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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成13ワ5609特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成13ワ2702損害賠償等請求事件 判例 特許
平成17ワ15455損害賠償請求事件 判例 特許
関連ワード 新規性 /  公然知られ(29条1項1号) /  進歩性(29条2項) /  周知技術 /  慣用技術 /  技術的範囲 /  発明の詳細な説明 /  実質的に同一 /  出願経過 /  参酌 /  置き換え /  容易に想到(容易想到性) /  禁反言 /  特許発明 /  実施 /  加工 /  構成要件 /  侵害 /  損害額 /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  変更 /  要旨変更 / 
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事件 平成 17年 (ワ) 5863号 損害賠償等請求事件
愛媛県四国中央市<以下略>
原告大 王製紙株式会社
同訴訟代理人弁護士小池豊
同 櫻井彰人
同訴訟代理人弁理士永井義久 東京都中央区<以下略>
被告王 子ネピア株式会社
同訴訟代理人弁護士辻居幸一
同 渡辺光
同 竹内麻子
同 高石秀樹
同 外村玲子
同 奥村直樹
同 補佐人弁理 士平山孝二
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2007/01/30
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求の趣旨被告は,原告に対し,12億2100万円及びこれに対する平成17年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,原告が,被告に対し,被告の製造販売する紙おむつが,原告の有する「紙おむつ」についての特許発明技術的範囲に含まれるとして,特許権侵害に基づく損害賠償を求めた事案である。被告は,被告の製造販売する紙おむつは上記特許発明技術的範囲に含まれず,また,原告の特許権には進歩性欠如の無効理由が存するので権利行使が許されないなどと主張して,これを争っている。
( , 。) 1前提となる事実 当事者間に争いがないか 後掲各証拠によって認められる( ) 当事者1原告は,紙・板紙の製造加工,販売等を業とする株式会社である。
被告は,紙類,パルプ類等の製造,加工,売買等を業とする株式会社である。
( ) 原告の有する特許権2原告は,下記の特許(以下 「本件特許」という )の特許権者である。 ,。
特 許 番 号第3009482号登録日平成11年12月3日出 願 番 号特願平2-407789号出願日平成2年12月27日公 開 番 号特開平4-224750号公開日平成4年8月14日発明の名称紙おむつ( ) 本件特許出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載3本件特許に係る明細書(平成11年3月29日付け手続補正後のもの。以下 「本件明細書」という。本判決末尾添付の特許公報(甲2)参照 )の , 。
特許請求の範囲の請求項1及び同3の記載は次のとおりである。
ア請求項1(以下,請求項1に係る発明を「本件特許発明1」という )。
「不透液性シートと透液性シートと吸収体とを有し,さらに製品の幅方向両側部に弾性伸縮性の自由部が内側に向いたバリヤーカフスを有する紙おむつにおいて,前記バリヤーカフスの自由部より外側であってかつ吸収体の側縁から側外方にあるフラップ部を構成するフラップ部材シートが,製品紙おむつの全長にわたり,かつ,フラップ部材シートのほぼ全体が透液性であり,これによりフラップ部の製品紙おむつの全長にわたる領域が使用面側から裏面側に液が透過可能であることを特徴とする紙おむつ 」。
イ請求項3(以下,請求項3に係る発明を「本件特許発明3」という )。
「不透液性シートと透液性シートと吸収体とを有し,さらに製品の幅方向両側部に弾性伸縮性の自由部が内側に向いたバリヤーカフスを有する紙おむつにおいて,製品紙おむつの使用面側において,前記自由部の先端部に使用状態において前記透液性シートから離間するように起立させる弾性伸縮部材を有するバリヤーカフスを構成する透液性バリヤーシートが,前記吸収体の側縁から側外方に延在してフラップ部を構成し,かつ,前記透液性バリヤーシートの側外方部分は透液性シートの側縁より側外方に延在し,前記透液性シートおよび不透液性シートは製品紙おむつの全長にわたり,透液性シートの側縁は,不透液性シートの側縁より内側とし,かつ,透液性シートの側縁部が不透液性シートにホットメルト接着剤により固定され,前記フラップ部を構成する透液性バリヤーシートが,製品紙おむつの全長,, , にわたり かつ フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性を示しかつ前記透液性バリヤーシートの幅方向中間が前記不透液性シートの使用面側に対してホットメルト接着剤により固定されていることを特徴とする紙おむつ 」。
( )構成要件の分説4本件特許発明1及び本件特許発明3(以下,総称して「本件各特許発明」という )を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれを 。
構成要件1A」のようにいう。。)ア本件特許発明11A不透液性シートと透液性シートと吸収体とを有し,さらに製品の幅方向両側部に弾性伸縮性の自由部が内側に向いたバリヤーカフスを有する紙おむつにおいて,1B前記バリヤーカフスの自由部より外側であってかつ吸収体の側縁から側外方にあるフラップ部を構成するフラップ部材シートが,製品紙おむつの全長にわたり,かつ,フラップ部材シートのほぼ全体が透液性であり,1Cこれによりフラップ部の製品紙おむつの全長にわたる領域が使用面側から裏面側に液が透過可能であることを特徴とする1D紙おむつ。
イ本件特許発明33A不透液性シートと透液性シートと吸収体とを有し,さらに製品の幅方向両側部に弾性伸縮性の自由部が内側に向いたバリヤーカフスを有する紙おむつにおいて,3B@製品紙おむつの使用面側において,前記自由部の先端部に使用状態において前記透液性シートから離間するように起立させる弾性伸縮部材を有するバリヤーカフスを構成する透液性バリヤーシートが,前記吸収体の側縁から側外方に延在してフラップ部を構成し,Aかつ,前記透液性バリヤーシートの側外方部分は透液性シートの側縁より側外方に延在し,3C@前記透液性シートおよび不透液性シートは製品紙おむつの全長にわたり,A透液性シートの側縁は,不透液性シートの側縁より内側とし,Bかつ,透液性シートの側縁部が不透液性シートにホットメルト接着剤により固定され,3D@前記フラップ部を構成する透液性バリヤーシートが,製品紙おむつの全長にわたり,Aかつ,フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性を示し,Bかつ前記透液性バリヤーシートの幅方向中間が前記不透液性シートの使用面側に対してホットメルト接着剤により固定されていることを特徴とする3E紙おむつ。
( ) 被告の製造,販売する製品とその構成5被告は,別紙物件目録1記載の紙おむつ(商品名「ドレミ」Mサイズ及びLサイズ。以下「被告製品1」という )及び同目録2記載の紙おむつ(商 。
品名「ドレミパンツ 。以下「被告製品2」という )を製造,販売及び販 」 。
売の申出をしている。
被告製品1の構成は,別紙物件目録1記載のとおりである。なお,バリヤーシート4及び外装シート6は,撥水性(水をはじく性質)である(争いがない。。)被告製品2の構成は,別紙物件目録2記載のとおりである。なお,バリヤーシート4及び外装シート6は,撥水性(水をはじく性質)である(争いがない。。)( ) 被告製品1及び被告製品2(以下,総称して「被告各製品」という )の6 。
本件各特許発明の充足性ア本件特許発明1)被告製品1は,構成要件1A及び1Dを充足する(争いがない。
a 。))被告製品2は,構成要件1A及び1Dを充足する(争いがない。 b 。)イ本件特許発明3被告製品1は,構成要件3A,3C@,B及び3Eを充足する(争いがない。なお,被告製品2については,本件特許発明3の技術的範囲に 。)属することを前提とする損害賠償請求はない。
2本件における争点( ) 被告各製品の構成(争点1)1( ) 被告各製品が構成要件1Bの「フラップ部材シートのほぼ全体が透液性」 2を,被告製品1が構成要件3B@,A及び構成要件3D@,Bの「透液性バリヤーシート」を充足するか(争点2-1 。)( ) 被告各製品が構成要件1C「透過可能」を,被告製品1が構成要件3D3A「透液性」を充足するか(争点2-2 。)( ) 被告製品1が構成要件3BA,構成要件3CA,構成要件3DBを充足す4るか(争点2-3 。)( ) 本件特許発明1が特許法29条1項1号又は29条2項に違反しているか5(争点3-1 。)ア特開昭63-182401号公報を主引例とする無効理由があるか。
イ特開昭62-250201号公報を主引例とする無効理由があるか。
( ) 本件特許発明3が特許法29条2項に違反しているか(争点3-2 。
6 )ア特開昭63-182401号公報を主引例とする無効理由があるか。
イ特開昭62-250201号公報を主引例とする無効理由があるか。
ウ補正が要旨変更に該当することに基づく無効理由があるか。
( ) 損害の額(争点4)7第3争点に関する当事者の主張1争点1(被告各製品の構成)について( ) 原告の主張1被告製品1は,別紙物件目録1の構成の説明( )ないし( )記載の各構成に 16加え 「( )紙おむつ7におけるフラップ部9の全長にわたる領域が使用面 , 7側から裏面側に液が透過可能である 」との構成を有する。 。
被告製品2は,別紙物件目録2の構成の説明( )ないし( )記載の各構成に15加え 「( )紙おむつ7におけるフラップ部9の全長にわたる領域が使用面 , 6側から裏面側に液が透過可能である 」との構成を有する。 。
( ) 被告の主張2被告製品1が原告主張の構成( )を有することは否認する。 7被告製品2が原告主張の構成( )を有することは否認する。 62争点2-1(被告各製品が構成要件1Bの「フラップ部材シートのほぼ全体が透液性 を 被告製品1が構成要件3B@ A及び構成要件3D@ Bの 透 」 , ,,「液性バリヤーシート」を充足するか)について( ) 原告の主張1ア本件各特許発明の「透液性」とは,文字どおり,液が透過することをもって足りる。被告各製品において,フラップ部を構成しているバリヤーシート4や外装シート6が「透液性」を有することは明らかである。
イ被告は 特許請求の範囲の記載におけるフラップ部材の 透液性 と 透 , 「」 「液性シート (いわゆるトップシート)の「透液性」とは,同じ意味でな 」ければならず,したがって,フラップ部材の透液性は,トップシートの透液性と同じ程度のものでなければならないと主張する。
しかし,特許請求の範囲の記載において 「透液性」は文字どおり「液 ,を透す性質」であり,その意味においてすべて同じ意味を持つ用語として統一して使用されているのであって,それ以上に,各部材における「透液性の程度」までも同じでなければならないなどという根拠は全くない。
被告は,透液性と撥水性とを対立する概念であると捉えている点で根本的に誤っている。撥水性とは水をはじくこと,すなわち,シート表面の性状・特性の問題であり,シートそのものの透液性とは異なる概念である。
シート表面に撥水性があっても,蒸れの原因となる汗などの水分は透過するのであって,透液性と撥水性は違う次元の問題である。透液性の反対の概念は,文字どおり不透液性であって,撥水性ではない。現に 「撥水性,の液透過性材料 (甲14・ 0019「トップシートは,しばしば疎 」【】),水性不織布である(乙7・3頁左下欄下から4行ないし2行)のよう 。」に,撥水性であり,かつ,透液性のシートが,他にも存在している。
被告各製品におけるバリヤーシート4や外装シート6は撥水性であるものの,透液性も有している(甲6,9 。したがって,本件各特許発明の )「透液性」を充足することは明らかである。
ウ「透液性」の要件は,液を透す性質を有するか否かという基準で判断すれば足りることであって,その意義は明確であり,特に明細書の詳細な説明の記載を参酌するまでもない。そして,詳細な説明や図面は,透液性の意味を明白に裏付けるものであり,被告が主張するように「透液性の程度が高い」とか,撥水性のあるものを除外するなどという解釈の根拠には全。,【】,【】,【】, くならない また 本件明細書の 000700110021【】,,,, 0033 の記載に照らしても 本件各特許発明の課題 作用 効果は透液性を有することによってもたらされるのであるから,限定解釈すべき理由は全くない。
被告は,本件明細書の【0013】の記載を引用して,撥水性不織布は液分の浸透を防止できるものとして記載されていると主張する。しかし,【0013】の記載は,バリヤーカフスを撥水性不織布にすると共に,これを不透液性シートに固定することによって不透液性であるフラップ部とするというのであるから,撥水性不織布は透液性のものとして記載されているのである。そうでなければ,フラップ部を撥水性不織布のみで構成するだけで,フラップ部は不透液性となるはずであって,わざわざ不透液性シートと固定する必要はない。次に【0014】は 【0013】で示し,た,撥水性不織布と不透液性シートからなるフラップ部から,不透液性シートを除外し,フラップ部を撥水性不織布だけの構成としたものをもって透液性を有するものと説明しているのである。
【】 , , 0016 は トップシートに用いられるような不織布と比較すれば撥水性不織布の方が液の浸出に対処できることを述べたにすぎず,撥水性不織布が不透液性であるなどと述べているものではない。
【0015】の「通気撥水性のシート」は,明らかに「通気防水性のシート」の誤記であって 「通気撥水性のシート」では意味が通らない 【0 , 。
015】では 「透液性を示すようにしたものであるために,たとえば通 ,気撥水性のシートを用いる場合に比較して蒸れの防止効果はきわめて高いものとなる 」とされている 「透液性」と「通気撥水性」とは相対立す 。。
る概念ではなく 「透液性」と「通気防水性」とを対比して,相対立する ,概念としてはじめて理解できるものである。次に【0002】で,蒸れの防止が紙おむつの改良の課題であるとした上で 【0003】で「この課 ,題を解決するために,実開昭62-88705号公報には,いわゆるサイドカット部分に対してそのサイドカット部分を埋め,紙おむつ全体が方形となるように,通気防水性シートを取付たもの(以下先行例1という)が知られている 」と記載している。そして,続く【0005】で「前述の 。
先行例1によれば,確かにサイドフラップ部における通気防水性シートの存在により着用時の蒸れをある程度防止できるとしても,少なくとも前後の部分での蒸れはまったく防止できない。たとえば幼児が仰向けまたはうつ伏せに寝ている場合には,背中側または腹側での蒸れが著しい 」とし。
て,本発明の課題を説明し,この後に,通気防水性シート方式の製造上の。【】 , , 困難性を指摘している0015 は かかる従来例の問題点を指摘し「 本件特許発明1におけるフラップ部は)透液性を示すようにしたもの (であるために,たとえば通気撥水性のシートを用いる場合に比較して蒸れの防止効果はきわめて高いものとなる 」との説明に至っているのである 。
から 「通気撥水性のシート」は「通気防水性のシート」の誤記であるこ ,とは疑問の余地がない 「通気撥水性のシート」という表現は,この箇所 。
にしか存在せず,その技術的効果がいかなるものであるかを説明することなしに,これよりも優れている旨の記載は誤記としか考えられない。
エ被告は,撥水性不織布をもって透液性とするのは,出願過程における原告の意見とは異なり,禁反言の原則に反する旨を主張する。
包袋禁反言は,出願過程で出願人が明確に主張した事実と反する事実を権利行使の場において主張することであって,個々の手続における言葉尻を捉えて議論する性質のものではない。平成11年3月29日付け意見書(乙4。以下「本件意見書」という )において,原告が一貫して主張し 。
てきたのは,各引用文献が,本件各特許発明と構成を異にし,その特徴である透液性のあるフラップ部材シートを具備しないことを指摘してきたのであり,特許庁もそれを認めて登録したものであって,それ以上に,意識的に撥水性のものを除外したとか,透液性の程度の低いものを除外したとかいうことは一切ない。
被告は,平成11年1月21日付け拒絶理由通知書(乙3。以下「本件拒絶理由通知書」という )を受けて提出された本件意見書における,引 。
用文献1(実開平3-24118,乙6。以下,本判決においても「引用文献1」という )について述べた意見において,ポリプロピレンスパン 。
ボンドを透液性シートから除外したと主張する。しかし,ポリプロピレンスパンボンドは,材質と製法から来る名称であって,それ自体で透液性の有無を論ずることはできない。また,引用文献1では 「シート10は液,バリヤー性および透湿性を有するポリエステル・ポリプロピレンなどのスパンボンド・メルトボンド・メルトブロー不織布や,ポリエチレンなどの微細多孔性プラスチックフィルムなどが用いられる(7頁19行ない。」し8頁3行)として,ポリプロピレンスパンボンドであっても,液バリヤー性,すなわち,不透液性であることが明記されている。さらに,被告の親会社が出願したパンツ型使い捨ておむつに関する特許において,トップシートとしてポリプロピレン製スパンボンドを使用した実施例が記載されている。このように,単にポリプロピレンスパンボンドといっても,透液性のものも不透液性のものもあるのであり,原告が引用文献1との相違を指摘したのは,それが液バリヤー性を有するポリプロピレンスパンボンドであるからであって,透液性のポリプロピレンスパンボンドを除外したなどということは全くない。
本件拒絶理由通知書における引用文献2(特開昭59-146651,乙7。以下,本判決においても「引用文献2」という )に対する意見に。
おいても,カフス自体が透液性ではないし,透液性を有するフラップ部材を設ける思想がないことを指摘したまでのことである。
(,。 本件拒絶理由通知書における引用文献3 実開平1-98110 乙8以下,本判決においても「引用文献3」という )に対する意見において 。
も,股下シートが撥水性であることを指摘しただけであって,フラップ部を透液性とする思想は一切ないと述べているとおり,引用文献3との相違を主張しただけで,透液性を有するが撥水性のあるものを除外したなどというものではない。
( ) 被告の主張2本件各特許発明における「透液性」とは,特許請求の範囲の記載,発明の詳細な説明及び出願経過に鑑みれば,透液性の程度の高い性質を意味し,撥水性ないし通気撥水性を含まないと解するのが合理的であり,被告各製品のフラップ部材シートが「透液性」の要件を充足しないことは明らかである。
ア特許請求の範囲の記載)特許請求の範囲の記載において 「透液性」という用語は 「透液性シ a ,,ート「フラップ部材シート」及び「透液性バリヤーシート」におい 」,て,共通して使用されている。
明細書の記載要領としては 「用語は,その有する普通の意味で使用 ,し,かつ,明細書全体を通じて統一して使用する 」と規定されている。
(特許法施行規則様式29[備考]8 。)したがって 「透液性シート」における「透液性「フラップ部材シ , 」,ート」における「透液性」及び「透液性バリヤーシート」における「透液性」は,それぞれ,同じ意味を有すると解するのが相当である。
そして,本件特許出願当時において,トップシートが尿等の液分を瞬間的かつ容易に透過する性質を有することから,出願人は,トップシートを「透液性」シートと呼んだのであり,使い捨ておむつの部材が有する特性を表す語として 「透液性」とはこのような性質を意味すると解 ,するのが相当である。
したがって 「透液性」とは (トップシートが有すると同程度の) ,,液体の透過性が高い性質を指すものであり,撥水性は含まないものである。
b)以上の解釈は,辞典類における一般的な定義を参照しても裏付けられる。すなわち 「透水」とは「水がしみとおること」であり 「水をは , ,じくこと」の「撥水」とは相容れないものである。
発明の詳細な説明について本件明細書の発明の詳細な説明において 「透液性」は「撥水性」を排 ,除する概念として記載されており 「透液性」が「撥水性」を含まないこ ,とは明白である。
a)本件明細書の【0013】には 「この種のバリヤーカフスを構成す ,る場合,軟便中の液分の紙おむつ側方への浸透を防止するために撥水性不織布を用いる」と記載され 「撥水性不織布」は,液分の浸透を防止 ,できるもの,すなわち透液性でないものとされている。
さらに 「軟便中の液分の紙おむつ側方への浸透を防止するために撥 ,水性不織布を用いる・・・したがって,フラップ部においては透液性を示さない 」と記載され,バリヤーシートを不透液性シートに固定する 。
ことと合わせて,フラップ部に撥水性不織布であるバリヤーシートを用いることで,透液性を示さないと明記されている。
b)これに続く【0014】では 「請求項1記載の発明においては,バ ,リヤーカフスを有する紙おむつにおけるフラップ部において,不透液性シートの側縁を製品紙おむつの側縁まで延在させる構成を採らないで,透液性を有する(したがって当然に通気性も有する )ものとした 」。。
とされている。このように【0013】から【0014】の流れにおいて,撥水性不織布を用いた透液性を示さないフラップ部を改善すべく,本件特許発明1ではフラップ部において透液性を有するものとしたとして 「透液性」は「撥水性」を排除する性質として位置付けている。 ,c)さらに 【0015】において 「軟便を阻止する機能の紙おむつに ,,おいては ・・・特に蒸れが生じやすい。しかし,請求項1記載の発明 ,においては ・・・透液性を示すようにしたものであるために,たとえ ,ば通気撥水性のシートを用いる場合に比較して蒸れの防止効果はきわめて高いものとなる 」と記載されている。これは,すなわち,軟便を阻 。
止する機能の紙おむつ(フラップ部に撥水性不織布を用いたもの)は蒸れが生じやすいのに対し,本件特許発明1では透液性を示すものを用いたために,通気撥水性シート(撥水性不織布)を用いる場合よりも蒸れ防止効果が高いとするもので,明らかに「撥水性」不織布(=蒸れが生じやすい )と「透液性 (=蒸れ防止効果が高い )とを相対する概念 。」。
として比較しているのである。
)また 【0016】では 「バリヤーカフスを構成する場合,バリヤ d ,,ーシートを通しての液分の外側外方への浸出性について考慮することが必要である。この点については,バリヤーシートをたとえば撥水性不織布を用いるで対処できる」として,明確に,撥水性不織布をバリヤーカフスに用いることで液分の外側外方への浸出性に対処できるとしているのである。
)発明の詳細な説明に関する原告の主張は,いずれも失当である。
e@原告は 【0013】及び【0014】に 「撥水性」不織布から , ,なるバリヤーカフスが「透液性」を有することが記載されていると主張する。
しかし 【0013】ないし【0016】の記載を参酌すれば,本 ,件明細書において 「撥水性不織布」は,液分の浸透を防止できるも ,のとして記載されており,原告の主張は,本件明細書の記載と明らかに矛盾する。
A原告は 【0007【0011【0021【0033】の記 ,】,】,】,載から,本件各特許発明の作用効果は,フラップ部材シートを「液が透過すること」によって奏されるものであり 「透液性が高い」とか ,「撥水性を有するものは除外される」と解釈する根拠はないと主張する。
,, 。 しかし 上記各段落の記載は 原告の主張を支持するものではないB原告は 【0015】の「通気撥水性のシート」との記載は 「通 , ,気防水性のシート」の誤記であり,そもそも 「透液性」と「通気撥 ,水性」とは相対立する概念ではなく,これが誤記であるが故に 「透,液性」と「通気防水性」という対立する概念として初めて理解できると主張する。
しかし 【0013】ないし【0016】の記載を参照すると,軟 ,便中の液分の浸透を防止するための「撥水性」不織布(従来例 【0,013 )と,透液性を有する部材を用いた「透液性」のフラップ部 】材(本件各特許発明 【0014 )とは,前者が液分の浸透を防止 ,】するのに対し,後者が「透液性」を有するという相違点において,正に対立する概念として記載されている したがって透液性 と 通 。,「」 「気撥水性」とは相対立する概念ではない旨の主張は,誤りである。
, 【】【】 また 出願当初明細書から存在した 0002 ないし 0007の記載は,紙おむつの前後の漏れ及び蒸れを防止するという技術思想について記載された部分である。一方,平成11年3月29日付け手続補正書(乙5。以下「本件手続補正書」という )において追加さ。
れた【0013】ないし【0017】には,バリヤーシートの材質として従来は「撥水性不織布」を使用していたのに対し,本件各特許発明においては,バリヤーシートとして「透液性」を有するものを使用したという技術思想が記載されている。以上のとおり 【0015】,に記載されている対比は 【0013】及び【0014】に記載され ,ている従来例と本件各特許発明との対比が記載されていると理解するのが自然であり,かつ,そのように理解すると前後の文脈が極めて良く整合するのであり,誤記では決してない。
さらに,原告(出願人)は,本件拒絶理由通知書を受けて提出された本件意見書において 「透液性」が「撥水性」を含まない概念であ ,ることを強調しており,両概念の相違を明細書上も明らかにして拒絶理由を回避するために,本件手続補正書による補正により 「通気撥,水性のシート」に係る記載を加えたものであり,同記載は誤記ではないというべきである。
C原告は 【0016】及び【0017】の各記載は,フラップ部材 ,シートから「撥水性」のものを除外する趣旨ではないと主張する。
しかし,原告も認めるとおり 【0016】の記載は,紙おむつに ,バリヤーカフスを設ける場合,バリヤーシートとして撥水性不織布を用いることによってバリヤーシートを通しての液分の浸透を抑制できることを意味する そして 原告が述べるとおり0017 は 外 。,,【】 「面への液の滲み出し」を防止するために,本件明細書の第5図のように 「ホットメルト接着剤により固定」することを記述したものであ ,る。
)以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明において 「透液性」f ,は,透液性の程度の高い性質を意味し 「撥水性」を排除する概念とし ,て記載されており,これが「撥水性」を含まないことは明らかである。
出願経過について原告は,出願経過において,ポリプロピレンスパンボンド不織布を使用したフラップ部は 本件各特許発明のフラップ部とは異なると主張し透 , ,「液性」は,透液性の程度の高い性質を意味するものであり 「撥水性」を,含まないことを明確にしている。
)引用文献1に関する主張についてa@本件拒絶理由通知書で引用された引用文献1において,第2フラップ部は本件各特許発明におけるフラップ部に相当する。そして,第2フラップ部は,上面に位置する吸液性シート(9)と下面に位置する不透液性及び透湿性シート(10)との複合シート(請求項2)で構。,, 。 成されている さらに 引用文献1には 次のとおり記載されている「シート9は吸汗性不織布,たとえば繊維表面が親水化処理されているポリエステル繊維のスパンボンド・メルトボンド・メルトブロー不織布や,ポリエステル・ポリピレンなどの疎水性繊維の不織布に前記親水化処理繊維・レーヨンなどのセルロース系親水性繊維がウォータージェットで交絡されたもの,これらの親水化処理または親水性繊維と前記疎水性繊維などの混合物からなるメルトボンド不織布などが用いられる(7頁8行ないし17行) 。」「シート10は液バリヤー性及び透湿性を有するポリエステル・ポリプロピレンなどのスパンボンド・メルトボンド・メルトブロー不織布や,ポリエチレンなどの微細多孔性プラスチックフィルムなどが用いられる(7頁19行ないし8頁3行) 。」A原告は,本件意見書において,次のとおり主張した。
「第2フラップ部分は,吸液性シート9と液バリヤー性で透湿性シート10とからなるものであり,したがって,第2フラップ部は液を透過しないものである(1頁22行ないし23行) 。」「引用文献1と本願各発明とは,前者が液を透過しないものであるのに対し,後者は透液性である点において,明確に相違する ・・・。
したがって,本願各請求項記載の発明は引用文献1記載の発明と同一ではない(2頁6行ないし10行) 。」Bシート9の素材として挙げられているポリエステルやポリプロピレン等の不織布について 「繊維表面が親水化処理されている」とあえ ,て記載されていることから,引用文献1において,これらの素材が親水性ではないことは明らかである。
また,シート10の素材は,このように親水化処理するとは記載されていないポリエステル・ポリプロピレンなどのスパンボンド・メルトボンド・メルトブロー不織布を用いるとしている。親水化処理していない上記不織布等は,その構造上程度の差はあれ,繊維と繊維の間を液体が物理的に透過するものである。
しかし,原告は,本件意見書において,このような単に物理的に透過可能であるポリエステル・ポリプロピレンなどのスパンボンド・メルトボンド・メルトブロー不織布等を素材とするシート10を用いた引用文献1におけるフラップ部をして 「液を透過しないもの」と主 ,張しているのである。したがって,単に繊維と繊維の間を液体が物理的に透過するポリエステル・ポリプロピレンなどのスパンボンド・メルトボンド・メルトブロー不織布等は,原告により「液を透過しないもの」と定義されているのである。
)引用文献2b,。 @本件拒絶理由通知書で引用された引用文献2には 次の記載がある「通気性カフスは,液体の通過に多少の程度抵抗しながらそれを通しての蒸気(空気及び水蒸気を包含)の多少の自由通過を可能とさせる(4頁左下欄2行ないし5行) 。」「通気性部分45の少なくとも内面48に蒸気の通過を過度に妨げずに液体の通過を遅延させるような特性を与える (10頁左下欄1」0行ないし12行)「事実上すべてのシート材料は,蒸気に対して,そして或る圧力下では液体に対して若干の(時々小さいが)透過性を有することが認められている。本明細書で使用される「不透過性 (蒸気または液体の」いずれに対して言及するとしても)は,問題の材料が使い捨てオムツに関係する実際的センスにおいて蒸気または液体の通過に対して実質上抵抗性であることを意味する(9頁左下欄7行ないし15行) 。」A原告は,本件意見書において 「・・・通気性とは蒸気通過性であ ,る。液に対して抵抗は示すものである(1頁最終行ないし2頁1 。」行「引用文献2(判決注・本判決における引用文献2である )の ), 。
ものは,カフス自体が通気性であるとしても,本願発明のように透液性のものではない(2頁17行ないし18行)等と主張した。 。」,,「 」, B以上のとおり 原告は液体の通過に多少の程度抵抗 する特性「液体の通過を遅延させるような特性」等は,いずれも本件各特許発明における「透液性」ではないことを強調している。また,前記のとおり,引用文献2では,すべてのシート材料が或る圧力下では液体に対して若干の透過性を有することを前提として,液体の通過に対して実質上抵抗性であることを「不透液性」と記載している。その上で,原告は,引用文献2は本願発明と異なり透液性のものではないと主張しているのであるから,液体の通過に対して実質上抵抗性があるものを,本件各特許発明の「透液性」から除外していることは明らかである。
)引用文献3c,。 @本件拒絶理由通知書で引用された引用文献3には 次の記載がある「撥水性を有し,かつ通気性の股下シートを設け (1頁10行な」いし11行)「股下シート4としては撥水性及び通気性を有するものであれば何でも良いが,望ましくは,ポリエステル,ポリプロピレンからなる不織布シート・・・が望ましい(5頁3行ないし7行) 。」A原告は,本件意見書において 「股下シートは通気性であるが撥水 ,性のものである(3頁20行)及び「この引用文献3においても, 。」バリヤーカフスの外側にフラップ部を設け,そのフラップ部を透液性とする思想は一切ない (3頁22行ないし23行)と主張した。 」さらに 原告は 本件手続補正書 乙5 により 本件明細書の 0 ,,(),【】【】 , 013 ないし 0015 を追加して通気撥水性のシートと比較し本件各特許発明では蒸れ防止効果が極めて高いものとして,引用文献3記載の発明との相違を主張している。
B以上のとおり,原告は 「撥水性及び通気性」を有するもの並びに ,その例として挙げられているポリプロピレンからなる不織布シートについて,いずれも本件各特許発明の「透液性」に含まれないと明確に主張している。
したがって,本件各特許発明における「透液性」は,ポリプロピレンからなる不織布シートのように「撥水性及び通気性」を有するものを排除するものである。
また,原告は,本件手続補正書により追加した本件明細書の【0015】において,引用文献3に記載されている「撥水性及び通気性」のシートと比較して本件各特許発明は高い蒸れ防止効果を奏すると記載しているのである( 0015】には 「通気撥水性のシートを用 【,いる場合に比較して蒸れの防止効果はきわめて高いものとなる 」と。
記載されている。。)このように,原告は,ポリプロピレン不織布を使用するフラップ部は,本件各特許発明の「透液性」のフラップ部とは異なることを明確にしている。
)以上のとおり,原告は,出願経過において,本件各特許発明におけるd「透液性」から「撥水性」を排除することにより特許権を取得したことが明らかである したがって 本件各特許発明における 透液性 に 撥 。,「」 「水性」が含まれると主張することは,禁反言に照らし許されない。
エ被告各製品の「撥水性」フラップ部材が,本件各特許発明の「透液性」に該当しないことについて被告各製品のフラップ部及びバリヤーカフスの素材は,ポリプロピレンスパンボンド不織布である。そして,ポリプロピレンスパンボンド不織布は「撥水性」である。被告各製品のフラップ部及びバリヤーカフスの素材は「撥水性」であり,トップシートに比して,耐水度,透水性において全,,「 」。 く異なり 著しく水が透過し難く液に対して抵抗を示すもの であるオしたがって,本件各特許発明の「透液性」は,液体の透過性が高い性質を意味し 「撥水性」を排除するものであるから,被告各製品のフラップ ,「」。 部及びバリヤーカフスは本件各特許発明の 透液性 の要件を充足しない3争点2-2(被告各製品が構成要件1C「透過可能」を,被告製品1が構成要件3DA「透液性」を充足するか)について( ) 原告の主張1既に述べたとおり 「透液性」は撥水性を含まないとの被告主張は失当で ,ある。したがって,被告各製品のフラップ部が,本件特許発明1の構成要件1B「フラップ部材シートのほぼ全体が透液性」及び構成要件1C「全長にわたる領域が・・・液が透過可能」を充足し,また,被告製品1が本件特許「 」 発明3の構成要件3DA フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性を充足することは明らかである。
( ) 被告の主張2ア被告製品1のフラップ部は,バリヤーカフス8の起立端11から外側に不透液性シート及び撥水性不織布からなるシート4及び外装シート6が延在している。また,被告製品2のフラップ部9は,二枚重ねの撥水性不織布からなる外装シート6からなり,撥水性である。
イ既に述べたとおり,本件各特許発明における「透液性」は「撥水性」を排除するものである。
ウ被告各製品のフラップ部は「透液性」に該当せず,本件特許発明1の構成要件1B「フラップ部材シートのほぼ全体が透液性」及び構成要件1C「全長にわたる領域が・・・液が透過可能」を充足せず,また,本件特許発明3の構成要件3DA「フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性」を充足しない。
4争点2-3(被告製品1が構成要件3BA,構成要件3CA,構成要件3DBを充足するか)について( ) 原告の主張1ア被告製品1のバリヤーシート4(透液性である )の側外方部分は,透 。
液性シート2の側縁より側外方に延在しているから,構成要件3BAを充足する。
被告製品1の透液性シート2の側縁は,不透液性シート1の側縁より内側であるから,構成要件3CAを充足する。
被告製品1において,透液性バリヤーシート4の幅方向中間が不透液性シート1の使用面側に対して,本件明細書の図1に示されるとおり,第2の固定部においてホットメルト接着剤により固定されているから,構成要件3DBを充足する。
イ被告は,構成要件3BA,構成要件3CA及び構成要件3DBは,透液性バリヤーシートが透液性シートに接触せずに不透液性シートに直接固定されることを要するものと解するのが相当であると主張する。
しかし,本件特許発明3の特許請求の範囲は,透液性シートの側縁部が不透液性シートにホットメルト接着剤により固定されていることを要件としているのみであり(構成要件3CB ,上記限定解釈の根拠は,特許請 )求の範囲の記載にはもちろん,明細書の記載にも全く存在しない。
構成要件3DBの「幅方向中間」における「中間」とは,文字どおり,両端の間に存在すればよいのであって,等距離である必要はない。
( ) 被告の主張2ア本件明細書の【0016】及び【0017】によると 「トップシート,を構成する透液性シートをそのままフラップ部に延在させると,その透液性シートを伝わってその側縁から液が浸出し,製品の外面に滲み出す虞れがある。これを防止するために,本件特許発明3においては 「透液性 。」 ,シートの側縁を,不透液性シートの側縁より内側とし,かつ透液性シートの側縁部が不透液性シートにホットメルト接着剤により固定されている」ことにより,液の伝わりを阻止することになる。すなわち,透液性バリヤーシートが透液性シートではなく不透液性シートに直接固定されることによって,液が透液性シートを介しフラップ部に伝わって浸出するのを防止しようと構成したものである。
したがって,本件特許発明3の構成要件3BA,構成要件3CA及び構成要件3DBは,透液性バリヤーシートが透液性シートに接触せずに不透液性シートに直接固定されることを要するものと解するのが合理的かつ自然である。
, , イ被告製品1は シート4が透液性シート2に熱融着により直接固定されバリヤーカフスを構成するバリヤーシートと透液性シートが直接接触している。
したがって,被告製品1が,本件特許発明3の構成要件3BA,構成要件3CA及び構成要件3DBを充足しないことは明らかである。
ウ本件特許発明3の構成要件3DBには,透液性バリヤーシートの「幅方向中間」が不透液性シートの使用面側に対してホットメルト接着剤により固定されていると明記されている 「中間」とは,一般に,二つの地点の 。
まんなかを意味する。
また,発明の詳細な説明におけるいずれの実施例をみても(本件明細書の図5ないし7 ,バリヤーシートの両端から等距離の地点であるバリヤ )ーカフスの起立端において,バリヤーシートが不透液性シートの使用面側に対し,ホットメルト接着剤により固定されている。
そして,出願経過に鑑みると,構成要件3DBは,当初明細書には記載がなく,当初明細書の図5に基づいて,平成9年12月25日付け手続補正書による補正により請求項4の中に追加されたものである。
しかるに,その補正の元となった当初明細書の図5ではバリヤーシートの両端から等距離の地点であるバリヤーカフスの起立端において,バリヤーシートが不透液性シートの使用面側に対し,ホットメルト接着剤により固定されており,それ以外の態様は開示されていない。
したがって,本件特許発明3の構成要件3DB「幅方向中間」とは,バリヤーシートの両端から等距離の地点であるバリヤーカフスの起立端を意味し,この点にバリヤーシートが不透液性シートの使用面側にホットメルト接着剤で固定されていなければならないと解するのが相当である。
, , エ被告製品1のシート4についてみると バリヤーカフスの起立端11は熱融着により透液性シート2に固定されており,構成要件3DB「不透液性シートの使用面側に対してホットメルト接着剤により固定されている」を充足しない。同時に,被告製品1は,シート4が不透液性シート1にホットメルト接着されている部分があるとはいえ,その接着箇所は,フラップ部9の外方端部の弾性伸縮部材に近く 「幅方向中間」ではない。 ,以上のとおり,被告製品1は,構成要件3DBを充足しない。
5争点3-1(本件特許発明1が特許法29条1項1号又は29条2項に違反しているか)について( ) 被告の主張・その11本件特許発明1は,本件特許発明1の出願日の前に公開された特開昭63-182401号公報(乙9。以下「引用文献4」という )に記載された。
発明(以下「引用発明4」という )と実質的に同一である(特許法29条
1項1号 。)仮に,引用文献4においてフラップ部が透液性であることが記載されていないとしても,本件特許発明1は,引用発明4と,本件特許発明1の出願日()(「」 の前に公開された引用文献2 乙7 に記載された発明 以下 引用発明2という )又は周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到で 。
きたものである(特許法29条2項 。)ア引用文献4には,次の記載がある。
)特許請求の範囲a「衣類面と身体面とを有する吸収性コアと,前記吸収性コアの前記衣類面に隣接配置された不透液性バックシートと,吸収性製品の縁に隣接配置された弾性的に収縮可能のガスケットカフスと,近位端と遠位端を有し前記ガスケットカフスに隣接配置されたバリヤカフスとを含む型の一体的使い捨て吸収性製品において ・・・前記近位端を吸収性製品に ,接合し・・・前記吸収性コアの前記身体面に隣接して透液性トップシートが配置され,このトップシートは外側に前記の各近位端に向かって延在してこの近位端の内側に終わり ・・・一体的使い捨て吸収性製品」 ,)発明の詳細な説明b@「本発明は使い捨てオシメなどの吸収性製品に関するもの (2頁」左下欄7行ないし8行)A「バリヤカフスはその遠位端を体液受容面から離間するための離間手段を備える(3頁左下欄14行ないし15行) 。」B「トップシートはバックシートと同一延長でなく,バリヤカフスがバックシートと共に吸収性製品のガスケットフラップを構成している (3頁左下欄19行ないし右下欄2行) 」C「バックシート42は吸収性コア44の縁を超えて延在し,オシメ20の外周部分28を成す。外周部分28はオシメの外周部分すなわち縁を成す。この外周部分28は長手方縁30と両端縁32とを有する ・・・トップシート38は少なくとも長手方縁30に沿ってバッ 。
クシート42と同一延長ではないが,好ましくは両端縁32に沿ってバックシート42に組合わされ重ね合わされる(4頁左下欄5行。」ないし14行)D「バリヤカフス62の近位端64は,ガスケットカフス56の内側において,好ましくは吸収性コア44の縁46とフラップ弾性部材60との中間において,接着剤などのシール手段78によってバリヤカフス部材62の一部をバックシート42に接合する事によって形成され・・・ (5頁左上欄12行ないし18行) 」E「トップシート38は吸収性コア44の身体側面86に隣接して配置され,吸収性コア44の側面縁46を超えて延長され,近位端64の内側に隣接して終わり,この箇所で,トップシートはシール手段78によってガスケットフラップ58(バックシート42)および近位端64に固着され・・・ (5頁右上欄19行ないし左下欄6行) 」F「バックシート42は液体不透過性・・・ (7頁左上欄5行ない 」し6行)G「トップシート38は液体透過性であって,体液を容易に透過させる・・・ (7頁左下欄8行ないし9行) 」H「トップシート38は近位端64に隣接して配置され,シール手段78によってガスケットフラップ58(バックシート42)に接着され・・・ (8頁右上欄16行ないし19行) 」I「・・・フラップ部分68をチャンネル部分70に固着された別個の材料片として形成する事ができる。すなわち,フラップ部分68はチャンネル部分70とは別個の物性,寸法および特性を有する事がで。, 」 きる 例えば フラップ部分68は不透液性である必要はなく・・・(10頁左上欄14行ないし20行)J「シール手段78は ・・・近位端64をガスケットフラップ58 ,に固着するための任意手段とする事ができる。シール手段78は・・・熱融解接着剤から成る接着製ビーズとする事が好ましい(12。」頁左下欄4行ないし14行)K「トップシート38がオシメの縁の内側に終わり,好ましくはバリヤカフス62の近位端64の内側に終わっている・・・ (14頁右」下欄11行ないし13行)L「トップシート38が不透液性フラップ部分68と不透液性バックシート42との間に包囲されオシメ20の縁の内側に終わっている・・・ (15頁左上欄14行ないし17行) 」)Fig1(15頁)には,トップシート38及びバックシート42がc一体的使い捨て吸収性製品20の全長にわたり,バックシート42が一体的使い捨て吸収性製品20の縁にまで延在しており,フラップ部68を構成するバリヤカフス62が一体的使い捨て吸収性製品20の全長にわたる状態が記載されている。
Fig2(15頁)では,フラップ部分68が,バリヤカフス62の遠位端66より外側であって吸収性コア44の側縁から側外方に存在し,スペーサ弾性部材77を備えたバリヤカフス62が,内側を向いてトップシート38から離間するように起立し,バリヤカフスを構成するシートが,吸収体側縁から側外方に延在してフラップ部分68を構成する状態が記載されている。
イ本件特許発明1と引用発明4とを対比すると,次のとおりである。
)構成要件1Aa引用文献4の特許請求の範囲には 「衣類面と身体面とを有する吸収 ,性コア「前記衣類面に隣接配置された不透液性バックシート「バ 」, 」,リヤカフス「前記吸収性コアの前記身体面に隣接して透液性トップ 」,シートが配置「一体的使い捨て吸収性製品」との記載がある。また, 」,Fig2では,スペーサ弾性部材77を備えたバリヤカフス62が内側を向いている図が記載されている。
本件特許発明1と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「不透液性バックシート「透液性トップシート「スペーサ弾性部材77を 」,」,備えたバリヤカフス62「一体的使い捨て吸収性製品」が,本件特 」,許発明1の「不透液性シート「透液性シート「弾性伸縮性の自由 」,」,部が内側に向いたバリヤーカフス「紙おむつ」に,それぞれ相当す 」,る。
したがって,引用文献4には構成要件1Aが記載されている。
)構成要件1Bb@引用文献4には,バリヤカフス62の遠位端66(本件特許発明1の「自由部」に相当する )より外側であって吸収性コア44の側縁 。
から側外方にあるフラップ部分68が,一体的使い捨て吸収性製品20の全長にわたる図が記載されている(Fig1及びFig2 。ま)た 「フラップ部分68は不透液性である必要はなく」との記載があ ,る。
本件特許発明1と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「フラップ部分68」が,本件特許発明1の「前記バリヤーカフスの自由部より外側であってかつ吸収体の側縁から側外方にあるフラップ部を構成するフラップ部材シート」に相当する。
A原告は,引用発明4の「フラップ部分68」は不透液性であると主張する。
しかし 「フラップ部分68」とは,使い捨てオシメのフラップ部 ,を構成する全体を意味すると解され,フラップ部を構成する一部の部材を指すものとは解されない。引用文献4の「フラップ部分68をチャンネル部分70に固着された別個の材料片として形成する事ができる。すなわち,フラップ部分68はチャンネル部分70とは別個の物性,寸法および特性を有する事ができる。例えば,フラップ部分68は不透液性である必要はなく」との記載には 「フラップ部分68」 ,と「チャンネル部分70」とが別個の素材から成る場合には,フラップ部分68は不透液性である必要はなく,透液性であってもよいことが開示されている。そして,原告の主張を前提とすると 「透液性」,「, 」, とは 文字どおり 液が透過することをもって足りる のであるから本件特許発明1における「透液性」に相当する。
Bしたがって,引用文献4には構成要件1Bが記載されている。
)構成要件1Cc前記)に述べたことから,引用文献4に構成要件1Cが記載されてbいることは明らかである。
)構成要件1Dd引用文献4には 「本発明は使い捨てオシメなどの吸収性製品に関す ,るもの」との記載がある。
本件特許発明1と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「吸収性製品」が,本件特許発明1の「紙おむつ」に相当する。
したがって,引用文献4には構成要件1Dが記載されている。
ウ以上のとおりであるから,本件特許発明1は,引用発明4と実質的に同一であるか,少なくとも引用発明4に基づき当業者が容易に想到し得るものである。
エ引用文献4においてフラップ部が透液性であることが記載されていないとしても,以下に述べるとおり,引用発明4に,引用発明2又は周知技術を組み合わせることによって本件特許発明1は容易に想到し得る。
オ引用文献2には,次の記載がある。
)「カフス15の通気性部分45は,特性がカフス15の不透過性部分a47とは異なる(269頁左下欄4行ないし5行) 。」)「事実上すべてのシート材料は,蒸気に対して,そして或る圧力下でbは液体に対して若干有限の(時々小さいが)透過性を有することが認められている(269頁左下欄7行ないし10行) 。」)「 透過性』は,場合によって使い捨てオムツの使用時に通常生ずるc 『条件下で液体または蒸気の容易に測定可能な通過を可能とさせる材料を記載するのに使用される(269頁左下欄15行ないし18行) 。」)「通気性部分45は,最も単純な場合には,蒸気および液体の両方に d対して自由に透過性である(269頁左下欄18行ないし20行) 。」カ引用発明4と,引用発明2又は周知技術との組合せについて)引用発明2の「カフス15」は,本件特許発明1のフラップ部に相当aする。引用文献2には 「 カフス15の)通気性部分45は,最も単 ,(純な場合には,蒸気および液体の両方に対して自由に透過性である 」。
と記載されており 「カフス15」は 「透液性」である。 ,,引用発明4のフラップ部分68と引用発明2のカフス15とは,いずれも排泄物の漏れを防止するという共通の機能,作用を有していることのみならず,両発明は,バックシートを通気性として「蒸れ」を防止する使い捨ておむつである点においても共通する。
したがって,引用発明4に,引用発明2を組み合わせることについての障害は全くないから,当業者にとって,引用発明4に,引用発明2を組み合わせることにより,本件特許発明1に想到することは極めて容易である。
)仮に,原告が主張するとおり,構成要件1B及び1Cにおけるフラッbプ部材シートの「透液性」とは 「文字通り,液を透す性質」であると ,すれば,引用発明2の「カフス15」に限らず,引用文献1の「第2フラップ ,引用文献3の「股下シート4」も,不織布を用いて作製して 」も良いと記載されており,原告が主張するところの「文字通り,液を透す性質」を有していることになるので,使い捨ておむつのフラップ部を「透液性」とすることは,周知慣用技術である。
したがって,当業者にとって,使い捨ておむつのフラップ部の材質と, , して不織布を採用することは 周知慣用技術に基づく設計事項にすぎず極めて容易なことであるから,仮に原告の主張を前提とすれば,本件特許発明1が新規性又は進歩性を有しないことは一層明らかである。
( ) 被告の主張・その22本件特許発明1は,本件特許発明1の出願日の前に公開された特開昭62-250201号公報(乙10。以下「引用文献5」という )に記載され。
た発明(以下「引用発明5」という )と,引用文献2に記載された引用発 。
明2又は周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到できたものである(特許法29条2項 。)ア引用文献5には,次の記載がある。
)「・・・トップシート38は,液体をその厚さを通して容易に透過さaせる透過性である(5頁左上欄8行ないし10行) 。」)「・・・バリヤカフス62がトップシート38と同一の要素または素b材から成り,その近位縁64がトップシート38の連続不可分要素である場合(すなわち一体型)とを含む ・・・ (9頁左上欄2行ないし 。」5行)イ本件特許発明1と引用発明5とを対比すると,次のとおりである。
)構成要件1Aa引用文献5の特許請求の範囲(請求項1)には 「液体不透過性バッ,クシート「液体透過性トップシート「吸収性コア「一体型使い 」, 」,」,捨て吸収性製品」との記載がある。また,Fig7では,スペーサ弾性部材77を備えたバリヤカフス762が内側を向いている図が記載されている(乙10・12頁左下欄2行ないし9行 。)本件特許発明1と引用発明5とを対比すると,引用発明5の「液体不透過性バックシート液体透過性トップシート吸収性コア一 」,「 」,「」,「体型使い捨て吸収性製品「スペーサ弾性部材77を備えたバリヤカ 」,フス762」が,本件特許発明1の「不透液性シート「透液性シー」,ト「吸収体「紙おむつ「弾性伸縮性の自由部が内側に向いたバ 」,」,」,リヤーカフス」に,それぞれ相当する。
したがって,引用文献5には構成要件1Aが記載されている。
)構成要件1Bb引用文献5には,吸収性コア44の側縁から側外方にある「ガスケットカフス56」が,透液性を有する透液性トップシートを延長して形成され 同シートが使い捨ておむつの全長にわたる図が記載されている 乙 , (10・12頁左下欄2行ないし11行,14頁Fig1及び7 。)本件特許発明1と引用発明5とを対比すると,引用発明5の「ガスケットカフス56の上面を構成する透液性トップシートと同一の素材から成るシート」が,本件特許発明1の「フラップ部を構成するフラップ部材シート」に相当する。
したがって,引用文献5には構成要件1Bが記載されている。
)構成要件1Cc引用文献5のFig7を見ると,ガスケットカフス56の下面にバックシート42が延在しているため 引用文献5に記載された発明はフ , ,「ラップ部・・・が使用面側から裏面側に液が透過可能」ではない。
したがって,引用文献5には構成要件1Cが記載されていない。
)構成要件1Dd引用文献5の特許請求の範囲(請求項1)には 「一体型使い捨て吸,収性製品」との記載がある。
本件特許発明1と引用発明5とを対比すると,引用発明5の「一体型使い捨て吸収性製品」が,本件特許発明1の「紙おむつ」に相当する。
したがって,引用文献5には構成要件1Dが記載されている。
ウ本件特許発明1と引用発明5との相違点についてしたがって,本件特許発明1は 「フラップ部の製品紙おむつの全長に ,わたる領域が使用面側から裏面側に液が透過可能 (構成要件1C)であ 」,, 。 るのに対し 引用発明5は フラップ部が透液性を示さない点で相違するエ引用発明5と,引用発明2又は周知技術の組合せについて)引用発明2の「カフス15」は,本件特許発明1のフラップ部に相当aする。引用文献2には 「 カフス15の)通気性部分45は,最も単 ,(純な場合には,蒸気および液体の両方に対して自由に透過性である 」。
と記載されており 「カフス15」は 「透液性」である。 ,,引用発明5のガスケットカフス56と引用発明2のカフス15とは,いずれも排泄物の漏れを防止するという共通の機能,作用を有していることのみならず,両発明は,バックシートを通気性として「蒸れ」を防止する使い捨ておむつである点においても共通する。
したがって,引用発明5に,引用発明2を組み合わせることについての障害は全くないから,当業者にとって,引用発明5に,引用発明2を組み合わせることにより,本件特許発明1に想到することは極めて容易である。
)仮に,原告が主張するとおり,構成要件1B及び1Cにおけるフラッbプ部材シートの「透液性」とは 「文字通り,液を透す性質」であると ,すれば,既に述べたとおり,当業者にとって,使い捨ておむつのフラップ部の材質として不織布を採用することは,周知慣用技術に基づく設計, 。,,「」 事項にすぎず 極めて容易なことである したがって 仮に透液性に関する原告の主張を前提とすれば,本件特許発明1が新規性又は進歩性を有しないことは一層明らかである。
( ) 原告の主張・その13ア本件特許発明1と引用発明4との対比について)構成要件1Bについてa引用発明4において,本件特許発明1のフラップ部に相当するのは,「ガスケットフラップ58」である 「ガスケットフラップ58」は, 。
「フラップ部分68」とその下面に存するバックシート42の延長部分とから構成されているところ,バックシート42は不透液性のシートで,「 」。 あるから 引用発明4の ガスケットフラップ58 は不透液性である仮に「フラップ部分68」が透液性であったとしても,本件特許発明1のフラップ部に相当するガスケットフラップ58を構成するもう一つの部材はバックシート42であり,バックシート42は当然不透液性なのであるから,ガスケットフラップ58は不透液性である。
したがって,引用文献4は,構成要件1Bを開示しない。
)構成要件1Cについてb本件特許発明1のフラップ部に相当するガスケットフラップ58には,不透液性シートであるバックシートの延長部分が少なくとも存在する。したがって,引用文献4は,構成要件1C「使用面側から裏面側に液が透過可能である」を開示しない。
イ引用発明4に対する引用発明2の適用について)引用発明4のバリヤカフスは,排泄物をチャンネル内に収容保持し,aガスケットカフスは,バリヤカフスを越え,又は浸透した表面物質(尿等)がおしめから漏れ出るのを防止するものである。一方,引用発明2のカフスは,通気性部分と不透過性部分とを有し,不透過性部分が尿の。 , 漏れを防止する 引用発明4のバリヤカフスと引用発明2のカフスとは尿に対する漏れ防止の機能・作用効果が相違するから,両者を組み合わせる動機はない。
)引用発明2のカフスは,仮に,液体に対して自由に透過性の通気性部b分45を有するとしても,不透過性部分47により漏れ防止を図るものであるから,液体の漏れ防止のために不透過性部分47が必須である。
すなわち,引用発明2には,カフス全体を透液性として液体を透過させるという技術思想はない。
)引用発明4のガスケットフラップ58は不透液性であるから,これにc換えて,液透過性の引用発明2のカフスを採用すると,引用発明4のガスケットフラップの液漏れ防止機能を損なうことになる。したがって,引用発明4に引用発明2を適用することを阻害する要因がある。
)仮に,引用発明2のカフスの通気性部分のみを,引用発明4のガスケdットカフスに適用すると,引用発明2のカフスの通気性部分が,吸収性コアの前後の裏面側に存在することになり,吸収性コアから液が漏れる構造となる。したがって,引用発明4に引用発明2を適用することを阻害する要因がある。
)仮に,引用発明4のガスケットカフスの「吸収体の側縁から側外方」eにある部分を,引用発明2のカフスの通気性部分で置き換えると,脚回り部分でバリヤーカフスの自由部より外側部位とフラップ部材シートとの間に不透液性シートが存在することになり,本件特許発明1の「吸収体の側縁から側外方にあるフラップ部を構成するフラップ部材シートのほぼ全体が透液性」である要件を満たさないこととなる。
)さらに,仮に,引用発明4の一部を液透過性とすると,製造時にフラfップ部材シートの括れ部分を吸収性コアの括れに対応させる必要があり,製造技術上,実施が困難となる。したがって,このような適用が容易であるとはいえない。
)被告は,周知技術として引用文献1の「第2フラップ ,引用文献3g 」の「股下シート」の適用を主張する。しかし,引用文献1の「第2フラップ」は 「液バリヤー性及び透湿性シート10」が裏面に存在するか ,ら,フラップ部は透液性ではない。また,引用文献3の「股下シート」は,通気性はあっても透液性であるとの示唆はないし,通気性があるのは脚回りのみであり,腹や背の蒸れを防止できるものではない。
( ) 原告の主張・その24ア既に述べたとおり,引用発明2及び周知技術のいずれも 「フラップ部,の長手方向のほぼ全体において透液性を示」すものではない。
イ引用発明4に引用発明2又は周知技術を適用する動機付けがないのと同様,引用発明5に引用発明2又は周知技術を適用する動機付けはない。
6争点3-2(本件特許発明3が特許法29条2項に違反しているか)について( ) 被告の主張・その11本件特許発明3は,本件特許発明3の出願日の前に公開された引用文献4に記載された引用発明4と,引用文献2に記載された引用発明2又は引用文献5に記載された引用発明5又は周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到できたものである(特許法29条2項 。)ア本件特許発明3と引用発明4とを対比すると,次のとおりである。
)構成要件3Aa引用文献4には 「衣類面と身体面とを有する吸収性コア「前記衣 , 」,類面に隣接配置された不透液性バックシート「バリヤカフス「前 」,」,記吸収性コアの前記身体面に隣接して透液性トップシートが配置「一」,体的使い捨て吸収性製品」との記載がある。また,Fig2では,スペーサ弾性部材77を備えたバリヤカフス62が内側を向いている図が記載されている。
本件特許発明3と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「不透液性バックシート「透液性トップシート「スペーサ弾性部材77を 」,」,備えたバリヤカフス62「一体的使い捨て吸収性製品」が,本件特 」,許発明3の「不透液性シート「透液性シート「弾性伸縮性の自由 」,」,部が内側に向いたバリヤーカフス「紙おむつ」に,それぞれ相当す 」,る。
したがって,引用文献4には構成要件3Aが記載されている。
)構成要件3B@b引用文献4には 「バリヤカフスはその遠位端を体液受容面から離間 ,するための離間手段を備える「フラップ部分68は好ましくはバリ 。」,ヤカフス部材70の連続延長部分とする」との記載がある。また,Fig2には,スペーサ弾性部材77を備えたバリヤカフス62が,トップシート38から離間するように起立し,バリヤカフスを構成するシートが,吸収体側縁から側外方に延在してフラップ部分68を構成する状態が記載されている。
本件特許発明3と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「スペーサ弾性部材77を備えたバリヤカフス62」が,本件特許発明3の「弾性伸縮部材を有するバリヤーカフス」に相当する。
したがって,引用文献4には,構成要件3B@の「製品紙おむつの使用面側において透液性シートから離間するように起立させる弾性伸縮部材を有するバリヤーカフスを構成するシートが,吸収体の側縁から側外方に延在してフラップ部を構成」する点が記載されている。
一方,本構成要件においては「バリヤーシート」が「透液性」とされているのに対し,引用文献4にはバリヤカフス62が透液性を有するかについて記載されていない点において相違する。
c)構成要件3BA引用文献4には 「バリヤカフスがバックシートと共に吸収性製品の ,ガスケットフラップを構成している 」との記載がある。また,Fig 。
2では,バリヤカフス62がトップシート38の側縁より側外方に延在してバックシート42と共にガスケットフラップ58を構成する状態が記載されている。
本件特許発明3と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「バリヤカフス62「トップシート38」が,本件特許発明3の「バリヤー 」,シート「透液性シート」に,それぞれ相当する。 」,したがって,引用文献4には,構成要件3BAの「バリヤーシートの側外方部分が透液性シートの側縁より側外方に延在」している点が記載されている。
一方,本構成要件においては「バリヤーシート」が「透液性」とされているのに対し,引用文献4にはバリヤカフス62が透液性を有するかについて記載されていない点において相違する。
d)構成要件3C@引用文献4には 「バックシート42は吸収性コア44の縁を超えて ,延在し,オシメ20の外周部分28を成す。外周部分28はオシメの外周部分すなわち縁を成す。この外周部分28は長手方縁30と両端縁32とを有する ・・・トップシート38は少なくとも長手方縁30に沿 。
ってバックシート42と同一延長ではないが,好ましくは両端縁32に沿ってバックシート42に組合わされ重ね合わされる 」との記載があ。
る。また,Fig1には,トップシート38及びバックシート42が一体的使い捨て吸収性製品20の全長にわたっている状態が記載されている。
本件特許発明3と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「トップシート38「バックシート42「一体的使い捨て吸収性製品20」 」,」,が,本件特許発明3の「透液性シート「不透液性シート「製品紙 」,」,おむつ」に,それぞれ相当する。
したがって,引用文献4には,構成要件3C@が記載されている。
e)構成要件3CA引用文献4には 「トップシート38がオシメの縁の内側に終わり, ,好ましくはバリヤカフス62の近位端64の内側に終わっている「ト」,ップシート38が不透液性フラップ部分68と不透液性バックシート42との間に包囲されオシメ20の縁の内側に終わっている」との記載がある。また,Fig1及び2では,バックシート42が一体的使い捨て吸収性製品20の縁にまで延在している状態が記載されている。
本件特許発明3と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「トップシート38「バックシート42」が,本件特許発明3の「透液性シ 」,ート「不透液性シート」に,それぞれ相当する。 」,したがって,引用文献4には,構成要件3CAが記載されている。
f)構成要件3CB引用文献4には 「トップシート38は近位端64に隣接して配置さ ,れ,シール手段78によってガスケットフラップ58(バックシート42)に接着されて,近位端64に沿って漏れ抵抗シールを成す「シ」,ール手段78は ・・・近位端64をガスケットフラップ58に固着す ,るための任意手段とする事ができる。シール手段78は・・・熱融解接着剤から成る接着製ビーズとする事が好ましい 」との記載がある。。
本件特許発明3と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「トップシート38「バックシート42「熱融解性接着剤」が,本件特許 」,」,発明3の「透液性シート「不透液性シート「ホットメルト接着剤」 」,」,に,それぞれ相当する。
したがって,引用文献4には,構成要件3CBが記載されている。
g)構成要件3D@引用文献4のFig1及び2には,フラップ部68を構成するバリヤカフス62が一体的使い捨て吸収性製品20の全長にわたっている状態が記載されている。
本件特許発明3と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「バリヤカフス62「一体的使い捨て吸収性製品20」が,本件特許発明3 」,の「フラップ部を構成する・・・バリヤーシート「製品紙おむつ」」,に,それぞれ相当する。
したがって,引用文献4には,構成要件3D@の「フラップ部を構成するバリヤーシートが製品紙おむつの全長にわたっている」点が記載されている。
一方,本構成要件においては「バリヤーシート」が「透液性」とされているのに対し,引用文献4にはバリヤカフス62が透液性を有するかについて記載されていない点において相違する。
h)構成要件3DA引用文献4には 「フラップ部分68をチャンネル部分70に固着さ ,れた別個の材料片として形成する事ができる。すなわち,フラップ部分68はチャンネル部分70とは別個の物性,寸法および特性を有する事ができる。例えば,フラップ部分68は不透液性である必要はなく」との記載がある。また,Fig1には,フラップ部68が一体的使い捨て吸収性製品20の長手方向全体にわたっている状態が記載されている。
本件特許発明3と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「フラップ部分68」が,本件特許発明の「フラップ部」に相当する。また,原告の主張を前提とすると 「透液性」とは「文字通り,液が透過するこ ,とをもって足りる」のであるから,引用発明4の「フラップ部分68は不透液性である必要はなく」との記載は,本件特許発明3における「透液性」に相当する。
したがって,引用文献4には構成要件3DAが記載されている。
i)構成要件3DB引用文献4には 「バリヤカフス62の近位端64は,ガスケットカ ,フス56の内側において,好ましくは吸収性コア44の縁46とフラップ弾性部材60との中間において,接着剤などのシール手段78によってバリヤカフス部材62の一部をバックシート42に接合することによって形成され「シール手段78は ・・・近位端64をガスケットフ 」,,ラップ58に固着するための任意手段とする事ができる。シール手段78は・・・熱融解接着剤から成る接着製ビーズとする事が好ましい 」。
との記載がある。
本件特許発明3と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「バリヤカフス62「バックシート42「熱融解性接着剤」が,本件特許 」,」,発明3の「透液性バリヤーシート「不透液性シート「ホットメル 」,」,ト接着剤」に,それぞれ相当する。また,本件特許発明3の「使用面側に対して 「バリヤーシート」が固定されていることは,引用文献4の 」Fig2においても同様である。さらに,原告の主張を前提とすると,本構成要件の「幅方向中間」とは「幅方向の両端の間であれば良い」のであるから,引用発明4における「吸収性コア44の縁46とフラップ」「」, 弾性部材60との中間 と本件特許発明3の 幅方向中間 との記載は実質的に同一である。
したがって,引用文献4には,構成要件3DBの「バリヤーシートの幅方向中間が前記不透液性シートの使用面側に対してホットメルト接着剤により固定されていることを特徴とする」点が記載されている。
一方,本構成要件においては「バリヤーシート」が「透液性」とされているのに対し,引用文献4にはバリヤカフス62が透液性を有するかについて記載されていない点において相違する。
j)構成要件3E引用文献4の特許請求の範囲には「本発明は使い捨てオシメなどの吸収性製品に関するもの」との記載がある。
本件特許発明3と引用発明4とを対比すると,引用発明4の「吸収性製品」が,本件特許発明3の「紙おむつ」に相当する。
したがって,引用文献4には,構成要件3Eが記載されている。
イ本件特許発明3と引用発明4との相違点について以上のとおり,本件特許発明3はバリヤーシートを透液性としているのに対し,引用文献4にはこれが記載されていないという点が相違するにすぎない。
ウ引用発明4と,引用発明2又は引用発明5との組合せについて引用文献2には,カフス15の通気性部分が液体に対して自由に透過性の場合があることが記載されている。また,引用文献5には,バリヤカフス62がトップシート38と同一の素材から成り,トップシート38が液体透過性であることが記載されている。
引用発明4と引用発明2及び引用発明5は,いずれも使い捨て紙おむつに関する発明である。また,引用発明4のバリヤカフスと引用発明2のカフス及び引用発明5のバリヤカフスは,いずれも,排泄物の漏れを防止するという共通の機能,作用を有する。
したがって,当業者が,引用発明4に,引用発明2又は引用発明5を組み合わせることについて障害は全くなく,上記相違点に想到することは容易である。
( ) 被告の主張・その22本件特許発明3は,本件特許発明3の出願日の前に公開された引用文献5に記載された引用発明5と,引用文献2に記載された引用発明2又は周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到できたものである(特許法29条2項 。)ア本件特許発明3と引用発明5とを対比すると,次のとおりである。
)構成要件3Aa引用文献5の特許請求の範囲(請求項1)には 「液体不透過性バッ,クシート「液体透過性トップシート「吸収性コア「一体型使い 」, 」,」,捨て吸収性製品」との記載がある。また,Fig7では,スペーサ弾性部材77を備えたバリヤカフス762が内側を向いている図が記載されている(乙10・12頁左下欄2行ないし9行 。)本件特許発明3と引用発明5とを対比すると,引用発明5の「液体不透過性バックシート液体透過性トップシート吸収性コア一 」,「 」,「」,「体型使い捨て吸収性製品「スペーサ弾性部材77を備えたバリヤカ 」,フス762」が,本件特許発明3の「不透液性シート「透液性シー」,ト「吸収体「紙おむつ「弾性伸縮性の自由部が内側に向いたバ 」,」,」,リヤーカフス」に,それぞれ相当する。
したがって,引用文献5には構成要件3Aが記載されている。
)構成要件3B@b引用文献5には 「バリヤカフス62の遠位端66をトップシート3 ,8上面40から離間するスペーサ手段76」との記載がある(乙10・10頁左下欄末行ないし右下欄1行 。また,Fig7には,スペーサ )弾性部材77を備えたバリヤカフス762が,トップシート38から離間するように起立し,バリヤーカフス762を構成するバリヤーシートが,吸収体側縁から側外方に延在してガスケットカフス56を構成している状態が記載されている。
本件特許発明3と引用発明5とを対比すると,引用発明5の「スペーサ弾性部材77を備えたバリヤカフス762 が 本件特許発明3の 弾 」 ,「性伸縮部材を有するバリヤーカフス」に相当する。そして,バリヤカフス762を構成するバリヤーシートが,吸収体側縁から側外方に延在してガスケットカフス56を構成することから,引用文献5には,構成要件3B@が記載されている。
c)構成要件3BA引用文献5のFig7では,ガスケットカフス56がトップシートの側縁である接着手段100により側外方に延在している状態が記載されている。
本件特許発明3と引用発明5とを対比すると,引用発明5の「ガスケットカフス56の上面を構成する透液性トップシートと同一の素材から成るシート「トップシート38」が,本件特許発明3の「バリヤー 」,シート「透液性シート」に,それぞれ相当する。 」,したがって,引用文献5には,構成要件3BAが記載されている。
d)構成要件3C@引用文献5のFig1には,トップシート38及びバックシート42が,オシメ20の全長にわたっている状態が記載されている。
本件特許発明3と引用発明5とを対比すると,引用発明5の「トップシート38「バックシート42「オシメ20」が,本件特許発明 」,」,3の「透液性シート「不透液性シート「製品紙おむつ」に,それ 」,」,ぞれ相当する。
したがって,引用文献5には,構成要件3C@が記載されている。
e)構成要件3CA引用文献5のFig1には,トップシート38の側縁を,バックシート42の側縁より内側とする構成が記載されている。
本件特許発明3と引用発明5とを対比すると,引用発明5の「トップシート38「バックシート42」が,本件特許発明3の「透液性シ 」,ート「不透液性シート」に,それぞれ相当する。 」,したがって,引用文献5には,構成要件3CAが記載されている。
f)構成要件3CB引用文献5には 「近位縁64は,加熱融解性接着剤から成るグルー ,ビーズの接着手段100によって相互に接着される との記載がある 乙」(10・12頁左下欄8行ないし10行 。Fig7には,近位縁64に )おいて,トップシート38とバックシート42が接着手段100により固定されていることが記載されている。
本件特許発明3と引用発明5とを対比すると,引用発明5の「トップシート38「バックシート42「加熱融解性接着剤から成るグル 」,」,ービーズの接着手段100」が,本件特許発明3の「透液性シート ,」「不透液性シート「ホットメルト接着剤」に,それぞれ相当する。 」,したがって,引用文献5には,構成要件3CBが記載されている。
g)構成要件3D@引用文献5のFig1には,ガスケットカフス56が,オシメ20の全長にわたっている状態が記載されている。
本件特許発明3と引用発明5とを対比すると,引用発明5の「ガスケットカフス56の上面を構成する透液性トップシートと同一の素材から成るシート「オシメ20」が,本件特許発明3の「フラップ部を構 」,成する透液性バリヤーシート「製品紙おむつ」に,それぞれ相当す 」,る。
したがって,引用文献5には,構成要件3D@が記載されている。
h)構成要件3DA引用文献5のFig1を見ると,ガスケットカフス56の下面にバックシート42がフラップ部に延在しているため,フラップ部は透液性を示さない。
したがって,引用文献5には,構成要件3DAが記載されていない。
i)構成要件3DB引用文献5のFig7には,バリヤカフス762とガスケットフラップ56を構成する透液性シートの幅方向中間が,不透液性シート42に接着剤層88により固定した構成が記載されている。
本件特許発明3と引用発明5とを対比すると,引用発明5の「バリヤカフス762とガスケットフラップ56を構成する透液性シート「バ」,ックシート42「接着剤層88」が,本件特許発明3の「透液性バ 」,リヤーシート「不透液性シート「ホットメルト接着剤」に,それ 」,」,ぞれ相当する。また,バリヤーシートが「幅方向中間」で「不透液性シートの使用面側に対して」固定されていることについては,引用文献5のFig7においても同様である。
したがって,引用文献5には,構成要件3DBが記載されている。
j)構成要件3E引用文献5の特許請求の範囲(請求項1)には「一体型使い捨て吸収性製品」との記載がある。
本件特許発明3と引用発明5とを対比すると,引用発明5の「一体型使い捨て吸収性製品」が,本件特許発明3の「紙おむつ」に相当する。
したがって,引用文献5には,構成要件3Eが記載されている。
イ本件特許発明3と引用発明5との相違点について以上のとおり,本件特許発明3は,フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性を示すのに対し(構成要件3DA ,引用発明5は,フラッ )プ部が透液性を示さない点で,相違するにすぎない。
ウ引用発明5と,引用発明2又は周知技術との組合せについて)引用発明2の「カフス15」は,本件特許発明1のフラップ部に相当aする。引用文献2には 「 カフス15の)通気性部分45は,最も単 ,(純な場合には,蒸気および液体の両方に対して自由に透過性である 」。
と記載されており 「カフス15」は 「透液性」である。 ,,引用発明5のガスケットカフス56と引用発明2のカフス15とは,いずれも排泄物の漏れを防止するという共通の機能,作用を有していることのみならず,両発明は,バックシートを通気性として「蒸れ」を防止する使い捨ておむつである点においても共通する。
したがって,引用発明5に,引用発明2を組み合わせることについての障害は全くないから,当業者にとって,引用発明5に,引用発明2を組み合わせることにより,本件特許発明3に想到することは極めて容易である。
)仮に,原告が主張するとおり,構成要件1B及び1Cにおけるフラッbプ部材シートの「透液性」とは 「文字通り,液を透す性質」であると ,すれば,既に述べたとおり,当業者にとって,使い捨ておむつのフラップ部の材質として不織布を採用することは,周知慣用技術に基づく設計, 。,,「」 事項にすぎず 極めて容易なことである したがって 仮に透液性に関する原告の主張を前提とすれば,本件特許発明3が進歩性を有しないことは一層明らかである。
( ) 被告の主張・その33当初明細書においては,バリヤーシートが「透液性」であるとの開示は全くなく,むしろ,バリヤーシートは「通気性」であることが記載されていた(【】,【】,【】,【】,【】, のであるから乙1・ 0015図50016図6図7【0021】等 ,バリヤーシートを通気性から透液性に変更する本件手続 )補正書(乙3)に基づく補正は,当初明細書に記載した技術的事項の範囲内ではない。
したがって,当初明細書における「通気性」のバリヤーシートを,本件手続補正書により「透液性」と補正したことは要旨変更にあたり,本件特許出願は,本件手続補正書の提出の日にしたものとみなされる。
その結果,本件特許出願の公開公報(特開平4-224750号公報)が公知文献となるところ,通気性のバリヤーシートに換えて透液性のバリヤーシートを採用することは当業者が容易になし得るものであるから,本件特許発明3は進歩性に欠ける。
( ) 原告の主張・その14)引用発明4において 本件特許発明3のフラップ部に相当するのはガ a , ,「スケットフラップ58」である 「ガスケットフラップ58」は 「フラ 。 ,ップ部分68」とその下面に存するバックシート42の延長部分とから構成されていて,少なくとも不透液性のシートであるバックシート42の延長部分が存在することにより,構成要件3DA「フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性を示」す構成ではない。
b)引用文献2に示された態様は第4図などのカフス15であり,構成要件3B@「バリヤーカフスを構成する透液性バリヤーシートが,前記吸収体の側縁から側外方に延在してフラップ部を構成」するものではないから,「フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性を示す構成 (構成要」件3DA)に想到し得るものではない。
c)引用発明5は,引用文献5の請求項1に明記されているように,バックシート42が不透液性のシートであるから,構成要件3DA「フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性を示」す構成ではない。引用文献5の第7図においても,不透液性のバックシート42がフラップ部の裏面側に位置しており,構成要件3DA「フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性を示」す構成ではない。
さらに,引用文献5の第7図から明らかなように,トップシート38がそのまま縦縁30まで延在するものであるから,構成要件3BA「前記透液性バリヤーシートの側外方部分は透液性シートの側縁より側外方に延」,,「, 在 するものではなく しかも 構成要件3CA 透液性シートの側縁は不透液性シートの側縁より内側と」したものでもない。
よって,引用発明5は,引用発明4に適用する動機付けとなるものではない。
( ) 原告の主張・その25)既に述べたとおり,引用発明2及び周知技術のいずれも,構成要件3D a「 」。 A フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性を示 す構成ではない)引用発明4に引用発明2又は引用発明5又は周知技術を適用する動機付bけがないのと同様,引用発明5に引用発明2又は周知技術を適用する動機付けはない。
( ) 原告の主張・その36当初明細書の請求項1に「吸収体側縁から側外方に延在するフラップ部の幅方向および長手方向のほぼ全体が透液性状態とされている」と明記されて, , おり 図5ないし図8のようにバリヤーシートがフラップ部を構成する場合そのバリヤーシートが「幅方向および長手方向のほぼ全体が透液性状態」のものであることは,論理的に,そして,本件明細書及び図面の記載からも明らかである。仮に,バリヤーシートが透液性状態でない場合には 「フラッ,プ部の幅方向および長手方向のほぼ全体が透液性状態」にはならないからである。
したがって,本件特許発明3に係るバリヤーシートに関し,当初明細書及び図面の記載からして,少なくとも「透液性状態」のものであることが明ら,「」, かにされていたのであり 当初明細書の 透液性状態 のバリヤーシートを本件手続補正書による補正により「透液性バリヤーシート」と言い換えただけであるから,要旨変更に当たらないことは明らかである。
7争点4(損害の額)について( ) 原告の主張1被告は,遅くとも平成11年12月から現在まで,被告各製品を製造,販売し,販売の申出をしている。
被告が平成11年12月から平成17年2月末日までに販売した被告各製品の売上高は,被告製品1につき228億円,被告製品2につき179億円を下らない(合計407億円 。), , 本件特許権の実施料は 売上高の少なくとも3%をもって相当とするから本件特許権の侵害による原告の損害額は12億2100万円を下らない(特許法102条3項 。)よって,原告は,12億2100万円及びこれに対する不法行為の後の日であることが明らかな平成17年3月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
( ) 被告の主張2損害に関する原告の主張は否認ないし争う。
第4争点に対する判断1争点2-1(被告各製品が構成要件1Bの「フラップ部材シートのほぼ全体が透液性」を,被告製品1が構成要件3B@,A及び3D@,Bの「透液性バリヤーシート」を充足するか)について( ) 本件各特許発明の特許請求の範囲の記載には 「不透液性シート (構成1 ,」要件1A,3A「透液性シート (構成要件1A,3A「フラップ部材 ),」),シートのほぼ全体が透液性 (構成要件1B「フラップ部の製品紙おむつ 」),」(), の全長にわたる領域が使用面側から裏面側に液が透過可能構成要件1C「透液性バリヤーシート (構成要件3B@,A及び3D@,B「フラッ 」 ),プ部を構成する透液性バリヤーシートが ・・・透液性を示し (構成要件 ,」3D@,A)等の記載があり,紙おむつの各構成部材について用いられている「透液性」の用語の意義について争いがある。そこで,本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して フラップ部材シートにおける 透液性構 , 「」(成要件1B ,フラップ部を構成する透液性バリヤーシートにおける「透液 )性 (構成要件3B@,A及び3D@,B)の意義を解釈する。 」( ) 本件明細書(甲2)には,次のとおり記載されている。
2ア産業上の利用分野「 0001】本発明は,フラップ部分が透液性を有し,蒸れを防止し 【た紙おむつに関する 」。
イ従来の技術「 0002】近年の紙おむつの改良には著しいものがあり,その改良 【の課題としては,着用時における蒸れの防止がある 」。
「 0003】この課題を解決するために,実開昭62-88705号 【公報には,いわゆるサイドカット部分に対してそのサイドカット部分を埋め 紙おむつ全体が方形となるように 通気防水性シートを取付たもの 以 , , (下先行例1という)が知られている 」。
ウ発明が解決しようとする課題「 0005】前述の先行例1によれば,確かにサイドフラップ部にお 【ける通気防水性シートの存在により着用時の蒸れをある程度防止できるとしても,少なくとも前後の部分での蒸れはまったく防止できない。たとえば幼児が仰向けまたはうつ伏せに寝ている場合には,背中側または腹側での蒸れが著しい ・・・ 」。。
「 0007】したがって,本発明の課題は,第1義的には着用時にお 【, , ける蒸れ 特にバリヤーカフスを有することで軟便中の液分に伴う蒸れを背中側および腹側においても確実に防止すること,付随的には大量生産に適した紙おむつの構造を提供することにある 」。
エ作用「 0011】本発明では,吸収体の側縁から側外方に延在するフラッ 【プ部のほぼ全体が,透液性とされている。たとえば具体的に,フラップ部分において,透液性シートおよび不透液性シートが存在せず,実質的に透液性不織布のみからなるフラップ部材シートにより構成され,このフラップ部材シートは紙おむつの実質的に全長にわたり配設されているので,サイドフラップ部分のみならず前後においても,蒸れが防止される 」。
「 0013】他方,軟便の阻止機能を有するバリヤーカフスを有する 【紙おむつが知られている。この種のバリヤーカフスを構成する場合,軟便の阻止のために,軟便中の液分の紙おむつ側方への浸透を防止するために撥水性不織布を用いるとともに,そのバリヤーカフスを構成するバリヤーシートを不透液性シートに固定してフラップ部を構成する思想が一般的で。, 。」 ある したがって フラップ部においては透液性を示さないものである「 0014】しかるに,特に請求項1記載の発明においては,バリヤ 【ーカフスを有する紙おむつにおけるフラップ部において,不透液性シートの側縁を製品紙おむつの側縁まで延在させる構成を採らないで,透液性を有する(したがって当然に通気性も有する)ものとした 」。
「 0015】軟便を阻止する機能の紙おむつにおいては,その軟便中 【の液分が吸収体に吸収されないまま使用面側に残存するので特に蒸れが生じやすい。しかし,請求項1記載の発明においては,バリヤーカフスを有する紙おむつにおけるフラップ部において,不透液性シートを存在させることなく,透液性を示すようにしたものであるために,たとえば通気撥水性のシートを用いる場合に比較して蒸れの防止効果はきわめて高いものとなる 」。
「 0016】一方,バリヤーカフスを構成する場合,バリヤーシート 【を通しての液分の外側外方への浸出性について考慮することが必要である。この点については,バリヤーシートをたとえば撥水性不織布を用いるで対処できるものの,トップシートを構成する透液性シートをそのままフラップ部に延在させると,その透液性シートを伝わってその側縁から液が浸出し,製品の外面に滲み出す虞れがある 」。
「 0017】しかるに,請求項3記載の発明によれば,透液性シート 【の側縁を,不透液性シートの側縁より内側とし,かつ,透液性シートの側縁部が不透液性シートにホットメルト接着剤により固定されているので,その固定部分において液の透液性シートでの伝わりが阻止され,製品の外面に滲み出すことはない 」。
実施例「 0021】このように構成された紙おむつにおいては,紙おむつの 【吸収体3の側縁の外方のほぼ全体が透液性で通気性のフラップ部材シート10から構成されているので,脚回り部分において蒸れを防止することができるとともに,紙おむつ長手方向前後においても,汗などによる水分がフラップ部材シート10を通して透過するので,背中および腹部分におおても(判決注: においても」の誤記と認める )蒸れを防止できる 」 「 。。
カ発明の効果「 0033】以上の通り,本発明によれば,着用時における蒸れを脚 【回りのみならず腹および背中においても蒸れを防止できるとともに,製造がきわめて容易となる 」。
,,, ( ) 本件明細書の上記記載によれば 本件各特許発明は 着用時における蒸れ3特に軟便の阻止機能を有するバリヤーカフスを有することによる軟便中の液分に伴う蒸れを,背中側及び腹側においても確実に防止することを課題とするものである。
ア本件特許発明1について)本件明細書の上記記載によれば,軟便の阻止機能を有するバリヤーカaフスは,従来技術においては,軟便中の液分の紙おむつ側方への浸透を防止するために,撥水性不織布を用いるとともに,バリヤーカフスを構成するバリヤーシートを不透液性シートに固定してフラップ部を構成するのが一般的であり,かかる従来技術においては,フラップ部は透液性を示さないものであった( 0013 )ため,バリヤーカフスを有す 【】る紙おむつが特に蒸れが生じやすいことから,本件特許発明1は,フラップ部において,不透液性シートを存在させることなく,透液性を示すようにしたものであり,その結果,たとえば通気撥水性のシートを用いる場合に比較して蒸れの防止効果が極めて高いものとなったものと認められる( 0014【0015。 【】,】))「撥水性」とは,水をはじく性質のことであり(甲25,26 ,水b )「」 。,「」 を透す性質である 透液性 とは両立する概念である 一方撥水性のものと「撥水性」でないものとを比較すれば 「撥水性」のものの方 ,が水を透す程度が低いということは明らかであり 「透液性」の程度と,「撥水性」とは無関係ではない。
)上記のとおり,従来は,液分の浸透を防止するためにバリヤーカフスcに撥水性不織布を用いるとともに,バリヤーカフスを構成するバリヤーシートを不透液性シートに固定してフラップ部を構成していたのであるから,従来技術における撥水性不織布は液の浸透を防止するために用いられていたものであることも明らかである。もっとも,撥水性不織布は直ちに不透液性を意味するものではないので,その浸透防止効果が不透液といえる程度のものであったとまでいうことはできない。
このような状況下において,本件特許発明1は,フラップ部材シートを蒸れ防止のために透液性としたのであるから,従来の撥水性不織布を用いていた場合(前記のとおり,液分の浸透防止効果は不透液といえる程度のものではないものの,蒸れを発生させる程度の透液性しか有していなかった )よりも高度の透液性を要求したと考えられる。このこと 。
は 「通気撥水性」のシートと比較して蒸れの防止効果が極めて高くな ,ったとの上記記載からも裏付けられるものである。したがって,本件特許発明1における「透液性」のフラップ部材シートは,通気撥水性のシートより高度の「透液性」があり,通気撥水性のシートを用いた場合よりも蒸れ防止効果が大きいものと解するのが相当であり,フラップ部材シートが撥水性である場合は,本件特許発明1の技術的範囲に含まれないと解すべきである。
イ本件特許発明3について本件明細書の上記記載によれば,バリヤーカフスを構成する場合,バリヤーシートを通しての液分の外側外方への浸出を防止することが求められ,液分がトップシートを構成する透液性シートを伝わって製品の外面に滲み出すことを阻止する必要がある( 0016。そこで,本件特許発 【】)明3は,透液性シートの側縁を,不透液性シートの側縁より内側とし,かつ,透液性シートの側縁部が不透液性シートにホットメルト接着剤により固定する構成を採用することによって,透液性シートでの伝わりを阻止したものである( 0017。【】)このように,本件特許発明3は,トップシートを構成する透液性シートを伝わって液が浸出することを上記の構成を採用することにより防止するものであるから,フラップ部を構成する「透液性バリヤーシート」の「透液性」については,本件特許発明1のフラップ部材シートにおける「透液性」と同義と解することは当然である。
なお,本件明細書においては,バリヤーシートを通しての液分の外側外方への浸出は 「バリヤーシートをたとえば撥水性不織布を用いる」こと ,で対処可能と記載されている( 0016。しかし,かかる記載は,段 【】)落【0016】及び【0017】全体の記載,並びに,上記のとおり,軟便中の液分の浸透防止のために撥水性不織布を用いることが従来技術として挙げられ,かかる従来技術においても液分の浸出防止は一定程度果たされていたのであることからすれば,かかる従来技術について触れたものと解するのが相当であって,本件特許発明1と本件特許発明3における「透液性」を別異に解することの根拠となるものではない。
( ) 以上の解釈は,出願経過における出願人の陳述内容にも沿うものである。
4ア平成9年12月25日付け手続補正書(乙2)による補正後の請求項は次のとおりである。
「 請求項1 ・・・通気性のフラップ部材シートが,製品紙おむつの 【】全長にわたり,かつ,フラップ部の長手方向のほぼ全体が通気性を有する・・・」「 請求項3 ・・・通気性バリヤーシートが ・・・フラップ部を構成 【】 ,し ・・・,前記フラップ部を構成するバリヤーシートが,製品紙おむつ ,の全長にわたり,かつ,フラップ部の長手方向のほぼ全体において通気性を示す・・・」イ前記ア記載の請求項に対する本件拒絶理由通知書(乙3)には,次の記載がある。
「引用文献1には,本願請求項4の,バリヤーシート及び透液性シートの取り付けをホットメルト接着剤で行う点の記載はないが,使い捨ておむつにおいてバリヤシートや透液シートを取り付ける手段として上記のものは汎用されている 」。
「引用文献2,3には,通気性のフラップを設けた使い捨ておむつが記載されている 」。
ウ引用文献3(乙8)には,次の記載がある。
「撥水性を有し,かつ通気性の股下シートを設け (1頁10行ないし」11行)「股下シート4としては撥水性及び通気性を有するものであれば何でも良いが,望ましくは,ポリエステル,ポリプロピレンからなる不織布シート・・・が望ましい(5頁3行ないし7行) 。」エ本件意見書(乙4)には,次の記載がある。
「引用文献3の股下シートは通気性であるが撥水性のものである。股下シートは,弾性部材7により,外向き状態で斜め外方に向いて起立するものである。この引用文献3においても,バリヤーカフスの外側にフラップ部をさらに設け,そのフラップ部を透液性とする思想は一切ない 」。
オさらに,原告は,本件手続補正書(乙5)において,本件明細書(平成9年12月25日付け手続補正書(乙2)による補正後のもの)の全文補正を行った。
本件手続補正書による補正前の【作用】欄( 0012】ないし【00 【18 )は,本件手続補正書により 【0011】ないし【0017】に 】 ,。,「」 「」, 補正された その補正の内容は通気性 を 透液性 に補正するほか「・・・しかし,本発明においては,バリヤーカフスを有する紙おむつにおけるフラップ部において,不透液性シートを存在させることなく,通気性を示すようにしたものであるために,蒸れを防止できる(補正前の。」【0016 )を 「・・・しかし,請求項1記載の発明においては,バ 】,リヤーカフスを有する紙おむつにおけるフラップ部において,不透液性シートを存在させることなく,透液性を示すようにしたものであるために,たとえば通気撥水性のシートを用いる場合に比較して蒸れの防止効果はきわめて高いものとなる(補正後の【0015 )に補正するというもの 。」】である(乙2,5。判決注:下線部は補正された箇所に付したものである。。)カ原告(出願人)は,通気性のフラップを有する例として示された引用文献2,3を踏まえ,本件手続補正書において,本件各特許発明は 「透液,性」のフラップを有する旨の補正を行った。そして,引用文献3の股下シートは通気性であるが撥水性のものであったところ,通気撥水性のシートと比較して,本件各特許発明の「透液性」のフラップによる蒸れの防止効果は極めて高い旨の記載( 0015 )を本件明細書に付加した。 【】したがって,原告(出願人)は,フラップ部が「通気性」ではなく「透液性」である旨の補正を行い,さらに,通気撥水性のものと比較して本件各特許発明の作用効果である蒸れの防止効果が極めて高いとの補正を行ったのであるから 「透液性」のフラップと補正することにより「通気撥水 ,性」のものを除くことを前提にしていたと解するのが相当である。
( ) 原告は,本件明細書の【0015】の「通気撥水性」との記載は,本件明5細書の従来の技術欄に記載されている先行例1( 0003 )と対比しな 【】,「」 。 ければ意味が通じないのであって通気防水性 の誤記であると主張するしかし,作用欄に従来技術として挙げられたバリヤーカフスに撥水性不織布を用いる構成( 0013 )と対比して「通気撥水性」の用語を用いた 【】ものと理解することによって,本件明細書の記載を技術的に誤りなく解釈できることは,既に述べたとおりである。そして,本件明細書の【0015】の「通気撥水性」との記載が,通気撥水性の股下シートが記載された引用文献3を受けてなされたものであることからしても,比較の対象は通気撥水性のものであるというべきである。よって,上記記載を誤記と認めることはできない。
( ) したがって,フラップ部材シートにおける「透液性 (構成要件1B ,6 」)フラップ部を構成する透液性バリヤーシートにおける「透液性 (構成要件」3B@,A及び3D@,B)の程度は,撥水性のものと比べ,より高度に液体が透過しやすいものと解するのが相当である。
( ) 被告各製品のフラップ部及び被告製品1のバリヤーカフスの素材は,ポリ7プロピレンスパンボンド不織布である。そして,ポリプロピレンスパンボンド不織布は 「撥水性」である(乙15の2。なお,被告各製品及び被告製 ,品1の上記部分が撥水性であること自体は,争いがない。そして,証拠。)(乙21)によれば,被告各製品のフラップ部は,透液性シート部分に比べて耐水度及び透水度が異なり,透液性シート部分に比べて,試験水が透過しにくいことが認められる。
これらの点からすれば,被告各製品のフラップ部の透液性は,撥水性のものが有するのと同等であり,本件特許発明1の構成要件1Bの「フラップ部材シートのほぼ全体が透液性であり」との構成を具備しない。また,被告製品1のバリヤーカフスの透液性も,撥水性のものが有するのと同等であるから,本件特許発明3の構成要件3B@,A及び3D@,Bの「透液性バリヤーシート」との構成を具備しない。したがって,被告各製品は本件特許発明1の,被告製品1は本件特許発明3のいずれの技術的範囲にも属しないものである。
2争点2-2(被告各製品が構成要件1C「透過可能」を,被告製品1が構成要件3DA「透液性」を充足するか)について構成要件1Cの「これによりフラップ部の製品紙おむつの全長にわたる領域が使用面側から裏面側に液が透過可能」は,構成要件1Bの「フラップ部を構成するフラップ部材シートが・・・透液性であり 」を受けるものである。し ,たがって,構成要件1Cの「透過可能」は,構成要件1Bの「透液性」を前提とした透過性を意味するものと解するのが相当である。被告各製品は,構成要件1Bの「透液性」を充足しないのであるから,構成要件1Cの「透過可能」も充足しないことは明らかである。
「 」 構成要件3DAの フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性を示しは,フラップ部を構成する「透液性バリヤーシート (構成要件3B@)の構 」造から導かれるものである。したがって,構成要件3DAの「透液性」は,構成要件3B@の「透液性」と同等の透液性を意味するものと解すべきである。
被告製品1は,構成要件3B@の「透液性」を充足しないのであるから,構成要件3DAの「透液性」も充足しないことは明らかである。
したがって,これらの点からも,被告各製品は本件特許発明1の,被告製品1は本件特許発明3のいずれの技術的範囲にも属しない。
3結論よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がないのでこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。