審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成18ワ28244損害賠償請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ1223特許権侵害行為差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20ワ2387特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19ワ2352特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成21ワ3527特許権侵害差止請求事件 平成21ワ3528特許権侵害差止請求事件 平成21ワ3530特許権侵害差止請求事件 平成21ワ3538特許権侵害差止請求事件 平成21ワ3539特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 確実性 / 技術的思想 / 有用性 / 新規性 / 公然実施(29条1項2号) / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 周知技術 / 技術的範囲 / 実施可能要件 / 技術常識 / 発明の詳細な説明 / 翻訳文 / 補正要件 / 実施料相当額 / 優先日 / 対象製品 / 出願経過 / 参酌 / 数値限定 / 技術的意義 / 置き換え / 置換 / 容易に想到(容易想到性) / 特許発明 / 実施 / 権原 / 構成要件 / 業として / 差止請求(差止) / 侵害 / 損害額 / 販売数量(販売数) / 実施料 / 不法行為(民法709条) / 実施権 / 通常実施権 / 設定登録 / 独占的通常実施権 / 拒絶査定 / 拒絶理由通知 / 請求の範囲 / 変更 / |
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事件 |
平成
20年
(ワ)
10854号
特許権侵害差止等請求事件
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原告アイティティ・ウォーター・アンド・ ウェイストウォーター・アクチボラグ 原告フ リクト日本株式会社 原告ら訴訟代理人弁護士鈴木修 同訴訟代理人弁理士伊藤孝美 同訴訟復代理人弁護士嶋田英樹 小野智博 同 補佐人弁理 士星野修 被告新 明和工業株式会社 訴訟代理人弁護 士小松陽一郎福田あやこ 宇田浩康 井崎康孝 辻村和彦 井口喜久治 森本純 中村理紗 山崎道雄 訴訟復代理人弁護士辻淳子 藤野睦子 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2009/12/24 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1原告らの請求をいずれも棄却する。 - 2 -2訴訟費用は原告らの負担とする。 3原告アイティティ・ウォーター・アンド・ウェイストウォーター・アクチボラグのため,この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求1主位的請求(1)被告は,別紙物件目録記載の製品を製造し,販売し,若しくは販売の申出をしてはならない。 (2)被告は,前項の製品及びその仕掛品を廃棄せよ。 (3)被告は,原告フリクト日本株式会社(以下「原告フリクト日本」という )に対し,6億3510万円及びこれに対する平成20年8月30日か 。 ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4)被告は,原告アイティティ・ウォーター・アンド・ウェイストウォーター・アクチボラグ(以下「原告ITT」という )に対し,3億3408万 。 円及びこれに対する平成20年8月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2予備的請求( )主位的請求( ),( ),( )と同じ。 1124(2)被告は,原告フリクト日本に対し,4億0290万円及びこれに対する平成20年8月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3)被告は,原告ITTに対し,2億0880万円及びこれに対する平成20年8月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,?発明の名称を「レベル・センサ」とする特許権を有する原告ITTが,被告による別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」という )の製。 造販売等の行為が同特許権を侵害するとして,被告に対し,特許法100条に基づき,被告製品の製造販売等の差止め及び被告製品等の廃棄を求めるとともに,被告が法律上の原因なく上記特許権に係る発明を実施したとして,不当利得返還請求権に基づき,利得金3億3408万円及びこれに対する平成20年8月30日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,後記原告フリクト日本の特許法102条2項により算出した損害賠償請求が認められない場合の予備的請求として,特許権侵害の不法行為に基づき,特許法102条3項により算出した損害金2億0880万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成20年8月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,?原告フリクト日本が,原告ITTから上記特許権について独占的通常実施権の設定を受けているとして,被告に対し,独占的通常実施権侵害の不法行為に基づき,主位的に,特許法102条2項により算出した損害金6億3510万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成20年8月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,特許法102条1項により算出した損害金4億0290万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成20年8月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める事案である。 1前提事実(末尾に証拠等の掲記のない事実は争いがない )。 ( )原告ITTの特許権1ア原告ITTは,次の特許(以下「本件特許」という )に係る特許権。 (以下 「本件特許権」という。なお,特許請求の範囲の請求項1に記載 ,の発明を「本件特許発明」といい,本件特許に係る明細書を「本件明細書」という )を有している。。 登録番号特許第3117169号発明の名称レベル・センサ出願日平成5年4月27日優先日平成4年4月28日登録日平成12年10月6日特許請求の範囲【請求項1】「 ポンプ媒体のレベルに応じて電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止するような電気機能の接続/切離し用のレベル・センサにおいて,中空本体内に配置したマイクロスイッチ(15)に接続された電気ケーブル(2)に自由懸垂状態に取付けられた(判決注:以下 「取付けられ,た」を「取り付けられた」と表記する )中空本体を含み,前記スイッ 。 チは前期(判決注: 前期」は「前記」の誤記であることが明らかであ 「るから,以下「前記」と表記する )中空本体内に配置した可動重りの 。 助けにより接続/切離位置へ作動され,平衡重り(9)として設計された当該可動重りは中空本体内に2つの異なる終端位置の間で該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され,前記平衡重りの表面の一つがマイクロスイッチ(15)を直接的に又は間接的に作動するように配置され,前記平衡重りの重量は,前記中空本体(1 ,前記マイクロ)スイッチ(15 ,平衡重り(9 ,及び平衡重りを中空本体内に回転 ))可能に支持する手段(5,6,7,8)から成るセンサが空気によって囲まれている時該センサの全重量の少なくとも30%であり,前記平衡重り(9)は,前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり,かつ前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり,液体中に浸漬されているときセンサは垂直位置から傾きなお電気ケーブル(2)から自由懸垂状態にあることを特徴とするレベル・センサ 」。 イ本件特許発明は,次の構成要件に分説するのが相当である。 Aポンプ媒体のレベルに応じて電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止するような電気機能の接続/切離し用のレベル・センサにおいて,B-1中空本体内に配置したマイクロスイッチ(15)に接続された電気ケーブル(2)に自由懸垂状態に取り付けられた中空本体を含み,B-2前記スイッチは前記中空本体内に配置した可動重りの助けにより接続/切離位置へ作動され,C平衡重り(9)として設計された当該可動重りは中空本体内に2つの異なる終端位置の間で該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され,D前記平衡重りの表面の一つがマイクロスイッチ(15)を直接的に又は間接的に作動するように配置され,E前記平衡重りの重量は,前記中空本体(1 ,前記マイクロスイッチ )(15 ,平衡重り(9 ,及び平衡重りを中空本体内に回転可能に支 ))持する手段(5,6,7,8)から成るセンサが空気によって囲まれている時該センサの全重量の少なくとも30%であり,F前記平衡重り(9)は,前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり,Gかつ前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり,H液体中に浸漬されているときセンサは垂直位置から傾きなお電気ケーブル(2)から自由懸垂状態にあることを特徴とするレベル・センサ。 ( )出願経過2原告ITTは,平成5年4月27日,本件特許に係る特許出願をした(以下,願書に最初に添付した明細書及び図面[乙6の1]を「当初明細書等」という )が,平成10年6月25日付けで拒絶査定を受けたので,同年1 。 0月5日付けで同拒絶査定に対する不服審判を請求した(乙6の1・6・7 。)そして,原告ITTは,平成10年11月4日付け手続補正書及び平成12年8月3日付け手続補正書を提出したところ(平成12年8月3日付け手続補正書による補正を「本件補正」という,平成12年8月22日付け 。)で拒絶査定を取り消して特許すべき旨の審決がなされ,これにより本件特許権の設定登録がされた(乙6の8・14・15 。)( )被告の行為3被告は,平成12月10月6日以降,被告製品を製造販売している。 第3争点1被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか(争点1)2本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものか(争点2)ア補正要件違反による出願日繰下げを前提とする新規性の欠如(争点2-1)(ア)本件補正は当初明細書等の要旨を変更するものか(平成5年法律第26号による改正前の特許法40条[以下「旧特許法40条」という ]に。 より出願日が本件補正に係る手続補正書が提出された平成12年8月3日に繰り下がるか否か)(イ)本件特許発明は平成12年8月3日より前に販売されていた「フリクト・レベル・レギュレーター(型番ENM-10(以下「ENM-1)」0」という )と同一か。 イ補正要件違反による出願日繰下げを前提とする進歩性の欠如(争点2-2)本件特許発明は本件特許に係る公開特許公報である特開平7-288073号公報(乙24,以下「乙24公報」という )に記載された発明等に基 。 づいて当業者が容易に発明することができたものかウ出願日繰下げを前提としない進歩性の欠如?(争点2-3)本件特許発明は実公昭52-42767号公報(乙16,以下「乙16公報」という )に記載された発明等に基づいて当業者が容易に発明すること 。 ができたものかエ出願日繰下げを前提としない進歩性の欠如?(争点2-4 [争点2-3)との関係で予備的主張]本件特許発明はスウェーデン特願8405668-8号明細書(乙18,以下「乙18明細書」という )に記載された発明等に基づいて当業者が容 。 易に発明することができたものかオサポート要件違反(争点2-5)(ア)サポート要件違反?(争点2-5-1)「前記平衡重りの重量は,…該センサの全重量の少なくとも30%であり」との特許請求の範囲の記載が平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項1号(以下「旧特許法36条5項1号」という )に違。 反するか(イ)サポート要件違反?(争点2-5-2)「センサの中空本体の外形の中心」との特許請求の範囲の記載が旧特許法36条5項1号に違反するか(ウ)サポート要件違反?(争点2-5-3)「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」との特許請求の範囲の記載が旧特許法36条5項1号に違反するか(エ)サポート要件違反?(争点2-5-4)「前記平衡重り(9)は,前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」との特許請求の範囲の記載が旧特許法36条5項1号に違反するかカ構成要件不可欠要件違反(争点2-6)本件特許には平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項2号(以下「旧特許法36条5項2号」という )違反の無効理由があるか 。 キ実施可能要件違反(争点2-7)本件特許には平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項(以下「旧特許法36条4項」という )違反の無効理由があるか 。 3原告フリクト日本は本件特許権の独占的通常実施権者であるか(争点3)4原告らの損害等(争点4)第4争点に関する当事者の主張1争点1(被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか)について【原告らの主張】( )被告製品の構成1被告製品の構成は,別紙被告製品説明書【原告】に記載のとおりである(以下,被告製品説明書【原告】の「第3構成の説明」欄に記載の被告製品のaないしhの構成を「構成a」ないし「構成h」といい,同説明書の第1図・第2図を「第1図 ・ 第2図」という。 」「。)( )構成要件Aについて2被告製品の構成aによれば,被告製品が本件特許発明の構成要件Aを充足することは明らかである。 ( )構成要件B-1について3ア「自由懸垂状態に取り付けられた」の意義本件明細書では 「自由懸垂状態」に関し,従来技術であるレベル・セ ,ンサの説明として 「この目的のレベル・センサは従来から公知で,液体 ,又は空気のどちらに囲まれているかに応じて垂直線に対して異なる角度を本体がとるような重量配置を有する自由懸垂型の中空水密体として設計されている(段落【0002 )と記載されている。 。」】また,本件特許発明に係るレベル・センサは 「中空本体は空気に囲ま ,れているとき主として垂直位置をとる (本件明細書段落【0011 ) 」 】一方 「中空本体が液体に囲まれているとき垂直線に対して強く傾斜した ,位置をとる (本件明細書段落【0011 )という特徴を有しており, 」 】空中にあっては重心の位置により,また,液中にあっては重力と浮力との関係により,中空本体が所定の方向に傾斜するのを妨げないように設計される必要がある。 したがって,構成要件B-1の「自由懸垂状態に取り付けられた」とは,中空本体が空気中はもとより液体中で傾斜する場合であっても,かかる傾斜動作を妨げることがないように電気ケーブル(2)に接続された状態をいう。 イ被告製品が構成要件B-1を充足すること被告製品の本体ケース(イ ,電気ケーブル(ロ)及びマイクロスイッ )チ(ヘ)は,それぞれ本件特許発明の「中空本体「電気ケーブル」,(2 」及び「マイクロスイッチ(15 」に相当する。 ) )被告製品を吊るした場合,クサリ(ル)の長さがクランプ(ヌ ・本体)ケース(イ)間の電気ケーブルより短いため,クランプ(ヌ)と本体ケース(イ)との間では電気ケーブル(ロ)が撓んだ状態となるが,本体ケース(イ)は,クサリ(ル)及びクランプ(ヌ)を介して電気ケーブル(ロ)に取り付けられており,本体ケース(イ)が所定の方向に傾斜する際に,かかる傾斜動作を妨げられないので,被告製品の本体ケース(イ)は電気ケーブル(ロ)に自由懸垂状態に取り付けられたものといえる。 また,被告製品の電気ケーブル(ロ)は,本体ケース(イ)頂部の開口部(ホ)を通して本体ケース(イ)内部に引き込まれており,3本の芯線によって本体ケース(イ)内に配置されたマイクロスイッチ(ヘ)に接続されている。 したがって,被告製品は本件特許発明の構成要件B-1を充足する。 ( )構成要件B-2について4被告製品の構成bによれば,被告製品が本件特許発明の構成要件B-2を充足することは明らかである。 ( )構成要件Cについて5被告製品の平衡重り(ハ)は,軸(ニ)を中心として回転可能に支持され,第1図における位置と第2図における位置の間で回転することができるから,「中空本体内に2つの異なる終端位置の間で該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され」ている。 したがって,被告製品は本件特許発明の構成要件Cを充足する。 ( )構成要件Dについて6被告製品の平衡重り(ハ)は,その底面の一部が作動レバー(チ)に接しており,第2図の位置をとる場合において,作動レバー(チ)を押すことによって,同レバーが押釦(リ)を押し込み,マイクロスイッチ(ヘ)を作動させる。また,第2図の位置から第1図の位置に戻る過程において,作動レバー(チ)は,平衡重り(ハ)の移動に合わせて,同重り(ハ)の底面に当接しながら,第1図の位置に復帰して,再びマイクロスイッチ(ヘ)に付設された押釦(リ)を押し込まない状態へ戻る。 したがって,被告製品の平衡重り(ハ)の「表面の一つ」が,作動レバー(チ)を介してマイクロスイッチ(ヘ)を作動するものであるから,平衡重り(ハ)の表面の一つがマイクロスイッチ(ヘ)を「間接的に作動するように配置され」ている。 よって,被告製品は本件特許発明の構成要件Dを充足する。 ( )構成要件Eについて7被告製品の平衡重り(ハ)は,軸(ニ)及び重りケース(ワ)によって,本体ケース(イ)内を回転可能に支持されているから,軸(ニ)及び重りケース(ワ)は,本件特許発明の「平衡重りを中空本体内に回転可能に支持する手段」に該当する。 そして,被告製品の平衡重り(ハ)の重量は,本体ケース(イ ,マイク)ロスイッチ(ヘ ,平衡重り(ハ ,頂部重り(ヲ ,軸(ニ)及び重りケー )))ス(ワ)から成るセンサ本体が空気によって囲まれている場合,当該センサの全重量の約38%である。 したがって,被告製品は本件特許発明の構成要件Eを充足する。 ( )構成要件Fについて8構成要件Fにいう「センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時」とは,本件明細書の「中空本体は空気に囲まれているとき主として垂直位置をとる「図1に示す位置において,本体は完全に又はほとんど完全に空 。」,気により囲まれている 」との各記載(段落【0011 【0012 )から 。 】】明らかなとおり,本件明細書の図1のようにセンサが空気中で電気ケーブルによって懸架された状態を意味する。 被告製品は,電気ケーブル(ロ)によって懸架された状態では,平衡重り(ハ)の重心が「中空本体」に該当する本体ケース(イ)の外形の中心を通る垂直線(第1図の点線)の側方にある。 したがって,被告製品は本件特許発明の構成要件Fを充足する。 ( )構成要件Gについて9被告製品における本体ケース(イ)の外形の中心を通る垂直線は,第1図の点線によって示される。そして,被告製品は,ケーブルで吊り下げたときに僅かに傾き,浮力を受けた際には一定方向に回転するから,被告製品全体の重心が,本体ケース(イ)の外形の中心を通る垂直線の左側,すなわち平衡重り(ハ)の重心と同じ側にあることは明らかである。 したがって,被告製品は本件特許発明の構成要件Gを充足する。 ()構成要件Hについて10被告製品は,全体が液体中に浸漬されている場合(第2図 ,浮力により)垂直位置から傾き,さらに,この場合でも,被告製品の重さは電気ケーブル(ロ)により懸架され,しかも傾斜動作が妨げられないから,電気ケーブル(ロ)から自由懸垂状態にあるといえる。 したがって,被告製品は本件特許発明の構成要件を充足する。 H()まとめ11以上のとおり,被告製品は,本件特許発明の構成要件をすべて充足するから,本件特許発明の技術的範囲に属する。 【被告の主張】( )被告製品の構成1被告製品の構成は,別紙被告製品説明書【被告 (以下,被告製品説明書 】【被告】の被告製品のa’ないしh’の構成を「構成a 」ないし「構成h’」といい,同説明書の第1’図-?・第2’図-?を「第1’図-? ・ ’ 」「第2’図-?」という )に記載のとおりである。 。 ( )構成要件A及びB-2について2被告製品が本件特許発明の構成要件A及びB-2を充足することは争わない。 ( )構成要件B-1について3ア「懸垂」の語義及び本件明細書の記載からすれば,構成要件B-1の「電気ケーブル(2)に自由懸垂状態に取り付けられた中空本体」とは,中空本体が,まっすぐに垂れ下がった電気ケーブルの先に取り付けられて電気ケーブルによって吊り下げられ,空気又は液体のいずれに囲まれているかによって,垂直線に対して異なる角度をとり得る構成を意味するものである。 イところが,被告製品は,まっすぐに垂れ下がったクサリ(ル)の先が,本体ケース(イ)の頭部側方から樹設したクサリ係止支柱(カ)に取り付けられ,クサリ(ル)によって本体ケース(イ)が吊り下げられる構成であって,本体ケース(イ)がまっすぐに垂れ下がった電気ケーブル(ロ)の先に取り付けられ,電気ケーブル(ロ)によって吊り下げられる構成ではない。 したがって,被告製品は本件特許発明の構成要件B-1を充足しない。 ( )構成要件Cについて4】, ア本件明細書の記載(特許請求の範囲,段落【0010】〜【0012【0015】〜【0017 )等によれば,本件特許発明にいう「平衡」 】とは,中空本体が,液中に浸漬した状態において,水平位置で釣り合うことを意味するものと解される。 ところで,構成要件Eにおいては,平衡重り(=可動重り)のみの重量と,中空本体,マイクロスイッチ,平衡重り(=可動重り)及び平衡重り(=可動重り)を回転可能に支持する手段からなるセンサの重量との比が所定の範囲の値となることを要件としており,同構成要件によって,中空本体が液中に浸漬した状態において水平位置で釣り合うことが実現される。 原告ITT自身,拒絶査定に対する不服審判手続において提出した平成11年2月25日付け手続補正書(乙6の10)の中で,可動重りのみに着眼し,可動重りのみで中空本体が液中に浸漬した状態において水平位置で釣り合うことを強調している。 したがって,構成要件Cの「平衡重り(9)として設計された当該可動重り」とは,液中に浸漬した状態において,中空本体を水平位置で釣り合わせるための可動重りであって,他に重りはなく,可動重りのみで中空本体が液中に浸漬した状態において水平位置で釣り合うことが要求されるものである。 イ被告製品は,可動重り(ハ)のほか頂部重り(ヲ)を具備する構成であって,重りが可動重りのみからなる構成ではない。被告製品は,頂部重り(ヲ)を取り除くと液面上に浮いてしまい液中に浸漬することはないから,液中に浸漬した状態で中空本体を水平位置で釣り合わせるためには頂部重り(ヲ)の存在が不可欠である。 したがって,被告製品は 「平衡重り(9)として設計された当該可動 ,重り」を具備するものではないから,本件特許発明の構成要件Cを充足しない。 ( )構成要件D,Eについて5上記( )のとおり,被告製品は,本件特許発明にいう「平衡重り(9 」4 )を具備するものではないから,構成要件D,Eも充足しない。 ( )構成要件Fについて6ア「垂直線」(ア)本件明細書の「液体又は空気のどちらに囲まれているかに応じて垂直線に対して異なる角度を本体がとるような (段落【0002, 」】)「スウェーデン特許第8405669-6号は,センサが常に垂直位置を取るマイクロスイッチを含む他の解決方法を示している(段落。」【0006「中空本体が液体に囲まれているとき垂直線に対して強 】),く傾斜した位置をとるように (段落【0011 )との記載及びスウ 」】ェーデン特許第8405669-6号公報に開示された発明の内容に照らせば,本件特許発明にいう「垂直」とは,センサの傾きにかかわらず定められる絶対的な方向であって,水平面に対し直角な鉛直方向を意味するものと考えるよりほかない。 (イ)本件明細書には構成要件Fの「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」について何ら記載がなく,構成要件Fの「垂直」は上記(ア)の「垂直」と同義であると解するほかないから,構成要件Fの「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」とは「センサの中空本体の外形の中心」を通るところの水平面に対し直角の方向の鉛直線を意味する。 イ「垂直線の側方」原告ITTは,平成9年12月10日付け拒絶理由通知(乙6の3)に対する平成10年3月16日付け意見書(乙6の5)において 「引用例,(判決注:実公昭42-10534号公報,乙19)の重り3の重心はセンサが垂直位置を取っている時センサを通るほぼ垂直線上にあるものと認められ,垂直線の横にあるという本発明の上記特徴(ハ)を示していない」と主張しており,可動重りの重心が垂直線の近傍に位置する構成を本件特許発明の技術的範囲から除外したものである。 ウ被告製品と構成要件Fとの対比原告らは,第1図の点線をもって「センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」に相当すると主張するが,上記のとおり 「垂直線」はあくまで水平面に対し直 ,角の方向の鉛直線であって,水平面に対し明らかに傾斜している第1図の点線をもって「垂直線」とすることはできない。 第1図の点線が「垂直線」であるとの原告らの主張を前提としても,被告製品の可動重りの重心位置は第1’図-?に記載のとおりであり,可動重りの重心がほぼ垂直線上にある旨原告ITTが主張した実公昭42-10534号公報記載の発明(乙19の第1図参照)よりもさらに原告らが主張する「垂直線」に近接して存在するのであるから,被告製品の可動重りの重心は「垂直線の側方」にはない。 したがって,被告製品は本件特許発明の構成要件Fを充足しない。 ( )構成要件Gについて7原告らは,被告製品の断面図(第1図)上において,原告らの主張する垂直線に対し,センサ全体の重心と可動重りの重心とが同じ側方にある旨主張しているようであるが,当該断面図上では,原告らの主張する垂直線,センサ全体の重心,可動重りの重心のすべてが同じ断面上に存するか否かが不明であるばかりか,そもそも,原告らはセンサ全体の重心の位置を全く特定していない。 さらに,原告らの主張する垂直線を前提としたとしても,被告製品の可動重りの重心は,原告らの主張する垂直線の近傍に存しており垂直線の側方にはなく,ましてや,センサ全体の重心は,原告らの主張する垂直線により近いところに位置するものと考えられることから,センサ全体の重心も垂直線の側方にはない。 したがって,被告製品は本件特許発明の構成要件Gを充足しない。 ( )構成要件Hについて8上記のとおり,被告製品のセンサは「自由懸垂状態」との要件を充たさないから,構成要件Hも充足しない。 ( )まとめ9以上のとおり,被告製品は,構成要件B-1,CないしHを充足しないから,本件特許発明の技術的範囲に属さない。 2争点2-1(補正要件違反による出願日繰下げを前提とする新規性の欠如)について【被告の主張】( )補正要件違反による出願日繰下げ1ア原告ITTは,本件補正により,特許請求の範囲に「かつ前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり 」,(構成要件G)との記載を新たに追加した。 イしかし,当初明細書等には,センサ全体の重心と平衡重りの重心の位置関係について全く記載がないだけでなく,センサ全体の重心の位置に関する記載すらない。 また,原告らは,当初明細書等の図1の「?・?・?・?」線(一点鎖線)が「前記垂直線」に当たる旨主張するが,同鎖線は,中空本体を吊り下げるケーブルを鉛直方向に延長した線であるから,物理学及び力学の常識に照らせば,当初明細書等の図1において,センサ全体の重心は,同鎖線上にあると解するほかないから,原告らの主張を前提とすれば,当初明細書等の図1には本件補正により追加された構成要件Gと矛盾する構成が開示されていることになる。 ウしたがって,構成要件Gを追加する本件補正は,当初明細書等に記載されていない事項を追加したものであり,かつ,出願時において,当業者が当初明細書等に記載された技術内容に照らして記載があると認識し得る程度に自明な事項を超えたものであるから,明細書等の要旨を変更するものである。よって,本件特許出願は,旧特許法40条により本件補正に係る手続補正書を提出した平成12年8月3日になされたものとみなされる。 ( )本件特許発明の公然実施2原告フリクト日本は,遅くとも平成7年8月には,本件特許発明の実施品であるENM-10を日本国内で販売していた。 ( )まとめ3以上のとおり,本件特許発明は,本件特許の出願日とみなされる平成12年8月3日より前に日本国内において公然と実施されたものであるから,本件特許は平成11年法律第41号による改正前の特許法29条1項2号に違反してなされたものであり,特許無効審判により無効とされるべきものである。 【原告らの主張】本件特許発明の「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」は,当初明細書等の図1及び図2の「?・?・?・?」線であり,平衡重りの重心は同各図の符号10(図1でいえば左側)に示されている。そして,当初明細書(3頁26行〜28行,4頁9行〜11行)には,空気に囲まれた図1の状態のレベル・センサが,液位が上昇して液面に接すると反時計回りの方向に傾いて図2の示す位置に至ることが記載されているところ,レベル・センサが液面に接した際に反時計回りの方向に傾くということは,それ以前の空気に囲まれた状態においてセンサ全体が同じ方向,すなわち図1でいうと左方向に僅かに傾いていることが必要不可欠であるから,センサ全体の重心が図1の左側にあることは自明である。 以上のとおり,本件補正により追加した特許請求の範囲の「かつ前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり(構成,」要件G)との記載は,当初明細書等に記載された事項であるか,当業者が当初明細書等に記載された技術内容に照らして記載があると認識し得る程度に自明な事項であるから,明細書等の要旨を変更するものではない。 したがって,旧特許法40条の適用を前提とする被告の主張は理由がない。 3争点2-2(補正要件違反による出願日繰下げを前提とする進歩性の欠如)について【被告の主張】( )補正要件違反による出願日繰下げ1上記2のとおり,本件補正は明細書等の要旨を変更するものであるから,本件特許出願は,旧特許法40条により本件補正に係る手続補正書を提出した平成12年8月3日になされたものとみなされる。 ( )本件特許に係る公開特許公報(乙24公報)に記載の発明2平成12年8月3日より前に頒布された乙24公報(2頁左欄2行〜16行,2頁右欄35行〜41行,43行〜44行,2頁右欄47行〜3頁左欄5行,3頁右欄4行〜5行,図1,図3)には 「ポンプ媒体のレベルに応 ,じて電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止するような電気機能の接続/切離し用のレベル・センサにおいて,中空本体内に配置したマイクロスイッチ 15 に接続された電気ケーブル(2)に自由懸垂状態に取り付けられた()中空本体を含み,前記スイッチは前記中空本体内に配置した可動重りの助けにより接続/切離位置へ作動され,平衡重り(9)として設計された当該可動重りは中空本体内に2つの異なる終端位置の間で該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され,前記平衡重りの表面の一つがマイクロスイッチ(15)を直接的に又は間接的に作動するように配置され,前記平衡重りの重量は,前記中空本体(1 ,前記マイクロスイッチ(15 ,平衡重 ) )り(9 ,及び平衡重りを中空本体内に回転可能に支持する手段(5,6, )7,8)から成るセンサが空気によって囲まれている時該センサの全重量の少なくとも30%であり,前記平衡重り(9)は,前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり,液体中に浸漬されているときセンサは垂直位置から傾きなお電気ケーブル(2)から自由懸垂状態にあることを特徴とするレベル・センサ」が記載されている(以下,乙24公報に記載された上記発明を「乙24発明」という。。)( )本件特許発明と乙24発明との対比3本件特許発明と乙24発明とは,本件特許発明は,センサ全体の重心が,センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線に対し平衡重りの重心と同じ側方にある(構成要件G)のに対し,乙24発明では平衡重りの重心とセンサ全体の重心との位置関係が不明である点で相違するが,その余の点ではすべて一致している。 ( )実公昭42-10534号公報(乙19,以下「乙19公報」という )4 。 に記載の発明平成12年8月3日より前(本件特許の優先日前でもある )に頒布され。 た乙19公報(1頁左欄12行〜14行,1頁左欄29行〜右欄7行,第1図,第2図)には「ポンプ媒体のレベルに応じて電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止するような電気機能の接続/切離し用のフロート式液面制御装置において,浮揚体内に配置した機械式スイッチ1に接続された電気ケーブル10に自由懸垂状態に取り付けられた浮揚体を含み,前記機械式スイッチ1は前記浮揚内に配置した作動錘3の助けにより接続/切離位置へ作動され,該作動錘3は作動レバー2の一端に取り付けられ,他端の支点Aを通る軸線を中心として,浮揚体内の2つの異なる終端位置の間で回転可能に支持され,前記作動錘3を取り付けた作動レバー2の表面の一つが押釦4を押し下げることによって,機械式スイッチ1を直接的に又は間接的に作動するように配置され,作動錘3は,装置が空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に,上記図面(第1図)において,浮揚体の中心線の側方に重心があり,かつ装置全体の重心は同中心線に対し作動錘3の重心と同じ側方にあり,液体中に浸漬されているとき装置は垂直位置から傾きなお電気ケーブル10から自由懸垂状態にあることを特徴とするフロート式液面制御装置」が記載されている(以下,乙19公報に記載された上記発明を「乙19発明」という。。)原告らの主張を前提とすれば,本件特許発明の構成要件Gは,中空本体の一つの断面図において,センサ全体の重心及び平衡重りの重心が,ある中心線に対し同じ側方に偏心していることを要求するものと理解できるところ,乙19発明は,浮揚体内の部材が,すべて中心線に対し断面図上同じ側に位置する構成であるから,作動錘3の重心と装置全体の重心が,第1図の断面図上において,中心線に対し同じ側方に位置することは明らかである。したがって,乙19発明は,本件特許発明と乙24発明の相違点に係る構成(本件特許発明の構成要件G)を備えている。 ( )容易想到性5ア乙24発明と乙19発明との組合せ乙24発明及び乙19発明は,いずれもレベル・センサにかかる発明であって技術分野が同一である。 乙24発明は「動作環境下で重大な歪みにさらされても誤りのない機能を果たすよう設計されたレベル・センサを得ること (段落【000」8 )を課題の一つとするところ,これは,レベル・センサにおいて当然 】に解決が必要な課題である。誤作動を防止し,水銀スイッチや振り子状重りで動作するスイッチを確実に作動させるためには,中空本体を液中において安定して所定の方向に傾斜させることが必要であり,そのために,センサ全体の重心の位置を,主水平位置において中空本体内の下方に位置するよう構成させることは,技術常識からみて,当業者であれば,誰もが容易に想到し得る課題解決方法である。 また,センサ全体の重心位置を偏心させるには,乙19発明のように,平衡重りの重心位置や,その他の部材の重量及び取付位置を適宜調整すれば足りるのであって,平衡重りの重心とセンサ全体の重心が垂直線に対し同じ側方にある構成を実現する上において,阻害要因となるべき事情は全くない。 したがって,乙24発明に乙19発明を組み合わせて本件特許発明に想到することは,当業者にとって容易であったといえる。 イ乙24発明と周知技術の組合せ可動重りの重心及びセンサ全体の重心が,断面図上,中心線に対し,いずれも同じ側に位置する構成(本件特許発明と乙24発明との相違点に係る構成)は,乙19公報のみならず,平成12年8月3日より前(本件特許の優先日前でもある )に頒布されたドイツ特許第6751576号公 。 報(乙21,以下「乙21公報」という,実開昭62-28339号 。)公報(乙22,以下「乙22公報」という )及びスペイン特許第295 。 330号公報(乙20,以下「乙20公報」という )に代表される多数。 の公知文献に明確に開示されており,レベル・センサにおいて周知技術と位置づけられるものである。 そして,乙24発明に上記周知技術を組み合わせるにあたり,何ら阻害要因となるべき事情もない。 したがって,乙24発明に上記周知技術を組み合わせて本件特許発明に想到することは,当業者にとって容易であったといえる。 ( )まとめ6以上のとおり,本件特許発明は,乙24発明等に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,本件特許は特許法29条2項に違反してなされたものであり,特許無効審判により無効とされるべきものである。 【原告らの主張】上記2のとおり,本件補正は明細書の要旨を変更するものではないから,旧特許法40条の適用を前提とする被告の主張には理由がない。 4争点2-3(出願日繰下げを前提としない進歩性の欠如?)について【被告の主張】( )乙16公報に記載の発明1本件特許の優先日前に頒布された乙16公報(1頁左欄16行〜21行,23行〜25行,1頁右欄2行〜4行,9行〜14行,26行〜36行,第1図)には 「ポンプ媒体のレベルに応じて電気的駆動ポンプ中のモータを ,始動/停止するような電気機能の接続/切離し用の液面検出スイッチにおいて,フロートA内に配置したリミットスイッチ4に接続された可撓性ケーブルに自由懸垂状態に取り付けられたフロートAを含み,底部に重錘5を固定したリミットスイッチ4は,その自重により接続/切離位置へ作動し,前記底部に重錘5を固定したリミットスイッチ4は,その自重によって,フロートA内に2つの異なる終端位置の間でリミットスイッチ4を通る軸7を中心として回転可能に支持される可動重りであり,リミットスイッチ4がキャップ2の側へ回動しその一面が受部9に接触したとき,その一面に取り付けられた作用片6が押し込まれることによってスイッチが接続され,他方,リミットスイッチ4が底部の側へ回動して同一面が受部9に接触しないときにはリミットスイッチ4のスイッチが切り離され,リミットスイッチ4は,装置全体が空気によって囲まれている時,装置全体に対し相当の重量を占め,液体中に浸漬されているとき,装置が,空気中にあるときの主垂直位置から傾き,なお,可撓性ケーブルから自由懸垂状態にある液面検出スイッチ」が記載されている(以下,乙16公報に記載された上記発明を「乙16発明」という。。)( )本件特許発明と乙16発明との対比2乙16発明の「液面検出スイッチ「フロートA「リミットスイッチ 」,」,4「可撓性ケーブル「軸7「重錘5を固定したリミットスイッチ 」,」,」,4」は,それぞれ本件特許発明の「レベル・センサ「中空本体「マイ」,」,クロスイッチ「電気ケーブル「軸線」及び「平衡重り」に相当する。 」,」,そうすると,本件特許発明と乙16発明とは 「ポンプ媒体のレベルに応 ,じて電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止するような電気機能の接続/切離し用のレベル・センサにおいて,中空本体内に配置したマイクロスイッチに接続された電気ケーブルに自由懸垂状態に取り付けられた中空本体を含み,平衡重りとして設計された可動重りは中空本体内に2つの異なる終端位置の間で該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され,前記平衡重りの表面の一つがマイクロスイッチを直接的に又は間接的に接続/切離位置へ作動するように配置され,前記平衡重りの重量は,センサが空気によって囲まれている時該センサの全重量の相当の重量を占め,液体中に浸漬されているときセンサは垂直位置から傾きなお電気ケーブルから自由懸垂状態にあることを特徴とするレベル・センサ」の点で一致する。 他方,本件特許発明と乙16発明とは,?本件特許発明は,可動重りをマイクロスイッチとは別個に設けており,可動重りが移動してマイクロスイッチの表面に接触することによってスイッチを作動させる構成であるのに対し,乙16発明は,マイクロスイッチそのものが可動重りとして,その自重により移動し,その表面が受部に接触することによってスイッチを作動させる構成であること(以下「相違点?」という,?本件特許発明は,平衡重り 。)のセンサ全体に対する重量比が少なくとも30%であるのに対し,乙16発明では,同重量比が30%以上であるか否か明らかでないこと(以下「相違点?」という,?本件特許発明は,センサが空気に囲まれて主垂直位置 。)を取っているとき,中空本体の外形の中心を通る垂直線に対し,平衡重りの重心とセンサ全体の重心とが同じ側方にあるのに対し,乙16発明では,平衡重りの重心とセンサ全体の重心が中心線に対し同じ側方にあるか否か明らかでないこと(以下「相違点?」という )の各点において相違する。 。 ( )乙18明細書に記載されている発明3本件特許の優先日前に頒布された乙18明細書(翻訳文2頁19行〜3頁3行,図面)には「ポンプ媒体のレベルに応じて電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止するような電気機能の接続/切離し用の液位センサーにおいて,中空体1内に配置したスイッチ装置3に接続された電気ケーブル2に自由懸垂状態に取り付けられた中空体1を含み,前記スイッチは前記中空体1内に配置した可動なおもり5の助けにより接続/切離位置へ作動され,平衡重りとして設計された当該可動なおもり5は中空体1内に2つの異なる終端位置の間で移動可能に支持され,前記おもり5の表面の一つがプランジャー4を押すことによってスイッチ装置3の電気回路が遮断されるよう配置され,おもり5は,装置全体が空気によって囲まれている時,装置全体に対し相当の重量を占め,液体中に浸漬されているとき液位センサーは垂直位置から傾きなお電気ケーブル2から自由懸垂状態にあることを特徴とする液位センサー」が記載されている(以下,乙18明細書に記載された上記発明を「乙18発明」という。。)( )乙19発明4乙19発明の内容は,上記3【被告の主張】( )に記載のとおりである。 4( )相違点?について5ア乙18発明の「おもり5」及び「スイッチ装置3」は,それぞれ本件特許発明の「可動重り」及び「マイクロスイッチ」に相当するから,乙18明細書には,マイクロスイッチをマイクロスイッチとは別部材である可動重りの助けにより接続/切離位置へ作動させる構成が開示されている。 乙19発明の「フロート式液面制御装置「電気ケーブル10「作 」,」,」, 動錘3」及び「支点A」は,それぞれ本件特許発明の「レベル・センサ「電気ケーブル「可動重り」及び「軸線」に相当するから,乙19公 」,報には,マイクロスイッチをマイクロスイッチとは別部材である可動重りの助けにより接続/切離位置へ作動させる構成が開示されている。 乙16発明,乙18発明及び乙19発明は,いずれもレベル・センサに係る発明であって,技術分野は同一であり,相違点?に関する乙16発明の構成を乙18発明及び乙19発明の構成に置き換えることの阻害要因となるべき事情は全くない。 イまた,可動重りをマイクロスイッチとは別に設け,可動重りが移動してマイクロスイッチの表面に接触することによってスイッチを作動させる構成は,乙18明細書,乙19公報のほか,フィンランド特許第42382号公報(乙17,以下「乙17公報」という,乙20公報ないし乙2 。)22公報等多数の公知文献に開示されており,レベル・センサの技術分野において,周知技術と位置づけられるものである。 ウしたがって,相違点?については,乙16発明に乙18発明及び乙19発明の構成を組み合わせること,あるいは乙16発明に上記周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができたものである。 ( )相違点?について6平衡重りの重量及びセンサ全体の重量をそれぞれどのような値にするかは,当業者であれば当然考慮すべき設計的事項であって,その比はそれぞれ適宜選択された値に基づき算出されるものにすぎない。 また,同重量比を少なくとも30%と数値を限定することについて,臨界的な意義はないから,相違点?に関して進歩性を認めることはできない。 ( )相違点?について7相違点?については,上記3【被告の主張】( )と同様,乙16発明に乙 519発明あるいは周知技術を組み合わせることにより当業者が容易に想到し得るものである。 ( )まとめ8以上のとおり,本件特許発明は,乙16発明等に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,本件特許は特許法29条2項に違反してなされたものであり,特許無効審判により無効とされるべきものである。 【原告らの主張】( )乙16発明について1乙16発明は,スイッチとしてマイクロスイッチを用いる点において本件特許発明と共通するものの,その他の本件特許発明の構成をいずれも具備していない。 ( )相違点?について2乙16発明は,リミットスイッチ(マイクロスイッチ)を回動させる構成が本質的な技術的思想であり,スイッチを固定することは発明の中核となる技術的思想を否定することにほかならないから,マイクロスイッチを固定した構成に置き換えることはありえない。 また,乙18発明及び乙19発明は,いずれも技術課題としては水銀スイッチを用いない液面センサの提供にあり,その限度で乙16発明の課題と共通するが,課題を解決するための手段はそれぞれ提示されているのであるから,乙16発明と組み合わせたはずであるという示唆等が存在しない。 ( )相違点?について3本件特許発明の平衡重りのセンサ全体に対する重量比が少なくとも30%という構成は技術的な意味を有するものであるところ,乙16発明においては,リミットスイッチのアクチュエータを押し込むのに必要な加重が得られる重さで足りるものであり,全体の重量との関連性は全くない。 ( )相違点?について4乙16発明は,重錘5によって傾斜するのではなく,フロートの形状とこれが受ける浮力によって傾斜するものであって,乙16公報には重錘5の重心の位置を全体の重心に対してどのようにするかといった技術的思想は記載も示唆もされていない。 ( )まとめ5したがって,乙16発明等に基づいて本件特許発明の進歩性を否定することはできない。 5争点2-4(出願日繰下げを前提としない進歩性の欠如?)について【被告の主張】( )乙18発明1乙18発明の内容は,上記4【被告の主張】( )に記載のとおりである。 3( )本件特許発明と乙18発明との対比 2乙18発明の「液位センサー「中空体1「スイッチ装置3「電気 」,」,」,ケーブル2」及び「可動なおもり5」は,それぞれ本件特許発明の「レベル・センサ「中空本体「マイクロスイッチ「電気ケーブル」及び 」,」,」,「平衡重りとして設計された可動重り」に相当する。 そうすると,本件特許発明と乙18発明とは 「ポンプ媒体のレベルに応 ,じて電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止するような電気機能の接続/切離し用のレベル・センサにおいて,中空本体内に配置したマイクロスイッチに接続された電気ケーブルに自由懸垂状態に取り付けられた中空本体を含み,前記スイッチは前記中空本体内に配置した可動重りの助けにより接続/切離位置へ作動され,平衡重りとして設計された当該可動重りは中空本体内に2つの異なる終端位置の間で移動可能に支持され,前記平衡重りの表面の一つがマイクロスイッチを直接的に又は間接的に作動するように配置され,前記平衡重りの重量は,前記中空本体,前記マイクロスイッチ,平衡重り,及び平衡重りを中空本体内に回転可能に支持する手段から成るセンサが空気によって囲まれている時該センサ全体に対し相当の重量を占め,液体中に浸漬されているときセンサは垂直位置から傾きなお電気ケーブルから自由状態にあることを特徴とするレベル・センサ」の点で一致する。 他方,本件特許発明と乙18発明とは,<ア>本件特許発明は,平衡重りを平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持するものであるのに対し,乙18発明は回転可能に軸支するものではないこと(以下「相違点<ア>」という,<イ>本件特許発明は,平衡重りのセンサ全体に対する重量比が少 。)なくとも30%であるのに対し,乙18発明では同重量比が30%以上であるか明らかでないこと(以下「相違点<イ>」という,<ウ>本件特許発明 。)は,センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っているとき,中空本体の外形の中心を通る垂直線に対し,平衡重りの重心とセンサ全体の重心とが同じ側方にあるのに対し,乙18発明はそのような構成ではないこと(以下「相違点<ウ>」という )の各点において相違する。 。 ( )乙16発明3乙16発明の内容は,上記4【被告の主張】( )に記載のとおりである。 1( )乙17公報に記載されている発明 4本件特許の優先日前に頒布された乙17公報(訳文1頁本文1行〜2行,19行〜21行,2頁9行〜17行,21行〜25行,図面)には「ポンプ媒体のレベルに応じて電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止するような電気機能の接続/切離し用の電気式水位制御装置において,フロート6内に配置した電気スイッチ3に接続された電気ケーブルに自由懸垂状態に取り付けられたフロート6を含み,電気スイッチ3は前記フロート6内に配置した重り5の助けにより接続/切離位置へ作動し,重り5は,フロート6内に,重り5をその一端に取り付けた作動アーム4の他端を支点として,2つの異なる終端位置の間で振り子のように回転可能に支持され,重り5の表面の一つが電気スイッチ3を直接的に作動させるように配置され,重り5は装置全体に対し十分な重量を備えるものであって,重り5は,フロート6が空気に囲まれて主垂直位置を取っている時にフロートの外形の中心線の側方に重心があり,かつ電気式水位制御装置全体の重心は前記中心線に対し,断面図上重り5の重心と同じ側方にあり,液体中に浸漬されているときフロート6は垂直位置から傾き,電気ケーブルの中途に取り付けられた重り2に対し浮揚状態にあることを特徴とするレベル・センサ」が記載されている(以下,乙17公報に記載された上記発明を「乙17発明」という。。)( )乙19発明5乙19発明の内容は,上記3【被告の主張】( )に記載のとおりである。 4( )相違点<ア>について6ア相違点<ア>は,平衡重りが回動可能に軸支されているか否かであるが,可動な重りの可動領域を限定するに当たり,可動領域をケーシングしたり,係止部を設けたり,軸支したりすることは,当業者であれば容易かつ自由に選択可能な設計的事項にすぎない。 イ乙16発明は,底部に重錘5を固定したリミットスイッチ4が,その自重によってフロートA内に2つの異なる終端位置の間でリミットスイッチ4を通る軸7を中心として回転可能に支持される構成である。これは,底部に重錘5を固定したリミットスイッチ4が可動重りとして自重により軸7を中心に回転移動する構成であるから,まさに,可動重りが回転可能に軸支する構成である。 乙17発明も,重り5が,フロート6内に,重り5をその一端に取り付けた作動アーム4の他端を支点として,2つの異なる終端位置の間で振り子のように回転可能に支持される構成である。これは,重り5を備えた作動アーム4が可動重りとして端部支点を中心に回転移動可能に軸支される構成であるから,可動重りが回転可能に軸支される構成といえる。 乙19発明も,作動錘3は作動レバー2の一端に取り付けられ,他端の支点Aを通る軸線を中心として,浮揚体内の2つの異なる終端位置の間で回転可能に支持される構成であり,これは,可動重りが回転可能に軸支される構成である。 乙18発明,乙16発明,乙17発明及び乙19発明は,いずれもレベル・センサに係る発明であって,技術分野が同一であり,相違点<ア>に関する乙18発明の構成を乙16発明,乙17発明及び乙19発明の構成に置き換えることの阻害要因となるべき事情は全くない。 ウしたがって,相違点<ア>にかかる構成は,単なる設計事項であるか,乙18発明に乙16発明,乙17発明及び乙19発明の構成を組み合わせることによって,当業者が容易に想到することができたものである。 ( )相違点<イ>について7上記4【被告の主張】( )と同様,相違点<イ>に係る平衡重りとセンサ全 6体の重量比は,当業者において適宜選択し得る設計的事項にすぎず,また,同重量比を少なくとも30%と数値を限定することについて臨界的な意義はないから,相違点<イ>をもって進歩性を認めることはできない。 ( )相違点<ウ>について8相違点<ウ>については,上記3【被告の主張】( )と同様,乙18発明に 5乙19発明あるいは周知技術を組み合わせることにより当業者が容易に想到し得るものである。 ( )まとめ9以上のとおり,本件特許発明は,乙18発明等に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,本件特許は特許法29条2項に違反してなされたものであり,特許無効審判により無効とされるべきものである。 【原告らの主張】( )乙18発明は,マイクロスイッチを用いている点は本件特許発明と共通す1るものの,その余の本件特許発明の構成を備えていない。 ( )相違点<ア>について2乙18発明は,水銀スイッチに代わるスイッチの採用と製造技術上低価格な方法を用いた液位センサを提供することが目的であるところ,乙18発明の重りを通軸を中心に回動する構成とするためには,重りに軸穴を開ける工程等が必要となり,製造技術上低価格な方法を用いるという乙18発明の目的に真っ向から反することになる。 そして,乙16発明は,水銀スイッチの代わりにリミットスイッチを用いるものであるが,リミットスイッチ自体を回動することによってリミットスイッチの動作を行うものであり,本件特許発明の技術的課題を提示するものでもなく,重りを軸を中心に回動可能として二つの終端位置をとるようにしたものでもない。 乙17発明及び乙19発明においても,重りそのものは可動であるものの,いずれも液体表面で浮遊することが前提であるから,本件特許発明のように,荒い水面による影響を受けてもなお誤りのない液面の測位を行うという本件特許発明の課題解決とは無関係である。 ( )相違点<イ>について3乙18明細書には,可動重りのセンサ全体に対する重量比についての記載及びセンサ全体に対する可動重りの占める割合についての技術的意義についての記載も示唆もない。 また,本件特許発明における可動重りのセンサ全体に対する割合は,技術課題の解決手段として重要な技術的意味があり,当業者が適宜選択し得る設計事項などではない。 ( )相違点<ウ>について4乙19公報では,作動錘3と釣合錘11とを機能に応じて明確に区別している。すなわち,釣合錘は浮揚体を液中において横倒するための機能を果たし,作動錘はもっぱらスイッチの作動作用のみを果たしている。このような構成を取る液面制御装置については,作動錘は平衡重りと別体であり,作動錘自体が平衡重りとしての機能を果たすものではないから,平衡重りの重心の位置とセンサ全体の重心の位置との位置関係を議論する根拠に欠ける。 また,被告が周知技術を裏付けるものとして指摘する文献(乙20ないし22)についても,それぞれ移動する重りによりスイッチを作動させる構成が記載されてはいるが,重りの重心位置を明記したものはなく,重りの重心がセンサ全体の重心の位置と同じ側に存することの技術的意義を示すものでもこれを示唆するものでもないから,重りの重心とセンサ全体の重心とが同一の側に存するとの構成が周知の技術であるとは到底いえない。 ( )まとめ5したがって,乙18発明等に基づいて本件特許発明の進歩性を否定することはできない。 6争点2-5-1(サポート要件違反?)について【被告の主張】(1)本件特許に係る特許請求の範囲には「前記平衡重りは,…該センサの全重量の少なくとも30%であり」と記載されている。 ところで,本件特許発明は,?環境に危険な材料を含まず,?動作環境下で重大な歪みにさらされても誤作動しないレベル・センサを提供することを課題とするものであるところ(本件明細書段落【0008】参照 ,本件明)細書には,上記?の課題を解決するため,液位レベルの変化に伴い回転軸を中心として平衡重りが回転することによってマイクロスイッチが接続/切離位置へ作動する構成を採用し,平衡重りの重量をセンサ全重量の少なくとも30%とすることにより,マイクロスイッチを確実に停止させることができる旨記載されているが(段落【0011】〜【0016,平衡重りの重】)量をセンサ全重量の少なくとも30%とする構成を採用することの技術上の有用性について,理論的な裏付けも実験的な裏付けも全く示されていない。 (2)また,本件特許発明が,液位レベルの変化に伴い回転軸を中心として平衡重りが回転し,もって,マイクロスイッチが接続/切離位置へ移動する構成である以上,マイクロスイッチの作動を確実にするためには,?中空本体の主水平位置における具体的な傾斜角度,?液面レベルの上昇・下降時それぞれにおいて,中空本体が何度傾斜した時点で,平衡重りが一端から他端へ移動するのか,?平衡重りの移動に伴うセンサの重心位置の移動,それによる中空本体の傾斜の変化,等々の具体的構成の決定が不可欠である。加えて,?本件特許発明は,液中において中空本体に浮力が作用することによって,中空本体が,センサの重力に抗して傾斜するものであるところ,中空本体には,中空本体の容積と同体積の液体の重さに相当する浮力が作用するのであるから(アルキメデスの原理 ,当然のこととして,液体密度とセンサの容 )積形状により決定される浮力とその作用点である浮心の位置,センサ全体の重量とセンサ全体の重心,及びそれらの相関関係を最適に定めることが不可欠である。 そうすると,レベル・センサにおいて,これら具体的構成と関わりなく,平衡重りとセンサ全体の重量比を30%以上と定めたところで,空気中や液体中でのセンサの傾斜角度,スイッチの動作に十分な力を作用させることができるか否か,液中において自由懸垂状態となるか否かについては,いずれも決定することができないし,そもそも,作動の確実性を実現し得ないことは,技術常識に照らして明らかであり,平衡重りとセンサ全体の重量比が装置のこれら具体的構成と関わりなく作動の確実性の決定要素となること自体がそもそも技術常識に反するものである。実際,可動重りとセンサ全体の重りとの重量比を21.0%にして行った実験においても,対象製品は適切に作動しており,誤作動防止の課題に対して何ら有意な差異は認められなかった(乙29 。)したがって,平衡重りとセンサ全体の重量比を少なくとも30%にすることとレベル・センサの動作を確実にするとの効果との関係の技術的な意味がないことは明白である。 (3)以上のとおり,本件特許に係る特許請求の範囲の「前記平衡重りは,…該センサの全重量の少なくとも30%であり」との記載は,本件明細書に平衡重りとセンサ全体の重量比を少なくとも30%とすることとレベル・センサの動作を確実にするとの効果との関係の技術的な意味が全く記載されておらず,本件特許出願時の技術常識を参酌しても,当業者においてこれを理解することはできないから,特許請求の範囲の上記記載は,旧特許法36条5項1号に違反するものであり,本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものである。 【原告らの主張】本件明細書には 「受け入れ可能な安全性を得る最小値は全重量の30%で ,あるが,適切な値は50から80%の間である (段落【0016 )と記載さ 」】れているが,液面センサにとっての「安全性」とは,スイッチが誤動作しないことである。そして,本件明細書では,スイッチが誤動作を生じる原因が「重大な歪 (段落【0008 )とされており,この「重大な歪」とは 「・・・ 」】 ,主にポンプ部所ではひんぱんな強力な電流(水流の誤記)のため,レベル・センサを大変荒く扱う (段落【0005 )ことや,既知のセンサが「液体表面 」】上に浮遊」するために「・・・液体の浮遊汚染物がセンサに付着するため誤機能を危険にさらす可能性 (段落【0007 )とされている。そうすると,本 」】件明細書に接した当業者は,ポンプによる強い水流や液面上の浮遊物から受ける外力に対し 「安全性」を損なう,すなわち容易に姿勢を変化させてしまう ,ことのないようにしてセンサの安定性を図るという効果を得るための要件が,平衡重りの重量をセンサ全体の重量の30%以上とすることであることは容易に理解することができる。 また,甲25ないし27の文献によれば,船舶の姿勢の安定化のために,全体の重量に対して一定量のバラスト(重り)が必要とされることはありふれた知識であることが認められ,かかる技術常識をふまえれば,可動重りの重量がセンサ全体の重量の30%以上であるという記載がセンサ全体の姿勢の安定性の確保を図るための要件であると認識・理解することは可能である。 したがって,本件明細書には 「30%以上」という平衡重りのセンサ全重 ,量に対する割合と発明の効果に関する具体的な記載があるというべきである。 7争点2-5-2(サポート要件違反?)について【被告の主張】本件特許に係る特許請求の範囲には「前記平衡重り(9)は,前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり 」と記載されているところ,本件 ,明細書には「外形の中心」の文言が全く記載されておらず 「センサの中空本,体の外形の中心」の具体的意義につき説明あるいは示唆する記載も一切見いだし得ない。 したがって,本件特許の特許請求の範囲の「センサの中空本体の外形の中心」との記載は,本件明細書において形式的なサポートすらされておらず,旧特許法36条5項1号に違反するものであり,本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものである。 【原告らの主張】後記8のとおり,本件特許に係る特許請求の範囲の「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」との記載は,センサの中空本体の外形形状のみに注目し,中空本体の外形を回転体と捉えた場合の,当該回転体を形成する際の回転軸を意味することは明らかであり 「を通る垂直線」を切り捨てて「センサの ,中空本体の外形の中心」のみを取り出して論ずることは無意味である。したがって 「センサの中空本体の外形の中心」という特許請求の範囲の記載は,本 ,件明細書の発明の詳細な説明に記載された範囲を何ら超えるものではない。 8争点2-5-3(サポート要件違反?)について【被告の主張】本件特許に係る特許請求の範囲には「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」と記載されているところ,上記7のとおり,本件明細書には,そもそも「センサの中空本体の外形の中心」について全く記載されていないばかりか,「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」を示す文言としての「垂直線」の記載すらない上 「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」の意 ,義を説明・示唆する記載も全く存在しない。 そして,技術常識に照らせば,何に対し垂直であるのかが明確になされていない場合には,地面に対しての垂直,すなわち鉛直線を意味するものと解すべきところであるが,上記のとおり「外形の中心」の意義が不明確であって,これを特定することができない以上 「センサの中空本体の外形の中心を通る垂 ,直線」の意義を理解することは到底できない。 この点,本件明細書の図1には 「?・?・?・?」線(一点鎖線)が記載 ,されており,原告らは,同鎖線が「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」である旨主張しているようであるが,センサ全体の重心が偏心しているレベル・センサの中空本体が,空気に囲まれている状態において,図1のように鉛直に垂れ下がるはずがなく,図1は,中空本体が,空気に囲まれた状態において,鉛直に垂れ下がっている点において既に誤っている。誤った図面に記載された鎖線を以て 「垂直線」の意義が示されているということはできない。 ,以上のとおり,特許請求の範囲の「センサの中空本体の外形の中心」という記載は,本件明細書において形式的なサポートすらなされておらず,旧特許法36条5項1号に違反するものであり,本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものである。 【原告らの主張】「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」は,本件明細書の図1及び図2の「?・?・?・?」線(一点鎖線)によって示されるとおり,センサが空気中にあるか液中に浸漬しているかでどのように傾いているかにかかわらず,センサの中空本体の形状のみに着目して決定されるものであって,センサの中空本体の外形形状のみに着目して「中空本体の外形」を「回転体」と捉えた場合の,当該「回転体」を形成する際の「回転軸」に相当する。したがって,特許請求の範囲の「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」との記載は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものではなく,明細書のサポート要件に違反するものではない。 9争点2-5-4(サポート要件違反?)について【被告の主張】(1)本件特許に係る特許請求の範囲には「前記平衡重り(9)は,前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」と記載されている。 (2)しかし,本件明細書には「センサの中空本体の外形の中心」及び「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」の意義を説明・示唆する記載が全く存在しないばかりか,同垂直線の「側方」の意義を説明・示唆する記載も全く存在しない。そして,本件明細書の図1には,原告らが「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」に当たると主張する鎖線と,平衡重りの重心位置とが図示されているが,上記のとおり,そもそも図1は,空気に囲まれた状態の中空本体を示す図面として誤っており,平衡重りの重心位置の意義を示す基礎を欠いている。このように,本件明細書には,センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に平衡重りの重心が中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方にあることにつき何ら記載がなされていない。 また,本件明細書には「全体の重心」の文言が全く記載されていないばかりか 「全体の重心」に関連した記載,あるいはセンサについて重心がどこ ,に位置するように設計されるべきか等についての記載すら一切認められない。 さらに 「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心 ,と同じ側方にあり」については,そもそも「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」の「側方」につき,いかなる線に対しいかなる位置関係の特定がなされているのかを全く理解することができない上 「同じ側方」との,記載が一体どの範囲の近接を意味するか全く不明である。それにもかかわらず,本件明細書には「同じ側方」について,なんら説明も示唆もされていない。 ( )以上のとおり,本件特許に係る特許請求の範囲の上記( )の記載は,本件3 1明細書において形式的なサポートすらなされておらず,旧特許法36条5項1号に違反するものであり,本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものである。 【原告らの主張】本件明細書の「図1に示す位置において…平衡重り9の重心10はベアリング6,8の左側に位置し (段落【0012 )との記載並びに図1及び図2 」】を併せて見れば 「中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方」とは図1の鎖 ,線の左側を意味することは明らかである。また,本件明細書の「水位レベルが上昇し始めると,レベルセンサは遂には傾き始め,最後に図2の示す水平位置に到達する(段落【0014 )と記載されており,図2にはセンサが左に 。」】傾いた状態が示されているのであるから,センサの重心は図1の垂直線の左側に位置することを明確に理解することができる。 したがって,特許請求の範囲の「前記平衡重り(9)は,前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」との各記載は,明細書のサポート要件に違反するものではない。 10争点2-6(構成要件不可欠要件違反)について【被告の主張】本件特許に係る特許請求の範囲の「センサの中空本体の外形の中心「セ」,ンサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」との各記載は,いずれも特許請求の範囲の記載自体が不明瞭であり,上記7ないし9のとおり,本件明細書においてもその具体的内容を示唆する記載は全くない。 したがって,本件特許に係る特許請求の範囲には,特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が記載されているとはいえないから,本件特許は旧特許法36条5項2号に違反するものであり,特許無効審判により無効とされるべきものである。 【原告らの主張】特許請求の範囲の「センサの中空本体の外形の中心「センサの中空本体」,の外形の中心を通る垂直線」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」との各記載は,上記7ないし9のとおり,いずれも明確であり,特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が適切に記載されている。 11争点2-7(実施可能要件違反)について【被告の主張】」, 本件特許に係る特許請求の範囲に記載の「センサの中空本体の外形の中心「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」は,上記7ないし9のとおり,本件明細書にはその構成を含む技術内容を明確にする記載が全くなく,当業者が容易にその実施をすることができるだけの記載がない。 したがって,本件特許は旧特許法36条4項に違反してなされたものであり,特許無効審判により無効とされるべきものである。 【原告らの主張】特許請求の範囲に記載の「センサの中空本体の外形の中心「センサの中」,空本体の外形の中心を通る垂直線」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」は,上記7ないし9のとおり,いずれも当業者において容易に理解できる内容であるから,実施をすることは容易に可能なものであって,実施可能要件に違反するものではない。 12争点3(原告フリクト日本は本件特許権の独占的通常実施権者か)について【原告フリクト日本の主張】原告ITTは,原告フリクト日本との間で,平成11年3月1日,本件特許発明の実施品である「ENM-10」を含む原告ITTの製品について,原告フリクト日本を日本国内への輸入と販売を行う独占的な販売代理店とする販売代理店契約を締結した。上記契約時に作成された販売代理店契約書(甲10)には,原告フリクト日本に本件特許権の独占的通常実施権を設定する旨の明示の記載は存在しないが,原告ITTは,販売代理店契約締結後現在に至るまでの約10年の長きにわたり,原告フリクト日本にのみ日本向けの「ENM-10」を供給してきたのであるから,原告フリクト日本に対して本件特許発明の実施品の輸入及び販売の範囲で独占的通常実施権を付与したことは明らかである。 【被告の主張】原告ITTと原告フリクト日本の間で作成された契約書(甲10)には,原告ITTが原告フリクト日本に対して「ENM-10」を含む製品を日本国内で販売する権利を付与することは記載されているが,本件特許権の通常実施権の許諾に関する記載はなく,同契約書において原告フリクト日本に対して独占的に付与されている権利は再販売業者を指定する権利だけである(3条 。)したがって,原告フリクト日本は,本件特許権について原告ITTから独占的通常実施権の設定を受けているものではないから,本件特許権の侵害について損害賠償請求権を有するものではない。 13争点4(原告らの損害等)について【原告ITTの主張】( )不当利得返還請求1被告は,正当な権原がないにもかかわらず,平成12年10月6日から平成17年8月21日までの間,被告製品を製造販売することにより,本件特許発明の実施料相当額の利益を得たものであり,原告ITTは同額の損失を受けたものであるから,被告は,原告ITTに対し,不当利得として,本件特許発明の上記期間中の実施料相当額を返還する義務を負う。 被告製品の販売額は1個当たり5800円を下らず,販売数量は1年当たり5万個を下らないから,被告は,平成12年10月6日から平成17年8月21日までの間(約4.8年 ,被告製品を販売して少なくとも13億9 )200万円の売上げを得た。 そして,本件特許発明の実施料相当額は売上高の24%を下らないから,上記期間の原告ITTの損失ないし被告の不当利得額は3億3408万円となる(計算:13億9200万円×0.24=3億3408万円 。)( )不法行為に基づく損害賠償請求(原告フリクト日本の主位的請求に対する2予備的請求)被告は,本件訴訟提起前3年間,被告製品を販売して8億7000万円の売上げを得たところ,本件特許発明の実施料相当額は売上金の24%を下らない。 したがって,原告ITTが受けた損害額は,特許法102条3項により2億0880万円(計算:8億7000万円×0.24=2億0880万円)となり,被告は原告ITTに対し上記損害を賠償する義務がある。 【原告フリクト日本の主張】( )主位的請求1被告は,本件訴訟提起までの3年間,被告製品を販売して8億7000万円の売上げを得たところ,被告の利益率は少なくとも販売価格の73%である。 したがって,原告フリクト日本が受けた損害額は,特許法102条2項により6億3510万円(計算:8億7000万円×0.73=6億3510万円)となり,被告は原告フリクト日本に対し上記損害を賠償する義務がある。 ( )予備的請求2被告は,本件訴訟提起前3年間,被告製品を15万個販売したところ,原告フリクト日本が本件特許発明の実施品である「ENM-10」の販売により得ることのできた1個当たりの利益は平均2686円である。 したがって,原告フリクト日本が受けた損害額は,特許法102条1項により4億0290万円(計算:15万個×2686円=4億0290万円)となる。 【被告の主張】原告らの主張はいずれも争う。 第5当裁判所の判断1争点2-5-1(サポート要件違反?)について事案にかんがみ,争点2-5-1(サポート要件違反?)から判断することとする。 ( )旧特許法36条5項1号は 「特許を受けようとする発明が発明の詳細な1 ,説明に記載したものであること」と規定し,特許請求の範囲の記載がこれに適合することを求めている(明細書のサポート要件 。その趣旨は,発明を )公開させることを前提に,その発明に特許を付与して一定期間その発明を業として独占的,排他的に実施することを保障し,もって,発明を奨励し,産業の発達に寄与することを目的とする特許制度の趣旨に基づき,願書に添付すべき明細書に,発明の技術内容を一般に開示させるとともに,その効力の及ぶ範囲(特許発明の技術的範囲)を明らかにするという役割を果たさせるため,明細書の発明の詳細な説明に,その発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載することを要求し,公開されていない発明について独占的,排他的な権利が発生することにより,一般公衆からその自由利用の利益を奪い,ひいては産業の発達を阻害することを防ぐことにある。そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10042号同年11月11日特別部判決・判例タイムズ1192号164頁参照 。)以下,かかる観点から,本件特許に係る特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものであるかについて検討する。 ( )本件明細書の記載2ア特許請求の範囲の記載本件特許発明の構成要件Eに係る特許請求の範囲の記載は 「前記平衡,重りの重量は,前記中空本体(1 ,前記マイクロスイッチ(15 ,平 ) )) , 衡重り(9 ,及び平衡重りを中空本体内に回転可能に支持する手段(56,7,8)から成るセンサが空気によって囲まれている時該センサの全重量の少なくとも30%であり」であり,要するに,平衡重りの重量を,センサが空気によって囲まれている時に,センサ全重量の少なくとも30%とするとの数値限定をしたものである。 イ発明の詳細な説明の記載本件明細書(甲1)の発明の詳細な説明の個所には次の記載がある。 (ア)【産業上の利用分野】「本発明は液体タンク中のレベルを測定し,各種機能を制御する装置へ信号を発生する電気レベル・センサに関係する。本発明は特にポンプを始動/停止し,警報等を開始する下水ポンプ部に用いられる(段。」落【0001 )】(イ)【従来技術】a「この目的のレベル・センサは従来から公知で,液体又は空気のどちらに囲まれているかに応じて垂直線に対して異なる角度を本体がとるような重量配置を有する自由懸垂型の中空水密体として設計されている。本体内の水銀スイッチが高さに応じて電気回路を接続/切断する。このようなセンサの例は米国特許第3183,323号に図示されている(段落【0002 ) 。」】b「この指示器の主要な欠点は,ある種の応用例では環境的な理由から水銀が使用できない点である(段落【0003 ) 。」】c「スウェーデン特願第8405668ー0号は,高さに応じて重りが異なる位置を取る本体内のゆるい重しにより影響を受けるいわゆるマイクロスイッチにより水銀スイッチが置換えられている(段落。」【0004 )】d「この解決方法は完全には信頼できない,何故なら,主にポンプ部所ではひんぱんな強力な電流(判決注: 水流」の誤記と認められ 「る )のため,レベル・センサを大変荒く扱うためである。重しはそ 。 の位置の一方へ止められ,これは誤操作を生じる(段落【000。」5 )】e「スウェーデン特許第8405669-6号は,センサが常に垂直位置を取るマイクロスイッチを含む他の解決方法を示している。上述の理由のため,荒い扱いが誤操作を生じる(段落【0006 ) 。」】f「ドイツ特許第270,6457号は,電導能力を有する粉末形状の材料を用いてレベル・センサ中の導体を接続/分離するのに用いている解決方法を示しており,又スウェーデン特許第355,568号は同じ目的のためにボールの使用を示している。これらの既知装置は共通して液体表面上に浮遊し,これは液体の浮遊汚染物がセンサに付着するため誤機能を危険にさらす可能性を有する(段落【000。」7 )】(ウ)【発明が解決しようとする課題】a「従って本発明は,環境に危険な材料を含まず,動作環境下で重大な歪みにさらされても誤りのない機能を果たすよう設計されたレベル・センサを得ることを目的とする(段落【0008 ) 。」】b「この問題は特許請求の範囲に記述した装置の助けにより解決される。本発明は添付の図面を参照して以下に詳細に記述される(段。」落【0009 )】(エ)【実施例】a「図面において,1は中空本体を,2は水密入口3と入口解放部4を有する電気ケーブルを,5は突出部6をもった接続円板を,7は接続ネジを,8は軸を,9は平衡重りを,10は重心を,11,12,13および14は平衡重り9の表面を,15は弾性作動ヨーク16をもったマイクロスイッチを,最後に17は電気ケーブルの導体を表わす。上記部品は中空本体1内に組立てられてレベル・センサを構成し,後述するように平衡重り9は,レベル・センサが液中に浸漬されると,センサをその浮力の中心の周りに回転させ,センサを水平位置で平衡させる作用を有すると共に,自身の回転によりスイッチング作用を行う(段落。」【0010 )】b「前述したように,中空本体の重量と容積は,中空本体が液体に囲まれているとき垂直線に対して強く傾斜した位置をとるように,管理される液体の密度に適合される。他方,中空本体は空気に囲まれているとき主として垂直位置をとる(段落【0011 ) 。」】c「図1(判決注:右図)に示す位置において,本体は完全に又は殆んど完全に空気により囲まれている。 そのとき平衡重り9の重心10はベアリング6,8の左側に位置し,かくして平衡重り9はそのベアリングのまわりに反時計方向に回転しようとする。回転運動は表面の一つが接続円板5の左側縁と接触するとき停止する。平衡重りがこの位置に到達する直前に,その表面13は接続円板5に取付けたマイクロスイッチ15上の弾性ヨーク16を作動し,マイクロスイッチの電子回路を接続又は切離す(段落。」【0012 )】d「レベル・センサが主に空気に取囲まれている限り,下水部の水位レベルがセンサより下にある限り,センサは直立位置を保持し,マイクロスイッチはその接続又は切離し位置を保持する(段落【00。」13 )】e「水位レベルが上昇し始めると,レベルセンサは遂には傾き始め,最後に図2(判決注:右図)に示す主水平位置に到達する。容積と重量の適切な選択により,水位レベルがセンサより上に如何に上昇するかに関係なく,センサはこの水平位置を取る(段落【0014 ) 。」】f「センサがその水平位置近くからスタートすると,そのとき重心10がベアリング6,8の下で且つ右にある平衡重り9はベアリング6,8のまわりを時計方向に回転する。この回転は平衡重り9の表面の一つが中空本体1の内面と接触することによって制限される。このように移動している間,平衡重りの表面13は接続円板5および弾性ヨーク16との接触を失っている。それからマイクロスイッチはスイッチが接続されるか又は切離されることを意味する他の位置をとるように作動される(段落【0015 ) 。」】g「マイクロスイッチを確実に停止させるため,平衡重り9は相対的に重く,レベル・センサの全重量の可成り(判決注:原文ママ。以下同じ )の部分を構成する。しかしながら同時に,センサは製造上の 。 理由のために重過ぎてはならない。受入れ可能な安全性を得る最小値は全重量の30%であるが,適切な値は50から80%の間である。 加えて,センサの全重量/容積関係は,レベル・センサが液体で囲まれているとき主水平位置を取ることを確保するように,管理される液体の密度と関連して選択されるであろう(段落【0016 ) 。」】h「発明の助けにより,非毒物環境に対する近年の要求と既知の水銀スイッチ・センサの信頼性とを組合せたレベル・センサが得られる。 レベル・センサはポンプを始動停止したり,警報等を発生したりするため電気回路を接続したり切離すため多くの分野で使用可能である。 マイクロスイッチを作動さる(判決注: 作動させる」の誤記と認め 「られる )ため相対的に重い平衡重りを用いる特定の利点は,高切断 。 能力のスイッチを設計できる点で,これは相対的に大電流を制御できるセンサを使用可能なことを意味している(段落【0017 ) 。」】( )検討3ア本件明細書の上記記載によれば,本件特許発明が解決しようとする課題は 「環境に危険な材料を含まず,動作環境下で重大な歪みにさらされて ,も誤りのない機能を果たすよう設計されたレベル・センサを得ること」(段落【0008 )にあるものと認められる。そして 「誤りのない機 】 ,能を果たす」とは,ポンプを始動停止したり,警報等を発生したりするための電気回路の接続・切離しを行うためのスイッチの作動を確実にする機能を果たすことを指していることは同記載上明らかである。また 「重大,な歪み」とは,本件明細書に従来技術の問題点として「…主にポンプ部所ではひんぱんな強力な電流(判決注: 水流」の誤記と認められる )の 「 。 ため,レベル・センサを大変荒く扱う…重しはその位置の一方へ止められ,これは誤操作を生じる(段落【0005「既知装置は共通して液体 。」】),表面上に浮遊し,これは液体の浮遊汚染物がセンサに付着するため誤機能を危険にさらす可能性を有する(段落【0007 )と記載されている 。」】ことからして,強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を指すものと理解できる。そうすると,本件特許発明が解決する課題(目的)は,環境に危険な材料を含まず,かつ,動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けてもスイッチが確実に作動するよう設計されたレベル・センサを得ることにあると認められる。 そして,上記のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明の【実施例】の項に「水位レベルが上昇し始めると,レベルセンサは遂には傾き始め,…主水平位置に到達する。容積と重量の適切な選択により,水位レベルがセンサより上に如何に上昇するかに関係なく,センサはこの水平位置を取る(段落【0014「センサがその水平位置近くからスタートする 。」】)と,そのとき重心10がベアリング6,8の下で且つ右にある平衡重り9はベアリング6,8のまわりを時計方向に回転する。この回転は平衡重り9の表面の一つが中空本体1の内面と接触することによって制限される。 このように移動している間,平衡重りの表面13は接続円板5および弾性ヨーク16との接触を失っている。それからマイクロスイッチはスイッチが接続されるか又は切離されることを意味する他の位置をとるように作動される(段落【0015 )と記載されていることからすれば,本件特 。」】許発明の上記課題である,動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けてもスイッチが確実に作動するよう設計されたレベル・センサを得るため,本件特許発明のレベル・センサは,液中にある状態で,概ね主水平位置を安定的に維持するような構成を採用したものと解され,その具体的構成の一つが,構成要件E,すなわち,平衡重りの重量を,センサが空気によって囲まれている時そのセンサの全重量の少なくとも30%とするとの数値限定したものと解される。 ところで,そのような数値限定をする構成を採用したことについて,本件明細書の発明の詳細な説明には 【実施例】の項に「マイクロスイッチ ,を確実に停止させるため,平衡重り9は相対的に重く,レベル・センサの全重量の可成りの部分を構成する。しかしながら同時に,センサは製造上の理由のために重過ぎてはならない。受入れ可能な安全性を得る最小値は全重量の30%であるが,適切な値は50から80%の間である(段。」落【0016 )と記載されており,この記載によれば,平衡重りの重量 】をセンサが空気によって囲まれている時そのセンサ全重量の少なくとも30%とすることが,本件特許発明の上記課題(その動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けても,概ね主水平位置を安定的に維持し,もってスイッチが確実に作動するよう設計されたレベル・センサを得る)を解決するために不可欠な構成とされていることが明らかである(上記数値限定を内容とする構成が,本件特許発明が解決する課題のうち「環境に危険な材料を含ま」ないレベル・センサを得ることを解決するものでないことは明らかである。。)イそこで,以上を前提に,本件明細書がサポート要件を具備するか否かについて検討する。平衡重りの重量の下限を,センサが空気によって囲まれている時そのセンサの全重量の30%と限定した(構成要件E)ことにより,動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けても,概ね主水平位置を安定的に維持し,もってスイッチが確実に作動するという本件特許発明の効果を奏することになるとの技術的意義に関して本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているのは,上記のとおり,【実施例】の項に「マイクロスイッチを確実に停止させるため,平衡重り9は相対的に重く,レベル・センサの全重量の可成りの部分を構成する。 しかしながら同時に,センサは製造上の理由のために重過ぎてはならない。 受入れ可能な安全性を得る最小値は全重量の30%であるが,適切な値は50から80%の間である。加えて,センサの全重量/容積関係は,レベル・センサが液体で囲まれているとき主水平位置を取ることを確保するように,管理される液体の密度と関連して選択されるであろう(段落。」【0016 )という部分のみである。同部分には,マイクロスイッチを 】確実に停止させるためには平衡重りがセンサ全体の重量との関係で「相対的」に重いことが必要であるが,製造上の理由から重すぎてはならず,平衡重りの重量のセンサ全体の重量に対する割合は,最小値で30%,好ましくは50〜80%の範囲で設定される旨が記載されている。レベルセンサが液中で概ね主水平位置を安定的に維持し,もってマイクロスイッチを確実に停止させるために,平衡重りに一定の重量が要求されることは技術常識として肯認する余地があるが,それがなにゆえ平衡重りそれ自体の絶対的な重量ではなく,センサ全体の重量との関係での相対的な重量比で定められるのかについて,上記発明の詳細な説明にその技術的意義は何ら開示されていない。 ウまた,以下のとおり,そもそも平衡重りの重量のセンサ全体の重量に対する比率を数値限定することが,マイクロスイッチを確実に停止させる効果を奏するという技術的意義を有する旨の技術常識の存在を認めることはできない。 本件明細書の上記記載によれば 「マイクロスイッチを確実に停止させ ,る (段落【0016 )という効果は 「動作環境下で重大な歪みにさら 」】,されても誤りのない機能を果たす (段落【0008 )こと,すなわち, 」】動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けても,レベル・センサは液中で概ね主水平位置を安定的に維持し,もってスイッチを確実に作動させることを意味する。したがって,スイッチを確実に作動させる,すなわち,レベル・センサが液中で概ね主水平位置を安定的に維持するためにどのような要素が必要であるかを検討する必要がある。そこで,液体中に吊り下げられた物体に作用する力がどのようなものであるか検討する。 証拠(乙30ないし32)及び弁論の全趣旨によれば,液体中に吊り下げられた物体に作用する力に関する技術常識として,以下の事実が認められる。すなわち,液体中に吊り下げられた物体に対しては,重心の1点に鉛直下向きに作用する重力W,浮心(浮力中心)の1点に鉛直上向きに作用する浮力F及び吊点の1点に張力Tが作用するとみなすことができ,液体の密度をd,物体の体積をVとした場合,浮力F=密度d×体積V浮力F+張力T=重力Wの関係が成り立つこと 「物体にいくつかの力が働いて,しかも物体が静 ,止していれば,物体は(力学的)平衡の状態にあるという (乙30 ,」)すなわち 「平衡」とは,物体(剛体)がつり合っている状態を意味する ,こと,そして,物体(剛体)がつり合うためには,?物体に働く力の合力(同時に働く2つ以上の力を合成した力)が0であること(力のつり合い)及び?各力の任意の点のまわりのモーメント(定点からの位置ベクトルと着目する物理量とのベクトル積)の和が0であること(モーメントのつり合い)が必要であること,これを液中で静止して安定している物体についてみると,力のつり合いを維持しているから,重力W,浮力F及び張力Tの合力は0であり(浮力F+張力T=重力W ,モーメントのつり合 )いに関しては,張力TによるモーメントMt,浮力FによるモーメントMf,重力WによるモーメントMwは,Lを距離として吊点まわりのモーメントを考えた場合,それぞれMt=T×0Mf=F×LfMw=W×Lwになること,モーメントの方向を考慮すると,これらモーメントの総和が0となってモーメントのつり合いを実現するためには,M=Mt-Mw+Mf=T×0-W×Lw+F×Lf=0すなわち,F×Lf=W×Lw∴Lw/Lf=F/Wとなる必要があること,そして,F/Wの値は一定であるのに対し,Lw/Lfの値は中空本体の傾斜角度に応じて変化し,上記等式を満たす傾斜角度で平衡することが認められる。 これを液体中のレベル・センサについてみると,その中空本体の鉛直上下方向には,吊点(電気ケーブルの接続点)に電気ケーブルによる鉛直上向きの張力が,浮点(浮力の合力が働く点)に鉛直上向きの浮力(中空本体の体積に相当する液体の重量と同じ大きさ)が,重心に鉛直下向きのレベル・センサ全体の重力がそれぞれ働き,これらが釣り合う傾斜角度でレベル・センサが平衡するのであるから,液中のレベル・センサの傾斜角度を所望のもの(上記実施例では主水平位置)として 「L,w/Lf=F/W」を満たす角度で平衡状態を保つためには,平衡重りとセンサ全体の重量比はその要素とならないことが明らかであり,かえって,液体の密度を考慮した上で,平衡重りを含めたレベル・センサ全体の重量,中空本体の形状・容積等を適切に設定することが必要になるものと考えられる。 以上によれば 「レベル・センサを液中において概ね主水平位置に安定 ,的に維持する」という効果との関係において,平衡重りとセンサ全体の重量比が影響を及ぼすとの技術常識を認めることはできない。 エ以上によれば,本件特許に係る出願時の技術常識に照らして,本件明細書の上記記載から 「動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける ,外力を受けてもスイッチが確実に作動する」との効果を得るために,平衡重りの重量をセンサ全重量の30%以上にすることの技術的意義ばかりでなく,平衡重りの重量をセンサ全重量の一定割合を超えるように設定することの技術的な意味を当業者が理解することができないというべきである。 他に,平衡重りの重量をセンサ全重量の一定割合を超えるように設定することの技術的な意味を示唆するような記載も見当たらない。したがって,本件特許の特許請求の範囲の記載は,明細書のサポート要件に違反するというべきである。 ( )原告らの主張について4原告らは,甲25ないし27の文献によれば,船舶の姿勢の安定化のために,全体の重量に対して一定量のバラスト(重り)が必要とされることはありふれた知識であることが認められ,かかる技術常識をふまえれば,可動重りの重量がセンサ全体の重量の30%以上であるという記載がセンサ全体の姿勢の安定性の確保を図るための要件であると認識・理解することは可能であると主張する。 証拠(甲25ないし27)によれば 「バラスト管装置設計基準 (甲2 , 」5,昭和46年6月20日初版発行)には,各種船舶の実例に基づいて,載貨重量を横軸にし,バラスト排水量と満載排水量の比率を縦軸にして作成されたグラフ(第2-4図,9頁)が記載されており,同グラフでは,各種船舶毎にバラスト排水量と満載排水量の比率が載貨重量との関係で一定の範囲内にあることが示されていること 「THEPRINCIPLESOF ,SHIPSTABILITY (甲26,1948年初版発行)には 」「必要とされるバラスト量が一般にどのくらいのものかについての見解は分かれている。船舶の設計に精通した者は,総積載トン数の25%程度にすることを示唆している「1万トン積の貨物船の場合,総積載トン数は,1 。」万2000トンから1万5000トンとなるが,この25%ということになると,バラスト量は,3000トンということになる」と記載されていること 「ThePracticalEncyclopediaofB ,oating (甲27,平成15年12月初版発行)には 「バラストは 」 ,重量物で,船の速度を奪うことから,ヨットの設計者は,バラスト比--バラストを船全体の重量又は排水量で割った比率--を,耐候性を保ったままできるだけ低く維持しようと努める「単胴の帆船についての一般的な“ 」,バラスト比”としては,以下のとおりである…クルーズ船:排水量の30%から40%,レース用の船:排水量の40%から50%,極限的なレース仕様の船:排水量の70%」と記載されていることが認められる。 しかしながら,船舶は,バラストを含めた船舶全体の重量と,船舶の水面下にある部分の体積相当の水の重量に相当する浮力とが釣り合うことにより水面上に浮かぶものであり,バラストの重量と船舶全体の重量との比率を一定割合にすることによって浮かぶものではなく,バラストの重量は,船の速度との関係を考慮しながら,船の安定性を確保するために適宜選択されるものであるから,実際の船舶において,船舶全体の重量とバラストの重量とが一定の割合になっていたとしても,それはバラストを含めた船舶全体の重量と浮力とを適切に調整した結果にすぎず,船舶全体の重量とバラストの重量とを一定の割合にすること自体に技術的な意味があるとは考えられない。そして,上記各文献においても,船舶の種類,載貨重量毎に必要となるバラスト量が異なってくるとされている上,レベル・センサと船舶とは技術分野が異なるものであり,その形状も大きく異なるのであるから,バラスト量と船舶全体の重量に言及する文献があるからといって,本件明細書に接した当業者が,レベル・センサの姿勢の安定化との関係で,平衡重りの重量をセンサ全重量の一定割合を超えるようにすることの技術的意味を認識できるとは考えられない。 したがって,原告らの上記主張は採用できないものである。 ( )小括5よって,本件特許は,旧特許法36条5項1号の規定に違反してなされたものであり,特許無効審判により無効とされるべきものと認められる。したがって,特許法104条の3第1項により,特許権者である原告ITTは,被告に対し,本件特許権に基づく権利を行使することはできず,また,そうである以上,原告ITTから本件特許権について独占的通常実施権の設定を受けたとする原告フリクト日本も,被告に対し,独占的通常実施権の侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権を行使することはできないものというべきである。 2結語以上によれば,原告らの本件請求は,その余の争点について判断するまでもなく,いずれも理由がないことに帰するから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 田中俊次 |
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裁判官 | 北岡裕章 |
裁判官 | 山下隼人 |