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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成14ワ3043特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成12ワ26626特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成14ワ5107特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成14ワ12752特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成14ワ14010損害賠償等請求事件 判例 特許
関連ワード 特許を受ける権利 /  発明者 /  協議 /  黙示の合意 /  製造方法 /  技術的範囲 /  発明の利用 /  優先権 /  債務不履行 /  権利の濫用(権利濫用) /  優先日 /  実施 /  加工 /  構成要件 /  差止請求(差止) /  侵害 /  信用回復措置(106条) /  同意 /  実施権 /  専用実施権 /  通常実施権 /  設定登録 /  移転登録 /  対価 /  請求の範囲 /  変更 /  異議申立 / 
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事件 平成 15年 (ワ) 6750号 特許権専用実施権に基づく差止等請求事件
原告 エルティーアイ株式会社
原告訴訟代理人弁護士 折田泰宏
同 若松豊
被告A
被告 イージーブライト株式会社
被告ら訴訟代理人弁護士 阪口春男
同 岩井泉
同 西山宏昭
被告ら補佐人弁理士 藤本昇
同 中谷寛昭
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2004/10/07
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告が別紙特許目録記載の特許権につき専用実施権を有することを確認する。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し、その2を原告の、その余を被告らの各負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告Aは、日本国全域において、別紙特許目録記載の特許(以下「本件特許」という。)の製造方法による微粒子状の蓄光性蛍光粉の販売又は拡布する行為をしてはならない。
2 被告イージーブライト株式会社は、日本国全域において、本件特許の製造方法による微粒子状の蓄光性蛍光粉及びこれを利用した別紙製品目録記載の製品の製造、販売又は拡布する行為をしてはならない。
3 主文第1項同旨 4 被告らは、日本国内において販売する蓄光性蛍光粉及びこれを利用した製品について本件特許を表示してはならない。
5 被告らは、原告に対し、各自金1000万円及びこれに対する平成15年10月28日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
6 被告らは、原告のために、株式会社朝日新聞社発行の朝日新聞、株式会社毎日新聞社発行の毎日新聞、株式会社讀賣新聞社発行の讀賣新聞、株式会社日本経済新聞社発行の日本経済新聞の各全国版社会面に、別紙謝罪広告目録記載の広告を、
同目録記載の条件で1回掲載し、被告イージーブライト株式会社は、同被告が作成、発信しているホームページに、別紙謝罪広告目録記載の広告を、同目録記載の条件で、本件判決言渡しの日の翌日から6か月間掲載せよ。
7 被告Aは、原告に対し、金651万4242円及びこれに対する平成15年10月28日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、本件特許につき専用実施権設定登録を受けている原告が、被告らに対し、専用実施権を有することの確認を求めるほか、被告らによる蓄光性蛍光粉及びこれを利用した製品の製造販売行為等が同専用実施権侵害するとして、専用実施権に基づきその差止めを求め、また、被告らがその販売する蓄光性蛍光粉等に本件特許を表示したり、原告の専用実施権の取得が無効であるなどといった事実を取引先等に告知ないし流布する行為が不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該当するとして、本件特許の表示の差止め、損害賠償及び信用回復措置を請求し、さらに、被告Aに対し、契約違反を理由とする損害賠償請求をしている事案である。
1 前提となる事実(当事者間に争いがないか、弁論の全趣旨等により容易に認定できる事実) (1) 当事者 ア 原告 原告は、蓄光に関する製品の開発、企画、製造、販売等を目的として、
平成13年10月2日に設立された株式会社である。
イ 被告イージーブライト 被告イージーブライト株式会社(以下「被告イージーブライト」という。)は、蛍光顔料・蓄光顔料の製造、販売等を目的として、平成12年3月10日に設立された株式会社である。
被告イージーブライトは、中国所在の中日合資無錫克斯装飾制品有限公司(以下「無錫有限公司」という。)に資本参加し、無錫有限公司が製造した蓄光顔料等を輸入して日本において販売している。
ウ 被告A 被告Aは、無錫有限公司の代表者である。
(2) 本件特許権、本件専用実施権等 ア 本件特許権 (ア) 原告が専用実施権を有していると主張している特許権の内容は、次のとおりである(以下、この特許権を「本件特許権」といい、その発明を「本件発明」という。)。
特許番号 第3209724号 出願年月日 平成11年1月13日 優先権主張国 中華人民共和国 優先日 平成10年1月14日 登録日 平成13年7月13日 発明の名称 微粒子状の蓄光性蛍光粉の製造方法及び微粒子状の蓄光性蛍光粉 特許請求の範囲 別紙特許公報(甲第6号証)該当欄記載のとおり (イ) 別紙特許公報の記載によれば、本件発明の発明者は被告A外3名であり、特許登録時の特許権者は中国所在の中日合資南京克斯装飾制品有限公司(以下「南京有限公司」という。)である。また、本件特許権は無錫有限公司に移転され、その旨平成13年10月16日に登録された。
(ウ) 根本特殊化学株式会社は、平成14年3月18日付けで、本件特許について特許異議申立て(以下「本件特許異議申立て」という。)を行った。
イ 本件専用実施権 (ア) 本件特許権について、平成13年8月1日、被告Aに対し、次の範囲で専用実施権が設定され(以下「本件専用実施権」という。)、同月22日にその旨登録された。
地域 日本国全域 期間 特許権の権利有効期間 内容 全部 (イ) 本件専用実施権については、原告に移転された旨登録されている(受付年月日:平成14年6月19日、登録年月日:平成14年7月31日)。
(3) 本件契約等 ア 原告、被告A及び無錫有限公司は、平成14年4月15日ころ、原告の無錫有限公司に対する出資と、原告への本件特許権の通常実施権の許諾等を内容とする契約(以下「本件契約」といい、その際作成された契約書(乙第1号証)を「本件契約書」という。)を締結した。
イ 原告は、本件契約に基づき、平成14年4月25日、上海浦東発展銀行無錫支店の無錫有限公司の口座に651万4242円を振込送金した。
2 争点 (1) 本件専用実施権が原告にあることの確認請求の確認の利益の存否 (2) 被告Aの原告に対する本件専用実施権の譲渡(以下「本件譲渡」という。)は、同被告の錯誤により無効か (3) 本件譲渡は、原告の被告Aに対する詐欺を理由として取り消されたか (4) 本件譲渡は、通謀虚偽表示により無効か (5) 本件譲渡は、信託法11条違反により無効か (6) 本件専用実施権の黙示の返還合意の有無 (7) 被告らの製造販売する蓄光性蛍光粉及びこれを利用した別紙製品目録記載の製品は、本件発明の技術的範囲に属するか (8)ア 被告イージーブライトは、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知ないし流布したか イ 被告Aは、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知ないし流布したか (9) 原告の損害 (10) 原告は、本件契約に基づく被告Aの債務不履行により、被告Aに対し損害賠償請求権を有するか (11) 謝罪広告の必要性
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(本件専用実施権が原告にあることの確認請求の確認の利益の存否) 【原告の主張】 被告らは、本件譲渡が錯誤あるいは詐欺を理由として無効あるいは取り消されたことを根拠に、本件専用実施権が原告にはないことなどを取引先等に告知ないし流布する行為を行っており、その結果、原告は営業に多大の被害を受け、また信用毀損の損害を被っている。したがって、原告は、被告らに対し、原告が本件専用実施権を有することの確認を求める利益を有する。
【被告らの主張】 争う。
2 争点(2)(被告Aの原告に対する本件譲渡は、同被告の錯誤により無効か) 【被告らの主張】 (1) 原告、被告A及び無錫有限公司との間で締結された本件契約(本件契約書第1条2項)により、無錫有限公司は原告に対して通常実施権を許諾した。
また、被告Aは、本件特許異議申立てにどのように対処するか悩んでいたとき、原告が本件特許権を維持するために弁護団を組むし、弁護団に要する費用はダイニック株式会社(以下「ダイニック」という。)から出るが、原告への通常実施権設定登録をしないとダイニックから費用が出ない、との話を聞かされた。
以上の経緯のため、被告Aは、原告の依頼を受けた弁理士から移転登録申請に必要な書類への押印を求められたとき、通常実施権設定登録に必要な書類であると考え、専用実施権設定登録に必要な書類と知らないまま、既に記されてあった自らの氏名の横に押印した。
(2) したがって、被告Aと原告との間の本件譲渡は、被告Aの錯誤によるものであるから、本件譲渡は無効である。
(3) 原告は、被告Aは原告に本件特許異議申立てに対処して欲しいと述べ、本件専用実施権の譲渡を申し出たのであるし、特許異議申立てに対して手続等を行うには専用実施権がなければならないと特許庁等から説明を受けたため、その旨被告Aに説明し、専用実施権移転登録手続に必要な書面に押印するよう求めたと主張する。しかし、被告Aは、日本国内で本件発明を実施するつもりであったから、日本国内で蓄光性蛍光粉の販売等を独占するための本件専用実施権を無償で原告に譲渡することはあり得ない。また、原告は、被告Aが特許権を守りたいために専用実施権を無償譲渡したと主張するが、対価も得ずに本件特許権の将来の実施を諦めたということはあり得ないし、無償譲渡してしまえば被告Aにとって守るものもなくなるから、原告の主張は論理矛盾である。
【原告の主張】 被告Aは、本件特許異議申立てがなされたことを知り、原告に対し、諸手続の費用、リスクはすべて原告が負担する代わりに、日本国内における専用実施権を譲渡するという申入れを行った。原告は、特許庁等から専用実施権がないと特許異議手続に関与できないとの趣旨の説明を受けたこともあり、被告Aに専用実施権の移転手続の必要性を説明した上で、その移転登録手続に必要な書類を送付した。被告Aは平成14年6月14日に本件専用実施権を原告に譲渡し、同日特許権者である無錫有限公司が当該譲渡を承諾したのであって、その旨記載した書面等(原告が送付した書類)に押印して、原告に返送した。
したがって、被告Aが、通常実施権設定登録に必要な書類と誤信して、本件専用実施権移転登録手続関係書類に押印したということはできない。それまでの経緯を問題とするのであれば動機にすぎない上、原告に対して表示されていない以上、要素の錯誤ということはできないし、仮に誤信していたとしても、表意者に重大な過失があったというべきである。
3 争点(3)(本件譲渡は、原告の被告Aに対する詐欺を理由として取り消されたか) 【被告らの主張】 (1) 事情は前記2【被告らの主張】(1)のとおりである。
(2) 原告は、被告Aに、専用実施権移転登録に必要な書類を通常実施権設定登録に必要な書類であると誤信させ、同書類に押印させたのである。
被告Aは、原告に対し、平成14年10月4日、書面で本件専用実施権の譲渡を取り消す旨の意思表示を行い、同書面は同月9日に原告に到達した。
【原告の主張】 事情は前記2【原告の主張】のとおりである。
本件譲渡に際し、原告が被告Aを欺罔した事実はない。
4 争点(4)(本件譲渡は、通謀虚偽表示により無効か) 【被告らの主張】 仮に本件譲渡の意思表示が錯誤により無効ではないとしても、原告と被告Aは、本件特許権の防御を原告に委ねることを唯一の目的として、専用実施権移転という虚偽の外形を整えるために専用実施権移転登録手続を行うこととしたのである。したがって、本件譲渡は、通謀虚偽表示により無効である。
【原告の主張】 原告と被告Aとの間に通謀の事実はない。原告は、本件特許権の防御のみを考えて本件専用実施権を譲り受けたのではなく、我が国において蛍光粉の二次的加工物を製造販売するに当たり、蓄光顔料を安定的に供給してもらうために、本件専用実施権の移転を受けたのである。
5 争点(5)(本件譲渡は、信託法11条違反により無効か) 【被告らの主張】 原告と被告Aは、本件異議申立てに対して本件特許権の防御を原告に委ねる目的のみによって、専用実施権移転登録に及んでいる。このような目的によって行われた専用実施権移転登録は、信託法11条の類推適用により無効である。
【原告の主張】 信託法11条は「他人間の法的紛争に介入し、その解決について司法機関を利用しつつ、不当な利益を追求する」ことを禁止するものであるところ、本件特許権の防御をすることは正当な利益を追求するものであるし、原告はその結果利得するどころか相応の経済的負担をしている。また、原告は実際に反論文の作成・提出を行っている。
したがって、本件においては信託法11条を(類推)適用する前提を欠いている。
6 争点(6)(本件専用実施権の黙示の返還合意の有無) 【被告らの主張】 原告と被告Aとの間には、本件特許異議申立てに対して本件特許権を防御するという目的が果たされたときには、本件専用実施権を被告Aに返還する旨の黙示の合意が成立していた。現在、本件特許異議申立ての紛争は終了しているのであるから、原告には、本件専用実施権を被告Aに返還する義務がある。
【原告の主張】 被告らが主張するような黙示の返還合意は存在しない。原告は、本件専用実施権により、蓄光顔料を利用した加工製品の製造販売を実効的に行う予定であったから、蓄光顔料が安定的に供給されて初めて、被告Aは原告に対して本件専用実施権の移転を請求できる。
7 争点(7)(被告らの製造販売する蓄光性蛍光粉及びこれを利用した別紙製品目録記載の製品は、本件発明の技術的範囲に属するか) 【原告の主張】 被告Aは本件発明の発明者であり、無錫有限公司は本件特許権の特許権者であるところ、無錫有限公司は蛍光粉を製造し、被告Aはその代表者であって、被告イージーブライトに対し本件発明の利用を許諾している。したがって、被告らが蓄光性蛍光粉及びこれを利用した別紙製品目録記載の製品は、本件発明の技術的範囲に属する。
【被告らの主張】 被告Aは、日本国内において、蓄光性蛍光粉を製造販売していない。
被告イージーブライトは、その子会社である無錫有限公司に、本件発明による製造方法に基づく蓄光性蛍光粉を製造させ、被告Aの許諾の下、日本国内で輸入販売していたが、平成13年以降製造販売している蓄光性蛍光粉(以下「被告蛍光粉」という。)及びその製造方法は、次に述べるとおり、本件発明の技術的範囲に属さない。
(1) 本件発明について 本件発明は、次の構成要件からなる。
ア 請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)について A アルカリ土類金属のアルミン酸塩からなる微粒子状の蓄光性蛍光粉の製造方法であって、
B AlCl3・6H 2OをAlの原材料とし、SrCl 2・6H 2OをSrの原材料とし、BaCl2・2H 2OをBaの原材料とし、
C Eu2O 3、Dy 2O 3、Sb 2O 3及びH 3BO 3をそれぞれEu、Dy、Sb及びBの原材料とし、
D 三種の塩化物の水溶液とアンモニウムイオン水溶液を80℃の水の中に入れ、冷却、濾過、乾燥した後、分散させ、焼成、冷却した後、Eu2O 3、Dy2O 3、Sb 2O 3、H 3BO 3及び(COOH) 2H 2Oを混入し湿式粉砕、分離、乾燥、粉砕した粉砕物を得、
E 粉砕物を坩堝に入れ、密閉することにより、酸化を防いで、炭酸ガス雰囲気中でEu3+をEu2+に還元して焼成、冷却することにより、
F 下記の一般式にて定義される: (A1-x-y D xE y)O・a(G 1-z H z) 2O 3 G 上記の式中Aはアルカリ土類金属のSrであり、Dは活性化剤Euであり、
H Eは共活性化剤であるランタノイドのDy、及びSbであり、
I Oは酸素であり、Gは母結晶体のAlであり、Hは基質結晶体のBであり、
J 式中におけるx、y、z及びaの範囲は下記により構成される: 0.0001≦x≦0.5、
0.0001≦y≦0.3、
0.0001≦z≦0.5、
0.5≦a≦3.0 K かつ、粒子が平均粒径=2ミクロンである微粒子状の蓄光性蛍光粉を得ることを特徴とする微粒子状の蓄光性蛍光粉の製造方法
イ 請求項2に係る発明(以下「本件発明2」という。) L Euを主な活性化剤とするアルカリ土類金属のアルミン酸塩からなる微粒子状の蓄光性蛍光粉であって、
M この蛍光粉の組成は下記の一般式にて定義される: (A1-x-y D xE y)O・a(G 1-z H z) 2O 3 N 上記の式中Aはアルカリ土類金属のMg、Ca、Sr、Ba及び2価金属Zn中の一種であり、Dは活性化剤Euであり、
O Eは共活性化剤であるランタノイドのDy、及びSbであり、
P Oは酸素であり、Gは母結晶体のAlであり、Hは基質結晶体のBまたはGaであり、
Q 式中におけるx、y、z及びaの範囲は下記により構成される: 0.0001≦x≦0.5、
0.0001≦y≦0.3、
0.0001≦z≦0.5、
0.5≦a≦3.0 R かつ、粒子が平均粒径=2ミクロンである微粒子状の蓄光性蛍光粉。
(2) 被告蛍光粉及びその製造方法は、本件発明の技術的範囲に属さない。
ア 蓄光性蛍光粉の製造方法について 被告蛍光粉の製造方法は、本件発明の構成要件B、C、D、G及びHを充足せず、本件発明1の技術的範囲に属さない。
(ア) 構成要件Bについて 被告蛍光粉の製造方法は、Al2O 3をAlの原料とし、SrCO 3をSrの原料とし、Ba成分を使用していない点で、いずれも異なっている。
(イ) 構成要件Cについて 被告蛍光粉の製造方法は、Sb成分を使用していない。
(ウ) 構成要件Dについて 被告蛍光粉の製造方法は、Sb2O 3及び(COOH) 2H 2Oを使用していないため、使用する原料に相違点があるほか、混入先となる水溶液や、水溶液を80℃の水の中に入れて冷却、濾過、乾燥した後、分散させ、焼成、冷却するか否かという点でも異なる。
(エ) 構成要件Gについて 被告蛍光粉の製造方法は、Aがアルカリ土類金属のSr及びSiであり、相違する。
(オ) 構成要件Hについて 被告蛍光粉の製造方法は、一般式中のEがDyのみであり、Sbが含まれない。
イ 蓄光性蛍光粉について 被告蛍光粉は、構成要件N、Oを充足せず、本件発明2の技術的範囲に属さない。
(ア) 構成要件Nについて 被告蛍光粉は、Aがアルカリ土類金属のSr及びSiであり、相違する。
(イ) 構成要件Oについて 被告蛍光粉は、一般式中のEがDyのみであり、Sbが含まれていない点で相違する。
8 争点(8)ア(被告イージーブライトは、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知ないし流布したか) 【原告の主張】 (1) 被告イージーブライトは、自社のホームページや会社概要において、平成13年7月に本件特許権を取得した旨記載し、対外的に宣伝している。
(2) 被告イージーブライトは、本件特許権の特許番号を表示した商品を販売している。
(3) 被告イージーブライトは、平成15年6月17日から同月19日までの間に大阪市のATCホールで開催された広告資機材見本市にて、本件特許権を表示した蓄光性蛍光粉及びこれを利用した製品を、自己の商品として展示した。
(4) 被告イージーブライトは、民間の起業家支援団体であるベンチャーコミュニティーに、本件特許権あるいは本件専用実施権を有する旨述べて、応募した。
(5) 被告イージーブライトは、本件特許権の特許証や覚書を提示して、財団法人大阪産業振興機構(新産業支援部ベンチャー支援課)から、銀行融資に関する保証を得ている。
(6) 被告イージーブライトは、取引先に対し、本件特許権の特許証、特許公報のほか、被告イージーブライトと無錫有限公司との平成12年5月18日付けの覚書(甲第12号証の2。以下「本件覚書」という。)を送付し、被告イージーブライトが本件特許権あるいは本件専用実施権を保有しているとの告知ないし流布を行っている。
しかし、本件覚書は、「特許登録後における本件特許の専用実施権登録を含めすべての権利は被告イージーブライトに帰属する」との内容であって、単に予約にすぎない。また、本件特許権は平成13年7月13日南京有限公司によって取得され、同年9月25日に無錫有限公司に移転された(移転登録は同年10月16日)ものである。本件覚書は平成12年5月18日付けであるにもかかわらず、特許権者を無錫有限公司とするものであるから、同時期に本件覚書が作成されることはあり得ず、被告Aと被告イージーブライトとの間で作成された虚偽文書である。
(7) 被告イージーブライトは、信用調査会社に対して、被告Aが原告に送付した、原告への専用実施権の移転が無効であるとの内容証明郵便の写しをファックス送信している。
(8) その他、被告イージーブライトは、原告は本件特許権あるいは本件専用実施権を有していないから、原告の商品は偽物であるとの情報を流布している。
(9) 以上の被告イージーブライトの告知ないし流布行為により、同被告が本件特許権あるいは本件専用実施権を有していると誤信され、本件専用実施権を有していると標榜する原告が逆にその真偽を疑われる結果となり、原告の信用が著しく毀損され、取引の機会等が奪われることとなった。したがって、被告イージーブライトの上記(1)ないし(8)の虚偽事実告知ないし流布行為により、競争関係にある原告の営業上の信用が害されたということができる。
【被告らの主張】 (1) 被告イージーブライトは、平成14年6月以降、そのホームぺージや会社概要において、平成13年7月に本件特許権を取得した旨記載しているが、これは被告イージーブライトの子会社である無錫有限公司が本件特許権を有していることを表示しているものにすぎない。なお、ホームページについては、平成15年4月以降、この表示は行っていない。
(2) 被告イージーブライトは、平成15年4月以前は本件特許権の特許番号を表示した商品を販売していたが、現在では行っていない。
(3) 被告イージーブライトが、原告主張の見本市にて、本件特許権を表示した蓄光性蛍光粉あるいはこれを利用した製品を、自己の商品として展示したことはない。
(4) 被告イージーブライトが、本件特許権あるいは本件専用実施権を有することを装ってベンチャーコミュニティに応募したり、融資の保証を求めたりしたことはない。被告イージーブライトは、本件発明とは別の発明に基づいて製品展開しており、ベンチャーコミュニティへの応募等も別の発明に基づいて行っている。
(5) 原告は、被告イージーブライトが取引先に対し、本件特許権の特許証、特許公報のほか、平成12年5月18日付けの本件覚書を送付し、被告イージーブライトが本件特許権あるいは本件専用実施権を保有しているとの告知ないし流布を行っている旨主張する。しかし、被告イージーブライトが取引先に送付したファックス送信票や添付の特許証には、被告イージーブライトが本件特許権や本件専用実施権を有しているような表示はない。また、本件覚書は、原告も主張するような内容の記載があるにすぎず、これを取引先に送付することが、被告イージーブライトが本件専用実施権を有している事実を流布することにはならない。むしろ、被告イージーブライトは、本件特許の専用実施権者でないことを明示した上で、それに代わるものとして、「特許登録後における本件特許の専用実施権登録を含めすべての権利は被告イージーブライトに帰属する」ことを特許権者である無錫有限公司が承認した覚書が存在し、この覚書により被告イージーブライトが本件特許権について権利行使できる旨説明しているのであって、このような記載は真実に合致する。なお、南京有限公司は住所地を移転したことに伴い、本件覚書締結当時無錫有限公司と名乗るようになったが、登録原簿においてしかるべき手続をとっていなかったのであって、南京有限公司と無錫有限公司は同一法人であって名称が変更したにすぎず、無錫有限公司は本件特許につき特許を受ける権利を有しており、本件覚書を締結し得る地位を有していたのであるから、本件覚書は虚偽文書ではない。
(6) 被告イージーブライトは、信用調査会社に原告主張の内容証明郵便写しをファックス送信したことはない。
(7) 被告イージーブライトが原告の商品が偽物であるとの情報を流布した事実はない。
(8) いずれにおいても、被告イージーブライトは、同被告が本件特許権あるいは本件専用実施権を有しているとの告知あるいは流布をしていないから、原告の営業上の信用を害するような虚偽の事実を告知したことにはならない。
9 争点(8)イ(被告Aは、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知ないし流布したか) 【原告の主張】 被告Aは、被告イージーブライトと共謀して、前記8【原告の主張】記載の行為を行っている。被告Aと被告イージーブライトとの共謀関係は、被告Aと被告イージーブライトが、本件専用実施権について共通の利害関係を有していること、
被告イージーブライトの代表者は無錫有限公司の取締役であるから、無錫有限公司の取締役会で被告Aと被告イージーブライトの代表者がいつも顔を合わせていること、被告Aの代理人から原告に郵送された内容証明郵便が、被告イージーブライトから信用情報会社にファックスされていると推測されること、などの諸事情から明らかである。
さらに、被告Aは、自らも、日本国内の顧客に、本件発明の製造方法による蓄光性蛍光粉の販売代理窓口の連絡先を被告Aにするとの案内をファックス(甲第20号証)で通知するなどして、日本国内での販売活動を展開している。
【被告らの主張】 被告Aが被告イージーブライトと共謀して虚偽事実を告知ないし流布した事実はない。
また、原告主張のファックス(甲第20号証)には、専用実施権の譲渡行為の無効性や、本件発明に係る製品である旨について、全く触れられていない。上記ファックスにある「弊社商品」とは、本件発明とは全く別の発明に基づいた製品であり、同ファックスは、被告Aがその販売の窓口となって日本国内の販売代理店を紹介すると表明したものにすぎない。
10 争点(9)(原告の損害) 【原告の主張】 被告らの前記8、9の【原告の主張】記載の虚偽事実の告知・流布行為によって、原告は、その信用を著しく毀損され、また、受けられるはずの融資が受けられなくなった。その信用毀損による無形損害は、金額にして900万円を下らない。
また、原告は、その損害を回復するために提起した本件訴訟のための弁護士費用として100万円の支出を余儀なくされた。
【被告らの主張】 原告の損害は否認する。また、原告は本件発明による蓄光性蛍光粉を製造販売していないのであるから、損害発生の根拠がない。
11 争点(10)(原告は、本件契約に基づく被告Aの債務不履行により、被告Aに対し損害賠償請求権を有するか) 【原告の主張】 本件契約において、原告は、無錫有限公司及び被告Aとの間で、平成14年4月30日までに無錫有限公司の株式5万米ドル分を取得することを約した。この約束は、原告が5万米ドルを出資し、無錫有限公司はこれを受け入れて原告に株を割り当てることを意味する。原告は、平成14年4月25日に5万米ドル相当の金員(651万4242円)を無錫有限公司の銀行口座に振り込んだが、未だ株式を割り当てられていない上に、無錫有限公司は、原告の振込金員を出資と認めない旨の決議を行っている。したがって、無錫有限公司は、原告に振込金相当額を返還すべきであり、原告は同額の損害を被っている。
被告Aは、無錫有限公司を実質的に支配しており、本件契約の当事者にもなっているのであるから、無錫有限公司の原告に対する本件契約に基づく債務の履行について個人保証をしたものというべきである。
よって、原告は、被告Aに対し、本件契約の債務不履行に基づき、振込金相当額651万4242円の損害賠償請求権を有する。
【被告Aの主張】 原告の主張のうち、原告の入金の事実及び無錫有限公司が原告に株式を割り当てる手続をしていない事実は認めるが、その余は争う。原告による振込金を預かっているのは無錫有限公司であり、被告Aは、原告が振り込んだ金額を個人として預かっているわけではないから、これを返還する義務はない。
なお、無錫有限公司が株式割当ての手続をしないのは、原告が本件専用実施権を被告Aに返還しないためである。原告は、被告Aの錯誤により、あるいは原告による欺罔行為により、本件専用実施権移転登録をしながら、その抹消登録に応じない。そのような状態において、原告が出資金の返還のみを求めることは権利の濫用である。
12 争点(11)(謝罪広告の必要性) 【原告の主張】 被告らの信用毀損行為により、原告は金銭の支払のみによっては回復し難い損害を受けている。被告らの信用毀損行為により害された営業上の信用を回復するためには、金銭の支払とともに、謝罪広告の掲載が不可欠である。
【被告らの主張】 争う。
当裁判所の判断
(以下、書証の枝番号を全部含む場合はその表記を省略する。) 1 争点(1)(本件専用実施権が原告にあることの確認請求の確認の利益の存否)について 被告らは、本件譲渡の錯誤無効あるいは詐欺取消等を主張することにより、
原告に本件専用実施権が帰属することを争っている。したがって、本件訴訟において、原告が被告らに対して本件専用実施権が原告にあることの確認を求める確認の利益があるものと認められる。
2 争点(2)(被告Aの原告に対する本件譲渡は、同被告の錯誤により無効か)について (1) 前記第2の1の前提となる事実と甲第1ないし第4号証、第6、第7号証、第12号証(第12号証の2については、被告A本人尋問の結果により真正に成立したものと認める。)、第25号証、第31号証、乙第1ないし第9号証、第18号証、原告代表者、被告A各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、
次の事実が認められる(乙第4号証、第18号証及び被告A本人尋問の結果中後記認定に反する部分は採用しない。)。
ア 南京有限公司は、日本において、被告A外のした発明について、平成11年1月13日に特許出願した。なお、南京有限公司は、平成11年6月にその所在を中国の無錫市に移転させることにより、無錫有限公司の名称に変更した。両有限公司は同一法人である。
イ 無錫有限公司は、日本において蓄光顔料を販売しようとしたが、蓄光顔料の市場が確立しておらず、同公司自身資金不足に悩まされていたため、出資者や販売事業者となる者を探していた。無錫有限公司の代表者である被告Aは、平成12年ころ、被告イージーブライトと交渉をするようになり、被告イージーブライトが無錫有限公司に出資するとともに、無錫有限公司が中国で蓄光顔料を製造し、被告イージーブライトがこれを輸入して、日本においてほぼ独占的に販売するという共同事業を行うこととなった。被告イージーブライトと無錫有限公司は、平成12年5月18日、当時出願中であった本件発明について、特許登録後は専用実施権を含めたすべての権利は被告イージーブライトに帰属することを承認すること、その他商品の開発の分担や商品流通についての取り決めなどを合意し、その旨の覚書(本件覚書、甲第12号証の2)を作成した。
ウ 本件発明については平成13年7月13日に特許権の設定登録がされ、
同年8月22日、本件特許権について、被告Aを専用実施権者とする専用実施権(本件専用実施権)の設定登録がされた。なお、被告Aが本件特許権について日本における専用実施権の設定を受けたのは、商品を日本で販売する場合に日本人による専用実施権があった方が営業的に有利であると、もと被告イージーブライトに所属していたBから助言されたことによる。
エ 被告イージーブライトの日本国内での販売が軌道に乗らなかったため、
無錫有限公司は、別の出資者あるいは大口販売先を探すようになった。
被告Aは、平成13年7月ころ、蓄光顔料に興味を抱いていたダイニック京都営業所長(ダイニック創業者の孫でもある。)のCを紹介された。被告Aは、同年8月には無錫有限公司が扱う蓄光顔料のサンプルをCに届けた。Cは、当初は、ダイニックの京都営業所長の立場で被告Aと連絡を取っていたが、そのうち、ダイニックから独立し、平成13年10月2日に原告を設立して、代表取締役に就任した。Cが原告の代表者として行動するようになった後は、蓄光顔料を利用したテープ等の製造販売を予定している原告に対して無錫有限公司から蓄光顔料を供給する交渉となっていった。被告Aは、交渉が進展していったため、無錫有限公司では蓄光顔料を供給する場合には供給先から出資を受けなければならないとの出資者間の合意があることをCに伝え、供給先となる原告か、被告Aが原告を吸収合併するものと認識していたダイニックから、出資を受けたいと要請したところ、Cから原告が出資する旨の回答があった。
被告Aは、平成14年3、4月ころ、被告イージーブライトに対し、ダイニックから出資があるので、蓄光顔料を原告に対して供給すると説明し、原告が出資するということは説明しなかった。当時無錫有限公司に出資できる状況になかった被告イージーブライトはその内容を了承した。
オ 原告、無錫有限公司及び被告Aは、平成14年4月15日ころ、原告の無錫有限公司に対する出資や無錫有限公司の原告に対する通常実施権の許諾等を内容とする本件契約書(乙第1号証)を作成し、本件契約を締結した。本件契約書では、第1条1項で、原告、無錫有限公司及び被告Aが、蓄光材料等の製造、開発並びに販売を円滑に執り行うことを共通の目的とする旨規定され、同条2項で、1項の目的を実現するために、無錫有限公司及び被告Aは本件特許権の通常実施権の行使を原告に委託する旨規定され、また、第2条で、原告が無錫有限公司の筆頭株主となるに足りる株式を取得すること、原告は上記三者の協議により適当と認められた時期に無錫有限公司の発行株式5万米ドル相当分を取得することが規定され、第3条で、原告は遅くとも2002年(平成14年)4月30日までに無錫有限公司の株式5万米ドルを取得完了する旨規定されていた。なお、契約条項は被告Aにおいて起案し、原告は、当初25万米ドルの出資とされていたのを5万米ドルに変更して欲しいと述べたほか、特に訂正や変更を求めなかった。
カ 根本特殊化学株式会社は、平成14年3月18日、本件特許異議申立てをした。この事実を同年4月ころ知った被告Aは、原告に対し、同申立てがなされたことを伝えるとともに、被告Aは中国において事業活動をしており、特許庁への書類提出を含めて対応が難しいので、協力してもらいたいと述べた。原告は、調査の結果本件特許権が取り消される可能性がないわけではないと判断し、その旨被告Aに伝えたところ、被告Aは改めて協力を依頼した。原告には協力をするだけの能力や情報等がなかったため、原告は、被告Aに対し、ダイニックの協力を得て行うと説明した。
また、原告は、本件特許異議申立てに対抗して本件特許権を防御するためには、本件特許権につき専用実施権を取得する必要があると判断し、その旨を被告Aに伝え、その了承を得た。そこで、原告は、平成14年6月ころ、中国にいる被告Aに対し、本件特許権の出願に当たって諸手続を行ったD弁理士を通じて書類(いずれも平成14年6月14日付け)を送付し、押印を求めた。原告が被告Aに対して送付した書類とは、「専用実施権譲渡証書」と題する書面(甲第4号証の2)(専用実施権譲受人の欄に、原告の住所地及び名称が、代表者としてCの氏名が記載され、また、特許番号として本件特許権の特許番号が、権利の表示として「順位 第1番 専用実施権」及びその範囲が記され、「上記専用実施権は、私所有のところ今般これを貴社に譲渡したことに相違ありません。」との文章が記載されており、末尾に専用実施権譲渡人として被告Aの住所と氏名が記載されている。)、「単独申請承諾書」と題する書面(甲第4号証の3)(専用実施権譲受人の欄に、原告の住所地及び名称が、代表者としてCの氏名が記載され、また、特許番号として本件特許権の特許番号が、権利の表示として「順位 第1番 専用実施権」及びその範囲が記載され、「上記専用実施権は平成14年6月 日に貴社に譲渡致しましたが、その移転登録申請書を貴社が単独ですることに、異議なくこれを承諾します。」との文章が記載されており、末尾に専用実施権譲渡人として被告Aの住所と氏名が記載されている。)、及び「特許権者の承諾書」と題する書面(甲第4号証の4)(専用実施権者の欄に被告Aの住所及び氏名が記載され、特許番号として本件特許権の特許番号が、権利の表示として「順位 第1番 専用実施権」及びその範囲が記載され、「上記専用実施権をエルティーアイ株式会社に譲渡することを承諾します。」との文章が記載され、末尾に特許権者として無錫有限公司の住所・名称と、その代表者としての被告Aの氏名が記載されている。)であった。
原告から早急に押印の上書類を返送して欲しいと言われた被告Aは、専用実施権者である被告A個人として、あるいは専用実施権の移転を承諾する特許権者である無錫有限公司の代表者として、それぞれ押印し、これらの書類をD弁理士を通じて原告に送り返した。
D弁理士は、原告の代理人として、これらの書類を添付して、平成14年6月17日付けで「譲渡による専用実施権移転登録申請書」(甲第4号証の1)を特許庁に対して提出した。特許庁は、同月19日にこれを受け付け、同年7月31日に専用実施権移転の登録がなされた。
キ 被告イージーブライトは、平成14年8月、本件専用実施権が原告に移転していることに気付き、被告Aに問い合わせた。被告Aと被告イージーブライトは、原告に対し、本件専用実施権を被告Aに戻すよう要請した。
被告Aの代理人は、平成14年10月4日付けで、原告に対し、本件譲渡が錯誤無効あるいは詐欺取消しとなるので、これを被告Aに返還するよう求め、
仮に必要な手続を執らない場合には法的措置を執ることを検討する旨記載した内容証明郵便を送付し、同内容証明郵便は、同月9日に原告に到達した。
ク 本件特許異議申立ての手続に関し、平成14年9月には、原告は異議申立人である根本特殊化学株式会社に対し、原告が本件特許権の専用実施権を取得したこと、今後は原告が異議申立手続に対応することを伝えた。一方、被告Aは意見書の基本骨子を作成して、D弁理士に渡した。D弁理士は、本件特許権の請求項を削る内容となることから、専用実施権者の同意を得ておいた方がよいと被告Aに説明した。被告Aはこれを了解してD弁理士にその後の提出方法を委ね、原告は後日意見書に同意したことを被告Aに連絡した。1回目の意見書は、平成15年4月1日に特許庁に提出された。しかし、2回目の意見書を提出する必要が生じたとき、
被告Aは本件訴訟が提訴されたことからもはや協力関係を取る必要がないとの理由により、D弁理士からの連絡に応じなかった。D弁理士は、原告と相談の上意見書を書いて、平成16年3月に特許庁に提出した。
(2) 以上認定の事実によれば、被告Aは、蓄光顔料の供給元を探していた原告に対し、供給の見返りとして出資を求め、また、原告が蓄光顔料を使用して蛍光テープ等を製造販売するために、無錫有限公司(本件特許権の特許権者)の代表者として通常実施権を無償で許諾することとして、原告との間で本件契約を締結したものであるが、その後、根本特殊化学株式会社が本件特許に対し本件特許異議申立てをしたことを契機として、同異議申立てに対応するために、被告Aが有していた本件専用実施権を原告に譲渡することを原告と被告Aの間で合意し、その登録手続に必要な関係書類に被告Aが押印して原告に送付したものである。そして、上記のような原告の立場からすると、原告が被告Aから本件譲渡を受けることは、本件発明を使用した蓄光顔料及びその加工製品の製造販売において、より強固な立場に立つことになることも明らかである。被告Aは、原告から送付された文書が専用実施権の譲渡及び特許権者の承諾に関する文書等であることを認識し、専用実施権を譲渡することの意義を了解した上で、押印の上原告に返送したとものと認められ、被告Aにおいてこれらの文書が通常実施権の設定に関する文書であるとの錯誤に陥っていたということはできない。
(3) 被告らは、被告Aが、原告から送付された文書を、本件契約にも規定されていた通常実施権について、特許異議の申立てに原告が対応するために必要となる設定登録を行うための書類であるとの錯誤に陥っていたと主張し、そのことは、被告Aが日本国内において本件発明の実施を予定していたこと、本件特許権を守ろうとしていた被告Aが無償で本件専用実施権を譲渡することはあり得ないことからも裏付けられると主張しており、被告Aの陳述書(乙第4号証)及び同被告本人尋問の結果中には、上記主張に沿う部分がある。
しかしながら、上記(1)で認定したとおり、原告が被告Aに対して送付した書類は、表題において専用実施権に関するものであることが明記されており、専用実施権の譲渡に関する書類であることが一読して明らかであったというべきであるし、書類を受け取った被告Aが、書類の閲読に際してその内容を十分に理解しないまま押印しなければならなかったような事情もうかがわれない。したがって、被告Aにおいて、これらの書類を通常実施権設定登録に必要な書類と読み誤るとは到底考えられない。
なお、被告らは、被告Aが日本において本件特許権を実施する予定があった以上、無償譲渡はあり得ないと主張するが、そのような予定があったことを証する的確な証拠はない。また、被告らは、本件特許権を守るために本件専用実施権を原告に移転すれば、被告Aは守るものがなくなると主張するが、専用実施権が原告のものとなっても、無錫有限公司(代表者は被告A)が特許権者であることに変わりはないのであって、被告Aに守るものがなくなるものではない。
(4) 以上によれば、被告らの錯誤の主張は理由がない。
3 争点(3)(本件譲渡は、原告の被告Aに対する詐欺を理由として取り消されたか)について 前記2の認定事実によれば、原告が、被告Aに対して送付した書類は、専用実施権移転登録申請に当たり必要な書類であることが一読して明らかであり、被告Aもそのことを了解して押印したものと認められるから、原告が被告Aを欺罔したということはできない。
したがって、被告らの詐欺による取消しの主張は理由がない。
4 争点(4)(本件譲渡は、通謀虚偽表示により無効か)について 前記2の認定事実によれば、本件譲渡は、本件特許異議申立てに対して本件特許権を防御するために必要であるとの判断を契機としてなされたものではあるが、本件専用実施権の譲渡自体は、原告と被告Aの間で真実合意されたものであって、両者の間で、真実は本件専用実施権の移転をする意思がないにもかかわらず、
移転を仮装するとの通謀がなされたような事実を認めることはできない。他に、そのような事実を認めるに足りる証拠もない。
したがって、被告らの通謀虚偽表示の主張は失当である。
5 争点(5)(本件譲渡は、信託法11条違反により無効か)について 前記2で認定した事実によれば、原告は、もともと蓄光顔料を利用した製品の製造販売の事業を行うために、無錫有限公司から蓄光顔料の供給を受け、本件特許権についての通常実施権を許諾してもらう見返りとして、無錫有限公司に対し出資することになっていたものであり、本件譲渡は、本件特許異議申立てに対して本件特許権を防御するための必要性を契機としてなされたものではあるが、原告が被告Aから本件専用実施権の譲渡を受けることは、単に特許異議手続に関与することだけを目的とするものではなく、本件発明を使用した蓄光顔料及びその加工製品の製造販売における立場を強固にするという実質的な意義も有するものであるから、
信託法11条が禁止する訴訟を目的とする信託の禁止ないしこれに準じた状況にあるものとはいえない。
よって、被告らの上記主張は失当である。
6 争点(6)(本件専用実施権の黙示の返還合意の有無)について 本件譲渡等の経緯は、前記2で認定したとおりである。本件譲渡において、
原告と被告Aの間で、本件特許権が維持されることが確定したときには本件専用実施権を被告Aに対して返還する旨の黙示の合意がなされたことを認めるに足りる証拠はない。
よって被告らの上記主張は失当である。
7 争点(7)(被告らの蓄光性蛍光粉及びこれを利用した別紙製品目録記載の製品は、本件発明の技術的範囲に属するか)について 被告イージーブライトは、当初本件発明の技術的範囲に属する蛍光粉あるいはそれを利用した製品を製造販売していたが、平成13年以降は本件発明の技術的範囲に属さない製造方法を用い、同技術的範囲に属さない被告蛍光粉及びそれを利用した製品を製造販売していた旨主張している。また、被告Aは、日本において蛍光粉を製造販売していないと主張している。
これに対し、原告は、被告らが製造販売する蛍光粉あるいはその製造方法が本件発明の技術的範囲に属することについて、具体的な主張立証をしない。本件全証拠を検討しても、被告らの製造販売する蓄光性蛍光粉及びその製造方法が本件発明の技術的範囲に属することを認めるに足りる証拠はない。
8 争点(8)ア(被告イージーブライトは、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知ないし流布したか) (1) 甲第5号証、第8ないし第19号証、第26ないし第28号証、第30、
第31号証、乙第2号証、原告代表者、被告A各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア 被告イージーブライトは、自社の会社概要等(甲第5号証、第8、第9号証)に、平成13年7月に蓄光顔料の製造方法に関する特許を取得した旨記載するとともに、特許番号として本件特許権の特許番号を併記した。ただし、被告イージーブライトは、本件訴訟提起後、ホームページ上の表示については消去している。
イ 被告イージーブライトは、平成15年4月ころまで、本件特許権の特許番号を付して蓄光顔料等の商品を販売していた。
ウ 被告イージーブライトは、財団法人大阪産業振興機構に対し、平成14年9月25日、ベンチャービジネス融資支援事業審査を申し込み、3000万円の融資に対する保証(2700万円の債務保証)を受けているが、申込みに際して、
本件特許権の特許証及び覚書と証する文書を提出した。
エ 被告イージーブライトは、平成15年5月14日、取引先に対し、「ご請求頂きました弊社蓄光顔料の特許証及び特許公報のコピーをご送信申し上げます。」と記載した文書と共に、本件特許権の特許証及び特許公報をファックス送信(甲第11号証)した。
オ 被告イージーブライトは、平成15年5月15日、取引先に対し、「先程お問い合わせ頂きました特許書類の件につきましてご回答申し上げます。弊社には(中略)ご指定頂きました特許登録済み通知書はございません。但し、その代わりになるものとしまして、特許権者の中日合資無錫パークス装飾品有限公司の総経理であり、且つ、発明者であるAと交わした覚書がございますので、本覚書をもちまして、権利が弊社に帰属することをご理解賜りますようお願い致したく存じます。」と記載した文書と共に、被告イージブライトと無錫有限公司との間で取り交わされた本件覚書(甲第12号証の2)をファックス送信した(甲12号証の1)。同覚書には、1項a)に「特許登録後における当該特許(注記:当時出願中の本件特許権を指す。)の専用実施権登録を含めすべての権利は甲(注記:被告イージーブライト)に帰属するものであることを乙(注記:無錫有限公司)は承認した」旨の記載がある。なお、平成12年5月18日当時は、本件特許の出願人は南京有限公司であったが、南京有限公司は住所を無錫に移転した後その名称を無錫有限公司としていたため、覚書上の特許の権利者・当事者は無錫有限公司の名義となっている。
カ 民間の起業家支援団体ベンチャーコミュニティーは、ベンチャー企業が開発した製品を大手企業が市場調査して支援する活動を行っていた。被告イージーブライトを含めたベンチャー企業数社が、同団体を通じて、大手企業に、市場調査の対象となり、かつ、相応の市場の評価を受けるか否かの判断を求めたところ、被告イージーブライトの蓄光材料のみが、市場に出した場合に相応の取引があり得るとの評価を得た。ただし、このとき対象となった蓄光材料あるいはその製造方法が、本件発明の技術的範囲に属するものであったか否かは不明である。
なお、被告イージーブライトが見本市等において、本件発明による商品を展示していたことを認めるに足りる的確な証拠はない。
キ 株式会社東京商工リサーチ京都支店は、平成14年11月21日に、原告に対し、その入手した「ご通知」と題する文書をファックス送信した(甲19)。このファックスで送付された「ご通知」なる文書は、被告Aの代理人弁護士が原告及びC等を名宛人として平成14年10月付け(日にち欄空欄)として作成したものであり、本件専用実施権の移転が錯誤又は詐欺によるものとして無効ないし取り消すことができると考えていることを述べた上で、速やかに本件専用実施権移転登録抹消手続を執るよう要請し、同手続が行われない場合には、法的措置を執ることを検討する旨記載されていた。当該文書は、後に作成日付を平成14年10月4日として同日内容証明郵便物として原告及びC等に対し差し出された「ご通知」と題する文書(乙第2号証)の下書き的なものであったと考えられる。なお、
株式会社東京商工リサーチが甲第19号証のファックス送信文書に添付された「ご通知」なる文書をどこから入手したかは、証拠上明らかでない。
(2) 不正競争防止法2条1項14号は、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」を不正競争と規定しているが、
これは、競争関係にある他人に対する不当な攻撃により、その者の競争条件を不利にしておいて、自ら営業上の競争において有利な地位に立とうとする行為に不正競争性を認める趣旨であるから、「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」の告知ないし流布とは、虚偽の事実によって、競争者の提供する商品や役務の社会的評価・信頼、あるいは競争者の支払能力や営業能力等に関する社会的評価・信頼を損ね、あるいは低下させる行為をいうと解される。自己の営業上の信用を高めようとする際に、その目的の限りで誇大なあるいは虚偽の事実を述べた場合は、それにより直ちに他人たる競争者の信用を毀損するものではないから、同号にいう不正競争行為となるものではない。
(3) そこで、前記(1)認定の事実について、不正競争防止法2条1項14号に該当するものであるか否かを検討する。
ア (1)アの事実について 被告イージーブライトは、会社概要等において平成13年7月に本件特許権を取得した旨表記しており、これを見た者は被告イージーブライトが本件特許権を有していると判断するであろうことが推測される。
しかし、同表記は、原告に本件専用実施権がないことまで示しているものではないし、特許権と専用実施権が別の法人格に属する以上、本件専用実施権の権利者である原告の商品についての社会的評価・信頼その他原告の営業上の信用を損ねるものとはいえない。
イ (1)イの事実について 被告イージーブライトは、平成15年4月ころまで自社製品に本件特許権の特許番号を付していたことが認められ、これを見た者は、当該製品が本件発明によるものと認識し、あるいは被告イージーブライトが、本件特許権を実施する何らかの権利を有しているか、特許権者あるいは専用実施権者から実施につき許諾されていると認識すると認められる。
被告イージーブライトは本件特許権も本件専用実施権も有していない以上は、取引者等をそのような認識に導く行為は虚偽の事実を告知ないし流布したということができる。また、平成13年以降は本件発明とは関係のない蓄光性蛍光粉を製造販売していたとの被告らの主張を前提とするならば、同被告の取扱製品について平成15年4月まで本件特許権の特許番号を付していたことは取引者を誤解させる行為であるということもできる。
しかし、上記表記は、それ以上に、原告が本件専用実施権を有しないことまで推測させるものではないし、原告の商品についての社会的評価・信頼その他原告の営業上の信用を損ねるものともいえない。
ウ (1)ウないしカの事実について 被告イージーブライトは、取引先や起業家支援団体等に対し、本件特許権に係る特許証や本件覚書等を提示しており、その結果、これを見た取引先や起業家支援団体等が、被告イージーブライトは、本件特許権ないしその実施を許諾された権利を有し、あるいは特許登録後には確実に専用実施権の登録を受け得る地位にあるものと認識するであろうと推認される。
本件専用実施権は原告にあるのであるから、あたかも被告イージーブライトに本件専用実施権があり、あるいは将来確実に取得し得る地位にあるかのような事実を告知ないし流布する行為は、虚偽事実を告知ないし流布したということはできる。
しかし、この告知・流布行為は、原告が本件専用実施権を有しないことを認識させるものではないし、原告の商品についての社会的評価・信頼その他原告の営業上の信用を損ない、低下させる事実を認識させるものということもできない。
エ (1)キの事実について 上記(1)キ認定の事実によれば、被告A側で、本件訴訟提起前より本件譲渡が錯誤あるいは詐欺によるものであって無効あるいは取り消されるとの見解を有しており、それを前提として原告に本件専用実施権を返還するよう求めていた事実は認められる。しかしながら、これはあくまで自己の法的見解を示した上で、それに基づき権利の返還を求めているというにすぎず、原告が本件専用実施権を有していないとの虚偽の事実を告知あるいは流布した行為ということはできない。また、
そもそも下書き文書がどのような経過を経て株式会社東京商工リサーチに入手されたのか不明であり、これを被告イージーブライトが入手させたと推測するに足りる証拠はない。
したがって、被告イージーブライトが、取引先に対して、原告が本件専用実施権を有していないとの虚偽の事実を告知あるいは流布したということはできない。
オ 以上のとおり、被告イージーブライトの行為には、虚偽の事実を告知ないし流布したと評価できるものもあるが、いずれも原告の商品や営業についての社会的評価・信頼等を害するということはできず、したがって、被告イージーブライトが、「原告の営業上の信用を害する虚偽の事実」を告知したということはできない。
(4)ア 原告は、被告イージーブライトが本件特許権あるいは本件専用実施権を有しているかのような虚偽の事実を告知することにより、本件専用実施権を有していると標榜する原告の信義が疑われ、原告の社会的信用が害されると主張する。
確かに、他の事情と相まって、単に権利の存在を推測させるような言動を行うことにより、原告は本件専用実施権を有していないとの虚偽の事実を告知したことになる場合はあり得、この場合には「原告の営業上の信用を害する虚偽の事実」を告知したことになろう。
しかし、本件においてはそのような「他の事情」を認めることはできない。原告代表者本人は、起業家支援団体が被告イージーブライトに融資保証したことを理由として、原告への融資保証を行わなかったことをもって、信用が害された旨の供述をするが、起業家支援団体が原告への融資保証を行わなかった理由は原告側の推測にすぎないし、原告の商品や営業に関する信用が損なわれたり害されたりした結果であると認めるに足りる証拠もない。
なお、原告は、被告イージーブライトが、見本市において本件特許権や本件専用実施権を有するかのように振る舞って商品を展示していた、あるいは起業家支援団体に被告イージーブライトが本件特許権あるいは本件専用実施権を有していると述べたなどと主張するが、いずれも証拠上認めることはできない。
イ さらに、原告は、被告イージーブライトが、原告の取引交渉先等に原告が本件専用実施権を有していないと述べた結果、交渉中の取引先から交渉の中止あるいは中断を求められていると主張し、原告代表者の陳述書(甲第31号証)や原告代表者本人尋問の結果中には、被告イージーブライトが原告は本件専用実施権を有していないと告知・流布した結果、原告が本件発明を利用して開発した商品に関する取引交渉中の三洋電機株式会社や伊藤忠商事株式会社などから、交渉を中止されあるいは中断された旨の記載ないし供述部分がある。
しかし、上記の原告代表者の陳述書の記載や本人尋問での供述は、被告イージーブライトが取引先等に対して行った告知行為の内容等について具体性に欠けている上、その記載ないし供述内容を裏付けるに足りる証拠もないから、採用することはできない。
他に、原告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。
9 争点(8)イ(被告Aは、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知ないし流布したか)について ア 前記8において認定判断したとおり、被告イージーブライトが原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知あるいは流布を行ったということはできないから、被告Aが、被告イージーブライトと共謀して、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知ないし流布していたということはできない。
イ 次に、甲第20号証によれば、被告Aが日本における取引先に対し、平成15年2月7日、「かねてよりお客様各位にご不便をおかけしておりました弊社商品のお問い合わせ窓口を無錫 克斯装飾制品有限公司、担当者Aとさせていただきます。今後は商品に関するご要望、技術的なお問い合わせなど何なりとお申し付けください、また日本国内における販売代理窓口につきましては、適切な販売代理をご紹介させていただきますのでどうぞ下記までご連絡いただけますようお願いいたします。」と記載し、連絡先として、社名を無錫有限公司、担当者を被告Aと記載した文書をファックスで送付した事実が認められる。
しかしながら、上記記載内容は、被告Aが、取扱商品に関する要望や問合せ、販売代理店の紹介等について窓口となることを述べているにすぎず、本件譲渡の効力については何も触れていないから、これをもって、被告Aが原告が本件専用実施権を有しないとの事実を告知・流布したということはできない。
その他、被告Aが、原告に対する本件譲渡が無効あるいは取り消されたから原告は本件専用実施権を有しないとの事実を告知あるいは流布したことを認めるに足りる証拠はない。
10 争点(10)(原告は、本件契約に基づく被告Aの債務不履行により、被告Aに対し損害賠償請求権を有するか)について 平成14年4月15日ころ、原告、無錫有限公司及び被告Aが本件契約書(乙第1号証)を作成して本件契約を締結したこと及び本件契約の主たる内容は、
前記2(1)オ認定のとおりである。また、原告が平成14年4月25日に5万米ドル相当の金員(651万4242円)を無錫有限公司の銀行口座に振り込んだ事実、
及び無錫有限公司が原告に対して株式を割り当てる手続をしていない事実は、原告と被告Aとの間で争いがない。被告Aは、無錫有限公司が原告に対して株式を割り当てる手続をしていないのは、原告が本件専用実施権を被告Aに対して返還しないことによるものである旨主張している。
上記事実によれば、無錫有限公司は、本件契約に基づき、原告に対する株式割当の手続をすべき義務があるというべきであり、仮にそれが不可能であるという状況になったのであれば、原告から振り込まれた金員を原告に返還すべきであるということができる。しかし、本件契約書の記載を検討しても、被告A個人が、原告に株式を取得させる義務を負っているとか、無錫有限公司が原告に株式を取得させない場合の金員の返還・損害賠償につき保証したとの事実を肯定することはできない。原告が主張するように、被告Aが無錫有限公司を実質的に支配している関係にあるとしても、そのことから直ちに被告A個人の義務を肯定することはできない。
他に、原告主張の被告A個人の金員返還義務の根拠となるような事実を認めるに足りる証拠もない。
したがって、原告が、被告Aに対し、本件契約の債務不履行を理由として損害賠償請求権を有しているということはできない。
11 よって、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、本件専用実施権を原告が有することの確認を求める限度で理由があるからこれを認容し、
その余はいずれも理由がないから棄却する。
追加
別紙特許目録特許番号第3209724号発明の名称微粒子状の蓄光性蛍光粉の製造方法及び微粒子状の蓄光性蛍光粉別紙製品目録1カラー蓄光顔料2蓄光ペレット3蓄光マスターバッチ4蓄光顔料入り塩ビ硬化シート5蓄光骨材6蓄光人工大理石7蓄光顔料入り水性塗料8蓄光塗料9蓄光フィルム10ネオライトストップ11その他本件特許の製造方法で製造された微粒子状の蓄光性蛍光粉(蓄光顔料)を混入した製品別紙謝罪広告目録(謝罪広告)当社は、従来、当社会社案内、ホームぺージ上などにおいて、2001年7月、
蓄光顔料の製造方法に関する特許(特許番号320924)を取得したと表示し、
当社取引先や信用調査会社に対して、当社が当該特許ないしはその専用実施権を有している旨表示しておりましたが、いずれも事実ではありません。当該特許の専用実施権は貴社に帰属するものであり、当社が、当該特許を表示した商品を「EZCG/B」、「EZCP」等の品番を付して販売・拡布しておりましたことは、貴社の専用実施権侵害するものです。当社はここに貴社の名誉、信用を害し、且つ貴社に多大の迷惑をおかけしましたことを、謝罪します。
(記載の条件)1新聞について表題部分2倍ゴチック活字原告及び被告らの各会社名、各代表取締役名の表示部分2倍明朝活字その他の部分1倍明朝活字2ホームページについて表題部分14ポイントゴチック体原告及び被告らの各会社名、各代表取締役名の表示部分14ポイント明朝体その他の部分12ポイント明朝体(別紙特許公報は省略)
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 中平健
裁判官 大濱寿美
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