審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成20ワ25354特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成4ワ6690特許権侵害行為差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16ワ8682損害賠償請求事件 | 判例 | 特許 |
平成17ワ 785特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成11ワ23013特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 発明者 / 反復(反復可能性) / 方法の発明 / 製造方法 / 新規性 / 29条1項3号 / 頒布された刊行物 / 進歩性(29条2項) / 同一技術分野(同一の技術分野) / 容易に発明 / 周知技術 / 公知技術 / 上位概念 / 下位概念 / 技術的範囲 / 出願公開 / 技術常識 / 明確性 / 発明の詳細な説明 / 遡及 / 分割出願 / クレーム / 出願経過 / 参酌 / 数値限定 / 技術的意義 / 発明の要旨認定 / 容易に想到(容易想到性) / 特許発明 / 実施 / 加工 / 交換 / 構成要件 / 侵害 / 実施料 / 不法行為(民法709条) / 設定登録 / 拒絶理由通知 / 訂正審判 / 請求の範囲 / 減縮 / 変更 / 訂正要件 / 不当に遅延 / 異議申立 / |
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事件 |
平成
19年
(ワ)
2980号
損害賠償請求事件
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原告不 二製油株式会社 訴訟代理人弁護 士山上和則藤川義人 訴訟復代理人弁護 士杉本智則 訴訟代理人弁理 士高津一也 補佐人弁理士廣田雅紀 大和信也 被告花王株式会社 訴訟代理人弁護 士竹田稔川田篤 木村耕太郎 補佐人弁理士花田吉秋 加藤実 伊藤健 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2008/10/09 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1原告の請求を棄却する。 2訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求1被告は,原告に対して,5億6000万円及びこれに対する平成19年3月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2訴訟費用は被告の負担とする。 3仮執行宣言第2事案の概要等1事案の概要本件は,発明の名称を「酵素によるエステル化方法」とする発明の特許権者である原告が,被告が「エコナクッキングオイル」等の商品名で製造販売する食用油の製造方法は上記特許発明の技術的範囲に属し同製品を製造する被告の行為は原告の有する上記特許権を侵害するとして,主位的には民法709条に基づく損害金の一部として,予備的には民法703条に基づく利得金の一部として,いずれも5億6000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年3月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 末尾に証拠を掲記したものを除き,当事者間に争いが 2争いのない事実等(ない )。 1当事者()ア原告は,油脂,蛋白それらの副産物並びに食料品等の製造,加工及び販売を主たる業務としている株式会社である。 イ被告は,食品の製造販売及び油脂,油脂誘導体,界面活性剤,高分子化合物,酵素並びに香料等の化学薬品の製造販売等を目的とする株式会社である。 2原告の特許権()原告は,次の特許(以下「本件特許」といい,後記コの特許請求の範囲記載の発明を「本件特許発明」といい,本件特許出願(後記イの分割出願)の願書に添付した明細書を「本件明細書」という )の特許権者であった(本 。 件特許に係る特許権を,以下「本件特許権」という。。)ア登 録 番 号特許第2135885号イ出 願 番 号特願昭62-241768ウ分割の表示特願昭55-32938の分割エ出願日昭和55年3月14日オ公 告 番 号特公平7-57195カ公告日平成7年6月21日キ登録日平成10年4月17日ク権利消滅日平成12年3月14日ケ発明の名称酵素によるエステル化方法コ特許請求の範囲「水または水及び低級アルコールを排出する系においてアルコール及び脂肪酸または脂肪酸の低級アルコールエステルを含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法(本判決末尾添付の特許公報〔以下「本件特許公 。」報」という 〕参照)。 3構成要件の分説()本件特許発明は,次の構成要件に分説することができる(以下,本件特許発明の各構成要件を単に「構成要件A」などという。。)A水又は水及び低級アルコールを排出する系においてBアルコール及び脂肪酸又は脂肪酸の低級アルコールエステルを含有する基質にCエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることDを特徴とするアルコールのエステル化方法。 4被告の行為()ア被告は,平成11年2月から,商品名を「エコナクッキングオイル」及び「健康エコナクッキングオイル」とする食用油(以下,これらを「イ号物件」といい,その製造方法を「イ号方法」という )を製造販売してい 。 る。 イ被告は,平成2年から,商品名を「花王エコナクッキングオイル」又は「エコナクッキングオイル (その後商品名を「エコナ炒め油」に変更) 」を製造販売している(以下,この食用油を「ロ号物件」といい,その製造方法を「ロ号方法」という。また,イ号方法とロ号方法を合わせて「被告方法」ともいう。。)ウ被告方法は,いずれも構成要件Bを充足する。 5本件特許の出願の経緯()本件特許は,昭和55年3月14日に出願された発明の名称を「酵素によるエステル化方法」とする特許出願(特願昭55-32938号〔以下,「原出願」といい,その願書に添付した明細書を「原明細書」という)。〕について,昭和62年9月26日にされた分割出願(以下「本件分割出願」という )に基づいて登録されたものである。 。 原明細書の「特許請求の範囲」には以下の記載がある。 「(1)可及的乾燥した系において基質にエステル交換活性を有する酵素を作用させることを特徴とするエステル化方法。 (2)生成エステルが脂肪酸エステルである第(1)項記載の方法。 (3)反応生成物の一を系外に排出する第(1)項記載の方法。 (4)反応生成物が水又は低級アルコールである第(3)項記載の方法。 。 (5)系外への排出を減圧留去により行う第(3)項及び第(4)項記載の方法(6)系外への排出を吸収剤を用いて行なう第(3)項及び第(4)項記載の方法 」。 3争点1被告方法は本件特許発明の技術的範囲に属するか(争点1)()ア被告方法の内容(争点1-1)イ構成要件Aの充足性(争点1-2)ウ構成要件Cの充足性(争点1-3)エ構成要件Dの充足性(争点1-4)2本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものか(争点2)()ア無効理由1本件特許発明は合衆国特許第2,676,906号明細書(乙13。 (ア)以下「引用例1」という )に記載された発明(以下「引用発明1」と 。 いう )と同一か(無効理由1における主位的主張〔新規性の欠如 。 。 〕争点2-1-1 。)仮に,本件特許発明が引用発明1と同一ではないとしても,引用発明(イ)1に基づいて当業者が容易に発明することができたものか(無効理由1における予備的主張〔進歩性の欠如 。争点2-1-2 。 〕)イ無効理由2本件特許発明は昭和54年(1979年)に発行された刊行物(ア)「 」1巻5号の211ないし216頁 BIOTECHNOLOGY LETTERS(乙23の1。以下「引用例2」という )に記載された発明(以下 。 「引用発明2」という )と同一か(無効理由2における主位的主張 。 〔新規性の欠如 。争点2-2-1 。 〕)仮に,本件特許発明が引用発明2と同一ではないとしても,引用発明(イ)2に基づいて当業者が容易に発明することができたものか(無効理由2における予備的主張〔進歩性の欠如 。争点2-2-2) 〕ウ無効理由3本件分割出願は平成6年法律第116号による改正前の特許法44条1項(以下「改正前44条1項」という )に規定する適法な分割出願か 。 (争点2-3 。)エ無効理由4本件明細書の発明の詳細な説明は,平成2年法律第30号による改正前の特許法36条3項(以下「改正前36条3項」という )及び昭和62 。 年法律第27号による改正前の特許法36条4項(以下「改正前36条4項」という )の規定する要件を満たしているか(争点2-4 。 。 )3損害の額(争点3)()第3当事者の主張1争点1-1(被告方法の内容)【原告の主張】1イ号方法()アイ号方法の内容FFI JOURNAL, VOL.210, No.2, 被告の従業員研究者であるP1が「」誌上で発表した「ジアシルグリセロールの研究開発」という表題2005の論文(甲3。以下「P1論文」という )に記載された,平成11年 。 (1999年)2月から発売されたジアシルグリセロールを主成分とする食用油は 「エコナクッキングオイル」又は「健康エコナクッキングオイ ,ル (イ号物件)である。 」P1論文の図1では,1,3位選択性リパーゼによるエステル化の際,反応により生成する水が排出されていることが示されている。また,同論文図2は「ジアシルグリセロールのエステル合成反応スキーム」という表題であり 「 ↑」と図示され,当 ,DehydrationH O(oil phase)H O(vapor) 2 2該反応により生成した水が,油相中から蒸気として脱水されている。 P1論文をもとに,イ号物件を生産する方法(イ号方法)を本件特許発明に対応するように表現するとすれば 「真空(減圧)にすることによっ ,て水を排出する系においてグリセリンと脂肪酸を含有する基質に1,3位選択性リパーゼを作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法 」というものである。 。 イイ号方法の分説上記イ号方法は次のとおり分説できる。 a真空(減圧)により脱水する系においてbグリセリンと脂肪酸を含有する基質にcエステル交換反応に用いる1,3位選択性リパーゼを作用させることdを特徴とするアルコールのエステル化方法。 2ロ号方法()P1論文に記載された,平成2年(1990年)から発売されたとされているコーン油に約10%のジアシルグリセロールを添加して酵素分解レシチンを安定的に溶解した食用油は 「花王エコナクッキングオイル」又は「エ ,コナクッキングオイル」であり,途中から「エコナ炒め油」に商品名が変更されたもの(ロ号物件)である。 文部科学省科学技術政策研究所第2研究グループP2氏作成の「独創的な商品開発を担う研究者・技術者の研究 (甲9)によれば,イ号物件の販売 」以前のロ号物件の販売時点から,ジアシルグリセロールの生産技術及び設備については確立していたと認められる。 したがって,ロ号方法についても,エステル化という観点からみれば,イ号方法と同じであるから,イ号方法に関する主張を引用する。 【被告の主張】1イ号方法について()アP1論文において平成11年(1999年)2月より発売されたと記載されている「ジアシルグリセロールを主成分とした食用油」の商品名が「エコナクッキングオイル」又は「健康エコナクッキングオイル」であること及びイ号方法が「グリセリンと脂肪酸を含有する基質に1,3位選択性リパーゼを作用させる 「アルコールのエステル化方法」であることは 」認めるが,その余は否認ないし争う。 イ号方法は,酵素反応を行う場所(以下「酵素塔」という)と減圧脱水を行う場所(以下「脱水槽」という)とを物理的に分離しているものであり 「脱水する系において 「1,3位選択性リパーゼを作用させる」も ,」のではない。イ号方法を本件特許発明の構成要件に即して分説すると以下のとおりである。 a減圧により脱水する系と,一定の系中水分を有する酵素反応を行う系とを備え,当該酵素反応を行う系において,bグリセリンと脂肪酸を含有する基質にc1,3位選択性リパーゼを作用させることdを特徴とするジグリセリド(DG)を主成分とする混合物の製造方法。 イ原告は,P1論文の図1を根拠とするが,P1論文の図1は脂肪酸及びグリセロールからジアシルグリセロール(DAG)に向かってエステル化が進行するに際してH Oが生成されるという一般的に知られた化学反応2を記載したにすぎず,構成要件Aの意味における「水(中略)を排出す」() 。。 る (以下「 中略 」を単に「…」と表記する )こととは無関係であるまた,P1論文の図2のうち「(脱水)の項の記載は,c) Dehydration 」液体相中の水分が気体相中に移行する速度(脱水速度)(oil phase)(vapor)を示す一般的な式を記載したものにすぎない。 そもそも,P1は,当時「健康エコナクッキングオイル (イ号物件) 」のヒトへの効果効能を評価することを職務内容としており,イ号方法の詳細を知る者ではない。 2ロ号方法について()アP1論文において平成2年(1990年)より発売されたと記載されている「家庭向け炒め油」の商品名が,当初は「エコナクッキングオイル」(又は「エコナ )であり,途中から「エコナ炒め油」に変更されたもの 」であること及びロ号物件に添加するジグリセリドの製造方法がイ号物件の製造方法と基本的に同一であることは認め,その余は否認又は争う。 ロ号物件は,コーン油に対して,10%程度のジグリセリド(正確には,ジグリセリドを主成分とする混合物)を添加して製造されるものであり,これに対して,イ号物件は,ジグリセリドを主成分とする混合物を製造し,それを他の食用油に添加することなく製品として出荷するものである。したがって,ロ号物件に添加するジグリセリドを主成分とする混合物の製造方法がイ号物件の製造方法と基本的に同一であるとしても,ロ号物件の製造方法がイ号物件の製造方法と同じであるとはいえない。 イイ号方法について述べた点はロ号方法についても共通であり,ロ号方法を本件特許発明の構成要件に即して分説すると以下のとおりである。 a減圧により脱水する系と,一定の系中水分を有する酵素反応を行う系とを備え,当該酵素反応を行う系において,bグリセリンと脂肪酸を含有する基質にc1,3位選択性リパーゼを作用させることdを特徴とする製造方法によってジグリセリド(DG)を主成分とする混合物を製造し,eこれにより得られたジグリセリド(DG)を主成分とする混合物をコーン油に対して10%程度添加することを特徴とする食用油の製造方法。 2争点1-2(構成要件Aの充足性)について【原告の主張】イ号方法の構成a「真空(減圧)により脱水する」は,本件特許発明の構成要件A「水…を排出する系において」に該当する。 【被告の主張】構成要件Aは「水又は水及び低級アルコールを排出する系において」であるが,後記(1)のとおり,これは「水又は水及び低級アルコールを排出することによって可及的乾燥した系において」の意味に解すべきである。また,本件特許発明は,可及的に乾燥した系において脂質分解酵素を作用させることを本質的特徴としているから,可及的乾燥した系であるか否かが問題となるのは,脂質分解酵素を基質に作用させる系(脂質分解酵素が存在する場)である。 この点,イ号方法においては,1,3位選択性リパーゼを作用させる系である「酵素反応を行う系」において減圧脱水をしておらず,また,かかる系における系中水分からして「可及的乾燥した」ともいえないので,構成要件Aの「水…を排出することによって可及的乾燥した系において (脂質分解酵素を 」作用させること)との要件を充足しない。 1「可及的乾燥した」の付加について()以下のとおり,構成要件Aは「水又は水及び低級アルコールを排出することによって可及的乾燥した系において」の意味に解すべきである。 ア明細書の記載原明細書の特許請求の範囲(4)を同(3)と対比すると,同(4)は「水又は低級アルコールを系外に排出する第(1)項記載の方法 」と書き換えるこ 。 とができる。また,これを同(1)と対比すると 「水…を系外に排出す ,る」ことは 「可及的乾燥した系において」酵素反応をさせることを前提 ,としている。 このように原明細書には,少なくとも?@「可及的乾燥した系+水を系外に排出しない」エステル化方法と,?A「可及的乾燥した系+水を系外に排出する」エステル化方法とが記載されているのであるから,本件特許発明は,このうち?Aを分割して出願したもの(本件分割出願)ということになる。 したがって,原告が,本件特許発明の構成要件Aは「可及的乾燥した系において」酵素反応をさせることを前提としないと主張することは,信義に反し許されない。 イ特許異議事件における原告の主張原告は,本件特許出願に対して提起された特許異議事件における平成8年6月3日付答弁書(乙8)において 「分割前の原明細書においても, ,本願明細書においても『水または水及び低級アルコールを排出する系』によって『できるだけ乾燥した系において作用させる,なるべく乾燥した系において作用させる』が実現することに何もかわりはない(2頁24。」行〜末行)として 「水…を排出する系」が「可及的乾燥した系」を実現 ,する手段であり 「水…を排出する系」との本件特許発明の構成要件が ,「可及的乾燥した系において」酵素反応をさせることを前提とすることを認めている。 したがって,かかる出願経過からしても,本件特許発明の構成要件Aが,「可及的乾燥した系において」酵素反応をさせることを前提としないと主張することは認められない。 ウ本件特許公報の記載構成要件Aが「可及的乾燥した系において」酵素反応をさせることを前提とすることは,本件特許公報の以下のような記載からも明らかである。 「本発明者は,脂質分解酵素の従来の使用形態の概念を越えた低水分の系において使用することの重要性と同時にそれによる反応速度の低下をカバーする方途の研究が必要であることとの認識から,脂質分解酵素の低水分の系における機能を研究して来た(本件特許公報3欄16 。」〜20行)「遂には既存の酵素には認められないような低水分でのエステル交換高活性の製剤を調製できることを見出した(特願昭55-29707号(本件特許公報3欄25〜27行) )。」「この発明で脂質分解酵素を作用させる系は,水または水及び低級アルコールを排出する系であり,そのような乾燥系で酵素がエステル交換活性を示すことが必要である。系中水分は文字通りの0であることを要しないが,目的とするエステル化物に対する水の溶解度以下になる水の量が目安として可及的乾燥させるのがよい。たとえば,目的とするエステル化物がTGである場合の系中水分は0.18%以下にするのがよい(本件特許公報4欄50行〜5欄7行) 。」エ本訴提起前及び提訴後の原告の対応原告は,本訴提起前の平成18年12月25日になされた被告との交渉の席において,本件特許発明が「可及的乾燥した系において」エステル化を行うことを必須の構成要件とすることを認めており,このことは,被告からの平成19年2月1日付け書状(乙33)に記載されている。 また 「可及的乾燥した系において」が分割出願に係る本件特許発明の ,必須の構成要件であることについては,本訴における原告の主張(可「『及的乾燥した系において基質にエステル交換活性を有する酵素を作用させる』のに貢献する方法の二として具体的に,酵素反応時における系中水分を問題とした,可及的水分を低下させた状態で(状態を維持しながら)酵素を作用させる方法が例示されている「原出願の当初明細書には, 。」,『可及的乾燥した系において基質にエステル交換活性を有する酵素を作用させる』方法として,二つの方法が記載されており,本件分割出願においては,後者を分割出願したものである 〔原告準備書面(2)55頁 )にお 」 〕いてこれを認めている。 2「可及的乾燥した」の意義について()「可及的乾燥」が意味する乾燥の程度に関して,本件特許公報には,本件特許発明が「脂質分解酵素の従来の使用形態の概念を越えた低水分の系」(3欄16〜17行)において酵素を作用させるものであることを記載しているほか 「系中水分は文字通りの0であることを要しないが,目的とする ,エステル化物に対する水の溶解度以下になる水の量が目安として可及的乾燥させるのがよい。たとえば,目的とするエステル化物がTGである場合の系中水分は0.18%以下にするのがよい(4欄50行〜5欄7行)と記 。」載している。 被告方法では,目的とするエステル化物はジグリセリド(DG)を主成分とする混合物であるところ,被告の試験結果(乙10)によれば,ジグリセリドに対する水の溶解度は約0.9%である。したがって,上記「目的とするエステル化物に対する水の溶解度以下」とは,被告方法との関係では「系中水分約0.9%以下」の意味であり 「可及的乾燥」は系中水分約0.9 ,%以下を目安として解釈されるべきである。すなわち,被告方法に関する限り,少なくとも,ジグリセリドに対する水の溶解度である約0.9%以下の系中水分の系において酵素反応を行うのでなければ 「可及的乾燥した系に ,おいて」酵素反応をさせることに該当しない。 3「系」の意義について()一般に「系」とは 「解析のために特に限界が定められたプロセスの全体, ,あるいは任意の部分を意味する (乙30『改訂化学工学の基礎と計算』3 」9頁)ものであり 「系」内への物質の入量 「系」外への物質の出量, , ,「系」内での物質の生成量,及び「系」内での物質の消費量を計算すること,つまり着目する任意の物質の収支計算を行うことのできる,何らかの方法により形式的に「境界」を決めることのできる,全体あるいは任意の部分をいう(同48〜49頁,60頁の各図の「系の境界」参照 。)『化学大辞典 (乙31)においても 「系」について「研究の便宜上, 』,自然の一部を区切って単純化し,目的とする現象や性質だけが明確に観察しやすいような有限の世界を人為的につくる。そのような一時的な仮設の対象物を系とよび,それにより研究を容易ならしめようとするものである。このような仮設の研究対象は,実在する自然の一部であってもよいし,また実際には実現不可能な仮想的設定で,単に思考実験を行うだけの理想体系であってもよい 」と説明しており,同様に『化学大辞典3 (乙32)において 。 』も「系」を「研究対象とする物体を有限にし,その性格をめいりょうにするため適当な実在の境界,あるいは抽象的な仮想的な境界を設けて問題の処理を簡単にする」ものと説明している。 本件に即していえば,水分の収支計算(又は水分量の測定)を行って,酵素反応時において「可及的乾燥」状態か否かを判定することのできる任意の部分,具体的には,被告方法における酵素塔?@の酵素剤を充填する部分が,本件特許発明における「水又は水及び低級アルコールを排出することによって可及的乾燥した系」か否かの対比を行うべき対象である。 4被告方法との対比()被告方法においては,酵素反応を行う場所(酵素塔)と減圧留去を行う場所(脱水槽)とを物理的に分離しており,1,3位選択性リパーゼを作用させる系である「酵素反応を行う系」において減圧脱水をしていないから,「水…を排出することによって可及的乾燥した系において (脂質分解酵素 」を作用させること)との要件を充足しない。 また,被告方法において,1,3位選択性リパーゼを作用させる系である酵素塔内の系中水分は約0.9%以下ではないから 「可及的乾燥した系」 ,との要件を充足しない。 【原告の反論】構成要件Aに「可及的乾燥した」を付加する理由はなく 「可及的乾燥した ,系」との要件を充足しないという被告の主張は前提において失当である。 また 「系」とは,エステル化を完成するための一連の装置群(少なくとも ,酵素塔と脱水槽を含む )を「系」と考えるべきであり,被告方法においては, 。 脱水槽において水を排出しているのであるから 「水…を排出することによっ ,て可及的乾燥した系において」の要件を充足する。 1「可及的乾燥した」を付加することについて()ア原明細書の記載について本件分割出願の内容は,原出願の特許請求の範囲に限られず,発明の詳細な説明に包含されていてもよいものである。したがって 「可及的乾燥 ,した系において」を必須の構成要件としていた原出願の特許請求の範囲と相違するという理由のみから原告の主張を信義に反すると指摘する被告の主張はそれ自体失当である。 イ特許異議事件における主張について被告が指摘する原告の特許異議事件における主張は,被告が異議申立書でした分割要件違反の主張に対して反論したものにすぎず,原告が「可及的乾燥した系において」ということを特許請求の範囲に含ませて解釈すべきと主張したものではない。 ウ本件特許公報の記載について被告が指摘する本件特許公報の記載は,いずれも反応開始時において可及的乾燥した系であるという条件の下で水を系外に排出するということに限定するものではない。 エ原告の対応について原告は 「可及的乾燥」の意味合いを共通に認識して,必須と認めたと ,いった経過は一切ない。 被告のいう平成18年12月25日の交渉時には,可及的乾燥という概念が,通常の酵素反応における水の量に比べると,水分18.7%でも極めて低水分であると説明されていた技術背景(甲37,乙6,甲38)の下で,酵素を水に溶かして使うような通常の酵素反応の水分領域を意図しないという考えを述べたものである。 2「系」の意義について()「系」本来は一筋の糸の意で,一連の関係をなすものという意味である(乙31 。被告が引用する乙第30号証及び乙第32号証によっても, )研究等を行う上で繋がりをどこまでも追求すると系の境界が無限定に拡大していくことを避けるため,便宜上,部分を切り取って「系」と考えることができるということが示されている。 本件において,本件特許発明もイ号方法も,脂質分解酵素を用いてアルコール類のエステルを得る技術を実施するものである。このエステル化物という目的物を得る反応の「系」とはいかにあるべきかが判断されねばならない。イ号方法では,酵素塔と脱水槽とは有機的な関連がある。すなわち,反応物は酵素塔から脱水槽に入り,水を除去して再度酵素塔に循環されており,目的とするエステル化物を得るために酵素反応と脱水とは一体不可分な反応・操作といえる。そうすると,単に酵素塔と脱水槽が装置として物理的に離れているとしても,現実は物理的に繋がった装置同士であり,かつ目的物を得るために反応物は循環され戻るという一連の関連する内容であるから,酵素によりエステル化を行う「系」として,酵素塔・脱水槽を含めて考えるのが適切である。 エステル化反応に関していえば,乙第30号証にあるように,解析のため特に限界を酵素塔のみに定める必要も必然もなく,酵素反応と脱水とをトータルで系として考える方が科学的な理解も適切に行える。 したがって,エステル化反応において「系」とは,反応を行う一部の装置である酵素塔のみを取り出すべきでなく,エステル化を完成するための一連の装置群を(少なくとも酵素塔と脱水槽を含む 「系」と考えるべき )である。 そうすると,被告方法では脱水槽において水を排出している以上 「水,…を排出する系において」との要件を充足する。 3争点1-3(構成要件Cの充足性)について【原告の主張】イ号方法の構成c「エステル交換反応に用いる1,3位選択性リパーゼを作用させること」は,本件特許発明の構成要件C「エステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させること」に該当する。 1「エステル交換活性を有する」の意義 ()被告は,構成要件Cの「エステル交換活性」の意義を「絶対値Ka又は相対値Krとして定義されている」と主張するが,本件特許公報において,「この発明で,エステル交換活性は,低水分系におけるエステルに結合する脂肪酸を交換する活性をいう (3欄41〜43行)と定義付けされている 」とおり,この定義は数値限定を含むものではないし,構成要件Cの文言上も数値限定はされていない。 よって,構成要件Cの「を有する」は,文字どおり「をもつ」の意味であり 「エステル交換活性を有する」とは,エステル交換をもつものであれば ,足りる。あえてKa又はKrを用いて表す場合には 「ゼロより大きい」と ,いう意味である。 2被告方法の1,3位選択性リパーゼがエステル交換活性を有すること()被告は,平成11年3月18日までは,担体に固定化されていない酵素を購入し,被告において担体に固定化して固定化酵素(以下「第1酵素」又は「第1酵素剤」という )を調製しており,同月19日以降は,当初から担 。 体に固定化された固定化酵素(以下「第2酵素」又は「第2酵素剤」という )を購入して用いている。 。 まず,第2酵素剤は,社(以下「ノボ社」という )のNOVO NORDISK 。 「(以下「リポザイム」という )であり,かかる酵素はLipozyme RM IM 」 。 エステル交換活性を有している。 また,第1酵素は,第2酵素と同じ微生物由来の酵素で,同じようにノボ社の固定化酵素或いはノボ社の固定化の方法により固定化した酵素であることからすると,第2酵素と同様の性質を有していることは明らかである。よって,第1酵素もエステル交換活性を有する。 【被告の主張】イ号方法の構成cの「1,3位選択性リパーゼ」が「脂質分解酵素」に該当することは認めるが,構成要件Cの「エステル交換活性を有する脂質分解酵素」に該当することについては否認する。 1「エステル交換活性」の意義()本件明細書の発明の詳細な説明を参酌すれば,?@「エステル交換活性」の意義は絶対値Ka又は相対値Krとして定義されていること,?Aその測定時においては,ヤシ油とステアリン酸メチルエステルとの等重量混合物20g,及び酵素剤1gを,系中水分の合計を0.08±0.02%の範囲内として,所定の条件で所定時間反応させた後,ヤシ油から遊離した脂肪酸であるラウリン酸の量を測定し,一定の算式にあてはめることによってKa値を求めること,?B酵素剤1gの脂質分解活性(国際単位)でKa値を除すことによって相対値Krを求めることが明らかである。 原告がエステル交換活性の定義として主張する「低水分系におけるエステルに結合する脂肪酸を交換する活性をいう」との記載では 「低水分系」が ,何を指すのか 「活性」をどのように測定するのか,まったく不明であり, ,その後に続く「…こととし,それを数値で表現するときは,以下の定義に準じるものとする 」と併せ読んで,初めて意味をなすものである。仮に, 。 「この発明で,エステル交換活性は,低水分系におけるエステルに結合する脂肪酸を交換する活性をいう」との記載が「エステル交換活性」を定義しているといい得るとしても,問題はエステル交換活性を「有する」の意義であり 「有する」か否かは数値で判断する以外に方法はない。したがって, ,「エステル交換活性を有する」か否かの判断において絶対値Ka又は相対値Krを考慮する必要はないとの原告主張は,根本的に誤りである。 2被告方法の1,3位選択性リパーゼについて()ア第1酵素剤が「リポザイム」ではないこと第2酵素剤がリポザイムであることは認める。 しかし,被告がロ号製品の発売当初の平成2年当時から平成11年3月18日まで被告方法において使用していた酵素剤はリポザイムではない。 当該酵素剤は,担体に固定化されていない酵素を購入し,これを被告社内において担体に固定化した上で,固定化酵素剤として用いていたものである。この被告社内において担体に固定化した酵素剤が,第1酵素剤に相当するものであり,これはリポザイムではない。 イ第2酵素剤のエステル交換活性原告は,第2酵素剤がエステル交換活性を有すると主張するが 「エス,テル交換活性を有する」か否かは,あくまでKa値又はKr値によって判断されるものである。しかし,本件特許公報を見ても,Ka値又はKr値がいくら以上であれば「低水分系でエステル交換活性を有する」こととなるかについての下限値を知る手がかりは存在しない。 特許明細書の記載が不明確であることによる不利益は特許権者が負うのが当然であるから,本件のように特許請求の範囲の文言の意味が不明確であるがゆえに被告方法との対比が不可能である場合は,被告方法が特許発明の技術的範囲に属しないものとして扱うほかはない。 ウ第1酵素剤のエステル交換活性原告は,第1酵素剤がリポザイムであることを前提に,第1酵素剤がエステル交換活性を有すると主張するものであるところ,前記のとおり,第1酵素剤はリポザイムではないから,これを前提とする原告の主張は失当である。 4争点1-4(構成要件Dの充足性)について【原告の主張】イ号方法の構成d「を特徴とするアルコールのエステル化方法」は,本件特許発明の構成要件D「を特徴とするアルコールのエステル化方法」と同じである。 【被告の主張】イ号方法の構成dのジグリセリド(DG)を主成分とする混合物の製造が「アルコールのエステル化」に該当することは認めるが,それが「 構成要件 (AからC)を特徴とする」方法であることは争う。 5争点2-1-1(無効理由1における主位的主張〔新規性の欠如 )につい 〕て【被告の主張】1総論()本件特許発明に含まれる化学反応は次の二つのものである。 ・アルコール+脂肪酸↑脂肪酸エステル+H O(水)2・アルコール+脂肪酸の低級アルコールエステル↑脂肪酸エステル+低級アルコールこれを,本件特許発明の特許請求の範囲に即して分けると 「水を排出す ,ることによって可及的乾燥した系においてアルコール及び脂肪酸を含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法(以下「実施形態?@」という )と 「水 。」 。,及び低級アルコールを排出することによって可及的乾燥した系においてアルコール及び脂肪酸の低級アルコールエステルを含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法(以下「実施形態?A」という )とに分けることができる。 。」 。 そして,実施形態?@における「エステル化」とは 「アルコールと脂肪酸 ,から脱水してエステルを生成する反応」であり,他方,実施形態?Aにおける「エステル化」とは 「他のアルコールとのアルコール交換反応によって脂 ,肪酸の低級アルコールエステルから新たなエステルを生成する場合のエステルを生成する反応」である。 被告は,無効理由1及び無効理由2において,本件特許発明のうち,少なくとも実施形態?@が新規性ないし進歩性を有しないものであることを主張する。実施形態?@が新規性ないし進歩性を欠如する場合には,本件特許の全体が無効とされるべきものだからである。 2周知技術()一般に脂肪酸とアルコールとのエステル化反応は,以下のとおり図示される。 RCOOH(脂肪酸)+R'OH(アルコール)□RCOOR'(エステル)+H O(水)2このエステル化反応は,一方的に右方向に進むのではなく,同時に逆方向にも進行し,ある時点で両反応の速度が一致し平衡に至る。通常,エステル化反応の副生成物である水を反応系から除去すると平衡が崩れ,反応が右方向に進むようになるので,水を反応系外に出しながらエステル化を行い,目的とするエステル化物の収率を上げるのが周知技術となっている。 このことは,脂質分解酵素を用いた場合も同様である。リパーゼを触媒として用いる反応において,一般に,水分が多い場合には反応は左(加水分解)の方向により多く進み,水分が少ない場合には反応は右(エステル化)の方向により多く進むこと,この加水分解とエステル化は常に同時に進行し,ある時点で平衡に至ること,及び水を反応系から除去すると平衡が崩れ,エステル化物の収率を上げることができることは,技術常識である。 3引用発明1の記載内容()引用例1(合衆国特許第2,676,906号明細書)には,別紙引用例【引用例1の記載】の内容が記載されているところ,引用例1の引用部分?@ないし?C,?E,?G及び?Iないし?K(以下,単に「引用例1の引用部分?@」などという )によれば,引用例1には,以下の内容が記載されている。 。 アトウゴマの実から高い脂質分解活性(比活性0.55 「比活性」につ 。 いて 「リパーゼ調製物の活性は,対象としている物質1gあたり1分あ ,たりに放出される酸のミリ当量を意味する,リパーゼの比活性として表している 」と定義されている〔乙13の訳文7頁24行以下)を有する 。 〕。 リパーゼ製品を得て(実施例?T ,これを乾燥,脱脂してさらに高い(比 )活性7.33)脂質分解活性を有するリパーゼ粉体が得られること(実施例?U 。)イ当該リパーゼ粉体と脂肪酸を混合し,その混合物の中にグリセロールを加え,エステル化反応を行うこと(実施例?Y 。)ウその際,エステル化反応により水が生成されると同時に,これを除去するために,乾燥窒素をバブリングさせながらエステル化反応を行うこと(実施例?Y 。)4本件特許発明と引用発明1との対比()ア上記(3)におけるトウゴマの実から得られた高い脂質分解活性を有する「リパーゼ粉体」は,本件特許発明の「脂質分解酵素」に相当する。また,引用例1には,エステル化反応による水を,それが生成されると同時に除去するために,乾燥した不活性ガス(例えば窒素又は二酸化炭素)をその混合物の中にバブリングさせ,エステル化反応による水を除去することによってエステル化反応の程度が高くなるとの内容が記載されており(引用例1の引用部分?G ,引用発明1の乾燥窒素バブリングは,本件特許発明 )の「水…を排出する」に相当する。 この点につき,引用発明1における実施例?Yの系中水分を被告において追試したところ,エステル化反応の進行に応じて系中水分は0.29%から0.41%であり,極めて低水分であった(乙22の2頁 。)したがって,引用発明1は,本件特許発明の構成要件「水を排出することによって可及的乾燥した系において(脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法 」を実質的に開示している。 )イ引用例1には 「エステル交換活性を有する」脂質分解酵素を作用させ ,ることについて明示的な記載はないが,引用例1の引用部分?D及び?Fによれば,低水分系での加水分解について開示されているほか,エステル化(実施例?Y)に使用したものと同一のリパーゼ粉体を用いて,平衡に達するまで約25℃で静置することにより加水分解を行なう旨記載されており(実施例?V〔引用例1の引用部分?J,実施例?Vにおいては,水比率が 〕)最も低い場合(実施例A)の平衡点における系中水分は,わずか0.38%である。 そうすると,本件特許発明が「エステル交換活性を有する」脂質分解酵素を基質に作用させているのに対し,引用例1には「エステル交換活性」を有する酵素剤を用いることについて明示的な記載をしていないが 「エ,ステル交換」は出発物質のエステルの加水分解と,新たなエステルを合成するエステル化とが並行して生じる反応と考えることができるから,引用発明1のリパーゼ粉体が低水分系での加水分解活性及び低水分系でのエステル化活性を有することが記載されているということは,引用例1には,低水分系での「エステル交換活性を有する」脂質分解酵素が実質的に開示されていることに帰着するものである。 この点を明確にするため,被告において,引用発明1のリパーゼ粉体について,本件特許発明における「エステル交換活性」の定義である絶対値Ka及び相対値Krを測定するための追試を行った。その結果,引用発明1のリパーゼ粉体のKa値は29.9であり,Kr値は0.554であった(乙22の2頁 。これは,本件明細書における実施例1(Ka値28. )5,Kr値0.0248)及び実施例3(Ka値7.1,Kr値0.0158)と比較して遜色ないレベルである。 したがって,引用例1には 「エステル交換活性」を有する酵素剤が開 ,示されている。 5以上より,引用例1に記載された引用発明1は,本件特許発明の「水を排()出することによって可及的乾燥した系においてアルコール及び脂肪酸を含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法」のすべての構成を開示しているから,本件特許発明は引用発明1と同一である。 【原告の主張】1引用発明1の意義()ア引用発明1は,リパーゼの基礎研究が始まった1970年よりもさらに15年以上前になされたものである。したがって,精製が不十分な粗酵素標品を用いた結果に関するものであり,実用化の観点から,当業者に見向きもされなかった文献である可能性が極めて高い。また,引例発明1から原出願までの25年以上の間はおろか,現在まで工業的な実用化がなされていないことを考慮すると,1970年代のリパーゼの基礎研究の対象から除外されていた可能性が高い。 イまた,引用例1において,脂肪酸及びグリセロールと接触させることによりグリセリドを合成する方法は,特定の製造方法によって製造された特殊なリパーゼ調製物の用途の1つとして,しかも重要な用途でないものとして記載されており(乙13の2欄53〜3欄7行,同訳文3頁12〜17行 ,実際,かかるエステル化方法に係る発明は,引用例1がCIP出 )願(部分継続出願)されるに際して放棄されている。 ウこの引用発明1は,フォローも展開もされない技術資料として眠っていたことからも明らかなように実用的なものではなく,これを基に他の技術と結び付けて発展させようとする活動を阻害する要因があったといえる。 すなわち,原出願当時,当業者が引用例1に記載のグリセリドの合成方法を用いようとする動機付けは,極めて低い。 2引用例1の記載内容()ア引用例1の引用部分?Gにつき,不活性ガスをバブリングしてエステル化反応とともに生じる水を除くことは,単に好ましいと記載されているにすぎず,被告の提出した実施例?Yの再現実験(乙22)要旨をみれば,エステル化により生成する水は殆どそのまま系中水分の増加(0.29%から0.41%へ増加)となって顕れており,原告の計算(甲41)によれば,実質的に水分除去が行われていない。このような反応条件で長時間反応を行った場合,水分増加によりエステル化の効率は低下し,十分に反応が完結しないことは明白といえる。 イまた,引用発明1のトウゴマの実のリパーゼ調製物を用いたエステル化反応は「約5℃〜20℃の範囲の温度」という制約があって(引用例1の引用部分?G ,実施例?Yでは10℃という低温で反応が行われていること )(引用例1の引用部分?K)からすると,本件特許発明における「エステル交換活性」の測定条件である40℃において,実質的に「エステル交換活性」があることは全く予想できず考えられない。 なお,被告による試験結果(乙22)は,本来 「殻を剥いた」トウゴ ,マの実を用いるべきであるのに,引用例1の訳文の誤訳に基づいて「殻付きの」トウゴマの実が用いられた可能性が高く信頼性が極めて低いものであるから,採用されるべきものではない。 3本件特許発明と引用発明1との一致点及び相違点()上記(2)によれば,引用発明1と本件特許発明は 「アルコール及び脂肪 ,酸を含有する基質に,酵素を作用させるアルコールのエステル化方法 」の。 点で一致し,以下の点で相違する。 ア酵素を作用させる系が,前者は「水又は水及び低級アルコールを排出する系」であるのに対し,後者は「実質的に水が排出されない系」である点(以下「相違点ア」という。。)イ用いる酵素が,前者は「エステル交換活性を有する脂質分解酵素」であるのに対し,後者は「トウゴマの実のリパーゼ調製物」である点(以下「相違点イ」という。。)4相違点の検討 ()ア相違点アについて引用例1のエステル化反応は 「約5℃〜20℃の範囲の温度」に制(ア) ,約され(引用例1の引用部分?G ,実施例?Yでは純グリセリンの融点約 )18℃を下回る10℃でエステル化が実施されており,グリセリンが固体に近い状態でバブリングされているのであるから,当業者はこのような低温度で行なう脱水手段について,充分な実効性があるとは考えない。 引用例1のバブリングに関し,引用例1には「その混合物を攪拌し,(イ)またエステル化反応による水をそれが生成されると同時に除去するために,乾燥した不活性ガスたとえば窒素又は二酸化炭素をその混合物中にバブリングさせるのが好ましい。エステル化反応による水を除去することによって,エステル化反応の程度が高くなる(引用例1の引用部 。」分?G)との記載がある一方で 「反応混合物に添加する水の量は,それ ,が加水分解の程度に影響するので,重要である。…さらに,水の比率を調整することによって,脂肪酸の部分グリセリド(モノ-及びジ-グリセリド)に対する比率を任意に変えることができる(乙13の4欄。」61〜71行,同訳文5頁26〜6頁1行)と記載されているように,水の量が重要であるとしている加水分解反応においてもバブリングを用いているのである。 このことからすると,バブリングは反応に大きく影響するほど水を排出するものではないと当業者は理解する。すなわち,引用例1では,その低温条件において不活性ガスをバブリングしてエステル化反応とともに生じる水を除くことは実質的には開示されていない。 本件明細書には 「しかし,酵素の作用は一般に水の存在と不可分で(ウ) ,あり,…かかる非乾燥系,或いは加水した非均質系において脂質分解酵素を作用させて行なうエステル化方法は,必然的に加水分解物(エステル化の原料)との並存均衡下にあり,従って合成率が低いという欠点がある(1頁2欄6〜14行)と記載されるとともに 「この発明は, 。」 ,水または水及び低級アルコールを排出する系においてアルコール及び脂肪酸または脂肪酸の低級アルコールエステルを含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを骨子とするアルコールのエステル化方法である(2頁3欄32〜36行)と記載されて 。」いるように,水を排出することにより加水分解を抑制し目的とするエステルの合成率を高めることを特徴とする発明である。また 「系を可及 ,的乾燥した状態にするのに,基質及び酵素は可及的水分を低下させるが,後述のように酵素を基質に作用させつつ水を系外に排出することも,系を乾燥させる。…水または低級アルコールを系外へ排出する方法としては,減圧留去または吸収剤を用いて行なうのがよい(3頁5欄7〜。」15行)と記載されているように,本件特許発明における水の排出は,実質的に水が排出されない引用例1の低温に限定されたバブリングと明確に区別できる程度の実質的な内容である。 以上のように,引用例1に触れた当業者は,引用発明1における低温(エ)バブリングは,反応に大きく影響するほどの水を排出するものではない或いは実効性がないと理解するのであり,本件特許発明の「水又は水及び低級アルコールを排出する系」を容易に想到できるものではない。 イ相違点イについて引用例1に記載のリパーゼ調製物は,その調製方法からも明らかなよ(ア)うに粗酵素標品であり,脂質分解酵素を含有するとともにトウゴマの実の他の成分をも含有した調製物である。 引用例1には,安定なトウゴマの実由来のリパーゼ調製物を製造する方法に関する発明が記載されているが,この安定とされている引用例1のリパーゼ調製物でさえ,エステル化の温度は20℃以下とされ,実施例では10℃でエステル化を実施しているように,純グリセリンの融点(約18℃)を下回る流動性が極めて乏しい中で反応を行わざるを得ないことが示されており,リパーゼの安定性が懸念されていることを窺い知ることができる。また,トウゴマの実を摩砕してリパーゼ調製物を得る引用例1の調製法等から明らかなように,引用例1のトウゴマの実のリパーゼ調製物には,脂質関係酵素を含む酵素が多数混在しており,これを用いた加水分解反応やエステル化反応においては,これら混在した酵素が複雑に影響し,具体的な酵素の影響を正確に把握することはできない。引用例1においては,加水分解反応の温度(約20〜35℃)とエステル化反応の温度(約5〜20℃)が異なっており,それぞれ異なる酵素が作用している可能性もある。 したがって,当業者が原出願時に引用例1に触れたとしても,トウゴマの実のリパーゼ調製物に関して記載された引用例1に記載の開示内容(トウゴマの実のリパーゼ調製物を用いた加水分解反応やエステル化反応の方法)は,トウゴマの実のリパーゼ調製物特有の特性であると考える。 本件特許発明における「脂質分解酵素」は,実施例の記載等から,実(イ)質的には微生物由来の菌体外酵素を意味すると解されることから,引用発明1のような,酵素の作用が正確に把握できない粗酵素標品であり,研究が積極的に進められていないトウゴマの実のリパーゼ調製物とは本質的に異なるものである。 したがって,当業者が原出願時に引用例1に触れたとしても,引用例(ウ)1に記載の方法において微生物由来の菌体外酵素を用いようとは通常考えない。 ウ以上のように,本件特許発明は引用発明1とは異なるものである。 【被告の反論】1被告の再現実験(乙22)の信用性について ()殻付きのトウゴマの実を使用したことにつき 「」には「殻を取り , shelled去った」という意味と「殻のある」という意味があり,引用例1の訳文は誤訳ではない。また,引用例1と同様,被告の再現実験(乙22)においても遠心分離処理を行っており,殻付きのトウゴマの実を用いたとしても殻は除かれるため,クリーム状物が得られた段階では,殻付き,殻なしでほとんど差異はない。なお,念のため被告において殻を取り去ったトウゴマの実を用いて乙第22号証と同様の試験を行ったところ,トウゴマリパーゼのエステル交換活性において大きな差はなかった。 2相違点アが存在しないこと()原告の計算(甲41)によれば,引用例1においては,エステル化反応の4.5時間後に生成した水分は0.1354%であり(結果5-C ,バブ)リングにより系外に排出された水分は0.015%であって,エステル化により生成された水分の約11%が系外に排出されていることになるから,実質的に水分除去が行われていないか又は水分除去が決して容易でないとはいえない。 引用例1が 「エステル化反応の程度が高くなる」ことを目的として「エ ,ステル化反応による水をそれが生成されると同時に除去する」エステル化方法を開示していることは,引用例1の引用部分?Gから明らかである。 したがって,引用発明1は,本件特許発明の「水(又は水及び低級アルコール)を排出する系において」との構成を備えており,原告の主張する相違点アは存在しない。 3相違点イが存在しないこと()引用発明1の「トウゴマの実のリパーゼ調製物」は本件特許発明の「脂質分解酵素」に含まれる以上,本件特許発明の「脂質分解酵素」と引用発明1の「トウゴマの実のリパーゼ調製物」とは相違点ではなく,一致点である。 6争点2-1-2(無効理由1における予備的主張〔進歩性の欠如 )につい 〕て【被告の主張】1本件特許発明と引用発明1との一致点及び相違点()引用発明1が記載された引用例1には,乾燥窒素バブリングによって水を排出する系において,アルコール(グリセロール)及び脂肪酸(オレイン酸)からなる基質に脂質分解酵素(リパーゼ粉体)を作用させてエステル化反応を行うことが開示されている。 したがって,本件特許発明と引用発明1とは 「水を排出する系において, ,アルコール及び脂肪酸を含有する基質に,エステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法」である点で一致し,本件特許発明が「水…を排出することによって可及的乾燥した系において」脂質分解酵素を作用させてエステル化を行うのに対し,引用発明1には,可及的乾燥した系において脂質分解酵素を作用させることまでは明示的な記載をしていない点において,相違しているということもできる。 2相違点の検討()ア「可及的乾燥」について「可及的乾燥」の意義について,本件明細書には「この発明で脂質分解酵素を作用させる系は,水又は水及び低級アルコールを排出する系であり,そのような乾燥系で酵素がエステル交換活性を示すことが必要である。系中水分は文字通りの0であることを要しないが,目的とするエステル化物に対する水の溶解度以下になる水の量が目安として可及的乾燥させるのがよい。たとえば,目的とするエステル化物がTGである場合の系中水分は0.18%以下にするのがよい(4欄50行〜5欄7行)と記載され 。」ている。また一般に「可及的」とは「なるべく。できるだけ 」という意 。 味である。 以上によれば,本件特許発明の「可及的乾燥」の意味は,基質に脂質分解酵素を作用させつつ,水又は水及び低級アルコールを反応系外に排出することによって,系中水分が文字通りの0であることは要しないが,酵素がエステル化を行う活性が失われない程度にできるだけ低水分とすることであり,その際に「目的とするエステル化物に対する水の溶解度以下になる水の量」が目安となる。 イ引用例2の記載内容BIOTECHNOLOGY 昭和54年(1979年)に発行された刊行物「」1巻5号の211ないし216頁(引用例2)には,別紙引LETTERS用例【引用例2の記載】の内容が記載されているところ,引用例2の引用部分?@ないし?B及び?Dないし?Iによれば,引用例2には,以下の内容が記載されている。 真菌菌糸体の細胞結合性脂肪分解酵素を用いて,グリセロール(アル(ア)コール)とオレイン酸(脂肪酸)からグリセリドを合成する反応について記載されていること。 当該菌糸体の調製として,培養し,集菌し,凍結乾燥して脱脂したこ(イ)と。 使用前にすべての溶媒をモレキュラーシーブを通して乾燥させたこと。 (ウ)撹拌槽型反応器におけるグリセリド合成度に対するオレイン酸濃度の (エ)影響の結果が図3に,充填床型反応器と撹拌槽型反応器の比較が図4に,それぞれ示されており,図3,図4の説明文によれば反応水分量を0.05%未満に維持していること。 充填床型反応器は菌糸体5gとモレキュラーシーブ5gを充填したこ(オ)と(表2下の説明文 。)ウ引用例3の記載内容FEMS Microbiology 昭和53年(1978年)に発行された刊行物「」3巻4号の223ないし225頁(乙24。以下「引用例3」 Lettersといい,同刊行物に記載された発明を「引用発明3」という )には,別 。 紙引用例【引用例3の記載】の内容が記載されているところ,引用例3の引用部分?Aないし?Dによれば,引用例3には,以下の内容が記載されている。 アーヒザス菌糸体凍結乾燥標品を用いて高度のエステ(ア) R. ()arrhizusル化が実現できること。 乾燥剤としてモレキュラーシーブを使用した場合も合成度が改善され(イ)ること(表3において,モレキュラーシーブの添加量が15重量%までは,添加量が多いほどグリセリドの合成度が高い。。)エ相違点の容易想到性についてリパーゼ酵素の反応に平衡があり,平衡が反応系の水の量に支配されること,換言すれば,反応系の水分が低下すると反応がエステル化に進むようになることは周知事項である。また,水分を低下させる具体的方法としては,モレキュラーシーブのような乾燥剤(脱水剤)を用いる方法(引用発明2,引用発明3 ,乾燥した不活性ガス(窒素など)をバブリングさ )せる方法(引用発明1)などが周知技術として存在し,当業者が適宜選択し得るものである。 そして,本件特許発明の「可及的乾燥した系」とは,系中水分を文字どおりの0とすることを要しないこと,引用例2には反応器中に脱水剤(モレキュラーシーブ)を充填し,反応水分量を0.05%未満でエステル化反応を行っていることが開示されていること,かかる「0.05%未満」との水分量は,本件特許発明の「可及的乾燥した系」に該当すると解されることを勘案すれば,前記相違点に係る構成については,引用発明1に引用発明2,引用発明3及び周知技術を組み合わせることによって当業者が容易に想到し得ることといえる。 3以上より,本件特許発明は,少なくとも引用発明1ないし引用発明3及び ()周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 【原告の主張】1被告が平衡論を論じるために周知技術として挙げる文献(乙6,15〜2()1)はいずれも,明らかに水分量の多い系を前提とするものである。 したがって,これらは本件特許発明の想定する脂質分解酵素の従来の使用形態の概念を越えた低水分の系における技術とは次元の異なる系(化学合成と同様に考えられることが可能な水分量の多い系)での教示であり,本件特許発明と同じレベルで議論できるような技術内容ではない。 2引用発明1におけるバブリングは,引用例1の引用部分?Gに「その混合物()を攪拌し,またエステル化反応による水をそれが生成されると同時に除去するために,乾燥した不活性ガスたとえば窒素又は二酸化炭素をその混合物の中にバブリングさせるのが好ましい 」と記載され 「加水分解反応の間, 。,その混合物は,撹拌するにしても,穏やかに撹拌するべきである。…便利で安全な撹拌方法は,不活性ガスたとえば窒素又は二酸化炭素をその混合物の中へバブリングさせる方法である(乙13の5欄16〜21行,同訳文 。」6頁12〜15行)と記載されているように,リパーゼの反応における撹拌のために必須とされており,引用発明2及び引用発明3で用いられているモレキュラーシーブに変更する阻害要因を有している。 7争点2-2-1(無効理由2における主位的主張〔新規性の欠如 )につい 〕て【被告の主張】1引用例2の記載内容()引用例2には,前記6【被告の主張】(2)イの(ア)ないし(オ)の内容が記載されている。 2本件特許発明と引用発明2との対比()引用例2には,アルコール及び脂肪酸からなる基質に脂質分解酵素を作用させてエステル化反応(グリセリドの合成)を行なうことが開示されている。 また,引用例2には,エステル化反応を行なう反応器中に脱水剤を充填し反応水分量を0.05%未満とすることが記載されており,引用発明2の「脱水剤により反応水分量を0.05%未満に維持する反応系」は,本件特許発明の「水…を排出することによって可及的乾燥した系」に相当する。 さらに,被告において引用発明2の脂質分解酵素(リゾプス・アーヒザス由来のリパーゼ)について,本件特許発明における「エステル交換活性」の定義である絶対値Ka及び相対値Krを測定するための追試を行なった。その結果,引用発明2の調製菌糸体(リゾプス・アーヒザス由来のリパーゼ)のKa値は7.6であり,Kr値は0.021であった(乙25の2頁 。)これは,本件明細書における実施例3(Ka値7.1,Kr値0.0158)と比較して遜色ないレベルである。 したがって,引用例2には「エステル交換活性」を有する酵素剤が開示されている。 3以上より,引用発明2の記載された引用例2には,本件特許発明の「水を()排出することによって可及的乾燥した系においてアルコール及び脂肪酸を含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法」のすべての構成を実質的に開示しているから,本件特許発明は引用発明2と同一である。 【原告の主張】1本件分割出願の特許異議申立における判断()被告は,本件分割出願に対して特許異議申立てを行ったが,その異議決定において 「本願発明は甲第2号証〜甲第5号証に記載されたものと認める ,ことができないばかりでなく,同号証記載のものから容易に発明をすることができたものとも認めることができない(甲12の2)と認定されてい 。」る。かかる特許異議申立てで提出された甲第3号証及び甲第5号証は,それぞれ被告が無効理由2の引用例として挙げる引用例2及び引用例4であることから,被告が主張する無効理由2については,特許庁において一度判断されており,本件特許が有効であることが確認されている。 2本件特許発明と引用発明2との対比()ア引用例2の記載引用例2は,表題を「連続反応系における真菌細胞結合性酵素によるグリセリド及びエステルの合成」とする刊行物であり,その要約には 「真,菌菌糸体の細胞結合性脂肪分解酵素を用いたグリセリドと脂肪酸エステルの合成について述べる 」と記載され,別紙引用例2の引用部分?B及び?C 。 の内容が記載されている。 イ本件特許発明と引用発明2との一致点及び相違点本件特許発明と引用発明2とを対比すると,両者は「水を排出する系においてアルコール及び脂肪酸を含有する基質に酵素を作用させるアルコールのエステル化方法」である点で一致し,用いる酵素が,前者は「エステル交換活性を有する脂質分解酵素」であるのに対して,後者は「真菌菌糸体の凍結乾燥調製物」である点で相違する。 ウ相違点の検討本件明細書には 「この発明で,エステル交換活性は,低水分系にお(ア) ,けるエステルに結合する脂肪酸を交換する活性をいうこととし,それを数値で表現するときは,以下の定義に準じるものとする 」と記載され, 。 この評価方法として 「ヤシ油(日本薬局方所載規格)とステアリン酸 ,メチルエステル(主としてCHCOOCH 及びCHCOO1735 31531CH とからなりCHCOOCH を含まない)との等重量混合物 3 1123 320gr,及び(湿っているものは真空乾燥により可及び的水分を下げた)酵素剤1gr(系中水分の合計は0.08±0.02%の範囲内 」からなる溶媒を含まない特定の低水分系において 「40℃で2 ) ,4時間(1日)反応させる」旨記載されている(本件特許公報の2頁第3〜4欄 。)一方,引用例2には 「真菌菌糸体の凍結乾燥調製物」が本件特許発 ,明における「エステル交換活性」を有することは記載されておらず不明である。引用発明2における反応は,基本的に溶媒(溶剤)を用いることを前提とする反応であり,例えば,引用例2で主たる反応として記載されているグリセロール(アルコール)とオレイン酸(脂肪酸)からグリセリドを合成する反応系は,著しく多量の溶媒中に0.2%の濃度のグリセリン及び10%の濃度のオレイン酸を含む系(基質:溶媒?垂P:9)であることからすると,このような反応系で用いられる引用発明2の「真菌菌糸体の凍結乾燥調製物」が,特別の思考を要することなく,溶媒を用いず(すなわち溶媒中に溶解する水の供給がない ,基質が, )濃厚な系で評価される本件特許発明の「エステル交換活性」を有するとは通常は考えられない。 この点,被告は,リゾプス・アーヒザス由来のリパーゼが「エステル交換活性」を有する旨主張するが,その根拠とする乙第25号証の試験では引用発明2と用いる菌体が異なっている。 また,本件特許発明における「脂質分解酵素」は,実質的には微生物(イ)由来の菌体外酵素を意味すると解されることから,引用発明2の「真菌菌糸体の凍結乾燥調製物」は本件特許発明の「脂質分解酵素」に含まれない。 引用例3は引用例2と継続した一連の報告であるが,引用例3の引用部分?@によれば,細胞外酵素(菌体外酵素)及び細胞内酵素(菌糸体)が区別して研究されていたことが示されている。また,引用例3の引用部分?Eによれば,菌糸体を用いた反応が,所定量の水の存在下で行う菌体外酵素を用いた反応の結果と同等であることに興味が示されている。 すなわち,所定量の水の存在下で行う菌体外酵素を用いたエステル化反応が当時の良好な結果のスタンダードであるという当業者の認識が示されており,菌体外酵素についてこのような当業者の認識がある場合に,水を排出する低水分の系で反応を行う引用発明2において 「真菌菌糸 ,体の凍結乾燥調製物」に代えて菌体外酵素を用いようとすることは,容易に想到し得ない。 3以上のように,本件特許発明は,原出願前に頒布された刊行物である引用()発明2とは異なるものである。 【被告の反論】1特許異議申立事件について()原告が指摘する特許異議申立事件に係る決定では 「エステル化反応の進 ,行により生成した水…を排出しながら行えば,平衡がエステル側に傾きエステル化がより進行することは当業者にとって常識である」ことについて「根拠が示されていない」と認定されているが,本件訴訟においては,さらに証拠(乙14ないし21)を提出して原出願前から存在した技術常識を具体的かつ詳細に主張,立証しており,判断の前提が異なる。 また,同事件においては,被告は,引用例2(同事件における甲第3号証)において系中水分量を0.05%未満に維持して脂質分解酵素を作用させることが明記されていることを主張していなかった。 よって,同事件に係る決定は本件の参考にはならない。 2相違点が存在しないこと()引用発明2における「真菌菌糸体の凍結乾燥調製物」が本件特許発明の「脂質分解酵素」に相当する(文言上含まれる)ことは明らかであり,原告もこれを争っていないのであるから,引用発明2の脂質分解酵素が「真菌菌糸体」に由来するものであるか,また「凍結乾燥調製物」であるかは関係のないことである。 また,引用発明2における「真菌菌糸体の凍結乾燥調製物」が「エステル交換活性を有する」ものである点については,乙第25号証の追試により明らかである。原告は,乙第25号証の試験では引用発明2と用いる菌体が異Rhizopus arrhizus なると主張するが,乙第25号証の菌体である「」は,引用発明2の菌体である「リゾプス・アーヒザス(ATCC24563)」と同一の菌体である。微生物株保存機 ()Rhizopus arrhizus (CMI83711)関が異なるために番号が違うだけである(乙59 。)よって,原告が主張する相違点は存在しない。 8争点2-2-2(無効理由2における予備的主張〔進歩性の欠如 )につい 〕て【被告の主張】1一致点及び相違点()引用例2には,アルコール及び脂肪酸からなる基質に脂質分解酵素を作用させてエステル化反応(グリセリドの合成)を行なうこと,反応器中に脱水剤を充填し反応水分量を0.05%未満とすることが記載されている。 したがって,引用発明2の「脱水剤により脱水することにより反応水分量を0.05%未満に維持する反応系」は,本件特許発明の「水…を排出することによって可及的乾燥した系」に相当するから,本件特許発明と引用発明2は 「水を排出することによって可及的乾燥した系においてアルコール及 ,び脂肪酸を含有する基質に脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法」である点で一致し,本件特許発明が脂質分解酵素として「エステル交換活性を有する」脂質分解酵素を基質に作用させているのに対し,引用発明2はこれについて明示的な記載をしていない点において一応,相違しているということもできる。 2相違点の検討()ア引用例4の記載内容引用発明2においては,脂質分解酵素として「リゾプス・アーヒザス」という微生物由来のリパーゼが用いられている。 ( Rhizopus arrhizus )リゾプス・アーヒザス由来のリパーゼの「エステル交換活性」について,特開昭52-104506号公報(乙26。以下「引用例4」といい,同公報に記載されている発明を「引用発明4」という )には別紙引用例 。 【引用例4の記載】の内容が記載されている。なお,引用例4における「分子間エステル化」とは,引用例4の引用部分?Bの「分子間エステル化(」との記載から分かるように 「」interesterification interesterification ) ,に対するこの出願代理人独自の訳語であって,正しくは「エステル交換」と訳すべきものである。 また,引用例4の実施例1ないし14には,リパーゼ酵素を使用する具体的なエステル交換方法が記載されている。このうち,実施例2(乙26の5頁右下欄10行以下)は,酵素としてリゾプス・デレマー由来のリパーゼを用いてパーム油(エステル)とステアリン酸(脂肪酸)とを反応させてエステル交換を行うことが記載されているが,酵素としてリゾプス・デレマーに代えてリゾプス・アーヒザス由来のリパーゼを用いて実施例2と同様のエステル交換反応を行ったのが実施例4である(同6頁左上欄13〜16行 。)引用例4では「リゾパスアーヒザス」と表記され( Rhizopus arrhizus )ているが,これは,引用例2及び引用例3に記載された菌種であるリゾプス・アーヒザスのことであり,引用例4の実施例4では,リゾプス・アーヒザス由来のリパーゼ酵素が,他のリパーゼ酵素(実施例2,3及び5)と同様に,エステル交換の活性を示したことが記載されている。 引用例4の実施例4における水分量については,実施例2(5頁右下欄10行以下)に関して「パーム油の中間画分」2.5部,ステアリン酸1.5部,担体0.25部,酵素0.004部,石油エーテル(溶媒)8部,緩衝液(水分)0.02部と記載されており 「実施例2を繰り返した」 ,(6頁左上欄15〜16行)実施例4も同じ配合比であるから,実施例4の水分量は,以下の計算式のとおり0.16%となる。 0.02/(2.51.50.250.00480.02)*1000.16 〔計算式〕+++++=引用例4の以上の記載によれば,引用例4には,0.16%というきわめて低水分の系において,リゾプス・アーヒザス由来のリパーゼを用いてパーム油とステアリン酸とをエステル交換反応をさせた(実施例4)ところ,回収されたトリグリセリド生成物中のステアリン酸の量が顕著に増加する結果が示されたことが記載されている。 イ引用発明2の「リゾプス・アーヒザスリパー()Rhizopus arrhizusゼ」はエステル交換活性を有すること引用発明2は乾燥脱脂された脂質分解酵素が低水分系でエステル交換活性を有するとの明示的な開示をしていないが,引用例4には,上記のようRhizopus に,使用されるリパーゼ酵素として,リゾプス・アーヒザス (リパーゼが記載されている。そして,リゾプス・アーヒザスの arrhizus )リパーゼを使用したエステル交換反応である引用発明4の実施例4における反応系の水分量はわずか0.16%であり,低水分と呼ぶに十分なものRhizopus で あ る か ら , 引 用 発 明 2 の 「 リ ゾ プ ス ・ ア ー ヒ ザ ス (リパーゼ」は低水分系でエステル交換活性を有することは明ら arrhizus )かである。 ウ引用発明2は反応器中に「リゾプス・アーヒザスリパーゼ」と脱水剤であるモレキュラーシーブを充填してアルコールと脂肪酸によるエステル化を行うこと,反応水分量を0.05%未満に維持して反応させていることを勘案すれば,引用例2は 「低水分系でエステル交換活性を有する」脂 ,質分解酵素に該当する「リゾプス・アーヒザスリパーゼ」を 「水を排出 ,することによって可及的乾燥させた系」において作用させることを実質的に開示しているといえるものであり,あるいは少なくとも,引用発明4の「リゾプス・アーヒザスリパーゼ」を「低水分系でエステル交換活性を有する」脂質分解酵素として引用発明2の反応系において作用させることは当業者が容易に想到し得ることといえる。 3以上より,本件特許発明は,少なくとも引用発明2及び引用発明4に基づ()いて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 【原告の主張】1引用例4は引用例2と直接関係する文献ではないことから,引用発明4を()用いて引用発明2の酵素のエステル交換活性を立証すること自体が失当である。 Rhizopus また,引用例2の引用部分?Aに 「リゾプス・アーヒザス , (の細胞外脂肪分解活性(ら,1970年)及び細胞結 arrhizus ) Slotboom合性脂質分解活性(ブレインら,1976年,ら,1978年)につ Bellいてはよく知られている 」と記載されているように 「リゾプス・アーヒ 。 ,ザスリパーゼ」には細胞外酵素(菌体外酵素)と細胞結合性酵素(菌糸体)が存在する。この点,引用例4の対応特許である米国特許第4275081a 号 ( 甲 8 0 ) の ク レ ー ム 1 に は 「 可 溶 性 微 生 物 リ パ ー ゼ 酵 素 ( ,」と記載されており,引用発明4のwater-soluble microbial lipase enzyme )「リゾプス・アーヒザスリパーゼ」が菌体外酵素と考えられる。これに対し,引用例2で用いられているリゾプス・アーヒザスリパーゼは菌糸体であるから,両者のリゾプス・アーヒザスリパーゼは異なる物である。 さらに,引用例4の実施例4で用いられた酵素はセライト(担体)に固定されている酵素剤である点で引用例2の「真菌菌糸体の凍結乾燥調製物」とは異なる。 よって,引用発明4を異なる酵素を用いている引用発明2に組み合わせることはできない。 2引用例4の引用部分?@には,特許請求の範囲として「(1)酵素を活性化す()る少量の水と共に,分子間エステル化触媒として,脂肪酸反応体に接触されたリパーゼ酵素の存在で分子間エステル化によりグリセリド油又は脂肪を含む脂肪反応体中の脂肪基の転位の方法 」と記載され,引用例4の2頁右下 。 欄10ないし12行には 「少量の,通常には10%までの,しかし好まし ,くは0.2ないし1%の水又は緩衝溶液が作用する酵素のために必要であり」と記載されており,作用する酵素のために水又は緩衝溶液が必要であることが記載されている。また,引用発明4は,本件特許発明におけるようなエステル化ではなく,原料であるトリグリセリド(TG)をジグリセリド等に分解する加水分解反応が生じているのであり,換言すれば,引用発明4の反応では加水分解を生じさせることを避けることができない程の水を添加するのである。 よって,このような水を添加する引用発明4を,水を排出する系を用いる引用発明2に組み合わせること自体無理がある。 3以上より,本件特許発明は,引用発明2及び引用発明4に基づいて当業者()が容易に想到できるものではない。 【被告の反論】1リゾプス・アーヒザスリパーゼにおける菌体内酵素と菌体外酵素という分()類と,生成した酵素自体の可溶性の有無とは相互に無関係である。 また,酵素の担体への固定の点についても,引用例4の実施例4において脂質分解酵素をセライト(担体)に固定させているのは「回収と再使用のため (乙26の4頁右下欄11〜12行)にすぎず,担体に固定したからと 」いってエステル交換活性の有無に差異が生じるということはあり得ない。 2引用例2と引用例4とは,いずれも油脂化学という同一の技術分野に属す()る公知文献であり,しかも低水分の系で脂質分解酵素を用いて広義のエステル化反応を行うという共通の課題に関するものである以上,組合せは容易である。 9争点2-3(無効理由3)について【被告の主張】1本件分割出願を違法とする理由1()ア「可及的乾燥した系」について原明細書の記載(ア)原明細書の特許請求の範囲第(3)項及び同第(4)項につき発明の詳細な説明を参酌すると 「酵素を基質に作用させつつ,反応生成物の一を系 ,外に排出することは,上述の反応率を高め,或はエステル化度を高める効果を増大させる(乙7の3頁左下欄11〜13行)とあるように, 。」「可及的乾燥した系において」行われ,かつ「反応生成物の一を系外に排出して」反応を行うことを必須の構成要件として規定している。そうすると,特許請求の範囲第(3)項及び同第(4)項は,実施態様項としては,特許請求の範囲第(1)項の技術的事項に更に他の技術的事項を付加することによって対象技術を限定する,いわゆる外的付加とみることができる。 また,原明細書には「この発明で酵素を作用させる系は,可及的乾燥した系であり,エステル交換活性を有する酵素を選択することと相俟って本発明の骨子を形成する。すなわち基質及び酵素は可及的水分を低下させたものを用い,従来のように酵素を水とともに加えるようなことをしない(乙7の3頁右上欄14〜19行)と記載され 「酵素を水と 。」 ,ともに加える」か否かという反応させる前(反応開始時)における水分量を問題とし,反応させる前(反応開始時)の基質及び酵素を可及的乾燥させることが発明の本質であることが明示されている。 そうすると,原明細書は 「可及的乾燥した系において」エステル交 ,換反応を行うことを前提に,水を排出する場合の発明と水を排出しない場合の発明とを含むものであり 「可及的乾燥した系」とは反応開始前 ,(反応開始時)における乾燥を問題とするものである。 本件特許公報の記載(イ)本件特許公報には 「この発明で脂質分解酵素を作用させる系は,水 ,または水及び低級アルコールを排出する系であり,そのような乾燥系で酵素がエステル交換活性を示すことが必要である(本件特許公報4 。」欄50行〜5欄3行)と記載され,反応させる前(反応開始時)の基質及び酵素を可及的乾燥させることは必須でなく,酵素反応時において,水を排出したことの結果として乾燥していればよいという発明が記載されている。 イ「反応生成物の一を系外に排出すること」について原明細書において,反応生成物の一を系外に排出するという構成は,可及的乾燥した系とは別の構成要件であり,可及的乾燥した系と組み合わせて初めてその効果を奏することが明示されている。そして,原明細書の実施例1ないし3のいずれにおいても,まず酵素及び基質を可及的に乾燥しておき,次いで反応系内にゼオライトを加えることにより(実施例1及び3 ,あるいは反応系を減圧下に置くことにより(実施例2 ,水又は低 ) )級アルコールを排出する系を形成させている。 これに対して,本件特許発明における「水…を排出する系」との構成要件は,酵素反応時における「可及的乾燥した系」を前提として,その実現手段として水を排出することを記載しているものである。 ウ以上より,原明細書に記載された発明は,?@「反応開始時において可及的乾燥した系であって,水を排出することによって酵素反応時に可及的乾燥した系」に関する発明と,?A「反応開始時において可及的乾燥した系であって,水を排出しない系」に関する発明とを含むものである。これに対し,本件特許発明は 「反応開始時において可及的乾燥した系であるか否 ,かは問わないが,水を排出することによって酵素反応時に可及的乾燥した系」に関する発明を意味する。すなわち,本件特許発明は上記?@に対する上位概念となっている。 エそうすると,本件特許発明は,原明細書に記載されていた発明とはいえないから,本件分割出願は,改正前44条1項に規定する適法な分割出願とはいえない。 2本件分割出願を違法とする理由2()本件特許発明の「アルコールのエステル化方法」は,発明の詳細な説明中の「エステル化」の定義において「多価アルコールの部分エステル等を生成する反応を包含する (本件特許公報4欄36〜37行)と明記されている 」ように,例えば「アルコール」がグリセリン(3価アルコール)である場合,その完全な(すなわち脂肪酸が3箇所結合した)エステル化物(トリグリセリド)のみならず 「部分エステル」であるジグリセリド(脂肪酸が2箇所 ,のみ結合)やモノグリセリド(脂肪酸が1箇所のみ結合)を目的物とする反応を含むものである。 これに対して,原明細書においては 「本発明の基質は酸とアルコールの ,みならず,…多価アルコールの部分エステル,その他を包含する(乙7。」の3頁左上欄13〜17行)として,酵素反応の「基質」に多価アルコールの部分エステルを含むとの記述はあるものの,発明の詳細な説明中の「エステル化」の定義において 「多価アルコールの部分エステル等を生成する反 ,応を包含する 」との記載はない。 。 したがって,本件特許発明は「完全なエステル化物を目的物として生成する反応のみならず,多価アルコールの部分エステルを目的物として生成する反応を含むアルコールのエステル化方法」に係る発明であるのに対して,原明細書に記載された発明は 「完全なエステル化物を目的物として生成する ,反応のみを含むアルコールのエステル化方法」に係る発明を開示するものであるから,原明細書は本件特許発明を開示するものではない。 よって,本件特許出願は,改正前44条1項に規定する適法な分割出願とはいえない。 3新規性又は進歩性の欠如について()上記(1)及び(2)のとおり,本件分割出願が改正前44条1項に規定する適法な分割出願とはいえないから,本件特許権の出願日は昭和62年9月28日となる。そして,原出願の特許出願公開公報である特開昭57-8787号公報(乙7)は同日より以前に頒布された刊行物であるところ,同公報には,前述したように 「反応開始時において可及的乾燥した系であって,水 ,を排出する(ことによって酵素反応時において可及的乾燥した)系において基質にエステル交換活性を有する酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法」の発明が開示されている。これは,本件特許発明の「水を排出することによって,酵素反応時において可及的乾燥した系において基質にエステル交換活性を有する酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法」の下位概念である。 また,同公報に記載された発明は「可及的乾燥した系において…完全なエステル化物を目的物として生成する反応のみを含むアルコールのエステル化方法」であるのに対し,本件特許発明は「 水を排出することによって)可 (及的乾燥した系において…完全なエステル化物を目的物として生成する反応のみならず,多価アルコールの部分エステルを目的物として生成する反応を含むアルコールのエステル化方法」であるから,かかる意味においても,同公報に記載された発明は本件特許発明に対する下位概念である。 したがって,本件特許発明は,同公報に記載された発明であるか,又は少なくとも同公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【原告の主張】1本件分割出願を違法とする理由1について()ア原明細書には 「この発明は可及的乾燥した系において基質にエステル ,交換活性を有する酵素を作用させることを骨子とするエステル化方法である(乙7の2頁右上欄19行〜左下欄1行)と記載されており 「乾燥 。」 ,した系において」における「おいて」は場所を表すことから,かかる記載は「この発明は基質にエステル交換活性を有する酵素を可及的乾燥した系で作用させることを骨子とするエステル化方法である 」ともいい換えら 。 れる。また 「乾燥した系において作用させる」や「乾燥した系で作用さ ,せる」は,反応が継続的に行なわれるときに,作用させる場が最初だけ乾燥していると解するよりも,作用させる場が継続的に乾燥していると解するのが普通の解釈である。 イまた,原明細書には 「この発明で酵素を作用させる系は,可及的乾燥 ,した系であり,エステル交換活性を有する酵素を選択することと相俟って本発明の骨子を形成する(乙7の3頁右上欄14〜16行)と記載さ 。」れており 「酵素を作用させる系」と「可及的乾燥した系」とが同格であ ,るという文章構造からすると,反応が瞬時に終わらず継続的に行われるときに,ただでさえ酵素を作用させることにより水が生成し,乾燥状態が損なわれていくのに,最初だけ可及的乾燥した系であると解するのは不合理であり,酵素を継続的に作用させている反応系が可及的乾燥した系であると解するのが普通の解釈である。 ウ原明細書及びその特許請求の範囲第(1)項には,酵素を作用させる場が「可及的乾燥した系」である発明が記載されている,すなわち,酵素を作用させる場が可及的乾燥した状態である包括的な発明が記載されている。 そして,酵素反応時に可及的乾燥した状態にすることは,その態様の1つとして技術的事項を限定し具体化する,いわゆる内的付加である。 換言すれば,原明細書には,特許請求の範囲第(1)項の「可及的乾燥した系において酵素を作用させる」という包括的な発明の態様として,?@反応開始時の基質や酵素の乾燥によって「可及的乾燥した系」を実現する発明と,?A酵素反応時における系外への水の排出によって「可及的乾燥した系」を実現する発明と,?B反応開始時における基質や酵素の乾燥と酵素反応時における系外への水の排出との組合せによって「可及的乾燥した系」を実現する発明の3つの発明が記載されているものである。 エ以上のとおり,本件分割出願は,原明細書の上記?Aの発明を分割出願したものであるから,適法であることは明らかである。 2本件分割出願を違法とする理由2について()ア原明細書には 「この発明で 『エステル化』とは,アルコールと酸か ,,ら脱水してエステルを生成する反応をいうだけでなく,広くエステルを生成する反応のすべてをいう(乙7の3頁左上欄10〜13行)と記載 。」されており,広くエステルを生成する反応をすべて含むという包括的な定義が示されている。原明細書の定義上,広くエステルを生成する反応のすべてが包含されているのであるから,多価アルコールの部分エステルがエステルであることは明らかである。 イ原明細書には 「多価アルコールのエステル化物を得るに際しては,エ ,ステル化度の相違する副生物が併存して共融混合物を形成し,目的物を分離し難い,という欠点がある(乙7の2頁左上欄2〜5行 ,さらに 。」 )「トリグリセリド(TG)の加水分解物の中でジグリセリド(DG)はTGから最も除去し難いものである(乙7の2頁左上欄6〜8行)と記 。」載されている。よって,少なくとも基質のアルコールとしての「多価アルコール」及び生成物の「エステル」として部分エステルのジグリセリドが原出願時において認識されていた。 ウ原明細書には 「但し酵素の特異性の有無及びその内容が明らかである ,ときは,理論的に『完全に反応した状態』を設定する方が簡便であり,また支障がない。例えば,グリセリドの2位に対して作用しない酵素を用いるとき,2位を除く脂肪酸分布が完全にランダム化した状態をもって『完全に反応した状態』とみなすこととし,aはヤシ油トリグリセリドの1,3位の脂肪酸基とステアリン酸メチルエステルの脂肪酸基の和に対する,1,3位に結合するラウリン酸基の割合として求めることができる 」。 (乙7の2頁右下欄9〜19行)と記載されており,特定の位置に特異的に作用する酵素を用いることが想定されている。 エ原明細書には 「例えば基質がグリセリン・・・と,脂肪酸・・・との混合物 ,であるときは,脂肪酸…を過剰量存在させるようにするのがよい(乙。」7の3頁左上欄20行〜右上欄4行)と記載されており,この反応によって部分エステルであるジグリセリドが生ずることは原出願時の当業者にとって自明である。 オ以上より,原明細書に多価アルコールの部分エステルを目的物として生成する反応を含むエステル化方法が実質的に記載されていることは明らかであり,本件分割出願が適法であることは明らかである。 3新規性及び進歩性欠如について()上述のように,本件分割出願は適法なものであり,本件分割出願の出願日は原出願(乙7)の出願日まで遡及することから,原出願の特許出願公開公報に基づいて本発明の新規性及び進歩性が否定されることはない。 10争点2-4(無効理由4)について【被告の主張】1「エステル交換活性を有する」の意義が不明確であること()本件特許発明は 「エステル交換活性を有する」脂質分解酵素を基質に作 ,用させることが必須の構成要件であり 「エステル交換活性」及び「エステ ,ル交換活性を有する」の意義が極めて重要である。しかし,本件明細書の発明の詳細な説明においては 「エステル交換活性」を絶対値Ka又は相対値 ,Krとして定義している(本件特許公報3欄41行〜4欄25行)にもかかわらず 「エステル交換活性を有する」の意義については 「この発明で使 , ,用する酵素のエステル交換活性の値は高い程好ましい(本件特許公報4 。」欄26〜27行「低水分系において一定のエステル交換活性を有するも ),のであれば,その調製方法はもとより限定されるものではない(本件特。」許公報4欄30〜32行)としか記載していない。 また,実施例を見ても,実施例1の酵素剤のKa値が28.5,Kr値が24.8/10 であること,実施例3の酵素剤のKa値が7.1,Kr値3が15.8/10 であること以外には,何の手がかりもない。 3このように,本件特許の特許請求の範囲の記載は不明確であり,発明は広範囲のものを包含することになるにもかかわらず,発明の詳細な説明には本件特許発明の一部のものしか裏付けられておらず,その他の部分について当業者が容易に発明の実施をできる程度に,その発明の目的,構成及び効果が記載されているとはいえない。 2原告の主張について()原告は「エステル交換活性」の意義につき 「低水分系におけるエステル ,に結合する脂肪酸を交換する活性をいう」と定義されると主張する。 しかし,本件特許発明には,実施形態?@と実施形態?Aがあるところ,実施形態?@における脂質分解酵素が「エステル交換活性を有する」との要件は,特許請求の範囲の記載上,技術的意義が不明確である。なぜなら,実施形態?@の方法の目的である「エステル化」は「エステル交換」とは種類の異なる反応であって,エステル化反応を達成する上でエステル交換反応の進行を要するわけではないからである。 したがって 「エステル化」方法の発明について,なぜ「エステル交換活 ,性」を問題にしなければならないのか,また「エステル交換活性を有する」ということが 「エステル化」という目的を達することとの関係で,どのよ ,うに定義されるのかが,当業者に理解可能な程度に発明の詳細な説明中に記載されていなければならないはずである。しかしながら,結局のところ「この発明で使用する酵素のエステル交換活性の値は高い程好ましい(本件。」特許公報4欄26〜27行)という以上に具体的なことは発明の詳細な説明中に記載されていない。 3よって,本件特許は,発明の詳細な説明において当業者が容易に本件特許()発明の実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果が記載されているとはいえないから,改正前36条3項の規定する要件を満たしていない。 また,特許請求の範囲に,発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものとはいえないから,改正前36条4項の規定する要件も満たしていない。 【原告の主張】1本件特許発明の「エステル交換活性を有する」の「エステル交換活性」は,()本件明細書に「この発明で,エステル交換活性は,低水分系におけるエステルに結合する脂肪酸を交換する活性をいう (本件特許公報3欄41〜43 」行)と明確に定義されている。そして 「エステル交換活性を有する」の ,「を有する」は,文字どおり「をもつ」の意味であり,本件明細書の測定方法に準じてKa又はKrを用いて表す場合には 「ゼロより大きい」という ,意味であるから,本発明の「エステル交換活性を有する」の意義は明確である。 2また 「エステル化」と「エステル交換」の関係について,本件明細書に() ,は 「この発明で 『エステル化』とは,アルコールと脂肪酸から脱水して ,,エステルを生成する反応をいうだけでなく,他のアルコールとのアルコール交換反応によって新たなエステルを生成する場合のエステルや,多価アルコールの部分エステル等を生成する反応を包含する(本件特許公報4欄3 。」3〜37行)と記載されており,本件特許発明の「エステル化」には,エステルでないもの(カルボン酸とアルコール)からエステルを得るというエステル化反応の他に,エステル交換反応も包含される旨が明記されている。 被告は,本件特許発明を実施形態?@と実施形態?Aに分けるとともに 「エ,ステル化」は「エステル交換」とは種類の異なる反応であると主張するが,エステル化反応及びエステル交換反応も,広義には「エステル化反応」に包含されるものとして必ずしも厳密に区別して用いられるものではない。 3したがって 「エステル交換活性」及び「エステル交換活性を有する」の() ,意義は明確であり 「エステル化反応」に用いる脂質分解酵素のエステル化 ,活性をエステル交換活性として表記することに何ら不自然さはないのであるから,本件特許が,改正前36条3項及び改正前36条4項の各要件を満たすことは明らかである。 11争点3(損害の額)について【原告の主張】1イ号物件の売上高()被告は,イ号物件の発売開始から本件特許権の消滅までの間に,イ号物件を少なくとも60億円は製造し,売り上げた。その売上高に実施料率5%を乗じると3億円となる。 2ロ号物件の売上高()被告は,ロ号物件の発売開始から本件特許権の消滅までの間に,ロ号物件を少なくとも100億円は売り上げた。その売上高に実施料率5%を乗じると5億円となる。 3一部請求()原告は,本訴において,イ号物件分として上記(1)の3億円のうち2億1000万円を請求し,ロ号物件分として上記(2)の5億円のうち3億5000万円を請求する。よって,本訴における合計請求額は5億6000万円となる。 【被告の主張】すべて争う。 1原告は,ロ号物件について,その「発売開始から」の売上げを主張してい()るが,ロ号物件の販売開始時期は原告も主張するように1990年(平成2年)であるところ,本件特許権の設定登録日は平成10年4月17日であり,公告日は平成7年6月21日であるから,少なくとも平成7年6月21日より前のロ号物件の売上げに基づく損害賠償請求は理由がない。 2また,ロ号物件はジグリセリド(DG)を主成分とする混合物を製造し,()これをコーン油に対して10%程度添加して製造するものであるところ,本件特許発明の実施が問題となり得るのは,ジグリセリド(DG)を主成分とする混合物を製造する工程までであるから,ロ号物件の売上げ全体に基づく損害賠償請求は理由がない。 第4当裁判所の判断当裁判所は,本件事案の内容にかんがみ,争点2-1-1から判断することとする。 1争点2-1-1(無効理由1における主位的主張〔新規性の欠如 )につい 〕て1総論()本件特許の特許請求の範囲は 「水又は水及び低級アルコールを排出する ,系においてアルコール及び脂肪酸又は脂肪酸の低級アルコールエステルを含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法 」であるところ,本件特許発明は, 。 被告が主張するように(前記第3の5【被告の主張】(1) ,二つの化学反 )応を含むものであり,したがって,次の二つの実施形態を含むものと認められる(なお,上記特許請求の範囲(構成要件A)に「可及的乾燥した」との要件を付加すべきかどうかについては,後記(4)ウにおいて述べる。。)すなわち,本件特許発明は 「水を排出する系においてアルコール及び脂 ,肪酸を含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法 」と「水及び低級アルコー 。 ルを排出する系においてアルコール及び脂肪酸の低級アルコールエステルを含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法 」という二つの実施態様に分ける 。 ことができる。 そして,被告は,上記各実施形態のうち,前者について新規性ないし進歩性を欠くものであることから,本件特許発明全体が新規性ないし進歩性を欠くと主張する。確かに,本件特許発明が出願前の公知技術と同一の実施態様を含むものとすれば,本件特許は,本件特許発明全体が新規性を欠くものとして,特許法29条1項,123条1項2号により無効とされるべきものである。そこで,上記した前者の実施形態,すなわち 「水を排出する系にお ,いてアルコール及び脂肪酸を含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法 」が。 引用発明1と同一であるかについて,以下,検討する。 2構成要件の分説()本件特許発明のうち「水を排出する系においてアルコール及び脂肪酸を含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法 」との実施形態に限定した場合にお 。 ける構成要件は,次のとおり分説するのが相当である(下記の各構成要件を,以下「構成要件A'」などという。。)A' 水を排出する系においてB' アルコール及び脂肪酸を含有する基質にC' エステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることD' を特徴とするアルコールのエステル化方法。 3引用例1の記載内容()引用例1(合衆国特許第2,676,906号明細書)には別紙引用例【引用例1の記載】の内容が記載されているところ,各掲記した引用例1の引用部分によれば,引用例1には以下の内容が記載されているものと認められる(下記の各項目の記載内容を,以下「記載内容(a)」などという。。)(a) トウゴマの実から脂質分解活性(比活性0.55)を有するリパーゼ製品が得られたこと(実施例?T,引用部分?H 。)(b) これを乾燥,脱脂することにより,さらに高い(比活性7.33)脂質分解活性を有するリパーゼ粉体が得られたこと(実施例?U,引用部分?I 。)(c) 当該リパーゼ粉体とオレイン酸を混合し,その混合物の中にグリセロールを添加し,エステル化反応を行ったこと(実施例?Y,引用部分?K 。)(d) その際,エステル化反応により生成される水を,それが生成されると同時に除去するために,乾燥した不活性ガス(例えば窒素又は二酸化炭素)をバブリングさせたこと(実施例?Y,引用部分?G,?K 。)(e) エステル化反応によって生成される水を除去することにより,エステル化反応の程度が高くなること(引用部分?G 。)4構成要件A'について()ア引用例1の記載内容(d)及び(e)によれば,引用例1には,エステル化反応によって生成された水を,それが生成されると同時に除去するために,乾燥した不活性ガス(例えば窒素又は二酸化炭素)をその混合物の中にバブリングさせ,エステル化反応による水を除去することによってエステル化反応の程度が高くなることが記載されている。 そうすると,記載内容(d)の乾燥窒素のバブリングは,構成要件A’にいう「水を排出する」ためになされるものであり,かかるバブリングはエステル化反応が行われている混合物の中においてなされるものであるから,「水を排出する系において (脂質分解酵素を作用させる)という内容が 」引用例1に記載されているものと認められる。 イ原告の主張について原告は,酵素を作用させる系が,本件特許発明の構成要件Aでは「水(ア)又は水及び低級アルコールを排出する系 (構成要件A'では「水を排 」出する系 )であるのに対し,引用例1の実施例?Yは「実質的に水が排 」出されない系」である点で異なると主張する(相違点ア 。)原告は,同主張の根拠として,被告が行った引用例1の実施例?Yの再現実験(乙22)において系中水分量を計算した結果(甲41)に基づき,エステル化反応の4.5時間の組成変化から計算した水の生成量は0.13%余であるのに対し,その間の系中水分量の増加量が0.12%であるから,ほとんど水は排出されていないと主張する。 しかし,上記甲第41号証によれば 「生成した水分0.135%に(イ) ,対する留去量は,0.015%に過ぎない」と計算されているところ,これを基に計算しても,生成された系中水分量のうち11.1%余(0.015÷0.135×100?垂P1.1)が排出されていることになる。 また,系中水分量を基に計算しても,反応開始前の系中水分量は0.29%であるから,これに反応によって生成した水分量(0.135%)を加えた水分量(0.425%)のうち,3.5%余(0.015÷0.425×100?垂R.5)の水分が排出されたということができる。 このように,いずれにしても,被告の行った再現実験(乙22)において一定の水分が乾燥窒素のバブリングにより系外に排出されているのであるから,引用例1の実施例?Yが原告のいう「実質的に水が排出されない系」であるということはできない。なお,原告は,上記再現実験(乙22)は本来であれば殻を剥いたトウゴマを使用すべきところ,殻付きのものを使用しているので信用性が低いと主張する。しかし,上記再現実験では,引用例1の実施例?Tと同様の手順により遠心分離処理を行っており,その過程で殻は取り除かれクリーム状になっているはずである(引用部分?I参照)から,後になされるバブリングにおいて,殻の有無が水分の排出に何らかの影響を及ぼすとは考え難い。したがって,水分の排出について上記再現実験(乙22)の信用性が低いということはできない。他にその信用性を左右する証拠はない。 また,そもそも引用例1の記載内容(d)及び(e)によれば,エステル化(ウ)反応の程度を高めるために乾燥した不活性ガスをバブリングすることにより水分を除去するという技術内容が明確に記載されているのであるから,構成要件A’にいう「水を排出する系」が開示されているというべきであって,仮に本件明細書に水分の除去が多くなされない実施例が記載されているとしても,上記のとおり一定量の水分が除去されている以上,本件特許発明との同一性の認定を左右するものではないというべきである。 ウなお,被告は,争点1-2(構成要件Aの充足性)において,構成要件Aは「水又は水及び低級アルコールを排出することによって可及的乾燥した系において」との意味に解釈すべきである旨主張する。 しかし,本件特許発明に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものといえるかどうか,すなわち特許の要件の有無の判断の前提となる特許発明の要旨認定においては,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなど特段の事情がある場合に限り,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるものというべきである(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁 。)この点,構成要件Aの「水又は水及び低級アルコールを排出する系において (構成要件A'の「水を排出する系」も含む )の技術的意義が,そ 」 。 の記載内容において一義的に明確に理解することができないとか,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるというような特段の事情は認められず,少なくとも特許の要件を審査する前提としてされる本件特許発明の要旨認定においては,「可及的乾燥した」という特許請求の範囲に何らの記載もない要件を付加すべき理由は認められない。 エ以上のとおり,原告が主張する相違点アは認められないから,前記アのとおり,引用例1には構成要件A'の内容が記載されているものと認められる。 5構成要件B'について()記載内容(c)の「グリセロール」及び「オレイン酸」は,構成要件B'の「アルコール」及び「脂肪酸」にそれぞれ相当するので,引用例1には,構成要件B'の「アルコール及び脂肪酸を含有する基質に」が記載されていると認められる(この点につき原告は争うことを明らかにしない。。)6構成要件C'について()ア記載内容(b)によれば,ここにいう「リパーゼ粉体」は,トウゴマの実, から得られた脂質分解活性を有するリパーゼ製品(記載内容(a))を乾燥脱脂することにより得られる,さらに高い脂質分解活性を有するものであることから,構成要件C'の「脂質分解酵素」に相当するものと認められる。 イそこで,記載内容(b)における「リパーゼ粉体」が構成要件C'にいう「エステル交換活性を有する」ことについて引用例1に記載されているか否かについて検討する。 まず 「エステル交換活性を有する」の意義については,争点1-3(ア) ,(構成要件Cの充足性)に関連して当事者間に争いがあるが,前記説示のとおり,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるというような特段の事情がある場合に限り,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるものというべきである。 そこで 「エステル交換活性を有する」の意義の明確性について検討(イ) ,するに,証拠(乙2,3,5)によれば,平成18年発行の『油化学辞典 (乙2)には 「エステル交換反応」につき 「エステルにアルコー 』, ,ル,脂肪酸若しくは他のエステルを反応させて,アルコキシル基若しくはアシル基を交換させて新しいエステルを生成させる反応をいう 」と。 記載されていること,昭和62年発行の『油脂用語辞典 (乙3)には, 』「エステル交換反応」につき 「適当な反応条件下,エステル間でアル ,コキシル基やアシル基が交換して新しいエステルが生成する反応をいう 」と記載されていること,2006年発行の『油脂化学入門 (乙 。 』5)には 「エステル交換」につき 「油脂,つまりトリグリセリドは, ,,3価のアルコールであるグリセリン一分子と脂肪酸三分子とのエステルである。したがって,アルコールあるいは脂肪酸と反応させれば新しいエステルができるほか,トリグリセリド分子内あるいはトリグリセリド分子間においても,脂肪酸(正確にはアシル基,RCO-)を交換させ,異なった脂肪酸の組み合わせのトリグリセリド,つまり新しいエステルとすることもできる。このうち,アルコールとの交換反応をアルコリシス,脂肪酸との交換反応をアシドリシス,分子内あるいは分子間における脂肪酸の交換反応,つまりエステル同士の交換反応をエステル交換(トランスエステル化)というが,アルコリシスとアシドリシス,トランスエステル化をひっくるめて広い意味でエステル交換と称されるときもある 」と記載されていることが,それぞれ認められる。 。 上記各技術文献の記載によれば,学術用語としての「エステル交換」は,広義には?@エステルにアルコールを反応させて別のエステルを得ること(アルコリシス ,?Aエステルに脂肪酸を反応させて別のエステル )を得ること(アシドリシス)及び?Bエステルに他のエステルを反応させて新たなエステルを得ることを含む概念であることが当業者にとって明らかといえる。 そして,前記(1)のとおり,本件特許発明の特許請求の範囲の記載に(ウ)よれば,本件特許発明は「アルコール及び脂肪酸を含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法 」と「アルコール及び脂肪酸の低級アルコー 。 ルエステルを含有する基質にエステル交換活性を有する脂質分解酵素を作用させることを特徴とするアルコールのエステル化方法 」の二つの 。 実施態様を含むものであるところ,本件において被告が新規性を欠くと主張する前者のエステル化方法は,エステルでないもの(アルコールと脂肪酸)からエステルを得る方法であるから,学術用語としての「エステル交換」には厳密にいえば該当しないことになる。すなわち 「エス,テル交換」反応は,学術的意義においては,アルコールと脂肪酸からエステルを得るエステル化(以下「エステル合成反応」という )とは別 。 の反応である。 しかし,エステル交換反応は,出発物質のエステルの加水分解と,新たなエステルを合成するエステル化とが並行して生じる反応と理解することができ(原告も,この点について明示的に争っていない,よっ。)て,エステル交換反応とエステル合成反応とでは,触媒する脂質分解酵素の役割としては,原理的な相違はないものということができる(基質にエステルが含まれているかどうかの差異があるにすぎない。そう。)すると,エステル合成反応を触媒する活性を有する脂質分解酵素であれば,エステル交換反応を触媒する活性を有することは当業者にとって明らかといえるから,構成要件C'の「エステル交換活性を有する脂質分解酵素」という文言のうち 「エステル交換活性を有する」との修飾語 ,は,当然のことを記載した特に意味をなさない記載と解するのが相当である。 以上によれば,構成要件C'の「エステル交換活性を有する脂質分解酵素」は,単なる「脂質分解酵素」を意味するものとして,その技術的意義を一義的に明確に理解することができる。したがって,その解釈に当たり本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することは許されないものというべきである。 そうすると,前記アで認定したとおり,記載内容(b)における「リパ(エ)ーゼ粉体」は構成要件C'の「脂質分解酵素」に相当するものであるから,引用例1には「エステル交換活性を有する脂質分解酵素」が記載されているものと認められる。 ウ原告の主張について原告は,構成要件C(構成要件C')と引用例1とでは,用いる酵素(ア)が前者は「エステル交換活性を有する脂質分解酵素」であるのに対して,後者は「トウゴマの実のリパーゼ調製物」である点で相違する旨主張する(相違点イ 。)原告は,相違点イが存在することの理由として,引用例1に記載のリパーゼ調製物は粗酵素標品であり,脂質分解酵素を含有するとともに他の酵素も多数混在し,これらが複雑に影響することから,当業者が引用例1に触れたとしても「トウゴマの実のリパーゼ調製物」特有の特性であると考える旨主張する。 しかし,引用例1には「本発明は,出発原料として使用された最初の(イ)生物学的原料に比較して,高度の脂肪分解活性を示すリパーゼの調製物又は濃縮物の製造に関する。…本発明は,トウゴマの実(リシヌス・コムニス)から,そのような高活性リパーゼ調製物( Ricinus communis )をクリームの形態又は乾燥粉末の形態で製造することに関する 」との。 内容の発明の意義が記載されており(引用部分?A ,他の酵素の影響に )ついては何らの記載もされていない。そうとすれば,引用例1に接した当業者が引用発明1を「トウゴマの実のリパーゼ調製物特有の特性」と考えるとは認められない。 そもそも原告も認めているとおり,引用例1のリパーゼ調製物には脂質分解酵素が含有されているのであるから,引用例1に接した当業者であれば,仮に引用例1のリパーゼ調製物に他の酵素が混在していたとしても,構成要件C'にいう,エステル交換活性を有する「脂質分解酵素 (すなわち,脂質分解活性を有する酵素)に該当すると考えるもの 」と認められる。 なお,原告は,本件特許発明における「脂質分解酵素」は,実施例の(ウ)記載等から,実質的には微生物由来の菌体外酵素を意味すると解されるとも主張する。しかし,証拠(乙2)によれば,平成18年発行の『油化学辞典 (乙2)において 「脂質分解酵素」につき「脂質の分解反 』,応を触媒する酵素」をいうものと記載されており,本件特許発明の特許請求の範囲の記載に照らしても「脂質分解酵素」の技術的意義は一義的に明確といえるから,これを菌体外酵素に限定されると解する余地はない。 エ以上のとおり,原告の主張する相違点イは認められず,記載内容(b)におけるリパーゼ粉体が構成要件C'の「エステル交換活性を有する脂質分解酵素」であることについては,引用例1に記載されていると認められる。 7構成要件D'について()構成要件D'は,構成要件A'ないし構成要件C'を特徴とするアルコールのエステル化方法であるところ,前記認定説示のとおり,引用例1には構成要件A'ないしC'の内容が記載されているものと認められ,また引用例1の記載内容(c)のグリセロールはアルコールであるから,記載内容(c)はアルコールのエステル化方法を記載したものと認められる。 よって,構成要件D'も引用例1に記載されているといえる(この点につき原告は争うことを明らかにしない。。)8引用発明1の意義について()その他,原告は,引用発明1の意義について,実用化の観点からして当業者に見向きもされなかった文献である可能性が極めて高いとか,当業者が引用例1に記載のグリセリドの合成方法を用いようとする動機付けが極めて低いなどとも主張するが,引用発明1が実用性の観点から問題があることを裏付ける的確な証拠は認められない上,仮に引用発明1が実用性の観点から問題があったとしても,かといって引用例1に記載されている技術内容を自らの発明として特許を受けることができる根拠にはなり得ない。 よって,この点に関する原告の主張は失当である。 9小括()以上より,引用発明1は,本件特許発明の構成要件A'ないしD'の全ての構成と一致している。したがって,本件特許発明は,特許出願前に外国において頒布された刊行物である引用例1に記載された発明と同一であり,特許法29条1項3号の発明に該当する。 そうすると,本件特許は,特許法29条1項に違反する部分を包含するから,本件特許全部が特許無効審判により無効とされるべきものと認められる。 したがって,特許法104条の3第1項により,原告は,本件特許権に基づく権利行使をすることができない。 2結論以上の次第で,原告の本件請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 3訴訟の進行に関する補足説明1原告は,平成20年7月14日の第9回口頭弁論期日において,本件特許()について訂正審判請求を行う予定であり,次回期日に同訂正審判請求に対応した主張立証を行いたいので,口頭弁論を続行されたい旨申し出たところ,当裁判所は,原告の上記申出を容れず,本件口頭弁論を終結する旨宣言したものである。そこで,以下,本件訴訟の進行に関して当裁判所が執った措置について補足説明する。 2記録によれば,本件訴訟の経過は次のとおりと認められる。 ()原告は,平成19年3月16日に本件訴訟を提起した。これに対し,被告は,同年6月25日の第2回口頭弁論期日において,本件特許が特許法29条1項又は2項,改正前36条3項,4項等に違反して特許されたものであり,特許無効審判により無効にされるべきものであるとして特許法104条の3に基づく権利行使制限の抗弁を主張した(被告第1準備書面 。)これに対し原告は,上記権利行使制限の抗弁には直接応答することなく,同年8月31日付け「審判請求書」により,特許庁に対し本件特許について訂正審判請求をし(以下「第1次訂正審判請求」という,本訴において。)も,訂正の再抗弁として,第1次訂正審判請求が認められることを前提に,訂正後の特許請求の範囲によれば,本件特許の無効理由が解消し,かつ,被告方法が本件特許の技術的範囲に属する旨主張した。 これに対し被告は,第1次訂正審判請求に係る訂正後の特許請求の範囲によっても無効理由は解消せず,被告方法はその技術的範囲に属しないなどと主張したが,その後,第1次訂正審判請求につき特許庁より同年9月25日付け「訂正拒絶理由通知書 (甲50)が発せられた。そこで,原告は,同 」年10月29日付け「請求取下書 (甲51)により第1次訂正審判請求を 」取り下げた。 原告は,同年11月14日付け「審判請求書」により,特許庁に対し再度訂正審判請求をし(以下「第2次訂正審判請求」という,本訴において。)も第1次訂正審判請求に基づく主張を撤回した上,さらなる訂正の再抗弁として,第2次訂正審判請求に係る訂正後の特許請求の範囲に基づく侵害の主張をした。これに対し被告は,第2次訂正審判請求に係る特許請求の範囲によっても無効理由は解消せず,被告方法はその技術的範囲に属しないなどと主張した。その後第2次訂正審判請求に係る訂正の主張について,訂正理由の有無,同訂正後の特許請求の範囲による無効理由解消の有無,同訂正後の特許請求の範囲による技術的範囲の属否に関する当事者の主張立証が重ねられ,平成20年5月30日の第8回口頭弁論期日において,双方から提出が予定されていた準備書面( 原告準備書面(7)」及び「被告第6準備書面 ) 「 」が陳述され,第2次訂正審判請求に係る主張を含め,判決をするのに必要な主張立証がほぼ尽くされた。ただし,原告準備書面(7)(これまで原告が明示的に主張していなかった原クレームに基づく被告の無効主張に対する原告の反論が記載されていた )に対して整理した反論をする旨被告が述べたこ 。 とから,当裁判所は口頭弁論を続行し,次回口頭弁論期日までに被告においてその反論をすることを促し,これにより審理を終結することを予定して,平成20年7月14日の第9回口頭弁論期日を指定し,同日,同口頭弁論期日が施行された。 しかるところ,原告は,同口頭弁論期日において,平成20年6月27日に特許庁より第2次訂正審判請求は成り立たない旨の審決がなされた(甲81)のを受け,第2次訂正審判請求を取り下げる予定である旨申し述べた上,本訴における第2次訂正審判請求に係る主張をすべて撤回した。そして,原告は,特許庁に対しさらなる訂正審判請求を申し立てる予定であり,本訴においても,上記訂正審判請求に係る主張立証を行う旨の意向を表明し,口頭弁論期日の続行を求めたが,同審判請求の具体的内容及び本訴において予定される主張立証の具体的内容については明らかにしなかった。 3特許権者による訂正審判請求は,特許法その他の法令上,その回数や期間()に制限が設けられているわけではない(ただし,特許法126条2項参照 。)他方,特許権侵害訴訟において当該特許が特許無効審判により無効とされるべきものと認められるときは,特許権者は,相手方に対しその権利を行使することができないとされているところ(特許法104条の3第1項の抗弁 ,)訂正審判請求がされ,同訂正審判請求が訂正要件を満たす場合において,それによって当該特許の無効理由が解消すると認められれば,当該特許が「特許無効審判により無効にされるべきものと認められるとき」には当たらないことになるので,特許法104条の3第1項の抗弁は認められないことになる(訂正の再抗弁 。)ところで,特許権侵害訴訟において,特許無効審判手続による無効審決の確定を要せず,特許法104条の3第1項の抗弁(以下「無効主張」という )をもって,特許権に基づく権利行使の制限を認めているのは,特許権 。 の侵害に係る紛争をできる限り特許権侵害訴訟の手続内で,迅速に解決することを図ったものであると解される。そして,同条2項の規定が,同条1項の規定による攻撃防御方法が審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められるときは,裁判所はこれを却下することができるとしている趣旨は,無効主張について審理,判断することによって訴訟遅延が生ずることを防ぐためであると解される。このような同条2項の規定の趣旨に照らすと,無効主張のみならず,無効主張を否定し,又は覆す主張(以下「対抗主張」という )も却下の対象となり,特許請求の範囲の減縮を目的 。 とする訂正を理由とする無効主張に対する対抗主張も,審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められれば,却下されることになるというべきである(最高裁平成20年4月24日第一小法廷判決・裁判所時報1458号153頁・民集62巻5号登載予定参照 。)もっとも,本件においては,上記2回にわたる対抗主張が撤回された後,新たに具体的な対抗主張がされたわけではないので,それが時機に後れた攻撃防御方法として却下することができるか否か問題となるのではなく,そのような対抗主張をさせるために口頭弁論期日を続行すべきか否かの訴訟指揮の在り方が問題とされているものである。 4本件訴訟の前記経過によれば,原告は,被告の無効主張を受けて,第1次()訂正審判請求をし,同審判請求が認められることを前提とした対抗主張をし,被告もこれに対して具体的な反論をするなどの審理が進められたが,同審判請求に対し特許庁から訂正拒絶理由通知を受けたため,同審判請求を取り下げるとともに,同審判請求が認められることを前提とした対抗主張をいずれも撤回した。原告は,さらに,第2次訂正審判請求をするとともに,同審判請求が認められることを前提とした対抗主張をし,被告もこれに具体的に反論するなどの審理が進められたが,特許庁から同審判請求が成り立たない旨の審決がされたことから,原告は,平成20年7月14日の第9回口頭弁論期日において,同審判請求を取り下げる予定であると述べるとともに,同審判請求が認められることを前提とした対抗主張をすべて撤回したものである。 そして,同期日において,原告は,今後行うべき訂正審判請求の具体的内容を明らかにせず,したがって,本件訴訟において審理の対象となるべき上記審判請求に対応する訂正主張が,訂正要件を満たし,同訂正が認められれば本件特許の無効理由が解消し,かつ,訂正後の特許請求の範囲によっても,被告方法が本件特許発明の技術的範囲に属するなど,同審判請求に対応する対抗主張の具体的内容を明らかにしなかったものである。 このように,原告は,2度にわたり訂正審判請求を行い,その都度,当裁判所は,原告の対抗主張を許容し,被告に対して原告の対抗主張に対する反論を行うよう促し,被告もこれに応じて詳細な反論をし,議論が尽くされてきたものであって,当裁判所としては,第9回口頭弁論期日において被告から予定されていた反論(原クレームに係る対抗主張に対する反論)がなされれば,双方の主張立証は尽くされ,第2次訂正審判請求に係る対抗主張の成否を含め,本件について判決をするのに熟するとの心証を得ていたものである。上記のとおり,被告は,2度にわたる原告の対抗主張に対してその都度具体的な反論を行っていたものであり,原告が上記期日に至って第2次訂正審判請求に基づく対抗主張をすべて撤回した上,さらに口頭弁論期日を続行して,続行期日以降に新たな対抗主張をすることを許すことは,本件訴訟の審理を不当に遅延させるものになるとともに,被告に過度の応訴負担を負わせるものというべきである。上記のとおり,第9回口頭弁論期日の段階では,原告が第2次訂正審判請求が成り立たない旨の審決を受けて間がなかったことから,未だ原告が意図する訂正審判請求及びこれに対応する対抗主張の具体的内容が明らかではなかった上,上記審決の主たる理由が,本件分割出願自体が改正前44条1項に規定する適法な分割出願とはいうことはできないということにあり(甲81 ,この判断には首肯すべきところがあることに )照らすと,今後予想される原告による訂正審判請求(第3次訂正審判請求等)が容易に認められるとはいい難い状況にあるといわざるを得ない。以上の事情にかんがみれば,当裁判所としては,上記口頭弁論期日をもって,本件について判決するのに熟したものと判断し,さらに口頭弁論期日を続行することなく弁論を終結する措置を執った次第である。 |
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田中俊次裁判長裁判官西理香裁判官北岡裕章裁判官【引用例1の記載】引用部分?@「1.高い脂肪分解活性を有するリパーゼ製品を調製するためのプロセスであって,水中でトウゴマの実を摩砕する工程,前記得られた摩砕物を少なくとも数時間エージングさせる工程,前記エージングされた摩砕物のpHを4〜5の範囲に調節する工程,次いでそれを遠心分離にかけて,高い脂肪分解活性を示すリパーゼクリーム状物を分離する工程,を含むプロセス。 2.前記リパーゼクリーム状物を乾燥させてから,脱脂することにより,その活性を失うことなく長期間にわたって室温で保存することが可能な安定な製品を調製する,請求項1に記載のプロセス(乙13の8欄2〜13行,同訳文9〜10頁。」〔特許請求の範囲の請求項1,2)〕引用部分?A「本発明は,出発原料として使用された最初の生物学的原料に比較して,高度の脂肪分解活性を示すリパーゼの調製物または濃縮物の製造に関する。…本発明は,トウゴマの実(リシヌス・コムニス()から,そのような高活性Ricinuscommunis)リパーゼ調製物をクリームの形態または乾燥粉末の形態で製造することに関する。 本発明のまた別な態様は,グリセリド油を部分的に加水分解させ,それによって有用な割合で部分グリセリド,すなわちモノ-およびジ-グリセリドを含む製品を得る,高活性リパーゼ調製物の使用に関する。本発明のまた別な目的は,脂肪酸とグリセロールとから部分グリセリドを合成するための,リパーゼ調製物の使用に関する(同1欄7〜20行,同訳文1頁本文4〜10行)。」引用部分?B「このリパーゼクリーム状物は脂肪分解活性が極めて高く,…各種の加水分解プロセスを実施するための有用な原料として使用できる。…より安定な生成物を調製するには,そのリパーゼクリーム状物を乾燥および脱脂させる。…乾燥粉末を調製するのに好適な方法は,まず凍結乾燥によって水を除去する,すなわち,物質を凍結させて,それを凍結したままで真空にかけてすべての水分を除去する。それに代わる方法として,クリーム状物を(減圧下で)30℃未満で沸騰するような有機溶,媒たとえばヘキサン,ヘプタン,石油エーテルなどと共に,減圧下で還流処理してもよい(同2欄10〜32行,同訳文2頁18行〜3頁1行)。」引用部分?C「本発明のリパーゼ濃縮物は,多くの用途を有する。したがって,それらは,脂肪酸(または部分グリセリド)およびグリセロールと接触させることによってグリセリドを合成するのに使用してもよい。さらに,それらは,トリグリセリド,すなわち天然産の脂肪または油を全加水分解または部分加水分解させるのにも使用して,脂肪酸または,脂肪酸ならびにモノ-およびジ-グリセリドの混合物を製造してもよい(同2欄53行〜3欄5行,同訳文3頁12〜16行)。」引用部分?D「本発明のプロセスのまた別な利点は,事実上所望の原料だけを含み,その他の物質をほとんど含まない,濃縮された系の中で部分加水分解が実施されるということである。したがって,その反応系の主成分は脂肪であり,その他の反応剤,リパーゼおよび水は極めて少ない割合でしか使用されない(同3欄44〜50行,同。」訳文4頁6〜9行)引用部分?E「反応混合物に添加する水の量は,それが加水分解の程度に影響するので,重要である。したがって,加える水が多い程,得られる加水分解の程度も高くなる」。 (同4欄61〜64行,同訳文5頁26〜27行)引用部分?F「本願発明者らは,部分グリセリドを最大量で,かつ遊離の脂肪酸を最小量で得ることに大きな関心を抱いていたので,本願発明者らは,脂肪の量を基準にして,水の量を約0.5〜5%の範囲に限定するのが良いと考えている。脂肪酸の部分グリセリドに対する相対的な比率は,その反応に使用された脂肪の化学的および物理的性質に依存して,各種所定の水の比率により変化するであろう。しかしながら,いずれの場合であっても,水の比率を上述の範囲に限定すれば,脂肪酸に対して高い比率の部分グリセリドが得られる(同5欄3〜15行,同訳文6頁5〜11。」行)引用部分?G「部分グリセリドはまた,脂肪酸とグリセロールとから出発する合成反応で,その合成を本明細書に記載するトウゴマの実のリパーゼ調製物を触媒に用いることによっても,調製することができる。そのような反応を実施するには,脂肪酸たとえば,カプリン酸,ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,アラキン酸,オレイン酸,リシノール酸などを,リパーゼ調製物と混合し,その混合物の中にグリセロールを加える。その反応を,約5℃〜20℃の範囲の温度で起こさせる。 その混合物を攪拌し,またエステル化反応による水をそれが生成されると同時に除去するために,乾燥した不活性ガスたとえば窒素または二酸化炭素をその混合物の中にバブリングさせるのが好ましい。エステル化反応による水を除去することによって,エステル化反応の程度が高くなる(同5欄59〜74行,同訳文7頁7。」〜15行)引用部分?H「実施例?Tから付きのトウゴマの実(25g)を50?tの水の存在下で乳鉢の中で摩砕して,ペースト状物とした。そのペースト状物を,25?tの水を使用してビーカーに移した。得られたリパーゼのミルク状物を,ビーカーに覆いをして2℃〜4℃で一夜保存した。その翌日,ほぼ等量のフタル酸カリウム溶液(0.2M,pH4.25)を加え,塩酸を加えてそのミルク状物のpHを4.5に調節した。次いでそのミルク状物を遠心分離にかけ,クリーム状物を蒸留水を用いて洗浄し,次いで再び遠心分離にかけた。収量19.9gでリパーゼのクリーム状物が得られ,そのリパーゼの比活性は0.55であった(同6欄21行以下,同訳文7頁27行〜8頁4。」行)引用部分?I「実施例?U実施例?Tで調製したリパーゼクリーム状物の一部を凍結させてから,真空にかけて乾燥させた。次いで石油エーテルを用いて,脂肪がまったくなくなるまで,その乾燥生成物を数回抽出した。その生成物のリパーゼの比活性は7.33であった(同6欄36行以下,同訳文8頁5〜8行)。」引用部分?J「実施例?V(A)実施例?Uで調製したリパーゼ粉体の50ミリグラムを50gのオリーブ油と混合し,その混合物の中に撹拌しながら1.25gの水を加えた。その反応混合物を,平衡に達するまで約25℃で静置した。 (B〜E)上述の手順を繰り返したが,使用する水の量を以下のように変化させた:B,1.58g;C,1.92g;D,2.25g;E,5.25g。 得られた結果を次の表にまとめた。 実施例水比率生成物および残存油比率(%)(%)脂肪酸モノグリセリドジグリセリドトリグリセリドA2.532.211.621.534.7B3.1637.713.219.030.1C3.8442.213.016.328.5D4.546.412.118.023.5E10.570.05.811.812.4(同6欄44行以下,同訳文8頁9行以下)」引用部分?K「実施例?Y実施例?Uで調製したリパーゼ粉体150mgを,14.3gのオレイン酸と混合した。次いでグリセロール(16.8g)を添加し,その混合物を,その中へ乾燥窒素をバブリングさせながら,10℃で保持した。4.5時間後および68時間後にその混合物を分析すると以下のような組成であることが判った:反応時間酸およびエステル化反応生成物の比率(%)(時間)酸モノグリセリドジグリセリドトリグリセリド4.586.05.88.00.26834.623.827.314.3(同7欄28行以下,同訳文9頁)」【引用例2の記載】引用部分?@「要約真菌菌糸体の細胞結合性脂肪分解酵素を用いたグリセリドと脂肪酸エステルの合成について述べる。基質溶液に有機溶媒を用い,また固相酵素系を用いることにより,充填床型反応器および撹拌槽型反応器において,高度の連続的変換が可能になる(乙23の1の211頁第1段落,同訳文1頁5行〜8行)。」引用部分?A「序論Slotboomリゾプス・アーヒザス()Rhizopusarrhizusの細胞外脂肪分解活性(Bellら,1970年)および細胞結合性脂肪分解活性(ブレインら,1976年,ら,1978年)についてはよく知られている。酸とグリセロールとのエステル化,アスペルギルス・ニガーあるいはその他のアルコール類とのエステル化は(イワイら,1964年,(イワ(リゾプス()sp.AspergillusnigerRhizopus))サキら,1976年)およびその他の糸状菌(ツジサカら,1977年)由来の細胞外リパーゼを用いて実施されているが,これらの試験では不均質な反応系と長時間にわたる培養法が使用されている。 リ前の論文(ベルら,1978年)で述べたように,有機溶媒に溶解した基質を菌糸体と振とうフラスコ培養法を用いゾプス・アーヒザス()Rhizopusarrhizusて培養することにより高収率でエステルとグリセリドを得ることができる。本論文では,充填床型反応器()および撹拌槽型反応器()の両者を用いてP.B.RS.T.R連続的な変換を実行する可能性について報告する(同211頁第2・第3段落,。」同訳文1頁9〜21行)引用部分?B「実験方法菌糸体の調製。(83711)は英連リゾプス・アーヒザス(Rhizopusarrhizus)CMI邦菌学会(サリー州,イングランド)から入手した。この菌糸体を前に述べたようにして培養し,集菌し,凍結乾燥して脱脂した(ブレインら,1976年。得ら)れた材料をナイフミルで粉砕し,1250μmの篩を通る粒子を得た。この材料を真空中PO上で,室温下で必要時まで保管した(同212頁第1段落,同訳25。」文1頁22〜27行)引用部分?C「後で実施したとを比較するグリセリド合成に関する研究では…恒P.B.R.S.T.R.温空気浴を用いて操作温度を30℃に維持し,…所定の流速で基質溶液を送り込んだ(同212頁第3段落,同訳文2頁3〜6行)。」引用部分?D「触媒および充填剤。菌糸体材料を適切な溶媒で濡らして取扱いやすくし,その必要量を(必要に応じ脱水剤と混合して)反応器に添加した。 基質および溶媒。すべての溶媒およびグリセロール()以外のすべての基質A.R.は工業銘柄であり,ブリティッシュ・ドラッグ・ハウズィズ,プール,イングランドから供給された。使用前にすべての溶媒を,モレキュラーシーブ4A型()上で乾燥させた(同212頁第5・第6段落,同訳文2頁13〜1B.D.H.。」7行)引用部分?E「グリセリドの合成。バッチ式フラスコ振とう系を用いたグリセリドの合成に関する予備的な研究で(ベルら,1978年,ジイソプロピルエーテル:アセトン=)4.1の組成の溶媒を用いて最良の結果が得られることが実証された。10%重量/体積(354ミリモル/リットル)のオレイン酸濃度および0.2%重量/体積(22ミリモル/リットル)のグリセロール濃度を用いて,2時間後に44%のエステル化が,また24時間後に70%のエステル化が達成された。 におけるグリセリド合成度に対するオレイン酸濃度の影響を検討したが,S.T.R.その結果を図3に示す。このは菌糸体1gを含み,流速は0.85mL/minでS.T.R.あった。結果はバッチシステムを用いて2時間にわたる培養で得られた結果と同様であり,またオレイン酸濃度を10%重量/体積以上に増加させても生じるエステル化度に影響がみられないことが分かる(同214頁第2・第3段落,同訳文。」4頁6〜16行)引用部分?F〈図は省略〉(同213頁Fig.3およびFig.4,同訳文3頁図3および図4)引用部分?G「P.B.R.およびS.T.R.におけるグリセリド合成の比較。およびで得らP.B.R.S.T.R.れたエステル化度を種々の量の菌糸体を用いて比較した。の場合,空隙容量P.B.R.を0.5?o径の微小ガラス球ビーズで満たした。図4は,所定量の菌糸体に対して得られたエステル化度はの方が高いが,いずれの反応系においても存在すP.B.R.る菌糸体の量とエステル化度の関係については同様な応答がみられたことを示している(同214頁最終段落,同訳文4頁下から5行〜末行)。」引用部分?H「反応中に生成したグリセリドの性質。から得られた流出物中に存在する脂P.B.R.質を,薄層クロマトグラフィーおよびガス‐液体クロマトグラフィーにより分析した(ブレインら,1976年。結果を表2に示す。主要な2種類の生成物は1-)モノグリセリドと1,3-ジグリセリドであり,トリグリセリドへの変換は極めて少なかった。 表2:グリセリド合成生成物の分析グリセリド流出物中の存在量P.B.R.(原料のグリセロールに対する%)トリグリセリド1.41,3-ジグリセリド21.81-モノグリセリド22.8は菌糸体5gとモレキュラーシーブ5gを充填した100?p×内径1?pのP.B.R.円筒であった。流速は15mL/hであった。リノール酸濃度=5%重量/体積(177ミリモル/リットル,グリセロール濃度=0.2%重量/体積(22ミリモル)/リットル(同215頁第1段落及びTable2,同訳文5頁1〜4行,表2,)。」5〜7行)引用部分?I「結論本研究は,反応器システムにおける脂肪分解変換用の固相酵素源として乾燥真菌菌糸体が適切であることを実証している。ここで述べた方法は他の脂肪分解酵素について報告されたような(ホリウチら,1974年,リーベルマンおよび,Ollis1975年)酵素の可溶化,精製および固定化の必要性を排除するものであり,ここでは乾燥細胞それ自身が酵素の適切な天然の担体となっている。本研究で述べた条件下で,菌糸体粉末はかなり長い期間にわたりその酵Rarrhizus.アーヒザス()素活性を維持する。 と有機溶媒を併用することによって,酸およびアルコールを適切に選択しP.B.R.て広範囲にわたりエステルを合成することが可能になり,連続的に高度の変換を得ることができる(同215頁「」の項,同訳文5頁8〜17行)。」CONCLUSION【引用例3の記載】引用部分?@「1964年にイワイら[5]は,オレイン酸とグリセロールまたはその他のアルコールからグリセリドあるいはエステルを合成する場合のアスペルギルス・ニガーから得られた結晶性細胞外リパーゼの利用について報告した。 ()Aspergillusniger…この原稿を作成中にツジサカら[9]は,A.ニガー,リゾプス・デレ(niger)RhizopusdelemarGeotrichumマー,ゲオトリクム・キャンディダム(()およびペニシリウム・ノタトウム由来の精製candidumPenicilliumnotatum)()された細胞外リパーゼによるグリセリド合成の触媒反応について報告した。細胞に結合した真菌酵素のエステル化作用についての研究は知られていない(乙24。」の223頁左欄7〜23行同訳文2頁14〜25行)引用部分?A「本論文は,基質溶液とアーヒザス菌糸体凍結乾燥標品との培養にR.()arrhizusよって高度のエステル化を実現できることを示す。パルミチン酸からパルミチン酸オクチルへの90%を超える変換が生じ,またグリセロールとオレイン酸からグリセリドを合成することはそれほど容易ではなかったものの(水酸基のエステル化,に関しては)70%を超える変換が達成された(同223頁左欄下から8行〜。」末行,同訳文2頁下から2行〜3頁3行)引用部分?B「溶媒は使用前にモレキュラーシーブ上で乾燥させた(同223頁右欄9〜1。」0行,同訳文3頁10行)引用部分?C「脱脂凍結乾燥菌糸体はPO上で用時まで保管した(同223頁右欄17〜125。」8行,同訳文3頁14〜15行)引用部分?D「3.2.部分グリセリドの合成両基質にとって適切な溶媒であることが証明されているアセトンの中で,グリセロールとオレイン酸とを反応させた。…乾燥剤としてモレキュラーシーブを使用した場合も合成度が改善されることを表3に示した。…表3グリセリドの合成におけるモレキュラーシーブの効果アセトン中で,0.2%(重量/体積)グリセロールおよび10%(重量/体積)オレイン酸,2.5mlを100mgとともに30℃R.アーヒザス()arrhizusで24時間培養した。反応は反復された。 モレキュラー合成度シーブ(ペレIIIット添加)059.056.5557.765.11070.072.51571.368.82060.263.9(同224頁右欄「3.2.」の項および225頁左欄「TABLE3,同訳文4頁下か」ら4行以下)引用部分?E「ここで報告したように,ほぼ無水の溶媒中で真菌の菌糸体を酵素源として得られた合成度が,ツジサカら[5,9]が少量の脂肪酸を含むグリセロールの水溶液からなる系で純粋な可溶性のリパーゼを用いて得た結果と同等であることは興味あることである(同224頁右欄26行〜225頁左欄1行同訳文5頁11〜1。」3行)【引用例4の記載】引用部分?@「(1)酵素を活性化する少量の水と共に,分子間エステル化触媒として,脂肪酸反応体に接触されたリパーゼ酵素の存在で分子間エステル化によりグリセリド油又は脂肪を含む脂肪反応体中の脂肪基の転位の方法。 (2)0.2ないし1%の水が脂肪反応体の重量で存在する特許請求の範囲(1)による方法(乙26の「2.特許請求の範囲)。」」引用部分?A「(6)酵素が…リゾパスアーヒザス…リパーゼを含む前記()Rhizopusarrhizusの特許請求の範囲の何れかによる方法(同「2.特許請求の範囲)。」」引用部分?B「本発明は特に食用のための脂肪及び分子間エステル化()によinteresterificationるこれらの製造に関するものである。…本発明はリパーゼを分子間エステル化反応に触媒としての使用を提案する。従って,本発明はこの反応が触媒としてリパーゼ及びこのリパーゼを活性化するため,緩衝液を含有する少量の水の存在で行なわれることを特徴とする脂肪の分子間エステル化のための方法を供する(同2頁左下欄4〜17行)。」引用部分?C「部分グリセリドの生成と共に逆の加水分解反応が促進されるので,本発明において1%以上の水又は緩衝液はあまり望ましくない(同2頁右下欄16〜18。」行)引用部分?D「本発明の方法は従来の分子間エステル化法の結果を得るために適用することができる。 遊離脂肪酸は反応の途中でトリグリセリド自体から放出される他の脂肪酸と共に,転位におけるグリセリドの生成に寄与するためにグリセリド混合物へ添加される(同3頁左上欄6〜11行)。」 |