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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成13ワ1105特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成19ワ13121特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成12ワ12728特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成14ワ5107特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成16ワ14710特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 承継 /  上位概念 /  技術的範囲 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  実施料相当額 /  模倣 /  ライセンス /  商標権 /  優先日 /  出願経過 /  参酌 /  均等 /  禁反言 /  特許発明 /  実施 /  権原 /  加工 /  構成要件 /  専用品 /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  販売数量(販売数) /  実施料 /  相当因果関係 /  不法行為(民法709条) /  実施許諾(実施の許諾) /  混同 /  知らないで /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 17年 (ワ) 2190号 特許権侵害差止等請求事件
原告イリノイ ツール ワークス インコーポレイテッド
原告日本パワーファスニング株式会社
原告ら訴訟代理人弁護士原 清藤原稔久
原告ら補佐人弁理士石井暁夫 東野正 西博幸
被告三鈴株式会社
被告 Y
被告ら訴訟代理人弁護士佐竹修三
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2007/04/26
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告イリノイツールワークスインコーポレイテッドの被告らに対する請求をいずれも棄却する。
2被告三鈴株式会社は,別紙ロ号物件目録記載の連結ピンについて,輸入,譲渡,譲渡のための展示をしてはならない。
3被告三鈴株式会社は,別紙ロ号物件目録記載の連結ピンについて,同被告の本店及び営業所並びに工場・倉庫に存する在庫及び仕掛品をすべて廃棄せよ。
4被告三鈴株式会社は,原告日本パワーファスニング株式会社に対し,301万1020円及びこれに対する平成17年3月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
- 2 -5原告日本パワーファスニング株式会社の被告三鈴株式会社に対するその余の請求及び被告Yに対する請求をいずれも棄却する。
6訴訟費用は,原告イリノイツールワークスインコーポレイテッドと被告らとの間においては,全部同原告の負担とし,原告日本パワーファスニング株式会社と被告Yとの間においては,全部同原告の負担とし,原告日本パワーファスニング株式会社と被告三鈴株式会社との間においては,両者の間に生じた費用を10分し,その1を同被告の負担とし,その余は同原告の負担とする。
7この判決の第2項ないし第4項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1請求1被告三鈴株式会社(以下「被告会社」という )は,別紙イ号物件目録記載のス 。
トリップ(以下「イ号物件」という,別紙ロ号物件目録記載の連結ピン(以下 。)「ロ号物件」という,別紙ハ号物件目録記載のガスカートリッジ(以下「ハ号 。)物件」という,別紙ニ号物件目録記載のガスカートリッジ用定量ノズル(以下 。)「ニ号物件」という,別紙ホ号物件目録記載のガスツール用ボンベ(以下「ホ 。)号物件」という,別紙へ号物件目録記載の連結ピン(以下「へ号物件」とい 。)う )及び別紙ト号物件目録記載のストリップ(以下「ト号物件」という )につ 。 。
いて,輸入,製造,譲渡,譲渡のための展示をしてはならない。
2被告会社は,前項記載の各物件について,本店及び営業所並びに工場・倉庫に存する在庫及び仕掛品をすべて廃棄し,かつ,上記各物件を製造するための金型その他の設備を廃棄せよ。
3被告らは,原告イリノイツールワークスインコーポレイテッド(以下「原告ITW」という )に対し,連帯して3950万円及びこれに対する平成1 。
7年3月23日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4被告らは,原告日本パワーファスニング株式会社(以下「原告JPF」という )に対し,連帯して6400万円及びこのうち4650万円に対する平成17 。
年3月23日(訴状送達の日の翌日)から,このうち1750万円に対する同年10月7日(同月4日付け訴え変更申立書送達の日の翌日)から,いずれも支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,@原告ITWが,イ号物件は原告ITWが有する後記特許権(以下「本件特許権」という )の技。
術的範囲に属すると主張して,被告会社に対し,本件特許権に基づき,イ号物件及びロ号物件(イ号物件とこれに保持された10本のピンによって構成されている )の譲渡等の差止め及び在庫等の廃棄を求めるとともに,被告会社に対し,特 。
許権侵害不法行為(民法709条)に基づき,被告Y(以下「被告Y」という )に対し,民法709条又は商法(平成17年法律第87号による改正前のも 。
の。以下同じ )266条ノ3第1項に基づき,連帯して3950万円の損害賠償 。
金(訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む )の支払を求め,。
A原告JPFが,原告JPF及び訴外ジェイ・ピー・エフ・ワークス株式会社(以下「JPFワークス」といい,原告JPFと併せて「原告JPFら」という )が販売している。
後記連結ピン(以下「本件商品1」という )の商品表示として周知性を取得して 。
いる本件商品1の形態と類似する形態のロ号物件及びヘ号物件を販売している被告会社の行為並びに原告JPFらが販売している後記ガスカートリッジ(以下「本件商品2」といい,本件商品1と本件商品2を併せて「本件各商品」という )の商品表示として周知性を取得している本件商品2の形態と類似する形態の 。
ハ号物件を販売している被告会社の行為は,いずれも不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たると主張して,同法3条に基づき,被告会社に対し,ロ号物件とロ号物件を構成するイ号物件,へ号物件とへ号物件を構成するト号物件,ハ号物件とハ号物件を構成するニ号物件及びホ号物件の譲渡等の差止め及び在庫等の廃棄を求めるとともに,被告会社に対し,同法4条に基づき,被告Yに対し,民法709条又は商法266条ノ3第1項に基づき,連帯して6400万円の損害賠償金(うちロ号物件及びハ号物件の販売に係る損害金4650万円につき訴状送達の日の翌日から,うちへ号物件の販売に係る損害金1750万円につき平成17年10月4日付け訴え変更申立書送達の日の翌日から,いずれも支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む )の支払を求め。
た事案である。
1争いのない事実(1)当事者ア原告ら(ア)原告ITWは,ねじ類や釘・鋲等の工業用のファスナー,ツール類,金具類等を扱う開発型メーカーであり,北米,欧州,アジア,オーストラリア等,世界各国に支社,営業所,代理店を有している(以下,原告ITWが世界に展開するこれら支社等を「原告ITWグループ」という。。)(イ)原告JPFは,原告ITWグループに属する会社であり,我が国において「JPFグループ」を形成してその中核をなしている。
JPFワークスは,JPFグループに属する会社であったが,平成19年1月1日,原告JPFによって吸収合併され,原告JPFがその権利義務を承継した。
イ被告ら(ア)被告会社は,産業用機械機器具卸売等を営む会社である。
(イ)被告Yは,被告会社の代表者である。
(2) 原告ITWの特許権原告ITWは,次の特許権(本件特許権)を有している(以下,別紙特許公報(以下「本件特許公報」という )の特許請求の範囲請求項1の発明を「本件 。
特許発明1」と,請求項6の発明を「本件特許発明2」といい,本件特許発明1,2を併せて「本件各特許発明」という。また,本件各特許発明に係る特許を「本件特許」といい,本件特許出願の願書に添付された明細書を「本件明細書」という )。
特許番号第2588812号発明の名称ファスナ保持帯及びファスナ打込装置における組合わせ出願日平成4(1992)年3月4日(特願平4-81390)登録日平成8(1996)年12月5日特許請求の範囲本件特許公報の特許請求の範囲記載のとおり(3)本件特許発明1の構成要件本件特許発明1の構成要件を分説すると,次のとおりである。
A釘や打込ピン等のファスナを圧縮空気機関あるいは内燃機関により駆動されるファスナ打込装置によって打ち込む際に前記ファスナを帯状に整列・保持するファスナ保持帯において,B前記ファスナ保持帯は合成樹脂材料により成形され,C前記ファスナは,尖った先端部と頭部とを有し被接合部材を貫通して基材に強制的に打込まれるように構成された細長いシャンクを備え,前記シャンクは,前記頭部と結合する位置に外方へ広がるテーパ部分を有し,D前記ファスナ保持帯は,前記ファスナの個々に対応し貫通孔を有する複数のスリーブを有し,E前記スリーブは,環状部分と,前記環状部分と一体で破断可能な部分とを有し,F前記環状部分の前記貫通孔が前記ファスナの先端部に近い前記シャンクの部分を把持するとともに前記破断可能部分の前記貫通孔が前記ファスナの頭部に近い前記シャンクの部分を把持し,G前記破断可能部分はG1前記環状部分とは反対側に打撃用端部を有するとともにG2ファスナの直径方向に背向し外方へ開口し湾曲した1対の同形状の窪んだ凹所を有し,H前記各凹所の奥には前記ファスナのシャンクの一部が露出可能な窓をそれぞれ有し,I前記ファスナ保持帯は隣接する前記スリーブの前記環状部分どうしの間及び前記破断可能部分どうしの間にそれぞれノッチで囲まれた壊れやすいブリッジ部を有し,J前記打撃用端部は前記凹所の各々を2等分するファスナ方向面と前記打撃用端部との交線に沿うノッチを有し,K前記被接合部材を貫通させて前記ファスナを前記基材に強制的に打込む際に,K1前記ファスナの頭部を打撃して前記ファスナのシャンクのテーパ部分を前記破断可能部分の打撃用端部に強く押し付け,K2前記環状部分を前記被接合部材に強く押し付け,前記ノッチから破断が開始し,K3前記ファスナ方向面にほぼ沿って前記破断可能部分を少なくとも2つの分割部分に割り拡げ,K4前記被接合部材に押し付けられた前記環状部分が前記ファスナの頭部と前記被接合部材との間の間隙をなくすとともに前記ファスナの打込時に加えられる衝撃を吸収するLことを特徴とするファスナ保持帯。
(4) 本件特許発明2の構成要件本件特許発明2の構成要件を分説すると,次のとおりである。
M釘や打込ピン等のファスナを圧縮空気機関あるいは内燃機関により駆動され打ち込むファスナ打込装置における組合わせであって,N前記ファスナを帯状に整列・保持するファスナ保持帯と,前記ファスナ保持帯をその長手方向へ案内する案内装置とを有し,B前記ファスナ保持帯は合成樹脂材料により成形され,C前記ファスナは,尖った先端部と頭部とを有し被接合部材を貫通して基材に強制的に打込まれるように構成された細長いシャンクを備え,前記シャンクは,前記頭部と結合する位置に外方へ広がるテーパ部分を有し,D前記ファスナ保持帯は,前記ファスナの個々に対応し貫通孔を有する複数のスリーブを有し,E前記スリーブは,環状部分と,前記環状部分と一体で破断可能な部分とを有し,F前記環状部分の前記貫通孔が前記ファスナの先端部に近い前記シャンクの部分を把持するとともに前記破断可能部分の前記貫通孔が前記ファスナの頭部に近い前記シャンクの部分を把持し,G前記破断可能部分は前記環状部分とは反対側に打撃用端部を有するとともにファスナの直径方向に背向し外方へ開口し湾曲した1対の同形状の窪んだ凹所を有し,H前記各凹所の奥には前記ファスナのシャンクの一部が露出可能な窓をそれぞれ有し,I前記ファスナ保持帯は隣接する前記スリーブの前記環状部分どうしの間及び前記破断可能部分どうしの間にそれぞれノッチで囲まれた壊れやすいブリッジ部を有し,J前記打撃用端部は前記凹所の各々を2等分するファスナ方向面と前記打撃用端部との交線に沿うノッチを有し,O前記案内装置は,1対の平行なリブを有し,前記各リブが,前記リブの間で前記ファスナ保持帯を案内するように前記複数のスリーブのうち少なくとも1つのスリーブによって把持される前記ファスナのシャンクの露出する部分に接近し前記窪んだ凹所のそれぞれの1つに嵌まり,P前記リブが,前記リブの長手方向に沿って移動することを前記ファスナ保持帯に許容し,K前記被接合部材を貫通させて前記ファスナを前記基材に強制的に打込む際に,K1前記ファスナの頭部を打撃して前記ファスナのシャンクのテーパ部分を前記破断可能部分の打撃用端部に強く押し付け,K2前記環状部分を前記被接合部材に強く押し付け,K3前記ノッチから破断が開始し,前記ファスナ方向面にほぼ沿って前記破断可能部分を少なくとも2つの分割部分に割り拡げ,K4前記被接合部材に押し付けられた前記環状部分が前記ファスナの頭部と前記被接合部材との間の間隙をなくすとともに前記ファスナの打込時に加えられる衝撃を吸収するQことを特徴とするファスナ打込装置における組合わせ。
(5) 本件商品1原告JPFらは,別紙本件商品1説明書記載の連結ピン(本件商品1)を販売している。連結ピンとは,保持帯で保持された状態のピンをいう。
本件商品1の形態は,同説明書記載のとおりであり,別紙本件製品1説明書記載の合成樹脂製ストリップ(以下「本件製品1」という )とこれに保持され。
た10本のピンとから構成されている。ストリップとは,ピン用の保持帯をいう。
(6) 本件商品2原告JPFらは,別紙本件商品2説明書記載のガスカートリッジ(本件商品2)を販売している。
本件商品2の形態は,同説明書記載のとおりであり,別紙本件製品2説明書記載の定量ノズル(以下「本件製品2」という )と別紙本件製品3説明書記載 。
のボンベ(以下「本件製品3」という )とから構成されている。 。
(7) イ号物件及びロ号物件被告会社は,平成14年11月初めには,ロ号物件(連結ピン)の販売を開始した。
ロ号物件の形態は,別紙ロ号物件目録記載のとおりであり,イ号物件(合成樹脂製ストリップ)とこれに保持された10本のピンとから構成されている。
イ号物件の構成は,別紙イ号物件目録記載のとおりであり,本件各特許発明構成要件のうち,構成要件Iを除くすべての構成要件を充足している。
(8) ハ号物件,ニ号物件及びホ号物件被告会社は,平成14年11月初めころには,ハ号物件(ガスカートリッジ)の譲渡を開始した。
ハ号物件の形態は,別紙ハ号物件目録記載のとおりであり,ニ号物件(定量ノズル)とホ号物件(ボンベ)とから構成されている。
(9) へ号物件及びト号物件被告会社は,遅くとも平成17年3月からへ号物件(連結ピン)を輸入,販売している。
へ号物件の形態は,別紙へ号物件目録記載のとおりであり,ト号物件(合成樹脂製ストリップ)とこれに保持された10本のピンとから構成されている。
2争点(1) イ号物件は本件各特許発明技術的範囲に属するか。
イ号物件は本件各特許発明構成要件Iを充足するか (争点1)。
(2)ロ号物件の販売は不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当するか。
ア本件商品1の形態は周知な商品等表示といえるか (争点2)。
イロ号物件の形態は本件商品1の形態と類似するか (争点3)。
ウロ号物件を本件商品1と誤認混同するおそれがあるか (争点4)。
(3)ハ号物件,ニ号物件及びホ号物件の譲渡は不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当するか。
ア本件商品2の形態は周知な商品等表示といえるか (争点5)。
イハ号物件の形態は本件商品2の形態と類似するか (争点6)。
ウハ号物件を本件商品2と誤認混同するおそれがあるか (争点7)。
(4)へ号物件の輸入,販売は不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当するか。
ア本件商品1の形態は周知な商品等表示といえるか (争点2と同じ)。
イへ号物件の形態は本件商品1の形態と類似するか (争点8)。
ウヘ号物件を本件商品1と誤認混同するおそれがあるか (争点9)。
(5) 被告Yの責任の有無(争点10)(6) 原告ITWの損害アロ号物件の販売額(争点11)イ本件特許の実施料率(争点12)ウ原告ITWの損害額(争点13)(7) 原告JPFの損害アロ号物件の販売額(争点11と同じ)イハ号物件の販売額(争点14)ウへ号物件の販売額(争点15)エ本件商品1,2の形態の使用料率(争点16)オ原告JPFの損害額(争点17)第3争点に関する当事者の主張1争点1(イ号物件は本件各特許発明構成要件Iを充足するか )について。
【原告ITWの主張】(1) ノッチの意味本件各特許発明構成要件Iは 「前記ファスナ保持帯は隣接する前記スリー ,ブの前記環状部分どうしの間及び前記破断可能部分どうしの間にそれぞれノッチで囲まれた壊れやすいブリッジ部を有し 」であるところ,そこに記載されて ,, いる「ノッチ」の意義について,岩波書店発行の広辞苑第4版(甲33)には「刻み目,目盛り,切欠」という意味が掲載されており,研究社発行の新英和大辞典(甲34)には 「nоtch」について 「切欠き,V字形の刻み目」 ,,といった意味が掲載されている。また,財団法人日本規格協会発行のJIS工業用語大辞典(甲35)には 「ノッチ効果」について 「穴,溝などがある材 ,,料に応力を加えると,その集中効果によって強さが低下する効果をいい,切欠き効果ともいう 」との説明があり,このことから,ノッチは 「穴,溝」とし 。 ,て把握できる。
これら甲第33ないし35号証を参酌すると,本件各特許発明における「ノッチ」とは 「溝」又は「切欠き」と解すべきである。 ,別紙イ号物件目録中のイ号図面の図7,9,11の拡大図である別紙イ号物件原告作成図に網掛けで表示したように,イ号物件の下側ブリッジ部11及び上側ブリッジ部12は,いずれも,隣り合ったスリーブ3によって画定された溝a〜eで囲われており,これらの溝a〜eがノッチに該当することは明らかである。したがって,イ号物件のブリッジ部11,12がノッチで囲われていることは明らかである。
被告らは,本件特許公報の実施例図面(図4,図5)に引きずられて,ノッチをV形の溝というように早合点したと推測されるが,請求項のどこにもノッチが「V形」であるという限定は付されていない。また,後述するように,本件各特許発明においてノッチがV形である必然性はないのであるから,イ号物件においてブリッジ部11,12を囲っている溝a〜eが本件各特許発明構成要件Iに記載しているノッチであることは明らかである。
(2) 補正との関係被告らは,構成要件Iにおける「ノッチで囲われた」の文言が補正によって付加されたことを理由に,包袋禁反言の原則に基づいてイ号物件が構成要件Iを備えていないと主張しているが,被告らの主張は,補正において追加された「ノッチ」が上位概念であることを無視したものである。本件特許公報の段落【0024】の第5文には 「上側ブリッジ部74は,上側ブリッジ部74を2 ,等分する垂直面のそれぞれの線に沿って延びる4つのV形ノッチを有している 」との記載があり,実施例のノッチが「V形」であることが記載されている 。
が,請求項では単に「ノッチ」と記載しているのみであって「V形ノッチ」とは記載していないのであり,したがって,補正によってあたかも「V形ノッチ」に限定したかのような被告らの主張は明らかに失当である。
本件各特許発明では,打撃用端部にもノッチが形成されている(構成要件J)が,この打撃用端部のノッチについても,段落【0023】には,実施例, として「V形状のノッチ70,72」との記載があって,請求項と実施例とで上位概念としての単なる「ノッチ」とその具体的形状の一例である「V形状のノッチ」とは明確に区別されている。このことからも,ブリッジ部を囲んでいるノッチの具体的断面形状がV形以外の他の形状も含んでいることが容易に理解できるのである。
ブリッジ部については,出願当初の請求項1では「脆いブリッジ部」の記載。 しかなく,どのような手段によって脆くなっているのか,その限定はなかった, したがって,たとえば後加工を施して弱化したような構成も含んでおり,またブリッジ部の前後幅寸法も限定がなく,ブリッジ部が上下に分離していないものや,上側ブリッジ部の上端面がスリーブの上端面(打撃用端面)と同一面になっているもの,下側ブリッジ部の下端面がスリーブの下端面と同一面になっているもの,あるいは,ブリッジ部の幅寸法がスリーブの外径と同じものも含んでいたといえる。
そして,拒絶理由通知後に提出した補正書により 「ノッチで囲われた壊れや ,すいブリッジ部」と変更したのであるが,これは,ブリッジ部を壊れやすくす, るための具体的手段としてノッチを限定したことにほかならない。換言するとブリッジ部を壊れやすく薄肉化するための溝が存在していればそれがノッチなのである。
イ号物件は,ブリッジ部11,12を溝a〜eで囲って薄肉化することによって壊れやすくなっているのであるから,イ号物件の溝a〜eが本件各特許発明構成要件Iを備えていることは明らかである。
(3) 作用効果について被告らは,イ号物件のブリッジ部はノッチで囲われていないため本件各特許発明の作用効果を奏さないと主張しているが,そもそも,イ号物件は本件各特許発明に係る商品の代替物として製造されたもので,原告らが販売しているガスツールに使用されている本件各特許発明実施品と同じ作用効果を奏していることは明らかであるから,イ号物件が本件各特許発明と作用効果が相違するとの被告らの主張は,自己否定に等しく,失当である。
【被告らの主張】(1) ノッチが「穴,溝」として把握できることは争わない。
しかし,イ号物件のブリッジ部11,12を囲っている溝a〜eは,見方によってはノッチの一種であるかもしれないが,これらのうち,溝d,eが本件各特許発明構成要件Iに記載しているノッチに相当しないことは明らかである。
原告ITWは,被告らがノッチをあたかもV字状のものに限定するかのように主張しているが,被告らは,ノッチをV字のものに限定する意図はないし,そのように主張したこともない。
被告らが問題にしているのは,本件特許公報の段落【0024】に記載されている本件各特許発明実施例の説明において 「ファスナ保持帯10には,隣接 ,したスリーブ32との間に,壊れやすい上側ブリッジ部74と,壊れやすい下側ブリッジ部76とが設けられている。…壊れやすい各ブリッジ部74,76の各々は,断面がほぼ等脚台形をなしている。…上側ブリッジ部74は,上側ブリッジ部74を2等分する垂直面のそれぞれの線に沿って延びる4つのV形ノッチを有している。すなわち,比較的長い上部ノッチ80と,2つの同様な側部ノッチ82,84と,比較的短い下部ノッチ86である。下側ブリッジ部76は,下側ブリッジ部76を2等分する垂直面のそれぞれの線に沿って延びる4つのV形ノッチを有している。すなわち,比較的短い上部ノッチ88と,2つの同様な側部ノッチ90,92と,比較的長い下部ノッチ94である 」と記載されている点 。
である。
上記実施例におけるノッチ80,82,84,86は上側ブリッジ部74に形成されており,また,ノッチ88,90,92,94は下側ブリッジ部76に形成されている。
このように各ブリッジ部74,76は,それ自体に形成されている各ノッチ80〜94により壊れやすく形成されているものである。
したがって,本件各特許発明構成要件Iの「ノッチ」に,溝d,eまで含ませるべきではない。
よって,イ号物件におけるブリッジ部は,ノッチで囲まれておらず,イ号物件は,本件各特許発明構成要件Iを充足しない。
(2)原告ITWは,イ号物件のブリッジ部11,12は溝a〜eにより薄肉に形成されている旨主張するが,別紙イ号物件被告作成図の図2及び図3から明らかなように,イ号物件のブリッジ部11,12は,周囲に存在する溝(ノッチ)によって薄肉に形成されてはいない(なお,上記被告作成図の図1は正面図,図2は図1の斜め上方からの斜視図で,シャンクは1本のみ図示し他は省略したもの,図3は図1のファスナ保持帯の一部の拡大平面図,図4は図1の一部を拡大した正面図及び縦断面図,図5は図1のファスナ保持帯の一つの縦断面側面図である。。)(3)本件各特許発明構成要件Iに相当する出願時の明細書の特許請求の範囲の請求項1における記載は 「前記キャリヤが,該キャリヤのスリーブの隣接する ,ものゝ間に脆いブリッジを有する」とされており 「ノッチで囲まれた」という ,限定は付されていなかった 「ノッチで囲まれた」という限定は,本件特許の出 。
願(特願平4-81390号)に対する平成7年2月22日付けの拒絶理由通知書に対し,平成7年9月7日付けの手続補正書による補正でなされたものである。すなわち,前記手続補正書において本件特許発明1の要旨を明確にするためにノッチで囲まれたという限定をしたわけであるから,イ号物件にノッチで囲まれたブリッジ部が設けられていない以上,イ号物件によっては本件特許発明1のファスナ保持帯と同様の作用効果を奏することはできないといわざるを得ない。
(4)なお,本件特許の優先日である1991年3月5日より前の1989年4月26日に出願され,優先日より前の1990年6月12日に特許された米国特許第4932821号明細書(乙9)には,本件各特許発明のスリーブ32に相当する樹脂製の一対のガイドブッシング4は本件各特許発明のブリッジ部74,76に相当するウエブ8,8により連結されており,各ウエブ8には,本件特許公報の段落【0024】の実施例におけるV形ノッチ80〜94に相当するV形切欠き9が形成されていることが記載されており,溝d,eに相当する部位も図2に明瞭に表示されている。このように本件各特許発明構成要件Iは,本件特許出願前に刊行物に記載されていた内容にすぎないものである。なお,前記米国特許第4932821号のファミリー出願が我が国において実用新案登録第2596917号として登録されている(乙10 。)2争点2(本件商品1の形態は周知な商品等表示といえるか )について。
【原告JPFの主張】本件商品1の形態は,次に述べるとおり,原告JPFを中核とするJPFグループの商品であることを示す商品表示として周知性を取得している。
(1) 原告ITWによるガスツールの開発の概要釘や鋲のように軸の端部に頭を備えているファスナをワークに打ち込む打ち込み工具(以下「釘打ち機」という )には,その動力源としてエアー(圧縮空 。
気)を使用したエアーツールと,火薬を使用した火薬銃とがある。このうちエアーツールは釘打ち機に多用されているが,コンプレッサが必要であるとともにホースが接続されていて機動性に劣る問題がある。他方,火薬銃は管理が厄介で汎用性に欠ける。
原告ITWは,コンプレッサが不要で機動性に優れるとともに管理も容易な釘打ち機として,シリンダボアの内部を摺動するピストンをガスの燃焼圧によって前進させてファスナを打ち出すガス燃焼式の釘打ち機(以下「ガスツール」という )を世界に先駆けて開発しており,原告ITWグループは,ガスツ 。
ールについて世界中で圧倒的なシェアを誇っている(台数では世界中で30万台超の販売実績 。)ガスツールシステムの概要は,別紙ガスツールシステム説明書記載のとおりである。ガスツールには,多数本(例えば10本)のファスナを平行に並べた状態に保持帯(ピン保持帯)で保持して成る連結ファスナが使用されており,連結ファスナをマガジンに装填して,ファスナを1本ずつ連続的に打ち込むことができる。
原告ITWが有している本件特許権は,ガスツール用の連結ファスナに好適なファスナ保持帯,及びこのファスナ保持帯と打込装置との組合せに関するものである。
鉄筋コンクリート建物あるいは鉄骨コンクリート建物では,躯体を施工してから,間仕切壁で室を仕切ることが一般的であり,この場合,コ字状の溝型鋼を床面と天井面とに固定し,天井面に固定した溝型鋼(天レール)と床面に固定した溝型鋼(地レール)との溝内に支柱を嵌め込んで固定し,この支柱に石膏ボード等の壁パネルを固定することが行われている(縦横の枠材で構成された下地フレームを支柱に固定し,この下地フレームに石膏ボードを固定することも行われており,具体的な壁の構造は様々である。。)本件特許発明1を具体化したファスナ保持帯は,現在,上記溝型鋼をコンク, リートの天井及び床に固定するための釘状のファスナの連結に多用されており溝型鋼は「トラック:track」と称されることから,原告ITWは,溝型鋼の締結に好適なガスツールという意味で,主力機種に「トラックファースト」の商品名を付している。
溝型鋼締結用のファスナは,一般に「ピン」又は「コンクリートピン」と呼ばれており,現在原告ITWグループが販売している商品では,10本のピンが保持帯に保持されている。
ガスツールは,ボンベに充填されたガスを燃料とするものであるが,原告ITWは,燃料ガスを効率的に使用できるようにするため,ボンベに取り付けてガスを一定量ずつ噴出させるようにした定量ノズルも開発しており,ボンベに定量ノズルが取り付けられたガスカートリッジは,ガスツールシステムに必須の消耗品である。
(2) 本件商品1の形態についてア被告会社は,ロ号物件及びヘ号物件(連結ピン)を販売するに当たって,イ号物件及びト号物件(ストリップ)の形態を本件製品1と全く相違するものにしようと思えばできたのにこれをせず,その結果,需要者にあたかもロ号物件及びへ号物件が原告JPFらと関係があるかのように誤認させる事態を招来している。
すなわち 「トラックファースト」等,原告ITWが開発したガスツールに ,使用できるストリップは,機能的に形態が制限されているわけではなく,事業者が新商品を開発したり新規分野に参入したりするに際して通常行う努力をもってすれば,本件製品1とは類似しない様々の形態を選択できたのであるが,被告会社は混同を回避するために独自の形態を開発する努力をなんら行わず,本件商品1と酷似した形態を採用することで原告らの名声にフリーライドせんとしているものである。
被告会社が本件製品1と全く類似しないストリップを採用できたか否かを判断するに当たっては,ストリップの形態がツール(特にマガジン)の構造によって制約を受けるのか否か,制約を受けるとしてそれはどの程度か,ピンや釘等のファスナに使用されるストリップで参考になる従来形態としてどのようなものがあったか,といった点を考慮すべき必要があると解される。
以下,これらの観点から詳述する。
イガスツールの形式ガスツールの形式について,使用されるファスナの種類とガスカートリッジとの関係から説明すると,次のとおりである。
ガスツールは,シリンダ内に発生したガスの燃焼圧によってロッドを前進させてピン等のファスナを打ち出すものであるが,ピン等のファスナが装填されるマガジンの構造は,ファスナの連結方式によって必然的に異なってくる。
原告JPFらは 「トラックファースト」を主力機種として,他に 「イン , ,パルス (たとえば甲17の48「トラッカー (たとえば甲17の25 , 」),」)「パルサー (たとえば甲17の42,43「スティード (たとえば甲4 」 ),」9)を販売してきた。
本件商品1は 「トラックファースト」用の連結ピンである 「インパル , 。
, ス」は,主として木材の締結のための釘打ち機として開発されたものであり連結ピンとしては,紙テープ等に連結された連結釘(甲55の1の写真参照)が使用されており,ガスカートリッジとしては,本件商品2が使用されている 「トラッカー」は,構造や使用される連結ピン,ガスカートリッジが 。
「トラックファースト」と全く同じであり 「トラックファースト」との相違 ,点は,電池プラグ及び冷却ファン用モータに給電するためACアダプタ付きのコードが接続されている点だけである( トラックファースト」等の他の機 「種は,電源として電池を備えている「パルサー」には,新型(PS-70 。)。
0EQ。たとえば甲17の42)と旧型(PS325C。たとえば甲17の43)とがあり,新型は,連結ピンとしては本件商品1が使用され,ガスカートリッジとしては甲第32号証の3,4のものが使用されている。他方,旧型は,甲第17号証の43に表示されているように,連結ピンとしては薄い紙テープで連結した釘が使用されており,ガスカートリッジとしては本件商品2が使用されている 「スティード」は,連結ピンとしては長い2本の樹 。
脂テープで多数のピンを連結したコイルタイプのものと本件商品1との両方を使用でき,ガスカートリッジとしては本件商品2が使用されている。
したがって 「トラックファースト「トラッカー「パルサー」の新型, ,」,」,「スティード」の各マガジンは,基本的には同じ構造になっている(なお,「トラッカー」は,現在は販売されていないが,過去に販売された製品の大部分はまだユーザーが使用し続けていると推測される。。)ウ原告ガスツールに使用されるストリップに必要な形態上の要件・制約本件商品1は 「トラックファースト「トラッカー「パルサー」の新型, ,」,」,「スティード」の各ガスツールの機種に使用される連結ピンであり,これらのガスツール(以下,本件商品1に使用可能な上記各ガスツールを総称して「原告ガスツール」という )の各マガジンは基本的には同じ構造になってい 。
る。
連結ピンを原告ガスツールに使用可能とするためには,ストリップについて,ガスツールのマガジンに装填して自在にスライドできる形態であることと,ロッドの前進動によって先頭のスリーブが後続したスリーブから離脱する形態又は構造であることとが必要であり,ストリップはこの2つの要件を満たしておればよい。
そこでまず,主として甲第56号証の4,6( トラックファースト」のマ 「ガジン(ロングマガジン)及び「スティード」のマガジンを上から見た写真)に基づいてマガジン(ロングマガジン)を具体的に観察してみると,マガジンには,当該マガジンからピン及びストリップが抜け出ることを許容するための長溝がヘッドに向けて開口しており,長溝は,基本的には細長い長方形になっており,長溝のうち本体に近い側に互いに隣接して第1広幅部と第2広幅部とが形成されており,両広幅部の境界部は細いレール部になっている。そして,第1広幅部にピンの頭とスリーブの第2部分(以下,単に「第2部分」という )とが嵌まり,第2広幅部にスリーブの第1部分(以下, 。
単に「第1部分」という )が嵌まり,レール部にスリーブの凹所が嵌まるよ 。
, うになっており,ピンの打ち出しに際しては,先頭から2番目のスリーブは第2広幅部の前段部で第1部分が支持されるとともに,レール部で第2部分が支持され,これにより,ロッドが前進動すると先頭のスリーブと後続のスリーブとを繋ぐブリッジ部がちぎれて先頭のピンがスリーブとともに打ち出される。いうまでもないが,連結ピンをスムースにスライドさせるため,長溝及び両広幅部とも,ピン及びストリップとの間に若干の隙間が空くように設定されている。
上記の説明から理解できるように,原告ガスツールに使用されるストリップに必要な要件・制約は,a.マガジンの溝(長溝,広幅部)にスライド自在に嵌まること,b.先頭から2番目のピンを保持するスリーブが,ピンの打ち出しに際して両広幅部及びレール部のどこかで支持されること,c.隣り合ったスリーブが連結部において破断する(ちぎれる)ことの3点のみであり,この3つの条件を満たせばよい。
そして,ストリップが2つの広幅部に嵌まるためには,必ずしも本件商品1(本件製品1)やロ号物件(イ号物件 ,ヘ号物件(ト号物件)のような形 )態にせねばならない必然性はなく,第1広幅部に嵌まる部分と第2広幅部に嵌まる部分とを完全に分離したり,第1広幅部に嵌まる部分と第2広幅部に嵌まる部分とをそれぞれ薄肉にしたり,両広幅部に嵌まる部分を一体に連続した状態に形成してレール部に嵌まる凹所はピンが露出しない状態に形成したりするなど,必要とする機能は保持しつつ様々の形態を採用することができるのである。
エ他に採用可能な具体的形態の例次に,原告ガスツールに使用できるストリップについて様々の形態を採用できることを,具体的に挙げて説明する。
(ア)「スティード」用ストリップの例「スティード」のマガジンと「トラックファースト」のマガジンとは基本的には同じ構造である。したがって 「トラックファースト」も「スティ ,ード」も実質的には同一機種として把握して差し支えないのであるが 「ス,ティード」に使用できるストリップとしてコイルタイプがあり,このものは,甲第57号証の1,2に示すように,マガジンの第1広幅部に嵌まる第1シートと第2広幅部に嵌まる第2シートとの2本の樹脂シートから成るもので,両シートは互いに分離しているとともに,それぞれドーナツ状の単位部分がブリッジ部を介して連続した形態であり,ストリップのみの比較においても,ピンを連結した状態での比較においても,本件商品1と全く類似していないことは明らかである。
このように 「スティード」用のコイルタイプのストリップは 「トラッ , ,クファースト」用のマガジンに装填してピンを1本ずつ打ち出すという機能を保持しつつ,本件商品1のストリップ(本件製品1)とは全く形態が相違しているのであり,この点,本件商品1のストリップ(本件製品1)の形態がストリップ自身の機能又はマガジンの機能に制約された形態でないことの証左である。
なお,本件商品1を「スティード」に使用することはできるが 「スティ,ード」用の連結ピンは「トラックファースト」や「トラッカー「パルサ」,ー」には使用できないようにしている(ストリップの最大幅(ドーナツ状の部分の外径)を 「トラックファースト「トラッカー「パルサー」に ,」,」,おけるマガジンの広幅部の溝幅寸法よりも僅かに大きい寸法に設定している。これは,たとえば,甲第49号証に表示されているようにコイルタ 。)イプのストリップの保持には,専用のドラムが必要であることから,ユーザーが誤って使用しないように配慮したものであり,ストリップの寸法さえ揃えれば,ベルトタイプの連結ピンであっても「トラックファースト」にもそのまま使用することができる。
(イ)公報に開示された形態の例ピン(釘)の軸を互いに分離した2本のストリップで保持するタイプの例として,たとえば,甲第58号証の1(特開平9-177742号公報 ,甲第58号証の2(実開昭49-122264号公報 ,甲第58号 ) )証の3(実開昭55-71807号公報 ,甲第58号証の4(実開昭59 )-175707号公報)がある。
そして,これら甲第58号証の1〜4を基にして,2本のストリップがそれぞれ「トラックファースト」におけるマガジンの第1広幅部と第2広幅部とに嵌まるように幅寸法や厚さ等の寸法を変更すれば,ストリップとしての機能を損なうことなく 「トラックファースト」用として本件商品1 ,及び本件製品1と類似しない形態を採用することが可能であり,かつ 「ト,ラックファースト」に適用できるように形態や寸法に変更を加えることに特段の困難性があるとも思えない。
ストリップが全体として一体構造になっているもの(すなわち分離方式でないもの)の例としては,被告が先に提出した乙第9号証,同10号証の他に,甲第58号証の5(米国特許第4106618号公報のフロントページ及び図面ページ ,甲第58号証の6(米国特許第5865311号 )公報のフロントページ及び図面ページ ,甲第58号証の7(米国特許第6 )823990号公報のフロントページ及び図面ページ)などがある。これらの公報群から容易に推測できるように,全体としてブロック状の外観を呈するタイプのストリップであっても,形状や寸法をアレンジすることにより 「トラックファースト」に使用できる機能は保持しつつ,本件商品1 ,のストリップ(本件製品1)と類似しない形態と成すことは可能である。
(ウ)他の実施物の例広く使用されている連結ファスナ(連結釘)の例として,甲第17号証の43のカタログに提示されているPLテープ連結釘として表示されているとともに甲第55号証の1,2の写真で表示したテープ連結式のものが。)。 ある(なお,テープは紙製である場合もあるし樹脂製である場合もあるそして,甲第59号証の5及び甲第60号証の7に示すように,テープ連結式ファスナは 「トラックファースト」や「スティード」のマガジンに ,スライド自在に嵌め込むことができるが,このことからは,頭を揃えて並べた釘群が薄テープで連結されたものを基礎にして,テープに,マガジンの第1及び第2の広幅部のうちいずれか一方又は両方に嵌まる厚肉状の支持部を一体に設ければ,本件商品1のストリップとは類似しない形態でありながら 「トラックファースト」にそのまま適用できる形態を案出できる ,ことが理解される。
(エ)補足以上の説明でファスナ(ピン,釘)の連結態様の多様性を説明してきたが,これらの中には,空圧で駆動される工具(エアツール)や火薬の爆発力で駆動されるツール(火薬銃)に使用されるものもある。
しかし,ストリップの本質的機能(多数本のファスナを所定の姿勢・間隔に保持する機能,及び,マガジンと協働してロッドの前進でピンを1本ずつ離脱させる機能)は駆動方式を問わず共通しており,駆動方式の違う釘打ち機に転用可能なものである。
以上によれば,被告会社は,既に存在している形態を基礎又はヒントにして多少なりとも努力すれば本件商品1及び本件製品1とは類似しない形態に想到できたものである。
オ特許との関係について次に,特許との関係において,原告ガスツールに使用されるストリップの形態が機能によって制約されるのかについて述べる。
(ア)本件特許公報の段落【0014】には,次の記載がある。
「 0014】本発明の重要な一利点は,環状部分が対応するファスナの 【頭部とワークとの間の間隙をなくすだけでなく,ファスナをファスナ打込装置が打込む際に,打込装置がファスナに加える衝撃を吸収することである。したがって,工具の弾性バンパー,その他の摩耗可能な部品の耐用年数は,打込装置が被接合部材を貫通してファスナをコンクリート基材に打込むのに使用されれば通常の耐用年数を著しく延長することができる 」。
つまり,段落【0014】では,打ち込んだ後にスリーブがピンに嵌まったまま残っていることの利点として,スリーブの環状部分がファスナの頭とワークとの間に挟まって隙間を無くせることと,スリーブの環状部分が一種のクッション作用を果たして打込装置(ロッド,ピストン)に対する衝撃を吸収できることとを挙げている。
段落【0014】に記載しているように,打ち込み後にスリーブがピンに残ることでクッション作用を果たすことは事実であるが 「トラックファ,ースト」用の連結ピンにおいて必ずしも打ち込み後にスリーブがピン(あるいはワーク)に残る必要はなく,甲第61号証の公報に記載されかつ実施品を甲第62号証の写真で示すように,打ち込み後にスリーブが飛散してしまう商品も存在している。
したがって,ストリップの形態に必要な条件として,必ずしも打ち込み後にピン(あるいはワーク)に残ったままの形態である必然性はなく,ストリップが完全に飛散したり,ストリップの一部が飛散して一部が残ったりする形態でもよい。さらに,たとえば「スティード」のように,ストリップがピンに残るという機能は保持しつつ,本件商品1のストリップとは異なる形態を採用することもできる。
(イ)本件特許公報の段落【0015 ,段落【0036】には,次の記載が 】ある。
「 0015】上述のように本発明によって得られる改良されたファスナ 【, 保持帯をファスナ打込装置の案内装置と組合せることによる著しい利点は摩擦接触がファスナ保持帯の合成樹脂面と案内装置の鋼面との間に生じるのではなく,ファスナのシャンクの露出する部分の鋼面と案内装置の鋼面との間に生じることである 」。
「 0036】したがって,ファスナ保持帯10の合成樹脂の面と案内装 【置124の鋼面との間の摩擦接触は,最小限になり,ファスナ保持帯の供給動作の上からは好ましい。合成樹脂面と鋼面との摩擦接触が容易には回避できないときでも,2つの鋼面の間(すなわち,ファスナ12のシャンク18の鋼の露出部分46,50と平行なリブ160,162の鋼面との。 間)の摩擦接触が促進されるので,摩擦の低減の観点からこれは好ましい鋼面間での摩擦接触は,寸法的な許容値の点からも,合成樹脂面と鋼面との間の摩擦接触よりも好ましい。一般に,鋼製部品の寸法は,合成樹脂材料から成形される部品の寸法と比べてより小さい許容値内に抑制可能だからである 」。
段落【0015 ,段落【0036】は,実施例に即して述べると,スリ 】ーブの凹所40,42にファスナ(ピン)のシャンクが露出する窓44,48を形成したことの1つの意味として,窓44,48の存在により,ファスナのシャンクが案内装置(マガジン)における鋼製のリブ160,162(甲第56号証の4に表示したレール部)に接触することの利点を挙げている。そして,段落【0015】の効果を発揮するには,ファスナ(ピン)のシャンク(軸)のうち少なくともマガジンのリブ160,162に接触する部分が露出していることが必要である(ただし,この点は必要条件であって十分条件ではなく,露出している面積は広くてもよい。。)確かに,ピンが露出していてマガジンのレール部に直接に接触し得ることは好適であるが,しかし 「トラックファースト」に使用できるストリッ ,プの態様としてピンが露出していないといけないわけではない。このことは,テープで連結されたピンをガスツール( インパルス )に支障なく使 「」用している事実から容易に推測できる。したがって,たとえば乙第9号証に記載されているストリップを基礎として,凹所の底部が薄い膜状になっていてピンが露出しない形態のストリップを形成してこれを「トラックファースト」に適用することも可能である( トラックファースト」における 「マガジンのレール部の箇所には,ピンとの間に若干の隙間があるので,ピンが露出していなくても連結ピンをスライドさせることは可能である。。)更に重要な点は,仮にピンを露出させることが必須であるとして,ピンを露出させるための具体的な形態としては,本件商品1のような形態に限定されるのではなく,たとえば「スティード」用のコイルタイプのストリップや甲第56号証の1〜4から推測できるように,ストリップを分離方式にするなどして本件商品1のストリップとは類似しない形態を採用できるということである。
(ウ)まとめ以上のように 「トラックファースト」に使用できるストリップは特許と ,の関係で本件製品1の形態に制限されるわけではなく,かつ 「トラックフ,ァースト」用のストリップとして,特許の効果を保持しつつ本件商品1と類似しない形態を採用することができるのである。
カ本件製品1及び本件商品1の形態上の特徴本件製品1(ストリップ)は 「筒状の第1部分と第2部分とを有しており, ,第1部分と第2部分との間にピンが露出する部分が空いている」という点が形態の特徴であるといえる。
本件商品1(連結ピン)は,ストリップの形態における上記特徴を持っているのみならず,ストリップとピンとの組み合わせから生じる特有の形態になっており,その形態の特徴は 「全体に対してかなり広い面積を占めるボリ ,ューム感のあるストリップがある,ストリップの各スリーブにはピンが嵌まっていて各ピンは先端側の部分と頭の部分と軸の中途部との3カ所においてストリップから露出している」という点に要約されるといえる。
そして,後記のとおり,イ号物件及びト号物件は,本件製品1の形態上の特徴を備えていて本件製品1に酷似しており,また,ロ号物件及びヘ号物件は,本件商品1の形態上の特徴を備えていて本件商品1に酷似している。
キむすび以上述べたように,原告ガスツールに使用できる連結ピン及びストリップの形態は,マガジンの構造や特許との関係から本件商品1及び本件製品1の形態に限定されるわけではなく,果たすべき機能を保持しつつ本件商品1及, び本件製品1とは類似しない様々の形態を採用することができたのであるが被告は,通常の事業者ならば新規参入に際して行うであろう努力(綿密な調査や設計等)は一切せず,本件商品1と類似するロ号物件及びヘ号物件を漫然と販売し,その結果,需要者がロ号物件及びへ号物件をあたかもJPFグ。 ループと関係があるかのように誤認してしまうおそれが生じるに至っているさて,いかなる分野においても,形態を新たにした新商品(新製品)の受け入れられ方は商品の種類や性質によってまちまちであり,専門性(特殊性)や技術性が高くなるほど,あるいは,競合品が少ないほど新商品に対するユーザーの目は厳しくなる。それは,従来品と同等又はそれ以上の品質や性能を備えているか否かをユーザーが簡単には把握できないからである。
そして,釘打ち機の中でも,エアーツールは古くから存在しており,工具及び連結釘(一般にはコイル状に巻いたコイルネイルが多用されている )の。
メーカーも多数あるため,連結釘の新商品が出てもユーザーに簡単に受け入れられやすいであろうが,ガスツール用の連結ピンの場合は,内燃機関と同様の駆動原理で構造が精密であるという特殊性,銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という )の規制が厳しくて高い安全性が要求されるという 。
特殊性,原告JPFらが長期にわたって市場を独占してきた(育ててきた)という特殊性から,需要者(ユーザー及び取扱店)は,本件商品1の形態に慣れ親しみ信頼を寄せているという事情がある。そのため,需要者が本件商品1とは類似しない新商品に接した場合,原告ITWが開発した新製品であることを納得しない限り,品質や信頼性に不安を抱いて安易には採用しないであろうと推測される。
そして,原告ガスツールのユーザーは,ロ号物件及びヘ号物件が本件商品1と形態が酷似しているが故に本件商品1を連想して安心して使用するのであるが,このことは,本件商品1の形態が出所表示機能・品質表示機能を備えていることを証明していることにほかならない。
(3) 本件商品1の形態の周知性についてア本件各商品の形態は,以下に述べるとおり,原告JPFを中核とするJPFグループの商品であることを示す表示として,遅くとも平成15年初めには我が国において周知性を取得した。
(ア)原告JPFは,平成5年頃から,原告ITWが開発したガスツールのほか,本件各商品を我が国で独占販売してきた。そして,平成14年7月以降は,原告JPFに加えて,JPFワークスも,原告ITWの開発に係る本件各商品を独占販売してきた。
(イ)原告JPFは,平成5年頃にガスツールの販売を開始して以来,各種の雑誌類,新聞類の各種媒体への継続的かつ大量の広告,各種展示会への継続的かつ積極的な出展と販売促進活動を行なってきた。
また,原告JPFは,北海道から九州まで多くの支店・営業所を有するとともに,多数の販売店・代理店網を有しており,これら支店・営業所・販売店・代理店からなる販売網を通じたカタログの配布や製品の説明に努めてきた。
これらの継続的かつ強力な広告・宣伝活動とガスツールの性能の良さやデザインの斬新さとが相俟って,原告ITWが開発したガスツールは,原告JPFを中核とするJPFグループの商品として周知性を獲得した。
(ウ)本件各商品は,原告ITWが開発したガスツールの専用品であり,原告JPFらは,ガスツールの販売活動を行う際,そのカタログ類や広告・宣伝に本件各商品を併せて掲載するなどして本件各商品の広告・宣伝活動を行い,またガスツールの展示会にもガスツールと一緒に本件各商品を展示するなどしてきた。
そのため,本件各商品は,ガスツールと同様,原告JPFを中核とするJPFグループの商品として周知性を獲得したのである。
(エ)本件製品1は,樹脂製で立体感に富んでおり,このストリップの形態及びこれにピンが保持されている本件商品1の形態は斬新なものであり,かつ,施工後にワークにスリーブが残ってワッシャーのように機能するという点も,建築関係者が初めて目にする画期的な施工態様である。
このような本件商品1の形態の斬新さや施工方法の画期性,及び,原告JPFらによる独占販売という事実から,本件商品1に接した者は,その形態から原告JPFを中核とするJPFグループを想起するに至っているといえる。すなわち,本件商品1の全体の形態及び要部である本件製品1の形態は,原告JPFを中核とするJPFグループを表示する立体商標と同じ機能を発揮するに至っているのである。
イ被告らは,乙第9号証を根拠に本件商品1の形態の周知性を否定する。しかし,本件商品1のストリップ(本件製品1)は,別紙本件製品1説明書中の本件製品1図面に示すとおり 「筒状の第1部分5と第2部分6とを有している ,点」及び「第1部分5と第2部分6との間にえぐられた状態の空所7が存在してここに窓8が開口している点」の2点を基本形態としているのに対し,乙第, ,。 9号証の図に示されている物には 「筒状の部分」が2つなく 「窓」もないしたがって,乙第9号証は,本件商品1の形態の周知性を否定する根拠たり得ない。
【被告らの主張】釘打ち機において,ストリップとこれにピンを保持する形態は,普遍的ないし一般的であって,特に斬新なものではない。
現に,ガスの圧力で打ち込むか,火薬の爆発の圧力で打ち込むかの違いはあっても,原告JPFらが本件商品1を販売する以前から,ヒルティアクチエンゲゼルシャフト等の会社が,ストリップにピンを保持した商品を我が国において広く販売しており,また,広く建築現場で使用されてきているものであって,建築関係者らは,本件商品1を見ても,特に初めて目にする画期的な施工態様の連結ピンであると感じるものではない。
したがって,本件商品1の形態は,その出所がJPFグループであることを示すものとはいえず,不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」には当たらない。
3争点3(ロ号物件の形態は本件商品1の形態と類似するか )について。
【原告JPFの主張】ロ号物件において需要者の目を引き付けるのは,ロ号物件全体の形態及びロ号物件のストリップ(イ号物件)の形態である。
まず,ロ号物件全体の形態について見ると,ピン2自体は特別の形態ではないが,特殊な形態のストリップ1に取り付けられて,シャンクの相当部分が隠れている形態は斬新であり,したがって,ストリップ1とピン2との組合せの斬新さから 「筒状のスペーサが連続しているストリップにピンを取り付けている」とい ,う形態が需要者の脳裏に深く焼き付けられ,これが立体商標的な機能を果たすことになる。そして,ロ号物件全体の形態は,本件商品1の形態とほとんど同一であり,このため,ロ号物件に接した需要者が本件商品1と見誤るおそれが極めて高い。
他方,ロ号物件のストリップ1(イ号物件)と本件商品1のストリップ1(本件製品1)とを比較すると,両者は,10本のスリーブ3を並列状に並べた形態である点や,各スリーブ3に凹所7が形成されている点など,基本的構成は完全に共通しており,また,ピンの打ち込みによって第2部分6が二つ割り状に割れて,第1部分5がワッシャーのような状態でワークに残る機能においても完全に共通している。
そして,ストリップの形態面では,本件商品1のストリップ1(本件製品1)では,第2部分6が平面視で略六角の形態であるのに対して,ロ号物件のストリップ1(イ号物件)では,第2部分6が平面視で略小判形に形成されている点において相違するが,両者のストリップとも,第2部分6の前後両面が平坦になっている点で共通しており,第2部分6の平面形状の相違は,全体から見て微々たる相違である。
結局,ロ号物件のストリップ1(イ号物件)は本件商品1のストリップ1(本件製品1)のデッドコピーともいうべきものであり,ロ号物件のストリップ1(イ号物件)が本件商品1のストリップ1(本件製品1)と酷似していることは疑いない。
【被告らの主張】争う。
4争点4(ロ号物件を本件商品1と誤認混同するおそれがあるか )について。
【原告JPFの主張】本件商品1のストリップ(本件製品1)は,立体商標と同様に出所表示機能を発揮しているから,イ号物件及びこれを使用したロ号物件に接した需要者が,その出所が原告JPFを中核とするJPFグループであるかのように誤認し,出所混同を生じるおそれがあることは明らかである。
【被告らの主張】争う。
5争点5(本件商品2の形態は周知な商品等表示といえるか )について。
【原告JPFの主張】本件商品2の形態は,次に述べるとおり,原告JPFを中核とするJPFグループの商品であることを示す商品表示として周知性を取得している。
(1) 本件商品2の形態について本件商品2は,本件製品2(定量ノズル)と本件製品3(ボンベ)とから構成されている。
本件製品2は,原告ITWがガスツール用のガスカートリッジに専用の部材として開発した特殊なものであり,本件商品2の形態を特徴付ける大きな要素である。すなわち,本件製品2の形態は,需要者に本件商品2の出所が原告JPFを中核とするJPFグループであることを想起・連想せしめる立体商標としての重要な役割を果たしているのである。
本件製品3は,外径に比べて長さが長い外径30o強のボンベとしてガスツールに適合させるために製造した特殊なものであり,他のボンベ類には見られない特別の形態である。このような特殊な形態(寸法設定)によって需要者の注意を引き付けることから,本件製品3に接した需要者は 「外径が30oより,もやや大きくて細長い」という程度の認識だけで,本件商品2の出所として原告JPFを中核とするJPFグループを想起するに至るといえる。
(2) 本件商品2の形態の周知性について前記2【原告JPFの主張】(3)アで述べたとおり,本件商品2の形態は,原告JPFを中核とするJPFグループの商品であることを示す表示として,遅くとも平成15年初めには我が国において周知性を取得した。
【被告らの主張】争う。
ガスカートリッジないしガスボンベは,今日さまざまな用途に使われているが,それぞれ用途に合わせて寸法を調整して使用されている。このことは広く国民の認識している事実であって,およそ通常のガスカートリッジとは全く異なる形態のものであればともかくとして,少なくとも原告らの本件商品2は,寸法設定の特別性だけからは,原告らを想起させるほどには表示の役割を果たしているものではなく,不正競争防止法2条1項1号所定の「商品等表示」には当たらない。
6争点6(ハ号物件(ニ号物件及びホ号物件)の形態は本件商品2の形態と類似するか )について。
【原告JPFの主張】ハ号物件において,ボンベ16は長さが本件商品2のボンベ16よりもやや短いだけで基本的形態は同一であり,また,定量ノズル17に至っては本件商品2の定量ノズル17と細かい寸法まで違わない完全同一品である。
【被告らの主張】争う。
7争点7(ハ号物件を本件商品2と誤認混同するおそれがあるか )について。
【原告JPFの主張】アハ号物件の定量ノズル(ニ号物件)及びボンベ(ホ号物件)の形態は,本件商品2の定量ノズル(本件製品2)及びボンベ(本件製品3)の形態と全く同じであるから,ハ号物件に接した需要者はその出所が原告JPFを中核とするJPFグループであるかのように誤認し,出所について混同を生じることは明らかである。
イまた,被告会社は,1000本のピン(連結ピンの本数では100本)に対して3本のガスカートリッジ(ハ号物件)をセットにしており,3本のガスカートリッジは甲第27号証のパッケージに入れて販売している。このガスカー,」,」, トリッジ用パッケージには 「FUELCELL「TrakQuick「発売元:MiSuZu「製造元:OKGMBH(GERMANY 」 」, )の表示が見られる。
これらの表示のうち,たとえば「TrakQuick」は,原告JPFの「TRAKFAST」を連想させるもので,需要者は,ハ号物件のパッケージから,原告JPFが販売している「トラックファースト」用に売り出した新タイプであるかのように誤認することは明らかである。
【被告らの主張】ハ号物件のパッケージには 「FUELCELL」が大きく斜めに記載されて ,いるほか,製造元及び販売元も明示されており,需要者が 「トラックファース,ト」用に売り出した新タイプであるかのように誤認するとはいえない。
8争点8(へ号物件の形態は本件商品1の形態と類似するか )について。
【原告JPFの主張】(1) 類似性の判断方法について不正競争防止法は,事業者間の公正な競争の確保を主たる目的としており(同法1条 ,不正競争行為であるか否かを判断するにあたっては,かかる目的 )に照らして,個々の事案について個別具体的に検討し,社会的に許される行為であるか否かが検討されなければならず,そのためには,需要者が商品に対して向ける通常の注意力・観察力を基礎にして判断する必要がある。
本件商品1やヘ号物件は,貴重品ではなく,1人の需要者が日々大量に使用する消耗品であり,また,ストリップ1の各スリーブ3は長さが10mm程度であって,個々の要素の形状の微細な違いが目に焼きつくという程の大きさではない。
また,本件商品1やヘ号物件の需要者は,ストリップの形状を仔細に観察しながら打ち込み作業を行っているわけではなく,ストリップの形状について,たとえば,ガスツールに装填するに際して短時間だけ観察する程度のことであり,筒部の形状が丸いとか,凹所が角張っているとかにまで注意あるいは認識しながら作業しているわけではなく,連結ピン全体の基本的な形態を認識しながら作業している。
このように,本件商品1の需要者は,その基本的形態に対して注意を向け,あるいは観察している。
, したがって,本件商品1とヘ号物件の形態の類似性を判断するに当たっては基本形態の共通性に重点を置くべきである。
(2) 基本形態の共通性本件商品1のストリップ(本件製品1)は,本件製品1図面に示すとおり,a「筒状の第1部分5と第2部分6とを有している点 ,」b「第1部分5と第2部分6との間にえぐられた状態の空所7が存在してここに窓8が開口している点 ,」の2点を基本形態としており,この基本形態こそにデザインの特徴がある。
したがって,基本的形態が共通する限り,各要素の具体的形状を多少変更しても全体の美感には影響せず,ユーザーは,同じデザインの範疇として認識する。
また,連結ピン(本件商品1)の状態では,本件商品1図面や甲第43号証から容易に理解できるように,c「窓8からピン2のシャンク13が露出している点 ,」d「ピン2の頭14はスリーブ3の第1部分5と略同径である点 ,」e「ストリップ1はピン2のうち頭部14に寄った部位に位置している点 ,」に特徴を有している。ピン2そのものを単体として見るとありふれたものであるが,ストリップ1と結合して連結ピンの態様になると,ストリップ1とピン2とが全体として一体不可分の関係になって独特の美感を呈している。
すなわち,連結ピン(本件商品1)の状態では,打ち込み方向から見て,ピン2の頭14⇒第2部分6⇒ピン2のシャンク13が露出した窓8付きの凹所7⇒第1部分5⇒ピン2のシャンク13,というデザイン的な流れが形成され, ているのであり,ピン2とストリップ1とがデザイン的に融合することにより独特の美感を呈するに至っている。さらに,ピン2は,頭部14及びシャンクのうち先端側の部分のみならずストリップ1の窓穴8の箇所でシャンク13の一部が露出しているのであり,このようにピンが3か所において露出していることが本件商品1の大きな特徴になっている。
他方,ヘ号物件のストリップ(ト号物件)は 「筒状の第1部分5と第2部分 ,6とを有している点「第1部分5と第2部分6との間にえぐられた状態の空 」,所7が存在してここに窓8が開口している点 ,の2点を基本形態としており, 」この点,本件商品1のストリップ(本件製品1)と基本形態が完全に一致している。したがって,需要者がへ号物件のストリップ(ト号物件)と本件商品1のストリップ(本件製品1)とを対比観察した場合,全く同じデザイン品として認識することが明らかである。
また,ヘ号物件は,打ち込み方向から見て,ピン2の頭14⇒第2部分6⇒ピン2のシャンク13が露出した窓8付きの凹所7⇒第1部分5⇒ピン2のシャンク13,というデザイン的な流れが形成されているのであり,この点も本件商品1と全く同じである。
結局,ヘ号物件及びト号物件は,本件商品1及び本件製品1の基本形態を単に模倣したものにすぎず,ヘ号物件及びト号物件に需要者の注意を特別に惹きつける造形が他に施されているわけではないのであり,よって,へ号物件及びト号物件が本件商品1及び本件製品1に類似することは明らかである。
特に,ヘ号物件と本件商品1とは全体のイメージが酷似しており,ほとんど同一物に近いといえる。
その他,ト号物件と本件製品1とは,全長L1やスリーブ3の長さL2等の寸法が一致しているのみならず,色使いも一致しており,この点からしても,ヘ号物件及びト号物件は,本件商品1及び本件製品1に対して極めて紛らわしいものとなっている。
(3) 相違点についてヘ号物件のストリップ(ト号物件)と本件商品1のストリップ(本件製品1)とを観察すると,本件製品1は,第2部分6が六角であるのに対して,ト号物件は,円形である点,本件製品1は凹所7が側面視で丸みを帯びているのに対して,ト号物件では凹所7の箇所が角張っている点,の2点で相違している。
しかし,以下に述べるように,これらの相違点は,基本形態に埋没して需要者の注意を何ら惹くことのない微差にすぎず,全体の美感の共通性には全く影響しない。
ストリップ同士の対比として述べると,需要者(看者)は,第2部分6の具体的な形状や凹所7の箇所の形状の相違に目が行くのではなく,筒状の第1部分5と窓8付き凹所7と筒状の第2部分6との三者の存在そのものをデザインの特徴として把握するのであり,各構成要素の具体的な形状の相違に注意が向くことはない。
連結ピン同士の対比として述べると,連結ピンの状態ではストリップ1の構成要素の具体的な形状に対する需要者の意識は,よりいっそう薄れて,ピン2の頭14⇒第2部分6⇒ピン2のシャンク13が露出した窓8付きの凹所7⇒第1部分5⇒ピン2のシャンク13,というデザイン的な流れ(ピン2とストリップ1とのコントラストの妙と言ってもよい )そのものに注意を奪われるの 。
であり,第2部分6の形状が六角であるか円形であるかの違いや,凹所7の箇所が丸みを帯びているか角張っているかの違いなど,少しも気に留めることはない。
換言すると,第2部分6の形状が六角であろうと円形であろうと,あるいは凹所7の箇所が丸みを帯びていようと角張っていようと,需要者は同一のデザインと認識するのであり,特に,連結ピンの状態ではピン2とストリップ1との融合性が高くなることにより,ストリップ1の構成要素の具体的形状に対する需要者の認識力・注意力が著しく弱くなり,その結果,ヘ号物件と本件商品1とを異種デザインとして認識することなどあり得ないというべきである。
(4)以上のとおり,ト号物件と本件製品1を対比し,あるいは,ヘ号物件と本件商品1とを対比すると,いずれも,その相違点は,全体の美感の共通性に全く影響しない微小な差に過ぎないのであり,したがって,ヘ号物件のストリップ(ト号物件)が本件商品1のストリップ(本件製品1)に類似することは疑いないものである。
【被告らの主張】争う。
本件商品1とへ号物件は,客観的な外観そのものが一見して直ちに判別が付く程度に相違しており,商品形態が異なっており,およそ類似しているということはできない。
9争点9(ヘ号物件を本件商品1と誤認混同するおそれがあるか )について。
【原告JPFの主張】(1) 形態自体による出所混同のおそれヘ号物件が本件商品1に類似し,ト号物件が本件製品1に類似しており,本件製品1及び本件商品1は,周知性と形態の斬新さゆえに,原告JPFを中核とするJPFグループを表示する一種の立体商標として機能しており,したがって,被告会社がヘ号物件を販売等する行為は,立体商標の商標権侵害しているのと同視できるものであり,需要者に商品の出所混同を生じさせるおそれは極めて高いものである。
なお,ここにいう出所混同とは,ヘ号物件に接したユーザーがこれを原告JPFを中核とするJPFグループの商品と混同すること(狭義の混同)のみを指すものではなく,被告会社が原告JPFを中核とするJPFグループと何らかの関係があるかのように誤認する広義の混同も意味している。
すなわち,へ号物件及びト号物件が本件商品1及び本件製品1と形態が極めて類似していることと,ガスツール用の連結ピン及びストリップともに競業他社が存在しない独占状態にあって,そもそもユーザーがJPFグループ以外の会社の存在を観念していないこととが相まって,ユーザーに対し,被告会社がJPFグループの一員であるとの誤認を生じさせたり,原告JPFらからライセンス等を受けて製造販売しているとの誤認を生じさせたりするおそれがあるのである。
(2) 連結ピンのパッケージ等についてア被告会社は,甲第45号証の1・2及び乙第4号証の写真のとおり,へ号物件をハ号物件とともに紙製のパッケージに詰めて販売しており,また,甲第47号証及び乙第8号証のとおり,パッケージをカタログに載せて配布も行なっており,パッケージに「TrakQuick」の商標を大きく表示している。
原告らは,連結ピンを含むガスツールシステムに「トラックファースト/TRAKFAST」の商標を使用しているところ 「トラックファースト/T ,RAKFAST」というのは,間仕切り用等の溝型鋼を素早く締結できるという意味合いを持たせたものである。
そして 「TrakQuick」を構成する「Quick」は 「素早 , ,い」という意味合いを持っていて 「Fast」と同義語であり 「Fas , ,t」も「Quick」もわが国において広く知られた英単語であって,連結ピンの需要者も熟知しているから 「TrakQuick」から「トラック ,ファースト/TRAKFAST」を直感することは明らかである。
「TrakQuick」の使用が「トラックファースト/TRAKFAST」の名声へのフリーライドを意図していることは明らかである一方,ユーザーが被告会社のパッケージに接すると,商標の類似性からあたかも原告らの商品の別バージョンであるかのように誤認するおそれが大である。
イ被告会社の商品のパッケージには,へ号物件とハ号物件(ガスカートリッジ)とが同梱されており,甲第45号証の2・3にあるとおり,へ号物件とハ号物件との間には仕切り紙が配置されており,この仕切り紙に,ガスカートリッジの使用説明が英文で記載されている。
そして,仕切り紙の写しである甲第46号証及びその抄訳のとおり,使用説明書には,ガスカートリッジが「トラックファースト」専用品であることが記載されているのである。
「トラックファースト」は,原告らの営業または商品の周知表示であり,「TrakQuick」が「トラックファースト/TrakFast」と意味的に共通しているから,この使用説明書に接した需要者は,へ号物件及びハ号物件があたかも原告らの純正品であるかのように錯覚するものである。
このガスカートリッジの使用説明書からも,被告会社が原告らの名声にフリーライドしようとしていることがわかる。
ウこのように,被告会社は,自己の商品の形態を本件商品1に類似させるにとどまらず,その販売方法においても,JPFグループの商品であるとの混同や,被告会社がJPFグループの一員あるいは何らかの関係のある会社であるとの混同を生じやすくする行為に出ており,かかる被告会社の行為は,不当に原告らの商品の信用や名声を利用するものと言わざるをえない。
【被告らの主張】争う。
連結ピンのパッケージ等について原告が引用している甲第45号証は,被告会社が販売している商品のパッケージと類似しているが,発売元が「KPF」と表示されており(甲45の5 ,被告会社の販売に係るパッケージとは異なっている。ま )た 「TRAKFAST」と「TrakQuick」とは,日本人の目と耳に ,照らせば,見た目も語感も相違しており,類似しているとはいえない。
10 争点10(被告Yの責任の有無)について(1) 原告ITWに対する責任について【原告ITWの主張】ア被告Yは,被告会社の代表取締役として,被告会社のイ号物件及びロ号物件の輸入,販売行為等が,特許権侵害行為にあたり,原告ITWの利益を侵害することを知りながら,もしくは過失により知らないで,これらの行為を指揮統括するなど主体的に関与して被告会社をして上記特許侵害行為をなさしめ,あるいはまた,その職務を行うにつき,被告会社のために忠実に職務を遂行する義務に重大な過失により違反して,被告会社をして上記特許侵害行為をなさしめたものであるから,民法709条又は商法266条ノ3第1項に基づき,原告ITWに対し,上記特許権侵害行為により原告ITWが被った損害を賠償すべき義務がある。
イ被告会社の責任との関係被告Yが民法709条に基づき責任を負う場合,被告らの行為は共同不法行為に該当するから,被告らは,各自,不真正連帯の関係で,上記特許権侵害行為により原告ITWに生じた損害を賠償すべき義務がある。
, 被告Yが商法266条ノ3第1項に基づき責任を負う場合にも,被告らは各自,不真正連帯の関係で,原告ITWに生じた損害を賠償すべき義務がある。
【被告Yの主張】争う。
(2) 原告JPFに対する責任について【原告JPFの主張】ア被告Yは,被告会社の代表取締役として,被告会社のイ号ないしト号物件の販売行為等が,不正競争行為にあたり,原告JPFらの営業上の利益を侵害することを知りながら,もしくは過失により知らないで,これらの行為を指揮統括するなど主体的に関与して被告会社をして上記不正競争行為をなさしめ,あるいはまた,その職務を行うにつき,被告会社のために忠実に職務を遂行する義務に重大な過失により違反して,被告会社をして上記不正競争行為をなさしめたものであるから,民法709条又は商法266条ノ3第1項に基づき,原告JPFに対し,上記不正競争行為により原告JPFらが被った損害を賠償すべき義務がある。
イ被告会社の責任との関係被告Yが民法709条に基づき責任を負う場合,被告らの行為は共同不法行為に該当するから,被告らは,各自,不真正連帯の関係で,上記不正競争行為により原告JPFらに生じた損害を賠償すべき義務がある。
, 被告Yが商法266条ノ3第1項に基づき責任を負う場合にも,被告らは各自,不真正連帯の関係で,原告JPFらに生じた損害を賠償すべき義務がある。
【被告Yの主張】争う。
11争点11(ロ号物件の販売額)について【原告らの主張】被告会社は,遅くとも平成15年初めから現在に至るまでロ号物件を販売し続けており,その販売数量は,1か月平均で30万本を下ることはない。ロ号物件の単価は,1本当たり10円である。
したがって,平成15年1月から平成17年1月までの間におけるロ号物件の販売額は,1本10円×1か月30万本×25か月=7500万円である。
【被告らの主張】争う。
平成15年1月から平成17年1月までの間におけるロ号物件の販売額は,商品台帳等(乙1340ないし1365の89)における,品番1000,1003,1008,1010及び1011に係る記載のとおりである。
12 争点12(本件各特許発明実施料率)について【原告ITWの主張】本件各特許発明実施料は,1本当たり5円が相当である。その理由は次のとおりである。
(1)本件商品1の権利関係についてア原告JPFは,原告ITWから許諾を得て,平成5年ころから,日本国内において,本件各特許発明実施品である本件商品1を独占販売していた。
イ平成9年になって,原告ITWの許諾先が,原告JPFから,JPFグループに属するジャピット株式会社(以下「ジャピット社」という )に変更さ。
れたが,同時に,ジャピット社は,原告ITWの承諾を得て,原告JPFに対して再許諾し,引き続き,原告JPFが本件商品1を独占販売していた。
ウ平成14年7月,原告ITW及び原告JPFの了承のもと,原告JPFに加えて,原告JPFの子会社であるJPFワークスが,ジャピット社の許諾を得て,本件商品1を製造販売するようになった。そして,平成14年7月以降,ジャピット社の許諾のもと,原告JPFとJPFワークスが,本件商品1を原告JPF,JPFワークス及びJPFグループの商品として独占販売してきた。
なお,ジャピット社は,自らは製造販売はしておらず,JPFワークスが製造,販売を行っており,JPFワークスは,原告JPFからの委託を受けての製造も行っていた。
エその後,ジャピット社の解散にともない,平成16年7月,原告ITWの許諾先がジャピット社からJPFワークスに変更されたが,引き続き,原告JPFとJPFワークスが独占販売をしており,現在に至っている。
(2)本件各特許発明実施料率についてア原告ITWは,ジャピット社(平成9年から平成16年7月まで)や,JPFワークス(平成16年7月以降)に対して,本件各特許発明実施許諾をしているが,その実施許諾料(ライセンス料)は,純販売額(純販売額とは,割引等がない正価のことをいう。以下同じ )の10%相当額である。 。
イしかし,純販売額の10%という低率であるのは,下記のような特別な事情が存するからなのであって,被告会社の場合には,ピン1本あたり5円が相当である。
(ア)そもそも,ジャピット社やJPFワークスが原告ITWとの間で実施許諾契約を締結することが可能であったのは,原告JPFを中核とするJPFグループに属しているからである(原告ITWの会社案内パンフレットの「HEADQUARTERSLОCATIONS ( 事業所所在」「地」という意味 )との項目に,原告JPFが記載されている(甲3。 。 )。)原告ITWは,原告JPFの設立時に出資し,原告ITWの製品の日本国内における販売を,原告JPFを中核とするJPFグループが一手に担ってきたほか,技術面においても,原告ITWと原告JPFは技術提携をしている(甲10 。また,人的な面においても,原告ITWの執行副社長 )が,原告JPFの子会社であるJPFワークスの代表取締役の一人として就任し,また,原告JPFの従業員が,原告ITW本社において研修を受けるなど,緊密な関係が築かれている。
このように,原告JPF,JPFワークス,そして原告ITWは,相互に緊密な関係にあり,だからこそ,本件各特許発明実施のロイヤリティが上記のように低率なものになっているのである。
(イ)ジャピット社は,原告ITWから本件各特許発明について実施許諾を受けていた当時,原告ITWとの間で,本件商品1及びガスツール以外にも,原告ITW製の各種ドリルねじや,オーガー,EZアンカー,EZトグル,タプコン等のアンカー,エア式の鋲打機について取引関係にあり,EZアンカー,トルーボルト,タプコンに関する特許について原告ITWから実施許諾を受けてロイヤリティを支払っていた。さらに,原告ITWとの間で,原告ITWの製品について最低購入量が定められてもいた。
, ジャピット社に代わって原告ITWの許諾先となったJPFワークスもジャピット社と同様,本件商品1及びガスツール以外にも,原告ITWの, 製品について取引関係にあり,上記EZアンカー等に関する特許について原告ITWから実施許諾を受けてロイヤリティを支払い,しかも,原告ITWとの間で,原告ITWの製品について最低購入量が定められているのである。
このように,ジャピット社やJPFワークスは,原告ITWに対し,本件特許以外の特許についてもロイヤリティを支払い,本件商品1及びガスツール以外にも原告ITW製品についての取引関係があり,さらには,原告ITWの製品について最低購入量が定められていることもあって,原告ITWとの間における本件各特許発明実施のロイヤリティが上記のように低率なものになっているのである。
(ウ)本件商品1とそれを用いるガスツールの販売活動を遂行するために,原告JPFらは,下記のとおり多額の費用をかけている。
@本件商品1及びガスツールの開発・設計,金型製作,試作,作業現場でのテストに要する費用A販売促進のためのカタログ,チラシ,宣伝広告,展示会の出展に要する費用B銃刀法の規制をクリアーするための日本仕様品の開発,警察庁への申請,そのための各資料の作成等に要する費用Cガスツールのアフターサービスに要する費用本件商品1は,ガスツールに用いられるのであるから,本件商品1の販路を開拓,維持,拡大するためには,ガスツールの販路を開拓,維持,拡大することが必要となる。そのため,原告JPFらは,莫大な費用をかけて,ガスツールの市場や販路を開拓,維持,拡大してきた。
原告JPFらが,上記@ないしCの多額の費用をかけ,また,ガスツールの市場や販路を開拓,維持,拡大することによって,収益が上がり,原告ITWが原告JPFらから得られるロイヤリティも増えるという関係にある。つまり,原告ITWの得ることができるロイヤリティの高低は,原告JPFらの販売高に依存し,販売高は,上記のような費用を出捐するという犠牲のもとに生まれているのである。
ところが,被告会社は,上記@ないしCのような多額の費用をかけることもなく,原告JPFらが厳しい競争社会の中で血の滲むような企業努力によって開拓してきたガスツール市場を利用して,ガスツール用の連結ピンの市場に参入し,原告JPFらの取引先等に対して,販売活動を行ってきたのであるから,本件においては,ジャピット社やJPFワークスと原告ITWとの間の上記のロイヤリティ(純販売額の10%)よりも高率,高額になるのは当然のことである。
ウ原告JPFらは,本件商品1を,いわゆる一見の,初めて取引をする小売店等に販売する場合には,1本約15円で販売している。
したがって,ピン1本あたりの販売額を10円とした場合の5円という実施料は,上記イを考慮すれば,決して高額ではない。
エまた,原告ITWは,原告JPFらが,ガスツールを日本で安全に使用できるシステムを作り上げているからこそ,原告JPFらが本件各特許発明実施することを許諾しているのである。
被告会社には,そのようなシステムを維持,管理する能力があるとは考えられず,したがって,仮に,原告ITWが被告会社に本件各特許発明実施を許諾すると仮定した場合には,被告会社の代わりに原告ITWが費用をかけて上記システムの維持管理をしてもなお,原告ITWに利益が出るような程度の高額・高率なロイヤリティでしか許諾しない。
オ以上より,本件各特許発明実施料率は,連結ピン1本(販売額10円)当たり5円,したがって50%が相当である。
【被告らの主張】争う。
13 争点13(原告ITWの損害額)について【原告ITWの主張】原告ITWは,被告会社によるロ号物件の販売により本件特許権を侵害され,平成15年1月から平成17年1月までの間に本件各特許発明実施料相当額3750万円(販売額7500万円÷1本当たりの販売額10円×1本当たりの実施料5円)及び本件訴訟に関して要する弁護士費用,弁理士費用のうち各100万円(計200万円 ,以上合計3950万円の損害を被った。 )【被告らの主張】争う。
14争点14(ハ号物件の販売額)について【原告JPFの主張】被告会社は,遅くとも平成15年初めから現在に至るまでハ号物件を販売し続けており,その販売額は,1か月平均で40万円を下ることはない。
したがって,平成15年1月から平成17年1月までの間におけるハ号物件の販売額は,1か月40万円×25か月=1000万円である。
【被告らの主張】争う。
15争点15(ヘ号物件の販売額)について【原告JPFの主張】, 被告会社は,平成17年3月から現在に至るまでヘ号物件を販売し続けておりその販売数量は,1か月平均で50万本を下ることはない。
したがって,平成17年3月から同年9月までの間におけるへ号物件の販売額は,1本10円×1か月50万本×7か月=3500万円である。
【被告らの主張】争う。
16争点16(本件商品1,2の形態の使用料率)について【原告JPFの主張】(1)本件商品1の形態の使用料率は,連結ピン1本当たり5円が相当である。その理由は次のとおりである。
, ア本件商品1は,ガスツール「トラックファースト」用の商品であるところガスツールは,その駆動原理が内燃機関と同様であるから 「トラックファー,スト」は,構造において精密さが要求される。この点において,従来から存在するエアーツール等の釘打ち機とは異なる特殊性を有している。また,国内において銃刀法の規制が厳しく,それをクリアするために「トラックファースト」には高い安全性が要求される。
原告JPFらは,ガスツール及び本件商品1の精密さや高い安全性を長年, にわたって維持してきたのであり,他方,需要者(ユーザー及び取扱店)は長年の間,本件商品1の形態に慣れ親しんできたのである。
したがって,本件商品1の形態は,それをガスツール「トラックファースト」に使用することによって,安全,正確に作業ができるという象徴なのである。
このように,本件商品1の形態は,信頼できるJPFグループの商品であ, ること及び高い品質を備えていることを表す機能を有しているのであるから本件商品1の形態の,その販売収益に対する貢献度は,本件特許のそれと甲乙つけがたいほどに高いというべきである。
したがって,本件商品1の形態の使用料率は,本件各特許発明実施料率と同じく,連結ピン1本当たり5円が相当である。
イ被告会社のピン1本あたりの単価が10円であって,本件各特許発明実施料率と本件商品1の形態の使用料率とが,ともに連結ピン1本あたり5円だとすると,ロ号物件の売上全額が賠償額となって不当であるとの反論が予想されるが,しかし,そもそも,単価10円というのが,適正なコストをかけておらずに安価に過ぎるのである。
また,特許の実施料相当額と商品形態の使用料相当額というのは,権利者が受けた損害の算定の問題であるところ,特許法と不正競争防止法とは,そもそも保護法益や保護要件を異にするのであるから,本件特許権侵害による賠償額と不正競争防止法に基づく賠償額の合計が売上全額に相当することになっても,何ら不当ではない。
【被告らの主張】争う。
17 争点17(原告JPFの損害額)について【原告JPFの主張】(1) 原告JPF及びJPFワークスは,被告会社による,アロ号物件の販売により,平成15年1月から平成17年1月までの間に,本件商品1の使用料相当額3750万円(販売額7500万円×50% ,)イハ号物件の販売により,平成15年1月から平成17年1月までの間に,本件商品2の使用料相当額500万円(販売額1000万円×50% ,)ウへ号物件の販売により,平成17年3月から同年9月までの間に,本件商品1の使用料相当額1750万円(販売額3500万円×50% ,)以上,合計6000万円の損害を被った。
(2)また,原告JPF及びJPFワークスは,被告会社による上記各物件の販売により,各々,本件訴訟に関して要する弁護士費用,弁理士費用のうち各100万円(計200万円)の損害を被った。
(3)原告JPFは,平成19年1日1日,JPFワークスを吸収合併し,その権利義務を承継した。
(4)よって,原告JPFは,被告らに対し,上記損害金合計6400万円及びこのうち4650万円(ロ号物件及びハ号物件の販売に係る損害金(本件商品1の使用料相当額3750万円+本件商品2の使用料相当額500万円+弁護士費用・弁理士費用200万円×2 )に対する平成17年3月23日(訴状送達 )の日の翌日)から,このうち1750万円(へ号物件の販売に係る損害金(本件商品1の使用料相当額 )に対する平成17年10月7日(同月4日付け訴え )変更申立書送達の日の翌日)から,いずれも支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。
【被告らの主張】争う。
第4 争点に対する当裁判所の判断1 争点1(イ号物件は本件各特許発明構成要件Iを充足するか )について。
(1) 問題の所在本件各特許発明構成要件Iは 「前記ファスナ保持帯は隣接する前記スリー ,ブの前記環状部分どうしの間及び前記破断可能部分どうしの間にそれぞれノッチで囲まれた壊れやすいブリッジ部を有し 」である。,原告は,イ号物件の隣り合ったスリーブ3によって画定された溝a〜e(別紙イ号物件原告作成図に網掛けで表示したa〜eの部分。以下,単に「溝a」とか,「溝a〜e」のようにいう )が構成要件Iの「ノッチ」に該当するとして,イ 。
号物件のブリッジ部11,12が構成要件Iの「ノッチ」で囲まれている旨主張するのに対し,被告は,構成要件Iの「ノッチ」は,ブリッジ部自体に形成されていることを要し,少なくとも溝d,eは上記「ノッチ」に該当しない旨主張する。
そこで,隣り合ったスリーブによって画定されたイ号物件の溝a〜eが構成要件Iの「ノッチ」に該当するかどうかについて,以下検討する。
(2) 「ノッチ」の意義まず 「ノッチ」の一般的な意義についてみる,証拠(甲33ないし35) , にによれば,株式会社岩波書店発行の広辞苑第4版には 「ノッチ」の意味として ,「刻み目,目盛り,切欠」との記載があること,株式会社研究社発行の新英和大辞典には 「notch」の意味として「切欠き「細い棒や板のへりなどにつ , 」,けたV字型の刻み目」との記載があること,財団法人日本規格協会発行のJIS工業用語大辞典第3版には 「ノッチ効果」の説明として「穴,溝などがある材 ,料に応力を加えると,その集中効果によって強さが低下する効果をいい,切欠き効果ともいう 」との記載があることが認められる。 。
上記事実からすると 「ノッチ」は,一般的な意義としては 「切欠き」又は , ,「溝 「刻み目」を指すものと認められる。しかし 「ノッチ」の一般的な意義か 」 ,ら,直ちに本件各特許発明構成要件Iでいう「ノッチ」の技術的な意義を特定することはできないので,以下,本件明細書の記載を参酌して検討を加える。
(3) 本件明細書の記載ア「ノッチ」に関する記載(ア)本件明細書の【発明の詳細な説明】中の【実施例】の項には 「ノッ,チ」に関して次のような記載がある。
a段落【0024】「ファスナ保持帯10には,隣接したスリーブ32との間に,壊れやすい上側ブリッジ部74と,壊れやすい下側ブリッジ部76とが設けられている(図3,4,5,6参照 。図6に示すように,壊れやすい各ブリッジ )部74,76の各々は,断面がほぼ等脚台形をなしている。上側ブリッジ部74は,上側ブリッジ部74によって結合される各スリーブ32の破断可能な上側部分36のほぼ打撃用端部38まで延びている。また,下側ブリッジ部76は,下側ブリッジ部76によって結合される各スリーブ32の下側部分34の面取りされた下側部分78まで延びている。上側ブリッジ部74は,上側ブリッジ部74を2等分する垂直面のそれぞれの線に沿って延びる4つのV形ノッチを有している。すなわち,比較的長い上部ノッチ80と,2つの同様な側部ノッチ82,84と,比較的短い下部ノッチ86である。下側ブリッジ部76は,下側ブリッジ部76を2等分する垂直面のそれぞれの線に沿って延びる4つのV形ノッチを有している。すなわち,比較的短い上部ノッチ88と,2つの同様な側部ノッチ90,92と,比較的長い下部ノッチ94である 」。
b段落【0026】「したがって,ファスナ12がファスナ打込装置を介して被接合部材を貫通して基材に強制的に打込まれると,対応するスリーブ32と隣接する各スリーブ32との間の壊れやすい上下の各ブリッジ部74,76には,剪断力が作用する。この場合,スリーブ間の壊れやすいブリッジ部74,76における上部,側部及び下部の各ノッチが最も深い箇所に応力が集中し,この部分で容易に剪断破壊される。ブリッジ部がノッチ箇所で剪断破壊すると,スリーブ32の端面には,ブリッジ部74,76のほぼ半分の厚さの部分が残る。ファスナ保持帯10の長手方向に沿って測定すると,1つのスリーブ32の全長は,スリーブ32の下側部分34の直径に,先行スリーブ32へ結合させるブリッジ部の厚さの半分と,後続スリーブ32へ結合させるブリッジ部の厚さの半分とを加算した値にほぼ等しくなる。スリーブ32がリブ96,98の1つを有している場合には,ファスナ保持帯10の長手方向に沿って測定すると,スリーブ32の全長は,各リブ96,98がブリッジ部74,76の1つの厚さの半分に等しい厚さを有するため,上述の全長にほぼ等しい。上部,側部及び下部のノッチが,その最も深い位置で完全に剪断破壊されるので,それぞれのスリーブ32のスリーブ長手方向の寸法はほぼ均等となる 」。
(イ)上記のとおり,本件明細書には 「ノッチ」について,断面がほぼ等脚 ,台形をなしているブリッジ部の上部,側部及び下部の各辺に1つずつ合計4つのV形ノッチが形成されている実施例のみが開示されており,ノッチをこのように形成することにより,ファスナが打ち込まれると,各ノッチの最も深い箇所に応力が集中し,この部分で容易に剪断破壊されるとともに,各ノッチの最も深い位置で完全に剪断破壊されるため,それぞれのスリーブの長手方向の寸法がほぼ均等になるという作用効果が得られることが記載されている。他方,本件明細書には,イ号物件の溝a〜eを「ノッチ」とするような 「ノッチ」がブリッジ部自体に形成されていない実施例は開示されてい ,ない。
イ従来の技術に関する記載(ア)本件明細書には 【従来の技術】に関して段落【0003】に次のよう ,な記載がある。
「従来の多くのファスナ打込装置は,ファスナ保持帯によりファスナを帯状に整列・保持し,マガジン機構によりファスナ保持帯を移送し打込部に供給する。一般に,ファスナは,ポリプロピレン等の合成樹脂材料から成形されたキャリヤにより整列・保持され,このキャリヤは,個々のファスナごとに設けられたスリーブ,ブッシュ又はホルダと,これらのスリーブ,ブッシュ又はホルダをつなぐ壊れやすいブリッジ部とを有している。このようなキャリヤを介して整列されたファスナは,米国特許第3,927,459号,同第3,954,176号,同第4,106,618号,同第4,718,551号,同第4,932,821号に開示されている 」。
(イ)米国特許第4,932,821号(1989年4月26日出願,1990年6月12日登録)に係る米国特許公報(乙9)には,本件各特許発明のスリーブ32に相当する樹脂製の一対のガイドブッシング4が,本件各特許発明のブリッジ部74,76に相当するウエブ8により連結され,各ウエブ8に,本件明細書の段落【0024】におけるV形ノッチ80〜94に相当するV形切欠き9が形成された実施例が開示されている。
(ウ)他方,本件明細書には,従来の技術として,イ号物件の溝a〜eに相当する部分を「ノッチ」とするような 「ノッチ」がブリッジ部自体に形成さ ,れていないものは開示されていない。
(エ)上記によれば,従来から,ファスナを保持する保持帯(スリーブ)において,ブリッジ部は,スリーブをつなぐ壊れやすい部分として設けられていたことが認められるから,剪断を容易にするために設ける「ノッチ」をブリッジ部自体に形成することは,当業者にとって技術常識であったと認められ,当業者であれば「ノッチで囲まれた壊れやすいブリッジ部」との記載をそのように理解するものというべきである。
ウ以上によれば,本件各特許発明構成要件Iにいう「ノッチ」は,それが上記実施例で開示されたもののように「V形」であることまでは要しないと解すべきであるが,少なくともブリッジ部自体に形成されるものに限定されると解すべきであり,そのことによって,ファスナが打ち込まれると,各ノッチの最も深い箇所に応力が集中し,この部分で容易に剪断破壊され,各ノッチの最も深い位置で完全に剪断破壊されるため,それぞれのスリーブの長手方向の寸法がほぼ均等になるという作用効果が得られるように形成された切欠き又は溝を指すものと認められる。
これに対し,隣り合ったスリーブによって画定されたイ号物件の溝a〜eは,ブリッジ部自体に形成されたものではなく,ファスナが打ち込まれても,応力が集中する箇所が一定しているとはいえず,剪断破壊される部分もまた一定せず,それぞれのスリーブの長手方向の寸法がほぼ均等になるという作用効果が得られるとは限らないものと推認される。
したがって,隣り合ったスリーブによって画定されたイ号物件の溝a〜eが本件各特許発明構成要件Iの「ノッチ」に該当するということはできない。
。 (4) 上記解釈は,以下のとおり,本件各特許発明出願経過にも沿うものであるすなわち,ア本件各特許発明の出願時の明細書の特許請求の範囲請求項1には,本件各特許発明構成要件Iに相当する記載として 「前記キャリヤが,該キャリヤの ,スリーブの隣接するものゝ間に脆いブリッジを有する」との記載しかなく,「ノッチで囲まれた」との限定は付されていなかったこと,特許庁は,上記当初出願に対して,平成7年2月22日付けで原告ITWに拒絶理由通知書を発したこと,原告ITWは,平成7年9月7日付けで手続補正書を提出し,上記記載を「ノッチで囲まれた壊れやすいブリッジ部」と変更したこと,以上の事実は当事者間に争いがない。
イ原告ITWは,上記補正はブリッジ部を壊れやすくするための具体的手段をノッチに限定したものであるところ,ブリッジ部を壊れやすく薄肉化するための溝が存在していればそれがノッチであると主張する。
しかし,上記(3)イ(ア)のとおり,ブリッジ部は,従来から,ファスナ保持帯においてスリーブをつなぐ壊れやすい部分として設けられていたものであり,これによれば,ブリッジ部を薄肉化すること自体は自明の事項というべきである。
そうすると,上記補正は,ブリッジ部を壊れやすくするための具体的手段として,ノッチが,ブリッジ部を囲むように,ブリッジ部自体に形成されるとしたものと解するのが自然である。
(5)よって,イ号物件は,本件各特許発明構成要件Iを充足せず,本件各特許発明技術的範囲に属しないから,その余の争点(争点10ないし13)について判断するまでもなく,被告会社に対し本件特許権に基づきイ号物件の譲渡等の差止め及び在庫等の廃棄を求めるとともに,被告らに対し特許権侵害不法行為に基づき損害賠償を求める原告ITWの請求は,理由がない。
2 争点2(本件商品1の形態は周知な商品等表示といえるか )について。
(1) 商品の形態の商品表示性商品の形態は,商品の機能を発揮したり商品の美感を高めたりするために適宜選択されるものであり,本来的には商品の出所を表示する機能を有するものではないが,ある商品の形態が他の商品に比べて顕著な特徴を有し,かつ,それが長期間にわたり特定の者の商品に排他的に使用され,又は短期間であっても強力な宣伝広告等により大量に販売されることにより,その形態が特定の者の商品であることを示す表示であると需要者の間で広く認識されるようになった場合には,商品の形態が不正競争防止法2条1項1号の商品表示として保護されることがあると解するのが相当である。ただし,商品の形態が当該商品の機能ないし効果と必然的に結びつき,上記形態を保護することによってその機能ないし効果を奏し得る商品そのものの独占的・排他的支配を招来するようになった場合には,結果的に,産業財産権制度によることなく,無期限にその形態によって実現されるのと同一の機能ないし効果を奏する同種の商品の販売が禁じられ,第三者の市場への参入を阻害し,ひいては自由競争のもたらす公衆の利益を阻害することになるから,このような機能ないし効果に必然的に由来する形態については,上記条項による保護は及ばないと解すべきである。
(2) 問題の所在被告らは,釘打ち機において,ストリップにピンを保持する形態は普遍的ないし一般的であって特に斬新なものではないから,本件商品1の形態は,不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」に該当しないと主張する。
上記主張は,本件商品1の形態が他の商品と比べて顕著な特徴(特別顕著性)を有するとはいえない旨の主張であるとともに,それが商品の機能ないし効果に必然的に由来する形態であって上記条項による保護は及ばない旨の主張を含むと解される。
しかし,本件商品1は,釘打ち機一般に用いられるのではなく,原告ガスツールに用いられるものである。そこで,以下では,まず,原告ガスツールの概要について認定し(後記(3) ,これをもとに,原告ガスツールの主力機種である「ト )ラックファースト」のストリップとして必要な条件(後記(4))及び「トラック。 ファースト」の連結ピンとして採用可能な具体例(後記(5))について検討するそして,上記検討をもとに,本件商品1の形態が,原告ガスツールに用いられる連結ピンとしての商品の機能ないし効果に必然的に由来するものかどうかを判断し,本件商品1の形態に,商品の機能ないし効果に必然的に由来する部分があるとすればそれはどの部分か,言い換えれば,本件商品1の形態の特徴はどの点にあるのかを認定して,本件商品1の形態が他の商品と比べて顕著な特徴を有するといえるかどうかについて判断する(後記(6) 。)そして,本件商品1の形態の使用状況等を認定し(後記(7) ,本件商品1の形)態の周知性の有無について判断する(後記(8) 。)(3) 原告ガスツールの概要証拠(甲4,17の25・42・43・47,49,55の1・2,56の4,59の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア原告ITWによるガスツールの開発釘や鋲のように軸の端部に頭を備えているファスナをワークに打ち込む打ち込み工具(釘打ち機)には,従来,動力源としてエアー(圧縮空気)を使用したエアーツールと,火薬を使用した火薬銃とがあった。このうち,エアーツールには,コンプレッサが必要であり,かつホースが接続されていて機動性に劣るという難点があり,火薬銃には,火薬類取締法による火薬の許可。 申請手続が必要である上,管理が厄介で汎用性に欠けるという難点があった原告ITWは,これらの難点を解消すべく,コンプレッサが不要で機動性に優れるとともに,管理も容易な釘打ち機として,シリンダボアの内部を摺動するピストンをガスの燃焼圧によって前進させてファスナを打ち出すガス燃焼式の釘打ち機(ガスツール)を開発した。
ガスツールのシステムの概要は,別紙ガスツールシステム説明書記載のとおりである。ガスツールには,多数本(たとえば10本)のファスナを平行に並べた状態に保持帯(ファスナ保持帯)で保持して成る連結ファスナが使用されており,連結ファスナをマガジンに装填して,ファスナを1本ずつ連続的に打ち込むことができる。
本件商品1は,本件特許発明1を具体化したファスナ保持帯である。すなわち,鉄筋コンクリート建物あるいは鉄骨コンクリート建物では,躯体を施工してから,間仕切壁で室を仕切ることが一般的であり,この場合,コ字状の溝型鋼を床面と天井面とに固定し,天井面に固定した溝型鋼(天レール)と床面に固定した溝型鋼(地レール)との溝内に支柱を嵌め込んで固定し,この支柱に石膏ボード等の壁パネルを固定することが行われている(縦横の枠材で構成された下地フレームを支柱に固定し,この下地フレームに石膏ボードを固定することも行われており,具体的な壁の構造は様々である )とこ。
ろ,本件商品1は,上記溝型鋼をコンクリートの天井及び床に固定するための釘状のファスナの連結に多用されている。
本件商品2は,ガスツールに必須の消耗品である。すなわち,ガスツールは,ボンベに充填されたガスを燃料とするものであるが,原告ITWは,燃料ガスを効率的に使用できるようにするため,ボンベに取り付けてガスを一定量ずつ噴出させるようにした定量ノズルも開発しており,本件商品2は,ボンベ(本件製品3)に定量ノズル(本件製品2)を取り付けたガスカートリッジである。
原告ITWは,溝型鋼が「トラック:track」と称されることから,溝型鋼の締結に好適なガスツールという意味で,ガスツールの主力機種に「トラックファースト」の商品名を付している。
原告ITWグループは,ガスツールについて,世界中で圧倒的なシェアを誇っている。
イガスツールの種類と連結ピンの関係上記のとおり,ガスツールは,シリンダ内に発生したガスの燃焼圧によってロッドを前進させてピン等のファスナを打ち出すものであるが,ピン等のファスナが装填されるマガジンの構造は,ファスナの連結方法によって必然的に異なる。
原告JPFらは,平成5年ころから,ガスツールとして,主力機種である「トラックファースト」のほか 「インパルス (甲17の48等 「トラッカ ,」),ー (甲17の25等 「パルサー (甲17の42・43等 「スティード」 」),」),(甲49等)という商品名の商品を販売してきた。
本件商品1は 「トラックファースト」専用の連結ピンとして販売されてい ,るが 「トラッカー「パルサー」の新型(PS-700EQ,甲17の4 ,」,2)及び「スティード」は,マガジンの構造が「トラックファースト」と基本的に同じであり,これらガスツールにも本件商品1の連結ピンを使用することができる。これに対して 「インパルス」には,連結ピンとしてテープ連結式 ,のものが使用されており(甲55の1・2 「パルサー」の旧型(PS325 ),C,甲17の43)には,薄い紙テープで連結した釘が使用されている(甲17の43 。なお 「スティード」には,本件商品1のほか,長い2本の樹脂テ ),ープ(シート)で多数のピンを連結したコイルタイプのもの(甲57の1・2)も使用することができる。
ウ「トラックファースト」のマガジンの構造「トラックファースト」のマガジンには,当該マガジンからピン及びストリップが抜け出ることを許容するための長溝がヘッドに向けて開口している。長溝は,基本的には細長い長方形になっており,長溝のうち本体に近い側に互いに隣接して第1広幅部と第2広幅部とが形成されており,両広幅部の境界部はやや幅の狭い細いレール部になっている(甲56の4参照 。)そして,第1広幅部にピンの頭部とスリーブの第2部分とが嵌り,第2広幅部にスリーブの第1部分が嵌り,レール部にスリーブの凹所が嵌るようになっており,ピンの打ち出しに際しては,先頭から2番目のスリーブは,第2広幅部の前段部で第1部分が支持されるとともに,レール部で第2部分が支持され(甲59の1・2参照 ,これによりロッドが前進動すると,先頭のスリーブ )と後続のスリーブとをつなぐブリッジ部がちぎれて先頭のピンがスリーブとともに打ち出される。
(4) 「トラックファースト」のストリップとして必要な条件上記(3)ウで認定した「トラックファースト」のマガジンの構造からすると,「トラックファースト」に使用できるストリップの条件としては,@マガジンの溝(長溝,広幅部)にスライド自在に嵌ること,A先頭から2番目のピンを保持するスリーブが,ピンの打ち出しに際して両広幅部及びレール部のどこかで支持されること,B隣り合ったスリーブが連結部において破断する(ちぎれる)こと,以上3つが必要であり,かつ,それで十分であることが認められる。したがって,連結ピンとして見た場合,ストリップが上記の3つの条件を満たすためには,たとえば,第1広幅部に嵌る部分と第2広幅部に嵌る部分とを本件商品1のように一体に連続した状態に形成する必要はなく,第1広幅部に嵌る部分と第2広幅部に嵌る部分が完全に分離されていてもよいし,第1広幅部に嵌る部分と第2広幅部に嵌る部分を一体に連続した状態に形成したとしても,本件商品1とは類似しない形態を選択することが可能であると考えられる。
(5) 「トラックファースト」の連結ピンとして採用可能な具体例ア現に 「スティード (上記のとおり 「スティード」と「トラックファース ,」,ト」のマガジンの構造は,基本的には同じである )には,連結ピンとして本 。
件商品1も使用できるが,長い2本の樹脂テープ(シート)で多数のピンを連結したコイルタイプのもの(甲57の1・2)も使用できる。このコイルタイプのものは,第1広幅部に嵌る第1シートと第2広幅部に嵌る第2シートは互いに分離している。
イ特開平9-177742号の公開特許公報(甲58の1 ,実開昭49-1)22264号の公開実用新案公報(甲58の2 ,実開昭55-71807号 )の公開実用新案公報(甲58の3 ,実開昭59-175707号の公開実用 )新案公報(甲58の4)には,ストリップの各スリーブが分離式になっている発明ないし考案が開示されているが,これら発明ないし考案をもとにして,2本のストリップがそれぞれ「トラックファースト」における第1広幅部と第2広幅部に嵌るように幅や厚さ等の寸法を調整すれば 「トラックファースト」 ,に使用可能な連結ピンを製造することが可能であると考えれられる。
ウまた,米国特許第4932821号の公報(乙9 ,実用新案登録番号第2 )596917号の実用新案登録公報(乙10 ,米国特許第4106618号 )の公報(甲58の5 ,米国特許第5865311号の公報(甲58の6 ,米 ) )国特許第6823990号の公報(甲58の7)には,本件商品1と同様,ストリップの各スリーブが全体として一体構造になっている発明ないし考案が開示されている。これら各公報に示された実施例の図面を見ると,乙第9号証の本件商品1の連結ピンに相当する部分の形態は,後記(6)アの本件商品1の形態とは,窓8がない点でB-1ないし3と相違する。また,甲第58号証の5ないし7についても,本件商品1のような,えぐられたような形状で形成された窓がない点で本件商品1の形態と相違している。そして,これら発明ないし考案をもとにして 「トラックファースト」における第1広幅部と第2広幅部 ,に嵌るように形状や寸法を調整すれば,本件商品1の形態と類似せず,かつ,「トラックファースト」に使用可能な連結ピンを製造することが可能であると考えられる。
エさらに 「インパルス」には,連結ピンとしてテープ連結式のものが使用さ ,れいているが,このテープ連結式の連結ピンは 「トラックファースト」や ,「スティード」のマガジンに自在に嵌め込むことができる(甲59の5,60の7 。したがって,頭を揃えて並べたピン群が連結されたテープの一部に, )マガジンの第1広幅部及び第2広幅部のいずれか一方又は両方に嵌る肉厚の支持部を設ければ,本件商品1の形態と類似しない形態で 「トラックファース,ト」に使用可能な連結ストリップを製造することが可能であると考えられる。
(6) 本件商品1の形態の特徴ア本件商品1の形態は,別紙本件商品1説明書記載のとおりであることは当事者間に争いがなく,これに同説明書添付の本件商品1図面を併せると,本件商品1の形態の概要は,以下のとおりと認められる。
A合成樹脂製ストリップ1と,これに保持した10本のピン2とから成る。
B-1各スリーブ3は,正面視において下方に位置する筒状の第1部分5と,一体に繋がった平面視略六角形の第2部分6とから成る。
-2第1部分5と第2部分6の間に両部分を区画する前後一対の凹所7が形成される。
-3各凹所7には,えぐられたような形状で窓8が形成され,この窓からピンが露出する。
-4第2部分6の上端面6aには,各スリーブ3が連結する方向に対して直交するようにV形溝10が形成される。
-5第1部分5は下側ブリッジ部11で,第2部分6は上側ブリッジ部12で連結される。
C-1各ピン2は、基端部に頭部14が形成されたシャンク13を有している。
-2シャンク13の先端部13aは尖っている。
-3シャンク13の頭部付け根部13bは頭部14に向けて外径が大きくなるテーパー状をなしている。
-4ピン2には、シャンク13のうち先端部13aと付け根部13bとの間が同一径であるストレートタイプと、シャンク13のうち先端部13aと付け根部13bとが頭部側の大径部13’と先端側の小径部13”とを有して径違いとなっている段付きタイプとがある。
D以上の構成を備えるガスツール専用の連結ピンである。
イ以上のとおり,連結ピンが原告ガスツールに使用されるためには,必ずしも本件商品1のような,第1広幅部に嵌る部分と第2広幅部に嵌る部分が一体に連続した形態である必要はなく,また,第1広幅部に嵌る部分と第2広幅部に嵌る部分を一体に連続した形態にするとしても,レール部に嵌る凹所からピンが露出しない形態も採用できることが認められる。
そうすると,本件商品1の上記形態のうち 「各スリーブが筒状の第1部分 ,と,これと一体に繋がった第2部分とを有しており,第1部分と第2部分を区画する前後一対の凹所の奥部に窓がえぐれたような形状で開いておりこの窓からピンが露出している」という点(上記形態の概要B-1ないし3参照)は,原告ガスツールに用いられる連結ピンとしての機能ないし効果に必然的に由来するものではないと認められる。
ウこれに対し,本件商品1の形態のうち,ピンが3か所で露出している点,すなわち,ピンの頭部が第2部分の上部から露出し,ピンのシャンクの一部が上記窓から露出し,ピンの先端部が第1部分の下部から露出している点は,原告ガスツールに用いられる連結ピンとしての商品の機能ないし効果に必然的に由来するものであると認められる(この点は,本件各特許発明構成要件F「前記環状部分の前記貫通孔が前記ファスナの先端部に近い前記シャンクの部分を把持するとともに前記破断可能部分の前記貫通孔が前記ファスナの頭部に近い前記シャンクの部分を把持し 」からも明らかである 。 ,。)エそして,後記(7)ア認定のとおり,原告JPFらが平成5年ころから本件商品1を日本国内において独占的に販売するようになってから,被告会社がロ号物件を販売するようになるまでの約10年間において,原告ガスツールに使用される連結ピンとして販売されていたのは,本件商品1のほかは,前記分離式のもののみであったことからすると,本件商品1の形態における 「各スリー,ブが筒状の第1部分と第2部分とを有しており,第1部分と第2部分を区画する前後一対の凹所の奥部に窓がえぐれたような形状で開いておりこの窓からピンが露出している」という点は際だっており,本件商品1の形態は,この点において,他の商品と比べて顕著な特徴を有しているものと認められる。
(7) 本件商品1の形態の使用状況等証拠(甲18の4・6・8・9・14ないし17・23・27ないし32・42・43・49ないし51・58ないし61・63ないし65・70ないし95,19の7・10・11,20の1ないし7,21の1ないし17,22の4ないし6)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア原告JPFらは,平成5年ころから,原告ITWが開発した「トラックファースト」を始めとする原告ガスツール及び本件各商品を日本国内において独占的に販売してきた。その後,被告会社がロ号物件を販売するようになるまでの約10年間(平成14年10月以前にロ号物件が販売されていたことを認めるに足りる証拠はない )において,原告ガスツールに使用される連結ピンとし 。
て販売されていたのは,本件商品1及び原告JPFらが販売していた前記分離式のもののみであった。
イ本件各商品の原告JPFらの販売ルートは,直接住宅メーカーに納入するルートのほかに,原告JPFらの取扱商品のみを販売する特約店から内装業者や設備業者等のユーザーが購入するルートと,他社の商品も販売する金物店,建築資材店,工具店などの販売店からユーザーが購入するルートの2つがある。
このうち後者の販売店は,ほぼ全国にわたって存在し,それらの支店や営業所の数は130を下らない。これら販売店は,ユーザーから電話等によって注文を受けて販売する場合と,店頭に商品を陳列して販売する場合がある。
ウ原告JPFらは,平成5年ころから,原告ガスツール及び本件各商品について,工事業者向けの雑誌を始めとする各種雑誌・事典類( 積算資料「あと「」,施工アンカー「日本ねじ工業協会名簿 「会報ねじ「日本建材時報 「建 」,」,」,」,築知識「電気と工事 「ゴルフダイジェスト 「日経architecture 「けん 」,」,」,」,ざい )に,写真や図によって形態を示した広告を継続的に掲載し,展示会に 」おいて現物を展示するなどして,販売促進活動を行ってきた。また,本件各商品について,写真や図によって形態を示した紹介記事も,各種事典・雑誌類( 建築設備リフォームリニューアル事典「月刊タイル「月刊建築仕上技 「 」,」,術「橋梁&都市 「月刊ねじの世界 「電気現場技術 「ファスナーレポー 」,」,」,」,ト,業界新聞( 全国鋲螺新聞「金属産業新聞「日本刃物工具新聞, 」)「」,」,」)建築メーカーのカタログ(ダイワハウスの現場道具カタログ)においてたびたび掲載された。さらに,原告JPFらは,北は北海道から南は九州まで全国に支店・営業所及び販売店・代理店を有しており,これら支店・販売店等を通じ,カタログを配布するなどして本件各商品について説明を行ってきた。
エ「トラックファースト」を始めとする原告ガスツールのユーザーは,工事現場等において,原告ガスツールに装填された本件商品1が打ち込み終わるたびに(ピンの装填可能数は,ショートマガジンタイプで22本〔本件商品1が2個とピン2本 ,ロングマガジンタイプが42本〔本件商品1が4個とピン2 〕本 (甲17の7の2枚目ほか,新たに本件商品1を装填して使用するとい 〕 ))う作業を繰り返す。したがって,原告ガスツールのユーザーは,1日の作業中に何度か本件商品1の形態を目にする機会がある。また,1日の作業終了の際に釘打ち機に残った本件商品1を抜いて片付けをし,次の作業開始の際に改めて本件商品1を装填するようなユーザーであれば,作業中だけでなく,作業の前後においても本件商品1の形態を目にすることになる。
したがって,原告ガスツールのユーザーは,本件商品1の形態上の特徴を把握しているものと認められる。
(8) 本件商品1の形態の周知性の有無ア前記(7)イ認定の事実によれば,本件商品1の形態の周知性の有無については,日本全国の住宅メーカー,内装業者,設備業者等のうち,原告ガスツールのユーザーを需要者として,また,原告JPFらの商品のみを販売する特約店や,他社の商品も販売する金物店,建築資材店,工具店などの販売店を取引者として考えるのが相当である。
イ前記(7)ア,ウ及びエ認定の事実によれば,本件商品1は,平成5年ころに販売が開始され,その後約10年間は,その形態が同一又は類似する競合商品が市場に現れることがなかったのであるから,本件商品1の形態は,長期間にわたり継続的にかつ独占的に使用され,ロ号物件の販売開始時のみならず,現在においても,日本全国の取引者及び需要者の間に原告JPFを中核とするJPFグループの商品を表示するものとして広く認識されているものと認められる。
ウ被告は,乙第9号証を根拠に本件商品1の形態の周知性を否定するが,本件商品1の形態の特徴は 「各スリーブが筒状の第1部分と,これと一体に繋が ,った第2部分とを有しており,第1部分と第2部分を区画する前後一対の凹所の奥部に窓がえぐれたような形状で開いておりこの窓からピンが露出している」という点にあるところ,乙第9号証に記載された物には,筒状の部分は1つしかなく,窓も開いていない。したがって,乙第9号証を根拠に本件商品1の形態の周知性を否定することはできない。
3 争点3(ロ号物件の形態は本件商品1の形態と類似するか )について。
(1)ロ号物件の形態は,別紙ロ号物件目録記載のとおりであり,これと同目録添付のロ号図面を併せると,ロ号物件の形態の概要は,以下のとおりと認められる。
a合成樹脂製ストリップ1と,これに保持した10本のピン2とから成る。
b-1各スリーブ3は,正面視において下方に位置する筒状の第1部分5と,一体に繋がった平面視略小判形の第2部分6とから成る。
-2第1部分5と第2部分6の間に両部分を区画する前後一対の凹所7が形成される。
-3各凹所7には,えぐられたような形状で窓8が形成され,この窓からピンが露出する。
-4第2部分6の上端面6aには,各スリーブ3が連結する方向に対して直交するようにV形溝10が形成される。
-5第1部分5は下側ブリッジ部11で,第2部分6は上側ブリッジ部12で連結される。
c-1各ピン2は,基端部に頭部14が形成されたシャンク13を有している。
-2シャンク13の先端部13aは尖っている。
-3シャンク13の頭部付け根部13bは頭部14に向けて外径が大きくなるテーパー状をなしている。
-4ピン2には,シャンク13のうち先端部13aと付け根部13bとの間が同一径であるストレートタイプと,シャンク13のうち先端部13aと付け根部13bとが頭部側の大径部13’と先端側の小径部13”とを有して径違いとなっている段付きタイプとがある。
d以上の構成を備えるガスツール専用の連結ピンである。
(2)前示のとおり,本件商品1は,ストリップ(本件製品1)にピンが保持されたものであり,ストリップには10本のスリーブが並列上に並べられている。本件商品1は,ストリップの「各スリーブが筒状の第1部分と,これと一体に繋がった第2部分とを有しており,第1部分と第2部分を区画する前後一対の凹所の奥部に窓がえぐられたような形状で開いておりこの窓からピンが露出している」という点において顕著な特徴がある。
そして,ロ号物件も,ストリップ(イ号物件)にピンが保持されたものであり,ストリップには10本のスリーブが並列上に並べられている。ロ号物件は,ストリップの各スリーブが筒状の第1部分とこれと一体に繋がった第2部分とを有しており,第1部分と第2部分を区画する前後一対の凹所の奥部に窓がえぐられたような形状で開いておりこの窓からピンが露出していて,本件商品1の形態の特徴と共通する特徴を有している。
(3)他方,本件商品1のストリップでは,第2部分6が平面視で略六角形であるのに対し,ロ号物件のストリップでは,第2部分6が平面視で略小判形であり,この点において両者は相違する。
しかし,本件商品1のストリップでも,ロ号物件のストリップでも,第2部分の前後両面は平坦になっており,上記の相違点は一見して明らかというものではなく,上記共通点との比較で見た場合,微々たる相違にすぎないというべきである。
(4)したがって,ロ号物件の形態は,本件商品1の形態に類似するものというべきである。
4 争点4(ロ号物件を本件商品1と誤認混同するおそれがあるか )について。
前示のとおり,本件商品1の形態は,JPFグループの商品等表示として需要者の間に広く認識されている。そうすると,被告会社が,本件商品1の形態と類似するロ号物件を販売し,販売のために展示するなどした場合,これに接した需要者は,その出所がJPFグループであるかのように誤認し,出所の混同が生じるおそれがある。
以上によれば,被告会社のロ号物件の譲渡等は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たる。そうすると,原告JPFは,その必要性が肯認される限り,同法3条に基づき,ロ号物件の譲渡等の差止め及びその在庫等の廃棄を求めることができるとともに(その必要性の存否については後記11で判断する ,同法4条に。)基づき,上記不正競争行為により原告JPFの被った損害の賠償を求めることができる。
5 争点5(本件商品2の形態は周知な商品等表示といえるか )について。
(1)本件商品2(ガスカートリッジ)は,原告ガスツールに使用される本件製品2(定量ノズル)と本件製品3(ボンベ)とからなっている。
(2)本件製品2の定量ノズルについては,ノズルとしての機能,すなわち,ガスボンベの取付口及びガスの流出口としての機能を果たす上で有すべき形態を超えた特殊な形態を備えているものとは認められない。
(3)本件製品3のボンベについても,一般のガスボンベと同様に単なる円筒形であり,ガスボンベとしてありふれた形態というべきである。
原告JPFは,外径に比べて長さが長い外径30o強のボンベはガスツールに適合させるために製造した特殊な形態である旨主張するが,正に原告JPFが主張するように原告ガスツールに適合させるためには必然的に本件製品3のような形態になるのであるから,外径に比べて長さが長い外径30o強であるという点は,本件製品3の機能ないし効果に必然的に由来するものというべきである。
(4)以上によれば,本件製品2と本件製品3とからなる本件商品2全体の形態もまた,ガスカートリッジとしての機能ないし効果に必然的に由来するものであって,不正競争防止法2条1項1号の商品等表示には当たらないというべきである。
(5)以上によれば,その余の争点(争点6,7)について判断するまでもなく,被告会社がハ号物件を譲渡する等の行為は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当するとはいえないから,上記行為の差止め及び在庫品等の廃棄並びに損害賠償を求める原告JPFの請求は理由がない。
6 争点8(へ号物件の形態は本件商品1の形態と類似するか )について。
(1)へ号物件の形態は,別紙へ号物件目録記載のとおりであり,これと同目録添付のへ号図面を併せると,へ号物件の形態の概要は,以下のとおりと認められる。
a’合成樹脂製ストリップ1と,これに保持した10本のピン2とから成る。
b’-1各スリーブ3は,正面視において下方に位置する円筒状の第1部分5と,上方に位置する円筒状の第2部分6と,両者を繋ぐ一対の板状部9とから成る。
-2板状部9は,スリーブ3の並び方向に振り分けた状態に配置されていて,板状部9の箇所は軸心側に凹んだ凹所7になっている。
-3一対の板状部9の間は,第1部分5及び第2部分6の貫通穴4に連通した窓8になっていて,この窓からピン2が露出している。
-4隣り合ったスリーブ3は,第1部分5に連続した第1ブリッジ部11と,板状部9のうち第2部分6に寄った部分に第2ブリッジ部12とで連結されている。
c’-1各ピン2は,基端部に頭部14が形成されたシャンク13を有している。
-2シャンク13の先端部は尖っている。
-3ピン2には,シャンク13のうち先端部と付け根部との間が同一径であるストレートタイプと,シャンク13が頭部側は大径部13’で先端側は小径部13”の径違いになっている段付きタイプとがある。
d’以上の構成を備えるガスツール専用の連結ピンである。
(2)前示のとおり,本件商品1は,ストリップ(本件製品1)にピンが保持されたものであり,ストリップには10本のスリーブが並列上に並べられている。本件商品1は,ストリップの「各スリーブが筒状の第1部分と,これと一体に繋がった第2部分とを有しており,第1部分と第2部分を区画する前後一対の凹所の奥部に窓がえぐられたような形状で開いておりこの窓からピンが露出している」という点において顕著な特徴がある。
そして,ヘ号物件も,ストリップ(ト号物件)にピンが保持されたものであり,ストリップには10本のスリーブが並列上に並べられている。へ号物件は,第1部分と第2部分とを有しており,両者を繋ぐ一対の板状部の間に窓が開いておりこの窓からピン2が露出していて,この限りにおいて,本件商品1の形態と共通する。
(3)他方,本件商品1のストリップでは,第1部分と,これと一体に繋がった第2部分を区画する前後一対の凹所の奥部に窓がえぐられたような形状で開いておりこの窓からピンが露出しているのに対し,へ号物件のストリップでは,第1部分と第2部分とを繋ぐ板状部の間に窓が開いておりこの窓からピンが露出しているところ,第1部分と第2部分が円筒形であることから,両者を繋ぐ板状部の下部に円筒の第1部分を付け,板状部の窓の上部に円筒の第2部分を付けた形態であって 「各スリーブが筒状の第1部分と,これと一体に繋がった第2部分とを ,区画する前後一対の凹所の奥部に窓がえぐられたような形状で」は開いていない。
(4)この点につき,原告JPFは,上記相違点は,需要者の注意を惹くことのない微少な差にすぎないと主張する。
しかし 「第1部分と,これと一体に繋がった第2部分とを区画する前後一対 ,の凹所の奥部に窓がえぐられたような形状で」開いている点を除くと,へ号物件の形態において本件商品1の形態と共通する点は,各スリーブが第1部分と第2部分とを有しており,両者を繋ぐ一対の板状部の間に窓が開いておりこの窓からピン2が露出している点,すなわち,ピンが3か所で露出している点(ピンの頭部が第2部分の上部から露出し,ピンのシャンクの一部が上記窓から露出し,ピンの先端部が第1部分の下部から露出している点)のみとなるが,ピンが3か所で露出している点は,前記説示のとおり,本件商品1の機能ないし効果に必然的に由来するものにほかならない。そうすると,へ号物件の形態は,本件商品1の形態と対比して,本件商品1の機能ないし効果に必然的に由来する部分を除いては,共通点がないことになる。
そうすると,へ号物件の形態は,本件商品1の形態に類似しないというべきである。
(5)以上によれば,その余の争点(争点9)について判断するまでもなく,被告会社がへ号物件を譲渡する等の行為は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当するとはいえないから,上記行為の差止め及び在庫品等の廃棄並びに損害賠償を求める原告JPFの請求は理由がない。
7 争点10(被告Yの責任の有無)について原告らは,被告Yは被告会社の代表取締役として,被告会社のロ号物件の販売行為を指揮統括するなど主体的に関与して被告会社をして不正競争行為をなさしめたと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
したがって,被告Yは,被告会社のロ号物件を販売する不正競争行為について,民法709条又は商法266条ノ3第1項に基づく損害賠償義務を負わない。
8 争点11(ロ号物件の販売額)について証拠(乙45の1ないし30,46の1ないし22,47の1ないし16,48の1ないし9,1341の65・66,1342の50・51,1343の59,1344の69・72,1345の64・67,1346の65・69,1347の78・82,1348の70・74,1349の78・83,1350の83・84・88,1351の79・82,1352の69・72,1353の80・83,1354の71・74・76,1355の76・80,1356の64・67・69,1357の71・74・76,1358の70・73・75,1359の80・83・86,1360の84・86・89ないし91,1361の74・76・78ないし80,1362の72・74・75,1363の67・69・70,1364の72,1365の73・75)及び弁論の全趣旨(被告らは,ロ号物件は,品番1000,1003,1008,1010,1011のものであると主張しているところ(第14回弁論準備手続調書 ,原告JPFはこれを争うことを明 )らかにしないこと等)によれば,平成15年1月から平成17年1月までの間における,ロ号物件の販売額は,合計3438万7750円であることが認められる(別紙ロ号物件販売金額整理表参照 。)9 争点16(本件商品1の形態の使用料率)について(1)本件商品1は,原告ガスツールに用いられる連結ピンであるところ,ガスツールは,その駆動原理が内燃機関と同様であるから,構造上の精密さが要求され,また,銃刀法の規制も受け,高い安全性が求められている。そのため,連結ピンにおいても,構造上の精密さや高い安全性が要求され,原告JPFらは,平成5年ころから約10年間,本件商品1及びこれが用いられる原告ガスツールを独占的に販売する中で,その構造上の精密さや高い安全性を維持してきたものであり,その需要者及び取引者は,このような原告JPFらの営業上の信用を表すものとして本件商品1の形態に慣れ親しみ,これに多大の信頼を寄せてきたものということができる。
(2)そこで,本件商品1の商品等表示の使用料相当額について検討すると,これを直接認定し得る的確な資料はないが,本件商品1に関して原告ITWがJPFグループに属するジャピット社やJPFワークスに対して本件各特許発明実施許諾をしているところ,その実施許諾料は純販売額の10%相当額とされていること(甲63ないし77,弁論の全趣旨)や,上記(1)の事情を考慮し,ロ号物件の販売額の8%相当額をもって相当と認める。
10 争点17(原告JPFの損害額)について(1) 使用料相当損害金以上によれば,被告会社が平成15年1月から平成17年1月までの間にロ号物件を販売したことにより原告JPFらの被った使用料相当損害金は,3438万7750円×8%=275万1020円となる。
(2) 弁護士費用及び弁理士費用原告JPFらが本件訴訟に関して要した弁護士費用及び弁理士費用については,そのうち各々13万円(計26万円)について,被告会社の上記不正競争行為と相当因果関係があるものと認める。
(3) 原告JPFの損害額そうすると,被告会社の上記不正競争行為により原告JPFらが被った損害額は,275万1020円+26万円=301万1020円となる。
11 差止め等の必要性について(1)被告らは,被告会社は平成15年4月末時点でロ号物件の販売を中止し,その後はへ号物件を輸入して販売していると主張するが,少なくとも平成17年1月まで被告会社がロ号物件の販売を続けていたことは,前記認定のとおりである。
また,被告らは,現在でも被告会社の倉庫にロ号物件の在庫が大量に残存していることを自認している。
上記事実からすれば,今後,被告会社がロ号物件の在庫を販売し,また,新たにロ号物件を輸入するなどして販売するおそれはあるものと認められる。
したがって,ロ号物件について,輸入,譲渡及び譲渡のための展示の差止め並びに在庫及び仕掛品の廃棄を命ずる必要がある。
(2)これに対し,被告会社がロ号物件を製造していたことを認めるに足りる証拠はなく,今後これを製造するおそれがあると認めるに足りる証拠もない。また,そもそも「製造」は不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為とされていないから,ロ号物件について,製造の差止め及び製造のための設備の廃棄を命ずることはできない。
(3)なお,イ号物件はロ号物件を構成するものではあるが,ロ号物件とは別にイ号物件をそれのみで譲渡等していることを認めるに足りる証拠はない。
したがって,イ号物件について,輸入,製造,譲渡及び譲渡のための展示の差止めを命ずる必要はなく,したがってまた,これら行為の予防のためにイ号物件の在庫品及び仕掛品の廃棄を命ずる必要もない。
12 結論以上によれば,原告ITWの被告らに対する特許権侵害に関する請求はいずれも理由がないから,これを棄却する。原告JPFの被告らに対する不正競争防止法に基づく請求は,被告会社に対し,同法3条に基づき,ロ号物件の輸入,譲渡,譲渡のための展示の差止め及びロ号物件の在庫及び仕掛品の廃棄と,同法4条に基づき,301万1020円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成17年3月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,被告会社に対するその余の請求及び被告Yに対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとする。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 西理香
裁判官 西森みゆき
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