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関連審決 異議1998-72536
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成12行ケ91取消決定取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10350審決取消請求事件 判例 特許
平成12行ケ310審決取消請求事件 判例 特許
平成18行ケ10386審決取消請求事件 判例 特許
平成13行ケ154審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 発明者 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  相違点の判断 /  周知技術 /  明瞭でない記載 /  数値限定 /  実施 /  訂正の目的 /  請求の範囲 /  減縮 /  拡張 /  変更 /  釈明 /  独立特許要件 /  訂正明細書 /  補助参加 /  取消決定 /  異議申立 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 143号 特許取消決定取消請求事件
原告 豊田合成株式会社
原告A
原告B
原告ら訴訟代理人弁護士 大場正成、尾崎英男、嶋末和秀、黒田健二、弁理士 平田忠雄、藤谷修
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 田部元史、青山待子、茂木静代、小林信雄
被告補助参加人 日亜化学工業株式会社
訴訟代理人弁護士 品川澄雄、吉利靖雄、野上邦五郎、杉本進介、冨永博之、弁 理士 青山葆、矢野正樹、石井久夫、北原康廣
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/10/09
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成10年異議第72536号事件について平成12年3月13日にした決定を取り消す。
訴訟費用中、参加によって生じたものは被告補助参加人の負担とし、その余は被告の負担とする。
事実及び理由
原告らの求めた裁判
主文第1項同旨の判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 原告らの本件特許2681733号(発明の名称・窒素-3族元素化合物半導体発光素子)は、平成4年10月29日に出願され、平成9年8月8日登録された。
本件特許に対して2件の異議申立てがあり、平成10年異議第72536号事件として審理された。原告らは、平成10年11月9日訂正請求をしたが、平成12年3月13日、請求項1ないし7に係る本件特許を取り消す旨の決定があり、その謄本は同年4月3日原告らに送達された。
2 本件発明の要旨(上記訂正後のもの) 【請求項1】n型の窒素-3族元素化合物半導体(AlXGa YIn 1- X- YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)からなるn層と、p型の窒素-3族元素化合物半導体(AlXGa YIn 1- X- YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)からなるp層とを有する窒素-3族元素化合物半導体発光素子において、
前記p層は、正孔濃度が1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりも正孔濃度が低く、正孔濃度が1×1014/cm3以上の低キャリア濃度p層との2重層で構成され、前記高キャリア濃度p+層に接合する電極をニッケル(Ni)としたことを特徴とする窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
【請求項2】前記p層はマグネシウム(Mg)が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
【請求項3】前記低キャリア濃度p層は、正孔濃度が1×1014〜1×1016/cm3であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
【請求項4】前記高キャリア濃度p+層は0.1〜0.5μmの厚さを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
【請求項5】前記低キャリア濃度p層は0.2〜1.0μmの厚さを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
【請求項6】前記高キャリア濃度p+層に接合する前記電極と前記n層に接合する電極は同一面側に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
【請求項7】前記低キャリア濃度p層及び前記高キャリア濃度p+層は半絶縁性窒素-3族元素化合物半導体層の一部をp型化して形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
3 決定の理由の要点 (1) 訂正の適否 (1)-1 訂正の目的等 @ 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、「前記p層は、正孔濃度が1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりも正孔濃度が低い低キャリア濃度p層との2重層で構成され、」を「前記p層は、正孔濃度が1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりも正孔濃度が低く、正孔濃度が1×1014/cm3以上の低キャリア濃度p層との2重層で構成され、」とする訂正は、低キャリア濃度p層のキャリア濃度を限定するものであるので、特許請求の範囲減縮に該当し、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質的に特許請求の範囲拡張又は変更するものではない。
A 訂正事項2 特許明細書の段落【0005】において、「前記p層は、正孔濃度が1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりも正孔濃度が低い低キャリア濃度p層との2重層で構成され、」を「前記p層は、正孔濃度が1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりも正孔濃度が低く、正孔濃度が1×1014/cm3以上の低キャリア濃度p層との2重層で構成され、」と訂正することは、特許請求の範囲の訂正に伴う、課題解決手段の訂正であるので、明瞭でない記載釈明に該当し、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質的に特許請求の範囲拡張又は変更するものではない。
(1)-2 独立特許要件 @ 訂正された発明 訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に係る発明(以下「訂正第1発明」ないし「訂正第7発明」という。)は、その明細書及び図面の記載からして、前記2の本件発明の要旨(上記訂正後のもの)に記載のとおりのものである。
A 刊行物記載の発明 平成11年2月26日付け取消理由通知書において引用した特開平4-68579号公報(刊行物1)には、第1の実施例(第1図)に関して、「3はZnO層(n型)1μmであり、4はGaNエピタキシャル層(n型)膜厚は3μmであり、5はGaNエピタキシャル層(p型)、膜厚1μm、6はAl正電極、そして7はAl負電極である。」(第5頁左上欄第4行から第7行)及び「このようにして形成したGaN:Oエピタキシャル膜4はキャリア濃度5×1017cm-3、抵抗率0.1Ω・cmであり、発光中心としては微量のZnを添加してある。p型GaN:Znエピタキシャル層5は、・・・キャリア濃度1×1017cm-3、抵抗率4Ω・cmである。」(第5頁右下欄第5行から第12行)と記載され、Al電極に関して、「電極形成用の金属元素としてAlに限って説明したがその他In、Ga、Ni、Ti、Cu、Au、Ag、Cr、Si、Ge等の単体あるいは混合金属膜のいずれもが、オーミック用電極として、適用可能であることは明らかである。」(第8頁左下欄第11行から第15行)と記載され、第2の実施例(第2図)に関して、「GaN:Mg層13は・・・・にて成膜した2μm厚、p型抵抗率10Ω・cm、キャリア濃度6×1016cm-3の低抵抗p型エピタキシャル膜である。」(第6頁右上欄第16行から左下欄第1行)と記載されている。
すなわち、刊行物1には、n型のGaNからなるn層と、p型のGaNからなるp層とを有する窒素-3族元素化合物半導体発光素子において、前記Mgをドープしたp層の正孔濃度が6×1016/cm3であり、前記p層に接合する電極は、Alである窒素-3族元素化合物半導体発光素子が記載されているとともに、上記Al電極はNiでも適用可能であると記載されている。
同じく特開昭58-219790号公報(刊行物2)には、
「第1図は従来例としてGaAlAs系材料から成る半導体レーザを示し、(1)は、n型GaAs(ガリウム砒素)基板、(2)は該基板上に積層されたレーザ光を発する発光層であり、該発光層はn型Ga1-X Al XA s(0Y、0≦Y<1)からなる活性層(4)、p型Ga 1-X Al XA Sからなる第2クラッド層(5)を順次エピタキシャル成長にて積層したものである。斯る発光層(2)では第1、第2クラッド層(3)(5)のAl(アルミニウム)濃度が活性層(4)のそれより大であるため、両クラッド層(3)(5)は活性層(4)よりバンドギャップが大でかつ光屈折率が小となる。従って、斯る発光層(2)に順方向バイアスを印加すると活性層(4)よりレーザ光が得られる。
(6)は上記発光層(2)上に積層されp型GaAsからなるキャップ層であり、該キャップ層は、将来斯る層上に形成される金属電極(図示せず)とのオーミック接触を良好となすものである。
通常、上記第2クラッド層(5)のキャリア濃度は約5×1017/cm3であり、またキャップ層(6)のキャリア濃度は、5×1018/cm3以上である。」(第1頁左下欄第16頁〜右上欄第17行) と記載されている。
すなわち、刊行物2には、GaAs系の化合物半導体発光素子において、p層を二重構造とし、高キャリア濃度のp+層のキャリア濃度は5×1018/cm3以上とし、低キャリア濃度のp層のキャリア濃度は約5×1017/cm3である発光素子が記載されている。
同じく特開昭59-228776号公報(刊行物3)には、「実施例3 第4図はサファイア等の絶縁性基板上に作製したダブル・ヘテロ接合素子の実施例の側断面図であって、3,5は実施例1で述べた絶縁性基板、オーミック電極、
9はn+型AlXGa 1- XN(0X)、11はn型またはp型のAl YGa 1- YN(0Y)、12はp+型AlX’Ga 1- X’N(0Y)を0.1μm〜0.4μm厚程度成長させる。・・・・・活性層の上にp+型AlX’Ga 1- X’N(0実施例1で述べたアクセプター添加量をp型に比べ多くする。」(第3頁左上欄第19行から右上欄第19行)と記載されている。
すなわち、刊行物3には、活性層として「n型またはp型」と記載されているので、p型を選択すると、低キャリア濃度p層の厚さを0.1μm〜0.4μm程度とし、それより高キャリア濃度p+層の厚みを0.4〜1μm程度としたGaN系化合物半導体発光素子が記載されている。
B 訂正第1発明について 訂正第1発明と刊行物1に記載された発明とを比較すると、後者における「GaN」は、前者における「窒素-3族元素化合物半導体(AlXGa YIn 1- X- YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)」に包含されるので、両者は、
「n型の窒素-3族元素化合物半導体(AlXGa YIn 1- X- YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)からなるn層と、p型の窒素-3族元素化合物半導体(AlXGaYIn 1- X- YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)からなるp層とを有する窒素-3族元素化合物半導体発光素子において、
前記p層に接合する電極をニッケル(Ni)とした窒素-3族元素化合物半導体発光素子」である点において一致し、
訂正第1発明においては、p層は、1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりもキャリア濃度が低く、1×1014/cm3以上の低キャリア濃度p層との2重層で構成されているのに対し、刊行物1記載の発明においては、キャリア濃度が6×1016/cm3である単層のp層が記載されている点において相違している。
そこで上記相違点について検討すると、p層を高キャリア濃度のp+層とそれより低いキャリア濃度のp層との2重層とする化合物半導体発光素子は刊行物2及び刊行物3に記載されているようによく知られており、また、GaN系においても、
電極と接触する部分を高キャリア濃度にすることは周知である(特開平4-242985号公報、段落【0038】及び【0039】参照)ところ、刊行物1に記載されているように、GaN系発光素子におけるp層のキャリア濃度を6×1016/cm3とすることが知られており、かつ、訂正発明における「1×1016/cm3以上」及び「1×1014/cm3以上」という数値に臨界的意義があるとも認められないので、p層を1×1016/cm3」以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりもキャリア濃度が低く、1×1014/cm3以上の低キャリア濃度p層との2重層で構成することは、当業者が容易になし得たことと認められる。
C 訂正第2発明について 訂正第2発明は、訂正第1発明に対して、p層にはマグネシウム(Mg)が添加されていることを付加したものであるが、刊行物1においてもp層にはMgが付加されているので、この点に格別の発明はない。
D 訂正第3発明について 訂正第3発明は、訂正第1発明及び第2発明に対して、上記低キャリア濃度p層は、正孔濃度が1×1014〜1×1016/cm3であることを付加したものであるが、
高キャリア濃度p+層のキャリア濃度を1×1016/cm3以上とする場合には、低キャリア濃度p層のキャリア濃度は、高キャリア濃度のキャリア濃度よりも1桁程度低くすることは刊行物2にも示されているように周知であり、かつ、それらの限定された値に臨界的意義があるとも認められないので、1×1014〜1×1016/cm3程度とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。
E 訂正第4発明について 訂正第4発明は、訂正第1発明ないし第3発明に対して、上記高キャリア濃度p+層の厚さを0.1〜0.5μmとすることを付加したものであるが、刊行物3には、p+層の厚さを0.4〜1μm厚程度に成長させることが示されており、かつ、それらの限定された値に臨界的意義があるとも認められないので、高キャリア濃度p+層の厚さを0.1〜0.5μmとすることは当業者が容易になし得たことと認められる。
F 訂正第5発明について 訂正第5発明は、訂正第1発明ないし第4発明において、上記低キャリア濃度p層の厚みを0.2〜1.0μmとしたものであるが、刊行物3には、キャリア濃度の低いp型層の厚みを0.1〜0.4μm程度成長させることが示されており、かつ、それらの限定された値に臨界的意義があるとも認められないので、低キャリア濃度p層の厚さを0.2〜1.0μm程度とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。
G 訂正第6発明について 訂正第6発明は、訂正第1発明ないし第5発明において、前記高キャリア濃度p+層に接合する前記電極と前記n層に接合する電極とを同一面側に形成したものであるが、刊行物1の第5図及び第6図にも記載されているように、p電極とn電極とを同一面側に形成したものはよく知られているので、前記高キャリア濃度p+層に接合する前記電極と前記n層に接合する電極とを同一面側に形成することは当業者が容易になし得たことと認められる。
H 訂正第7発明について 訂正第7発明は、訂正第1発明ないし第6発明において、前記低キャリア濃度p層及び前記高キャリア濃度p+層を半絶縁性窒素-3族元素化合物半導体層の一部をp型化して形成したものであるが、刊行物1には、電極が形成されるp-GaN層としてi-GaN層の一部をp型化した発光素子が第9図に開示されているので、低キャリア濃度p層及び前記高キャリア濃度p+層を半絶縁性窒素-3族元素化合物半導体層の一部をp型化して形成することは当業者が容易になし得たことと認められる。
(1)-3 訂正の適否のむすび 以上のとおりであるので、訂正第1発明ないし第7発明は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たことと認められるので、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正は、平成6年法律第116号附則第6条第1項により、なお従前の例とされる改正前の特許法第126条第3項の規定を適用し、これを認めることができない。 (2) 本件発明 本件発明は、特許明細書の特許請求の範囲請求項1ないし7に記載された事項により特定された以下のとおりのものである(以下「本件第1発明」ないし「本件第7発明」という。)。
「【請求項1】n型の窒素-3族元素化合物半導体(AlXGa YIn 1- X- YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)からなるn層と、p型の窒素-3族元素化合物半導体(AlXGa YIn 1- X- YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)からなるp層とを有する窒素-3族元素化合物半導体発光素子において、
前記p層は、正孔濃度が1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりも正孔濃度が低い低キャリア濃度p層との2重層で構成され、前記高キャリア濃度p+層に接合する電極をニッケル(Ni)としたことを特徴とする窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
【請求項2】前記p層はマグネシウム(Mg)が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
【請求項3】前記低キャリア濃度p層は、正孔濃度が1×1014〜1×1016/cm3であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
【請求項4】前記高キャリア濃度p+層は0.1〜0.5μmの厚さを有することを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
【請求項5】前記低キャリア濃度p層は0.2〜1.0μmの厚さを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
【請求項6】前記高キャリア濃度p+層に接合する前記電極と前記n層に接合する電極は同一面側に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。
【請求項7】前記低キャリア濃度p層及び前記高キャリア濃度p+層は半絶縁性窒素-3族元素化合物半導体層の一部をp型化して形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。」 (3) 対比及び判断 本件第1発明ないし第7発明は、上記訂正第1発明ないし第7発明と比較すると、低キャリア濃度p層のキャリア濃度を「1×1014/cm3以上」にするという限定が付与されていないものであるが、上記限定が付与されていなければなおさら、
上記(1)-2のBないしHにおいて述べた理由と同じ理由により、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たことと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(4) 決定のむすび 以上のとおりであるから、本件第1発明ないし第7発明に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により取り消すべきものである。
原告ら主張の決定取消事由
1 取消事由1(一致点の認定の誤り) 決定は、訂正第1発明と刊行物1記載の発明につき、「両者は、「n型の窒素-3族元素化合物半導体(AlXGa YIn 1- X- YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)からなるn層と、p型の窒素-3族元素化合物半導体(AlXGa YIn 1- X- YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)からなるp層とを有する窒素-3族元素化合物半導体発光素子において、前記p層に接合する電極をニッケル(Ni)とした窒素-3族元素化合物半導体発光素子」である点において一致し」と認定したが、刊行物1には「p層に接合する電極をニッケル(Ni)とした」構成は開示されておらず、この点で両者は相違している。決定は、この点において相違点を看過し、一致点の認定を誤ったものである。
(1) 訂正第1発明は、発光素子の「駆動電圧の低下」を目的とし、「p層を、
正孔濃度が1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりも正孔濃度が低く、正孔濃度が1×1014/cm3以上の低キャリア濃度p層との2重層で構成した上で、高キャリア濃度p+層に接合する電極をニッケル(Ni)とした」ことにより、p+層とNi電極との間のオーミック特性が良好となり駆動電圧が低下した結果、注入電流が大きくなり発光輝度が向上するとの効果を得るものである。
(2) 刊行物1には、「p層に接合する電極をニッケル(Ni)とした」との記載はない。
p-GaN層(キャリア濃度:1×1017/cm3)にAl金属電極を形成した実施例の説明に続いて「電極形成用の金属としてはAlに限って説明したがその他In、Ga、Ni、Ti、Cu、Au、Ag、Cr、Si、Ge等の単体あるいは混合金属膜のいずれもオーミック用電極として適用可能であることは明らかである」(8頁左下欄11行〜15行)の記載があるが、この記載は、単元素半導体(Si等)に接合するオーミック電極の材料として一般的である「In、Ga、Ni、Ti、Cu、Au、Ag、Cr、Si、Ge等」を例示列挙し、これらを化合物半導体(p-GaN)に接合しても単元素半導体に接合したときと同様なオーミック性が得られることを単に予測したものにすぎない。Niを含め列挙した電極材料の駆動電圧特性については何ら実験・実証がないばかりか、列挙した電極材料が接合される半導体につき、導電型がn型かp型か、
単元素半導体か化合物半導体かについての考察も見られない。また、列挙した電極材料のうち、特別Niに関する記載もない。上記記載はp型化合物半導体に接合する電極材料としてNiを選択するものではない。
(3) したがって、刊行物1には、訂正第1発明の「p層に接合する電極をニッケル(Ni)とした」構成は開示されていない。
2 取消事由2(相違点の判断の誤り) 決定は、訂正第1発明と刊行物1記載の発明との間の相違点について、「p層を高キャリア濃度のp+層とそれより低いキャリア濃度のp層との2重層とする化合物半導体発光素子は刊行物2及び刊行物3に記載されているようによく知られており、また、GaN系においても、電極と接触する部分を高キャリア濃度にすることは周知である(特開平4-242985号公報、段落【0038】及び【0039】参照)ところ、刊行物1に記載されているように、GaN系発光素子におけるp層のキャリア濃度を6×1016/cm3とすることが知られており、かつ、訂正発明における「1×1016/cm3以上」及び「1×1014/cm3以上」という数値に臨界的意義があるとも認められないので、p層を1×1016/cm3」以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりもキャリア濃度が低く、1×1014/cm3以上の低キャリア濃度p層との2重層で構成することは、当業者が容易になし得たことと認められる。」と認定、判断したが、誤りである。
(1) 刊行物1は、正負電極の対向配置に基づく「電流流路断面積の拡大」による発光輝度の向上を目的とするもので、「駆動電圧の低下」による発光輝度の向上を目的とするものではない。
化合物半導体は単元素半導体に比較してオーミック性が得難いので、化合物半導体に対して良好なオーミック性が得られる電極材料を見つけることは、重要な技術課題である。しかしながら、上述したとおり、刊行物1には、Niを含め列挙した電極材料の駆動電圧特性については何ら実験・実証がないばかりか、列挙した電極材料が接合される半導体につき、導電型がn型かp型か、単元素半導体か化合物半導体かについての考察も見られない。また、列挙した材料のうち、特別Niに関する記載もない。
以上、刊行物1には、電極材料としてNiの記載があるにせよ、発光素子の「駆動電圧の低下」を目的としてNiを転用する動機付けがない。
(2) 刊行物2はAlGaAs系半導体に関するものでありGaN系とは組成元素が異なるので、GaN系半導体への転用は困難である。また、キャップ層の多層構造は、高正孔濃度のキャップ層からクラッド層へアクセプタ不純物が拡散するのを防止するもので、「駆動電圧の低下」を目的とするものではない。さらに、上記キャップ層とクラッド層との層構造が訂正第1発明の2重層に対応するとしても、2重層を構成する各層の正孔濃度の各下限値は示唆されない。
なお、正孔濃度に関する「5×1018/cm3以上」(キャップ層)及び「5×1017/cm3」(クラッド層)という数値は、実際は不純物濃度を意味する。しかし、GaAs半導体と異なり、GaN半導体では不純物濃度と正孔濃度とが比例せず不純物濃度から正孔濃度を予測できないという特殊事情があるので、刊行物2に記載されたGaAs半導体の正孔濃度又は不純物濃度の数値から直ちに訂正第1発明のようなGaN半導体の正孔濃度の数値を予測することはできない。
刊行物3の2層構造(p型発光層とp+層)は、ヘテロ接合であるため必然的になる構造であって、「駆動電圧の低下」を目的としたものではない。「駆動電圧の低下」を目的とした2重層の構成や2重層を構成する各層の正孔濃度の各下限値は示唆されない。
このように、刊行物2及び刊行物3のいずれにも、「p層を、正孔濃度が1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりも正孔濃度が低く、正孔濃度が1×1014/cm3以上の低キャリア濃度p層と2重層で形成した」構成(2重層を構成する各層の正孔濃度の各下限値)が記載されていない。
(3) 以上、刊行物1には、電極材料に「駆動電圧の低下」を目的としてNiを転用する動機付けがないので、Ni電極と刊行物2又は刊行物3の半導体とを組み合わせることはできず、組み合わせたとしても刊行物2又は刊行物3には、2重層を構成する各層の正孔濃度の各下限値につき記載がないから、「p層を1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりもキャリア濃度が低く、1×1014/cm3以上の低キャリア濃度p層との2重層で構成する」構成を導くことはできない。
(4) 決定は、「1×1016/cm3以上」及び「1×1014/cm3」という数値に臨界的意義が認められないとするが、以下のとおり誤りである。
(4)-1 特許庁の平成6年改正に伴う審査運用指針によると、「課題が異なり、有利な効果が異質である場合は、数値限定を除いて両者が同じ発明を特定するための事項を有していたとしても、数値限定に臨界的意義を要しない。」とされ、
進歩性の判断において数値限定に臨界的意義を要するのは、数値限定を除いて両者が同じ発明を特定するための事項を有する場合だけである。訂正第1発明が刊行物1記載の発明と対比して数値限定のほかに更に異なる発明を特定するための事項を有するときは、数値限定に臨界的意義が求められることはない。これに対し、決定は、訂正第1発明が刊行物1記載の発明と対比して数値限定の外にさらに異なる発明を特定するための事項を有することを認めている。
同じく、「課題が異なり、有利な効果が異質である場合」にも数値限定に臨界的意義を要しない。他方、上記のとおり訂正第1発明の「駆動電圧の低下」効果は刊行物1に記載もなく異質であることは明らかである。
以上のとおり、「1×1016/cm3」及び「1×1014/cm3」という数値に臨界的意義が要求される理由はなく、そこに臨界的意義を求めた決定の認定は誤りである。
(4)-2 仮に、数値限定の臨界的意義が要求されるとしても、「1×1016/cm3以上」の数値限定には臨界的意義があるから、この点でも誤りである。
すなわち、下記図1及び図2のNi電極及びAl電極の接触抵抗の正孔濃度特性の測定結果(被告補助参加人が特許異議手続において平成10年11月9日付け特許異議意見書=甲第9号証に添付したもの)によると、「1×1016/cm3以上」の正孔濃度にして電極を形成すると接触抵抗は臨界的に小さくなること、Niの方がAlよりも接触抵抗が2〜5桁小さいことが理解できる。以上から、「1×1016/cm3以上」には接触抵抗の観点から臨界的意義が存在し、また「1×1016/cm3以上」にNi電極を接合することによりAl電極に比べ駆動電圧を低くできることから電極材料と半導体材料との組合せの観点からも意義が認められる。「1×1016/cm3以上」は単なる設計事項ではない。
図1 図2 なお、上記測定結果と同じ結果を示す書面(被告補助参加人担当者の研究報告書。甲第16号証)との対比からみて、上記測定結果を示した実験報告には客観性がある。
被告は、4測定点の一つを測定誤差とみなして除いた残り3測定点はほぼ直線関係を示すこと、4測定点を採用するにしても1015/cm3台に測定点がないこと、
「1×1016/cm3」を超えたところで接触抵抗が減少し「1×1016/cm3」で急減するわけではないことを理由に、上記測定結果が臨界的意義を示すとはいえないと主張する。
しかし、被告の主張は、真正な測定点である左端又は左から2番目の測定点を勝手に除外して測定結果を議論するもので、客観性がなく恣意的である。また、1×1016/cm3から2×1016/cm3にかけて接触抵抗が1/10以下に急減する上、1×1016/cm3から2×1016/cm3にかけての範囲は、3桁にわたって変化する全測定範囲に比べると無視できるわずかな範囲にすぎないから、1×1016/p3で臨界的に接触抵抗が低下しているということができる。
(4)-3 訂正第1発明の数値限定の臨界的意義は、本件明細書の【0025】及び【0026】に記載されている。
被告は、【0025】及び【0026】には、低キャリア濃度p層が1×1014/cm3以下となり、又は高キャリア濃度p+層が1×1016/cm3より小さくなると、直列抵抗が高くなりすぎて望ましくないとする根拠につき記載がないので、臨界的意義を示す記載ではないと主張するが、本件明細書には、発明者の実験による確認を含む認識が記載されているのであって、その根拠の記載まで求められるものではない。数値限定の意義は、出願当初に発明者によって認識されている。
3 取消事由3(顕著な効果の看過) (1) 訂正第1発明は、p層を高キャリア濃度層と低キャリア濃度層からなる2重層とし各層の正孔濃度の数値範囲を限定したこと、高キャリア濃度層に接合する電極の材料をNiとしたことの相乗効果により、@駆動しきい値電圧が7V(従来例のAl電極)から3V(本件のNi)へと1/2以下に低下した、A立ち上がり電圧が17V(従来例のAl電極)から5V(本件のNi)へと1/3以下に低下したとの「駆動電圧の低下」効果を得、発光輝度が向上した。
この効果は各刊行物には記載がなく、予測することができない効果である。訂正第1発明は、各刊行物の記載から容易に発明をすることができたものではない。
(2) 被告は、甲第8号証(SPIE Vol.1361 (1990)p138以下の「High efficiency UV and blue emitting devices prepared by MOVPE and low energy electron beam irradiation treatment」と題する論文)中の「p型GaNのオーミック用電極としてAuを用いたGaNからなるpn接合発光ダイオードのしきい値が約3Vである」旨の記載をとらえて、従来から「駆動電圧の低下」の効果は達成されており異質の効果とはいえないと主張するが、訂正第1発明「駆動電圧の低下」の効果はNi電極によるものでAu電極によるものではないので、「Au電極による駆動電圧の低下の達成」によって異質性の判断が阻害されることはない。
決定取消事由に対する被告の反論
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)に対して 刊行物1の「電極形成用の金属元素としてはAlに限って説明したがその他In、Ga、Ni、Ti、Cu、Au、Ag、Cr、Si、Ge等の単体あるいは混合金属のいずれもオーミック用電極として適用可能であることは明らかである」との記載は、オーミック性を単に予測する記載ではなく、窒化ガリウム化合物半導体発光素子のp層に対して電極形成用の金属元素として列記されたものの中からNiを選択することは任意になし得ることを示す記載である。
単体のNiをp層の電極としたGaN化合物半導体発光素子が実質的に刊行物1に記載されているのは明らかであるから、「p+層に接合する電極をニッケル(Ni)とした」をもって一致点とした決定の認定に誤りはない。
2 取消事由2(相違点の判断の誤り)に対して (1) 原告らは、刊行物1には駆動電圧の低下を目的としてNiを用いる動機付けがなく、刊行物2及び刊行物3には、「窒素-3族元素化合物半導体発光素子において、p層を正孔濃度が1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりも正孔濃度が低く、正孔濃度が1×1014/cm3以上の低キャリア濃度p層との2重層で形成した」が示唆されておらず、刊行物1、刊行物2及び刊行物3を組み合わせても、p層を2層にした各層の正孔濃度の下限値や高キャリア濃度p+層の電極をNiとすることは導き得ず、駆動電圧がAlに比べて1/2以下となるという優れた効果は予測し得ないので、訂正第1発明は各刊行物記載の発明から容易に発明をすることができたものではない、と主張する。
しかしながら、刊行物1には単体のNiをp+層の電極としたGaN化合物半導体発光素子が実質的に記載されており、「GaN系化合物半導体発光素子のp層を高キャリア濃度の層とそれより低いキャリア濃度の層との2重層とすること」及び「GaN系化合物半導体発光素子において電極と接触する層を高キャリア濃度にすること」は刊行物2、刊行物3及び特開平4-242985号公報(乙第1号証)に記載のように周知であり、訂正第1発明の数値限定に臨界的意義が認められず、そして、「駆動電圧の低下」という効果は、GaN系化合物半導体発光素子のp層に接合する電極材料をNiにしたことによる効果にすぎないから、訂正第1発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。原告らの主張は失当である。
(2) 原告らは、刊行物2につき、GaN系半導体の正孔濃度はアクセプタ濃度と比例しないから、他の半導体と違ってアクセプタ濃度から正孔濃度を予測することはできない、刊行物3の2重層(p型発光層とp+層)はヘテロ接合であるために必然的になる構造である、刊行物2及び刊行物3には、「駆動電圧の低下」を目的とした2重層の構成や2重層を構成する各層の正孔濃度の各下限値の示唆がない、
と主張する。
しかしながら、決定が刊行物2及び刊行物3において認定する事項は「p層を高キャリア濃度のp+層とそれより低いキャリア濃度p層との2重層とする化合物半導体発光素子」だけであるから、原告らの主張はこの認定と関連がない。
特開平4-242985号公報には、「ヘテロ接合を利用する場合も、同一組成の結晶によるpn接合の場合と同様に、オーム性電極組成を容易にするため電極と接触する部分付近のキャリア濃度は高濃度にしても良い」(【0038】)の記載が、
また、【0039】には、「n型結晶のキャリア濃度はドナー不純物のドーピング濃度により、またp型結晶のキャリア濃度はアクセプタ不純物のドーピング濃度及び電子線照射処理条件により制御する。又、特にオーム性電極形成を容易にするため高キャリア濃度実現が容易な結晶を金属との接触用に更に接合してもよい。」の記載があり、「GaN系発光素子において電極と接触する部分を高キャリア濃度とすること」が記載されている。
(3) 原告らは、Ni電極及びAl電極の接触抵抗の正孔濃度特性の測定結果によれば、「1×1016/cm3以上」には臨界的意義が存在すると主張するが、その測定結果を示す書面には作成者及び作成時期の記載がないので、客観的な実験報告とはいえない。また、そこには測定点が4点しかなく、臨界的意義を示すとはいえない。
すなわち、原告ら主張の図1において、1×1016/cm3近傍の測定点又は1014/cm3台の測定点を測定誤差とみなして除くと、それぞれ、残り3測定点はほぼ直線関係を示す。また、4測定点を採用するにしても1015/cm3台に測定点がないので、
1×1016/cm3に臨界的意義があるのか不明である。さらに、接触抵抗が急減する値は1×1016/cm3を超えたところにあり1×1016/cm3にあるわけではない。したがって、上記測定結果は、1×1016/cm3に臨界的意義が存在することを示すものではない。
原告らは、数値限定の意義は本件明細書の【0025】及び【0026】に記載されていると主張するが、【0025】及び【0026】には、低キャリア濃度p層が1×1014/cm3以下となり、又は高キャリア濃度p+層が1×1016/cm3より小さくなると、
直列抵抗が高くなりすぎて望ましくない、とする根拠につき記載がないので、臨界的意義を示す記載ではない。
3 取消事由3(顕著な効果の看過)に対して 本件許明細書には従来技術として、「最近、・・・pn接合を有するGaN発光ダイオードが提案されている。この発光ダイオードの電極は、n層がアルミニウム(Al)、p層が金(Au)である。」(【0003】)と記載されている。一方、甲第8号証(SPIE Vol.1361 (1990)p138以下の「High efficiency UV and blue emitting devices prepared by MOVPE and low energy electron beam irradiation treatment」と題する論文)における「LEEBI(低エネルギー電子線照射)処理されたGaN:Mgへのオーミックコンタクトは、Fig.7に示されるように堆積したAuにより達成された。」(第144頁第6行〜7行)、及び「p-n接合LEDのしきい値電圧は、GaNp-n接合のビルトイン電圧を考慮して妥当な約3Vである」(第147頁第7行〜8行)の記載によれば、p型GaNのオーミック用電極として金(Au)を用いたときの駆動電圧は約3Vである。
そうすると、本件明細書に従来技術として記載された「p型GaNとAuとの接合」においても駆動電圧は3Vであるということができ、したがって、駆動電圧が3Vに低下したという訂正第1発明の「駆動電圧の低下」効果は、実は従来技術(p型GaNとAuとの接合)において既に達成されていた効果である。予測不可能な効果であるとも、異質の効果であるともいえない。
当裁判所の判断
取消事由2(相違点に関する判断の誤り)について判断する。
1 訂正第1発明 (1) 甲第2号証及び第3号証によれば、本件明細書に以下の記載があることが認められる。
@「本発明の目的は、窒素-3族元素化合物半導体発光ダイオードの発光輝度を向上させること及び駆動電圧を低下させることである。」(第2頁左欄第26〜29行) A「p層を、正孔濃度が1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層と、その高キャリア濃度p+層よりも正孔濃度が低く、正孔濃度が1×1014/cm3以上の低キャリア濃度p層との2重層で構成し、高キャリア濃度p+層に接合する電極をニッケル(Ni)とすることにより、良好なオーミック特性を得ると共に駆動電圧が低下した。又、駆動電圧の低下により同一電圧では注入電流を大きくすることができ、発光輝度が向上した。」(第2頁右欄第8行〜15行) B「又、低キャリア濃度p層の正孔濃度を1×1014〜1×1016/cm3とすることで、発光効率を向上させることができる。」(第2頁右欄第16行〜18行) C「又、上記低キャリア濃度p層51の正孔濃度は1×1014cm3〜1×1016/cm3・・・が望ましい。正孔濃度が1×1014/cm3以下となると、直列抵抗が高くなり過ぎるので望ましくなく、正孔濃度が1×1016/cm3以上になると、低キャリア濃度n層4とのマッチングが悪くなり発光効率が低下するので望ましくない。」(第4頁左欄第9行〜15行) D「更に、高キャリア濃度p+層52の正孔濃度は1×1016/cm3以上・・・が望ましい。正孔濃度が1×1016/cm3より小さくなると、直列抵抗が高くなるので望ましくない。」(第4頁左欄第18〜21行) (2) 上記記載@〜Dから、訂正第1発明は、pn接合型のGaN系発光素子の「駆動電圧の低下」を目的とし、
(ア) オーミック性を良好にする(正孔濃度を高くする、電極材料を選定する) (イ) p層の直列抵抗を高くしない(正孔濃度を高くする) (ウ) n層とのマッチングを悪くしない(正孔濃度を高くし過ぎない)ことを考慮して、p層を、電極側の正孔濃度をオーミック性を良好にし直列抵抗を高くしないように高くし、n層側の正孔濃度を直列抵抗を高くしない限度においてn層とのマッチングを悪くしないように低くした2重層とし、良好なオーミック性に好適な電極材料としてNiを選択したものと認められる。
2 刊行物1の記載 (1) 甲第4号証によれば、刊行物1に以下の記載があることが認められる。
@「本発明の第1の実施例を第1図に示す。・・・3はZnO層(n型)1μmであり、4はGaNエピタキシャル層(n型)膜厚は3μmであり、5はGaNエピタキシャル層(p型)膜厚1μm、6はAl正電極、そして7はAl負電極である。・・・このようにして形成したGaN:Oエピタキシャル膜4はキャリア濃度5×1017cm-3、・・・p型GaN:Znエピタキシャル膜5は、・・・キャリア濃度1×1017cm-3・・・である。」(第4頁右下欄第10行、第5頁左上欄第4行〜7行、右下欄第5行〜第12行) A「本発明の第2の実施例を第2図に示す。・・・GaN:O層12は・・・キャリア濃度4×1017cm-3の低抵抗GaN:O(0001)発光層であり、GaN:Mg層13は・・・p型抵抗率10Ω・cm、キャリア濃度6×1016cm-3の低抵抗p型エピタキシャル膜である。」(第6頁左上欄第7行、右上欄第9行〜左下欄第1行) B「電極形成用の金属元素としてはAlに限って説明したがその他In、Ga、Ni、Ti、Cu、Au、Ag、Cr、Si、Ge等の単体あるいは混合金属膜のいずれもがオーミック用電極として適用可能であることは明らかである。」(第8頁左下欄第11行〜15行) C「第3の問題点として、・・・透明なα-Al2O3基板を光取出窓として利用したフリップ・チップ構造の基本であるプレーナ型においてはエピタキシャル層内面方向の電気抵抗のために素子全体としての電力損失ならびに印加電圧の増大という因子を十分に除去することは出来ず、素子特性向上、特に低電圧駆動(5V以下動作)、高輝度、高効率安定発光素子を製作するうえでは、極めて大きな問題である。」(第3頁右上欄第15行〜左下欄第8行) D「従来の第3の問題点であった、素子構造により起因する発光素子の電気的特性(駆動電圧低減、消費電力削減、発光輝度・効率)の向上は従来素子において不可欠であった。絶縁性サファイア基板が除去され、低抵抗ZnS基板が使用できることにより対向電極構造[第1〜4図参照]の運用が可能となった。」(第4頁左下欄第15行〜右下欄第1行) E「このようにして形成されたp型GaN:Zn層5の移動度は、15cm3/V・secとなり、従来のサファイア上に形成されたGaN:Znに比較してアクセプタ不純物Znの活性化率で1桁以上の向上かつ移動度は約2倍増大する。このようにして製作されたGaNpn接合型発光ダイオードは、立ち上がり電圧3V、電圧3.5V印加時の電流10mAなる動作条件下において発光ピーク波長480nm、発光輝度30mcdを示した。」(第5頁右下欄第13行〜第6頁左上欄第2行) (2) 上記記載@、A及びBによれば、pn接合型のGaN系発光素子について記載され、そのp層に接合する金属電極の材料としてNiを適用すること、p層の正孔濃度を1×1017/cm3又は6×1016/cm3とすることが記載されていることは、明らかである。
また、p層の正孔濃度の「1×1017/cm3又は6×1016/cm3」が訂正第1発明の「正孔濃度が1×1016/cm3以上の高キャリア濃度p+層」に相当することも、
明らかである。
上記記載C、D及びEによれば、刊行物1の発明は「駆動電圧の低下」を目的としており、目的において訂正第1発明と共通するものということができる。そして、上記のとおり、電極材料をNiとすること、p層の正孔濃度を1×1017/cm3又は6×1016/cm3とすることの記載からみて、刊行物1が目的とする「駆動電圧の低下」には、訂正第1発明と同様、良好なオーミック性と低直列抵抗が寄与していると認められる。
しかし、刊行物1の「駆動電圧の低下」は、基板を従来の絶縁性サファイア基板から低抵抗ZnS基板とし正電極及び負電極を対向電極構造とすることによって、従来のプレーナ型におけるエピタキシャル層内面方向の電気抵抗を低減することによるものであり、訂正第1発明のように、電極側の正孔濃度と電極材料の選定によりオーミック性を良好にし直列抵抗を高くしないようにしたことによるものではないことは明らかである。
(3) そうすると、刊行物1には、オーミック性と低直列抵抗による「駆動電圧の低下」を目的とする点において共通すると認められるものの、訂正第1発明のような「p層のn層側をn層とのマッチングを悪くしないよう低濃度とする」ことについては開示がないというべきである。
3 刊行物2の記載 (1)甲第5号証によれば、刊行物2に以下の記載があることが認められる。
@「本発明は、半導体発光素子に関し、特に発光層とオーミック特性の優れたキャップ層とを有したものに関する。」(第1頁左下欄第10行〜12行) A「第1図は従来例としてGaAlAs系材料からなる半導体レーザを示し、(1)は、
n型GaAs(ガリウム砒素)基板、(2)は該基板上に積層されたレーザ光を発する発光層であり、該発光層はn型Ga1-xAlxAs(0<x<1)からなる第1クラッド層(3)、Ga1-yAlyAs(x>y、0≦y<1)からなる活性層(4)、p型Ga 1-xAlxAsからなる第2クラッド層(5)を順次エピタキシャル成長にて積層したものである。・・・(6)は上記発光層(2)上に積層されp型GaAsからなるキャップ層であり、
該キャップ層は、将来斯る層上に形成される金属電極(図示せず)とのオーミック接触を良好となすものである。通常、上記第2クラッド層(5)のキャリア濃度は約5×1017/cm3であり、またキャップ層(6)のキャリア濃度は、5×1018/cm3以上である。」(第1頁左下欄第16行〜右下欄第17行) B「第2図は本発明の一実施例を示し、従来例との相違は、キャップ層(6)をキャリア濃度の異なる第1、第2、第3層(7)(8)(9)から構成したことである。・・・上記第2クラッド層(5)のキャリア濃度は7〜8×1017/cm3とした。また、上記第1〜第3層(7)〜(9)のキャリア濃度は夫々、2〜3×1018/cm3、6〜7×1018/cm3、1〜1.5×1019/cm3とし・・・た。」(第2頁左上欄第14行〜右上欄第3行) C「第3図は半導体発光素子のキャップ層表面から厚み方向のキャリア濃度変化を示す。」(第2頁右上欄第10行、第11行) (2) 上記記載@〜Cによれば、キャップ層(6)及び第2クラッド層(5)はいずれもp型であること、キャリア濃度は、第1図(従来例)では「5×1018/cm3以上」(キャップ層)及び「約5×1017/cm3 」(クラッド層)であり、第2図(実施例)では「2〜3×1018/cm3、6〜7×1018/cm3、1〜1.5×1019/cm3」(キャップ層)及び「7〜8×1017/cm3」(第2クラッド層)であることから、キャップ層(6)の正孔濃度が第2クラッド層(5)の正孔濃度よりも大きいことは、それぞれ明らかである。
したがって、刊行物2には「p層を高キャリア濃度p+層とそれより低い正孔濃度の低キャリア濃度p層との2重層とする化合物半導体発光素子」が記載されているものということができるが、この2重層は、「オーミック接触を良好となす」(刊行物2第1頁右下欄第14行)ために電極側を高キャリア濃度とするという従来周知の考え(甲第12号証)によるもので、n層側が低キャリア濃度となる構造は単なるその結果にすぎないものである。また、n層とのマッチングを悪くしないように低濃度とすることの開示もない。
(3) また、刊行物2に記載の発光素子のp層の材料は、上記のとおりGaAlAsであってGaNではないのみならず、GaAlAs半導体とNi電極とのオーミック特性についての記載もない。したがって、刊行物2に記載の発明は、「p層を高キャリア濃度p+層とそれより低い正孔濃度の低キャリア濃度p層との2重層とする化合物半導体発光素子」との構成の範囲においてGaN化合物半導体発光素子に採用することが可能であるにとどまり、具体的な正孔濃度値までを示すものではないし、ましてや本件発明のように、Ni電極に接合するとの構成の採用までを示すものではない。
仮に、刊行物2の記載から何らかの正孔濃度値を採用することができるとしても、キャップ層(6)の正孔濃度(5×1018/cm3以上(従来例)、2〜3×1018/cm3、6〜7×1018/cm3、1〜1.5×1019/cm3(いずれも実施例))は、訂正第1発明の高キャリア濃度p+層の範囲内(1×1016/cm3以上)にあるものの、第2クラッド層(5)の正孔濃度(5×1017/cm3(従来例)、7〜8×1017/cm3(実施例))も訂正第1発明の高キャリア濃度p+層の範囲内にあるのであって、
低キャリア濃度p層の範囲(1×1014/cm3以上(実施例の1×1014〜1×1016/cm3))を予測することも困難であるというべきであり、まして第2クラッド層(5)の下限値についての記載は、刊行物2にはないのである。
(4) 以上要するに、刊行物2には「p層を高キャリア濃度p+層とそれより低い正孔濃度の低キャリア濃度p層との2重層とする化合物半導体発光素子」の開示はあるものの、2重層は電極側を高濃度としたことによるものでn層側をn層とのマッチングを悪くしないように低濃度としたことによるものではなく、さらに、2重層を構成する各層の正孔濃度の各下限値、とりわけ低濃度層の濃度範囲につき記載がないということができる。
4 刊行物3の記載 (1) 甲第6号証によれば、刊行物3に以下の記載があることが認められる。
@「GaNの場合も通常は発光素子としてMIS構造をとる・・・が、動作電圧が7.5〜10Vと高くなる欠点がある。・・・本発明はこれらの欠点を解決するために、・・・GaNとAlxGa1-xN(0<x≦1)とでヘテロ接合素子を形成するようにしたもので、青色領域近傍の可視光領域での高効率な発光素子を得ることを目的とする。」(第2頁左上欄第1行〜17行) A「第4図はサファイア等の絶縁性基板上に作製したダブル・ヘテロ接合素子の実施例の側断面図であって、3,5は実施例1で述べた絶縁性基板、オーミック電極、9はn+型AlxGa1-xN(0<x≦1)、10はn+型Alx'Ga 1-x'N(0<x'≦1、
x'>x)、11はn型またはp型AlyGa1-yN(0<y≦1、x'>y)、12はp+型Alx'Ga1-x'N(0<x'≦1)である。」(第3頁左上欄第20行〜右上欄第6行) B「活性層であるn型またはp型のAlyGa1-yN(0<y≦1、x'>y)」(第3頁右上欄第12行、第13行) C「n+型にするため、n型よりもドナーを多く添加する。・・・p+型にするため実施例1で述べたアクセプター添加量をp型に比べ多くする。」(第3頁右上欄第9行、第17行〜第19行) D「p+型Alx'Ga1-x'N層12とn+型AlxGa 1-xN層9の上に、第4図に示すように、Inオーミック電極5を真空蒸着により取り付ける。」(第3頁右上欄第19行〜左下欄第1行)。
(2) 上記記載@によれば、刊行物3の発明は、訂正第1発明と同様「駆動電圧の低下」を目的とするものということができる。しかし、それは、発光層をヘテロ接合とすることにより「駆動電圧の低下」を図るもので、訂正第1発明のような、
p層の直列抵抗及びn層とのマッチングを考慮しつつp層の正孔濃度に変更を加えて2重層構造とすることにより「駆動電圧の低下」を図るとの思想はないというべきである。
(3) 上記記載A〜Dによれば、刊行物3の発明における発光層はダブル・ヘテロ接合素子であるところ、「n型またはp型のAlyGa1-yN層11」はダブル・ヘテロ接合の活性層であるのに対して「p+型Alx'Ga1-x'N(0<x'≦1)層12」は電荷注入層であるから、両層は異なる作用をなす層である。したがって、「n型またはp型のAlyGa1-yN層11」のうち選択したp型層と「p+型Alx'Ga 1-x'N(0<x'≦1)層12」とを組み合わせてp層としても、同p層を同一の作用をなす一つの層とみなすことはできない。そうすると、「p層を高キャリア濃度p+層とそれより低い正孔濃度の低キャリア濃度p層との2重層とする化合物半導体発光素子」が記載されているとは認められない。
5 特開平4-242985号公報の記載 乙第1号証によれば、特開平4-242985号公報に「又、特にオーム性電極形成を容易にするため高キャリア濃度実現が容易な結晶を金属との接触用に更に接合してもよい。」(第4頁左欄第42〜44行)との記載があることが認められる。しかし、この記載もGaN半導体について「p層を高キャリア濃度p+層とそれより低い正孔濃度の低キャリア濃度p層との2重層とする化合物半導体発光素子」を開示するものの、2重層は電極側を高濃度としたことによるものでn層側をn層とのマッチングを悪くしないように低濃度としたことによるものではなく、さらに、
2重層を構成する各層の正孔濃度の各下限値、とりわけ低濃度層の濃度範囲についての記載はない。
6 相違点に関する判断のまとめ 以上、刊行物1には、Ni電極と高キャリア濃度のp層とのオーミック性を維持しつつn層とのマッチングを考慮してn層側を低濃度にして2重層とする考えはない。刊行物3には2重層の記載がない。刊行物2又は特開平4-242985号公報に記載の2重層は、いずれも電極側を高濃度とする考えに基づくもので、n層側を低濃度とする考えに基づくものではなく、訂正第1発明の低キャリア濃度p層の正孔濃度範囲に相当する範囲の開示もない。
したがって、刊行物2又は特開平4-242985号公報に記載の2重層を刊行物1のp層(正孔濃度:1×1017/cm3又は6×1016/cm3)に適用してp層を2重層とすると、電極側は訂正第1発明の高キャリア濃度p+層の範囲内(1×1016/cm3以上)になるものの、n層側の正孔濃度も訂正第1発明の高キャリア濃度p+層の範囲内のままである。刊行物1のp層を訂正第1発明の高濃度キャリアp+層に対応させたとしても、訂正第1発明の低キャリア濃度p層の範囲(1×1014/cm3以上(実施例の1×1014〜1×1016/cm3))を導くことはできない。
すなわち、高キャリア濃度p+層とそれよりも正孔濃度が高いp+層との2重層を導くことはできても、「高キャリア濃度p+層よりも正孔濃度が低く、正孔濃度が1×1014/cm3以上の低キャリア濃度p層」を備える2重層を導くことはできないというべきである。
7 被告の主張に対する判断 (1) 被告は、「低キャリア濃度p層の正孔濃度を1×1014/cm3以上とする」及び「高キャリア濃度p+層の正孔濃度を1×1016/cm3以上とする」ことの臨界的意義は認められない、と主張する。
しかしながら、訂正第1発明と刊行物1記載の発明との間には、数値範囲の構成上の差異以外に2重層の有無の構成の差異が存するとの相違も認められるのであるから、被告主張に係る正孔濃度に関する臨界的意義の存否をもって、刊行物1記載の発明との対比において訂正第1発明との間の相違がないとすることはできない。
被告の上記主張は理由がない。
(2) 被告は、本件明細書の【0025】及び【0026】の記載は、直列抵抗が高くなりすぎて望ましくないとするが、その根拠についての記載がないので、臨界的意義を示す記載ではないと主張する。
しかしながら、直列抵抗が高くなることは、刊行物1の「透明なα-Al2O3基板を光取出窓として利用したフリップ・チップ構造の基本であるプレーナ型においてはエピタキシャル層内面方向の電気抵抗のために素子全体としての電力損失ならびに印加電圧の増大という因子を十分に除去することは出来ず、」(甲第4号証第3頁右上欄第20行〜左下欄第5行)との記載にもみられるように、「駆動電圧の低下」をもたらす要因であり望ましくないことが明らかである。
そして、訂正第1発明は「直列抵抗を考慮して低濃度層の正孔濃度を定める」ことに基づくのに対して、各刊行物には同事項自体の開示がないのであるから、各刊行物との対比における訂正第1発明の進歩性の有無を判断するに際しては、正孔濃度の下限値に対応する望ましくない直列抵抗の値までは必ずしも必要とするものではない。したがって、被告の主張は理由がない。
8 そうすると、決定は、訂正第1発明の独立特許要件進歩性の有無を判断するに当たり、刊行物1に記載の発明との対比において相違点に関する判断を誤ったものであり、この誤りは、訂正第1発明の進歩性判断の結論に影響を及ぼし、また、訂正第1発明の進歩性を否定したことを前提としてした訂正第2ないし第7発明の独立特許要件の判断にも影響を及ぼすものである。そして、訂正第1ないし第7発明の独立特許要件の判断における誤りは、本件特許を取り消すべきものとした決定の結論に影響を及ぼすものである。
結論
以上のとおりであり、原告らの請求は認容されるべきである。
(平成13年9月27日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実