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関連審決 不服2000-7602
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審判番号(事件番号) データベース 権利
昭和54ネ825 判例 特許
平成19ワ507特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成15行ケ39審決取消請求参加事件 判例 特許
平成12ワ9657特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成15ワ23943特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 発明者 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  技術的範囲 /  出願公開 /  技術常識 /  参酌 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 585号 審決取消請求事件
原告A
訴訟代理人弁護士 藤井冨弘
同 山本卓也
同 鈴木雄一
同 大河内 將貴
同 弁理士 大橋弘
被告 特許庁長官今井康夫
指定代理人 久保克彦
同 橋本康重
同 粟津憲一
同 大野克人
同 宮川久成
同 伊藤三男
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/03/10
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2000-7602号事件について平成14年10月11日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成9年12月5日,発明の名称を「ゴミ発電方法」とする特許出願(特願平9-335782号,以下「本件特許出願」という。)をしたが,平成12年4月12日に拒絶の査定を受けたので,これに対する不服の審判の請求をした。
特許庁は,同請求を不服2000-7602号事件として審理した上,平成14年10月11日に「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月24日,原告に送達された。
2 本件特許出願の願書に添付した明細書(平成12年3月24日付け手続補正書による補正後のもの)の特許請求の範囲の【請求項1】記載の発明(以下「本願発明」という。)の要旨 他の焼却設備で発生したダイオキシンを含む焼却灰を有料で受け入れ,これを可燃ゴミ中に混入して前記焼却灰が溶融する1300℃以上の温度に維持された焼却炉に投入することにより,前記焼却灰を溶融し,併せて焼却炉で焼却されるボリューム当りのゴミカロリーを調整し,このゴミカロリーの調整により発電出力を調整して売電を効率的に行うゴミ発電方法。
3 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願発明は,特開平9-60829号公報(審判刊行物1・本訴甲1,以下「刊行物1」という。)及び特開平8-193711号公報(審判刊行物2・本訴甲2,以下「刊行物2」という。)記載の発明(以下,それぞれ「刊行物1発明」,「刊行物2発明」という。)並びに周知の事実に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。
原告主張の審決取消事由
審決は,本願発明と刊行物1発明との一致点の認定を誤り(取消事由1),本願発明と刊行物1発明との相違点1,2についての判断を誤り(取消事由2,3),本願発明の顕著な作用効果を看過した(取消事由4)ものであるから,違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(本願発明と刊行物1発明との一致点の認定の誤り) (1) 審決は,刊行物1発明を,「通常のゴミ焼却炉にて一旦焼却されたゴミの焼却灰を受け入れ,これを可燃性のゴミ中に混入して前記焼却灰が溶融する約1400℃の温度に維持されたゴミ焼却灰溶融炉に投入することにより,前記焼却灰を溶融し,併せてゴミ焼却灰溶融炉から発生する排ガスにより発電を行う方法」(審決謄本3頁第2段落)と認定し,刊行物1発明の「通常のゴミ焼却炉にて一旦焼却されたゴミの焼却灰」,「可燃性のゴミ」及び「ゴミ焼却灰溶融炉」は,それぞれ,本願発明の「他の焼却設備で発生した焼却灰」,「可燃ゴミ」及び「焼却炉」に相当する(同第3段落)とした上,本願発明と刊行物1発明の一致点として,「他の焼却設備で発生した焼却灰を,これを可燃ゴミ中に混入して前記焼却灰が溶融する1300℃以上の温度に維持された焼却炉に投入することにより,前記焼却灰を溶融し,併せて発電する方法」(同)を認定したが,誤りである。
(2) 刊行物1(甲1)には,「焼却灰を受け入れる」こと及び「他の焼却設備で発生した焼却灰」についての開示はなく,本願発明の「他の焼却設備で発生した焼却灰」に相当する構成はない。
また,刊行物1発明の「焼却灰」は,本願発明の「焼却灰」とは異なるものである。すなわち,刊行物1発明の「焼却灰」は,未燃物,すなわちカロリーが残っている状態のものであることは,刊行物1の「この場合,ゴミ焼却灰も固体燃料(注,固定燃料とあるのは誤記と認める。以下同じ。)と同程度に微粒化され,それらが混合されていると燃焼性(注,燃料性とあるのは誤記と認める。以下同じ。)が良いので好適である」(段落【0021】)との記載から明らかであり,焼却灰に未燃物が残っているからこそ,この焼却灰を混合したときに燃焼性が良いのであって,未燃物が残っていないカロリー零の焼却灰を混合しても,燃焼性が悪化することはあっても,燃焼性が良くなることはあり得ない。これに対し,本願発明の「焼却灰」は,本件明細書(甲5添付)【表2】の「焼却灰カロリー 0KCal/kg」(段落【0019】*1)から明らかなように,発熱量を持たないカロリー零の焼却灰であり,ゴミと混合した場合,発熱量を低下させることはあっても,増加させることはない。「焼却灰」関連の発明に関する公開特許公報(甲16-1〜6)によれば,「焼却灰」は,一般的な技術常識としてカロリー零のものを意味するから,本願発明の「焼却灰」は一般的な「カロリー零」の「焼却灰」を対象としていると解釈すべきである。
2 取消事由2(本願発明と刊行物1発明との相違点1についての判断の誤り) (1) 審決は,本願発明と刊行物1発明との相違点1として認定した,「本願発明は,焼却灰にダイオキシンを含むものであるが,刊行物1に記載された発明(注,刊行物1発明)は,焼却灰にダイオキシンを含むものであるかどうか,刊行物1に明確に記載されていない点」(審決謄本3頁第4段落「相違点1」の項)について,「焼却炉で焼却された焼却灰に有害物質であるダイオキシンが含まれることは周知の事項であり(例えば,特開平8-61634号公報〔注,甲3。以下「甲3公報」という。〕参照。),刊行物1の溶融処理する焼却灰にも,焼却条件に応じて有害物質であるダイオキシンが含まれることは,当業者には自明の技術的事項にすぎない」(同4頁第2段落「相違点1について」の項)と判断したが,誤りである。
(2) 本件特許出願当時には,焼却灰にダイオキシンが含まれているのではないかとの推測はされていたが,この焼却灰中のダイオキシンを測定する技術は確立していなかったから,これを「周知の事項」ないし「自明の技術的事項」ということはできない。
3 取消事由3(本願発明と刊行物1発明との相違点2についての判断の誤り) (1) 審決は,本願発明と刊行物1発明との相違点2として認定した,「本願発明は,焼却灰を有料で受け入れ,これを可燃ゴミ中に混入して焼却灰を溶融し,併せて焼却炉で焼却されるボリューム当りのゴミカロリーを調整し,このゴミカロリーの調整により発電出力を調整して売電を効率的に行うものであるのに対し,刊行物1に記載された発明は,発熱量が少ないゴミである焼却灰を受け入れ,他の可燃性のゴミと混焼し,燃焼排ガスがもつ熱エネルギーを利用して発電するものであるが,刊行物1には,焼却灰を有料で受け入れることの記載はない点」(審決謄本3頁最終段落「相違点2」の項)について,「刊行物2(注,甲2)には,焼却炉からの排ガスで発電し,処理するゴミの量を変化させずに,売電による収入を増加させるために,昼間と夜間で,発熱量が少ないゴミと可燃性のゴミの混合割合を調節することが記載されている。また,事業所等から出る廃棄物や焼却灰等を,有料で受け入れ処理する産業廃棄物請負業が存在することも知られている。そうすると,刊行物1(注,甲1)記載の,発熱量がきわめて少ないゴミである焼却灰を受け入れて,他の可燃性のゴミと混焼して溶融処理するシステムにおいて,焼却灰を有料で受け入れ,これを可燃ゴミ中に混入して焼却灰を溶融し,併せて焼却炉で焼却されるボリューム当りのゴミカロリーを調整し,このゴミカロリーの調整により発電出力を調整して売電を効率的に行うことは,刊行物2記載の技術及び周知の事実に基づいて,当業者が容易に想到し得た」(同4頁「相違点2について」の項)と判断したが,誤りである。
(2) 刊行物2(甲2)では,昼間と夜間で発熱量が少ないゴミと可燃性のゴミの混合割合を調整することにより,処理するゴミの量を変化させずに,売電による収入を増加させるとしているが,ゴミ発電の場合,その出力は,通常マキシマムで運転することが前提となっていて,これを大幅に下回る出力で運転することは技術的に不可能である。したがって,例えば,昼間は可燃ゴミ(カロリー大のゴミ)の量の比率を最大にして運転し,夜間は発熱量の少ないゴミの量の比率を増やして,上記ゴミ発電の運転条件の範囲で出力を低下させて運転した場合,夜間は売電量及び単価ともに低下するから,売電による収入を増加させることはできない。
また,本件特許出願当時,廃棄物を有料で受け入れ,これを焼却したり,薬品分解したりする産業廃棄物請負業が存在していた例はあるが,焼却灰については,処分場にそのまま投棄(処分)するだけで,「処理」すなわちダイオキシン等の有害物を処理して無害化してから投棄する産業廃棄物請負業の存在は皆無であった。したがって,「事業所等から出る廃棄物や焼却灰等を,有料で受け入れ処理する産業廃棄物請負業が存在することも知られている」ということはできない。
4 取消事由4(本願発明の顕著な作用効果の看過) (1) 審決は,「本願発明が奏する作用,効果は,刊行物1及び2の記載並びに周知の事実から容易に予測できた」(審決謄本4頁第5段落)と判断したが,誤りである。
(2) ゴミの焼却溶融炉がすべてのゴミ焼却施設にあり,焼却灰を溶融し,スラグ化することができるのであればともかく,ゴミ焼却溶融炉の建設には数百億円の設備投資が必要であり,また,ゴミ焼却溶融炉は,焼却するゴミの量は一定量以上を確保しなければならないという運転上の問題があり,さらに,ゴミ焼却溶融炉は付帯設備を含めると膨大な敷地が必要となるから,どこにでも建設できるわけではない。環境問題,住民の反対等の問題もあり,これらの諸問題をすべて解消できる例は少なく,その結果として,ゴミ焼却溶融炉の建設は一部の大都市を除き進んでいない。本願発明は,このようなゴミ焼却溶融炉を持たない地方自治体の焼却炉で発生したダイオキシンを含む焼却灰を受け入れて処理するものであり,社会問題となっている焼却灰対策の解決でもある。本願発明は,この受け入れる焼却灰の処理技術をゴミ発電と組み合わせ,売電による収入と,焼却灰を有料で受け入れることによる収入の多角化により,ゴミ焼却溶融施設の収入の安定化を図り,設備投資に対する償却の一助とするという,極めて有用なシステムを提供できる顕著な作用効果を奏するものであるところ,審決はこれを看過したものである。
被告の反論
審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1 取消事由1(本願発明と刊行物1発明との一致点の認定の誤り)について (1) 刊行物1発明は,「ゴミ焼却灰溶融炉」に係る発明であるところ,刊行物1(甲1)には,その構成として【図1】とともに,「前記ゴミ投入部1と並列に,焼却灰を投入する焼却灰投入部5が配置されており,この焼却灰投入部5には,投入した焼却灰を徐々に移動させるスクリュウ部材6と,焼却灰投入部5の下部に配置されて焼却灰の排出量を調節するロータリバルブ7と,ロータリバルブ7の下方に設けられた開口部8とを備えている。尚,この焼却灰とは,例えば通常のゴミ焼却炉にて一旦焼却されたゴミの焼却灰である」(段落【0032】)と記載されているところ,「焼却灰」を生成する焼却設備は記載されていないのであるから,他の「通常のゴミ焼却炉」等より「焼却灰」を輸送し,刊行物1の「ゴミ焼却溶融炉」で受け入れて処理するものであることは,当業者にとって自明である。したがって,審決が,刊行物1の「ゴミ焼却灰溶融炉」が「通常のゴミ焼却炉にて一旦焼却されたゴミの焼却灰を受け入れ」るものであると認定した点に誤りはなく,また,刊行物1の「焼却灰」を「他の焼却設備で発生した焼却灰」であると認定した点にも誤りはない。
(2) また,本願発明の「焼却灰」が未燃物が残存しないカロリー零のものであることは,本願発明の特許請求の範囲には記載されていないので,この点に係る原告の主張は,本願発明の要旨に基づかない主張であり,失当である。本件明細書(甲5添付)の【表2】には,「*1 この表は例として以下のデータを使用している」と記載され,原告が引用する「焼却灰カロリー 0KCal/kg」との記載は,例示にすぎないのであって,この例示を参酌して,本願発明の要旨を認定しなければならない特段の事情が存在するものとは認められない。
2 取消事由2(本願発明と刊行物1発明との相違点1についての判断の誤り)について 甲3公報には,「【従来の技術】・・・都市ゴミ等の焼却処理に際しては,・・・ダイオキシン等が発生する。・・・一般に,都市ゴミ等を焼却した残存焼却灰(バグフィルター等で収集されたものも含む)は,これを埋め立て地に埋設したり,その他に土木基礎工事においてコンクリート打設に際して地中に埋設したりして爾後処理されていた。しかし,焼却灰は,ダイオキシンを吸着した微粉であり,また,燃えない重金属を含んでいて,その取り扱い運搬に際して飛散する恐れが高く,その運搬処理に手間のかかる問題がある」(段落【0002】〜【0003】)と記載され,特開平7-155731号公報(乙1)には,集じん灰の加熱脱塩素化処理方法について,「【従来の技術】人体および環境にとって有害なダイオキシン類・・・は,都市ごみ焼却処理施設から排出される排ガスおよび集じん灰に含有され,環境を汚染することが知られている。国は,その対策として平成2年12月26日付厚生省生活衛生局水道環境部長通知衛生環第260号別添の『ダイオキシン類発生防止等ガイドライン』で総括的な対策を取りまとめている。このガイドラインによれば,集じん灰中のダイオキシン類の処理に関して『最終処分される焼却灰等のダイオキシン類の灰処理技術としては(1)加熱脱塩素化処理,(2)溶融固化処理のようなものがあり,今後重金属類の挙動を含めた技術開発や研究を推進し,実用化をめざすことが望ましい。』と記載されている。このような集じん灰中のダイオキシン類を低減する技術としては,例えば本発明者らの提案による特開平2-78479号公報(ごみ焼却炉の焼却灰処理方法および処理装置)があげられる。この処理方法および処理装置によれば,ごみ焼却処理施設から回収される焼却灰を300℃以上に加熱することにより,灰中のダイオキシンをはじめとする有機塩素化合物を効果的に分解できるとともに,排ガス集じん装置における灰の滞留部に加熱手段を設けて前記充満した焼却灰を加熱処理することにより,焼却灰中の有機塩素化合物をほぼ完全に無害化処理することができる」(段落【0002】〜【0004】)と記載されている。これらの記載によれば,審決が「焼却炉で焼却された焼却灰に有害物質であるダイオキシンが含まれていることは周知の事項であり」と認定したことは,本願発明の出願日前の技術水準に照らしても,誤りではない。また,ダイオキシンを含む焼却灰が本件特許出願前に知られている以上,焼却灰がダイオキシンを含むものであるか否かをどのように測定して特定するかは,本願発明に関連する技術とはいえ,本願発明の技術的範囲には直接の関係がないものである。そして,本件特許出願前に,焼却灰中のダイオキシンを測定する技術が確立していたかどうかはともかく,焼却灰中にダイオキシンが存在しているかどうかを測定する技術は,公知の技術であったと認められる。
3 取消事由3(本願発明と刊行物1発明との相違点2についての判断の誤り)について 刊行物2(甲2)には,「昼夜での運転出力の切り替えを必要とするごみ処理施設の場合,従来は焼却炉へ供給するごみの量を変化させているが,本発明(注,刊行物2発明)によれば,供給量は変えなくとも供給するごみの発熱量の制御により出力の調整が行えるため,平均的なごみの量に合わせた焼却炉の容量でよく,設備コストが低減できるという効果がある」(段落【0038】)と記載され,この記載によれば,焼却炉へ供給するごみの量を変化させて運転出力の切り替えを行なうごみ処理施設が,従来技術として当業者には知られていたものと認められる。したがって,ゴミ発電の場合,原告が主張するように,通常はマキシマムで運転することが前提であり,これを大幅に下回る出力で運転することが技術的に不可能であるとしても,夜間時にマキシマムより大幅に下回ることのない出力の範囲において,これを運転することを妨げるものではないから,原告の主張は,仮にそれが事実としても,「刊行物2(注,甲2)には,焼却炉からの排ガスで発電し,処理するゴミの量を変化させずに,売電による収入を増加させるために,昼間と夜間で,発熱量が少ないゴミと可燃性のゴミの混合割合を調節することが記載されている」(審決謄本4頁第3段落「相違点2について」の項)との審決の認定を誤りということはできない。
本件特許出願当時,廃棄物を有料で受け入れ,これを焼却したり,薬品分解したりする産業廃棄物請負業が存在していた例があることは,原告の自認するところであるが,この産業廃棄物請負業が受け入れる廃棄物の出所には,特段の事情がない限り,事業所等が含まれるとみるのが妥当である。また,本件特許出願時に,都市ゴミ等の廃棄物を焼却した焼却灰の処理方法としては,埋立地に埋め立てるのが一般的であったし,一部の焼却灰は加熱溶融して建材等に利用されていたのである(特開平9-4828号公報〔乙2〕及び特開平7-31953号公報〔乙3〕)。そして,焼却灰を処理する施設は,市町村が所有するものであっても,多くは業者に委託して運営されていること,また,焼却灰を処理するためには,焼却灰の搬送から,処理施設における処理,その後の最終処分地まで種々のコストが必要であることからみても,焼却灰を取り扱う業者が存在し,事業所等から出る焼却灰を処理するには,通常有料であったと認められるのである。そうすると,審決が「事業所等から出る廃棄物や焼却灰等を,有料で受け入れ処理する産業廃棄物請負業が存在することも知られている」と認定したことに,誤りはない。
4 取消事由4(本願発明の顕著な作用効果の看過)について 原告が本願発明の顕著な作用効果として主張する,本願発明はゴミ焼却溶融炉を持たない地方自治体の焼却炉で発生したダイオキシンを含む焼却灰を受け入れて処理することによって,多額の設備投資が必要で広大な用地が必要なゴミ焼却溶融炉をすべての地方自治体が有しなくても,ダイオキシンを含む焼却灰対策を行うことができるとの点は,ゴミ焼却溶融炉を持たない地方自治体の焼却炉で発生した焼却灰を受け入れて処理するという,本願発明の要旨外の事項を前提としての主張であるから,本願発明の効果ということはできない。また,この焼却灰の処理技術をゴミ発電と組み合わせることにより,売電収入に加えて,焼却灰を有料にて受け入れることによる収入の多角化により,施設の収入の安定化を図り,設備投資に対する償却の一助とすることができるとの点は,刊行物1(甲1)に,焼却灰の処理技術をゴミ発電と組み合わせたシステムが記載され,このシステムにおいて,「焼却灰を有料で受け入れ,これを可燃ゴミ中に混入して焼却灰を溶融し,併せて焼却灰で焼却されるボリューム当たりのゴミカロリーを調整し,このゴミカロリーの調整により発電出力を調整して売電を効率的に行うことは,刊行物2記載の技術及び周知の事実に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである」(審決謄本4頁「相違点2について」の項)以上,刊行物1発明,刊行物2発明及び周知の事実に基づいて,当業者が容易に予測できた効果というべきである。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本願発明と刊行物1発明との一致点の認定の誤り)について (1) 原告は,刊行物1(甲1)には,「焼却灰を受け入れる」こと及び「他の焼却設備で発生した焼却灰」についての開示はなく,本願発明の「他の焼却設備で発生した焼却灰」に相当する構成はないと主張する。
刊行物1には,以下の記載がある。
ア 「【請求項1】可燃性の廃棄物から形成した微細な固体燃料又は液体燃料を,炉内にて高温にて燃焼させて溶融スラグとするとともに,該溶融スラグを更に加熱して,該溶融スラグと溶融メタルとを分離することを特徴とするゴミ焼却灰溶融炉。・・・【請求項4】前記微粒化固体燃料にゴミ焼却灰を加えて燃焼させることを特徴とする前記請求項3記載のゴミ焼却灰溶融炉。・・・【請求項13】前記ゴミ焼却灰溶融炉に,その燃料として,可燃性の廃棄物を微細に破砕した微粒化固体燃料と同様に微粒化したゴミ焼却灰とを混合して供給する燃料供給装置を備えたことを特徴とする前記請求項12記載のゴミ焼却灰溶融炉システム。【請求項14】前記ゴミ焼却灰溶融炉の高温の燃焼排ガスを用いてスターリングエンジンを駆動し発電するシステムを有することを特徴とする前記請求項12又は13記載のゴミ焼却灰溶融炉。」(【特許請求の範囲】) イ 「【発明の属する技術分野】本発明は,都市ゴミ等のゴミを焼却して溶融処理するゴミ焼却灰溶融炉に関するものである。」(段落【0001】) ウ 「【従来の技術】現在,一般廃棄物の年間総排出量は5000万tを越え,その増加傾向は鈍化しているものの,非常に高水準である。一般廃棄物の処理方法としては,ゴミをバーナ等を用いて燃焼させる焼却処理が主流である。ところが,この焼却処理によって発生する焼却灰は,ゴミ発生量の12%に相当し非常に多量である。また,これまでは,ゴミは灰で終わると考えられ,ゴミを焼却して灰にし,この焼却灰を埋立地に投棄して処理する方法が採用されていたが,この方法では,埋立地の入手困難を始め,重金属の溶出,埋立地の汚濁などの問題がある。
そのため,最終処分されて埋め立てされる物質の減容化や汚染物質の対策が検討されている。」(段落【0002】〜【0003】) エ 「【発明が解決しようとする課題】この対策として,焼却灰の溶融処理を行なう技術が考えられる。これは,例えばコークスを用いて焼却する高炉式溶融炉や,電気を用いた電気アーク式溶融炉や,オイルバーナを用いた回転式表面溶融炉等の様に,焼却灰を高温で溶融させて処理する方法であり,減容化等には有効であるが,通常は,特定の対象の物質を焼却する特有の構造をした専焼炉的なものであり,また,非常に多くのエネルギーを必要とし,製造及び運転コストが高いという問題がある。本発明は,前記課題を解決するためになされたものであり,ゴミ処理に関して,安全無害化,減容化,資源の有効利用を図ることができ,しかも低コストのゴミ焼却灰溶融炉及びゴミ焼却灰溶融炉システムを提供することを目的とする。」(段落【0004】〜【0005】) オ 「【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために,・・・請求項3の発明は,前記固体燃料が,可燃性の廃棄物を粉砕した微粒化固体燃料であることを特徴とする前記請求項1又は2記載のゴミ焼却灰溶融炉を要旨とする。請求項4の発明は,前記微粒化固体燃料にゴミ焼却灰を加えて燃焼させることを特徴とする前記請求項3記載のゴミ焼却灰溶融炉を要旨とする。」(段落【0006】〜【0008】) カ 「【発明の実施の形態】請求項4の発明では,微粒化固体燃料にゴミ焼却灰を加えて燃焼させる。この場合,ゴミ焼却灰も固体燃料と同程度に微粒化され,それらが混合されていると燃焼性が良いので好適である。尚,このゴミ焼却灰としては,通常の焼却炉等で焼却され,まだ減容化が十分でないものを用いると,減容化が促進されるので好適である。」(段落【0021】) キ 「【実施例】・・・前記ゴミ投入部1と並列に,焼却灰を投入する焼却灰投入部5が配置されており,この焼却灰投入部5には,投入した焼却灰を徐々に移動させるスクリュウ部材6と,焼却灰投入部5の下部に配置されて焼却灰の排出量を調節するロータリバルブ7と,ロータリバルブ7の下方に設けられた開口部8とを備えている。尚,この焼却灰とは,例えば通常のゴミ焼却炉にて一旦焼却されたゴミの焼却灰であるが,溶融スラグとなるまで加熱されていないので,それほど減容化は進んでいない。・・・前記ゴミ収容器18又は焼却灰収容器19に各々収容されたゴミ又は焼却灰は,上述した各破砕機11,12,13によって破砕されているので,容易に細い管の中を移動可能な様に,微粒化した固体となっている。
前記ゴミ収容器18及び焼却灰収容器19の開口部23,26からは,微粒化したゴミ及び焼却灰が,細管である燃料供給路30に導入されて混合される。尚,ここで,ゴミと焼却灰とを混合して微粒化固体混合燃料とするのは,一般の焼却炉等で低温にて(即ち溶融化されないで)焼却された焼却灰を効率よく加熱溶融して減容化を行なうためである。(段落【0029】〜【0038】) 上記によれば,刊行物1には,可燃性の廃棄物を粉砕して微粒化した固体燃料を高温で燃焼させてスラグ化するとともに,発生した熱で発電を行うゴミ消却灰溶融炉であって,燃焼に際して,「その燃料として,可燃性の廃棄物を微細に破砕した微粒化固体燃料と同様に微粒化したゴミ焼却灰とを混合して供給する」(上記ア)こと,その際,「このゴミ焼却灰としては,通常の焼却炉等で焼却され,まだ減容化が十分でないものを用いると,減容化が促進されるので好適である」(上記カ)ことが記載され,また,焼却灰については,「この焼却灰とは,例えば通常のゴミ焼却炉にて一旦焼却されたゴミの焼却灰であるが,溶融スラグとなるまで加熱されていないので,それほど減容化は進んでいない」(上記キ)ことが記載されているから,刊行物1において,可燃性廃棄物から生成された固体燃料とともに高温で燃焼されてスラグ化される「ゴミ焼却灰」は,さほど高温で燃焼させるものではない通常のゴミ焼却炉で焼却されたゴミの焼却灰を使用すること(受け入れること)を予定していることが理解され,このような「通常の焼却炉」が刊行物1の「ゴミ焼却灰溶融炉」とは異なる別の焼却炉であることは明らかである。したがって,原告の上記主張は理由がなく,審決が,刊行物1の「ゴミ焼却灰溶融炉」が「通常のゴミ焼却炉にて一旦焼却されたゴミの焼却灰を受け入れ」るものであると認定した点に誤りはなく,また,刊行物1の「焼却灰」を「他の焼却設備で発生した焼却灰」であると認定した点にも誤りはない。
(2) また,原告は,刊行物1発明の「焼却灰」は,未燃物,すなわちカロリーが残っている状態のものであることは,刊行物1の「この場合,ゴミ焼却灰も固体燃料と同程度に微粒化され,それらが混合されていると燃焼性が良いので好適である」(段落【0021】)との記載から明らかであるが,これに対し,本願発明の「焼却灰」は,本件明細書(甲5添付)【表2】の「焼却灰カロリー 0KCal/kg」(段落【0019】*1)から明らかなように,発熱量を持たないカロリー零の焼却灰であるから,両者は異なると主張する。
しかしながら,本願発明の「焼却灰」が未燃物が残存しないカロリー零のものであることは,本願発明の特許請求の範囲には記載されていないから,この点に係る原告の主張は,本願発明の要旨に基づかない主張であり,失当である。原告が引用する本件明細書の上記記載は,【表2】の注の「*1 この表は例として以下のデータを使用している」との記載から,焼却灰が零カロリーのものであることを例示しているにすぎないと認められ,同記載を参酌して,本願発明の「焼却灰」がカロリー零のものに限定しなければならない特段の事情が存在するものとは認められない。原告は,「焼却灰」関連の発明に関する公開特許公報(甲16-1〜6)によれば,「焼却灰」は,一般的な技術常識としてカロリー零のものを意味するから,本願発明の「焼却灰」は一般的な「カロリー雰」の「焼却灰」を対象としていると解釈すべきであるとも主張するが,特開平11-114535号公報(甲16-3)の「ゴミの焼却により減容化(初期の1/10)はできるものの焼却灰が発生し,灰の埋立地処分用地の確保すら逼迫した状況となっている。しかも,灰の埋立処分において灰の飛散,含有量金属類の溶出による環境汚染,未燃焼物による悪臭等環境に及ぼす悪影響が重要な課題となっている」(段落【0003】)との記載及び特開昭51-59770号公報(乙4)の「焼却灰は未燃分とくに紙,プラスチックス,皮革,繊維,鉄屑,非鉄金属,土砂,陶磁器,ガラス屑,ダストなどの多種多様なものを含んでおり,何等の手段を加えることなく,これらの処理をすることは困難であった」(1頁右下欄下から第2段落)との記載によれば,本件特許出願前に,ゴミ焼却場から出る「焼却灰」は,完全燃焼できなかった未燃物を含むものであると当業者に認識されていたことが認められるのであって,原告の上記主張も採用することができない。
(3) 以上によれば,本願発明と刊行物1発明との一致点についての審決の認定に,原告主張の誤りはなく,原告の取消事由1の主張は,理由がない。
2 取消事由2(本願発明と刊行物1発明との相違点1についての判断の誤り)について (1) 原告は,本件特許出願当時には,焼却灰にダイオキシンが含まれているのではないかとの推測はされていたが,この焼却灰中のダイオキシンを測定する技術は確立していなかったから,これを「周知の事項」ないし「自明の技術的事項」ということはできず,本願発明と刊行物1発明との相違点1について,「焼却炉で焼却された焼却灰に有害物質であるダイオキシンが含まれることは周知の事項であり(例えば,特開平8-61634号公報〔注,甲3公報〕参照。),刊行物1の溶融処理する焼却灰にも,焼却条件に応じて有害物質であるダイオキシンが含まれることは,当業者には自明の技術的事項にすぎない」(審決謄本4頁第2段落「相違点1について」の項)とした審決の判断を誤りであると主張する。
(2) 甲3公報は,本件特許出願前である平成8年3月8日出願公開に係る公開特許公報であるところ,そこには,「【従来の技術】都市ゴミ,その焼却灰,シュレッダダスト(自動車の裁断処理),下水汚泥,海底及び河川底ヘドロには,有害物質が含まれている。それらのうち,都市ゴミ等の焼却処理に際しては,SOx,NOx,或いはダイオキシン等が発生する。・・・一般に,都市ゴミ等を焼却した残存焼却灰(バグフィルター等で収集されたものも含む)は,これを埋め立て地に埋設したり,その他に土木基礎工事においてコンクリート打設に際して地中に埋設したりして爾後処理されていた。しかし,焼却灰は,ダイオキシンを吸着した微粉であり,また,燃えない重金属を含んでいて,その取り扱い運搬に際して飛散する恐れが高く,その運搬処理に手間のかかる問題がある。また,この焼却灰を単に土中に埋設すると雨,地下水によって流出することで公害問題を引き起こすことがあり,その廃棄処理は慎重に行われなければならない。・・・こうした現状に鑑み,近く,この焼却灰の二次溶解処理が義務付けられることが決定している。その為に,最近に至ってゴミ焼却灰を高温で溶解し,ダイオキシンを分解(通常600°Cで分解されると言われている)させようとする方法が提案されている。・・・本発明は,こうした現状に鑑み,産業廃棄物の焼却,溶解処理に於いて,焼却,溶解による処理物の減容化と,高温によるダイオキシンの分解と,溶解処理物のリサイクルとを低燃費で成し得るところの産業廃棄物の焼却,溶解処理方法を提供することを目的とする」(段落【0002】〜【0010】)との記載がある。上記記載によれば,本件特許出願前に,ゴミの焼却に際して発生する焼却灰にはダイオキシンが含まれていること,焼却灰を再度高温で溶解することによってダイオキシンを分解させる二次溶解方式が有効であることが,当業者に周知であったことが認められる。
また,平成9年6月13日日本環境化学会発行「環境化学」第7巻第2号(乙5)の「廃棄物処理におけるダイオキシン類標準測定分析マニュアル(平成9年2月)厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課・・・本マニュアルは『ダイオキシン類発生防止等ガイドライン』(平成2年12月)に示された『廃棄物処理におけるダイオキシン類測定標準法』を基礎として,『ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン(平成9年1月)』など,その後のダイオキシン類削減対策のための様々なニーズや分析技術レベルの向上,分析機器の高度化等を踏まえ,内容をさらに適切な正確さの高い分析方法に見直したものである・・・本法により,廃棄物処理における排ガス,灰,排水及びその他の関連試料中に含まれるダイオキシン類の定量分析を行うことができる」(333頁〜334頁),「灰試料の採取方法 灰試料の採取に当たっては焼却施設の稼動状況等を考慮し,その施設を代表する試料であることを確認する。なお,焼却灰は5mmのふるいでふるい分け後試料とし,EP灰やBF灰等は集じん灰採取口等より直接に採取した試料とする」(342頁),「分析方法・・・試料からの抽出・・・(2)灰試料焼却灰試料(ふるい分けされたもの),EP灰又はBF灰等の集じん灰試料は風乾後,乳鉢中で均一にすりつぶして混合し」(344頁〜348頁)との記載によれば,焼却炉より焼却灰を採取して,その中に含まれるダイオキシンを測定分析するための技術は,平成2年ころには,既に当時の厚生省がガイドラインを示す程度に確立していたことが認められる。
(3) したがって,原告の上記主張は理由がなく,本願発明と刊行物1発明との相違点1についての審決の判断に誤りはなく,原告の取消事由2の主張は,理由がない。
3 取消事由3(本願発明と刊行物1発明との相違点2についての判断の誤り)について (1) 原告は,ゴミ発電の場合,その出力は,通常マキシマムで運転することが前提となっていて,これを大幅に下回る出力で運転することは技術的に不可能であるから,ゴミの混合割合を調整することにより売電による収入を増加させることはできず,また,本件特許出願当時,ダイオキシン等の有害物を処理して無害化してから投棄する産業廃棄物請負業の存在は皆無であったから,「事業所等から出る廃棄物や焼却灰等を,有料で受け入れ処理する産業廃棄物請負業が存在することも知られている」(審決謄本4頁「相違点2について」の項の第1段落)ということはできず,本願発明と刊行物1発明との相違点2について,「刊行物1(注,甲1)記載の,発熱量がきわめて少ないゴミである焼却灰を受け入れて,他の可燃性のゴミと混焼して溶融処理するシステムにおいて,焼却灰を有料で受け入れ,これを可燃ゴミ中に混入して焼却灰を溶融し,併せて焼却炉で焼却されるボリューム当りのゴミカロリーを調整し,このゴミカロリーの調整により発電出力を調整して売電を効率的に行うことは,刊行物2(注,甲2)記載の技術及び周知の事実に基づいて,当業者が容易に想到し得た」(同第2段落)とした審決の判断は誤りであると主張する。
(2) 刊行物2(甲2)には,「本発明(注,刊行物2発明)の第二の作用は,ごみを焼却処理する際にごみ焼却熱の制御が容易になることである。ごみを高い発熱量を有するごみと低い発熱量を有するごみとに分離することにより,焼却炉内におけるごみ焼却熱の発生状態にあわせて焼却炉に供給するごみの発熱量を個別に制御することが可能となり,ごみの供給量によりごみ焼却熱の制御が容易に行えるようになる。すなわち,蒸気タービンの容量に見合った蒸気を発生するに必要なだけのごみ焼却熱となるように溶融ごみと溶融しないごみの焼却炉への供給量を制御することにより,余剰蒸気が生じず,従って,ごみ燃焼熱の有効利用率が向上出来る。さらに,焼却炉におけるごみの燃焼状態に合わせて供給するごみの供給量を質別に制御できるため,ごみの完全燃焼が行えるようになる」(段落【0014】),「運用法について示す。一般にごみ焼却炉では,単位時間あたりに供給できるごみの量が決まっている(図2-(a))。従って,従来のごみ発電プラントの発生蒸気量は,都市ごみの発熱量のばらつきのために変動するが,1〜2時間程度の平均発生蒸気量は,都市ごみの平均的な発熱量に相当する蒸気量となる(図2-(b))。しかし本実施例によれば,単位時間あたりのごみ供給量が同じであっても,分離後の発熱量の高いごみと低いごみを焼却炉へ供給する際に,その比率を変えることにより発生蒸気量を変化させることができる。従って,例えば図3-(a)に示すように,昼間には発熱量の高い溶融ごみの供給量を多くし,夜間には少なくすることで,図3-(b)のような発生蒸気量を得ることができる。売電価格は昼間が高く夜間が低いため,ごみ発電プラントをこのように運用をすることで,一日のごみ処理量を変化させずに効果的に売電による収入を増加させることができる」(段落【0029】),「昼夜での運転出力の切り替えを必要とするごみ処理施設の場合,従来は焼却炉へ供給するごみの量を変化させているが,本発明(注,刊行物2発明)によれば,供給量は変えなくとも供給するごみの発熱量の制御により出力の調整が行えるため,平均的なごみの量に合わせた焼却炉の容量でよく,設備コストが低減できるという効果がある」(段落【0038】)と記載され,これらの記載によれば,焼却炉へ供給するごみの量を変化させて運転出力の切り替えを行うごみ処理施設が,従来技術として当業者には知られていたものと認められる。したがって,仮に,原告主張のように,ゴミ発電の場合,その出力は,通常マキシマムで運転することが前提となっていて,これを大幅に下回る出力で運転することは技術的に不可能であるとしても,設計された発電能力の範囲内で一日のうちの発電量を売電価格に応じて時間帯によって変動させることは可能であるから,「刊行物2(注,甲2)には,焼却炉からの排ガスで発電し,処理するゴミの量を変化させずに,売電による収入を増加させるために,昼間と夜間で,発熱量が少ないゴミと可燃性のゴミの混合割合を調節することが記載されている」(審決謄本4頁「相違点2について」の項第1段落)との審決の認定を誤りということはできない。
(3) また,平成10年1月5日全国産業廃棄物連合会発行「いんだすと」1月号通巻123号(乙6)には,平成9年5月に完成し,同年10月29日に公開されたメルテック株式会社の廃棄物再生工場について,「これまで,焼却灰は,単に埋め立て処分されており,埋立処分場の延命や無害化など,その処分先が課題となってきた。また,取り扱いのやっかいな都市ごみ焼却灰や汚泥焼却灰も同様である。このように,これまで,埋め立てることで最終処分されてきた焼却灰は,高温にて溶融固化すれば安全性の高いリサイクルが可能であると言われてきた」(56頁右欄最終段落〜57頁左欄第1段落),「受け入れる焼却灰は,ごみ焼却灰,下水汚泥の他各種汚泥焼却灰,その他焼却灰などの産業廃棄物の焼却灰が対象だ」(57頁右欄第2段落),「高温で分解するためダイオキシン類の含有量も法定基準内に抑えることができるという」(58頁右欄下から第2段落)と記載され,本件特許出願前である平成9年10月当時,ごみ焼却灰を高温溶融してダイオキシン等を無害化する産業廃棄物請負業が存在することも知られていたことが明らかであり,「事業所等から出る廃棄物や焼却灰等を,有料で受け入れ処理する産業廃棄物請負業が存在することも知られている」(審決謄本4頁「相違点2について」の項の第1段落)とした審決の認定にも誤りはない。
(4) 以上によれば,原告の上記主張は理由がなく,本願発明と刊行物1発明との相違点2についての審決の判断に誤りはなく,原告の取消事由3の主張は,理由がない。 4 取消事由4(本願発明の顕著な作用効果の看過)について 原告は,本願発明は,ゴミ焼却溶融炉を持たない地方自治体の焼却炉で発生したダイオキシンを含む焼却灰を受け入れて処理するものであり,社会問題となっている焼却灰対策の解決であり,かつ,この受け入れる焼却灰の処理技術をゴミ発電と組み合わせ,売電による収入と,焼却灰を有料で受け入れることによる収入の多角化により,ゴミ焼却溶融施設の収入の安定化を図り,設備投資に対する償却の一助とするという,極めて有用なシステムを提供できる顕著な作用効果を奏するものであると主張する。しかしながら,本願発明はゴミ焼却溶融炉を持たない地方自治体の焼却炉で発生したダイオキシンを含む焼却灰を受け入れて処理することによって,多額の設備投資が必要で広大な用地が必要なゴミ焼却溶融炉をすべての地方自治体が有しなくても,ダイオキシンを含む焼却灰対策を行うことができるとの点は,ゴミ焼却溶融炉を持たない地方自治体の焼却炉で発生した焼却灰を受け入れて処理するという,本願発明の要旨外の事項を前提としての主張であるから,本願発明の効果ということはできない。また,この焼却灰の処理技術をゴミ発電と組み合わせることにより,売電収入に加えて,焼却灰を有料にて受け入れることによる収入の多角化により,施設の収入の安定化を図り,設備投資に対する償却の一助とすることができるとの点は,刊行物1(甲1)に,焼却灰の処理技術をゴミ発電と組み合わせたシステムが記載され,このシステムにおいて,「焼却灰を有料で受け入れ,これを可燃ゴミ中に混入して焼却灰を溶融し,併せて焼却炉で焼却されるボリューム当たりのゴミカロリーを調整し,このゴミカロリーの調整により発電出力を調整して売電を効率的に行うことは,刊行物2記載の技術及び周知の事実に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである」(審決謄本4頁「相違点2について」の項第2段落)以上,刊行物1発明,刊行物2発明及び周知の事実に基づいて,当業者が容易に予測できた効果というべきである。したがって,原告の取消事由4の主張も理由がない。
5 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 早田尚貴