関連審決 | 異議2000-74604 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成20行ケ10151審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19行ケ10300審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成17ワ2649特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成22行ケ10221審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成15行ケ39審決取消請求参加事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 一致点の認定 / 相違点の認定 / 周知技術 / 技術分野の関連性 / 課題の共通性 / 発明の詳細な説明 / 明瞭でない記載 / 援用権(援用) / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 加工 / 設定登録 / 誤記の訂正 / 請求の範囲 / 減縮 / 拡張 / 変更 / 釈明 / 訂正明細書 / 取消決定 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
13年
(行ケ)
474号
特許取消決定取消請求事件
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原告 株式会社三洋物産 訴訟代理人弁理士 川口光男 復代理人弁理士 山田強 被告 特許庁長官太田信一郎 指定代理人 佐藤昭喜、藤井俊二、山口由木、高木進、林栄二 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2002/11/26 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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原告の求めた裁判
「特許庁が異議2000-74604号事件について平成13年8月28日にした決定を取り消す。」との判決。 |
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事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 原告は、特許第3057812号に係る発明(名称「パチンコ機における制御ユニット」。本件発明)は、平成3年5月20日に出願された特願平3-145656号の特許出願に係り、平成12年4月21日特許の設定登録がなされた。その後特許異議の申立てがあり(異議2000-74604号)、平成13年8月8日に訂正請求がされたが、平成13年8月28日、「訂正を認める。特許第3057812号の請求項1に係る特許を取り消す。」との決定があり、その謄本は同年9月25日原告に送達された。 2 本件発明の要旨(訂正後)(「共に」は「ともに」と表記)【請求項1】パチンコ機の裏面に装着され遊技内容を制御する制御ユニットの収納ケースの内部には、遊技内容を制御するCPUやROM等の電子部品を組み込んだプリント基板が設けられるとともに、このプリント基板には前記パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報を表示する表示器も併せて組み込まれ、さらに前記収納ケースには前記表示器に表示される情報を外部から観察するために透視可能な観察手段が設けられていることを特徴とするパチンコ機における制御ユニット。 3 決定の理由の要点 (1) 訂正は、特許請求の範囲の「パチンコ機の動作など関する情報を表示する」を「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報を表示する」とし、その他発明の詳細な説明の【0005】の記載も同様に訂正するものであるが、前者は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、後者は、特許請求の範囲の訂正事項と整合を図るものであるから、誤記の訂正を目的とするもの及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、いずれの訂正事項も、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。したがって、この訂正を認める。 (2) 引用刊行物及びそこに記載の発明 異議審が平成13年6月7日付けで通知した取消理由には、本件発明の特許出願前に頒布された次の刊行物1ないし刊行物7を引用した。 (2)-1 刊行物1[特開平2-128780号公報]には、弾球遊技機に関する次の事項が記載されている。(「予め」は「あらかじめ」と、「毎に」は「ごとに」と表記) 「また、機構板29の裏面には、制御回路基板を収納する制御基板ボックス50が着脱自在に取り付けられ、この制御回路基板には、後述する制御回路が含まれている。ここで、制御基板ボックス50の構成について第1図を参照して説明する。 この制御基板ボックス50は、直方体形状の金属製の基板ボックス本体51の内部に後述するマイクロコンピュータ100を含む制御基板(図示しない)が収納されている。」(4頁右上欄) 「更に、基板ボックス本体51の後面には、開口54が開設され、該開口54を被覆するように開閉蓋55が開閉自在に設けられている。開閉蓋55には、施錠機構56が設けられ、該施錠装置56を鍵57で開錠することにより開放できるようになっている。開閉蓋55の内部には、この実施例の要部である可変入賞装置70の所定回数(18回)における可動部材77a、77bの第1の状態となっている合計時間を変更するための構成が収納されている。すなわち、合計時間の設定を変更するための時間設定操作手段としての開成時間設定スイッチ58が設けられている。」(4頁左下欄) 「また、開成時間設定スイッチ58の一側には、選択した設定値を数字で表示するための表示器が設けられている。」(4頁右下欄) 「また、開成時間設定スイッチ58の下方には、始動回数表示器61が設けられている。この始動回数表示器61は、前記始動入賞口14,15a,15bに入賞した打玉の入賞個数を表示するもので、リセットされた時点では、あらかじめ定められた一定数(例えば、1000)を表示し、前記始動入賞玉検出スイッチ26,27a,27bからの検出信号があるごとに「1」づつ減算される。」(5頁左上欄) 「以上、説明してきた実施例の制御について第5図に基づいて説明する。第5図は制御回路構成ブロック図である。図において、制御回路は制御中枢としてのマイクロコンピュータ100を含む。マイクロコンピュータ100は以下に述べるようなパチンコ遊技機1の全体の動作を制御する機能を有する。このために、マイクロコンピュータ100は、たとえば、数チップのLSIで構成されており、その中には制御動作を所定の手順で実行することのできるMPU101と、MPU101の動作プログラムデータを格納するROM102と、必要なデータの書込みおよび読出しができるRAM103とを含む。」(6頁左下欄〜6頁右下欄) (2)-2 刊行物2[実願昭52-143398号(実開昭54-70364号公報)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム]には、 配線基板に対する半導体集積回路の実装構造に関する次の事項が記載されている。 「第1図ないし第3図はこの考案に係る配線基板に対する半導体集積回路の実装構造を液晶デイジタルクロックに適用した場合の一実施例を示す構成図である。まず第1図において、配線基板1面には液晶表示パネル2,酸化銀電池3,水晶発振子4,およびモールドフラットパッケージ型LSI5が搭載されている。前記液晶表示パネル2は、この液晶表示パネル2の裏面に形成された端子群領域の各端子と前記配線基板1の表面に形成された端子群領域の各端子とがそれぞれ接続された状態で、表示パネルホルダー2aによって配線基板1に固定されている。また前記配線基板1の上面のモールドフラットパッケージ型LSI5の搭載部には前記モールドフラットパッケージ型LSI5の各端子とそれぞれ接続すべき各端子からなる端子群領域6を有する。」(2頁〜3頁) 「この実施例では液晶デイジタルクロックにおけるモールドフラットパッケージ型LSI5の実装について述べたが、一般の配線基盤にモールドフラットパッケージ型LSIを実装する場合にも応用できることはいうまでもなく、またモールドフラットパッケージ型LSIに限定されず半導体集積回路全てを実装する場合に応用できる。以上述べたように、この考案の係る配線基板に対する半導体集積回路の実装構造によれば、信頼性に優れ、かつ製造工程を容易にすることができる。」(6頁) (2)-3 刊行物3[実願昭48-102319号(実開昭50-51584号公報)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム]には、 液晶デバイス付プリント基板に関する次の事項が記載されている。 「以下、本考案の一実施例を第3図〜第5図にもとついて説明する。図中1はプリント基板で、このプリント基板1の長手方向一端部には矩形状の透孔からなる液晶デバイス挿入孔2が設けられている。また、この挿入孔2内には両側端縁に嵌着されたコネクター8,3を介して液晶デバイス4が圧入固定されている。」(3頁) 「そして、これら接続孔16・・・,17・・・および接続満18・・・内に充填したインジウム等の導電性接着剤19によって上記液晶デバイス4の個々のデバイス端子18・・・とこれらに対応するプリント基板端子14・・・とを電気的に接続し、液晶デバイス付プリント基板を構成している。」(5頁) 「したがって、従来のように引出し端子を用いたむかで方式のものと比較して、 スペース効率が向上し、しかも液晶デバイスを容易かつ確実に取付けることができ作業性の向上が図れるとともに引出し端子等の部品減少による製造原価の低減が図れる。また、接続個所が1個所に減り信頼性が向上するとともに、接続不良の補修が容易に行なえる。さらに、液晶デバイスをプリント基板に設けられた液晶デバイス挿入孔内に挿入するようにしたから、プリント基板の厚さだけ薄形になるといった大なる実用的効果を奏する。」(7頁) (2)-4 刊行物4[実願昭61-164290号(実開昭63-70584号公報)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム]には、 表示装置のプリント基板取付け構造に関する次の事項が記載されている。 「図中、表示装置1の表面に文字表示を行うディスプレイ部1bはプリント基板2へ形成されているパターン面2bから見える様に取付けられているため、表示装置1に形成されている端子1aを180°逆方向に折り曲げ、プリント基板2へ設けられている基板穴7に挿入し、基板ランドと端子1aを半田加工3する。その後、ディスプレイ部1bがプリント基板2を通して見えるようプリント基板2に割り取り加工を行うと表示窓2aが形成されディスプレイ部lbの前面より表示文字が見えるようになる。なお、セット6に表示装置を取付けた構造は第2図へ示し、 パネル5の窓部5aディスプレイ部1bとの間隔Aを最短距離にすることができる。」(3頁〜4頁) (2)-5 刊行物5[特開平2-142580号公報]には、パチンコ機に関する次の事項が記載されている。 「制御装置87は、第15図〜第17図に示すようにマイクロコンピュータにて構成されるもので、所定の基板(プリント基板)88上にIC、LCI、トラジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサ等の多数の電気部品が配列、接続されるとともに、上蓋89と下蓋90とからなるケース91に収納、支持されるが、この場合基板88上の電気部品が定電圧制御IC92等により所定の電圧を供給する電源部93と、CPU94、ROM95、RAM96、入出力コントローラ97等からなる論理回路部98と、ドライバ99〜101等からなる入出力変換部102と、各電気機器をつなぐコネクタ103等の接続端子部104に画成して配列され、かつ基板88の片側から順に電源部93、論理回路部98、入出力変換部102、接続端子部104となるように形成される。ケース91の上蓋89は、金属製からなる筐枠状のもので、基板88片側の接続端子部104を除いて電源部93、論理回路部98、入出力変換部102で覆う大きさに形成され、蓋表面には中央に内部を透視可能にクリアプレート105を取り付けた可視窓106が形成され、内部の封印状態が確認されるようになっている。」(4頁右上欄〜4頁左下欄) (2)-6 刊行物6[特開昭64-17677号公報]には、遊技機における制御回路基板の保護カバーに関する次の事項が記載されている。 「次に上記した制御回路基板71を収納する保護カバー50について、第1図及び第2図に基づいて説明する。保護カバー50は、制御回路基板71を固定する固定カバー51と、該固定カバー51を覆う被覆カバー63とから成っており、それぞれ金属製のプレートをプレス成型にて形成したものである。」(4頁右上欄〜4頁左下欄)「特に表板64に形成される通気孔70は外部からROMやCPUの番号、あるいはそれらに封印紙が貼付してある場合は封印紙の番号等が透視できるような位置に形成されるのが好ましい。」(5頁左上欄) (2)-7 刊行物7[実願昭62-14014号(実開昭63-122469号公報)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム]には、 パチンコ遊技機に関する次の事項が記載されている。 「第1図は本考案の1実施例であるパチンコ遊技機の制御部の拡大斜視図である。第1図において、制御部3は後述する封印紙が貼られたCPUやROM等の電子部品と、その電子部品が配置されているプリント基板10と、電子部品やプリント基板を収納する上部蓋11aと底板11bとを有するケース11とを含む。12はケース11内部のプリント基板10に配置されたCPUやROM等に貼られた封印紙の異状の有無や封印番号を検査するために上部蓋11aに設けられた透明な観察窓である。」(6頁) (3) 決定がした対比及び一致点・相違点の認定 本件発明と刊行物1に記載の発明とを対比すると、刊行物1に記載の発明の「制御基板ボックス50」「基板ボックス本体51」「MPU101、ROM102、 RAM103」「基板ボックス本体51の内部に収納されるマイクロコンピュータ100を含む制御基板」「弾球遊技機」が、それぞれ本件発明の「制御ユニット」「収納ケース」「遊技内容を制御するCPUやROM等の電子部品」「プリント基板」「パチンコ機」に相当する。 また、刊行物1に記載の発明の「始動回数表示器61」は、「始動入賞口14、 15a、15bに入賞した打玉の入賞個数」の情報を表示するものであり、その表示される情報は、本件訂正明細書の【0002】に例示されている「遊技球の数や入賞した回数、入賞装置の開放回数などのパチンコ機の動作に関するデータ」等の本件発明の表示器が表示する「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報」と同様の情報であるから、刊行物1に記載の発明の前記「始動回数表示器61」は、本件発明の「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報を表示する表示器」に相当するものということができる。 そうしてみると、両者は「パチンコ機の裏面に装着され遊技内容を制御する制御ユニットの収納ケースの内部には、遊技内容を制御するCPUやROM等の電子部品を組み込んだプリント基板が設けられるとともに、前記パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報を表示する表示器が組み込まれているパチンコ機における制御ユニット」である点で一致し、次の点で構成が相違する。 【相違点1】 本件発明の表示器が「このプリント基板に併せて組み込まれ」ているのに対し、刊行物1に記載の発明の表示器は、そのようになっているか否か不明である点。 【相違点2】 本件発明では、「収納ケースには前記表示器に表示される情報を外部から観察するために透視可能な観察手段が設けられている」のに対し、刊行物1に記載の発明では、開口54に開閉自在な開閉蓋55が設けられていて、透視可能ではない点。 (4) 相違点についてした決定の判断 (4)-1 相違点1について 刊行物2に「配線基板1面には液晶表示パネル2,酸化銀電池3,水晶発振子4,およびモールドフラットパッケージ型LSI5が搭載されている。前記液晶表示パネル2は、この液晶表示パネル2の裏面に形成された端子群領域の各端子と前記配線基板1の表面に形成された端子群領域の各端子とがそれぞれ接続された状態で、表示パネルホルダー2aによって配線基板1に固定されている。」と記載され、刊行物3にも「導電性接着剤19によって上記液晶デバイス4の個々のデバイス端子18・・・とこれらに対応するプリント基板端子14・・・とを電気的に接続し、液晶デバイス付プリント基板を構成している。」と記載され、そして刊行物4には「表示装置1の表面に文字表示を行うディスプレイ部1bはプリント基板2へ形成されているパターン面2bから見える様に取付けられている」と記載されていることは、前記「(2) 引用刊行物及びそこに記載の発明」で示したとおりである。 そうしてみると、刊行物2ないし刊行物4の上記記載からみて、ROM等と表示器をプリント基板に併せて組み込むようにすることは、本件発明の出願時の周知技術であるということができるから、刊行物1に記載の発明に前記周知技術を適用することにより上記相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (4)-2 相違点2について 刊行物5ないし刊行物7に、それぞれ「ケース91の上蓋89は、金属製からなる筐枠状のもので、基板88片側の接続端子部104を除いて電源部93、論理回路部98、入出力変換部102で覆う大きさに形成され、蓋表面には中央に内部を透視可能にクリアプレート105を取り付けた可視窓106が形成され、内部の封印状態が確認されるようになっている。」、「表板64に形成される通気孔70は外部からROMやCPUの番号、あるいはそれらに封印紙が貼付してある場合は封印紙の番号等が透視できるような位置に形成される」及び「12はケース11内部のプリント基板10に配置されたCPUやROM等に貼られた封印紙の異状の有無や封印番号を検査するために上部蓋11aに設けられた透明な観察窓である。」と記載されていることは、前記「(2) 引用刊行物及びそこに記載の発明」で示したとおりであり、刊行物5ないし刊行物7の上記記載からみて、収納ケース内の情報を外部から観察するための観察手段を透視可能とすることは、本件出願時の周知技術ということができる。 そして、刊行物1及び刊行物5ないし刊行物7に記載の発明は同じ技術分野のものであるから、刊行物1に記載の発明において、刊行物5ないし刊行物7に記載のような周知技術である透視可能な観察手段を設けることは、当業者にとって格別の困難を要することではなく、前記周知技術を刊行物1に記載の発明に適用して上記相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本件発明の相違点2の作用効果も、前記周知技術の透視可能な観察手段が奏する作用効果にとどまり、格別の作用効果を奏するものでもない。 (5) 決定のまとめ そうすると、本件発明は、上記刊行物1に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 |
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原告主張の決定取消事由
1 取消事由1(一致点の認定誤り) (1) 「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報」 決定は、「刊行物1に記載の発明の前記「始動回数表示器61」は、本件発明の「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報を表示する表示器」に相当するものということができる。」と認定したが、誤りである。 本件発明の「表示器」は、「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報を表示する」ためのものであって、なおかつ、その「情報」は、 「外部から観察」される性質を具備するものである。本件発明においては、パチンコ機の動作に関する当該パチンコ機の確認のための情報が表示器から得られるのであり、かかる情報はパチンコ機の動作に変化を与えるものではなく、履歴のチェック(確認)が行われるにすぎない。 これに対し、刊行物1に記載の発明の「始動回数表示器61」は、なるほどいわゆる残り始動回数が表示されるようになってはいるが、本件発明の表示器とは異なる。すなわち、刊行物1は、可変入賞装置を打球を受け入れやすい第1の状態(開成状態)と受け入れにくい第2の状態(閉状態)とに繰り返し切り換えられるものとして構成したパチンコ機において、第1の状態と第2の状態とに交互に切り換え駆動する場合に、所定回数の第1の状態の合計時間を複数種類の異なる合計時間に設定できるようにしておき、それを始動回数が所定値に達した場合に変更できるようにしたものである。刊行物1の第1図に示されているように、今回の設定値が表示器59に表示され、次回の設定値が表示器60に表示され、あとどれだけで設定が変更されるかという設定変更条件に相当する残り始動回数が「始動回数表示器61」に表示されるようになっているのである。 (2) 「外部から観察される情報」 刊行物1では、もしも「始動回数表示器61」に表示された内容が遊技者に見られて(観察されて)しまうようなことが起きると、あと何回始動入賞すれば設定値が変化して遊技者に有利な状態(あるいは不利な状態)になるのかといったことが把握されてしまうことになる。つまり、このような情報は、本件発明の「観察される情報」とは異なり、遊技者の有利・不利に直結する、遊技者に見られてはならない重大な情報なのである。さらには、かかる情報は、遊技者のみならず、いわゆる遊技ホール従業員(管理者、責任者を除く)に対しても見られてはならないものである。 2 取消事由2(相違点1の判断の誤り) 決定は「刊行物1に記載の発明に前記周知技術を適用することにより上記相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。」と認定判断したが、誤りである。 周知技術が記載されているものとして決定が引用した刊行物2ないし4には、技術分野の関連性、課題の共通性等、パチンコ機に適用するための動機付けとなり得る記載がない。刊行物2ないし刊行物4のいわゆる表示器は、「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報を表示する表示器」ではない。このような表示器をプリント基板に併せて組み込むようにすることを、周知技術として認定し適用すること自体誤っている。 かかる表示器がプリント基板に組み込まれていることにより、本件発明では、 「表示器はプリント基板に組み込まれるため、表示器との間は外部結線を必要とされない。また、パチンコ機の工場からパチンコ機を出荷する前に制御ユニットが正常に作動するか否かをテストする動作テストが行われているが、この発明では制御ユニットに表示器が配置されて必要な表示がなされるので、動作テスト用のモニターに接続することなく容易に動作テストを行なうことができる。」(本件訂正明細書【0023】【0024】)のである。刊行物1、更には刊行物2〜4を考慮しても、本件発明の上記効果は得られない。 3 取消事由3(相違点2の判断の誤り) (1) 周知技術の認定の誤り 決定は、「刊行物5ないし刊行物7の上記記載からみて、収納ケース内の情報を外部から観察するための観察手段を透視可能とすることは、本件出願時の周知技術ということができる。」と指摘している。しかしながら、「収納ケース内の情報」なる実体は、いずれも、不正が行われると考えられる部分(例えば、論理回路部、 ROMやCPU、封印紙等)ばかりであって、本件発明の「情報」は、「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報」であるから、意義が異なる。したがって、刊行物5ないし刊行物7は、本件出願時の周知技術であることを立証するための引用文献としての適格に欠ける。 (2) 容易想到の認定の誤り 刊行物1においては、表示器59〜61を覆い隠す開閉蓋55が設けられている。さらには、開閉蓋55のみならず、施錠機構56までもが設けられている。このように、厳重に覆い隠す手段が設けられているのは、「始動回数表示器61」等の表示内容を遊技ホール責任者のみが知ることができるようにするためにほかならない。つまりは、刊行物1の「始動回数表示器61」等は、遊技者のみならず、他の遊技ホール従業員にすら知られてはならないものなのである。進歩性の判断に際しては、「刊行物中に請求項に係る発明に容易に想到することを妨げるほどの記載があれば、引用発明としての適格性を欠く」とされているところ、刊行物1には、 「始動回数表示器61」等を、遊技ホール責任者以外の者に見られてはならないということが実質的に記載されている。すなわち、刊行物1には、「外部から観察するために透視可能な観察手段」を設けることを妨げる事情が存在する。それゆえ、 刊行物1に記載の発明において、透視可能な観察手段を設けることは、邪道であり、当業者において到底考えられるはずのないことである。 してみれば、「刊行物1に記載の発明において、刊行物5ないし刊行物7に記載のような周知技術である透視可能な観察手段を設けることは、当業者にとって格別な困難を要することではなく、前記周知技術を刊行物1に記載の発明に適用して上記相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易に想到し得る」とした決定の認定判断は、誤りである。 |
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決定取消事由に対する被告の反論
1 取消事由1(一致点の認定誤り)に対して (1) 「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報」 本件発明の「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報」として、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の欄及び図面には、以下の記載がある(「ともなって」は「伴って」と表記)。 「遊技球の数や入賞した回数、入賞装置の開放回数などのパチンコ機の動作に関するデータ」(【0002】)、 「表示器24はパチンコ機の動作に関する情報などを表示するものであって、この実施例では、図2に示されるように、大当たり回数を表示する大当り回数表示器26と、スタート入力した回数を表示する始動回数表示器27と、遊技球が各始動口7〜9へ入賞するに伴ってそれぞれに対応して点滅するモニタランプ28〜30とが設けられている。」(【0012】)、 「この実施例では上述したように構成されているため、遊技盤4上に打ち出されたパチンコ球がいずれかの始動口7〜9に入賞すると、その都度始動入賞検出スイッチ43から入賞球検出信号が発信され、波形整形回路46を介してマイクロコンピュータへ入力される。この結果、マイクロコンピュータからの指令に基づき選択回路54、駆動回路53を介して始動回数表示器27に入賞回数が表示される。」(【0018】) また、本件図面(特許公報(甲第2号証))の【図2】には、符号27で示される始動回数表示器の上部に「始動回数」と記載されている。 上記記載によると、本件発明の実施例には、表示器24に表示される「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報」として「大当たり回数」、「始動口7〜9に入賞した回数」すなわち「始動入賞回数」、「遊技球が各始動口7〜9へ入賞する(に伴ってそれぞれに対応してモニタランプ28〜30を点滅させる)信号」が例示されている。 一方、刊行物1には、「この始動回数表示器61は、前記始動入賞口14,15a,15bに入賞した打玉の入賞個数を表示するもので、リセットされた時点では、あらかじめ定められた一定数(例えば、1000)を表示し、前記始動入賞玉検出スイッチ26,27a,27bからの検出信号があるごとに「1」づつ減算される。」(5頁左上欄6行〜12行)と記載されており、「始動回数表示器61」には、一定数からの残り始動入賞回数が表示されている。 そうすると、本件発明の「表示器」に表示される情報と刊行物1に記載の「始動回数表示器61」に表示される情報とは、いずれも両者の表示される情報が「始動入賞回数」の情報であることにおいて一致するから、「始動回数表示器61」に表示される情報は、「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報」にほかならず、刊行物1に記載の「始動回数表示器61」は、本件発明の「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報を表示する表示器」に相当するといえる。 (2) 「外部から観察される情報」 本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1には、パチンコ機の裏面に装着された収納ケースに、収納ケース内部に設けられた表示器に表示される情報を外部から観察するための観察手段が設けられていることが記載され、また、発明の詳細な説明の欄には、「この発明の目的は・・・遊技者に分からないようにデータのチェックをできるようにすることである。」(【0004】)と記載されている。 そうすると、本件発明の表示器に表示される情報は、外部から観察される情報ではあるが、パチンコ機の裏面側の外部から観察される情報であって、パチンコ機の表面側の遊技者からは観察されない情報である。 刊行物1に記載のパチンコ遊技機では、「始動回数表示器61」に表示される入賞した打玉の入賞個数の情報は、基板ボックス本体51の後面に開設された開口54を被覆し開閉自在に設けられている開閉蓋55を開放することにより、外部から観察される情報である。 したがって、刊行物1に記載の「始動回数表示器61」に表示される情報は、本件発明の情報と同じく、「外部から観察される情報」であるということができる。 ところで、本件発明の情報が加算されていく始動入賞回数の情報であるのに対し、刊行物1に記載の発明の情報は一定数からの残り始動入賞回数の情報である点で相違する。仮に、パチンコ機の表面側の遊技者が裏面側の表示器を観察することが可能であったとした場合でも、その情報を一瞥しただけで直ちにその情報の意義が把握されるものとはいえないから、刊行物1に記載の「始動回数表示器61」の情報が責任者以外に観察されてはならない重大な情報であると解することはできない。 2 取消事由2(相違点1の判断の誤り)に対して 決定の刊行物2ないし刊行物4は、本件発明と刊行物1に記載の発明との相違点1について、当業者が容易に想到し得たか否かを検討する際に、「ROM等と表示器をプリント基板に併せて組み込むようにすること」が本件出願時の周知技術であったことを立証するために引用したものである。 そして、刊行物1に記載の発明は、始動回数表示器61を有するパチンコ遊技機に関するものではあるが、上記相違点1の構成は「プリント基板に表示器を併せて組み込む構成」に関するものであって、プリント基板に表示器を組み込むという汎用性のある技術に関するものであり、パチンコ遊技機の遊技内容と密接に関連するものではないから、刊行物2ないし刊行物4記載のものがパチンコ遊技機に関するものではなくても、刊行物2ないし刊行物4は、本件出願時の周知技術を立証するための引用文献として何ら適格性を欠くものではない。 3 取消事由3(相違点2の判断の誤り)に対して 決定の刊行物5ないし刊行物7は、本件発明と刊行物1に記載の発明との相違点2について、当業者が容易に想到し得たか否かを検討する際に、「収納ケース内の情報を外部から観察するための観察手段を透視可能とすること」が本件出願時の周知技術であったことを立証するために引用したものであり、特定の情報の観察手段を示すものとして引用したものではないから、本件出願時の周知技術を立証するための引用文献として何ら適格性を欠くものではない。 刊行物1に記載の発明の「始動回数表示器61」が、パチンコ遊技機の制御基板ボックス50の後面に設けられていて、通常は遊技者に観察されるおそれがないこと、「始動回数表示器61」の情報が、外部から観察されてはならない重大な情報と解することはできないことを考慮すると、刊行物1に記載の発明において、開成時間設定スイッチ58及び表示器59〜61を覆い隠す開閉蓋55と施錠機構56が制御基板ボックス50に設けられているのは、「始動回数表示器61」等を遊技者及び遊技ホール従業員に見えないように厳重に封鎖・施錠するためというより、 遊技場の責任者が操作する「開成時間設定スイッチ58」を、他の者によって安易に操作されないようにするためと考えるのが自然である。 したがって、刊行物1に記載の発明において、始動回数表示器61の情報を「外部から観察するために透視可能な観察手段」を設けることを妨げる事情が存在する、とはいえない。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由1(一致点の認定誤り)について 原告は、本件発明の「表示器」は、「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報」は、「外部から観察」される性質を具備するものであって、パチンコ機の動作に変化を与えるものではない、と主張する。 しかしながら、本件訂正明細書(甲第4号証)の発明の詳細な説明【0002】には、従来の技術として、「パチンコ遊技ホール側では管理上遊技球の数や入賞した回数、入賞装置の開放回数などのパチンコ機の動作に関するデータをチェックする必要がある。このため、従来のパチンコ遊技ホールでは、各パチンコ機の動作に関するデータをホールの管理室に設置したホールコンピュータにより監視するようにしている。この監視されたデータを知りたいときには記録紙に打ち出し、打ち出されたデータによりチェックできるようにしている。」と記載されているところ、 本件発明の構成及び作用に関する発明の詳細な説明の記載としては、【0004】に訂正後の本件発明の特許請求の範囲に係る構成を採用したことの記載があるほか、【0006】に本件発明の作用として「この発明では上述した構成とされているので、例えば始動口への入賞があった旨、あるいは可変表示装置に特定の組合せが得られた旨等の信号が制御ユニットに入力されると、これらの信号に基づき表示器にその旨表示する。そして表示器に表示された情報は収納ケースに設けられた観察手段により外部から観察される。」と記載されているのみである。 本件発明の特許請求の範囲には、「パチンコ機の動作などに関する当該パチンコ機の確認のための情報」と限定されているのみであるところ、表示器に表示された情報が外部から観察されるものであることの記載のほかには、原告主張のような、 その情報がパチンコ機の動作に変化を与えるものではないこととの記載や、その情報と本件発明の構成との関係についての記載は認められない。 原告は、刊行物1記載の発明における「始動回数表示器61」に表示される情報は、本件発明の「観察される情報」とは異なり、遊技者の有利・不利に直結する、 遊技者に見られてはならない重大な情報である旨主張するが、上記説示の発明の詳細な説明の記載及び本件発明の要旨によれば、本件発明における上記情報が、原告主張の刊行物1記載の発明におけるこのような情報を排斥しているものと認めることはできない。 なお、本件訂正明細書には発明の効果として、「この発明は、パチンコ機の裏面に装着される遊技内容を制御する制御ユニットの収納ケースの内部にパチンコ機の動作などに関する情報を表示する表示器を組込むとともに、収納ケースに表示器に表示される情報を外部から観察するために透視可能な観察手段を設けているので、 各パチンコ機ごとにより該パチンコ機の動作などに関する情報を知ることができる。また、パチンコ機の工場からパチンコ機を出荷する前に制御ユニットが正常に作動するか否かをテストする動作テストが行われているが、この発明では制御ユニットに表示器が配置されて必要な表示がなされるので、動作テスト用のモニターに接続することなく容易に動作テストを行なうことができる。」(【0023】【0024】)と記載されているが、これらの記載も上記判断を左右するものではないし、その余の本件訂正明細書における発明の詳細な説明の記載は、実施例に関するものにすぎない。 取消事由1は、本件発明の特許請求の範囲に基づかない主張に帰するものとして、理由がない。 2 取消事由2(相違点1の判断の誤り)について 相違点1に係る構成は「プリント基板に表示器を併せて組み込む構成」に関するものであって、プリント基板に表示器を組み込むという汎用性のある技術に関するものであり、パチンコ遊技機の遊技内容にも適用可能なものであることは明らかである。したがって、刊行物2ないし刊行物4記載のものがパチンコ遊技機に関する特有のものではなくても、決定がこれらを本件出願時の周知技術として援用した点に誤りはない。 取消事由2も理由がない。 3 取消事由3(相違点2の判断の誤り)について (1) 相違点2に係る本件発明の構成を採択するに際しての周知技術を認めるべき文献として決定が引用した刊行物5ないし刊行物7は、パチンコ機ないし遊技機に関するものであり、これを周知技術が記載されている文献として引用した決定の認定判断に、誤りはない。 (2) 刊行物1(甲第6号証)に記載の発明の「始動回数表示器61」が、パチンコ遊技機の制御基板ボックス50の後面に設けられていること(刊行物1の4頁左下欄及び5頁左上欄)からすると、遊技者に観察されてはならない情報が、「始動回数表示器61」に表示されるものであることは認めることはできるが、それを超えて、「始動回数表示器61」の情報が、遊技者以外の者によって観察されてはならないほどの重大な情報と解すべき記載は刊行物1には認められない。刊行物1に記載の発明において、開成時間設定スイッチ58及び表示器59〜61を覆い隠す開閉蓋55と施錠機構56(刊行物1の4頁左下欄には、「基板ボックス本体51の後面には、開口54が開設され、該開口54を被覆するように開閉蓋55が開閉自在に設けられている。開閉蓋55には、施錠機構56が設けられ、該施錠装置56を鍵57で開錠することにより開放できるようになっている。」との記載がある。)が制御基板ボックス50に設けられたのが、遊技場の責任者が操作する「開成時間設定スイッチ58」を、他の者によって安易に操作されないようにするためであるとの理解も排除することができない。そうすると、刊行物1に記載の発明に、始動回数表示器61の情報を「外部から観察するために」周知の「透視可能な観察手段」を設けるのを排除するまでの記載が刊行物1にあると認めることもできない。 (3) 念のために、刊行物1に記載された「始動回数表示器61」に表示される情報についてみるに、刊行物1には、「また、機構板29の裏面には、制御回路基板を収納する制御基板ボックス50が着脱自在に取り付けられ、この制御回路基板には、後述する制御回路が含まれている。ここで、制御基板ボックス50の構成について第1図を参照して説明する。この制御基板ボックス50は、直方体形状の金属製の基板ボックス本体51の内部に後述するマイクロコンピュータ100を含む制御基板(図示しない)が収納されている。」(4頁右上欄)、「開閉蓋55の内部には、この実施例の要部である可変入賞球装置70の所定回数(18回)における可動部材77a,77bの第1の状態となっている合計時間を変更するための構成が収納されている。すなわち、合計時間の設定を変更するための時間設定操作手段としての開成時間設定スイッチ58が設けられている。しかして、開成時間設定スイッチ58は、回転つまみ形式のものが使用されており、このため、開成時間設定スイッチ58が回転動作されるごとに複数種類の合計時間の中から1つが選択設定されるようになっている。この実施例の場合は、後述するように合計時間の種類は、それぞれ3段階に設定され、開成時間設定スイッチ58が回転動作されるごとに順次変化するようになっている。また、開成時間設定スイッチ58の一側には、 選択した設定値を数字で表示するための表示器が設けられている。すなわち、現在の設定値を表示する現在開成時間設定表示器59と次回の設定値を表示する次回開成時間設定表示器60の2つが設けられている。そして、現在開成時間設定表示器59は、開成時間設定スイッチ58が操作される前に設定した合計時間を表示するものであり、次回開成時間設定表示器60は、開成時間設定スイッチ58の操作された後に設定された合計時間を表示している。このように開成時間設定スイッチ58の操作前後の合計時間を表示するようにしたのは、開成時間設定スイッチ58を回動して合計時間を変更しても、その変更後の合計時間が遊技に反映されるのは、 一定期間を経過した後であるように構成されているため、まだこれから継続される合計時間と、一定期間経過後に変更される合計時間とを表示して、誤操作を無くすためである。なお、時間設定操作手段を実施例のような回転つまみ形式にして目盛を付した場合には、次回開成時間設定表示器60は、必ずしも設ける必要はない。」(4頁左下欄〜5頁左上欄)、「開成時間設定スイッチ58の下方には、始動回数表示器61が設けられている。この始動回数表示器61は、前記始動入賞口14,15a,15bに入賞した打玉の入賞個数を表示するもので、リセットされた時点では、あらかじめ定められた一定数(例えば、1000)を表示し、前記始動入賞玉検出スイッチ26,27a,27bからの検出信号があるごとに「1」づつ減算される。そして、その表示が「0」になると、前記開成時間設定スイッチ58で設定された次回の合計時間が働くようになる。すなわち、この実施例の場合、 遊技場の責任者が開成時間設定スイッチ58を操作した時点での始動回数表示器61で表示されている残存回数(1000以内の数;所定の期間)が経過するまでは、その変更後の合計時間が遊技に反映されないようになっている。」(5頁左上欄)との記載がある。 これらの記載からすると、「始動回数表示器61」に表示される情報が、@開閉時間設定スイッチの設定に関する情報であり、Aリセットされた時点では、あらかじめ定められた一定数(例えば、1000)を表示し、始動入賞玉検出スイッチ26,27a,27bからの検出信号があるごとに「1」づつ減算されるものであり、開成時間設定スイッチ58で設定された次回の合計時間が働くようになるまでの残存回数(1000以内の数;所定の期間)である情報であることが認められる。 しかし、刊行物1に記載されているところは上記のものにとどまり、しかも、これらは実施例に関する記載にとどまる。開成時間設定スイッチ58及び表示器59〜61を覆い隠す開閉蓋55と施錠機構56に関し、刊行物1記載の発明がその思想として持つ意義についての記載は、刊行物1には見当たらないのであり、刊行物1に記載の発明において、始動回数表示器61の情報を「外部から観察するために透視可能な観察手段」を設けることが妨げられるべき事情を認めることはできない。 (4) よって、取消事由3も理由がない。 |
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結論
以上のとおり、原告主張の決定取消事由は理由がないので、原告の請求は棄却されるべきである。 (平成14年11月12日口頭弁論終結) 裁判長裁判官 永 井 紀 昭 裁判官 塩 月 秀 平 裁判官 田 中 昌 利 |