審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成13ワ2702損害賠償等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16ワ8557特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
平成12ワ17298損害賠償等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成17ワ5863損害賠償等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成11ワ12586特許権侵害差止等請求事件 平成13ワ3381特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 製造方法 / 公知技術 / 発明の詳細な説明 / 警告 / 置換 / 実施 / 権原 / 交換 / 構成要件 / 構成要件充足性 / 業として / 差止請求(差止) / 侵害 / 損害額 / 実施料 / 不法行為(民法709条) / 同意 / 拒絶理由通知 / 請求の範囲 / |
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事件 |
平成
13年
(ワ)
5609号
特許権侵害差止等請求事件
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原告 岳南第一製紙協同組合 原告 東京産業株式会社 上記両名訴訟代理人弁護士 野末寿一 被告 日本製紙株式会社 同訴訟代理人弁護士 大場正成 同 尾崎英男 同 嶋末和秀 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2002/11/27 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 被告は,別紙イ号目録及び同ロ号目録記載の各方法により焼成カーボン(溶鋼用保温酸化防止材)を製造してはならない。 2 被告は,前項の各方法を用いて製造した焼成カーボン(溶鋼用保温酸化防止材)を使用,譲渡又は譲渡のために展示してはならない。 3 被告は,その所有する前項記載の焼成カーボン(溶鋼用保温酸化防止材)を廃棄せよ。 4 被告は,第1項記載の各方法による焼成カーボン(溶鋼用酸化防止材)の製造に供された設備を除却せよ。 5 被告は,原告らに対し,金2879万1000円及びこれに対する平成13年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要
本件は,原告らが,別紙イ号目録及び同ロ号目録記載の各方法を使用して焼成カーボンの製造,譲渡及び展示をする被告の行為が,原告らの有する特許権を侵害するとして,被告に対し,被告の上記行為の差止め及び損害賠償金の支払等を求めている事案である。 1 争いのない事実 (1) 原告らの有する特許権 原告らは,以下の特許権(以下「本件特許権」といい,請求項1の発明を「本件発明」という。)を有する。 発明の名称 焼成カーボン及び溶鋼用保温酸化防止材の生成方法 出願日 平成7年9月19日 登録日 平成11年12月3日 特許番号 特許第3009610号 特許請求の範囲 別紙「特許公報」写しの請求項1記載のとおり(以下同公報掲載の明細書を「本件明細書」という。)。 (2) 本件発明の構成要件 本件発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。 A 古紙再生施設から排出されたペーパースラッジをロータリ式の加熱炉内に供給し, B この加熱炉から排出される排ガス中の酸素濃度を3〜8%に制御した状態で上記ペーパースラッジを上記加熱炉内で転動させてその受熱面を更新しながら乾燥及び酸素抑制燃焼させた後, C これを上記乾燥及び酸素抑制燃焼に要する時間とほぼ同等の時間上記加熱炉内に温度550℃〜950℃の下で保持することによって焼成カーボンを熟成させる D ことを特徴とする焼成カーボンの生成方法 (3) 被告の行為 被告は,業として,福島県いわき市〈以下略〉所在の勿来工場及び徳島県小松島市〈以下略〉所在の小松島工場において,製紙スラッジ粒状炭化物を製造し,これを溶鋼用保温酸化防止材として販売している(以下,勿来工場において実施されている製造方法を「勿来方法」,小松島工場において実施されている製造方法を「小松島方法」という。また,勿来方法及び小松島方法を併せて「被告方法」という。)。 2 争点及び当事者の主張 (1) 勿来方法の構成 (原告らの主張) 勿来方法は,別紙イ号目録記載のとおりである(なお,争いのある部分には下線を付した。)。 (被告の認否) ア 別紙イ号目録添付の「図面」1ないし3は認める。 イ 勿来方法の「構成」は,別紙被告主張イ号目録記載のとおりとすべきである。各構成の認否は以下のとおりである。 (ア) 構成a,bについて 認める。 (イ) 構成cについて スラッジドライヤー(4)が本件発明の特許請求の範囲に記載された「加熱炉」であること及び乾燥時間が約43分であることは否認する。その余は認める。 (ウ) 構成dについて 勿来方法の設備に,本件発明の特許請求の範囲に記載された「加熱炉」が存在することは否認する。その余は認める。 炭化キルン(7)は炭化炉(12)とは別の装置である。すなわち,炭化キルン(7)は無酸素状態で乾留を行う装置であり,炭化炉(12)は炭化キルン(7)で発生した乾留ガスを燃焼する装置である。 (エ) 構成eについて 否認する。 炭化キルン(7)から排出されるのは,ペレット状のペーパースラッジを実質的に無酸素状態で加熱乾留して発生する燃焼性の乾留ガスであり,炭化キルン(7)からは排ガスは排出されない。炭化キルン(7)から炭化炉(12)に導出された乾留ガスは炭化炉(12)中で燃焼され,さらに脱臭炉(16)で完全に燃焼した上で排出される。 (オ) 構成fについて ペレット状粒子が炭化キルン(7)内で転動されて受熱面を更新することは認め,その余は否認する。 ペレット状粒子は炭化キルン(7)内を約30分で通過し,その間に実質上無酸素状態で乾留される。ペレット状粒子はスラッジドライヤー(4)で含水率2〜3%まで乾燥されている。 (カ) 構成gについて 炭化キルン(7)内の温度が780〜800℃であることは認め,その余は否認する。 (キ) 構成hについて 熟成させた焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。 (ク) 構成iについて 焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。 (ケ) 構成jについて 焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。 (コ) 構成kについて 焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。 (2) 小松島方法の構成 (原告らの主張) 小松島方法は,別紙ロ号目録記載のとおりである(争いのある部分には下線を付した。)。 (被告の認否) ア 別紙ロ号目録添付の「図面」1ないし3のうち,「図面」1は否認し,その余の「図面」は認める。「図面」1については排ガスファンの位置が誤っており,別紙被告主張ロ号目録添付の「図面」1のとおりとすべきである。 イ 小松島方法の「構成」は,別紙被告主張ロ号目録記載のとおりとすべきである。各構成の認否は以下のとおりである。 (ア) 構成l,mについて 認める。 (イ) 構成nについて ドライヤー(4)が本件発明の特許請求の範囲に記載された「加熱炉」であること,乾燥時間が約43分であること,熱風の温度が400℃であること,未乾燥ペレット状粒子の含水率平均が約65%であること及び乾燥後の含水率が2〜3%であることは否認する。その余は認める。 (ウ) 構成oについて 小松島工場の設備に,本件発明の特許請求の範囲に記載された「加熱炉」が存在することは否認する。その余は認める。 炭化キルン(7)は炭化炉(12)とは別の装置である。すなわち,炭化キルン(7)は無酸素状態で乾留を行う装置であり,炭化炉(12)は炭化キルン(7)で発生した乾留ガスを燃焼する装置である。 (エ) 構成pについて 否認する。 炭化キルン(7)から排出されるのはペレット状のペーパースラッジを実質的に無酸素状態で加熱乾留して発生する燃焼性の乾留ガスであり,炭化キルン(7)からは排ガスは排出されない。炭化キルン(7)から炭化炉(12)に導出された乾留ガスは炭化炉(12)中で燃焼され,さらに再燃炉(21)で完全に燃焼した上で排出される。 (オ) 構成qについて ペレット状粒子が炭化キルン(7)内で転動されて受熱面を更新することは認め,その余は否認する。 ペレット状粒子は炭化キルン(7)内を100〜120分で通過し,その間に実質上無酸素状態で乾留される。ペレット状粒子はドライヤー(4)で含水率7%まで乾燥されている。 (カ) 構成rについて 炭化キルン(7)内の温度が780〜800℃であることは認め,その余は否認する。 (キ) 構成sについて 熟成させた焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。 (ク) 構成tについて 焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。 (ケ) 構成uについて 焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。 (コ) 構成vについて 焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。 (3) 被告方法の構成要件充足性 (原告らの主張) ア 構成要件Aの充足性 勿来方法においては,別紙イ号目録記載の構成aないしdのとおり,また,小松島方法においては,別紙ロ号目録記載の構成lないしoのとおり,製紙工場から排出されたペーパースラッジをロータリー式の加熱炉であるスラッジドライヤー(4)及び炭化キルン(7)内にそれぞれ移送,供給している。 したがって,被告方法はいずれも本件発明の構成要件Aを充足する。 イ 構成要件Bの充足性 (ア) 勿来方法においては,別紙イ号目録記載の構成cないしfのとおり,また,小松島方法においては,別紙ロ号目録記載の構成nないしqのとおり,供給されたペーパースラッジを,転動させてその受熱面を更新しながら,スラッジドライヤー(4)(勿来方法)又はドライヤー(4)(小松島方法)内において約43分間,含水率2〜3%まで乾燥させ,引き続き,温度約790〜800℃に保持された炭化キルン(7)内へ移送し,排出される排ガス中の酸素濃度を3〜8%に制御した状態で,転動させてその受熱面を更新しながら,約4〜5分間,昇温・酸化すなわち酸素抑制燃焼させている。 (イ) 「酸素抑制燃焼」について 以下に示すとおり,炭化キルン(7)内への空気の流入を遮断する構造となっていないことから,被告方法において,「酸素抑制燃焼」が行われていることは明らかである。 a 導出管を通じた炭化キルン内への空気の流入 被告方法においては,炭化キルン(7)と炭化炉(12)を連通する複数の導出管(15A)(15B)が存在する。この導出管(15A)(15B)の一部は,炭化キルン(7)内で発生したガスを炭化炉(12)へ導出する連通管として働くが,残りの一部は,打込みエアーファン(13)によって炭化炉(12)内へ吹き込まれる空気を,炭化キルン(7)内へ導出する空気流入口として働くものである。特に,打込みエアーファン(13)の空気吐出口付近の導出管(15A)では,経験則上,炭化炉(12)側の圧力が炭化キルン(7)側の圧力に勝ると考えられる。したがって,炭化炉(12)内に吹き込まれた空気は,炭化キルン(7)内へ送入されている。 b ロータリーバルブから炭化キルン内への空気の流入 ロータリーバルブは,羽根の回転により,落下(排出)する被輸送物の反対側にある充満空気(置換空気)を上昇させ,この容積の交換によって,被輸送物(ペレット状粒子)の輸送を行うものである。したがって,被告方法の設備においても,炭化キルン(7)の被輸送物排出口側に設置されたロータリーバルブ(5)から,被輸送物の排出に伴い,連続的に置換空気が炭化キルン(7)内へ送入されている。 また,ロータリーバルブ及びシングルスクリューコンベアのように,羽根と羽根の間の空間部に被輸送物を送入し,これを羽根の回転により輸送する装置の場合,該羽根空間部における被輸送物質の充満率というものが必ず存在する。この充満率は,最も高いものでも0.45である。したがって,炭化キルン(7)内へ被輸送物を供給する側に設置されたロータリーバルブ(11)でも,羽根空間部の容積をvlとすると,羽根の回転に伴い,連続的にv(1-0.45)lの空気が被輸送物とともに内部へ送入されている。 排出口側及び搬入口側の2台のロータリーバルブ(5)(11)を通じて炭化キルン(7)内へ漏れ込む空気量を計算すると,1時間当たり39.4‰である。被告は,漏込量はわずかであると反論するが,被告の計算は,ロータリーバルブ(5)(11)内と炭化キルン(7)内の圧力差(ロータリーバルブ(5)(11)内が大気圧と同じであるのに対し,炭化キルン(7)内は炭化炉(12)とほぼ同じ-2.9mmAqのはずであるから,圧力差は-2.9mmAqである。)を考慮していない点で誤りがある。 c エアーシールから炭化キルン内への空気の流入 被告方法の設備のラビリンスシール(10A)(10B)は,実際は,エアーシール(シールボックス中の圧力をキルン内部圧力よりも高くとり,シール用ガスがキルン内に入ってもキルン内ガスが外に漏出しない形式のシール)である。被告は,シール用ガスとして蒸気を使用していると反論するが,シール部の導入管の構造や蒸気の物理特性からして,実際には蒸気を使用しているとは考えられない。したがって,被告方法の設備のシール部(10A)(10B)からは,炭化キルン(7)内へ空気が流入している。 また,仮に蒸気をシール用のガスとして使用しているとしても,被告方法においては,脱気装置が付設されておらず,結局,蒸気の注入に伴って空気の吹き込みがあることは明らかであり,炭化キルン(7)内へ空気(酸素)が流入していることは否定できない。 (ウ) 排ガス中の酸素濃度について 構成要件Bの「加熱炉から排出される排ガス」とは,本件明細書の特許請求の範囲に「加熱炉から排出される排ガス中の酸素濃度を3〜8%に制御した状態で上記ペーパースラッジを上記加熱炉内で転動させて・・・乾燥及び酸素抑制燃焼させ・・・上記加熱炉内に・・・保持することによって焼成カーボンを熟成させる」と記載されているとおり,加熱炉内で乾燥,酸素抑制燃焼,熟成の各工程を経た後に加熱炉から排出される排ガスを意味すると解すべきである。 そうすると,被告方法において,構成要件Bの「排ガス」と対比すべき部分は,炭化キルン(7)からの排ガスではなく,ペーパースラッジから発生した可燃性ガスを燃焼した後に炭化炉(12)から排出されるガスである。そして,木質材料炭化処理の発生ガスが完全燃焼したときの空気過剰比mが1.3であり,空気中の酸素濃度が21%であることから,ペーパースラッジの酸素抑制燃焼に伴って放出された可燃性ガスが完全燃焼したときの酸素濃度を計算すると,4.8%となる。 したがって,被告方法において,炭化炉(12)から排出される排ガス中の酸素濃度は3〜8%の制御範囲に合致する。 (エ) したがって,被告方法はいずれも本件発明の構成要件Bを充足する。 ウ 構成要件Cの充足性 (ア) 勿来方法においては,別紙イ号目録記載の構成e及びgのとおり,また小松島方法においては,同ロ号目録記載の構成p及びrのとおり,排出される排ガス中の酸素濃度を3〜8%に制御した状態で,ペーパースラッジを転動させてその受熱面を更新しながら,約47分間,炭化キルン(7)内に温度約790〜800℃の下で保持して熟成させ,焼成カーボンを生成させている。 (イ) 被告方法において炭化物の熟成が行われていることは,以下の点から明らかである。 すなわち,被告は,炭化キルン(7)内の温度が780℃〜800℃であることを認めている。そして,@セルロース及びヘミセルロースを含む木質系物質の炭化工程では,かかる温度は熟成(精錬)の温度に当たること,A木炭製造のうち白炭を生産する場合,560℃以上の温度で精練炭ができること,B木質バイオマスの炭化過程においては,600℃以上は炭素化帯として熟成の工程にあること,C勿来工場において製造された炭化物(以下,「勿来物件」という。)は,炭素含有率分析値で,熱灼減量に対して炭素含有量が純炭素程度に高いことからすれば,被告方法において炭化物の熟成が行われていることは明白である。 (ウ) したがって,被告方法はいずれも本件発明の構成要件Cを充足する。 (被告の反論) ア 構成要件Aの充足性について 被告方法においては,以下のとおり,構成要件Aの「加熱炉」を有しない。 原告らは,本件発明の出願に対する平成10年12月4日付拒絶理由通知を受けた際に提出した意見書において,「本発明では唯一つのロータリーキルン式の加熱炉内で乾燥,酸素抑制燃焼及び熟成の各工程を遂行しているのに対し,引例2(特開昭49-54293)では乾燥機内で乾燥させ,熱分解炉内で熱分解している。」と述べている。したがって,構成要件Aの「ロータリー式の加熱炉」とは,乾燥,酸素抑制燃焼及び熟成の各工程のすべてを遂行するロータリーキルン式の加熱炉を指すものと解すべきである。 これに対し,被告方法では,ペーパースラッジの乾燥は,炭化キルン(7)とは別体のドライヤーで行っているので,被告方法においては,本件発明の「加熱炉」を有しない。 また,勿来方法のペーパースラッジは古紙再生施設から排出されたものではない。 したがって,被告方法は本件発明の構成要件Aを充足しない。 イ 構成要件Bの充足性について (ア) 「酸素抑制燃焼」について 被告方法においては,以下のとおり,炭化キルン(7)内でペーパースラッジの「酸素抑制燃焼」を行なっていないので,構成要件Bを充足しない。 すなわち,被告方法は,炭化キルン(7)内でペーパースラッジを実質的に無酸素状態で乾留して,乾溜ガスを発生させる,いわゆる乾溜式炭化物製造法である。被告方法の設備は,回転する炭化キルン(7)とその周囲を覆う固定の炭化炉(12)(燃焼室)の二重構造を採用しており,炭化キルン(7)は,ロータリバルブ(5)(11)や蒸気を用いたラビリンスシール(10A)(10B)によって空気の流入が遮断されているから,酸素抑制燃焼は起こらない。 原告らが,「酸素抑制燃焼」を行なっているとする主張は,以下のとおり理由がない。すなわち, a 導出管を通じた炭化キルン内への空気流入に対する反論 原告らは,被告方法の炭化キルン(7)には,導出管(15A)(15B)を通じて炭化炉(12)から空気が流入していると主張する。 しかし,被告方法においては,炭化キルン(7)及び炭化炉(12)の内部の気体を排ガスファン(22)で吸引し,炭化炉(12)内の圧力が大気圧に対し-3mmAqとなるようにして,常にガスが炭化キルン(7)から炭化炉(12)に流れるように制御している。したがって,炭化炉(12)から炭化キルン(7)内に空気やガスが逆流することはない。 b ロータリーバルブから炭化キルン内への空気流入に対する反論 原告らは,ロータリーバルブ(5)(11)を通じて空気が炭化キルン(7)内に流入すると主張する。 しかし,炭化キルン(7)入口のロータリーバルブ(5)から空気が侵入することはない。また,炭化キルン(7)出口のロータリーバルブ(11)から,排出される固体の体積に等しい量の空気が外部から侵入するとしても,その量は極めてわずかである。炭化キルン(7)内で1時間当たり発生する水蒸気と乾留ガスの量に,ロータリバルブ(11)から1時間当たり流入する空気の量を加えた全気体の合計量に対し,流入した空気量中の酸素が占める割合を計算すると,酸素濃度は,勿来工場においては0.077%,小松島工場においては0.076%にすぎない。これは,およそ物が燃焼するために必要な酸素の量とは全くかけ離れた微量な値である。したがって,ロータリバルブ(11)から侵入する空気があったとしても,炭化キルン(7)内が実質的無酸素状態であることに変わりはない。 c エアーシールから炭化キルン内への空気の流入に対する反論 ラビリンスシール(10A)(10B)においては,許容酸素量を百万分の一 以下に抑制するように規制した用水から発生させた蒸気を,シール用ガスとして使用している。したがって,蒸気が炭化キルン(7)内に流入しても炭化キルン(7)内の酸素量を増加させることはない。 (イ) 加熱炉から排出される排ガス中の酸素濃度について a 被告方法においては,以下のとおり「排ガス」が発生しない。 構成要件Bの「加熱炉」とは,ロータリー式加熱炉(ロータリーキルン)を指す。ところで,被告方法において,炭化工程に用いるロータリーキルンは,炭化キルン(7)が相当するのであるから,「加熱炉から排出される排ガス」と対比すべきものは,「炭化キルン(7)から排出されるガス」である。被告方法では,そもそも,炭化キルン(7)内で燃焼が起こらないから,炭化キルン(7)から排出されるものは「排ガス」ではなく,「乾溜ガス」である。 b 被告方法においては,ガス中の酸素濃度を3〜8%に制御することが行われていない。 仮にロータリバルブ(11)から炭化キルン(7)内に空気が流入するとしても,被告の主張イ(ア)b記載のとおり炭化キルン(7)内に供給される空気はわずかな量であり,この程度の漏入れ空気により,炭化キルン(7)から排出されるガス中の酸素濃度が3〜8%となることはない。 したがって,被告方法は,構成要件Bを充足しない。 ウ 構成要件Cの充足性について 構成要件Cの「熟成」とは,本件明細書の「発明の詳細な説明」欄を参照すると,ペーパースラッジを燃焼させた後の燃焼残渣を,熟成工程に供し,乾燥及び酸素抑制燃焼と同時間炭化炉内で転動移送の間一定温度下に保持することを指すと解すべきである。すなわち,発明の詳細な説明欄には,【0013】「・・・ペーパースラッジの乾燥及び酸素抑制燃焼はおよそ45分間450mの転動移送によって完了する。」,【0014】「燃焼残渣は乾燥及び酸素抑制燃焼に要する時間とほぼ同等の時間,即ち,およそ45分間450mの転動移送の間加熱炉4内において550℃〜950℃,望ましくはほぼ670℃の温度下に保持され,これによって焼成カーボンが熟成される。」と記載され,同記載に照らすと,熟成とは,燃焼残渣を所定の条件下で保持することを指すことは明らかである。 これに対し,被告方法においては,そもそも酸素抑制燃焼はないから,熟成工程に供すべき燃焼残渣もない。そして,酸素抑制燃焼がない以上,乾燥及び酸素抑制燃焼に要する時間を測ることや,これと等しい熟成時間を測ることができない。以上のとおり,被告方法には,酸素抑制燃焼を前提にその残渣を熟成するという過程が存在しない。 したがって,被告方法は,本件発明の構成要件Cを充足しない。 (4) 損害額 (原告らの主張) ア 補償金支払請求 原告岳南第一製紙協同組合(以下「原告岳南」という。)は,平成9年6月20日付け書面により,被告に対し,特許法(以下「法」という。)65条1項の警告をした。 被告は,勿来工場において,遅くとも平成9年11月から同11年11月までの間本件発明を実施し,少なくとも合計1000トンの勿来物件を製造し,これをトン単価平均3500円で販売した。また,小松島工場において,遅くとも平成11年4月から同年11月までの間本件発明を実施し,少なくとも合計1200トンの炭化物(以下,小松島工場において製造された炭化物を「小松島物件」という。)を製造し,同単価で販売した。本件発明の実施料率は,8パーセントが相当である。 したがって,被告は,61万6000円の補償金支払義務を負う。 イ 法102条2項所定の損害 原告岳南は,平成7年10月ころから,本件発明により製造した製品を広く日本国内において販売している。 被告は,勿来工場において,平成11年12月から同13年2月までの間に,少なくとも勿来物件合計600トンを製造し,これをトン単価平均3500円で販売した。また,被告は,小松島工場において,同期間の間に,少なくとも小松島物件合計2250トンを製造し,これを同単価にて販売した。 勿来物件及び小松島物件の販売による被告の利益率は,20パーセントを下ることはなく,被告は,販売により少なくとも199万5000円の利益を得ている。 したがって,原告らの被った損害は199万5000円と推定される。 ウ ペーパースラッジの廃棄処分費用 原告岳南は,被告による勿来物件及び小松島物件の販売行為により,少なくとも被告が販売したと認められるのと同等の数量のペーパースラッジ合計2850トン(平成11年12月に190トン,平成12年1月から2月の間に2660トン)を投棄処分せざるを得なくなった。 投棄処分に要した費用は,平成11年12月は,投棄代及び運賃を合わせて1トン当たり8600円,平成12年1月から同13年2月までの間は,1トン当たり8100円である。 したがって,原告らが,被告による勿来物件及び小松島物件の販売行為により被った積極損害は2318万円である。 エ 弁護士費用 本件事件処理に関する弁護士報酬としては,少なくとも300万円を下ることはない。 オ まとめ したがって,原告らが被った損害(補償金を含む)は,合計2879万1000円である。遅延損害金は,各不法行為の後の日である平成13年3月1日から請求する。 (被告の主張) 原告岳南が,平成9年6月20日付け書面により,被告に対し,法65条1項の警告をしたとの主張は認める。その余の主張は争う。 |
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当裁判所の判断
1 構成要件Aの充足性 (1) 構成要件Aにおける「加熱炉」の意義 当裁判所は,構成要件Aにおける「加熱炉」とは,ペーパースラッジの乾燥,酸素抑制燃焼及び熟成のすべての工程を行う炉を意味するものと解する。その理由は,以下のとおりである。 ア(ア) 本件発明の【特許請求の範囲】【請求項1】欄には,「ペーパースラッジをロータリ式の加熱炉内に供給し,・・・上記ペーパースラッジを上記加熱炉内で転動させてその受熱面を更新しながら乾燥及び酸素抑制燃焼させた後,・・・これを上記乾燥及び酸素抑制燃焼に要する時間とほぼ同等の時間上記加熱炉内に温度550℃〜950℃の下で保持することによって焼成カーボンを熟成させる」と記載されている。 (イ) また,本件特許出願に対し,平成10年12月15日,拒絶理由通知書が発せられ,その中で,公知技術として引例2(特開昭49-54293号公報)の存在が指摘された。これに対して,出願人である原告らは,平成11年2月9日,特許庁に対して手続補正書及び意見書を提出した。原告らは,同意見書の中で,本件発明を引例2の公知技術と区別すべく,「引例2では,機械的に脱水した未侵出スラッジを回転式乾燥機内で油バーナからの燃焼ガスと直接接触させて乾燥し,次いで,この乾燥機から取り出した乾燥生成物が尚あたたかい内に油バーナを具え両端を密閉して漏洩を防止してなる熱分解炉内に供給してここで油バーナの二次空気の供給を緩徐に減少させることによって生成される還元性条件下で直接加熱することにより熱分解している。・・・即ち,本発明では唯一のロータリキルン式の加熱炉内で乾燥,酸素抑制燃焼及び熟成の各工程を遂行しているのに対し,引例2では乾燥機内で乾燥させ,熱分解炉内で熱分解している。」と述べ,上記補正を経て,本件発明について特許査定されている(乙10,弁論の全趣旨)。 イ 上記アの記載及び経緯に照らすならば,本件発明の構成要件Aにおける「ロータリー式の加熱炉」とは,乾燥,酸素抑制燃焼及び熟成の各工程のすべてを遂行するロータリーキルン式の加熱炉を指し,その一部の工程のみを遂行する加熱炉を含まないものと解すべきである。 (2) 被告方法との対比 ア 勿来方法においては,ペレット状粒子は,まず,スラッジドライヤー(4)で含水率が2〜3%になるまで乾燥させられてから,次いで,ロータリーバルブ(5)及びシングルスクリューコンベア(6)を経由して,スラッジドライヤー(4)とは別個の設備である炭化キルン(7)内部へと移送され,また,小松島方法においては,ペレット状粒子は,まず,ドライヤー(4)で乾燥させられてから,次いで,ロータリーバルブ(5)及びシングルスクリューコンベア(6)を経由して,ドライヤー(4)とは別個の設備である炭化キルン(7)内部へと移送される(争いがない)。 イ 以上によれば,被告方法では,ペレット状粒子を乾燥させる工程が,炭化キルン(7)とは異なる設備内で行われているものであり,仮に炭化キルン内で酸素抑制燃焼及び熟成が行われているとしても(被告は,炭化キルン内で酸素抑制燃焼及び熟成が行われていること自体を争っている。),被告方法は,乾燥,酸素抑制燃焼及び熟成のすべての工程を単一の「加熱炉」で行うものではない。 したがって,被告方法は,いずれも構成要件Aを充足しない。 2 構成要件Bの充足性 (1) 被告方法において,炭化キルン(7)内でペーパースラッジの「排ガス中の酸素濃度を3〜8%に制御した状態で・・・酸素抑制燃焼」を行なっていると認められるか否かについて検討する(なお,上記1(2)イで判断したとおり,被告方法においては「加熱炉」,すなわち乾燥,酸素抑制燃焼及び熟成のすべての工程を遂行するロータリーキルン式の加熱炉が存在しないのであるから,構成要件Bの「加熱炉から排出される排ガス」と,被告方法のいかなる部分から排出されるガスとを対比すべきかが,必ずしも明確ではない。しかし,原告らは,被告方法においてはペーパースラッジの酸素抑制燃焼及び熟成工程は炭化キルン(7)内で遂行されていると主張するのであるから,以下においては,炭化キルン(7)から排出されるガスと対比することとする。)。 (2) 事実認定 ア 勿来工場及び小松島工場の設備の構造は以下のとおりであり,これを覆すに足りる証拠はない(証拠を付した部分以外は,争いがない)。 (ア) ペーパースラッジは,スラッジドライヤー(4)(勿来方法)又はドライヤー(4)(小松島工場)で乾燥された後,ロータリーバルブ(5),シングルスクリューコンベア(6)を経由して,炭化キルン(7)内に搬入される。炭化キルン(7)は,炭化炉(12)を貫通して内嵌されている回転可能な円筒形の装置である。 (イ) 炭化炉(12)は,炭化キルン(7)の周囲を覆っており,炭化炉(12)と炭化キルン(7)とは,複数の導出管(15A)(15B)により連通している。炭化炉(12)には,複数の補助バーナー(14)が配設され,その内部を加熱できるようになっている。また,炭化炉(12)内には,打込みエアーファン(13)により送入された空気が,複数の打込みエアノズル(空気吐出口)から吹き込まれている。打込みエアノズルは,導出管(15A)(15B)の吐出口と相対することのないよう,吐出口の位置とは,すべて水平上の位置及び高さをずらして配置されている(乙13)。 (ウ) 炭化キルン(7)の回転部(8)と,回転部を支持するキルン固定部(9A)(9B)との間からの空気の流入を防ぐため,両部分の接触部分には,ラビリンスシール(10A)(10B)が施されている。このラビリンスシールは,キルン回転部(8)の外周にリング状の板を数枚垂直方向に取り付け,かつ,その板と板の間に位置するように,キルン固定部(9A)(9B)の内周に同様のリング状の板を数枚垂直に取り付けて,キルン回転部(8)とキルン固定部(9A)(9B)との間の空間を仕切り,狭い通路を設けることによって,流体の流れを妨げているものである(乙4,6)。被告方法においては,この通路に,脱酸素処理をした用水を用いて発生させた蒸気を充満させ,固定枠の通路内の圧力が外気より少し高くなるようにすることにより,外部空気の炭化キルン(7)内への流入を防止している(甲19の2頁及び写真No13,乙7,8)。また,シール性を高めるため,キルン固定部(9A)(9B)のリング状の板の両外側に,弾力性のあるシールパッキンを取り付けている(乙7,8)。 イ 上記認定した事実によれば,被告方法の炭化キルン(7)は,可能な限り内部への空気の流入を防ぐよう設計されており,たとえ炭化キルン(7)内に不可避的に漏れ入る空気があるとしても,その量はわずかなものにすぎないといえる。 ウ 原告らの主張に対する判断 これに対して,原告らは,被告方法においては,複数の経路を通じて炭化キルン(7)内に多量の空気が流入していると主張する。しかし,原告らの同主張は,以下のとおり理由がない。すなわち, (ア) 導出管を通じた流入について 原告らは,被告方法においては,炭化炉(12)内の空気が導出管(15A)(15B)の一部を通じて炭化キルン(7)内に流入していると主張する。 しかし,前記認定((2)ア(イ))のとおり,打込みエアノズルは,導出管(15A)(15B)の吐出口と相対することのないよう,すべて吐出口とは水平上の位置及び高さをずらして配置されているのであり,かかる構造からすれば,炭化キルン(7)が回転している間も,導出管(15A)(15B)の吐出口とエアノズルが一直線上に並ぶことはなく,打込みエアーファン(13)によって炭化炉(12)内へ送り込まれた空気がそのまま炭化キルン(7)内へ挿入されるとは認められない。 かえって,被告方法においては,炭化キルン(7)内で発生した可燃性ガスを炭化炉(12)へと確実に導入するために,炭化炉(12)内の圧力が常に炭化キルン(7)内の圧力よりも低くなるように制御していることがうかがえる(乙5)ことからすると,炭化炉(12)内の空気が,導出管(15A)(15B)を通じて炭化キルン(7)内に流入するとは考えられないというべきである。 したがって,この点についての原告らの主張は採用できない。 (イ) ロータリーバルブからの空気の流入について また,原告らは,被告方法においては,ロータリーバルブ(5)(11)を通じて炭化キルン(7)内に空気が流入していると主張する。 確かに,乙4及び6によれば,ロータリーバルブとは,円筒状のケーシングの中で,数枚の羽根から構成された断面が星状のローターが回転し,右羽根の間の溝(ポケット)に入った物体を排出する構造になっていることが認められ,このような構造からすれば,ロータリーバルブ(5)(11)から搬送物が搬出入されるのに伴い,炭化キルン(7)内に羽根の間の溝から空気が漏れ入る可能性がある。 しかし,乙6及び弁論の全趣旨によれば,ロータリーバルブの役割は本来外界からの空気を遮断しつつ噴流体を供給することにあることが認められ,このような装置を用いて搬送物の搬出入をすることに伴い不可避的に空気が流入するとしても,その量はごくわずかなものであると推認されることからすれば(乙4によれば,ペーパースラッジを排出した際の置換空気の量は,ロータリーバルブ1台につき,勿来方法については約0.352Nm3,小松島工場については約2.135Nm3程度であり,これを炭化キルン(7)中の酸素濃度に換算すると,勿来工場については0.077%,小松島工場については0.076%であることが認められる。),このような不可避的な空気の流入がわずかに生ずることをもって,被告方法において,排ガス中の酸素濃度を3〜8%に制御した酸素抑制燃焼を行っていると認めることはできない。 したがって,この点についての原告らの主張は採用できない。 (ウ) 勿来物件の炭素成分含有率について なお,原告らは,勿来物件の炭素成分含有率が約97%と非常に高いところ,炭化キルン(7)内に酸素を供給することなく,このような高炭素物質を得ることは理論的に不可能であるとも主張する。 しかし,乙1によれば,被処理物から炭化物を生成する方法としては,本件発明のように被処理物を供給した炉内で燃焼を行う内熱式の炭化方法以外にも,被処理物を投入した部分への空気の流入を遮断し,これを外部から加熱して,被処理物を熱分解させる方法も存在することが認められる(甲20によれば,木材は,空気の供給を不十分にするか遮断しながら加熱していくと,96%という高い炭素含有量が得られる旨述べた文献もある。)。 したがって,この点についての原告らの主張も採用できない。 (3) 小括 以上によれば,被告方法において,炭化キルン(7)内に,同キルンから排出される排ガス中の酸素濃度が3〜8%となるような大量の空気(酸素)を供給していること,さらに,その供給量を排ガス中の酸素濃度が3〜8%の範囲内となるように制御していることを認めることはできない。 したがって,被告方法は,いずれも本件発明の構成要件Bを充足しない。 |
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結論
よって,その余の点を判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
イ号目録1図面の簡単な説明別紙図面1は,本件イ号方法のためのスラッジ炭化設備の概略フローである。 同図面2はイ号方法における炭化炉及び炭化キルンの模式的な正面断面図,同図面3は,イ号方法における炭化炉及び炭化キルンの一部を切り欠いて示した模式的な斜視図である。 2イ号方法の構成a製紙工場から排出されたペーパースラッジを原料受入槽(1)へ貯留し,処理量に応じて槽底に設けた4本のスクリューコンベヤ(2)で排出し,造粒機(3)へ移送する。 b造粒機(3)では,ペーパースラッジを多数の小穴からペレット状粒子として連続的に押し出す。 c上記の未乾燥(含水率平均約65%)のペレット状粒子を,加熱炉であるスラッジドライヤー(4)へ移送し,転動させて受熱面を更新しながら,約43分間,約400℃の熱風により乾燥(含水率2〜3%)する。 dペレット状粒子を,スラッジドライヤー(4)出口からロータリーバルブ(5),シングルスクリューコンベヤ(6)を経由し,加熱炉である炭化炉(12)中の炭化キルン(7)内部へ移送する。 e炭化キルン(7)に周設された複数の導出管(15A)(15B)を通じて炭化キルン(7)から炭化炉(12)を経て排出される排ガス中の酸素濃度を3〜8%に制御した状態で,f上記ペレット状粒子を約4〜5分間,炭化キルン(7)内で転動させてその受熱面を更新しながら引き続き乾燥及び酸素抑制燃焼させた後,g約47分間,炭化キルン(7)内に温度780℃〜800℃の下で保持して焼成カーボンを熟成させる。 h熟成させた焼成カーボンは連続的に,ロータリーバルブ(11),シングルスクリューコンベア(17)を経由し,冷却キルン(18)へ移送される。 i外部水冷式のロータリーキルンである冷却キルン(18)において,上記焼成カーボンを約50℃(出口)まで冷却する。 j冷却された焼成カーボンは,ベルトコンベア(19)で炭化物ホッパー(20)へ移送される。 k炭化物ホッパー(20)に貯留された焼成カーボンをコンテナーバッグへ充填する。 図面1図面2図面3ロ号目録1図面の簡単な説明別紙図面1は,本件ロ号方法のためのスラッジ炭化設備の概略フローである。 同図面2はロ号方法における炭化炉及び炭化キルンの模式的な正面断面図,同図面3は,ロ号方法における炭化炉及び炭化キルンの一部を切り欠いて示した模式的な斜視図である。 2ロ号方法の構成l製紙工場から排出されたペーパースラッジを原料受入槽(1)へ貯留し,処理量に応じて槽底に設けた6本のスクリューコンベヤ(2)で排出し,造粒機(3)へ移送する。 m造粒機(3)では,ペーパースラッジを多数の小穴からペレット状粒子として連続的に押し出す。 n上記の未乾燥(含水率平均約65%)のペレット状粒子を,加熱炉であるドライヤー(4)へ移送し,転動させて受熱面を更新しながら,約43分間,約400℃の熱風により乾燥(含水率2〜3%)する。 oペレット状粒子を,ドライヤー(4)出口からロータリーバルブ(5),シングルスクリューコンベヤ(6)を経由し,加熱炉である炭化炉(12)中の炭化キルン(7)内部へ移送する。 p炭化キルン(7)に周設された複数の導出管(15A)(15B)を通じて炭化キルン(7)から炭化炉(12)へ放出され,更に,再燃炉(21),ドライヤー(4)を経て排出される排ガス中の酸素濃度を3〜8%に制御した状態で,q上記ペレット状粒子を約4〜5分間,炭化キルン(7)内で転動させてその受熱面を更新しながら引き続き乾燥及び酸素抑制燃焼させた後,r約47分間,炭化キルン(7)内に温度780℃〜800℃の下で保持して焼成カーボンを熟成させる。 s熟成させた焼成カーボンは連続的に,ロータリーバルブ(11),投入用シュート(22)を経由し,冷却キルン(18)へ移送される。 t外部水冷式のロータリーキルンである冷却キルン(18)において,上記焼成カーボンを約40℃(出口)まで冷却する。 u冷却された焼成カーボンは,ベルトコンベア(19)で炭化物ホッパー(20)へ移送される。 v炭化物ホッパー(20)に貯留された焼成カーボンをコンテナーバッグへ充填する。 図面1図面2図面3(別紙)被告主張イ号目録図面1図面2図面3図面4図面5被告主張ロ号目録図面1図面2図面3図面4図面5 |
裁判長裁判官 | 飯村敏明 |
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裁判官 | 今井弘晃 |
裁判官 | 大寄麻代 |