• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ワ 785特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成17ワ3155特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成4ワ6690特許権侵害行為差止等請求事件 判例 特許
平成18ワ29554特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成17ワ10524特許権侵害差止請求事件 判例 特許
関連ワード 産業上利用(29条1項柱書) /  物の発明 /  加工方法 /  新規性 /  29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  容易に実施 /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  慣用技術 /  技術的範囲 /  同一の発明 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  化学構造 /  分割出願 /  実施料相当額 /  権利の濫用(権利濫用) /  対象製品 /  数値限定 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  不存在 /  特許発明 /  実施 /  権原 /  加工 /  交換 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  差止請求(差止) /  侵害 /  販売数量(販売数) /  譲渡数量 /  実施料 /  相当因果関係 /  実施権 /  実施許諾(実施の許諾) /  請求の範囲 /  審決確定(審決が確定) / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 15年 (ワ) 23943号 特許権侵害差止等請求事件
原告 出光興産株式会社
同訴訟代理人弁護士片山英二
同林康司
同 大月雅博
同訴訟復代理人弁護士 荒井剛
同補佐人弁理士 小林浩
被告 昭和シェル石油株式会社
同訴訟代理人弁護士島田康男
同補佐人弁理士 友松英爾
被告 日興産業株式会社
被告 エヌ・エスルブリカンツ株式会社
上記2名訴訟代理人弁護士石川順道
同訴訟復代理人弁護士 山本敦子
同補佐人弁理士 亀川義示
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2006/03/29
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告らは,別紙物件目録記載の各物件を製造し,又は販売してはならない。
2 被告らは,その占有に係る別紙物件目録記載の各物件を廃棄せよ。
3 被告昭和シェル石油株式会社及び被告日興産業株式会社は,原告に対し,連帯して2億1000万円及びこれに対する平成15年10月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告らは,原告に対し,連帯して11億6760万円及び内金9億1000万円に対する平成15年10月24日から,内金2億5760万円に対する被告昭和シェル石油株式会社については平成16年10月8日から,被告日興産業株式会社及び被告エヌ・エスルブリカンツ株式会社については同月2日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,塑性加工用潤滑油剤についての特許権を有する原告が,被告らが製造し,販売する別紙物件目録記載の各物件(以下「被告各製品」という )が。
上記特許権に係る発明の技術的範囲に属するとして,被告らに対し,特許法100条1項に基づき,被告各製品の製造及び販売の差止めを求め,同条2項に基づき 被告各製品の廃棄を求めるとともに 被告昭和シェル石油株式会社 以 ,,(下「被告昭和シェル」という )及び被告日興産業株式会社(以下「被告日興 。
産業」という )が,上記特許権の出願公告の日(平成7年8月23日)から 。
平成11年1月31日までの間,共同して被告各製品を製造販売していたとして,被告昭和シェル及び被告日興産業に対し,民法703条に基づき,実施料相当額の不当利得の返還を求め,被告らが,同年2月1日から平成12年10月31日までの間,共同して被告各製品を製造販売していたとして,被告らに対し,同条に基づき,実施料相当額の不当利得の返還を求め,被告らが,同年11月1日から平成16年8月31日までの間,共同して被告各製品を製造販売していたとして,被告らに対し,同法709条に基づき,特許権侵害による損害(遅延損害金を含む )の賠償を,それぞれ求めた事案である。 。
1 前提となる事実(括弧内に証拠を掲示したもの以外は,当事者間に争いがない)。
?当事者原告は,石油,油脂及び石油製品の製造及び販売,石油その他鉱物資源の調査,開発及び採取,医薬品,農業薬品及び農業用資材の製造及び販売等を業とする株式会社である。
被告昭和シェルは,石油類,石油化学製品及び化学製品の製造,加工,売買,輸出入等を業とする株式会社である。
被告日興産業は,潤滑油の製造及び販売等を業とする株式会社である。
(「 」 。) 被告エヌ・エスルブリカンツ株式会社以下 被告エヌ・エス というは,石油及び油脂の輸出入及び販売等を業とする株式会社である。
? 原告の特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,特許請求の範囲請求項1の特許発明を「本件発明」と,本件特許権に係る特許を「本件特許」とい。, 「 」 。)(,)。 う また その明細書を 本件明細書 という を有している 甲1 2特 許 番 号 第2128578号発 明 の 名 称 塑性加工用潤滑油剤出 願 年 月 日 昭和63年11月15日出 願 番 号 特願平4-343672分 割 の 表 示 特願昭63-286868の分割出願公告年月日 平成7年8月23日出願公告番号 特公平7-78226登 録 年 月 日 平成9年4月25日特許請求の範囲請求項1「() , () A 炭素数6〜40の直鎖オレフィン2〜50重量% 及び B40℃における動粘度が0.5〜30cStの分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有してなる塑性加工用潤滑油剤 」。
? 構成要件の分説本件発明は,次の構成要件に分説することができる(以下,分説した各構成要件をその符号に従い「構成要件A」のように表記する 。。)A 炭素数6〜40の直鎖オレフィン2〜50重量%B 40℃における動粘度が0.5〜30cStの分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物C 上記AとBを含有してなる塑性加工用潤滑油剤? 塑性加工について「塑性加工」とは,通常,金属等の固体が形状又は寸法の永久変形を起こすように加工することをいう。例えば,圧延(圧延機により鋼板,棒鋼,平鋼等の形状に成形加工すること ,絞り(金属の平板素材から容器状のもの )を押し出して成形加工すること。自動車のボディー,アルミ缶,鍋,家電器具等の製造に用いられる ,打抜き(打抜用の金型で所定の形状のものを 。)打ち抜くこと ,引抜き(線,棒,管などの素材を素材断面より小さい寸法 )のダイスを通して引き抜き,ダイス孔と同形状の断面の製品に加工すること ,冷間鍛造(常温下で金型等により金属等の全部又は一部を圧縮・打撃 )して成形加工すること)が,塑性加工の典型的なものである。
例えば,絞りや打抜き等の塑性加工では,加工する金属に金型を押し付けることによって加工がされるが,加工後の製品の表面状態を良好に仕上げ,加工性を向上させ,また,加工工具の寿命を延長するために,加工する金属と金型の間に潤滑性を確保することが必須であり,したがって,塑性加工においては,潤滑油剤が必要不可欠なものとして使用される。
? 被告らの行為ア 被告昭和シェル及び被告日興産業は,両被告間で受委託契約を締結するなどして,遅くとも平成4年ないし平成5年ころには,共同して,別紙物件目録記載の各物件(以下「被告各製品」という )の日本国内における 。
製造販売を開始した。
イ 被告昭和シェル及び被告日興産業は,平成11年2月1日,両被告が主たる株主となって,被告エヌ・エスを設立し,同日をもって,国内ユーザ各社に対する被告各製品の販売活動を被告エヌ・エスに移管し,以後,被告ら3社は,被告昭和シェル及び被告日興産業の従前の活動と同様に,共同して,被告各製品の日本国内における製造販売行為を開始した。
ウ 被告らは,現在,被告各製品の製造及び販売を停止している。
? 被告各製品の構成ア 別紙物件目録記載1?の物件(以下「被告製品1」という )。
被告製品1は,1-ドデセン(炭素数12の直鎖オレフィン)と1-テトラデセン(炭素数14の直鎖オレフィン)を含み,1-ドデセンと1-テトラデセンの合計量は12重量%である。また,被告製品1は,イソパラフィン(分岐オレフィンの水素化物)を含み,被告製品1に含まれるイソパラフィンの40℃における動粘度は,2.12cStである。
イ 別紙物件目録記載1?の物件(以下「被告製品2」という )。
被告製品2は,1-ドデセンと1-テトラデセンを含み,1-ドデセンと1-テトラデセンの合計量は6重量%である。また,被告製品2は,イソパラフィンを含み,被告製品2に含まれるイソパラフィンの40℃における動粘度は,2.19cStである。
ウ 別紙物件目録記載2?ないし?の各物件(以下,同目録中の番号に従って「被告製品3?」などという )。
被告製品3?ないし?は,1-ドデセンと1-テトラデセンを含み,1,, -ドデセンと1-テトラデセンの合計量は 被告製品3?では13重量%,。, 被告製品3?では11重量% 被告製品3?では13重量%である また被告製品3?ないし?は,イソパラフィン(分岐オレフィンの水素化物)を含み,被告製品3?ないし?に含まれるイソパラフィンの40℃における動粘度は,被告製品3?では1.18cSt,被告製品3?では2.01cSt,被告製品3?では2.80cStである。
被告製品3?は,1-ドデセンと1-テトラデセンを含み,1-ドデセ,。, ンと1-テトラデセンの合計量は2〜50重量%の範囲内にある また被告製品3?は,イソパラフィンを含み,被告製品3?に含まれるイソパ,. 。 ラフィンの40℃における動粘度は 05〜30cStの範囲内にあるエ 別紙物件目録記載1?の物件(以下「被告製品4」という )。
被告製品4は,1-ドデセンと1-テトラデセンを含み,1-ドデセンと1-テトラデセンの合計量は,2〜50重量%の範囲内にある。また,被告製品4は,イソパラフィンを含み,被告製品4に含まれるイソパラフィンの40℃における動粘度は,0.5〜30cStの範囲内にある。
? 被告各製品の構成要件充足性被告各製品は,いずれも,構成要件AないしCの各構成を有する。
? 無効審判の請求等被告らは 平成16年9月3日 本件特許につき 無効審判を請求した 無 ,,,(効2004-80140 (乙28,42 。))特許庁審判官は,原告に対し,平成17年6月6日,無効理由の通知をした(乙35,42 。)原告は,平成17年7月11日,特許請求の範囲請求項1を次のとおり訂正する旨の訂正の請求をした(甲28,乙42。訂正部分には下線を付してある。以下「本件訂正請求」という 。。)「() , , , , A 1-オクテン 1-デセン1-ドデセン 1-テトラデセン1-ヘキサデセン,1-オクタデセン,1-エイコセン及びこれらの混合物から選択される直鎖オレフィン2〜50重量%,及び(B)40℃における動粘度が0.5〜30cStのポリブテン及びその水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有してなるアルミニウムフィン成形用潤滑油剤 」。
上記無効審判事件について,平成17年11月14日,訂正を認め(以下「」。),() 。 本件訂正 という 本件特許を無効とする旨の審決がされた 乙422争点? 被告各製品は,本件発明の技術的範囲に属するか。
? 本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか。
ア 本件発明は,発明として未完成か。
イ 本件発明は,新規性を欠くか。
ウ 本件発明は,進歩性を欠くか。
エ 本件特許は,平成2年法律第30号による改正前の特許法(以下「平成2年改正前特許法」という )36条に違反するか。 。
? 本件特許権は,明細書の虚偽記載により,権利行使することが権利の濫用に当たるか。
? 実施料相当額? 損害の発生の有無及びその額3 争点に関する当事者の主張? 争点?(被告各製品は,本件発明の技術的範囲に属するか )について。
(原告の主張)被告らは,被告各製品は脱脂性の向上という作用効果を奏しないから,被告各製品は本件発明の技術的範囲に属しないと主張する。
そもそも,作用効果不奏功の主張は,特許権非侵害の抗弁事由となり得ないとの立場もあり得るところである(なお,大阪高裁平成14年11月22(。)),, 日判決 エアロゾル製剤事件控訴審最高裁ホームページ 参照 が 仮に作用効果不奏功が抗弁事由となるとした場合,被告らにおいて被告各製品が本件発明の作用効果を奏しないことを主張立証すべき責任を負うことになる。しかし,被告らは,本件発明の重要な作用効果である加工性や表面品質の向上について,何ら不奏功を主張していない。
また,被告らは,被告各製品が加工性や表面品質の向上,脱脂性や防錆性の向上という本件発明の作用効果を奏していることを広く発表しているのであるから,被告各製品は,本件発明の技術的範囲に属する。
(被告らの主張)ア 本件発明は,加工性の向上と共に,加工製品の表面の脱脂性の向上をその作用効果とする。
ここにおいて 「脱脂」とは,金属表面に付着している油脂性の汚れを ,除去して清浄にすること(JIS工業用語大辞典第4版 ,脂肪を抜き取)ること(広辞苑第5版 ,圧延,成形などで付着した油脂分や汚れを除去 )する方法(JIS用語辞典X金属・化学・窯業編「アルミニウム表面処理用語 )を意味するところ,被告各製品は,そもそも加工製品の表面の脱 」脂を行うものではなく,加工製品の表面の脱脂性の向上という作用効果を有するものではない。
,, ,, そして 対象物件が 特許発明の作用効果を奏しない場合 当該物件は特許権を侵害するものではない 大阪地裁平成13年10月30日判決 エ ((アロゾル製剤事件第一審。判例タイムズ1102号270頁)参照 。),, , したがって 被告各製品は 本件発明の作用効果を奏するものではなく本件発明の技術的範囲に属しない。
イ 本件明細書においては,所定の作用効果を奏するためにいかなる構成が必要とされるかについて,何らの説明もされておらず,数値限定がされているにもかかわらず,限定された数値が従来の数値に対して格段の効果を奏することが説明されているわけでもない。それどころか,被告らが,実施例及び比較例を追試したところでは,格別の効果がないことが明らかにされている。
しかも,本件明細書では,特許請求の範囲に記載された構成に加えて,公知の油性剤や極圧剤を添加することができ,また,各種公知の乳化剤,防錆剤,腐食防止剤,消泡剤などを適宜添加することもできると記載されており,これらの配合量は特に制限はないとされている。
そうすると,特許請求の範囲に記載の構成のみで所定の作用効果を奏することが当業者に容易に理解できる程度に技術開示されていない以上,本件明細書に記載の作用効果が本件発明の奏する作用効果であるということはできない。
同様に,被告各製品の説明書に,本件明細書に記載の作用効果が記載されているとしても,本件発明に該当する構成によって当該作用効果が生ずることが明らかにされない以上(添加物によって生ずる作用効果である可能性があるから ,被告各製品の作用効果であるということはできない。 ),, , したがって 被告各製品は 本件発明の作用効果を奏するものではなく本件発明の技術的範囲に属しない。
? 争点?ア(発明未完成)について(被告らの主張)本件発明は,以下のとおり,発明として完成していないため,特許法2条1項の「発明」に該当せず,同法29条1項柱書の規定により特許することができないものであるから,本件特許は,同法123条1項2号の規定に基づき,特許無効審判により無効とされるべきものである。
加工性向上の技術的課題を解決していないこと-乙1記載の実験( ) 試作油及び比較油の調製ア本件発明の構成要件Aの成分として,α-オレフィン(三菱化学株式会社製「ダイアレン208 。炭素数20〜28の直鎖α-オレフィン 」の混合物。以下「( )成分」という )を用い,本件発明の構成要件Bのa。
成分として,ポリブテン(日本油脂株式会社製「ニッサンポリブテン0N 。分岐オレフィン。25cSt/40℃。数平均分子量370。以 」下「( )成分」という )又はイソパラフィン(被告昭和シェル製「パb1。
」。. 。 「 」 。) ラオール130 1 36cSt/40℃ 以下 ( )成分 というb2を用いて,次の4種類の試作油を調製した。
a ( )成分48重量%+( )成分52重量%の潤滑油(以下「試作油ab1@」という )。
(「 」 b ( )成分2重量%+( )成分98重量%の潤滑油 以下 試作油Aab1という )。
c ( )成分48重量%+( )成分52重量%の潤滑油(以下「試作油ab2B」という )。
(「 」 d ( )成分2重量%+( )成分98重量%の潤滑油 以下 試作油Cab2という )。
また,試作油@ないしCと比較対照する比較油として,パラフィン系鉱油〔基油 (コスモ石油株式会社製「コスモピュアスピン 。4.75 〕」cSt/40℃ 以下 ( )成分 という 及びブチルステアレート 花 。「 」 。)(c王株式会社製。以下「( )成分」という )を用いて,( )成分90重量dc。
%+( )成分10重量%の潤滑油(以下「比較油」という )を調製しd。
た。
( ) 外観性状試験イa 試作油@ないしC及び比較油をそれぞれガラス容器に入れ,温度20±1℃の恒温槽に一昼夜保持してから,その外観性状を肉眼で観察した。
その結果,試作油A及びC並びに比較油はいずれも透明な液体状態であったが,試作油@及びBは,白色状態に固化し,容器を横倒ししても流動性は全く認められなかった。
金属塑性加工(空調用アルミフィン加工)において,潤滑油は,通常,被加工面に吹き付けることによって使用されるので,試作油@及びBのようにいわゆる常温において固化しているものは,製作現場において使用することができない。
b 原告は,乙1記載の実験における試作油@及びBは,30℃程度に加温することで液体状態になり,塑性加工を行う現場では,必要な加工温度に加温することも通常行われているから,潤滑油の供給に問題はないと主張する。
しかし,アルミフィンしごき加工加工工程の概要に関する報告書(乙16)及びアルミフィン加工油実験報告書(乙15)からも,加工油を温めて使用することは非現実的,非実用的方法であることは明らかである。原告の上記主張は,アルミのロールが室温より低温で,それに加工油を塗布,噴霧すれば加工油の温度は下がることを考慮していない。
念のため,被告らは,原告主張の工程を加えることを試みたが,試作油@及びBは,30℃に温めたとしても,加工油として使用に耐えないことが確認された(乙17 。)( ) 潤滑性能試験ウ空調用アルミフィン加工における加工性を調べるため,アルミ加工における潤滑性能を評価するものとして,一般に用いられている「バウデン-レーベン摺動試験」を行い,摩擦係数を測定した。なお,本件発明のような塑性加工油剤は一般的に液体であり,バウデン-レーベン摺動試験もこれを滴下して行うのが通常であるが,上記( )aのとおり,試イ作油@及びBは固体状態であったため,試作油@及びBについては,そ,。 の摩擦特性を確認するため 固体状態の試作油を塗布して試験を行ったその結果,試作油@は比較油と同じ数値を示し,試作油Aは比較油の約2倍の摩擦係数を示し,試作油Bは比較油よりやや高い摩擦係数を示し,試作油Cは比較油の約1.4倍の摩擦係数を示した。
金属塑性加工(空調用アルミフィン加工)における加工性は,摩擦係数の大小と相関しており,摩擦係数が小さいことは加工時の摩擦が小さく,加工性がよいことを示す。
,, , したがって 試作油@ないしCは加工性が向上しているとはいえずむしろ加工性が悪化していると評価される。
( ) 発明未完成エこのように,本件発明の特許請求の範囲に属する試作油@ないしCのいずれも,その加工性を向上させるものではなく,むしろ,その加工性を悪化させていることは明らかであるから,本件発明は,本件発明が目的とする技術的課題を何ら解決しておらず,本件発明は,発明として未完成なものである。
なお,原告は,試作油@ないしCについて,技術常識を度外視してあえて選択された各パラメータの上限値や下限値による試作油であると主張するが,試作油@ないしCは,本件明細書において「最も好ましい」とした範囲に属するものであるから,原告の主張は当たらない。
加工性向上の技術的課題を解決していないこと-乙15記載の実験試作油@ないしC及び比較油を調製し,これらを使用したアルミフィン打ち抜き実験を実施したところ,以下のような結果となった。
( ) 試作油@及びBについてア試作油@及びBについては,白色固化しており,現状の加工油の供給装置では均一な塗布(フエルト塗布)ができないし,工具(金型)において噴霧式給油ノズルから噴霧給油できないので,実験することができなかった。
( ) フィンカラーフレア割れイフィンカラーフレア割れとは,アルミフィンを打ち抜いてしごき加工を行って,できた円形の孔円周部に立ち上がらせたフィンカラーフレアが割れてしまうことをいう。
., ., . 試作油Aでは10 6% 試作油Cでは11 9% 比較油では199%のフィンカラーフレア割れが認められた。フィンカラーフレア割れの比率(%)は (14穴/1枚)×5枚×3列=210穴についての ,発生率である。
フィンカラーフレア割れがこの程度発生すると,製作現場では,不適格な加工油として,使用することができない。加工油として使用するには,通常,フィンカラーフレア割れが少なくとも3%未満であることが必要とされている。
試作油A及びCでは,比較油に比べてフィンカラーフレア割れの比率が低くなっているが,このように試作油A及びC並びに比較油のいずれもがこのような高い割合でフィンカラーフレア割れが生じるようでは,加工油として不適格なものであり,比較油に比べて比率が低くなっていることに何の技術的意義もない。
( ) アイアニングパンチの焼付き及び加工アルミ材の付着等ウ試作油Cにおいては,工具のアイアニングパンチにアルミ板材のアルミ素材に由来すると思われるリング状の曇りの発生が明らかに認められた。この現象は,加工ショット数の増加によりアイアニングパンチにアルミ素材が凝着する現象の前兆である。更にしごき加工を続けるとアイアニングパンチへのアルミ素材の凝着現象が顕著になり,10000ショット以内でカラー部千切れ・破断及びフィンカラー座屈を生じることが推測される。また,このようなアルミ凝着が生じたアイアニングパンチによってしごき加工を行い,フィンカラー内面に肌荒れが発生した場合には,熱媒体が通る銅パイプの挿入不良の原因となることは明らかである。
( ) このように,乙15記載の実験の結果,試作油@ないしCのうちのエ一部は固化して,アルミフィンの打抜加工実験に供することができず,また,試作油@ないしCのすべてが比較油と比べてそのしごき不良率を著しく向上させることはないどころか,アルミフィンの打抜加工のためのアルミフィン加工油としては使用に耐えないものであることが判明した。
この結果,本件発明は,本件発明の目的とする作用効果を奏するものではなく,本件特許が掲げる技術的課題を解決していないから,発明として未完成なものである。
なお,原告は,試作油@ないしCについて,技術常識を度外視してあえて選択された各パラメータの上限値や下限値による試作油であると主張するが,同主張が当たらないことは,前記ア( )において述べたとおエりである。
ウ 防錆性向上の技術的課題を解決していないこと-乙18記載の実験原告は,防錆性の向上も,本件特許の作用効果の1つであると主張するので,この点についても実験したところ,そのような効果は得られなかった。
エ 本件明細書の実施例1の組成の塑性加工用潤滑油以外については作用効果が不明であること原告は,摩擦係数と加工性との関係に関連して,実際にどの程度の加工性,成形性が得られるかについては,当該潤滑油を用いて,それぞれの素材(様々な性質・形状の金属)につき所望の塑性加工(圧延,絞り,打抜き,引抜き,冷間鍛造等)を様々な加工条件を設定した上で実施してみなければわからないと主張する。
原告のこの主張に基づけば,本件発明の効果がそれなりに実証されているのは,本件明細書の実施例1における「1-ヘキサデセンと1-オクタデセンの1:1の混合物20%に,ポリブテン(分子量265)80%を添加した打抜加工用潤滑油」のみであるから,本件発明は,この特定の組成の打抜加工用潤滑油以外は,その作用効果が不明であり,作用効果の予測性もない。
したがって,本件発明は,本件明細書の実施例1以外の部分(範囲)については,発明として未完成なものである。
オ 本件発明は架空のものであること,() 本件明細書には アルミフィン成形専用50トンプレス 社製Burr Oakを使用して打抜加工実験を行ったことが記載されているが,上記プレスを取り扱っている株式会社オークジャパンは,被告らからの問合せに対し,「 50トンプレス』というプレスは,過去にも現在にも存在しておりま 『せん 」と回答した。。
すなわち,本件発明の有意性を裏付ける重要な実験である上記打抜加工実験は,実施が不可能のはずであるから,本件発明は,すべて架空のものであり,発明が完成された段階で出願されたものとはいえず,本件発明は未完成のものである。
(原告の主張)本件発明は,発明として完成しており,かつ,当業者が容易に実施することができるものである。以下のとおり,被告らが行った実験によっても本件発明が未完成であるとはいえず,被告らの指摘も当たらない。
ア 乙1記載の実験について( ) 乙1記載の実験と同一の条件により行われた甲11記載の実験によアれば,試作油@及びBは,室温(20.6℃)において流動性のある半固体状態であり,30℃程度に加温することにより液体状態になるのであって,( )成分又は( )成分単独の場合と比較して,摩擦係数が明らb1 b2かに低下していることから,被告らが技術常識を度外視してあえて選択している各パラメータの上限値や下限値での試作油であっても本件発明は実施可能であるといえる。
また,塑性加工を行う現場では,必要な加工温度に加温することも通常行われており,試作油@及びBも30℃で液体であるから,潤滑油の供給に問題はなく,現実の現場で使用ができないというものではない。
( ) 乙1記載の実験結果は,金属塑性加工(空調用アルミフィン加工)イにおける加工性は,摩擦係数の大小と相関しており,摩擦係数が小さいことは加工時の摩擦が小さく,加工性がよいことを示すとの前提に立っている。
しかし,乙1添付の参考文献?「表面処理フィン材の特性におよぼす揮発性プレス油の影響」を前提としても,潤滑油を使用した場合の,摩擦係数と限界しごき率(加工性に関する指標)との間に相関関係は認められない。塑性加工においては,摩擦と潤滑に関して多くの要素が諸々の作用をもたらすのであって,実際にどの程度の加工性,成形性が得られるかについては,当該潤滑油を用いて,それぞれの素材(様々な材質・形状の金属)につき所望の塑性加工(圧延,絞り,打抜き,引抜き,冷間鍛造等)を様々な加工条件を設定した上で実施してみなければわからない。
したがって,乙1記載の実験結果をもって加工性の良否を結論付けることはできない。
また,摩擦係数と粘度とは,添加剤の有無にかかわらず,粘度が高くなるに伴って摩擦係数が減少するという関係にある(乙9の636頁左欄の図1)ところ,乙1では,粘度が高い試作油A(主成分( )成分のb140℃における粘度が25cSt が 粘度が低い試作油C 主成分( ) ), (b2成分の40℃における粘度が1.36cSt)よりも大きな摩擦係数を示しており,乙1記載の実験の結果自体にも疑問がある。
イ 乙15記載の実験について( ) 試作油@及びBは給油不能との点についてア潤滑油剤の供給法としては,フェルト塗布やノズル噴霧よりも「浸せき(浸漬 」による方法(加工素材を潤滑油剤に浸せき( )する )dippingことにより素材の表面に加工油を付着させる方法)が塑性加工の分野ではより一般的である。加えて,固体の潤滑油を部材に塗布して使用する例は,特公昭43-30438号公報(乙7)にも明記されている。
( ) フィンカラーフレア割れイa 加工性の改善について乙15記載の実験では,試作油Aで10.6%,試作油Cで11.9%,比較油で19.9%のフィンカラーフレア割れがそれぞれ発生しており,被告らが技術常識を度外視してあえて選択している各パラメータの上限値や下限値による試作油であっても,より常識的にパラメータを選択していると解される比較油との比較において,フィンカラーフレア割れの発生率の半減という加工性の著しい改善を示している。
なお,乙15記載の実験では,加工後のアルミフィンの性状の評価に際し,加工工具の不具合と考えられるとして,4列中1列を除外しているが,この加工工具の不具合が何かは明らかにされておらず,恣意的な除外であったとも疑われる。
b 加工油として不適格であるとの主張について被告らは,フィンカラーフレア割れは3%未満でなければ加工油として不適格であると主張するが,塑性加工においては,被加工材の種, (,,,, ) , 類や性状 加工の種類 圧延 絞り 打抜き 引抜き 冷間鍛造等加工工具の選択,各種の加工条件の設定など,潤滑油剤以外にも極めて多くの要素が加工性に影響するのであって,前提条件等が何ら示されない「3%」の基準には重大な疑念がある。
( ) アイアニングパンチのリング状の曇りについてウ乙15記載の実験では,フィンカラーフレア割れという不良の発生率が試作油C(発生率11.9%)よりも格段に大きい比較油(発生率19.9% ,試作油Cとほぼ同等の試作油A(発生率10.6%)につ )いて,いずれも「微かに曇りが見られた」にすぎないとされており,フィンカラーフレア割れと同様 「曇り」の発生には,潤滑油剤以外の様 ,々な要素又はそれらの組合せが関係しているものと考えられる。
また,乙15では,日高精機株式会社の技術陣による,フィンカラー座屈等の不良が生じるとの推測が述べられているにすぎず,これらのコメントが被告らによる伝聞であることも考えれば 「アイアニングパン,チの曇り」と潤滑油剤の加工性との連関についての説明は,単なる推測を述べたものにすぎないと考えるべきである。
ウ 乙18記載の実験被告らは,乙18記載の実験は,その結論部分(4項)の「防錆油(さび止め油)の性質を有していない」との記述から分かるとおり 「さび止,め油」に関する試験,すなわち,試験片表面に油膜がどの程度残存するかに関するものであって,本件発明における防錆性に関するものではない。
本件発明における「防錆面 「防錆性」は 「上記油性剤,極圧剤等の 」,,添加により加工部分の脱脂や防錆面で様々な不都合があった 」という本。
件明細書の記述からも明らかなとおり,添加された油性剤や極圧剤の脱脂性が十分でない場合に,これが原因となって加工品に錆などの腐食が発生することを防ぐことを意味しているのであって 「さび止め油」のように ,素材表面に油膜を残存させることを意味するものではない。なお,被加工材表面に腐食の発生を評価する試験としては,通常,銅板腐食試験法が用いられ,被告各製品の評価においても用いられている。
「」 (「()」 エ 本件発明は架空のものであることについて 上記 被告らの主張オ)について後記?の「 原告の主張 」と同旨 ()? 争点?イ(本件発明の新規性欠如の有無)について(被告らの主張)本件発明は,次のとおり,本件特許の特許出願前に日本国内において頒布(。「 」 された刊行物である特開昭61-85492号公報 乙6 以下 引用例1という )に記載された発明(以下「引用例1発明」という )と同一であ 。。
り,本件特許は,特許法29条1項3号の規定に違反して特許されたものであるから,同法123条1項2号の規定に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。
ア 引用例1発明引用例1発明は 「潤滑油にアルキルペンタエリトリトールホスフアイ ,トの1種以上とホスホン酸エステルの1種以上を配合させることを特徴とする冷間加工用潤滑剤 」であるところ,引用例1には 「本発明のベー 。,ス油として用いられる潤滑油は,鉱油の他に,αオレフイン油,モノエステル油,ポリブテン油,ポリグリコール油などの合成油及びこれらの混合油が例示される (3頁右上欄5ないし8行)との記載がある。 。」上記記載中「αオレフイン油」は,本件発明の構成要件Aの「直鎖オレフィン」に該当する。
,「」, 「 」 また ポリブテン油 は 本件発明の構成要件Bの 分岐オレフィンに該当する。
さらに 「これらの混合油が例示される 」と記載されており 「αオレ ,。,フイン油」と「ポリブテン油」の混合油が例示,記載されている。
そして 「冷間加工用潤滑剤」は 「塑性加工用潤滑油剤」に含まれる。 ,,したがって,引用例1には,本件発明の構成要件AないしCを備えた塑性加工用潤滑油剤が記載されている。
なお,引用例1発明は 「ベース油」に極圧剤と考えられる「アルキル ,ペンタエリトリトールホスフアイトの1種以上とホスホン酸エステルの1種以上を配合する」ものであるが,本件明細書においても,構成要件AないしCを備える塑性加工用潤滑油剤をベース油として,これに油性剤や極圧剤を加えることが記載されているから,引用例1発明の技術思想と本件発明とは,この点において相違はない。
イ 直鎖オレフィンの炭素数について本件発明の構成要件Aにおいては,直鎖オレフィンの炭素数が6ないし40であることが規定され,数値の限定がされている。
しかし,本件発明において 「炭素数6ないし40の直鎖オレフィン」 ,とは,例えば,炭素数が6の直鎖オレフィンでもよいし,炭素数が10の直鎖オレフィンでもよいし,炭素数が14の直鎖オレフィンでもよいし,これらの2種以上の混合物でもよいという意味である。
,(。「」。 ) 他方 特公昭43-30438号公報 乙7 以下 引用例2 というには,炭素数が10ないし37,38以上の直鎖オレフィンが示されてお, , り 本件発明の構成要件Aにおける炭素数はごく一般的なものであるから前記のとおり,引用例1の「αオレフイン油」は,本件発明の構成要件Aの「直鎖オレフィン」に該当する。
ウ 分岐オレフィンの動粘度について( ) 本件発明の構成要件Bにおいては,分岐オレフィン及び分岐オレフアィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の,4.。 0℃における動粘度が0 5〜30cStであることが規定されているしかし,引用例2には 「オレフイン組成物と混合出来る鉱油あるい ,は炭化水素油の代表的なものは,石油から得られ,25乃至10000Saybolt Universalセイボルト・ユニバーサル・セカンド(S.U.S ())の粘度を有するものであるが,これは単一の炭化水素でも炭Seconds化水素混合物でもよい (2頁右欄22ないし27行)と記載されて 。」いる。
「25乃至10000S.U.S」は,動粘度に換算すれば,2.0cSt以下〜2164cStである。なお,25S.U.S.は,2.0cSt以下であることは明らかであるが,更に詳細な数値を算定することができない。
また 「アルミニウムの圧延 (乙8。以下「引用例3」という )に ,」 。
,「. . 」 は 1 5〜4 5cst/40℃の粘度の鉱物油をベースオイルと(290頁右欄末行)することが記載されている。
このように,本件発明の構成要件Bに規定されている動粘度は,引用例2及び引用例3に示されているものとほとんど重複しており,本件特許の特許出願前に知られていたごく一般的慣用的な数値でしかないから,前記のとおり,引用例1の「ポリブテン油」は,本件発明の構成要件Bの「分岐オレフィン」に該当する。
( ) また,本件発明において構成要件とされている「40℃における動イ.」, , 粘度が0 5〜30cSt という範囲は 極めて広範囲のものでありまた,上記のとおり,引用例2及び引用例3に記載された範囲とほとんど重複するものであるから,引用例1に記載された「αオレフイン油とポリブテン油との混合油からなる潤滑油剤」を実施しようとすれば,引用例2又は引用例3に記載されている程度の粘度を用いることになる。
このことを勘案すれば,上記「40℃における動粘度が0.5〜30cSt」という構成要件は,範囲を限定したことに格別の意味はないといわざるを得ない。
すなわち,本件発明の構成要件Bは,動粘度については,格別の限定を加えたという意味合いはなく,単に 「分岐オレフィン及び分岐オレ ,フィンの水素化物」というに等しいから,実質的に引用例1に記載されている。
( ) しかも,引用例2や引用例3の記載は,本件発明や引用例1と同様ウ,, , に 塑性加工油に関するものであり塑性加工油として使用するときはその塑性の性質を問わず,同程度の粘度のものを使用することは常識であるから,引用例1及び本件発明と同一技術分野に属する引用例2や引用例3における粘度をもって,引用例1に記載された潤滑剤の粘度を推定することは極めて合理的なことである。
なお,原告は,引用例2に「鉱油あるいは炭化水素油」と記載されている部分について,この記載における「炭化水素油」とは,鉱油,具体的には軽油や灯油のようなものを指していると主張するが,炭化水素油と鉱油とは,具体的にも,概念的にも,異なるものである。
エ 直鎖オレフィンの含有量について( ) 本件発明の構成要件Aにおいては,直鎖オレフィンの含有量を2なアいし50重量%と規定している。
しかし,引用例3には,「1.5〜4.5cst/40℃の粘度の鉱物油をベースオイルとし,これに油性向上剤として高級アルコール(C 〜C )高級脂肪10 18酸(C 〜C )高級脂肪酸のブチルエステルあるいはメチルエステ12 18ル等を添加したものがあるが,主として使用されるのは( ) アルコール:4〜7% @( ) アルコール:4〜7%+エステル:1〜3% Aである (296頁左欄8〜15行) 。」と記載されており,油性向上剤等を4〜10%程度含有させることが示されている。
,「」 (。「 」。) また 新版 石油製品添加剤 乙14 以下 引用例4 というには 「近い将来には添加剤や混合する合成油の成分の方が石油系潤滑 ,油留分より多くなってくるという説も,決して誇張ではないかもしれない 」との記載がある。。
したがって,本件発明の構成要件Aにおける油性向上剤の含有量は一般的なものである。また,そもそも,油性向上剤の含有量は,塑性加工油の用途や加工方法に応じて当業者が適宜選択できる設計的な事項でしかない。
( ) なお,引用例3に記載された4〜10%という使用量が,本件発明イの「2〜50重量%」の範囲に包含されていることは疑う余地もない。
また,本件発明における「2〜50重量%」などという限定は,本件発明が(A)成分と(B)成分よりなる混合物であることを考えれば,当業者であれば誰でも考えつく常識的な数値であって,このような限定はないに等しい。
オ したがって,本件発明の構成要件A及びBにおける各数値は,慣用技術あるいは設計事項程度のことであるから,本件発明は,引用例1に開示されている技術思想と同一であり,新規性がない。
「」 (「()」 カ 引用例1と本件発明における技術思想の相違 後記 原告の主張ア)について原告は,本件発明の技術思想は,引用例1の技術思想と異なり,引用例1には,本件発明の構成要件が開示されていないと主張する。
しかし,発明の構成要件が開示されているか否かは,発明の目的によって左右されるものではなく,本件発明には,引用例1記載の技術から本件発明を想到することを妨げるような目的は何ら記載されていない。本件発明は,各構成要素が基油,油性剤,油性向上剤,極圧剤,添加剤のいずれに当たるかということを構成要件とするものではない。
また,上記ア記載のとおり,本件明細書においても,構成要件AないしCを備える塑性加工用潤滑油剤をベース油として,これに油性剤や極圧剤を加えることが記載されているのであるから,引用例1記載のような「αオレフイン油とポリブテン油よりなるベース油」に「アルキルペンタエリトリトールホスフアイトの1種以上とホスホン酸エステルの1種以上」を配合した加工用潤滑油が,後者を配合したことによって,本件発明の技術的範囲に含まれないということはできない。つまり 「アルキルペンタエ,リトリトールホスフアイトの1種以上とホスホン酸エステルの1種以上」を配合するか否かは,本件発明と引用例1発明との比較において何ら影響を及ぼさない。
キ 「αオレフイン油」がα-オレフィンオリゴマーを指すとの主張について原告は 「トライボロジー叢書8 潤滑グリースと合成潤滑油 (甲8。 ,」以下「甲8文献」という )の記載を引用し,α-オレフィンオリゴマー 。
すなわちαオレフィン油は 「α-オレフィンを低重合(オリゴメリゼー ,ション)し,末端二重結合を水素添加したものである」と主張する。
しかし,甲8文献には 「α-オレフィンオリゴマーすなわちαオレフ ,ィン油」という記載はない。甲8文献には 「α-オレフィンオリゴマー ,(), は読んで字のごとくα-オレフィンを低重合 オリゴメリゼーション し末端二重結合を水素添加したものである」と記載され,次いで反応式が示されており,反応式においては,α-オレフィンの例としてデセン-1が示され,それが低重合され,水素添加されて,α-オレフィンオリゴマーとなることが示されている。
また,α-オレフィンオリゴマーとα-オレフィンが異なるものであることは,それぞれの化学構造の違いからも明らかであり,当業者がα-オレフィンオリゴマーとα-オレフィン(油)が同一物であると認識している,ということはあり得ない。そもそも,甲8文献の204頁の ( )の3.1 1タイトルは 「α-オレフィンオリゴマー(ポリ-α-オレフィン 」と ,)いうものであり,このタイトルに照らしても,α-オレフィンオリゴマーがα-オレフィン(油)であるとの原告の主張が誤りであることは明らかである。
ク 引用例1の「αオレフイン油」が特定も限定もされていないとの主張について原告は,引用例1の「αオレフイン油」との記載について,直鎖か分岐かの特定がされておらず,その他の特定も限定もされていないとして,引用例1には,本件発明の構成要件Aの「炭素数6〜40の直鎖オレフィン2〜50重量%」が開示されているとはいえないと主張するが 「αオレ,」,, , フイン油 がいかなる性質 性状を有し どのように利用されているかは当業者によく知られているのであるから,原告の上記主張は失当である。
(原告の主張)ア 引用例1と本件発明における技術思想の相違引用例1発明は,潤滑油にアルキルペンタエリトリトールホスファイトの1種以上とホスホン酸エステルの1種以上を配合させることを特徴とする冷間加工用潤滑剤であり,アルキルペンタエリトリトールは油性向上剤として,ホスホン酸エステルは極圧剤として,それぞれ作用するものである。すなわち,引用例1発明は,基油に油性向上剤及び極圧剤を添加した潤滑油剤にほかならず,まさしく本件発明が課題として認識した従来技術に係る潤滑油剤である。
引用例1発明は,添加剤を必須要件とする発明であり,添加剤の配合を回避することを目的の1つとする本件発明とは,技術思想が異なることは明らかである。本件発明においても,各種の添加剤を様々な目的から添加することは妨げられないが,このことをもって,本件発明の技術思想が引用例1と同一であるとはいえない。
イ 引用例1と本件発明の構成要件Aについて( ) 「直鎖オレフィン」についてア被告らは,引用例1中の「αオレフイン油」が本件発明の構成要件Aの「直鎖オレフィン」であると主張するが 「αオレフイン油」は,α ,-オレフィンの低重合体であるα-オレフィンオリゴマーを指すのであって,直鎖オレフィンではない。
合成潤滑油としてのα-オレフィン油の意義については,甲8文献に詳しく述べられているとおりである。すなわち,合成潤滑油たるα-オレフィンオリゴマーであるαオレフィン油は 「α-オレフィンを低重 ,合(オリゴメリゼーション)し,末端二重結合を水素添加したものである (甲8文献の204頁 。そして,このオリゴマーは 「イソパラフ 」) ,ィン系の炭化水素」であり 「分子構造が櫛(くし)状の分岐をもつよ ,うに設計してある (甲8文献の205頁)ものである。イソパラフィ 」ンは,分岐構造を有する飽和炭化水素であり,甲8文献の204頁の反応式で例示されているα-オレフィンオリゴマーも 「C H 」の側,817鎖の繰り返し構造や元素の数(炭素と水素がn:2n+2になってい。), 。 る から分かるとおり 櫛状構造の分岐を有する飽和炭化水素である他方 「α-オレフィン」とは,分子内に二重結合を一個持つ不飽和 ,炭化水素(オレフィン)のうち二重結合がαの位置(末端の炭素とそれに隣接する炭素の間)にあるものであり,合成潤滑油であるα-オレフィンオリゴマー(αオレフィン油)の原料となるものである(甲8文献の204ないし205頁 そして本件発明の構成要件Aにおける 炭 )。, 「素数6〜40の直鎖オレフィン」は,α-オレフィンという構造に限定すれば,炭素数が6〜40の直鎖型α-オレフィン(n(ノルマル)-α-オレフィン)を指すのである。
「,, 引用例1における ベース油として用いられる潤滑油は 鉱油の他にαオレフイン油・・・ との記述から明らかなとおり この記載中の α 」,「オレフイン油」は,甲8文献の204頁以下で説明されている合成潤滑油としてのα-オレフィンオリゴマーであって,その原料たるα-オレフィン又は本件発明の構成要件Aにおける直鎖オレフィンを意味するものではない。当業者であればむしろ,引用例1の上記記載における「αオレフイン油」は 「一般に潤滑油剤の基油として用いられる合成油の ,一種である」構成要件Bにおける分岐オレフィン(の水素化物)であると理解する。
また,甲8文献で「末端二重結合を水素添加したものである (20」4頁)と解説されているとおり,合成潤滑油としてのα-オレフィンオ,() リゴマーは 原料たるα-オレフィンのオリゴメリゼーション 低重合と共に水素が添加され,飽和炭化水素となったものである。このような水素添加を行うのは,潤滑油剤としての性質上,熱安定性や酸化安定性を高めることが望ましいからである。他方,本件発明の構成要件Aの直鎖オレフィンは,構成要件Bと異なり,水素化物が除外されており,かつ,本件明細書の詳細な説明欄で 「分子内に二重結合を1個有する」 ,とされているとおり,二重結合を有する不飽和炭化水素である。
したがって,本技術分野における当業者であれば,引用例1の「ベース油として用いられる潤滑油は,鉱油の他に,αオレフイン油・・・」との記載における「αオレフイン油」は 「分岐状(櫛状)の構造を持 ,ったα-オレフィンオリゴマーであり水素添加されて飽和炭化水素となったもの」と当然に理解するのであり,本件発明の構成要件Aの直鎖オレフィンと理解することはない。
( ) 直鎖オレフィンの炭素数についてイ引用例2には 「炭素数10以上の直鎖オレフイン」が記載されてい ,るのみであって 「炭素数6ないし40の直鎖オレフィン」という限定 ,は,引用例2には示されていない。
( ) 直鎖オレフィンの含有量についてウ被告らは,鉱油をベース油とし,引用例3及び引用例4の記述を引用して,本件発明の構成要件Aにおける直鎖オレフィンの含有量(2〜50重量%)は一般的なものであり,油性向上剤の含有量は,塑性加工油の用途や加工方法に応じて当業者が適宜に設定できる設計的な事項にすぎないと主張する。
しかし,従来技術において加工性を維持するため油性剤や極圧剤等を添加することには様々な不都合があったところ,本件発明は,これを克服し,油性剤,極圧剤等を添加しなくても優れた加工性等を実現したものである。これに対し,引用例3に記載された基油たる鉱油に油性向上剤を添加した冷間圧延油は,本件発明のいう従来技術であって,引用例3での油性向上剤の添加量と本件発明の構成要件Aにおける直鎖オレフィンの含有量を比較することは無意味である。
( ) したがって,そもそも直鎖か分岐かの特定すらされておらず,そのエ他何らの特定も限定もされていない引用例1の「αオレフイン油」との記載をよりどころに,引用例1に,本件発明の構成要件Aの「炭素数6〜40の直鎖オレフィン2〜50重量%」が開示されているとはいえない。
ウ 引用例1と本件発明の構成要件Bについて,「,, ( ) 引用例1には ベース油として用いられる潤滑油は 鉱油の他にアαオレフイン油・・ポリブテン油・・などの合成油及びこれらの混合油が含まれる」との記載があるものの,この記載に本件発明の構成要件Bの「40℃における動粘度が0.5〜30cStの分岐オレフィン/その水素化物」が開示されていないことは明らかである。
( ) 被告らは,引用例2及び引用例3に鉱油又は炭化水素油の粘度に関イする記載があることを理由として,40℃における動粘度が0.5〜30cStであることが一般的慣用的な数値でしかないと主張する。
しかし,引用例2で述べられている「鉱油あるいは炭化水素油」は,「石油から得られ」るものであり,ここにいう「炭化水素油」とは,鉱油,具体的には軽油や灯油のようなものを指している。また,引用例3も,鉱油の粘度を記載したものである。これに対し,本件発明の構成要件Bにおける分岐オレフィン又はその水素化物は,合成油である。そして,鉱油の粘度をそのままポリブテンに適用することはできないから,引用例2又は引用例3で述べられている粘度を根拠とする被告らの上記主張は,失当である。
エ 引用例1と本件発明の構成要件Cについて引用例1が本件発明の構成要件A及びBのいずれも開示するものでない以上,本件発明の構成要件C,すなわち,構成要件Aの成分と構成要件Bの成分を組み合わせることについて,引用例1が開示するものでないことは当然である。
引用例1発明は,アルキルペンタエリトリトールホスファイトという油性向上剤とホスホン酸エステルという極圧剤を基油に配合することをその内容とするものであり,基油自体についての発明ではない。引用例1における「αオレフイン油」との記載は,基油についてのものであり,この記載は,基油として鉱油や合成油及びこれらの混合油,換言すれば,従来から使われているベース油が使用できるという程度の一般的記載にすぎず,基油に関する特定の成分構成を何ら開示,示唆するものではない。
オ 上記のとおり,引用例1には,本件発明の構成要件AないしCのいずれも開示されていないから,本件発明が引用例1発明と同一の発明であるとはいえない。
? 争点?ウ(本件発明の進歩性欠如の有無)について(被告らの主張), ,,, 仮に 本件発明に新規性が認められるとしても 本件発明は 次のとおり本件特許の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載,, された発明に基づいて 当業者が容易に発明をすることができたものであり,, 本件特許は 特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであるから同法123条1項2号の規定に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。
進歩性の欠如@仮に,本件発明に新規性が認められるとしても,本件発明の構成要件A及びBにおける各数値は,慣用技術ないしは設計事項程度のことであるから,本件発明は,引用例1(乙6)に開示されている技術思想並びに引用例2(乙7)及び引用例3(乙8)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
進歩性の欠如A,() (,, 本件発明は 引用例1 乙6 発明並びに引用例2ないし4 乙7 814 合成潤滑油について 乙10 以下 引用例5 という 圧 ),「」(。「 」。),「延における潤滑 (乙9。以下「引用例6」という 「合成潤滑油最近 」。 ),の進歩?ポリブテンの製造と合成潤滑油としての応用 乙11 以下 引 」(。「用例7」という 「潤滑油の基材・合成潤滑油 (乙12。以下「引用 。),」例8」という )及び「油性向上剤および極圧添加剤 (乙13。以下「引 。」用例9」という )に記載された発明(以下「引用例2発明」ないし「引 。
用例9発明」という )に基づいて,当業者が容易に発明をすることがで 。
きたものである。
( ) 鉱油に対する油性向上剤等の添加ア塑性加工用潤滑油剤として,古くは鉱油が単独で用いられていたところ,その加工性を向上させるために,鉱油に,油性向上剤として高級アルコール,高級脂肪酸,高級脂肪酸のエステルを含有させることが行われるようになった。このことは,引用例3,引用例6及び引用例9に記載されている。
( ) 鉱油と共に含有される油性向上剤イ鉱油と共に含有される油性向上剤としては,デセン-1(1-デセン ,ドデセン-1(1-ドデセン ,テトラデセン-1(1-テトラ ))デセン ,ヘキサデセン-1(1-ヘキサデセン ,オクタデセン-1 ))(1-オクタデセン)のような直鎖オレフィンを用いることも古くから知られていたことである。このことは,引用例2に記載されている。
( ) 鉱油に代えて用いられる合成油ウ油性向上剤や極圧剤が配合される鉱油についても,鉱油に代えて合成油が用いられていた。こうした合成油の1つとして,引用例6及び引用例7には 「ポリブテン油」が記載されている。引用例1にも,鉱油の ,代わりにベース油としてポリブテン油(分岐オレフィン)を含有するアルミニウム塑性加工用の潤滑剤が示されている。この「ポリブテン油」は,ブテンを重合したものであるから,本件発明における「分岐オレフィン」に該当する。
( ) ポリブテンエオレフィンを低分子重合したポリオレフィン油は,当業者間になじみ深いものとして知られ,ブテンを重合して末端を水素添加したポリブテンは,ポリオレフィンの代表的なものであると理解され,化学構造的にも鉱油に最も近いことが知られている。このことは,引用例5及び引用例8に記載されている。この「ポリブテン」は,本件発明における「分岐オレフィンの水素化物」に該当する。
( ) 周知のベース油及び油性向上剤・極圧剤オ塑性加工油には,ベース油に必要な加工性の向上を求めて油性向上剤や極圧剤等が配合されるところ,ベース油については鉱油,合成油(炭化水素油,ポリオレフィン油,ポリブテン,合成系飽和炭化水素油)がよく知られており,また,これらのベース油に配合される油性向上剤や,,, , 極圧剤等として 高級アルコール高級脂肪酸 高級脂肪酸のエステルα-オレフィン(直鎖オレフィン)もよく知られていた。
() 小括カ本件発明は,構成要件Aに記載の直鎖オレフィンを油性向上剤とし,これを構成要件Bに記載の分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をベース油として,A及びBを含有させて塑性加工用潤滑油剤としたものである。直鎖オレフィンはよく知られた油性向上剤であり,分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物もよく知られていたベース油であり,油性向上剤とベース油を含有させて塑性加工用潤滑油剤とすることは周知の技術である。
直鎖オレフィンと,分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有させて,塑性加工用潤滑油剤とすることは,引用例1発明ないし引用例9発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
( ) 直鎖オレフィンの炭素数についてキ本件発明の構成要件Aにおいては,直鎖オレフィンの炭素数が6〜40であることが規定されているが,引用例2に炭素数が10〜37,38の直鎖オレフィンが示されているように,直鎖オレフィンの炭素数が6〜40であることは特別のものではなく,塑性加工用潤滑油剤においては,ごく一般的なものである。
( ) 構成要件Bの動粘度についてク本件発明の構成要件Bにおいては,分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の40℃における動粘度が0.5〜30cStであることが規定されている。
しかし,上記?の「 被告らの主張 」ウのとおり,引用例2には, ()オレフィン組成物と混合できる鉱油あるいは炭化水素油の代表的なものとして,2.0cSt以下〜2164cStの粘度を有するものが記載されている。
また,上記?の「 被告らの主張 」ウのとおり,引用例3には,1. ()5〜4.5cSt/40℃の粘度の鉱物油をベース油とすることが記載されている。
そして,引用例6には 「比較的粘度の高いもの(たとえば100〜 ,150SSU,100゜F 」及び「比較的粘度の低いもの(30〜5 )5SSU,100゜F 」の鉱油が記載されている。なお 「SSU」 ),は 「SUS」の誤記と思われる。これらを換算すれば (21〜32 ,,cSt/37.8℃)及び(2以下〜9cSt/37.8℃)となる。
このように,本件発明の構成要件Bに規定されている動粘度は,引用例2,引用例3及び引用例6に示されているものとほとんど重複している。
( ) 構成要件Aにおける直鎖オレフィンの含有量についてケ本件発明の構成要件Aにおいて,直鎖オレフィンの含有量を2〜50重量%と規定している。
しかし,上記?の「 被告らの主張 」エのとおり,引用例3には, ()油性向上剤等を4〜10%程度含有させることは示されている。
また,引用例4には 「近い将来には石油系潤滑油留分よりも添加剤 ,や混合する合成油の成分の方が多くなってくることも決して誇張ではないかもしれない 」との記載がある。。
したがって,本件発明の構成要件Aにおける直鎖オレフィンの含有量2〜50重量%というのは,油性向上剤の含有量としてごく一般的なものであり,油性向上剤の含有量は,塑性加工油の用途や加工方法に応じて当業者が適宜に設定できるような設計的な事項でしかない。
( ) 作用効果(加工性)についてコ本件発明は,構成要件A,B及びCを具備することによって,加工性に優れるとともに表面品質にも優れた塑性加工用潤滑油剤を得るように企図したものであるが,特段の作用効果を見出せない。しかも,本件発明は,同じくベース油に油性向上剤を加えることによって,加工性に優れるとともに表面品質にも優れた塑性加工用潤滑油剤を得ようとした従前の塑性加工用潤滑油剤と比較して,優れた作用効果は認められない。
( ) 作用効果(臭い)についてサ本件発明は,ベース油及び油性向上剤としてほとんど臭いのないものを選択したにすぎず,本件発明の組合せによって,ベース油あるいは油性向上剤が有していた臭いが消えたというものではない。
そして,ベース油及び油性向上剤として,ほとんど臭いのないものを選択することについて,格別の困難性はない。
直鎖オレフィンであるn-α-オレフィンも,分岐オレフィンの水素化物であるイソパラフィンも,いずれもほとんど臭いはなく,まして悪臭や不快臭などないことは,当業者によく知られている。
したがって,上記n-α-オレフィンとイソパラフィンを配合し,混合したものにも悪臭や不快臭が生じないことは明らかであって,本件発明とされる構成物(塑性加工用潤滑油剤)が不快臭を生じないことも,当業者にとっては当然すぎることであって,本件発明に特有の作用効果ではない。
( ) したがって,本件発明は,引用例1発明ないし引用例9発明に基づシいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,その作用効果においても何ら特段の作用効果が得られているものでもないから,本件発明には進歩性がなく,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号の規定により無効にされるべきものである。
進歩性の欠如B本件発明は,アメリカ合衆国(以下「米国」という )特許第3,28。
8,715号明細書(乙19。以下「引用例10」という )に記載され。
た発明(以下「引用例10発明」という ,引用例8(乙12)発明及 。)び引用例1(乙6)発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
( ) 引用例10についてア引用例10は,引用例2の対応米国特許である。
引用例10には,「 A〕直鎖オレフィンと 〔〔A-1〕直鎖オレフィンの炭素数10〜38以上〔A-2〕直鎖オレフィンの含有量が10〜95重量%以上〔B〕鉱油を含有する〔B-1〕該鉱油(又は炭化水素油)の動粘度が25〜10000S・U・S(2.0以下〜2164cSt)〔C〕塑性加工用潤滑油」が記載されている。
( ) 引用例10発明と本件発明との対比イ本件発明と引用例10発明とを比較すると,本件発明の構成要件Bが「分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物からなる群から選ばれ」,〔〕 る少なくとも一種の化合物 であるのに対して 引用例10発明の Bが「鉱油」である点においてのみ相違している。
( ) 引用例8についてウ引用例8には,次の記載がある。
「合成系の炭化水素は・・・化学構造的にも性状的にも鉱油に最も近い。中でもオレフィンを低分子重合(分子量300〜2500)したポリオレフィン油がなじみの深いものである。たとえばブテンを重合し末端を水素添加したポリブテンは代表的なものであり ・・・ (52頁,」右欄21ないし27行)( ) 引用例1についてエ引用例1には,次の記載がある。
「本発明は,アルミニウムあるいはアルミニウム合金の冷間鍛造に好適な潤滑剤及びそれを用いた塑性加工方法に関する (1頁右下欄4。」ないし6行)「本発明のベース油として用いられる潤滑油は,鉱油の他に ・・・,ポリブテン油・・・などの合成油及びこれらの混合油が例示される 」。
(3頁右上欄5ないし8行)( ) 容易想到性についてオ上記( )のとおり,引用例8には,炭化水素,特に,ポリオレフィンウ,。 油が 化学構造的にも性状的にも鉱油に最も近いことが記載されているまた,ポリオレフィン油は 「分岐オレフィン又は分岐オレフィンの水 ,素化物」である。
したがって,引用例10発明の〔B〕の「鉱油」に代えて「分岐オレフィン又は分岐オレフィンの水素化物」を用いることは,当業者にとって容易である。
なお,引用例8におけるポリオレフィン油は,電気絶縁油,ガスコンプレッサ油又は2サイクルエンジン油に使用されることが記載されてい,。, るが 塑性加工用潤滑油剤に使用することは記載されていない しかし引用例1には,上記( )の記載があるから,塑性加工用潤滑油剤においエても同様に考えられることである。
進歩性の欠如C本件発明は,引用例10(乙19)発明,引用例9(乙13)発明,引用例1(乙6)発明及び特開昭52-114602号公報(乙36。以下「引用例11」という )に記載された発明(以下「引用例11発明」と 。
。), 。 いう に基づいて 当業者が容易に発明をすることができたものである( ) 引用例10についてア引用例10には,アルミニウム製品に圧延等の塑性加工を行う際の潤滑に用いられる組成物の発明が記載されており,その潤滑油組成物の成分としてヘキサデセン-1,オクタデセン-1等の炭素数が10以上の長鎖オレフィンが挙げられ,そのオレフィンは,次の一般式で表わされるもので,上記一般式は,R及びR’の結合位置が不明瞭であるが,具体的な例示化合物等の記載からみて,直鎖オレフィンであるか,又は直鎖オレフィンが包含されるものと解される。また,潤滑油組成物中のオレフィンは10〜95重量%の範囲が好都合である旨の記載もあり,さらに,オレフィンは潤滑油粘度の鉱油,ジエステル油と混合されることについても記載があり,オレフィンが混合される典型的な鉱油又は炭化水素油の粘度が25〜10,000セイボルトユニバーサル秒であることについても記載がある。粘度「25〜10,000セイボルトユニバーサル秒」の換算に関しては,換算表(乙38)の最小値は.(),, 32 6セイボルトユニバーサル秒 SUS であり 換算表によると32.6SUSは2.0センチストークス(cSt)で,高粘度用の換算係数によると,10,000SUSは2160cStであるから,25〜10,000SUSは,少なくとも2.0〜2160cStの範囲を包含する。
( ) 引用例10発明と本件発明との対比イ引用例10発明も,本件発明も,塑性加工用の潤滑油剤において,炭素数が10以上の直鎖オレフィン10〜50重量%を含有するものである点で一致又は重複する。
そして,直鎖オレフィン以外の成分が,本件発明では,40℃における動粘度が0.5〜30cStの分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であるのに対し,引用例10発明では,鉱油又はジエステル油等であり,その粘度が「潤滑油粘度」とされていて,オレフィン組成物が混合される典型的な鉱油又は炭化水素油が,25〜10,000セイボルトユニバーサル秒の粘度を持つ石油から得られたもの,とされている点で相違している。
本件発明における分岐オレフィン又は分岐オレフィンの水素化物は,本件明細書によると,ポリブテン等を含む。
( ) 容易想到性についてウ引用例9の記載によると,α-オレフィンが油性向上剤としての効果を有すること及びアルミニウムの潤滑に対しても有効に作用することが知られており,引用例10で長鎖オレフィンの具体例として挙げられているヘキサデセン-1(セテン)は,引用例9においてその例とされているものであるから,当業者であれば,引用例10発明におけるそのような長鎖オレフィンが油性向上剤として機能するものであると理解する,, , ことができ そうすると 引用例10における鉱油又はジエステル油は潤滑油組成物における基油(基材)に相当するものであるということも,,「,, 理解でき そのことは これらのオレフィン類は 潤滑油粘度の鉱油。」。 ジエステル組成物等と混合される との記載によっても裏付けられる一方,引用例1の記載によると,アルミニウム材の塑性加工時に使用される油性向上剤とベース油からなる潤滑油組成物においてベース油として用いられる潤滑油(基油)として,鉱油のほかに,合成油であるジオクチルセバケート,トリメチロールプロパントリカプリレートと並んでポリブテンが知られているから,引用例1と同じ加工対象の潤滑油組成物である引用例10発明に係る潤滑油組成物の基油である鉱油又はジエステル油に代えて,ジエステル油と同じ合成油として引用例1に記載,, されている 金属加工油基油として周知のポリブテンを使用することは当業者が容易に想到することができるものである。また,潤滑油組成物の基油として用いられるポリオレフィンは,水素化されているものも水素化されていないものも,同様に用いられることは,例えば引用例11により知られている。
引用例10において,オレフィンに混合される鉱油,ジエステル油は「潤滑油粘度」であるとされ,具体的には,鉱油の場合として,25〜10,000SUSとされており,本件発明のように「40℃における動粘度が0.5〜30cSt」という規定はされていないが,引用例10においても,アルミニウムの塑性加工に用いられる潤滑油を目的とするものであり,25〜10,000SUSは,前記のとおり,少なくとも2.0〜2160cStの範囲を包含する,広い範囲のものであるから,引用例10における粘度の規定は,本件発明のものと重複する範囲のものであるか,あるいは,例えば,引用例1で潤滑油の基油として鉱油と並んで具体的に使用されているジオクチルセバケートの粘度が1.( (.)), 2 5cSt 100゜F =37 8℃ であることを考慮すると「40℃における動粘度が0.5〜30cSt」という規定は,当業者がアルミニウムの塑性加工において,普通に使用する潤滑油(基油)の,。 粘度範囲を規定したものにすぎず格別の範囲を規定したものではないまた,本件発明の加工性が向上するという効果については,引用例9に記載されているα-オレフィンの油性向上剤としての効果から予測される範囲のものであり,本件発明の臭気が少なく作業環境が向上するという効果及び加工製品の表面の脱脂性が向上するという効果についても,既知の効果であるか,引用例10発明,引用例9発明,引用例1発明及び引用例11発明に基づいて容易に想到する本件発明の潤滑油剤の構成が奏する効果の単なる確認にすぎず,それが格別のものであるとはいえない。
( ) よって,本件発明は,引用例10発明,引用例9発明,引用例1発エ明及び引用例11発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 訂正の請求について( ) 訂正事項ア原告は,上記1?のとおり,無効審判事件において,本件訂正請求をしたが,この訂正は 「 A)炭素数6〜40の直鎖オレフィン」を, ,(その好ましい態様である「1-オクテン,1-デセン,1-ドデセン,1-テトラデセン,1-ヘキサデセン,1-オクタデセン,1-エイコセンあるいはこれらの混合物」に限定し(以下,この訂正事項を「訂正事項1」という 「 B)分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素 。),(化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物」を,その好ましい態様である「ポリブテン及びその水素化物よりなる群から選ばれる少」(, 「 」 なくとも一種の化合物 に限定し 以下この訂正事項を 訂正事項2という 「塑性加工用潤滑油剤」を,その好ましい態様である「アル 。),ミニウムフィン成形用潤滑油剤 に限定した 以下 この訂正事項を 訂 」(, 「正事項3」という )ものである。。
( ) 訂正の可否イa 本件明細書には「これらの直鎖オレフィンの具体例としては,1 ,-オクテン,1-デセン,1-ドデセン,1-テトラデセン,1-ヘキサデセン,1-オクタデセン,1-エイコセンあるいはこれらの混合物などを挙げることができる (3欄18ないし22行)との記 。」載があるが,この記載は「アルミニウム,銅,黄銅その他の金属あ ,るいは合金を塑性加工するに際し (2欄12ないし13行)との記 」載から明らかなとおり,広く金属又は合金の塑性加工を対象としているものであり 「アルミニウムフィン成形用」に特定して記載されて ,いるのではない。
したがって,訂正事項1は,訂正事項3との関連において,願書に添付した明細書の記載に基づかないものであるから,本件訂正請求は認められない。
b また,原告は,訂正事項3の根拠として,本件明細書の打抜加工実験の記載を挙げている。
しかし,上記打抜加工実験は 「1-ヘキサデセンと1-オクタデ ,センの1:1の混合物」によってアルミフィン成形加工実験を行ったものにすぎないから,上記打抜加工実験の記載に基づいて訂正事項1の訂正が認められるものではない。
c さらに,原告は,特許庁審判長に提出した平成17年7月11日付け意見書(甲27の1)において,訂正事項3に関し 「アルミニウ,ムフィン成形用潤滑油剤」であることに,他の金属及び他の加工方法とは違った特異性がある旨主張している。
,「,, しかし 訂正事項1により訂正された1-オクテン 1-デセン1-ドデセン,1-テトラデセン,1-ヘキサデセン,1-オクタデセン,1-エイコセンあるいはこれらの混合物」は,上記のとおり,広く金属又は合金の塑性加工を対象としているのであって,原告の主張するような特異性のある「アルミニウムフィン成形用潤滑油剤」の構成要素として記載されているのではない。
したがって 「アルミニウムフィン成形用潤滑油剤」については, ,訂正事項1との関連において,本件明細書には一切記載がない。
d 上記aないしcのとおり,訂正事項1は訂正事項3との関連において,また,訂正事項3は訂正事項1との関連において,願書に添付した明細書の記載に基づかないものであるから,本件訂正請求は,特許法134条の2第5項において準用する同法126条3項に違反するものであり,認められない。
( ) 訂正後の本件発明の進歩性の有無ウ仮に,本件訂正請求が認められたとしても,訂正事項1は,引用例10に記載されている技術事項であり,訂正事項2は,引用例1に記載されている技術事項であり,訂正事項3は,引用例9に記載されている技術事項であり,訂正事項1ないし3によって新たに格別の効果が得られるものでもない。
したがって,本件訂正後の本件発明は,特許法29条2項の規定に違反するものであり,上記訂正請求が認められたとしても,本件特許は,無効にされるべきものである。
(原告の主張)ア 進歩性の欠如@( ) 引用例1(乙6)についてア引用例1については,上記?の「 原告の主張 」のとおりである。 ()( ) 引用例2(乙7)についてイ,「, 引用例2発明は アルミニウム材と加工部材の間に潤滑剤を付与し切削,圧延,引抜き,または押し出しによって加工部材とアルミニウム材とを接触せしめてアルミニウム材を加工する方法において,潤滑剤に一般式(式中R’は水素またはメチル基を示し,R”は少なくとも8個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を示す)を有する単量体オレフィン系化合物を含有せしめたことを特徴とするアルミニウム材加工方法」に関するものである。
( ) 引用例2発明と本件発明との対比ウa 引用例2発明と本件発明とを比較すると,両発明は,直鎖オレフィンを潤滑油剤の必須成分として用いるという点で共通する。
しかし,引用例2には,本件発明のその他の技術事項,すなわち,直鎖オレフィンと分岐オレフィン又はその水素化物を組み合わせて用いること,直鎖オレフィンを2〜50重量%配合すること,分岐オレフィンの40℃における動粘度が0.5〜30cStであること,のいずれについても,何らの記載も示唆も存在しない。
b 引用例2では,直鎖オレフィンからなる潤滑剤が用いられており,この点からも,引用例2は,構成要件Bの成分に直鎖オレフィンを配合することへの動機付けとはならない。すなわち,引用例2には,直鎖オレフィンを分岐オレフィン又はその水素化物に組み合わせて用いることが開示されていないのはもちろん,それとは逆に,直鎖オレフィンを単独で潤滑剤として用いることが記載されている。
( ) 本件発明に係る潤滑油剤のような特定の2成分を特定の配合比で配エ合した潤滑油剤は,引用例1に引用例2及び引用例3を参照したとして, 。,, も 当業者が容易に想到し得たものではない したがって 本件発明は引用例1発明ないし引用例3発明によってその進歩性が否定されるものではない。逆に,引用例1ないし引用例3の記載は,油性剤や極圧剤を配合せずとも優れた加工性等を実現することができる潤滑油剤という本件発明の技術思想から遠ざける契機ないし動機付けとなるものである。
進歩性の欠如A( ) 引用例1についてア引用例1については,上記?の「 原告の主張 」のとおりである。 ()( ) 引用例2についてイ引用例2については,上記アのとおりである。
( ) 本件発明の構成要件Aの直鎖オレフィンは油性剤(油性向上剤)でウあるとの主張(上記「 被告らの主張 」イ( ),( )及び( ))につい ()アイ オてa 本件特許の特許出願(原出願)当時の「油性剤(油性向上剤 」の)意義油性剤とは,長い炭化水素基と極性基からなる構造を有しており,炭化水素基の部分は,潤滑油(基油)分子と似ているためそれに溶解するという性質を持つ一方,極性基の部分は金属(極性表面を有している )と親和性を有する化合物である。このような極性化合物を金 。
加工用の潤滑剤に添加することで,基油の金属表面への吸着性を向上させ,材料金属や工具の摩擦,摩耗を低減する機能を果たすのである。
すなわち,本件特許出願(原出願)当時に考えられていた油性剤とは,その分子中に,基油と類似性を持つ長い炭化水素基と,電気極性を有する金属表面に対し親和性を有する極性基という2つの異なる部位を有する化合物である(なお,極圧剤とは,高い圧力を受ける部分の潤滑剤に用いられる添加剤であり,高圧に伴う熱の発生によって分解し,材料金属と硫,塩,リン化物を作り,それが皮膜として機能することにより摩擦面の摩耗,焼付きを防止するという機能を有する添加剤である 。。)油性剤の代表的なものは,本件明細書や引用例3にも挙げられているとおり,高級脂肪酸(例:ステアリン酸 ,高級アルコール(例: )オレインアルコール ,高級脂肪酸のエステル,脂肪族アミン・アミ )ド等であり,いずれも「長い炭化水素基+極性基」という特徴を備えた化合物(極性化合物)である。
本件明細書の従来技術についての記載における「油性剤」も 「長,い炭化水素基+極性基」という基本概念を前提とするものである。
また,引用例1,引用例3及び引用例6において示されている「油性剤」も 「長い炭化水素基+極性基」という本件特許の特許出願当 ,時の「油性剤」の概念を前提としている。
b 直鎖オレフィンと「油性剤」本件発明の構成要件Aの直鎖オレフィンは,直鎖の炭化水素基を有,,,, しているものの 極性基を有していないため 極性はなく このため直鎖オレフィンは,従来技術の下で油性剤としては機能しないと考えられていたものである。
なお,本件特許の特許出願(原出願)の後,本件発明に係る潤滑油,「 ()」, 剤に関し 構成要件Aの直鎖オレフィンをもって 特殊な 油性剤「 特殊な)添加剤」などと呼ぶことがあるが,ここでの添加剤概念 (は,もはや「長い炭化水素基+極性基」という本件発明前の油性剤概念とは異なるものである。
c引用例2被告らは,引用例2を根拠に 「鉱油と共に含有される油性向上剤 ,として直鎖オレフィンを用いることが古くから知られていた」と主張する。
しかし,引用例2の実施例では,直鎖オレフィンのみからなる切削油が用いられているのであり,引用例2に接した当業者は,直鎖オレフィンが油性向上剤ではなく,潤滑油として用いられていると理解するのである。
d したがって,本件特許の特許出願(原出願)当時において,直鎖オレフィンを油性向上剤として理解することは,技術的にも,また,本件明細書等の公平な理解としても成り立ち得ないものである。
被告らの特許無効に関する主張は,いずれも直鎖オレフィンを油性向上剤として理解することを柱とするものであり,この理解が正当でない以上,被告らの無効理由の主張は,いずれも成り立たない。
進歩性の欠如B米国の特許明細書である引用例10に対応する日本の特許公報である引用例2(乙7)には,本件発明の技術的事項,すなわち,直鎖オレフィンと分岐オレフィン又はその水素化物を組み合わせて用いること,直鎖オレフィンを2〜50重量%配合すること,分岐オレフィンの40℃における動粘度が0.5〜30cStであることのいずれも記載ないし示唆されていない。
したがって,引用例10に,オレフィンの好適な濃度が10〜95重量%の範囲であることが記載されていたからといって,本件発明の特許性が否定される理由は全くない。
進歩性の欠如C本件特許の出願当時,直鎖オレフィンは当業者には油性剤として認識されていなかったと考えるのが自然であり,仮に,そのような認識があったとしても,引用例10発明,引用例9発明,引用例1発明及び引用例11発明を組み合わせて本件発明を導く合理的動機付けが存在しないし,仮にそのような動機付けがあり,上記各引用例発明を組み合わせたとしても,本件発明の構成要件をすべて具備した潤滑油組成物には到達し得ず,さらに,本件発明に係る潤滑油組成物は,上記各引用例発明からは予期できない顕著な効果を奏する。
? 争点?エ(本件特許は,平成2年改正前特許法36条に違反するか )に。
ついて(被告らの主張)ア 本件明細書の実施例1の組成の塑性加工用潤滑油以外については作用効果が不明であることについて原告は,上記?の「 原告の主張 」ア( )のとおり,実際にどの程度の ()イ加工性,成形性が得られるかについては,当該潤滑油を用いて,それぞれの素材につき所望の塑性加工を様々な加工条件を設定した上で実施してみなければわからないと主張する。
原告のこの主張によれば,本件明細書において,本件発明の効果がそれなりに実証されているのは,唯一,本件明細書の段落【0009】の実施例1における「1-ヘキサデセンと1-オクタデセンの1:1の混合物2,( ) 」 0%に ポリブテン 分子量26580%を添加した打抜加工用潤滑油のみである。本件発明は,この特定の組成の打抜加工用潤滑油以外については,その作用効果が不明であり,作用効果の予測性もない。
したがって,本件明細書は,平成2年改正前特許法36条の要件を満たさない。
イ 原告自らが技術常識を度外視したパラメータと主張する上限値及び下限値をもって好ましい範囲と記載していることについて原告は,特許請求の範囲に属するのみならず,本件明細書において「最も好ましい」とした範囲に属する成分による試作油@ないしCについて,技術常識を度外視してあえて選択している各パラメータの上限値や下限値によるものであると主張する。原告のこの主張によれば,本件明細書の記載は,技術常識を度外視した上限値及び下限値をもって,好ましい範囲,あるいは,最も好ましい範囲,と記載していることになる。
そして,本件発明における「直鎖オレフィン」の炭素数及び含有量並びに「分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物」の動粘度の数値範囲も,前記のとおり有意義な数値とはいえないことは明白である。
したがって,本件明細書は,平成2年改正前特許法36条の要件を満たさない。
ウ 特許請求の範囲に記載された成分を用いることの理由付けが記載されていないことについて本件発明は (A)成分が直鎖オレフィンであること及び(B)成分が ,分岐オレフィン又はその水素化物であることを規定しているが,本件明細,() 「 」 () 書は A 成分が 直鎖 オレフィンでなければならない理由及び B成分が「分岐」オレフィン又はその水素化物でなければならない理由を全く開示しておらず,発明の実体が不明である。
したがって,本件明細書は,平成2年改正前特許法36条の要件を満たさない。
エ 特許請求の範囲に記載された成分及び数値についての根拠が記載されていないことについて本件明細書の実施例の潤滑油剤は,1-ヘキサデセンと1-オクタデセンの1:1混合物20%,ポリブテン(分子量265)80%よりなる組成物である。そして,1-ヘキサデセンは,炭素数16の直鎖オレフィンであり,1-オクタデセンは,炭素数18の直鎖オレフィンである。
この実施例からいえることは,炭素数16の直鎖オレフィンと炭素数18の直鎖オレフィンよりなる組成物は,打抜加工の際の潤滑油剤として比較例1及び2より優れていることのみである。この実験のみから,本件発明に包含される組成物のすべてが加工性に優れた塑性加工用潤滑油剤であるといえる根拠は不明である。
また,本件発明においては,構成要件Aの直鎖オレフィンの炭素数が6〜40と規定されているが,上記実施例から炭素数が6〜40に特定され。, る根拠は不明である 炭素数6未満のものは引火点が低いため適当でなく炭素数40を超えるものは固体状となるため使用が困難であるとしても,炭素数6〜40のものがすべて加工性に優れた潤滑油剤を作るのに有効であるとする根拠は不明である。
さらに,構成要件Bでいう,40℃における動粘度が0.5〜30cStの範囲のものという数値限定が生まれた根拠も不明である。このような数値限定は,本件明細書の実施例からは到底読み取れない。
構成要件Bの成分も,本件明細書の実施例では,ポリブテンが示されているのみであるにもかかわらず 「分岐オレフィン又はその水素化物」が ,上記動粘度の条件さえ満たしていれば,そのすべてが所定の作用効果を奏することの根拠が全く説明されていない。
したがって,本件明細書は,平成2年改正前特許法36条の要件を満たさない。
(原告の主張)ア 「本件明細書の実施例1の組成の塑性加工用潤滑油以外については作用効果が不明であることについて (上記「 被告らの主張 」ア)について 」( )上記?の「 原告の主張 」と同旨 ()イ 「原告自らが技術常識を度外視したパラメータと主張する上限値及び下限値をもって好ましい範囲と記載していることについて (上記「 被告」(らの主張 」イ)について)「最も好ましい」範囲からの選択であっても,技術的に有利なもの,不利なものが存在することは自明のことであるところ,被告らは,あえて不利なものを選択している。
ウ 「特許請求の範囲に記載された成分を用いることの理由付けが記載されていないことについて (上記「被告らの主張 」ウ)について 」( )発明の特許要件として,発明のメカニズムを明らかにすることは要求されていない。
エ 「特許請求の範囲に記載された成分及び数値についての根拠が記載されていないことについて (上記「被告らの主張 」エ)について 」( )数値限定のみをもって発明の特徴とする典型的な数値限定発明でない限り,その数値限定の意味を逐一明らかにする必要は認められない。
? 争点?(本件特許権は,その出願手続において不正な手段が用いられており,権利行使することは権利の濫用に当たるか )について。
(被告らの主張)ア 本件特許明細書における実施例の記載本件明細書は【請求項1】のほか 【発明の詳細な説明】に【産業上の ,利用分野 【0001 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】 】】,【】,【】 【】,【】, 0002 発明が解決しようとする課題 0003 0004【0005 【0006 【0007】と続き 【0008】〜【001 】,】,,3】において,実施例と比較例の比較を行っている。
実施例と比較例はいずれも「アルミフィン成形専用50トンプレス( 社製)を用い,打抜実験を行った」ものであり( 0009】Burr Oak【実施例1 0010 比較例1 0011 比較例2 その結果が 0 ,【】,【】),【012】表1に示されている 【0013】は,表1の説明であり 「臭 。,」。【】 気 についての5人の感応結果も記載されている それに続く 0014は【発明の効果】である。
本件明細書の記載は,以上のとおりであるから,本件発明の特許性(技術上の新規性,進歩性)は,実施例1と比較例1,2の比較によって裏付けられている。
イ 「アルミフィン成形専用50トンプレス( 社製 」の不存在とBurr Oak)原告の対応被告らは,本件発明の追試を試みようとしたところ,本件明細書に記載された実施例1,比較例1及び比較例2の打抜加工実験に用いられた「アルミフィン成形専用50トンプレス(社製 」は,本件特許の特Burr Oak)許出願当時から現在に至るまで販売されていないことが明らかとなった。
そこで,被告らは,平成16年2月4日の第2回弁論準備手続期日において,被告ら準備書面?を陳述し,同準備書面において 「アルミフィン,成形専用50トンプレス( 社製」は,本件特許の特許出願当時Burr Oak)から現在に至るまで販売されていないこと,現在利用可能な 社Burr Oakのプレス機は30トンと60トンであり,被告らは実験方法を検討中であること を述べるとともに 社への問合せの結果を含む報告書 乙 ,, (Burr Oak2)を提出した。
これに対し,原告は 「 社製アルミフィン成形専用50トンプ ,Burr Oakレス機」の存在あるいは上記報告書の疑問点を主張することもなく,打抜実験は30トンでも60トンでも構わない旨を述べ,その後の準備書面においても,同様の主張を繰り返している。
ウ 特許明細書の虚偽記載Burr Oak上記の原告の対応及び アルミフィン成形専用50トンプレス 「(社製 」が現在に至るまで販売されていないことに照らし,本件明細書に )記載された実施例1,比較例1及び比較例2の打抜加工実験は行われていないといわざるを得ず,少なくとも,同明細書に記載された条件では行われていない。
本件においては,上記実験は,特許発明の特許性(技術上の新規性,進歩性)を裏付ける重要なものであるから,これに関する虚偽の記載の存在により,米国特許法のフロードにおけるクリーン・ハンドの原則を参考として,同原則,あるいは,権利濫用の法理に基づき,原告による本件特許権に基づく差止請求,損害賠償請求は,許されないというべきである。
(原告の主張)ア 被告らの上記主張の根拠は,実施例に記載された「アルミフィン成形専用50トンプレス( 社製 」は存在しないということに尽きるよBurr Oak)うである。
イ しかし,本件発明は,各潤滑油成分を構成要件とする塑性加工用潤滑油剤についての発明であり,特定のプレス機をその構成ないし前提とするものではないし,実施例に記載された「アルミフィン成形専用50トンプレス( 社製 」以外のプレス機で本件発明が実施できないなどといBurr Oak)うことは全くない。
ウ 本件特許の出願(原出願)につながる研究開発の過程で,原告は,取引関係等のある複数のアルミフィン製造メーカーの工場において実機試験を行っており,本件明細書の実施例及び比較例における打抜加工実験は,すべて上記の実機試験の結果によるものである。
ただ,実験がなされてから既に15年以上が経過し,また,上記の試験は第三者たるアルミフィン製造メーカーの設備を間借りする形で実施されたものであるため,当時用いられたプレス機の詳細を現時点で正確に特定することはもはや困難であり,しかも,本件明細書の「アルミフィン成形専用50トンプレス 社製)を用い との記載に何らかの誤記 例 (」 (Burr Oakえば最大荷重トン数)が存する可能性も完全に排除することはできない。
そもそも,本件明細書の上記記載は「アルミフィン成形用プレスを用い」という程度の意味しか持たないものであって(少なくとも当業者は必ずそう理解する ,上記のような誤記が仮にあったとしても,本件発明の実施 )可能性や技術的範囲は何ら影響を受けるものではない。
? 争点?(実施料相当額)について(原告の主張)ア 被告エヌ・エスに被告各製品の販売を移管するまでの期間について被告昭和シェル及び被告日興産業が共同して被告各製品の製造販売を開始したのは,遅くとも平成4年ないし平成5年ころである。
本件特許の出願公告日(平成7年8月23日)から,被告エヌ・エスに被告各製品の販売を移管する平成11年1月31日までの間における,被告各製品の販売金額の総額は,21億円を下らない。
被告昭和シェル及び被告日興産業は,上記の期間,本件特許権に対する通常の実施料(10パーセント)を支払うことなく被告各製品を製造販売したことにより,2億1000万円(21億円×0.1)の利得を得,原告は,上記実施料を得ていないから,上記同額の損失を被った。
イ 被告エヌ・エスに被告各製品の販売を移管した後の期間について被告らが共同して被告各製品の製造販売を開始した平成11年2月1日から,本件訴訟の提起の日から遡って3年以内の日である平成12年10月31日までの間における,被告各製品の販売金額の合計は,6億8000万円を下らない。
被告らは,上記の期間,本件特許権に対する通常の実施料(10パーセント)を支払うことなく被告各製品を製造販売したことにより,6800万円(6億8000万円×0.1)の利得を得,原告は,上記実施料を得ていないから,上記同額の損失を被った。
ウ 海外への直接販売分に関する主張について被告昭和シェル及び被告エヌ・エスは,海外向けの被告各製品を販売しているが,被告ら自身が直接海外にすべて輸出しているのではなく,輸出を行う第三者に対し,国内で,いったん被告各製品を販売しているのである。
したがって,被告らが,販売価額の相当部分を海外への直接販売分として除外した数字を主張することには,正当性がない。
エ 製造元が販売した後の販売に関しては実施料の支払はない旨の主張について被告らは,通常,特許権者から実施権を付与されて製品を製造・販売する場合には,製造元が実施契約を結び,実施品の倉出し価格の総額に対して実施料を支払い,その後の販売に関しては,実施料を支払わないと主張する。
しかし,被告らの上記主張は,特許権侵害訴訟における不当利得額の算定に対する反論としての意味を持たない。被告らの侵害行為により原告が被った損失及び被告らが得た利得とは,侵害行為をそれぞれ行っている各被告が侵害行為により得た利得の総計であり,これを被告日興産業の利得に限る根拠は全く存在しない。
オ 不当利得返還義務が連帯債務となることについて( ) 被告エヌ・エスに被告各製品の販売を移管するまでの期間についてア被告昭和シェルは,平成7年8月23日から平成11年1月31日までの期間に,被告日興産業に対し,被告各製品の製造を委託し,被告日興産業は,被告各製品を製造した上で,被告昭和シェルにこれをすべて販売し,被告昭和シェルは,買い受けた被告各製品に自社のブランドを付して第三者に販売した。
よって,被告昭和シェルの行為と被告日興産業の行為との間には,密接な関連共同性が認められ,民法719条1項前段に該当する。
また,権利者と複数の共同的権利侵害者の間で不当利得返還請求権が成立する場合,不当利得返還請求を受ける当事者間に目的に向けての共同体が形成されているときは,不当利得返還請求にも不真正連帯債務関係が認められるべきところ,被告昭和シェルの行為と被告日興産業の行為との間の密接な関連共同性からすれば,本件において,目的に向けての共同体の形成は十分に認められる。
したがって,被告昭和シェル及び被告日興産業は,上記の期間における本件特許権の侵害行為によって生じた原告に対する不当利得返還義務について (不真正)連帯債務を負っている。 ,( ) 被告エヌ・エスに被告各製品の販売を移管した後の期間についてイ被告昭和シェルは,平成11年2月1日をもって,国内ユーザー各社に対する被告各製品の販売活動を,被告昭和シェルと被告日興産業との合弁企業である被告エヌ・エスに移管し,同日以降,被告日興産業は,新たな製造委託に基づき,被告各製品を製造した上で,被告エヌ・エスと被告昭和シェルにこれをすべて販売し,被告昭和シェル及び被告エヌ・エスは,買い受けた被告各製品に自社のブランドを付して,それぞれ相互補完的に第三者に販売している。
よって,被告らの行為の間には,密接な関連共同性が認められ,民法719条1項前段に該当する。
したがって,被告らは,平成11年2月1日から平成12年10月31日までの期間における本件特許権の侵害行為によって生じた原告に対する不当利得返還義務について (不真正)連帯債務を負っている。 ,(被告らの主張)ア 平成7年8月23日から平成11年1月31日までの期間は,被告日興,。 産業が被告各製品を製造し 被告昭和シェルが被告各製品を販売していた上記期間における被告日興産業の被告昭和シェルへの販売金額の総額は,8億1579万2210円である。そして,上記期間における被告昭和シェルの国内特約店あての販売金額は,8億8497万8070円である。
イ 平成11年2月1日から平成12年10月31日までの期間は,被告日興産業が被告各製品を製造し,被告昭和シェル及び被告エヌ・エスが被告各製品を販売していた。
上記期間における被告日興産業の被告昭和シェル及び被告エヌ・エスへの販売金額の総額は,5億2232万4000円である。そして,上記期間における被告エヌ・エスの販売金額は,4億5735万3400円である。
上記期間における被告昭和シェルの販売先は,すべて国外の特約店であり,国内の特約店には販売されていない。
,, ウ 通常 特許権者から実施権を付与されて製品を製造・販売する場合には製造元が実施契約を結び,実施品の倉出し価格の総額に対して実施料を支払い,その後の販売に関しては,実施料を支払わない。
エ 被告各製品のような石油製品は,薄利多売の製品であり,石油製品に関する特許の実施料は,極めて低いのが一般的であって,通常1ないし2%程度である。実際に,上記ア及びイの期間における被告各製品の製造・販売についても,十分に損益分岐点に達せず,赤字となっている。
実施料の算定に当たり,実施許諾対象製品に対する特許発明の寄与の程度が考慮されることは,当然のことである。そして,本件発明が被告各製品の売上げに寄与するところがないことは,後記?の「 被告らの主張 」()ウのとおりである。
? 争点?(損害の発生の有無及びその額)について(原告の主張)ア 被告らは,本件訴訟の提起の日から遡って3年以内の日である平成12年11月1日から被告らが被告各製品の製造販売を停止したと主張する平成16年8月31日までの期間,故意又は過失により,被告各製品の製造販売を共同して行い,本件特許権を侵害した。
被告らが,上記の期間に製造販売した被告各製品の量の合計は,1万1700キロリットルを下らない。そして,原告は,上記販売数量を含めた数量の本件発明の実施品を製造販売する能力を有しており,被告らによる本件特許権の侵害行為がなければ,上記販売数量と同量の潤滑油剤を製造販売することが可能であり,その1リットル当たりの利益の額は,88円である。
したがって,被告らによる上記の期間における本件特許権の侵害行為により原告が受けた損害の額は,10億2960万円(1万1700キロリットル×1000×88円/リットル)を下らない(特許法102条1項。)イ 原告は,被告らの本件特許権の侵害行為のために本件訴訟の提起を余儀なくされ,原告訴訟代理人らに支払を約した弁護士費用相当額の損害を被った。
本件事案の性質,内容等にかんがみれば,被告らに対する本件差止請求及び損害賠償請求のために要し,又は要する弁護士費用のうち7000万円は,本件特許権の侵害行為と相当因果関係のある損害に当たる。
ウ 被告らの行為の間には,密接な関連共同性が認められ,民法719条1項前段に該当することは,上記?の「 原告の主張 」オ( )のとおりであ ()イる。
したがって,被告らは,本件特許権の侵害行為によって生じた原告に対する損害賠償義務について (不真正)連帯債務を負っている。 ,(被告らの主張)ア 被告各製品の製造・販売数量平成12年11月1日から平成15年10月31日までの期間は,被告日興産業が被告各製品を製造し,被告昭和シェル及び被告エヌ・エスが被告各製品を販売していた(なお,被告日興産業は,平成16年8月31日,,,, をもって 被告各製品の製造を停止し被告エヌ・エスは 同日をもって,, , 被告各製品の販売を停止し 被告昭和シェルは 同年1月31日をもって被告各製品の輸出を停止した 。。)上記期間における製造数量は,8785キロリットルであり,販売数量は,被告昭和シェル及び被告エヌ・エスの両社で合計7843キロリットルである。
,, なお 上記の期間に被告エヌ・エスが海外に直接販売した被告各製品は2400.420キロリットルである。
イ 特許法102条1項にいう「利益」いわゆる粗利を特許法102条1項にいう「利益」とすることは,原告に実際以上の利益を与えることになるため,損害賠償請求においては,いわゆる粗利を「利益」とすることは認められない。
原告の利益については,原材料費のみならず販管費(製造費,荷造運賃費,販売経費,一般管理費等)を考慮して考えるべきところ,原告の実施品の利益率は,多く見ても2%前後である。
原告の主張によれば,原告の実施品の利益率は47.45%となるが,このような高い利益率は法外なものであり,被告らや当業に従事する他社の計算書類により公表されている利益実績,特約店を介在した取引形態という当業界の取引慣行及び原告の実施品の取引の実情に照らし,到底認められるものではない。
ウ 本件発明の寄与の程度( ) 特許法102条1項ただし書は,侵害者の営業努力その他の要因にアより 「侵害者の譲渡数量=権利者の喪失した販売数量」とできない事 ,情を侵害者が立証すれば,その事情に応じた額を控除する趣旨の規定であるから,侵害された特許発明侵害品の売上げにどの程度寄与したかの問題を同項ただし書の適用により解決することができる。
( ) 被告各製品の売上げは,次のとおり,被告各製品の性能(品質)にイよるのであって,本件発明の作用効果によるものではない。
a 被告各製品は,アルミフィンの加工工程における洗浄工程を不要とするものであり,このことは,被告各製品の売上げに大きな影響を与えている。
,, , これに対し 本件発明の作用効果は加工性の向上や脱脂性であり洗浄工程を不要とすることは,本件発明の作用効果ではない。
b アルミフィンの加工工程においては,加工油による作業者の手荒れが大きな問題となっているところ,被告各製品は,手荒れ防止の効果が顕著であり,このことは,被告各製品が購入される大きな動機となっている。
手荒れ防止が本件発明の作用効果ではないことはいうまでもない。
( ) 被告各製品は,市中において大量に販売される製品ではなく,発注ウ者の注文に応じて納品されるものであり,その性能要請に応じて製品の性能(品質)が決定される。
本件発明の作用効果は漠然としており,その構成も漠然としたものであるから,本件発明のみで発注者の要求する性能及び品質に応じることはできない。
したがって,被告各製品の売上げは,販売者の営業努力及び市場開発努力によるものであって,本件発明によるものではない。
争点に対する当裁判所の判断
1 争点?ウ(進歩性の有無)について本件については,事案の内容にかんがみ,まず争点?ウから判断する。
? 引用例10についてア 引用例10(乙19)には,次の記載がある。
( ) 「本発明はアルミニウム製品の加工に関するものである。特に詳しアくは,本発明は加工工程中,加工部材とアルミニウム材の間の摩擦面にオレフィンのある群のものを用いて摩擦状態の下にアルミニウムを加工する技術の改良に関する。
アルミニウム製品,例えばフィルム,フォイル等を含むアルミニウム,,,, シート アルミニウムワイヤを加工する際 アルミニウムを切削 押出プレス,スタンピング,鍛造する際等々においては,加工部材とアルミニウムとの間の界面の潤滑には様々な困難があった (1欄10ない。」し23行)( ) 「上記目的のために有益であることを私どもが明らかにした(かつイ顕著な刺激性又はその他の生理的効果を持たない)組成物は,以下の一般式をもつ少なくとも炭素数10の長鎖オレフィンである(以下「オレフィン」又は「オレフィン組成物」と称する 。)(I)上記一般式において,R,R’は水素,フッ素からなる群から選ばれた基であり,その上に,R’はメチル基,フルオロメチル基,ジフルオロメチル基及びトリフルオロメチル基からなる群から選ばれた基であってもよく,R”は少なくとも8個の炭素原子を持つ直鎖アルキル基,及び少なくとも8個の炭素原子を持つ直鎖フルオロアルキル基とからなる群から選ばれた,1価の直鎖飽和脂肪族基である。R”は炭素原子数が35を越えないことが望ましいが,それ以上の長鎖基も使える (1。」欄62行ないし2欄10行)( ) 従って 加工用部材の加工又は工作の結果として 上記部材が 酸ウ「, , (化アルミニウム皮膜が破れた後に)新鮮なアルミニウム表面とただ一度だけ接触するアルミニウムの工作条件下で,加工を受けるアルミニウム片と加工部材との間の摩擦界面にこれらの長鎖オレフィンを導入する,(,,,) と アルミニウムの加工 それが圧延 切削 押出 引き抜き等の場合を行うのに必要な力が大幅に減少した;更に,アルミニウムが加工部材に付着した形跡はなかった;そして更に,このようなオレフィンによって,加工されたアルミニウムは高度に研磨された表面となったことを見出したのは驚くべきことであった。上記目的に対してこれらの長鎖オレフィンを使用すると,アルミニウムの加工の後に,検出可能な残留汚染物を残すことなく,この長鎖オレフィンは比較的温和な条件下で,アルミニウム表面から容易に蒸発できるのが普通であると言う更なる利点を有することも見出された。このことにより,圧延アルミニウムシート又は箔の加工の際に使用される通常の組成物を凌ぐ著しい改善が得られた,と言うのはアルミニウム表面の汚染を防ぐために加工後にアルミニウムから潤滑剤を除去するために比較的厄介な工程が必要だからである。最後に,これらの潤滑剤は,工具を清浄にすることに,研磨することに,及び交換することに割かれる時間を大幅に短縮し,工具の寿命を著しく延ばす (2欄29ないし55行) 。」( ) 「 分岐鎖状化合物と対比して)上記一般式(I)に示された直鎖エ(の化合物には,以下のものが含まれる,例えば,デセン-1,ドデセン,, ,, -1 テトラデセン-1 α-メチルテトラデセン-1 ドデセン-2テトラデセン-2,ペンタデセン-1,ヘキサデセン-1(セテン ,)α-メチルヘキサデセン-1,オクタデセン-1,オクタデセン-2,,, , 1-フルオロテトラデセン-1 12-ジフルオロテトラデセン-1,,, 1-フルオロヘキサデセン-1 トリフルオロ-ヘキサデセン-1 11,1,2-テトラフルオロヘキサデセン-2,等々パラフィン製品のクラッキングから得られるそのようなオレフィン類,又はフィッシャー・トロプシュ( )プロセスにより得られるこれらのオレFischer-Tropschフィン類の混合物も同様である(2欄56ないし66行) 。」( ) 「製造が容易なこと,合成原料が容易に入手できること,及びそれオらの原料の安定性,並びに潤滑剤として及び他の公知の潤滑剤への添加剤として優れた特性のために,オレフィン系材料として,12〜25個の炭素原子の鎖長で1-又は2-の位置にオレフィン系不飽和結合を有する直鎖不飽和脂肪族炭化水素を使用することが好ましい。
,, 上記オレフィンは 単独あるいはこれらの混合物として使用できるし或いはこれらのオレフィンは,アルミニウムの加工の際に改善をもたらすオレフィンの能力に顕著に影響しないその他の稀釈剤及び展延剤と混。, , , 合してもよい かくして これらのオレフィン類は 潤滑油粘度の鉱油ジエステル組成物等と混合される(2欄67行ないし3欄10行) 。」「, ( ) 上記溶剤又はその他の潤滑油組成物に対するオレフィンの濃度はカ溶液又は混合物の総重量の10〜95重量%の範囲なら使用に好都合である (3欄22ないし26行) 。」( ) 「オレフィン組成物が混合される典型的な鉱油又は炭化水素油は,キ25〜10,000セイボルトユニバーサル秒(S.U.S )の粘度.を持つ石油から得られたものであるが,これは単一の炭化水素でも炭化水素混合物でもよい (3欄31ないし35行) 。」( ) 特許請求の範囲ク「1.切削,圧延,引き抜き及び押出から成る群から選ばれる加工方法に用いる加工部材とアルミニウム材を接触することによるアルミニウム材の加工方法において,加工部材とアルミニウム材との間の界面に,下記の一般式を有し本質的に単量体オレフィンから成る皮膜を供給( )することを特徴とする改良方法。supplying(式中,R’は水素及びメチル基から成る部類から選ばれる基であり,R”は8〜20個の炭素原子を有し,実質的にアルキル基の全ての炭素が直鎖の中にある一価のアルキル基である )。
2.圧延ロールと圧延対象のアルミニウムとの間の界面に,下記の一般式の本質的に単量体オレフィンから成る皮膜を供給することを特徴とするアルミニウムの圧延方法。
(式中,R’は水素及びメチル基から成る部類から選ばれ,R”は8〜20個の炭素原子を有し,実質的にアルキル基の全ての炭素が直鎖の中にある一価のアルキル基である (7欄57行ないし8欄14行) 。)」イ 上記アの記載からすると,引用例10には,アルミニウム製品に圧延等の加工を行う際の潤滑に用いられる組成物において,その成分として,上記ア( )の一般式(T)で表される炭素数が10以上の長鎖オレフィン1イ0ないし95重量%及び25ないし10,000セイボルトユニバーサル秒(S.U.S )の粘度を持つ石油から得られた鉱油又は炭化水素油を .含有するものが記載されているものと認められる。そして,圧延及び引抜きは,上記第2の1?のとおり,塑性加工に含まれる。また,上記一般式(T)の組成物は,R及びR’を水素とすれば,炭素数が10以上の直鎖オレフィンとなるから,上記一般式(T)の組成物には,炭素数が10以上の直鎖オレフィンが含まれる。さらに,粘度換算についての報告書(乙38)によれば,32.6S.U.S.は2.0cStに相当し,10,000S.U.S.は2160cStに相当し,25ないし10,000S.U.S (上記ア( ))は,少なくとも2.0ないし2160cSt .キの範囲を包含するものであることが認められる。
ウ よって,本件発明と,引用例10発明とは,塑性加工用の潤滑油剤において,炭素数が10以上の直鎖オレフィン10ないし50重量%を含有するものが含まれる点で一致又は重複し,潤滑油剤の直鎖オレフィン以外の成分が,本件発明では,40℃における動粘度が0.5ないし30cStの分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であるのに対し,引用例10発明では,鉱油又はジエステル組成物等であり,その粘度が「潤滑油粘度」とされていて,オレフィン組成物が混合される典型的な鉱油又は炭化水素油が,2.0ないし2160cStの粘度を持つ石油から得られたものとされている点で相違する。
? 引用例9についてア 引用例9(乙13)には,次の記載がある。
( ) 「潤滑油,グリースの使命は,いうまでもなくすべり合う金属どうアしを油膜によって分離し,摩擦,摩耗を減少させ焼付きを防止することにある。しかしながら,潤滑条件がか酷になるとこの油膜は熱的あるいは機械的に破壊され,もはや潤滑作用を示さなくなり,著しい摩擦あるいは摩耗の増大をもたらし,ついには焼付きに至る。このような境界潤extreme滑条件下において 潤滑油に潤滑性能を与えるのが極圧添加剤 ,()と総称される一連の添加剤である。pressure additives従来,この種の添加剤は,吸着膜によって摩擦,摩耗を減少させる油性向上剤( )と,化学反応の結果生成する被膜によっoiliness improversて焼付きを防止する極圧添加剤とに分類されていたが,現在は,油性向上剤と極圧添加剤を総括して極圧添加剤と称するようになってきた 」。
(343頁左欄2ないし16行)( ) 「油性剤としては,古くからオレイン酸などの高級直鎖脂肪酸あるイいは高級アルコール,アミン,エステル,グリセライド,さらには塩素化油脂,硫化油脂などが用いられてきた (347頁右欄12ないし 。」15行)( ) 「以上で述べた油性剤は,現在でも広く使用されているが,最近でウはα-オレフィン,あるいは芳香族化合物の油性剤としての効果が注目R.S.OWENS cetane 1-cetane ethyl stearate vinyl stearateされている らは。,,,,,, を潤滑剤として ステインレスの潤滑に対する二重結合の影響を検討し表6の結果を得ている。表6に示されるように, は炭素鋼,ニ1-ceteneッケルに対してはあまり効果はないが,クロムおよびスティンレス鋼に対しては著しい摩擦減少効果を示している。この作用機構としては,摩擦面でα-オレフィンの二重結合が開きクロムあるいはクロム酸化物と化学的に結合し,強固な化学吸着膜を形成し,焼付きを防止しているものと説明されている。また,α-オレフィンはアルミニウムの潤滑に対しても有効に作用するといわれている (347頁右欄21ないし3 。」5行)イ 上記アの記載からすると,引用例9は,α-オレフィンが油性向上剤としての効果を有し,アルミニウムの潤滑に対しても有効に作用することを開示している。
? 引用例1についてア 引用例1(乙6)には,次の記載がある。
( ) 「潤滑油にアルキルペンタエリトリトールホスフアイトの1種以上アとホスホン酸エステルの1種以上を配合させた冷間加工用潤滑剤を被加工材の表面に塗布し,被加工材表面にアルキルペンタエリトリトール及びホスホン酸エステルと被加工材との反応によつて形成される膜の存在の下に被加工材の塑性加工を行うことを特徴とするアルミニウム塑性加工方法 (1頁特許請求の範囲請求項3) 。」( ) 「本発明は,アルミニウムあるいはアルミニウム合金の冷間鍛造にイ好適な潤滑剤及びそれを用いた塑性加工方法に関する (1頁右下欄。」4ないし6行)( ) 「本発明に用いられるアルキルペンタエリトリトール及びホスホンウ酸エステルの作用について述べると概略以下の通りである。すなわち,アルキルペンタエリトリトールは,被加工材または金型加工面などに吸着し,油性向上剤として働くもので,加工開始時のような低温,低面圧条件における金属同士の接触を防止するものであり (3頁左上欄8な」いし14行)( ) 「本発明のベース油として用いられる潤滑油は,鉱油の他に,αオエレフイン油,モノエステル油,ポリブテン油,ポリグリコール油などの合成油及びこれらの混合油が例示される(3頁右上欄5ないし8行) 。」イ 引用例1の4頁の表には,潤滑剤の例として,鉱油,ジオクチルセバケート,トリメチロールプロパントリカプリレート及びポリブテンが記載されている。
ウ 上記ア及びイの記載からすると,引用例1は,アルミニウム塑性加工に用いられ,油性向上剤及びベース油からなる潤滑剤において,ベース油として,鉱油のほか,ポリブテンが用いられることを開示している。
? 引用例11についてア 引用例11(乙36)には,次の記載がある。
( ) 「イオウ含有量50ppm以下の多段接触水添炭化水素油,流動パアラフイン,ポリオレフインまたはアルキル化芳香族化合物のうちの少くとも1種類を潤滑油基油として含有する潤滑油組成物 (1頁特許請。」求の範囲請求項?)( ) 「本発明の他の目的は実際の使用条件下でオイルステインの発生のイない金属加工用潤滑油,特に防錆油,圧延油,切削油,摺動面油を提供することである (2頁左下欄2ないし5行) 。」( ) 「ポリオレフインとしては分子量200〜2500の水素化されてウいるかまたはされていないポリブテン,ポリイソブチレン,ポリプロピレンが使用できる。例えば出光石油化学叶サ出光ポリブテンあるいは出光IP-ソルベント等が好適である (3頁左上欄下から3行ないし 。」右上欄3行)( ) 「実施例 1エ下記表2に示す試料を用いてオイルステインの実験を行なつた。試料1〜4は本発明による潤滑油組成物である。5,および6は比較品として1段接触水添油を主成分として用いた潤滑油組成物であり,7は市販のさび止め油である。
表2・・・試料1,2,4,5,7の性状を表3に示す。
試 料番 号試 料 組 成1 2段接触水添油(100%)2 3段接触水添油(100%)3 1+酸化防止剤D.B.P.C.(0.5wt%)4出光I.P.-ソルベント2835(100%)5 1段接触水添油(100%)6 5+酸化防止剤D.B.P.C.(0.5wt%)7 市販さび止め油発明品比較品表3(4頁左上欄6行ないし左下欄) 」イ 上記アの記載からすると,引用例11は,潤滑油の基油として用いられ,, るポリオレフィンは 水素化されているものも水素化されていないものも同様に用いられることを開示している。
? 容易想到性についてア 引用例9には,上記?イのとおり,α-オレフィンが油性向上剤としての効果を有することが開示されており,引用例9の上記?イ( )で例示さウ,, れた は 引用例10の上記?ア( )で例示されたものであるから1-ceteneエ当業者であれば,引用例10における「長鎖オレフィン」が油性向上剤として機能するものであり,引用例10の上記?ア( )の「他の公知の潤滑オ剤への添加剤として優れた特性」との記載が油性向上剤としての特性を指。, , すものであると理解することができるそうすると 引用例10において潤滑油剤の直鎖オレフィン以外の成分である「鉱油又はジエステル組成物等」が,潤滑油組成物における基油に相当するものであることも理解することができる。
イ 引用例1には,上記?ウのとおり,アルミニウム塑性加工に用いられ,油性向上剤及びベース油からなる潤滑剤において,ベース油として,鉱油のほか,ポリブテンが用いられることが開示されており,引用例10発明及び引用例1発明は,いずれも,アルミニウム製品の塑性加工用の潤滑油剤に関する発明であるから,引用例10発明において,潤滑油組成物における基油である鉱油又はジエステル組成物等に代えて,引用例1に鉱油と試料1 試料2 試料4 試料5 試料7粘度cst (37.8℃)8.324 8.022 12.3 8.329 2.678いおう分 wtppm7 3 <5 220 2100同等のベース油として明示されているポリブテンを用いることは,当業者が容易に想到し得るものである。
なお,ポリブテンが分岐オレフィン又は分岐オレフィンの水素化物に該当することは,本件明細書に「本発明において(B)成分として用いられる分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物とは,上記直鎖オレフィン(A)以外のオレフィン及びこのオレフィンの水素化物をいう。これらは,一般に潤滑油剤の基油として用いられる合成油の一種であり,具体的には,例えばポリブテン,ポリプロピレン等の分岐オレフィン,その水素化物,あるいはこれらの混合物などが挙げられる (3欄26ないし3 。」3行)と記載されているとおりである。
そして,引用例11には,上記?イのとおり,潤滑油の基油として用いられるポリオレフィンとしては,水素化されているポリブテンも水素化されていないポリブテンも,同様に用いられることが開示されている。
以上のことからすると,引用例10発明において,引用例1発明を組み合わせて,直鎖オレフィン以外の成分として,分岐オレフィン又は分岐オレフィンの水素化物を用いることは,当業者にとって容易に想到できたことといえる。
ウ 次に,動粘度に関しては,引用例3に 「1.5〜4.5cst/40 ,℃の粘度をもつ鉱物油をベースオイルとし,更に油性を向上さすため高級アルコール,高級脂肪酸,高級脂肪酸のエステル等を添加する (29。」0頁右欄45行ないし291頁左欄2行 「冷間圧延油は1.5〜4. ),5cst/40℃の粘度の鉱物油をベースオイルとし,これに油性向上剤として高級アルコール(C 〜C )高級脂肪酸(C 〜C )高級脂肪10 18 12 18酸のブチルエステルあるいはメチルエステル等を添加したものがある 2」(96頁左欄8ないし12行)との記載があり,引用例6に 「鉱油として,はステンレス鋼用には比較的粘度の高いもの(たとえば100〜150SSU 100゜F アルミニウムの冷間用には比較的粘度の低いもの 3 ,),(0〜55SSU,100゜F)が使用される (636頁左欄1ないし 。」5行 「SSU」は 「SUS」の誤記と認められる )との記載があり, 。, 。
「トライボロジー叢書1 新版潤滑の物理化学(第二版 (乙37))」に,引用例1において潤滑油の基油として鉱油と並んで記載されているジオクチルセバケート(上記?イ)の100゜Fにおける粘度が12.5cStであることが記載されている。そして,100゜Fは,ほぼ37.8℃に相当し,粘度換算表(乙38)によれば,100ないし150SUSは,ほぼ21ないし32cStに相当し,30ないし55SUSは,少なくとも2.0ないし8.5cStの範囲を含むものであることが認められる。
そうすると,潤滑油組成物の基油の粘度として,引用例3には,40℃で1.5〜4.5cStのもの,引用例6には,ステンレス鋼用として約38℃で21〜32cStのもの,アルミニウム冷間用として約38℃で2.0〜8.5cStのもの,引用例1には,約38℃で12.5cStのものが,それぞれ開示されているものと解される。
他方,本件明細書の記載によれば 「40℃における動粘度が0.5な ,いし30cSt」という数値範囲が示されているものの,その上限値及び下限値について,本件発明が有するとされる各作用効果に関し,技術的観点からどのような臨界的意義が存するかは,全く開示されておらず,その示唆もない。
したがって,本件発明において,潤滑油組成物における基油に相当する「分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物」の動粘度を「40℃における動粘度が0.5ないし30cSt」と規定している点は,前記の各引用例における数値範囲の開示を考慮すれば,当業者がアルミニウムの塑性加工において,通常使用する潤滑油の基油の粘度範囲を規定したものにすぎず,格別の範囲を規定したものではないものと認められる。
したがって,引用例10発明に引用例1発明を組み合わせた場合に,当業者が,その分岐オレフィン又は分岐オレフィンの水素化物の動粘度を,40℃で0.5ないし30cStとすることに,格別の困難性はないものといえる。
エ よって,本件発明と引用例10発明との相違点に係る構成は,引用例1,,, , 発明に基づき 引用例3 6 9及び11の各記載を考慮することにより当業者が容易に想到し得るものと認められる。
オ また,本件発明の有する加工性の向上という効果は,引用例10発明に開示されているα-オレフィンについて,これが油性向上剤としての効果を有する旨の引用例9の記載から容易に予測されるものであり,加工製品の表面の脱脂性の向上という効果も,引用例10の上記?ア( )の記載のウように,既知の効果であるか,引用例10発明に引用例1発明を組み合わせた潤滑油剤の構成が奏する効果として容易に予測し得るものにすぎず,それが格別のものであるとは認められない。
カ 以上のアないしオの説示に照らし,本件特許の出願当時,直鎖オレフィンは当業者には油性剤として認識されていなかったと考えるのが自然であり,仮に,そのような認識があったとしても,引用例10発明,引用例9発明,引用例1発明及び引用例11発明を組み合わせて本件発明を導く合理的動機付けが存在しないし,仮にそのような動機付けがあり,上記各引用例発明を組み合わせたとしても,本件発明の構成要件をすべて具備した潤滑油組成物には到達し得ず,さらに,本件発明に係る潤滑油組成物は,上記各引用例発明からは予期できない顕著な効果を奏する旨の原告の主張を,いずれも採用する余地がないことは明らかといえる。
,, , したがって 本件発明は 引用例10発明に引用例1発明を組み合わせ引用例3,6,9及び11の各記載を考慮することにより,当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。
? 訂正の請求についてなお,原告は,上記第2の1?のとおり,無効審判事件において,本件訂正請求をしたが,同訂正請求を認める旨の審決が確定したとしても,訂正後の本件発明は,次のとおり,引用例10発明に引用例1発明を組み合わせ,引用例3,6,9及び11の各記載を考慮することにより,当業者が容易に発明をすることができたものである。
ア 本件訂正後の本件発明と,引用例10発明とは,アルミニウム製品加工用の潤滑油剤において,1-オクテン,1-デセン,1-ドデセン,1-テトラデセン,1-ヘキサデセン,1-オクタデセン及び1-エイコセンから選択される直鎖オレフィン10ないし50重量%を含有するものが含まれる点で一致又は重複し,@潤滑油剤の直鎖オレフィン以外の成分が,本件発明では,40℃における動粘度が0.5ないし30cStのポリブテン及びその水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であるのに対し,引用例10に記載された発明では,鉱油又はジエステル組成物等であり,その粘度が「潤滑油粘度」とされていて,オレフィン組成物が混合される典型的な鉱油又は炭化水素油が,2.0ないし2160c(「 」 Stの粘度を持つ石油から得られたものとされている点 以下 相違点@という )及びAアルミニウム製品の加工に関し,本件発明では,アルミ 。
フィン成形用と特定されているのに対し,引用例10に記載された発明で,(「」。 ) は アルミニウム製品の加工とされている点 以下 相違点A というで相違する。
イ 相違点@について相違点@については,上記?アないしエと同様である。
ウ 相違点Aについて引用例10は,上記?ア( )のとおり,様々な態様のアルミニウム製品アの加工があることを前提とし,加工対象のアルミニウムの形態も,様々なものがあることを前提としている また引用例10発明は 上記?ア( ) 。, ,アのとおり,アルミニウムの加工に際し,アルミニウム材と加工部材との間の摩擦面における潤滑の問題点の解消を試み,その課題解決のために,ヘキサデセン-1等のオレフィンを潤滑油組成物の成分として用いることを,, , 開示するものであるから 当業者は アルミフィンの成形加工についても同様の技術課題が存すると認識し得るものと認められる。また,本件訂正後の本件明細書において,アルミフィンの成形加工に関して,独自の技術課題が存することは何ら開示されておらず,その示唆も認められない。
したがって,当業者にとって,引用例10発明の潤滑油剤を,アルミニウム製品の加工のうち,アルミフィン加工の用途に限定した潤滑油剤として用いること(相違点A)に,何らの困難はないといえる。
エ したがって,本件訂正後の本件発明は,引用例10発明に引用例1発明,,, , を組み合わせ 引用例3 6 9及び11の各記載を考慮することにより当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。
? 上記?ないし?のとおり,本件発明は,引用例10発明に引用例1発明を組み合わせ,引用例3,6,9及び11の各記載を考慮することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許は,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであって,上記?のとおり,本件訂,,, 正後の本件発明も 引用例10発明に引用例1発明を組み合わせ 引用例36,9及び11の各記載を考慮することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は,同法123条1項2号の規定に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。
2 上記1のとおり,本件特許は,特許法123条1項2号の規定に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,同法104条の3第1項の規定により,被告に対し,本件特許権を行使することができない。
結論
以上によれば,原告の請求は,その余の点を判断するまでもなく,いずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
清水節裁判長裁判官山田真紀裁判官東崎賢治裁判官物件目録1次の?ないし?の製品名・型番号のいずれか又は両方を有する潤滑油剤(製品名のうち「フィンストック」は,英字表記「FINSTOCK」を含む),。
?「フィンストックRF190「T-7G08A」」,?「フィンストックRF190HS」?「フィンストックRF270「T-7F21C」」,2次の?ないし?の製品名・型番号のいずれか又は両方を有する潤滑油剤(製品名のうち「プロホーマー」は,英字表記「PROFORMER」を含む),。
?「プロホーマーK18A「T-7K18A」」,?「プロホーマーK18B「T-7K18B」」,?「プロホーマーK18C「T-7K18C」」,?「プロホーマーK18D「T-7K18D」」,
  • この表をプリントする