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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19・3494特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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事件 平成 19年 (ワ) 3494号 特許権侵害差止等請求事件
東京都中央区<以下略>
原告 株式会社クレハ
同訴訟代理人弁護士山内貴博
同 田中昌利
同 上田一郎
同 古川裕実
同 東崎賢治
同訴訟代理人弁理士森田憲一
同 山口健次郎
同補佐人弁理士 脇村善一東京都港区<以下略>
被告 メルク製薬株式会社訴訟承継人マイラン製薬株式会社 大阪市中央区<以下略>
被告 扶桑薬品工業株式会社
被告ら訴訟代理人弁護士城山康文
同 山本健策
同訴訟復代理人弁護士山内真之
同訴訟復代理人弁理士 束田幸四郎
同 齋藤房幸
同補佐人弁理士安藤雅俊
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2009/08/27
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 -2-1 被告メルク製薬株式会社訴訟承継人マイラン製薬株式会社は,別紙被告製品目録記載の製品を製造し,販売し,又は販売のために展示してはならない。
2 被告メルク製薬株式会社訴訟承継人マイラン製薬株式会社は,その占有する別紙被告製品目録記載の製品を廃棄せよ。
,, 3 被告扶桑薬品工業株式会社は別紙被告製品目録記載の製品を販売し又は販売のために展示してはならない。
4 被告扶桑薬品工業株式会社は,その占有する別紙被告製品目録記載の製品を廃棄せよ。
5 被告メルク製薬株式会社訴訟承継人マイラン製薬株式会社は,原告に対し,7159万8210円(ただし,284万0785円の限度で被告扶桑薬品工業株式会社と連帯して)及びこれに対する平成19年2月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告メルク製薬株式会社訴訟承継人マイラン製薬株式会社は,原告に対し,7億8840万1790円(ただし,7315万9215円の限度で被告扶桑薬品工業株式会社と連帯して)及びこれに対する平成20年11月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 被告扶桑薬品工業株式会社は,原告に対し,被告メルク製薬株式会社訴訟承継人マイラン製薬株式会社と連帯して,284万0785円及びこれに対する平成19年2月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8 被告扶桑薬品工業株式会社は,原告に対し,被告メルク製薬株式会社訴訟承継人マイラン製薬株式会社と連帯して,7315万9215円及びこれに対する平成20年11月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
-3-訴訟費用は,これを10分し,その3を原告の負担とし,その6を被 10告メルク製薬株式会社訴訟承継人マイラン製薬株式会社の負担とし,その余を被告扶桑薬品工業株式会社の負担とする。
,,。 11この判決は 第5項ないし第8項に限り 仮に執行することができる
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨( ) 主文第1項ないし第4項及び第7項と同旨 1( ) 被告メルク製薬株式会社訴訟承継人マイラン製薬株式会社は,原告に対 2し,1億2790万4460円(ただし,284万0785円の限度で被告扶桑薬品工業株式会社と連帯して)及びこれに対する平成19年2月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
( ) 被告メルク製薬株式会社訴訟承継人マイラン製薬株式会社は,原告に対 3し,11億4421万1790円(ただし,1億0275万9215円の限度で被告扶桑薬品工業株式会社と連帯して)及びこれに対する平成20年11月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
( ) 被告扶桑薬品工業株式会社は,原告に対し,被告メルク製薬株式会社訴 4訟承継人マイラン製薬株式会社と連帯して,1億0275万9215円及びこれに対する平成20年11月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
,, ( ) 被告らは 別紙被告製品目録記載の製品の広告又は取引に用いる書類に 5別紙品質等誤認表示目録1記載の表示をしてはならない。
( ) 被告らは,別紙被告製品目録記載の製品についてのウェブサイトに「先 6発製品名クレメジン」との表示をしてはならない。
( ) 被告らは,別紙被告製品目録記載の製品の名称として「メルクメジン」 7という表示を用いてはならない。
( ) 訴訟費用は被告らの負担とする。 8( ) 仮執行宣言92 請求の趣旨に対する答弁( ) 原告の請求をいずれも棄却する。 1( ) 訴訟費用は原告の負担とする。 2( ) 仮執行免脱宣言 3
事案の概要
1 本件は,経口投与用吸着剤並びに腎疾患治療又は予防剤及び肝疾患治療又は予防剤についての特許権を有する原告が,被告らにおいて別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という )を製造,販売する行為は上記特許権を 。
侵害する行為であると主張して,( ) 被告メルク製薬株式会社訴訟承継人マイラン製薬株式会社(以下「被告 1マイラン」という )に対して,特許法100条1項に基づく被告製品の製 。
造,販売等の差止め及び同条2項に基づく被告製品の廃棄,特許法184条の10第1項に基づく補償金9830万6250円と民法709条に基づく(, 損害賠償金2959万8210円の合計1億2790万4460円 ただし284万0785円の限度で被告扶桑薬品工業株式会社と連帯して)及びこれに対する請求又は不法行為の後である平成19年2月21日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,並びに,民法709条に基づく損害賠償金11億4421万1790円(ただし,1億0275万9215円の限度で被告扶桑薬品工業株式会社と連帯して)及びこれに対する不法行為の日の後である平成20年11月28日(平成20年11月21日付け訴えの変更申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,( ) 被告扶桑薬品工業株式会社(以下「被告扶桑薬品」という )に対して, 2 。
特許法100条1項に基づく販売等の差止め及び同条2項に基づく被告製品の廃棄,被告マイランと連帯して,民法709条及び719条に基づく損害賠償金284万0785円及びこれに対する不法行為の後である平成19年2月21日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,並びに,被告マイランと連帯して,民法709条及び719条に基づく損害賠償金1億0275万9215円及びこれに対する不法行為の後である平成20年11月28日(平成20年11月21日付け訴えの変更申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,2 「クレメジン」との名称の医薬品を製造・販売する原告が,被告らにおいて被告製品を「クレメジン」の後発医薬品であると表示する行為や「メルクメジン」という名称で販売する行為等が,品質誤認表示に当たると主張して,被告らに対し,不正競争防止法2条1項13号及び3条に基づき,当該表示行為及び「メルクメジン」との名称の使用の差止めを求めるとともに,特許法100条に基づく差止請求及び廃棄請求の予備的請求として,不正競争防止法3条に基づき,被告製品の製造・販売等の差止め及び廃棄を求めた事案である。
争いのない事実等(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない)。
1当事者( ) 原告は,化学工業薬品,化学工業品,農薬,医薬品,医薬部外品等の製 1造及び販売等を業とする株式会社であり(甲1 ,石油ピッチを炭素源とす )る球状活性炭を有効成分とする腎疾患治療薬であるクレメジンカプセル200及びクレメジン細粒(以下,これらを合わせて「原告製品」という )を 。
製造販売している。
( ) メルク製薬株式会社(以下「メルク」という )は,医薬品,動物用医 2 。
薬品,医薬部外品,医療用機械器具等の製造販売及び輸出入等を業とする株式会社であり(甲2 ,平成20年2月1日,被告マイランに対し,被告製 )品の製造,販売事業を含む製薬事業を譲渡した。被告マイランは,平成20年5月16日,メルクを吸収合併し,その債務を承継した。
被告扶桑薬品は,医薬品,医療部外品,動物用薬品,農薬,医療用器械器具等の製造,販売及び貿易等を業とする株式会社である。
2 原告の有する特許権( ) 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許請求の範囲 1請求項1を引用する請求項6の発明を「本件発明6-1」といい,請求項2を引用する請求項6の発明を「本件発明6-2」といい,これらの発明を合わせて「本件発明」という。また,本件発明に係る特許を「本件特許」とい,()「」。 ) い 本件特許に係る明細書 別紙特許公報参照 を 本件明細書 というを有している。
特 許 番 号 第3835698号発明の名称 経口投与用吸着剤,並びに腎疾患治療又は予防剤,及び肝疾患治療又は予防剤出 願 日 平成15年10月31日優 先 日 平成14年11月1日国際公開日 平成16年5月13日登 録 日 平成18年8月4日【特許請求の範囲】【請求項1】,. フェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として製造され 直径が001〜1mmであり,ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000?u/g以上であり,そして細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満である球状活性炭からなるが,但し,式(1 :)R=(I -I )/(I -I ) (1)15 35 24 35〔式中,I は,X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折 15強度であり,I は,X線回折法による回折角(2θ)が35°における35回折強度であり,I は,X線回折法による回折角(2θ)が24°にお 24ける回折強度である〕で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭を除く,ことを特徴とする,経口投与用吸着剤。
【請求項2】全塩基性基が0.40meq/g以上の球状活性炭からなる請求項1に記載の経口投与用吸着剤。
【請求項6】請求項1〜5のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤を有効成分とする,腎疾患治療又は予防剤。
( ) 本件発明6-1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分 2説した構成要件をそれぞれ「構成要件A」などという 。。)A フェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として製造され,B 直径が0.01〜1mmであり,C ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000?u/g以上であり,そしてD 細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満である球状活性炭からなるが,E 但し,式(1 :)R=(I -I )/(I -I ) (1)15 35 24 35〔式中,I は,X線回折法による回折角(2θ)が15°にお 15ける回折強度であり,I は,X線回折法による回折角(2θ) 35が35°における回折強度であり,I は,X線回折法による回 24折角(2θ)が24°における回折強度である〕で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭を除く,ことを特徴とする,F 経口投与用吸着剤を有効成分とする,G 腎疾患治療又は予防剤( ) 本件発明6-2を構成要件に分説すると,構成要件AからGは,本件発 3明6-1と同じであり,次の構成要件が加わる。
H 全塩基性基が0.40meq/g以上の球状活性炭からなる3 本件特許に係る出願は,平成15年10月31日にされたが,その後,複数回の補正がされ,平成18年5月15日付けの手続補正(甲70の8 ,同年 )6月16日付けの手続補正(甲70の11)を経て,同年8月4日に登録がされた。
このうち,同年5月15日付けの手続補正(甲70の8)は,請求項1の構成要件E(いわゆる「除くクレーム )を加えるものであった(以下,この補 」正を「本件補正」という 。。)4 原告は,平成16年6月14日,メルクに対して発明の内容を記載した警告書(甲13の1)を発送し,同警告書は,同月15日,メルクへ到達した(甲13の2 。)5 被告らの行為メルクは,平成16年7月から平成20年1月31日まで,被告製品(別紙被告製品目録記載1の「メルクメジン細粒」及び同目録記載2の「メルクメジンカプセル200mg )を業として製造,販売し,平成20年2月1日から 」は,被告マイランが被告製品を業として製造,販売している。
また,被告扶桑薬品は,平成16年12月から,被告製品を業として販売している。
6 被告製品の構成被告製品は,いずれも炭素源としてフェノール樹脂を使用した,腎疾患の一つである慢性腎不全の治療薬である。したがって,構成要件A(フェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として製造され)及びG(腎疾患治療又は予防剤)を充足する。
争点
1 被告製品は,構成要件B,C,D,E,F及びHを充足するか2 本件補正は不適法であり,本件特許は,特許法17条の2第3項により無効とされるべきものか3 先使用による通常実施権の有無4 補償金の額5 共同不法行為の成否及び損害の額6 被告らの行為が品質誤認表示に当たるか
争点に関する当事者の主張
1 争点1(被告製品は,構成要件B,C,D,E,F及びHを充足するか)について〔原告の主張〕( ) 構成要件Bについて 1被告製品の平均粒子径につき,本件明細書の【0027】段落に測定方法として記載されているJIS K 1474(活性炭試験方法)に従って測定すると,メルクメジン細粒の平均粒子径は0.27mm,メルクメジンカプセル200mgの平均粒子径は0.29mmであった(甲9)から,被告製品は,いずれも構成要件B(直径0.01〜1mm)を充足する。
( ) 構成要件Cについて 2被告製品の比表面積につき,本件明細書の【0028】段落に測定方法として記載されているラングミュアの吸着式によって比表面積を計算すると,被告製品の比表面積は,いずれも1570?u/gであった(甲10)から,被告製品は,いずれも構成要件C(ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000?u/g以上)を充足する。
( ) 構成要件Dについて 3被告製品における,細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積につき,本件明細書の【0029】段落に測定方法として記載されている水銀圧入法によって細孔容積を計算すると,被告製品における細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積につきの細孔容積はいずれも0.05mL/gであった(甲11 。)また,被告製品が球状活性炭からなるものであることは,被告製品の説明書(甲6)の記述から明らかである。
よって,被告製品は,いずれも構成要件D(細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満である球状活性炭からなる)を充足する。
( ) 構成要件Eについて 4被告製品につき,反射式デフラクトメーター法により,回折角(2θ)15°,24°及び35°における回折強度をそれぞれ測定した。そして,測定された回折強度をもとに,構成要件Eで定義されている回折強度比Rを算出した結果,被告製品は,いずれも1.01であった(甲12)から,被告製品は,いずれも構成要件E(式(1 : R=(I -I )/(I - )15 35 24I ) (1 〔式中,Iは,X線回折法による回折角(2θ)が15° 35 15 )における回折強度であり,I は,X線回折法による回折角(2θ)が3535°における回折強度であり,I は,X線回折法による回折角(2θ)が2 244°における回折強度である〕で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭を除く)を充足する。
( ) 構成要件Fについて 5被告製品がいずれも経口投与用吸着剤を有効成分としていることは,被告製品の説明書 甲6 から明らかであり 被告製品はいずれも構成要件F 経 () , (口投与用吸着剤を有効成分とする)を充足する。
( ) 構成要件Hについて 6被告製品において,本件明細書の【0031】段落に全塩基性基の測定方法として記載されている方法に従い全塩基性基を測定したところ,メルクメジン細粒における全塩基性基は0.67meq/g,メルクメジンカプセル200mgにおける全塩基性基は0.65meq/gであった(甲11)から,被告製品は,いずれも構成要件H(全塩基性基が0.40meq/g以上の球状活性炭からなる)を充足する。
〔被告らの主張〕争う。
2 争点2(本件補正は不適法であり,本件特許は,特許法17条の2第3項により無効とされるべきものか)について〔被告らの主張〕(,「」 知的財産高等裁判所特別部平成20年5月30日判決 以下 大合議判決という )は,訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総 。
合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は 「明細書又は図面に記載した事項 ,」。, の範囲内において するものということができると判示している 換言すれば訂正が訂正前の明細書の記載から導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入するものである場合,該訂正が除くクレームの体裁を採っていたとしても,その訂正は新規事項の追加となる。
そして,本件補正は,補正前の明細書に全く記載も示唆もされていない「式(1 : R=(I -I )/(I -I ) (1 〔式中,I は,X線 ))15 35 24 35 15回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり,I は,X線 35回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり,I は,X線 24回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭」を除くという,当初明細書との関係で新たな技術的事項を導入する補正であることは明らかである。なぜなら,本件補正は,当初明細書を各構成要件に分説し,各構成要件に該当しうる物質の一部を特定して消極的表現によって除外したものではなく 「R値 ,が1.4以上である球状活性炭を除く」ことにより 「R値が1.4未満であ ,る球状活性炭」という新規な技術的構成を導入したものに他ならないからである。
よって,本件補正が,新規事項追加に該当し,特許法17条の2第3項に違反する補正であることは明らかであり,本件特許権の行使は同法104条の3第1項により許されない。
〔原告の主張〕( ) 本件補正の経緯 1平成15年10月31日,原告により本件特許出願(特願2004-548107号)と特願2004-548106号の特許出願が同日にされた。
後者の出願は,平成17年4月28日に特許第3672200号として登録された(甲15。以下「別件特許」という 。。)本件特許出願は拒絶査定がされたため,原告は拒絶査定不服審判を請求した。同手続中において,本件特許出願にかかる発明が別件特許にかかる発明と同一であるとの理由で拒絶理由通知が出された。
原告は,上記拒絶理由通知に対応して,平成18年5月15日に手続補正を行い(本件補正 ,最終的に特許審決を受けた請求項における除くクレー )ムの記載のように補正した。
( ) 被告らは,大合議判決を引用して,本件補正は新規な新たな技術的事項 2を導入するものであり,特許法17条の2第3項に違反すると主張する。
しかしながら,被告らの大合議判決の解釈は独自の解釈にすぎない。大合議判決は,新たな技術的事項を導入したものであるかの判断として,補正前における最大の特徴が補正後においても維持されているか,また補正の前後で効果が共通かを検討して判断しており,本件においても同様の検討がなされるべきである。
本件当初明細書に記載された本件発明の最大の特徴は,炭素源を出発材料として,従前用いられていたピッチに代えてフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を使用して調製した経口投与用吸着剤が優れた選択吸着率を有することを見出した点にある。そして,本件補正は 「R値が1.4以上である球状 ,活性炭を除く」旨の補正であるが,前記( )のとおり,この補正は,同じ出 1願人により同日に出願された別件特許との重なりを解消するために,別件特許に係る発明として開示された「R値が1.4以上である球状活性炭」を除外するものであって,本件発明の技術情報とは無関係であり,何ら新たな技術事項を付加するものではない。
これを大合議判決の判断基準に照らすと,経口投与用吸着剤の炭素源(出発材料)として熱硬化性樹脂を使用したという本件当初明細書に記載された本件発明の最大の特徴は,本件補正後も全く同じであり,また,優れた選択吸着率を獲得するに至ったという本件当初明細書に記載された本件発明の効果もまた同じである。
したがって,本件補正は,本件当初明細書に開示された本件発明に関する技術事項に新たな技術事項を付加したものではなく,特許法17条の2第3項に違反するものでないことは明らかである。
3 争点3(先使用による通常実施権の有無)について〔被告らの主張〕( ) 最高裁判所昭和61年10月3日第二小法廷判決は 特許法79条の 事 1 ,「業の準備」の意味について,発明を即時実施する意図を有しており,かつその即時実施の意図が客観的に認識できる態様,程度において表明されていることを意味すると判示している。
メルク及びその製造受託者であるフタムラ化学株式会社(旧商号二村化学工業株式会社。以下「二村化学」という )は,本件特許の優先日である平 。
成14年11月1日より前に,球形活性炭の発明を共同して完成していた。
そして,メルクは,優先日以前である平成14年6月10日までに,被告製品の量産サンプルを製造し,この量産サンプルを用いて,あらかじめ定めた規格への適合性を確認する規格及び試験方法に関する試験を開始し,本件特許の優先日前である平成14年8月26日までに,同試験を完了して量産サンプルが規格に適合することが確認されていたのであり,これらの事実からすれば,即時実施の意図が客観的に認識できる態様,程度において表明されていたというべきである。
( ) 量産サンプルとしては,3つのロット(KK-1,KK-2及びKK- 23)が製造されているものの,これら量産サンプルは,いずれも同一材料を用いた炭化,賦活,酸洗浄及び乾燥,気相による酸化を伴う熱処理という同一の製造手順で製造され,そのすべてが優先日前に規格及び試験方法に関する試験が実施され,かつ,安定性試験の1回目はすでに優先日前に完了していた。安定性試験は40℃,相対湿度75RH%という苛酷条件下での加速試験であるため,一度開始したら最後まで見届けるしかない試験であり,当業者の常識からすれば,この試験は,被告の発明の内容はもちろん,事業の内容(製造手順を含む )が確定していなければ実行に移すことができない 。
試験であるといえる。したがって,優先日前に量産サンプルが3ロット準備され,そのすべてが安定性試験に供されることにより,この量産サンプルの実施形式に具現される発明の実施たる事業を即時実施する意図が表明されていたというべきである。
この点に関し,原告は,KK-1と,KK-2及びKK-3との相違として充填密度及び比表面積等の違いを指摘する。しかしながら,以下に述べるように,これらの違いは実質的な差異ではない。
ア 充填密度に関しては,KK-1の賦活時間が試みにKK-2及びKK-3よりも長くされていたために生じた差異にすぎず,球形活性炭の重要な効能である選択的吸着性に何ら違いがないことから,時間短縮のために,他の量産サンプルであるKK-2及びKK-3については短めに設定した結果にすぎず,製剤の効能特性に関連した技術的意味を有する変更ではない。ゆえに,KK-1,KK-2及びKK-3はすべて厚生労働省に対する製造承認試験に供され,同一の製剤であることを前提として審査を受けた結果,被告製品の製造承認が下されているのである。
充填密度なる指標は,本件明細書において特許請求の範囲その他発明の詳細な説明においても一切触れられていない項目であって,その他,医療() 用活性炭に関する原告による本件優先日前の公知文献 乙214〜221にも,充填密度の相違をもって吸着剤の同一性を左右する旨の記載ないし示唆は一切ない。充填密度は,包材(カプセル)に薬剤を詰める際,どの程度詰まるかを示す指標として想定し得るものの,およそカプセル剤において完全に隙間なく内容物の薬剤を詰め込むことが行われないのは顕著な事実であり,カプセル剤を製造する局面において充填密度は高度な技術的意味を有する指標ではない。また,細粒剤において充填密度が全く意味のない指標であることは自明である。原告製品のインタビューフォーム(乙170)においてすら,その物理的化学的性質として充填密度なる評価項目は触れられていない。被告による発明の完成当時において,球形活性炭g/ml g/ml に関する当業者常識として充填密度が0 52 であるか0 61 ..であるか程度の差異が球形活性炭の発明の同一性を左右するような差異ではなく,賦活時間の多少の増減により適宜選択することができる設計的事項であったことは明らかである。つまり,KK-1,KK-2及びKK-3は,すべてメルクが設定した球形活性炭の規格によって画定される被告発明の範囲内であり,メルクにおける本件被告製品についての事業内容が遅くとも実測試験の着手時期(平成14年7月30日)において確定していた事実に影響を与えるものではない。
イ また,比表面積に関しては,本件特許発明においても1000?u 以上/gであることが規定されているのみであり また 本件優先日前公知文献 乙 ,, (214〜221)においても,おおむね500?u から2000?u であ /g /gれば,同一発明の範疇に属することが本件優先日当時の当業者常識として示されているのであって,原告が指摘する差異(KK-1について1542?u (乙25 ,KK-2について1362?u (乙27 )が,当業者 /g /g ))常識に照らして球形活性炭の特性としての実質的差異ではなかったと評価されるべきことは明白である。
ウ メルクと二村化学は,平成14年2月13日,KK-2の製造条件について打合せを行い(乙183 ,選択的吸着性を評価する目標物質として )プルランとアルギニンを選択するとともに,プルラン25%以下,アルギニン75%以上という吸着率の目標を設定した。そして,KK-2を製造し,その分析によれば,プルラン及びアルギニンの吸着率の目標を達成していた。また,KK-3についても同様であった。
このように,KK-1,KK-2及びKK-3は,プルラン及びアルギニンの吸着率において上記目標を達成しており,その選択的吸着性能に差異はなく,これらは実質的に同一である。
エ また,クレアチニンとトリプシンの吸着試験(規格及び試験方法に関する試験(乙29,104 )において,KK-1,KK-2及びKK-3 )のいずれも,メルクの定めた規格の水準を満たし,同様の結果が出たことからすれば,充填密度の違いによって吸着率が左右されず,これらが実質的に同一であることは明らかである。
( )ア 被告製品は,前記量産サンプル(KK-1,KK-2及びKK-3) 3,(() ) と 実質的に同じ原材料 ● 省略 ●が製造する特定のフェノール樹脂を用い,実質的に同一温度で炭化され,実質的に同一温度で賦活(体内毒素を吸着する細孔径を成長)され,実質的に同一希釈率の塩酸で酸洗浄及び乾燥がなされ,実質的に同一温度で熱処理(不純物を除去)して製造されるものである。そして活性炭の吸着特性を左右するフェノール水酸基,カルボキシル基等の官能基を炭素に結合させるための酸化処理も熱処理の工程において一貫して同一酸素濃度に調整された気相処理によって行われている。
,, , , イ なお 原告は 被告製品の製造において行われる酸化工程が KK-1KK-2及びKK-3の製造においては存在しなかったと主張するが,被告製品の球形活性炭は,アミン系尿毒素(塩基性)を含む体内毒素を選択的に吸着する原告製品の後発医薬品であるから,表面が酸化処理されること(塩基性の尿毒素を吸着するべく極性が逆である酸性基を所定量有すること)は自明である。また,原告は,被告製品は酸化工程を経ずに製造されているとも主張する。しかし,●(省略)●により,球状活性炭を酸化させている。
ウ 量産サンプルと被告製品の製造手順との唯一の相違点は,炭化,賦活及び熱処理に要する時間である。しかしながら,この相違点は,量産サンプルの原材料仕込量が260 であった(乙25,183〜188)のに kg対して,現在の量産体制では原材料を1000 仕込んでいることに起 kg因するものであり(乙192 ,仕込量が多ければそれぞれの加熱処理時 )間が長くなることは活性炭分野の当業者にとって自明であるから,この相違が実質的なものではないことは明らかである。
したがって,被告製品の原薬の製造方法は,遅くとも平成14年3月25日までに確定していた製造手順(乙188)から,現在(乙223)に至るまで実質的に変更はないのであって,被告製品は,メルクの先使用に係る実施形式に具現された発明の範囲内に属するものであり,原告の請求は理由がない。
( ) 原告は,被告製品の量産体制が整備されていなかったとして,事業の準 4備がなかったと主張する。
しかしながら,量産体制が整っていることが,事業の準備の必須の根拠事実ではないことは,前記最高裁判所昭和61年10月3日第二小法廷判決の結論から明らかである。また,実質的にも,もともと有していた量産用設備を転用した事案では先使用権が成立するが,実施形式が決まった後に新たに設備を導入した事案では先使用権が成立しないという解釈は不当である。
なお メルクが被告製品の製造を委託していた二村化学の固定資産台帳 乙 ,(164)上も,被告製品の量産用設備が本件特許の優先日前に導入されていたことが表れている。
( ) 原告は,事業の実施の準備が整ったというためには,生物学的同等性試 5験の完了まで必要であると主張する。
しかしながら,特許法79条は,医療用医薬品について事業の準備の要件として厚生労働省が求める安定性試験や生物学的同等性試験が了していることを求めていないと解すべきである。なぜなら,規格試験や安定性試験等は医薬品の有効性及び安全性確保という行政上の目的から設けられたものであり,特許発明にかかる物の実施の事業を即時実行する意図の表明をもって特許権者に対抗できるとした特許法79条の趣旨と直接関係するものではないからである。
〔原告の主張〕( ) 先使用の抗弁が認められるかについての判断基準 1先使用権制度の趣旨は,主として特許権者と先使用者との公平を図る点にあるとされている。そのため 「事業の準備」に当たるかどうかについて, ,画一的な基準を立てることは困難であり,公平の理念に従い,発明の内容及び性質,先使用者が事業の実施に向けて行った活動の内容等を総合的に考慮して判断するものとされている。
発明の実施である事業が量産品の製造及び販売の事業である場合において,最高裁判所昭和61年10月3日判決が述べる「即時実施の意図」が認められるためには,優先日までに,実施品の仕様及び製造方法が細部に至るまで確定していることが必要であると解すべきである。なぜなら,仕様及び製造方法が細部に至るまで確定していなければ,実施品の販売のための量産を開始することはできず,そのような状況をもって,量産品の製造及び販売の事業を即時実施する意図があったと評価することは困難だからである。
また,医薬品に関する先使用を判断した裁判例からすれば,優先日において,少なくとも,( )製造設備の整備等への投資,安定供給体制の確保等, a事業の実施に向けて相当程度の時間,労力,資金を費やした事実,( )安定b性試験等に使用される製剤の内容が完全に定まっているとの事実 及び ( ),,cその製剤の薬効などが明らかになっている事実が存在する場合に 「事業の ,準備」がなされたものと判断すべきである。
,, そして 被告製品は後発医薬品として製造承認の申請がされたものであり後発医薬品は,先発医薬品の製造者の功労の下に,簡略化された承認手続で医薬品の製造,販売をすることが可能になっているものであることに鑑みると,通常の医薬品よりも多くの時間,労力,資金を費やした事実があって初めて( )製造設備の整備等への投資,安定供給体制の確保等,事業の実施に a向けて相当程度の時間,労力,資金を費やしたと判断されるべきである。
また,被告製品が後発医薬品として製造承認の申請がされたものであることに加えて,被告製品は,球状活性炭であり,通常の医薬品と異なり,そのほとんどが単一の元素である炭素からなる医薬品であることから,単に構成要素が判明しただけではその性質が不明であり,被告製品が先発医薬品と同等であることは,構造式のみから判断できないという特殊性がある。したがって,被告製品が先発医薬品と吸着能力その他の仕様において同一でない限り,( )安定性試験等に使用される製剤の内容が完全に定まっているとの事 b実は認められるべきでない。
さらに,被告製品が後発医薬品として製造承認の申請がされたものであること,及び被告製品が先発医薬品と同等であることが構造式のみから判断できないという特殊性からすれば,先発医薬品との薬効の同等性を確認していない限り,( )その製剤の薬効などが明らかになっている事実は認められる cべきではない。
( ) 製造設備の整備等への投資,安定供給体制の確保等の事実が認められな 2いことア KK-1,KK-2及びKK-3は量産サンプルとは評価できないこと被告らは,被告製品の原末として製造された3本のロット(KK-1,KK-2及びKK-3)は,1バッチの仕込量が260kgで製造されるものであるから量産サンプルであるとし,被告らが本件特許の優先日以前に量産のための準備行為をしていたと主張する。
しかしながら,被告らは,1バッチ260kgという仕込量が量産レベルの量であることの理由について具体的な理由は示していない。実際は,1バッチ260kg程度のわずかな仕込量では量産レベルとは評価できない。
すなわち,フェノール樹脂から活性炭を製造する工程における一般的な収率(フェノール樹脂から炭素質材料とするための収率を50%,炭素質材料を充填密度0.52g/mlの活性炭とするための賦活収率を40%), , と仮定 の下に計算すると フェノール樹脂の仕込量が260kgの場合活性炭の収量は,52.0kgとなる。そして,後工程である気相酸化工程における収量を80%と仮定すると,最終的に得られる球状活性炭の量は,わずか41.6kgにすぎない。さらに,二村化学において41.6kgの球状活性炭が得られたとしても,出荷の前に将来の分析等のためにある程度の量をロットごとにサンプル保存するのが通常であることを考慮すると,結局,仕込量が1バッチ260kgであることは,製造承認申請に必要な試験の実施等のために二村化学がメルクに対して納入したKK-1の量37.0kgと辻褄が合う。
以上のとおり,1バッチ260kgというフェノール樹脂の仕込量は,製造承認申請において必要な各種試験用に用いる程度の量の球状活性炭を製造することができる量にすぎないから,かかる仕込量から製造された試験用の3ロットが量産サンプルであるとは到底いえない。なお,37kgの球状活性炭からは,1人あたりの投与量を6g/日,投与期間を6か月として考えた場合,たかだか34人程度に投薬できる量の被告製品しか製造できない。この点からも,球状活性炭の量を量産レベルの量ということはできない。
このように,1バッチ260kg程度のわずかな仕込量によって球状活性炭を製造していたとの事実をもって,メルクに事業の準備があったとはいえないことは明らかである。
イ 量産体制が整っていなかったこと被告らは,乙第164号証を提出し,メルク(その製造受託者である二)() 村化学 が遅くとも平成13年11月1日までに薬用活性炭の焼成 製造用炉について事業供用を開始していたのでメルクには量産体制があったと主張する。
しかしながら,乙第164号証に記載された設備はあくまで二村化学が保有するものであり,被告製品の量産用設備であること,すなわち,メルクと二村化学との間で,当該設備を用いて被告製品を製造することが,本件特許の優先日までに合意されていたことについては,主張も立証もされていないのであって,被告らの主張は失当である。
また,乙第164号証記載のほとんどの設備が事業供用された時期(平成13年2月1日)と被告製品のサンプル品が製造された時期(平成14年1月10日ころ)とを比較すると,約1年間の空白がある。事業用の炉を事業供用してから1年もの間,稼働させずに放置しておくことは,通常考えられない。したがって,仮に,乙第164号証記載の二村化学所有の炉を被告製品の製造に供用するに至ったのだとしても,それは,結果的に当該炉を被告製品の製造に供したにすぎず,被告製品の製造のために準備されたものではないと解される。
さらに,乙第164号証記載の設備を用いて,どのような製造条件によって被告製品を製造するに至ったのか,その条件を決定したのはいつなのかについて主張立証はなく,メルクが本件特許の優先日より前に被告製品の量産体制を整えていたことは認められず,事業の準備を終えていたとはいえないことは明らかである。
( ) 事業内容が確定していなかったこと 3被告らは,事業の内容が確定していなければ安定性試験を実行に移すことができないことが当業者の常識であるとして,KK-1,KK-2及びKK-3が安定性試験に供されることによって即時実施の意図が表明されたと主張する。
しかし,以下のとおり,本件特許の優先日当時,メルクの製造工程は確定しておらず,また,製造工程の一部である賦活工程における賦活条件も確定していなかったのであり,安定性試験を実行に移したことをもって即時実施の意図が表明されたとは認められない。
ア 製造工程が未確定であったこと(ア) 酸化工程が本件優先日後に追加されたことKK-1,KK-2及びKK-3の製造工程,製造承認申請書に記載されたメルクメジンカプセル200mgの製造工程,さらに乙第25号証に記載されたKK-1の製造工程を対比すると,酸化工程の有無について変遷が見られる。
まず,二村化学の従業員の陳述書(乙176)等によれば,KK-1は,●(省略)●ものであり,その製造工程に酸化工程は含まれていない。なお,KK-1を製造したのは平成13年12月のことである。
しかし,その直後,平成14年1月21日付けで,KK-1の製造工程を記載したものとして二村化学からメルクに提出された「メルク・ホエイ(株)殿 打合せ資料 (乙25)には 「気相での酸化処理」と 」,,。, の記載が見られ 酸化工程が含まれた記載となっている 上記のとおり実際にはKK-1の製造工程において酸化工程を経ていないことは,日報により裏付けられているものであって,乙第25号証の上記記載は,事実を反映していない可能性があるものの,乙第25号証と乙第176号証を比較することにより,KK-1の試作時点で,酸化工程を含むかどうかについて,二村化学とメルクとの間で意思決定されていなかったことが認められる。
その後,乙第25号証に「残り2バッチ分については1バッチ目の評価後改めて開始」と明記されているとおり,平成14年2月にKK-2の試作が行われ,同年4月にKK-3の試作が行われた。前記二村化学の従業員の陳述書(乙176)等によれば,その製造工程に酸化工程は含まれていない。乙第183号証及び乙第188号証にも乙第25号証に存在した「気相での酸化処理」といった記載は見られない。
このような経緯からすれば,最終的には,酸化工程は含まれないこととされたのかと思われる。ところが,本件特許の優先日より後に当局に提出されたメルクメジンカプセル200mgに係る平成15年3月20日付け医薬品製造承認申請書(乙175)の基原欄には,●(省略)●する工程が含まれていることが明記されている。メルクメジン細粒も,基原は同一であり,製造承認申請書にも同一の記載がある(甲22の1・2 。この記載は,関係当局に提出された公の文書に記載されたもの )であり,被告製品の有効成分である球形活性炭について,最終的に確定した製造工程,すなわち,事業が実施の段階に至った時点での製造工程を示していると考えられる。
このように,酸化工程は,KK-1,KK-2及びKK-3の試作工程においては,多少の変遷が見られるものの基本的には存在しなかったのに対し,最終的に製造承認申請書において確定した製造工程には取り入れられているのである。
なお,被告提出の証拠(乙176,212)によれば,現在の被告製品の製造工程においては,熱処理における雰囲気が窒素であって,酸化工程ではないと認められるから,製造承認を得た後においても,さらに製造方法変更したものと推測される。
(イ) 酸化工程の重要性酸化工程とは,球状活性炭の球状活性の表面に官能基を導入することにより,選択的吸着性を向上させるための工程であり,その有無が経口投与吸着剤の選択吸着性に影響する,決して軽視することのできない工程である。このことは,下記の本件明細書の記載から裏付けられる。
【0017】本発明による前記の球状活性炭の選択吸着性を一層向上さ,,,. せるには こうして得られた球状活性炭を 続いて 酸素含有量01〜50vol%(好ましくは1〜30vol%,特に好ましくは3〜20vol%)の雰囲気下,300〜800℃(好ましくは320〜600℃ の温度で酸化処理し 更に800〜1200℃ 好 ), (ましくは800〜1000℃)の温度下,非酸化性ガス雰囲気下で加熱反応による還元処理をすることにより,本発明の経口投与用吸。, 着剤として用いる表面改質球状活性炭を得ることができる ここで表面改質球状活性炭とは,前記の球状活性炭を,前記の酸化処理及び還元処理して得られる多孔質体であり,球状活性の表面に酸性点と塩基性点とをバランスよく付加することにより腸管内の有毒物質の吸着特性を向上させたものである。
【0025】本発明による経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭(すなわち,前記の球状活性炭を更に酸化処理及び還元処理), , することによって製造される生成物では 官能基の構成において.. , . 全酸性基が0 40〜1 00meq/gであり 全塩基性基が040〜1.10meq/gである。官能基の構成において,全酸性基が0.40〜1.00meq/gであり,全塩基性基が0.40〜1.00meq/gの条件を満足すると,前記の選択吸着特性が向上し,特に前記の有毒物質の吸着能が高くなるので好ましい。官能基の構成において,全酸性基は0.40〜0.90meq/gであることが好ましく,全塩基性基は0.40〜1.00meq/gであることが好ましい。
このように,経口投与用吸着剤の選択吸着特性を向上させる酸化工程が,KK-1,KK-2及びKK-3の製造工程には存在しなかったのに対し,最終的に確定した製造工程に取り入れられている事実は,決して軽視することはできない。本件特許の優先日の前後で,酸化工程を経るかどうかという点で変更があった以上,本件特許の優先日当時,被告製品の製造工程は確定していなかったものといえる。
イ 賦活条件が未確定であったこと(ア) 活性炭は,孔隙構造の発達した炭素材料であり,炭素質物質を炭化し,賦活することにより製造される。吸着剤としての活性炭を特徴付けるのは,発達した細孔であるが,炭素質物質を炭化しただけでは,比表面積は小さく,非常に小さい吸着能力しか持たない。大きな比表面積ゆえに,大きな吸着能力を持つ活性炭は,水蒸気,二酸化炭素などの活物質が炭素と反応する条件下で,炭素化材料を賦活することによって生み出される。
水蒸気による賦活における主な反応は,炭素と水蒸気が反応して水素と一酸化炭素又は二酸化炭素を生成する反応である。水蒸気による賦活反応においては,賦活時間が長くなると,賦活収率が低下する関係にある。また,賦活時間が長くなると,比表面積(固体の単位面積当たりの表面積)が増加する関係にある。さらに,賦活時間が長くなると,ガス化量が増大して炭素物質の細孔が拡大し,重量が減少するから,充填密度が低下することは明らかである。
吸着剤としての活性炭を特徴付けるのは,発達した細孔であり,賦活の目的は,基本的には単位量当たりの吸着有効面積をいかに拡大するかにある。比表面積が多孔質体(活性炭)の性質の重要な因子として取り上げられるのは,他の物質との相互作用が可能な表面の指標として重要であるからである。
(イ) 二村化学の従業員の陳述書(乙176)等によれば,KK-1の製造においては,最初に20時間,次いで5時間,更に4時間と,合計29時間にわたって賦活処理を行ったが,KK-2及びKK-3の製造においては,生産時間を短縮し,賦活収率を高くするため,KK-2で21時間,KK-3で21.5時間の賦活時間が採用された。その結果,KK-2及びKK-3は,KK-1の約2倍の賦活収率となった。
そして,上記のとおり,賦活時間と賦活収率,比表面積及び充填密度とは,それぞれ密接に関連しており,活性炭の特性を基礎付ける重要な製造条件となっている。
(ウ) そして,この賦活時間の違いは,以下のとおり充填密度の相違を生じ,吸着能力に密接に関連する。
すなわち,KK-1の充填密度は,0.52g/ml(乙25)であるのに対し KK-2及びKK-3の充填密度は 0 61g/ml 乙 ,,.(26,27)である。メルクと二村化学が,このような充填密度の差を意識的に設け,充填密度を0.52g/mlとするか0.61g/mlとするかが平成14年1月21日の時点で未確定であったことは「メルク・ホエイ(株)殿打合せ資料」と題する書面(乙25)から明らかである。同書面には 「残り2バッチ分については1バッチ目の評価後改 ,めて開始」とあり,原末の仕様は1バッチ目の評価後に再検討することが予定されていたことが明記されているのである。
炭素材に細孔構造が形成されると,細孔となった部分は空隙となるため,充填密度は小さくなり,比表面積は大きくなる。充填密度は,球状活性炭の比表面積と相関関係を有し,その吸着材としての性能を示す良い指標となる。
充填密度が0.52g/mlのKK-1と充填密度が0.61g/mlのKK-2及びKK-3は,吸着性能に大きな影響を及ぼす要素である比表面積において,大きな差異を有する。すなわち 「メルク・ホエ ,イ(株)殿打合せ資料」と題する書面(乙25)によれば,KK-1の比表面積は1542?u/gであり 「太閤活性炭 活性炭分析表 (乙 ,」27)によれば,KK-2の比表面積は1362?u/gである。なお,KK-3の比表面積は証拠上現れていないが,KK-2とKK-3の充填密度が同じであることから,比表面積もKK-2とほぼ同じと推測される。
,, そして 比表面積の差異は吸着性能を大きく左右するものであるから球状活性炭の充填密度が0.52g/mlであるKK-1と,0.61g/mlであるKK-2及びKK-3では,医薬品の性能においても有意な差異があることは論理的に明らかである。
(エ) KK-1,KK-2及びKK-3の製造経緯からすれば,以下のとおり,メルクがKK-1とKK-2及びKK-3とが全く別個の物質であることを十分認識していたことは明らかである。
KK-1の賦活工程に係る日報(乙177〜179)によれば,KK-1の製造に当たっては,最初に20時間の賦活が行われ,次に5時間の再賦活が行われ,更に4時間の再賦活が行われている。二村化学の従業員の陳述書(乙176)の4頁によれば,20時間の賦活を行ったものについて,抜き取り検査を行ったとのことであり,25時間の賦活を行ったものについても,同様の検査が行われたものと推測される。そして,合計29時間の賦活を行ったKK-1と原告製品について,充填密() 度及び比表面積を含む活性炭の性能について対比を行っている 乙25ことからすれば,2回の抜き取り検査を行いつつ,合計29時間の賦活が行われたのは,充填密度及び比表面積を含む活性炭の性能が原告製品と同等になるような賦活条件を探っていたものと考えられる。
ところが,合計29時間の賦活を行ったKK-1と原告製品を対比することにより,その充填密度及び比表面積を含む性能が近似していることを確認していたにもかかわらず,KK-2及びKK-3の製造の際には,これとは異なる20時間の賦活で抜き取られたものの性能を目標値として設定したのである(乙183,188 。ここで設定した目標値 ),() が 合計29時間の賦活を行ったKK-1や原告製品に係る値 乙25と大きく違うことはいうまでもない。乙第25号証には,原告製品の比表面積が1590?u/g,KK-1の比表面積が1542?u/gと記載されているのに対し,設定した比表面積の目標値は,1300〜1350?u/g(乙183,188)であったのである。
これらのことからすれば,メルクは,KK-2及びKK-3を製造するに当たり,KK-1と全く別個の物質となることを十分認識しつつ,あえてKK-1の賦活条件とは異なり,約2倍の収率で活性炭が得られる賦活条件を設定したものと考えられる。
(オ) 被告らは,KK-1,KK-2及びKK-3について,プルラン及びアルギニンの吸着率からすれば選択的吸着性能に差異はなく,これらのサンプルは実質的に同一であると主張する。しかし,プルランは多糖類の一種,アルギニンはアミノ酸の一種にすぎず,代表的な体内の有益成分とも毒性物質ともいい難く,これらの吸着率の確認をもって,選択的吸着性能を確認できるものではない。
また,被告らは,KK-1,KK-2及びKK-3について,トリプシン及びクレアチニンに対する吸着試験において選択的吸着性能に差異がなく,これらは実質的に同一である旨主張する。しかし,同試験の条件設定のための試験において試料の添加量を増減させても吸着率に差が生じていないことから,試料の添加量が過剰であり条件設定が不適切であることは明らかであり,このような試験による結果には何ら意味はない。
(カ) 生物学的同等性試験におけるKK-1のみの使用メルクは,平成14年10月24日,株式会社日本バイオリサーチセンターに委託し,生物学的同等性試験として,KK-1及び原告製品について,動物実験に着手し,本件特許の優先日以降である同年11月28日から平成15年1月24日までの間,5/6腎摘出ラットにKK-1を投与し,血中クレアチニン,尿素窒素及びクレアチニン・クリアランスを指標として,腎機能に対する効果を検討するとともに,陽性対照() 。 物質である原告製品の効果と比較する試験を実施している 乙107しかし,本件特許の優先日までにKK-2又はKK-3について,このような試験は行われていない。そして,KK-1は,原告製品と同等の比表面積及び充填密度を有する(乙25)のに対し,KK-2及びKK-3は,KK-1と賦活時間,賦活収率,比表面積及び充填密度を異にし,細孔の生成状況を異にするものであり,同様に原告製品とも異なるものである。
後発医薬品の生物学的同等性試験の実施に際し,後発医薬品の試験製剤については,実生産ロットと同等性試験に用いるロットの製法は同じにすべきものとされている( 後発医薬品の生物学的同等性試験ガイド 「ライン」第3章A?T。甲63 。仮に,生物学的同等性試験の実施の当 )時,既に被告製品の賦活条件がKK-2及びKK-3の賦活条件に基づいて確定されていたとすれば,生物学的同等性試験の試験製剤としてはKK-2又はKK-3が用いられたはずである。ところが,実際にはKK-1が用いられたということは,生物学的同等性試験として5/6腎摘出ラットに対するKK-1の投与が開始された平成14年11月28日の時点(本件特許の優先日である平成14年11月1日より後である )では,被告製品の賦活条件をKK-2及びKK-3の賦活条件に 。
基づくものとすることはいまだ確定してなかったものといわざるを得ない。
(キ) このように,本件特許の優先日当時,被告製品の賦活条件は確定していなかったのである。
ウ 以上のとおり,本件特許の優先日の当時,被告製品の製造工程は確定しておらず,また,賦活条件も確定していなかったものであるから,安定性試験等に使用される製剤の内容が完全に定まっていたとの事実は認められない。
( ) 製剤の薬効の確認ができていなかったこと 4ア メルクが実施しようとしていた事業は,原告製品と同等の後発医薬品の製造及び販売の事業である。
後発医薬品の製造及び販売の事業を実施するためには,規格及び試験方法に関する資料,安定性試験(加速試験)に関する試料及び生物学的同等性試験に関する資料を添付して製造承認の申請をし,製造承認を受けることが必要となる。後発医薬品の生物学的同等性試験の目的は,先発医薬品に対する後発医薬品の治療学的な同等性を保証することにあるのであり,これが保証されるがゆえに,臨床試験成績に関する資料の添付を要しないものとされている(甲41,42 。このように,後発医薬品製造承認 )の申請における生物学的同等性試験の機能は極めて重要である。
そうすると,後発医薬品の製造及び販売の事業についての即時実施の意図があったというためには,少なくとも後発医薬品と先発医薬品との間に同等性があることが確認されていることが必要である。なぜなら,後発医薬品と先発医薬品との間の同等性が確認できていなければ,その後に規格や製造方法変更が必要なる可能性が少なくなく,そのような状況で,事業を即時実施する意図があったとはいい難いからである。
これを本件についてみると,メルクは,株式会社模範薬品研究所に委託し,KK-1,KK-2及びKK-3を試料として,規格及び試験方法に関する試験を実施し,体内排泄物指標物質であるクレアチニン及び消化酵素であるトリプシンに対する吸着力試験を実施している。しかしながら,先発医薬品である原告製品について,同一の方法,同一の条件で吸着力試験を行ったのは,本件特許の優先日後である平成14年11月11日以降である(乙96,97 。他方で,原告製品は,腎不全時血中濃度が上昇 )する他のイオン性有機化合物に対する選択的吸着特性を,薬効を裏付ける試験成績としていた(甲64)から,後発医薬品と先発医薬品との間の同等性を確認するためには,クレアチニンだけではなく,腎不全時血中濃度が上昇する他のイオン性有機化合物に対する吸着力をも確認することが重要であると考えられるにもかかわらず,これらの確認が本件特許の優先日前に行われたことを示す証拠はない。
したがって,本件特許の優先日当時,KK-1,KK-2及びKK-3と原告製品との間に同等性があることは確認されていなかったのであるから,事業を即時実施する意図があったとは認められない。
4 争点4(補償金の額)について〔原告の主張〕平成16年7月から平成18年8月3日までの被告製品の販売高(被告扶桑薬品を通じて販売されたものに係る売上を含む )は19億6612万500 。
0円と推定される。また,被告製品に係る本件特許権の実施料は販売価格の5%を下らない。
よって,補償金の額は,9830万6250円である。
〔被告マイランの主張〕( ) 被告製品の売上高について 1平成16年7月から平成18年8月3日までの期間における被告製品の売上高(被告扶桑薬品を通じて販売されたものを含む )について,14億円 。
の範囲で認める。
( ) 実施料率について 2本件発明は,炭素源を石油ピッチではなく,フェノール樹脂やイオン交換樹脂等の熱硬化性樹脂とした点に発明の意義があるとされており(本件明細書【0004】段落参照 ,炭素源をフェノール樹脂やイオン交換樹脂等の )熱硬化性樹脂とした点以外は従来技術にすぎない。そして,経口吸着剤の炭素源としては,本件発明のフェノール樹脂やイオン交換樹脂のほか,石油ピッチ及び合成有機高分子も採用可能であることが知られており(乙215,218 ,これらの物質が石油ピッチ,合成有機高分子,フェノール樹脂及 )びイオン交換樹脂は炭素源として相互に代替可能であり,本件発明は,被告製品の製造販売に際して必要不可欠なものではない。
また,被告製品の売上げには,被告マイラン及びメルクの営業販売活動,剤形の工夫及びブランド力が大きく貢献している。
以上の事情を考慮すれば,本件発明の実施料は,せいぜい1%から2%程度というべきである。
5 争点5(共同不法行為の成否及び損害の額)について〔原告の主張〕( ) 被告扶桑薬品を通じた販売について,共同不法行為が成立すること 1メルクは,本件特許権の設定登録日である平成18年8月4日から平成20年1月31日までの間,被告製品の製造・販売を行い,原告は,これにより損害を被ったため,原告は,メルクに対して,民法709条に基づく損害賠償請求権を有することとなった。被告マイランは,同年5月16日に行われたメルクとの合併により,メルクの原告に対する同損害賠償債務を承継した。
また,被告マイランは,平成20年2月1日から現在に至るまで,被告製品の製造・販売を行い,原告は,これにより,損害を被ったため,原告は,被告マイランに対して,民法709条に基づく損害賠償請求権を有することとなった。
被告扶桑薬品は,平成16年12月以降,現在に至るまで,メルク又は被(), , 告マイランの唯一の販売者 卸売業者として 被告製品を継続的に販売し原告は,これにより損害を被ったため,原告は被告扶桑薬品に対し,民法709条に基づく損害賠償請求権を有することとなった。
メルク及び被告マイランの上記不法行為と,被告扶桑薬品の上記不法行為とは,医療用医薬品の流通過程を構成する一連の行為であり,相互に補完し合う関係にある行為であるから,相互に密接な関連共同性のある行為であるというべきであり,上記各不法行為は,共同不法行為の関係にある。
,,, したがって 被告扶桑薬品を通じた被告製品の販売については 被告らは民法719条に基づき,連帯して損害賠償責任を負う。
( ) 損害額の算定 2ア 特許法102条2項が適用されるべきであること,。, (ア) 原告は 本件発明の実施品を製造・販売していない しかしながら原告は,平成3年12月からクレメジンカプセル200を,平成12年,, 7月からクレメジン細粒を それぞれ現在に至るまで製造販売しておりこれらの原告製品は,被告製品の競合品であるから,特許法102条2項(損害額の推定)が適用されるべきである。
(イ) 権利者が自ら権利者製品の製造・販売を全く行っていない場合には,逸失利益は発生していないから,特許法102条2項は適用されないが,権利者が特許発明実施品とはいえないものの,侵害品の競合品を製造・販売している場合に,同項が適用されるかどうかについては,学説は分かれており,先例となるべき裁判例もあるとは言い難い状況である。
もっとも,下記のとおり,本件においては,被告らによる被告製品の製造・販売がなければ,原告は,その分,原告製品を製造・販売できたのであり,逸失利益相当の損害が発生したことは明らかである。
すなわち,原告製品及び被告製品は,いずれも医療用医薬品であるから,市場における需要が所与のものとして一定程度存在しており,同種の製品が登場したからといって市場が拡大するわけではない。さらに,原告製品及び被告製品は,先発医薬品と後発医薬品の関係にある。このような状況において,被告らは,原告製品の後発医薬品であると称して被告製品を製造・販売しているのであるから,原告製品と被告製品は市場を完全に奪い合う関係にある。現実に医師により経口投与用吸着剤が処方される場合において,仮に後発医薬品と称する被告製品が存在しなかったからといって,何も処方しないという選択肢はあり得ない。そうすると,原告製品と被告製品は医療用医薬品市場において完全に競合していることは明らかであり,後発医薬品と称する被告らによる被告製品の製造・販売によって,先発医薬品である原告製品の製造・販売が減少し,原告製品の製造・販売によって得られたはずの利益が失われたことは,疑う余地がない。すなわち,特許法102条2項の基礎にある,侵害者が侵害品の販売等により一定額の利益を上げている場合には,権利者も同額の利益を上げられたはずであるという経験則が,本件事案では認められるのである。
(ウ) 現実には,特許を利用した事業戦略として,構成要件の一部を異にする複数の特許出願を行い,又は,構成要件の一部を異にする複数のクレームを設定した特許出願を行うなどの方法により,一定の範囲の技術に関して特許権を取得するものの,取得した特許権のすべてに係る発明を実施するのではなく,その一部についてのみ実施することは,通常の特許戦略である。特に,医療用医薬品に関する特許の場合には,関連する複数の特許権,複数のクレームに応じてそれぞれ臨床試験を行った上で医薬品製造承認申請を行い,それぞれに対応した医療用医薬品の製造。, 承認を得て製造・販売を行うことは考えられない それにもかかわらずそのような非現実的な行動をとらなければ,権利者が実際に選択した医療用医薬品に対応する特許権又はクレーム以外の特許権又はクレームについては特許法102条2項の適用を受けられないとすると,侵害者を不当に利する結果となり,発明の保護が到底図れないことは明らかである。
イ 損害の額について(ア) 被告らが受けた利益の額市場動向等によれば,被告製品の売上高は,下記の金額を下らないものと推認され,合計35億5700万円を下らない。
平成18年8月4日から同年12月31日までの間 5億4300万円平成19年1月1日から同年12月31日までの間15億3000万円平成20年1月1日から同年10月31日までの間14億8400万円そして,被告製品の上記売上高のうち,被告扶桑薬品を通じて販売されたものは,3億2000万円を下らない。
上記被告製品の売上高に占める被告マイランの利益の額の割合(被告扶桑薬品を通じて販売されたものについては,被告らの利益の合計の割合)は,上記被告製品の売上高の30%を下らないものと推認される。
そうすると,被告マイランの侵害行為により同被告が受けた利益の額(被告扶桑薬品を通じて販売されたものについては,被告らが受けた利益の額の合計額)は,次の計算式のとおり10億6710万円を下らない。
(計算式)35億5700万円 × 0.3 =10億6710万円このうち,被告扶桑薬品を通じて販売されたものについて,被告らが受けた利益の額の合計額は,次の計算式のとおり9600万円を下らない。
(計算式)3億2000万円 × 0.3 =9600万円(イ) 弁護士等費用原告は,被告らによる本件特許侵害行為のため,本訴訟の提起を余儀なくされた。本件事案の内容,性質,被告らによる訴訟追行の状況等に鑑みれば,本件特許権侵害行為の差止め,被告製品の廃棄及び損害賠償を得るために原告が要した弁護士等費用のうち,本件特許権侵害行為と相当因果関係のある損害は,1億0671万円(このうち,被告扶桑薬,)。 品を通じて販売された被告製品に係る部分は 960万円 を下らない(ウ) 損害額合計したがって,被告マイランは,原告に対し,民法709条に基づき,11億7381万円の損害賠償義務を負い,そのうち1億0560万円については,民法719条に基づき,被告扶桑薬品と連帯して損害賠償義務を負い,被告扶桑薬品は,民法719条に基づき,被告マイランと連帯して1億0560万円の損害賠償義務を負う。
(エ) 寄与度減額すべきとの被告らの主張について寄与度考慮による減額が認められるのは,侵害品全体の販売利益を権利者の損害と推定して,権利者にその権利行使を認めることは,権利者。, に過大な保護を与えることになって相当ではないからである すなわち特許法102条2項において 「侵害者がその侵害の行為により一定額 ,の利益を受けていること」が推定の前提とされたのは,侵害者が侵害品の販売等により一定額の利益を上げている場合には,権利者も同額の利益を上げられたはずであるという経験則が存在するとされていることによるものであり,寄与度減額すべき場合とは,侵害者の侵害行為がなかったとすれば,権利者が侵害品の製造販売数量と同数の権利者製品を製造販売できていたとはいえず,上記経験則がそのまま妥当するとはいえない場合である。
本件では,原告製品と被告製品は,先発医薬品と後発医薬品の関係にあり,後発医薬品と称する被告製品の製造販売によって,先発医薬品である原告製品の製造販売が減少し,原告製品の製造販売によって得られるはずの利益が失われたことは疑う余地がなく,上記経験則がそのまま妥当することは明らかである。
〔被告らの主張〕( ) 被告マイランは,被告製品の製造販売を,また,被告扶桑薬品は,被告 1製品の販売を,それぞれ独自の経営判断に基づく事業として別個に独立して行っており,主観的にも客観的にも行為の関連共同性はなく,共同不法行為は成立しない。
( ) 特許法102条2項が適用されないこと 2原告は,原告製品が本件特許の実施品ではないことを認めているにもかかわらず,原告製品は被告製品の競合品であるとして,特許法102条2項が適用されると主張している。
しかしながら,特許権によって保護されるべき利益は,当該発明を独占的に実施することで市場利益を独占的に享受できる点にあるのであるから,単なる競合品の販売利益が確保されることは,特許権によって法的に保護される範囲には含まれないというべきである。特許法102条2項は,これを前提として,特許発明の排他的独占の下に実施品を市場独占できる機会が,侵害者によって奪われたことを,侵害者が得た利益の額をもって特許権者の損害額と推定する規定である。そして,特許権侵害による損害は,特許権者が当該特許発明実施を妨げられたことによって被る損害を意味するため,特許権者は,損害の発生として,当該特許権の実施を妨げられたことを主張立証しなければならない。
よって,特許権者が当該特許発明実施していない場合には特許法102条2項が適用される余地はない。
( ) 被告製品の売上高について 3平成18年8月4日から同年10月31日までの期間における被告製品の売上高(被告扶桑薬品を通じて販売されたものを含む )については,2億 。
3000万円の範囲で認め,このうち被告扶桑薬品の売上高については,3000万円の範囲で認める。
同年11月1日から平成20年10月31日までの期間における被告製品の売上高(被告扶桑薬品を通じて販売されたものを含む )については,2 。
,, 4億3000万円の範囲で認め このうち被告扶桑薬品の売上高については2億円の範囲で認める。
( ) 本件特許の寄与度を考慮すべきであること 4,, ア 仮に特許法102条2項が適用されるとしても 下記イ及びウのとおり被告らの得た利益の中には,本件特許が寄与していない部分,すなわち侵害行為と因果関係を有するとはいえない部分が存在する。よって,当該部分は損害額から控除すべきである。
しかも,原告は本件特許の実施品ではなく,被告製品の競合品を販売しているにすぎない。そのような単なる競合品の販売利益は,特許権を侵害しない競合品の出現によって容易に減少し得るものであるから,単なる競合品を製造販売するにすぎない原告に対して特許法102条2項を適用するのであれば,本件特許の寄与度を考慮しなければ,被告らに不当に過酷な結果となることは明らかである。
,, 【 】 , イ この点 まず 本件明細書の 0003 段落に述べられているように本件特許の優先日前において,肝腎疾患治療剤として用いる経口吸着剤は広く知られていた。そして,本件明細書が引用する先行文献(特公62-11611号公報)では,石油ピッチを炭素源として製造された経口吸着剤が開示されており,本件明細書の【0004】段落に述べられているように,本件特許発明は,炭素源を石油ピッチではなく,フェノール樹脂やイオン交換樹脂等の熱硬化性樹脂とした点に発明の意義があるとされている。
すなわち,本件発明は,基本発明ではなく,従来技術に改良を加えたものにすぎないのであって,炭素源をフェノール樹脂やイオン交換樹脂等の熱硬化性樹脂とした点以外は従来技術にすぎない。
よって,被告らの得た利益に対する本件発明の寄与は,ひとえに炭素源をフェノール樹脂やイオン交換樹脂等の熱硬化性樹脂とした点にかかっているといえる。経口吸着剤の炭素源としては本件発明のフェノール樹脂やイオン交換樹脂のほか,石油ピッチ及び合成有機高分子も採用可能である(,) ,, , ことが知られており 乙215 218 石油ピッチ 合成有機高分子フェノール樹脂やイオン交換樹脂は炭素源として相互に代替可能である。
したがって,本件発明のフェノール樹脂やイオン交換樹脂は選択肢の一つにすぎず,その寄与度は低いといわざるを得ない。
また,原告製品は,石油ピッチを炭素源としている。それにより,原告製品は,被告製品をはるかに上回る(少なくとも10倍以上)の売上を得ているものと思われる。すなわち,被告製品のようにあえてフェノール樹脂を炭素源とせずとも,石油ピッチを炭素源とした経口吸着剤でそのような大きな売上を上げることができるのであり,だからこそ特許権者である原告自身が本件特許を実施せず,石油ピッチを炭素源とし続けているのである。したがって,炭素源をフェノール樹脂とすることの被告製品の売上に対する寄与度が低いことは明らかである。むしろ,石油ピッチを炭素源とした原告製品とフェノール樹脂を炭素源とした被告製品とを比較して,原告製品の方が優れている旨を市場で喧伝しているのは原告自身である。
ウ 被告マイラン及びメルクは,被告製品の売上を伸ばすために活発な宣伝広告活動を行っており,かかる営業努力が被告製品の売上に対して多大な貢献をしていることは疑いの余地がない。
また,経口投与用球状活性炭は無味無臭であるが,黒くて泥のようで口に含んだときに相当な不快感を伴うため,いかにして患者が服用しやすくするかという点が大きな課題の一つである。この点に関し,被告マイラン及びメルクは,被告製品につき剤形の工夫を行っている。具体的には,球状活性炭の充填密度を大きくすることで,同じ重量でもその体積が小さくて済むようにし,その結果,被告製品を小型の製剤カプセルに充填することを可能としたのである。充填密度については,本件明細書に全く記載されておらず,被告製品の売上には,このような被告マイラン及びメルクによる独自の工夫も貢献している。
さらに,被告マイランは,平成20年2月1日に設立され,同年5月16日にメルクを合併したものであるが,メルクの親会社であるドイツ法人メルクの合併前のジェネリック医薬品事業の売上高は世界第5位の規模であり,被告マイランの親会社である米国法人マイランの合併後のジェネリック医薬品事業の売上高は世界第3位の規模である(乙234 。このよ )うに,被告マイラン及びメルクの知名度は極めて高く,その強力なブランド力が被告製品の売上に大きく貢献していることは明らかである。
加えて,原告自身も,補償金の額の争点(争点4)に関する主張において,被告製品に係る本件特許権の実施料率について,5%としている。
エ 以上より,被告らの得た利益に対する本件発明の寄与度は,5%を上回ることはなく,せいぜい1%から2%程度と言うべきである。
6 争点6(被告らの行為が品質誤認表示に当たるか)について〔原告の主張〕( ) 被告製品は原告製品の後発医薬品であるとは到底いえないこと 1ア 被告らは,被告製品「メルクメジン」を,原告製品「クレメジン」の後発医薬品であるとして製造販売しているが,被告製品は原告製品の後発医薬品であるとは到底いえない。
後発医薬品とは,先発医薬品の特許が切れた後に先発医薬品と成分や規格等が同一であるとして,臨床試験などを省略して承認される医薬品を指す(甲49 。すなわち,後発医薬品は,先発医薬品と成分や規格等が同 )一であることを基本にしているのであり,それゆえに承認申請に必要な書類が大幅に簡略化されている(甲41,42 。)イ 充填密度は,比表面積と相関関係があり,球状活性炭の吸着材としての性能を示す重要な指標であるところ,先発医薬品である原告製品,メルクが作成した試作ロット及び実際に市場に流通している被告製品の充填密度は,以下のとおりである。
原告製品 0.51g/ml(甲45)KK-1 0.52g/ml(乙25)KK-2 0.61g/ml(乙26)KK-3 0.61g/ml(乙27)被告製品 0.66g/ml(甲45)上記のとおり,被告製品の充填密度は,先発医薬品である原告製品の充填密度とは大きく異なる。そして,充填密度は,比表面積の代替指標であるから,充填密度が0.51g/mlである原告製品と,0.66g/mlである被告製品とでは,比表面積が大きく異なることとなる。具体的には,BET法による比表面積は,原告製品が1650?u/gであるのに対し,被告製品は,1260?u/gしかなく,ラングミュア法による比表面積は,原告製品が1990?u/gであるのに対し,被告製品は,1520?u/gしかない(甲46 。これだけの比表面積の差異が医薬品の性能に )影響を与えることは明らかである。
ウ メルクは,物理的性質及び吸着特性の比較試験及び生物学的同等性試験において,原末の仕様候補の一つにすぎないロットのKK-1のみを用いて,先発医薬品である原告製品と比較したデータを採取し,そのデータを前提として,原告製品の後発医薬品としての製造承認を得ている。これらの試験結果からいえることは,せいぜいKK-1が原告製品と同等であるということが限度である。そうであるとすれば,被告製品は,原告製品の後発医薬品であると標榜する以上,本来ならば,製造承認を得た際に用いた試料であるKK-1と同じ仕様の原末を用いて製造されなければならないはずである。
しかしながら,実際には,被告らは,充填密度においてKK-1と全く異なる仕様の原末を用いて被告製品を製造販売している。
エ 以上のとおり,被告製品は,原告製品の後発医薬品とはいえないことが明らかである。
( ) 品質誤認表示 2ア 甲第55号証の1(以下「被告パンフレットA」という )について。
(ア) 吸着特性に関する表示被告パンフレットAの3頁左欄には 「生体内毒素と消化酵素の吸着 ,比較試験において,標準製剤と同等であることが認められました (別。」)。, 紙品質等誤認表示目録1記載1-1 と大書されている その下部には別紙品質等誤認表示目録2記載1の「イオン性有機化合物の吸着」と題「」 。, する表及び 消化酵素の吸着 と題する表が記載されている これらは物理的性質及び吸着特性の比較試験の結果である乙第31号証の14頁の「表6」及び15頁の「表7」と同内容のものが転記されたものである。
,, , しかしながら 前記のとおり 物理的性質及び吸着特性の比較試験は実際に販売されている被告製品とは異なるKK-1を用いて実施されたものである。したがって,物理的性質及び吸着特性の比較試験の結果から,被告製品が「標準製剤と同等であることが認められました」とは到底いい得ないのである。にもかかわらず,そのように表示することは,被告製品の品質及び内容についての誤認表示であるといわざるを得ない。
(イ) 生物学的同等性に関する表示被告パンフレットAの3頁右欄には 「進行性の腎機能障害に対し, ,標準製剤の効果と生物学的に同等であることが認められました (別 。」)。, 紙品質等誤認表示目録1記載2-1 と大書されている その下部には別紙品質等誤認表示目録2記載2の「尿素窒素を指標とした腎機能に対する効果」と題する表及び「血中クレアチニンを指標とした腎機能に対する効果」と題する表が記載されている。これらは,生物学的同等性試験である乙第32号証の別紙グラフ3枚目「Fig.3」と同内容のものが転記されたものである。
しかしながら,前記のとおり,生物学的同等性試験は,実際に販売されている被告製品とは異なるKK-1を用いて実施されたものである。
したがって,生物学的同等性試験の結果から,被告製品が「標準製剤と同等であることが認められました」とは到底いい得ないのである。にもかかわらず,そのように表示することは,被告製品の品質及び内容についての誤認表示であるといわざるを得ない。
イ 甲第55号証の2(以下「被告パンフレットB」という )。
被告パンフレットBの表面上部には 「飲みやすさを追求しました。新 ,しく開発された球状合成高分子樹脂のメルクメジンは,滑らかな表面で高い硬度を誇る小型(2号カプセル)の剤形です (別紙品質等誤認表示 。」目録1記載3-1)と大書されている。そして,その下部には 「滑らか ,な表面」であることの根拠として電子顕微鏡写真が(別紙品質等誤認表示目録2記載3 「高い硬度」であることの根拠として破損率の試験結果 ),が(同目録記載4 ,それぞれ記載されている。 )しかしながら,被告製品のような球状活性炭の表面がいくら滑らかであろうが,また硬度が高かろうが,人が摂取するに際して,当該活性炭を必ずしも嚥下しやすくなるわけではない。したがって,活性炭の「表面の滑らかさ」や「硬度」が「飲みやすさ」に影響を与えることはない。特に,被告製品のうちカプセル剤においては,球状活性炭はカプセルに入っており,経口投与の際に活性炭が直接,口腔内で触れることはないのであるから,活性炭の「表面の滑らかさ」や「硬度」が「飲みやすさ」と無関係であることは明白である。さらに,ここで用いられている破損率の比較試験は 「メルクメジン及び標準製剤を鋼球とともに入れた硬さ試験用皿を振 ,とうした」というものであり,細粒剤を経口摂取する状況を再現したものではないから,その意味でも 「飲みやすさ」の根拠にはなり得ない。 ,したがって,パンフレットBの記載中,被告製品の「飲みやすさ」に関係するのは,せいぜい「2号カプセル」という比較的小型のカプセルを用いているという点だけである。
このように 「飲みやすさを追求しました 」などと大書しながら 「飲 ,。,みやすさ」とは本来関係のない指標で埋め尽くされた被告パンフレットBの表面は,全体として被告製品の品質及び内容についての誤認表示といわざるを得ない。
ウ 甲第55号証の3(以下「被告パンフレットC」という )。
被告パンフレットCの表面上部には 「効率の良さを追求しました。新 ,しく開発された球状合成高分子樹脂のメルクメジンは,細孔直径(1.0nm)以下の容積率が高く,選択的吸着力に優れています (別紙品質 。」)。,, 等誤認表示目録1記載4-1 と大書されている そして その下部には「効率の良さ」の根拠として,?@赤色色素存在下でクレアチニンの吸着率を測定したデータ(別紙品質等誤認表示目録2記載5)及び?Aクレアチニンに対する吸着力を比較したデータ(同目録記載6)が記載されている。
しかしながら,上記?@においてクレアチニンとの比較の対象とされている赤色色素の分子量は約500から900とされており,経口投与用吸着剤としての効率性を判断するためになぜこの数値範囲の分子と比較したのか,その根拠は示されていない。見方を変えれば,この数値範囲に属する分子を吸着しないことを意味していると考えられる。また,経口投与用吸着剤が対象とする体内毒素は,クレアチニンに限られないのであって,その他複数の体内毒素を対象に分析すると,被告製品は先発医薬品である原告製品に吸着性能において劣ることが実証的研究により示されている(甲46 。にもかかわらず,クレアチニンについての比較のみをもって「選 )択的吸着力に優れています 」と表示することは,被告製品の品質及び内 。
容について誤認を生じさせるものである。
このように 「効率の良さを追求しました 」などと大書しながら,効 ,。
率の良さを根拠付けないデータを,あたかもその根拠となるかのように記載している被告パンフレットCの表面は,全体として被告製品の品質及び内容についての誤認表示といわざるを得ない。
製造方法に関する表示被告パンフレットAの裏面(4枚目)には,被告製品の仕様表が記載されており,その「 組織・性状 」中の「成分・含量」欄には 「球形吸着 【】 ,炭(石油系芳香族由来の球形微粒多孔質炭素を高温にて酸化及び熱処理して得たもの 」との記載がある。被告パンフレットBの裏面,被告パンフ )レットCの裏面にも同一の被告製品仕様表が記載されており,さらに,被告製品の添付文書(甲54)の「組織・性状 」中の「成分・含量」欄 【】にも同一の記載がある。
しかしながら,被告提出の証拠(乙176,212)によれば,現在の被告製品の製造工程においては,熱処理における雰囲気が窒素であって,酸化工程ではないと認められるから,酸化しているとの表示は,被告製品の実際の製造工程と異なっているものといわざるを得ない。したがって,上記各表示は,商品の製造方法について誤認させるような表示である。
オ 被告ウェブサイトの製品検索ページの表示被告マイランのウェブサイト(URLは省略)中の製品情報と題するページで,先発薬品名に「クレメジン」と入力して製品検索を行うと 「メル,クメジンカプセル200mg」及び「メルクメジン細粒」を検索結果とするページが表示される。そして,このページの検索結果の上方に「先発製品名 クレメジン」と表示される。
この検索結果の表示は,被告製品が原告製品の後発医薬品であることを示すものである。しかしながら,前記のとおり,被告製品は先発医薬品である原告製品の後発医薬品であるとは到底いえない。したがって,この表,。 示は 商品の品質及び内容についての誤認表示であるといわざるを得ない,, カ このように被告らは 上記アないしオの各品質等誤認表示を行っており原告は,被告らに対し,同表示行為の差止めを求める。
( ) 被告製品の名称の使用禁止及び販売等の禁止 3被告製品が原告製品の後発医薬品ではないという事実は,被告製品それ自体に内在し,被告製品と切り離せないものである。つまり,被告製品が「メルクメジン」という名称のもと,原告製品の後発医薬品として製造承認を受けた上で製造販売されていること自体が,品質誤認表示であるといいうるのである。
そこで,原告は,被告らに対し,被告製品の名称である「メルクメジン」を用いることの差止めを求め,さらに,被告製品の製造販売等の行為の差止め及び在庫品の廃棄を求める。
〔被告らの主張〕( ) 被告パンフレットAについて 1原告は,被告パンフレットAの記載は,KK-1について行われた比較試験や生物学的同等性試験の結果に基づいているところ,KK-1は被告製品とは異なるものであるので,品質等誤認表示に該当すると主張する。
しかしながら,原告の主張する充填密度及び比表面積の違いをもって異なる物質であるということができず,被告製品とKK-1,KK-2及びKK-3とが実質的に同一であることは前記のとおりである。
( ) 被告パンフレットBについて 2原告は,球状活性炭の表面が滑らかで高い硬度を有することと飲みやすさとの関係はないとして,被告パンフレットBの記載が品質等誤認表示に該当すると主張する。
しかしながら,高硬度の表面を有する活性炭は,粒子と粒子との摩擦や衝突による表面の破損が起こりにくいから粉っぽさがなく(細粒 ,墨臭も感 )じにくい(細粒,カプセル)のであり,球状活性炭の表面が滑らかで高い硬度を有することが飲みやすさの間に関連性が認められることは明らかである。
( ) 被告パンフレットCについて 3原告は,被告パンフレットC記載の赤色色素存在下でクレアチニンの吸着率を測定したデータ(別紙品質等誤認表示目録2記載5)について,クレアチニンとの比較の対象とされている赤色色素の分子量は約500から900とされていることにつき,経口投与用吸着剤としての効率性を判断するためになぜこの数値範囲の分子と比較したのか,その根拠は示されておらず,選択的吸着力に優れている根拠にはならないと主張する。
しかしながら,体内毒素の分子量は500を下回る。例えば尿毒素の一種であるβインドール酢酸の分子量は175であり,同じくクレアチニンの分子量は131である。分子量500以上の物質の吸着力が高ければ,分子量100から300の範囲内にある尿毒素の吸着力が低下することは明らかであるから,原告の主張は事実に反する。
( ) 製造方法に関する記載について 4原告は,被告製品の製造につき,酸化工程を経ていないと主張する。しかし,熱処理の段階で,窒素ガスを封入する際に微量の酸素が残存するよう調整し,酸化が行われているのであって,原告の主張は事実に反する。
( ) 被告ウェブサイトの「製品検索」ページの表示,被告製品の名称の使用 5及び販売について被告製品は,厚生労働省から原告製品の後発医薬品として製造承認を受けて製造販売されるものであり,原告製品の後発医薬品と表示することが品質等誤認表示に当たらないことは明らかである。
また,被告製品の「メルクメジン」との名称の使用そのものが品質等誤認表示に該当しないことは明らかである。同様に,被告製品の製造,販売及び販売のための展示それ自体が品質等誤認表示に該当することもあり得ない。
当裁判所の判断
1 争点1(被告製品は,構成要件B,C,D,E,F及びHを充足するか)について( ) 構成要件Bについて 1,「『 』 , 本件明細書には 本明細書で 直径がD1〜Duである という表現はJIS K 1474に準じて作成した粒度累積線図(平均粒子径の測定方法に関連して後で説明する)において,ふるいの目開きD1〜Duの範囲に対応するふるい通過百分率 % が90%以上であることを意味する 0 () 。」(【022 )との記載がある。 】そして,被告製品の球状活性炭をJIS K 1474に基づいて測定したところ,メルクメジン細粒については,36号ふるい(目開き0.425).,(.) mm の通過百分率は99 8%で 100号ふるい 目開き0 15mmの通過百分率は0.59%であり,メルクメジンカプセル200mgについては,36号ふるいの通過百分率は100%で,100号ふるいの通過百分率は0.59%であったことが認められる(甲9 。)この測定結果からすれば,メルクメジン細粒のふるいの目開き0.15mmから0.425mmの範囲に対応するふるい通過百分率は,99.8%と0.59%の差である99.21%であり,メルクメジンカプセル200mgの同通過百分率は,100%と0.59%の差である99.41%であって,いずれも90%以上であるから,被告製品の球状活性炭は,いずれも直.. ,, 径が0 15mmから0 425mmであると認められるから 被告製品は構成要件B(0.01〜1mm)を充足する。
( ) 構成要件Cについて 2本件明細書には,ラングミュアの式による比表面積の計算法が記載されており( 0028 ,この測定方法に従って被告製品の球状活性炭の比表面 【】 )積を測定すると,メルクメジン細粒及びメルクメジンカプセル200mgの(), いずれについても1570?u/gであったことが認められるから 甲10被告製品は,構成要件C(1000?u/g以上)を充足する。
( ) 構成要件Dについて 3本件明細書には,水銀圧入法による細孔容積の測定方法が記載されており(【】 ),. 0029 この測定方法に従って被告製品の球状活性炭の細孔直径75〜15000nmにおける細孔容積を測定すると,メルクメジン細粒及びメルクメジンカプセル200mgのいずれについても0.05mL/gであったことが認められるから(甲11 ,被告製品は,構成要件D(0.25 )mL/g未満)を充足する。
( ) 構成要件Eについて 4証拠(甲12)によれば,被告製品につき,反射式デフラクトメーター法により,回折角(2θ)15°,24°及び35°における回折強度をそれぞれ測定したところ,下記の結果となったことが認められる。
15° 24° 35°574.00 571.04 96.64 メルクメジン細粒550.16 546.16 92.96 メルクメジンカプセル,, () そして この測定結果を用いて 構成要件Eの式であるR= I -I15 35/(I -I 〔式中,I は,X線回折法による回折角(2θ)が15 24 35 15 )°における回折強度であり,I は,X線回折法による回折角(2θ)が3355°における回折強度であり,I は,X線回折法による回折角(2θ)が 2424°における回折強度である〕で回折強度比(R値)を求めると,下記のとおりとなり,いずれも約1.01となる。
574.00 96.64 / 571.04 96.64 =1.01 メルクメジン細粒 ( - ) ( - )550.16 92.96 / 546.16 92.96 =1.01 メルクメジンカプセル ( - ) ( - )(いずれも小数第3位を四捨五入)したがって,被告製品は,いずれも回折強度比(R値)は,1.4以上ではないことが認められるから,構成要件Eを充足する。
( ) 構成要件Fについて 5証拠(甲6)及び弁論の全趣旨からすれば,被告製品は,いずれもその用法は経口投与であり,成分は球形吸着炭であることが認められるから,被告製品は,構成要件F(経口投与用吸着剤を有効成分とする)を充足する。
( ) 構成要件Hについて 6,( 【】 ), 本件明細書には 全塩基性基の測定方法が記載されており 0031この測定方法に従い全塩基性基を測定すると,メルクメジン細粒における全塩基性基は0.67meq/g,メルクメジンカプセル200mgにおける.() , 全塩基性基は0 65meq/gであったことが認められるから 甲11被告製品は,いずれも構成要件H(全塩基性基が0.40meq/g以上の球状活性炭からなる)を充足する。
( ) 以上から,被告製品は,いずれも本件特許発明技術的範囲に属するも 7のと認められる。
2 争点2(本件補正は不適法であり,本件特許は,特許法17条の2第3項により無効とされるべきものか)について( ) 特許法17条の2第3項は,第1項の規定により明細書等について補正 1をするときは,願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければならないと規定している。そして 「明細書等に記載した事 ,項 とは その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの 当 」, (業者)を基準として,明細書・特許請求の範囲・図面のすべての記載を総合して理解することができる技術的事項のことであり,補正が,上記のようにして導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は「明細書等に記載した事項の範囲内」であると解すべきである。
したがって,特許請求の範囲減縮を目的として特許請求の範囲に限定を付加する補正を行う場合,付加される補正事項が当該明細書等に明示されているときのみならず,明示されていないときでも新たな技術的事項を導入するものではないときは 「明細書等に記載した事項の範囲内」の減縮である ,というべきであり,このことは除くクレームを付加する補正においても妥当する。
( ) 原告は,平成15年10月31日,本件特許出願(特願2004-54 2), ( ) 8107号 と 別件特許に係る特許出願 特願2004-548106号を行ったが,その後,本件特許出願は拒絶査定がされたため,原告は拒絶査定不服審判を請求した。同手続中において,本件特許出願の発明が別件特許の発明と同一であるとの理由で拒絶理由通知が出された。そこで,原告が上記拒絶理由通知に対応して,平成18年5月15日に手続補正を行ったのが本件補正であり,請求項1及び4に下記の記載を付加するものである(甲70の8 。)但し,式(1 :)R=(I -I )/(I -I ) (1)15 35 24 35〔式中,I は,X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折 15強度であり,I は,X線回折法による回折角(2θ)が35°における 35回折強度であり,I は,X線回折法による回折角(2θ)が24°にお 24ける回折強度である〕で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭を除く,すなわち,本件補正は,球状活性炭につき,X線回折法による回折角(2θ)が15°,24°,35°における回折強度の比(R値)が1.4以上であるものを除くとするものである。
一方,当初の本件明細書に記載された発明は,経口投与用吸着剤に用いられる球状活性炭について,熱硬化性樹脂,実質的にはフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として用い,これにより,ピッチ類を用いる従来の球状活性炭に比べて,有益物質に対する吸着が少なく尿毒症性物質の吸着性に優れるという選択吸着性が向上するという効果を奏するとするものである。
そして,別件特許の請求項1は,以下のとおりである(甲15 。)【請求項1】直径が0.01〜1mmであり,ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000?u/g以上であり,そして式(1 :)R=(I -I )/(I -I (1)15 35 24 35 )〔式中,I は,X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折15強度であり,I は,X線回折法による回折角(2θ)が35°における 35回折強度であり,I は,X線回折法による回折角(2θ)が24°にお 24ける回折強度である〕で求められる回折強度比(R値)が1.4以上であえる球状活性炭からなることを特徴とする,経口投与用吸着剤このように,別件特許は,球状活性炭からなる経口投与剤につき,その細孔構造に注目して,直径,比表面積のほか,最も優れた選択的吸着性を示すX線回折強度を示す回折角の観点からこれをR値として規定し,このR値が1.4以上であることを特徴とするものである。別件特許は,球状活性炭に関し,本件特許とは異なり,フェノール樹脂又はイオン交換樹脂を出発原料として特定せず,また,本件特許では従来技術に属するものとされるピッチ類を用いても調整が可能であるとして,このR値の観点から球状活性炭を特定したものである。
そうすると,球状活性炭のうちフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として用いた場合において,そのR値が1.4以上であるときには,本件特許に係る発明と別件特許に係る発明は同一であるということができる。そして,本件補正は,このR値が1.4以上である球状活性炭を特許請求の範囲から除くことを目的とするものであり,特許請求の範囲の記載に技術的観点から限定を加えるものではなく,新たな技術的事項を導入するものではないと認めるのが相当である。
( ) したがって,本件補正は 「明細書等に記載した事項の範囲内」の減縮 3 ,,,, であるので 特許法17条の2第3項に違反するものではなく 本件特許は無効とされるべきものとは認められない。なお,本件特許の審決取消請求訴訟において,同様の判断がされている(知的財産高等裁判所平成21年3月31日判決・甲77 。)3 争点3(先使用による通常実施権の有無)について( ) 前記争いのない事実等に,後掲証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以 1下の事実が認められる。
ア メルクによる被告製品の開発経過(ア) メルクは,平成12年12月1日,二村化学及び群栄化学工業株式会社(以下「群栄化学」という )との間で,メルクが使用する薬用球 。
形微粒子の炭素吸着剤の二村化学における製造の可能性を検討するに際して互いに開示されたデータ,試料,情報及び成果物等の機密を保持することを約する機密保持契約(乙24)を締結し,遅くともこのときまでに,二村化学と共同して,被告製品の原末となるべき球状活性炭についての開発準備を開始した。
,, , (イ) 二村化学は 平成13年に1億3000万円以上の費用をかけて球状活性炭又は食品添加用の活性炭の製造を目的とした焼成炉を建設した(乙164,169 。)(ウ) 二村化学は,平成14年1月21日までに,球状活性炭の試作第1号ロット(ロット番号9902110Z01)を製造し,メルクに提供した(乙25 。このロットは,その後メルクによりKK-1とのロッ )ト番号が付された(乙17の2 。)KK-1の製造工程は,おおむね次のとおりであった。すなわち,●(省略)●というものであった(乙176〜182 。)(エ) メルクと二村化学は,平成14年1月21日付けの打合せ資料(乙25)に基づいて,KK-1の製造工程及び原告製品との一般性能比較について検討を行った。同資料には,備考欄に「残り2バッチ分については1バッチ目の評価後改めて開始」との記載が,また,熱処理の設備及び条件欄には「気相での酸化処理」との記載がある。
,() (オ) メルクと二村化学は 同年2月13日付けの実機試作 2バッチ目社内打合せ資料(乙183)に基づいて,2バッチ目の試作の製造工程について検討を行った。その際,目標値として,プルランの吸着率は25%以下,アルギニンの吸着率は75%以上との値が設定された。
二村化学は,同年3月15日までに,球状活性炭の試作第2号ロット(ロット番号9902308Z01)を製造し,メルクに提供した(乙26 。このロットは,その後メルクによりKK-2とのロット番号が )付された(乙18の2 。)KK-2の製造工程でKK-1のそれと異なる主な点は,賦活処理を加熱時間21時間の1回のみとし,再賦活は行わないことであった(乙183〜187 。)(カ) メルクと二村化学は,同月25日付け実機試作条件(3バッチ目)と題する資料(乙188)に基づいて,3バッチ目の試作の製造工程について検討を行い,プルラン及びアルギニンの吸着率の目標値は,KK-2と同様とされた。
二村化学は,同年4月24日までに,球状活性炭の試作第3号ロット(ロット番号9902419Z01)を製造し,メルクに提供した(乙27 。このロットは,その後メルクによりKK-3とのロット番号が )付された(乙19の2 。)KK-3の製造工程でKK-1及びKK-2と異なる主な点は,賦活時間を21.5時間の1回とすること及び乾燥処理を機能G乾燥機を用いることであった(乙188〜191 。)(キ) メルク,二村化学及び群栄化学は,同年7月1日,群栄化学が製造する球状フェノールビーズ樹脂を使用した医療用球状活性炭の開発を共同して行うことを約する共同開発契約を締結した(乙174 。)(ク) メルクは,同月5日から9日ころまでの間,KK-1,KK-2及びKK-3を用いて,各4000個程度のカプセル製剤及び各2500包程度の細粒製剤を製造した(乙17の3・4,18の3・4,19の3・4 。)(ケ) 規格及び試験方法に関する試験(乙29,104)メルクは,平成14年7月30日から同年8月26日までの間,株式会社模範薬品研究所に委託して,被告製品の規格及び試験方法を設定するとともに,KK-1,KK-2及びKK-3を用いたカプセル製剤及び細粒製剤が,製造時においてその規格に適合するものであるか確認するための試験を行った。
具体的には,●(省略)●が行われた。
(コ) 安定性試験(加速試験 (乙30,105) )メルクは,平成14年7月30日から平成15年2月20日までの間に,株式会社模範薬品研究所に委託して,KK-1,KK-2及びKK-3を用いたカプセル製剤及び細粒製剤の加速試験による安定性試験を行った。
この試験は,試料を40℃,相対湿度75%の条件下で保存し,試験開始時,1か月後,3か月後及び6か月後において規格に適合するかを試験するものである。試験開始時のデータは,前記規格及び試験方法に関する試験のデータが用いられ,本件特許の優先日である平成14年11月1日までに3か月後における試験が実施されたが,6か月後における試験は,優先日以後に実施された。そして,6か月経過後も,試験開始時から大きな変化はなく,試料は安定したものであることが確認された。
(サ) 物理的性質及び吸着特性の比較試験(乙31,106)メルクは,同年1月24日,株式会社模範薬品研究所に委託してKK-1と原告製品との同等性試験として,物理的性質及び吸着特性の比較試験を開始し,平成15年2月3日までに以下の試験を実施した。
●(省略)●e KK-1と原告製品についての吸着特性の比較試験KK-1及び原告製品について,消化酵素のトリプシンほか4物質及び生体内毒素のクレアチニンほか6物質についての吸着力の比較試験が行われたが,本件特許の優先日である平成14年11月1日より以前に実施されたかどうかは不明である。
(シ) 生物学的同等性試験(乙32,107)メルクは,平成14年10月22日,株式会社日本バイオリサーチセンターとの間で,KK-1と原告製品との生物学的同等性試験を委託する契約を締結した(乙98,99 。)同試験は,5/6腎摘出ラットにKK-1を8週間反復経口投与し,血中クレアチニン,尿素窒素及びクレアチニン・クリアランスを指標として,腎機能に対する効果を検討するとともに,原告製品の効果と比較することを目的とするものであった。
そして,同試験は,同月30日に動物の入手,同年11月28日及び29日に群分け及び投与開始,平成15年1月22日及び23日に投与終了,同日及び同月24日に剖検,同年2月28日に最終報告書の作成が行われた。
同試験の結果は,KK-1は進行性の腎機能障害を抑制することが示,, 。 唆され この効果は 原告製品の効果と同等であるというものであった(ス) メルク,二村化学及び群栄化学は,平成15年1月22日,球状フェノール樹脂を原料とした活性炭からなる経口投与型の医薬用吸着剤に(。「」。 ) 関する特許 特許第3585043号 以下 メルクら特許 というの優先権主張の基礎となる特許出願を行い,同年12月10日,メルクら特許の出願を行い,平成16年8月13日に特許登録された(甲44。)(セ) メルクは,平成15年3月20日,被告製品の製造承認申請を行った(甲22の1・2 。この申請書には,●(省略)●と記載されてい )た(乙175 。)そして 前記試験の結果資料である規格及び試験方法に関する資料 乙 ,(29,104 ,安定性試験に関する資料(乙30,105 ,同等性 ))(,) 試験に関する資料-物理的性質及び吸着特性の比較- 乙31 106及び生物学的同等性試験に関する資料(乙32,107)が,同申請書の添付資料として提出された(乙5の1・2 。)(ソ) 被告製品は,平成16年2月26日,医薬品製造承認がなされ(乙7の1・2 ,同年12月1日,発売された(甲7 。 ))イ 被告製品の球状活性炭の製造工程●(省略)●(乙176,192〜212 。)ウ 比表面積及び充填密度比表面積(BET法による測定)は,原告製品については,1590?u/g(乙25)又は1588?u/g(乙26,27 ,KK-1が154 )2?u/g,KK-2が1362?u/gである。
充填密度は,原告製品が0.50g/ml(乙25 ,KK-1が0. )52g/ml(乙25 ,KK-2が0.61g/ml(乙26 ,KK ))-3が0.61g/ml(乙27)である。
( ) これらの認定事実を前提として,メルクが本件特許の優先日である平成 214年11月1日の際,発明の実施である事業の準備をしている者(特許法79条)に該当するかどうかにつき,以下検討する。
ア 特許法79条にいう発明の実施である「事業の準備」とは,特許出願に係る発明の内容を知らないでこれと同じ内容の発明をした者又はこの者から知得した者が,その発明につき,いまだ事業の実施の段階には至らないものの,即時実施の意図を有しており,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度において表明されていることを意味すると解するのが相当である(最高裁昭和61年10月3日第二小法廷判決・民集40巻6号1068頁参照 。そして,特定の発明を用いたある事業につい )て,即時実施の意図を有しているというためには,少なくとも,当該事業の内容が確定していることを要するものであると解すべきである。
イ 前記認定事実のとおり,メルクは,本件特許の優先日である平成14年11月1日より前において,被告製品の原末となるべき球状活性炭の試作サンプルとしてKK-1を製造し,これと原告製品との物理的性質及び吸着特性の比較試験に着手し,●(省略)●の各試験を実施したこと,KK-1より賦活時間を短縮した試作サンプルのKK-2及びKK-3を製造し,KK-1,KK-2及びKK-3のそれぞれについてカプセル製剤及び細粒製剤のサンプルを製造し,これらの製剤について,規格及び試験方法に関する試験及び安定性試験に着手し,細粒製剤についての規格及び試,, 験方法に関する試験についてはこれを了したこと KK-1のみについて生物学的同等性試験のための動物の入手をしたことが認められる。
このように,メルクは,本件特許の優先日までに,KK-1,KK-2及びKK-3の3つのサンプルを製造し,これらすべてについて,規格及び試験方法に関する試験を実施するとともに安定性試験に着手しており,被告らの主張するとおりの事実が認められる。
ウ しかしながら,前記認定事実のとおり,KK-1とKK-2及びKK-3とでは,その賦活時間において,KK-1が29時間であるのに対し,KK-2及びKK-3が21時間(KK-2)又は21.5時間(KK-3)であって,7.5時間から8時間の違いがあり,賦活のための温度が●(省略)●もの高温であることに鑑みると,この違いは製造コストにおいて大きな差異をもたらすものと考えられる。また,この賦活時間の違いから,活性炭の吸着性能に影響を及ぼす重要な指標であると認められる比表面積及び充填密度について下記のとおりの違いを生じている。
比表面積(BET法)KK-1 1542?u/gKK-2 1362?u/gKK-3 測定されていない充填密度KK-1 0.52g/mlKK-2 0.61g/mlKK-3 0.61g/mlこれらの点に照らすならば,KK-1とKK-2及びKK-3とを実質的に同一であると認めることはできない。
そして,KK-1とKK-2及びKK-3とを実質的に同一であると認めることができない以上,これらのサンプルが製造された段階では,被告製品の内容が一義的に確定しておらず,事業の内容が確定したとはいえない。
したがって,これらの3つのサンプルを製造し,これらが規格に適合することを確認し,安定性試験に供したことにより事業の即時実施の意図が表明されたとする被告らの主張は採用することができない。
エ この点,被告らは,3つのサンプルは実質的に同一であると主張する。
(ア) 被告らは,比表面積の違いについて,本件特許発明においても1000?u 以上であることが規定されているのみであり,また,本件特許 /gの優先日前の公知文献においても,おおむね500?u から2000?u /gであれば,同一発明の範疇に属することが本件優先日当時の当業者の /g常識として示されているのであって,原告が指摘する差異(KK-1について1542?u ,KK-2について1362?u )が,当業者の常 /g /g識に照らして球形活性炭の特性としての実質的差異ではなかったと評価されるべきであると主張する。
しかしながら,活性炭の吸着能力の優劣は,吸着しようとする分子に合致する径を有する細孔の存在量に関係するものであるから,細孔の存在量と密接に関連する比表面積が活性炭の吸着能力に影響を与えることは明らかである。KK-2は,KK-1に比べて比表面積は11%程度も小さく,この違いが無視できる程度の違いであると認めることはできない。確かに,本件特許発明においては,比表面積が1000?u/g以上であることが規定されており(構成要件C ,また,本件特許の優先 )/g /g 日前の公知文献において比表面積について500?u から2000?uの範囲が示されている(乙214〜221)ことが認められるものの,これらは特許発明技術的範囲を画する指標等であり,この範囲内にあるものを同一のものと評価できるものとするものではない。
(イ) 被告らは,充填密度は重要な指標ではないと主張するので,この点について,以下検討する。
証拠(甲44)によれば,メルク,二村化学及び群栄化学らの共同出願した特許(メルクら特許)の明細書には以下の記載があることが認められる。
a 【特許請求の範囲】【請求項1】球状フェノール樹脂を炭化,賦活することにより得られた活性炭であって,比表面積800〜2000?u/g,細孔容積0.2〜1.0mL/g,充填密度0.5〜0.75g/mL,平均細孔直径1.7〜2.0nm,細孔直径1.0nm以下の細孔の総細孔容積が全細孔容積の55%以上,細孔直径20〜1000nmの細孔の総細孔容積が0.04mL/g以下,最大粒子径が425μm以下,平均粒子径が350μm以下である球状の活性炭からなることを特徴とする医薬用吸着剤。
b 【0032】次に,本発明の実施例1〜9の活性炭及び比較例1〜6の活性炭を用意し,比表面積(?u/g ,細孔容積(mL/g ,平均細孔直径 ))(nm ,細孔直径1nm以下の容積(% ,充填密度(g/mL , )))平均粒子径(μm ,表面酸化物量(meq/g ,粉化量(%)を ))測定した。
(中略)・充填密度(g/mL :JIS K 1474に記載の方法により求 )めた。
(以下略)c 【0040】(実施例1)球状フェノール樹脂(群栄化学工業(株)製「マリリンHF?MDC )800gを金属製レトルト容器(内容量1.5L)に収容し, 」静置式電気炉を用いて,窒素雰囲気中において600℃の温度で4時間加熱することによって炭化した。前記炭化した球状フェノール樹脂炭化物を,ロータリー式外熱炉を用いて,水蒸気中において950℃で1.5時間加熱することによって賦活した後,0.1%塩酸水溶液で洗浄した。洗浄後の活性炭について,pHをJIS K 1474に記載の方法で測定した際,活性炭のpHは5〜7となるように水で濯いだ。そして,水洗後の活性炭をロータリー式外熱炉により,酸素濃度を3vol%に調整した酸素?窒素混合気体中において600℃の温度で3時間加熱処理した。そして,これを目開き119-200mesh(75〜125μm)のJIS Z 8801に記載の篩を用いて篩別し,実施例1の活性炭を得た。
d 【0041】(実施例2)実施例1における水蒸気賦活の時間を2時間とした以外は,実施例1と同様の処理を行い実施例2の活性炭を得た。
e 【0042】(実施例3)実施例1における水蒸気賦活の時間を3時間とした以外は,実施例1と同様の処理を行い実施例3の活性炭を得た。
f 【0043】(比較例1)また,比較例1として,実施例1における水蒸気賦活を行わなかっ,。 たこと以外は 実施例1と同様の処理を行い比較例1の活性炭を得たg 【0044】(比較例2)実施例1における水蒸気賦活の時間を5時間とした以外は,実施例1と同様の処理を行い比較例2の活性炭を得た。
h 【0045】実施例1〜3及び比較例1,2の活性炭について,前述の測定方法により,比表面積(?u/g)等の物理化学的性質と,アルギニン,プトレシン,プルラン及びトリプシンに対する吸着性能とを調べた。これらの結果は以下の表1及び表2のとおりである。
i 【0046】【表1】上記bのとおり,充填密度とは,JIS K 1474に記載の方法により求められる指標であり,弁論の全趣旨からすれば,容積1ml当たりに充填される試料の質量であることが認められるところ,上記メルクら特許の明細書に記載されている実施例及び比較例の結果によれば,球状フェノール樹脂を炭化した後に賦活した活性炭につき,その賦活時間を0時間(比較例1 ,1.5時間(実施例1 ,2時間(実施例2 , )))3時間(実施例3 ,5時間(比較例2)と長くしていくと,充填密度 ),. ( ) . ( ) ,. は 0 80g/ml 比較例1 0 61g/ml 実施例1 0 ,59g/ml(実施例2 ,0.54g/ml(実施例3 ,0.42 ))g/ml(比較例2)と減少し,比表面積は,反対に610?u/g(比較例1 ,1380?u/g(実施例1 ,1470?u/g(実施例2 , )))1630?u/g(実施例3 ,2190?u/g(比較例2)と増加して )いることが認められ,また,賦活により細孔構造が発達(すなわち比表面積が増加)すれば,炭の質量は減少するため充填密度は減少するものであると考えられるのであって,賦活時間と,充填密度及び比表面積とは相関関係にあることが認められる。前記のとおり,比表面積は吸着性能に影響を及ぼす重要な指標であるから,これと相関関係にある充填密,。 度もまた 吸着性能に影響を及ぼす重要な指標であるというべきである(ウ) 被告らは,平均細孔径こそが最も重要な指標であると主張する。
確かに,細孔の直径の平均値である平均細孔径は,どの分子量の物質をよく吸着するか,すなわち選択的吸着性能にとっては重要な指標であるが,吸着性能の高さには直接関係するものではない。比表面積が吸着性能の高さに関わる重要な指標であることには違いはないのであり,比表面積の違いが活性炭の同一性を左右することは前記のとおりである。
(エ) 被告らは,KK-2及びKK-3について,プルラン及びアルギニンの吸着率は目標値に達しており,KK-1との実質的同一性が認められると主張する。
しかしながら,証拠(乙229)によれば,プルランは,少なくとも7種類(分子量が5800,12200,23700,48000,100000,186000及び853000のもの)のものがあることが認められ,いかなる分子量のプルランを採用して吸着率を測定したのかについて明らかでないことに加え,プルラン及びアルギニンがそれぞれ代表的な体内の有益成分及び毒性物質であるとの証拠はなく,また,(,) メルクが実施した物理的性質及び吸着特性の比較試験 乙31 106においてもプルラン及びアルギニンを対象とした吸着試験を行っていないことを考慮すると,これらの物質の吸着率がメルクの設定した値を達成していたことをもって,KK-1と実質的に同一であったと認めることはできない。
(オ) 被告らは,クレアチニン及びトリプシンの吸着においてKK-1とKK-2及びKK-3との間に有意な差は認められないから,これらが実質的に同一であると主張する。
しかしながら,被告らがその主張の根拠として挙げる実験には次の問題点があるといわざるを得ない。
証拠(乙29,104)によれば,被告らが実施したクレアチニンの( (,)) 吸着力試験 規格及び試験方法に関する試験 乙29 104 の一つは,●(省略)●に,試料(KK-1,KK-2及びKK-3)を2.5g添加して,吸着率を計測するというものである。そして,このように添加する試料量を2.5gとすることに決定したのは,試料添加量を2.0g,2.5g,3.0gに設定し,吸着率を求めたところ,下記の結果となり,有意差を認めなかったからとされている。
●(省略)●しかしながら,上記の結果を見ると,試料の添加量を2.0gと減ら,. , 。 しても 3 0gと増加させても吸着率に有意な変動は認められない,, 活性炭は その表面の細孔構造に目標物質を吸着させるものであるから一定量の物質に対する吸着率は,活性炭の添加量に依存する関係にあると考えられるのであり,試料の添加量を2.5gから増減させても,一定量のクレアチニンの吸着率が変動しないということは,添加量が過剰であるためである可能性が高いと考えられ,このような試験方法では吸着力の正確な測定はできないものといわざるを得ない。
このような試験方法を用いてクレアチニンの吸着率を測定したところ,●(省略)●という結果が出てはいるものの(乙29の表47,乙104の表46 ,上記のとおり,試料の添加量が過剰であった可能性 )が高いことからすれば,この測定結果をもって,KK-1,KK-2及びKK-3のクレアチニンに対する吸着力が同一であったということはできない。
(カ) したがって,3つのサンプルは実質的に同一であると認めることはできない。
オ なお,KK-1について,原告製品との同等性試験として物理的性質及び吸着特性の比較試験(乙31,106)及び生物学的同等性試験(乙32,107)に着手したことをもって,被告製品の内容をKK-1と同一のものとすることで事業の内容が確定したと見る余地も考えられる。
しかしながら,前記認定事実のとおり,消化酵素のトリプシンほか4物質及び生体内毒素のクレアチニンほか6物質についての吸着力に関するKK-1と原告製品との比較試験が優先日前に実施されたことを認めることはできず,また,生物学的同等性試験についても,優先日前にされたことは動物の入手にすぎない。これらの事実からすれば,メルクにおいて,本件特許の優先日前までに,KK-1が原告製品と同等性があったことの確認ができていたとは認められない。
そして,メルクが準備しようとしていた事業は,原告製品の後発医薬品の製造販売であるから,原告製品との同等性が確認できていない段階にお,。, いては 被告製品の開発が完了していたと評価することはできない 特に開発しようとする被告製品は,球状活性炭を有効成分とする腎疾患治療薬であり,その化学的構成は炭素からなるものであって,その吸着特性は,物理的構造(細孔構造)に由来するものであるから,球状活性炭であるKK-1を製造した段階では,どのような吸着性能を有するのかは未知であり,実際に各物質の吸着率を確認することが重要であると考えられる。
このように,本件特許の優先日前までに,被告製品の開発が完了してい,。 たということはできない以上 即時実施の意図を認めることは困難である( ) 以上のとおりであるから,先使用による通常実施権があるとする被告ら 3の主張は,採用することができない。
4 争点4(補償金の額)について( ) 前記第3争いのない事実等のとおり,原告は,本件特許に係る出願が国 1際公開された後である平成16年6月14日,メルクに対して,発明の内容,,,。, を記載した警告書を発送し 同警告書は 同月15日 到達した メルクは同警告書受領後の同年7月に,被告製品の製造・販売を開始したため,本件特許権設定登録日である平成18年8月4日の前日までにメルクによって販売された被告製品について,特許法184条の10第1項に基づく補償金支払請求権を取得した。
() ( ) 被告製品の売上高 平成16年7月から平成18年8月3日までの期間 2同期間における被告製品の売上高(被告扶桑薬品を通じて販売されたものを含む )が,少なくとも14億円であったことについて当事者間に争いが 。
なく,また,同金額を超えるものであったことについては,これを認めるに足りる証拠はない。
( ) 本件特許の実施料率 3医薬品その他の化学薬品に関する実施料の統計結果(甲76)によれば,平成4年度から平成10年度の実施料率の平均値は,イニシャル有りが6.7%,イニシャル無しで7.1%であったと認められること,本件特許は,従来技術の石油ピッチではなくフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源とすることにより優れた選択的吸着性があるとしているものの(本件明細書【0004 【0005 ,原告は本件特許発明実施しておらず,従来 】,】 )技術である石油ピッチを炭素源とした球状活性炭の原告製品を製造販売していること(争いがない)からすれば,本件において,本件特許の実施料率は3パーセントと認めるのが相当である。
( ) このように,平成16年7月から平成18年8月3日までの期間におけ 4る被告製品の売上高は,14億円であり,本件特許の実施料率は3パーセン,,。 トであるから この期間における補償金の額は 4200万円と認められるしたがって,メルクは,原告に対して4200万円の補償金支払債務を負っており,被告マイランがメルクを吸収合併したことにより,同被告が同債務を承継した。
したがって,原告の被告マイランに対する4200万円の補償金支払請求及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年2月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求は理由がある。
5 争点5(共同不法行為の成否及び損害の額)について( ) 本件特許が登録された平成18年8月4日以降,メルク(平成20年5 1月16日に被告マイランが吸収合併後は,被告マイラン)は,本件特許を侵害する被告製品を製造販売し,被告扶桑薬品は,メルク(平成20年5月1,) , 6日に被告マイランが吸収合併後は 被告マイラン の唯一の販売者として被告製品を販売している(弁論の全趣旨)のであるから,被告扶桑薬品が販売した被告製品については,共同不法行為が成立するものと認められる。
( ) 被告らは,原告が本件特許発明実施していないことから,特許法10 22条2項は適用されないと主張する。
確かに,同項は,損害額の推定規定であり,損害の発生までをも推定する規定ではないため,侵害行為による逸失利益が発生したことの立証がない限り,適用されないものと解される。もっとも,侵害行為による逸失利益が生じるのは,権利者が当該特許を実施している場合に限定されるとする理由はなく,諸般の事情により,侵害行為がなかったならばその分得られたであろう利益が権利者に認められるのであれば,同項が適用されると解すべきである。
そして,弁論の全趣旨によれば,被告製品は,腎疾患治療薬(カプセル剤及び細粒剤)である原告製品の後発医薬品として製造承認を受け販売されているものであり,被告製品が製造販売されることで新たな需要を生み出すものではなく,腎疾患治療薬の市場において原告製品と競合し,シェアを奪い合う関係にあること,球状活性炭の腎疾患治療薬における原告製品のシェアが高いことが認められ,被告製品がなかったとした場合に原告製品ではなく他の後発医薬品が売れたであろうとの事情を裏付ける証拠もない本件においては,被告らによる侵害行為がなければ得られたであろう利益が原告に認められるのであって,本件には特許法102条2項が適用されるものと解するのが相当である。
( ) 特許法102条2項に基づく損害算定 3ア 被告製品の売上高(ア) 平成18年8月4日から同年10月31日までの期間同期間における被告製品の売上高(被告扶桑薬品を通じて販売されたものを含む )が,少なくとも2億3000万円であったこと,このう 。
ち被告扶桑薬品の売上高が,少なくとも3000万円であったことについて当事者間に争いがなく,また,これらの金額を超えるものであったことについては,これを認めるに足りる証拠はない。
(イ) 同年11月1日から平成20年10月31日までの期間同期間における被告製品の売上高(被告扶桑薬品を通じて販売されたものを含む )が,少なくとも24億3000万円であったこと,この 。
うち被告扶桑薬品の売上高が,少なくとも2億円であったことについて当事者間に争いがなく,また,これらの金額を超えるものであったことについては,これを認めるに足りる証拠はない。
イ 被告製品の利益率証拠(甲71〜75)によれば,被告マイランの親会社である米国マイラン社( )の2008年9月30日で終了する四半期の連結 MYLAN Inc.損益計算書に記載の純収益と売上原価から利益率を計算すると34.3パーセントとなること,被告マイランの前親会社であるメルク社の2007年年次報告書記載のジェネリック事業部門の売上と粗利益から利益率を計算すると47.2パーセントとなること及び日本の主要な後発医薬品会社3社の利益率が45パーセントを超えていることが認められ,これらの事実からすれば,原告が主張するとおり被告製品の利益率は30パーセントであると認めるのが相当である。
損害額このように平成18年8月4日から同年10月31日までの期間における被告製品の売上高(被告扶桑薬品を通じて販売されたものを含む )は。
2億3000万円であり,利益率が30パーセントであるから,メルクの不法行為による原告の損害額は,6900万円と認められ,このうち,メルクと被告扶桑薬品との共同不法行為による原告の損害額は,同被告の売上高の3000万円の30パーセントである900万円と認められる。
また,同年11月1日から平成20年10月31日までの期間における被告製品の売上高(被告扶桑薬品を通じて販売されたものを含む )は2。
4億3000万円であり,利益率が同様に30パーセントであるから,メルク又は被告マイランの不法行為による原告の損害額は,7億2900万円と認められ,このうち,メルク又は被告マイランと被告扶桑薬品との共同不法行為による原告の損害額は,同被告の売上高の2億円の30パーセントである6000万円と認められる。
( ) 弁護士等費用 4本件訴訟の内容,認容額その他諸般の事情を考慮すれば,弁護士等費用としては2000万円が相当であり,内金700万円が被告扶桑薬品を通じて販売されたことに係る弁護士等費用として相当であると認める。
( ) 被告らは,フェノール樹脂を炭素源として用いることは選択肢の一つに 5すぎず,石油ピッチに代替可能であること,被告製品を服用しやすいよう剤形を工夫していること,被告マイラン及びメルクが活発な宣伝活動を行っていること並びに被告マイラン及びメルクの知名度が高いことを主張して,損害賠償額につき寄与度減額をすべきであると主張する。
本件特許は,従来技術である石油ピッチを炭素源とする活性炭よりもフェノール樹脂を炭素源としたものが高い吸着性能を有することを特徴とするものであることに鑑みると,石油ピッチを用いることができることは寄与度減額をすべき事情に該当しないと解すべきである。なお,被告らは,原告製品が石油ピッチを炭素源とするものであるにもかかわらず,大きな売上があることをもって,石油ピッチに代替可能であると主張する。しかしながら,弁論の全趣旨によれば,原告製品に大きな売上があるのは,炭素源を石油ピッチとしつつも高い選択的吸着性能を持ち,先発医薬品として知られていることによるものであると認められるから,被告らの主張は採用することができない。
また,被告らは,被告製品の球状活性炭の充填密度を上げることでカプセルを小型化するという工夫を行っていることから,損害賠償額の寄与度減額をすべきであるとも主張する。しかしながら,カプセルを小型化したことで売上が増加したことについて,これを認めるに足りる証拠はなく,被告らの主張は採用することができない。
被告らが主張するその他の事情についても,寄与度減額をすべき事情に当たるとは認められない。
( ) 以上によれば,平成18年8月4日から同年10月31日までの期間に 6係るメルクによる侵害行為により6900万円の損害が生じた(内金900万円についてはメルクと被告扶桑薬品との共同不法行為による損害と認められる )と認められるから,原告が訴状において被告マイランに請求してい 。
る同期間における損害2959万8210円(内金284万0785円の限度で被告扶桑薬品と連帯して)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年2月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求,並びに,原告が訴状において被告扶桑薬品に対して請求している上記期間における損害284万0785円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年2月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求の全額について理由がある。
また,平成18年11月1日から平成20年10月31日までの期間に係るメルク又は被告マイランによる侵害行為により損害金7億2900万円の損害が生じた(内金6000万円についてはメルク又は被告マイランと被告扶桑薬品との共同不法行為による損害と認められる )と認められるから, 。
原告が訴えの変更申立書(平成20年11月21日付け)で拡張した被告マイランに対する請求部分については,この7億2900万円に上記訴状における請求を超える平成18年8月4日から同年10月31日までの期間に係る損害金3940万1790円(内金615万9215円の限度で被告扶桑薬品と連帯して)及び弁護士等費用2000万円(内金700万円の限度で被告扶桑薬品と連帯して)を合計した7億8840万1790円(内金7315万9215円の限度で被告扶桑薬品と連帯して)及びこれに対する同申立書送達の日の翌日である平成20年11月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求部分,並びに,原告が同申立書で拡張した被告扶桑薬品に対する請求部分については,上記6000万円に上記訴状における請求を超える平成18年8月4日から同年10月31日までの期間に係る損害金615万9215円及び弁護士費用700万円を合計した7315万9215円及びこれに対する同申立書送達の日の翌日である平成20年11月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求部分について理由があり,その余の請求については理由がない。
6 争点6(被告らの行為が品質誤認表示に当たるか)について( ) 被告パンフレットAについて(別紙品質等誤認表示目録1記載1-1, 11-2,2-1及び2-2)(,,), , 証拠 甲55の1 乙31 106 によれば 被告パンフレットAには被告製品が吸着比較試験において原告製品と同等であることが認められたとの記載(別紙品質等誤認表示目録1記載1-1)とともに,その根拠としてKK-1を試料として行われた物理的性質及び吸着特性の比較試験の結果(同目録記載1-2)が記載されていること,及び,被告製品が原告製品の効果と生物学的に同等であることが認められたとの記載(同目録2-1)とともに,その根拠としてKK-1を試料として行われた生物学的同等性試験の結果(同目録記載2-2)が記載されていることが認められる。
原告は,被告製品とKK-1とは異なるものであり,KK-1の試験結果をもとに,上記の各記載をすることは品質誤認表示に当たると主張する。
しかしながら,上記物理的性質及び吸着特性の比較試験及び生物学的同等性試験の各結果は,被告製品の製造承認申請の添付書類として厚生労働省に提出されたものであり,これらの試料を基に,原告製品と同等性が認められるとして製造承認を受けたものであるから,標準製剤と同等であることが認められたと記載することや,KK-1に関する試験結果を転載することは,被告製品の品質等を誤認させるものということはできない。
したがって,被告パンフレットAの記載内容が,被告製品の品質等を誤認させるものであるとの原告の主張は採用することができない。
( ) 被告パンフレットBについて(別紙品質等誤認表示目録1記載3-1な 2いし3-5)証拠(甲55の2)によれば,被告パンフレットBには,その上部に大きな文字で「飲みやすさを追求しました 」との記載があり,その下に「新し 。
く開発された球状合成高分子樹脂のメルクメジンは,滑らかな表面で高い硬()。 」(, 度を誇る小型 2号カプセル の剤形です と記載されていること 以上別紙品質等誤認表示目録1記載3-1,さらにその下の左欄には 「表面 ),が滑らかで微粉末状の付着が少ないことが認められました 」との記載(同 。
目録3-2)と,その根拠として電子顕微鏡写真(同目録3-3)が掲載されていること,右欄には 「破損率が低く,硬度も高いことが認められまし ,た (同目録3-4)との記載と,その根拠として被告製品と原告製品を 。」鋼球とともに入れた硬さ試験用皿を振とうした後にふるいにかけて元の試料と比較する方法による試験によると,破損率が被告製品では0.6%,原告製品では3.8%であったとの結果が記載されていること(同目録3-5)が認められる。
原告は,活性炭の表面の滑らかさや硬度が飲みやすさに影響することはないこと,カプセル製剤においては明らかに活性炭の表面の滑らかさや硬度は飲みやすさに無関係であること,及び,破損率試験は経口摂取の状況を再現したものでなく飲みやすさの根拠とならないことを主張して,上記に認定した被告パンフレットBの各記載が品質誤認表示に当たると主張する。
しかしながら,表面の滑らかさや硬度が飲みやすさに無関係であることの,, 立証はなく かえって活性炭の表面が滑らかであれば微粉末の付着が少なく口に含んだ際の粉っぽさが軽減し,また,硬度が高く破損率が低いことにより微粉末の発生が減少するであろうと考えられる。さらに,小型カプセルを採用したことも飲みやすさの根拠として記載されていることも合わせて考えれば,被告パンフレットBの記載が品質誤認表示に該当すると認めることはできない。
( ) 被告パンフレットCについて(別紙品質等誤認表示目録1記載4-1な 3いし4-5)ア 証拠(甲55の3)によれば,被告パンフレットCには,?@赤色色素存在下でクレアチニンの吸着率を測定したデータ及び?Aクレアチニンに対する吸着力についての原告製品との比較試験結果をもとに,被告製品の選択的吸着力が優れているとする記載がされていることが認められる。
イ 原告は,上記?@のデータは,分子量500から900の赤色色素を用いたことについての根拠がなく,そのようなデータを基に,被告製品の選択的吸着力が高いと表示することは,品質誤認表示に該当すると主張する。
しかしながら,弁論の全趣旨によれば,体内毒素の分子量は500を下回るものが多いこと,活性炭はその細孔構造に物質を吸着して除去するものであるから,他の分子量の物質を多く吸着することは,目標とする物質の吸着率が低下することにつながるものであることが認められるから,分子量500から900の赤色色素を添加した状態でクレアチニンの吸着率を測定した結果,被告製品が,これらの赤色色素の物質の吸着率は低く,体内毒素の一つであるクレアチニンの吸着率が低下しない試験結果は 効,「率の良さ」を示すものとして合理性がないとまではいえず,原告の主張は採用することができない。
ウ また,原告は,上記?Aのデータについて,クレアチニンのみの吸着率の比較をもって選択的吸着性が優れているとはいえないと主張する。
しかしながら,クレアチニンは体内毒素の主要な物質であり,その吸着率の高さをもって「効率の良さ」を根拠付けることも合理性がないとはいえないのであって,上記記載が品質を誤認させるものと認めることはできず,原告の主張は採用することができない。
( ) 製造方法に関する記載について(別紙品質等誤認表示目録1記載5) 4証拠(甲54,55の1〜3)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品の添付文書(甲54 ,被告パンフレットA,同B及び同Cには,いずれも被告 )製品の仕様表が掲載されており,その「 組織・性状 」中の「成分・含量」 【】欄には 「球形吸着炭(石油系芳香族由来の球形微粒多孔質炭素を高温にて ,酸化及び熱処理して得たもの 」との記載があり,被告製品の製造工程には )酸化工程があることをが表示されていることが認められる。
原告は,被告製品が酸化工程を経ているとする製造方法の表示について,被告製品の製造工程には酸化工程はなく,品質等誤認表示に当たると主張する。
,( , , ) , , しかしながら 証拠 乙176 212 224 によれば 被告製品は●(省略)●ところ,窒素のみの雰囲気下での加熱ではなく,むしろ表面が改質する程度の酸化が行われるよう一定濃度の酸素が残存するよう酸素濃度を調整していることが認められる。
したがって,被告製品の製造工程に酸化工程がないことを前提とする原告の主張は採用することができない。
( ) 被告ウェブサイトの製品検索ページの表示,被告製品の名称の使用 5証拠(甲78の1〜5)によれば,被告マイランのウェブサイト(URLは省略)中の製品情報と題するページで,先発薬品名に「クレメジン」と入力して製品検索を行うと 「メルクメジンカプセル200mg」及び「メル ,クメジン細粒」を検索結果とするページが表示され,同ペーの上方には「先発製品名 クレメジン」と表示されることが認められる。
原告は,被告製品は原告製品の後発医薬品ではなく,被告ウェブサイト上で被告製品を原告製品の後発医薬品であると表示することは,品質誤認表示に当たると主張する。
しかしながら,被告製品は,厚生労働省から原告製品の後発医薬品であるとして製造承認を受けたものであり,後発医薬品と表示することが品質誤認表示に当たるとすることはできない。
また,原告は,被告製品の名称を「メルクメジン」とすることも品質誤認表示に当たると主張する。しかしながら,被告製品が原告製品の後発医薬品として製造承認を受けており,また,そもそも被告製品の名称がその品質や内容を示すものとは認められないから,原告の主張は採用することができない。
( ) 以上のとおり,原告の不正競争防止法に基づく請求は,いずれも理由が 6ない。なお,原告は,特許権に基づく差止請求の予備的請求として,不正競争防止法に基づき被告製品の製造販売の差止め及び廃棄を求めているところ,前記のとおり,主位的請求である特許権に基づく差止請求が認められるため,予備的請求については,判断を要しない。
7 被告らは,原告の被告らに対する損害賠償請求は権利の濫用であるとも主張する(平成21年1月28日付け被告準備書面( )第5 。しかしながら,同 15)主張は時機に遅れて提出されたものと認められるので,却下する。
8結論以上によれば,原告の訴状における請求については,被告らに対し特許法100条に基づく被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄請求,被告マイランに対し特許法184条の10に基づく補償金として4200万円及び特許権侵害不法行為に基づく損害賠償金として2959万8210円(内金284万0785円の限度で被告扶桑薬品と連帯)の合計7159万8210円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年2月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,並びに,被告扶桑薬品に対し特許権侵害不法行為に基づく損害賠償金として,被告マイランと連帯して,284万0785円及び及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年2月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとする。
原告が平成20年11月21日付け訴えの変更申立書で追加した請求については,被告マイランに対し特許権侵害不法行為に基づく損害賠償金として7億8840万1790円(内金7315万9215円の限度で被告扶桑薬品と連帯して)及びこれに対する平成20年11月21日付け訴えの変更申立書送達の日の翌日である平成20年11月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,並びに,被告扶桑薬品に対し特許権侵害不法行為に基づく損害賠償金として,被告マイランと連帯して,7315万9215円及びこれに対する平成20年11月21日付け訴えの変更申立書送達の日の翌日である平成20年11月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容することとし,その余は理由がないからこれを棄却することとする。
原告の不正競争防止法に基づく表示行為の差止請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとする。
被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄を命ずる主文第1項ないし第4項については,仮執行宣言は相当でないからこれを付さないこととし,金銭の支払を命ずる主文第5項ないし第8項については,仮執行宣言を付すこととし,仮執行免脱宣言は相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 柵木澄子
裁判官 舟橋伸行
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