関連審決 | 不服2000-15237 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成20ワ8611特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20ワ2387特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19ワ22715特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20ワ12952特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20ワ12516損害賠償請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 物の発明 / 方法の発明 / 新規性 / インターネット / アクセス / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 相違点の認定 / 周知技術 / 慣用技術 / 公知技術 / 先願主義 / 上位概念 / 技術的範囲 / 実施可能要件 / 技術常識 / 発明の詳細な説明 / 発明が明確 / 技術的特徴 / 遡及 / 優先権 / 分割出願 / クレーム / ライセンス / 抵触 / 原出願日 / 優先日 / 対象製品 / 出願経過 / 参酌 / 文言解釈 / 技術的意義 / 発明の要旨認定 / 置き換え / 容易に想到(容易想到性) / 信義則 / 禁反言 / 特許発明 / 実施 / 加工 / 間接侵害 / 構成要件 / 構成要件充足性 / 方法の使用 / のみ用いる / 一般に流通 / 課題解決に不可欠(課題の解決に不可欠) / 具体的態様 / 差止請求(差止) / 侵害 / 損害額 / 設定登録 / 拒絶査定 / 拒絶理由通知 / 新規事項追加(新規事項の追加) / 請求の範囲 / 拡張 / 変更 / 合理的な理由 / |
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事件 |
平成
19年
(ワ)
27187号
特許権侵害差止等請求事件
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アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス《以下省略》 原告スターサイトテレキャスト インコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士片山英二 同 本多広和 同 岡本尚美 同 牧恵美子 同 補佐人弁理 士加藤志麻子東京都港区《以下省略》 被告株式会社東芝 同訴訟代理人弁護士内田公志 同 鮫島正洋 同 木村貴司 同 岩永利彦 同 松島淳也 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2009/07/15 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1原告の請求をいずれも棄却する。 2訴訟費用は原告の負担とする。 3この判決に対する控訴のための付加期間を14日と定める。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求1被告は,別表1記載のレコーダー及び別表2記載のテレビを製造,販売してはならない。 2被告は,前項記載のレコーダー及びテレビを廃棄せよ。 3被告は,原告に対し,26億3212万円及びこれに対する平成19年10月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4仮執行宣言第2事案の概要本件は,テレビジョン番組リストのユーザーインタフェースに関する特許権を有する原告が,被告に対し,被告が製造,販売した別表1記載の各製品(以下「イ号物件」といい,イ号物件を用いて実施される方法を「イ号方法」という。)及び別表2記載の各製品(以下「ロ号物件」といい,ロ号物件を用いて実施される方法を「ロ号方法」という。なお,イ号物件及びロ号物件を併せて「被告製品」という。)は,上記特許権に係る発明の技術的範囲に属し,上記特許権を侵害すると主張して,被告製品の製造,販売の差止め及び廃棄を求めるとともに,特許法102条3項に基づく損害賠償として,26億3212万円及びこれに対する本訴状送達日の翌日である平成19年10月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1争いのない事実等(争いのない事実以外は,証拠を項目の末尾に記載する。)(1)原告の特許権(甲2)原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」といい,本件特許に係る発明を「本件発明」という。)を有している。 特許番号第3600149号発 明 の 名 称テレビジョン番組リストのユーザーインタフェース出願日平成12年10月20日分 割 の 表 示特願平3-516691の分割原出願日平成3年9月10日優先日平成2年9月10日優 先 権 主 張 国米国登録日平成16年9月24日特許請求の範囲請求項1(請求項1に係る発明を「本件発明1」という。)「タイトル,放送時間そしてチャンネルをそれぞれが含んでいる複数のテレビジョン番組リストを電子メモリに記憶するステップ,時間とチャンネルのグリッドガイド形式で前記の複数のテレビジョン番組リストのチャンネルの中の幾つかをモニタースクリーン上に表示するステップ,このモニタースクリーン上でカーソルを移動してグリッドガイド形式で表示されたチャンネルの一つに目印を付けるステップ,そしてグリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目印を付けたチャンネルを表示するステップを備え,前記の単一チャンネル形式はその目印を付けたチャンネルに対応するチャンネルのテレビジョン番組リストを順次配列した行を含んでいることを特徴としたテレビジョン番組リストのデータベースを閲覧する方法。」請求項6(請求項6に係る発明を「本件発明2」という。)「タイトル,放送時間そしてチャンネルをそれぞれが含んでいる複数のテレビジョン番組リスト,このテレビジョン番組リストの中の幾つかを表示する時間とチャンネルのグリッドガイド,このグリッドガイドに表示されたテレビジョン番組リストの一つを選択して目立たさせる可動カーソル,そして時間とチャンネルのグリッドガイドをその目立たせたテレビジョン番組リストのチャンネルの単一チャンネルガイドに変える手段を備えていることを特徴とする電子番組ガイド。」請求項8(請求項8に係る発明を「本件発明3」という。)「テレビジョン番組リストを複数のセル内に表示している時間とチャンネルのグリッドガイド形式で表示モニターに,RAMに記憶したテレビジョン番組リストを表示させる信号を発生し,その表示されたテレビジョン番組リストの一つを目立たさせる信号を発生し,そして,グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目立たされたテレビジョン番組リストを表示する信号を発生するようプログラムされていることを特徴としたマイクロプロセッサ。」請求項16(請求項16に係る発明を「本件発明4」という。)「複数のテレビジョン番組リストに対応し,テレビジョン番組リスト毎にタイトル,チャンネルそして開始時間を含んでいるデータファイルをメモリに記憶するステップ,メモリに記憶されている複数のテレビジョン番組リストをディスプレイモニターに表示するステップ,記録するためビデオ記録媒体をVCRまたはその他の記録装置内に装填するステップ,表示された複数のテレビジョン番組リストの中の一つを記録するために選択するステップ,そして記録するために選択されたテレビジョン番組リストが示している番組をVCRまたはその他の記録装置に記録する…ために前記の記録するために選択されたテレビジョン番組リストのデータを前記のデータファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送するステップを備えることを特徴とするVCRまたはその他の記録装置を使用して,ビデオ記録媒体にテレビジョン番組を記録する方法。」請求項30(請求項30に係る発明を「本件発明5」という。)「タイトル,チャンネルそして開始時間をテレビジョン番組リスト毎に含んでいる複数のテレビジョン番組リストのデータファィルを記憶しているRAMから前記の複数のテレビジョン番組リストを取り出してディスプレイモニターに表示する信号を発生し,この表示された複数のテレビジョン番組リストの中の一つを記録するためその一つのテレビジョン番組リストを特定する信号を発生し,そしてこの記録するために選択されたテレビジョン番組リストに対応するデータをデータファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送するための信号を発生するようプログラムされ,前記の記録するために選択されたテレビジョン番組リストが示している番組を記録させるようにすることを特徴としたマイクロプロセッサ。」(2)構成要件の分説ア本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりとなる。 Aタイトル,放送時間そしてチャンネルをそれぞれが含んでいる複数のテレビジョン番組リストを電子メモリに記憶するステップ,B時間とチャンネルのグリッドガイド形式で前記の複数のテレビジョン番組リストのチャンネルの中の幾つかをモニタースクリーン上に表示するステップ,Cこのモニタースクリーン上でカーソルを移動してグリッドガイド形式で表示されたチャンネルの一つに目印を付けるステップ,そしてDグリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目印を付けたチャンネルを表示するステップEを備え,前記の単一チャンネル形式はその目印を付けたチャンネルに対応するチャンネルのテレビジョン番組リストを順次配列した行を含んでいるFことを特徴としたテレビジョン番組リストのデータベースを閲覧する方法。 イ本件発明2を構成要件に分説すると,次のとおりとなる。 Gタイトル,放送時間そしてチャンネルをそれぞれが含んでいる複数のテレビジョン番組リスト,Hこのテレビジョン番組リストの中の幾つかを表示する時間とチャンネルのグリッドガイド,Iこのグリッドガイドに表示されたテレビジョン番組リストの一つを選択して目立たさせる可動カーソル,そしてJ時間とチャンネルのグリッドガイドをその目立たせたテレビジョン番組リストのチャンネルの単一チャンネルガイドに変える手段Kを備えていることを特徴とする電子番組ガイド。 ウ本件発明3を構成要件に分説すると,次のとおりとなる。 Lテレビジョン番組リストを複数のセル内に表示している時間とチャンネルのグリッドガイド形式で表示モニターに,RAMに記憶したテレビジョン番組リストを表示させる信号を発生し,Mその表示されたテレビジョン番組リストの一つを目立たさせる信号を発生し,そしてNグリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目立たされたテレビジョン番組リストを表示する信号を発生Oするようプログラムされていることを特徴としたマイクロプロセッサ。 エ本件発明4を構成要件に分説すると,次のとおりとなる。 P複数のテレビジョン番組リストに対応し,テレビジョン番組リスト毎にタイトル,チャンネルそして開始時間を含んでいるデータファイルをメモリに記憶するステップ,Qメモリに記憶されている複数のテレビジョン番組リストをディスプレイモニターに表示するステップ,R記録するためビデオ記録媒体をVCRまたはその他の記録装置内に装填するステップ,S表示された複数のテレビジョン番組リストの中の一つを記録するために選択するステップ,そしてT記録するために選択されたテレビジョン番組リストが示している番組をVCRまたはその他の記録装置に記録するために前記の記録するために選択されたテレビジョン番組リストのデータを前記のデータファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送するステップUを備えることを特徴とするVCRまたはその他の記録装置を使用して,ビデオ記録媒体にテレビジョン番組を記録する方法。 オ本件発明5を構成要件に分説すると,次のとおりとなる。 Vタイトル,チャンネルそして開始時間をテレビジョン番組リスト毎に含んでいる複数のテレビジョン番組リストのデータファィルを記憶しているRAMから前記の複数のテレビジョン番組リストを取り出してディスプレイモニターに表示する信号を発生し,Wこの表示された複数のテレビジョン番組リストの中の一つを記録するためその一つのテレビジョン番組リストを特定する信号を発生し,そしてXこの記録するために選択されたテレビジョン番組リストに対応するデータをデータファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送するための信号を発生するようYプログラムされ,前記の記録するために選択されたテレビジョン番組リストが示している番組を記録させるようにすることを特徴としたマイクロプロセッサ。 カなお,本件発明において,「グリッドガイド形式」とは,格子状のテレビジョン番組表(形式)をいう。 (3)被告の行為被告は,被告製品であるイ号物件及びロ号物件を,別表1及び2発売日欄記載の各発売日より製造し,販売している。 (4)被告製品の構成(甲5の1ないし24,甲6の1ないし35)ア被告製品が受信するのは,タイトル,放送時間のほか,「チャンネル」ではなく,「放送局コード」を含んでいる複数のテレビジョン番組情報である。 イ被告製品は,格子状の番組表形式に表示されたテレビジョン番組情報ごとに移動可能な枠を移動させ,テレビジョン番組情報の一つを目立たせることによって,対応する「テレビジョン番組情報にかかる欄」に目印を付けている。 (5)本件発明と被告製品との対比等ロ号方法は,本件発明4の要件Uを充足する。 (6)特許出願の経緯等ア原出願(乙6の1ないし7,乙8)(ア)原告は,平成3年9月10日,「テレビジョンスケジュールシステムのユーザーインタフェース」に関する発明(以下「原出願発明」という。)について,アメリカ合衆国において平成2年9月10日に行った特許出願(以下「原外国出願」という。)に基づく優先権を主張して,特許の出願(特願平3-516691,以下「原出願」という。)をした。 (イ)特許庁は,平成12年6月16日,原出願を拒絶査定し,原告は,同年9月25日,これに対する審判を請求(不服2000-15237)したが,特許庁は,平成14年5月31日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「原出願審決」という。)をした。 原告は,平成14年,東京高等裁判所に対し,上記審決に対する審決取消訴訟(同年(行ケ)第529号)を提起したが,同裁判所は,平成16年9月30日,請求棄却の判決をした。 イ本件特許(甲1,2,乙14,16,17)(ア)原告は,平成12年10月20日,原出願の分割出願として,本件特許の出願(特願2000-321391)をした。 (イ)原告は,本件特許の出願手続において,特許請求の範囲のうち,請求項1の要件Cに該当する部分について,当初は,「スクリーン上でカーソルを移動して,グリッドガイド形式で表示されたタイトルの一つに目印を付け,そして」と記載し,目印を付ける対象を「タイトル」としていたが,平成15年9月24日,手続補正書及び同日付け意見書を提出し,請求項の表現を読みやすく訂正するとの理由により,「このモニタースクリーン上でカーソルを移動してグリッドガイド形式で表示されたチャンネルの一つに目印を付けるステップ,そして」と補正し,目印を付ける対象を「チャンネル」とした。 (ウ)本件特許は,平成16年9月24日,特許権の設定登録がされた。 2争点(1)被告製品の構成(1)-1イ号方法及びイ号物件の構成(1)-2ロ号方法及びロ号物件の構成(2)侵害論(2)-1請求項における用語の解釈(2)-2本件発明1の侵害の有無(イ号方法及びイ号物件)(2)-3本件発明2の侵害の有無(イ号方法及びイ号物件)(2)-4本件発明3の侵害の有無(イ号方法及びイ号物件)(2)-5本件発明4の侵害の有無(ロ号方法及びロ号物件)(2)-6本件発明5の侵害の有無(ロ号方法及びロ号物件)(3)無効論(3)-1本件発明1の無効理由の有無(3)-2本件発明2の無効理由の有無(3)-3本件発明3の無効理由の有無(3)-4本件発明4の無効理由の有無(3)-5本件発明5の無効理由の有無(4)損害論3争点に対する当事者の主張(1)被告製品の構成(1)-1イ号方法及びイ号物件の構成(原告)アイ号方法及びイ号物件の構成は,次のとおりである。 (ア)本件発明1に対応するイ号方法の構成aタイトル,放送時間そしてチャンネルをそれぞれが含んでいる複数のテレビジョン番組情報(「テレビジョン番組情報」とは,テレビジョン番組を特定するための個々の番組単位の番組情報を意味する。以下同様。)を電子メモリに記憶し,b放送時間及びチャンネルをそれぞれ軸とする格子状の番組表形式で,前記の複数のテレビジョン番組情報のチャンネルの中の幾つかをモニタースクリーン上に表示し,cこのモニタースクリーン上でカーソルを移動させ,一つのテレビジョン番組情報を選択することによって表示されたチャンネルの一つに目印を付け,d複数チャンネルを表示する格子状の番組表形式の代わりに,単一チャンネルの番組表形式でその目印を付けたチャンネルを表示し,e前記の単一チャンネルの番組表形式はその目印を付けたチャンネルに対応するチャンネルのテレビジョン番組情報を順次配列した行を含んでいるfことを特徴とした,テレビジョン番組情報のデータベースを閲覧する方法。 (イ)本件発明2に対応するイ号物件の構成gタイトル,放送時間そしてチャンネルをそれぞれが含んでいる複数のテレビジョン番組情報,hこのテレビジョン番組情報の中の幾つかを表示する,放送時間及びチャンネルをそれぞれ軸とする格子状の番組表,iこの格子状の番組表に表示されたテレビジョン番組情報の一つを選択して目立たせる,移動可能なカーソル,そしてj格子状の番組表をその目立たせたテレビジョン番組情報に対応する単一チャンネルの番組表に変える手段kを含むことを特徴とする電子番組ガイド。 (ウ)本件発明3に対応するイ号物件の構成l放送時間及びチャンネルをそれぞれ軸とし,テレビジョン番組情報を複数のセル内に表示する格子状の番組表形式で表示モニターに,RAMに記憶したテレビジョン番組情報を表示させる信号を発生し,mその表示されたテレビジョン番組情報の一つをカーソルにより目立たせる信号を発生し,そしてn複数チャンネルを表示する格子状の番組表形式の代わりに単一チャンネルの番組表形式でその目立たせたテレビジョン番組情報を表示する信号を発生oするようプログラムされていることを特徴としたマイクロプロセッサ。 イ(ア)外部からの情報は,すべてRAMを経由しなければ「ハードディスクドライブ」(以下「HDD」という。)に記憶されることはなく,また,RAMを経由しなければ,データが記憶装置外に出力されることはない。HDDは,データを長期的に保存するために補助的記憶装置として用いられる外部記憶装置にすぎず,CPUはそこに記憶されている情報を直接読み書きすることができないから,記憶装置外から入力及び出力される情報はすべて,CPUが直接読み書きができるRAMにいったんは記憶される。HDDに情報が記憶されるとの主張は,RAMにも情報が記憶されることを自認することになる。 (イ)「放送局コード」は,各放送局に割り当てられたコード,すなわち,チャンネルを認識するための情報であるから,イ号物件は,チャンネルを含むテレビジョン番組情報を受信している。 (被告)ア原告の主張は争う。 イ(ア)イ号物件が受信するのは,「チャンネル」ではなく,「放送局コード」を含んでいる複数のテレビジョン番組情報である。 (イ)イ号物件がテレビジョン番組情報を記憶するのは,RAMではなく,HDDである。 (1)-2ロ号方法及びロ号物件の構成(原告)アロ号方法及びロ号物件の構成は,次のとおりである。 (ア)本件発明4に対応するロ号方法の構成p複数のテレビジョン番組情報について,それぞれのテレビジョン番組情報のタイトル,チャンネルそして開始時間を含んでいるデータファイルをメモリに記憶し,qメモリに記憶されている複数のテレビジョン番組情報をディスプレイモニターに表示し,r記録するためのビデオ記録媒体をVCRまたはその他の記録装置内に装填し,s表示された複数のテレビジョン番組情報の中の一つを,記録するために選択し,t選択されたテレビジョン番組情報が示している番組をVCRまたはその他の記録装置に記録するために,選択されたテレビジョン番組情報のデータを前記のデータファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送するuことを特徴とする,VCRまたはその他の記録装置を利用して,ビデオ記録媒体にテレビジョン番組を記録する方法。 (イ)本件発明5に対応するロ号物件の構成v複数のテレビジョン番組情報について,それぞれのテレビジョン番組情報のタイトル,チャンネルそして開始時間を含んでいるデータファイルを記憶しているRAMから,テレビジョン番組情報を取り出してディスプレイモニターに表示する信号を発生し,wこの表示された複数のテレビジョン番組情報の中の一つが示している番組を記録するため,その一つのテレビジョン番組情報を特定する信号を発生し,xこの選択されたテレビジョン番組情報に対応するデータをデータファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送するための信号を発生するyようプログラムされ,前記の選択されたテレビジョン番組情報が示している番組を記録させるようにすることを特徴としたマイクロプロセッサ。 イ本件発明4及び5は録画の実行については何ら言及していないから,レコーダー単体で録画を実行していないとしても,構成要件充足性を欠くことにはならない。 (被告)ア原告の主張は争う。 イロ号物件が受信し記憶するのは,タイトル,放送時間のほか,「チャンネル」ではなく,「放送局コード」を含んでいる複数のテレビジョン番組情報である。 ウロ号物件(テレビdeナビ録画方式を採用する機種)でも,録画先として「東芝RDアナログ」が設定されている場合には,レコーダー単体に対する録画指示を行っているものではない。 (2)侵害論(2)-1請求項における用語の解釈アテレビジョン番組リスト(原告)(ア)「テレビジョン番組リスト」とは,テレビジョン番組を特定するための個々の番組単位の番組情報を意味する。 (イ)本件特許請求の範囲の記載全体を考慮し,技術的に合理的に解釈すると,本件発明1の要件Aの記載からは,表示された複数の「テレビジョン番組リスト」が,それぞれ「タイトル,放送時間そしてチャンネル」という番組を特定するための番組情報を含むものであり,また,「テレビジョン番組リスト」そのものがメモリに記憶される対象であると解される。本件発明1の要件B及び要件Eの各記載からは,「テレビジョン番組リスト」そのものは,「グリッドガイド」形式や「単一チャンネル」形式という表示形式を持つものではなく,むしろ,それらの表示形式で表示される対象として理解される。本件発明3の要件Lの記載では,「テレビジョン番組リスト」自体,「複数のセル内」に表示されなければならないが,本件発明4の要件Tでは,「テレビジョン番組リスト」が番組の記録のための選択の対象として記載されているが,記録のためには番組の特定が必要とされることは技術常識であるから,「テレビジョン番組リスト」が,多数の番組を含む「番組表」などではあり得ず,「個々の番組」と解される。そうすると,本件発明1及び4の特許請求の範囲において,「テレビジョン番組リスト」は,RAMに記憶される個々の番組単位の番組情報として規定されており,また,スクリーン上に現れた場合には,番組表の中で複数表示され,記録したい番組を特定するために選択し得るものと解釈するのが合理的である(なお,本件発明2,3,5に対応する請求項中の記載からも,同様に解される。)。 (ウ)本件特許に係る明細書(以下「本件明細書」という。)の記載からも,原告の解釈に矛盾はない。 ?@段落【0009】の「表示されたテレビジョン番組リストの一つを目立たさせる」との記載からすると,「テレビジョン番組リスト」とは,番組情報がスクリーン上に表示として現れた場合における,個々の番組単位の番組情報を指していると解される。同段落の「表示された複数の番組リストの内の記録のための番組リストを識別する」,「記録のために選択された番組リスト」との記載からすると,「テレビジョン番組リスト」は,記録のために選択する情報としても,個々の番組単位の番組情報を意味していると解される。 ?A段落【0011】の「番組リストの幾つかは,長さのため,二つかそれ以上のコラム28を重複して使用している。」との記載からすると,「番組リスト」が番組表自体ではなく,番組表の中で,コラム(列)を2つ以上使用して表示されることのある「個々の番組単位の番組情報」であると解される。また,同段落全体としては,スクリーン上の番組表(アレー)が「番組リスト」の長さに応じた不規則なセルによって構成されていることが説明されているから,同段落の「アレーは,半時間長の三つのコラム28,及び十二の行30の番組リストとして構成されている」との記載は,「アレー(番組表)は,半時間長の三つのコラム28,及び十二の行30の(セルに表示された)番組リストにより構成されている」と解するのが自然である。 ?B段落【0031】の「リスト58」,「番組リスト58」との記載は,【図7】の特定の部位を示すために用いられている表記にすぎず,かかる意味をもって「テレビジョン番組リスト」の解釈とすることはできない。また,同段落の「リスト58は,そのチャンネルの一連の番組リストの行60とチャンネル情報フィールド62を含む」との記載からすると,「番組リスト」は,番組表自体ではなく,番組表に含まれる一連の「個々の番組単位の番組情報」を意味していることが明らかである。 ?C段落【0022】の「TV表示部のテキストスペースの制限により,可能な限りTVリストの多数の行を表示するのが好ましい」との記載は,「TVリスト」という情報を多数の行にわたって表示することを説明していると解される。 ?D段落【0065】の「リスト」が「並んだもの」を意味するとして,「テレビジョン番組リスト」も「テレビジョン番組のタイトルの並んだもの」と解する被告の主張は,特許請求の範囲の記載全体からみた場合における技術的合理性を考慮することをせず,文言を分割して別々に解釈し,これを組み合わせるという手法であり,適切でない。 ?E段落【0019】によると,番組表情報が更新される都度,番組リンクアイコン46が付された番組のタイトル情報と更新後の「新規のリスト」との突き合わせがされ,合致した場合には「新規のリスト」に自動的に記録のために標識が付けられるから,自動的に記録のために標識が付けられるのは,「番組表」自体ではなく,新規の「リスト」すなわち「個々の番組単位の番組情報」である。 ?F段落【0024】によると,【図6】の番組ノート52は,「3または4のリスト」を隠してしまうが,必要に応じて「選択されたリスト」を隠すのを回避できるようになっているから,同段落の「リスト」は番組表自体ではなく,「個々の番組単位の番組情報」であることは明らかである。 (ウ)原出願審決の審決取消訴訟における特許庁の主張及び裁判所の判断は,原告の解釈と整合している。 ?@原出願審決の審決取消訴訟では,原出願発明における「番組ノート」が,「テレビジョン番組リスト」が表示された「セル」内に表示される情報であってもよいのかが本質的に争われたが,特許庁は,「テレビジョン番組リスト」が「テレビジョン番組を特定するための,個々の番組単位の番組情報」であるとの認識に基づき,「『テレビジョン番組リスト』はテレビジョン番組のリストなのであるから,常識的には,テレビジョン番組のタイトル(名称)のリストと解すべきである。そして,本願発明は,セル内に表示されているものが全て『テレビジョン番組リスト』ということではなく,『テレビジョン番組リスト』が『セル内に表示され』ているということに過ぎない」等として,「番組ノート」が「セル」内に表示されないということはできないとの意味で主張したものである。 ?A裁判所は,判決において「また,本願発明の『テレビジョン番組リスト』は,通常の意味からすれば,テレビジョン番組のタイトルのリストと解されるのであって,刊行物発明の『番組名称』に相当するものである」と述べたが,ここでは,「テレビジョン番組リスト」は,タイトル情報を含む番組情報として理解されているものである。 (エ)出願経過における主張について,信義則に基づく禁反言の法理が適用されるのは,「出願審査の過程における出願人の主張により,審査官や審判官の発明の技術的範囲の判断に影響を与えたと考えられる」場合であるが,原告は,出願経過において,拒絶理由を回避するべく「テレビジョン番組リスト」の文言を被告が主張するような意味に解すべきとの主張をしたことはなく,また,同文言に関する原告の主張が,原出願発明の進歩性の判断を左右させた事情もない。被告が主張する原告書面の記載も,部分的に同文言の意味に混乱を来した箇所があっただけである。原出願の審査手続や原出願審決の審決取消訴訟においても,「テレビジョン番組リスト」は,むしろ「個々の番組単位の番組情報」と解された上で審査審理がされているから,本件での主張と齟齬はなく,分割出願制度の趣旨に反することはない。 (オ)被告が挙げる特願2006-00226号及び特願2006-00227号は,本件特許の登録日よりも後に,本件特許のいわゆる「子出願」から分割出願されたものであり,本件特許の出願の審査経過とは無関係のものである。 (被告)(ア)「テレビジョン番組リスト」とは,テレビジョン番組のタイトルが並んだものを意味する。 (イ)「テレビジョン番組リスト」を文字どおり解すると,「テレビ」の「番組」に関する「リスト」(「表のように項目を並べたもの」であり,「情報」ではない。)である。 (ウ)本件発明1の要件Aについて,「テレビジョン番組リスト」を「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」と解釈しても,タイトルの並びに加えて放送時間,チャンネルを軸とした表形式で表わせば,それぞれ「タイトル,放送時間,そしてチャンネル」を含んでいるリストは観念し得るし,そのデジタル情報がRAMに記憶できるものであることは,原告及び被告いずれの解釈を採用しても可能である。 (エ)本件明細書の検討?@「テレビジョン番組リスト」の用語は,本件明細書の段落【0008】及び【0009】以外では用いられていないところ,段落【0009】は原出願の出願当初の明細書(以下「原出願当初明細書」という。)及び原外国出願の出願当初の明細書に記載がなく,分割出願である本件特許の出願時に追加された新規事項であるから,同段落の追加及び同段落に対応する各請求項は,分割要件に違反しており,原出願日を基準とする限り,同段落に基づく主張は,先願主義及び法が新規事項の追加を禁じた趣旨から認められるべきではない。 ?A「テレビジョン番組リスト」という文言が,本件明細書の「番組リスト」(段落【0011】及び【0031】)や「TVリスト」(段落【0022】)に相当すると善解しても,上記と同様の解釈となる。 a 段落【0011】の「アレーは半時間長の三つのコラム28,十二の行30の番組リストとして構成されている」との記載及び【図1】からすると,番組リストは,【図1】全体の番組のタイトルが並んだようなもの,すなわち,番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味すると考えられる。「十二の行30」という用語が「番組リスト」を修飾する関係にあるとしても,「番組リスト」は,行単位,すなわちチャンネル単位の「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味していることになる。なお,同段落の上記記載の直後の「番組リストの幾つかは,長さのため,二つかそれ以上のコラム28を重複して使用している」との記載からは,個々の番組単位のものと解釈し得るが,直前の上記記載からは,被告の主張する意味で解されることは明らかである。 b段落【0031】の「単一チャンネルの番組リスト58のスクリーン22を示す」との記載及び【図7】の符号58が【図7】全体を示していることからすると,「番組リスト58」は,【図7】に示されるような番組のタイトルが複数並んだものと解される。 c段落【0022】の「可能な限りTVリストの多数の行を表示するのが好ましい」との記載及び【図6】からすると,「TVリスト」とは「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味すると考えられる。 ?B本件明細書の「リスト」という文言を検討しても,上記と同様の解釈となる。 a段落【0065】の「スクリーン116により,ユーザーは,チャンネルを興味に合わせてカスタム化でき,リストをコンパクトにでき」との記載は,グリッドガイドに表示される縦軸のチャンネルの数を減らすことにより,表形式のような「リスト」(一定の項目が並んだもの)をコンパクトにできるとの意味に解されるから,「リスト」は,「並んだもの」を意味する言葉として用いられているといえる。 b段落【0019】の「新規のリスト」の文言について,同段落では,スケジュールが更新される都度,番組リンクアイコン46が付された番組のタイトル情報と更新後の「新規リスト」との突き合わせがなされることが述べられているから,突き合わせの対象となる「新規のリスト」とは,少なくとも2つ以上のものから構成されていなければならない。したがって,「新規のリスト」とは,むしろ番組表のような複数の番組の束からなるものと考えるべきである。 同段落の「それは自動的に…」の「それ」とは,突き合わせによって特定された番組を意味することは明らかである。 c段落【0024】の「リスト」の文言について同段落が説明する【図6】は,「番組ノート52は,ガイドの3又は4つのチャンネルの部分で番組表に重ねられる」態様を表示しているから,「リスト(タイトルを並べたもの)」という被告の解釈と整合する。 (オ)原出願審決の審決取消訴訟において,特許庁及び裁判所は,「テレビジョン番組リスト」とは,テレビジョン番組のタイトルのリスト,すなわち,テレビジョン番組のタイトルが並んだものであると明言している。特許庁の準備書面には「常識的には,テレビジョン番組のタイトル(名称)のリストと解すべき」,「セル内に表示されているもの全て『テレビジョン番組リスト』ということでなく,『テレビジョン番組リスト』が『セル内に表示され』ていることに過ぎない」,「『テレビジョン番組リスト』は,テレビジョン番組のリストであり,テレビジョン番組のタイトル(名称)のリストと解される」,「この『番組名称』(の並び)が『テレビジョン番組リスト』に該当する。」と記載され,裁判所の判決にも「通常の意味からすれば,テレビジョン番組のタイトルのリストと解される」と記載されている。 (カ)原告は,原出願において,「テレビジョン番組リスト」の用語を「個々の番組単位」の番組情報とは考えていなかったから,分割出願で異なる解釈を主張することは,分割出願における解釈変更という手段による新規事項の追加行為となり,また,分割出願に係る特許権による権利行使の際に,同用語の意義を違えて主張することは,信義則に反するから,いずれも許されない。 (キ)原告は,本件特許の出願を更に分割し,特願2006-00226及び特願2006-00227の分割出願(以下「再分割出願」という。)をした際,請求項に「テレビジョン番組リスト」の文言を使用したところ,特許庁から拒絶理由通知を受け,「テレビジョン番組表」と補正しているから,原告自身,「テレビジョン番組リスト」が番組表を意味していたことを自認していたものである。再分割出願で上記のように振る舞いながら,本件で「個々の番組単位の番組情報」と主張することは信義則に反する。 イグリッドガイド形式(原告)「グリッドガイド形式」とは,格子状のテレビジョン番組表(形式)をいうが,時間とチャンネルを軸としてテレビジョン番組リストという情報(要素)が格子状に配列されていればよいから,「縦線」,「横線」等の実線による区切りは必ずしも必要ない。 (被告)「グリッドガイド形式」とは,格子状のテレビジョン番組表(形式)をいうが,「格子状」の用語の意義について,「碁盤の目のように,縦横が常に明瞭に区切られた状態」,すなわち,番組表形式でいえば,時間とチャンネルの軸で常に明瞭に区切られている状態を意味すると考えられる。 ウチャンネルの一つに目印を付ける(原告)(ア)本件発明1の要件C,Dの各記載からすると,「チャンネルの一つに目印を付ける」とは,「単一チャンネル形式での表示に変換する契機となるチャンネル情報を選択する」ことであり,具体的態様については,特段の限定はない。 (イ)本件明細書の段落【0033】には「単一のチャンネルガイドは,グリッド24上のカーソル32により選択されたチャンネルとスケジュール時間とに対して開かれる。」と記載され,【図2】及び【図7】にはグリッドガイド形式において,特定の「チャンネルとスケジュール時間」という情報を含む「テレビジョン番組リスト」を選択することによって,当該「テレビジョン番組リスト」に対応する「チャンネル」を特定し,その「チャンネル」を単一チャンネル形式で表示する方法が開示されているから,「チャンネルの一つに目印を付ける」態様として,「モニター画面上の,テレビジョン番組リストを表示する部分を選択することによって,単一チャンネル形式表示に対応するチャンネル情報を選択する」方法が含まれるといえる。 (ウ)目印を付ける対象が,本件発明2ないし5では「テレビジョン番組リスト」とされ,本件発明1では「チャンネル」とされているが,本件発明1ないし5は,それぞれ別個の発明であるから,それぞれの発明の特許請求の範囲について,どのような規定ぶりとするかは特許要件を充たす限り自由であるし,特許請求の範囲の文言解釈も,当該特許請求の範囲及び本件明細書全体の記載に照らし,個別に判断を行うのが常識である。特許請求の範囲相互間での一部の表現が異なることをもって,一方の発明について,他方の発明における,その一部の異なった表現による実施態様を排除しているとか,そのような実施態様を含まない形で限定解釈しなければ信義則に反する等ということはあり得ない。 (エ)原告は,本件特許の出願手続において,請求項1を「タイトルの一つに目印を付け」から「チャンネルの一つに目印を付け」に補正したが,本件発明1の内容は補正の前後において実質的な変更はなく,補正前も,グリッドガイド形式で表示されたテレビジョン番組リストを,チャンネルに対応するテレビジョン番組リストの行を含む単一チャンネル形式に変更するステップを含む発明であり,「タイトルの一つに目印を付け」ることは,当該チャンネル情報を選択する態様として記載されているにすぎない。補正したことにより,発明の技術的意義に則したものとなり,発明が理解しやすくなった。 (被告)(ア)本件発明1の請求項の記載からすると,要件Cの「チャンネルの一つに目印を付ける」とは,チャンネル軸に表示されているチャンネルの一つに目印(目で見てすぐ分かるようなしるし)を付けることを意味する。 (イ)原告の主張する本件明細書の記載も,目で見えるようなしるしである「目印」が付けられるのは,テレビジョン番組のタイトルであり,チャンネルではない。本件発明2ないし5の要件と対比しても,本件発明1の要件Cだけがあえて「テレビジョン番組リスト」ではなく「チャンネル」と規定しており,要件Cの規定ぶりが異なるにもかかわらず,「テレビジョン番組リスト」を選択することをもって,表示された「チャンネルの一つに目印」を付けているとの主張は,「テレビジョン番組リスト」と「チャンネル」を同視するものであり,請求項によって両者を使い分けている原告の意思と明らかに矛盾し,信義則に反する。 (ウ)本件特許の出願の経緯において,原告は,「請求項の表現を読みやすくする」目的で請求項を補正し,目印を付ける対象を「タイトル」から「チャンネル」に変更したのであるから,「タイトルに目印を付ける」ことは,「チャンネルに目印を付ける」ことから除外されるべきであり,権利行使時にこれを含むと主張することは禁反言の法理に抵触する。 エカーソル(原告)(ア)「カーソル」とは,「表示装置の画面上の次の操作位置を指示するために用いられる可動でかつ可視な標識」を意味する。 (イ)「カーソル」は,技術用語としては当業者において一義的に理解できる用語である。辞典等においても,上記意味又は「表面上の次の操作位置を指示するために使われる,可動でかつ可視な印」(JIS工業用語大辞典・第4版),「電子計算機の入出力装置として用いられるディスプレイ装置において,画面上で位置を指示するマーカのこと」(データ・画像通信用語辞典),「この説明書に記載しているカーソルとは,▲▼またはボタンを押すことにより画面上で移動する黄色表示のこ▼▲とです。どの項目を選んでいるかを示しています」(松下電器産業株式会社の取扱説明書)と定義,説明されている。幾つかの特許公開公報では,当業者は,イ号方法のような「四角い枠」を「カーソル」と呼んでいる。選択した領域を着色し,点滅させるようなものを,当業者が「カーソル」と呼ぶこともある。 (ウ)被告の主張は,辞典における「カーソル」の説明と,本件明細書の「カーソル」の具体例が整合しないことから,限定して解釈すべきというものであるが,そもそも当業者の理解では,カーソル自体何ら特定の形状に限定されるものではない。 (被告)(ア)本件発明1及び2の「カーソル」の技術的な範囲は,本件明細書の記載に基づき,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる範囲(特許法36条4項1号参照)の技術に限定して解釈すべきところ,本件明細書において,上記程度明確かつ十分に記載されていると認められるカーソルは,段落【0015】の?@セル全体に広がり,かつ,?A現在の基礎位置をはっきりとハイライトしているという2つの要素を具備するカーソルである。すなわち,本件明細書のカーソルは,基礎セル(1/2時間)でしか移動できないことを前提に,位置連続表示(34)とセグメント分割(36)によって,セル全体をハイライトすることにした上,基礎セルよりも長いセルの場合,クリックにより次に移動する基礎セルをセグメント分割して表示しているものである(36)。 (イ)他方,イ号物件のカーソルは,1回のクリックで必ず隣接するセルに移動させることが可能であるため,基礎セルという概念が存在せず,現在の基礎位置をはっきりとハイライトしているという要素を不要にした点で,本件明細書のカーソルとは技術的思考が異なっている。そして,基礎セル(1/2時間)単位でしか移動できないカーソルについての本件明細書の記載のみから,当業者が,イ号物件のような1回のクリックで常に次のセルに移動することが可能なカーソルを実施することはできない。したがって,イ号物件のカーソルは,本件発明1及び2の「カーソル」に該当しない。 オ電子番組ガイド(原告)(ア)本件発明2は,「システム」に係る発明であり,「表示物」の発明ではない。 (イ)本件発明2全体の規定ぶりからすると,要件Jの「時間とチャンネルのグリッドガイドをその目立たせたテレビジョン番組リストのチャンネルの単一チャンネルガイドに変える手段」との記載は,かかる手段を備える「電子番組ガイド」が「システム」であることを明確に示している。また,要件Iからは,「このグリッドガイドに表示されたテレビジョン番組リストの一つを選択して目立たせる」手段が読み取れるから,システムの発明と理解すべきである。 (ウ)「電子番組ガイド」を「表示物」と解すると,要件Iの「可動カーソル」や,要件Jの「手段」が構成要件に含まれることと,技術的に齟齬する。 (被告)(ア)本件発明2の「電子番組ガイド」は,システムの発明ではなく,電子番組ガイドという表示態様に関する何らかの工夫に関する「表示物」の発明である。 (イ)本件明細書には,「電子番組ガイド」という文言は用いられていないが,「TVガイド」がこれに対応する文言であると善解し,本件明細書の段落【0006】の「TVガイドは,不規則なセルのアレーであり」,「グリッド状TVガイド」,段落【0021】の「グリッドTVガイドの頭部を横切る1/2時間ヘッダストリッブ」,段落【0025】の「大半の印刷TVガイドと異なって」の各記載からすると,「TVガイド」は,画面表示された何らかの態様(表示物)であり,電子番組ガイドも表示態様(表示物)である。「ガイド」という文言も,本件明細書では何らかの表示物を意味する言葉として用いられている。 (ウ)本件発明2を「システム」に係る発明と解すると,要件GないしJの構成要素うち,要件GないしIはシステムの発明としての記載になっておらず,権利行使不能である。すなわち,要件Gは,「テレビジョン番組リスト」(テレビジョン番組のタイトルが並んだもの)を,要件Hは,「グリッドガイド」(格子状の表示物又は表示態様)を,要件Iは,「可動カーソル」(画面上に表示される表示物又は表示態様)という表示物又は表示態様を,それぞれ構成要素とする。要件Jは,「変える手段」を構成要素としており,システムの発明と考え得る。したがって,4つの構成要件のうち「手段」が1つしかない以上,「システムの発明」とは考えられず,「表示物の発明」と考えるほかない。 (2)-2本件発明1の侵害の有無(イ号方法及びイ号物件)(原告)アイ号方法は,次のとおり,本件発明1の要件をすべて充足する。 (ア)要件A?@「テレビジョン番組リスト」とは,テレビジョン番組を特定するための個々の番組単位の番組情報を意味する。 ?Aイ号方法は,タイトル,放送時間そしてチャンネルをそれぞれが含んでいる複数のテレビジョン番組情報を電子メモリに記憶する(構成a)ステップを有しているから,要件Aを充足する。 (イ)要件B?@「時間とチャンネルのグリッドガイド形式」とは,放送時間及びチャンネルをそれぞれ軸として,各セル内にテレビジョン番組のタイトルを表示する格子状のテレビジョン番組表形式をいう。 ?Aイ号方法は,放送時間及びチャンネルをそれぞれ軸とする格子状の番組表形式で,複数のテレビジョン番組情報のチャンネルの中の幾つかをモニタースクリーン上に表示する(構成b)ステップを有しているから,要件Bを充足する。 (ウ)要件C?@「チャンネルの一つに目印を付ける」とは,「チャンネル」を何らかの方法で一つに特定することができれば,「チャンネルの一つに目印を付ける」に該当する。 ?Aイ号方法は,モニタースクリーン上でカーソルを移動させ,一つのテレビジョン番組情報を選択することによって表示されたチャンネルの一つに目印を付ける(構成c)ステップを有しているから,要件Cを充足する。 (エ)要件D?@「単一チャンネル形式」とは,単一のチャンネルにおいて放送されるテレビジョン番組の放送時間,タイトル等が表示されたテレビジョン番組表形式をいう。 ?Aイ号方法は,複数チャンネルを表示する格子状の番組表形式の代わりに,単一チャンネルの番組表形式でその目印を付けたチャンネルを表示する(構成d)ステップを有しているから,要件Dを充足する。 (オ)要件Eイ号方法の単一チャンネルの番組表形式は,目印を付けたチャンネルに対応するチャンネルのテレビジョン番組情報を順次配列した行を含んでいる(構成e)から,要件Eを充足する。 (カ)要件Fイ号方法は,テレビジョン番組情報のデータベースを閲覧する方法(構成f)であるから,イ号方法は,要件Fを充足する。 イ間接侵害(ア)イ号方法は,本件発明1の要件をすべて充足しているから,イ号方法の実施に用いるイ号物件は,本件発明1の使用に用いるものである。 また,本件発明1の解決課題は,テレビジョン番組リストをより見やすい形で表示する方法を提供し,より分かりやすい仕方で視聴又は記録するための番組を選択する方法を提供することにある(本件明細書の段落【0008】参照)ところ,イ号物件は,本件発明1による課題の解決に不可欠なものであるから,被告によるイ号物件の製造・販売は,本件特許権1を侵害するものとみなされる(特許法101条5号)。 (イ)被告は,本件発明1が特許発明であること及びイ号物件がその発明の実施に用いられることを,原告の関連会社の者が被告の担当者と面会し,本件発明1を含む特許権の一覧表を示した平成18年3月23日までには知っていた。 (被告)ア原告の主張は争う。イ号方法は,次のとおり,本件発明1の要件を充足しない。 (ア)要件A?@「テレビジョン番組リスト」とは,番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味する。メモリに記憶するものではないため,要件Aの「…テレビジョン番組リストを電子メモリに記憶するステップ」を観念すること自体困難である。 ?A仮に,タイトルが並んだ番組表を表示するためのデータと考えれば,メモリに記憶することは観念できるが,イ号方法においては,データを記憶する場所は「HDD」であって,「RAM」ではない。「HDD」は,データの書込みを磁気的に行うものであり,電気的に記憶する「RAM」とは異なる。また,記憶の対象も,テレビジョン番組のタイトルが並んだもののデータ自体ではない。 ?B「…それぞれが含んでいる。」の点も意味が不明である。 ?Cしたがって,イ号方法は要件Aを充足しない。 (イ)要件B?@「時間とチャンネルのグリッドガイド形式」は「格子状のテレビジョン番組表形式」を意味するが,「格子状」とは,「碁盤の目状になっているもの。」を意味するところ,イ号方法は,放送時間及びチャンネルをそれぞれ軸とし,チャンネル(縦軸)に対しては区切られているが,放送時間(横軸)に対して区切られていない(碁盤の目状ではない)から,「格子状」の番組表形式である「グリッドガイド形式」ではない。 ?Aしたがって,イ号方法は要件Bを充足しない。 (ウ)要件C?@「チャンネルの一つに目印を付ける」とは,字句どおり「チャンネル軸に表示されているチャンネルの一つに目印をつける」という意味である。また,「カーソル」は,セル全体に広がり,現在の基礎位置をはっきりとハイライトしているカーソルに限定解釈されるべきである。 ?Aイ号方法は,モニタースクリーン上でカーソルを移動させ,「タイトルが表示されたセルに目印を付けている」だけであるし,上記のような「カーソル」は用いていない。また,イ号方法は,格子状の番組表形式である「グリッドガイド形式」を具備しない。 ?Bしたがって,イ号方法は要件Cを充足しない。 (エ)要件D?@「単一チャンネル形式」の意味は概ね認めるが,イ号方法は,格子状である「グリッドガイド形式」を用いておらず,「その目印を付けたチャンネル」も存在しない。 ?Aしたがって,イ号方法は要件Dを充足しない。 (オ)要件E?@イ号方法には,「その目印を付けたチャンネル」は存在しない。また,「テレビジョン番組リスト」は,テレビジョン番組のタイトルが並んだものであるから,この「テレビジョン番組リスト」を順次配列しているわけではない。 ?Aしたがって,イ号方法は要件Eを充足しない。 イ間接侵害原告の主張は争う。イ号方法は,本件発明1の要件を充足しない。 (2)-3本件発明2の侵害の有無(イ号方法及びイ号物件)(原告)イ号物件の電子番組ガイドは,次のとおり,本件発明2の要件をすべて充足するから,本件発明2の技術的範囲に属する。 ア要件Gイ号物件の電子番組ガイドは,タイトル,放送時間そしてチャンネルをそれぞれが含んでいる複数のテレビジョン番組情報(構成g)を有しているから,要件Gを充足する。 イ要件Hイ号物件の電子番組ガイドは,テレビジョン番組情報の中の幾つかを表示する,放送時間及びチャンネルをそれぞれ軸とする格子状の番組表(構成h)を有しているから,要件Hを充足する。 ウ要件I要件Iにおける「グリッドガイドに表示されたテレビジョン番組リストの一つを選択して目立たせる」ことは,スクリーン上では,例えば,グリッドガイド上に表示されたタイトルの一つを選択して目立たせることによって行うことが可能である。ここでは,あるタイトルが表示されたセルを選択すると,タイトル情報と,放送時間情報と,チャンネル情報を有している「テレビジョン番組リスト」という番組単位の情報を選択できることになる。 イ号物件の電子番組ガイドは,移動可能なカーソルを有しており,スクリーン上で,当該カーソルによって格子状の番組表に表示されたタイトルの一つを選択して目立たせることにより,テレビジョン番組情報の一つを選択して目立たせている(構成i)から,要件Iを充足する。 エ要件Jイ号物件の電子番組ガイドは,格子状の番組表をその目立たせたテレビジョン番組情報に対応する単一チャンネルの番組表に変える機能(構成j)を有しているから,要件Jを充足する。 オ要件Kイ号物件の電子番組ガイドは,以上の構成を備えていることを特徴とする電子番組ガイド(構成k)であるから,要件Kを充足する。 (被告)ア原告の主張は争う。 イ本件発明2は,電子番組ガイドの「システムの発明」ではなく,電子番組ガイドという表示態様に関する何らかの工夫に関する「表示物の発明」である。そして,レコーダーであるイ号物件は,かかる表示物を有していないから,本件発明2の技術的範囲に属しない。 ウ仮に,本件発明2が電子番組ガイドの「システムの発明」であったとしても,イ号物件が含む電子番組ガイドシステムは,次のとおり,本件発明2の技術的範囲に含まれない。 (ア)要件G?@「テレビジョン番組リスト」は,番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」と解されるところ,イ号物件の電子番組ガイドシステムには,このような「テレビジョン番組リスト」は物理的に存在しない。 ?A「…それぞれが含んでいる」の意味も不明である。 ?Bしたがって,イ号物件の電子番組ガイドシステムは要件Gを充足し得ない。 (イ)要件H?@「テレビジョン番組リスト」は,番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」と解されるところ,イ号物件によって表示される電子番組ガイドシステムでは,「テレビジョン番組リスト」は一つしか表示していないため,「幾つかを表示する…グリッドガイド」に該当しない。 ?Aイ号物件が含む電子番組ガイドシステムは,格子状の番組表形式を有するものではないため,「グリッドガイド」を具備しない。 ?Bしたがって,イ号物件の電子番組ガイドシステムは要件Hを充足しない。 (ウ)要件I?@「テレビジョン番組リスト」は,番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」と解されるところ,イ号物件が含む電子番組ガイドシステムにおいては,「テレビジョン番組リストの一つを選択して目立たさせる…カーソル」は具備しない。 ?Aイ号物件が含む電子番組ガイドシステムに係る番組表は,放送時間及びチャンネルをそれぞれ軸としているが,格子状ではないから「グリッドガイド」に該当しない。また,?@セル全体に広がり,?A現在の基礎位置をはっきりとハイライトしているような「カーソル」を有していない。 ?Bしたがって,イ号物件の電子番組ガイドシステムは要件Iを充足しない。 (エ)要件J?@イ号物件の電子番組ガイドシステムの番組表は,格子状ではないので「グリッドガイド」を具備しないし,「テレビジョン番組リスト」は,番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」であるから,「その目立たせたテレビジョン番組リスト」は存在しない。 ?Aしたがって,イ号物件の電子番組ガイドシステムは要件Jを充足しない。 (2)-4本件発明3の侵害の有無(イ号方法及びイ号物件)(原告)イ号物件のマイクロプロセッサは,次のとおり,本件発明3の各要件をすべて充足するから,本件発明3の技術的範囲に属する。 ア要件L(ア)イ号物件のマイクロプロセッサは,放送時間及びチャンネルをそれぞれ軸とし,テレビジョン番組情報を複数のセル内に表示する格子状の番組表形式で表示モニターに,RAMに記憶したテレビジョン番組情報を表示させる信号を発生する(構成l)から,要件Lを充足する。 (イ)マイクロプロセッサが直接読み書きできるのはRAMに記憶された情報であるから,イ号物件のマイクロプロセッサは「RAMに記憶したテレビジョン番組リストを表示させる信号を発生」するものである。 イ要件Mイ号物件のマイクロプロセッサは,表示されたテレビジョン番組情報の一つをカーソルにより目立たせる信号を発生する(構成m)から,要件Mを充足する。 ウ要件Nイ号物件のマイクロプロセッサは,複数チャンネルを表示する格子状の番組表形式の代わりに単一チャンネルの番組表形式で目立たせたテレビジョン番組情報を表示する信号を発生する(構成n)から,要件Nを充足する。 エ要件O(ア)イ号物件のマイクロプロセッサは,以上の信号を発生するようプログラムされていることを特徴としたマイクロプロセッサ(構成o)であるから,要件Oを充足する。 (イ)マイクロプロセッサがプログラムの実行装置であることは,当業者の技術常識であり,要件Oが,要件L,M及びNの各信号を発生させるプログラムの存在に基づき,それらの信号を発生させるという機能を実現するマイクロプロセッサを意味することは当業者において当然に理解できる。そして,イ号物件のマイクロプロセッサも,要件L,M及びNの各信号を発生するプログラムに基づき,これらの各信号を発生しているから,「…信号を発生するようプログラムされている…マイクロプロセッサ」であるといえる。 (被告)原告の主張は争う。イ号物件は,次のとおり,本件発明3の要件を充足しない。 ア要件L(ア)イ号物件において採用されている表示形式は,「格子状」ではないから,イ号物件が含むマイクロプロセッサは,「グリッドガイド形式で…表示させる信号」を発生しない。 (イ)「テレビジョン番組リスト」は,番組表のようなテレビジョン番組のタイトルが並んだものを表すものであり,RAMに記憶するものではないから,「RAMに記憶したテレビジョン番組リスト」を観念すること自体困難である。 (ウ)仮に,番組表を表示するためのデータと考えれば,RAMに記憶することは観念できるが,イ号物件のマイクロプロセッサは,「RAMに記憶」ではなく,「HDDに記憶」した情報を表示させる信号を発生するものである。また,記憶の対象は,テレビジョン番組のタイトルが並んだもののデータ自体ではない。 (エ)したがって,イ号物件が含むマイクロプロセッサは要件Lを充足しない。 イ要件M(ア)「その表示されたテレビジョン番組リスト」とは,要件Lの「RAMに記憶したテレビジョン番組リスト」であり,「テレビジョン番組リスト」を番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」と理解する限り,イ号物件が含むマイクロプロセッサでは,「その表示されたテレビジョン番組リストの一つを目立たせる信号」を発生させない。 (イ)イ号物件が含むマイクロプロセッサにおいて,目立たせているのはテレビジョン番組のタイトルが表示されたセルであり,番組表のような「テレビジョン番組のタイトルの並んだもの」ではないから,「テレビジョン番組リストの一つを目立たせる信号」を具備しない。 (ウ)したがって,イ号物件が含むマイクロプロセッサは要件Mを充足しない。 ウ要件N(ア)「その目立たされたテレビジョン番組リスト」とは,要件Mの「その表示されたテレビジョン番組リスト」であり,上記のとおり,「その表示されたテレビジョン番組リスト」が存在しないのであるから,イ号物件が含むマイクロプロセッサは,「その目立たされたテレビジョン番組リスト」を表示する信号を発生させない。 (イ)イ号物件が含むマイクロプロセッサによる表示形式は,「グリッドガイド形式」のような格子状の番組表形式ではない。 (ウ)したがって,イ号物件が含むマイクロプロセッサは要件Nを充足しない。 エ要件O(ア)イ号物件が含むマイクロプロセッサは,要件L,M及びNの各信号を発生するようプログラムされておらず,かかるプログラムは,マイクロプロセッサとは別のRAMに格納されているから,イ号物件のマイクロプロセッサは「プログラムされている…マイクロプロセッサ」を具備しない。 (イ)したがって,イ号物件のマイクロプロセッサは,要件Oを充足しない。 (2)5本件発明4の侵害の有無(ロ号方法及びロ号物件)(原告)アロ号方法は,次のとおり,本件発明4の要件をすべて充足する。 (ア)要件Pロ号方法は,複数のテレビジョン番組情報について,それぞれのテレビジョン番組情報のタイトル,チャンネルそして開始時間を含んでいるデータファイルをロ号物件のメモリに記憶する(構成p)ステップを有しているから,ロ号方法は,要件Pを充足する。 (イ)要件Qロ号方法は,メモリに記憶されている複数のテレビジョン番組情報をロ号物件のディスプレイモニターに表示する(構成q)ステップを有しているから,ロ号方法は,要件Qを充足する。 (ウ)要件Rロ号方法は,記録するためのビデオ記録媒体をVCR又はその他の記録装置内に装填する(構成r)ステップを有しているから,ロ号方法は,要件Rを充足する。 (エ)要件Sロ号方法は,ロ号物件に表示された複数のテレビジョン番組情報の中の一つを,記録するために選択する(構成s)ステップを有しているから,ロ号方法は,要件Sを充足する。 (オ)要件T?@ロ号方法は,選択されたテレビジョン番組情報が示している番組をVCR又はその他の記録装置に記録するために,選択されたテレビジョン番組情報のデータをロ号物件に記憶された前記のデータファイルからVCR又はその他の記録装置に転送する(構成t)ステップを有しているから,ロ号方法は,要件Tを充足する。 ?A被告は,ロ号物件についてテレビジョン番組情報(データ)を含んだデータファイルをRAMに記憶することを認めており,かつ,当該データがRAMからレコーダーに転送されることも認めているから,結局,ロ号物件においても,テレビジョン番組リストのデータはRAM中のデータファイルからレコーダーに転送されているにほかならない。 (カ)要件Uロ号方法は,VCR又はその他の記録装置を利用して,ビデオ記録媒体にテレビジョン番組を記録する方法(構成u)であるから,ロ号方法は,要件Uを充足する。 イ間接侵害(ア)ロ号方法は本件発明4の要件をすべて充足しているから,ロ号方法の実施に用いるロ号物件は,本件発明4の使用に用いるものである。また,本件発明4の解決課題は,将来の日付けの自動記録のためのVCRの設定の複雑さを避けるため,テレビジョン視聴者がテレビのモニタースクリーン上のプログラムリストにアクセスし,VCR又はその他の記録装置を容易かつ便利な方法で制御することにある(本件明細書の段落【0001】,【0002】参照)ところ,ロ号物件は,本件発明4による課題の解決に不可欠なものであるから,被告によるロ号物件の製造・販売は,本件特許権4を侵害するものとみなされる(特許法101条5号)。 (イ)被告は,本件発明4が特許発明であること及びロ号物件がその発明の実施に用いられることについて,原告の関連会社の者が被告の担当者と面会し,本件発明4を含む特許権の一覧表を示した平成18年3月23日までには知っていた。 (ウ)平成14年改正により特許法101条5号を新設した趣旨は,「〜にのみ用いる物」という客観的要件を必須とする従来の規定(特許法101条4号)の要件に代え,「発明による課題の解決に不可欠なもの」との客観的要件及び「発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら」との主観的要件を必須として,間接侵害に該当する行為の範囲を広げようとしたことにあるところ,「発明による課題の解決に不可欠なもの」の解釈において,複数用途の存在を考慮すると,従来の間接侵害規定との差異がなくなり,上記法改正の意味がなくなるので,かかる解釈は採り得ない。 また,特許発明に係る用途の利用頻度も,「不可欠」要件において考慮すべきではない。「発明による課題の解決に不可欠」な物であれば,たとえ特許発明に係る用途に用いられる頻度が少なくても,現にその用途に用いられた場合には,特許権侵害となる。 そして,間接侵害品を製造・販売する行為が,全体として差し止められるべきことは当然である。 (エ)本件では,被告は,本件発明4の方法発明の使用に直接用いるテレビを製造,販売しているから,「その方法の使用に用いる物」を生産することに該当し,被告の行為が間接侵害に該当しないとされる理由はない。 (オ)ロ号物件は,EPG機能を備え,かつ,ロ号方法を実現するための機能を備えた特別のテレビであるから,「市場において一般に入手可能な状態にある規格品,普及品」と解することはできない。 (被告)ア原告の主張は争う。ロ号方法は,次のとおり,要件Uを除き本件発明4の要件を充足しない。 (ア)要件P?@「テレビジョン番組リスト」は,番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」であり,メモリに記憶するものではないから,「テレビジョン番組リスト毎に…データファイルをメモリに記憶するステップ」を観念すること自体困難である。 ?A「データファイル」が,番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を表示するためのデータと考えれば,メモリに記憶することは観念できるが,ロ号方法は,番組表のようなテレビジョン番組のタイトルが並んだもののデータ自体をメモリに記憶しているものではないから,「テレビジョン番組リスト毎に…データファイルをメモリに記憶するステップ」は有していない。 ?Bしたがって,ロ号方法は要件Pを充足しない。 (イ)要件Q?@「テレビジョン番組リスト」は,そもそもメモリに記憶されていないから,ロ号方法は,「メモリに記憶されている…」といえない。 ?Aロ号方法において,ディプレイモニターに表示されるのは一つの「テレビジョン番組リスト」にすぎないから,「複数のテレビジョン番組リストを…表示」しない。 ?Bしたがって,ロ号方法は要件Qを充足しない。 (ウ)要件R?@レコーダーは,ビデオ記録媒体が充填できる機能を有しており,かかるレコーダーをロ号物件に接続することによって,要件Rを具備し得ることは認める。 ?Aしかし,録画する際にDVD(記録媒体)を充填するユーザーは少数派であり,通常は,レコーダー内部に設置されているHDDに録画を行うのであって,そもそも,ロ号物件と接続されるレコーダーがロ号方法のために用いられることは稀である。すなわち,ロ号物件の製造・販売は,ロ号方法の実施に必ずしも結びつかないのが現状であって,直接侵害の予備的な行為を規制するという間接侵害の趣旨に鑑みると,仮に,ロ号物件がレコーダーと接続されて,ごく少数のユーザーによる少ない機会においてロ号方法が実施されるとしても,間接侵害には該当しない。 (エ)要件S?@「テレビジョン番組リスト」とは,番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」と解されるところ,要件Sに該当するためには,ロ号物件を使用する人がロ号物件に表示された「テレビジョン番組リスト」,すなわち,テレビジョン番組のタイトルが並んだものの中の一つ(「タイトルが並んだもの」そのもの)を選択しなければならないが,実際は「テレビジョン番組リスト」の中の一つの番組を選択しているだけである。 ?Aしたがって,ロ号方法は要件Sを充足しない。 (オ)要件T?@ロ号方法は,選択されたセルに対応するテレビジョン番組情報のデータをRAMからレコーダーに転送するステップを有するが,「テレビジョン番組リスト」とは,番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」と解されるから,上記ロ号方法は,テレビジョン番組のタイトルが並んだものからなる「テレビジョン番組リスト」の中の一つを選択していない。また,データは,RAMからレコーダーに転送しているのであり,「データファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送するステップ」を有していない。なお,データファイルは,要件Pの規定からするとデータの集合物を指し,データが保存されている物理的な場所(ハードウエア)を指すものではないことは明らかであり,本要件の意味は不明である。 ?Aしたがって,ロ号方法は,要件Tを充足しない。 イ間接侵害(ア)原告の間接侵害(特許法101条5号)の主張は争う。 (イ)?@「課題を解決するために不可欠なもの」かどうかを考えるに当たっては,当該方法の使用に用いる物の生産譲渡等の行為が,間接侵害の趣旨である「直接侵害に直結する高度の蓋然性が認められる予備的行為」であるとの評価を前提として,当該物が「その発明による課題の解決に不可欠なもの」であることを考えるべきである。 ?Aロ号物件であるテレビについては,本件発明4に係る方法の実施のほか,様々な経済的・商業的・実用的な用途(テレビ番組を視聴する目的のほか,ゲーム機として接続してゲームを表示する,LANと接続してインターネットの画面表示のために用いる等)が存在しており,本件発明4のために用いる以上に,多種多様な用途のため利用可能であるから,少なくともロ号物件の製造販売行為が特許権侵害に直結する高度の蓋然性が認められるとはいえない。 ?B本件発明4は,テレビ画面を通じて操作することを特徴とした無数の特許発明のうちの一つであり,仮に,ロ号物件がこのような操作結果を表示するために用いられるという一事をもって,本件発明4の間接侵害になるとすれば,ロ号物件は同時にこれらの無数の「テレビ画面操作発明」の間接侵害品となってしまう。 ?Cレコーダーでテレビ番組を録画する際に,ビデオ記録媒体を充填するユーザーは少数派であり,レコーダー内部に設置されているHDDに録画を実行するユーザーが大多数のため,必ずしも要件Rが実行されるわけではない。 (ウ)ロ号物件は,それだけを利用して特許発明に係る方法を実施することは不可能であり,レコーダーとテレビとからなるテレビ番組録画システムという「その方法の使用に用いる物」の構成部品の一つにすぎないところ,かかる構成部品が,「その方法の使用に用いる物」に含まれるとする解釈は,直接侵害の予備的又は幇助的行為を更に限定した範囲で適用するとする間接侵害の不当な拡張となり許されない。 (エ)ロ号物件は,間接侵害の除外事由である「日本国内において広く一般に流通しているもの」に該当する。 (オ)本件発明4について,平成19年7月13日に送付されたクレームチャートには何らの記載はなく,同年9月18日の交渉の場でもライセンス交渉はされていないから,被告が「平成18年3月23日までには知っていた」ことはない。 (2)-6本件発明5の侵害の有無(ロ号方法及びロ号物件)(原告)ロ号物件のマイクロプロセッサは,次のとおり,本件発明5の各要件をすべて充足するから,本件発明5の技術的範囲に属する。 ア要件Vロ号物件のマイクロプロセッサは,複数のテレビジョン番組情報について,それぞれのテレビジョン番組情報のタイトル,チャンネルそして開始時間を含んでいるデータファイルを記憶しているRAMから,テレビジョン番組情報を取り出してディスプレイモニターに表示する信号を発生する(構成v)から,要件Vを充足する。 イ要件Wロ号物件のマイクロプロセッサは,表示された複数のテレビジョン番組情報の中の一つが示している番組を記録するため,その一つのテレビジョン番組情報を特定する信号を発生する(構成w)から,要件Wを充足する。 ウ要件X(ア)ロ号物件のマイクロプロセッサは,選択されたテレビジョン番組情報に対応するデータをデータファイルからVCR又はその他の記録装置に転送するための信号を発生する(構成x)から,要件Xを充足する。 (イ)ロ号物件では,テレビジョン番組リストは,結局のところデータファイルからレコーダーに転送されているから,要件Xを充足する。 エ要件Y(ア)ロ号物件のマイクロプロセッサは,以上の信号を発生するようプログラムされ,前記の選択されたテレビジョン番組情報が示している番組を記録させるようにすることを特徴としたマイクロプロセッサ(構成y)であるから,要件Yを充足する。 (イ)要件Yは,マイクロプロセッサにプログラムが格納されていることを意味するのではなく,要件V,W及びXの各信号を発生させるプログラムの存在に基づき,それらの信号を発生させるという機能を実現するマイクロプロセッサを意味する。そして,ロ号物件のマイクロプロセッサも,要件V,W及びXの各信号を発生するプログラムに基づき,これらの各信号を発生しているから,要件Yを充足する。 (被告)原告の主張は争う。ロ号物件は,次のとおり,本件発明5の要件を充足しない。 ア要件V(ア)「テレビジョン番組リスト」は,番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を表わすものであり,RAMに記憶するものではないため,「テレビジョン番組リスト毎に含んでいる複数のテレビジョン番組リストのデータファイルを記憶しているRAM」を観念すること自体困難である。 (イ)「データファイル」が番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を表示するためのデータと考えれば,RAMに記憶することは観念できるが,ロ号物件が含むマイクロプロセッサは,番組表のようなテレビジョン番組のタイトルが並んだもののデータ自体をRAMに記憶しているものではないから,「テレビジョン番組リスト毎に含んでいる複数のテレビジョン番組リストのデータファイルを記憶しているRAM」から「複数のテレビジョン番組リストを取り出して…表示する信号を発生」することはない。 (ウ)したがって,ロ号物件が含むマイクロプロセッサは要件Vを充足しない。 イ要件W(ア)「この表示された複数のテレビジョン番組リスト」とは,要件Vにおいて,テレビジョン番組リストが記憶されたRAMから取り出されたものであり,「テレビジョン番組リスト」を番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」と理解する限り,ロ号物件のマイクロプロセッサでは,「この表示されたテレビジョン番組リストの一つを記録するため…信号を発生」するものではないし,「その一つのテレビジョン番組リストを特定する信号を発生」するものでもない。 (イ)したがって,ロ号物件が含むマイクロプロセッサは要件Wを充足しない。 ウ要件X(ア)ロ号物件について,「テレビジョン番組リスト」の意義を番組表のような「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」と理解すると,ロ号物件マイクロプロセッサでは,記録するためその一つのテレビジョン番組リストを特定する信号が発生していないのであるから,「この記録するために選択されたテレビジョン番組リストに対応するデータを…転送するための信号」は発生しない。また,データをRAMからレコーダーに転送する信号を発生しているのであり,「データファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送するための信号を発生」しているのではない。 (イ)したがって,ロ号物件のマイクロプロセッサは,要件Xを充足しない。 エ要件Y(ア)ロ号物件には,「記録するために選択されたテレビジョン番組リスト」がそもそも存在しない。また,ロ号物件が含むマイクロプロセッサは,要件V,W及びXの各信号を発生するようプログラムされておらず,かかるプログラムは,マイクロプロセッサとは別のRAMに格納されているから,「プログラムされ…マイクロプロセッサ」を具備しない。 (イ)したがって,ロ号物件が含むマイクロプロセッサは要件Yを充足しない。 (3)無効論(3)-1本件発明1の無効理由の有無ア記載要件違反(被告)(ア)平成6年法律第116号による改正前の特許法(以下「平成6年改正前の特許法」という。)36条5項2号違反?@本件特許の適用法である平成6年改正前の特許法36条5項2号は,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載した項(以下「請求項」という。)に区分してあること」を記載要件として要求し,この「特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項」とは,「一の請求項に記載された事項に基づいて特許を受けようとする発明が明確に把握できることを意味する」とされているところ,本件発明1の「テレビジョン番組リスト」の用語は,多義的であり,いずれの解釈を採用するかによって本件発明1の範囲が変動するから,この請求項からは「特許を受けようとする発明が明確に把握できる」とはいえず,同号違反の無効理由を有する。 ?A「テレビジョン番組リスト」については,原告と被告は異なる解釈をしているが,被告がその解釈の根拠とする本件明細書の段落【0011】の「番組リスト」に関する記載は,原告が指摘する「番組リストの幾つかは,長さのため,二つかそれ以上のコラム28を重複して使用している」に関する限りは,「個々の番組単位の番組情報」という原告の解釈に近くなることからすると,「番組リスト」という用語が多義的に用いられており,特許請求の範囲に用いられている「テレビジョン番組リスト」という文言も,少なくとも二通りの解釈を有することになる。 ?B本件特許の出願を更に分割した再分割出願(特願2006-00226及び特願2006-00227)において,特許庁は,「番組リスト」という用語が,番組の内容の見出しを並べたものを意味するのか,それとも単に番組そのものを意味するのかが不明である旨を述べており,「テレビジョン番組リスト」について二種類の解釈が可能ということになる。 (イ)平成6年改正前の特許法36条5項1号違反?@本件特許の適用法である平成6年改正前の特許法36条5項1号は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を記載要件として要求するところ,本件発明1の要件Cは,本件明細書の発明の詳細な説明において開示されていないので,同号違反の無効理由を有する。 ?A本件発明1の要件C「チャンネルの一つに目印を付ける」は,要件Dとの関係で,グリッドガイド形式を単一チャンネルガイド形式に切り替える際に,グリッドガイド形式で表示されたチャンネルの一つに目印を付けることを規定しているところ,「チャンネル」,「一つに目印を付ける」はいずれも一義的な意味を有するから(最高裁判所第二小法廷平成3年3月8日判決昭和62年(行ツ)第3号参照),「チャンネルの一つに目印を付ける」が,チャンネルを示す欄の一つに目で見えるしるしを付けることを意味することは明らかである。 ?B他方,本件明細書では,段落【0031】の記載,【図2】,【図7】を見ても,本件明細書には,グリッドガイドから単一チャンネルガイドへの切替に当たって,番組タイトルを表示したセルを選択することによって行うものであることが開示されているだけであり,「チャンネルの一つに目印を付けるステップ」は,何ら開示されていない。 ?C原告は,カーソルで番組タイトルを表示したセルを選択することをもってチャンネルに目印を付けたといえると主張するが,「チャンネル」,「一つに目印を付ける」はいずれも一義的な意味を有しており,原告の解釈は上記判例に反する。また,原告は,目印を付ける対象を「タイトル」と規定した本件発明1の当初の特許請求の範囲の記載を,「請求項の表現を読みやすく」するため,「チャンネルの一つに目印を付ける」という文言に補正したのであるから,権利行使時において,「チャンネル」以外の部分である番組タイトルなどに目印を付けることをもって,「チャンネルの一つに目印を付ける」という解釈を行うことは,禁反言の法理に抵触する。 (原告)(ア)平成6年改正前の特許法36条5項2号違反被告は,本件発明における「テレビジョン番組リスト」の文言が多義的であると主張するが,その前提である被告の同文言の解釈自体が誤っている。特許請求の範囲の記載全体に基づいて,発明の構成要件の一つとして技術合理性をもって解釈すれば,「テレビジョン番組リスト」は,「テレビジョン番組を特定するための個々の番組単位の番組情報」としか解されないし,当該解釈,発明の詳細な説明の記載によっても裏付けられる。また,原告の解釈に基づけば,本件発明は,明確に把握できるものであり,「一の請求項に記載された事項に基づいて特許を受けようとする発明が明確」という要件を満たすものである。 (イ)平成6年改正前の特許法36条5項1号違反本件発明1の要件Cの「チャンネルの一つに目印をつける」が本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていないとの被告の主張は,被告の誤った解釈から生じている不整合にすぎない。特許請求の範囲の記載全体に基づいて,発明の構成要件を技術的合理性をもって理解すれば,「チャンネルの一つに目印を付ける」ことは,「単一チャンネル形式での表示に変換する契機となるチャンネル情報を選択する」ことと解すべきである。本件明細書の段落【0033】の記載及び【図2】,【図7】からしても,グリッドガイド形式において,特定の「チャンネルとスケジュール時間」という情報を含む「テレビジョン番組リスト」を特定することによって,当該「テレビジョン番組リスト」に対応する「チャンネル」を選択し,その「チャンネル」を単一チャンネル形式で表示する方法が開示されているのは明らかである。被告の出願経過及び禁反言の法理の主張も,本件発明1は,補正の前後において,発明の内容に何ら実質的な変更はないから,禁反言の法理が働く余地はない。 イ進歩性欠如(被告)本件特許の優先権主張の日前である平成元年8月23日に頒布された特開平1-209399号公報(以下「乙29文献」という。)に記載された発明(以下「乙29発明」という。)を主引用例とした場合の進歩性欠如(ア)乙29発明と本件発明1との相違点は,以下のとおりである。 ?@相違点1モニタースクリーン上でカーソルを移動してグリッドガイド形式で表示されたものの一つに目印を付けることに関し,本件発明1は,「チャンネル」に目印を付けるのに対し,乙29発明は,「番組」に目印を付ける点。 ?A相違点2本件発明1は,要件D「グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目印を付けたチャンネルを表示するステップ」を有するのに対し,乙29発明は,明確に示されていない点。 (イ)相違点1の検討グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式で番組表を表示する際に,特定の一つのチャンネルの番組表を表示するためにチャンネルを選択する必要があるところ,その手法として,チャンネルに目印を付けるのか,それとも番組に目印を付けるのかは,ユーザーの便宜を考えて適宜変更される設計的事項である。 (ウ)相違点2の検討相違点2については,次のとおり,乙29発明と本件特許の優先権の主張日前である平成元年12月22日に頒布された特開平1-306962号公報(以下「乙30文献」という。)に記載された発明(以下「乙30発明」という。)を組み合せることで本件発明1に容易に想到し得るものである。 ?@組合せ容易性a乙29文献には,「どのような情報処理システムにも適用することができる。」と記載され,たまたま実施例としてVTR装置の予約を行うシステムに適用した例が開示されたまでであるから,乙30文献に開示されているようなVTR装置の予約を行うシステム以外にも適用できると考えるべきである。したがって,乙29発明を乙30発明と組み合わせるべきことは,乙29文献に示唆されている。 b乙29発明は,「情報処理システム」に関するものであり,VTRに係るスケジュール管理について,操作性の改善と処理の信頼性を向上させること,すなわち,ユーザーインタフェースの向上をその課題とし,乙29文献には,予め定められたスケジュールに従って提供される提供情報の処理において,処理の対象としたい提供情報を選択するだけで,その提供情報を処理するために必要となる情報を自動的に所定の処理のためにセットできるようにする情報処理システムやその方法の発明が開示されている。そして,上記のとおり,乙29発明は,どのような情報処理システムにも適用できるものであるから,一般的なスケジュール管理システム(スケジュール表示に関する情報処理システム)という技術分野に属する。 他方,乙30発明は,「スケジュール管理装置」に関するものであり,小さい装置サイズのままでスケジュール管理を行うこと,すなわち,ユーザーインタフェースの向上をその課題とし,乙30文献には,月間カレンダー表示を中心として,種々の異なった形式で表示をする表示技術に関する情報処理システムやその方法の発明が開示されている。そして,乙30発明も,スケジュール管理システム(スケジュール表示に関する情報処理システム)という技術分野に属する。 cしたがって,乙29文献では,他の情報処理システムに適用できることが示唆されており,また,乙29発明と乙30発明では技術分野や課題が共通しているから,乙29発明と乙30発明を組み合わせることに何ら困難性はない。 ?A組合せによる容易想到性a乙30文献には,「カーソルの位置は,カーソル移動キー13にて上下左右に自在に移動させることができる」と記載され,乙30文献の第6図(a)からも,曜日と週を軸として日付が表示されたカレンダーにおいて,カーソルの位置を基準として,ユーザーがカレンダーキーを操作することによって,カーソルの位置を目立たせることが開示されている。また,乙30文献では,「第6図(a)の表示状態において,カレンダーキー165を操作すると,カーソルで指示されている11日から1週間のスケジュール内容を」,「第5図(a)に示すように表示する」とされており,ユーザーがカレンダーキーを操作することによって,目立たせたカーソル位置に対応した単一の週の曜日単位で日付やスケジュール情報が表示される技術が開示されている。したがって,乙30文献には,「曜日と週を軸として,日付が表示されたカレンダーにおいて,ユーザーがカーソルで日付に目印を付け,カレンダーキーを操作することによって,目印を付けた日付に対応した単一の週の曜日単位で日付スケジュール情報が表示される技術」が開示されているといえる。 b乙30発明と本件発明1の要件Dを対比すると,乙30発明の「曜日と週を軸として,日付が表示されたカレンダーにおいて」が,要件Dの「グリッドガイド形式」に該当し,乙30発明の「ユーザーがカーソルで日付に目印を付け」が,要件Cの「グリッドガイド形式で表示された…の一つに目印を付ける」を受けて当該カーソルで目印を付けられた日付が,要件Dの「目印を付けた」に該当し,乙30発明の「カレンダーキーを操作することによって,目印を付けた日付に対応した,単一の主張の曜日単位で日付やスケジュール情報が表示される」が,要件Dの「代わりに単一チャンネル形式で目印を付けたチャンネルを表示する」に該当している。乙30発明には,本件発明1に係る「放送時間とチャンネルとタイトル」が,それぞれ曜日と週と日付に,「番組表」がスケジュール表に置き換えられ,その他の本質的構成に相違がないスケジュール表示技術が開示されている。なお,要件Dの目印を付けたチャンネルに対応するのは,本来であれば,目印を付けた週となるはずであるところ,目印を付けた日付となっているが,週に目印を付けるか,日付に目印を付けるかは設計事項である。 c本件特許の優先権主張の日前である昭和62年3月17日に頒布された特開昭62-60377号公報(以下「乙31文献」という。)に記載された技術は,テレビ番組情報を番組メモリに記憶し,この番組メモリに記憶したテレビ番組情報を所定のキー操作に応じてCRT画面に表示する「テレビジョン受像機」に関するものであって,キー操作により,複数チャンネルの番組表を表示したり,それに代えて,指定された単一チャンネルの番組表を表示したりすることが開示されており,本件特許の出願当時において,複数チャンネルの番組表から単一のチャンネルの番組表に切り替えるという発想は,テレビ番組情報を表示する技術分野においては当然知られていたものである。 d乙30文献では,本件発明1の要件Dの構成とその本質を同じくする表示技術に関する情報処理システムが開示されており,また,本件特許の出願当時から,複数チャンネルの番組表から単一のチャンネルの番組表へ切り替えるという発想も知られていたことを考慮すれば,乙29発明と乙30発明を組み合わせることで,本件発明1に容易に想到し得るものである。 (原告)被告の相違点の認定には誤りがある。また,相違点は,乙30発明に基づいて,当業者が容易に想到し得るものではない。 (ア)乙29文献から,本件発明1との関係で最も関連する発明(以下「乙29発明A」という。)を認定すると,本件発明1と乙29発明Aの相違点aは,「本件発明1においては,『このモニタースクリーン上でカーソルを移動してグリッドガイド形式で表示されたチャンネルの一つに目印を付けるステップ,グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目印を付けたチャンネルを表示するステップ,を備え,前記の単一チャンネル形式はその目印を付けたチャンネルに対応するチャンネルのテレビジョン番組リストを順次配列した行を含んでいる』という構成を有しているのに対し,乙29発明Aにおいては,これらについて記載がない」(要件C〜Eに対応)という点となる。 本件発明1の要件C,Dは,グリッドガイド形式での表示を単一チャンネル形式に変更する一連の操作であり,要件Eは,要件Dのステップにおける単一チャンネルの表示形式をより具体的に説明しているにすぎないから,要件CないしEは,発明の技術的特徴から一体的な要件であり,分断することはできないところ,乙29文献には,表示画面から所望の番組を選択し,録画予約するという一連の簡潔した操作が記載されているにすぎず,要件CないしEの一連の操作については説明されていない。 (イ)相違点aの検討?@相違点aは,乙30発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。乙30発明は,「スケジュール管理」に係るものであり,本件発明1や乙29発明Aのような「テレビジョン番組に関する情報データベースを閲覧する方法」とは技術分野を異にする。被告の主張は,本件発明1の「放送時間とチャンネルとタイトル」がスケジュール表に置き換えられているというように見えるという後知恵的見解にすぎない。 ?A乙29発明と乙30発明の組合せについても,極端に抽象化,上位概念化した課題が共通することをもって両発明を組み合わせることができるというのは不適切である。乙29発明と乙30発明の技術分野についても,乙29発明の技術分野は「テレビ番組の録画予約システム」と認定すべきであり,乙30発明の技術分野と共通するとはいえず,両発明は組み合わせることができない。 ?B乙31文献に開示された技術についても,乙31文献には,キー操作前の表示画面とキー操作後の表示画面が技術的に何らリンクしているものではない上,本件発明1の要件CないしEで規定するような「複数チャンネルの番組表から単一チャンネルの番組表へ切り替えるという発想」は記載されていないから,乙31文献に開示された技術から相違点aを容易に想到し得るとはいえない。 ウ分割要件違反を前提とした進歩性欠如(被告)(ア)原出願の分割出願としてされた本件特許の出願は,原出願当初明細書に記載されていない項目を含む特許法44条に違反する不適法な分割であり,出願日の遡及は認められない。 (イ)本件明細書の段落【0010】から【0084】の部分は,原出願当初明細書と参照符号の修正など形式的な修正を除いて同一であるところ,同部分(以下「本件明細書の原出願当初明細書対応記載部分」という。)を検討すると,本件発明1の要件Cに関して,グリッドガイドから単一チャンネルガイドへの切替に当たって,番組タイトルを表示したセルを選択することによって行うことしか開示されておらず,チャンネルに目印を付けて行うことは全く開示されていない。 そうすると,本件明細書の原出願当初明細書対応記載部分には,本件発明1の要件Cの記載がないから,原出願当初明細書にも本件発明1の要件Cの記載がないことになり,本件発明1は分割出願の際に新たに追加されているものである。 (ウ)したがって,本件特許の出願は,分割要件を充たさないから,出願日は,遡及せず,本件特許の現実の出願日である平成12年10月20日となる。そして,同日前である平成6年5月12日に頒布された特開平6-504165号公報(以下「乙33文献」という。)に記載された発明(以下「乙33発明」という。)を主引用例とした場合,乙33発明と本件発明1との相違点は,以下のとおりである。 a相違点?@モニタースクリーン上でカーソルを移動してグリッドガイド形式で表示されたものの一つに目印を付けることに関し,本件発明1は「チャンネル」に目印を付けるのに対し,乙33発明は,「タイトル」に目印を付ける点b相違点?@の検討グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式で番組表を表示する際に,特定の一つのチャンネルの番組表を表示するためにはチャンネルを選択する必要があるところ,その手法として,チャンネルに目印を付けるのか,それとも番組に目印を付けるのかは,ユーザーの便宜を考えて適宜変更される設計的事項である。テレビ番組情報を番組メモリに記憶し,この番組メモリに記憶したテレビ番組情報を所定のキー操作に応じてCRT画面に表示する「テレビジョン受像機」に関する技術を記載した乙31文献にも,キー操作により今後放送されるすべての番組表に代えて,指定チャンネルの今後放送される番組の一覧表を表示したりすることが開示されており,「目印を付け」ているものではないが,一つのチャンネルを選択すること自体,公知技術である。したがって,上記相違点は,当業者が容易になし得る設計的事項にすぎない。 (原告)(ア)被告の分割要件違反の主張は,すべて明細書の記載不備に基づくものであり,被告の明細書の記載不備の主張も全く理由がないから,分割要件違反の主張も理由がない。 (イ)本件発明1の要件Cに関して,本件特許の「特許請求の範囲」全体の記載に基づいて,「チャンネルの一つに目印を付ける」という発明の構成要件を技術的合理性をもって理解すれば,これは,「単一チャンネル形式での表示に変換する契機となるチャンネル情報を選択する」と解される。そして,原出願当初明細書における「単一のチャンネルガイドは,グリッド24上のカーソル32により選択されたチャンネルとスケジュール時間とに対して開かれる」との記載を,本件明細書の【図2】,【図7】を参酌して読めば,グリッドガイド形式において,特定の「チャンネルとスケジュール時間」という情報を含む「テレビジョン番組リスト」を特定することによって,当該「テレビジョン番組リスト」に対応する「チャンネル」を選択し,その「チャンネル」を単一チャンネル形式で表示する方法が開示されているのは明らかであるから,本件発明1の内容は原出願当初明細書に記載されているといえる。 (ウ)よって,本件特許の出願には,本件発明1の要件Cを理由とする分割要件違反はない。 (3)-2本件発明2の無効理由の有無ア記載要件違反(被告)(ア)平成6年改正前の特許法36条5項2号違反?@本件発明2の「電子番組ガイド」を「システムの発明」とすれば,電子番組ガイドシステムの構成に不可欠な事項が記載されたものではなく,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載した」といえず,平成6年改正前の特許法36条5項2号違反の無効理由を有している。 ?A「システム」とは複数の機能を有する手段の組合せであるから,各構成要件は「特定の機能を有する手段」を規定するものでなければならず,また,特許性の判断における発明の要旨認定においては,まずはクレーム文言の一義性が論じられるべきところ(最高裁判所第二小法廷平成3年3月8日判決昭和62年(行ツ)第3号参照),要件Gの「テレビジョン番組リスト」は,テレビジョン番組のタイトルのリストを意味するものとしてほぼ一義的に意味が定まり,要件Hの「時間とチャンネルのグリッドガイド」は,放送時間及びチャンネルをそれぞれ軸として,各セル内にテレビジョン番組のタイトルを表示する格子状の表示態様(表示物)を意味し,要件Iの「可動カーソル」にかかる「カーソル」も,一般的にはコンピュータなどのディスプレー画面上で,入力位置や入力待ちであることを表示する下線や記号として一義的な意味を有する表示態様(表示物)であるから,いずれも「特定の機能を有する手段」ではなく,システム発明の一構成要素と解釈する余地はない。したがって,本件発明2の四つの構成要件のうち,三つはシステム発明の構成要素になり得ないものであり,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項」を記載したものとはいえない。 (イ)平成6年改正前の特許法36条5項2号違反本件発明2の「テレビジョン番組リスト」という用語は,多義性を有しており,いずれの解釈を採用するかによって本件発明2の範囲が変動してしまい,「特許を受けようとする発明が明確に把握できる」とはいえず,平成6年改正前の特許法36条5項2号違反の無効理由を有する。 (原告)(ア)平成6年改正前の特許法36条5項2号違反?@被告は,システムの発明の「各構成要件は,『特定の機能を有する手段』を規定するものでなければならない。」と主張するが,「各構成要件」を,分説に対応した各要件と解すると,分説は,対象製品が発明の技術的範囲に属するか否かを判断するために用いる便宜上の区分でしかないから,その要件ごとに「特定の機能を有する手段」が必要とされる理由はない。「各構成要件」を,発明を構成する個々の要件と解しても,個々の要件すべてが「特定の機能を有する手段」でなくてはならないと解すべき合理的理由もない。 ?Aシステムの発明では,特定の目的のため機能するように各要素が組み合わされていることが明確になるように記載されていればよいと解されるところ,本件発明2の「電子番組ガイド」というシステムには,その要素として,複数のテレビジョン番組リスト及びこれが表示されるグリッドガイドが存在すること(要件G,H),グリッドガイドに表示されたテレビジョン番組リストの一つを選択して目立たせる機能を有する手段として,可動カーソルが存在すること(要件I),チャンネルのグリッドガイドをその目立たせたテレビジョン番組リストのチャンネルの単一チャンネルガイドに変える手段が存在すること(要件J)がそれぞれ読み取れるから,「グリッドガイドに表示されたテレビジョン番組リストの一つを選択して可動カーソルで目立たせ,グリッドガイドを,その目立たせたテレビジョン番組リストのチャンネルの単一チャンネルガイドに変える,という特定の目的のために機能するように組み立てられた電子番組ガイド」というシステムであることは明確に理解でき,本件発明2について,特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が明確に記載されているというべきである。 (イ)平成6年改正前の特許法36条5項2号違反第2,3(3)-1,ア(原告)(ア)と同じイ進歩性欠如(被告)乙29発明を主引用例とした場合の進歩性欠如(ア)乙29発明と本件発明3との相違点は,以下のとおりである。 相違点3本件発明2は,「時間とチャンネルのグリッドガイドをその目立たせたテレビジョン番組リストのチャンネルの単一チャンネルガイドに変える手段を備えている」のに対し,乙29発明は,このような構成を備えているかが明確にされていない点(イ)相違点3の検討相違点3は,相違点2と概ね同様であり,乙29発明と乙30発明を組み合わせることは容易であり,かかる組合せにより本件発明2に容易に想到し得る。なお,相違点3は,相違点2の「その目印を付けたチャンネルを表示する」だけではなく,「目立たせたテレビジョン番組リストのチャンネルの単一チャンネルガイドに変える」のであり,特定のチャンネルを単一チャンネルで表示することは同じであるが,目印を付ける対象がチャンネルであるのか,テレビジョン番組リストであるのかという点で相違する。しかし,「テレビジョン番組リスト」を目立たせることは,「番組」を目立たせることと同義であり,乙30文献には,日付に目印を付けることが開示され,日付は,番組表に言い換えると番組に該当するから,相違点2よりもむしろ容易に想到し得る方向に働く。 相違点3では,相違点2と異なり,切り替える手段が必要となるが,乙30文献にはユーザーがチャンネル切替ボタンを押すことが開示され,切替手段が設けられているため,容易になし得るものである。 (原告)(ア)乙29文献から,本件発明2との関係で最も関連する発明を認定すると,「1日分を単位としてチャンネル,時間,番組名を情報として含む番組スケジュールを表示する横軸にチャンネル,縦軸に時間を配した番組表,当該番組表に表示された番組の一つを選択するカーソル,を有する電子番組ガイド」(以下「乙29発明B」という。)となり,本件発明2と乙29発明Bの相違点bは,「本件発明2においては『時間とチャンネルのグリッドガイドをその目立たせたテレビジョン番組リストのチャンネルの単一チャンネルガイドに変える手段』を備えているのに対し,乙29発明Bにおいては当該手段について記載がない」(要件Jに対応)という点となる。 (イ)そして,相違点bは相違点aとほぼ同じであるから,相違点aが乙29発明及び乙30発明に基づいて当業者が容易になし得るものでない以上,相違点bも乙29発明及び乙30発明に基づいて当業者が容易になし得るものでないといえる。 ウ分割要件違反を前提とした新規性欠如(被告)(ア)第2,3(3)-1,ウ(被告)(ア)のとおり。 (イ)原出願の分割出願としてなされた本件特許の出願は,分割要件を充たさないから,出願日は,遡及せず,本件特許の現実の出願日である平成12年10月20日となる。そして,同日前である平成6年5月12日に頒布された原出願当初明細書の公表特許公報である乙33文献には,本件発明2がすべて開示されており,乙33発明と本件発明2は同一であり,新規性欠如の無効理由を有する。 (原告)被告の主張は争う。 (3)-3本件発明3の無効理由の有無ア記載要件違反(被告)(ア)平成6年改正前の特許法36条5項1号及び同条4項違反?@本件特許の適用法である平成6年改正前の特許法36条5項1号は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を要求し,同条4項は「前項第3号の発明の詳細な説明には,…容易にその実施をすることができる程度に,その発明の…構成…を記載しなければならない」と要求しているところ,本件発明3は,本件明細書の発明の詳細な説明において実施可能な程度に開示されていないので,同条5項1号及び同条4項違反の無効理由を有する。 ?A本件発明3は,要件L,M及びNに記載された各機能を実現するための信号を発生するようプログラムされていることを特徴とする「マイクロプロセッサ」(要件O)に係る発明であるところ,「容易にその実施をすることができる程度」(平成6年改正前の特許法36条4項)とは,少なくとも「容易に当該物を生産,使用をすることができる程度」であり,マイクロプロセッサの開発に従事している当業者は,aマイクロプロセッサ内部の構成要素及び構成要素間の関係,bマイクロプロセッサの動作(プログラムで制御されている場合には,プログラムの実行手順等も含む)などにより技術的な内容を把握するのが一般的であるから,これらが開示されていることが必要であると解すべきである。また,マイクロプロセッサとは,「記憶装置」,「命令やデータを取り込むしくみ」,「命令実行を制御するしくみ」,「データを加工(処理)するしくみ」を基本的な構成要素とし,記憶装置であるメモリに格納された命令やデータをマイクロプロセッサ内部に取り込み,この取り込んだ命令を実行,すなわち,メモリに格納されているデータに対して何らかの加工(何もしないことを含む)をして,メモリに書き戻したり,命令実行の状態を変化させたりするものであるから,マイクロプロセッサの構造を理解するために,aマイクロプロセッサ内部の構成要素及び構成要素間の関係を開示した上,必要に応じて個々の構成要素についての構成が開示されるべきであるし,命令やデータを取り込み,この取り込んだ命令を実行する装置であるから,b命令の実行手順等がフローチャートやタイミングチャート等により開示されるべきである。マイクロプロセッサ発明を記載した複数の特許公報の記載や裁判例からしても,マイクロプロセッサの発明であれば,この程度まで開示して初めて生産できる程度にまで開示されているといえるのである。 ?B原告は,3種類の信号を発生させることができることを前提として,要件L,M及びNの機能,及びマイクロプロセッサが上記要件L,M及びNの機能の実現が可能となるように設けられていることが要件となるなどと主張しているが,本件明細書等においては,マイクロプロセッサは,【図22】において228と付番された「CPU」と銘打ったボックスでしか開示されておらず,内部の構造は何ら開示されていないこと,マイクロプロセッサがどのように動作するのかについての開示も全くないこと,本件発明3は,3種類の信号を「発生するようプログラムされていることを特徴としたマイクロプロセッサ」であるにもかかわらず,プログラムについて何ら開示されていないことからすると,実施可能要件を具備していないことは明らかである。 ?C仮に,要件L,M及びNの各機能が本件明細書等に開示されているとしても,要件Oに係る「マイクロプロセッサ」がそのプログラムにより発生すべき要件L,M及びNに係る3つの信号については,本件明細書には何ら開示されていない。要件Lの「表示モニターにRAMに記憶したテレビジョン番組リストを表示させる信号」の発生についてCPUが何らかの関与をしていることは,本件明細書の段落【0076】の記載と併せれば漠然と把握可能であるが,CPU(マイクロプロセッサ)にそのようなプログラムが存在することについては何ら開示がない。また,要件M「表示されたテレビジョン番組リストの一つを目立たせる信号」及び要件N「単一チャンネル形式で目立たされたテレビジョン番組リストを表示する信号」については,本件明細書の発明の詳細な説明には,これらの信号の発生についてCPUが関与していることを示唆する事実は一切開示がない。原告は,「CPUは,要件M,Nの機能を実現するのに関係する…に接続されており,…にも接続されている。」と主張するが,かかる主張からは,CPU(マイクロプロセッサ)が要件M及びNに規定されているような具体的な機能を有する信号を発生するようにプログラムされていることとのつながりが不明である。 (イ)平成6年改正前の特許法36条5項2号違反本件発明3の「テレビジョン番組リスト」という用語は,多義性を有しており,いずれの解釈を採用するかによって本件発明3の範囲が変動してしまい,「特許を受けようとする発明が明確に把握できる」ことができず,平成6年改正前の特許法36条5項2号違反の無効理由を有する。 (原告)(ア)平成6年改正前の特許法36条5項1号及び同条4項違反?@ハードウェア資源に関しては,その物理的,機械的構成に特徴がある発明のほか,当該実現すべき機能に特徴がある発明があり,本件発明3及び5は,実現すべき機能に技術的特徴があり,これを「マイクロプロセッサ」により実現するという発明であるから,発明の詳細な説明に,このような実現すべき機能が明確に把握できるように記載されており,かつ,これらの機能がマイクロプロセッサによって実現できるように記載されていれば,発明の詳細な説明の記載要件を満たすといえる。発明の詳細な説明において,何をどの程度開示するべきかは,発明の技術的特徴との関係で決まるのであって,発明の対象となる「物」が何であるかによって一律に決まるのではない。よって,「マイクロプロセッサの発明であれば,被告が例示する特許公報の程度まで開示して,初めて生産できる程度にまで開示されているといえる」という論理は成り立たない。被告の例示する裁判例も,発明の技術的特徴に照らして,記載要件を判断している。 ?A被告は,本件発明3の3種類の信号について開示がないと主張するが,マイクロプロセッサが所定の機能を実現するための制御を行うには,信号を発する必要があること自体は,当業者の技術的常識であるから,本件発明3が発明の詳細な説明に記載されているといえるためには,a上記要件L,M及びNの機能並びにbマイクロプロセッサが上記要件L,M及びNの機能の実現が可能となるように設けられていることが発明の詳細な説明及び図面から把握できれば十分であり,各要件の機能との関連で,それぞれ「…という信号を発した」という記載がなければならないというわけではない。そして,本件発明3に関しては,発明の詳細な説明の段落【0030】,【0031】,【0033】,【0073】,【0074】,【0076】の記載及び【図2】,【図7】,【図8】,【図22】,【図23】からすると,要件L,M及びNの機能が理解でき,また,CPU(マイクロプロセッサ)が要件L,M及びNの機能を実現するために所定の信号を発生することが理解できる。 (イ)平成6年改正前の特許法36条5項2号違反第2,3(3)-1,ア(原告)(ア)と同じイ進歩性欠如(被告)乙29発明を主引用例とした場合の進歩性欠如(ア)乙29発明と本件発明3との相違点は,以下のとおりである。 a相違点4本件発明3は,各要件の「信号を発生」させること,及び,各要件の信号を発生するようプログラムされているのに対し,乙29発明では,このような構成を備えているか明確に開示されていない点。 b相違点5本件発明3は,グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目立たされたテレビジョン番組リストを表示する信号を発生するようプログラムされているのに対し,乙29発明は,このような構成を備えているかが明確に示されていない点。 (イ)相違点4の検討あるマイクロプロセッサを実現するときにそれぞれの機能を有する信号を発生すべきことは,当業者が容易に想到し得ることであり,また,そのためにプログラムすることも同様であるから,当該相違点については,容易に想到し得るものである。 (ウ)相違点5の検討相違点5は,相違点2,3と概ね同様であり,乙29発明及び乙30発明を組み合わせることは容易であり,かかる組合せによって本件発明3は容易に想到し得る。なお,相違点5は,相違点2,3と異なり,本件発明3では,本件発明1のように,目立たされたチャンネルのテレビジョン番組リストを表示するものでも,本件発明2のように,目立たされたテレビジョン番組リストに対応するチャンネルのテレビジョン番組リストを表示するものでもなく,単に一つの目立たされたテレビジョン番組リストを表示するにすぎないものであるから,相違点2,3に比べてより容易であるといえる。 (原告)(ア)乙29発明から,本件発明3との関係で最も近い態様を認定すると,「横軸にチャンネル,縦軸に時間を配した番組表として,予め記憶された,1日分を単位としてチャンネル,時間,番組名を情報として含む番組スケジュールを表示させる信号を発生するようプログラムされているマイクロプロセッサ」(以下「乙29発明C」という。)となり,本件発明3と乙29発明Cの相違点cは,「本件発明3においては,『表示されたテレビジョン番組リストの一つを目立たさせる信号を発生し,そしてグリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目立たされたテレビジョン番組リストを表示する信号を発生』するのに対し,乙29発明Cにおいてはこの点について記載がない」(要件M及びNに対応)という点となる。 (イ)そして,相違点cは相違点aとほぼ同じであるから,相違点aが乙29発明及び乙30発明に基づいて当業者が容易になし得るものでない以上,相違点cも,乙29発明及び乙30発明に基づいて当業者が容易になし得るものでないといえる。 ウ分割要件違反を前提とした進歩性欠如(被告)(ア)第2,3(3)-1,ウ(被告)(ア)のとおり。 (イ)本件明細書の原出願当初明細書対応記載部分を検討すると,同部分には,本件発明3の各要件において「信号を発生」すること,及び,要件Oにおいて,各要件の信号を発生するようプログラムされているマイクロプロセッサは何ら開示されていない。そうすると,本件明細書の原出願当初明細書対応記載部分には,本件発明3の各要件の「信号を発生」及び要件Oの記載がないから,原出願当初明細書にもその記載がないことになり,結果として,本件発明3は,分割出願の際に新たに追加されているものである。 (ウ)したがって,本件特許の出願は,分割要件を充たさないから,出願日は,遡及せず,本件特許の現実の出願日である平成12年10月20日となる。そして,同日前である平成6年5月12日に頒布された乙33文献に記載された乙31発明を主引用例とした場合,乙33発明と本件発明3との相違点は,以下のとおりである。 a相違点?A本件発明3は,各要件の「信号を発生」すること,及び,各要件の信号を発生するようプログラムされているのに対し,乙33発明では,このような構成を備えているか明確にされていない点。 b相違点?Aの検討あるマイクロプロセッサを実現するときにそれぞれの機能を有する信号を発生すべきこと,また,そのためにプログラムすることは,いずれも当業者が容易に想到し得ることである。したがって,上記相違点は,当業者であれば容易に想到し得る。 (原告)(ア)第2,3(3)-1,ウ(原告)(ア)のとおり(イ)本件発明3の各要件において「信号を発生」すること,及び,要件Oにおいて,各要件の信号を発生するようプログラムされているマイクロプロセッサが,所定の機能を実現するための制御を行うに当たり,信号を発する必要があること自体は,いずれも当業者の技術常識であるから,「信号の発生」及び「信号を発生するようプログラムされているマイクロプロセッサ」に関する要件については,原出願当初明細書にも実質的に記載されているといえる。 (ウ)よって,本件特許の出願には,本件発明3の各要件及び要件Oを理由とする分割要件違反はない。 (3)-4本件発明4の無効理由の有無ア記載要件違反(被告)(ア)平成6年改正前の特許法36条5項1号違反?@本件特許の適用法である平成6年改正前の特許法36条5項1号は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を記載要件として要求するところ,本件発明4の要件Tは,本件明細書の発明の詳細な説明において開示されていないので,同号違反の無効理由を有する。 ?A本件発明4の要件Tは,「記録するために選択されたテレビジョン番組リストが示している番組をVCRまたはその他の記録装置に記録するするために前記の記録するために選択されたテレビジョン番組リストのデータを前記のデータファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送するステップ」と記載し,(A)「テレビジョン番組情報にかかるデータ(タイトル,チャンネル,開始時間を含んだもの)」を,(B)番組を記録するために,RAMからVCR等(内部↑外部)に転送するという点に特徴があるが,本件明細書の発明の詳細な説明には,次のとおり,この点の開示がない。 a本件明細書の段落【0077】の「番組を時間シフトして記録要求がなされた」,「番組のタイトル及びその記録パラメータ(チャンネル,開始時間及び長さ)は,スケジュールメモリ232から記録メモRAMメモリ236へコピーされる」との記載及び【図22】からは,タイトル,チャンネル,放送時間を含んだテレビジョン番組情報が,電子番組ガイド180内のスケジュールメモリ232から記録メモRAMメモリ236へコピーされること(内部↑内部)を示すにすぎず,VCRその他の記録装置に転送することが開示されているとはいえない。同段落の「パワーオン及び記録コマンドをVCR206へ」との記載からは,VCRの電源を入れなさいという命令と,番組を記録しなさいという命令をVCRに赤外線リモートドライバ214を介して転送していることを記載しているだけであり,記録するためにテレビジョン番組情報のデータを,赤外線リモートドライバ214を介して転送することは開示されていない。段落【0080】の「このバス270は,また,記録,再生,チューナ選択及びパワーオン/オフを含むその他の機能のためのVCRコントロールコマンドを伝送する。」との記載は,それぞれ特定の命令を転送することを開示しているにすぎず,「テレビジョン番組情報(タイトル,チャンネル,開始時間を含んだもの)」という情報を転送(伝送)することについては開示されていない。 b本件明細書の【図13】は,記録した番組を再生するため,テープ内容確認要求がされたときの画面表示であり,電子番組ガイド内で作成される「仮想ディレクトリ」のテープインデックススクリーンの表示であるが,かかる表示は,電子番組ガイドシステム内の不揮発性メモリ(記録メモRAMメモリ236又はテープディレクトリRAM234)に記録された情報を表示しているだけであり,同図の画面表示をもって,記録するために,テレビジョン番組情報が転送されているとは認められない。本件明細書の段落【0037】の「テープインデックススクリーン76は,仮想のテープディレクトリを提供し,テープ記録の目次に等しい機能をもたらす。」との記載からも,同図は,テープに記録された目次情報を表示したものではなく,「目次情報に等しい」,「仮想テープディレクトリ」の情報を表示したものであることが分かるし,段落【0081】の「記録番組を再生するため,テープ内容確認要求により,テープの記録番組のディレクトリが表示される」の記載のとおり,同図の情報は,「VCRその他の記録装置内」(外部)に存在するのではなく,不揮発性メモリ(記録メモRAMメモリ236又はテープディレクトリRAM234)へ記憶されているものである。したがって,同図は,「テレビジョン番組情報(タイトル,チャンネル,開始時間を含んだもの)」という情報が,記録するために「内部↑外部」へ転送されていることの根拠にならない。 (イ)平成6年改正前の特許法36条5項2号違反本件発明4の「テレビジョン番組リスト」という用語は,多義性を有しており,いずれの解釈を採用するかによって本件発明4の範囲が変動してしまい,「特許を受けようとする発明が明確に把握できる」ことができず,平成6年改正前の特許法36条5項2号違反の無効理由を有する。 (原告)(ア)平成6年改正前の特許法36条5項1号違反本件発明4及び5において,被告が主張する(A)「テレビジョン番組情報にかかるデータ(タイトル,チャンネル,開始時間を含んだもの)」を(B)番組を記録するために,RAMからVCR等(内部↑外部)に転送するという点については,本件明細書の段落【0077】,【0080】の記載及び【図13】,【図22】を含む発明の詳細な説明の記載を総合的に見れば,記載がされているといえる。すなわち,本件発明4及び5は,「容易な呼出及び再生のため,タイトルによって記録番組のディレクトリを作成するシステム及び方法」(段落【0001】)という発明に関するものであり,そのうち,タイトルを含むテレビジョン番組リストのデータをVCR又はその他の記録装置に転送するという技術的特徴に焦点を当てたものである。段落【0036】〜【0051】の記載によれば,本件発明4及び5は,最終的にはTV側の不揮発性メモリに格納された「仮想テープディレクトリ」に記憶されているデータと,テープのデータチャンネルのデータとの突き合わせを行うことを可能にするべく,タイトルを含むテレビジョン番組リストのデータをVCRへ転送するものであることが分かり(段落【0036】,【0044】),また,具体的には,まず,タイトルを含むテレビジョン番組リストがテープに記録されることが把握できる(段落【0038】,【0043】)。そして,データがいったんVCR等の記録装置を経由する必要があることは当業者にとって自明であるから,発明の詳細な説明には,「タイトルを含むテレビジョン番組リストのデータがVCR等の記録装置に転送されていること」について記載があるといえる。 また,段落【0077】の記載によると,タイトルを含むテレビジョン番組リストのデータは,もともとはTV側のRAM(スケジュールメモリ)に存在し,当該RAMから転送されることが読み取れるし,段落【0077】,【0080】の記載からは,記録,再生に関するTV側の情報は,バス270を通じてVCR側に転送できることが読み取れるから,段落【0043】等から読み取れるタイトルを含むテレビジョン番組リストのデータの転送が,発明の詳細な説明に記載されたシステムによって実現できることは,当業者が容易に理解できるものである。 なお,被告の主張する段落【0080】の「コマンド」の記載から,被告は,情報を転送することについては開示されていないと主張するが,同段落のその直前の記載では,データバス270を通じて,「テープインデックス位置」という情報が転送可能であることが明示されている。 また,被告は,【図13】の記載は,不揮発性メモリ中の仮想テープディレクトリの情報を表示したものであるから,テレビジョン番組情報に係るデータが記録するために「内部↑外部」へ転送されていることの根拠にならないと主張するが,段落【0043】の記載からすると,テープのデータチャンネルと,不揮発性メモリとには,同じ情報が同時に書き込まれると解釈できるから,【図13】が示しているものが,仮想テープディレクトリであるとしても,テープに対して【図13】に表示される番組タイトル等の情報が書き込まれることを示すことになり,結局は,テレビジョン番組情報に係るデータが記録のためにVCR等に転送されることが把握できる。 (イ)平成6年改正前の特許法36条5項2号違反第2,3(3)-1,ア(原告)(ア)と同じイ新規性欠如(被告)本件特許の優先権主張の日前である平成元年12月12日に頒布された特開平1-307944号公報(以下「乙32文献」という。)に記載された発明(以下「乙32発明」という。)を主引用例とした場合の新規性欠如(ア)乙32発明は,次のとおり,本件発明4のすべての要件を備えており,乙32発明と本件発明4は同一である。 (イ)乙32発明では,1週間から4週間分程度の複数の「放送番組の簡単な内容,放送開始・終了時間,チャンネル番号」等を含む情報が,各情報に対応してROM32というメモリに記憶されていることになり,乙32発明の放送番組の簡単な内容,チャンネル,放映開始は,本件発明4のタイトル,チャンネル,開始時間に相当し,これらの情報は,「テレビジョン番組情報を特定するための個々の番組単位の番組情報」といえるから,原告の解釈による「テレビジョン番組リスト」に相当する。したがって,要件Pのうち,「複数のテレビジョン番組リストに対応し…タイトル,チャンネルそして開始時間を含んでいるデータファイルをメモリに記憶するステップ」が開示されている。なお,要件Pの「テレビジョン番組リスト毎に」メモリに記憶する点は,乙32発明は開示していないが,かかる相違は単なるデータの持ち方にすぎず,設計的事項である。また,乙31発明の第3図には「テレビジョン番組リスト毎に…メモリに記憶」している発明が開示されており,乙31発明は,乙32発明と同様に番組表を表示する方法に係る発明であるから,技術分野,課題を共通にし,これを乙32発明に適用することに何ら困難性はない。 (ウ)乙32発明は,ROM32から番組表を読み出して番組データをVTR3に出力し,番組データはVTR3のRAM53にいったん記憶されるから,要件Qの「メモリに記憶されている複数のテレビジョン番組リスト」に該当し,これがテレビ受像機5に出力されて表示されるから,要件Qの「テレビジョン番組リストをディスプレイモニターに表示」に該当する。そしてROM32に記憶されている番組表とは,放送番組の簡単な内容,チャンネル,放映開始を含む「複数のテレビジョン番組リスト」に該当するから,乙32発明は,要件Qの「メモリに記憶されている複数のテレビジョン番組リストをディスプレイモニターに表示」しているといえる。 (エ)乙32発明では,テレビ放送を録画するVTR3にビデオカセットテープを挿入するためのカセット挿入部7が設けられており,ビデオカセットテープは要件Rの「ビデオ記録媒体」に,VTRは要件Rの「VCRまたはその他の記録装置」に相当し,「記録するため」にビデオカセットテープをVTRに「装填する」ことは当然であるから,乙32発明は,要件Rの「記録するためビデオ記録媒体をVCRまたはその他の記録装置に装填」しているといえる。 (オ)乙32発明では,テレビ受像機5に複数のテレビジョン番組リストが表形式で表示されているから,要件Sの「表示された複数のテレビジョン番組リスト」に該当し,この番組表において,カーソルキー21ないし24を操作し,カーソルを移動させ,所望の番組を反転表示させた状態で録画予約カード1の「設定」キー11を操作することで,VTR3はその開始時刻が来ると録画を開始するものであるから,かかる操作は要件Sの「テレビジョン番組リストの中の一つを記録するために選択する」に該当する。乙32発明は,要件Sの「表示された複数のテレビジョン番組リストの中の一つを記録するために選択する」ステップを開示している。 (カ)乙32発明は,録画予約のために「設定」キーが押されると,現在カーソルがある位置に対応した番組の開始時刻とチャンネル番号を録画予約カード1のROM32から読み出してVTR3に出力するというステップ170が行われる。さらに,ステップ170に対応して,ROM32から読み出された情報がRAM53に記憶される。そして,RAM53はVTR内に設けられるものであるから,乙32発明は,「記録するために選択されたテレビジョン番組リストが示している番組をVTRに記録するために…ROMに格納された情報を前記VTRに転送」しているといえ,要件Tに該当する。また,ROMに格納された情報は,開始時刻やチャンネルを含む「記録するために選択されたテレビジョン番組リストのデータ」に該当する。 (キ)乙32発明は,記録するためにテレビジョン番組リストを選択し,そのテレビジョン番組リストが示している番組をVTRに装填されたビデオカセットテープに記録するものであるから,要件Uの「を備えることを特徴とするVCRまたはその他の記録装置を使用して,ビデオ記録媒体にテレビジョン番組を記録する方法」が開示されている。 (ク)仮に,原告の主張するように乙32発明と本件発明4に相違点を認めるとしても,相違点の認定は,「本件発明4においては,番組を記録するために転送する情報が,『テレビジョン番組リスト毎にタイトル,チャンネルそして開始時間を含んでいるテレビジョン番組リスト』であるのに対し,乙32発明においては,番組を記録するために転送する情報が,『カーソル位置』情報に基づく,個々の番組の開始時刻,チャンネル番号,番組終了時刻であって,タイトルについては転送が明確に記載されていない点」である。そして,本件発明4と乙32発明は,いずれも,番組録画のためという目的でデータを転送しているのであり,同じ目的の下,時間,チャンネルに関するデータだけを転送するのか,タイトルまで含めたデータを転送するのかは,当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎないから,上記相違点は,容易に想到し得ることは明らかである。 (原告)(ア)乙32発明から,本件発明4との関係で最も関連する発明(以下「乙32発明A」という。)を認定すると,本件発明4と乙32発明Aの相違点dは,「本件発明4においては,記録するために選択及び転送する情報が,『テレビジョン番組リスト毎にタイトル,チャンネルそして開始時間を含んでいるテレビジョン番組リスト』であるのに対し,乙32発明Aにおいては,記録するために選択及び転送する情報が,『カーソル位置』情報に基づく,個々の番組の開始時刻,チャンネル番号,番組終了時刻のみであって,タイトル情報については選択,転送がされていない」(要件S)という点となる。 乙32発明Aのシステムにおいては,録画対象の選択,転送のために用いられる情報は,時間情報及びチャンネル情報のみに限られており,本件発明4と乙32発明には相違点dが存在するから,本件発明4は乙32に記載された発明であるとはいえない。 (イ)相違点dの検討?@相違点dは,乙32発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。本件発明4は,チャンネル,開始時間のみならずタイトル情報を選択,転送する点を技術的特徴とするものであるのに対し,乙32発明にはこの点が全く記載されていない。 ?Aすなわち,本件発明4及び5は,発明の属する技術分野に記載されている「容易な呼出し及び再生のため,タイトルによって記録番組のディレクトリを作成するシステム及び方法」(段落【0001】)という発明に関するものであり,そのうち,タイトルを含むテレビジョン番組リストのデータをVCR又はその他の記録装置に転送するという技術的特徴に焦点を当てたものであるから,本件発明4においては,チャンネル情報のみならず,タイトル情報の選択,転送が不可欠であり,そのため,「テレビジョン番組リスト毎にタイトル,チャンネルそして開始時間を含んでいるテレビジョン番組リスト」を選択,転送する必要が生じるのである。他方,乙32発明Aは,バーコードを用いた従来の録画予約システムにおいては,操作が煩雑であり,しかも,読み取りミスがあったという問題を解決すべくなされたものであり,この点からすると,選択,転送される情報は,乙32記載の録画行為に必要な情報(時間,チャンネルに関する情報)に限られると解されるから,乙32発明Aでは,タイトル情報を転送する必要性はなく,その動機付けも生じない。また,被告の提出するいずれの証拠にも,仮想テープディレクトリに記憶されているデータと,テープのデータチャンネルのデータとの突き合わせを行うことを可能にするべく,タイトルを含むテレビジョン番組リストのデータをVCRへ転送する技術は開示されていないから,相違点dの「タイトル情報を選択,転送」する点については,当業者が容易になし得るものではない。 ウ分割要件違反を前提とした進歩性欠如(被告)(ア)第2,3(3)-1,ウ(被告)(ア)のとおり(イ)本件明細書の原出願当初明細書対応記載部分を検討すると,同部分には,本件発明4の要件Tに関して,テレビジョン番組情報に係るデータ(タイトル,チャンネル,開始時間を含んだもの)を,番組に記録するためにRAMからVCR等(内部↑外部)へ転送することは何ら開示されていない。そうすると,本件明細書の原出願当初明細書対応記載部分には,本件発明4の要件Tの記載がないから,原出願当初明細書にも本件発明4の要件Tの記載がないことになり,本件発明4は分割出願の際に,新たに追加されているものである。 (ウ)したがって,本件特許の出願は,分割要件を充たさないから,出願日は,遡及せず,本件特許の現実の出願日である平成12年10月20日となる。そして,同日前である平成6年5月12日に頒布された乙33文献に記載された乙33発明を主引用例とした場合,乙33発明と本件発明4との相違点は,以下のとおりである。 a相違点?B本件発明4では,要件T「記録するために選択されたテレビジョン番組リストが示している番組をVDR又はその他の記録装置に記録するために前記の記録するために選択されたテレビジョン番組リストのデータを前記のデータファイルからVCR又はその他の記録装置に転送するステップ」を有するのに対し,乙33発明ではこのようなステップが明確に示されていない点。 b相違点?Bの検討相違点?Bに関しては,乙33発明と乙32発明を組み合わせることにより,容易に想到し得るものである。すなわち,乙32発明には,テレビ番組録画に関する情報処理システムの発明が開示されており,乙33発明と,その技術分野,課題も共通しており,これらを組み合わせることに何ら困難性はない。そして,乙32発明は,要件Tに想到する構成を有している。そうすると,乙32発明に要件Tが開示されており,また,乙33発明と乙32発明を組み合わせることは容易であることからすると,本件発明4に容易に想到し得るものである。 (原告)(ア)第2,3(3)-1,ウ(原告)(ア)のとおり。 (イ)本件発明4の要件Tに関して,本件明細書の段落【0077】,【0080】の記載,【図13】,【図22】及び段落【0036】〜【0051】を中心とする本件明細書の発明の詳細な説明の記載を総合的に見れば,(A)「テレビジョン番組情報にかかるデータ(タイトル,チャンネル,開始時間を含んだもの)」を,(B)「番組を記録するためにRAMからVCR等(内部↑外部)へ転送すること」は,共に,本件明細書に記載されているところ,原出願当初明細書にも,これらの記載に対応した記載がある。 (ウ)よって,本件特許出願には,本件発明4の要件Tを理由とする分割要件違反はない。 (3)-5本件発明5の無効理由の有無ア記載要件違反(被告)(ア)平成6年改正前の特許法36条5項1号及び同条4項違反?@本件特許の適用法である平成6年改正前の特許法36条5項1号は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を要求し,同条4項は「前項第3号の発明の詳細な説明には,…容易にその実施をすることができる程度に,その発明の…構成…を記載しなければならない」と要求しているところ,本件発明5は,本件明細書の発明の詳細な説明において実施可能な程度に開示されていないので,同条5項1号及び同条4項違反の無効理由を有する。 ?A本件発明5は,要件V,W及びXに記載された各機能を実現するための信号を発生するようプログラムされていることを特徴とする「マイクロプロセッサ」(要件Y)に係る発明であるところ,上記条項を充たすためには,本件明細書の発明の詳細な説明に,「マイクロプロセッサを生産できる程度に開示」されていることが必要であるが,原告の主張する要件では,その程度に開示したことにはならないので不十分である。本件明細書等においても,マイクロプロセッサは,【図22】において28と付番された「CPU」と銘打ったボックスでしか開示されておらず,発明の詳細な説明にも,マイクロプロセッサ内部の構成要素及び構成要素間の関係や,マイクロプロセッサの動作の開示はなく,本件発明5が3種類信号を「発生するようプログラムされ,…ることを特徴としたマイクロプロセッサ」であるにもかかわらず,プログラムについて何ら開示されていない。 ?B仮に,要件V,W及びXの各機能が本件明細書等に開示されているとしても,要件Yに係る「マイクロプロセッサ」がそのプログラムにより発生すべき要件V,W及びXに係る3つの信号については,本件明細書等には何ら開示されていない。要件Vについては,要件Lと同様,「RAMから…テレビジョン番組リストを取り出してディスプレイモニターに表示する信号」の発生についてCPUが関与していることが漠然と把握可能であるが,依然としてCPU(マイクロプロセッサ)にそのようなプログラムが存在することは何ら開示されていない。 また,要件W「この表示された複数のテレビジョン番組リストの中の一つを記録するためその一つをテレビジョン番組リストを特定する信号」及び要件X「データをデータファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送するための信号」については,本件明細書の発明の詳細な説明には一切開示がない。原告は,「CPU228は…また,要件Wの機能を実現するのに関係する…,に接続されている。」,「また,CPUは,Xの機能を実現するのに関係する…に接続され,また,…に接続され,さらに,…に接続されている。」と主張するが,かかる主張からは,CPU(マイクロプロセッサ)が要件W及びXに規定されているような具体的な機能を有する信号を発生するようにプログラムされていることとのつながりが不明である。 (イ)平成6年改正前の特許法36条5項2号違反本件発明5の「テレビジョン番組リスト」という用語は,多義性を有しており,いずれの解釈を採用するかによって本件発明5の範囲が変動してしまい,「特許を受けようとする発明が明確に把握できる」ことができず,平成6年改正前の特許法36条5項2号違反の無効理由を有する。 (ウ)平成6年改正前の特許法36条5項1号違反?@本件特許の適用法である平成6年改正前の特許法36条5項1号は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を記載要件として要求するところ,本件発明5の要件Xは,本件明細書の発明の詳細な説明において開示されていないので,同号違反の無効理由を有する。 ?Aすなわち,本件発明5の要件Xは,「この記録するために選択されたテレビジョン番組リストに対応するデータをデータファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送するための信号を発生するよう」と規定され,(A)「テレビジョン番組情報にかかるデータ(タイトル,チャンネル,開始時間を含んだもの)」を(B)記録するために,RAMからVCR等(内部↑外部)に転送するという点に特徴があるが,発明の詳細な説明を含む本件明細書等には,前記のとおり,この点の開示がない。 (原告)(ア)平成6年改正前の特許法36条5項1号及び同条4項違反?@第2,3(3)-3,ア(原告)(ア)?@と同じ?A被告は,本件発明5の3種類の信号について開示がないと主張するが,マイクロプロセッサが所定の機能を実現するための制御を行うには,信号を発する必要があること自体は,当業者の技術的常識であるから,本件発明5が発明の詳細な説明に記載されているといえるためには,a上記要件V,W及びXの機能並びにbマイクロプロセッサが上記要件V,W及びXの機能の実現が可能となるように設けられていることが発明の詳細な説明及び図面から把握できれば十分であり,各要件の機能との関連で,それぞれ「…という信号を発した」という記載がなければならないというわけではない。そして,本件発明5に関しては,発明の詳細な説明の段落【0043】,【0073】,【0074】,【0076】,【0077】,【0080】の記載及び図2,8,13,22からすると,要件V,W及びXの機能が理解でき,また,CPU(マイクロプロセッサ)が要件V,W及びXの機能を実現するために所定の信号を発生することが理解できる。 (イ)平成6年改正前の特許法36条5項2号違反第2,3(3)-1,ア(原告)(ア)と同じ(ウ)平成6年改正前の特許法36条5項1号違反第2,3(3)-4,ア(原告)(ア)と同じイ進歩性欠如(被告)乙32発明を主引用例とした場合の進歩性欠如(ア)乙32発明と本件発明5との相違点は,以下のとおりである。 a相違点6本件発明5は,各要件の「信号を発生」させること,及び,各要件の信号を発生するようプログラムされているのに対し,乙32発明では,このような構成を備えているかが明確に開示されていない点。 b相違点7本件発明5においては,番組を記録するために転送する情報が,「テレビジョン番組リスト毎にタイトル,チャンネルそして開始時間を含んでいるテレビジョン番組リスト」であるのに対し,乙32発明においては,番組を記録するために転送する情報が,「カーソル位置」情報に基づく,個々の番組の開始時刻,チャンネル番号,番組終了時刻であって,タイトルについては転送が明確に記載されていない点。 c相違点8本件発明5においては,「テレビジョン番組リスト」をRAMから取り出してディスプレイモニターに表示する信号を発生するのに対し,乙32発明においては,RAM33から番組表のデータを取り出して,CPU51に出力する信号を発生する点。 (イ)相違点の検討a相違点6相違点4と同様,あるマイクロプロセッサを実現するときにそれぞれの機能を有する信号を発生すべきことは,当業者が容易に想到し得ることであり,また,そのためにプログラムすることも同様である。 したがって,相違点6は容易に想到し得る。 b相違点7本件発明4の相違点の内容と概ね同様であるから,同相違点が容易に想到し得るのであるから,相違点7も容易に想到し得る。 c相違点8乙32発明には,レコーダー側に存在するCPU31とCPU51とが協働処理することによって,番組表データがテレビ受像機に表示することが開示されているから,これをCPU31が単独で,番組表データがテレビ受像機に表示するように処理する信号を発生するように構成することは単なる設計的事項であり,当業者にとって何の困難性もない。したがって,相違点8も容易に想到し得る。 (原告)(ア)本件発明5は,本件発明4の「VCRまたはその他の記録装置を使用して,ビデオ記録媒体にテレビジョン番組を記録する方法」を実現するための「マイクロプロセッサ」に係るものであり,その要件も,本件発明4とほぼ同じであるから,本件発明4が乙32発明に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものでない以上,本件発明5も,乙32発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。 (イ)すなわち,乙32発明から,CPU31の機能に着目して,本件発明5との関係で最も近い態様を認定すると,「番組表のデータを記憶している録画予約カード側のROM32から当該番組表のデータを取り出してVTRのCPU51に出力する信号を発生し,カーソル位置の情報に基づいて,記録する番組の開始時間情報,チャンネル番号,番組終了情報を特定する信号を発生し,そして,記録するために選択した当該カーソル位置の情報に基づく,番組の開始時間情報,チャンネル番号,番組終了情報を,録画予約カード中のROM32からVTRのCPU51に対して転送するための信号を発生するようプログラムされ,前記の記録するために選択されたカーソル位置が示している番組を記録させるようにすることを特徴としたマイクロプロセッサ」(以下「乙32発明B」という。)となり,本件発明5と乙32発明Bの相違点は,次のとおりである。 ?@相違点e本件発明5においては,「テレビジョン番組リスト」をRAMから取り出してディスプレイモニターに表示する信号を発生するのに対し,乙32発明Bにおいては,RAM33からデータを取り出してディスプレイモニターに表示する信号は発生しない点(要件Vに対応)?A相違点f本件発明5においては,記録するために選択及び転送する情報が,『タイトル,チャンネルそして開始時間をテレビジョン番組リスト毎に含んでいるテレビジョン番組リスト』であるのに対し,乙32発明Bにおいては,記録するために選択及び転送する情報が,「カーソル位置」の情報に基づく,個々の番組の開始時刻,チャンネル番号,番組終了時刻であって,タイトル情報については選択,転送がなされない点(要件W,X及びYに対応)(ウ)相違点の検討相違点eについては,乙32発明Bにおいて,このような信号が発生するという記載がない以上,当該相違点を克服することは当業者が容易になし得るとはいえない。また,相違点fは,相違点dとほぼ同じであるところ,相違点dは当業者に容易になし得るものではないから,相違点fは,当業者が容易になし得るものではない。 ウ分割要件違反を前提とした進歩性欠如(被告)(ア)第2,3(3)-1,ウ(被告)(ア),(イ)のとおり。 (イ)本件明細書の原出願当初明細書対応記載部分を検討すると,同部分には,本件発明5の要件Xに関して,テレビジョン番組情報に係るデータ(タイトル,チャンネル,開始時間を含んだもの)を,番組に記録するためにRAMからVCR等(内部↑外部)へ転送することは何ら開示されていない。また,本件明細書の原出願当初明細書対応記載部分には,本件発明5の各要件において「信号を発生」すること,及び,要件Yにおいて,各要件の信号を発生するようプログラムされているマイクロプロセッサは,何ら開示されていない。そうすると,本件明細書の原出願当初明細書対応記載部分には,本件発明5の各要件の「信号を発生」,要件X及びYの記載がないから,原出願当初明細書にも本件発明5の各要件の「信号を発生」,要件X及びYの記載がないことになり,結果として,本件発明5は,分割出願の際に新たに追加されているものである。 (ウ)したがって,本件特許の出願は,分割要件を充たさないから,出願日は,遡及せず,本件特許の現実の出願日である平成12年10月20日となる。そして,同日前である平成6年5月12日に頒布された乙33発明を主引用例とした場合,乙33発明と本件発明5との相違点は,以下のとおりである。 a相違点(a)相違点?C本件特許5は,各要件の「信号を発生」すること,及び,各要件の信号を発生するようプログラムさせているのに対し,乙33発明では,このような構成を備えているかが明確に示されていない点。 (b)相違点?D本件発明5では,要件X「この記録するために選択されたテレビジョン番組リストに対応するデータをデータファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送するための信号を発生するよう」という構成を有するのに対し,乙33発明では,このような構成が明確に示されていない点b相違点の検討(a)相違点?Cあるマイクロプロセッサを実現するときにそれぞれの機能を有する信号を発生すべきことは当業者が容易に想到し得ることであり,また,そのためにプログラムすることも同様に容易に想到し得るものである。したがって,相違点?Cについては,当業者であれば容易に想到し得るものである。 (b)相違点?D乙33発明は,要件Xの機能(要件Tの機能と同じ)を有しており,乙33発明と乙32発明を組み合わせることも容易であるから,かかる組合せによって相違点?Dは容易に想到し得る。 (原告)(ア)第2,3(3)-1,ウ(原告)(ア)のとおり。 (イ)本件発明5の要件Xに関して,本件明細書の段落【0077】,【0080】の記載,【図13】,【図22】及び段落【0036】〜【0051】を中心とする本件明細書の発明の詳細な説明の記載を総合的に見れば,(A)「テレビジョン番組情報にかかるデータ(タイトル,チャンネル,開始時間を含んだもの)」を,(B)「番組を記録するためにRAMからVCR等(内部↑外部)へ転送すること」は,共に,本件明細書に記載されているところ,原出願当初明細書にも,これらの記載に対応した記載がある。また,本件発明5の各要件において「信号を発生」すること,及び,要件Yにおいて,各要件の信号を発生するようプログラムされているマイクロプロセッサが,所定の機能を実現するための制御を行うに当たり,信号を発する必要があること自体は,いずれも当業者の技術常識であるから,「信号の発生」及び「信号を発生するようプログラムされているマイクロプロセッサ」に関する要件については,原出願当初明細書にも実質的に記載されているといえる。 (ウ)よって,本件特許出願には,本件発明5の各要件及び要件X,Yを理由とする分割要件違反はない。 (4)損害論(原告)被告は,平成16年9月から平成19年9月までの間,イ号物件及びロ号物件を,少なくとも286万1000台販売しており,原告が本件発明1ないし5の実施に対し受け取るべき金銭の額に相当する額は,イ号物件及びロ号物件1台当たり920円を下らないから,原告の損害額は,少なくとも26億3212万円である。 (被告)原告の主張は,争う。 第3当裁判所の判断1争点(2)侵害論,(2)-1請求項における用語の解釈について本件発明の技術的範囲を確定し,イ号方法及びイ号物件並びにロ号方法及びロ号物件の本件発明の構成要件充足性を検討する前提として,まず,本件発明の「特許請求の範囲」記載の用語の解釈について,検討する。 (1)テレビジョン番組リストア本件発明1ないし3(ア)本件発明1に関する「特許請求の範囲」の記載によると,本件発明1の要件Aには「タイトル,放送時間そしてチャンネルをそれぞれが含んでいる複数のテレビジョン番組リストを電子メモリに記憶する」と記載され,「複数」の「テレビジョン番組リスト」の「それぞれ」が「タイトル,放送時間そしてチャンネル」という個々の番組を特定するための番組情報を含むものであり,また,「テレビジョン番組リスト」そのものが電子メモリに記憶される対象として規定されていること,本件発明1の要件Bには,「時間とチャンネルのグリッドガイド形式で…複数のテレビジョン番組リストのチャンネルの中の幾つかをモニタースクリーン上に表示する」と記載され,要件Eには「…単一チャンネル形式はその目印を付けたチャンネルに対応するチャンネルのテレビジョン番組リストを順次配列した行を含んでいる」と記載されており,「テレビジョン番組リスト」は,それ自体が,「複数」,「順次配列」し得るようなものと認められ,グリッドガイド形式又は単一チャンネル形式という表示形式で表示される対象として規定されていることからすると,本件発明1において,「テレビジョン番組リスト」とは,「個々の番組単位の番組情報」を意味すると解するのが相当である。 (イ)本件発明2に関する「特許請求の範囲」の記載によると,本件発明2の要件Gには「タイトル,放送時間そしてチャンネルをそれぞれが含んでいる複数のテレビジョン番組リスト」と記載され,「複数」の「テレビジョン番組リスト」の「それぞれ」が「タイトル,放送時間そしてチャンネル」という番組情報を含むものとして規定されていること,要件Hの「このテレビジョン番組リストの中の幾つかを表示する時間とチャンネルのグリッドガイド」との記載は,複数の「テレビジョン番組リスト」が,グリッドガイド形式で表示される対象となることを表わしていると解されること,要件Iの「表示されたテレビジョン番組リストの一つを選択して目立たさせる」との記載及び要件Jの「その目立たせたテレビジョン番組リスト」との記載からすると,「テレビジョン番組リスト」は,表示された中から,個別に選択され,また,選択されたことを示すために目立たさせられるものとして規定されていること,そして,選択され,目立たさせられるためには,個別に特定されていることが必要であること等を考慮すると,本件発明2において,「テレビジョン番組リスト」とは,「テレビジョン番組を特定するための個々の番組単位の番組情報」を意味すると解するのが相当である。 (ウ)本件発明3に関する「特許請求の範囲」の記載によると,本件発明3の要件Lには「テレビジョン番組リストを複数のセル内に表示している時間とチャンネルのグリッドガイド形式で表示モニターに,RAMに記憶したテレビジョン番組リストを表示させる信号を発生し」と記載され,「テレビジョン番組リスト」が,グリッドガイド形式の「複数のセル内」に表示されるものであり,また「テレビジョン番組リスト」そのものがRAMに記憶される対象として規定されていること,要件Nの「単一チャンネル形式でその目立たされたテレビジョン番組リストを表示する」との記載は,「テレビジョン番組リスト」が,単一チャンネル形式の画面表示において表示される対象となることを表わしていること,要件Mには,「その表示されたテレビジョン番組リストの一つを目立たさせる信号」と記載され,「テレビジョン番組リスト」が,個別に目立たさせられる対象となるものとして規定されていること,個別に目立たさせられるためには,それぞれが特定されていることが必要であること等を考慮すると,本件発明3において,「テレビジョン番組リスト」とは,「テレビジョン番組を特定するための個々の番組単位の番組情報」を意味すると解するのが相当である。 (エ)以上のとおり,本件発明1ないし3においては,「テレビジョン番組リスト」は,「個々の番組単位の番組情報」あるいは「テレビジョン番組を特定するための個々の番組単位の番組情報」を意味すると解するのが相当である。 イ本件発明4及び5(ア)本件発明4に関する「特許請求の範囲」の記載によると,本件発明4の要件Pの「複数のテレビジョン番組リストに対応し,テレビジョン番組リスト毎にタイトル,チャンネルそして開始時間を含んでいるデータファイル」との記載及び要件Tの「記録するために選択されたテレビジョン番組リストのデータ」との記載があり,これらの記載からすると,「テレビジョン番組リスト」は,それ自体が「複数」あり,「テレビジョン番組リスト」,「毎」に「タイトル,チャンネルそして開始時間」という番組情報(データ)を含むものとして規定されていること,要件Qの「メモリに記憶されている複数のテレビジョン番組リストをディスプレイモニターに表示する」,要件Sの「表示された複数のテレビジョン番組リストの中の一つを記録するために選択する」,要件Tの「記録するために選択されたテレビジョン番組リストが示している番組を…記録するために選択されたテレビジョン番組リストのデータを前記のデータファイルからVCRまたはその他の記録装置に転送する」との各記載からすると,「テレビジョン番組リスト」は,その複数がメモリに記憶されるものであるとともに,ディスプレイモニターに表示され,また,表示された中から記録するためにその一つが個別に選択される対象となるものであり,さらに,そのデータが記録装置等に転送されるものとして規定されていること,個別に選択されるためには,それぞれが特定されていることが必要であること等を考慮すると,本件発明4において,「テレビジョン番組リスト」とは,「テレビジョン番組を特定するための個々の番組単位の番組情報」を意味すると解するのが相当である。 (イ)本件発明5に関する「特許請求の範囲」の記載によると,本件発明5の要件Vの「タイトル,チャンネルそして開始時間をテレビジョン番組リスト毎に含んでいる複数のテレビジョン番組リスト」との記載,要件Wの「この表示された複数のテレビジョン番組リスト」との記載があり,これらの記載からすると,「複数」の「テレビジョン番組リスト」は,それぞれが「タイトル,チャンネルそして開始時間」という番組情報を含むものとして規定されていること,要件Vの「記憶しているRAMから前記の複数のテレビジョン番組リストを取り出してディスプレイモニターに表示する信号を発生」との記載,要件Wの「この表示された複数のテレビジョン番組リストの中の一つを記録するためその一つのテレビジョン番組リストを特定する信号を発生」との記載,要件Xの「この記録するために選択されたテレビジョン番組リストに対応するデータをデータファイルからVCRまたはその他の記憶装置に転送するための信号を発生」との記載,要件Yの「前記の記録するために選択されたテレビジョン番組リストが示している番組を記録させる」との記載からすると,「テレビジョン番組リスト」は,記憶されたRAMからその複数が取り出され,ディスプレイモニターに表示され,表示された中から記録するためにその一つが特定され選択される対象として規定されていること等を考慮すると,本件発明5においては,「テレビジョン番組リスト」とは,「テレビジョン番組を特定するための個々の番組単位の番組情報」を意味すると解するのが相当である。 (ウ)以上のとおり,本件発明4及び5においては,「テレビジョン番組リスト」は,「テレビジョン番組を特定するための個々の番組単位の番組情報」を意味すると解するのが相当である。 ウ「テレビジョン番組リスト」の解釈に関して,本件明細書の記載及び図面を検討すると,本件明細書には,「テレビジョン番組リスト」の文言は,本件明細書の「発明の詳細な説明」のうち,「発明が解決しようとする課題」(段落【0008】)及び「課題を解決するための手段」(段落【0009】)の欄以外には記載されていないが,これに類似する文言である「番組リスト」,「TVリスト」,「リスト」については,次のとおりの記載がある。 (ア)本件明細書の段落【0031】には,「図7は…単一チャンネルの番組リスト58のスクリーン22を示す。リスト58は,そのチャンネルの一連の番組リストの行60とチャンネル情報フィールド62を含む。」と記載され,この説明に対応する【図7】では,番組リストの行60として,「11:30A判事(パート2)」等の,個々の番組単位の開始時間,タイトル等の番組情報の記載された各行が示されている。 (イ)本件明細書の段落【0022】の「TV表示部のテキストスペースの制限により,可能な限りTVリストの多数の行を表示するのが好ましい」との記載では,「TVリスト」は,「多数」の「行」に表示されるものであることが示されている。 (ウ)本件明細書の段落【0019】では,「各スケジュール更新後,スケジュールシステムは,リンクされたタイトル(図24)でのタイトルに合致するいかなるタイトルの発生に対しても新規のリストを調査する。もしタイトルが合致すれば,それは自動的に記録のために標識が付けられる。」と記載され,番組のスケジュール情報が更新されると,番組リンクアイコン46が付された番組のタイトル情報と更新後の「新規のリスト」との突き合わせがされ,合致した場合には後者に自動的に記録のために標識が付けられるとされており,上記「リスト」は,情報を含むものとして,調査され,場合によっては自動的に記録のために標識が付けられる対象となるものとされている。 (エ)本件明細書の段落【0024】には,「選択した番組の番組ノートは,要求に応じてグリッドガイド上に重ねて表示される。…番組ノート52は,ガイドの3または4のリストに重ねられるか隠してしまう。 ガイドの隠蔽を最小にするために,自動移動ノートが使用される。番組ノートは,スクリーンの上半分か下半分に重ねられ,必要に応じて,選択されたリストのタイトルをマスクを回避できるようになっている。」と記載され,これに対応する【図6】では,番組ノート52が,番組情報(タイトル)を表示した行を数行隠しているものの,選択された「ゴールデンガールズ」という番組情報(タイトル)を隠さないよう,スクリーンの下半分に位置している様子が示されている。 (オ)本件明細書の段落【0073】の「リスト情報やケーブルチャンネル割当データといった他の支持情報が…一日数回または連続的にVBIに送信される」との記載,段落【0074】の「VBI信号がCPU228によって処理された後,リストデータは,スケジュールメモリ232へ記憶される」との記載及び段落【0076】の「TV内容確認要求に関して,スケジュールメモリ232に記憶されているリストが呼び出され,CPU228で処理され,ビデオ表示発生器224へ出力される。」との記載によると,「リスト」の用語は,上記各段落では,情報を含むものとして,VBIに送信され,CPU228によって処理された後,スケジュールメモリ232に記憶される対象となるものである。 エ以上のとおり,本件明細書の各記載及び図面によると,本件明細書における「番組リスト」(ただし,段落【0031】については「番組リストの行60」の「番組リスト」を示す。),「TVリスト」,「リスト」の文言は,個々の番組の番組情報を含み,画面上は行の中に表示され,あるいは,マイクロプロセッサにより処理されたりメモリに記憶されるものとして使用されているから,これらの文言は,「個々の番組単位の番組情報」を意味していると解するのが相当である。そして,上記のような本件明細書の記載及び図面を考慮すると,本件特許の「特許請求の範囲」に記載された「テレビジョン番組リスト」の文言の解釈については,これを「テレビジョン番組を特定するための個々の番組単位の番組情報」と解することが,本件明細書の記載等とも整合しているというべきである。 オ被告は,「テレビジョン番組リスト」とは,「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味すると主張し,「テレビジョン番組リスト」を文言解釈すると,「テレビ」の「番組」に関する「リスト」(「表のように項目を並べたもの」であり「情報」ではない。)であること,本件発明の「特許請求の範囲」の記載からしても,「テレビジョン番組リスト」を「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」と解釈し,本件発明1の要件Aについて,タイトルの並びに加えて放送時間,チャンネルを軸とした表形式で表せば,それぞれ「タイトル,放送時間,そしてチャンネル」を含んでいるリストとして観念し得るし,そのデジタル情報をRAMに記憶することも可能であると主張する。 しかしながら,上記のとおり,本件発明1の他の要件(要件B,E)の記載によると,「テレビジョン番組リスト」は,それ自体が,複数,グリッドガイド形式又は単一チャンネル形式という表示形式で表示される対象として規定されているから,「個別の番組情報」として解されており,これを「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」(番組表)として解釈することはできないというべきである。したがって,被告の上記主張は採用できない。 カ被告は,本件明細書の段落【0011】及び【0031】の「番組リスト」,段落【0022】の「TVリスト」,段落【0065】,【0019】,【0024】の「リスト」という各文言の意味を考慮すると,いずれも「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」と解されるから,本件発明の「特許請求の範囲」の「テレビジョン番組リスト」の文言についても,同様に解されると主張する。そして,確かに,本件明細書の段落【0011】の記載によると,「番組リスト」は,「半時間長の三つのコラム28,及び十二の行30」から「構成され」,長さにより,隣接する時間帯の「二つかそれ以上のコラム28を重複して使用している」ものであるから,「番組リスト」は,縦横に並べられた複数のコラムと行から構成され,時間が長い番組については,複数のコラムを重複して使用しているような「番組表」を意味すると解することもできる。また,段落【0031】では,「単一チャンネルの番組リスト58」について,「リスト58は,そのチャンネルの一連の番組リストの行60とチャンネル情報フィールド62を含む。」と記載され,これに対応する【図7】においても,「リスト58」は,一連の番組情報を示す行とチャンネルが並べられた同図全体を指しているから,「リスト58」は,同段落においては「番組表」の意味で使用されているといえる。さらに,段落【0065】では,ユーザーがチャンネルを興味に合わせて除去する等してカスタム化し「リストをコンパクトにできる」とし,表形式のような「リスト」を簡略化することを記載しているから,同段落の「リスト」は「並んだもの」を意味していると解される。 しかしながら,本件明細書の「番組リスト」,「TVリスト」,「リスト」の各文言が,上記各段落においては「番組表」を意味すると解され得るとしても,上記ウのとおり,本件明細書の他の段落においては「番組情報」を意味すると解されることや,「特許請求の範囲」に記載された「テレビジョン番組リスト」の文言の解釈との関係において,同文言を「番組表」と解釈すると,複数の「テレビジョン番組リスト」のそれぞれが個々の番組を特定するための番組情報を含むものとされていたり(本件発明1,2,4,5),「テレビジョン番組リスト」が,個別に選択され,目立たさせられる対象となるものとして規定されていること(本件発明2ないし5)等と整合性のある解釈をすることはできないから,本件明細書に被告の主張するような記載があるとしても,「特許請求の範囲」における「テレビジョン番組リスト」の文言を「番組表」と解することはできないと言わざるを得ない。したがって,被告の主張を採用することはできない。 キ被告は,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続では,原告が,「テレビジョン番組リスト」の用語を「個々の番組単位における番組情報」の意味では使用しておらず,各手続における特許庁の主張及び裁判所の判決においても,「テレビジョン番組リスト」とは,テレビジョン番組のタイトルのリスト,すなわち,テレビジョン番組のタイトルが並んだものと解されているから,本件発明における「テレビジョン番組リスト」の文言についても,「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味すると解すべきであり,分割出願に係る本件特許権による権利行使の際に,同用語の意義を違えて主張することは,信義則に基づく禁反言法理から許されないと主張する。 しかしながら,分割出願制度は,一つの出願において二つ以上の異なる発明の特許出願をした出願人に対し,出願を分割する方法により,各発明につき,それぞれ元の出願の時に遡って出願がされたものとみなして特許を受けさせるものであるから,原出願で特許出願された発明と,分割出願で特許出願された発明は,本来,内容を異にするものであり,分割出願された発明の「特許請求の範囲」に記載された文言の解釈が,原出願の手続における文言の解釈と必ずしも一致する必要はないというべきである。したがって,本件特許の「テレビジョン番組リスト」の文言の解釈において,仮に,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続において使用された「テレビジョン番組リスト」の文言の意味とは異なる解釈をしたとしても,禁反言法理から許されないとはいえず,被告の上記主張は採用できない。 なお,被告は,本件特許の登録後に関連で再分割出願された2つの特許出願の経過についても主張するが,本件特許とは異なる特許出願における「特許請求の範囲」に記載された文言の解釈に係る主張であり,上記と同様の理由により,これを採用することはできない。 (2)グリッドガイド形式ア本件発明において,本件発明1の要件B,C,D,本件発明2の要件H,I,J,本件発明3の要件L,Nの「グリッドガイド形式」とは,格子状のテレビジョン番組表(形式)をいうことについては,当事者間に争いがないところ(前記第2,3(2)-1,イ),「格子状」とは,技術常識からして,必ずしも縦横が常に明瞭に区切られた状態である必要はなく,縦横の位置の目安が分かる程度の状態であれば足りると解されるから,番組表においては,時間とチャンネルを軸としてテレビジョン番組リストという情報(要素)が格子状に配列されていればよいと解される。 イ被告は,「格子状」とは,「碁盤の目のように,縦横が常に明瞭に区切られた状態」,すなわち,時間とチャンネルの軸で常に明瞭に区切られている状態をいうと主張するが,上記の説示から明らかなように,このような限定解釈をする必要性及び合理性はなく,被告の主張を採用することはできない。 (3)チャンネルの一つに目印を付けるア本件特許の「特許請求の範囲」の記載によると,本件発明1の要件Cでは「チャンネルの一つに目印を付ける」と記載され,目印を付ける対象を「チャンネル」と規定しているのに対し,他の本件発明である本件発明2の要件Iでは「テレビジョン番組リストの一つを選択して目立たさせる」,本件発明3の要件Mでは「テレビジョン番組リストの一つを目立たさせる」,本件発明4の要件Sでは「テレビジョン番組リストの中の一つを記録するために選択する」,本件発明5の要件Wでは「その一つのテレビジョン番組リストを特定する」とそれぞれ記載され,いずれも選択し,目立たさせ,あるいは特定する対象として「テレビジョン番組リスト」を規定しており,本件発明1の要件Cのみがあえて他の本件発明とは異なる規定となっている。また,本件明細書の記載によると,段落【0027】には,「チューナが同調するチャンネルがグリッド24に表示されると,56で示されるように,そのチャンネルはハイライトされる」と記載され,対応する【図1】では,タイトル「若さと不安」と表示されたセルに実線及び破線の下線が引かれているのとは別に,チャンネル56の「2」が,ハッチング(網掛け)されている。そして,前記第2,1の争いのない事実等(以下,単に「争いがない事実等」と表記する。)(6)イのとおり,原告は,本件特許の出願手続において,請求項1の要件Cに該当する部分について,当初は,目印を付ける対象を「タイトル」と記載していたのを,平成15年9月24日,手続補正書及び同日付け意見書を提出し,請求項の表現を読みやすく訂正するとの理由により,目印を付ける対象を「チャンネル」に変更したものである。 そうすると,「チャンネルの一つの目印を付ける」とは,チャンネル軸に表示されているチャンネルの一つに目印を付けることを意味していると解するのが相当である。 イ原告は,「チャンネルの一つに目印を付ける」とは,「単一チャンネル形式での表示に変換する契機となるチャンネル情報を選択する」ことであり,そのような情報を選択できれば,具体的態様については,特段の限定はないと解すべきであると主張する。そして,本件明細書の段落【0033】の記載及び【図2】,【図7】から,「モニター画面上の,テレビジョン番組リストを表示する部分を選択することによって,単一チャンネル形式表示に対応するチャンネル情報を選択する」方法が開示されていること,特許請求の範囲相互間での一部の表現が異なることをもって,一方の発明について,他方の発明における,その一部の異なった表現による実施態様を排除しているとか,そのような実施態様を含まない形で限定解釈しなければ信義則に反するということはないこと,本件特許の出願の経緯に照らしても,補正の前後において,請求項1の発明の内容には実質的な変更がないこと等を主張する。 しかしながら,上記アのとおり,本件明細書の段落【0027】の記載及びこれに対応する【図1】からすると,「チャンネルの一つに目印を付ける」ことは,「チャンネル」が「ハイライトされる」(【図1】上は「チャンネル2」がハッチングされている。)ことにより表わされており,他方,「タイトルの一つに目印を付ける」ことは,タイトルが表示されたセル26をカーソル32が選択する(【図1】上は「若さと不安」というタイトルが表示されたセルに実線及び破線の下線が引かれている。)ことにより表わされていると解されるから,「チャンネルの一つに目印を付ける」ことと「タイトルの一つに目印を付ける」ことは,画面表示においては,異なる事項を指しているものと解される。また,利用者の観点からも,タイトルが表示されたセルをカーソルで選択することは,あくまで「タイトルの一つに目印を付け」て番組を選択することであり,「チャンネルの一つに目印を付ける」ことと認識しているものではないことからすると,「チャンネルの一つに目印を付ける」ことと「タイトルの一つに目印を付ける」こととは,別の技術的事項を表わしており,タイトルの表示に目印を付けるという態様は,チャンネル情報を選択する態様には含まれないと解するのが相当である。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 (4)カーソルア本件発明1の要件Dの「グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目印を付けたチャンネルを表示する」との記載,本件発明2の要件Jの「時間とチャンネルのグリッドガイドをその目立たせたテレビジョン番組リストのチャンネルの単一チャンネルガイドに変える」との記載及び本件発明3の要件Nの「グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目立たされたテレビジョン番組リストを表示する」との記載のとおり,本件発明1ないし3は,グリッドガイド形式で表示された複数のテレビジョン番組リストを,単一チャンネル形式に切り替えることにより,テレビジョン番組リストをより見やすい形で表示することを技術的特徴としているところ,「カーソル」は,本件発明1の要件Cの「モニタースクリーン上でカーソルを移動してグリッドガイド形式で表示されたチャンネルの一つに目印を付ける」,本件発明2の要件Iの「このグリッドガイドに表示されたテレビジョン番組リストの一つを選択して目立たさせる可動カーソル」との各記載のとおり,上記グリッドガイド形式から単一チャンネル形式に切り替えるための契機となる情報の選択手段としての役割を果たしているにすぎないから,本件発明における「カーソル」とは,「表示装置の画面上の次の操作位置を指示するために用いられる可動で可視な標識」と解するのが相当である。 イ被告は,本件発明における「カーソル」は,本件明細書の段落【0013】から【0015】に記載された?@セル全体に広がり,かつ,?A現在の基礎位置をはっきりとハイライトしているという2つの要素を具備するカーソルに限定して解釈すべきであると主張するが,本件発明1ないし3において,グリッドガイド形式で表示された複数のテレビジョン番組リストを,単一チャンネル形式に切り替えるという解決すべき課題との関係では,当該切替えの契機となる情報の選択手段としての「カーソル」について,被告の主張するような特定の形状のものに限定する合理的な理由はないというべきである。したがって,被告の主張を採用することはできない。 (5)電子番組ガイドア本件発明2の要件Jの「時間とチャンネルのグリッドガイドをその目立たせたテレビジョン番組リストのチャンネルの単一チャンネルガイドに変える手段」の記載からすると,本件発明2には,特定の機能を実現するための手段が記載されているといえる。また,本件発明2の他の要件は,いずれも画面に表示されている要件Gの「テレビジョン番組リスト」,要件Hの「グリッドガイド」及び要件Iの「可動カーソル」をそれぞれ構成要素としているが,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,全体としてシステムの発明として記載されていることが明らかであるから,本件発明2は「システムの発明」であると解するのが相当である。 イ被告は,本件発明2は,「システム」の発明ではなく,電子番組ガイドという表示態様に関する何らかの工夫に関する「表示物」の発明であると主張し,本件発明2の四つの要件GないしJのうち,三つの要件GないしIは,システムの発明としての記載になっていないことを理由として述べるが,そもそも請求項の分説は,対象製品が発明の技術的範囲に属するか否かを判断するために用いる便宜上の区分であることや,システムの発明において,必ずしも,すべての分説ないし構成要件が特定の機能を実現するための手段として記載されている必要はないと解されることからすると,被告の上記主張を採用することはできない。 また,被告は,「電子番組ガイド」に類似する文言として,本件明細書における「TVガイド」(段落【0006】,【0021】,【0025】)及び「ガイド」に関する記載を検討し,いずれも何らかの「表示物」として用いられているから,「電子番組ガイド」も「表示物」であると主張するが,上記のとおり,本件明細書における発明の詳細な説明では,本件発明2が,全体としてシステムの発明として記載されていることからすると,被告の上記主張を採用することはできない。 2争点(2)侵害論,(2)-2本件発明1の侵害の有無(イ号方法及びイ号物件)について(1)以上の用語の解釈に基づいて,イ号方法の本件発明1の充足性について検討する。 ア争いのない事実等(4)アのとおり,イ号方法は,タイトル,放送時間のほか,「チャンネル」ではなく,「放送局コード」を含む複数のテレビジョン番組情報を受信するという構成を有するイ号物件を用いて実施される方法であるところ,「チャンネル」は,地域により異なり,任意のチャンネルに対して任意の放送局を割り当てることができるのに対して,「放送局コード」は,地域によって異ならないものであるから,「チャンネル」と「放送局コード」は,技術的な概念として相違しており,「チャンネル」の概念に「放送局コード」の概念は含まれないと解される。 イまた,争いのない事実等(4)イのとおり,イ号方法は,「チャンネルの一つに目印を付ける」のではなく,テレビジョン番組情報の一つを目立たせることによって,対応する「テレビジョン番組情報にかかる欄」に目印を付けるという構成を有するイ号物件を用いて実施される方法であるところ,上記のとおり,「チャンネルの一つに目印を付ける」ことは,番組情報である「タイトルの一つに目印を付ける」こととは相違するものである。 ウそうすると,イ号方法は,「チャンネル」と「放送局コード」の概念が異なるため,要件Aを充足しておらず,また,「チャンネルの一つに目印を付け」ていないので,要件C,D,Eを充足していない。 (2)したがって,その余の構成要件充足性を判断するまでもなく,イ号方法は,本件発明1の構成要件を充足していない。 3争点(2)侵害論,(2)-3本件発明2の侵害の有無(イ号方法及びイ号物件)について(1)前記の用語の解釈に基づいて,イ号物件の本件発明2の充足性について検討すると,争いのない事実等(4)アのとおり,イ号物件は,タイトル,放送時間のほか,「チャンネル」ではなく,「放送局コード」を含む複数のテレビジョン番組情報を受信する構成であり,「放送局コード」は,「チャンネル」の概念とは相違するから,イ号物件は,要件Gを充足していない。 (2)したがって,その余の構成要件充足性を判断するまでもなく,イ号物件は,本件発明2の構成要件を充足していない。 4争点(2)侵害論,(2)-4本件発明3の侵害の有無(イ号方法及びイ号物件)について(1)前記の用語の解釈に基づいて,イ号物件の本件発明3の充足性について検討する。 アイ号物件のマイクロプロセッサは,「テレビジョン番組情報」である「テレビジョン番組リスト」を「格子状の表示形式」である「グリッドガイド形式」で表示モニターに表示させる信号を発生させている。また,イ号物件は,テレビジョン番組情報を「HDD」に記憶しているが,HDDに記憶するためには,当該情報をいったんRAMにも格納して取り扱わなくてはならないことは技術常識であるから,「RAMに記憶したテレビジョン番組リスト」を表示させているといえる。したがって,イ号物件のマイクロプロセッサは,構成要件Lを充足している。 イ争いのない事実等(4)イのとおり,イ号物件のマイクロプロセッサは,グリッドガイド形式で表示された「テレビジョン番組情報」である「テレビジョン番組リスト」の一つを目立たせる信号を発生しているから,構成要件Mを充足している。 ウイ号物件のマイクロプロセッサは,グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式で,当該目立たされた「テレビジョン番組情報」である「テレビジョン番組リスト」を表示する信号を発生するから,構成要件Nを充足している。 エ「プログラムされているマイクロプロセッサ」が,プログラムが内蔵されているマイクロプロセッサだけではなく,外部のROMやHDD等に記憶されているプログラムによりプログラムされているマイクロプロセッサも含むことは,技術常識といえるから,イ号物件のマイクロプロセッサは,構成要件Oを充足している(2)したがって,イ号物件は,本件発明3の構成要件LないしOのすべての構成要件を充足している。 5争点(2)侵害論,(2)-5本件発明4の侵害の有無(ロ号方法及びロ号物件)について(1)前記の用語の解釈に基づいて,ロ号方法の本件発明4の充足性について検討する。 ア争いのない事実等(4)アのとおり,ロ号方法は,タイトル,放送時間のほか,「チャンネル」ではなく,「放送局コード」を含む複数のテレビジョン番組情報を受信するという構成を有するロ号物件を用いて実施される方法であるところ,「チャンネル」は,地域により異なり,任意のチャンネルに対して任意の放送局を割り当てることができるのに対して,「放送局コード」は地域によって異ならないものであるから,「チャンネル」と「放送局コード」は,技術的な概念として相違しており,「チャンネル」の概念に「放送局コード」の概念は含まれないと解される。 イそうすると,ロ号方法は,「チャンネル」と「放送局コード」の概念が異なるため,要件Pを充足していない。 (2)したがって,その余の構成要件充足性を判断するまでもなく,ロ号方法は,本件発明4の構成要件を充足していない。 6争点(2)侵害論,(2)-6本件発明5の侵害の有無(ロ号方法及びロ号物件)について(1)前記の用語の解釈に基づいて,ロ号物件の本件発明5の充足性について検討すると,争いのない事実等(4)アのとおり,ロ号物件の「テレビジョン番組リスト」(「テレビジョン番組情報」)には,「チャンネル」は含まれず,「チャンネル」の概念とは相違する「放送局コード」が含まれているから,ロ号物件は,要件Vを充足していない。 (2)したがって,その余の構成要件充足性を判断するまでもなく,ロ号物件は,本件発明5の構成要件を充足していない。 7争点(3)無効論,(3)-3本件発明3の無効理由の有無について(1)進歩性欠如についてア本件特許の優先権主張の日前である平成元年8月23日に頒布された特開平1-209399号公報(乙29文献)には,以下のとおりの記載がある。 (ア)「本発明は,情報処理システムに係り,特に,定められたスケジュールに従って,提供される情報を処理する情報処理システムに関する」(1頁右3行から5行)(イ)「本発明の目的は,…予め定められたスケジュールに従って提供される提供情報の処理における,操作性の改善と処理の信頼性の向上を図った情報処理システムを提供することにある。」(2頁左上10行から14行)「本件発明によれば,…提供される情報の内容と,その情報が提供されるスケジュールとが処理装置で処理可能な形態で予め提供されるようにし,この情報の中から処理の対象としたい提供情報の内容を選択することにより,そのスケジュールが処理装置に登録されるようにする。」(2頁左上16行から右上1行)(ウ)実施例?@「本発明が適用されたVTRにおけるテレビ放送の録画予約処理システムは,第1図に示すように,VTR制御部3,予約制御部4,操作パネル5及びフロッピーディスク(以下FDという)装置6を有するVTR装置2と,ディスプレイ装置1とにより構成され,操作パネル5は,カーソル移動キー16,モード切替スイッチ17,設定スイッチ18及びテンキー19等を備えて構成されている。」(2頁左下19行から右下6行)?A「VTR制御部3は,VTRの基本機能である録画,再生機能,1週間分の番組の録画予約機能を含んでおり,録画開始,終了の日時と,そのチャンネル情報とは,予約制御部4からセットされるものとする。 予約制御部4は,1週間分のテレビ放送のスケジュールが記録されたFDの内容をFD装置6から読出して,その内容をRGB信号ケーブル7’を介してディスプレイ装置1に表示する。」(2頁右下14行から3頁左上2行)?B「FD装置6にセットされるFDは,予め提供される1週間分の放送スケジュールを記録しており,このFDに記録されている放送スケジュールの内容を示すデータの論理フォーマットが第2図に示されている。1日分のデータは,日付フィールド8,曜日フィールド8’に続き,各チャンネル毎に時間フィールドと番組フィールドとにより記録されている。1チャンネル分のフォーマットは,第2図の例では,まず,チャンネルフィールド9-1により1CHの番組であることが示された後,このフィールドに引続いて,時間フィールド10-1と番組フィールド11-1との対のフィールドが,1日分の番組の数だけ設けられて,番組スケジュールを示すように構成されている。次に,第2チャンネルの1日分のスケジュールが,チャンネルフィールド9-2に引続き,時間フィールド10-2と番組フィールド11-2との組が1日分の番組の数だけ設けられて示される。FD内には,番組を提供している全てのチャンネルについて,その一週間分の番組が順次前述と同様にフォーマットされたスケジュールとして記録されている。」(3頁左上9行から右上9行)?C「前述のフォーマットにおいて,時間フィールド10-1,10-2には,対応する番組フィールド11-1,11-2で示される番組の開始及び終了時刻が記録されており,番組フィールド11-1,11-2には,一般的には番組名称と,必要に応じてその番組の概要が記録されている。」(3頁右上10行から15行)?D「第3図には,このようにして表示された画面の一例が示されており,FD内の日付フィールド8,曜日フィールド8’の情報は,日付エリア12に,チャンネルフィールド9-1,9-2の情報は,チャンネルエリア13-1,13-2に夫々表示され,番組フィールド11-1,11-2の情報は,時間フィールド10-1,10-2を表示する時間エリア14に対応した番組エリア15に夫々表示される。 第3図に示す例では,19時〜23時における第1チャンネルと第2チャンネルの番組表が表示されている。」(3頁左下15行から右下4行)?E「録画予約を行おうとする操作者は,この表示画面の中に所望する番組を見付け出すと,カーソル移動キー16を操作して,カーソルを所望の番組に移動させる。カーソルは,その番組を表示しているエリア全体の色を変える等により,その番組を選択していることを示すものであり,第3図では,カーソルは斜線であらわされていて,ニュースAが選択された状態を示している。」(3頁右下5行から12行)?F「前述の実施例は,1画面に2つのチャンネルの番組表を表示できるようにしたが,表示されるチャンネル数は,さらに多くてもよい。 また,例えば,1個のチャンネルのみとして,表示できる時間帯を多くしてもよい。」(4頁左上2行から6行)?G「前述の実施例は,番組のスケジュールがフロッピーディスク等の記録媒体により提供されるとしたが,番組の情報が通信手段を介して直接VTRに提供されるようにしてもよい。」(4頁左上7行から10行)?H「前述の実施例は,本発明をVTR装置の録画予約を行うシステムに適用したものであるが,本発明は,予め定められたスケジュールに従って,提供される情報を処理するどのような情報処理システムにも適用することができる。」(4頁左上17行から右上1行)?Iまた,図3には,番組スケジュールに含まれる番組の情報(時間,チャンネル,番組名など)を,縦軸に時間,横軸にチャンネルを配する複数のチャンネルの番組表形式で,ディスプレイ装置1に表示している一例が記載されている。 イ乙29発明乙29文献には,上記のとおりの記載があり,上記ア?A,?D,?I等の記載から,乙29発明の予約制御部4は,番組の情報を複数の番組エリア内に表示しており,縦軸に時間を,横軸にチャンネルをそれぞれ配する複数チャンネルの番組表形式で,ディスプレイ装置1に,FDに記憶した番組スケジュールに含まれる番組の情報を表示させるRGB信号を発生しているといえる。 また,乙29文献の上記ア?A及び?E等の記載から,乙29発明の予約制御部4は,表示された番組の情報の一つを選択していることを示すために,その番組を表示している番組エリア全体の色を変えるRGB信号を発生しているといえる。 さらに,乙29文献の上記?Fの記載から,乙29発明の予約制御部4が,1画面に複数のチャンネルの番組表を表示するRGB信号を発生する構成に代えて,1個のチャンネルのみの番組表を表示するRGB信号を発生する構成が示唆されているといえる。 なお,乙29発明では,FDに格納された番組のスケジュールが,ディスプレイ装置1に表示されることになるところ,このようにFDに記憶されているデータをモニターに表示する際に,FDから読み出したデータをいったんRAMに格納してからモニター表示に適した信号に変換して表示する構成は,常套手段にすぎないから,乙29発明は,当該テレビジョン番組に係る情報を,「RAMに記憶」しているということができる。 したがって,乙29文献の記載からすると,同文献に記載された乙29発明は,以下のとおりのものと認められる。 「チャンネル,時間,番組名称等を含んでいる番組情報を,複数の番組エリア内に表示し,縦軸に時間を,横軸にチャンネルをそれぞれ配する複数チャンネルの番組表形式で,ディスプレイ装置1に,RAMに記憶した番組情報を表示させるRGB信号を発生し,その表示された番組情報の一つを選択していることを示すために,その番組を表示している番組エリア全体の色を変えるRGB信号を発生する予約制御部4であって,1画面に複数のチャンネルの番組表形式で表示する信号を発生する構成に代えて,1個のチャンネルのみの番組表形式を表示する信号を発生する構成が示唆されている予約制御部4」ウ本件発明3と乙29発明の対比(ア)本件発明3は,争いのない事実等で判示したとおりであり,これと乙29発明を対比すると,乙29発明の「チャンネル,時間,番組名称等を含んでいる番組情報」は本件発明3の「テレビジョン番組リスト」に,乙29発明の「番組エリア」は本件発明3の「セル」に,乙29発明の「縦軸に時間を,横軸にチャンネルをそれぞれ配する複数チャンネルの番組表形式」は本件発明3の「時間とチャンネルを軸とするグリッドガイド形式」に,乙29発明の「ディスプレイ装置1」は本件発明3の「表示モニター」に,乙29発明の「RGB信号」は本件発明3の「信号」に,乙29発明の「選択していることを示すため,その番組を表示している番組エリア全体の色を変える」は本件発明3の「目立たせる」に,乙29発明の「1個のチャンネルのみの番組表形式」は本件発明3の「単一チャンネル形式」に,それぞれ相当することは明らかである。 また,乙29発明の「予約制御部4」と,本件発明3の「マイクロプロセッサ」とは,いずれも,制御手段である点で共通しているといえる。 (イ)したがって,本件発明3と乙29発明とは,「テレビジョン番組リストを複数のセル内に表示する時間とチャンネルを軸とするグリッドガイド形式で表示モニターに,RAMに記憶したテレビジョン番組リストを表示させる信号を発生し,その表示されたテレビジョン番組リストの一つを目立たさせる信号を発生することを特徴とする制御手段」である点で共通し,以下の点で相違する。 ?@相違点1本件発明3は,信号を発生させるよう制御する制御手段として,プログラムされたマイクロプロセッサを用いているのに対し,乙29発明では,信号を発生させるよう制御する制御手段として,予約制御部4とのみ記載されており,どのような内部構成を備えているかが明確に開示されていない点?A相違点2本件発明3は,グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目立たされたテレビジョン番組リストを表示する信号を発生しているのに対し,乙29発明は,グリッドガイド形式でテレビジョン番組リストを表示する信号を発生する構成の代わりに,単一チャンネル形式でテレビジョン番組リストを表示する信号を発生する構成を備えているかが明確に開示されていない点(ウ)原告は,本件発明3と乙29発明の相違点を,「本件発明3においては,『表示されたテレビジョン番組リストの一つを目立たさせる信号を発生し,そしてグリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目立たされたテレビジョン番組リストを表示する信号を発生』するのに対し,乙29発明Cにおいてはこの点について記載がない」と主張する。しかしながら,上記ア(ウ)に認定した乙29文献の記載によると,同文献には,グリッドガイド形式で表示されるモニター画面上で,所望する番組を見付け出すと,カーソルを所望の番組に移動させ,カーソルは,その番組を表示しているエリア全体の色を変えるなどして,その番組を選択していることを示すことが開示されているから,乙29発明は,「表示されたテレビジョン番組リストの一つを目立たさせる」構成を有しているというべきである。したがって,原告の主張を採用することはできない。 エ相違点1の検討乙29発明の属する情報処理システムの技術分野において,制御のための信号を発生させる制御手段として,制御のための信号を発生するようプログラムされたマイクロプロセッサを用いることは慣用技術にすぎないから,乙29発明の予約制御部4として,プログラムされたマイクロプロセッサを用いる構成を採用することも,当業者が容易に想到し得るものである。 したがって,相違点1に係る本件発明3の構成は,当業者が容易に想到できるといえる。 オ相違点2の検討(ア)?@a本件特許の優先権の主張日前である平成元年12月11日に頒布された特開平1-306962号公報(乙30文献)には,以下のとおりの記載がある。 「本発明は,…スケジュールの事柄に対して,その日時の管理を行うことのできるスケジュール管理装置に関する。」(1頁左下2行から同頁右下1行)「時間の単位を細かくすると表示装置自体を大きくする必要があり,…携帯しづらくなってくる。」(2頁左上10行から14行)「本発明は,…スケジュールの時刻を例えば時間単位で表示しているにも限らず,それより小さい単位で認識できるスケジュール管理装置を提供するものである。」(2頁右上2行から5行)「カレンダー機能は,モード選択キー16のカレンダーキー165を操作すれば,例えば第6図(a)のように1988年1月のカレンダー表示が表示装置2に行われる。」(3頁左下13行から17行)「また,第6図(a)のカレンダー表示において,11日はカーソル位置を示し,その日を他の日より目立たせている。このカーソルの位置は,カーソル移動キー13にて上下左右に自在に移動させることができる。」(3頁左下20行から同頁右下5行)「以上のようなスケジュールモードとは異なり,カレンダー表示状態より,カレンダーキー165の操作により例えば第5図に示すようなスケジュール表示が行われる。例えば第6図(a)の表示状態において,カレンダーキー165を操作すると,カーソルで指示されている11日から1週間のスケジュール内容を第5図(a)に示すように表示する。図に示されるように,日にちと曜日(頭文字)及びその日のスケジュール内容を先頭より決められた文字数を表示する」(4頁右上7行から16行)b以上の記載から,乙30文献には,以下のような発明(乙30発明)が記載されているといえる。 「スケジュール情報を表示する情報処理を行う装置であって,縦軸に週を配し,横軸に曜日を配して,各日を表形式で表示し,カーソルで特定の日を選択してその日を目立たせるようにし,カレンダーキーの操作により,その目立たされた日を含む1週間のスケジュール情報を表示する装置」?A本件特許の優先権の主張日前である昭和62年3月17日に頒布された特開昭62-60377号公報(乙31文献)には,以下のとおりの記載がある。 「本発明は,テレビ番組情報の表示機能を備えたテレビジョン受像機に関する」(1頁右下2行から3行)「次に番組メモリ16に記憶した番組表をCRT表示部3に表示する場合の動作について説明する。上記番組表の表示は,キーボード2のキー操作により指定するが,表示させる番組表としては,第10図に示すように,?@今後放送される全ての番組表。 ?A指定した日の1日分の番組表。 ?B指定ジャンル(種類)の今後放送される番組の一覧表。 ?C指定チャンネルの今後放送される番組の一覧表。 ?D指定曜日(間近の曜日)の1日分の番組表?E今,放送中の番組表。 を指定することができる。上記?@〜?Eの番組表を表示させる場合,例えば第10図に示すように,?@については「番組表」キーのみの単独操作D,?Aについては「日付」の入力と「番組表」キーの組合わせ操作E,?Bについては番組の「種類」指定と「番組表」キーの組合わせ操作F,?Cについては「チャンネル」の指定と「番組表」キーの組合わせ操作G,?Dについては「曜日」指定と「番組表」キーの組合わせ操作H,?Eについては「放送中」キーの単独操作Iにより指定する。 キーボード2により上記番組表の表示指定操作が行われると,ビデオテックス制御装置25は,第11図〜第16図に示す処理を実行する。」(6頁左下14行から右下19行)(イ)乙29発明と乙30発明の組合せ?@上記イ認定のとおり,乙29発明は,スケジュールを表示する情報処理システムに係る発明であり,また,上記(ア)?@認定のとおり,乙30発明もスケジュールを表示する情報処理を行う装置であることから,乙29発明と乙30発明とは,共通の技術分野に属しているといえる。 原告は,乙29発明の技術分野は「テレビ番組の録画予約システム」であり,乙30発明とは技術分野を異にすると主張するが,上記のとおり,乙29発明は,実施例では,VTRにおけるテレビ放送の録画予約処理システムが記載されているものの,当該特許請求の範囲の記載から見て,スケジュール管理情報処理システムに係る発明であることは明らかというべきであるから,原告の上記主張を採用することはできない。 ?Aまた,上記イ認定のとおり,乙29発明は,スケジュールを表示する情報処理システムに係る発明であって,番組スケジュールを表示する際に,1画面に複数チャンネルの番組表形式で表示する構成及び1個のチャンネルのみの番組表形式を表示する構成が開示されており,さらに,1個のチャンネルのみの番組表形式を表示することで表示する時間帯を多くする作用が得られること,すなわち,表示するスケジュール情報の範囲を絞り込むことにより,限られた表示画面を有効に利用して,より詳細なスケジュール情報を表示可能とすることが,乙29文献に開示されているといえる。 そして,上記(ア)?@認定のとおり,乙30発明も,スケジュール情報を表示する情報処理を行う装置の発明であって,複数の週を含む表形式でスケジュール情報を表示している際に,特定の日を選択して目立たせるよう表示した上で,その目立たせた特定の日を含んだ1週間のスケジュール情報を表示することにより,限られた画面を有効に利用して,より詳細なスケジュール情報を表示可能とすることが開示されているといえる。 ?Bそうすると,乙29発明と乙30発明は,いずれもスケジュール情報を表示する際に表形式で表示する機能を提供している点で,機能を共通にするものであり,また,いずれにも,限られた表示画面を有効に利用して詳細なスケジュール情報を表示する課題が示唆されており,当該課題において共通するものである。 原告は,乙29発明と乙30発明について,極端に抽象化,上位概念化した課題が共通することをもって組み合わせるのは不適切であると主張するが,上記のとおり,乙29発明と乙30発明は,限られた表示画面を有効に利用して詳細なスケジュール情報を表形式で表示するという限定的,具体的な課題において共通するといえるから,原告の上記主張は採用できない。 ?C以上によれば,乙29発明と乙30発明とを組み合わせることは容易であるといえる。 (ウ)上記(ア)?@に認定したとおり,乙30発明には,1か月分のカレンダーの特定の日をカーソルで選択すると当該特定の日が含まれる1週間のスケジュールが表示されるという技術が開示されているが,これを上位概念化すると,「縦軸と横軸からなる表示形式を,一方の軸の特定の項目に着目して,特定の項目だけを表示する表示形式に切り替える」ことを可能とする実現手段が記載されているといえる。そして,これを乙29発明に適用すると,「時間軸とチャンネル軸からなるグリッドガイド表示形式を,一方のチャンネル軸に着目して,特定のチャンネルだけを表示する単一チャンネル形式の表示形式に切り替える」ことになる。 (エ)また,上記(ア)?Aに認定したとおり,乙31文献には,キー操作により,複数チャンネルの番組表をグリッドガイド形式で表示したり,指定されたチャンネルの番組表を単一チャンネル形式で表示したりする技術が開示されているから,グリッドガイド形式から単一チャンネル形式への番組表の表示形式を変更する発想は,本件発明の優先権主張日前から,周知技術であったといえる(そもそも乙29発明自体にも,前記イのとおり,「1画面に複数のチャンネルの番組表形式で表示する信号を発生する構成に代えて,1個のチャンネルのみの番組表形式を表示する信号を発生する構成」が示唆されていると認められる。)。 なお,原告は,乙31発明には,キー操作前後の表示画面が技術的に何らリンクしておらず,複数のチャンネルの番組表から単一のチャンネルの番組表へ切り替えることが記載されていないと主張するが,上記認定の乙31文献の記載からすると,乙31発明では,キー操作により表示画面を変えること,表示画面として?@〜?Eの番組表を表示させることができることが開示されているから,複数のチャンネルの番組表?@から単一のチャンネルの番組表?Cに切り替えることも,乙31発明に開示されているということができる。したがって,上記原告の主張は採用できない。 (オ)そうすると,相違点2のうち「グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目立たされたテレビジョン番組情報を表示する」ことは,乙29発明,乙30発明及び乙31文献に記載された周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到し得るというべきである。 カ効果の検討そして,本件発明3により得られる効果についても,乙29発明及び乙30発明並びに乙31文献に記載の周知技術等から当業者が容易に想到し得る範囲内のものにすぎない。 (2)したがって,本件発明3は,乙29発明及び乙30発明並びに乙31文献に記載の周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,進歩性欠如(特許法29条2項違反)の無効理由を有する。 8よって,その余の点について判断するまでもなく,原告は,本件特許権に基づき,イ号物件及びロ号物件に対して権利行使することができないといわざるを得ない。 第4結論以上により,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 |