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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ネ10056特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成20ネ10080特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成20ネ10077損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成19ネ10089特許権侵害行為差止等請求控訴事件 判例 特許
平成19ネ10089特許権侵害行為差止等請求控訴事件 判例 特許
関連ワード 間接侵害 /  構成要件 /  差止請求(差止) /  侵害 /  不法行為(民法709条) /  信用回復措置(106条) /  変更 / 
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事件 平成 21年 (ネ) 10002号 特許権侵害差止等請求控訴事件
控訴人(一審原告 )株式会社ミュウテック(旧商号・有限会社ミュ ウテッ ク)
訴訟代理人弁護 士原山邦章
訴訟代理人弁理 士中村誠
同 峰隆司
被控訴人(一審被告)有 限会社村松研磨工業
訴訟代理人弁護 士石塚尚
補佐人弁理士山本健男
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/05/27
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
請求
1 原判決を取り消す。
2被控訴人は,原判決別紙1記載の研磨装置を製造,使用してはならない。
3 被控訴人は,前項の研磨装置を廃棄せよ。
4被控訴人は,控訴人に対し,612万9500円及びこれに対する平成18年11月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5被控訴人は,控訴人の業務に関し原判決別紙2記載の事実を告知してはならない。
6被控訴人は,静岡新聞(株式会社静岡新聞社発行)に,原判決別紙3記載の謝罪広告を縦4センチメートル,横8センチメートルの大きさで1回掲載せよ。
事案の概要
本件は,「ワークの研磨装置」に関する発明の特許権者である控訴人(以下,「原告」という。)が被控訴人(以下,「被告」という。)に対し,原判決別紙1記載の研磨装置(以下,「被告装置」という。)を製造し,使用する被告の行為が原告の特許権を侵害すると主張して,特許法100条1項,2項に基づき被告装置の製造,使用の差止め及び廃棄と,同法102条3項に基づき不法行為による損害賠償を求めるとともに,被告が原告の業務に関し原判決別紙2記載の事実を告知したことが不正競争防止法2条1項14号所定の原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する行為に該当すると主張して,同法3条1項に基づき原判決別紙2記載の事実の告知の差止めと,同法14条に基づく信用回復措置として原判決別紙3記載の謝罪広告の掲載を求めたところ,原判決は,原告の各請求をいずれも棄却したので,原告が控訴を提起した事案である。
争いのない事実及び争点は,原判決2頁15行目ないし5頁17行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。
なお,略語については,原判決と同一のものを使用する。
争点に関する当事者の主張
争点に対する当事者の主張は,下記の当審における主張を除き,原判決の「事実及び理由」欄の「第3争点に関する当事者の主張」(5頁18行目から14頁15行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
1 争点1(被告装置の本件発明の構成要件Gの充足の有無)について(1) 原告の主張被告装置は,本件発明の構成要件Gを充足するものではないが,装置を作動させるプログラムを変更すれば,本件発明の構成要件G所定の制御を行うことができるものであるから,被告装置を製造,使用する行為は,特許製品の生産に不可欠な部品を製造,使用する間接侵害行為に当たり,また,不完全利用行為にも当たる。
(2) 被告の反論被告装置において,シーケンス制御プログラムを変更して,移動手段と揺動手段を同期させても,本件発明の構成要件Gを充足することはない。すなわち,被告装置は,移動手段と揺動手段が連動しておらず,たとえ,移動運動と揺動運動を同期させることができても,揺動手段により振り子運動は継続するため,揺動運動にてワークが最高点にきたときに揺動運動を止めて回転軸が傾いたまま上昇し,さらに回転軸を垂直にすることはできず,ワークは振り子運動しつつ上下運動を継続することになる。
また,被告装置では,移動手段及び揺動手段はエアーシリンダーにより行われている。エアーシリンダーでは,エアー量を多くすれば移動及び揺動速度は上がるが,エアー量により上下運動と揺動運動の周期を同期させることは極めて困難であり,さらに,研磨工程での負荷の相違により,継続して両者の周期を同期させることも非常に困難である。
したがって,被告装置は,制御プログラムを変更することによって,本件発明の構成要件Gを充足することはないので,原告の主張は,主張自体失当である。
また,被告装置の製造及び使用が,本件特許権の間接侵害行為に当たることもないし,不完全利用行為にも当たらない。
2 争点3(被告の不正競争行為の有無)について(1) 原告の主張ア エンケイオートモーティブに対する虚偽の事実の告知について原告代表者は,「戸塚綜業の担当者から,『ミュウテックから機械を2台借りるんで,ディスクの研磨ができる。A以下,3人,作業者が抜けたんで,もう技術者がいない。』との話を聞いた。」と供述している。
戸塚綜業の担当者が原告代表者に伝えた内容は,本件の客観的な事実に符合しており,同担当者が虚偽の事実を原告代表者に伝える理由もない。
そうすると,原告代表者が上記担当者から聞いた内容は十分に信用できる。
イ 竜洋塗装に対する虚偽の事実の告知についてAがBに対して,「研磨材の代金や人材派遣の給料の支払が遅延している。」とした発言内容は,原告の倒産の危機に瀕し,新たな取引を躊躇させるような虚偽の事実の告知に当たらないと評価される内容ではない。この点は,Bは,「まあ,ミュウテックさんがつぶれるのが間近かなというような意味で受け取りました。」と明確に述べていることから明らかである。
ウ 三光製作に対する虚偽の事実の告知について原告代表者は,「三光製作の代表者が,Aから『研磨材が入らなくなるのでミュウテックは潰れる。』との電話を受けたため,慌てて原告を訪れたこと,原告代表者が『信用不安はない』と説明したにもかかわらず,結局専用のバレル研磨機を売却することとなった。」と供述したが,供述どおりの事実が存在したと認定されるべきである。
すなわち,?@原告に研磨材を納入していた守田屋塗料のC(以下,「C」という。)作成の陳述書(甲17)には,Aから研磨材を原告に納入しないよう圧力をかけられたとの記載部分があること,?A原告が専用バレル研磨機の量産態勢を整え,多大の利益を見込んでいた時期に,将来の利益を犠牲にしてまで,研磨機を三光製作に売却することは不自然であること等の事情を考慮するならば,Aが「ミュウテックは潰れる。」と発言をしたことが推認される。原告代表者の上記供述は採用されるべきである。
エ ショーワに対する虚偽の事実の告知について被告代表者がショーワに対して,被告は,原告と同じ機械を保有している趣旨を述べたが,被告代表者の発言は虚偽の内容を含んでいると評価すべきである。すなわち,当業者が共通の取引先に対して同じ機械という場合には,当然にその性能においても同等であることを意味する。そして,被告装置は原告のサンプル機と同等の構造を有しているが,移動手段と揺動手段を同期させない場合には,同サンプル機と同等の研磨能力を持ち得ないから,これをもって同じ機械であるとするのは,虚偽である。
(2) 被告の反論ア エンケイオートモーティブに対する虚偽の事実の告知に対し原告代表者の供述は,以下のとおり,採用の限りでない。
すなわち,被告代表者及びAが平成17年2月にエンケイオートモーティブを訪問したとの供述内容は,同社の執行役員であったEが否定していること,原告代表者が戸塚綜業の担当者から聞いたという供述内容は,当該担当者が特定されていないことから,原告代表者の供述は,信用することができない。原告の主張は失当である。
イ 竜洋塗装に対する虚偽の事実の告知に対しAのBに対する発言は,Aが原告に在籍していたころの様子と当時守田屋塗料に在籍していたCから聞いた話を内容としたものであるから,同発言は,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知と評価される発言内容ではない。
ウ 三光製作に対する虚偽の事実の告知に対し被告は三光製作の下請業者であるところ,その一従業員にすぎないAが三光製作の代表者に対し,電話で「ミュウテックは研磨材が入らなくなるので潰れる」などと述べることは,常識的にあり得ない。
エ ショーワに対する虚偽の事実の告知に対し被告代表者がショーワに対して,原告と同じ機械を保有している趣旨を述べたことは認める。しかし,「同じ機械」は,全く同一の機械を意味するものではなく,同じような機械を意味するにすぎない。また,被告代表者がショーワに対し原告が倒産すると述べた事実もないから,被告代表者の発言に,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知はない。
当裁判所の判断
当裁判所も,原告の各請求をいずれも棄却した原判決は相当であるから,本件控訴を棄却すべきものと判断する。その理由は,下記の当審における原告の主張に対する判断を除き,原判決「第4当裁判所の判断」(14頁17行目から27頁19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
1 争点1(被告装置の本件発明の構成要件Gの充足の有無)について原告は,被告装置は,本件発明の構成要件Gを充足するものではないが,装置を作動させるプログラムを変更すれば,本件発明の構成要件G所定の制御を行うことができるものであるから,被告装置を製造,使用する行為は,特許製品の生産に不可欠な部品を製造,使用する間接侵害行為に当たり,また,不完全利用行為にも当たると主張する。
しかし,被告装置は,本件発明の構成要件Gを充足しない以上,本件特許権を侵害しないことは,既に述べたとおりである。被告装置を製造,使用する行為が,本件特許権の侵害行為に該当しない以上,その行為が,間接侵害に該当する行為であると解する余地はなく,また,本件発明の不完全利用行為として,本件特許権侵害と同様に評価される余地もない。原告の上記主張はいずれも失当である。
2 争点3(被告の不正競争行為の有無)についてア エンケイオートモーティブに対する虚偽の事実の告知について証人A及び被告代表者はいずれも,A及び被告代表者が平成17年2月ころにエンケイオートモーティブを訪問した事実はないと供述する。他に同時期に同人らが訪問したと認定するに足りる証拠はない。また,原告代表者が,戸塚綜業の担当者から聞いたとする供述は,訪問の具体的状況が不明であり,その供述部分を信用することはできない。原告の主張に理由はない。
イ 竜洋塗装に対する虚偽の事実の告知について証人Bの証言及び同人作成の陳述書(甲16)中には,AがBに対し「ミュウテックは潰れる。」と述べた旨の供述及び陳述はなく,原告の主張に係る事実を認めることはできない。また,上記証人Bの証言及び同人作成の陳述書には,Aから,原告について,研磨材の代金が払えない,人材派遣の給料が払えない旨聞いたとの部分があるが,Aのそのような発言は,仮にあったとしても,原告代表者は,平成17年当時,原告の守田屋塗料に対する研磨材の代金の支払は,半月から1か月程度遅れがちになっていた旨を供述していた点に照らすと,上記発言が,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に当たるということはできない。原告の主張に理由はない。
ウ 三光製作に対する虚偽の事実の告知について原告代表者は,「三光製作の代表者は,Aから電話で『研磨材が入らなくなるのでミュウテックは潰れる。』との話を聞いたため,急遽,原告を訪れて,バレル研磨機を売却することとなった。」と供述する。しかし,原告代表者の上記供述は,証人Aが同事実を否定していること,三光製作の代表取締役のDもまたこれを否定していること(乙16)に照らして,採用の限りでない。また,C作成の陳述書(甲17)には,同人は,守田屋塗料に勤務していた者であるが,Aから研磨材を原告に納入しないよう圧力をかけられたとの陳述記載があるが,他方,Aの証言及び同人の陳述記載(乙11)によれば,守田屋塗料は原告と取引があり,被告の情報が守田屋塗料を通じて同業の原告に知れることを恐れて,原告との取引の解消を求めたとの事実が認められるのであって,同証言及び陳述記載を総合すると,原告代表者の上記供述を採用することはできない。原告の主張は理由がない。
エ ショーワに対する虚偽の事実の告知について原告代表者及びAの各証言によれば,被告代表者はショーワに対し,「村松研磨にはミュウテックと同じ機械がある。」と述べた事実が認められる。
しかし,その趣旨は,被告がショーワに対し,原告と同じような機械を有しているという意味を述べたと理解すべきであること,そして,被告装置は,研磨媒体が収容されるタンクと,ワークが取り付けられる回転軸をその軸心を中心として回転させる回転手段,上記回転軸を前記軸心に沿って移動させる移動手段,上記回転軸の一端側が円弧軌道に沿って移動可能なように揺動させる揺動手段及びこれらの手段を制御する制御部を備えたワーク研磨装置である点において,本件発明の構成を充足していること(本件発明の構成要件AないしF,H)に照らすならば,被告代表者の上記発言が虚偽の事実の告知であるということはできない。原告の主張に理由がない。
3 結論以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がなく,これと同旨の原判決は相当である。よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 中平健
裁判官 上田洋幸
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