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審判番号(事件番号) データベース 権利
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関連ワード 発明者 /  職務発明 /  業務範囲 /  現在または過去の職務(現在又は過去の職務) /  技術的思想 /  物の発明 /  方法の発明 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  公知技術 /  技術的範囲 /  発明の詳細な説明 /  着想 /  実施料相当額 /  時効 /  援用権(援用) /  出願経過 /  技術的意義 /  均等 /  均等侵害 /  置き換え /  置換 /  置換可能性 /  同一の作用効果 /  置換容易性 /  容易に想到(容易想到性) /  非公知 /  意識的除外(意識的に除外) /  禁反言 /  特許発明 /  実施 /  先使用権(先使用) /  加工 /  構成要件 /  方法の使用 /  差止請求(差止) /  侵害 /  供した設備 /  逸失利益 /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  実施権 /  通常実施権 /  実施許諾(実施の許諾) /  法定実施権 /  法定実施権 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 / 
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事件 平成 20年 (ワ) 18566号 特許権侵害差止等請求事件
名古屋市<以下略>
原告羽根エンジニアリング株式会社
同訴訟代理人弁護士木村圭二郎
同 増本充香 三重県四日市市<以下略>
被告東 洋スチロール株式会社
同訴訟代理人弁護士滝井朋子
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2010/04/23
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1主位的請求(1) 被告は,別紙物件目録記載の発泡樹脂成形装置を使用(別紙方法目録記載の発泡樹脂成形品の取出方法を使用することを含む。)してはならない。
(2) 被告は,別紙物件目録記載の発泡樹脂成形装置を廃棄せよ。
(3) 被告は,原告に対し,1113万7500円及び,うち797万5000円に対する平成20年7月25日から,うち215万円に対する平成21年11月5日から,いずれも支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2予備的請求(1) 被告は,別紙物件目録記載の発泡樹脂成形装置を使用(別紙方法目録記載の発泡樹脂成形品の取出方法を使用することを含む。)してはならない。
(2) 被告は,別紙物件目録記載の発泡樹脂成形装置を廃棄せよ。
(3) 被告は,原告に対し,1012万5000円及び,うち797万5000円に対する平成20年7月25日から,うち215万円に対する平成21年11月5日から,いずれも支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要1本件は,別紙物件目録記載の発泡樹脂成形装置(以下「被告装置」という。)を使用し同時に別紙被告方法目録記載の発泡樹脂成形品の取出方法(以下「被告方法」という。)を使用する被告に対し,原告が,被告方法及び被告装置は原告の有する後記2(2)の特許権(以下,この特許権を「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許 ,本件特許に係る特許請求の範囲の請求 」項1記載の方法の発明を「本件特許発明1 ,同2記載の物の発明を「本件特 」許発明2」といい,本件特許発明1及び本件特許発明2を合わせて「本件特許発明」という。)を侵害すると主張して,主位的に,本件特許権に基づき,被告装置及び被告方法の使用差止め並びに被告装置(侵害の行為を組成したもの及び侵害の行為に供した設備として)の廃棄を,本件特許権侵害不法行為による損害賠償請求権(民法709条,特許法102条3項)に基づき,平成16年12月15日から平成21年6月14日までの間の損害賠償金1113万7500円(弁護士費用を含む。)及び附帯請求として民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,主位的請求の損害賠償請求について,予備的に不当利得返還請求権に基づき,上記同期間の不当利得金1012万5000円の返還及び附帯請求として商事法定利率の年6分の割合による利息の支払を求める事案である。
被告は,被告方法及び被告装置が本件特許発明構成要件を充足することを争う。
被告方法及び被告装置がいずれも本件特許権を文言侵害しないことは当事者間に争いがなく,均等侵害の成否のみが問題となっている。
2前提となる事実(1) 当事者等ア取下前原告Aは,本件特許の発明者であり,本件特許を出願し,本件特許権を取得した。(争いのない事実,弁論の全趣旨)イ原告は,発泡スチロール成形工場の生産システムの設計,発泡スチロール用成形加工機械及び同付属部品の販売,輸出入等を目的とする株式会社である。(弁論の全趣旨)原告は 平成16年12月15日 Aから本件特許権の譲渡を受けた (争 , , 。
いのない事実)ウ被告は,合成樹脂製品の製造及び販売並びに輸出入等の業務を行う株式会社である。(争いのない事実)(2) 本件特許本件特許は,次のとおりのものである。
ア登 録 番 号特許第3022073号イ発明の名称発泡樹脂成形品の取出方法および装置ウ出願日平成5年7月15日エ登録日平成12年1月14日オ特許請求の範囲「 請求項1】成形金型により成形された発泡樹脂成形品を前記成形金型 【からコンベア上に移送する発泡樹脂成形品の取出方法において前記成形金型で成形された発泡樹脂成形品を搬出するのに,発泡樹脂成形品の取出枠を回動可能に設けた昇降枠を下降して成形金型のパーティング面に対応した取出位置に取出枠を挿入位置したのち,成形金型から成形品をエジェクト機構により押出し離型して,前記取出枠に緩衝部材を介して設けた保持器に押し付け成形品を吸着保持させ受渡してから昇降枠を上方に持ち上げ,次で,該取出枠をコンベアの上方位置まで走行移送するとともに該取出枠を成形品を吸着保持した保持器とともに反転機構で反転変位し成形品を取出姿勢から水平状態の受渡姿勢に変更したのち,前記昇降枠を下降させ,昇降駆動機構によって予めコンベアの搬送面高さを調節したコンベア上に前記発泡樹脂成形品を前記保持器から外して積載するようにしたことを特徴とする発泡樹脂成形品の取出方法。
【請求項2】開閉自在に対向配備された一対の成形金型により成形された発泡樹脂成形品を取り出してコンベアに移送し,この発泡樹脂成形品をコンベアにより所定位置まで搬送する発泡樹脂成形品の取出装置であって,前記成形金型およびコンベアの上方に設けられたガイドレール上に移動可能に支持された移動支持枠体と,前記移動支持枠体に昇降可能に昇降枠を設けると共に,該昇降枠に回動可能な取出枠を設け,該取出枠には発泡樹脂成形品を吸着保持または離脱可能に設けられ,かつ緩衝機構を備えた保持器とを設け,前記取出枠には発泡樹脂成形品の取出姿勢および受渡姿勢を保持する姿勢変化用アクチュエータを,前記移動支持枠体には前記ガイドレール上を移動させる移動アクチュエータと前記昇降枠を昇降させる昇降用アクチュエータとを夫々設け,前記コンベアには昇降駆動機構により搬送面の高さを発泡樹脂成形品の積載高さに応じて調節する高さ調節機構を設けたことを特徴とする発泡樹脂成形品の取出装置 」。
(以下,本件特許発明に係る特許請求の範囲,明細書及び図面を「本件明細書」といい,その特許公報〔甲2〕を別紙として添付する。)(争いのない事実)(3) 構成要件の分説ア本件特許発明1本件特許発明1の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A」のようにいう。以下同様。)。
【A】成形金型により成形された発泡樹脂成形品を前記成形金型からコンベア上に移送する発泡樹脂成形品の取出方法において前記成形金型で成形された発泡樹脂成形品を搬出するのに,【B】発泡樹脂成形品の取出枠を回動可能に設けた昇降枠を下降して成形金型のパーティング面に対応した取出位置に取出枠を挿入位置したのち,【C】成形金型から成形品をエジェクト機構により押出し離型して,前記取出枠に緩衝部材を介して設けた保持器に押し付け成形品を吸着保持させ受渡してから昇降枠を上方に持ち上げ,【D】次で,該取出枠をコンベアの上方位置まで走行移送するとともに該取出枠を成形品を吸着保持した保持器とともに反転機構で反転変位し成形品を取出姿勢から水平状態の受渡姿勢に変更したのち,【E】前記昇降枠を下降させ,昇降駆動機構によって予めコンベアの搬送面高さを調節したコンベア上に前記発泡樹脂成形品を前記保持器から外して積載する【F】ようにしたことを特徴とする発泡樹脂成形品の取出方法。
(争いのない事実)イ本件特許発明2本件特許発明2の構成要件を分説すると,次のとおりである。
【A 】開閉自在に対向配備された一対の成形金型により成形された発泡 ’樹脂成形品を取り出してコンベアに移送し,この発泡樹脂成形品をコンベアにより所定位置まで搬送する発泡樹脂成形品の取出装置であって,【B 】前記成形金型およびコンベアの上方に設けられたガイドレール上 ’に移動可能に支持された移動支持枠体と,【C'】前記移動支持枠体に昇降可能に昇降枠を設けると共に,該昇降枠に回動可能な取出枠を設け,【D 】該取出枠には発泡樹脂成形品を吸着保持または離脱可能に設けら ’れ,かつ緩衝機構を備えた保持器とを設け,【E 】前記取出枠には発泡樹脂成形品の取出姿勢および受渡姿勢を保持 ’する姿勢変化用アクチュエータを,【F 】前記移動支持枠体には前記ガイドレール上を移動させる移動アク ’チュエータと前記昇降枠を昇降させる昇降用アクチュエータとを夫々設け,【G 】前記コンベアには昇降駆動機構により搬送面の高さを発泡樹脂成 ’形品の積載高さに応じて調節する高さ調節機構を設けた【H 】ことを特徴とする発泡樹脂成形品の取出装置。 ’(争いのない事実)(4) 被告の行為被告は,頭書本店所在地の工場において,被告装置を使用することにより,被告方法を用いて発泡樹脂成形品を製造している。(争いのない事実)(5) 被告方法被告方法の動作は,別紙被告方法説明書に記載のとおりである。(争いのない事実,弁論の全趣旨)(6) 被告装置被告装置の構造は,別紙被告装置説明書に記載のとおりである。(争いのない事実,弁論の全趣旨)(7) 構成要件の充足ア被告方法は 「前記昇降枠を下降させ,昇降駆動機構によって予めコンベ ,アの搬送面高さを調節したコンベア上に前記発泡樹脂成形品を前記保持器から外して積載する」との構成要件Eを除く本件特許発明1の構成要件をいずれも充足するが,構成要件Eを充足しない。(争いのない事実)イ被告装置は 「前記コンベアには昇降駆動機構により搬送面の高さを発泡 ,樹脂成形品の積載高さに応じて調節する高さ調節機構を設けた」との構成要’ ,’ 件G を除く本件特許発明2の構成要件をいずれも充足するが 構成要件Gを充足しない。(争いのない事実)(8) 均等の要件の充足被告方法につき構成要件Eは,また,被告装置につき構成要件G’は,いずれも均等の第3要件(置換容易性)を充足し,被告方法又は被告装置につき,いずれも均等の第4要件(容易想到性)を充足する。(争いのない事実)(9) 出願手続の経過ア出願当初の特許請求の範囲本件特許の出願当初における本件明細書の特許請求の範囲は,次のとおりである。(甲5)「 特許請求の範囲】【【請求項1】成形金型により成形された発泡樹脂成形品を前記成形金型からコンベア上に移送する発泡樹脂成形品の取出方法において,前記成形金型で成形された発泡樹脂成形品を前記成形金型の上方へ持ち上げた後に前記コンベアの上方位置まで水平移動させ,該コンベアの上方位置で前記発泡樹脂成形品を下降させて前記コンベア上に積載するようにしたことを特徴とする発泡樹脂成形品の取出方法。
【請求項2】前記発泡樹脂成形品を前記コンベア上に積載する前に前記発泡樹脂成形品の姿勢を変えるようにした請求項1に記載の発泡樹脂成形品の取出方法。
【請求項3】開閉自在に対向配置された一対の成形金型により成形された発泡樹脂成形品を取り出してコンベアに移送し,この発泡樹脂成形品をコンベアにより所定位置まで搬送する発泡樹脂成形品の取出装置であって,前記成形金型の上方に該成形金型上の金型パーティング面に対応した取出位置と前記コンベア上の積載位置との間を移動可能に支持された移動支持枠体と,該移動支持枠を駆動して前記取出位置と前記積載位置との間を移動させる移動用アクチュエータと,前記移動支持枠体に昇降可能,かつ取出姿勢と受渡し姿勢とに姿勢変化可能に支持された取出枠体と,前記移動支持枠体が取出位置と積載位置に位置する時に前記取出枠体を昇降駆動する昇降用アクチュエータと,前記移動支持用枠体が取出位置で前記取出枠体が下降位置にある場合に前記取出枠体を取出姿勢に保持し,前記移動支持用枠体が積載位置で前記取出枠体が下降位置にある場合に前記取出枠体を受渡し姿勢に保持する姿勢変化用アクチュエータと,該取出枠体に発泡樹脂成形品を吸着保持可能に設けられ,前記成形金型により成形された発泡樹脂成形品を前記移動支持枠体が取出位置で前記取出枠体が下降位置に位置した時に吸着保持し,前記移動支持枠体が積載位置で前記取出枠体が下降位置に位置した時に前記コンベアに受け渡す保持器と,を備えることを特徴とする発泡樹脂成形品の取出装置。
【請求項4】前記成形金型が成形された発泡樹脂成形品をエジェクト部材により押し出して離型するものであって,前記保持器を,前記取出枠体に前記発泡樹脂成形品を吸着可能な吸着パッドと,該吸着パッドを前記取出枠体に対して移動可能な保持用シリンダと,該保持用シリンダと前記吸着パッドとの間に介装されたクッション用スプリングとから構成し,前記発泡樹脂成形品の離型前に前記保持用シリンダを伸長作動させて吸着パッドを前記発泡樹脂成形品に吸着し,前記エジェクト部材が前記発泡樹脂成形品を押し出す間は前記保持用シリンダをフローティング状態とするようにした請求項3に記載の発泡樹脂成形品の取出装置。
【請求項5】制御用の機器が収容された制御盤を備え,該制御盤と前記コンベアとを近接して並設した請求項3に記載の発泡樹脂成形品の取出装置。
【請求項6】前記コンベアはベルトコンベアからなり,該ベルトコンベアをベルト搬送面を昇降可能に支持し,該ベルトコンベアのベルト搬送面の高さを前記発泡樹脂成形品の積載高さに応じて調節する高さ調節機構を設けた請求項3または請求項5に記載の発泡樹脂成形品の取出装置 」。
イ第1回拒絶理由通知,, , (ア) 特許庁は Aに対し 平成10年5月14日付け拒絶理由通知書において引用文献を特開平2-204016号公報(甲8。以下「引用文献1」又は「引例?」という )及び特開平3-58816号公報(甲9。以下「引用 。
文献2」又は「引例?」という )として,次の理由による拒絶理由を通知 。
した (乙1)。
「引用文献2には,搬送途中で姿勢を変更する機構を設けた点が記載されており,発泡樹脂成形品を対象とした製品取出方法及び装置は本願出願前,周知かつ慣用の技術であるし,ベルト面高さ調節機構を設けることも,物流機構として普通のことであるから,請求項1〜6に係る発明は,引用文, 。」 献1 2に記載のものから当業者が容易に為すことができたものである(イ) Aは,平成10年7月23日,特許請求の範囲を次のとおり変更する手続補正をしたが,同補正は却下された (甲6,弁論の全趣旨) 。
「 請求項1】成形金型により成形された発泡樹脂成形品を前記成形金型 【からコンベア上に移送する発泡樹脂成形品の取出方法において前記成形金型で成形された発泡樹脂成形品を搬出するのに,発泡樹脂成形品の取出枠を回動可能に設けた昇降枠を下降して成形金型のパーティング面に対応した取出位置に取出枠を挿入位置したのち,成形金型から成形品をエジェクト機構により押出し離型して,前記取出枠に緩衝部材を介して設けた保持器に押し付け成形品を吸着保持させ受渡してから昇降枠を上方に持ち上げ,次で,該取出枠をコンベアの上方位置まで走行移送するとともに該取出枠を保持器とともに反転機構で反転変位し成形品を取出姿勢から水平状態の受渡姿勢に変更したのち,前記コンベアを上昇させて,前記発泡樹脂成形品を前記保持器から外してコンベア上に積載するようにしたことを特徴とする発泡樹脂成形品の取出方法。
【請求項2】開閉自在に対向配置された一対の成形金型により成形された発泡樹脂成形品を取り出してコンベアに移送し,この発泡樹脂成形品をコンベアにより所定位置まで搬送する発泡樹脂成形品の取出装置であって,前記成形金型およびコンベアの上方に設けられたガイドレール上に移動可能に支持された移動支持枠体と,前記移動支持枠体に昇降可能に昇降枠を設けると共に,該昇降枠に回動可能な取出枠を設け,該取出枠に発泡樹脂成形品を吸着保持可能に設けられ,かつ緩衝機構を備えた保持器と,前記取出枠に発泡樹脂成形品の取出姿勢および受渡姿勢を保持する姿勢変化用アクチュエータと,前記コンベアに設けられた昇降機構とを有していることを特徴とする発泡樹脂成形品の取出装置。
【請求項3】前記保持器が,前記取出枠に固定されたシリンダの作動ロッド先端に設けた筒状部材に軸状部材を摺動自在に備え,該軸状部材に真空源に連結した吸着パッドを設けると共に,筒状部材と軸状部材との間にクッション用スプリングを介装させ成形品の押出し変位に伴って変位する緩衝機構を持っている請求項2記載の発泡樹脂成形品の取出装置。
【請求項4】前記コンベアが,装置フレームの成形金型装置に隣接して設けられ,該コンベアに並設して制御用機器が収容された制御盤を近接配備した請求項2または3記載の発泡樹脂成形品の取出装置 」。
(ウ) また,Aは,審査官に対し,上記同日,次のとおりの意見を述べた (甲。
7)「・・・即ち,本願発明は,『成形品の取出時における脱落防止と,成形品を傷付けることなく安定して取出すことを可能とし,成型品上に水滴が滞留することなく受渡作業を合理的に行えるようにすること』が目的であり,A.成型済の成形品を搬出するのに,発泡樹脂成形品の取出枠を回動可能に設けた昇降枠を下降して成形金型のパーティング面に対応した取出位置に取出枠を挿入位置したのち,成形金型から成形品をエジェクト機構により押出し離型して,前記取出枠に緩衝機構を介して設けた保持器に押し付け成形品を吸着保持させ受渡してから昇降枠を上方に持ち上げ次で,該取出枠をコンベアの上方位置まで走行移送し,該取出枠を保持器とともに反転機構で反転変位し成形品を取出姿勢から水平状態の受渡姿勢に変更したのち,前記コンベアを上昇させて,前記発泡樹脂成形品を前記保持器から外してコンベア上に積載すること(以下A着想,請求項1)と装置としては,上記A構成の装置とB.保持器が,取出枠に固定されたシリンダの作動ロッド先端に設けた筒状部材に軸状部材を摺動自在に備え,該軸状部材に真空源に連結した吸着パッドを設けると共に,筒状部材と軸状部材との間にクッション用スプリングを介装させ成形品の押出し変位に伴って変位する緩衝機構を持っていること (以下B着想,請求項2) 。
を特徴としているが,これらのA・B着想に関しては引例??には何等開示されていません。
・・・(4) しかも,引例??の構成は,本願発明のA・B着想がないために製品取出処理サイクルに余計な時間がかかり,製品損傷のおそれも生じやすく本願発明の作用効果の特徴を予測する記載はどこにもないものと言えます。
・・・」ウ第2回拒絶理由通知,, , (ア) 特許庁は Aに対し 平成11年10月4日付け拒絶理由通知書において次の理由による拒絶理由を通知した (乙2)。
「本願明細書の発明の詳細な説明又は図面には,コンベアの搬送面高さが調節可能であり,かつ,発泡樹脂成形品を取出姿勢から受渡姿勢に姿勢変更させるという特有の取出装置,及びそれを用いた取り出し方法について記載されており,これによって明細書記載の特有の効果を奏するものと認められるが,現在の請求項1〜6に記載される要件のみをもって構成される発明について,それが初期の効果を奏すると認めるに足るまママでの記載はない。
したがって,請求項1〜6に係る発明は発明の詳細な説明又は図面に記載された発明でなく,又は,各請求項には発明の構成に欠くことができない事項が記載されていない。
なお,必要があれば,先の拒絶理由通知書で提示した各引用文献に記載された発明と対比して,本願各発明の技術的意義進歩性について,意見書において御説明いただきたい 」。
, , (, (イ) Aは 平成11年10月22日 特許請求の範囲を前記(2)オ 請求項12)及び次のとおりに変更する手続補正をした (乙3)。
「 請求項3】 前記保持器が、前記取出枠に固定されたシリンダの作動 【ロッド先端に設けた筒状部材に軸状部材を摺動自在に備え、該軸状部材に真空源に連結した吸着パッドを設けると共に、筒状部材と軸状部材との間にクッション用スプリングを介装させ成形品の押出し変位に伴って変位する緩衝機構を持っている請求項2記載の発泡樹脂成形品の取出装置。
【請求項4】 前記コンベアが、装置フレームの成形金型装置に隣接して設けられ、該コンベアに並設して制御用機器が収容された制御盤を近接配備した請求項2または3記載の発泡樹脂成形品の取出装置 」。
(ウ) また,Aは,審査官に対し,上記同日,次のとおりの意見を述べた (乙。
9)「・・・(2) なお,本願補正後の特許請求の範囲記載の発明は先の拒絶理由通知書で提示された各引用例とは明らかに相違しており,各引用例から容易に発明できたものとは云えないものです。すなわち,?特開平2-204026号公報(引例1)ママ引例1には,射出成形品を金型より取出し,これをチャック機構で保持し,このチャック機構をアーム機構により前進,後退,昇降動作させて射出成形機の長手方向に沿って移動させて該成形品をコンベア等に離反放出することが記載されている。
?特開平3-58816号公報(引例2)引例2には,併設された射出成形機から取出された成形品を,コンベアで移送する際に,コンベア装置としてリフトコンベア装置,搬送コンベア装置,組合わせコンベア装置を適宜搬送方向に配置して成形品を垂直状態にしたままで搬送し,成形品の一方をターンコンベア装置で180度回動して,二つの成形品の溶着面を対向させて溶着工程まで移送するようにした射出成形品の搬送装置が記載されている。
?本願の請求項1記載の発明と,引例1の取出方法を対比すると,・・・本願の請求項1記載の発明は・・・成型金型に発生した水滴が成形品に滞留する不都合がなく,また成形品に若干の水滴が付着していても成形品の姿勢変更によりコンベア上に積載するまでに排除できるものである。もちろん成形品を水平状態にしてコンベア上に横積みでき安定移送できるものである。
また,コンベア上に成形品を積載する際に予めコンベアの搬送面高さを調節するためにコンベアを昇降させて,多段積載を容易にしたものであり,これらの点については,引例1には何ら記載も示唆もされていない。
?本願の請求項2記載の発明と,引例2の搬送装置を対比すると,引例2には,本願の請求項2記載の発明の構成要件・・・ コンベアに高さ調節機構を設けた』構成については何ら記 『載されていない。
本願発明はこれらの構成によって,発泡樹脂成形品の取出装置として,成形品に水滴の滞留による不都合もなく,また成形品に付着した水滴があったとしてもこれをコンベア積載までに排除でき,また,成形品を保持器に保持した状態で取出から積載まで連続して迅速に行うことができ,さらに成形品の保持に当たり過大な力を作用させることがなく,またコンベアへの多段積載が可能なので発泡樹脂成形品の取出装置として有効である 」。
(10)消滅時効に関連する事実ア本訴提起原告は,平成20年7月5日,本件訴訟を提起した (顕著な事実)。
援用の意思表示被告は,平成20年8月22日本件第1回口頭弁論期日において,同期日に陳述の答弁書をもって,本件訴訟提訴前3年より前の本件損害賠償請求権につき,消滅時効援用する旨の意思表示をした (顕著な事実)。
3争点(均等)(1) 均等の第1要件(非本質的部分)の充足(2) 均等の第2要件(置換可能性)の充足(3) 均等の第5要件(意識的除外)の充足(実施許諾)(4) 法定通常実施権(特許法35条)の有無(消滅時効)(5) 時効消滅の有無(損害)(6) 損害の不発生(7) 損害の額(8) 弁護士費用(不当利得)(9) 不当利得の有無4争点に関する当事者の主張(均等)について(1) 争点(1)(均等の第1要件〔非本質的部分〕の充足)につきア原告(ア) 本件特許発明は,?保持器と受取器との間で製品を受け渡さなければならず,また,これら保持器と受取器のそれぞれに真空吸着パッド等を設けなければならず,そのため成形品の処理が複雑化して処理時間が長大化するとともに,部品点数が多くコストの増大を招くという課題と,?成形時に不可避的に水滴等が成形金型に生じるため,この水滴が成形金型の下方に取り出した成形品上に滴下して滞留するという課題を解決するために(本件明細書 0【003】) 「成形金型で成形された発泡樹脂成形品を成形金型の上方に持 ,, 」 ち上げた後に水平移動し 成形品を水平状態に回動してコンベアに積載するという構成を採り(本件明細書【0031】),このことにより「取り出した発泡樹脂成形品上に滴下した水滴が滞留する等の不都合を防止でき,また,1つの保持器に保持した状態で取出から積載までを連続して迅速に行うことができ,さらに,部品点数を削減してコストの低減も可能となる」との効果を奏する(本件明細書【0032】)点に特徴がある。
そうすると,本件特許発明1の構成要件E「昇降駆動機構によって予めコ」 ’ ンベアの搬送面高さを調節したコンベア 又は本件特許発明2の構成要件G「前記コンベアには昇降駆動機構により搬送面の高さを発泡樹脂成形品の積載高さに応じて調節する高さ調節機構を設けた」との要件(以下,まとめて「コンベア高さ調節」という )は,本件特許発明に特有の課題解決手段を 。
基礎付ける特徴的な部分とはいえない。成形品の積載をコンベア高さ調節で行うのか,あるいはセンサーによって昇降枠の方の高さを調節するかはささいな違いにしかすぎず,この部分の構成を置き換えても,全体として本件特許発明技術的思想と別個のものと評価されるような部分ではなく,いずれであっても「倒れを生じること無く発泡樹脂成形品を搬送面に積み上げることができ」る(本件明細書【0034 )との効果を奏するのであり,コン 】ベア高さ調節は,本件特許発明の本質的部分ではない。
(イ) 引用文献1又は引用文献2記載の発明は,コンベア高さ調節によって発泡樹脂成形品を多段積載するという技術とは何ら関係がなく,Aが上記各引用文献との相違を主張するに当たってコンベア高さ調節が本質的なものであると主張したことはない。コンベア高さ調節は一般的な技術であり,本件特許発明の本質的部分を構成し得ない。
イ被告(ア) Aは 第1回拒絶理由通知に対する手続補正において 請求項1中に コ , ,「ンベアを上昇させて」の文言を,また,請求項2中に「コンベアに設けられた昇降機構」なる文言を付加し,さらに,明細書中の「課題を解決するため」「 」 の手段 の項に コンベアを上昇させて・・・積載するようにしたものである旨を加える補正をした。さらに,Aは,第2回拒絶理由通知に対する意見書において 「予めコンベアの搬送面高さを調節するためにコンベアを昇降さ ,せ」た点などが進歩性の根拠である旨を述べて特許査定を受けた。
この経過からみれば,本件特許発明は,コンベア高さ調節が極めて重要かつ本質的な構成であり,これを特許請求の範囲に加えることをもってようやく本件特許審査に至ったものである。したがって,コンベア高さ調節の構成は,本件特許発明の本質的部分を構成している。
(イ) 本件特許の上記出願経過に照らせば,コンベア高さ調節を本件特許発明の本質的部分ではないと主張することは,少なくとも包袋禁反言に照らし許されないというべきである。
(2) 争点(2)(均等の第2要件〔置換可能性〕の充足)につきア原告(ア) 本件特許発明は,本件明細書にその作用効果が「コンベアの搬送面高さを搬送面に積み上げられる発泡樹脂成形品の積み上げ高さに応じて調節する高さ調節機構を備えることで,倒れを生じること無く発泡樹脂成形品を搬送面に積み上げることができ,高い信頼性を得られるようになる 」と記載され。
ているが(本件明細書【0034】),当該効果は,従来技術の課題の解決に加えて更に付加して認められる効果にすぎない。そして,被告方法の動作又は被告装置の構造でも上記同様の効果を奏する。
したがって,本件特許発明1の構成要件E又は本件特許発明2の構成要件G’を,それぞれ被告方法の動作又は被告装置の構造に置き換えても,本件特許発明同一の作用効果を生じるものといえる。
(イ) コンベア高さ調節によって発泡樹脂成形品を積載する場合でも,コンベア,, , に積載された発泡樹脂成形品は その後 ベルトコンベアが回転することで後の工程である袋詰め工程等に搬送されるのであるから(本件明細書【0029,コンベア面の高さは,一番低い位置であっても後に搬送されるベ 】)ルトコンベアの高さと一致させる必要がある。結局,本件特許発明のコンベア高さ調節でも,被告方法又は被告装置のような昇降枠の高さの調節であっても,いずれも,積載される発泡樹脂成形品の量は昇降枠の下端からコンベア面高さまでの距離によって制約され,当該距離に違いは生じない。
イ被告発泡樹脂成形機は,その成形品が発泡製品であってかなりかさ高になることから,一般に相当に大型な機械とならざるを得ない。また,発泡樹脂成形工程では水滴が生ずることがあるが,その付着を防ぐために,成形品はこうした機械の上部から取り出して(上取出し)機械の上部を移動させた後にコンベア上に積載される。そうすると,この上取出し型の機械によってコンベア上に積載し得る成形品の数量は,コンベア面高さから昇降枠下端までの距離によって制約される。したがって,本件特許発明は,コンベア高さ調節によりコンベア面を可及的に低い位置にまで下げて設置することによって,それだけ積載成形品の数を増加させることができる。
これに対して,被告方法の動作又は被告装置の構造では,コンベア面は固定されており,その位置を変更することはできないのであるから,コンベア高さ調節によって成形品の積載量を増加させるようなことはできない。
すなわち,コンベア高さ調節を被告方法の動作又は被告装置の構造のものに置き換えると,本件特許発明の目的を達することができず,同一の作用効果を奏するものではないから,置換可能とはいえない。
(3) 争点(3)(均等の第5要件〔意識的除外〕の充足)につきア被告(ア) 本件特許発明1に係る当初明細書に記載された発明(請求項1,2)は,その請求項に記載されている構造であるコンベアについて,コンベア高さ調節を具備する場合とコンベア高さ調節を具備しない場合の双方を含んでいる。
一方,本件特許発明1は,その発明をコンベア高さ調節を具備した方法に,, 。, 限定し もって コンベア高さ調節を具備しない方法を除外している Aは第2回拒絶理由通知に対する意見書においても 「予めコンベアの搬送面高 ,さを調節するためにコンベアを昇降させて,多段積載を容易にしたもの」であることを強調して,コンベア高さ調節を具備する技術から成る本件特許発明1の非公知性,進歩性を主張している。
そうすると,本件特許発明1は,コンベア高さ調節を具備しない方法を特許請求の範囲から意識的に除外したものである。
(イ) 本件特許発明2に係る当初明細書に記載された発明(請求項3〜6)は,コンベア高さ調節を具備しない発明(請求項3〜5)と これを具備する発明(請 ,求項6)とを包含している。
一方,本件特許発明2は,コンベア高さ調節を具備した装置に限定し,もって,当初明細書に特許請求の範囲に包含されていたコンベア高さ調節を具備しない装置を除外している。Aは,第2回拒絶理由通知に対する意見書に, , おいても コンベア高さ調節を具備する技術から成る本件特許発明2につきコンベア高さ調節という特徴を強調して公知技術との差異を力説している。
そうすると,本件特許発明2は,コンベア高さ調節を具備しない装置を特許請求の範囲から意識的に除外したものである。
イ原告(ア) 本件特許発明は,当初明細書における請求項に,同請求項6「該ベルトコンベアをベルト搬送面を昇降可能に支持し,該ベルトコンベアのベルト搬送面の高さを前記発泡樹脂成形品の積載高さに応じて調節する高さ調節機構を設けた請求項3または請求項5に記載の発泡樹脂成形品の取出装置」を取り込む形で整理したにすぎない。当初明細書においても,課題解決手段につき「さらに,この発明にかかる発泡樹脂成形品の取出装置は,コンベアの搬送面高さを発泡樹脂成形品の積み上げ高さに応じて調節可能とする態様に構成することができる 」(【0007】),作用につき「さらに,この発明にか 。
かる取出装置は,コンベアの搬送面高さを発泡樹脂成形品の積載高さに応じて調節することで,発泡樹脂成形品をコンベア上に安定的に積み上げることができる 」(【0010】),効果につき「さらに,この発明は,コンベア 。
の搬送面高さを搬送面に積み上げられる発泡樹脂成形品の積み上げ高さに応じて調節することで,倒れを生じること無く発泡樹脂成形品を搬送面に積み上げることができ,高い信頼性を得られるようになる 」(【0034】)と。
記載されている。
したがって,コンベア高さ調節を具備しない発明を特許請求の範囲から意識的に除外したものではない。
(イ) Aは,コンベア高さ調節を具備することが本件特許発明の重要な本質であるとは述べていない。確かに,Aは,第2回拒絶理由通知に対する意見書において 「コンベア上に成形品を積載する際に予めコンベアの搬送面高さを ,調節するためにコンベアを昇降させて,多段積載を容易にしたものであり,これらの点については,引例1には何ら記載も示唆もされていない 」と述。
べているが,これは本件特許発明と引例?とに違いがあることを述べただけであって,それが本件特許発明の必須の構成であると述べているわけではない。また,Aは,第2回拒絶理由通知に対する意見書において,引例?との関係につき 「本願発明はこれらの構成によって ・・・コンベアへの多段 , ,積載が可能なので,発泡樹脂成形品の取出装置として有効である 」と述べ。
ているが,発泡樹脂成形品をコンベアへ多段積載することを可能にするとの作用効果が本件特許発明の特徴である旨を述べるにすぎず,コンベア高さ調節が特徴であるとは述べていない。
したがって,Aは,コンベア高さ調節を具備しない発明を特許請求の範囲から意識的に除外したものではない。
(ウ) Aは,コンベア高さ調節が本件特許発明と引例??との差異であるとは述べていない。引例?も引例?も、発泡樹脂成形品を多段積載する方法に関する技術とは何ら関係がない発明である。
したがって,Aは,コンベア高さ調節を具備しない発明を特許請求の範囲から意識的に除外したものではない。
(実施許諾)について(4) 争点(4)(法定通常実施権の有無)につきア被告(ア) 株式会社羽根は,既に平成2年以前から,発泡樹脂成形機及びその付属装置の製造,販売を行っており,平成5年には,会社の目的を,合成樹脂加工機械及びその付属部品の販売や輸出入をも含むように変更しており,発泡樹脂成形装置の製造は,株式会社羽根の業務の範囲内である。
(イ) Aは,被告や,株式会社羽根の取引先であって成形機及び金型等の付属装置を製作する株式会社関製作所において,成形機及び金型等の付属品の製造の実務的研修をし,平成2年から平成12年に至るまで一貫して株式会社羽根の技術開発担当の中心的従業者又は役員として,成形機及びその付属装置の技術開発の職務に従事していた。本件特許発明は,平成4年ころ,当時株式会社羽根の開発課長であったAが自己の職務に属する発明としてした。したがって,株式会社羽根は,本件特許発明について,法定の通常実施権(特許法35条)を有する。
(ウ) 被告は,株式会社羽根が発行済株式の約70%の株式を有する株式会社羽根の子会社であり,役員,代表者も重複しており,いわば株式会社羽根の成形部門・製造部門の実質を与えられた会社である。被告は,株式会社羽根の注文によってのみ成形品の製造をし,その際,株式会社羽根の有する金型のみを用いており,その成形品全量を株式会社羽根にのみ納品売却していて,それ以外の第三者との間の取引は一切していない。被告による被告方法又は被告装置の使用は,株式会社羽根の意思に基づき,その事業のためにされたものであり,株式会社羽根の上記通常実施権の範囲内である(最高裁平成9年10月28日第三小法廷判決・裁判集民事185号421頁参照)。
(エ) 特許法35条に基づく法定通常実施権には法律上何らの制限が定められておらず,その範囲は,その職務発明技術的範囲内で一切の制限がないと解すべきである。そして,職務発明が及ぶ技術的範囲均等の範囲まで拡張することができるのであるから,法定通常実施権の範囲も均等の範囲に及んでいると解されなければならない。そうでないとすると,職務発明を使用する使用者が,均等技術に一歩踏み出した途端に従業者等から差止めを請求されることになり,それでは,その職務発明に対し少なからぬ貢献のある使用者に対する保証として与えられた法定実施権としては,不足のものとなってしまう。
また,先使用者の通常実施権については実施形式に具現された発明と同一性を失わない範囲内において特許発明の全範囲に及ぶとされていること(最高裁昭和61年10月3日第二小法廷判決・民集40巻6号1068頁参照)との対比からみても,上記のように解するのが相当である。
イ原告(ア) 株式会社羽根は,発泡樹脂成形品の購入,販売を業とする会社であり,発泡樹脂成形品の製造も,発泡樹脂成形装置の製造,販売も行っておらず,それらは,株式会社羽根の業務範囲に属さない。
(イ) Aは,株式会社羽根の開発部に所属していたが,その業務は,金型の設計や発注業務,発泡樹脂成形品の設計や発注業務であり,発泡樹脂成形装置といった機械の開発を業務とするものではなかった。また,本件特許発明をするに当たって要した開発費用や本件特許権の登録費用等は,すべて,A,その父で株式会社羽根の代表取締役であるB又は原告において捻出した。したがって,発泡樹脂成形装置の設計,製作は,Aの現在又は過去の職務に属さない。
(ウ) 株式会社羽根と被告は別法人であるから,たとえ被告が製作する発泡樹脂成形品のすべてが株式会社羽根に販売されているとしても,被告は株式会社羽根の工事部門・製造部門とはいえない。そして,株式会社羽根は,特許権者であるA又は原告の承諾なく,通常実施権の再実施許諾をすることはできないのであるから,被告が通常実施権を有することはない。
(消滅時効)について(5) 争点(5)(時効消滅の有無)につきア被告被告方法及び被告装置は,平成16年8月に被告において使用開始されたものであるところ,株式会社羽根は,上記のとおり被告と特殊な関係にある親会社として,その一部始終を承知していた。そして,当時の本件特許権者であったAは,株式会社羽根の技術に詳しい同社執行役員であったのであるから,当然にこの事情を承知していた。さらに,原告は,このA,その兄であるC,Bで構成している会社であって,上記被告の使用開始の直後にAから本件特許権を取得したものであるから,同人と同時期に上記の事情を了知していたものである。よって,時効起算点は平成16年8月である。
イ原告争う。
(損害)について(6) 争点(6)(損害の不発生)につきア被告原告は,本件特許権の実施をしていない。したがって,その主張の逸失利益が生じることはあり得ないというべきである(最高裁平成9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)。
イ原告争う。
(7) 争点(7)(損害の額)につきア原告(ア) 使用台数被告が使用する被告装置の台数は5台を下らない。
(イ) 利益額,,。 被告装置が製造する発泡樹脂成形品は 1台につき 毎月5tを下らないまた,当該製造にかかる粗利益は,1kg当たり250円を下らないから,被告装置1台の月当たりの粗利益は,125万円を下らない。
(ウ) 実施料相当額実施料は,粗利益の3%を下らないから,被告装置1台の月当たりの実施料相当額は,3万7500円を下らない。
(エ) 算定原告が受けるべき実施料相当額は,月額18万7500円(3万7500円×5台)である。したがって,原告が,平成16年12月15日から平成21年6月14日までの間に受けるべき実施料相当額は,平成16年12月15日から平成20年6月30日までの期間の797万5000円(内金)と平成20年7月1日から平成21年6月14日までの期間の215万円の合計1012万5000円である。
イ被告すべて争う。
(8) 争点(8)(弁護士費用)につきア原告弁護士費用は,逸失利益の1割である101万2500円が相当である。
イ被告争う。
(不当利得)について(9) 争点(9)(不当利得の有無)につきア原告被告は,本件特許権侵害により,原告の損失のもとで,平成16年12月15日から平成21年6月14日までの間,上記(7)のとおり,本件特許権の実施料相当額である1012万5000円を下らない利得を得ている。
イ被告否認する。
第3当裁判所の判断1被告方法が本件特許発明1の構成要件Eを,被告装置が本件特許発明2の構成要件G’を,いずれも文言上充足しないことは当事者間に争いがない(前記第2の2(8))ところ,原告は,?本件特許発明1の構成要件E「昇降駆動機構によって予めコンベアの搬送面高さを調節したコンベア」又は本件特許発明2の構成要件G 「前記コンベアには昇降駆動機構により搬送面の高さを発泡 ’樹脂成形品の積載高さに応じて調節する高さ調節機構を設けた」との要件(コンベア高さ調節)は,本件特許発明に特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的な部分とはいえず(均等の第1要件〔非本質的部分,?本件特許発明1の 〕)構成要件E又は本件特許発明2の構成要件G’を,それぞれ被告方法の動作又は被告装置の構造に置き換えても,本件特許発明同一の作用効果を生じるものといえ(同第2要件〔置換可能性,かつ,?コンベア高さ調節を具備し 〕)(〔〕), ない発明を意識的に除外したものではない 同第5要件 意識的除外から均等侵害が成立すると主張する(前記第2の2(9)のとおり,均等の第3要件〔置換容易性 ,同第4要件〔容易想到性〕については争いがない。 〕 。)そこで,本件事案にかんがみ,上記第5要件から検討する。
2争点(3)(均等の第5要件〔意識的除外〕の充足)について(1) 意識的除外について平成5年7月15日付け本件特許出願の願書(甲5)に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という )の特許請求の範囲は,前記第2,2(10)ア 。
のとおり,コンベア高さ調節を構成要件として含まない請求項(1〜5)とコ() , ンベア高さ調節を構成要件として含む請求項 6 とが記載されていたところ前記第2,2(2)のとおり,本件特許発明1(請求項1)又は本件特許発明2(請求項2)は,いずれもコンベア高さ調節を構成要件として含み(構成要件E,G,その余の請求項(3,4)も請求項1,2の従属項であるからコ ’)ンベア高さ調節を構成要件として含み(甲2 ,したがって,本件明細書の特 )許請求の範囲からは,コンベア高さ調節を構成要件として含まない発明はなくなっている。
そして,コンベア高さ調節に係る構成要件E及び構成要件G’が,特許庁での審査段階で審査官から通知された拒絶理由(乙2)に対応して,出願人たるAが当該拒絶理由を回避しようと意識的に加えたものであることは,前記第2,2(10)イ,ウの出願経過から明らかである。この認定に反する原告の主張は,前記第2,2(10)イ,ウに認定した手続補正書(甲6,乙3)及び意見書(甲7,乙9)の記載自体からみて,採用することができない。
そうとすれば,Aのした上記補正は,コンベア高さ調節を含まない構成を意識的に除外したものと認められるから,コンベア高さ調節を含まない構成である被告方法又は被告装置は,均等の第5要件を充足しないものというべきである。
(2) 原告の主張についてア原告は,本件特許発明がすべてコンベア高さ調節を構成として含む発明になったのは,当初明細書に開示されていたコンベア高さ調節を構成として含む発明を本件特許発明に取り込んだことによって生じた結果にすぎず,コンベア高さ調節を含まない構成を除外しようとしたことによるものではない旨を主張する。
しかしながら,Aは,平成11年10月22日付け手続補正書(乙3)により,当初明細書のコンベア高さ調節を構成要件として含まない請求項(1〜5)とコンベア高さ調節を構成要件として含む請求項(6)とが記載されていた特許請求の範囲をコンベア高さ調節を構成要件として含むものに限定したことが,前記第2,2(10)に認定した出願経過から外形的に明らかであるところ,そうである以上,補正に際しての出願人の主観的意図にかかわらず,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,禁反言の法理に照らし許されないというべきである。
原告の上記主張は,採用することができない。
イ原告は,コンベア高さ調節は,本件特許発明の本質的部分ではない旨を主張する。
しかし,意識的に除外した部分が本質的部分でないからといって,均等の上記第5要件を充足することになるものではないから,その主張は,採用することができない。
なお,付言する。第1回拒絶理由通知(乙1)に示された引用文献1(甲8)には,射出成形機の製品取出装置,製品取出方法に関し,チャック機構及びアーム機構を用いて,成形品を成形金型の上方に取り出し,そのまま水平移動させた後,当該成形品の姿勢を変え,下降させてコンベア上に置くことが開示されているが,本件特許発明のように成形品を吸着保持する機能がある保持器が設けられた取出枠を回動可能に備えてなる昇降枠等を成形金型上からコンベア上まで移動可能にした構成や,コンベアの搬送面高さを調節可能にした構成は開示されていない。また,同じく上記拒絶理由通知に示された引用文献2(甲9)にも,上記構成は開示されていない。この点について,審査官が上記拒絶理由通知において「物流機構として普通」としたのに対し,Aは,平成11年10月22日付け意見書(乙9)において引用文献1には何ら記載も示唆もないものであるとして,上記構成を根拠に本件特許発明進歩性を主張していたものである(前記第2,2(10)ウ 。そうする)と,出願人は,本件特許の出願手続において,コンベア高さ調節に係る構成を本件特許発明進歩性の根拠として主張していたものということができ,特許権者である原告が上記構成を非本質的部分であると主張することは,出願手続における主張と反する主張をすることにほかならず,禁反言の法理に照らし許されないというべきである。
ウ原告は,コンベア高さ調節を具備する構成を採ったことは,成形品の多段積載とは何ら関係のない発明である引用文献1又は引用文献2記載の発明との相違を明らかにする客観的関係にはなかった,すなわち拒絶理由を回避するためにしたものではなかったことになると解される主張をする。
しかしながら,均等の上記第5要件にいう特許請求の範囲からの除外は,拒絶理由を回避するための行動でなければならない必要はない。すなわち,たとえ自発的に行った補正であったとしても,外形的に特許請求の範囲を限定した以上,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,やはり禁反言の法理に照らして許されないものであるからである。
これを本件についてみれば,仮にコンベア高さ調節に係る構成が引用文献1又は引用文献2記載の公知技術に基づく無効理由を回避するのに必要ではなかったとしても,Aは,コンベア高さ調節の構成を付加することによって本件特許発明進歩性を主張したのものであるから,そうである以上,それは,外形的にコンベア高さ調節を具備しない構成の発明を意識的に除外したことにほかならず,後にこれを翻すことは許されない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
3以上のとおり,被告装置及び被告方法は,いずれも本件特許発明均等侵害に該当するということはできない。
4結論よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,主位的請求,予備的請求ともいずれも理由がないから,これらをすべて棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 岡本岳
裁判官 鈴木和典
裁判官 中村恭
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