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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成14ワ5107特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成11ワ101特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成12ワ17298損害賠償等請求事件 判例 特許
平成8ワ1635特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成11ワ26599特許権侵害差止請求事件 判例 特許
関連ワード 使用方法 /  技術的範囲 /  クレーム /  実施 /  間接侵害 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  のみ用いる /  業として /  差止請求(差止) /  侵害 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 16年 (ワ) 17488号 損害賠償等請求事件
原告 カースル株式会社
被告 有限会社ジョイ・パック・システム
同訴訟代理人弁護士 徳岡寿夫
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2005/02/25
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は,別紙物件目録1ないし4記載の製品の製造,販売若しくは輸入又は販売の申出をしてはならない。
2 被告は,原告に対し,1億5000万円及びこれに対する平成16年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,排気口へのフィルター取付け方法に関する特許権を有する原告が,被告に対し,被告製品の製造・販売等は上記方法の特許の間接侵害に当たると主張して,その製造,販売等の差止め及び平成15年12月31日までの販売分につき損害賠償の支払を求めた事案である。
1 前提事実 (1) 原告の有する特許権 ア カースル産業株式会社(以下「カースル産業」という。)は,次の特許権を取得した(以下「本件特許権」といい,その請求項3の発明を「本件発明」という。)。
特許番号 第1882363号 発明の名称 排気口へのフィルター取付け方法 出願日 平成2年1月28日 登録日 平成6年11月10日 特許請求の範囲(請求項3) 予め,装着しようとする排気口の周囲に表面に鉤状突起が設けられた基盤を取付け,その上から該排気口を覆う所定広さのフィルターを被せ,前記鉤状突起に該フィルターの周辺を直接掛止したことを特徴とする排気口へのフィルター取付け方法。
(争いのない事実) イ カースル産業は,原告に対し,平成16年6月7日,本件特許権を譲渡し,同月21日,その旨の登録がされた。
(争いのない事実) ウ また,カースル産業は,原告に対し,同年8月5日,被告が本件特許権の登録日である平成6年11月10日から平成16年3月10日までの間に後記被告各製品を製造販売したことにより発生した損害賠償請求権1億5000万円を譲り渡した。
(甲3,4の1,弁論の全趣旨) (2) 構成要件の分説 本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。
A 予め,装着しようとする排気口の周囲に表面に鉤状突起が設けられた基盤を取付け, B その上から該排気口を覆う所定広さのフィルターを被せ, C 前記鉤状突起に該フィルターの周辺を直接掛止した D ことを特徴とする排気口へのフィルター取付け方法 (3) 被告各製品 ア 被告は,平成11年ころから,業として,イ号製品ないしニ号製品(別紙物件目録1ないし4記載の製品。これらを併せて「被告各製品」という。)を製造,販売している。
(争いのない事実) イ 被告各製品の構成及び使用方法は,別紙物件目録1ないし4記載のとおりであり,被告各製品は,本件発明の「鉤状突起が設けられた基盤」に対応する手段として,面ファスナー(「マジックテープ」は,面ファスナーの登録商標の1つである。)のフック面である着脱テープ(2)を使用している。
(争いのない事実,甲10の2) ウ(ア) 面ファスナーは,本来,フック面とループ面を2枚1組で,容易に繰り返し着脱することができるファスナーとして使用されるものである。
(イ) 被告各製品が使用している面ファスナーのフック面は,ナイロンやポリエステル製の輪の最頂部からやや下方部の片面に切れ目を入れたものを多数集めて構成されており,逆J字状突起とI字状突起から成っている。
(ウ) 面ファスナーは,40年以上前に発明され,本件特許権の出願前から,容易に繰り返し着脱することができるファスナーとしておむつからスペースシャトルに至るまで様々な分野で広く利用されている。
(争いのない事実,甲5,6,10の2,11,乙6〜11(枝番を含む。)) (4) 被告各製品の使用方法等の構成要件充足性 ア 本件発明の構成要件と被告製品の構成及び使用方法とを対比すると,被告各製品の構成及び使用方法は,次の点を除き,本件発明の構成要件を充足する。
@面ファスナーのフック面である着脱テープ(2)が構成要件Aのうち「表面に鉤状突起が設けられた基盤」に当たる点,A着脱テープ(2)の「鉤状になった突起(別紙5における(21)。以下「逆J字状突起」ともいう。)」が構成要件Cのうち「鉤状突起」に当たる点,Bフィルターの周辺を逆J字状突起に「止める」ことが構成要件Cのうち「掛止(する)」ことに当たる点 イ そして,被告各製品が上記@ないしBの点でも本件発明の構成要件を充足するとした場合,被告各製品は,本件発明の使用にのみ用いる物と認められる。
(ア及びイにつき,争いのない事実,弁論の全趣旨) 2 争点 (1) 鉤状突起等の構成要件充足性 被告各製品の逆J字状突起は,本件発明の構成要件A及びCにいう「鉤状突起」に該当し,したがって,被告各製品の着脱テープ(2)は,本件発明の構成要件Aにいう「表面に鉤状突起が設けられた基盤」に該当し,逆J字状突起に被告各製品のフィルターの周辺を止めることは,「掛止(する)」に該当するか。
(2) 原告の損害 3 争点(1)(鉤状突起等の構成要件充足性)について (1) 原告の主張 ア(ア) 本件発明の特許請求の範囲は,「鉤状突起」の大きさや形状について何ら限定していない。
(イ) これに反する被告の主張は,本件発明の特許請求の範囲の記載を実施例に限定しようとする不当なものである。
イ(ア) したがって,被告各製品の鉤状になった突起(21)は,本件発明の「鉤状突起」に該当し,その結果,被告各製品の着脱テープ(2)は,本件発明の構成要件Aにいう「表面に鉤状突起が設けられた基盤」に該当し,その鉤状になった突起(21)に被告各製品のフィルターの周辺を止めることは,同構成要件Cの「掛止(する)」に該当する。
(イ) 被告は,被告各製品の着脱テープ(2)には逆J字状突起のほかに,I字状突起が存在することを主張するが,逆J字状突起が本件発明の「鉤状突起」に該当する以上,他にI字状突起が付加されたとしても,被告各製品が本件発明の技術的範囲に属することに変わりはない。
(ウ) また,被告は,被告各製品においてはI字状突起もフィルターの固定に作用している旨主張するが,被告各製品においてフィルターを固定しているのは逆J字状突起であり,I字状突起は,フィルターを固定する上でプラスに作用せず,かえって,逆J字状突起をフィルターに掛かりにくくするというマイナスの作用を及ぼしている(甲7,9,10の1)。
(2) 被告の主張 ア(ア) 本件発明の「鉤状突起」は,本件発明の明細書及び図面(以下「本件明細書」という。)に記載のとおり,基盤の表面に設けられた先端部が鋭く尖って曲がった形状の鉤状突起を意味する。
また,本件明細書には,鉤状突起の説明において,面ファスナーのフック面への言及がない。面ファスナーは,前記のとおり本件特許権の出願前から広く利用されていたから,カースル産業が本件明細書に面ファスナーについて記載することは,容易なことであった。
(イ) また,本件発明の構成要件Cの「掛止」は,本件明細書に記載のとおり,鉤状突起の傾き方向にフィルターを引いて,やや力を抜くとフィルターが戻ることにより,鉤状突起に止めることを意味する。
イ(ア) 被告各製品の着脱テープのうちフィルターに接する面は,前記のとおり逆J字状突起及びI字状突起から成っているところ,逆J字状突起のみを切り離して認識すべきではないから,逆J字状突起及びI字状突起は,本件発明の「鉤状突起」に該当しない。
(イ) また,被告各製品の止め方は,フィルターを面ファスナーのフック面に圧着すると,逆J字状突起とI字状突起との間に幅変動が起こり,フィルターが挟まるというものであり,本件発明の「掛止」には該当しない。
4 争点(2)(原告の損害)について (1) 原告の主張 ア 被告は,平成11年ころから平成15年12月31日までの間に,被告各製品を少なくとも30億円販売した。
イ 被告各製品の利益率は,5%を下らない。
ウ よって,被告が得た利益は1億5000万円となり,原告は,特許法102条2項に基づき,同額の損害金を請求する。
(2) 被告の主張 原告の主張は否認する。
当裁判所の判断
1 争点(1)(鉤状突起等の構成要件充足性)について (1) 本件特許請求の範囲の記載 前記のとおり,被告各製品の面ファスナーのフック面の逆J字状突起は,それだけを拡大して見れば,鉤状突起といい得る形状をしているが,面ファスナーは,本来,フック面とループ面を2枚1組で,容易に繰り返し着脱することができるファスナーとして使用されるものであるし,被告各製品が使用している面ファスナーのフック面は,多数の逆J字状突起とI字状突起から成っているものである。したがって,本件発明の特許請求の範囲の記載から,構成要件A及びCにいう「鉤状突起」が面ファスナーのフック面の逆J字状突起を含むものと解することはできない。
(2) 本件明細書の記載の考慮 ア 本件明細書には,次の記載がある(甲2)。
(ア) 本件発明は,排気口へのフィルター取付け方法に関するものであるが,従来は,換気扇やレンジフード等に取替え可能なフィルターを取り付ける場合,予め合成樹脂等からなる枠で吸入口を覆い,表面から不織布などからなるフィルターを固着する構造となっていて,取付けが面倒な上,フィルターについた油で枠が汚れるので枠の処理が面倒であるなどの問題があった。これに対し,本件発明は,簡単にフィルターを排気口に取り付けるとともに,取替えも容易なフィルターの取付け方法を提供することを目的とするものである(2欄2行から3欄10行まで)。
(イ) 上記課題を解決するため,本件発明では,予め装着しようとする排気口の周囲に表面に鉤状突起が設けられた基盤を取り付け,その上から該排気口を覆う所定広さのフィルターを被せ,上記鉤状突起に該フィルターの周辺を直接掛け止めする構成を採用している(3欄11行から26行まで)。
(ウ) さらに,本件明細書には,第5の実施例が記載され,排気口の周囲に適当間隔で鉤状突起28の設けられた基盤29を磁石30によって取り付け,鉤状突起28にフィルター31の端を引っ掛ける方法が示され,第6図には,内部に磁石30を収納した断面コ字状の基盤29と,その一表面に先端部が鋭く尖って曲がった形状の金属製を想起させる鉤状突起28が3本設けられたものが図示されている(5欄4行から10行まで,第6図)。
(エ) しかしながら,前記のとおり,面ファスナーは,本件特許権の出願前から様々な分野で広く利用されていたから,カースル産業が本件明細書に面ファスナーについて記載することは,容易なことであったと認められるが,本件明細書には,鉤状突起が設けられた基盤として具体的にどのような物品があるかについての言及はなく,したがって,鉤状突起の一例等として面ファスナーのフック面についての言及もない。
イ 前記(1)に説示の事実に,上記アの事実を併せ考慮しても,本件発明の構成要件A及びCにいう「鉤状突起」が面ファスナーのフック面の逆J字状突起を含むものと認めることはできない。
ウ したがって,本件発明の構成要件A及びCにいう「鉤状突起」は,本件明細書に記載された先端部が鋭く尖って曲がった形状のものを意味するものと解すべきであり,面ファスナーのフック面の逆J字状突起を含むものと解することはできない。
(3) 原告の主張に対する判断 原告は,本件発明の特許請求の範囲は,「鉤状突起」の大きさや形状について何ら限定していないから,面ファスナーのフック面の逆J字状突起を含むものであり,被告の主張は,特許請求の範囲の正当な解釈方法に反する旨主張する。
しかしながら,原告主張のとおり,本件明細書の記載を考慮し,実施例に限定しないよう配慮しながら特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈しても,単なる「鉤状突起」との本件特許請求の範囲の記載に,前記(1)に説示のとおり特殊な形状をしている面ファスナーのフック面の逆J状突起が含まれると解することはできず,この点は,特許請求の範囲で「鉤状突起」という機能的クレームに近い表現を採用しながら,前記(2)のとおり実施例として単に先端部が鋭く尖って曲がった形状の金属製を想起させる鉤状突起28を開示しただけで,それ以上に「鉤状突起」の他の構成例やそれを示唆する記載をしていない本件明細書の記載を考慮しても同様であるといわざるを得ず,原告の上記主張は,採用することができない。
(4) まとめ したがって,被告各製品の構成及び使用方法は,本件発明の構成要件A及びCを充足しない。
2 結論 よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 頼晋一
裁判官 高嶋卓
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