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関連審決 無効2008-800184
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21ネ10040損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成17行ケ10271審決取消請求事件 判例 特許
平成22行ケ10277審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10161審決取消請求事件 判例 特許
平成22行ケ10331審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 特許を受ける権利 /  確実性 /  使用方法 /  新規性 /  29条1項3号 /  進歩性(29条2項) /  周知技術 /  慣用技術 /  技術的範囲 /  技術常識 /  明確性 /  発明の詳細な説明 /  発明が明確 /  遡及 /  優先権 /  分割出願 /  クレーム /  出願経過 /  参酌 /  特許発明 /  実施 /  交換 /  構成要件 /  設定登録 /  発明の範囲 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  減縮 /  国際出願 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10272号 審決取消請求事件
原告 X
訴訟代理人弁護士横井盛也
被告パナソニック電工株式会社
訴訟代理人弁護士小松陽一郎
同 平野和宏
同 福田あやこ
同 宇田浩康
同 井崎康孝
同 辻村和彦
同 井口喜久治
同 川端さとみ
同 森本純
同 中村理紗
同 山崎道雄
同 辻淳子
同 藤野睦子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/12/10
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1特許庁が無効2008-800184号事件について平成21年8月6日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
第2事案の概要1本件は,原出願からの分割出願に基づき設定登録された特許第3752588号(発明の名称「開き戸の地震時ロック方法 ,請求項の数4)について, 」被告からその請求項1,3及び4につき特許無効審判請求がなされたところ,特許庁がこれを無効とする旨の審決をしたことから,特許権者である原告がその取消しを求めた事案である。
2争点は,?上記請求項に係る特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号(サポート要件)に違反するか,?分割出願に係る上記特許出願が同法44条(分割要件)に違反するか,?上記請求項に係る特許請求の範囲の記載が同法36条6項2号(明確性要件)に違反するか,等である。
第3当事者の主張1 請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯アBは,平成7年9月27日・平成7年10月7日・平成8年5月16日の各優先権を主張して,平成8年5月27日付けで原出願(特願平8-171559号)をし,その後同人から特許を受ける権利の譲渡を受けた原告は,平成16年6月7日,上記原出願からの分割出願として,発明の名称を「開き戸の地震時ロック方法」とする発明につき特許出願(特願2004-197427号)をし,その後の手続補正等を経て,平成17年12月22日付けで設定登録を受けた(特許第3752588号,請求項の数4,以下「本件特許」という 。)イこれに対し被告から,本件特許のうち請求項1,3及び4について特許無効審判請求(乙1)がなされたので,特許庁は,同請求を無効2008-800184号事件として審理した上,平成21年8月6日,上記サポート要件違反・分割要件違反・明確性要件違反がいずれも認められるとして 「特許第3752588号の請求項1,3及び4に係る発明について ,の特許を無効とする 」旨の審決をし,その謄本は平成21年8月17日 。
原告に送達された。
(2) 発明の内容本件特許の請求項1,3及び4(以下,それぞれ「本件特許発明1「本」,件特許発明3「本件特許発明4」という )の内容は,以下のとおりであ 」, 。
る。
・【請求項1】マグネットキャッチなしの開き戸において開き戸側でなく家具,吊り戸棚等の本体側の装置本体に可動な係止手段を設け,該係止手段が地震のゆれの力で開き戸の障害物としてロック位置に移動しわずかに開かれる開き戸の係止具に係止する内付け地震時ロック装置を開き戸の自由端でない位置の家具,吊り戸棚等の天板下面に取り付け,前記係止後使用者が閉じる方向に押すまで閉じられずわずかに開かれた前記ロック位置となる開き戸の地震時ロック方法・【請求項3】請求項1の開き戸の地震時ロック方法を用いた家具・【請求項4】請求項1の開き戸の地震時ロック方法を用いた吊り戸棚( )審決の内容3審決の内容は別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本件特許発明1,3及び4について前記サポート要件違反・分割要件違反及び明確性要件違反が認められる等として,これを無効としたものである。
(4)審決の取消事由しかしながら,審決には,以下に述べるような誤りがあるから,違法として取り消されるべきである。
ア取消事由1(サポート要件違反の判断の誤り)(ア)本件明細書(甲18〔特許公報 )の段落【0009】には 「図5 〕 ,は本発明の方法を示し,該方法は開き戸(2)の自由端から蝶番側へ離。() れた位置にロック装置を取り付ける点に重要な特徴がある 開き戸 2の自由端に取り付けると蝶番(特にマグネットキャッチを用いずばね付き蝶番だけで開き戸(2)の閉止力を確保している場合)から遠いため地震時の開き戸(2)の動きが最も大きくロック機構にとってロックが不安定になるという問題が生じる場合があるからである。地震時ロック装置を開き戸(2)の自由端から蝶番側へ離れた位置に取り付けると開き戸(2)の動きが少なくなるためロック機構にとってロックが確実になるのである。…」との記載がある。
上記記載は 「自由端…動きが最も大きい…問題が生じる…自由端か ,ら蝶番側へ離れた位置…動きが少なくなる…ロックが確実」という文章の流れであり 「自由端…動きが最も大きい」とした直後に「自由端か ,ら蝶番側へ離れた位置…動きが少なくなる としているのであるから 動 」「きが少なくなる」とはその直前にある「動きが最も大きい」を否定する表現と理解することができる。
上記文章の流れに注意すれば 「自由端」の否定として「自由端から ,蝶番側へ離れた位置」と表現しているのであり,逆に「自由端から蝶番側へ離れた位置」の否定は「自由端」と表現しているものである。
したがって 「自由端から蝶番側へ離れた位置」とはすなわち「自由 ,端」の否定であり 「自由端」の否定とは 「自由端でない位置」という ,,ことになる。すなわち,本件特許発明1に記載された「自由端でない位置」は 「自由端から蝶番側へ離れた位置」と全く同じであり,発明の ,詳細な説明に記載されているから,サポート要件違反はない。
(イ)また,審決は 「…自由端ではないが自由端に近接した位置に地震 ,時ロック装置を取り付けた場合では,…自由端に地震時ロック装置を取り付けた場合と同様にロックが不安定になるという問題が生じるおそれがあるから,上記『地震時のロックが確実になる』との効果を奏するとは認められない(13頁16行〜22行)とした。 。」しかし,本件明細書の上記段落【0009】に記載された「自由端から蝶番側へ離れた位置」には,例えば1mm離れた位置,0.1mm離れた位置のような「自由端に近接した位置」はこれに含まれるし,少な「」「」 くとも本件明細書に 自由端…問題が生じる とされた 自由端でないの概念には含まれる。
そうすると 「自由端に近接した位置」は発明の詳細な説明に記載さ ,れた範囲に含まれているのであるから 「自由端でない位置」を特許請 ,求の範囲に記載してもサポート要件違反には該当しない。
(ウ)加えて 「自由端に近接した位置」では,一切効果がないのではな ,く,わずかでも効果はあるから,上記(イ)の審決の認定は誤りである。
そもそも本件特許では 「自由端でない」なる構成要件は審査の過程 ,で周知技術であり進歩性(進歩性とは特許に足る十分な効果があるということである)がないことが引用公報により明らかになった構成要件である すなわち本件特許の出願時 平成16年6月7日 の請求項1 甲 。 ()(2の15)は 「マグネットキャッチなしの開き戸において地震のゆれ ,の力でロック位置に開き戸の障害物が移動する内付け地震時ロック装置を開き戸の自由端でない位置の家具,吊り戸棚等の天板下面に取り付けた開き戸の地震時ロック方法」としていた。しかし,平成16年11月30日付け拒絶理由通知(甲2の16)において 「…ロック装置を開,き戸の自由端でない位置に取り付けることは,実公平2-40218号公報(特に,第1図参照)及び実公平6-45582号公報(特に,第3図参照)に記載されているように周知技術であ」るとされた。
ここで,上記実公平2-40218号公報(考案の名称「家具における扉のラッチ装置 ,出願人 株式会社伊藤喜工作所,公告日 平成2年 」10月26日,甲6)には第3図に示されるとおり扉7の自由端でない(自由端に近い)位置にロック装置が取り付けられ,実公平6-455(「」, , 82号公報 考案の名称 ヒンジ装置出願人 コーエイ産業株式会社公告日 平成6年11月24日,甲7)には第5図に示されるとおり扉11の自由端でなく,蝶番に非常に近い,本件特許の図5よりもさらに蝶番に近い位置にロック装置が取り付けられている。
そして,平成16年12月13日付け手続補正(甲2の17)において,請求項1は 「マグネットキャッチなしの開き戸において開き戸側 ,でなく家具,吊り戸棚等の本体側で検出した地震のゆれの力でロック位置に開き戸の障害物が移動する内付け地震時ロック装置を開き戸の自由端でない位置の家具,吊り戸棚等の天板下面に取り付けた地震終了までわずかに開かれたままとなる開き戸の地震時ロック方法 (下線は補正」した部分)と補正された。
さらに,平成17年9月10日付け手続補正(甲2の24)後の請求項1(本件特許発明1)は 「マグネットキャッチなしの開き戸におい ,て開き戸側でなく家具,吊り戸棚等の本体側の装置本体に可動な係止手段を設け,該係止手段が地震のゆれの力で開き戸の障害物としてロック位置に移動しわずかに開かれる開き戸の係止具に係止する内付け地震時ロック装置を開き戸の自由端でない位置の家具,吊り戸棚等の天板下面に取り付け,前記係止後使用者が閉じる方向に押すまで閉じられずわずかに開かれた前期ロック位置となる開き戸の地震時ロック方法」とされている(下線は原告が付記 。)以上の通り 本件特許発明1については 審査過程において 上記 地 , ,,「震終了までわずかに開かれたまま (審査段階)及び「押すまで閉じら 」」(),「」 れずわずかに開かれた特許査定時 とされた補正は自由端でないとの構成要件周知技術であり進歩性(原告の主張では進歩性とは特許に足る十分な効果があることをいう)がないことが審査の過程で明らかになったことで 「作動が確実なロック方法の提供」との課題解決のた ,めの発明全体としての進歩性を確保するために減縮補正した構成要件である。
そして,審査の過程で進歩性がないことが明らかになった場合に,効果の主張がそのまま特許された明細書に残っていること自体を特許法は無効理由とはしていない。そのような場合には本件特許発明1の「自由端でない との構成要件には 特許に足る十分な効果はそもそもない 進 」, (歩性がない)と認定されるだけである。しかしながら,十分な効果がなくても,例えば自由端が蝶番から450mmの位置にある開き戸であれば,自由端から1mm離れれば開き戸の動きは449/450の動きになり,開き戸の動きが最大の場合と449/450の動きの場合で,前者ではロックしないが後者ではロックに間に合うというゆれの状況がありうるから,わずかでも効果はあるものである。
また,審決は「…上記『押すまで閉じられずわずかに開かれた』という構成は,一旦係合した後の係合状態を維持するため(の)ものと解されるから,かかる構成をもって,自由端に近接した位置における係合が確保できると解することはできない… (16頁6行〜9行)と指摘す 」る。
しかし 「押すまで閉じられずわずかに開かれた」という構成によっ ,て,係合時と係合後のいずれにおいても「作動が確実なロック方法の提供」との課題解決に貢献している。すなわちロック装置が「自由端に近接した位置」であろうと「自由端から(一定程度)離れた位置」であろうといずれに取り付けられようと係合時と係合後のいずれにおいても「作動が確実」になるものである。
係合時には,地震のゆれで開き戸が開閉のばたつきを始めると「押すまで閉じられずわずかに開かれた」ではないゆれの波毎にロックと解除を繰り返す場合にはロック装置をどこに取り付けてもロックが間に合わずに開いてしまう危険(その確率)が極めて大きい。ロック装置が「自由端」に取り付けられれば最も危険の確率が大きく係合が1回だけになる利点は最も大きく,次に「自由端に近接した位置」に取り付けられれば危険の確率は「自由端」に次いで大きいのであるから係合が1回だけになる利点は次いで大きく,さらに「自由端から(一定程度)離れた位置」に取り付けられれば危険の確率は,前記よりは少なくなるもののやはり大きいのであるから,係合が1回だけになる利点は十分にある。
係合後は「押すまで閉じられずわずかに開かれた」の場合にはそうでない場合と比較して,いったん係合した後の係合状態を維持するのであるから作動が確実である。
(エ)以上の通りであり,審判被請求人である原告が主張したのは,本件特許発明1の「自由端でない」との構成要件が,仮にわずかな効果であり進歩性に足る十分な効果でないとしても,審査の過程で発明全体の進歩性を確保するために減縮補正された「押すまで閉じられずわずかに開かれた」という構成要件によって,係合時と係合後のいずれにおいても「作動が確実」との課題に対応している,とするものである。
そもそも特許発明は,特許公報のみで解釈してはならないことを原告は主張する。特に出願経過において特許請求の範囲減縮補正が行われた場合は,当初の特許請求の範囲では進歩性が確保できない場合に減縮補正した構成要件によって進歩性を確保することを最大の目的としており,本件特許もまさにそれに該当するものである 「押すまで閉じられ。
ずわずかに開かれた」という構成要件は「作動が確実なロック方法の提供」という課題の解決手段であり,それによって「自由端でない」との構成要件では進歩性を確保するに十分な効果ではなくても,発明全体としての進歩性を確保するに十分な効果を達成しているということである。
イ取消事由2(分割要件違反の判断の誤り)(ア)上記アのとおり,そもそも「自由端でない」はサポート要件違反でないから分割要件違反にはならない。
つまり,原出願の当初明細書(平成8年5月27日付け。甲2の8)記載の図1ないし図4の実施例,図20及び図25を結合して本件分割出願としたことに無効理由はない。なぜなら「自由端でない」との概念に図20と図25はいずれも含まれるし,図20と図25はいずれも開き戸の動きが最も大きくないのであるから,本件明細書(甲18)に記載されている「自由端…ロックが不安定」という問題の解決の効果において同じである。
また,図1ないし図4の実施例は天板下面に取り付けられており,左右方向の位置について明細書に記載がないということは,左右方向については任意の位置に取り付けられると解釈するのが技術常識に基づく通常の解釈である。原出願の当初明細書について,図1ないし図4が,図21ないし図25と同様 「…ゆれの力でロック位置に移動」という発 ,明であることは,図1と例えば図22を対比すれば,図1について「地震のゆれの力で動き…地震が起こると図2に示す様に係止手段(4)が動いて…開き戸 2 はその位置でロックされる…ロック位置で…段 () 」(落番号【0005 ,甲2の8)とされ,一方図22について「…地震 】のゆれの力で…係止手段(4)がロック位置に移動… (段落番号【0」012 )と説明されており,また説明を読むまでもなく図面を参照す 】れば両者は同様であることが明らかである。
なお,図1は断面側面図( 図面の簡単な説明 )であるから,その係 【】止手段(4)は下向きに動くことは明らかであるし,一方図22は断面平面図( 図面の簡単な説明 )とされ,その係止手段(4)は「横向き 【】に可動 (段落番号【0012 )と説明されているから,下向きに動く 」】( 可動」または「突出 )か横向きに動く( 可動」または「突出 ) 「」「」かの相違はある。
しかし,原出願の当初明細書(甲2の8)の段落【0009】に「…」, 図18乃至図24の地震時ロック装置は選択可能である… と記載され図18及び図19は下向きに可動な係止手段であり,図21,図22及び図23は横向きに可動な係止手段であって,下向きのものは「比較の」,「」 ための…ロック装置 とされ 横向きのものは 本発明の…ロック装置と単体としての動く向きで一応区別した上で,それらの棚本体への取り付け位置を選択すれば 「横向き↑下向き「下向き↑横向き」と相互 ,」,に交換又は選択できるということであるから,下向きか横向きかの相違以外の構成は全く共通していることを示している。したがって,動く向きが下向きの図1は,図22と比較して動く向きは相違するものの両者共に同様の「ロック位置」を有し 「地震のゆれの力で係止手段がロッ ,ク位置に移動」という構成は共通している。
(イ)以上によれば,図1ないし図4の実施例で開示された発明と図20及び図25に開示された「自由端でない」という発明の両者を結合,すなわち「ゆれの力でロック位置に移動」という発明と「自由端でない」という発明を結合した構成に限定した新たな発明を分割発明とすることは特許法違反ではない。すなわち,その通りの表現が明細書に記載されていなくても,記載されている複数の発明を結合して新たな発明にし,それを分割出願することは特許法違反ではない。
ウ取消事由3(明確性要件違反の判断の誤り)(ア)審決は,本件特許発明1の「わずかに開かれる…係止…押すまで閉じられずわずかに開かれた」について,審決は「…実施例以外の具体的な構成を想定できない… (23頁30行)として明確性要件違反と判 」断した。
しかし,本件特許発明1の「押すまで閉じられずわずかに開かれた」との構成要件はその概念の目的に注目すれば,次の目的段階がありそれに伴う意味と効果の認識が異なる。
第1目的段階:地震時のロック自体が目的でロック作動を1回だけにすることを目的にしている。したがって地震時は「閉じられない」ことを意味し「ロックが確実」との効果を達成している。
第2目的段階:地震時のロック確実との目的以外に,次の段階として地震終了時に押すことでロック状態が解除され扉等を開くことを可能とすることも目的にしている。したがって地震時は「閉じられない」という意味と共に地震終了時に押すことでロック状態が解除されるということも意味し,地震時の「ロックが確実」との効果に追加して地震終了時の「解除操作は押すという簡単操作」という効果がある。
第3目的段階:地震時のロック確実と地震終了時の押せばロック状態が解除され扉等が開き可能となるとの目的以外に,次の段階として押す操作は係止体を初期状態に戻すことも目的にしている。したがって地震時は「閉じられない」という意味と地震終了時に押すことでロック状態が解除されるという意味と共に地震終了時に押せば係止体が初期状態に戻るという意味を有し地震終了時に「押せばロック状態の解除と係止体が初期状態に戻ることの両者が同時に達成される」という追加的な効果がある。
(イ)上記の通り第1目的段階をクレームしたのが請求項1(本件特許発明1)であり,第2目的段階または第3目的段階までをクレームしたのが請求項2(無効審判請求対象外)である。
なぜならば請求項1は「開き戸の地震時ロック方法」とされ,請求項2は「閉じる方向に押す解除操作をする…ロック方法」とされており,,「 」 請求項1は請求項2と異なって押すまで閉じられずわずかに開いたとの構成要件は「解除操作」を目的とするものであるといっていないからである。
また 「解除操作」と分離した「地震時ロック」だけで発明は完結す ,るものである。それは,経時的にも地震終了までの発明は発明として成立するし 「ロックが確実」との目的のため地震時の係止体と係止具の ,係止状態が(一定の力で)保持されるという構成を採用し,結果として「ロックが確実」との効果が達成されるからである。さらにいえば,地震終了時に開き戸はわずかに開かれているのであるから,わずかに開かれた隙間から手作業で解除操作可能であることは当業者に自明であり,解除操作の構成要件クレームに入れなくても発明として完結するものである。
例えば,本件特許出願前の公知文献である特表平10-502713号公報(発明の名称「地震作動形安全ラッチ ,出願人 A,公表日 平 」成10年3月10日,甲17)に「地震が収まった後,扉(27)を僅かに開き,指でフック(26)を移動させて,ラッチ突起(20)から外すことができる。… (10頁24行〜25行)と記載されている通 」り,従来からわずかに開かれた隙間から手作業で解除操作する地震対策付き棚は公知であった。
しかもそのクレームはロック作動についての構成要件だけであって解除操作の構成要件はなく,該公知文献は米国特許出願に基づく国際出願であり,解除操作の構成要件クレームに入っていない地震対策付き棚の発明が国際出願として通用することを証明している。
したがって明細書の実施例は第1目的段階,第2目的段階,第3目的段階すべてが開示されているが,請求項1には第1目的段階のクレームをし,請求項2には第2目的段階または第3目的段階までの発明をクレームすることに何ら特許法の無効理由はない。すなわち「押すまで閉じられずわずかに開かれた」係止状態は地震のゆれの力で閉じられず(ゆれの力より大きい)押す力では閉じられる係止状態であればよいのであるから,その様な係止状態は一定の力で保持される係止状態であればよい。
したがって,それを達成するには慣用技術を用いれば可能であるから具体的な構成を想定できる。しかも本件特許の原出願の当初明細書(甲) (), 2の8 の図10ないし図13の実施例には解除具 8 が前に突出し磁石(7)の力で「押すまで閉じられずわずかに開かれた」との構成も開示されていたのである。本件特許は原出願の当初明細書記載の図10ないし図13の実施例を含んでいないが,少なくとも他の構成が想定可, 。 能であり 実施例以外の具体的な構成を想定できることが明らかである以上の通り,本件特許発明1の「わずかに開かれる…係止…押すまで閉じられずわずかに開かれた」との構成について「実施例以外の具体的な構成を想定できない」との審決は誤りである。
(ウ)また審決は,係止手段が移動し,その後に「更にゆれの力により」開き戸がわずかに開く,との実施例でのプロセスの説明と,本件特許発明1の「係止手段が…移動しわずかに開かれる開き戸の係止具に係止」するとの表現が一致していない旨指摘する。
すなわち請求項1は係止手段の移動と係止が同時であるかの如き表現になっているのに対して,実施例では係止手段の移動の後に係止するとのプロセス説明になっており,両者は一致していないと指摘している。
しかし,請求項1の文章の順序は実施例でのプロセス説明の順序と同じであるし,急激に大きい地震のゆれが生じた場合は係止手段の移動開始と開き戸の開き開始は同時である。
すなわち係止手段が移動するゆれの力(小さい)と開き戸がわずかに開くゆれの力(大きい)のいずれよりも大きい地震のゆれが急激に生じた場合は,係止手段の移動と係止が同時になる場合がある。
係止手段が移動するのも開き戸がわずかに開くのもいずれも「ゆれの力」によると明細書に説明されているのであるから,急激に大きい地震のゆれが生じた場合は係止手段の移動開始と開き戸の開き開始は同時であると説明がなくても当業者であれば想到できる現象である。
「」 仮に現実の地震において係止手段の移動の後に 更にゆれの力により開き戸がわずかに開く,とのプロセスしか起こらないとすれば,開き戸がわずかに開く際には必ず係止手段はロック位置への移動を完了し,係止準備状態になっているのであるから,本件特許発明において指摘している課題である「開き戸(2)の自由端に取り付けると蝶番(特にマグネットキャッチを用いずばね付き蝶番だけで開き戸(2)の閉止力を確保している場合)から遠いため地震時の開き戸(2)の動きが最も大きくロック機構にとってロックが不安定になる」という問題は生じない。
なぜなら係止手段が必ず係止準備状態になっていれば,開き戸の動きしろが最も大きい位置(自由端)と少なくなる位置(自由端でない位置または離れた位置)のいずれも異なることなく必ず係止手段はロック位置への移動を完了していることになり 「ロックが不安定になる」との ,課題は存在しないことになるからである。
すなわち自由端では「開き戸(2)の動きが最も大きくロック機構にとってロックが不安定になる」としているのは,係止手段の移動開始と開き戸の開き開始が同時になった場合に係止手段が移動を完了するまでに開き戸が開き過ぎないよう,動きが最も大きくない位置に取り付けるべきであるという技術課題を指摘しているのである。
要するに,一方で実施例のプロセス説明は震源地の遠い地震(小さいゆれから次第に大きいゆれになっていく地震)についての説明であり,他方で直下型の地震(急激に大きいゆれが生じる地震)についての技術課題を出願時から認識し,それを指摘していたのである。
したがって「係止手段が…移動しわずかに開かれる開き戸の係止具に係止」との表現は,急激に大きい地震のゆれが生じた場合は係止手段の移動開始と開き戸の開き開始は同時であると説明がなくても当業者であれば想到できる現象であるのみならず,技術課題として出願時から意識し,それを指摘していた現象でもある。
特許法は当業者を基準に明細書を読めと規定しているのであるから,。, 当業者が力学の常識で明細書を読めば全く不明確ではない したがって本件特許発明1の「係止手段が…移動しわずかに開かれる開き戸の係止具に係止」との表現は明確性要件違反ではない。
2請求原因に対する認否請求原因( )ないし( )の各事実は認めるが,同( )は争う。
13 43被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
( )取消事由1に対し1ア原告は,?「自由端でない位置」は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載「自由端から蝶番側へ離れた位置 (段落番号【0009 )と同義で 」】ある(以下「原告の主張?」という,?本件明細書の発明の詳細な説明 。)には「開き戸(2)の自由端に取り付けると…問題が生じる場合がある」(段落番号【0009 )と記載されているのであるから,自由端ではな 】く自由端に近接した位置は「自由端から蝶番側へ離れた位置」に含まれる(以下「原告の主張?」という,?自由端ではない自由端に近接した位 。)置についても,わずかでも効果はあるから,仮に進歩性を認めるに足るだけの十分な効果がないとしても,発明の詳細な説明に記載された発明の範囲内にある(以下「原告の主張?」という,として本件特許発明1,3 。)及び4にはサポート要件違反はない旨主張する。なお,原告は,特許発明は特許公報のみで解釈してはならないと主張し,出願経過を斟酌すべき旨も主張するが 「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載し ,たものであること」が問題となるサポート要件充足の判断において,出願経過を斟酌することは許されない。
イ本件明細書 甲18 特許公報によれば 本件特許発明の課題は 作 (〔〕),「動が確実な開き戸の地震時ロック方法の提供」にあるところ(段落【0003,段落【0009】には,地震時ロック装置を開き戸の自由端に取 】)り付けると,地震時の開き戸の動きが大きく,ロックを確実に作動させることができないため 「自由端から蝶番側へ離れた位置」に取り付ける趣 ,旨の記載がなされている。
本件明細書の上記記載によれば,自由端ではないが自由端に近接した位置に地震時ロック装置を取り付けた場合には,依然,地震時の開き戸の動きが大きく,上記の発明の課題「作動が確実な開き戸の地震時ロック方法の提供」を解決することはできない。したがって 「作動が確実な開き戸 ,の地震時ロック方法の提供」をするためには,審決が説示するとおり,自由端から蝶番側へ一定程度離れた位置に地震時ロック装置を取り付けなければならないのであって(審決12頁1行〜13頁22行 ,本件特許発)明の課題を解決することができるものと当業者が認識できるように記載された地震時ロック装置の取り付け位置は,あくまで 「自由端から蝶番側,へ(一定程度)離れた位置」であると解するよりほかない。
ウ原告の主張?は 「自由端でない位置」と「自由端から蝶番側へ離れた ,位置 とが同義であるとするものであるが そもそも離れるは遠 」 ,,「」,「ざかった位置にある。へだたった所にいる 」等の意味を有する用語で 。
ある(広辞苑第6版2283頁 。したがって 「自由端から蝶番側へ離 ),れた位置」は 「自由端から蝶番側へ一定程度離れた位置」を意味するも ,のであって 「自由端に近接した位置」は含まないと解するのが自然な ,文理解釈である。
原告の主張?は 「自由端でない位置」及び「自由端から蝶番側へ離 ,れた位置」の文理から大きくかけ離れた解釈であり,ただ強引な理屈を展開したものというよりほかない。
エ原告の主張?について,本件明細書(甲18)の発明の詳細な説明には,課題解決のための地震時ロック装置の取り付け位置として 「自由,端から蝶番側へ一定程度離れた位置本件明細書の図6に示される T 」( 「」),「 」 位置のみが記載されており自由端ではなく自由端に近接した位置については何ら記載がなされていない。
それにもかかわらず,段落【0009】の「開き戸(2)の自由端に」 , 取り付けると…問題が生じる場合がある の記載があること一事をもって「自由端ではなく自由端に近接した位置」に取り付ける構成についてまで開示があるとする原告の主張?には無理がある。
オ原告の主張?について(ア)本件特許発明の作用効果は,開き戸の動きが少なくなることでは, ,, なく 地震時のロックを確実にすることにあるところ 上記のとおり自由端に近接した位置では,開き戸の動きは,依然,自由端に取り付けた場合とほぼ同程度に大きいのであるから,同位置に取り付けた場, 。, 合について 上記作用効果を奏するものと認める余地はない よって原告の主張?に理由はない。
(イ)原告は,本件特許発明について 「自由端でない位置」なる構成と ,「押すまで閉じられずわずかに開かれた」構成とを具備することによって,作動が確実との課題を解決することができるとし,自由端に近接した位置であっても 「押すまで閉じられずわずかに開かれた」構成と合 ,わせて課題を解決することができるとして,明細書の発明の詳細な説明には「自由端でない位置」すべてについて記載がなされており,明細書のサポート要件違反には当たらない旨主張する。
しかし,審決が説示するとおり,そもそも本件明細書には 「押すま,で閉じられずわずかに開かれた」構成によって,作動を確実にするとの課題を解決することができるとの記載は全くなされていない。また,地震時ロック装置の取り付け位置にかかる構成は,確実に係合するためのものであり,一方 「押すまで閉じられずわずかに開かれた」構成は, ,一旦係合した後の係合状態を維持するための構成である(審決15頁35行〜16頁10行 。)なお,段落【0009】に「地震時ロック装置を開き戸(2)の自由端から蝶番側へ離れた位置に取り付けると開き戸(2)の動きが少なくなるためロック機構にとってロックが確実になるのである 」と記載さ。
れていることからも判るとおり,本件特許発明においては,係合回数を1回とすることにより地震時のロックを確実にするものではない。
「地震時のロックが確実になる」という本件特許発明の効果と,係合が1回だけであるか否かという問題,換言すれば一旦係合した状態を維持することとの関係について,本件明細書は何ら記載しておらず,別個の問題であり 「押すまで閉じられずわずかに開かれた」なる構成要件 ,によって「自由端でない位置」なる構成が奏する効果を代替又は補完することができないことは明らかである。
よって,同構成を以て,自由端に近接した位置における係合を確保し得るものではないことは明らかである。
(ウ)審決がいう「効果がない」の意義について,原告は 「わずかな効,果を含めて効果が一切ない」という意味なのか 「進歩性に足る十分な ,効果がない」との意味なのかとし,進歩性に足る十分な効果がなくてもわずかでも効果がある旨主張している。
しかし,発明は,その発明特有の作用効果を奏するものであり,発明特有の作用効果を奏しないのであれば,発明未完成となるが,それは,発明の構成が新規かつ進歩性があるか否かの問題とは別個の問題であり,発明の効果についての進歩性がなくとも,発明について進歩性が認められることはあり,そもそも原告の主張は失当である。
(エ)原告は 「地震時のロックが確実になる」という効果は 「わずかで , ,もロックが確実」を含む旨主張している。
しかし,そもそも「わずかでも…確実」とは如何なる意味か不明である。この点 「地震時のロックが確実になる」という効果がわずかしか ,認められないのであれば,それは地震時のロックが不安定となることにほかならない。段落【0009】では「開き戸(2)の自由端に取り付けると蝶番から遠いため地震時の開き戸(2)の動きが最も大きくロック機構にとってロックが不安定になるという問題が生じる場合がある」と記載されており 「地震時のロックが確実になる」という本件特許発 ,明の効果は 「ロック機構にとってロックが不安定にならない」という ,ことを意味すると解され,そうすると「わずかでもロックが確実」ということは 「ロック機構にとってロックが不安定であるということであ ,り 「地震時のロックが確実になる」という本件特許発明の効果を奏さ ,ないということである。
(オ)以上のとおり,本件特許にいわゆる明細書のサポート要件違反はないとする原告の主張に理由はなく,審決に誤りはない。
( )取消事由2に対し2ア原告は,原出願の当初明細書(甲2の8)の図25には,図22等の実施例の取り付け位置が示されているところ,?図25は,地震時ロック装置の取り付け位置として「自由端でない位置」を開示したものである(以下「原告の主張?」という,?原出願の当初明細書の図1ないし図4に 。)示された「比較のためのロック装置」と,原出願にかかる発明の実施例である図22記載の装置とは “地震のゆれの力で係止手段がロック位置に ,移動”する構成である点において共通している(以下 「原告の主張?」,という )として,原出願の当初明細書の図1ないし図4の実施例に開示 。
された構成と,図20及び図25に開示された「自由端でない位置」なる構成とを結合して新たな発明として分割出願することは分割要件に違反していないとして,本件特許にかかる特許出願が不適法な分割出願である旨の審決の判断は誤りである旨主張する。
イ原告の主張?については,原出願の当初明細書は,図25記載の「T位置」を以て,あくまで 「家具,吊り戸棚等の天板下面」を例示している ,にすぎず,取り付け位置として「自由端から蝶番側へ離れた位置」として選択可能な範囲を開示したものではない。
ところで,原告は,図1ないし図4の実施例は天板下面に取り付けられており,左右方向の位置について明細書に記載がないということは,左右方向については任意の位置に取り付けられると解釈するのが通常の解釈である旨主張する。しかし上記原告の主張は,原出願の当初明細書には,地震時ロック装置の取り付け位置に関して特段の技術思想は開示されていな,,, かったということを意味するものであり この点からしても 本件特許は原出願の当初明細書に記載されていない事項を本件特許発明構成要件として含むものであって分割要件に違反するものである。
したがって,原告の主張?に理由はない。
ウ原出願の当初明細書の図25は,原出願にかかる発明の実施例である図22等に記載の装置にかかる取り付け位置の構成であり,一方,原出願の当初明細書の図1ないし図4に示された構成は 「比較のためのロック装 ,」 ,, , 置 として示されたものであって 両者は 原出願の当初明細書において全く独立した事項として記載されたものである。
原告の主張?は,原出願にかかる発明の構成を殊更に抽象化して,当該発明の実施例である図22記載の構成と 「比較のためのロック装置」の ,例である図1ないし図4記載の構成とが “地震のゆれの力で係止手段が ,ロック位置に移動”する構成である点において共通しているとするが,原出願当初明細書は,図1ないし図4に示された装置の取り付け位置を図25記載の位置とする構成について,何ら記載していない。
たとえ原出願当初明細書の図1ないし図4の構成と図20記載の取り付け位置及び図25記載の「T位置」を組み合わせることが当業者に容易想到であったとしても,該組み合わせが原出願当初明細書に記載されていなかったことは疑いがなく,審決が説示するとおり,原出願当初明細書の図1ないし図4の構成,図20記載の取り付け位置及び図25記載の「T位置」を組み合わせて一つの発明とし,これを原出願から分割して新たな特許出願(本件特許出願)とすることは,地震時ロック装置の取り付け位置の点で,原出願当初明細書に記載されていない事項を本件特許発明構成要件として含むものであって,審決の判断に誤りはない。
エまた,審決が説示するとおり,原出願当初明細書には,取り付け位置として 「自由端から蝶番側へ離れた位置」の記載しかなされていないにも ,かかわらず,本件特許発明は,かかる記載された範囲を超えて 「自由端,でない位置」を広く包含するものであるから,かかる意味においても,本件特許出願は分割要件に違反するものである(審決19頁32行〜20頁3行 。)オ以上のとおり,本件特許にかかる特許出願につき分割要件違反はないとする原告の主張は理由がなく,審決の判断に誤りはない。
(3)取消事由3に対しア原告は,?本件特許の請求項1の記載の「押すまで閉じられずわずかに開かれた」の構成は,ロックの解除操作を目的とするものであると示したものではなく,係止状態が,地震のゆれの力では閉じられず,ゆれの力より大きい押す力では閉じられる係止状態であれば足りるから,同構成については,慣用技術を用いることによって実施例以外の具体的な構成を想定することができる(以下「原告の主張?」という,?請求項1の記載の 。)「係止手段が地震のゆれの力で開き戸の障害物としてロック位置に移動しわずかに開かれる開き戸の係止具に係止する」の構成と,発明の詳細な説明の段落【0006】記載の実施例の構成とで,係止手段の作動順序が異なっているとする審決の判断(23頁35行〜24頁14行)に対し,急激に大きいゆれが生じた場合には,係止手段の移動と係止とが同時となることもあるとして,本件特許につき明確性要件に違反するとした審決の判断には誤りがある旨主張する(以下「原告の主張?」という。。)イ(ア)原告は,上記原告の主張?において,請求項1は,ロックを解除する目的で扉を押す旨の記載がなく,解除目的で押す構成に限定されるものではないとして,実施例以外の構成が存在する旨の主張を以て審決の取消事由とする。
しかし,請求項1の記載「押すまで閉じられずわずかに開かれた」なる構成は,地震時ロック装置の係合状態を維持するための構成であることは審決も認定するところであり,請求項1記載の発明が,ロックの解除操作を目的とするか否かにかかわらず,審決は 「係止手段が地震の,ゆれの力で開き戸の障害物としてロック位置に移動しわずかに開かれる開き戸の係止具に係止する「係止後使用者が閉じる方向に押すまで閉 」,じられずわずかに開かれたロック位置となる」の各構成について,実施例以外の具体的な構成を想定できないと判断しているものであり,原告の主張?は,審決の取消事由に当たらず,失当である。
(イ)同じく原告の主張?に関し,審決は,本件特許発明1の特許請求の範囲の「わずかに開かれる」及び「わずかに開かれた」の文言が,極めて抽象的・機能的な表現であって,これら文言を含む本件特許発明1の各構成について,作動を確実にするとの本件特許発明の課題に照らし,また,本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】ないし【0009】全体の記載及び図面の記載を参酌し,さらに,本件特許発明1の他の構成を参酌し,また,当業者の技術常識を勘案しても,具体的な構造や手段に依らず機能(作用)的表現を以て特定された本件特許発明の範囲が明らかでなく,実施例以外の具体的な構成を想定できないことを理由として,本件特許が明確性要件に違反する旨判断しており(審決23頁1行〜34行 ,かかる審決の判断は極めて妥当なものである。 )原告は,抽象的・機能的な文言である「押すまで閉じられずわずかに開かれた」につき,明細書等の記載を離れて殊更に抽象化して,実施例以外に具体的な構成があり得ると主張しているにすぎない。かかる原告の主張は,権利範囲の外延を画するという明確性の要件の要請をないがしろにするものであって,理由がない。
明確性要件は,独占的排他権が付与される特許権において,当該特許を受けようとする発明が明確であって,権利範囲の外延を画することを要求するものである。
審決は,請求項1の記載「係止手段が地震のゆれの力で開き戸の障害物としてロック位置に移動しわずかに開かれる開き戸の係止具に係止する」が,発明の詳細な説明の記載と齟齬しているために,具体的に如何なる作動を意味するものであるか明確でない旨判旨しているのであって,係止手,, 段の移動と係止とが同時となることもある旨の原告の主張?は そもそも審決の判断の誤りを主張するものとは位置付けられない。
また,原告の主張?によれば,急激に大きいゆれが生じた場合には,係止手段の移動開始と開き戸の開き開始が同時となり,係止手段の移動が完了するまでに開き戸が開き過ぎないよう,動きが最も大きくない位置に地震時ロック装置を取り付けるべきであるという技術課題が存し,その場合の開き戸の地震時ロック方法が請求項1に記載されていることになる。
ところが,本件明細書(甲18)には,係止手段の移動と係止とが同時となる場合の開き戸の地震時ロック方法は記載がなく,実施例は,係止手段の移動後に「更にゆれの力により」開き戸がわずかに開くというプロセスが起こる場合について記載されており,しかも,この場合,開き戸がわずかに開く際には係止手段はロック位置への移動を完了し,係止状態になっているため,本件特許の課題である「開き戸(2)の自由端に取り付けると蝶番(特にマグネットキャッチを用いずばね付き蝶番だけで開き戸(2)の閉止力を確保している場合)から遠いため地震時の開き戸(2)の動きが最も大きくロック機構にとってロックが不安定になる」という問題は生じないということになる。
そうすると,本件特許の実施例として記載されている開き戸の地震時ロック方法は,請求項1記載の発明の技術的範囲に属さないものであり,これ以外に本件明細書において開き戸の地震時ロック方法の具体的な構成を示す記載はないのであるから,本件明細書が明確性要件に違反することに疑いがない。
エ以上のとおり,本件特許につき明確性要件に違反するものでないとする原告の主張には理由がなく,審決の判断に誤りはない。
第4当裁判所の判断1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯 ,(2)(発明の内容 ,(3)(審決 ))の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
そこで,原告主張の取消事由について,以下判断する。
2取消事由1(サポート要件違反の判断の誤り)について( )原告は,審決が本件特許発明(本件特許発明1,3及び4)の「…本件1特許発明は,構成要件Dにおける『自由端でない位置』との事項が,本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えるものであり,特許法第36条第6項第1号に定める要件を充たすとは認められないから,本件特許は,同法第123条第1項第4号に該当し,無効にすべきものであ。」() , る16頁12行〜16行 と判断したことは誤りである旨主張するので以下検討する。
ア本件明細書(甲18〔特許公報 )には,以下の記載がある。 〕(ア)特許請求の範囲前記第3,1( )のとおり。
2(イ)発明の詳細な説明・「本発明は開き戸を地震時に自動ロックして収納物の落下を防止する開き戸の地震時ロック方法に関するものである(段落【0001【技 。」】,術分野 )】・「従来において作動が確実な開き戸の地震時ロック方法は未だ開発されていない(段落【0002【背景技術 ) 。」】,】・「本発明は以上の従来の課題を解決し作動が確実な開き戸の地震時ロック方法の提供を目的とする(段落【0003【発明が解決しようと 。」】,する課題 )】・「本発明は以上の目的達成のためにマグネットキャッチなしの開き戸において地震のゆれの力でロック位置に開き戸の障害物が移動する内付け地震時ロック装置を開き戸の自由端でない位置の家具,吊り戸棚等の天板下面に取り付けた開き戸の地震時ロック方法(請求項1記載の発明)等を提案するものである(段落【0004【課題を解決するための手 。」】,段 )】・「本発明の開き戸の地震時ロック方法は特に家具,吊り戸棚等の天板下面において開き戸の自由端でない位置に地震時ロック装置を取り付けるため開き戸の動きが最も大きい自由端ではないため地震時のロックが確実になる(段落【0005【発明の効果 ) 。」】,】・「以下本発明の開き戸の地震時ロック方法を図面に示す実施例に従い説明する。
図1は本発明の方法に用いることが可能なロック装置を示し,該ロック装置は家具,吊り戸棚等の本体(1)に固定された装置本体(3)を有する。
該装置本体(3)には地震のゆれの力で動き可能に係止手段(4)が支持される。係止手段(4)は係止部(4a)を有し装置本体(3)の停止部(3a)で停止されるものである。
次に開き戸(2)に係止具(5)が取り付けられ前記係止手段(4)が地震のゆれの力で動いた際にその係止部 4a が係止される係止部 5 ()(b)を有する。一方係止手段(4)の戻り路に弾性手段(6)が設けられている。
以上の実施例に示した比較のための地震時ロック装置の作用は次の通りである。すなわち開き戸(2)が図1の様に閉じられた閉止状態では家具,吊り戸棚等の本体(1)側の装置本体(3)に開き戸(2)側の係止具(5)が近接している。この状態で地震が起こると図2に示す様に係止手段(4)が動いて係止具(5)に接触する。
更にゆれの力により図3に示す様に開き戸(2)がわずかに開くと係止手段(4)の係止部(4a)が係止具(5)の係止部(5b)に係止される。
この状態で係止手段(4)の係止部(4a)は装置本体(3)の停止部(3a)で停止され開き戸(2)はその位置でロックされる。
当然のことながらゆれの力は開き戸(2)を閉じる方向にも作用するがロック位置で係止手段(4)は装置本体(3)の弾性手段(6)に押さえられている。
該弾性手段(6)の押さえ力はゆれの力より大きく設定されているため係止手段(4)はその位置で停止する。
次に地震が終わり開き戸(2)を開くには使用者は開き戸(2)を強く押す。
これにより図4に示す様に弾性手段(6)が退いていき一定以上退くと弾性手段(6)による押さえが外れる。
この結果係止手段(4)は慣性で図4の状態から図1の初期状態へと戻ることになる(段落【0006【発明を実施するための最良の形 。」】,態 ,なお【0007】は欠落) 】・「以上に実施例を図示したが,要するに図示の開き戸の地震時ロック装置は可動な障害物(開き戸(2)の障害物という意味である)としての係止手段(4)について該障害物自体を地震のゆれの力でロック位置に移動させる開き戸の地震時ロック装置であることが判る(段落【00。」08 )】・「図5は本発明の方法を示し,該方法は開き戸(2)の自由端から蝶番側へ離れた位置にロック装置を取り付ける点に重要な特徴がある。
開き戸(2)の自由端に取り付けると蝶番(特にマグネットキャッチ() ) を用いずばね付き蝶番だけで開き戸 2 の閉止力を確保している場合から遠いため地震時の開き戸 2 の動きが最も大きくロック機構にとっ ()てロックが不安定になるという問題が生じる場合があるからである。
地震時ロック装置を開き戸(2)の自由端から蝶番側へ離れた位置に取り付けると開き戸(2)の動きが少なくなるためロック機構にとってロックが確実になるのである。
マグネットキャッチなしでコスト削減したい場合にこの取り付け方法でロックが確実になるという非常に重要な効果が達成出来る。
次に図6に示されるT,B,S1,S2及びS3位置(その他の実施例もあるが)は一般的に地震時ロック装置の取り付け位置として選択可能であることを示す。しかし本発明の方法は図5において説明した通りT位置にロック装置を取り付けるのである(すなわち開き戸(2)の自)。」(【】) 由端でない位置にロック装置を取り付けるのである段落 0009(ウ)図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である )。
(本発明の方法に用いる地震時ロック装置の断面側面図) ・ 図1【】(同上作動状態図) ・ 図2【】(同上作動状態図) ・ 図3【】(同上作動状態図) ・ 図4【】(本発明の方法の概念図) ・ 図5【】(本発明の方法の概念図) ・ 図6【】(エ)上記(ア)〜(ウ)によれば,本件特許発明は,開き戸を地震時に自動ロックして収納物の落下を防止する開き戸の地震時ロック方法に関する発明である(段落【0001 )ところ,作動が確実な開き戸の地震時 】ロック方法は未だ開発されていない(段落【0002 )として,作動】が確実な開き戸の地震時ロック方法を提供することを目的とするものである(段落【0003。】)本件特許発明においては その目的を達成するため 内付け地震時ロッ ,,ク装置を開き戸の自由端でない位置に取り付ける等とし(段落【0004【課題を解決するための手段,これにより開き戸の動きが最も 】, 】)(【】, 大きい自由端でないためロックが確実になるとする 段落 0005【発明の効果。】)そして,本件特許発明1の特許請求の範囲(請求項1)には「内付け地震時ロック装置を開き戸の自由端でない位置の家具…に取り付け…」と記載されているところ,この「自由端でない位置」に関する記載として,発明の詳細な説明には 「本発明の開き戸の地震時ロック方法は… ,開き戸の自由端でない位置に地震時ロック装置を取り付けるため開き戸。」 の動きが最も大きい自由端ではないため地震時のロックが確実になる(【】),「 ,() 段落 0005図5は本発明の方法を示し 該方法は開き戸 2の自由端から蝶番側へ離れた位置にロック装置を取り付ける点に重要な特徴がある。開き戸(2)の自由端に取り付けると蝶番(特にマグネットキャッチを用いずばね付き蝶番だけで開き戸(2)の閉止力を確保している場合 から遠いため地震時の開き戸 2 の動きが最も大きくロッ ) ()ク機構にとってロックが不安定になるという問題が生じる場合があるからである。地震時ロック装置を開き戸(2)の自由端から蝶番側へ離れた位置に取り付けると開き戸(2)の動きが少なくなるためロック機構にとってロックが確実になるのである。…次に図6に示されるT,B,S1,S2及びS3位置(その他の実施例もあるが)は一般的に地震時ロック装置の取り付け位置として選択可能であることを示す。しかし本発明の方法は図5において説明した通りT位置にロック装置を取り付けるのである(すなわち開き戸(2)の自由端でない位置にロック装置を取り付けるのである段落 0009と記載され 図5には ロッ )。」(【】),「ク装置」の,図6には「T位置」の記載がそれぞれある。
しかし,図5の「ロック位置」について,上記のとおり「…本発明の方法を示し,…自由端から蝶番側へ離れた位置にロック装置を取り付ける「本発明の方法は,…T位置にロック装置を取り付ける…(開き戸 」,(2)の自由端でない位置にロック装置を取り付ける…(段落【0)。」009 )とするが,ロック装置,T位置が自由端からどの程度離れた 】, 。, 位置であるかについて 発明の詳細な説明には何らの記載がない また本件明細書中には自由端 自体についても 発明の詳細な説明図 ,「」【】,【面の簡単な説明【符号の説明】等にも一切説明がない。 】,上記によれば,本件特許発明1の目的は,作動が確実な開き戸の地震時ロック方法を提供するものであり,そのためロック装置を「自由端でない位置」に取り付けるとするものであるところ,自由端は開き戸の動きが最も大きいためこの自由端でない位置にこれを取り付けるとするが,自由端でない位置がいかなる位置であるのかにつき,発明の詳細な説明には何ら具体的な記載がないものである。上記のとおり,本件特許発明1では,地震時に自由端に比較して開き戸の動きが小さくなる「開き戸の自由端から蝶番側へ離れた位置」に取り付けを行うとするものであるところ,地震時には自由端において開き戸の動きが最も大きいからロックが確実ではなく,自由端近傍では開き戸の動きが自由端と同様に大きいため,ロックを確実にするためには,一定距離自由端から蝶番側へ離れた位置にロック装置を取り付ける必要があるものと解される。し, 「」, かし 本件特許発明1の特許請求の範囲の 自由端でない位置 につきどの程度の距離自由端から離れた位置であるのかにつき,発明の詳細な説明には一切記載がないことから,本件特許発明1は,発明の詳細な説明に記載された発明とはいえず 特許法36条6項1号に定める要件 い , (わゆるサポート要件)を充たさないというほかない。そして,本件特許発明1の開き戸の地震時ロック方法を用いた家具である本件特許発明3,同じく本件特許発明1の開き戸の地震時ロック方法を用いた吊り戸棚である本件特許発明4についても同様である。
そうすると,本件特許発明1,3及び4につき特許法36条6項1号に違反する無効理由があるとする審決の判断に誤りはない。
( )原告の主張に対する補足的判断2ア原告は 「自由端でない位置」とは,本件明細書(特許公報,甲18) ,の発明の詳細な説明に記載された「自由端から蝶番側へ離れた位置」と全く同じであるから,本件特許発明1は発明の詳細な説明に記載された発明であり,サポート要件違反はない旨主張する。
しかし,上記( )のとおり,本件特許発明1において,地震時のロック 1を確実にするためには開き戸の自由端から蝶番側へ離れた位置 にロッ ,「 」ク装置を取り付ける必要があり 「開き戸の自由端でない位置」であれば ,自由端近傍であっても地震時のロックが確実となるとは考えられないことから,特許請求の範囲の記載の「自由端でない位置」は,本件明細書の発明の詳細な説明の「自由端から蝶番側へ離れた位置」との記載と同義であると解することはできない。原告の上記主張は採用することができない。
イまた原告は,本件特許発明1の「自由端でない位置」には 「自由端に,近接した位置」を含み,これは発明の詳細な説明に記載された範囲に含まれるのであるからサポート要件違反には該当せず,また「自由端に近接した位置」では十分とはいえなくともわずかな効果はあるから,サポート要件違反はない旨主張する。
しかし,本件特許発明1は 「自由端でない位置 (特許請求の範囲の記 ,」載)にロック装置を取り付ける発明であるところ,本件明細書には 「自,由端から蝶番側へ離れた位置」にロック装置を取り付ける旨が記載されており,これは地震時において,一定程度自由端から離れた位置にロック装置を取り付けることで,そのような位置では自由端に比較して開き戸の動きが小さくなることを利用して,ロックを確実に行うとするものである。
そして,特許請求の範囲に記載の「自由端でない位置」には 「自由端近,傍」を含むものであって,明細書に記載の「自由端から離れた位置」とは同義とすることができないのは上記アのとおりである。
さらに 「自由端近傍」にロック装置を取り付けた場合には,地震時の ,動きが自由端と同様に大きいと判断されることから,そのような位置に置いてもロックが確実になされることは,本件明細書には示されていない。
原告はこの点について 「自由端に近接した位置」は一切効果がないの ,ではなく,仮に十分ではないとしてもわずかな効果はある旨主張するが,自由端では確実にロックすることが出来ないとしながら,わずかに開き戸の動きが小さい自由端近傍ではロックが確実に可能であるとは到底解することができないから,原告の上記主張は採用することができない。
ウさらに原告は,本件特許発明1について 「自由端でない位置」なる構 ,成と 「押すまで閉じられずわずかに開かれた」構成とを具備することに ,, , よって 地震時のロック作動が確実となるとの課題を解決することができ本件明細書の発明の詳細な説明には「自由端でない」いずれの位置につい, 。 ての記載もされているから サポート要件違反には当たらない旨主張する原告は本件特許発明1は「自由端でない位置」なる構成と「押すまで閉じられずわずかに開かれた」との構成を具備することによって,ロック装置の作動を確実に行うとの課題を解決することができるとしているが,その旨は本件明細書(甲18)には一切記載されていないし,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)の技術常識に照らせばそのように解することができるとする適切な証拠もない。原告は,「押すまで閉じられずわずかに開かれた」との構成はいったん係合した後の係合状態を維持するものであって,これによってロックするための作動が確実であるとも主張するが,これとロック装置の取り付け位置によるロック装置の作動の確実性との関連についての記載は本件明細書には一切されていないから,原告の上記主張は採用することができない。
3取消事由2(分割要件違反の判断の誤り)について( )原告は,審決が 「…原出願当初明細書における,図1乃至図4に示され1 ,た地震時ロック装置,図20に例示された『ロック装置』の位置,及び,図25に例示された『T位置』を組合わせて一つの発明とし,これを原出願から分割して,新たな特許出願(本件特許出願)とすることは,少なくとも,地震時ロック装置の取り付け位置の点で,原出願当初明細書に記載されていない事項を本件特許発明構成要件として含むものと思量されるから,分割要件に違反するものといわざるをえない(19頁25行〜31行)等とし 。」て,本件特許発明に係る出願は分割要件違反であると判断したのは誤りである旨主張する。
ア本件特許出願の原出願の当初明細書(甲2の8。公開特許公報〔特開平,〕。「」。) 10-30372 甲1 も同じ 以下 原出願の当初明細書 というには,以下の記載がある。
(ア)特許請求の範囲・【請求項1】横向きに可動な障害物を地震のゆれの力でロック位置に移動させる開き戸の地震時ロック装置・【請求項2】横向きに可動な障害物についてその動き停止手段を地震のゆれの力でロック位置に移動させる開き戸の地震時ロック装置・【請求項3】マグネットを有せず開き戸の機械的閉止保持機構を有する内付け地震時ロック装置において地震のゆれの力でロック位置に障害物が移動する開き戸の地震時ロック装置・【請求項4】マグネットを有せず開き戸の機械的閉止保持機構を有する内付け地震時ロック装置において地震のゆれの力で前記機械的閉止保持機構を構成する障害物の動き停止手段がロック位置に移動する開き戸の地震時ロック装置・【請求項5】障害物がその安定位置を中心に往復振動する請求項1又は3記載の開き戸の地震時ロック装置・【請求項6】動き停止手段がその安定位置を中心に往復振動する請求項2又は4記載の開き戸の地震時ロック装置(イ)発明の詳細な説明(下線は判決で付記)・「 発明の実施の形態】以下本発明の開き戸の地震時ロック装置を図面に 【示す実施例に従い説明する。
ここで本発明の理解を容易にするため図1乃至図9及び図14乃至図21に比較のためのロック装置(従って本発明ではない)について説明する。
図1は比較のためのロック装置を示し,該ロック装置は家具,吊り戸棚等の本体(1)に固定された装置本体(3)を有する。
該装置本体(3)には地震のゆれの力で動き可能に係止手段(4)が支持される。係止手段(4)は係止部(4a)を有し装置本体(3)の停止部(3a)で停止されるものである。
次に開き戸(2)に係止具(5)が取り付けられ前記係止手段(4)が地震のゆれの力で動いた際にその係止部 4a が係止される係止部 5 ()(b)を有する。
一方係止手段(4)の戻り路に弾性手段(6)が設けられている。
以上の実施例に示した比較のための地震時ロック装置の作用は次の通りである。
すなわち開き戸(2)が図1の様に閉じられた閉止状態では家具,吊り()()()() 戸棚等の本体 1 側の装置本体 3 に開き戸 2 側の係止具 5が近接している。この状態で地震が起こると図2に示す様に係止手段(4)が動いて係止具(5)に接触する。
更にゆれの力により図3に示す様に開き戸(2)がわずかに開くと係止手段(4)の係止部(4a)が係止具(5)の係止部(5b)に係止される。
この状態で係止手段(4)の係止部(4a)は装置本体(3)の停止部(3a)で停止され開き戸(2)はその位置でロックされる。
当然のことながらゆれの力は開き戸(2)を閉じる方向にも作用するがロック位置で係止手段(4)は装置本体(3)の弾性手段(6)に押さえられている。該弾性手段(6)の押さえ力はゆれの力より大きく設定されているため係止手段(4)はその位置で停止する。
次に地震が終わり開き戸(2)を開くには使用者は開き戸(2)を強く押す。これにより図4に示す様に弾性手段(6)が退いていき一定以上退くと弾性手段(6)による押さえが外れる。
この結果係止手段(4)は慣性で図4の状態から図1の初期状態へと戻ることになる(段落【0005 ) 。」】・「図19は比較のための他の地震時ロック装置を示し,該ロック装置はゴム,ばね,弾性材料等の戸当たり(90)が装置自体に組み込まれた。() () 点に重要な特徴がある 戸当たり 90 は図示の実施例では開き戸 2側の係止具(5)に取り付けられ家具,吊り戸棚等の本体(1)側の装置本体(3)の正面に当接するものであり開き戸(2)の緩衝機能と共に閉止位置決め機能も負担している。
この様に閉止位置決め機能を地震時ロック装置自体が有する場合はロック機構にとってロックの位置決めが確実になるという非常に重要な効果を発揮する。
図20は比較のための他の地震時ロック装置を示し,該ロック装置は開き戸(2)の自由端から蝶番側へ離れた位置に取り付けられた点に重要な特徴がある。
開き戸(2)の自由端に取り付けると蝶番(特にマグネットキャッチを用いずばね付き蝶番だけで開き戸(2)の閉止力を確保している場合)から遠いため地震時の開き戸 2 の動きが最も大きくロック機構にとっ ()てロックが不安定になるという問題が生じる場合があるからである。
地震時ロック装置を開き戸(2)の自由端から蝶番側へ離れた位置に取り付けると開き戸 2 の動きが少なくなるためロック機構にとってロッ ()クが確実になるのである。
マグネットキャッチなしでコスト削減したい場合にこの取り付け方法でロックが確実になるという非常に重要な効果が達成出来る。
() , 図22 図21も同様 及び図24は本発明の地震時ロック装置を示し該ロック装置は係止手段(4)が横向きに突出するものである(これに対して図19は係止手段(4)が下向きに突出するものであった 。)すなわち図19は家具,吊り戸棚等の天板下面に固定された状態で係止手段 4 が下向きに突出するのに対して図22及び図24の地震時ロッ ()ク装置は家具,吊り戸棚等の天板下面又は底板上面に固定された状態で係止手段(4)が横向きに突出する(図19は開き戸(2)の上端付近() )。 の側面図であったが図22は開き戸 2 の開放端付近の平面図であるここで係止手段(4)が下向きに突出する場合は係止手段(4)を重力と併用して磁力により開き戸(2)の係止具(5)に係止させることになる。
これに対して係止手段(4)が横向きに突出する場合は係止手段(4)を重力と併用せず磁力だけにより開き戸(2)の係止具(5)に係止させることになる。
初期状態(地震のない通常の待機状態)では係止手段(4)は装置本体(3)の後端壁面(3h (図示のものはやや傾斜)で安定状態になっ )ている。
地震時には係止手段(4)が前進し前進位置で磁石(5c)の磁力(重力と併用せず)に吸着されて横向きに突出する。
これにより図19と同様に係止手段(4)の係止部(4a)が側方にある係止具(5)の係止部(5b)に係止される。
この状態で係止手段(4)の係止部(4a)は装置本体(3)の停止部(3a)で停止され開き戸(2)はその位置でロックされる。
図22及び図24の本発明の地震時ロック装置のその他の解除等の作用については図19のものと同様である。
図23は本発明の他の地震時ロック装置を示し,該ロック装置は前述の図18の地震時ロック装置と類似する。
図23の地震時ロック装置においては家具,吊り戸棚等の天板下面又は底板上面に固定された状態で係止手段(4)が横向きに突出する(図23は平面図であることに注意 。)要するに以上の図21乃至図24の地震時ロック装置は図25に示されるB位置又はT位置に取り付けられそして係止手段(4)が横向きに突出するものである。図18及び図19のものは図25に示されるT位置に取り付けられそして係止手段(4)が下向きに突出するものである。
逆に図21乃至図24の地震時ロック装置を図25に示されるS1,S2又はS3の位置に取り付けた場合は係止手段(4)が下向きに突出することに気付くべきである。
更に図18及び図19の地震時ロック装置を図25に示されるS1,S2又はS3の位置に取り付けた場合は係止手段(4)が横向きに突出する。
横向きに係止手段(4)が突出するものは前述の図10乃至図13に既に実施例が示されていたから図21乃至図24の地震時ロック装置はこれと同様に構成されただけである。
以上で図25に示されるT,B,S1,S2及びS3位置を(その他の実施例もあるが)例えば図18乃至24の地震時ロック装置は選択可能であることが理解されたことと思う(段落【0009 ) 。」】・「…例えば図1乃至図5のものの様に静止位置から前方へのみ動くことが出来るものではゆれのエネルギーを蓄積出来ない(感度が落ちる)だけでなく振動数の選択も出来ないのでありこの点で両者は相違するのである。… (段落【0012 ) 」】(ウ)図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である )。
(比較のための地震時ロック装置の断面側面図) ・ 図1【】(同上作動状態図) ・ 図2【】(同上作動状態図) ・ 図3【】(同上作動状態図) ・ 図4【】(比較のための他の地震時ロック装置の概念図) ・ 図20【】(本発明の地震時ロック装置の取り付け位置を示す正面図) ・ 図25【】(エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば,原出願の当初明細書(甲2の8)には 「比較のためのロック装置(従って本発明ではない 」として本件明 , )細書(甲18)の図1〜図4と同内容である図1〜4が示され,そのた「 」, め図面の説明としても 比較のための地震時ロック装置の断面側面図「同上作動状態図」とされている。
しかし,上記によれば,原出願の当初明細書においては,図18ない,, , , し図24の地震時ロック装置においては 取り付け位置として T BS1,S2及びS3位置が選択可能であるとされている(段落【0009 )が,図1〜4で示される比較のための地震時ロック装置について 】は,これをT位置に取り付けることについては記載がされていないということができる。
イ(ア)一方,本件特許の出願時(原出願からの分割出願時,平成16年6月7日)の明細書(以下「本件当初明細書」という。甲2の15)の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
・「図8は本発明の方法を示し,該方法は開き戸(2)の自由端から蝶番側へ離れた位置にロック装置を取り付ける点に重要な特徴がある。
開き戸(2)の自由端に取り付けると蝶番(特にマグネットキャッチを用いずばね付き蝶番だけで開き戸(2)の閉止力を確保している場合)から遠いため地震時の開き戸 2 の動きが最も大きくロック機構にとっ ()てロックが不安定になるという問題が生じる場合があるからである。
地震時ロック装置を開き戸(2)の自由端から蝶番側へ離れた位置に取り付けると開き戸 2 の動きが少なくなるためロック機構にとってロッ ()クが確実になるのである。
マグネットキャッチなしでコスト削減したい場合にこの取り付け方法でロックが確実になるという非常に重要な効果が達成出来る。
次に図9に示されるT,B,S1,S2及びS3位置(その他の実施例もあるが)は一般的に地震時ロック装置の取り付け位置として選択可能であることを示す。しかし本発明の方法は図8において説明した通りT位置にロック装置を取り付けるのである(すなわち開き戸(2)の自由)。」(【】) 端でない位置にロック装置を取り付けるのである段落 0009(イ)また,本件当初明細書(甲2の15)の図面には,図1〜図4として,上記ア(ウ)の原出願の当初明細書(甲2の8)及び上記2( )ア記1載の本件明細書(甲18)と同一の図1〜図4が示されている。また,【図面の簡単な説明】の記載内容は,本件明細書の記載と同一の記載内容である(上記ア(ウ)の原出願の当初明細書の記載とは異なることとなる 。)また,図8は本件明細書の図5と,図9は本件明細書の図6とそれぞれ同一である(平成17年4月26日付け手続補正〔甲2の20〕によりそれぞれ図5,図6とされたものである 。)ウ上記イのとおり,本件特許出願にかかる本件当初明細書(甲2の15)においては,図1〜図4で示されるロック装置をT位置に取り付けるものとされているところ,上記ア(エ)において検討したとおり,原出願の当初明細書(甲2の8)には,本件当初明細書と同一の図1〜図4で示される「比較のための地震時ロック装置」については,これをT位置に取り付けることについて,記載がされていなかったものである。
そうすると,本件特許出願は,原出願の当初明細書には記載されていない本件特許発明1に係るロック装置をT位置に取り付ける事項を含むものであるから,特許法44条1項に規定する適法な分割出願とすることはできない。そうすると,本件特許出願について,本件分割前の原出願の出願日(平成8年5月27日)への遡及を認めることは出来ず,その基準時は本件特許の出願日(分割出願の日)である平成16年6月7日となる。
そして,上記のとおり,原出願の公開公報(甲1,公開日 平成10年2月3日)には,本件特許発明1の実施例に用いられる地震時ロック装置と同一の地震時ロック装置及びその使用方法が開示され,その地震時ロック方法を用いた家具(本件特許発明3)及び吊り戸棚(本件特許発明4)についても開示されているから,本件特許発明1,3及び4は,原出願の公開公報(甲1)に記載された発明と同一であり,新規性(特許法29条1項3号)を欠如するものであって,これと同旨の審決の判断に誤りはない。
( )原告の主張に対する補足的判断2原告は,原出願の当初明細書記載の図1〜図4の実施例は天板下面にロック装置が取り付けられており,左右方向への動きは任意に選択可能であり,原出願の当初明細書の図1〜図4で示されるロック装置を 同じく図25 本,(件出願の当初明細書の図9)で示されるT位置に設ける発明は,原出願に記載されていた複数の発明を組み合わせて減縮したものであるから,適法な分割出願である旨主張する。
しかし,原告主張の減縮した発明については,上記( )のとおりT位置に1ロック装置を設けることの記載自体がないものであるから,原出願の当初明細書には記載がないというほかなく,原告の上記主張は採用することができない。
4取消事由3(明確性要件違反の判断の誤り)について( )原告は,審決が,本件特許発明1の「わずかに開かれる「わずかに開1 」,かれた「開き戸の自由端でない位置」との記載はいずれも不明確であると 」,して 「…本件特許発明1は,同発明に係る特許請求の範囲の請求項1の記 ,載が明確でないということができ,また,本件特許発明1を引用する本件特許発明3,4についても,同発明に係る特許請求の範囲の請求項3,4の記載が明確でないということができる(25頁5行〜8行)とした判断は誤 。」りである旨主張する。
ア本件特許発明1の特許請求の範囲の記載は前記第3,1( )記載のとお2りであるところ,そこには 「…係止手段が地震のゆれの力で開き戸の障 ,害物としてロック位置に移動しわずかに開かれる開き戸の係止具に係止する…「…係止後使用者が閉じる方向に押すまで閉じられずわずかに開か 」,れた前記ロック位置となる…」との記載があり,それぞれ係止手段が係止具に係止してロック位置になると,開き戸をわずかに開いた位置で係止することが記載されている。
イまた 本件明細書 甲18 の発明の詳細な説明の記載内容は上記2( ) ,()1アのとおりであるところ,この「わずかに開かれ」については 「…更に,ゆれの力により図3に示す様に開き戸(2)がわずかに開くと係止手段(4)の係止部(4a)が係止具(5)の係止部(5b)に係止される。
… (段落【0006 )と記載されている。そして,図3で示される係止 」】手段 4 が係止具 5 に係止している状態がロック装置が開き戸を ロッ ()() 「ク」していると解されることから 「係止手段が…わずかに開かれる開き ,戸の係止具に係止する「わずかに開かれた前記ロック位置となる開き 」,戸 ,及び「…更にゆれの力により図3に示す様に開き戸(2)がわずか 」()()()() に開くと係止手段 4 の係止部 4a が係止具 5 の係止部 5b。 」, 。 に係止される … の各表現は 図3の状態を表わしていると判断されるこれらによれば,このときの図3における係止手段(4)の係止部(4)()() () a と係止具 5 の係止部 5b が係止している状況での開き戸 2と本体(1)との間隔が,本件特許発明1における「わずかに」であると一応理解できる。
上記のとおり本件明細書の発明の詳細な説明の記載と図面とを参酌した上で,本件特許発明1は,地震時において本体側に設けられた係止手段の係止部が,開き戸の係止具の係止部に当たり,それ以上開き戸が開かないようにするとの構成を理解したとしても,その開き戸が開く程度については,特許請求の範囲の記載に「わずかに」と極めて抽象的に表現されているのみで,特許請求の範囲の他の記載を参酌しても,その内容が到底明らかになるものとはいえない。
そして,本件明細書の発明の詳細な説明にも,その「わずかに」で表わされる程度を説明したり,これを示唆するような具体的な記載はない。
そうすると,当業者にとって,その技術常識参酌したとしても,本件特許発明1の「わずかに」と記載される程度を理解することは困難であっ, 。, て 特許請求の範囲の記載が不明確であるといわざるを得ない この理は本件特許発明1の記載を引用する本件特許発明3・4についても同様である。審決の判断に誤りはない。
( )原告の主張に対する補足的判断2ア原告は,本件特許発明1の特許請求の範囲記載の「押すまで閉じられずわずかに開かれた」との構成について,係止状態が,地震のゆれの力では閉じられず,ゆれの力より大きい押す力では閉じられる係止状態であれば足りるから,同構成については,慣用技術を用いることによって,実施例以外の具体的な構成を想定することができる旨主張する。
しかし 「わずかに」で表わされる特許請求の範囲の記載が明確でない ,ことについては,上記( )のとおりであり,慣用技術を用いることにより1その記載の範囲が明確になるものではないから,原告の上記主張は採用することができない。
イまた原告は,審決が,本件特許発明1の「係止手段が地震のゆれの力で開き戸の障害物としてロック位置に移動しわずかに開かれる開き戸の係止具に係止する」との構成については,本件明細書(甲18)の段落【0006】の「この状態で地震が起こると図2に示す様に係止手段(4)が動いて係止具(5)に接触する。更にゆれの力により図3に示す様に開き戸(2)がわずかに開くと係止手段(4)の係止部(4a)が係止具(5)()。」 ,, の係止部 5b に係止されるとの記載と整合していない すなわち,「 , 上記特許請求の範囲の記載によると係止手段のロック位置への移動と」,【】, 係止手段の係止具へ係止 が同時に生じるところ 段落 0006 では「係止手段が係止具へ接触した後,さらなる揺れによって係止手段が係止具へ係止」する順序となっており,本件特許発明1の構成が不明確である旨指摘する(23頁下5行〜14行)のに対し,急激に大きい地震のゆれが生じた場合は係止手段の移動開始と開き戸の開き開始が同時であることは技術常識であり,発明の詳細な説明は小さいゆれから次第に大きいゆれになっていく地震についてのプロセスを説明したものであり,明確性要件違反はない旨主張する。
しかし,上記原告の主張は,本件特許発明1では,係止手段のロック位置への移動と係止手段の係止具への係止が同時に生じる旨を指摘する審決の上記理解を誤りとする理由とはならないうえ,係止手段のロック位置への移動と係止手段の係止具への係止が同時に生じるとすると,本件明細書の発明の詳細な説明には,これが同時に生じる場合の説明がなされていないことに変わりはない。一方,仮に本件特許発明1を,係止手段のロック位置への移動後に,係止手段の係止具へ係止が生じると解した場合には,開き戸が開く以前にすでに係止手段はロック位置にまで移動しているのであるから,本件特許発明1の課題である「開き戸の自由端に取り付けると蝶番から遠いため地震時の開き戸の動きが最も大きくロック機構にとってロックが不安定になる」という問題はそもそも生じないことになる。そうすると,いずれにしろ本件特許発明1が明確であるとする理由とはなり得ないものであって,原告の上記主張は採用することができない。
5結語以上のとおりであるから,原告主張の取消事由は全て理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 今井弘晃
裁判官 真辺朋子