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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20ワ25354特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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関連ワード 進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  相違点の判断 /  技術的範囲 /  出願公開 /  技術的手段 /  技術常識 /  先行技術 /  実質的に同一 /  優先日 /  参酌 /  均等 /  置換 /  置換可能性 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  交換 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  差止請求(差止) /  侵害 /  請求の範囲 /  国際出願 /  国際公開 /  国内公表 / 
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事件 平成 20年 (ワ) 6681号 特許権侵害差止等請求事件
原告 コロベンタアヴフクトニングアクティボラーグ
訴訟代理人弁護士寺澤幸裕 矢倉千栄
訴訟代理人弁理士中嶋恭久
補佐人弁理 士小林徳夫
被告象 印マホービン株式会社
訴訟代理人弁護士阿部隆徳
補佐人弁理 士古川泰通前堀義之 後藤昌彦
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2009/03/24
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」という )を製造し, 。
販売し,販売の申出をしてはならない。
,, 。 2被告は 被告製品 その半製品及び被告製品の製造のための金型を廃棄せよ3訴訟費用は被告の負担とする。
4仮執行宣言第2事案の概要本件は,発明の名称を「空気の乾燥方法及び装置」とする特許発明の特許権者である原告が,被告の製造販売する除湿乾燥機が上記特許発明技術的範囲に属し,その製造販売等は上記特許権を侵害すると主張して,特許法100条に基づき,被告製品の製造販売等の差止めと被告製品及びその半製品等の廃棄を求める事案である。
1当事者間に争いのない事実( )原告の有する特許権1原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その請求項7及び請求項8に係る特許発明をそれぞれ「本件第1発明「本件第2発明」といい, 」,併せて「本件各発明」という。また,本件特許権に係る特許を「本件特許」と,その特許明細書を「本件明細書」という )を有する。 。
優先日昭和63年11月25日(SE8804281-7)イ国際出願日平成1年11月17日(特願平2-500067)ウ国際公開平成2年6月14日(WO90/06165)エ国内公表平成4年4月9日(特表平4-501973号)オ登録平成11年6月25日カ登録番号第2942932号キ発明の名称空気の乾燥方法及び装置ク特許請求の範囲(ア)本件第1発明(請求項7)「, )()() 空気乾燥機であって a 空気取り入れ口 3 および取り出し口 4を備えたハウジング(2 ,b)ハウジング内でジャーナル止めされま )た水分収着剤例えばシリカゲル結晶をのせた通路(6a)ないしは床を備えたローター(6 ,c)のぞましくは連続的にローター(6)を駆 ), )() , 動するための手段 d 取り入れ口 3 に供給される空気を加圧して該空気がローターの少なくとも一部分を通って流れ,水分抽出後,取り出し口(4)から出るようにするためのファン,e)ローターの他の部分を通る再生用空気を加熱するための手段,からなる空気乾燥機において,ローター(6)の低圧側で該ローターに密接して取り付けられまた輻射熱をローターの通路(6a)ないしは床上に収納された水分収着剤上軸方向に向けるように作動する発熱装置(15)を特徴とする空気乾燥機 」。
(イ)本件第2発明(請求項8)「特許請求の範囲第7項に記載の空気乾燥機において,発熱装置がローターの低圧側に配置されたケーシング(12 12′)内に取り付けら;れることを特徴とする空気乾燥機 」。
( )本件第1発明の構成要件の分説2本件明細書の記載を参酌すれば,本件第1発明は次の構成要件に分説するのが相当である。
A空気乾燥機であって,)()()(), Ba 空気取り入れ口 3 及び取り出し口 4 を備えたハウジング 2Cb)ハウジング内でジャーナル止めされまた水分収着剤例えばシリカゲル結晶をのせた通路(6a)ないしは床を備えたローター(6 ,)Dc)のぞましくは連続的にローター(6)を駆動するための手段,Ed)取り入れ口(3)に供給される空気を加圧して,該空気がローターの少なくとも一部分を通って流れ,水分抽出後,取り出し口(4)から出るようにするためのファン,Fe)ローターの他の部分を通る再生用空気を加熱するための手段,Gからなる空気乾燥機において,Hローター(6)の低圧側で該ローターに密接して取り付けられまた輻射熱をローターの通路(6a)ないしは床上に収納された水分収着剤上軸方向に向けるように作動する発熱装置(15)を特徴とする空気乾燥機。
( )本件第2発明の構成要件の分説3本件明細書の記載を参酌すれば,本件第2発明は次の構成要件に分説するのが相当である。
I特許請求の範囲第7項に記載の空気乾燥機において,J発熱装置がローターの低圧側に配置されたケーシング(12 12′);内に取り付けられることを特徴とする空気乾燥機。
( )被告の行為4被告は,別紙物件目録記載の除湿乾燥機(被告製品)を製造し,販売し,販売の申出をしている。
( )被告製品の構成(ただし,下線部については争いがある )5 。
a再生用空気を処理空気に対して遮断された循環経路内でサブファンによって循環させる再生用空気循環型の除湿乾燥機であって,b吸込口と吹出口を備えた本体を有し,c本体内でローターが軸支(ジャーナル止め)されており,このローターはゼオライトをのせた通路を備え,dローターを連続して回転させるモーターを備え,e吹出口で本体内の処理空気を減圧し,吸込口から本体内へ流入した処理空気がローターの一部を通って流れ,水分抽出後,吹出口から出るようにするためのメインファンを備え,fローターの他の部分を通る再生用空気を加熱するための第1及び第2のヒータを備えたg再生用空気循環型の除湿乾燥機であって,h第1のヒータはローターの低圧側でローターから5.5?oの隙間を隔てて配置され,第2のヒータはローターの低圧側でローターから18.0?oの隙間を隔てて配置され,第1及び第2のヒータのうち両方又はいずれか一方が発熱して再生用空気を加熱し,i第1及び第2のヒータは,ローターの低圧側に配置された扇状ケース内に取り付けられている除湿乾燥機。
( )被告製品は,本件第1発明の構成要件B,C,D,F及び本件第2発明6の構成要件Jを充足する。
2争点( )被告製品は本件第1発明の技術的範囲に属するか。
1(なお,被告製品が本件第2発明の技術的範囲に属するか否かも問題になるが,同発明は本件第1発明の従属項であり被告製品が本件第2発明で付加された構成要件Jを充足することは当事者間に争いがないので,被告製品が本件第1発明の技術的範囲に属するとすれば当然に本件第2発明の技術的範囲に属することになるし,逆に,被告製品が本件第1発明の技術的範囲に属しないとすれば当然に本件第2発明の技術的範囲に属しないことになるから,この点は争点として摘示しない。。)( )本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものか。
2第3争点に関する当事者の主張(要旨)1争点( )(被告製品は本件第1発明の技術的範囲に属するか)について1【原告の主張】次のとおり,被告製品は,本件第1発明の構成要件をすべて充足する。被告は,被告製品が本件第1発明の構成要件B,C,D及びFを充足することは争っていない。そこで,その余の構成要件充足性について主張する。
( )構成要件A,Gについて1,,「」 「『』 」 被告は 構成要件A Gにいう 空気乾燥機 は 再生用空気 開放 型に関するものであり 「再生用空気『循環』型」の除湿乾燥機である被告製 ,品は上記各構成要件を充足しないと主張する。
しかし,本件明細書には 「本発明はさらに,空気乾燥機または除湿機に ,関し,より詳しくは,特許請求の範囲第7項のプレアンブル部分に定義された種類の空気乾燥機に関するが,この種の空気乾燥機のみに限定されるものではない(2頁4欄21〜24行)と記載されており,本件各発明にい 。」う「空気乾燥機」が「再生用空気『開放』型」に限定されるものではない。
また,本件第1発明の本質からしても,そこでいう「空気乾燥機」が「再生用空気『開放』型」であるか「再生用空気『循環』型」であるかは関係がなく,この違いによっては「湿り空気を装置外へ排出する必要」がなくなるかの違いが生じることがあるとしても,本件第1発明の目的の達成が左右されるものではない。
( )構成要件Eについて2ア被告は,構成要件Eが「取り入れ口(3)に供給される空気を加圧して…取り出し口(4)から出るようにするためのファン」であるのに対し,被告製品の構成eは「吹出口で本体内の処理空気を減圧し…吹出口から出るようにするためのメインファン」であるから,被告製品は,構成要件Eを充足しないと主張する。
しかし,本件第1発明及び被告製品のいずれの「ファン」も,除湿前の外気を引き込んで,それが必ずローターの一部を通って「取り出し口」から排出するという役割のためだけに設置されたものである。したがって,構成要件Eの「加圧して」は 「ファン」の構成要件としての特徴を表現 ,,「 」 したものではなく該空気がローターの少なくとも一部分を通って流れるものであれば 「取り入れ口」に配置される必要はなく,その高圧側に ,設置されているか低圧側に設置されているかは,構成要件Eの充足性を左右しない。
, ,「」 被告は 本件明細書記載の第1実施例を根拠に 構成要件Eの ファンは「取り入れ口」から供給される空気を「加圧」するものでなければならないと主張する。しかし,上記主張は第1実施例のみを根拠としたものに,「」 ,「」 すぎない上 上記 ファン の果たす作用効果からすれば 当該 ファンが「取り出し口」にあっても変わりはない。
イ被告製品は,本件第1発明と均等の関係にある。すなわち,ファン(メインファン)が,処理空気を加圧するために取り入れ口にあるか,減圧するために取り出し口にあるかの違いにより 「より効果的な方法で再生空 ,気に伝達されるエネルギーを回収し利用することによりその過程における熱の産出度を高める」という本件第1発明の目的及び特徴の実現には影響を与えず,上記相違は本件第1発明の非本質的部分である(均等の第1要件 。)次にファンがどちら側にあっても,除湿前の外気を引き込んで,それが必ずローターの一部を通って取り出し口から排出するという作用効果は同一であって,置換可能性があり(均等の第2要件 ,かつ,その置換も容 )易に想到できたものといえる(均等の第3要件 。そして,均等の第4, )第5要件に当たる事情は認められない。
( )構成要件Hについて3被告は,構成要件Hが「ローター(6)の低圧側で該ローターに密接して取り付けられまた輻射熱をローターの通路(6a)ないしは床上に収納された水分収着剤上軸方向に向けるように作動する発熱装置(15)を特徴とする空気乾燥機」であるのに対し,被告製品の構成hは「第1のヒータはローターの低圧側でローターから5.5?oの隙間を隔てて配置され,第2のヒータはローターの低圧側でローターから18.0?oの隙間を隔てて配置され」ており,発熱装置(ヒータ)がローターに「密接して取り付けられ」ていないから,被告製品は構成要件Hを充足しないと主張する。
しかし 「密接」とは「二つ以上のものが非常に近い状態」を意味し(甲 ,11ないし13 ,本件第1発明が,従来の「再生用器具装置がローターか )らかなり離れた場所に位置していたから,再生用空気によって湿気を効果的に抽出できなかった」という課題を解決するものであったこと,本件明細書の図2,3において 「電気素子15」は「ローター6」との間に隙間があ ,るように図示されていること等から 「密接」とは 「ローターを再生する ,,ために要する熱に高い温度を与えることができ,しかも,それによって,とりわけローターの通路内での熱産出率を高めることができる」程度にごく近接していればよいと解釈すべきであって 「ローターの回転を許容する上で ,必要最小限のわずかな隙間」しか許容されないと解釈すべきではない。
以上より,被告製品は,第1のヒータがローターから5.5?oの隙間を隔てて配置されており,そうであれば「ローターを再生するために要する熱に高い温度を与えることができ,しかも,それによって,とりわけローターの通路内での熱産出率を高めることができる」ので,構成要件Hを充足する。
,, 。 ( )以上のとおり 被告製品は 本件第1発明の構成要件をすべて充足する4そして,被告製品が本件第2発明の構成要件Jを充足することは争いがないから,被告製品は本件第2発明の技術的範囲にも属する。
【被告の主張】次のとおり,被告製品は,本件第1発明の構成要件A,E,G及びHを充足せず,本件第1発明の技術的範囲に属しない。したがって,その従属項に係る発明である本件第2発明の技術的範囲にも属しない。
( )構成要件A,Gについて1ア空気乾燥機は 「再生用空気『開放』型」と「再生用空気『循環』型」 ,に大別される 「再生用空気『開放』型」では,外部環境から取り込まれ 。
た処理空気はローターを通過して再生に利用された後に外部環境(例えば屋外)に排出される 「再生用空気『循環』型」では,空気乾燥機内に処 。
理又は除湿される空気に対して実質的に遮断された再生空気の循環経路が設けられており,再生空気はこの循環経路を循環しつつローターを何度も通過して再生に利用される。当業者は 「再生用空気『開放』型」と「再 ,生用空気『循環』型」とは全く異なるものと認識している(乙2 。)「」 「『』 」, イ構成要件Aにいう 空気乾燥機 は 再生用空気 開放 型 を意味し「再生用空気『循環』型」を含まない。すなわち,本件明細書には,実施例として「再生用空気『開放』型」のみが記載されている。そうである以上,前記のとおり,当業者は両者を異なるタイプのものと認識しているから,構成要件Aの「空気乾燥機」は「再生用空気『循環』型」を含まないことが明らかである。
ウ被告製品は 「再生用空気『開放』型」ではなく「再生用空気『循環』 ,型」であるから,構成要件Aを充足しない。
( )構成要件Eについて2ア構成要件Eにいう「ファン」は,取り入れ口に配置されるもので 「空,気を加圧」するものであることが必須である。本件各発明において 「フ,ァン」を取り出し口に設けた場合,チャンバー(12)内からローターcを通過して他のケーシングへ向かい再生用空気の流れは生じず,本件明細書記載の第1実施例は機能しない。
イしかるに,被告製品のメインファン(構成e)は,吹出口で本体内の処理空気を減圧するものであり,取り入れ口に供給された空気を加圧する構成要件Eの構成とは異なるから,被告製品は,構成要件Eを充足しない。
( )構成要件Hについて3ア構成要件Hでは「発熱装置」は「ローターに密接して取り付けられ」と規定されているのみで 「ローター」に対し「発熱装置」がいかなる態様 ,で取り付けられているか明確でない。本件明細書の記載(5頁9欄2〜4, ),。 行 6頁11欄3行〜同頁12欄2行 を参酌しても 同様に明確でない一般に 「密接」とは 「隙間なく接していること」という意味である ,,(乙4,5 。また,本件明細書の図2,3には電気素子とローターとの )間に隙間があるように図示され,電気素子がローターに対して物理的に接触していると,ローターの回転を妨げることが推察されることを考慮しても,構成要件Hの「密接して取り付けられ」とは,ローターの回転を許容する上で必要最小限のわずかな隙間のみが確保されるような態様で発熱装置がローターに対して配置されていることを意味すると解される。
イ被告製品の第1のヒータの5.5?oの隙間,第2のヒータの18.0?oの隙間は,いずれもローターの回転を許容する上で必要最小限のわずかな隙間とはいえず,発熱装置(ヒータ)がローターに「密接して取り付けられ」ていないので,被告製品は構成要件Hを充足しない。
( )以上のとおり,被告製品は,本件第1発明の技術的範囲に属しない。ま4た,被告製品は,本件第1発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するということもできない。したがって,被告製品は,本件第1発明の従属項である本件第2発明の技術的範囲にも属しない。
2争点( )(本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものか)につい2て【被告の主張】本件各発明は,下記の先行技術に記載された発明と実質的に同一であるか,同発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条1項又は同条2項の規定に違反して特許されたものであり,本件特許は同法123条1項2号に該当し,特許無効審判により無効とされるべきものである。したがって,本件特許権に基づく権利の行使は認められない(特許法104条の3第1項 。以下詳述する。 )( )先行技術1ア実願昭60-70183号(実開昭61-187225号)のマイクロフィルム(乙6。以下「乙6文献」という )。
乙6文献は,本件各発明の優先日である1988年11月25日より前である昭和61年(1986年)11月21日に出願公開されたものであって,本件各発明と同一技術分野である除湿器に関するものである。
乙6文献には以下の記載がある。
(ア)処理空気の流れ(乙6の3頁6行〜4頁1行,第1図〜第3図)まず,処理空気aは,処理空気入口11から遠心式の処理空気ファン1によって吸い込まれ,加圧されて,処理空気通路5を通り,第3図から明らかなように,吸湿エレメント4を格納充填した除湿ロータ3の一部分に導かれる。湿度の高い処理空気は,ここで除湿ロータ3を通過する間に高性能の吸湿エレメント4と接触することによって,空気中の水分が吸湿エレメント4に吸着されて,乾燥空気となる。
水分が除去された乾燥空気である処理空気は,吸込時よりも空気の温度が上昇するため,必要に応じてその保有する熱エネルギーを除湿ロータの再生空気の予熱に使用するように設けられた顕熱交換器8に導かれ,空気の温度を下げて,処理済み空気として処理空気出口12から室内に排出される。
(イ)再生空気の流れ(乙6の4頁1行〜16行,第1図〜第3図)これに対して,再生空気は再生空気入口13から顕熱交換器8を経て,前記処理空気によって予熱されてから再生空気口14に導かれる。
そして,この再生空気は処理空気ファン1と同軸に配置された再生空気ファン2によって吸い込まれ,再生空気通路6を通る間に,その通路内に設けられたケーシング(第1図に記載されていないが,被告代理人の方で名称を付加した)内に配設されたヒータ7により加熱されて,第3図から明らかなように,除湿ロータ3の他の部分に導かれる。
処理空気の水分を吸着した除湿ロータ3は,ロータ駆動用モータ10等で徐々に回転しているため,その間に加熱され温度が高くなった再生空気が,吸湿エレメント4と接触し,吸湿エレメント4が吸着した水分が除去され再生される。この水分を含んだ再生空気は再生空気出口15を経て室外へ放出されることが開示されている。
(ウ)その他なお,9はファン駆動用モータ,16はタイミングベルトである。
(エ)ヒータ7と吸湿エレメント4の密接性また,乙6文献の5頁17行〜6頁1行に 「本案の一実施例として ,は処理空気温度25℃,相対湿度80%,絶対湿度16/?sの時,除g,,, 湿量0 45/の能力に対し 寸法が巾500高さ350 .gh mmmm厚さ50,重量7?sの装置となっている 」と記載されている。 mm 。
, ( , すなわち 厚さ50のハウジング 第1図に記載されていないがmm被告代理人の方で名称を付加した)の内部に,第1図に開示される構成部品が収納されているのであり,このことから,ヒータ7は吸湿エレメント4に密接して配置されていることは明らかである(第1図参照 。)イ特公昭58-8284号公報(乙7。以下「乙7文献」という )。
乙7文献は,本件各発明の優先日である1988年11月25日より前である昭和58年(1983年)2月15日に出願公告されたものであって,本件各発明と同一技術分野に属する除湿機に関するものである。
乙7文献には,以下の構成を有する除湿機が開示されている。
(ア)処理空気の流れ第2図には,ドラム状に形成され,中心軸1aのまわりにモータ3,ベルト2等で回転するロータ1が開示され,このロータには中心軸と平行にハニカム状の空気通過路1bが形成されている。
そして,この空気通過路1bは不燃紙,アスベスト等からつくられ,塩化リチューム等の吸湿剤が含浸されており,空気通過路1bを通過する空気中の水分を吸収するものである。
ロータ1の軸方向両側には固定セクタ5が設置され,ロータ1の空気通過路1bを処理空気通過路αと再生空気通過路βとに区分している。
そして,処理空気送風機6によって多湿処理空気がフィルタ7を介して処理空気通過路αを通過し,その間に多湿処理空気中の水分が吸収され,乾燥空気となって出口側より除湿室へ送出される。
(イ)再生空気の流れこれに対して,再生空気送風機8によって,再生空気はフィルタ9を介して赤外線発生器11で加熱された再生空気通過路βへ送り込まれ,この加熱再生空気は処理空気通過路α側で吸収した水分を奪い,出口側より外部へと排出される。よって,ロータ1は再び吸湿効果を回復し,処理空気通過路α側において除湿効果を発揮することが開示されている。
なお,前記赤外線発生器11は硝子製グローブ12を介して再生空気通過路βをその入口側から照射するもので,ロータを直熱し,ロータを効果的に乾燥することができ,また,空気通過路には出口側に近づくにつれて狭くなるテーパがつけられているから,赤外線受光面が増し,吸収水分の排除を効率的に行うことができるようになる旨が記載されている(乙7の4欄24行〜29行 。)( )本件各発明と乙6文献との対比(一致点及び相違点)2本件各発明と,乙6文献に記載の発明(以下「乙6発明」という )とを。
対比すると,一致点及び相違点は,以下のとおりである。
ア一致点本件各発明と,乙6発明とは,共にローターを回転させて除湿すべき空気をローターの一部分に供給して除湿すべき空気中の水分を除去し,乾燥した処理空気を排出する一方,ローターの他部分にヒータにより加熱した高温の再生空気を供給してローターを再生する空気乾燥機である。
また,乙6発明の処理空気入口11,処理空気出口12,及び,ハウジング(符号なし)は,本件第1発明及び本件第2発明の「空気取り入れ口(3「取り出し口(4,及び 「ハウジング(2 」にそれぞれ )」,)」,)相当し ロータ駆動用モータ10で連続して回転する除湿ロータ3はロ , ,「ーター(6 」に,処理空気ファン1は 「処理空気入口11に供給され ) ,る空気を加圧して,該空気がローターの少なくとも一部を通って流れ,水分抽出後,取り出し口(4)から出るようにするためのファン」に,ヒータ7は「ローターの他の部分を通る再生用空気を加熱するための手段」にそれぞれ相当する。
さらに,乙6発明における前記ヒータ7は,第1図から明らかなように,除湿ローター3の低圧側に設けたケーシング内で除湿ローター3に密接して取り付けられ,輻射熱をローターの通路に向けてあり,本件第1発明及び本件第2発明における「発熱装置(15 」に相当する。 )なお,ヒータの輻射熱を利用して物品を加熱(乾燥)しようとする場合,物品が焼損しない範囲で,物品にヒータを出来るだけ近づけて(密接)配置することは加熱効率上当然のことであって,何も目新しい技術的手段ではない。
以上のように,乙6発明には,本件第1発明及び本件第2発明の構成の殆どが開示されている。したがって,本件第1発明及び本件第2発明は,乙6発明と実質的に同一である。
イ相違点上記のように,本件各発明は,乙6発明と実質的に同一であるが,あえて相違点を挙げると,以下のとおりである。
すなわち,本件各発明においては,ローターには水分吸着剤,たとえば,シリカゲル結晶をのせた通路を備えている。これに対し,乙6発明の除湿ローターの吸湿エレメントについては,具体的構成が明示されていない。
相違点の判断(本件各発明の実質同一性・容易想到性)乙7文献に開示されているロータ1は,中心軸1aを中心に回転するものであり,このロータには中心軸と平行にハニカム状の不燃紙,アスベスト等から作られた空気通過路1bが形成され,この空気通過路1bは,シリカゲル結晶と同等の塩化リチウム等の吸湿剤が含浸されており,空気通過路を通過する空気中の水分を吸収,また,高温の再生空気によりその吸収した水分を放出するものである。
また,乙7文献のロータと同様の構成のロータは,実願昭51-35123号(実開昭52-126659号)マイクロフィルム(乙2)の2頁16行乃至19行,7頁19行乃至8頁3行にも記載されている。
このように,除湿ローターを使用する空気乾燥機の分野では,中心軸と平行にハニカム状の不燃紙等で作られた空気通過路にシリカゲル結晶と同等の塩化リチウム等の吸湿剤をのせたローターを使用することは周知の技術である。
そうすると,乙6文献のロータが乙7文献のロータと同様の構成のものであることは,当業者であれば当然想定されるものである。
【原告の主張】, ,, 本件各発明は 乙6発明と実質的に同一でないばかりでなく 乙6発明には本件各発明に特有の作用効果を生じさせる特徴的部分に関する思想(本質的部分)が何ら開示されていない上,乙7文献との組合せによっても,かかる本件各発明の本質的部分にかかる思想の開示はないというべきであるから,本件各発明は,いずれも特許法123条1項2号に該当せず,よって,同法104条の3第1項の規定によりその権利を行使することを妨げられるものではない。
( )本件各発明の本質的部分1ア本件各発明が解決しようとした技術的課題について従来技術には,?@再生用器具装置がローターからかなり離れた場所に位置していたことから,再生用空気によって湿気を効果的に抽出することができなかった(甲1の第2頁第4欄38〜41行目 ,?A特に湿気を抽出 )することが最も困難なローターの低圧側の場所に位置するローター部品の隅や隙間で捕捉される湿気は十分に抽出することができなかった(同第4欄41〜44行目 という問題点があった これらの問題点を解決しよ )。 ,「り効果的な方法で再生空気に伝達されるエネルギーを回収し利用することによりその過程における熱の産出度を高めるため」に( 本発明の目的」 「欄,第5欄21行から24行目 ,ローターの低圧側に配置され,ロータ )ー内部に位置する湿気吸着手段又は湿気吸収手段に輻射熱を軸方向に伝える働きをする放熱装置(発熱装置の誤記と認められる )にごく近接した 。
部分に再生空気を運ぶことを主な特徴とし(第5欄26行から31行 ,)また,放熱装置(発熱装置の誤記と認められる )をローターにごく近接 。
した部分に取り付けることにより,ローターを再生するために要する熱に高い温度を与えることができ,しかも,それによって,とりわけローターの通路内での熱産出率を高めることができる(第5欄32行ないし36行 ,さらにローターを再生するために輻射熱を利用することにより,ロ )ーターの通常最も再生することが困難な部分を十分に加熱することができる(第5欄37行ないし39行)ようにしたのが,本件各発明である。
イ本件各発明の構成の特徴(ア)本件第1発明の特徴上記のとおり 「より効果的な方法で再生空気に伝達されるエネルギ ,ーを回収し利用することによりその過程における熱の産出度を高める」ことが本件各発明の目的なのであるから,原告が本件第1発明によって実現しようとしたのは,構成要件Fの「e)ローターの他の部分を通る再生用空気を加熱するための手段」によって再生用空気自体を加熱するとともに,構成要件Hの「ローター(6)の低圧側で該ローターに密接して取り付けられまた輻射熱をローターの通路(6a)ないしは床上に収納された水分収着剤上軸方向に向けるように作動する発熱装置(15 」を備えることによって,ローターの低圧側から送られる当該加熱 )された再生用空気とローターと密接した発熱装置による輻射熱の相乗効果によって,ローター及びローター内の水分収着剤を最も効果的に再生させることである(このことは,本件明細書第9欄7行目から13行目でも 「ケーシング12によって偏向され,ローターを通ってリサイクルされ ,た加熱された空気流による吸着物質の再生に加えて,該収着剤は発熱電気素子15によって伝えられる輻射熱によっても再生される。したがって,高温の熱エネルギーはローターの中に直接輻射し,その中でケーシングに隣接するローター部分は約250℃ことによると300℃以上に加熱される 」と記載されていることからも明らかである。 。 。)そして構成要件Hは,さらに以下aないしdのとおり分説できる。
()() 。 a発熱装置 15 がローター 6 の低圧側に配置されていることb発熱装置(15)がローター(6)に密接して取り付けられていること。
c発熱装置(15)は,輻射熱を向けるように作動すること。
d輻射熱は,ローターの通路(6a)ないし床上に収容された水分収着剤上軸方向に向けられること。
(イ)本件第2発明の特徴本件第2発明の特徴は,本件第1発明の上記特徴に加え 「J:発熱 ,装置がローターの低圧側に配置されたケーシング(12:12 )内に’取り付けられること」にある。このケーシングは,発熱装置から発せられる逆輻射熱(ローターから離れた方向に向かうもの)を反射させることによって,ケーシングを通過する際に再生用空気を加熱し,発熱装置から発せられる熱をより効率的に利用するという役割を有する(甲1:第5欄47行目ないし50行目,第7欄38行目から40行目 。した)がって,乙6発明が本件第2発明と実質的に同一というためには,最低限,乙6文献に,本件第1発明及び本件第2発明が解決しようとした課題を実現するための上記構成要件F,構成要件H及び構成要件Jの各構成がいずれも開示されていることが必要である。なお,このケーシング’ , , 12 は 再生用空気流を加熱することを前提に設けているものであり構成要件Hの上記分説からも明らかなとおり,ケーシング12’内に取り付けられた電気素子15(発熱装置)は,ローター6に強い輻射熱を伝えるものであることが必要である。なぜなら,そのような構成であって初めて 「加熱された空気流による吸着(収着の誤記と認められる ) , 。
物質の再生に加えて,該収着剤は発熱電気素子15によって伝えられる輻射熱によっても再生される(第9欄8〜10行目)ことになるの 。」である。
(ウ)以上を前提に,本件各発明の技術的課題を解決するための手段が乙6文献及び乙7文献によって開示されているか(特許法29条1項 ,)本件各発明の出願時において当業者において容易想到性があったかどうか(特許法29条2項)について主張する。
( )被告の主張に対する反論2, , 乙6文献及び乙7文献には 本件第1発明及び本件第2発明の構成要件AB,D,E,Fが開示されている。しかし,構成要件C,G,H,I及びJは開示されておらず,また,構成要件Cに関して乙7文献との組合せによる本件各発明の容易想到性があるとはいえない。以下詳述する。
ア乙6文献が解決しようとした課題乙6文献には「従来の乾式除湿器はシロッコファンとハニカム式除湿ロータとを組み合わせた構成を持ったものが多く,その処理能力はロータと処理空気の接触時間の多少で決まるのが普通である。従来の構成を持った乾式除湿器では,処理空気量や除湿能力を増すためにはシロッコファンや除湿ロータを大型にすることが必要となり,必然的に除湿器が大型化し,設置スペースが増加し,その結果高価格になるといった問題があった 」。
(1頁ないし2頁)ちなみに「シロッコファン」とは,甲第17号証に示すように,円盤状に複数の羽を垂直上に角度を持たせて,ドラム状にしたものであり 「ハ,ニカム式除湿ローター」とは,甲第18号証に示すように,シート状吸着剤 を ハ ニ カ ム 構 造 体 と し て 成 形 し た ロ ー タ ー で あ り , ハ ニ カ ム()構造体とは,平面充填可能な図形である三角形,四角形,Honeycomb六角形などを蜂の巣のように( ハニカム」の語源は「蜂の巣」である) 「隙間なく並べた構造を言う 甲第19号証本件各発明のローターも ハ ()。「ニカム構造体」を有している。
乙6文献は,このような除湿器の部品の大型化に伴う除湿器の大型化,設置スペースの増加,その結果生まれる高価格を回避する一方,ローター式除湿器の能力を拡大することを目的として,?@独自の吸湿エレメントを格納充填した除湿ローターを採用し,?A同一軸上に重ね合わせて配置した2個の遠心ファンの同心円外周上に配置し,?B処理空気と再生空気の流れ方向が遠心ファンの軸心から外周円周方向となるように構成することで,従来の除湿器では除湿ローター(ハニカム式除湿ローター)と送風ファン(シロッコファン)が占有していた大型の配置スペースを,2個の遠心ファンの占める厚さに近い寸法までに機器の厚さをコンパクトに薄型に納めることができ,小型,軽量化を実現することができるようにしたものである(乙6:2頁ないし3頁「考案が解決しようとする問題点」及び「問題点を解決するための手段と作用」参照 。)以上を前提に被告が乙6文献に関して主張する?@ヒータ(7)は,除湿ローター(3)の低圧側で該除湿ローター(3)に密接して取り付けられ,輻射熱を除湿ローター(3)に向けるように作動する発熱装置を特徴(),() ,() とする空気乾燥機 構成要件H?Aヒータ 7 は 除湿ローター 3の低圧側に設けたケーシング内に取り付けられることを特徴とする空気乾燥機(構成要件J ,及び?B除湿エレメントを備えた除湿ローター )(3 (構成要件C)に関して,原告は以下のとおり異議を述べ,主張す )る。なお,構成要件G「からなる空気乾燥機」については構成要件Cの充足性との関連で,構成要件I「特許請求の範囲第7項に記載の空気乾燥機において 」は,構成要件C,G,Hの充足性との関連で,それぞれ被告 ,の主張に異議を有するものである。
構成要件Hについて, , , 被告は 乙6文献における前記ヒータ7は 第1図から明らかなように除湿ローター3の低圧側に設けたケーシング内で除湿ローター3に密接して取り付けられ,輻射熱をローターの通路に向けてあり,本件第1発明及び本件第2発明における「発熱装置(15 」に相当し,なお,ヒータの )輻射熱を利用して物品を加熱(乾燥)しようとする場合,物品が焼損しない範囲で,物品にヒータを出来るだけ近づけて(密接)配置することは加熱効率上当然のことであって,何も目新しい技術手段ではない,と主張する。
しかし,まずもって乙6文献には,被告が主張するような「輻射熱をローターの通路に向けてあり」というような事情は全く存在せず,これを示唆するような記載も存在しない。
本件各発明の本質的部分は,前記のとおり,構成要件Fの「e)ローターの他の部分を通る再生用空気を加熱するための手段」によって再生用空気自体を加熱するとともに,構成要件Hの「ローター(6)の低圧側で該ローターに密接して取り付けられまた輻射熱をローターの通路(6a)ないしは床上に収納された水分収着剤上軸方向に向けるように作動する発熱装置(15 」を備えることによって,ローターの低圧側から送られる当 )該加熱された再生用空気とローターと密接した発熱装置による輻射熱の相乗効果によって,ローター及びローター内の水分収着剤を最も効果的に再生させることである。しかし,乙6文献でヒータ7の役割として記載されているのは 「再生空気6は (中略)再生空気通路6を通る間にその通路 ,,内に設けられたヒータ7によって加熱されて除湿ロータ3に導かれる4。」(頁)と第3図に関して「再生空気の流れの中には,再生空気加熱用ヒータ7を設けている (5頁)というこの二つのみである。したがって,これ 」らから乙6文献におけるヒータ7の役割は,再生用空気の加熱のみであって,ヒータの輻射熱を利用してローターを再生させるために,ヒータをローターの通路ないしは床上に収納された水分収着剤上軸方向に向けるように意識的に設置したというような教示も示唆も全くない。
,, ( , また 被告は 厚さ50?oのハウジング 第1図に記載されていないが被告代理人の方で名称を付加した)内部に,第1図に開示される構成部品が収納されているのであり,このことから,ヒータ7は吸湿エレメント4に密接して配置されていることは明らかであるとも主張する。被告は独自, .「」 の理論に基づいて ヒータとローターの隙間が5 5?oであっても 密接とは言えないと主張しているが,被告が自説の根拠とする乙6文献の第1図は,実施例の構成を示す断面図に過ぎず,第1図で想定されている製品の構造において 「独自の吸湿エレメントを格納充填したローター」3と ,ヒータ7の距離がどの程度のものなのかは全くわからない。かえって 「ロ,ーター式除湿器の原理図」である第3図によれば,被告が主張する「ハウジング」であると思われる,除湿ローター3に近いところに設けられた扇状の区画を設ける部材の中には,再生空気加熱用ヒータ7は配置されておらず,完全にその外側に離間された状態で配置されている。
前記のとおり,乙6文献におけるヒータ7の役割は,再生用空気の加熱のみであることは明らかであって,乙6文献にはヒータの輻射熱を利用してローターを再生させるということが必要となる技術的課題がない以上,ヒータをローターの通路ないしは床上に収納された水分収着剤上軸方向に向けるように「密接して」意識的に設置したというような思想も動機付けもないのであるから,乙6文献にはヒータをローターに「密接」させる旨の教示も示唆もないというべきである。
なお,被告は,ヒータの輻射熱を利用して物品を加熱(乾燥)しようとする場合,物品が焼損しない範囲で,物品にヒータを出来るだけ近づけて(密接)配置することは加熱効率上当然のことであるとも主張する。輻射熱とは,物体から発生した熱エネルギーが空間を通過して物体に当たり吸収され,再び熱に変わる伝搬現象のことをいう。つまり,高温の固体表面から低温の固体表面に,その間の空気その他の気体の存在に関係なく,直接電磁波の形で伝わる伝わり方を輻射といい,その熱を輻射熱というのである(甲14ないし甲16「輻射」には,赤外線ランプなどが用いられ )。
るが,赤外線が通過した空気は加熱されないので,気体である空気そのものを熱しようとする場合 「輻射熱」を用いるという思想は現れない。な ,お 「加熱」の方法(熱の伝わり方)には 「輻射」の他に「伝導」や「対 , ,流」があるが,このうち空気を加熱するために用いられるのは「伝導」である 「伝導」とは熱を加えることによって分子や電子の運動を活発にし, 。
それが隣の分子や電子を次々と揺さぶるという状況が繰り返されることによってエネルギーが伝わることをいう(甲15,甲16及び甲20 。身)近な例では,セラミックファンヒータがあるが,これは発熱体が直接空気に接触することで空気に熱を「伝導」させることによって暖房効果を産む仕組みを有している。乙6文献がヒータ7を再生用空気の加熱のためにのみ用いていることからすると,乙6文献に開示されているヒータは 「輻,射」を用いるものではなく「伝導」を用いるヒータであった可能性が極めて高い。またセラミックヒータなど「伝導」を用いるヒータであれば,熱する対象はそこを通過する空気なのであって,固体に照射して発熱させるものではないのであるから,?@ローターに密接させる必要性もなければ,?Aローターの軸方向に向けるよう作動する必要もないので,そのように意識してヒータを設置することはない。またセラミックヒータでは,本件各発明におけるヒータが意図しているローターを250℃程度の高温にすることもできない。
なお,乙6文献が開示されていた当時に除湿器に用いられていたのは,実際PTCヒータと呼ばれるフィン付抵抗発熱体素子を用いたヒータであって,具体的な形状としては梯子状に配置されたセラミックヒータに熱交換用のアルミニウム製などのフィンが多数設けられて空気との接触面積が拡大され,ここを通過する空気に接触して効率的に熱を送り出すものであった。これは乙6文献の出願当時において,除湿器に用いられているヒータの役割としては,乙6文献に開示されているとおり,再生用空気を加熱するのに過ぎなかったこととも整合する 「輻射熱」によって対象物を加 。
, , 熱する赤外線ヒータなどは 電磁波として再生空気を通過してしまうため再生用空気を加熱するものとしては適さなかったからである。
以上から,乙6文献では,構成要件Hの「ヒータ(7)は,除湿ローター(3)の低圧側で該除湿ローター(3)に密接して取り付けられ,輻射熱を除湿ローター(3)に向けるように作動する発熱装置」であるというような開示は全くないといえる。
構成要件Jについて, , , 被告は 乙6文献における前記ヒータ7は 第1図から明らかなように除湿ローター3の低圧側に設けたケーシング内で除湿ローター3に密接して取り付けられていると主張する。
しかし,第1図には,それが「ケーシング」又はそれに相当するものであるとして示されているものは存在しない。また前述のとおりこのケーシングは,?@ローターを通過する間に予備加熱された空気を一部捕捉し,偏向させ,これを再生用空気として利用する(甲1の第6欄12行目及び21行目)ほか,?A発熱装置から発せられる逆輻射熱(ローターから離れた方向に向かうもの)を反射させることによって,ケーシングを通過する際に再生用空気を加熱し,発熱装置から発せられる熱をより効率的に利用するという役割のために積極的に付加されたものである(第5欄47行目ないし50行目,第7欄38行目から40行目 。しかしながら,前述のと )おり乙6文献では 「輻射熱を用いてローターを加熱する」という技術思 ,想はないのであるから,被告が「ケーシング」と主張しているものは 「発,熱装置から発せられる逆輻射熱(ローターから離れた方向に向かうもの)を反射させる」というものではないし,それは再生用空気すべてが通る通路としての役割しかないのであるから,本件明細書【第4図】の「18」(導管)又は【第2図】においては「2b (ハウジング低圧部分)の役 」割しか有しておらずこれらに相当するものである。したがって,乙6文献に「ケーシング」に相当するようなものは開示されていないというべきである。
構成要件Cについて被告は,本件第1発明の構成要件Cが「ハウジング内でジャーナル止めされまた水分収着剤例えばシリカゲル結晶をのせた通路(6a)ないしは床を備えたローター」であるのに対し,乙6文献は「吸湿エレメントを備えた除湿ローター(3 」であって,この点に相違があることを認めた上 )で,乙7文献に開示されているローターが「中心軸1aを中心に回転するものであり,このローターには中心軸と平行にハニカム状の不燃紙,アス,, ベスト等から作られた空気通過路1bが形成され この空気通過路1bはシリカゲル結晶と同等の塩化リチウム等の吸湿剤が含浸されており,空気通過路を通過する空気中の水分を吸収,また,高温の再生空気によりその吸収した水分を放出するものであ」って,除湿ローターを使用する空気乾燥機の分野では,中心線と平行にハニカム状の不燃紙等で作られた空気通過路にシリカゲル結晶と同等の塩化リチウム等の吸湿剤を載せたローターを使用することは周知の技術である」ので 「乙6のローターが乙7のロ ,ーターと同様構成のものであることは,当業者であれば当然想定されるものである 」と主張する。。
しかしながら,前述のとおり乙6文献は 「従来の乾式除湿器はシロッ ,コファンとハニカム式除湿ロータとを組み合わせた構成を持ったものが多く,その処理能力はロータと処理空気の接触時間の多少で決まるのが普通である。従来の構成を持った乾式除湿器では,処理空気量や除湿能力を増, やすためにはシロッコファンや除湿ロータを大型にすることが必要となり必然的に除湿器が大型化し,設置スペースが増加し,その結果高価格になるといった問題があった (乙6:1頁ないし2頁)ことから,敢えてこ 」れらを使わないことによって(乙6文献はその趣旨で「独自の吸湿エレメントを格納充填した除湿ロータ」と表現している「小型,軽量でスペー ),スをとらない薄型の除湿器を実現することができた (乙6:5頁)ので 」ある。ハニカム式除湿ローターは甲第18号証で示すとおり,シート状吸着剤をハニカム構造体として成形したローターであるが,乙6文献の構成で,従来のものより小型かつ薄型の除湿器を実現しようとすると,単純に考えても吸湿剤が含浸されているハニカムの面積を従来のものより相当程度(少なくともファンの面積分)減らさなければならないことになる。そして,それで吸湿効率を維持又は上げるとすれば,シート状吸着剤をハニカム構造体として成形したローターを用いず,開示はされていないが,乙6文献で述べられているところの従来のものとは異なった「独自の吸湿エレメントを格納充填した除湿ロータ」を採用する必要が出てくる。換言すれば,乙6文献の構成を前提とすれば,元来存在したローターのハニカム状に平面充填された空気通過路の表面積全体のうち,ファンの表面積分に相当する分は 「ハニカム状の不燃紙等で作られた空気通過路にシリカゲ ,ル結晶と同等の塩化リチウム等の吸湿剤を載せた」ものが減るのであるから,?@その分ローターを大きくするか,?Aローターを厚くするか,?Bこれ。 までに比べて吸湿剤の性能が著しく高いものにするかのいずれかしかない(, ?Bについては何ら具体的なものが開示されていないのであるから ただし「独自の吸湿エレメントを格納充填した除湿ロータ」はこの趣旨かも知れない ,乙6文献の構成を前提として,シート状吸着剤をハニカム構造体 )として成形したローターを用いることは,当時の当業者の技術常識を前提としても,容易想到であるとはいえないと解すべきである。
オまとめ以上のとおり,本件各発明は,乙6文献に記載された発明と実質的に同一でないばかりではなく,乙6文献には,本件各発明に特有の作用効果を生じさせる特徴的部分すなわち本質的部分に関する思想が何ら開示されて, , いないばかりか ローターの構成に関する乙7文献との組合せによってもかかる本件各発明の本質的部分にかかる思想の開示はないというべきであるから,本件各発明は,いずれも特許法123条1項2号に該当せず,よって,特許法104条の3第1項の規定によりその権利を行使することを妨げられるものではないというべきである。
第4当裁判所の判断1争点( )(本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものか)につい2て事案にかんがみ,まず,争点( )について判断する。
2( )乙6文献の記載1ア乙6文献には,以下の記載がある。
(ア)「同一回転軸上に重ね合わせて設けられた,1個のモータで駆動される2個の遠心ファンと該ファンの同心円上外周に配置された除湿ロータと,さらに該ファンと除湿ロータの間で構成される処理空気の通路から成り,通路の一部は再生空気の通路として構成され,その中にヒータを設けた除湿器( 実用新案登録請求の範囲」1頁5〜11行) 。」「(イ)「第1図(判決注・右図)は基本的な配置をファンの回転軸を含む断面図として表した図である。処理空気aは処理空気入口11から遠心式の処理空気ファン1によって吸込まれ,処理空気通路5を通って吸湿エレメント4を格納充填した除湿ロータ3に導かれる。湿度の高い処理空気はここで除湿ロータ3を通過する間に,高性能の吸湿エレメント4と接触することによって,空気中の水分が吸湿エレメント4に吸着されて乾燥空気となる。湿度が除去された処理空気は,吸込時よりも空気の温度が上昇するため,必要に応じてその保有する熱エネルギを除湿ロータの再生空気の予熱に使用するように設けられた顕熱交換器8(第1図では図示せず)に導き,空気の温度を下げて処理済み空気として処理空気出口12から室内へ戻し,室温の上昇を防ぐと共に省エネルギに役立てている。一方再生空気6は第1図では図示されていない再生空気入口13と顕熱交換器8を経て,処理空気によって予熱されてから再生空気口14に導かれる。処理空気ファン1と同軸に配置された再生空気ファン2によって吸込まれ,再生空気通路6を通る間にその通路内に設けられたヒータ7によって加熱されて除湿ロータ3に導かれる。処理空気の水分を吸着した除湿ロータ3に格納充填されている吸湿エレメント4は,除湿ロータ3が徐々に回転され再生空気通路6を通過する間に温度の高い再生空気と接触して,吸着した水分を再生空気中に放出して再生される。水分を含んだ再生空気は再生空気出口15を経て室外へ放出される。第2図(判決注・右図)は以上説明した配置に基づいて製品としてまとめた一例を示す構造図で,特に処理空気と再生空気の出入口の配置と第1図で図示されていなかった顕熱交換器8との関連について示した他,ファン駆動用モータ9とロータ駆動用モータ10,タイミングベルト16を示してある( 実施例」3頁4行〜5頁3行) 。」「(ウ)また,第1図及び第2図には 「処理空気入口11,及び処理空気出 ,口12を備え,除湿ロータ3が配置されたハウジング「ハウジング内」,でジャーナル止めされた除湿ロータ3「除湿ロータ3の低圧側で除湿 」,ロータ3に対向し,近傍に取り付けられたヒータ7 ,及び「ヒータ7が 」除湿ロータ3の低圧側に配置されたケーシング内に取り付けられていること」が開示されている。
イこれらの記載から,乙6文献には以下の発明(乙6発明)が記載されていることが認められる。
「除湿器であって,処理空気入口(11)及び処理空気出口(12)を備えたハウジング,ハウジング内でジャーナル止めされ通路ないしは床を備えた除湿ロータ(3 ,連続的に除湿ロータ(3)を駆動するためのロータ駆動 )用モータ(10 ,処理空気入口(11)に供給される空気を加圧して,該 )空気が除湿ロータ(3)の少なくとも一部分を通って流れ,水分を抽出した,() (), 後処理空気出口12から出るようにするための処理空気ファン 1除湿ロータ(3)の他の部分を通る再生空気(6)を加熱するためのヒータ(7 ,からなる除湿器において,除湿ロータ(3)の低圧側で該ロータに )対向し,近傍に取り付けられたヒータ(7)を備え,また,ヒータ(7)が除湿ロータ(3)の低圧側に配置されたケーシング内に取り付けられる除湿器 」。
(なお,上記「ハウジング内でジャーナル止めされ通路ないし床を備えた除湿ロータ(3 」のうち「通路ないし床」は乙6文献に明示的には記載され )ていない。しかし,除湿ロータ(3)は,処理空気入口(11)及び処理空気出口 12 を備えたハウジング内にあるから 処理空気を通すための 通 () ,「路ないし床」を備えていることは自明というべきである )。
( )本件各発明と乙6発明との一致点及び相違点2ア本件第1発明と乙6発明とを対比すると,乙6発明の「除湿器 「処理」空気入口(11「処理空気出口(12「除湿ロータ(3「ロータ )」)」)」駆動用モータ10処理空気ファン1再生空気6及びヒ ()」「()」「()」「ータ(7 」は,その構造,機能,作用等からみて,それぞれ本件第1発 )明の「空気乾燥機 「空気取り入れ口(3「取り出し口(4「ロータ 」)」)」ー(6「のぞましくは連続的にローター(6)を駆動するための手段」 )」「ファン 「再生用空気」及び「再生用空気を加熱するための手段,及び 」発熱装置(15 」に相当すると認められる。 )イしたがって,両者の一致点は次のとおりである。
「空気乾燥機であって,空気取り入れ口(3)および取り出し口(4)を備えたハウジング(2 ,ハウジング内でジャーナル止めされまた通路 )(6a)ないしは床を備えたローター(6 ,のぞましくは連続的にロー )ター(6)を駆動するための手段,取り入れ口(3)に供給される空気を加圧して,該空気がローターの少なくとも一部分を通って流れ,水分抽出後,取り出し口(4)から出るようにするためのファン,ローターの他の部分を通る再生用空気を加熱するための手段,からなる空気乾燥機において,ローター(6)の低圧側で取り付けられ,作動する発熱装置(15)を特徴とする空気乾燥機」である点。
ウ他方,両者の相違点は,以下のとおりである。
, (), (ア)本件第1発明は ローターに備えられた通路 6a ないしは床に「水分収着剤例えばシリカゲル結晶をのせた」のに対して,乙6発明では,ローターに備えられた通路(6a)ないしは床に「水分収着剤例えばシリカゲル結晶をのせているか否か」が不明である点(以下「相違点1」という。。)(イ)本件第1発明は,発熱装置が 「該ローターに密接して取り付けら ,れまた輻射熱をローターの通路(6a)ないしは床上に収納された水分収着剤上軸方向に向けるように作動する」のに対して,乙6発明は,発熱装置が,該ロータに対向し,近傍に取り付けられており,また輻射熱をローターの通路ないしは床上に収納された水分収着剤上軸方向に向けるように作動するか否かが不明である点(以下「相違点2」という。。)なお,被告は,乙6発明におけるヒータ7は,第1図から明らかなように,除湿ロータ3の低圧側に設けたケーシング内で除湿ロータ3に密接して取り付けられ,輻射熱をローターの通路に向けてあり,本件各発明における「発熱装置(15 」に相当するなどとして,相違点2に係 )る事項は乙6文献に開示されている旨主張するが,乙6文献に開示された発明(乙6発明)は,上記認定のとおりであり,相違点2に係る事項が乙6文献に開示されているとまでは認められないから,この点は相違点として扱うのが相当である。
( )相違点1に関する判断3ア乙7文献には,以下の記載がある。
「この種除湿機は,たとえば第1図(判決注・下図)に示す如き構成を有していた。図中符号1で示すものがロータである。このロータ1はドラム状に形成され,その水平な中心軸1aをもって支持される。その中心軸1aのまわりにはそれと平行にハニカム状の空気通過路1bが形成される。そして,その空気通過路1bは不,() 燃紙・プラスチック・アスベスト等からつくられ 塩化リチュームLiCl等の吸湿剤が含浸されており,前述空気通過路1bを通過する空気の水分を吸収する(2欄7〜16行) 。」これらの記載から,乙7文献には「塩化リチュームをのせた空気通過路(1b)を備えたロータ(1)を設けた除湿機 」との発明(乙7発明) 。
が記載されていることが認められる。
そして,乙7発明の「塩化リチューム 「空気通過路(1b「ロータ 」)」(1 」及び「除湿機」は,その構造,機能,作用等からみて,それぞれ )本件第1発明の水分収着剤通路6aローター6及び空 「」「()」「()」「気乾燥機」に相当すると認められるから,乙7文献には 「水分収着剤を ,」 。, のせた通路を備えたローター が開示されていることになる そうすると相違点1は乙7発明に開示されていると認められるところ,乙6発明及び乙7発明は,いずれも空気乾燥機に関する発明であり,同一の技術分野に属し,かつローターに空気を通過させることにより,空気中の湿気を抽出するという同一の機能,作用を奏するものである。また,乙6発明に乙7発明を適用するにあたり,その適用を妨げるような記載や示唆はない。
よって,相違点1は,乙6発明の除湿ロータ(3)に備えられた通過路ないしは床に乙7発明のロータ(1)に備えられた空気通過路(1b)にのせられた塩化リチューム(水分収着剤)を適用した程度のものであり,かつ,その組合せによる作用効果も格別顕著なものではなく,乙6発明に乙7発明を組み合せることにより当業者が予測可能な範囲のものである。
イなお 「吸湿エレメント(4 」の具体的内容については,乙6文献に ,)明確な記載がないものの,本件第1発明にいう「水分収着剤例えばシリカゲル結晶」を含むことが明らかである。また,乙6文献には 「湿度の高 ,い処理空気はここで除湿ロータ3を通過する間に,高性能の吸湿エレメント4と接触することによって,空気中の水分が吸湿エレメント4に吸着されて乾燥空気となる(3頁9〜13行)と記載されているから,吸湿 。」エレメント4に処置空気を通過させて,湿気を吸着させるため,吸湿エレメント4には通路ないしは床が形成され,そこに,水分収着剤がのせられていると解することができる。したがって,乙6発明の上記構成は,本件第1発明にいう「水分収着剤例えばシリカゲル結晶をのせた通路(6a)()」 。 ないしは床を備えたローター 6と実質的に同一であるとも解されるウ以上より,相違点1は,当業者であれば,乙6発明に乙7発明を適用することにより,容易に想到することができたというべきである。
( )相違点2に関する判断4ア一般に,どのようなタイプの発熱装置(ヒータ)であれ,発熱装置(ヒータ)を利用して加熱(乾燥)する場合,加熱(乾燥)効率を上げるため,() () に 被加熱物品 乾燥させる物品 が焼損しない範囲で発熱装置 ヒータにできるだけ近づけて,つまり密接させて配置することは,単純な技術常識であることが認められる。
したがって,相違点2における発熱装置が「該ローターに密接して取り付けられ」との点は,単に発熱装置の配置を加熱(乾燥)効率を上げるという目的に沿って上記技術常識に基づいて単純に限定したものにすぎず,当業者が,上記技術常識を考慮して,適宜容易になし得る程度の設計的事項であり,しかもこのことにより予想外の格別顕著な作用効果を奏するものではない。
イ次に,相違点2中,本件第1発明において,発熱装置が「輻射熱をローターの通路(6a)ないしは床上に収納された水分収着剤上軸方向に向けるように作動する」との点について検討する。
証拠(甲14ないし16,20)によれば 「熱輻射」とは 「熱放射」 ,,ともいい,物体から熱エネルギーが電磁波として放出される現象,あるいはその電磁波(甲15 「岩波理化学辞典〔第4版 」954頁 ,あるい 。 〕)は,加熱された物体がその原子の熱振動によって電磁波的性格をもつ振動波を空間内に放出するものであって,その振動波は例えば赤外線放射されるものである(甲16〔ブリタニカ国際大百科事典15。また,輻射〕)熱(放射熱)とは,高温の固体表面から低温の固体表面に,その間の空気その他の気体の存在に関係なく,直接電磁波の形で伝わる熱をいうのであって(甲14〔weblio辞書 ,甲20 ,これらの知見ないし技術 〕)は,上記各文献に照らし周知であることが認められる。また,上記事実及び弁論の全趣旨によれば,輻射熱を利用した発熱装置も,例えば赤外線暖,, 房機等として極めて周知なものであることが認められ また乙7文献には「この発明による除湿機にあっては,従来の加熱器10に代えて赤外線発生器11が使用される。この赤外線発生器11は硝子製グローブ12を介して再生空気通過路βをその入口側から照射する(4欄9〜13行) 。」,(「()」 と記載されており 赤外線発生器11 本件第1発明の 発熱装置 15に相当する )から,照射される赤外線,つまり輻射熱により,ローター 。
を加熱して,除湿している除湿機(本件第1発明の「空気乾燥機」に相当する )が開示されていることが認められる。したがって,相違点2のう 。
ち,発熱装置が「輻射熱をローターの通路(6a)ないしは床上に収納された水分収着剤上軸方向に向けるように作動する」との点は,単に,乙6発明のヒータ(7)を上記周知の輻射熱を利用した発熱装置に置換したものにすぎず,上記のように置換されれば,本件第1発明と同様な発熱装置の配置となると認められるから,当然,輻射熱は水分収着剤上軸方向に向けるように作動するものと解される。そして,このような構成を採用したことにより,予想外の格別顕著な作用効果を奏するものとはいえない。
ウよって,相違点2は,当業者であれば,乙6発明に周知の技術常識を適用することにより,容易に想到することができたというべきである。
( )本件第1発明の容易想到性に関する小括5以上のとおりであるから,本件第1発明は,乙6発明,乙7発明及び上記周知の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件第1発明に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反して。,, , なされたものである したがって 同特許は 同法123条1項2号により特許無効審判により無効とされるべきものである。
( )本件第2発明の容易想到性について6本件第2発明は,本件第1発明に構成要件Jが付加されたものであるところ,構成要件Jの構成は 「発熱装置がローターの低圧側に配置されたケー ,シング(12 12′)内に取り付けられる」というものである。しかし,;前示認定のとおり,乙6発明には「ヒータ(7)が除湿ロータ(3)の低圧側に配置されたケーシング内に取り付けられる」構成が開示されており,この点で本件第2発明の構成と一致する。したがって,本件第1発明が,乙6発明,乙7発明及び上記周知の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである以上,本件第2発明も当業者が容易に発明をすることができたものであることが明らかであるから,本件第2発明に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものである。したがって,同特許は,同法123条1項2号により,特許無効審判により無効とされるべきものである。
( )これに対し,原告は,乙6文献には,本件各発明に特有の作用効果を生7じさせる特徴的部分すなわち本質的部分に関する思想が何ら開示されていないばかりか,ローターの構成に関する乙7文献との組合せによっても,本件各発明の本質的部分に係る上記思想の開示はない旨主張する。しかし,原告のいう「本件各発明に特有の作用効果を生じさせる特徴的部分すなわち本質的部分に関する思想」自体が直接的,明示的に乙6発明に開示されているか否かはともかく,乙6文献に開示された乙6発明は,上記( )イに認定した1とおりであり,そこでは相違点1及び2を除き,本件各発明の構成がすべて開示されている。そして,上記各相違点については,乙6発明に乙7発明及び周知の技術常識を適用する動機付けが認められ,かつ,上記組合せにより予想される作用効果が予想される範囲内である以上,本件各発明は,当業者が容易に想到することができたものであることに変わりはない。
その他,原告が縷々主張するところを考慮しても,当裁判所の上記認定判断を左右するには至らない。
2以上によれば,原告は,特許法104条の3第1項により,被告に対し本件特許権に基づく権利行使をすることができない したがって その余の争点 技 。,(術的範囲の属否)について判断するまでもなく,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 西理香
裁判官 北岡裕章
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