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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20行ケ10151審決取消請求事件 判例 特許
平成19行ケ10300審決取消請求事件 判例 特許
平成17ワ2649特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成22行ケ10221審決取消請求事件 判例 特許
平成15行ケ39審決取消請求参加事件 判例 特許
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  設定登録 /  誤記の訂正 /  請求の範囲 /  減縮 /  拡張 /  変更 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 386号 審決取消請求事件
原告 テルモ株式会社
訴訟代理人弁護士 吉原省三
同 小松勉
同 三輪拓也
同 竹田吉孝
訴訟代理人弁理士 中澤直樹
被告 株式会社グッドテック
訴訟代理人弁理士 石田喜樹
同 斉藤純子
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/12/27
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が無効2000−35241号事件について平成13年7月18日にした審決のうち,「特許第2528011号の請求項2,3に係る発明についての特許を無効とする。」との部分を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
1 原告の請求 (1) 主文第1項と同旨 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実 (1) 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「カテーテル」とする特許第2528011号(平成1年12月20日出願,平成8年6月14日設定登録,以下「本件特許」といい,その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
被告は,平成12年5月2日,本件特許に関し,請求項1ないし3の特許を無効にすることについて審判を請求し,特許庁は,これを無効2000-35241号事件として審理した。原告は,上記事件の審理の過程において,同年8月21日付けで本件特許の願書に添付した明細書の訂正を請求した(以下「本件第1次訂正請求」という。)。特許庁は,上記事件につき審理した結果,平成13年7月18日,「訂正を認める。特許第2528011号の請求項1に係る発明についての審判請求は,成り立たない。特許2528011号の請求項2,3に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,同年8月2日に,その謄本を原告に送達した。
(2) 審決の理由 審決の理由は,要するに,@本件第1次訂正請求に係る訂正事項は,特許請求の範囲減縮及び誤記の訂正に相当し,かつ,特許明細書又は図面に記載された事項の範囲内の事項であり,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものでもないから,訂正を認める,A本件第1次訂正請求に係る訂正後の請求項1に係る発明は,審判甲第1号証及び第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないから,これらにより請求項1に係る特許を無効とすることはできない,B請求項2,3に係る発明は,審判甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項2,3に係る特許は,特許法29条2項に違反して登録されたものとして,無効とされるべきものである,というものである。
(3) 原告は,本訴係属中,平成13年9月6日付けで,本件特許出願の願書に添付した明細書の訂正をすることについて審判を請求し,特許庁は,これを訂正2001-39153号事件として審理した結果,平成13年11月2日に上記訂正をすることを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,これが確定した。
(4) 本件訂正審決による訂正の内容 (ア) 本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲の請求項2,3 「【請求項2】 内部にルーメンを形成し,先端部に開口を有する超弾性金属管により形成された本体部と,該本体部の先端に取り付けられたカテーテルを誘導するための誘導部と,先端部および基端部を有し,該基端部が前記本体部に取り付けられ,該先端部が前記誘導部または前記本体部の先端部に取り付けられ,前記開口にて前記ルーメンと連通する収縮あるいは折り畳み可能な拡張体とを有することを特徴とする拡張体付カテーテル。」 【請求項3】 本体部と先端部とを有し,先端が開口する第1のルーメンを有する内管と,該内管に同軸的に設けられ,本体部と先端部とを有し,前記内管の先端より所定長後退した位置に設けられ,該内管の外面との間に第2のルーメンを形成する外管と,先端部および基端部を有し,該基端部が前記外管に取り付けられ,該先端部が前記内管に取り付けられ(判決注・本件審決書(甲第1号証)の請求項3の認定(4頁1行〜10行)及び本件訂正審決書(甲第6号証)の訂正前の請求項3の認定(2頁下から4行〜3頁6行)中に,「該先端部が前記内管に取り付けられ,」との記載がないのは,誤記(脱落)と認める。),該基端部付近にて第2のルーメンと連通する収縮あるいは折り畳み可能な拡張体と,該内管の基端部に設けられた,前記第1のルーメンと連通する第1の開口部と,前記外管の基端部に設けられた前記第2のルーメンと連通する第2の開口部とを有し,前記内管および前記外管の少なくとも一方の本体部は,超弾性金属管により形成されていることを特徴とするカテーテル。」 (イ) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲の請求項2,3(下線部が訂正個所である。) 「【請求項2】 内部にルーメンを形成し,先端部に開口を有し,カテーテル の基端部 で与えた 押し込み力の伝達性 を高めるために 超弾性金属管により形成された本体部と,該本体部の先端に取り付けられたカテーテルを誘導するための誘導部と,先端部および基端部を有し,該基端部が前記本体部に取り付けられ,該先端部が前記誘導部または前記本体部の先端部に取り付けられ,前記開口にて前記ルーメンと連通する収縮あるいは折り畳み可能な拡張体とを有することを特徴とする拡張体付カテーテル。」 【請求項3】 本体部と先端部とを有し,先端が開口する第1のルーメンを有する内管と,該内管に同軸的に設けられ,本体部と先端部とを有し,前記内管の先端より所定長後退した位置に設けられ,該内管の外面との間に第2のルーメンを形成する外管と,先端部および基端部を有し,該基端部が前記外管に取り付けられ,該先端部が前記内管に取り付けられ(判決注・本件訂正審決書(甲第6号証)の訂正後の請求項3の認定(3頁8行〜18行)中に,「該先端部が前記内管に取り付けられ,」との記載がないのは,誤記(脱落)と認める。),該基端部付近にて第2のルーメンと連通する収縮あるいは折り畳み可能な拡張体と,該内管の基端部に設けられた,前記第1のルーメンと連通する第1の開口部と,前記外管の基端部に設けられた前記第2のルーメンと連通する第2の開口部とを有し,前記内管および前記外管の少なくとも一方の本体部は,カテーテルの基端部 で与えた 押し込み力の伝達性を高めるために 超弾性金属管により形成されていることを特徴とするカテーテル。」3 当裁判所の判断 上記当事者間に争いのない事実の下では,本件特許請求の範囲請求項2,3については,特許法29条2項に違反して登録された特許であることを理由にこれらの特許を無効とした審決(以下「本件無効審決」という。)の取消しを求める訴訟の係属中に,特許請求の範囲の文言に係る訂正を含む訂正の審判の請求がなされ,特許庁は,同請求について,審理の結果,特許請求の範囲減縮を含むものと判断した上,同請求を認めるとの本件訂正審決をし,これが確定したということができる。本件無効審決は,これにより,結果として,請求項2,3について,判断の対象となるべき発明を特定すべき特許請求の範囲の文言の認定を誤ったことになる。
この誤りが本件無効審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,本件特許請求の範囲請求項2,3に係る発明についての特許を無効とした本件無効審決は,取消しを免れない。
4 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法62条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 阿部正幸