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関連審決 無効2008-800202
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ワ3494特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成20ワ4754損害賠償請求事件 判例 特許
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平成20ワ36028特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 技術的思想 /  有用性 /  新規性 /  公然実施(29条1項2号) /  頒布された刊行物 /  アクセス /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  周知技術 /  慣用技術 /  公知技術 /  技術的範囲 /  発明の詳細な説明 /  実施料相当額 /  クレーム /  援用権(援用) /  権利の濫用(権利濫用) /  原出願日 /  参酌 /  技術的意義 /  発明の要旨認定 /  同一の作用効果 /  容易に想到(容易想到性) /  信義則 /  禁反言 /  特許発明 /  実施 /  加工 /  交換 /  構成要件 /  業として /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  乗じた額 /  実施料 /  相当因果関係 /  不法行為(民法709条) /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 19年 (ワ) 13513号 特許権侵害差止等請求事件
原告株式会社 島津製作所
同訴訟代理人弁護士上原理子
同 上原健嗣
同訴訟代理人弁理士喜多俊文
同 開本亮
同 江口裕之
同補佐人弁理士豊岡静男
被告株 式会 社イシダ
同訴訟代理人弁護士伊原友己
同 加古尊温
同 岩坪哲
同 速見禎祥
同補佐人弁理士吉村雅人
同 藤岡宏樹
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2009/10/29
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1被告は,別紙物件目録記載の各物件を製造し,販売してはならない。
2被告は,前項記載の各物件を廃棄せよ。
3被告は原告に対し,3億7150万9000円及びうち2億0795万円に対する平成19年11月7日から,うち1億6355万9000円に対する平成20年11月26日から各支払済みまで年5%の割合の各金員を支払- 2 -え。
4原告のその余の請求を棄却する。
5訴訟費用はこれを2分し,その1を被告,その余を原告の各負担とする。
6この判決の第1項及び第3項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1当事者の求めた裁判1原告1被告は,別紙物件目録記載の物件を製造し,販売してはならない。
()2被告は,前項記載の物件を廃棄せよ。 ()3被告は,原告に対し,17億5968万円及びうち9億3614万円に対 ()する平成19年11月7日から,うち8億2354万円に対する平成20年11月26日から各支払済みまで年5%の割合の各金員を支払え。
4訴訟費用は被告の負担とする。
()5仮執行宣言()2被告1原告の請求をいずれも棄却する。
()2訴訟費用は原告の負担とする。 ()第2事案の概要1前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない )。
1当事者()原告は,放射線機器の製造販売,計量器の製造販売,産業機器及びその他の機器の製造販売等を目的とする株式会社である。
被告は,計量器及びこれに関連する器物の製作修理及び販売等を目的とする株式会社である。
2本件特許権()原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特許」という。また,下記「特許請求の範囲」の【請求項1】の発明を「本件特許発明」という )を有している。 。
特許番号特許第3804687号発明の名称X線異物検査装置出 願 日平成18年3月8日出願番号特願2006-62993号分割の表示特願2004-366932号の分割原出願日平成9年12月18日登 録 日平成18年5月19日特許請求の範囲「 請求項1】【X線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置において,一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として,少なくとも被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレームと,漏洩X線を防止するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバーとを備え,前記カバーは前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備えるとともに,前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具を備えることを特徴とするX線異物検査装置」3構成要件の分説()本件特許発明構成要件は,次のとおり分説される(以下,各構成要件を,それぞれに付した符号に対応させて「構成要件A」などという。。)AX線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置においてB一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として,少なくとも被検査物を移動する搬送機構及び該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレームとC漏洩X線を防止するために前記搬送機構及び前記ラインセンサを被うカバーとを備えD前記カバーは前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備えるとともにE前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具を備えることを特徴とするFX線異物検査装置4被告の行為()被告は,業として,別紙物件目録記載の9機種のX線異物検査装置(以下,9機種併せて「被告製品」という )を製造し,販売している。 。
2原告の請求原告は,被告製品を製造販売する被告の行為が本件特許権を侵害するとして,特許法100条1項に基づく被告製品の製造販売の差止め及び同条2項に基づく被告製品の廃棄並びに民法709条不法行為に基づく損害賠償として,17億5968万円及びうち9億3614万円に対する本件訴状送達の日の翌日である平成19年11月7日から,うち8億2354万円に対する平成20年11月21日付け訴え変更申立書送達の日の翌日である同月26日から各支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払いを求めている。
3争点1被告製品が本件特許発明技術的範囲に属するか。(争点1)()2本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものか (争点2) () 。
公然実施 (争点2-1)本件特許は特許法29条1項2号に違反して登録されたものかイ進歩性の欠如 (争点2-2)本件特許は特許法29条2項に違反して登録されたものか。
3損害の額 (争点3)()第3当事者の主張1争点1(被告製品が本件特許発明技術的範囲に属するか)【原告の主張】1被告製品の構成()被告製品は,次のとおりの構成を備える。
aX線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置である。
b搬送コンベアによって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持するラインセンサカバーは,被検査物を移動する搬送コンベアを載設するフレームでもあって,一方の端部を自由端とし,他方の端部を支持端として片持ち支持されている。
c漏洩X線を防止するために,前記搬送コンベア及び前記ラインセンサを被うX線漏洩防止部材を備えている。
d前記X線漏洩防止部材は,前記片持ちフレームの自由端側において,開閉自在な検査室ドアを備えており,これを閉じると前記搬送コンベアの側面や底面の一部が隠蔽され,これを開くと前記搬送コンべアの側面や底面が露出される。
e前記検査室ドアは,固定器具を備え,閉鎖状態を保持する。
fX線異物検査装置である。
2本件特許発明との対比()ア被告製品の構成aは構成要件Aを充足する。
イ被告製品の構成bの搬送コンベアを載設するラインセンサカバーは,片持ちフレームであって,構成要件Bの搬送機構及びラインセンサを支持する片持ちフレームにも相当し,被告製品の構成bは構成要件Bを充足する。
ウ被告製品の構成cは,X線漏洩防止部材をもって,前記搬送コンベア及び前記ラインセンサを被うことによって,漏洩X線防止という目的を達成することができるものであり,構成要件Cを充足する。
なお,構成要件Cの「カバー」に対応する被告製品cのX線漏洩防止部材とは,別紙カバー説明図1ないし3に示すとおり,上面パネル(コンベア部及びラインセンサ部を入れる検査室の上面のパネル ,左右側面パネ )ル(コンべア開口部側の側面のパネル ,背面パネル,正面パネル(検査 )室ドア)及び底面パネルによって構成された多面体のボックスを指すものである。
エ被告製品の構成dは,検査室ドアを閉じたときは,前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送コンベアの側面や底面が隠蔽され,前記検査室ドアを開くことによって,前記搬送コンべアの側面や底面が露出されるので,前記構成dは構成要件Dを充足する。
オ被告製品の構成eは構成要件Eを充足する。
カ被告製品の構成fは構成要件Fを充足する。
3被告の主張に対する反論()ア構成要件Cの充足性被告は,構成要件Cの「カバー」は 「搬送機構」及び「ラインセン(ア) ,サ」を開放面がないように覆い隠すものでなければならないと主張する。
しかし,構成要件Cのカバーは,漏洩X線を防止する目的で搬送機構とラインセンサを被うものであるから,カバー以外の他の部材によって,X線の漏洩を防止することができる場合には,それによって同目的を達成することができる。したがって,カバーは必ずしも搬送機構とラインセンサを全面的に「被い隠す ,あるいは「被い包む」ものとする必要 」はない。構成要件Cの「被う」とは「覆い隠す」という限定的な意味を有する用語として用いられているわけではない。元来 「被う」という ,用語は 「 上に)被せる」という用語と同義であり 「覆う」の意味す ,( ,る「覆い隠す」とか「覆い包む」という全面的な隠蔽を必然とするものではない。
本件特許に係る明細書及び図面(甲2参照:以下「本件明細書」という )の実施例において,被検査物の搬入口及び搬出口を除き,検査室 。
の上面,底面,正面及び背面を全てカバー6によって被う構成としているのは,従来技術例として,被検査物の搬入口及び搬出口を除き,検査室の上面,底面,正面及び背面を全てカバー106によって被う構成のX線異物検査装置を取り上げたことに対比させたものにすぎず,あくまで1つの典型的な実施例にすぎないものである。
上記のとおり,漏洩X線を防止する「カバー」は 「前記搬送機構お(イ) ,よび前記ラインセンサ」を全面的に被い包む必要はなく,他の部材と相まってX線の漏洩を防止することができれば,搬送機構及びラインセンサの一部を被っているだけであっても足りるところ,被告製品は,ラインセンサを支持し,これを被うカバーでもあり,また搬送コンベアを載設するフレームでもある部材(被告主張の「水平支持部」)によって,検査室の底面側へのX線の漏洩が防止されているので,搬送機構とラインセンサの底面側が全面的にカバーによって被われる必要はない。
したがって,被告製品は,漏洩X線を防止する目的で搬送機構とラインセンサを被っているカバーを備えているということができるのであるから,構成要件Cを充足するものである。
構成要件Dの充足性被告は,構成要件Dの「カバー」は,搬送機構を露出自在に開閉する(ア)開閉部分を備えることが必須であると主張する。
しかし,本件明細書の段落【0009】ないし【0011【00】,13【0015】及び【0034】の各記載からすると,本件特許 】,発明は,搬送用のベルトやX線検出器等の補修,清掃,あるいは部品交換等のメンテナンスを容易にするために,その側面部分及び底面部分に支持のための脚部材が存在しない構成とし,さらに,片持ちフレームで支持される機構を被うカバーを開くことによって,X線異物検査装置の側面部分及び底面部分を開放状態にして,脚部材に干渉されずに側面部分及び底面部分から工具や交換部品を装置内に挿入することができることを特徴とするものである。
したがって,構成要件Dにおける「露出」の意味は,側面部分及び底面部分から工具や交換部品を装置内に支障なく挿入してメンテナンスをすることができるかという観点から判断されなければならない。
この点,被告製品のカバーは,搬送機構の底面を全面的に被い隠して(イ)はいないが,開閉式カバー(検査室ドア)を閉じた状態では,底面がカバーに隠れている。また,検査室ドアが,左右の各1対の脚部を連結する横棒に,相当な幅と長さを有するフレームによって周り止めされているため,側面部分や底面部分から工具や交換部品を装置内に支障なく挿入することはできない。他方,検査室ドアを開いた状態においては,検査室ドアは下方に回転移動して大きく開き,その結果,側面部分及び底面部分が開放され,下方に存在する脚部材に全く干渉されることなく,側面部分や底面部分から工具や交換部品を装置内に挿入することができ,搬送用のベルトやX線検出器等の補修,清掃,あるいは部品交換等のメンテナンスを容易にするという上記目的を達成することができる。
このように,被告製品の搬送機構の底面は常に「露出」しているということはできず,検査室ドアの開放により「露出」されるのであるから,被告製品のカバーは,片持ちフレームの自由端側において,搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分(検査室ドア)を備えている。
なお,被告製品の脚部について,同脚部は搬送機構の下部方向にはあ(ウ)るが,搬送機構等を支持する脚部ではなく,被告が主張する従来技術の支持脚には相当しない。しかも,被告製品の搬送機構等は,本件特許発明と同様に片持ち支持されているので,検査室ドアを開いて搬送機構等のメンテナンスをする際,脚部は工具や交換部品の挿入について干渉する位置関係にはなく 「底面部分に支持のための脚部材が存在しない構 ,成」に該当する。
よって,被告製品は構成要件Dを充足する。
(エ)【被告の主張】被告製品は,以下のとおり構成要件C及びDを充足せず,本件特許発明技術的範囲に属さない。
1被告製品の構成()X線異物検査装置本体は正面側2本,背面側2本の合計4本の脚部を有する。
X線を検出するラインセンサは,検査装置背面側に溶接された水平支持部に取り付けられ,搬送コンベアのフレームは該水平支持部上に載置されている。搬送コンベアの一部を構成する無端状の平ベルトは,上記水平支持部を中心にその周囲を回動する。
搬送コンベアの左右方向の開口部には防護カーテン(訴状添付第4図参照)が設けられており,該防護カーテンによって搬送コンベアの左右方向の開口部が遮蔽されている。
また,検査装置の正面側に設けられた開閉式カバー(検査室ドア)によって搬送コンベア及び上記水平支持部の前面側が遮蔽されているが,該検査室ドアの閉鎖時においても,搬送コンベア及び水平支持部の底面側は遮蔽されず,該搬送コンベア及び水平支持部底面側は常に露出開放状態となっている。
検査室ドアの開放時には,該ドアは正面側の脚部より前側で周り止めされ脚部より背面側に位置することができない。
2構成要件Cの充足性 ()ア構成要件Cの「カバー」の解釈構成要件Cの「カバー」は,構成要件Bの「搬送機構」及び「ラインセンサ」を「被う」もの,即ち,漏洩X線を防止するために,両部材を開放面がないように覆い隠すものでなければならない。
このことは,本件明細書からも明らかである。すなわち,従来技術を示す「図6において…搬送機構103,該搬送機構を被うカバー106」が開示され(段落【0007【図6】においては,被検査物の搬入口及 】),び搬出口を除き,異物検査室の天面,底面,正面,背面が全てカバー106によって覆われている。また,本件特許発明実施例を示す「図1,2において,カバー6は搬送機構3及びX線検出器4を被い,漏洩X線の防止及び防塵を行なっている (段落【0029【図1【図3】にお 」】)。】,いては 【図6】と同様,被検査物の搬入口及び搬出口を除き,異物検査 ,室の天面,底面,正面及び背面が全てカバー6によって覆われている。
したがって,搬送機構及びラインセンサを覆わない構成は構成要件Cを充足しない。
イ被告製品との対比被告製品には本件特許発明の「カバー」に相当する構成が存在しない。
原告が主張する「底面のパネル」は,検査室ドアにおける細幅の一面あるいは検査室出入り口の両隅の僅かな面であり,これは明らかに「搬送コンベア」及び「ラインセンサ」を覆うものではない。すなわち,被告製品においては搬送コンベアの底面側には「カバー」に相当する部材が存在せず,常時開放状態となっている。
よって,被告製品は「前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバー」を備えないので,構成要件Cを充足しない。
3構成要件Dの充足性()ア本件特許発明において 「カバーは…搬送機構の側面や底面を露出自在 ,に開閉する開閉部分を備える」こと(構成要件D)が必須とされている。
これは,従来のX線異物検査装置では「搬送機構やX線検出器等は,X線の漏洩防止…のためにX線遮蔽を兼ねたカバーによって被われる構成であり,…そのため,搬送用のベルトやX線検出器等の補修,清掃,あるいは部品交換等のメンテナンスを行うには,カバーを分解して取り外す必要」があるからである(段落【0009。】)しかるに,被告製品では,搬送機構の底面側はX線遮断を兼ねたカバーによって覆われていないために,底面を露出/遮蔽自在に開閉し,カバーの遮蔽時には同「カバー」によって漏洩X線を防止するという構成を,もとより採用し得ないのである。
イまた,本件特許発明において「搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する」こと(構成要件D)の技術的意義は 「カバーを取り外した状態に ,おいても,支持脚の陰となる部分のメンテナンスが困難であり,工具や交換具品が支持脚と干渉して挿入が困難となる (段落【0009 )とい 」】う課題を解決するために 「X線異物検査装置を支持する従来の支持脚を ,省く構成とすることによって,搬送用のベルトやX線検出器等の…メンテナンスを容易とする (段落【0011 )ことを目的として,搬送機構 」】の側面や底面を被覆状態と露出状態とに「露出自在」に開閉するようにした点にある。本件明細書の【図6】は従来技術の支持脚を示すものであるところ,その装置手前(操作者側)には支持脚101が存在する。他方,本件特許発明実施形態を示す【図1】及び【図3】においてはその支持脚が存在せず,それゆえ【図3】のごとくカバーを開ければ,支持脚に干渉することなく搬送機構の底面部分を露出状態とすることが可能になる。
しかるに,被告製品の手前(操作者側)には,従来技術と同様に支持脚に相当する脚部,即ち,手前側と奥側に全部で4本の脚が存在し,その脚にはフレームを介して開閉式の検査室ドアが取り付けられている。
したがって,従来技術での操作者側支持脚を省略することにより工具や交換部品の挿入(支持脚の陰になる部分のメンテナンス)を容易化するという本件特許発明技術的思想(目的及び作用効果)は,被告製品においては全く無縁のものである。この意味においても,装置手前側の支持脚が存在する被告製品は,搬送機構の底面が常に露出され,被覆状態と露出状態とを自在に変更する開閉カバーを備えないと評価でき,被告製品は本件特許発明構成要件Dを充足しない。
4信義則違反()本件において,原告は,X線異物検査装置の側面(操作者側)に設けられた支持脚が搬送機構を支持するものでさえなければ,被告製品のように操作者側に支持脚が存在しても,本件特許発明に含まれると広範な解釈を主張している。
これに対し,原告は,本件特許に係る無効審判事件(無効2008-800202号:以下「別件無効審判事件」という )における平成20年12 。
月26日付け答弁書(乙34)において,本件特許発明の特徴は,開閉カバーの開放側に脚部や支柱を有しないこと(開閉カバーの開放側には脚部や支柱を除いたこと)にあると主張している。
このように,たとえ脚部が搬送機構の下部方向にあったとしても「搬送機構を支持する支持脚」が開閉カバーの開放側に存在しないことが本件特許発明の特徴であるとの本件侵害訴訟での広いクレーム解釈とは裏腹に,別件無効審判事件においては,開放側に支持脚が存在しないこと,換言すれば,搬送機構を支持する支持脚であるか否かを問わず,開閉カバーの開放側に支持脚が存在するものは本件特許発明の要旨から外れるという,狭い発明の要旨を主張することによって,無効理由を免れんとしているのである。
原告の本件侵害事件における主張は別件無効審判事件の答弁書における主張との関係で禁反言に該当し,かかる主張に基づく権利行使は,民法上,訴訟上の信義則に反するものであって,権利の濫用を構成する。
5以上より,被告製品は本件特許発明技術的範囲に属しない。
()【原告の反論 (信義則違反の主張について) 】1原告は,本件において,本件明細書の【図6】に示される支持脚101は,()両持ち支持のための脚部であり,メンテナンスに支障を来すものであるから,被告製品の脚部はこれに相当しないと主張し,さらに,被告製品の搬送機構等は,本件発明と同様に片持ち支持されていて,検査室ドアを開いて搬送機構等のメンテナンスをする際,脚部は工具や交換部品の挿入について干渉する位置関係にはないから,底面部分に支持のための脚部材が存在しない構成に該当すると主張した。
2原告は,別件無効審判事件における答弁書において,本件発明は,搬送機()構及びラインセンサを支持する片持ちフレームを備えることにより,自由端側では,メンテナンスの際に工具や交換部品の挿入について干渉する位置に脚部が存在しない構成とすることができると主張したものであり,本件訴訟における主張と別件無効審判事件における主張とは完全に一致している。
3よって,原告の本件訴訟における主張は権利の濫用に当たらない。
()2争点2-1(公然実施)【被告の主張】1公用物件()原告の子会社である島津メクテム株式会社(以下「島津メクテム」という )は,被告を介し,遅くとも平成9年5月8日までに,X線異物検査装 。
置「SLDX-1500 (以下「公用物件」という )を株式会社加ト吉に 」 。
販売した。
公用物件は以下の構成□ないし□を備える。
□X線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置である。
□一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として,被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレームを有する。
□漏洩X線を防止するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被う検査室ドアを備えている。
□前記検査室ドアは,前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面及び底面を露出自在に開閉する開閉部分を備えるとともに,前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具を備える。
□ 以上を特徴とするX線異物検査装置である。
2本件特許発明との同一性()ア公用物件の構成□及び□は本件特許発明構成要件A及びBとそれぞれ同一である。すなわち,公用物件のラインセンサ及び搬送機構は,背面側で支持され,正面側で自由端となる片持ちフレームの構成を備えている。
なお,搬送機構の自由端側にはヒンジによって上下方向に回動自在なブラケットが設けられ,該ブラケットを上方に回動して搬送機構の自由端と係合させることも出来るようになっているが,このことは,公用物件が構成要件Bを備えている事実を全く左右しない。本件明細書に記載された作用効果は「片持ちフレームとすることによって,X線異物検査装置の側部方向や底部方向が開放されるため,工具や部品を脚部に干渉されることがなく容易に挿入することができ,メンテナンス操作を行うことができる」というものであり(段落【0035,公用物件においても 「片持ちフ 】),レームとすることによって,X線異物検査装置の側部方向や底部方向が開放」され 「メンテナンス操作を行うことができる」ようになっているか ,らである。
また,公用物件の搬送機構は,キャスターでX線異物検査装置本体から引き出すことも出来るようになっているが,かかる構成は本件特許発明構成要件との関係では単なる付加にすぎない。
イ公用物件の構成□は,原告の主張を前提とすれば,本件特許発明構成要件Cを充足する。すなわち,原告は,構成要件Cに関し 「漏洩X線を ,防止する『カバー』は 『前記搬送機構および前記ラインセンサ』を全面 ,的に被い包む必要はなく,他の部材と相まってX線の漏洩を防止することができれば,搬送機構およびラインセンサの一部を被っているだけであっても足りる」と主張している。しからば,公用物件において,搬送機構下部に設けられた底板(乙6の写真?B)が,検査室ドア(搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分。乙6の写真?@)並びに筐体の天面及び背面と相まってX線を防止することができるものであるから,公用物件は本件特許発明構成要件Cを充足することになる。
ウ公用物件の構成□も,原告の主張を前提とすれば,本件特許発明の構成, , 要件Dを充足する。なぜなら,原告は 「構成要件Dの『露出』の意味は側面部部分及び底面部分から工具や交換部品を装置内に支障なく挿入してメンテナンス」できればよいとしているところ,公用物件においても検査室ドア(カバー)が開いた状態で搬送機構の側面部分及び底面部分から工具や交換部品を挿入することは可能であって(乙6の写真?B ,原告のい )う「露出自在に開閉する開閉部分」を備えることになるからである。そして,公用物件は,開閉部分の閉鎖状態を保持する固定金具を備える。
エ公用物件の構成要件□は本件特許発明構成要件Eを充足する。
3以上のとおり,原告の主張を前提とすれば,本件特許発明は原告の子会社()が本件出願前に製造販売した公用物件により,全部公知の発明である。
【原告の主張】1乙第6号証の信用性()ア被告が公用物件の構成を示すものとして提出する乙第6号証の写真撮影報告書に掲載された装置は,島津メクテムが製造し被告が販売していた「SLDX-1500」と構成要素が明らかに異なっており,かかる装置が被告を介してそのままの状態で販売されていたとは到底考えられない。
すなわち,島津メクテムが製造して被告に販売した「SLDX-1500」は,搬送機構を両持ち支持する支持脚の正面側にX線漏洩防止のためのパネル(遮蔽板)が取り付けられている。当該パネル(遮蔽板)は,X線漏洩を防止するために,取り外し厳禁とされており,容易に取り外すことができないように,ボルトでしっかりと締め付けられている。
X線関連機種を取り扱う業者が,自ら施した安全対策上の部材を故意に取り外して客先に販売することは法律上許されるものではないので,乙第6号証に掲載された装置は,販売製品そのものを示しているものではない。
イそもそも,被告が提出した乙第6号証の写真が撮影されたのは,販売先である株式会社加ト吉の工場内ではなく,被告の事業所内であり,同証拠に掲載された装置が,本件特許に係る出願前に販売した装置であるのか,単なる仕掛品として被告の事業所内に放置されていたのか,あるいは,本件特許に係る出願後に販売した装置で,廃棄処分となったものを回収してきたものかなど,その実態は全くもって不明である。
ウよって,乙第6号証は,公然実施を示す証拠としては到底信用できるものではない。
2公用物件の構成(), 公用物件たる「SLDX-1500」の正確な構成は以下のとおりであり被告の主張する□ないし□の構成は否認する。
□X線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置□1 4本の支持脚にて両持ち支持されている搬送機構□2 一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として,搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレーム□1 漏洩X線を防止するために前記両持ち支持脚の正面側支持脚に設置されたパネル(遮蔽板)□2 前記搬送機構および前記ラインセンサを覆う検査室ドア□前記検査室ドアは,前記両持ち支持されている支持脚の正面側において,開閉する開閉部分を備えるとともに,前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具を備える□以上を特徴とするX線異物検査装置である。
3構成要件Bの相違について()ア公用物件の搬送機構は,背面側で片持ち支持されているのではなく,4本の支持脚によって両持ち支持されている。正面側の支持脚の上部に備わっているブラケットは,搬送機構と支持脚の係合を解除するものであるが,ブラケットを解除したときは,背面側の2本の支持脚だけでは搬送機構の荷重を受けて支えることができず,搬送機構が沈むことになる。したがって,公用物件は,X線異物検査時においては,搬送機構の重量及び搬送する被検査物の重量(全機長当たり最大30?s)と支持脚とのバランスの関係から,搬送機構は必ず4本の支持脚で両持ち支持されており,X線発生部の駆動を停止した後,開閉カバーを開けたときには,支持脚が正面側に存在する構成となっている。
この構成は 「カバーを取り外した状態においても,支持脚の陰となる ,部分のメンテナンスが困難であり,工具や交換具品が支持脚と干渉して挿入が困難となる (段落【0009「構成部分のメンテナンスを行う 」】),場合,脚部や支柱等が内部あるいは開閉カバーの開放位置に存在すると,工具や交換部品として干渉して取り扱いや挿入を困難にする場合がある」(段落【0033 )との本件特許発明の従来技術に相当する構成そのも 】のであって,本件特許発明同一の作用効果を奏するものではない。
イまた,公用物件において,搬送機構をキャスターでX線異物検査装置本体から引き出すのは,コンベアベルトの着脱等のメンテナンスのためであり,これは,搬送機構が両持ち支持されていることからくる必然的な構成要素であって 「本件特許発明構成要件と関係のない単なる付加」では ,ない。公用物件は,搬送機構が4本の支持脚によって両持ち支持されている上に,正面側支持脚にはX線漏洩防止用のパネル(遮蔽板)が取り付けられているので,搬送機構をキャスターでX線異物検査装置本体から引き出さなければ,テンションローラや,テールハンドルの取り外し等の搬送用コンベアベルトの着脱及びX線検出器の清掃等が困難だからである。
4構成要件C,Dの相違について()公用物件は,開閉カバーを開けたときには,工具や交換部品の挿入を干渉する位置に,支持脚及びX線漏洩防止用のパネル(遮蔽板)が存在する構成となっているので,工具等の挿入は困難であり,コンベアベルトの補修・清掃などのメンテナンスも困難である。
この構成は,本件特許発明の従来技術における課題を何ら解決しておらず,構成要件Dにいう「露出」の構成にはなっていない。
3争点2-2(進歩性の欠如)【被告の主張】1引用発明(乙2)()本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である特開平9-127017号公報(乙2:以下「乙2公報」という )には 「X線によって被検査物 。,である食品の異物検査を行うX線異物検査装置」であって,搬送機構(コンベア3,4)及びラインセンサ(X線検出器7)を備え 「漏洩X線を防止 ,するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバーとを備え ,」該カバーは「前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備える」ものが開示されている(以下「引用発明」という。。)引用発明の明細書には,同発明における「シールドボックス2」が開閉ドア(開閉部分)を有することの明記はないものの,搬入コンベア3あるいは搬出コンベア4の交換等のために開閉部分を有し,開閉自在となっていることは当業者にとって自明である。あるいは,公用物件の検査室ドアを引用発明のシールドボックス2に適用し 「前記搬送機構の側面や底面を露出自在 ,に開閉する開閉部分を備える」ようにすることは推考容易である。
2引用発明との相違点()引用発明と本件特許発明との相違点は,以下のとおりである。
ア相違点?@本件特許発明では 「一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端とし ,て,少なくとも被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレーム」を有するのに対し,引用発明の明細書にはその明記がないこと(以下「相違点?@」という。。)イ相違点?A本件特許発明では 「前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具を備 ,える」のに対し,引用発明の明細書にはその明記がないこと(以下「相違点?A」という。。)3容易推考()ア引用発明と同一技術分野の「放射線検査装置」に関する特開平9-145343号公報(乙3:以下「乙3公報」という )には 「一方を自由 。,端とし他方の端部を支持端」とする「X線を検出するラインセンサ( X「線センサ5 )を支持する片持ちフレーム」が開示されている( 図1】 」 【(b) 。)また,引用発明と同一技術分野の「簡易型高分解能X線透過自動検査装置」に関する特開平9-72863号公報(乙9:以下「乙9公報」という )には 「一方を自由端とし他方を支持端」とする「水平移送機構 。,( ベルト5d,5d )を支持する片持ちフレーム」が開示されている 「」( 図1】(b) 。【)さらに,引用発明と関連する技術分野の「製造工場や配送現場で食品,食品原材料,食用中間品,或いは,薬品等を連続的に搬送するベルトコンベア」に関する特開平8-310632号公報(乙10:以下「乙10公報」という )にも 「一方を自由端とし他方を支持端」とする「搬送機 。,構( 搬送部6 )を支持する片持ちフレーム」が開示されている( 図 「」 【3。】)引用発明に上記乙3公報,乙9公報及び乙10公報に開示されたラインセンサ・搬送機構を支持する片持ちフレームを適用して相違点?@に係る本件特許発明の構成とすることは,清掃やメンテナンスの利便性確保という一般的課題解決のために当業者であれば容易に想到できる事項である。乙9公報には「シールドボックス1の扉1dを開くことにより,昇降台5やロッドレスシリンダ4等の内部機構のメンテナンスも容易に行なえる」(段落【0021 )との記載が,乙10公報には「脚部がL字状に形成 】され一側部が開放されており搬送部の脱着が容易に行えベルトコンベアのメンテナンスや清掃が容易で衛生的に優れる (段落【0010 )との 」】記載が存在する。そして,引用発明に,同一技術分野に係る乙3公報,乙9公報及び乙10公報を適用する阻害事由も存在しない。
したがって,相違点?@に係る構成を本件特許発明のようにすることは,その出願時,当業者が容易に想到できた。
イ開閉部分(検査室ドア)に閉鎖状態を保持する固定器具を設けることは慣用技術であるから,相違点?Aに係る構成を本件特許発明のようにすることも,その出願時,当業者が容易に想到できた。
ウよって,本件特許発明は特許法29条2項に違反して特許されたものである。
【原告の主張】1引用発明との相違点()引用発明との相違点について,被告は前記相違点?@及び?Aを指摘するが,これら相違点の他に,当初「カバーは前記フレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉可能に開閉する開閉部分を備える」点を相違点として挙げていた。引用発明の明細書には,シールドボックスに開閉ドアを設けることについては何ら記載されていないのであるから,この点は,被告が当初指摘していたように,相違点として挙げるべきである。
仮に,シールドボックスに開閉ドアを設けることは設計的事項であるから,開閉ドアを備えることは相違点として認定する必要はないということができるとしても 「搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉可能に開閉する開閉 ,部分を備える」ことまで,設計的事項ということはできない。
2乙3公報について()ア相違点?@について乙3公報の【図1】(b)のX線センサ5は4本の脚を有する支持台1(ア)に支持されているが,ベルトコンベア12,14は支持台1に支持されているのではなく,コンベア台11に支持されているのであり,かつ,ベルトコンベア12,14やX線センサ5の支持態様については何ら開示されていない。
被告は,同図を根拠として,乙3公報には一方を自由端とし他方を支(イ)持端としてX線センサ5を支持する片持ちフレームが開示されていると主張するが,同図には,4本の脚を有する支持台1がX線センサ5を片持ちしていると推認されるような図面が示されているとはいえても,ベルトコンベア12,14が図示されていないから,同図を根拠として,乙3公報に搬送機構を支持する片持ちフレームが開示されているとはいえない。
イ相違点?Aについて, ,(ア) 本件特許発明構成要件Dは 「片持ちフレームとすることによってX線異物検査装置の側部方向や底部方向が開放されるため,工具や部品を脚部に干渉されることがなく容易に挿入することができ,メンテナンス操作を行うことができる(本件明細書の段落【0035 )との作 。」 】用効果を奏するためのものであり,カバーを開閉して露出させた搬送機構の側面や底面に,工具や部品を挿入するときに干渉するような脚部がないように構成されているものである。
これに対して,乙3公報の【図1】(a)及び(b)では,扉7を上方に開(イ)いたときのコンベア台11の脚の内側には,支持台1の脚が存在しており,工具や部品を挿入するときに干渉することになる。乙3公報に係る発明においては,扉7を開いたときに,コンベア台11が引き出せるようになればよいのであり,コンベア台11を引き出さない状態で工具や部品を挿入して作業をするということは想定されていないから,工具や部品を挿入するときに干渉するような脚部をなくすという技術思想はない。
よって,乙3公報の【図1】における扉7は,片持ちフレームの自由(ウ)端側において搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉可能に開閉するものではないから,乙3公報の構成を引用発明に適用しても 「カバーは ,前記フレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備える」構成を満たすことはできない。
なお,公用物件の検査室ドアは 「前記搬送機構の側面や底面を露出 ,自在に開閉する開閉部分を備える」ものではないから,公用物件の検査室ドアを引用発明のシールドボックス2に適用したとしても,相違点?Aの構成とはならず,推考容易であるとはいえない。
3乙9公報について ()ア乙9公報に係る発明は,昇降台の下方位置でプリント基板のX線画像を撮像面に撮像するものであり,本件特許発明や引用発明のように,被検査物をコンベアで搬送しつつラインセンサで透過X線を検出するものではないから,当然ラインセンサを備えていない。
イまた,乙9公報の【図1】(b)は,プリント基板Pの水平移送機構を有する昇降台を,撮像面まで下降させ,撮像後には再び上昇させなければならず,昇降台を水平状態に維持するために,シールドボックスの壁面にリニアガイドレールを設けているという,引用発明や本件特許発明とは異なる特殊な構造を有するものであり,かつ,その特殊な構造ゆえに,扉を設けるためには,昇降台を片持ち支持しなければならないのである。
そして,引用発明においては,片持ち支持しなくても,シールドボックスに扉を設けることは可能であるから,特殊な構造ゆえに片持ち支持している乙9公報に記載された技術を,引用発明に適用して片持ち支持とする動機付けは全くない。
さらに,乙9公報の【図1】(b)の撮像面は昇降台とは別の箇所に設けられており,撮像面を片持ち支持しているとも記載されていない。
ウしたがって,本件特許発明の「片持ちのフレーム構成とすることによって,X線異物検査装置の側面部分や底面部分に,支持のための脚部材が存在しない構成とすることができ,支持脚に干渉することなく工具や交換部品をX線異物検査装置内に挿入することができる」との技術思想は乙9公報に開示されておらず,乙9公報を参酌したとしても,引用発明において,搬送装置及びラインセンサを支持する片持ちフレームとすることが容易とはいえない。
4乙10公報について()ア乙10公報に記載されたベルトコンベアは,単に食用品や薬品を搬送するものにすぎないから,X線源や透過X線を検出するラインセンサなどは備えていないし,漏洩X線を防止するためのシールドボックスも備えていない。
したがって,乙10公報に記載された単なる搬送用のベルトコンベアに関する技術を,引用発明のX線異物検出装置に適用できるとはいえないし,また,適用したとしても,ラインセンサを片持ち支持することについての動機付けになるものではない。
イ乙10公報には,ベルトコンベアの脚部を略L字状にする作用・効果として,搬送部の脱着が容易に行えること,搬送部を簡単に外すことができること,搬送部のフレームからの挿着や取り外しがその開放側から容易であることしか記載されていないから,ベルトコンベアを簡単に外すことができればよいのである。
それゆえ,ベルトコンベアの下方にラインセンサを設け,全体をシールドボックスで被った場合に,ラインセンサまでを片持ち支持し,ベルトコンベアの側面や底面を露出自在にする必要性はないといえる。
ウしたがって,前記 3 ウでも主張した本件特許発明の技術思想が乙10公()報に開示されておらず,乙10公報を参酌し,適用したとしても,引用発明において,搬送装置及びラインセンサの両者を支持する片持ちフレームとすることが容易とはいえない。
5よって,本件特許発明と引用発明との 「カバーは前記フレームの自由端() ,側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉可能に開閉する開閉部分を備える」との相違点及び相違点?@は,乙2公報,乙3公報,乙9公報及び乙10公報に記載された発明から容易に想到し得るものではない。
4争点3(損害の額)【原告の主張】1被告製品の売上金額()本件特許が登録された平成18年5月19日から平成20年11月21日まで(2年6か月間)の被告製品の売上額は,以下のとおりと考えられる。
すなわち,全国におけるX線食品異物検査装置の売上台数合計及び売上金額合計は,次のとおりである。
平成18年1134台53億5800万円平成19年1854台83億3100万円平成20年1950台(見込み)86億円(見込み)また,平成19年におけるX線食品異物検査装置の市場において,被告の販売台数におけるシェアは40.7%であり,販売金額におけるシェアは39.9%である。そして,被告の各シェアは,平成18年及び20年も概ね同様である。被告が販売しているX線食品異物検査装置のうち,本件の対象としていない装置は大型製品で需要が限られており,販売台数も少なく,全体のシェアの1%程度である。したがって,被告製品の販売金額におけるシェアは少なくとも38%以上と推測される。
そこで,被告製品の売上金額は,以下の計算式により算出される(ただし100万円未満切捨て 。)?@平成18年5月19日〜12月末日12億6600万円計算式:\5,358,000,000×(227日÷365日)×0.38=\1,266,000,000?A平成19年1月1日〜12月末日31億6500万円計算式:\8,331,000,000×0.38=\3,165,000,000?B平成20年1月1日〜11月20日29億0100万円計算式:\8,600,000,000×(325日÷366日)×0.38=\2,901,000,000よって,平成18年5月19日から平成20年11月21日までの間に被告が販売した被告製品の売上合計金額は上記?@?A?Bの合計額である73億3200万円となる。
2特許法102条2項に基づく損害額()ア原告が本件特許発明実施していること原告製品の構成(ア)原告が製造,販売するSLDX-2050,SLDX-2050-U,SLDX-2055,SLDX-2055-U,SLDX-5000XAS及びSLDX-5000XAS-V(以下,これらを併せて「原告製品」という )は,いずれも「一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端 。
として,少なくとも被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレーム」を有し,また 「漏洩X線を防止するために前記 ,搬送機構および前記ラインセンサを被うカバーとを備え,前記カバーは前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備えるとともに,前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具を備える」ものである。
小型装置(イ)SLDX-2050は,平成16年6月8日から11日にかけて,「国際食品工業展」の被告展示ブースにおいて譲渡のための展示がなされ,遅くとも平成16年7月ころには原告による製造販売が開始された。
SLDX-2055は,遅くとも平成19年2月ころには製造販売が開始された。
上記2機種は,平成19年12月ころまで製造販売され,その後,後継機種SLDX-2050-U及びSLDX-2055-Uに切り替えられた。上記機種の変更点はソフトウエア,画面の変更等であって,本件特許発明実施品であることに変わりはなく,原告による製造販売は現在に至っている。
以上の原告4製品は,検査可能な被検査物の幅240?o,高さ120?oの小型装置に分類される。これに対し,被告製品のIX-G-2450,IX-G-2475,IX-GA-2475,IX-G-2480は,いずれも検査範囲の幅240?o,高さ120?oであり,上記の原告4製品と競合する。
中型装置(ウ)SLDX-5000XASは,遅くとも平成14年9月ころから製造販売が開始され,その後,平成20年10月7日から11日にかけて開催された「東京国際包装展」において,後継機種であるSLDX-5000XAS-Vが被告以外の展示ブースにおいて譲渡のための展示がなされ,順次,SLDX-5000XASから切り替えられて,現在に至っている。
以上の原告2製品は,被検査物の幅400?o,高さ150?oの中型装置に分類されるものである。これに対し,IX-G-4075,IX-G, A-4075及びIX-G-4080は,いずれも検査範囲の幅400?o高さ150?oであり,上記原告2製品と同一であって,競合する。被告製品IX-G-4075-A及びIX-G-4080-Aは,いずれも検査範囲の幅400?o,高さ220?oであり,いずれも原告2製品よりも70?o高いものの,同各製品はX線管最大電圧が85kVで被告製品IX-G-4075-Aの75kV,IX-G-4080-Aの80kVよりも高く,厚さがある物も貫通できるので,上記の原告2製品と被告5製品とは競合する。
実施期間(エ)上記のとおり,原告は,本件特許発明実施品である原告製品を,本件特許の登録日である平成18年5月19日から現在に至るまで継続して製造販売しており,被告は,原告製品と代替性があり,競合する被告製品を同一期間において製造販売している。
イ被告製品の限界利益率被告製品の限界利益率は,少なく見積もっても40%を下るものではない。したがって,前記の売上合計金額(73億3200万円)に40%の利益率を乗じて算定した29億3280万円が,被告製品の製造販売により被告が得た利益である。
ウ被告製品における本件特許発明の寄与率X線食品異物検査装置の需要者である食品業者にとって,日常のメンテナンスが容易で,メンテナンス性に優れていることが必要かつ不可欠であり,X線食品異物検査装置の選択購入の動機において極めて重要な要素である。
本件特許発明は,X線食品異物検査装置のメンテナンス性の向上に関する発明であり,被告自ら被告製品についてメンテナンス性をセールスポイントとして宣伝広告していることからも明らかなように,被告製品において,本件特許発明の占める価値は,他の部分の価値と比べて極めて高い。
また,本件特許発明は,X線食品異物検査装置全体の機構・構成に関わる発明であって,被告製品においても,被告製品の装置全体の機構上,重要かつ不可欠なものとなっている。さらに,被告製品において,購入の動機となるべき被告独自の技術は格別認められない。
したがって,被告製品全体の利益に対する本件特許発明の寄与率は60%と認定すべきである。
損害額以上より,被告が本件特許権の侵害行為によって得た利益の額は17億5968万円(\2,932,800,000×60%=\1,759,680,000)であり,特許法102条2項により,原告は同額の損害を受けたものと推定される。
なお,遅延損害金の起算日は,平成18年5月19日から本件訴状を提出した同19年10月末日までの間の損害金9億3614万円について本件訴状送達日の翌日である平成19年11月7日とし,同年11月1日から同20年11月20日までの間の損害金8億2354万円について本件訴え変更申立書送達の日の翌日である平成20年11月26日とする。
3特許法102条3項による損害の額()原告は,本件特許権侵害に基づく損害賠償の最低額として,予備的に特許法102条3項による実施料相当額の損害賠償を請求する。
すなわち,前記のとおり平成18年5月19日から平成20年11月21日までの間の被告製品の売上合計金額は73億3200万円であるところ,本件においては,原告と被告の関係及び本件訴訟に至る経緯等にかんがみれば,本件特許権の実施料率としては7%が相当である。
したがって,特許法102条3項による損害は,上記売上金額に実施料率7%を乗じた5億1300万円(ただし100万円未満切り捨て)となる。
なお,遅延損害金の起算日は,平成18年5月19日から本件訴状を提出した同19年10月末日までの間の損害金2億7291万円について本件訴状送達の翌日である平成19年11月7日とし,同年11月1日から同20年11月20日までの間の損害金2億4009万円について本件訴え変更申立書送達日の翌日である平成20年11月26日とする。
【被告の主張】1被告製品の売上及び利益の額()ア売上金額について本件特許が登録された平成18年5月19日から平成20年11月までの被告製品に係る売上金額及び経費の額については,別紙損害額計算表のとおりであり,原告の主張は否認する。
イ利益の額について原告は,特許法102条2項の「利益の額」が限界利益であることを前提とするが,同条項の「利益の額」は売上高から変動経費を控除したものを指すものではない。侵害品の製造販売行為に相当因果関係のある出費・費用(直接間接に要した経費)は,侵害行為を行うために合理的に必要であった経費であり,それゆえ必然的に侵害者の手元には何ら残らない利得額であるから,かかる経費を売上額から控除して始めて「侵害の行為により」受けた利益の額が算定できる。
また,被告は,元々原告を製造元,被告を販売元とする食品X線異物検査装置事業を提携して行っていたが,原告の製造能力に起因して顧客から多数のクレームが舞い込み,その対応に追われた結果(乙32 ,やむな )く被告をセカンドソースとして自社開発,自社生産に踏み切らざるを得なくなった経緯がある。それゆえ,被告は,被告製品を製造するために新たな研究開発ないし設備投資や顧客に対する信頼回復のための営業活動を強いられたのであるから,かかる新たな研究開発費等の個別固定費も侵害行為と相当因果関係が認められる経費費目(侵害行為に直接的に必要であった経費)であり,侵害行為により受けた利益を算定するに際し控除されるべきものである。
さらに,固定費であっても,侵害製品に直接関連する経費はその侵害製品の製造販売のために必要であったものとして控除の対象とすべきであるから,販売費,即ち食品X線異物検査装置(産業機械)部門の営業人件費を含む営業費を控除しなければならない。
以上より,別紙損害額計算表において掲げた全ての経費を売上金額から控除すべきである。
2原告の本件特許発明実施について()原告が平成18年6月から平成20年11月までの間に本件特許発明実施していることについては否認する。
原告製品には検査装置の側面部分や底面部分に支持のための脚部材が存在するため,本件特許発明の該作用効果を奏せず,本件特許発明技術的範囲に属しない。
3寄与率について ()ア公知技術との関係における寄与率本件特許発明には,メンテナンス性において何ら劣らない公用物件の構成,具体的には「片持ちフレームにブラケットを付け,片持ちと両持ちを自由に切り替えることができる構成」という,当業者であれば容易に採用することができる代替技術(公知技術)が存在する。メンテナンスを容易にするために片持ちを採用するという技術的思想は公用物件において既に備わっており,これにブラケットが付設されているのは片持ちを前提とした上での強度補強という効果を付加したものにすぎない。
よって,本件特許発明実施価値(被告の販売行為における顧客吸引力に対する寄与率)はゼロか極めてゼロに近い。被告が得た利益をあえて観念するならば,ブラケットを省略することによって得られるコストダウンによる利益に止まり,具体的には,せいぜいステンレス製の小寸法の支持棒ないし支持板とこれを支持脚に設けるヒンジとナットの原価(1台当たり2000円程度)にすぎない。
仮に被告製品の製造原価を200万円とすると,被告の利益における本件特許発明の寄与率は,公知技術に対する超過利益分に限っても0.1%である(\2,000÷\2,000,000×100=0.1% 。)イ販売力,技術力との関係における寄与率被告製品は,本件特許発明以外の技術的要素,例えば欠品検査精度や(ア)耐久性,取扱いの簡便性によって販売できている。
例えば,被告製品は,コンベアの下方が開放されており,落下した食品が機械を汚すことなく全て床に落下する設計である。それゆえ,機械が汚れることがなく,ユーザーは床を清掃するのみで容易にラインの衛生状態を保つことができる。これに対し,原告製品はコンベアの下方が開放されておらず,食品が機械に溜まる構造である。かかる構造の場合,定期的に機械内部を清掃しなければならず,下方が開放されている機械と比較して衛生性が劣る。このような,本件特許発明とは無関係の構成が,顧客に対する被告製品の誘引力となっているのである。
X線異物検査装置は,コンピュータスケールや重量チェッカーなどと(イ)同じラインの前後で使用されるものであり,これらの周辺機器に対する販売力がX線異物検査装置の販売機会獲得にも直結する。この点,被告のコンピュータスケールに関する国内シェアは約70%,重量チェッカーに関する国内シェアは約40%であり,このことも被告製品の販売に貢献している。
被告は,食品製造業界の多様な要望やニーズをいち早く知り,その要(ウ)望やニーズに迅速確実に対応することによって,ユーザーたる食品製造業者からメーカーとしての信頼を勝ち得てきたのであり,確固たるブランド力を有する。
被告はこのようなサポート体制とブランド力を有しているからこそ,被告製品を含むX線異物検査装置についても高い市場占有率を獲得できているのである。逆に,原告にはこのようなサポート体制や技術力がなく,原告と被告が提携していた当時も,原告の製造能力に起因して多数の顧客からクレームが寄せられた。
被告がかつて原告と共同して製造販売していたSLDXシリーズにお(エ)いて,メンテナンス時に搬送機構及びラインセンサが片持ち支持されたSLDX-500,SLDX-1500及びSLDX-5000の販売台数累計は532台(平成20年12月まで)であるのに対し,搬送機構及びラインセンサが常時両持ちのSLDX-200,SLDX-2000及びSLDX-2100の販売台数累計は833台(同上)であり,両持ち異物検査装置の方が片持ち異物検査装置よりも多く売れた。
かかる代替技術(非実施技術)が市場においてむしろ本件特許発明を凌駕していたことを考慮するならば,仮に,被告が本件特許発明実施を行わなくても,それによって原告において獲得できたであろう売上は,いかに多く見積もったとしても1%を超えることはない。
ウ本件特許の抑止力X線異物検査装置の売上に関する市場比率は,被告が約48%でトッ(ア)プシェアを占め,アンリツ産機システム株式会社(以下「アンリツ」という )が約42%であり,両者で約90%を占めている。そして,残 。
る10%を,日新電子工業株式会社(以下「日新電子」という,株。)式会社システムスクエア(以下「システムスクエア」という,ニッ。)カ電測株式会社,大和製衡株式会社,株式会社寺岡精工,ソフテックス株式会社,株式会社東研,株式会社理学電機サービスセンター及び原告が分け合っている状況にあり,原告のシェアはほぼ無いに等しい。
他方,アンリツを始めとして被告以外の他の競合メーカーは,例外な(イ)く,ラインセンサや搬送機構を被う開閉可能なカバーを備え,かつラインセンサ及び搬送機構を支持する片持ちフレームを有するX線異物検査装置を販売しており,本件特許発明実施している。
かくも多くの競合他社が本件特許発明実施している理由は,本件特許発明に特許性がないからである。すなわち,乙2公報に公知技術周知技術を適用することによって当業者が容易に想到できたことを業界全体が知っており,本件特許発明に抑止力が全くないからである。
特許権の効力は排他的独占権,禁止権にあるのであるから,特許性を有しないために排他的独占権の効力(第三者に対する抑止力)を有しない特許には,独占的価値は存在しないに等しい。
このように,本件特許の抑止力(排他的独占力)は無いに等しく,仮(ウ)に存在するとしても1%を超えることはない。
エ以上を総合すれば,被告製品の利益獲得に対する本件特許発明の寄与率は公知技術との関係における寄与率(0.1% ,排他的独占力(1%)及 )び本件特許発明とは無関係の技術力,販売力,ブランド力を控除した寄与率(1%)を乗じた,0.00001%を上回ることはない。
【原告の反論 (寄与率について) 】1本件特許発明有用性()本件特許発明の作用効果は 「被検査物の搬送機構とX線検出器,さらに ,は,X線発生部の補修,清掃あるいは部品交換等のメンテナンスを容易に行うことができる (段落【0017 )という点にある。 」】公用物件では,コンベアベルトの洗浄・清掃のために必要な脱着に,男性2名による作業で約6分の時間を要しているが,本件特許発明実施製品では,男性1名による作業で僅か2分で脱着することができ,しかも,作業の内容は非常に簡易で筋力を必要としないため,女性でも十分に行うことができる。
食品を搭載するコンベアベルトの洗浄・清掃作業は,その性質上,毎日実施しなければならないものであり,本件特許発明実施製品における作業の時間効率性,作業内容の容易性は,従来製品に比較して顕著な顧客誘引力を有する。
2競合メーカーの動向()ア原告は,本件特許発明構成要件のうち,搬送機構の底面が露出自在とはいえないが,その他の構成要件は具備した小型装置SLDX-500を開発した。そして,販売を担当していた被告は,平成12年5月15日に開催された国際食品工業展にこれを出展した。一方,当時の市場シェアトップのアンリツは,小型装置KD7203AWを同展示会に出展し,「高清掃性でステンレス筐体。コンベアー部IP66.ベルトワンタッチ脱着」を謳い文句の一つにしていた。後日,同装置は片持ち支持であることが判明したが,その詳細は不明であった。
中型装置については,アンリツが,平成13年10月10日 「ベルト ,コンベヤーは取り外しが容易で洗浄しやすい構造とした」KD7216AWを発表した。原告は,1年後,コンベア室の扉が150度以上開き,コンベアベルト,出入り口の鉛ノレンなどがワンタッチで着脱できる中型装置SLDX-5000XASを開発し,被告が販売開始を発表した。この装置は本件特許発明のすべての構成要件を具備するものであった。
競合メーカーのシステムスクエアは,平成16年6月5日,メタホークシリーズを発表した。それは,片持ち支持の製品であると推認されるものであった。そのころ,原告は,本件特許発明のすべての構成要件を具備する小型装置SLDX-2050XASを開発し,被告が,同年6月8日に開催された国際食品工業展に出展した。他方で,被告は,原告との協力体制を見せかけながら,本件特許発明実施したX線異物検査装置「IXシリーズ」を完成させ,同年8月2日,原告に対して,被告製品を開発し販売することを告げた。
その後,業界第3位の日新電子も,約2年遅れた平成18年3月30日に,片持ち支持の製品であると推認される小型装置NX-2-245030等を発表した。
イ上記の経過でX線異物検査装置の平成19年度シェアは,第1位被告39.9%,2位アンリツ38.4%,3位日新電子工業10.8%,4位システムスクエア5.4%となった。
これらの競合他社の製品は全て片持ち支持の装置と推認できるものであって,さらに,その片持ち支持の装置のなかでも,その構成が本件特許発明技術的範囲に属すると判断されるもの,あるいは,技術的範囲に属するとの疑いが強いものが相当な割合を占めている。かかる事実は,原告とアンリツとがメンテナンス性が高く他の機能も兼ね備えた装置の開発に凌ぎを削った経過を踏まえて,食品異物検査装置市場が本件特許発明の高い価値を認めたことを示すものである。
このような事実は,本件特許発明に極めて高度な有用性が認められるからこそ生じたものである。
3被告製品の誘引力(技術力との関係)()原告製品のメンテナンスは極めて容易であり,底面に汚れやゴミが生じたとしても,カバーを開けて即時かつ容易に清掃可能であって,下方が開放されている場合と比較して衛生性が劣るということはない。また,下方が開放されているか否かに関係なく,食品を扱う機械の性質上,毎日,機械内部の清掃をすることは不可欠であり,衛生性に何らの問題もないというべきである。
4被告のサポート体制とブランド力()ア原告は,医療用X線分野や産業用X線分野において,高い評価を得ており,シェアも高く,両部門における原告のブランドバリューは極めて高い。
他方,被告は,食品業界には精通していたが,X線に係る技術力が低かったことから,平成7年11月に原告の子会社である島津メクテムと,続いて同10年12月に原告と協力関係に入り,原告がX線食品異物検査装置の開発・製造を担当し,被告が販売及びメンテナンスを担当するという共同体制を構築した。被告のカタログには,必ず「製造元株式会社島津製作所」と掲げており,製品にも,原告と被告の会社名が併記されていた。
イX線食品異物検査装置では販売後の顧客に対する継続的なメンテナンスは不可欠であり,原告・被告共同体が,本件特許発明実施したX線食品異物検査装置の製造販売を開始し,かつ,製造・販売・メンテナンスのネットワークを早期に構築することができたために,そして,何よりも本件特許発明が従来製品と比べて卓越したメンテナンス性を有していたがゆえに,先行していたアンリツとほぼシェアを二分するまでに売上高を伸ばすことができたのである。
このように,被告がX線異物検査装置分野で一定の地位を確保することができたのは,原告と被告で密接不可分の協力をしていたからである。それにもかかわらず,被告は,市場における原告製品のトップシェアの座が間近になった平成15年ころ,極秘裏に自社製品の開発に着手し,ほどなく,本件特許権を侵害する被告製品の製造販売を開始したのである。そして,被告は,原告と被告の協力によって構築したX線食品異物検査装置の販売網を利用し,顧客に対し,本件特許発明実施品である原告製品の購入を勧めることなく,その代替品として,同じく実施品である被告製品の購入を顧客に勧めることによって,原告製品の代わりに被告製品を販売したのである。
ウ上記のような事実関係においては,被告サポート体制やブランド力といった事由で本件特許発明の寄与率が左右されるべきではない。
第4当裁判所の判断1争点1(被告製品が本件特許発明技術的範囲に属するか)について被告製品が構成要件A,B,E及びFを充足していることについては,当事者間に争いがないので,以下,構成要件C及びDの各充足性について検討する。
1構成要件Cの充足性について()ア構成要件Cにおける「カバー」の解釈特許請求の範囲の記載(ア)構成要件Cは「漏洩X線を防止するために前記搬送機構及び前記ラインセンサを被うカバーとを備え」というものであり,ここにいう「搬送機構」及び「ラインセンサ」は構成要件Bにおける「搬送機構」及び「ラインセンサ」を指すものであるから,構成要件Cの「カバー」は,「被検査物を移動する搬送機構 (以下,争点1に係る判示部分におい 」て単に「搬送機構」という )及び「該搬送機構によって移動中の被検 。
査物を透過したX線を検出するラインセンサ (以下,争点1に係る判 」示部分において単に「ラインセンサ」という )を被うものであること 。
を要する。
発明の詳細な説明の記載(イ)証拠(甲2)によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,構成要件Cのカバーに関連して,以下の記載があることが認められる。
a 【背景技術】【0004】「図5は従来から用いられている搬送機構及び遮蔽機構を説明するための概略図である。図5(a)に示す機構では,水平搬送型の搬送機構103aを用いて被検査物の搬送を行い,鉛ゴムの簾を備える遮蔽材106aを用いて漏洩X線の遮蔽を行う。被検査物(図示していない)を透過した透過X線は,ベルト間に配置されたX線検出器104によって検出される 」。
【0007】「X線異物検査装置は,複数本の支持脚によって上記各機構を支持する構成としている。図6は従来のX線異物検査装置の支持構成を説明するための概略斜視図である。図6において,内部にX線発生供給102を備えるカバー105,搬送機構103,該搬送機構103を被うカバー106,図示しないX線検出器等の各検査機構は複数本の支持脚101によって支持される。このような従来のX線異物検査装置は,例えば,特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平9-250992号公報」b 【発明が解決しようとする課題】【0009】「X線異物検査装置が備える搬送機構やX線検出器等は,X線の漏洩防止や防塵のためにX線遮蔽を兼ねたカバーによって被われる構成であり,又,この構成部分はカバーを含めて支持脚101によって支持される構成である。そのため,搬送用のベルトやX線検出器等の補修,清掃,あるいは部品交換等のメンテナンスを行うには,カバーを分解して取り外す必要があり,又,カバーを取り外した状態においても,支持脚の陰となる部分のメンテナンスが困難であり,工具や交換具品が支持脚と干渉して挿入が困難となる 」。
c 【課題を解決するための手段】【0015】「本発明の他の実施の態様によれば,片持ちフレームで支持される機構を被うカバーを開閉可能な構成とし,該カバーを開くことによって,X線異物検査装置の側部や底部を開放状態とする。片持ちフレームとすることによって,X線異物検査装置の側部方向や底部方向が開放されるため,工具や部品を脚部に干渉されることがなく容易に挿入することができ,メンテナンス操作を行うことができる 」。
d 【発明を実施するための最良の形態】【0029】「図1,2において,カバー6は搬送機構3及びX線検出器4を被い,漏洩X線の防止及び防塵を行っている。漏洩X線の防止には,X線が漏洩する可能性のある部分に鉛のシールド部材を設けることによって行うことができる。図において,カバー6は固定カバー61と開閉カバー62を備え,開閉カバー62は固定カバー61に対してヒンジ等の開閉機構により取り付けられる。開閉カバー62は,カバー6の側面部分や底面部分を開閉可能とすることができる 」。
【0030】「この開閉カバー62は,異物のX線検査を行う場合には閉じた状態とし,清掃や部品交換等のメンテナンスを行う場合には開いた状態とする。又,開閉カバー62の閉鎖状態は,図示しない固定器具によって保持することができる。なお,図1は開閉カバー62を閉じた状態を示している 」。
検討(ウ)構成要件Cの「カバー」について,前記(ア)の特許請求の範囲の記載によれば,同カバーは,?@ 漏洩X線を防止するためのものであり,?A搬送機構及びラインセンサを被うものであることを要するものと解されるが,?Aの点について,前記特許請求の範囲の記載のみから,被告が主張するように,搬送機構及びラインセンサを開放面がないように覆い隠すものでなければならないとまではにわかに解し難い。
また 「カバー」に係る前記(イ)の記載を参酌しても,搬送機構及びラ ,インセンサを開放面がないように覆い隠すものであることを認めるに足りる記載はない。
この点,被告は,上記段落【0007【0029【図1】及び 】,】,【図6】をもって,上記主張の根拠とする。なるほど 【図1】及び ,【図6】には,搬送機構3及びX線検出器4を上下及び前後から包み込むように被うカバー6(固定カバー61及び開閉カバー62から成る )が描かれており,同カバーによって搬送機構3とX線検出器4が 。
すっぽり覆われていることが認められる。しかし,上記段落【0007】で言及されているとおり 【図6】は従来の支持構成を示すもので ,あり,また,上記段落【0029】及び【図1】は,いずれも本件特許発明実施例に係る記載であるから,かかる記載をもって,直ちに,同カバーが搬送機構及びラインセンサを覆い隠すものでなければならないとまでは解されない。
かえって,上記従来技術の記載(段落【0007【図6 )及び本】,】件特許発明実施例の記載(段落【0029【図1 )においても, 】,】被検査物の搬入口及び搬出口における搬送機構は開放されており,カバーに被われていない。この点,上記段落【0004】の「鉛ゴムの簾を備える遮蔽材106aを用いて漏洩X線の遮蔽を行う」との記載や,同段落【0029】の「漏洩X線の防止には,X線が漏洩する可能性のある部分に鉛のシールド部材を設けることによって行うことができる」との記載によれば,本件明細書では,搬送機構及びラインセンサの全てをカバーで被わず,カバーに被われていない部分に別の部材を設けることによりX線の漏洩を防ぐ構成が示されていると認められる。
また,前記特許請求の範囲の記載及び本件明細書の段落【0009】の記載によれば,カバーはX線の漏洩防止や防塵のためのものであるところ,搬送機構及びラインセンサの一部がカバーによって被われていれば防塵の効果は認められるし,X線の漏洩防止についても,上記のとおり,搬送機構及びラインセンサの一部がカバーで被われていなくても,別の部材と併せてX線の漏洩が防止されていれば,X線の漏洩防止の作用効果を奏することができると認められる。
そうとすれば,構成要件Cの「カバー」は搬送機構及びラインセンサの双方を被っていなければならないが,その全てを覆い隠す必要はなく,少なくとも漏洩X線の防止や防塵を行うという観点から必要とされる限度において被われていれば足りると解するのが相当である。
イ被告製品との対比証拠(甲5)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品の構成は,別紙被告製品の構成図のとおりであることが認められ(他の型式についても同様の構成を有することに争いがない,同別紙第1図の検査室ドアが搬送機 。)構であるコンベア及びラインセンサを収納するラインセンサカバーの正面側を被っていることが認められる。また,別紙カバー説明図の上面パネル及び背面パネルが,それぞれコンベア及びラインセンサカバーの上面及び背面を被っていることが認められる。そして,これらが正面側,上面側及び背面側のX線漏洩防止や防塵の役割を果たしていることについては争いがない。
被告は,被告製品においては,底面にはカバーが存在せず,コンベアもラインセンサも被われておらず,常時開放状態にあると主張する。しかし,被告製品のパンフレット(甲5の2枚目)によれば 「本装置は,遮蔽さ ,れた筐体の中でのみX線を照射する構造であり,かつ装置外部に漏洩するX線が1μSv/h以下である」と説明されているのであるから,底面側に何らのX線漏洩防止対策が施されていないわけではなく,当然,ラインセンサカバー(中にラインセンサを収納している )自体がX線漏洩防止 。
の役割を果たしているものと認められる。
そうすると,被告製品におけるラインセンサカバー自体がX線漏洩防止のための他の部材に当たることになるから,底面の全てがカバーに被われていなくても,搬送機構及びラインセンサの正面側,上面側及び背面側の全部もしくは一部が,基準値を超えるX線が漏洩しない程度にカバーで被われていれば足りるというべきである。そうすると,上記のとおり,被告製品の検査室ドア,上面パネル及び背面パネルは,それぞれ正面側,上面側及び背面側のX線漏洩防止の役割を果たしているのであるから,これらをもって構成要件Cの「カバー」に該当するものと認められる。なお,側面側については,被告製品においても鉛のシールド部材によってX線漏洩防止の措置が講じられている。
よって,被告製品はいずれも構成要件Cを充足するものと認められる。
2構成要件Dの充足性について()ア構成要件Dにおける「露出自在」の解釈特許請求の範囲の記載(ア)構成要件Dは「前記カバーは前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備える」というものであり,構成要件Cの「カバー」が片持ちフレームの自由端側において開閉部分を備えること及び同カバーの開閉により,搬送機構の側面や底面が露出自在となることが定められている。
発明の詳細な説明の記載(イ)証拠(甲2)によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,構成要件Dの「露出自在」に関連して,以下の記載があることが認められる。
a 【発明が解決しようとする課題】【0008】「従来のX線異物検査装置では,検査機構を複数本の支持脚101によって支持する構成であるため,X線異物検査装置の内部に設けられた機構の補修や部品交換等のメンテナンスが困難であるという問題がある 」。
【0009】「X線異物検査装置が備える搬送機構やX線検出器等は,X線の漏洩防止や防塵のためにX線遮蔽を兼ねたカバーによって被われる構成であり,又,この構成部分はカバーを含めて支持脚101によって支持される構成である。そのため,搬送用のベルトやX線検出器等の補修,清掃,あるいは部品交換等のメンテナンスを行うには,カバーを分解して取り外す必要があり,又,カバーを取り外した状態においても,支持脚の陰となる部分のメンテナンスが困難であり,工具や交換具品が支持脚と干渉して挿入が困難となる 」。
【0010】「そこで,本発明は前記した従来のX線異物検査装置の問題点を解決し,メンテナンスを容易に行うことができる異物検査装置を提供することを目的とする 」。
b 【課題を解決するための手段】【0011】「本発明のX線異物検査装置は,X線異物検査装置を支持する従来の支持脚を省く構成とすることによって,搬送用のベルトやX線検出器等の補修,清掃,あるいは部品交換等のメンテナンスを容易とするものである 」。
【0013】「本発明は片持ちのフレーム構成とすることによって,X線異物検査装置の側面部分や底面部分に,支持のための脚部材が存在しない構成とすることができ,支持脚に干渉することなく工具や交換部品をX線異物検査装置内に挿入することができ,搬送用のベルトやX線検出器等の補修,清掃,あるいは部品交換等のメンテナンスを容易に行うことができる 」。
【0015】「本発明の他の実施の態様によれば,片持ちフレームで支持される機構を被うカバーを開閉可能な構成とし,該カバーを開くことによって,X線異物検査装置の側部や底部を開放状態とする。片持ちフレームとすることによって,X線異物検査装置の側部方向や底部方向が開放されるため,工具や部品を脚部に干渉されることがなく容易に挿入することができ,メンテナンス操作を行うことができる 」。
c 【発明の効果】【0017】「本発明のX線異物検査装置によれば,被検査物の搬送機構とX線検出器,さらには,X線発生部のメンテナンスを容易に行うことができる 」。
d 【発明を実施するための最良の形態】【0031】「次に,図3を用いて本発明のX線異物検査装置のメンテナンス動作を説明する。図3に示す斜視図は開閉カバー62を開いた状態を示している。開閉カバー62は,搬送機構3及びX線検出器4の側面及び底面を開放するカバー部分であり,カバー6の底面あるいは背面部分に図示しない開閉手段によって,開閉可能に取り付けられている 」。
【0032】「X線発生部の駆動を停止した後,開閉カバー62を開けることによって,搬送機構3及びX線検出器4の側面及び底面部分を露出させることができ,清掃や補修のための工具や交換部品を内部に挿入することができる。図3に示す搬送機構3において,ベルト33は第1ローラ31,第2ローラ32で駆動されると共に,湾曲したベルト支持板34,ガイドローラ35等の構成部品から組み立てられている。
又,ベルト33の間にはX線検出器4が配置されている。これらの搬送機構やX線検出器は,被検査物によって汚れが生じる可能性があり,特に生肉や加工食品等の異物検査を行う場合には,清掃を行う必要がある。又,搬送機構は可動部分を備えており,補修や部品交換を行う必要があり,又,X線検出器についても補修や部品交換を行う必要がある 」。
【0033】「これらの構成部分のメンテナンスを行う場合,脚部や支柱等が内部あるいは開閉カバーの開放位置に存在すると,工具や交換部品と干渉して取り扱いや挿入を困難にする場合がある。これに対して,本発明のX線異物検査装置では,搬送機構やX線検出器を片持ちで支持する構成とすることによって,開閉カバーの開放側には脚部や支柱を除いた構成とすることができるため,工具や交換部品の挿入や取り扱いを容易とすることができる 」。
【0034】「なお,カバー6を,側面部分と底面部分に分割した構造とし,それぞれ独立してあるいは連結した状態で開閉可能とすることもできる。
側面側及び底面側からのメンテナンスを容易に行うことができる。又,開閉カバー62の開放部分は,清掃位置や補修位置に応じて定めることができる。特に,底面部分においては,フレームを片持ち構造とすることによって,搬送機構やX線検出器の下方部分を開放した状態とすることができるため,メンテナンスが容易となる 」。
【0035】「本発明の実施の形態によれば,片持ちフレームとすることによって,X線異物検査装置の側部方向や底部方向が開放されるため,工具や部品を脚部に干渉されることがなく容易に挿入することができ,メンテナンス操作を行うことができる。又,片持ちフレームはX線発生部,搬送機構,X線検出器等の構成部分を一体に支持することができる 」。
検討(ウ)前記(ア)で認定したとおり,特許請求の範囲の記載では,構成要件Cの「カバー」が片持ちフレームの自由端側において開閉部分を備えること及び同カバーの開閉により搬送機構の側面や底面が露出自在となることが定められている。
そして,上記(イ)aないしcの本件明細書の記載によれば,本件特許発明は,搬送用のベルトやX線検出器等の補修,清掃,あるいは部品交換等のメンテナンスを容易とするものであり,そのための手段として,搬送機構及びラインセンサを片持ちフレームの構成とすることによって,従来メンテナンスの妨げになっていた,操作者側(前面部)の支持脚を省き,さらに,片持ちフレームで支持される機構を被うカバーを開閉可能な構成として,同カバーを開くことでX線異物検査装置の側部方向や底部方向を開放し,工具や部品を脚部に干渉されることなく容易に挿入することができるようにするものであることが認められる。また,本件明細書の実施例(上記(イ)d)においても 【図3】の「開閉カバー62 ,は,搬送機構3及びX線検出器4の側面及び底面を開放するカバー部分であり (段落【0031,同「開閉カバー62を開けることによっ 」】)て,搬送機構3及びX線検出器4の側面及び底面部分を露出させることができ,清掃や補修のための工具や交換部品を内部に挿入することができる」こと(段落【0032 )が記載されている。 】上記の特許請求の範囲の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,構成要件Dにおける搬送機構の側面や底面を「露出自在に開閉する」とは,開閉カバーを開けた者にとって,搬送機構のメンテナンス(補修,清掃,部品交換等)が容易にできる程度に,搬送機構の側面や底面をむき出しにすることと解するのが相当である。
この点,被告は,上記段落【0009】や【0011】の記載を根拠に 「露出」といえるためには,支持脚が干渉することなく搬送機構の ,底面部分が露出状態にならなければならない旨主張する。しかし,同各段落にいう「支持脚」とは,従来技術としての【図6】で示される両持ち支持のための「支持脚101」を指すものと解され,片持ち支持の構造を採用すれば,少なくとも両持ち支持のための支持脚は存在しないはずである。そこで,片持ち支持のための支持脚が搬送機構の底面部分に張り出してくることによって,メンテナンスを容易にするという本件特許発明の作用効果を全く奏していないというような例外的な場合に限って,構成要件Dにいう「露出自在」には当たらないと解するのが相当である。
なお,被告が指摘する【図1】や【図3】は,あくまで本件特許発明実施するための最良の形態を示すものにすぎないのであるから,必ずしもここに示されている程度まで搬送機構の底面部分が大きく開放されることまでは要しないというべきである。
信義則違反について(エ)被告は,原告の別件無効審判事件での答弁と本件訴訟における原告の主張に齟齬があるとして,原告の本件訴訟における主張が権利の濫用に当たると主張する。たしかに,別件無効審判事件において原告が本件特許発明の特徴として「開閉カバーの開放側には脚部や支柱を除いた構成とすること (乙34の6頁最終行以降)と主張していることが認めら 」れるが,他方で,構成要件Dの説明としては 「カバーを開閉して露出 ,させた搬送機構の側面や底面に,工具や部品を挿入するときに干渉するような脚部がないように構成されているものである (乙34の24頁 」11行目以降)とも主張しているのであり,本件特許発明の要旨を限定して主張したものとは認め難い。その他,被告は縷々主張する(詳細は平成21年1月26日付け被告第10準備書面)が,原告の主張が別件無効審判事件における主張と異なっているとは認められず,権利の濫用に当たるような事情は窺えない。
イ被告製品との対比前記(1)で認定したとおり,被告製品の検査室ドアは構成要件Cの「カバー」に当たるところ,別紙被告製品の構成図の第1図,第3図及び第4図によれば,同検査室ドアは,片持ちフレームの自由端側に設けられており,開閉することができるものであるから,構成要件Dにおける「開閉部分」に当たると認められる。
また,同別紙第5図のとおり,被告製品における「搬送機構」すなわちコンベアは,コンベアベルト及びコンベアフレームから成るものであり,その側面(X線異物検査装置本体正面側)の殆どは検査室ドアによって被い隠されている。そして,検査室ドアを開けることによって初めて搬送機構の側面がむき出しになり,メンテナンスが可能になるものである。したがって,被告製品においては,検査室ドアの開閉によってコンベアの側面が露出自在になると認められる。
次に,コンベアの底部について,同別紙第2図及び第4図のとおり,被告製品において,コンベアベルトは,コンベアフレームの上面とラインセンサカバーの底面を回動する構造となっていることから,被告製品においては,ラインセンサカバー底面側のコンベアベルトが搬送機構の底部に当たるものと認められる。しかるところ,被告製品において,かかるコンベア底部は検査室ドアによって直接被われているものではないが,同別紙第1図ないし第3図によれば,検査室ドアを閉じた状態ではコンベア底部へのアクセスは困難であり,かかる状態でのメンテナンス作業は全く想定されていない。他方で,同別紙第4図ないし第6図によれば,検査室ドアを開けることにより,搬送機構底部へのアクセスは格段に向上し,補修,清掃,部品交換等のメンテナンスが容易にできる程度にコンベア底面がむき出しになるものと認められる。
この点,被告は,被告製品では搬送機構の底面側がカバーに被われていないために,カバーによって底面を露出/遮蔽自在に開閉する構成を採用できないと主張する。しかし,前記アのとおり,搬送機構の底面が直接カバーで被われていなくても,開閉カバーを開けた者にとって,搬送機構のメンテナンスが容易にできる程度に,搬送機構の側面や底面がむき出しにすることができれば足りるのであるから,搬送機構の底面側が直接カバーに被われていなくても,構成要件Dの充足性を左右するものではない。
また,被告は,被告製品の正面側には支持脚に相当する脚部が存在しており,メンテナンス容易という本件特許発明の技術思想とは無縁である旨主張する。たしかに,同別紙第1図及び第2図によれば,被告製品のコンベア底部の下方に4本の支持脚があることが認められる。しかし,上記のとおり,被告製品では,コンベア及びラインセンサカバー(ラインセンサが収納されている )を片持ちフレームで支持していることにより,検査 。
室ドアを開けることによってメンテナンスが容易にできる程度にコンベア底面がむき出しになるのであり,同別紙第4図ないし第6図によれば,かかる支持脚はメンテナンスにおいて大きな支障となるようなものとは認められず,本件特許発明1の作用効果を全く奏していないとは認められない。
よって,被告製品は,いずれも構成要件Dを充足するものと認められる。
3その他の被告の主張について()ア被告は,原告の主張の一部を捉えて有利に援用すると主張し,被告に有利な自白が成立したかのように主張するが(詳細は平成20年7月23日付被告準備書面(5)の1〜6頁 ,被告が主張するような自白が成立した )ものとは認められないので採用できない。
イまた,被告は,特許庁が別件無効審判事件について平成21年4月1日になした審決において示された本件特許発明の要旨認定を前提にすれば,被告製品が本件特許発明技術的範囲に属さないことになると主張する(その詳細は平成21年4月17日付け被告準備書面(13) 。)しかし,上記審決における要旨認定を前提にした場合,被告製品が本件特許発明技術的範囲に属さなくなるとは認められない。また,被告が審決取消訴訟を提起したことにより,当該審決は未だ確定しておらず,しかも,被告は同訴訟において,特許庁の要旨認定が誤っている旨の主張をしていることを考えると,当裁判所が,現時点で審決との整合性について判断する必要性も見出し難い。
2争点2-1について被告は,本件特許に係る出願前に原告の子会社である島津メクテムが被告を介して販売した公用物件(SLDX-1500)が本件特許発明と同一の構成を有するとして,本件特許発明新規性(特許法29条1項2号)を欠くと主張する。これに対し,原告は公用物件が構成要件BないしDを備えない点において本件特許発明とは異なると主張するので,以下検討する。
1本件特許発明の要旨認定(構成要件Bについて)()ア特許請求の範囲の記載本件特許発明構成要件Bは「一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として,少なくとも被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレーム」というものであり,かかる記載によれば,搬送機構とラインセンサがいずれも「片持ちフレーム」によって支持されていることを要するものと解される。
しかし 「片持ちフレーム」がいかなる構造のものかについては,特許 ,請求の範囲の記載からは一義的に明らかとはいえない。
イ本件明細書の記載発明の詳細な説明参酌するに,証拠(甲2)によれば,本件明細書には以下の記載があることが認められる。
【課題を解決するための手段】(ア)【0014】「本発明の実施の態様によれば,片持ちフレームは,基部上に垂直に立てた垂直支持部と,該垂直支持部から横方向に延びた水平支持部を備えた構成とすることができ,水平支持部は,被検査物を移動する搬送機構等の機構を支持する支持部であり,又,垂直支持部は,水平支持部及び該水平支持部上で支持する機構をその一方の端部で支持する支持部である 」。
【0016】「本発明の他の実施の態様によれば,片持ちフレームはX線発生器を支持する支持部を備え,X線発生器,搬送機構,X線検出器等の構成部分を一体に支持することができる 」。
【発明を実施するための最良の形態】(イ)【0019】「フレーム10は,最下部の支持部分を構成する基部11と,該基部11上に立てられる垂直支持部12と,該垂直支持部12から水平方向に取り付けられる水平支持部13,15を備える。水平支持部13,15は,その一方の端部を垂直支持部12側に固定あるいは移動可能に取り付けられ,他方の端部を自由端とし,片持ちによる支持フレームを構成している。なお,図1,2では,水平支持部13は垂直支持部12側に固定され,L字型支持部15は垂直支持部12側に対して上下方向に移動可能に取り付けられる構成例を示している。又,X線異物検査装置1が備える他の機構についても,垂直支持部12に片持ちで取り付けた水平支持部(図示しない)により支持することができる 」。
【0027】「なお,搬送機構3とX線検出器4とを,別個の水平支持部によって垂直支持部12に片持ち支持させることもできる 」。
ウ検討上記段落【0014】の記載によれば 「片持ちフレーム」は,垂直支 ,持部と同垂直支持部から横方向に延びた水平支持部とから成るものであり,水平支持部は,その一端において垂直支持部に支持されているものと解される。また,段落【0019】の記載によれば,単一の垂直支持部に複数の水平支持部がいずれもその一端で取り付けられている実施例が示されており,段落【0027】の記載によれば,搬送機構とX線検出器とを別個の水平支持部によって垂直支持部に片持ち支持させることが示されている。
そして,段落【0016】では,X線発生器,搬送機構,X線検出器等の構成部分が一体に支持されるものであることが示されている。
以上を総合すると,構成要件Bの「片持ちフレーム」は,単一の水平支持部で搬送機構及びラインセンサを支持する場合のほか,二つの水平支持部によってそれぞれ搬送機構及びラインセンサを支持するものも含まれるが,いずれであっても,当該水平支持部が単一の垂直支持部に一体に支持されるひとまとまりのものでなければ,搬送機構及びラインセンサを支持する片持ちフレームとはいえないと認められる。
2公用物件との対比()ア証拠(甲8)によれば,公用物件のラインセンサを支持する部材は,一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として公用物件背面側の垂直支持部に支持されていると認められるが,公用物件の搬送機構を支持する部材は,公用物件背面側の垂直支持部によって支持されているのではなく,これとは別個の,キャスターが付いた4本脚のコンベアユニットによって支持されていることが認められる。
そうすると,公用物件はラインセンサと搬送機構が単一の垂直支持部に一体に支持されているものではないから,構成要件Bの「片持ちフレーム」を備えるものとは認められない。
イまた,上記搬送機構が支持されるコンベアユニットの4本の脚のうち,手前側の2本にそれぞれブラケットが備えられており,メンテナンス時にブラケットの部分を外すことにより,搬送ベルトを手前側に取り外すことができる構造になっていることが認められる(争いがない。しかし,。)同証拠及び弁論の全趣旨によれば,同ブラケットは,搬送機構の荷重を受けてこれを支えるためのL字状の底部が設けられており,また,ブラケットの先端には,係合時に搬送機構を上部に持ち上げてロックするための円錐状の係合部材を備えており,これらの部材により搬送機構の荷重を受ける構造となっていることが認められる。したがって,公用物件のコンベアユニットのブラケットは搬送機構を支持する構造のものと認められるから,上記コンベアユニットの構造が片持ちであるとは認められない。
これに対し,被告は,公用物件でもブラケットを外した場合に片持ち状態になると主張するが,上記 1 で認定したとおり 「片持ちフレーム」と() ,は,その構造上,水平支持部の一端が垂直支持部に支持されることを示すものであり,常時,片持ち支持の状態であることを要するものというべきである。そうすると,公用物件のように,メンテナンス時において搬送ベルトを取り外す際に一時的に片持ちのようになるというようなものは,構造上片持ちであることを要する構成要件Bの「片持ちフレーム」とは技術的思想を異にするものであり,これには該当しないというべきである。
3よって,公用物件は少なくとも本件特許発明構成要件Bに係る構成を備()えていないから,本件特許発明は公用物件によって実施された発明と同一とは認められず,特許法29条1項2号に該当しない。
3争点2-2(進歩性の欠如)被告は,本件特許発明は,本件特許に係る出願前の平成9年5月16日に公開された乙2公報(特開平9-127017号公報)に記載された発明等に基づいて容易に発明することができたと主張するので,以下検討する。
1乙2公報に記載された発明()ア乙2公報の記載証拠(乙2)によれば,乙2公報には以下の記載があることが認められる。
特許請求の範囲(ア)「 請求項1】 被検査物品にX線を照射するX線照射手段と,被検査物 【品を透過したX線を検出するX線検出手段とを有し,被検査物品に照射されたX線の透過状態から該物品に混入した異物を検出するX線異物検出装置であって,被検査物品をX線のシールドボックス内に搬入する搬入コンベアと,該シールドボックス内から被検査物品を搬出する搬出コンベアとが配置されていると共に,シールドボックス内における搬入コンベアから搬出コンベアに至るところに上記X線照射手段とX線検出手段とが配置されており,かつ,上記搬入コンベアまたは搬出コンベアの少なくとも一方に,当該コンベア上の物品の重量を計量する計量手段が備えられていることを特徴とする計量機能付きX線異物検出装置 」。
発明の詳細な説明(イ)【0001】「 発明の属する技術分野】本発明は,被検査物品にX線を照射し,そ 【の透過状態から該物品に混入している異物を検出するX線異物検出装置,特に被検査物品の計量機能を付加した装置と,この装置を用いた商品の検査方法に関する 」。
【0002】「 従来の技術】近年,各種の商品についての安全性に関する要求が高 【まり,特に食品等の商品にあっては,その商品中に異物が混入することを極力防止する必要がある。そして,このような要求に対応するものとして,例えば特開平3-246485号公報に開示されているように,生産された商品の中に異物が混入していないかどうかを検査するX線異物検出装置が実用化されている 」。
【0007】「そこで,本発明は,X線異物検出装置の構成を活用して,該装置に上記の重量検査機能や値付け機能等の他の機能を付加し,これにより,該装置の商品価値の向上を図ると共に,これを備えたラインのコンパクト化や生産性の向上等を実現することを課題とする 」。
【0013】「このような構成によれば,第1発明〜第3発明のいずれによっても,搬入コンベアによってシールドボックス内に搬入された被検査物品にX線照射手段によってX線が照射されると共に,該物品を透過したX線がX線検出手段によって検出され,その透過X線についての所定の処理により被検査物品への異物の混入の有無が検出される。そして,その被検査物品は搬出コンベアによって上記シールドボックスから搬出されることになる 」。
【0014】「その場合に,上記搬入コンベアまたは搬出コンベアの少なくとも一方には計量手段が備えられているので,上記被検査物品が当該コンベア上にあるときに,その重量が計量されることになる 」。
【0019】「まず,第1実施形態について説明すると,図1に示すように,この実施形態に係るX線異物検出装置1は,両側に被検査物品の入口2aと出口2bとがそれぞれ設けられたX線シールドボックス2を有し,このボックス2内に搬入コンベア3と搬出コンベア4とが直列状に配置されている。搬入コンベア3は始端部が上記入口2aに位置し,該入口2aから被検査物品をシールドボックス2内に搬入すると共に,該ボックス2の中央部で被検査物品を搬出コンベア4に受け渡す。また,搬出コンベア4は終端部が上記出口2bに位置し,搬入コンベア3から受け取った被検査物品を該出口2bに向けて搬送する 」。
【0020】「また,このシールドボックス2の中央部における搬入コンベア3の終端部と搬出コンベア4の始端部との間には,被検査物品の受け渡しに支障がない寸法の間隙5が設けられていると共に,この間隙5の上方にはX線照射器6が,下方にはX線検出器7がそれぞれ配置され,これらが間隙5を介して上下に対向している 」。
【0057】「 発明の効果】以上のように本発明によれば,シールドボックス内に 【搬入した被検査物品にX線を照射すると共に,その透過状態から該物品に混入した異物を検出するX線異物検出装置において,被検査物品を上記シールドボックス内に搬入する搬入コンベアまたは該ボックス内から被検査物品を搬出する搬出コンベアの少なくとも一方に計量手段を備えたから,被検査物品についての異物混入の検査と併せて,該物品の重量が計量されることになる 」。
イ乙2発明の内容上記アの各記載によれば,乙2公報には 「被検査物品(食品等)をX ,線のシールドボックス内に搬入する搬入コンベアと,該シールドボックス内から被検査物品を搬出する搬出コンベアとが配置されていると共に,シールドボックス内における搬入コンベアから搬出コンベアに至るところにX線照射手段とX線検出手段とが配置されており,かつ,漏洩X線を防止するために上記搬入コンベア,上記搬出コンベア及び上記X線検出手段を被うシールドボックスを備えたX線異物検出装置 (以下「乙2発明」 」という )が記載されていることが認められる。 。
2本件特許発明と乙2発明との対比()ア一致点乙2発明の 「X線検出手段」及び「シールドボックス」は,その機 ,能・用途に照らして,それぞれ本件特許発明の「ラインセンサ」及び「カバー」に相当し,また,乙2発明の「搬入コンベア」及び「搬出コンベア」は,併せて本件特許発明の「搬送機構」に相当するものと認められる。
そうすると,本件特許発明と乙2発明は 「X線によって被検査物であ ,る食品の異物検査を行うX線異物検査装置において,被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサと,漏洩X線を防止するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバーとを備えるX線異物検査装置」である点において一致していることが認められる。
イ相違点他方で,本件特許発明と乙2発明とは,以下の点において相違することが認められる。
相違点1(ア)本件特許発明では 「一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端と ,して,少なくとも被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレーム」を有するのに対し,乙2発明にはその明記がないこと(以下「相違点1」という。。)相違点2(イ)本件特許発明では 「カバーは片持ちフレームの自由端側において, ,搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備えるとともに前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具を備える」のに対し,乙2発明にはその明記がないこと(以下「相違点2」という。。)3相違点1について()被告は,相違点1について,乙3公報,乙9公報及び乙10公報に開示されたラインセンサ・搬送機構を支持する片持ちフレームを適用することにより,相違点1に係る本件特許発明の構成とすることは容易に想到できると主張するので,以下検討する。
ア乙3公報の記載平成9年6月6日に公開された乙3公報(特開平9-145343号公報)には 「放射線検査装置」に関して,以下の事項が記載されている。 ,発明が解決しようとする課題(ア)【0008】「?A 汚れたベルトコンベア101を水洗する場合があり,この場合にはベルトコンベア101が放射線検査装置の内部に組み込まれたままでは水洗の作業性が良くない 」。
課題を解決するための手段(イ)【0018】「請求項3記載の発明によれば,例えば第2の部分(ベルトコンベア)が汚れ水洗いが必要な場合がある。かかる場合には第2の部分を第1に部分から引き出して水洗いを行う 」。
発明の実施の形態(ウ)【0035】【図1】 「 1-1)本実施形態例の機構系の構成 (図1(a),(b)に示すように,放射線検査装置Dの機構系は,X線管2等を支持すると共に,X線の外部への漏れを遮蔽する支持台1およびX線遮蔽箱6の部分と,被検体を該X線遮蔽箱6内に搬送するコンベア台11の部分とにより構成されている 」。
【0036】「前記支持台1およびX線遮蔽箱6の部分は,4本の脚を有する支持台1上の上方にはX線管2が配置され,該X線管2の下方にはX線フィルタ3と次に説明する疑似物体投入器4とが配置されている。更に,下方にはX線センサ5が配置されている 」。
【0038】「また,前記コンベア台11の4本の脚の先端部には,それぞれキャスタ12が取り付けられ,前面方向に引き出し可能に構成されている。コンベア台11の上面には第1ベルトコンベア12と第2ベルトコンベア14とが配置されている。第1ベルトコンベア12は第1ローラ13aと第2ローラ13bとにより放射線検査装置内に向かって上昇するように張架され,第1ローラ13aは開口部8aから外部に出た位置に配置され,第2ローラ13bは前記疑似物体投入器4の下方近くの位置に配置されている。このように構成することにより,被検体10は上昇方向に搬送される 」。
発明の効果(エ)【0076】「 発明の効果】以上説明したように各請求項記載の発明によれば,被 【検体が開口部に接触することなく放射線検査装置により検査を受けることができ,搬送手段(ベルトコンベア)を水洗する場合に,その他の箇所に影響を与えることなく水洗ができ,放射線検査装置がインラインで使用される場合に,放射線検査装置や組立ラインのシステムの異常を検知し,その異常に対して即座に対処する体勢を取ることができ,例えば,食肉用のハムの包装用針金と異物との判別を行うことができ,地震等の場合に,放射線検査装置の動作を停止させることができる 」。
イ乙9公報の記載平成9年3月28日に公開された特開平9-72863号公報(乙9公報)には 「簡易型高分解能X線透過自動検査装置」に関して,次の事項 ,が記載されている。
従来の技術(ア)【0002】「 従来の技術】周知のように,プリント基板のベアボードや部品実装 【後の製品は,マイクロ化が進んでいる。従って,目視や光学的手法では検査できないプリント基板のベアボードや部品実装製品の部位(隠れた部位等)では,X線透過像によって検査している。このようなX線透過像を用いる検査では,上記のとおり,被検査物のマイクロ化が進んでいる関係上,撮像の高分解能が要求される。ところで,分解能を問題にしない被検査物の一般的な画像の撮り方は,図7(a)に示すように,フォーカスサイズFの径が50〜1000μmのX線源51と,撮像面52との間に被検査物53を配設し,撮像面52に被検査物53の画像を投影している。しかしながら,このような方法では,前記フォーカスサイズFのX線源51と被検査物53,撮像面52の配置から幾何学ボケを生じてしまうので画像に所定の分解能が得られない 」。
発明が解決しようとする課題(イ)【0006】「さらに,X線源のフォーカスサイズはターゲット材の熱膨張による変形等により,使用時間に伴って経時的にフォーカスサイズが拡大するので,高分解能を確保するフォーカスサイズ管理のために,頻繁にターゲット材またはX線管球を交換しなければならない。また,一般的なターゲット材の冷却方法である油冷却法によるX線源の場合,絶縁性確保のために交換油内への空気混入防止が必要で,冷却油を入れる前に1週間程度の真空引きを要するので,X線透過検査装置のメインテナンスコストが嵩み,かつメインテナンス時間を要するという経済効率面の解決すべき課題も生じる 」。
【0007】「従って,本発明の目的とするところは,サブミリフォーカスサイズのX線源の活用を可能ならしめることにより,低コストで分解能が優れると共に,コンパクトであって,しかもメインテナンスの容易な簡易型高分解能X線透過自動検査装置を提供するにある 」。
発明の実施の形態(ウ)【0013】「 発明の実施の形態】本発明に係る簡易型高分解能X線透過自動検査 【装置は,下記のように考えてなしたものである。即ち,フォーカスサイズの径が50μm以上のX線源を用いれば,X線源は比較的低コストであるからX線透過自動検査装置を安価にすることができ,しかも撮像面より上方の搬入口で受取った被検査物を昇降台で水平移動させ,かつ撮像面の上側の検査位置まで下降させて被検査物の画像を撮像すれば,例えフォーカスサイズの径が50μm以上の比較的低コストのX線源であっても,分解能の優れたほぼ等倍の撮像を得ることができるので,X線透過自動検査装置に高分解能を付与することが可能になる 」。
【0014】「そして,撮像済の被検査物を昇降台で搬送レベルに上昇させ,かつ水平移動で搬出口まで搬送する構成とすれば,シールドボックスの高さを従来よりも低くすることができ,X線透過自動検査装置の重心が下がり装置の安定性の向上が可能になるのに加えて,前記シールドボックスの被検査物の搬入口および搬出口を有しない一方側の内壁に前記昇降台を昇降させる昇降台駆動装置を付設すれば,前記内壁の他方側に開閉自在な扉を設けることができ,昇降台や昇降台駆動装置を容易にメインテナンスすることができる 」。
【0017】「このシールドボックス1の内側の前記扉1dの配設位置の相対する壁面には垂直な一対のリニアガイドレール3,3が設けられていて,この一対のリニアガイドレール3,3の間に垂直に設けられた昇降台駆動装置であるロッドレスシリンダ4によって後述する構成になる昇降台5が前記リニアガイドレール3,3に案内されて昇降作動されるように構成されている。このように,リニアガイドレール3,3を用いることにより,昇降,停止位置の如何を問わず昇降台5を水平状態でに(判決注:原文ママ)維持することができる(乙9公報図1参照) 。」【図1】発明の効果 (エ)【0030】「 発明の効果】以上詳述したように,本発明の請求項1,2,3また 【は4に係る簡易型高分解能X線透過自動検査装置によれば,フォーカスサイズの径が50μm以上の比較的低コストのX線源を用いることで,このX線透過自動検査装置を低コストにすることができる。しかも,撮像面よりも上方の搬入口で受取った被検査物を昇降台により撮像面の上側の検査位置まで下降させると共に,水平移送機能により検査位置に水平移動させて画像を撮像するので,分解能の優れたほぼ等倍の撮像を得ることができ,また撮像済の被検査物を昇降台で搬出口まで上昇させるので,シールドボックスの高さを従来よりも低くすることができ,このX線透過自動検査装置自体の安定性が増する。そのため,被検査物製造ラインの管理者によるラインの観察が容易になり,かつX線源のメインテナンスや交換を容易かつ低コストで行えるのに加えて,このX線透過自動検査装置をコンパクトにすることができるという多大な効果がある 」。
ウ乙10公報の記載平成8年11月26日に公開された特開平8-310632号公報(乙, 。 10公報)には 「ベルトコンベア」に関して次の事項が記載されている発明が解決しようとする課題(ア)【0003】「 発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来のベルトコン 【ベアでは,以下のような問題点を有していた。
(1)食用品や薬品を搬送する場合は特に衛生の面が重要視されるが清掃等のための搬送部の脱着が困難で作業性に劣り不衛生であるという問題点を有していた。
(2)各構成が固定されたままであり隅部や溝部を有し清掃が困難で搬送物の残査(判決注:原文ママ)や汚れが堆積し腐敗し或いは雑菌等が繁殖し不衛生となるという問題点を有していた。
(3)フレームの端部にサイズの大きな駆動部を有しフレームの端部に駆動部を位置させる空間を必要とし作業範囲が狭まるという問題点を有していた。
(4)トラフを用いた場合はトラフと搬送部の間に力が作用し回転中にずれや斜行が発生するという問題点を有していた 」。
作用(イ)【0010】「 作用】この構成によって,トラフを容易にフレームから取り外し洗 【浄液に浸漬させ洗浄し殺菌清掃できる。また,フレーム表面が平滑で洗浄し易くトラフやフレーム及び搬送部を清潔に保つことができる。搬送接触面の傾斜角度や形状の異なるトラフを用途に応じフレームに固定できる。トラフの脱着がトラフ固定部に係止部を挿着するだけで良く特殊な器具を必要とせず容易に据付が可能である。また,使用中にトラフがフレームから移動したり脱落することがなく強固に固定できる。駆動部がフレームの長手方向の略中央部に装設されるので,フレームの両端部はローラだけが配設され搬送品の搬入空間や排出空間が狭くとも搬入排出ができる。駆動部がモータープーリからなり搬送部への動力伝達機構が必要なく構造が簡便で搬送部の回転が確実に行われる。搬送部にガイド部を備えフレームにガイド部と移動自在に嵌合するガイド受け部を設けたので,搬送部が回転中にガイド部とガイド受け部が常に嵌合されており搬送部が斜行せず正常な位置を回転できる。ローラブラケット軸受ユニットが上方にはね上げられ張設されていた搬送部を緩め,出し入れが容易にできる。又,脚部がL字状に形成され一側部が開放されており搬送部の脱着が容易に行えベルトコンベアのメンテナンスや清掃が容易で衛生的に優れる 」。
実施例(ウ)【0012】「以上のように本実施例によれば,フレームの両縁部に脱着自在に配設された搬送接触面部と,搬送接触面部の側面から下方に立設された係止部と,フレームの側面に配設され係止部を脱着自在に挿着するトラフ固定部と,フレームの略中央部の下方に装設されたモータープーリからなる駆動部と,を設けたので,簡単な構造にも係わらずトラフの脱着が容易であると同時に搬送物を落下させることなく搬送できる。トラフを分離することによりトラフとフレームの表面の洗浄や殺菌が簡単にかつ確実に行うことができ清潔が要求される食品や食品原料或いは薬品の搬送に好適に用いられる。また,脚部がL字状で一方が開放されているのでローラブラケット軸受ユニットと回動させるだけで搬送部を簡単に外すことができ搬送部の表裏面の洗浄を確実に行うことができる。フレームの両側面に外側に傾斜した搬送接触面を有するトラフを設けたので搬送時のフレーム側面からの搬送品の落下を防止でき作業効率を向上させることができる。駆動部を中央部に設けたので両端部にはフレームの上部に障害物がなく作業時に頭等をぶつけたりすることがなく安全性に優れるとともに製品の高さを制限することがなく作業性に優れている。駆動部にモータープーリを用いたので動力伝達機構が必要なく構造が簡便で量産性に富み,また,動力の伝達が確実で信頼性が高い(乙10公報図。」2,3参照)エ検討相違点1に係る本件特許発明の構成(構成要件B)は,メンテナンス(ア)を容易にするという本件特許発明の効果を奏するために不可欠なものと位置づけられるところ,乙2発明では明確にメンテナンスを容易にするという課題が明示されているわけではないが,被検査物品(本件特許発明における「被検査物」に相当)として「食品」が掲げられており(乙2公報の段落【0002,食品に係る検査装置においてメンテナン 】)スを容易にするという課題は自明といえるから,乙2発明には,メンテナンスを容易にするための構成を適用すること自体については動機付けがあると認められる。
そして,乙3公報でも,被検体(乙2発明における「被検査物品」に相当)の例として「食肉用のハム」が掲げられており(乙3公報の段落【0076,食品を含むX線異物検査装置であるという点において 】)乙2発明と技術分野を共通にするものと認められる。また,乙3公報において,ベルトコンベアの水洗いの作業性が課題として掲げられており(乙3公報の段落【0008,かかる課題解決の手段として,ライ 】)ンセンサ5の一方を支持台1の垂直部に直角に支持し,他方は自由端とすること,及びコンベア台11の部分を前面方向に引き出し可能にするため,先端部にそれぞれキャスタ12が取り付けられた4本の脚を有する構成を採ることにより,コンベア台を引き出して水洗いする構成が示されており(乙3公報の段落【0018【0035【0036】 】,】,及び【0038,その効果として,ベルトコンベアを水洗いする場 】)合に,他の箇所に影響を与えることなく水洗いが可能である旨記載されている(乙3公報の段落【0076。】)よって,乙2発明に乙3公報に記載された事項を適用すること,すなわち,ラインセンサを片持ちフレームにより支持した上,搬送機構を引き出し可能なようにX線異物検査装置本体とは別の部材によって支持し,その先端にキャスタを付ける構成を採用することは容易に想到することができると認められる。
さらに,ベルトコンベア一般に係る乙10公報には,清掃等のための搬送部の脱着が困難で作業性に劣り不衛生であるなどといった課題が掲げられ(乙10公報の段落【0003,その解決手段として,脚部 】)7の垂直柱7aに,搬送部6が一方を自由端として片持ち支持する構成が示されている(乙10公報の段落【0010】及び【0012。】)そうすると,上記のとおり乙2発明に乙3公報に記載された構成を適用した上,引き出し可能なコンベア台を片持ち支持に変更する構成も一応考えられる。
しかし,上記のように乙2発明に乙3公報及び乙10公報に記載された事項を適用しても,引き出し可能な搬送機構の構造を片持ち支持する構成に至るにとどまり,かかる搬送機構をラインセンサと同一の垂直支持部によって片持ち支持するという相違点1に係る本件特許発明の構成には辿り着かない。
しかも,乙3公報は,ベルトコンベアの水洗いの作業性を向上させるために,わざわざベルトコンベアを別の支持構造により支持する構成を採用した上,放射線検査装置本体から前方に引き出すことができるようにしたものであり,ベルトコンベアを放射線検査装置本体と同一の支持構造により支持した場合,ベルトコンベアを前方に引き出すことができず,上記作業性を向上するという課題が解決できなくなるのであるから,ベルトコンベアを放射線検査装置本体と同一の支持構造により片持ち支持することを設計事項とすることはできない。
よって,乙2発明に,乙3公報及び乙10公報に記載された事項を適用しても,相違点1に係る本件特許発明の構成を容易に想到し得たとは認められない。
他方で,乙9公報の段落【0017】並びに【図1】の(a)及び(b)に(イ)は,プリント基板Pを移送するベルト5dを備えた昇降台5(本件特許発明における「搬送機構」に相当)が,シールドボックス1の扉1dの配設位置の相対する壁面内側に設けられたリニアガイドレール3に片持ちに支持されていることが示されている。
そこで,乙3公報の片持ち支持のラインセンサと,乙9公報の片持ち支持の搬送機構を乙2発明に適用すれば,相違点1に係る本件特許発明の構成にはなり得る。
しかし,そもそも食品に係る検査装置である乙2発明において,メンテナンスを容易にするという課題自体は自明であるものの,乙2発明にはそのための構成が何ら示されていないのであるから,乙2発明に当該課題を解決するための構成を適用するに当たっては,当該課題を解決するために技術的意義を有する構成を一体として適用すべきであって,かかる技術的意義を捨象して,構成の一部のみを抽出して適用することはできないというべきである。この点,乙3発明では,ラインセンサのみを片持ち支持することによってメンテナンスを容易にするという課題が解決できるわけではなく,ベルトコンベアを手前方向に引き出すことができるようにすることによって初めて,他の箇所に影響を与えることなくベルトコンベアを水洗いすることができるという課題が解決できるのである。したがって,片持ち支持のラインセンサのみを乙2発明に適用することはできないというべきである。
また,乙2発明に,乙3公報のラインセンサとベルトコンベアを適用するに当たって,乙3公報のベルトコンベアに代えて乙9公報のベルトコンベアを適用するという論理付けも一応考えられる。しかし,乙3公報のベルトコンベアに代えて乙9公報のような放射線検査装置本体に片持ち支持されたベルトコンベアを適用してしまうと,ベルトコンベアを前面方向に引き出してメンテナンスをすることができなくなり,メンテナンスを容易にするという乙3公報の課題が解決できなくなるから,かかる論理付けにも無理がある。
しかも,乙9公報は,X線透過自動検査装置に係るものであり 「X,線を利用した検査装置」という広い概念では乙2発明や乙3公報と同じ範疇に入るものの,乙9公報での被検査物は「プリント基板のベアボード」や「部品実装製品」とされており(乙9公報の段落【0002,】)乙2発明や乙3公報のような食品とは大きく異なるものである。そして,かかる被検査物の違いは,メンテナンスの違いにも反映しており,乙9公報におけるメンテナンスを容易にするという趣旨は 「高分解能を確 ,保するフォーカスサイズ管理のために,頻繁にターゲット材またはX線管球を交換しなければならない (乙9公報の段落【0006 )と 」 】いった「X線源のメンテナンスや交換 (同段落【0030 )に主眼 」】があり,昇降台のメンテナンスに関する言及はあるものの(同段落【0014,少なくとも昇降台の衛生状態を維持するための水洗いを含 】)むものでないことは明らかである。したがって,乙2発明や乙3公報に乙9公報の技術的事項を適用すること自体,無理があるといわざるを得ない。
よって,相違点1に係る本件特許発明の構成は,乙2発明に,乙3公(ウ)報,乙9公報及び乙10公報に記載された構成を適用することによって,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
4小括()以上より,相違点1に係る本件特許発明の構成について,容易に想到し得たということができない以上,相違点2に係る容易想到性について判断するまでもなく,本件特許発明容易に発明することができたとは認められない。
よって,本件特許発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができなかったものとは認められず,特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。
4争点3について1被告製品の売上金額について()原告は,被告製品の売上金額につき,平成18年において53億5800万円,同19年において83億3100万円であり,同20年においては86億円が見込める旨主張するところ,他方で,被告が乙第41号証により明らかにした被告製品に係る売上金額について,当裁判所がこれを前提に損害額を算定することに異議を述べない旨陳述した。
そこで,かかる経緯を弁論の全趣旨として考慮し,乙第41号証に基づいて売上金額を算定することとする。
そうすると,被告製品に係る平成18年6月から平成20年11月までの売上金額の合計は,少なくとも別紙損害額計算表のとおり60億6282万1000円であることが認められる。
2特許法102条2項に基づく損害額の算定()ア原告による本件特許発明実施について原告製品が本件特許発明技術的範囲に属するかについて(ア)証拠(甲10の1,10の2,20,21及び22の1〜5)によれば,原告製品はいずれもX線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置であって,その一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として,少なくとも被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレームを有し,また,漏洩X線を防止するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバーとを備え,前記カバーは前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備えるとともに,前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具を備えるものであることが認められる。
この点,被告は,原告製品の検査装置の側面や底面部分に支持のための脚部材が存在するため,本件特許発明技術的範囲に属さないと主張する。しかし,前記1(2)ア(ウ)のとおり,検査装置の底面部分に脚部材があったとしても,片持ち支持の構造によるメンテナンスの容易さという効果を全く奏していないものでない限り,本件特許発明技術的範囲に属するというべきであるところ,原告製品は,いずれも支持脚がメンテナンスにおいて支障となるものとは認められない。
よって,原告製品は,いずれも本件特許発明技術的範囲に属するものと認められる。
原告による原告製品の製造販売の期間について(イ)証拠(甲36の6頁)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品であるSLDX-2050は,平成16年7月ころから,原告によって製造販売が開始されたことが認められる。
証拠(甲37の9頁)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品であるSLDX-2055は,平成19年2月ころには,原告によって製造販売が開始されたことが認められる。
証拠(甲38の1頁)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品の上記2機種は,平成19年12月ころまで製造販売され,その後,後継機種SLDX-2050-U及びSLDX-2055-Uに切り替えられたこと,これらの機種の変更点はソフトウエア及び画面の大きさ等であって,構造そのものの変更はなされていないこと,これらの機種の製造販売は現在に至るまでなされていることが,それぞれ認められる。
証拠(甲39の2頁)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品のSLDX-5000XASは,遅くとも平成14年9月ころから製造販売が開始されたこと,その後,後継機種であるSLDX-5000XAS-Vに順次,切り替えられ,現在に至っていることが認められる。
原告製品と被告製品との競合について(ウ)a証拠(甲20最終頁)によれば,原告製品のSLDX-2050及びSLDX-2055における被検査物の大きさは,幅につき最大240?o,高さにつき最大120?oであることが認められる。また,SLDX-2050-U及びSLDX-2055-Uは,前記(イ)で認定したとおり,SLDX-2050及びSLDX-2055の後継機種であるから,被検査物の大きさは同じであると認められる。
他方で,証拠(甲15の4頁・7頁)によれば,被告製品のIX-G-2450型,IX-G-2475型及びIX-GA-2475型の検査範囲は,幅につき最大240?o,高さにつき最大120?oであることが認められ,証拠(甲24)によれば,IX-G-2480型の検査範囲についても,幅につき最大240?o,高さにつき最大120?oであることが認められる。
そうすると,被告製品のIX-G-2450型,IX-G-2475型,IX-GA-2475型及びIX-G-2480型は,原告製品のSLDX-2050,SLDX-2055,SLDX-2050-U及びSLDX-2055-Uと競合すると認められる。
b証拠(甲21最終頁)によれば,原告製品のSLDX-5000XASにおける被検査物の大きさは,幅につき最大400?o,高さにつき最大150?oであることが認められる。また,前記(イ)で認定したとおり,SLDX-5000XAS-VはSLDX-5000XASの後継機種であるから,被検査物の大きさは同じであると認められる。
他方で,証拠(甲15の5頁・8頁及び甲23)によれば,被告製品のIX-G-4075型,IX-GA-4075型及びIX-G-4080型の検査範囲は,いずれも幅につき最大400?o,高さにつき最大150?oであり,上記原告製品と同一であるから,これら原告製品と競合する。
また,証拠(甲15の5頁及び甲24)によれば,被告製品のIX-G-4075-A型及びIX-G-4080-A型の検査範囲は,いずれも幅につき最大400?o,高さにつき220?oであり,いずれも上記原告製品よりも70?o高いことが認められる。しかし,前掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告製品のSLDX-5000XAS及びSLDX-5000XAS-VにおけるX線管電圧は最大85kVであるのに対し,被告製品のIX-G-4075-A型は最大75kV,IX-G-4080-A型は80kVであり,いずれについても上記原告製品の方が高く,厚さがある物も貫通できることから,上記原告製品と上記被告製品とは競合すると認められる。
以上より,平成18年6月から同20年11月までの間,原告は本件(エ)特許発明実施していたものと認められ,その実施品である原告製品は被告製品と競合していると認められる。
イ利益の額について特許法102条2項の「利益の額」については,侵害物件に係る売上金額から,当該侵害物件の製造販売のために追加的に必要となる経費を控除した額と捉えるのが相当である。
売上原価について(ア)別紙損害額計算表の「売上原価」について,被告は「材料費,労賃,光熱費,無償交換部品代等の直接売上に要した変動費である」旨説明していることから(乙41「売上原価」については被告製品を製造販 ),売するために追加的に必要となる経費として控除するのが相当である。
そして,売上原価の額について,原告は,被告が乙第41号証によって明らかにした額を前提に損害額の算定をすることについては異議を述べない旨陳述したことから,同証拠において明らかにされた額を前提とすることとする。
販売費について(イ)別紙損害額計算表の「販売費」について,被告は「運賃,支払手数料等の変動費と食品X線異物検査装置事業に必須の同事業部門営業費,サービス費,食品X線異物検査装置事業に係る設備投資費等直接固定) 」,」, 費」である旨説明し(乙41 ,具体的費目として「人件費「運賃「広告宣伝費「販売促進費「販売手数料」及び「その他」の控除 」,」,を主張するので,以下それぞれについて検討する。
a人件費について販売費のうち 「人件費」について,被告は「営業要員・システム ,技術(メンテ)要員の人件費」である旨説明する(乙42 。また, )前記(ア)のとおり,被告製品の製造に係る人件費は「売上原価」として計上されているものと考えられるから,販売費としての「人件費」は製造部門以外の営業部門や保守部門の人員であることが窺える。
しかし,証拠(甲15)によれば,被告は被告製品以外にも食品X線異物検査装置を製造販売していることが認められ,被告における食品X線異物検査装置事業は被告製品のためにのみ存続するものではない。しかるに,被告は 「人件費」の具体的内訳を明らかにしないの ,であるから 「人件費」を被告製品の販売のために追加的に必要とな ,る経費であると認めることはできないというべきである。
b運賃について販売費のうち 「運賃」について,被告は「機物・部品の運送料 ,(運賃 」である旨説明する(乙42)ところ,かかる経費は被告製 )品の製造販売のために追加的に必要となる経費と考えられるから,売上金額から控除するのが相当である。
そして,運賃の額について,原告は積極的に争っているわけでもないので,乙第42号証における金額を前提とすることとする。
c広告宣伝費について販売費のうち 「広告宣伝費」について,被告は「展示会費用な ,ど」である旨説明する(乙42)が,かかる説明のみでは被告製品の販売のために追加的に必要となる経費とは考え難い。そこで 「広告,宣伝費」の具体的内容について被告が明らかにしない以上,かかる経費の控除を認めることはできない。
d販売促進費及び販売手数料について販売費のうち 「販売促進費」について,被告は「営業・代理店へ ,の報奨金など」である旨説明し 「販売手数料」については「代理店 ,), などへの販売手数料」である旨説明する(乙42 。これらの経費は被告製品の販売のために追加的に必要となる経費と考えられるから,売上金額から控除するのが相当である。
そして 「販売促進費」及び「販売手数料」の各額については,上 ,記bの「運賃」と同じく,乙第42号証における金額をそれぞれ前提とすることとする。
eその他について販売費のうち 「その他」として,被告は「管理課人件費「教育 , 」,費「従業員募集費「旅費交通費「消耗品費「交際費「会 」,」,」,」,」,議費「作業委託料「諸会費「損害保険料「灯熱水道費 , 」,」,」,」,」「通信費「リース料「間接材料費「修繕費「保守料「租 」,」,」,」,」,税課金「その他の経費「減価償却費「固定資産税「賃借 」,」,」,」,料「支払手数料「金型償却費」を掲げる。そして 「管理課人件 」,」, ,費」は「管理要員の人件費」である旨 「教育費」は「外部研修受講 ,費など」である旨 「消耗品費」は「コピー代,文具代など」である ,旨 「作業委託料」は「派遣社員・請負社員の人件費」である旨, ,「通信費」は「切手代・電話代」である旨 「リース料」は「車両 ,リース料」である旨 「間接材料費」は「設置/納品時に手配した部品 ,などの費用」である旨 「租税課金」は「収入印紙代」である旨, ,「その他の経費」は「 テスト用)サンプル購入費など」である旨, (「減価償却費」は「建物,構築物などの減価償却費」である旨 「賃,借料」は「営業所の賃借料」である旨 「支払手数料」は「売掛金入 ,金時の支払手数料である旨,それぞれ説明する(乙42 。)しかし,上記被告の説明によれば 「間接材料費」については被告 ,製品の販売のために追加的に必要となる経費と考えられるが,その他については内容が不明確であり,被告製品の販売のために追加的に必要となる経費とは認め難い。
よって 「その他」の経費の内 「間接材料費」のみを売上金額か ,,ら控除するのが相当である。
そして 「間接材料費」の額については,上記bの「運賃」と同じ ,く,乙第42号証における金額を前提とすることとする。
開発費について(ウ)別紙損害額計算表の「開発費」について,被告は「IXの製品開発やバリエーション展開に関わる費用に加え,要素開発やソフトのバージョンアップに要した費用」である旨説明する(乙41 。しかし,上記 )(イ)aで認定したとおり,被告は被告製品以外にも食品X線異物検査装置を製造販売しているのであり,被告が主張する「開発費」をもって,被告製品の製造販売のために追加的に必要となる経費であるとは認め難い。
よって 「開発費」について売上金額からの控除を認めることはでき ,ない。
なお,被告は,被告が被告製品を自社開発・自社生産するに至ったのは,原告に非がある旨主張するが,被告製品の開発に至るまでの経緯(動機)は,上記判断を左右する事情とはいえない。
管理費について(エ)別紙損害額計算表の「管理費」について,被告は「全社にサービスを提供している経理・総務・情報システムなどの費用であり,全社の粗利総額に占めるIXの粗利額の比率に応じて配賦計算した結果」である旨説明する(乙41 。しかし,たとえ配賦計算したとはいえ,かかる経 )費をもって被告製品の製造販売のために追加的に必要となる経費と認めることはできない。
よって 「管理費」について売上金額からの控除を認めることはでき ,ない。
小括(オ)以上より,本件においては,別紙損害額計算表の「売上金額」から,「売上原価「運賃「販売促進費「販売手数料」及び「間接材料 」,」,」,費」を控除したものをもって特許法102条2項の「利益の額」とすべきであり,その額は,同別紙のとおり,平成18年6月から同19年10月までにつき10億3975万4000円,同年11月から同20年11月までにつき8億1779万6000円で,合計18億5755万円となる。なお 「運賃「販売促進費「販売手数料」及び「間接材 ,」,」,料費」については,月別の金額が不明であるため,平成19年4月から同年10月までの金額と同年11月から同20年3月までの金額については,月別の販売台数に応じて按分した。
ウ寄与率について被告製品における本件特許発明の位置づけ(ア)本件特許発明は,X線異物検査装置において重要な構成要素である搬送機構及びラインセンサの支持構造そのものに係るものであり,被告製品の全体構造において欠くことのできないものと認められる。
また,被告は,本件特許発明の作用効果であるメンテナンスの容易さについて,被告製品のパンフレット(甲5及び15)において 「簡単,に分解して水洗いが可能」であるとして「清掃性」を強調している。被告製品は主として食品を被検査物とするものであるところ,食品に係る機械については,常に衛生的に保つ必要があり,特に食品を搬送するコンベアについては,衛生状態に気を配る必要がある。被告製品の取扱説明書においても 「一日の運転が終了したら,コンベヤ各部を清掃して ,ください」として,毎日の清掃を推奨している。そうとすれば,ベルトコンベアの清掃性に直結する本件特許発明は,被告製品の販売において少なからぬ寄与をしているものというべきである。
ただし,被告製品の本来的な機能はX線を用いて食品に異物が混入しているかどうかを検査するというものであり,メンテナンス性については重要な機能ではあるものの,あくまで付随的な機能である。
したがって,本件特許発明の寄与度についても,かかる付随的な機能であるという限度において判断されるべきものである。
代替技術の有無(イ)被告は,公用物件に係る構成をして,本件特許発明の代替技術に当たると主張する。たしかに,公用物件においてもメンテナンスを容易にするという技術思想は窺うことができる。しかし,公用物件における解決方法は,搬送機構であるコンベアユニットをX線検査異物装置本体の支持部材とは別の部材により支持した上,これを手前側に引き出して行うものであり,本件特許発明とは大きく異なるものである。なお,被告は,乙第6号証や乙第13号証において,コンベアユニットを手前側に引き出さないまま清掃作業を行う様子を示すが,公用物件の取扱説明書(甲9の126頁)においては,コンベアの清掃作業の手順として,コンベアユニットを引き出すことが記載されているのであるから(被告は,公用物件の発売元であるにもかかわらず,説明書とは異なるメンテナンス手順を示すのである,公用物件におけるメンテナンスを容易にする 。)という課題解決手段は,コンベアユニットを手前側に引き出すことにあるというべきである。そして,公用物件は,かかる構造を採るがゆえに,その分,手数を要することになるから,メンテナンス性という意味においては,本件特許発明より劣るものといわざるを得ない。
そうすると,公用物件はメンテナンスを容易にするための構成を有してはいるものの,本件特許発明にとって,容易に取って代わるような代替技術であるとは認められない。
被告の技術力(ウ)被告は,被告製品が本件特許発明以外の技術的要素によって販売できていると主張し,その具体例として,被告製品のコンベアの下方が開放されており,清掃が容易であることを挙げる。
しかし,かかる作用効果について,被告製品のパンフレット(甲5,15)では何ら触れられていない。また,被告は原告製品では下方が開放されていないことを指摘するが,原告製品のパンフレット(甲20の2頁,甲21の3頁)によれば,原告製品でも検査室ドアを開けることによって容易に搬送機構の下方を清掃することができるのであり,食品に係るX線異物検査装置では毎日清掃することが推奨されていることを併せ考慮すれば,被告製品においてコンベアの下方が開放されていることが大きなセールスポイントになるとは考え難い。
また,被告は,被告製品が「欠品検査精度「耐久性「取扱の簡 」,」,便性」によって販売できている旨も主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
被告の販売力(エ)弁論の全趣旨によれば,X線異物検査装置はコンピュータスケールや重量チェッカーなどと同じラインの前後で使用されるものであること,これら周辺機器に対する販売力がX線異物検査装置の販売機会獲得につながったこと,被告がX線異物検査装置に係る市場において48%のトップシェアを有すること,被告が充実したサポート体制を敷いていること,以上の事実が認められ,かかる事実は,被告製品の販売において相応の寄与をしていると認められる。
この点,原告は,被告がX線異物検査装置の分野で一定の地位を確保することができたのは,原告と被告が密接不可分の協力をしていたからであると主張する。しかし,被告の販売網の確立において原告が寄与したかどうかは,被告製品の販売における本件特許発明の寄与を判断するに当たっては,基本的に関係のない事柄であり,採用できない。
競合他社の動向(オ)被告は,X線異物検査装置の市場において,アンリツ等の競合他社が本件特許発明実施しており,本件特許発明に抑止力がないとして独占的価値がないと主張する。
しかし,特許権の独占力(特許法68条)は法によって付与される特別の効力であり,競合他社の無断実施によってかかる法律上の効果が減殺されるものではない。
かえって,本件においては,被告が主張するとおり,アンリツ,日新電子及びシステムスクエア等の競合他社が本件特許発明実施しているというのであるから(本件では,かかる事実につき当事者間に争いがないので,これを前提とする,X線異物検査装置において,本件特許 。)発明の有用性は高く,かつ容易に取って代わる代替技術も存在しないものと認められる。
上記のとおり,本件特許発明はX線異物検査装置の本来的な機能に係(カ)るものではないものの,メンテナンス性という食品を取り扱う機器にとって重要な機能において有用性の高いものであり,かつ容易に取って代わる代替技術も認められないこと,本件特許発明は,被告製品の構造上不可欠なものであることを考慮すれば,被告製品の販売において被告の販売網が寄与したことを考慮したとしても,本件特許発明の寄与率については20%と認めるのが相当である。
エ小括以上により,特許法102条2項損害額は,前記イで認定した利益額に20%を乗じた額となり,平成18年6月から同19年10月までにつき2億0795万円,同年11月から同20年11月までにつき1億6355万9000円で,合計3億7150万9000円となる(いずれも千円未満切り捨て 。)3特許法102条3項に基づく損害額の算定()原告は,本件特許権侵害に基づく損害賠償の最低額として,予備的に同条3項に基づく損害額の算定をも主張し,同条2項に基づく算定結果と比して,多い方の額の損害賠償を求めている。
ところで,本件において,同条3項に基づく損害額を算定するに当たっては,売上金額に実施料率を乗じる方法で算定するのが相当であるところ,売上金額については,前記 1 のとおり,別紙損害額計算表における売上金額を()前提とすることから,前記 2 で算定した同条2項に基づく損害額(3億71 ()50万9000円)を売上金額(60億6282万1000円)で除すると約6.1%となる。
しかし,本件において,前記 2 で認定した事情を総合してもなお,実施料()率が上記6.1%を超えるような事情は窺えない。
よって,実施料率について具体的に判断するまでもなく,同条3項に基づく損害額が同条2項に基づく損害額を超えるとは認められない。
5結論以上によれば,原告の本件請求は,被告製品の製造,販売の差止め及びその廃棄並びに3億7150万9000円及びうち2億0795万円に対する平成19年11月7日から,うち1億6355万9000円に対する平成20年11月26日から各支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,原告のその余の請求は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条及び64条本文を,主文第1項及び第3項の仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用し,主文第2項の仮執行宣言については相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。
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