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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成19ワ11981特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 技術的範囲 /  時効 /  クレーム /  援用権(援用) /  信義則 /  実施 /  業として /  損害額 /  不法行為(民法709条) / 
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事件 平成 19年 (ワ) 23460号 損害賠償請求事件
神奈川県相模原市<以下略>
原告株式会社イー・ピー・ルーム 東京都港区<以下略>
被告住 友石炭鉱業株式会社
同 訴訟代理人弁護 士冨永敏文
同 尾原央典
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2008/02/22
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1本件訴えを却下する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1当事者の求めた裁判1請求の趣旨被告は,原告に対し,10万円及びこれに対する平成19年9月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2請求の趣旨に対する答弁(1)本案前の答弁主文第1項と同旨。
(2)本案の答弁原告の請求を棄却する。
第2事案の概要本件は,被告が,原告作成に係る放電プラズマ焼結機の部品図から,原告代表者名である「A」の署名(以下「原告の署名」という。)部分を切除し,こ2れを原告が作成した放電プラズマ焼結機の設計図に貼り付けた行為が私文書偽造に当たり,不法行為が成立すると主張して,原告が,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,10万円及びこれに対する遅延損害金を支払うよう請求する事案である。
1原告の主張(1)原告は,「放電燒結装置」に関する特許権(特許第2640694号)に係る発明を実施した放電焼結機の設計及び製造を業としており,平成6年1月14日,被告との間で,放電焼結機の販売に関する取引基本契約(甲8)を締結し,同年9月ころ,被告が原告の設計したSPS-S502放電プラズマ焼結機を発注するか否かを検討するため,被告に対し,同放電プラズマ焼結機の設計図の写しを交付した。
原告は,同年10月7日,被告から,図面の修正,加筆等が必要であるとして,上記放電プラズマ焼結機の設計図の原紙を交付するよう要請されたため,上記設計図に自ら修正,加筆をした設計図(以下「原告設計図」という。)を作成し,その原紙を被告に送付した。また,原告は,被告の要請に応じて,同放電プラズマ焼結機の部品図(以下「原告部品図」という。)50枚(甲6はそのうちの1枚の写し)を作成し,被告に送付した。
原告は,同月14日,被告から,設計図(以下「本件設計図」という。)の写し(甲1の1)の送付を受けた。本件設計図の右下の四角く縁取りされた部分の中の「DRAWNBY」と題する欄には,原告の署名が記載されていた。被告は,50枚の原告部品図から無作為に1枚を選び,その部品図の中の原告の署名部分を切除し,これを原告設計図に貼り付けて本件設計図を作成したものであり,被告の上記行為は,私文書偽造に当たり,不法行為が成立する。
(2)原告は,被告が,上記偽造に係る本件設計図と50枚の原告部品図を用いて,SPS-510L住石放電プラズマ焼結機(甲3)を製造,販売して310万円以上の利益を得たことにより,これと同額の得べかりし利益を失った。したがって,被告は,原告に対し,損害賠償として10万円を支払うべき義務がある。
2被告の主張(1)本案前の主張本件訴えは,原告が,被告に対し,知財高裁平成19年(ネ)第10015号損害賠償請求控訴事件(乙2)において請求,主張したのと同一の事由に基づき10万円の支払を求めるものであり,前訴の蒸し返しであって信義則に反するから,本件訴えは却下されるべきである。
(2)本案についての主張ア原被告間の取引基本契約においては,被告が原告に対し設計図の作成を発注し,原告がこれを請け負うという関係にあった。取引基本契約書19条は,「注文品又は請負の実施に付帯して作成された乙の図面,技術資料等の所有権は甲に帰属する。」と規定されており,同規定によれば,乙(原告)が甲(被告)に納品した原告設計図の所有権は,被告に属するから,原告の請求はその前提を欠いている。
イ被告が原告の署名部分を原告部品図から切除して原告設計図に貼り付けたかどうかは,13年前(平成6年)のことであり,当時の担当者も別会社に移籍して被告に在籍していないから,分からない。
仮に,被告の担当者が原告の署名を切り取り,原告設計図に貼り付けたとしても,被告は本件設計図の作成者が原告であることを明示していること,当時,本件設計図の写しの送付を受けた原告からクレームが出なかったことに鑑みると,原告は,被告による上記の貼り付け行為を承認していたものと考えられる。
ウ原告は,本件設計図の送付を受けた平成6年10月14日には,被告が原告部品図から切除した原告の署名部分を原告設計図に貼り付けて本件設4計図を作成したことを認識していたというのであるから,原告が主張する不法行為に基づく損害賠償請求権については,原告が損害及び加害者を知ったときから3年を経過しており,時効により消滅している。被告は,本件訴訟において,上記時効援用する。
第3当裁判所の判断1証拠(乙2,8,9)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)原告は,被告に対し,以下のとおりの請求,主張を含む訴えを東京地方裁判所に提起した(平成18年(ワ)第22355号事件)。
ア請求被告に対し,原告部品図の署名「A」を切り取り,原告設計図に切り貼りし,偽造して原告に被らせた損害金の一部5万円及びこれに対する遅延損害金の支払。
イ請求原因被告は,原告が被告から強いて使うようにと言って渡された用紙に鉛筆で作図した50枚の放電焼結機の部品図の中から,例えば1枚の図面を選んで,原告の署名を切り取り,原告設計図に貼り付けて,原告の署名があるとする。かかる行為は私文書偽造に当たり,不法行為が成立する。
被告の上記不法行為による原告の損害額は,被告が「放電燒結装置」に関する発明(特許第2640694号)の技術的範囲に属する放電焼結機を製造販売して得た利益15億円であると推定され,このうち,一部請求として5万円を請求する。
(2)東京地方裁判所は,平成19年1月31日,原告の上記請求を棄却した。
原告は,上記の判決を不服とし,知的財産高等裁判所に控訴を提起した(知財高裁平成19年(ネ)第10015号事件)。知的財産高等裁判所は,原告の前記請求について,本件全証拠によっても,原告が被告から強いて使うようにと言って渡された用紙に原告が鉛筆で作図した50枚の部品図の中5から,例えば1枚の図面を選んで,原告の署名を切り取り,原告設計図に貼り付けたことを認めるに足りないから,原告の請求に理由はない旨説示して,原告の控訴を棄却し,同年9月14日,同判決は確定した(以下,上記訴訟を「前訴」という。)。
2本件訴訟における原告の請求は,被告が,原告より送付された50枚の原告部品図から無作為に1枚を選び,その部品図から原告の署名部分を切除した上,原告設計図に貼り付けて本件設計図を作成したという行為が,私文書偽造に当たり,不法行為が成立するから,原告が放電焼結機を製造販売して得た利益の一部10万円を損害賠償として支払うことを求める,というものである。したがって,原告が提起した本件訴えは,上記1で認定した前訴における損害賠償請求と同一の不法行為に基づく損害賠償請求の残部を請求するものであり,前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものにほかならず,前訴の確定判決によって紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し,被告に更なる応訴の負担を強いるものということができる。
そうすると,原告の被告に対する本件訴えは,信義則に照らして許されないものと解するのが相当である。
3よって,本件訴えは,不適法な訴えであるから,これを却下することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。