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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成11ワ5104特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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平成15ワ5443特許権侵害差止等請求事件 平成15ワ8228損害賠償請求事件 判例 特許
関連ワード 一定の効果 /  方法の発明 /  製造方法 /  29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  技術的範囲 /  発明の詳細な説明 /  分割出願 /  権利の濫用(権利濫用) /  出願経過 /  特許発明 /  実施 /  権原 /  間接侵害 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  業として /  差止請求(差止) /  侵害 /  乗じた額 /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 13年 (ワ) 2702号 損害賠償等請求事件
原告 ユニ・チャーム株式会社
訴訟代理人弁護士 近藤恵嗣
訴訟復代理人弁護士 梅澤健
被告 株式会社瑞光
訴訟代理人弁護士 竹内隆夫
同 井窪保彦
同 佐長功
同 原田崇史
同 清水聖子
同 細見孝次
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2002/07/23
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
1 被告は,原告に対し,26億円及びこれに対する平成13年3月3日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,別紙物件目録記載の構成のパンツ型おむつ製造装置を製造し又は販売してはならない。
事案の概要
本件は,使い捨てブリーフの製造装置に関する特許権及び使い捨てブリーフの製造方法に関する特許権を有する原告が,被告が製造販売するパンツ型おむつ製造装置及びその使用が原告の特許発明を充足し,かつ,同製造装置は原告の特許発明に係る製造方法にのみ使用する物であると主張して,被告に対して,同装置の製造販売の差止め及び損害賠償を求めているものである。これに対し,被告は,被告の製造販売する装置は原告の特許発明技術的範囲に属さず,間接侵害も成立しないなどと主張して,争っている。
1 前提となる事実等(証拠により認定した事実については,末尾に認定に用いた証拠を掲げた。)(1)原告の有する特許権 原告は,次の特許権(以下,@記載の特許権を「本件第1特許権」,A記載の特許権を「本件第2特許権」といい,両者を「本件各特許権」という。)を有する。
@ 特許番号 第2132959号 発明の名称 使い捨てブリーフの製造方法 出願日 平成元年6月29日(特願平1-167224号) 登録日 平成9年10月20日 A 特許番号 第2532824号 発明の名称 使い捨てブリーフの製造装置 出願日 平成元年6月29日(特願平1-167224号からの分割) 登録日 平成8年6月27日(2)特許請求の範囲 ア 本件第1特許権に係る明細書(平成7年1月30日付け手続補正書による補正後のもの。以下「本件第1明細書」という。また,同明細書を掲載した公報(甲2)を「本件第1公報」という。)における特許請求の範囲のうち,【請求項4】の記載は,次のとおりである(以下,同【請求項4】に係る発明を「本件第1発明」という。)。
「ブリーフの表裏面シートの一方を形成する連続ウエブ上にその長さ方向と同方向へそれぞれ複数の弾性糸からなる第1および第2連続弾性部材を導入し,前記連続ウエブのほぼ中央域の幅方向のほぼ各半分域で前記連続ウエブの長さ方向とそれぞれ交差するように進退動作し,前記連続ウエブの長さ方向と交差する方向へ互いに離間並列した複数の糸案内保持部をそれぞれ有して該方向へ互いに離間並列した第1および第2トラバース手段の該糸案内保持部の各々に前記第1および第2連続弾性部材の各弾性糸を保持し,前記第1および第2トラバース手段の前記進退動作により,前記連続ウエブ上において前記第1および第2連続弾性部材をこれらが前記連続ウエブの幅方向に互いに対向するサインカーブ状曲線を描くように一定周期で変位させて,該第1および第2連続弾性部材を前記連続ウエブ上に取り付け,前記連続ウエブにブリーフの他の構成部材を重ね合わせて連続複合ウエブを構成し,前記連続複合ウエブをその長さ方向中心線を介して二つに折り畳み,前記連続複合ウエブの構成後から前記二つに折り畳むまでの工程において前記連続複合ウエブの長さ方向に互いにほぼ対称的に対向する前記第1および第2連続弾性部材の前記変位部で囲まれる前記連続複合ウエブ部分を切除してレッグホールを形成し,前記折り畳んだ連続複合ウエブをその幅方向へ横切るとともに前記レッグホールの中央部とウエストラインに相当する前記連続複合ウエブの一側縁との間に帯状ヒートシール域を設け,個々のブリーフが前記連続複合ウエブの長さ方向と直交する幅方向へ向き該方向へ並列する連続ブリーフを構成し,前記連続ブリーフを前記帯状シール域に沿って該連続ブリーフの長さ方向に二分されるように該連続ブリーフの幅方向に分断し,よって,第1および第2弾性部材がそれぞれ中央部と両側部とを有するほぼU字形に湾曲し,前記第1および第2弾性部材の前記中央部が両レッグホール間を横切り,前記第1弾性部材の前記両側部が前記両レッグホールのほぼ前半分に沿って,かつ,前記第2弾性部材の前記両側部が前記両レッグホールの残りのほぼ後半分に沿って位置する個々のブリーフをうる各工程を含む使い捨てブリーフの製造方法。」 イ 本件第2特許権に係る明細書(平成9年9月30日付け訂正請求書による訂正後のもの。以下「本件第2明細書」という。)における特許請求の範囲のうち,【請求項1】の記載は,次のとおりである(以下,同【請求項1】に係る発明を「本件第2発明」という。)。
「両レッグホールの弾性部材を第1および第2弾性部材から構成し,前記第1および第2弾性部材をそれぞれ中央部と両側部とを有するほぼU字状に湾曲させ,前記第1および第2弾性部材の前記中央部をして前記両レッグホールの間を横切らせ,前記第1弾性部材の前記両側部を前記両レッグホールのほぼ前半分に沿って,かつ,前記第2弾性部材の前記両側部を前記両レッグホールの残りのほぼ後半に沿ってそれぞれ位置させた使い捨てブリーフのための製造装置であって,a)互いに離間並列する複数の第1糸案内保持部を有し,移動する連続ウエブのほぼ中央域の幅方向のほぼ半分域上で前記移動方向と交差するように進退動作し,前記第1糸案内保持部の各々に保持した伸長状態の各弾性糸からなる第1連続弾性部材を前記連続ウエブ上において前記移動方向と交差する方向へサインカーブ状曲線を描くように一定周期で変位湾曲させる第1トラバース手段と,b)前記連続ウエブの移動方向に前記第1トラバース手段と離間並列して配置してあって,互いに離間並列する複数の第2糸案内保持部を有し,前記ほぼ中央域の残りのほぼ半分域上で前記移動方向と交差するように進退動作し,前記第2糸案内保持部の各々に保持した伸長状態の各弾性糸からなる第2連続弾性部材を前記連続ウエブ上において前記移動方向と交差する方向へ前記第1連続弾性部材のサインカーブ状曲線の変位湾曲と前記連続ウエブの幅方向に互いに対向するサインカーブ状曲線を描くように一定周期で変位湾曲させる第2トラバース手段と,c)前記第1および第2連続弾性部材を前記変位湾曲状態で前記連続ウエブ上に接着剤を介し押圧して固定する手段とを含む前記製造装置。」(3)本件第1,第2発明の分説 本件第1,第2発明の特許請求の範囲を分説すれば,次のとおりである(以下,分説されたそれぞれを「構成要件A」などという。)。
【本件第1発明の分説】 A ブリーフの表裏面シートの一方を形成する連続ウエブ上にその長さ方向と同方向へそれぞれ複数の弾性糸からなる第1および第2連続弾性部材を導入し, B-1 前記連続ウエブのほぼ中央域の幅方向のほぼ各半分域で前記連続ウエブの長さ方向とそれぞれ交差するように進退動作し, B-2 前記連続ウエブの長さ方向と交差する方向へ互いに離間並列した複数の糸案内保持部をそれぞれ有して該方向へ互いに離間並列した B-3 第1および第2トラバース手段の該糸案内保持部の各々に前記第1および第2連続弾性部材の各弾性糸を保持し, C 前記第1および第2トラバース手段の前記進退動作により,前記連続ウエブ上において前記第1および第2連続弾性部材をこれらが前記連続ウエブの幅方向に互いに対向するサインカーブ状曲線を描くように一定周期で変位させて,該第1および第2連続弾性部材を前記連続ウエブ上に取り付け, D 前記連続ウエブにブリーフの他の構成部材を重ね合わせて連続複合ウエブを構成し, E 前記連続複合ウエブをその長さ方向中心線を介して二つに折り畳み, F 前記連続複合ウエブの構成後から前記二つに折り畳むまでの工程において前記連続複合ウエブの長さ方向に互いにほぼ対称的に対向する前記第1および第2連続弾性部材の前記変位部で囲まれる前記連続複合ウエブ部分を切除してレッグホールを形成し, G 前記折り畳んだ連続複合ウエブをその幅方向へ横切るとともに前記レッグホールの中央部とウエストラインに相当する前記連続複合ウエブの一側縁との間に帯状ヒートシール域を設け,個々のブリーフが前記連続複合ウエブの長さ方向と直交する幅方向へ向き該方向へ並列する連続ブリーフを構成し, H 前記連続ブリーフを前記帯状シール域に沿って該連続ブリーフの長さ方向に二分されるように該連続ブリーフの幅方向に分断し, I よって,第1および第2弾性部材がそれぞれ中央部と両側部とを有するほぼU字形に湾曲し,前記第1および第2弾性部材の前記中央部が両レッグホール間を横切り,前記第1弾性部材の前記両側部が前記両レッグホールのほぼ前半分に沿って,かつ,前記第2弾性部材の前記両側部が前記両レッグホールの残りのほぼ後半分に沿って位置する個々のブリーフをうる J 各工程を含む使い捨てブリーフの製造方法
【本件第2発明の分説】 A 両レッグホールの弾性部材を第1および第2弾性部材から構成し,前記第1および第2弾性部材をそれぞれ中央部と両側部とを有するほぼU字状に湾曲させ,前記第1および第2弾性部材の前記中央部をして前記両レッグホールの間を横切らせ,前記第1弾性部材の前記両側部を前記両レッグホールのほぼ前半分に沿って,かつ,前記第2弾性部材の前記両側部を前記両レッグホールの残りのほぼ後半に沿ってそれぞれ位置させた使い捨てブリーフのための製造装置であって, B.a)@ 互いに離間並列する複数の第1糸案内保持部を有し, A 移動する連続ウエブのほぼ中央域の幅方向のほぼ半分域上で前記移動方向と交差するように進退動作し, B 前記第1糸案内保持部の各々に保持した伸長状態の各弾性糸からなる第1連続弾性部材を前記連続ウエブ上において前記移動方向と交差する方向へサインカーブ状曲線を描くように一定周期で変位湾曲させる第1トラバース手段と, b)@ 前記連続ウエブの移動方向に前記第1トラバース手段と離間並列して配置してあって, A 互いに離間並列する複数の第2糸案内保持部を有し, B 前記ほぼ中央域の残りのほぼ半分域上で前記移動方向と交差するように進退動作し, C 前記第2糸案内保持部の各々に保持した伸長状態の各弾性糸からなる第2連続弾性部材を前記連続ウエブ上において前記移動方向と交差する方向へ前記第1連続弾性部材のサインカーブ状曲線の変位湾曲と前記連続ウエブの幅方向に互いに対向するサインカーブ状曲線を描くように一定周期で変位湾曲させる第2トラバース手段と, c)前記第1および第2連続弾性部材を前記変位湾曲状態で前記連続ウエブ上に接着剤を介し押圧して固定する手段と C を含む前記製造装置。
(4)被告の行為 被告は,別紙「納入先目録」記載のとおり,平成6年6月から同11年9月までの間に,同目録記載の各納入先に対して,パンツ型おむつ製造装置を製造して販売した(以下,目録記載のとおり各納入先に対して販売された装置14台を「被告装置」と総称する。)。
(5)被告装置1の構成 被告装置のうち,被告が平成9年7月ないし9月にトーヨー衛材株式会社に納入したパンツ型おむつ製造装置(別紙「納入先目録」の「被告顧客名」欄に「トーヨー衛材株式会社」,「推定納入・据付時期」欄に「1997年7月〜1997年9月」,「納入・据付場所」欄に「徳島県美馬郡貞光町 トーヨー衛材株式会社貞光工場」,「台数」欄に「1」と記載されている装置。以下「被告装置1」という。)の構成は,別紙物件目録記載のとおりである。
2 争点(1)原告は,被告装置1は本件各特許権を侵害するものであり(ただし,本件第1特許権については,納入先のおむつメーカーによる被告装置1の使用がその侵害に当たるとして直接侵害を主張するとともに,被告装置1の間接侵害を主張),それ以外の被告装置も,被告装置1と同様,別紙物件目録記載のとおりの構成であるから,本件各特許権の侵害の成否については被告装置1と同様の結論となると主張している。
これに対して,被告は,被告装置のうち被告装置1以外のものの構成については,認否を留保しつつ,被告装置1は本件各特許権のいずれも侵害しないと主張する。そして,それ以外の被告装置が被告装置1と同様の構成であるとして被告装置全部について本件各特許権の侵害をいう原告の主張に従えば,被告装置の全部について被告装置1と同様の結論となるはずであるとして,原告の請求全部の棄却を求めている。
そうすると,本件においては,まず,その構成が別紙物件目録記載のとおりのものであることについて争いのない被告装置1について,本件各特許権を侵害するものかどうか(ただし,本件第1特許権については,被告装置1の使用による直接侵害及び被告装置1の間接侵害)を検討すべきものである。
すなわち,仮に被告装置1が本件各特許権のいずれも侵害しないのであれば,それ以外の被告装置について被告装置1と同様の構成であるとして本件各特許権の侵害をいう原告の主張も,理由がないこととなる。他方,被告装置1が本件各特許権を侵害するのであれば,それ以外の被告装置について,被告においてその構成を明らかにした上で,本件各特許権の発明との対比において被告装置1とは異なることを主張しない限り,被告は被告装置の全部について本件各特許権侵害の責を負うべきこととなる。
そこで,本件各特許権侵害の成否については,まず,被告装置1について本件各特許権を侵害するものかどうかが,争点となるから,本件における争点は,下記@〜Dのとおりである。
(2)なお,被告装置1が本件第1,第2発明の技術的範囲に属するかについて,被告は,本件第1発明の構成要件B-2,C及び本件第2発明の構成要件B.a)B,B.b)@,B.b)Cの非充足を主張しており,本件第1,第2発明のその他の構成要件該当性については,明確に争っていない。
@ 被告装置が本件第1,第2発明の技術的範囲に属するか。(争点1) A 被告装置は,本件第1発明の実施にのみ使用する物として,特許法101条2号により本件第1特許権を侵害するとみなされるかどうか。(争点2) B 被告は,被告の納入先が被告装置を使用して本件第1,第2特許権の侵害行為によって原告に与えた損害につき,共同不法行為者として責任を負うか。(争点3) C 本件第2特許権には,無効理由が存在することが明らかであり,本件第2特許権に基づく差止め及び損害賠償の請求は権利の濫用に当たり許されないか。(争点4) D 損害賠償の額(争点5) 3 争点に関する当事者の主張(1)争点1(被告装置が本件第1,第2発明の技術的範囲に属するか。) 【原告の主張】 被告装置1は次のとおり,本件第1,第2発明の技術的範囲に属するものである。その余の被告装置も,その構成は被告装置1と同じであるから,同様に本件第1,第2発明の技術的範囲に属する。
ア 本件第1発明の構成要件B-2及び本件第2発明の構成要件B.b)@の充足性 本件第1発明の構成要件B-2は,「前記連続ウエブの長さ方向と交差する方向へ互いに離間並列した複数の糸案内保持部をそれぞれ有して該方向へ互いに離間並列した」という文言であり,また,本件第2発明の構成要件B.b)@は,「前記連続ウエブの移動方向に前記第1トラバース手段と離間並列して配置してあって,」という文言であるが,これらの「該方向」「移動方向」とは,トラバース手段がウエブに弾性部材を配置する目的を有することを前提にしていることから考えて,2枚のウエブが重ねられる前の位置での方向という意味であり,バック不織布(1)につき左下から右上方向,インナー不織布(2)につき右下から左上方向を意味し,別紙概念図のβγの方向という意味である。また,「離間並列」とは,現実にサインカーブ同士が交差している必要はなく,交差して描くことも可能なように第1,第2トラバース手段が配置されていればよい。
そして,被告装置1は,別紙概念図のβγの方向に,互いにすれ違える構造であり,被告装置1における2つの糸ゴムガイドは最も近づく位置において3.72mm交差している(甲13)から,「前記連続ウエブの長さ方向と交差する方向へ互いに離間並列した複数の糸案内保持部をそれぞれ有して該方向へ互いに離間並列した」,「前記連続ウエブの移動方向に前記第1トラバース手段と離間並列して配置してあって,」という文言を満たし,本件第1発明の構成要件B-2及び本件第2発明の構成要件B.b)@を充足する。
イ 本件第1発明の構成要件C及び本件第2発明の構成要件B.a)B,B.b)Cの充足性 本件第1発明の構成要件Cは,「前記第1および第2トラバース手段の前記進退動作により,前記連続ウエブ上において前記第1および第2連続弾性部材をこれらが前記連続ウエブの幅方向に互いに対向するサインカーブ状曲線を描くように一定周期で変位させて,該第1および第2連続弾性部材を前記連続ウエブ上に取り付け,」という文言であり,また,本件第2発明の構成要件B.a)Bは,「前記第1糸案内保持部の各々に保持した伸長状態の各弾性糸からなる第1連続弾性部材を前記連続ウエブ上において前記移動方向と交差する方向へサインカーブ状曲線を描くように一定周期で変位湾曲させる第1トラバース手段と,」,同発明の構成要件B.b)Cは,「前記第2糸案内保持部の各々に保持した伸長状態の各弾性糸からなる第2連続弾性部材を前記連続ウエブ上において前記移動方向と交差する方向へ前記第1連続弾性部材のサインカーブ状曲線の変位湾曲と前記連続ウエブの幅方向に互いに対向するサインカーブ状曲線を描くように一定周期で変位湾曲させる第2トラバース手段と,」という文言であり,「サインカーブ状曲線」とは,連続ウエブ上に配置した際の連続弾性部材の形状をいうところ,その形状は数学的意味のそれではなく,湾曲する山と谷が繰り返される態様程度の曲線,すなわち,各トラバース手段の進退動作を制御する手段(例えばカム機構のカム面)が,なだらかな曲線となる程度のものでよい。また,本件第2明細書において説明されている【図9】記載のような一部が直線であるものも含む。すなわち,「サインカーブ状曲線」とは,数学的意味のそれではなく,湾曲する山と谷が繰り返される態様程度の曲線でよく,凹凸状ないしは山と谷状の,曲線状及び直線状部分の組み合わせを含むものであり,また,各トラバース手段の進退動作を制御する手段,例えばカム機構のカム面がなだらかな曲線となる程度のものでよいのである。
そして,被告装置1は,連続ウエブ上に配置した際の連続弾性部材の形状をみると,その一部が直線となっているものの,湾曲する山と谷が繰り返される態様の曲線となっているから,「サインカーブ状曲線」の文言を満たし,本件第1発明の構成要件C及び本件第2発明の構成要件B.a)B,B.b)Cを充足する。
【被告の主張】 被告装置1は,次のとおり,本件各特許権を侵害するものではない。したがって,その余の被告装置について,これらが被告装置1と同様の構成であるとして本件各特許権の侵害をいう原告の主張も,失当である。
ア 本件第1発明については,後記のとおり,被告装置1が本件第1特許権の間接侵害(特許法101条2号)に該当しないことが明らかであるから,個々の対比をする必要はない。
イ 本件第2発明の構成要件B.b)@の「移動方向に…離間並列」との文言の充足性 本件第2発明の「移動方向」とは,弾性部材を配置する目的を前提として考えれば,その位置は,現実に弾性部材が配置される圧着点が基準となるべきであるから,別紙概念図のαの方向であると考えるべきである。また,「離間並列」とは,出願経過から考えて,トラバース手段が連続弾性部材を接触させ,又は交差させて取り付けることを可能とする構成を有していることを意味する。そして,被告装置1は,トラバース手段がαの方向でなくβγの方向に離れており,また,連続弾性部材を接触させ,又は交差させて取り付けることはないから,本件第2発明の構成要件B.b)@を充足しない。なお,被告装置1において,2つの糸案内保持部がごく短い時間に数ミリ重なり合うことは事実であるが,そもそも「離間並列」とは,上記のとおり,2つの連続弾性部材の接触または交差を可能とする構成を意味するものであるから,2つの連続弾性部材が接触も交差もせず終始離間しているパンツ型おむつのための製造装置にすぎない被告装置1においては,第2トラバース手段と第1トラバース手段は「離間並列」していないことは明らかである。
ウ 本件第2発明の構成要件B.a)B,B.b)Cの「サインカーブ状曲線」との文言の充足性 本件第2発明の構成要件B.a)B,B.b)Cにいう「サインカーブ状曲線」の「サインカーブ」とは,別名正弦曲線ともいい,一定の角速度で円周上を移動する点を垂直軸上に投影することにより生じる往復運動(単振動)を,縦軸を振幅,横軸を時間として表示した単純かつ一様な波形を意味する。そこで,「サインカーブ状曲線」についても,「サインカーブ状」と記載した以上は,サインカーブにみえるものでなければならない。そして,かかる「サインカーブ状曲線」とは,出来上がった製品における連続弾性部材の配置ではなく,トラバース手段が連続弾性部材を連続ウエブ上で変位湾曲させる際の動きの形状,すなわち,移動する連続ウエブ上におけるトラバース手段の進退動作を規定したものというべきである。このことは,本件第2明細書の「発明の詳細な説明」欄の記載に照らして明らかであるし,「サインカーブ状曲線」の意味をそのように解さなければ,「カム機構の回転動作およびトラバース手段の進退動作を円滑軽快にして高速化する」という本件第2発明の作用効果が発揮されない。
原告は,本件第2明細書の「発明の詳細な説明」欄の【実施例】の段落【0015】に「…サインカーブ状曲線,すなわち,湾曲する山部と山部または谷部と谷部とが互いに対向する状態で該曲線を描くように,」と記載されていることから,「サインカーブ状曲線」とは,数学的意味のそれではなく,湾曲する山部と谷部が繰り返される態様の曲線をいうなどと主張するが,同記載部分は,2つの弾性部材の配置場所及びそれらの相対的位置関係について述べているにすぎず,サインカーブ状曲線そのものの意味を説明していない。また原告は,「サインカーブ状曲線」とは,連続ウエブ上に配置した際の連続弾性部材の形状をいうと主張するが,上記に照らして,失当である。
(2)争点3(被告装置は,本件第1発明の実施にのみ使用する物として,特許法101条2号により本件第1特許権を侵害するとみなされるかどうか。) 【原告の主張】 被告装置1には,本件第1発明の使い捨てブリーフの製造方法実施する以外にその用途は存在しないから,被告装置1は,方法の発明である本件第1発明の実施にのみ使用する物として,特許法101条2号により本件第1特許権を侵害するものとみなされる。したがって,その余の被告装置も,被告装置1と同じ構成であるから,本件第1特許権を侵害するものとみなされる。
被告は,被告装置1は,ボディフィットギャザー,すなわち,パンツ型おむつの胴回りに配置されたギャザーの取付けのみに使用することも可能であり,その場合に製造されるパンツ型おむつは,レッグギャザーを備えていないパンツ型おむつであるから,被告装置1には本件第1発明を実施する以外の用途があると主張するが,失当である。被告装置1の構成について,別紙物件目録の「構成の説明」欄第3項に,「レッグギャザー用糸ゴム(5)及び(6)」,「レッグギャザー用糸ゴムガイド(7)及び(8)」と記載されているように,同装置はレッグギャザーの取付けに用いるものであり,被告装置1には,本件第1発明を実施する以外には用途がない。
そして,被告の主張は,そうした被告装置1を実質的に別の物になるように構成を変更すれば,他の用途に使用できるというにすぎない。また,被告の主張のように,被告装置1を,レッグギャザーを備えていないパンツ型おむつを製造するために転用することは無意味なことである。すなわち,被告装置1をボディフィットギャザーの取付けに使用する場合には,単に固定された糸ゴムガイドがあれば十分であり,被告装置1全体の7割もの費用を占める極めて高額のカムは,不要となる。
したがって,被告装置1の装置をボディフィットギャザーの取付けのみに使用するためには,製作されているカムの駆動入力をあえて止めたり,カムと糸ゴムガイドとの連結をあえて切り離したりすることなどにより,糸ゴムガイド(7),(8)を停止させることとなる。これでは,極めて高額なカムに,その本来の機能を果たさせないことになる。そして,本件第1発明の実施にのみ使用する物であっても,本件第1発明の実施に関係する機能を使用しないように構成を変更すれば,他の用途に用いることができるのは当然のことであるから,被告装置1につき,そのような変更をすればボディフィットギャザーの取付けにも用いることができ,レッグギャザーの取付けには用いないことができるからといって,被告装置1が本件第1発明の侵害とみなされることを否定する理由にはならない。
また,被告の主張を前提とすれば,被告装置1をボディフィットギャザーの取付けという他の用途に用いるときに重要な部分(レッグギャザー取付機構)が遊んでしまうことになったとしても特許法101条2号による間接侵害は成立しないということになるが,これは正当とはいいがたい。さらに,被告装置1は,別紙物件目録記載の構成を有するところ,ボディフィットギャザー取付機構は同目録において特定されていないから,このようなものについて,別紙物件目録において特定されているレッグギャザー取付機構を使用する場合の「他の用途」ということはできない。
【被告の主張】 原告は,被告装置1には,本件第1発明を実施する以外に用途は存在しないと主張するが,失当である。被告装置1は,レッグギャザー(すなわち,本件第1発明の特許請求の範囲における「第1連続弾性部材」及び「第2連続弾性部材」)のないおむつを作る用途に用いることができる。すなわち,被告装置1は,レッグギャザー及びボディフィットギャザー取付ユニットを含むが,このユニットを,ボディフィットギャザー,すなわち,パンツ型おむつの胴回りに配置されたギャザーの取付けのみに使用することも可能であり,同ユニットをそのように用いた場合に製造されるパンツ型おむつは,レッグギャザーを備えていないおむつである。そして,現に,被告がパンツ型おむつの製造装置を販売したメーカーの中には,当該ユニットをボディフィットギャザーを取り付けるために使用し,レッグギャザーのないおむつを製造販売している会社も存在する。そもそも,レッグギャザーは何らパンツ型おむつに必須の構成ではなく,米国など海外でも,弾性部材が着用者に圧迫感を与えたりムレが生じないようにするため,レッグギャザーを備えていないパンツ型おむつが販売されている。そして,本件第1発明は,レッグギャザーである「第1連続弾性部材」及び「第2連続弾性部材」を連続ウエブ上に取り付けることが要件となっているから,レッグギャザーを備えていないパンツ型おむつを製造する場合は,本件第1発明を実施する以外の用途に当たるものである。
原告の反論は,レッグギャザー及びボディフイットギャザー取付ユニットをボディフィットギャザーの取付けのみに使用することは,実質的に別の物になるように構成を変更したことと同等であるという趣旨のものと考えられるが,かかる反論は失当である。そもそも,被告装置1の一構成ユニットである「レッグギャザー及びボディフイットギャザー取付ユニット」は,@レッグギャザーの取付けと,Aボディフィットギャザーの取付けという2種類のギャザーの取付機構を併せ備えるものであり,それぞれの取付機構は,それぞれ独立に稼働しうる設計となっている。つまり,このユニットは,レッグギャザーのみを取り付けるために用いても良く,ボディフィットギャザーのみを取り付けるために用いても良く,両者を同時に取り付けるために用いても良いのであり,レッグギャザー及びボディフィットギャザー取付ユニットを,レッグギャザーの取付けには用いずボディフィットギャザーの取付けのみに用いた場合であっても,当該ユニットの機械的構成を変更する必要は全くない。すなわち,被告装置1のレッグギャザー用糸ゴムガイド(7)及び(8)に糸ゴムを通さないというだけで目的を達するのであり,原告が主張するように,あえてカムの駆動入力を止めたり,カムと糸ゴムガイドの連結を切り離したりする必要もない。したがって,上記ユニットをレッグギャザーの取付けのみに使用することが,実質的に別の物になるように構成を変更したことと同等であるという原告の主張は誤りである。
また原告は,被告装置1をボディフィットギャザーの取付けのみに使用する場合には,全体の7割もの価格である極めて高額なカムが本来の機能を果たさず無意味であると主張するが,失当である。レッグギャザー及びボディフィットギャザー取付ユニット自体は,大規模な製造ラインである被告装置1中のごく一部を構成するにすぎないものであり,被告装置1の同ユニットに使用されている2個のカムは,同ユニットの価格中の4分の1程度の価格を占めるにすぎないものである。そして,レッグギャザー及びボディフィットギャザー取付ユニットを含むパンツ型おむつ製造装置である被告装置1を購入したユーザーが,レッグギャザー取付機能を用いなかったとしても,これは,被告装置1全体の価格のうち極めてわずかな部分を使用していないというにすぎない。
また原告は,別紙物件目録においてボディフィットギャザーが特定されていないと主張するが,同目録の図2の(b)図において,ボディフィットギャザー用糸ゴム(9)及びニップロール(3),(4)が図示されているから,同主張は失当である。
(3)争点3(被告は,被告の納入先が被告装置を使用して本件第1,第2特許権を侵害する行為によって原告に与えた損害につき,共同不法行為者として責任を負うか。) 【原告の主張】 被告の納入先であるおむつメーカー各社は,被告装置を使用してパンツ型おむつを製造,販売しているところ,被告装置は本件第1,第2発明の技術的範囲に属するものであるから,納入先の各社の行為は,本件第1,第2特許権を侵害する。そして被告は,被告装置の仕様について納入先と打合せを重ねた上で,被告の納入先が本件第1,第2発明を実施することを知って,被告装置を納入先に販売したものである。したがって,被告は,被告の納入先である各社が本件第1,第2特許権を侵害した行為によって原告に与えた損害につき,民法719条1項前段又は同条2項により共同不法行為者として納入先各社と連帯して賠償する責任を負う。
【被告の主張】 上記のとおり,被告装置は本件第1,第2発明の技術的範囲に属しないし,被告装置の製造,販売が本件第1特許権の間接侵害にも当たらないと考えられるから,この点からして,原告の主張はすでに失当である。また,被告は,被告の納入先であるおむつメーカー各社が,納入後の改良により,現にどのような方法によってパンツ型おむつを製造しているか承知していないし,また,それを知り得る立場にもないのであるから,被告の納入先の各社によるパンツ型おむつの製造行為について,被告が責任を負うべきいわれはない。
(4)争点4(本件第2特許権には,無効理由が存在することが明らかであり,本件第2特許権に基づく差止め及び損害賠償の請求は権利の濫用に当たり許されないか。) 【被告の主張】 本件第2特許権には,以下のア〜ウの無効理由が存在することが明らかであるから,本件第2特許権に基づく差止め及び損害賠償の請求は権利の濫用に当たり許されない(最高裁平成10年(オ)第364号同12年4月11日第3小法廷判決・民集54巻4号1368頁参照)。
ア 本件第2特許権は,その特許出願前に,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が特許出願前に国内で頒布された刊行物である乙7の1〜3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項,123条1項2号の規定に該当する。
イ 本件第2特許権に係る特許出願は,本件第1特許権に係る特許出願を親出願とする分割出願であるところ,本件第1特許権に係る特許出願については,平成7年1月30日付けの手続補正書により特許請求の範囲及び発明の詳細な説明について補正が行われている。そして,この補正は,願書に添付された明細書及び図面の要旨を変更する不適法なものであることが明らかであるから,本件第2特許権の特許出願は,上記の要旨を変更する補正の内容を分割したものとして,特許法44条1項に規定される分割要件を欠くものである。したがって,本件第2特許権の出願日は,本件第1特許権の出願日である平成元年6月29日ではなく,出願の分割がされた平成7年1月30日ということになる。
しかるに,本件第2特許権は,同出願日である平成7年1月30日より前に既に頒布されていた刊行物である乙7の4と同一のものであるから,特許法29条1項3号の規定に該当し,特許を受けることができない。また,本件第2特許権は,その特許出願前に当業者が乙7の4に記載された発明又は乙7の1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項,123条1項2号の規定に該当する。
ウ 本件第2特許権に係る明細書は,特許請求の範囲の記載が不明確であり,また,発明の詳細な説明が,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから,本件第2特許権の特許出願は,特許法36条4項,123条1項4号の規定に該当する。
【原告の主張】 被告の主張は,争う。
(5)損害賠償の額(争点5) 【原告の主張】 〔主位的主張〕原告は,被告装置の納入先のおむつメーカー各社が製造販売したパンツ型おむつと同種のパンツ型おむつを業として製造販売しており,被告装置の納入先各社が製造販売したパンツ型おむつと同数量のパンツ型おむつを製造する能力を有していた。原告が,被告装置を使用して製造販売されるパンツ型おむつと競合する原告製のパンツ型おむつを販売することにより得られる利益は,平均して1枚当たり15円を下らない。そして被告装置の納入先各社が,被告装置の納入後から平成12年9月30日までの間に被告装置を使用して製造販売したパンツ型おむつの枚数は,13億枚を下らない。したがって,特許法102条1項により,原告製のパンツ型おむつ1枚当たりの利益の額に被告装置を使用して製造販売したパンツ型おむつの枚数を乗じた金額である195億円が,原告の受けた損害となる。原告は,この195億円の内金26億円を請求する。
〔予備的主張〕原告が,本件第1,第2発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭は,26億円である。すなわち,被告は,その販売価格が1台当たり平均6億円を下らない被告装置を,別紙納入先目録記載のとおり14台販売しているから,売上額の合計は84億円を下らず,実施料率としては,31%とみるのが相当であるから,上記金銭の額は,84億円に31%を乗じた額である26億円とみることができる。なお,被告の顧客により製造,販売されたパンツ型おむつ1枚当たりの実施料に当たる金額は,2円とみるのが相当であるから,このことからも,上記金銭の額を26億円とみることができることが裏付けられる。
【被告の主張】 原告の主張は,主位的主張,予備的主張のいずれも争う。
当裁判所の判断
1 既に述べたとおり,原告は,被告装置1は本件第1,第2発明の技術的範囲に属するものであるとし,その余の被告装置についても,その構成は被告装置1と同じであると主張して,同様に本件第1,第2発明の技術的範囲に属するという。
これに対して,被告は,被告装置1は本件各特許権を侵害するものではないから,その余の被告装置について,これらが被告装置1と同様の構成であるとして本件各特許権の侵害をいう原告の主張も失当であるとして,争っている。
そこで,まず,被告装置1が本件第1,第2発明の技術的範囲に属するかどうかについて,検討する。
2 争点1(被告装置が本件第1,第2発明の技術的範囲に属するか。)について(1)本件第2発明の構成要件充足性については,構成要件B.b)@に,「前記連続ウエブの移動方向に…離間並列」とあるところ,被告装置1が,この文言を充足するかどうかが争われている。また,構成要件B.a)B,B.b)Cに,第1,第2連続弾性部材が「サインカーブ状曲線」を描くとあるところ,被告装置1が,この文言を充足するかどうかが争われている。
(2)そこでまず,被告装置1が「前記連続ウエブの移動方向に…離間並列」の文言を満たすかどうかを判断するため,「離間並列」の意味について検討する。
本件第2明細書の「特許請求の範囲」の【請求項1】の文言からすると,構成要件B.b)@は,構成要件B.a)で示した第1トラバース手段についての説明を受けて,構成要件B.b)で第2トラバース手段について説明を加えたうちの一部であることが分かり,その文言が「前記連続ウエブの移動方向に前記第1トラバース手段と離間並列して配置してあって,」とあることからすれば,「離間並列」とは第2トラバース手段が第1トラバース手段の位置を基準としてどのように配置されているかについて,第2トラバース手段が第1トラバース手段と「離間並列」して配置してあることを述べたものということが分かる。
そして,本件第2明細書の「発明の詳細な説明」欄の記載をみると,その【従来技術とその課題】の段落【0003】に,「レッグホールの脚回りに対する所要の締め付けをうるには,複数本の弾性部材を用いるのが好ましい場合があるが,前記従来技術は,そうした場合における弾性部材の処理手段についてなんら教示していない。」と記載され,段落【0004】に,「また,前記従来技術のうちの特開昭57-117602号公報は,レッグホール用の連続弾性部材(ゴムひも)を保持して連続ウエブ上に配列する二つの移動体を開示している。しかし,両移動体は,連続ウエブの移送方向と直交する横方向に延在する一つの軌道である支承装置に沿って移動する機構になっている。したがって,各移動体にそれぞれ保持されながら所要の曲線を描く各ゴムひもを,必要に応じて,例えば,着用者のレッグ回りを連続的に囲んでシールするため,互いに接触させまたは交差させて取り付けたブリーフを製造することができない。」と記載されているから,これらからすれば,従来技術の問題点として,レッグホール用に複数本の弾性部材を連続ウエブ上に配列する場合,各弾性部材を互いに接触,交差させて取り付けたブリーフを製造することができなかったことを指摘していることが分かる。そして,これらを受ける形で,段落【0005】で,「本発明の目的は,レッグホール用の弾性部材としてそれぞれ複数本の弾性糸を高速かつ連続的に変位湾曲させて移動ウエブに取り付け,ひいては,高速量産することができる装置を提供することにある。」と,また段落【0029】【発明の効果】で「本発明装置によれば,次の効果を奏する。
1)所望ブリーフの設計上,必要に応じて,各トラバース手段の糸案内保持部の連続ウエブを横切る方向・角度などを適宜設定することにより,完成ブリーフにおける弾性糸の互いの並列間隔を,たとえば,該ブリーフの股下中央部からその腰部位へ次第に大きくし,さらには,各トラバース手段の糸案内保持部の移動量を適宜設定することにより,該ブリーフにおけるほぼU字状をなす両弾性部材の中央部を股下域において互いに近接,接触,交差または離間させることができる。」と記載されている。
以上からすれば,本件第2発明の構成要件B.b)@にいう「離間並列」とは,レッグホール用に複数本の弾性糸を変位湾曲させて連続ウエブに取り付ける際,ほぼU字状をなす両弾性部材の中央部を股下域において互いに近接,接触,交差または離間させることができるようにするための,第2トラバース手段が第1トラバース手段の位置を基準としてとるべき位置のことを指すというべきである。
そして次に,構成要件B.b)@にいう「移動方向」の意味について検討する。
本件第2明細書の「特許請求の範囲」【請求項1】の文言からすると,同構成要件の「移動方向」とは,その直前の文言である「前記連続ウエブの」を受けたものであり,「前記連続ウエブの」は「移動する連続ウエブの」を受けたものであるから,連続ウエブが移動する方向であることが分かる。しかるに,連続ウエブが移動する方向といっても,ウエブは被告装置1のどの部分の場所にあるかによってその方向は時々刻々と変化するものであるから,連続ウエブが移動する方向というだけではその方向を一義的に決めることはできず,いつの時点において連続ウエブが移動する方向かを明らかにしなければならない。
この点について,本件第2明細書の「発明の詳細な説明」欄に上記のような記載があることからすれば,本件第2発明の実質的価値は,レッグホール用に複数本の弾性部材を連続ウエブ上に配列する場合,各弾性部材を互いに接触,交差させて取り付けたブリーフを製造することができるようにする点にあるというべきであるから,「移動方向」の文言についても,連続ウエブ上に各弾性部材を取り付ける時点において連続ウエブが移動する方向を指すと解するのが相当である。すなわち,「移動方向」とは,現実に弾性部材が配置される点において連続ウエブが移動する方向であり,別紙概念図のαの方向を指すというべきである。
そして,被告装置1における第1トラバース手段と第2トラバース手段に相当する部材は,別紙物件目録のうち,図2の(d)図における符号(7),(8)で示されるものであり,これらは,別紙概念図におけるβγの方向に離れていることが明らかであるから,たとえ被告装置1が,レッグホール用に複数本の弾性糸を変位湾曲させて連続ウエブに取り付ける際,ほぼU字状をなす両弾性部材の中央部を股下域において互いに近接,接触,交差または離間させることができるように第2トラバース手段が配置されているという構成をとっているといっても,構成要件B.b)@の「前記連続ウエブの移動方向に…離間並列」との文言を全体として満たさないというほかはない。
原告は,「移動方向」とは別紙概念図のβγの方向であると主張するが,これは,連続ウエブ上に各弾性部材を取り付ける時点より前の時点において連続ウエブが移動する方向を述べるものであって,上記認定に照らし,採用することができない。また原告は,被告装置1において,2つの糸ゴムガイドは最も近づく位置において3.72mm交差していると主張し,甲13を提出するが,トラバース手段が一部交差することをもって「離間並列」しているということまではいえるとしても,被告装置1においては上記認定のとおり,「移動方向」に離間並列しているといえないものであるから,原告の主張は,失当である。
以上によれば,被告装置1は本件第2発明の構成要件B.b)@の「前記連続ウエブの移動方向に…離間並列」との文言を満たさないから,本件第2発明の技術的範囲に属しないというべきである。そうすると,原告は,その余の被告装置について,その構成が被告装置1と同じであると主張しているのであるから,原告の主張する構成を前提としても,その余の被告装置もまた同様に本件第2発明の構成要件B.b)@を満たさず,本件第2発明の技術的範囲に属しないということになる。
(3)上記のとおり,被告装置は「前記連続ウエブの移動方向に…離間並列」の文言を満たさず,この点からしてすでに,本件第2発明の技術的範囲に属しないというべきものであるが,なお念のため,被告装置が,構成要件B.a)B,B.b)Cの「サインカーブ状曲線」との文言を充足するかどうかについても,判断することとする。
「サインカーブ状曲線」の意味については,本件第2明細書の「特許請求の範囲」【請求項1】をみると,第1トラバース手段について説明している構成要件B.a)Bに,「前記第1糸案内保持部の各々に保持した伸長状態の各弾性糸からなる第1連続弾性部材を前記連続ウエブ上において前記移動方向と交差する方向へサインカーブ状曲線を描くように一定周期で変位湾曲させる第1トラバース手段と,」と記載され,また,第2トラバース手段について説明している構成要件B.b)Cに,「前記第2糸案内保持部の各々に保持した伸長状態の各弾性糸からなる前記第2連続弾性部材を前記連続ウエブ上において前記移動方向と交差する方向へ前記第1連続弾性部材のサインカーブ状曲線の変位湾曲と前記連続ウエブの幅方向に互いに対向するサインカーブ状曲線を描くように一定周期で変位湾曲させる第2トラバース手段と,」と記載されていることから,この「サインカーブ状曲線」は弾性部材についての形状をいっていることが分かる。
そして,本件第2明細書の「発明の詳細な説明」の【実施例】の段落【0015】に,「…弾性部材25A,25Bが,図4(B)に示すように,前記接着域30aを設けられて移動するウエブ27の該接着域のほぼ半周にそれぞれ沿うとともに隣接する該両接着域の間で交差しながらウエブ27幅方向に互いに対向するサインカーブ状曲線,すなわち,湾曲する山部と山部または谷部と谷部とが互いに対向する状態で該曲線を描くように…配置されるようになっている。」と記載されていることからすると,「サインカーブ状曲線」とは,湾曲する山部と谷部が繰り返される形状のものであることが分かり,また,段落【0017】に,「図8は,摺動杆112および案内杆116の移動を制御して,前記弾性部材25Aが描くサインカーブ状曲線の一部を変形するための機構の部分断面図,図9は,その変形状態の平面図をそれぞれ示す。…所定位置の不動部124からは支持片114の側面が衝接するストッパー125が設けられている。そうした機構が摺動杆112に付設されていない場合には,摺動杆112および案内杆116の移動で弾性部材25Aが円弧部分25A’を有するサインカーブ状曲線を描くように配置されるが,そうした機構が摺動杆112に付設されている図8に示す場合には,…弾性部材25Aのサインカーブ状曲線が直線部分25A”に変形されるようになっている。」と記載されていることからすると,「サインカーブ状曲線」には,本件第2明細書に説明されている【図9】「前記トラバース変形機構で変形させる弾性部材の配置平面図」にあるような一部直線となるものも含まれることが分かる。
しかして,「サインカーブ状曲線」の湾曲する山部と谷部が繰り返される形状の具体的意味をさらに明らかにするためになお検討すると,本件第2明細書の「発明の詳細な説明」欄の【従来技術とその課題】段落【0005】に,「本発明の目的は,レッグホール用の弾性部材としてそれぞれ複数本の弾性糸を高速かつ連続的に変位湾曲させて移動ウエブに取り付け,ひいては,高速量産することができる装置を提供することにある。」と記載され,また,段落【0029】【発明の効果】欄に,「本発明装置によれば,次の効果を奏する。…2)各トラバース手段は連続弾性部材が連続ウエブ上でサインカーブ状曲線を描くように進退動作させるものであるから,各トラバース手段の進退動作を制御する手段,例えばカム機構のカム面はなだらかな曲線でよく,…したがって,連続弾性部材に対して,曲線から直線へまたは直線から曲線へ急に変化したり,曲率半径の大きいものと小さいものとを有するようになっていたりするなどのなだらかでない曲線を描かせ…るトラバース手段およびカム機構を有する装置に比較して,カム機構の回転動作およびトラバース手段の進退動作を円滑軽快にして高速化することができるから,連続弾性部材を高速で連続ウエブ上に配置することができ,ひいては,ブリーフを高速で廉価量産することができる。」と記載されているから,これらからすれば,本件第2発明における「サインカーブ状曲線」にいう湾曲する山部と谷部が繰り返される形状の具体的意味は,弾性糸を整然とまたは高速で取り付けるという本件第2発明の目的,効果から考えて,数学的意味のサインカーブを基本としたものであることが要請されるというべきである。なぜなら,数学的意味のサインカーブを基本としたものであって初めて,弾性糸を整然とまたは高速で取り付けるという本件第2発明の目的,効果に符合し,「サインカーブ」との文言の通常の意味にも合致するからである。そして,本件第2明細書に説明されている【図9】は,数学的意味のサインカーブを基にしてこれを一部変形したものというべきである。
そうすると,本件第2発明の構成要件B.a)B,B.b)@の「サインカーブ状曲線」とは,数学的意味のサインカーブを基本とする曲線であり,本件第2明細書に説明されている【図9】の一部直線となっている部分のように,これを一部変形したものまで含むと解するのが相当である。
この解釈によれば,トラバース手段はほぼ正確なサインカーブを描くように進退動作させなければならない。なぜなら,弾性糸を整然とまたは高速で取り付けるという本件第2発明の目的,効果に符合させるためには,本件第2発明においては,トラバース手段がほぼ正確なサインカーブを描いて,その結果として,弾性部材が「サインカーブ状曲線」を描くというべきだからである。そうすると,被告装置1が「サインカーブ状曲線」の文言を充足するかどうかについては,被告装置1におけるトラバース手段が数学的意味のほぼ正確なサインカーブを描くものであったか否かという見地から判断するべきである。
原告は,「サインカーブ状曲線」とは,数学的意味のそれではなく,湾曲する山と谷が繰り返される態様程度の曲線でよいのであり,凹凸状ないしは山と谷状の,曲線状及び直線状部分の組み合わせを含むと述べ,また,各トラバース手段の進退動作を制御する手段,例えばカム機構のカム面がなだらかな曲線となる程度のものでよいと主張するが,上記に述べたような本件第2発明の目的,効果,「サインカーブ状曲線」の文言の通常の意味などをふまえた解釈に照らして,採用することができない。
そして,被告装置1をみるに,甲11,13,乙10及び弁論の全趣旨によれば,本件第2発明のトラバース手段に相当する被告装置1における糸ゴムガイドの軌跡は,完成品において糸ゴムがきれいな曲線を形成するようにするために複雑な動きをさせており,このような軌跡が数学的意味のほぼ正確なサインカーブに当たるとは到底認められない。したがって,被告装置1は,本件第2発明の構成要件B.a)B,B.b)Cの「サインカーブ状曲線」との文言も充足しないというべきである。
そうすると,原告は,その余の被告装置の構成が被告装置1と同じであると主張しているのであるから,原告の主張する構成を前提としても,その余の被告装置もまた同様に本件第2発明の構成要件B.a)B,B.b)Cの「サインカーブ状曲線」との文言も充足しないというべきである。
(4)続いて,被告装置の使用が本件第1発明の技術的範囲に属するかどうかについて判断する。
ア 本件第1発明の構成要件B-2には,トラバース手段が「該方向へ互いに離間並列」と記載されており,被告装置1を使用した場合に,この文言を充足するかどうかが争われている。
そこで検討するに,まず,「該方向」とは,本件第1明細書の「発明の詳細な説明」欄の(実施例)の記載から考えて,連続ウエブの「長さ方向」であるというべきところ,この「長さ方向」たる「該方向」がいつの時点での方向を指すものかが問題となることは,上記(2)において本件第2発明に関して述べたとおりである。
そして,本件第1発明についても,本件第1明細書の「発明の詳細な説明」欄において,「本発明の…目的は,…弾性糸が不自然に捩れたり,互いに重なり合って交差したりすることなく,弾性糸を整然と離間並列して取り付けることができる使い捨てブリーフの製造方法を提供することにある。」(本件第1公報5欄6〜11行)と記載され,また,(課題を解決するための手段)として,「前記目的を達成するための本発明方法は,ブリーフの表裏面シートの一方を形成する連続ウエブ上にその長さ方向と同方向へ第1および第2連続弾性部材を導入する。前記連続ウエブ上において前記第1および第2連続弾性部材を前記連続ウエブの長さ方向と交差する方向へ一定周期で変位させ,これら第1および第2連続弾性部材を前記連続ウエブ上に取り付ける。」(本件第1公報5欄12〜19行)と記載されている。これらからすれば,本件第1発明は,第1および第2連続弾性部材を連続ウエブ上に取り付けてブリーフを製造する方法について創意工夫を凝らしたものというべきであるから,「該方向」の文言についても,上記(2)において本件第2発明に関して述べたのと同様に,連続ウエブ上に各弾性部材を取り付ける時点において連続ウエブが移動する方向を指すと解するのが相当である。すなわち,「該方向」とは,現実に弾性部材が配置される点において連続ウエブが移動する方向であり,別紙概念図のαの方向を指すというべきである。
そうすると,被告装置1を使用することが「該方向へ互いに離間並列」の文言を充足するかどうかについては,上記(2)において本件第2発明に関して述べたのと同様の理があてはまるというべきであるから,被告装置1は,本件第1発明の「該方向へ互いに離間並列」との文言を充足しないというべきである。
イ また,本件第1発明の構成要件Cには,「サインカーブ状曲線」との文言が存するところ,被告装置1の使用が,「サインカーブ状曲線」の文言を充足するかどうかについても,本件第2発明の場合と同様に争われているので,この点についても検討する。
本件第1発明の構成要件Cは,「前記第1および第2トラバース手段の前記進退動作により,前記連続ウエブ上において前記第1および第2連続弾性部材をこれらが前記連続ウエブの幅方向に互いに対向するサインカーブ状曲線を描くように一定周期で変位させて,該第1および第2連続弾性部材を前記連続ウエブ上に取り付け,」というものであり,また,上記に記載したように,本件第1明細書の「発明の詳細な説明」欄において,「本発明の…目的は,…弾性糸が不自然に捩れたり,互いに重なり合って交差したりすることなく,弾性糸を整然と離間並列して取り付けることができる使い捨てブリーフの製造方法を提供することにある。」(本件第1公報5欄6〜11行)と記載されている。これらに加えて,本件第1明細書の記載と本件第2明細書の記載を対比すれば,本件第1発明の「サインカーブ状曲線」との文言の意味についても,上記(3)において本件第2発明の「サインカーブ状曲線」との文言の意味について述べたのと同様の理があてはまるというべきである。すなわち,「サインカーブ状曲線」とは,数学的意味のサインカーブを基本とする曲線であり,本件第1明細書に説明されている【第9図】の一部直線となっている部分のように,これを一部変形したものまで含むと解するのが相当である。
そして,この解釈から,弾性糸を整然と離間並列して取り付けるという本件第1発明の目的,効果に符合させるために,トラバース手段はほぼ正確なサインカーブを描くように進退動作させなければならないことが導かれることも,上記(3)において本件第2発明について判示したところと同様である。そうすると,これも上記(3)において述べたとおり,被告装置1の使用が「サインカーブ状曲線」の文言を充足するかどうかについては,被告装置1におけるトラバース手段が数学的意味のほぼ正確なサインカーブを描くものであったか否かという見地から判断するべきであり,この見地から判断するならば,被告装置1の使用は,上記(3)において本件第2発明について判示したところと同様に,本件第1発明の「サインカーブ状曲線」との文言を充足しないというべきである。
ウ 以上より,被告装置1の使用は,本件第1発明の技術的範囲に属しないというべきである。そうすると,原告は,その余の被告装置の構成が被告装置1と同じであると主張しているのであるから,原告の主張する構成を前提としても,その余の被告装置の使用もまた同様に本件第1発明の技術的範囲に属しないということになる。
3 争点2(被告装置は,本件第1発明の実施にのみ使用する物として,特許法101条2号により本件第1特許権を侵害するとみなされるかどうか。)について 上記のとおり,被告装置の使用は本件第1発明の技術的範囲に属しないから,この点からしてすでに,被告装置が特許法101条2号により本件第1特許権を侵害するものとみなされるという原告の主張は,その前提を欠き失当であるが,加えて,次の点からも,被告装置が本件第1特許権を侵害するという原告の主張は失当である。
すなわち,乙5及び弁論の全趣旨によれば,被告装置1においては,レッグギャザーとボディフィットギャザーは同一のユニット(レッグギャザー及びボディフィットギャザー取付装置)により,おむつに装着される設計となっていること,おむつメーカーがレッグギャザーを不要と考えれば,レッグギャザー用の弾性部材を使わないか,トラバース手段を止めればよいこと,現に,大王製紙株式会社が,被告装置を使用してレッグギャザーのないおむつを製造していたことがあり,同様の製品は米国でも販売されていたこと,その背景に,レッグギャザーは脚回りからの漏れ防止に一定の効果があるものの,着用者に圧迫感を与えたりムレの原因となったりすることからこれを嫌う考え方があること,がそれぞれ認められる。これらからすれば,被告装置1においては,レッグギャザーなしのおむつを作ることができ,現実にそのようなおむつが製品として存在しているというのであるから,被告装置1においては,レッグホールに沿って弾性糸を位置させるという本件第1発明の方法と異なる用途があるといわなければならない。
したがって,被告装置1及びこれと同一の構成を有すると原告の主張するその余の被告装置は,いずれも,上記の点からも,本件第1特許権を侵害しないものというべきである。
この点について,原告は,被告装置1を使用してレッグギャザーのないおむつを製造することは,被告装置1の価格の7割も占める高額のカムを使用しないことになり無意味である,また,被告装置1を記載した別紙物件目録においてはレッグギャザー取付機構が特定されておりボディフィットギャザー取付機構は特定されていないから,別紙物件目録記載の被告装置1との関係では,レッグギャザー取付機構が遊んでいるような状態を「他の用途」ということはできない旨主張する。しかし,被告装置1におけるカムがその価格の7割を占めることを認めるに足りる証拠はないし,被告装置1については,別紙物件目録の図2の(b)図において,ボディフィットギャザー用糸ゴム(9)及び同糸ゴム(9)をバック不織布(1)及びインナー不織布(2)の間に挟み込むニップロール(3),(4)が図示されている。原告の主張は,失当といわざるを得ない。
また原告は,被告装置1を他の用途に用いるときに重要な部分が遊んでしまうことになったとしても特許法101条2号により特許権の侵害とみなされないと考えることは正当とはいえないと主張する。しかし,上記に認定したように現実にレッグギャザーのないおむつが製品として存在していることなどに照らせば,被告装置1において,ボディフィットギャザーの取付けに比してレッグギャザーの取付けが重要ということには必ずしもならないと考えられる。つまり,被告装置を使用する各おむつメーカーは,レッグギャザーを取り付けずにボディフィットギャザーのみを取り付けるという選択をすることによって,レッグギャザーのないおむつを製造することができ,レッグギャザーの取付けを嫌う考え方もあって,現実にそのようなおむつが製品として存在するというのであるから,このようなレッグギャザーのないおむつを製造するという用途をレッグギャザーのあるおむつを製造する用途の他の経済的用途と認めることは何ら妨げられないというべきである。原告の主張は,採用できない。
4 結論 以上によれば,原告の本訴請求は,その余の争点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
追加
物件目録添付図面1に示すパンツ型おむつ製造装置であって,添付図面2に示すレッグギャザー及びボディフィットギャザー取付ユニットを含み,該ユニットは下記「構成の説明」に記載されたとおりの動作をするように構成されている。
記構成の説明1バック不織布(1)及びインナー不織布(2)は,繰出装置により,ニップロール(3)及び(4)を含むレッグギャザー及びボディフィットギャザー取付ユニットに送られる。
2バック不織布(1)は,ニップロール(3)及び(4)に至る途中でホットメルト塗布装置を通過し,バック不織布(1)のほぼ全面にホットメルトを塗布される。
3各3本からなる2組のレッグギャザー用糸ゴム(5)及び(6)が,ガイドローラーによりレッグギャザー用糸ゴムガイド(7)及び(8)に送られ,ニップロール(3)及び(4)においてボディフィットギャザー用糸ゴム(9)とともにバック不織布(1)及びインナー不織布(2)の間に挟み込まれ,バック不織布(1)に塗布されたホットメルトによって,バック不織布(1)及びインナー不織布(2)に接着固定される。
4レッグギャザー用糸ゴムガイド(7)及び(8)は,それぞれスライドシャフト(10)及び(11)に沿って移動するように構成され,互いに独立してカム(12)及び(13)により駆動され,定常的に一定の速さで移動するバック不織布(1)及びインナー不織布(2)に対して,添付図面1に「糸ゴムガイド軌跡」として示される軌跡を描く。
図面納入先目録概念図
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 和久田道雄
裁判官 田中孝一
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