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事件 平成 21年 (ワ) 5717号 損害賠償請求事件
川崎市宮前区〈以下略〉
原告有限会社申申閣
同訴訟代理人弁護士・弁理士小林幸夫
同 弓削田博
同訴訟代理人弁護士坂田洋一
同訴訟代理人弁理士河野登夫
同 河野英仁
同 安田恵 徳島市〈以下略〉
被告株式会社ジャストシステム
同訴訟代理人弁護士福島栄一
同 菅尋史
同 大向尚子
同 宮内知之
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2010/10/15
権利種別 特許権
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求被告は,原告に対し,450万円及びこれに対する平成21年3月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要1本件は,文書作成システムに関する後記2,( )の特許の特許権者である原 2告が,被告が別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という )を製。
造,販売する行為は,上記特許権の間接侵害(特許法101条2号)に該当すると主張して,被告に対し,特許権侵害不法行為による損害賠償請求権(民法709条,特許法102条3項)に基づき,損害賠償金450万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年3月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない )。
( ) 当事者1ア原告は,パソコン辞書の開発,販売,書籍・文書の制作,出版等を業として行う特例有限会社である。
イ被告は,ソフトウェアの開発,販売等を業として行う株式会社である。
( ) 原告の特許権2原告は,次の特許の特許権者である(以下,この特許を「本件特許」といい,本件特許に係る特許権を「本件特許権 ,本件特許に係る特許請求の範 」囲の【請求項1】記載の発明を「本件特許発明」という。本件特許に係る明「」,()。)。 細書を 本件明細書 といい その特許公報 甲2 を別紙として添付する(甲1,2)ア登録番号特許第2810880号イ発明の名称文書作成システムウ出願日平成4年9月25日エ登録日平成10年8月7日オ特許請求の範囲【請求項1】仮名入力手段(10)と,仮名漢字変換装置部(1)とを備える文書作成システムであって,仮名漢字変換装置部(1)は,文法辞書(12)と,仮名漢字変換部(11)とを有し,文法辞書(12)は,現代仮名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補を統合的に登録してあり,仮名漢字変換部(11)は,仮名入力手段(10)から入力された文字列を,文法辞書(12)を参照して仮名漢字変換して仮名漢字混じり文字列として出力し,変換された仮名漢字混じり文字列は,特定の文字コード体系のコードで記憶する文書作成システム。
【請求項2 (以下略)】( ) 構成要件の分説3本件特許発明構成要件を分説すると次のとおりであり,それぞれ「構成要件A」ないし「構成要件F」という。
A仮名入力手段(10)と,仮名漢字変換装置部(1)とを備える文書作成システムであって,B仮名漢字変換装置部 1 は 文法辞書 12 と 仮名漢字変換部 1 () ,() ,(1)とを有し,C文法辞書(12)は,現代仮名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補を統合的に登録してあり,D仮名漢字変換部(11)は,仮名入力手段(10)から入力された文字列を,文法辞書(12)を参照して仮名漢字変換して仮名漢字混じり文字列として出力し,E変換された仮名漢字混じり文字列は,特定の文字コード体系のコードで記憶するF文書作成システム。
( ) 被告の行為4被告は,平成20年2月上旬から,被告製品を製造,販売している。被告製品は パーソナルコンピュータにインストールして使用するものである 以 , (下,被告製品をインストールしたパーソナルコンピュータを「被告装置」という。。)( ) 被告装置の構成及び被告装置を使用した仮名漢字変換の流れ5被告装置の構成は,別紙「被告装置の構成」のとおりであり,被告装置を使用した仮名漢字変換の流れは,別紙「被告装置における仮名漢字変換の流れ」のとおりである (乙13,16)。
( ) 構成要件の充足6被告装置は,本件特許発明構成要件A,E,Fを充足する。
3争点( ) 構成要件B,C,Dの充足1( ) 間接侵害の成否(特許法101条2号) 2( ) 特許法104条の3第1項の権利行使の制限 3ア新規性欠如(特許法29条1項)イ進歩性欠如(特許法29条2項)( ) 損害額(特許法102条3項)4第3争点に関する当事者の主張1争点( )(構成要件B,C,Dの充足)について1〔原告の主張〕( ) 本件明細書は 「現代仮名遣いの文法に加えて歴史的仮名遣いの文法を統1 ,合して辞書に格納する」ことにより実現される機能について 「原文の仮名,表記どおりに入力された仮名文を,原文と同じ現代仮名遣い又は歴史的仮名遣いの仮名漢字混じり文に変換する「現代仮名遣い,歴史的仮名遣いの 」,いずれの仮名遣いで書かれた原文であっても,その仮名表記どおりに仮名入力された原文を,原文と同じ現代仮名遣い又は歴史的仮名遣いの仮名漢字混じり文に変換する」と説明するのみであり,かつ,このような機能を実現する構成について何ら限定していない。
このような本件明細書の記載を踏まえれば,本件特許発明構成要件Cの「統合的に登録してあり」の意義は,上記のような機能が実現されるように「現代仮名遣いの文法規則」と「歴史的仮名遣いの文法規則」と「各仮名遣いに対する漢字候補」とが互いに紐付けて登録されていることと解釈すべきである。そして,この「互いに紐付けて」とは,仮名漢字変換部が,?互いに関連付けられた現代仮名遣いの文法規則及び漢字候補と,?互いに関連付けられた歴史的仮名遣いの文法規則及び漢字候補に対して同様にアクセスして,原文の仮名表記どおりに入力された文字列を,原文と同じ現代仮名遣い又は歴史的仮名遣いの仮名漢字混じり文字列に変換できるように,上記文法規則及び漢字候補が関連付けられていることを意味する。
( ) 被告装置における「文法規則」は 「辞書群」に登録された情報と「品詞2 ,コード」を通じて紐付けられており,また 「辞書群」には,現代仮名遣い ,及び歴史的仮名遣いのいずれにも対応する「品詞コード」と各仮名遣いに対する漢字候補(被告はこれを「単語(動詞であれば語幹「読み」と称す)」,るが,仮名文字列に対応する漢字候補である )の情報が収められている。 。
このような構成を持つ被告装置において,仮名文字列がローマ字入力されると,被告装置の「仮名漢字変換部」は 「辞書群」を参照して当該仮名文 ,字列に適合する「漢字候補」と「品詞コード」を読み出し,当該「品詞コー」,「」 「」,「」 ドを手掛かりに更に辞書群が文法規則を参照し品詞コードに対応する「活用のロジック」に関する情報を読み出す。この一連のプロセスを経て,被告装置は 「現代仮名遣い,歴史的仮名遣いのいずれの仮名遣 ,, , いで書かれた原文であっても その仮名表記どおりに仮名入力された原文を原文と同じ現代仮名遣い又は歴史的仮名遣いの仮名漢字混じり文に変換する」ことができる。
「品詞コード」は「品詞の属性を特定する識別子」であり,カ行5段,ハ行5段などのように各単語の活用ごとに割り振られたものである 「品詞コ。
ード」が特定されれば一意的に活用形が決定され,活用形が決定すれば活用ロジックも国語上一意に決定されるため,品詞コードは「文法規則」そのものないしこれと実質的に同一のものであり,被告装置の辞書群には文法規則が登録されているといえる。そして 「辞書群」が参照する「文法規則」と ,は,品詞コードで特定される属性,例えば,動詞であれば活用形情報に従う語尾変化の具体的情報である。被告はこれを「活用のロジック」と称しているが,ロジック・論理などと称すべきものではなく 「規則の内容」である ,にすぎないから 「文法規則」でないとはいえないまでもそのごく一部にす ,ぎないというべきである。
,「」 被告装置において上記のような仮名漢字変換が可能であるのは辞書群に,現代仮名遣いに対応する「品詞コード」と,歴史的仮名遣いに対応する「品詞コード」と,各仮名遣いに対応する漢字候補が互いに紐付けて登録され,更に各品詞コードはこれに対応する「活用のロジック」に関する情報と紐付けられているからである。このように,被告装置における仮名漢字変換部においては,?互いに関連付けられた現代仮名遣いの文法規則及び漢字候補と,?互いに関連付けられた歴史的仮名遣いの文法規則及び漢字候補に対して同様にアクセスして,原文の仮名表記どおりに入力された文字列を,原文と同じ現代仮名遣い又は歴史的仮名遣いの仮名漢字混じり文字列に変換できるよう,上記文法規則及び漢字候補が関連付けられているといえる。
( ) したがって,被告装置は 「現代仮名遣い,歴史的仮名遣いのいずれの仮3 ,名遣いで書かれた原文であっても,その仮名表記どおりに仮名入力された原文を,原文と同じ現代仮名遣い又は歴史的仮名遣いの仮名漢字混じり文に変」, , 換する ように 現代仮名遣いの文法規則及び歴史的仮名遣いの文法規則と各仮名遣いに対する漢字候補が互いに紐付けられて登録されているから,被告装置には,現代仮名遣いの文法規則及び歴史的仮名遣いの文法規則と,各仮名遣いに対する漢字候補が「統合的に登録」されている「文法辞書」が存在するといえる。
( ) 以上から,被告装置は「現代仮名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの4文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補を統合的に登録してあ」る「文法辞書」を備え,かつ 「仮名漢字変換装置部は,文法辞書と,仮名漢字変換 ,部とを有し「仮名漢字変換部は,仮名入力手段から入力された文字列を, 」,文法辞書を参照して仮名漢字変換して仮名漢字混じり文字列として出力」するから,本件特許発明構成要件B〜Dを充足する。
( ) 被告は 「漢字候補」を登録した辞書群と 「文法規則」を含む仮名漢字5 , ,変換部(漢字変換エンジン:ATOK21W.IMEファイル。以下「ファイルα」という )とは別ファイルであるから 「統合的に登録」に当たら 。 ,ないと主張する。
しかし,ファイルとはOSにおけるデータの管理単位であるが,本件明細書においてはファイル及びOSについて一切言及していない。そして,本件特許発明はワードプロセッサ,日本語作成ソフトウェアというアプリケーションプログラムに関するものであるから,本件特許発明の「文法辞書」又は「統合的に登録」の解釈を,OSレベルの管理単位であるファイルに準拠して行うこと自体,本件明細書の記載やコンピュータ技術の常識に照らして失当である。
また,プログラムを実行する際,複数のファイルに格納されたデータ又はプログラムのすべてをメインメモリ上に展開せず,使用頻度,データの大きさ等を考慮して,データ又はプログラムの一部を,必要に応じて所要のタイミングでメインメモリ上に展開することは一般的に行われていることである。したがって,被告製品であるATOKが起動された時点で 「活用語尾,テーブル」及び「付属語テーブル (ファイルαの一部)及び辞書群を検索 」するライブラリであるATOK21DE.dllファイル(以下「フィアルβ」という )がメインメモリ上に展開され,辞書群ファイル(以下「ファ 。
イルγ」という )がいまだメインメモリ上に展開されていない状態にある 。
ことは何ら格別なことではなく,ATOK起動時点でファイルα〜γの一部がメインメモリ上に展開され,他の部分がメインメモリ上に展開されていな,「」 。 いという事実は 本件特許発明の 文法辞書 の定義とは全く無関係である被告の主張は,被告製品における「文法規則」は「活用語尾テーブル」及び「付属語テーブル」であって,これらのテーブルは仮名漢字変換部である「ATOK21W.IMEファイル (ファイルα)にあるという点に基づ 」くものであるが,被告製品の辞書群(ファイルγ)中には品詞コードが登録されており,上記( )のように品詞コードは「文法規則」にほかならない。
2〔被告の主張〕( ) 原告は 「統合的に登録」の意義について 「互いに紐付けて登録されて1 , ,いること」である旨主張するが,本件明細書における文法辞書の説明から導き出すことができない誤った解釈である。
本件明細書には,仮名漢字変換部が文法辞書をどのように参照するかについての具体的な記載は全くない。仮に 「現代仮名遣いの文法規則「歴史 , 」,的仮名遣いの文法規則「それぞれの仮名遣いの読みに対応する常用漢字 」,候補」が別個の場所に存在するとしたならば,仮名漢字変換部が仮名漢字混じり文に変換するに当たって,いずれをどの順番で参照するのかの条件設定をしなければならない。本件明細書には,単に「仮名漢字変換部11は,文法辞書12を参照」すると記載されているのみであるから,最も単純な形態であると考えるほかなく 「現代仮名遣いの文法規則「歴史的仮名遣いの , 」,文法規則「それぞれの仮名遣いの読みに対応する常用漢字候補」は同一 」,の場所に存在するものといわざるを得ない。
原告主張のとおり,本件明細書に記載される機能が実現されるように「現代仮名遣いの文法規則」と「歴史的仮名遣いの文法規則」と「各仮名遣いに対する漢字侯補」とが互いに紐付けて登録されているとすれば,どのようにしてそれを実現するかについての記載が本件明細書になければならない。具体的な実現方法を当業者が理解できるように明細書に記載されていない以上,記載要件違反になるか,発明が未完成というほかない。
( ) 本件明細書には 「現代仮名遣いの文法に加えて歴史的仮名遣いの文法を2 ,。」,,() 統合して辞書に格納すると記載されておりまた本件の特許願乙3における【特許請求の範囲】においては 「現代仮名遣いの文法規則及び歴 ,史的仮名遣いの文法規則並びに各仮名遣いに対応する漢字候補を格納する文法辞書」と記載されていることからすれば 「統合的に登録」とは「統合し ,て(辞書に)格納する」という意味である 「格納」とは 「物を倉庫にし 。,まい入れること」を意味するのであるから,本件特許発明における「文法辞書」は一定の場所に存在し,そこに?現代仮名遣いの文法規則,?歴史的仮名遣いの文法規則,?現代仮名遣いに対する漢字候補,?歴史的仮名遣いに対する漢字候補の情報が1つにまとめて入れられている必要がある。
そして,構成要件Cの「統合的に登録」の文言は,本件特許発明の特許請求の範囲において 「文法辞書」の説明として用いられているものであり, ,かつ 「辞書」とは 「ワード-プロセッサー・自動翻訳システムにおいて, ,,漢字・熟語・文法などを登録してあるファイル」を意味するものである。よって,ワードプロセッサーにおける文書変換システムに関する本件特許発明構成要件Cに用いられている「文法辞書」の「辞書」とは 「漢字・熟語,・文法などを登録してあるファイル」を意味するものであり 「現代仮名遣,いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補を統合的に登録してあ」る「文法辞書」とは,これらの情報を登録した1つのファイルを意味するものである。
( ) 被告製品のATOKにおいては,それぞれの品詞がその属性によってどの3ような活用をするのかという動詞の活用のロジックである「文法規則」は活用語尾テーブル及び付属語テーブルとして仮名漢字変換部(ファイルα)に内包されている。これに対し,現代仮名遣い及び歴史的仮名遣いにおける漢字候補を登録した辞書群(ファイルγ。各辞書には,登録された各単語ごとに「単語 (動詞であれば語幹「読み「品詞コード (品詞の属性を特 」),」,」定する識別子)が登録されている )は,仮名漢字変換部とは独立した別フ 。
ァイルとして存在している。
そして,被告装置においてメモ帳等のアプリケーションを起動すると,漢字変換エンジンであるファイルαがメインメモリ上に展開され,その際に,辞書群を検索するライブラリであるファイルβもメインメモリ上にロードされる。仮名漢字変換の過程における読みに基づく辞書検索や,共起処理・文脈処理がなされる場合にファイルβが実行されることにより 「ATOK2,1.DIC」等,漢字変換エンジンであるファイルαの外部に存在し,それまではメインメモリ上にロードされていない辞書群ファイル(ファイルγ)がオープンされ,ファイルγの中から検索された単語の情報等が初めてメインメモリ上に読み込まれることになる。このように,仮名漢字変換の実行時においても,辞書群は仮名漢字変換部(漢字変換エンジン)とは別の独立したファイルとしてその外部に存在し,仮名漢字変換部によって参照されるのである。
したがって,被告製品がインストールされた被告装置において 「現代仮,名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補を統合的に登録」した1つの「文法辞書(ファイル 」は存在して)おらず,仮名漢字変換部は「文法辞書」を参照していないため,被告装置は本件特許発明構成要件B〜Dを充足しない。
( ) 被告装置における辞書群を構成する各辞書には,登録された各単語に関す4る情報として品詞の属性を特定する識別子である「品詞コード」が登録されている。登録されている単語が動詞の場合には,カ行5段であれば「n ,」ハ行5段であれば「m」といったように,各単語の活用ごとに品詞コードが割り振られ,当該品詞コードが単語の情報として辞書群に登録されている。
, 「」,「」, 具体的にはハ行4段活用動詞である笑ふの場合語幹である笑その読みである「わら」及びその活用である「ハ行4段」に対応する品詞コードが辞書群に登録されているのみであり,辞書群には 「笑」という単語,「」「 」「」, が ハ行4段 活用により は・ひ・ふ・ふ・へ・へ の語尾を伴い 笑ふ「笑へば」というように活用されるという,当該動詞の活用のロジック(文法規則の内容)は登録されていない。
このように 「文法規則」は動詞の活用のロジックであり,そこには各動 ,詞の活用語尾や付属語に関する情報が含まれている必要があるため 単に 品,「詞の属性を特定する識別子」であり文法規則に関する情報にすぎない「品詞コード」が 「文法規則」そのものないしこれと実質的に同一であるとはい ,えない。
2争点( )(間接侵害の成否)について2〔原告の主張〕被告製品はソフトウェアであり,パーソナルコンピュータにインストールして使用することができるから,被告製品は本件特許発明技術的範囲に属する被告装置の「生産に用いる物」であり,かつ,本件特許発明による「課題の解決に不可欠なもの」である。また,被告製品は 「日本国内において広く一般 ,に流通しているもの」には該当しない。
また,被告は,平成20年2月22日に,被告装置が本件特許発明技術的範囲に属すること,被告製品が本件特許発明実施に用いられるものであることについて原告より警告を受け,これらの事実を認識するに至ったが,業として被告製品を製造,販売している。
したがって,被告による,平成20年2月22日以降の被告製品の製造,販売行為は,本件特許権を間接侵害する(特許法101条2号)。
〔被告の主張〕否認ないし争う。
被告装置は,本件特許発明技術的範囲に属するものではない。また,特許に係る物の生産行為は存在しないため,被告製品は被告装置の「生産に用いる物」に該当しない。
3争点( )(特許法104条の3第1項の権利行使の制限)について3(1) 新規性欠如〔被告の主張〕ア刊行物(岡島論文)記載発明に基づく新規性欠如(特許法29条1項3号)本件特許出願前である平成3年12月14日に頒布された情報処理語学文学研究会(JALLC)会報第10号(以下「本件会報」という )に。
掲載された「旧仮名遣変換について」と題する岡島昭浩執筆の論文(以下「岡島論文」という )に記載された技術は,以下のように本件特許発明
構成要件A〜Fのすべての構成を備え,本件特許発明と同一のものである。したがって,本件特許発明新規性欠如を理由として特許無効審判により無効とされるべきものであり,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し,本件特許権の侵害を理由として権利を行使することができない。
(ア) 岡島論文は,日本語入力システム(いわゆる「FEP 。以下「FE」P」ともいう )における「旧仮名による漢字変換」を行う方法につい 。
て記載したものであるが,以下の構成が記載されている。
FEPである「松茸V2」は,被告製品同様,パーソナルコンピュータ等にインストールされて使用されるソフトウェアであるため,当該FEPを使用するためには,同ソフトをパーソナルコンピュータにインストールして使用することとなり 「松茸V2」がパーソナルコンピュー ,タにインストールされた状態は 「仮名入力手段と,仮名漢字変換装置 ,部とを備える文書作成システム (構成要件A)であり,また,出力さ 」れた仮名漢字文字列を記憶することができ,記憶は文字そのものではなく特定の文字コード体系のコードでされるため 「変換された仮名漢字 ,混じり文字列は,特定の文字コード体系のコードで記憶する文書作成システム(構成要件E,F)である。 。」また 「BUNPO.COM」というフリーウェアーソフトを用いて ,「松茸V2」の文法解析部分である「BUNPO.DIC」を書き換えることによって 「松茸V2」を使用して歴史的仮名遣いで入力された ,文字列の仮名漢字変換が可能となる。すなわち,パーソナルコンピュータにインストールされ 「BUNPO.DIC」を書き換えた後の「松 ,茸V2 (以下「書換後松茸V2」という )は 「おもわず」で入力し 」 。,て変換すれば思わずとなりおもはずで入力して変換すれば思 「」,「」「はず」になり,現代仮名遣いの文法規則及び歴史的仮名遣いの文法規則が実現されている。また,書換後松茸V2においては 「ハ行4段を可,能に」し 「二段動詞も単語登録しさえすれば変換できるようになって ,い」るのであるから,任意の単語(活用のロジックを含む)を登録できることは明らかである。そして,原告の主張によれば,原文の仮名表記どおりに入力された文字列を原文と同じ現代仮名遣い又は歴史的仮名遣いの仮名漢字混じり文字列に変換するという機能を実現するように「現代仮名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補」の各要素が紐付けられていれば 「統合的に登録」,「」 , の要件を満たした 文法辞書 が存在するといえるというのであるから書換後松茸V2において 「文法辞書は,現代仮名遣いの文法規則並び ,に歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補を統合的に登録してあ」る(構成要件C)といえる。
さらに,書換後松茸V2は,仮名漢字変換部と文法辞書とを有しており(構成要件B ,仮名漢字変換部が,仮名入力手段から入力された文 )字列を,文法辞書を参照して仮名漢字変換して仮名漢字混じり文字列として出力するものである(構成要件D 。)したがって,岡島論文に開示された書換後松茸V2は,本件特許発明構成要件A〜Fをいずれも備えている。
(イ) 本件会報の刊行物該当性本件会報は,1991年(平成3年)12月14日の発行当時に,情報処理語学文学研究会の会員に対してフロッピーディスクによって配布されたものであり,その後,1995年(平成7年)3月25日に,本件会報の内容を収録した書籍である情報処理語学文学研究会会報第6〜10号の累積版(乙7。以下「本件累積版」という )が発行された。。
特許法29条1項3号の「刊行物」とは,公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書,図面その他これに類する情報伝達媒体をいい,フロッピーディスクによって発行されたものも刊行物に該当すると解されるから,フロッピーディスクによって発行された本件会報は「刊行物」に該当する。
「頒布」とは,当該刊行物が不特定の者が見得るような状態に置かれること,当該刊行物が一般大衆により閲覧可能な状態で配布されることをいうが,本件会報は,発行日である1991年(平成3年)12月14日に,フロッピーディスク(MS-DOSフォーマット)にテキストファイルで収録されて,情報処理語学文学研究会の会員120名程度に対して郵送により配布されたのであるから,本件会報は,頒布された刊行物である。
本件累積版における記載から,岡島論文は本件会報発行当時の内容が修正や改変等されることなく本件累積版に掲載されているといえ,本件累積版に記載されている技術内容が1991年(平成3年)12月14日発行の本件会報にそのまま同一内容で掲載されていた。このことは,執筆者である岡島昭浩自身が,本件累積版に掲載された岡島論文は,1991年(平成3年)12月14日にフロッピーディスクに収録されて配布された本件会報に掲載されたものと同じ内容のものであり,本件累積版の発行に当たっては,欄外に累積版注を追加しただけで,論文の本文に変更は加えられていないと述べていることから明らかである。
公然実施発明に基づく新規性欠如(特許法29条1項2号)本件特許の出願前に不特定多数に販売されていた「新松」に収録された「松茸Ver2.05」及び不特定多数が入手可能であった「松茸文法辞書改造キット(第1.2版 」により,本件特許の出願当時には,不特定 )多数人が秘密にする義務を負わずに本件特許発明実施(生産,使用等)していた。したがって,本件特許発明新規性欠如を理由として特許無効審判により無効とされるべきものであり,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し,本件特許権の侵害を理由として権利を行使することができない。
(ア) 1990年(平成2年)8月12日付けの「松茸文法辞書改造キット(第1.2版)解説 (乙43)の記載によれば 「松茸」は,文法辞 」 ,書を独立したファイルとして持つ日本語FP(FEP)であり,書き換えのために必要な文法辞書の内部構造の資料も,旧松の時代のものが公開されており 「松茸文法辞書改造キット」により,松茸V2の文法辞 ,書を好みに応じて書き換えることができ,その書き換えに必要な実行ファイルである「BUNPO.COM」や「ADDBUNPO.BAT改造の例(二段活用とハ行四段活用を追加する 」などが含まれていた。 )この BUNPO COM は 本件特許出願前である1990年 平 「.」 , (成2年)8月に 「松茸文法辞書改造キット(第1.2版 」の名称で , )FMIND(当時のニフティフォーラム)等に掲載されており,特に秘密性を有することなく第三者において使用可能であった。また 「松茸,Ver2.05」は 「新松」に同梱されており既に販売され入手可能 ,なものであった。
(イ) 「松茸文法辞書改造キット(第1.2版 」による改造後の「松茸V )er2.05」をインストールしたコンピュータは,以下のとおり本件特許発明構成要件A〜Fすべての構成を備え,本件特許発明同一の発明である。
A?キーボードと,仮名漢字変換装置部を備える文書作成システムであって,B?仮名漢字変換装置部は,文法辞書と,仮名漢字変換部とを有し,C?「わらう」と入力して変換すれば「笑う」と 「わらふ」と入力し,て変換すれば「笑ふ」と変換されることから,システム中に現代仮名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補が統合的に登録してあり,D?仮名漢字変換部は,仮名入力手段から入力された文字列を,文法辞書を参照して仮名漢字変換して仮名漢字混じり文字列として出力し,E?出力された仮名漢字文字列は,特定の文字コード体系のコードで記憶するF?文書作成システム。
(ウ) したがって,本件特許発明は,その出願前において,一般に入手可能なソフトウェアを使用して特に秘密性を有することなく実施することができた発明であり,本件特許発明は,特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明(特許法29条1項2号)である。
(エ) 本件の審理経過からすれば,上記の公然実施に基づく無効主張は,平成22年4月2日以前に提出する機会があったとはいえず,原告に不意打ちを与えるものでもないため,不当に訴訟の完結を遅延することにはならない。また,上記時期に上記主張を追加したことに重過失はない。
〔原告の主張〕ア刊行物(岡島論文)記載発明に基づく新規性欠如の主張に対して(ア) 本件特許の出願日は平成4年9月25日であるところ,本件累積版の発行日は平成7年3月14日であり,本件特許の出願前に頒布された刊行物ではない。
平成3年12月14日にフロッピーディスクを媒体として情報処理語学文学研究会の会員に頒布された刊行物である本件会報に掲載された岡島論文の内容と本件累積版に掲載された岡島論文の内容が同一であるとはいえず,本件特許出願前に頒布された刊行物の内容を認定することはできない 「累積」の語義が「重ね積むこと」であるところ,その語義 。
自体からして,本件会報を基に,複数回にわたって内容的な改変が加えられた上で本件累積版が作成されたことが推認され,本件累積版の欄外の注には本件特許出願後の情報が記載されている。
論文執筆者自身の陳述書(乙12)は,作成日が平成21年6月17日であるところ,本件累積版が作成されたのはその約14年前,本件会報が作成されたのは更にその4年前のことであり,論文の執筆者自身といえどもその記憶が相当あいまいになっていることは想像に難くなく,その記載内容は信用できない。
フロッピーディスクそのものについても,このような電磁的情報は容, , 易に改ざんが可能であり その痕跡を追跡することも不可能であるから本件会報に記載された内容を認定することはできない。
(イ) 仮に,本件会報に掲載された岡島論文の内容と本件累積版に掲載された内容が同一だとしても,岡島論文には,本件特許発明構成要件C及びDに相当する構成が開示されていない。
岡島論文には 「 おもわず」で変換すれば「思わず」となり 「おも ,「 ,はず」で変換すれば「思はず」になる」との記載があり,当該作用効果を実現する手段として 「BUNPO.DICを書き換えてユーザーの ,望み通りの文法解析を可能にして呉れます 」と記載しているにすぎな 。
い。そもそも 「BUNPO.COM」ないし「BUNPO.DIC」 ,とはどのような構成をもつソフトウェアなのか岡島論文には全く開示されておらず,また 「BUNPO.DIC」におけるいかなるバッチフ ,ァイルをどのように書き換えれば 「ユーザーの望み通りの文法解析を ,可能」とするのかについての具体的な手段も一切開示されておらず,抽象的に「BUNPO.DICを書き換え」ればよいと記載するにとどまっている。
岡島論文が本件特許発明同一の発明を開示していると認定するには,少なくとも,現代仮名遣いの文法規則及び歴史的仮名遣いの文法規則,これら各仮名遣いに対する漢字候補の4つの要素について言及した上で,更にこれらを「文法辞書」中に「統合的に登録」することについて言及されなければならないところ,岡島論文は,単に「BUNPO.DICを書き換え」ればよいとするのみで,何ら作用効果を実現するための手段について具体的に開示するものではなく,構成要件C及びDに対応する具体的な構成は開示されていない。
また,岡島論文には 「ユーザーの望み通りの文法解析を可能」とす ,る具体的方法について 「二段動詞も単語登録しさえすれば変換「自 , 」,分で頑張れば…変換できるように登録「あまりにたくさん登録しす 」,ぎると候補が増えてしまいますので適度な登録に留めておく」との記載があるが このような記載からすると 岡島論文は結局ユーザ自身が 頑 , , 「張って」手作業で単語登録を行うことにより変換を実行する技術を開示しているにすぎない。岡島論文が開示するのは 「単語登録 ,すなわ ,」ち,単語ごとに新たな活用に関する情報を逐一登録する方法であって,本件特許発明構成要件Cの「現代仮名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補を統合的に登録」する方法についても,構成要件Dの「 そのように統合的に登録された情 (報を含む)文法辞書を参照して仮名漢字変換」する方法についても,全く開示していない。
公然実施発明に基づく新規性欠如の主張に対して上記主張は,平成22年4月2日付け準備書面において初めてされたものであるが,既に訴訟提起から1年以上が経過しており,弁論期日1回,弁論準備手続期日を7回も経ており,その間,被告には無効理由の主張の機会があった。被告には十分に無効理由を検討する時間があったというべきであり,侵害論の審理が終盤にさしかかった上記段階においてまで上記主張をなし得なかった理由は皆無である。
したがって,被告の上記主張は,被告の重大な過失によって時機に後れて提出された防御方法であって,これにより訴訟の完結が遅延することは明らかであるから,却下されるべきである(民訴法157条1項 。)(2) 進歩性欠如〔被告の主張〕ア乙21刊行物を主引用例とする主張本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平2-132550号公報(乙21。公開日:平成2年5月22日。以下,この刊行物を「乙21刊行物」という )に記載された発明及び岡島論文に記 。
載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は特許法29条2項に違反し,特許無効審判により無効にされるべきもので,特許法104条の3第1項により,原告は,被告に対し,本件特許権の侵害を理由として権利を行使することができない。
(ア) 乙21刊行物には以下の発明が記載されている。
A?仮名入力手段(10)であるキーボード1と,仮名漢字変換装置部(1)であるCPU4,ディスク装置2,主メモリ3とを備える文書作成システムであって,B?仮名漢字変換装置部(1)は,文法辞書(P)及び文法辞書(Q)と,仮名漢字変換部(11)である仮名漢字変換処理部41とを有し,C?ディスク装置2には,読み仮名と漢字を対応付けた単語辞書21,会話文を除く通常文用の文法辞書(P)22,及び会話文用の文法辞書(Q)23が格納されており,D?仮名漢字変換処理部41は,単語辞書21及び識別バッファKで指定された文法辞書(P)22を参照して,入力文バッファポインタaaからn文字のデータについて仮名漢字変換を行い,変換結果m文字を出力文バッファBにセーブし,セーブした変換結果を連結して出力し,E?仮名漢字変換処理部41は,仮名漢字変換を行い,変換結果m文字を出力文バッファBにセーブする(パーソナルコンピュータ等において,出力された仮名漢字文字列を記憶(セーブ)するのに,特定の文字コード体系で行うことは周知技術である )。
F?文書作成システム。
(以下,この発明を「乙21発明」という )。
(イ) 本件特許発明と乙21発明の対比乙21発明には,本件特許発明構成要件A,B,D,E,Fが開示。 , , されている 本件特許発明との相違点は 本件特許発明構成要件Cが「歴史的仮名遣いの文法規則」であるのに対して,乙21発明では「会話文用の文法辞書」である点のみである。すなわち,本件特許発明は,「現代仮名遣い」と「歴史的仮名遣い」で区別するのに対して,乙21発明では「会話文用」と「非会話(通常)文用」で区別する点が相違する。
(ウ) 相違点について乙21発明は,歴史的仮名遣いの文法規則を網羅していない点で本件特許発明と相違するが,この点は乙21発明と岡島論文開示技術との組合せにより当業者が容易に想到することができる。すなわち,岡島論文に開示された技術である書換後松茸V2では 「おもわず」で入力して ,変換すれば「思わず」となり 「おもはず」で入力して変換すれば「思 ,はず」になり,また,二段動詞も単語登録すれば変換できるようになっているため,システム中に歴史的仮名遣いの文法規則が統合的に登録されることが開示されている。
乙21発明と岡島論文開示技術は,いずれも文書作成システムに関する技術であるから,乙21発明に岡島論文開示技術を組み合わせる動機付けは十分にある。
イ乙23刊行物を主引用例とする主張本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平4-148367号公報(乙23。公開日:平成4年5月21日。以下,この刊行物を「乙23刊行物」という )に記載された発明及び岡島論文に記 。
載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は特許法29条2項に違反し,特許無効審判により無効にされるべきもので,特許法104条の3第1項により,原告は,被告に対し,本件特許権の侵害を理由として権利を行使することができない。
(ア) 乙23刊行物には以下の発明が記載されている。
A?日本語を入力する手段と,該入力手段により入力された漢語,和語を漢字に変換する漢字変換手段を備えたことを特徴とする日本語ワードプロセッサであって,B?各種変換に用いる,漢字辞書20,綴り字辞書21及び原綴り字辞書22よりなる辞書群を有する辞書部11と,漢字コード発生部14及び振り仮名発生部15を有する漢語処理部8,綴り字発生部16及び漢字コード発生部24を有する和語処理部9,片仮名発生部17,ローマ字発生部18及び原綴り発生部19を有する外来語処理部10とを有し,C?漢字の振り仮名,外来語等の表記において現代仮名遣い,歴史的仮名遣い,振り仮名,ローマ字表記,原綴り時表記等の対応を可能にした,D?ステップS410にて,該当単語が辞書部11に存在するか否かを判定し,存在しない場合はステップS411に移行し,設定されている入力形式(仮名入力,ローマ字入力,半角/全角等)で編集バッファ12にその形式のキャラクタコードを格納し,他方,該当単語が存在する場合は,ステップS412に移行し,単語分離部7より辞書コードを分離し,分類化した結果に応じて漢語処理部8,和語処理部9,外来語処理部10いずれかに該当単語の分類コードとキーコードを送り,E?該当する処理部により,文章を他の日本語WPで出力したとき振り仮名が付いた形で出力できるように通常のJISコードを用い,処理された文書を一時記憶する編集バッファ12に変換候補のコードを格納するF?文書作成システム。
(以下,この発明を「乙23発明」という )。
(イ) 本件特許発明と乙23発明の対比本件特許発明と乙23発明の相違点は,乙23発明には 「現代仮名,遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補」を格納する「文法辞書」がない点である。
(ウ) 相違点について本件特許の拒絶査定に対する審判請求理由補充書(乙29)において当該請求人が主張するように,乙23発明では 「歴史的仮名遣いが選 ,,「」「」, 択されている場合わらうの入力で笑ふと変換されるのであり歴史的仮名遣いの文法規則を有していないが,岡島論文では,書換後松茸V2においては 「おもわず」と入力して変換すれば「思わず」と変 ,換され 「おもはず」と入力して変換すれば「思はず」と変換されるこ ,とが開示されている。
したがって,乙23発明と岡島論文の開示技術との組合せに基づき,当業者は本件特許発明容易に発明をすることができた。
〔原告の主張〕ア乙21刊行物を主引用例とする主張に対して(ア) 乙21発明においては 「国文法に則した…第1の文法辞書」と「会 ,話文に用いられる…第2の文法辞書」が相互に独立に存在し,非会話文については「第1の文法辞書」を参照して文法処理を行い,会話文については「第2の文法辞書」を参照して文法処理を行う発明である。本件特許発明と乙21発明は 「現代仮名遣い」と「歴史的仮名遣い」で区 ,別するか 「非会話文」と「会話文」で区別するかの点において相違す ,るだけではなく,乙21発明には 「第1の文法辞書」と「第2の文法 ,辞書」との統合的登録について開示も示唆も全くされておらず,乙21発明と本件特許発明とは根本的に相違しているため,相違点に関する被告の主張は誤っている。乙21発明には,構成要件Dの「文法辞書」も開示されていないから,その点も相違点となる。
(イ) 被告は,相違点について岡島論文の開示技術により解消されると主張するが,そもそも乙21発明に開示された会話文と非会話文の仮名漢字変換を行う文書作成システムに,岡島論文が開示する技術を組み合わせる動機付けがないし,岡島論文には歴史的仮名遣いの文法規則及びこれに対する漢字候補を統合的に登録することが開示されていないから,この点からも被告の主張には理由がない。
イ乙23刊行物を主引用例とする主張に対して被告が主張する相違点について,具体的に岡島論文のどの箇所の記載によって,どのように開示されているのか,被告の主張は不明瞭である。岡島論文には歴史的仮名遣いの文法規則及びこれに対する漢字候補を統合的に登録することが開示されていない。
また,いかなる論理付けによって,乙23発明と岡島論文に記載された技術を組み合わせて本件特許発明に想到することができるのかについての被告の主張も不明である。
乙23発明と岡島論文に記載された技術との組合せにより本件特許発明に想到するとする被告の主張は失当である。
4争点( )(損害額)について4〔原告の主張〕被告の平成20年3月期の一太郎シリーズ(一太郎2008を以外のバージョンを含む総称)の年間売上額は約40億円,ATOKシリーズ(ATOK2) , 008以外のバージョンを含む総称 の年間売上額は約15億円であるところそれぞれの年間売上本数は,各製品単価で除して推定すれば,年間30万本及び年間15万本を下ることはない。したがって,平成20年2月から訴え提起時までの約1年における被告製品の製造,販売本数は45万本を下ることはない。
日本語入力システムにおける仮名漢字変換システムの重要性,被告製品の販売単価,本件特許発明の内容,歴史的仮名遣いによる仮名入力の重要性を考慮すれば,被告製品の1製品あたりの実施料は10円を下らない。
したがって,被告による本件特許権の間接侵害行為により原告が被った損害は,特許法102条3項により,450万円である。
〔被告の主張〕否認ないし争う。
第4当裁判所の判断1争点( )(構成要件B,C,Dの充足)について1( ) 本件特許発明の「文法辞書」について 1本件特許の特許請求の範囲には 「文法辞書」の用語は,構成要件Bにお ,いて「仮名漢字変換装置部(1)は,文法辞書(12)と,仮名漢字変換部(11)とを有し」と,構成要件Cにおいて「文法辞書(12)は,現代仮名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補を統合的に登録してあり」と,構成要件Dにおいて「仮名漢字変換部(11)は,仮名入力手段(10)から入力された文字列を,文法辞書(12)を参照して仮名漢字変換して仮名漢字混じり文字列として出力」すると記載されている。したがって,本件特許発明の「文法辞書」とは,上記4つの内容(現代仮名遣いの文法規則,現代仮名遣いに対する漢字候補,歴史的仮名遣いの文法規則及び歴史的仮名遣いに対する漢字候補 を 統合的に登録そ ) 「」(の意味については,後記( )で検討する )し,仮名漢字変換部によって「参2 。
照」されるものである。そして,本件特許発明は「仮名漢字変換する文書作成システムとして普及しているワードプロセッサ,日本語文書作成ソフトウェア搭載のパーソナルコンピュータ (本件明細書の発明の詳細な説明の段 」落【0003 )に係る技術分野に関するものであり,本件特許出願当時に 】,「」,「 , おいて辞書 とはワード-プロセッサー・自動翻訳システムにおいて漢字・熟語・文法などを登録してあるファイル (乙38)を意味していた 」ことからすると,本件特許発明のように仮名漢字変換をする文書作成システムの技術分野における「文法辞書」は 「ファイル」であると解される。 ,この点について,本件明細書には「文法辞書」の意味や具体例の記載は認められないが,発明の詳細な説明の段落【0020】〜【0021】の「仮名漢字変換装置部1及び正字体変換装置部2は単一の,又は各別のコンピュータによって作成される。仮名漢字変換装置部1は,原稿を仮名入力するキーボード10に接続されており,キーボード10で入力された仮名文字列を仮名漢字混じり文字列に変換する仮名漢字変換部11と,現代仮名遣いの文法規則及び歴史的仮名遣いの文法規則,並びにそれぞれの仮名遣いの読みに対応する常用漢字候補,さらには入力確度が高い「てふてふ」及び歴史的仮名遣いのみの表記も予想される「にほふ 「きはめる」等の字音に対応する 」常用漢字候補が統合的に登録されている文法辞書12を備えており」との記載からすると,仮名漢字変換装置部はコンピュータによって作成され,その仮名漢字変換装置部に文法辞書が備えられていることが認められ,コンピュータはファイルを扱うものであるから,本件明細書の記載は,文法辞書がファイルであるという上記解釈と整合する。また,本件明細書の「文法辞書12に,現代仮名遣いの文法規則に加えて登録する歴史的仮名遣いの文法規則を具体的に説明する (段落【0024 )との記載も,文法辞書が追加的 」】な登録が可能である「ファイル」の形式で存在するという上記解釈と整合するものである。
したがって,本件特許発明における「文法辞書」とは,現代仮名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補を統合的に登録した「ファイル」であって,仮名漢字変換部によって参照されるものであると解される。
( ) 本件特許発明の「統合的に登録」の意味2「」, () 統合 とは 2つ以上のものを1つに統べ合わせること 広辞苑第4版を意味するが,構成要件Cの「統合的に登録」がどのように統べ合わせることを意味するのかは一義的に明確ではない。
本件明細書の発明の詳細な説明には 「本発明はこのような問題点を解決 ,するためになされたものであって,現代仮名遣いの文法に加えて歴史的仮名遣いの文法を統合して辞書に格納することにより,原文の仮名表記どおりに入力された仮名文を,原文と同じ現代仮名遣い又は歴史的仮名遣いの仮名漢字混じり文に変換する文書作成システムの提供を目的とする(段落【0。」013 )との記載がある。そして 【発明が解決しようとする課題】とし 】 ,て 「新字体,旧字体の字体別の漢字候補を辞書に登録しておき,仮名漢字 ,変換後の文書の字体を設定する手段により設定された字体に対応する漢字候補を辞書の中から選別し,選別された漢字候補の中からオペレータが所望の漢字を選択できる文書作成システム」は「歴史的仮名遣いの原文の仮名漢字変換は不可能である」こと(段落【0008「現代口語表現で入力され 】),た原文を文語表現,古語表現による旧表現の文体に変換する文体変換手段を設けた文書作成システム」は「旧表現で書かれている原稿をオペレータは現代の口語表現に読み替えて仮名入力しなければならない」こと(段落【0010「口語用,文語用の2種類の辞書を切り換えて使用する切り換え手 】),段を設け,口語文,文語文,又はこれらの混淆文を作成する文書作成システム は 歴史的仮名遣いの口語文を作成することはできない こと 段落 0 」 「 」(【011「入力された仮名文を現代仮名遣いで文法解析できない場合に旧 】),仮名遣いと判定し,入力された仮名文を現代仮名遣いに変換して再度仮名漢字変換を行う文書作成システム」は「現代仮名遣いの文法で解析できない場合に初めて歴史的仮名遣いと認識するので,歴史的仮名遣いの原文が現代仮名遣いの文法で誤って解析されてしまった場合に誤った変換が行われる」こと(段落【0012 )が記載され,これらの文書作成システムでは,現代 】仮名遣い又は歴史的仮名遣いで入力された原文を同様に変換してそれぞれの仮名漢字混じり文に変換することができないことが認められる。
これに対し,本件特許発明は「このような問題点を解決するために…現代仮名遣いの文法に加えて歴史的仮名遣いの文法を統合して辞書に格納することにより,原文の仮名表記どおりに入力された仮名文を,原文と同じ現代仮名遣い又は歴史的仮名遣いの仮名漢字混じり文に変換する (段落【001」3 )ものであって,現代仮名遣い又は歴史的仮名遣いで入力された仮名文 】「」 を同様に変換できるようにするという課題を解決するために 統合的に登録するものであるから,構成要件Cの「統合的に登録」とは,現代仮名遣い又は歴史的仮名遣いで入力された仮名文を変換するに当たって,現代仮名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補を同様に参照して変換できるように登録することを意味すると解される。
( ) 被告装置の構成3被告装置においては,キーボードからローマ字が入力されると,その読み(例えば 「わらふ )に基づく辞書検索が行われ,登録された単語(例え ,」ば 「笑 )が辞書群から検索される。そして,検索された単語につき登録 ,」されている品詞コードに基づき,対応する活用の内容(例えば,ハ行4段活用の動詞が「は・ひ・ふ・ふ・へ・へ」の語尾を伴い 「笑ふ「笑へば」,」,というように活用されること )が参照され,入力された仮名( わらふ」 。 「「」) , の場合は ふが当該単語を活用した結果の活用語尾として適切であれば単語に活用語尾を付した文節( 笑ふ )が生成される (乙13,16,3 「」。
9,弁論の全趣旨)上記活用の内容として参照されるデータが「活用語尾テーブル」と「付属語テーブル」であり(乙16「活用語尾テーブル」は,例えば,ワ行5 ),段活用,ハ行4段活用といった現代仮名遣い及び歴史的仮名遣いに係る動詞が採り得る活用語尾の情報を含むものである 「活用語尾テーブル」と「付 。
属語テーブル」は 「ATOK21W.IME」というファイル(ファイル ,α)に格納されており,ファイルαは被告製品の漢字変換エンジンに相当す,(), るものであるとともに DLL 動的リンクライブラリ ファイルであってアプリケーションの起動時にメインメモリ上にロードされ,その終了までメインメモリ上に展開されたまま動作するものである。したがって,ファイルα内に格納されている「活用語尾テーブル」及び「付属語テーブル」は,アプリケーションの起動時にメインメモリ上にロードされ,その終了までメインメモリ上に展開されたまま動作するものと認められる (乙16,33〜。
35 。)また,被告製品の辞書群を構成する各辞書には,登録された各単語ごとに「単語(動詞であれば語幹「読み「品詞の属性を特定する識別子(品 )」,」,詞コード 」が登録されており,辞書群は 「ATOK21.DIC」等, ) ,ファイルαの外部に存在するファイル(ファイルγ)である。仮名漢字変換処理の過程において,当該辞書ファイルはメインメモリ上にロードされておらず,検索の結果,使用可能な部分がメインメモリ上に展開され文節生成が行われる (乙39,弁論の全趣旨 。 。 )( ) 属否の判断4以上に認定した事実によれば,被告装置においては,活用語尾を付した文節を生成するためには,読み,単語,品詞コード,活用語尾テーブルを参照する必要があるが,品詞の活用の具体的な内容を特定するためには品詞コードと活用語尾テーブルが必要であることから,品詞コードと活用語尾テーブルを併せたものが「現代仮名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則」に当たると認められる。また,ファイルα(ATOK21W.IME)はアプリケーションの起動時にメインメモリ上にロードされ,メインメモリ上に展開されたまま動作するため,ファイルα内に格納された「活用語尾テーブル」は,仮名漢字変換に当たり参照される際にはメインメモリ上に展開されおり,ファイルとして存在するものとは認められない。他方で,ファイルγ(辞書群ファイル)は,メインメモリ上にロードされておらず,検索の結果,使用可能な部分のみがメインメモリ上に展開され文節生成が行われるのであるから 「品詞コード」は仮名漢字変換部によりファイルとして参照 ,されるものと認められる。
( )で説示したように,本件特許発明における「文法辞書」とは,現代仮1名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補を統合的に登録した「ファイル」であり 「ファイル」として仮名 ,漢字変換部によって参照されるものであるが,被告装置における文法辞書の「」 ,(.) 一部である 活用語尾テーブル は ファイルα ATOK21W IMEに格納されているデータではあるものの,仮名漢字変換に当たり参照される際にはメインメモリ上に展開されており 「ファイル」として存在するもの ,ではないため,被告装置の仮名漢字変換部は 「ファイル」としての「文法 ,辞書」を参照するものと認めることはできない。
そうすると,被告装置は,本件特許発明構成要件B〜Dの上記「 ファ『イル』として仮名漢字変換部によって参照される 「文法辞書」の構成を有 」しないものであるから,上記構成要件を充足するものとは認められない。
原告は,ファイルとはOSにおけるデータの管理単位であるが,本件明細書においてはファイル及びOSについて一切言及していないから,本件特許発明の「文法辞書」の解釈を,OSレベルの管理単位であるファイルに準拠して行うことはできないと主張する。しかし,本件特許出願当時の特許法施行規則24条は 「願書に添附すべき明細書は,様式第29により作成しな ,ければならない 」と定め,様式第29の備考8は 「用語は,その有する 。 ,,, 。, 普通の意味で使用し かつ 明細書全体を通じて統一して使用する ただし特定の意味で使用しようとする場合において,その意味を定義して使用するときは,この限りでない 」と定めていたのであるから,明細書に用語の定 。
義がない場合は,用語はその有する普通の意味で理解すべきことになる。そうすると,上記( )で説示したように,本件特許発明は 「仮名漢字変換す1 ,る文書作成システムとして普及しているワードプロセッサ,日本語文書作成ソフトウェア搭載のパーソナルコンピュータ (本件明細書の発明の詳細な 」説明の段落【0003 )に係る技術分野に関するものであり,本件特許出 】願当時において 「辞書」とは 「ワード-プロセッサー・自動翻訳システム ,,において,漢字・熟語・文法などを登録してあるファイル」を意味していたのであるから,本件特許発明における「文法辞書」は「ファイル」であると解すべきであって,原告の主張を採用することはできない。
( ) 以上検討したところによれば,被告装置は本件特許発明技術的範囲に属5するということはできないから,被告製品を製造,販売する行為が本件特許権の間接侵害(特許法101条2号)に該当するということはできない。
2結論よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 岡本岳
裁判官 坂本康博
裁判官 寺田利彦
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