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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成14ワ10511特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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関連ワード 方法の発明 /  使用方法 /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  試行錯誤 /  発明の詳細な説明 /  分割出願 /  実施料相当額 /  善意 /  権利の濫用(権利濫用) /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  先使用権(先使用) /  社会通念 /  加工 /  間接侵害 /  構成要件 /  業として /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  実施権 /  通常実施権 /  事業の準備 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 11年 (ワ) 5104号 特許権侵害差止等請求事件
原告 オムロン株式会社
訴訟代理人弁護士 岡田春夫
同 小池眞一
同 矢倉信介
補佐人弁理士 牛久健司
同 井上正
被告 名古屋電機工業株式会社
訴訟代理人弁護士 堀川 日出輝
同 野上 邦五郎
同 杉本進介
同 冨永博之
補佐人弁理士 浜野哲郎
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2002/04/25
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は、別紙ロ’号物件目録記載の物件を製造し、販売し、販売の申出をしてはならない。
2 被告は、別紙ニ’号物件目録記載の物件を製造し、販売し、販売の申出をしてはならない。
3 被告は、その占有に係る第1項及び第2項の各物件並びにこれらの半製品を廃棄せよ。
4 被告は、原告に対し、金5087万9190円及びこれに対する平成14年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は5分し、その1を原告の、その余を被告の各負担とする。
7 この判決は、第4項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1ないし3 主文第1項ないし第3項と同旨。
4 被告は、原告に対し、金1億4259万円及びこれに対する平成14年1月25日(平成14年1月21日付け訴えの変更申立書送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
(略称)後記前提となる事実1(1)記載の特許権 ― 「第1特許権」 後記前提となる事実1(2)記載の特許権 ― 「第2特許権」 第1特許権の発明 ― 「第1発明」 第2特許権の発明 ― 「第2発明」 第1特許権出願に係る明細書 ― 「第1明細書」 第2特許権出願に係る明細書 ― 「第2明細書」 第1特許権の特許公報(甲2) ― 「第1公報」 第2特許権の特許公報(甲4) ― 「第2公報」 別紙イ号物件目録記載の物件 ― 「イ号物件」 別紙ロ号物件目録記載の物件 ― 「ロ号物件」 別紙ハ号物件目録記載の物件 ― 「ハ号物件」 別紙ニ号物件目録記載の物件 ― 「ニ号物件」 別紙イ’号物件目録記載の物件 ― 「イ’号物件」 別紙ロ’号物件目録記載の物件 ― 「ロ’号物件」 別紙ハ’号物件目録記載の物件 ― 「ハ’号物件」 別紙ニ’号物件目録記載の物件 ― 「ニ’号物件」 イ’号物件及びロ’号物件からなるシステム ― 「イ’号+ロ’号システム」(他のシステムも同様とする。) 別紙イ”号物件目録記載の物件 ― 「イ”号装置」 本件は、第1特許権及び第2特許権を有する原告が、@ユーザによるイ’号物件及びロ’号物件、イ’号物件及びハ’号物件、イ号物件及びロ号物件並びにイ号物件及びハ号物件の各組み合わせによる使用(ニ’号物件又はニ号物件をコンピュータにインストールすることを含む。)は第1特許権及びその出願公告による仮保護の権利(平成6年法律第116号による改正前の特許法52条1項)の直接侵害に、Aユーザによるロ’号物件、ハ’号物件、ロ号物件及びハ号物件の使用(ニ’号物件又はニ号物件をコンピュータにインストールすることを含む。)は第2特許権の直接侵害にそれぞれ当たることを前提として、各物件の製造販売等をした被告に対し、次のとおり請求した事案である。
@-1 ロ’号物件及びニ’号物件の製造販売等が第1特許権の間接侵害に当たることを理由とする、同特許権に基づく前記製造販売等の差止めと廃棄等請求(請求の第1項ないし第3項)。
@-2 ロ’号物件、ニ’号物件、ロ号物件及びニ号物件の各販売が第1特許権及び前記仮保護の権利の間接侵害又はユーザによる前記@の直接侵害行為の教唆幇助(民法719条2項)に当たることを理由とする、民法719条1項(イ’号物件又はイ号物件との組み合わせ使用のため、同物件も損害賠償の対象とする。)、特許法102条3項に基づく損害賠償請求(請求の第4項)。
A-1 ロ’号物件の製造販売等が第2特許権の直接侵害又は間接侵害に、
ニ’号物件の製造販売等が第2特許権の間接侵害にそれぞれ当たることを理由とする、同特許権に基づく前記製造販売等の差止めと廃棄等請求(請求の第1項ないし第3項)。
A-2 ロ’号物件及びロ号物件の販売が第2特許権の直接侵害間接侵害又はユーザによる前記Aの直接侵害行為の教唆幇助(民法719条2項)に、ニ’号物件及び及びニ号物件の販売が第2特許権の間接侵害又はユーザによる前記Aの直接侵害行為の教唆幇助(民法719条2項)にそれぞれ当たることを理由とする、
民法719条1項、特許法102条3項に基づく損害賠償請求(請求の第4項)。
(前提となる事実) 1 原告は、次の各特許権を有している。
(1) 特許番号 第2077044号(特願昭61-290790) 発明の名称 実装基板検査位置生成装置および方法 出願日 昭和61年12月5日 出願公告日 平成7年12月20日 登録日 平成8年8月9日 特許請求の範囲 別紙特許公報(第1公報)該当欄請求項1記載のとおり。
(2) 特許番号 第2570239号(特願平03-214358) 発明の名称 実装部品検査用データ生成方法およびその方法の実施に用いられる実装部品検査装置 出願日 平成3年7月30日 登録日 平成8年10月24日 特許請求の範囲 別紙特許公報(第2公報)該当欄請求項2記載のとおり。
2 第1発明及び第2発明の各構成要件を分説すれば、次のとおりである。
(1) 第1発明 A 部品が実装された実装基板を検査するための検査位置を生成する実装基板検査位置生成装置であって、
B 基板に対する前記実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報を記憶する第1の記憶手段と、
C 部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報を記憶する第2の記憶手段と、
D 前記第1の記憶手段に記憶される部品装着情報と前記第2の記憶手段に記憶される部品情報とから実装基板を検査するための検査位置を生成する検査位置生成手段と E を備えることを特徴とする実装基板検査位置生成装置。
(2) 第2発明 F 被検査基板上に実装された複数の部品につき、それぞれの実装品質を検査するのに必要な実装部品検査用データを生成するための装置であって、
G 前記被検査基板上に実装された各部品について、それぞれその部品種を識別するための識別情報、実装方向、および実装位置を、それぞれ外部より入力して記憶する第1の記憶手段と、
H 複数の部品種について、それぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータを記憶する第2の記憶手段と、
I 前記各部品種について、それぞれその部品種を識別するための識別情報とライブラリデータとを対応づけるための変換テーブルを記憶する第3の記憶手段と、
J 前記第1の記憶手段に記憶される各部品の識別情報と前記第3の記憶手段に記憶される変換テーブルとを用いて、被検査基板上の各部品毎に、その部品種に該当するライブラリデータを前記第2の記憶手段から読み出した後、このライブラリデータと前記実装方向および実装位置とを合成して前記実装部品検査用データを生成する合成手段と K を備えて成る実装部品検査用データ生成装置。
3 被告は、いずれも業として
(1) ウィンドウズ化前の装置等として、イ号物件、ロ号物件及びニ号物件を製造し、販売し、販売の申出をしていた。
(2) ウィンドウズ化後の装置等として、イ’号物件、ロ’号物件及びニ’号物件を製造し、販売し、販売の申出をしている。
なお、イ号物件及びイ’号物件(商品名「レーザインスペクタNLBシリーズ」)は、基板に取り付けられた電子部品の「はんだ付けの状態」及び「部品の位置ずれ」等をレーザ光を利用して自動検査する検査装置である。ロ号物件及びロ’号物件(商品名「アナライザNLBA」)は、イ号物件及びイ’号物件の検査精度や稼働効率を向上させるための各種のソフトを搭載したパソコンである。ニ号物件及びニ’号物件は、ロ号物件及びロ’号物件に用いられるCAD展開ソフトを記録した媒体である(ちなみに、ハ号物件及びハ’号物件は、汎用コンピュータにCAD展開ソフトがインストールされたものである。)。
4 イ’号+ロ’号システムは、第1発明の構成要件のうち、後記争点以外の構成要件をすべて充足する。
(第1特許権についての争点)―イ’号物件及びロ’号物件の議論が、イ号物件及びロ号物件、イ号物件及びハ号物件並びにイ’号物件及びハ’号物件にそのまま妥当することは当事者間に争いがないので、侵害論の争点では、イ’号+ロ’号システムを代表例として摘示するにとどめる。
1 第1発明の構成要件A、D及びE「検査位置生成」の充足性 (原告の主張) 第1発明は、部品の種類毎に検査対象となり得る場合の相対位置データを含む部品情報を記憶するライブラリを設け、このライブラリを用いて実装基板を検査するための検査位置を生成するところにその本質があり、「生成した検査位置を記憶する記憶手段」まで同発明の構成要件とするものではないから、被告主張のように、検査に先立ち実装基板上のすべての部品の検査対象位置をあらかじめ生成しておくことは、必要ではない。被告の指摘する出願当初明細書(乙1)には、第1発明がインサーキットテスター又はこれに類似する検査装 置に限定されることを示唆する記載は一切ないから、第1発明がブリッジ検査対象登録方法に限定される理由はない。なお、被告の言及するブリッジ検査対象登録方法の発明については、第1特許権の特許出願から分割出願され、第1特許権とは別の特許(特許番号第2697678号、甲39)として登録されている。
イ’号+ロ’号システムについて、イ’号物件が、ロ’号物件から与えられた検査プログラムに基づき、検査位置算出手段においてレーザ掃引場所を算出し、
この検査位置の算出と算出した検査位置に対するレーザ掃引(対象物の上にレーザ光を走査すること)を交互に行うことにより検査対象位置を生成するものであるとしても、上記構成要件を充足する。仮に検査位置を生成することに生成した検査位置を記憶することが含まれると解しても、イ’号+ロ’号システムは、一時的にせよ、算出した検査位置を記憶している(これを消去するのはメモリ節約のためにすぎない。)から、上記構成要件を充足することに変わりはない。
(被告の主張) 第1発明は、従来技術が、実装基板の検査を行う前に、実装基板上のすべての部品の検査対象位置をあらかじめ決めた後で、それを検査装置に教示して検査を行うものであったことを前提として、そこにおける検査対象位置の登録方法の問題点を改良し、検査位置生成装置として検査位置を支援するものであり、検査に先立ち、実装基板上のすべての部品の検査対象位置をあらかじめ登録作業の自動化により生成しておくものである(その出願当初明細書(乙1)においても、第1発明はブリッジ検査対象登録方法のみを前提としていたことからみて、第1発明の「検査位置」とは、「ブリッジ検査の対象とする相手方電極の位置」という「検査ポイント」を意味し、「検査領域」という概念とは異なる。)。したがって、第1発明の「検査位置生成」とは、検査装置を支援するために、検査に先立ち実装基板上のすべての部品の検査対象位置をあらかじめ生成しておくことを意味し、検査対象位置を計算し、これに基づき検査するという工程を交互に行うようなものは含まれない。
イ’号+ロ’号システムについて、イ’号物件が、ロ’号物件から与えられた検査プログラムに基づいて検査位置算出手段においてレーザ掃引場所を算出し、
この検査位置の算出と算出した検査位置に対するレーザ掃引を交互に行うことによって部品実装基板上のはんだ付けの状態(はんだ付けの良否、はんだ、ブリッジの有無等)、部品の有無、ずれ等を検査するものであって、検査に先立ち実装基板上のすべての部品の検査対象位置をあらかじめ生成しておくものではないから、上記構成要件を充足しない。
2 第1発明の構成要件C「部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報を記憶する」の充足性 (原告の主張) 次の点に照らせば、イ’号+ロ’号システムは、「部品の種類/パーツav毎の、部品の外形、リード、パッド(電子部品を基板にはんだ付けするための基板上の接続部分)等に関するデータ(形状情報)と各検査項目のレーザ掃引情報よりなるパーツデータを記憶するものであるから、上記構成要件を充足する。
(1) 第1発明は、基板座標系から離れて、実装基板検査位置生成装置内でデータを共用するという観点から分類される部品の種類毎に、検査対象となり得る場所を定めておくという技術思想を想定したものであり、パッドの形状や寸法が異なれば検査対象となり得る場所の相対位置データも異なるというのであれば、異なる部品の種類(部品の種類/パーツ)が割り当てられるのは当然であり、被告の主張(1)のような形式的な解釈をすべきではない。
(2) 第1発明の最終目的は検査位置を導く点にあり、「位置データ」をその文言に従って解釈しても、「位置に関するデータ」であり、位置を導き出すデータを含めて解釈するのが自然かつ合理的であるから、座標データに限定解釈する理由はない(座標は位置を表す一手段にすぎない。)。したがって、「相対位置データ」とは、部品系で示される位置に関するデータで、部品系で示される位置を導き出すデータも含まれる。
(3) 被告の主張(3)は否認する。第1発明がインサーキットテスター又はこれに類似する検査装置に適用できるブリッジ検査対象登録方法に限定される理由はない。
(被告の主張) 原告の主張はいずれも否認する。
(1) 「部品の種類」とは、部品自体の属性に含まれない部品以外の要素も含めて分類したとすれば、「部品の種類」とはいえないから、部品自体の属性に基づく分類をいい、部品自体の属性に関わらないものを考慮した分類は含まれない。「部品情報」も、部品自体の属性に含まれない部品以外の情報を含むものであれば、
「部品の情報」とはいえないから、部品自体の属性に関わる情報をいい、部品自体の属性に関わらない情報は含まれない。第1明細書の実施例第8図に関する記載もこれを前提としている。
イ’号+ロ’号システムにおいて、ロ’号物件のパーツデータ・ファイル63Aは、部品自体の属性に関わらないパッドの情報という要素を含む「部品の種類/パーツavごとに分類されており、また、部品自体の属性に関わらないパッドに関するデータを含むものであるから、上記構成要件を充足しない。
(2) 「相対位置データ」とは、その文言自体や第1明細書の実施例第7図ないし第9図に関する記載に照らし、基板座標系上の絶対位置に対する部品座標系上の相対位置を示す位置データをいい、位置データと同視し得る位置データを導き出し得るすべてのデータというような意味ではない。
イ’号+ロ’号システムにおいて、ロ’号物件のパーツデータ・ファイル63Aは、「部品の種類/パーツavごとに、部品、リード及びパッド等の長さ、
幅、間隔等の寸法に関するデータや、レーザの掃引回数や掃引長さ等の掃引に関するデータを記憶しているだけであって、「相対位置データ」情報を記憶するものではないから、上記構成要件を充足しない。
(3) 第1発明の出願当初明細書(乙1)にはインサーキットテスター又はこれに類似する検査装置に適用できるブリッジ検査対象登録方法しか記載されていなかった以上、第1発明は同登録方法を前提としており、その検査位置もブリッジ検査の対象とする相手方電極の位置という検査ポイントを意味するのであって、一定の範囲を意味する検査領域ではないから、検査ポイントとしての検査位置を求めるデータを記憶していることが必要である。
イ’号+ロ’号システムにおいては、被検査領域をレーザ掃引し、被検査領域の各部から反射するレーザ光の方向を識別して数列化することによって初めて検査が可能となる方式を採用しているため、レーザ掃引開始位置を算出する部品及びパッドの長さ情報とレーザ掃引方法に関する情報が必要であり、レーザ掃引開始位置を求めるデータをもって検査位置を求めるデータということはできないから、
上記構成要件を充足しない。
3 明らかな無効理由 (被告の主張) 第1発明は、これに対する特許無効審判請求書(乙2)添付の特開昭59-125469号公開特許公報(プリント基板自動設計装置)、特開昭61-74398号公開特許公報(組立ロボツトによる電子部品自動組立て方法)、DEC(Digital Equipment Corporation)TECHNICAL PAPER(June 2-6.1985、
被検査印刷回路基板のロボットによるプロービング(探針移動操作))に記載された各発明に基づき、当業者であれば容易に発明することができた(特許法29条2項違反)。したがって、第1特許権には特許の無効理由が存在することが明らかであるから、第1特許権に基づく請求は権利の濫用である。
(原告の主張) 被告の主張は否認する。
4 先使用による通常実施権 (被告の主張) (1) 被告は、第1特許出願前から、イ”号装置の研究開発及び製造の準備を行っていた。
(2) イ”号装置の発明は、イ’号+ロ’号システムの発明と同一である。すなわち、イ”号装置は、部品のリードとリードの間のようにブリッジが生じやすい場所(領域)をレーザ掃引し、その反射光の強度の変化を検出することによってブリッジの有無を検査する方法を採用しており、部品位置データ記憶手段に記憶された部品位置データ(部品装着情報)とパーツデータ記憶手段の部品の形状情報及びレーザ掃引情報とから検査プログラムが作成され、検査プログラムのDATAnファイルに含まれる部品位置データ(部品装着情報)と部品形状情報とからレーザ掃引基準位置(ブリッジ検査基準位置)が算出され、このレーザ掃引基準位置の算出と、算出されたレーザ掃引基準位置及びDATAnファイルに含まれるレーザ掃引情報(掃引ストローク、掃引ピッチ)に基づくレーザ掃引とを各部品毎に交互に行うことによりブリッジ検査を行っている。
(3) 被告は、前記(1)の当時、第1発明の内容を知らなかった。
(原告の主張) (1) 被告の主張(1)は否認する。ソフトウェアの開発工程は、通常、@機能設計→A構造設計→Bモジュール設計→Cプログラミング→Dデバッグ→Eテストの各工程から構成されるところ、被告の主張するイ”号装置の技術思想は、部品位置データとパーツデータとから検査位置を生成することにあるから、前記A構造設計の工程が当該技術思想のプロセスを構築するための中心部分である。ところが、
イ”号装置は、第1特許出願時では、被告設計者のメモによっても具体的設計には至らず、部品基準位置も定まっていなかったのであり、前記A構造設計の工程で試行錯誤を繰り返していたものであるから、未だ発明の完成がなく、事業の準備があるとはいえない。
(2) 被告の主張(2)は否認する。イ”号装置にはイ’号+ロ’号システムと次のような相違点が存するから、イ”号装置に具現された発明と同一性があるとはいえない。
ア イ”号装置では、部品基準位置の情報が手動で入力され、検査位置の算出に必要なパーツデータも手動で選択する必要があるが、イ’号+ロ’号システムでは、部品基準位置の情報にはCADデータが用いられ、検査位置の算出に必要なパーツデータもCAD展開処理手段において自動的に選択される。つまり、イ”号装置が検査位置の手動入力を原則とするのに対し、イ’号+ロ’号システムは検査位置をすべて自動で生成するものであるから、両者の構成は大きく異なる。
イ 第1発明の作用効果が検査対象位置の登録作業を自動化することにより、係員の作業負担の軽減、登録作業の効率化、登録ミスの発生防止にあるところ、イ”号装置では、部品装着情報の入力及びパーツデータの選択を手動で行う必要があり、これらを自動で行うイ’号+ロ’号システムと比較すれば、その作業負担は圧倒的に重く、効率化の点でも劣り、登録ミスの発生防止も十分ではないから、作用効果の点でも、両者は大きく異なる。
ウ イ”号装置の開発経緯に照らしても、@被告がイ”号装置を開発したという時期からCADデータの利用が開始されるまでに、実に5年余りという長い年月を要した、ACADデータの利用が開始されたのは、ユーザの示唆によるものであり、被告のイニシアティブによるものではなかった、B手入力から初期CAD展開への利用へと改良された平成4年3月の時点においても、イ’号+ロ’号システムに採用されているCAD展開ソフトの開発が困難であったのであるから、両者の技術上の隔たりは大きい。
(3) 被告の主張(3)は否認する。
5 間接侵害又は教唆幇助 (原告の主張) (1) 特許法101条1号について、ある製品が特許発明たる物の生産にのみ使用する機能とそうでない機能の複数の機能を切り替えて使用することが可能な構造になっており、当該特許発明たる物の生産に使用しない方法自体が存する場合であっても、当該特許発明たる物の生産に使用しない使用を続けながら、当該特許発明たる物の生産に使用する機能を全く使用しないという使用形態が、当該製品の経済的、商業的又は実用的な使用として実質的に認められない場合には、当該製品を製造販売することによって侵害行為が誘発される蓋然性が極めて高いから、「その物の生産にのみ使用する物」という要件を満たすものというべきである。
ロ’号物件について、被告担当事業部長が、平成8年11月1日発行の表面実装技術11月号(甲14)において、CAD展開につき、「現在ほとんどのユーザで利用されており、マニュアルティーチング作業はほとんどなくなったといえる。」と述べているように、当時、CAD展開がほとんどのユーザで使用されていることが明らかであり、イ’号+ロ’号システムによる使用を全く伴わないという使用形態が、ロ’号物件の経済的、商業的又は実用的な使用として実質的に認められないから、前記要件を満たす。ニ’号物件についても、イ’号+ロ’号システムによる使用を全く使用しないという使用形態が、同物件の経済的、商業的又は実用的な使用として実質的に認められないから、前記要件を満たす。
(2) 被告は、密接な相互依存関係を有するイ’号物件とロ’号物件(ロ’号物件は、イ’号物件の存在と同物件との組み合わせによる使用を当然の前提とする。)を製造販売し、CAD展開ソフトの取扱説明書等(甲23ないし25)をユーザに配布し、ロ’号物件を購入したユーザに引き渡すに際しても、CAD展開ソフトの使用方法を教示しているのであるから、被告は、ユーザによる第1特許権の直接侵害行為を故意又は過失により教唆又は幇助した(民法719条2項)。ニ’号物件についても、被告は、同様に故意又は過失により教唆又は幇助した。
(3) 被告の主張(3)について、アナライザー(ロ’号物件及びロ号物件)が1台であっても、そこで生成された検査プログラムをFDやLANを介して複数台のレーザインスペクタ(イ’号物件及びイ号物件)にインストールし、各レーザインスペクタの検査位置算出手段において「検査プログラム」を処理することで検査位置を生成することは可能であり、かつ、両者を組み合わせて使用することは一般的に行われているのであるから、各販売台数の不一致の点が第1特許権の侵害を否定するものではない。
(被告の主張) (1) 原告の主張(1)は否認する。
(2) 原告の主張(2)は否認する。イ’号物件のユーザの中には、マニュアルティーチングを行っている者もあり、その者については第1特許権の侵害は成立しないから、被告に教唆又は幇助が成立することもない。
(3) 個々の物件では特許権を侵害しない複数の物件が同時に販売される場合に限り、同特許権を侵害するという関係にあるときは、単体のみで販売する場合は特許権を侵害しないものというべきである。仮にイ’号+ロ’号システム及びイ号+ロ号システムが第1特許権を侵害するとしても、レーザインスペクタ(イ’号物件及びイ号物件)が単体のみで販売された場合には、第1特許権の侵害とはならないから、アナライザー(ロ’号物件及びロ号物件)とは別に販売したレーザインスペクタ(イ’号物件及びイ号物件)については侵害とはならない。
6 原告の損害 (原告の主張) (1) 平成7年12月20日(第1特許権の出願公告日)から平成13年10月31日までの被告による各物件の販売額は次のとおりである。
イ号物件及びイ’号物件 45億円 ロ号物件及びロ’号物件 1億5000万円 ニ号物件及びニ’号物件 1500万円 (2) 第1特許権の実施料相当額は、各物件の販売額の3%(後記(3)において寄与率を100%としたことを考慮した数値である。ただし、第2特許権と併せての実施料相当額であれば、第2特許権についての争点5記載のとおり、各物件の販売額の5%)を下らない。
(3) 各物件に占める第1発明の寄与率は、次の点に照らし、いずれも100%とすべきである。
ア 第1発明の本質は、部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報を記憶するライブラリを設け、基板に実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報を受け付け、この部品装着情報とライブラリの部品情報とを結びつけて、実装基板を検査するための検査位置を生成する(検査位置を算出する)ところにある。
イ イ号物件及びイ’号物件には八つの機能(イ号物件では、FILE、PARTS DATA、TEACHING、INSPECTION、MAINTENANCE、SYSTEM、UTILITY及びEXIT(甲17)。イ’号物件では、パーツライブラリ、検査プログラム、基板検査、ハイブリッド、メンテナンス、システム、データ変換、メカニカル(甲23)。)があるが、同物件が実装プリント基板のはんだ付けの自動検査装置であることからすれば、その本質的な機能は、イ号物件につきPARTS DATA、TEACHING及びINSPECTION、
イ’号物件につきパーツライブラリ、検査プログラム、基板検査及びハイブリッドであり、とりわけ基板検査の実行であるINSPECTION及び基板検査が最も重要である。そして、基板検査の実際の流れに着目しても、イ号物件及びイ’号物件は、検査位置の算出と算出した検査位置に対するレーザ掃引を交互に行うことにより、第1発明の技術を常時用いている(基準点位置及び検査位置が算出されて初めてレーザ掃引が可能となることに照らすと、被告主張の基板検査の六つの機能の中でも基準点位置検出機能及び検査位置算出機能が基板検査の中心を担うものであるから、
六つの機能を同列に扱うことはできない。また、第1発明の本質やイ号物件及びイ’号物件の本質的機能に照らすと、被告主張のようにソフトのステップ数を基準とすることも合理的ではない。)。
ウ ロ号物件及びロ’号物件には、四つの機能(シミュレータ機能、標準CAD機能、ユーティリティ機能及び集計機能)があるが、同物件は検査装置を補完し、検査を効率的に行うためのものであり、そのための機能として検査プログラムの自動生成機能があり、当該機能を担う標準CAD機能が最も重要な機能であるのに対し、その余の機能は標準CAD機能に対する補助的追加的な機能にすぎないから、四つの機能を同列に扱うことはできない。
(被告の主張) (1) 原告の主張期間における被告による各物件の販売額は次のとおりである(マニュアルティーチングのみで使用するものは、ユーザによる第1特許権の直接侵害行為が成立しないから、これを控除した販売額である。)。
イ号物件及びイ’号物件 23億2582万円(143台) ロ号物件及びロ’号物件 8517万円(55台) ニ号物件及びニ’号物件 828万円(14個) (2) 原告の主張(2)は否認する。
(3)ア イ号物件及びイ’号物件について、基板検査という本質的機能に対し、
第1発明は、検査位置の生成という検査位置における支援機能の一つに関するものにすぎず、原告主張の八つの機能のうちの一つの機能(INSPECTION又は基板検査)に関わるものにすぎないから、その寄与率は8分の1を上回るものではない。基板検査の中にも六つの機能(レーザ掃引機能、受光部数列化機能、基板搬送機能、基準点位置検出機能、検査位置算出機能及び結果出力機能)があり、本件の検査位置算出手段はこの一つ(基準点位置検出機能)に関するものにすぎないから、第1発明の寄与率を更に6分の1に減ずることも考えられる。また、検査装置本体の全ソフトのステップ数で比較すれば、1600分の1(0.02MB/32.16MB)とすることも考えられる。実際にも、ロ号物件の開発後に製造されたイ号物件であっても、
マニュアル操作を行うための機能は基本設計として備えられており、パーツデータが登録されていない部品が使用されている等の理由でロ号物件を使用できない場合や、部品の数が少ない等の理由でマニュアル操作によりイ号物件を使用する方が効率的である場合には、ロ号物件を用いることなく、マニュアル操作により部品装着位置等を入力して検査プログラムを生成し、検査位置算出手段によって検査位置を算出することとしている。
イ ロ号物件及びロ’号物件についても、第1発明は、原告主張の四つの機能のうちの一つの機能(標準CAD機能)に関わるものにすぎないから、第1発明の寄与率は4分の1を上回るものではない。標準CAD機能は、アナライザーの開発過程上、後に追加された機能にすぎず、実際の販売価格でも、他の機能を有するソフトより高いわけではない(シミュレータ機能ソフトが70万円、ユーティリティ機能ソフトが30万円、集計機能ソフトが30万円であるのに対し、標準CAD機能は40万円である。)。
(第2特許権についての争点)―ロ’号物件の議論が、ロ号物件、ハ号物件及びハ’号物件にそのまま妥当することは当事者間に争いがないので、侵害論の争点では、ロ’号物件を代表例として摘示するにとどめる。
1 第2発明の構成要件F「実装部品検査用データを生成するための装置」、K「実装部品検査用データ生成装置」の充足性 (原告の主張) 第2発明は、実装部品検査用データ生成装置であって、実装部品検査用データを生成するものである。実装部品検査用データは、これを実装部品検査装置に与えれば、同装置がそのデータに従って検査を実行するものであれば足りるから、被告主張のように、検査に先立ち、基板上のすべての部品について検査用データをあらかじめ生成しておくことは必要ではない。
ロ’号物件は、検査に先立ち、検査プログラムを作成し、この検査プログラムを検査装置(イ’号物件)に与えることにより、同検査装置は検査プログラムに従って検査を実行するものであるから、同検査プログラムは実装部品検査用データにほかならず、ロ’号物件は上記構成要件をいずれも充足する。
(被告の主張) 第2発明は、第2公報の産業上の利用分野、発明が解決しようとする課題及び実施例の記載によれば、実装部品の検査に先立ち、あらかじめ基板上のすべての部品について、教示データ(実装部品検査用データ)を作成し、これを検査装置に教示して検査を行うという従来技術を前提とし、実装部品検査用データ生成中に検査装置を専有してしまうという問題点を改良したものである。したがって、第2発明の「実装部品検査用データ(を)生成(するための)装置」とは、検査に先立ち、基板上のすべての部品について検査用データをあらかじめ生成しておくことが前提とされている。
ロ’号物件は、単にDATAnファイルとLVDTnファイルから構成される検査プログラムを作成するにすぎず(レーザ掃引開始位置に結びついた検査用データが作成されるのはイ’号物件においてであり、かつ、イ’号物件ですら、検査に先立ち、基板上のすべての部品について検査用データがあらかじめ生成されているわけではないから)、ロ’号物件は、検査に先立ち、基板上のすべての部品について検査用データがあらかじめ生成しておくものではないから、上記構成要件を充足しない。
2 第2発明の構成要件H「検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータを記憶する第2の記憶手段」、I「識別情報とライブラリデータとを対応づけるための変換テーブルを記憶する第3の記憶手段」、J「ライブラリデータと前記実装方向および実装位置とを合成して前記実装部品検査用データを生成する合成手段」の充足性 (原告の主張) (1) 第2発明のライブラリデータは、検査装置による部品の実装品質の検査の観点から作成されるものであり、採用する実装部品検査方法、検査項目等において検査基準になり得るものであれば足りる。したがって、構成要件H「少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータ」とは、検査対象部位と検査基準とを直接対応づけたものに限られず、直接には検査基準と検査項目とを対応づけるものであっても、結果として検査対象部位と検査基準とを対応づけるものになっていれば足りる。
ロ’号物件は、そのライブラリ記憶手段内において、各「部品の種類/パーツav毎に、レーザ掃引場所(レーザ掃引情報を用いて算出される。)と検査基準(判定シート及び感度シート)とが、検査項目を通して相互に対応づけられているから、構成要件Hを充足する。
(2) 第2発明の技術思想の核心は「変換テーブル」にある。すなわち、第2発明においては、外部データに含まれる部品を特定する識別情報を、検査装置による実装品質の検査の観点から作成されたライブラリデータに対応づける必要があり、
この対応づけを行うものが構成要件Iの「変換テーブル」である。したがって、変換テーブルとは、外部データに含まれる、部品の種類を表す識別情報(部品コード)を、検査装置による実装品質の検査の観点から作成されたライブラリデータを表す識別コードにコード変換するものをいう。
ロ’号物件において、ユーザ部品コード対照テーブルが、外部から与えられるCADデータの識別コード(ユーザ部品コード)を、検査基準を含むライブラリファイルの識別コード(部品の種類/パーツ)に変換しているから、構成要件Iを充足する。
(3) 第2発明は、検査位置生成装置ではなく、実装部品検査用データ生成装置に関するものであるから、生成される「実装部品検査用データ」(構成要件J)も、これを実装部品検査装置に与えれば、実装部品検査装置が当該データに従って検査を実行するものであれば足りる。
ロ’号物件は、CADデータに含まれるユーザ部品コードとユーザ部品コード対照テーブルとを用いて被検査基板上の各部品について、ユーザ部品コードに対応する「部品の種類/パーツavのライブラリデータと、CADデータ中の実装方向及び実装位置とを合成して検査プログラムを生成しており、この検査プログラムが「実装部品検査用データ」に当たるから、構成要件Jを充足する。
(被告の主張) (1) 構成要件Hについて、第2発明は、特許請求の範囲の記載上、「複数の部品種について検査基準を対応づけたライブラリデータ」や「検査項目(又は検査対象部位)と検査基準とを対応づけたライブラリデータ」とせずに、わざわざ「複数の部品種について、それぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータ」としており、「検査項目を通じて」という留保もない。実施例【0014】の記載も、同じ部品、同じ検査項目であっても、検査対象部位により検査基準が異なり得ることを前提としている。したがって、構成要件Hは、文字どおり、「検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータ」であることが必要である。
ロ’号物件は、各検査項目について「部品の種類/パーツavごとに一つの検査シートを持てば足り、検査対象部位ごとに検査基準を対応づける必要はない。そのライブラリ記憶手段に記憶されているパーツ・データファイル63Aには検査基準に関するものは含まれておらず、検査基準ファイル63Bにも検査対象部位と検査基準とを対応づけたものは一切含まれていない。したがって、ロ’号物件は、
「検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータ」を記憶しておらず、
構成要件Hを充足しない。
(2) 構成要件Iにいう「変換テーブル」も、それぞれの部品種を識別するための識別情報と、第2の記憶手段に記憶されている各検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータとを対応づけるものでなければならない。
ロ’号物件は、前記(1)のとおり、検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータを有していない以上、前記「変換テーブル」も存しないから、構成要件Iを充足しない。
(3) 構成要件Jについて、第2発明の第2記憶手段に記憶されているライブラリデータは、部品種毎に検査対象部位と検査基準とを対応づけたものにすぎず、実装基板上に実装された部品の具体的な検査データとなっていないため、第2発明は、第2記憶手段に記憶されているライブラリデータと各部品の実装方向及び実装位置とを合成する合成手段により、初めて被検査基板上に実装された複数の部品につき、それぞれの実装品質を検査するのに必要な実装部品検査用データを合成している。したがって、構成要件Jにいう「実装部品検査用データを合成する合成手段」も、このように完成された実装部品検査用データを合成するものでなければならない。
ロ’号物件は、前記(1)のとおり、検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータを有していないから、構成要件Jを充足しない。また、ロ’号物件は、単にDATAnファイルLVDTnファイルから構成される検査プログラムを作成するだけであって、レーザ掃引開始位置から導かれた検査対象部位に結びついた検査用データを作成していない(イ’号物件において、初めてレーザ掃引開始位置から導かれた検査対象部位に結びついた検査用データが作成されるにすぎない)点でも、構成要件Jを充足しない。
3 明らかな無効理由 (被告の主張) 第2発明は、その特許無効審判請求書(乙3)に添付された特開昭62-190448号公開特許公報(部品実装基板の検査装置)、昭和57年5月15日社団法人日本能率協会発行「EDPS入門シリーズD 新版システム設計入門」(第4章ファイル設計)、Proceedings of the 1st European Test Conference,1989,IEEE(多角検査技術のための被検査部品データとモデルデータ)に記載された各発明に基づき、当業者であれば容易に発明することができた(特許法29条2項違反)。したがって、第2特許権には特許の無効理由が存在することが明らかであるから、第2特許権に基づく請求は権利の濫用である。
(原告の主張) 被告の主張は否認する。
4 間接侵害又は教唆幇助 (原告の主張) 仮にロ’号物件の製造販売等が第2特許権を直接侵害するものではないとしても、第1特許権についての争点5で主張したとおり、間接侵害に当たる、又はユーザによる直接侵害行為を故意又は過失により教唆又は幇助する(民法719条2項)ものである。ニ’号物件及びニ号物件についても同様である。
(被告の主張) いずれも否認する。 5 原告の損害 (原告の主張) (1) 平成8年10月24日(第2特許権の登録日)から平成13年10月31日までの被告による各物件の販売額は次のとおりである。
ロ号物件及びロ’号物件 1億2000万円 ニ号物件及びニ’号物件 1200万円 (2) 第2特許権の実施料相当額は、各物件の販売額の3%(第1特許権と併せての実施料相当額であれば、各物件の販売額の5%)を下らない。
(3) 第1特許権を含む原告の総損害額は、次式のとおりである。
イ号物件及びイ’号物件 4,500,000,000×0.03=135,000,000 ロ号物件及びロ’号物件(150,000,000-120,000,000)×0.03+120,000,000×0.05=6,900,000 ニ号物件及びニ’号物件(15,000,000-12,000,000)×0.03+12,000,000×0.05= 690,000 合計 1億4259万円(135,000,000+6,900,000+690,000) (被告の主張) いずれも否認する。
判断
1 第1特許権についての争点1(第1発明の構成要件A、D及びE「検査位置生成」の充足性) 第1発明の構成要件A、D及びEにいう「検査位置生成」について、その具体的内容は、特許請求の範囲の記載上、一義的に明らかとはいえないから、第1明細書の他の記載も考慮して、これを検討する。
(1) 第1明細書によれば、第1発明は、「部品が実装された実装基板を検査するための検査位置を生成する実装基板検査位置生成装置および方法に関する」ものである(第1公報2欄12行〜14行)。すなわち、従来技術としては、部品が実装された基板について、例えば実装された部品のブリッジなど部品の実装状態を検査する場合、あらかじめ検査装置に基板上の検査対象位置を教示する必要がある。
通常、実装部品のブリッジ検査を行う場合、それに先立って係員はすべての実装部品の各電極につきブリッジ検査の対象とする相手電極を登録しておく作業が必要である。従来、この種の登録方法として、係員がティーチングユニットをマニュアル操作して、ブリッジ検査の対象をひとつひとつ登録してゆく方法や、すべての電極をブリッジ検査の対象とした上でその中から非検査対象を指定して削除してゆく方法が存在する。ところが、上記の登録方法の場合、係員がブリッジ検査の対象をひとつひとつ登録するため、係員の作業負担が著しく大きくなり、疲労を招き易い。
また登録作業に時間がかかるため、作業能率が悪く、しかも登録ミスが発生し易いなどの問題があった(第1公報3欄1行〜19行)。そこで、第1発明は、この問題を解消するために、基板に対する実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報を記憶する第1の記憶手段と、部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報を記憶する第2の記憶手段と、前記第1の記憶手段に記憶される部品装着情報と前記第2の記憶手段に記憶される部品情報とから実装基板を検査するための検査位置を生成する検査位置生成手段とを備えることを特徴としている。また、この発明の部品が実装された実装基板を検査するための検査位置を生成する方法においては、基板に対する前記実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報と、部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報とから実装基板を検査するための検査位置を生成するようにしている(第1公報3欄25行〜39行)。第1発明によれば、部品装着情報と部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報とから実装基板を検査するための検査位置を生成するので、検査の対象位置の登録作業を自動化できる。したがって、係員が実装基板の検査対象位置をひとつひとつ登録していた従来の方式と比較して、係員の作業負担を大幅に軽減できるとともに、登録作業が短時間で行えるため作業能率が良く、しかも登録ミスが発生し難いなどの作用効果を有する(第1公報3欄41行〜45行(作用の項に「部品装着増俸」とあるは「部品装着情報」の誤記と認める。)、7欄12行〜8欄1行)。
(2) このような第1発明の解決しようとする問題点、問題点を解決するための手段、作用効果等のほか、第1発明の特許請求の範囲の文言上、「あらかじめ」又はこれに類する記載が全く存しないことに照らすと、第1発明の「検査位置生成」を検査に先立ち実装基板上のすべての部品の検査対象位置をあらかじめ生成しておくことに限定する根拠はないというべきである。
確かに、第1明細書の従来の技術の項には、前記(1)認定のとおり、「例えば実装された部品のブリッジなど部品の実装状態を検査する場合、あらかじめ検査装置に基板上の検査対象位置を教示する必要がある。」との記載があり、検査対象登録方法としてもブリッジ検査対象登録方法が挙げられ、同登録方法を前提とする第1発明の実施例(第1公報4欄15行〜18行、第1図及び第2図)の記載も存する。しかし、従来技術の項に掲げられたブリッジ検査対象登録方法は、第1明細書を通読すれば、せいぜい第1発明の実施例の一つとして位置付けられるものにすぎず(第1公報4欄15行〜16行、第1図の説明として「この発明の一実施例にかかるブリッジ検査対象登録方法」と明記されている。)、第1発明において同方法を必須の前提とする趣旨でないことは明らかである。なお、被告は、第1発明の出願当初明細書(乙1はその公開特許公報)がブリッジ検査対象登録方法のみを前提としていた点も主張するが、出願当初明細書の発明の名称は「実装部品のブリッジ検査対象登録方法」であり、特許請求の範囲第1項にも「・・・各部品の各電極につきブリッジ検査の対象とする相手電極を決定して登録するためのブリッジ検査対象登録方法であって、・・・ブリッジ検査の対象として抽出して登録することを特徴とする実装部品のブリッジ検査対象登録方法」と記載されているものの、発明の詳細な説明中には、インサーキットテスター又はこれに類似する検査装置に限定されることを示す記載はなく、ブリッジ検査対象登録方法についての発明は、第1特許権に係る特許出願から分割出願の結果、第1特許権とは別の特許(特許番号第2697678号、発明の名称「実装部品のブリッジ検査対象登録方法」)として登録されており(甲39)、第1発明の構成要件を限定解釈する根拠となるものではないから、被告の前記主張も採用することができない。
(3) イ’号+ロ’号システムについて、イ’号物件がロ’号物件から与えられた検査プログラムに基づいて検査位置算出手段においてレーザ掃引場所を算出し、
この検査位置の算出と算出した検査位置に対するレーザ掃引を交互に行うことにより検査対象位置を生成するものであり、検査に先立ち実装基板上のすべての部品の検査対象位置をあらかじめ生成しておくものではないとしても、第1発明の構成要件A、D及びE「検査位置生成」を充足する。
(4) 以上の点は、イ号物件及びロ号物件、イ号物件及びハ号物件並びにイ’号物件及びハ’号物件の各システムについても、同様に妥当する。
2 第1発明の構成要件C「部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報を記憶する」の充足性 (1) 被告は、「部品の種類」とは部品自体の属性に基づく分類をいい、部品自体の属性に関わらないものを考慮した分類は含まれない、「部品情報」も部品自体の属性に関わる情報をいい、部品自体の属性に関わらない情報は含まれないと主張する。
しかし、第1発明において予定する検査対象は、単なる部品そのものではなく、「部品が実装された実装基板」(第1公報2欄12行)であり、実質的にも、第1発明は、部品の種類毎に検査対象が異なることから、「部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報を記憶する」(第1発明の構成要件C)というものであるから、部品自体の属性としては同一の部品であっても、パッドにより検査対象が異なるのであれば、パッドの情報を含めて分類することも当然予定されているというべきである。そして、第1明細書の発明の詳細な説明欄の記載を精査しても、「部品の種類」や「部品情報」という文言を部品それ自体の属性に限定して解釈すべきであるとまではいえず、むしろ第1発明の予定する前記検査対象に鑑みると、パッドもいわば部品に関わる情報として、これらに含めて解釈することもできる。被告の指摘する第1明細書の第8図に関する記載(第1公報5欄12行〜22行)も、実施例についての記載にすぎず、第1発明の特許請求の範囲を同実施例に限定しなければならない根拠も見い出せない。したがって、
この点に関する被告の主張は採用することができない。
イ’号+ロ’号システムにおいて、ロ’号物件のパーツデータ・ファイル63Aが、ロ’号物件目録記載のとおり、パッドの情報という要素を含む「部品の種類/パーツavごとに分類されており、また、パッドに関するデータを含むものであるとしても、上記構成要件を充足する。
(2) 被告は、「相対位置データ」とは、基板座標系上の絶対位置に対する部品座標系上の相対位置を示す位置データであり、位置データと同視し得る位置データを導き出し得るすべてのデータという意味ではないと主張する。
確かに、第1明細書の実施例第7図ないし第9図に関する説明(第1公報5欄3行〜27行)の中には、部品座標系の相対位置を示す位置データであることを前提とするかのような記載もないわけではない。しかし、第1発明は、実装基板を検査するための検査位置を生成する(構成要件A)ものであり、その一手段として「部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報を記憶する第2の記憶手段」(構成要件C)を備えるのであるから、ここにいう「相対位置データ」も、検査位置に関するデータとして検査位置を導き出すデータを広く含むと解釈することが可能であり、特許請求の範囲欄の文理上、これを座標データのみに限定すべきとはいえない。第1明細書の実施例も、「部品形状情報16」が「部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報」に該当すると考えられる(第1公報の第2図参照)ところ、「部品形状情報16」の具体的意味は「各部品形状番号の部品が何個の電極を持ち、各電極がどの位置に設けられているかを示す情報」(第1公報5欄14行〜16行)とされ、「例えば」(第1公報5欄19行)とあることからも明らかなように、部品座標系の相対位置を示す位置データはその例示にすぎない。したがって、この点に関する被告の主張は採用することができない。
イ’号+ロ’号システムにおいて、ロ’号物件におけるパーツデータ・ファイル63Aは、「部品の種類/パーツavごとに「形状情報」とレーザ掃引情報を保有するものであり、レーザ掃引情報は、部品実装基板におけるレーザ掃引場所を算出するために必要なデータの一つであって(ロ’号物件目録のライブラリ記憶手段欄)、ロ’号物件で作成されるDATAnファイル(同目録のCAD展開処理手段欄)に記述された部品装着情報、形状情報、レーザ掃引情報等に基づき、イ’号物件においてレーザ・ビームを掃引すべき場所(レーザ掃引場所)を算出する(イ’号物件目録の全体構成欄)のであるから、部品座標系の相対位置を示す位置データを記憶するものでないとしても、上記構成要件を充足する。
(3) 被告は、第1発明がインサーキットテスター又はこれに類似する検査装置に適用できるブリッジ検査対象登録方法を前提とし、その検査位置もブリッジ検査の対象とする相手方電極の位置という検査ポイントを意味するから、検査ポイントとしての検査位置を求めるデータを記憶していることが必要であると主張する。
しかし、被告の主張の根拠とする出願当初明細書(乙1)は、第1特許権についての争点1(2)で判示したとおり、第1発明の構成要件を限定解釈する根拠となるものではないから、この点に関する被告の主張は、その前提を欠き、採用することができない。
(4) 以上の点は、イ号物件及びロ号物件、イ号物件及びハ号物件並びにイ’号物件及びハ’号物件の各システムについても、同様に妥当する。
3 第1特許権についての争点3(明らかな無効理由) (1) 被告は、第1発明の進歩性欠如(特許法29条2項違反)の根拠として、
その無効審判請求書(乙2)添付の@特開昭59-125469号公開特許公報、
A特開昭61-74398号公開特許公報、BDEC(Digital Equipment Corporation) TECHNICAL PAPER(June 2-6.1985)を主張し、より具体的には、前記@の公報第6図には部品装着情報を記憶する第1の記憶手段に相当するものが、同第7図には相対位置データを含む部品情報を記憶する第2の記憶手段に相当するものが記載されており、これらの情報から絶対位置を生成することが示されている、前記Aの公報には組立ロボットの座標系上の条件データと印刷回路基板上の座標系上の位置データから動作位置データXR、Y R、α R、Z R、β Rに変換する過程が示されている、前記Bの刊行物には、CADデータを用いて、検査点を含めたプローブ命令を生成することが従来から公知であり、また、印刷回路基板の自動設計やチップマウンタと実装基板検査方法(装置)は、それらの開発過程、設置状況、稼働状況等からみても同一技術分野に属するといえることが示されている旨を主張する。しかし、前記特許無効審判事件において、同審判請求は成り立たない旨の審決が平成13年10月23日にされており(甲42)、当裁判所も、次の理由により、無効理由が存在することが明らかであるとはいえないと判断する。
(2)ア 被告の指摘する前記@の公報第6図は、「作成すべきセルの一例」(同公報3頁左下欄6行)又は「登録すべき回路を示す図」(同公報8頁右上欄16行)を表したものにすぎないから、当該図から、第1発明の構成要件B「部品装着情報を記憶する第1の記憶手段」を容易に想到することができるとはいえない。
なお、前記@の公報には、「ステップ(145)はこのような結線情報を作成するための処理である。この処理では部品ファイル(11)が参照される。
部品ファイル(11)内には、第7図に示すように、論理ゲート・ファイルと(IC)チップ・ファイルとがある。論理ゲート・ファイルは、各ゲートについて、出力端子の位置を基準として(座標(0、0))、出力端子と入力端子の位置の座標を表わしたものである。チップ・ファイルは、各ICについて、そこに内蔵されているゲート名、個数、ICの形名、ピン数、ピン種類等をストアしたものである。
ここでOは出力端子を、Iは入力端子をそれぞれ表わしている。まず、各ゲートのゲート位置エリヤにストアされている位置座標(基準点の座標、これは上述のように出力端子の位置を表わしている)にもとづいて、論理ゲート・ファイルを参照して、そのゲートの入力端子の座標が求められる。たとえば、2ANDゲート(G2)の基準点(B)の座標は(22、10)であるから、論理ゲート・ファイルを参照すると、この2ANDゲート(G2)の入力端子((D)、(E)点)の座標は(18、11)(18、9)となる。」(同公報5頁左上欄9行〜右上欄16行)という記載があることは認められる。しかし、この記載も、「どの配線がどのゲートの入力と出力とを結ぶのかということを直接的に示す結線情報」を作成するための処理についての記載したものにすぎない(同公報5頁左上欄7行〜10行)。つまり、ここにいう論理ゲート・ファイルに記憶されている座標は、基板に実装される実際の部品の端子の座標ではなく、各ゲートのゲート位置エリヤにストアされている位置座標も、基板に実装される部品の実際の装着位置を指定するものではないから、前記@の公報には、部品装着情報を記憶すること、部品情報を記憶すること、部品装着情報と部品情報とから基板上の端子等の位置を生成することのいずれも、記載ないし示唆されているとはいえない。そして、前記@の公報記載の発明は、そもそも第1発明のような実装基板検査位置生成装置および方法に関するものではなく、プリント基板自動設計装置に関するもの(前記公報の発明の名称、
特許請求の範囲及び発明の詳細な説明1頁右下欄4行〜8行)にすぎず、抽象化された回路図と実装基板上の実際の検査位置とを同列に考えることはできないから、
前者に関する技術を後者に用いることが容易であるともいえない。
イ 前記Aの公報に記載された発明は、組立ロボツトによる電子部品自動組立て方法に関するもの(同公報の発明の名称、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明1頁右下欄17行〜18行)であり、その実施例の項には次の記載がある(同公報4頁右上欄17行〜左下欄10行、5頁右上欄16行〜左下欄4行)。
「印刷回路基板6の設計情報(中略)に含まれる各電子部品の印刷回路基板6上の各位置データXP、Y P、α P、Z P、β Pを読取って電子部品位置データメモリ20へ格納する。次に作業者によってキー入力された、動作位置データ作成のための周辺条件や補正値等の条件データを条件データメモリ21へ格納する。各条件データの設定が終了すると、電子部品位置データメモリ20に格納された各位置データXP、Y P、α P、Z P、β Pを読み出して座標変換式を用いて組立ロボット4の座標(XR、Y R、Z R)系の各動作位置データX R、Y R、α R、Z R、β Rへ変換して第7図の動作位置データメモリ22の該当領域へ格納する。」、「印刷回路基板の座標(XP、Y P)と組立ロボット4の座標(X R、Y R)との傾斜角θを求めるために、
二つの座標間で座標系の平行移動と回転の公式を応用すれば(5)および(6)式が求まる。
XrS=Xr0+XPS cosθ-YPS sinθ・・・・(5) YrS=Yr0+X PS sinθ-Y PS cosθ・・・・(6)」 しかし、これらの記載には、せいぜい電子部品の印刷回路基板6上の各位置データを読み取って、座標変換式を用いて組立ロボット4の座標(XR、Y R、
ZR)系の各動作位置データへ変換することが記載されているにすぎず、部品情報を記憶することや、部品装着情報と部品情報とから基板上の端子等の位置を生成することは、記載ないし示唆されているとはいえない。
ウ 前記Bの刊行物に記載された発明は、被検査印刷回路基板のロボットによるプロービング(探針移動操作)に関するものであり、被検査印刷回路基板をロボットによりプロービング(探針移動操作)するために、CADデータを用いて、
印刷回路基板上におけるプローブを移動させるべき検査点のX-Yデータを生成する旨が記載されている。
しかし、前記Bの刊行物には、検査位置を生成するための具体的構成についての記載は全くみられず、部品装着情報を記憶すること、部品情報を記憶すること、部品装着情報と部品情報とから検査位置を生成することのいずれも、記載ないし示唆されているとはいえない。
(3) したがって、前記無効審判請求書(乙2)添付の@特開昭59-125469号公開特許公報、A特開昭61-74398号公開特許公報、BDEC(Digital Equipment Corporation) TECHNICAL PAPER(June 2-6.1985)を個々に検討しても、これらを総合的に考察しても、各発明から第1発明を容易に推考することができたとはいえないから、無効理由が存在することが明らかであるとはいえず、この点に関する被告の主張は採用することができない。
(4) なお、被告は、第1特許権に対する新たな無効審判請求(平成13年12月5日付け、乙28)に基づき、本件訴訟においても明白な無効理由(特開昭60-93436号公開特許公報、特開昭61-102800号公開特許公報、昭和63年版公開特許分類索引W、Xを根拠とする特許法29条2項違反)の主張を追加提出した。しかし、当該攻撃防御方法は、第12回口頭弁論期日までで侵害論の審理を終え、損害論についての審理を行った後に、口頭弁論終結の日である第14回口頭弁論期日(この期日に弁論を終結する予定であることは第13回口頭弁論期日において予告していた。)に近接して提出された被告の平成14年2月15日付け準備書面(17)において初めて主張された点で時機に後れたものといわざるを得ず、時機に後れたことにつき被告の合理的説明もない以上、少なくとも被告の重大な過失によるものと認められ、この点の審理を続行するとすれば、訴訟の完結を遅延させることは明らかであるから、民事訴訟法157条1項により、却下する。
4 第1特許権についての争点4(先使用による通常実施権) (1) 被告は、第1特許出願前から研究開発及び製造の準備を行っていたというイ”号装置を根拠として先使用による通常実施権があると主張する。
(2) 仮にイ”号装置の発明がイ”号物件目録記載のとおりであるとすれば、
イ”号装置が、検査位置算出手段において、検査プログラム生成手段によって生成され、記憶されている検査プログラムの部品装着情報と形状情報を用いて、部品の検査対象となる場所のレーザ掃引基準位置の算出と、算出されたレーザ掃引基準位置とレーザ掃引情報によるレーザ掃引とを交互に行うことにより、はんだブリッジの有無を検査するものである(イ”号物件目録のイ”号装置の全体構成欄)点で、
検査プログラムを生成し、これに基づいて検査位置算出手段においてレーザ掃引場所を算出し、この検査位置の算出と算出した検査位置に対するレーザの掃引とを交互に行うことにより部品実装基板上のはんだ付けの状態等を検査するイ’号+ロ’号システムと共通するところがないわけではない。
しかし、イ”号装置が、@部品位置データ入力手段がイ”号物件目録第2図のプログラミングユニットのジョイスティックを操作してXYステージを移動させ、レーザビームが検査すべき部品の所定の一点(部品基準位置)を照射する位置でスイッチ(SET)を操作して、その実装基板上に設定した座標系における座標(部品装着情報)を入力する(イ”号物件目録の第3)、A検査位置の算出に必要なパーツデータ選択手段としても、各部品の種類及びパーツbそれぞれ同目録第2図のプログラミングユニットのセレクトSW及びデジタルSWで入力する必要がある(同目録第5、第6)というものであるのに対し、イ’号+ロ’号システムは、@基板上に実装された各部品について、それぞれの部品を識別するためのユーザ部品コード及び部品装着情報を含むCADデータ記憶手段を有する(ロ’号物件目録のCADデータ記憶手段欄)、Aパーツデータの選択も、CAD展開処理手段において自動的になされる(同目録のCAD展開処理手段欄)という構成を備えるものである。すなわち、イ”号装置とイ’号+ロ’号システムとの間には、@部品装着情報を手動で入力する必要があるか、自動的に入力されるため、手動入力は不要であるか、Aパーツデータの選択も、手動で入力する必要があるか、自動的に入力されるため、手動入力は不要であるかという点で、大きく相違する。のみならず、この相違点は、係員の作業負担の軽減、登録作業の効率化及び登録ミスの発生防止という第1発明の作用効果の観点においても、顕著な相違をもたらすことは容易に推認することができる。
(3) したがって、イ”号装置に具現された発明には、イ’号+ロ’号システムの発明と同一性があるとはいえないから、イ”号装置の発明の完成時期や事業の準備時期及び被告の善意について判断するまでもなく、被告の主張する先使用による通常実施権は認めることができない。
5 第1特許権についての争点5(間接侵害又は教唆幇助) (1) 特許法101条1号にいう「のみ」とは、社会通念上、経済的、商業的又は実用的であると認められる他の用途がないことを要するところ、本件において、
被告は「他の用途」の有無につき何ら具体的な主張立証をしないばかりか、被告作成の被告製品カタログにおいても、アナライザーNLBA(ロ’号物件)は、はんだ付け外観検査装置のサポートシステムの一つであり(甲5)、「本装置(アナライザーNLBA)はレーザインスペクタを総合的にサポートするもの」(甲10)と位置付けられており、「他の用途」に関する言及は全くみられない。また、平成8年11月1日日刊工業新聞社発行の専門誌「表面実装技術」1996年11月号(甲14)において、CAD展開につき、被告自身が「現在ほとんどのユーザで利用されており、マニュアルティーチング作業はほとんどなくなったといえる。」というまでの認識を表明していた点も総合すれば、ロ’号物件につき、イ’号+ロ’号システムによる使用以外の「他の用途」があるとはいえないから、前記要件を満たし、ロ’号物件は第1発明に係る物の生産にのみ使用する物に当たるというべきである。同様に、ニ’号物件も、ロ’号物件目録又はハ’号物件目録に記載の「CAD展開ソフト」を記録した媒体である以上、前記要件を満たすというべきである。
(2) イ’号+ロ’号システム及びイ号+ロ号システムのユーザによる使用は第1特許権を侵害するものであるところ、イ’号物件とロ’号物件、イ号物件とロ号物件は、それぞれ極めて密接な相互依存関係にあり、イ’号物件及びイ号物件の一部が納入先(ユーザ)においてマニュアルティーチングのみで使用されているが、
その余はロ’号物件及びロ号物件と組み合わせたシステムとして使用されることを前提として製造販売されてきたものと認められ(甲14、弁論の全趣旨)、他に特段の反証もない本件においては、同システムの一部を構成するイ’号物件及びイ号物件の製造販売も、これを幇助(民法719条2項)するものであり、この点について被告に少なくとも過失があったことは明らかであるから、被告は、ロ’号物件及びロ号物件、ニ’号物件及びニ号物件のみならず、イ’号物件及びイ号物件の製造販売についても、不法行為に基づく損害賠償責任を負担するものと解するのが相当である。
(3) もっとも、被告は、個々の物件では特許権を侵害しない複数の物件が同時に販売される場合に限り、同特許権を侵害するという関係にある場合において、単体のみで販売するときは特許権を侵害しないという前提に立ち、本件では、レーザインスペクタ(イ’号物件及びイ号物件)が単体のみで販売された場合には、第1特許権の侵害とはならないから、アナライザー(ロ’号物件及びロ号物件)とは別に販売したレーザインスペクタ(イ’号物件及びイ号物件)については侵害とはならないと主張する。
しかし、原告も主張するとおり、アナライザー(ロ’号物件及びロ号物件)が1台であっても、そこで生成された検査プログラムをFDやLANを介して複数台のレーザインスペクタ(イ’号物件及びイ号物件)にインストールし、各レーザインスペクタの検査位置算出手段において検査プログラムを処理することで検査位置を生成することは可能かつ容易であり、被告作成のレーザーインスペクター取扱説明書(甲17)においても、システムの構成図には、パソコンがLANを介してサーバーに接続され、検査プログラムが当該パソコンのハードディスクのみならず、サーバーにも存することが図示されており(1-3頁)、ファイルモードの説明中にも、HD、FD、LI(本体の装置RAM)に保存されている検査プログラムを他にコピーする方法が詳細かつ具体的に説明されている(4-1頁〜4-7頁)。また、第1特許権についての争点6(原告の損害)に対する被告の認否としても、ユーザに販売したレーザインスペクタ(イ’号物件及びイ号物件)のうちマニュアルティーチングのみで使用するものについては、その台数を明記した上、これを損害算定の基礎数値から控除すべき旨を主張しながら、他の販売分については何らその使用形態を明らかにしていないのであるから、アナライザー(ロ’号物件及びロ号物件)の販売台数をもってレーザインスペクタ(イ’号物件及びイ号物件)の製造販売に関する被告の不法行為責任の範囲を画するのは相当でない。この点に関する被告の主張は採用することができない。
6 第1特許権についての争点6(原告の損害) (1) 第1特許権の出願公告日である平成7年12月20日から平成13年10月31日までの被告による各物件の販売額について、原告主張額を認めるに足りる証拠はなく、結局、被告の自認する次の限度(イ号物件及びイ’号物件については、マニュアルティーチングのみで使用されているものを除く。)で認められるにとどまる。
イ号物件及びイ’号物件 23億2582万円(143台) ロ号物件及びロ’号物件 8517万円(55台) ニ号物件及びニ’号物件 828万円(14個) (2) 第1特許権の実施料相当額を判断するに当たり、第1発明の寄与率について検討すると、原告はイ号物件及びイ’号物件並びにロ号物件及びロ’号物件についても100%であると主張するが、第1発明は実装基板検査位置生成装置に関するものであって、実装基板検査装置そのものではないから、原告の前記主張は直ちに採用することができない。この寄与率を算定するに当たっては、前記各物件の各機能がそれぞれ果たす役割や重要性を認定した上、これらに対し第1発明がいずれの機能について貢献しているかを検討する必要がある。
ア イ号物件及びイ’号物件には、大別して八つの機能があり、個々の機能の内容は次のとおりである。
イ号物件(甲17の1-9頁、4-1頁、5-1頁、6-1頁、7-1頁、8-1頁、9-1頁、10-1頁) FILE ファイルモードに入り、検査プログラムのファイルの管理などを行う(HD、FD、LI内の検査プログラムのコピー、印刷、削除及び名称の変更などのファイル操作を行う。)。
PARTS DATA パーツデータモードに入り、パーツデータの登録、修正を行う(パーツデータの作成、編集及び印刷などを行う。)。
TEACHING ティーチングモードに入り、検査プログラム作成や修正を行う(検査プログラムの作成、編集を行う。)。
INSPECTION 検査モードに入り、検査を行う(基板の検査のみならず、検査結果の表示、印刷、削除及びコピーなどを行う。)。
MAINTENANCE メンテナンスモードに入り、判定シート、感度シートの設定や手動運転を行う(装置内のガルバノ、カメラ、システム、判定シート、感度シートに関する基本的な設定や、クランクやシャッターなどの機械的な設定を行う。)。
SYSTEM システムモードに入り、装置のシステムを設定する(装置RAM内のメモリやシステムの設定、変更を行う。)。
UTILITY ユーティリティモードに入り、CADデータを取り込んだり、自動でブロックを設定する(CADデータを取り込む、ブロックを設定する、外部機器からデータを受信するなど知っておくと、便利な機能が登載されている。)。
EXIT 装置のソフトウェアを終了し、MS-DOSの画面にする。
イ’号物件(甲23の3〜5頁、1-1頁、2-1頁、3-1頁、4-1頁、7-1頁) パーツライブラリ 各部品種の検査に関するデータをストックしておくライブラリである。各部品種に関する寸法などのデータをあらかじめ入力してライブラリとして登録することで、ティーチング毎に部品のデータを入力する手間を省く(ここでは、ライブラリに登録する部品を作成する。ライブラリに基本となる部品のデータを登録しておくことによって、検査プログラム作成時に一からデータを作成しなくてすむ。)。
検査プログラム 検査プログラムを作り上げるモードである。検査プログラムを作成、修正する(検査プログラムの新規作成、既存のプログラムの修正を行うモードである。検査プログラム内のデータ加工等を行うモードも備えている。)。
基板検査 基板検査を行うモードである。NLB単体で検査を行う時に使用し、自動検査と手動検査がある(ティーチングを終了し、完成したプログラムを用いて基板を検査することを目的としたモードである。)。
ハイブリッド NLBとNLPとを接続して基板検査を行うモードである。自動検査と手動検査がある。NLB単体で検査を行う時とはNLB上で検査する内容が多少異なる(NLB単独ではなく、NLPと接続して基板を検査することを目的とした機能である。検査方法などの機能は、基板検査と同様である。)。
メンテナンス 装置のメンテナンスの調整時に使用するモードである。通常は使用しない。
システム 装置の環境設定を行うモードである。通常は使用しない。
データ変換 データ(パーツデータ・検査プログラム)の管理に関するモードである。パーツデータのバックアップ・リストア・パーツライブラリの変換・検査プログラムのコピー・削除を行う(HD、FD、LI内の検査プログラムのコピー、削除などのファイル操作を行う。)。
メカニカル 検査テーブル上のメカを手動で動作するモードである。
確かに、第1特許権を直接侵害するイ’号+ロ’号システム又はイ号+ロ号システムを念頭に置いた場合、ロ’号物件又はロ号物件は、被告作成の被告製品カタログ(甲5、8、9、11)上、イ’号物件又はイ号物件のオプションとして位置付けられており、この点に関する被告の主張も勘案すれば、ロ’号物件又はロ号物件と組み合わされることなく使用されるイ’号物件又はイ号物件も皆無ではないことが窺われる。しかし、イ’号物件及びイ号物件は、自動はんだ付外観検査装置であり、各物件目録の全体構成欄記載のとおり、検査プログラムに基づいて検査位置算出手段においてレーザ掃引場所を算出し、この検査位置の算出と算出した検査位置に対するレーザ掃引を交互に行うことによって部品実装基板上のはんだ付けの状態(はんだ付けの良否、はんだ、ブリッジの有無等)、部品の有無、ずれ等を検査するものであることからすれば、前記認定の各機能のうち本質的な機能は、
イ号物件につきINSPECTION、イ’号物件につき基板検査にあることは明らかである。そして、被告主張のように、基板検査の中に六つの機能(レーザ掃引機能、受光部数列化機能、基板搬送機能、基準点位置検出機能、検査位置算出機能及び結果出力機能)があるとしても、基準点位置の検出や検査位置の算出なくしてレーザ掃引を行うことは不可能であるから、前記機能の中でも基準点位置検出機能及び検査位置算出機能が基板検査の中心を担うものということができる。したがって、これらの枢要な機能に関係する第1発明の寄与は決して小さくないものというべきである。これに対し、被告は、機能数や全ソフトのステップ数で等分化した割合による寄与があるにとどまると主張する。しかし、既に判示したところのほか、被告作成のカタログにおいても、「検査プログラムは、CADデータ/マウントデータから自動生成できます。」(甲11)、「自動化を目指すお客さまには最適な検査装置です。」(甲8)など、第1発明の作用効果をイ’号物件及びイ号物件の宣伝文句として強調している点に照らしても、被告の前記主張は、主たる機能と従たる機能とを一律に同列に扱おうとするもので、採用することができない。
イ ロ号物件及びロ’号物件には、大別して次の四つの機能がある(甲10、44)。
シミュレータ機能 レーザインスペクタから出力される数列データをもとに、判定条件を変更させながら、検査機と同等の判定を行い、総合的にシミュレーションを行う。これにより、レーザインスペクタの量産基板の検査を中断することなく、検査プログラムの判定値の最適化を短時間で容易に行うことができる。
標準CAD機能 CADデータから検査機用の検査プログラムを作成する一連の処理をいう。
ユーティリティ機能 検査プログラムの編集機能(エディタ、パーツデータ、判定シート、自動ブロック設定、ブロックソート多数取り、基準点変更、基板ローテーション等)をいう。
集計機能 日別、週別、月別等の期間毎のNG集計表を作成する機能である。
ロ号物件及びロ’号物件の目的は、原告の主張するとおり、検査装置を補完し、検査を効率的に行うことにあり、そのための機能として検査プログラムの自動生成機能が存するのであるから、当該機能を担う標準CAD機能が最も重要な機能であり、その他の機能は標準CAD機能に対する補助的、追加的な機能にすぎない。すなわち、平成3年当時の文献(甲21)には、はんだ付け後の外観検査装置についてのユーザの導入契機として、目視の限界を理由に自動化せざるを得ない点を指摘するものがあり、これによれば、第1発明の作用効果に期待したことが前記導入の動機づけの一つになったとも推認されるところである。被告自身も、平成7年6月13日以降、CAD展開の取扱説明書(甲19、24)の発行を続け、平成8年1月1日発行の技術レター(甲16)において、標準CAD展開につき多くのスペースを割いてこれを大きく宣伝し、同年11月1日発行の専門誌(甲14)においては、「CAD展開」を検査装置の運用効率の向上のための手段の一つとして位置付けた上、現在ほとんどのユーザで利用されており、マニュアルでのティーチング作業はほとんどなくなったといえる、この時、使用されるパーツライブラリは、あらゆる部品の検査属性や判定条件を包含し、部品の多種多様化にも十分対応可能なものとなっているとして、その価値を高く評価している。このような点に鑑みると、ロ号物件又はロ’号物件についても、標準CAD機能に貢献する第1発明の寄与は極めて大きいものということができ、被告主張のように、機能数で等分化した割合による寄与にとどまるということはできない。実際の販売価格において、
仮に被告主張の価格差があるとしても、寄与率を算定する一事情として考慮し得るにすぎない。
ウ 以上の点を総合考慮した上、イ’号+ロ’号システム又はイ号+ロ号システムという組み合わせによる使用が一般的であることを加味すれば、イ’号物件、イ号物件、ロ’号物件及びロ号物件の各物件を通じて、第1発明の寄与率を70%と算定するのが相当である。なお、ニ’号物件及びニ号物件は、第1発明の本質的機能と一体不可分ともいうべき「CAD展開ソフト」を記録した媒体であるところ、この点に関する特段の主張立証のない本件においては、その寄与率は100%とするのが相当である。
(3) 弁論の全趣旨によれば、原告と被告とは、はんだ付け外観検査装置の分野において競合関係にあることが認められ、その他本件に顕れた諸般の事情を勘案すると、前記寄与率を乗じる基礎となる実施料率を3%と認定するのが相当である。
したがって、第1特許権侵害についての原告の損害は次のとおりとなる。
イ号物件及びイ’号物件 2,325,820,000×0.03×0.7=48,842,220 ロ号物件及びロ’号物件 85,170,000×0.03×0.7= 1,788,570 ニ号物件及びニ’号物件 8,280,000×0.03 = 248,400 合 計 48,842,220+1,788,570+248,400=50,879,190 7 第2特許権についての争点2(第2発明の構成要件H「検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータを記憶する第2の記憶手段」、I「識別情報とライブラリデータとを対応づけるための変換テーブルを記憶する第3の記憶手段」、J「ライブラリデータと前記実装方向および実装位置とを合成して前記実装部品検査用データを生成する合成手段」の充足性) 第2発明の構成要件Hにいう「検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータ」について、その具体的内容は、特許請求の範囲の記載上、一義的に明らかとはいえないから、第2明細書の他の記載も考慮して、これを検討する。
(1) 第2明細書によれば、第2発明は、被検査基板上の各実装部品につき実装状態の良否(実装品質)を検査するのに必要な検査用のデータを生成する方法及び装置に関するものである(第2公報3欄13行〜16行)。すなわち、このような実装品質の検査において、目視検査では、検査ミスの発生が避けられず、検査結果も検査する者によりまちまちであり、検査処理能力にも限界があった(同3欄19行〜21行)ことから、各実装部品の実装品質を画像処理技術を用いて自動的に検査する実装部品検査装置が実用化された。この実装部品検査装置を使用する場合、
検査に先立ち、検査対象である基板上のどの位置に、どのような部品が、どのように実装されるかにつき、基板の種別毎に実装部品検査装置に教示(ティーチング)する必要がある(同3欄22行〜27行)。しかし、これらの基板情報及び検査情報は、被検査基板の種類毎に部品の一つずつにつきオペレータが実装部品検査装置に手入力するため、多大の労力と時間とを要し、またティーチング作業中はその実装部品検査装置による検査ができないという問題があった(同4欄1行〜6行)。
そこで、第2発明は、実装部品検査装置を専有せずに効率的に実装部品検査用データを短時間で生成できる実装部品検査用データ生成方法及び装置を提供することを目的とし(同4欄7行〜10行)、課題を解決するための手段として、被検査基板上の各部品について、それぞれその部品種を識別するための識別情報、実装方向及び実装位置を、それぞれ外部より入力して記憶する第1の記憶手段と、複数の部品種について、それぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータを記憶する第2の記憶手段と、前記各部品種について、それぞれその部品種を識別するための識別情報とライブラリデータとを対応づけるための変換テーブルを記憶する第3の記憶手段と、前記第1の記憶手段に記憶される各部品の識別情報と前記第3の記憶手段に記憶される変換テーブルとを用いて、被検査基板上の各部品毎に、その部品種に該当するライブラリデータを前記第2の記憶手段から読み出した後、このライブラリデータと前記実装方向及び実装位置とを合成して前記実装部品検査用データを生成する合成手段とを備えたものである(同4欄26行〜42行)。第2発明によれば、手入力操作によらずコンピュータによる処理により効率的に実装部品検査用データを作成できる、実装部品検査用データを実装部品検査装置を専有せずに作成できる、実装部品検査用データの作成時にも、実装部品検査装置を本来の検査のために用いることが可能となる、実装部品検査用データの生成に撮像手段を有する高価なティーチング機が不用であり、しかも実装部品検査用データの生成が完全に手順化されるので、オペレータによる実装部品検査用データの質のばらつきを防止できるなどの作用効果がある(同5欄1行〜3行、9欄6行〜15行)。その実施例も、「検査領域数は、各部品について設定されるウィンドウの総数であって、例えば前記のチップ部品32の場合、図8に示すように、第1〜第3の各ウィンドウW1〜W3と、必要に応じて第4〜第9の各ウィンドウW4〜W9とが設定される。このうち第1、第2の各ウィンドウW1、W2ははんだ付け状態の良否を判別するためのもので、各ランド34、35の位置にランドの形状および大きさとほぼ一致させて設定される。第3ウィンドウW3は部品の欠落を判別するためのもので、チップ部品32の実装位置にその外形より小さな矩形状に設定される。第4〜第9の各ウィンドウW4〜W9はブリッジ検査のためのもので、各ランド34、35の周囲に隣接する部品の有無に応じて必要個数設定される。前記ウィンドウ内検査基準は、前記ウィンドウの設定個数に応じた数だけ存在し、」(第2公報7欄40行〜8欄4行)とあって、検査対象部位と検査基準とが直接対応したものが示されており、検査対象部位と検査基準との対応が間接的なものについてまで言及したものはみられない。
(2) このような第2発明の目的、課題を解決するための手段、作用効果、実施例のいずれの点からみても、第2発明の構成要件Hについて、検査対象部位と検査基準との対応が間接的であってもよい旨を説明し、又は示唆するような記載は窺われず、第2発明の特許請求の範囲の記載上、この点に関する特段の留保もないことに照らすと、第2発明は、同じ部品、同じ検査項目においても検査対象部位により検査基準が異なることを前提として、複数の部品種について、それぞれ検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータをあらかじめ第2の記憶手段に記憶する構成を採ったものと解される。そうすると、構成要件Hにいう「検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータを記憶する第2の記憶手段」とは、検査対象部位と検査基準とが他の項目を媒介することなく直接的に対応していることが必要であると解するのが相当である。
(3) これに対し、原告は、構成要件H「検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータ」とは、検査対象部位と検査基準とを直接対応づけたものに限られず、直接には検査基準と検査項目とを対応づけるものであっても、結果として検査対象部位と検査基準とを対応づけるものになっていれば足りると主張する。
しかし、既に判示したとおり、第2明細書の特許請求の範囲の記載はもとより、発明の詳細な説明の記載を精査しても、原告の主張を根拠づけるような記載部分は全く窺われない。実質的にも、第2発明は、実装部品検査用データ生成方法及びその方法の実施に用いられる実装部品検査装置である以上、検査対象部位と検査基準との間に、多かれ少なかれ何らかの関連性があることは当然のことであるから、間接的な対応づけであってもよいとする原告の前記主張を前提とすると、構成要件Hを特に設けた意義が没却されてしまうことになり、相当でない。
(4) ロ’号物件は、そのライブラリ記憶手段内において、各検査項目について、「部品の種類/パーツav毎に一つの検査基準(判定シート及び感度シート)を記憶するにすぎず、検査項目の分類とかかわりなく検査対象部位と検査基準とが直接的に対応しているものではない。したがって、ロ’号物件は構成要件Hを充足しない。なお、ロ’号物件において、「検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータ」を有しない以上、その余の点について判断するまでもなく、構成要件I「識別情報とライブラリデータとを対応づけるための変換テーブルを記憶する第3の記憶手段」及び構成要件J「ライブラリデータと前記実装方向および実装位置とを合成して前記実装部品検査用データを生成する合成手段」を充足しないことも明らかである。
(5) 以上の点は、ロ号物件、ハ号物件及びハ’号物件についても同様に妥当するから、その余の点について判断するまでもなく、ロ’号物件及びロ号物件について第2特許権の直接侵害間接侵害又はユーザによる直接侵害行為の教唆幇助並びにニ’号物件及び及びニ号物件について第2特許権の間接侵害又はユーザによる直接侵害行為の教唆幇助は、いずれも成立しない。
結論
以上によれば、原告の請求は、上記の限度で理由がある(主文第1項ないし第3項につき、仮執行宣言は相当でないから付さない。)。
追加
イ号物件目録(ウィンドウズ化前)(商品名)自動はんだ付外観検査装置「レーザインスペクタNLBシリーズ」(図面の説明)第1図全体構成を示すブロック図。
第2図初期CAD展開用データ(中間ファイル)の一部を示す。
第3A図パーツデータ・ファイルの一部を示す。
第3B図検査基準ファイル(良否判定基準ファイル)を示す。
第4図ユーザ部品コード対照テーブルを示す。
第5図検査プログラム(検査用データ)(DATAnファイルとLVDTnファイルから構成される。)を示す。
第6図初期CAD展開処理を示すフローチャート。
第7図SOTのフィレット検査を行う場合の検査位置算出方法説明図。
(全体構成)イ号物件は、部品の実装位置等を手入力処理によるほか、後記の初期CAD展開処理により検査プログラム(検査用データ)を生成する機能を有しており、生成した検査プログラムに基づいて検査位置算出手段においてレーザ掃引場所を算出し、この検査位置の算出と算出した検査位置に対するレーザの掃引を交互に行うことによって部品実装基板上のはんだ付けの状態(はんだ付けの良否、はんだ、ブリッジの有無等)、部品の有無、ずれ等を検査するものである。
イ号物件は、第1図に示すように、初期CAD展開処理手段11、初期CAD展開用データ記憶手段12、ライブラリ記憶手段13及びユーザ部品コード対照テーブル記憶手段14を含む。
初期CAD展開処理手段11は初期CAD展開プログラム(「初期CAD展開ソフト」という。)に従って検査プログラムを生成するものであり、初期CAD展開ソフト16が組み込まれたコンピュータである。
初期CAD展開用データ記憶手段12、ライブラリ記憶手段13及びユーザ部品コード対照テーブル記憶手段14はコンピュータに備えられたハードディスク又は他の記憶装置である。
この初期CAD展開用データは、CADデータ(又はマウンタデータ)とは異なり、CADデータ(又はマウンタデータ)から抽出したデータを、検査装置内の初期CAD展開処理手段11によって処理することができる独自のフォーマットに、
ユーザによって変換された「中間ファイル」であって、フロッピィディスク(FD)又は通信回線を介して検査装置に入力されるものである。
これらの各手段11、12、13、14の詳細については後述する。
イ号物件において、部品実装基板の実装品質の検査は概略次のようにして行われる。
部品31を実装した基板30はXYステージ22上に載置され、所定位置に位置決めされる。
半導体レーザ23から出射するレーザ・ビームは集光光学系(図示略)により集光されながら、ガルバノメータ24を経て基板30上の検査箇所(レーザ掃引場所)(たとえば、はんだのフィレット)に照射される。ガルバノメータ24はレーザ・ビームを、検査すべき方形領域内でX方向及びY方向に掃引する。
受光部25は一定方向に配列された多数の受光セル26を含む。検査箇所に照射されたレーザ・ビームは、はんだ面の傾斜角に応じた方向に反射され、反射方向に存在する受光セル26によって受光される。レーザ・ビームはX又はY方向に掃引されるので、反射ビームを受光するセル26も次々と変わっていく。受光セル26に一定順序で番号を付けておく。レーザ・ビームの掃引に伴って反射ビームを受光したセル26を表わす番号の列(「数列」という。)が得られる。この数列は、はんだ形状を表現している。
検査プログラムの構成を第5図に示す。検査プログラムは部品の属性等を管理する「DATAn」ファイルと、良否判定基準値を管理する「LVDTn」ファイルとから構成される。
DATAnファイルは基板名等を含むヘッダ部(図示略)と、部品実装基板上の個々の部品ごとのデータとを含む。個々の部品ごとのデータは検査の順序に対応しており、これには後記の「部品の種類/パーツav、「部品装着情報」、「形状情報」、「レーザ掃引情報、(判定シート)、感度シートav等が含まれる。
「レーザ掃引情報、(判定シート)及び感度シートavは検査項目(検査の種類)ごとに設けられる。
LVDTnファイルには、部品実装基板上のすべての部品に対して「部品の種類/パーツavごとに、検査に用いる判定シートが各検査項目について設けられている。
判定シートは、前述した数列によって表現されるはんだ形状の良否を判定するための検査基準である判定値を記述したものである。
LVDTnファイルにはまた感度シート・テーブルが含まれている。感度シートは、反射レーザ・ビームを受光する受光セル26から出力される信号を二値化するための(反射レーザ・ビーム有り、無しを表わすデータを得るための)しきい値を記述したものである。複数の感度シートが番号(感度シート)により特定される。
制御装置(CPU)21は検査プログラムに従って部品実装基板上の各部品の実装品質検査の実行を制御するものであり、検査位置算出手段27を含む。制御装置21の検査位置算出手段27は、部品実装基板上の個々の部品ごとに、DATAnファイルに記述された部品装着情報、形状情報、レーザ掃引情報等に基づいてレーザ・ビームを掃引すべき場所(レーザ掃引場所)を一時的に算出する。制御装置21は算出されたレーザ掃引場所に基づいてXYステージ22及びガルバノメータ24を制御する。制御装置21はまた、受光部25からの受光信号に基づいて数列を作成する際に、
DATAnファイルに記述された感度シートbノ対応する感度シートをLVDTnファイルから読み出して用いる。また、部品の種類/パーツbナ対応づけられる個々の部品に対する判定シートを各検査項目についてLVDTnファイルから読み出し、作成した数列を、読み出した判定シートに基づいて評価し、はんだ付けの状態を判定する。
(初期CAD展開用データ記憶手段)初期CAD展開用データ記憶手段12は初期CAD展開用データ(CADデータ又はマウンタデータを初期CAD展開処理手段用にユーザがフォーマットするもの。中間ファイルといわれる。)を外部から入力して記憶するものである。
初期CAD展開用データは基板上における部品の配置等を設計するとき用いるCAD(COMPUTERAIDEDDESIGN)から得られるデータに基づいてユーザによって変換作成されたものであって、基板上に実装された各部品について、それぞれの部品を識別するための「識別情報(ユーザ部品コード)」及び「部品装着情報」を含んでいる。
初期CAD展開用データの実例の一部を第2図に示す。「部品装着情報」はX座標、Y座標、角度等を含む。「X座標」及び「Y座標」は基板上に設定された座標原点を基準にして、部品の中心のX座標及びY座標を表わすもので、基板上における部品の実装(装着)位置を示す。「角度」は部品の基板上における実装方向(取付角度)を表わす。「ユーザ部品コード」はユーザが自社内での部品購買管理や部品実装装置(例えばマウンタ)のために汎用的に使用することを目的として決定した識別符号であり、いわばユーザ系における部品コードである。
(ライブラリ記憶手段)ライブラリ記憶手段13は、ライブラリを構成するパーツデータ・ファイル13A及び検査基準ファイル(良否判定基準ファイル)13Bを記憶するものである。
パーツデータ・ファイル13Aは、第3A図に示すように、部品の種類とパーツbフ組(「部品の種類/パーツavという。)ごとに、部品の外形、リード、パッド等に関するデータ(「形状情報」という。)、レーザ掃引情報、(判定シート)及び感度シートb保有する。
パーツデータ・ファイル13Aにおける部品の種類/パーツbイとのレーザ掃引情報、(判定シート)及び感度シートbヘ検査項目ごとに設けられる。
「部品の種類」はCHIP、SOT、SOP等で代表される部品種別を示す。
「パーツavは、リードを含む部品の形状と寸法、色等の外形的特徴及びその部品を実装するパッドの形状と寸法等により付けられた部品種別における部品の識別番号である。
したがって、「部品の種類/パーツavは、部品やパッドに関する情報に応じて付けられる識別符号で、イ号物件内においてパッドの形状を含んだ部品を特定する。すなわち、パッドの形状や寸法が異なれば同一の部品でも異なる「部品の種類/パーツavが付けられる。
パーツデータの例をSOTについて示すと、次のようになっている。なお、部品データとパッドデータが前述の形状情報である。
部品データ(部品の種類、パーツaAリード方向、リードピッチ(1次側、
2次側)、部品の外形長さ、部品の外形幅、部品の外形高さ、リード長さ(1次側、2次側)、リード幅(1次側、2次側)、リード間ピッチ(1次側、2次側))パッドデータ(パッド間最大長さ、パッド長さ(1次側、2次側)、パッド幅(1次側、2次側))フィレット検査(パッド間最大長さ、掃引ピッチ(シングル、クロス、1次側、
2次側)、掃引ストローク(1次側、2次側)、掃引回数(1次側、2次側)、リード位置(1次側、2次側)、掃引タイプ(シングル、クロス)、判定シートaA
感度シート)パーツデータ・ファイル13Aに含まれる「レーザ掃引情報」は、検査位置算出手段27において、ガルバノメータ24によるレーザ掃引場所を算出するために必要なデータである。
検査基準ファイル13Bは、良否判定基準値を管理するもので、第3B図に示すように判定シート・テーブルと感度シート・テーブルを含む。
判定シート・テーブルは、部品の種類/パーツbイとに、各検査項目について用いられる判定シートを記憶する。判定シートは部品の種類/パーツbイとに設けられているから、パーツデータ・ファイル13A中の(判定シート)は実際には使用されない。
感度シート・テーブルは感度シートbノ対応して感度シートを記憶する。
(ユーザ部品コード対照テーブル記憶手段)ユーザ部品コード対照テーブル記憶手段14はユーザ部品コード対照テーブルを記憶するものであり、その実例の一部を第4図に示す。
ユーザ部品コード対照テーブルは、初期CAD展開用データ(第2図)で用いられるユーザ系の「ユーザ部品コード」を、ライブラリ記憶手段13(パーツデータ・ファイル13A及び検査基準ファイル13B)(第3A図、第3B図)で用いられる「部品の種類/パーツavと対応づけるための変換テーブルである。
なお、このユーザ部品コード対照テーブルは、実装回路基板の集積度等を考慮して設計されたパッド余裕度等に応じて設定されるものである。
(初期CAD展開処理手段)初期CAD展開処理手段11は初期CAD展開用データを用いて初期CAD展開ソフト16に従ってイ号物件用の検査プログラムを自動的に作成する一連の処理を実行するものである。
第6図に示すように、まず、イ号物件のフォーマットに従った形式に変換された初期CAD展開用データがイ号物件に入力され、初期CAD展開用データ記憶手段12に記憶される。
続いて、初期CAD展開用データ(第2図)中のユーザ部品コードが、ユーザ部品コード対照テーブル記憶手段14に記憶されたユーザ部品コード対照テーブル(第4図)を参照して部品の種類/パーツbノ変換される。
部品の種類/パーツbキーにして、ライブラリ記憶手段13に記憶されたパーツデータ・ファイル13A(第3A図)から部品の種類/パーツbイとに、形状情報並びに各検査項目のレーザ掃引情報、(判定シート)及び感度シートbェ読み出される。初期CAD展開用データ中の個々の部品について、部品装着情報と、パーツデータ・ファイル13Aから読み出された形状情報並びに各検査項目についてのレーザ掃引情報、(判定シート)及び感度シートbェ合成され、DATAnファイル(第5図)が作成される。
また、部品の種類/パーツbキーにして検査基準ファイル13B(第3B図)内の判定シート・テーブルから、部品の種類/パーツbイとに各検査項目を対応づけた判定シートが読み出され、LVDTnファイル(第5図)が作成される。LVDTnファイルには検査基準ファイル13B内の感度シートテーブルも格納される。
(検査位置算出手段)検査位置算出手段27において、部品実装基板上の個々の部品ごとに、DATAnファイルに記述された部品装着情報、形状情報、レーザ掃引情報等に基づいてレーザ・ビームを掃引すべき場所(レーザ掃引場所)を算出する。
レーザ・ビームを掃引すべき場所を算出する方法の一例を、SOTのフィレット検査を行う場合について第7図を用いて説明する。
第7図に示すように、「レーザ掃引開始位置Aの座標」を(Xa、Ya)とし、基板原点に対する部品の座標」を(x、y)とし、「レーザ掃引開始位置を求める長さ」をL1とし、「リードピッチ」をL2とすると、
基板の原点に対するレーザ掃引開始位置A(X、Y)は、
Xa=x+L2/2Ya=y+L1/2として算出される。
なお、第7図において、@は掃引開始位置を求めるための長さL1であって、
部品をはさんで対向するパッド間の最大長さとレーザの掃引誤差αμmを加えたものであり、AはリードピッチL2であり、Bは掃引ストローク(シングル)であって、掃引ピッチ×掃引回数である。
第1〜7図ロ号物件目録(ウィンドウズ化前)(商品名)「アナライザーNLBA」(図面の説明)第1図全体構成を示すブロック図。
第2図中間ファイルの一部を示す。
第3A図パーツデータ・ファイルの一部を示す。
第3B図検査基準ファイル(良否判定基準ファイル)を示す。
第4図ユーザ部品コード対照テーブルを示す。
第5図検査プログラム(検査用データ)(DATAnファイルとLVDTnファイルから構成される)を示す。
第6図CAD展開処理を示すフローチャート。
(全体構成)ロ号物件は、CADデータ(又はマウンタデータ)から、レーザインスペクタNLBシリーズ(イ号物件)で用いる検査プログラム(検査用データ)を生成する機能をもつ。この機能を達成するためのロ号物件の全体構成を第1図に示す。
ロ号物件は、CAD展開処理手段41、CADデータ記憶手段42、ライブラリ記憶手段43及びユーザ部品コード対照テーブル記憶手段44を含む。
CAD展開処理手段41はCAD展開プログラム(「CAD展開ソフト」という)に従って検査プログラムを生成するものであり、CAD展開ソフト46が組み込まれたコンピュータである。
CADデータ記憶手段42、ライブラリ記憶手段43、及びユーザ部品コード対照テーブル記憶手段44はコンピュータに備えられたハードディスク又は他の記憶装置である。
CAD展開処理手段41によって生成される検査プログラムの構成を第5図に示す。検査プログラムは部品の属性等を管理する「DATAn」ファイルと、良否判定基準値を管理する「LVDTn」ファイルとから構成されている。
DATAnファイルは基板名等を含むヘッダ部(図示略)と、部品実装基板上の個々の部品ごとのデータとを含む。個々の部品ごとのデータは検査の順序に対応しており、これには後記の「部品の種類/パーツav、「部品装着情報」、「形状情報」、「レーザ掃引情報、(判定シート)、感度シートav等が含まれる。
「レーザ掃引情報、(判定シート)及び感度シートavは検査項目(検査の種類)ごとに設けられる。
LVDTnファイルには、部品実装基板上のすべての部品に対して、「部品の種類/パーツavごとに、検査に用いる判定シートが各検査項目について設けられている。
判定シートは、はんだ形状の良否を判定するための検査基準である判定値を記述したものである。
LVDTnファイルにはまた感度シート・テーブルが含まれている。感度シートは、受光信号を二値化するためのしきい値を記述したものである。複数の感度シートが番号(感度シート)により特定される。
(CADデータ記憶手段)CADデータ記憶手段42はCADデータを外部から入力して記憶するものである。
CADデータは基板上における部品の配置等を設計するとき用いるCAD(COMPUTERAIDEDDESIGN)から得られるデータであって、基板上に実装された各部品について、それぞれの部品を識別するためのユーザ部品コード及び「部品装着情報」を含んでいる。
第2図は、CADデータから必要なデータを抽出し、ロ号物件用にフォーマット変換された状態のデータ(中間ファイル)の一部を示すが、この「中間ファイル」はロ号物件におけるデータ処理の過程で一時的に生成されるものであり、ユーザが作成してイ号物件に入力する「初期CAD展開用データ」とは異なるものである。「部品装着情報」はX座標、Y座標、角度等を含む。「X座標」及び「Y座標」は基板上に設定された座標原点を基準にして、部品の中心のX座標及びY座標を表わすもので、基板上における部品の実装(装着)位置を示す。「ユーザ部品コード」はユーザが自社内での部品購買管理や部品実装装置(例えばマウンタ)のために汎用的に使用することを目的として決定した識別符号であり、いわばユーザ系における部品コードである。
(ライブラリ記憶手段)ライブラリ記憶手段43は、ライブラリを構成するパーツデータ・ファイル43A及び検査基準ファイル(良否判定基準ファイル)43Bを記憶するものである。
パーツデータ・ファイル43Aは、第3A図に示すように、部品の種類とパーツbフ組(「部品の種類/パーツavという。)ごとに、部品の外形、リード、パッド等に関するデータ(「形状情報」という。)、レーザ掃引情報、(判定シート)及び感度シートb保有する。
パーツデータ・ファイル43Aにおける部品の種類/パーツbイとのレーザ掃引情報、(判定シート)、及び感度シートbヘ検査項目ごとに設けられる。
「部品の種類」はCHIP、SOT、SOP等で代表される部品種別を示す。
「パーツavは、リードを含む部品の形状と寸法、色等の外形的特徴及びその部品を実装するパッドの形状と寸法等により付けられた部品種別における部品の識別番号である。したがって、「部品の種類/パーツavは、部品やパッドに関するデータに応じて付けられる識別符号で、ロ号物件内においてパッドを含めた部品を特定する。すなわち、パッドの形状や寸法が異なれば同一の部品でも異なる「部品の種類/パーツavが付けられる。
パーツデータの例をSOTについて示すと、次のようになっている。なお、部品データとパッドデータが前述の形状情報である。
部品データ(部品の種類、パーツaAリード方向、リードピッチ(1次側、
2次側)、部品の外形長さ、部品の外形幅、部品の外形高さ、リード長さ(1次側、2次側)、リード幅(1次側、2次側)、リード間ピッチ(1次側、2次側))パッドデータ(パッド間最大長さ、パッド長さ(1次側、2次側)、パッド幅(1次側、2次側))フィレット検査(パッド間最大長さ、掃引ピッチ(シングル、クロス、1次側、
2次側)、掃引ストローク(1次側、2次側)、掃引回数(1次側、2次側)、リード位置(1次側、2次側)、掃引タイプ(シングル、クロス)、判定シートaA
感度シート)パーツデータ・ファイル43Aに含まれる「レーザ掃引情報」は、部品実装基板におけるレーザ掃引場所を算出するために必要なデータであるが、ロ号物件では、
レーザ掃引場所の算出は行わない。
検査基準ファイル43Bは、良否判定基準値を管理するもので、第3B図に示すように判定シート・テーブルと感度シート・テーブルを含む。
判定シート・テーブルは、部品の種類/パーツbイとに、各検査項目について用いられる判定シートを記憶する。判定シートは部品の種類/パーツbイとに設けられているから、パーツデータ・ファイル43A中の(判定シート)は実際には使用されない。
感度シート・テーブルは感度シートbノ対応して感度シートを記憶する。
(ユーザ部品コード対照テーブル記憶手段)ユーザ部品コード対照テーブル記憶手段44はユーザ部品コード対照テーブルを記憶するものであり、その実例の一部を第4図に示す。
ユーザ部品コード対照テーブルは、CADデータ(第2図)で用いられるユーザ系の「ユーザ部品コード」を、ライブラリ記憶手段43(パーツデータ・ファイル43A及び検査基準ファイル43B)(第3A図、第3B図)で用いられる「部品の種類/パーツavと対応づけるための変換テーブルである。
なお、このユーザ部品コード対照テーブルは、実装回路基板の集積度等を考慮して設計されたパッドの余裕度等に応じて設定されるものである。
(CAD展開処理手段)CAD展開処理手段41はCADデータを用いてCAD展開ソフト46に従って検査プログラムを自動的に作成する一連の処理を実行するものである。
第6図に示すように、まずCADデータがロ号物件に入力される。CADデータはロ号物件のフォーマットに従った形式に変換され(中間ファイルの生成)、CADデータ記憶手段42に記憶される。
続いて、中間ファイル(第2図)中のユーザ部品コードが、ユーザ部品コード対照テーブル記憶手段44に記憶されたユーザ部品コード対照テーブル(第4図)を参照して部品の種類/パーツbノ変換される。
部品の種類/パーツbキーにして、ライブラリ記憶手段43に記憶されたパーツデータ・ファイル43A(第3A図)から部品の種類/パーツbイとに、形状情報並びに各検査項目のレーザ掃引情報、(判定シート)及び感度シートbェ読み出される。中間ファイル中の個々の部品について、中間ファイルの部品装着情報と、
パーツデータ・ファイル43Aから読み出された形状情報並びに各検査項目についてのレーザ掃引情報、(判定シート)及び感度シートbェ合成され、DATAnファイル(第5図)が作成される。
また、部品の種類/パーツbキーにして検査基準ファイル43B(第3B図)内の判定シート・テーブルから、部品の種類/パーツbイとに各検査項目を対応づけた判定シートが読み出され、LVDTnファイル(第5図)が作成される。LVDTnファイルには検査基準ファイル43B内の感度シートテーブルも格納される。
第1〜6図ハ号物件目録(ウィンドウズ化前)汎用コンピュータにCAD展開プログラム(「CAD展開ソフト」という。)をインストールして、ロ号物件目録に記載の構造をもつに至ったコンピュータ。
ニ号物件目録(ウィンドウズ化前)ロ号物件目録又はハ号物件目録に記載の「CAD展開ソフト」を記録した媒体。
イ’号物件目録(ウィンドウズ化後)(商品名)自動はんだ付外観検査装置「レーザインスペクタNLBシリーズ」(図面の説明)第1図全体構成を示すブロック図。
第2図検査プログラム(検査用データ)(DATAnファイルとLVDTnファイルから構成される。)を示す。
(全体構成)イ’号物件は外部から与えられた検査プログラムに基づいて検査位置算出手段においてレーザ掃引場所を算出し、この検査位置の算出と算出した検査位置に対するレーザ掃引を交互に行うことによって部品実装基板上のはんだ付けの状態(はんだ付けの良否、はんだ、ブリッジの有無等)、部品の有無、ずれ等を検査するものである。
イ’号物件において、部品実装基板の実装品質の検査は概略次のようにして行われる。
第1図を参照して、部品31を実装した基板30はXYステージ22上に載置され、
所定位置に位置決めされる。
半導体レーザ23から出射するレーザ・ビームは集光光学系(図示略)により集光されながら、ガルバノメータ24を経て基板30上の検査箇所(レーザ掃引場所)(たとえば、はんだのフィレット)に照射される。ガルバノメータ24はレーザ・ビームを、検査すべき方形領域内でX方向及びY方向に掃引する。
受光部25は一定方向に配列された多数の受光セル26を含む。検査箇所に照射されたレーザ・ビームは、はんだ面の傾斜角に応じた方向に反射され、反射方向に存在する受光セル26によって受光される。レーザ・ビームはX又はY方向に掃引されるので、反射ビームを受光するセル26も次々と変わっていく。受光セル26に一定順序で番号を付けておく。レーザ・ビームの掃引に伴って反射ビームを受光したセル26を表わす番号の列(「数列」という。)が得られる。この数列は、はんだ形状を表現している。
イ’号物件に外部から入力される検査プログラムの構成を第2図に示す。検査プログラムは部品の属性等を管理する「DATAn」ファイルと、良否判定基準値を管理する「LVDTn」ファイルとから構成される。
DATAnファイルは基板名等を含むヘッダ部(図示略)と、部品実装基板上の個々の部品ごとのデータとを含む。個々の部品ごとのデータは検査の順序に対応しており、これには「部品の種類/パーツav、「部品装着情報」、「形状情報」、「レーザ掃引情報」等が含まれる。「レーザ掃引情報」は検査項目(検査の種類)ごとに設けられる。
LVDTnファイルは、部品実装基板上のすべての部品に対して「部品の種類/パーツavごとに、検査に用いる判定シート及び感度シートが各検査項目について設けられている。
判定シートは、前述した数列によって表現されるはんだ形状の良否を判定するための検査基準である判定値を記述したものである。
感度シートは、反射レーザ・ビームを受光する受光セル26から出力される信号を二値化するための(反射レーザ・ビーム有り、無しを表わすデータを得るための)しきい値を記述したものである。
制御装置(CPU)21は外部から入力される検査プログラムに従って部品実装基板上の各部品の実装品質検査の実行を制御するものであり、検査位置算出手段27を含む。制御装置21の検査位置算出手段27は、部品実装基板上の個々の部品ごとに、DATAnファイルに記述された部品装着情報、形状情報、レーザ掃引情報等に基づいてレーザ・ビームを掃引すべき場所(レーザ掃引場所)を一時的に算出する。制御装置21は算出されたレーザ掃引場所に基づいてXYステージ22及びガルバノメータ24を制御する。制御装置21はまた、受光部25からの受光信号に基づいて数列を作成する際に、部品の種類/パーツbナ対応づけられる個々の部品に対する感度シートを各検査項目についてLVDTnファイルから読み出して用いる。また、
部品の種類/パーツbナ対応づけられる個々の部品に対する判定シートを各検査項目についてLVDTnファイルから読み出し、作成した数列を、読み出した判定シートに基づいて評価し、はんだ付けの状態を判定する。
第1、2図ロ’号物件目録(ウィンドウズ化後)(商品名)「アナライザーNLBA」(図面の説明)第1図全体構成を示すブロック図。
第2図中間ファイルの一部を示す。
第3A図パーツデータ・ファイルの一部を示す第3B図検査基準ファイル(良否判定基準ファイル)を示す。
第4図ユーザ部品コード対照テーブルを示す。
第5図検査プログラム(検査用データ)(DATAnファイルとLVDTnファイルから構成される。)を示す。
第6図CAD展開処理を示すフローチャート。
(全体構成)ロ’号物件は、CADデータ(又はマウンタデータ)から、レーザインスペクタNLBシリーズ(イ’号物件)で用いる検査プログラム(検査用データ)を生成する機能をもつ。この機能を達成するためのロ’号物件の全体構成を第1図に示す。
ロ’号物件は、CAD展開処理手段61、CADデータ記憶手段62、ライブラリ記憶手段63及びユーザ部品コード対照テーブル記憶手段64を含む。
CAD展開処理手段61はCAD展開プログラム(「CAD展開ソフト」という。)に従って検査プログラムを生成するものであり、CAD展開ソフト66が組み込まれたコンピュータである。
CADデータ記憶手段62、ライブラリ記憶手段63及びユーザ部品コード対照テーブル記憶手段64はコンピュータに備えられたハードディスク又は他の記憶装置である。
CAD展開処理手段61によって生成される検査プログラムの構成を第5図に示す。検査プログラムは部品の属性等を管理する「DATAn」ファイルと、良否判定基準値を管理する「LVDTn」ファイルとから構成されている。
DATAnファイルは基板名等を含むヘッダ部(図示略)と、部品実装基板上の個々の部品ごとのデータとを含む。個々の部品ごとのデータは検査の順序に対応しており、これには後記の「部品の種類/パーツav、「部品装着情報」、「形状情報」、「レーザ掃引情報」等が含まれる。「レーザ掃引情報」は検査項目(検査の種類)ごとに設けられる。
LVDTnファイルには、部品実装基板上のすべての部品に対して、「部品の種類/パーツavごとに、検査に用いる判定シート及び感度シートが各検査項目について設けられている。
判定シートは、はんだ形状の良否を判定するための検査基準である判定値を記述したものである。
LVDTnファイルにはまた感度シート・テーブルが含まれている。感度シートは、受光信号を二値化するためのしきい値を記述したものである。
(CADデータ記憶手段)CADデータ記憶手段62はCADデータを外部から入力して記憶するものである。
CADデータは基板上における部品の配置等を設計するとき用いるCAD(COMPUTERAIDEDDESIGN)から得られるデータであって、基板上に実装された各部品について、それぞれの部品を識別するためのユーザ部品コード及び「部品装着情報」を含んでいる。
第2図は、CADデータから必要なデータを抽出し、ロ’号物件用にフォーマット変換された状態のデータ(中間ファイル)の一部を示すが、この「中間ファイル」はロ’号物件におけるデータ処理の過程で一時的に生成されるものである。
「部品装着情報」はX座標、Y座標、角度等を含む。「X座標」及び「Y座標」は基板上に設定された座標原点を基準にして、部品の中心のX座標及びY座標を表わすもので、基板上における部品の実装(装着)位置を示す。「ユーザ部品コード」はユーザが自社内での部品購買管理や部品実装装置(例えばマウンタ)のために汎用的に使用することを目的として決定した識別符号であり、いわばユーザ系における部品コードである。
(ライブラリ記憶手段)ライブラリ記憶手段63は、ライブラリを構成するパーツデータ・ファイル63A及び検査基準ファイル(良否判定基準ファイル)63Bを記憶するものである。
パーツデータ・ファイル63Aは、第3A図に示すように、部品の種類とパーツbフ組(「部品の種類/パーツavという。)ごとに、部品の外形、リード、パッド等に関するデータ(「形状情報」という。)及びレーザ掃引情報を保有する。
パーツデータ・ファイル63Aにおける部品の種類/パーツbイとのレーザ掃引情報は検査項目ごとに設けられる。
「部品の種類」はCHIP、SOT、SOP等で代表される部品種別を示す。
「パーツavは、リードを含む部品の形状と寸法、色等の外形的特徴及びその部品を実装するパッドの形状と寸法等により付けられた部品種別における部品の識別番号である。したがって、「部品の種類/パーツavは、部品やパッドに関するデータに応じて付けられる識別符号で、ロ’号物件内においてパッドを含めた部品を特定する。すなわち、パッドの形状や寸法が異なれば同一の部品でも異なる「部品の種類/パーツavが付けられる。
パーツデータの例をSOTについて示すと、次のようになっている。なお、部品データとパッドデータが前述の形状情報である。
部品データ(部品の種類、パーツaAリード方向、リードピッチ(1次側、
2次側)、部品の外形長さ、部品の外形幅、部品の外形高さ、リード長さ(1次側、2次側)、リード幅(1次側、2次側)、リード間ピッチ(1次側、2次側))パッドデータ(パッド間最大長さ、パッド長さ(1次側、2次側)、パッド幅(1次側、2次側))フィレット検査(パッド間最大長さ、掃引ピッチ(シングル、クロス、1次側、
2次側)、掃引ストローク(1次側、2次側)、掃引回数(1次側、2次側)、リード位置(1次側、2次側)、掃引タイプ(シングル、クロス)パーツデータ・ファイル63Aに含まれる「レーザ掃引情報」は、部品実装基板におけるレーザ掃引場所を算出するために必要なデータであるが、ロ’号物件では、レーザ掃引場所の算出は行わない。
検査基準ファイル63Bは、良否判定基準値を管理するもので、第3B図に示すように判定シート・テーブルと感度シート・テーブルを含む。
これらのシート・テーブルは、部品の種類/パーツbイとに、各検査項目について用いられる判定シート及び感度シートをそれぞれ記憶する。
(ユーザ部品コード対照テーブル記憶手段)ユーザ部品コード対照テーブル記憶手段64はユーザ部品コード対照テーブルを記憶するものであり、その実例の一部を第4図に示す。
ユーザ部品コード対照テーブルは、CADデータ(第2図)で用いられるユーザ系の「ユーザ部品コード」を、ライブラリ記憶手段63(パーツデータ・ファイル63A及び検査基準ファイル63B)(第3A図、第3B図)で用いられる「部品の種類/パーツavと対応づけるための変換テーブルである。
なお、このユーザ部品コード対照テーブルは、実装回路基板の集積度等を考慮して設計されたパッドの余裕度等に応じて設定されるものである。
(CAD展開処理手段)CAD展開処理手段61はCADデータを用いてCAD展開ソフト66に従って検査プログラムを自動的に作成する一連の処理を実行するものである。
第6図に示すように、まずCADデータがロ’号物件に入力される。CADデータはロ’号物件のフォーマットに従った形式に変換され(中間ファイルの生成)、CADデータ記憶手段62に記憶される。
続いて、中間ファイル(第2図)中のユーザ部品コードが、ユーザ部品コード対照テーブル記憶手段64に記憶されたユーザ部品コード対照テーブル(第4図)を参照して部品の種類/パーツbノ変換される。
部品の種類/パーツbキーにして、ライブラリ記憶手段63に記憶されたパーツデータ・ファイル63A(第3A図)から部品の種類/パーツbイとに、形状情報並びに各検査項目のレーザ掃引情報が読み出される。中間ファイル中の個々の部品について、中間ファイルの部品装着情報と、パーツデータ・ファイル63Aから読み出された形状情報並びに各検査項目についてのレーザ掃引情報が合成され、DATAnファイル(第5図)が作成される。
また、部品の種類/パーツbキーにして検査基準ファイル63B(第3B図)内の判定シート・テーブル及び感度シート・テーブルから、部品の種類/パーツbイとに各検査項目を対応づけた判定シート及び感度シートが読み出され、LVDTnファイル(第5図)が作成される。
第1〜6図ハ’号物件目録(ウィンドウズ化後)汎用コンピュータにCAD展開プログラム(「CAD展開ソフト」という。)をインストールして、ロ’号物件目録に記載の構造をもつに至ったコンピュータ。
ニ’号物件目録(ウィンドウズ化後)ロ’号物件目録又はハ’号物件目録に記載の「CAD展開ソフト」を記録した媒体。
イ”号物件目録(本件第1特許出願前から製造準備)第1〜6図
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 中平健
裁判官 田中秀幸