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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成18行ケ10542審決取消請求事件 判例 特許
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事件 平成 22年 (行ケ) 10207号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2011/05/10
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成23年5月10日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成22年(行ケ)第10207号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成23年4月21日

判 決

原 告 日本電動式遊技機特許株式会社
訴訟代理人弁護士 山 崎 優

三 好 邦 幸
川 下 清

河 村 利 行
加 藤 清 和

沢 田 篤 志
伴 城 宏
今 田 晋 一

梁 沙 織
小 林 悠 紀

高 橋 幸 平
古 賀 健 介
中 村 昭 喜

笹 山 将 弘
池 垣 彰 彦

弁理士 梁 瀬 右 司
振 角 正 一

被 告 株 式 会 社 三 共
訴訟代理人弁護士 谷 口 由 記
弁理士 深 見 久 郎

森 田 俊 雄




酒 井 將 行

塚 本 豊

中 田 雅 彦

白 井 宏 紀


主 文

原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。



事 実 及 び 理 由

第1 原告の求めた判決
特許庁が無効2009−800095号事件について平成22年6月1日にした
審決を取り消す。



第2 事案の概要

本件は,特許無効審判請求を不成立とする審決の取消訴訟である。争点は,訂正
請求の適法性,進歩性の有無,である。
1 特許庁における手続の経緯

被告は,平成5年5月27日になした原々々々出願(特願平5−126281号)
の一部を平成12年5月29日に新たな特許出願とした特願2000−15909

4号の一部を平成12年6月28日に新たな特許出願とした特願2000−194
103号の一部を平成12年7月28日に新たな特許出願とした特願2000−2

29525号からの分割出願として,平成12年8月28日,名称を「遊技機」と
する発明につき特許出願をし(特願2000−258258号) 平成18年4月2

1日,特許登録を受けた(特許第3795311号,特許公報は甲10)。

これに対し,被告は,平成21年5月15日,本件特許の請求項1〜3につき無




効審判を請求した。

特許庁は,上記請求を無効2009−800095号事件として審理し,その中

で被告は平成21年8月20日付けで訂正請求をしたが(甲18),特許庁は,平成

22年6月1日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決を

し,その謄本は同年6月10日原告に送達された。



2 本件発明の要旨
<訂正前>

【請求項1】
「遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり,所定の特別遊

技状態用識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を含み,
該可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し,該可変
表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生する遊技機

であって,
前記遊技機は,遊技者にとって特に有利な遊技状態である特別遊技状態と,前記

特別遊技状態よりも低い所定の範囲の払出比率で遊技が行なわれる通常遊技状態と
を有し,
前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数

である賭数を入力するための賭数入力手段と,
前記可変表示装置により前記特別遊技状態用識別情報が導出表示されることによ

り,前記特別遊技状態に制御可能な遊技制御手段と,
前記入賞の発生を許容するか否かを決定する決定手段と,

前記可変表示装置を制御する手段であって,前記決定手段の決定内容に基づいた
制御が可能な可変表示制御手段と,
前記可変表示装置の表示結果を判定する判定手段と,

前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた特定の表示態様のうちの




いずれかとなった場合に所定の有価価値を付与する価値付与手段と,

前記特別遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種

類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与

される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確

率を向上させる制御を行なう確率制御手段とを含み,
該確率制御手段は,前記特別遊技状態となった場合に,前記複数種類定められた

特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与され
る特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示

態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低下させるこ
とを特徴とする,遊技機。」

【請求項2】
「前記確率制御手段は,前記特別遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の
表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうち,1ゲームにおいて付

与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様とは別の所定の特定の表示
態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率をも向上させる

ことを特徴とする,請求項1に記載の遊技機。」
【請求項3】
「前記確率制御手段は,前記通常遊技状態においては前記賭数入力手段により入

力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付与数および有価
価値の付与回数のうち少なくとも一方とによって算出される価値付与状況を予め定

められた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が,
1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となる

ことを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御することを特徴とす
る,請求項1または請求項2に記載の遊技機。」
<訂正後(下線部は訂正部分)>(請求項3は削除)

・【請求項1】(訂正発明1)




「遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり,所定のビッグ

ボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を含み,

該可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し,該可変

表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生する遊技機

であって,
前記遊技機は,遊技者にとって特に有利な遊技状態であるビッグボーナス遊技状

態と,前記ビッグボーナス遊技状態よりも低い所定の範囲の払出比率で遊技が行な
われる通常遊技状態とを有し,

前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数
である賭数を入力するための賭数入力手段と,

前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されることによ
り,前記ビッグボーナス遊技状態に制御可能な遊技制御手段と,
前記入賞の発生を許容するか否かを,ランダム値を用いて所定の演算を行った演

算結果と所定の当選値とを比較することにより決定する決定手段と,
前記可変表示装置を制御する手段であって,前記決定手段の決定内容に基づいた

制御が可能な可変表示制御手段と,

前記可変表示装置の表示結果を判定する判定手段と,
前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた小役入賞の発生のための

予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に特定の表
示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値を付与する価値付与手段と,

前記通常遊技状態において,前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価
値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況

を予め定められた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示
結果が,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態
様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を制御し,さらに,

前記比較結果に基づいて,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類定められ




た特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与さ

れる特定の表示態様以外のいずれかとなることを許容する旨が前記決定手段により

決定される確率も併せて制御することにより,前記複数種類の小役入賞の発生確率

のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態を前記小役入賞の

発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えて前記通常遊技
状態における価値付与状況を所定範囲内に保つための確率制御手段とを含み,

該確率制御手段は,前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となっ
た場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様のうち

の1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様とな
ることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させ,前記複数種

類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価
値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,
特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を低

下させることを特徴とする,遊技機。」
・【請求項2】(訂正発明2)

「前記確率制御手段は,前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に,前記可変
表示装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうち,1ゲーム
において付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様とは別の所定の

特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率をも
向上させることを特徴とする,請求項1に記載の遊技機。」



3 審決の理由の要点

(1) 訂正は,特許請求の範囲減縮誤記の訂正,又は明りょうでない記載の
釈明を目的とし,特許請求の範囲減縮又は明りょうでない記載の釈明については
願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,誤記

の訂正については願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範




囲内のものであり,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものでない。

したがって,訂正を認める。

(2) 甲第1号証(特開平5−123444号)には,実質的に以下の発明(甲1

発明)が記載されていることが認められる。

「遊技者が希望する賭け数分に対応した回数だけ取込ボタン24aを押すと,そ
の押した回数に対応した賭け数の球が取り込まれてスタート操作用把手94中のラ

ンプが点灯し,遊技者がスタート操作用把手94を握ってスタート装置90を操作
すると,内部の3つの可変表示ドラムが回転を開始して,それに伴って可変表示窓

10b,10c,10d中の表示の変化が開始され,所定時間経過すると,ストッ
プ表示部15a,15b,15c中のランプが点灯し,さらに所定時間が経過する

と,左,中,右の順に可変表示ドラムが停止されて可変表示窓10b,10c,1
0d中の表示が確定され,遊技者が上記操作を繰り返すことによって次々とゲーム
が行なわれるが,そのゲームの結果,停止時における可変表示窓10b,10c,

10d中の表示の組合せがスコア表示部10fに表示された賞態様(役)のいずれ
かと一致すると,その賞態様(役)に応じた数の賞球が実球で上皿71又は下皿8

0中に排出されるとともに,特に,表示の組合せが“ビッグチャンス”を発生させ
る表示の組合せ(「7,7,7」の組合せ)となったときには,“ビッグチャンス”
が発生して,しかる後,“ビッグチャンスゲーム”に移行される遊技機であって,

ステップS110におけるボーナス判定処理の結果として合格したと判定したと
きにはステップS118でボーナスフラグ成立の処理を行ってから,また,ステッ

プS130における小役判定の結果として合格したと判定したときにはステップS
134で小役フラグの成立処理を行ってから,可変表示ドラム667,677,6

87の停止制御後,ステップS142では役が確定したか否かを判定し役が確定し
たときにはステップS144でその役の確定分に対して球の払い出し処理を行うも
のであり,

前記ビッグチャンスのゲームは,可変表示ゲームの結果としてビッグチャンスを




発生させる表示態様が成立したときに遊技者に賞球獲得の大きなチャンスを与える

ために行なわれるゲームで,このビッグチャンスのゲーム時には,通常ゲーム時に

比べて小役発生の確率がアップされるとともに,ボーナスゲーム発生の可能性が生

ずるものであり,

小役は“俵の絵”が3つ揃ったとき(4),“亀の絵”が3つ揃ったとき(5),左と
中の表示が“亀の絵”で右の表示が“かぶとの絵”のとき(6) “鶴の絵”が3つ揃った


とき(7),左と中の表示が“鶴の絵”で右の表示が“かぶとの絵”のとき(8),“鼓の
絵”が3つ揃ったとき(9),左と中の表示が“鼓の絵”の表示であるとき(10),左

と中の表示が“かぶとの絵”の表示であるとき(11) 左の表示が“鼓の絵”の表示で

あるとき(12)等に発生し,
(4)〜(6)の小役のときの賞球数は,例えば75

個,(7)又は(8)の小役のときの賞球数は,例えば50個,(9)又は(8)の
小役のときの賞球数は,例えば,40個,
(11)の小役のときの賞球数は,例えば
25個,(12)の小役のときの賞球数は,例えば10個である遊技機。」

(3) 訂正発明1と甲1発明の一致点と相違点は次のとおりである。
【一致点】

「遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり,所定のビッグ
ボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を含み,
該可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し,該可変

表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生する遊技機
であって,

前記遊技機は,遊技者にとって特に有利な遊技状態であるビッグボーナス遊技状
態と,前記ビッグボーナス遊技状態よりも低い所定の範囲の払出比率で遊技が行な

われる通常遊技状態とを有し,
前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数
である賭数を入力するための賭数入力手段と,

前記可変表示装置により前記ビッグボーナス識別情報が導出表示されることによ




り,前記ビッグボーナス遊技状態に制御可能な遊技制御手段と,

前記入賞の発生を許容するか否かを,決定する決定手段と,

前記可変表示装置を制御する手段と,

前記可変表示装置の表示結果を判定する判定手段と,

前記可変表示装置の表示結果が予め複数種類定められた小役入賞の発生のための
予め複数種類定められた特定の表示態様のうちのいずれかとなった場合に特定の表

示態様の種類に応じて予め定められた数の有価価値を付与する価値付与手段と,
確率制御手段とを含み,

確率制御手段は,ビッグボーナス遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の
表示結果が特定の表示態様となることを許容する旨が決定手段により決定される確

率を向上させる,遊技機。」である点。
【相違点1】
「前記入賞の発生を許容するか否かを,決定する決定手段」が,訂正発明1では

「ランダム値を用いて所定の演算を行った演算結果と所定の当選値とを比較するこ
とにより」決定しているのに対し,甲1発明ではどのように決定しているか不明で

ある点。
【相違点2】
可変表示制御手段が,訂正発明1では「前記決定手段の決定内容に基づいた制御

が可能な」ものであるのに対し,甲1発明ではそのような構成を有するか不明な点。
【相違点3】

「確率制御手段」が,訂正発明1では「前記通常遊技状態において,前記賭数入
力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された有価価値の付

与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し,該比較
結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が,1ゲームにおいて付与可能な最大
数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段

により決定される確率を制御」するものであるのに対し,甲1発明ではそのような




構成でない点。

【相違点4】

「確率制御手段」が,訂正発明1では「前記比較結果に基づいて,前記可変表示

装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにお

いて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとな
ることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御することに

より,前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動
させて前記通常遊技状態を前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小

役高確率状態とに切り換えて前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内
に保つための」ものであるのに対し,甲1発明ではそのような構成でない点。

【相違点5】
「確率制御手段」は,訂正発明1では「前記小役高確率状態から前記ビッグボー
ナス遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特

定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される
特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向

上させ,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可
能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の
表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段によ

り決定される確率を低下させる」のに対し,甲1発明では「ビッグボーナス遊技状
態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となることを許

容する旨が決定手段により決定される確率を向上させる」点。
(4) 以下の理由により,訂正発明1及び2は当事者が容易に発明をすることが

できたものではない。
@ 所定の契機で取得されたランダム値(乱数値)と当選値を比較して入賞
の発生を許容するか否かを決定することは,甲第7号証(特開平2−232084

号,甲7) 甲第15号証
, (実開昭62−84484号のマイクロフィルム,甲15)




に示されるように従来周知の技術手段とは認められるものの,当該従来周知の技術

手段はランダム値を用いて所定の演算を行うものではない。また,ランダム値を用

いて所定の演算を行う点は請求人の提出した他の各甲号証にも記載がないものであ

って,相違点1に係る「ランダム値を用いて所定の演算を行った演算結果と所定の

当選値とを比較する」を従来周知の技術手段とすることはできない。
したがって,相違点1に係る訂正発明1の構成を当業者が容易になし得たとする

ことはできない。
A 甲7の遊技機は,甲1発明において甲第7号証に記載された技術的事項

を適用し,相違点2に係る訂正発明1の構成とすることは,当業者であれば想到容
易である。

B 甲1発明において甲第4号証(特開平4−279183号,甲4)に記
載された技術的事項を適用し,相違点3に係る訂正発明1の構成とすることは,当
業者にとって想到容易である。

C 訂正発明1の「前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを・・・変動さ
せ」る点及び「前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つ」点は,

甲4には記載されておらず,かつ,設計的事項ということもできない。
したがって,相違点4に係る訂正発明1の構成を想到容易とすることはできない。
また,甲4以外の請求人提出の各甲号証によっても想到容易とすることはできな

い。
そして,この点により,
「本実施の形態では,小役発生確率についてのみ標準値と

の比較によって制御するようにしたので,通常ゲームにおける払出率を所定範囲内
に保ちながら,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの発生についてはランダム値

Rの抽出タイミングと設定値によって制御されることとなり,高設定でもボーナス
発生回数が多いとは限らず,また低設定でも少ないとは限らなくなって遊技者に対
しゲームの興趣を持続させることのできる遊技機とすることができる。 (
」 【008

6】)という 訂正明細書記載の作用効果を奏するものである。




D 相違点5に係る訂正発明1のうち「小役高確率状態からビッグボーナス

遊技状態となった場合に」
(確率を変更する) 甲第2号証
は, (株式会社白夜書房「月

刊パチスロ必勝ガイド平成5年4月号」6頁〜7頁,12頁〜13頁)には記載さ

れておらず,かつ,設計事項ということもできない。

したがって,相違点5に係る訂正発明1の構成を想到容易とすることはできない。
また,甲2以外の請求人提出の各甲号証によっても想到容易とすることはできな

い。
E 訂正発明2は,訂正発明1に限定を付したものであるから,当業者が容

易に想到できたものとすることはできない。



第3 原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(訂正違反その1)
(1) 審決は,訂正前の「『通常遊技状態』は発明の詳細な説明における『小役

低確率状態』及び『小役高確率状態』を内在している」という認識を判断の前提と
して,
「訂正前の請求項1には『特別遊技状態となった場合に,必ず確率変更処理を

行う』と記載されているわけではなく」
(11頁12行〜)「
,『確率変更処理を行う』
条件として,〈訂正前構成〉においては,『特別遊技状態に(ママ)なった場合』とし
ているだけで,その前の状態については問わないものとなっている。(10頁最下


2行〜)ということから,〈訂正後構成〉においては〈訂正前構成〉では特定され

ていなかった『その前の状態』について『小役高確率状態』と特定するものであっ

て,当該訂正は限定を行うものであるから,特許請求の範囲拡張するものではな
い。(11頁1行〜)と判断した。

審決は,本件訂正を訂正事項1から5に分けており,そのうち訂正事項5は次のとおりであ
る。
・訂正事項5
【請求項1】の「前記特別遊技状態となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前
記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付
与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を




向上させる制御を行なう確率制御手段とを含み,
該確率制御手段は,前記特別遊技状態となった場合に,前記複数種類定められた特定の表
示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態
様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容す
る旨が前記決定手段により決定される確率を低下させる」を
「前記通常遊技状態において,前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与
手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定めら
れた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が,1ゲームにお
いて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が
前記決定手段により決定される確率を制御し,さらに,前記比較結果に基づいて,前記可変
表示装置の表示結果が,前記複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて
付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外のいずれかとなることを許
容する旨が前記決定手段により決定される確率も併せて制御することにより,前記複数種類
の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較によって変動させて前記通常遊技状態を
前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えて前記
通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つための確率制御手段とを含み,
該確率制御手段は,前記小役高確率状態から前記ビッグボーナス遊技状態となった場合に,
前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて
付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する旨が前記
決定手段により決定される確率を向上させ,前記複数種類定められた特定の表示態様のうち
の1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様以外の少な
くとも1つの特定の表示態様に関しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決
定手段により決定される確率を低下させる」と訂正する。
しかし,訂正事項5は,訂正前の請求項3の構成を請求項1に繰り上げる訂正を
含んでいる。この訂正のみが行われた場合,通常遊技状態は,小役高確率状態と小

役低確率状態に2分されることになり,訂正前の「特別遊技状態となった場合に,
確率変更処理を行う。」という構成は,A「小役高確率状態から特別遊技状態となっ
た場合に,確率変更処理を行う。」という構成とB「小役低確率状態から特別遊技状

態となった場合に,確率変更処理を行う。」という構成の両者を含むことになる。
そして,この場合におけるAとBの関係であるが,訂正前構成はどのような状態

から特別遊技状態となった場合であるかを限定していないのであるから,Aの構成
もBの構成も含む構成,すなわち,小役高確率状態から特別遊技状態となった場合
にも,小役低確率状態から特別遊技状態となった場合にも,確率変更処理を行う構




成と解するのが当然である。これは書き替えると,
「小役高確率状態から特別遊技状

態となった場合に,確率変更処理を行い,小役低確率状態から特別遊技状態となっ

た場合に,確率変更処理を行う。」という構成となる。訂正事項5は,これを「小役

高確率状態から特別遊技状態となった場合に,確率変更処理を行う。 と訂正するも


のであり,この訂正は,直列的な関係要素の一方を削除するものであり,それによ
って構成の内容が拡がるものとなるから,特許請求の範囲拡張するものである。

(2) 訂正前の請求項1における「通常遊技状態」 「小役低確率状態」 「小
は, 及び
役高確率状態」を内在するものではない。すなわち,訂正前の請求項1には,
「前記

遊技機は,遊技者にとって特に有利な遊技状態である特別遊技状態と,前記特別遊
技状態よりも低い所定の範囲の払出比率で遊技が行われる通常遊技状態とを有し,」

とあるのみであって,
「小役低確率状態」や「小役高確率状態」を含む記載となって
いない。「小役低確率状態」や「小役高確率状態」は,「前記通常遊技状態において
は前記賭数入力手段により入力された入力数と前記価値付与手段により付与された

有価価値の付与数および有価価値の付与回数のうち少なくとも一方とによって算出
される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し,該比較結果に基づいて前記

可変表示装置の表示結果が,1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与
される特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確
率を制御すること」を実施する構成として特許明細書に記載されており,これは訂

正前の請求項3の発明の技術である。訂正前の請求項3は,訂正前の請求項1に上
記の構成を付加したものであって,逆にいえば,訂正前の請求項1は,訂正前の請

求項3に記載された上記の構成を含まない構成である。
審決は,訂正前の請求項1が訂正前の請求項3の構成を「内在している」という

認識に基づき,これを前提として訂正の当否を判断したのであり,明白な誤りであ
る。
そして,特別遊技状態となる前の状態が限定されていないことは,どのような状

態から特別遊技状態となった場合にも,確率変更処理をする構成と解するのが当然




である。

それにもかかわらず,審決は,
「訂正前の請求項1には『特別遊技状態となった場

合に,必ず確率変更処理を行う』と記載されているわけではなく,上記のように特

別遊技状態となる前の状態については問わないものである以上,訂正前の請求項1

に係る発明はA及びBの構成を含むものではなく,A又はBの構成を含むものと解
するのが至当である。(11頁12行〜)と認定したが,A及びBの構成,すなわ


ち小役高確率状態からであろうと小役低確率状態からであろうと,特別遊技状態と
なった場合に確率変更処理をする構成が訂正前の請求項1に含まれていなかったと

いう判断が明白な誤りであることはいうまでもない。
また,
「必ず」がないこと,特別遊技状態となる前の状態については問わないもの

であることが,なぜ,上記の結論に結びつくのかも明らかでない。
(3) 審決は,図11を例に挙げ,「(a)の状態から(d)の状態になる場合のよう
に,
『特別遊技状態になった場合に,確率変更処理を行わない』場合があっても,(b)

の状態から(d)の状態になる場合のように『特別遊技状態になった場合に,確率変
更処理を行う』場合があれば,このような実施例は,特別遊技状態になった場合に,


確率変更処理を行う』ものであるから,訂正前の特許請求の範囲に含まれることは
明らかである。(11頁下7行〜)と認定したが,これは,訂正前の請求項1が「特

別遊技状態となった場合に,確率変更処理を行う場合がある」と記載されているの

と全く同一に解釈するものである。
しかし,このようなクレームは,どのような場合に確率変更処理を行うのかが特

定されておらず,発明が不明確となる(特許法36条6項2号違反となる。。

また,上記のような「処理を行う場合がある」という特定の仕方が許容される場

合があって,そのようにクレーム・アップをしたいと考えるのであれば,そのよう
に特許請求の範囲を記載すればよい。しかし,本件ではそのような記載の仕方をさ
れておらず,単に「特別遊技状態となった場合に,確率変更処理を行う。」というも

のなのであるから,審決のような解釈は理不尽であって,妥当性を欠くものである。




さらに,本件発明の目的は,
「特別遊技状態中のゲームで入賞が発生した場合に比

較的大きな有価価値が遊技者に付与されるようにして特別遊技状態の魅力を向上さ

せること」(段落【0004】)とされているのであるから,特別遊技状態となった

場合に確率変更処理を行うことが重要な意義を有するのであって,これが特定され

ておらず,特別遊技状態になっても確率変更処理を行わない場合があっては,本件
発明の特徴は失われてしまい,発明の目的を達成することができない。



2 取消事由2(訂正違反その2)

(1) 多くのパチスロ機の図柄の組合せは,@ビッグボーナス(BB),Aレギ
ュラーボーナス(RB),B複数種類の小役,C再遊技(リプレイ),Dハズレの5種

類に大きく分けられているというのは,周知事項である。図11でも@「BB」,A
「RB」,Bとして「15」
「8」
「6」
「3」枚役の小役,C「再ゲーム」,D「はず
れ」という記載があるのも,同様である。

訂正事項5では,前記複数種類の小役入賞の発生確率のみを前記標準値との比較

によって変動させ」となっており,この「小役入賞の発生確率のみを・・・変動さ

せ」とは,複数種類の小役の発生確率「のみ」を向上,低下させ,
「小役入賞」以外
のもの,すなわち@「BB」,A「RB」,Cリプレイ,Dハズレの発生確率を変動
させないことを意味すると解するほかない。
「のみ」という表現は,それ以外のもの

の発生確率の変動を例外なく一切許さないという意味以外に解釈のしようがないも
のであり,訂正の文言自体から明らかである。

被告は,自らの意思で,あえて「のみ」という用語を使用したのであるから,こ
の文言の意味を厳密に解釈するのは当然である。

(2) 訂正事項5に関係して明細書に実施例として記載されているのは,図11
のように,小役当選許容値の範囲を変動させる技術だけであり,この方法によると,
小役当選許容値の範囲の変動により小役入賞の発生確率を変動させることはできる

が,図11を見る限り「はずれ」の範囲も変動しており,
「はずれ」の発生確率も変




動させてしまっていることは明らかであって,小役入賞の発生確率のみを変動させ

ているとはいえない。

明細書には,他に小役入賞の発生確率のみを変動させる具体例は一切記載がなく,

したがって,訂正事項5は,新規事項の追加であって,訂正違反である。

明細書の段落【0086】には,
「小役発生確率についてのみ標準値との比較によ
って制御する」という記載があり,被告はこれを訂正の根拠とするものと思われる。

しかし,この明細書の記載は,段落【0055】【0057】の記述を受けたもの

であり,記述の過程で,4種類しかない当選許容値と「はずれ」を含む5種類があ

る発生確率とを混用したことから生じた誤りである(「はずれ」に当選という概念は
ないが,発生はする)。

そもそも,
「発生確率」の性格上,はずれを含む各発生確率の和は必ず「1」とな
るから,そのうちの1つの発生確率のみを変動させることなど不可能である。した
がって複数種類の小役の発生確率の総和を維持しながら,各小役の発生確率のみを

変動させるしか方法がない。しかし,そのような技術は明細書には記載されていな
い。明細書に記載されているのは,小役の当選許容値の範囲を変動させるだけでな

く,複数種類の小役全体の当選許容値の範囲を変動させる技術のみである。明細書
に「小役発生確率についてのみ・・・制御する」との文言はあっても,実行不可能
な誤った記載であることは明白であり,「小役発生確率についてのみ・・制御する」

技術は,実質的には記載されていない。



3 取消事由3(相違点1の判断の誤り)
(1) 審決は,「ランダム値(乱数値)と当選値を比較」することは周知技術

あるとしつつ,ランダム値を用いて所定の演算を行った演算結果と所定の当選値と

を比較」することは周知技術ではないと認定し(42頁)「ランダム値(乱数値)
, 」
とランダム値に演算を行った「演算結果」とは異なるものであるという判断をした

上,演算結果との比較をすることは周知技術ではないと判断した。




しかし,「ランダム値(乱数値)」と「演算結果」を殊更に異なるものと評価する

審決は誤りである。仮に,ランダム値が演算結果と異なるとしても,演算結果を当

選値と比較するというのは周知技術にすぎない。

(2) 訂正明細書の段落【0040】【0041】の記載とそのフローチャート


(甲10,【図6】(b))からすると,S15で「R=R+N」という演算が行われ
る。また,ランダム値Rは一定の範囲の整数であるために,上記の演算でその最大

値が越えた場合には,S17で「R=R−最大値」という演算が行われる。さらに,
ランダム値がランダムになるように,S19で「Rの値にもとづきNを変更」する。

このNは,複数種類の素数でかつ前記最大値をその素数で除した場合の商が整数に

ならないような素数の中から1つ選択され」るものであり,前記のとおりランダム

値Rに加算されるNにも一定の演算が加えられる。
このようにランダム値Rは,更新される度に演算を加えられた結果となっている。
そうすると,演算を加えているか否かで,ランダム値(乱数値)と演算結果を区別

することは意味がない。ランダム値に演算を行った演算結果というのは,
「ランダム
値(乱数値)」そのものであって,別個の性質を有するものではない。演算を加える

というのはランダム値(乱数値)の作り方の一種にすぎない。
(3) 甲7の4頁右下欄5行目以下の記載において,第7図を引用し,タイマー
で発生させた乱数値に対して,『+1』『+3』
「 , ,あるいは『+4』の処理は,前回

の乱数値に10進数の『769』という素数を加えてゆくことになる」とされてお
り,一定の演算を行って乱数値を決めていることが明らかである。

このように乱数値の発生方法として,一定の演算を加えるというのは周知慣用技
術に過ぎないものであり,単なる設計事項である。

訂正発明では,前記のとおり,演算の結果であるランダム値Rに関して,
「S66
に進み,格納されているランダム値Rを用いて所定の演算を行う処理がなされる」
(段落【0054】,図9参照)。すなわち,S15ないしS19の演算結果である

ランダム値Rに対して,S66で再度の演算を行っている。しかしながら,この再




度の演算は,訂正発明において何らの作用効果をもたらすものではないし,訂正発

明の特徴的な技術とは無関係である。少なくとも,訂正明細書には,再度の演算を

行うことの作用効果について何らの記載もない。

したがって,再度の演算による結果についても乱数そのものであって,乱数に再

度の演算を行うことは乱数の発生方法にすぎず,単なる設計事項である。
(4) 上記の通り乱数値自体がすでに演算の結果であるが,仮に,再度の演算を

加えることに進歩性が認められるとしても,「パチスロ必勝ガイド」(甲26)の4
2頁4段目,97頁3段目以降の記載からしても,一度発生させた乱数値に,再度

の演算を加えて乱数値を発生させることは,出願当時に周知慣用技術であった。



4 取消事由4(相違点4の判断の誤り)
(1) 審決は,甲4に記載された発明は,遊技状態に関係なく割数すなわち価値
付与状況を所定範囲内に保っているといえるが,特大賞態様の発生状況を変動させ

ている点において,『小役入賞の発生確率のみ』を変動させて価値付与状況(割数)

を所定の範囲内にするという訂正発明1と技術思想を異にするものである」と判断

した(46頁)。
しかし,審決は,
「小役入賞の発生確率を前記標準値との比較によって変動させて
前記通常遊技状態を前記小役入賞の発生確率が相異なる小役低確率状態と小役高確

率状態とに切り換えて価値付与状況を所定範囲内に保つ」ことが甲4に実質的に記
載されていること,小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えるため小役入賞


の発生確率を変更するに際し,確率を変更する対象として『最大小役』のみに限定
すべき理由」がないこと,『他の小役』の発生確率を変更することに何らの技術的


困難性もない」ことを認めて,『他の小役』の発生確率を併せて変更することを採

用するか否かは設計上の事項にすぎない」と判断しているのであるから,小役の当
選確率のみを変動させ,特大賞態様の発生状況を変動させないとすることに何らの

技術的困難性がないことはまったく同様であり,小役の当選確率のみを変動させる




か,特大賞態様の発生状況をも変動させるかも設計事項にすぎないという判断とな

るはずである。遊技機における各役の当選確率やその変動などは,遊技の組み立て

にすぎず,技術思想などというほどのものではない。技術的にはどのように構成す

ることも可能であり,技術的困難はない。それにもかかわらず,審決は,恣意的に

設計事項と技術思想の相違として判断を分けており,一貫性がなく,矛盾している
との批判を免れない。

(2) 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律下における周知慣用
技術

回胴式遊技機は,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風適法)
の下においては,射幸性の基準(出願当時の風適法4条3項,同法施行規則7条

号,
「役物の作動により獲得することができる遊技メダルの数が,役物の作動によら
ないで獲得することができる遊技メダルの数に比して著しく多いこととなる性能を
有する遊技機であること」,甲27)及び技術上の規格(風適法20条3項,本件出

願当時の遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則別表第5回胴式遊技機に係る
技術上の規格〔第6条関係〕,甲27)により,役物が作動しない場合,すなわち通

常遊技状態において獲得することができる遊技メダルの枚数の期待値を技術上の規
格に定められた範囲内にするべきことが定められていた。したがって,通常遊技状
態において獲得することができる遊技メダルの枚数を所定の範囲内に保つことは,

昭和60年の風適化法施行以降,同法の射幸性の基準及び技術上の規格に適合する
回胴式遊技機のすべてが備えている性能であり,周知慣用技術であった。

そして,上記風適法の射幸性の基準及び技術上の規格の下において,回胴式遊技
機に関する発明又は回胴式遊技機を含む遊技機に関する発明は,役物が作動しない

場合,すなわち通常遊技状態において獲得することができる遊技メダルの枚数を所
定の範囲内にする性能を有するものでなければ,現実に実施することができないの
であり,この性能(技術)は,実際に製造されて使用されている回胴式遊技機のすべ

てにおいて実施されていた技術であるから,あたりまえすぎて明細書に記載されな




かったものと推認するのが相当である。

訂正発明,甲4記載の発明その他の回胴式遊技機に関する発明は,このような当

時の技術常識を前提に理解されるべきである。また,甲4発明を実施する場合には,

上記周知慣用技術と組み合わせることが当然に想定されていたものである。

(3) 確率変動の技術
回動式遊技機の製造業者の大半が加入していた当業者の組合である日本電動式遊

技機工業協同組合(日電協)が風適法を所管する警察庁の指導に基づき平成2年1
1月21日に制定した「技術上の規格に関する解釈基準(以下「日電協内規」とい

う。甲29)には,上記の技術上の規格の解釈として,役物が作動しない場合におい
て,すなわち,通常遊技状態において獲得することができる遊技メダルの枚数の期

待値を所定の範囲内に保つという技術上の規格を守っていれば,各役の抽選確率を
遊技中に変更させることが許容されることが記載されていた。これによって,当時
の回胴式遊技機の製造業者の大半が,通常遊技状態において獲得することができる

遊技メダルの枚数の期待値を所定の範囲内に保ちながら,各役の抽選確率を遊技中
変更させる技術を周知慣用技術として認識していたことが明らかである。

したがって,遅くとも平成2年11月21日以降,通常遊技状態において獲得す
ることができる遊技メダルの枚数の期待値を所定の範囲内に保ちながら各役の抽選
確率を遊技中に変更させる技術は,周知慣用技術である。

上記の周知慣用技術うち,小役の抽選確率のみを変動させるものとして現実に実
施されたものが,いわゆる2号機,3号機における「小役の集中」(小役の入賞図柄

は,フルーツであることが多いことから,当時「フルーツの集中」と呼ばれた。)
と,4号機において「ニューパルサー」が最初に実施した,通常遊技状態において

小役の高確率状態と低確率状態とに切り分ける技術である。
ビッグボーナス・レギュラーボーナスの抽選確率を変動させることも,同様に周
慣用技術であるが,確変」
「 と呼ばれ,まったく異なる性能として理解されている。

(4) 「フルーツの集中」




特許庁作成に係る平成18年度の標準技術集(甲30)には,
「一般的に『集中役』

と称されているものは,一定のゲーム数もしくは特定条件を定め,その特定条件を

満たすまで小役(リプレイを除く)またはシングルボーナスの内部抽選確率を飛躍的

に高め,メダル増加に係る機能を指す。」と説明し,さらに〈小役の集中〉が存在す

ることを明記している。
したがって,上記技術上の規格を遵守して,通常遊技状態において獲得すること

ができる遊技メダルの枚数の期待値を所定の範囲内に保ちながら,通常遊技状態に
おいて,小役(リプレイを除く)の内部抽選確率を飛躍的に高め,メダル増加に係る

機能(技術)が,特許庁において,標準技術すなわち周知慣用技術と認識されていた
ことは明らかである。

(5) 「ニューパルサー」
4号機においては,通常遊技状態において,払出率をチェックし,払出率によっ
て小役の高確率状態と低確率状態に切り分ける技術が採用されたのであり,本件出

願以前に,これを公然実施した機種が「ニューパルサー」である(甲32)。
パチスロ大図鑑(甲31)には「ニューパルでは,通常時の小役払い出し率を常

にチェックしており,払い出しが多ければ小役低確率状態,少なければ高確率状態
へと移行する仕組みになっている」こと,
「通常時小役確率合算値として,高確率状
態1.73分の1,低確率状態6.92分の1」であることが明記されており(1

01頁),パチスロ完全攻略辞典VOL.4(甲33)には,「各役の確率」が表に
なって記載されており,
「高確率」と「低確率」とでは,
「10枚小役」
「4枚チェリ

ーリー」
「2枚チェリー」の抽選確率だけが変動し,
「ビッグ」
「レギュラー」の抽選
確率は変動しないことが明記されている(114頁)。

(6) 小括
以上のとおり,回胴式遊技機は,風適法による規制の下,射幸性の基準により「役
物の作動により獲得することができる遊技メダルの数が,役物の作動によらないで

獲得することができる遊技メダルの数に比して著しく多いこととなる性能を有する




遊技機」に該当しないように,技術上の規格に沿って「役物が作動しない場合にお

いて,遊技メダル1枚につき獲得することができる遊技メダルの枚数の期待値は,

〇.三五枚を超え,〇.九〇枚を超えない」ことを遵守することが求められており,

型式試験における所定の回数の遊技を行う試射試験においても上記の範囲内になる

ことが求められ,小役入賞のみによる期待値を基準の範囲内にすることは,射幸性
の基準に適合するため,技術上の規格を判断する型式試験に適合するため,すべて

の回胴式遊技機に採用されていた周知慣用技術である。
また,通常遊技状態における小役の当選確率を高確率状態と低確率状態を設けて

変動させる技術は,2号機時代から多くの機種に用いられていた周知慣用技術であ
る。

しかも,本件出願以前に制定された日電協内規が解釈基準として小役入賞による
期待値を変動させることを明記し,この内規に基づいて開発製造された「ニューパ
ルサー」が再ゲームをも含む各役の当選確率のうち小役入賞の当選確率のみを変動

させる制御を行っていたこと,かつ,価値付与状況を所定の範囲に保つ制御を行っ
ていた。

したがって,相違点4は,審決が認定した甲4記載の事項と当時の周知慣用技術
を組み合わせることにより容易に想到可能であったというべきである。
(7) 甲31〜34の提出の可否等について

原告は,審判手続において審理判断されていた公知事実に基づく特定の無効原因
とは別個の無効原因を形成する公知事実を立証するための証拠として,甲31〜3

4を提出しているのではない。
役物が作動しない場合,すなわち通常遊技状態において獲得できる遊技メダルの

枚数を所定の範囲に保ちながら,小役の抽選確率のみを変動させることは, 「集
前記
中役」以来,一般に広く実施されている周知慣用技術である。したがって,本来立
証の必要がないはずのものであるところ,審決ではこの点の判断を誤っているので,

裁判所において,この点を具体的に認識できるようにするために,当時,現実に実




施されていた具体例を証拠として提出したものである。

また,被告は,甲32に記載された「ニューパルサー」が,甲31〜34に記載

された性能を有する「ニューパルサー」と同一であったか否かも不明である」と主

張するが,風適法上の規制をうける遊技機については型式試験があり,その試験を

通過した機種については,同一であるのは当然である。そのようなことは,従前の
裁判例・審決例においても当然とされてきたことであり,遊技機メーカーである被

告もよく知っているところである。



5 取消事由5(相違点5の判断の誤り)
審決は,甲2には,相違点5に係る訂正発明1の「前記ビッグボーナス遊技状態

となった場合に,前記可変表示装置の表示結果が,前記複数種類の特定の表示態様
のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態
様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される確率を向上させ,前記

複数種類定められた特定の表示態様のうちの1ゲームにおいて付与可能な最大数の
有価価値が付与される特定の表示態様以外の少なくとも1つの特定の表示態様に関

しては,特定の表示態様となることを許容する旨が前記決定手段により決定される
確率を低下させる」ことが実質的に記載されていることを認めたが,甲2において,
確率を変更するのは,
「平常時」から「ビッグ中」になった場合であるが,
「平常時」

に「小役高確率状態」が存在する旨の記載あるいは示唆がないことを理由に,
「相違
点5に係る訂正発明1のうち,小役高確率状態からビッグボーナス遊技状態となっ


た場合に』(確率を変更する)は,甲第2号証には記載されておらず,かつ設計事項
ということもできない」と判断し,相違点5の容易想到性を否定した(48頁)。

しかし,前記のとおり,通常遊技状態において,小役発生確率の高い高確率状態
と確率が低い低確率状態とを設けること,小役入賞による価値付与状況を所定の範
囲に保つことは2号機時代から行われていた周知慣用技術である。

甲2の「チェリーバー」は,
「集中役」のうち「フルーツの集中」ではなくシング




ルボーナスの抽選確率を向上させる集中役を採用しており,小役高確率状態」「小
「 と

役低確率状態」を設ける仕組みを採用していないが,審決が採用した記載部分は,

「平常時」と「ビッグ中」の抽選確率の比較であるから,シングルボーナスの集中

に代えて「フルーツの集中」を採用し,
「平常時」を「小役高確率状態」と「小役低

確率状態」に分けて審決が採用した部分と組み合わせることは容易であり,何ら困
難はない。

したがって,相違点5は,当業者にとって容易に想到可能なものであったという
べきである。



6 取消事由6(訂正発明2についての進歩性判断の誤り)

訂正発明2で訂正発明1に含まれない構成については,甲2に記載されており,
また,単なる設計事項にすぎない。
したがって,訂正発明1に進歩性が認められない以上,訂正発明2についても進

歩性は認められない。



第4 被告の反論
1 取消事由1に対し
原告は,訂正前の「特別遊技状態となった場合に,確率変更処理を行なう」とい

う記載を「小役高確率状態から前記ビッグボーナス状態となった場合に,確率変更
処理を行なう」とする訂正事項5は,
「小役低確率状態から特別遊技状態となった場

合」を削除するものであり,この訂正は直列的な関係要素の一方を削除するもので
あり,それによって構成の内容が拡がるものとなるから,特許請求の範囲拡張

るものである旨主張する。
しかし,原告の主張は,訂正前の特許請求の範囲を「小役高確率状態から特別遊
技状態となった場合に,確率変更処理を行ない,小役低確率状態から特別遊技状態

となった場合に,確率変更処理を行なう」ものであることを前提として,本件訂正




を行った場合の主張にすぎず,訂正前の特許請求の範囲を誤解した主張である。

すなわち,訂正前の記載は,審決(10頁38行〜11頁4行)が認定するとお

り,
「特別遊技状態となった場合に,確率変更処理を行なう」としているだけで,
「特

別遊技状態」の前の状態については,小役低確率状態であるのか,小役高確率状態

であるのか,さらにはそれ以外の状態であるのかは何ら問うものではないのであり,
原告の主張は特許請求の範囲の解釈の誤りに由来することが明らかである。

そして,審決が認定するとおり,訂正前の請求項1においては,「通常遊技状態」
及び「特別遊技状態」が記載されており,
「通常遊技状態」は発明の詳細な説明にお

ける「小役低確率状態」及び「小役高確率状態」を内在しているものであるから,
<訂正前構成>はA[通常遊技状態のうち小役高確率状態から特別遊技状態となっ

た場合に,確率変更処理を行う]構成及びB[通常遊技状態のうち小役低確率状態
から特別遊技状態となった場合に,確率変更処理を行う]構成を含むものというこ
とができる。しかしながら,訂正前の請求項1には「特別遊技状態となった場合に,

必ず確率変更処理を行う」と記載されているわけではなく,上記のように特別遊技
状態となる前の状態については問わないものである以上,訂正前の請求項1に係る

発明はA及びBの構成を含むのではなく,A又はBの構成を含むものと解するべき
である。そうすると,<訂正前構成>から選択的構成のうちAのみに限定して<訂
正後構成>とする訂正は,特許請求の範囲減縮するものであり,特許請求の範囲

拡張するものではない(審決11頁16行〜18行)。
また,原告は,審決の上記判断について,このようなクレームはどのような場合

に確率変更処理を行うのかが特定されておらず,「発明が不明確となる」とか,「訂
正事項5は,訂正によって,ゲームの内容を根本的に変更してしまっており,発明

の要旨を変更するものである」と主張するが,これらの点は,訂正が特許請求の範
囲を拡張するものでないとの審決の判断の当否にまったく関係がなく,主張自体失
当というべきである。





2 取消事由2に対し

原告は,訂正事項5に関し,図11を見る限り「はずれ」の範囲も変動しており,

「はずれ」の発生確率も変動させてしまっていることは明らかであって,小役入賞

の発生確率のみを変動させているとはいえないとか,本件明細書には,他に小役入

賞の発生確率のみを変動させる具体例は一切記載がなく,したがって,訂正事項5
新規事項の追加であって,訂正要件違反であるなどと主張する。

しかし,本件明細書の【発明の実施の形態】の段落【0086】には「小役発生
確率についてのみ標準値との比較によって制御するようにした」と記載されている

のであって,
「小役入賞の発生確率のみ…を変動させ」とする構成への訂正には新規
事項の追加はない。

各入賞役の発生確率と「はずれ」の発生確率との総和が理論的に1になることは
当然であるから,
「小役入賞の発生確率のみ」を対象として,標準値との比較によっ
て変動させる制御をすれば,その制御に伴って「はずれ」の発生確率がその制御に

連動して変化することは至極当然のことである。段落【0086】の記載は,この
ような至極当然のことを前提とした記載であって,段落【0086】には,小役入

賞の発生確率のみを対象として標準値との比較によって変動させたときに「はずれ」
の発生確率が連動して変化してしまうという当然のことを敢えて記載していないだ
けのことであり,当選許容値と発生確率を混用したものではない。

訂正事項5のうちの「小役入賞の発生確率のみ…を変動させ」という記載につい
ても同様であって,小役入賞の発生確率のみを対象として標準値との比較によって

変動させたときに「はずれ」の発生確率が連動して変化するという当然のことまで
をわざわざ特許請求の範囲に記載していないだけのことである。

以上のとおり,訂正事項5は,本件明細書及び図面のすべての記載を合理的に総
合解釈して導かれる技術的事項に対して,新たな技術的事項を追加したものではな
いから,訂正が本件明細書に記載された事項内における特許請求の範囲減縮であ

るとした審決の判断に誤りはない。




3 取消事由3に対し

(1) 訂正発明1(請求項1)の「ランダム値」と「演算結果」との用語の意義

本件明細書において,
「ランダム値」と「演算結果」とは異なる技術的意義を有す

る用語として,区別して用いられている。原告の主張するように「『ランダム値』と
『演算結果』とが殊更に異なるものでない」のであれば,
『ランダム値』=『ランダ

ム値を用いて所定の演算を行なった演算結果』ということになるから,
『ランダム値
を用いて所定の演算を行なった演算結果と所定の当選値とを比較する』という記載

ではなく,
『ランダム値と所定の当選値とを比較する』と記載されるはずである。し
かし,特許請求の範囲の記載は「ランダム値」と「ランダム値を用いて所定の演算

を行った演算結果」とを明確に区別して用いていることからみて,
『ランダム値』と
『ランダム値を用いて所定の演算を行なった演算結果』は技術的意義が異なるもの
と理解されるべきことは当然のことである。

また,段落【0054】の記載を参酌すると,ここには「ランダム値」が「当選
値との比較の前の演算対象として抽出された特定の1つの値」であるとともに,
「演

算結果」が「既に抽出されて格納されたランダム値に対して所定の演算が行われた
結果,得られた値」であることが明確に記載されている。
したがって,特許請求の範囲に記載された「ランダム値」および「演算結果」の

用語は,それぞれ別個の技術的意義を有する用語として解釈されるべきである。
なお,原告が引用する段落【0040】【0041】,図6(b)記載は,ランダ

ムカウンタのランダム値を生成する動作説明そのものにすぎず,抽出された特定の
ランダム値に対する演算を説明したものではない。また,原告が引用する段落【0

040】【0041】,図6(b)のどこにも「ランダム値」および「演算結果」と
いう用語は存在しない。
以上のとおり,『ランダム値(乱数値)
「 』と『演算結果』とを殊更に異なるもの

と評価する審決は誤りである。との原告の主張こそ誤りであることが明らかである。





(2) 甲7との関係

原告は,甲7の記載を引用して,乱数値の発生方法として一定の演算を加えると

いうのは周知慣用技術に過ぎないものであり,単なる設計事項であると主張する。

しかし,原告が引用する甲7の第7図には,値(RAND1,RAND2)をラ

ンダムに更新することによって乱数を生成することを繰り返す処理が記載されてい
るにすぎず,この処理は「ランダムカウンタ」の処理のことである。

一方,甲7の第9図には,乱数をサンプリング(抽出)した上で,入賞テーブル
を選択して,サンプリングした乱数と選択した入賞テーブルとを用いて入賞判定(大

ヒット,中ヒット,小ヒットの当選の有無の判定)をする処理が記載されているが,
サンプリングした乱数に対して入賞判定する前に演算を行う処理は記載されていな

い。つまり,甲7には,訂正発明1の「ランダム値を用いて所定の演算を行う」と
いう構成は示されていない。それゆえ,審決の「所定の契機で取得されたランダム
値(乱数値)と当選値を比較して入賞の発生を許容するか否かを決定することは,

甲7及び甲15に示されるように従来周知の技術手段と認められるものの,当該周
知の技術手段はランダム値を用いて所定の演算を行うものではない。 との判断
」 (4

2頁22行〜25行)に誤りはない。
さらに,抽出されたランダム値を対象にして演算を加える構成を設計事項と認定
できる証拠は存在せず,原告の主張は理由がない。

(3) 「パチスロ必勝ガイド」(甲26)との関係
原告は,「パチスロ必勝ガイド」(甲26)の記載を引用して,一度発生させた乱

数値に,再度の演算を加えて乱数値を発生させることは,本件出願当時に周知慣用
技術であったことは明白であると主張する。

しかし,甲26には「既に抽出されて格納されたランダム値に対して所定の演算
を行う処理」は記載されていない。甲26には「まず,1ゲーム毎にABC(乱数
の元)を生成し,次に,『B,CでCを更新し,更新後のCからDを生成すること』

を割り込み毎に繰り返し行ない,ゲームをスタートするためのレバーが押された瞬




間にDを抽出した上で,このDと当選値とを比較して入賞判定を行なうこと」が実

質的に開示されているが,レバーが押されたときに抽出したDを当選値と比較する

前に,Dに対して所定の演算を施すことが記載されているとはいえない。

したがって,審決の「所定の契機で取得されたランダム値(乱数値)と当選値を

比較して入賞の発生を許容するか否かを決定することが従来周知の技術手段である
ことは前述のとおりであり,比較,読み取り(「取得」,判定(
) 「入賞の発生を許容

するか否かを決定」などの手段を用いることは想到容易ということができるとして

も,当該周知技術によって「演算」を行う手段を用いることを設計上の選択的事項

として想到容易とすることはできない。」との判断(42頁34行〜39行)に誤り
はない。



4 取消事由4に対し
(1) 甲26〜34に基づく原告主張の不当性

審決の判断は,甲4の技術思想は「遊技状態に関係なく,価値付与状況を所定範
囲内に保っている」もので,かつ,
「特大賞態様の発生状況を変動させている」もの

であるから,相違点4に係る訂正発明1の『前記複数種類の小役入賞の発生確率の
みを…変動させ』る点及び『前記通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内
に保つ』点は,技術思想の点で進歩性が認められ,甲4に記載された技術の設計的

事項とはいえないとするものである。
これに対し,原告は,審判では提出されていなかった新証拠(甲26〜34)を

提出して,相違点4は,審決が認定した甲4記載の事項と当時の周知慣用技術を組
み合わせることにより容易に想到可能であったと主張する。

しかし,上記新証拠は,甲4に記載された事項の意義を明らかにする目的で提出
されたものではなく,甲4の技術思想と相容れない技術(相違点4と甲4との相違
部分である上記二重カッコ部分)を周知慣用技術として立証するために提出された

証拠である。




しかも,原告の主張は,審決が「訂正発明1の『…』る点及び『…』点は,甲4

には記載されておらず,かつ,設計的事項ということもできない。また,甲4以外

の請求人提出の各甲号証によっても容易想到とすることはできない。と判断した点


についての誤りを主張立証するものではなく,甲4の技術思想と相容れない技術に

関して別の証拠を新たに採用した上で,改めて相違点4に係る訂正発明1の構成の
容易想到性の論証を試みるものであるから,審決取消訴訟に提出できない追加証拠

及び主張というべきである。
(2) 甲4の技術思想と新証拠との関係

ア 仮に,新証拠を採用して甲4に記載された事項と周知慣用技術の組み合
わせに基づいた容易想到性の主張が許されるとしても,相違点4に係る訂正発明1


の構成」が容易想到であるとの結論には至らない。
甲4の技術思想は,相違点4に係る訂正発明1の構成のうちの『前記複数種類の
小役入賞の発生確率のみを…変動させ』る点及び『前記通常遊技状態における価値

付与状況を所定範囲内に保つ』点を採用しないことを前提として成立するものであ
るが,仮に,新証拠からそれらの点が「周知慣用技術」であると認定できたとして

も,その「周知慣用技術」を甲4に記載された事項に組み合わせることができない
からである。
イ また,審決の判断に一貫性がないとする原告の主張は理由がない。すな

わち,審決は,要するに「甲4の記載からすると,発生確率を変更する小役入賞の
対象として最大払出小役以外のその他の小役も含まれるのか否か不明であるが,最

大払出小役とその他の小役とは払出枚数が異なる点を除いて技術的に格別の差異は
なく,また,小役低確率状態と小役高確率状態とに切り換えるに際し,確率を変更

する対象として最大(払出)小役のみに限定するべき理由がない」という理由で,
「他の小役の発生確率を併せて変更することを採用するか否かは設計上の事項に過
ぎない」と判断したのである(45頁〜46頁のイ)。

しかし,甲4に記載された発明を「特大賞態様の発生状況を変動させないもの」




変更することについては,「変更するべき理由がない」とはいえない。すなわち,

甲4の段落【0019】に記載のとおり,
「特大賞態様は,通常賞態様に比較して多

数枚の賞コインを遊技者に与える」ものであるから,特大賞態様の発生は,価値付

与状況に極めて大きな影響を与える。甲4発明が「通常賞態様の高得点の賞態様や

特大賞態様の発生,或いは特大賞態様の発生だけ」を制御して,
「演算割数が設定割
数の例えば1割以内の誤差となるまで継続する。(段落【0027】
」 )のは,まさし

く,特大賞態様の発生が価値付与状況に極めて大きな影響を与えるからである。
そうすると,甲4発明が「特大賞態様の発生を含めて価値付与状況を保つ発明」

である以上,あえて,特大賞態様の発生状況を変動させないように変更することが
設計事項であるなどとはいえないことになる。むしろ,そのように変更することは

想定できないというべきである。
また,甲4と「相違点4に係る訂正発明1の構成」との相違部分は,甲4におけ
る技術思想の前提を成す部分であるから,甲4の前提部分を変更して「相違点4に

係る訂正発明1の構成」とすることができるはずはない。
したがって,甲4と「相違点4に係る訂正発明1の構成」との相違部分について,

新証拠を追加して,甲4と周知慣用技術の組合せに基づいた容易想到性の論証を試
みたとしても,
「相違点4に係る訂正発明1の構成」に容易想到であるとの結論には
至らないというべきである。

(3) 新証拠につき
原告は,新証拠(甲26〜34)を提出して,
「小役入賞のみによる期待値を基準

の範囲内にすることは,射幸性の基準に適合するため,又,技術上の規格を判断す
る型式試験に適合するため,すべての回胴式遊技機に採用されていた周知慣用技術

である。また,通常遊技状態における小役の当選確率を高確率状態と低確率状態を
設けて変動させる技術は,2号機時代から多くの機種に用いられていた周知慣用技
術である。と主張するが,
」 新証拠からはそのような周知慣用技術を認定できないし,

新証拠に記載された技術の技術的意義と相違点4に係る訂正発明1の構成の技術的




意義とが異なるため,甲4と組み合わせる技術としては採用の余地がない。以下,

その理由を詳述する。

ア 特許庁作成に係る平成18年度標準技術集(甲30)

原告は,小役の抽選確率を変動させて価値付与状況を所定の範囲に保つことが

3号機以前から一般に行なわれており,その技術の一つが『フルーツの集中』とい
われるものであるところ,かかる技術が特許庁作成に係る標準技術集(甲30)に

記載されていると主張する。
しかし,甲30は本件出願前に頒布された刊行物ではないから,
「小役の抽選確率

を変動させて,価値付与状況を所定の範囲に保つことが3号機以前から一般に行な
われていた」との事実は立証されない。また,甲30には,
「なお,同役は過去の『遊

技機の認定及び型式の検定に関する規則』2003年以前)
( には定められておらず,
現行規則上(2004年以降)では,
・・・ため,事実上搭載不可能な機能となって
いる。 と記載されており,
」 甲30に記載された集中役は,本件の原々々々出願日(平

成5年〔1993年〕5月27日)以前には規則に存在していなかったことが明ら
かである。

したがって,甲30からでは「小役入賞のみによる期待値を基準の範囲内に保つ
こと」または「通常遊技状態における小役の当選確率を高確率状態と低確率状態を
設けて変動させる技術」が周知慣用技術であるとは到底いえない。

ウ パチスロ必勝ガイド(甲26)
原告は,甲26に基づいて「『フルーツの集中』は,小役の当選確率のみを変動さ

せる技術であり,多数の機種に採用されていた周知技術であった。フルーツの集中』

を採用した機種においても, ・
・ ・技術上の規格に適合していたものであるから,
『フ

ルーツの集中』を含めて獲得できるメダルの期待値を所定の範囲に保たれていたこ
とは明らかである。」と主張する。
しかし,
「技術上の規格に適合していたもの」であるというだけでは,『フルーツ


の集中』を含めて獲得できるメダルの期待値を所定の範囲に保たれていたことが明




らかである」とはいえず,原告が提出した新証拠からでは「当時の技術上の規格に

は,小役入賞のみにより獲得することができる遊技メダルの枚数の期待値を,所定

の範囲に保つことが記載されていた。」とはいえない。

また,甲26には,フルーツの集中が「獲得できるメダルの期待値を所定の範囲

に保つ」ものであることは一切記載されていない。
むしろ,甲26の「獲得できるコイン枚数は,機種によって大きな差があり,い

くらかコインのもちを良くする位のものから,ビッグチャンスに至るまで小役の集
中が続き,延々とコインが増える可能性のある機種まである。(4枚目13頁)
」 ,そ

の他(7枚目23頁上から4段目,8枚目29頁の見出し白抜き文字部分,10枚
目36頁の縦書き見出し文,10枚目37頁上から3段目,37頁の上から4段目)

の記載からすると,フルーツの集中は,獲得できるメダルの期待値が所定の範囲に
保たれているか否かとは無関係に発生・終了するもので,獲得メダルが増加する状
態であると理解される。

したがって,甲26の記載からでは,『フルーツの集中』を含めて獲得できるメ

ダルの期待値を所定の範囲に保たれていたことは明らかである」とはいえず,原告

の主張は理由がない。
また,甲26の「フルーツの集中」は,上記のとおり「獲得できるメダルの期待
値が所定の範囲に保たれているか否かとは無関係に発生・終了し,獲得メダルが増

加する状態」であるため,このような技術を甲4に組み合わせてみても,相違点4
のうち,甲4では埋まらない訂正発明1の構成部分である『前記通常遊技状態にお

ける価値付与状況を所定範囲内に保つ』点には想到し得ない。
さらに,甲26の記載のうち,
「フルーツの集中で獲得できるコインの枚数には制

限がない」や「フルーツの集中には,…ビッグチャンスが入るまで,
“1万枚も夢で
ない”という機械も存在する。」などの記載を考慮すると,「フルーツの集中」の技
術的意義は,メダルの獲得枚数が格段に増える状態を提供してメダル獲得の面白み

を向上させる点にあると解され,少なくとも,「フルーツの集中」は,「価値付与状




況の調整」に向けられた機能ではない。それゆえ,
「フルーツの集中」の技術的意義

を考慮することなく,
「フルーツの集中」から「小役の発生確率が向上」という点の

みを抜き出して甲4に組み合わせることを当業者が想定でき得る余地はない。

エ 甲31〜34

パチスロ必勝ガイド(甲32)には,相違点4に係る訂正発明1の構成を備える
遊技機が公然実施された事実は記載されておらず,単に,
「ニューパルサー」という

機種名の遊技機でゲームをしたときの「実戦報告」が記載されているにすぎない。
また,甲32に記載された「ニューパルサー」が,パチスロ大図鑑1694〜2

000(甲31),パチスロ完全攻略辞典VOL.4(甲33),ニューパルサー必
勝ガイド(甲34)に記載された性能を有する「ニューパルサー」と同一であった

か否かも不明である。さらに,甲31〜34は,いずれも本件出願前に頒布された
刊行物ではない。
したがって,甲31〜34からでは,相違点4に係る訂正発明1の構成を備える

遊技機が本件出願前に公然実施をされた発明であるとは到底いえない。



5 取消事由5に対し
原告は,
「通常遊技状態において,小役発生確率の高い高確率状態と確率が低い低
確率状態とを設けること,小役入賞による価値付与状況を所定の範囲に保つことは

2号機時代から行われていた周知慣用技術である。」という主張を前提とした上で,
甲2に関し,
「シングルボーナスの集中に代えて,
『フルーツの集中』を採用し,
『平

常時』を『小役高確率状態』と『小役低確率状態』に分けて,審決が採用した部分
と組み合わせることは容易であり,何ら困難はない。」と主張する。

しかし,前記のとおり,
「小役入賞による価値付与状況を所定の範囲に保つことは
2号機時代から行われていた周知慣用技術である。 とはいえないから,
」 原告の主張
は理由がない。





6 取消事由6に対し

原告は,
「訂正発明2で訂正発明1に含まれない構成については,甲2に記載され

ているし,また,単なる設計事項にすぎない。したがって,訂正発明1に進歩性

認められない以上,訂正発明2についても進歩性は認められない。」と主張する。

しかし,審決は,原告が主張するような,
「訂正発明2が甲2に記載」されている
か否か,「単なる設計事項である」か否かを判断するまでもなく,「訂正発明2は訂

正発明1に限定を付したものであるから,当業者が容易に想到できたものとするこ
とはできず」という理由で特許法29条2項の規定に違反してされたものではない

と判断したものである。
原告の主張は,訂正発明2に対する審決の判断の誤りを主張するものではないか

ら主張自体失当というべきである。


第5 当裁判所の判断

当裁判所は,以下のとおり,訂正違反の取消事由1,2は理由がなく,相違点4
の判断誤りをいう取消事由4は理由がないと判断し,この点において,訂正発明1,

2の進歩性を肯定した審決の結論を支持することができると判断する。
1 取消事由1(訂正違反その1)について
(1) 本件明細書(甲10,19)の発明の詳細な説明には,訂正発明1の構成

に対応する事項として,次の2つのケースが記載されている。
(a) 小役低確率状態(「通常時」)から特別遊技状態となった場合に,確率

変更処理を行う・・・図11(a)(d)(ケースA)
(b) 小役高確率状態(「高確率時」)から特別遊技状態となった場合に,確

変更処理を行う・・・図11(b)(d)(ケースB)
(2) 原告の主張は,訂正前の特許請求の範囲を「小役高確率状態から特別遊技
状態となった場合に,確率変更処理を行ない,小役低確率状態から特別遊技状態と

なった場合に,確率変更処理を行なう」ものであることを前提としたものである。




しかし,訂正前の特許請求の範囲は,
「特別遊技状態となった場合に,確率変更

理を行なう」としているだけで,
「特別遊技状態」の前の状態については,小役低確

率状態であるのか,小役高確率状態であるのかは問われていない。特別遊技状態へ

の移行前の状態がどのような状態かが問われていない(限定されていない)という

ことは,何らかの状態(例えばケースA)から特別遊技状態になった場合に,確率
変更処理を行えばよいと解釈すべきあり,何らかの状態以外の状態(例えばケース

B)から特別遊技状態になった場合に,確率変更処理を行わなかったとしても,
「特
別遊技状態となった場合に,確率変更処理を行なう」ことに含まれる。したがって,

訂正前の請求項1に係る発明はケースA及びケースBの構成を含むのではなく,ケ
ースA又はケースBの構成を含むものと解するべきである。

そうすると,訂正前の構成であるケースA又はケースBのうちケースAのみに限
定する訂正は,特許請求の範囲減縮するものであり,特許請求の範囲拡張する
ものではない。よって,これと同旨の審決の判断に誤りはない。

(3) また,原告は,特別遊技状態となった場合に確率変更処理を行うことに本件
発明の重要な意義があるのであって,これを特定せず,特別遊技状態になっても確

変更処理が行われない場合があっては,発明の特徴が失われてしまい,発明の目
的を達成することができないなどと主張する。
しかし,特別遊技状態となった場合に確率変更処理が行われないケースが一部に

存在したとしても,特別遊技状態となった場合に確率変更処理が行われるケースが
存在する限り,本件発明の特徴が失われるものではない。また,そもそも,原告の

上記主張は,訂正が特許請求の範囲拡張するものでないとの審決の判断の当否に
影響を及ぼすものではない。よって,原告の上記主張を採用することはできない。



2 取消事由2(訂正違反その2)について
原告は,
「小役入賞のみを・・・変動させ」とは,
「小役」の発生確率のみを向上・低

下させ,それ以外のもの(「BB」「RB」「リプレイ」「はずれ」
, , , )の発生確率を




変動させないことを意味すると解するほかないが,図11や【0086】を見ると,

「小役」と共に「はずれ」の発生確率も変化しており,
「小役」の発生確率のみを変

化させているとはいえないので,訂正事項5は新規事項の追加にあたり訂正要件

反であると主張する。

図11には,遊技機で起こり得る事象として,@「BB」(ビッグボーナス),A
「RB」(レギュラーボーナス),B「小役」「3」「6」「8」「15」,C「再
( , , , )

ゲーム」(リプレイ),D「はずれ」の5つが例示されている。これらの事象@〜D
の発生確率の総和は理論上必ず1(=100%)になるので,何かの事象の発生確

率を増加させれば,その分だけ別の事象の発生確率を低下させなければならない。
このことは,当業者の技術常識を論じるまでもなく一般常識であるといえる。また,

D「はずれ」は,システム上の取り扱いとしては,他の事象@〜Cと特段区別され
るものではないが,遊技者の視点に立ち,遊技者にとって何らかの有意性がある事
象@〜Cと,そうでない事象,すなわちD「はずれ」を概念的に区別することは不

自然ではない。そうすると,B「小役」の発生確率を変動させ,その変動分をD「は
ずれ」の発生確率で調整するという技術事項を, 「小役入賞のみを・・・変動させ」
単に

と表現したとしても,明細書及び図面の記載を参酌すれば,その技術的意義は明確
で,明細書の記載内容との間に齟齬が生じるものでもない。むしろ,上記一般常識
を無視して,原告が主張するように「のみ」を厳格に解釈すると,システムが実行

不可能なものになってしまう点を考えれば,そのように解釈することこそ著しく不
自然である。

よって,訂正事項5は新規事項を追加するものではなく,原告の上記主張は理由
がない。



3 取消事由4(相違点4の判断の誤り)について
(1) 原告は,小役の当選確率のみを変動させ,特大賞態様の発生状況を変動さ

せないとすることに何らの技術的困難性がなく,小役の当選確率のみを変動させる




か,特大賞態様の発生状況をも変動させるかも設計事項にすぎないから,通常遊技

状態における価値付与状況を所定範囲内に保つため小役入賞発生確率のみを変動さ

せるという相違点4に係る構成を甲4及びそれ以外の証拠によっても想到容易とす

ることはできないとした審決は誤りであると主張する。

(2) 原告のこの主張は,訂正発明1と甲1発明との間の相違点4の容易想到性
を裏付けるものとして,甲4に記載の技術的事項について設計事項をいうものであ

るから,甲1発明との相違点4の容易想到性の主張としては間接的な事情にすぎな
い。このことを前提にして,原告の主張について検討するに,訂正明細書(甲10,

19)の段落【0001】〜【0006】の記載によれば,訂正発明1は,スロッ
トマシン等で代表される遊技機に関するものであり,従来の遊技機においては,ビ

ッグボーナス遊技状態中のゲームで入賞が発生した場合に遊技者に付与される有価
価値の大きさが比較的小さく,遊技者の立場からしてビッグボーナス遊技状態の魅
力が今一歩不足する感があったことから,ビッグボーナス遊技状態中のゲームで入

賞が発生した場合に比較的大きな有価価値が遊技者に付与されるようにしてビッグ
ボーナス遊技状態の魅力を向上させることを課題とするものであり,その解決手段

として,通常遊技状態のうちの小役高確率状態からビッグボーナス状態となった場
合に,可変表示装置の表示結果が複数種類の特定の表示態様のうち1ゲームにおい
て付与可能な最大数の有価価値が付与される特定の表示態様となることを許容する

旨が決定手段により決定される確率を向上させるとする構成を採用したものである。
また,段落【0055】〜【0057】【0083】〜【0087】の記載によれ


ば,小役発生確率についてのみ標準値との比較によって制御することにより,通常
ゲームにおける払出率を所定範囲内に保ちながら,ビッグボーナスやレギュラーボ

ーナスの発生についてはランダム値Rの抽出タイミングと設定値によって制御され
ることとなり,高設定でもボーナス発生回数が多いとは限らず,低設定でも少ない
とは限らなくなって遊技者に対しゲームの興趣を持続させることのできる遊技機と

したものであることが認められる。すなわち,訂正発明1は,小役発生確率につい




てのみ標準値との比較によって制御することにより,通常ゲームにおける払出率を

所定範囲内に保ちながら,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの発生については

フィードバック制御を行わないで,遊技者に対しゲームの興趣を持続させることの

できる遊技機を提供しようとするものである。

(3) これに対し,甲4の記載によれば,甲4に記載された技術的事項は,複数
の回転体により組合せ賞態様が発生する電子制御式ゲーム機に関するものであって,

従来のゲーム機では,回転体の停止位置の組合せによる賞態様の発生が全くの偶然
に任されており,遊技店側では所望する採算ベースによる営業,いわゆる割数制御

ができないという問題点があったことから,遊技店の営業利益率を意味する条件を
外部から予め可変設定できるようにするとともに,その設定に基づいて複数の回転

体の組合せ賞態様の発生状況を制御するようにしたゲーム機を提供することを課題
とするものであり,第2賞態様(特大賞態様)は第1賞態様(通常賞態様)に比較
して多数枚のコインを遊技者に与えることになり,遊技者にとって有利であるが遊

技店側では損失となるので,この第2賞態様(特大賞態様)の発生を主体とした制
御をすることにより,遊技店が予め設定した営業利益率を比較的容易にかつ確実に

達成できるようにするとともに,いわゆる「大当たり」を適度に出して遊技者が期
待しておりかつ遊技店の著しい不利益にまではならない合理的なサービスを実行す
ることができるようにしたものであることが認められる。

(4) 以上によれば,甲4に記載の事項は,「特大賞態様は,通常賞態様に比較
して多数枚の賞コインを遊技者に与える」ものであって,特大賞態様の発生は価値

付与状況に極めて大きな影響を与えることに着目して,特大賞態様の発生を主体と
した制御を行うことにより,遊技店の目標営業利益率を達成しようとしたものであ

るのに対し,訂正発明1は,特別遊技状態(ビッグボーナス及びレギュラーボーナ
ス。甲4における特大賞態様に該当)の発生確率については制御の対象としないこ
とによって,遊技者が対しゲームに対する興趣を持続させるようにしたものであっ

て,特別遊技状態(特大賞態様)に対する対応が異なるものである。そうすると,




甲4に記載の事項が「特大賞態様の発生を主たる制御対象として価値付与状況を保

つ発明」である以上,あえて,特大賞態様の発生状況を変動させないように変更

ることが設計事項であるとはいえず,むしろ,そのように変更することは想定でき

ないというべきである。

(5) また,原告は,本件出願時の@遊技機に対する法規制(甲27〜29),
A「フルーツの集中」という技術(甲30,31),B「ニューパルサー」において

行われていた制御(甲31〜34)からすれば,小役入賞のみによる期待値を基準
の範囲内にすること,通常遊技状態における小役の当選確率を高確率状態と低確率

状態を設けて変動させること,小役入賞の当選確率のみを変動させる制御を行い,
かつ,価値付与状況を所定の範囲に保つ制御を行うことは周知慣用技術であったか

ら,相違点4は,審決が認定した甲4記載の事項と当時の周知慣用技術を組み合わ
せることにより容易に想到可能であったと主張する。
しかし,甲4に記載された技術的事項は,前記のとおり,特大賞態様の発生を主

体とした制御を行うことにより価値付与状況を制御して遊技店の目標営業利益率を
達成させようとするものであって,特大賞態様の発生を制御することに技術的意義

があるものであるから,小役入賞の当選確率のみを変動させるという技術が出願時
に周知慣用技術であったか否かは別として,甲4に記載された技術内容とは相容れ
ないものである。したがって,甲4に記載の事項を相違点4の構成に適用するため

の前提が存在しないことになり,訂正発明1についての相違点4に係る構成に至る
ことが容易であるということはできない。

(6) よって,原告の主張する取消事由4は採用することができない。



4 取消事由6について
前記のとおり,相違点4に係る構成において訂正発明1に進歩性が認められる以
上,訂正発明2の進歩性の欠如を理由とする取消事由6は理由がない。





第6 結論

以上のとおり,訂正の適否に関する取消事由は理由がなく,進歩性に関する取消

事由4が認められず訂正発明の進歩性が否定されない以上,取消事由3,5につい

て判断するまでもなく,訂正発明1,2は容易想到ではなく,無効とすることがで

きないとした審決の結論は支持することができる。
よって原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第2部




裁判長裁判官
塩 月 秀 平




裁判官

真 辺 朋 子




裁判官
田 邉 実






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