審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成16ワ26092特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16ワ8557特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
平成15ワ23943特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成17ワ2649特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16ワ20601特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 物の発明 / 技術情報 / 実施料相当額 / 消尽 / 特許発明 / 実施 / 耐用期間 / 効用を終えた / 加工 / 交換 / 差止請求(差止) / 侵害 / 実施料 / 不法行為(民法709条) / 実施権 / 通常実施権 / 実施許諾(実施の許諾) / 設定登録 / 対価 / |
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事件 |
平成
17年
(ワ)
10821号
特許権侵害差止請求事件
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原告 エム・ピー・イー株式会社 訴訟代理人弁護士 藤巻次雄 被告 日本コンベヤ株式会社 訴訟代理人弁護士 松本俊正 被告 三菱電機ビルテクノサービス株式会社 訴訟代理人弁護士 千代田博明 同中島龍生 被告 マリン興産株式会社 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2006/07/20 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 被告日本コンベヤ株式会社(以下「被告日本コンベヤ」という。)は,原告に対し,平成15年2月14日から毎月50万2500円の割合による金員を支払え。 2 被告三菱電機ビルテクノサービス株式会社(以下「被告三菱電機ビルテクノサービス」という。)は,福岡市<以下略>所在福岡パーキング(以下「福岡パーキング」という。)の駐車場装置について,被告マリン興産株式会社(以下「被告マリン興産」という。)は,東京都<以下略>所在YS健康センタービル地下駐車場(以下「YS健康センタービル地下駐車場」という。)の駐車場装置について,それぞれ自ら又は第三者(被告日本コンベヤを含む。)をして特許第3398222号(発明の名称:台車固定装置,設定の登録:平成15年2月14日)の特許(以下「本件特許権」といい,その特許発明を「本件特許発明」という。)に係る発明を使用した台車固定装置(以下「本件台車固定装置」という。)の点検,修理及び部品の交換を行ってはならない。 |
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事案の概要
1 本件は,被告らが保守管理している立体駐車場装置について,原告が特許権者である本件特許発明を使用した本件台車固定装置が設置されており,その保守管理をする行為は原告の特許権を侵害するとして,原告が,被告日本コンベヤに対し,本件特許権の設定の登録がされた日からの実施料相当額の不当利得の返還を,その余の被告らに対し,本件台車固定装置の点検,修理及び部品の交換の差止めを求めた事案である。 2 前提となる事実(証拠により認定した事実は末尾に証拠を掲げた。その余は争いのない事実である。)(1) 原告は,平成6年7月28日,台車固定装置に関する発明について特許出願をし(出願番号:特願平6-176282号),同特許出願は,平成15年2月14日,特許権の設定の登録がされた(本件特許権)。 (2) 原告は,平成7年6月16日,被告日本コンベヤとの間で,原告が有する立体駐車装置に関する複数の特許権(ただし,本件特許権は含まない。)について,被告日本コンベヤに通常実施権を設定すること等を内容とする技術情報基本契約を締結した(原告と被告三菱電機ビルテクノサービスとの間では甲1。 以下「本件技術情報基本契約」という。)。 (3) 多田林産株式会社は,被告三菱電機ビルテクノサービスに対し,福岡パーキングの駐車場設置工事を発注し,被告三菱電機ビルテクノサービスは,被告日本コンベヤに対し,上記の駐車場設置工事を発注した。被告日本コンベヤは,平成10年3月31日,上記の駐車場設置工事を完成させた(工事完成日については乙1。)。 (4) プラネット株式会社は,被告マリン興産に対し,YS健康センタービル地下駐車場の駐車場設置工事を発注し,被告マリン興産は,被告日本コンベヤに対し,上記の駐車場設置工事を発注した。被告日本コンベヤは,平成9年10月31日,上記の駐車場設置工事を完成させた(工事完成日については乙2。)。 (5) 福岡パーキング,YS健康センタービル地下駐車場,横浜市<以下略>所在横浜金港マンション駐車場,千葉県八千代市所在八千代緑ヶ丘シティー駐車場(以下,これらの駐車場を併せて「本件各駐車場」という。)の立体駐車場装置には,本件台車固定装置が設置されている(原告と被告日本コンベヤ及び被告マリン興産との間においては,福岡パーキング,YS健康センタービル地下駐車場以外の駐車場について,原告と被告三菱電機ビルテクノサービスとの間では本件各駐車場全部についていずれも弁論の全趣旨。)。 (6) 原告と被告日本コンベヤは,平成14年7月23日,本件技術情報基本契約の終了の確認及び原告が有する立体駐車装置に関する特許権に関し,被告日本コンベヤは原告に対し,本件各駐車場の有償メンテナンスについて一定の実施料を支払うこと等を内容とする裁判上の和解をした(原告と被告三菱電機ビルテクノサービスとの間では甲2。以下「別件和解」という。本件特許権は別件和解の和解調書に記載がない。)。 (7) 被告日本コンベヤは,被告三菱電機ビルテクノサービスから福岡パーキングの,被告マリン興産からYS健康センタービル地下駐車場の,各保守点検業務を委託されている。 |
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争点及び争点に対する当事者の主張
1争点本件各駐車場の本件台車固定装置について,被告らが点検,修理及び部品の交換を行うことが,原告の本件特許権を侵害するか。また,その実施料相当額はいくらか。 2 原告の主張(1) 被告らは,本件特許権については何らの権利も有していないので,本件台車固定装置の点検,修理及び部品の交換を行うことは,本件台車固定装置を「使用」する行為に該当し,本件特許権を侵害する。すなわち被告日本コンベヤは,本件特許権が成立したにもかかわらず,これに対する保守管理の実施権を設定せず,対価を支払うことなく違法に保守管理を行っている。被告三菱電機ビルテクノサービス及び被告マリン興産は,このような事情を知りながら被告日本コンベヤに保守管理を委託して被告日本コンベヤの違法な行為を幇助している。なお,別件和解が成立した当時,本件特許権は設定の登録前であるから,別件和解における実施許諾及び許諾料の対象の中に本件特許権は含まれていない。 (2) 保守管理の場合の特許権実施料は,1パレットあたり月1500円が通常である。被告日本コンベヤが保守管理をしている駐車場のうち,本件台車固定装置の設置された駐車場は,被告三菱電機ビルテクノサービスから委託を受けている駐車場,被告マリン興産から委託を受けている駐車場,横浜金港マンション駐車場,八千代緑ヶ丘シティー駐車場であり,その合計パレット数は335である。 (3) よって,原告は,被告日本コンベヤに対し,同被告が本件台車固定装置について保守管理を行うことにより不当に利得している本件特許権の実施料相当額(本件特許権の設定の登録の日である平成15年2月14日から毎月50万2500円)の支払を求める。また,原告は,被告三菱電機ビルテクノサービス及び被告マリン興産に対し,本件特許権の侵害行為である本件台車固定装置の点検,修理及び部品の交換の差止めを求める。 3 被告らの主張被告日本コンベヤは,立体駐車装置に関する原告の特許について,本件技術情報基本契約により実施許諾を得て,本件台車固定装置については,原告の承諾を得た上で立体駐車場を設置していた。具体的にいえば,被告日本コンベヤは,本件技術情報基本契約に基づき原告の設計図書等を買い取り,原告が当時製作していた本件台車固定装置等を購入し,これを立体駐車場の装置に設置して納品した。 別件和解成立後は,被告日本コンベヤは,原告に対し,同和解に基づいて実施許諾料を支払ったうえで,本件各駐車場の保守点検を行っている。その後,本件特許権の設定の登録がされたからといって,既に購入したものについて,被告らの保守管理業務が突然,不法行為あるいは不当利得になる理由はない。なお,被告日本コンベヤは,本件台車固定装置を交換したことはないし,新規の駐車場を建設する際に,本件台車固定装置を用いるつもりもない。 |
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当裁判所の判断
1 本件特許発明は台車固定装置の発明であり(甲3),物の発明である。物の発明における「実施」とは,「その物の生産,使用,譲渡等…若しくは輸入又は譲渡等の申出…をする行為」をいう(特許法2条3項1号)。したがって,被告らが本件特許発明を実施しているといえるのは,被告らの行為が,「生産」,「使用」,「譲渡等」,「輸入又は譲渡等の申出」のいずれかに該当する場合である。 2 この点,原告は,本件台車固定装置の点検,修理及び部品の交換は本件台車固定装置の「使用」に該当すると主張する。 「使用」とは,発明の目的を達するような方法で当該発明に係る物を用いることをいうものと解するべきである。証拠(甲3【0001】,【0008】)によれば,本件特許発明の目的は,「例えば立体駐車装置において自動車を戴置させる台車をリフター中央および定位置で固定する台車固定装置に関するもの」であって,「台車を正確,かつ,確実に停止固定して台車の停止精度を向上することを目的とする」ものであることが認められる。この目的は,自動車等を戴置した台車をリフター中央及び定位置に移動させて,台車固定装置を作動させて固定するという方法で達することができるものであって,単に,台車固定装置の点検,修理及び部品の交換をしただけでは,この目的を達することはできない。したがって,単に台車固定装置の点検,修理及び部品の交換をするだけの行為は,発明の目的を達するような方法で物を用いることには当たらないので,本件台車固定装置の「使用」に該当しない。 3 しかも,別件和解成立以前に設置された本件各駐車場については,被告日本コンベヤは,本件技術情報基本契約に基づき,原告の承諾を得て本件台車固定装置を用いた駐車場設備の設置工事をし,具体的には,被告日本コンベヤは,本件技術情報基本契約に基づき原告の設計図等の提供を受け,原告が当時製作していた本件台車固定装置等を購入し,これを立体駐車場の装置に設置して納品していたことは,原告と被告日本コンベヤ及び被告マリン興産との間では争いがなく,原告と被告三菱電機ビルテクノサービスについても証拠(甲1,2,乙3)により認められる。 特許権者又は実施権者が特許製品を譲渡した場合には,当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し,もはや特許権の効力は,当該特許製品を使用し,譲渡し又は貸し渡す行為等には及ばないものというべきであるところ(最高裁判所平成9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁),上記のとおり,被告日本コンベヤは,本件台車固定装置について後に特許権者となる原告から適法に譲渡を受けたのであるから,当該本件台車固定装置については,後に設定登録がされる本件特許権はその目的を達成したものとして消尽しているものと解すべきであり,その後,被告らがこれを「使用」したとしても本件特許権の侵害とはならない。原告の主張は,この点でも失当である。 4 もっとも,当該特許製品が製品として本来の耐用期間を経過してその効用を終えた後に再使用又は再生利用がされた場合(第1類型),当該特許製品につき第三者により特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた場合(第2類型)には,特許権は消尽せず,特許権者は,当該特許製品について特許権に基づく権利行使をすることが許されるものと解する余地もあるが,そのように解するとしても,原告の主張する「点検,修理及び部品の交換」が上記のいずれかの類型に該当することの主張立証はない。 原告は,部品の取り替えはすでに何度か行われている,部品には当然耐用年数があり,駐車場では安全性や故障がないことが要求されるので,部品の取り替えが必要なのは当然のことと考えられる,ソノレイド(円筒コイル)は消耗品で取り替えの必要があり,台車に使用しているゴムは経年変化による劣化が考えられ定期的に取り替える必要がある,更に台車衝突時の衝撃と慣性を受け止めるので,芯がずれると破損や変形のおそれがあり,常に綿密な保守,点検を必要とする,本件各駐車場以外の原告が保守管理している駐車場の本件台車固定装置については故障が生じているのであり(甲6の1ないし11),本件台車固定装置には消耗品が使われているから,部品の取り替えが必要であることはいうまでもないと主張する。しかしながら,上記のいずれかの取り替えが前述の特許権に基づく権利行使が許される余地のあるいずれかの類型にどういう理由で該当するのかという点についても,そのような取り替えを被告らが実際に本件各駐車場で行ったという点についても,具体的な主張立証はない。しかも,被告三菱ビルテクノサービスは,保守点検の内容には消耗部品の交換が含まれ,消耗部品はヒューズ,各表示灯用電球,油脂類の補給である,消耗部品以外の部品の交換の必要が生じた場合は,別途の契約を締結することになっている,現在まで本件台車固定装置についてはトラブルがなく部品の交換作業は行われていないと主張し,被告日本コンベヤも,本件各駐車場について現在まで本件台車固定装置を交換したことはないとして,部品の交換を否認しているのに対し,原告は何ら反論も立証もしていない。 したがって,原告の主張する「点検,修理及び部品の交換」について,本件特許権は消尽せずこれに基づく権利行使をすることが許される場合に該当するとは認められない。 5結論よって,原告の本件各請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 山田知司 |
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裁判官 | 西理香 |
裁判官 | 村上誠子 |