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関連審決 無効2002-35272
異議2002-71139
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成14ワ10511特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成14ワ6035特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成13ワ15276特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成14ワ2473損害賠償等請求事件 判例 特許
平成16ワ20636特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 技術的思想 /  使用方法 /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  公知技術 /  技術的範囲 /  出願公開 /  技術常識 /  優先権 /  警告 /  権利の濫用(権利濫用) /  特許出願日 /  対象製品 /  出願経過 /  均等 /  均等論 /  置き換え /  置換 /  同一の作用効果 /  容易に想到(容易想到性) /  意識的除外(意識的に除外) /  特許発明 /  実施 /  加工 /  交換 /  間接侵害 /  構成要件 /  方法の使用 /  のみ用いる /  業として /  差止請求(差止) /  侵害 /  逸失利益 /  不法行為(民法709条) /  拒絶理由通知 /  新規事項追加(新規事項の追加) /  請求の範囲 /  減縮 /  拡張 /  変更 /  釈明 /  異議申立 / 
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事件 平成 14年 (ワ) 5107号 特許権侵害差止等請求事件
原告 オムロン株式会社
訴訟代理人弁護士 中島敏
補佐人弁理士 世良和信
同 和久田 純一
同 遠山勉
同 松倉秀実
被告 株式会社アイ・エム・エス
訴訟代理人弁護士 木下貴司
同 杉本俊明
同 國政直子
同 高木浩二
同 野口政幹
補佐人弁理士 梁瀬右司
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2003/12/25
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨 (1) 被告は、別紙イ号物件目録記載の物件を製造し、販売し、又はその販売の申出をしてはならない。
(2) 被告は、別紙ロ号物件目録記載の物件を製造し、販売し、又はその販売の申出をしてはならない。
(3) 被告は、その占有に係る別紙イ号物件目録記載の物件及び別紙ロ号物件目録記載の物件並びにこれらの半製品を廃棄せよ。
(4) 被告は、原告に対し、金1億8400万円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(5) 訴訟費用は被告の負担とする。
(6) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁 主文同旨
当事者の主張
1 請求原因 (1) 当事者 原告は、制御機器、健康機器、遊戯用機械、コンピュータソフトウェア等の製造及び販売を業とする株式会社である。
被告は、遊戯用機械の製造及び販売を業とする株式会社である。
(2) 特許権 ア 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」という。)を有する。
特許番号 第3226520号 発明の名称 写真シール自動販売方法および写真シール自動販売機 出願年月日 平成12年7月17日 出願番号 2000-215513 優先権主張 国 名 日本国 出願年月日 2000年(平成12年)3月21日 登録年月日 平成13年8月31日 イ 本件特許権の特許出願の願書に添付された明細書(以下、本件特許権の特許査定時の明細書を「本件明細書」といい、その特許公報(甲第2号証、別紙1)を「本件公報」という。)の特許請求の範囲の請求項1、請求項2の記載は次のとおりである(以下、本件明細書の請求項1記載の特許発明を「本件方法発明」、請求項2記載の特許発明を「本件装置発明」といい、本件方法発明と本件装置発明を包括して「本件特許発明」という。)。
【請求項1】投入貨幣を処理する貨幣処理手段と、撮像や画像編集その他必要な操作を入力する入力手段と、被写体を連続して照明する連続照明手段と、
プリント画像の撮像に同期して被写体をストロボ発光して照明するストロボ照明手段と、被写体を撮像するカメラと、撮像画像や編集画像その他必要事項を表示する表示手段と、撮像画像や編集画像の写真シールをプリントして放出するプリンタと、これら構成要素を制御する制御手段とを備え、前記カメラの左右位置に前記ストロボ照明手段と連続照明手段との夫々を並設した状態で配置し、前記貨幣処理手段への貨幣投入に基づいてプレイ操作を許容し、カメラの左右に配置した連続照明手段の照光によって前記表示手段に撮像ポーズを表示すると共に撮像ポーズの確認を可能とし、連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像した後、前記表示手段に撮像画像を表示し、撮像後前記表示手段に表示された画像に画像編集を許容し、画像確定後プリンタで写真シールをプリントして放出する写真シール自動販売方法。
【請求項2】投入貨幣を処理する貨幣処理手段と、撮像や画像編集その他必要な操作を入力する入力手段と、被写体を連続して照明する連続照明手段と、
プリント画像の撮像に同期して被写体をストロボ発光して照明するストロボ照明手段と、被写体を撮像するカメラと、撮像画像や画像編集(請求項1と同様に「編集画像」とすべきところ、「画像編集」とされた誤記であると認められる。)その他必要事項を表示する表示手段と、撮像画像や編集画像の写真シールをプリントして放出するプリンタと、これら構成要素を制御する制御手段とを備え、前記カメラの左右位置に前記ストロボ照明手段と連続照明手段との夫々を並設した状態で配置し、前記貨幣処理手段への貨幣投入に基づいてプレイ操作を許容し、カメラの左右に配置した連続照明手段の照光によって前記表示手段に撮像ポーズを表示すると共に撮像ポーズの確認を可能とし、連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像した後、前記表示手段に撮像画像を表示し、撮像後前記表示手段に表示された画像に画像編集を許容し、画像確定後プリンタで写真シールをプリントして放出すべく前記制御手段を設定した写真シール自動販売機。
(3) 構成要件 ア 本件装置発明 本件装置発明を構成要件に分説すると、次のとおりである(以下、本件装置発明の構成要件は、A1ないしO1の各符号によって特定する。) A1 投入貨幣を処理する貨幣処理手段と、
B1 撮像や画像編集その他必要な操作を入力する入力手段と、
C1 被写体を連続して照明する連続照明手段と、
D1 プリント画像の撮像に同期して被写体をストロボ発光して照明するストロボ照明手段と、
E1 被写体を撮像するカメラと、
F1 撮像画像や編集画像その他必要事項を表示する表示手段と、
G1 撮像画像や編集画像の写真シールをプリントして放出するプリンタと、
H1 これら構成要素を制御する制御手段とを備え、
I1 前記カメラの左右位置に前記ストロボ照明手段と連続照明手段との夫々を並設した状態で配置し、
J1 前記貨幣処理手段への貨幣投入に基づいてプレイ操作を許容し、
K1 カメラの左右に配置した連続照明手段の照光によって前記表示手段に撮像ポーズを表示すると共に撮像ポーズの確認を可能とし、
L1 連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像した後、前記表示手段に撮像画像を表示し、
M1 撮像後前記表示手段に表示された画像に画像編集を許容し、
N1 画像確定後プリンタで写真シールをプリントして放出すべく前記制御手段を設定した O1 写真シール自動販売機 イ 本件方法発明 本件方法発明を構成要件に分説すると、次のとおりである(以下、本件方法発明の構成要件は、A1ないしO1′の各符号によって特定する。) A1ないしM1 本件装置発明のA1ないしM1と同じ。
N1′画像確定後プリンタで写真シールをプリントして放出する O1′写真シール自動販売方法 (4) 出願経過 ア 原告は、平成12年7月17日、本件特許を出願した(以下、平成12年7月17日出願の願書に添付された明細書、図面(乙第1号証)を「出願当初明細書」という。)。
イ 原告は、平成13年3月6日提出の手続補正書(乙第2号証)によって明細書全文を補正した(以下「平成13年3月6日付補正」という。)。
ウ 特許庁審査官は、原告に対し、平成13年5月14日起案の拒絶理由通知書(乙第4号証)によって拒絶理由を通知した。
エ 原告は、平成13年7月13日提出の手続補正書(乙第3号証)によって明細書全文を補正し(以下「平成13年7月13日付補正」という。)、それとともに意見書(乙第5号証。以下「平成13年7月13日付意見書」という。)を提出した。
オ 平成13年7月31日、本件公報(別紙1)のとおりの明細書(本件明細書)により、特許査定がされた。
(5) 被告の行為 ア 被告は、平成13年11月から、商品名を「ぱれっと」とする写真シール自動販売機(以下「被告装置」という。)及び商品名を「ペーパーシートセット」とする写真シール用紙セット(以下「被告用紙セット」という。)を製造し、
大阪、京都、東京、広島を始めとする全国200以上のアミューズメントセンター等の店舗に販売し、又は販売の申出をしている。
被告装置は、写真シールの自動販売方法(以下「被告方法」という。)に使用されるものであり、被告用紙セットは、被告装置に使用される写真シールの用紙セットである。
イ(ア) 被告装置の構成は別紙イ号物件目録記載のとおりである。
被告装置のフラッシュ照明部2-1の光量に対して、同2-2の光量はその50ないし71%であるが、同2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、
2-8の光量はその18ないし25%で、同2-1の光量の6分の1から4分の1であるにすぎないから、同2-1、2-2と同2-3、2-4、2-5、2-6、
2-7、2-8の間には、歴然とした光量の差異があり、同2-1、2-2が「主フラッシュ照明部」、同2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8が「補助フラッシュ照明部」に該当することは明らかである。
最適な画像の提供という目的のためにフラッシュ照明部を配置することは、本件特許発明においても被告製品においても同一であり、最適な画像の提供という目的は、被告装置において主フラッシュ照明部2-1、2-2の配置によって既に実現しており、光量が主フラッシュ部の6分の1ないし4分の1にすぎない補助フラッシュ部の付加によって被告装置特有の効果が実現するものではない。
(イ) 被告用紙セットの構成は別紙ロ号物件目録記載のとおりである。
(6) 被告装置、被告方法の構成 ア 被告装置 被告装置の構成を分説すると、次のとおりである(構成中の番号は、別紙イ号物件目録記載の番号である。別紙イ号物件目録記載の番号は、枝番号をすべて含む場合は、枝番号を省略することがある。以下、被告装置の構成は、aないしoの各符号によって特定する。)。
a 被告装置は、本体16の下部には、貨幣処理部9を備え、
b 本体16の正面には、カメラユニット1を備え、撮影を準備するシャッターボタン4と、メインモニタ5にデジタルカメラ14で取り込んだ画像を表示し、これにスタンプ(絵柄)やフレーム(写真枠)等を加工し、落書き等をするタッチペン8-1、8-2を有し、
c 本体16の両端上下4か所、及びカーテン部17の天井中央には、利用者の安全を確保し、作成される写真シールの明るさを連想させて、利用者をできるだけ多く誘引するとともに、撮像ポーズの確認に充分な照明を提供するための蛍光灯照明部3-1、3-2、3-3、3-4、3-5を備え、写真シール自動販売機内部を連続的に照光し、
d カメラユニット1の左右位置には、被写体の撮像と同期して閃光を発し被写体を照明するフラッシュランプを内蔵した主フラッシュ照明部2-1、2-2を有し、カメラユニット1の下部、本体16の中央下部、カーテン部17の背面上下4角には主フラッシュ照明部の約6分の1ないし4分の1の光量の補助フラッシュ照明部2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8を有し、
e プレイヤを撮像するデジタルカメラ14と、
f カメラユニット1にカメラモニタ15、本体16の中央部に撮像画像や編集画像を表示するメインモニタ5、その両隣にサブモニタ7-1、7-2を各備え、
g プレー完了後の撮像画像や編集画像を印刷して放出するプリンタ26を本体16の内部に設置し、
h メインPC25-2のプログラムによりカメラユニット1、メインモニタ5、サブモニタ7-1、7-2、UPS36を制御し、入出力接続装置34を経由してフラッシュ照明部2、蛍光灯照明部3、標準レンズ選択ボタン31、広角レンズ選択ボタン32、シャッターボタシ4、LED点滅部38、貨幣処理部9、
コインカウンタ、プリントカウンタ等を制御し、サブPC25-1のプログラムによりプリンタ26、サブモニタ7-1、7-2、PHS37を制御し、
i カメラユニット1が位置する順光側には、縦長の主フラッシュ照明部2-1、2-2がカメラユニット1の左右に備えられ、また縦長の蛍光灯照明部3-1、3-2が主フラッシュ照明部2-1、2-2の外側に備えられ、
j 貨幣処理部9ヘコインを投入することによりゲームをスタートさせ、
k カメラの左右両側に備えられた縦長の蛍光灯照明部3-1、3-2がプレイヤをカメラ側から順光照明し、プレイヤをカメラモニタ15とメインモニタ5に表示し、
l プレイヤがシャッターボタン4を押してから約6.5秒後に、フラッシュ照明部2を閃光させてデジタルカメラ14でプレイヤを撮像する。蛍光灯照明部3-1、3-2は連続的にプレイヤを照明し、プレイヤがシャッターボタン4を押した後も引き続きカウント1までの間(約5.2秒間)点灯を続けるが、フラッシュ照明部2に比べて光量が圧倒的に微量であるため撮影時の照明としては用をなさないので、カウント1(撮像の約1.3秒前)で蛍光灯照明部3-1、3-2は消灯し、撮像約4秒後に再点灯する。メインモニタ5には撮像した写真すべてを表示する。
m デジタルカメラ14で撮影した画像をメインモニタ5に表示し、タッチペン8-1、8-2で画像に落書き等をする。また、両隣のサブモニタ7-1、
7-2には、落書きに必要なアイテムの選択画面やゲームに必要な説明アニメーション等が表示される。
n 本体16の内部に設置されたプリンタ26はプレー完了後の画像を印刷し、側面に備えたシール排出ロ20よりプリンタ26で印刷されたシールが排出され、サブPC25-1のプログラムによりプリンタ26を制御している o 写真シール自動販売機 イ 被告方法 被告方法の構成を分説すると、次のとおりである(構成中の番号は、別紙イ号物件目録記載の番号である。以下、被告方法の構成は、aないしo′の各符号によって特定する。)。
aないしm 被告装置の構成aないしmと同じ。
n′本体16の内部に設置されたプリンタ26はプレー完了後の画像を印刷し、側面に備えたシール排出ロ20よりプリンタ26で印刷されたシールが排出される o′写真シール自動販売方法 (7) 対比 ア 被告装置及び被告方法に共通する構成aないしmと本件装置発明及び本件方法発明に共通する構成要件A1ないしM1との対比 (ア) 構成aは構成要件A1を充足する。
(イ) 構成bは構成要件B1を充足する。
(ウ) 構成cは構成要件C1を充足する。
(エ) 構成dは構成要件D1を充足する。
(オ) 構成eは構成要件E1を充足する。
(カ) 構成fは構成要件F1を充足する。
(キ) 構成gは構成要件G1を充足する。
(ク) 構成hは構成要件H1を充足する。
(ケ) 構成iは構成要件I1を充足する。
(コ) 構成jは構成要件J1を充足する。
(サ) 構成kは構成要件K1を充足する。
(シ) 構成lは構成要件L1を充足する。
被告装置及び被告方法において、蛍光灯照明部3-1、3-2は、撮像の約1.3秒前に消灯する。しかし、撮像に当たっては、構成kに示すとおり「カメラの左右両側に備えられた縦長の蛍光灯照明部3-1、3-2がプレイヤをカメラ側から順光照明し、プレイヤをカメラモニタ15とメインモニタ5に表示し」ており、プレイヤがシャッターボタン4を押した後も、引き続きカウント1までの間(約5.2秒間)蛍光灯照明部3-1、3-2はプレイヤを照明し続けているから、プレイヤは、カメラモニタ15とメインモニタ5の表示で撮像ポーズを確認しながらシャッター4を押すだけでなく、かつその後も引き続き撮像ポーズを修正することができ、蛍光灯照明部3-1、3-2が消灯するのは、撮像のポーズの確認を行った後のことである。しかも、蛍光灯照明部3-1、3-2がフラッシュ照明部に比べて光量が圧倒的に微量であるため撮像時に照明として用をなさないことは、技術常識に属する。したがって、構成lは、構成要件L1の「連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像し」という要件を充足する。
(ス) 構成mは構成要件M1を充足する。
イ 被告装置の構成n、oと本件装置発明の構成要件N1、O1との対比 (ア) 構成nは構成要件N1を充足する。
(イ) 構成oは構成要件O1を充足する。
ウ 被告方法の構成n′、o′と本件方法発明の構成要件N1′、O1′との対比 (ア) 被告方法の構成n′は構成要件N1′を充足する。
(イ) 被告方法の構成o′は構成要件O1′を充足する。
(8) 均等構成要件L1と構成l 構成要件L1の「連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像した後」という文言を、撮像時の照明手段として連続照明手段及びストロボ照明手段の両方を必要とする意味であると解した場合、構成lは、連続照明手段である蛍光灯照明部3-1、3-2が撮像時に消灯し、撮像時の照明手段として連続照明手段を欠くことになるから、この点で構成要件L1と相違する。しかし、
構成要件L1の、撮像時の照明手段として連続照明手段及びストロボ照明手段の両方を必要とするという構成を、構成lの、連続照明手段である蛍光灯照明部3-1、
3-2が撮像時に消灯し、撮像時の照明手段として連続照明手段を欠くという構成に置換することにつき、最高裁判所第三小法廷平成10年2月24日判決・民集52巻1号113頁の判示する均等成立の要件に照らして、次のイ(ア)ないし(オ)記載のとおり均等が成立し、被告装置は本件装置発明と均等なものとしてその技術的範囲に属する。
イ 各要件 (ア) 第1要件 (a) 均等の第1要件の特許発明の本質的部分とは、特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分をいう。
(b) 本件装置発明においては、撮像ポーズの確認は連続照明手段による照明の下で表示手段に鮮明な画像を表示させて行い、カメラによる被写体の撮像はストロボ照明手段による照明の下で行うところ、本件明細書の本件装置発明の解決課題及び作用効果に関する記載によれば、本件装置発明の技術思想は、連続照明手段とストロボ照明手段をカメラの左右位置にそれぞれ並設し、両照明手段の照明方向を、撮像領域の中央に向くほぼ同一の角度に設定し、カメラによる撮像時に生じる陰を撮像ポーズ確認時にあらかじめ正確に予想することにより、複数人を撮影する時における陰の重なりの問題を有効に解決しようとするものである。そうであるから、本件装置発明の本質的部分は、この技術思想の中核を直接実現するための解決手段、すなわち、「前記カメラの左右位置に前記ストロボ照明手段と連続照明手段との夫々を並設した状態で配置し」(構成要件I1)、「カメラの左右に配置した連続照明手段の照光によって前記表示手段に撮像ポーズを表示すると共に撮像ポーズの確認を可能とし」(構成要件K1)たことにある。
(c) 被告装置は、少なくとも、構成要件I1、K1に相当する構成i、kを備えているから、本件装置発明の本質的部分を備えている。
他方、構成要件L1のうち撮像時の照明手段としてストロボ照明手段とともに連続照明手段による照明を必要とする点は、本件装置発明の本質的部分に該当するものではなく、被告装置の構成lは、このような本件装置発明の非本質的部分において、本件装置発明の構成要件L1と異なるにすぎないから、被告装置は、
均等の第1要件を充足する。
(イ) 第2要件 被告装置は、構成i、k及びlにおいて、カメラの左右位置にフラッシュ照明部と蛍光灯照明部とのそれぞれを並設した状態で配置し、カメラの左右に配置した蛍光灯照明部の照光によってモニタに撮像ポーズを表示するとともに、撮像ポーズの確認を可能とし、フラッシュ照明部で被写体を照光してカメラで撮像した後、モニタに撮像画像を表示する手段を採用している。
被告装置は、このような構成を採用し、カメラの左右の位置に、フラッシュ照明部と蛍光灯照明部をそれぞれ並設した状態で配置したので、被写体であるプレイヤ(利用者)が撮像ポーズをいろいろと思案している間中、蛍光灯照明部の左右方向からの照明による十分な光量によって表示手段に鮮明な画像を表示することができる。また、撮像時にはフラッシュ照明部で照射して撮像し、写真シールをプリントアウトして販売するので、出来上がった写真シールは充分な光量で鮮明な画像が得られ、品質の良好な写真シールを提供することができる。さらに、蛍光灯照明部による左右方向からの照明によって撮像ポーズを決めている時、腕や指を突き出すピース等利用者の様々なポーズで生じる陰の方向と位置を表示手段を見てあらかじめ確認できるので、陰から顔や撮像したい部分を外しておけば、全員が満足する撮像ポーズのイメージと略一致した写真シールを提供することができる。このような被告装置の作用効果は、本件明細書の段落【0019】ないし【0021】に記載された本件装置発明の作用効果と同一である。
したがって、被告装置は、均等の第2要件を充足する。
(ウ) 第3要件 被告装置について、カメラ撮像時に蛍光灯照明部を消灯させるように設計変更することは、単に蛍光灯照明部のスイッチをOFFに設定するだけで達成することができ、このようなスイッチ操作を必要に応じてすることは、技術常識であり、被告装置の製造時に当業者が容易に想到することができた。
被告は、原告から本件特許権侵害について平成13年11月28日付警告書の送付を受けた後、わずか数週間の短期間内にカメラ撮像時に蛍光灯照明部を消灯させるように設計変更を行い、被告装置を市場に導入したから、このことからも、このような設計変更について当業者が容易に想到することができたことが裏付けられる。
したがって、被告装置は、均等の第3要件を充足する。
(エ) 第4要件 被告装置の構成i、kは、本件装置発明の本質的部分を構成する構成要件I1、K1と一致しており、これらの構成要件を含む本件装置発明が新規かつ独創的なものとして特許されているから、これらの構成要件と同一の構成i、kを含む被告装置もまた新規かつ独創的なものである。
したがって、被告装置は、均等の第4要件を充足する。
(オ) 第5要件 被告装置が本件装置発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないから、被告装置は、均等の第5要件を充足する。
(9) 改悪実施、迂回技術 ア 構成要件L1を、撮像時の照明手段として連続照明手段及びストロボ照明手段の両方を必要とする意味であると解し、構成lは、撮像時の照明手段として連続照明手段を欠くことから、構成要件L1を文言上充足しないとした場合でも、次のイ、ウ記載のとおり改悪実施又は迂回技術の理論の適用により、被告装置は本件装置発明の技術的範囲に属する。
イ 改悪実施 被告装置は、(@)本件装置発明と同一の技術的思想に基づきながら、本件装置発明の構成要件のうち比較的重要度の低いものを省略、置換しており、(A)本件装置発明に基づいてこのような省略、置換をすることは当業者にとって容易であり、(B)このような省略、置換により他に格別の効果をもたらさず、かえって本件装置発明よりも効果の劣ることが明白であり、したがって技術的完全を期す限りそのような省略をするはずがなく、結局、本件装置発明の特許請求の範囲を回避するためにあえて技術的に劣る手段を採ったと推認されてもやむを得ず、(C)そのような改悪によってもなおかつ本件装置発明の目的とする特別の作用効果を奏し得ている。したがって、被告装置のように本件装置発明を改悪実施したものも、均等論の特別形式として、又は均等論類似の公平の観点から、本件装置発明の技術的範囲に属するものと評価すべきである。
ウ 迂回技術 被告装置は、本件装置発明と技術思想、作用効果を同じくしながら、本件装置発明の侵害を回避するため、技術的な意味のない不必要な変更を加え、いたずらに迂回の技術を採っているのみであり、(@)そのような迂回の技術がその出現の時点で当業者にとって本件装置発明から容易に想到することができ、(A)そのような迂回の技術が本件装置発明の構成要件に無用の変更を加え、全体として技術的価値を低下させることが、当業者に明白である。したがって、被告装置のような本件装置発明の迂回技術は、均等論の特別形式として、又は均等論類似の公平の観点から、本件装置発明の技術的範囲に属するものと評価すべきである。
(10) 技術的範囲の属否 ア したがって、被告装置は本件装置発明の技術的範囲に属する。
イ 被告方法は本件方法発明の技術的範囲に属する。
(11) 特許権侵害の態様 ア 直接侵害 被告装置は本件装置発明の技術的範囲に属するから、被告装置の製造、
販売、販売の申出をする行為は、本件装置発明の直接侵害に該当する。
間接侵害 (ア) 被告装置 (a) 被告装置は、被告方法の使用のみ用いる物に該当する。
(b) したがって、被告装置の製造、販売、販売の申出をする行為は、本件方法発明についての間接侵害(特許法101条3号)に該当する。
(イ) 被告用紙セット (a) 被告用紙セットは、被告装置に使用する「純正部品」であり、被告装置に使用する以外には経済的、商業的用途を有しないから、被告装置の生産にのみ用いる物に該当し、また、被告方法の使用のみ用いる物に該当する。
(b) したがって、被告用紙セットの製造、販売、販売の申出をする行為は、本件装置発明及び本件方法発明についての間接侵害(特許法101条1号、3号)に該当する。
ウ 共同不法行為 (ア) 被告は、被告装置をアミューズメントセンター等の店舗に販売し、
これらの店舗では、業として被告装置及び被告方法を使用している。
(イ) 被告は、被告装置を販売することにより、これらの店舗における被告方法の使用を教唆又は幇助しているから、被告は、これらの店舗における被告方法の使用について共同不法行為者としての責任(民法719条2項)を負う。
(12) 損害 ア(ア) 被告の平成13年11月から平成14年4月末日までの被告装置の売上げは4億2000万円を下らず、被告用紙セットの売上げは2億円を下らない。
(イ) 被告装置、被告用紙セットの限界利益率は、被告装置については20パーセント、被告用紙セットについては50パーセントを下らない。
(ウ) したがって、被告が平成13年11月から平成14年4月末日までに被告装置について得た利益は8400万円(4億2000万円×0.2=8400万円)を下らず、被告用紙セットについて得た利益は1億円(2億円×0.5=1億円)を下らず、それらの合計は1億8400万円を下らない。
イ 被告の得た利益の額である1億8400万円(前記ア(ウ))は、原告が受けた損害の額と推定される(特許法102条2項)。
ウ 被告が被告装置をアミューズメントセンター等の店舗に販売し、これらの店舗における被告方法の使用を教唆又は幇助したことにより、原告は、被告が被告用紙セットの販売によって得た利益である1億円に相当する逸失利益の損害を被った(原告は、前記イの損害相当額1億8400万円又は逸失利益相当額1億円を請求する。)。
(13) 結論 よって、原告は被告に対し、次のとおり請求する。
ア 本件特許権に基づき、被告装置及び被告用紙セットの製造、販売、及び販売の申出の差止めを求める。
イ 本件特許権に基づき、被告の占有に係る被告装置及び被告用紙セット並びにそれらの半製品の廃棄を求める。
ウ 本件特許権に基づき、損害賠償として1億8400万円及びこれに対する不法行為の後である平成14年6月6日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否 (1) 請求原因(1)(当事者)の事実は認める。
(2) 請求原因(2)(特許権)ア、イは認める。
(3) 請求原因(3)(構成要件)ア(本件装置発明)、イ(本件方法発明)は認める。
(4) 請求原因(4)(出願経過)アないしオの事実は認める。
(5)ア 請求原因(5)(被告の行為)アの事実のうち、被告が被告装置を平成13年11月から平成14年1月まで製造し、全国のアミューズメントセンター等の店舗に販売し、その販売の申出をしていたこと、平成13年11月から被告用紙セット(ただし、被告用紙セットは、後記イ(イ)(a)記載のとおり、「シール用紙セット」であり、「写真シール用紙セット」ではない。)を製造し、全国のアミューズメントセンター等の店舗に販売し、その販売の申出をしていること、被告装置は被告方法に使用されるものであり、被告用紙セットは被告装置に使用される用紙セットであることは認め、その余は否認する。
イ(ア) 請求原因(5)イ(ア)の被告装置の構成について、別紙イ号物件目録に対する認否は、次のとおりである。
(a) 「1図面の説明」について 認める。
(b) 「2符号の説明」について 2-1、2-2が「主フラッシュ照明部」であること、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8が「補助フラッシュ照明部」であることは否認し、その余は認める。
被告装置においては、フラッシュ照明部全体で被写体を照光し、適切な明るさで撮像できるようになっており、最適な画像の提供という目的にとってフラッシュ照明部に主従の区別はないから、2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8は、いずれも「フラッシュ照明部」とすべきである。
(c) 「3構造の説明」について @ (1)は認める。
A (2)のうち「補助フラッシュ照明部2-3」という部分は否認し、
その余は認める。前記(b)記載のとおり、被告装置においてフラッシュ照明部について主従の区別はないから、「補助フラッシュ照明部2-3」という部分は「フラッシュ照明部2-3」とすべきである。
B (3)の「フラッシュランプを内蔵した主及び補助フラッシュ照明部2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8がそれぞれ備えられ」という部分のうち「主及び補助フラッシュ照明部」、「2-3」という部分は否認する。前記(b)記載のとおり、被告装置においてフラッシュ照明部について主従の区別はないから、「主及び補助フラッシュ照明部」は「フラッシュ照明部」とすべきであり、また、フラッシュ照明部2-3は、他のフラッシュ照明部に比べて光量が低いから、前記部分からは削除し、他のフラッシュ照明部と別に記載すべきである。
(3)の「このうちカメラユニット1が位置する順光側には強い光量の主フラッシュ照明部2-1、2-2がカメラユニット1の左右に備えられ、補助フラッシュ照明部2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8がカメラユニット1の下部、本体16の中央下部及びカーテン部の背面上下4角に位置しているが、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8の光量はいずれも弱く、2-1、2-2の6分の1ないし4分の1の光量である。」という部分は否認する。
前記(b)記載のとおり、被告装置においてフラッシュ照明部について主従の区別はないから、この部分は削除されるべきである。
(3)の「フラッシュ照明部2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8が閃光を発し撮影する。」という部分は否認する。フラッシュ照明部2-3は、他のフラッシュ照明部に比べて光量が低いことから、他のフラッシュ照明部とは区別して記載すべきであり、「カメラユニット1の中央下部のフラッシュ照明部2-3(他のフラッシュ照明部に比べて発光量が弱い)とともに、フラッシュ照明部2-1、2-2、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8が閃光を発し撮影する。」とすべきである。
(3)のうち、上記の否認する部分以外は認める。
C (4)の「カメラユニット1が位置する順光側には、縦長の蛍光灯照明部3-1、3-2が主フラッシュ照明部2-1、2-2の左右外側に備えられている。蛍光灯照明部3-1、3-2は、主フラッシュ照明部2-1、2-2と照明方向が同じであって、プレイヤをカメラ側から順光照明するので、出来上がる写真シールのイメージを撮像前にプレイヤが把握することができる。蛍光灯照明部3-1、3-2はプレイヤを連続的に照明し、プレイヤがシャッターボタン4を押した後も引き続きカウント1までの間(約5秒間)点灯を続けるが」という部分のうち、縦長の蛍光灯照明部3-1、3-2が2-1、2-2の左右外側に備えられていること、蛍光灯照明部3-1、3-2は、主フラッシュ照明部2-1、2-2と照明方向が同じであること、出来上がる写真シールのイメージを撮像前にプレイヤが把握することができること、蛍光灯照明部3-1、3-2がプレイヤを連続的に照明し、プレイヤがシャッターボタン4を押した後も引き続きカウント1までの間(約5秒間)点灯を続けることは認めるが、その余は否認する。前記(b)記載のとおり、被告装置においてフラッシュ照明部について主従の区別はなく、全体で撮像に最適な照光を提供するように設計してあるから、順光、逆光という観念も生じる余地がない。前記部分は、「カメラユニット1の左右には、縦長の蛍光灯照明部3-1、3-2がフラッシュ照明部2-1、2-2の左右外側に備えられている。蛍光灯照明部3-1、3-2は、フラッシュ照明部2-1、2-2と照明方向が同じであって、蛍光灯照明部3-3、3-4、3-5とともに撮像ポーズの確認に十分な光量を提供するので、出来上がる写真シールのイメージを撮像前にプレイヤが把握することができる。蛍光灯照明部3-1、3-2は、蛍光灯照明部3-3、3-4、3-5とともにプレイヤを連続的に照明し、このうち蛍光灯照明部3-1、3-2は、プレイヤがシャッターボタン4を押した後も引き続きカウント1までの間(約5秒間)点灯を続けるが」とすべきである。
(4)のうち、上記の否認する部分以外は、認める。
D (5)ないし(7)は認める。
E (8)のうち「補助フラッシュ照明部2-5、2-6、2-7、2-8」という部分は否認し、その余は認める。前記(b)記載のとおり、被告装置においてフラッシュ照明部について主従の区別はないから、「補助フラッシュ照明部2-5、2-6、2-7、2-8」という部分は、「フラッシュ照明部2-5、2-6、2-7、2-8」とすべきである。
F (9)は認める。
G (10)のうち、「主及び補助フラッシュ照明部2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8」という部分は否認し、その余は認める。前記(b)記載のとおり、被告装置においてフラッシュ照明部について主従の区別はないから、「主及び補助フラッシュ照明部2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8」という部分は、「フラッシュ照明部2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8」とすべきである。
H (11)のうち、「主及び補助フラッシュ照明部2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8」という部分は否認し、その余は認める。前記(b)記載のとおり、被告装置においてフラッシュ照明部について主従の区別はないから、「主及び補助フラッシュ照明部2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8」という部分は、「フラッシュ照明部2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8」とすべきである。
I (12)ないし(14)は認める。
(d) 「4『ぱれっと』処理フローチャート説明(動作の説明)」について @ @(電源投入)は認める。
A A(初期処理)のうち、「主及び補助フラッシュ照明部」という部分は否認し、その余は認める。前記(b)記載のとおり、被告装置においてフラッシュ照明部について主従の区別はないから、「主及び補助フラッシュ照明部」という部分は、「フラッシュ照明部」とすべきである。
B B(デモムービー再生)、C(コイン受付)は認める。
C D(撮影処理)のうち、「主及び補助フラッシュ照明部2-1、
2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8」という部分は否認する。前記(b)記載のとおり、被告装置においてフラッシュ照明部について主従の区別はないから、「主及び補助フラッシュ照明部2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8」という部分は、「フラッシュ照明部2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8」とすべきである。
「また、カウントダウン開始時には、利用者がカメラレンズに視線を合わせやすくするために、カメラレンズ横のLED点滅部38を点滅させる。」という部分と「撮影完了の約4秒後に再度、正面左右上蛍光灯3-1、3-2とカメラモニタ15を点灯し、同時に全照明部に異常がないか判定する。」という部分の間に、「カウントダウン終了のタイミングに合わせすべてのフラッシュ照明部2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8を発光させて撮影する。」と挿入すべきである。
Dのうち、上記の否認する部分以外は、認める。
D E(写真選択処理)、F(選択写真の背景選定)、G(落書き処理)、H(印刷イメージの選定)、I(みてみてサイト登録)、J(次ゲームの受付)は認める。
(e) 「5図面」について @ 「(符号の説明)」のうち、2-1、2-2が「主フラッシュ照明部」であること、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8が「補助フラッシュ照明部」であることは否認し、その余は認める。前記(b)記載のとおり、被告装置においてフラッシュ照明部について主従の区別はないから、2-1、2-2は「フラッシュ照明部1」、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8は「フラッシュ照明部2」とすべきである。
A 第6図のうち、「主フラッシュ照明部」、「補助フラッシュ照明部」という部分は否認し、その余は認める。前記(b)記載のとおり、被告装置においてフラッシュ照明部について主従の区別はないから、「主フラッシュ照明部」は「フラッシュ照明部1」とし、「補助フラッシュ照明部」は「フラッシュ照明部2」とすべきである。
(イ) 請求原因(5)イ(イ)の被告用紙セットの構成について、別紙ロ号物件目録に対する認否は、次のとおりである。
(a) 頭書について 被告用紙セットは、写真だけに限られて使用されるものではなく、
被告装置によれば落書きだけでも印刷できるから、「シール用紙セット」であり、
「写真シール用紙セット」ではないから、頭書のうち、「写真シール用紙セット」は、「シール用紙セット」とすべきであり、その余の部分は認める。
(b) 「1図面の説明」について 第1図及び第2図について、「写真シール用紙セット」は、「シール用紙セット」とすべきであり、その余の部分は認める。
(c) 「2符号の説明」について 認める。
(d) 「3構成の説明」について 「3構成の説明」のうちの「写真シール用紙セット」(9か所)は、「シール用紙セット」とすべきである。
また、「3構成の説明」の末尾に、「シール用紙セットは、プリンタ製造元より被告向けとして供給を受けているものなので、『ぱれっと』にのみ係るものではなく、当該プリンタを搭載する被告製他機種にも利用できる。また、シール用紙セットは、同系機プリンタに対しては、暗証番号などの情報を記載したICチップ5を交換するだけで、本件シール用紙セットが利用できない機種に対しても、利用できるようになる。」と付加すべきである。
上記以外の部分は認める。
(e) 「4図面」について 認める。
(6)ア 請求原因(6)(被告装置、被告方法の構成)ア(被告装置)の被告装置の構成に対する認否は、次のとおりである。
(ア) 構成aないしcは認める。ただし、構成cの蛍光灯照明部3-1、
3-2は、被写体の撮像時には消灯する。
(イ) 構成dは否認する。
被告装置においては、フラッシュ照明部について主従の区別はなく、
フラッシュ照明部全体で被写体を照光し、適切な明るさで撮像できるようになっており、各フラッシュ照明部の光量も、フラッシュ照明部2-3、2-4はフラッシュ照明部2-1、2-2に比べて光量が低いが、フラッシュ照明部2-5、2-6、2-7、2-8は、フラッシュ照明部2-1、2-2に比べて光量は劣らない。
(ウ) 構成eないしhは認める。
(エ) 構成iは否認する。
被告装置においてフラッシュ照明部について主従の区別はなく、フラッシュ照明部全体で撮像に最適な光量を提供するように設計されているから、順光、逆光という観念が生ずる余地はない。
(オ) 構成jは認める。
(カ) 構成kは否認する。
前記(エ)記載のとおり、被告装置においては、順光、逆光という観念が生ずる余地はないし、プレイヤをカメラモニタ15及びメインモニタ5に表示するためにプレイヤを照明することについては、蛍光灯照明部3-1、3-2だけでなく、蛍光灯照明部3-3、3-4、3-5も寄与している。
(キ) 構成lは認める。
(ク) 構成mは認める。
(ケ) 構成n、oは認める。
イ 請求原因(6)イ(被告方法)の被告方法の構成に対する認否は、次のとおりである。
(ア) 構成aないしmに対する認否は、前記ア(ア)ないし(ク)記載のとおりである。
(イ) 構成n′、o′は認める。
(7)ア(ア) 請求原因(7)(対比)ア(被告装置及び被告方法に共通する構成aないしmと本件装置発明及び本件方法発明に共通する構成要件A1ないしM1との対比)(ア)ないし(ウ)は認める。
(イ) 請求原因(7)ア(エ)は否認する。
(ウ) 請求原因(7)ア(オ)ないし(ク)は認める。
(エ) 請求原因(7)ア(ケ)は否認する。
(オ) 請求原因(7)ア(コ)は認める。
(カ) 請求原因(7)ア(サ)は否認する。
(キ) 請求原因(7)ア(シ)は否認する。
(a) 特許法70条1項36条5項によれば、明細書の特許請求の範囲について、特許発明を特定するために必要なすべての事項を記載しなければならないとともに、特許発明の特定に必要な事項だけを記載すべきことが定められている。そして、特許請求の範囲によって画された特許発明に対して特許査定が行われ、特許発明技術的範囲が決まることにより、特許請求の範囲構成要件的機能が生じる。したがって、特許請求の範囲に記載された事項の一部を、特許査定後に構成要件ではないと主張することを許すならば、特許請求の範囲構成要件的機能が失われてしまうから、そのようなことは許されない。
構成要件L1には、「連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像した後」と記載されているから、撮像時に連続照明手段とストロボ照明手段の両方によって照光しなければならないことが明らかにされている。原告の主張するように、撮像時の照明手段としてはストロボ照明手段だけで足り、連続照明手段による照光は不要であるとすることは、構成要件L1の前記文言に反し、特許請求の範囲を不当に拡張することになってしまうから、許されない。
(b) 出願当初明細書の特許請求の範囲の請求項1は、「・・・貨幣の投入と入力操作に基づいて被写体を第1および第2の照明手段で照明しカメラで撮像して・・・」(ここでいう「第1の照明手段」は連続照明手段を指し、「第2の照明手段」はプリント画像の撮像に同期して被写体を照明する照明手段を指す。)と記載されており、被写体を撮像する際に、連続照明手段とストロボ照明手段により照明することとされていた。
平成13年3月6日付補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「・・・被写体を少なくともストロボ照明手段で照明しカメラで撮像して・・・」と、請求項2は、「前記カメラの撮像時のストロボ照明手段の照明に、前記連続照明手段の連続照明を併用する」とされ、請求項1は、撮像時の照明手段としてストロボ照明手段のみでも撮像できる趣旨に補正され、平成13年3月6日提出の手続補正書による補正に係る明細書の段落【0020】には、作用効果について、「この発明によれば、ストロボ照明手段による十分な光量によって被写体であるプレイヤ(利用者)の撮像ポーズを照射して撮像し写真シールをプリントアウトして販売するので、写真シールは充分な光量で鮮明な画像が得られ、品質の良好な写真シールを提供することができる。」と説明されていた。
ところが、拒絶理由通知を受けた後、平成13年7月13日付補正により、特許請求の範囲の請求項1、請求項2は、「・・・連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像した後・・・」(構成要件L1)とされ、連続照明手段とストロボ照明手段とで撮像することに限定する趣旨に補正され、作用効果について、「撮像時には連続照明手段に加えてほぼ同方向からのストロボ照明手段で照射して撮像し、写真シールをプリントアウトして販売するので、
出来上がった写真シールは充分な光量で鮮明な画像が得られ、品質の良好な写真シールを提供することができる。」(本件明細書【0019】)と説明され、特許査定がされた。
このような出願経過に鑑みると、原告は、特許請求の範囲について、平成13年3月6日付補正によって、撮像時の照明手段としてストロボ照明手段のみでも撮像できる趣旨に補正しておきながら、最終的には、これを捨て去り、
撮像時の照明手段としてストロボ照明手段に加えて連続照明手段を用いる趣旨に限定していることがうかがえる。したがって、構成要件L1は、文字通り、撮像時に「連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光」することが不可欠であると解釈しなければならず、撮像時にストロボ照明手段のみによって被写体を照光する被告装置は、構成要件L1を充足しない。
(ク) 請求原因(7)ア(ス)は認める。
イ 請求原因(7)イ(被告装置の構成n、oと本件装置発明の構成要件N1、O1との対比)(ア)、(イ)は認める。
ウ 請求原因(7)ウ(被告方法の構成n′、o′と本件方法発明の構成要件N1′、O1′との対比)(ア)、(イ)は認める。
(8)ア 請求原因(8)(均等)ア(構成要件L1と構成l)のうち、構成要件L1の「連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像した後」という文言を、撮像時の照明手段として連続照明手段及びストロボ照明手段の両方を必要とする意味であると解した場合、構成lは、連続照明手段である蛍光灯照明部3-1、3-2が撮像時に消灯し、撮像時の照明手段として連続照明手段を欠くことになるから、この点で構成要件L1と相違することは認め、その余は争う。
イ 請求原因(8)イ(各要件)(ア)ないし(オ)は争う。
(9) 請求原因(9)(改悪実施、迂回技術)アないしウは争う。
(10) 請求原因(10)(技術的範囲の属否)ア、イは争う。
(11)ア 請求原因(11)(特許権侵害の態様)ア(直接侵害)の事実は否認し、
主張は争う。
イ(ア)(a) 請求原因(11)イ(間接侵害)(ア)(被告装置)(a)の事実は否認し、主張は争う。
(b) 請求原因(11)イ(ア)(b)の主張は争う。
(イ)(a) 請求原因(11)イ(イ)(被告用紙セット)(a)の事実は否認し、主張は争う。
被告用紙セットは、被告装置が採用しているプリンタである三菱電機製CP8000Dに用いられるものであり、それに付属しているICチップは、
被告の製造販売する写真シール自動販売機か否かを判定するためのものであって、
被告用紙セットを使用することができるのは、本件の被告装置(商品名「ぱれっと」)に限られない。
(b) 請求原因(11)イ(イ)(b)の主張は争う。
ウ(ア) 請求原因(11)ウ(共同不法行為)(ア)の事実のうち、被告が被告装置をアミューズメントセンター等の店舗に販売したことは認め、その余は不知。
(イ) 請求原因(11)ウ(イ)の事実は否認し、主張は争う。
(12)ア 請求原因(12)(損害)ア(ア)ないし(ウ)の事実は否認する。
イ 請求原因(12)イは争う。
ウ 請求原因(12)ウの事実は否認し、主張は争う。
3 抗弁(権利濫用) (1) 特許異議、無効審判の経過等 ア 特許異議 本件特許については、第三者から、平成14年4月24日、特許異議申立て(以下、特許異議を単に「異議」という。)がされ(異議申立書は乙第10号証)、さらに、同年5月2日(異議申立書は乙第11号証)及び同月8日(異議申立書は乙第12号証)にも異議申立てがされ、これらの異議申立ての審理は併合された(異議2002-71139)。
特許庁審判官は、原告に対し、平成14年7月5日起案の取消理由通知書によって取消理由を通知した。
原告は、平成14年9月17日付の訂正請求書(甲第9号証)によって訂正を請求した。その後、無効審判を先に審理することとされ、異議申立ての審理の手続は中止された。
イ 無効審判 被告は、本件特許について、平成14年6月26日、特許請求の範囲の請求項1ないし4について無効審判を請求した(無効2002-35272、審判請求書は乙第6号証)。
特許庁審判官は、原告に対し、平成14年11月15日起案の無効理由通知書(甲第12号証、乙第9号証)によって無効理由を通知した。
原告は、平成15年1月20日付訂正請求書(甲第20号証)によって訂正請求をし、それとともに意見書(甲第21号証)を提出した。
特許庁審判官は、平成15年3月7日付で、訂正を認め、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする旨の審決(以下「本件無効審決」という。)を行った(審決書は乙第14号証(別紙2))。
これに対し、原告は、東京高等裁判所に審決取消訴訟(同裁判所平成15年(行ケ)第150号)を提起した。
(2) 新規事項の追加 ア 本件明細書の段落【0020】には、「更に、連続照明手段による左右方向からの照明によって撮像ポーズを決めている時、腕や指を突き出すピース等利用者の様々なポーズで生じる陰の方向と位置を表示手段を見て予め確認できる。」と記載され、段落【0021】には、「この陰の方向と位置は略同一位置のストロボ照明手段による光の照射でできる陰と殆ど同一であるから、利用者は撮像ポーズの選択時に、予め連続照明手段でできる陰から顔や撮像したい部分を外しておけば、その位置は撮像時のストロボ照明手段の照光による陰から外れていることになり、複数人が撮像ポーズを確認決定した時の全員が満足する撮像ポーズのイメージと略一致した写真シールを提供することができる。」と記載されている。
イ ところで、出願当初明細書の「発明の実施の形態」の項では、連続照明手段は、カメラの左右に配設された「蛍光灯16、16」とされており、これに関する記述は、出願当初明細書の段落【0022】、【0039】、【0049】及び【0075】にある。しかし、これらの記述や出願当初明細書のその余の記載に照らしても、出願当初明細書には、本件明細書の段落【0020】、【0021】に記載された作用効果の記載はないし、これらの作用効果を直接的かつ一義的に導き出せる根拠となる記載もない。
ポーズ確認に関して、出願当初明細書の段落【0039】には、カメラの左右の蛍光灯16と上部の蛍光灯18による三方向からの照明の下でポーズ確認が行われる旨記載されているが、このように三方向から照明したときにディスプレイ12に表示される陰の位置と、ストロボ照明手段による光の照射でできる陰の位置が、本件明細書の段落【0021】に記載されたようにほとんど同一であることはあり得ず、出願当初明細書の段落【0039】の記載を根拠として、本件明細書の段落【0021】の記載を導くことは不可能である。
また、蛍光灯は、ストロボ照明手段と比べて暗く、蛍光灯の光量がストロボ照明手段の光量よりも圧倒的に少ないことは周知の事実であり、たとえ左右の蛍光灯16、16のみの照明下でポーズ確認を行うとしても、その照明によって生じる陰は、輪郭自体が極めて不鮮明であり、ディスプレイの表示画像上で部分的に暗い領域が生じていることは認識できても、本件明細書の段落【0020】の記載のように、ディスプレイの表示画像においてどの位置にどのような陰ができているかまで明確に特定できるほどではなく、ましてや本件明細書の段落【0021】の記載のように左右の蛍光灯16、16の照明による陰の位置がストロボ照明手段による光の照射でできる陰の位置とほとんど同一になると断言することは到底不可能である。
出願当初明細書の記載全体からすると、本件明細書の段落【0021】に記載されたような、撮像ポーズのイメージとほぼ一致した写真シールを提供することができるという効果は、出願当初明細書の段落【0049】に記載されたように、明るさ調整機能34の動作によるものであって、左右の連続照明手段(蛍光灯)とストロボ照明手段によるものではない。
本件明細書の段落【0020】、【0021】は、平成13年7月13日付補正において、拒絶理由通知に引用された引例との差を明確にするために特許請求の範囲減縮を行い、この減縮後の発明の正当性の辻褄合わせのために出願当初明細書に一切開示されていない事項を付け加えたものであり、出願当初明細書に記載されていない新規事項である。
したがって、本件特許には、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対して特許がされたという無効理由(同法123条1項1号)が存在することが明らかである。
よって、本件特許権に基づく差止め、損害賠償の請求は、権利の濫用として許されない。
ウ 原告は、平成15年1月20日付訂正請求書によって、本件明細書の段落【0020】、【0021】を削除することなどを内容とする訂正請求を行い、
訂正請求の原因について、「明細書の【0020】及び【0021】に記載された『陰の位置と方向』の記載について、『位置と方向』が明りょうではないので、明りょうでない記載の釈明を目的として、【0020】及び【0021】を削除するものである。」(平成15年1月20日付訂正請求書9頁ないし10頁)としている。
しかし、原告は、平成13年7月13日付意見書において、連続照明手段による陰の方向及び位置とストロボ照明手段による陰の方向及び位置を一致させることが、引用例との大きな差異であると主張して、特許査定を得たものである。
そうであるから、本件明細書の段落【0020】、【0021】を削除する訂正は、明りょうでない記載の釈明に該当せず、特許法134条2項3号に違反し、また、引用例との差異である作用効果の記載をなくし、実質上特許請求の範囲拡張し又は変更するから、同法134条5項126条3項に違反する。
(3) 進歩性欠如 ア(ア) 特許第3000527号公報 特許第3000527号公報(乙第8号証の1、甲第13号証。以下「乙8-1公報」という。)は、本件特許出願前の平成12年1月17日に発行されたものであり、本件装置発明に係る写真シール自動販売機と同様の画像プリント供給装置を開示している。乙8-1公報に記載された画像プリント供給装置は、コイン投入部5、入力ペン6、照明7、撮影機9、画面3、プリンタ13、PC(パーソナルコンピュータ)14を備える。
(イ) 特許第3021638号公報 特許第3021638号公報(乙第8号証の2、甲第14号証。以下「乙8-2公報」という。)は、本件特許出願前の平成12年3月15日に発行されたものであり、パスポート又はビザ用写真などの人物写真撮影用の自動写真撮影装置を開示している(同公報2頁左欄11ないし13行、25ないし27行)。乙8-2公報には、自動写真撮影装置のカメラの上下左右に配置された光源として、
例えばフラッシュライトを用いる旨が記載されている(同公報5頁左欄21ないし25行)。しかも、パスポート又はビザ用写真などの人物写真撮影用の撮影装置を、興味深い、又は娯楽的な背景若しくは前景あるいは補助的写真ないし装飾などと重ね合わせ又は併べ合わせて成るおもしろい複合写真をもたらすために使用することができる旨も明記されており(同公報3頁右欄12ないし16行)、乙8-1公報に記載された画像プリント供給装置にフラッシュライト(本件特許発明におけるストロボに相当する。)を設ける技術的思想が開示されている。
乙8-2公報記載の特許発明の特許権者は、我が国の株式会社アトラスの英国における100%出資の子会社であるフォトスターリミテッド社であり、
本件特許発明特許出願日前において、フォトスター社の有する特許又は出願中の特許が、自動シール印刷機(プリクラ機)に関する基本的な発明に係ることは、少なくともプリクラ業界においては周知であった。このようなプリクラ機に関する基本的な発明を開示する乙8-2公報に、フラッシュライトをカメラの両側に配置して使用するという技術思想が開示されていたから、ストロボ照明手段をプリクラ機に搭載することは、本件特許発明特許出願日前において当業者にとって極めて容易になし得ることであった。
(ウ) 特開平10-48705号公報 特開平10-48705号公報(乙第8号証の3、甲第17号証。以下「乙8-3公報」という。)は、本件特許出願前の平成10年2月20日に出願公開されたものであり、カメラの左右における第1、第2サイド光源の例として、
モデリングライトとストロボとを対にしたもの、換言すれば、1個のサイド光源が連続照明手段とストロボ手段とを備えているものが記載されている(同公報3頁左欄13ないし16行)。
イ(ア) 本件特許発明は、「カメラの左右に連続照明手段とストロボ照明手段とをそれぞれ配置し、貨幣投入に基づくプレイ操作により、連続照明手段の照光によりポーズ確認を可能にし、連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光して撮像し、編集を加えた画像をプリントする」ことを特徴とする。
乙8-1公報に記載された編集機能をもった画像プリント供給装置に、乙8-2公報に記載されたようなフラッシュライトを用いることは容易であり、更にこれに、乙8-3公報に記載されたような、モデリングライト(連続照明手段に相当)とストロボ(ストロボ照明手段)とを備えるサイド光源をカメラ設置位置の左右に一対配設する発明を組み合わせることも、容易である。
(イ) ストロボは撮影時にのみ照光させ、ストロボより光量の少ない照明下でポーズ確認を行うことは、写真撮影に関するすべての技術分野において共通する周知事項である。
本件明細書の段落【0022】には、本件特許発明に係るストロボ照明ボックス体の作用効果について、一般にスタジオで使用される傘状の反射手段と比較して記述されているが、これは、原告自らが、撮影スタジオで用いられる大規模な装置をそのまま写真シール自動販売機に導入することは難しいとしても、スタジオで用いられる技術に何らかの変形を加えて写真シール自動販売機に転用できると認識していたことを明確に示す。さらに、スタジオの撮影でも、複数人で撮像した場合には、後方に位置する被写体の顔に陰が生じるため、陰の具合を撮影本番に先立って調べ、ストロボ照明手段により陰を解消するのは当然になされる撮影手法であり、本件特許発明に係るようなプリクラ機における撮影技術は、スタジオ撮影などの一般的な写真撮影技術と何ら相違がない。そうであるから、スタジオ撮影とプリクラ機の技術分野が違うということにより本件特許発明進歩性があるということはできない。
ウ そうすると、本件特許発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙8-1公報、乙8-2公報、乙8-3公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許には、特許法29条2項の規定に違反して特許がされたという無効理由(同法123条1項2号)が存在することが明らかである。
よって、本件特許権に基づく差止め、損害賠償の請求は、権利の濫用として許されない。
4 抗弁に対する認否 (1) 抗弁(1)(特許異議、無効審判の経過等)ア(特許異議)、イ(無効審判)の事実は認める。
(2)ア 抗弁(2)(新規事項の追加)アの事実は認める。
イ 抗弁(2)イ、ウは争う。
ウ 新規事項か否かは、技術的事項の対比において新たな技術的事項が付加されているか否かにより判断されるのであって、単に語句と語句との対比により判断されるべきではない。本件明細書の段落【0020】、【0021】の記載は、
出願当初明細書に記載された構成がもたらす当然の作用効果を示したものにすぎず、何ら新規事項には該当しない。しかしながら、自明の作用効果をわざわざ記載するまでもないことから、原告は、無用な紛争を避けるために、平成15年1月20日付訂正請求書によって、本件明細書の段落【0020】、【0021】を削除することなどを内容とする訂正請求を行い、平成15年3月7日付で、訂正を認める本件無効審決がされた。
(3)ア 抗弁(3)(進歩性欠如)アないしウは争う。
イ(ア) 乙8-1公報には、被写体をストロボ照明手段によって撮像することは全く開示されておらず、いわんや、カメラとストロボ照明手段及び連続照明手段との配置関係についての技術思想は全く開示されていない。
乙8-1公報に記載されたものはプリクラ機ではあるが、連続照明手段しか備えておらず、ストロボ照明を行うものではなく、ストロボ照明手段を用いることは全く想定されていなかった。ストロボ照明手段を用いないプリクラ機は、
光量が不足するなどの問題があり、その問題は本件明細書の段落【0002】ないし【0004】に記載されており、乙8-1公報に記載された発明は、本件特許発明が批判し、克服した従来技術にすぎなかった。ストロボ照明手段を用いるプリクラ機は、乙8-1公報、乙8-2公報、乙8-3公報に記載されておらず、本件特許出願前に存在しなかった。
(イ) 乙8-2公報に記載された発明は、「パスポートタイプの人物写真もしくは肖像写真」あるいはたかだか「娯楽的な背景もしくは前景あるいは補助的写真ないし装飾など」との複合写真(同公報3頁右欄12行ないし16行)の撮影装置に係るものにすぎず、プリクラ機において複数人が自由にポーズをとって撮影する際に全員が満足する写真をいかにして撮影するかという課題は存在せず、課題の解決についての示唆もない。
乙8-2公報には、「ブース内部は壁4の開放部あるいは透明パネルあるいは半透明パネル背後の上方もしくは下方部分に適当に配置された光源27、
28、29(例えばフラッシュライト)により照明され得る。」(同公報5頁左欄21行ないし25行)と記載されているのみであって、カメラとストロボ照明手段及び連続照明手段との配置関係についての技術思想は開示されていない。
(ウ) 乙8-3公報に記載された装置は、いすに座ってその位置が固定されている単独の被写体を撮影する照明写真用の写真撮影スタジオ装置であり、プリクラ機ではない。また、乙8-3公報には、銀塩写真の場合にはストロボとモデリングライトが望ましいと記載されているが、デジタルカメラの場合はハロゲンランプ等を使用するとされており、デジタルカメラによる撮影時にストロボ照明手段の使用を示唆する記載はない。さらに、実際の撮影に際して、乙8-3公報に記載された発明は、経験あるプロカメラマンによりあらかじめ撮影され光源番号が記載された種々のライティング見本のファイルを作成しておき、顔写真を撮影する者がこれを参照してその中から撮影したい写真に最も近いファイルを選択して撮影するというものである(同公報【0017】、【0018】)。
これに対し、本件装置発明に係る写真シール自動販売機は、「娯楽施設(例えば、ゲームセンタ)において、デジタルカメラで撮像した画像をカラープリンタでシール紙出力する」(本件明細書【0001】)娯楽性の高いエンターテイメント製品であり、撮像ポーズは、多人数が様々な位置関係に立つため予想し難いことが多く、これを刻々と表示手段(モニタ)に表示しながら撮像し、撮像後も表示手段(モニタ)により画像編集を可能とするものである。そして、本件特許発明は、ゲームセンターにおける撮影人数の多様性やプレイヤ同士の位置関係の違いに応じて刻々と変化する無限の撮像ポーズに対応して、出来上がる写真シールの照明イメージ等を撮像前に把握することに課題がある。
そうであるから、乙8-3公報に記載された発明と本件特許発明は技術分野を異にし、ライティング見本のファイルを参照して照明手段を選択する方法は、撮影時間が限られたプリクラ機には全く適さない。また、乙8-3公報に記載された発明においては、被写体である人が見本として参照するあらかじめ撮影されたファイルには限りがあり、当然、人数(通常は単独の被写体。図面には1人用のいすのみが示されている。)やポーズにも限りがある(図面でも被写体である人はカメラに正対していすに座している。)から、これによって、複数人が様々な位置関係を取ることによる光と陰の多様な関係が問題となるプリクラ機のライティングをカバーすることは到底できない。したがって、乙8-3公報に記載された発明は、プリクラ機に適用することはできない。
(エ) 本件特許発明は、単にストロボ照明手段を有するにとどまるものではなく、写真シール自動販売機の正面でデジタルカメラの左右の位置に、ストロボ照明手段と連続照明手段とのそれぞれを、ストロボ照明手段をデジタルカメラ側にして左右に並設する、という独特の構成を採用するものであり、この構成は乙8-3公報には記載されておらず、モデリングランプとストロボとで発光する点を乙8-1公報に適用しても、本件特許発明容易に想到することはできない。
(オ) ストロボ照明手段自体は本件特許出願前に公知のものであったが、
これをプリクラ機に使用することは、長年にわたって困難とされ、実用化されていなかった。本件特許発明は、特定の構成を採用することにより、この困難を克服し、プリクラ機にストロボ照明手段を使用することを初めて実現し、商業的成功まで収めた。本件特許発明の特徴的な構成と、達成された技術的効果や商業的効果については、いずれも刊行物に開示されておらず、示唆されていない。
(カ) 以上によれば、本件特許発明は、乙8-1公報、乙8-2公報、乙8-3公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。本件特許発明進歩性を有することは明白である。
理 由1 請求原因について検討する。
(1) 請求原因(1)(当事者)の事実は当事者間に争いがない。
(2) 請求原因(2)(特許権)ア、イは当事者間に争いがない。
(3) 請求原因(3)(構成要件)ア(本件装置発明)、イ(本件方法発明)は当事者間に争いがない。
(4) 請求原因(4)(出願経過)アないしオの事実は当事者間に争いがない。
(5)ア 請求原因(5)(被告の行為)アの事実のうち、被告が被告装置を平成13年11月から平成14年1月まで製造し、全国のアミューズメントセンター等の店舗に販売し、その販売の申出をしていたこと、平成13年11月から被告用紙セット(後記イ(イ)(a)記載のとおり、被告用紙セットは「写真シール用紙セット」であると認められる。)を製造し、全国のアミューズメントセンター等の店舗に販売し、その販売の申出をしていること、被告装置は被告方法に使用されるものであり、被告用紙セットは被告装置に使用される用紙セットであることは、当事者間に争いがない。
被告が被告装置又は被告用紙セットを販売した先が、全国のアミューズメントセンター等の店舗であったことは、上記のとおり当事者間に争いがないが、大阪、京都、東京、広島を始めとする全国200以上の店舗であったことについては、これを認めるに足りる証拠がない。また、被告が平成14年1月以降も被告装置を販売していることを認めるに足りる証拠はない。
イ(ア) 請求原因(5)イ(ア)の被告装置の構成について、別紙イ号物件目録に関する認定は、次のとおりである。
(a) 「1図面の説明」について 当事者間に争いがない。
(b) 「2符号の説明」について 甲第11号証によれば、被告装置のフラッシュ照明部2-1の光量に対して、同2-2の光量はその50ないし71%であるが、同2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8の光量はその18ないし25%で、同2-1の光量の約6分の1から4分の1であるにすぎないことが認められ、同2-1、2-2と同2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8の間には、相当程度の光量の差異があることが認められる。したがって、フラッシュ照明部2-1、2-2を「主フラッシュ照明部」とし、同2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8を「補助フラッシュ照明部」とすることは相当であると認められる。
被告は、被告装置においては、フラッシュ照明部全体で被写体を照光し、適切な明るさで撮像できるようになっており、最適な画像の提供という目的にとってフラッシュ照明部に主従の関係はないから、2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8はいずれも「フラッシュ照明部」とすべきであると主張する。しかし、被告装置において、2-3、2-4、2-5、2-6、
2-7、2-8が最適な画像の作成に寄与していることを前提としても、これらを「補助フラッシュ照明部」とすることによって、そのような寄与を否定することにはならないから、被告の前記主張は、採用することができない。
(c) 「3構造の説明」について 前記事実欄第2の2(5)イ(ア)(c)記載のとおり、「3構造の説明」については、当事者間に争いのない部分と、争いのある部分がある。しかし、この争いのある部分は、前記(b)で認定した事実及び弁論の全趣旨によれば、原告主張の別紙イ号物件目録記載のとおり認定するのが相当である。
(d) 「4『ぱれっと』処理フローチャート説明(動作の説明)」について 前記事実欄第2の2(5)イ(ア)(d)記載のとおり、「4『ぱれっと』処理フローチャート説明(動作の説明)」については、当事者間に争いのない部分と、争いのある部分がある。しかし、この争いのある部分は、前記(b)で認定した事実及び弁論の全趣旨によれば、原告主張の別紙イ号物件目録記載のとおり認定するのが相当である。
(e) 「5図面」について 前記事実欄第2の2(5)イ(ア)(e)記載のとおり、「5図面」についても、当事者間に争いのない部分と、争いのある部分がある。しかし、この争いのある部分は、前記(b)で認定した事実及び弁論の全趣旨によれば、原告主張の別紙イ号物件目録記載のとおり認定するのが相当である。
(f) 以上によれば、被告装置の構成は、原告主張の別紙イ号物件目録記載のとおりであると認められる。
(イ) 請求原因(5)イ(イ)の被告用紙セットの構成について、別紙ロ号物件目録に関する認定は、次のとおりである。
(a) 頭書について 頭書のうち、「写真シール用紙セット」という部分以外は、当事者間に争いがない。
甲第3号証、第22号証、第28号証及び弁論の全趣旨によれば、被告装置は、いわゆるプリクラ機と呼ばれる遊戯機で、複数人で顔写真等を撮影するのが用途の主な目的であり、落書き等の機能は、撮影された顔写真に装飾等を施すための付加的な機能であることが認められ、顔写真等を撮影せず、落書き等のためだけに被告装置を使用することは、通常はなく、被告装置の用途として想定されていないものと推認される。したがって、被告用紙セットは、写真に使用されるものと認められ、「写真シール用紙セット」とするのが相当であると認められる。
(b) 「1図面の説明」について 第1図及び第2図について、「写真シール用紙セット」という記載は、前記(a)記載のとおり、相当であると認められる。その余の部分は当事者間に争いがない。
(c) 「2符号の説明」について 当事者間に争いがない。
(d) 「3構成の説明」について 「3構成の説明」のうちの「写真シール用紙セット」(9か所)という記載は、前記(a)記載のとおり、相当であると認められる。
弁論の全趣旨によれば、被告用紙セットは、被告装置が採用しているプリンタである三菱電機製CP8000Dに用いられるものであり、それに付属しているICチップ5は、被告の製造販売する写真シール自動販売機か否か等を判定するためのものであることが認められ、被告用紙セットは、被告の製造販売する写真シール自動販売機で、三菱電機製CP8000Dを採用するものであれば、被告装置(「ぱれっと」)以外の機種にも利用できることが推認される。また、前記(a)記載のとおり、被告用紙セットは、「写真シール用紙セット」とするのが相当である。したがって、「3構成の説明」の末尾に、「写真シール用紙セットは、プリンタ製造元より被告向けとして供給を受けているものなので、『ぱれっと』にのみ係るものではなく、当該プリンタを搭載する被告製他機種にも利用できる。」という記載を付加することは相当であると認められる。
被告は、「3構成の説明」の末尾に、更に、「また、シール用紙セットは、同系機プリンタに対しては、暗証番号などの情報を記載したICチップ5を交換するだけで、本件シール用紙セットが利用できない機種に対しても、利用できるようになる。」と付加することを主張する。しかし、被告用紙セットは、被告装置に使用されるものであり(前記(5)ア)、また、別紙ロ号物件目録は、「2符号の説明」、「4図面」において、ICチップ5を含めて特定がされており、「3構成の説明」(後記のとおり当事者間に争いのない部分)には、ICチップ5の情報により、プリンタ製造元の純正写真シール用紙セットであること、及び被告向けの写真シール用紙セットであることが識別される旨記載されているから、被告用紙セットは、被告装置(「はれっと」)に使用可能であると識別される情報をICチップ5に備えたものとして特定されているというべきであり、このようなICチップ5を交換した場合について別紙ロ号物件目録に記載するのは相当でないというべきである。したがって、被告の上記主張は、採用することができない。
上記以外の部分は当事者間に争いがない。
(e) 「4図面」について 当事者間に争いがない。
(f) 以上によれば、被告用紙セットの構成は、原告主張の別紙ロ号物件目録の「3構成の説明」の末尾に「写真シール用紙セットは、プリンタ製造元より被告向けとして供給を受けているものなので、『ぱれっと』にのみ係るものではなく、当該プリンタを搭載する被告製他機種にも利用できる。」という記載を付加したものとするのが相当であると認められる。
(6)ア 請求原因(6)ア(被告装置)の被告装置の構成に関する認定は、次のとおりである。
(ア) 構成aないしcは当事者間に争いがない。
(イ) 前記(5)イ(ア)(c)の認定によれば、被告装置は、別紙イ号物件目録の「3構造の説明」(3)記載のとおりの構成を備えるものと認められるから、被告装置は、構成dを備えるものと認められる。
(ウ) 構成eないしhは当事者間に争いがない。
(エ) 前記(5)イ(ア)(c)の認定によれば、被告装置は、別紙イ号物件目録の「3構造の説明」(4)記載のとおりの構成を備えるものと認められるから、被告装置は、構成iを備えるものと認められる。
(オ) 構成jは当事者間に争いがない。
(カ) 前記(5)イ(ア)(c)の認定によれば、被告装置は、別紙イ号物件目録の「3構造の説明」(2)、(4)、(5)記載のとおりの構成を備えるものと認められるから、被告装置は構成kを備えるものと認められる。
(キ) 構成lは当事者間に争いがない。
(ク) 構成mは当事者間に争いがない。
(ケ) 構成n、oは当事者間に争いがない。
イ(ア) 請求原因(6)イ(被告方法)の被告方法の構成について検討する。
被告方法は、被告装置を使用した写真シールの自動販売方法であるから、前記ア(ア)ないし(ク)記載のとおり、被告方法も構成aないしmを備えるものと認められる。
(イ) 被告方法が構成n′、o′を備えることは当事者間に争いがない。
(7)ア(ア) 請求原因(7)(対比)ア(被告装置及び被告方法に共通する構成aないしmと本件装置発明及び本件方法発明に共通する構成要件A1ないしM1との対比)(ア)ないし(ウ)は、当事者間に争いがない。
(イ) 構成dが構成要件D1を充足するかについて検討する。
構成dの「被写体の撮像と同期して閃光を発し被写体を照明するフラッシュランプを内蔵した主フラッシュ照明部2-1、2-2」、「カメラユニット1の下部、本体16の中央下部、カーテン部17の背面上下4角には主フラッシュ照明部の約6分の1ないし4分の1の光量の補助フラッシュ照明部2-3、2-4、
2-5、2-6、2-7、2-8」は、構成要件D1の「プリント画像の撮像に同期して被写体をストロボ発光して照明するストロボ照明手段」に該当するから、構成dは構成要件D1を充足するものと認められる。
(ウ) 請求原因(7)ア(オ)ないし(ク)は当事者間に争いがない。
(エ) 構成iが構成要件I1を充足するかについて検討する。
構成iの「縦長の主フラッシュ照明部2-1、2-2」、「縦長の蛍光灯照明部3-1、3-2」は、それぞれ構成要件I1の「前記ストロボ照明手段」、
「連続照明手段」に該当し、構成iによれば、カメラの左右の内側にそれぞれ「縦長の主フラッシュ照明部2-1、2-2」が配置され、外側にそれぞれ「縦長の蛍光灯照明部3-1、3-2」が配置され、カメラの左右それぞれにおいて、「縦長の主フラッシュ照明部」と「縦長の蛍光灯照明部」が並設された状態で配置されていることが認められるから、構成iは構成要件I1を充足するものと認められる。
(オ) 請求原因(7)ア(コ)は当事者間に争いがない。
(カ) 構成kが構成要件K1を充足するかについて検討する。
構成kの「カメラの左右両側に備えられた縦長の蛍光灯照明部3-1、
3-2」は、構成要件K1の「カメラの左右に配置した連続照明手段」に該当し、
「カメラモニタ15」、「メインモニタ5」は、構成要件K1の「前記表示手段」に該当する(前記(ウ)記載のとおり、請求原因(7)ア(カ)(構成fによる構成要件F1の充足)は当事者間に争いがない。)。また、別紙イ号物件目録の「3構造の説明」(2)(前記(5)イ(ア)(c)認定のとおり、被告装置は、別紙イ号物件目録の「3構造の説明」(2)記載のとおりの構成を備える。)には、「利用者がデジタルカメラ14の動画画像をカメラモニタ15にて確認できるとともに、撮影スタイルをズームアップボタン31、ズームダウンボタン32により選択できる」と記載され、「3構造の説明」(4)(前記(5)イ(ア)(c)認定のとおり、被告装置は、別紙イ号物件目録の「3構造の説明」(4)記載のとおりの構成を備える。)には「蛍光灯照明部3-1、3-2は、主フラッシュ照明部2-1、2-2と照明方向が同じであって、プレイヤをカメラ側から順光照明するので、出来上がる写真シールのイメージを撮像前にプレイヤが把握することができる。」と記載され、構成l(前記(6)ア(キ)記載のとおり、被告装置は構成lを備える。)には、「メインモニタ5には撮像した写真すべてを表示する」との構成があることから、蛍光灯照明部3-1、
3-2の照明によってカメラモニタ15及びメインモニタ5に撮像ポーズが表示され、それを見ることによって、プレイヤが撮像ポーズを確認することができることが認められる。したがって、構成kは構成要件K1を充足する。
(キ) 構成lが構成要件L1を充足するかについて検討する。
構成要件I1は「前記カメラの左右位置に前記ストロボ照明手段と連続照明手段との夫々を並設した状態で配置し」という構成であり、構成要件K1は「カメラの左右に配置した連続照明手段の照光によって前記表示手段に撮像ポーズを表示すると共に撮像ポーズの確認を可能とし」という構成であり、構成要件L1が「連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像した後、前記表示手段に撮像画像を表示し」という構成であることからすると、構成要件L1の「連続照明手段」は、カメラの左右位置にストロボ照明手段とともに配置された連続照明手段を意味するものと認められ、構成lの「蛍光灯照明部3-1、3-2」がこれに該当するものと認められる。
構成要件L1は、「連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像した後」という構成であり、その文言からすると、カメラによる撮像時には、ストロボ照明手段と連続照明手段の両方によって被写体が照光されることを要するものと認められる。
これに対し、構成lは、「プレイヤがシャッターボタン4を押してから約6.5秒後に、フラッシュ照明部2を閃光させてデジタルカメラ14でプレイヤを撮像する。」、「カウント1(撮像の約1.3秒前)で蛍光灯照明部3-1、3-2は消灯し、撮像約4秒後に再点灯する。」という構成より成り、カメラによる撮像時には、ストロボ照明手段によって被写体が照光されるが、連続照明手段に該当する「蛍光灯照明部3-1、3-2」は消灯しており、連続照明手段によっては被写体は照光されていない。
そうすると、構成lは、カメラによる撮像時にはストロボ照明手段と連続照明手段の両方によって被写体が照光されることを要するとする構成要件L1を文言上充足しないものというべきである。
イ よって、その余の点について判断するまでもなく、被告装置は、本件装置発明の構成要件を文言上充足せず、被告方法は、被告方法発明の構成要件を文言上充足しない。
(8) 均等の成否について ア 特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、(1)上記部分が特許発明の本質的部分ではなく、(2)上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、(3)上記のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、上記対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁判所第三小法廷平成10年2月24日判決・民集52巻1号113頁参照)。
イ 前記(7)ア(キ)認定のとおり、構成要件L1は、カメラによる撮像時にストロボ照明手段と連続照明手段の両方によって被写体が照光されることを要するという意味であり、構成lは、カメラによる撮像時には、ストロボ照明手段によって被写体が照光されるが、連続照明手段によっては被写体は照光されていないという点で、構成要件L1と相違する。
そこで、構成要件L1の、撮像時の照明手段として連続照明手段及びストロボ照明手段の両方を必要とするという構成を、構成lの、撮像時の照明手段として連続照明手段を欠くという構成に置換することにつき均等が成立するか検討する。
ウ 上記均等成立のための要件(5)(第5要件)について検討する。
出願当初明細書の特許請求の範囲の請求項1は、「投入貨幣を処理する貨幣処理手段と、操作を入力する入力手段と、被写体を連続して照明する第1の照明手段と、プリント画像の撮像に同期して被写体を照明する第2の照明手段と、被写体を撮像するカメラと、画像や必要事項を表示する表示手段と、撮像した被写体の写真シールをプリントして放出するプリンタと、これら構成要素を制御する制御手段とを備え、貨幣の投入と入力操作に基づいて被写体を第1および第2の照明手段で照明しカメラで撮像して、表示手段で撮像画像を表示する共に、プリンタで写真シールをプリントして放出する写真シール自動販売機であって、前記第2の照明手段を、ボックス状の箱体内に収納したストロボ照明装置と、該装置のストロボ発光を撮像領域側に反射する反射板と、ストロボ発光を撮像領域側に拡散する拡散板とで撮像領域側を照明するストロボ照明ボックス体に形成した写真シール自動販売機。」であり(乙第1号証)、「被写体を連続して照明する第1の照明手段と、プリント画像の撮像に同期して被写体を照明する第2の照明手段とを備え、被写体を第1および第2の照明手段で照明しカメラで撮像」する旨記載されており、撮像時に連続照明手段とストロボ照明手段により照明されることが記載されている。
しかし、平成13年3月6日付補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1は、「投入貨幣を処理する貨幣処理手段と、操作を入力する入力手段と、被写体を連続して照明する連続照明手段と、プリント画像の撮像に同期して被写体をストロボ発光して照明するストロボ照明手段と、被写体を撮像するカメラと、画像や必要事項を表示する表示手段と、撮像した被写体の写真シールをプリントして放出するプリンタと、これら構成要素を制御する制御手段とを備え、前記貨幣処理手段に対する貨幣の投入と入力手段による入力操作に基づいて、被写体を少なくともストロボ照明手段で照明しカメラで撮像して、表示手段で撮像画像を表示すると共に、プリンタで写真シールをプリントして放出する写真シール自動販売方法。」というもの、請求項3は、「投入貨幣を処理する貨幣処理手段と、操作を入力する入力手段と、被写体を連続して照明する第1の照明手段と、プリント画像の撮像に同期して被写体を照明する第2の照明手段と、被写体を撮像するカメラと、
画像や必要事項を表示する表示手段と、撮像した被写体の写真シールをプリントして放出するプリンタと、これら構成要素を制御する制御手段とを備え、前記貨幣処理手段に対する貨幣の投入と入力手段による入力操作に基づいて被写体を少なくとも第2の照明手段で照明しカメラで撮像して、表示手段で撮像画像を表示すると共に、プリンタで写真シールをプリントして放出する写真シール自動販売機であって、前記第2の照明手段をストロボ発光するストロボ照明手段で形成し、前記カメラの撮像時に同期してストロボ照明手段を前記制御手段が制御する写真シール自動販売機。」というものであり(乙第2号証)、「被写体を連続して照明する連続照明手段(第1の照明手段)と、プリント画像の撮像に同期して被写体をストロボ発光して照明するストロボ照明手段(第2の照明手段)とを備え、被写体を少なくともストロボ照明手段(第2の照明手段)で照明しカメラで撮像」することが記載されており、撮像時に少なくともストロボ照明手段による照明があれば足り、連続照明手段による照明を欠くものも含まれる趣旨の記載とされた。
その後、平成13年7月13日付補正によって明細書が再び補正され、特許請求の範囲の請求項1、請求項2の記載は、構成要件C1、D1、L1のようにされ(乙第3号証)、前記(7)ア(キ)認定のとおり、カメラによる撮像時にストロボ照明手段と連続照明手段の両方によって被写体が照光されることを要するという意味の記載とされた。
このように、原告は、特許請求の範囲について、平成13年3月6日付補正により、いったんは、撮像時に連続照明手段を欠くものも含まれるような構成としたが、同年7月13日付補正により、再び、出願当初明細書と同様、撮像時に連続照明手段による照明を要するような構成とした。このような補正の経過に鑑みると、被告装置のように撮像時に連続照明手段を欠くものは、少なくとも平成13年7月13日付補正により、特許請求の範囲から意識的に除外されたものと認めるのが相当である。
したがって、被告装置は、均等の第5要件を欠くから、その余の点につき判断するまでもなく、本件装置発明について均等は成立しないものというべきである。
(9) 原告は、請求原因(9)(改悪実施、迂回技術)アないしウにおいて、改悪実施又は迂回技術による特許権侵害を主張する。しかし、特許発明技術的範囲は、
願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない(特許法70条1項)とされていることから、特許発明技術的範囲に属するというためには、原則として、特許請求の範囲構成要件を文言上充足することが必要であり、文言上充足しない場合には、例外として、均等の要件が充足された場合にのみ特許発明技術的範囲に属するというべきであり、その他に、構成要件が文言上充足されないにもかかわらず、特許発明技術的範囲に属するとされる場合は認められないものというべきである。原告が主張するようなものを認め得る余地があるとしても、せいぜい均等の一類型として上記の均等の要件を満たす場合に限られるものというべきところ、被告装置が本件装置発明と均等と認められないことは前示のとおりであるから、改悪実施又は迂回技術による特許権侵害の主張は、採用することができない。
(10) 後記2(1)(抗弁(1)(特許異議、無効審判等)イ(無効審判)の事実)のとおり、原告は、平成15年1月20日付訂正請求書(甲第20号証)によって訂正請求をし、特許庁審判官は、同年3月7日付で、訂正を認め、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする旨の本件無効審決(審決書は乙第14号証(別紙2))を行い、これに対し、原告は、審決取消訴訟を提起した。本件無効審決は未だ確定していないから、現時点において、本件特許権の特許出願の願書に添付された明細書、図面の内容は、本件公報記載のとおりであるが、本件無効審決によって認められた訂正を前提に、侵害の有無について検討する。
本件無効審決により認められた訂正の内容は別紙2(審決書)の「理由」、
「第2.訂正の適否についての判断」、「1.訂正の内容」欄記載のとおりであり、このような訂正を前提としても、構成要件L1は、カメラによる撮像時に、ストロボ照明手段と連続照明手段の両方によって被写体が照光されることを要する意味であると認められるから、前記(7)ア(キ)認定のとおり、構成lはこれを文言上充足しないものと認められる。そうであるから、訂正を前提としても、被告装置は、本件装置発明の構成要件を文言上充足せず、被告方法は、被告方法発明の構成要件を文言上充足しない。
また、均等については、訂正を前提としても、前記(8)ウに記載されたのと同様の理由により、第5要件を欠くというべきであり、本件装置発明について均等は成立しない。
(11) 以上によれば、被告装置は、本件装置発明の技術的範囲に属さず、被告方法は、本件方法発明の技術的範囲に属さないものというべきである。
2 抗弁(権利濫用)についても検討する。
(1) 抗弁(1)(特許異議、無効審判の経過等)ア(特許異議)、イ(無効審判)の事実は当事者間に争いがない。
(2) 抗弁(3)(進歩性欠如)について検討する。
ア(ア) 乙8-1公報(乙第8号証の1)について、次の事実が認められる。
(a) 乙8-1公報は、本件特許出願前の平成12年1月17日に発行されたものであり、発明の名称を「画像プリント供給装置」とする発明に係るものである。
(b) 乙8-1公報には、次のとおり記載されている。
「少なくとも、被写体の画像情報を撮影する撮影機と、該撮影機で撮影された被写体の画像情報を表示するディスプレイとを備え、前記撮影機による被写体の撮影と、前記ディスプレイによる画像情報の表示は、それぞれハーフミラーを介して行われる画像プリント供給装置において、前記撮影機には、該撮影機を回転させるためのチルト手段と、前記撮影機の位置を前記ハーフミラーに沿って斜め方向に移動させるためのスライド手段とが設けてあり、前記チルト手段は、前記撮影機を保持する支持具と、該支持具を回転させる駆動源たる第1のアクチュエーターとを有し、前記スライド手段は、前記支持具を回転可能に保持する基台と、該基台をスライドさせる駆動源たる第2のアクチュエータとを有することを特徴とする画像プリント供給装置。」(【請求項1】) 「前記撮影機によって撮影された被写体の画像情報は、三次元式座標変換及び横方向に3〜5%の縮小補正が加えられることを特徴とする請求項1又は請求項2の画像プリント供給装置。」(【請求項3】) 「本発明は、撮影された被写体の画像情報又はこれと各種背景情報の合成情報をシール又はポストカード上にプリント再生して供給する画像プリント供給装置において、その撮影機の回転及び移動を可能とすることで、撮影ポイントを調整し得るようにし、特に、それによって被写体の全身を撮影できるようにした画像プリント供給装置であり・・・」(【0001】) 「従来から、被写体の画像情報や、その背景情報との合成情報をプリント再生して供給する様々な機種が開発されているが、その多くは被写体の顔部を撮影するポジションに撮影機が固定されているため、その撮影範囲は顔部からせいぜい胸元付近までであり、到底、被写体の全身を撮影することはできなかった。」(【0002】) 「・・・最近では、広角レンズを備えた撮影機を用いて被写体の全身を撮影できるものも開発されているが、広角レンズ特有の間延びした画像となり、
その画像情報をソフトウエアで補正してはいるものの、顔部や上半身が大きく強調された不自然な画像プリントしか得られないのが現状であった。」(【0003】) 「更に、撮影機を移動して被写体を撮影する装置としては、特開平7-298123号の公開公報に示される画像印刷装置が存在し、これは撮影機の縦方向と横方向(円周方向)の移動を可能としているが、被写体となる人が腰掛けた状態で撮影機を移動させるもので、また、何ら画像情報の補正手段を備えていないため、到底、被写体の全身を撮影し、その忠実な画像プリントを得ることはできなかった。」(【0004】) 「本発明は如上の点を考慮して開発されたもので、その解決すべき課題は、撮影機にその回転及び移動の機能を付加することで、被写体の背の高低に拘わらず、撮影機の撮影ポイントを自由に調整し得るようにし、特に、被写体の全身を撮影でき、且つ、恰も正面から撮影したような自然な画像プリントを供給できる画像プリント供給装置を、安価にて提供せんとするものである。」(【0005】) 「本発明は、如上の課題を解決するための手段として、先ず、請求項1の本発明では、少なくとも、被写体の画像情報を撮影する撮影機と、該撮影機で撮影された被写体の画像情報を表示するディスプレイとを備え、前記撮影機による被写体の撮影と、前記ディスプレイによる画像情報の表示は、それぞれハーフミラーを介して行われる画像プリント供給装置において、前記撮影機には、該撮影機を回転させるためのチルト手段と、前記撮影機の位置を前記ハーフミラーに沿って斜め方向に移動させるためのスライド手段とが設けてあり、前記チルト手段は、前記撮影機を保持する支持具と、該支持具を回転させる駆動源たる第1のアクチュエータとを有し、前記スライド手段は、前記支持具を回転可能に保持する基台と、該基台をスライドさせる駆動源たる第2のアクチュエータとを有する構成の画像プリント供給装置を提案するものである。」(【0006】) 「・・・前記撮影機によって撮影された画像情報に、三次元式座標変換及び横方向に3〜5%の縮小補正を加えてなる画像プリント供給装置について提案するものである。」(【0010】) 「本発明に係る画像プリント供給装置は、被写体を撮影するための撮影機に回転及び位置移動の機能を持たせたため・・・」(【0011】) 「また、本発明に係る画像プリント供給装置では、前記撮影機による被写体の撮影と、前記ディスプレイによる画像情報の表示を、ハーフミラーを介して行うことで、表情やポーズの決定を容易にし、より自然な画像情報を撮影することができる。」(【0012】) 「また、本発明に係る画像プリント供給装置では、前記撮影機が取り付けられた支持具を保持する基台が載置され、且つ、その移動を案内する案内片を設けることで、前記基台のスライドを安定的に行うことができる。」(【0013】) 「更に、本発明に係る画像プリント供給装置では、前記撮影機の回転及び移動を遠方から行える遠隔操作手段を設けることで、それまでは、固定された撮影機の撮影ポイントに合わせて、被写体となる利用者自らが移動していたものが、撮影機側を被写体に合わせて回転・移動できるため、所望とするポジションに居ながらにして、最適な撮影ポイントを調整することができる。」(【0014】) 「加えて、本発明に係る画像プリント供給装置では、撮影機によって撮影された被写体の画像情報、特に、被写体の全身が撮影された画像情報に、三次元式座標変換及び横方向に3〜5%の縮小補正を加えることで、恰も正面から撮影したかの如く、自然且つ望ましい八頭身体形の全身の画像プリントを供給することができる。」(【0015】) 「以下、本発明の望ましい実施例を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、撮影機9による被写体の撮影と、ディスプレイ12による画像情報の表示を、ハーフミラー8を介して行う場合の本発明に係る画像プリント供給装置を示すもので、撮影機9を回転させるチルト手段と、撮影機9の位置を移動させるスライド手段を設けられている。」(【0016】) 「図示したものは、ハーフミラー8を介して表示されるディスプレイ12の画像情報に加え、座標入力装置付き液晶モニター4からも、前記ディスプレイ12と同一の画像情報が表示できる、いわゆるツインモニター方式の画像プリント供給装置であり、データを書き込むための入力ペン6のほか、コイン投入部5、
照明7などが筐体2の外部に、また、PC(パーソナルコンピュータ)14、プリンタ13、コインセレクター(図示しない)などが、前記したハーフミラー8、撮影機9、ディスプレイ12などと共に筐体2の内部に設けられている。」(【0017】) 「なお、図示したものは、ハーフミラー8を介して撮影機9による撮影とディスプレイ12による画像表示を行う場合の実施例であるため、撮影機9は筺体2内部のハーフミラー8を挟んで被写体とは反対側に設けられているが、ハーフミラー8を用いない場合は、筺体2の外部などの、撮影機9の回転及び位置移動を妨げない部分に取り付けられることになる。」(【0018】) 「図3は本発明に係る画像プリント供給装置の構成を示すブロック図であり、ハードウエア部とソフトウエア部との相関関係、及び、各種情報信号及び制御信号の流れを示すものである。図示されていないが、ハーフミラーを用いた場合の本発明では、当然のことながら、撮影機9とディスプレイ12にはハーフミラー8が介在することになる。」(【0019】) 「・・・本発明に係る画像プリント供給装置における撮影機9において・・・」(【0020】) 「撮影機9を回転させるチルト手段は、撮影機9を保持する支持具15と、該支持具15を回転させるための駆動源となる第1のアクチュエータ18とを主たる構成要素とし、第1のアクチュエータ18に備え付けのギア21は、前記支持具15に備え付けのギア22と噛合している。撮影機9は支持具15に備え付けの連結片16に連結・固定されており、支持具15と一体で回転することになるが、その取り付け方法についてはこれに限定されない。」(【0021】) 「・・・撮影機9の位置を移動するスライド手段は・・・」(【0022】) 「・・・撮影機9を保持する支持具15・・・」(【0023】) 「・・・支持具15は前記基台17に保持された状態で撮影機9を伴って回転する。」(【0024】) 「従来の画像プリント供給装置は多くが固定式の撮影機を用いていたが、本発明では、全身を撮影するに際して、赤外線リモコン等の遠隔操作手段26を用いて撮影機9の回転及び位置移動を行うことができるため、『カメラ遠隔操作』の処理工程を有している。」(【0025】) 「図7は本発明に係る画像プリント供給装置において、特に、図6(B)の『カメラ遠隔操作』の工程時における撮影機9の状態と、該撮影機9と被写体との位置関係を示す概略側面図である。被写体の顔部からせいぜい胸元辺りまでを撮影する場合は、被写体となる利用者は図中(a)のポジション、すなわち、
装置本体1の直前に位置しており、撮影機9を回転も移動もさせずに図中(イ)の部位に位置させておけば良いが、被写体の全身を撮影する場合は、被写体となる利用者は図中(b)のポジション付近まで後退し、撮影機9を図中(ロ)の部位まで移動させ、且つ、撮影機9のレンズが被写体の全身を捕らえるよう回転させることになる。」(【0026】) 「先ず、コイン投入部5に所定のコインを投入して、画像プリント供給装置の装置本体1を利用可能な状態にする。次に、座標入力装置付き液晶モニター4に表示された各種モードの中から、『全身モードオペレーション』の項目を備え付けの入力ペン6を用いて選択する。」(【0029】) 「続いて、所望とする印刷の方向(縦横)とフレーム及び背景を選択すると、表情やポーズを決定するため、被写体たる利用者は装置本体1から離れ、
全身撮影に適した図7のポジション(b)付近まで後退する。その際、遠隔操作手段26を備えており、離れたポジションからでも様々な指示制御ができるため、これを持って移動することで、所望のポジションに居ながらにして、装置本体1に各種指示を与えることができる。通常、全身撮影に適したポジションは、筐体2から延出したアーム10の先端から吊り下げられたカーテン11に最も寄った位置となる。」(【0030】) 「次いで、画面3をモニターしながら、遠隔操作手段26を用いて、
基台17を図7の(ロ)付近の部位まで移動させると共に、撮影機9が保持される支持具15を自己の全身が写し出されるまで回転させ、更に、画像の大小をズーム調整することになる。なお、基台17の移動の際、それを載置し案内する案内片25が設けてあるため、基台17は案内片25上をスムース且つ安定的に移動することができる。また、被写体の撮影とその画像情報の表示をハーフミラー8を介して行うため、被写体となる利用者は常に画面3をモニターしながら、好みの表情やポーズを決定することができる。」(【0031】) 「かくして、所望とする全身画像が写し出されるよう撮影機9の部位を調整し終えたら、遠隔操作手段26を用いて撮影を行う。次いで、撮影された画像が画面3に表示されるので、それが気に入った場合は『確定』を選択することで次の作業に移行するが、若し、気に入らなければ、『キャンセル』を選択することで図6(B)中の『カメラ遠隔操作』の前段階に戻り、再度、撮影機9の部位を調整して撮影し直すことになる。」(【0032】) 「撮影された画像が気に入り、『確定』を選択した場合は、被写体たる利用者は装置本体1まで戻り、座標入力装置付き液晶モニター4上で入力ペン6によって所望とするメッセージやカラーを選択し、且つ、好みの文字や図形等を書き込むことで、全ての工程が終了し、しばらくして所望とする画像プリントが供給されることになる。」(【0033】) 「本発明に係る画像プリント供給装置は、撮影機の回転及びハーフミラーに沿った斜め方向移動を可能としたため、最適な撮影ポイントを微細に調整することができ、特に、被写体の全身を容易に撮影することができる。」、「本発明に係る画像プリント供給装置は、撮影機の回転及び位置移動を可能としたことで、
最適な撮影ポイントを微細に調整することができ、特に、被写体の全身を容易に撮影することができる。」(【0034】) 「請求項2の本発明では、基台の移動を案内する案内片が設けてあるため、該基台に保持される支持具に取り付けられた撮影機の位置移動を、スムーズ且つ安定的に行うことができる。」(【0036】) (c) 乙8-1公報の図1(同公報記載の発明に係る画像プリント供給装置の実施例を示す概略斜視図)には、照明7が、画像プリント供給装置の正面であって画面3の左右両側と上に当たる位置に設けられていることが示されている。
乙8-1公報の図1、図2(図1の画像プリント供給装置の内部構造を示す概略的な側部断面図)には「画面3」、「座標入力装置付き液晶モニター4」が示されている。
乙8-1公報の図2には「プリンター13」が示されており、また、
「画面3」の前方の「ハーフミラー8」の更に前方に「撮影機9」が示されている。
乙8-1公報の図3として、同公報記載の発明に係る画像プリント供給装置の構成を示すブロック図が示され、そこには、「CCDカメラ」、「照明部」、「プリンタ」が示されている。
乙8-1公報の図4(案内片を設けた場合の同公報記載の発明に係る画像プリント供給装置のパンニング手段とスライド手段の構造を示す概略的な正面断面図)、図5(同公報記載の発明に係る画像プリント供給装置における支持具の回転と基台の移動の状況を示す概略側面図)、図7(図6(B)のフローチャート中「カメラ遠隔操作」時における同公報記載の発明の画像プリント供給装置の撮影機の状態と、該撮影機と被写体との位置関係を示す概略側面図)には、「撮影機9」が示されている。
乙8-1公報の図6(A)(同公報記載の発明に係る画像プリント供給装置における全体の処理工程の流れを示すフローチャート)には、モードセレクトによる選択により、全身モードオペレーション、上半身モードオペレーション、
顔アップモードオペレーションのいずれかを経た後、シール印刷に至ることが示されている。
乙8-1公報の図7として、図6(B)のフローチャート中「カメラ遠隔操作」時における同公報記載の発明の画像プリント供給装置の撮影機の状態と、該撮影機と被写体との位置関係を示す概略側面図が示されている。
(イ) 乙8-1公報に記載された発明と本件特許発明を対比すると、その一致点は次のとおりであると認められる。
(a) 前記(ア)(b)認定の乙8-1公報の「先ず、コイン投入部5に所定のコインを投入して、画像プリント供給装置の装置本体1を利用可能な状態にする。」(【0029】)という記載によれば、同公報記載の発明について、投入された貨幣を処理し、画像プリント供給装置の装置本体1を利用可能な状態にする手段を有することが示されていると認められるから、同公報には、本件特許発明構成要件A1(「投入貨幣を処理する貨幣処理手段と、」)が記載されているものと認められる。
(b) 前記(ア)(b)認定の乙8-1公報の「データを書き込むための入力ペン6」(【0017】)、「座標入力装置付き液晶モニター4に表示された各種モードの中から、『全身モードオペレーション』の項目を備え付けの入力ペン6を用いて選択する。」(【0029】)、「遠隔操作手段26を備えており、離れたポジションからでも様々な指示制御ができるため、これを持って移動することで、所望のポジションに居ながらにして、装置本体1に各種指示を与えることができる。」(【0030】)、「画面3をモニターしながら、遠隔操作手段26を用いて、基台17を図7の(ロ)付近の部位まで移動させると共に、撮影機9が保持される支持具15を自己の全身が写し出されるまで回転させ、更に、画像の大小をズーム調整することになる。」(【0031】)、「所望とする全身画像が写し出されるよう撮影機9の部位を調整し終えたら、遠隔操作手段26を用いて撮影を行う」(【0032】)、「座標入力装置付き液晶モニター4上で入力ペン6によって所望とするメッセージやカラーを選択し、且つ、好みの文字や図形等を書き込むことで、全ての工程が終了し」(【0033】)という記載によれば、同公報記載の「入力ペン6」及び「遠隔操作手段26」は、撮像や画像編集その他必要な操作を入力するための手段であると認められるから、同公報には、本件特許発明構成要件B1(「撮像や画像編集その他必要な操作を入力する入力手段と、」)が記載されているものと認められる。
(c) 前記(ア)(b)認定のとおり、乙8-1公報には「照明7」(【0017】)が記載され、前記(ア)(c)認定のとおり、同公報の図1には、照明7が、画像プリント供給装置の正面であって画面3の左右両側と上に当たる位置に設けられていることが示されており、図3には、「照明部」が示されているから、同公報には、「被写体を照明する照明手段」が記載されているものと認められる。
(d) 前記(ア)(b)認定のとおり、乙8-1公報には、「撮影機」について言及する箇所が多数存在し(【請求項1】、【請求項3】、【0001】ないし【0006】、【0010】ないし【0026】、【0031】、【0032】、
【0034】、【0036】)、前記(ア)(c)認定のとおり、乙8-1公報の図2、
図4、図5、図7には、「撮影機9」が示されており、同公報の図3には、「CCDカメラ」、「照明部」が示されており、同公報の図7として、図6(B)のフローチャート中「カメラ遠隔操作」時における同公報記載の発明の画像プリント供給装置の撮影機の状態と、該撮影機と被写体との位置関係を示す概略側面図が示されているから、同公報の「撮影機9」はカメラであってもよいものと認められ、同公報には、本件特許発明構成要件E1(「被写体を撮像するカメラと、」)が記載されているものと認められる。
(e) 前記(ア)(b)認定のとおり、乙8-1公報には、「撮影機で撮影された被写体の画像情報を表示するディスプレイ」、「前記撮影機による被写体の撮影と、前記ディスプレイによる画像情報の表示は、それぞれハーフミラーを介して行われる画像プリント供給装置」(【請求項1】、【0006】)、「前記撮影機による被写体の撮影と、前記ディスプレイによる画像情報の表示を、ハーフミラーを介して行うことで」(【0012】)、「撮影機9による被写体の撮影と、ディスプレイ12による画像情報の表示を、ハーフミラー8を介して行う場合の本発明に係る画像プリント供給装置」(【0016】)、「ハーフミラー8を介して表示されるディスプレイ12の画像情報に加え、座標入力装置付き液晶モニター4からも、前記ディスプレイ12と同一の画像情報が表示できる、いわゆるツインモニター方式の画像プリント供給装置」(【0017】)、「ハーフミラー8を介して撮影機9による撮影とディスプレイ12による画像表示を行う場合の実施例」(【0018】)、「・・・撮影機9とディスプレイ12にはハーフミラー8が介在することになる。」(【0019】)、「座標入力装置付き液晶モニター4に表示された各種モード」(【0029】)、「被写体の撮影とその画像情報の表示をハーフミラー8を介して行うため、被写体となる利用者は常に画面3をモニターしながら、好みの表情やポーズを決定することができる。」(【0031】)、「撮影された画像が画面3に表示されるので」(【0032】)と記載されており、「ディスプレイ12」に表示された画像情報等は、「ハーフミラー8」を介して、そのまま「画面3」に表示されるものと認められる。そして、前記(ア)(c)認定のとおり、
同公報の図1、図2には「画面3」、「座標入力装置付き液晶モニター4」が示されている。これらの認定事実によれば、乙8-1公報記載の「画面3」、「座標入力装置付き液晶モニター4」は、撮像画像や編集画像その他必要事項を表示する表示手段に該当するものと認められ、同公報には、本件特許発明構成要件F1(「撮像画像や編集画像その他必要事項を表示する表示手段と、」)が記載されているものと認められる。
(f) 前記(ア)(b)認定のとおり、乙8-1公報には、「プリンタ13」(【0017】)と記載され、前記(ア)(c)認定のとおり、同公報の図3には「プリンタ」が示され、同公報の図6(A)には、同公報記載の発明に係る画像プリント供給装置における全体の処理工程の流れを示すフローチャートの中に「シール印刷」が示されているから、同公報には、本件特許発明構成要件G1(「撮像画像や編集画像の写真シールをプリントして放出するプリンタ」)が記載されているものと認められる。
(g) 前記(ア)(b)認定のとおり、乙8-1公報には、「PC(パーソナルコンピュータ)14」(【0017】)、「図3は本発明に係る画像プリント供給装置の構成を示すブロック図であり、ハードウエア部とソフトウエア部との相関関係、及び、各種情報信号及び制御信号の流れを示すものである。」(【0019】)と記載され、前記(ア)(c)認定のとおり、同公報の図3として上記内容の図が示されているから、同公報には、本件特許発明構成要件H1(「これら構成要素を制御する制御手段とを備え、」)が記載されているものと認められる。
(h) 前記(ア)(c)認定のとおり、乙8-1公報の図1には、照明7が、画像プリント供給装置の正面であって画面3の左右両側と上に当たる位置に設けられていることが示されており、同公報の図2には、「画面3」の前方の「ハーフミラー8」の更に前方に「撮影機9」が示されているから、照明7は、画像プリント供給装置の正面であって撮影機9の左右に当たる位置に設けられていることとなり、
また、前記(d)記載のとおり「撮影機9」はカメラであってもよいものと認められ、
後記(l)記載のとおり、同公報記載の「画像プリント供給装置」は、本件装置発明の「写真シール自動販売機」に該当すると認められるから、同公報には、「写真シール自動販売機の正面であって、カメラの左右位置に照明手段が配置されていること」が記載されているものと認められる。
(i) 前記(ア)(b)認定のとおり、乙8-1公報には、「先ず、コイン投入部5に所定のコインを投入して、画像プリント供給装置の装置本体1を利用可能な状態にする。次に・・・」(【0029】)と記載されているから、同公報には、
本件特許発明構成要件J1(「前記貨幣処理手段への貨幣投入に基づいてプレイ操作を許容し、」)が記載されているものと認められる。
(j) 前記(h)記載のとおり、乙8-1公報には、「写真シール自動販売機の正面であって、カメラの左右位置に照明手段が配置されていること」が記載されているものと認められ、前記(e)記載のとおり、同公報記載の「画面3」、「座標入力装置付き液晶モニター4」は、撮像画像や編集画像その他必要事項を表示する表示手段に該当するものと認められる。また、前記(ア)(b)認定のとおり、同公報には、「被写体の撮影とその画像情報の表示をハーフミラー8を介して行うため、被写体となる利用者は常に画面3をモニターしながら、好みの表情やポーズを決定することができる。」(【0031】)、「かくして、所望とする全身画像が写し出されるよう撮影機9の部位を調整し終えたら、遠隔操作手段26を用いて撮影を行う。次いで、撮影された画像が画面3に表示されるので、それが気に入った場合は『確定』を選択することで次の作業に移行するが・・・」(【0032】)と記載されている。そうすると、同公報には、「カメラの左右に配置した照明手段の照光によって表示手段に撮像ポーズを表示するとともに撮像ポーズの確認を可能としていること」、「カメラで被写体を撮像した後、表示手段に撮像画像を表示すること」が記載されているものと認められる。
(k) 前記(ア)(b)認定のとおり、乙8-1公報には、「撮影された画像が気に入り、『確定』を選択した場合は、被写体たる利用者は装置本体1まで戻り、
座標入力装置付き液晶モニター4上で入力ペン6によって所望とするメッセージやカラーを選択し、且つ、好みの文字や図形等を書き込むことで、全ての工程が終了し、しばらくして所望とする画像プリントが供給されることになる。」(【0033】)と記載されており、前記(g)記載のとおり、同公報には構成要件H1(「これら構成要素を制御する制御手段とを備え、」)が記載されているものと認められるから、同公報には、本件特許発明構成要件M1(「撮像後前記表示手段に表示された画像に画像編集を許容し、」)、本件装置発明の構成要件N1(「画像確定後プリンタで写真シールをプリントして放出すべく前記制御手段を設定した」)、本件方法発明の構成要件N1′(「画像確定後プリンタで写真シールをプリントして放出する」)が記載されているものと認められる。
(l) 前記(i)記載のとおり、乙8-1公報には、本件特許発明構成要件J1(「前記貨幣処理手段への貨幣投入に基づいてプレイ操作を許容し、」)が記載されているものと認められ、前記(k)記載のとおり、同公報には、本件装置発明の構成要件N1(「画像確定後プリンタで写真シールをプリントして放出すべく前記制御手段を設定した」)、本件方法発明の構成要件N1′(「画像確定後プリンタで写真シールをプリントして放出する」)が記載されていると認められるから、同公報記載の「画像プリント供給装置」は、本件装置発明の「写真シール自動販売機」に該当し、同公報には、本件装置発明の「写真シール自動販売機」、本件方法発明の「写真シール自動販売方法」が記載されているものと認められる。
(ウ) これまで述べたところによれば、乙8-1公報に記載された発明と本件特許発明の相違点は、次のとおりであると認められる。
(a) 本件特許発明は、連続照明手段の他に、「プリント画像の撮像に同期して被写体をストロボ発光して照明するストロボ照明手段」(本件特許発明構成要件D1)を備えるのに対し、乙8-1公報には、そのようなストロボ照明手段についての記載はない。
(b) 本件特許発明は、カメラの左右位置にストロボ照明手段と連続照明手段とのそれぞれを並設した状態で配置した(構成要件I1)ものであるのに対し、乙8-1公報には、そのような記載はない。
(c) 本件特許発明は、連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像するのに対し、乙8-1公報には、そのような記載はない。
イ(ア)(a) 乙8-1公報に記載された発明と本件特許発明の相違点のうち、本件特許発明は、連続照明手段の他に、「プリント画像の撮像に同期して被写体をストロボ発光して照明するストロボ照明手段」(本件特許発明構成要件D1)を備えるのに対し、乙8-1公報には、そのようなストロボ照明手段についての記載はないこと(前記ア(ウ)(a))について検討する。
(b) 乙8-2公報(乙第8号証の2)は、発明の名称を「自動写真撮影装置」とする、人物の写真を自動的に撮影する装置の発明に係るものであり、同公報には、「ブース内部は壁4の開放部あるいは透明パネルあるいは半透明パネル背後の上方もしくは下方部分に適当に配置された光源27、28、29(例えばフラッシュライト)により照明され得る。」(同公報5頁左欄21行ないし25行)と記載され、その第3図(装置の略図的断面図)には、自動写真撮影装置の前面部にカメラ20及び鏡面ガラス10が配置されていることが示されており、第6図(装置の内部立面図)には、同装置の内部の前面に光源27、28、29が配置されていることが示されている。
乙8-3公報(乙第8号証の3)は、発明の名称を「写真撮影スタジオ装置」とする、証明用写真等の撮影に用いられる自動の写真撮影スタジオ装置の発明に係るものであり、同公報には、「光源は、銀塩写真の場合は、ストロボとモデリングライトを対にした光源が望ましい。」(同公報【0010】)と記載されている。
(c) 本件特許発明は、「例えば、娯楽施設(例えば、ゲームセンタ)において、デジタルカメラで撮像した画像をカラープリンタでシール紙出力するような写真シール自動販売方法および写真シール自動販売機に関する」(本件明細書【0001】)ものであり、乙8-1公報記載の発明は、「遊技場やゲームセンターにおける娯楽機」(同公報【0001】)等に関するものであり、いずれもいわゆるプリクラ機に関するものであるのに対し、乙8-2公報記載の発明は、「パスポートタイプの人物写真もしくは肖像写真」(同公報3頁右欄12行ないし13行)等の自動写真撮影装置に関するもの、乙8-3公報記載の発明は、「証明用写真等」(同公報【0005】)の自動の写真撮影スタジオ装置に関するものである。
しかし、乙8-2公報及び乙8-3公報に記載された発明も、本件特許発明及び乙8-1公報に記載された発明も、使用者が自らの写真を撮影するための機械の発明である点で共通する。乙8-2公報には、「上述した撮影装置はパスポートタイプの人物写真もしくは肖像写真、あるいは例えば人物写真を興味深い、
もしくは娯楽的な背景もしくは前景あるいは補助的写真ないし装飾などと重ね合わせもしくは併べ合わせて成るおもしろい複合写真をもたらすために使用され得る。」(同公報3頁右欄12行ないし16行)と記載され、同公報記載の自動写真撮影装置が娯楽等のために用いられることが示されている。また、本件特許に対する平成14年5月7日付異議申立書(乙第12号証)添付の甲第10号証(平成10年10月16日付「日刊工業新聞」の記事)は、新たに発売されたシール写真の自動販売機に関する新聞記事であるところ、同自動販売機は証明写真にも使えることが特徴である旨記載されている。
したがって、証明写真等の自動写真撮影装置と娯楽用のいわゆるプリクラ機は、近接した技術領域に属するものと認められ、乙8-2公報又は乙8-3公報に開示された事項を、乙8-1公報記載の発明に適用することは、当業者にとって容易であると認められる。
(d) さらに、弁論の全趣旨によれば、写真を撮影する際にストロボ照明手段を用いることは周知、慣用の技術であることが認められる。
(e) これらの認定事実によれば、乙8-1公報記載の発明の照明手段としてストロボ照明手段を使用することは、格別困難であるとは認められず、当業者であれば容易になし得るものと認められる。
(イ)(a) 乙8-1公報に記載された発明と本件特許発明の相違点のうち、本件特許発明は、カメラの左右位置にストロボ照明手段と連続照明手段とのそれぞれを並設した状態で配置した(構成要件I1)ものであるのに対し、乙8-1公報には、そのような記載はないこと(前記ア(ウ)(b))について検討する。
(b) 乙8-3公報には、「光源は、銀塩写真の場合は、ストロボとモデリングライトを対にした光源が望ましい。また、デジタルカメラの場合は、ハロゲンランプ等を使用する。」(同公報【0010】)、「銀塩写真用のカメラをカメラ設置位置Cに設置して撮影する場合、各光源はストロボとモデリングライトを対にした光源としてあるので」(同公報【0021】)と記載されているから、同公報には、ストロボ照明手段と連続照明手段を並設した状態で配置することが記載されているものと認められる。
また、乙8-3公報には、「第1サイド光源1,2は、第1サイド光源室11,12の前方に設けられた断面略円弧状の反射板25,25′に光を反射させて、拡散板26,26′で光を拡散させて椅子19に座っている人の上半身にサイド前方から光を当てるようにしてある。」(同公報【0011】)と記載されており、同公報の「図面の簡単な説明」及び図1、図2によれば、「Cカメラ設置位置」は、写真撮影スタジオ装置の前方中央にあり、その左右の位置に、それぞれ、第1サイド光源1,2、反射板25,25′、拡散板26,26′が配置されることが示されている。
(c) 前記(ア)(c)認定のとおり、乙8-3公報に開示された事項を乙8-1公報記載の発明に適用することは、当業者にとって容易である。
(d) これらの認定事実によれば、乙8-1公報記載の発明の照明手段の配置方法として、カメラの左右位置にストロボ照明手段と連続照明手段とのそれぞれを並設した状態で配置するということは、格別困難であるとは認められず、当業者であれば容易になし得るものと認められる。
(ウ)(a) 乙8-1公報に記載された発明と本件特許発明の相違点のうち、本件特許発明は、連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像するのに対し、乙8-1公報には、そのような記載はないこと(前記ア(ウ)(c))について検討する。
(b) 乙8-3公報の段落【0019】ないし【0023】には、同公報の図3に示されたコントローラ40の使用方法が記載されており、その中に、「プッシュスイッチを押すと、対応するモデリングライトが点灯する。」(同公報【0021】)という記載と、「図2の例では足元に設置された足踏みスイッチ38を踏み込むと、カメラのシャッターを切られると同時に、プッシュスイッチが押されているストロボが発光し、選択したライティング見本に近い写真が撮影できる。」(同公報【0023】)という記載があり、両記載の間に、モデリングライトを消灯したという記載がないから、同公報には、カメラによる撮影時に、モデリングライトも点灯したままであり、モデリングライトとストロボの双方による照光が行われたことが記載されているとみることができる。
また、撮影時に連続照明手段とストロボ照明手段をどのように組み合わせて用いるかということは、当業者が適宜決定することのできる設計的な事項であるというべきである。
(c) 前記(ア)(c)認定のとおり、乙8-3公報に開示された事項を乙8-1公報記載の発明に適用することは、当業者にとって容易である。
(d) これらの認定事実によれば、乙8-1公報記載の発明の撮像時の照明の方法として、連続照明手段とストロボ照明手段とで被写体を照光してカメラで撮像することは、格別困難であるとは認められず、当業者であれば容易になし得るものと認められる。
ウ 以上によれば、本件特許発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙8-1公報、乙8-2公報、乙8-3公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項により特許を受けることができないものであり、本件特許には、同法29条2項の規定に違反して特許がされたという無効理由(同法123条1項2号)が存在することが明らかである。
原告は、公知のストロボ照明手段をプリクラ機に使用することは、長年にわたって困難とされ、実用化されていなかったが、本件特許発明は、特定の構成を採用することにより、この困難を克服し、プリクラ機にストロボ照明手段を使用することを初めて実現し、商業的成功まで収めた旨主張する。しかし、原告主張のような本件特許発明実施品による商業的成功の事実があるとしても、上記説示に照らして、本件特許発明進歩性を欠如するものであるとの上記認定判断を左右するものではない。
エ(ア) 本件無効審決は未だ確定していないから、現時点において、本件特許権の特許出願の願書に添付された明細書、図面の内容は、本件公報記載のとおりであるが、本件無効審決によって認められた訂正を前提に、本件特許の無効について検討する。
(イ)(a) 本件無効審決により認められた訂正の内容は別紙2(審決書)の「理由」、「第2.訂正の適否についての判断」、「1.訂正の内容」欄記載のとおりであり、このような訂正を前提とした場合、乙8-1公報に記載された発明と本件特許発明(訂正後)の相違点は、前記ア(ウ)(a)ないし(c)のほか、撮像する手段が、本件特許発明(訂正後)は「デジタルカメラ」であるのに対し、乙8-1公報記載の発明はカメラである点、本件特許発明(訂正後)においては、ストロボ照明手段と連続照明手段を、ストロボ照明手段がデジタルカメラ側になるようにして並設するが、乙8-1公報にはそのような記載がない点にも存在することとなる。
(b) 乙8-1公報に記載された発明と本件特許発明(訂正後)の相違点のうち前記ア(ウ)(a)ないし(c)については、前記イ(ア)ないし(ウ)記載のとおり、乙8-1公報、乙8-2公報、乙8-3公報記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものと認められる。
(c) 乙8-1公報に記載された発明と本件特許発明の相違点のうち、撮像する手段が、本件特許発明(訂正後)は「デジタルカメラ」であるのに対し、乙8-1公報記載の発明はカメラである点について検討する。
乙8-1公報には、前記ア(ア)(c)認定のとおり、図3に「CCDカメラ」が示されており、これはCCDイメージセンサを用いたカメラであり、デジタル信号を用いるから、「デジタルカメラ」に該当し、乙8-1公報には既に、「デジタルカメラ」が開示されていると認められる。また、乙8-3公報には「デジタルカメラ」(同公報【0010】)と記載されている。撮影の手段としてデジタルカメラを選択することは、当業者が適宜決定できる設計的な事項であるともいえる。
これらの認定事実によれば、乙8-1公報記載の発明における撮像の手段として「デジタルカメラ」を用いることは、同公報に既に開示されているし、
仮にそのように開示されている点を措くとしても、格別困難であるとは認められず、当業者であれば容易になし得るものと認められる。
(d) 乙8-1公報に記載された発明と本件特許発明の相違点のうち、本件特許発明(訂正後)においては、ストロボ照明手段と連続照明手段を、ストロボ照明手段がデジタルカメラ側になるようにして並設するが、乙8-1公報にはそのような記載がない点について検討する。
前記イ(イ)(d)記載のとおり、乙8-1公報記載の発明の照明手段の配置方法として、カメラの左右位置にストロボ照明手段と連続照明手段とのそれぞれを並設した状態で配置するということは、格別困難であるとは認められず、当業者であれば容易になし得るものと認められる。そして、ストロボ照明手段と連続照明手段の二つの部材を並設する際にどのように配置するかということは、当業者が必要に応じて適宜決定することのできる設計的な事項であるというべきである。
そうすると、乙8-1公報記載の発明の照明手段の配置方法として、
カメラの左右位置にストロボ照明手段と連続照明手段とのそれぞれを並設した状態で配置する場合に、ストロボ照明手段がデジタルカメラ側になるようにして並設することは、格別困難であるとは認められず、当業者であれば容易になし得るものと認められる。
(ウ) したがって、本件無効審決により認められた訂正を前提としても、本件特許発明(訂正後)は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙8-1公報、乙8-2公報、乙8-3公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項により特許を受けることができないものであり、本件特許(訂正後)には、同法29条2項の規定に違反して特許がされたという無効理由(同法123条1項2号)が存在することが明らかである。
(3) 以上によれば、本件特許権に基づく差止め及び損害賠償の請求は、権利の濫用として許されないものというべきである。
3 よって、原告の本訴請求はいずれも理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 中平健
裁判官 大濱寿美
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