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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16ワ8682損害賠償請求事件 判例 特許
平成18ワ29554特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成4ワ6690特許権侵害行為差止等請求事件 判例 特許
平成14ワ12752特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成15ワ23943特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 発明者 /  製造方法 /  新規性 /  29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  新規性喪失(新規性の喪失) /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  技術的範囲 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  実施料相当額 /  援用権(援用) /  権利の濫用(権利濫用) /  製造承認 /  参酌 /  置き換え /  置換 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  損害額推定(損害額の推定) /  逸失利益 /  販売数量(販売数) /  乗じた額 /  実施能力 /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  対価 /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 / 
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事件 平成 14年 (ワ) 6178号 特許権侵害差止等請求事件
原告 富田製薬株式会社
訴訟代理人弁護士 村林隆一
同 松本司
同 岩坪哲
同 井上裕史
補佐人弁理士 三枝英二
同 斎藤健治
同 藤井淳
被告 ニプロファーマ株式会社(変更前の商号) 菱山製薬株式会社
被告 ニプロ株式会社
被告ら訴訟代理人弁護士 小松陽一郎
同 福田あやこ
同 宇田浩康
同 井崎康孝
同 辻村和彦
同 小野昌延
同 近藤惠嗣
補佐人弁理士 谷良隆
同 志村尚司
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2004/05/27
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1(1) 被告ニプロファーマ株式会社は、別紙被告製品目録記載の物件を製造し、
販売し、貸し渡し、販売又は貸渡しの申出をしてはならない。
(2) 被告ニプロ株式会社は、別紙被告製品目録記載の物件を販売し、貸し渡し、販売又は貸渡しの申出をしてはならない。
2 被告らは、別紙被告製品目録記載の物件のうち同目録2記載の「A−1剤」及びその半製品を廃棄せよ。
3 被告らは、原告に対し、連帯して金11億9689万8500円及び内金2億1697万円に対する平成14年7月3日から、内金9億3992万8500円に対する平成15年9月4日から、内金4000万円に対する同年同月20日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は被告らの負担とする。
6 この判決は、第3項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 主文第1項(1)(2)と同じ。
2 被告らは、別紙被告製品目録記載の物件及びその半製品を廃棄せよ。
3 主文第3項と同じ。
事案の概要
本件は、「重炭酸透析用人工腎臓灌流用剤の製造方法及び人工腎臓灌流用剤」の特許発明につき特許権を有する原告が、別紙被告製品目録記載の物件についての被告ニプロファーマ株式会社の製造販売、被告ニプロ株式会社の販売が同特許権を侵害するとして、被告らに対し、特許権に基づく上記製造販売等行為の差止めと廃棄を請求するとともに、民法709条に基づく損害賠償請求をした事案である。
(争いのない事実等) 1 原告は、次の特許権(以下、「本件特許権」といい、請求項7に係る発明を「本件発明」と、本件特許出願に係る明細書を「本件明細書」という。なお、特許公報(本件公報)を本判決末尾に添付する。)を有している。
(1) 発明の名称 重炭酸透析用人工腎臓灌流用剤の製造方法及び人工腎臓灌流用剤 (2) 特許番号 第2769592号 (3) 出願日 平成4年12月14日(特願平4-353965号) (6) 登録日 平成10年4月17日 (7) 特許請求の範囲 (請求項7)塩化ナトリウム粒子の表面に塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムからなる電解質化合物を含むコーティング層を有し、かつ、複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物からなる顆粒状乃至細粒状の重炭酸透析用人工腎臓灌流用剤。
2 本件発明の構成要件を分説すれば、次のとおりである。
A 塩化ナトリウム粒子の表面に塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムからなる電解質化合物を含むコーティング層を有し、
B かつ、複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物からなる C 顆粒状乃至細粒状の重炭酸透析用人工腎臓灌流用剤 3 被告ニプロファーマ株式会社(以下「被告ニプロファーマ」という。)は、
別紙被告製品目録記載の物件(以下「被告製品」という。ただし、その構成は、後記争点1の限度で当事者間に争いがある。)を製造販売しており、被告ニプロ株式会社(以下「被告ニプロ」という。)は、被告製品を被告ニプロファーマから供給を受けて販売している。
4 被告製品は、後記争点1で争いがある部分を除き、本件発明の構成要件を充足する。
(争点) 1 本件発明の構成要件A、Bの充足性 2 明白な無効理由その1(テルモ公報(乙1)を根拠とする新規性欠如) 3 明白な無効理由その2(特公平4-75017号特許公報(乙4)を根拠とする新規性欠如、又は同特許公報(乙4)及び特開平2-145522号公開特許公報(乙7)を根拠とする進歩性欠如) 4 原告の損害 5 共同不法行為の成否
争点に関する当事者の主張
1 争点1-本件発明の構成要件A、Bの充足性 (原告の主張) (1) 被告製品のA-1剤の構成は、別紙被告製品目録2「構成の説明」(2)記載のとおりであるところ、その構成(a)は本件発明の構成要件Aを、構成(b)は同Bを、それぞれ充足する。
(2) 被告らは、本件発明の構成要件A、Bにいう「コーティング層」及び同Bにいう「からなる」の部分の充足性を争うが、被告らの特許請求の範囲の解釈は当を得ないものである。
本件発明の構成要件A、Bにいう「コーティング層」とは、微量電解質化合物成分を適切に含有する連続して核粒子を被覆する層を有し、その造粒物からなる重炭酸透析用人工腎臓灌流用剤を用時溶解した結果、従来技術の粉剤との比較において組成が均一な灌流液を得ることができるものであれば足り、粒子の一つ一つが完全に(100%)又はほぼ完全に被覆されていることまでは必要ではない。また、本件発明の構成要件Bにいう「からなる」も、同様に複数個の塩化ナトリウム粒子が結合した造粒物のほかに単独の塩化ナトリウム粒子が含まれる場合であってもよい。すなわち、
ア 本件明細書の段落番号【0003】、【0007】、【0011】及び【0027】の記載によれば、重炭酸透析用人工腎臓灌流用剤(いわゆるA剤)について、多数の成分からなる混合物であるため均一な組成の粉剤を得ることが困難であり、そのため、現状では、工場において水溶液とし、10リットル程度のポリエチレン容器に包装して使用場所である病院や透析センターに輸送しているが、水溶液としたA剤は重量及び容積が大きいため輸送コスト及び病院等での保管スペースの点から望ましくないという問題点があったところ、本件発明の目的は、上記問題点を解決し、成分組成が均一な粉状(顆粒状ないし細粒状)のA剤を提供することにある。そして、そのために、本件発明は、塩化ナトリウム粒子の表面に、他の電解質化合物及び必要に応じて使用されるブドウ糖を含むコーティング層を有し、
該コーティング層を介して複数の塩化ナトリウム粒子が結合して造粒物を形成するという製剤形態を提供することにより、「重量、容積とも小さい粉末製剤であり且つその組成が均一であるので、…従来の溶液製剤と同等の品質(電解質化合物含有量の均一性)を保持したままで、輸送コストの低減、病院等での保管スペースの削減が図れる」という効果を奏するものである。すなわち、本件発明は、輸送が容易で保管スペースの削減が図れる粉末製剤でありながら、用時溶液とすれば従来の溶液製剤と同等の電解質化合物含量の均一性を保持できるという効果を発揮するものである。本件発明における「コーティング層を有する造粒物」も、このような効果を発揮するものとして開示されているのであるから、上記効果を奏するものであれば足りる。
医薬品の分野では、コーティングにより期待される効果(例えば苦味のマスキングなど)を得るために、当業者がコーティングの度合いを適宜選択・決定するのが通常であって、「気密性」や「完全に覆われている状態」を要する旨の被告らの主張は、特定の目的に基づきそのようなコーティングの形態を要するもの(例えば「正露丸糖衣」のように薬効成分の匂いや苦味の完全なるマスキングを要するもの)を、あらゆる医薬組成物における「コーティング」に一般化しようとするものであり、誤っている。
イ 本件発明の構成要件Bにいう「複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物からなる」の「からなる」の解釈についても、@本件明細書を通覧しても、被告主張のような限定解釈を施すべき根拠を何ら見い出せないし、A特許用語としての「Aからなる」の意義には「実質的に要素Aによって構成されている」の意味を含むものと解され、B市販製剤1袋中の粒子数(分量2250gの被告製品の場合、数千万粒以上のオーダ)に対し、例え1粒でも単独粒子が存在すれば、本件発明の技術的範囲から外れると解することは、当業者の認識とかけ離れている。
(3) 上記(2)の点を被告製品につき検討すると、T大学工学部総合研究機構(協調工学部門)教授I作成の製剤分析報告書(甲12)によれば、被告製品(1袋中からランダムにサンプリングされた造粒物につき)は、@電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)による断面観察像及び波長分散型X線分光装置(EPMA)による粒子表面の元素組成分析結果から、塩化ナトリウム核粒子の表面に微量電解質成分によるコーティング層が形成されていること、A特に、同元素組成分析により、造粒物表面における核粒子である塩化ナトリウムの存在率はいずれの分析個所においても0%で、塩化ナトリウムの露出・析出も全く認められなかったこと、Bデジタルマイクロスコープ及びX線透視検査装置による観察結果から、複数個粒子が結合する粒子が大半を占め、その存在割合は分析に供された総粒子に対して81〜87%であることが確認されているから、上記構成要件を充足する。仮に製品の移動搬送の過程等で若干のコーティング層の欠損や本来複数個粒子であったものに割れが生じたとしても、被告製品が本件発明の技術的範囲に属するとの結論を左右するものではない。
被告らは、「被告製品は、基本的には特開平11-343230号公開特許公報(乙26)実施例1に基づいて製造されている」旨主張するが(原告はこの主張を有利に援用する。)、この被告製品の製造方法に用いられる「転動攪拌流動層造粒装置」は、日本粉体工業技術協会編「造粒ハンドブック」(甲7)317頁表7・27、同320〜321頁表7・28に示されているように、コーティングに十分適応するものである。
(4) なお、被告らは、本件発明の「コーティング層」が「部分的付着物」を許容する意味とすれば、本件発明は、原告自身の主張によって、新規性喪失(争点2の乙1に基づく刊行物記載)が裏付けられると主張する。しかし、被告製品の造粒物はその略大半が塩化ナトリウム粒子表面に微量電解質成分によるコーティング層を有し、該コーティング層を介して塩化ナトリウム粒子が結合された造粒物であるのに対し、M大学薬学部薬品物理化学教室教授S作成の特開平2-311418号公開特許公報(乙1。以下「テルモ公報」という。)実施例2の追試実験に関する実験報告書(甲8。以下「S実験報告書」といい、この実験を「S実験」という。)によれば、テルモ公報実施例2の再現品は単なる部分的付着物であり、原料粒子の表面にコーティング層が形成されていないものであったから、被告製品が本件発明の技術的範囲に属し、かつ本件発明がテルモ公報記載の発明により新規性が阻却されないことと何ら矛盾するものではない。
また、被告製品の造粒物の性状がテルモ公報実施例2の再現品の性状と有意に異なることは一目瞭然であって(甲12添付資料1のFig.1〜30及び甲9添付Fig.1〜9参照)、同実施例2記載の「流動層造粒機」が使用されているとは考えられない。
(被告らの主張) (1) 本件発明の構成要件A、Bにいう「コーティング層」とは、核となる物質が連続して完全に(100%)又はほぼ完全に覆われている状態を意味するものであり、核となる物質の表面上に部分的に物質が存在しているというだけでは、コーティングとはいえない。また、本件発明の構成要件Bにいう「からなる」については、複数個の塩化ナトリウム粒子が結合した造粒物のほかに単独の塩化ナトリウム粒子が含まれる場合には、「からなる」とはいえない。すなわち、
ア 本件発明は薬剤として用いられるものであるほか、本件明細書の発明の詳細な説明欄において、従来技術の問題点の項の「各電解質化合物の原料としての添加割合と、造粒物の成分組成とが一致しにくく、場合によっては、造粒後に各電解質化合物の組成を補正するため特定の電解質化合物を添加混合する必要がある。」(段落番号【0005】)という記載や、発明が解決しようとする課題の項の「成分組成が均一な粉末状(顆粒状乃至細粒状)のA剤を提供することにある。」という記載(段落番号【0007】)があることからすれば、本件発明では、造粒物の組成成分が各電解質化合物の原料としての添加割合と一致すること(均一性)が不可欠の要件であると考えられる。このような要請に鑑みれば、ロットで生産される製品すべてが均質で、本件発明の構成要件を満たすものでなければならず、単に一部の核粒子がコーティング層を有していたり、造粒物を形成しているだけでは足りないというべきである。したがって、そのような要件を満たさない造粒物が無視し得ない程度に含まれているのであれば、非侵害の結論が導かれるべきである。
イ 岩波書店発行「広辞苑(第5版)」(乙17の2及び3)によれば、「コーティング」とは「錠剤や顆粒剤を気密に包被すること。また、その包被。」をいい、「気密」とは「気体を通さぬこと。気体に対して密閉されていること。」をいうとされ、日刊工業新聞社発行「CD-ROM版マグローヒル科学技術用語大辞典(改訂第3版)」(乙18)によれば、「被覆剤(coating)」とは、「〔材料〕1.表面上に連続した薄い膜を形成する材料の総称.2.上記1項の材料でつくられた薄い膜.」をいうと説明されている。
ウ 次に、構成要件Bにいう「複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物からなる」の「からなる」の意味についてみるに、本件発明の特許請求の範囲の記載の仕方からも明らかなように、原告は「からなる」という言葉と、他の要素を排斥しない「含む」という言葉を意識的に区別して用いている。このことは、「からなる」と「含む」を互いに置き換えても文章の意味が通じるにもかかわらず、あえて両者を使い分けていることからも明らかである。すなわち、複数個の塩化ナトリウム粒子が結合した造粒物のほかに単独の塩化ナトリウム粒子が含まれる場合には、本件発明の構成要件を充足しないのである。
エ S実験報告書(甲8)15頁には「付着物の存在は確認できたが、塩化ナトリウム粒子を層状に被覆したコーティング層と言えるほどの構造は確認できなかった。」との記載があるが、これは、S教授が部分的な付着のみでは「コーティング」とはいえないとの理解に立っていることを示している。
オ 仮に本件発明の構成要件A、Bにいう「コーティング」の意味を、核となる物質を完全に覆うものでなくてもよいと解し、本件発明の構成要件Bにいう「からなる」の意味を単に「含む」と同義であると解するのであれば、本件特許は、出願前公知文献であるテルモ公報実施例2により無効となるから、この無効理由を回避するためには、被告ら主張のように上記構成要件を限定解釈せざるを得ない。
(2) 上記(1)の点を被告製品につき検討すると、株式会社東レリサーチセンター作成の造粒製剤表面のEPMA分析に関する結果報告書(乙20)によれば、被告製品の表面に塩化ナトリウムが認められる割合は約1/3にすぎず、コーティングに欠損があり、ほぼすべての核粒子がかかるコーティング層を有しているわけではないから、本件発明の構成要件A、Bにいう「コーティング」とはいえず、同構成要件を充足しない。また、被告ニプロ作成の実験報告書(乙12)によれば、被告製品すべての塩化ナトリウム粒子が結合しているわけではなく、リンパックは約22%、リンパック3号は約25%が単独で存在しており、すべての塩化ナトリウム粒子がコーティング層を介して結合して造粒されているというわけではないから、本件発明の構成要件Bにいう「からなる」とはいえず、同構成要件を充足しない。
2 争点2-明白な無効理由その1(テルモ公報(乙1)を根拠とする新規性欠如) (被告らの主張) 本件発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物であるテルモ公報に記載された発明と同一であり、本件特許には無効理由(特許法29条1項3号違反)が存することが明らかであるから、その権利行使は権利の濫用であって許されない。すなわち、
(1) テルモ公報には、まず、塩化ナトリウム粒子を流動化させている流動層造粒機内に電解質溶液を噴霧して増量させ、造粒物を得る方法が記載されており、この流動層造粒機は、本来、核粒子表面にコーティング層を形成させるための装置である。したがって、該装置を用いて塩化ナトリウム粒子を流動化させながら上記電解質溶液を噴霧すれば、必然的に塩化ナトリウム粒子表面に電解質のコーティング層が形成され、また、この造粒法の常として核粒子がコーティング層を介して複数個結合した造粒物が得られることは当業者にとって当然のことである。TY大学教授O及び同大学助手TK作成のテルモ公報実施例2の追試実験に関する実験報告書T(乙2。以下「O実験T報告書」といい、この実験を「O実験T」という。)においても、同公報の記載から「塩化ナトリウム粒子の表面に電解質化合物を含むコーティング層を有し、かつ、複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物であることが直ちに理解された。」ことが示されている。
被告製品の製造工程からみても、被告製品は基本的には特開平11-343230号公開特許公報(乙26)実施例1に基づくものである。これは、造粒工程において造粒装置内に転動撹拌装置を備えることによって原料粉末の流動性が更に良好になるとはいえ、原理としてはテルモ公報記載の製造方法と全く同一である。
(2) O実験Tにより得られた造粒物(追試実験その1)は、これを対象としたルーペ観察、顕微鏡写真撮影、電子顕微鏡写真撮影及び粒度分布測定の結果、次のア及びイのとおり、本件発明の造粒物と同一であることが判明した。また、O実験Tにおいて、酢酸混合が行われ、得られた造粒物(追試実験その2)も、ルーペ観察、顕微鏡写真撮影、電子顕微鏡写真撮影、表面分析(EPMA)及び粒度分布測定の結果、上記追試実験その1と同様に、塩化ナトリウム粒子の表面に該電解質化合物を含むコーティング層を有し、かつ、複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合したものであり、本件発明の造粒物と同一であることが判明した。そして、テルモ公報記載の発明の目的は、軽量で運搬及び保存性に優れかつ粉末製造の均一性の維持並びに安定性の良好な粉末透析用製剤を得ることにある(同公報3頁左上欄6行〜11行、6頁左下欄12行〜右下欄13行)から、その効果も本件発明の奏する効果と全く同一である。
ア O実験T報告書添付資料2の写真1及び6で撮影された塩化ナトリウム粒子がいずれも高い透明性を有しているのに対して、写真2〜5及び7で撮影された造粒物は核粒子の表面にコーティング層が形成されているので表面が濁って見え、また、同添付資料11の全体像写真、50倍拡大写真及び250倍拡大写真のいずれからも、複数の塩化ナトリウム粒子が結合している様子が観察された。
イ O実験T報告書添付資料11の表1〜3のSample 1〜5によれば、上記コーティング層から、炭素、酸素、ナトリウム、マグネシウム、塩素、カリウム、カルシウムの各元素がすべて検出され、各造粒物の表面には、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムを含んでなるコーティング層が存在していることが明らかにされた。
(3) O実験Tにおける原料使用量、平均粒径等に関する原告の主張につき反論すれば、STRA-15の製品カタログに記載された処理量は、製造現場における処理量の目安を示しただけのものにすぎず、それ以下では処理できないという数値ではないし、粒径の点も、テルモ公報に記載された原料塩化ナトリウム粒子と電解質の重量比率、目的とする造粒物の粒度分布を見て、当該実験者が対数正規確率紙による方法(乙16)により決定したものであり、何ら不当ではない。また、コーティングには、単核コーティング(1つの核粒子にコーティングが行われるもの)とコーティング凝集(複数の核粒子がコーティング層を通じて凝集しているもの)とがあるが、テルモ公報実施例2で予定されているのはコーティング凝集であるのに対し、コーティングに適しないと原告が指摘する文献の該当部分(甲7)はいずれも単核コーティングを意味するにすぎない。
(4) S実験は、これに用いられた流動層造粒装置が「STREA-60」という、テルモ公報実施例2で用いられた「STREA-15」より4倍程度規模の大きな装置であり、ノズルの種類、ノズル高、噴霧角度は固定式で、計器類もかなり異なるなど、多くの条件において「STREA-15」の場合とは異なる条件で実験がなされたはずであるから、テルモ公報実施例2を正しく再現したものとはいえない。その実際の実験条件を検討しても、流動層造粒装置内を造粒に適した状態(噴霧液滴が流動層を形成している粉粒体に接触し、粉末間に液体架橋を形成させ、それが乾燥されて固化するのに適した状態)に保つために、給気・排気温度、
装置内の湿度、これらに関連しての噴霧速度、噴霧時間等が適切な状態に保たれる必要があるにもかかわらず、S実験では、当業者ならば選択しないような造粒困難な条件が設定されている。
(原告の主張) 被告ら主張の上記無効理由は争う。その理由は次のとおりである。
(1) そもそも流動層造粒法とは、「造粒ハンドブック」(甲7)283頁によれば、粉体層を流動状態に保ち、この流動層に結合剤を含んだ溶液を噴霧して粉体同士をその結合剤によって凝集させる操作であり、流動層造粒法は一般的には噴霧液滴の架橋によって複数の原料粒子を凝集付着させることを目的とする処理であって、粒子表面を噴霧液の成分でコーティングすることを主目的とする処理ではない。そして、「造粒ハンドブック」(甲7)317頁表7・27によれば、流動層造粒法はコーティングに「全く適応しない」か「適応不十分」なものであり、逆に流動層造粒、攪拌造粒、転動造粒などを組み合わせた複合型造粒がコーティングに「十分適応する」ものとされているのであるから、当業者にとって、コーティングを主目的とする別の処理法(流動層に攪拌や転動装置を組み合わせた複合型造粒法)が存在することは明らかであり、仮に流動層造粒においてコーティングを実施しようとするなら、そのための実施条件又は手段を極めて限定的に選択しなければならないことも自明の事項である。
(2) ところが、テルモ公報には、一定の重量比の各種電解質化合物を一定の水に溶解して水溶液とし、「塩化ナトリウム2188.7部を流動層造粒機(富士産業株式会社製STREA-15)内で流動化させ、この流動層中に前記水溶液を噴霧させて増量した。このようにして得られた造粒物を……攪拌混合した」という事項と(同公報5頁右上欄2〜13行)、当該造粒物の粒度分布(同公報5頁右上欄13行〜左下欄2行)が開示されているに止まり、同実施例2で得られた造粒物が塩化ナトリウム粒子の表面にコーティング層を有するものであるという開示は一切存在しない。つまり、テルモ公報には原料粒子となる塩化ナトリウム及び噴霧液に溶解されるその他の電解質化合物の配合比と、これらが流動層造粒機によって造粒され、かつ酢酸と混合されたという事実と、できあがった造粒物の粒度分布が記載されているのみであり、このような開示内容に基づき、テルモ公報に「核粒子の表面にコーティング層を有する粒子」が記載されているとはいえない。まして、原料粒子表面に形成されたコーティング層を介して粒子同士を結合することが流動層造粒機の本来の目的であるなどとする根拠も、その造粒物がこのような構成を備えていたと解すべき根拠も見い出すことはできない。テルモ公報に係る特許出願過程で同特許出願人が特許庁審査官に提出した意見書(甲6)においても、「流動層法は、……均一性に優れたロット毎のバラツキのない、より望ましい組成物を得るための方法である。すなわち、第1の組成物の塩化ナトリウム以外の透析用固体電解質の各成分の粒径の違いで均一性が損なわれることがなくなっている」(7頁)という事項が記載されているにすぎず、同実施例2によって核粒子表面にコーティング層が形成されたなどという記載はない。
(3) O実験T報告書は、その流動層造粒の実施条件のうち原材料塩化ナトリウムの粒度、乾燥吸排気温度、水溶液噴霧用ノズルの形状、噴霧速度に言及しているものの、他の実施条件、例えば噴霧用ノズルの向き、ノズル位置、噴霧圧等が何ら特定されていない点で、その信用性に疑問がある。また、開示された条件をみても、
O実験Tでは、原料粒子の平均粒径が105〜177μmと、造粒本来の目的からみて不適切に大きな粒子を原料に用い、原料の塩化ナトリウム粒子の使用量も規格範囲(15〜25s)を大幅に下回る5sとするなど、少量で大きな粒子を流動化させることにより、粒子同士が接触し難い状況を呈し、粒子間の液体架橋による凝集結合が進行する前に表面が噴霧液で覆われ乾燥し、被覆層を形成しやすくした、
つまり、原料粒子の表面にコーティング層が形成されやすい条件(原料粒子の付着凝集という流動層造粒の本来的機能が発揮され難い条件)を意図的に選択した不適切な実験である。他にも、外観観察による評価や元素組成の測定の点でも、O実験Tは不適切である。
さらに、O実験Tに示された条件は、テルモ公報に記載されたものでもなければ、流動層造粒法において必ず採用されるべき実施条件として当時の技術常識を構築していたものとも認められない。すなわち、流動層造粒機の稼動条件には、温度に関する乾燥吸気温度・同排気温度・昇温条件、噴霧液に関するノズル形状・ノズル位置・噴霧方向・噴霧圧・噴霧液濃度・噴霧時間条件、その他風量等の諸条件があるが、これらの稼動条件は使用者がどのような性状の造粒物を得たいと考えるかにより種々の変更が可能とされている。また、造粒に供される原料粒子(粉体)のサイズや形状いかんで、処理の結果である造粒物の性状が左右されることも自明である。したがって、O実験Tは、いずれもテルモ公報に記載されていない実施条件を特定の実施条件に設定した上で流動層造粒法を実施したものにすぎないから、
そこから得られた造粒物をもって本件発明がテルモ公報に記載された発明と同一ということはできない。
テルモ公報で用いられた流動層造粒機が本来核粒子表面にコーティング層を形成させるための装置である旨の被告らの主張につき反論すれば、被告らの根拠とする同製品カタログ(乙3)ですら、これを「コーティング層を形成させるための装置」等とせず、せいぜい「乾燥機」又は「造粒乾燥機」(スプレー装置を追加した場合)と位置付けるにすぎない。かえって「造粒ハンドブック」295頁(甲7)によれば、回分式で行う製剤等の造粒の技術分野においては、造粒コーティングと単なる造粒(凝集造粒)とが異なる概念として存するところ、造粒コーティングを行うために用いられる装置としては「噴流流動層型」や「噴流層型」の装置が存在するのに対し、テルモ公報実施例2記載の流動層造粒機であるSTREA-15はこれらの装置と基本的構成を異にする「造粒」(凝集造粒)用の装置と位置付けられている。また、流動状態にある粒子に対してコーティングを施すという技術は、底部近傍の側面からスプレーする「サイドスプレー方式」により「顆粒のコーティング」を行うものや、容器底部の中央から上向きにスプレーする「ボトムスプレー方式」により「大粒子のコーティング」を行うという限定的なものであるのに対し、STREA-15は、凝集造粒用として一般に用いられていたトップスプレー方式によるものであって、コーティングには適しないものとされている。日本粉体工業協会編「造粒便覧」(乙9添付資料)254頁の図2・7・5は浸漬状態と称されるものであり、廣川書店発行「医薬品の開発 第11巻 製剤の単位操作と機械」(平成元年11月10日発行、甲14)23頁表2・2によれば、浸漬状態になると、流動層造粒法では造粒できないことが明記されており、このような知見が当業者の当時の技術常識であった。さらに、原料粒子の特性からみても、塩化ナトリウムは典型的な親水性物質であるから、主としてfunicular-1域で造粒が行われることになるにすぎず(「粉体と工業」1974年2月号54頁(甲15))、その結合液の付着状態に照らせば、造粒物表面に連続するコーティング層が形成されるとは考えられない。
(4) テルモ公報実施例2を再現したS実験によれば、これにより得られた造粒物は、塩化ナトリウムの表面を塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムからなる電解質化合物と見られる物の部分的付着が辛うじて確認されるに止まり、塩化ナトリウム粒子表面を被覆したコーティング層といえるほどの構造は確認できないものであったから、本件発明と同一のものであるとはいえない。
3 争点3-明白な無効理由その2(特公平4-75017号特許公報(乙4)を根拠とする新規性欠如、又は同特許公報(乙4)及び特開平2-145522号公開特許公報(乙7)を根拠とする進歩性欠如) (被告らの主張) 本件発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である特公平4-75017号特許公報(乙4、以下「乙4公報」という。)に記載された発明と同一であり、仮にそうでないとしても、同特許公報記載の発明と本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平2-145522号公開特許公報(乙7、以下「乙7公報」という。)に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、本件特許には無効理由(特許法29条1項3号違反又は同条2項違反)が存することが明らかであるから、その権利行使は権利の濫用であって許されない。すなわち、
(1) 乙4公報には、「NaCl、KCl、CaCl2・2H2O、MgCl2・6H2O及びCH 3COONa・(1〜3)H 2Oからなる人工腎臓透析用電解質化合物混合粉体」が記載されており、その成分は本件発明の人工腎臓灌流用剤と同一である。そして、上記公報には「NaClの結晶の核にKCl、CaCl2・2H 2O及びMgCl2・6H 2Oの濃厚溶液が均一に付着した後、これにCH 3COONa・(0〜2)H 2Oの微粉末が水和反応によつて付着して、コーテイング層を形成するものと考えられる。」(同公報3欄29行〜33行)と記載されているのであるから、
この製造方法で得られた造粒物は、塩化ナトリウムの核粒子の表面に塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウムからなるコーティング層を有するものである。
(2) 前記O及びTK作成の乙4公報の実施例1の追試実験に関する実験報告書U(乙5。以下、この実験を「O実験U」という。)によれば、造粒物の顕微鏡写真(乙5の添付資料2)や電子顕微鏡写真(乙5の添付資料11)に照らし、該造粒物はコーティング層を有する核粒子が該コーティング層を介して複数個結合した造粒物であることが判明した。株式会社東レリサーチセンター作成の粉末透析剤の分析に関する結果報告書(乙5の添付資料5)によっても、該コーティング層から、炭素、酸素、ナトリウム、マグネシウム、塩素、カリウム、カルシウムの各元素が検出され、各造粒物の核粒子の表面には、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムを含んでなるコーティング層が存在していることが判明した。
(3) 酢酸透析剤に係るものである乙4公報記載の発明と、重炭酸透析剤である本件発明とは相違するから、本件発明を容易に想到できない旨の原告の主張につき反論すれば、乙4公報の特許請求の範囲の記載上、透析剤を酢酸透析剤に限定しているわけではなく、両者の組成比が異なるとはいえ、透析用剤としては用途を共通にするものであり、酢酸透析剤と重炭酸透析剤とは実質的には同一であるから、原告の上記主張は失当である。
仮に乙4公報の造粒物が酢酸透析用剤であったとしても、乙7公報において、上記成分からなるペースト状の人工腎臓灌流用剤をアセテート透析剤(酢酸透析剤)及びバイカーボネート透析剤(重炭酸透析剤)の第1剤(又はA剤)のどちらにも用いることができる旨が記載されている。この造粒物は、本件明細書の特許請求の範囲に記載された造粒物と全く同じ塩化ナトリウム粒子の表面に電解質化合物からなるコーティング層を有し、かつ、複数の核粒子がコーティング層を介して結合した造粒物であるから、当該造粒物を炭酸水素ナトリウム(B剤)を別添とする重炭酸透析剤のA剤として用いるようなことは、透析剤の製造販売を行う当業者にとっては、本件特許出願前から自明のことであった。
(原告の主張) 被告ら主張の上記無効理由はいずれも争う。
(1) 乙4公報に記載されている発明は、酢酸(アセテート)透析剤、すなわち腎機能不全によって体内に滞留した酸を中性化するために酢酸塩を利用するもので、そのために大量の酢酸塩を配合する必要がある透析剤に関するものである。一方、本件発明の重炭酸(バイカーボネート)透析剤は、体内に滞留した酸を重炭酸で中和するもので、酸を中和するための酢酸塩を必要とせず、酢酸塩の配合量は酢酸透析剤に比して極端に少ないものである。このように、酢酸透析剤と重炭酸透析剤とは酢酸の配合割合が全く異なる別異の組成物であり、乙4公報には重炭酸透析剤に関する記載は一切存在しない。したがって、本件発明が乙4公報に記載された発明と同一であるとはいえない。
(2) また、乙4公報記載の酢酸透析剤の製造方法は、本件発明の重炭酸透析剤の製造方法とは有意に異なる。すなわち、大量の酢酸ナトリウムを配合する酢酸透析剤では、酢酸ナトリウム添加後水和反応により55℃に発熱し(この温度は酢酸ナトリウム三水和物が溶融する温度57〜59℃より低温度である。本件公報第7欄7〜9行参照)、次いで冷却して製造されている。酢酸透析剤では「加熱による乾燥を試みたが、全体が固結して岩石状とな」るため、目的物は得られない(乙4の8欄)。これに対し、酢酸透析剤に比して酢酸ナトリウムの配合量の少ない本件発明の重炭酸透析剤は、酢酸ナトリウム添加後、これが溶融する温度以上の60℃以上に加熱し更に加熱を続けこのまま乾燥して製造されるものである。このように、物の製造方法の観点からみても、酢酸透析剤と重炭酸透析剤(本件発明)は明確に区別されるものである。しかるところ、乙4公報には本件発明の重炭酸透析剤を製造する方法は全く開示されていない。
(3) 乙4公報及び乙7公報を根拠とする進歩性欠如に関する被告らの主張に対する反論は次のとおりである。すなわち、乙4公報の対象とする酢酸透析法と本件発明の対象とする重炭酸透析法とは、同じ人工透析といっても、透析剤の組成(腎機能不全によって体内に滞留した酸を中性化するために前者は酢酸塩を、後者は重炭酸塩を用いる。)や透析の仕組み(前者は人体の代謝機能を利用して徐々に酸塩基平衡を保たせるのに対し、後者は重炭酸塩のHCO 3-イオンを直接的に利用する。)が有意に異なり、両透析法の間には一方の技術を他方に直ちに置換できるような関係は存在しない。また、酢酸透析剤は電解質組成物とグルコースを、重炭酸透析剤は電解質組成物と重炭酸ナトリウムを併用する薬剤である点でも相違する(乙7公報第1表記載の酢酸透析剤の電解質組成物と重炭酸ナトリウムとを併用した場合、過度のアルカローシス〔体液、特に血液の酸塩基平衡がアルカリ側へ傾いた状態〕を生じ、重炭酸透析剤の電解質組成物とグルコースを併用した場合には過度のアシドーシス〔体液の酸塩基平衡が酸側へ傾いた状態〕を生じ、いずれも患者の生命に危険をもたらす。)。つまり、酢酸透析剤と重炭酸透析剤とは、酢酸ナトリウムの配合量の点で相違するのみならず、その作用機序を異にし、ヒトの生理作用に与える影響も大きく異なることから、全く別異の透析剤として長年にわたって使用されてきたものである。
一方、乙7公報は、粉末状透析剤の発明ですらなく、特定組成を有するペースト状の透析剤について異なる成分6を更に添加することで酢酸透析用と重炭酸透析用に使用されることが記載されているにすぎない(同公報3頁左上欄3〜6行)。つまり、乙7公報は、ペースト状透析剤が処方によって透析手法が完全に分離されていることを示した文献であり、基本的な電解質組成物をどちらにも流用できることを示唆した文献ではない。まして、粉末用透析剤である乙4公報記載の剤型を重炭酸透析用に転用できる旨を示唆するものでもない。
したがって、乙7公報は、乙4公報記載の透析用灌流剤の剤型を重炭酸透析用として適用可能か否かにつき、当業者に何らかの示唆を与えるものではなく、
両刊行物に基づき本件発明が容易に想到できたとはいえない。
4 争点4-原告の損害 (原告の主張) (1)ア 被告らが平成13年4月から平成15年8月までの間に本件特許権を侵害して被告製品を製造販売した侵害行為の内容(平均販売単価、販売数、売上金額)は、別紙原告主張損害表1記載のとおりであり(平成14年4月以降薬価が引き下げられているので、これに伴う販売単価の修正を施した。)、被告らの利益率は同表記載のとおり33%であるから、被告らは、同表の「特許法102条2項による損害額」欄記載のとおり、合計11億4689万8500円の利益を得ており、これが原告の被った損害額と推定される。原告は、この損害を主位的に主張する(訴状記載の請求額が2億0697万円、原告の平成15年9月2日付け請求の拡張申立書による請求額が9億3992万8500円であり、それぞれにつき各書面送達日の翌日からの遅延損害金を併せて請求する。) イ 被告らは、被告製品の製造販売に係る被告らの利益はゼロであると主張するが、そのような経済的合理性を欠く不当廉価販売によって特許法102条2項による損害額の推定を免れるようなことは許されるべきでない。同法102条2項に基づき推定される権利者の逸失利益とは、現に権利者が新たな設備投資を要することなく特許発明実施品を製造販売し得る限りにおいて、被告物件1個分の販売によって被告が得た売上金額から当該物件の製造販売のための変動経費を控除した限界利益に、その販売個数を乗じたものとみるべきである。この観点から、被告ら主張の経費のうちで控除が許される経費を検討すると、被告ら主張の経費費目のうち@原料費、A資材費及びBその他の変動費(工場の光熱費、消耗品費等)に限られ、その具体的金額も別紙原告主張経費表の限度に限られるというべきである。
そこで、被告らの開示した数値を前提に、本件において被告ニプロファーマが得た被告製品(リンパック1号、同3号)の利益(限界利益)の額を算定すると、次のとおり、合計14億8728万6286円となる。
平成13年4月〜平成14年3月 2億1327万5153円 平成14年4月〜平成14年5月 1億1841万0463円 平成14年6月〜平成15年3月 7億5028万0650円 平成15年4月〜平成15年8月 4億0532万0020円 原告は、被告ニプロファーマが製造元として本件特許権侵害行為に関わり始める以前は、自ら被告ニプロファーマを通じて被告ニプロに対し重炭酸透析用人工腎臓灌流用剤を供給していた立場にあるから、上記の被告ニプロファーマが得た利益の額をもって原告が逸失利益の損害と推定することが妥当である。
ウ 被告製品は、本件発明の実施品であるA-1剤の存在ゆえに、A-2剤(ブドウ糖)及びB剤(重炭酸ナトリウム)を販売できたのであるから、被告製品の売上に占める本件発明の寄与度は100%である。
エ 原告は、被告ニプロファーマに対しては、予備的に、「ニプロファーマ1号」、「同3号」(被告ニプロ以外に販売した分)の売上に対する限界利益の額である1776万9856円を加算し、上記アの金額の限度で損害賠償を請求する。
(2)ア 原告は、平成13年10月まで、被告ニプロファーマに対し、本件発明の実施品であるA-1剤であって、被告製品のリンパック1号(別紙被告製品目録記載の「リンパック」のこと)、リンパック3号に対応するものをいずれも単価690円で販売していた。これに対し、原告が1セットを販売するのに要した経費の額は、多くても、リンパック1号に対応するものにつき397.86円、同3号に対応するものにつき417.71円を上回らない。特許法102条1項の「単位当たりの利益の額」は、権利者の売上金額から同売上を得るのに要した変動経費のみを控除した限界利益を指すと解すべきであり、原材料費、資材費、製造費(工場の光熱費、動力費、消耗品費等)、販売費(運送費)を合計した額が控除の対象となるにすぎない。仮に更に控除すべきだとしても、工場部門における直接労務費が更に控除されるにすぎない。これらの変動経費の合計額が上記経費である。したがって、原告は、被告らによる本件特許権侵害がなかったならば、原告の本件発明の実施品(A-1剤)のうちリンパック1号に対応するもの1セット当たり292.14円、同3号に対応するもの1セット当たり272.29円の利益を得ることができた。上記単位当たりの利益額を平成13年4月から平成14年3月の間に被告ニプロファーマが販売した被告製品の数量(リンパック1号が59万6313セット、同3号が15万7461セット)を乗じた金額は2億1708万1936円となる。
イ さらに、原告は、被告らによる本件特許権侵害行為がなければ、上記に引き続いて本件発明の実施品を販売することができたところ、平成14年4月以降は薬価改定があったので、薬価の改定(減少)幅を販売単価の減少幅とみなし、リンパック1号に対応するものについては1セット当たり584.71円、同3号に対応するものについては同じく617.48円にて原告のA-1剤を販売することができたとみるのが合理的である。これに対し、原告が1セットを販売するのに要した経費の額は、アで述べたのと同額であり、原告が得ることのできた1セット当たりの利益の額は前者につき186.85円、後者につき199.77円となる。
この単位当たりの利益額に同期間に被告ニプロファーマが販売した被告製品の数量(リンパック1号が182万7486セット、同3号が142万2774セット)を乗した額は合計6億2569万3321円となる。
ウ 以上をまとめると別紙原告主張損害表2記載のとおりであり、原告は、
予備的に、特許法102条1項に基づく損害額合計8億4277万5257円を主張する。
(3) 被告らの主張によれば、別紙原告主張損害表3記載のとおり、平成13年4月から平成15年8月までの間に、被告製品を、被告ニプロファーマは合計39億9287万2806円、被告ニプロは合計34億26002077円を売り上げた。本件発明の実施に対し原告が受けるべき対価の額は、売上の10%が相当である。よって、原告は、更に予備的に、特許法102条3項に基づく損害額(被告ニプロファーマにつき3億9928万7280円、被告ニプロにつき3億4260万0207円)を主張する。
(4) 原告がその委任に係る訴訟代理人弁護士及び補佐人弁理士に支払うことを約した弁護士費用及び弁理士費用は合計5000万円である(訴状記載の請求額が1000万円、原告の平成15年9月4日付け請求拡張申立書の訂正申立書による請求額が4000万円であり、それぞれにつき各書面送達日の翌日からの遅延損害金を併せて請求する。)。
(被告らの主張) (1) 原告主張の別紙原告主張損害表のうち、3の各「販売期間」欄に対応する同被告の「平均販売単価(円/セット)」、「販売数(セット)」、「売上金額(円)」の数値はいずれも認めるが、その余は否認する。
(2) 特許法102条2項が基礎を置く民法709条は、現実に被った損害を賠償させるものであるが、権利者の逸失利益相当損害と観念されるもの自体が本来の必要経費を除外した純利益相当額であることはいうまでもない。したがって、立証軽減のための損害額の推定規定に止まる特許法102条2項によって権利者の損害額と推定される利益額もまた、必要経費を控除した純利益と解すべきである。具体的に控除されるべき経費項目は、各被告につき、次のとおりであり、これらを控除すれば(その具体的数額は、被告らの平成15年11月26日付け準備書面9添付資料5ないし19参照)、被告らは、いずれも平成13年4月以降赤字が続いているから、被告製品の製造販売により被告らの得た利益はない(同資料2参照)。
ア 被告ニプロファーマ 被告ニプロファーマは、A-1剤、A-2剤及びB剤の原料を他社から購入し、A-1剤については造粒工程・混合工程を経て小分け充填包装を行い、同じく小分け包装されたA-2剤、B剤とセット化して製品を完成させ、これを販売している。したがって、以下のものが経費として控除されるべきである。
(ア) 原料費 塩化ナトリウム、ブドウ糖、炭酸水素ナトリウム等原料を他社から購入した費用である。
(イ) 資材費 袋や容器などの包装費用、添付資料等の資材を他社から購入した費用である。
(ウ) 直接労務費 被告ニプロファーマは、リンパック製造専用の工場設備を備えており、製造ラインにおいて、リンパックの製造に直接携わっている社員の労務費を計上している。
(エ) 変動費 リンパック製造のためにかかる経費のうち、水道光熱費(水道、LPGガス、重油代)、動力費(動力費、自家発電重油代)、消耗品費(フィルター類、機械の消耗部品、試験関連費用、環境整備費用、マスク、保護衣、作業靴等)、修繕費(保守点検費用、ライン改造費、修繕費用)を計上している。
(オ) 固定費 保険、税金等である。
(カ) 減価償却費・リース代 リンパック製造専用の工場に配置された設備のリース代又は償却費である。
(キ) 補助管理費 リンパック製造専用の工場に所属する試験課、業務課、施設課、総務課等の労務経費である。
(ク) 販売経費・管理費 いわゆる販管費であっても、被告らが被告製品を製造販売して利益を得るためには、これら経費の支出は避けられないのであるから、当該経費が侵害品の売上げに必要であったと考えられる限り、控除すべき費用として認められるべきである。被告ニプロファーマにおける各期ごとの販売経費・管理費を基準にして、
総売上額に占めるリンパックの売上金額の割合を掛けてリンパックの販売経費・管理費を算出した。
イ 被告ニプロ 被告ニプロは、被告ニプロファーマから、A-1剤、A-2剤及びB剤のセットを仕入れて在庫品を倉庫に保管し、これを第三者に販売して利益を得ている。したがって、以下のものが経費として控除されるべきである。
(ア) 仕入金額 販売用として被告ニプロファーマから仕入れた金額である。
(イ) 製剤見本・溶解試験用仕入金額 被告ニプロが、顧客に対し無償で提供する製剤見本・溶解試験用として、被告ニプロファーマから仕入れた金額である。
(ウ) 物流経費 入出庫・保管に伴う倉庫経費、倉庫間移動に伴う運送経費及び出荷に伴う運送経費である。計算を単純化するため、平成15年6月から8月までの物流経費の平均値(倉庫経費403万円+移動経費150万円+出荷経費830万円)/191,523セット=72.21円/セット)を算出し、これに各月ごとの販売数量乗じた額を各月ごとの物流経費として算出した。
(エ) 人件費 リンパック販売に携わっている担当部署(透析2課、透析商品営業部、物流センター及び支店社員)の人件費である。
(3) 被告製品の売上金額は、A-1剤、A-2剤及びB剤を合わせた合計額であって、本件発明の実施品であるA-1剤の売上はその一部にすぎないから、原告の損害額を算定するに当たっては本件発明の寄与度を考慮する必要がある。A-1剤の寄与度の具体的算定につき、必ずしも一義的な求め方があるわけではないが、
被告ニプロファーマの場合、便宜上、セット化資材費は概ね重量比に比例するものとして、直労費や経費については概ね資材費に比例するものとしてそれぞれ算出するのが合理的である。これによれば、被告製品における本件発明の寄与度は62%〜75.3%である。販売のみを行う被告ニプロの場合は、被告製品全体に占めるA1剤の重量比により算出すれば足りる。これによれば、A-1剤の占める割合は、被告製品のうちリンパックにつき68.10%、リンパック3号につき70.80%であり、平均69.45%である。
原告の損害額は、これらの寄与度を考慮して定められるべきである。
また、原告の損害額に当たっては、被告製品中の塩化ナトリウム粒子のうちでコーティング後に凝集したものの割合も考慮すべきである。
(4) 特許法102条1項に基づく原告の予備的主張は争う。原告と被告ニプロファーマ間の従前の取引経緯に照らすと、被告製品の製造に関する原告の実施能力は1か月当たり6万セットが限界であった。
(5) 特許法102条3項に基づく原告の予備的主張は争う。原告は、被告ら双方に対し特許法102条3項に基づく請求をしているが、被告らはいわゆる川上-川下の関係にあるから、原告が実施料相当額を被告ら双方に対して請求することは二重の利得を求めるものであって、合理性を欠く。
(6) 弁護士費用及び弁理士費用に関する原告の主張は争う。
5 争点5-共同不法行為の成否 (原告の主張) 被告らは、わずかな例外を除き、被告ニプロファーマを製造元とし被告ニプロを販売元として被告製品の製造販売を行っている。このような被告らの製造販売行為は、主観的にも客観的にも共同一体のものとして捉えられ、これが被告らの共同不法行為を構成することは明らかである。
(被告らの主張) 被告らの行為は、時、場所、相手方等を異にする別個独立の行為であり、被告ニプロファーマは自社の製造したA-1剤をすべて被告ニプロに納入しているわけではなく、被告ニプロ以外の取引先にも販売していることからすれば、被告ニプロファーマの行為と被告ニプロの行為を全体的に1個の共同行為と捉えることはできないから、被告らに共同不法行為は成立しない。
争点に関する当裁判所の判断
1 争点1(本件発明の構成要件A、Bの充足性)について (1) 本件発明の構成要件Aは「塩化ナトリウム粒子の表面に塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムからなる電解質化合物を含むコーティング層を有し」というものであり、構成要件Bは、「かつ、複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物からなる」というものであるところ、構成要件A、Bにいう「コーティング層」及び同Bにいう「からなる」の意義につき争いがあるので、本件明細書の発明の詳細な説明欄の記載を検討する。
証拠(甲2)によれば、本件明細書には次の記載があることが認められる(括弧内の数字の記載は本件明細書の発明の詳細な説明欄の該当段落番号を指す。
以下同じ。)。
ア 本件発明を含む本件明細書記載の発明(特許請求の範囲の記載によれば、請求項1ないし10からなり、請求項1ないし6は重炭酸透析用人工腎臓灌流用剤の製造方法に関する発明であり、請求項7ないし10は重炭酸透析用人工腎臓灌流用剤に関する発明である(本件発明は請求項7)。)は、重炭酸透析用人工腎臓灌流用剤及びその製造方法に関するものである(0001)。重炭酸透析用人工腎臓灌流剤(以下「重炭酸透析液」という。)の従来技術として、一般には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムの各電解質と必要に応じて添加されるブドウ糖とからなる通常A剤と称する人工腎臓灌流用剤と、粉末状の重炭酸ナトリウム又はその水溶液からなる通常B剤と称する人工腎臓灌流用剤とを混合した水溶液が使用されている(0002)。
イ B剤については、溶液状のものも粉末状のものも開発されており、適宜選択して使用することができるが、A剤については、多数の成分からなる混合物であるため、均一な組成の粉剤を得ることが困難である。そのため、現状では、工場において水溶液とし、10リットル程度のポリエチレン容器に包装して、使用場所である病院や透析センターに輸送している。しかし、水溶液としたA剤は、重量及び容積が大きいため輸送コスト及び病院等での保管スペースの点から望ましくなく、また、包装に使用するポリエチレン容器の使用後の廃棄物処理の点からも望ましくない(0003)。なお、A剤の粉剤化技術としては、各電解質化合物を混合・粉砕して造粒する乾式造粒法及び各電解質化合物をスラリーとして造粒・乾燥する湿式造粒法が知られているが、これらの物理的な粉砕・造粒方法には、粉砕工程や造粒工程において装置の摩擦によって異物が混入し、電解質化合物を汚染しやすいという問題がある(0004)。また、公知の乾式造粒法により得られる粉剤は、各々の電解質化合物の硬度が異なり、混合・粉砕の際に、それぞれ、粉砕されやすいものとされにくいもの、造粒物になりやすいものとなりにくいものがあるため、造粒物として回収されるものの成分と造粒されずに粉末として残存するものの成分との間に大きなバラツキが生じやすい。すなわち、各電解質化合物の原料としての添加割合と造粒物の成分組成とが一致しにくく、場合によっては、造粒後に、
各電解質化合物の組成を補正するため特定の電解質化合物を添加混合する必要がある。この問題点を解決する方法として、各電解質化合物を微粉末化することによって、造粒物の硬度を上げる方法、すなわち粉末として残存するものの量を低減する方法も知られている。しかし、電解質化合物を微粉末化するためには面倒な操作を必要とするし、粉末として残存するものの量を低減するためには繰り返し造粒する必要があり、粉砕・造粒装置の摩擦などによる異物の混入で電解質化合物が汚染されやすくなるという問題がある(0005)。さらに、湿式造粒法については、乾燥時の固結により塊状物が発生しやすいため、製品とする際の整粒の前に破砕等の操作を必要とする等、製造工程が煩雑であるため大量生産することが難しいという問題がある(0006)。
ウ 上記のような従来技術の問題点を踏まえ、本件明細書記載の発明は、重炭酸透析液(重炭酸透析用人工腎臓灌流剤)に使用する粉末状(顆粒状ないし細粒状)のA剤(人工腎臓灌流用剤)の新たな製造方法を提供すること及び成分組成が均一な粉末状(顆粒状ないし細粒状)のA剤を提供することを解決課題として(0007)、その特許請求の範囲記載の構成を備えることとしたものである。
エ 本件明細書記載の発明によれば、特殊な造粒操作を行うことなく、塩化ナトリウムの結晶表面に微量電解質化合物のコーティング層を形成し、かつ該コーティング層を結合剤として塩化ナトリウム粒子同士を結合させることによって顆粒状又は細粒状の混合粉体(A剤)を得ることができる。また、乾式造粒機、湿式造粒機、コーティング装置を必要とせず、簡易の混合装置のみでコーティング及び造粒が行なえ、しかも均一性に優れた製品を大量かつ安価に生産することができる。
その結果、装置の摩擦等による異物混入の問題も発生しにくい(0026)。さらに、本件発明のA剤は、重量、容積とも小さい粉末製剤であり、かつその組成が均一であるので、本件発明のA剤によれば、従来の溶液製剤と同等の品質(電解質化合物含有量の均一性)を保持したままで、輸送コストの低減、病院等での保管スペースの削減が図れる。さらに簡易な包装材料を使用できるので、ポリエチレン容器等の廃棄物処理問題を解決する手段として、医療機関のみならず社会的にも極めて有用であるという作用効果が得られる(0027)。
(2) 上記(1)によれば、本件発明は、人工腎臓灌流用剤に用いられるA剤の形態として、輸送コスト、保管スペース、容器の廃棄物処理等の問題点を有するもの(溶液状のもの)ではなく、粉末状のものとすることを選択した上で、A剤の粉末化技術として公知の造粒法を採用した場合の異物混入、成分組成のばらつき等の問題点を解決するために、その特許請求の範囲(請求項7)所定の各電解質化合物を必須成分として含有する、均一な組成の「コーティング」を形成し、当該コーティング層を結合材として塩化ナトリウム粒子同士を結合させることにより、その各成分割合がほぼ一定の特定の値となるA剤を得ることができるようにしたものであるということができる。
そうすると、本件発明の構成要件A、Bにいう「コーティング層」とは、
上記の作用効果を奏する程度に、塩化ナトリウム粒子の表面がコーティングされていれば足り(被告らの主張に係る均一性の要請もこの限度で満たされれば足りる。)、完全に(100%)又はほぼ完全に覆われている状態であることまで要するものではなく、同様に、同構成要件Bにいう「からなる」も、上記の作用効果を奏する程度に、複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物が形成されていれば足り、単独の塩化ナトリウム粒子が一切含まれないことまで要するものではないというべきである。
上記認定判断に反する被告らの主張は、本件明細書の記載に基づくものではなく、採用できない。
(3) そこで、上記判断を前提に被告製品についてみると、被告製品を分析対象としたT大学工学部総合研究機構(協調工学部門)教授I作成の製剤分析報告書(甲12)の分析結果によれば、被告製品にはコーティング層の存在(甲12添付資料1のFig.1〜30)が認められ、塩化ナトリウムの複数個粒子が結合した割合は約81〜87%に達する(甲12添付資料3のFig.1〜23)ものとされている。
この点について、被告らは、被告製品におけるコーティング層は約1/3の割合で欠損している、被告製品における塩化ナトリウムの単独粒子は約22〜25%の割合で存在している旨を主張し、確かに、被告ニプロ医薬品研究所K作成の実験報告書(乙12)及び株式会社東レリサーチセンター作成の結果報告書(乙20)にはこれに沿う実験結果の記載もみられる。
しかし、上記各実験結果(乙12、20)は、そのサンプル数(乙12では、1000枚の観察結果中、写真1〜10が提出されたに止まる。乙20でも、
サンプル数は3検体に止まる。)が僅少であり、被告製品の全体的構成を正しく反映したものか疑問がある。仮にこれらの実験結果を前提としても、コーティング層がどの程度の割合で欠損すれば、各成分の組成が不均一となり、本件発明の作用効果を奏しないことになるのかに関しては、何ら具体的な主張立証はない。したがって、被告ら主張の事実をもって直ちに被告製品につき本件発明の構成要件A、Bにいう「コーティング層」、同B「からなる」を充足しないということはできない。
むしろ、被告製品は、いずれも製造承認及び薬価収載を終えて販売が開始され、後記4で判示するとおり、相応の販売実績が存するところ、その添付文書(甲3、
4)記載の用法・用量を遵守しさえすれば、所定の電解質濃度を有する人工腎臓用透析液が得られるものであり、本件明細書記載の従来技術におけるような問題点を有するものでないことが認められる。上記のとおり、被告らの根拠とする上記実験結果(乙12、20)と相反するI教授作成の製剤分析報告書(甲12)の分析結果も存するところであり、この分析結果と対比しても、被告らの根拠とする上記実験結果(乙12、20)は疑問がある。
さらに、被告らは、被告製品は基本的に特開平11-343230号公開特許公報(乙26)実施例1の工程に基づいて製造されていると主張し、原告も同主張を援用しているところ、この被告らの主張に基づいて被告製品の具体的な製造工程から検討しても、同特許公報記載の発明は、塩化ナトリウム粒子の表面にコーティングされた塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムの各電解質化合物の含量が均一であること等の特徴を備えた固形重曹透析用剤の提供を目的とするものであって(同公報段落番号0004)、その実施例1で使用されている造粒装置(転動撹拌流動層造粒装置〔MP-25型、パウレック社製〕)は複合型造粒としてコーティングに十分適応するものであり(甲7の317頁)、実際に同実施例により得られた造粒物は、各成分毎の含量及び含量均一性を十分満たし(同公報段落番号0010)、塩化ナトリウム粒子の表面に被覆された塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムの混合物の被覆層は粒子が均一にコーティングされているものであることが認められる(同公報段落番号0015)。
以上の点を総合すれば、被告製品においては、その各成分割合がほぼ一定の特定の値となるA剤を得ることができるという本件発明の作用効果を奏する程度にコーティング層を有するものであり、塩化ナトリウムの複数個粒子からなるものと認められ、本件発明の構成要件A、B「コーティング層」、同B「からなる」をいずれも充足するというべきである。
(4) 被告らは、S実験報告書(甲8)15頁には「付着物の存在は確認できたが、塩化ナトリウム粒子を層状に被覆したコーティング層と言えるほどの構造は確認できなかった。」との記載があるが、これは、S教授が部分的な付着のみでは「コーティング」とはいえないとの理解に立っていることを示している旨主張する。しかし、その指摘に係るS実験報告書15頁の記載は、同実験報告書を通読すれば、テルモ公報の実施例2の追試実験(S実験)をした結果に基づいて、その分析結果について、部分的な付着物の存在をもってコーティング層とはいえないと述べているものであり、これに対し、被告製品は、上記認定のとおりで、テルモ公報の実施例2の追試実験結果とは顕著に異なるものであるから、S実験報告書の上記記載部分をもって被告らの主張を根拠付けるものと解することはできない。
また、被告らは、仮に本件発明の構成要件A、Bにいう「コーティング」の意味を、核となる物質を完全に覆うものでなくてもよいと解し、本件発明の構成要件Bにいう「からなる」の意味を単に「含む」と同義であると解するのであれば、本件特許は、出願前公知文献であるテルモ公報実施例2により無効となるから、この無効理由を回避するためには、被告ら主張のように上記構成要件を限定解釈せざるを得ないとも主張する。しかし、後記2以下で判示するとおり、本件特許に無効理由は存せず、本件発明の構成要件をことさら限定解釈する必要もないから、この点についての被告らの主張も採用の限りではない。
2 争点2(明白な無効理由その1(テルモ公報(乙1)を根拠とする新規性欠如))について (1) 被告は、テルモ公報実施例2を根拠として本件特許に無効理由が存在することが明らかである旨を主張するので、まず、テルモ公報記載の発明内容を検討する必要がある。
(2) テルモ公報(乙1)記載の発明は、その発明の名称が示すとおり、血液透析用製剤及びその製造方法に関するものであり(産業上の利用分野)、運搬及び保存性に優れ、かつ粉末製造の均一性の維持並びに安定性の良好な粉末状透析用製剤及びその製造方法を提供することを解決課題とするものである(発明が解決しようとする課題)。これらの目的は、透析用固体電解質及び液体酸よりなる粉末状の第1の組成物と、炭酸水素ナトリウム及びブドウ糖よりなる粉末状の第2の組成物との2つの組成物よりなる血液透析用製剤により達成される。また、透析用固体電解質の各成分を混合し粉砕した後、造粒し、このようにして得られる造粒物に液体酸を配合して混合することにより第1の組成物と、炭酸水素ナトリウム及びブドウ糖よりなる粉末状の第2の組成物との2つの組成物よりなる血液透析用製剤の製剤方法によっても達成される(課題を解決するための手段)。第1の組成物で使用される透析用固体電解質としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、
塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム等があり、また液体酸はpH調整剤として使用されるものであって、例えば酢酸、乳酸、塩酸等があるが、好ましくは酢酸である。第1の組成物は、乾式法又は流動層法のいずれかで製造することが好ましい。
このうち、流動層法においては、塩化ナトリウム以外の透析用固体電解質の0.8〜30倍、好ましくは1.5〜15倍の水に溶解させ、得られる水溶液を、塩化ナトリウム粉末を流動層造粒機内で流動化させ、その流動層内に噴霧しながら造粒し、このようにして得られる造粒物に液体酸を配合してバーチカルグラニュレータ、ナウターミキサー等の攪拌混合機で混合することにより得られる(作用)。
テルモ公報実施例2の記載は、次のようなものである。すなわち、塩化カリウム52.2部、塩化カルシウム77.2部、塩化マグネシウム35.6部及び酢酸ナトリウム357.2部を水1500部(電解質の約3倍)に溶解させて水溶液を得た。塩化ナトリウム2188.7部を流動層造粒機(富士産業株式会社製STREA-15)内で流動化させ、この流動層中に前記水溶液を噴霧させて増量した。このようにして得られた造粒物をバーチカルグラニュレータに供給し、更に酢酸41.5部を加えて攪拌混合した。このようにして得られた第1の組成物の粒度分布は、下記のとおりであった。
メッシュ % 〜12 0.07 12〜 32 5.44 32〜 48 6.22 48〜 80 24.51 80〜150 48.64 150〜 15.08 平均粒径 80〜150メッシュ (3) 上記(2)によれば、確かに、テルモ公報には人工腎臓灌流用剤としてのA剤に対応するものとして「第1の組成物」が記載されており、この第1の組成物を構成する電解質化合物は、本件発明と同じである。しかし、その人工腎臓灌流用剤が本件発明のような「塩化ナトリウム粒子の表面に塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムからなる電解質化合物を含むコーティング層を有し、かつ、複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物からなる」構成を備えることについては何ら記載されていない。
被告らは、テルモ公報実施例2で用いられた流動層造粒機が本来核粒子表面にコーティング層を形成させるための装置であるから、該装置を用いて塩化ナトリウム粒子を流動化させながら上記電解質溶液を噴霧すれば、必然的に塩化ナトリウム粒子表面に電解質のコーティング層が形成され、また、この造粒法の常として核粒子がコーティング層を介して複数個結合した造粒物が得られることは当業者にとって当然である旨を主張し、同実施例2を再現したというO実験T及びO実験T報告書(乙2)の記載をその根拠とする。
なるほど、O実験T報告書(乙2)では、テルモ公報の記載から「塩化ナトリウム粒子の表面に塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムからなる電解質物質を含むコーティング層が形成され、かつ、該コーティング層を介して複数個の塩化ナトリウム粒子が結合した造粒物が得られているものと直ちに理解された。なんとなれば、一般に流動層造粒においては、流動層を形成している核粒子の表面に、コーティング物質を溶解した溶液が付着してコーティング層を形成しながら造粒がなされ、また表面が溶液で濡れた状態の核粒子が幾つか結合して造粒物が造られるのが普通であるからである。」(2頁)とされている。
しかし、日本粉体工業協会編、オーム社発行「造粒便覧」(乙9の添付資料)によれば、流動層造粒法とは、粒体を流動状態に保ち、これに結合剤を含んだ溶液を噴霧して凝集造粒させる操作をいい、その具体的装置としては大別して回分式及び連続式がある(日本粉体工業協会編、オーム社発行「造粒ハンドブック」(甲7)295頁〜296頁では、更に半連続式を含めた分類が記載されている。)ところ、テルモ公報実施例2に使用された流動層造粒機(富士産業株式会社製STREA-15)は、その同型機(STRA-15)の製品カタログ(乙3)、「造粒便覧」265頁の図2・7・16、「造粒ハンドブック」297頁の図7・42(甲7)によれば、回分式流動層造粒機に相当する。そして、スプレーノズルとの組合せに着目すれば、流動層内の上部にノズルを配置し、流動層に対向して噴霧するトップスプレー式(「造粒ハンドブック」295頁、「造粒便覧」252頁)に分類されるものである。このトップスプレー式の回分式流動層造粒機は、コーティングを主体とするものではなく凝集を主体とするものであり、その具体的用途も、造粒のみを予定し、コーティングを予定しないもの(「造粒ハンドブック」295頁。なお、上記製品カタログ(乙3)も、STRA-15を乾燥機と位置付け、スプレー装置の追加により造粒乾燥機となる旨を記載するにすぎない。)であるか、小粒子の造粒とともに、顆粒のコーティングを予定する(「造粒便覧」252頁)ものであるとしても、適当とされる材料の具体的粒度は20〜200μm、造粒された製品の粒度分布は100〜1000μmとされ、材料粒子の径の約5倍の造粒物を得ることを予定しているものである(「造粒便覧」266頁によれば、コーティングを主体とするものでさえ、微粒子のコーティングは流動層でも不可能に近いとされ、例外的に小粒子でもコーティングできる場合の一般的な材料粒度が150〜200μmとされる。)。これに対し、テルモ公報実施例2においては、富士産業株式会社製STREA-15の使用により得られた組成物の平均粒径は80〜150メッシュ(104〜180μm)であるから、その原料の平均粒径も更に小さいものであるといえる。そうすると、テルモ公報実施例2における組成物は、コーティングを主体とするものではなく、凝集を主体とする小粒子の造粒により得られたものというべきである。これに対し、被告らは、テルモ公報実施例2で予定されているのは(単核コーティングと対置される)「コーティング凝集」である旨を主張するが、そのような技術概念を裏付ける証拠が提出されていない。のみならず、造粒機構や造粒材料との関係からみても、流動層造粒の造粒機構はバインダー溶液を媒体として粉末を相互に付着凝集させることを主とするものであり(「造粒便覧」253〜254頁(乙9の添付資料))、「親水性材料ではfunicular-1の状態で造粒する場合が多く、粒子が結合剤溶液と相互に溶け合って凝集され造粒する。」ものとされ(「造粒便覧」264頁)、ファニキュラー状態(funicular state)とは、「粒子間の液体が連続して網目状に存在し、その間に気泡が孤立して点在する状態」をいう(椿淳一郎ほか著・日刊工業新聞社発行「入門 粒子・粉体工学」44頁(甲18))から、テルモ公報実施例2では、核粒子とされた親水性材料である塩化ナトリウムが噴霧した電解質溶解の水溶液と相互に溶け合って凝集造粒することを繰り返し、造粒物が得られるものと考えられる。
以上によれば、テルモ公報実施例2で用いられた流動層造粒機(富士産業株式会社製STREA-15)は、本来核粒子表面にコーティング層を形成させるための装置であるとはいえず、該装置を用いたとしても、塩化ナトリウム粒子を流動化させながら上記電解質溶液を噴霧すれば、必然的に塩化ナトリウム粒子表面に電解質のコーティング層が形成されるとはいえず、また、この造粒法の常として核粒子がコーティング層を介して複数個結合した造粒物が得られるともいえない。上記のO実験T報告書の記載は、以上の認定事実に照らして採用できない。
(4) 被告らは、テルモ公報実施例2を追試したO実験Tにおいて、本件発明と同一の造粒物が得られたとも主張する。
しかし、そもそも流動層造粒がコーティング操作には適応不十分なもの、
又は全く適応しないものとされ(甲7の317頁)、テルモ公報実施例2で使用されたトップスプレー式回分式流動層造粒機もコーティング操作に適しない装置であることは既に判示したとおりであるから、コーティング操作に適しない装置を利用したO実験Tにはその前提条件に大きな疑問がある。
また、流動層造粒法を用いた際の粒度分布の変化に着目した場合、原料の径と比較して大径の方向へ大きくシフトするのが通常である(「造粒便覧」255頁)にもかかわらず、O実験T(追試実験その1の第1回、第2回)では、原料である破砕塩化ナトリウムの粒子径のピーク(106〜180μm)と変わらない粒度分布の結果が生じている。このように流動層造粒法における粒度分布の変化に関する知見と反するO実験Tには、通常の流動層造粒法とは異なる条件下で行われたのではないかという疑問を差し挟む余地がある。例えば、STRA-15の製品カタログ(乙3、甲8の添付資料2)によれば、その適正な処理量を15〜25sと規定するにもかかわらず、O実験Tではその原料とする塩化ナトリウム量をその3分の1ないし5分の1である5sとしている(乙2の3頁)ため、流動層中において粒子同士の接触機会が減少し、適切な凝集造粒が進行しなかったのではないかという疑問がある。この点に関し、被告らは、STRA-15の製品カタログに記載された処理量は、製造現場における処理量の目安を示しただけのものにすぎない旨を主張するが、流動層造粒を行おうとする当業者が製品カタログ記載の数値とかけ離れた処理量を選択するとは通常考えられず、他に製品カタログ記載の処理量と大幅に異なる数値を採用した合理的根拠も認められないから、上記主張は採用の限りではない。また、回分式流動造粒装置を用いる場合に、得られた造粒物の5分の1程度の平均粒径を有する材料を選択するのが通常である(「造粒便覧」264〜265頁)にもかかわらず、O実験Tでは、テルモ公報実施例2で得られる造粒物の平均粒径が104〜180μmである(乙1)のに、その原料である塩化ナトリウムにつき平均粒径104μmのものをわざわざ選択しており(乙2の3頁。乙2の6頁でも、原料の塩化ナトリウムの平均粒径のピークが106〜180μmにあると記載されている。)、流動層造粒の本来予定しない条件を採用したため、適切な凝集造粒が進行しなかったのではないかという疑問がある(この点に関する被告らの主張も採用の限りではない。)。
以上のように、O実験Tにはテルモ公報実施例2を正しく再現したというには多くの疑問が残るというべきである。したがって、S実験の当否につき検討するまでもなく、テルモ公報に記載された発明が本件発明と同一であると認めることはできない。
よって、テルモ公報実施例2を根拠とする明白な無効理由に関する被告らの主張は採用することができない。
3 争点3(明白な無効理由その2(乙4公報を根拠とする新規性欠如、又は乙4公報及び乙7公報を根拠とする進歩性欠如))について (1) 被告は、乙4公報記載の発明を根拠として本件特許に無効理由が存在することが明らかである旨を主張するので、まず、上記特許公報記載の発明内容を検討する必要がある。
(2) 乙4公報記載の発明は、その特許請求の範囲は「NaCl、KCl、CaCl2・2H 2O、MgCl 2・6H 2O及びCH 3COONa・(1〜3)H 2Oからなる人工腎臓透析用電解質化合物混合粉体の製造方法において、最終生成物中のCH3COONaの結晶水と後記のCH3COONa・(0〜2)H 2Oの結晶水との差に相当する量の水にKCl、CaCl2・2H 2O及びMgCl 2・6H 2Oを溶解し、得られた溶液とNaClとを撹拌混合し、得られた混合物にCH3COONa・(0〜2)H2O微粉末を徐々に撹拌混合した後、得られたクリーム状混合物を冷却下に撹拌して粉体化させることを特徴とする人工腎臓透析用電解質化合物混合粉体の製造方法。」というもので、人工腎臓透析用電解質化合物混合粉体の製造方法に関するものであり(同公報1欄16行〜17行)、酢酸ナトリウムを主剤とする人工腎臓透析用剤(以下「アセテート透析剤」という。)を粒状化又は粉体化する方法として、乾式造粒法及び湿式造粒法が従来技術として知られていた。しかし、公知の乾式造粒法により得られる粒体においては、電解質化合物の組成のバラツキが大きくなりやすく、また潮解及び固結が生じやすいので、バッチ方式により少量ずつの生産しかできない。一方、湿式造粒法は、化合物の湿式混合、造粒、乾燥及び整粒という多段の工程を必要とするのみならず、乾燥時にpH値が上昇したり、凝集固結する等の欠点があった。したがって、アセテート透析剤の新たな製造方法の実現が切望されていた(同公報1欄19行〜2欄13行)。これを前提として、問題点を解決するための手段の項には「本発明者は、上記の如き現状に鑑みて種々研究を重ねた結果、アセテート透析剤を構成する各電解質化合物を水の存在下に特定の順序で添加混合し且つ特定の段階で冷却を行なう場合には、造粒工程を要することなく、
最終的に得られる混合物が顆粒若しくは細粒の形態を呈することを見出した。」(同公報2欄15行〜21行)ことが記載されている。また、発明の効果の項には「本発明によれば、電解質化合物を特定の順序で混合するとともに特定の段階で冷却を行なうという簡易な操作により、独立した造粒及び乾燥工程を要することなく、顆粒状乃至細粒状のサラサラした均質なアセテート透析剤(「アセテート解析剤」とあるは誤記と認める。)が得られる。本発明方法によれば、簡易な装置により安定した品質の製品を大量生産することが出来る。」ことも記載されている。その実施例1においても、酢酸ナトリウムを主剤とするものが記載されている(同公報4欄22行〜5欄1行)。
(3) 以上の記載に照らせば、乙4公報の特許請求の範囲には同発明をアセテート透析剤に限定する明示的記載は存しないものの、その発明の詳細な説明の記載はすべて同発明がアセテート透析剤に関するものであることを前提としていることは明らかであるから、上記特許公報に記載された発明はアセテート透析剤に関するものであり、「重炭酸透析用」に関するものではないというべきである。
そうであれば、乙4公報記載の発明は、「重炭酸透析用」に関するものである本件発明と同一であるとはいえないから、O実験Uの当否につき判断するまでもなく、上記特許公報を根拠とする明白な無効理由(新規性欠如)に関する被告らの主張は採用することができない。
(4) 次に、被告らは、本件発明が乙4公報記載の発明と相違するとしても、これに乙7公報記載の発明を組み合わせれば、当業者が容易に本件発明をすることができた旨を主張する。
しかし、乙7公報記載の発明は、ペースト状人工腎臓灌流用剤及びその製造方法に関するものであり(特許請求の範囲@は、「電解質化合物NaCl、KCl、CaCl2、MgCl 2 及びCH 3COONaから成る固形分30〜70重量%及び水分20〜70重量%を含有し、粘度が1000〜7000cps(25°C)であるペースト形態をとるペースト状人工腎臓灌流用剤。」というものである。)、現在使用されている人工腎臓透析薬剤には大別してアセテート透析剤とバイカーボネート透析剤の2種類があることを前提として、液剤(原液剤)及び粉末製品という従来の製品形態を採用した場合の問題点(保管運搬上の取り扱い、品質の安定性、製造管理の容易さ等)を踏まえ、その特許請求の範囲所定のペースト形態をとることにより、従来技術の問題点を解決しようとしたものである。すなわち、同発明は、アセテート透析剤又はバイカーボネート透析剤には、それぞれに適した使用時の特定組成があることを依然前提とするものであって(同公報1頁右欄12行〜2頁左欄11行)、「本発明のペースト状灌流用剤において、アセテート透析剤にあってはグルコースを、バイカーボネート透析剤にあっては炭酸水素ナトリウムを別剤として添付し、使用時に調製する。」(同公報3頁左欄3行〜6行)という記載も、使用時にそれぞれに適した別剤を追加することをいうにすぎず、アセテート透析剤及びバイカーボネート透析剤のいずれにも使用できる同一組成のペースト状透析剤を記載するものではない。他にアセテート透析剤と重炭酸透析剤とが相互に転用できることを示唆するような記載も認めるに足りない。
したがって、乙4公報及び乙7公報記載の各発明に基づいて当業者が容易に本件発明をすることができたとはいえないから、上記各公報を根拠とする明白な無効理由(進歩性欠如)に関する被告らの主張は採用することができない。
4 争点4(原告の損害)について (1) 原告は、主位的には、特許法102条2項に基づく損害額を主張するから、まずこれにつき検討する。
ア 被告らの販売金額について この点に関し、原告は、別紙原告主張損害表1のとおり被告製品の平均販売単価、販売数及び売上金額を主張するが、被告らが認める別紙原告主張損害表3記載の数額を超える部分については、これを認めるに足りる証拠はない。したがって、被告らの自認する別紙原告主張損害表3記載の数額をもって、平成13年4月から平成15年8月までの間の被告らによる被告製品の販売単価、販売数及び売上金額と認定すべきである。
そうすると、被告製品の売上金額は次のとおりとなる。
(被告ニプロファーマ) 平成13年4月〜14年3月 7億5997万8693円 平成14年4月〜14年5月 3億0630万1260円 平成14年6月〜15年8月 29億2659万2853円 合計 39億9287万2806円 (被告ニプロ) 平成13年4月〜14年3月 7億1417万8248円 平成14年4月〜14年5月 2億6171万4303円 平成14年6月〜15年8月 24億5010万9521円 合計 34億2600万2077円 しかるところ、被告製品(リンパック1号、同3号)は被告ニプロファーマが製造し、これを被告ニプロに供給し、被告ニプロが販売しているものであるが(当事者間に争いのない事実)、弁論の全趣旨によれば、被告ニプロファーマは、被告ニプロに供給するほかに、被告製品を他にも販売していることが認められる。そして、被告ニプロファーマが被告ニプロに供給している被告製品の製造販売による流通に関しては、被告ニプロファーマがいわゆる川上、被告ニプロが川下の関係にあり、原告は、被告ニプロファーマの得た利益の額をもって原告の損害額と推定すべきであると主張するから、以下では、まず、被告ニプロファーマが被告製品の製造販売(ただし、被告ニプロに供給した製品の関係のみ)によって得た利益の額を認定する。
イ 被告ニプロファーマが被告ニプロに供給した被告製品の売上金額 これについては、弁論の全趣旨によれば、別紙裁判所認定損害表の売上金額欄記載のとおりであると認められる(この金額と上記アで認定した被告ニプロファーマの売上金額との差額が、同被告が被告ニプロ以外に販売した被告製品の売上金額に当たる。)。
ウ 控除すべき経費について 次に、上記売上金額から控除すべき費用について検討する。
特許法102条2項は、特許権を侵害した者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者が受けた損害の額と推定する旨を規定するところ、ここにいう「利益の額」とは、侵害者が当該特許権侵害行為である製品の製造販売によって得た売上額から、製造販売行為に必要であった費用、
すなわち、その製品の製造原価ないし仕入れ価格のほか、梱包、保管、運送等の経費のうち侵害製品の製造のみのために要した部分を控除した額であると解するのが相当である。そして、控除すべき費用は、一般には、当該侵害品の製造販売に伴って比例的に増大するいわゆる変動費をいうが、これに当たらない固定費であっても、侵害製品に直接関連する経費はその侵害製品の製造販売のために必要であったものとして控除の対象となるものというべきである。
これを本件についてみるに、被告らは、多くの経費費目を挙げて被告らの売上額から控除すべきである旨主張するところ、被告製品を製造販売する被告ニプロファーマとの関係では、被告ら主張の被告ニプロファーマ関係の経費費目のうち、別紙原告主張経費表記載の原料費、資材費及び変動費(工場の光熱費、消耗品費等)は、その性質上、被告製品の製造販売に必要な経費であり、原告においても控除すべき費目であることを自認しているから、これを控除すべきである。次に、
被告ら主張の販売経費・管理費については、上記アのような多額の売上げに際し、
相応の費用を要することは否定できないから、これを全部控除すべき対象から除外することは相当ではなく、上記認定の売上額や、弁論の全趣旨から推認される被告ニプロファーマの総売上額に占める被告製品の割合を参酌すると、上記の被告製品の売上金額の5%に相当する販売経費・管理費を被告製品の製造販売に必要な経費であるとみて、控除するのが相当である。これに対し、被告ニプロファーマ主張のその余の費目に関しては、本件の被告製品に限らず、他の医薬品の製造販売を広く行っていると推認される同被告にとって他に利用できないものとはいえないから、
特許法102条2項の「利益」を算定するに当たり控除すべき費目に該当するということはできない。
以上によれば、控除すべき費目の具体的金額は、別紙裁判所認定損害表のとおりである。この点に関し、被告ニプロファーマは更に多額の経費額を主張するが、同被告自身の作成に係る製品原価表(乙29〜34、37、39、41、43、46、48、50、52)の経費額と必ずしも整合しておらず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠も存しないから、原告の自認する別紙原告主張経費表記載の金額の限度で認めるに止めるのが相当である。
そうすると、被告ニプロファーマが被告製品を製造販売(被告ニプロに供給した分のみ)したことにより得た利益額(ただし、後記エの本件発明の寄与度を考慮する前の数値)は、別紙裁判所認定損害表の利益額欄記載のとおりであり、
その合計額は13億0398万5861円となる。
エ 被告製品における本件発明の寄与度について 被告製品は別紙被告製品目録記載のとおり、A-1剤(本件発明の実施品)、A-2剤及びB剤から構成されるものであるところ、被告らは、その被告製品に占めるA-1剤の重量比に応じた寄与度(被告ニプロファーマにつき62〜75.3%、被告ニプロにつき平均69.45%)があるにすぎない旨を主張し、原告はこれを100%と主張する。
そこで、検討するに、本件発明は、争点1で判示したとおり、特殊な造粒操作を行うことなく、塩化ナトリウムの結晶表面に微量電解質化合物のコーティング層を形成し、かつ該コーティング層を結合剤として塩化ナトリウム粒子同士を結合させることにより顆粒状又は細粒状の混合粉体(A剤)が得られること、乾式造粒機、湿式造粒機、コーティング装置を必要とせず、簡易の混合装置のみでコーティング及び造粒が行なえ、しかも均一性に優れた製品を大量かつ安価に生産できること、その結果、装置の摩擦等による異物混入の問題も発生しにくいこと、本件発明のA剤は、重量、容積とも小さい粉末製剤であり、かつその組成が均一であるので、本件発明のA剤によれば、従来の溶液製剤と同等の品質(電解質化合物含有量の均一性)を保持したままで、輸送コストの低減、病院等での保管スペースの削減が図れること、簡易な包装材料を使用できるので、ポリエチレン容器等の廃棄物処理問題を解決する手段として、医療機関のみならず社会的にも極めて有用であることという作用効果が得られるものであり、非常に価値の高い発明ということができる。これに対し、被告製品を構成する他の製剤成分はブドウ糖(A-2剤)や炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム、B剤)といった極めてありふれたものであり、何ら新規な物質ではない。
そして、被告製品の実際の単価内訳を検討しても、例えば、被告ニプロファーマの平成13年度原価表(乙29)によれば、リンパック(自社A-1剤)の原料費の単位単価欄にはブドウ糖60.69円、炭酸水素ナトリウム75.78円と記載されているのに対し、A-1剤は820.50円と、他の製剤に比し極めて高額な単価が設定されている。また、リンパック3号(自社A-1剤)についても、被告ニプロファーマの平成13年度原価表(乙33)によれば、ブドウ糖60.69円、炭酸水素ナトリウム67.57円と記載されているのに対し、A-1剤876.90円と、上記と同様に極めて高額な単価が設定されている(乙31、
36、38、40、42、45、47、49、51にも、単価内訳につき同様の記載がみられる。)。
以上のような点を総合すれば、被告製品における本件発明の寄与度は90%とするのが相当である。
なお、被告らは、損害額の算定に当たり、被告製品中の塩化ナトリウム粒子のうちでコーティング後に凝集したものの割合も考慮すべきである旨を主張するが、争点1で判示したとおり、被告製品は本件発明の構成要件をすべて充足するものであるから、上記主張は採用の限りではない。
オ まとめ 以上によれば、被告ニプロファーマが被告製品を製造販売(被告ニプロに供給した分のみ)したことにより得た利益の額は、11億7358万7274円(円未満切捨て)となり、この金額が、少なくとも、特許法102条2項に基づき原告が受けた損害の額と推定される。
原告は、特許法102条2項に基づく損害として11億4689万8500円を請求しているから、この範囲で原告の請求を認めるべきである(なお、附帯請求の関係でいうと、原告は訴状では平成14年5月までの損害として2億0697万円を請求しているが、上記認定によれば、平成13年4月から平成14年5月までの期間の損害額はこの請求額を超える額になるから、附帯請求についても、
原告の請求のとおり認められる。)。
(2) 原告は、予備的に、被告ニプロファーマに対し、被告ニプロ以外に販売した分についても加算して損害賠償を求めるほか、被告らに対し、特許法102条1項に基づく損害額及び同条3項に基づく損害額も主張しているが、既に、主位的な主張において請求額全額が認められる(後記のとおり、被告ニプロについても共同不法行為の成立が認められる。)から、その余の主張について判断する必要をみない。
(3) 弁護士費用について 本件事案の難易、請求額、認容額、訴訟の経過その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すると、弁護士費用としては、原告の主張金額である5000万円をもって相当と認める。
(4) 以上によれば、原告の損害合計は、11億9689万8500となる。
5 争点5(共同不法行為の成否)について 原告は、被告ニプロファーマの製造販売に係る被告製品全部につき、被告ニプロとの共同不法行為の成立を主張し、被告らはこれを全面的に否定する。
そこで検討するに、上記4で判示したとおり、被告ニプロは、その販売に係る被告製品をすべて被告ニプロファーマから購入しているが、被告ニプロファーマは、その製造に係る被告製品の一部を被告ニプロ以外の第三者にも販売している。
しかし、上記4で認定した事実関係から分かるように、被告ニプロファーマが製造している被告製品の大部分は被告ニプロに供給され、被告ニプロから販売されているのであり、少なくとも、被告ニプロに供給された被告製品に関する限りでは、両者は関連会社として一体的な関係にあるものというべきであり、客観的な関連共同性が存在することを肯定できる。したがって、上記4で認定した損害の全額について、被告らの共同不法行為が成立する。
6 結論 以上によれば、原告の本件特許権に基づく差止請求及び損害賠償請求は理由がある。ただし、原告は、被告製品全体(及びその半製品)の廃棄を求めているが、本件発明の技術的範囲に属する製剤は、被告製品のうちのA-1剤のみであり、これとA-2剤(成分はブドウ糖)及びB剤(成分は炭酸水素ナトリウム)が組み合わされたものが人工腎臓用透析粉末製剤である被告製品であり、この被告製品が一体のものとして製造され販売されているのであるから、被告製品全体の製造、販売を差し止める必要性は肯定できるが、廃棄については、それ自体直接には本件発明とは無関係であり他用途にも流用できると考えられるA-2剤及びB剤の廃棄までは必要がなく、A-1剤及びその半製品のみで足りるものというべきである。訴訟費用の負担につき民訴法64条ただし書を適用し、主文第1、2項について仮執行宣言を付するのは相当でないので、付さないことにする。
よって、主文のとおり判決する。
追加
被告製品目録1名称人工腎臓用透析液粉末製剤「リンパック」(A液9L用及び27L用)並びに同「リンパック3号」2構成の説明(1)以下の製剤の組合せからなる。
A-1剤成分は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、無水酢酸ナトリウム、氷酢酸(pH調整剤)。
A-2剤成分は、ブドウ糖。
B剤成分は、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)。
(2)A-1剤は、以下の構成を有している。
(a)核粒子は塩化ナトリウムからなり、その表面には、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム及び酢酸からなる電解質化合物を含むコーティング層を有する。
(b)複数個の塩化ナトリウム粒子が、上記コーティング層を介して結合して造粒されている。
(c)顆粒状ないし細粒状の粉末製剤である。
3用法の説明A-1剤とA-2剤とを希釈水で溶かしてA液を製し、B剤を希釈水で溶かしてB液を製し、これらを更に希釈水で希釈、調整し、重炭酸型透析液供給装置を用いて血液透析を行う場合の灌流液として使用する。
以上原告主張損害表1販売期間平均販売単価(円/セット)販売数(セット)売上金額(円)被告らの利益率特許法102条2項による損害額平成13年4月〜平成14年3月1,124580,000651,920,0000.33215,133,600平成14年4月〜平成14年5月977250,000244,250,0000.3380,602,500平成14年6月〜平成15年8月9772,640,0002,579,280,0000.33851,162,400小計3,475,450,000合計1,146,898,5002(リンパック)販売期間販売数(セット)原告の平均販売単価(円/セット)控除すべき経費(円/セット)原告の利益(円/セット)特許法102条1項による損害額(円)平成13年4月〜平成14年3月596,313690397.86292.14174,206,880平成14年4月〜平成15年8月1,827,486584.71397.86186.85341,465,759小計515,672,639(リンパック3号)販売期間販売数(セット)原告の平均販売単価(円/セット)控除すべき経費(円/セット)原告の利益(円/セット)特許法102条1項による損害額(円)平成13年4月〜平成14年3月157,461690417.71272.2942,875,056平成14年4月〜平成15年8月1,422,774617.48417.71199.77284,227,562小計327,102,618842,775,257リンパック及びリンパック3号の合計3販売期間同被告の平均販売単価(円/セット)販売数(セット)売上金額(円)実施料率特許法102条3項による損害額(円)平成13年4月〜平成14年3月1,006.20755,295759,978,6930.1075,997,869平成14年4月〜平成14年5月1,004.55304,914306,301,2600.1030,630,126平成14年6月〜平成15年8月990.452,954,8052,926,592,8530.10292,659,285小計3,992,872,806小計399,287,280販売期間同被告の平均販売単価(円/セット)販売数(セット)売上金額(円)実施料率特許法102条3項による損害額(円)平成13年4月〜平成14年3月1,169.51610,662714,178,2480.1071,417,825平成14年4月〜平成14年5月1,074.20243,636261,714,3080.1026,171,431平成14年6月〜平成15年8月988.972,477,4422,450,109,5210.10245,010,952小計3,426,002,077小計342,600,207(被告ニプロファーマ)(被告ニプロ)(注)いずれも「セット」とは、別紙被告製品目録2(1)記載のA-1剤、A-2剤及びB剤を1袋ずつ組み合わせたものをいう。
原告主張経費表原料費資材費変動費平成13年4月〜平成14年3月(円/セット)456.72134.88119.39上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)270,105,12179,768,30170,607,485平成14年4月〜平成14年5月(円/セット)436.4279.1280.55上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)75,387,19113,667,18813,914,207平成14年6月〜平成15年3月(円/セット)436.4279.1280.55上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)490,151,59488,861,17590,467,235平成15年4月〜平成15年8月(円/セット)405.7593.2160.23上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)206,112,07447,348,62930,595,515原料費資材費変動費平成13年4月〜平成14年3月(円/セット)479.26134.88129.72上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)75,464,75921,238,34020,425,841平成14年4月〜平成14年5月(円/セット)457.7479.1280.55上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)58,192,94410,058,60510,240,402平成14年6月〜平成15年3月(円/セット)457.7479.1280.55上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)385,495,81166,632,64967,836,955平成15年4月〜平成15年8月(円/セット)424.3693.2160.23上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)192,381,48442,256,28827,304,969原料費資材費変動費平成13年4月〜平成14年3月(円/セット)456.72214.98119.39上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)2,242,9521,055,766586,324平成14年4月〜平成14年5月(円/セット)436.41125.8680.55上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)1,258,170362,854232,226平成14年6月〜平成15年3月(円/セット)436.41125.8680.55上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)5,954,3781,717,2341,099,024平成15年4月〜平成15年8月(円/セット)405.69123.9660.26上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)2,889,324882,843429,172原料費資材費変動費平成13年4月〜平成14年3月(円/セット)000上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)000平成14年4月〜平成14年5月(円/セット)000上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)000平成14年6月〜平成15年3月(円/セット)457.7482.2780.56上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)41,1977,4047,250平成15年4月〜平成15年8月(円/セット)426.8179.9459.56上記期間に対応する販売数を乗じた金額(円)15,3652,8782,144リンパック3号自社販売分リンパック1号自社販売分リンパック3号リンパック1号裁判所認定損害表販売期間売上金額(円)原料費(円)資材費(円)変動費(円)販売経費・管理費(円)利益額(円)平成13年4月〜平成14年3月752,897,031345,569,880101,006,64191,033,32637,644,851177,642,333平成14年4月〜平成14年5月302,726,340133,580,13523,725,79324,154,60915,136,317106,129,486平成14年6月〜平成15年8月2,900,693,0731,274,140,963245,098,741216,204,674145,034,6531,020,214,042合計3,956,316,4441,753,290,978369,831,175331,392,609197,815,8211,303,985,861
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 守山修生
裁判官 田中秀幸
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