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審判番号(事件番号) データベース 権利
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事件 平成 21年 (ワ) 1201号 特許権侵害差止等請求事件
福井県福井市<以下略>
原告株 式会社コバード
同訴訟代理人弁護士竹田稔
同 木村耕太郎
同 補佐人弁理 士根本恵司
同 川崎好昭 栃木県宇都宮市<以下略>
被告レ オン自動機株式会社
同訴訟代理人弁護士清永利亮
同訴訟復代理人弁護士宮寺利幸
同 補佐人弁理 士櫻井義宏
同 豊岡静男
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2010/11/25
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,別紙1-1ないし3の被告装置目録1ないし3記載の装置(以下,別紙1-1被告装置目録1記載の装置を「被告装置1 ,別紙1-2被告装置 」目録2記載の装置を「被告装置2 ,別紙1-3被告装置目録3記載の装置を 」「被告装置3」という。また,これらを総称して「被告装置」ということがある )を製造し,販売し,販売の申出をし又は輸出してはならない。 。
2被告は,被告の保管にかかる被告装置を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,3600万円及びこれに対する平成22年2月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,パン生地,饅頭生地等の外皮材によって,餡,調理した肉・野菜等の内材を確実に包み込み成形することができる,食品の包み込み成形方法及びこれに用いる食品の包み込み成形装置についての特許権を有する原告が,被告による被告装置の製造,販売等の行為は上記成形装置の特許権を侵害するものである,又は,特許法101条4号により上記成形方法の特許権を侵害するものとみなされる,と主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づく被告装置の製造,販売等の差止め,同条2項に基づく被告装置の廃棄並びに不法行為に基づく損害賠償として3600万円及びこれに対する平成22年2月17日(訴え変更申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1争いのない事実等(末尾に証拠を掲げていない事実は,当事者間に争いがない事実である )。
( )当事者1原告は,菓子,パン等の食品製造加工機器,総合厨房設備,調理用機器の製作及び販売等を業とする株式会社である。
被告は,食品機械器具,電子機械器具,情報処理機器,測定機械器具,化学物理機械器具及びこれらのソフトウェアの製造,販売,輸出入等を業とする株式会社である。
( )原告の有する特許権2ア原告は,次の特許権(以下,後記特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明1請求項2の発明を本件発明2といい両発明を併せて本 」,「」,「件発明」という。また,本件発明1に係る特許を「本件特許1 ,同特許」「」, 「」, に係る特許権を 本件特許権1本件発明2に係る特許を 本件特許2同特許に係る特許権を「本件特許権2」という。これらの特許ないし特許権を併せて本件特許ないし本件特許権本件特許に係る明細書別 「」「」,(紙特許公報参照)を「本件明細書」という )を有している。。
特 許 番 号第4210779号発明の名称食品の包み込み成形方法及びその装置出願日平成20年8月6日原 出 願 日平成13年8月17日登録日平成20年11月7日特許請求の範囲【請求項1】別表1「特許請求の範囲構成要件の分説」の「請求項1 「特許」請求の範囲」欄記載のとおり【請求項2】別表1の「請求項2 「特許請求の範囲」欄記載のとおり 」イ本件発明1及び2を構成要件に分説すると,それぞれ,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件1A」などという )。
【本件発明1】別表1の「請求項1 「構成要件の分説」欄記載のとおり 」【本件発明2】別表1の「請求項2 「構成要件の分説」欄記載のとおり 」( )被告装置の販売等3被告は,被告装置1について,販売の申出及び輸出の申出をしている。
また,被告は,被告装置2及び被告装置3を製造し,被告装置2を中部フーズ株式会社(以下「中部フーズ」という )に販売し,被告装置3を山崎 。
製パン株式会社(以下「山崎製パン」という )に販売した。。
( )当事者間に争いのない被告装置の構成 4被告装置の構成について,当事者間に争いのない部分は,別紙1-1ないし3の被告装置目録1ないし3に記載のとおりである(なお,同目録に記載されていない被告装置の構成については,後記のとおり当事者間に争いがある部分が存在する。。)2争点( )被告装置を製造,販売等する行為は,特許法101条4号により本件特1許権1を侵害するものとみなされるか(間接侵害の成否 (争点1))( )被告装置は,本件発明2の構成要件を充足するか(争点2)2( )本件発明は,進歩性を欠くか(争点3) 3( )原告の損害(争点4)43争点に関する当事者の主張( )争点1(間接侵害の成否)について1[原告の主張]ア被告装置の構成被告装置1ないし3の構成は,それぞれ,別紙2-1ないし3の被告装置目録(原告主張)1ないし3(以下「被告装置目録(原告主張)1」などという )記載のとおりである。 。
また,被告装置1ないし3を用いた食品の包み込み成形方法(以下,被告装置1を用いた方法を「被告方法1 ,被告装置2を用いた方法を「被 」告方法2 ,被告装置3を用いた方法を「被告方法3」という。また,こ 」れらを総称して「被告方法」ということがある )を本件発明1の構成要 。
件に対応させて分説すると,それぞれ,別表2「原告主張の被告装置・被告方法」の「本件発明1」欄に記載のとおりである(以下,分説した構成をそれぞれ「構成1a」などという。。)イ被告方法1,3が本件発明1の構成要件を充足すること別表2記載のとおり,被告方法1を本件発明1の構成要件に対応させて分説したもの(構成1aないし1h)は,被告方法3を本件発明1の構成要件に対応させて分説したものと同じである。
被告方法1,3は,以下の(ア)ないし(ウ)のとおり,いずれも,本件発明1の構成要件を充足する。
したがって,本件発明1に係る方法の使用のみ用いるものである被告装置1,3を製造し,販売し,販売の申出をし又は輸出をする行為は,特許法101条4号により,本件特許権1を侵害するものとみなされる。
(ア)構成要件1A及び1Bについて構成1aにおける「載置部材7「6枚のシャッタ片8「シャッ 」,」,タ」及び「生地F」は,それぞれ,構成要件1Aの「受け部材「複」,数のシャッタ片「シャッタ」及び「外皮材」に相当する。また,構 」,成1bにおける「生地Fが載置部材7の開口部7Aを覆い尽くすほぼ同心となる所定位置」は,構成要件1Bの「所定位置」に相当する。
したがって,被告方法1,3は,構成要件1A及び1Bを充足する。
(イ)構成要件1C及び1Dについて構成1cにおける「ノズル部材4」及び「生地押え部材5」は,それぞれ,構成要件1Cの「押し込み部材」及び「押え部材」に相当する。
また,構成1dにおける「開口部7A」及び「支持コンベヤ10」は,それぞれ,構成要件1Dの「開口部」及び「支持部材」に相当する。
したがって,被告方法1,3は,構成要件1C及び1Dを充足する。
(ウ)構成要件1Eないし1Hについて構成1eにおける「内材G」は,構成要件1Eの「内材」に相当し,構成1gにおける「成形品H」及び「支持コンベヤ10および下部コンベヤ11により・・・搬送すること は それぞれ 構成要件1Gの 成 」 ,,「形品」及び「搬送すること」に相当する。したがって,被告方法1,3は,構成要件1E及び1Gを充足する。
また,構成1fと構成要件1F及び構成1hと構成要件1Hは,それぞれ同一であるから,被告方法1,3は,構成要件1F及び1Hを充足する。
ウ被告方法2が本件発明1の特許請求の範囲に記載された構成と均等であること(ア)被告方法2を本件発明1の構成要件に対応させて分説したもの(構成1a’ないし1h )と被告方法1の構成1aないし1hとは,構成 ’1cと1c’及び構成1dと1d’の各一部が異なる(相違点については,別表2の「被告装置2・被告方法2 「本件発明1」欄の下線部分 」。),, , を参照ほかは 同一の構成であるから 本件発明1の構成要件1A1B及び1Eないし1Hを充足する。
(イ)構成要件1C及び1Dについて被告方法2における構成1c’及び1d’は,構成要件1Cが「押し込み部材とともに押え部材を下降させて」とし,構成要件1Dが「押し込み部材をさらに下降させることにより(受け部材の開口部に進入させて 」としているのに対し 「シャッタ片8とともに載置部材7を上昇 ),させることにより,ノズル部材4及び生地押え部材5に接近させて」いる点(構成1c )及び「シャッタ片8とともに載置部材7を上昇させ ’てノズル部材4を 載置部材7の開口部7Aに進入させている点 構 ( )」(成1d,すなわち,ノズル部材4及び生地押え部材5が昇降動作を ’)行うのではなく,シャッタ片8及び載置部材7を上昇させることによってノズル部材4及び生地押え部材5に接近させている点において,構成要件1C及び1Dと相違する(かかる相違点を,以下「本件相違構成部分」という。。)しかしながら,特許請求の範囲に記載された構成中に他人が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という )と異なる部分。
が存在する場合であっても,?上記部分が特許発明の本質的部分ではなく(以下「第1要件」という,?上記部分を対象製品等におけるも 。)のと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって(以下「第2要件」という,?上記のよう。)に置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(以下「第3要件」という,。)?対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく(以下「第4要件」という,かつ,?対象製品等が特許発明の特許出願手続に 。)おいて特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(以下「第5要件」という )は,対象製品等は,特 。
請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明技術的範囲に属するものと解される。
本件相違構成部分を含む被告方法2は,次のとおり,本件発明1の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものである。
a第1要件について本件発明1は,受け部材の上方に配置された複数のシャッタ片からなるシャッタに 「外皮材が所定位置に収まるように位置調整 (構成 , 」要件1B)することと 「外皮材の周縁部を内材を包むように集めて ,封着 (構成要件1F)することの相異なる2つの機能を持たせるこ 」とで,装置構成の簡素化を図ることができ,しかも,外皮材の位置調整から成形品の搬送までの一連の工程を,受け部材の周辺スペースの, , 1か所で行うことができるため 生産効率を高めることができる点に本質的特徴がある。
したがって,構成要件1C及び1Dのうち,押し込み部材及び押え部材が昇降動作を行うとの部分(以下「置換された構成」という )。
は,本件発明1の本質的部分ではない。
b第2要件について構成要件1C及び1Dは,要するに 「押え部材」に相当する生地 ,押え部材5が 「外皮材」に相当する生地Fを 「受け部材」に相当す , ,る載置部材7上に保持することができ 「押し込み部材」に相当する ,ノズル部材4が,載置部材7の開口部に,内材を供給する目的を達するのに十分な深さに進入すればよいとするものである。
そうすると,置換された構成を本件相違構成部分に置き換えたとしても,同一の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものといえる。
c第3要件について被告方法2において,置換された構成を本件相違構成部分に置き換えることは,ノズル部材4及び生地押え部材5を載置部材7上の生地Fに接近させるための動作に関して,単に,上方の部材を下降させるか,下方の部材を上昇させるかの違いにすぎない。
したがって,本件相違構成部分のような構成に想到することは,当業者にとって容易である。
d第4要件について被告方法2が本件特許の出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから容易に推考することができたものであるという事実はない。
e第5要件について被告方法2が本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたなどの特段の事情はない。
f小括以上のとおり,被告方法2は,第1要件ないし第5要件をすべて満たす。
(ウ)以上によれば,被告方法2は本件発明1の特許請求の範囲に記載された構成と均等である。
,,,,, エよって 原告は 本件特許権1に基づき 被告に対し 被告装置の製造販売,販売の申出及び輸出についての差止め(特許法100条1項)並びに侵害の行為を組成した物である被告装置の廃棄(同法100条2項)を求める。なお,被告は,被告装置をいまだ輸出はしていないものの,原告との間で台湾に向けた輸出の受注競争を行っており,輸出を差し止めなけ。,, れば今後被告装置を輸出するおそれがある したがって 輸出についても侵害の予防として差止めを認める必要性がある。
[被告の主張]ア被告装置の構成被告装置1ないし3の構成は,それぞれ,別紙3-1ないし3の被告装置目録(被告主張)1ないし3(以下「被告装置目録(被告主張)1」などという )に記載のとおりである。 。
, () また 被告装置1ないし3を用いた食品の包み込み成形方法 被告方法を本件発明1の構成要件に対応させて分説すると,それぞれ,別表3「被告主張の被告装置・被告方法」の「本件発明1」欄に記載のとおりである(以下,分説した構成をそれぞれ「構成1(a)」などという。。)イ被告方法1ないし3は本件発明1の構成要件を充足しないこと(ア)構成要件1Aについて【被告方法1について】被告方法1が構成要件1Aを充足することは認める。
【被告方法2,3について】本件発明1の方法は 「受け部材の上方に配設した複数のシャッタ片 ,からなるシャッタを開口させた状態で受け部材上にシート状の外皮材を供給し (構成要件1A ,次いで 「シャッタ片を閉じる方向に動作さ 」),せてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整し (構成要件1B)ているものであり 「受け部材の上方に」とは, 」 ,,, 受け部材とシャッタとの間に空間や介在する部材がないこと すなわち受け部材の上に直接複数のシャッタ片からなるシャッタが配設されていることを意味する(本件明細書の図40を参照。。)これに対し,被告方法2,3では,シャッタ片8は,載置部材7の上方に「離間した位置」で開いた状態に配置され,上部コンベヤ6の先端を上流側に戻すことにより生地Fを落下させ,開口部7Aを覆うように載置部材7上に移載し,次いで,載置部材7を上昇させ,シャッタ片8の下面に接した状態で停止させている(被告装置目録(被告主張)2及び3の第2図,第4図及び第5図を参照。。)したがって,被告方法2,3では,シャッタ片8は載置部材7の「上方に」配置されているものではなく,構成要件1Aを充足しない。
(イ)構成要件1Bについて構成要件1Bでは 「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口 ,面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整し」ており,上記「位置調整」とは,受け部材の平面上の位置調整(二次元的位置調整)を意味する。
これに対し,被告方法1ないし3の構成1(b),1(b)’及び1(b)”では 「シャッタ片8を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小 ,し,シャッタ片8で生地Fの周縁部を押圧することにより」までは,載置部材7の二次元的位置調整であるものの 「かつ生地Fの中央部の自 ,重により同中央部を載置部材7の開口部7Aから少し下方に窪ませ,開口部7Aを覆い尽くすほぼ同心となる所定位置に収まるように位置調整」し(構成1(b),1(b) ,1(b)「生地Fに生じた窪みを支 ’”),持コンベヤ10で支持し (構成1(b),1(b) )ているのは,上下 」’方向の位置調整(三次元的位置調整)というべきものである。
したがって,被告方法1ないし3は,構成要件1Bと異なる方法で位置調整を行っており,同構成要件を充足しない。
(ウ)構成要件1Cないし1Eについて原告は,被告方法1ないし3における「ノズル部材4」が構成要件1Cないし1Eにおける「押し込み部材」に相当すると主張する。
しかしながら 「押し込み部材」とは 「押え部材」とともに下降し ,,た上(構成要件1C「押え部材」よりさらに下降することにより, ),受け部材の開口部に進入し,外皮材の中央部分を開口部に押し込むことによって,外皮材を椀状に形成する(構成要件1D)ものを意味する。
一方,被告方法1,2における「ノズル部材4」とは 「押え部材」,に相当する生地押え部材5が下降し,同部材を生地Fの縁部に押し付けて生地Fを載置部材7上に保持した後に下降するもの(構成1(c),1(d) ,又は,シャッタ片8及び載置部材7が上昇することによってノ )ズル部材4及び生地押え部材5に接近するもの(構成1(c) )であっ’て 「押え部材」と同時に下降するものではない。 ,また,被告方法1ないし3における「ノズル部材4」は,その下端部を生地Fの中央部分に形成された窪みに当接させる状態で停止させ(構成1(d),1(c) ,1(c),ノズル部材4を通して内材を供給しな ’”)がら生地Fを膨張させて椀状に形成する 構成1(e) 1(e)1(e) (,’,,すなわち,ノズル部材が生地の中に進入することにより生地を椀 ”), , 状に形成し 椀状形成された外皮材の内側に内材を配置するのではなく内材の吐出圧によって生地を膨張させて椀状に形成するものである(なお,被告装置1ないし3は,ノズル部材の下面が,最大でも,載置部材の下面から1mmしか突出することができない構造となっている(乙8の1・2,乙26の1・2,乙27の1・2。))したがって,被告方法1ないし3は,構成要件1Cないし1Eの「押し込み部材」を備えておらず,これらの構成要件を充足しない。
(エ)構成要件1F及び1Gについて被告方法1ないし3が構成要件1F及び1Gを充足することは認める。
[被告の主張に対する原告の反論]ア構成要件1Aについて「受け部材の上方に」複数のシャッタ片からなるシャッタを開口させた状態で配設しているとの構成要件1Aは 「外皮材を供給」する段階で要 ,求されるものである 「生地の供給工程」の一部として説明されている被 。
告装置目録(被告主張)2及び3の第5図によると,シャッタは載置部材7の上方に「離間した位置」に配置されているものではないので,構成1(a)’及び1(a)”は正確ではない。
,’” ,「」 仮に構成1(a)及び1(a)の構成を前提とするとしても上方という言葉の通常の意味は,直接配置されている(接している)か,離間,「」 , して配置されているかを問わず上の方 であることを指すものであり直接配置されている状態に限定されるものではない。また,本件明細書の図40は実施例にすぎず,これをもって,構成要件1Aの「受け部材の上方に」の意味を被告の主張するように限定解釈することはできない。本件発明1の本質的特徴は 前記 原告の主張 ウ(イ)a記載のとおりであり受 ,[] ,「け部材の上方に」の意味を 「受け部材上にシャッタ片が直接配置されて ,いるもの」に限定して解釈しなければならない理由はない。
構成要件1Bについて構成要件1Bにおける「位置調整」とは,後の工程である押し込み部材による生地中央部の押し込み及び生地押え部材による生地縁部の保持(構成要件1C,1D ,押し込み部材による内材の供給(構成要件1E)並 )びにシャッタによる封着(構成要件1F)といった動作を正確に行い得るように生地を位置調整すること すなわち 生地を受け部材のほぼ中央 受 ,, (け部材の開口部を覆い尽くすほぼ同心となる所定位置)に配置することを意味する。
被告方法1ないし3においても 「シャッタ片8を閉じる方向に動作さ ,せてその開口面積を縮小し ・・・開口部7Aを覆い尽くすほぼ同心とな ,る所定位置に収まるように位置調整」する構成(構成1(b),1(b) ,’1(b) )により 「外皮材が所定位置に納まるように位置調整」してい ”,るのであるから,上記構成は構成要件1Bを充足する。
被告は,構成1(b),1(b)’及び1(b)”において 「生地Fの中央,部の自重により同中央部を載置部材7の開口部7Aから少し下方に窪ませ」と表現する。しかしながら 「シャッタ片を閉じる方向に動作させて ,その開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整 (構」成要件1B)すれば,程度の差こそあれ,生地Fの中央部が生地の自重により窪むことになるのは自明である。
また,被告方法1,2において 「生地Fに生じた窪みを支持コンベヤ ,10で支持」しており 「三次元的位置調整」を行っているとしても 「生 , ,地Fに生じた窪みを支持コンベヤ10で支持」しているとの部分は,単なる付加的構成にすぎず,構成要件Bを充足するか否かとは関係がない。
構成要件1Cないし1Eについて(ア)被告方法1におけるノズル部材4は生地押え部材5と同時に下降するものであること「 」, 構成要件1Cの 押し込み部材とともに押え部材を下降させて とは「ともに」という言葉の通常の意味からして,押し込み部材と押え部材とが同時に下降することを意味する。ただし,当業者の技術常識に照らし,生地や内材の種類によっては,押し込み部材と押え部材とを完全に同時に下降させたのでは製品を正常に成形できない場合があることから,押え部材の下降が完了する前から押し込み部材の下降が開始される限り(すなわち,押し込み部材と押え部材とが同時に下降する時間帯が存在する限り ,構成要件1Cの「押し込み部材とともに押え部材を下 )降させて」を充足するというべきである。
これに対し,被告は,被告方法1における「ノズル部材4」は 「押,え部材」に相当する生地押え部材5が下降し,同部材を生地Fの縁部に押し付けて生地Fを載置部材7上に保持した後に下降するものであり,ノズル部材4と生地押え部材5が同時に下降することはないと主張する。
しかしながら,被告装置1は,ノズル部材4と生地押え部材5とを個別に駆動し(乙5の3 ,独立して昇降の制御ができる構造をとってい )るものであるから,ノズル部材4と生地押え部材5が同時に昇降するように制御することも可能である。
また,包み込み成形装置のユーザーである菓子パン等の製造業者にとって,1分間に何個製造することができるかという生産効率の問題は,生産コストに直接関わる問題であり,重大な関心事である。生地や内材の種類によっては,完全な同時下降ができない場合があるとはいえ,少なくとも,生地押え部材の下降が完了する前からノズル部材の下降が開始されるようにした方が,製品1個当たりの加工時間が短くて済み,生産効率を上げることができることは明らかである。
したがって,被告装置1の通常の利用者であれば,生地押え部材5の下降が完了する前からノズル部材4の下降が開始されるように制御値を設定しておくことは確実である。原告が入手した被告装置の動作説明ビデオ(甲12)でも,生地押え部材5の下降が完了する前からノズル部材4の下降が開始されていることを確認することができる。
(イ)被告方法1ないし3におけるノズル部材4は本件発明1における「押し込み部材」に相当すること被告は,被告方法1ないし3における「ノズル部材4」とは,その下端部を生地Fの中央部分に形成された窪みに当接させる状態で停止させ,ノズル部材4を通して内材を供給しながら生地Fを膨張させて椀状に形成するもの,すなわち,ノズル部材が生地の中に進入することにより生地を椀状に形成し,椀状形成された外皮材の内側に内材を配置するのではなく,内材の吐出圧によって生地を膨張させて椀状に形成するものであり,また,被告装置1ないし3では,ノズル部材4を最も深く下降させた場合であっても,その下端は載置部材7の下面より1mm下方に突出するにすぎないと主張する。
しかしながら,ノズル部材を生地に進入させずに,その下端部を生地の中央部分に形成された窪みに当接させる状態で停止させるにとどめ,ノズル部材を通して内材を供給しながら生地を膨張させて成形するという方法では,生地の硬さや内材の種類によっては正常に成形することができない場合が存在することが,被告装置と同様の装置を用いた原告の実験によって確認されている(甲16 。また,被告の主張する方法, )すなわち,ノズル部材4によっては生地の押し込み又は椀状形成を行わず,供給される内材の圧力で内側から膨張させて成形品の形を成形するという方法では,かえって,生地にかかる張力が均一にならず,最終製品の形状が安定しないという問題が生じる。
したがって,被告方法に関する被告の上記主張は,事実ではなく,被告方法1ないし3においては,ノズル部材を上記被告主張よりも深く生地に進入させているはずである。
仮に,被告方法1ないし3においてとられている構成が被告の主張するとおりであるとしても 「椀状」とは,特許技術用語としては,湾曲 ,した窪みを意味し,その窪みが深いか浅いかを問わないものである。また,本件発明1において 「押し込み部材を受け部材の開口部に進入さ ,せて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成する」ことの意義は,後の内材供給及び封着を正常に行うことのできる深さまで生地を押し込んで変形させることを意味し,かつ,それで足りると解するのが相当である。
そうすると,被告装置1ないし3におけるノズル部材4は,単に生地Fに当接(接しているだけで圧力を加えない)しているのではなく,生地Fに対して圧力を加えて「押し込み」をしているものであり,また,ノズル部材4が生地Fを押し込むことによって,生地Fをノズル部材4の先端形状に沿う形,すなわち「椀状」に形成していることが認められるものであるから(甲16 ,被告方法1ないし3におけるノズル部材 )4は,本件発明1における「押し込み部材」に相当するというべきである。
なお,本件発明1においては,押し込み部材(ノズル部材)の下降によって,外皮材(生地)が押し込み部材の先端形状に沿った一定の形状に形成されることを「椀状に形成する」と呼んでいるのであって,椀状に形成された後に,供給された内在の圧力によって外皮材(生地)が内側から膨張することは,本件発明1における「椀状に形成」とは関係がない。外皮材(生地)が椀状に形成された後,内在が供給されて,内在の圧力によって外皮材(生地)が内側から膨張する現象は,生地が柔らかく,かつ供給される内材の量が十分である場合には当然生じるものであり,このことは,本件発明1においても想定されている。
( )争点2(被告装置は本件発明2の構成要件を充足するか)について2[原告の主張]ア被告装置の構成被告装置1ないし3の構成を本件発明2の構成要件に対応させて分説す,,「」 (, ると それぞれ 別表2の 本件発明2 欄に記載のとおりである 以下分説した構成をそれぞれ「構成2a」などという。。)イ被告装置1,3が本件発明2の構成要件を充足すること別表2記載のとおり,被告装置1を本件発明2の構成要件に対応させて分説したもの(構成2aないし2g)は,被告装置3を本件発明2の構成要件に対応させて分説したものと同じである。
被告装置1,3は,以下の(ア)ないし(ウ)のとおり,いずれも,本件発明2の構成要件を充足する。
(ア)構成要件2Aないし2Cについて構成2aにおける「開口部7A「略円盤状の生地F」及び「載置 」,部材7」は,それぞれ,構成要件2Aの「開口部「シート状の外皮」,材」及び「受け部材」に相当する。また,構成2bにおける「6枚のシャッタ片8」及び「シャッタ」は構成要件2Bの「複数のシャッタ片」及び「シャッタ」に,構成2cにおける「生地Fが載置部材7の開口部7Aを覆い尽くすほぼ同心となる所定位置」及び「シャッタ駆動シャフト9」は構成要件2Cの「所定位置」及び「シャッタ駆動手段」に,それぞれ相当する。
,,, 。 したがって 被告装置1 3は 構成要件2Aないし2Cを充足する(イ)構成要件2Dについて構成2dにおける「ノズル部材4「内材G」及び「ノズル部材4 」,及びその昇降機構からなる生地形成手段」は,それぞれ,構成要件2Dの「押し込み部材「内材」及び「外皮材形成手段」に相当する。 」,したがって,被告装置1,3は,構成要件2Dを充足する。
(ウ)構成要件2Eについて構成2eにおける「生地押え部材5」及び「生地押え部材5及びその」 ,,「」 昇降機構からなる保持手段 は それぞれ 構成要件2Eの 押え部材及び「保持手段」に相当する。
したがって,被告装置1,3は,構成要件2Eを充足する。
(エ)構成要件2F及び2Gについて構成2fにおける「支持コンベヤ10「成形品Hを搬出する」及 」,び「支持コンベヤ10及びその昇降機構からなる支持手段」は,構成要件2Fの「支持部材「成形品を搬送する」及び「支持手段」に相当 」,する。したがって,被告装置1,3は,構成要件2Fを充足する。
, ,,, また 構成2gと構成要件2Gは同一であるから 被告装置1 3は構成要件2Gを充足する。
ウ被告装置2が本件発明2の特許請求の範囲に記載された構成と均等であること(ア)構成要件2Aないし2C及び2Eないし2Gについて被告装置2を本件発明2の構成要件に対応させて分説したもの(構成2a’ないし2g )と被告装置1の構成2aないし2gとは,構成2 ’’’(, dと2d 及び構成2eと2e の各一部が異なる 相違点については別表2の「被告装置2・被告方法2 「本件発明2」欄の下線部分を参 」照 )ほかは,同一の構成である。 。
,「 」 また 構成2eにおいて 生地押え部材5及びその昇降機構からなるとされているのが,構成2e’では「生地押え部材5からなる」とされている点は,被告装置2におけるノズル部材4が昇降動作を行わないことから,同装置は昇降機構を備えていないという,当然のことを示すにすぎず,被告装置2における生地押え部材5は,構成要件2Eにおける「保持手段」に相当する。
したがって,被告装置2は,本件発明2の構成要件2Aないし2C及び2Eないし2Gを充足する。
(イ)構成要件2Dについて被告装置2における構成2d’は,構成要件2Dが「押し込み部材を下降させることにより(受け部材の開口部に進入させて 」としている)のに対し 「シャッタ片8とともに載置部材7を上昇させて」ノズル部 ,材4及び生地押え部材5に接近させて,ノズル部材4を載置部材7の開口部7Aに進入させている点,すなわち,ノズル部材4及び生地押え部材5が昇降動作を行うのではなく,シャッタ片8及び載置部材7を上昇させることによってノズル部材4及び生地押え部材5に接近させている点において,構成要件2Dと相違する(かかる相違点は,前記「本件相違構成部分」と同じである。。)しかしながら,本件相違構成部分を含む被告装置2は,次のとおり,本件発明2の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものである。
a第1要件について本件発明2の本質的特徴は,前記( )[原告の主張]ウ(イ)a記載の1とおりであり,構成要件2Cに相当する部分である。
したがって,構成要件2Dのうち,押し込み部材が昇降動作を行う(,「」。), との部分この部分は前記置換された構成と同じであるは本件発明2の本質的部分ではない。
b第2要件について構成要件2Dは,要するに 「押し込み部材」に相当するノズル部 ,材4が,載置部材7の開口部に,内材を供給する目的に十分な深さに進入すればよいとするものである。
したがって,置換された構成を本件相違構成部分に置き換えたとしても,同一の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものといえる。
c第3要件ないし第5要件について被告装置2において,置換された構成を本件相違構成部分に置き換えることが当業者によって容易に想到できるものであること(第3要件 ,被告装置2が本件特許の出願時における公知技術と同一又は当 )業者がこれから容易に推考できたものであるという事実はないこと(第4要件 ,被告装置2が本件特許の出願手続において特許請求の )() 範囲から意識的に除外されたなどの特段の事情はないこと 第5要件,[] 。 については 前記( ) 原告の主張 ウ(イ)cないしeと同じである1d小括以上のとおり,被告装置2は,第1要件ないし第5要件をすべて満たす。
(ウ)以上によれば,被告装置2は本件発明2の特許請求の範囲に記載された構成と均等である。
,,,,, エよって 原告は 本件特許権2に基づき 被告に対し 被告装置の製造販売,販売の申出及び輸出についての差止め並びに被告装置の廃棄を求める。
[被告の主張]ア被告装置の構成被告装置1ないし3の構成を本件発明2の構成要件に対応させて分説す,,「」 (, ると それぞれ 別表3の 本件発明2 欄に記載のとおりである 以下分説した構成をそれぞれ「構成2(a)」などという。。)イ被告装置1ないし3は本件発明2の構成要件を充足しないこと(ア)構成要件2A及び2Bについて【被告装置1について】被告装置1が構成要件2A及び2Bを充足することは認める。
【被告装置2,3について】a構成要件2Aについて本件発明2の装置における 「中央部分に開口部が形成されるとと ,」(), もにシート状の外皮材が載置される受け部材構成要件2A とは本件明細書によれば,昇降動作をしないものと認められる。
これに対し,被告装置2,3において上記「受け部材」と対応関係にあると解される「載置部材7」は,昇降動作を行うものである。
したがって,被告装置2,3は,構成要件2Aを充足しない。
b構成要件2Bについて本件発明2の装置は 「受け部材の上方に配設されるとともに複数 ,のシャッタ片を備えたシャッタ (構成要件2B)を構成要素とする 」ものである 「受け部材の上方に」とは 「受け部材とシャッタとの 。 ,間に空間や介在する部材がないこと」を意味することについては,前記( )[被告の主張]イ(ア)【被告方法2,3について】と同じであ1る。
これに対し,被告装置2,3では,シャッタ片8は,載置部材7の上方に離間した位置に配置されている。
したがって,被告装置2,3は,シャッタ片8を載置部材7の「上方に」配置しているものではなく,構成要件2Bを充足しない。
(イ)構成要件2Cについて構成要件2Cでは,シャッタ駆動手段が 「シャッタ片を閉じる方向 ,に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整」しており,上記「位置調整」とは,受け部材の平面上の位置調整(二次元的位置調整)を意味する。
これに対し,被告装置1ないし3の構成2(c),2(c)’及び2(c)”では,シャッタ駆動シャフト9が 「シャッタ片8を閉じる方向に動 ,作させてその開口面積を縮小し」ているが,その「シャッタ片8で生地Fの周縁部を押圧することによりかつ生地Fの中央部の自重により同中央部を載置部材7の開口部7Aから少し下方に窪ませ,生地Fが載置部材7の開口部7Aを覆い尽くすほぼ同心となる所定位置に収まるように位置調整」しており,両者はその構成を異にする。
したがって,被告装置1ないし3は,構成要件2Cを充足しない。
(ウ)構成要件2D及び2Eについて原告は,被告装置1ないし3における「ノズル部材4」及び「生地押え部材5」が,それぞれ,構成要件2D及び2Eにおける「押し込み部材」及び「押え部材」に相当すると主張する。
しかしながら,本件発明2における外皮材形成手段(構成要件2D,2E)に設けられる「押し込み部材」とは 「押え部材」とともに下降 ,することにより,受け部材の開口部に進入し,外皮材の中央部分を開口部に押し込み,外皮材を椀状に形成するものを意味する。被告装置1,2における「ノズル部材4」は 「押え部材」に相当する生地押え部材 ,5と別個に昇降可能に設けられたもの(構成2(e) ,又は,シャッタ)片8及び載置部材7が上昇することによってノズル部材4及び生地押え部材5に接近するもの(構成2(d)’2(e) )であって 「押え部材」 ’,と同時に下降するものではない また 被告装置1ないし3における ノ 。, 「ズル部材4」は,その下端部を生地Fの中央部分に形成された窪みに当接させる状態で停止させ(構成2(d),2(d) ,2(d),ノズル部 ’”)材4を通して内材を供給しながら生地Fを膨張させて椀状に形成する(構成2(f),2(f) ,2(f) )もの,すなわち,ノズル部材が生 ’”地の中に進入することにより生地を椀状に形成し,椀状形成された外皮材の内側に内材を配置するのではなく,内材の吐出圧によって生地を膨張させて椀状に形成するものである。
したがって,被告装置1ないし3は,構成要件2D及び2Eの「 押(し込み部材を備えた)外皮材形成手段」を備えておらず,これらの構成要件を充足しない。
(エ)構成要件2Fについて構成要件2Fにおける「支持手段」とは 「受け部材の下方に配設さ ,れるとともに「支持部材を上昇させて椀状形成された外皮材を支持 」,し「支持部材を下降させて成形品を搬送する」ものであり 「椀状形 」, ,成された外皮材」とは,押し込み部材によって外皮材の中央部分を開口部に押し込むことによって椀状に形成されるもの(構成要件2D)を指す。
これに対し,被告装置1ないし3における支持コンベヤ10が支持す,, () るのは いずれも ノズル部材4を通して供給される内材G の吐出圧により膨張して椀状に形成される生地Fであって,椀状に形成された後の生地Fではない。
したがって,被告装置1ないし3は,構成要件2Fを充足しない。
( )争点3(本件発明は進歩性を欠くか)について3[被告の主張]本件発明1及び2は 以下のとおり 特開平11-137231号公報 乙 ,, (14。以下「乙14公報」という )に記載された発明に,特開2000- 。
50854号公報(乙17。以下「乙17公報」という )及び特開昭62。
-239970号公報(乙20。以下「乙20公報」という )に記載され。
た各発明並びに周知技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項に違反して特許されたものであるから,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものである。
よって,特許法104条の3第1項により,原告は,被告に対し,本件特許権の行使をすることはできない。
ア乙14公報記載の発明乙14公報に記載されている発明を,本件発明1及び2の構成要件ごとに対応させると,次の各構成(以下「構成1( )」などという )からなA 。
(【】 【】, る発明が記載されていると認められる段落0001〜0003【0014】〜【0017【0021】〜【0025。 】, 】)(本件発明1に対応する発明(以下「乙14-1発明」という)。)1( )受け部材の上方に配置した複数のシャッタ片からなるシャッタAを開口させた状態で受け部材上にシート状の外皮材を供給し,1( )感知手段により,受け部材上の外皮材が所定位置からずれていBるか否かを感知し,1( )押え部材を下降させて押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外C皮材を受け部材上に保持し,1( )外皮材の外周縁部より中心側の部分を成形型内面に吸着させDて,中心側の部分を椀状に成形し,1( )適宜の手段で内材を供給して外皮材に内材を配置し,E1( )外皮材を成形型内面で支持した状態でシャッタを閉じ動作させ Fることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着し,1( )成形型から成形品を離脱させることG1( )を特徴とする食品の包み込み成形方法。H(本件発明2に対応する発明(以下「乙14-2発明」という)。)2( )中央部分に開口部が形成されるとともにシート状の外皮材が載A置される受け部材と,2( )受け部材の上方に配置されるとともに複数のシャッタ片を備えBたシャッタと,2( )受け部材上の外皮材が所定位置からずれているか否かを感知すCる感知手段及びシャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着するシャッタ駆動手段と,2( )外皮材の外周縁部より中心側の部分を成形型内面に吸着させDて,中心側の部分を椀状に成形する外皮材形成手段及び内材供給手段と,2( )外皮材形成手段に設けられるとともに押え部材を外皮材の縁部Eに押し付けて外皮材を受け部材上に保持する保持手段と,2( )成形型から成形品を離脱させる手段と,F2( )を備えていることを特徴とする食品の包み込み成形装置。 Gイ本件発明1と乙14-1発明の一致点及び相違点(ア)一致点本件発明1と乙14-1発明とを対比すると,構成1( )は構成要件A1Aと,構成1( )は構成要件1Fと,それぞれ一致する。 F(イ)相違点本件発明1と乙14-1発明との相違点は,?本件発明1は 「シ,ャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整し (構成要件1B)ているのに対し, 」乙14-1発明は 「感知手段により,受け部材上の外皮材が所定位置 ,からずれているか否かを感知し (構成1( ))ているにすぎず,外皮 」B(「」 材の位置調整を行うことについて記載がないこと 以下 相違点1-1という,?本件発明1は 「押し込み部材とともに押え部材を下降 。),させて押え部材を外皮材の縁部に押しつけて外皮材を受け部材上に保持し (構成要件1C)た上 「押し込み部材をさらに下降させることに 」,より受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに外皮材を支持部材で支持し (構成」要件1D ,次いで 「押し込み部材を通して内材を供給して外皮材に ),内材を配置 (構成要件1E)するのに対し,乙14-1発明は,押し 」込み部材を備えておらず(構成1( ) ,外皮材を椀状に形成するのに C )吸着作用を利用しており(構成1( ) ,内材を供給する手段を特定しD )ていない(構成1( ))こと(以下「相違点1-2」という,?本E 。)件発明1は 「支持部材を下降させて成形品を搬送 (構成要件1G) , 」しているのに対し,乙14-1発明は,成形型から成形品を離脱させており(構成1( ) ,成形品の搬送について特段記載はないこと(以下G )「相違点1-3」という,である。。)(ウ)相違点についての検討(相違点1-1について)a乙14-1発明には,受け部材上の外皮材が所定位置からずれているか否かを感知することが示されており,外皮材が所定位置からずれている場合に,これを修正しようとすることは,当業者が極めて自然に着想するところである。
bシャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整することは,次のとおり,本件特許の原出願前に頒布された刊行物である乙17公報に記載されていたもの,ないし周知の技術であったものである。
(a)乙17公報の記載乙17公報には,外皮材の周縁部を封着するシャッタが,外皮材の外周縁部を円周方向より中心方向に絞り込む包み込み前工程を行い,その後で,シャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着する構成(以下「乙17発明」という )が開示されている(段落【0041】〜【0047。 。 】)(b)特開平9-187215号公報(乙15。以下「乙15公報」という )及び特開2000-4766号公報(乙16。以下「乙 。
16公報」という )の記載。
乙15公報及び乙16公報には 「シャッタ片を閉じる方向に動 ,作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整する構成 (構成要件1B)が記載されており(乙15・ 」段落【0028【0033 ,乙16・段落【0012,この 】,】 】)ような構成は,本件特許の原出願前において周知であった。
(c)特開平6-178679号公報(乙18。以下「乙18公報」という )及び特開平6-217675号公報(乙19。以下「乙 。
19公報」という )の記載。
乙18公報及び乙19公報には,芯材及び外皮材からなる食品を所定形状に成形し切断するための一連の動作において,シャッター片を第1段階及び第2段階の2度にわたって操作させるようにする構成が記載されている。このような構成は,本件特許の原出願前において周知であった。
c以上のとおり,乙17発明や,乙15公報,乙16公報,乙18公報及び乙19公報に記載された周知技術を勘案すれば,乙14-1発明における外皮材の位置ずれの感知に代えて,本件発明1の構成,すなわち,シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整をすることは,当業者が容易に想到することができたものといえる。
(相違点1-2について)相違点1-2に係る本件発明1の構成要件,すなわち,構成要件1Cないし1Eの構成は,次のとおり,本件特許の原出願前に頒布された刊行物である乙20公報に記載されたもの,ないし周知の技術であったものである。
a乙20公報の記載乙20公報には,本件発明2の構成要件1Cないし1Gに相当する構成(以下「乙20発明」という )が開示されている(2頁左下欄 。
17行〜3頁右上欄16行,同頁右下欄19行〜4頁左下欄7行 。)b特開昭62-262978号公報(乙21。以下「乙21公報」という )の記載。
乙21公報には,本件発明2の構成要件1Dないし1Gに相当する構成が開示されている(4頁左上欄16行〜右上欄11行,同頁左下欄17行〜20行,同頁右下欄8行〜5頁左上欄6行,同頁左上欄19行〜右上欄8行,同頁右下欄2行〜7行,6頁右上欄8行〜11行 。このような構成は,上記のとおり乙20公報にも記載されてい )るものであり,本件特許の出願当時において周知であったものといえる。
c以上のとおり,相違点1-2に係る本件発明1の構成要件は,乙14-1発明に乙20発明を適用して,又は,乙14-1発明に乙20, 。 発明及び周知技術を適用して 当業者が容易に想到することができた(相違点1-3について)乙20公報及び乙21公報に構成要件1Gに相当する記載があり,このような構成が周知であったことについては,上記(相違点1-2について)に記載のとおりである。
したがって,相違点1-3に係る本件発明1の構成要件は,乙14-1発明に乙20発明及び周知の技術を適用して,当業者が容易に想到することができた。
ウ本件発明2と乙14-2発明の一致点及び相違点(ア)一致点本件発明2と乙14-2発明とを対比すると,構成2( )は構成要件A2Aと,構成2( )は構成要件2Bと,構成2( )は構成要件2Eと, B Eそれぞれ一致する。
(イ)相違点本件発明2と乙14-2発明との相違点は,?本件発明2は,シャッタ駆動手段が 「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積 ,を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整する (構成要件」2C)のに対し,乙14-2発明では,受け部材上の外皮材が所定位置からずれているか否かを感知する感知手段を備えているにすぎず,シャッタ駆動手段が外皮材が所定位置に収まるように位置調整することについて記載がないこと(以下「相違点2-1」という,?本件発明。)2は,押し込み部材を備えた外皮材形成手段が,外皮材を椀状に形成するために,押し込み部材を下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み,押し込み部材を通して外皮材内に内材を供給する(構成要件2D)のに対し,乙14-2発明は,外皮材形成手段が押し込み部材を備えておらず,吸着作用を用いて外皮材を椀状に形成しており,内材の供給手段を特定していない(構成2( )こと以下相違点2-2という?本件発明2は受D )(「」。),,「け部材の下方に配置されるとともに支持部材を上昇させて椀状形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形品を搬送する支持手段構」(成要件2F)を備えているのに対し,乙14-2発明は,成形型から成形品を離脱させる手段を備えているものの,上昇下降する支持手段は記載されていないこと(以下「相違点2-3」という,である。。)(ウ)相違点についての検討相違点2-1に係る構成に代えて構成要件2Cに相当する構成をとること,相違点2-2に係る構成に代えて構成要件2Dに相当する構成をとること,相違点2-3に係る構成に代えて構成要件2Fに相当する構成をとることが,いずれも,当業者が容易に想到することができたものであることについては,前記イで主張したところから明らかである。
[原告の主張]被告の主張を否認ないし争う。
本件発明の本質的特徴は,前記のとおり,受け部材の上方に配置された複数のシャッタ片からなるシャッタに 「外皮材が所定位置に収まるように位 ,置調整」することと 「外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着」す ,ることの相異なる2つの機能を持たせることで,装置構成の簡素化を図るこ,, , とができ しかも 外皮材の位置調整から成形品の搬送までの一連の工程を受け部材の周辺スペースの1か所で行うことができるため,生産効率を高めることができることにある。
被告は,本件発明は,乙14-1発明及び乙14-2発明に,乙17発明及び乙20発明並びに乙15公報,乙16公報,乙18公報,乙19公報及び乙21公報等に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。しかしながら,上記本質的特徴は,乙14公報ないし乙21公報に一切記載されていない。
したがって,本件発明が進歩性を欠くとする被告の主張は,理由がない。
( )争点4(原告の損害)について4[原告の主張]被告は,平成20年7月末ころ,中部フーズに対し,被告が製造した被告装置2を代金8000万円で販売し,同年8月ころ,山崎製パンに対し,被告が製造した被告装置3を代金1億円で販売した。
被告装置2,3は,本件発明1に係る方法の使用のみ用いる物であるから,本件発明1の技術的範囲に属する(特許法101条4号 。また,これ)らの装置は,本件発明2の技術的範囲にも属する。
したがって,被告が被告装置2,3を製造し,販売した行為は,本件特許権1及び2を侵害する。
被告が上記販売によって得た利益は,上記売上代金の合計額の2割である3600万円(1億8000万円×20%)を下らず,上記利益の額は,原告の受けた損害の額であると推定される(特許法102条2項 。),,, , よって原告は被告に対し上記不法行為に基づく損害の賠償として3600万円及びこれに対する訴えの変更申立書送達の日の翌日である平成22年2月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
[被告の主張]原告の主張を否認ないし争う。
第3争点に対する判断1争点1(間接侵害の成否)について( )被告方法1について1ア被告方法1が構成要件1A,1F及び1Gを充足することについては,前記のとおり当事者間に争いがない。
イ被告方法1が構成要件1Bないし1Eを充足するか否かについては,前記のとおり当事者間に争いがある。被告は,被告方法1は構成要件1Bと異なる方法で位置調整を行っており,構成要件1Cないし1Eの「押し込み部材」を用いるものでもないと主張する。
構成要件1Bの充足性について被告方法1において 「シャッタ片8を閉じる方向に動作させてその開 ,口面積を縮小し ・・・開口部7Aを覆い尽くすほぼ同心となる所定位置 ,に収まるように位置調整」する構成(構成1(b))がとられていることについては,当事者間に争いがない。そして,構成1(b)における「 生地() 」 , Fが載置部材7の 開口部7Aを覆い尽くすほぼ同心となる所定位置 は構成要件1Bの「所定位置」に相当するものと認められるから,被告方法1における上記構成は,構成要件1Bを充足するものと認められる。
これに対し,被告は,被告方法1は 「生地Fの中央部の自重により同 ,中央部を載置部材7の開口部7Aから少し下方に窪ませ「生地Fに生」,じた窪みを支持コンベヤ10で支持」するものであって,構成要件1Bと異なる方法で位置調整を行うものであるから,同構成要件を充足しないと主張する。
しかしながら 「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を ,縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整 (構成要件1B)す」れば,程度の差こそあれ,外皮材の中央部には自重がかかるものであるから,構成要件1Bの方法をとることによって外皮材が少し窪む事態が生じる場合があることは,想定されているといえる。また,本件発明1において,外皮材を椀状に形成する以前から支持部材で外皮材を支持しておくことについて,何ら不合理な事情は見当たらない。
したがって,構成要件1Bにおける「位置調整」の解釈に当たって,被告の主張する上記構成が排除されるものではなく,これらの構成は,単なる付加的構成にすぎないというべきであり,上記構成要件1Bを充足するとの判断を左右するものではない。
構成要件1Cないし1Eの充足性について(ア)被告装置1の構成原告は,被告装置1の構成は被告装置目録(原告主張)1記載のとおりであり,被告方法1におけるノズル部材4は,その下端部を生地の中央部分に形成された窪みに当接させる状態で停止されるものではなく,さらに生地Fに深く進入するものであり,ノズル部材4によって生地Fが椀状に形成されるものであると主張する。
また,原告は,同人の主張を裏付ける証拠として,甲第16号証(原告が製造販売している包餡成形装置を使用し,被告装置と同じサイズに原告が成形したノズル部材等を用いて,原告においてノズル部材4の動(「」。) ) 作に関する実験以下本件実験というを行った際の実験報告書及び甲第17号証(本件実験の状況を撮影したDVD)を提出する。
原告は,本件実験は,原告が製造販売している包餡成形装置MH-1(以下「MH-1」という )を実験装置として使用したものであり, 。
ノズル部材4,生地押え部材5,載置部材9,シャッタ片10及び支持コンベヤ12は,被告の作成した被告装置1の説明図等(乙7,乙8の1,乙10,乙11の1〜15)に基づいて原告が作製したものであって,ノズル部材4及び生地押え部材5の昇降,シャッタ片10の開閉,支持部材13の昇降並びに内材の供給の各タイミングは,被告の作成した被告装置1のタイミングチャート(乙9の1)に基づいて動作制御するよう,原告が設定したものであると主張する。そして,原告は,本件実験の結果,?ノズル部材4の先端を被告の主張するとおり載置部材の下面より1mmしか下降させない場合,普通の硬さの生地(あんパン等の菓子パンに使用されるもの)については,ほぼ正常に成形することができるものの,硬めの生地(惣菜パン等に使用されるもの)については,封着動作の際に内材が漏れ出してしまい,うまく成形することができないこと,?一方,ノズル部材4を載置部材の下面より10mmのところまで下降させた場合は,普通の硬さの生地でも硬めの生地でもほぼ正常に成形することができること,が確認されたとして,様々な生地材料及び内材の組合せで成形を行う場合は下降位置を深くした方が確実に対応することができることから,被告装置1においても,顧客のニーズに応じてノズル部材4を開口部に対して深く進入させるように設計していることは明らかである,と主張する。
しかしながら 本件実験は 原告が製造販売している包餡成形装置 M ,, (H-1)を使用して行われたものであり,被告装置1そのものを用いた実験ではないので,同実験の結果から直ちに,被告装置1において,ノズル部材4が載置部材の下面より深く進入しない限り生地を正常に成形することができないものと認めることは,困難である。原告は,本件実験に用いたノズル部材等の部品やノズル部材の昇降のタイミング等については,被告の作成した被告装置1の説明図やタイミングチャート等に基づき原告が作成し,動作を制御するように設定したとも主張する。しかしながら,上記ノズル部材等は,本来,被告装置1に適応するように設計され,動作のタイミングも設定されているものであるから,これらの部材を原告の製造する装置であるMH-1に備え付けた場合に,被告装置1に備え付けられた場合と同様にこれらの部材が適切に作動することについては,これを認めるに足りる証拠はないというべきである。同様に,本件実験において,支持コンベヤを上昇させる位置や支持コンベヤを下降させる速度が適当であったか否かという点についても,これが適当であったことを認めるに足りる証拠はない。
むしろ,証拠(乙9の1,乙10,乙11の1〜15)によれば,被告装置1では,ノズル部材4が生地Fに深く進入することによって生地Fを椀状に形成するのではなく,ノズル部材4の下端部を生地Fの中央部分に形成された窪みに当接させる状態で,又は,せいぜい,ノズル部材4の下端部を生地Fに接触させ,生地Fをノズル部材4の下端部の形状に沿う形にわずかに窪ませる程度の状態で,これを停止させ,その後に,ノズル部材4から内材を供給することにより,内材の吐出圧によって生地Fを椀状に膨らませる(椀状に形成する)構成となっていることが認められる。すなわち,仮に,原告の主張するように,ノズル部材4を生地に深く押し込むことによって生地を椀状に形成し,その後に内材の供給を開始するのであれば,ノズル部材4は,生地F中に押し込まれた後に,内材の配置される場所を作るために上昇する必要があるはずにもかかわらず,このような状況は,乙第10号証(被告が撮影した,被告装置1の動作を撮影したDVD)には写っておらず,乙第9号証の1(被告装置1のタイムチャート図)でも,ノズル部材4の位置は,内材の供給中は変化しておらず,内材の供給が終了した後に上昇していることが認められる。
また,原告は,被告の主張する被告装置目録(被告主張)1記載の方法では,かえって,生地にかかる張力が均一にならず,最終製品の形状が安定しない問題が生じるとも主張するものの,同主張を裏付けるに足りる客観的な証拠はない。
したがって,被告方法1においてノズル部材4が生地Fに深く進入していると認めることはできない。
(イ)「押し込み部材」の解釈a原告は,被告方法1においてとられている構成が被告の主張するとおりであるとしても,ノズル部材4は,単に生地Fに当接(接しているだけで圧力を加えない)しているのではなく,生地Fに対して圧力を加えて「押し込み」をしているものであり,ノズル部材4が生地Fを押し込むことによって,生地Fをノズル部材4の先端形状に沿う形(椀状)に形成しているものであるから,ノズル部材4は本件発明1における「押し込み部材」に相当するとも主張する。
bしかしながら 「椀」とは 「汁・飯などを盛る木製の食器・多く ,,。」 (), は漆塗で蓋があるという意味を有するものである 乙30 から前記(ア)のとおりノズル部材4の下端部が生地Fに接触することによって生地Fをノズル部材4の下端部の形状に沿う形にわずかに窪ませる程度のことをもって 「椀状に形成する」に当たると解することは, ,「椀」という語の通常の用法に沿うものとは認められない。
c また,本件明細書の発明の詳細な説明中には,以下の記載が存在する。
【発明が解決しようとする課題】「このようにシート状の外皮材から成形を行う場合,パン生地のような食材は,柔軟性を有するために外皮材の形状が一定せず,一枚一枚微妙にばらついた楕円形状になることが多く,また,粘着性を有することから,搬送途中で位置ずれが生じたりして正確に成形位置に配置することができないことも考慮する必要がある。上述した従来の食品成形方法は,外皮材が楕円形状であったり,成形位置からずれた位置に外皮材が供給された場合,外皮材を封止できないことが生じ易く例えば特許文献2では,生地片がカップ周縁に載置されないと以後の工程で生地片の縁部が落ち込んで封止できなくなる。
それを避けるために生地片を大きくすることも考えられるが,その場合には,生地片の量が多くなるため,封止ゲートを閉じた際に,生地片が封止ゲートの上方にはみ出るおそれがある。特許文献3でも同様のことが言え,プラグにより外皮材の突出防止を図っているものの,プラグを雌型に配置するため工程が増えると共に,外皮材を載置した雌型を移動させるなど工程が複雑化し,しかも,多数の雌型を配置する必要から装置全体が大型化し,装置機構が複雑化する難点があった(2頁32行〜46行段落【0004 ) 。」 】「本発明は,従来の食品成形方法に上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので,外皮材に形状のばらつきや位置ずれがあっても,封着時に外皮材により確実に内材を包み込み成形することができる包み込み成形方法と構成簡素な包み込み成形装置を提供することを目的とする(2頁47行〜3頁1行段落【0005 ) 。」 】【発明の効果】「また,外皮材を椀状形成する際に外皮材の縁部を押え部材により保持するので,外皮材がパン生地等の弾性に富む食材であっても,外皮材の縁部周辺を伸ばしながら椀状に形成することができ,たとえ多少外皮材の形状・大きさがばらついていたり,位置ずれがあったとしても,外皮材を確実に椀状形成することができる。このとき,外皮材を支持部材で支持するようにすれば,外皮材が必要以上に下方へ伸びてしまうことを防ぐことができる(3頁33行〜39。」行段落【0009 )】「また,押し込み部材を通して内材を供給しているので,押し込み部材の上昇に伴って外皮材が収縮するのを防ぐことができると共に,外皮材の形状形成と内材の供給を短時間に効率良く行なうことが可能となる。このとき,外皮材を支持部材で支持しているので,内材の吐出による外皮材の必要以上の伸びを防ぐことができ,内材を確実に外皮材の内側に配置することができる(3頁40行〜45。」行段落【0010 )】「また,シャッタの下方に設けた受け部材上に外皮材を供給しているので,より安定的に外皮材を戴置することができると共に,受け部材と保持手段の押え部材とにより外皮材を確実に押え保持することができ,さらに受け部材の開口部に押し込み部材を進入させることによって,受け部材の開口部を利用して外皮材を椀状形成することも可能となる(3頁46行〜50行段落【0011 ) 。」 】「また,シャッタの下方に設けた受け部材上に外皮材を供給しているので,シャッタの閉じ動作によって受け部材上の外皮材の位置調整, 。」 を行なうことができ 装置構成を極めて簡素化することができる(4頁1行〜4行段落【0012 )】【発明を実施するための最良の形態】[実施形態]「そして,図42に示すように,押え部材50で外皮材Fの縁部を保持した状態で,押し込み部材30をさらに下降させることにより押し込み部材30を受け部材8の開口部80に進入させ,シート状の外皮材Fの中央部分を受け部材8の開口部80に押し込むことにより外皮材Fを椀状に形成する。このように,外皮材Fを椀状形成する際に,外皮材Fの縁部を保持手段5で保持するので,外皮材Fがパン生地等の弾性に富む食材であっても,外皮材Fの縁部周辺を伸ばしながら椀状に形成することができ,たとえ多少外皮材の形状・大きさがばらついていたり,位置ずれがあったとしても,外皮材を確実に椀状形成することができる。また,このとき,外皮材Fを支持部材60で支持するようにすれば,外皮材が必要以上に下方へ伸びてしまうことを防ぐことができる(10頁49行〜11頁8 。」行段落【0060 )】「次に,図43に示すように,押し込み部材30を上昇させながら押し込み部材30内の弁40を上昇させて吐出孔を開くことにより内材Gを吐出させ,椀状形成された外皮材Fの内側に内材Gを配置する。そして,所定量の内材Gが吐出された時点で弁40を下降させて吐出孔を閉じる。このように,押し込み部材30を上昇させると同時にこの押し込み部材30を通して内材Gを供給しているので,押し込み部材30の上昇に伴ってパン生地から成る外皮材Fが収縮するのを防ぐことができると共に,外皮材Fの形状形成と内材Gの。,, 供給を短時間に効率良く行なうことが可能となる また このとき外皮材Fを支持部材60で支持しているので,内材Gの吐出による外皮材Fの必要以上の伸びを防ぐことができ,内材Gを確実に外皮材Fの内側に配置することができる(11頁9行〜18行段 。」落【0061 )】(なお,本件明細書の発明の詳細な説明中には,押し込み部材(ノズル部材)によって外皮材(生地)を原告の主張する意味での「椀状」に形成(外皮材を押し込み部材の先端形状に沿う形に形成すること)した上で,その後に押し込み部材を通して内材を供給することによって外皮材を膨らませて成形する方法,ないし装置については,特段記載されていない )。
d上記明細書の発明の詳細な説明中の記載からすると,本件発明1において,押し込み部材とともに押え部材を下降させて押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持し,押し込み部材をさらに下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに外皮材を支持部材で支持することの技術的意義は,このような方法をとることにより,外皮材が弾性に富む食材であったり,外皮材の形状,大きさがばらついていたり,外皮材に位置ずれがあった場合でも,外皮材が必要以上に下方へ伸びてしまうことを防ぎ,外皮材を確実に椀状形成することができるようにすることにあると認められる。同様に,押し込み部材を通じて内材を供給することの技術的意義は,押し込み部材の上昇に伴い外皮材が収縮するのを防ぐとともに,外皮材の形状形成と内材の供給を短時間に効率よく行うことを可能とし,内材の吐出による外皮材の必要以上の伸びを防ぐことができるようにすることにあると認められる。
そうすると,本件発明1における「押し込み部材」とは,単に,同部材の下端部を外皮材の中央部分に形成された窪みに当接させる状態で停止し,又は,せいぜい,同部材の下端部を外皮材に接触させ,外皮材を同部材の下端部の形状に沿う形にわずかに窪ませる程度の状態で停止するものではなく 「外皮材が必要以上に下方へ伸びてしまう ,こと」及び「押し込み部材の上昇に伴い外皮材が収縮するのを防ぐ」必要がある程度に,深く外皮材に進入し,外皮材の縁部周辺を伸ばしながら外皮材を椀状に形成することを想定しているといえ,同部材によって,外皮材を成形品の高さと同程度の深さに「椀」形の形状に形成し,同部材によって形成された椀状の部分の中に内材が吐出されるものを意味すると解するのが相当である。
したがって 被告装置1におけるノズル部材4は 本件発明1の 押 , ,「し込み部材」には当たらないというべきである。
オよって,被告方法1は,本件発明1の構成要件を充足しない。
( )被告方法2,3について2原告は 被告方法2を本件発明1の構成要件に対応させて分説したもの 構 , (成1a’ないし1h )と被告方法1の構成1aないし1hとは,構成1c ’と1c’及び構成1dと1d’の各一部が異なる(ノズル部材4及び生地押え部材5が昇降動作を行うのではなく,シャッタ片8及び載置部材7を上昇させることによってノズル部材4及び生地押え部材5に接近させている点(本件相違構成部分)ほかは同一の構成であり,本件相違構成部分を含 )。
む被告方法2は本件発明1の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであると主張する。
また,原告は,被告方法1を本件発明1の構成要件に対応させて分説したもの(構成1aないし1h)は,被告方法3を本件発明1の構成要件に対応させて分説したものと同じであり,被告方法3は本件発明1の構成要件を充足すると主張する。
しかしながら,被告方法2,3における「ノズル部材4」とは,生地Fに深く進入するものではなく,単に,同部材の下端部を外皮材の中央部分に形成された窪みに当接させる状態で停止し,又は,せいぜい,同部材の下端部を外皮材に接触させ,外皮材を同部材の下端部の形状に沿う形にわずかに窪ませる程度の状態で停止するものであると認められること,及び,ノズル部材4は構成要件2Cないし2Eの「押し込み部材」には当たらないと解すべきことについては,上記( )(被告方法1について)で説示したとおりであ1る。
したがって,その余の点について検討するまでもなく,被告方法2,3は本件発明1の構成要件を充足しない。
3争点2(被告装置は本件発明2の構成要件を充足するか)について上記2に説示したところに照らすと,被告装置1ないし3の構成が本件発明2の構成要件を充足しないことは,明らかである。
4よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 山門優
裁判官 小川卓逸