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審判番号(事件番号) データベース 権利
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関連ワード 物の発明 /  使用方法 /  公然実施(29条1項2号) /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  技術的範囲 /  権利の濫用(権利濫用) /  特許発明 /  実施 /  間接侵害 /  構成要件 /  業として /  差止請求(差止) /  侵害 /  過失推定(過失の推定) /  損害額 /  販売数量(販売数) /  不法行為(民法709条) /  営業秘密 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 12年 (ワ) 4184号 特許権侵害差止等請求事件
原告 ヤヨイ化学工業株式会社
訴訟代理人弁護士 島田康男
補佐人弁理士 佐藤正年
同 佐藤年哉
被告 極東産機株式会社
訴訟代理人弁護士 青柳ヤ子
同 美勢克彦
補佐人弁理士 岡崎謙e
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2001/07/26
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は、原告に対し、金30万7560円及びこれに対する平成12年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを20分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨 (1) 被告は、別紙物件目録一ないし三記載の物件を製造し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出してはならない。
(2) 被告は、その所有に係る別紙物件目録一ないし三記載の物件を廃棄せよ。
(3) 被告は、原告に対し、金1512万5000円及びこれに対する平成12年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4) 訴訟費用は被告の負担とする。
(5) 第3項につき仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁 (1) 原告の請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者の主張
1 請求原因 (1) 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)を有する。
特許番号 第3020161号 発明の名称 壁紙糊付機 出願年月日 平成10年11月20日 登録年月日 平成12年1月14日 (2) 本件発明の特許出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲(請求項1、2、4)の記載は、次のとおりである。
ア 請求項1 本体後部から引き入れられるシート状の壁装材を、前記本体の前面側から使用者が手で引き出すことにより、本体内部に配設された糊付けロールを含む複数のロール間の所定の経路に添って移動させ、本体下部に配設された糊桶内の糊を前記糊付けロールにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する手動壁紙糊付機において、
前記糊付けロールに対して前記壁装材の引き出し力を助勢する補助動力源と、
前記補助動力源からの駆動力を前記壁装材の引き出しの回転力として前記糊付けロールに伝達すると共に、当該引き出し方向への前記糊付けロールの単独遊転を許容する一方向クラッチ機構とを備えていることを特徴とする手動壁紙糊付機。
イ 請求項2 前記補助動力源は、前記壁紙糊付機の使用者が足で操作する操作部を備えていることを特徴とする請求項1記載の手動壁紙糊付機。
ウ 請求項4 本体の外部から引き入れられるシート状の壁装材を、前記本体部の前面側から使用者が引き出すことにより、本体内部に配設された糊付けロールを含む複数のロール間の所定の経路に添って移動させ、本体下部に配設された糊桶内の糊を前記糊付けロールにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する壁紙糊付機において、
前記本体部が、開閉可能に構成された上部構体と下部構体とから構成され、
前記糊付けロールは前記下部構体に配設され、
前記糊付けロールの上流側には、前記壁装材の上面側から接して他のロールと連動しない押さえステーが前記上部構体に配設され、
前記糊付けロールの下流側には、前記壁装材の上面側から接して前記糊付けロールと連動するドライブロールが前記上部構体に配設され、さらにその下流側に前記壁装材の下面側から接して前記糊付けロールと連動する均しロールが配設され、
前記糊付けロールに前記壁装材の引き出し力を助勢する補助動力源が、前記本体部に対して着脱自在に配設されており、
前記補助動力源からの駆動力の伝達部が、前記補助動力源の出力軸の回転を前記壁装材の引き出し方向への回転力として前記糊付けロールに伝達すると共に、前記糊付けロールの単独遊転を許容する一方向クラッチ機構を備えており、
前記動力源の操作部が、前記壁紙糊付機の使用者の足で操作されるフットスイッチを備えている、
ことを特徴とする手動壁紙糊付機。
(3) 本件発明は、壁紙糊付機に関するもので、その構成要件を分説すれば、次のとおりである。
ア 請求項1 A 本体後部から引き入れられるシート状の壁装材を、前記本体の前面側から使用者が手で引き出すことにより、本体内部に配設された糊付けロールを含む複数のロール間の所定の経路に添って移動させ、本体下部に配設された糊桶内の糊を前記糊付けロールにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する手動壁紙糊付機において、
B 前記糊付けロールに対して前記壁装材の引き出し力を助勢する補助動力源と、
C 前記補助動力源からの駆動力を前記壁装材の引き出しの回転力として前記糊付けロールに伝達すると共に、当該引き出し方向への前記糊付けロールの単独遊転を許容する一方向クラッチ機構とを D 備えていることを特徴とする手動壁紙糊付機 イ 請求項2 前記補助動力源は、前記壁紙糊付機の使用者が足で操作する操作部を備えていることを特徴とする請求項1記載の手動壁紙糊付機 ウ 請求項4 a 本体の外部から引き入れられるシート状の壁装材を、前記本体部の前面側から使用者が引き出すことにより、本体内部に配設された糊付けロールを含む複数のロール間の所定の経路に添って移動させ、本体下部に配設された糊桶内の糊を前記糊付けロールにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する壁紙糊付機において、
b 前記本体部が、開閉可能に構成された上部構体と下部構体とから構成され、
c 前記糊付けロールは前記下部構体に配設され、
d 前記糊付けロールの上流側には、前記壁装材の上面側から接して他のロールと連動しない押さえステーが前記上部構体に配設され、
e 前記糊付けロールの下流側には、前記壁装材の上面側から接して前記糊付けロールと連動するドライブロールが前記上部構体に配設され、さらにその下流側に前記壁装材の下面側から接して前記糊付けロールと連動する均しロールが配設され、
f 前記糊付けロールに前記壁装材の引き出し力を助勢する補助動力源が、前記本体部に対して着脱自在に配設されており、
g 前記補助動力源からの駆動力の伝達部が、前記補助動力源の出力軸の回転を前記壁装材の引き出し方向への回転力として前記糊付けロールに伝達すると共に、前記糊付けロールの単独遊転を許容する一方向クラッチ機構を備えており、
h 前記動力源の操作部が、前記壁紙糊付機の使用者の足で操作されるフットスイッチを備えている、
i ことを特徴とする手動壁紙糊付機 (4) 被告は、業として、別紙物件目録一記載の物件(商品名「β-EDラクーンAuto」。以下「イ号物件」という。)、別紙物件目録二記載の物件(商品名「ラクーン」。以下「ロ号物件」という。)及び別紙物件目録三記載の物件(商品名「ラクーンU」。以下「ハ号物件」という。)を製造販売している。
(5)ア イ号物件は、補助動力源付手動壁紙糊付機であり、その構成を分説すれば、次のとおりである。
1-@ 本体手動壁紙糊付機の本体部後部から引き入れられるシート状の壁装材を、前記本体部の前面側から使用者が手で引き出すことにより(以下、シート状の壁装材を引き入れる本体部後方側を上流側といい、シート状の壁装材が引き出される本体部前方側を下流側という。)、本体部内部に配設された糊付けローラーを含む複数のローラー間を所定の経路に沿って移動させ、本体部下部に配設された糊桶内の糊を前記糊付けローラーにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する手動壁紙糊付機において、
1-A 糊付けローラーに対して壁装材の引き出し力を助勢する補助動力源を備えていることを特徴とする手動壁紙糊付機である。
1-B 本体手動壁紙糊付機の本体部は筺体部と蓋体部からなっており、
蓋体部は爪部を一方に倒すことにより、本体部の後部側に設けられている筺体部と蓋体部の支点部を軸として上方に開くことができる。また、支点部のピンを外すことにより、蓋体部を筺体部から取り外すことができる。
1-C 筺体部には、糊付けローラーが配設されており、その下流側にハイテンションローラーを介して前記糊付けローラーと連動する均しローラーが配設されている。
1-D 蓋体部には、筺体部と閉じられたときに、前記糊付けローラーの上流部に位置するカウンター取付ステー(他のローラーと連動しない。)と、前記糊付けローラーの下流部に位置するハイテンションローラーが配設されている。
1-E 本体部後部から引き入れられたシート状の壁装材は、前記カウンター取付ステーの下面側、前記糊付けローラーの上面側、前記ハイテンションローラーの下面側、前記均しローラーの上面側を経て、本体部の前面側から引き出される。
1-F 補助動力源部は糊付けローラー等から構成される本体部の(前面から見て)右側面に着脱可能に配設されている。
1-G 補助動力源部からの駆動力伝達部は、補助動力源の出力軸の回転を前記壁装材の引き出し方向(上流側から下流側の方向)への回転力として、前記糊付けローラーに伝達するが、前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている。
1-H 補助動力源部は、壁紙糊付機の使用者が足で補助動力源を操作することができる操作部(以下「フットスイッチ」という。)を備えており、フットスイッチはケーブルにより補助動力源部背面側に接続されている。
イ ロ号物件及びハ号物件は、手動壁紙糊付機(商品名「β-ED」)用の補助動力源であり、これを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体は、別紙物件目録四記載のとおりであり(以下、この装置全体を「本件参考装置」という。)、その構成を分説すれば、次のとおりである。
2-@ 本体手動壁紙糊付機の本体部後部から引き入れられるシート状の壁装材を、前記本体部の前面側から使用者が手で引き出すことにより、本体部内部に配設された糊付けローラーを含む複数のローラー間を所定の経路に沿って移動させ、本体部下部に配設された糊桶内の糊を前記糊付けローラーにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する手動壁紙糊付機において、
2-A 糊付けローラーに対して壁装材の引き出し力を助勢する補助動力源を備えていることを特徴とする手動壁紙糊付機である。
2-B 本体手動壁紙糊付機の本体部は筺体部と蓋体部からなっており、
蓋体部は爪部を一方に倒すことにより、本体部の後部側に設けられている筺体部と蓋体部の支点部を軸として上方に開くことができる。また、支点部のピンを外すことにより、蓋体部を筺体部から取り外すことができる。
2-C 筺体部には、糊付けローラーが配設されており、その下流側にドライブローラーを介して前記糊付けローラーと連動する均しローラーが配設されている。
2-D 蓋体部には、筺体部と閉じられたときに、前記糊付けローラーの上流部に位置するカウンター取付ステーと、前記糊付けローラーの下流部に位置するドライブローラーが配設されている。
2-E 本体部後部から引き入れられたシート状の壁装材は、前記カウンター取付ステーの下面側、前記糊付けローラーの上面側、前記ドライブローラーの下面側、前記均しローラーの上面側を経て、本体部の前面側から引き出される。
2-F 補助動力源部は糊付けローラー等から構成される本体部の(前面から見て)右側面に着脱可能に配設されている。
2-G 補助動力源部からの駆動力伝達部は、補助動力源の出力軸の回転を前記壁装材の引き出し方向(上流側から下流側の方向)への回転力として、前記糊付けローラーに伝達するが、前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている。
2-H 補助動力源部は、壁紙糊付機の使用者が足で補助動力源を操作することができる操作部(フットスイッチ)を備えており、フットスイッチはケーブルにより補助動力源部背面側に接続されている。
(6)ア(ア) イ号物件の構成1-@は、請求項1の構成要件A及びDを充足し、
構成1-Aは、構成要件Bを充足し、構成1-Gは、構成要件Cを充足するから、
イ号物件は、請求項1を充足する。
(イ) イ号物件の構成1-Hは、請求項2のうち、「前記補助動力源は、
前記壁紙糊付機の使用者が足で操作する操作部を備えていることを特徴とする」との構成を充足し、前記(ア)のとおり、イ号物件は請求項1を充足するから、イ号物件は、請求項2を充足する。
(ウ) イ号物件の構成1-@は、請求項4の構成要件a及びiを充足する。構成1-Bの蓋体部、筺体部は、それぞれ、構成要件bの上部構体、下部構体に該当するから、構成1-Bは、構成要件bを充足する。構成1-Cは、構成要件cを充足する。構成1-D及び1-Eによると、イ号物件のカウンター取付ステーは、蓋体部に配設されており、糊付けローラーの上流側に位置し、他のローラーと連動することはなく、その下面を移動するシート状の壁装材を押さえておくものであるから、構成1-D及び1-Eは、構成要件dを充足する。構成1-C、1-D及び1-Eによると、イ号物件のハイテンションローラーは蓋体部に配設されており、筺体部に配設されている糊付けローラーと均しローラーの間に位置するように配設されており、本体部後部から引き入れられたシート状の壁装材は、カウンター取付ステーの下面側、糊付けローラーの上面側、ハイテンションローラーの下面側、均しローラーの上面側を経て、本体部の前面側から引き出されるから、構成1-C、1-D及び1-Eは、構成要件eを充足する。構成1-Fは、構成要件fを充足し、構成1-Gは、構成要件gを充足し、構成1-Hは、構成要件hを充足する。したがって、イ号物件は、請求項4を充足する。
イ(ア) 本件参考装置の構成2-@は、請求項1の構成要件A及びDを充足し、構成2-Aは、構成要件Bを充足し、構成2-Gは、構成要件Cを充足するから、同装置は、請求項1を充足する。
(イ) 本件参考装置の構成2-Hは、請求項2のうち、「前記補助動力源は、前記壁紙糊付機の使用者が足で操作する操作部を備えていることを特徴とする」との構成を充足し、前記(ア)のとおり、同装置は請求項1を充足するから、同装置は、請求項2を充足する。
(ウ) 本件参考装置の構成2-@は、請求項4の構成要件a及びiを充足する。構成2-Bの蓋体部、筺体部は、それぞれ、構成要件bの上部構体、下部構体に該当するから、構成2-Bは、構成要件bを充足する。構成2-Cは、構成要件cを充足する。構成2-D及び2-Eによると、同装置のカウンター取付ステーは、蓋体部に配設されており、糊付けローラーの上流側に位置し、他のローラーと連動することはなく、その下面を移動するシート状の壁装材を押さえておくものであるから、構成2-D及び2-Eは、構成要件dを充足する。構成2-C、2-D及び2-Eによると、同装置のハイテンションローラーは蓋体部に配設されており、筺体部に配設されている糊付けローラーと均しローラーの間に位置するように配設されており、本体部後部から引き入れられたシート状の壁装材は、カウンター取付ステーの下面側、糊付けローラーの上面側、ドライブローラーの下面側、均しローラーの上面側を経て、本体部の前面側から引き出されるから、構成2-C、2-D及び2-Eは、構成要件eを充足する。構成2-Fは、構成要件fを充足し、
構成2-Gは、構成要件gを充足し、構成2-Hは、構成要件hを充足する。したがって、同装置は、請求項4を充足する。
ウ ロ号物件及びハ号物件は、いずれも、本件参考装置の生産にのみ使用する物に当たる。
(7) 被告は、イ号物件、ロ号物件及びハ号物件を製造し、譲渡し、貸し渡し、
譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出するおそれがある。
(8)ア(ア) 被告は、イ号物件を、本件特許権の登録日の翌日である平成12年1月15日から同年6月30日までの間、少なくとも、385台販売した。イ号物件の販売価格は1台17万8000円であり、イ号物件1台当たりの利益率は20パーセントを下らない。
したがって、この間のイ号物件の販売によって得た被告の利益は、1370万6000円(17万8000円×0.2×385台=1370万6000円)を下らない。
(イ) 被告は、ハ号物件を、本件特許権の登録日の翌日である平成12年1月15日から同年6月30日までの間、少なくとも、165台販売した。ハ号物件の販売価格は1台4万3000円であり、ハ号物件1台当たりの利益率は20パーセントを下らない。
したがって、この間のハ号物件の販売によって得た被告の利益は、141万9000円(4万3000円×0.2×165台=141万9000円)を下らない。
(ウ) 原告は、イ号物件、ハ号物件を手動壁紙糊付機に取り付けた補助動力源付手動壁紙糊付機(本件参考装置)と、それぞれ競合する補助動力源付手動壁紙糊付機(商品名「フレッシュマン駆動式システマ」等)を製造販売している。
(エ) したがって、被告がイ号物件及びハ号物件の販売によって得た利益1512万5000円(1370万6000円+141万9000円=1512万5000円)は、特許法102条2項により、原告が受けた損害の額と推定される。
イ(ア) 原告は、イ号物件、ロ号物件及びハ号物件と競合する補助動力源付手動壁紙糊付機の製造販売を平成10年9月から本格的に始め、同月の販売台数は13台であったが、同年10月の販売台数は29台に伸び、原告は、補助動力源付手動壁紙糊付機の販売数量につき、1か月当たり100台という見込みを立てていた。しかし、被告は、同年11月、手動壁紙糊付機β-EDに取り付けられる補助動力源ラクーンの販売を始め、ラクーンを単独で、又はβ-EDに取り付けて販売した。そのため、原告の販売数量は大幅に減少した。補助動力源付手動壁紙糊付機の販売は、原告と被告が競合しており、他に見るべき競合機種や競合業者は存在しないから、原告の販売数量の減少は、被告の販売によるものである。
本件特許権の登録日の翌日である平成12年1月15日から同年6月30日までに原告が販売できると見込まれた補助動力源付手動壁紙糊付機の数は600台であり、この間に原告が実際に販売したのは66台であるから、原告は、被告の販売によって、534台分につき販売する機会を失った。原告の補助動力源付手動壁紙糊付機の販売価格は1台17万8000円であり、1台当たりの限界利益は3万5600円を下ることはないから、原告は、被告の販売により、同年1月15日から同年6月30日までの間に1901万0400円の得べかりし利益を喪失した(3万5600円×534台=1901万0400円)。
(イ) 原告は、被告に対し、この1901万0400円の損害の内金1512万5000円を請求する。
(9) よって、原告は、被告に対し、本件特許権に基づき、イ号物件、ロ号物件及びハ号物件の製造、譲渡、貸渡し、譲渡若しくは貸渡しのための展示、輸出の差止め並びにイ号物件、ロ号物件及びハ号物件の廃棄を求め、本件特許権侵害不法行為による損害賠償として、1512万5000円及びこれに対する不法行為の後である平成12年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否 (1) 請求原因(1)ないし(3)は認める。
(2)ア 同(4)の事実のうち、被告が、業として、平成12年5月9日まで、一方向クラッチ機構を備え、別紙物件目録三記載の構成を備えた「ラクーンU」という商品名の手動糊付機用補助動力源を販売していた(以下、一方向クラッチ機構を備えた「ラクーンU」という商品名の手動糊付機用補助動力源を「旧ラクーンU」という。)ことは認める(ただし、同目録の「三 構成」A中に「係合ピン」とあるのは否認する。「ガイド」とすべきである。)。被告は、「ラクーン」という商品名の手動糊付機用補助動力源については、本件特許権の登録日である平成12年1月14日の前から既に製造販売していないから、ロ号物件については認否しない。同(4)の事実のうちその余は否認する。
イ 被告は、業として、平成12年5月9日まで、一方向クラッチ機構を備えた「β-EDラクーンAuto」という商品名の補助動力源付手動糊付機を販売していたが(以下、一方向クラッチ機構を備えた「β-EDラクーンAuto」という商品名の補助動力源付手動糊付機を「旧β-EDラクーンAuto」という。)、同月10日以降は、一方向クラッチ機構を備えない「β-EDラクーンAuto」という商品名の補助動力源付手動糊付機を販売しており(以下、一方向クラッチ機構を備えない「β-EDラクーンAuto」という商品名の補助動力源付手動糊付機を「新β-EDラクーンAuto」という。)、旧β-EDラクーンAutoは販売していない。
旧β-EDラクーンAutoの構成は、別紙物件目録一記載の構成と、
フットスイッチを備えない点で異なるが、その余は同一であり、新β-EDラクーンAutoの構成は、別紙物件目録一記載の構成と、フットスイッチを備えない点及び一方向クラッチ機構を備えない点で異なるが、その余は同一である。
ウ 前記のとおり、被告は、業として、平成12年5月9日まで、旧ラクーンUを販売していたが、同月10日以降は、一方向クラッチ機構を備えない「ラクーンU」という商品名の手動糊付機用補助動力源を販売しており(以下、一方向クラッチ機構を備えないラクーンUという商品名の手動糊付機用補助動力源を「新ラクーンU」という。)、旧ラクーンUは販売していない。
前記のとおり、旧ラクーンUの構成は、別紙物件目録三記載の構成と同一であり、新ラクーンUの構成は、別紙物件目録三記載の構成と、一方向クラッチ機構を備えない点で異なるが、その余は同一である。
(3) 請求原因(5)に対する認否は、次のとおりである。
ア(ア) 旧β-EDラクーンAutoについて、構成1-@ないし1-Gを備えることは認め、構成1-Hを備えることは否認する。
(イ) 新β-EDラクーンAutoについて、構成1-@ないし1-F及び1-Gのうち「補助動力源部からの駆動力伝達部は、補助動力源の出力軸の回転を前記壁装材の引き出し方向(上流側から下流側の方向)への回転力として、前記糊付けローラーに伝達する」という部分を備えることは認め、構成1-Gのうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分及び構成1-Hを備えることは否認する。
イ ロ号物件を手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体の構成については認否しない。
ウ(ア) 旧ラクーンUについて、それを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体が別紙物件目録四記載のとおり(本件参考装置)であり、その構成が構成2-@ないし2-Hのとおりであることは認める。
(イ) 新ラクーンUについて、それを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体に関しては、別紙物件目録四のうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分は否認し、その余は認める。その構成については、構成2-@ないし2-F、2-H及び2-Gのうち「補助動力源部からの駆動力伝達部は、補助動力源の出力軸の回転を前記壁装材の引き出し方向(上流側から下流側の方向)への回転力として、前記糊付けローラーに伝達する」という部分を備えることは認め、構成2-Gのうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分を備えることは否認する。
(4) 請求原因(6)に対する認否は、次のとおりである。
ア(ア) 旧β-EDラクーンAutoが請求項1を充足することは認める。
新β-EDラクーンAutoは、構成1-Gのうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分を備えないから、請求項1の構成要件Cを充足しない。
(イ) 旧β-EDラクーンAutoは、構成1-Hを備えないから、請求項2の「前記補助動力源は、前記壁紙糊付機の使用者が足で操作する操作部を備えていることを特徴とする」という部分を充足しない。
新β-EDラクーンAutoは、構成1-Hを備えないから、請求項2の「前記補助動力源は、前記壁紙糊付機の使用者が足で操作する操作部を備えていることを特徴とする」という部分を充足しないし、前記(ア)のとおり、請求項1を充足しないから、請求項2の「請求項1記載の手動壁紙糊付機」という部分も充足しない。
(ウ) 旧β-EDラクーンAutoは、構成1-Hを備えないから、請求項4の構成要件hを充足しない。
新β-EDラクーンAutoは、構成1-Gのうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分を備えないから、請求項4の構成要件gを充足しないし、構成1-Hを備えないから、構成要件hも充足しない。
イ ラクーンを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体が請求項1、2又は4を充足するかについては、認否しない。
ウ(ア) 旧ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた本件参考装置が請求項1を充足することは認める。
新ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体は、構成2-Gのうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分を備えないから、請求項1の構成要件Cを充足しない。
(イ) 旧ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた本件参考装置が請求項2を充足することは認める。
新ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体は、前記(ア)のとおり、請求項1を充足しないから、請求項2の「請求項1記載の手動壁紙糊付機」という部分を充足しない。
(ウ) 旧ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた本件参考装置が請求項4を充足することは認める。
新ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体は、構成2-Gのうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分を備えないから、請求項4の構成要件gを充足しない。
エ 請求原因(6)ウの事実のうち、旧ラクーンUが、旧ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた本件参考装置の生産にのみ使用する物に当たること、新ラクーンUが、新ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体の生産にのみ使用する物に当たることは認め、ロ号物件が本件参考装置の生産にのみ使用する物に当たるかどうかについては認否しない。
(5) 請求原因(7)の事実は否認する。前記(2)イ及びウのとおり、被告は、平成12年5月10日以降、新β-EDラクーンAuto及び新ラクーンUを製造販売しており、既に製造していた旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUについては、すべて新β-EDラクーンAuto及び新ラクーンUに改造済みであり、在庫を有していない。また、前記(4)ア(ア)及びウ(ア)、(イ)、(ウ)のとおり、被告は、旧β-EDラクーンAutoが請求項1を充足すること並びに旧ラクーンUをβ-EDに取り付けた本件参考装置が請求項1、2及び4を充足することを争っていない。さらに、被告は、後記(6)ア(ア)、(イ)のとおり、本件特許権の特許公報発行日である平成12年3月15日から同年5月19日までに販売した旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUの台数を明らかにし、それぞれの1台当たりの利益率が20パーセントであることも争っていない。したがって、被告が、将来、旧β-EDラクーンAuto又は旧ラクーンUを製造販売等するおそれはない。
(6)ア(ア) 請求原因(8)ア(ア)の事実のうち、被告が、本件特許権の特許公報発行日である平成12年3月15日から同年5月9日までに旧β-EDラクーンAutoを5台販売し、その販売額が合計68万3000円であること、1台当たりの利益率が20パーセントであることは認め、その余は否認する。
(イ) 同(8)ア(イ)の事実のうち、被告が、前同平成12年3月15日から同年5月9日までに旧ラクーンUを25台販売し、その販売額が合計85万4800円であること、1台当たりの利益率が20パーセントであることは認め、その余は否認する。
(ウ) 同(8)ア(ウ)の事実のうち、原告が補助動力源付手動壁紙糊付機(商品名「フレッシュマン駆動システマ」等)を製造販売していることは認め、その余は否認する。これは、旧ラクーンUと競合する製品ではない。
(エ) 同(8)ア(エ)の主張は争う。
イ 同(8)イ(ア)の事実のうち、原告が補助動力源付手動壁紙糊付機を製造販売していることは認め、その余の事実は否認し、主張は争い、(イ)の主張は争う。
(7) 同(9)の主張は争う。
3 抗弁 (1)(特許無効による権利濫用) ア 本件発明の特許出願前に頒布された刊行物には、次のような記載がある。
(ア) 遅くとも昭和55年にフセオ商事株式会社が製造販売した糊付機NEWαの取扱説明書(乙第1号証)には、半自動糊付機NEWα-Uの構成として、糊付機本体後部から引き入れられるクロスを、本体の前面側から手で引き出すことにより、本体内部に配設された糊付けローラーを含む複数のローラー間の所定の経路に沿って移動させ、本体下部に配設された糊桶内の糊を前記糊付けローラーにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する手動壁紙糊付機において、前記糊付けローラーに対して前記壁装材の引き出し力を助勢する補助動力源である半自動電装ボックスを設け、前記補助動力源からの駆動力を前記壁装材の引き出しの回転力として前記糊付けローラーに伝達するようにした構成及び糊付機本体に補助動力源の取付部を設けた構成が記載されている。乙第1号証には、NEWα-Uがフットスイッチを備えていることも記載されている。
(イ) 特開平10-34776号公開特許公報(乙第2号証)は、片面段ボールを形成するシングルフェーサの糊付装置に関するものであり、中しん紙を供給する下段ロールと糊ロールの速度差を一定とし、中しん紙の各山に常時一定量の糊を付着させることを目的とし、中しん紙との接触によって回転する糊ロールに、
糊ロールの回転速度が駆動軸の回転速度を上回ると、駆動軸から糊ロールへの回転伝達を遮断し、糊ロールの単独遊転を許容する一方向クラッチを設けたことを特徴とするものである。
(ウ) 特開平5-43084号公開特許公報(乙第3号証)は、ファクシミリ装置等の用紙搬送装置に関するものであり、駆動モーターからの駆動力を紙の引き出しの回転力として送りローラに伝達するとともに、引き出し方向への紙の引き出しを行えるよう送りローラの単独遊転を許容する一方向クラッチを設けた構成のものであり、搬送通路内における紙詰まり時において、紙を送り出し方向に軽く引くと、一方向クラッチによって、ローラと減速歯車機構との連結が解離されて、
各ローラは遊転し、紙を搬送通路から容易に取り除くことができるという作用を有するものである。
(エ) 特開平7-313913号公開特許公報(乙第4号証)は、手動クロス糊付機に関するものであり、たとえ凹凸のあるクロスであっても、完全均一に糊を塗布することのできる、カウンターステー等の押さえ手段を備えた改良された手動クロス糊付機を提供することを目的とするものである。
(オ) 特開平1-186487号公開特許公報(乙第5号証)は、動力補助式自転車の動力伝達装置に関するものであり、補助動力から被駆動軸に対して駆動力を伝達可能な一方向クラッチを設け、被駆動軸側からの回転時には、補助動力との連結を解除し、空転するようにしたものである。
(カ) 特開平5-8895号公開特許公報(乙第6号証)は、複写機やプリンタ等の画像形成装置やその他ソータ等に装備される搬送装置に関するものであり、駆動系のモーターに対する入力部に、一方向クラッチを設け、駆動モーターの電気系が停電し、モーターが停止しても、駆動系は遊転し、排紙不良を防ぐことができるようにしたものである。
(キ) 特開平5-278670号公開特許公報(乙第7号証)は、電気自転車に関するものであり、減速部材に一方向クラッチを設けることにより、モーターの回転力を後車輪の車軸に伝達し、一方、車輪からモーターへの回転力の伝達を解除するようにしたものである。
(ク) 特開平5-155450号公開特許公報(乙第8号証)は、プリンタ又は複写機等において、用紙を一枚ずつ分離して印字部に供給し、印字後に用紙を戻し得る自動給紙装置に関するものであり、モーターの正方向の回転をトルクリミッタと一方向クラッチとを介して分離ローラーに伝達し、重なった用紙を分離ローラーで押し戻し、モーターを逆転させた場合には、一方向クラッチにより分離ローラーの追従回転を許容し、用紙を円滑に戻すようにしたものである。
(ケ) 特開平5-169767号公開特許公報(乙第9号証)は、電子写真方式の印刷機に使用される感光ドラムや定着ロールの汚れを除去する印刷機のドラムクリーニング装置に関するものであり、ペーパーウェブの弛みを取るために巻き取りモーターを回すと巻き取り軸のみを駆動するように、一方向クラッチを使用したものである。
(コ) 特公昭38-3161号特許公報(乙第10号証)は、内輪にボール半径よりやや大きい曲率をもつ軌道面を作り、外輪に外径側より内輪軌道面に接するようにボール半径よりやや大きい斜穴をあけ、この斜穴と内輪軌道との間にボールを装入した一方向クラッチに関するものである。
イ 乙第5ないし第10号証に示されるように、一方向クラッチを駆動側と被駆動側の間に介設し、被駆動側ローラーの自由な回転を許容するものは、多分野において用いられており、単にその応用分野が新規であるからといって、進歩性を有するものではない。このような技術水準を勘案すると、請求項1の発明は、乙第1及び第2号証又は乙第1ないし第3号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができ、請求項2の発明は、乙第1及び第2号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができ、請求項4の発明は、乙第1、第2及び第4号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ したがって、請求項1、2及び4には、特許法29条1項2号又は同条2項に違反する無効理由があることが明らかであり、このような無効理由があることが明らかな特許権に基づく差止め、損害賠償の請求は、権利の濫用に当たり許されない。
(2)(過失推定の障害事実) 特許法103条により過失が推定される根拠は、特許権の存在が公示されていることにあるから、特許権登録後であっても、特許公報の発行が行われていない期間については、過失推定の根拠を欠く。したがって、原告が損害賠償を請求し得るとしても、本件特許権の特許公報が発行された平成12年3月15日から、被告が旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUの販売を行っていた同年5月9日までの期間についてにすぎない。
4 抗弁に対する認否 (1) 抗弁(1)の主張は争う。
本件発明が手動壁紙糊付機に関するものであるのに対して、乙第1ないし第10号証に記載されているものは、いずれも手動壁紙糊付機に関する技術ではないし、これらの技術を手動壁紙糊付機に転用することが容易であるとはいえない。
また、乙第1号証は、出願の過程において特許庁に提出され審査を経ているから、
明らかな無効理由があることを裏付ける根拠となるものではない。したがって、本件特許権に無効理由があることが明らかとはいえない。
(2) 抗弁(2)の主張は争う。
理 由1 請求原因(1)ないし(3)は当事者間に争いがない。
2(1) 同(4)の事実のうち、被告が、業として、平成12年5月9日まで、別紙物件目録三記載の構成を備えた旧ラクーンUを製造販売していたことは、当事者間に争いがない(なお、同目録の「三 構成」A中の「係合ピン」については、被告はこれを「ガイド」とすべきであると主張しており、この部分は当事者間で争いがあるが、客観的な構成に争いがあるわけではなく、また、本件発明との対比の上で特に意味がある部分でもない。)。この当事者間に争いのない事実と乙第11号証、
第12号証の1、2、第13号証、第16号証、第17号証、第18号証の1ないし3、第19号証の1ないし4、第20号証、第21号証、第22号証の1ないし7、第23号証の1、2、第24号証、第25号証の1ないし30、第26号証及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
被告は、かつて、業として、手動壁紙糊付機β-EDに装着する手動壁紙糊付機用補助動力源であるラクーンを製造販売していたが、本件特許権の登録日である平成12年1月14日の前に既に製造販売をやめ、平成11年から、ラクーンの後継機種として、糊付けローラーが壁装材の引き出し方向へ駆動軸の回転に拘束されずに単独遊転することができるように一方向クラッチを備えた手動壁紙糊付機用補助動力源である旧ラクーンUを製造販売していた。被告は、業として、平成12年5月9日まで、旧ラクーンU及び同様な一方向クラッチを備えた補助動力源付手動壁紙糊付機である旧β-EDラクーンAutoを製造販売していた。
被告内においては、平成12月4月ごろ、営業部門を通じて行ったアンケートの結果に基づき、実際のユーザーである内装施工業者に開発担当者が連絡を取るなどして調査を行い、ラクーンUの作動時に壁紙をモーターの回転速度より速く引くような使用方法はされないとの結果を得て、β-EDラクーンAuto及びラクーンUから一方向クラッチを外しても支障がないとの結論に至った。この調査結果は、被告の本社で同年5月8日に開かれたインテリア関連機器の新商品開発検討会に報告され、β-EDラクーンAuto及びラクーンUから一方向クラッチを外すことが決定された。その際、一方向クラッチを外すと、クロスをモーターの駆動より速く引いた場合に従前と糊付け状態が変わるおそれがあるので、その旨、取扱説明書と注意シールに明記すること、不具合が生じた場合には営業サイドで対処すること、一方向クラッチを外しても品番、名称は変えないが、製造番号を累進して変更分を判別できるようにすることなどが決められた。この決定に基づき、被告内では、生産部門及び品質保証部門に対し、既に完成している旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUの在庫分について一方向クラッチを外す改造を行うための改造用部品の発注及び改造依頼を行う業務依頼書が配布された。この依頼書には、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUの在庫数量(旧β-EDラクーンAutoの在庫が神岡(関西配送センター)に37台、北関東(関東配送センター)に52台、旧ラクーンUの在庫が神岡(関西配送センター)に18台、北関東(関東配送センター)に33台、合計140台)、改造に必要な部品の詳細(歯車軸、6角穴付止めネジ2種、平行キー片丸、注意シール、取扱説明書に追加するページ)及び発注数(予備を含めて145台分)、改造内容の詳細が書かれていた。旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUの一方向クラッチ取付部の構造は、モーター軸にハウジングシャフトを取り付け、そのハウジングシャフトにシェル形ローラークラッチを嵌合させて一方向クラッチを構成し、ローラークラッチに駆動伝達用の歯車を取り付けるという構造であった。改造の内容は、歯車と一方向クラッチを外し、新たに用意した歯車軸を取り外した歯車の中心に入れて境界面(円周上)にタップを立て、押しネジ用のタップも立て、平行キーを入れて6角穴付止めネジで、駆動伝達用歯車を止めること、「回転速度に合わせてご使用下さい。」と記載された注意シールを所定の位置に貼付すること、取扱説明書に、「ご使用上の注意 ローラーの回転速度より速くクロスを引くと、糊がかすれることがあります。ローラーの回転速度に合わせてクロスを引いて下さい。」と記載されたページを追加することなどであった。また、その後新たに製造する分について設計変更をするため、設計変更の詳細を記載した設計変更通知書が同年5月11日に研究開発部門から発送されたが、同月10日出荷の4台から設計変更実施された。新たな製造分について同月10日出荷分から設計変更実施されたことは、同月11日、営業部門であるインテリア事業部へ報告された。同月10日、インテリア事業部から各営業所及び各配送センター宛に、同日以降、当分の間、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUは関西配送センター以外からは出荷停止にすること、関東配送センターと各営業所の在庫品の出荷は絶対にしてはならないこと、各営業所の在庫品は関西配送センターに同月15日までに返送すること、関西配送センターではクラッチ機構を取り除いて同月10日から出荷していること、関東配送センターの在庫品は同週末に一部クラッチ機構を取り除く予定であることなどが記載された連絡表が送付された。関西配送センターでは、在庫があった旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUについて改造が行われたが、営業担当者が持ち回っていた分についても回収され改造が行われたため、業務依頼書及び設計変更通知書に記載されていた旧β-EDラクーンAuto37台及び旧ラクーンU18台の合計55台よりも4台多い59台について改造が行われた。関東配送センターでは、同年6月3日、旧β-EDラクーンAuto52台及び旧ラクーンU33台について改造が行われた。被告は、同月10日以降は、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUは、製造も販売も行っておらず、一方向クラッチを外した新β-EDラクーンAuto及び新ラクーンUを製造販売している。
新β-EDラクーンAutoについて、営業品番は、旧β-EDラクーンAutoと同じ11-1427のままとされたが、旧β-EDラクーンAutoの在庫分から改造されたものについては、製品コードは051-0171-01とされ、製造番号は3001以降に変更され、一方向クラッチを備えないで新たに製造されるものについては、製品コードは051-0186-00とされ、製造番号は1001以降とされた。また、新ラクーンUについて、営業品番は、旧ラクーンUと同じ11-1423のままとされたが、旧ラクーンUの在庫分から改造されたものについて、製品コード及び製造番号は、旧β-EDラクーンAutoの在庫分から新β-EDラクーンAutoに改造されたものと同様とされ、一方向クラッチを備えないで新たに製造される分については、製品コードは051-0185-00とされ、製造番号は1001以降とされた。
旧β-EDラクーンAuto及び新β-EDラクーンAutoは、壁紙を引くと同時に補助動力源のスイッチが入り、糊付ローラーが自動回転するようにテンション検知機能が付いているから、補助動力源のスイッチを操作するためにフットスイッチは必ずしも必要ではなく、フットスイッチはオプションとされており、別売のフットスイッチを装着することができるが、旧β-EDラクーンAuto及び新β-EDラクーンAuto自体には、フットスイッチは含まれておらず、その構成とはなっていない。これに対し、旧ラクーンU及び新ラクーンUは、手動糊付機β-ED用の補助動力源であるが、β-EDには、テンション検知機能が付いていないから、両手で壁紙を持った状態で補助動力源のスイッチを操作するためにはフットスイッチが必要であり、旧ラクーンU及び新ラクーンUには、フットスイッチが付属し、その構成をなしている。
以上の事実が認められる。
(2) 原告は、β-EDの製造販売が現在でも行われているところ、テンション検知機能が付いていないβ-EDを購入した者が補助動力源を購入する場合は、フットスイッチの付いたラクーン又は旧ラクーンUを購入することになるから、β-EDの製造販売が現在も行われている以上、ラクーン又はラクーンUの製造販売の事実も推認される旨主張する(平成13年2月4日付け原告第7準備書面8頁以下)。しかし、前記認定のとおり、β-EDに装着される補助動力源としては、旧ラクーンUがラクーンの後継機種として製造販売され、平成12年5月10日以降は新ラクーンUが製造販売されているから、β-EDが製造販売されていることをもって、ラクーン又は旧ラクーンUの製造販売の事実が推認されるものではない。
原告は、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUの製造販売が平成12年5月9日に中止され、同月10日から新β-EDラクーンAuto及び新ラクーンUが製造販売されたとすれば、品番が変更され、その後作成されたカタログに掲載される品番も変更されたはずであるところ、被告が、同年1月に開催された壁紙、カーテン等の見本市であるジャパンテックス2000において配布したカタログ(甲第13号証)と、平成13年2月に開催されたジャパンテックス2001において配布したカタログ(甲第14号証)において、「β-EDラクーンAuto」、「ラクーンU」と表示された製品の品番はいずれも変わっていないから、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUの製造販売が平成12年5月9日に中止されたとは認められない旨主張する(前同準備書面2頁以下)。しかし、前記認定のとおり、新β-EDラクーンAuto及び新ラクーンUについて、営業品番は、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUと同じままとされたが、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUから改造されたもの並びに一方向クラッチを備えずに新たに製造されたものについて、製品コード及び製造番号が変更され、
製品コード及び製造番号により、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUと新β-EDラクーンAuto及び新ラクーンUを区別することが可能となっている。したがって、甲第13及び第14号証に記載された品番が変わっていないとしても、そのことを根拠として、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUの製造販売が平成12年5月9日に中止されたと認められないとはいえない。
原告は、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUと新β-EDラクーンAuto及び新ラクーンUでは、一方向クラッチを外したことによって主要な機能、機構に変わりがないとはいえないこと、平成12年1月のジャパンテックス2000において配布されたカタログ(甲第13号証)と、平成13年2月のジャパンテックス2001において配布されたカタログ(甲第14号証)は別のカタログ(パンフレット)であることから、被告研究開発本部企画部aの陳述書(乙第13号証)「5」末尾記載の「ワンウェイクラッチを取り外しても、パンフレットに記載している主要な機能、機構には変わりがありませんので、同じパンフレットを使用しております。」という記述は事実に反し、そのことから、平成12年5月10日以降は一方向クラッチ機構を取り外したβ-EDラクーンAuto及びラクーンUを製造販売しているなどの乙第13号証の他の記述も信用することができない旨主張する(前同準備書面3頁以下)。しかし、ジャパンテックスは平成12年、13年と連続して開かれている(甲第13、第14号証)ことからみて、毎年開かれる見本市であると推認されるところ、各年度により、開催日を始め、展示会場の配置、展示品、宣伝する商品が異なることは当然であり、各年度のパンフレットが異なることも当然に予想されるところであって、このことに照らせば、乙第13号証の前記記述にいう「同じパンフレット」がジャパンテックスのパンフレットを指すという、原告の主張の前提は、採用することができないというべきである。乙第13号証が、主にβ-EDラクーンAutoとラクーンUについて記述した陳述書であることからすると、そこにいう「パンフレット」とは、これらの製品のパンフレットである乙第12号証の1、2を指すと認められる。そして、乙第12号証の1、2には、壁紙をモーターの駆動より速く引いた場合のことなど、一方向クラッチの機能や作用について触れた記述はないから、「ワンウェイクラッチを取り外しても、パンフレットに記載している主要な機能、機構には変わりがありません」という記述は、事実に反するところはないといえる。したがって、乙第13号証「5」末尾の前記記述は、事実に反せず、この記述が事実に反することから同号証の他の記述も信用することができないとする原告の主張は、採用することができない。
原告は、一方向クラッチの取り外しに関する調査報告書(乙第17号証)並びに平成12年5月10日にインテリア事業部から各営業所及び各配送センター宛てに配布された連絡表(乙第26号証)に「ラクーン」という記載があることから、被告がラクーン(ロ号物件)を本件特許権の登録日である平成12年1月14日の後も販売している疑いがある旨主張する(平成13年4月27日付け原告第8準備書面4頁)。しかし、乙第17号証には、「件名:ラクーンUのワンウエイクラッチを外しても支障ないか」という題名が記載されており、また、乙第26号証には「件名:ラクーンUラクーンAUTO出荷停止について」という題名が記載され、「本日より、11-1423ラクーンUと11-1427ラクーンAUTOの2種類の商品は当面の間、関西配送センター以外からは「出荷停止」に致します。」という記載があることから、これらの文書中の「ラクーン」という記載は、
「ラクーンU」を省略して記載したことが文面上から容易に読み取れるところであり、原告の前記主張は、採用することができない。
原告は、甲第6号証の1、甲第13、第14号証に、フットスイッチの付いたβ-EDラクーンAutoの写真が掲載されていることから、β-EDラクーンAutoにはフットスイッチが付いていると主張する(平成13年2月4日付け原告第7準備書面8頁)。しかし、β-EDラクーンAutoのパンフレットである甲第6号証の1には、β-EDラクーンAutoについて、品番「11-1427」、価格「17万8000円」及び「フットスイッチはオプションとなります。」という注意書きが記載され、さらにフットスイッチについて品番「11-1428」と価格「6000円」が記載されていることから、前記認定のとおり、フットスイッチはオプションとされており、別売のフットスイッチを装着することができるが、β-EDラクーンAuto自体にフットスイッチは含まれず、その構成とはなっていないことが示されているということができ、甲第6号証の1は、原告の前記主張の根拠とはならない。また、甲第13及び第14号証には、「パワーユニット付手動糊付機」又は「パワーユニット付手動壁紙糊付機」、「β-EDラクーンAuto、品番11-1427、17万8000円」と記載され、その製品を示すために、フットスイッチの付いたβ-EDラクーンAutoの写真が掲載されており、この記載及び写真は、原告主張のとおり、β-EDラクーンAuto自体の構成にフットスイッチが含まれると解される余地のあるものである。しかし、この記載及び写真は、多数の被告の製品がそれぞれ小さく示された紙面の中で、その一つとして掲げられているものにすぎず、必ずしも正確にβ-EDラクーンAutoの構成を証明したものともいえないから、この記載及び写真があることをもって、フットスイッチがβ-EDラクーンAutoの構成に含まれるとはいえない。
3 ラクーン(ロ号物件)に対する差止請求等について検討する。
前記2(1)の認定事実によれば、被告は、かつて、業として、ラクーンを製造販売していたが、本件特許権の登録日である平成12年1月14日の前に既に製造販売をやめ、平成11年から、ラクーンの後継機種として、旧ラクーンUを製造販売しており、平成12年5月10日以降は、新ラクーンUを製造販売している。このような事実に照らすと、ラクーンについては、現在製造販売していないし、将来製造販売するおそれがあるとは認められない。したがって、ラクーン(ロ号物件)については、その構成や請求項1、2又は4の技術的範囲への属否を検討するまでもなく、その製造、譲渡、貸渡し、譲渡若しくは貸渡しのための展示の停止又は予防の請求は理由がなく、廃棄の請求も理由がない。なお、輸出自体は物の発明実施に含まれないから(特許法2条3項1号参照)、原告による輸出の差止めの請求も、理由がない。
4 旧β-EDラクーンAuto及び新β-EDラクーンAuto並びに旧ラクーンU及び新ラクーンUの構成の分説について検討する。
(1)ア 旧β-EDラクーンAutoが、構成1-@ないし1-Gを備えることは当事者間に争いがない。前記2(1)の認定事実によれば、旧β-EDラクーンAutoはフットスイッチを備えておらず、構成1-Hを具備しない。
イ 新β-EDラクーンAutoが、構成1-@ないし1-F及び1-Gのうち「補助動力源部からの駆動力伝達部は、補助動力源の出力軸の回転を前記壁装材の引き出し方向(上流側から下流側の方向)への回転力として、前記糊付けローラーに伝達する」という部分を備えることは当事者間に争いがない。前記2(1)の認定事実によれば、新β-EDラクーンAutoは一方向クラッチ及びフットスイッチのいずれも備えておらず、構成1-Gのうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分及び構成1-Hを具備しない。
(2)ア 旧ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体が別紙物件目録四記載のとおり(本件参考装置)であり、その構成が構成2-@ないし2-Hのとおりであることは当事者間に争いがない。
イ 新ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体が、別紙物件目録四のうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分以外の記載のとおりであること、その構成は、構成2-@ないし2-F、2-H及び2-Gのうち「補助動力源部からの駆動力伝達部は、補助動力源の出力軸の回転を前記壁装材の引き出し方向(上流側から下流側の方向)への回転力として、前記糊付けローラーに伝達する」という部分を備えることは、当事者間に争いがない。前記2(1)の認定事実によれば、新ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体は、別紙物件目録四のうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構」を備えておらず、構成2-Gのうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分を具備しない。
5 旧β-EDラクーンAuto、新β-EDラクーンAuto並びに旧ラクーンU又は新ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体が請求項1、2又は4を充足するかなどについて検討する。
(1)ア 旧β-EDラクーンAutoが請求項1を充足することは当事者間に争いがない。
新β-EDラクーンAutoは、構成1-Gのうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分を具備しないから、請求項1の構成要件Cを充足しない。
イ 旧β-EDラクーンAutoは、構成1-Hを具備しないから、請求項2の「前記補助動力源は、前記壁紙糊付機の使用者が足で操作する操作部を備えている」という部分を充足しない。
新β-EDラクーンAutoは、構成1-Hを具備しないから、請求項2の「前記補助動力源は、前記壁紙糊付機の使用者が足で操作する操作部を備えていることを特徴とする」という部分を充足しないし、前記アのとおり、請求項1を充足しないから、請求項2の「請求項1記載の手動壁紙糊付機」という部分も充足しない。
ウ 旧β-EDラクーンAutoは、構成1-Hを具備しないから、請求項4の構成要件hを充足しない。
新β-EDラクーンAutoは、構成1-Gのうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分を具備しないから、請求項4の構成要件gを充足しないし、構成1-Hを具備しないから、構成要件hも充足しない。
(2)ア 旧ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた本件参考装置が請求項1を充足することは、当事者間に争いがない。
新ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体は、構成2-Gのうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分を具備しないから、請求項1の構成要件Cを充足しない。
イ 旧ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた本件参考装置が請求項2を充足することは、当事者間に争いがない。
新ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体は、前記アのとおり、請求項1を充足しないから、請求項2の「請求項1記載の手動壁紙糊付機」という部分を充足しない。
ウ 旧ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた本件参考装置が請求項4を充足することは、当事者間に争いがない。
新ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた場合の装置全体は、構成2-Gのうち「前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている」という部分を具備しないから、請求項4の構成要件gを充足しない。
(3) 旧ラクーンUが、旧ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた本件参考装置の生産にのみ使用する物に当たることは、当事者間に争いがない。
6 抗弁(1)(特許無効による権利濫用)について検討する。
(1) 本件明細書には、次のような記載がある。
従来技術として、壁紙糊付機に手動型のものと自動型のものがあったこと(【0002】)が記載され、「従来の壁紙糊付機で手動型と電動型の切り替えが可能なものも考案されているが、この従来例では、手動の際には駆動源となるモータユニットを取り外し、更に、自動動作の時にのみ必要な入り口側のピンチロールを取り外すことで、手動型としても使用出来るようにしている」(【0005】)と記載されている。
発明が解決しようとする課題としては、手動型の問題(【0006】)、自動型の難点(【0008】)のほか、「自動型と手動型とに切り替え可能に構成したものは、自動の際の作動が完全になるように、電動型でのみ必要な構成としての入り口側ピンチロールを供えたものであるが、この装置を手動型として使用する場合には、このピンチロールをいちいち取り外したり、更には駆動源を取り外したりして、切り替えが容易ではない難点がある」(【0009】)と記載されている。
そして、本件発明の目的として、手動型の問題点を解決して、補助動力を設けることで、使用者の労力の低減を図ること、切り替え動作無しに、手動型と自動(動力補助付き)型とを使い分けられる壁紙糊付機を提供すること、補助動力を設けても、糊付機装置本体が大型化しない、取り扱いの楽な糊付機を提供すること、従来の手動壁紙糊付機を用いても、最低限の改造で、簡易な補助動力を付けることができる壁紙糊付機を提供することを挙げている(【0011】)。
課題を解決するための手段として、「この発明では、いわゆるクラッチ機構を設けることで、補助動力源からの動力の伝達状態と、糊付けロール他の連動ロールの遊転状態とを維持できる。即ち、補助動力源の動作時には、その駆動力を前記壁装材の引き出しの回転力として前記糊付けロールに伝達することが出来るし、補助動力源の駆動に拘わらず当該引き出し方向への前記糊付けロールの単独遊転を行うこともできるので、駆動源の動作の有無に係わらず、使用者が通常の手動型同様に壁装材を引き出せる。」(【0034】)、「即ち、仮に小型低出力のモーターを使用しても、空転抵抗は存在するので、その抵抗をなくすために、駆動源からの駆動力の供給過程に、クラッチ機構を設けたものである。・・・・これにより、壁装材を作業者が引き出す作業は、補助動力源の動作に拘わらず、通常の手動型と同様に行える。」(【0035】)、「さらに、補助動力源からの駆動力が伝導(伝達)されている場合には、その搬送速度が遅い場合であっても、例えば一方向クラッチ機構を備えていれば、使用者が更に早く引き出すこともできる。従って、動力源は引き出し力を補助する程度のもので充分であり、作業効率は手動型を下回ることはないし、引き出し労力自体は従来より大幅に低減されるし、糊付け作業の時間短縮となる。」(【0036】)と記載されている。
発明の効果としては、「本発明では、クラッチ機構を備えることで、手動型としての糊付機の一般的な使用も可能であり、さらには、最終的な長さあわせの手動調整や、補助動力源での速度が遅い場合でも使用者の手の小さな力でより早い糊付け作業が行える。」(【0101】と記載されている。
(2) ところで、弁論の全趣旨によれば、一方向クラッチ(ワンウェイクラッチ)機構そのものの機能は、逆方向の回転の伝達を遮断することであると認められるが、このような一方向クラッチ機構の機能のみからは、本件発明の課題を解決するための手段、作用効果は、直接に導き出すことはできないものである。前記の本件明細書の記載にもあるとおり、糊付機の分野の従来技術における、自動型と手動型の切り替えが容易でないという課題を前提とし、切り替え動作無しに手動型と自動型とを使い分けられる壁紙糊付機を提供するという目的と一方向クラッチ機構が結びつくことにより、補助動力源付壁紙糊付機に一方向クラッチ機構を備えるという本件発明の構成が生まれ、補助動力源が駆動していなくても、また、駆動していてもその回転より速く、引き出し方向に壁装材を引き出すことができるという作用効果を生じ、前記目的を達成することが可能となったものである。したがって、切り替え動作無しに手動型と自動型とを使い分けられるということは、本件発明の目的、作用効果のいずれの面からも重要な意味を有するものと解される。
(3) 乙第1ないし第4号証によれば、各書証に記載された発明は、抗弁(1)ア(ア)ないし(エ)のとおりであることが認められるが、乙第1ないし第4号証には、
いずれも、切り替え動作無しに手動型と自動型とを使い分けられるということは、
示唆されていない。また、乙第5ないし第10号証には、各種技術分野において一方向クラッチ機構が使用されていることが示されているが、これらにも、切り替え動作無しに手動型と自動型とを使い分けられるということは、示唆されていない。
したがって、請求項1、2及び4の発明は、いずれも、本件発明の特許出願前に公然実施されていたものとはいえないし、乙第1ないし第10号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできず、請求項1、2及び4に、特許法29条1項2号又は同条2項に違反する無効理由があることが明らかであるとはいえない。よって、権利濫用の抗弁は理由がない。
7 以上によれば、旧β-EDラクーンAutoの製造販売は、請求項1の直接侵害に当たり、旧ラクーンUの製造販売は、請求項1、2及び4の間接侵害に当たるが、新β-EDラクーンAutoの製造販売は、請求項1の直接侵害に当たらず、
新ラクーンUの製造販売は、請求項1、2又は4の間接侵害に当たらない。
8 被告が、旧β-EDラクーンAuto又は旧ラクーンUを製造し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示するおそれがあるかという点について検討する。
旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUと新β-EDラクーンAuto及び新ラクーンUとの差異は、一方向クラッチ機構の有無にあり、前記2(1)の認定事実によれば、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUから新β-EDラクーンAuto及び新ラクーンUへの改造は、比較的容易で短期間になし得たものであり、このことから推測すると、今後製造販売するβ-EDラクーンAuto及びラクーンUに再び一方向クラッチを付加することは、技術的には比較的容易になし得ると推認することができる。しかし、前記2(1)の認定事実によれば、被告は、平成12年5月10日以降、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUを製造販売しておらず、新β-EDラクーンAuto及び新ラクーンUを製造販売しており、既に製造されていた旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUについては、新β-EDラクーンAuto及び新ラクーンUにすべて改造済みであり、在庫を有していない。また、被告は、本件特許権の有効性は争っているものの、旧β-EDラクーンAutoが請求項1を充足すること及び旧ラクーンUを手動壁紙糊付機に取り付けた本件参考装置が請求項1、2及び4を充足することを争っておらず、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUの1台当たりの利益率が20パーセントであることも争っていない。さらに、本件特許権の特許公報発行日である平成12年3月15日から同年5月9日までに、旧β-EDラクーンAutoを5台販売してその販売額が合計68万3000円であること、同期間に旧ラクーンUを25台販売してその販売額が合計85万4800円であることを認め、それらを裏付ける得意先元帳(乙第25号証の1ないし30)を、営業秘密にかかわる部分を削除した上ではあるが、提出している。そして、原告からは、被告が旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUをそれ以上販売したことを裏付ける証拠は提出されていない。なお、本件特許権は、平成12年1月14日に登録となり、同年3月15日に特許公報が発行されている(甲第4号証)から、被告が同年5月9日までに一方向クラッチ機構を備えたラクーンU及びβ-EDラクーンAutoの販売を止め、それ以降の一方向クラッチ機構を備えていないものに変えた理由としては、そのころ本件特許権の存在を知ったという事情も関係していると推認することもできないわけではない。しかし、そのような事情が存在したとしても、前記2(1)の認定事実によれば、一方向クラッチ機構を備えないものとしても技術的に問題がないという検討結果に基づいて、前記のような変更がなされたものであるから、旧ラクーンU及び旧β-EDラクーンAutoから新ラクーンU及び新β-EDラクーンAutoへの変更が外形上のものにすぎないとか、便宜的ないし一時的なものとみることはできない。これらの事情に鑑みると、被告は、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUを、現在製造販売していないだけでなく、将来製造し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示するおそれがあるとも認められない。
したがって、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUについては、その製造、譲渡、貸渡し、譲渡若しくは貸渡しのための展示の停止又は予防の請求に理由はなく、廃棄の請求も理由がない。なお、輸出自体は物の発明実施に含まれないから、原告による輸出の差止めの請求も、理由がない。
9 損害額について検討する。
(1) 被告が、本件特許権の特許公報発行日である平成12年3月15日から同年5月9日までに旧β-EDラクーンAutoを5台販売し、その販売額が合計68万3000円であること、同期間に旧ラクーンUを25台販売し、その販売額が合計85万4800円であることは、その限度では当事者間に争いがなく、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUの各販売による1台当たりの利益率が20パーセントであることは、当事者間に争いがない。
平成12年3月15日以降、被告が上記を超える台数の旧β-EDラクーンAuto又は旧ラクーンUを販売したことを裏付ける証拠はない。甲第6号証の1、第13、第14号証、乙第12号証の1には、β-EDラクーンAutoの定価が17万8000円と記載され、甲第6号証の2、第13、第14号証、乙第12号証の2には、ラクーンUの定価が4万3000円と記載されている。しかし、
乙第25号証の1ないし30によれば、実際には、旧β-EDラクーンAutoは1台当たり13万3000円ないし14万2000円で販売され、5台の販売額の合計が68万3000円であること、旧ラクーンUは、1台当たり3万2000円ないし3万4000円で販売され、25台の販売額の合計が85万4800円であることが認められ、販売額がこれを上回ることを認めるに足りる証拠はない。
(2) 原告が補助動力源付手動壁紙糊付機(商品名「フレッシュマン駆動システマ」等)を製造販売していることは、当事者間に争いがない。弁論の全趣旨によれば、原告の製造販売する補助動力源付手動壁紙糊付機は、旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUをβ-EDに取り付けた補助動力源付手動壁紙糊付機(本件参考装置)と競合する商品であることが認められる。
(3) 抗弁(2)(過失の推定の障害事実)について検討する。
特許法103条により過失が推定される根拠は、特許権の存在が公示されていることにあるから、特許権登録後であっても、特許公報の発行が行われていない期間については、過失推定の根拠を欠き、過失は推定されないというべきである。
甲第4号証によれば、本件特許権の特許公報が発行されたのは、平成12年3月15日であることが認められるから、同日以降についての本件特許権侵害行為については、過失があったものと推定される。しかし、同月14日以前については、過失は推定されず、被告の過失を基礎づける事実は立証されていないから、過失はなかったものというべきである。
(4) 以上によれば、被告が旧β-EDラクーンAuto及び旧ラクーンUの販売によって得た利益30万7560円(68万3000円×0.2+85万4800円×0.2=30万7560円)が、特許法102条2項により、原告の受けた損害額と推定される。
(5) 原告は、被告の販売により、534台の補助動力源付手動壁紙糊付機を販売する機会を失ったとし、その分についての得べかりし利益の喪失による損害1901万0400円の内金1512万5000円を請求する。しかし、原告が、被告の販売により、534台の補助動力源付手動壁紙糊付機を販売する機会を失ったことを裏付ける証拠はないから、この点に関する原告の請求は理由がない。
10 結論 よって、本訴請求は、本件特許権侵害による損害賠償として30万7560円及びこれに対する不法行為の後である平成12年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条64条本文を、仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
追加
物件目録一(イ号物件)一補助動力源付手動壁紙糊付機二商品名β-EDラクーンAuto三構成本体手動壁紙糊付機の本体部後部から引き入れられるシート状の壁装材を、前記本体部の前面側から使用者が手で引き出すことにより(以下、シート状の壁装材を引き入れる本体部後方側を上流側といい、シート状の壁装材が引き出される本体部前方側を下流側という。)、本体部内部に配設された糊付けローラーを含む複数のローラー間を所定の経路に沿って移動させ本体部下部に配設された糊桶内の糊を前記糊付けローラーにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する手動壁紙糊付機において、糊付けローラーに対して壁装材の引き出し力を助勢する補助動力源を備えていることを特徴とする手動壁紙糊付機であって、本体手動壁紙糊付機の本体部は筺体部と蓋体部からなっており、蓋体部は爪部を一方に倒すことにより、本体部の後部側に設けられている筺体部と蓋体部の支点部を軸として上方に開くことができる。また、支点部のピンを外すことにより、蓋体部を筺体部から取り外すことができる。
筺体部には、糊付けローラーが配設されており、その下流側にハイテンションローラーを介して前記糊付けローラーと連動する均しローラーが配設されている。
蓋体部には、筺体部と閉じられたときに、前記糊付けローラーの上流部に位置するカウンター取付ステー(他のローラーと連動しない)と、前記糊付けローラーの下流部に位置するハイテンションローラーが配設されている。
本体部後部から引き入れられたシート状の壁装材は、前記カウンター取付ステーの下面側、前記糊付けローラーの上面側、前記ハイテンションローラーの下面側、前記均しローラーの上面側を経て、本体部の前面側から引き出される。
補助動力源部は糊付けローラー等から構成される本体部の(前面から見て)右側面に着脱可能に配設されている。
補助動力源部からの駆動力伝達部は、補助動力源の出力軸の回転を前記壁装材の引き出し方向(上流側から下流側の方向)への回転力として、前記糊付けローラーに伝達するが、前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている。
補助動力源部は、壁紙糊付機の使用者が足で補助動力源を操作することができる操作部(以下「フットスイッチ」という。)を備えており、フットスイッチはケーブルにより補助動力源部背面側に接続されている。
物件目録二(ロ号物件)一手動壁紙糊付機用の補助動力源二商品名ラクーン三構成@手動壁紙糊付機の本体部後部から引き入れられるシート状の壁装材を、前記本体部の前面側から使用者が手で引き出すことにより、本体部内部に配設された糊付けローラーを含む複数のローラー間を所定の経路に沿って移動させ本体部下部に配設された糊桶内の糊を前記糊付けローラーにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する手動壁紙糊付機において、糊付けローラーに対して壁装材の引き出し力を助勢する補助動力源を備えていることを特徴とする手動壁紙糊付機であって、本体手動壁紙糊付機の本体部は筺体部と蓋体部からなっており、蓋体部は爪部を一方に倒すことにより、本体部の後部側に設けられている筺体部と蓋体部の支点部を軸として上方に開くことができる。また、支点部のピンを外すことにより、蓋体部を筺体部から取り外すことができる。
筺体部には、糊付けローラーが配設されており、その下流側にドライブローラーと連動する均しローラーが配設されている。
蓋体部には、筺体部と閉じられたときに、前記糊付けローラーの上流部に位置するカウンター取付ステーと、前記糊付けローラーの下流部に位置するドライブローラーが配設されている。
本体部後部から引き入れられたシート状の壁装材は、前記カウンター取付ステーの下面側、前記糊付けローラーの上面側、前記ドライブローラーの下側、前記均しローラーを経て、本体部の前面側から引き出される。
A前記の構成を有する手動壁紙糊付機において、糊付けローラー等から構成される手動壁紙糊付機本体部の(前面から見て)右側面に着脱自在に配設されるものであり、手動壁紙糊付機に取り付ける側面には略四隅部分に各々係合ピンが設けられ、側面中央部には一方向に遊転可能なギアが突出して設けられており、前記ギアを介して出力軸の回転を前記壁装材の引き出し方向(上流側から下流側の方向)への回転力として前記糊付けローラーに伝達するが、前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構が設けられており、壁紙糊付機の使用者が足で補助動力源を操作することができる操作部(フットスイッチ)をケーブルにより背面部に接続している補助動力源物件目録三(ハ号物件)一手動壁紙糊付機用の補助動力源二商品名ラクーンU三構成@手動壁紙糊付機の本体部後部から引き入れられるシート状の壁装材を、前記本体部の前面側から使用者が手で引き出すことにより、本体部内部に配設された糊付けローラーを含む複数のローラー間を所定の経路に沿って移動させ本体部下部に配設された糊桶内の糊を前記糊付けローラーにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する手動壁紙糊付機において、糊付けローラーに対して壁装材の引き出し力を助勢する補助動力源を備えていることを特徴とする手動壁紙糊付機であって、本体手動壁紙糊付機の本体部は筺体部と蓋体部からなっており、蓋体部は爪部を一方に倒すことにより、本体部の後部側に設けられている筺体部と蓋体部の支点部を軸として上方に開くことができる。また、支点部のピンを外すことにより、蓋体部を筺体部から取り外すことができる。
筺体部には、糊付けローラーが配設されており、その下流側にドライブローラーを介して糊付けローラーと連動する均しローラーが配設されている。
蓋体部には、筺体部と閉じられたときに、前記糊付けローラーの上流部に位置するカウンター取付ステーと、前記糊付けローラーの下流部に位置するドライブローラーが配設されている。
本体部後部から引き入れられたシート状の壁装材は、前記カウンター取付ステーの下面側、前記糊付けローラーの上面側、前記ドライブローラーの下側、前記均しローラーを経て、本体部の前面側から引き出される。
A前記の構成を有する手動壁紙糊付機において、糊付けローラー等から構成される手動壁紙糊付機本体部の(前面から見て)右側面に着脱自在に配設されるものであり、手動壁紙糊付機に取り付ける側面には略四隅部分に各々係合ピンが設けられ、側面中央部には一方向に遊転可能なギアが突出して設けられており、前記ギアを介して出力軸の回転を前記壁装材の引き出し方向(上流側から下流側の方向)への回転力として前記糊付けローラーに伝達するが、前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構が設けられており、壁紙糊付機の使用者が足で補助動力源を操作することができる操作部(フットスイッチ)をケーブルにより背面部に接続している補助動力源物件目録四一補助動力源付手動壁紙糊付機二手動壁紙糊付機商品名「β-ED」(商品名)に補助動力源「ラクーン」(商品名)又は「ラクーンU」(商品名)が取り付けられた場合三構成本体手動壁紙糊付機の本体部後部から引き入れられるシート状の壁装材を、前記本体部の前面側から使用者が手で引き出すことにより、本体部内部に配設された糊付けローラーを含む複数のローラー間を所定の経路に沿って移動させ本体部下部に配設された糊桶内の糊を前記糊付けローラーにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する手動壁紙糊付機において、糊付けローラーに対して壁装材の引き出し力を助勢する補助動力源を備えていることを特徴とする手動壁紙糊付機であって、本体手動壁紙糊付機の本体部は筺体部と蓋体部からなっており、蓋体部は爪部を一方に倒すことにより、本体部の後部側に設けられている筺体部と蓋体部の支点部を軸として上方に開くことができる。また、支点部のピンを外すことにより、蓋体部を筺体部から取り外すことができる。
筺体部には、糊付けローラーが配設されており、その下流側にドライブローラーを介して前記糊付けローラーと連動する均しローラーが配設されている。
蓋体部には、筺体部と閉じられたときに、前記糊付けローラーの上流部に位置するカウンター取付ステーと、前記糊付けローラーの下流部に位置するドライブローラーが配設されている。
本体部後部から引き入れられたシート状の壁装材は、前記カウンター取付ステーの下面側、前記糊付けローラーの上面側、前記ドライブローラーの下面側、前記均しローラーの上面側を経て、本体部の前面側から引き出される。
補助動力源部は糊付けローラー等から構成される本体部の(前面から見て)右側面に着脱可能に配設されている。
補助動力源部からの駆動力伝達部は、補助動力源の出力軸の回転を前記壁装材の引き出し方向(上流側から下流側の方向)への回転力として、前記糊付けローラーに伝達するが、前記糊付けローラーが単独遊転できる一方向クラッチ機構を備えている。
補助動力源部は、壁紙糊付機の使用者が足で補助動力源を操作することができる操作部(フットスイッチ)を備えており、フットスイッチはケーブルにより補助動力源部背面側に接続されている。
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 中平健
裁判官 田中秀幸
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