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関連審決 不服2003-11612
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成12行ケ91取消決定取消請求事件 判例 特許
平成13行ケ154審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10350審決取消請求事件 判例 特許
平成17行ケ10185審決取消請求事件 判例 特許
平成18行ケ10386審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  引用発明の認定 /  一致点の認定 /  周知技術 /  優先権 /  クレーム /  優先日 /  参酌 /  数値限定 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  不存在 /  実施 /  加工 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  減縮 /  独立特許要件 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10112号 審決取消請求事件
原告スミスクライン・ビーチャム・コンシューマー・ヘルス ア・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
訴訟代理人弁理士田中光雄,伊藤晃,元山忠行
被告特許庁長官中嶋誠
指定代理 人和泉等,阿部寛,岡田孝博,田中敬規
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/02/08
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた裁判「特許庁が不服2003-11612号事件について平成17年11月7日にした審決を取り消す 」との判決。。
第2事案の概要本件は,原告が,名称を「歯ブラシ」とする発明について,特許出願をして拒絶査定を受け,これを不服として審判請求をしたが,審判請求は成り立たないとの審決がされたため,同審決の取消しを求めた事案である。
1特許庁における手続の経緯( )本件出願(甲3)1出願人:原告発明の名称: 歯ブラシ」「出願番号:特願平10-537267出願日:平成10年2月17日優先日:平成9年2月24日(優先権主張外国庁 ヨーロッパ特許庁)( )本件手続2手続補正日:平成14年3月25日拒絶査定日:平成15年3月17日審判請求日:平成15年6月23日(不服2003-11612号)手続補正日:平成15年7月14日(甲4。後出の本願補正発明)審決日:平成17年11月7日審決の結論: 本件審判の請求は,成り立たない 」 「 。
審決謄本送達日:平成17年11月22日2本願発明の要旨平成14年3月25日付けの手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1は,次のとおりである(これを「本願発明」という。なお,請求項は1から18まであるが,2以下は省略する。。)「ハンドルと,ヘッド(ここで,該ヘッドはハンドルに向かうベース端部とそのベース端部から離れた位置に先端部を有する)と,ヘッドのベース端部とハンドルの間にネック域とを有し,そのヘッドが該ヘッドのベース端部でネック域に接しており,ヘッド,ネックおよびハンドルが歯ブラシの縦軸に沿って配置され,そのヘッドが該ヘッドの植毛面から伸びる植毛を有している歯ブラシであって,ヘッドが,歯ブラシのネックに接し,ヘッドのベース端部からそのベース端部と先端部の間にある弾性に富む柔軟な連結部にまで伸びる,その長さがヘッドのベー, , ス端部と先端部の間の長さの少なくとも%に及ぶ 実質的に剛性なベース域と 50ヘッドの先端部から連結域にまで伸びる実質的に剛性な先端域とを有し,ここでそのベース域および先端域は共に植毛を担持し,歯磨きの間に,連結域にてヘッドを横切って横方向に伸びる折り曲げまたはピボット軸を中心として,ベース域に対してハンドルに向かって弾性的に後方に折れ曲がるかピボットし,ヘッドが応力のない状態で,歯ブラシの先端域およびベース域の植毛面が°より小さな角度を形180成するように,その先端域は連結域を介してベース域に柔軟的かつ弾性的に連結しており,ヘッドのベース端部とネックの間に弾性に富む柔軟な連結部があることを特徴とする歯ブラシ 」。
3本願補正発明の要旨平成15年7月14日付け手続補正後の特許請求の範囲の請求項1は,次のとおりである(甲4。これを「本願補正発明」という。下線部分が補正に係る部分で 。)ある。
「ハンドルと,ヘッド(ここで,該ヘッドはハンドルに向かうベース端部とそのベース端部から離れた位置に先端部を有する)と,ヘッドのベース端部とハンドルの間にネック域とを有し,そのヘッドが該ヘッドのベース端部でネック域に接しており,ヘッド,ネックおよびハンドルが歯ブラシの縦軸に沿って配置され,そのヘッドが該ヘッドの植毛面から伸びる植毛を有している歯ブラシであって,ヘッドが,歯ブラシのネックに接し,ヘッドのベース端部からそのベース端部と先端部の間にある弾性に富む柔軟な連結部にまで伸びる,その長さがヘッドのベー, , ス端部と先端部の間の長さの少なくとも%に及ぶ 実質的に剛性なベース域と60ヘッドの先端部から連結域にまで伸びる実質的に剛性な先端域とを有し,ここでそのベース域および先端域は共に植毛を担持し,先端域が,歯磨きの間に,連結域にてヘッドを横切って横方向に伸びる折り曲げまたはピボット軸を中心として,ベース域に対してハンドルに向かって弾性的に後方に折れ曲がるかピボットし,ヘッドが応力のない状態で,歯ブラシの先端域およびベース域の植毛面が-°の150179角度を形成するように,その先端域は連結域を介してベース域に柔軟的かつ弾性的に連結しており,ヘッドのベース端部とネックの間に弾性に富む柔軟な連結部があることを特徴とする歯ブラシ 」。
4審決の理由の要点4-1本願補正発明について50 まず 平成15年7月14日付けの手続補正書の補正については少なくとも , ,「%」とあるのを「少なくとも%」と限定し 「°より小さな角度」とあるの60180 ,を「-°の角度」と限定するもので,特許請求の範囲減縮を目的とする150179ものに該当するとし,次に,本願補正発明の独立特許要件(容易想到性不存在)について,以下のとおり,これを否定した。
「そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下 「本願補正発明」という )が,出願の際独 , 。
立して特許を受けることができるものであるかどうかについて以下検討する。
( ) 引用発明及び引用例22ア.原審の拒絶の理由に引用した,本願の優先権主張の日前に米国内に頒布された米国特許第号明細書(以下 「引用例1」という。判決注:本訴甲1 )には,歯ブラシに関して,図5373602 , 。
面とともに以下の事項が記載されている。
The present invention relates to an improved toothbrush which is effective in cleaning the back ()「ア-1teeth and for brushing the teeth with the least amount of scratching on the periodontal tissue surface of the(第1欄第6〜9行,当審仮訳(以下,同じ 「本発明は,奥歯を磨くのに効果的な, oralcavity. 」 。
口腔の歯周組織表面をできるだけ引っ掻くことがなく歯を磨く,改良された歯ブラシに関する)。」Another object of the present invention is to provide a toothbrush having a flexible extension (ア-2 「)containing a plurality of bristles and a flexible element which covers the back of the head for minimizing(第1欄第〜行 「本発明の他の目 scratches on the periodontal tissue surface of the oral cavity.2731 」 ,的は,複数の植毛を含み,口腔の歯周組織表面を最小限に引っ掻く頭部の後方を覆う弾性要素を含む,可撓性の延長部材を有する歯ブラシを提供することである)。」As shown in FIGS.2 and 4, the flexible extension member 12 includes a cover 17 which is (ア-3 「)attached to the outer planar surface of the brush head 11 by an adhesive 18. The member 12 also has aninner stepped surface. Bristles 13' are attached to the surface 16 which extends in a longitudinal directionaway from the handle beyond the outer planar surface of the brush head of the flexible extension portionand bristles 13 are attached to the brush head surface 15. The bristles 13' contain a plurality of shorterbristles near the transition point between the flexible and fixed portions of the toothbrush head so that theflexible extended portion of the toothbrush head can flex while avoiding conflict with the bristles 13 of themain head portion of the brush.The flexible extension member 12 is made of rubber, so that the surface thereof can minimize scracthingwhile massaging the periodontal tissue surface. Accordingly, the flexible extension member 12 can be used」(,「 , to effectively clean the back teeth.24 第2欄第6〜行第2図及び第4図に示されているように可撓性の延長部材は,接着剤によりブラシ頭部の外側の平坦表面に取り付けられるカバ121811ーを含む。部材は,また,内側の段部になった表面を有する。植毛は,可撓性の延長部 1712 13'材のブラシ頭部の外側の平坦表面を越えてハンドルから軸方向の外側に延びた表面に取り付け 16られており,植毛は,ブラシ頭部表面に取り付けられている。植毛は,歯ブラシ頭部の 13 15 13'可撓性部分と固定部分の間の境界点の近くの複数の短い植毛を含んでおり,歯ブラシ頭部の可撓性の延長部材が,ブラシの主頭部の植毛と衝突しないように撓むことができる。
13可撓性の延長部材は,ゴムでできており,その表面が歯周組織表面をマッサージしていると 12き,引っ掻くのを最小限にする。従って,可撓性の延長部材は,奥歯を効果的に磨くことがで 12きる)。」(ア-4)第4図には,ブラシ延長部材が,植毛部に約°程度の角度で屈曲した点が図示12135されている。
また,ブラシ頭部は,ブラシ頭部とブラシ延長部の和の少なくとも%の固定植毛11111260部を有していることが図示されている。
また,第1図,第3図より,ハンドルとブラシ頭部の間には,ネックが存在することが図示11されている。
,, 。(, 以上の記載及び図示内容から総合すると 引用例1には 以下の発明が記載されている以下「引用発明」という )。
「ハンドルと,ブラシ頭部と,ブラシ延長部材と,ブラシ頭部とハンドルの間に1411 12111411 11 14ネックとを有し,ブラシ頭部とネックが接しており,ブラシ頭部,ネックおよびハンドルが歯ブラシの縦軸に沿って配置され,ブラシ頭部およびブラシ延長部材の植毛面から伸びる11 12植毛を有している歯ブラシであって,ブラシ頭部の長さが,ブラシ頭部とブラシ延長部材の和の少なくとも%であり,11 111260ブラシ頭部は実質的に剛性であり,ブラシ頭部およびブラシ延長部材は共に植毛を保持し, 11 12ブラシ延長部材は,応力のない状態で歯ブラシのブラシ延長部材およびブラシ頭部の植 12 1211毛部が°程度の角度で屈曲し,ブラシ延長部材はブラシ頭部に柔軟的かつ弾性的に連結 135 1211している歯ブラシ 」。
イ.同じく特開平号公報(以下 「引用例2」という。判決注:本訴甲2 )には,歯ブ9-19323 , 。
ラシに関して図面とともに以下の事項が記載されている。
(イ-1 「ハンドルとネックとブラシ毛が植毛された剛性ヘッドを有する歯ブラシにおいて,当 )該剛性ヘッドが複数の植毛部から構成され,各植毛部の相互間に弾性材が設けられ,当該各植毛部のブラシ毛が接触する口腔内の形状に応じて当該弾性材が弾性変形することにより,当該各植毛部の厚み方向における相対的位置が変動するように構成されていることを特徴とする歯ブラシ(特。」許請求の範囲の【請求項1 )】(イ-2 「一般に,ハンドル1とネック2とヘッド3は,一体に成型された剛性の合成樹脂から ),, 。」(【】) からなるが 実施例1においては ネック2とヘッド3が弾性材8で連結されている段落00163a()「 , , イ-3合成樹脂製のヘッド3は 図1〜図3に示すように 厚み方向に4分割された植毛部〜から構成され,各植毛部は,弾性材〜により連結されている(段落【)3d 4a4c 0017 。」】( )対比・判断3本願補正発明と引用発明を対比すると,その構成及び機能からみて,後者の「ハンドル」は 14前者の ハンドル に相当し 後者の ブラシ頭部は前者の ベース域 に相当し 後者の ブ 「」,「」「」,「 11ラシ延長部材」は前者の「先端部」に相当するから,後者の「ブラシ頭部」と「ブラシ延長 12 11部材」の合わせたものは,前者の「ヘッド」相当するものと認められる。 12また,後者も「ネック」を有しているから 「ネック域」は存在するし 「ベース域」が存在す , ,る以上「ベース端部」も存在する。
そうすると,両者は 「ハンドルと,ヘッド(ここで,該ヘッドはハンドルに向かうベース端部 ,とそのベース端部から離れた位置に先端部を有する)と,ヘッドのベース端部とハンドルの間にネック域とを有し,そのヘッドが該ヘッドのベース端部でネック域に接しており,ヘッド,ネックおよびハンドルが歯ブラシの縦軸に沿って配置され,そのヘッドが該ヘッドの植毛面から伸びる植毛を有している歯ブラシであって,ヘッドが,歯ブラシのネックに接し,ヘッドのベース端部からそのベース端部と先端部の間にある弾性に富む柔軟な連結部にまで伸びる,その長さがヘッドのベース端部と先端部の間の長さの少なくとも%に及ぶ,実質的に剛性なベース域と,ヘッドの先端部から連結域にまで伸びる先60端域とを有し,ここでそのベース域および先端域は共に植毛を担持し,先端域が,歯磨きの間に,連結域にてヘッドを横切って横方向に伸びる折り曲げまたはピボット軸を中心として,ベース域に対してハンドルに向かって弾性的に後方に折れ曲がるかピボットし,ヘッドが応力のない状態で,歯ブラシの先端域およびベース域の植毛面が屈曲部を形成するように,その先端域は連結域を介してベース域に柔軟的かつ弾性的に連結している,歯ブラシ」の点で一致しており,下記の点で相違している。
(相違点1)歯ブラシの先端域について,前者は 「実質的に剛性な」ものであるのに対し,後者は,弾性的 ,なものである点。
(相違点2),,「」 歯ブラシの先端域およびベース域の植毛面が屈曲部を形成した角度が 前者は-°150179の角度であるのに対し,後者は,約「°」程度である点。 135(相違点3)ヘッドのベース端部とネックの間において,前者は 「弾性に富む柔軟な連結部がある」のに ,対し,後者は,そのような構成になっていない点。
上記相違点について以下検討する。
, ,(, 上記相違点1について 歯ブラシの先端域を実質的に剛性とすることは 周知の技術 例えば上記引用例2,米国特許第号明細書等参照)であり,引用発明に上記周知の技術を適用し3188672て,上記相違点1に係る本願補正発明とすることは当業者が容易に想到し得るところである。
上記相違点2について,屈曲部の角度を-°とすることに臨界的意義はなく,屈曲部150179の角度を°とするものに代えて-°とすることは,当業者が適宜なし得る設計的事項135 150179と認める。
上記相違点3について,ヘッドのベース端部とネックの間において 「弾性に富む柔軟な連結部 ,がある」ようにすることは,引用例2に記載されており,歯ブラシという同じ技術分野に属することから,引用発明に上記引用例2に記載された技術を適用して上記相違点3に係る本願補正発明とすることは,当業者が容易に想到し得たものと認める。
そして,本願補正発明の作用効果も引用発明,引用例2及び周知の技術から当業者が容易に予測できる程度のものであって格別のものはない。
( ) むすび4以上のとおりであるから,本願補正発明は,引用発明,引用例2及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって出願の際独立して特許を受けることができないから,本件補正は,平成年改正前特許法第条の2第5項で準用する同法第条第5項の規1517 126定に違反し,同法第条第1項により読み替えて準用する同法第条第1項の規定により却下 159 53すべきものと認める 」。
4-2本願発明 について,,,() そのうえで 本願発明についても 次のとおり 特許要件 容易想到性不存在を否定した。
「本願補正発明は,本願発明に下線部分を限定して減縮したものであるから,本願補正発明が引, , 用発明 引用例2及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものである以上本願発明も引用発明,引用例2及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものである 」。
第3原告の主張(審決取消事由)の要点1取消事由1(本願補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り及び相違点4の看過)( ) 審決は,引用発明について 「……,ブラシ延長部材は,応力のない状態1 12 ,で歯ブラシのブラシ延長部材およびブラシ頭部の植毛部が°程度の角度1211135で屈曲し,ブラシ延長部材はブラシ頭部に柔軟的かつ弾性的に連結している 1211歯ブラシ 」と認定した。。
しかしながら,引用例1において,応力のない状態では,ブラシ延長部材と12ブラシ頭部が同一平面を構成しており(第1〜3図 ,ブラシ延長部材がブ 11 12 )ラシ頭部に対して柔軟に屈曲する状態を示す第4図は,口腔内で歯ブラシを使11用するときにブラシ延長部材に応力がかかっている状態を示しているのである 12から,審決の上記認定は誤りである。
( ) そうすると,本願補正発明では,ヘッドが応力のない状態で,歯ブラシの先2端域及びベース域の植毛面が-°の角度を形成するように,その先端域は 150179ベース域に連結しているのに対して,引用発明では,ブラシ頭部が口腔内で応力を受けた状態で,先端域(延長部材)及びベース域(ブラシ頭部)の植毛面が12 11一定の角度をなすべく屈曲可能に,その先端域はベース域に柔軟的かつ弾性的に連結しているのであって,ブラシ頭部が応力のない状態では,先端域とベース域の植,,(, 毛面は同一平面を構成している という点において 両者は相違している 原告は本訴において,この点を相違点4として主張するものである。審決は,相違点4。)を看過したものである。
( ) 被告は,原告の主張する取消事由1に対しては沈黙した上,審決で認定した 3引用例1の実施例とは別の記載部分である,米国特許明細書に慣用的に記載される定型文言の記載に依拠し,かつ,審決では摘示されなかった乙1〜4(いずれも特許ないし実用新案の出願公報)を当審に至って提出し,これに登場する技術を周知技術として引用することによって,引用例1には審決で認定された事実が記載されているものといえるとの結論を導こうとしている。
被告の上記主張は,審決が具体的にした認定とは異なる引用例1の記載事項と公知ないし周知の事実とを基礎にして,審決がした認定と同じ結論部分を導こうとするものであるが,本件訴訟では,原告は,審決が具体的にした特定の認定についての違法性を問題にしているのであって,被告の主張は,審決が採用したのとは異なる新たな拒絶理由を本件訴訟で主張するものであるから,許される主張ではない。
( ) 被告は 「引用例1には,歯ブラシのヘッドが応力のない状態で内側に屈曲4 ,しているものも,記載されているに等しい 」と主張するが,引用発明は,延長部 。
材は,不使用時に平坦で,使用時に必要に応じてブラシ主頭部に対して撓める12ようにした点に特徴があるので,ブラシの不使用時つまり応力のない状態において屈曲しているとする被告主張の周知技術は,技術思想として両立し得ないものであるから,被告の主張は失当である。
,( )) 「」 ( ) 被告は 乙3 実願昭号(実開平号の 圧縮可動部563-1506472-7132913が本願補正発明の「弾性に富む柔軟な連結部又は連結域」に機能上相当すると主張しているが,この主張は失当である。乙3において,植毛部先端側は,作用具16Bによって支持されていて,この作用具Bの位置により,植毛部先端側は植毛 16部固定側に対する角度が固定されている。すなわち,この圧縮可動部は,先 15 13端側と固定側とを連結するヒンジの機能を果たすだけで,歯ブラシの使用時1615, ,「」 , には 弾性機能すなわちバネ機能を有していないのであり 当該 圧縮可動部 は本願補正発明の「弾性に富む柔軟な連結部又は連結域」の連結機能と共通するところはあるものの,弾性に富む柔軟な連結部には相当しない。
2 取消事由2(本願補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り及び相違点5の看過)1 12 ( ) 引用例1の 第2図及び第4図に示されているように 可撓性の延長部材 「 ,1811 17 は,接着剤によりブラシ頭部の外側の平坦表面に取り付けられるカバーを含む(2欄6〜9行,被告翻訳)との記載は,第3図に明示された屈曲の見ら 。」れない平坦なブラシ延長部材が接着剤によりブラシ頭部に取り付けられ12181112て第1 2図の状態になることを意味している したがって 引用発明の延長部材 , 。,の先端部分とブラシ頭部とが,本願補正発明の先端域とベース域に相当してい11,, , るのであるから 引用発明には 延長部材の先端部分とブラシ頭部との間に 12 11弾性に富む柔軟な連結部又は連結域は存在しない。
引用発明では,ブラシ延長部材自体が可撓性のあるゴムで形成されることに12よって,その先端部分がブラシ頭部に対して撓み得る構成となっているのであ 11り,本願補正発明の構成のように,それ自体が弾性に富む柔軟な連結部又は連結域を介することによって,先端域がベース域に対して撓み得る構成とは相違している(原告は,本訴において,この点を相違点5として指摘し,その看過の違法を主張するものである。。)( ) 被告は,引用例1の延長部材とカバーとの間に形成される段部が本願2 1217補正発明の「弾性に富む柔軟な連結部又は連結域」に相当すると主張しているが,たとえ,その段部が本願補正発明の連結部又は連結域に相当するとしても,その段部より先端側の延長部材は可撓性を有するので,本願補正発明の「実質的に剛12性な」先端域には相当しないことになる。要は,本願補正発明では,剛性な2つの部分を弾性に富む柔軟な連結手段で連結するのに対して,引用例1では,剛性な部分(ヘッド部)に可撓性の部分を連結したにすぎないのであるから,両者の構成は基本的に相違する。
3取消事由3(進歩性についての認定判断の誤り)審決は,上記相違点4,5を看過したことにより,これらの相違点について進歩性の判断をしないで,また,それらの構成の相違からもたらされる作用効果の点についても進歩性の判断をしないで,進歩性を否定する結論を導いている。したがって,審決が進歩性についてした認定判断は誤りであり,審決は取り消されるべきである。
以下において,これを具体的に説明する。
( ) 本願補正発明においては,上記相違点4,5で指摘したように,弾性連結域1を介して先端域とベース域の植毛面の間に一定の角度を付与することで,その先端域を容易に歯の裏側にある歯間に持って行くことができ,またその先端域が,例えば口腔内組織と接触することにより力が加えられれば,その先端域は図8の屈曲状態に復元しようとするため,植毛がより強く歯と接触し,確実に歯間に達することもできる。
これに対して,引用発明のブラシ延長部材は,口腔内の歯周組織表面を引っ12掻くことがないことを目的として,全体がゴム製の柔軟な材料で形成されている。
また,その先端部分(カバーより先端側の部分)とブラシ頭部とは弾性体で17 11。, , 連結されているのではない その先端部分は 歯ブラシ使用時のブラッシング中にそれ自体が第4図に示すように口腔内形状に応じて柔軟に変形できるように構成したものにすぎない。したがって,本願明細書の図8に示したようにしてブラッシングをする際は,引用発明では,延長部材の先端部分は屈曲状態から平坦状態に12復元しようとするから,先端部分の植毛’を奥歯の裏側に強く接触させること 13はできない。
( ) 被告は,本願明細書には「歯間」についての言及がないので,原告の主張が2本願明細書の記載に基づかないものであると主張するが,図8を見れば,歯ブラシの先端域の植毛の毛先が使用者の歯間に届いていることが明らかである。
1221( ) 被告は,本願補正発明の数値限定である「°」について,その数値 3 150-179限定には臨界的意義がなく,その「°」の値は「°」の値と効果上の格別 179180の差異が生じない,と主張しているが,その主張は失当である。
本願補正発明の数値限定は,歯ブラシの先端域及びベース域の植毛面がなす角度が°°の数値範囲の鈍角を形成することに技術的意義があり,歯ブラシ150-179の先端域及びベース域の植毛面が同一平面であることを意味する「°」とは質 180的に技術的意義を異にする。
第4被告の主張の要点1取消事由1(本願補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り及び相違点4の看過)に対して1 The invention being thus described, it will be obvious ( ) 引用例1(甲1)には 「,that the same may be varied in many ways. Such variations are not to be regarded as adeparture from the spirit and scope of the invention, and all such modifications as wouldbe obvious to one skilled in the art are intended to be included in the scope of the」(,「, , following claims.2429 2欄行〜行本発明は このように記述されているから同じものが多数の手段で変化されるのは明らかである。このような変化例は,本発明の精神及び範囲から,逸脱しているとはみなされないし,当業者に明らかであろうこのようなすべての変化例は,下記のクレームの範囲内に含まれるものと意図する(被告仮訳 )という記載があり,第1図〜第4図等から当業者が明らかに把 。」)握できる多数の変化例も,実質的に記載されているものとみるのが相当である。
,, , そして 歯ブラシには 歯ブラシのヘッドが同一平面状にあるものばかりでなく応力のない状態で内側に屈曲したものが変化例として存在することも当業者におい,, (), て周知であり この点は 乙1の特表平号公報 平成8年4月2日公表8-502909乙2の実願平号(実開平号。平成6年5月17日公開 ,本願の 4-841576-36421 )63-1506472-71329 拒絶査定時に周知例として提示した乙3の実願昭号(実開平号 ,同じく本願の拒絶査定時に周知例として提示した乙4の平号公報の )1-190307各記載によって,明らかである。
そうすると,引用例1には,歯ブラシのヘッドが応力のない状態で内側に屈曲しているものも,記載されているに等しいといえるのであって,結果的に,審決の認定判断には誤りがない。
( ) 相違点4についての反論2引用例1の図4が必ずしも使用状態を示しているものではなく,引用例1には口腔内でブラシ頭部がどのような状態になるのかの記載も全くないのであるから,原告が相違点4に係る引用発明の構成として主張するところは失当であり,本願補正発明においても,使用状態における該角度の限定はないのであるから,両発明の対比に当たって,使用状態における相違点を取り上げても意味がない。
仮に,原告が主張する相違点4を取り上げて 「ヘッドが応力のない状態で,歯 ,ブラシの先端域およびベース域の植毛面が約°の角度である」ことを引用発明180150-179 179として認定したとしても,本願補正発明の「°の角度」には 「角度,°」の場合が含まれているのは明らかであって 「約°の角度」との差異は, ,179微差であり,作用効果にも差異があるとはいえないから,その相違点は,実質的に相違点とはならないか,あるいは,単なる設計的事項といえる。
したがって,結果的に,審決における「屈曲部の角度」に係る相違点は当業者が適宜なし得る設計的事項である,との判断に誤りはなく,前記原告の主張は理由がない。
2取消事由2(本願補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り及び相違点5の看過)に対してBriefly described, the present invention relates to a toothbrush having 引用例1には 「,a flexible extension containing a plurality of bristles and a flexible element which coversthe back of the head for minimizing scratches on the periodontal tissue surface of the oral(1欄行〜行 「簡単に述べれば,本発明は,口腔部の歯周組織の表 cavity.4044 」,面を掻き取るのを最小限にしたヘッド部の裏側を覆う複数の植毛と可撓性部材を含As む可撓性延長部分を有する歯ブラシに関するものである被告仮訳及び。」()),「shown in FIGS.2 and 4, the flexible extension member 12 includes a cover 17 which isattached to the outer planar surface of the brush head 11 by an adhesive 18. The member(2欄〜行 「第2図及び第4図に示されて 12 also has an inner stepped surface.69 」。
いるように,可撓性の延長部材は,接着剤によりブラシ頭部の外側の平121811坦表面に取り付けられるカバーを含む。部材は,また,内側の段部になった 1712表面を有する(被告仮訳,審決に記載済み )と記載されている。 。」 )引用例1の上記記載からみて,延長部材は可撓性部材からなり,かつ,延長12部材とカバーとの境界には「段部」が存在し,そして 「段部」は一般的に1217 ,撓みやすいものである。してみると,その機能からみて 「段部」が本願補正発明 ,の「弾性に富む柔軟な連結部又は連結域」に相当し 「段部」以外の延長部材が ,12本願補正発明の先端域に相当するとみるのが自然である。
そうすると,本願補正発明と引用発明とが「その先端域は連結域を介してベース域に柔軟的かつ弾性的に連結している」点で一致していると認定判断した審決に誤りはない。
3取消事由3(進歩性についての認定判断の誤り)に対して本願明細書の記載には 「歯の裏側」あるいは「歯の裏面」との記載はあ ,2322,「」, , るものの歯間 についての言及がなく 原告の主張する本願補正発明の効果はこれら本願明細書の記載とどのように対応するのか不明確であり,原告の主張は,本願明細書の記載に基づかないものである。
The flexible extension member 12 is made of rubber, so また 引用例1 甲1 には ,()「that the surface thereof can minimize scracthing while massaging the periodontal tissue(2欄〜行 「可撓性の延長部材は,ゴムでできており,その表 surface.2022 12 」。
面が歯周組織表面をマッサージしているとき,引っ掻くのを最小限にする,審決。」記載の仮訳)との記載があり,引用例2(甲2)には「ブラッシングするべき歯面や歯茎面にほぼ垂直に適度な圧力をもってブラシ毛の先端を接触することができ7る (4頁5欄〜行)との記載がある。引用例1及び引用例2に記載の効果 」 2123は,上記本願明細書に記載の効果である「歯磨きの間に過剰な磨き圧が加わることを妨げるのに役立つ 」と対応するから,この点において,引用例1及び引用例2 。
に記載の歯ブラシも,本願補正発明と同等の効果を奏するといえる。
さらに,本願補正発明の数値限定である「°」には臨界的意義がないこ150-179とも明らかであり,特に 「°」の場合と「°」の場合とで,効果上格別の , 180179差異が生じないことは明らかである。
なお,歯ブラシにおいて 「植毛が‥‥確実に歯間に達する」ように構成するこ ,とも,前述したように乙4に記載されており,本願優先日の前に周知である。
そうすると,原告の主張する効果は顕著で格別なものであるとはいえないのであって,審決の「本願補正発明の作用効果も引用発明,引用例2及び周知の技術から当業者が容易に予測できる程度のものであって格別のものはない 」との判断には。
誤りがなく,前記原告の主張には理由がない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(本願補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り及び相違点4の看過)について( ) 甲1によれば,引用例1(米国特許第号明細書)には,次のとおり1 5373602記載されている。
「第2図及び第4図に示されているように,可撓性の延長部材は,接着剤によりブラ 1218シ頭部の外側の平坦表面に取り付けられるカバーを含む。部材は,また,内側の段11 1712部になった表面を有する。植毛は,可撓性の延長部材のブラシ頭部の外側の平坦表面を越 13'えてハンドルから軸方向の外側に延びた表面に取り付けられており,植毛は,ブラシ頭 16 13部表面に取り付けられている。植毛は,歯ブラシ頭部の可撓性部分と固定部分の間の境15 13'界点の近くの複数の短い植毛を含んでおり,歯ブラシ頭部の可撓性の延長部材が,ブラシの主頭部の植毛と衝突しないように撓むことができる(第2欄〜行の被告訳。審決書の13 619 。」3頁行〜下から行)267そうすると,引用例1には,延長部材のカバーが接着剤によりブラシ 121718頭部の外側の平坦表面に取り付けられる前の状態が第3図に示され,延長部材11がブラシ頭部に取り付けられた後の状態が第1,第2,第4図に示されてい 1211るところ,第3図によれば,ブラシ頭部に取り付けられる前の延長部材は, 11 12ブラシ頭部の外側の平坦表面と同じ面方向に延長しているから,単に,延長部 11材がブラシ頭部に取り付けられた後の,応力のない状態においては,第1図 1211及び第2図に示されるように,ブラシ頭部と延長部材とは,側方から見て, 1112。,, 屈曲することなく一直線上に延びていることが認められる そして 引用例1には第2図及び第4図に,歯ブラシ頭部の可撓性部分と固定部分の間の境界点の近くの植毛が,延長部材の先端から境界点に向けて徐々に短くなっていることが示13'12され,また,植毛が短い植毛を含むことにより,延長部材の植毛がブラ 13' 1213'シの主頭部の植毛と衝突しないように,延長部材が撓むことができると記載 13 12されているのであるから,第4図において,破線で図示された状態は撓む前の状態, , を示し 実線で図示された状態はブラシ頭部に対して延長部材が撓んだ状態1112すなわち応力のある状態を示していることが明らかである。
しかるに,審決は 「ブラシ延長部材は,応力のない状態で歯ブラシのブラシ ,12延長部材およびブラシ頭部の植毛部が°程度の角度で屈曲し」ているも 1211135のを,引用例1に記載されている発明( 引用発明」という )と認定した。 「。
そうすると,引用例1において,応力のない状態を示す第1図〜第3図では,ブラシ頭部と延長部材とが,側方から見て,屈曲することなく一直線上に延び1112ており,これらが屈曲した状態を示す第4図(実線図示部分)は応力のある状態を示すものであるから,審決が応力のない状態において屈曲しているとした部分の認定は誤りであり(この点は,当事者の主張に応じて,上述したようにやや子細に検討したものの,実は,明細書の英文を検討するまでもなく,第1図〜第3図と第4図とを比較すれば,一目瞭然である。審決は,応力のある状態か否かの点に重きをおかなかったことにより,不用意に誤ったにすぎないものと窺われる,本願補正。)発明の場合のように応力のない状態か,引用発明の場合のように応力のある状態かは,それがどのような意味を有するかは別として,一応の相違点として指摘するのが精確であったということはできる。
, , そこで この誤りが審決の結論に影響を与えるようなものであるか否かについて以下,検討することとする。
( ) 歯ブラシの形状が,全体として一直線状をなしているか,あるいはヘッドが2内側(植毛側)に全体として鈍角に屈曲しているかについて,本願当時の技術水準からみて,技術上,どのような意味を有するのかを検討することとする。
ア被告が提出した乙1〜4には,それぞれ次のような事項が記載されている。
@乙1(特表平-号公報)8502909「 特許請求の範囲】 【‥‥‥‥‥13.前記ヘッドのトウ部分は,ヘッド部材のヒール部分の剛毛の面に関して約゜から約115゜の鈍角を形成するように前記ヒール部分に固定されている請求項5に記載の歯ブラシ(3 170 。」頁〜行)171914.省略15.前記ヘッドのトウ部分は,ヘッド部材のヒール部分の剛毛の面に関して約155゜から約170゜の鈍角を形成するように前記ヒール部分に固定される請求項14に記載の歯ブラシ 」。
(3頁行〜4頁行)261「最後に第10図は,トウとヒールの接合部で歯ブラシのヘッドを約αの所定の角度に曲げることによって剛毛の先端に角度を設ける。好ましくは,鈍角αの曲けは,約゜乃至約゜であ115170り,最も好ましいのは,約゜から約゜である(9頁〜行) 1551702125 。」((),) A 乙2 実願平-号 実開平-号平成年月日公開 4841576364216517「 請求項3】植毛台の底面に設けられた屈曲部のうち,最も外端方に位置する屈曲部の 【 24 5内角が°〜°になるように形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の歯刷子(2 135170 。」頁1欄〜行)1417B 乙3(実願昭-号(実開平-号 ) 63150647271329 )「作用具Bを必要としない歯磨き用ブラシにおいては,磨く際,歯が植毛部に与える外力によって植毛部先端側は,最大,植毛部固定側と水平状態になるまで無段階に角度を変えるので,通常は毛先の向く側へ角度を保った形に圧縮可動部を加工するのが望ましい。‥‥また,請求項7記載の作用具を必要としない歯磨き用ブラシにおいても,植毛部先端側は通常,毛先の向く側へ角度を保っており,磨く際の歯が植毛部に与える外力により圧縮可動部を中心に,最大,植毛部固定側と水18 平状態になるまで無段階に角度を変え歯のどの面にも対応できるようにするものである(8頁。」行〜10頁行)1C 乙4(特開平-号公報) 1190307「本発明は,‥‥把手部と把手部につながる首部,そして,首部から続く角度の付いた穂先頭部からなっており,そして,該把手部と首部,首部とブラシ頭部の夫々の接続部には扱いやすいような角度がつけられ,且つ,頭部内につけられた角度は歯と歯グキの全領域を磨くのに最もふさわしい形に決められており,それは,特に奥歯の裏,内歯グキ側,外歯グキ側,歯間を磨くに最適な歯ブラシを提供せんとするものである。‥‥奥歯グキ側(),内歯グキ側()或は歯間()の近傍を192018磨く際に,曲げられた穂先頭部の先端部や中心部の毛は歯間()にまで届き,従って,普通の歯ブ 18ラシでは届きにくい歯カスや粒状刺激物を解きほぐすことができる(2頁右下欄行〜3頁左 。」 12上欄行) 12イ上記アの記載によれば,歯ブラシのヘッドが応力のない状態で内側に様々な角度(鈍角)で屈曲したものは,本願当時,周知技術であったことが認められる。
また,こうした記載に徴するまでもなく,歯ブラシのヘッドが応力のない状態で内側に屈曲したものは,本願よりもかなり前から商品として普及していたことは,裁判所にも顕著な事実である。
そうすると,本願補正発明においてヘッドが応力のない状態で内側に屈曲しているとの構成は周知のものであり,格別な相違点であるとは到底いえないから,審決がこの点についてした認定上の誤りは,容易想到性を否定した結論に影響のないものであることが明らかである。
( ) 以上のとおりであるから,歯ブラシのヘッドの屈曲が応力のない状態か否か3について,本願補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り及び相違点4の看過をいう原告の主張は,採用することができない。
2取消事由2(本願補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り及び相違点5の看過)について,『』,「,, ( ) 本願補正発明は連結部 についてヘッドが 歯ブラシのネックに接し1ヘッドのベース端部からそのベース端部と先端部の間にある弾性に富む柔軟な連結部にまで伸びる……ベース域と,ヘッドの先端部から連結域にまで伸びる実質的に剛性な先端域とを有し 」と規定し 『連結域』について 「先端域が,歯磨きの間 ,,,に,連結域にてヘッドを横切って横方向に伸びる折り曲げまたはピボット軸を中心として,……後方に折れ曲がるかピボットし,……その先端域は連結域を介してベース域に柔軟的かつ弾性的に連結しており 」と規定している。,ここでは 『連結部』及び『連結域』の用語が用いられているが,両者の関係が ,不明であるので,本件明細書を参酌すると 「ヘッド3のベース端部4からベース ,端部4と先端部5の間にある連結部まで伸びる実質的に硬いベース域と,ヘ11 101112 11ッド3の先端部5から連結部にまで伸びる先端域とからなる ……連結域。
は先端域とベース域との間でヘッド3の材料と一体化したプラスチック材料12101413 1727の2本のストリップで架橋される隙間により得られ ……甲3の頁,」(行〜頁行)と記載されており,両者に同じ符合が付されているなど,両者は185実質上同義であると解される。
また,本件明細書には 「折り曲げまたはピボット軸は植毛面の平面中にあって ,。」(),「」, もよい6頁〜行 と記載されており ここで 植毛面の平面 について1415ベース域及び先端域のいずれの植毛面かを限定する記載はないから 「先端域の植,毛面の平面」をも観念することができ,そうであれば,ヘッドを横切って横方向に「」, 伸びる折り曲げ又はピボット軸を 先端域の植毛面の平面 に形成することも含みその個所を『連結域』として観念することができる。
( ) 引用発明は,ブラシ延長部材自体が可撓性のあるゴムで形成されること2 12によって,その先端部分がブラシ頭部に対して撓みうる構成となっているとこ 11ろ,上述した本願補正発明に含まれるところとなる「先端域の植毛面の平面 ,す」なわち延長部材の植毛面の平面において撓み得る点で,基本的に同じものであ12るといわざるを得ない。
そうであれば,引用例1には 「ブラシ延長部材はブラシ頭部に柔軟的か ,1211つ弾性的に連結している歯ブラシ 」が記載されていると認定した審決に誤りはな 。
い。
そして,本願補正発明と引用発明との一致点として 「ヘッドが,歯ブラシのネ ,ックに接し,ヘッドのベース端部からそのベース端部と先端部の間にある弾性に富む柔軟な連結部にまで伸びる……ベース域と,ヘッドの先端部から連結域にまで伸びる先端域とを有し,……ここでそのベース域および先端域は共に植毛を担持し,先端域が,歯磨きの間に,連結域にてヘッドを横切って横方向に伸びる折り曲げまたはピボット軸を中心として,ベース域に対してハンドルに向かって弾性的に後方に折れ曲がるかピボットし,ヘッドが応力のない状態で,歯ブラシの先端域およびベース域の植毛面が屈曲部を形成するように,その先端域は連結域を介してベース,」 。 域に柔軟的かつ弾性的に連結している 歯ブラシ を認定した審決にも誤りはない( ) 原告は 「連結部」ないしは「連結域」に係る引用発明の認定の誤りを前提3 ,として,相違点5を主張するが,その前提に理由がないので,原告の主張は理由がない。
( ) 以上より 「連結部」ないしは「連結域」について,本願補正発明と引用発4 ,明との一致点の認定の誤り及び相違点5の看過をいう原告の主張は,採用することができない。
3 取消事由3(進歩性についての認定判断の誤り)について( ) 原告は,相違点4,5が存在することを前提として,審決が,相違点4,51について判断することなく,また,それらの構成の相違からもたらされる作用効果についての判断もすることなく進歩性の判断をしたものとして,取り消されるべきである,と主張するが,相違点4,5については,既に検討したように,実質的な相違点として認められないのであるから,原告の主張は前提において理由がない。
( ) また,原告は,本願補正発明においては,相違点5にかかる弾性連結域を介2して先端域とベース域の植毛面の間に一定の角度(-°の角度)を付与す 150179ることで,その先端域を容易に歯の裏側にある歯間に持って行くことができ,またその先端域が,例えば口腔内組織と接触することにより力が加えられれば,その先端域は図8の屈曲状態に復元しようとするため,植毛がより強く歯と接触し,確実に歯間に達することもできる,と主張する。
しかしながら,本件明細書には 「先端域とベース域の間の,およびヘッドとネ ,ックの間の,本発明により設けられた柔軟な連結手段はまた,歯磨きの間に過剰な。」(), 磨き圧が加わることを妨げるのに役立つ6頁15〜17行 と記載されておりこの記載は,過剰な磨き圧が加わることを妨げるとしているのに対し,原告が主張する効果は,むしろ植毛と歯との強い接触を主張するものであって,本件明細書に記載された効果と矛盾するものであるといわざるを得ず,失当である。
さらに,本願補正発明の数値限定である「-°」には臨界的意義がない150179ことも明らかであり,特に 「°」の場合と「°」の場合とで,効果上格別 , 180179の差異が生じないことは明らかである。
( ) そうすると,原告の主張する効果は顕著であるとも,格別なものであるとも3いうことはできないのであって,審決の判断には誤りがなく,原告の主張は採用することができない。
4結語以上のとおりであるから,原告の主張する審決取消事由はいずれも採用することができないから,原告の請求は棄却を免れない。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 石原直樹
裁判官 高野輝久