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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成14ワ5107特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成11ワ101特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成12ワ17298損害賠償等請求事件 判例 特許
平成13ワ21278特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成11ワ26599特許権侵害差止請求事件 判例 特許
関連ワード 相当の対価(相当な対価) /  公知技術 /  技術的範囲 /  先行技術 /  発明の詳細な説明 /  発明の概要 /  特許発明 /  実施 /  権原 /  加工 /  間接侵害 /  構成要件 /  差止請求(差止) /  侵害 /  侵害するおそれ /  組成した物 /  損害額 /  販売数量(販売数) /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  対価 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 8年 (ワ) 1635号 特許権侵害差止等請求事件
原告 中濃産業株式会社右代表者代表取締役 【A】 右訴訟代理人弁護士 伊神喜弘右補佐人弁理士 【B】
被告 関西ゴム産業株式会社右代表者代表取締役 【C】
被告 【C】
被告 【D】
被告 【E】右被告四名訴訟代理人弁護士 尾川雅清
同 権藤健一
同 田中千博右被告四名補佐人弁理士 【F】
同 【G】
同 【H】
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2000/12/12
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告関西ゴム産業株式会社は、別紙イ号物件目録及び別紙ロ号物件目録記載の各物件を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。
二 被告関西ゴム産業株式会社は、その保管にかかる別紙イ号物件目録及び別紙ロ号物件目録記載の各物件を破棄せよ。
三 被告関西ゴム産業株式会社は、原告に対し、金六七六万八四八六円及び内金六四八万二六六九円に対する平成八年二月二七日から、内金二八万五八一七円に対する平成一一年五月一日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告の被告【C】、同【D】及び同【E】に対する請求、並びに被告関西ゴム産業株式会社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
五 訴訟費用は、原告と被告関西ゴム産業株式会社との間においては、原告に生じた費用と同被告に生じた費用の各四分の三を原告の負担とし、その余を同被告の負担とし、原告と被告【C】、同【D】及び同【E】との間においては全部原告の負担とする。
六 この判決は、第三項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
一 被告関西ゴム産業株式会社は、別紙イ号物件目録及び別紙ロ号物件目録記載の各物件を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。
二 被告関西ゴム産業株式会社は、その保管にかかる別紙イ号物件目録及び別紙ロ号物件目録記載の各物件並びに同各物件の材料である外装タイヤ及び内装タイヤを破棄せよ。
三 被告関西ゴム産業株式会社は、別紙機械目録記載の複層タイヤ製造機を除去せよ。
四 被告らは、原告に対し、各自、金六一〇五万円及び内金五〇〇〇万円に対する平成八年二月二七日から、内金一一〇五万円に対する平成一一年五月一日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、発明の名称を「複層タイヤ」とする特許発明の特許権者である原告が、被告関西ゴム産業株式会社並びにその代表取締役及び取締役らであるその余の被告らに対し、被告関西ゴム産業株式会社の製造、販売する複層タイヤは同発明の技術的範囲に属すると主張して、その差止め等と損害賠償を請求した事案である。
一 争いのない事実等 1 原告は、タイヤの修理及び販売、自動車の販売及びリース、レンタル等を目的とする株式会社である。
被告関西ゴム産業株式会社(以下「被告会社」という。)は、生成ゴム材料の販売、中古タイヤの販売、産業廃棄物処分業等を目的とする株式会社であり、
被告【C】(以下「被告【C】」という。)はその代表取締役、被告【D】(以下「被告【D】」という。)及び被告【E】(以下「被告【E】」という。)はその取締役である。
2 原告の特許権 原告は左記特許権(以下「本件特許権」といい、特許請求の範囲1項の発明を「本件第一発明」、同3項の発明を「本件第三発明」、本件第一発明及び本件第三発明を合わせて「本件発明」という。)を有している。
(一) 発明の名称 複層タイヤ (二) 出願日 昭和五九年三月一六日(特開昭五九―五一五八九) (三) 出願公告日 平成二年八月三〇日(特公平二―三八四〇一) (四) 登録日 平成三年七月一五日 (五) 特許番号 第一六一〇八三〇号 (六) 特許請求の範囲は、別添特許公報(以下「本件公報」という。)の該当欄記載のとおりである。
3 本件第一発明及び本件第三発明は、次のとおり分説される。
(一) 本件第一発明 A クラウン部のトレッドパターンを切削して、ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑かに仕上げると共にタイヤ内部に装着された気密性を保つためのチューブの圧力に抗する内装タイヤと、
B 一方のサイドウォール部の中央よりビード部寄りで切断し、リムに固定するビード部を一方のみとした外装タイヤからなり、
C 上記外装タイヤの内部に上記内装タイヤを装着してなることを特徴とする複層タイヤ。
(二) 本件第三発明 A′ 外表面を滑かに仕上げ、タイヤ内部に装着された気密性を保つためのチューブの圧力に抗する内装タイヤと、
B′ 一方のビード部またはビード部及びレインフォース部を有せず、リムに固定するビード部を一方のみとした外装タイヤからなり、
C′ 上記外装タイヤの内部に上記内装タイヤを装着してなることを特徴とする複層タイヤ。
4 本件発明の作用効果は、外装タイヤの内部に内装タイヤを装着することによって、チューブの内圧が内装タイヤによって保持され、外装タイヤに受けた外傷は、内圧の影響を受けて広がることがないから、外装タイヤを摩耗するまで使用できることにある。
5 被告会社は、外装タイヤの内部に内装タイヤを装着してなる複層タイヤを製造、販売している(なお、右複層タイヤの構成については、後記第三、一のとおり、原被告間に争いがある)。
二 争点 1 被告会社が製造、販売した複層タイヤの性状について 2 被告会社が製造、販売した複層タイヤは、本件発明の技術的範囲に含まれるか 3 被告会社が台タイヤを製造、販売した行為は、本件特許権を侵害するといえるか 4 代表取締役及び取締役らの責任 5 損害の発生及び額 6 製品及び半製品の破棄並びに複層タイヤ製造機の除去請求について
争点に対する当事者の主張
一 争点1(被告会社が製造、販売した複層タイヤの性状について) 〔原告の主張〕 1 被告会社が製造する複層タイヤは、別紙イ号物件目録記載の複層タイヤ(以下「イ号物件」という。)又は別紙ロ号物件目録記載の複層タイヤ(以下「ロ号物件」という。)のどちらかのタイプのものである。
2 右事実は、次の各事実から明らかである。
(一) イ号物件に相当する複層タイヤ(検甲一)は、原告が株式会社佐藤工務店(以下「佐藤工務店」という。)に依頼し、同工務店から木村タイヤ株式会社(以下「木村タイヤ」という。)に対し、被告会社の製造した複層タイヤを一本注文してもらい、平成七年一一月二日に佐藤工務店に納入されたものである。
(二) ロ号物件に相当する複層タイヤ(検甲二)は、原告の補佐人である弁理士【B】(以下「【B】弁理士」という。)が大東建設株式会社の社長【I】(以下「【I】社長」という。)に依頼し、【I】社長から木村タイヤを介して被告会社が製造した複層タイヤを二本注文してもらい、平成八年二月五日ころ【B】弁理士の下に納入されたもののうちの一本である。
なお、木村タイヤは、トーヨータイヤ兵庫販売株式会社(以下「トーヨータイヤ兵庫販売」という。)に右複層タイヤに用いる再生タイヤ二本を注文し、
被告会社は、トーヨータイヤ兵庫販売から、平成八年一月二四日発送の右再生タイヤ二本を受領している。
(三) 原告は、平成九年二月一三日、吉田直土木株式会社(以下「吉田直土木」という。)阪奈作業所より、使用済みの複層タイヤ二六本を引き取ったところ、そのうち六本はイ号物件又はロ号物件に該当する複層タイヤであった。
右六本のタイヤは、西日本タイヤ株式会社(以下「西日本タイヤ」という。)が平成七年一二月二八日及び平成八年一月一二日に、被告会社から合わせて八本仕入れ、それを吉田直土木に納入したものである。
(四) 【B】弁理士は、平成一〇年五月二〇日、関西リサイクルセンターにおいて、被告会社が製造したと思われる切削したタイヤを確認した。
(五) 外装タイヤに一ランク下の規格の内装タイヤを装着するためには、内装タイヤのクラウン部からショルダー部にかけて丸みを持たせる必要があるから、
被告会社が製造する複層タイヤの内装タイヤの外表面も右のような状態になっていると考えられる。
〔被告らの主張〕 1(一) 原告の主張1は否認する。
(二)(1) 原告の主張2(一)について 検甲一の複層タイヤは原告のもとで外装タイヤと内装タイヤが分離されているから、製造、販売当時の形状を示す証拠とはならない。
また、検甲一が被告会社の製造したものであるということについては、「購入する際、関西ゴム産業と指定した。」との原告代表者の主張以外には積極的証拠がなく、検甲一が被告会社の製造に係るものであることの証明はない。
(2) 原告の主張2(二)について 被告会社が、平成八年一月二四日ころ、トーヨータイヤ兵庫販売から、再生タイヤ二本を受領したこと、同じころ、木村タイヤに対し、右再生タイヤを用いた複層タイヤを二本販売したことは認めるが、右二本のタイヤのうちの一本がロ号物件に相当する複層タイヤであることは否認する。原告の主張する入手経路は、通常の流通経路とは異なる上、被告会社が木村タイヤに出荷してから【B】弁理士のもとに到達するまで一〇日を要し、その間多くの人手を経ているから、検甲二は、被告会社が製造したタイヤの形状を示す証拠としての信用性は低い。
(3) 原告の主張2(三)について 被告会社が、西日本タイヤに対し、平成七年一二月二八日及び平成八年一月一二日に、複層タイヤを合わせて八本販売したことは認めるが、その余の事実は否認する。
右各複層タイヤは、内装タイヤの外表面が、切削してあったり、凹状に陥没したりするもので、被告会社が製造するものとは異なる上、右各内装タイヤは三種類の方法で切削されていることからすると、複数の会社により製造されたものである。
また、被告会社が販売してから原告が入手するまで、一年以上経過しているから、右各複層タイヤが被告会社が製造したものと同一であることの証明力はないに等しい。
(4) 原告の主張2(四)について 関西リサイクルセンター内にあった切削したタイヤが被告会社が製造したものであるとの原告の主張は、単なる推測にすぎず、何ら根拠はない。
(5) 原告の主張2(五)について 外装タイヤより一ランク下の規格の内装タイヤであっても、中古のものであれば、外表面が滑らかに仕上げられていなくても、装着可能である。
(三) 被告会社は、手元にある中古タイヤを外装タイヤ及び内装タイヤとして適宜組み合せて複層タイヤを製造しており、内装タイヤの外表面を切削する必要はなく、実際、切削していない。
2 被告会社は、別紙「A型及びB型タイヤ販売一覧表」並びに別紙「C型及びD型タイヤ販売一覧表」に記載のとおりA型ないしD型タイヤを販売したが、その構成は、次のとおりである。
(一) A型及びB型タイヤ A型タイヤの外装タイヤは、ナイロンタイヤ(大きさは、一〇・〇〇―二〇、九・〇〇―二〇、八・二五―二〇、七・五〇―一六〔注・右一〇・〇〇―二〇の一〇・〇〇はタイヤ断面幅、二〇はリム径をそれぞれインチで表示したもの〕)であり、片ビードを切断してある。
B型の外装タイヤは、ナイロンタイヤ(大きさは、二三・五―二五、二〇・五―二五、一七・五―二五、一四・〇〇―二四、一三・〇〇―二四の大型のもの)であり、ORタイヤ又はジャンボタイヤと呼ばれているオフロードタイプのものであり、片ビードを切断してある。
A型及びB型タイヤの内装タイヤは、両ビードを切断せず、その外表面は、切削しておらず、トレッドパターンの凹凸を有する中古のタイヤである(ただし、トーヨージャイアントタイヤ販売株式会社(以下「トーヨージャイアント」という。)に販売したものは、新品の内装タイヤが用いられている。)。
具体的な構成は、別紙被告主張物件目録(検乙一のタイヤに相当するもの)に示すとおりである。
(二) C型タイヤ 外装タイヤは、スチールタイヤ(大きさは、一〇・〇〇R二〇)であり、両ビードは切断できないため、切断していない。
内装タイヤは、両ビードをビード部とサイドウォール部の境界付近で斜めに切断した中古のタイヤである。
(三) D型タイヤ 外装タイヤは、ナイロンチューブタイヤで、両ビードを切断している。
内装タイヤは、ノーパンクタイヤで、両ビードを切断していない新品又は中古のタイヤである。
〔被告らの主張に対する原告の反論〕 (一) 検乙一は、被告会社が本件訴訟提起後に見本として製造したものであって、被告会社が実際に製造、販売したものと同一であるとはいえない。
(二) C型タイヤについて ラジアルタイヤのビードは切断できないことはないから、外装タイヤがラジアルタイヤであるとの理由から、その両ビードが切断されていないものであるということはできない。
内装タイヤの両ビードを切断した場合、外装タイヤと内装タイヤとの境界にギャップが発生し、すぐにパンクしてしまい使用できない。
(三) D型タイヤについて 被告会社が株式会社吉本商店に販売した複層タイヤについては、外装タイヤの両ビードが切断されたものであることは認めるが、被告らがD型タイヤを販売したと主張するその余の取引先については、外装タイヤの両ビードが切断された複層タイヤであることは否認する。
被告らがD型タイヤのみを販売したと主張する有限会社タイヤショップ松井の社長【J】(以下「【J】社長」という。)は、原告代理人に対し、被告会社から購入した複層タイヤの外装タイヤは一方のビード部を切断したものである旨回答している。
外装タイヤの両ビードを切断した場合、内装タイヤに固定するのが極めて困難になるから、被告会社が、そうした複層タイヤを販売することは考えにくい。
二 争点2(被告会社が製造、販売した複層タイヤは、本件発明の技術的範囲に含まれるか) 〔原告の主張〕 1 イ号物件の構成α、βは第三発明の構成要件A′を、同γは構成要件B′を、同δは構成要件C′をそれぞれ充足するから、イ号物件は、本件第三発明の技術的範囲に属する。
ロ号物件の構成α、βは第一発明の構成要件Aを、同γは構成要件Bを、
同δは構成要件Cをそれぞれ充足するから、ロ号物件は、本件第一発明の技術的範囲に属する。
2 被告らがD型タイヤと主張するタイヤについて 内装タイヤについては、ノーパンクタイヤといっても、大型タイヤの場合は、チューブに空気の代わりに「発砲ウレタン」を入れるものであり、この場合、
本件特許の「タイヤ内部に装着された気密性を保つためのチューブの圧力に抗する内装タイヤ」であることは間違いない。
〔被告らの主張〕 1 本件発明における「外表面を滑らかに仕上げ」とは、明細書の記載からすると、内装タイヤの外表面をトレッドパターンの凹凸がない状態にまで仕上げることを意味すると解すべきである。
本件発明の出願前に公知であった実公昭五八―三二九六六号実用新案公報(乙一)に記載の技術と本件発明とを比較すると、内装タイヤの外表面にトレッドパターンを有するか否かの点を除き、すべての構成が共通しているから、内装タイヤの外表面にトレッドパターンを有するものが本件発明の技術的範囲に含まれると解することはできない。
2 右解釈を前提とすると、別紙被告主張物件目録記載の構成のA型及びB型タイヤは、内装タイヤの外表面にトレッドパターンの凹凸を有するから、本件第一発明の構成要件A及び本件第三発明の構成要件A′を備えていない。
また、外装タイヤの両ビード部を切断せず、内装タイヤの両ビード部を切断したC型タイヤ、及び外装タイヤの両ビード部を切断し内装タイヤにノーパンクタイヤを用いたD型タイヤは、いずれも、本件第一発明ないし本件第三発明の技術的範囲に属さない。
三 争点3(被告会社が台タイヤを製造、販売した行為は、本件特許権を侵害するといえるか) 〔原告の主張〕 被告会社が製造、販売した台タイヤのうち大きさが八・二五R以上のものは、本件発明の技術的範囲に属する複層タイヤの内装タイヤとして出荷されたものであるから、右台タイヤの製造、販売行為は、侵害行為を組成した物の譲渡(特許法102条1項参照)に該当する。
〔被告らの主張〕 中古タイヤのトレッド部分を取り除き新しいトレッドを張り付けることにより再生したタイヤを再生タイヤという(更生タイヤともいう。)が、被告会社は、
タイヤ販売店等から中古タイヤを取得して、再生タイヤ用の台タイヤとして流通業者や再生タイヤ業者に販売している。
したがって、被告会社が販売している台タイヤは、複層タイヤとは関係がない。
四 争点4(代表取締役及び取締役らの責任) 〔原告の主張〕 1 被告【C】は、被告会社の代表取締役として、その職務の遂行として被告製品を製造、販売したから、原告に対し、民法709条による損害賠償責任を負う。
2 被告【D】及び被告【E】は、被告会社の取締役として、会社の違法な営業行為については未然に防止し、すでに違法行為を行っているときにはこれを直ちに中止すべき注意義務があるのに、これを怠った重大な過失があるから、原告に対し、商法266条の3第1項による損害賠償責任を負う。
〔被告らの主張〕 原告の右主張は争う。
五 争点5(損害の発生及び額) 〔原告の主張〕 1 複層タイヤ及び台タイヤの製造、販売に伴う損害 (一) 主位的請求 (1) 被告会社は、平成二年五月一日から平成一一年四月三〇日までの間に、本件第一発明もしくは本件第三発明を侵害する複層タイヤを少なくとも一七八九本製造、販売した。
被告会社の右販売行為がなければ販売することができた複層タイヤの一本当たりの原告の利益は四万円であるから、特許法102条1項により、原告の被った損害は、七一五六万円となる。
(2) 台タイヤについて 被告会社は、平成二年五月一日から平成八年四月三〇日までの間に、
台タイヤ五五四九本を製造、販売したが、そのうち少なくとも一〇分の一の五五四本は、複層タイヤの内装タイヤ用に製造、販売されたものである。
被告会社は、平成八年五月一日から平成一一年四月三〇日までの間に、複層タイヤの内装タイヤ用として、台タイヤ一四本を販売した。
被告会社の右台タイヤ合計五六八本の製造、販売行為は、本件特許権を侵害する行為に該当するところ、被告会社の右行為がなければ販売することができた複層タイヤの一本当たりの原告の利益は四万円であるから、原告の被った損害は、二二七二万円となる。
(二) 予備的請求 特許法102条3項に基づき、実施料相当損害金を請求する。
2 弁護士費用及び弁理士費用 本件訴訟に係る弁護士費用及び弁理士費用としては六三〇万円(平成二年五月一日から平成八年二月二〇日までの損害に対応した右費用五二五万円、平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの損害に対応した右費用一〇五万円)が相当である。
3 原告は、被告らに対し、@ 平成二年五月一日から平成八年二月二〇日までの右1の損害及び右2の弁護士費用及び弁理士費用の内五〇〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日である平成八年二月二七日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金、A 平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの右1の損害及び右2の弁護士費用及び弁理士費用の内一一〇五万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成一一年五月一日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める。
〔被告らの主張〕 1 原告の右主張は争う。
2 原告には、被告会社が加工又は加工販売した数量の複層タイヤを販売できたとはいえない次のような事情がある。
(一) 本件訴訟において陳述書を提出した被告会社の販売先一四社のうち、
西日本タイヤ及びトーヨージャイアントは、原告のことを知っていたものの、自ら原告から複層タイヤを購入したことはなく、その余の取引先は原告の存在を知らなかった。
(二) 原告の複層タイヤの売値は、原告の主張によれば七万五〇〇〇円である一方、被告会社の売値は、A型タイヤが二〇〇〇円から一万円、B型タイヤが八〇〇〇円から七万円、C型タイヤが一万円から一万二〇〇〇円、D型タイヤが五〇〇〇円から一万円である。
(三) 複層タイヤ自体に対する需要が近年減退しており、複層タイヤに代替する製品も多々存する。
六 争点6(製品及び半製品の破棄並びに複層タイヤ製造機の除去請求について) 〔原告の主張〕 原告は、特許法100条2項に基づき、被告会社に対し、その保管にかかる別紙イ号物件目録及び別紙ロ号物件目録記載の各物件並びに同各物件の材料である外装タイヤ及び内装タイヤの破棄とともに、本件特許権を侵害するイ号及びロ号物件の複層タイヤを製造する設備である別紙機械目録記載の複層タイヤ製造機の除去を求めることができる。
〔被告らの主張〕 原告の右主張は争う。
争点に対する判断
一 争点1について 乙八ないし四一、四二の1、2、四三ないし六二及び弁論の全趣旨によれば、被告会社は、別紙「A型及びB型タイヤ販売一覧表」並びに別紙「C型及びD型タイヤ販売一覧表」記載のとおり、複層タイヤを販売したことが認められる(なお、藤田タイヤ工業所に販売したA型タイヤとして、品番の欄に「内装タイヤ」と記載されているものは、外装タイヤとともに販売したものであるから、金額を合計する際にその金額を加算してあるが、数量を合計する際にはその数は加算していない。)。
A型ないしD型タイヤの各形状は次のとおりである。
1 A型タイヤについて (一) A型タイヤは、外装タイヤの一方のビード部を切断し、リムに固定するビード部を一方のみとしたものであること、ビード部の右切断位置はサイドウォール部の中央よりビード部寄りであることは、当事者間に争いがない。
(二)(1) 検甲一の複層タイヤの入手経路について、甲五、六、八、一六ないし一八、検証の結果によれば、次の事実が認められる。
原告代表者の【K】は、被告会社が本件特許権を侵害する疑いのある複層タイヤを製造しているとの情報を得たことから、佐藤工務店に対し、佐藤工務店の名で木村タイヤに対し関西ゴムを指定して複層タイヤを一本注文してもらうように依頼した。
佐藤工務店は、右依頼に従って木村タイヤに注文したところ、平成七年一一月二日、木村タイヤから、複層タイヤが一本納入されたので、同複層タイヤを原告方に送付し、それを【B】弁理士の事務所に運び込んで、弁理士【L】に鑑定を依頼し、同弁理士の立会いのもとで外装タイヤと内装タイヤとを分解して写真を撮影した後、再度複層タイヤに戻し、原告は、同タイヤを検甲一として当裁判所に提出した。そして、平成八年一二月一〇日の本件検証手続において、検甲一の外装タイヤを切断し内装タイヤを分離して、検証が実施された。
(2) なお、被告らは、検甲一の複層タイヤは原告のもとで外装タイヤと内装タイヤが分離されているから、製造、販売当時の形状を示す証拠とはならない旨主張するが、右入手経路、分解の経緯が不自然なものということはできず、これらの過程において、検甲一の内装タイヤが付け替えられたことを疑わせるに足りる事情はないし、その他、検甲一の複層タイヤが被告会社の製造に係るものであることを覆すに足りる証拠はない。
(3) そして、甲五、検甲一、検証の結果によれば、検甲一の複層タイヤは、外装タイヤは、大きさが一〇・〇〇―二〇で、一方のビード部が切除されたものであり、内装タイヤは、大きさが八・二五R二〇で、ショルダー部が削られ、その外表面は、トレッドパターンが摩耗してその溝がかなり浅くなり、少なくとも極端な凹凸のない状態であることが認められる。
(三)(1) 検甲二の複層タイヤの入手経路について、被告会社が、平成八年一月二四日ころ、トーヨータイヤ兵庫販売から、再生タイヤ二本を受領したこと、同じころ、木村タイヤに対し、右再生タイヤを用いた複層タイヤを二本販売したことは当事者間に争いがなく、甲九の1ないし3、4及び5の各イ、ロ、一〇の1ないし3、一一の1ないし3、一三、一六、一八、二六、二七の2、乙一三によれば、
次の事実が認められる。
【B】弁理士は、平成八年一月二〇日ころ、【I】社長に木村タイヤ及び被告会社に複層タイヤの購入を依頼し、承諾を得たため、同月二三日、その旨ファクシミリにて送信した。
木村タイヤは、【I】社長から右依頼を受け、トーヨータイヤ兵庫販売に対し、外装タイヤにするための再生タイヤ二本を被告会社に送付することとして一本一万円で発注するとともに、被告会社に対し、同再生タイヤを用いた複層タイヤ二本を一本五〇〇〇円で発注した。
被告会社は、同月二四日、トーヨータイヤ兵庫販売から再生タイヤ二本の送付を受け、それを用いて複層タイヤ二本を製造し、同年二月一日、【I】社長のもとに運賃着払いで送付した(なお、右複層タイヤ二本の送付の際の送り状(甲九の4のロ)の出荷主欄に「トーヨータイヤ兵庫販売」と記載されているが、
右記載は、右複層タイヤ二本がトーヨータイヤ兵庫販売から出荷されたことまでを示すものとはいえないから、右認定を覆すものではない。)。
【I】社長は、右二本の複層タイヤを【B】弁理士の事務所に送付し、【B】弁理士が、平成八年二月七日、右タイヤを受け取って駐車場に保管していたが、原告は、そのうちの一本を検甲二として当裁判所に提出し、他の一本は、
平成九年二月八日に同事務所において分解し写真撮影をした後、再度組み立てて保管することとした。そして、平成八年一二月一〇日の本件検証手続において、検甲二の外装タイヤを切断し内装タイヤを分離して、検証が実施された。
(2) 被告らは、右入手経路は、通常の流通経路とは異なること、【B】弁理士のもとに到達するまでの期間、多くの人手を経ていること等を理由に、検甲二の信用性が低い旨主張するが、右入手経路が不自然なものということはできないし、その他、検甲二の複層タイヤが被告会社の製造に係るものであることを覆すに足りる証拠はない。
(3) 甲二〇、検甲二、検証の結果によれば、右二本の複層タイヤは、外装タイヤは、大きさが一〇・〇〇―二〇で、一方のビード部が切除されたものであり、内装タイヤは、大きさが九・〇〇―二〇で、ショルダー部とクラウン部が削られ、トレッドパターンが摩耗してその凹凸がほとんどない状態になっていることが認められる。
(四) 原告が吉田直土木から引きとった複層タイヤについて、被告会社が、
西日本タイヤに対し、平成七年一二月二八日及び平成八年一月一二日に、合わせて八本販売したことは争いがなく、甲二九の7ないし9、甲三〇ないし三三によれば、西日本タイヤは、吉田直土木に対し、平成八年一月一二日及び同月二二日にそれぞれ四本ずつ複層タイヤを販売したこと、原告は、平成九年二月一三日、吉田直土木から使用済み複層タイヤ二六本を引き取ったところ、そのうちの六本の複層タイヤが外装タイヤの一方のビード部が切断されたタイプのものであり、原告代理人及び補佐人において右六本のタイヤについて実況見分したこと、右六本のうち二本について内装タイヤを取り出したところ、いずれも両ビード部が切断されていないタイヤであり、そのうちの一本が、トレッドパターンの凹凸が全く残らない程度に切削されたものであり、他の一本が、トレッドパターンの凹凸が残ってはいるものの極端な凹凸が生じない程度に切削されたものであったことが認められる。
しかし、右実況見分に係る六本の複層タイヤが被告会社が製造したものであるか否かについては、原告代理人作成の催告書(甲二八の1)において、吉田直土木の阪奈作業所長【M】が、右六本のタイヤは西日本タイヤから購入したと述べている旨の記載があるものの、その他に右六本のタイヤと被告会社とを結びつける証拠がない。そうすると、右六本のタイヤが被告会社が製造したものである可能性は否定できないものの、原告代理人作成の右催告書のみからでは、右六本のタイヤが、被告会社が製造したものであることを認めることはできない。
(五) なお、原告は、【B】弁理士が平成一〇年五月二〇日関西リサイクルセンターにおいて被告会社が製造したと思われる切削したタイヤを確認した旨主張し、【B】弁理士作成の実況見分報告書(甲三四)には、同趣旨の記載があるが、
関西リサイクルセンターにおいて確認したタイヤが被告会社の製造に係るものであることについて、【B】弁理士の推測以外に何ら客観的な根拠がないといわざるを得ず、右証拠は、被告会社が製造したタイヤの状況を示す証拠としては採用できない。
(六) また、被告主張物件目録記載の複層タイヤに相当する検乙一は、弁論の全趣旨によれば、被告会社が本件訴訟提起後に証拠として提出するために作成したものであることが認められ、その他に検乙一が被告会社が製造、販売した複層タイヤと同一の形状のものであることを認めるに足りる証拠はないから、検乙一を被告会社が製造、販売したタイヤの形状を示す証拠としては採用できない。
(七) そうすると、被告会社が販売したA型タイヤは、そのすべての形状を示す証拠はないものの、右(二)及び(三)記載のとおり、A型タイヤのうちの三本が検甲一ないし検甲二に相当するタイヤであり、A型タイヤの中に検甲一及び検甲二とは異なる形状のものが存在することを推認させる反証もないから、A型タイヤは検甲一ないし検甲二に相当するタイヤであることが推認できるというべきである。
また、右(四)記載の事実についても、被告会社が製造したA型タイヤが検甲一ないし検甲二に相当するものであることと矛盾するものではなく、その他、右推定を覆すに足りる証拠はない。
2 B型タイヤについて (一) B型タイヤは、外装タイヤの一方のビード部を切断し、リムに固定するビード部を一方のみとしたものであること、ビード部の右切断位置はサイドウォール部の中央よりビード部寄りであることは、当事者間に争いがない。
(二) 乙四六、六三、七二の1ないし7によれば、B型タイヤは、ORタイヤ又はジャンボタイヤと呼ばれているオフロードタイプの大型タイヤであり、被告会社がトーヨージャイアントに販売したB型タイヤの内装タイヤが、新品のものでトレッドの凹凸がそのまま残っていることが認められるが、その余の取引先に販売したB型タイヤの内装タイヤの形状を直接示す証拠はなく、乙四一、四二の1、六一、六二及び弁論の全趣旨によれば、トーヨージャイアント以外の取引先に被告会社が販売したB型タイヤの内装タイヤは、中古のものであること、右取引先のうち、四社が、内装タイヤのトレッドパターンは切削してなかった旨述べていることが認められるにとどまる。
原告は、B型タイヤの内装タイヤの形状についても、被告会社が製造した検甲一及び検甲二の複層タイヤの形状に基づく立証をするのみであるが、右のとおりその内装タイヤは中古のものであるから、一定程度トレッドパターンが摩耗しているとしても、検甲一及び検甲二の複層タイヤとB型タイヤとは、大きさ、形状が右のとおり異なるものであること、トーヨージャイアントに販売したものにおいてはトレッドパターンの凹凸が残った新品の内装タイヤを装着していること、トーヨージャイアント以外の販売先のうちの四社が、内装タイヤのトレッドパターンの摩耗の程度については言及していないものの、切削していなかったと述べていることからすると、B型タイヤにまで検甲一及び検甲二の形状と同一であるとの推認が直ちに働くものとすることはできない。
また、原告は、外装タイヤに一ランク下の規格の内装タイヤを装着するには、内装タイヤのクラウン部からショルダー部にかけて丸みを持たせる必要がある旨主張し、甲五二、五五の2、3によれば、被告会社が大物タイヤー株式会社(以下「大物タイヤー」という。)に販売したB型タイヤが、外装タイヤの一ランク下の規格の内装タイヤを装着していることが認められるが(なお、甲五五の4によれば、被告会社は二ランク下の内装タイヤを装着した複層タイヤも販売している。)、右事実から直ちに内装タイヤの外表面が検甲一や検甲二と同等の滑らかさを有するものと推認することはできない。
なお、原告代理人作成の報告書(甲五二)及び同陳述書(甲五四)には、原告代理人が大物タイヤーの社長【N】から「つるつるのタイヤを中に入れていると思う。」との回答を得たとの事実が記載されている。しかし、【N】社長作成の陳述書(乙四二の1)には、内装タイヤは外表面は切削してないとの内容が記載されており、同会社の八幡営業所長【O】の陳述書(乙四二の2)には、
内装タイヤを見たことはなかったが自分の考えで「つるつるのタイヤを中に入れていると思う。」と回答したとの内容が記載されており、誰がどのような知見から「つるつるのタイヤを中に入れていると思う。」と回答したかについて明らかでないから、原告代理人作成の右各証拠を採用することはできず、その他、原告が主張するように、B型タイヤの内装タイヤのトレッドパターンが切削ないし摩耗により外表面を滑らかに仕上げたものであることを認めるに足りる証拠はない。
3 C型タイヤについて C型タイヤが、イ号物件ないしロ号物件に該当するタイヤであることを認めるに足りる証拠はない。
かえって、乙七、四四、四八、四九、六〇、六二、七五によれば、C型タイヤの外装タイヤは、スチールタイヤ(大きさは、一〇・〇〇R二〇)であり両ビードを切断していないもので、内装タイヤは両ビードを切断した中古のタイヤであること、スチールタイヤには、ビード部、サイドウォール部、ショルダー部及びトレッド部のすべてでスチールコードが使用されているオールスチール構造のものと、トレッド部又はトレッド部及びサイド部の上部のみにスチールコードが使用されているST構造ないしスチールブレーカ構造のものとがあり、右外装タイヤに用いられるものはオールスチール構造のもので、そのビード部は何らかの方法で切断可能かも知れないが、実際は困難であることが認められる。
なお、原告は、内装タイヤの両ビードを切断した場合、外装タイヤと内装タイヤとの境界にギャップが発生し、すぐにパンクしてしまい使用できないと主張するが、乙三の3ないし5、四四、六四及び六五の各1ないし3並びに弁論の全趣旨によれば、C型タイヤにおいては、内装タイヤの両ビードの切断位置がビード部とサイドウォール部の境界付近か否かは明確ではないものの、右切断部は斜めになっており、切断部とチューブとの間にフラップが挿入されることが認められるから、右切断部に一定のギャップが生じるとしても、そのギャップが発生することが不可避なものということはできず、その他、原告の右主張を認めるに足りる証拠はない。
4 D型タイヤについて D型タイヤが、イ号物件ないしロ号物件に該当するタイヤであることを認めるに足りる証拠はない。
かえって、証拠乙八、四〇、四三、四七によれば、D型タイヤの外装タイヤは、ナイロンチューブタイヤで両ビードを切断したもので、内装タイヤはノーパンクタイヤで両ビードを切断していない新品又は中古のタイヤであることが認められる。
なお、原告は、【J】社長からD型タイヤの外装タイヤは一方のビード部を切断したものである旨の回答を得ていると主張し、原告代理人作成の報告書(甲五三)には、右主張に沿う記載があるが、【J】社長自身が作成した陳述書(乙四三)には、外装タイヤの両ビードを切断したものである旨の記載がある上、右内容は前記認定の証拠にも合致するものであるから、原告代理人作成の右証拠を直ちに採用することはできない。
二 争点2について 1 A型タイヤについて (一)(1) 同タイヤは、外装タイヤの一方のサイドウォール部の中央よりビード部寄りで切断し、一方の少なくともビード部を有せず、リムに固定するビード部を一方のみとしたものであり、本件第一発明の構成要件B及び本件第三発明の構成要件B′を充足する。
(2) 同タイヤは、内装タイヤは両ビード部を切断せず、タイヤ内部にチューブを有するものであり、本件第一発明の構成要件A及び本件第三発明の構成要件A′の内装タイヤが「タイヤ内部に装着された気密性を保つためのチューブの圧力に抗する」との構成を充足する。
(3) 同タイヤは、外装タイヤの内部に内装タイヤを装着した複層タイヤであり、本件第一発明の構成要件C及び本件第三発明の構成要件C′を充足する。
(二) 同タイヤのうち、検甲一に相当するタイヤが本件第三発明の構成要件Aの内装タイヤが「外表面の滑かに仕上げ」たものとの構成を、検甲二に相当するタイヤが本件第一発明の構成要件A′の内装タイヤが「クラウン部のトレッドパターンを切削して、ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑かに仕上げ」たものとの構成をそれぞれ充足するかについて検討する。
(1) 本件公報の発明の詳細な説明中の〔従来技術〕の項には、「実用的な公知技術として特公昭五七―三四一一二公報を挙げることができる。前記公報に記載の技術は、第3図及び第4図の要部断面図に示す構造を有するものである。…図中21はその外側に係合するトレッドパターン22を具備するタイヤカーカスである。23は着脱自在トレッドベルトであり、24は前記トレッドパターン22と係合する凹凸部を有するトレッドベルト側のトレッドパターンである。」(4欄三四行ないし5欄一行)、「しかし、この種のタイヤにおいては、着脱自在トレッドベルト23の内側トレッドパターン24とタイヤカーカス21のトレッドパターン22との係合によるものであったから、専用のタイヤカーカス21を必要とし、しかも、使用時にトレッドパターン24及び22相互間の発熱により、特殊な用途に用いることができても汎用的ではなかった。」(5欄三二行ないし三九行)との記載がある。
〔発明の目的〕の項には、「本発明は上記欠点を除去し、特殊なトレッドベルトを使用することなく、市販されているタイヤを切削加工し、これらのタイヤを二重にすることによって、タイヤの寿命を延長することを目的とするものである。」(6欄六行ないし一〇行)との記載がある。
発明の概要〕の項には「クラウン部のトレッドパターンを切削してショルダー部及びクラウン部の表面を滑かに仕上げた内装タイヤ」との記載がある(6欄一二ないし一四行)。
〔発明の実施例〕の項には、「前記内装タイヤが市販状態と異なる点は、第7図に示す様にクラウン部及びショルダー部、必要によりサイドウォール部の表面を滑かに仕上げた点にある、即ち、ショルダー部からクラウン部に至るトレッド51の凸状部を切削して、そのトレッドパターンを除去し、また、サイドウォール部にデコレーションラインを有するものにあっては、当該デコレーションラインをも切削する。勿論、前記デコレーションラインの程度によっては無視してもよい。」(6欄四二行ないし7欄七行)、「クラウン部及びショルダー部及び必要により行なうサイドウォール部の切削の深さは、上記外装タイヤ30に内装タイヤ50を装着した状態において、外装タイヤ30の形状に影響を与えない程度の切削深さでよい。」(7欄八ないし一二行)、「外装タイヤ30の内部のカーカスに、クラウン部のトレッドパターンを切削して、ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑かに仕上げた内装タイヤ50の外表面を密接させ装着したものにおいては、外装タイヤ30の内表面と内装タイヤ50の外表面との間が一体となって変化するから、両者間に摩擦熱が発生し難くなる。」(8欄二一ないし二八行)、
「前記密接とは厳密に言えば、外装タイヤ30のカーカスの内面にも、メーカー毎に異なる若干の凸状パターンがあり、内装タイヤ50の仕上げにおいても、滑かに仕上げるとは、加工精度を上げる意味ではなく、極端な凹凸が生じない程度に仕上げることを意味するものであるから、外装タイヤ30と内装タイヤ50の自己形状維持力によって結合している状態を意味するものである」(8欄二八ないし三六行)、「以上の実施例では、市販のタイヤを用いた場合について述べたが、特に内装タイヤにあっては、その表面の構造を、クラウン部のトレッドパターンを切削して、ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑かに仕上げたものであるから、古タイヤのクラウン部のトレッドパターンが摩耗したものを使用すると、クラウン部のトレッドパターンを切削する手間が省けることができ効果的であり、その使用において、何等新しいタイヤに劣るところがない。」(9欄三三ないし四二行)との記載がある。
(2) 本件発明の出願前の公知技術として、乙一(実公昭五八―三二九六六号実用新案公報)記載の技術があるが、同公報によれば、その技術は、実用新案登録請求の範囲を「ホイール付のタイヤに於いて、チューブの入った内タイヤにそれより一回り大きい古い外タイヤを被せ、外タイヤの裏ビード部を切除し、表ビード部のみをホイールのリムに組込み、チューブ内の空気圧により内タイヤが外タイヤの表ビード部をリムに圧着したことを特徴とするダブルタイヤ」とするものであり、考案の詳細な説明のうち、実施例の項には、「内タイヤは新品で」との記載があり、図面には、内タイヤのトレッドパターンが明記されており、これらの記載内容から、右内タイヤにはトレッドパターンを有する新品のタイヤを用いるものであることが認められる。
(3) 本件公報の前記各記載によれば、本件第一発明の構成要件A及び本件第三発明の構成要件A′における「外表面を滑かに仕上げ」とは、外装タイヤの内表面を内装タイヤの外表面に密着させ、外装タイヤと内装タイヤを自己形状維持力により結合させ、両者間に摩擦熱が発生し難くするために必要であって、その滑らかさは、極端な凹凸が生じない程度であれば足りると解される。
そして、本件第一発明においては、構成要件Aに「クラウン部のトレッドパターンを切削して」とあるように、右外表面を滑らかに仕上げた状態を、クラウン部のトレッドパターンを切削することによって形成することが要件となる。
また、本件第三発明の構成要件A′においては、切削することが要件となっておらず、前記のとおり明細書の実施例において、内装タイヤとして、古タイヤのクラウン部のトレッドパターンが摩耗したものを使用することも予定していることからすると、摩耗して外表面に極端な凹凸がない状態になった古タイヤを特段の加工を施すことなく内装タイヤとして用いることも含まれるものと解される。
(4) なお、内装タイヤの外表面が極端な凹凸がないとはいえない場合、とりわけ内装タイヤとして新品のタイヤを用いた場合には、本件第一発明の構成要件A及び本件第三発明の構成要件A′を充足しない。このことは、前記(2)記載のとおり、複層タイヤにおいて、内装タイヤにトレッドパターンを有する新品のタイヤを用いる先行技術が存することからも明らかである。
(5) そうすると、A型タイヤのうち、検甲一に相当する複層タイヤ(イ号物件)は、その外表面が少なくとも極端な凹凸のない状態であるから、本件第一発明の構成要件Aの内装タイヤが「クラウン部のトレッドパターンを切削して、ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑らかに仕上げ」たものとの構成を、検甲二に相当する複層タイヤ(ロ号物件)は、その外表面のうちショルダー部とクラウン部が削られ、トレッドパターンが摩耗してその凹凸がほとんどない状態になっているから、本件第三発明の構成要件A′の内装タイヤが「外表面の滑らかに仕上げ」たものとの構成を充足する。
2 B型タイヤについて トーヨージャイアントに販売したB型タイヤは、その内装タイヤは新品でトレッドパターンの凹凸がそのまま残っているものであり、その余の取引先に販売したB型タイヤの内装タイヤのトレッドパターンの残存の程度は明確ではなく、外表面を滑らかに仕上げたものであることが認められないのであるから、本件第一発明の構成要件A及び本件第三発明の構成要件A′に該当するとすることはできない。
よって、B型タイヤに係る原告の請求は理由がない。
3 C型タイヤについて C型タイヤは、その外装タイヤの両ビードを切断していないものであるから、本件第一発明の構成要件B及び本件第三発明の構成要件B′を充足せず、本件第一発明及び本件第三発明の技術的範囲に属しないものである。
よって、C型タイヤに係る原告の請求は理由がない。
4 D型タイヤについて D型タイヤは、その外装タイヤの両ビードを切断したものであるから、本件第一発明の構成要件B及び本件第三発明の構成要件B′を充足せず、本件第一発明及び本件第三発明の技術的範囲に属しないものである。
よって、その余の点について判断するまでもなく、D型タイヤに係る原告の請求は理由がない。
三 争点3について 1 乙六六ないし七一及び弁論の全趣旨によれば、被告会社は、中古タイヤのトレッド部分を取り除いたものを台タイヤとして販売し、販売先は、右台タイヤに新しいトレッドを張り付けることにより再生タイヤ(更生タイヤともいう。)を製造し、あるいは、再生タイヤ用の台タイヤとして転売していることが認められる。
2 そうすると、被告会社が製造、販売する台タイヤは、検甲一ないし検甲二に相当する複層タイヤの内装タイヤとして用いることができるものの、他に再生タイヤの台タイヤとしての用途もあるから、台タイヤの製造、販売行為は、本件特許権の侵害行為ないし間接侵害行為に当たるということはできない。
よって、被告会社の台タイヤの製造、販売行為が本件特許権を侵害することを理由とする原告の請求は理由がない。
四 争点4について 1 原告は、被告【C】が、被告会社の代表取締役として、その職務の遂行として複層タイヤを製造、販売した旨主張するが、前記のとおり、被告会社がA型タイヤ等の製造、販売を行ったことは認められるものの、被告【C】が右行為にどの程度の関与をしたかについては、これを明らかにする証拠はない。
したがって、被告会社によるA型タイヤの製造、販売が本件特許権を侵害していることについて、被告【C】個人に故意、過失があることを基礎付ける事実、すなわち、被告【C】に対する損害賠償義務を基礎付ける事実を認めることができないといわざるを得ないから、原告の被告【C】に対する請求は理由がない。
2 原告は、被告【D】及び被告【E】が、被告会社の取締役として、会社の違法な営業行為については未然に防止し、すでに違法行為を行っているときにはこれを直ちに中止すべき注意義務があるのに、これを怠った重大な過失がある旨主張するが、本件において、被告【D】及び被告【E】に、取締役の職務を行うにつき重過失があったこと(商法266条の3)を認めるに足りる証拠はないから、原告の被告【D】及び被告【E】に対する請求は理由がない。
五 争点5について 1 主位的請求(特許法102条1項に基づく請求)について (一) 乙九ないし三九、五〇ないし五八及び弁論の全趣旨によれば、被告会社が販売した本件特許権(出願公告から登録までは仮保護の権利)の侵害に当たるA型タイヤの販売数量は、本件発明が出願公告された日である平成二年八月三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は七六九個(販売額四二四万七六〇〇円)、平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は三四個(販売額一八万七〇〇〇円)である(別紙「A型及びB型タイヤ販売一覧表」並びに別紙「A型タイヤの平成二年五月一日から同年八月二九日までの販売分」参照)。
原告は、被告会社の平成八年五月一日以降の複層タイヤの販売行為が本件特許権を侵害するものであるとし、同日以降の販売額を基礎として損害賠償を請求するが、本件発明が出願公告された日である平成二年八月三〇日以前の販売額を基礎として損害賠償を請求する部分については理由がない。
(二) 右販売数量に対し、被告らは、原告の複層タイヤの知名度、原告製品と被告製品との価格差等を理由に、原告は、被告会社が加工又は加工販売した数量の複層タイヤを販売できたとはいえないと主張する。
(1) 被告らは、被告会社の販売先一四社のうち、西日本タイヤ及びトーヨージャイアントは、原告の存在を知っていたものの、自ら原告から複層タイヤを購入したことはなく、その余の取引先は原告の存在を知らなかった旨主張するところ、被告会社の販売先作成に係る陳述書(乙八、四〇、四一、四二の1、四四ないし四六、四八、五九ないし六二)によれば、右主張に沿う事実(ただし、原告の存在を認識していたか否かについて言及しているのは、右掲記の陳述書を提出した一二社である。)が認められる。
(2) 甲三五ないし四二によれば、原告は複層タイヤ(鉱山スチールASN一〇・〇〇―二〇)を七万円ないし七万五〇〇〇円で販売していることが認められ、一方、被告会社の販売する複層タイヤの売値は別紙「A型及びB型タイヤ販売一覧表」記載のとおり一五〇〇円から一万円であるから両者の間には、七倍から五〇倍に至る価格差がある。乙四五、四八、五九、六一、六二及び弁論の全趣旨によれば、被告会社は、外装タイヤに中古タイヤや再生タイヤを用いることが多く、販売先が提供した外装タイヤを用いて複層タイヤを製造することもあることが認められるが、右の事情を考慮しても、なお右価格差は著しいものというべきである。
そして、販売価格差が著しいことに加え、乙四四、四六、四八、六一、六二によれば、被告会社が複層タイヤを販売した取引先四社が、売値が七万五〇〇〇円とすれば非常に高いとの意見を述べていること、近年、通常のタイヤの中にもトレッド部の厚さがより厚い製品が開発され、複層タイヤに代替する製品も存在することが認められ、複層タイヤは、パンクが起き易い場所等においてパンクの発生を減らし、外装タイヤを摩耗するまで使用するために用いられるものであり、
いわばコスト軽減のために使用される製品であるから、複層タイヤを用いるか否かの判断において、右パンクを減らすことのメリットとの比較において、複層タイヤに要するコストが重要な要素となると考えられる。
右のような事情に前記(1)の事実も勘案すると、被告会社が販売したA型タイヤの数量の七割については、原告において販売することができないとする事情があると認めるのが相当である。
(3) そうすると、損害の基礎とすべきA型タイヤの販売数量は、平成二年八月三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は二三〇個、平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は一〇個となる。
(三) 原告の複層タイヤの一本当たりの利益について (1) 特許法102条1項にいう「利益の額」とは、特許権者等が侵害行為がなかったらならば、販売できたであろう追加的な売上を得るに当たって、追加的に必要となると考えられる諸経費を右売上額から控除した額であると解するのが相当である。
(2) 前記のとおり、原告は複層タイヤ(鉱山スチールASN一〇・〇〇―二〇)を七万円ないし七万五〇〇〇円で販売し、甲四三ないし五一によれば、その材料費として、新品の外装タイヤ二万五〇〇〇円ないし二万九〇〇〇円、新品のチューブ一七〇〇円ないし二三〇〇円、新品のフラップ一一〇〇円ないし一六〇〇円、ホイール一五〇〇円、台タイヤ六五〇円ないし二三〇〇円を要していることが認められる。
(3) 一方、甲六八の1ないし3、10によれば、原告の帳簿上の粗利益が、
昭和六三年八月が四七万円(販売数一六個)、平成元年八月が八〇万円(販売数三五個)、平成二年八月が六〇万円(販売数二四個)、平成三年八月が一二万円(販売数四個)と算出されていることが認められ、右期間における複層タイヤ一台当たりの平均粗利益は、二万五一八九円(1,990,000/79)となる。
右帳簿上の粗利益の算出経過は明確ではないものの、売値から前記(2)記載の材料費を控除すると、三万三三〇〇円ないし四万五〇五〇円となり、甲五六によれば、複層タイヤの製造に要する労務費は一本当たり約一〇〇〇円であり、その製造には、五万円ないし一〇万円のグラインダーのほか特に高価な機械、工具は必要がないことが認められ、そうすると、右平均粗利益の額二万五一八九円は、当該複層タイヤの製造、販売に応じて増減する間接費を控除したものと推認され、原告の複層タイヤ一本当たりの利益の額は二万五一八九円とするのが相当である。
(四) 以上によれば、原告の損害は、平成二年八月三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は五七九万三四七〇円、平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は二五万一八九〇円となる。
2 予備的請求(特許法102条3項に基づく請求)について (一) 前記1の(二)記載のとおり、被告会社が販売したA型タイヤのうち、
七割については、原告において販売することができないとする事情があるとして、
その部分に関しては102条1項による請求ができないが、この部分についても、
無許諾の実施品であることに変わりがないから、102条3項相当な対価額の賠償請求は認められるものと解される。そして、除かれた七割に当たる販売数量は、
平成二年八月三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は五三九個、平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は二四個であり、右数量に対応する売上高を、各期間のA型タイヤの売上高の七割とみなして計算すると、平成二年八月三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は二九七万三三二〇円(4,247,600×0.7)、平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は一三万〇九〇〇円(187,000×0.7)となる。
(二) 本件発明の実施に対し受けるべき実施料の率は、本件発明の内容、発明品の種類、用途等を考慮すると、三パーセントが相当である。
(三) よって、原告が受けるべき損害額は、平成二年八月三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は八万九一九九円(2,973,320×0.03)、平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は三九二七円(130,900×0.03)となる。
3 右1及び2の損害額の合計は、平成二年八月三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は五八八万二六六九円、平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は二五万五八一七円となる。
各期間に対応した弁護士費用、弁理士費用は、平成二年八月三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は六〇万円、平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は三万円が相当であり、同費用を加算した損害額の合計は、平成二年八月三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は六四八万二六六九円、平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は二八万五八一七円となる。
六 争点6について 原告は、被告会社に対し、その保管にかかる別紙イ号物件目録及び別紙ロ号物件目録記載の各物件並びに同各物件の材料である外装タイヤ及び内装タイヤの破棄を求めるが、内装タイヤは、前記四記載のとおり内装タイヤは再生タイヤの台タイヤとして用いることが可能なものであり、外装タイヤもD型タイヤに用いる等、
他の用途が考えられるものであるから、右外装タイヤ及び内装タイヤは特許法100条2項にいう「侵害の行為を組成した物」ということはできず、右外装タイヤ及び内装タイヤの破棄を求める部分は理由がない。
また、原告は、別紙機械目録記載の複層タイヤ製造機の除去を求めるが、被告らが本件特許権を侵害するおそれをなくするためには、原告の請求のうち製造、
販売及び販売のための禁止と、侵害品の廃棄を命ずれば十分であって、イ号物件ないしロ号物件以外のC型、D型タイヤ等の製造にも用いることができる右複層タイヤ製造機の除去を命ずるまでの必要性は認められないから、右複層タイヤ製造機の除去を求める部分は理由がない。
七 よって、原告の請求は、主文第一ないし第三項記載の限度で理由があるから認容し、主文第一、第二項に係る仮執行宣言については相当でないから、これを付さないこととする。
(口頭弁論終結の日 平成一二年七月二一日)
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 阿多麻子
裁判官 前田郁勝
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