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審判番号(事件番号) データベース 権利
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事件 平成 21年 (ワ) 36145号 特許権侵害差止等請求事件
アメリカ合衆国カリフォルニア州<以下略>
原告ジェムスターディベロプメント コーポレイション
同訴訟代理人弁護士片山英二 本多広和 岡本尚美 牧恵美子
同訴訟代理人弁理士加藤志麻子 東京都港区<以下略>
被告株式会社東芝
同訴訟代理人弁護士鮫島正洋 松島淳也 ?見憲
同訴訟復代理人弁護士和田祐造
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2010/12/03
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,別紙被告製品目録記載(1)のレコーダーを製造,販売してはならない。
2被告は,前項記載のレコーダーを廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,1億1968万円及びこれに対する平成21年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要1本件は,発明の名称を「ビデオカセットレコーダインデックスと電子番組ガイドの組み合わせ」とする後記2(2)の本件特許の特許権者である原告が,被告に対し,その製造,販売する別紙被告製品目録記載のレコーダー(ただし,同目録記載(2)のレコーダーについては,既に製造,販売を終了している。以下,一括して「被告製品」という。)が上記発明の方法の使用に用いられる物であって後記2(2)の本件発明による課題の解決に不可欠なものであり,被告は被告製品が本件発明の実施に用いられることを知りながら,業として,上記行為を行い,本件特許権を侵害するものとみなされる(特許法101条5号)と主張して,同法100条1項,2項に基づき,同目録記載(1)のレコーダーの製造,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,不法行為(特許権侵害)による損害賠償請求権に基づき,損害合計1億1968万円及びこれに対する不法行為の後である平成21年10月21日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない。)(1)当事者原告は,電子番組ガイド及びその関連技術の開発,商品化等を目的として,アメリカ合衆国カリフォルニア州法に基づき設立された法人である。(弁論の全趣旨)被告は,レコーダーを含むデジタル機器等の製造,販売等を目的とする株式会社である。
(2)原告の特許権原告は,下記特許の特許権者である。
同特許は,アメリカ合衆国特許出願(優先日:平成8年3月15日)を優先権主張の基礎としてPCT国際出願(PCT/US97/04074)されたもの(国際公開番号:WO97/34413)である。(甲2,乙11)記特 許 番 号第3195367号発明の名称ビデオカセットレコーダインデックスと電子番組ガイドの組み合わせ出願年月日平成9年3月14日登録年月日平成13年6月1日特許請求の範囲【請求項1】視聴のために番組を選択する方法において,記憶媒体に記録された複数の番組のディレクトリを生成する段階であって,前記ディレクトリは,前記記録された番組のタイトルと該記録された番組の位置とを含む,前記段階と,複数の情報提供者から放送される複数の番組のディレクトリを生成する段階であって,前記ディレクトリは,前記放送される番組のタイトルと該放送される番組のチャンネルとを含む,前記段階と,記録された番組の前記ディレクトリと放送される番組の前記ディレクトリを二者択一的に表示する段階と,前記放送される番組の内の1つからの番組あるいは前記記録された番組の内の1つからの番組を,表示されるディレクトリと同時に二者択一的に表示する段階と,前記表示する段階で表示された記録された番組の前記ディレクトリからの番組タイトルのうち1つを目立たせる段階と,前記目立たせられた番組タイトルに対応する番組を検索する段階と,前記表示された番組を前記検索された番組で置き換えることによって,前記表示されたディレクトリと同時に前記検索された番組を表示する段階と,を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】〜【請求項18】省略(以下,上記特許の【請求項1】に係る発明を「本件発明」,その特許を「本件特許」といい,その特許出願の願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。なお,その特許公報〔甲2〕を別紙として添付する。)(3)構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件A」〜「構成要件I」という。)。
A視聴のために番組を選択する方法において,B記憶媒体に記録された複数の番組のディレクトリを生成する段階であって,前記ディレクトリは,前記記録された番組のタイトルと該記録された番組の位置とを含む,前記段階と,C複数の情報提供者から放送される複数の番組のディレクトリを生成する段階であって,前記ディレクトリは,前記放送される番組のタイトルと該放送される番組のチャンネルとを含む,前記段階と,D記録された番組の前記ディレクトリと放送される番組の前記ディレクトリを二者択一的に表示する段階と,E前記放送される番組の内の1つからの番組あるいは前記記録された番組の内の1つからの番組を,表示されるディレクトリと同時に二者択一的に表示する段階と,F前記表示する段階で表示された記録された番組の前記ディレクトリからの番組タイトルのうち1つを目立たせる段階と,G前記目立たせられた番組タイトルに対応する番組を検索する段階と,H前記表示された番組を前記検索された番組で置き換えることによって,前記表示されたディレクトリと同時に前記検索された番組を表示する段階と,Iを備えることを特徴とする方法(4)被告製品ア被告は,被告製品を次の表の「発売日」欄記載の時から製造し,販売している(なお,被告は,別紙被告製品目録記載(2)のレコーダーについては,既に製造,販売を終了している。)。
製品名(機種番号)発売日RD-E1004K平成21年8月上旬RD-E304K平成21年8月上旬RD-X9平成21年9月上旬RD-S1004K平成21年9月上旬RD-S304K平成21年9月上旬RD-E160平成18年12月上旬RD-E300平成18年11月上旬イ被告製品を用いて実施される方法(以下「被告製品方法」という。)は,別紙被告製品説明書記載のとおりであり,本件発明の構成要件Aを充足する。
3争点(1)被告製品方法は,本件発明の技術的範囲に属するか。
構成要件B該当性イ構成要件C該当性ウ構成要件D該当性エ構成要件E該当性(なお,構成要件F〜I該当性についても争いがあるが,これらは,結局のところ,構成要件B〜E該当性の争点に収れんされるから,独立して争点として挙げることはしない。)(2)被告は被告製品が本件発明の実施に用いられることを知りながら,業として,被告製品の製造,販売を行ったものであるか。
(3)本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか。
(4)損害額4争点に関する当事者の主張(1)争点(1)(被告製品方法は,本件発明の技術的範囲に属するか)についてア構成要件B該当性(ア)原告a本件発明の構成要件Bの「記憶媒体に記録された複数の番組のディレクトリ」(以下「記録番組ディレクトリ」という。)とは,記憶媒体に記録された複数の番組の番組情報の集合体であって,選択された番組情報に対応する特定の記録番組を記憶媒体の中から検索するために利用されるものを意味する。
なお,本件発明の構成要件Bの「記憶媒体」とは,データを保存するための記録媒体であり,その種類には,ビデオテープのみならず,ハードディスクドライブ(以下「HDD」という。)も含まれる。また,本件発明の構成要件Bの「位置」とは,記憶媒体に記録された複数の番組のそれぞれが当該記憶媒体のどこに記憶されているかを示す情報(以下「記憶位置情報」という。)を意味するもので,記憶媒体に記録された個々の番組の記憶位置情報が「ディレクトリ」に含まれることにより,「ディレクトリ」内の番組情報を選択した際,対応する番組の記憶位置情報に基づき,記憶媒体からの番組検索及び再生が可能となる。
b被告製品方法は,被告製品に内蔵されたHDDに記録された複数の番組の録画番組一覧表を表示し,録画番組一覧表に表示されたタイトルの1つが選択されると,選択されたタイトルに対応する番組をHDDから読み出し,テレビ画面に表示するが,その前提として,被告製品に内蔵されたHDDに記録された複数の番組のディレクトリを生成する段階を有していることは明らかである。また,当該生成されたディレクトリに,記録された番組のタイトル情報と,記録された番組のHDD記憶位置情報が含まれていることも明らかである。
よって,被告製品方法は,構成要件Bを充足する。
cなお,本件発明の構成要件Bは,「記憶媒体に記録された複数の番組ディレクトリを生成する」こと,すなわち,「記録された複数の番組」を対象として番組ディレクトリが生成されることを規定しているにすぎず,ディレクトリをどのように生成するかという観点からの限定は何ら付されていない。また,本件発明は記憶媒体がビデオテープであることを前提とするものでもないから,構成要件Bについて「記録番組ディレクトリを生成する以前から記憶媒体に記録されていた複数の番組に関する情報を記憶媒体から抽出(解読)して,記録番組ディレクトリを生成する」などと限定解釈すべき理由はない。
したがって,仮に,被告製品方法において,「個々」の番組の「記録中」に記録番組ディレクトリが生成されているとしても,「記憶媒体に記録された複数の番組のディレクトリが生成」されることには変わりがない。また,記録番組ディレクトリに蓄積される情報(番組タイトル,チャンネル,月日,放送番組の長さ等)は,いずれも記憶媒体の「外」から収集される情報であるが,仮に被告製品方法においてかかる情報が記憶媒体を介在させずに記録番組ディレクトリに直接蓄積されたとしても,「記憶媒体に記録された複数の番組のディレクトリが生成」されることに変わりがない。
(イ)被告a本件発明の構成要件Bの「記憶媒体」は,本件特許の原文である「WO97/34413」(乙11)に記載された「ビデオテープ」の上位概念であり,本件特許は,原文に記載されていない事項を含むものとして,後記のとおり,特許無効審判により無効とされるべきものである(特許法123条1項5号,104条の3第1項)。
したがって,本件発明の技術的範囲を確定する場面においては,無効理由となる部分まで包含しないように,構成要件Bの「記憶媒体」については,原文(乙11)に記載されていた「ビデオテープ」に限定して解釈すべきである。
しかるところ,被告製品方法においては,記憶媒体としてHDDを採用しており,ビデオテープを使用することはないから,本件発明の構成要件Bを充足しない。
b本件発明の構成要件Bの「記録された複数の番組のディレクトリを生成」とは,テープの長手方向(走行方向)に沿って記録再生するというビデオテープの方式を前提とすれば,次の図のとおり,「記録番組ディレクトリを生成する以前から記憶媒体に記録されていた複数の番組に関する情報を記憶媒体から抽出(解読)して,記録番組ディレクトリを生成すること」を意味するものと解される。
これに対し,被告製品方法は,次の図のとおり,あらかじめHDDのシステム領域にディレクトリファイルを記録しておき,「記録中の番組に関する個々の情報をHDD(記憶媒体)外から収集することでディレクトリを更新する」(放送番組を記録し始めると同時に,順次,個別の番組ごとのディレクトリ情報を電子メモリ上で追加登録し,記録の完了と同時にディレクトリの更新も完了する)のであり,「記録番組ディレクトリを生成する以前から記憶媒体に記録されていた複数の番組に関する情報を記憶媒体から抽出(解読)して,記録番組ディレクトリを生成すること」はしていない。
したがって,被告製品方法は,本件発明の構成要件Bの「記録された複数の番組のディレクトリを生成」を充足しない。
構成要件C該当性(ア)原告a構成要件Cの「複数の情報提供者から放送される複数の番組のディレクトリ」(以下「放送番組ディレクトリ」という。)とは,複数の情報提供者から放送される複数の番組の番組情報の集合体であって,選択された番組情報に対応する特定の放送番組を複数のチャンネルの中から検索するために利用されるものを意味する。
「放送番組ディレクトリ」には,放送される複数の番組の番組情報として,例えば「時刻,チャンネル,長さ,タイトル」といった多様な情報を含むことが可能であるが,「ディレクトリ」の機能からして,少なくとも放送される番組の「タイトル」情報と「チャンネル」情報が含まれることが要件とされる。
なお,本件発明における「チャンネル」は,放送番組を特定するために必要な番組情報としての「チャンネル」情報,すなわち,「どの放送局から番組が放送されているかが識別できる情報」を意味するものと解するのが合理的である。
b被告製品方法は,複数の放送局から放送される複数の番組の電子番組表を表示し,電子番組表に表示されたタイトルの1つが選択されると,選択されたタイトルに対応する放送番組を,チューナーのチャンネル切替えによってテレビ画面に表示するが,その前提として,複数の放送局から放送される複数の番組のディレクトリを生成する段階を有していることは明らかである。
なお,構成要件Cにおいて放送番組ディレクトリを生成する場合に,ディレクトリを構成する「情報」自体を新たに一から生成することまでが要求されているわけではなく,放送番組ディレクトリを構成する番組情報が外部から送信されてくることは,むしろ当然のことである。
しかし,このように外部から順次送信されてくる放送信号の中から番組情報を抽出し,1つの集合体としてシステム内で利用できるように蓄積することは,レコーダー等のシステムによる動作があって初めて行われることであって,システムが何ら動作することなく,番組情報の集合体をシステム内部で生成することができるわけではない。このような番組情報の抽出及び蓄積は,とりもなおさず,システムによる放送番組ディレクトリの「生成」である。
被告製品方法においても,テレビ画面に電子番組表を表示する前提として,外部から送信される放送信号から放送番組の番組情報を抽出し,これを内部に蓄積していることは明らかであるから,放送番組ディレクトリを生成する段階を有している。
また,当該生成されたディレクトリに,放送される番組のタイトル情報と放送される番組のチャンネル情報(被告製品方法が利用しているのは「放送局コード」であるが,これは全国の各放送局を識別するコードであり,「どの放送局から番組が放送されているかが識別できる情報」の一種であるから,本件発明の構成要件Cの「チャンネル」に該当する。)が含まれていることは明らかである。
よって,被告製品方法は,本件発明の構成要件Cを充足する。
(イ)被告構成要件Cの「チャンネル」とは,その用語の通常の意味からして,「テレビ放送ごとに割り当てられる番号で,地域により異なり,また,任意の放送局を割り当てることができるもの」であると解されるところ,被告製品方法では,「放送される番組のチャンネル」ではなく,これとは概念が異なる「放送局コード」(テレビ放送局ごとに割り当てられるコードで,地域によって異ならず,放送局に固有のコード)を使用している。
また,被告製品方法は,被告製品の外部から受信した放送番組の情報を複製して利用するのみであり,「複数の情報提供者から放送される複数の番組のディレクトリ」を「生成」(情報の集合体を新たに作り出すこと)しているわけではない。
したがって,被告製品方法は,本件発明の構成要件Cを充足しない。
構成要件D該当性(ア)原告a被告製品方法は,上記アの記録番組のディレクトリと上記イの放送番組のディレクトリとを,前者は録画番組一覧表という形式で,後者は電子番組表という形式で,二者択一的に表示する段階を有しているから,本件発明の構成要件Dを充足する。
bなお,構成要件Dにおいては,記録番組ディレクトリに含まれるすべての情報をテレビ画面上に表示するなどとは記載されておらず,ディレクトリに含まれる情報を一律に表示しなければならないという技術的制約もないのであるから,そのいずれを表示するかについては,「表示」の段階において,別途,選択の余地があることになる。
ディレクトリを生成する際にいかなる情報を含むかということと,かかるディレクトリの表示をいかなる形式によって行うかは別次元の話であり,生成される情報と具体的に表示される情報の範囲が食い違っていたとしても,何ら矛盾はない(本件発明の技術的特徴に照らしても,記憶位置情報は,必ずしも表示される必要はない。)。
したがって,被告製品方法において,記録番組ディレクトリを表示するに当たり「位置」情報を表示していないとしても,被告製品方法が構成要件Dを充足することの妨げにはならない。
(イ)被告a本件発明の構成要件Dにおいては「記録された番組の前記ディレクトリを……表示」することが要件となっているところ,ここでいう「前記ディレクトリ」は,少なくとも「記録された番組のタイトルと該記録された番組の位置とを含む」ことが要件とされているから(構成要件B),「記録された番組の前記ディレクトリを……表示」した場合,表示画面上には,少なくとも「記録された番組のタイトル」と「記録された番組の位置」が表示されてしかるべきであり,そのように解するのがクレーム文言の解釈論として明確性,客観性を有する。
また,本件発明を実施した方法を利用する視聴者は,ディレクトリの情報やカーソルを利用して記録番組の位置を決定し,これにより「テープ上の選択された番組の流れを制御する」ことによって番組を視聴するものである。そして,本件発明においては,テープインデックスガイドを前提とする開示がされており,「番組の位置」情報には,テープ上の記憶位置のみならず,複数のテープの中でどのテープに記憶されているのかという情報(テープ番号)も含まれるのであり,視聴者は,このテープ番号(「番組の位置」情報)を使って番組をサーチするのであるから,本件発明においては,「番組の位置」情報が表示されることが想定されているというべきである。
しかるところ,被告製品方法で表示される「記録された番組のディレクトリ」では,「位置」情報が表示されない。
bまた,本件発明の構成要件Dは「記録された番組の前記ディレクトリと放送される番組の前記ディレクトリを二者択一的に表示する」となっているところ,「二者択一」とは「2つの物事のうち,いずれか1つを選ぶこと」であるから,構成要件Dを充足するためには,「2つの物事のうち,いずれか1つを選ぶ」という態様で,記録番組ディレクトリと放送番組ディレクトリが表示されなければならない。
しかるところ,被告製品方法では,「録画タイトル」,「今の番組」,「次の番組」の3つの物事(1種類の記録番組ディレクトリと2種類の放送番組ディレクトリ)のうち1つを選ぶという態様で表示しているのであって,「二者択一的に表示」しているとはいえない。
cしたがって,被告製品方法は,本件発明の構成要件Dを充足しない。
構成要件E該当性(ア)原告被告製品方法は,上記イの放送される番組(「将来放送される番組」に限らず「現在放送中の番組」も含まれるが,構成要件Eにおいて「放送される番組」がディレクトリと同時に二者択一的に表示される場合には,将来の番組そのものについては表示のしようがないのであるから,必然的に「現在放送中の番組」を意味することになる。)の内の1つの番組あるいは上記アの記録された番組の内の1つの番組を,表示される録画番組一覧表あるいは電子番組表と同時に二者択一的に表示する段階を有しているから,構成要件Eを充足する。
なお,構成要件Eは,「前記放送される番組の内の1つからの番組あるいは前記記録された番組の内の1つからの番組を,表示されるディレクトリと同時に二者択一的に表示する段階」であるところ,当該記載における「,」(読点)の位置に注意して解釈すれば,ここで二者択一的に表示されるのは,「前記放送される番組の内の1つからの番組」と「前記記録された番組の内の1つからの番組」であって,その際にいずれの番組であっても同時に「ディレクトリ」が表示されると解するのが正しい解釈である。つまり,番組表示と同時にディレクトリが表示されることについては規定されているものの,番組とディレクトリの組合せについては何ら制限されるものではない。
実際,本件明細書の発明の詳細な説明においては,表示される番組とディレクトリの組合せに関しては,「放送番組と放送番組ディレクトリの同時表示」,「放送番組と記録番組ディレクトリの同時表示」,「記録番組と記録番組ディレクトリの同時表示」及び「記録番組と放送番組ディレクトリの同時表示」の4通りがあることが示されている。
(イ)被告本件発明の構成要件Eにおいては「前記放送される番組の内の1つからの番組あるいは前記記録された番組の内の1つからの番組を,表示されるディレクトリと同時に二者択一的に表示する」とされているが,本件発明については,拒絶理由を解消するために「放送される番組又は記録された番組の中の1つからの番組が,それと対応するディレクトリと同時に表示」という場面に限定することによって特許査定を受けるに至ったという出願経過(乙4〜6)があったのであるから,本件発明の構成要件Eにいう「二者択一的に表示」とは,「放送番組とこれに対応する放送番組ディレクトリの同時表示」,「記録番組とこれに対応する記録番組ディレクトリの同時表示」が「二者択一的に表示」されることを意味するものと解釈すべきである(これに反する原告の主張は,禁反言の法理に照らし,許されない。)。
被告製品方法の「録画番組一覧表」が記録番組ディレクトリ,「電子番組表」が放送番組ディレクトリをそれぞれ表示したものであるとしても,被告製品方法においては,「放送番組と放送番組ディレクトリの同時表示」と「記録番組と記録番組ディレクトリの同時表示」以外に,「放送番組と記録番組ディレクトリの同時表示」や「記録番組と放送番組ディレクトリの同時表示」が表示されるため,いわば「四者択一」となっており,「放送番組とこれに対応する放送番組ディレクトリの同時表示」,「記録番組とこれに対応する記録番組ディレクトリの同時表示」が「二者択一的に表示」されるわけではない。
仮に,構成要件Eの「二者択一」が「前記放送される番組の内の1つからの番組」と「前記記録された番組の内の1つからの番組」の「二者択一」を意味するものであるとしても,被告製品方法では,そもそも「放送される番組」を「表示」していない。すなわち,本件発明の構成要件Eの「放送される番組」とは,将来放送される番組を意味するものであり,現在放送中の番組は含まれないと解されるところ,被告製品方法では,現在放送中の番組を表示することはあるが,将来放送される番組を表示することはない。
したがって,被告製品方法は,本件発明の構成要件Eを充足しない。
(2)争点(2)(被告は被告製品が本件発明の実施に用いられることを知りながら,業として,被告製品の製造,販売を行ったものであるか)についてア原告原告と被告は,本件発明を含むライセンス交渉を平成18年3月ころから行っているところ,被告は,本件発明が特許発明であること,及び被告製品がその発明の実施に用いられることについて,遅くとも各被告製品の販売開始日(平成18年11月から平成21年9月)までには知っていた。
イ被告争う。
(3)争点(3)(本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか)についてア被告本件特許は,以下に述べるとおり,特許無効審判により無効にされるべきものであり,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない(特許法104条の3第1項)。
(ア)新規性の欠如本件発明は,本件特許出願の優先日(平成8年3月15日)以前の平成8年3月7日に頒布されたWO96/07270A1(乙7)に記載された発明と同一の発明であり,「特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明」(特許法29条1項3号)に該当する。
すなわち,乙7には,「チャンネルグレージング(判決注:視聴者がチャンネルからチャンネルに切り替えて,それぞれの受信されたチャンネルにどのような番組が放映されているかを見ることによって,チャンネル選択を行うこと)を容易にするために,テレビの視聴者は,PIP(判決注:〔画像内画像〕の略)フォーマットを使用しpicture-in-pictureて,番組スケジュールデータベースからの現在テレビ番組リストを背景に表示すると共に,表示されたリストから特定の番組を選択すると,それに対応する番組が,PIP窓に自動的に現れる」発明(以下「引用発明」という)が記載されており,本件発明の構成要件A〜Iがすべて開示されている。
(イ)進歩性の欠如引用発明においては,「全チャンネル」ガイドから「このチャンネル」ガイドに切り替える段階で,「このチャンネルガイド」以外にも,「次」のガイド,「分類」ガイドのほか,「全チャンネル」ガイドに復帰することが可能であるから,二者択一ではなく,四者択一が開示されており,この点(構成要件D,E)が相違点であると評価する余地がある。しかしながら,仮に上記の点が相違点とされたとしても,「次」のガイドへの切替,「分類」ガイドへの切替,「全チャンネル」ガイドへの復帰を可能とするか否かは,単なる設計事項であるから,当業者であれば,引用発明に基づいて,本件発明に容易に想到したということができる。
したがって,本件発明は,特許法29条2項に該当する。
(ウ)「ディレクトリ」との記載が不明確であることに起因する記載要件違反本件明細書の「ディレクトリ」は,その意味が不明確であり,「特許を受けようとする発明が明確であること」(特許法36条6項2号)に違反している。
すなわち,「ディレクトリ」という用語の普通の意味は,「ハードディスクやフロッピーディスク,CD-ROMなどの記憶装置で,ファイルを分類・整理するための保管場所」であるが,この「ディレクトリ」の意味を前提に,請求項の記載から特許を受けようとする発明の内容を確認しようとしても,全く意味をなさない(例えば,構成要件Dを例に説明すると,「ファイルを分類・整理するための保管場所」を「二者択一的」に「表示」することになるが,本件発明との関係では意味をなさない。)。
したがって,本件発明は,請求項の記載がそれ自体で明確ではない場合の類型に属するものであり(この点は,原告が,本件明細書の「発明の詳細な説明」の記載から「ディレクトリ」の定義づけを試みていることからしても明らかである。),このような場合,特許庁の審査基準によれば,「特許請求の範囲以外の明細書及び図面中に請求項の用語についての定義又は説明があるかどうかを検討し,その定義又は説明を出願時の技術常識をもって考慮して請求項中の用語を解釈することによって,請求項の記載が明確といえるかどうか」を判断することになるが,本件明細書には「ディレクトリ」の用語についての定義がなく,その使用もされていないのであるから,結局,特許請求の範囲が不明確であると結論づけるほかない。
このように「ディレクトリ」の意味が不明確であることにより,特許請求の範囲の内容も不明確であるから,本件特許は,特許法36条6項2号が規定する「特許を受けようとする発明が明確であること」に違反している。
(エ)構成要件Cについてサポート要件違反本件発明の構成要件Cは「複数の情報提供者から放送される複数の番組のディレクトリを生成する段階」と規定するが,前記のとおり,本件発明でいう「ディレクトリ」とはいかなるものか不明確であるから,この構成要件についてサポート要件を満たすためには,?どのような対象物を(「ディレクトリ」概念の特定),?どのような方法で生成するのかが記載されていなければならないはずである。
しかしながら,これらの事項は,本件明細書の「発明の詳細な説明」に記載も示唆もされていないから,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」(特許法36条6項1号)というサポート要件に違反する。
(オ)構成要件Dについてサポート要件違反構成要件Dは,「記録された番組の前記ディレクトリと放送される番組の前記ディレクトリを二者択一的に表示する段階と,」と規定するが,「記録番組ディレクトリと放送番組ディレクトリが二者択一的に表示する段階」については,発明の詳細な説明に何ら記載も示唆もされていない。
なお,構成要件Eの「前記放送される番組の内の1つからの番組あるいは前記記録された番組の内の1つからの番組を,表示されるディレクトリと同時に二者択一的に表示する段階と,」についても,発明の詳細な説明に十分な記載があるとはいえないが,仮に,構成要件Eについてサポート要件を具備していると評価できるとしても,これらは,番組とディレクトリを同時に表示する構成要件Eをサポートする記載であって,これと明確に区別された構成要件Dがサポートされているとはいえない。
以上のとおり,「二者択一」が本件明細書の「発明の詳細な説明」に記載されておらず,特許法36条6項1号に違反する。
(カ)構成要件Bの「記憶媒体」が原文新規事項特許法123条1項5号には,「外国語書面出願に係る特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲……に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき」は,特許を無効にすべき理由として規定されているところ,上記規定は,PCT出願に関し,それぞれ「外国語書面出願」,「外国語書面」を同法184条の18によって読み替えており,要するに,PCT出願原文にかかる翻訳文(補正にかかる事項を含む)に開示されている事項であって,PCT出願原文に開示されていない事項(原文新規事項)が存在する場合,本件特許に基づく権利行使はできない。
そして,「外国語書面」を読み替えたPCT原文である「第184条の4第1項国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面」(WO97/34413〔乙11〕)には,本件発明の構成要件Bに規定されている「記憶媒体」に該当する記載はなく,「」video tape(以下「ビデオテープ」と表記する。)に関する記載しかない。
しかるに,本件明細書(甲2)で規定した構成要件Bの「記憶媒体」は,「ビデオテープ」の上位概念であるから,WO97/34413(乙11)に記載されていない「ビデオテープ」以外の「記憶媒体」を含むという点で,原文新規事項となる(特許法123条1項5号)。
(キ)構成要件Cの「ディレクトリを生成」が原文新規事項特許法123条1項5号の「外国語書面」を同法184条の18によって読み替えたPCT原文である「第184条の4第1項国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面」(WO97/34413〔乙11〕)には,本件発明の構成要件Cに規定されている「ディレクトリを生成」に該当する記載はなく,当該事項が原文新規事項である(特許法123条1項5号)。
(ク)構成要件Dの「二者択一」が原文新規事項特許法123条1項5号の「外国語書面」を同法184条の18によって読み替えたPCT原文である「第184条の4第1項国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面」(WO97/34413〔乙11〕)には,本件発明の構成要件Dに規定されている「二者択一」に該当する記載はなく,当該事項は原文新規事項である。
(ケ)構成要件Eの「二者択一」が原文新規事項特許法123条1項5号の「外国語書面」を同法184条の18によって読み替えたPCT原文である「第184条の4第1項国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面」(WO97/34413〔乙11〕)には,本件発明の構成要件Eに規定されている「二者択一」に該当する記載はなく,当該事項は原文新規事項である。
イ原告(ア)新規性の欠如の主張について引用発明は,グレージング(テレビのチューナをチャンネルからチャンネルへ切り換え,各チャンネルに受信されている番組をスクリーン上で見ることで番組を選択すること)に関するものであり,各チャンネルに受信されている番組の選択をより簡便な操作により行うことを発明の解決すべき課題とするものである。その具体的内容は,現在放送されているテレビ番組の番組リストや将来のテレビ番組リストを背景に表示させ,その中から選択された番組の動画やビデオクリップ画像を同時にPIP窓に表示させるという技術に関する発明であり,本件発明にいう「放送される番組」の間での番組選択を容易にした発明でしかない。
よって,引用発明は,「テレビ視聴モードと,テレビ放送される番組に対する番組ガイド画面及び記録された番組に対するインデックスガイド画面により構成されるガイドモードとの間で切換を行う点」に関する構成を欠いていることは明らかであり,このような引用発明に基づいて本件発明の新規性が否定されることはない。
(イ)進歩性の欠如の主張について引用発明には,本件発明の構成要件D,Eのほか,構成要件B,F〜Iについても開示がない。そして,これらの相違点は,「記録された番組」のディレクトリに関する構成や,「放送される番組」と「記録された番組」の双方のディレクトリに関連する構成であるところ,引用発明には「記録された番組」やそのディレクトリについて何ら記載がなく,また,双方のディレクトリを二者択一的に選択することについても何ら記載がないのであるから,当業者が引用発明に基づいて容易に想到し得るはずがない。
(ウ)「ディレクトリ」との記載が不明確であることに起因する記載要件違反の主張について被告は,構成要件B,Cにおける「ディレクトリ」という用語が多義的に使用されているなどと主張するが,構成要件Bの「記憶媒体に記録された複数の番組のディレクトリ」と構成要件Cの「複数の情報提供者から放送される複数の番組のディレクトリ」に含まれる情報が違うということや,両者の利用目的が異なるということにすぎず,構成要件B,Cの「ディレクトリ」そのものとして備えなければならない必須条件が違うということではないから,これらの情報が違うことを指摘したところで,構成要件Bと構成要件Cとで「ディレクトリ」の意味が多義的であるとはいえない。
また,被告は,「ディレクトリの情報」,「番組ディレクトリ」,「オンスクリーンディレクトリ」といった用語が何の定義もされていないため,各用語の使い分けが困難であるという理由で,「ディレクトリ」の用語の意味が不明確であると主張するが,「ディレクトリの情報」,「番組ディレクトリ」,「オンスクリーンディレクトリ」の用語は,「ディレクトリ」と一般的に理解できる用語とを単純に組み合わせたものでしかなく,原告の主張する「ディレクトリ」の定義に基づいてそれぞれの用語を明確に理解することが可能であるから,このような用語について明細書に個別に定義づけをする必要はない。
以上のとおり,「ディレクトリ」の意味が明確でないとする被告の主張は,いずれも根拠がない。
(エ)構成要件Cについてのサポート要件違反の主張について被告は,構成要件Cについて,「ディレクトリ」の意味が不明確であることを前提に,?どのような対象物を,?どのような方法で生成するのかが記載されている必要があるが,本件明細書にはそのような記載も示唆もないから,特許法36条6項1号のサポート要件を満たしていないと主張する。
しかしながら,「ディレクトリ」の意味は明確であるから,これが不明確であることを前提とする被告の主張は失当である。また,ディレクトリの生成方法について限定する必要はないのであるから,明細書にその点の記載があるか否かは関係がない。
(オ)構成要件Dについてのサポート要件違反の主張について被告は,構成要件Dの「記録された番組の前記ディレクトリと放送される番組の前記ディレクトリを二者択一的に表示する段階」が本件明細書に記載も示唆もされていないなどと主張するが,本件明細書には「視聴者がGUIDE/TVボタン28を押すと,PIPチップ23はオンとなり,ガイドスイッチ20は,EPG装置18ないしTIS装置22をPIPチップ23に連結し,テレビ28はEPGないしテープインデックスガイドを表示する。」(甲2の8欄27行〜31行),「ガイドモードでは,INDEXボタン30はスイッチ20を制御する。従って視聴者は,図3に示すようなEPG画面から,図4に示すようなテープインデックスガイド画面に切り換えてもよく,図11A,1Bに示すようにその逆の切換をしてもよい。」(同10欄10行〜14行)との記載がある。
上記部分には,視聴者がGUIDE/TVボタンを押すとテレビがEPG(放送番組ディレクトリ)又はテープインデックスガイド(記録番組ディレクトリ)を表示すること,そして,EPG画面からテープインデックスガイド画面への切換え,又はその逆の切換えができることが明記されているのであるから,被告の上記主張は理由がない。
(カ)構成要件Bの「記憶媒体」が原文新規事項との主張についてPCT出願を基礎とする本件明細書に原文新規事項が含まれるか否かの判断は,本件明細書に記載された事項が,PCT外国語出願に添付された明細書(以下「原文明細書」という)に記載された事項の範囲内であるかどうかという判断によって行うが,その基準は,補正において新規事項が含まれるか否かの判断と同じであり,「原文明細書に記載された事項の範囲内であるかどうか」という基準に従って判断される。そして,この判断においては,「当該明細書の記載から自明な事項」についても考慮されるものであり(審査基準の「補正」の箇所参照),必ずしも原文明細書に同じ文言が記載されていなければ,原文新規事項に該当するというものではない。
しかるところ,本件PCT出願の出願時においては,ビデオテープ以外の記録媒体(ハードディスク,フロッピーディスク,CD-R,DVD等)も当業者において周知のものであった。しかも,原文明細書の記載から明らかなとおり,本件発明の解決すべき課題及びこれに対応した技術的特徴とは,ガイド画面間の移動やガイドモードとテレビ視聴モードとの間での移動を容易にし,視聴をしやすくしたことにあるところ,当業者の技術常識によれば,本件発明がビデオテープを記録媒体として用いることを前提とする発明であるとか,媒体がビデオテープでなければ発明の作用効果を奏しないなどとは解されない。
これらのことからすると,当業者であれば,原文明細書における「ビデオテープ」とは,「記憶媒体」の一例として記載されていたにすぎないと理解するのであるから,構成要件Bにおける「記憶媒体」の記載は「原文明細書の記載から自明な事項」に該当し,原文明細書に記載された事項の範囲内のものと解されるべきである。
(キ)構成要件Cの「ディレクトリを生成」が原文新規事項との主張について「ディレクトリ」とは,「複数の番組の番組情報の集合体であって,選択された番組情報に対応する特定の番組を検索するために利用されるもの」である。原文明細書の図3に示されるEPG画面には,「番組一覧エリア58」に情報提供者から提供される複数の番組が表示されており,このことは,情報提供者から受信した情報に基づいて,ディレクトリが生成されていることを示している。
よって,構成要件Cにおける「ディレクトリを生成する」の記載は,原文新規事項ではない。また,ディレクトリを生成する段階は,本件発明の技術的特徴を特定するためのいわば前提要件にすぎないのであり,かかる意味においても原文新規事項にはなり得ない。
(ク)構成要件Dの「二者択一」が原文新規事項との主張について原文明細書には,本件明細書と同様,「本発明におけるテレビジョンシステムにより,視聴者はテレビジョンモードからいずれかのガイド,すなわちEPGまたはテープインデックスガイドにアクセスすることができ,またガイドモードにおいて2つのガイドの間を移動することもできる。」(乙11の4頁7〜9行),「視聴者は,図3に示すようなEPG画面から図4に示すようなテープインデックススクリーンに切り換えてもよく,図11Aと11Bに示すようにその逆の切り換えをしてもよい。」(乙11の7頁14〜16行)と記載され,図11A及び11Bには,上記2つのガイド間の切換えについて明りょうに示されている。
したがって,構成要件Dにおける,記録された番組の前記ディレクトリであるEPGと,放送される番組の前記ディレクトリであるテープインデックスガイドを二者択一的に表示することは,原文明細書に記載されており,原文新規事項ではない。
(ケ)構成要件Eの「二者択一」が原文新規事項との主張について原文明細書には,本件明細書と同様,「視聴者はガイドモードの間にVCR16からの番組出力とチューナー12からの番組出力の間の切換をPIPウィンドウ50の中で行ってもよい。」(乙11の7頁14〜16行),「視聴者は,PIPウィンドウ50に現に放映中の番組を見続けながら,(略)望みの番組が記録されたビデオテープを識別してVCR16にロードした後,図7の画面が表示される。」(乙11の7頁34行〜8頁3行)と記載され,図7においては,PIP窓50にビデオの映像が流れることが示されている。
したがって,構成要件Eにおける「前記放送される番組の内の1つからの番組」と「前記記録された番組の内の1つからの番組」を二者択一的に表示することは,原文明細書に記載されており,原文新規事項ではない。
(4)争点(4)(損害額)についてア原告被告は,平成18年11月から平成21年9月までの間,別紙被告製品目録記載(1),(2)のレコーダーを少なくとも17万台販売した。
原告が本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額は,被告製品1台当たり704円を下らないから,原告は,少なくとも1億1968万円を自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる(特許法102条3項)。
イ被告否認ないし争う。
第3当裁判所の判断1争点(1)(被告製品方法は,本件発明の技術的範囲に属するか)について(1)被告製品方法が本件発明の構成要件Aを充足していることは当事者間に争いがない。
(2)本件事案にかんがみ,被告製品方法が本件発明の構成要件Dを充足するか否かについて検討する。
ア本件発明の構成要件Dは,「記録された番組の前記ディレクトリと放送される番組の前記ディレクトリを二者択一的に表示する段階と,」というものであるところ,上記「記録された番組の前記ディレクトリ」とは,本件発明の構成要件Bにおいて生成された「記憶媒体に記録された複数の番組のディレクトリ」を指し,「放送される番組の前記ディレクトリ」とは,本件発明の構成要件Cにおいて生成された「複数の情報提供者から放送される複数の番組のディレクトリ」を指すものであることは,【請求項1】の文言から明らかである。
そして,本件発明の構成要件Bによれば,「記録された番組の前記ディレクトリ」には,「記録された番組のタイトル」と「記録された番組の位置」が不可欠な情報として含まれ,構成要件Dにおいて,このような「記録された番組の前記ディレクトリ」が(「放送される番組の前記ディレクトリ」と二者択一的に)表示されるというのであるから,これらの文言からすれば,「記録された番組のタイトル」と「記録された番組の位置」に係る情報がそのまま表示されるものと解するのが相当である。
イまた,本件明細書(甲2)には,本件発明の実施例として,「テープ上に貯えられた制御とディレクトリの情報から,テープインデックスガイドシステムは,画面上に表示されるべき番組ディレクトリを作り出す。ディレクトリにより視聴者は,自分のテープライブラリ中の記録番組の位置を決定し,VCRにロードされたテープ上の選択された番組の流れを制御できる。」(6欄35〜41行)という記載があり,本件発明を実施した方法を利用する視聴者が,ディレクトリの情報を利用して記録番組の位置を決定し,これにより「VCRにロードされたテープ上の選択された番組の流れを制御」することによって番組を試聴する態様が明らかにされている。
さらに,本件明細書には,本件発明の別の実施例(代替実施例)として,「選択した番組,例えば図7の『 』のプレイがWhen You Wish Upon A Star一旦終わると,テープ索引付け&探索装置22は,VCRを自動的に停止するか,テープを巻き戻して選択した番組のプレイを繰り返すか,テープを流し続けて次の番組の『』を表示するかのいずれを行ってBelleもよい。」(9欄29〜34行)」という記載があり,「 」と「」との間に時When You Wish Upon A StarBelle的先後関係があることが分かるから,本件明細書の【第7図】に表示されている番組のタイトルは,テープに記録されている順序で表示されているものと理解することができる。
【第7図】本件特許の優先日(平成8年3月15日)当時,テレビ番組の記録媒体としてビデオテープ以外のものが実用化されていたことを認めるに足りる証拠はなく(原告は,上記優先日当時,ビデオテープ以外のハードディスク,フロッピーディスク,CD-R,DVD等の記録媒体も当業者に周知であったと主張するが,原告がその証拠として提出する甲13〜16を検討しても,その当時,原告が指摘するような記憶媒体が存在していたことはうかがわれるものの,これらがテレビ番組の録画という用途に耐える程度に実用化されていたことを認めるには足りない。),ビデオテープでは,複数の番組を記憶する際に,先頭位置からの順番を相対的な位置情報として用いて頭出しをすることが通常であるから,【第7図】で表示されている番組ディレクトリは,テープに記録された番組の相対的な位置(順序)を含んでいると認められる。
加えて,本件明細書には,上記代替実施例について,「番組をテープ番号でサーチした場合,テープの先頭に貯えられた番組はカーソル60で一覧エリア58に強調表示される。……代替実施例では,適切なテープがロードされるとTIS装置22は選択された番組サーチを自動的に開始する。」(9欄50行目〜10欄9行目)という記載があり,視聴者は,この「テープ番号」(複数のテープのうち,どのテープに記憶されているかを示す「番組の位置」情報)を使って番組のサーチを行うというのであるから,上記代替実施例においては,「番組の位置」情報が表示されることが前提とされているものということができる。
ウ以上のとおり,本件明細書の上記イの記載及び図示は,上記アの文言解釈と整合するものであり,これらの記載及び図示を考慮しても,本件発明は,構成要件Bで生成された番組ディレクトリ(記録された番組の位置を含んでいる。)をそのまま構成要件Dで表示するものであると解釈するのが相当である。
原告は,本件発明の技術的特徴に照らして記憶位置情報は必ずしも表示される必要はないと主張するが,本件特許に係る特許請求の範囲には,「記憶媒体に記録された複数の番組のディレクトリを生成する段階であって,前記ディレクトリは,前記記録された番組のタイトルと該記録された番組の位置とを含む」(下線は判決において付加した。)と明りょうに記載されているのであって,原告の上記主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものであり,採用することができない。
エ他方,被告製品については,「録画番組一覧表」において,「記録された番組の前記ディレクトリ」に含まれる情報のうち「記録された番組のタイトル」を表示していることは認められるものの,「記録された番組の位置」を表示しているとは認められない。すなわち,被告製品では,番組を記録する記録媒体として,先頭から順次アクセスするテープではなく,任意の位置にランダムにアクセスすることが可能なHDDを利用しているのであるから,「録画番組一覧表」に表示されている順序は,HDD上での記録位置とは何らの関連がないものであり,その他,本件全証拠を検討しても,被告製品について,「記録された番組の位置」を表示していることを認めることはできない。
オしたがって,被告製品方法は,本件発明の構成要件Dを充足するものと認めることはできない。
2以上のとおり,被告製品方法は,本件発明の構成要件Dを充足するものと認めることはできないから,被告製品は本件発明の方法の使用に用いられる物ということはできず,その製造,販売が特許法101条5号のみなし侵害に該当するということはできない。
よって,原告の請求は,その余の点について検討するまでもなく,いずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 岡本岳
裁判官 鈴木和典
裁判官 坂本康博
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