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事件 平成 16年 (ネ) 1042号 特許権侵害差止等請求控訴事件
控訴人(1審原告) カネボウ株式会社
同訴訟代理人弁護士 山口孝司
同 松岡伸晃
同 平泉真理
同 矢倉千榮
同 松井良太
同訴訟代理人弁理士 村上智司
被控訴人(1審被告) 池上通信機株式会社
同訴訟代理人弁護士 福岡清
同 大橋正典
同 松田政行
同 齋藤浩貴
同 上村哲史
同 松葉栄治
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2004/10/08
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨等
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、別紙イ号及びロ号物件目録記載の物件を製造し、販売し又はその販売の申出をしてはならない。
3 被控訴人は、その占有に係る別紙イ号及びロ号物件目録記載の物件並びにこれらの半製品を廃棄せよ。
4 被控訴人は、控訴人に対し、2億1000万円及びこれに対する平成14年10月4日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
6 仮執行宣言
事案の概要
1 本件は、「小物物品検査装置」に関する特許発明の特許権者である控訴人が、被控訴人に対し、被控訴人の製造、販売する錠剤検査装置は上記特許発明技術的範囲に属すると主張して、特許権に基づき、その製造販売の差止め等及び損害賠償を請求した事案である。
原判決は、被控訴人の製造、販売する錠剤検査装置は上記特許発明技術的範囲に属するとはいえないとして、控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が本件控訴を提起した。
(以下、控訴人を「原告」、被控訴人を「被告」という。) 2 前提事実 当事者間に争いがない事実並びに各項に掲げた証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実は、原判決2頁14行目から6頁10行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、5頁5行目の「別紙」を「原判決別紙」と改める。
3 争点 原判決6頁12行目から7頁2行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、6頁23行目及び同24行目を次のとおり改める。
「(4) 均等 ア 「スリット」(構成要件B)を「吸引孔列」(構成b)に置換したことによる均等の成否 イ 「搬送用索条」(構成要件C)を「タイミングベルト27」(構成c)に置換したことによる均等の成否」
争点に関する当事者の主張
次のとおり付加、訂正等するほかは、原判決7頁4行目から19頁18行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
1 7頁21行目及び8頁11行目の各「別紙」をいずれも「原判決別紙」と改める。
2 10頁22行目の「台形の空間」の次に「(以下、併せて「本件凸形状の空間」という。)」を、11頁3行目の「ガイド板上面」の次に「等」を、同行目末尾の次に改行して、次のとおり各加える。
「ウ 原告の補足主張 (ア) 本件明細書には、「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しない」(本件公報13欄35行目及び36行目)との記載があるが、上記空隙とは、従来技術(米国特許明細書第3433375号)にみられる、吸気用の開口とアイドルローラに支持されたコンベアベルトとの間にあるような空隙であって、その空隙によって、搬送される小物物品の全周からの空気流を生じ、小物物品の下方に生じる空気流の速度差をわずかなものにするようなものを指すというべきである。
(イ) 被告製品は、「案内路31」を「吸引孔30列」の両側の各縁部に設け、「吸引ボックス22」に対して一体的に形成したため、「吸引孔30列」と「案内路31」との間に空気流は生じないから、前記空隙は存在せず、この点において、開口とアイドルローラを別個に設けたため、これらの間に空気流を生じていた上記従来技術とは、根本的に異なる。
被告製品における本件凸形状の空間は、「タイミングベルト27」と「案内路31」との間の空間であるが、これは、後記3(1)主張のとおり、製造加工上又は設計上当然に生じるものにすぎない。「搬送用索条」と「案内部材31a」との間にクリアランスがなければ、摩擦抵抗が大きくなり、「搬送用索条」の安定した走行が得られないし、製造加工上の誤差や表面粗さをも考慮する必要があるからである。
したがって、被告製品における本件凸形状の空間は、前記従来技術にみられる空隙とは明らかに性質を異にする。
(ウ) 被告製品における本件凸形状の空間は、「吸引孔30列」と対比しても、極めて微小な空間であり、かかる空間から生じ得る空気流が、「吸引孔30列」における吸着に影響を及ぼすものではない。」 3 11頁22行目の「ガイド板上面」の次に「等」を、13頁1行目の「争点(4)」の次に「ア」を、同17行目の「したがって、」の次に「被告製品は、」を各加える。
4 14頁17行目から18行目にかけての「構成要件B」の次の「の」を削り、15頁17行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
「5 争点(4)イ(均等-「搬送用索条」(構成要件C)を「タイミングベルト27」(構成c)に置換したことによる均等の成否) (1) 原告の主張 仮に、「タイミングベルト27」(構成c)が「搬送用索条」(構成要件C)に該当せず、文言侵害が成立しないとしても、次のとおり、「搬送用索条」(構成要件C)を「タイミングベルト27」(構成c)に置換することにつき均等が成立するから、被告製品は、本件特許発明均等なものとしてその技術的範囲に属する。
ア 第1要件(非本質的部分) 本件特許発明の本質的部分、すなわち、本件特許発明特有の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分は、吸気口となるスリットの両側の各縁部にそれぞれガイドレールを設け、スリットとガイドレールとを負圧室に対して一体的に形成し、吸引効率を高める点にある。
本件凸形状の空間は、「タイミングベルト27」が「案内路31」上を円滑に走行するため、製造加工上又は設計上、不可避的に必要となる空間なのであって、本件特許発明の本質的部分ではない。
また、上下面が凸面をなす小物物品の安定的な保持及び円滑な受渡しの点(構成要件G及びH)並びに磁力ではなく負圧による吸引により非磁性体のものも被搬送物とする点(構成要件E)も、本件特許発明の本質的部分であるが、本件凸形状の空間は、これらの点にも影響を与えるものではない。
したがって、被告製品は、均等の第1要件を充足する。
イ 第2要件(置換可能性) 被告製品は、製造加工上又は設計上、不可避的に必要となる本件凸形状の空間はあるが、「吸引孔列30」と「タイミングベルト27」との間には空隙が存在せず、小物物品に対する高い吸引効率を保持している。また、被告製品は、
小物物品の安定的な保持及び円滑な受渡しの点並びに非磁性体のものも被搬送物とする点についても、被告製品は本件特許発明同一の作用効果を奏する。
したがって、被告製品は、均等の第2要件を充足する。
ウ 第3要件(置換容易性) 被告製品における「タイミングベルト27」は、プーリと係合する歯付きのベルトであって、また、「案内路31」と嵌合するようベルト中央部が凹型をなしたベルトである。そして、「タイミングベルト27」は、「案内路31」との間に本件凸形状の空間がある。
プーリと係合する歯付きベルトや、凸型の案内部分に嵌合するようにベルトを形成し、案内部分上を走行させる技術は従来から一般的に用いられており、歯付きベルトを利用してベルトの走行方向における同期を取りつつ、凸型の案内部分を利用してベルトの左右のぶれをなくすことは、当業者が侵害時において容易に想到することができるものであり、「タイミングベルト27」が凹凸のある形状をしている以上、製造加工上又は設計上、不可避的に本件凸形状の空間が生じることも容易に想到することができる。
なお、「タイミングベルト27」は、プーリと係合する歯付きのベルトであって、また、凸状の「案内部材31a」と嵌合するようベルト中央部が凹状をなしたものであるが、このような形状のベルトは、侵害時において既に利用されていた技術内容である。
したがって、「搬送用索条」を「タイミングベルト27」に置換することは、当業者が侵害時において容易に想到することができたことであり、被告製品は、均等の第3要件を充足する。
エ 第4要件(非公知技術) 被告製品の構成b、c、g、hは、本件特許発明の本質的部分をなす構成要件B、C、G、Hと完全に一致しており、これらの構成要件を含む本件特許発明新規性進歩性を有するものとして特許されているから、構成要件b、c、
g、hを備える被告製品もまた新規性進歩性を有する。
したがって、被告製品は、均等の第4要件を充足する。
オ 第5要件(意識的除外) 被告製品が本件特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情は存在しない。
したがって、被告製品は、均等の第5要件を充足する。
(2) 被告の主張 ア 第1要件(非本質的部分) 均等論の第1要件(非本質的部分)の判断に当たって、当該部分が本質的部分であるか否かは、対象製品と離れて、特許発明そのものについてのみ判断されなければならない。
原告も認めるように、「スリットの両側の各縁部にそれぞれ設けたガイドレール」(構成要件B)と「前記各ガイドレールに個別に案内されて走行する2本の搬送用索条」(構成要件C)は、本件特許発明の本質的部分である。
したがって、本件特許発明の本質的部分である「搬送用索条」(構成要件C)の要件を被告製品の「タイミングベルト27」(構成要件c)が充足しない以上、被告製品は、均等の第1要件を充足しない。
イ 第2要件(置換可能性)について 被告製品には本件凸形状の空間があり、「タイミングベルト27」の外側から「吸引孔列」の方向に横方向の空気流が生じる構造になっており、本件特許発明が意図する高い吸引効率は実現されていない(乙第43号証によれば、吸引力の差は47ないし60パーセントに及ぶ。)から、本件特許発明に特有の作用効果を奏しない。
したがって、被告製品は、均等の第2要件も充足しない。」 5 15頁18行目冒頭の「5」を「6」と改め、16頁14行目及び17頁14行目の各「第6回口頭弁論期日」の前にいずれも「原審」を、同12行目の「組み合わせたとしても、」の次に「カード・ガイドやローラーが障害物となって、」を各加える。
6 17頁15行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
「 仮に、乙45公報が時機に後れて提出された攻撃防御方法に当たらないとしても、乙1-3公報記載の発明、乙45公報記載の発明及び乙6米国明細書記載の発明から本件特許発明容易に想到することはできない。」 7 17頁18行目の「吸着搬送路」を「吸着搬送経路」と、18頁11行目の「上記」を「前記」と、19頁7行目冒頭の「6」を「7」と各改める。
当裁判所の判断
1 当裁判所も、原告の請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決19頁20行目から29頁9行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 21頁24行目の「上記」を「前記」と改め、22頁13行目及び26頁6行目の各「空隙」の前にいずれも「、通常の負圧で空気を吸引した場合に外部からの空気流を生じる」を加え、24頁10行目の「別紙」を「原判決別紙」と改める。
(2) 26頁11行目から28頁3行目までを、次のとおり改める。
「(3)ア 証拠(甲第81号証)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品には、
「タイミングベルト27」の凹部と「案内部材31a」との間に、幅約2.5o、
高さ約0.2oの長方形の空間と上辺の長さ約0.4o、下辺の長さ約0.7o、
高さ約0.35oの台形の空間から成る、略凸形状をした空間(本件凸形状の空間)があることが認められる。
イ(ア) 証拠(甲第60号証)によれば、被告製品とほぼ同一の構造を備えた実験装置を用い、本件凸形状の空間を開放した場合と閉塞した場合の吸引室内の圧力を測定した(弁論の全趣旨によれば、吸引の負圧は、通常用いられる程度のものであると認められる。)ところ、タイミングベルト上に錠剤を載置しない状態では、吸引室内の圧力は、本件凸形状の空間を開放した場合が-1.51KPa、
閉塞した場合が-1.54KPaであり、タイミングベルト上に外径9o、厚さ5.3o、重さ360rの糖衣錠を14個載置した状態では、本件凸形状の空間を開放した場合が-1.91KPa、閉塞した場合が-2.01KPaであり、タイミングベルト上に外径6o、厚さ3.6o、重さ110rの糖衣錠を20個載置した状態では、本件凸形状の空間を開放した場合が-1.97KPa、閉塞した場合が-2.11KPaであったことが認められる。
(イ) また、証拠(乙第42号証)によれば、被告製品(TIE-5010)を用い、本件凸形状の空間を開放した場合と閉塞した場合の吸引室内の圧力を測定した(弁論の全趣旨によれば、吸引の負圧は、通常用いられる程度のものであると認められる。)ところ、タイミングベルト上に錠剤を載置しない状態では、
吸引室内の圧力は、本件凸形状の空間を開放した場合が-1.51KPa、閉塞した場合が-1.54KPaであり、タイミングベルト上に外径9.8o、厚さ5.8o、重さ408rの糖衣錠を14個載置した状態では、本件凸形状の空間を開放した場合が-1.68KPa、閉塞した場合が-1.77KPaであり、タイミングベルト上に外径9.6o、厚さ3.3o、重さ272rの平素錠を14個載置した状態では、本件凸形状の空間を開放した場合が-1.85KPa、閉塞した場合が-2.02KPaであったことが認められる。
(ウ) さらに、証拠(乙第43号証)によれば、被告製品(TIE-5010)を用い、被搬送物品をぶら下げる方向で吸引する第2搬送部に、被搬送物を吸着させ、最低吸引保持圧力を測定したところ、外径9.1o、厚さ4.7o、
重さ260rのフィルムコート錠を被搬送物とした場合の最低吸引保持圧力は、本件凸形状の空間を開放したときが-0.25KPa、閉塞したときが-0.17KPaであり、外径11o、厚さ3.2o、重さ465rの平素錠を被搬送物とした場合の最低吸引保持圧力は、本件凸形状の空間を開放したときが-0.13KPa、閉塞したときが-0.11KPaであり、外径5o、長さ14.5o、重さ149rのカプセルを被搬送物とした場合の最低吸引保持圧力は、本件凸形状の空間を開放したときが-0.08KPa、閉塞したときが-0.05KPaであったことが認められる。
ウ 前記ア、イの認定によれば、被搬送物である錠剤の種類、数によって差はあるものの、通常の負圧で空気を吸引した場合、本件凸形状の空間を開放したときと閉塞したときで、吸引室内の圧力や最低吸引保持圧力は明らかに変化しており、被告製品において、「タイミングベルト27」の外側から、本件凸形状の空間を通じて、「吸引孔列」の方向へ、横方向の空気流が生じていることが明らかである。
してみると、被告製品における「タイミングベルト27」(構成c)は、「吸引孔列」と「タイミングベルト27」との間に、通常の負圧で空気を吸引した場合に外部からの空気流を生じる空隙が存在しないように配置されたものではないというべきであるから、「搬送用索条」(構成要件C)を充足しない。
(4)ア なお、原告は、被告製品における本件凸形状の空間は、製造加工上又は設計上当然に生じるものにすぎず、従来技術における空隙とは根本的に異なるものである旨主張する。
確かに、証拠(甲第48ないし第59号証)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品に用いられているようなポリウレタン製の歯付きベルトは、一般に、
前記(3)ア認定の「台形の空間」に当たる「心線支持凹み」を有していること、固定されたガイドレール上に搬送用索条を高速走行させる場合、ガイドレールと搬送用索条が密着していると、摺動摩擦抵抗が大きくなり、搬送用索条の安定した走行が得られないこと、そのため、当業者は、搬送用索条の安定した走行を得るために、
製造加工上又は設計上、ガイドレールと搬送用索条との間にわずかなクリアランスをとることが技術常識であることが認められる。
しかしながら、本件明細書には、製造加工上又は設計上必要なクリアランスであれば、通常の負圧で空気を吸引した場合に外部からの空気流を生じさせるようなものでも許容されることをうかがわせる記載ないし示唆は存在しないばかりか、かえって、前記(2)認定のとおり、特段の留保を設けることなく、「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しないので、(中略)小物物品の左右からの空気流は生じず、前後方向からの空気流のみである。」との記載が存在することからすれば、前記(3)認定のとおり、被告製品における本件凸形状の空間が通常の負圧で空気を吸引した場合に外部からの空気流を生じさせるものである以上、被告製品における「タイミングベルト27」(構成c)は、「搬送用索条」(構成要件C)を充足しないというべきである。
原告の上記主張は、採用することができない。
イ また、原告は、被告製品における本件凸形状の空間は極めて微小であると主張する。
しかしながら、吸引孔列から空気を吸引した場合、吸引孔列の上方(2本のタイミングベルトの間)から流入する空気流(本件明細書にいう「前後方向からの空気流」に当たる。)と、本件凸形状の空間から流入する空気流(本件明細書にいう「左右からの空気流」に当たる。)が生じるところ、それぞれから流入する空気の量の比率は、ほぼ、タイミングベルトのピッチ当たりの2本のタイミングベルトの間の面積と、本件凸形状の空間の断面積との比率に対応するものと考えられ、上記2本のタイミングベルトの間の幅は3o、上記ピッチは5oであること(甲第81号証、弁論の全趣旨)からすると、これと比較して、幅約2.5o、高さ約0.2oの長方形の空間と上辺の長さ約0.4o、下辺の長さ約0.7o、高さ約0.35oの台形の空間から成る、本件凸形状の空間から流入する空気流が無視できるほど少ないということは到底できないから、本件凸形状の空間が極めて微小であるとはいえない。
原告の上記主張は、採用することができない。」 (3) 28頁8行目から同16行目までを次のとおり改める。
「2 争点(4)イ(均等-「搬送用索条」(構成要件C)を「タイミングベルト27」(構成c)に置換したことによる均等の成否) (1) 明細書の特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、@当該部分が特許発明の本質的部分ではなく、A当該部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、Bそのように置き換えることに、当業者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、C対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、D対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、このような対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁判所第三小法廷平成10年2月24日判決・民集52巻1号113頁参照)ので、これを本件について検討する。
(2) 前記最高裁判決の@要件について 前記1(2)イ(ア)ないし(エ)認定のとおりの本件明細書における発明の詳細な説明の記載及び同エ認定のとおりの本件特許に対する無効審判手続における原告の主張内容を併せて参酌すると、本件特許発明の特徴的部分は、吸引口となるスリットの両側の各縁部にそれぞれガイドレールを設け、ガイドレールに搬送用索条を案内して吸着搬送経路を形成することにより、スリットと搬送用索条との間の空隙をなくし、被搬送物である小物物品と搬送用索条とが接触している部分において、小物物品の左右からの空気流を生じないようにし、それによって、吸引効率を高める点にあり、この点は本件特許発明の本質的部分の少なくとも一つであるというべきである。
そして、前記認定判断のとおり、被告製品における「タイミングベルト27」は、「吸引孔列」と「タイミングベルト27」との間に横方向の空気流を生じるような空隙が存在しないように配置されたものではないから、特許請求の範囲に記載された構成と本質的な部分において異なるものであるというほかなく、前記最高裁判決の@要件を満たすとはいえない(なお、原告は、上下面が凸面をなす小物物品の安定的な保持及び円滑な受渡しの点及び磁力ではなく負圧による吸引により非磁性体のものも被搬送物とする点も本件特許発明の本質的部分であると主張するが、仮にそうであるとしても、上記認定判断を左右するものではない。)。
(3) そうすると、前記最高裁判決の他の要件の該当性について判断するまでもなく、均等侵害も成立しない。」 (4) 28頁22行目から23行目にかけての「第6回口頭弁論期日」の前に「原審」を、同24行目の「同期日において」の前に「原審は、」を各加え、29頁5行目の「その発見が遅れたことに、」を「その発見が遅れたことにつき、被告に」と、同6行目から7行目にかけての「乙45公報が提出された第6回口頭弁論期日」を「原審は、乙45公報が提出された原審第6回口頭弁論期日」と各改め、
同行目の「終結しており、」の次に「当審においても、平成16年6月2日に開かれた当審第1回口頭弁論期日に弁論を終結したものであるから、」を加える。
2 その他、原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし、原審及び当審で提出、援用された全証拠を改めて精査しても、当審及び当審の引用する原審の認定、判断を覆すほどのものはない。
3 結論 以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから棄却を免れず、これと同旨の原判決は相当であるから、本件控訴は理由がない。
よって、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結の日 平成16年6月2日)
裁判長裁判官 竹原俊一
裁判官 小野洋一
裁判官 中村心
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