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関連審決 不服2006-14019
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20行ケ10352審決取消請求事件 判例 特許
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平成20行ケ10350審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10490審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10489審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  公衆に利用可能 /  電気通信回線 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  パリ条約 /  優先権 /  特許出願日 /  数値限定 /  実施 /  交換 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 /  異議申立 / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10381号 審決取消請求事件
原告ゼ ネラ ルエレクトリッ クカンパニイ
同訴訟代理人弁理士松本研一 黒川俊久 小倉博 荒川聡志
被告特許庁長官
同 指定代理 人金澤俊郎早野公惠 大谷謙仁 深澤幹朗 紀本孝 安達輝幸
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/09/08
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2006-14019号事件について平成20年6月9日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,原告の本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が,本願発明の要旨を下記2のとおり認定した上,同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯(1)本件出願(甲10)及び拒絶査定発明の名称:「内面溝付きタービン壁」(以下「本願発明」という。)出願日:平成12年4月5日出願番号:特願2000-102894号パリ条約による優先権主張日:平成11年(1999年)4月6日(米国)優先権主張番号:09/286802拒絶理由通知発送日:平成17年6月7日(甲12。以下「本件拒絶理由通知」という。)手続補正日:平成17年7月26日(甲11。以下「本件補正」という。)拒絶査定日:平成18年3月28日(甲13。以下「本件拒絶査定」という。)(2)審判手続及び本件審決審判請求日:平成18年7月3日(乙1)審決日:平成20年6月9日審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」審決謄本送達日:平成20年6月24日2本願発明の要旨(1)本件審決が判断の対象とした本願発明は,本件補正後の明細書(以下「本願明細書」という。)における特許請求の範囲の請求項1に記載されたものであり,その要旨は,次のとおり(下線部分は本件補正による補正箇所)である。なお,文中の「/」は,原文の改行部分を示す。
【請求項1】燃焼ガス20に面する外面30と,インピンジメント空気により冷却される反対側内面40と,この内面における複数の隣合うリッジ44と溝46とからなり,/熱伝達冷却を増すために,前記リッジの高さCが冷却空気の境界層厚さDを超えるように定められるタービン壁28。
(2)なお,本件補正前の請求項1ないし3の記載は次のとおりであり,本件補正後の請求項1は,次の請求項3に記載されていた構成の一部,すなわち,「熱伝達冷却を増すために,前記リッジの高さCが冷却空気の境界層厚さDを超えるように定められる」との構成(以下「本件構成」という。)を上記(1)の下線部分のとおり付加するものであった。
【請求項1】 燃焼ガス20に面する外面30と,インピンジメント空気により冷却される反対側内面40と,この内面における複数の隣合うリッジ44と溝46とからなるタービン壁28。
【請求項2】 リッジ44は互いに平行である請求項1記載の壁。
【請求項3】 リッジ44は,熱伝達を増すために冷却空気16の境界層厚さを超える高さをもつ,請求項2記載の壁。
3本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,要するに,本願発明は,下記アの引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び下記イないしエの周知例1ないし3(以下,総称して「本件周知例」という。)に記載された周知技術(以下「本件周知技術」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。
ア引用例:特表平9-507549号公報(甲1)イ周知例1:特開平9-195703号公報(甲7)ウ周知例2:特開平10-274001号公報(甲8)エ周知例3:特開平10-274002号公報(甲9)4取消事由再度の拒絶理由を通知しなかった手続違背の違法第3当事者の主張〔原告の主張〕1本件出願に係る審査手続には,以下のとおり,特許法50条に定める拒絶理由通知をすることなく拒絶査定をした違法があったので,審判官としては,この違法を解消すべく,再度の拒絶理由を通知しなければならなかったにもかかわらず,これを怠って拒絶査定を維持する旨の本件審決をしたものであり,本件審決には手続違背の違法がある。
2本件出願に係る審査手続において本件拒絶理由通知がされ,これを受けて,原告は,本件特許出願に係る発明が特許法29条1項3号又は同条2項の規定により特許を受けることができないものであるとの拒絶理由を解消するために,本件補正により本件構成を付加したものであって,本件補正により,本願発明の構成は,本件補正前の請求項1記載に係る発明の構成に本件構成が付加されたものとなった。
本件出願と同一の米国出願を優先権主張の基礎とする欧州特許第1043479号の請求項1に係る発明は,「燃焼ガス(20)に面する外面(30)と,インピンジメント空気により冷却される反対側内面(40)と,この内面において略等しい幅を有し隣り合う複数のリッジ(44)と溝(46)とからなり,熱伝達冷却を増すために,前記のリッジの高さ(C)が冷却空気の境界層厚さ(D)と超えるように定められることを特徴とするタービン壁(28)。」であるところ,当該下線部は欧州特許庁における審査過程で補正された部分に対応するものである。この特許は,異議申立てを経た後も特許として維持されており,上記欧州特許は,リッジ(44)及び溝(46)が「略等しい幅を有」する点のみにおいて本願発明と異なるが,上記補正部分に含まれる本件構成が発明の重要な構成であると理解することができるのであり,本件構成が単なる「周知技術」であるということはできない。
特許法50条は,「審査官は,拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは,特許出願人に対し,拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならない。」と規定するところ,本件補正により本件拒絶理由通知の拒絶理由は解消し,本件審決で引用されている本件周知例を引用しなければ本件拒絶理由通知を維持することができなかったものであるから,審査官は,本件審決に至る前に,本件周知例を引用文献として引用した上で再度の拒絶理由を通知しなければならなかったものである。
しかしながら,審査官は,再度の拒絶理由を通知することなく,本件拒絶査定をしたものであって,その手続は特許法50条に違反する。
3したがって,本件審決は,本件出願に係る審査段階における上記2の違法を理由として,本件拒絶査定を取り消すか,少なくとも,再度の拒絶理由通知を行って補正の機会を確保すべきであったにもかかわらず,これを怠って本件拒絶査定を維持しているのであるから,取り消されるべきものである。
〔被告の主張〕1本件補正前の請求項の記載と本件補正後の請求項1審査官は,最初の拒絶理由通知である本件拒絶理由通知により,本件補正前の請求項1ないし14に係る発明は,その「引用文献1ないし6」(判決注:引用文献1は引用例である。)に記載された発明であるか,これらに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性がないとの拒絶理由を通知している。
本件拒絶理由通知後にされた本件補正による補正後の請求項1は,同補正前の請求項1に本件構成を付加したものであるが,請求項2に記載された事項(「リッジ44は互いに平行である」)の限定がないため,結局,本件補正前の請求項3を拡張したものとなっている。
このような場合には,審査官は,本件補正前の請求項3に記載の発明について,既に特許法29条2項の拒絶理由を有するとしているのであるから,本件補正後の請求項1についても,同様の拒絶理由を有するものと理解すべきことになる。
2本件拒絶理由通知と本件拒絶査定本件拒絶理由通知は,本件補正前の請求項2ないし14に記載の発明について,「引用文献1ないし6に記載されたものの凹凸形状からみて,技術の具体化の際に当業者が適宜採用し得る設計事項を超えるものはないか,または,引用文献1-6に実質的に記載された発明であると認められる。」との拒絶理由を通知するものであり,本件拒絶査定は,本件補正後の請求項1について,本件拒絶理由通知と同じ理由,すなわち,本件拒絶理由通知において提示した引用文献1ないし6に基づいて設計的変更を行うことにより,当業者が容易に発明をすることができたという理由により本件特許出願を拒絶するものである。
また,本件周知例は,いずれも本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行物であり,周知とされた技術内容が各々の文献において従来技術として記載されている程度に既によく知られていたことを示すものである。
3以上のとおり,本件拒絶査定及びこれを維持した本件審決は,本件補正により原告が限定した事項が周知技術であることを前提とするものであるところ,このような場合に,拒絶理由通知という形式で改めて上記周知技術について文献を摘示して事前に通知しなくても,拒絶査定及び本件審決の判断が不意打ちになることはないから,本件拒絶査定及び本件審決に新たに拒絶理由を通知しなかった手続違背はなく,原告主張の取消事由は理由がない。
第4当裁判所の判断1原告は,本件特許出願の審査手続においては,再度の拒絶理由通知を行うべきであったのに,これを怠った手続違背を理由に,本件審決が取り消されるべきものであると主張するので,以下,本件特許出願の審査経過を踏まえ,本件拒絶査定の当否及びこれによる本件審決の当否について検討することとする。
2本件出願に係る審査経過について(1)本件拒絶理由通知の内容ア審査官は,本件補正前の特許請求の範囲の記載を前提として,本件特許出願についての最初の拒絶理由通知である本件拒絶理由通知を行った。本件拒絶理由通知に係る拒絶理由通知書(甲12)には,拒絶の理由の「【理由2】」として,要旨,次の(ア)ないし(ウ)のように記載されている。以下,この記載を「【理由2】」という。
(ア)この出願の下記の請求項(判決注:請求項1である。)に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
また,この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(イ)請求項1に係る発明の特に「リッジ」及び「溝」とからなる凹凸形状の規定では,引用文献1ないし6に記載されたものの凹凸部と格別な構成上の差異はないといえる。
したがって,引用文献1ないし6のそれぞれには,燃焼ガスに面する外面と,インピンジメント空気により冷却される反対側内面と,この内面における複数の隣合うリッジと溝とからなるタービン壁とが実質的に記載されていると認められる。
また,引用文献1ないし6に記載されたものの凹凸形状をリッジ及び溝なる本願発明の実施例レベルの具体的な形状とすることに何ら困難性はない。
(ウ)「リッジ」及び「溝」とからなる凹凸形状に関して,形状,大きさ,面積に係る数値限定,配置関係などを規定する請求項2-14に係る発明については,それぞれ引用文献1ないし6に記載されたものの凹凸形状からみて,技術の具体化の際に当業者が適宜採用し得る設計事項を超えるものはないか,または,引用文献1-6に実質的に記載された発明であると認められる。
イそして,引用文献として掲げられた引用例(甲1)には,「ガスタービンのエアフォイル」の発明に関し,「発明の背景」として,次の記載がある(4頁22〜24行)。
日本国の特開昭58-197402号公報においては,エアーは,突出部間に位置したブレードの内部表面に衝突する。これらの突出部は,上記ブレードの壁面の内表面から,エアー通路の全高にわたって延びている。
ウ上記記載によると,本件特許出願日前において,ガスタービンの衝突冷却の効率を高めるために,ブレード(本願発明における「リッジ」)の高さがエアー通路(本願発明における「冷却空気の境界層厚さ」)の全体にわたって延びるようにすることは,この種発明の背景を構成する技術として当業者に周知のものであったと認められる。
(2)本件補正の内容と本件拒絶査定本件拒絶理由通知を受けた原告は,本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載に本件構成を付加し,前記第2の2のとおりとしたが,審査官は,本件特許出願について本件拒絶査定をした。その拒絶の理由は,本件拒絶理由通知の【理由2】によるものであった。
そして,本件拒絶査定においては,「備考」として,「補正後の請求項1に追加した「熱伝達冷却を増すために,前記リッジの高さCが冷却空気の境界層厚さDを超えるように定められる」事項について検討すると,冷却通路内の突部を冷却空気の境界層の厚さより高くすることは周知(下記文献参照。)である。したがって,リッジに係る特定事項は周知技術に基づき,当業者が適宜なし得る設計事項であるといえる。したがって,請求項1ないし10に係る発明は,引用文献1ないし6記載事項及び上記周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。」と記載されている(判決注:下記文献として掲げられているのは,本件周知例である。)ところ,ここで挙げられた本件周知例に係る特許公開公報は,それぞれ「ガスタービン冷却動翼」(周知例1),「ガスタービンエンジン内の翼の冷却通路の乱流促進構造」(周知例2)及び「ガスタービンエンジンの動翼の冷却通路の乱流器構造」(周知例3)の発明に関するものであり,本件特許出願に係る発明とその技術分野を同じくするものであると認められる。
3本件拒絶査定の当否について特許法50条は,「審査官は,拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは,特許出願人に対し,拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならない。」と規定するところ,拒絶査定の理由が特許出願人に対して既に通知されている拒絶理由と同様のものである場合においては,審査官が改めて拒絶理由を通知する必要はないと解される。
しかるところ,本件拒絶査定は,上記2(2)のとおり,本件拒絶理由通知の【理由2】により,本件特許出願を拒絶すべきとしたものであるが,その【理由2】が本件補正後の請求項1に記載した発明に対するものとしても妥当するのであれば,審査官は,同様の理由について,特許法50条に規定する拒絶査定の要件としての再度の拒絶理由通知を行うべき義務はなく,本件拒絶査定に原告主張の違法はないことになる。
反対に,【理由2】が本件補正後の請求項1に記載した発明に対するものとしては相当でなく,原告が主張するように,本件補正により本件拒絶理由通知における拒絶の理由は解消し,本件周知例を引用しなければ本件拒絶理由通知を維持することができなかったものと認められる場合には,本件拒絶査定には,再度の拒絶理由を通知しなかった違法があるということになる。
そこで,以下において,本件周知例の内容並びに本件補正によって請求項1に付加された本件構成と本件周知例の内容との関係について検討する。
(1)本件周知例における記載ア周知例1(甲7)の記載【0002】【従来の技術】ロータの外周に植設され,約1000℃にもなる高温ガス中で作動するガスタービン動翼は,高温化による強度低下を防止するため,その内部に翼根部より翼端部の方向,いわゆる翼幅方向に,冷却通路を穿設し,ロータの内部に穿設した流体通路を介して,外部から取入れた高圧の冷却空気を,この冷却通路に導入し,内部から冷却することが行われている。
【0003】図2は,このような,内部に冷却通路を設けた従来のガスタービン動翼を示す図である。図2(a)の横断面図に示すように,動翼1の内部には,翼幅方向に3列の冷却通路2が,それぞれ連通して設けられている。図示しない,動翼1を外周に植設するロータの内部に穿設した流体通路から,動翼1の翼根部の冷却通路2に導入された冷却空気3は,翼端部方向へ流れ,翼端部で180°旋回して翼根部方向へ流れ,翼根部で再び180°旋回して翼端部方向へ流れ,翼端部に設けた開口4から動翼1の外周縁を流れる高温ガス5中へ流出する。この冷却通路2を流れる冷却空気3と熱交換することによって,動翼1は冷却され,高温化による強度低下が防止でき,強度を維持できる。
【0004】また,冷却通路2には,冷却空気3の流れる方向と直交させて,直交タービュレータ6が冷却通路2の幅全体に突設されている。この直交タービュレータ6は,図2(b)に示すように,直交タービュレータ6の後方に生じるはく離渦7で,冷却空気3の流れに攪乱を生じさせて,冷却通路2を流れる冷却空気3の熱伝達率を向上させるためのものであり,冷却通路2面に沿って流れる冷却空気3の境界層の厚さより上端が高くなるように,冷却通路2面から突設されている。
イ周知例2(甲8)の記載【0002】【従来の技術】ガスタービンエンジン,例えば航空機ジェットエンジンは,翼を有する構成部(例えばタービン,圧縮機,ファン等)を備えている。例えば,動翼用の翼は,回転するタービンロータディスクに取付けたシャンク部と,エンジンの燃焼器を出た高温ガスから有用仕事を抽出するために用いられる翼形部とを有する。翼形部はシャンクに取付けた翼根と,翼形部の自由端である翼端とを含んでいる。最新の航空機ジェットエンジンは,タービン動翼の内部冷却を用いて翼形部温度をある設計限度内に保つ。通例,タービン動翼の翼形部は,縦方向に延在する内部通路を通流する空気(通常エンジン圧縮機からの抽気)により冷却され,この空気は翼根近くで流入しそして翼端近くで流出する。公知のタービン動翼冷却通路は,複数の接続されない縦方向向きの通路からなる冷却回路を含み,この回路の各通路は翼根近くから冷却空気を受入れそしてその空気を縦方向に翼端の方に導く。また,公知の冷却通路には蛇行冷却回路が含まれ,直列に接続されて蛇行流を生成する複数の縦方向通路からなる。いずれの冷却回路でも,幾らかの空気が翼形部前縁近くのフィルム冷却孔を通って翼形部を出るとともに幾らかの空気が後縁冷却孔を通って翼形部を出る。
【0003】乱流促進体は動翼の冷却流路において通常用いられる装置で,熱境界層を破りそして冷却通路壁近くで乱流を発生し,こうして,冷却媒体と壁との間の熱伝達を良くする。乱流促進体(従来,冷却通路に鋳造され断面と間隔が同じである複数の長方形または正方形リブ)の高さと形状は乱流発生の効果を得るのに重要であることは理解されている。特に,乱流促進体の高さは熱境界層を乱すために同層の厚さより大きくなければならない。
ウ周知例3(甲9)の記載【0002】【従来の技術】ガスタービンエンジン,例えば航空機ジェットエンジンは,動翼を有する構成部(例えば,タービン,圧縮機,ファン等)を備えている。例えば,タービン動翼は,回転するタービンロータディスクに取付けたシャンク部と,エンジンの燃焼器を出た高温ガスから有用な仕事を抽出するために用いられる翼形部とを有する。翼形部はシャンクに取付けた翼根と,翼形部の自由端である翼端とを含んでいる。最新の航空機ジェットエンジンは,タービン動翼の内部冷却を用いて翼形部温度をある設計限度内に保つ。通例,タービン動翼の翼形部は,縦方向に延在する内部通路を通流する空気(通常エンジン圧縮機からの抽気)により冷却され,この空気は翼根近くで流入しそして翼端近くで流出する。公知のタービン動翼冷却通路は,複数の接続されない縦方向向きの通路からなる冷却回路を含み,この回路の各通路は翼根近くから冷却空気を受入れそしてその空気を縦方向に翼端の方に導く。また,公知の冷却通路には蛇行冷却回路が含まれ,これは直列に接続されて蛇行流を生成する複数の縦方向通路からなる。いずれの冷却回路でも,幾らかの空気が翼形部前縁近くのフィルム冷却孔を通って翼形部を出るとともに幾らかの空気が後縁冷却孔を通って翼形部を出る。
【0004】乱流促進器或は乱流器は熱境界層を破りそして冷却通路壁近くで乱流を発生するために動翼の冷却流路に普通用いられる素子である。こうして,冷却材と壁との間の熱伝達を高める。乱流器(従来,冷却通路壁上に鋳造され断面と間隔が同じである複数の長方形または正方形リブ)の高さと形状は乱流発生の効果を得るのに重要であることは理解されている。特に,乱流促進体の高さは熱境界層を乱すために同層の厚さより大きくなければならない。
(2)本件周知例の内容本件周知例の上記(1)の記載によると,本件特許出願日前の刊行物には,ガスタービンエンジン内の翼の冷却に関する従来の技術として,動翼内部に設けられた冷却通路2には,熱伝達率を向上させるために,冷却空気3の流れる方向に直行させて直行タービュレータが,冷却空気3の境界層よりも上端が高くなるように冷却通路2面から突設されていたものがあること(上記(1)ア),タービン動翼は内部通路を通流する空気によって冷却されるが,熱伝達を良くするために乱流促進体が通常用いられる装置で,長方形又は正方形リブの形状である乱流促進体の高さは,熱境界層を乱すために同層の厚さより大きくなければならないものであること(同イ),タービン動翼は内部通路を通流する空気によって冷却されるが,乱流促進器あるいは乱流器は,乱流を発生させて熱伝達を高めるために普通に用いられる素子であり,正方形リブの形状の乱流器における高さは,熱境界層を乱すために同層の厚さより大きくなければならないものであること(同ウ)が記載されていたことが認められる。
なお,周知例1のタービュレータ,周知例2の乱流促進体,周知例3の乱流器は,いずれもタービン動翼の冷却通路に突設された部材であって,本願発明の「リッジ」に相当する部材であることは明らかである。
(3)本件周知例の内容と本件構成との関係上記(2)によると,本件周知例のいずれにも,従来の技術として,本件構成が採用されていたことが記載されているものと認められ,その記載内容に照らして,このような技術は当業者に周知のものであったということができる。
そして,本件拒絶理由通知の【理由2】は,請求項2ないし14について,「引用文献等1-6」を摘示した上,「備考」として「「リッジ」及び「溝」とからなる凹凸形状に関して,形状,大きさ,面積に係る数値限定,配置関係などを規定する請求項2-14に係る発明については,それぞれ引用文献1ないし6に記載されたものの凹凸形状からみて,技術の具体化の際に当業者が適宜採用し得る設計事項を超えるものはないか,または,引用文献1-6に実質的に記載された発明であると認められる。」と記載するものであり,「引用文献1」に記載された技術(ガスタービンの衝突冷却の効率を高めるために,ブレード(本願発明における「リッジ」)の高さがエアー通路(本願発明における「冷却空気の境界層厚さ」)の全体にわたって延びるようにするという技術)が本件特許出願日における当業者に周知のものであることは上記2(1)のとおりであるところ,リッジの高さが少なくとも冷却空気の境界層厚さの全高にわたっている必要があることと,リッジの高さを冷却空気の境界層厚さを超えるように定める必要があることは,技術的に同義であるということができる。
そうすると,本件拒絶査定において示された本件周知例は,本件構成を含む請求項である請求項3に係る発明が本件拒絶理由通知の【理由2】により,当業者によって容易に発明することができたものであるとされたことを前提として,本件補正後の請求項1に記載の発明,すなわち,本件補正前の請求項3に記載の発明に比して,請求項2に記載の「リッジ44は互いに平行である」との構成による限定がないものについても,同様の理由により当業者により容易に発明することができたことを確認的に説明するため,本件拒絶理由通知において摘示した引用例と同趣旨の周知技術について,より端的な記載がある本件周知例を摘示したものにすぎない。
したがって,本件拒絶査定は,本件拒絶理由通知において通知した拒絶の理由と異なる理由により本件出願を拒絶すべきとしたものではないのであり,審査官は新たに拒絶理由通知をすべき義務はなかったというべきであるから,原告の取消事由に係る主張は,その前提となっている手続違背が認められないので,失当というべきである。
4結論以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 高部眞規子
裁判官 杜下弘記
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