審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成20ワ25354特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20ワ12501特許権侵害行為差止請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20ワ2387特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19ワ3494特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19ワ13513特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 創作性(創作) / 物の発明 / 方法の発明 / 製造方法 / 使用方法 / 公然知られ(29条1項1号) / 頒布された刊行物 / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 周知技術 / 技術的範囲 / 先行技術 / 発明の詳細な説明 / 択一的 / 遡及 / 出願変更 / 意匠登録出願 / 実質的に同一 / 登録意匠 / 類似する意匠 / 意匠権 / 出願経過 / 参酌 / 置き換え / 置換 / 容易に想到(容易想到性) / 禁反言 / 特許発明 / 実施 / 先使用権(先使用) / 加工 / 交換 / 構成要件 / 業として / 差止請求(差止) / 侵害 / 損害額 / 不法行為(民法709条) / 実施権 / 通常実施権 / 拒絶理由通知 / 請求の範囲 / 変更 / 合理的な理由 / |
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元本PDF |
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事件 |
平成
20年
(ワ)
3277号
特許権侵害差止等請求事件
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原告株 式会社高橋製作所 訴訟代理人弁護 士畑良武島武男 佐野正幸 堀井昌弘 上田憲 小池裕樹 隈元暢昭 齋藤友紀 渡邉直貴 阪口博教 野間あや 補佐人弁理士山下賢二 被告ア ートスペース株式会社 訴訟代理人弁護 士阿部隆徳 訴訟代理人弁理 士杉谷勉戸高弘幸 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2009/08/27 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原 告 の 請 求 を い ず れ も 棄 却 す る 。 2 訴 訟 費 用 は 原 告 の 負 担 と す る 。 - 2 - |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求の趣旨1被告は,別紙イ号製品目録ないしハ号製品目録の各第1項記載の各鉄筋用スペーサーを製造し,販売し,又は販売の申出をしてはならない。 2被告は,前項の各鉄筋用スペーサー及び別紙イ号製品目録ないしハ号製品目録の各第2項記載の各成形金型をいずれも廃棄せよ。 3被告は,別紙イ号金型目録第1項記載の成形金型(ただし,イ号-1金型を除く )を使用してはならない。 。 4被告は,原告に対し,7270万0800円及びこれに対する平成20年3月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5訴訟費用は被告の負担とする。 6仮執行宣言第2事案の概要1当事者間に争いのない事実等(末尾に証拠の掲記のない事実は当事者間に争いがない )。 1本件特許権()ア原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,その請求項1の発明を「本件特許発明」という )の特許権者である(以下,本件特許に係る特 。 許権を「本件特許権」といい,本件特許に係る願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。。)登 録 番 号第3732202号発明の名称鉄筋用スペーサー出 願 番 号特願2004-124314号出願日平成16年4月20日登録日平成17年10月21日特許請求の範囲「 請求項1】【長方形の4辺面が90度づつ(判決注:以下,特許請求の範囲及び明細書の記載を引用する場合でも,公用文の表記に従い「ずつ」と表記する )の方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パ 。 ネル(M)と択一的に接触使用される一定厚み(t)のコンクリートブロック(B)から成り,上記長方形のほぼ中心部に1個か,又はその長方形の長手中心線(O-O)上に点在分布する合計2個の結束用金属線材受け入れ孔(3)を貫通形成し,上記4辺面の角隅部を凸曲面(2)に造形する一方,少なくとも隣り合う2辺面を鉄筋(A)の係止用凹曲面(1)として陥没させると共に,その各鉄筋係止用凹曲面(1)の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距離を,上記鉄筋(A)の互いに異なる2種以上のコンクリートかぶり厚さ(D1 (D2 (D3 (D4)となる寸法に設定 )))した鉄筋用スペーサーにおいて,上記長方形の4辺面に対応する平面形状の囲い壁面(19)とフラットな底面(20)とから成る断面ほぼU字型の胴体(18)を備え,且つそのフラットな底面(20)から上向き一体的に垂立する上記結束用金属線材受け入れ孔(3)の賦形用芯棒(21)のみならず,上記鉄筋(A)の互いに異なる2種以上のコンクリートかぶり厚さ(D1 (D2 (D3 (D4)となる寸法を簡略に示す陥没数字(G) )))の賦形用凸版(P)も反転数字として隆起された耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製のコンクリートブロック用成形キャビティ(C)を,裏返し脱型作業できる金属製の枠台(F)へ取り付け使用して,その成形キャビティ(C)の内部へ上方から充填した生コンクリートを硬化させることにより,上記コンクリートブロック(B)自身を成形すると一挙同時に,そのコンクリートブロック(B)のフラットな片面(5)における各鉄筋係止用凹曲面(1)の底部とほぼ対応位置する個所へ,成形キャビティ(C)の凸版(P)により一定な輪郭幅(s)と深さ(d)の上記陥没数字(G)を,その隣り合う同志(判決注: 同士」の誤記と認められるので,以下「同士」と表記す 「る )での直交する姿勢として賦形したことを特徴とする鉄筋用スペ 。 ーサー 」。 イ本件特許発明の構成要件の分説本件特許発明は,次の構成要件に分説するのが相当である(以下,本件特許発明の各構成要件を,以下に掲げる符号を付して「構成要件A」などという。。)A長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネル(M)と択一的に接触使用される一定厚み(t)のコンクリートブロック(B)から成り,B上記長方形のほぼ中心部に1個か,又はその長方形の長手中心線(O-O)上に点在分布する合計2個の結束用金属線材受け入れ孔(3)を貫通形成し,C上記4辺面の角隅部を凸曲面(2)に造形する一方,少なくとも隣り合う2辺面を鉄筋(A)の係止用凹曲面(1)として陥没させると共に,Dその各鉄筋係止用凹曲面(1)の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距離を,上記鉄筋(A)の互いに異なる2種以上のコンクリートかぶり厚さ(D1 (D2 (D3 (D4)となる寸法に設定した鉄 )))筋用スペーサーにおいて,E上記長方形の4辺面に対応する平面形状の囲い壁面(19)とフラットな底面(20)とから成る断面ほぼU字型の胴体(18)を備え,且つそのフラットな底面(20)から上向き一体的に垂立する上記結束用金属線材受け入れ孔(3)の賦形用芯棒(21)のみならず,上記鉄筋(A)の互いに異なる2種以上のコンクリートかぶり厚さ(D1 (D)2 (D3 (D4)となる寸法を簡略に示す陥没数字(G)の賦形用 ))凸版(P)も反転数字として隆起された耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製のコンクリートブロック用成形キャビティ(C)を,裏返し脱型作業できる金属製の枠台(F)へ取り付け使用して,Fその成形キャビティ(C)の内部へ上方から充填した生コンクリートを硬化させることにより,上記コンクリートブロック(B)自身を成形すると一挙同時に,そのコンクリートブロック(B)のフラットな片面(5)における各鉄筋係止用凹曲面(1)の底部とほぼ対応位置する個所へ,成形キャビティ(C)の凸版(P)により一定な輪郭幅(s)と深さ(d)の上記陥没数字(G)を,その隣り合う同士での直交する姿勢として賦形したことを特徴とする鉄筋用スペーサー。 2本件意匠権1()原告は,次の意匠登録(以下「本件意匠登録1」といい,その登録意匠を「本件登録意匠1」という。)の意匠権者である(以下,本件意匠登録1に係る意匠権を「本件意匠権1」という。。)登録番号第1265621号出願番号意願2005-18188号出願日平成16年4月20日登録日平成18年2月3日意匠に係る物品鉄筋用スペーサー登録意匠別紙本件登録意匠1の図面のとおり3本件意匠権2()原告は,次の意匠登録(以下「本件意匠登録2」といい,その登録意匠を「本件登録意匠2」という。)の意匠権者である(以下,本件意匠登録2に係る意匠権を「本件意匠権2」という。。)登録番号第1238637号出願番号意願2004-15454号出願日平成16年5月26日登録日平成17年3月18日意匠に係る物品鉄筋用スペーサーの成形金型登録意匠別紙本件登録意匠2の図面のとおり4被告の行為()アイ号製品被告は,別紙イ号製品目録第1項記載のイ号製品を,いずれも業として製造販売している。 イロ号製品被告は,別紙ロ号製品目録第1項記載のロ号製品を,いずれも業として製造販売していた。 ウハ号製品被告は,別紙ハ号製品目録第1項記載のハ号製品を,いずれも業として製造販売している。 エイ号金型被告は,イ号製品を製造するために,別紙イ号金型目録第1項記載のイ号金型を,業として使用している。 5本件特許発明に係る構成要件の一部充足()アイ号製品は構成要件AないしDを充足する。 イロ号製品は構成要件AないしDを充足する。 ウハ号製品は構成要件A,C及びDを充足する。 2原告の請求原告は,イ号製品ないしハ号製品(以下,併せて「被告製品」ともいう )。 を製造販売する被告の行為が本件特許権を侵害するとともに,ロ号製品については本件意匠権1をも侵害すると主張し,またイ号金型を使用する被告の行為が本件意匠権2を侵害すると主張して,被告に対して以下の請求をしている。 1特許法100条1項に基づく被告製品の製造販売等の差止め並びに同条2()項に基づく被告製品及びその製造に用いる各成形金型の各廃棄2意匠法37条1項に基づくロ号製品の製造販売等の差止め並びに同条2項()に基づく同製品及びその製造に用いる成形金型の各廃棄3意匠法37条1項に基づくイ号金型(ただし,イ号-1金型を除く。以下()同じ )の使用の差止め及び同条2項に基づく同金型の廃棄 。 4民法709条の不法行為に基づく損害賠償として7270万0800円及()びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年3月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払3争点1被告製品の製造販売が本件特許権を侵害するか。(争点1)()ア被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか。(争点1-1)イ本件特許は特許法29条2項に反して登録されたものとして特許無効審判により無効とされるべきものか。(争点1-2)2ロ号製品の製造販売が本件意匠権1を侵害するか。(争点2)()アロ号製品に係る意匠(以下「ロ号意匠」という )は本件登録意匠1に 。 類似するか。 (争点2-1)イ本件意匠登録1は意匠法3条1項又は2項に反して登録されたものとして意匠登録無効審判により無効とされるべきものか。(争点2-2)ウ本件意匠権1に対する自由意匠の抗弁(争点2-3)3イ号金型の製造販売が本件意匠権2を侵害するか。(争点3)()アイ号金型に係る意匠(以下「イ号金型意匠」という )は本件登録意匠 。 2に類似するか。 (争点3-1)イ本件意匠登録2は意匠法3条1項又は2項に反して登録されたものとして意匠登録無効審判により無効とされるべきものか。(争点3-2)ウ本件意匠権2に対する自由意匠の抗弁(争点3-3)エ本件意匠権2に対する先使用の抗弁(争点3-4)4損害の額 (争点4)()第3争点に関する当事者の主張1争点1-1(本件特許発明の技術的範囲の属否)【原告の主張】1構成要件E及びFの充足性()被告製品の構成は,別紙イ号製品目録ないしハ号製品目録の各第3項に記載のとおりである。なお,同各別紙図1ないし図5の使用状態図における成形金型(以下「成形キャビティ」ともいう )間の隙間は1?pよりも狭く, 。 裏返し叩打しなければ,枠台と成形キャビティとの間に入り込んだ生コンクリートの粕(以下「ノロ」ともいう )の接着力に起因して,枠台から成形 。 キャビティが抜け落ちなくなる程度の広さのものである。 被告は,被告製品を製造する際,成形キャビティを金属製の枠台上に固定せずに使用していると主張する。しかし,被告が提出した被告製品の製造方法(乙5,6)によれば,枠台を裏返しても抜け落ちない成形キャビティが多数残存し,そのため枠台を合成樹脂製の網箱へ裏返し叩打して,繰り返し衝撃を与えたり,作業者が指先で成形キャビティを枠台から押圧して,無理に抜き落としたりしており,被告製品は成形キャビティを枠台へ「固定せずに載せ」ているのではなく,まさに成形キャビティを枠台へ「取り付け」ているといえる。 よって,被告製品は本件特許発明の構成要件E及びFを充足する。 2被告の主張に対する反論 ()ア被告は,成形キャビティを枠台に固定せずに載せることは構成要件Eの「取り付け」に当たらないと主張するが,極めて不当な縮小解釈である。 「取り付け」とは「機器・器具などをとりつけること,装置すること ,」「装着」とは「衣服や防具などを身につけること,付属品を本体に取り付けること「固定」とは「動かないようにすること」をそれぞれ意味す 」,る(広辞苑第五版 。つまり 「取り付け」とは 「固定」よりも広い意味 ),,を有し,非固定状態も含む意味の用語である。 よって,成形キャビティを枠台に固定せずに載せていたとしても,成形キャビティが枠台から浮いていない限り,成形キャビティを枠台へ取り付けたものと自然かつ合理的に解釈できる。 イ被告は,構成要件Eの「裏返し脱型作業できる金属製の枠台」について,枠台に取り付けられた成形キャビティからコンクリートブロックが脱型できる枠台と解釈するが,本来,成形キャビティ(C)さえあれば鉄筋用スペーサーを製造することは可能であり,枠台(F)は多数の成形キャビティ(C)を並べるための取付台としての役割を担うものである。したがって,枠台から成形キャビティが抜け落ちると同時か,又はその直後に人力を加えなくても鉄筋用スペーサーが成形キャビティから抜け出せば,構成要件Eの「裏返し脱型作業できる金属製の枠台(F 」と解釈できる。 )被告製品の製造においても枠台を裏返しているが,被告が主張するように,かかる作業が成形キャビティを枠台から取り外すことが目的であるとしても,それだけにとどまらず,同時に,成形キャビティからコンクリートブロックを脱型させることをもその目的としているというべきである。 すなわち,裏返し叩打作業の最終目的はコンクリートブロックを脱型させることにあるのであり,高スピードでの強力な叩打作業が行われているのであるから,叩打力(衝撃力)の強さや叩打回数などの如何では,枠台から成形キャビティの抜け落ちと同時か,これよりも早く(先行して)コンクリートブロックが脱型することが無いと断定することは不可能である。 よって,被告製品においても「裏返し脱型作業できる金属製の枠台」を使用している。 ウそもそも構成要件Eの「裏返し脱型作業できる金属製の枠台(F 」と)ある記載は,その成形キャビティ(C)を取り付ける用具としての枠台(F)が,裏返し脱型作業できるという可能性を規定しており,その製造工程までも構成要件とする方法の発明ではない。本件特許発明はあくまでも物としての鉄筋用スペーサーの発明である。 【被告の主張】1被告製品の構成に対する認否()アイ号製品の構成別紙イ号製品目録第3項記載のイ号製品の構成のうち,構成e及びfは否認し,その余は認める。イ号製品の構成は別紙イ号製品の構成(被告)に記載のとおりである(なお,下線を付した部分は,被告が否認ないし争う部分である。。)構成eについて(ア)イ号製品の成形キャビティは 「裏返し脱型作業できる枠台へ取り付 ,け」使用するものではない。すなわち,イ号製品の成形キャビティは,枠台上に固定せずに載せて使用するようになっており 「枠台へ取り付 ,け」使用するものではない。また,イ号製品の枠台は 「裏返し脱型作 ,業できる枠台」ではない。 成形キャビティを枠台に取り付けて固定すると,成形キャビティに生コンクリートを流し込むときに,成形キャビティと枠台との間に生コンクリートのノロが侵入する。そして,製造工程を何回か繰り返しているうちにノロが硬化して,成形キャビティの張出部を徐々に上に押し上げ,その影響で胴体(キャビティ)の囲い壁面も変形し,脱型が難しくなる。 被告は,平成14年ころまで,成形キャビティを枠台に取り付けて固定する方法を採用していたが,上記のような問題点があるため,同年8月ころにこの方法を止め,成形キャビティを枠台上に固定せずに載せて使用する方法を採用するようになった。具体的には,枠台上に載せられた成形キャビティに生コンクリートを充填して養生硬化させた後,枠台を裏返し,枠台から落下した成形キャビティ(硬化した鉄筋用スペーサーを内包したもの )を裏返して金枠に打ち付け,成形キャビティから 。 鉄筋用スペーサーを脱型するという方法を採用している。これにより,成形キャビティと枠台との間にノロが侵入しても,成形キャビティの張出部や胴体(キャビティ)の囲い壁面が変形することはなく,容易に脱型することができる。 このように,イ号製品の成形キャビティは 「枠台に取り付けて使用 ,する」ものではない上,枠台を裏返しても鉄筋用スペーサーは成形キャビティから脱型しないから,イ号製品の枠台は「裏返し脱型作業できる枠台」でもない。 構成fについて(イ)上記のように,イ号製品の成形キャビティは,枠台上に固定せずに載せて使用するようになっており 「枠台へ取り付け」使用するものでは ,ないので 「その取付状態にある成形キャビティ」の内部へ生コンクリ ,ートを充填するものではない。 イロ号製品の構成別紙ロ号製品目録第3項記載の構成のうち構成e及びfは否認し,その余は認める。ロ号製品の構成は別紙ロ号-1製品の構成(被告)ないしロ号-3製品の構成(被告)に各記載のとおりである(なお,下線を付した部分は,被告が否認ないし争う部分である。。)ロ号製品の構成e及びfに係る主張は,イ号製品おける主張と同じである。 ウハ号製品の構成, 別紙ハ号製品目録第3項記載の構成のうち,構成a,e及びfは否認しその余は認める。ハ号製品の構成は別紙ハ号製品の構成(被告)に記載のとおりである(なお,下線を付した部分は,被告が否認ないし争う部分である。。)ハ号製品の構成aについて,ハ号製品は,長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によってコンクリート構造成形用の型枠パネルと択一的に接触使用されるものではなく,長方形の隣り合う2辺面が90度の方向変換によってコンクリート構造成形用の型枠パネルと択一的に接触使用されるものである。 ハ号製品の構成e及びfに係る主張は,イ号製品における主張と同じである。 2構成要件不充足()ア構成要件の解釈構成要件Eの「取り付け」の意義(ア)本件明細書の【発明の詳細な説明】の段落【0023 (以下,本件 】明細書の【発明の詳細な説明】欄の記載について,単に段落番号を付して「段落【0023 」などという,段落【0039 ,段落【00 】。)】42 ,段落【0054 ,段落【0061】並びに【図8】及び【図 】】9】によれば,構成要件Eの「成形キャビティ(C)を,裏返し脱型作業できる金属製の枠台(F)へ取り付け使用」するという事項は 「鉄,筋用スペーサーのコンクリートブロック(B)が成形硬化した後に,成形キャビティが並列配置された枠台を裏返して作業テーブルへ強く叩打した際に,成形キャビティ(C)からコンクリートブロック(B)は脱型するが,枠台(F)から成形キャビティ(C)は離脱しない程度の強固さで,成形キャビティ(C)が枠台(F)に装着された状態をいう」と解釈すべきである。 構成要件Eの「裏返し脱型作業できる金属製の枠台(F 」の意義(イ) )上記各記載を考慮すれば,本件特許発明における 「裏返し脱型作業 ,できる…枠台」とは 「枠台を裏返して叩打することにより,枠台に取 ,り付けられた成形キャビティからコンクリートブロックを脱型できる枠台をいう」と解釈すべきである。 したがって,裏返すと枠台からコンクリートブロックがキャビティごと落下する枠台が 「裏返し脱型作業できる…枠台」に当たらないこと ,は明らかである。 構成要件Fの「その成形キャビティ(C 」の意義(ウ) )上記構成要件Eの解釈によれば,構成要件F冒頭の「その成形キャビティ(C 」は,枠台に取り付けられた成形キャビティ(C)を意味す )ることは明らかである。 包袋禁反言(エ)本件特許は出願後の平成17年7月12日に拒絶理由通知が発せられており,原告がこれに応答して平成17年9月9日付けの手続補正書により,構成要件E及びFを加えるなど特許請求の範囲を補正するなどし(以下,この補正を「本件補正」という,その結果,特許査定に至 。)ったものである。 かかる出願経過からすれば,原告は拒絶理由を回避するために構成要件Eに係る事項を自ら付加したのであるから,本件特許発明における構成要件Eを無視するか,あるいは過小評価するようなことは,包袋禁反言の観点から許されない。 イイ号製品構成要件E (ア)イ号製品の成形キャビティは枠台上に固定せずに載せて使用するようになっており,成形キャビティが並列配置された枠台を裏返して作業テーブルへ強く叩打した際に,成形キャビティ(C)からコンクリートブロック(B)が脱型することなく,枠台(F)から成形キャビティ(C)が離脱するにすぎない。 よって,イ号製品の成形キャビティは,枠台へ取り付け使用するものではない。 また,イ号製品の枠台は,裏返して叩打しても成形キャビティからコンクリートブロックが脱型することはないので 「裏返し脱型作業でき ,る枠台」にも当たらない。 したがって,イ号製品は構成要件Eを充足しない。 構成要件F(イ)イ号製品は,枠台に固定せずに載せた成形キャビティに生コンクリートを充填しているので 「その成形キャビティ(C 」に当たらない。 , )したがって,イ号製品は構成要件Fを充足しない。 よって,イ号製品は本件特許発明の技術的範囲に属さない。 (ウ)ウロ号製品構成要件E(ア)上記イ ア と同じ。 ()構成要件F (イ)上記イ イ と同じ。 ()よって,ロ号製品は本件特許発明の技術的範囲に属さない。 (ウ)エハ号製品構成要件A(ア)ハ号製品は,長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によってコンクリート構造成形用の型枠パネルと択一的に接触使用されるものではなく,長方形の隣り合う2辺面が90度の方向変換によってコンクリート構造成形用の型枠パネルと択一的に接触使用されるものである。 よって,ハ号製品は本件特許発明の構成要件Aを充足しない。 構成要件E(イ)上記イ ア と同じ。 ()構成要件F (ウ)上記イ イ と同じ。 ()よって,ハ号製品は本件特許発明の技術的範囲に属さない。 (エ)2争点1-2(本件特許発明の進歩性)【被告の主張】本件特許は,以下のとおり特許法29条2項の規定に違反して登録されたものであり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,特許法104条の3第1項により,本件特許権を行使することはできない。 1本件特許発明()本件特許発明の構成要件Eをさらに分説すると以下のとおりである。 E1上記長方形の4辺面に対応する平面形状の囲い壁面(19)とフラットな底面(20)とから成る断面ほぼU字型の胴体(18)を備え,E2且つそのフラットな底面(20)から上向き一体的に垂立する上記結束用金属線材受け入れ孔(3)の賦形用芯棒(21)のみならず,E3上記鉄筋(A)の互いに異なる2種以上のコンクリートかぶり厚さ(D1 (D2 (D3 (D4)となる寸法を簡略に示す陥没数字(G) )))の賦形用凸版(P)も反転数字として隆起されたE4耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製のコンクリートブロック用成形キャビティ(C)を,E5裏返し脱型作業できる金属製の枠台(F)へ取り付け使用して,2先行技術()アC.T.NSKスペーサー品名「C.T.NSKスペーサーH3045」の鉄筋用スペーサー(ア)(乙19 ,品名「C.T.NSKスペーサーH7080」の鉄筋用ス )ペーサー(乙20)及び品名「C.T.NSKスペーサーH7010」の鉄筋用スペーサー(乙21:以下,これらを併せて「C.T.NSKスペーサー」という )は,本件特許の出願前から有限会社北島建材店 。 によって製造販売されたものでり,同出願前に公然知られた発明である。 C.T.NSKスペーサーは,いずれも以下の構成を備えている。 a長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのコンクリートブロックから成る(構成要件Aに対応 。)b上記4辺面の角隅部を凸曲面に造形する一方,その4辺面を鉄筋の係止用凹曲面として陥没させている(構成要件Cに対応 。)c各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距離を,上記鉄筋の互いに異なる4種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定している(構成要件Dに対応 。)C.T.NSKスペーサーは,それぞれ,発泡スチロール成形型CS(イ)-32(乙22 ,発泡スチロール成形型CS-801(乙23)及び )発泡スチロール成形型CS-80(乙24:以下,これらを併せて「発泡スチロール成形型CS」という )によって成形されるものである。 。 発泡スチロール成形型CSは,いずれも以下の構成を備えている。 a発泡スチロール成形型CSは,上記長方形の4辺面に対応する平面形状の囲い壁面とフラットな底面とから成る断面ほぼU字型の胴体を備えている(構成要件E1に対応 。)b発泡スチロール成形型CSの胴体の底面には,上記鉄筋の互いに異なる4種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法を簡略に示す陥没数字の賦形用凸版が反転数字として隆起されている(構成要件E3に対応 。)c合成樹脂製の発泡スチロール成形型CSを使用する(構成要件E4に対応 。)d発泡スチロール成形型CSの内部へ上方から充填した生コンクリートを硬化させることにより,上記コンクリートブロック自身を成形すると一挙同時に,そのコンクリートブロックのフラットな片面における各鉄筋係止用凹曲面の底部とほぼ対応位置する個所へ,発泡スチロール成形型CSの凸版により一定な輪郭幅と深さの上記陥没数字を,その隣り合う同士での直交する姿勢として賦形する(構成要件Fに対応 。)イ株式会社京都スペーサーのカタログ(乙25)遅くとも平成15年9月5日までに発行された株式会社京都スペーサーのカタログ(乙25:以下「乙25カタログ」という )にはセラミック 。 スペーサーSH(品名「SH-25×30「SH-30×35「S 」,」,H-40×45×50×55「SH-60×65×70×75」及び 」,「SH-80×85×90×100 。以下,これらを併せて「セラミッ 」クスペーサーSH」という )が記載されており,これらはいずれも以下 。 の構成を備えている。 長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造(ア)物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのセラミックブロックから成る(構成要件Aに対応 。)「SH-25×30「SH-30×35「SH-40×45×(イ) 」,」,50×55」及び「SH-60×65×70×75」に関しては,上記長方形のほぼ中心部に1個の結束用金属線材受け入れ孔を貫通形成しており 「SH-80×85×90×100」に関しては,上記長方形の ,長手中心線上に点在分布する合計2個の結束用金属線材受け入れ孔を貫通形成している(構成要件Bに対応 。)上記4辺面の角隅部を凸曲面に造形する一方,その4辺面を鉄筋の係(ウ)止用凹曲面として陥没させている(構成要件Cに対応 。)各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距(エ)離を,上記鉄筋の互いに異なる2種又は4種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定している(構成要件Dに対応 。)上記セラミックブロックのフラットな片面における各鉄筋係止用凹曲(オ)面の底部とほぼ対応位置する個所へ,上記鉄筋の互いに異なる2種以上のコンクリートかぶり厚さとなる寸法を簡略に示す数字を,その隣り合う同士での直交する姿勢として賦形する(構成要件Fに対応 。)ウ意匠登録808607号公報(乙28の1)平成3年3月8日に発行された意匠登録808607号公報(乙28の1:以下「乙28公報」という )には,以下の構成を備える鉄筋用スペ 。 ーサーの意匠(以下「乙28意匠」という )が開示されている。 。 長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造(ア)物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのコンクリートブロックから成っている(構成要件Aに対応 。)長方形の長手中心線上に点在分布する合計2個の結束用金属線材受け(イ)入れ孔を貫通形成している(構成要件Bに対応 。)4辺面の角隅部を凸曲面に造形する一方,その4辺面を鉄筋の係止用(ウ)凹曲面として陥没させている(構成要件Cに対応 。)各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距(エ)離を,上記鉄筋の互いに異なる3種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定している(構成要件Dに対応 。)エ実開昭62-85613号公報(乙29)昭和62年6月1日に発行された実開昭62-85613号公報(乙29:以下「乙29公報」という )には,以下の考案が開示されている。 。 長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造(ア)物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのコンクリートブロックから成っている(構成要件Aに対応 。)上記4辺面からこれと向かい合う1辺面までの間隔距離を,上記鉄筋(イ)の互いに異なる4種(30?o,40?o,50?o,60?o)のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定している(構成要件Dに対応 。)上記4面の鉄筋を載置する部位と対応位置する個所へ,上記鉄筋の互(ウ)いに異なる4種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法を簡略に示す陥没数字「3「4「5「6」を,その隣り合う同士での直交する姿 」,」,」,勢として賦形する(構成要件Fに対応 。)オ実開昭63-163312号公報(乙30)昭和63年10月25日に発行された実開昭63-163312号公報(乙30:以下「乙30公報」という )には,以下の考案(以下「乙3 。 0考案」という )が開示されている。 。 長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造(ア)物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのコンクリートブロックから成っている(構成要件Aに対応 。)上記4辺面を鉄筋の係止用凹曲面として陥没させている(構成要件C(イ)に対応 。)各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距(ウ)離を,上記鉄筋の互いに異なる2種のコンクリートかぶり厚さ( l(1)と(l2 )となる寸法に設定している(構成要件Dに対応 。 ) )耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製の成形型を使用する(構(エ)成要件E4及びE5に対応 。)成形型は,上記長方形の4辺面に対応する平面形状の囲い壁面とフラ(オ)ットな底面とから成る断面ほぼU字型の胴体を備えている(構成要件E1に対応 。)成形型の内部へ上方から充填した生コンクリートを硬化させることに(カ)より,上記コンクリートブロック自身を成形する(構成要件Fに対応 。)カ旧ASスペーサー及びその製造工程旧ASスペーサー(乙31〜34)(ア)被告は,平成12年11月ころから平成14年8月ころまでの間,品番「A3035「A3540」及び「A4050」のASスペーサ 」,ーを乙第3号証に示した従前の製造工程で製造し,これを販売した(以下,同期間において従前の製造工程で製造されたASスペーサーを,「旧ASスペーサーA3035「旧ASスペーサーA3540」及 」,び「旧ASスペーサーA4050」といい,これらを併せて「旧ASスペーサー」ともいう。旧ASスペーサーは,平成13年ころに頒布 。)された被告のカタログ(乙31:以下「乙31カタログ」という,。)平成13年4月20日に発行された大阪建材新聞(乙32 ,平成13 )年12月に頒布された二三情報(乙33)に掲載されている。 よって,旧ASスペーサーは,いずれも本件特許の出願前に公然知られた発明であり,かつ同出願前に頒布された刊行物に記載された発明である。 旧ASスペーサーは,いずれも以下の構成を備えている。 a長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのコンクリートブロックから成る(構成要件Aに対応 。)b長方形のほぼ中心部に1個の結束用金属線材受け入れ孔を貫通形成している(構成要件Bに対応 。)c上記4辺面の角隅部を凸曲面に造形する一方,その4辺面を鉄筋の係止用凹曲面として陥没させている(構成要件Cに対応 。)d各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距離を,上記鉄筋の互いに異なる2種または3種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定している(構成要件Dに対応 。)旧ASスペーサーを製造する従前の製造工程(乙3,9,35,51(イ)〜59)被告は,平成12年11月ころから平成14年8月ころの期間において,旧ASスペーサーを従前の製造工程によって公然と製造した。 従前の製造工程は,いずれも以下の構成を備えている。 a旧ASスペーサーA3035,旧ASスペーサーA3540及び旧ASスペーサーA4050はそれぞれ,旧成形金型A3035,旧成形金型A3540及び旧成形金型A4050(以下,併せて「旧成形金型」という )によって成形される。 。 b旧成形金型は,上記長方形の4辺面に対応する平面形状の囲い壁面とフラットな底面とから成る断面ほぼU字型の胴体を備えている(構成要件E1に対応 。)c旧成形金型の胴体の底面から上向き一体的に垂立する上記結束用金属線材受け入れ孔の賦形用芯棒が隆起されている(構成要件E2に対応)d旧成形金型は,耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製である(構成要件E4に対応 。)e旧成形金型を裏返し脱型作業できる金属製の枠台へ取り付け使用する(構成要件E5に対応 。)f旧成形金型の内部へ上方から充填した生コンクリートを硬化させることにより,上記コンクリートブロック自身を成形する(構成要件Fに対応 。)キ特開昭62-215763号公報(乙36)昭和62年9月22日に発行された特開昭62-215763号公報(乙36:以下「乙36公報」という )には,以下の発明が開示されて 。 いる。 長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造(ア)物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのコンクリートブロックから成る(構成要件Aに対応 。)上記4辺面を鉄筋の係止用凹曲面として陥没させている(構成要件C(イ)に対応 。)各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距(ウ)離を,上記鉄筋の互いに異なる2種または3種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定している(構成要件Dに対応 。)成形キャビティは,上記長方形の4辺面に対応する平面形状の囲い壁(エ)面とフラットな底面とから成る断面ほぼU字型の胴体を備えている(構成要件E1に対応 。)成形キャビティは,耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製であ(オ)る(構成要件E4に対応 。)成形キャビティを裏返し脱型作業できる金属製の枠台へ取り付け使用(カ)する(構成要件E5に対応 。)成形キャビティの内部へ上方から充填した生コンクリートを硬化させ(キ)ることにより,上記コンクリートブロック自身を成形する(構成要件Fに対応 。)ク特開昭64-56509号公報(乙37)平成元年3月3日に発行された特開昭64-56509号公報(乙37)には,以下の発明が開示されている。 コンクリート構造物成形用の型枠パネルと接触使用される一定厚みの(ア)コンクリートブロックから成る(構成要件Aに対応 。)上記長方形の長手中心線上に点在分布する合計2個の結束用金属線(イ)材受け入れ孔を貫通形成している(構成要件Bに対応 。)鉄筋の係止用凹曲面として陥没させる(構成要件Cに対応 。 (ウ) )成形キャビティは,平面形状の囲い壁面とフラットな底面とから成(エ)る断面ほぼU字型の胴体を備えている(構成要件E1に対応 。)そのフラットな底面から上向き一体的に垂立する上記結束用金属線(オ)材受け入れ孔の賦形用芯棒が隆起されている(構成要件E2に対応 。)成形キャビティは,耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製であ(カ)る(構成要件E4に対応 。)成形キャビティの内部へ上方から充填した生コンクリートを硬化さ(キ)せることにより,上記コンクリートブロック自身を成形する(構成要件Fに対応 。)ケ実開昭49-29156号公報(乙38)昭和49年3月13日に発行された実開昭49-29156号公報(乙38:以下「乙38公報」という )には,以下の考案が開示されている。 。 型枠には,陥没文字の賦形用凸版が反転文字として隆起されている(ア)(構成要件E3に対応 。)型枠は,耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製である(構成要(イ)件E4に対応 。)型枠の内部へ上方から充填した生コンクリートを硬化させることによ(ウ)り,上記コンクリートを成形すると一挙同時に,そのコンクリートのフラットな片面に凸版により文字等を賦形する(構成要件Fに対応 。)コ特開昭62-37464号公報(乙39)昭和62年2月18日に発行された特開昭62-37464号公報(乙39:以下「乙39公報」という )には,以下の発明が開示されている。 。 型枠には,陥没文字の賦形用凸版が反転文字として隆起されている(ア)(構成要件E3に対応 。)型枠は,耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製である(構成要(イ)件E4に対応 。)型枠の内部へ上方から充填した生コンクリートを硬化させることによ(ウ)り,上記コンクリートを成形すると一挙同時に,そのコンクリートのフラットな片面に凸版により文字等を賦形する(構成要件Fに対応 。)サ実開平6-12619号公報(乙40)平成6年2月18日に発行された実開平6-12619号公報(乙40:以下「乙40公報」という )には,以下の考案(以下「乙40考案」 。 という )が開示されている。 。 長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造(ア)物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのブロックから成る(構成要件Aに対応 。)上記4辺面を鉄筋の係止用凹曲面として陥没させている(構成要件C(イ)に対応 。)各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距(ウ)離を,上記鉄筋の互いに異なる2種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定している(構成要件Dに対応 。)そのブロックのフラットな片面における各鉄筋係止用凹曲面の底部と(エ)ほぼ対応位置する個所へ,一定な輪郭幅と深さの上記陥没数字を,その隣り合う同士での直交する姿勢として賦形している(構成要件Fに対応 。)シアペックス株式会社のカタログ(乙41)平成14年ころに頒布されたアペックス株式会社のカタログ(乙41:以下「乙41カタログ」という )に記載された「ブロック (以下「ポ 。 」リスペーサブロック」という )は,以下の構成を備えている。 。 長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造(ア)物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのブロックから成る(構成要件Aに対応 。)上記4辺面を鉄筋の係止用凹曲面として陥没させている(構成要件C(イ)に対応 。)各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距(ウ)離を,上記鉄筋の互いに異なる2種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定している(構成要件Dに対応 。)そのブロックのフラットな片面における各鉄筋係止用凹曲面の底部と(エ)ほぼ対応位置する個所へ,一定な輪郭幅と深さの上記陥没数字を,その隣り合う同士での直交する姿勢として賦形している(構成要件Fに対応 。)ス株式会社スペーサー工業のカタログ(乙43・44)平成9年11月ころに頒布された株式会社スペーサー工業(以下「スペーサー工業」という )のカタログ(乙43:以下「乙43カタログ」と 。 いう )及び平成13年3月ころに頒布されたスペーサー工業のカタログ 。 (乙44:以下「乙44カタログ」という )に記載された「バテー型ス 。 ペーサー (以下「バテー型スペーサー」という )は,以下の構成を備 」 。 えている。 コンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一(ア)定厚みのコンクリートブロックから成る(構成要件Aに対応 。)鉄筋の係止用凹曲面として陥没させている(構成要件Cに対応 。 (イ) )鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距離(ウ)を,上記鉄筋の互いに異なる2種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定している(構成要件Dに対応 。)フラットな片面における各鉄筋係止用凹曲面の底部とほぼ対応位置す(エ)る個所へ,一定な輪郭幅と深さの上記陥没数字を賦形している(構成要件Fに対応 。)セスペーサー工業のカタログ(乙43)乙43カタログに記載された「CTドーナツ (以下「CTドーナツ」 」という )は,以下の構成を備えている。 。 コンクリートンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使(ア)用される一定厚みのコンクリートブロックから成る(構成要件Aに対応 。)鉄筋の係止用凹曲面として陥没させている(構成要件Cに対応 。 (イ) )フラットな片面における各鉄筋係止用凹曲面の底部とほぼ対応位置す(ウ)る個所へ,一定な輪郭幅と深さの上記陥没数字を賦形している(構成要件Fに対応 。)3容易想到性()本件特許発明の構造を特定する構成要件(構成要件A〜D,F)の大部分は,C.T.NSKスペーサー,セラミックスペーサーSH,乙28意匠,乙30考案及び旧ASスペーサーにそれぞれ開示されており,周知である。 また,本件特許発明の製法を特定する構成要件(構成要件E1〜E5,F)も,乙36公報及び旧ASスペーサーの製造工程に大部分が開示されている。 そこで,別表1ないし10のとおり,これら先行技術又は周知技術を主たる引用例とし,その余の前記周知技術を単に付加することで,本件特許発明の構成要件全てを備えるように変更することは極めて容易である(詳細は平成20年9月18日付け被告第4準備書面33頁以降のとおり。。)よって,本件特許発明は,本件特許の出願前に公知,公用,あるいは刊行物公知となった発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 【原告の主張】1被告は,構成要件Eについて,E1ないしE5の5つの構成要素に細かく()分解するとともに,構成要件Fについて「一部一致」とした上で,本件特許発明は進歩性を欠くと主張するが,本件特許発明における耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製のコンクリートブロック用成形キャビティ(C)について,被告の主張のように,細かく機械的に分解しなければ先行技術と比較できないのは,主張自体失当というべきである。なぜなら,被告主張のように特許発明の構成要件を過度に細分した上で単純に比較消去するのは,進歩性の判断上重要な構成要素同士の有機的な結合関係(改良点)を無視することになるからである。 2先行技術について()アC.T.NSKスペーサーについてC.T.NSKスペーサーが本件出願前に公然と知られた発明であることについては否認する。 発泡スチロール成形型CSは,いずれも発泡スチロール製であるため,これを破壊しなければ鉄筋用スペーサーを脱型することができない。したがって,同成形型では構成要件E5の枠台(F)も不要となる。 イ乙25カタログについて乙25カタログログの頒布された日付が不明であり,本件出願前に頒布されたことについては否認する。 ウ乙28公報及び乙29公報について乙28公報及び乙29公報には,本件特許発明の「製法を特定する構成要件」が記載されていない。 エ乙30公報について乙30公報には「耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製」である旨の記載はないし,その成形型(7)が裏返し脱型作業できる金属製の枠台へ取り付け使用される旨の記載もない。 オ旧ASスペーサー及びその製造工程について否認する。乙第3号証やその他の証拠には信用性がない。 被告は自社で枠台を製作できるのであり,合成樹脂製の成形キャビティにビス穴を自社で加工することもできる。したがって,平成14年ころ以降も鉄筋用スペーサーのすべての品番について,その成形キャビティと枠台に自社でビス穴を加工して鉄筋用スペーサーを製造することができたはずである。 カ乙36公報について乙36公報には,内型枠(1)が耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製であることや,外型枠(2)が金属製であること,内型枠(1)が裏返し叩打して脱型作業されることについての記載はない。 乙36公報に記載されているコンクリート製スペーサーは比較的低強度な立方形のコンクリートブロックであり,かつ土木分野ではなく,建築分野の工事現場で使われるものとして,その現場の残存コンクリートを天日干しにより養生するものにすぎない。そのため,本件特許発明の陥没数字(G)やその賦形用凸版(P)の開示はない。 キ乙38公報及び乙39公報について乙38公報第4図に示された文字や乙39公報第1図に示された文字は,本件特許発明のコンクリートかぶり厚さとなる寸法を簡略に示す陥没数字(G)の賦形用凸版(P)ではなく,その目的・用途が全く異なる。また,乙39公報第1図に示された文字は反転数字でもない。 本件特許発明における陥没数字(G)の賦形用凸版(P)は,鉄筋(A)のコンクリートかぶり厚さ(D1 (D2 (D3 (D4)となる )))寸法が互いに異なる2種以上であることとの関係上,成形キャビティ(C)におけるフラットな底面(20)の特定位置から複数として隆起されているのであり,このような構成までは乙38公報と乙39公報には記載されていない。 ク乙40公報について乙40考案はコンクリートブロックでなく合成樹脂製品である。 ケ乙41カタログについて乙41カタログが頒布された日付及びポリスペーサブロックの販売日は不明であり,乙41カタログが平成14年ころに頒布されたとの点は否認する。 また,同カタログに記載されたポリスペーサブロックはコンクリートブロックではなく合成樹脂製品である上,本件特許発明とは全く異なる輪郭形状を有している。 コ乙43カタログ及び乙44カタログについて乙43カタログ及び乙44カタログに記載されたバテー型スペーサー及びCTドーナツは,販売日が不明である上,たとえこれらがコンクリート製品であるとしても,その記載程度から,かぶり寸法を示す数字が一定な輪郭幅と深さの陥没数字であると認定することはできないし,その旨の記載はない。 3以上のとおり,被告の主張する各先行技術によっても,本件特許発明にお()ける必須不可欠な構成要件E,Fのうち,?@コンクリートブロック用成形キャビティ(C)は耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂製として,裏返し脱型作業できる金属製の枠台(F)へ取り付け使用されること,?A上記成形キャビティ(C)は長方形の4辺面に対応する平面形状の囲い壁面(19)を備え,フラットな底面(20)からは結束用金属線材受け入れ孔(3)の賦形用芯棒(21)のみならず,コンクリートかぶり厚さとなる寸法を簡略に示す陥没数字(G)の賦形用凸版(P)も複数の反転数字として,上向きに隆起されていること及び?B一定な輪郭幅(s)と深さ(d)の陥没数字(G)が複数として,コンクリートブロック(B)のフラットな片面(5)における各鉄筋係止用凹曲面(1)の底部とほぼ対応位置する個所へ,その隣り合う同士での直交する姿勢に賦形されていることは開示されていない。 よって,これらを有機的に組み合わせた構成の全体について,被告の提示した先行技術から当業者が容易に発明することはできず,被告の主張は失当である。 3争点2-1(本件登録意匠1とロ号意匠との類否)【原告の主張】1本件登録意匠1の構成態様は次のとおりである。 ()Aほぼ長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのコンクリートブロックから成る。 B上記長方形の長手中心線上に点在(偏心部)分布する合計2個(一対)の結束用金属線材受け入れ孔が,正背方向への貫通状態に形成されている。 C上記4辺面の角隅部は凸曲面に造形されている一方,その4辺面が鉄筋の係止用凹曲面として陥没されている。 Dその各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距離が,上記鉄筋の互いに異なる3種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定された鉄筋用スペーサーである。 G上記コンクリートブロックのフラットな片面(正面)における各鉄筋係止用凹曲面の底部とほぼ対応位置する個所に,上記鉄筋の互いに異なる3種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法が,そのミリメートル単位を省いた簡略な陥没数字として賦形されている。 2本件登録意匠1とロ号意匠との対比()ロ号意匠の構成態様は,別紙ロ号製品目録の第3項に記載のとおりである。 ロ号意匠の構成aないしd及びgは本件登録意匠1の構成態様AないしD及びGと類似し,特にロ号-3製品に係る意匠は本件登録意匠1と実質的に同一であるといえる程酷似しているから,ロ号意匠は全体的に本件登録意匠1と類似する。 【被告の主張】1本件登録意匠1の構成態様()本件登録意匠1は,原告が主張する構成態様AないしD及びGのほか,下記の構成態様HないしJも備える。 H上記4辺面の鉄筋の係止用凹曲面は,長手中心線を挟んで対向する2つの係止用凹曲面は対称形であるのに対して,長手中心線上で対向する他の2つの係止用凹曲面は非対称形である。 I上記陥没数字は,長手中心線を挟んで対向する位置にそれぞれ賦形された「110」の数字と,長手中心線上で対向する位置に賦形された「120」及び「130」の数字からなる。 J上記「120」及び「130」の陥没数字は,それぞれ対応する係止用凹曲面と結束用金属線材受け入れ孔との間に配置されている。 2本件登録意匠1の要部()ア本件登録意匠1において注視される部分本件登録意匠1に係る物品は鉄筋用スペーサーであり,その需要者は,建築・土木の施工業者である。また,鉄筋用スペーサーの用途・使用態様は,鉄筋係止用凹曲面を90度ずつ方向変換して,コンクリート構造物成形用の型枠パネルと接地させることにより,その鉄筋係止用凹曲面に係止された鉄筋のコンクリートかぶり厚さを所定の寸法に維持するというものである。 上記のような鉄筋用スペーサーの用途・使用態様によれば,鉄筋用スペーサーは様々な角度で型枠パネルに接地させて使用されるので,需要者は,購入に際して鉄筋用スペーサーの正面だけでなく,背面,側面を含む全体の形態を重視する。 したがって,本件登録意匠1に係る鉄筋用スペーサーにおいて,需要者が注視する部分は,正面,背面,側面を含む全体の形態である。 イ構成態様AないしD及びH乙28意匠の正面図,意匠公報808607の類似1(乙28の2)の正面図,意匠公報808607の類似3(乙28の3)の正面図,意匠公報808607の類似2(乙28の4)の正面図,乙31カタログの旧ASスペーサー「A8910 ,乙25カタログのセラミックスペーサーS 」H「SH-80×85×90×100」は,いずれも本件登録意匠1の構成態様AないしD及びHを有する。 よって,構成態様AないしD及びHは,鉄筋用スペーサーとしては極めてありふれた形態であるので,鉄筋用スペーサーの需要者の注意を惹き付ける部分ではなく,これらの構成態様は本件登録意匠1の要部ではない。 ウ構成態様G構成態様Gにおける「数字」は数を表す文字であり,コンクリートの(ア)かぶり厚さ寸法という情報の伝達にのみ用いられるものである。また,構成態様Gの具体的な数字である構成態様Iの「110「120 ,」,」「130」の各数字は,陥没してはいるものの,未だ模様に変化したとは到底認めることができない。したがって,構成態様Gにおける「かぶり厚さの寸法」を示した数字は意匠を構成しない。 また,構成態様Gにおける陥没数字の配置は,鉄筋用スペーサーが長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される関係で,使用状態において「陥没数字」を読みやすくするためのものであり,模様化のための配置ではない。 よって,陥没数字の配置を考慮しても,構成態様Gは意匠を構成しない。 仮に構成態様Gが意匠を構成するとしても,正面における各鉄筋係止(イ)用凹曲面の底部と対応位置する個所に「かぶり厚さの寸法」に対応した「数字」を付す点は,乙25カタログのセラミックスペーサーSH「SH80×85×90×100 ,C.T.NSKスペーサー及び乙44 」カタログのCTトリプルドーナツスペーサにより公知であるから,このような数字を鉄筋用スペーサーに付したとしても,需要者の注意が惹き付けられることはない。 よって,構成態様Gのうち,正面における各鉄筋係止用凹曲面の底部と対応位置する個所に 「かぶり厚さの寸法」に対応した「数字」を付 ,する点は本件登録意匠1の要部ではない。 仮に構成態様Gが意匠を構成するとしても 「かぶり厚さの寸法」に(ウ) ,対応した「数字」を陥没させる点はC.T.NSKスペーサー,乙29公報の第2図,乙40公報の図1,乙41カタログに掲載のポリスペーサブロック,乙43カタログに掲載のバテー型スペーサー及び乙43カタログに掲載のCTドーナツにより公知であるから,このような陥没数字を鉄筋用スペーサーに付したとしても需要者の注意が惹き付けられることはない。 よって,構成態様Gのうち 「かぶり厚さの寸法」に対応した「数 ,字」を陥没させる点も本件登録意匠1の要部ではない。 エ構成態様I及びJ構成態様Gが意匠を構成しない場合,構成態様I及びJは存在しない。 また,構成態様Gが本件登録意匠1の要部ではない場合,構成態様I及びJも要部とならない。 オ以上のとおり,本件登録意匠1の構成態様AないしD及びHは,いずれもありふれた形態であり,また,構成態様Gは意匠を構成しない。したがって,本件登録意匠1には要部はない。 仮に構成態様Gが本件登録意匠1の要部である場合には,構成態様IとJも同様に要部となり,陥没数字が長手中心線を挟んで対向する位置にそれぞれ賦形された「110」の数字と,長手中心線上で対向する位置に賦形された「120」及び「130」の数字からなり(構成態様I ,かつ)上記「120」及び「130」の陥没数字は,それぞれ対応する係止用凹曲面と結束用金属線材受け入れ孔との間に配置されている(構成態様J)点も要部となる。 3本件登録意匠1とロ号意匠との類否()アロ号-1製品ロ号-1製品に係る意匠(以下「ロ号-1意匠」という )の構成態様 。 は,別紙ロ号-1製品の構成(被告)のとおりである。 前記 2 のとおり,本件登録意匠1に要部はないので,本件登録意匠1と()ロ号-1意匠とは非類似である。 仮に構成態様G,I及びJが本件登録意匠1の要部であるとしても,これら構成態様とロ号-1意匠の構成態様g,i及びjとを比較すると,特に本件登録意匠1の構成態様Iが「上記陥没数字は,長手中心線を挟んで対向する位置にそれぞれ賦形された『110』の数字と,長手中心線上で対向する位置に賦形された『120』及び『130』の数字からなる」のに対して,ロ号-1意匠の構成態様iは「上記陥没数字は,長手中心線を挟んで対向する位置に賦形された『60』と『65』の数字と,長手中心線上で対向する位置にそれぞれ賦形された『70』の数字とからなる」点で,両者は相違する。 したがって,本件登録意匠1とロ号-1意匠とは,意匠の要部が相違する。また,ロ号-1意匠は,その4辺面の鉄筋の係止用凹曲面が長手中心線を挟んで対向する2つの係止用凹曲面は非対称形である(構成態様h)のに対し,本件登録意匠1では長手中心線上で対向する他の2つの係止用凹曲面は対称形である(構成態様H)点で相違する。 よって,本件登録意匠1とロ号-1意匠とは非類似である。 イロ号-2製品ロ号-2製品に係る意匠(以下「ロ号-2意匠」という )の構成態様 。 は,別紙ロ号-2製品の構成(被告)のとおりである。 前記 2 のとおり,本件登録意匠1に要部はないので,本件登録意匠1と()ロ号-2意匠とは非類似である。 仮に構成態様G,I及びJが本件登録意匠1の要部であるとしても,これら構成態様とロ号-2意匠の構成態様g,i及びjとを比較すると,特に本件登録意匠1の構成態様Iが「上記陥没数字は,長手中心線を挟んで対向する位置にそれぞれ賦形された『110』の数字と,長手中心線上で対向する位置に賦形された『120』及び『130』の数字からなる」のに対して,ロ号-2意匠の構成態様iは「上記陥没数字は,長手中心線を挟んで対向する位置にそれぞれ賦形された『80』数字と,長手中心線上で対向する位置に賦形された『90』と『100』の数字とからなる」点で,両者は相違する。 よって,本件登録意匠1とロ号-2意匠とは,意匠の要部が相違するので非類似である。 ウロ号-3製品ロ号-3製品に係る意匠(以下「ロ号-3意匠」という )の構成態様 。 は,別紙ロ号-3製品の構成(被告)のとおりである。 前記 2 のとおり,本件登録意匠1に要部はないので,本件登録意匠1と()ロ号-3意匠とは非類似である。 仮に構成態様G,I及びJが本件登録意匠1の要部であるとしても,これら構成態様とロ号-3意匠の構成態様g,i及びjとを比較すると,特に本件登録意匠1の構成態様Jが「上記『120』及び『130』の陥没数字は,それぞれ対応する係止用凹曲面と結束用金属線材受け入れ孔との間に配置されている」のに対して,ロ号-3意匠の構成態様jは「上記長手中心線上で対向する位置に賦形された『120』と『130』の数字は,『130』の数字が,対応する係止用凹曲面と結束用金属線材受け入れ孔との間に配置されているのに対して 『120』の数字は,結束用金属線 ,材受け入れ孔よりも内側(コンクリートブロックの中心側寄り)に配置されている」点で,両者は相違する。 よって,本件登録意匠1とロ号-3意匠とは,意匠の要部が相違するので非類似である。 エ以上より,本件登録意匠1とロ号意匠は,いずれも非類似である。 【原告の反論 (本件登録意匠1の要部について) 】1本件登録意匠1の構成態様Gの「数字」は,専ら情報伝達のためにだけ使()用されているものではなく,鉄筋のコンクリートかぶり厚さとなる寸法を,ミリメートル単位を省略して表示する識別機能を果している。また,その数字はコンクリートブロックのフラットな表面から陥没する状態に賦形されているため,立体形状(凹型)として外観に表われ,陥没した凹溝の稜線が数字の輪郭を形作っており,しかも,その数字が各鉄筋係止用凹曲面の底部とほぼ対応する個所に賦形されているから,その数字の配置全体(レイアウト)も外観に表出する模様として,意匠の構成要素や類否判断要素になり得る要部となる。 2乙25カタログのセラミックスペーサーの数字はゴム印の押捺による数字 ()であり陥没していないし,C.T.NSKスペーサーは若干陥没数字に見えるが,本件意匠登録1の出願前に販売されたものではない。乙44カタログのCTトリプルドーナツスペーサーは本件登録意匠1と全く異なる全体形状であり,その数字も表面から隆起する凸型である。また,乙29公報のスペースブロックは本件登録意匠1と全く異なる全体形状であり,乙40公報のスペーサブロックは合成樹脂製品である上,その識別表示は陥没していない。 乙41カタログのブロックも合成樹脂製品である。乙43カタログのバテー型スペーサーは陥没数字ではないし,バテー型スペーサーとCTドーナツは本件登録意匠1の出願前に販売されたものではない。 よって,これら先行意匠は,被告主張にかかる構成態様Gが本件登録意匠1の要部ではないことの根拠たり得ない。 3また,本件登録意匠1の陥没数字を「110「120「130」と() 」,」,いう具体的な値のそれのみに限定解釈しなければならない合理的な理由はない。 4よって,本件登録意匠1の構成態様Gのみならず,被告がいう構成態様H()も具備する意匠であれば,その陥没数字の具体的な値だけが異なるとしても,本件登録意匠1と類似する意匠というべきであるから,ロ号意匠はいずれも本件登録意匠1に類似する。 4争点2-2(本件意匠登録1に係る無効理由の有無)【被告の主張】本件意匠登録1は,以下のとおり意匠法3条1項1号又は同条2項の規定に違反して登録されたものであり,意匠登録無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,意匠法41条(特許法104条の3第1項)により,本件意匠権1を行使することはできない。 1無効理由1()ア本件意匠登録1に係る出願日本件意匠登録1は,特願2005-181355号の出願変更に係るものであるが,本件意匠登録1の出願に係る意匠と,同特許出願の願書に最初に添付された明細書及び図面(乙69)に表された意匠とは実質的に同一でない。 すなわち,乙第69号証のいずれの図面にも,本件登録意匠1のA-A線断面図が表されていないところ,乙第69号証の図3,図9ないし図12,図17,図18及びその明細書の段落【0048】を参酌すると,正背方向へ貫通状態に形成される金属線材受け入れ孔は,図3に明示されているのと同様に,陥没数字が賦形されている正面から背面にかけて徐々にその径が小さくなる態様と解釈できる。これに対して,本件登録意匠1のA-A線断面図に現れる金属線材受け入れ孔は,正面から背面にかけて径が一定であるので,本件意匠登録出願に係る意匠は,同特許出願の明細書及び図面に表された意匠と実質的に同一ではない。 したがって,本件意匠登録1の出願日は遡及せず,現実の出願日である平成17年6月23日とされるべきである。 イ引用意匠及び本件登録意匠1との対比平成17年5月9日に発行された意匠登録第1238637号公報(甲6:以下「引用意匠1」という )の参考図 3 は,本件登録意匠1と酷似 。 ()している。 ウよって,本件意匠登録1は,意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 2無効理由2()ア引用意匠本件意匠登録1の出願前に公然知られた意匠である旧ASスペーサー(乙31)の品名「A8910 (以下「引用意匠2」という )の構成 」 。 態様は別紙本件意匠登録1に係る無効理由2の第1項に記載のとおりである。 また,先行周辺意匠は同別紙第2項に記載のとおりである。 イ本件登録意匠1と引用意匠2との対比意匠に係る物品は,両意匠とも「鉄筋用スペーサー」であり,同一の物品である。 また,本件登録意匠1の構成態様AないしD及びHはそれぞれ,引用意匠2の構成態様a2ないしd2及びh2と共通している。これに対し,引用意匠2は,コンクリートブロックのフラットな片面(正面)に陥没数字が一切賦形されておらず,本件登録意匠1の構成態様G,I及びJを備えていない点において差異が認められる。 ウ本件登録意匠1と引用意匠2との類否両意匠は意匠に係る物品が共通し,形態についても,共通点が類否判断に大きな影響を及ぼすのに対し,差異点は意匠の類否判断に影響を及ぼさないので,両意匠の共通感を凌駕するものとはいえないから,本件登録意匠1は引用意匠2に類似する。 エよって,本件意匠登録1は,意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 3無効理由3()ア引用意匠本件意匠登録1の出願前に公然知られた意匠である乙25カタログに掲載されたセラミックスペーサーSHの品名「SH-80×85×90×100 (以下「引用意匠3」という )の構成態様は,別紙本件意匠登録 」 。 1に係る無効理由3の第1項に記載のとおりである。 また,先行周辺意匠は同別紙第2項に記載のとおりである。 イ本件登録意匠1と引用意匠3との対比意匠に係る物品は,両意匠とも「鉄筋用スペーサー」に関するもので (ア)あり,同一の物品である。 両意匠の構成態様Aとa3について,ほぼ長方形の4辺面が90度ず(イ)つの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのブロックからなる点で共通しているものの,本件登録意匠1の構成態様Aはコンクリートブロックであるのに対し引用意匠3の構成態様a3はセラミックブロックである点で差異がある。 本件登録意匠1の構成態様B及びCはそれぞれ,引用意匠3の構成態(ウ)様b3及びc3と共通している。 両意匠の構成態様Dとd3について,各鉄筋係止用凹曲面の底部から(エ)これと向かい合う1辺面までの距離が,上記鉄筋の互いに異なる複数のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定されている点で共通しているものの,コンクリートかぶり厚さとなる寸法について本件登録意匠1の構成態様Dは3種に設定されているのに対し,引用意匠3の構成態様d3は4種に設定されている点で差異がある。 両意匠の構成態様Gとg3について,コンクリートブロックのフラッ(オ)トな片面(正面)における各鉄筋係止用凹曲面の底部とほぼ対応する個所に 「かぶり厚さの寸法」に対応した「数字」を付す点で共通してい ,るものの,本件登録意匠1の構成態様Gは3種の寸法の数字であるのに対し,引用意匠3の構成態様g3は4種の寸法の数字である点で差異があり,また,構成態様Gは数字が陥没数字で賦形されているのに対し,構成態様g3は数字が陥没数字ではなく印字で賦形されている点で差異がある。 両意匠の構成態様Hとh3について,長手中心線上で対向する他の2(カ)つの係止用凹曲面は非対称形である点で共通しているものの,本件登録意匠1の構成態様Hは長手中心線を挟んで対向する2つの係止用凹曲面は対称形であるのに対し,引用意匠3の構成態様h3は長手中心線を挟んで対向する2つの係止用凹曲面は非対称形である点で差異がある。 両意匠の構成態様Iとi3について,本件登録意匠1の構成態様Iは(キ)長手中心線を挟んで対向する位置にそれぞれ賦形される数字が「110」であり,長手中心線上で対向する位置に賦形される数字が「120」及び「130」であるのに対し,引用意匠3の構成態様i3は長手中心線を挟んで対向する位置に賦形される数字が「80」及び「85」であり,長手中心線上で対向する位置に賦形される数字が「90」及び「100」である点で差異がある。 両意匠の構成態様Jとj3について,長手中心線上で対向する位置に(ク)賦形されている数字が,それぞれ対応する係止用凹曲面と結束用金属線材受け入れ孔との間に配置されている点で共通しているものの,本件登録意匠1の構成態様Jでは,長手中心線上で対向する位置に賦形されている数字自体が構成態様Jでは「120」及び「130」であるのに対し,引用意匠3の構成態様j3では「90」及び「100」である点で差異がある。 ウ本件登録意匠1と引用意匠3との類否上記のように,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,形態については,「ほぼ長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのブロックから成り,上記4辺面の角隅部は凸曲面に造形されている一方,その4辺面が鉄筋の係止用凹曲面として陥没形成されており,その各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの距離が,上記鉄筋の互いに異なる複数のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定されている」という当該物品の正面,背面及び四側面の全体に現れる基本的骨格的な構成態様の共通点が類否判断に大きな影響を及ぼす。これに対し,構成態様G,I,Jに係る各差異点はいずれも微弱であって,両意匠の共通感を凌駕するものとはいえない。 よって,本件登録意匠1は引用意匠3に類似する。 エ以上より,本件意匠登録1は,意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 4無効理由4()ア引用意匠本件意匠登録1の出願前に公然知られた意匠であるC.T.NSKスペーサーの品名「H3045 (以下「引用意匠4」という )の構成態様 」 。 は別紙本件意匠登録に係る無効理由4の第1項に記載のとおりである。 また,先行周辺意匠は同別紙第2項に記載のとおりである。 イ本件登録意匠1と引用意匠4との対比意匠に係る物品は,両意匠とも「鉄筋用スペーサー」に関するもので(ア)あり,同一の物品である。 本件登録意匠1の構成態様A及びCはそれぞれ,引用意匠4の構成態(イ)様a4及びc4と共通している。 引用意匠4は,本件登録意匠1の構成態様Bを備えていない点で差異(ウ)がある。 両意匠の構成態様Dとd4について,各鉄筋係止用凹曲面の底部から(エ)これと向かい合う1辺面までの距離が,上記鉄筋の互いに異なるコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定されている点で共通しているものの,本件登録意匠1の構成態様Dは3種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定されているのに対し,引用意匠4の構成態様d4は4種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定されている点で差異がある。 両意匠の構成態様Gとg4について,コンクリートブロックのフラッ(オ)トな片面(正面)における各鉄筋係止用凹曲面の底部とほぼ対応する個所に 「かぶり厚さの寸法」に対応した「数字」を付す点及び数字が陥 ,没数字で賦形されている点で共通しているものの,本件登録意匠1の構成態様Gは3種の寸法の数字であるのに対し,引用意匠4の構成態様g4は4種の寸法の数字である点で差異がある。 両意匠の構成態様Hとh4について,長手中心線上で対向する他の2(カ)つの係止用凹曲面は非対称形である点で共通しているものの,本件登録意匠1の構成態様Hは長手中心線を挟んで対向する2つの係止用凹曲面は対称形であるのに対し,引用意匠4の構成態様h4は長手中心線を挟んで対向する2つの係止用凹曲面は非対称形である点で差異がある。 両意匠の構成態様Iとi4について,本件登録意匠1の構成態様Iは(キ)長手中心線を挟んで対向する位置にそれぞれ賦形される数字が「110」であり,長手中心線上で対向する位置に賦形される数字が「120」及び「130」であるのに対し,引用意匠4の構成態様i4は長手中心線を挟んで対向する位置に賦形される数字が「40」及び「45」であり,長手中心線上で対向する位置に賦形される数字が「30」及び「35」である点で差異がある。 両意匠の構成態様Jとj4について,長手中心線上で対向する位置に(ク)賦形されている陥没数字の,係止用凹曲面に対する位置関係又は意匠全体における配置に関しては共通しているものの,引用意匠4は「結束用金属線材受け入れ孔」を備えていないので,構成態様j4の陥没数字「40」及び「45」が係止用凹曲面と結束用金属線材受け入れ孔との間に配置されているとはいえない点で差異がある。 ウ本件登録意匠1と引用意匠4との類否上記のように,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,形態については,「ほぼ長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのコンクリートブロックから成り,上記4辺面の角隅部は凸曲面に造形されている一方,その4辺面が鉄筋の係止用凹曲面として陥没形成されており,その各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの距離が,上記鉄筋の互いに異なる複数のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定されている」という基本的骨格的な構成態様の共通点が類否判断に大きな影響を及ぼす。そして,構成態様G,I及びJに対応する各差異点はいずれも微弱であり,両意匠の共通感を凌駕するものとはいえない。 よって,本件登録意匠1は引用意匠4に類似する。 エ以上より,本件登録意匠1は,意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 5無効理由5()ア引用意匠本件意匠登録1の出願前に公然知られた意匠であるC.T.NSKスペーサーの品名「H7010 (以下「引用意匠5」という )の構成態様 」 。 は別紙本件意匠登録1に係る無効理由5の第1項に記載のとおりである。 また,先行周辺意匠は同別紙第2項に記載のとおりである。 イ本件登録意匠1と引用意匠5との対比意匠に係る物品は,両意匠とも「鉄筋用スペーサー」に関するもので(ア)あり,同一の物品である。 引用意匠5の構成態様a5,c5,d5,g5及びh5はそれぞれ,(イ)引用意匠4の構成態様a4,c4,d4,g4及びh4と同じであり,引用意匠5の構成態様i5及びj5と,引用意匠4の構成態様i4及びj4とは,コンクリートかぶり厚さを示す数字の具体的な値を除いて共通している。 よって,本件登録意匠1と引用意匠4とが類似するのと同様,本件登(ウ)録意匠1は引用意匠5とも類似する。 ウ以上より,本件登録意匠1は,意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 6無効理由6()ア引用意匠引用意匠3の構成態様は別紙本件意匠登録1に係る無効理由3の第1項に記載のとおりである。 イ先行意匠コンクリートブロックからなる点(構成態様A)については,引用意(ア)匠2及び先行意匠(別紙本件登録意匠にかかる無効理由1及び2の各第2項記載の?@〜?H,?K〜?M,?Q,?R,○〜○,○及び○)のとおり,本23273032件意匠登録1の出願前より広く知られていた。 鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距離(イ)が,鉄筋の互いに異なる3種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定されている点(構成態様D)は,引用意匠2及び先行意匠(同?@〜?E)に見られるように,本件意匠登録1の出願前より広く知られていた。 4辺面の鉄筋の係止用凹曲面は,長手中心線を挟んで対向する2つの(ウ)係止用凹曲面は対称形であるのに対して,長手中心線上で対向する他の2つの係止用凹曲面は非対称形である点(構成態様H)は,引用意匠2及び先行意匠(同?C〜?E)に見られるように,本件登録意匠1の出願前よりこの意匠の属する物品分野において広く知られていた。 「かぶり厚さの寸法」に対応した「数字」が陥没数字で賦形されてい(エ)る点(構成態様G)については,先行意匠(?K〜?M,?R〜○)のとおり,26本件意匠登録1の出願前より広く知られていた。 ウ容易創作性鉄筋用スペーサーをコンクリートブロックで構成する態様は本件登録(ア)意匠1の出願前から極めて周知であり,セラミックブロックをコンクリートブロックに置き換えることは,当業者にとってありふれた手法である。 コンクリートかぶり厚さとなる寸法を3種に設定している態様は周知(イ)であるとともに,上記4辺面の鉄筋の係止用凹曲面は,長手中心線を挟んで対向する2つの係止用凹曲面は対称形である態様も周知である。さらに,コンクリートかぶり厚さとなる寸法を3種にするか4種にするかは,当業者が適宜に選択することができたことであり,コンクリートかぶり厚さとなる寸法を4種から3種に変更することは当業者にとってありふれた手法である。そして,このような変更に伴って,長手中心線を挟んで対向する2つの係止用凹曲面を,対称形から非対称形に変更することも,当業者にとってありふれた手法である。 「かぶり厚さの寸法」に対応した「数字」を付す点及び「かぶり厚さ(ウ)の寸法」に対応した「数字」を陥没させる点は,本件登録意匠1の出願前から周知である。したがって,表面に賦形する数字を印字から陥没数字に変更することは,当業者にとってありふれた手法である。 寸法や距離に対応して表示する数字の具体的な値を変更することは,(エ)この種の意匠の属する物品分野においてのみならず,普通に行われることである。したがって,コンクリートのかぶり厚さに応じて賦形する数字の具体的な値を選択変更することは,極めてありふれた手法である。 以上より,本件登録意匠1は,その出願前に当業者が公然知られた形(オ)状,模様,若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたものである。 エよって,本件意匠登録1は,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである。 【原告の主張】いずれも否認ないし争う。 前記3の【原告の反論】のとおり,本件登録意匠1の構成態様Gは類否判断の要素になり得る要部である。 よって,被告が主張する引用意匠はいずれも本件登録意匠1とは類似しないし,容易に創作できるものでもない。 5争点2-3(本件意匠権1に対する自由意匠の抗弁)【被告の主張の骨子】ロ号製品は,引用意匠2(乙31カタログに記載された品名「A8910 )と実質的に同一の意匠であるので,ロ号製品の実施に対しては,本件意 」匠権1は及ばない。 (詳細は平成21年1月23日付け被告第9準備書面58頁以下のとおり )。 【原告の認否】否認ないし争う。 6争点3-1(本件登録意匠2とイ号金型との類否)【原告の主張】1本件登録意匠2の構成態様()本件登録意匠2は,長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのコンクリートブロックから成る鉄筋用スペーサーの成形金型であり,次の構成態様を具備している。 ?T鉄筋用スペーサーの2個取りとして,合成樹脂から鉄筋用スペーサーと対応する大きさ・形状に一体成形された一対の胴体(キャビティ)を有している。 ?Uその胴体(キャビティ)の各個は鉄筋用スペーサーと対応する平面形状(凹凸曲面)の囲い壁面と,フラットな底面とから断面ほぼU字型に造形されており,その内部へ生コンクリートを充填するようになっている。 ?Vしかも,上記胴体(キャビティ)におけるフラットな底面のほぼ中心部からは,鉄筋用スペーサーの結束用貫通孔を賦形するための芯棒が,上向き一体的に垂立されている。 ?Wまた,同じくフラットな底面における上記芯棒の周辺部からは,コンクリートかぶり代のミリメートル単位を省いた簡略な陥没数字を賦形するための凸版が,反転数字として隆起されている。その数字は「35」と「40」との異なる2種になっている。 ?Xさらに,上記胴体(キャビティ)を形作っている囲い壁面の上縁部からは,一対の平行な取付座が水平に張り出しており,その両取付座を別途準備された枠台へ取り付け使用して,上記胴体(キャビティ)の内部へ生コンクリートを充填することにより,鉄筋用スペーサーを成形するようになっている。 2本件登録意匠2とイ号金型意匠との対比()イ号金型意匠の構成は別紙イ号金型目録の第2項に記載のとおりである。 本件登録意匠2とイ号金型意匠とを対比すると,イ号金型意匠の構成態様,,,及びは本件登録意匠2の構成態様?T,?U,?V,?W及び?Xと ??????????類似し,特にイ号-3金型の意匠は本件登録意匠2と実質的に同一といえる程酷似しているから,イ号金型意匠はいずれも本件登録意匠2と類似する。 【被告の主張】1本件登録意匠2の構成態様()本件登録意匠2の構成態様は原告が主張する構成態様?Tないし?Xのほかに,以下の構成態様?Yないし?\も備える。 ?Y上記胴体(キャビティ)の囲い壁面は,対向する囲い壁面がそれぞれ同形の凹凸曲面に形成されており,隣接する囲い壁面との関係では異なる形の凹凸曲面に形成されている。 ?Z側面から見て,上記取付座は,階段状に水平に張り出しており,取付座の上側に位置する金型部位は,取付座の下側に位置する金型部位よりも幅広に形成されている。 ?[平面から見て,一対の胴体(キャビティ)の短辺が金型の長辺(取付座)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の長辺が金型の短辺に沿って配置されている。 ?\底面図に示された胴体(キャビティ)の四隅は,丸まった形状になっている。 2本件登録意匠2の要部()ア需要者が注視する部分本件登録意匠2に係る物品は鉄筋用スペーサーの成形金型であり,その需要者たる鉄筋用スペーサーの製造業者は,成形金型の胴体(キャビティ)の形態だけでなく,成形金型を枠台に並列配置させるのに適した形状か否か,生コンクリートを胴体に流し込みやすい形状か否か,並列配置させた成形金型と枠台との間に生コンクリート(ノロ)が入りやすいか否か等を重視して購入する。そして,成形金型を枠台に並列配置させるのに適した形状か否かは,成形金型の張出部の形態に関わる。 したがって,成形金型の張出部の形態がよく現れる成形金型の上方ないし斜め上方及び側方から見える形態が,需要者が注視する部分である。 イ本件登録意匠2の構成態様?T,?U,?V,?X及び?Y旧ASスペーサーA3035,同A3540,同A4050の成形金(ア)型(旧成形金型)は,本件登録意匠2の構成態様?T,?U,?V,?X及び?Yと共通する以下の各構成態様を有する。 a鉄筋用スペーサーの2個取りとして,合成樹脂から鉄筋用スペーサーと対応する大きさ・形状に一体成形された一対の胴体(キャビティ)を有する(構成態様Iに対応する形態 。)bその胴体(キャビティ)の各個は鉄筋用スペーサーと対応する平形状(凹凸曲面)の囲い壁面と,フラットな底面とから断面ほぼU字型に造形されており,その内部へ生コンクリートを充填するようになっている(構成態様?Uに対応する形態 。)cしかも,上記胴体(キャビティ)におけるフラットな底面のほぼ中心部からは,鉄筋用スペーサーの結束用貫通孔を賦形するための心棒が,上向き一体に垂立されている(構成態様?Vに対応する形態 。)dさらに,上記胴体(キャビティ)を形作っている囲い壁面の上縁部からは,一対の平行な取付座が水平に張り出しており,その両取付座を別途準備された枠台へ取り付け使用して,上記胴体(キャビティ)の内部へ生コンクリートを充填することにより,鉄筋用スペーサーを成形するようになっている(構成態様?Xに対応する形態 。)e上記胴体(キャビティ)の囲い壁面は,対向する囲い壁面がそれぞれ同形の凹凸曲面に形成されており,隣接する囲い壁面との関係では異なる形の凹凸曲面に形成されている(構成態様?Xに対応する形態 。)被告は,旧ASスペーサーA3035,A3540,A4050の成(イ)形キャビティ(旧成形金型)を枠台にビス止め固定して使用していたが,平成14年8月ころから枠台に固定せずに載せて使用する新しい製造方法を採用した。被告は,それまで使用していた旧成形金型を大きな袋に収納し,5,6年前ころから被告所在地のすぐ裏手にある資材置場の入口付近に放置していた。しかし,その袋には封がされておらず,また長期間にわたって屋外に放置されたために老朽化し,多くの旧成形金型が袋からこぼれ出て資材置場に散乱している。 したがって,旧成形金型は,本件登録意匠2の出願前に公知である。 よって,本件登録意匠2の構成態様?T,?U,?V,?X及び?Yは,本件意(ウ)匠登録2の出願前に公然知られていたものであるから,創作性の低いものであり,本件登録意匠2の要部とは成り得ない。 ウ構成態様?U,?V及び?Y本件登録意匠2の構成態様?U,?V及び?Yは,生コンクリートが充填される胴体(キャビティ)を特徴付ける形態であるところ,これらの構成態様で特徴付けられる胴体(キャビティ)で成形される鉄筋用スペーサーは,意匠第739567号公報(乙65:以下「乙65公報」という )の正。 面図,乙25カタログのセラミックスペーサーSH(SH-25×30,SH-30×35 ,乙31カタログの旧ASスペーサー(A3035, )A3540)のとおり周知である。また,生コンクリートを成形型に流し込んで鉄筋用スペーサーを製造する点も周知である(乙3,36,37,66 。)そうすると,上記周知の鉄筋用スペーサーを成形するための成形金型の胴体(キャビティ)を特徴付ける形態である本件登録意匠2の構成態様?U,?V及び?Yは,その成形品である鉄筋用スペーサーの形態によって必然的に定まるものであり,創作的要素が入り込む余地はない。 したがって,公知の鉄筋用スペーサーを参酌すれば,構成態様?U,?V,?Yは創作性の低いものであり,本件登録意匠2の要部とは成り得ない。 エ構成態様?X構成態様?Xについて,乙36公報の第1図のとおり,鉄筋用スペーサーの成形金型を枠台に取り付けて使用する製法において,成形金型に取付座(乙36公報では 「鍔部1b )を設ける点は,本件意匠登録2の出願 ,」前から公知である。 したがって,構成態様?Xは創作性の低い部分であり,本件登録意匠2の要部とは成り得ない。 オ構成態様?W鉄筋用スペーサーの結束用貫通孔の周辺部に 「かぶり厚さの寸法」に ,対応した「数字」を付す点は公知である(乙25,19〜21,44 。)また 「かぶり厚さの寸法」に対応した「数字」を陥没させる点も公知で ,ある(乙19〜21,29,40,41,43 。)そうすると,生コンクリートを成形金型に流し込んで鉄筋用スペーサーを製造する場合に,その鉄筋用スペーサーに公知の「かぶり厚さ寸法」に対応する「陥没数字」を賦形するためには,成形金型の底面に陥没数字を反転させた凸版を隆起させることになるのは必然である。 したがって,本件登録意匠2の構成態様?Wは,創作性の低い部分であり,本件登録意匠2の要部とは成り得ない。 カ以上より,本件登録意匠2においては構成態様?Z及び?[が要部である。 特に,構成態様?Zは,公知意匠には認められないので新規な創作部分である。 3イ号金型意匠との類否()アイ号金型意匠の構成態様イ号金型意匠の構成態様は,別紙イ号-2金型の構成(被告)ないし別紙イ号-6金型の構成(被告)に記載のとおりである。 イ本件登録意匠2の構成態様?Zとイ号金型意匠の各構成態様viiとの対比本件登録意匠2の要部である構成態様?Zとイ号金型意匠の構成態様viiとを比較すると,構成態様?Zが「側面から見て,上記取付座は,階段状に水平に張り出しており,取付座の上側に位置する金型部位は,取付座の下側に位置する金型部位よりも幅広に形成されている」のに対して,構成態, 様viiは「側面から見て,胴体(キャビティ)の上面から張出部に亘って面一に形成されて」おり,両意匠は要部において相違する。 その結果,本件登録意匠2は取付座が階段状になっているので,全体としてデコボコした角張った印象を与えるのに対して,イ号金型意匠は,全体として平坦でスッキリした印象を与えるものであり,両意匠は需要者に与える美感が相違する。 ウ本件登録意匠2の構成態様?[とイ号金型意匠の構成態様viiiとの対比本件登録意匠2の要部である構成態様?[とイ号金型意匠の対応する構成態様viiiとを比較すると,構成態様?[が「平面から見て,一対の胴体(キャビティ)の短辺が金型の長辺(張出部)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の長辺が金型の短辺に沿って配置されている」のに対して,構成態様viiiは「平面から見て,一対の胴体(キャビティ)の各長辺が金型の長辺(張出部)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の各短辺が金型の短辺に沿って配置されて」おり,両意匠は要部において相違する。 その結果,本件登録意匠2の成形金型がずんぐりした印象を需要者に与えるのに対して,イ号金型意匠はスリムな印象を需要者に与えるものであり,両意匠は需要者に与える美感が相違する。 エその他の相違点本件登録意匠2とイ号金型意匠との間には,上記のほか以下の相違点がある。 イ号-2金型(ア)イ号-2金型は陥没数字を賦形するための凸版の数字が「30」と「35」であるので,本件登録意匠2の構成態様?Wと異なる。 イ号-2金型は金型の上面から水平に張り出した張出部を枠台に固定せずに載せて使用するものであるので,本件登録意匠2の構成態様?Xと異なる。 イ号-2金型は底面図に示された胴体(キャビティ)の四隅がやや角ばった形状になっているので,本件登録意匠2の構成態様?\と異なる。 イ号-3金型(イ)イ号-3金型は本件登録意匠2の構成態様?X及び?\といずれも異なる。 その理由はイ号-2金型と同じである。 イ号-4金型 (ウ)イ号-4金型は陥没数字を賦形するための凸版の数字が「40」と「45」と「50」であるので,本件登録意匠2の構成態様?Wと異なる。 イ号-4金型は胴体(キャビティ)の対向している長辺の囲い壁面は非対称の凹凸曲面に形成されているので,本件登録意匠2の構成態様?Yと異なる。 イ号-4金型は本件登録意匠2の構成態様?X及び?\といずれも異なる。 その理由はイ号-2金型と同じである。 イ号-5金型(エ)イ号-5金型は陥没数字を賦形するための凸版の数字が「50」と「55」と「60」であるので,本件登録意匠2の構成態様?Wと異なる。 イ号-5金型は本件登録意匠2の構成態様?X及び?Yといずれも異なる。 その理由はイ号-2金型及びイ号-4金型と同じである。 オ以上より,本件登録意匠2とイ号金型意匠には,各々要部において相違点があり,需要者に与える美感が相違するので,本件登録意匠2とイ号金型意匠はいずれも類似しない。 【原告の反論】1本件登録意匠2の要部について()ア需要者が注視する部分について被告は,ノロが入りやすいか否かという点が需要者に注視されると主張するが,鉄筋用スペーサーを賦形するキャビティ(胴体)から溢出した余剰分のノロが重要視されることはない。生コンクリートをキャビティに充填する金型である以上,そのノロが金型の外部周辺に付着することは当然の状況であり,予め想定されていることである。 鉄筋用スペーサーは鉄筋のコンクリートかぶり厚さ寸法を規定する製品であることの本質上,その寸法精度が最も重要視される。そして,キャビティ(胴体)の開口面(上面)が生コンクリートの余剰分をヘラや左官コテなどにより掻き取り除去できる定規面として機能しなければ,芯棒による結束用貫通孔も賦形することができなくなるため,また芯棒を折損してしまうおそれもあるため,その定規面になることが最も重要である。 イ本件登録意匠2の構成態様?T,?U,?V ,?X及び?Yについて旧成形金型が公知であったことは否認する。 単に資材置場に放置していたことをもって,公然使用していたとはいえない。 ウ構成態様?U,?V及び?Wについて被告の主張は,本件登録意匠2の構成態様のうち,その1個の胴体(キャビティ)の内部形状(鉄筋用スペーサーの輪郭形状)に限っての主張にとどまる。胴体(キャビティ)には外部形状もあり,これは底面図にいわば2個取りとして連続した縁取り状態にある。また,内部形状を規定する肉厚が均一である場合のみならず,不均一である場合も考えられるため,創作的要素の入る余地は幾つもあり得るのであり,鉄筋用スペーサーの輪郭形状から一義的に決まるものではない。 エ構成態様?Xについて本件登録意匠2のような2個取り成形金型の長辺だけから取付座(張出部)の一対を平行に張り出した基本的な形態は,乙36公報の鍔部(1b)と全く異なり,公知であるとはいえない。乙36公報の内型枠(1)は,その下面(底面)の形状としても本件登録意匠2と全く異なっている。 オ構成態様?Yについて乙25カタログのセラミックスペーサーSHは,セラミック素材の長尺品を切断し焼成することにより作成されるものであり,数字をゴム印などによって押捺したものであるにすぎない。また,乙28公報や乙65公報に開示の鉄筋用スペーサーも,長尺な押出成形品から切断されたものであるため,陥没数字を賦形することができない。 本件登録意匠2の構成態様?Yのように,凸版が2個取りとして並列する胴体(キャビティ)の底面から内向きに隆起したものは公知ではなく,本件登録意匠2の要部をなす。 2本件登録意匠2とイ号金型意匠との類否について()本件登録意匠2の取付座は,イ号金型意匠の張出部と同じく胴体(キャビティ)の長辺からだけ平行に張り出して,そのフラットな下面(裏面)を枠台へ係止させることができ,その上面(表面)の段付き部はノロの侵入と関係がないため,意匠の全体として類似するというべきである。 また,2個取りのための胴体(キャビティ)が縦長の状態に並んでいるか,あるいは横長の状態に並んでいるかという配置については,意匠全体として顕著に異なる印象を与えるものではなく,互いに類似することは明白である。 本件登録意匠2の構成態様?Yは要部をなしており,イ号金型意匠の構成態様viは,その凸版の反転数値だけ相違する(ただし,イ号-3金型は反転数値も同じ )としても,本件登録意匠2の構成態様?Yを具備している。 。 したがって,イ号金型意匠はいずれも本件登録意匠2に類似する。 7争点3-2(本件意匠登録2に係る無効理由の有無)【被告の主張】仮に本件登録意匠2がイ号金型意匠と類似するとしても,本件意匠登録2は以下のとおり意匠法3条1項1号又は同条2項の規定に違反して登録されたものであり,意匠登録無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,意匠法41条(特許法104条の3第1項)により,本件意匠権2を行使することはできない。 1無効理由1()ア引用意匠本件意匠登録2の出願前に公然知られた意匠である旧成形金型A4050(乙35:以下「引用意匠6」という )の構成態様は,別紙本件意匠 。 登録2に係る無効理由1の第1項に記載のとおりである。 また,先行周辺意匠は同別紙第2項に記載のとおりである。 イ本件登録意匠2と引用意匠6との対比意匠に係る物品(ア)意匠に係る物品は,両意匠とも鉄筋用スペーサーの成形金型に関するものであり,同一の物品である。 形態上の共通点(イ)本件登録意匠2の構成態様?Tないし?V及び?Xは,それぞれ引用意匠6の構成態様1ないし1及び1と共通する。また,本件登録意匠2 ??????の構成態様?Yは,対向している短辺の囲い壁面は対称形の凹凸曲面,すなわち同形の凹凸曲面に形成されている点において,引用意匠6の構成態様vi1と共通する。 形態上の差異点(ウ)本件登録意匠2の構成態様?Wは,底面に陥没数字を賦形するための凸版を有しているのに対し,引用意匠6はこれに相当する構成態様を有していない点に差異がある。 本件登録意匠2の構成態様?Yは,対向している長辺の囲い壁面が同形の凹凸曲面に形成されているのに対し,引用意匠6の構成態様vi1は,対向している長辺の囲い壁面は非対称形の凹凸曲面に形成されている点に差異がある。 本件登録意匠2の構成態様?Zは取付座が階段状であるとともに,取付座の上側に位置する金型部位は取付座の下側に位置する金型部位よりも幅広に形成されているのに対し,引用意匠6の構成態様vii1は,取付座が胴体(キャビティ)と面一である点で差異がある。また,本件登録意匠2の構成態様?Zはビス穴が形成されていないのに対し,引用意匠6の構成態様vii1はビス穴が形成されている点に差異がある。 本件登録意匠2の構成態様?[は一対の胴体(キャビティ)の短辺が金型の長辺(取付座)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の長辺が金型の短辺に沿って配置されているのに対し,引用意匠6の構成態様viii1は一対の胴体(キャビティ)の長辺が金型の長辺(取付座)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の短辺が金型の短辺に沿って配置されている点に差異がある。 本件登録意匠2の構成態様?\は底面図に示された胴体(キャビティ)の四隅が丸まった形状になっているのに対し,引用意匠6の構成態様ix1は底面図に示された胴体(キャビティ)の四隅がやや角ばった形状になっている点に差異がある。 ウ本件登録意匠2と引用意匠6との類否仮に本件登録意匠2がイ号金型意匠と類似すると認められる場合には,構成態様?Z及び?[の各差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さく,基本的骨格的な態様である構成態様?T及び構成態様?Xの共通点は,上記差異点に比して相対的に大きな影響を類否判断に及ぼすと考えられる。そして,各差異点の相まった視覚効果を考慮しても,両意匠の共通感を凌駕するものとはいえない。 したがって,仮に本件登録意匠2がイ号金型意匠と類似する場合は,本件登録意匠2は引用意匠6に類似する。 エよって,仮に本件登録意匠2がイ号金型意匠と類似すると認められる場合には,本件意匠登録2は意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 2無効理由2()ア引用意匠「新成形金型A3540 (乙84:以下「引用意匠7」という )の 」 。 構成態様は,別紙本件意匠登録2に係る無効理由2の第1項に記載のとおりである。 引用意匠7は,被告が平成14年8月ころから旧ASスペーサーの「A3540」の成形に使用していたものであり,その製造工程は秘密にすることなく公開されていた。よって,引用意匠7は本件意匠登録2の出願前から公然知られた意匠である。 また,先行周辺意匠は同別紙第2項に記載のとおりである。 イ本件登録意匠2と引用意匠7との対比意匠に係る物品(ア)意匠に係る物品は,両意匠とも鉄筋用スペーサーの成形金型に関するものであり,同一の物品である。 意匠に係る形態上の共通点(イ)本件登録意匠2の構成態様?Tないし?V及び構成態様?Yはそれぞれ,引用意匠7の構成態様2ないし2及び構成態様vi2と共通する。 ????本件登録意匠2の構成態様?Xは,上記胴体(キャビティ)の内部へ生コンクリートを充填することにより,鉄筋用スペーサーを成形するようになっている点において,引用意匠7の構成態様2と共通する。??意匠に係る形態上の差異点(ウ)本件登録意匠2の構成態様?Wは底面に陥没数字を賦形するための凸版を有しているのに対し,引用意匠7はこれに相当する構成態様を有していない点に差異がある。 本件登録意匠2の構成態様?Xは胴体(キャビティ)を形作っている囲い壁面の上縁部から水平に張り出す一対の取付座を有しているのに対し,引用意匠7の構成態様2は一対の張出部を有している点で差異がある。 ??また,本件登録意匠2の構成態様?Xは両取付座を枠台へ取り付け使用するものであるのに対し,引用意匠7の構成態様2は,両張出部を枠台 ??へ固定せずに載せて使用する点に差異がある。 本件登録意匠2の構成態様?Zは取付座が階段状であるとともに,取付座の上側に位置する金型部位は取付座の下側に位置する金型部位よりも幅広に形成されているのに対し,引用意匠7の構成態様vii2は胴体(キャビティ)の上面から張出部に亘って,面一に形成されている点に差異がある。 本件登録意匠2の構成態様?[は一対の胴体(キャビティ)の短辺が金型の長辺(取付座)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の長辺が金型の短辺に沿って配置されているのに対し,引用意匠7の構成態様viii2は一対の胴体(キャビティ)の長辺が金型の長辺(張出部)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の短辺が金型の短辺に沿って配置されている点に差異がある。 本件登録意匠2の構成態様?\は底面図に示された胴体(キャビティ)の四隅が丸まった形状になっているのに対し,引用意匠7の構成態様ix2は底面図に示された胴体(キャビティ)の四隅がやや角ばった形状になっている点に差異がある。 ウ本件登録意匠2と引用意匠7との類否仮に本件登録意匠2がイ号金型意匠と類似すると認められる場合,構成態様?Z及び?[の各差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さく,基本的骨格的な態様である構成態様?T及び構成態様?Xの共通点は,上記差異点に比して相対的に大きな影響を類否判断に及ぼすと考えられる。そして,各差異点の相まった視覚効果を考慮しても,両意匠の共通感を凌駕するものとはいえない。 したがって,仮に本件登録意匠2がイ号金型意匠と類似する場合は,本件登録意匠2は引用意匠7に類似する。 エよって,仮に本件登録意匠2がイ号金型意匠と類似すると認められる場合には,本件意匠登録2は,意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 3無効理由3()ア引用意匠本件意匠登録2の出願前に公然知られた「新成形金型A5060 (乙」85:以下「引用意匠8」という )の構成態様は,別紙本件意匠登録2 。 に係る無効理由3の第1項に記載のとおりである。 引用意匠8は,被告が平成14年8月ころから旧ASスペーサーの「A5060」の成形に使用していたものであり,その製造工程は秘密にすることなく公開されていた。よって,引用意匠7は本件意匠登録2の出願前から公然知られた意匠である。 また,先行周辺意匠は同別紙第2項に記載のとおりである。 イ本件登録意匠2と引用意匠8との対比意匠に係る物品(ア)意匠に係る物品は,両意匠とも鉄筋用スペーサーの成形金型に関するものであり,同一の物品である。 意匠に係る形態上の共通点(イ)本件登録意匠2の構成態様?Tないし?V及び?\はそれぞれ,引用意匠8の構成態様3ないし3及びix3と共通する。 ????本件登録意匠2の構成態様?Xは,胴体(キャビティ)の内部へ生コンクリートを充填することにより鉄筋用スペーサーを成形するようになっている点において,引用意匠8の構成態様3と共通する。??本件登録意匠2の構成態様?Yは,対向している短辺の囲い壁面は対称形の凹凸曲面,すなわち同形の凹凸曲面に形成されている点において引用意匠8の構成態様vi3と共通する。 意匠に係る形態上の差異点(ウ)本件登録意匠2の構成態様?Wは底面に陥没数字を賦形するための凸版を有しているのに対し,引用意匠8がこれに相当する構成態様を有していない点に差異がある。 本件登録意匠2の構成態様?Xは胴体(キャビティ)を形作っている囲い壁面の上縁部から水平に張り出す一対の取付座を有しているのに対し,引用意匠8の構成態様3は一対の張出部を有している点に差異がある。 ??また,本件登録意匠2の構成態様?Xは両取付座を枠台へ取り付け使用するものであるのに対し,引用意匠8の構成態様3は両張出部を枠台へ ??固定せずに載せて使用する点に差異がある。 本件登録意匠2の構成態様?Yは対向している長辺の囲い壁面が同形の凹凸曲面に形成されているのに対し,引用意匠8の構成態様vi3は対向している長辺の囲い壁面が非対称形の凹凸曲面に形成されている点に差異がある。 本件登録意匠2の構成態様?Zは取付座が階段状であるとともに,取付座の上側に位置する金型部位は取付座の下側に位置する金型部位よりも幅広に形成されているのに対し,引用意匠8の構成態様vii3は胴体(キャビティ)の上面から張出部に亘って面一に形成されている点に差異がある。 本件登録意匠2の構成態様?[は一対の胴体(キャビティ)の短辺が金型の長辺(取付座)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の長辺が金型の短辺に沿って配置されているのに対し,引用意匠8の構成態様viii3は一対の胴体(キャビティ)の長辺が金型の長辺(張出部)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の短辺が金型の短辺に沿って配置されている点に差異がある。 ウ本件登録意匠2と引用意匠8との類否仮に本件登録意匠2がイ号金型意匠と類似すると認められる場合,構成態様?Z及び?[の各差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さく,基本的骨格的な態様である構成態様?T及び?Xの共通点は,上記差異点に比して相対的に大きな影響を類否判断に及ぼすと考えられる。そして,各差異点の相まった視覚効果を考慮しても,両意匠の共通感を凌駕するものとはいえない。 したがって,仮に本件登録意匠2がイ号金型意匠と類似する場合は,本件登録意匠2は引用意匠8に類似する。 エよって,仮に本件登録意匠2がイ号金型意匠と類似すると認められる場合には,本件意匠登録2は,意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 4無効理由4()ア引用意匠引用意匠8の構成態様は別紙本件意匠登録2に係る無効理由3の第1項に記載のとおりである。 また,先行周辺意匠は別紙本件意匠登録2に係る無効理由4の第1項に記載のとおりである。 イ容易創作性前記 3 イのとおり,引用意匠8は,本件登録意匠2の構成態様?Tない(ア)()し?V,?\の全部及び構成態様?X,?Yの一部と共通しており,構成態様?W,?Z,?[の全部及び構成態様?X,?Yの一部において異なっている。 構成態様?X,?Zに係る差異について,胴体(キャビティ)を形作って(イ)いる囲い壁面の上縁部から一対の平行な取付座又は張出部が水平に張り出す態様は広く知られている。また,両取付座又は張出部を別途準備された枠台へ取り付け使用する態様も,公然知られている(引用意匠6及び先行意匠?C 。さらに,コンクリート製品を成形するための金型の分 )野においても,取付座の種々の態様が公然知られている(先行意匠?L〜?N 。)したがって,枠台に固定せずに載せて使用するための張出部を,枠台に取り付け使用するための取付座に置換変更すること及び取り付け使用するにあたり,枠台に適当に取り付けることができる形状を選択採用することは,当業者にとってありふれた手法である。 構成態様?[に係る差異については,本件登録意匠2と引用意匠8のい(ウ)ずれの態様も胴体(キャビティ)自体が極端に扁平しておらず,どちらかと言えば正方形に近い四角形であるから,いずれの態様も任意に選択・採用される態様である。 構成態様?W及び?Yに係る差異について,胴体(キャビティ)の内部形(エ)状は鉄筋用スペーサーの形状に応じて一義的に選択され,創作性の入り込む余地がない。 仮に,胴体(キャビティ)の内部形状に関する具体的な態様が意匠を構成すると認められるとしても,かかる態様は広く知られたものである(先行意匠?O〜○ 。 32)よって,仮に胴体(キャビティ)の内部形状に関する具体的な態様が(オ)意匠を構成すると認められるとしても,本件登録意匠2は,この出願前に当業者が公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができた。 ウ以上より,本件登録意匠2は,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである。 【原告の主張】1無効理由1について()胴体(キャビティ)の内部形状が鉄筋用スペーサーの輪郭形状に対応するとしても,その内部形状を囲む壁部の肉厚や,底面から見た胴体の外部輪郭形状が凸レンズ状の境界部を挟んで連続的に並ぶこと,そのフラットな底面から内向きに隆起する凸版(反転数字)の個数,分布位置,高さ,幅などには自由に創作できる選択肢がある。 また,凸版とビス穴との有無に関する差異点は,需要者又は取引者の最も注目する部位に表出し,特に反転数字の凸版は本件登録意匠2の要部をなすものであるから,かかる点が相違する以上,本件登録意匠2は引用意匠6と類似しない。 2無効理由2及び3について()上記 1 のとおり胴体(キャビティ)の形状には自由に創作できる選択肢が ()ある。しかも,上記凸版(反転数字)は需要者又は取引者の最も注目する部位にあり,本件登録意匠2の要部をなす上,このような凸版を備えた鉄筋用スペーサーの2個取り成形金型は,本件意匠登録2の出願前に公然知られたものでもない。 よって,かかる点において相違する以上,本件登録意匠2と引用意匠7及び8はいずれも類似しない。 3無効理由4について()無効理由4に係る被告の主張は,発明の進歩性に関するものならばともかく,本件登録意匠2の形状や模様などと対比すべき公知のそれらが余りにも違いすぎるため,到底理由がない。本件登録意匠2はあくまで2個取りの成形金型であることを基本的形態として成り立っているものである。 8争点3-3(本件意匠権2に対する自由意匠の抗弁)【被告の主張の骨子】1イ号金型意匠は,本件意匠登録2の出願前に公然知られた旧成形金型A4()050(乙35)と実質的に同一の意匠であるので,イ号金型の使用について本件意匠権2は及ばない。 2イ号金型意匠は,本件意匠登録2の出願前に公然知られた新成形金型A3()540(乙84)と実質的に同一の意匠であるので,イ号金型の使用について本件意匠権2は及ばない。 3イ号金型意匠は,本件意匠登録2の出願前に公然知られた新成形金型A5()060(乙85)と実質的に同一の意匠であるので,イ号金型の使用について本件意匠権2は及ばない。 (詳細は平成21年1月23日付け被告第9準備書面68頁以下のとおり。)【原告の認否】いずれも否認ないし争う。 9争点3-4(本件意匠権2に対する先使用の抗弁)【被告の主張の骨子】1イ号金型意匠は,本件意匠登録2の出願前から被告が使用していた旧成形()金型A4050(乙35)に類似するので,被告は本件意匠権2について先使用による通常実施権(意匠法第29条)を有する。 2イ号金型意匠は,本件意匠登録2の出願前から被告が使用していた新成形()金型A3540(乙84)に類似するので,被告は本件意匠権2について先使用による通常実施権(意匠法第29条)を有する。 3イ号金型意匠は,本件意匠登録2の出願前から被告が使用していた新成形()金型A5060(乙85)に類似するので,被告は本件意匠権2について先使用による通常実施権(意匠法第29条)を有する。 (詳細は平成21年1月23日付け被告第9準備書面109頁以下のとおり。)【原告の認否】いずれも否認ないし争う。 10争点4(損害の額)【原告の主張】1被告は,遅くとも平成18年からイ号製品ないしハ号製品を製造販売して()おり,その年間売上総額は1億8175万2000円である(別紙被告の販売想定数・単価・売上額一覧表記載 。)被告は,本件提訴までの間,少なくとも2年間にわたって製造販売を続けており,その2年間の総売上額は同表記載のとおり3億6350万4000円である。 2被告におけるイ号製品ないしハ号製品の利益率は,販売価格の20%であ()る。 3よって,被告の利益額は7270万0800円(\363,504,000×20%=\7()2,700,800)であり,特許法102条2項又は意匠法39条2項により同額が原告の受けた損害額と推定される。 【被告の認否】否認ないし争う。 第4当裁判所の判断1争点1-1(本件特許発明の技術的範囲の属否)について被告は構成要件E及びFの充足性を否認することから,以下この点について検討する。 1構成要件E及びFの位置づけについて()前記当事者間に争いのない事実(第2の1 1 イ)のとおり,本件特許発明 ()は構成要件AないしFに分説することができる。しかし,他方で,原告は,構成要件Eの「枠台」の解釈において,裏返し脱型作業するという製造工程までも構成要件とする方法の発明ではないとも主張する。 たしかに,本件特許発明は特許法2条3項1号の物の発明と解されるところ,それにもかかわらず,特許請求の範囲に物の製造方法(構成要件E及びF)が記載されている。そこで,本件特許発明における構成要件E及びFの位置づけについて最初に検討することとする。 ア特許法2条3項1号の物の発明において特許請求の範囲に当該物の製造方法が記載されている場合であっても,原則として,同製造方法により得られる物と同一であれば,これと異なる製造方法を用いて製造された物であっても,同特許発明の技術的範囲に属するというべきである。 しかしながら,証拠(乙18)によれば,本件特許に係る出願経過について,以下の事実が認められる。 出願(ア)原告は,平成16年4月20日,本件特許の出願をした。本件特許の出願当初の請求項1は以下のようなものであった。 「 請求項1】【長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネル(M)と択一的に接触使用される一定厚み(t)のコンクリートブロック(B)から成り,その4辺面の角隅部を凸曲面(2)に造形する一方,少なくとも隣り合う2辺面を鉄筋(A)の係止用凹曲面(1)として陥没させると共に,その各凹曲面(1)の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距離を,上記鉄筋(A)の互いに異なる2種以上のコンクリートかぶり厚さ(D1 (D2 (D3 (D4)となる寸法に設定した鉄筋用 )))スペーサーにおいて,上記コンクリートブロック(B)のフラットな片面(5)における各鉄筋係止用凹曲面(1)の底部と対応位置する個所へ,上記鉄筋(A)のコンクリートかぶり厚さ(D1 (D2 (D3 (D4)と )))なる寸法を簡略に示す陥没数字(G)を,そのコンクリートブロック(B)自身の成形と一挙同時に賦形したことを特徴とする鉄筋用スペーサー 」。 拒絶理由通知(イ)特許庁審査官は,平成17年7月12日,請求項1の発明は,実願平3-97223号(実開平6-12619号)のCD-ROM(同拒絶理由通知では「引用文献1」として引用 ,実願昭62-82129号 )(実開昭63-192518号)のマイクロフィルム(同引用文献2として引用)及び特開2001-207592号公報(同引用文献3として引用)に基づき当業者が容易に発明できたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものと通知した。 同通知では引用文献からの容易想到性について,以下のような理由が示された。 「引用文献1には,鉄筋用スペーサであること,凹溝部(本願の係止用凹曲面に相当)を陥没させること,凹溝部の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距離を,互いに異なるコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定すること,コンクリートかぶり厚さに対応した数字を刻印等により表示することが記載されている 」。 「鉄筋用スペーサをコンクリートブロックにより構成することは引用文献2に記載されており,引用文献1記載の発明の合成樹脂によるスペーサをコンクリートにより製造することは,当業者が容易になし得ることである。 また,凹凸を形成するために,成形時に予め型枠側対応(判決注:原文ママ)する形状を作り込んでおくことが従来周知であることを考慮すれば,かぶり厚さの刻印を構成するために,型枠側に対応する形状を作り込み,成形と同時に刻印を形成するようにすることは,当業者が適宜なし得ることにすぎない。 なお,コンクリートブロックによる鉄筋用スペーサを型枠により製造することは,引用文献3にもみられるように周知である 」。 補正(ウ)原告は,平成17年9月9日,手続補正書を提出し,出願当初の請求項1の内容を本件特許発明のように補正するなどし(以下「本件補正」という,平成17年9月26日,特許査定を受けた。原告は,本件 。)補正に係る同日付けの意見書において以下のように述べた。 「引用文献1には鉄筋用スペーサーが記載されておりますが,これは『硬質合成樹脂材による一体成形品』であり,そのための成形金型が金属製品となります。 従って,これを本願発明の合成樹脂製品であるコンクリートブロック用成形キャビティ(C)と同一視することができません 」。 「引用文献2には本願発明のような合成樹脂製のコンクリートブロック用成形キャビティ(C)は全く開示されておりません。 引用文献2に開示のコンクリートスペーサーは,…長尺に押出成形された後,長手方向での所定寸法に切断されたものであります 」。 「このような引用文献2,4に記載された押出成形手段の場合,本願発明のような陥没数字(G)をそのコンクリートブロックのフラット面へ賦形することが,そもそも全く不可能であります 」。 「引用文献3の段落【0003【0019【0022】には, 】,】,なる程『型枠』の記載がありますが,その『型枠』が本願発明に係るコンクリートブロック用成形キャビティ(C)のような耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂からの成形品であることや,裏返し脱型作業できる金属製の枠台(F)に合成樹脂製の成形キャビティ(C)を取り付け使用することまでは,一切記載されておりません 」。 「一般に合成樹脂製品を成形する金属製の成形金型と異なり,本願発明のようなコンクリートブロック(B)を成形する合成樹脂製の成形キャビティ(C)としては,ましてそのフラットな底面(20)から反転数字の凸版(P)を異なる2種以上の点在分布状態に隆起させた構成や,その成形キャビティ(C)を裏返し脱型作業できる金属製の枠台(F)へ取り付けたことまでは,決して従来から周知であると言うことができません 」。 イ上記のとおり,原告は本件補正において,特許請求の範囲に構成要件Bを加えると共に 「鉄筋(A)のコンクリートかぶり厚さ(D1 (D , )2 (D3 (D4)となる寸法を簡略に示す陥没数字(G)を,そのコ ))ンクリートブロック(B)自身の成形と一挙同時に賦形」する手段として,構成要件E及びFのような成形キャビティを使用する方法を具体的に加えていることが認められる。 本件補正のうち,構成要件Bの金属線材受け入れ孔を設けることについては,もともと出願当初の特許請求の範囲【請求項2】に記載されていたものであり,同請求項に係る上記拒絶理由通知においても「結束用金属線材受け入れ孔を設けることは,引用文献2にも記載されている 」と指摘 。 されているところである。また,原告も上記意見書においてこの点を特段強調してもいない。 これに対し,成形キャビティを用いたコンクリートブロックの成形及び陥没数字の賦形手段については,上記意見書においても,原告が従来技術との相違点として特に強調していた点であり,本件補正がなされたことによって特許査定がなされていることからすれば,特許庁審査官も,その当否は措くとして,この点を考慮して特許査定したものと認められる。 そうとすれば,原告が本件特許権を行使するに当たり,本件特許発明は物の発明であって,構成要件E及びFの製造工程を構成要件とするものではないと主張することは,禁反言の法理に照らして到底許されるものではないというべきである。 ウよって,構成要件E及びFの製造工程も,本件特許発明の技術的範囲を画する構成要件と解すべきであり,ここに記載された製造工程によって製造された鉄筋用スペーサーのみが本件特許発明の技術的範囲に属し得るものというべきである。 そこで,以下では被告製品の製造方法について認定した上,構成要件E及びFの充足性について検討することとする。 2被告製品の製造方法について()被告製品の製造における成形キャビティと枠台の使用状態が別紙イ号製品目録ないしハ号製品目録の各図1ないし図5のとおりであることについて当事者間に争いはなく,これに証拠(乙3,5,6,17)及び弁論の全趣旨を併せれば,被告製品の製造方法は以下のとおりと認められる。 ア成形キャビティ整列工程複数の成形キャビティを上記図1ないし図5のように枠台に載せる。 イ離型剤塗布工程枠台に載せた成形キャビティに,鉄筋用スペーサーを成形キャビティから脱型しやすくするための離型剤を吹きつける。 ウ生コンクリート流し込み工程枠台に載せられた成形キャビティに生コンクリートを流し込む。 エ養生硬化工程生コンクリートを流し込んだ後,養生場所へ配置する。 同養生場所全体をブルーシートで覆った上,ブルーシート内に蒸気を送り込んで生コンクリートを硬化させる。 オキャビティ取り外し工程養生後(コンクリート硬化後 ,枠台を裏返し,硬化した鉄筋用スペー )サーを内包した成形キャビティを枠台から落下させる。 カ脱型工程成形キャビティを裏返して,金枠にたたきつけ,衝撃により鉄筋用スペーサーを成形キャビティから脱型する。 3構成要件Eの解釈について()次に,構成要件Eの「成形キャビティ(C)を,裏返し脱型作業できる金属製の枠台(F)へ取り付け使用して」の意義について検討する。 なお,この点について,原告は,成形キャビティを枠台に固定せずに載せていたとしても,成形キャビティが枠台から浮いていない限り成形キャビティを枠台へ取り付けたものと解釈できると主張するのに対し,被告は 「鉄,筋用スペーサーのコンクリートブロック(B)が成形硬化した後に,成形キャビティが並列配置された枠台を裏返して作業テーブルへ強く叩打した際に,成形キャビティ(C)からコンクリートブロック(B)は脱型するが,枠台(F)から成形キャビティ(C)は離脱しない程度の強固さで,成形キャビティ(C)が枠台(F)に装着された状態」をいうと主張している。 ア本件明細書の記載本件明細書には以下の記載のあることが認められる(甲2 。)【発明の効果】の段落【0023】(ア)「又,上記コンクリートブロック用成形キャビティは耐熱性と耐衝撃性に富む高強度な合成樹脂からの成形品として,そのコンクリートブロックのフラットな片面(正面又は背面)と対応するフラットな底面から,上記陥没数字を賦形する凸版が上向き一体的に隆起されており,裏返し叩打して脱型作業できる金属製の枠台に取り付けられているため,コンクリートブロックとの対応的な平面輪郭形状や上記陥没数字の凹型とも相俟って,コンクリートの肌離れ(離型性)が向上し,コンクリートブロックをその成形キャビティからすばやく確実に取り出し脱型作業でき,その際に上記陥没数字を欠損してしまうおそれもない 」。 【発明を実施するための最良の形態】の段落【0039】(イ)「図8〜12は本発明に係る鉄筋用スペーサーの多数個取り成形金型を示しており,これは1人でも持ち上げ裏返して脱型作業できる大きさと重量を備えた金属製の枠台(F)と,その枠台(F)との別体物である多数(図例では合計6個)のコンクリートブロック用成形キャビティ(C)とから成り,その各成形キャビティ(C)が上記コンクリートブロック(B)における好ましくは2個取りの合成樹脂製品として,枠台(F)の枠内へ着脱・交換自在に取り付け固定されている 」。 同段落【0042】(ウ)「 12)は上記枠台(F)を形作る支持枠(7)の囲い壁面から,横 (向き一体的に張り出された左右一対のグリップハンドル(棒鋼)であって,これを両手で把持した作業者の1人が,成形金型を持ち上げ裏返した状態のもとで,その枠台(F)の叩打管(11)を作業テーブルへ強く叩打することにより,成形金型のコンクリートブロック用成形キャビティ(C)から鉄筋用スペーサーのコンクリートブロック(B)を取り出し脱型作業することになる 」。 同段落【0052】(エ)「そのため,このようなコンクリートブロック用成形キャビティ(C)の各個を,上記枠台(F)における天板(6)の成形キャビティ受け入れ口(13)へ,その天板(6)の裏側から並列状態に差し込み嵌合することができ,そうすれば各成形キャビティ(C)の胴体(18)から張り出す水平な開口縁取りフランジ(22)のうち,その左右一対の平行な取付座(23)だけが天板(6)の裏面へ係止することになる結果,その表側へ成形キャビティ(C)が抜け出すおそれはなく,上記開口縁取りフランジ(22)の残余部が天板(6)の成形キャビティ受け入れ口(13)へ嵌まり込んで,その天板(6)の表面とほぼ面一状態に保たれる 」。 同段落【0053】(オ)「 24)は上記枠台(F)の前後方向に沿って延在する複数(図例で (は合計4個)の平行な裏当て押圧板(鋼板)であって,上記天板(6)の仕切り桟(14)とほぼ同等の一定帯幅(w)を備えており,上記成形キャビティ(C)における隣り合う左右一対ずつの取付座(23)同士や,その成形キャビティ(C)の取付座(23)と上記天板(6)の裏打ちスペーサープレート(17)との隣り合う同士を,天板(6)の裏側から各々押え付けるようになっている 」。 同段落【0054】(カ)「しかも,その各裏当て押圧板(24)には上記天板(6)の皿ビス受け入れ孔(15)と対応合致する皿ビス受け入れ連通孔(25)が開口分布されているため,上記成形キャビティ(C)の取付座(23)を裏側から天板(6)へ挟み付けた裏当て押圧板(24)に対して,その天板(6)の皿ビス受け入れ孔(15)から裏当て押圧板(24)の皿ビス受け入れ連通孔(25)へ,上記皿ビス(16)を通し込んだ上,その皿ビス(16)の先端部へ裏側から固定ナット(26)を各々締結することにより,上記コンクリートブロック用成形キャビティ(C)の並列する複数(図例では2個)ずつを言わば1単位として,一挙同時に枠台(F)の天板(6)へ取り付け固定することができる 」。 同段落【0061】(キ)「そして,最後に蒸気養生室から搬出した成形金型の1個ずつを,1人の作業者が両手により持ち上げ裏返して,図外の作業テーブルへ強く叩打することにより,上記成形硬化している鉄筋用スペーサーのコンクリートブロック(B)を,その成形キャビティ(C)の胴体(18)から取り出し脱型作業すれば良く,その際にも上記陥没数字(G)は凹型として,不慮に欠損してしまうおそれがない 」。 図面(ク)【図8】【図9】イ検討構成要件Eでは,成形キャビティを枠台へ取り付けることが定められ(ア)ているところ 「取り付ける」とは 「機器などを一定の場所に設置し ,,たり他の物に装置したりする」ことであり(広辞苑第5版 ,取付けの )態様自体は物によって異なり得るものの,少なくとも一定の目的の下に設置ないし装置することを意味するものと解される。 本件においても 「成形キャビティ(C)を,裏返し脱型作業できる ,金属製の枠台(F)へ取り付け使用」するというのであるから,これを素直に読めば,裏返し脱型することを可能にするために枠台に取り付けるものと解される。 そして,上記段落【0023】では,成形キャビティが「裏返し叩打して脱型作業できる金属製の枠台に取り付けられているため,…コンクリートブロックをその成形キャビティからすばやく確実に取り出し脱型作業でき」る旨が記載されているのであるから,構成要件Eでいう「裏返し脱型作業できる」とは,成形キャビティが取り付けられた枠台を裏返し,同枠台を叩打してコンクリートブロックを脱型する作業をいうものと解することができる。 この点,本件明細書に記載された実施例である段落【0039】にお(イ)いても,成形キャビティが枠台に取り付け固定されている上記図8及び図9の成形金型が示されており(同段落において「成形金型」とは,枠台と多数の成形キャビティから成るものと説明されており,図8及び図9のように成形キャビティが枠台に取り付けられたもの全体をいうものとされている,段落【0042】によれば,作業者が「成形金型を 。)持ち上げ裏返した状態のもとで,その枠台(F)の叩打管(11)を作業テーブルへ強く叩打することにより,成形金型のコンクリートブロック用成形キャビティ(C)から鉄筋用スペーサーのコンクリートブロック(B)を取り出し脱型作業する」というのであり,成形キャビティが取り付けられた枠台(同実施例では枠台に設けられた叩打管)を叩打してコンクリートブロックを脱型する方法が記載されている。 また,段落【0061】においても,養生硬化後の「成形金型の1個ずつを,1人の作業者が両手により持ち上げ裏返して,図外の作業テーブルへ強く叩打することにより,…コンクリートブロック(B)を,その成形キャビティ(C)の胴体(18)から取り出し脱型作業」することが記載されており,上記と同様の作業工程が示されている。 なお,段落【0052】ないし【0054】では,枠台への成形キャビティの取付方法が具体的に開示されているところ,ここに記載された取付方法は相当強固なものであり,段落【0052】では,天板の「表側へ成形キャビティが抜け出すおそれはな(い 」とも指摘されている )ところである。このような実施例の記載からすれば,同実施例においては,脱型作業時に成形キャビティが抜け出さないようにするために強固に固定されていることが窺える。 以上によれば,構成要件Eの「成形キャビティ(C)を,裏返し脱型(ウ)作業できる金属製の枠台(F)へ取り付け」るとは,その取付方法は本件明細書の実施例に明示された方法には限定されないものの,少なくとも「コンクリートブロック(B)が成形硬化した後,成形キャビティが取り付けられた枠台を裏返して作業テーブルへ叩打した際に,成形キャビティ(C)からコンクリートブロック(B)は脱型するが,枠台(F)から成形キャビティ(C)が離脱しない程度の強固さで成形キャビティ(C)を枠台(F)に取り付け」ることをいうものと解するのが相当である。 4構成要件Eの充足性()上記 2 で認定したとおり,被告製品の製造工程においては,成形キャビテ ()ィを単に枠台に載せるにとどまり,それ以上,特段の固定手段を施さないまま成形キャビティに生コンクリートを充填し,養生硬化後も枠台を裏返して成形キャビティを落下させた上,別途成形キャビティからコンクリートブロックを脱型しているのであるから,枠台を叩打してコンクリートブロックを脱型しておらず,枠台を裏返して叩打した際に成形キャビティが枠台から離脱しない程度の強固さで取り付けられているものとは認められない。 この点,原告は,被告製品の製造工程において枠台を裏返しても抜け落ちない成形キャビティが多数残存し,作業者が衝撃を与えたり,指先で押圧して無理に抜き落としているとして枠台に固定されていると主張する。たしかに,乙第5号証によれば,枠台を裏返しただけで成形キャビティが全て抜け落ちるわけではなく,成形キャビティと枠台との隙間に入り込んだ生コンクリートのノロによって枠台に付着したキャビティがいくつか見受けられる。 しかし,同証拠によれば,枠台に付着した成形キャビティも,作業者が指先で押圧することによって,比較的容易に枠台から外れていることが認められる。他方で,成形キャビティを枠台に固定し,枠台ごと裏返して叩打する方法を示す乙第3号証によれば,枠台に成形キャビティを固定したまま脱型するには,相当の強さの力で何度も枠台を叩打しなければならないことが認められ,それでもなお成形キャビティが枠台から外れないようにするには,相当強固な固定手段が必要となるものと窺える。そうとすれば,被告製品の製造工程におけるような,何らの固定手段を施さないまま枠台に付着した成形キャビティは,少なくとも枠台を叩打して脱型する際の衝撃には到底耐えられないものと認められる。よって,上記のような枠台への付着をもって固定されているとか,取り付けられているなどということはできない。 また,原告は,被告製品における枠台を裏返して成形キャビティを落とす工程について,脱型をも目的にしているとも主張するが,被告製品の製造工程において,枠台を裏返して成形キャビティを落とす際にコンクリートブロックも一緒に脱型していると認めるに足りる証拠は全くなく,原告の上記主張は根拠を欠くものである。 よって,被告製品の製造工程においては 「成形キャビティ(C)を,裏 ,返し脱型作業できる金属製の枠台(F)へ取り付け使用して」いるものとは認められず,被告製品は構成要件Eを充足するとは認められない。 5構成要件Fの充足性()構成要件Fの「その成形キャビティ(C)の内部へ上方から充填した生コンクリートを硬化させる」との部分について,ここにいう「その成形キャビティ」は構成要件Eの枠台に取り付けられた成形キャビティを受けるものと解されることから,構成要件Fの上記部分は,枠台に取り付けられた成形キャビティに生コンクリートを充填して硬化させるという方法を定めるものと解するのが相当である。 この点,上記認定のとおり,被告製品の製造工程において,生コンクリートを充填する前の成形キャビティは単に枠台に載せられているにすぎず,その段階で裏返せば,成形キャビティの自重で枠台から抜け落ちると考えられるから,同段階では,未だ成形キャビティが枠台に取り付けられているとは認め難い。 よって,被告製品の製造工程は,枠台に取り付けられた成形キャビティに生コンクリートを充填して硬化させるものではないので,被告製品は構成要件Fも充足しない。 6小括()以上のとおり,被告製品はいずれも構成要件E及びFを充足しないから,本件特許発明の技術的範囲に属さない。 よって,争点1-2について判断するまでもなく,被告製品を製造,販売する被告の行為が本件特許権を侵害するものとは認められない。 2争点2-2(本件意匠登録1に係る無効理由の有無)について争点2については,事案にかんがみ争点2-2の無効理由6から判断することとする。 1本件登録意匠1の構成態様()証拠(甲4)によれば,本件登録意匠1は別紙本件登録意匠1の図面に記載のとおりであり,その構成態様は以下のとおりと認められる。なお,以下の構成態様のうち,構成態様AないしDについては当事者間に争いがなく,構成態様HないしJについては,被告主張に係るものであるが,原告において同各構成態様を備えること自体を争うものではない。 Aほぼ長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのコンクリートブロックから成る。 B上記長方形の長手中心線上に点在(偏心部)分布する合計2個(一対)の結束用金属線材受け入れ孔が,正背方向への貫通状態に形成されている。 C上記4辺面の角隅部は凸曲面に造形されている一方,その4辺面が鉄筋の係止用凹曲面として陥没されている。 Dその各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの間隔距離が,上記鉄筋の互いに異なる3種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定された鉄筋用スペーサーである。 G上記コンクリートブロックのフラットな片面(正面)における各鉄筋係止用凹曲面の底部とほぼ対応位置する個所に,上記鉄筋の互いに異なる3種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法が,そのミリメートル単位を省いた簡略な陥没数字として賦形されている。 H上記4辺面の鉄筋の係止用凹曲面は,長手中心線を挟んで対向する2つの係止用凹曲面は対称形であるのに対して,長手中心線上で対向する他の2つの係止用凹曲面は非対称形である。 I上記陥没数字は,長手中心線を挟んで対向する位置にそれぞれ賦形された「110」の数字と,長手中心線上で対向する位置に賦形された「120」及び「130」の数字からなる。 J上記「120」及び「130」の陥没数字は,それぞれ対応する係止用凹曲面と結束用金属線材受け入れ孔との間に配置されている。 2引用意匠の構成態様()証拠(乙25,26)によれば,乙25カタログは本件意匠登録1の出願日である平成16年4月20日より前の平成15年7月に発行されたものと認められる。 乙25カタログには,以下の構成態様を有するセラミックスペーサーSH「SH-80×85×90×100 (引用意匠3)が掲載されており,そ 」の形態は本件意匠登録1に係る出願前に当業者に公然と知られたものと認められる。 a3ほぼ長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのセラミックブロックから成る。 b3上記長方形の長手中心線上に点在(偏心部)分布する合計2個(一対)の結束用金属線材受け入れ孔が,正背方向へ貫通状態に形成されている。 c3上記4辺面の角隅部は凸曲面に造形されている一方,その4辺面が鉄筋の係止用凹曲面として陥没形成されている。 d3その各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの距離が,上記鉄筋の互いに異なる4種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定された鉄筋用スペーサーである。 g3上記コンクリートブロックのフラットな片面(正面)における各鉄筋係止用凹曲面の底部とほぼ対応する個所に,上記鉄筋の互いに異なる4種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法が,そのミリメートル単位を省いた簡略な数字として賦形されている。 h3上記4辺面の鉄筋の係止用凹曲面は,長手中心線を挟んで対向する2つの係止用凹曲面は非対称形であるのに対して,長手中心線上で対向する他の2つの係止用凹曲面は非対称形である。 i3上記数字は,長手中心線を挟んで対向する位置にそれぞれ賦形された「80」及び「85」の数字と,長手中心線上で対向する位置に賦形された「90」及び「100」の数字からなる。 j3上記「90」及び「100」の数字は,それぞれ対応する係止用凹曲面と結束用金属線材受け入れ孔との間に配置されている。 3本件登録意匠1と引用意匠3との対比()意匠に係る物品は,両意匠とも「鉄筋用スペーサー」に関するものであり,同一の物品である。 他方,意匠に係る形態には,以下の共通点と差異点が認められる。 ア構成態様Aと構成態様a3について両意匠は,ほぼ長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によってコンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのブロックからなる点で共通している。 他方,本件登録意匠1はコンクリートブロックである(構成態様A)のに対し,引用意匠3はセラミックブロックである点(構成態様a3)で異なる。 イ構成態様Bと構成態様b3及び構成態様Cと構成態様c3について両意匠は,長方形の長手中心線上に点在(偏心部)分布する合計2個(一対)の結束用金属線材受け入れ孔が正背方向への貫通状態に形成されている点,及び4辺面の角隅部は凸曲面に造形されている一方その4辺面が鉄筋の係止用凹曲面として陥没されている点において,それぞれ共通している。 ウ構成態様Dと構成態様d3について両意匠は,各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの距離が上記鉄筋の互いに異なる複数のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定されている点で共通している。 他方,本件登録意匠1はコンクリートかぶり厚さとなる寸法が3種に設定されている(構成態様D)のに対し,引用意匠3では4種に設定されている(構成態様d3)点で異なる。 エ構成態様Gと構成態様g3について両意匠は,コンクリートブロックのフラットな片面(正面)における各鉄筋係止用凹曲面の底部とほぼ対応する個所に「かぶり厚さの寸法」に対応した「数字」を付す点で共通している。 他方,本件登録意匠1は3種のかぶり厚さの寸法に係る数字が陥没数字で賦形されている(構成態様G)のに対し,引用意匠3は4種の数字が印字されている(構成態様g3)点で異なる。 オ構成態様Hと構成態様h3について両意匠は,長手中心線上で対向する他の2つの係止用凹曲面が非対称形である点で共通している。 他方,本件登録意匠1は長手中心線を挟んで対向する2つの係止用凹曲面は対称形である(構成態様H)のに対し,引用意匠3は長手中心線を挟んで対向する2つの係止用凹曲面は非対称形である(構成態様h3)点で異なる。 カ構成態様Iと構成態様i3について本件登録意匠1は長手中心線を挟んで対向する位置にそれぞれ賦形される数字が「110」であり,長手中心線上で対向する位置に賦形される数字が「120」及び「130」である(構成態様I)のに対し,引用意匠3は,長手中心線を挟んで対向する位置に賦形される数字が「80」及び「85」であり,長手中心線上で対向する位置に賦形される数字が「90」及び「100」である(構成態様i3)点で異なる。 キ構成態様Jと構成態様j3について両意匠は,長手中心線上で対向する位置に賦形されている数字がそれぞれ対応する係止用凹曲面と結束用金属線材受け入れ孔との間に配置されている点で共通している。 他方,長手中心線上で対向する位置に賦形されている数字自体が,本件登録意匠1では「120」及び「130」である(構成態様J)のに対し,引用意匠3では「90」及び「100」である(構成態様j3)点で異なる(上記カに係る差異点と同じ。。)ク図面なお,参考のために,本件登録意匠1の斜視図と引用意匠3の各図面を掲げる。 【本件登録意匠1】【引用意匠3】4本件登録意匠1の容易創作性()ア本件登録意匠1と引用意匠3との差異点について前記 3 によれば,本件登録意匠1と引用意匠3とは,?@材質がコンクリ()ートかセラミックか(以下「差異点?@」という,?Aかぶり厚さの寸法 。)が3種に設定されているか4種に設定されているか(その結果,長手中心線を挟んで対向する係止用凹局面が対称であるか非対称であるか,また同局面に表示される具体的な数字が異なることになる。そこで,以下,これらを併せて「差異点?A」という,?Bかぶり厚さを表示する数字が陥没 。)数字か印字されたものか(以下「差異点?B」という )において,異なっ 。 ていることが認められる。 イ公知意匠証拠(乙28の1)によれば,乙28公報(意匠登録808607号(ア)公報)は本件意匠登録1の出願日より前の平成3年3月8日に発行されたものであり,これには以下の意匠(以下「乙28意匠」という )が。 掲載されていることが認められる。 a意匠に係る物品「鉄筋用スペイサー」b図面(正面図)c物品の説明(抜粋)「本物品は,かぶり寸法に応じて種々の大きさとなり,その材料はコンクリート,樹脂等である 」。 乙28意匠は,以下の a ないし d の構成態様を有するものと認められ(イ) ()()る。 aほぼ長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリー()ト構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのコンクリートブロックから成る。 b上記長方形の長手中心線上に点在分布する合計2個の結束用金属線()材受け入れ孔を正背方向への貫通状態に貫通形成している。 c上記4辺面の角隅部は凸曲面に造形されている一方,その4辺面が()鉄筋の係止用凹曲面として陥没されている。 dその各鉄筋係止用凹曲面の底部からこれと向かい合う1辺面までの()間隔距離が,上記鉄筋の互いに異なる3種のコンクリートかぶり厚さとなる寸法に設定されている。 ウ差異点?@ないし?Bに係る容易創作性ついて差異点?@について(ア)引用意匠3の材質はセラミックであるが,証拠(乙25,27及び28)によれば,材質がセラミックかコンクリートであるかによって,「形状,模様若しくは色彩 (意匠法2条1項)において特段の差異が 」あるとは認められない。 また,乙28公報においては,本件意匠登録1に係る物品と同一の物品につき,材質をコンクリートにすることについて明確に示されているのであるから(前記イ ア c ,鉄筋用スペーサーにおいて材質をセラミ() )ックからコンクリートに置き換えることは当業者にとってありふれた手法というべきであり,この点について格別の意匠上の創作があったとは認められない。 差異点?Aについて(イ)前記イ イ によれば,乙28意匠は3種のかぶり厚さに対応する鉄筋用()スペーサーであり,しかも本件登録意匠1の構成態様AないしDを備えるもので,かぶり厚さの数字を付する以外の形状において本件登録意匠1と類似するものと認められる。そうすると,引用意匠3と乙28意匠をもってすれば,引用意匠3のかぶり厚さを本件登録意匠1のように3種に変更することは,当業者にとって極めて容易であったというべきである。 また,かぶり厚さを3種に変更すれば,長手中心線を挟んで対向する係止用凹局面が対称となることは,必然ではないにしても極めて自然なことであり,この点において本件登録意匠1に特段の創作があったとも認め難い。 なお,係止用凹曲面に付する数字は,かぶり厚さに対応するものであるから,かぶり厚さを変更すれば当然に変更を要するものであり,その点に創作が介在する余地はない。 差異点?Bについて(ウ)証拠(乙29)によれば,昭和62年6月1日に発行された実開昭62-85613号公報(乙29公報)の第1図及び第2図において,「鉄筋コンクリート用スペースブロック」のかぶり厚さが陥没数字で示されていることが認められる。 証拠(乙41,42)によれば,平成14年に頒布されたアペックス株式会社のカタログ(乙41カタログ)に掲載された「ブロック (ポ」リスペーサブロック)には,鉄筋用スペーサーのかぶり厚さが陥没数字で示されていることが認められる。 証拠(乙43〜46)によれば,平成9年11月ころに頒布されたスペーサー工業のカタログ(乙43カタログ)及び平成13年3月ころに頒布されたスペーサー工業のカタログ(乙44カタログ)に掲載された「バテー型スペーサー」及び乙44カタログに掲載された「CTドーナツ」には,いずれも鉄筋用スペーサーのかぶり厚さが陥没数字で示されていることが認められる。 以上によれば,鉄筋用スペーサーにおいて,かぶり厚さを陥没数字で表示することは,本件意匠登録1に係る出願日より前において,既に周知な表示手段というべきである。 よって,印字された数字を陥没数字に置き換えることは当業者にとってありふれた手法というべきであり,この点について格別の意匠上の創作があったとは認められない。 5小括()以上より,本件登録意匠1は,その出願前に当業者に公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠であると認められ,その結果,本件意匠登録1は,意匠法3条2項の規定に反して登録されたものであり,意匠登録無効審判により無効とされるべきものであるから,意匠法41条(特許法104条の3第1項)により,原告は被告に対して本件意匠権1を行使することができない。 よって,争点2に関するその余の争点について判断するまでもなく,ロ号製品を製造,販売することが本件意匠権1を侵害するものとは認められない。 3争点3-1(本件登録意匠2とイ号金型との類否)について1本件登録意匠2に係る物品は「鉄筋用スペーサーの成形金型」であり,イ()号金型も鉄筋用スペーサーの成形金型であるから,物品は同一である。 そこで以下,本件登録意匠2とイ号金型の形態の類否について検討することとする。 2本件登録意匠2の構成態様()証拠(甲6)によれば,本件登録意匠2に係る図面は別紙本件登録意匠2の図面記載の各図面のとおりであり,以下の構成態様を有することが認められる。なお,原告は構成態様に物品の使用方法をも含めて主張しているが,以下では客観的な構成態様に絞って認定し,イ号金型と対比することとする(使用方法については要部認定の検討に際して考慮する。。)?T鉄筋用スペーサーの2個取りとして,合成樹脂から鉄筋用スペーサーと対応する大きさ・形状に一体成形された一対の胴体(キャビティ)を有している。 ?Uその胴体(キャビティ)の各個は鉄筋用スペーサーと対応する平面形状(凹凸曲面)の囲い壁面と,フラットな底面とから断面ほぼU字型に造形されている。 ?Vしかも,上記胴体(キャビティ)におけるフラットな底面のほぼ中心部からは,芯棒が上向き一体的に垂立されている。 ?Wまた,同じくフラットな底面における上記芯棒の周辺部からは,陥没数字を賦形するための凸版が,反転数字として隆起されている。その数字は「35」と「40」との異なる2種になっている。 ?Xさらに,上記胴体(キャビティ)を形作っている囲い壁面の上縁部からは,一対の平行な取付座が水平に張り出している。 ?Y上記胴体(キャビティ)の囲い壁面は,対向する囲い壁面がそれぞれ同形の凹凸曲面に形成されており,隣接する囲い壁面との関係では異なる形の凹凸曲面に形成されている。 ?Z側面から見て,上記取付座は,階段状に水平に張り出しており(以下,階段状の部分を「本件階段状部」という,取付座の上側に位置する金 。)型部位は,取付座の下側に位置する金型部位よりも幅広に形成されている。 ?[平面から見て,一対の胴体(キャビティ)の短辺が金型の長辺(取付座)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の長辺が金型の短辺に沿って配置されている。 ?\底面図に示された胴体(キャビティ)の四隅は,丸まった形状になっている。 3本件登録意匠2の要部()本件登録意匠2とイ号金型意匠との類否を検討するに当たり,まず,本件登録意匠2の要部について検討することとする。 ア使用態様本件登録意匠2に係る物品は 「鉄筋用スペーサーの成形金型」であ(ア) ,るところ,その意匠公報(甲6)には,本件登録意匠2に係る物品の説明として以下の記載がなされるとともに,下記の【参考図(1 】及び)【参考図(2 】が示されている。 )「この意匠に係る物品は鉄筋用スペーサーとなるコンクリートブロックを成形するための合成樹脂製金型であり,参考図(1 (2)では )共通の枠台に並列設置された多数個取りとしての成形状態を例示している。その使用に当たっては参考図(1 (2)のように,金型のキ )ャビティへ生コンクリートを充填し,その生コンクリートが蒸気養生により硬化した後,脱型すれば,参考図(3)のようなコンクリートかぶり代の陥没数字も成形された鉄筋用スペーサーを得られる 」。 【参考図(1 】【参考図(2 】 ) )上記の本件登録意匠2に係る物品の説明及び参考図の記載によれば,(イ)本件登録意匠2の物品である鉄筋用スペーサーの成形金型は,それ単体で使用されるものではなく,別途準備された枠台に複数個取り付けて使用されるものであり,枠台に取り付けるに際して,本件階段状部は,上記参考図(2)とおり 「仕切り桟」と「押え板」によって挟み付けら ,れ,成形金型を枠台に強固に固定する役割を果たすものと認められる。 イ公知意匠旧ASスペーサー(ア)証拠(乙31)によれば,被告のカタログ(乙31カタログ)には,以下の図に示す品番「A3035」の鉄筋用スペーサー(旧ASスペーサーA3035 ,品番「A3540」の鉄筋用スペーサー(旧ASス )ペーサーA3540)及び品番「A4050」の鉄筋用スペーサー(旧ASスペーサーA4050)が掲載されていることが認められる。 また,証拠(乙32)によれば,平成13年4月20日に発行された大阪建材新聞に,乙31カタログの2枚目に掲載された旧ASスペーサーの写真と同じ写真が掲載されていることが認められ,証拠(乙33)によれば,平成13年12月に頒布された「二三情報」という情報誌においても,同写真が掲載され,乙31カタログの3枚目に掲載された旧ASスペーサーの図と仕様も併せて掲載されていることが認められる。 さらに,証拠(乙34の1〜4)によれば,被告は,旧ASスペーサーを平成13年4月21日,同月24日,同年11月7日及び同月30日に納品したことが認められる。 以上の事実からすると,乙31カタログに掲載された旧ASスペーサーは,いずれも本件意匠登録2に係る出願前に公知であったと認められる。 そして,上記旧ASスペーサーに係る意匠に加え,昭和63年7月28日に発行された意匠第739567号公報(乙65)に掲載された意匠及び平成15年7月に発行された乙25カタログに掲載されたセラミックスペーサーSHの品番「SH-25×30」及び同「SH-30×35」に係る意匠をも併せ考慮すれば,鉄筋用スペーサーにおいて,以下の構成態様は周知なものということができる。 aほぼ長方形の4辺面が90度ずつの方向変換によって,コンクリート構造物成形用の型枠パネルと択一的に接触使用される一定厚みのコンクリートブロックから成る。 b上記長方形のほぼ中心に1個の結束用金属線材受け入れ孔を正背方向への貫通状態に貫通形成している。 c上記4辺面の角隅部は凸曲面に造形されている一方,その4辺面が鉄筋の係止用凹曲面として陥没されている。 旧成形金型(イ)証拠(乙9)によれば,被告は,平成13年3月6日,三誠化学工業所に対して,2個取りの旧成形金型を発注していたことが認められ,被告がそのころ旧成形金型を用いて旧ASスペーサーを製造していたことが推認できる。 証拠(乙62)及び検証の結果によれば,旧成形金型は,現在,被告会社の裏手にある資材置場に散乱し,放置されていることが認められ,少なくとも被告において旧ASスペーサーの製造工程を秘密にする意図は窺えない。また,旧成形金型の散乱状況や傷み具合からすれば,相当以前からこのように放置されていたことが窺える。 これらの事実に加え,前記 ア のとおり,旧ASスペーサーが本件意匠()登録2に係る出願前に既に販売されていたことを併せ考慮すれば,被告は本件意匠登録2に係る出願前において,旧成形金型を使用して旧ASスペーサーを製造しており,旧成形金型に係る意匠は公知であったものと認められる。 そして,証拠(乙35)によれば,旧成形金型のうち,旧ASスペーサーA4050を製造するための成形キャビティに係る意匠は以下のようなものであることが認められる。 【斜視図】【平面図】そうすると,鉄筋用スペーサーの成形金型において,以下の構成態様は公知であったと認められる。 a鉄筋用スペーサーの2個取りとして,合成樹脂から鉄筋用スペーサーと対応する大きさ・形状に一体成形された一対の胴体(キャビティ)を有する。 bその胴体(キャビティ)の各個は鉄筋用スペーサーと対応する平形状(凹凸曲面)の囲い壁面と,フラットな底面とから断面ほぼU字型に造形されている。 cしかも,上記胴体(キャビティ)におけるフラットな底面のほぼ中心部からは,芯棒が上向き一体に垂立されている。 dさらに,上記胴体(キャビティ)を形作っている囲い壁面の上縁部からは,一対の平行な取付座が水平に張り出している。 e上記胴体(キャビティ)の囲い壁面は,対向する囲い壁面がそれぞれ同形の凹凸曲面に形成されており,隣接する囲い壁面との関係では異なる形の凹凸曲面に形成されている。 f側面から見て,胴体(キャビティ)の上面から取付座に亘って,面一に形成されており,取付座にはビス穴が形成されている。 g平面から見て,一対の胴体(キャビティ)の長辺が金型の長辺(取付座)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の短辺が金型の短辺に沿って配置されている。 ウ検討本件登録意匠2の構成態様?U,?V及び?Yについて(ア)本件登録意匠2に係る物品である鉄筋用スペーサーの成形金型の需要者は鉄筋用スペーサーの製造業者であるところ,本件登録意匠2のうち生コンクリートを充填する胴体(キャビティ)に係る部分は,製造業者にとって注意を払い得る箇所ではある。 しかし,上記認定のとおり,上記イ ア のaないしcの構成態様を有す()る鉄筋用スペーサーは周知であるところ,本件登録意匠2のうち,胴体に係る部分(ただし,陥没数字を賦形するための凸版に係る部分を除く )は,単に上記周知な鉄筋用スペーサーの形態を反転させたものに 。 すぎないものと認められる。 加えて,鉄筋用スペーサーの成形金型において,上記イ イ のb,c及()びeの各構成態様が公知であることをも併せ考慮すれば,本件登録意匠2の構成態様のうち,胴体に係る構成態様?U,?V及び?Yについては,需要者又は取引者に特段の美感を想起させるものではなく,本件登録意匠2の要部たり得ないというべきである。 なお,原告は,胴体の外部形状は内部形状から一義的に定まるものではないと主張するが,そもそも外部形状は需要者たる鉄筋用スペーサーの製造業者が注意を払う部分ではないので,かかる部分が要部となることもないというべきである。 本件登録意匠2の構成態様?T及び?[について(イ)本件登録意匠2においては胴体が2個設けられているが,単に同じ胴体を並べてつなげたものにすぎず,上記 ア のとおり当該胴体に係る構成()態様が特段の美感を想起させるものではない以上,これを2個並べて組み合わせたとしても,特段の美感を想起させることにはならない。 また,本件登録意匠2の胴体の短辺と長辺の長さは,大きく異なるものではないから,胴体を並べるに当たって,その短辺を金型の長辺に沿って配置するか,あるいは胴体の長辺を金型の長辺に沿って配置するかによって,美感に大きな差異が生じるとも認め難い。 加えて,鉄筋用スペーサーの成形金型において,上記イ イ のa及びg()の各構成態様が公知であることをも併せ考慮すれば,本件登録意匠2の構成態様?T及び?[は要部たり得ないというべきである。 本件登録意匠2の構成態様?Wについて(ウ)本件登録意匠2の胴体の底面には「35」と「40」の2種の陥没数字を賦形するための凸版が設けられているところ,需要者たる鉄筋用スペーサーの製造業者にとって,かかる凸版は陥没数字の賦形手段として注意を払い得る箇所ではある。 しかし,前記2 4 ウ ウ のとおり,本件登録意匠1において,かぶり厚()()さを陥没数字によって表示することは当業者にとってありふれた手法であるところ,本件登録意匠2の上記凸版は,単に陥没数字を賦形するために数字を反転させて凸版にしたものにすぎず,創作性の低いものであり,特段の美感を想起させるようなものとはいい難い。 また,当該凸版が設けられた箇所も,胴体の底面であり,特に目立つ箇所ではないことからすれば,その有無によって本件登録意匠2の全体の美感に与える影響は限定的というべきである。 そうすると,本件登録意匠2の構成態様?Wは,本件登録意匠2を特徴づける一つの要素であるとしても,需要者の注意を惹きつける要部であるとまでは認め難い。 構成態様?X及び?Zについて(エ)本件登録意匠2においては,胴体の囲い壁面の上縁部から水平に取付座が張り出しているところ(構成態様?X ,乙36公報の第1図及び上 )記イ イ の旧成形金型の構成態様dによれば,同取付座自体は,本件意匠()登録2に係る出願前に公知であったとことが認められる。 これに対し,同取付座に設けられている本件階段状部(構成態様?Z)については,本件証拠上,かかる構成態様が公知ないし周知であったことを認めるに足りる証拠はない。 また,上記アのとおり,本件階段状部は,本件登録意匠2に係る物品を枠台に取り付けて使用する際 「仕切り桟」と「押え板」とによって ,挟持固定するためのものであり,前記ア ア の参考図(1)及び同(2)()によれば,本件階段状部を設けることによって,枠台への固定後は,枠台の天板と成形金型の取付座が同一面になり,成形金型に生コンクリートを流し込んだ際,余分な生コンクリートを容易に掻き取ることができ,しかも本件階段状部同士で隣り合う2つの成形金型の間に仕切り桟が嵌まり込むことによって,同成形金型間へ生コンクリートのノロが入り込むこともないという効果を奏する。逆に,被告のように成形金型を単に枠台に乗せて使用するような製造方法(前記1 2 ア)を採る場合には,()本件登録意匠2のような成形金型を使用すると,本件階段状部によって形成された窪みに生コンクリートのノロが入り込んでしまい,容易に掻き取ることもできないので,製造において大きな支障を来すことになる。 このように,本件階段状部は鉄筋用スペーサーの製造方法と直接結びつくものであり,需要者たる鉄筋用スペーサーの製造業者の注意を強く惹きつける部分ということができ,また成形金型全体の美感に与える影響も大きいものと認められる。 よって,構成態様?Zの本件階段状部は本件登録意匠2の要部であると認められる。 本件登録意匠2の構成態様?\について(オ)本件登録意匠2の構成態様?\は成形金型の底面に係るものであるところ,需要者が底面に注目するとは考え難いので,かかる構成態様は要部たり得ないというべきである。 4イ号金型意匠の構成態様()別紙イ号金型目録添付の図面によれば,イ号金型意匠の構成態様について,以下のとおりと認められる(以下,イ号-2金型に係る意匠を「イ号-2金型意匠」といい,イ号-3金型に係る意匠ないしイ号-6金型に係る意匠についても同様とする。。)アイ号-2金型意匠の構成態様鉄筋用スペーサーの2個取りとして,合成樹脂から鉄筋用スペーサー ??と対応する大きさ・形状に一体成形された一対の胴体(キャビティ)を有している。 その胴体(キャビティ)の各個は鉄筋用スペーサーと対応する平面形 ??状(凹凸曲面)の囲い壁面と,フラットな底面とから断面ほぼU字型に造形されている。 しかも,上記胴体(キャビティ)におけるフラットな底面のほぼ中心 ??部からは,芯棒が上向き一体的に垂立されている。 また,同じくフラットな底面における上記芯棒の周辺部から,陥没数 ??字を賦形するための凸版が,反転数字として隆起されている。その数字は「30」と「35」の2種である。 さらに,上記胴体(キャビティ)を形作っている囲い壁面の上縁部か ??らは,一対の平行な張出部が水平に張り出している。 vi上記胴体(キャビティ)の囲い壁面は,対向する囲い壁面がそれぞれ同形の凹凸曲面に形成されており,隣接する囲い壁面との関係では異なる形の凹凸曲面に形成されている。 vii側面から見て,胴体(キャビティ)の上面から張出部に亘って,面一に形成されている。 viii平面から見て,一対の胴体(キャビティ)の各長辺が金型の長辺(張出部)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の各短辺が金型の短辺に沿って配置されている。 ix底面図に示された胴体(キャビティ)の四隅は,やや角ばった形状になっている。 イイ号-3金型意匠の構成態様鉄筋用スペーサーの2個取りとして,合成樹脂から鉄筋用スペーサー ??と対応する大きさ・形状に一体成形された一対の胴体(キャビティ)を有している。 その胴体(キャビティ)の各個は鉄筋用スペーサーと対応する平面形 ??状(凹凸曲面)の囲い壁面と,フラットな底面とから断面ほぼU字型に造形されている。 しかも,上記胴体(キャビティ)におけるフラットな底面のほぼ中心 ??部からは,芯棒が上向き一体的に垂立されている。 また,同じくフラットな底面における上記芯棒の周辺部から,陥没数 ??字を賦形するための凸版が,反転数字として隆起されている。その数字は「35」と「40」の2種である。 さらに,上記胴体(キャビティ)を形作っている囲い壁面の上縁部か ??らは,一対の平行な張出部が水平に張り出している。 vi上記胴体(キャビティ)の囲い壁面は,対向する囲い壁面がそれぞれ同形の凹凸曲面に形成されており,隣接する囲い壁面との関係では異なる形の凹凸曲面に形成されている。 vii側面から見て,胴体(キャビティ)の上面から張出部に亘って,面一に形成されている。 viii平面から見て,一対の胴体(キャビティ)の各長辺が金型の長辺(張出部)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の各短辺が金型の短辺に沿って配置されている。 ix底面図に示された胴体(キャビティ)の四隅は,やや角ばった形状になっている。 ウイ号-4金型意匠の構成態様鉄筋用スペーサーの2個取りとして,合成樹脂から鉄筋用スペーサー ??と対応する大きさ・形状に一体成形された一対の胴体(キャビティ)を有している。 その胴体(キャビティ)の各個は鉄筋用スペーサーと対応する平面形 ??状(凹凸曲面)の囲い壁面と,フラットな底面とから断面ほぼU字型に造形されている。 しかも,上記胴体(キャビティ)におけるフラットな底面のほぼ中心 ??部からは,芯棒が上向き一体的に垂立されている。 また,同じくフラットな底面における上記芯棒の周辺部から,陥没数 ??字を賦形するための凸版が,反転数字として隆起されている。その数字は「40「45」及び「50」の3種である。 」,さらに,上記胴体(キャビティ)を形作っている囲い壁面の上縁部か ??らは,一対の平行な張出部が水平に張り出している。 vi上記胴体(キャビティ)の囲い壁面は,対向している長辺の囲い壁面は非対称形の凹凸曲面に形成されており,対向している短辺の囲い壁面は対称形の凹凸曲面に形成されている。 vii側面から見て,胴体(キャビティ)の上面から張出部に亘って,面一に形成されている。 viii平面から見て,一対の胴体(キャビティ)の各長辺が金型の長辺(張出部)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の各短辺が金型の短辺に沿って配置されている。 ix底面図に示された胴体(キャビティ)の四隅は,やや角ばった形状になっている。 エイ号-5金型意匠の構成態様鉄筋用スペーサーの2個取りとして,合成樹脂から鉄筋用スペーサー ??と対応する大きさ・形状に一体成形された一対の胴体(キャビティ)を有している。 その胴体(キャビティ)の各個は鉄筋用スペーサーと対応する平面形 ??状(凹凸曲面)の囲い壁面と,フラットな底面とから断面ほぼU字型に造形されている。 しかも,上記胴体(キャビティ)におけるフラットな底面のほぼ中心 ??部からは,芯棒が上向き一体的に垂立されている。 また,同じくフラットな底面における上記芯棒の周辺部から,陥没数 ??字を賦形するための凸版が,反転数字として隆起されている。その数字は「50「55」及び「60」の3種である。 」,さらに,上記胴体(キャビティ)を形作っている囲い壁面の上縁部か ??らは,一対の平行な張出部が水平に張り出している。 vi上記胴体(キャビティ)の囲い壁面は,対向している長辺の囲い壁面は非対称形の凹凸曲面に形成されており,対向している短辺の囲い壁面は対称形の凹凸曲面に形成されている。 vii側面から見て,胴体(キャビティ)の上面から張出部に亘って,面一に形成されている。 viii平面から見て,一対の胴体(キャビティ)の各長辺が金型の長辺(張出部)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の各短辺が金型の短辺に沿って配置されている。 ix底面図に示された胴体(キャビティ)の四隅は,丸まった形状になっている。 オイ号-6金型意匠の構成態様鉄筋用スペーサーの2個取りとして,合成樹脂から鉄筋用スペーサー ??と対応する大きさ・形状に一体成形された一対の胴体(キャビティ)を有している。 その胴体(キャビティ)の各個は鉄筋用スペーサーと対応する平面形 ??状(凹凸曲面)の囲い壁面と,フラットな底面とから断面ほぼU字型に造形されている。 しかも,上記胴体(キャビティ)におけるフラットな底面のほぼ中心 ??部からは,芯棒が上向き一体的に垂立されている。 また,同じくフラットな底面における上記芯棒の周辺部から,陥没数 ??字を賦形するための凸版が,反転数字として隆起されている。その数字は「60「65」及び「70」の3種である。 」,さらに,上記胴体(キャビティ)を形作っている囲い壁面の上縁部か ??らは,一対の平行な張出部が水平に張り出している。 vi上記胴体(キャビティ)の囲い壁面は,対向している長辺の囲い壁面は非対称形の凹凸曲面に形成されており,対向している短辺の囲い壁面は対称形の凹凸曲面に形成されている。 vii側面から見て,胴体(キャビティ)の上面から張出部に亘って,面一に形成されている。 viii平面から見て,一対の胴体(キャビティ)の各長辺が金型の長辺(張出部)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の各短辺が金型の短辺に沿って配置されている。 ix底面図に示された胴体(キャビティ)の四隅は,丸まった形状になっている。 5本件登録意匠2とイ号-2金型意匠との類否()ア共通点前記認定の本件登録意匠2とイ号-2金型意匠の各構成態様からすれば,本件登録意匠2とイ号-2金型意匠との間には,以下の共通点が認められる。 鉄筋用スペーサーの2個取りとして,合成樹脂から鉄筋用スペーサー(ア)と対応する大きさ・形状に一体成形された一対の胴体(キャビティ)を有している(本件登録意匠2の構成態様?Tとイ号-2金型意匠の構成態様:以下「共通点?@」という。 ?? 。)その胴体(キャビティ)の各個は鉄筋用スペーサーと対応する平面形(イ)状(凹凸曲面)の囲い壁面と,フラットな底面とから断面ほぼU字型に造形されている(本件登録意匠2の構成態様?Uとイ号-2金型意匠の構成態様:以下「共通点?A」という。 ?? 。)しかも,上記胴体(キャビティ)におけるフラットな底面のほぼ中心(ウ)部からは,芯棒が上向き一体的に垂立されている(本件登録意匠2の構成態様?Vとイ号-2金型意匠の構成態様:以下「共通点?B」とい ??う。。)また,同じくフラットな底面における上記芯棒の周辺部からは,陥没(エ)数字を賦形するための凸版が,反転数字として隆起されている(本件登録意匠2の構成態様?Wの一部とイ号-2金型意匠の構成態様の一部:??以下「共通点?C」という。。)さらに,上記胴体(キャビティ)を形作っている囲い壁面の上縁部か(オ)らは,一対の平行な取付座(イ号-2金型意匠では「張出部 )が水平 」に張り出している(本件登録意匠2の構成態様?Xの一部とイ号-2金型意匠の構成態様の一部:以下「共通点?D」という。 ?? 。)上記胴体(キャビティ)の囲い壁面は,対向する囲い壁面がそれぞれ(カ)同形の凹凸曲面に形成されており,隣接する囲い壁面との関係では異なる形の凹凸曲面に形成されている(本件登録意匠2の構成態様?Yとイ号-2金型意匠の構成態様vi:以下「共通点?E」という。。)イ差異点他方,本件登録意匠2とイ号-2金型意匠との間には,以下の差異点が認められる。 本件登録意匠2の胴体底面に設けられた陥没数字を賦形するための凸(ア)版の反転数字が「35」と「40」であるのに対し,イ号-2金型意匠では「30」と「35」である(以下「差異点?@」という。。)本件登録意匠2の取付座には本件階段状部が設けられているのに対し,(イ)イ号-2金型意匠の張出部はこのような階段状部は形成されておらず,面一に形成されている(以下「差異点?A」という。。)本件登録意匠2では,平面から見て,一対の胴体(キャビティ)の短(ウ)辺が金型の長辺(取付座)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の長辺が金型の短辺に沿って配置されているのに対し,イ号-2金型意匠では,一対の胴体(キャビティ)の各長辺が金型の長辺(張出部)に沿って配置され,上記一対の胴体(キャビティ)の各短辺が金型の短辺に沿って配置されている(以下「差異点?B」という。。)本件登録意匠2の底面図に示された胴体の四隅は丸まった形状になっ(エ)ているのに対し,イ号-2金型意匠ではやや角張った形状になっている(以下「差異点?C」という。。)ウ検討上記共通点?@ないし?Eは,本件登録意匠2の構成態様?Tないし?Yに係るものであるところ,これらについては前記 3 ウで認定したとおり,要部た()り得ないものであるか(共通点?@〜?B,?D,?E ,又は特段の美感を想起 )させるものではないもの(共通点?C)であるから,これらの共通点が類否判断に与える影響については限定的というべきである。 これに対し,上記イ認定の差異点のうち差異点?Aは要部に係るものであり,しかもイ号-2金型意匠においては,階段状部が何ら形成されていないのであるから,この点は需要者が注視する部分に係る顕著な形態上の差異というべきであり,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものと認められる。なお,上記差異点のうち,その余の点(差異点?@,?B,?C)は,いずれも類否判断に大きな影響を与えるものとは認められない。 よって,本件階段状部に係る差異点?Aは,共通点?@ないし?Eによってもたらされる両意匠における共通性,類似性を凌駕するものであるから,イ号-2金型意匠が本件登録意匠2に類似するものとは認められない。 6本件登録意匠2とイ号-3金型意匠との類否()ア共通点前記認定の本件登録意匠2とイ号-3金型意匠の各構成態様からすれば,本件登録意匠2とイ号-3金型意匠との間には,イ号-2金型意匠に係る共通点?@ないし?Eがその共通点として認められるほか,胴体底面に設けられた陥没数字を賦形するための凸版の反転数字が「35」と「40」である点においても共通していることが認められる。 イ差異点他方,本件登録意匠2とイ号-3金型意匠との間には,イ号-2金型意匠に係る差異点?Aないし?Cがその差異点として認められる。 ウ検討上記本件登録意匠2とイ号-3金型意匠との共通点は,反転数字自体が共通している点を考慮してもなお,イ号-2金型意匠と同一の理由(前記5 ウ)により,類否判断に与える影響は限定的というべきである。なぜな()ら,反転数字が要部ではない以上,その具体的数字の一致による影響もまた限定的というべきであるからである。 また,同様に,イ号-2金型に係る類否において説示したとおり,本件階段状部に係る差異点?Aは両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものであり,上記共通点によってもたらされる両意匠における共通性,類似性を凌駕するものと認められる。 よって,イ号-3金型意匠は本件登録意匠2に類似するとは認められない。 7本件登録意匠2とイ号-4金型意匠ないしイ号-6金型意匠との類否()ア共通点前記認定の本件登録意匠2とイ号-4金型意匠ないしイ号-6金型意匠の各構成態様からすれば,本件登録意匠2とイ号-4金型意匠ないしイ号-6金型意匠との間には,イ号-2金型意匠に係る共通点?@ないし?Dがその共通点として認められる。 イ差異点他方,本件登録意匠2とイ号-4金型意匠ないしイ号-6金型意匠との間には,イ号-2金型意匠に係る差異点?@ないし?Cがその差異点として認められる(ただし,差異点?@の具体的な数字については,イ号-4金型意匠ないしイ号-6金型意匠によってそれぞれ異なる )ほか,本件登録意 。 匠2では,胴体の対向する囲い壁面がそれぞれ同形の凹凸曲面に形成されており,隣接する囲い壁面との関係では異なる形の凹凸曲面に形成されているのに対し,イ号-4金型意匠ないしイ号-6金型意匠においては,対向している長辺の囲い壁面は非対称形の凹凸曲面に形成されており,対向している短辺の囲い壁面は対称形の凹凸曲面に形成されている点において異なっていることが認められる。 ウ検討本件登録意匠2とイ号-2金型意匠において説示したとおり,共通点?@ないし?Dが類否判断に与える影響は限定的というべきである。 また,同様に,イ号-2金型意匠において説示したとおり,本件階段状部に係る差異点?Aは両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものであり,上記共通点によってもたらされる両意匠における共通性,類似性を凌駕するものと認められる。 よって,イ号-4金型意匠ないしイ号-6金型意匠は,いずれも本件登録意匠2に類似するとは認められない。 8小括()以上より,イ号金型意匠は,いずれも本件登録意匠2と類似しないから,争点3に係るその余の争点について判断するまでもなく,イ号金型を使用する被告の行為が本件意匠権2を侵害するものとは認められない。 第5結論以上により,原告の本件請求は,その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |