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審判番号(事件番号) データベース 権利
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関連ワード 技術的思想 /  使用方法 /  進歩性(29条2項) /  公知技術 /  上位概念 /  技術的範囲 /  発明の詳細な説明 /  分割出願 /  原出願日 /  参酌 /  技術的意義 /  均等 /  均等論 /  均等侵害 /  置き換え /  置換 /  置換可能性 /  同一の作用効果 /  置換容易性 /  容易に想到(容易想到性) /  非公知 /  意識的除外(意識的に除外) /  禁反言 /  特許発明 /  実施 /  加工 /  交換 /  間接侵害 /  構成要件 /  方法の使用 /  のみ用いる /  具体的態様 /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  販売利益 /  不法行為(民法709条) /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 /  釈明 / 
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事件 平成 22年 (ネ) 10089号 特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2011/06/23
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成23年6月23日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成22年(ネ)第10089号 特許権侵害差止等請求控訴事件

原審・東京地方裁判所平成21年(ワ)第1201号

口頭弁論終結日 平成23年6月9日

判 決

控 訴 人 株 式 会 社 コ バ ー ド

同訴訟代理人弁護士 竹 田 稔

木 村 耕 太 郎

同補佐人弁理士 根 本 恵 司

川 崎 好 昭

被 控 訴 人 レオン自動機株式会社

同訴訟代理人弁護士 清 永 利 亮

同補佐人弁理士 櫻 井 義 宏

豊 岡 静 男

主 文

1 原判決を以下のとおり変更する。

(1) 被控訴人は,別紙1ないし3の被告装置目録1ない

し3記載の装置を製造し,販売し,販売の申出をし

又は輸出してはならない。

(2) 被控訴人は,上記装置を廃棄せよ。

(3) 被控訴人は,控訴人に対し,1766万9218円

及びこれに対する平成22年2月17日から支払済

みまで年5分の割合による金員を支払え。

(4) 控訴人のその余の請求を棄却する。

2 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを3分し,そ

の1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担




とする。

3 この判決は,主文第1項の(3)に限り,仮に執行する

ことができる。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 主文1(1)(2)と同旨

3 被控訴人は,控訴人に対し,3600万円及びこれに対する平成22年2月

17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。

5 3項につき仮執行の宣言

第2 事案の概要(略称は,原則として原判決に従う。)

1 本件は,被控訴人が,被告装置(別紙1ないし3の被告装置目録1ないし3

記載の装置をいう。以下同じ。)を製造,販売及び販売の申出をした行為について,

控訴人が,被控訴人の上記行為は,控訴人の有する特許第4210779号(発明

の名称「食品の包み込み成形方法及びその装置」)についての請求項1に係る本件

特許権1を侵害するものとみなされ(特許法101条4号),請求項2に係る本件

特許権2を侵害すると主張して(被告装置2については,いずれも均等論による侵

害を主張して),@本件特許権に基づき,被告装置の製造,販売等の差止め及び廃

棄を求めるとともに,A不法行為に基づく損害賠償として,3600万円及びこれ

に対する平成22年2月17日(訴え変更の申立書送達の日の翌日)から支払済み

まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

原判決は,被告装置を用いた食品の包み込み成形方法(被告方法)及び被告装置

における「ノズル部材」が,いずれも本件発明の「押し込み部材」に当たらないか

ら,構成要件を充足せず,被告装置2については均等侵害も成立しない旨を判示し

て,控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人は,これを不服として控訴し,当審




において,予備的主張として,「押し込み部材」の点について均等論による侵害

主張を追加した。

2 前提となる事実

控訴人の請求について判断の前提となる事実は,原判決の事実及び理由の第2の

1(原判決2頁19行目〜4頁7行目)のとおりであるから,これを引用する。

3 本件訴訟の争点

(1) 本件特許権1の間接侵害の成否

(2) 本件特許権2の侵害の成否

(3) 進歩性欠如の有無

(4) 損害額

第3 当事者の主張

1 原審における主張

原審における当事者の主張は,以下のとおり付加訂正するほか,原判決の事実及

び理由の第2の3(原判決4頁15行目〜31頁9行目)のとおりであるから,こ

れを引用する。なお,構成要件1Bの充足性については,争点としない。

(1) 原判決4頁15行目の「間接侵害」の前に「本件特許権1の」を加える。

(2) 原判決16頁24行目の「内在」を「内材」と訂正する。

(3) 原判決17頁2行目の「被告装置は本件発明2の構成要件を充足するか」

を「本件特許権2の侵害の成否」に改める。

(4) 原判決23頁17行目の「本件発明は進歩性を欠くか」を「進歩性欠如の

有無」に改める。

(5) 原判決30頁17行目の「原告の損害」を「損害額」に改める。

2 当審における当事者の主張

〔控訴人の主張〕

(1) 本件特許権1の間接侵害の成否

ア 被告方法1が構成要件1Cないし1Eを充足すること




(ア) 被告装置1の構成は,原判決別紙2−1被告装置目録(原告主張)1記載

のとおりであり,これを分説すると,原判決別表2「原告主張の被告装置・被告方

法」被告装置1・被告方法1の1aないし1h(以下「控訴人主張の構成1a」な

どという。)記載のとおりであって,原判決の認定は,全て誤りである。

a 被控訴人の主張の不合理さ

ノズル部材を生地に進入させずに,その下端部を生地の中心部分に形成された窪

みに当接させる被控訴人の主張する方法では,生地の硬さや内材の種類によって正

常に成形することができない場合があるから,被控訴人の主張は事実に反するもの

であり,ノズル部材を被控訴人主張よりも深く進入させているはずである。

b 甲16,17の実験の結果

本件実験(甲16,17による実験)のとおり,被告装置1においても,顧客の

ニーズに応じてノズル部材を開口部に対して深く進入させるよう設計していること

は明らかである。

本件実験(特に実験C)は,生地の種類及び内材の種類の組合せいかんによって,

正常に成形するために必要な押し込み深さが異なるという,単純かつ常識的な事実

を確認したものであって,そのこと自体は,どのような実験装置を用いようとも変

わりはない。そして,このことを前提として,被告装置においても,生地の種類及

び内材の種類の組合せいかんによっては,ノズル部材先端を載置部材の下面から1

oより深く下降させる必要がある。原判決は,同実験において条件によっては正常

に成形できた事実が存在することを不当に無視し,被告装置そのものでないとの理

由でこの実験結果を採用できないとしたが,その判断は,実験の目的趣旨に沿わな

い誤った判断である。

本件実験に用いた装置は,ノズル部材も支持部材も,設計図に基づいて忠実に再

現されたもので,これらの部材をどのタイミングでどの位置に位置決めするかにつ

いても,被告装置の成形方法を忠実に再現しているから,本件実験に用いた装置は,

被告装置1に備え付けられた場合と同様にこれらの部材が適切に作動することは明




らかである。

本件実験において,支持コンベヤの動作を忠実に再現しており同じ速度に設定さ

れている。

原判決は,外皮材(生地)の種類及び内材の種類の組合せいかんによって正常に

成形するために必要な押し込み部材(ノズル部材)の下降位置が異なることについ

て,全く認識を欠いている。

本件実験では,1oの深さでは生地の硬さや内材の違いによって安定して包み込

み成形ができないことを実証しており,この実験結果は生地の状態によっては生地

にかかる張力が均一にならないことを明示するものである。すなわち,生地の形状

は,1枚1枚微妙に異なっており,内材を供給する前に位置調整した際に形状が変

化し,全体の厚みは不均一になっている。また,時間経過とともに生地の特性は変

化していくことを考慮すれば,同じように内材を供給したとしても内材の吐出圧力

で生地の厚みの薄くなっている部分や湾曲している部分に圧力が不均一に加わるよ

うになって,生地全体に均一な張力が加わることはない。

以上のとおり,被告方法1におけるノズル部材は,その下端部を生地の中央部分

に形成された窪みに当接させる状態で停止するだけのものではなく,外皮材の種類

と内材の種類の組合せによっては更に生地に深く進入するものであって,ノズル部

材によって生地が椀状に形成されるものである。

c 被告装置1の構成を確認し,かつ同装置に設けられたノズル部材の昇降位置

を調整して内材を生地により包み込み封着する事実実験(甲26)の結果

上記事実実験の対象である装置は,被告装置1である。

上記事実実験によれば,被告装置1において,ノズル部材を載置部材の開口部に

進入させた場合に,載置部材の開口部下面からノズル部材が最も下降した状態にお

けるノズル部材の先端に固定された口金の下面位置までの深さは7oであり,ノズ

ル部材をこの位置まで進入させて内材を生地により包み込み封着することができる

のであるから,被控訴人の,ノズル部材の下面が載置部材の下面から最大でも1o




しか突出することができない構造となっているとの主張は,明らかに事実に反して

いる。しかも,被告装置1においては,ノズル部材は,支持枠体から簡単に取り外

すことができ,顧客の要望に合わせて,ノズル部材自体を長いものに交換できるよ

うになっている。筒状の本体に螺合されたノズル部材の口金を交換し,口金の交換

に対応して内部に設けられた弁部材を交換することが可能であり,載置部材も開口

径が異なる4枚が用意され顧客の必要とする成形品のサイズにより交換可能な構造

になっている。そして,部材を交換することにより,載置部材の開口部下面からノ

ズル部材が最も下降した状態におけるノズル部材の先端に固定された口金の載置部

材下面位置までの深さは15oとすることが可能である。ノズル部材の下降位置を

10oとすることにより,極めて硬く,凝集性・弾力が低く伸びにくいデニッシュ

生地ですら内材を包み込み封着できる。

外皮材である「パン生地の硬さ,伸びやすさ,弾力,復元力などの物性」は,使

用する原料小麦粉の特性,加水量や,配合する油脂や食塩,糖類などの割合,発酵

や熟成の時間,生地の温度などの様々な条件で異なるから(甲23),本件発明に

係る食品のシート状の外皮材に内材を包み込み成形する方法・装置において,良好

な包み込みをするためには,外皮材と内材の組合せに対応してノズル部材の下降位

置を設定して椀状の深さをどの程度にするかを決めることが必要である。ノズル部

材の昇降位置を調整して内材を生地により包み込み封着する実験によれば,被告装

置1の構成を備えた対象装置では,ノズル部材の下降位置を設定できる下限の7o

にすることにより初めてその実用的価値が認められるのであって,この点からみて

も,被告装置1の下降位置が最大1oであるとする被控訴人の主張は,装置の実用

的な性能を無視した誤った主張であることが明確である。しかも,簡単な手作業で

ノズル部材は支持枠体のネジを緩めて取り外し,これを分解してエアシリンダの駆

動ロッドの先端部にネジ止めされた棒状の樹脂製ジョイントをより長いものに交換

し,ノズル部材本体に螺合されている樹脂製の口金の中央部の長さをこれに対応し

た長さのものと交換すれば,ノズル部材を下限の7oより更に下降させることがで




き,ノズル部材の下降位置を10oにした場合には,極めて硬く柔軟な内材を包み

込みにくいデニッシュ生地ですら,3個の成形品とも漉し餡もカスタードクリーム

も完全に包み込むことができたのである(甲26,27)。

(イ) 「押し込み部材」の解釈について

a 本件発明1において,押し込み部材を外皮材を保持する受け部材の開口部に

進入させて外皮材を椀状に形成する構成が採用されているのは,その状態で押し込

み部材を通して内材を供給し,シャッタを閉じて確実に内材を包み込み成形するた

めである。その場合,押し込み部材をどの程度受け部材の開口部に進入させるか,

すなわち,椀状の深さをどの程度にするかは,外皮材の種類と内材の種類の組合せ

によって決められる(甲23,24)。

b 外皮材を「椀状に形成する」ことは,内材供給及び封着のための成形品を正

常に成形するために行う準備動作であるから,押し込み部材をどこまで深く進入さ

せなければならないかは,外皮材の種類及び内材の種類との組合せによって適宜,

当業者が調整すればよいことである。それにもかかわらず,被告装置において,ノ

ズル部材を単に生地に当接されるのみで生地に対して圧力を加える「押し込み」を

全く行わない構成を採用しているとすれば,生地が比較的柔らかく内材が比較的硬

い場合は包み込み成形は可能であるが,それ以外の生地と内材の種類の組合せに対

応して種々の食品の包み込み成形ができないことになり,著しく実用性に欠け,そ

のような製品をユーザーが購入して使用するとは到底考えられない。

c さらに,本件発明の特許請求の範囲には,「椀状に形成する」とのみ規定し,

それ以上に椀状の具体的態様を限定していないし,発明の詳細な説明にも「椀状に

形成する」を定義した記載はない。また,外皮材を弾性に富む外皮材に限定する記

載はない。

d したがって,構成要件1Dの「押し込み部材を…受け部材の開口部に進入さ

せて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成する」は,「押し込

み部材を深く外皮材に進入させ,外皮材の縁部周辺を伸ばしながら外皮材を椀状に




形成する」構成に限定される根拠はない。

e また,特許請求の範囲に記載された技術用語の意味は,当該技術分野におい

て当業者が理解し認識するところに基づいて解釈すべきものであって,原判決のよ

うに広辞苑(乙30)の記載に基づいて判断すべきことではない。

特許技術用語としては,「椀状」は,湾曲した窪みを意味し,その窪みが深いか

浅いかを問わず「椀状」という用語が使われており,椀状の具体的態様を限定して

いない本件発明においては,窪みが浅いという理由のみで「椀状」に含まれないと

することができないことは明らかである。

f 本件明細書の発明の詳細な説明のとおり(【0009】【0060】),

「外皮材が必要以上に下方へ伸びてしまうこと」を防ぐことは,外皮材を支持部材

で支持するとの構成を採ったことの作用効果である。押え部材を外皮材の縁部に押

し付けて外皮材を受け部材上に保持することや,押し込み部材を更に下降させるこ

とにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮

材を椀状に形成することは,「外皮材が必要以上に下方へ伸びてしまうこと」を防

ぐこととは直接の関係がない。また,外皮材が必要以上に下方に伸びることは「防

ぐ」ことができればよいのであり,生地及び内材の種類によってそもそも押し込み

部材を受け部材の開口部に深く進入させる必要がない場合は,外皮材が必要以上に

下方に伸びることを防止するという課題が生じないだけのことである。

さらに,本件明細書(【0061】)の記載から明らかなように,「押し込み部

材の上昇に伴い外皮材が収縮する」のを防ぐことは,押し込み部材を上昇させると

同時に押し込み部材を通して内材を供給することの作用効果である。したがって,

「押し込み部材の上昇に伴い外皮材が収縮する」のを防ぐことと,押し込み部材を

更に下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口

部に押し込み外皮材を椀状に形成することとは,直接の関係はない。「押し込み部

材の上昇に伴い外皮材が収縮する」のを防ぐことは,押し込み部材を上昇させると

同時に押し込み部材を通して内材を供給することの作用効果であり,しかも,外皮




材が「弾性に富む食材」である場合(【0061】)に限定された効果である。し

かるに,「押し込み部材を上昇させると同時に」押し込み部材を通して内材を供給

することは,本件発明の構成要件ではない。つまり,「押し込み部材の上昇に伴い

外皮材が収縮する」のを防ぐことは本件発明の実施例の作用効果であって,本件発

明自体の作用効果ではないのである。

したがって,原判決の認定判断は,単なる実施例の作用効果にすぎないことをも

って本件発明の構成要件の解釈を行うという誤りを犯している。

g 以上より,本件発明1における押し込み部材が「外皮材が必要以上に下方へ

伸びてしまうこと」及び「押し込み部材の上昇に伴い外皮材が収縮するのを防ぐ」

必要がある程度に,深く外皮材に進入し,外皮材の縁部周辺を伸ばしながら外皮材

を椀状に形成することを想定しているとの原判決の認定判断は,本件明細書の記載

を誤認したことに基づくものであって,誤りである。

h 本件発明1において,押し込み部材を外皮材を保持する受け部材の開口部に

進入させて外皮材を椀状に形成する構成が採用されているのは,その状態で押し込

み部材を通して内材を供給し,シャッタを閉じて確実に内材を包み込み成形するた

めである。本件発明の特許請求の範囲には,「椀状に形成する」とのみ規定し,そ

れ以上に椀状の具体的態様を限定していないし,発明の詳細な説明にも「椀状に形

成する」を定義した記載はない。しかるに,原判決が「椀状に形成する」を,外皮

材を成形品の高さと同程度の深さに「椀」形の形状に形成するものを意味すると定

義したのはその根拠を欠き,本件発明1における「押し込み部材」の技術的意義

看過誤認したことに基づく誤った解釈である。

(ウ) 小括

本件発明において押し込み部材によって外皮材を「椀状に形成する」ことは,特

請求の範囲の記載からみて,後の内材供給及び封着工程のための準備動作工程で

あることは明らかであり,したがって,「椀状に形成する」ことの意義は,後の内

材供給及び封着工程を正常に行うことのできる程度まで生地を押し込んで変形させ




ることを意味し,かつそれで足りると解釈すべきである。原判決は,外皮材(生

地)の種類及び内材の種類の組合せいかんによって正常に成形するために必要な押

し込み部材(ノズル部材)の下降位置が異なることについて,本件発明1における

「押し込み部材」の技術的意義を看過誤認し,誤った解釈をしたものである。

そして,被告装置1は,ノズル部材(押し込み部材に相当する)を載置部材(受

け部材に相当する)の開口部に進入させて生地(外皮材に相当する)の中央部分を

開口部に押し込みノズル部材の下降位置を7oに設定して生地を椀状に形成するこ

とができる構成であり,この構成により内材を生地に配置し,シャッタを閉じて確

実に内材を包み込むことができるから,この装置を用いて食品の包み込み成形を行

う被告方法1は,本件発明1の構成要件1Cないし1Eを充足する。

したがって,被告装置1におけるノズル部材は,本件発明1の「押し込み部材」

に当たり,被告方法1は,本件発明1の全ての構成要件を充足する。

イ 被告方法2,3が構成要件1Cないし1Eを充足すること

前記アと同様に,被告方法2及び3は,ノズル部材(押し込み部材に相当する)

を載置部材(受け部材に相当する)の開口部に進入させて生地(外皮材に相当す

る)の中央部分を開口部に押し込みノズル部材の下降位置を7oに設定して生地を

椀状に形成することができる構成であることにおいては,被告方法1と同一である。

なお,被告装置2及び3においても,ノズル部材は,甲26の対象装置と同様に包

み込み封着を行うように構成されているから,これと同様にノズル口金及び内部の

弁部材が交換可能に構成されていることは明らかであり,これによりノズル部材の

下降位置を更に下降させることが可能な構成である。

したがって,被告装置2及び3におけるノズル部材は,本件発明1の「押し込み

部材」に当たり,被告方法2及び3は,本件発明1の全ての構成要件を充足する。

(2) 均等論による本件特許権1の間接侵害の成否

仮に,被告方法1ないし3におけるノズル部材は,同部材の下端部を生地の中央

部分に形成された窪みに当接させる状態で停止し,又は,せいぜい,同部材の下端




部を生地に接触させ,生地を同部材の下端部の形状に沿う形にわずかに窪ませる程

度の状態で停止するものであるのに対し,本件発明1における「押し込み部材」は,

深く外皮材に進入し,外皮材の縁部周辺を伸ばしながら外皮材を椀状に形成するも

のであるとしても,均等論の適用により被告装置1ないし3におけるノズル部材は,

本件発明1の構成要件1Cないし1Eの構成における「押し込み部材」の構成と均

等なものとして,その技術的範囲に属する。

均等論の第1要件(置換された構成が特許発明の本質的部分でないこと)に

ついて

特許発明の本質的部分」とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成の

うちで,当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的な部分,言い換えれ

ば,上記部分が他の構成に置き換えられるならば,全体として当該特許発明の技術

的思想とは別個のものと評価されるような部分をいう。

本件発明1は,食品のシート状の外皮材に内材を包み込み成形する方法に係る発

明であって,受け部材の上方に配置された複数のシャッタ片に,「外皮材が所定位

置に収まるように位置調整」すること(構成要件1B)と,「外皮材の周縁部を内

材を包むように集めて封着」すること(構成要件1F)の相異なる2つの機能を持

たせることを特徴とする。すなわち,本件発明1の本質的特徴は,シャッタに位置

調整と封着の機能を兼ね備えさせる点にあり,この構成により,外皮材に形状のば

らつきや位置ずれがあっても,封着時に外皮材により確実に内材を包み込み成形す

ることができ,かつ食品の包み込み成形に必要な動作を1か所で完了することがで

き,装置構成の簡素化を図ることができる(【0005】)という従来技術では果

たせなかった優れた作用効果を奏するものである。

したがって,本件発明1の本質的部分は,構成要件1B及び1Fであって,構成

要件1Cないし1Eにおける押し込み部材の構成は本質的部分ではない。このこと

は,本件発明に係る審決取消訴訟の判決の判示からも明らかである。

本件発明において押し込み部材によって外皮材を「椀状に形成する」ことは,特




請求の範囲の記載からみて,後の内材供給及び封着工程のための準備動作工程に

すぎず,その意義は,後の内材供給及び封着工程を正常に行うことのできる程度ま

で生地を押し込んで変形させることを意味するものであって,本件発明の本質的部

分には当たらない。

よって,被告方法1ないし3は,均等論の第1要件を満たす。

均等論の第2要件(置換可能性)について

被告方法1ないし3におけるノズル部材の構成は,本件発明の本質的特徴とは関

係がない部分であって,本件発明の押し込み部材をノズル部材に置き換えても,本

件発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏するものである。本件発

明において,押し込み部材を外皮材を保持する受け部材の開口部に進入させて外皮

材を椀状に形成する構成が採用されているのは,その状態で押し込み部材を通して

内材を供給し,シャッタを閉じて確実に内材を包み込み成形するためである。

「押し込み部材の上昇に伴って外皮材が収縮するのを防ぐことができる」との作

用効果(【0010】)は,押し込み部材を上昇させると同時に押し込み部材を通

して内材を供給することの作用効果であり,本件発明の実施例の作用効果であって,

本件発明自体の作用効果ではない。仮に本件発明の作用効果であるとしても,外皮

材が収縮するのを防ぐことは,弾性の多い外皮材を用いた場合にのみ生じる課題で

あって,内材の吐出圧力によって外皮材が膨張するような弾性の少ない柔軟な外皮

材を用いた場合(パン生地のうちでも餡パンのように弾性が少なく柔軟な材料を外

皮材として用いるときは,外皮材の縁部を押え部材で保持した状態で,押し込み部

材を受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部を開口部に僅かに押し込めば内

材の吐出圧力で膨らむ。)には,外皮材の収縮防止という課題は生じないから,置

換可能性の判断に当たり特に考慮を要しない。上記【0010】の記載は,外皮材

がパン生地のうちでもフランスパンのように弾性に富む材料であるときは,その復

元力で元に戻ろうとする傾向が強いので,この復元力に対抗するためには内材の吐

出圧力を高くしなければならないところ,吐出圧力を高くしすぎると外皮材が破れ




るおそれがあるので,押し込み部材を深く押し込んで外皮材の復元力を考慮しつつ,

押し込み部材を引き上げながら内材の吐出を行う必要があることに対応するもので

ある。

また,「より安定的に外皮材を戴置することができると共に,受け部材と保持手

段の押え部材とにより外皮材を確実に押さえ保持することができる」(【001

1】)は,被告方法が共通に奏する効果であり,「受け部材の開口部に押し込み部

材を進入させることによって,受け部材の開口部を利用して外皮材を椀状形成する

ことも可能となる」(【0011】)は,被告方法のように外皮材の縁部を押え部

材で保持した状態で,押し込み部材を受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央

部を開口部に僅かに押し込めば外皮材の形状を中央部分が窪んだ椀状に形成するこ

とによっても奏する効果であって,押し込み部材を深く外皮材に進入させることに

よってのみ奏する効果ではない。

そうすると,本件発明の押し込み部材を被告方法におけるノズル部材と置き換え

ても,本件発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏する。

したがって,被告方法1ないし3は,均等論の第2要件を満たす。

均等論の第3要件(置換容易性)について

本件発明において,押し込み部材によって外皮材を「椀状に形成する」ことは,

特許請求の範囲の記載から,後の内材供給及び封着工程のための準備工程であるこ

とは明らかであり,したがって,押し込み部材によって外皮材を「椀状に形成す

る」ことの意義は,後の内材供給及び封着工程を正常に行うことのできる深さまで

生地を押し込んで変形させることを意味するから,外皮材の生地の弾性の程度や硬

軟に応じて,押し込み部材を外皮材の中心部から受け部材の開口部に僅かに押し込

む構成にすることは当業者にとって容易に想到し得たことである。

したがって,被告方法1ないし3は,均等論の第3要件を満たす。

均等論の第4要件(非公知技術)について

被告方法が本件特許の出願時における公知技術と同一,又は当業者がこれから容




易に推考できたものであるという事実はない。

被告方法は,食品の包み込み成形装置において,受け部材の上方に配置された複

数のシャッタ片に「外皮材が所定位置に収まるように位置調整」することと,シャ

ッタを閉じ動作させることにより「外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封

着」することの相異なる2つの機能を持たせることを特徴とし,しかも外皮材の位

置調整から成型品の搬送までの一連の工程を,受け部材の周辺スペースの1箇所で

行うことができるため,小型化と生産効率を高めることができるという本件発明の

本質的機能を全て備えているものであって,本件特許の出願時における公知技術

同一,又は当業者がこれから容易に推考できたものではない。

したがって,被告方法1ないし3は,均等論の第4要件を満たす。

均等論の第5要件(意識的限定)について

被告方法が本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外された

などの特段の事情はない。

したがって,被告方法1ないし3は,均等論の第5要件を満たす。

カ 小括

以上のとおり,被告方法1ないし3は,均等論の要件を全て満たし,上記以外の

本件発明1の構成要件を全て充足することについては,原判決の認めるところであ

るから,本件発明1の技術的範囲に属する。

(3) 本件特許権2の侵害の成否

ア 前記(1)と同様に,被告装置1ないし3におけるノズル部材は,本件発明2

の「押し込み部材」に当たり,被告装置1ないし3は,本件発明2の全ての構成要

件を充足する。

イ 仮に,そうでないとしても,前記(2)と同様に,被告装置1ないし3におけ

るノズル部材は,本件発明2の構成要件2Dの構成における「押し込み部材」の構

成と均等なものとして,その技術的範囲に属する。

(4) 損害額




被控訴人の主張を認める。

〔被控訴人の主張〕

(1) 本件特許権1の間接侵害の成否

ア 被告方法1について

(ア) 被告方法1

被告装置1の構成は,原判決別紙3−1被告装置目録(被告主張)1の記載のと

おりであり,これを分説すると,原判決別表3「被告主張の被告装置・被告方法」

被告装置1・被告方法1の構成1(a)ないし1(h)(以下「被控訴人主張の構成1

(a)」などという。)であって,原判決の認定判断に誤りはない。

a 甲16,17について

被告装置1は,種々の生地や内材の組合せに対し,ノズル部材の先端を生地の窪

みに当接させれば,支持コンベヤの調節,ノズル部材と生地押え部材の昇降動作や

内材の吐出圧等を調節することによって,正常に椀状形成され,内材を生地で封着

させるから,これを否定するためには,被告装置1は,ノズル部材を載置部材から

1oより深く下降させなければ,各種の調節をしても正常に椀状形成できないこと

を立証する必要があり,被告装置1を用い,生地及び内材も同じものを用い,同じ

方法で実施しなければ,実験する意味がない。他の装置や材料,方法を用いた場合

には,上記した実施と同等であることを立証しなければならない。

甲16,17は,被告装置の動作及び構造を正確に実験したものでなく(乙3

6),被告装置は実用性に欠けるものではない。

b 甲26について

控訴人の甲26による主張立証は,故意又は重大な過失により時機に後れて提出

した攻撃防御の方法であるというべきであるから,却下されるべきものである。

被控訴人は,甲26の実験の対象とした製品はもともと被控訴人が第三者に販売

したものであろうと推測するが,控訴人が,元は被告装置であったものについてそ

の主張に適合させようとして改造を加え,この改造品について文言侵害ないしは均




侵害の成立の主張立証をしようとするものである。控訴人が被告装置そのものに

ついて実験したというのならばともかく,控訴審になってから,改造品を作ってま

でして実験をしたのである。甲26の実験は,本件発明内容の解釈を誤ったことに

よる実験でもあると解される。

しかし,被控訴人が組立指図に基づいて組み立て,納入検収業務の際に調整した

状態で,被告装置の購入会社で使用されている製品においては,ノズル部材の下面

が載置部材の下面より1o突出した位置を最下点とし,これ以上下降させることが

できない構成となっているのである。

すなわち,元もとの被告装置は,型式「0N168」のものであって,平成21

年に製造した2号機以降の型式0N168の1列VMインクラスタは,ノズル部材

の下面が載置部材の下面より1o突出した位置を最下点とし,これ以上下降させな

い構造となっている。また,被控訴人は,被告装置を納入引渡しする際には,当社

の専門部門の社員が購入会社の工場を訪問し,その機械で購入会社が希望する製品

(食品)が製造できることを確認した後に,検収してもらっている。その際,ノズ

ル部材上下位置調整ハンドルに取付けられたデジタルインジケータの値は,「00

00」あるいはそれより大きな数値(最下点より上方の位置を示す数値)になって

おり,ノズル部材の最下点は,載置部材の下面より1oであり,それ以上下降した

状態で使用されるということはない。納入後の調整でも,ノズル部材の最下点を更

に下降させるようなものは一切入っておらず,購入会社は,製品の納入時に被控訴

人が設定及び指導した内容に基づき機械を使用している(乙41,42)。

(イ) 押し込み部材の解釈

a 押し込み部材を開口部に進入させて,その状態で押し込み部材を通して内材

を供給するという主張は,明細書の記載に基づかない。

b また,甲23,24は,被告装置の認定には何らの影響もないものである

(乙36)。被告装置においては,食品を正常に成形するために,生地の厚さ,性

状,弾性,生地の張力と内材の吐出圧との関係等に即して,支持コンベヤを調節し




たり,生地の厚さや性状に対応してノズル部材と生地押え部材との昇降動作や吐出

圧等を調整可能にすることによって対処しているのであって,本件発明のように,

押し込み部材を押し込んで外皮材を椀状に形成しているのとは異なるのである。

c 本件明細書には,「椀状」について定義されておらず,「椀」の普通の用語

例に従う図面が図示されている。そうであれば,「椀状」の意義は,原判決のとお

り,その有する普通の意味に解釈される。控訴人が提出する甲21には,「椀状」

の前に「平たい」という形容詞が付されているし,甲22は,本件発明の技術分野

に関する文献ではない。

d また,押し込み部材が窪みに当接させる程度にしか下降しなければ,外皮材

は下方に伸びるはずもないが,本件明細書の記載(【0009】)のとおり,押し

込み部材を深く侵入させるから,「外皮材が必要以上に下方へ伸びてしまうこと」

を防ぐために,外皮材を支持部材で支持することが必要になるのである。同様に,

押し込み部材を深く進入させるから,「押し込み部材の上昇に伴って外皮材が収縮

するのを防ぐ」ことが必要となり,押し込み部材を上昇させると同時に押し込み部

材を通して内材を供給することにより解決できるのである(【0010】)。

e そして,本件明細書の記載によれば,構成要件1C及び1Dの技術的意義は,

原判決の判示するとおりである。

(ウ) 小括

被告方法1のノズル部材が本件発明1の「押し込み部材」に当たらないこと及び

被告方法1が本件発明1の全ての構成要件を充足するものでないことは,原判決が

判示するとおりである。

イ 被告方法2,3について

上記アと同様であり,原判決の判断に誤りはない。

(2) 均等論による本件特許権1の間接侵害の成否

ア 時機に後れた主張

控訴人は,平成21年1月16日,被控訴人に対し,本件訴訟を提起し,同年3




月5日の第1回口頭弁論期日以降,弁論及び弁論準備手続等が行われ,平成22年

8月31日に弁論が終結され,同年11月25日原判決が言い渡された。本件訴訟

は,当初から文言侵害の成否について争いがあって,双方からその主張立証が行わ

れたところ,控訴人としては,その間,均等論の主張をする機会は十分にあった。

しかも,控訴人は,原審裁判所の心証開示後に準備書面を提出し,原審裁判所が均

等論の主張をしているのかとの釈明をしたのに対し,その主張はしていない旨述べ

た。

以上のような経緯に照らすと,当審においてした均等論の主張は,故意又は重大

な過失により時機に後れて提出した攻撃防御の方法というべきであって,却下され

るべきものである。

均等論の適用対象

控訴人は,均等論の対象を「ノズル部材」は,同部材の下端部を生地の中央部分

に形成された窪みに当接させる状態で停止し,又は,せいぜい,同部材の下端部を

生地に接触させ,生地を同部材の下端部の形状に沿う形にわずかに窪ませる程度の

状態で停止するものであるのに対し,本件発明1及び2における「押し込み部材」

は,深く外皮材に進入し,外皮材の縁部周辺を伸ばしながら外皮材を椀状に形成す

るものであるということに限定しようとしている。しかしながら,本件発明1及び

2における「押し込み部材」は,@深く外皮材に進入し,外皮材を成形品の高さと

同程度の深さに「椀」状に形成し,A同部材を上昇させながら,形成された椀状の

部分の中に内材が吐出されるものであるのに対し,被告装置における「ノズル部

材」は,@下端部を生地の中央部分に形成された窪みに当接させる状態で停止させ,

A停止した状態で,ノズル部材から内材を供給することにより,内材の吐出圧によ

って生地を椀状に形成するものである。したがって,本件発明1に即していえば,

構成要件1Dの椀状形成だけでなく,構成要件1Eの押し込み部材を通して内材を

供給することも相違点であり,この点も,均等論の対象とすべきである。

均等論の第1要件(置換された構成が特許発明の本質的部分でないこと)に




ついて

(ア) 本件出願は,分割出願であるところ,原出願(特願2001−24820

4号)も,登録されている(乙37)。本件発明と原出願に係る発明とは,従来技

術では,外皮材が楕円形状であったり,成形位置からずれた位置に外皮材が供給さ

れた場合には,外皮材を封止できない,外皮材がシャッタの上方にはみ出るおそれ

がある,工程や装置機構が複雑化するなどの難点があったので,外皮材に形状のば

らつきや位置ずれがあっても,封着時に外皮材により確実に内材を包み込み成形す

ることができ,構成を簡素にすることを目的とするものである点で,共通している。

原出願(乙37)においては,外皮材に形状のばらつきや位置ずれがあっても,

封着時に外皮材により確実に内材を包み込み成形することができるという目的を達

成する構成要件は,各シャッタ片の前縁部よりも遅れて閉鎖する後縁部によって外

皮材の周縁部を封着するというものであり,シャッタ片の前縁部同士または斜面部

同士を閉鎖させた状態で,外皮材の周縁部を後縁部で封着することが可能となるか

ら,前記目的を達成することができるのである(【請求項1】【請求項8】【00

79】)。これに対し,本件発明の特許請求の範囲には,各シャッタ片の前縁部よ

りも遅れて閉鎖する後縁部によって外皮材の周縁部を封着するという構成要件は記

載されていないが,早期審査に関する事情説明書(乙39)において,控訴人は,

本件明細書に記載された特許文献1ないし特許文献3との対比説明として,本件発

明は,特許請求の範囲に記載された構成を備えることで,外皮材に形状のばらつき

や位置ずれがあっても,封着時に外皮材により確実に内材を包み込み成形すること

ができる旨主張している。本件明細書の記載(【0002】〜【0004】)及び

控訴人の上記主張を参酌すると,本件発明においても,上記目的を達成することが

課題であると解される。

本件発明は,原出願の明細書記載の第三実施形態から,請求項1及び請求項2に

記載された構成要件を抽出したものであることが分かる(乙38)。

(イ) 本件明細書の記載(【0008】)のとおり,構成要件1Bの「シャッタ




片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるよ

うに位置調整し」の効果は,「外皮材の形状のばらつきや位置ずれが予め修正され,

より確実な成形処理を行なうことが可能となる」というものであって,「封着時に

外皮材により確実に内材を包み込み成形することができる」(【0005】)とい

うものではない。「封着時に外皮材により確実に内材を包み込み成形することがで

きる」(【0005】)ようにするためには,外皮材の形状のばらつきや位置ずれ

を予め修正するだけでは足りず,「外皮材を椀状形成する際に外皮材の縁部を押え

部材により保持するので,外皮材がパン生地等の弾性に富む食材であっても,外皮

材の縁部周辺を伸ばしながら椀状に形成することができ,たとえ多少外皮材の形状

・大きさがばらついていたり,位置ずれがあったとしても,外皮材を確実に椀状形

成することができる。このとき,外皮材を支持部材で支持するようにすれば,外皮

材が必要以上に下方へ伸びてしまうことを防ぐことができる。」,「押し込み部材

を通して内材を供給しているので,押し込み部材の上昇に伴って外皮材が収縮する

のを防ぐことができると共に,外皮材の形状形成と内材の供給を短時間に効率良く

行なうことが可能となる。このとき,外皮材を支持部材で支持しているので,内材

の吐出による外皮材の必要以上の伸びを防ぐことができ,内材を確実に外皮材の内

側に配置することができる」,「シャッタの下方に設けた受け部材上に外皮材を供

給しているので,より安定的に外皮材を戴置することができると共に,受け部材と

保持手段の押え部材とにより外皮材を確実に押え保持することができ,さらに受け

部材の開口部に押し込み部材を進入させることによって,受け部材の開口部を利用

して外皮材を椀状形成することも可能となる」という構成及び効果も必要なのであ

る(【0009】〜【0011】)。

これらの構成を備え,効果を有することにより,外皮材の形状・大きさがばらつ

いていたり,位置ずれがあったとしても,外皮材を確実に椀状形成することができ,

外皮材の必要以上の伸びや収縮を防いで内材を確実に外皮材の内側に配置すること

ができるので,構成要件1Fにより,「封着時に外皮材により確実に内材を包み込




み成形することができる」という目的を達成することができるのである。

そうすると,本件発明の課題である「封着時に外皮材により確実に内材を包み込

み成形することができる」という目的を達成するためには,構成要件1Aないし1

Gを有する食品の包み込み成形方法である必要があるのであって,特に,外皮材を

確実に椀状形成するための構成要件である構成要件1C,1D,並びに外皮材の必

要以上の伸びや収縮を防いで内材を確実に外皮材の内側に配置するための構成要件

である構成要件1E,1Fの前半部分は,課題解決のために必須の構成要件といえ

るから,本件発明の本質的部分であることは明らかである。

(ウ) よって,控訴人の,本件発明1の本質的部分は構成要件1B及び1Fであ

る旨の主張は誤りである。

(エ) なお,「押し込み部材を通して内材を供給しているので,押し込み部材の

上昇に伴って外皮材が収縮するのを防ぐことができる」ことは,本件発明の効果で

あり(【0010】),実施例の効果として記載されているのではない。構成要件

1Eは,「押し込み部材を上昇させながら」という文章が省略されていると解する

のが相当である。

また,控訴人は,本件発明1の本質的部分は構成要件1B及び1Fであることは,

審決取消訴訟の判決からも明らかである旨主張する。しかし,上記判決は,本件発

明における「位置調整」は,開口状態で規定されるところの所定位置(所定範囲

内)に外皮材を収めることにより,外皮材を椀状形成する際に外皮材の縁部を押え

部材により保持することが可能になるので,外皮材がパン生地等の弾性に富む食材

であっても,外皮材の縁部周辺を伸ばしながら椀状に形成することができ,外皮材

を確実に椀状形成することができるなど,その後に続く椀状に形成する工程や封着

する工程を踏まえて行われるものであって,後の工程と密接に関連したものである

ことを,「その後に続く椀状に形成する工程や封着する工程との関連が強く,その

後の椀状に形成する工程や封着する工程にとって重要な工程である外皮材の位置調

整」と判示しているのであって,「外皮材の位置調整」に係る構成要件のみが,本




件発明の本質的部分であると判示しているのではない。

よって,被告方法1ないし3は,均等論の第1要件を満たさない。

均等論の第2要件(置換可能性)について

(ア) 控訴人は,「押し込み部材の上昇に伴って外皮材が収縮するのを防ぐこと

ができる」との作用効果は,押し込み部材を上昇させると同時に押し込み部材を通

して内材を供給することの作用効果であり,本件発明の実施例の作用効果であって,

本件発明自体の作用効果ではないと主張したいのであろうが,本件明細書の記載に

反するもので誤りである。

また,本件明細書において,【0010】に記載された事項は,発明の効果であ

って,その発明は本件発明にほかならない。さらに,本件明細書の実施形態を参酌

すると(【0055】〜【0066】),本件明細書の唯一の実施形態には,本件

発明の効果である「押し込み部材の上昇に伴って外皮材が収縮するのを防ぐことが

できる」(【0010】)ということを裏付けるような記載がされており,控訴人

主張のような,押し込み部材を進入させた「その状態」,すなわち,その位置で,

押し込み部材を通して内材を供給する旨の記載はなく,示唆もない。したがって,

本件発明の実施の形態を参酌しても,「押し込み部材の上昇に伴って外皮材が収縮

するのを防ぐことができる」というのは,本件発明の作用効果にほかならない。

(イ) 控訴人は,原審において,本件発明1においては,押し込み部材の下降に

よって,外皮材(生地)が押し込み部材の先端形状に沿った一定の形状に形成され

ることを「椀状に形成する」と呼んでおり,椀状に形成された後に,供給された内

材の圧力によって外皮材(生地)が内側から膨張することは本件発明1における

「椀状に形成」とは関係がないこと,及び,フランスパン用の生地のように生地が

硬い場合には,内材の圧力だけでは生地の膨張の程度はわずかであり,生地の種類

や内材の種類・量によらずいかなる場合にも大きく膨張するということは技術的に

あり得ないと主張していた。

本件発明においては,請求項の記載から明らかなように,外皮材には生地が柔ら




かいもの,生地が硬いものなど,どのような性状の外皮材も包含されるところ,原

審における控訴人の上記主張によれば,どのような性状の外皮材であれ,押し込み

部材の下降によって,外皮材を押し込み部材の先端形状に沿った一定の形状である

「椀状に形成」に形成するものであるから,押し込み部材を進入させたその状態で

押し込み部材を通して内材を供給することはあり得ない。すなわち,フランスパン

用の生地のように生地が硬い場合に,押し込み部材を進入させたその状態で押し込

み部材を通して内材を供給しようとしても供給できない。したがって,控訴人の上

記主張は,原審における控訴人の主張とも矛盾する。

(ウ) 本件発明においては,請求項の記載から明らかなように,外皮材には生地

が柔らかいもの,生地が硬いものなど,どのような性状の外皮材も包含され,また,

どのような性状の外皮材であれ,押し込み部材の下降によって,外皮材を押し込み

部材の先端形状に沿った一定の形状である「椀状に形成」するものであるから,押

し込み部材を進入させたその状態で押し込み部材を通して内材を供給することはあ

り得ず,押し込み部材を深く押し込んで外皮材を椀状に形成し,押し込み部材を引

き上げながら内材の吐出を行うものであるから,外皮材の性状に応じて置換可能性

の有無を主張する控訴人の上記主張は,意味をなさない。

また,本件明細書には,外皮材の性状に応じて,押し込み部材の動きを異ならせ

るなどの記載は一切ないから,控訴人の上記主張は,明細書の記載に基づかない主

張である。

さらに,外皮材の弾性の少ない柔軟な材料を外皮材として用いた場合には,外皮

材の収縮防止という課題は生じないという控訴人の主張は誤りであり,置換可能性

の判断に当たり特に考慮を要しないという主張は,その前提において誤っている。

したがって,本件明細書の「押し込み部材の上昇に伴って外皮材が収縮するのを

防ぐことができる」というのは,本件発明の作用効果である。

(エ) 本件明細書の記載(【0011】)の効果のうち,受け部材の開口部に押

し込み部材を進入させることによって,受け部材の開口部を利用して外皮材を椀状




形成することも可能となるというのは,押し込み部材を深く進入させることによっ

てのみ奏する効果であるから,控訴人の主張は,誤りである。

このように,本件明細書の【0010】【0011】記載の効果は,本件発明特

有の効果である。

これに対し,被告方法においては,ノズル部材の下端部を生地の中央部分に形成

された窪みに当接させた状態で停止させ,ノズル部材を通して内材を供給しながら

生地を膨張させて椀状に形成するものであるから,本件発明の【0010】【00

11】記載の効果を奏するものではない。

したがって,被告方法1ないし3は,均等論の第2要件を満たさない。

均等論の第3要件(置換容易性)について

(ア) 被告方法においては,外皮材の弾性の程度や硬軟に関係なく,ノズル部材

の下端部を生地の中央部分に形成された窪みに当接させた状態で停止させ,ノズル

部材を通して内材を供給しながら生地を膨張させて椀状に形成するものであって,

控訴人の主張のような,外皮材の弾性の程度や硬軟に応じて,押し込み部材を外皮

材の中心部から受け部材の開口部に僅かに押し込む構成としているものではないか

ら,控訴人の主張は,その前提において誤りである。

(イ) また,本件発明においては,請求項の記載から明らかなように,外皮材に

は生地が柔らかいもの,生地が硬いものなど,どのような性状の外皮材も包含され,

また,どのような性状の外皮材であれ,押し込み部材の下降によって,外皮材を押

し込み部材の先端形状に沿った一定の形状である「椀状に形成」に形成するもので

ある。

(ウ) 本件発明において押し込み部材によって外皮材を「椀状に形成する」こと

の意義は,本件発明が外皮材には生地が柔らかいもの,生地が硬いものを包含する

ものであることに鑑み,フランスパン用の生地のように生地が硬い場合には,内材

の圧力だけでは生地の膨張ができないから,外皮材の性状にかかわらず,押し込み

部材の下降によって外皮材が押し込み部材の先端形状に沿った一定の形状に形成さ




せるようにしたことにある。控訴人主張のような,後の内材供給及び封着工程を正

常に行うことのできる深さまで生地を押し込んで変形させることを意味するという

ような上位概念化された点にあるのではない。

これに対し,被告方法においては,外皮材の弾性の程度や硬軟に関係なく内材の

吐出圧力で外皮材を膨張させることができるという技術知見のもとに,ノズル部材

の下端部を生地の中央部分に形成された窪みに当接させた状態で停止させ,ノズル

部材を通して内材を供給しながら生地を膨張させて椀状に形成するものである。

したがって,両者は,外皮材の椀状形成についての技術知見においてそもそも相

違している。このように,内材の圧力だけでは生地を膨張させることができないと

いう技術知見のもとに押し込み部材の下降により外皮材を椀状に形成するという技

術的思想から,これとは全く反対の,ノズル部材の下端部を生地の中央部分に形成

された窪みに当接させた状態で停止させ,ノズル部材を通して内材を供給すること

により生地を膨張させて椀状に形成するという構成を想到することは,当業者とい

えども到底できないことである。

よって,被告方法1ないし3は,均等論の第3要件を満たさない。

均等論の第5要件(意識的限定)について

控訴人は,本件特許出願の願書に添付した本件明細書(甲4)の背景技術の項に,

特許文献2として実公平7−18299号公報(乙40)を記載している。したが

って,控訴人は,本件特許出願の原出願日である平成13年8月17日以前に,こ

の特許文献2の記載内容を知っていたことを意味する。

特許文献2に記載のアン類押し込み部におけるアン類供給手法と被告方法におけ

る内材供給手法とは,両者は内材を介して生地を椀状に形成する点で,その作用機

序を同じくするものである。被告方法の内材供給手法と作用機序を同じくする特許

文献2記載のアン類供給手法が本件特許出願前に存在し,そのことを控訴人は知っ

ていたのであるから,本件特許出願の際,上記内材を介して生地を椀状に形成する

技術を本件発明の構成とすることもできたのに,この技術を採用することなく,




「押し込み部材を通して内材を供給する」技術に限定しているのであるから,本件

発明は,上記構成要件1Eの構成に意識的に限定しているものというべきであり,

又は,禁反言の法理が適用され,被告装置のように,内材の吐出圧によって内材を

供給する技術をもって,本件発明と均等の範囲内にあると主張することはできない

特段の事情がある。

よって,被告方法1ないし3は,均等論の第5要件を満たさない。

(3) 本件特許権2の侵害の成否

ア 前記(1)と同様であるから,被告装置1ないし3が本件発明2の構成要件

充足しないとした原判決の認定判断は正当である。

イ 前記(2)と同様に,被告装置1ないし3は,本件発明2と均等とはいえない。

(4) 損害額

被告装置2の販売額は5576万2560円,販売利益額は1087万3699

円(利益率19.5%)であり,被告装置3の販売額は7005万6900円,販

売利益額は679万5519円(利益率9.7%)である。

第4 当裁判所の判断

1 本件発明について

(1) 本件発明1の構成要件

本件発明1の構成要件は,以下のとおり分説することができる。

1A:受け部材の上方に配設した複数のシャッタ片からなるシャッタを開口させ

た状態で受け部材上にシート状の外皮材を供給し,

1B:シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所

定位置に収まるように位置調整し,

1C:押し込み部材とともに押え部材を下降させて押え部材を外皮材の縁部に押

し付けて外皮材を受け部材上に保持し,

1D:押し込み部材をさらに下降させることにより受け部材の開口部に進入させ

て外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに外皮材を




支持部材で支持し,

1E:押し込み部材を通して内材を供給して外皮材に内材を配置し,

1F:外皮材を支持部材で支持した状態でシャッタを閉じ動作させることにより

外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着し,

1G:支持部材を下降させて成形品を搬送すること

1H:を特徴とする食品の包み込み成形方法。

(2) 本件発明2の構成要件

本件発明2の構成要件は,以下のとおり分説することができる。

2A:中央部分に開口部が形成されるとともにシート状の外皮材が載置される受

け部材と,

2B:受け部材の上方に配設されるとともに複数のシャッタ片を備えたシャッタ

と,

2C:シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所

定位置に収まるように位置調整するとともにシャッタを閉じ動作させることにより

外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着するシャッタ駆動手段と,

2D:押し込み部材を下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮

材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに押し込み部材を

通して外皮材内に内材を供給する外皮材形成手段と,

2E:外皮材形成手段に設けられるとともに押え部材を外皮材の縁部に押し付け

て外皮材を受け部材上に保持する保持手段と,

2F:受け部材の下方に配設されるとともに支持部材を上昇させて椀状形成され

た外皮材を支持し支持部材を下降させて成形品を搬送する支持手段と

2G:を備えていることを特徴とする食品の包み込み成形装置。

(3) 本件明細書の記載

ア 本件明細書の記載によれば,本件発明は,パン生地,饅頭生地等の外皮材に

よって,餡,調理した肉・野菜等の内材を確実に包み込み成形することができる食




品の包み込み成形方法とこれに用いる食品の包み込み成形装置に関するものである

(【0001】)。

従来技術としては,内材を棒状にしてその外側に外皮材を筒状にしたものを連続

的に形成し,これをシャッタ機構の開閉動作により絞り込んで成形切断することが

行われている。しかし,外皮材としてパン生地等の発酵性の生地を用いる場合には,

筒状形成するときに生地に過度な圧力や捻りなどが加わることから,成形切断後に

生地が十分膨らまなくなり,外皮材が弾力性に乏しい硬い食品になってしまう難点

がある(【0002】)。

外皮材の筒状形成を避けてシート状の外皮材から食品成形を行う方法も提案され

ているが,シート状の外皮材から成形を行う場合,パン生地のような食材は,柔軟

性を有するために外皮材の形状が一定せず,一枚一枚微妙にばらついた楕円形状に

なることが多く,また,粘着性を有することから,搬送途中で位置ずれが生じたり

して正確に成形位置に配置することができないために,外皮材を封止できないこと

が生じやすい(【0003】【0004】)。それを避けるために生地片を大きく

する場合には,生地片の量が多くなるため,封止ゲートを閉じた際に,生地片が封

止ゲートの上方にはみ出るおそれがあり,また,プラグにより外皮材の突出防止を

図る場合にも,プラグを雌型に配置するため工程が増えると共に,外皮材を載置し

た雌型を移動させるなど工程が複雑化し,しかも,多数の雌型を配置する必要から

装置全体が大型化し,装置機構が複雑化する難点があった(【0004】)。

そこで,本件発明は,従来の食品成形方法に上記のような難点があったことに鑑

みてされたもので,外皮材に形状のばらつきや位置ずれがあっても,封着時に外皮

材により確実に内材を包み込み成形することができる包み込み成形方法と構成簡素

な包み込み成形装置を提供することを目的とするものである(【0005】)。

イ 本件発明は,上記の目的のために,請求項1又は請求項2に記載された技術

的事項を採用したもので,それにより,以下のような効果を奏するものである。

(ア) シャッタのシャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小させ




れば,縮小した開口状態に合わせて外皮材をセットすることができ,外皮材が所定

位置に収まるように外皮材の位置調整を行うことができる。このことによって外皮

材の形状のばらつきや位置ずれがあらかじめ修正され,より確実な成形処理を行う

ことが可能となる(【0008】)。

(イ) 外皮材を椀状形成する際に外皮材の縁部を押え部材により保持するので,

外皮材がパン生地等の弾性に富む食材であっても,外皮材の縁部周辺を伸ばしなが

ら椀状に形成することができ,たとえ多少外皮材の形状・大きさがばらついていた

り,位置ずれがあったとしても,外皮材を確実に椀状形成することができる。この

とき,外皮材を支持部材で支持するようにすれば,外皮材が必要以上に下方へ伸び

てしまうことを防ぐことができる(【0009】)。

(ウ) 押し込み部材を通して内材を供給しているので,押し込み部材の上昇に伴

って外皮材が収縮するのを防ぐことができると共に,外皮材の形状形成と内材の供

給を短時間に効率良く行うことが可能となる。このとき,外皮材を支持部材で支持

しているので,内材の吐出による外皮材の必要以上の伸びを防ぐことができ,内材

を確実に外皮材の内側に配置することができる(【0010】)。

(エ) シャッタの下方に設けた受け部材上に外皮材を供給しているので,より安

定的に外皮材を戴置することができると共に,受け部材と保持手段の押え部材とに

より外皮材を確実に押え保持することができ,更に受け部材の開口部に押し込み部

材を進入させることによって,受け部材の開口部を利用して外皮材を椀状形成する

ことも可能となる(【0011】)。

(オ) シャッタの下方に設けた受け部材上に外皮材を供給しているので,シャッ

タの閉じ動作によって受け部材上の外皮材の位置調整を行うことができ,装置構成

を極めて簡素化することができる(【0012】)。

(カ) 外皮材が供給された時点で,外皮材の封着を行うシャッタのシャッタ片を

閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小させることにより,縮小した開口状態

に合わせて外皮材をセットすることができ,外皮材が所定位置に収まるように外皮




材の位置調整を行うことができる点で優れた効果を奏するものといえ,特に,「第

一参考例」のように別途の補助シャッタを設けることなく,封着用のシャッタによ

り達成している点で格別の効果を奏する(【0013】〜【0036】,【図1】

〜【図24】,【0056】,【0066】)。

2 被告方法1による本件特許権1の間接侵害の成否

(1) 構成要件1A,1F,1Gの充足性

被告方法1が,構成要件1A,1F及び1Gを充足することは,当事者間に争い

がない。

(2) 構成要件1Bの充足性

構成要件1Bは,「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮

小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整し」であるところ,被告方法1に

おいて,「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小し,生地が…

開口部を覆い尽くすほぼ同心となる所定位置に収まるように位置調整」する構成が

とられていることは,その限度において当事者間に争いがない(控訴人主張の構成

1b及び被控訴人主張の構成1(b)のとおり)。そして,被告方法1の「開口部を

覆い尽くすほぼ同心となる所定位置」は本件発明1の「所定位置」に相当し,被告

方法1の「生地」は本件発明1の「外皮材」に相当するから,被告方法1における

上記構成は,構成要件1Bを充足する。

イ なお,原判決も,被告方法1が構成要件1Bを充足すると判断したのに対し,

被控訴人は,これを当審における争点とはしない旨述べた。

(3) 構成要件1Cの充足性

構成要件「押し込み部材とともに押え部材を下降させて」の解釈

構成要件1Cは,「押し込み部材とともに押え部材を下降させて押え部材を外皮

材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持し」であるところ,控訴人は,

「押し込み部材とともに押え部材を下降させて」について,押し込み部材と押え部

材が同時に下降する場合のみならず,押え部材の下降が完了する前から押し込み部




材の下降が開始される場合を含むと主張し,被控訴人は,押え部材のみが下降する

場合は含まないと主張する。

「…ともに…」の通常の用語の解釈によれば,押し込み部材と押え部材とが,と

もに,すなわち一緒に下降することと解釈するのが自然ではあるが,構成要件1C

には,押え部材を下降させ,これを外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上

に保持することが記載され,押え部材の役割を中心に記載されている。構成要件

Cに続く構成要件1Dにおいて,押し込み部材が更に下降することが記載されてお

り,本件明細書には,押し込み部材と押え部材とが一緒に下降することの技術的意

義は何ら記載がないことに照らすと,構成要件1Cの「押し込み部材とともに押え

部材を下降させて」は,押し込み部材と押え部材とがいずれも下降することを表し

ているものであって,両者が同時に下降する場合のみならず,押え部材の下降が完

了する前から押し込み部材の下降が開始される場合を含むと解するのが相当である。

イ 被告方法1の構成

被告方法1において,「生地押え部材…を下降させ,生地押え部材を生地の縁部

に押し付けて生地を載置部材上に保持」する構成をとっていることは,その限度で

当事者間に争いがない(控訴人主張の構成1c及び被控訴人主張の構成1(c)のと

おり)。

被控訴人は,被告方法1においては,「生地押え部材のみを下降させて,生地押

え部材を生地の縁部に押し付けて生地を載置部材上に保持」する構成がとられてお

り,ノズル部材と同時に,当該生地押え部材を下降させるものではないと主張する。

しかし,被告装置1においては,生地押え部材が下降するほか,ノズル部材もまた

下降するものであり,ノズル部材と生地押え部材とを別個に昇降動作するようにし

て,個別に駆動し(乙5の3,8の2),独立して昇降の制御ができる構造をとっ

ている。ノズル部材と生地押え部材とが同時に下降するように制御し,又は生地押

え部材の下降が完了する前からノズル部材の下降が開始されるようにした方が,加

工時間が短くて済み,生産効率を上げることができることに照らすと,被告装置1




において,ノズル部材と生地押え部材とが同時に昇降するように,又は生地押え部

材の下降が完了する前からノズル部材の下降を開始するように,制御することが可

能である。

ウ 充足性

被告方法1の「生地押え部材」は本件発明1の「押え部材」に相当し,被告方法

1の「載置部材」は本件発明1の「受け部材」に相当するから,被告方法1は,構

成要件1Cの「押え部材を下降させて押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材

を受け部材上に保持し」を充足する。被告方法1の「ノズル部材」が本件発明1の

「押し込み部材」に該当することは,後記(5)で判示するとおりであるところ,被

告方法1において,生地押え部材が下降するほか,ノズル部材も下降するのであっ

て,両者が同時に下降するように,又は生地押え部材の下降が完了する前からノズ

ル部材の下降を開始するように,制御することが可能であるから,構成要件1Cの

「押し込み部材とともに…下降し」も充足する。

よって,被告方法1は,本件発明1の構成要件1Cを充足する。

(4) 構成要件1Dの充足性

構成要件「椀状に形成する」の解釈

(ア) 構成要件1Dは,「押し込み部材をさらに下降させることにより受け部材

の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成す

るとともに外皮材を支持部材で支持し」である。これによれば,押し込み部材が下

降し外皮材を開口部に押し込むことにより,外皮材を椀状に形成するものであるが,

特許請求の範囲にはそれ以上,「椀状」の具体的態様を限定していない。

控訴人は,「椀状に形成する」について,特許請求の範囲にも発明の詳細な説明

にも,「椀状」を定義した記載はない上,外皮材を弾性に富む外皮材に限定する記

載はないから,「押し込み部材を深く外皮材に進入させ,外皮材の縁部周辺を伸ば

しながら外皮材を椀状に形成する」構成に限定される根拠はなく,後の内材供給及

び封着工程を正常に行うことのできる程度まで生地を押し込んで変形させることを




意味すると主張する。これに対し,被控訴人は,押し込み部材が当接する程度のわ

ずかな窪みは含まないなどと主張する。

(イ) 本件明細書に「椀状」の定義はされていないものの,本件明細書には,外

皮材を椀状に形成することの説明として,略U字型の窪みの形状が図面に示されて

いる(図10(c),図19,図22,図28,図35,図42,図51)。これら

の形状は,一定の深さを有する「椀」という用語の通常の用法に沿う形状である。

(ウ) 前記1のとおり,本件明細書には,本件発明が特許請求の範囲に記載され

た技術的事項を採用したことにより奏する作用効果が記載されており,その記載に

よると,本件発明1においては,押し込み部材を一定程度深く進入させるために

「外皮材が必要以上に下方に伸びてしまう」おそれがあり(【0009】),また

「内材の吐出による外皮材の必要以上の伸び」があるおそれもあるため(【001

0】),それを防ぐために外皮材を支持部材で支持するものである。仮に,押し込

み部材が窪みに当接させる程度にしか下降しないものであれば,内材の吐出による

伸びのほか,外皮材が下方に必要以上に伸びることにはならないから,本件発明1

においては,押し込み部材が一定程度の深さで進入することを予定しているものと

いうことができる。同様に,押し込み部材を一定程度深く進入させるからこそ,

「押し込み部材の上昇に伴って外皮材が収縮する」おそれがあり,本件発明1にお

いては,それを防ぐために押し込み部材を通して内材を供給するものである(【0

010】)。このように,本件発明1の押し込み部材は,外皮材を支持部材で支持

し内材を供給するため,開口部に一定程度の深さで進入するものと解される。

(エ) また,本件明細書の記載に照らすと,押し込み部材が受け部材の開口部に

一定程度の深さで進入することにより外皮材を椀状に形成し,その後に内材を配置

するものであると解される。すなわち,本件発明1は,押し込み部材が,一定程度

の深さで外皮材に進入し,外皮材を「椀状」に形成し,形成された椀状の部分の中

に内材が配置されるものである。

このように,本件発明1の作用効果に照らすと,本件発明1における「押し込み




部材」とは,その下端部を外皮材の中央部分に形成された窪みに当接させる状態で

停止し,又は,せいぜい,その下端部を外皮材に接触させ,外皮材を下端部の形状

に沿う形にわずかに窪ませる程度の状態で停止するものではなく,受け部材の開口

部に一定程度の深さで進入することにより外皮材を椀状に形成することを想定して

いるものというべきである。そして,外皮材が「弾性に富む食材」である場合に顕

著な効果であるとしても,本件明細書には外皮材の種類と内材の種類に着目した記

載は特段認められないから,本件発明1は,外皮材の種類や内材の種類にかかわら

ず,押し込み部材の下降によって外皮材が押し込み部材の先端形状に沿った「椀

状」に形成させるようにするものである。

(オ) なお,特許技術用語としては,甲21には,「平たいお椀状の窪み」とい

う用語が用いられ,第5図に示されるような窪みの形状を「平たいお椀状の窪み」

と称している。また,同じく甲22には,防爆機構としての封口板を備えた密閉型

電池に関する技術において,皿状の凹部について「椀状に絞り加工されてなる」と

記載されている。このように,甲21の第5図に示されるような形状や,甲22の

皿状の凹部の形状を,「椀状」と称することがあり,浅いか深いかを問わずに「椀

状」との用語を用いていることが認められる。

(カ) 以上によれば,本件発明1において,押し込み部材によって外皮材を「椀

状に形成する」ことの意義は,外皮材の性状にかかわらず,押し込み部材が一定程

度の深さまで下降することによって,外皮材を押し込み部材の先端形状に沿った

「椀状」の形状に形成させるようにし,内材の配置及び封着ができるようにしたこ

とにあるというべきである。そして,「椀状」の程度については,特許請求の範囲

に何らの限定もなく,特許技術用語としても,浅いか深いかを問わずに「椀状」と

いう用語を用いている例があることに照らすと,原判決が認定するように「成形品

の高さと同程度の深さ」というほど深いものである必要はなく,その後内材の配置

及び封着ができるものであれば足り,浅いか深いかを問わないものということがで

きる。




イ 被告方法1の構成

(ア) 被控訴人は,被告方法1は,「生地に生じた窪みを支持コンベヤで支持し

た状態を維持し,ノズル部材を下降させ,ノズル部材の下端部を生地の中央部分に

形成された窪みに当接させた状態で停止させ」るものであり,ノズル部材の下面が,

最大でも,載置部材の下面から1oしか突出することができない構造となっている

と主張する。

確かに,被控訴人が提出した,被告装置1のタイムチャート図及びその説明書

(乙9の1・2),同動作説明用ビデオ(乙10)及び写真(乙11の1〜15)

並びに開発経緯に関する被控訴人担当者の説明書(乙13)によれば,被告方法1

では,ノズル部材が生地に深く進入することによって生地を椀状に形成するのでは

なく,ノズル部材を下降させてその下端部を生地に接触させ,生地をノズル部材の

下端部の形状に沿う形に窪ませる程度の状態で,これを停止させ,その後に,ノズ

ル部材から内材を供給し,支持コンベヤで生地の底部を支持しながら下降すること

により,内材の吐出圧もあって,生地を膨張させる構成となっていることが認めら

れる。

もっとも,被控訴人の主張する窪みの形状は,ノズル部材が下降したことにより,

原判決別紙3−1被告装置目録(被告主張)1の6B図の状態から7B図のとおり

変形したものであり,7B図の形状は,浅い椀状のものともいうことができる。

(イ) 他方,控訴人は,被告装置1を入手し,その構成を確認してノズル部材の

昇降位置を調整して内材を生地により包み込み封着する事実実験を,平成23年2

月23日公証人に嘱託して実施し,その結果を記載した事実実験公正証書(甲2

6)を提出した。それによれば,被告装置1のノズル部材は,載置部材の開口部下

面から口金の下面位置までの深さが7oの位置まで下降でき,その深さまで進入さ

せることができること,また,ノズル部材は支持枠体から簡単に取り外すことがで

き,長いものに交換することが可能な構造となっており,それにより深さを15o

とすることも可能であることが認められる。




そして,ノズル部材の先端を載置部材の下面より1oしか下降させない場合,普

通の硬さの生地であればほぼ正常に成形することができるものの,硬めの生地につ

いては,封着動作の際に内材が漏れ出してしまい,うまく成形することができない

のに対し,ノズル部材を載置部材の下面より10oのところまで下降させた場合は,

普通の硬さの生地でも硬めの生地でもほぼ正常に成形することができ,様々な生地

の種類及び内材の種類の組合せで成形を行う場合は,下降位置を深くした方が確実

に対応することができる(甲16,17,23)。

このことからすれば,被告方法1においても,ノズル部材の先端を下降させて生

地に当接させれば,生地の中央部にノズルの先端形状に沿った窪みが形成され,種

々の生地材料や内材の組合せに応じて,支持コンベヤの調節(下降速度),ノズル

部材と生地押え部材の昇降動作(生地を押圧する程度),内材の吐出圧等を調節す

ることにより成形し,内材を生地で封着できるものと推認できる。そして,被告方

法1のノズル部材の下降位置を1oではなく,7oにするなど下降位置を深くする

ことにより,その実用的価値を高めることが可能である。

(ウ) なお,被控訴人は,甲26に基づく主張立証が時機に後れた攻撃防御方法

であると主張する。しかし,甲26は,被告装置1を入手して行った事実実験公正

証書であり,従前の控訴人の主張を裏付ける証拠として提出されたものであり,し

かも控訴審の当初に被控訴人の反論反証が可能な時期に提出されたものであって,

時機に後れたということはできない。

また,被控訴人は,控訴人の行った甲26の事実実験の対象装置が,被告装置1

を改造したものであって,ノズル部材は1o以下に下降できないように固定されて

いると主張する。しかし,控訴人が公証人に依頼して事実実験を行うに際し,少な

くともノズル部材の下降位置を7oとするに当たり,被告装置1を改造したことを

認めるに足りる証拠はない。仮に,被控訴人の主張するとおり,被控訴人の製造販

売時にノズル部材が1o以下に下降できないようにしていたとしても,ストッパー

の位置を変更したり,ストッパーを取り外すことやノズル部材を交換することが不




可能ではなく,かつより深く下降させた方が実用的なのであるから,この点は,後

間接侵害の成否において判断することとする。

(エ) そうすると,被告方法1は,ノズル部材を下降させることにより,その下

端を載置部材の開口部に,下面から深さ7ないし15oの位置まで進入させること

ができ,これにより,生地の中央部を押し込み,生地にノズル部材の先端形状に沿

った窪みを形成するとともに,生地を載置部材で支持するものということができる。

ウ 充足性

前記のとおり,本件発明1は,「押し込み部材をさらに下降させることにより受

け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に

形成する」ものであり,押し込み部材を受け部材の開口部に一定の深さまで進入す

ることにより外皮材を椀状に形成しているものである。これに対し,被告方法1で

は,ノズル部材の下端部を生地に接触させ,生地をノズル部材の下端部の形状に沿

う形に窪ませる程度に使用されるが,ノズル部材を下降させることにより,その下

端を載置部材の開口部に,下面から深さ7ないし15oの位置まで進入させること

ができ,これにより,生地の中央部を押し込み,生地にノズル部材の先端形状に沿

った窪みを形成するとともに,生地を載置部材で支持するように使用することがで

きる。そして,浅いか深いかを問わずに構成要件1Dの「椀状」ということができ

ることに照らすと,被告方法1において,ノズル部材の下端を載置部材の開口部に,

下面から深さ7ないし15oの位置まで進入させることにより,生地の中央部に形

成した窪みも,「椀状」ということができる。

また,被告方法1における「支持コンベヤ」は本件発明1の「支持部材」に相当

し,それによって外皮材(生地)を支持していることは,同様である。

よって,被告方法1は,構成要件1Dを充足する。

(5) 構成要件1Eの充足性

構成要件の解釈

構成要件1Eは,「押し込み部材を通して内材を供給して外皮材に内材を配置」




するものである。本件明細書には,押し込み部材を通して内材を供給しているので,

押し込み部材の上昇に伴って外皮材が収縮するのを防ぐことができると共に,外皮

材の形状形成と内材の供給を短時間に効率良く行うことが可能となることが記載さ

れているから(【0010】),押し込み部材が一定の深さで外皮材に進入するこ

とにより,外皮材を「椀状」に形成し,その後押し込み部材を上昇させながら,形

成された椀状の部分の中に内材を配置することを想定して上記作用効果が記載され

ているとはいえるものの,そのような配置以外の方法を除外しているわけではなく,

特許請求の範囲の記載においては,配置の仕方について特段の限定はされていない。

よって,本件発明1においては,前記(4)のとおり,押し込み部材が一定程度の深

さまで外皮材に進入し,外皮材を「椀状」に形成し(構成要件1D),押し込み部

材から内材を供給して外皮材に内材が配置されるものであれば,構成要件1Eを充

足するということができる。

イ 被告方法1の構成

被告方法1が,「ノズル部材を通して内材を供給し…生地に内材を配置」するこ

とは,その限度で当事者間に争いがない(控訴人主張の構成1e及び被控訴人主張

の構成1(e)のとおり)。なお,被告方法1は,ノズル部材を下降させることによ

り,その下端を載置部材の開口部に,下面から深さ7ないし15oの位置まで進入

させることができ,これにより,生地の中央部を押し込み,生地にノズル部材の先

端形状に沿った窪みを形成するとともに,生地を載置部材で支持し,ノズル部材で

内材を供給し,底部を支持する支持コンベヤを下降させながら,内材の吐出により

更に生地を膨張させるというものであることは,前記(4)のとおりである。

ウ 充足性

前記のとおり,本件発明1は,押し込み部材を通して,外皮材に形成された椀状

の部分の中に内材を配置するものであり,被告方法1も,ノズル部材を通して,生

地の窪みに内材を供給し,生地に内材を配置するものである点においてかわりはな

いから,被告方法1の「ノズル部材」が本件発明1の「押し込み部材」に該当し,




被告方法1は,本件発明1の構成要件1Eを充足する。

なお,内材の吐出による外皮材の伸びは,本件発明1においても想定されている

ことであるから(【0010】),被告方法1において,内材の吐出により,生地

を膨張させることは,充足性の判断を左右しない。

(6) 間接侵害の成否

ア 以上のとおり,被告方法1は,本件発明1の構成要件を全て充足する。

イ 特許法101条4号について

特許法101条4号は,その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施する物

についてこれを生産,譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであるところ,同

号が,特許権を侵害するものとみなす行為の範囲を,「その方法の使用にのみ用い

る物」を生産,譲渡等する行為のみに限定したのは,そのような性質を有する物で

あれば,それが生産,譲渡等される場合には侵害行為を誘発する蓋然性が極めて高

いことから,特許権の効力の不当な拡張とならない範囲でその効力の実効性を確保

するという趣旨に基づくものである。このような観点から考えれば,その方法の使

用に「のみ」用いる物とは,当該物に経済的,商業的又は実用的な他の用途がない

ことが必要であると解するのが相当である。

被告装置1は,前記のとおり本件発明1に係る方法を使用する物であるところ,

ノズル部材が1o以下に下降できない状態で納品したという被控訴人の前記主張は,

被告装置1においても,本件発明1を実施しない場合があるとの趣旨に善解するこ

とができる。

しかしながら,同号の上記趣旨からすれば,特許発明に係る方法の使用に用い

る物に,当該特許発明実施しない使用方法自体が存する場合であっても,当該特

許発明を実施しない機能のみを使用し続けながら,当該特許発明実施する機能は

全く使用しないという使用形態が,その物の経済的,商業的又は実用的な使用形態

として認められない限り,その物を製造,販売等することによって侵害行為が誘発

される蓋然性が極めて高いことに変わりはないというべきであるから,なお「その




方法の使用のみ用いる物」に当たると解するのが相当である。被告装置1におい

て,ストッパーの位置を変更したり,ストッパーを取り外すことやノズル部材を交

換することが不可能ではなく,かつノズル部材をより深く下降させた方が実用的で

あることは,前記のとおりである。そうすると,仮に被控訴人がノズル部材が1o

以下に下降できない状態で納品していたとしても,例えば,ノズル部材が窪みを形

成することがないよう下降しないようにストッパーを設け,そのストッパーの位置

変更したり,ストッパーを取り外すことやノズル部材を交換することが物理的に

も不可能になっているなど,本件発明1を実施しない機能のみを使用し続けながら,

本件発明1を実施する機能は全く使用しないという使用形態を,被告装置1の経済

的,商業的又は実用的な使用形態として認めることはできない。したがって,被告

装置1は,「その方法の使用のみ用いる物」に当たるといわざるを得ない。

(7) 小括

以上のとおり,被告装置1の製造,販売及び販売の申出をする行為は,本件特許

権1を侵害するものとみなされる。

3 被告方法2による本件特許権1の間接侵害の成否

(1) 構成要件1Aの充足性

構成要件「受け部材の上方に」の解釈

本件発明1の構成要件1Aは,「受け部材の上方に配設した複数のシャッタ片か

らなるシャッタを開口させた状態で受け部材上にシート状の外皮材を供給し」であ

るところ,被控訴人は,「受け部材の上方に」とは,受け部材とシャッタとの間に

空間や介在する部材がないこと,すなわち,受け部材の上に直接複数のシャッタ片

からなるシャッタが配設されていることを意味すると主張する。そして,本件明細

書の実施例には,受け部材の上に直接シャッタが配設されている図面が記載されて

いる(図40)。

しかし,「上方」とは,直接接して配置されているか,離間して配置されてい

るかを問わず,通常,単に「上の方」であることを指すものであり,実施例の図




面にあるからといって,直接配置されている状態に限定して解釈すべきものとは

いえない。そして,構成要件1Aは,「外皮材を供給」する段階で,受け部材の

上方にシャッタが配設されていることが要求されているのであって,それが間に

空間や介在する部材がないように直接配設されていることまで要求されるものと

解することはできない。

イ 被告方法2の構成

被告方法2が,「載置部材の上方に…配設した6枚のシャッタ片からなるシャ

ッタを開口させた状態で…載置部材上にシート状の生地を供給」するものである

ことは,その限度において当事者間に争いがない(控訴人主張の構成1a’及び

被控訴人主張の構成1(a)’のとおり)。

ウ 充足性

被告方法2において,シャッタ片が受け部材から離間した上方の位置に配置さ

れているものであるとしても,構成要件1Aの「上方」に含まれるということが

できるから,被告方法2は,構成要件1Aを充足する。

(2) 構成要件1Bの充足性

ア 被告方法2の構成

控訴人の主張によっても,被控訴人の主張によっても,被告方法2における構成

要件1Bに対応する構成は,被告方法1におけるそれと同一である(控訴人主張の

構成1bと1b’及び被控訴人主張の構成1(b)と1(b)’のとおり)。

イ 充足性

よって,前記2の被告方法1と同様,被告方法2における上記構成は,構成要件

1Bを充足する。

(3) 構成要件1Cの充足性

ア 被告方法2の構成

被告方法2において,「シャッタ片,載置部材…を上昇させ…生地押え部材を生

地の縁部に押しつけて生地を載置部材上に保持」する構成がとられていることは,




その限度において当事者間に争いがない(控訴人主張の構成1c’及び被控訴人

主張の構成1(c)’のとおり)。そうすると,被告方法2は,本件発明1がノズル

部材及び生地押え部材を下降させてシャッタ片及び載置部材に接近させているのに

対し,押し込み部材の下降はなく,シャッタ片及び載置部材を上昇させることによ

ってノズル部材及び生地押え部材に接近させている点において,異なるものである。

均等侵害の要件

本件発明1に係る特許請求の範囲に記載された構成中に被告方法2と異なる部分

が存する場合であっても,@上記部分が本件発明の本質的部分ではなく,A上記部

分を被告方法2におけるものと置き換えても,本件発明1の目的を達することがで

き,同一の作用効果を奏するものであって,B上記のように置き換えることに,本

件発明の属する技術の分野における通常の知識を有する当業者が,被告方法2の使

用の時点において容易に想到することができたものであり,C被告方法2が,本件

発明1の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容

易に推考できたものではなく,かつ,D被告方法2が本件発明1の特許出願手続に

おいて特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もな

いときは,被告方法2は,特許請求の範囲請求項1に記載された構成と均等なもの

として,本件発明1の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平

成6年(オ)第1083号平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号

113頁参照)。

均等侵害の要件@について

前記1の本件明細書の記載からすると,本件発明1は,その後に続く椀状に形成

する工程や封着する工程との関連が強く,その後の椀状に形成する工程や封着する

工程にとって重要な工程である外皮材の位置調整を,既に備わる封着用のシャッタ

で行う点,そして,別途の手段を設けることなく簡素な構成でこのような重要な工

程を達成している点に,その特徴があるということができる。

本件発明1においては,シャッタ片及び載置部材と,ノズル部材及び生地押え部




材とが相対的に接近することは重要であるが,いずれの側を昇降させるかは技術的

に重要であるとはいえない。よって,本件発明1がノズル部材及び生地押え部材を

下降させてシャッタ片及び載置部材に接近させているのに対し,被告方法2がシャ

ッタ片及び載置部材を上昇させることによってノズル部材及び生地押え部材に接近

させているという相違部分は,本件発明1の本質的部分とはいえない。

均等侵害の要件Aについて

ノズル部材及び生地押え部材を下降させてシャッタ片及び載置部材に接近させて

いるのに代えて,押し込み部材の下降はなく,シャッタ片及び載置部材を上昇させ

てノズル部材及び生地押え部材に接近させる被告方法2によっても,外皮材が所定

位置に収まるように外皮材の位置調整を行うことができ,外皮材の形状のばらつき

や位置ずれがあらかじめ修正され,より確実な成形処理を行うことが可能であり

(【0008】【0013】),より安定的に外皮材を戴置し,確実に押え保持す

ることができ(【0011】),装置構成を極めて簡素化することができる(【0

012】)といった本件発明1と同一の作用効果を奏することができる。

本件発明1の構成要件1C及び1Dは,押え部材が外皮材を受け部材上に保持

することができ,押し込み部材が,受け部材の開口部に内材を供給するため一定

の深さに進入することにより,達することができるとするものである。

そうすると,ノズル部材及び生地押え部材を下降させてシャッタ片及び載置部

材に接近させる構成を,シャッタ片及び載置部材を上昇させることによってノズル

部材及び生地押え部材に接近させる構成に置き換えたとしても,同一の目的を達

することができ,同一の作用効果を奏するものということができる。

均等侵害の要件Bについて

本件発明1と被告方法2の上記構成の相違は,ノズル部材及び生地押え部材を

載置部材上の生地に接近させるための動作に関して,単に,上方の部材を下降さ

せるか,下方の部材を上昇させるかの違いにすぎない。したがって,被告方法2

の上記構成に想到することは,当業者にとって容易である。




均等侵害の要件CDについて

上記要件@ないしBが認められる場合においては,要件CDが認められない限り,

均等侵害が成立するところ,被控訴人は,要件CDを満たさないことについて,何

ら主張立証しない。

キ 小括

以上のとおり,被告方法2は,本件発明1の構成要件1Cの構成と均等なもので

ある。

(4) 構成要件1Dの充足性

構成要件「さらに下降させる」の解釈

構成要件1Dは,「押し込み部材をさらに下降させることにより受け部材の開

口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成すると

ともに外皮材を支持部材で支持し」であり,構成要件1Cに続いて,押し込み部材

が下降し外皮材を開口部に押し込むことにより,外皮材を椀状に形成するものであ

ることを規定する。構成要件1Cが,押し込み部材と押え部材のいずれも下降する

ことを前提に,押え部材の作用及び機能を中心に特定しているのに対し,構成要件

1Dは,押し込み部材の作用及び機能を中心に特定していることからすると,構成

要件1Dにおける「さらに下降させる」は,構成要件1Cにおけるのと別個に更に

押し込み部材だけが単独で下降する場合のみならず,押え部材と一緒に下降する場

合を含むものと解すべきである。そして,構成要件1Dは,押し込み部材が下降し,

最終的に到達する位置が受け部材よりも更に下降した位置であることを特定してい

るものと解され,この点にその技術的意義が認められる。

イ 被告方法2の構成

被告方法2において,ノズル部材と生地押え部材とは一体化しており(乙23,

24),前記(3)のとおり,本件発明1がノズル部材及び生地押え部材を下降させ

てシャッタ片及び載置部材に接近させているのに対し,シャッタ片及び載置部材を

上昇させることによって一体化したノズル部材及び生地押え部材に接近させ,それ




によりノズル部材の下端を載置部材よりも更に下降した位置に相対的に移動させる

ことにより,生地の中央部分に形成された窪みを,少なくとも原判決別紙3−2被

告装置目録(被告主張)2の6B図から7B図のように変形させる程度に,進入し

ているものである。

ウ 充足性

そうすると,被告方法1において,ノズル部材が下降することはないものの,

前記(3)と同様,本件発明1がノズル部材及び生地押え部材を下降させてシャッタ

片及び載置部材に接近させているのに対し,シャッタ片及び載置部材を上昇させる

ことによって一体化したノズル部材及び生地押え部材に接近させることにおいて,

本件発明1と均等なものということができる。そして,それによりノズル部材の下

端を載置部材よりも更に下降した位置に相対的に移動させることにより,生地の中

央部分に形成された窪みに進入して生地を変形させることは,前記2の被告方法1

におけるのと同様であり,ノズル部材を通して内材を供給しながら生地を膨張させ

ているとしても,被告方法2も,構成要件1Dを充足するということができる。

(5) 構成要件1Eの充足性

被告方法2が,「ノズル部材を通して内材を供給し…生地に内材を配置」するこ

とは,その限度で当事者間に争いがない(控訴人主張の構成1e’及び被控訴人主

張の構成1(e)’のとおり)。

そうすると,被告方法2は,前記2の被告方法1におけるのと同様,構成要件

Eを充足し,内材の吐出により,生地を膨張させることは,充足性の判断を左右し

ない。

(6) 構成要件1F,1Gの充足性

被告方法2が,構成要件1F及び1Gを充足することは,当事者間に争いがない。

(7) 間接侵害の成否

ア 以上のとおり,被告方法2は,本件発明1と均等なものとして,その技術的

範囲に属する。




イ 特許法101条4号について

前記2と同様,被告装置2は,本件発明1の「その方法の使用のみ用いる物」

に当たるといわざるを得ない。

(8) 小括

以上のとおり,被告装置2の製造,販売及び販売の申し出をする行為は,本件特

許権1を侵害するものとみなされる。

4 被告方法3による本件特許権1の間接侵害の成否

(1) 構成要件1Aの充足性

ア 被告方法3の構成

控訴人の主張によっても,被控訴人の主張によっても,被告方法3における構成

要件1Aに対応する構成は,被告方法2におけるそれと同一である(控訴人主張の

構成2a’と2a及び被控訴人主張の構成2(a)’と2(a)”のとおり)。

イ 充足性

よって,被告方法3は,前記3の被告方法2におけるのと同様,構成要件1Aを

充足する。

(2) 構成要件1Bの充足性

控訴人は,被告方法3は,被告方法1と同じである旨主張するのに対し,被控訴

人は,被控訴人主張の構成1(b)”のとおり主張する。被控訴人主張の構成1(b)”

は,被告方法1における被控訴人主張の構成1(b)の「生地に生じた窪みを支持コ

ンベヤで支持」する以外は同一のものである。仮に,被告方法3が,被控訴人主張

のとおりの構成であるとしても,前記2の被告方法1におけるのと同様,構成要件

1Bを充足する。

(3) 構成要件1Cの充足性

被告方法3が,「ノズル部材及び生地押え部材を下降させて,生地押え部材を生

地の縁部に押し付けて生地を載置部材上に保持」することは,その限度において当

事者間に争いがない(控訴人主張の構成1c及び被控訴人主張の構成1(c)”のと




おり)。

よって,被告方法3は,構成要件1Cを充足する。

(4) 構成要件1Dの充足性

被控訴人は,被告方法3において,押し込み部材を更に下降させることがないと

主張する。被告方法3においては,ノズル部材と生地押え部材が一体化されている

が(乙23,25),ノズル部材が一体化された生地押え部材とともに下降するこ

とも,構成要件1Dに含まれることは,前記3のとおりである。

また,被控訴人は,被告方法3が,被告方法1及び2と同様,「ノズル部材」

は,その下端部を生地の中央部分に形成された窪みに当接させる状態で停止させ

(被控訴人主張の構成1(c)”),ノズル部材を通して内材を供給しながら生地を

膨張させて椀状に形成するもので(同構成1(e)”),ノズル部材が生地の中に進

入することにより生地を椀状に形成し,椀状形成された外皮材の内側に内材を配置

するのではなく,内材の吐出圧によって生地を膨張させて椀状に形成するものであ

ると主張する。しかし,この点は,前記2の被告方法1におけるのと同様であり,

被告方法3も,構成要件1Dを充足するということができる。

(5) 構成要件1Eの充足性

被告方法3が,「ノズル部材を通して内材を供給し…生地に内材を配置」するこ

とは,その限度で当事者間に争いがない(控訴人の構成1e及び被控訴人主張の構

成1(e)”のとおり)。

そうすると,被告方法3は,前記2の被告方法1におけるのと同様,構成要件

Eを充足し,内材の吐出により,生地を膨張させることは,充足性の判断を左右し

ない。

(6) 構成要件1F,1Gの充足性

被告方法3が構成要件1F及び1Gを充足することは,当事者間に争いがない。

(7) 間接侵害の成否

ア よって,被告方法3は,本件発明1の構成要件を全て充足する。




イ 特許法101条4号について

前記2と同様,被告装置3は,本件発明1の「その方法の使用のみ用いる物」

に当たるといわざるを得ない。

(8) 小括

以上のとおり,被告装置3の製造,販売及び販売の申し出をする行為は,本件特

許権1を侵害するものとみなされる。

5 被告装置1による本件特許権2の侵害の成否

(1) 構成要件2A,2Bの充足性

被告装置1が,構成要件2A及び2Bを充足することは,当事者間に争いがない。

(2) 構成要件2Cの充足性

構成要件2Cは,「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮

小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整するとともにシャッタを閉じ動作

させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着するシャッタ駆動

手段と」であり,本件発明1における構成要件1B及び1Fと同様である。

被告装置1において,「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮

小し,…開口部を覆い尽くすほぼ同心となる所定位置に収まるように位置調整する

とともに,シャッタを閉じ動作させることにより生地の周縁部を内材を包むように

集めて封着するシャッタ駆動シャフト」の構成がとられていることは,その限度に

おいて当事者間に争いがない(控訴人主張の構成2c及び被控訴人主張の構成2

(c)のとおり)。そして,構成要件1Bと同様,上記「開口部を覆い尽くすほぼ同

心となる所定位置」は,構成要件2Cの「所定位置」に相当する。

よって,被告装置1は,構成要件2Cを充足する。

イ 被控訴人は,「位置調整」とは,受け部材の平面上の位置調整(二次元的位

置調整)を意味し,被告装置1の構成はこれと異なると主張するが,被告装置1に

おける「シャッタ片で生地の周縁部を押圧することによりかつ生地の中央部の自重

により同中央部を載置部材の開口部から少し下方に窪ませる」構成は,付加的なも




のであって,構成要件2Cの充足性を左右しない。なお,構成要件2Cと同様の構

成要件1Bについては,被控訴人が当審における争点としない旨を述べ,同1Fに

ついては充足性に争いがないことは,前記2のとおりである。

(3) 構成要件2Dの充足性

構成要件「椀状に形成する」の解釈

構成要件2Dは,「押し込み部材を下降させることにより受け部材の開口部に進

入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに押

し込み部材を通して外皮材内に内材を供給する外皮材形成手段と」である。

構成要件2Dにおいて,押し込み部材によって外皮材を「椀状に形成する」こと

の意義は,本件発明1における構成要件1Dと同様,外皮材の性状にかかわらず,

押し込み部材が一定程度の深さまで下降することによって,外皮材が押し込み部材

の先端形状に沿った「椀状」の形状に形成させるようにしたことにある。また,内

材の配置の仕方について特段の限定はされていないから,押し込み部材が一定程度

の深さまで外皮材に進入し,外皮材を「椀状」に形成し,形成された椀状の部分の

中に内材が配置されるものであることも,構成要件1Eと同様である。

なお,被控訴人は,外皮材形成手段に設けられる「押し込み部材」とは,「押え

部材」とともに下降することにより,受け部材の開口部に進入し,外皮材の中央部

分を開口部に押し込み,外皮材を椀状に形成するものを意味すると主張するが,本

件発明2に係る特許請求の範囲において,押し込み部材と押え部材とがともに下降

することを示す記載はない。

イ 被告装置1の構成

前記2(4)(5)のとおり,被告装置1は,ノズル部材を下降させることにより,ノ

ズル部材の下端部を生地に接触させ,生地をノズル部材の下端部の形状に沿う形に

窪ませる程度に使用されるが,ノズル部材を下降させることにより,その下端を載

置部材の開口部に,下面から深さ7ないし15oの位置まで進入させることができ,

これにより,生地の中央部に窪みを形成するとともに生地を載置部材で支持するよ




うに使用することができるものである。そして,ノズル部材を通して,生地の窪み

に内材を供給し,生地に内材を配置するものである。

ウ 充足性

被告装置1における「ノズル部材」は本件発明2における「押し込み部材」に相

当し,被告装置1における窪みが「椀状」であることは,前記2と同様であり,ノ

ズル部材が「外皮材形成手段」を構成する。よって,被告装置1は,構成要件2D

を充足する。

(4) 構成要件2Eの充足性

構成要件の解釈

構成要件2Eは,「外皮材形成手段に設けられるとともに押え部材を外皮材の縁

部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持する保持手段と」であり,押し込み部材

と押え部材とがともに下降することは要件とされていないことは,構成要件2Dと

同様である。なお,保持手段は,構成要件2Dの外皮材形成手段に設けられている。

イ 被告装置1の構成

被告装置1が「生地押え部材を生地の縁部に押し付けて生地を載置部材上に保

持」することは,その限度で当事者間に争いがない(控訴人主張の構成2e及び被

控訴人主張の構成2(e)のとおり)。

ウ 充足性

被告装置1の「生地押え部材」が本件発明2の「押え部材」に相当し,「載置部

材」が本件発明2の「受け部材」に相当することは,前記2の本件発明1における

のと同様であり,生地押え部材が「保持手段」を構成する。被控訴人の主張のとお

り,生地押え手段がノズル部材が別個に昇降可能であるとしても,ノズル部材に設

けられていることは,原判決別紙3−1被告装置目録(被告主張)1の各図面のと

おりであるから,被告装置1は,構成要件2Eを充足する。

(5) 構成要件2Fの充足性

構成要件2Fは,「受け部材の下方に配設されるとともに支持部材を上昇させて




椀状形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形品を搬送する支持手段

と」であるところ,被告装置1が,「載置部材の下方に配設されるとともに支持コ

ンベヤを上昇させて,窪みを形成された生地を支持し,…支持コンベヤを下降させ

て成形品を搬出する,支持コンベヤ及びその昇降機構からなる支持手段」であるこ

とは,その限度で当事者間に争いがない(控訴人主張の構成2f及び被控訴人主張

の構成2(f)のとおり)。そして,被告装置1の「支持コンベヤ」が本件発明2の

「支持部材」に相当し,被告装置1における「窪み」の形成が,本件発明2におけ

る「椀状」形成に該当することは,前記2と同様である。

よって,被告装置1は,構成要件2Fを充足する。

(6) 侵害の成否

以上のとおり,被告装置1は,本件発明2の構成要件を全て充足し,その技術的

範囲に属する。

6 被告装置2による本件特許権2の侵害の成否

(1) 構成要件2Aの充足性

構成要件「受け部材」の解釈

構成要件2Aは,「中央部分に開口部が形成されるとともにシート状の外皮材が

載置される受け部材と」であるところ,被控訴人は,本件発明2の「受け部材」は

昇降動作をしないと主張する。しかし,特許請求の範囲には,受け部材が昇降する

か否かについての記載はなく,昇降動作をしないものに限定する理由はない。

イ 被告装置2の構成

被告装置2が,「中央部分に開口部が形成されるとともに略円盤状の生地が載置

される載置部材…」の構成を有することは,その限度で当事者間に争いがない(控

訴人主張の構成2a’及び被控訴人主張の構成2(a)’のとおり)。

ウ 充足性

被告装置2の載置部材が昇降機構を伴うとしても,構成要件2Aを充足すること

に変わりはない。




(2) 構成要件2Bの充足性

構成要件「上方に」の解釈

構成要件2Bは,「受け部材の上方に配設されるとともに複数のシャッタ片を備

えたシャッタと」であるところ,被控訴人は,「受け部材の上方に」とは,「受け

部材とシャッタとの間に空間や介在する部材がないこと」を意味すると主張する。

しかし,「上方」とは,直接接して配置されているか,離間して配置されている

かを問わず,通常,単に「上の方」であることを指すものであり,直接配置され

ている状態に限定して解釈すべきものとはいえないことは,構成要件1Aと同様

である。

イ 被告装置2の構成

被告装置2が,「載置部材の上方に配置されるとともに6枚のシャッタ片を備え

たシャッタ…」の構成を有することは,その限度で当事者間に争いがない(控訴人

主張の構成2b’及び被控訴人主張の構成2(b)’のとおり)。

ウ 充足性

被告装置2において,シャッタ片が受け部材から離間した上方の位置に配置さ

れているものであるとしても,構成要件2Bの「上方」に含まれるということが

できるから,被告装置2は,構成要件2Bを充足する。

(3) 構成要件2Cの充足性

被告装置2が,構成要件2Cを充足することは,前記5の被告装置1についてと

同様である。

(4) 構成要件2Dの充足性

構成要件の解釈

構成要件2Dが,「押し込み部材を下降させることにより受け部材の開口部に進

入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに押

し込み部材を通して外皮材内に内材を供給する外皮材形成手段と」であり,押し込

み部材によって外皮材を「椀状に形成する」ことの意義は,外皮材の性状にかかわ




らず,押し込み部材が一定程度の深さまで下降することによって,外皮材が押し込

み部材の先端形状に沿った「椀状」の形状に形成させるようにしたことにあり,内

材の配置の仕方について特段の限定はされていないから,押し込み部材が一定程度

の深さまで外皮材に進入し,外皮材を「椀状」に形成し,形成された椀状の部分の

中に内材が配置されるものであることも,前記5と同様である。

イ 被告装置2の構成

被告装置2において,「シャッタ片,載置部材…を上昇させ…ノズル部材を通し

て生地内に内材を供給する」構成がとられていることは,その限度において当事者

間に争いがない(控訴人主張の構成2d’及び被控訴人主張の構成2(d)’のとお

り)。

そうすると,被告装置2は,本件発明2がノズル部材及び生地押え部材を下降さ

せてシャッタ片及び載置部材に接近させているのに対し,押し込み部材の下降はな

く,シャッタ片及び載置部材を上昇させることによってノズル部材及び生地押え部

材に接近させている点において,異なるものである。

均等侵害の成否

被告装置2は,本件発明2の構成要件2Dと均等なものとして,その技術的範囲

に属することは,前記3と同様である。

(5) 構成要件2Eの充足性

構成要件2Eが,「外皮材形成手段に設けられるとともに押え部材を外皮材の縁

部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持する保持手段と」であり,被告装置2が,

「生地押え部材を…生地の縁部に押し付けて生地を載置部材上に保持する…保持手

段」であることは,その限度において当事者間に争いがない(控訴人主張の構成2

e’及び被控訴人主張の構成2(e)’のとおり)。また,被控訴人の主張によって

も,被告装置2におけるノズル部材と生地押え部材は一体に設けられている(被控

訴人主張の構成2(e)’)。

よって,被告装置2は,構成要件2Eを充足する。




(6) 構成要件2Fの充足性

ア 被告装置2の構成

控訴人の主張によっても,被控訴人の主張によっても,被告装置2における構成

要件2Fに対応する構成は,被告装置1におけるそれと同一である(控訴人主張の

構成2fと2f’及び被控訴人主張の構成2(f)と2(f)’のとおり)。

イ 充足性

よって,被告装置2は,前記5の被告装置1におけるのと同様,構成要件2Fを

充足する。

(7) 侵害の成否

以上のとおり,被告装置2は,本件発明2と均等なものとして,その技術的範囲

に属する。

7 被告装置3による本件特許権2の侵害の成否

(1) 構成要件2Aの充足性

ア 被告装置3の構成

控訴人の主張によっても,被控訴人の主張によっても,被告装置3における構成

要件2Aに対応する構成は,被告装置2におけるそれと同一である(控訴人主張の

構成2a’と2a及び被控訴人主張の構成2(a)’と2(a)”のとおり)。

イ 充足性

よって,被告装置3は,前記6の被告装置2におけるのと同様,構成要件2Aを

充足する。

(2) 構成要件2Bの充足性

ア 被告装置3の構成

被告装置3が,「載置部材の上方に…配置されるとともに6枚のシャッタ片を

備えたシャッタ」の構成を有することは,その限度で当事者間に争いがない(控訴

人主張の構成2b及び被控訴人主張の構成2(b)”のとおり)。

イ 充足性




被告装置3において,シャッタ片が受け部材から離間した上方の位置に配置さ

れているものであるとしても,構成要件2Bの「上方」に含まれるということが

できるから,被告装置3は,構成要件2Bを充足する。

(3) 構成要件2Cの充足性

被告装置3が,構成要件2Cを充足することは,前記5の被告装置1についてと

同様である。

(4) 構成要件2Dの充足性

ア 被告装置3の構成

控訴人の主張によっても,被控訴人の主張によっても,被告装置3における構成

要件2Dに対応する構成は,被告装置1におけるそれと同一である(控訴人主張の

構成2d及び被控訴人主張の構成2(d)と2(d)”のとおり)。

イ 充足性

よって,被告装置3は,前記5の被告装置1におけるのと同様,構成要件2Dを

充足する。

(5) 構成要件2Eの充足性

構成要件2Eが,「外皮材形成手段に設けられるとともに押え部材を外皮材の縁

部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持する保持手段と」であり,被告装置3が,

「生地押え部材を…生地の縁部に押し付けて生地を載置部材上に保持する…保持手

段」であることは,その限度において当事者間に争いがない(控訴人主張の構成2

e及び被控訴人主張の構成2(e)”のとおり)。また,被控訴人の主張によっても,

被告装置3におけるノズル部材と生地押え部材は一体に設けられている(被控訴人

主張の構成2(e)”)。

よって,被告装置3は,構成要件2Eを充足する。

(6) 構成要件2Fの充足性

構成要件2Fは,「受け部材の下方に配設されるとともに支持部材を上昇させて

椀状形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形品を搬送する支持手段




と」であるところ,被告装置3が,「支持コンベヤで…生地を支持し,…支持コン

ベヤを下降させて成形品を搬出する,支持コンベヤ及びその昇降機構からなる支持

手段」であることは,その限度で当事者間に争いがない(控訴人主張の構成2f及

び被控訴人主張の構成2(f)”のとおり)。被控訴人の主張によっても,被告装置

3における支持コンベヤが,載置部材の下方に配設されていることは,原判決3−

3被告装置目録(被告主張)3の図面から,明らかである。

被告装置3における支持コンベヤは本件発明2の「支持手段」に相当し,被告装

置3における載置部材は本件発明2の「受け部材」に相当するから,被告装置3は,

構成要件2Fを充足する。

(7) 侵害の成否

以上のとおり,被告装置3は,本件発明2の構成要件を全て充足し,その技術的

範囲に属する。

8 特許無効の抗弁について

(1) 被控訴人は,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものである

と主張する。

(2) 被控訴人は,本訴における無効理由と同一の理由により,本件発明1及び

2に係る特許無効審判を請求したところ,請求は成り立たないとする審決がされた。

被控訴人は,同審決の取消しを求める訴えを提起したが(知的財産高等裁判所平成

22年(行ケ)第10058号),当裁判所は,平成23年1月11日,被控訴人

の請求を棄却する旨の判決を言い渡し,同判決は確定した。

(3) よって,被控訴人の主張する理由に基づき本件特許が特許無効審判により

無効にされるべきものということはできないから,その余の点について判断するま

でもなく,特許無効の抗弁は失当である。

9 損害について

(1) 被控訴人が被告装置2を中部フーズ株式会社に販売し,被告装置3を山崎

製パン株式会社に販売したことは,当事者間に争いがない。そして,被控訴人が,




被告装置2の販売額は5576万2560円,販売利益額は1087万3699円

(利益率19.5%)であり,被告装置3の販売額は7005万6900円,販売

利益額は679万5519円(利益率9.7%)であると主張したところ,控訴人

がその額を認め,被控訴人は他に控除すべき費用を主張しない。

(2) よって,特許法102条2項に基づく控訴人の損害は,1087万369

9円と679万5519円の合計1766万9218円であると認める。

10 結論

以上の次第であるから,控訴人の本訴請求は,特許法100条1項に基づき,被

告装置1ないし3の製造,販売,販売の申出及び輸出の差止め(輸出については,

本件特許権2の実施行為としての差止め),同条2項に基づき,同装置の廃棄,民

709条に基づき,1766万9218円の損害賠償を求める限度で理由がある。

よって,主文のとおり原判決を変更すべきものである。

知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 滝 澤 孝 臣




裁判官 部 眞 規 子




裁判官 井 上 泰 人



(別紙省略)






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