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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ワ22715特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成20ワ4754損害賠償請求事件 判例 特許
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平成19ワ13513特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 技術的思想 /  新規性 /  29条1項3号 /  容易に実施 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  上位概念 /  技術的範囲 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  共有 /  参酌 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  加工 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  侵害 /  損害額 /  不法行為(民法709条) /  請求の範囲 /  変更 /  要旨変更 / 
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事件 平成 19年 (ワ) 16025号 損害賠償請求事件
原告A
原告B
原告ら訴訟代理人弁護士長澤清 宮島栄祐
同 補佐人弁理 士萬田正行
被告象 印マホービン株式会社
訴訟代理人弁護士藤山利行
補佐人弁理 士古川泰通前堀義之 後藤昌彦
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2009/09/10
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,原告Aに対し,3450万円及びこれに対する平成11年5月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告Bに対し,3450万円並びに内金2000万円に対する平成14年12月16日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金1450万円に対する平成17年6月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,?@発明の名称を「調理レンジ」とする特許権(後記本件特許権1)を有していた原告Aが,被告による別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という )の製造販売が同特許権を侵害するとして,被告に対し,不法 。
行為に基づき,損害賠償金の一部として3450万円及びこれに対する平成11年5月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,?A発明の名称を「調理レンジ」とする2つの特許権(後記本件特許権2及び同3)を有する原告Bが,被告による被告製品の製造販売がこれらの各特許権を侵害するとして,被告に対し,不法行為に基づき,損害賠償金の一部として3450万円並びに内2000万円に対する平成14年12月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金並びに内1450万円に対する平成17年6月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1争いのない事実( )原告らの特許権1ア本件特許権1原告A(以下「原告A`」という)は,以下の特許権(以下 「本件特 ,許権1」といい,本件特許権1に係る特許を「本件特許1」という。また,特許請求の範囲第1項に記載の発明を「本件特許発明1」といい,本件特許1に係る明細書を「本件明細書1」という )を有していた。 。
登録番号特許第2685172号発明の名称調理レンジ出願日昭和61年3月15日登録日平成9年8月15日期間満了日平成18年3月15日特許請求の範囲【第1項】レンジ室内を気密に保持し得るレンジ本体と,レンジ室内に収容される調理材料を加熱する加熱手段と,レンジ室内と連通されレンジ室内の加圧及び減圧を繰り返す加減圧手段とを備えた調理レンジ。
【第2項】前記加減圧手段によるレンジ室内の加圧及び減圧の繰り返し回数は適宜設定可能である特許請求の範囲第1項に記載の調理レンジ。
イ本件特許権2原告B(以下「原告B`」という )は,以下の特許権(以下 「本件 。 ,特許権2」といい,本件特許権2に係る特許を「本件特許2」という。また,請求項1の発明を「本件特許発明2-1 ,請求項4の発明を「本件 」特許発明2-4」といい,本件特許2に係る明細書を「本件明細書2」という )を有している。 。
登録番号特許第3286666号発明の名称調理レンジ出願日平成2年3月26日登録日平成14年3月15日特許請求の範囲【請求項1】調理部内にて加熱調理を行う機能を有する調理装置と該調理部内を加減圧する加減圧手段を備えた調理レンジに於いて,前記調理部内と関与して屈折迂回部分,又は凸凹部分を設けて,加減圧の圧力調整する圧力調整手段又は加減圧の圧力制御する圧力制御手段を備えた調理レンジ。
【請求項4】調理部内にて加熱調理を行う機能を有する調理装置と該調理部内を加減圧する加減圧手段を備えた調理レンジにおいて,前記調理部内と関与して補助室を設けて,加減圧の圧力調整する圧力調整手段又は加減圧の圧力制御する圧力制御手段を備えた調理レンジ。
ウ本件特許権3原告B`は,以下の特許権(以下 「本件特許権3」といい,本件特許 ,権3に係る特許を「本件特許3」という。また,請求項1の発明を「本件特許発明3」といい,本件特許3に係る明細書を「本件明細書3」という )を有している。 。
特許番号特許第3513756号発明の名称調理レンジ出願日平成2年3月26日登録日平成16年1月23日特許請求の範囲【請求項1】調理部内において加熱調理を行う機能を有する調理装置と前記調理部内を加減圧する加減圧手段とを備えた調理レンジにおいて,前記調理部内と関与して,屈折迂回部分,凹凸部分,分岐部分,抵抗体及び補助室の少なくともいずれか一つを設けて,加減圧の圧力制御を行う圧力制御手段と,少なくとも,前記調理装置の加熱調理状態に関する情報及び前記圧力制御手段の圧力制御状態に関する情報のいずれか一つを報知する報知手段とを備えることを特徴とする調理レンジ。
( )本件各特許発明構成要件の分説2本件各特許発明構成要件は,それぞれ以下のとおり分説することができる。
ア本件特許発明1Aレンジ室内を気密に保持し得るレンジ本体と,Bレンジ室内に収容される調理材料を加熱する加熱手段と,Cレンジ室内と連通されたレンジ室内の加圧及び減圧を繰り返す加減圧手段とDを備えた調理レンジ。
イ本件特許発明2-1E調理部内にて加熱調理を行う機能を有する調理装置とF該調理部内を加減圧する加減圧手段Gを備えた調理レンジに於いて,H1前記調理部内と関与して屈折迂回部分,又は凸凹部分を設けて,加減圧の圧力調整する圧力調整手段又は加減圧の圧力制御する圧力制御手段Iを備えた調理レンジ。
ウ本件特許発明2-4E調理部内にて加熱調理を行う機能を有する調理装置とF該調理部内を加減圧する加減圧手段Gを備えた調理レンジにおいて,H2前記調理部内と関与して補助室を設けて,加減圧の圧力調整する圧力調整手段又は加減圧の圧力制御する圧力制御手段Iを備えた調理レンジ。
エ本件特許発明3J調理部内において加熱調理を行う機能を有する調理装置とK前記調理部内を加減圧する加減圧手段とLを備えた調理レンジにおいて,M前記調理部内と関与して,屈折迂回部分,凹凸部分,分岐部分,抵抗体及び補助室の少なくともいずれか一つを設けて,加減圧の圧力制御を行う圧力制御手段と,N少なくとも,前記調理装置の加熱調理状態に関する情報及び前記圧力制御手段の圧力制御状態に関する情報のいずれか一つを報知する報知手段とOを備えることを特徴とする調理レンジ。
( )被告の行為3被告は,被告製品を販売していた(ただし,被告製品を販売していた期間については争いがある。。)( )被告製品の構成等4被告製品の構成等は,別紙被告製品説明書のとおりである(ただし,下線部については争いがある。下線部の【】内は原告らの主張であり,下線部の【】の外は被告の主張である。。)2争点( )被告製品は本件特許発明1の技術的範囲に属するか(争点1)1( )被告製品は本件特許発明2-1,同2-4の技術的範囲に属するか(争点 22)( )被告製品は本件特許発明3の技術的範囲に属するか(争点3)3( )本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものか(争点4) 4ア新規性進歩性の欠如?@(争点4-1)本件特許発明1は特開昭58-38518号公報(乙22,以下「乙22公報 )に記載された発明と同一か,又は同発明に基づいて当業者が容 」易に発明することができたものかイ進歩性の欠如?A(争点4-2)本件特許発明1は特開昭59-41717号公報(乙32,以下「乙32公報」という )に記載された発明等に基づいて当業者が容易に発明す 。
ることができたものか( )本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものか(争点5)5ア進歩性の欠如(争点5-1)本件特許発明2-1,同2-4は特開昭62-213715号公報(乙35,以下「乙35公報」という )に記載された発明等に基づいて当業 。
者が容易に発明することができたものかイ記載不備(争点5-2)本件明細書2の記載は平成2年法律第30号による改正前の特許法36条3項(以下「旧特許法36条3項」という )に定める要件を充たして 。
いるか( )本件特許3は特許無効審判により無効にされるべきものか(争点6)6ア進歩性の欠如(争点6-1)本件特許発明3は乙35公報に記載された発明等に基づいて当業者が容易に発明することができたものかイ記載不備(争点6-2)本件明細書3の記載は旧特許法36条3項に定める要件を充たしているか( )原告らの損害額(争点7)7( )なお,本件特許1の出願日は昭和61年3月15日であり,昭和62年法 8律第27号による改正前の特許法が適用されるから,本件明細書1の特許請求の範囲第2項の記載は必須要件項である本件特許発明1の実施態様を記載したものにすぎず(同改正前の特許法36条4項参照 ,これを独立の発明 )と捉えることはできない(本件特許1の特許公報にも発明の個数は1個と記載されている。したがって,被告製品が上記特許請求の範囲第1項に係 。)る発明の技術的範囲に属するか否かを判断すれば足り,第2項に係る「発明」の技術的範囲に属するか否かは,争点として取り上げない。
第3争点に関する当事者の主張1争点1(被告物件は本件特許発明1の技術的範囲に属するか)について【原告A`の主張】( )被告製品の構成1本件特許発明1の構成要件に対応させて被告製品の構成を分説すると以下のとおりとなる。
a鍋5内を気密に保持し得る,胴部2及び蓋部3から構成される炊飯ジャー本体と,b鍋5内に収容される炊飯材料を加熱する電磁誘導加熱手段(誘電加熱コイル)と,c第一通気口10を開閉可能に構成され,第一通気口10の閉塞により鍋5内を加圧する加圧手段(押し棒16の後退により第一通気口10を閉塞するボール11 ,第二通気口20を開閉可能に構成され,第二通気口2 )0の閉塞により鍋5内を加圧するとともに,第二通気口20の開放により鍋5内を減圧する加圧減圧手段(第二通気口20を閉塞する弁21及び調圧機構30 ,及び,圧力センサ42による鍋5内圧力の検知に基づいて )加圧減圧手段による第二通気口20の開閉を制御し,鍋5内の圧力が予め設定された圧力上限値と圧力下限値との間となるように鍋5内の加圧と減圧を繰り返させるマイコンから構成される加減圧手段とdを備えた炊飯ジャー。
( )構成要件Aについて2ア本件明細書1には「 産業上の利用分野]本発明は,電子レンジ,オー [ブンレンジ等の調理レンジに関する (1欄10行目ないし12行目)と 」記載されているから 「調理レンジ」は電子レンジやオーブンレンジ以外 ,も包含することがわかる。
そして,新明解国語辞典(第3版 ,大百科事典,広辞苑(第2版補訂 )版)及び万有百科大辞典の「レンジ「料理「調理器具」等の説明か 」,」,らすれば,炊飯ジャーが「レンジ」ないし「調理器具」の範疇に含まれることは明らかといえる。
したがって,炊飯ジャーの一形態である被告製品は,本件特許発明1にいう調理レンジに相当する。
イこれに対し,被告は,本件特許発明1にいう調理レンジとは,電子レンジとしての機能,すなわちマイクロ波の照射により調理材料を加熱する機能を必須の機能として有するものと主張するが,調理学用語辞典には「レンジ(RANGE)とは,上部にこんろ,下部にオーブンを組み込んだ加熱機器,こんろのバーナーが2〜3個のものや真中にグリルのついたものもある。熱源は電気やガスが使われているが,わが国ではガスレンジが多い」と記載されているから,マイクロ波の照射を「調理レンジ」の要件とすることはできない。
ウ以上によれば,被告製品の胴部2及び蓋部3から構成される炊飯ジャー本体は本件特許発明1のレンジ本体に相当し,鍋5は炊飯ジャー本体の内部に収容されるものでありレンジ室内に相当するから,被告製品は構成要件Aを充足する。
( )構成要件Bについて3被告製品の「取扱説明書・お料理ノート」によれば,鶏肉などの食材や醤油などの調味料を米と一緒に鍋内にセットしてから炊飯する五目ご飯や山菜おこわなどが紹介されており,米以外の食材や調味料も調理対象とされているから,被告製品の構成bの炊飯材料は本件特許発明1にいう調理材料に相当する。
そして,被告製品の構成bの電磁誘導加熱手段(電磁誘導コイル)は本件特許発明1にいう加熱手段に相当する。
したがって,被告製品は構成要件Bを充足する。
( )構成要件Cについて4ア本件特許発明1にいう「加減圧手段」の意義本件明細書1の特許請求の範囲では,加減圧手段について,積極的に加減圧を行う手段とは限定していない。
そして,本件明細書1は,加減圧手段の具体的な実施例として,気密室6の内部を加熱する加熱体3と気密室6に管合したポンプ4又は調圧器5により気密室6の圧力の調整を行うことを記載しているところ,ポンプ4のみによる気密室6内の圧力の調整である加減圧は,気密室6内を積極的ないし能動的に加圧又は減圧することによる強制的な加減圧であるが,調圧器5による気密室6内の圧力の調整である加減圧は,加熱体3による気密室6内の気体の加熱に伴う圧力増加を解放することによる消極的ないし受動的なものである。同様に,ポンプ4と調圧器5とを併用して気密室6内の圧力の調整(加減圧)を行う場合も,気密室6内の圧力の調整である「加減圧」は,調圧器5が関与した消極的ないし受動的な動作態様を包含する。
そうすると,本件特許発明1にいう加減圧手段とは,能動的であると受動的であるとを問わずレンジ室内の加減圧を繰り返すための手段を指すことは明白であり,加減圧手段を本件明細書1に実施例として記載されているポンプ4に限定して解釈すべきではない。
イ被告製品の構成要件Cの充足性被告製品の構成cは,誘電加熱コイルによる鍋5内の加圧動作と共同して,受動的ではあるが鍋5内を繰り返し加圧及び減圧するものであるから,本件特許発明1にいう加減圧手段に相当する。
そして,被告製品のボール11は,鍋5内空間と外部とが第一通気口10を介して連通する通気路に設けられているものであるから,被告製品の構成cの「第一通気口10を開閉可能に構成され」の部分は構成要件Cの「レンジ室内と連通され」という部分に相当する。また,被告製品の弁21は,鍋5内空間と外部とが第二通気口20を介して連通する通気路に設けられる構成であるから,被告製品の構成cの「第二通気口20を開閉可能に構成され」の部分も構成要件Cの「レンジ室内と連通され」に相当する。
したがって,被告製品は構成要件Cを充足する。
( )構成要件Dについて5上記のとおり,炊飯ジャーは本件特許発明1にいう調理レンジの範疇に含まれるものであるから,被告製品は本件特許発明1の構成要件Dを充足する。
( )まとめ6したがって,被告製品は本件特許発明1の技術的範囲に属する。
【被告の主張】( )被告製品の構成について1原告A`が主張する被告製品の構成aは認めるが,構成bないし構成dは否認する。
( )構成要件Aについて2ア本件特許発明1にいう「調理レンジ」の意義本件明細書1には「 産業上の利用分野]本発明は,電子レンジ,オー 「ブンレンジ等の調理レンジに関する (1欄10行目ないし12行目)と 」の記載がある。
そして,本件特許1の出願前に刊行された電子百科事典,調理学用語辞典の記載によれば,電子レンジとは,高周波電波ないしマイクロ波の照射により食品を加熱する調理機器であって調理内容は特に限定されないものと解される。また,上記調理学用語辞典の記載によれば,オーブンレンジとは,電子レンジの機能に加え,ガス又は電気を熱源として食品を蒸し焼きにする機能を有する調理機器であると解される。加えて,本件特許1の出願前の家電製造会社のカタログによれば,電子レンジ及びオーブンレンジの用語が上記の意味で普通に用いられていたことは明らかである。
他方,広辞苑,調理学用語辞典 「液化石油用ガスレンジJISS ,2105」及び「都市ガス用レンジJISS2125」によれば,単に「レンジ」や「ガスレンジ」と表現するときの「レンジ」とはオーブンの上にこんろが組み込まれた調理機器を意味するものであり,電子レンジやオーブンレンジとして表現する場合の「レンジ」とは異なる意味で使用されていることがわかる。
このように「レンジ」という語は二つの異なる意味で使用されていることを考慮すれば,本件明細書1の上記「電子レンジ,オーブンレンジ等」の「等」についてはいたずらに広く解釈すべきではない。
したがって,本件特許発明1にいう「調理レンジ」とは,電子レンジとしての機能,すなわちマイクロ波の照射により調理材料を加熱する機能を必須の機能として有し,調理内容が特に限定されてない汎用の調理機器の総称と解される。
イ被告製品が構成要件Aを充足しないこと圧力炊飯ジャーである被告製品は,電磁誘導加熱のための誘導加熱コイルと保温用の抵抗発熱型ヒータとを備えるが,誘導加熱コイル及び抵抗発熱型ヒータはいずれもマイクロ波の照射により加熱を行うものではない。
また,圧力IH炊飯ジャーである被告製品では,米以外の具材や調味料は,あくまで米とともに炊飯されるのが前提である。
このように,被告製品は,マイクロ波の照射により調理材料を加熱する機能を必須の機能として有し,調理内容が特に限定されない汎用の調理機器ではないから,本件特許発明1にいう「調理レンジ」の範疇に含まれるものではない。
したがって,被告製品の鍋5は本件特許発明1にいう「レンジ室」に相当せず,胴部2及び蓋部3から構成される炊飯ジャー本体も「レンジ本体」に相当しないから,被告製品は構成要件Aを充足しない。
( )構成要件Bについて3上記のとおり,被告製品は本件特許発明1にいう「調理レンジ」に相当せず,鍋5も「レンジ室」に相当しないから,被告製品は構成要件Bを充足しない。
( )構成要件Cについて4ア本件特許発明1にいう「加減圧手段」の意義(ア)本件明細書1には加減圧を繰り返し行う手段としてはポンプ4を作動させる以外には何ら開示も示唆もされていないのであるから,本件特許発明にいう加減圧手段は,ポンプのような積極的ないしは能動的な手段を用いてレンジ室内の気体の強制的な増加と強制的な減少とを繰り返すものと解するほかない。
(イ)本件特許1の出願当初の明細書には,レンジ室内の加減圧を実行するタイミング(加熱との前後関係)に関し 「本発明は加熱前に,調理 ,材に調味料の味付けを減圧,又は加圧を行う事により内部まですみやかに浸透させ,その後,加熱を行い調理する 」と記載されていただけで 。
あり,加熱中に加減圧を実行することは一切記載されていなかった。
その後,原告A`は,平成5年3月13日付け手続補正書を提出し,特許請求の範囲に「この加減圧を繰り返し行い,被加熱体の内部へ調味料を浸透させた後,又は同時に加熱加工を行う」との記載を追加する補正をしたが,同補正は要旨変更であるとして平成7年12月6日付けで却下決定がなされ,同却下決定に対する不服審判請求についても不成立の審決がなされている。
そして,原告A`は,平成9年4月16日付け手続補正書を提出して,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明から加熱と加減圧の時期に関する記載を削除する補正をし,本件明細書1の内容で特許査定がなされたものである。
以上の審査手続の経緯を考慮すると,本件特許発明1にいう「加減圧手段」は,出願当初の明細書に記載されたとおり,加熱前にレンジ室内の加減圧を行うものに限定して解釈すべきである。
(ウ)以上によれば,本件特許発明1にいう「加減圧手段」は,ポンプのような積極的ないしは能動的な手段を用いて,加熱前にレンジ室内の気体の強制的な増加と強制的な減少とを繰り返すものと解するべきである。
イ被告製品が構成要件Cを充足しないこと被告製品説明書のとおり,被告製品は,炊飯材料とともに収納された水が誘電加熱コイルで加熱されて蒸発することにより蒸気圧で鍋5内の圧力を上昇させ,弁21の弁体23が開くことで蒸気が大気に放出されることにより鍋5内の圧力を低下させるものであるから,鍋5内の気体を強制的に増加させることも強制的に減少させることも行わない。
また,被告製品では,予熱工程で誘導加熱コイルによる加熱を開始しても,ボール11,弁21,及び調圧機構30のいずれもが非作動状態にあって機能せず,予熱工程後に初めて弁21及び調圧機構30が作動状態となるから,加熱手段による加熱前にレンジ室内の加減圧を行うものでもない。
したがって,被告製品には本件特許発明1にいう「加減圧手段」は存在しないから,構成要件Cを充足しない。
( )構成要件Dについて5上記のとおり,被告製品は本件特許発明1にいう調理レンジに相当するものではないから,構成要件Dも充足しない。
( )まとめ6以上のとおり,被告製品は,構成要件AないしDを充足しないから,本件特許発明1の技術的範囲に属さない。
2争点2(被告製品は本件特許発明2-1,同2-4の技術的範囲に属するか)について【原告B`の主張】( )被告製品の構成1本件特許発明2-1,同2-4の構成要件に対応させて被告製品の構成を分説すると以下のとおりとなる。
e内蓋7により鍋5の開口部を気密に閉塞してなる調理部内において炊飯による加熱調理を行う機能を有する誘導加熱コイル及び鍋5を含む調理装置とf前記調理部としての鍋5内を加減圧する誘導加熱コイル,マイコン,弁21及び調圧機構30を含む加減圧手段とgを備えた圧力IH炊飯ジャー1に於いて,h前記調理部としての鍋5内と関与して,内蓋7と隔壁61との間に閉塞室63を設けるとともに,排気口86を有するケースキャップ84により閉塞した蒸気口ケース73の内部空間に流向制御壁74により屈折迂回部分又は凸凹部分を設け,かつ,蒸気口ケース73の底部の連通口75におひつボール76を配置して,加減圧の圧力制御を行う圧力制御手段iを備えることを特徴とする圧力IH炊飯ジャー1。
( )構成要件Eについて2ア「調理部」日本語大辞典及び大百科事典によれば,炊飯とは水を媒体として加熱する湿熱加熱による調理技術であることがわかる。
そして,本件明細書2の記載を参酌すれば,構成要件Eの調理部とは,内部を加圧,減圧,又は加減圧することを可能とし,かつ内部で煮る,炊く等の加熱調理を可能とする部分ないし部材と解される。
被告製品においては,鍋5の開口部の全体を内蓋7で閉塞するとともに,鍋5の開口部の周縁を内蓋7のパッキン6により気密に封止して,鍋5の内部空間を加圧空間となる気密空間としており,鍋5の内部空間には水とともに米が投入され,誘導加熱コイルによる誘導加熱により鍋5が発熱して,内部の米を湿熱により加熱調理(炊飯により加熱調理)する。
したがって,被告製品は,パッキン6を有する内蓋7により鍋5の開口部を気密に閉塞した「調理部」を備えている。
イ「調理装置」本件特許発明2-1,同2-4にいう「調理装置」とは 「調理部」内 ,において「加熱調理」を行う機能を有する装置である。
被告製品は,上記のとおり,鍋5の内部空間に水とともに米を投入し,誘導加熱コイルによる誘導加熱によって鍋5を発熱させることで,内部の米を湿熱により加熱調理(炊飯により加熱調理)する機能を有しているのであるから,少なくとも,かかる機能を発揮する誘導加熱コイル及び鍋5は,本件特許発明2-1,同2-4にいう「調理装置」を構成する。
ウしたがって,被告製品は構成要件Eを充足する。
( )構成要件Fについて3ア本件特許発明2-1,同2-4にいう「加減圧手段」の意義本件明細書2には「加減圧調理レンジ(1)に於て,加圧又は減圧又は加減圧又は圧力現状維持等を行う為の加減圧機能装置(2(7欄27)」行目ないし29行目「加減圧調理レンジ(1)に於て,加圧,減圧, ),加減圧の制御,調整を行う加減圧機能装置,構造 (7欄31行目ないし 」33行目,39行目ないし41行目,45行目ないし47行目,8欄2行目ないし4行目,同8行目ないし10行目,同14行目ないし16行目,同21行目ないし23行目,同27行目ないし29行目,同33行目ないし35行目,同40行目ないし42行目,同48行目ないし50行目 ,)「ニ)加減圧調理レンジに加減圧力鍋,釜を使用して,食品を煮炊きする時,加圧,減圧の断続,停止,加減圧の変化等の制御,調整を行ってコントロール調理を行えば,より早く且つ美味しく及び安全に使用出来る調理装置となり得る。又加減圧力調理レンジとなる。依って加減圧力鍋,釜等の効果が相乗的に得ることが出来る(7欄13行目ないし18行目) 。」との記載がある。
以上の記載内容からすれば,本件特許発明2-1,同2-4にいう「加減圧手段」は,能動的であるか受動的であるかを問わず 「加圧又は減圧 ,又は加減圧又は圧力現状維持等」により「調理部内を加減圧する」限りにおいて,各種の構成を包含する手段であり 「調理部」を「加減圧力鍋, ,釜」により構成して 「加減圧力鍋,釜」自身の加減圧機能(加熱により ,内部圧力を上昇し,調圧弁により内部圧力を降下する機能)により「調理部内を加減圧」する場合も包含する。
構成要件Fの充足性被告製品は,従来の圧力ボールに加え,新たに可変圧力機構を搭載することで,メニューにあわせて100℃(1気圧)〜107℃(1.3気圧)まできめ細かく釜内の圧力を自動的に選択するものであり,マイコン制御により誘導加熱コイルの通電量を制御して鍋5内の水を所定温度まで加熱して沸騰状態を持続させることで,内蓋7により密閉された鍋5内の上方密閉空間の圧力を前記所定温度に対応する所定圧力値まで加圧したり,マイコン制御による調圧機構30により鍋5内の上方密閉空間の圧力を減圧したりしているものである。
そうすると,被告製品は,誘導加熱コイル,マイコン,弁21及び調圧機構30を使用して調理部としての鍋5内を加圧及び減圧しており,少なくとも,かかる機能を発揮する誘導加熱コイル,マイコン,弁21及び調圧機構30は,本件特許発明2-1,同2-4にいう「加減圧手段」を構成する。
ウまとめしたがって,被告製品は構成要件Fを充足する。
( )構成要件Gについて4本件明細書2には「 産業上の利用分野〉本発明は,電子レンジ,オーブ 〈ンレンジ等の調理レンジに関する (2欄9行目ないし12行目)と記載さ 」れているから 「調理レンジ」は電子レンジやオーブンレンジ以外も包含す ,ることがわかる。また,本件明細書2には「肉類,魚類,穀物類等の色々煮る蒸す焼くの過程において加減圧調理レンジの加圧加熱で調理(7欄7。」行目ないし8行目)との記載もあるから,米等の穀物類を煮炊きする場合の調理装置として適用可能であることが明記されている。
被告製品の「圧力IH炊飯ジャー1」は,炊飯という調理を行う器具である点で,本件特許発明2-1,同2-4の調理レンジの範疇に含まれると解されるから,被告製品は構成要件Gを充足する。
( )構成要件H1,H2について5ア「屈折迂回部分 (本件特許発明2-1) 」屈折迂回部分とは,本件明細書2に記載の「屈折迂回した管(24 」)(8欄24行目ないし25行目,第9図H)を含む上位概念の用語であり,調理部内と関与して設けられるものである。
イ「凸凹部分 (本件特許発明2-1) 」凸凹部分とは,本件明細書2に記載の「凸凹を設けた管(25(8)」欄30〜31行目,第9図I)を含む上位概念の用語であり,調理部内と関与して設けられるものである。
ウ「補助室 (本件特許発明2-4) 」補助室とは,本件明細書2に記載の「吸排出口(10)より続く枠箱(11 」内の空間(7欄33〜34行目,第9図B)を含む上位概念の )用語であり,調理部内と関与して設けられるものである。
エ「加減圧の圧力調整する圧力調整手段又は加減圧の圧力制御する圧力制御手段 (本件特許発明2-1,2-4) 」本件明細書2の記載によれば,構成要件H1に係る屈折迂回部分又は凸凹部分からなる圧力調整手段若しくは圧力制御手段は,調理部内を加減圧手段により加圧状態(大気圧を超える圧力状態)としたときに,調理部内と外部空間とを連通する連通路又は連通室となり,その狭小かつ複雑な内部空間形状により,調理部の内部空間から外部空間に排出される空気に抵抗を付与することで緩衝し,調理部内の圧力制御ないし圧力調整を行うものと解することができる。
また,本件明細書2の記載によれば,構成要件H2に係る補助室からなる圧力調整手段又は圧力制御手段は,調理部内を加減圧手段により加圧状態(大気圧を超える圧力状態)としたときに,調理部内と外部空間とを連通する連通路又は連通室となり,その相対的に狭小な内部空間形状により,調理部の内部空間から外部空間に排出される空気に抵抗を付与することで緩衝し,調理部内の圧力制御ないし圧力調整を行うものと解することができる。
構成要件H1,H2の充足性被告製品は,調理部としての鍋5内と関与して,内蓋7と隔壁61との間に閉塞室63を設けるとともに,排気口86を有するケースキャップ84により閉塞した蒸気口ケース73の内部空間に流向制御壁74により迂回部分又は凸凹部分を設け,かつ,蒸気口ケース73の底部の連通口75におひつボール76を配置して,鍋5内の加減圧の圧力制御を行っているところ,閉塞室63は本件特許発明2-4の補助室に相当し,排気口86を有するケースキャップ84により閉塞した蒸気口ケース73の内部空間の流向制御壁74により設けた迂回部分又は凸凹部分は本件特許発明2-1の屈折迂回部分又は凸凹部分に相当する。
したがって,被告製品は構成要件H1,H2を充足する。
( )構成要件Iについて6上記のとおり,被告製品は調理レンジに相当する圧力IHジャー1を備えているから,構成要件Iを充足する。
( )まとめ7以上のとおりであるから,被告製品は本件特許発明2-1及び2-4の技術的範囲に属する。
【被告の主張】( )被告製品の構成1本件特許発明2-1,同2-4の構成要件に対応させて被告製品の構成を分説すると以下のとおりとなる。
e’内蓋7で気密に閉塞される鍋5を電磁誘導加熱する炊飯用の誘導加熱コイルと,f’マイコンからの入力に応じて弁21が鍋5内の圧力に抗して閉弁状態を維持する力を調節し,それによって鍋5内の圧力を調圧する調圧機構30と,g’を備えた圧力IH炊飯ジャー1であって,h’内蓋7と外蓋70の下側蓋体71との間に形成されて鍋5から排気口86に向かう蒸気を結露させる結露室63と,結露室63から進入した蒸気を流向制御壁74によって旋回流Fとして排気口86から大気に排出させることで蒸気からおねばを分離するおねば分離ケース73と,i’を備えた圧力IH炊飯ジャー1。
( )構成要件Eについて2本件明細書2の実施例の記載箇所には調理部なる用語は一切使用されておらず具体的に説明されていないので本件特許発明2-1,同2-4にいう「調理部」がいかなるものであるかを解釈することはできず,被告製品の「鍋7で気密に保持される鍋5」が本件特許発明2-1,同2-4にいう「調理部」に相当するとはいえない。
また,本件明細書2の実施例の記載箇所には,調理装置なる用語も一切使用されておらず,本件明細書からは本件特許発明2-1,同2-4にいう「調理装置」の意義が明らかでない以上,被告製品の「鍋5を電磁誘導加熱する炊飯用の誘電加熱コイル」を本件特許発明2-1,同2-4にいう「調理装置」に相当するということもできない。
したがって,被告製品は構成要件Eを充足しない。
( )構成要件Fについて3ア上記のとおり,本件明細書2の記載を参酌しても本件特許発明2-1,同2-4にいう調理部の意義が明らかでないから,加減圧手段による加減圧の対象は明確でない。
また,本件明細書2では 「加圧「減圧「加減圧」及び「圧力維 ,」,」,持」が互いに異なる機能として区別して記載されているから(7欄28行目,同32行目,同40行目,同46行目,8欄3行目,同9行目,同15行目,同22行目,同28行目,同34行目,同41行目,同49行目 ,本件特許発明2-1,同2-4にいう加減圧手段は,あくまで「加 )減圧」を行うものであって 「加圧「減圧」及び「圧力維持」は行わな ,」,いものである。
イ原告B`は,被告製品の誘導加熱コイル,マイコン及び調圧機構30が本件特許発明2-1,2-4にいう「加減圧手段」に相当すると主張するが,被告製品の鍋5内の圧力は誘電加熱コイルで加熱された鍋5内の水が蒸発することで上昇するものの,マイコン及び調圧機構は,鍋5内の圧力を調圧するにすぎず,加減圧を行うものではないから,被告製品には本件特許発明2-1,同2-4にいう「加減圧手段」に相当するものはない。
ウ以上のとおり,本件特許発明2-1,同2-4にいう「調理部」の意義が明確でないので「加減圧手段」が何を「加減圧する」のかも明確でない上,少なくとも 「加減圧手段」が「加減圧」を行うのに対して被告製品 ,のマイコン及び調圧機構30は「調圧」を行うものである点で,被告製品が本件特許発明2-1,同2-4にいう「加減圧手段」を備えているとは認められない。
したがって,被告製品は構成要件Eを充足しない。
( )構成要件Gについて4ア本件明細書2の記載内容及び争点1の箇所で指摘した「電子レンジ」「オーブンレンジ 「レンジ」が一般的に使用されている意味を考慮すれ 」ば,本件特許発明2-1,同2-4にいう調理レンジとは,電子レンジとしての機能,すなわちマイクロ波の照射により調理材料を加熱する機能を必須の機能として有し,調理内容が特に限定されない汎用の調理機器の総称であると解される。
イ争点1の箇所で主張したとおり,圧力炊飯ジャーである被告製品は,電磁誘導加熱のための誘導加熱コイルと保温用の抵抗発熱型ヒータとを備えるが,誘導加熱コイル及び抵抗発熱型ヒータはいずれもマイクロ波の照射により加熱を行うものではない。
また,圧力IH炊飯ジャーである被告製品では,米以外の具材や調味料は,あくまで米とともに炊飯されるのが前提である。
このように,被告製品は,マイクロ波の照射による加熱機能を備えていない炊飯専用の調理機器であるから,マイクロ波の照射による調理材料を加熱する機能を必須の機能として有し,調理内容が特に限定されない汎用の調理機器ではないから,本件特許発明2-1,同2-4にいう「調理レンジ」の範疇には到底含まれない。
したがって,被告製品は構成要件Gを充足しない。
( )構成要件H1について5ア本件特許発明2-1にいう「屈折迂回部分 「凸凹部分」の意義 」本件明細書2の記載(7欄27行目ないし30行目,8欄21行目ないし26行目)並びに第9図A,第9図H及び第9図Iからすれば,第9図I及び第9図Hでは表れていない「加減圧調理レンジ(1 」の右側壁に )「加減圧機能装置(2 」が設けられており,左側壁に設けられている )「屈折迂回した管(24 」又は「凸凹を設けた管(25 」は「加減圧 ) )機能装置(2 」を介することなく「吸排出口(10 」で直接的に「加 ) )減圧調理レンジ(1 」と連通していると解される。 )したがって,本件特許発明1の「前記調理部内と関与して屈折迂回部分,又は凸凹部分を設けて」は「前記調理部内と直接的に連通するように屈折迂回部分,又は凸凹部分を設けて」に限定して解釈しなければならない。
イ被告製品が構成要件H1を充足しないこと被告製品のおねば分離ケース73と鍋5内との間には結露室63が設けられており,おねば分離ケース73は鍋5内に直接的に連通しているわけではない。
また,被告製品のおねば分離ケース73は,蒸気からの「おねば」の分離を行うものであるのに対し,構成要件H1の「屈折迂回部分,又は凸凹部分」は「加減圧の圧力調整」又は「加減圧の圧力制御」を行う「圧力調整手段」又は「圧力制御手段」として設けられているから,両者は明らかに異なるものである。
したがって,被告製品は構成要件H1を充足しない。
( )構成要件H2について6ア本件特許発明2にいう「補助室」の意義本件明細書2の記載内容(7欄27行目ないし38行目)並びに第9図A及び第9図Bからすれば,第9図Bでは表れていない「加減圧調理レンジ(1 」の右側壁に「加減圧機能装置(2 」が設けられており,左側 ) )壁に設けられている「枠箱(11 」は「加減圧機能装置(2 」を介す ) )ることなく「吸排出口(10 」で直接的に「加減圧調理レンジ(1 」 ) )と連通していると解される。
したがって,本件発明2-4の「前記調理部内と関与して補助室を設け」は 「前記調理部内と直接的に連通するように補助室を設けて」に限 ,定して解釈しなければならない。
イ被告製品が構成要件H2を充足しないこと被告製品の結露室63と鍋5内との間の第一通気口10と第二通気口20には,それぞれボール11と弁21が設けられているから,結露室63は鍋5内に直接的に連通しているものではない。
また,本件特許発明2-4の補助室は,加減圧の圧力調整又は加減圧の圧力制御を行うと規定されているが,被告製品の結露室63は蒸気の結露による水分除去と蒸気からのおねばの分離を行うものであるから,両者は異なるものである。
したがって,被告製品は構成要件H2を充足しない。
( )構成要件Iについて7上記のとおり,被告製品は本件特許発明2-1,同2-4にいう「調理レンジ」の範疇には含まれないから,構成要件Iを充足しない。
( )まとめ8以上のとおり,被告製品は本件特許発明2-1,2-4の構成要件をいずれも充足しないので,これらの発明の技術的範囲に属さない。
3争点3(被告製品は本件特許発明3の技術的範囲に属するか)について【原告B`の主張】( )被告製品の構成1本件特許発明3の構成要件に対応させて被告製品の構成を分説すると以下のとおりとなる。
j内蓋7により鍋5の開口部を気密に閉塞してなる調理部内において炊飯による加熱調理を行う機能を有する誘導加熱コイル及び鍋5を含む調理装置とk前記調理部としての鍋5内を加減圧する誘導加熱コイル,マイコン,弁21及び調圧機構30を含む加減圧手段lを備えた圧力IH炊飯ジャー1に於いて,m前記調理部としての鍋5内と関与して,内蓋7と隔壁61との間に閉塞室63を設けるとともに,排気口86を有するケースキャップ84により閉塞した蒸気口ケース73の内部空間に流向制御壁74により屈折迂回部分又は凸凹部分を設け,かつ,蒸気口ケース73の底部の連通口75におひつボール76を配置して,加減圧の圧力制御を行う圧力制御手段とn少なくとも,前記調理装置の加熱調理状態に関する情報として炊飯開始や炊飯終了をメロディー音又はブザー音で報知する報知手段とoを備えることを特徴とする圧力IH炊飯ジャー1。
( )構成要件Jについて2ア「調理部」(ア)日本語大辞典及び大百科事典によれば,炊飯とは水を媒体として加熱する湿熱加熱による調理技術であることがわかる。
そして,本件明細書3に「前記調理部内を加圧,減圧,又は加減圧する (段落【0009「調理部内にて煮る,炊く,焼く,蒸す,蒸 」】),らす,味付け,又は味浸透を行う (段落【0009「調理部内に 」】),て加熱を行う (段落【0009「 調理部内』とは,前記調理レン 」】),『ジに関与して設けた加圧,減圧,加減圧容器の調理部内,若しくは,調理レンジの調理部内の全体を言う場合もある (段落【0014 )と 」】記載されている。
そうすると,本件特許発明3にいう「調理部」とは,内部を加圧,減圧,又は加減圧することを可能とし,かつ,内部で煮る,炊く等の加熱調理を可能とする部分ないし部材であると解される。
(イ)被告製品は,鍋5の開口部の全体を内蓋7で閉塞するとともに,鍋5の開口部の周縁を内蓋7のパッキン6により気密に封止して,鍋5の内部空間を加圧空間となる気密空間としている。鍋5の内部空間には水とともに米が投入され,誘導加熱コイルによる誘導加熱により鍋5が発熱して,内部の米を湿熱により加熱調理(炊飯により加熱調理)する。
したがって,被告製品は,パッキン6を有する内蓋7により鍋5の開口部を気密に閉塞した「調理部」を備えていると解される。
イ「調理装置」本件特許発明3にいう「調理装置」とは,調理部内において加熱調理を行う装置であるが,被告製品は,上記のとおり,鍋5の内部空間に水とともに米を投入し,誘電加熱コイルによる誘電加熱によって鍋5を発熱させることで,内部の米を湿熱により加熱調理する機能を有している。
したがって,少なくとも,かかる機能を発揮する誘電加熱コイル及び鍋5は,本件特許発明3にいう調理装置に相当する。
ウ以上のとおり,被告製品は構成要件Jを充足する。
( )構成要件Kについて3ア加減圧手段(ア)本件明細書3には 「加減圧調理レンジ(1)に於いて,加圧又は ,減圧又は加減圧又は圧力現状維持等を行う為の加減圧機能装置(2 」)(段落【0046「加減圧調理レンジ(1)に於いて,加圧,減圧, 】),加減圧の制御,調整を行う加減圧機能装置,構造 (段落【0047 , 」】【0048【0050】ないし【0057「加減圧調理レンジ 】, 】),(1)に於いて,加圧,減圧,加減圧の制御,調整を行う加減圧機能装置,構造(加減圧容器(段落【0049 )との記載があり,これら )」】の記載からすれば,加減圧手段とは,調理部内を加圧又は減圧又は加減圧又は圧力現状維持等する手段であると解される。
, , (イ)また,本件明細書3には 「ニ)調理レンジに関与した加減圧力鍋釜を使用して,食品を煮炊きする時,加圧,減圧を断続,停止したりし,又加圧,減圧,加減圧の変化等の制御,調整を行ってコントロール調理を行えば,より早く且つ美味しく及び安全に仕様,使用出来る加減圧調理レンジ及び加減圧鍋,釜と為ることが出来る。又,依って加減圧調理レンジ,加,減,圧力鍋,釜等等となり仕様,利用効果が相乗的に得ることが出来る(段落【0043 )との記載があるが,この記載から 。」】すれば,加減圧手段とは,調理部を加減圧力鍋,釜」により構成して,「加減圧力鍋,釜」自身の加減圧機能(加熱により内部圧力を上昇し,調圧弁により内部圧力を降下する機能)により調理部内を加減圧する場合も包含する。
(ウ)したがって,本件特許発明3にいう加減圧手段は,能動的であるか受動的であるかを問わず,加圧又は減圧又は加減圧又は圧力現状維持等により調理部内を加減圧する限りにおいて,各種の構成を包含する手段である。
イ被告製品が構成要件Kを充足すること被告製品は,従来の圧力ボールに加え,新たに可変圧力機構を搭載することで,メニューにあわせて100℃(1気圧)〜107℃(1.3気圧)まできめ細かく釜内の圧力を自動的に選択するものであり,マイコン制御により誘導加熱コイルの通電量を制御して鍋5内の水を所定温度まで加熱して沸騰状態を持続させることで,内蓋7により密閉された鍋5内の上方密閉空間の圧力を前記所定温度に対応する所定圧力値まで加圧したり,マイコン制御による調圧機構30により鍋5内の上方密閉空間の圧力を減圧したりしているものである。
したがって,被告製品は,誘導加熱コイル,マイコン,弁21及び調圧機構30を使用して調理部としての鍋5内を加圧及び減圧しており,少なくとも,かかる機能を発揮する誘導加熱コイル,マイコン,弁21及び調圧機構30は,本件特許発明3にいう「調理部内を加減圧する加減圧手段」を構成すると解されるから,構成要件Kを充足する。
( )構成要件Lについて4本件明細書3には「本発明は,電子レンジ,オーブンレンジ,その他のレンジ,その他種々の調理装置(調理レンジ)に関する(段落【000。」1 )と記載されており 「調理レンジ」は,電子レンジやオーブンレンジ 】,等のレンジ類に限定されるものではなく,それ以外の種々の調理装置を包含する意味で使用されている。
また,本件明細書3には「肉類,魚類,穀物類等の色々食品の煮る,炊く,蒸す,蒸らす,焼く,味付けの料理過程において加減圧調理レンジ (段落」【0042 )と記載されており,調理レンジが穀物類の食品又は食材を煮 】炊きする場合の調理装置ないし調理器具として適用可能であることが明記されている。
そして,被告製品は,圧力IH炊飯ジャーであり,炊飯という調理を行う器具であるから,本件特許発明3にいう調理レンジに相当する。
したがって,被告製品は構成要件Lを充足する。
( )構成要件Mについて5ア「調理部内と関与して」構成要件Mの「調理部内と関与して」とは,調理部の内部と関与して,, , との意味であり 「関与」とは,本件明細書3にも明記されているように「関連,添着,係合,係着,連通,等々の意味をも含む」広範な用語である。
イ「屈折迂回部分」構成要件Mの「屈折迂回部分」とは,本件明細書3に記載されている「屈折迂回した管(24 」を含む上位概念であり 「調理部内と関与し ) ,て」設けられ,例えば,吸排出口10に接合して「加圧,減圧又は加減圧等の圧力の制御,調整を行うもの」である(段落【0053】及び図16 。)ウ「凹凸部分」構成要件Mの「凹凸部分」とは,本件明細書3に記載されている「凹凸を設けた管(25 」を含む上位概念であり 「調理部内と関与して」設 ) ,けられ,例えば,吸排出口10に接合して「加圧,減圧又は加減圧等の圧力の制御,調整を行う」べく調理レンジに設けられるものである(段落【0054】及び図17 。)エ「補助室」「補助室」とは,本件明細書3に記載されている「吸排出口(10)より続く枠箱(11 」内の空間である「 補助室(段落0047及び図 )()」, , 10)を含む上位概念であり 「調理部内と関与して」設けられ,例えば補助室の上部に別口の吸排出口13を設けて 「加圧,減圧又は加減圧等 ,の圧力の制御,調整を行う」もの,あるいは「補助室の上部に別口の吸排出口(13)を設けてその枠箱(11 ,補助室の中に吸排出口(10) )(13)に適合した大きさの球(12)の抵抗体を入れて加圧,減圧又は加減圧等の圧力の制御,調整を行う」ものである(段落【0047】及び図10 。)オ「加減圧の圧力制御を行う圧力制御手段」「圧力制御手段」は,前記屈折迂回部分,前記凹凸部分,前記補助室,並びに,分岐部分及び抵抗体の少なくともいずれか一つを有して「加減圧の圧力制御を行う」ものである。
そして,本件明細書3に「加圧,減圧又は加減圧等の圧力の制御,調整を行う機能として用いる部品,機構」として 「イ)玉,舌,輪,スプリ ,ング等の部品を使用して弁,抵抗体の機構を形成して加圧,減圧又は加減圧の制御調整を行う機構」又は「ロ)管,凸凹,重ね,回り,輪道の部品機構を使用して圧力の道の制御,圧力の分配により加圧,減圧,加減圧の制御,調整を行う機構」が開示され,その具体例として,前記屈折迂回部分,凹凸部分,補助室,分岐部分及び抵抗体が例示されている(段落【0044【0045【0047【0053【0054【005 】,】,】,】,】,6。】)また 「圧力制御手段」に関しては,本件明細書3に「調理レンジ,加 ,減圧容器,または調理部に関与して,或いは,これらの構造の一部として,例えば,これらに連通される連通路を設けることにより,前記圧力調整手段を構成することもできる「例えば,屈折迂回部分,凸凹部分,分岐 。」,部分,抵抗体,弁体,補助室等を設置するとともに,その配置場所や配置位置を,調理レンジ側(扉側も含む)又は加減圧容器の蓋体側に関与して設定する。又は,それらを調理レンジ側と加減圧容器の蓋体側とに跨って設定するも可能である 」との記載がある(段落【0017。 。 】)したがって,本件特許発明3にいう「圧力制御手段」は 「屈折迂回部 ,分「凹凸部分」又は「補助室」からなるものであり,調理部内を加減 」,圧手段により加圧状態(大気圧を超える圧力状態)としたときに,調理部内と外部空間とを連通する「連通路」又は連通室となり,その狭小かつ複雑な内部空間形状又は相対的に狭小な内部空間形状により,調理部の内部空間から外部空間に排出される空気に抵抗を付与することで緩衝し,調理部内の圧力制御ないし圧力調整を行うものと解される。
カ被告製品が構成要件Mを充足すること(ア)被告製品は,閉塞室63内において,ボール11がその自重により第一通気口10を常に閉塞し,鍋5内に自重を上回る圧力が加わると,ボール11が第一通気口10から退避して第一通気口10を開放する。
このとき,第一通気口10が開放されたときの鍋5内の圧力空気は,鍋5内の空間よりも相対的に狭小な空間となる閉塞室63を通って緩衝(圧力制御)され,更に,ケース収容部73内の狭小な屈折迂回空間ないし凹凸空間を通って緩衝(圧力制御)され,連通口75と反対側で開口する排気口86へと至る間に空気抵抗を付与されて外部空間に放出される。
(イ)また,閉塞室63内においては,調圧機構30の弁21が圧縮バネの付勢力により第二通気口20を常には閉塞し,鍋5内に圧縮バネの付勢力を上回る圧力が加わると,弁21が第二通気口20を開放する。このとき,第二通気口20が開放されたときの鍋5内の圧力空気は,鍋5内の空間よりも相対的に狭小な空間となる閉塞室63を通って緩衝(圧力制御)され,更に,蒸気口ケース73内の狭小な屈折迂回空間ないし凹凸空間を通って緩衝(圧力制御)され,更に,連通口75と反対側で開口する排気口86へと至る間に空気抵抗を付与されて,外部空間に放出される。
(ウ)そして,第一通気口10及び第二通気口20の閉塞時における鍋5内の圧力空気は,鍋5内の空間よりも相対的に狭小な空間となる閉塞室63を通って緩衝(圧力制御)され,更に,連通口75と反対側で開口する排気口86へと至る間に空気抵抗を付与されるとともに,蒸気口ケース73内の狭小な屈折迂回空間ないし凹凸空間を通って緩衝(圧力制御)されて,外部空間に放出される。
(エ)以上からすれば,調理部としての鍋5内と関与して内蓋7と隔壁61との間に設けられた閉塞室63は,本件特許発明3にいう「補助室」に相当し,ボール11が「補助室」に収容された「抵抗体」としての「球12」に相当するといえる。
また,調理部としての鍋5内と関与して内蓋7と隔壁61との間に設けられた「排気口86を有するケースキャップ84により閉塞した蒸気口ケース73の内部空間」の流向制御壁74により設けられた「迂回部分又は凹凸部分」は,本件特許発明3の「屈折迂回部分」又は「凹凸部, , 分」に相当し 「連通口75」から「排気口86」へと至る通気経路は本件特許発明3の「屈折迂回部分又は凹凸部分 (少なくともその一 」部)に相当する。
したがって,被告製品は,鍋5内と関与して,内蓋7と隔壁61との間に閉塞室63を設けるとともに,排気口86を有するケースキャップ84により閉塞した蒸気口ケース73の内部空間に流向制御壁74により迂回部分又は凹凸部分を設け,かつ,蒸気口ケース73の底部の連通口75におひつボール76を配置して,鍋5内の加減圧の圧力制御を行っており,かかる機能を発揮する閉塞室63,蒸気口ケース73及びケースキャップ84は,本件特許発明3の「加減圧の圧力制御を行う加減圧手段」を構成すると解されるから,被告製品は構成要件Mを充足する。
( )構成要件Nについて6本件明細書3には 「調理部内の情報を表示・報知する手段として,メロ ,ディを奏でたり,ラッパを鳴らしたり,ベル又はブザー等の音を発生させることにより表示を行い又は報知する手段を採用しても良い(段落【00。」09 )と記載されている。 】そして,被告製品は,炊飯開始時や炊飯終了時にメロディー音又はブザー音で知らせる機能を有しているのであるから 「少なくとも,前記調理装置 ,の加熱調理状態に関する情報及び前記圧力制御手段の圧力制御状態に関する情報のいずれか一つを報知する報知手段 (構成要件N)を備えているとい 」える。
( )構成要件Oについて7上記のとおり,被告製品は調理レンジに相当する圧力IHジャー1を備えているから,構成要件Oを充足する。
( )まとめ8以上のとおりであるから,被告製品は本件特許発明3の技術的範囲に属する。
【被告の主張】( )本件特許発明3の構成要件に対応させて被告製品の構成を分説すると以下1のとおりとなる。
j’内蓋7で気密に閉塞される鍋5を電磁誘導加熱する炊飯用の誘導加熱コイルと,k’マイコンからの入力に応じて弁21が鍋5内の圧力に抗して閉弁状態を維持する力を調節し,それによって鍋5内の圧力を調圧する調圧機構30と,l’を備えた圧力IH炊飯ジャーであって,m’内蓋7と外蓋70の下側蓋体71との間に形成されて鍋5から排気口86に向かう蒸気を結露させる結露室63と,結露室63から進入した蒸気を流向制御壁74によって旋回流Fとして排気口86から大気に排出させることで蒸気からおねばを分離するおねば分離ケース73と,n’炊飯開始時や炊飯終了時に,マイコンからの指令に基づいてメロディー音やブザー音を発生して報知するスピーカo’を備えた圧力IH炊飯ジャー。
( )構成要件Jについて2本件明細書3の実施例の記載箇所には調理部なる用語は一切使用されておらず具体的に説明されていないので,本件特許発明3にいう調理部がいかなるものであるかを解釈することはできず,被告製品の「鍋7で気密に保持される鍋5」が本件特許発明3にいう調理部に相当するとはいえない。
また,本件明細書3の実施例の記載箇所には,調理装置なる用語も一切使用されておらず,本件明細書からは構成要件Jにいう調理装置の意義が明らかでない以上,被告製品の「鍋5を電磁誘導加熱する炊飯用の誘電加熱コイル」を本件特許発明3にいう調理装置に相当するということもできない。
したがって,被告製品は構成要件Jを充足しない。
( )構成要件Kについて3ア上記のとおり,本件明細書3の記載を参酌しても本件特許発明3にいう調理部の意義が明らかでないから,加減圧手段による加減圧の対象は明確でない。
また,本件明細書3では 「加圧「減圧「加減圧」及び「圧力維 ,」,」,持」が互いに異なる機能として区別して記載されているから,本件特許発明3の加減圧手段は,あくまで「加減圧」を行うものであって 「加圧 , ,」「減圧」及び「圧力維持」を行うものではない。
イ原告B`は,被告製品の誘導加熱コイル,マイコン及び調圧機構30が本件特許発明3にいう加減圧手段に相当すると主張するが,被告製品の鍋5内の圧力は誘電加熱コイルで加熱された鍋5内の水が蒸発することで上昇するものの,マイコン及び調圧機構は,鍋5内の圧力を調圧するにすぎず,加減圧を行うものではないから,被告製品には本件特許発明3にいう「加減圧手段」に相当するものはない。
ウ以上のとおり,本件特許発明3にいう「調理部」の意義が明確でないので「加減圧手段」が何を「加減圧する」のかも明確でない上,少なくとも,「加減圧手段」が「加減圧」を行うのに対して被告製品のマイコン及び調圧機構30は「調圧」を行うものである点で,被告製品が本件特許発明3にいう「加減圧手段」を備えているとは認められない。
したがって,被告製品は構成要件Kを充足しない。
( )構成要件Lについて4ア本件明細書3の記載及び争点1の箇所で指摘した「電子レンジ 「オー」ブンレンジ 「レンジ」が一般的に使用されている意味を考慮すれば,本 」件特許発明3にいう調理レンジとは,電子レンジとしての機能,すなわちマイクロ波の照射により調理材料を加熱する機能を必須の機能として有し,調理内容が特に限定されない汎用の調理機器の総称であると解される。
イ争点1の箇所で主張したとおり,圧力IH炊飯ジャーである被告製品は,電磁誘導加熱のための誘導加熱コイルと保温用の抵抗発熱型ヒータとを備えるが,誘導加熱コイル及び抵抗発熱型ヒータはいずれもマイクロ波の照射により加熱を行うものではない。
また,圧力IH炊飯ジャーである被告製品では,米以外の具材や調味料は,あくまで米とともに炊飯されるのが前提である。
このように,被告製品は,マイクロ波の照射による加熱機能を備えていない炊飯専用の調理機器であるから,マイクロ波の照射による調理材料を加熱する機能を必須の機能として有し,調理内容が特に限定されない汎用の調理機器ではないから,本件特許発明3にいう「調理レンジ」の範疇には含まれない。
したがって,被告製品は構成要件Lを充足しない。
( )構成要件Mについて5ア「屈折迂回部分」等の意義本件明細書の「屈折迂回部分,凹凸部分,分岐部分,抵抗体及び補助室」に関する記載及び図16(屈折迂回した管(24,図17(凸凹))を設けた管(25,図18(複数の穴(26)を有する管(27, )) ))図19(単数の枝又は複数の枝(28)を有する管 ,及び図10(枠箱 )(11,並びにこれらの図面に関する記載(段落【0053【00 )) 】,54【0055【0056 )からすると 「屈折迂回部分,凹凸部 】,】,】,分,分岐部分,抵抗体及び補助室」は「調理部」に対して「加減圧手段」等を介することなく直接的に接続されている。
イ被告製品が構成要件Mを充足しないこと(ア)被告製品の結露室63と鍋5内との間の第一通気口10と第二通気口20には,それぞれボール11と弁21が設けられているから,結露室63は鍋5内に直接的に連通しているものではない。
また,本件特許発明3の補助室は,加減圧の圧力調整又は加減圧の圧力制御を行うと規定されているが,被告製品の結露室63は蒸気の結露による水分除去と蒸気からのおねばの分離を行うものであるから,両者は異なるものである。
そして,被告製品のボール11は,鍋5内と大気との連通を限定する機能と,リリーフ弁としての機能を備えるのであって,原告B`が主張するような抵抗体として機能するわけではない。
したがって,被告製品の結露室63は本件特許発明3にいう「補助室」に相当するものではない。
(イ)被告製品のおねば分離ケース73と鍋5内との間には結露室63が設けられており,おねば分離ケース73は鍋5内に直接的に連通しているわけではない。
また,被告製品のおねば分離ケース73は,蒸気からのおねばの分離を行うものであるのに対し,構成要件Mの屈折迂回部分,又は凹凸部分は加減圧の圧力調整又は加減圧の圧力制御を行う圧力調整手段又は圧力制御手段として設けられているから,両者は明らかに異なるものである。
そして,被告製品のおひつボール76は,おねば分離ケース73に蓄積されたおねばが結露室63へ戻るのを防止する機能を備えているのであって,原告B`が主張するような抵抗体として機能するものではない。
(ウ)以上のとおり,被告製品の「内蓋7と外蓋70の下側蓋体71との間に形成されて鍋5から排気口86に向かう蒸気を結露させる結露室63と,結露室63から進入した蒸気を流向制御壁74によって旋回流として排気口86から大気に排出させることで蒸気からおねばを分離するおねば分離ケース73」は,本件特許発明3の「前記調理部内と関与して,屈折迂回部分,凹凸部分,分岐部分,抵抗体及び補助室の少なくともいずれか一つを設けて,加減圧の圧力制御を行う圧力制御手段」に相当しないから,構成要件Mを充足しない。
( )構成要件Nについて6上記のとおり,被告製品は,報知手段によって情報が報知されると規定されている調理装置及び圧力制御手段を備えていないから,構成要件Nも充足しない。
( )構成要件Oについて7上記のとおり,被告製品は本件特許発明3にいう「調理レンジ」の範疇には含まれないから,構成要件Oを充足しない。
( )まとめ8以上のとおり,被告製品は本件特許発明3の技術的範囲に属さない。
4争点4-1(本件特許1-新規性進歩性の欠如?@)【被告の主張】( )乙22公報に記載されている発明1本件特許1の出願前に頒布された乙22公報(1頁左欄12行目ないし13行目,2頁右上欄10行目ないし11行目,同頁右上欄15行目ないし18行目,同頁左下欄最終行ないし同右下欄3行目,第3図)には,以下の構成を有する加圧炊飯と保温を行う圧力ジャー炊飯器等の圧力調理器に関する発明が記載されている(以下,乙22公報に記載されている下記の発明を「乙22発明」という。。)ア圧力ジャー炊飯器は,本体10とヒンジ軸16により本体10に対して開閉自在に取り付けられた蓋体15(蓋部3)とを備えており,本体10の保護枠2内に設けた炊飯ヒータ1上に鍋24が収納され,鍋24の開口部は鍋パッキン26を介して圧力蓋25により気密に閉鎖されるようになっている。
イ圧力蓋25の上面には先端に錘28を着脱自在にセットしたノズル27が取り付けられ,ノズル27と錘28とで圧力調整装置27’が設けられている。
ウ圧力調整手段27’は,鍋24内の圧力が錘28の設定圧力に達すると,錘28が鍋内圧により押し上げられてノズル27の中心に設けた貫通孔の上端開口を開放し,錘28の下端に設けた開口から蒸気を逃し,内圧が低下すると,再度,錘28がノズル27の開口を閉鎖し,鍋内圧をほぼ一定に保持するものである。
( )本件特許発明1と乙22発明との対比2ア構成要件A乙22発明の圧力ジャー炊飯器が本件特許発明1の調理レンジに相当するとすれば,鍋24は,圧力蓋25により気密に保持され,本体10及び蓋体15から構成される圧力ジャー炊飯器本体の内部に調理材料が収容されるため,圧力ジャー炊飯器本体は本件特許発明1のレンジ本体に相当し,鍋24内はレンジ室内に相当する。
したがって,乙22発明は構成要件Aを備えている。
構成要件B乙第22発明の炊飯ヒータ1は,鍋24内の調理材料を加熱するものであり,本件特許発明1の加熱手段に相当するから,乙22発明は構成要件Bを備えている。
構成要件C乙22発明の圧力蓋25に取り付けた圧力調整装置27’は,鍋24内空間と外部とが連通するように設けたノズル27の上部に錘28がノズル27の開口を開閉可能に設けてあり,炊飯にあたって蒸気圧である内圧が設定圧力に達すると,錘28が上方に押し上げられノズル27の開口から蒸気が逃げ,その結果,内圧が下がれば,再度,錘28が前記開口を閉鎖して内圧をほぼ一定に保持する。つまり,錘28がノズル27の開口を閉鎖しているときは,炊飯にもとづき発生する蒸気圧により鍋24内を加圧し,ノズル27が開口すると鍋24内を減圧するため,前記圧力調整装置27’は,本件特許発明1の「レンジ室内と連通されレンジ室内の加圧及び減圧を,繰り返す加減圧手段」に相当する。
したがって,乙22発明は構成要件Cを備えている。
構成要件D乙22発明の圧力ジャー炊飯器は,本件特許発明1の調理レンジに相当するから,乙22発明は構成要件Dを備えている。
( )まとめ3以上のとおり,乙22公報には本件特許発明1の構成要件がすべて開示されており,本件特許発明1は乙22発明と同一であるから,本件特許1は特許法29条1項3号の規定に違反してなされたものである。
仮に,本件特許発明1と乙22発明とが同一でないとしても,本件特許発明1は,当業者であれば乙22発明から容易に発明し得たものであるから,本件特許1は特許法第29条2項の規定に違反してなされたものである。
したがって,本件特許1は,同法第123条第1項の規定により無効となるべきものである。
【原告A`の主張】乙22発明の圧力調整手段27’は,鍋24内の内圧を一定に保持し炊飯するためのものであり,受動的にではあれ加圧及び減圧を繰り返すために使用されることについて開示も示唆もしていない。
したがって,本件特許発明1は,乙22発明と同一ではなく,また,同発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものでもない。
5争点4-2(本件特許1-進歩性の欠如?A)【被告の主張】( )乙32公報に記載されている発明 1本件特許1の出願前に頒布された乙32公報には,以下の記載がある(以下,乙32公報に記載の下記発明を「乙32発明」という。。)ア「2.特許請求の範囲密閉自在な調理室を有する調理器本体と,この本体の調理室内を所望時に減圧する減圧装置と,上記調理室内の食品を所望時に加熱する加熱手段とを備えて成る調理器(1頁左欄4行目ない 。」し8行目)イ「 1)は調理器の外装となる外わく (2)は扉,…(4)は外わく ( ,(1)と扉(2)の密着度を向上させるためのパッキン (5)は外わく ,(1 ,扉(2 ,窓(3 ,パッキン(4)で囲まれた密閉自在な調理室 )))である。そして,以上述べた各部品にて調理器本体を構成している。
(6)は調理器(5)を減圧するための減圧ポンプ (7)は減圧ポンプ ,(6)から排出空気を外部へ逃すための排気孔 (8)は減圧ポンプ ,(6)と調理器(5)を継ぐ連結管 (9)は連結管(8)中に設けられ ,た第1の電磁バルブで,このバルブが開くと減圧ポンプ(6)と調理室(5)が通じる (10)は連結管(8)の端の部分に設けられた第2の 。
電磁バルブで,このバルブが開くと調理器(5)は大気圧となる (1。
1)は調理室(5)の内圧に応じて開閉する電気接点を持つ圧力スイッチ,(12)は減圧調理時にはその圧力…を設定するための設定圧力調整ダイヤル,…(14)は設定圧力(温度)調整ダイヤル(12)による設定圧力(温度)を表示する設定圧力(温度)表示部 (15)は調理器として ,使用する場合に使用するタイマー (16)は本装置の電源スイッチ, ,(17)は減圧調理…を開始させるためのスタートスイッチで,このスイッチを操作している時のみONするものである。…(19)は減圧調理時の熱源を選択する加熱源選択スイッチ (20)は減圧調理を行うか,減 ,圧冷却を行うかを選択する冷却選択スイッチ (21)は調理室(5)内 ,に設置されたヒーター (22)は調理室(5)内に周波を照射するマ , ??グネトロン (1頁右欄15行目ないし2頁右上欄7行目) 」ウ「減圧調理器として使用する場合…電源スイッチ(16)を入れ,調理したい飲食物を調理室(5)に入れ,冷却選択スイッチ(20)を調理側に切り換える。調理時の圧力は…設定圧力(温度)調理ダイヤル(12)により設定する。…扉(2)を閉めると,ドアースイッチ(18)がON状態となり,適当な調理時間をタイマー(15)でセットし,接点がON状態となる。スタートスイッチ(17)をONとするとスタート用リレー(24)が動作する。…電流は圧力スイッチ(11)の高圧側(11a)接点に流れ第2の電磁バルブ(10)が閉まりパワーリレー(25)を動作させる。同時に加熱源選択スイッチ(19)によって選択されたマグネトロン(22)か,ヒーター(21)に電圧が印加され,調理室(5)内の加熱が開始される。これよりやや遅れて,遅延リレー(26)が動作する。減圧ポンプ(6)が動作を開始するのは,パワーリレー(25)の動作によるが,第1の電磁バルブ(9)が開くのは遅延リレー(26)が動作してからである (3頁左上欄14行目ないし同頁右上欄19行目) 」エ「圧力が設定値よりも下がると,圧力スイッチ(11)が低圧側(11b)となりOFFするため,パワーリレー(25)がOFF状態となり第1の電磁バルブ(9)が閉まる。これよりやや遅れて遅延リレー(26)が動作し減圧ポンプ(6)が停止する (3頁左下欄2行目ないし7行 」目)オ「タイマーで設定された調理時間が経過するとスタート用リレー(24)がOFF状態となり,調理が終了となる (3頁左下欄14行目ない 」し16行目)( )本件特許発明1と乙32発明との対比2ア一致点本件特許発明1と乙32発明とは,ともに調理レンジに関するものである点で共通する。
そして,乙32発明の「調理室(5「密閉自在な調理室を有する調 )」,理器本体「減圧装置(減圧ポンプ 」は,順に本件特許発明1の「レン 」,)ジ室「レンジ室内を気密に保持し得るレンジ本体「レンジ室内の減 」, 」,圧を行う減圧手段」にそれぞれ相当する。
さらに,乙32発明の「ヒーター(21 」及び「マグネトロン(2 )) 。 2 」は,本件特許発明1の「調理材料を加熱する加熱手段」に相当する本件特許発明1と乙32発明とは,以上の点で一致する。
イ相違点他方,乙32発明は,レンジ室内を加圧する加圧手段がない点,レンジ室内の加圧及び減圧を繰り返さない点において,本件特許発明1と相違する。
( )相違点の容易想到性3ア本件特許1の出願前に頒布された特開昭57-86259号公報(乙33,以下「乙33公報」という(1頁右欄6行目ないし11行目,3 。)頁右下欄2行目ないし4頁左上欄11行目)には 「マイクロ波照射室に ,継がる増圧装置(コンプレッサ51)を設け,該増圧装置から圧搾空気を吹込んでマイクロ波照射室を一気圧以上に上昇させた状態でマイクロ波を照射する調理装置」が記載されている(以下,乙33公報に記載されている上記発明を「乙33発明」という。。)乙第32発明と乙33発明は,技術分野が同一であり,いずれもレンジ等の調理器に関するものであって単なる加熱だけによる調理よりも巾広い調理を行う別個の手段(調理室内を減圧と加圧)を備えていることからすれば,単なる加熱だけによる調理より更に幅広い調理を行うために,乙32発明に乙33発明の加圧手段を付加することは当業者であれば容易に想到できたものである。
イまた,本件特許1の出願前に頒布された特開昭59-37912号公報(乙34,以下「乙34公報」という(1頁左欄11行目ないし16 。)行目,2頁左上欄2行目ないし同頁右上欄11行目,同頁右上欄19行目ないし左下欄8行目,同頁右下欄5行目ないし3頁左上欄19行目,5頁左欄17行目ないし同頁右欄2行目)には 「調理室内を加圧,減圧する ,加圧減圧手段を設けて調理する場合,調理材料に調味料を程好く浸透させるのに,調理室内を所定回数加・減圧を繰り返せばよいこと,およびその繰り返し回数をタイマーで設定すること」が記載されている(以下,乙34公報に記載されている上記発明を「乙34発明」という )のであるか 。
ら,調理レンジに加減圧手段を備える場合,加圧,減圧を繰り返したり,その繰り返し回数をタイマー等により設定可能にすることは容易に想到し得たことである。
ウしたがって,本件特許発明1は,乙32発明ないし乙34発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,本件特許1は特許法29条2項の規定に違反してなされたものである。
【原告A`の主張】( )乙32発明の「減圧装置(減圧ポンプ( ))は減圧機能のみを発揮するも1 6のであり,乙33発明の「増圧装置50」も加圧機能のみを発揮するものにすぎないのであって,乙32公報と乙33公報は,いずれも本件特許発明1のように減圧機能と加圧機能を併用することについては開示も示唆もしていない。
( )乙32発明は,調理室内を減圧条件とすることで,100℃付近まで温度2を上げずに含水量を減少させることを可能としたり,パンやケーキの発泡を促進させたり,含水量の多い料理の場合に,調理終了後減圧状態とすることにより,食品を沸騰させ,その気化熱を利用して短時間に飲食可能な温度まで冷却させたりすることを目的ないし特有の効果としているのである(乙3) , 2公報1頁左欄10行目ないし右欄7行目 。調理室内を加圧した場合には上記のような100℃未満での含水量の減少や食品の沸騰,その気化熱を利用した冷却といった所期の目的ないし特有の作用効果を発揮することができないのであるから,乙32発明に加圧機能を付加する動機付けが存在しない。
( )また,乙33発明は,マイクロ波照射室48内(及びマイクロ波照射室438内と連通する被加工食品蒸煮用の容器60内)の気圧又は温度が,上記のとおり,設定値以上の気圧又は温度となるよう,マイクロ波照射室48内の気圧をコントロールすることで(乙33公報3頁右下欄5行目ないし18行目 ,水分を所望の温度で沸騰させることができ,容器60内の被加工食品 )を均一加熱できるという特有の作用効果を発揮するものである(同左上欄第2行目ないし11行目 。このように,マイクロ波照射室48内を減圧条件 )とした場合は,上記のような所望の温度での水分沸騰及び容器60内の被加工食品の均一加熱といった所期の目的ないし特有の作用効果を発揮することができないのであるから,乙32発明に減圧機能を付加する動機付けが存在しない。
(4)したがって,本件特許発明1は,乙32発明ないし乙34発明に基づき当業者が容易に発明できたものではない。
6争点5-1(本件特許2-進歩性の欠如)【被告の主張】( )乙35公報に記載されている発明1本件特許2の出願前に頒布された乙35公報には,以下の記載がある(以下,乙35公報に記載の下記発明を「乙35発明」という。。)ア「2.特許請求の範囲レンジ室内を気密に保持し,室内の圧力を加圧,又は減圧して調理する加減圧調理レンジの構造(1頁左欄4行目ない 。」し6行目)イ「外枠1に密着する扉2,とで気密室6を設け,その内部を加熱する加熱体3,及び気密室6に管合したポンプ4又は調圧器5にて気密室6の圧力を調整する構造の加減圧調理レンジ (1頁右欄1行目ないし5行目) 」( )本件特許発明2と乙35発明との対比2ア本件特許発明2-1及び同2-4と乙35発明との一致点本件特許発明2-1及び同2-4と乙35発明とは,いずれも「調理部内にて加熱調理を行う機能を有する調理装置と該調理部内を加減圧する加減圧手段を備えた調理レンジ」である点において一致する。
イ本件特許発明2-1と乙35発明との相違点乙35発明は,圧力調整手段又は圧力制御手段として,調理部内と関与して屈折迂回部分を設けていない点において本件特許発明2-1と相違する。
ウ本件特許発明2-4と乙35発明との相違点乙35発明は,圧力調整手段又は圧力制御手段として,調理部内と関与して補助室を設けていない点において本件特許発明2-4と相違する。
( )本件特許発明2-1の容易想到性3本件特許2の出願前に頒布された特開昭58-60132号公報(乙36,以下「乙36公報」という(1頁左欄4行目ないし9行目,同欄12行 。)目ないし14行目,同頁右欄3行目ないし20行目,2頁左下欄3行目ないし12行目,同頁右下欄7行目及び8行目)には 「加熱室(調理部)と関 ,与して設けた屈折迂回部分からなり,加熱室から排出される流体に流体抵抗を付与する排気ガイド7(排気路)を設けた電子レンジ」が記載されているところ(以下,乙36公報に記載の上記発明を「乙36発明」という,。)排気ガイド7は,屈折迂回部分を有するため,調理部内の圧力が大気圧より大あるいは小となる場合,排気ガイド7で流体抵抗が生じ,その結果,加熱室内の圧力を制御するものである。
そして,乙35発明において,乙36発明の排気ガイド7で排気路を構成することは当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって,本件特許発明2-1は,乙35発明及び乙36発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
( )本件特許発明2-4の容易想到性4ア本件特許2の出願前に頒布された特開昭55-11879号公報(乙37,以下「乙37公報」という(4頁左下欄12行目ないし5頁左上 。)欄6行目)には 「飯器(調理部)内で水と飯米とが加熱されてその蒸気 ,圧が上昇すると,蒸気は通口50と調圧弁51との間を通って,蒸気案内筒13内の室(本件特許発明2-4の補助室に相当)に流入したのち通口20から外方に放出し,調理部内の圧力を制御する炊飯器の調圧装置」が記載されているから,乙35発明の調理レンジの排気通路として,乙37発明の蒸気案内筒13内の室(補助室)を設けることは当業者であれば容易になし得たことである。
したがって,本件特許発明2-4は,乙35発明及び乙37発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。
イまた,乙36発明の排気ガイド7の下降部8は,本件特許発明2-4の補助室に相当するものであるから,上記( )で述べたとおり,本件特許発3明2-4は,乙35発明及び乙36発明に基づいて当業者が容易に発明することもできたものである。
【原告B`の主張】( )本件特許発明2-1について1乙36発明の排気ガイド7は,本件特許発明2-1の圧力調整手段又は圧力制御手段のように調理部内の圧力調整又は圧力制御を行うものではないから,本件特許発明2-1の「屈折迂回部分」に相当するものではない。
したがって,本件特許発明2-1は,乙35発明及び乙36発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
( )本件特許発明2-4について2乙37発明の蒸気案内筒13は,それ自体が飯器内の圧力制御を行うものではないから,本件特許発明2-4の圧力調整手段又は圧力制御手段としての補助室に相当するものではない。
また,乙36発明の排気ガイド7の下降部8も,加熱室2の圧力制御を行うことは全くなく,本件特許発明2-4の圧力調整手段又は圧力制御手段としての補助室に相当するものではない。
したがって,本件特許発明2-4は,乙35発明及び乙36発明,又は乙35発明及び乙37発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
7争点5-2(本件特許2-記載不備)【被告の主張】本件明細書2の発明の詳細な説明の欄には,構成要件Fの加減圧手段に相当する加減圧機能装置(2)の具体的な構造と機能は一切記載されておらず,また,加減圧手段ないし加減圧機能装置(2)が機能したときに,構成要件H1の屈折迂回部分に相当する屈折迂回した管(24 ,凹凸部分に相当する凹凸 )を設けた管(25 ,構成要件H2の補助室に相当する補助室()がどのよう )11な機能を果たすかについても,何ら具体的に記載されていない。
したがって,当業者であっても,構成要件Fの加減圧手段,構成要件H1の屈折迂回部分又は凹凸部分を設けた圧力調整手段又は圧力制御手段,構成要件H2の補助室を設けた圧力調整手段又は圧力制御手段としてどのような構成を採用すれば,構成要件H1,H2で規定されている加減圧の圧力調整や加減圧の圧力制御なるものが実現できるのかについて,本件明細書2の発明の詳細な説明の欄の記載からは観念することはできない。
以上のとおり,本件明細書2は,旧特許法36条3項の規定に定める要件を欠くものである。
【原告B`の主張】本件明細書2の発明の詳細な説明の欄には,加減圧機能装置(2)に関して,第9実施例として 「第9図Aは具体例を示し,加減圧調理レンジ(1)に於 ,て,加圧又は減圧又は加減圧又は圧力現状維持等を行う為の加減圧機能装置(2)を設定して加圧,減圧又は加減圧の制御,調整を行う(7欄27行。」目ないし30行目「第9図Lは別の具体例を示し,加減圧調理レンジ ),(1)に於て加圧,減圧又は加減圧の制御,調整を行う加減圧機能装置,構造で (8欄第48行目ないし50行目)との記載がある。 」そして,本件特許出願当時の技術常識に照らしても,加減圧機能装置(2)の構成は当業者にとって明確に把握できるものである。
また 「加減圧手段」ないし「加減圧機能装置(2 」が機能したときに, , )「屈折迂回部分」である「屈折迂回した管(24,構成要件H1の「凸凹 )」部分」である「凸凹を設けた管(25,構成要件H2の「補助室」である )」「枠箱(11 」がどのような機能を果たすかについては,対応する第9実施 )例中の具体例の記載(第9図Hを参照した記載,第9図Iを参照した記載,及び第9図Bを参照した記載)から明確であり,特に,これら「屈折迂回した管(24「凸凹を設けた管(25「枠箱(11 」は,いずれも,比較的 )」,)」,)簡単な構造であることから,あえて,第9実施例中に記載した以上の記載をしなくても,当業者であれば,第9実施例中の記載のみから,その内容を明確に把握することができる。
したがって,本件発明2-1及び同2-4は,本件明細書2の記載及び出願当時の技術常識参酌すれば,当業者が容易に実施することができるものであるから,本件明細書2の記載内容は旧特許法36条3項の規定に違反するとはいえない。
8争点6-1(本件特許3-進歩性の欠如)【被告の主張】( )本件特許発明3と乙35発明との対比 1ア一致点本件特許発明3と乙35発明とは 「調理部内にて加熱調理を行う機能 ,を有する調理装置と該調理部内を加減圧する加減圧手段を備えた調理レンジ」の点において一致する。
イ相違点本件特許発明3と乙35発明とは,乙35発明が「調理部内と関与して,屈折迂回部分凹凸部分,分岐部分,抵抗体及び補助室の少なくともいずれか一つ (構成要件M)を備えていない点(相違点1「少なくとも,前 」 ),記調理装置の加熱調理状態に関する情報及び前記圧力制御手段の圧力制御状態に関する情報のいずれか一つを報知する報知手段調理装置の加熱調理状態に関する情報を報知する報知手段 (構成要件N)を備えていない点 」(相違点2)において相違する。
( )容易想到性2ア相違点1争点5-1の箇所で主張したとおり,乙35発明に乙36発明の排気ガイド7を適用することは,当業者であれば容易に想到し得たものである。
イ相違点2実願昭55-26940号のマイクロフィルム(乙38,以下「乙38公報」という(2頁11行目ないし3頁3行目,3頁18行目ないし 。)4頁19行目)の記載によれば,電子レンジにおいて,加熱調理の進行状況を視聴覚的に知らしめるようにすることは周知であったと認められるから,この報知手段を乙35発明に適用することは当業者であれば容易になし得たことである。
ウしたがって,本件特許発明3は,乙35発明,乙36発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,本件特許3は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものである。
【原告B`の主張】乙36発明の排気ガイド7は,本件特許発明3の圧力調整手段又は圧力制御手段のように調理部内の圧力調整又は圧力制御を行うものではないから,本件特許発明3の「屈折迂回部分」に相当するものではない。
したがって,本件特許発明3は,乙35発明等に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
9争点6-2(本件特許3-記載不備)【被告の主張】本件明細書3の発明の詳細な説明の欄には,構成要件Kの加減圧手段に相当, する加減圧機能装置( )の具体的な構造と機能は一切記載されておらず,また2加減圧手段ないし加減圧機能装置( )が機能したときに,構成要件Mの「屈折 2迂回部分,凹凸部分,分岐部分,抵抗体及び補助室」に相当する「屈折迂回した管(24「凹凸を設けた管(25「複数の穴(26)を有する管 )」, )」,(27「単数の枝又は複数の枝(28)を有する管」及び「外箱(1 )」,1 」がどのような機能を果たすのかについても具体的に記載されていない。 )したがって,当業者であっても,構成要件Kの加減圧手段,構成要件Mの「屈折迂回部分,凹凸部分,分岐部分,抵抗体及び補助室の少なくともいずれか一つを設けた圧力制御手段」として具体的にどのような構成を採用すれば構成要件Mで規定されている加減圧の圧力制御なるものが実現できるのかについて,本件明細書3の発明の詳細な説明の欄の記載からは観念することができない。
以上のとおり,本件明細書3は,旧特許法36条3項の規定に定める要件を欠くものである。
【原告B`の主張】(1)本件明細書3の発明の詳細な説明の欄には 「加減圧機能装置(2 」に ,)関して,被告の指摘に係る記載以外に,第9図を参照する第9実施例の一具体例として 「加減圧調理レンジ(1)に於いて,加圧又は減圧又は加減圧 ,又は圧力現状維持等を行う為の加減圧機能装置(2)を設定して加圧,減圧又は加減圧の制御,調整を行う(段落【0046 )と記載されており, 。」】第20図を参照して圧力制御手段との関連を説明する第9実施例の一具体例として 「加減圧調理レンジ(1)に於いて加圧,減圧又は加減圧の制御, ,調整を行う加減圧機能装置,構造 」との記載がある(段落【0057。 , 】)また,第10図ないし第19図を参照する「加圧,減圧,加減圧の制御,調整を行う加減圧機能装置」との記載も,第9実施例の各具体例として圧力制御手段との関連を説明するものである。
そして,本件明細書3の第1実施例ないし第5実施例の各冒頭文中に「此処で説明する調理レンジは,使用時において,加圧又は減圧又は加減圧の機能の働きを為すとき」との記載があり,また 「ここで説明する調理レンジ ,は,加圧,減圧又は加減圧の調理レンジにて,加圧,減圧又は加減圧にて調理中に加圧,減圧が一定値を越えたとき,安全装置が作動して危険,爆発を防ぎ安全を保つものである(段落【0036【0058 )との各記載 。」】,】も,加減圧機能装置(2)に関する記載である。
以上の記載に加え,出願当時の技術常識も考慮すれば,加減圧機能装置(2)の構成は当業者にとって明確に把握できるものである。
( )そして 「加減圧手段」ないし「加減圧機能装置(2 」が機能したとき2 , )に 「屈折迂回部分」である「屈折迂回した管(24,構成要件Dの「凸 , )」凹部分」である「凸凹を設けた管(25「補助室」である「枠箱(1 )」,1 」がどのような機能を果たすかについては,対応する第9実施例中の具 )体例の記載(第16図を参照した記載,第17図を参照した記載,及び第10図を参照した記載)から明確であり,特に,これら「屈折迂回した管(24「凸凹を設けた管(25「枠箱(11 」は,いずれも比較的簡単 )」,)」,)な構造であることから,あえて,第9実施例中に記載した以上の記載をしなくても,当業者であれば,第9実施例中の記載のみから,その内容を明確に把握することができる。
(3)以上のとおり,本件特許発明3は,本件明細書3及び出願時の技術常識参酌すれば,当業者が容易に実施することができるものであるから,本件明細書3の記載内容は旧特許法36条3項の規定に違反するものではない。
10争点7(損害の額)【原告A`の主張】原告A`は,被告による被告製品の販売により,少なくとも3450万円の損害を受けた。
【原告B`の主張】原告B`は,被告による被告製品の販売により,少なくとも3450万円(本件特許権2の侵害分として2000万円,本件特許権3の侵害分として1450万円)の損害を受けた。
【被告の主張】いずれも争う。
第4当裁判所の判断1争点1(被告製品は本件特許発明1の技術的範囲に属するか)についてまず,被告製品が構成要件Cにいう「加減圧手段」を有し,同構成要件を充足するか否かについて検討する。
( )構成要件Cにいう「加減圧手段」の意義1ア特許請求の範囲の記載(ア)特許請求の範囲第1項は 「レンジ室内を気密に保持し得るレンジ ,本体と,レンジ室に収容される調理材料を加熱する加熱手段と,レンジ室内と連通されレンジ室内の加圧及び減圧を繰り返す加減圧手段とを備えた調理レンジ 」というものである。 。
上記記載によれば,本件特許発明1の調理レンジは「レンジ室内に収容される調理材料を加熱する加熱手段」と「レンジ室内と連通されレンジ室内の加圧及び減圧を繰り返す加減圧手段」とをそれぞれ備えているものとされている。
(イ)ところで,特許請求の範囲において,加減圧手段は 「レンジ室内 ,と連通されレンジ室内の加圧及び減圧を繰り返す加減圧手段」というように,加減圧という作用,機能面に着眼して抽象的に記載されているだけであって,加減圧手段の具体的な構成は明らかにされていない。
このように,特許請求の範囲の発明の構成が機能的,抽象的な表現で記載されている場合に,当該機能ないし作用効果を果たし得る構成がすべてその技術的範囲に含まれるとすれば,明細書に開示されていない技術的思想に属する構成までもが発明の技術的範囲に含まれることになりかねず,特許権に基づく独占権が当該特許発明を公衆に対して開示することの代償として与えられるという特許法の理念に反することになり,相当でない。
そこで,本件特許発明1の技術的範囲を確定するに当たっては,本件明細書1の発明の詳細な説明及び図面を参酌し,そこに開示された加減圧手段に関する記載内容から当業者が実施し得る構成に限り,その技術的範囲に含まれると解するのが相当である。
イ本件明細書1の記載本件明細書1には加減圧手段に関して以下の記載がある。
(ア)「 問題点を解決するための手段]上記目的を達成するため,本発 [明は,レンジ室内を気密に保持し得るレンジ本体と,レンジ室内に収容される調理材料を加熱する加熱手段と,レンジ室内と連通されレンジ室内の加圧及び減圧を繰り返す加減圧手段とを備えた(2欄10行目。」ないし15行目)(イ)「 作用]上記手段により,レンジ本体のレンジ室内に調理材料を [入れてレンジ室を気密に保持し,この状態で加減圧手段によってレンジ室内の加圧及び減圧を繰り返すことにより,短時間で調味料が調理材料に浸透される(3欄1行目ないし5行目) 。」[ 。 (ウ)「 実施例]以下,本発明を具体化した一実施例について説明する第1図(判決注・右下図)に示すように,調理レンジはレンジ本体としての外枠1とその外枠1に密着する開閉扉2とを備え,外枠1及び開閉扉2によりレンジ室としての気密室6が形成される。気密室6には調理材料を加熱するための加熱手段としての発熱体3が配設されている。外枠1には管路が接続され,その管路に加減圧手段としてのポンプ4及び調圧器5が接続されている。そして,表面に調味料が塗布された調理材料を気密室6内に収容した状態で,ポンプ4を作動し加圧減圧を繰り返し行うことにより,短時間で調理材料に調味料が浸透される。なお,前記加圧減圧の繰り返し回数,圧力,時間等を種々設定することにより程好く調味料を浸透させることができる(3欄6行目ないし4欄4行目) 。」(エ)「 図面の簡単な説明】第1図は,本発明の一実施例に係る調理レ 【ンジの断面図である。…レンジ本体としての外枠及び開閉扉,3…1,2加熱手段としての発熱体,4…加減圧手段としてのポンプ,5…調圧器,6…レンジ室としての気密室(4欄12行目ないし17行目) 。」ウ加減圧手段の意義(ア)上記のとおり,本件明細書1には,加減圧手段の具体的構造としては,実施例として,ポンプ4が記載されている(上記イ(ウ),(エ),第1図)のみである。なお,本件明細書1には「調圧器5」がポンプ4と管路で接続し,両者を併せたものが加減圧手段とされているとも読めなくもなく,そのような構成を採り得ることが示唆されているともいえる。
しかし,本件明細書1には,上記調圧器5の具体的構成や,それがいかなる作用,機能を有するものであるかについて,一切開示されておらず,当業者にとっても「調圧器5」がいかなる構造,機能を有するものであるかを理解することはできない(本件明細書1の【図面の簡単な説明】の欄には 「ポンプ4」が「加減圧手段としてのポンプ」と記載されて ,いるのに対し 「調圧器5」は単に「調圧器」と記載されているだけで ,ある。そして,本件明細書1には,加減圧手段として採り得る他の 。)構成は開示されおらず,また,他の構成を採用し得ることについての示唆もない。してみると,本件明細書1で加減圧手段として開示されている具体的構成は,気密室6を構成する外枠1に接続された管路に接続し,ポンプ4の作動により,加圧と減圧を繰り返すものである。
以上によれば,本件明細書1の発明の詳細な説明及び図面を参酌して,その記載内容等から当業者が実施し得る加減圧手段の構成は,ポンプ4のようなそれ自体の作動により加圧及び減圧を繰り返すことができるようなもの,すなわち,加熱手段によるレンジ室内の加熱に伴う圧力変化とは無関係にそれ自体の作動によりレンジ室内の加圧及び減圧を繰り返し行うものと解するのが相当である。
(イ)これに対し,原告A`は,本件明細書1に記載されている実施例に関して,調圧器5による気密室6内の圧力の調整である加減圧を行う場合及びポンプ4と調圧器5とを併用して気密室6内の圧力の調整(加減圧)を行う場合は,調圧器5が関与した消極的ないし受動的な動作態様を包含するから,本件特許発明1にいう加減圧手段とは,能動的であると受動的であるとを問わずレンジ室内の加減圧を繰り返すための手段を指すことは明白であると主張する。
しかし,本件明細書1に記載されている調圧器5の構造,機能は上記のとおり明らかではなく,消極的ないし受働的な動作態様をもってレンジ室内を加減圧するという技術的思想が開示されているとはいえないから,原告A`の上記主張を採用することはできない。
( )構成要件Cの充足性2以上のとおりの技術的範囲の解釈に従い,被告製品が構成要件Cを充足するか否かについて検討する。
ア原告A`は,被告製品には本件特許発明1の加減圧手段に相当する「?@第一通気口10を開閉可能に構成され,第一通気口10の閉塞により鍋5内を加圧する加圧手段(押し棒16の後退により第一通気口10を閉塞するボール11 ,?A第二通気口20を開閉可能に構成され,第二通気口2 )0の閉塞により鍋5内を加圧するとともに,第二通気口20の開放により鍋5内を減圧する加圧減圧手段(第二通気口20を閉塞する弁21及び調機構30 ,?B圧力センサ42による鍋5内圧力の検知に基づいて加圧減 )圧手段による第二通気口20の開閉を制御し,鍋5内の圧力が予め設定された圧力上限値と圧力下限値との間となるように鍋5内の加圧と減圧を繰り返させるマイコンから構成される加減圧手段」があるとして,被告製品が構成要件Cを充足すると主張する。
イ?@の点について別紙被告製品説明書によれば,被告製品においては,内蓋7の上面の第一通気口10の位置にドーム状キャップ12が取り付けられ,その内部に金属製のボール11が収容されていること,このドーム状キャップ12は,内蓋7を外蓋70に取り付けた際に下側蓋体71の隔壁61の第一凹部18内に収容されること,第一凹部18のドーム状キャップ12の内方に向かって前進可能な押し棒16と,押し棒16を前進方向に付勢する圧縮バネ15と,押し棒16を後退方向に駆動するソレイド17が設けられていること,ソレイド17への通電をしない時(非炊飯時 ,押し棒16は圧 )縮バネ15の付勢力により押されて前進した状態にあり,押し棒16で押されたボール11は第一通気口10から外れるので第一通気口10は開放され,鍋5内は大気と連通すること,ソレイド17へ通電して作動させた時(炊飯時)には,押し棒16は圧縮バネ15の付勢力に抗して後退した状態にあり,ボール11は自重により第一通気口10を閉塞し,第一通気口10が閉塞されると,鍋5内と大気との連通が弁21を経由する経路に限定されること,ボール11が第一通気口10を閉塞していても,誘導加熱コイルによる加熱によって発生した水蒸気により鍋5内の圧力が上昇してボール11の自重を上回ると,ボール11が第一通気口10から退避して第一通気口10が開放され,鍋5内の圧力が一気に大気開放されることが認められる。
以上によれば,被告製品のボール11は,炊飯時に押し棒16が後退することにより,自重により第一通気口10を閉塞して鍋5内と大気との連通を弁21を経由する経路に限定し,その結果,鍋5内の圧力上昇に関与するという機能を有するものと認められるが,鍋5内の圧力上昇は,あくまでボール11が第一通気口10を閉塞した状態で誘導加熱コイルによる加熱によって発生した水蒸気に起因するものであって,誘電加熱コイルによる鍋5内の加熱に伴う圧力変化とは無関係にボール11自体の作動により鍋5内の圧力を上昇させるものではない。
そうすると,被告製品の鍋5及び誘電加熱コイルがそれぞれ本件特許発明1にいうレンジ室内及び加熱手段に相当するという原告A`の主張を前提としても,被告製品のボール11は,誘電加熱コイルによる鍋5内の加熱に伴う圧力変化とは無関係に,それ自体の作動により鍋5内の圧力を上昇させるものではないから,本件特許発明1にいう「加減圧手段」を構成するものとは認められない。
ウ?Aの点について別紙被告製品説明書によれば,被告製品においては,内蓋7の上面の第二通気口20の位置に弁21が取り付けられており,弁21は,円筒状キャップ22と,その内部に収容された弁体23,弁体23を第二通気口20を閉塞させる方向に付勢する圧縮バネ24,及びバネ押さえ25から構成され,バネ押さえ25は円筒状キャップ22の上端から突出していること,弁21の円筒状キャップ22は,内蓋7を外蓋70に取り付けた際に,下側蓋体71の隔壁61に形成された第二凹部28に収容され,第二凹部28の底にはゴム製のキャップ29が嵌め込まれていること,キャップ29を介してバネ押さえ25を押し下げる調圧機構30が設けられていること,圧縮バネ24は,弁21の弁体23に対して,第二通気口20を閉塞させる方向の弾性的な付勢力を作用させること,誘導加熱コイルによる加熱によって発生した水蒸気により鍋5内の圧力が弁体23に作用する付勢力を上回ると,弁体23が圧縮バネ24の付勢力に抗して上昇し,第二通気口20が開放され,鍋5内は大気と連通すること,この大気連通により鍋5内の蒸気が排出され,その結果鍋5内の圧力が圧縮バネ24から弁体23に作用する付勢力を下回ると,弁体23が降下して第二通気口20を閉塞すること,圧縮バネ24から弁体23に作用する付勢力は,圧縮バネ24の圧縮量(圧縮バネ24が自然長から縮んでいる量)により調節でき,圧縮バネ24の圧縮量は,調圧機構30によってバネ押さえ25を昇降させることで調節できることが認められる。
以上によれば,被告製品の弁21及び調圧機構30を含む構造は,第二通気口20を開閉可能に構成され,第二通気口20を閉塞することにより鍋5内の圧力上昇に関与し,第二通気口20を開放することにより鍋5内の圧力の減少に関与するものと認められるが,上記イと同様,鍋5内の圧力上昇は,あくまで,弁21の弁体23が第二通気口20を閉塞した状態で誘導加熱コイルによる加熱によって発生した水蒸気に起因するものであるし,鍋5内の圧力減少についても,鍋5内の圧力が弁体23に作用する付勢力を上回った場合に鍋5内の水蒸気が弁体23を押し上げて第二通気口を開放して鍋5内と大気が連通することにより圧力が降下するものである。
したがって,弁21及び調圧機構30は,誘電加熱コイルによる鍋5内の加熱に伴う圧力変化とは無関係に,鍋5内の圧力を上昇させたり下降させたりする機能を有するものではないから,本件特許発明1にいう「加減圧手段」を構成するものとは認められない。
エ?Bの点について別紙被告製品説明書によれば,被告製品において,調圧機構30は,バネ押さえ25を押圧する押圧体32と,先端が押圧体32に差し込まれておりシーソー運動によって押圧体32を上下運動させるアーム33と,アーム33の基端側に取付けられたアーム側歯車34と,正逆回転が可能なステッピングモータ36と,ステッピングモータ36の回転軸とともに回転するモータ側歯車37とを有していること,調圧機構30のステッピングモータ36は,蓋部3内の中継基板41と電気的に接続されており,中継基板41には,圧力センサ42が接続されていること,中継基板41は胴部2内の制御基板に電気的に接続され,制御基板にはマイコンが実装されていること,マイコンは,圧力センサ42が検知した鍋5内の圧力に応じてステッピングモータ36の動作を制御することが認められる。
そうすると,被告製品のマイコンは,圧縮バネ24の弁体23に対する付勢力を調整し,鍋5内の圧力の上昇及び減少に関与するものと認められるが,上記のとおり,鍋5内の圧力上昇は,あくまで誘導加熱コイルによる加熱によって発生した水蒸気に起因するものであるから,マイコン自体の構造で鍋5内の加熱に伴う圧力変化とは無関係に鍋5内の加圧及び減圧を行うものとはいえず,圧力センサ42及びマイコンも本件特許発明1にいう「加減圧手段」を構成するとは認められない。
オまとめしたがって,原告A`が主張する被告製品の?@ないし?Bの構造を総合しても,被告製品は,加熱手段によるレンジ室内の加熱に伴う圧力変化とは無関係に,ポンプ4のようなそれ自体の作動によりレンジ室内の加圧及び減圧を繰り返し行う加減圧手段を備えているとはいえないから,構成要件Cを充足するとは認められない。
( )小括3以上によれば,その余の構成要件充足性について判断するまでもなく,被告製品は本件特許発明1の技術的範囲に属するとは認められないから,被告製品を製造販売する被告の行為は本件特許権1を侵害するものとはいえない。
2争点2(被告製品は本件特許発明2-1,同2-4の技術的範囲に属するか)について( )構成要件Fにいう「加減圧手段」の意義1まず,被告製品が構成要件Fにいう「加減圧手段」を有し,同構成要件を充足するか否かについて検討する。
ア特許請求の範囲の記載(ア)本件明細書2の特許請求の範囲の請求項1には「調理部内にて加熱調理を行う機能を有する調理装置と該調理部内を加減圧する加減圧手段を備えた調理レンジに於いて,前記調理部内と関与して屈折迂回部分,又は凸凹部分を設けて,加減圧の圧力調整する圧力調整手段又は加減圧の圧力制御する圧力制御手段を備えた調理レンジ 」と記載され,請求 。
項4には「調理部内にて加熱調理を行う機能を有する調理装置と該調理部内を加減圧する加減圧手段を備えた調理レンジにおいて,前記調理部内と関与して補助室を設けて,加減圧の圧力調整する圧力調整手段又は加減圧の圧力制御する圧力制御手段を備えた調理レンジ 」と記載され 。
ている。
上記記載によれば,本件特許発明2-1,同2-4の調理レンジは「調理部内にて加熱調理を行う機能を有する調理装置」と「該調理部内を加減圧する加減圧手段」とをそれぞれ備えているとされている。
(イ)ところで,特許請求の範囲において,加減圧手段は 「調理部内を ,加減圧する加減圧手段」と記載されているだけであり,加減圧という作用,機能面に着眼して抽象的に記載されているものであって,加減圧手段の具体的な構成は明らかにされていないから,争点1で説示したところと同様,本件特許発明2-1,同2-4の技術的範囲を確定するに当たっては,本件明細書2の発明の詳細な説明及び図面を参酌し,そこに開示された加減圧手段に関する記載内容から当業者が実施し得る構成に限り,本件特許発明2-1,同2-4の技術的範囲に含まれると解するのが相当である。
イ本件明細書2の記載本件明細書2には加減圧手段に関して以下の記載がある。
(ア)「請求項1に記載された発明では,調理部内にて加熱調理を行う機能を有する調理装置と該調理部内を加減圧する加減圧手段を備えた調理レンジに於いて・・・ (3欄14行目ないし16行目) 」(イ)「請求項4に記載された発明では,調理部内にて加熱調理を行う機能を有する調理装置と該調理部内を加減圧する加減圧手段を備えた調理レンジにおいて,・・・ (3欄32行目ないし34行目) 」(ウ)「加熱機能を有する調理レンジにおいて,該調理レンジの調理部内を加減圧する加減圧手段と,・・・ (3欄38行目ないし39行目) 」(エ)「 第9実施例)此処で説明する調理レンジは,加圧,減圧又は加 (減圧の調理レンジに圧力調整機構を持たせて加圧,減圧,加減圧の制御,調整を行うものである。加圧,減圧,加減圧の制御,調節により調理経由のコントロールを行い美味な料理の出来上がり並びに付加加減圧による安全性を図ることが出来る。よってコントロール機能の作用により料理方法の特徴の例を次に挙げる(6欄35行目ないし41行目) 。」(オ)「イ)例えば,ご飯,豆のような穀類は,電子レンジにて煮炊きは出来にくいものである。そこで加圧,又は減圧の調理レンジに加減圧調整機構を持たせて加圧,減圧,加減圧の制御,調整を行える調理レンジでコントロールしながら煮炊きを行えば,ふきこぼれを制御しながら早く美味しく煮ることが出来る(6欄42行目ないし49行目) 。」(カ)「ロ)漬け物,酢漬け,ピックル,砂糖漬け,肉の味付け等の生のままの味わいを持った味の浸透させるものは,加圧,減圧又は加減圧を行ったり,加圧,減圧又は加減圧を止め一時そのままの加圧維持を行ったり又は加熱を止め一時そのままの加圧維持を行ったり又それらの繰り返しなどを行って圧力調整を行い味のうま味をコントロールすることも出来る(6欄50行目ないし7欄6行目) 。」(キ)「ハ)肉類,魚類,穀物類等の色々食品の煮る蒸す焼くの過程において加減圧調理レンジの加圧加熱で調理。加圧,減圧,加減圧で味を浸透させたりして,制御,調整を行う,コントロール調理を行えば食品の持ち味を生かした,固い,柔らかい又味の浸透度合いもコントロールできて,美味な料理が出来上がる(7欄7行目ないし12行目) 。」(ク)「ニ)加減圧調理レンジに加減圧力鍋,釜を使用して,食品を煮炊きする時,加圧,減圧の断続,停止,加減圧の変化等の制御,調整を行ってコントロール調理を行えば,より早く且つ美味しく及び安全に使用出来る調理装置となり得る。又加減圧力調理レンジとなる。依って加減圧力鍋,釜等の効果が相乗的に得ることが出来る(7欄13行目な 。」いし18行目)(ケ)「第9図A(判決注:右図)は具体例を示し,加減圧調理レンジ(1)に於て,加圧又は減圧又は加減圧又は圧力現状維持等を行う為の加減圧機能装置(2)を設定して加圧,減圧又は加減圧の制御,調整を行う(7欄27行目ないし30 。」行目)ウ加減圧手段の意義(ア)上記のとおり,本件明細書2には加減圧手段の具体的な構成は記載されていない。第9実施例に関しても,上記のとおり「加減圧機能装置(2 」との記載しかなく,これを表示した図面にも単純な小円形とし )て表示されているだけである(なお,加減圧機能装置(2)が本件特許発明2-1,同2-4にいう加減圧手段,圧力調整手段又は圧力制御手段のいずれを意味するのかについても本件明細書2の記載からは明らかでない。そして,本件明細書2には「調理部内にて加熱調理を行う 。)機能を有する調理装置と該調理部内を加減圧する加減圧手段を備えた調理レンジ (上記イ(ア),(イ)「加熱機能を有する調理レンジにおい 」),て,該調理レンジの調理部内を加減圧する加減圧手段と (上記イ 」(ウ))との記載があり,また,本件明細書2においては,第9実施例として 「ロ)漬け物,酢漬け,ピックル,砂糖漬け,肉の味付け等の生 ,のままの味わいを持った味の浸透させるものは,加圧,減圧又は加減圧を行ったり,加圧,減圧又は加減圧を止め一時そのままの加圧維持を行ったり又は加熱を止め一時そのままの加圧維持を行ったり又それらの繰り返しなどを行って圧力調整を行い味のうま味をコントロールすることも出来る(上記イ(カ))と記載されており,調理部内を加熱するこ 。」となく加減圧を行い得ることが示されている。
そして,本件明細書2には,加減圧手段について,調理部内の加熱調理を行う調理装置と一体として構成することの記載や示唆は一切ない。
そうすると,本件特許発明2-1,同2-4にいう加減圧手段とは,本件特許発明1と同様(上記1 ,調理装置によるレンジ室内の加熱調 )理に伴う圧力変化とは無関係にそれ自体の作動により調理部内の加圧及び減圧を行うものと解するのが相当である。
(イ)これに対し,原告B`は,本件明細書2の「ニ)加減圧調理レンジに加減圧力鍋,釜を使用して,食品を煮炊きする時,加圧,減圧の断続,停止,加減圧の変化等の制御,調整を行ってコントロール調理を行えば,より早く且つ美味しく及び安全に使用出来る調理装置となり得る。又加減圧力調理レンジとなる。依って加減圧力鍋,釜等の効果が相乗的に得ることが出来る(上記イ(ク))との記載からすれば,本件特許発明 。」, , 2-1,同2-4にいう「加減圧手段」は 「調理部」を「加減圧力鍋釜」により構成して 「加減圧力鍋,釜」自身の加減圧機能(加熱によ ,り内部圧力を上昇し,調圧弁により内部圧力を降下する機能)により「調理部内を加減圧」する場合も包含すると主張する。
しかし,本件明細書2の上記記載からは「加減圧力鍋,釜等」と「調理部「調理装置「加減圧手段」との関係が全く明らかでなく 「調 」,」, ,理部内の加熱調理を行う調理装置」と「調理部内を加減圧する加減圧手段」を一体に構成するとの技術的思想を開示していると解することができないから,原告B`の主張を採用することはできない。
( )構成要件Fの充足性の検討2原告B`は,被告製品においては,マイコン制御により誘導加熱コイルの通電量を制御して鍋5内の水を所定温度まで加熱して沸騰状態を持続させることで,内蓋7により密閉された鍋5内の上方密閉空間の圧力を前記所定温度に対応する所定圧力値まで加圧したり,マイコン制御による調圧機構30により鍋5内の上方密閉空間の圧力を減圧したりしているものであるから,誘導加熱コイル,マイコン,弁21及び調圧機構30が本件特許発明2-1,同2-4にいう加減圧手段に相当すると主張する。
しかし,原告B`の主張を前提とすれば,被告製品の誘電加熱コイル及び鍋5が本件特許発明2-1,同2-4にいう調理装置に相当するのであるから,誘電加熱コイルの加熱による鍋5内の圧力の上昇は,調理装置によるレンジ室内の加熱調理に伴う圧力変化とは無関係にそれ自体の作動により調理部内の加圧及び減圧を行うものとはいえず,被告製品に本件特許発明2-1,同2-4にいう加減圧手段があるとはいえない。
したがって,被告製品が構成要件Fを充足するとは認められない。
( )小括3以上のとおり,その余の構成要件充足性について判断するまでもなく,被告製品は,構成要件Fを充足しないから,本件特許発明2-1及び同2-4の技術的範囲に属するとは認められず,被告製品を製造販売する被告の行為が本件特許権2を侵害するとはいえない。
3争点3(被告製品は本件特許発明3の技術的範囲に属するか)についてまず,被告製品が構成要件Kにいう「加減圧手段」を有し,同構成要件を充足するか否かについて検討する。
( )構成要件Kにいう「加減圧手段」の意義1ア特許請求の範囲の記載(ア)特許請求の範囲の【請求項1】には「調理部内において加熱調理を行う機能を有する調理装置と前記調理部内を加減圧する加減圧手段とを備えた調理レンジにおいて 」と記載されている。 ,上記記載によれば,本件特許発明3の「調理レンジ」は「調理部内において加熱調理を行う機能を有する調理装置」と「該調理部内を加減圧する加減圧手段」とをそれぞれ備えているとされている。
(イ)ところで,特許請求の範囲において,加減圧手段は 「調理部内を ,加減圧する加減圧手段」というように,その具体的な構成は明示されておらず,加減圧という作用,機能面に着眼して抽象的に記載されているものであるから,争点1,2で説示したところと同様,本件特許発明3の技術的範囲を確定するに当たっては,本件明細書3の発明の詳細な説明及び図面を参酌し,そこに開示された加減圧手段に関する記載内容から当業者が実施し得る構成に限り,本件特許発明3の技術的範囲に含まれると解するのが相当である。
イ本件明細書3の記載内容本件明細書3には加減圧手段に関して以下の記載がある。
(ア)「・・・請求項1に係る調理レンジは,調理部内において加熱調理を行う機能を有する調理装置と前記調理部内を加減圧する加減圧手段とを備えた調理レンジにおいて・・・ (段落【0004 ) 」】(イ)「・・・本発明の調理レンジは,加熱調理手段と,加減圧手段と,調理部内の調理或いは機能或いは作用の仕法を行う(適切,適当,調節,調整,制御又は安全な)手段とより構成することもできる(段落。」【0008 )】(ウ)「また,本発明に係る調理レンジは,例えば,経時的なオンオフ制御を行う手段,多段圧力制御・調整を行う手段,又は加圧状態と大気開放状態との間で圧力調整する手段のいずれかの手段を備えるよう構成することもできる。このように構成された調理レンジによれば,加圧状態と減圧状態との間での圧力調整によって結果的に加減圧を行うことが出来る。その結果,減圧用ポンプを用いることなく簡易な構成によって圧力変動をさせることが出来る。しかも,加減圧ポンプを用いた場合と同様な良好な調理の仕上がりを期待させることが出来る。また,多段圧力制御・調整の方法を用いて,調理部内を一定圧,一定値に保つ事が出来る。なお,この場合,加圧或いは加減圧を行う場合に,調理部内を単純に一定値に加圧するものに限らず,その加圧状態での圧力値を変化させたり,調理部内を所定の圧力に保持したり,調理部内の圧力を調理過程に応じて特異な変動をさせたりすることが可能となり,便利性が高くなって使い勝手がよくなると共に,調理の良好な仕上がりを期待させることができる(段落【0011 ) 。」】(エ)「本発明に係る調理レンジは,例えば,風発生機構を備えるよう構成することもできる。この場合,風の発生有無,風の強弱,風の量の多少又は風の域の作用区分に関する運転を行う手段を備えることもできる。
又は,調理部内の圧力変化,区別変化,区分変化又は状態変化を行う手段を備えることもできる。又は,上記何れの手段の調整・制御を行う手段を備えることもできる。又は,調理レンジの圧力変化,区別変化,区分変化又は状態変化を行う機構・機能の調整・制御を行う手段や,該機構・機能の指示・方法や作動・作用を行う手段を備えることもできる。
この場合,例えば,風による機能を利用して,調理部内を加減圧することもできる。例えば,風の冷却機能による熱のコントロールを行い,加減圧の際の圧力の変化作用(加減圧の圧力制御,調整)を為し得る事が可能である。従って,これにより,安全,危険回避,安定性の機能を有する調理レンジとすることができる(段落【0012 ) 。」】(オ)「本発明に係る調理レンジは,例えば,加熱調理を行う機能を有する調理レンジ内の容器を,前記調理レンジに関与して設けることにより加圧,減圧または加減圧容器とするための手段を備えることもできる。
この場合,前記容器が加圧,減圧,加減圧容器となる。又,調理レンジに関与して設けた前記加圧,減圧,加減圧容器内の加圧,減圧,加減圧の圧力調整や圧力制御を行う手段を当該加圧,減圧,加減圧容器に備えることもできる。又は,上記調理レンジにそのような圧力制御・調整手段を備えてもよい。調理レンジ内における前記容器は,前記加圧,減圧,加減圧容器とするための手段を用いることにより,その機能を発揮し,その構造により加圧,減圧,加減圧を行い,あるいは,圧力の調整制御を行う。よって,両者(調理レンジ及び容器)は,相互,交互,扶助の関係,或いは,共有,共通の機能,機構をともに持って成り立っている。
ここで,調理レンジ内の「容器」または「加減圧容器」とは,蓋なし容器,圧力容器,蓋体付容器,蓋体付圧力容器をも含んだ器の全般を指す。
従って,鍋,釜,フライパン,食器等種々の器をも含まれる。また,「加圧,減圧,加減圧容器」とは,調理材料(食品,食材)を投入可能な容器を有し,その容器に蓋をするための蓋体を有する。例えば,調理レンジの扉を蓋体とし,前記容器の開放部をその扉(蓋体)により閉じる事もできる(段落【0013 ) 。」】(カ)「又,上記調理レンジ,調理レンジの「調理部内」とは,前記調理レンジに関与して設けた加圧,減圧,加減圧容器の調理部内,若しくは,調理レンジの調理部内の全体を言う場合もある。又,例えば,加熱調理を行う機能を有する調理レンジにおいて,調理レンジの調理部内の容器は,レンジ機能に関与して,加減圧容器,圧力容器,蓋体付加減圧容器,, , 蓋体付圧力容器とすることができる。なお 「関与」とは,関連,添着係合,係着,連通,等々の意味をも含む。また,前記容器を,加減圧容器類等に変化機能させる構造とする為の,加圧,減圧,加減圧手段の構造,機能を,前記容器側または前記容器蓋体に設置することもできる。
又は,前記加圧,減圧,加減圧手段をレンジ側に備える事も出来る。このように構成された調理レンジや前記容器によれば,圧力調整手段を備えたことにより調理部内(上記種々の容器類等の器内をも含む)の圧力調整を自在に行うことが可能となる。しかも,比較的簡易な手段で圧力調整手段を構成することが出来る。これにより,調理レンジや容器のユニット化が容易になるという利点もある(段落【0014 ) 。」】(キ)「 第4実施例)此処で説明する調理レンジは,加圧又加減圧又は (減圧の機能の働きを為すとき,風の発生により加圧又加減圧又は減圧等の圧力のあり方,状態,指示,方法等をなす。又該表示を行うものである。風の発生による加圧,減圧又は加減圧の作用は機構から機能を取り入れて,風を発生利用させる。或いは,感知器にて圧力等の加圧,減圧又は加減圧を感知してファン等によって風の発生を行い作用する 」。
(段落【0026 )】(ク)「 第9実施例)此処で説明する調理レンジ及び容器は,加圧,減 (圧又は加減圧する圧力調整機構を持たせて加圧,減圧,加減圧の制御,調整を行う該手段を備えて,加減圧調理レンジ,装置或いは加圧,減圧,加減圧容器とするものである。加圧,減圧,加減圧の制御,調節により調理経由のコントロールを行い美味な料理の出来上がる,並びに構造,機能,仕法,付加の加減圧レンジ,容器による安全性を図ることが出来る(段落【0038 ) 。」】(ケ)「よってコントロール機能の作用により料理方法の特徴の例を次に挙げる(段落【0039 ) 。」】(コ)「イ)例えば,ご飯,豆のような穀類は,電子レンジにて煮炊きは出来にくいものである。そこで加圧,減圧,加減圧の調理レンジ,装置或いは容器に加減圧調整機構を持たせて加圧,減圧,加減圧の制御,調整を行える調理レンジ,又は容器でコントロールしながら煮炊きを行えば,ふきこぼれを制御しながら早く美味しく煮炊き,蒸らすことが出来る(段落【0040 ) 。」】(サ)「ロ)漬け物,酢漬け,ピックル,砂糖漬け,肉の味付け等を生のままの味わいを持った味の浸透させるものは,加圧,減圧又は加減圧を行ったり,加圧,減圧又は加減圧を止め一時そのままの圧維持を行ったり又は加熱を止め一時そのままの加圧維持を行ったり又それらの繰り返しなどを行って圧力調整を行い味のうま味をコントロールすることも出来る(段落【0041 ) 。」】(シ)「ハ)肉類,魚類,穀物類等の色々食品の煮る,炊く,蒸す,蒸らす,焼く,味付けの料理過程において加減圧調理レンジ,容器の加圧加熱で調理したり,加圧,減圧,加減圧で味を浸透させたりした種々仕様で制御,調整を行う,コントロール調理を行えば食品の持ち味を生かした,固い,柔らかい又味の浸透度合いもコントロールできて,美味な料理が出来上がる(段落【0042 ) 。」】(ス)「ニ)調理レンジに関与した加減圧力鍋,釜を使用して,食品を煮炊きする時,加圧,減圧を断続,停止したりし,又加圧,減圧,加減圧の変化等の制御,調整を行ってコントロール調理を行えば,より早く且つ美味しく及び安全に仕様,使用出来る加減圧調理レンジ及び加減圧鍋,釜と為ることが出来る。又,依って加減圧調理レンジ,加,減,圧力鍋,釜等等となり仕様,利用効果が相乗的に得ることが出来る(段落。」【0043 )】(セ)「図9(判決注:右図)は具体例を示し,加減圧調理レンジ(1)に於いて,加圧又は減圧又は加減圧又は圧力現状維持等を行う為の加減圧機能装置(2 (請求項1乃至 )9に記載する (ユニット化可能)を設定して加圧,減圧又は加減圧の )制御,調整を行う(段落【0046 ) 。」】ウ加減圧手段の意義(ア)上記のとおり,本件明細書3には加減圧手段の具体的な構成は記載されていない。第9実施例に関しても,上記のとおり「加減圧機能装置(2 」との記載しかなく,これを表示した図面にも単純な小円形とし )て表示されているだけである(なお,加減圧機能装置(2)が本件特許発明3にいう加減圧手段又は圧力制御手段のいずれを意味するのかについても本件明細書3の記載からは明らかでない。そして,本件明細 。)書3には「調理部内において加熱調理を行う機能を有する調理装置と前記調理部内を加減圧する加減圧手段とを備えた調理レンジにおいて・・・ (イ(ア)「・・・本発明の調理レンジは,加熱調理手段と,加減圧手 」),段と,・・・より構成することもできる(上記イ(イ))との記載があり, 。」また,本件明細書3には,第9実施例として「ロ)漬け物,酢漬け,ピックル,砂糖漬け,肉の味付け等の生のままの味わいを持った味の浸透させるものは,加圧,減圧又は加減圧を行ったり,加圧,減圧又は加減圧を止め一時そのままの加圧維持を行ったり又は加熱を止め一時そのままの加圧維持を行ったり又それらの繰り返しなどを行って圧力調整を行い味のうま味をコントロールすることも出来る(上記イ(サ))と記 。」載されており,調理部内を加熱することなく加減圧を行い得ることが示されている。
そして,本件明細書3には,加減圧手段について,調理部内の加熱調理を行う調理装置と一体として構成することの記載や示唆は一切ない。
そうすると,本件特許発明3にいう加減圧手段とは,本件特許発明1(上記1)及び本件特許発明2(上記2)と同様,調理装置によるレンジ室内の加熱調理に伴う圧力変化とは無関係にそれ自体の作動により調理部内の加圧及び減圧を行うものと解するのが相当である。
(イ)これに対し,原告B`は,本件明細書3に「ニ)調理レンジに関与した加減圧力鍋,釜を使用して,食品を煮炊きする時,加圧,減圧を断続,停止したりし,又加圧,減圧,加減圧の変化等の制御,調整を行ってコントロール調理を行えば,より早く且つ美味しく及び安全に仕様,使用出来る加減圧調理レンジ及び加減圧鍋,釜と為ることが出来る。又,依って加減圧調理レンジ,加,減,圧力鍋,釜等等となり仕様,利用効果が相乗的に得ることが出来る(上記イ(ス))との記載からすれば, 。」加減圧手段について,調理部を「加減圧力鍋,釜」により構成して,「加減圧力鍋,釜」自身の加減圧機能(加熱により内部圧力を上昇し,調圧弁により内部圧力を降下する機能)により調理部内を加減圧する場合も包含すると主張する。
しかし,本件明細書3の上記記載からは「加減圧力鍋,釜等」と「調理部「調理装置「加減圧手段」との関係が全く明らかでなく 「調 」,」, ,理部内において加熱調理を行う機能を有する調理装置」と「調理部内を加減圧する加減圧手段」とを一体に構成するとの技術的思想を開示していると解することはできないから,原告B`の上記主張を採用することはできない。
( )構成要件Kの充足性の検討2原告B`は,被告製品においては,マイコン制御により誘導加熱コイルの通電量を制御して鍋5内の水を所定温度まで加熱して沸騰状態を持続させることで,内蓋7により密閉された鍋5内の上方密閉空間の圧力を前記所定温度に対応する所定圧力値まで加圧したり,マイコン制御による調圧機構30により鍋5内の上方密閉空間の圧力を減圧したりしているものであるから,誘導加熱コイル,マイコン,弁21及び調圧機構30が本件特許発明3にいう加減圧手段に相当すると主張する。
しかし,原告B`の主張を前提とすれば,被告製品の誘電加熱コイル及び鍋5が本件特許発明3にいう調理装置に相当するのであるから,誘電加熱コイルの加熱による鍋5内の圧力の上昇は,調理装置によるレンジ室内の加熱調理に伴う圧力変化とは無関係にそれ自体の作動により調理部内の加圧及び減圧を行うものとはいえず,被告製品に本件特許発明3にいう加減圧手段があるとはいえない。
したがって,被告製品が構成要件Kを充足するとは認められない。
( )小括3以上のとおり,その余の構成要件充足性について判断するまでもなく,被告製品は,構成要件Kを充足しないから,本件特許発明3の技術的範囲に属するとは認められず,被告製品を製造販売する被告の行為が本件特許権3を侵害するとはいえない。
第5結語以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
追加
別紙被告製品目録圧力IHジャー(型名:NP-AS10及びNP-AS18)別紙被告製品説明書1.製品名圧力IH炊飯ジャー型名NP-AS10(型名NP-AS18も構造は同様)2.図面の説明写真1蓋部を閉じた状態の圧力IH炊飯ジャーの外観を示す写真写真2蓋部を開いた状態の圧力IH炊飯ジャーの外観を示す写真写真3蓋部の外蓋から内蓋を取り外し,かつ,外蓋を上側蓋体と下側蓋体に分解した状態の圧力IH炊飯ジャーの外観を示す写真写真4内蓋の上面の外観を示す写真写真5内蓋を取り外した状態の蓋部(外蓋)の内面の外観を示す写真写真6蓋部の内部(外蓋の上側蓋体を取外した状態)を平面視で示す写真写真7蓋部の内部(外蓋の上側蓋体を取外した状態)を斜視で示す写真写真8調圧機構を示す写真写真9蓋部を閉じた状態で蓋部(外蓋)からケースキャップを取り外した状態の圧力IH炊飯ジャーの外観を平面視で示す写真写真10蓋部を閉じた状態(おねば分離セット【蒸気口セット】を取付けた状態)の圧力IH炊飯ジャーの外観を平面視で示す写真写真11おねば分離セット【蒸気口セット】を側面視で示す写真写真12おねば分離セット【蒸気口セット】をケースキャップとおねば分離ケース【蒸気口ケース】に分解した状態を示す写真図1(a)蓋部の外蓋内部の結露室を示すために圧力IH炊飯ジャーを左右方向に切断して概略的に示す断面図図1(b)蓋部の外蓋内部の結露室を示すために圧力IH炊飯ジャーを前後方向に切断して概略的に示す断面図図2(a)アームが最も上昇している状態の調圧機構を示す側面図図2(b)アームが最も降下している状態の調圧機構を示す側面図図3おねば分離ケース【蒸気口ケース】を示す平面図3.符号の説明1圧力IH炊飯ジャー(被告製品)2胴部3蓋部4操作パネル4a液晶表示装置4b操作ボタン5鍋6(内蓋外周の)パッキン7内蓋10第一通気口11ボール12ドーム状キャップ15圧縮バネ16押し棒17ソレノイド18第一凹部20第二通気口21弁22円筒状キャップ23弁体24圧縮バネ25バネ押さえ28第二凹部29キャップ30調圧機構32押圧体33アーム34アーム側歯車36ステッピングモータ37モータ側歯車40(内鍋の)センサ用孔41中継基板42圧力センサ43(外蓋の)連通口44(外蓋の)センサ用孔52凹部53(内蓋の)係止片61(外蓋の)隔壁62(隔壁の)パッキン63結露室【閉塞室】70外蓋71(外蓋の)下側蓋体72ケース収容部73おねば分離ケース【蒸気口ケース】74(おねば分離ケース【蒸気口ケース】の)流向制御壁75(おねば分離ケース【蒸気口ケース】の)連通口76おひつボール81(外蓋の)上側蓋体82キャップ受け83差込口84ケースキャップ85(ケースキャップの)筒状部86(ケースキャップの)排気口87おねば分離セット【蒸気口セット】F旋回流4.構成(1)全体a.被告製品である圧力IH炊飯ジャー1は,有底の胴部2と,ヒンジにより胴)。部2に対して開閉自在に取付けられた蓋部3とを備えている(写真1,2,10蓋部3の上面には,操作パネル4が配設されている。蓋部3の上面の後部中央には,大気に連通した排気口86を有するおねば分離セット【蒸気口セット】87が取り付けられている。
b.胴部2には鍋5が着脱自在に収容されている。鍋5の開口部は,蓋部3の内蓋7の周囲のパッキン6により気密に閉塞される(写真2。また,圧力IH炊飯)ジャー1の「IH」とは(電磁誘導加熱)の意であり,鍋5を収InductionHeating容する胴部2には,通電により鍋5を電磁誘導加熱する炊飯用の誘導加熱コイルが配設されている(写真には表れない。さらに,胴部2と蓋部3には,それぞれ保)温用の抵抗発熱型ヒータが配設されている(写真には表れない。胴部2と蓋部3)には,それぞれ温度センサが配設されている(写真には表れない。)c.蓋部3は,内蓋7及び外蓋70により構成されている。外蓋70は下側蓋体71及び上側蓋体81により構成されている(写真3。)d.内蓋7は,放熱性の良好なステンレス鋼板を円形板状に形成してなり,三つの貫通孔(第一通気口10,第二通気口20,及びセンサ用孔40)が設けられている(写真2。また,内蓋7の上面の外周縁の若干内側に円形リング状の凹部5)2が形成されている(写真3,4。更に,内蓋7の外周には係止片53を備える)樹脂製の枠体が固定されている。内蓋7は係止片53を介して外蓋70の下側蓋体71の下面側に着脱自在に装着される。e.外蓋70の下側蓋体71の下面には,円形板状の隔壁61が固着され,隔壁61の周囲にはパッキン62が取付けられている(写真3,5。)f.外蓋70の下側蓋体71の隔壁61には,内蓋7の三つの貫通孔,すなわち第一通気口10,第二通気口20,及びセンサ用孔40にそれぞれ対応して,第一凹部18,第二凹部28,センサ用孔44が形成されている(写真3,5。セン)サ用孔44には鍋5内の圧力を検出するための圧力センサ42(写真6)が配置されている。また,隔壁61に連通口43が形成されている。
(2)ボールa.内蓋7の上面において,第一通気口10の位置にはドーム状キャップ12が取付けられ,その内部に金属製のボール11が収容されている(写真3,4。ド)ーム状キャップ12は,内蓋7を外蓋70に取付けた際に下側蓋体71の隔壁61の第一凹部18内に収容される(図1(a。))b.外蓋70の上側蓋体81を下側蓋体71から取り外して内部構造(下側蓋体71の上面側)を視ると(写真6,7,第一凹部18のドーム状キャップ12の)内方に向かって前進可能な押し棒16と,押し棒16を前進方向に付勢する圧縮バネ15と,押し棒16を後退方向に駆動するソレノイド17が設けられている。
(3)弁及び調圧機構a.内蓋7の上面の第二通気口20の位置には,弁21が取付けられており(写真3,4,図2(a(b,弁21は,円筒状キャップ22と,その内部に収),))容された弁体23,弁体23を第二通気口20を閉塞させる方向に付勢する圧縮バネ24,及びバネ押さえ25から構成されており,バネ押さえ25は円筒状キャップ22の上端から突出している。
b.弁21の円筒状キャップ22は,内蓋7を外蓋70に取付けた際に,下側蓋体71の隔壁61に形成された第二凹部28に収容される(図1(a)及び図2),))。(a(b。第二凹部28の底にはゴム製のキャップ29が嵌め込まれているc.外蓋70の上側蓋体81を下側蓋体71から取り外して内部構造(下側蓋体71の上面側)を視ると(写真6,7,8,図2(a(b,キャップ29を),))介してバネ押さえ25を押し下げる調圧機構30が設けられている。
d.調圧機構30(写真8及び図2(a(b)は,バネ押さえ25を押圧す),)る押圧体32と,先端が押圧体32に差し込まれておりシーソー運動によって押圧体32を上下運動させるアーム33と,アーム33の基端側に取付けられたアーム側歯車34と,正逆回転が可能なステッピングモータ36と,ステッピングモータ36の回転軸と共に回転するモータ側歯車37とを有している。
(4)蓋部の結露室a.内蓋7を外蓋70の下側蓋体71に装着した状態では,隔壁61の周囲のパッキン62が内蓋7に密接し,それによって内蓋7の上面と外蓋70の下側蓋体71の隔壁61との間に扁平な薄厚円盤状の密閉空間である結露室【閉塞室】63が形成されている(図1(a(b。この結露室【閉塞室】63は,炊飯時に鍋),))5から排気口86を通って外気に排出される蒸気を結露させる機能と,この排出される蒸気から「おねば」を分離する機能と【この排出される上記を圧力緩衝する機能と】を有する。
b.内蓋7を外蓋70の下側蓋体71に装着した状態では,下側蓋体71の隔壁61に形成された連通口43が内蓋7の上面の対応部位と対向する。また,この状態では,ボール11を内装したドーム状キャップ12及び弁21の円筒状キャップ22は,それぞれ結露室【閉塞室】63内において第一凹部18及び第二凹部28内に収容されている(図1(a))。
(5)おねば分離セットa.蓋部3の外蓋70には,おねば分離ケース【蒸気口ケース】73とケースキャップ84からなるおねば分離セット【蒸気口セット】87が着脱可能に装着されている(図1(a)及び写真9,10。おねば分離ケース【蒸気口ケース】73)は有底円筒状である(写真11,12及び図3。ケースキャップ84は細長い板)状であり,下面には筒状部85が設けられている(写真11,12。筒状部85)の下端に,おねば分離ケース【蒸気口ケース】73の上端が着脱可能に密に嵌め込まれている。
b.おねば分離ケース【蒸気口ケース】73の底部側には連通口75が形成されている。また,おねば分離ケース【蒸気口ケース】73内には,連通口75に隣接した位置から側壁内周面に沿って延びる平面視でS字状の流向制御壁74が設けられている。さらに,連通口75上にプラスチック製の小球である可動のおひつボール76が配置されている。おひつボール76の径は連通口75の開口面積よりも小さく,連通口75上におひつボール76が載った状態であっても連通口75は完全には閉鎖されない。
c.ケースキャップ84には,筒状部85の上端で囲まれた部分に4個の長孔状の排気口86が貫通形成されている。排気口86はおねば分離ケース【蒸気口ケース】73の連通口75に対して,前後に離間した位置(反対側)にある。d.蓋部3の外蓋70の上側蓋体81の上面には,後部中央に浅い凹部状のキャップ受け82が設けられ,その後端部に差込口83が形成されている(写真9。)おねば分離セット【蒸気口セット】87は,この差込口83からおねば分離ケース【蒸気口ケース】73と筒状部85を蓋部3内に差し込むことにより,キャップ受け82にケースキャップ84を配置した状態で,蓋部3に着脱可能に装着されている(写真10。)e.蓋部3の外蓋70の下側蓋体71の上面には,差込口83と対応する位置に有底円筒状のケース収容部72が設けられている(写真6,7及び図1(b。))ケース収容部72の最上端は差込口83の周囲を取り囲むように外蓋70の上側蓋体81の下面側に当接している。このケース収容部72内に,差込口83から差し込まれたおねば分離ケース【蒸気口ケース】73が収容されている。ケース収容部72の底部には隔壁61に形成された連通口43の上端が開口している。ケース収容部72に収容されたおねば分離ケース【蒸気口ケース】73の連通口75は,連通口43と対向して連通している。
(6)マイコン調圧機構30のステッピングモータ36は,蓋部3内の中継基板41と電気的に接続されている(写真6,7。また,中継基板41には,圧力センサ42が接続)されている。さらに,中継基板41にはソレノイド17の駆動回路が接続されている。中継基板41は胴部2内の制御基板(写真には表れていない)に電気的に接。
続されている。制御基板にはマイコンが実装されている。このマイコンが圧力センサ42からの入力に基づいてステッピングモータ36の動作を制御し,個々の炊飯メニューにおける工程の移行に応じてソレノイド17への通電を制御する。また,マイコンは炊飯用の誘導加熱コイルと保温用の抵抗発熱型ヒータへの通電を制御する。
(7)スピーカ胴部2内にはマイコンからの指令に基づいてメロディー音やブザー音を発生するスピーカ(図示せず)が収容されている。
5.作用効果(1)ボールa.ソレノイド17へ通電して作動させた時(炊飯時,押し棒16は圧縮バネ)15の付勢力に抗して後退した状態にあり,ボール11は自重により第一通気口10を閉塞する。第一通気口10が閉塞されると,鍋5内と大気との連通は弁21を経由する経路に限定される。
b.ソレノイド17への通電を停止して非作動とした時(非炊飯時,押し棒1)6は圧縮バネ15の付勢力により押されて前進した状態にあり,押し棒16で押されたボール11は第一通気口10から外れるので第一通気口10は開放される。第一通気口10が開放されると,鍋5内は大気と連通する。
c.ソレノイド17への通電時(炊飯時)であってボール11が第一通気口10を閉塞していても,鍋5内の圧力が上昇してボール11の自重を上回ると,ボール11が第一通気口10から退避して第一通気口10が開放され,鍋5内の圧力が一気に大気開放される。
d.以上のように,ボール11には,第一通気口10を閉塞することで弁21を経由する経路に鍋5内と大気との連通を限定する機能と,第一通気口10の閉塞時であっても鍋5内の圧力の過剰な上昇を防止するいわゆるリリーフ弁(安全弁)としての機能とがある。
e.第一通気口10が開放されたときの大気との連通経路は,第一通気口10から,結露室【閉塞室】63,下側蓋体71(隔壁61)の連通口43,及びおねば分離ケース【蒸気口ケース】73の連通口75から,おねば分離ケース【蒸気口ケース】73の内部を経て排気口86で大気に達する。
(2)弁及び調圧機構a.圧縮バネ24は弁21の弁体23に対して,第二通気口20を閉塞させる方向の弾性的な付勢力を作用させる。鍋5内の圧力が弁体23に作用する付勢力を上回ると,弁体23が圧縮バネ24の付勢力に抗して上昇し,第二通気口20が開放される。第二通気口20が開放されると,鍋5内は大気と連通する。この大気連通により鍋5内の蒸気が排出され,その結果鍋5内の圧力が圧縮バネ24から弁体23に作用する付勢力を下回ると,弁体23が降下して第二通気口20を閉塞する。
要するに,鍋5内の圧力が圧縮バネ24の付勢力未満であれば弁体21(弁体23)は閉弁状態にあって鍋5内は密閉され,鍋5内の圧力が圧縮バネ24の付勢力を上回ると弁21(弁体23)が開弁して鍋5内が大気と連通する。
b.圧縮バネ24から弁体23に作用する付勢力,すなわち弁21(弁体23)が閉弁状態を維持する鍋5内の圧力は,圧縮バネ24の圧縮量(圧縮バネ24が自然長から縮んでいる量)により調節できる。圧縮バネ24の圧縮量が大きい程(圧縮バネが縮んでいる「硬い」状態となっている程,圧縮バネ24から弁体23に)作用する付勢力が大きくなる。圧縮バネ24の圧縮量は,調圧機構30によってバネ押さえ25を昇降させることで調節できる。バネ押さえ25が降下している程,圧縮バネ24の圧縮量が大きくなり,弁21(弁体23)が閉弁状態を維持する鍋5内の圧力も高くなる。
c.図2(a)に示すように,アーム33の先端と共に押圧体32が最も上昇しているとき,バネ押さえ25は最上昇位置にあり,圧縮バネ24の圧縮量は最少(圧縮バネ24の縮み量が最も少ない「柔らかい」状態)となる。この状態での圧縮バネ24の付勢力は,鍋5内の圧力が1気圧であるときに,弁体23が第二通気口20を閉塞する力が鍋5内の圧力と釣り合うように設定されている。
d.図2(a)に示す状態からステッピングモータ36が正転方向に回転し,その回転がモータ側歯車37を介してアーム側歯車34に伝達されてアーム33が回動すると,アーム33の先端と共に押圧体32が下方に変位する。その結果,バネ押さえ25が下方に押し込まれ,圧縮バネ24が圧縮される(圧縮バネ24が縮んで「硬く」なる)ので,弁体23に対する付勢力が増加する。図2(b)に示すように,アーム33の先端と共に押圧体32が最も降下しているとき,バネ押さえ25は最降下位置にあり,圧縮バネ24の圧縮量は最大(圧縮バネ24が最も縮んで最も「硬く」なった状態)となる。この状態での圧縮バネ24の付勢力は,鍋5内の圧力が1.4気圧程度であるときに,弁体23が第二通気口20を閉塞する力が鍋5内の圧力と釣り合うように設定されている。
e.逆に,図2(b)に示す状態から,ステッピングモータ36が逆転方向に回転すると,アーム32の先端と共に押圧体32が上方に変位する。その結果,バネ押さえ25が上方に移動して圧縮バネ24の圧縮量が減少し,弁体23に対する付勢力が減少する。
f.以上のように,調圧機構30により,弁体23が鍋5内の圧力に抗して閉弁状態を維持する力を調節できる。
g.弁21によって第二通気口20が開放されたときの大気との連通経路は,第二通気口20から,結露室【閉塞室】63,下側蓋体71(隔壁61)の連通口43,及びおねば分離ケース【蒸気口ケース】73の連通口75から,おねば分離ケース【蒸気口ケース】73の内部を経て排気口86で大気に達する。
(3)結露室とおねば分離セットa.前述のようにボール11による第一通気口10の開放時,及び弁21の第二連通口20の開放時の鍋5内から大気までの連通経路は,第一通気口10や第二連通口20から,結露室【閉塞室】63,下側蓋体71(隔壁61)の連通口43,及びおねば分離ケース【蒸気口ケース】73の連通口75から,おねば分離セット【蒸気口セット】87のおねば分離ケース【蒸気口ケース】73内部を経て排気口86で大気に達する。
b.炊飯時に第一連通口10や第二連通口20が開放されると,鍋5内の蒸気は結露室【閉塞室】63に入る。内蓋7は放熱性が良好で結露室【閉塞室】63は鍋5内よりも低温であるため,結露室【閉塞室】63内に進入した蒸気が結露する。
この結露により最終的には排気口86で大気に排出される空気から水分が除去される。また,炊飯時には,第一連通口10や第二連通口20の開放時に米から生じる糊状の白い汁(おねば)が蒸気と共に鍋5内から吹き出る場合がある。液体状である「おねば」は蒸気よりも比重が大きいので,結露室【閉塞室】63に進入すると重力により蒸気から分離される。結露による水分と分離された「おねば」は,結露室【閉塞室】63の底部を構成している内蓋7の上面に溜まる。
c.次に,結露室【閉塞室】63から下側蓋体71の連通口43を通過した蒸気は,連通口75からおねば分離ケース【蒸気口ケース】73内に入る。連通口75から進入する蒸気の流れにより,おひつボール76は連通口75から外れた位置に退避する。連通口75に隣接した位置から側壁内周面に沿って流向制御壁74が設けられているので,連通口75からおねば分離ケース【蒸気口ケース】73に入った蒸気は図3において矢印で示すように分離ケース73の側壁内周面に沿った旋回流Fとなって排気口86から大気に排出される。旋回流Fにより生じる遠心力で蒸気から「おねば」が分離される。蒸気から分離された「おねば」は分離ケース73内に溜まる。第一連通口10と第二連通口20の両方が閉鎖されていれば,鍋5内から排気口86へ向かう蒸気の流れがなくなるので,おひつボール76が連通口75に載る。その結果,おねば分離ケース【蒸気口ケース】73内に溜まった「おねば」が連通口75,43を通って結露室【閉塞室】63へ戻るのを防止できる。なお,おひつボール76が連通口75を完全に閉鎖しないのは,炊飯終了後にソレノイド17が非作動状態となってボール11は第一通気口10から外れた状態となったときに,鍋5内と排気口86(大気)との連通を確保し,蓋部3を確実に開放可能とするためである。
d.以上のように,結露室【閉塞室】63には,炊飯時に鍋5内から第一連通口10や第二連通口20を介して鍋5内から排出される蒸気を結露させることで,排気口86から大気に排出される空気(蒸気)の水分を減らす機能がある。また,結露室【閉塞室】63には,炊飯時に鍋5内から吹き出る「おねば」を蒸気から分離する機能がある。さらに,おねば分離セット【蒸気口セット】87には,おねば分離ケース【蒸気口ケース】73内で旋回流Fを起こすことで蒸気から「おねば」を分離する機能がある。
e.内蓋7を外蓋70から取り外すことで,内蓋7の上面に溜まった水分や「おねば」を洗浄することができる。また,おねば分離セット【蒸気口セット】87を蓋部3(外蓋70)から取り外し,さらにケースキャップ84の筒状部85をおねば分離ケース【蒸気口ケース】73から外すことで,おねば分離ケース【蒸気口ケース】73内に溜まった「おねば」を洗浄できる。
【f.加えて,第一通気口10または第2連通口20が開放されたとき,鍋5内の蒸気(圧力空気)は,鍋5内の空間よりも相対的に狭小な扁平な薄厚円盤状の密閉空間となる閉塞室63を通って圧力緩衝(圧力制御)される。また,第一通気口10または第二通気口20から閉塞室63内に放出された蒸気(圧力空気)は,扁平な薄厚円盤状の密閉空間である閉塞室63の厚さ方向(上方)に放出された後,小半球状の小空間である第一凹部18または第二凹部28の面に沿って進行方向が略90度以上変更されて当該第一凹部18または第二凹部28内を流動し,その後,閉塞室63の平面方向(水平方向)に流動して,隔壁61の連通口43部分でその進行方向が約90度変更され,隔壁61の連通口43から閉塞室63の外部に放出される。即ち,第一通気口10または第二通気口20から閉塞室63内に放出された蒸気(圧力空気)は,屈折または迂回経路となる第一凹部18または第二凹部28内を流動して進行方向を変更された後に閉塞室63内を流動し,その後,再度進行方向を変更されて連通口43から外部に放出されることになり,かかる狭小空間内での複数回の進行方向を変更した流動時に空気抵抗を付与されて圧力緩衝される】。
【g.また,連通口75から蒸気口ケース73内に入った蒸気(圧力空気)が,閉塞室63内の空間よりも(当然,鍋5内の空間よりも)相対的に狭小な蒸気口ケース73の内部空間を通って圧力緩衝(圧力制御)され,蒸気口ケース73は,ケースキャップ84と協働して内部に放出された圧力空気の圧力緩衝機能を発揮する。
更に,蒸気口ケース73の内部空間は,流向制御壁74によって,連通口75側の相対的に小さな屈折迂回空間状乃至凹凸空間状の第1の空間(写真12及び図3中の左側の異形状空間)と,連通口75と流向制御壁74を挟んで反対側に隣接する相対的に大きな第2の空間とに区画され,流向制御壁74の先端(開放端)で前記第1の空間と前記第2の空間とを連通している。したがって,蒸気口ケース73内に放出される蒸気(圧力空気)は,連通口75から蒸気口ケース73の第1の空間の軸方向(上方)に放出されて,おひつボール76を連通口75の直上またはその近傍位置に上昇退避させると共に,連通口75の直上に配置されるケースキャップ84の筒状部85の閉塞部分(排気口86が形成されない部分)や流向制御壁74によってその進行方向を略90度変更されて前記第1の空間内をその先端部分(開放端部分)に向かって流動し,幅狭となった先端部分を超えて第2の空間内を旋回流Fとなって流動して,前記筒状部85の排気口86部分でその進行方向が約90度変更され,筒状部85の排気口86から外部空間に放出される。即ち,連通口75から蒸気口ケース73の内部空間内に放出された蒸気(圧力空気)は,狭小な屈折または迂回経路となる前記第1の空間内を流向制御壁74に沿って流動して進行方向を変更された後に,隣接する前記第2の空間内を流動し,その後,再度進行方向を変更されて排気口86から外部空間に放出されることになり,かかる狭小空間内での複数回の進行方向を変更した流動時に空気抵抗を付与されて圧力緩衝される。
また,連通口75からの蒸気(圧力空気)は,おひつボール76を上昇退避させる際にも,当該おひつボール76によって空気抵抗を付与される】。
(4)マイコンによる制御a.マイコンは,予め記憶されている炊飯フローに従って,温度センサ及び圧力センサ42からの入力を参照しつつ,誘導加熱コイル,ボール11の開閉用のソレノイド11,及び調圧機構30のステッピングモータ36の動作を制御して炊飯動作を実行する。なお,炊飯動作が実行される前に,鍋5内には炊飯材料(主として米)と水とが鍋5内に収容され,内蓋7を装着済みの蓋部3が閉じられる。
b.炊飯フローは,概ね,鍋5内の温度を約50℃に調節して予熱を加える「予熱工程,誘導加熱コイルにフルパワーの電力で通電する「中ぱっぱ工程,鍋5」」内の温度を100℃に達した後に誘導加熱コイルへの通電量を制御して行う「電力制御工程,鍋内の温度を100℃以上に上げる「炊き上げ工程,所定時間の蒸」」らし及び露とばしを行う「むらし工程」の各工程からなる。
c.予熱工程マイコンは「予熱工程」においては誘導加熱コイルへの通電を行い,前述のよ,うに鍋5内を加熱する。しかし,マイコンは「予熱工程」においては,ソレノイ,ド11を非通電状態としてボール11を第一通気口10から外した状態で維持する。
また「予熱工程」においては,マイコンは,調圧機構30のステッピングモータ,36を非作動状態で維持する。つまり,マイコンは「予熱工程」において,第一,通気口10を開弁して鍋5内を大気開放した状態で維持し,調圧機構30をまったく機能させない。
d「中ぱっぱ工程」から「むらし工程」まで.i)マイコンは「中ぱっぱ工程「電力制御工程「炊き上げ工程,及び,」,」,」「むらし工程」中は,ソレノイド17へ通電して第一通気口10をボール11で閉塞する。
)また,マイコンは「ふつう「やわらかめ「かため「急速」等の炊飯ii,」,」,」,メニューごとに「中ぱっぱ工程「電力制御工程「炊き上げ工程「むらし工,」,」,」,程」の各工程における「圧力上限値」及び「圧力下限値」のデータテーブルを有している。そして,マイコンは,各工程において,圧力センサ42により鍋5内の圧力を検知し,検知した圧力を圧力上限値及び圧力下限値と対比し,対比結果に基づいて調圧機構30を動作させて弁21の弁体23に対する付勢力を調節する。マイコンには180毎に圧力センサ42が検知した圧力が入力される。
msec)鍋5内には炊飯材料と共に水が収容されているので誘導加熱コイルによる加iii熱によって水蒸気が発生する。この水蒸気が鍋5内の圧力を上昇させる「中ぱっ。
ぱ工程「電力制御工程「炊き上げ工程,及び「むらし工程」の各工程では,」,」,」ステッピングモータ36は「正転「逆転,及び「停止」の3つの回転状態の,」,」うちのいずれかにあり,マイコンは,圧力センサ42が検知した圧力に応じて,検知時のステッピングモータ36を現在の状態から他の2つの回転状態のいずれかに切り換えるか又は現在の回転状態を維持させる。具体的には,圧力センサ42が検出した鍋5内の圧力が圧力下限値未満であれば,ステッピングモータ36を正転方向に回転させてバネ押さえ25を下方に変位させ,圧縮バネ24の弁体23に対する付勢力を増加させる。また,圧力センサ42が検出した鍋5内の圧力が圧力上限値を上回っていれば,ステッピングモータ36を逆転方向に回転させてバネ押さえ25を上方に変位させて圧縮バネ24の弁体23に対する付勢力を減少させる。さらに,圧力センサ42が検出した鍋5内の圧力が圧力下限値と圧力上限値の間であれば,ステッピングモータ36を回転させず,バネ押さえ25の高さを維持する。
これら圧力センサ42の検出値に基づく弁体23に対する付勢力の調節により,鍋5内は圧力下限値以上かつ圧力上限値以下の設定圧力を維持するように調圧される。
,.iv)例えば「ふつう」の炊飯メニューの「中ぱっぱ」工程の場合,鍋5内が114気圧に調圧されるように,圧力下限値は1.13気圧に設定され,圧力上限値は1.15気圧に設定される。
)いずれの炊飯メニューのいずれの工程においても,マイコンによって駆動さvれる調圧機構30が圧縮バネ24の弁体23に対する付勢力を調節する回数は,ユーザが設定することができるものでも,炊飯フローで予め定められているわけでもなく,同一炊飯メニューの同一工程であっても実行時の室温,鍋5内の水量等の条件により異なる。例えば「中ぱっぱ」工程の場合,蓋部3に配設された温度セン,サの検出温度が予め定められた値まで上昇すると,マイコンは「中ぱっぱ」工程を終了して「電力制御工程」に移行する。蓋部3に配設された温度センサの検出温度の上昇は,室温,鍋5内に収容された水の量等に依存するので「中ぱっぱ」工程,の継続時間,言い換えれば「中ぱっぱ」工程中に調圧機構30が何回作動するの,かは,実際に「中ぱっぱ」工程を実行しない限り分からない。
e.保温工程マイコンは,炊飯フローの実行後,温度センサからの入力に基づいて誘導加熱コイル及び保温用の抵抗発熱型ヒータへの通電を制御して鍋5内を設定温度に維持する「保温工程」を実行する。マイコンは「保温工程」においては,ソレノイド1,1を非通電状態としてボール11を第一通気口10から外した状態で維持する。また「保温工程」においては,マイコンは,調圧機構30のステッピングモータ3,6を非作動状態で維持する。
(5)スピーカ炊飯開始時や炊飯終了時には,マイコンからの指令に基づいてスピーカがメロディー音やブザー音を発生して報知する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 北岡裕章
裁判官 山下隼人