• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 無効2007-800146
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18行ケ10563審決取消請求事件 判例 特許
平成18行ケ10268審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10151審決取消請求事件 判例 特許
平成19行ケ10300審決取消請求事件 判例 特許
平成15行ケ39審決取消請求参加事件 判例 特許
関連ワード 方法の発明 /  進歩性(29条2項) /  慣用技術 /  公知技術 /  技術的範囲 /  出願公開 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  技術的意義 /  発明の要旨認定 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  設定登録 /  誤記の訂正 /  請求の範囲 /  減縮 /  拡張 /  変更 /  訂正明細書 /  訂正要件 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 20年 (行ケ) 10216号 審決取消請求事件
原告清 水建設株式会社
原告 訴訟代 理人弁 護士近藤惠嗣
被告新 潟トランシス株式会社
被告エデロン セドラ インターナショナル ビー.ヴィ
被告ら訴訟代理人弁理士清水千春
同 渡辺美穂
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/03/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1特許庁が無効2007−800146号事件について平成20年4月25日にした審決中,特許第3824948号の請求項17ないし20に係る発明についての審判請求を成り立たないとした部分を取り消す。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用は5分し,その4を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2007-800146号事件について平成20年4月25日にした審決を取り消す。
争いのない事実
1特許庁における手続の経緯等被告らは,発明の名称を「レールの据付方法および据付構造」とする特許第3824948号(平成14年3月7日出願,平成18年7月7日設定登録。請求項の数は20である。)の特許(以下「本件特許」という。)の特許権者である(なお,審決では,被告エデロンセドラインターナショナルビー.ヴイは,旧商号である「エデロンインターナショナルビー.ヴイ」と表記されている。)。
原告は,平成19年7月26日,本件特許の請求項1ないし20に係る発明についての特許を無効とすることについて審判(無効2007-800146号事件。以下「本件審判」という。)を請求した。
被告らは,平成19年11月21日,本件特許の願書に添付した明細書の記載を訂正する請求(以下,この請求に係る訂正を「本件訂正」といい,本件訂正前後の明細書を,図面と併せ,それぞれ「訂正前明細書」,「訂正明細書」という。)をした。
特許庁は,平成20年4月25日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,同年5月12日,その謄本を原告に送達した。
2 本件訂正の内容及び特許請求の範囲の記載(1) 本件訂正の内容本件訂正(甲21参照)は,次の訂正事項からなるものである。
ア 訂正事項a訂正前明細書(甲20)の特許請求の範囲の請求項1の「【請求項1】軌道の基礎部上面に,走行レールと,当該走行レールに所定間隔をおいて設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と,上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する振動吸収板の敷設工程と,上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と,上記調整板上に,スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを置き位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と,上記走行レールおよび脱線防止レールが位置決めされた上記凹部に,セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レールの樹脂注入硬化工程と,を含むことを特徴とするレールの据付方法。」を,「【請求項1】軌道の基礎部上面に,走行レールと,当該走行レールに所定間隔をおいて設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と,上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と,上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と,上記調整板上に,スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを置き位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と,上記走行レールおよび脱線防止レールが位置決めされた上記凹部に,セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レールの樹脂注入硬化工程と,を含むことを特徴とするレールの据付方法。」とする訂正。
イ 訂正事項b訂正前明細書の特許請求の範囲の請求項4の「【請求項4】軌道の基礎部上面に,走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と,上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する振動吸収板の敷設工程と,上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記走行レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と,上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と,上記走行レールが位置決めされた上記凹部に,セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程と,を含むことを特徴とするレールの据付方法。」を,「【請求項4】軌道の基礎部上面に,走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と,上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と,上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記走行レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と,上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と,上記走行レールが位置決めされた上記凹部に,セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程と,を含むことを特徴とするレールの据付方法。」とする訂正。
ウ 訂正事項c訂正前明細書の特許請求の範囲の請求項7の「【請求項7】上記走行レールと上記接続走行レールとの接続端部同士を溶接によって接続するとともに,溶接された上記接続端部のある箇所の上記凹部に上記ポリウレタンを注入する前に,当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動球種板を接着固定することを特徴とする請求項2,3,5および6のいずれかに記載のレールの据付方法。」を,「【請求項7】上記走行レールと上記接続走行レールとの接続端部同士を溶接によって接続するとともに,溶接された上記接続端部のある箇所の上記凹部に上記ポリウレタンを注入する前に,当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動吸収板を接着固定することを特徴とする請求項2,3,5および6のいずれかに記載のレールの据付方法。」とする訂正。
エ 訂正事項d訂正前明細書の特許請求の範囲の請求項15の「【請求項15】走行レールと,当該レールに所定間隔をおいて設けられた脱線防止レールとの据付構造であって,軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に,接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と,上記走行レールと脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて,それぞれ振動吸収板上に設けられ,当該走行レールと脱線防止レールの各レベルを所定のレベルにする調整板と,上記調整板上に位置決めされ,スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと脱線防止レールと,これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層とを備えたことを特徴とするレールの据付構造。」を,「【請求項15】走行レールと,当該レールに所定間隔をおいて設けられた脱線防止レールとの据付構造であって,軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に,上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と,上記走行レールと脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて,それぞれ振動吸収板上に設けられ,当該走行レールと脱線防止レールの各レベルを所定のレベルにする調整板と,上記調整板上に位置決めされ,スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと脱線防止レールと,これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層とを備えたことを特徴とするレールの据付構造。」とする訂正。
オ 訂正事項e訂正前明細書の特許請求の範囲の請求項17の「【請求項17】走行レールの据付構造であって,軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に,接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と,上記走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて,それぞれ振動吸収板上に設けられ,上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と,上記調整板上に位置決めされ,スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと,これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層とを備えたことを特徴とするレールの据付構造。」を,「【請求項17】走行レールの据付構造であって,軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に,上記走行レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と,上記走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて,それぞれ振動吸収板上に設けられ,上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と,上記調整板上に位置決めされた上記走行レールと,これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層とを備えたことを特徴とするレールの据付構造。」とする訂正。
なお,訂正事項eは,「振動吸収板」の凹部の底面への接着固定に関し,「上記走行レールの敷設方向に連続して」いるものである点を追加する訂正事項(以下「訂正事項e-1」という。)と,「走行レール」に関し,「スペーサによって互いの間隔が保持され」たものである点を削除する訂正事項(以下「訂正事項e-2」という。)を含むものである。
カ 訂正事項f訂正前明細書の段落【0007】の「上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する振動吸収板の敷設工程と,」を,「上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と,」とする訂正。
キ 訂正事項g訂正前明細書の段落【0010】の「上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する振動吸収板の敷設工程と,」を,「上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と,」とする訂正(判決注:本件訂正後の段落【0010】の記載につき,審決書5頁35行〜36行及び訂正請求書〔甲21〕3頁18行〜20行と,同請求書添付の全文訂正明細書〔甲22〕13頁13行〜15行とは齟齬しているが,原告が,審決における訂正事項gの認定及び同訂正事項に係る訂正の適否の判断を認めていること〔原告第1準備書面1頁〕にかんがみ,審決書及び訂正請求書の上記該当箇所の記載に基づいて,訂正事項gを認定した。)。
ク 訂正事項h訂正前明細書の段落【0013】の「当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動球種板を接着固定する」を,「当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動吸収板を接着固定する」とする訂正。
ケ 訂正事項i訂正前明細書の段落【0021】の「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に,接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と,」を,「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に,上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と,」とする訂正。
コ 訂正事項j訂正前明細書の段落【0023】の「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に,接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と,上記走行レールの下面敷設位置に沿って間隔をおいて,それぞれ振動吸収板上に設けられ,上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と,上記調整板上に位置決めされ,スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと,」を,「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に,上記走行レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と,上記走行レールの下面敷設位置に沿って間隔をおいて,それぞれ振動吸収板上に設けられ,上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と,上記調整板上に位置決めされた上記走行レールと,」とする訂正。
(2)訂正明細書(甲22)の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,各請求項に係る発明を項番号に対応して,「本件発明1」などという。)。
「【請求項1】軌道の基礎部上面に,走行レールと,当該走行レールに所定間隔をおいて設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と,上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と,上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と,上記調整板上に,スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを置き位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と,上記走行レールおよび脱線防止レールが位置決めされた上記凹部に,セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レールの樹脂注入硬化工程と,を含むことを特徴とするレールの据付方法。
【請求項2】軌道の基礎部上面に,走行レールと,当該走行レールより短く形成され,かつ当該走行レールに所定間隔をおいて並列に設けられる脱線防止レールとを,上記走行レールの接続端部が上記脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で収納するための凹部を形成する走行・脱線防止レールの溝形成工程と,上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する上記凹部の底面に,接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行・脱線防止レールの振動吸収板敷設工程と,上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と,上記調整板上に,スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを,上記走行レールの接続端部が上記脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で置き,位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と,上記走行レールおよび上記脱線防止レールが位置決めされた状態で,当該走行レールと脱線防止レールとが並列する箇所の上記凹部に,セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レール並列部分の樹脂注入硬化工程と,軌道の基礎部上面に,上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と,上記接続走行レールの接続端部を除く,当該接続走行レール用の上記凹部の底面に,接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板の敷設工程と,上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記接続走行レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と,上記調整板上に,上記接続走行レールを置き位置決めをする接続走行レール設置工程と,上記接続走行レールが位置決めされた上記凹部に,少なくとも上記走行レールとの接続端部を除いて,セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と,上記ポリウレタンで固定された上記走行レールおよび上記接続走行レールの上記接続端部同士を接続した後に,接続された上記接続端部のある箇所の上記凹部にセルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レール接続部分の樹脂注入硬化工程と,を含むことを特徴とするレールの据付方法。
【請求項3】軌道の基礎部上面に,走行レールと,当該走行レールより短く形成され,かつ当該走行レールに所定間隔をおいて並列に設けられる脱線防止レールとを,上記走行レールの接続端部が上記脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で収納するための凹部を形成する走行・脱線防止レールの溝形成工程と,上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する上記凹部の底面に,接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行・脱線防止レールの振動吸収板敷設工程と,上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と,上記調整板上に,スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを,当該走行レールの接続端部が当該脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で置く走行・脱線防止レール設置工程と,軌道の基礎部上面に,上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と,上記接続走行レールの接続端部を除く,当該接続走行レール用の上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板敷設工程と,上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記接続走行レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と,上記調整板上に,上記接続走行レールを置く接続走行レール設置工程と,上記調整板上に置かれた上記走行レールと,上記調整板上に置かれた上記接続走行レールとの接続端部同士を接続する走行レールの接続工程と,上記走行レール,上記脱線防止レールおよび上記接続走行レールが位置決めされた状態で,上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する箇所の上記凹部と接続された上記接続端部がある箇所の上記凹部とに,セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と,を含むことを特徴とするレールの据付方法。
【請求項4】軌道の基礎部上面に,走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と,上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と,上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記走行レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と,上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と,上記走行レールが位置決めされた上記凹部に,セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程と,を含むことを特徴とするレールの据付方法。
【請求項5】軌道の基礎部上面に,走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と,上記走行レールの接続端部を除く当該走行レール用の上記凹部の底面に,接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行レールの振動吸収板敷設工程と,上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記走行レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と,上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と,上記走行レールが位置決めされた状態で,少なくとも当該走行レールの上記接続端部を除く上記凹部に,セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程と,軌道の基礎部上面に,上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と,上記接続走行レールの接続端部を除く,当該接続走行レール用の上記凹部の底面に,接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板敷設工程と,上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記接続走行レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と,上記調整板上に,上記接続走行レールを置き位置決めをする接続走行レール設置工程と,上記接続走行レールが位置決めされた上記凹部に,少なくとも上記走行レールとの接続端部を除いて,セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と,上記ポリウレタンで固定された上記走行レールおよび上記接続走行レールの上記接続端部同士を接続した後に,接続された上記接続端部のある箇所の上記凹部にセルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レール接続部分の樹脂注入硬化工程と,を含むことを特徴とするレールの据付方法。
【請求項6】軌道の基礎部上面に,走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と,上記走行レールの接続端部を除く当該走行レール用の上記凹部の底面に,接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行レールの振動吸収板敷設工程と,上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記走行レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と,上記調整板上に上記走行レールを置く走行レール設置工程と,軌道の基礎部上面に,上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と,上記接続走行レールの接続端部を除く,当該接続走行レール用の上記凹部の底面に,接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板敷設工程と,上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板を,上記接続走行レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と,上記調整板上に,上記接続走行レールを置く接続走行レール設置工程と,上記調整板上に置かれた上記走行レールと,上記調整板上に置かれた上記接続走行レールとの接続端部同士を接続する走行レールの接続工程と,上記走行レールおよび上記接続走行レールが位置決めされた状態で,接続された上記接続端部を含めた上記走行レールがある箇所の上記凹部に,セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と,を含むことを特徴とするレールの据付方法。
【請求項7】上記走行レールと上記接続走行レールとの接続端部同士を溶接によって接続するとともに,溶接された上記接続端部のある箇所の上記凹部に上記ポリウレタンを注入する前に,当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動吸収板を接着固定することを特徴とする請求項2,3,5および6のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項8】上記走行レールと上記脱線防止レールとを収納する上記凹部部分への上記ポリウレタンの注入は,まず上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間に上記ポリウレタンを注入して,上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間の上記ポリウレタンの表面レベルが,上記軌道の基礎部上面レベルと略同じにした後に,上記走行レールと上記脱線防止レールとの間にポリウレタンを注入して,上記走行レールと上記脱線防止レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが,走行レール頭部の下端部に位置するようにすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項9】上記走行レールのみを収納する上記凹部部分への上記ポリウレタンの注入は,まずレール軌道の外側に位置する上記凹部側壁と上記走行レールとの間に上記ポリウレタンを注入して,当該凹部側壁と上記走行レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが,上記軌道の基礎部上面レベルと略同じにした後に,レール軌道の内側に位置する上記凹部側壁と上記走行レールとの間に上記ポリウレタンを注入して,当該凹部側壁と上記走行レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが,レール頭部の下端部に位置するようにすることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項10】上記ポリウレタンは,ポリイソシアネートプレポリマーと,アミンとの混合物にコルク粒を1〜10重量%含めたものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項11】上記ポリウレタンを凹部に注入する直前に,当該凹部に,プライマーとして溶剤に溶解させたポリイソシアネートを散布することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項12】上記振動吸収板は,合成ゴムまたは天然ゴムであり,上記接着剤は硬化剤が加えられたエポキシ樹脂接着剤であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項13】上記調整板の高さ寸法の調整は,敷設された振動吸収板上面のレベルを測定し,当該測定値に基づいて,複数の調整板を積み重ねて当該測定値に対応した高さ寸法に調整することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項14】上記振動吸収板が,コルク粒を1〜20重量%含有し,上記調整板がコルク板であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項15】走行レールと,当該レールに所定間隔をおいて設けられた脱線防止レールとの据付構造であって,軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に,上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と,上記走行レールと脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて,それぞれ振動吸収板上に設けられ,当該走行レールと脱線防止レールの各レベルを所定のレベルにする調整板と,上記調整板上に位置決めされ,スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと脱線防止レールと,これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層とを備えたことを特徴とするレールの据付構造。
【請求項16】上記ポリウレタン層の表面レベルは,上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間の上記ポリウレタン層の表面レベルが,上記軌道の基礎部上面レベルと略同じであり,上記走行レールと上記脱線防止レールとの間の上記ポリウレタン層の表面レベルは,走行レール頭部の下端部に位置することを特徴とする請求項15に記載のレールの据付け構造。
【請求項17】 走行レールの据付構造であって,軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に,上記走行レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と,上記走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて,それぞれ振動吸収板上に設けられ,上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と,上記調整板上に位置決めされた上記走行レールと,これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層とを備えたことを特徴とするレールの据付構造。
【請求項18】上記ポリウレタンは,ポリイソシアネートプレポリマーと,アミンとの混合物にコルク粒を1〜10重量%含めたものであることを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載のレールの据付構造。
【請求項19】上記振動吸収板は,合成ゴムまたは天然ゴムであり,上記接着剤は硬化剤が加えられたエポキシ樹脂接着剤であることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載のレールの据付構造。
【請求項20】上記振動吸収板は,コルク粒を1〜20重量%含有し,上記調整板は,複数のコルク板を積み重ねて所定の高さに調整したものであることを特徴とする請求項15〜19のいずれかに記載のレールの据付構造。」3 審決の理由別紙審決書写しのとおりである。要するに,原告(請求人)が下記(1)のとおり主張したのに対し,下記(2)のとおり認定判断し,「請求人の主張および証拠方法によっては,本件発明1〜20の特許を無効とすることはできない」(審決書52頁6行〜7行)としたものである。
(1) 原告(請求人)の主張(無効理由)ア 無効理由1「本件発明1〜20は,甲第1号証〜甲第13号証(判決注,本訴の甲1〜甲13と同じ。)に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明であり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」(審決書14頁30行〜32行)甲1ないし13(以下,これらの刊行物を書証番号に対応して「甲1文献」などという。)は,次のとおりである。
・甲1「J-RAIL’01鉄道技術連合シンポジウム講演論文集」,電気学会交通・電気鉄道技術委員会(平成13年12月),p.427-434・甲2「工業大辞書」,(株)日本図書センター(2000年10月25日),p.1774-p.1775・甲3CoenraadEsveld,“MODERNRAILWAYTRACKSecondEdition”,(蘭),MRT-Productions(2001年),p.253-p.257・甲4 欧州特許出願公開第0710743号明細書・甲5 特開昭52-5102号公報・甲6 特公昭63-26205号公報・甲7 特開昭56-6804号公報・甲8 特開昭52-18611号公報・甲9 特開平8-239500号公報・甲10 特開平3-149273号公報・甲11 特開平7-279112号公報・甲12 特開2000-145152号公報・甲13 特開平6-219808号公報イ 無効理由2「本件発明17は,特許を受けようとする発明が明瞭でなく,特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。」(審決書15頁1行〜2行)(2) 審決の認定判断ア 本件訂正の可否「訂正事項a〜jは,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定および同法同条第5項の規定により準用する同法第126条第3項および第4項の規定に適合するので,当該訂正を認める。」(審決書7頁33行〜35行。以下,特許法134条の2第1項ただし書きの規定する要件と,同条5項の規定により準用する同法126条3項及び4項の規定する各要件とを併せて,「訂正要件」という。)審決は,上記判断をするに当たり,訂正事項e-2について,次のとおり認定判断した。
「2本の走行レールの間隔を保持するためのスペーサは通常用いられておらず,特許明細書にも走行レールと脱線防止レールとの間隔を保持するためのスペーサしか説明されていないから,脱線防止レールを伴わない走行レールの据付構造において,スペーサが不要なことは明白である。そうしてみると,訂正前の請求項17における,『スペーサによって互いの間隔が保持され』の記載は誤記と認められる。よって,この記載を削除する訂正事項e-2は,誤記の訂正を目的とするものである。
そして,これらの訂正は,特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものでもない。」(審決書7頁14行〜23行)イ 無効理由1の成否(ア) 本件発明1について「甲1発明(判決注,甲1文献記載の施行方法の発明〔以下「甲1発明」という。〕)及び甲第1号証〜甲第13号証に記載された技術に基づいて,本件発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たものであるとはいえない。」(審決書34頁5行〜7行)審決は,上記判断をするに際して,甲1発明の内容,本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点1ないし5を次のとおり認定した上,相違点2に係る本件発明1の構成は容易に想到し得たものであるが,相違点3に係る本件発明1の構成はそのようにいうことはできない旨説示した(なお,審決は,相違点1,4及び5に係る本件発明1の構成の容易想到性については,検討していない。)。
a甲1発明の内容「レールより少し大きめの溝がついたコンクリート床版をまず施工し,溝の底にはコルクパッドを敷き,レールをその上に置き,樹脂を溝の隙間に注入し,連続的にレールと溝との隙間を埋めていく樹脂固定軌道の施工方法。」(審決書27頁6行〜9行)b一致点「軌道の基礎部上面に,走行レールと,当該走行レールに所定間隔をおいて設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と,上記凹部の底面に振動吸収板を敷く振動吸収板の敷設工程と,上記走行レール及び脱線防止レールを置く走行・脱線防止レール設置工程と,上記走行レールおよび脱線防止レールが置かれた上記凹部に,セルフレベリング性を有する樹脂を注入して硬化させる走行・脱線防止レールの樹脂注入硬化工程と,を含むことを特徴とするレールの据付方法。」(審決書28頁30行〜29頁1行)c相違点(a) 相違点1「本件発明1は,振動吸収板を,凹部の底面に,『接着剤を塗布して』『接着固定』するのに対し,甲1発明は,単に『敷』くものである点。」(審決書29頁3行〜5行)(b) 相違点2「本件発明1は,『走行レールおよび脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように,高さ寸法を調整した調整板』を『振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程』を含むものであるのに対し,甲1発明は,前記の如くの『調整板設置工程』を含むものではない点。」(審決書29頁6行〜10行)(c) 相違点3「本件発明1は,振動吸収板の敷設工程において,振動吸収板を,『走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して』固定し,調整板設置工程において,調整板を,『走行レールおよび脱線防止レールの敷設位置に沿って,間隔をおいて』置く構成を備えるのに対し,甲1発明は,前記構成について明らかでない点。」(審決書29頁11行〜15行)(d) 相違点4「本件発明1は,走行・脱線防止レール設置工程が,『調整板上に,スペーサによって互いに間隔が保持された走行レールおよび脱線防止レールを置き位置決めをする』構成を備えるのに対し,甲1発明は,走行レール及び脱線防止レールを置く点以外は明らかでない点。」(審決書29頁16行〜19行)(e) 相違点5「本件発明1は,樹脂注入硬化工程において使用する樹脂として,『ポリウレタン』を採用しているのに対し,甲1発明においては,その点が明らかでない点。」(審決書29頁20行〜22行)ウ 無効理由2の成否本件訂正により,「訂正前の請求項17における『スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レール』から,『スペーサによって互いの間隔が保持され』を削除する訂正がなされ,『スペーサ』が何との間隔を保持するのかが不明である点が解消されたので,請求項17は,特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。」(審決書51頁28行〜33行)
当事者の主張
1取消事由に関する原告の主張審決は,以下のとおり,本件発明1の進歩性の判断に際して,相違点3の認定を誤ったか,相違点3に係る本件発明1の構成の容易想到性の判断を誤った違法があり(取消事由1),また,本件発明2ないし20の進歩性の判断に際しても,本件発明1と同様の誤りを犯した違法(取消事由2)があるから,取り消されるべきである。
また,審決は,請求項17に係る訂正事項e-2についての訂正要件の判断を誤った結果,本件訂正のうち請求項17及びこれを引用する請求項18ないし20に係る訂正を認めた違法(取消事由3)があるから,審決中,本件特許の請求項17ないし20に係る審判請求を不成立とした部分は取り消されるべきである。
(1) 取消事由1(本件発明1の進歩性の判断の誤り)本件審決は,以下のとおり,本件発明1の進歩性の判断を誤った。
ア 相違点3の認定の誤り審決は,本件発明1と甲1発明との相違点の一つとして,前記第2,3(2)イ(ア)c(c)のとおり,相違点3を認定した。
しかし,以下のとおり,審決の上記認定は誤りである。
(ア) 相違点3に係る甲1発明の構成審決は,「調整板設置行程」の有無という相違点2(前記第2,3(2)イ(ア)c(b))について,結論として,「当業者であれば容易に想到し得たものである」(審決書30頁19行〜20行)としていること,甲1発明の「コルクパッド」が本件発明1の「振動吸収板」に相当するとしていること(審決書31頁3行〜4行参照)から,相違点3に関し,「甲1発明は,前記構成について明らかでない」としたのは,次の2点であると理解される。
?@「コルクパッド」が「連続して」いるか否か。
?A「調整板」が「間隔をおいて」置かれているか否か。
(イ) 甲1発明の認定の誤りa甲1文献に収録された二つの論文は同一の技術を異なる観点から報告したものであること甲1文献には,「S9-1-9.LRT対応樹脂固定軌道(INFUNDO)の試験施工と特性確認試験について」と題する論文(431頁〜434頁。以下「A論文」という。)及び「S9-1-8.LRT対応の新しい軌道構造および分岐器の動向と日本への適用について」と題する論文(427頁〜430頁。以下「B論文」という。)が収録されているところ,同論文はいずれも「INFUNDO」あるいは「Infundo」という語を何度も用いていること,B論文にいう「性能確認試験」についての「別項の発表」(429頁右欄16行〜17行)が,「特性確認試験」について報告したA論文を指すことは,その文脈上明らかであることからすれば,A論文及びB論文は別々の技術を紹介したものではなく,「INFUNDO」という同一の技術を異なる観点から報告したものというべきであり,甲1発明を認定するに当たっては,両論文を総合考慮すべきである。
この点,審決は,「前記第429頁の図-1と,前記第431頁の図1とは異なる論文に記載されたもの」(審決書31頁15行〜16行)などという説示に示されるように,A論文とB論文とが別々のものと誤解したため,A論文のみに基づいて甲1発明を認定し,その結果,甲1発明において「高さ調整パッド」が使用されていることを看過したものである。
b甲1発明において「コルクパッド」及び「高さ調整パッド」がともに使用されていること(a)A論文の図1の右上の断面図(甲1文献の431頁)には,溝の底に「コルクパッド」があり,その上のレール底部との間に「Edilon樹脂」が入り込んでいることが記載されている。
(b)一方,B論文の図-1(甲1文献の429頁)には,明確に「高さ調整パッド」が記載されている。
なお,被告らは,B論文の図-1では,高さ調整パッドが2枚に分かれているだけであって,「コルクパッド」と「高さ調整パッド」の両者が使用されているものではないと主張する。しかし,仮に,高さを調整するために2枚以上のパッドを重ねて使用することがあるとしても,B論文の図-1のような模式図において,わざわざ一つの機能の部材を二つに分けて表示することはあり得ないから,当業者であれば,同図では二つの異なる部材が使用されているものと理解するというべきである。
(c)上記(a)及び(b)に加え,B論文の説明図(甲1文献の428頁)を総合すれば,Infundo軌道の標準的な断面においては「コルクパッド」が使われ,場所によっては「高さ調整パッド」も使われていることが理解できる。
c甲1発明における「コルクパッド」が「連続して」おり,「高さ調整パッド」が「間隔をおいて」置かれていること(a)A論文に,施工方法の説明として,「溝の底にはコルクパッドを敷き」(甲1文献の431頁右欄下から7行目〜下から6行目)と記載されていること,同論文の図1に示されるように,コルクパッドとレールとの間に隙間が存在することを考慮すれば,当業者は,甲1発明における「コルクパッド」が「連続して」いると理解する。
(b)この点,審決は,A論文の「図1に記載されるコルクパッドの上には,レールが直接置かれるものであると解するのが相当である」と認定している(審決書31頁19行〜21行)。
しかし,以下のとおり,審決の上記認定は誤りである。
A論文の図1の右上の断面図では,レールとコルクパッドの間に隙間が存在するから,当業者であれば,この隙間を維持するために,何らかの支持部材が存在すると考える方が自然である。
仮に,何の支持部材も存在しないのであれば,何らかの方法でレールを宙づりにしておいてから,Edilon樹脂を流し込むことが必要となるが,そのような工程は,甲1文献には記載されていないし,審決も想定していない。
(c)前記aのとおり,A論文とB論文とは別々の技術を紹介したものではなく,「INFUNDO」という同一の技術を異なる観点から報告したものというべきであるから,当業者は,B論文の図-1とA論文の図1とは,同じものの異なる断面(高さ調整パッドが現れる断面と現れない断面)を示すものと理解する。
そして,「コルクパッド」は,A論文の図1にも,B論文の図-1にも現れているから,当業者は,甲1発明における「コルクパッド」が「連続して」いるものと理解する。
一方,「高さ調整パッド」は,現れる断面と現れない断面が存在することから,当業者は,甲1発明における「高さ調整パッド」が「間隔をおいて」置かれているものと理解する。
(d)なお,甲1発明について上記のとおり理解すべきことは,甲3文献(同文献の内容についての審決の認定の誤りは,後記イ(ア)において主張する。)の記載によっても裏付けられるところである。
(ウ) 相違点3が存在しないこと甲1発明の「Edilon樹脂」,「コルクパッド」及び「高さ調整パッド」は,本件発明1の「ポリウレタン系樹脂」,「振動吸収板」及び「調整板」にそれぞれ該当する。
したがって,甲1発明においても,本件発明1と同様に,「振動吸収板」を「レールの敷設方向に連続して」固定し,「調整板」を「間隔をおいて」置く構成が用いられているというべきである。
以上のとおり,審決は,甲1発明の認定を誤った結果,本件発明1と甲1発明との相違点の一つとして,相違点3を認定した点に誤りがある。
イ 相違点3についての容易想到性の判断の誤り仮に,審決における相違点3の認定に誤りがないとしても,以下のとおり,審決は,相違点3に係る本件発明1の構成の容易想到性の判断を誤ったものである。
すなわち,審決は,甲3文献についての認定を誤った結果,?@「コルクパッド」が「連続して」いるか否か,?A「調整板」が「間隔をおいて」置かれているか否かのいずれの点についても,当業者が甲1発明において本件発明1のように構成することは容易ではなかった旨誤って判断したものである。
(ア) 甲3文献についての認定の誤り審決は,甲3文献に記載された技術(以下「甲3技術」という。)における「パッド」及び「弾性材の平準化シム」がいずれも本件発明1の「調整板」に相当するとし,「単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しない」という長所をもたらすために,「パッド」が「『レールの敷設方向に連続して』置かれていると解するのが相当である」(審決書32頁14行〜15行)と認定し,さらに,この認定を「弾性材の平準化シム」にも拡大した。
しかし,以下のとおり,審決の上記認定は「パッド」及び「弾性材の平準化シム」の技術的意義を誤解したものであり,誤りである。
a甲3文献の「レール脚部の下のフィリング・パッド・・・によって」(with filling pads underneath the rail foot ・・・)との記載における「フィリング・パッド」とは,原文(英語)で「pads」という複数形が用いられているとおり,1個1個分かれている。それゆえ,樹脂を注入することにより,パッドのない部分では,樹脂がレールフット(レール底)の下側に回り込んでレールを連続的に支持することになるのである。
このことは,甲3文献の「弾性複合材は,レール頂部を除いてレール輪郭のほぼ全体を包囲する」との記載からも明らかである。
したがって,甲3技術において,「パッド」はレールの敷設方向に連続している必要はない。むしろ,「パッド」が「間隔をおいて」置かれていることから,レールの底面と溝の上面との隙間に樹脂が均一に流れ込んで固まり,均一な支持が実現できるのである。
b甲3文献の図9.46では,注入した樹脂は,レールと「弾性材の平準化シム」の間に入り込んでいない。
しかし,「弾性材の平準化シム」も,「パッド」と同様に,「間隔をおいて」置かれるものであるから,「弾性材の平準化シム」のない断面では,レールの底面と溝の上面との隙間に樹脂が均一に流れ込んで固まることにより,均一な支持が実現される。同図からも容易に理解できるとおり,「弾性材平準化シム」はレールの左右の傾きを調整する働きも有しており,このような部材は「間隔をおいて」設けることが技術常識である。
したがって,「弾性材平準化シム」は「間隔をおいて」置かれるものであり,「弾性材平準化シム」がない部分では,レールの下に隙間があると理解できるのであるから,樹脂が注入され,上記隙間にも樹脂が均一に充填された結果,樹脂による連続的な支持が実現し,「単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しない」という長所がもたらされる。
c審決は,甲3文献の図9.49について,「『黒灰色』のもの及び『黄色』のものが,それぞれ何であるのかは明確でない。」(審決書32頁35行〜36行)と述べているが,技術常識によれば,黒灰色のものが「弾性帯状板(elastic strip)」であること,黄色のものが「弾性材平準化シム」であることは,当業者がいずれも容易に理解できる。
d甲3文献についての上記の理解を前提として,以下,相違点3の容易想到性について,主張する。
(イ)「コルクパッド」が「連続して」いるようにすることの容易想到性甲3文献の「溝の底には,弾性帯状板が敷かれ」との記載における「弾性帯状板」(elastic strip)という表現から,これが連続した細長いものであることを理解できるから,当業者が,甲1発明の「コルクパッド」として,甲3技術における「弾性帯状板」を採用することは容易であったというべきである。
(ウ)「調整板」を使用すること及びこれを「間隔をおいて」置くことの容易想到性以下のとおり,レールを「調整板」で支持すること,その「調整板」を「レールの走行方向に間隔をおいて」置くことは,いずれも当業者が容易になし得たことというべきである。
a「調整板」の使用について(a)B論文の図-1(甲1文献の429頁)に記載された「高さ調整パッド」は,溝の底に敷かれた別の部材の上に置かれている。仮に,B論文の図-1(甲1文献の429頁)とA論文の図1(甲1文献の431頁)とが同じ技術を示すものであることが明確ではなかったとしても,A論文の図1に基づいて実際の施工を行う際に,当業者が高さ調整パッドを使用することは単なる設計事項の範囲内である。
(b)甲3文献に,「弾性帯状板」とは別に「弾性材の平準化シム」又は「フィリング・パッド」が使用されることが記載されていることを前提とすれば,B論文の図-1(甲1文献の429頁)と,A論文の図1(甲1文献の431頁)から,コルクパッドの上に高さ調整パッドを置くことは,当業者が容易になし得たことである。
b「調整板」を「間隔をおいて」置くことについて(a)甲5文献によれば,レールの高さを調整する高さ調整板(詰材)をレールに沿って一定の間隔で配置することは当業者の常識であるといえ,さらに,特表昭62-500603号公報(甲26)によれば,高さ調整手段は,レールの長さ方向に対して間隔をおいて置かれていることが明らかであるといえるから,間隔をおいて高さ調整板を置くことは当業者の技術常識の範囲内にある。
(b)「フィリング・パッド」は,機械などの据付に際して,高さを調整するために床と機械などの間に挿入するパッドである(据え付けガイド〔甲25〕)ところ,これをレールの据付に使用すれば,長さ方向に間隔をおいて置くことにならざるを得ないのであるから,甲3技術における「フィリング・パッド」という語から,高さ調整板が「間隔をおいて」置かれていることが理解できる。
さらに,甲3文献では,位置決めの手段として,弾性くさびと「フィリング・パッド」が記載されているところ,両者は共に複数形で記載され,弾性くさびについては,図9.50に図示されているように,明らかに「間隔をおいて」置かれている。「フィリング・パッド」の説明は省略されているが,当業者であれば,図9.49に写っている黄色い板状の部材が「フィリング・パッド」又は「弾性材の平準化シム」であることは容易に理解できる。
(c)そもそも,「当該箇所のレール高さに応じて」高さを調整できることが高さ調整板の利点なのであり,このような利点は,高さ調整板が間隔をおいて置かれるからこそ発揮されるのであるから,間隔をおいて高さ調整板を置くことは,当業者による周知慣用技術適用の範囲内である。
ウ まとめ以上のとおり,審決は,本件発明1の進歩性の判断に際して,相違点3の認定を誤ったか,相違点3に係る本件発明1の構成の容易想到性の判断を誤ったものであり,同認定,判断の誤りが,本件発明1の進歩性の判断に係る審決の結論に影響する。
なお,前記アにおいて主張したとおり,審決は,相違点2を認定した点で誤りがあるが,相違点2に係る本件発明1の構成が容易に想到することができたものであると判断しているから,相違点2を認定した誤りは,本件発明1の進歩性の判断を左右するものではない。また,審決は相違点1,4及び5に係る本件発明1の構成の容易想到性について判断していないが,これらの相違点は,その内容に照らし,いずれも実質的なものとはいえない(この点,審決書は,本件審判の手続において,相違点5に関し,被告〔被請求人〕らが相違点であるとの主張をしていない旨を明記している。)。
(2) 取消事由2(本件発明2ないし20の進歩性の判断の誤り)以下のとおり,審決における本件発明2ないし20の進歩性の判断は,本件発明1についての進歩性の判断と同様の誤りがある。
ア 本件発明2ないし6,15及び17について本件発明2ないし6,15及び17についての審決の認定判断は,本件発明1についての認定判断と同様の誤りがあり,その誤りが結論に影響することも本件発明1の場合と同様である。
イ 本件発明7ないし14について本件発明7ないし14は,いずれも,本件発明1ないし6を直接的あるいは間接的に引用する発明であるが,本件発明7ないし14において付加されている構成について特段の困難性はなく,いずれも甲1発明及び甲2文献ないし甲13文献に記載された技術に基づいて当業者が容易にすることができた発明にすぎない。したがって,本件発明7ないし14についての審決の認定判断は,本件発明1ないし6についての認定判断と同様の誤りがあり,その誤りが結論に影響することも本件発明1ないし6の場合と同様である。
ウ 本件発明16について本件発明16は,本件発明15を引用する発明であるが,本件発明16において付加されている構成について特段の困難性はなく,甲1発明及び甲2文献ないし甲13文献に記載された技術に基づいて当業者が容易にすることができた発明にすぎない。したがって,本件発明16についての審決の認定判断は,本件発明15についての認定判断と同様の誤りがあり,その誤りが結論に影響することも本件発明15の場合と同様である。
エ 本件発明18ないし20について本件発明18ないし20は,いずれも,本件発明15又は17を直接的あるいは間接的に引用する発明であるが,本件発明18ないし20において付加されている構成について特段の困難性はなく,いずれも甲1発明及び甲2文献ないし甲13文献に記載された技術に基づいて当業者が容易にすることができた発明にすぎない。したがって,本件発明18ないし20についての審決の認定判断は,本件発明15又は17についての認定判断と同様の誤りがあり,その誤りが結論に影響することも本件発明本件発明15又は17の場合と同様である。
(3) 取消事由3(請求項17に係る訂正を認めた誤り)審決は,訂正事項e-2が訂正要件を充足すると判断した。
しかし,以下のとおり,審決の上記判断は誤りである。
訂正前明細書の特許請求の範囲の請求項17の記載から「スペーサによって互いの間隔を保持され」を削除する訂正は,誤記の訂正を目的とするものということはできない。
また,上記訂正により,請求項17に係る発明は「スペーサによって互いの間隔を保持され」ていないものを含むことになるから,実質上特許請求の範囲拡張するものである。
このように,訂正事項e-2は訂正要件を充足しないものであるから,審決が請求項17及びこれを引用する請求項18ないし20に係る訂正を認めたことは誤りであり,また,この誤りが本件特許の請求項17ないし20に係る審決の結論に影響することは明らかである。
2 被告らの反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
(1) 取消事由1(本件発明1の進歩性の判断の誤り)に対しア 相違点3の認定の誤りに対し以下のとおり,審決が相違点3を認定したことに誤りはない。
(ア) 甲1発明の認定の誤りに対しa甲1文献に収録された二つの論文が異なるものであること原告は,A論文及びB論文は同一の技術を異なる観点から報告したものであると主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
そもそも,A論文とB論文とは著者及び報告内容を異にする別の論文である。
そして,「INFUNDO」とは,単にINFUNDO社によってドイツで実施されていた樹脂軌道を称するものにすぎず,本件発明1が特定する具体的な工法を画一的に導出する語ではない。
したがって,審決がA論文とB論文とを「異なる論文」であると説示した点に何ら誤りはなく,また,B論文の図-1とA論文の図1とは同じものの異なる断面を示すという原告の主張も,根拠を欠くものである。
b甲1発明において「コルクパッド」及び「高さ調整パッド」がともに使用されているとはいえないこと原告は,甲1発明において「コルクパッド」及び「高さ調整パッド」がともに使用されていると主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
(a)A論文には,「コルクパッド」(本件発明1の「振動吸収板」に相当。)が設けられた構成が開示されているのみであり,同論文に「レールより少し大きめの溝がついたコンクリート床版をまず地盤上に施行し,溝の底にはコルクパッドを式,さびやゴミを落としたレールを置く。」(甲1文献の431頁右下欄下から8行目〜下から6行目)と記載されていることに照らしても,本件発明1の「調整板」に相当するものについては何ら記載されていないといえる。
(b)B論文の図1には,単に「高さ調整パッド」という文字が示されているだけであって,以下のとおり,本件発明1の「振動吸収板」に相当するものは何ら記載されていない。
そもそも,B論文の図1は明瞭でなく,拡大図(乙1)を参照しなければ,「高さ調整パッド」の下面に板状のものを視見することも不可能である。
そして,同図に二つの部材が記載されているとしても,一般に,高さ調整パッドはあらかじめ複数枚の厚さの異なるパッドを用意し,当該箇所のレール高さに応じてこれらを組み合わせることにより,所望の高さ寸法にすることは,周知の技術である(訂正明細書の段落【0063】,【0082】参照)から,同図に記載された構成は,単に「高さ調整パッド」を重ねたものにすぎないと考えるのが自然である。
仮に,同図において「高さ調整パッド」と異なるものが重ねられているとしても,「高さ調整パッド」と「フィリング・パッド」が積層されていることもあり得るから,本件発明1の「振動吸収板」に相当するものが記載されているとする根拠はない。
c甲1発明における「コルクパッド」が「連続して」おり,「高さ調整パッド」が「間隔をおいて」置かれているということはできないこと(a)原告は,A論文の図1の右上の断面図では,レールとコルクパッドの間に隙間が存在するから,当業者は,「コルクパッド」が「連続して」いるものと理解すると主張する。
しかし,コルクパッドとレールとの間に隙間が存在するとしても,そのことから,直ちに「コルクパッド」が「連続して」いるということはできない。
なお,仮に,レールとコルクパッドの間の隙間を維持するために何らかの支持部材が存在するとしても,それは「フィリング・パッド」であったり,「コルクパッド」そのものの上部に一体形成された凹凸であったりすることも考えられる。また,Edilon樹脂を流し込み,固化してからレールを載置すれば,Edilon樹脂がセルフレベリング性を有すること(訂正明細書の段落【0069】参照)から,支持部材が存在しなくてもレールとの隙間を維持することが可能であって,宙づりなどの工程を想定する必要はない。
(b)原告は,B論文の図-1とA論文の図1とは,同じものの異なる断面を示すと主張する。
しかし,前記aのとおり,原告の上記主張は理由がない。
(c)なお,原告は,甲1発明についての原告の主張が甲3文献の記載によっても裏付けられると主張するが,根拠を欠くものである。
(イ) 相違点3の認定に誤りがないこと以上のとおり,相違点3の認定の誤りをいう原告の主張は,甲1文献に収録された異なる論文に別々に記載されている構成要素を,強いて本件発明1における個々の構成要素に合致させようとするものであり,失当である。
なお,甲3文献にも「弾性帯状板をレールの敷設方向に連続して固定し,高さ調整板をレールの敷設位置に沿って,間隔をおいて置く」との記載やそれを示唆する記載は存在しない。
イ 相違点3についての容易想到性の判断の誤りに対し(ア) 甲3文献についての認定の誤りに対しa甲3技術における「パッド」は,Fig.9.46に記載されている「Leveling shim」であって,レベル(高さ)を調整するものである。そして,複数枚のパッドを用いて所望の高さ寸法にすることは周知の技術であるから,「pads」という複数形の語が用いられていることから,直ちにパッドがレールの敷設方向に「間隔をおいて」設けられている構成が開示されているとすることはできない。
bまた,「profile」という語は,そもそも「側面」が第1義的な訳語であるし,「輪郭」という意味であるとしても,パッドが設けられているレール下面は,「輪郭」には入らない。甲3文献の「弾性複合材は,レールヘッドを除いてレール周囲(profile)のほぼ全体を包囲する」との記載は,レールの下方部分が弾性複合材に覆われているという程度の意味に解するのが自然である。
cそうとすれば,甲3文献における「パッド」について「pads」という複数形の語が用いられていることや「profile」という語について「輪郭」という訳語を用いるべきであるとして,甲3文献にパッドがレールの敷設方向に間隔をおいて設けられている構成が開示されているとする原告主張は,根拠がないものというべきである。
(イ)「コルクパッド」が「連続して」いるようにすることの想到困難性原告は,甲1発明の「コルクパッド」として,甲3文献記載の連続した「弾性帯状板」を採用することは容易であったと主張する。
しかし,甲3文献には,単に,弾性帯状板(elastic strip)が記載されているだけであるから,甲1発明の「コルクパッド」として,甲3文献記載の「弾性帯状板」を採用することにより,相違点3に係る本件発明1の構成に想到することが容易であったとはいえない。
(ウ)「調整板」を使用すること及びこれを「間隔をおいて」置くことの想到困難性aそもそも,本件発明1における「調整板」とは,特許請求の範囲の記載に示されるように,走行レールなどの上面の高さを所定のレベルとなるように調整する高さ調整板である。
これに対し,甲3文献における「フィリング・パッド」は,「filler」が「間隙材」を意味すること(乙2)や「filling material」が「スラブ軌道の高低やカント,弾性の調整を目的として,軌道スクラブと路盤コンクリートの間に充填する材料」を意味すること(乙3)からすれば,走行レールなどが設置される凹部に凹凸などの高低が存在する場合に配置し,曲線部において外側レールを単に高くするために凹部に配置し,または弾性などを調整するために凹部に配置する,単なる隙間埋めパッドである。
b原告は,甲3文献には,弾性帯状板とは別に「弾性材の標準化シム」又は「フィリング・パッド」が使用されていると主張する。
しかし,同文献の記載から明確なのは,弾性帯状板の上のレールとの間に「フィリング・パッド」が詰められるということだけであって,弾性帯状板とフィリング・パッドとを合わせてFig.9.46の標準化シムを示す可能性も,弾性帯状板がFig.9.46の標準化シムである可能性もある。したがって,甲3文献のFig.9.46に部材を特定することなく表示される弾性材の標準化シムがフィリング・パッドであるとすることはできない。
なお,仮に,フィリング・パッドが高さ調整板に相当するとしても,甲3文献には「高さ調整板をレールの敷設位置に沿って,間隔をおいて置く」との記載やそれを示唆する記載はない。
c甲5文献の詰材は,レールを傾斜させて支持するものであって,高さ調整パッドでなく,「軌条構造内に振動を吸収する1つの方法として弾性詰材の使用がある。本発明は特に厚板軌条構造に用いる改善された形状の弾性詰材に関する。」と記載されているように,フィリング・パッドである。したがって,そのようなものが「レールに沿って一定間隔で配置される個々の要素であり,或いはまた各レールの下で連続したものとすることができる」と記載されていることをもって,高さ調整板をレールに沿って一定の間隔で配置することが当業者の常識であるということはできない。
d甲26の図面は,隙間4に粒子11含有のコンパウンド8を流し込んだものを示したものであって,切欠部を図示することによって,もともと存在した隙間4を明示しているにすぎない。原告の主張は,誤解に基づくものである。
ウ まとめ以上のとおり,審決における相違点3の認定にも,相違点3に係る本件発明1の構成の容易想到性の判断にも誤りはなく,原告主張の取消事由1は理由がない。
(2) 取消事由2(本件発明2ないし20の進歩性の判断の誤り)に対し原告は,審決における本件発明2ないし20の進歩性の判断は,本件発明1についての進歩性の判断と同様の誤りがあると主張する。
しかし,本件発明1についての進歩性の判断に誤りがないことは前記(1)のとおりであるから,原告の上記主張はいずれも失当である。
(3) 取消事由3(請求項17に係る訂正を認めた誤り)に対し原告は,訂正事項e-2が訂正要件を充足しないと主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
そもそも,訂正前明細書の請求項17は,「走行レールの据付構造」に関する発明に関するものであって,スペーサで互いの間隔を保持する余地がないものである。
また,訂正前明細書において,請求項17に係る据付構造を得るための据付方法を示す請求項4ではスペーサを必須の構成要素としていないこと,請求項17の実施形態を示す段落【0079】及び【0083】並びに【図9】にもスペーサの構成は何ら記載されていないことからすれば,請求項17における「スペーサによって互いの間隔を保持された」との記載が誤記によって加入されたものであることは,当業者には明らかである。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本件発明1の進歩性の判断の誤り)について(1) 相違点3の認定の誤りについて原告は,審決が相違点3を認定したことは誤りであると主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
ア 甲1文献の記載等甲1文献に収録されたA論文及びB論文には,それぞれ次の記載等がある。
(ア) A論文の記載等「欧州で開発されたInfundoと称する樹脂固定軌道というべき新型軌道構造に注目し,我が国への導入を検討した。Infundoは,砕石やまくら木及びレール締結装置を持たない,従来の軌道とは全く異なる構造で,それらの機能をコンクリート床板や樹脂などによって実現するものである。」(431頁左下欄13行〜18行)「2.1.Infundo軌道の構造軌道の主な構成部材は,レール,レール周囲を覆う樹脂,鉄筋コンクリートスラブなどである。その概念図を図1に示す。Infundo軌道の特徴として,砕石の突き固めやレール締結装置ボルトの点検等の保守が不要になること,レールウェブを樹脂で覆っているため,振動が減衰することから低騒音,低振動が期待できること,・・・などがあげられる」(431頁左下欄23行〜右下欄1行)「2.2.施工方法レールより少し大きめの溝がついたコンクリート床版をまず地盤上に施工し,溝の底にはコルクパッドを敷き,さびやゴミを落としたレールを置く。・・・上下左右とも±1mmの精度で施工している。レールのウェブ部の左右に並行して塩ビ製等のパイプを入れる。プライマーを塗布した後,Edilon社製樹脂を溝の隙間に注入し,連続的にレールと溝との隙間を埋めていく。パイプは樹脂の注入量を節約するとともに,各種ケーブルの配線路としても使用できる。」(431頁右下欄9行〜432頁左欄3行)「(株)新潟鐵工所新潟構機工場内の線路の一部にInfundo軌道が試験施工された。施工箇所は,直線部1カ所および曲線部1カ所である(図2参照)。・・・曲線部は・・・内軌道レールに護輪軌条を設けた。」(432頁左欄12行〜右欄1行)「図8は,スラブ中央及び端部のスラブに対するレール上下変位量測定結果を示す。在来軌道では,レールをまくら木で断続的に支持するのに対し,Infundo軌道ではレールを連続的に支持するという違いがあり・・・」(433頁右欄11行〜14行)「図1Infundo軌道の概念図」(431頁)には,レールをその頭部を上方に突出させた状態で溝内に収め,この溝内に,溝の上縁までEdilon樹脂を充填したInfundo軌道の構造が,レールの敷設方向に直角な断面で示され,溝の底にコルクパッドが設けられ,その上にレールを設置した点が記載されている。なお,同図からは,コルクパッドとレールの間に隙間が存在することが読み取れる。
(イ) B論文の記載等「〈3.1〉樹脂固定軌道・・・オランダの化成品会社エディロン(Edilon)は,コークラストと名づけた・・・ポリウレタン系樹脂を用いて,コンクリート道床の溝にレールとともに固定する方式を開発,30年前から試験を開始し,・・・使用実績を重ねていった。この方式は,レールの支持に金具を使用せず,粘弾性体(コークラスト)でレールを包み込むために,騒音・振動が吸収されるため,・・・保線作業が大幅に軽減できる特長がある。」(428頁右欄1行〜19行)「図-1INFUNDO断面」(429頁)には,溝内にレールをその頭部を溝の上縁とほぼ同じ高さにして収め,この溝内に,レールの軌道外側では溝の上縁まで樹脂を充填し,レールの軌道内側ではレール頭部が現れる程度の高さまで樹脂を充填したInfundo軌道の構造が,レールの敷設方向に直角な断面で示されており,溝の底とレールの下面との間に「高さ調整パッド」とともにパッド状の部材を設けることが記載されている。
イ 判断(ア) 甲1文献に収録された二つの論文の関係についてa前記ア(ア)及び(イ)の各記載等によれば,甲1文献にいう「Infundo」とは,レール敷設用の溝内にレールを収め,この溝内に樹脂を充填してレールを固定する樹脂固定軌道を意味するものと理解することができ,また,同文献に収録されたA論文及びB論文とは著者を異にするものの,いずれも上記樹脂固定軌道に関する具体的な構造が記載されているという限りで共通するものと認められる。
bしかし,A論文に記載された樹脂固定軌道とB論文に記載された樹脂固定軌道とは,その具体的な構造が相違する。すなわち,A論文には,溝の底とレールの下面との間に「コルクパッド」を設けることが記載されており(図1),この構造では,コルクパッドとレールの間に隙間が存在することから,コルクパッドの上に,Edilon樹脂の層を介して,レールが設けられていることが認められるものの,「高さ調整パッド」を設けることは何ら記載されていない。一方,B論文には,溝の底とレールの下面との間に「高さ調整パッド」とともにパッド状の部材を設けることが記載されている(図-1)ものの,「コルクパッド」を設けることは明記されていない(なお,B論文の図-1に示される「高さ調整パッド」の下のパッド状の部材は,A論文の図1に示される「コルクパッド」に対応するものである可能性がないとまではいえないが,そのことが明確であるとまではいえない。)。
そして,A論文の図1に示される軌道とB論文の図-1に示される軌道が同一の軌道であるか否かについて,両論文は記載するところがなく,また,両軌道が具体的構造において異なる部分がある理由を説明する記載も見当たらない。
したがって,両論文の記載に基づいて,直ちにA論文の図1とB論文の図-1が同一の軌道中のレールの敷設方向において異なる部分の断面を記載したものと認めることは困難である。
cこの点,原告は,B論文にいう「性能確認試験」についての「別項の発表」(甲1文献の429頁右欄16行〜17行)が,「特性確認試験」について報告したA論文を指すことは明らかであると主張する。
しかし,仮に,B論文にいう「別項の発表」がA論文を意味するものであるとしても,そのことから,直ちに両論文にそれぞれ記載された樹脂固定軌道の具体的な構造が同一の軌道の異なる部分を記載したものであるとまで認めることはできない。
d原告は,B論文の図-1には「高さ調整パッド」が記載されている一方,A論文の図1では溝の底に「コルクパッド」があり,その上のレール底部との間にEdilon樹脂が入り込んでいることを指摘する。
しかし,原告の指摘に係る上記の点を含め,A論文及びB論文の各記載を精査しても,「コルクパッド」及び「高さ調整パッド」に関し,レール敷設方向に沿った構成が明確に記載されているとは認められない。
e以上のとおりであるから,A論文の図1に示される断面とB論文の図-1に示される断面とが,同一の樹脂固定軌道についての具体的構造を表していると解すべきか否か,仮に同一とした場合,レールの敷設方向において異なる位置の構造を表していると解すべきか否かは,両論文の記載に照らして,明確であるとはいえない。
したがって,両論文を総合考慮したとしても,「Infundo」と称される樹脂固定軌道の標準的な断面には「コルクパッド」が使われ,場所によっては「高さ調整パッド」も使われていることが明らかであるとはいえない。
なお,甲3文献の記載を考慮したとしても,甲1文献の記載事項の解釈に係る上記判断は何ら左右されるものではない。
(イ) 「高さ調整パッド」について原告は,B論文に「高さ調整パッド」が記載されていることから,A論文及びB論文を総合考慮することにより,Infundo軌道の標準的な断面においては,場所により「高さ調整パッド」も使われており,また,「間隔をおいて」置かれていると理解できる旨主張する。
しかし,前記(ア)のとおり,両論文を総合考慮したとしても,「Infundo」と称される樹脂固定軌道の標準的な断面において,場所により「高さ調整パッド」も使われていると直ちに認めることは困難である。
また,B論文の図-1における断面図はレールの据付構造をレールの敷設方向に直角な断面を示したものであり,同論文には,レールの敷設方向の構造に関する説明はないから,直ちに「高さ調整パッド」が「間隔をおいて」置かれていると認識するとはいえない。
(ウ) 「コルクパッド」について原告は,A論文においてコルクパッドとレールとの間に隙間が存在すること,「コルクパッド」はA論文の図1にもB論文の図-1にも現れていることから,「コルクパッド」が「連続して」いると理解できると主張する。
しかし,前記(ア)のとおり,A論文の図1に示される断面とB論文の図-1に示される断面とが,同一の樹脂固定軌道についての具体的構造を表しているということはできないのであるから,両図面を比較検討することに基づく原告の上記主張は,その前提を欠くものであり,採用することができない。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)で検討したところに加え,訂正明細書(甲22)の請求項1の記載(前記第2,2(2))及び甲1文献の前記ア(ア)及び(イ)の各記載等に照らせば,審決が,本件発明1との対比に際し,甲1文献に収録されたA論文とB論文のうち,本件発明1の構成と共通する構成がより多く記載されていると解されるA論文の記載に基づいて甲1発明を認定したこと,同発明を本件発明1と対比して相違点3を認定したことは,いずれも誤りであるとはいえない。また,審決は,相違点2に係る本件発明1の構成の容易想到性の判断に際して,「甲第1号証には,甲1発明の他に,溝の底に敷かれたコルクパッドの上に,レールの高さ調整パッドを設けることが開示されている」(審決書30頁1行〜3行)と認定しているから,B論文に記載された樹脂固定軌道において「高さ調整パッド」が使用されている点について看過したものでないことも明らかである。
(2) 容易想到性の判断の誤りについて原告は,審決が相違点3に係る本件発明1の容易想到性の判断を誤ったと主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
ア 甲3文献についての認定の誤りについて原告は,甲3技術における「パッド」及び「弾性材の平準化シム」は「間隔をおいて」置かれているものであって,審決は,相違点3に係る本件発明1の容易想到性の判断に際して,甲3文献についての認定を誤ったものであると主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
(ア) 甲3文献の記載等甲3文献には次の記載等(ただし,日本語の表記は原告の提出に係る訳文によることとするが,「elastic strip」の訳語については,「弾性帯状体」ではなく,「弾性帯状板」を用いた。なお,同訳文に対し,被告らは格別の意見を表明していない。)がある。
a「9.8.1 埋め込み型レールの特徴埋め込み型レール構造(ERS)は,例えばコルクとポリウレタンからなる複合材を介してのレールの連続的な支持を伴う。レールはこの弾性複合材を介して固着され,弾性複合材はレール頂部を除いてレール輪郭のほぼ全体を包囲する。」(253頁38行〜42行)b「レールの固着方法は次の原理によって特徴付けられる。
?弾性帯状板上でのレールの連続的支持?溝中に弾性的に固着することによるレールの方向付け?トップ-ダウン方式によるレールの心出し?レール輪郭の弾性注入複合材による固着?特定の弾性のための,溝寸法,弾性複合材料,及び帯状板の設計の最適化弾性的連続的に支持されたレールの利点は,個々のレール支持の間における二次的曲げによる動的荷重が存在しないこと・・・である。」(254頁1行〜8行)c「9.8.2 埋め込み型レール軌道の構築埋め込み型のレールは,注入された弾性複合材及びレールを収容するための溝を必要とする。このような溝は,コンクリート又は鋼鉄によって提供され得る。・・・図9.46は,埋め込み型レールを収容しているスラブの細部の断面を示している。」(254頁11行〜21行)d「溝の底には弾性帯状板が敷かれ,その上面の上に,レール脚部の下のフィリング・パッドと側面の弾性くさびによってレールが位置決めされる。レールはトップダウン方式によって調節される。調節後,(弾性)複合材が溝部内に注入される前に,レールは加熱によって応力を取り除かれる(図9.52)。」(254頁36行〜44行)e図9.46(254頁)には,溝の左側に「弾性くさびとブロック」,溝の右側に「注入された弾性材料」,「弾性くさびとチューブホルダ,φ50mmのPVCチューブ」,溝の上側に「軌間」,溝の下側に「弾性材の平準化シム」と記載されている。
f図9.49(255頁)には,溝の底がレールの敷設方向に連続して黒灰色で,所定間隔で黄色の模様あるいは部材が溝の底の全幅にわたって設けられている点が記載されている。
(イ) 判断a甲3文献の前記(ア)の記載等によれば,甲3技術は「埋め込み型レール」に関するものであって,下記(a)ないし(i)のとおりのものと理解することができる。
(a)レールは,注入された弾性複合材を介して連続的な支持を受けるものであるとともに(前記(ア)a),弾性帯状板上で連続的な支持を受けるものであること(前記(ア)b)。
(b)レールは,注入された弾性複合材を介して溝中に弾性的に固着されるものであり(前記(ア)a,b),溝は,注入された弾性複合材及びレールを収容するものであること(前記(ア)c)。
(c)レールは,弾性的連続的に支持されていることから,個々のレール支持の間における二次的曲げによる動的荷重が存在しないこと(前記(ア)b)。
(d)レールは,溝の底に敷かれた弾性帯状板の上面の上に,レール脚部の下のフィリング・パッドと側面の弾性くさびによって,位置決めされ,トップダウン方式によって調節され,加熱によって応力を取り除かれるものであること(前記(ア)d)。
(e)弾性複合材は,レールが加熱によって応力を取り除かれた後,溝に注入され(前記(ア)d,c),レール頂部を除いてレール輪郭のほぼ全体を包囲するものであり(前記(ア)a),また,レール輪郭を固着するものであること(前記(ア)b)。
(f)弾性複合材料は,特定の弾性のために設計されるものであるが,帯状板とは別の部材であること(前記(ア)b)。
(g)弾性帯状板は,溝の底に敷かれるものであり,その上面の上にレールが置かれるものであること(前記(ア)b)。
(h)帯状板は,特定の弾性のために設計されるものであるが,弾性複合材料とは別の部材であること(前記(ア)b)。
(i)フィリング・パッドは,レール脚部の下に置かれるものであって,レールの側面の弾性くさびとともに,弾性帯状板の上面の上にレールを位置決めするものであること(前記(ア)d)。
bしかし,下記(a)ないし(c)のとおり,甲3技術における弾性帯状板が「レールの敷設方向に連続して」置かれているか否か,フィリング・パッド又は弾性材の平準化シムが「レールの敷設方向に沿って間隔をおいて」置かれているか否かは,いずれも明確とはいえない。
(a)甲3文献には,弾性帯状板(審決にいう「弾性帯状帯(an elastic strip)」)が「レールの敷設方向に連続して」置かれているか否かについて,明示的な記載は見当たらない。
原告は,甲3文献の「溝の底には,弾性帯状板が敷かれ」との記載における「弾性帯状板」(elastic strip)という語から,これが連続した細長いものであることを理解できると主張する。
しかし,上記記載から「弾性帯状板」がある程度細長いものであることが理解できるとしても,同記載は,甲3技術における弾性帯状板が「レールの敷設方向に連続して」置かれていると断定するに十分なものとはいえない。
また,審決は,「『弾性帯状帯(an elastic strip)』・・・は,前記の『単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しない』という長所をもたらすために,ともに,『レールの敷設方向に連続して』置かれていると解するのが相当である」(審決書32頁12行〜15行)と説示しており,原告もこれを前提とするものと解される。
しかし,甲3技術についての前記a(a)ないし(c)の理解によれば,弾性帯状板上でのレールの連続的な支持は,注入された弾性複合材を介して実現されるものであるから,甲3技術における弾性帯状板が「レールの敷設方向に連続して」置かれておらず,「レールの敷設方向に沿って間隔をおいて」置かれているとしても,弾性帯状板が存在しない箇所は,注入された弾性複合材により埋められると考えられ,「個々のレール支持の間における二次的曲げによる動的荷重が存在しない」という作用効果を実現することは可能である。
したがって,弾性帯状板が「レールの敷設方向に連続して」置かれているか否かは,甲3文献の記載からは明らかであるとはいえない。
なお,原告は,甲3文献の図9.49について,黒灰色のものが弾性帯状板であることは,当業者が容易に理解できると主張する。
しかし,同図における黒灰色のものが何であるのかは,甲3文献の記載から明確であるとは認めがたい。また,仮に,同図における黒灰色のものが弾性帯状板であるとしても,同図の記載から直ちに「レールの敷設方向に連続して」置かれていることが明らかであるとまでは認められない。
以上のほか,甲3文献を精査しても,弾性帯状板について,レール敷設方向に沿った構成が明確に記載されているとは認められない。
(b)甲3文献には,フィリング・パッド(審決にいう「パッド」)が「レールの敷設方向に沿って間隔をおいて」置かれているか否かについて,明示的な記載は見当たらない。
この点,原告は,「フィリング・パッド」について,?@甲3文献(原文)では「pads」という複数形が用いられていることからは,複数のパッドが1個1個分かれてレール敷設方向に間隔をおいて置かれるものである,?A甲3技術において,「個々のレール支持の間における二次的曲げによる動的荷重が存在しない」という長所をもたらすためには,フィリング・パッドは,レールの敷設方向に連続している必要はなく,むしろ,「間隔をおいて」置かれていると解することが合理的である,?Bこのことは,甲3文献の「弾性複合材は,レール頂部を除いてレール輪郭のほぼ全体を包囲する」との記載からも明らかであると主張する。
確かに,原告が主張するように,レール脚部の下のフィリング・パッドが,「レールの敷設方向に間隔をおいて」置かれていると解せば,レールの底面と溝又は弾性帯状板の上面との隙間が生じることとなるが,この隙間は注入された弾性複合材により埋められ,「個々のレール支持の間における二次的曲げによる動的荷重が存在しない」という作用効果を実現することが可能であると考えられる。
しかし,甲3文献の記載からは,複数のパッドが1個1個分かれて「レールの敷設方向に間隔をおいて」詰められるのか,「レールの敷設方向に連続して」複数のパッドが重ねられて詰められるのかは明らかでない。
また,甲3技術におけるフィリング・パッドが「レールの敷設方向に沿って間隔をおいて」置かれておらず,「レールの敷設方向に連続して」置かれているとしても,長さや高さ等が異なる複数のフィリング・パッドが重ねて詰められるなどして,「レールの敷設方向に連続」するようにされている場合には,レールの底面とフィリング・パッドの上面との間に隙間が生じることがあり,この隙間が注入された弾性複合材により埋められることにより,「個々のレール支持の間における二次的曲げによる動的荷重が存在しない」という作用効果を実現することが可能である。
また,レールの底面とフィリング・パッドの上面との間に隙間が生じない場合であっても,弾性帯状板が「レールの敷設方向に連続して」置かれている限り,レールは弾性的連続的に支持されているということができ,「個々のレール支持の間における二次的曲げによる動的荷重が存在しない」という作用効果を実現することも可能である。
そして,「レール輪郭(profile)」という語が,レール脚部の下を含むか否かは,必ずしも明確とはいえないから,上記のいずれの場合であっても,弾性複合材は,レール頂部を除いてレール輪郭のほぼ全体を包囲するものであり,レール輪郭を固着するものであるといえないものではなく,また,レールは注入された弾性複合材を介して溝中に弾性的に固着されるものといえる。
以上及び後記(c)で説示するところのほか,甲3文献を精査しても,フィリング・パッドについて,レール敷設方向に沿った構成が明確に記載されているとは認められない(原告は,レールを位置決めする手段として記載されている弾性くさびが「間隔をおいて」置かれていることも指摘するが,そのことから直ちにフィリング・パッドが「間隔をおいて」置かれているとまでは認められないことは,いうまでもない。)。
したがって,フィリング・パッドが「レールの敷設方向に沿って間隔をおいて」置かれているか否かは,甲3文献の記載からは明らかであるとはいえないなお,原告は,甲25に基づいて,「フィリング・パッド」とは,機械などの据付けに際して,高さを調整するために床と機械などの間に挿入するパッドであるから,これをレールの据付けに使用すれば,長さ方向に間隔をおいて置くことにならざるを得ないとも主張する。
しかし,甲3技術は「埋め込み型レール」に関するものであって,甲25に記載されているような目的でフィリング・パッドを使用するものではないから,原告の上記主張は採用することができない。
(c)甲3文献の図9.46において,弾性材の平準化シムがどの部材を指すかは明確でなく,また,同文献には,フィリング・パッドと弾性材の平準化シムとの異同について,明示的な記載は見当たらない。
仮に,同図において,レール脚部の下の部材が弾性材の平準化シムであり,その下の部材が弾性帯状板であるとすれば,弾性材の平準化シムは,フィリング・パッドと同様の位置に置かれるものということができるが,フィリング・パッドについて前記(b)で説示したのと同様の理由により,弾性材の平準化シムが「レールの敷設方向に沿って間隔をおいて」置かれているか否かは,甲3文献の記載からは明らかであるとはいえない。
なお,原告は,「弾性材平準化シム」はレールの左右の傾きを調整する働きも有しており,このような部材は「間隔をおいて」設けることが技術常識である,甲3文献の図9.49について,黄色のものが「フィリング・パッド」又は「弾性材の平準化シム」であることは,当業者が容易に理解できるなどと主張する。
しかし,レールの左右の傾きを調整する部材を「間隔をおいて」設けることが技術常識であったことを認めるに足りる証拠は,本件記録に照らし,これを見いだすことができない。また,甲3技術が,一般的な鉄道の軌道ではなく,「埋め込み型レール」に関するものであることにかんがみると,仮に,レールの左右の傾きを調整する部材を「間隔をおいて」設けることが,通常の鉄道の軌道における技術常識であったとしても,直ちに甲3技術における弾性材平準化シムについても同様であると断定することは困難である。そして,甲3文献の図9.49における黄色で示されたものが何であるかは,同文献の記載からは明らかでない。
c上記検討したところによれば,審決が「『弾性帯状帯(an elastic strip)』,『パッド』は,前記の『単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しない』という長所をもたらすために,ともに,『レールの敷設方向に連続して』置かれていると解するのが相当である」(審決書32頁12行〜15行)と断定した点については,直ちにこれを是認することができないとしても,審決が「甲第3号証・・・は,・・・振動吸収板を,走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して固定し,且つ,調整板を走行レールおよび脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置く構成を開示するものではない。」(審決書33頁15行〜18行)と認定したことに誤りはない。
イ「コルクパッド」が「連続して」いるようにすることの容易想到性について原告は,甲1発明の「コルクパッド」として,甲3技術における連続した「弾性帯状板」を採用することは容易であったと主張する。
しかし,前記ア(イ)b(a)のとおり,甲3技術における弾性帯状板が「レールの敷設方向に連続して」置かれているか否かは,甲3文献の記載から明らかではないから,原告の上記主張はその前提を欠くものであり,失当である。
ウ「調整板」を使用すること及びこれを「間隔をおいて」置くことの容易想到性について(ア) 調整板の使用について原告は,甲1発明において,コルクパッドの上に高さ調整パッドを置くようにすることは,B論文又は甲3文献の記載に照らし,容易であったと主張するところ,前記アのとおり,B論文においても,甲3文献においても,レールの敷設方向の構造は明らかでないから,仮に,原告が主張するように,B論文又は甲3文献から「調整板」を使用することが容易であったとしても,これを「間隔をおいて」置くことまで容易であったとすることはできない。
そこで,以下,「調整板」を「間隔をおいて」置くことの容易想到性について検討する。
(イ) 「調整板」を「間隔をおいて」置くことについて原告は,甲5文献及び甲26の記載等に照らし,甲1発明において,間隔をおいて高さ調整板を置くようにすることは当業者の技術常識の範囲内にある旨主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
a甲5文献には,次の記載等がある。
「(1)車輪が走行する頭部をもつ一対の平行なレール;レールの頭部を含む平面と平行な平面内に平坦な上表面をもつ基礎厚板;およびレールを基礎厚板上で所望の傾斜をもって支持するために基礎とレールとの間に配設された弾性傾斜詰材から成る鉄道軌条構造。」(1頁左下欄5行〜10行)「(3)各レールが間隔を保って配列された個々の詰材で支持されている,特許請求の範囲第1項記載の鉄道軌条構造。」(1頁左下欄13行〜15行)「(4)鉄道軌条構造に用いる傾斜した弾性楔部材をレール支持用詰材。」(1頁左下欄16行〜17行)「(8)楔部材が傾斜部と非傾斜部の2つの部分から成り前記部分の一方が弾性を有し他方が剛性を有する,特許請求の範囲第4項記載のレール支持用詰材。」(1頁右下欄7行〜10行)「本発明は鉄道軌条の構造に関し,特にレールの下方の本来の場所または予め鋳造した鉄筋コンクリート基礎を含む厚板軌条構造に関する。・・・鉄筋コンクリート基礎を用いる数種のレール軌条構造がある。これらの形式においてはレールと車輪表面の不規則さおよび運動の偏心性から主として生ずる振動が軌条構造内に吸収される必要がある。軌条構造内に振動を吸収する1つの方法として弾性詰材の使用がある。本発明は特に厚板軌条構造に用いる改善された形状の弾性詰材に関する。」(1頁右下欄20行〜2頁右上欄11行)「本発明は基礎厚板がレールの頭部を含む平面と平行な平面内に平坦な上表面をもつ軌条構造を提供し,この場合レールはレールに対し所望の傾斜を与えられるように傾斜付けされた弾性詰材上に支持され,なお前記詰材はレール底部と基礎厚板の表面との間に横たわる。」(2頁右上欄2行〜7行)「本発明はまた平坦な表面上に所望の傾斜をもつてレールを支持するための傾斜付弾性詰材を提供する。本発明によれば,詰材は荷重を受けて変形するときに一定の傾斜を維持するように設計される。
・・・詰材はレールに沿つて一定間隔で配置される個々の要素であり,或はまた各レールの下で連続したものとすることもできる。・・・本発明による詰材は例えば合成ゴム,天然ゴム,コルク,ポリウレタン,ポリ硫化物のような弾性重合材料を含む種々の材料で造ることができる。」(2頁右上欄8行〜左下欄1行)「平坦な厚板軌条基礎上にレールを連続的または間欠的に支持する傾斜した詰材の使用は」(2頁右下欄10行〜11行)「第2図は2つ以上の構成要素を用いた傾斜支持詰材7,8を示し,傾斜要素8は堅い材料で接着形状または界面摩擦によつて矩形弾性詰材7と位置づけられる。第3図は2つ以上の構成要素を取入れた傾斜支持詰材9,10を示し,これによつて堅い材料の傾斜部材10が矩形弾性着座詰材9内に押込められる。」(3頁右上欄3行〜10行)第2図には,コンクリート厚板5上に矩形弾性詰材7が設置され,その上に傾斜要素8が設置され,この傾斜要素8の上にレール1が載置されているレールの据付構造が記載されている。
第3図には,コンクリート厚板5上に矩形弾性着座詰材9が設置され,その上に傾斜部材10が設置され,この傾斜部材10の上にレール1が載置されているレールの据付構造が記載されている。
上記各記載によれば,甲5文献には,矩形弾性詰材の上に堅い材料の傾斜支持詰材を設けた傾斜付弾性詰材を,レールの下でレールに沿つて一定間隔で配置する又はレールの下で連続したものとして配置することにより,軌条構造内に振動を吸収し,かつ,所望の傾斜をもつてレールを支持するレールの据付構造が記載されていると認められる。そして,詰材の構造に関して,下側の矩形弾性詰材に対して,上側の傾斜支持詰材を傾斜部として,傾斜した弾性楔部材とすることが記載されていると認められる。
してみると,矩形弾性詰材が主に軌条構造内に振動を吸収する機能を担い,堅い材料の傾斜支持詰材が主にレールを支持する傾斜を調整する機能を担っていると解することができるから,甲5文献には,レールの傾斜を調整する詰材を,振動を吸収する詰材と共に,レールの下でレールに沿つて一定間隔で配置する技術的事項が記載されていると認められる。
しかし,このレールの傾斜を調整する詰材は,レールの敷設方向に連続して配置された振動を吸収する詰材上に,レールに沿つて一定間隔で配置されるものではない。しかも,本件発明1の調整板は「走行レールおよび脱線防止レールの各レベルが所定レベルとなるように,高さ寸法を調整した」ものであることは明らかであるところ,甲5文献のレールの傾斜を調整する詰材は,傾斜が調整されて,レールの下に詰められることによりレールを所定の傾斜となるように調整するものである。
したがって,甲5文献記載の上記技術的事項を甲1発明に適用したとしても,相違点3に係る本件発明1の構成とすることまで容易になし得たとはいうことはできない。
原告の主張は採用することができない。
b甲26は,原告が本件審判の手続において提出したものではなく,審決において判断された公知技術ではないから,本訴において,甲26に基づいて,本件特許の出願当時の技術常識について主張することを超えて,相違点3に係る本件発明1の構成の容易想到性について主張することは許されない。
また,上記の点をひとまず措くとしても,甲26は,コンクリート床1とレール3の基部2との間の間隙4にポリウレタンを主体とするコンパウンド8が流し込まれたレールの据付構造に関する文献であり,「コンクリート床1と,たとえば市街電車レール3の基部2との間で,公知方法で間隙4が調整される」(2頁右上欄2行〜3行)と記載されているように,高さ調整手段についての具体的な構成を開示するものではない。
したがって,甲26に基づく原告の主張は採用することができない。
c原告は,間隔をおいて高さ調整板を置くことは,当業者による周知慣用技術適用の範囲内であるとも主張する。
しかし,本件特許の出願当時,間隔をおいて高さ調整板を置くことが周知慣用技術であったことを認めるに足りる証拠は,本件記録に照らし,これを見いだすことができない。
(ウ) まとめ上記検討したところによれば,甲1発明において,「調整板」を使用することが容易であったとしても,これを「間隔をおいて」置くことまで容易であったとすることはできない。
(3) 小括以上のとおり,審決における相違点3の認定及び同相違点に係る本件発明1の構成の容易想到性の判断に誤りはない。その他,原告は,本件発明1の進歩性の判断に関し縷々主張するが,いずれも理由がない。
したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(本件発明2ないし20の進歩性の判断の誤り)について原告は,審決における本件発明2ないし20の進歩性の判断は,本件発明1についての進歩性の判断と同様の誤りがあると主張する。
しかし,審決における本件発明1の進歩性の判断に誤りがないことは,前記1のとおりであるから,これと同様の理由により,原告主張の取消事由2のうち,本件発明2ないし16に係る部分は理由がない。
3 取消事由3(請求項17に係る訂正を認めた誤り)について原告は,訂正前明細書の特許請求の範囲の請求項17の記載から「スペーサによって互いの間隔を保持され」を削除する訂正は,誤記の訂正を目的とするものということはできず,また,実質上特許請求の範囲拡張するものであるから,訂正要件を充足しないと主張するので,検討する。
(1) 特許請求の範囲の記載について訂正事項e-2は,「走行レール」に関して,訂正前明細書の請求項17における「上記調整板上に位置決めされ,スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと,」との記載から,「スペーサによって互いの間隔が保持され」との記載を削除し,「上記調整板上に位置決めされた上記走行レールと,」に訂正するものである(前記第2,2(1)オ)。
訂正前明細書の請求項17は,車両が走行する走行レールの据付構造に関する発明を記載したものであり,同発明では,走行レールは複数条存在すると解するのが自然であるところ,同請求項の記載は,「スペーサによって互いの間隔が保持された」複数条の走行レールが,「調整板上に位置決めされ」ているという技術的事項が特定されているものと解することができる。
そうすると,訂正前明細書の請求項17の記載が誤記であると認めることはできない。
(2) 発明の詳細な説明の記載についてア訂正要件の成否は,誤記の訂正を目的とする訂正の場合にあっては,願書に最初に添付した明細書又は図面を基準として判断すべきである(特許法134条の2第5項,126条3項参照)ところ,本件特許の願書に最初に添付した明細書(以下,図面と併せ,「当初明細書」という。乙5)には,次の記載がある。
「【0079】次に,第二実施形態として,本発明の請求項4および請求項17に関連する上記コンクリートスラブ10の他方の走行レール11のみが収納される他方の凹部33(図9参照)におけるレールの据付方法および据付構造について説明する。・・・・・【0080】さらに,この振動吸収板14上には,間隔をおいてコルク板からなる高さ調整板15が載置されている。そして,これら複数の調整板15上に,走行レール11が敷設されている。ここで,走行レール11の外側方には,それぞれ塩化ビニル製のパイプ20が付設されている。そして,上記凹部33内に,前述の実施形態と同じポリウレタン21を注入して硬化することにより,走行レール11が固定されている。」「【0083】・・・・・すなわち,レールの長さは一般に規格寸法が25mであるが,これらを予め溶接接続して所要の長さにした後,走行レール11両側に,塩化ビニル製のパイプ20を,スペーサ兼水平位置調節用リング23および適宜間隔をおいて巻回された針金やプラスチックバンド(図13参照)24によって付設しておく。そして,図12に示すように,調整板15上に,これらパイプ20が一体化された走行レール11を置く。
【0084】次いで,図13に示すように,パイプ20に装着した水平位置調節用リング23と凹部33の側壁との間にコルク製のくさび部材25を打ちこんで,走行レール11の水平方向の位置を調節する。そして,このようにして走行レール11の位置決めが完了した後に,針金やプラスチックバンド24を取り去る。次に,図14に示すように,凹部33内の全体に後工程で注入されるポリウレタン21との接着強度を増すための第一実施形態と同様のプライマー26を散布する。
【0085】次に,図15に示すように凹部33のレール軌道の外側に位置する側壁33a(図において右側の側壁)と走行レール11との間に,上記ポリウレタン21を注入する。・・・・・」「【0094】なお,軌道の基礎部として,第一実施形態の走行レール11と脱線防止レール12を支持するためのレール支持構造と第二実施形態の走行レール11を支持するためのレール支持構造とを形成する2条の凹部が形成された一体型のコンクリートスラブ10を用いると,両走行レール11の間隔や高さ精度を容易に調節することができる。」イ当初明細書の前記アの各記載によれば,訂正前明細書の請求項17に関連して,走行レール11のみが収納される凹部33におけるレールの据付構造について,「走行レール11をその両側にスペーサ兼水平位置調節用リング23を付設して調整板15上に置き,水平位置調節用リング23と凹部33の側壁との間にコルク製のくさび部材25を打ちこんで,走行レール11の水平方向の位置を調節して,走行レール11の位置決めが完了した後に,凹部33のレール軌道の外側に位置する側壁33aと走行レール11との間にポリウレタン21を注入した構造」が記載されていると認められる。
この「スペーサ兼水平位置調節用リング」の用語は,自然な解釈として「スペーサを兼ねた水平位置調節用リング」を意味すると解されるところ,これをそのスペーサ機能部分を捉えて「スペーサ」と表現することも可能である。
また,当初明細書の前記アの各記載によれば,スペーサ兼水平位置調節用リング23は,凹部33の側壁との間にコルク製のくさび部材25を打ちこんで,走行レール11の水平方向の位置を調節して,走行レール11を位置決めする部材であるところ,それぞれ走行レールを据え付ける2条の凹部が形成された一体型のコンクリートスラブを用いるとされているので,一方の凹部33内において水平方向の位置決めされた走行レール11は,他方の凹部内において同様に水平方向の位置決めされた走行レールとの関係で,スペーサ兼水平位置調節用リングによって互いの間隔が保持されているということができる。
してみると,当初明細書の前記アの各記載は,「スペーサによって互いに間隔が保持された走行レール」について記載していると解することもできる。
ウ さらに,当初明細書には,次の記載もある。
「【0121】次いで,外軌側の凹部33に形成されるレールの据付構造を得るための他のレールの据付方法である第七実施形態(本発明の請求項6に関連する)について説明する。本実施形態においても,上記第六実施形態と同様に,コンクリートスラブ50に凹部33および溶接凹部33eを形成し,底面の所定箇所に振動吸収板14を接着固定した後に,調整板15,16を載置し,これら調整板15,16上に,スペーサ17によって互いに間隔が保持された走行レール11を置いて,コルク製のくさび部材25を打ち込み,位置決めをする。」エここで,当初明細書の請求項6は,走行レールと接続走行レールとを凹部内に据え付けるレールの据付方法に係る発明であるところ,上記ウの記載によれば,同請求項に関連する第七実施形態において,「走行レールがスペーサによって互いに間隔が保持されてそれぞれ調整板上に位置決めされる」という事項が記載されていると認められる。
オ以上検討したところによれば,当初明細書には,「走行レール」に関し,「スペーサによって互いの間隔が保持された」事項が記載されていたと解することができる。
そうすると,当初明細書の発明の詳細な説明の記載に照らしても,訂正前明細書の請求項17における「スペーサによって互いの間隔が保持され」との記載が誤記であると認めることはできない。
(3) 被告らの主張に対しア被告らは,走行レールはスペーサで互いの間隔を保持する余地がないものであると主張する。
しかし,以下のとおり,被告らの上記主張は失当である。
そもそも,訂正前明細書の請求項17に係る発明は,一般的な鉄道の軌道ではなく,「走行レールの据付構造であって,軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に,接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と上記走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて,それぞれ振動吸収板上に設けられ,上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と,上記調整板上に位置決めされ・・・た上記走行レールと,これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層とを備えたことを特徴とするレールの据付構造。」に関するものであるから,仮に,スペーサで走行レールの間隔を保持することが,通常の鉄道の軌道において一般的でないとしても,そのことから訂正前明細書の請求項17における「スペーサによって互いの間隔が保持され」との記載が誤記であると認めることはできない。
むしろ,前記(2)のとおり,当初明細書には,「走行レール」に関し,「スペーサによって互いの間隔が保持された」事項が記載されていたと解することができる。
イ被告らは,訂正前明細書において,請求項17の走行レールの据付構造を得るための据付方法を示す請求項4において,スペーサを必須の構成要素としていないことを主張する。
しかし,同明細書の記載を検討しても,請求項17と請求項4とが被告らの主張する関係にあることが明確であるとはいえない。
(4) 小括上記検討したところによれば,訂正前明細書の請求項17における「スペーサによって互いの間隔を保持され」という記載を削除する訂正事項e-2は,誤記の訂正を目的とするものとは認められず,また,同訂正事項より,請求項17に係る発明は「スペーサによって互いの間隔を保持され」ていないものを含むことになるから,実質上,特許請求の範囲拡張し,又は変更するものというべきである。
そして,訂正事項e-2は,単に形式的なものではなく,請求項17に係る発明の技術的範囲に実質的影響を及ぼすものであるから,審決が,請求項17についての訂正(訂正事項e)を認めたこと,また,請求項17についての訂正と不可分の関係にあることが明らかな段落【0023】についての訂正(訂正事項j)を認めたことは,誤りというべきであるが,特許無効審判の請求がされている請求項に係る特許請求の範囲減縮を目的とする訂正は,各請求項ごとに個別に請求することが許容され,その許否も各請求項ごとに個別に判断されるべきであり,また,訂正が誤記の訂正のような形式的なものであって,特許請求の範囲に実質的影響を及ぼさないものであるときも,同様と解されるから,本件訂正におけるその余の訂正事項の適否の判断には影響しないものというべきである(最高裁判所平成19年(行ヒ)第318号平成20年7月10日第一小法廷判決・裁判所時報1463号262頁,最高裁判所昭和53年(行ツ)第27号,第28号昭和55年5月1日第一小法廷判決・民集34巻3号431頁参照)。
なお,訂正請求書(甲21)によれば,訂正事項eに係る訂正請求は,請求項17についてのみでなく,同請求項を引用する請求項18ないし20(いずれも特許無効審判の請求がされている請求項である。)との関係でも請求されていると認められる。
そうすると,審決は,訂正事項eに係る訂正を誤って認めたことにより,本件発明17ないし20の各発明の要旨認定を誤ったものであり,この誤りが,審決中,請求項17ないし20に係る審判請求を成り立たないとした部分の結論に影響することは明らかである。
原告主張の取消事由3は理由がある。
4 結論以上のとおり,原告主張の取消事由1及び取消事由2(ただし,本件発明2ないし16に係る部分)は理由がないが,取消事由3は理由がある。
したがって,原告の本訴請求は,審決中,特許第3824948号の請求項17ないし20に係る発明についての審判請求を成り立たないとした部分の取消しを求める限度で理由があり,その余は理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 齊木教朗
裁判官 嶋末和秀
  • この表をプリントする