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審判番号(事件番号) データベース 権利
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関連ワード 産業上利用(29条1項柱書) /  反復(反復可能性) /  反復実施 /  技術的思想 /  製造方法 /  頒布された刊行物 /  容易に実施 /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  周知技術 /  技術的範囲 /  実施可能要件 /  技術常識 /  明確性 /  発明の詳細な説明 /  発明が明確 /  優先権 /  参酌 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  差止請求(差止) /  侵害 /  侵害するおそれ /  予防に必要な行為 /  設定登録 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 20年 (ワ) 14858号 特許権侵害差止請求事件
コリア〈以下略〉
原告三 星電子株式会社
訴訟代理人弁護 士大野聖二
同 井上義隆
訴訟代理人弁理 士片山健一
同 津田理 大阪市〈以下略〉
被告シ ャープ株式会社
訴訟代理人弁護 士永島孝明
同 安國忠彦
同 明石幸二郎
訴訟代理人弁理 士深見久郎
同 森田俊雄
同 吉田昌司
同 荒川伸夫
補佐人弁理士磯田志郎
同 和田吉樹
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2009/03/06
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1被告は,別紙イ号物件目録記載の製品を生産し,譲渡し,貸し渡し,輸出若しくは輸入し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)をしてはならない。
2被告は,被告の占有にかかる前項の製品を廃棄せよ。
- 2 -3訴訟費用は被告の負担とする。
4この判決の第1項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
主文第1,2項と同旨
事案の概要
1 事案の要旨本件は,発明の名称を「液晶表示装置の製造方法」とする特許番号第3625598号の特許(以下,この特許を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」という。)の特許権者である原告が,被告が別紙イ号物件目録記載の製品の製造,販売又はその販売の申出等をする行為が,本件特許権の侵害に当たる旨主張して,被告に対し,特許法100条1項,2項に基づき,上記製品の生産,譲渡,輸出等の差止め及び廃棄を求めた事案である。
2 争いのない事実(1) 当事者ア原告は,半導体,携帯電話,液晶モニター等の製造,販売を業とする韓国法人である。
イ被告は,液晶テレビ等電気機械器具の製造,販売等を業とする株式会社である。
(2) 原告の特許権ア原告は,平成8年12月27日,発明の名称を「液晶表示装置の製造方法」とする発明につき特許出願(優先権主張平成7年12月30日・平成8年10月5日,特願平8-351456号。以下「本件出願」という。)をし,平成16年12月10日,本件特許権の設定登録(請求項の数4)を受けた。
イ本件特許に係る願書に添付した明細書(以下,図面を含めて「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は,次のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本件発明1」,請求項2に係る発明を「本件発明2」,請求項3に係る発明を「本件発明3」,請求項4に係る発明を「本件発明4」という。)。
「【請求項1】薄膜トランジスタ部及びパッド部を有する液晶表示装置の製造方法において,基板上に第1金属膜及び第2金属膜を順番に積層した後,1次写真蝕刻して前記薄膜トランジスタ部及びパッド部にゲート電極及びゲートパッドをそれぞれ形成する段階と,前記ゲート電極及びゲートパッドの形成された基板の全面に絶縁膜及び半導体膜を順番に形成する段階と,前記半導体膜を2次写真蝕刻して前記薄膜トランジスタ部に半導体膜パターンを形成する段階と,前記半導体膜パターンの形成された基板の全面に第3金属膜を形成する段階と,前記第3金属膜を3次写真蝕刻して前記薄膜トランジスタ部にソース電極及びドレイン電極を形成する段階と,前記ソース電極及びドレイン電極の形成された基板の全面に保護膜を形成する段階と,前記保護膜及び絶縁膜を4次写真蝕刻して前記ドレイン電極の表面と,前記ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホールを形成し,前記ゲートパッドより内側にオープンされるように前記保護膜及び絶縁膜を蝕刻する段階と,前記コンタクトホールの形成された基板の全面に透明導電膜を形成する段階と,前記透明導電膜を5次写真蝕刻して,前記ドレイン電極と接続される第1画素電極パターンと,ゲートパッドと接続される第2画素電極パターンとを形成する段階と,を含み,前記半導体膜パターンを形成する段階及びソース電極及びドレイン電極を形成する段階のうち,少なくとも何れか一段階は,前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る段階からなることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。」「【請求項2】前記第1金属膜はアルミニウムあるいはアルミニウム合金から形成されることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法。」「【請求項3】前記第2金属膜は耐火金属から形成されることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法。」「【請求項4】前記画素電極パターンを形成する段階は,前記画素電極パターンは前記パッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分より大きく形成する段階からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法。」ウ(ア) 本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである。
A薄膜トランジスタ部及びパッド部を有する液晶表示装置の製造方法において,B基板上に第1金属膜及び第2金属膜を順番に積層した後,1次写真蝕刻して前記薄膜トランジスタ部及びパッド部にゲート電極及びゲートパッドをそれぞれ形成する段階と,C前記ゲート電極及びゲートパッドの形成された基板の全面に絶縁膜及び半導体膜を順番に形成する段階と,D前記半導体膜を2次写真蝕刻して前記薄膜トランジスタ部に半導体膜パターンを形成する段階と,E前記半導体膜パターンの形成された基板の全面に第3金属膜を形成する段階と,F前記第3金属膜を3次写真蝕刻して前記薄膜トランジスタ部にソース電極及びドレイン電極を形成する段階と,G前記ソース電極及びドレイン電極の形成された基板の全面に保護膜を形成する段階と,H前記保護膜及び絶縁膜を4次写真蝕刻して前記ドレイン電極の表面と,前記ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホールを形成し,前記ゲートパッドより内側にオープンされるように前記保護膜及び絶縁膜を蝕刻する段階と,I前記コンタクトホールの形成された基板の全面に透明導電膜を形成する段階と,J前記透明導電膜を5次写真蝕刻して,前記ドレイン電極と接続される第1画素電極パターンと,ゲートパッドと接続される第2画素電極パターンとを形成する段階と,を含み,K前記半導体膜パターンを形成する段階及びソース電極及びドレイン電極を形成する段階のうち,少なくとも何れか一段階は,前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る段階からなることを特徴とする液晶表示装置の製造方法
(イ) 本件発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである。
A〜K(前記(ア)のとおり)L前記第1金属膜はアルミニウムあるいはアルミニウム合金から形成されることを特徴とする液晶表示装置の製造方法
(ウ) 本件発明3を構成要件に分説すると,次のとおりである。
A〜K(前記(ア)のとおり)M前記第2金属膜は耐火金属から形成されることを特徴とする液晶表示装置の製造方法
(エ) 本件発明4を構成要件に分説すると,次のとおりである。
A〜K(前記(ア)のとおり)N前記画素電極パターンを形成する段階は,前記画素電極パターンは前記パッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分より大きく形成する段階からなることを特徴とする液晶表示装置の製造方法
(3) 被告の行為被告は,別紙イ号物件目録記載の製品(以下,同製品を「イ号液晶テレビ」といい,同製品に搭載された液晶モジュールを「イ号液晶モジュール」という。)を製造し,販売し,販売の申出をしている。
3 争点本件の争点は,イ号液晶モジュールの製造方法が本件発明1ないし4の構成要件を充足し,その技術的範囲に属するか否か(争点1),本件特許に無効理由があり,原告の本件特許権の行使が特許法104条の3第1項により制限されるかどうか(争点2)である。
争点に関する当事者の主張
1争点1(イ号液晶モジュールの製造方法の本件発明1ないし4の技術的範囲の属否)(1) 原告の主張ア本件発明1の「薄膜トランジスタ部」,「パッド部」及び「ゲートパッド」の意義(ア)本件発明1の「薄膜トランジスタ部」とは,本件明細書(甲3)の図9,11に図示されているように(図中の左側部分の「TFT部」),画素領域に設けられ,ソース,ドレイン,ゲートにより構成される薄膜トランジスタ(TFT)及びドレイン電極の表面を露出させる「コンタクトホール」が形成された領域をいう。
(イ)本件発明1の「ゲートパッド」とは,液晶表示装置の画素領域外(基板の周辺)の領域において,ゲートラインの一端(末端)に形成される電極をいい(本件明細書の段落【0037】,図6),ゲート電極を構成する「第1金属膜」,「第2金属膜」により形成される。
そして,本件発明1の「パッド部」は,本件明細書の図9,11に図示されているように(図中の右側部分の「パッド部」),上記「ゲートパッド」と「第2画素電極パターン」との接続が行われる領域をいう。この「パッド部」において行われる「ゲートパッド」と「第2画素電極パターン」の接続は,「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(請求項1)を介して行われる。
イ イ号液晶モジュールの構造イ号液晶モジュールは,次のように,「薄膜トランジスタ部」と「パッド部」を有している。
(ア) 薄膜トランジスタ部aイ号液晶モジュールの「薄膜トランジスタ部」(TFT部)においては,薄膜トランジスタのドレイン電極は,ゲート電極・ソース電極の交点付近から右斜上方に向かって伸びるように形成されており,その端部にはコンタクトホールが形成されている。
bイ号液晶モジュールの薄膜トランジスタ部の構造の概要は,別紙1(1)のとおりである(甲5の写真5-6,甲6の写真5-6,5-12等)。
すなわち,基板(a)上に,「チタン」を含む金属膜(b),「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)及び「チタン」を含む金属膜(d)が基板側から順番に積層されて,その側壁が基板(a)に対して傾くようにゲート電極が形成され,このゲート電極上に絶縁膜(e)が設けられている。
絶縁膜(e)の上には,第1の非晶質シリコン(a-Si)膜(f)及び第2の非晶質シリコン(a-Si)膜(g)が順次積層されてパターニングされ,第2の非晶質シリコン膜(g)の上に,「チタン」を含む金属膜(h)と「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)を積層してなるソース電極及びドレイン電極が形成されている。
上記パターニングされた第2の非晶質シリコン膜(g)全体の下部表面は第1の非晶質シリコン膜(f)の表面と当接しており,第2の非晶質シリコン膜(g)パターンの一部が第1の非晶質シリコン膜パターン(f)と接触している。
そして,ソース電極,ドレイン電極及びソース-ドレイン電極間に形成されるチャネル領域(第2の非晶質シリコン膜(g)が除去されることで露出する第1の非晶質シリコン膜(f)の表面)は,保護膜(j)より被覆されている。
cイ号液晶モジュールの薄膜トランジスタ部のコンタクトホール部の構造の概要は,別紙1(2)のとおりである(甲5の写真7-5等)。
すなわち,基板(a)上に絶縁膜(e)が設けられており,この絶縁膜(e)の上には,第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)が順次積層されてパターニングされている。
第2の非晶質シリコン膜(g)の上には,「チタン」を含む金属膜(h)と「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)を積層してなるドレイン電極(の端部)が形成されており,当該ドレイン電極の一部を露出するように保護膜(j)が形成され,ドレイン電極のうちの「チタン」を含む金属膜(h)の一部が,透明導電膜(k)に電気的に接続している。
なお,「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)の上には保護膜(j)が形成されており,透明導電膜(k)とは接していない。
(イ) パッド部aイ号液晶モジュールには,画素領域外の基板周辺部に,「ゲート-パッド連結部1」及び「ゲート-パッド連結部2」が形成され,それぞれにおいて「ゲートパッド」と「第2画素電極パターン」との接続部である「パッド部」が形成されている。
すなわち,イ号液晶モジュールにおいて,画素領域外の基板周辺部に形成されたゲートラインは,「ゲート電極」の末端部分であり,「ゲートパッド」に相当する。そして,「ゲート-パッド連結部1」及び「ゲート-パッド連結部2」において,それぞれ上記「ゲートパッド」と「画素電極」である透明導電膜(k)との接続が行われていることから,「ゲート-パッド連結部1」及び「ゲート-パッド連結部2」は,いずれも「パッド部」に該当する。
b「ゲート-パッド連結部1」の概要は,別紙1(3)のとおりである(甲5の写真8-14等)。
すなわち,基板(a)上に,「チタン」を含む金属膜(b),「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)及び「チタン」を含む金属膜(d)が基板側から順番に積層されて「ゲートパッド」が形成されている。
このゲートパッド上には,コンタクトホールにより,ゲートパッドの一部が開口されるように絶縁膜(e)が設けられ,当該絶縁膜(e)の上には,第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)が順次積層されており,第2の非晶質シリコン膜(g)の上には,「チタン」を含む金属膜(h),「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)及び保護膜(j)が設けられている。
なお,保護膜(j)は,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」の一部を露出するように形成されている。また,コンタクトホールの縁の「チタン」を含む金属膜(d)の上には,第1及び第2の非晶質シリコン膜(f,g)及び「チタン」を含む金属膜(h)が残存している。
そして,当該領域の全面に透明導電膜(k)が形成され,保護膜(j)及び絶縁膜(e)が一部除去されることにより形成されたコンタクトホールを介して,ゲートパッドを構成する第2金属膜としての「チタン」を含む金属膜(d)と透明導電膜(k)とが電気的に接続し,「パッド部」を形成している。
c「ゲート-パッド連結部2」の概要は,別紙1(4)のとおりである(甲5の写真8-17等)。
すなわち,基板(a)上に,「チタン」を含む金属膜(b),「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)及び「チタン」を含む金属膜(d)が順番に積層されてゲートパッドが形成されている。
このゲートパッド上には,その一部が開口されるように絶縁膜(e)が設けられ,当該絶縁膜(e)の上には,第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)が順次積層されており,第2の非晶質シリコン膜(g)の上には,「チタン」を含む金属膜(h)が設けられている。
なお,コンタクトホールの縁の「チタン」を含む金属膜(d)の上には,第1及び第2の非晶質シリコン膜(f,g)及び「チタン」を含む金属膜(h)が残存している。
そして,当該領域の全面に透明導電膜(k)が形成され,絶縁膜(e)の開口部のコンタクトホールを介して,ゲートパッドを構成する第2金属膜としての「チタン」を含む金属膜(d)と透明導電膜(k)とが電気的に接続し,「パッド部」を形成している。
ウ イ号液晶モジュールの製造方法前記イのイ号液晶モジュールの構造によれば,イ号液晶モジュールは,次のような工程1ないし12を経て製造されたものである。
(ア) 工程1別紙2?@のとおり,基板(a)上に,「チタン」を含む金属膜(b),「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)及び「チタン」を含む金属膜(d)を順番に積層した後,フォトリソグラフィー工程(1次写真蝕刻)により,薄膜トランジスタ部及びパッド部にゲート電極及びゲートパッドをそれぞれ形成する工程。
(イ) 工程2別紙2?Aのとおり,ゲート電極及びゲートパッドの形成された基板の全面に絶縁膜(e)を形成する工程。
(ウ) 工程3別紙2?Bのとおり,絶縁膜(e)の上に,第1の非晶質シリコン膜(f)及びドーピングされた第2の非晶質シリコン膜(g)を形成する工程。
(エ) 工程4別紙2?Cのとおり,半導体膜(第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g))を,フォトリソグラフィー工程(2次写真蝕刻)により,薄膜トランジスタ部に半導体膜パターンを形成する工程。
なお,当該工程において,パッド部にも半導体膜パターンが形成される。パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の「チタン」を含む金属膜(d)の上に,図中に矢印で示したように第1及び第2の非晶質シリコン膜(f,g)が残っている。
(オ) 工程5別紙2?Dのとおり,半導体膜パターンの形成された基板(a)の全面に,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)を形成する工程。
(カ) 工程6別紙2?Eのとおり,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)を,フォトリソグラフィー工程(3次写真蝕刻)により,薄膜トランジスタ部にソース電極及びドレイン電極を形成する工程の前段。
なお,パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の「チタン」を含む金属膜(d)の上に,図中に矢印で示したように第1及び第2の非晶質シリコン膜(f,g)及びパッド電極を構成する金属膜(h,i)が残っている。
(キ) 工程7別紙2?Fのとおり,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)をマスクとして,ソース電極とドレイン電極間に位置する第2の非晶質シリコン膜(g)を除去する工程(ソース電極及びドレイン電極を形成する工程の後段)。
なお,当該工程において,パッド部にも半導体膜パターンが形成される。パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の「チタン」を含む金属膜(d)の上に,図中に矢印で示したように第1及び第2の非晶質シリコン膜(f,g)が残っている。
(ク) 工程8別紙2?Gのとおり,ソース電極及びドレイン電極の形成された基板(a)の全面に保護膜(j)を形成する工程。
(ケ) 工程9別紙2?Hのとおり,保護膜(j)及び絶縁膜(e)をフォトリソグラフィー工程(4次写真蝕刻)により,ドレイン電極(の端部)の表面と,ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホールを形成し,ゲートパッドより内側にオープンされるように保護膜(j)及び絶縁膜(e)を蝕刻する工程。
(コ) 工程10別紙2?Iのとおり,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)のうち,コンタクトホールにより露出されている部分の「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)を除去する工程。
(サ) 工程11別紙2?Jのとおり,コンタクトホールの形成された基板(a)の全面に透明導電膜(k)を形成する工程。
(シ) 工程12別紙2?Kのとおり,フォトリソグラフィー工程(5次写真蝕刻)により透明導電膜(k)を蝕刻して,ドレイン電極と接続される第1画素電極パターンと,ゲートパッドと接続される第2画素電極パターンとを形成する工程。
エ 本件発明1の構成要件充足性イ号液晶モジュールは,前記イのとおり,「薄膜トランジスタ部及びパッド部を有する液晶表示装置」(構成要件A)であり,かつ,イ号液晶モジュールの製造方法は,以下のとおり,本件発明1の構成要件BないしKをすべて充足するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1の技術的範囲に属する。
(ア) 構成要件Ba本件発明1の「ゲート電極」は,「第1金属膜及び第2金属膜を順番に積層した後,1次写真蝕刻して」形成されるものであるから,「薄膜トランジスタ部」の基板上には,(少なくとも)二つの金属膜が形成され,これら金属膜のうち,基板側の金属膜が「第1金属膜」であり,当該「第1金属膜」の上に積層される金属膜が「第2金属膜」である。
bそして,工程1において,基板(a)上に「第1金属膜」に相当する「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)及び「第2金属膜」に相当する「チタン」を含む金属膜(d)を順番に積層した後,フォトリソグラフィー工程(1次写真蝕刻)により,薄膜トランジスタ部及びパッド部にゲート電極及びゲートパッドをそれぞれ形成するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Bを充足する。
この1次写真蝕刻工程時に用いられるマスクパターンは,別紙3(1)の「第1マスクパターン」のとおりである。
(イ) 構成要件C工程2において,ゲート電極及びゲートパッドの形成された基板(a)の全面に絶縁膜(e)を形成し,工程3において,絶縁膜(e)の上に,第1の非晶質シリコン膜(f)及びドーピングされた第2の非晶質シリコン膜(g)を形成するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Cを充足する。
(ウ) 構成要件D工程4において,半導体膜(第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g))を,フォトリソグラフィー工程(2次写真蝕刻)により,薄膜トランジスタ部に半導体膜パターンを形成するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Dを充足する。
この2次写真蝕刻工程時に用いられるマスクパターンは,別紙3(2)の「第2マスクパターン」のとおりである。
そして,2次写真蝕刻工程において,パッド部にも半導体膜パターンが形成され,パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の「チタン」を含む金属膜(d)の上に,半導体膜(f,g)が残される。
(エ) 構成要件E工程5において,半導体膜パターンの形成された基板(a)の全面に「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)が形成され,これらの金属膜(h,i)は本件発明1の「第3金属膜」に相当するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Eを充足する。
(オ) 構成要件F工程6において,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)を,フォトリソグラフィー工程(3次写真蝕刻)により,薄膜トランジスタ部にソース電極及びドレイン電極を形成し,工程7において,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)をマスクとして,ソース電極-ドレイン電極間に位置する第2の非晶質シリコン膜(g)を除去しているから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Fを充足する。
この3次写真蝕刻工程時に用いられるマスクパターンは,別紙3(3)の「第3マスクパターン」のとおりである。
そして,3次写真蝕刻工程において,パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の「チタン」を含む金属膜(d)の上に,半導体膜(f,g)及び第3金属膜(h,i)が残されている。
(カ) 構成要件G工程8において,ソース電極及びドレイン電極の形成された基板(a)の全面に保護膜(j)を形成するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Gを充足する。
(キ) 構成要件Ha工程9において,保護膜(j)及び絶縁膜(e)をフォトリソグラフィー工程(4次写真蝕刻)により,ドレイン電極(の端部)の表面と,ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホールを形成し,ゲートパッドより内側にオープンされるように保護膜(j)及び絶縁膜(e)を蝕刻し,工程10において,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)のうち,コンタクトホールにより露出されている部分の「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)を除去しているから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Hを充足する。
この4次写真蝕刻工程時に用いられるマスクパターンは,別紙3(4)の「第4マスクパターン」のとおりであり,パッド部に形成された保護膜(j)及び絶縁膜(e)は,同一のマスクパターンにより同一の蝕刻工程により行われ,絶縁膜(e)の除去は,パッド部に形成されたコンタクトホールの縁に残された半導体膜(f,g)をマスクとしており,絶縁膜(e)の除去に別途のフォトリソグラフィー工程が加えられているわけではない。
b被告は,イ号液晶モジュールのゲート-パッド連結部1は,接続面積が極めて小さく,導電粒子による電気的接続は期待できず,外部電極と接続される部分ではないから,構成要件Kの「パッド部」に該当せず,ゲート-パッド連結部1に形成されたコンタクトホールは,「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)にも,「前記パッド部に形成されるコンタクトホール」(構成要件K)にも該当しない旨主張する。
しかし,イ号液晶モジュールのゲート-パッド連結部1は,別紙写真1の青色部分において「ゲートパッド」と透明導電膜(「画素電極」)が電気的に連結しており,同連結部の大きさが極めて小さくとも,電気信号が伝達されることは技術常識であるから,同連結部が「パッド部」に該当することは明らかである。また,ゲート-パッド連結部1では,別紙写真1の青色部分及び赤色部分(「パッド電極」と「透明導電膜」の連結部)を覆うように広く透明導電膜が形成されており(甲4の写真9-2),「赤色」部分と「青色」部分における導電粒子の存在確率を問題とする意味はない。
したがって,被告の上記主張は失当である。
c被告は,本件発明1の「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)は,保護膜及び絶縁膜の「双方」が「ゲートパッドより内側にオープンされる」構成のものであるが,イ号液晶モジュールのゲート-パッド連結部2においては,保護膜(j)が全て除去され,ゲート-パッド連結部2の保護膜(j)はゲートパッドよりも外側まで開口されているから,ゲート-パッド連結部2に形成されたコンタクトホールは,「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)に該当しない旨主張する。
しかし,構成要件Hの「ゲートパッドより内側にオープンされるように前記保護膜及び絶縁膜を蝕刻する」との文言は,「保護膜の蝕刻領域はゲートパッドの内側である」と規定したものではなく,あくまでも,「ゲートパッドより内側にオープンされるように前記保護膜及び絶縁膜を蝕刻する」と規定したにすぎないのであり,被告が主張するような保護膜及び絶縁膜の「双方」が「ゲートパッドより内側にオープンされる」との限定解釈を行うべき理由はない。
また,イ号液晶モジュールのゲート-パッド連結部2の保護膜(j)上には,画素電極が形成されている箇所もある。
したがって,被告の上記主張は失当である。
(ク) 構成要件I工程11において,コンタクトホールの形成された基板(a)の全面に透明導電膜(k)を形成するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Iを充足する。
(ケ) 構成要件J工程12において,フォトリソグラフィー工程(5次写真蝕刻)により透明導電膜(k)を蝕刻して,ドレイン電極と接続される第1画素電極パターンと,ゲートパッドとパッド電極と接続される第2画素電極パターンとを形成するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,工程12により,構成要件Jを充足する。
この5次写真蝕刻工程時に用いられるマスクパターンは,別紙3(5)の「第5マスクパターン」のとおりである。
(コ) 構成要件K工程4の2次写真蝕刻工程において,パッド部にも半導体膜パターンが形成され,パッド部に形成されるコンタクトホール(ゲート-パッド連結部1及びゲート-パッド連結部2にそれぞれ形成されるコンタクトホール)の縁の「チタン」を含む金属膜(d)の上に,半導体膜(f,g)が残されており,また,工程6の3次写真蝕刻工程において,パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の「チタン」を含む金属膜(d)の上に,半導体膜(f,g)及び第3金属膜(h,i)が残されているから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Kを充足する。
オ 本件発明2の構成要件充足性イ号液晶モジュールの製造方法は,以下のとおり,本件発明2の構成要件AないしLをすべて充足するから,本件発明2の技術的範囲に属する。
(ア) 構成要件AないしK前記エのとおりである。
(イ) 構成要件L前記エ(ア)bのとおり,工程1において基板(a)上に積層された「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)は,「第1金属膜」に相当するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明2の構成要件L(「前記第1金属膜はアルミニウムあるいはアルミニウム合金から形成される」との構成)を充足する。
カ 本件発明3の構成要件充足性イ号液晶モジュールの製造方法は,以下のとおり,本件発明3の構成要件AないしK,Mをすべて充足するから,本件発明3の技術的範囲に属する。
(ア) 構成要件AないしK前記エのとおりである。
(イ) 構成要件M前記エ(ア)bのとおり,工程1において基板(a)上に積層された「チタン」を含む金属膜(d)は「第2金属膜」に相当するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明3の構成要件M(「前記第2金属膜は耐火金属から形成される」との構成)を充足する。
キ 本件発明4の構成要件充足性イ号液晶モジュールの製造方法は,以下のとおり,本件発明4の構成要件AないしK,Nをすべて充足するから,本件発明4の技術的範囲に属する。
(ア) 構成要件AないしK前記エのとおりである。
(イ) 構成要件N別紙2?Kに示すように,工程12により得られる第2画素電極パターンは,パッド部の保護膜(j)及び絶縁膜(e)のオープンされた部分より大きく形成されているから,イ号液晶モジュールは,本件発明4の構成要件N(「前記画素電極パターンを形成する段階は,前記画素電極パターンはパッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分より大きく形成する段階」)を充足する。
ク まとめ以上のとおり,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1ないし4の技術的範囲に属するから,被告によるイ号液晶モジュールを搭載するイ号液晶テレビの製造,販売及び販売の申出は,本件特許権の侵害に当たる。
(2) 被告の反論ア 本件発明1ないし4の構成要件充足性の主張に対しイ号液晶モジュールが原告主張の構造(前記(1)イ)を有することは,否認する。したがって,イ号液晶モジュールが原告主張の構造を有することを前提に,イ号液晶モジュールの製造方法が本件発明1ないし4の構成要件を充足するとの原告の主張は,理由がない。
また,仮にイ号液晶モジュールが原告主張の構造を有するとしても,イ号液晶モジュールの製造方法は,以下のとおり,少なくとも本件発明1の構成要件B,E,F,H及びKを満たしていないので,本件発明1の技術的範囲に属さない。したがって,イ号液晶モジュールの製造方法は,請求項1を引用する本件発明2ないし4の技術的範囲にも属さない。
(ア) 構成要件Bの非充足a本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載中の「基板上に第1金属膜及び第2金属膜を順番に積層した後,1次写真蝕刻して前記薄膜トランジスタ部及びパッド部にゲート電極及びゲートパッドをそれぞれ形成する段階」との記載(構成要件B)は,ゲート電極及びゲートパッドを形成する工程として,基板の上に最初に第1金属膜を形成し,続けて第1金属膜の上に第2金属膜を形成して2層の金属膜からなる積層構造を成膜した後,この2層の積層構造を写真蝕刻して,ゲート電極及びゲートパッドを形成することを明確に示すものであり,また,「第3金属膜」との記載(構成要件E)は,「第3金属膜」が形成される前には,「第1金属膜」及び「第2金属膜」の2層しか金属膜が形成されないことを明確に示すものである。
したがって,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明1の「ゲート電極及びゲートパッド」(構成要件B)は,2層の金属膜からなる積層構造のものに限定されると解すべきである。
また,本件明細書(甲3)の「発明の詳細な説明」においても,本件発明1の唯一の実施例について,「図11を参照すると,ゲート電極が耐火金属/アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)の二重構造から形成され,パッド部に位置するゲートパッドパターンの境界内で絶縁膜及び保護膜がオープンされるようにパターニングされる。」(段落【0049】)との記載があり,上記記載は,「ゲート電極及びゲートパッド」は「第1金属膜」及び「第2金属膜」の「二重構造」のものに限定されることを示すものである。本件明細書の段落【0016】,【0020】,【0046】,【0058】にも,これと同様の記載がある。
bそして,原告の主張によれば,イ号液晶モジュールの「ゲート電極及びゲートパッド」は,「チタン」を含む金属膜(b),「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)及び「チタン」を含む金属膜(d)の3層構造であって,2層の積層構造のものではないから,「第1金属膜」及び「第2金属膜」を備えておらず,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1の構成要件Bを充足しない。
(イ) 構成要件E,F,Kの非充足a本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載中には,「第3金属膜」について,「前記半導体膜パターンの形成された基板の全面に第3金属膜を形成する段階」(構成要件E),「前記第3金属膜を3次写真蝕刻して前記薄膜トランジスタ部にソース電極及びドレイン電極を形成する段階」(構成要件F),「・・・ソース電極及びドレイン電極を形成する段階・・・は,前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に・・・第3金属膜・・・が残る段階」(構成要件K)との記載があり,また,第3金属膜によって形成されるドレイン電極についても,ドレイン電極の表面を露出させるコンタクトホールが形成され,第1画素電極パターンと接続される旨の記載(構成要件HないしJ)がある。
そして,本件明細書(甲3)の「発明の詳細な説明」には,「パッド部に形成されるパッド電極を耐火金属/アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)の構造から形成する場合,図5に示したように‘A’部分でアルミニウムとITOとが直接接触するようになる。このようにアルミニウムとITOが接触すると,ITOをパターニングするための写真工程時に現像液による電池反応のためにITOが現像液に解けたり,LCD駆動時に駆動電流により酸化膜が形成される問題点がある。」(段落【0024】),「パッド電極を・・・アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)/耐火金属の構造から形成する場合,保護膜及び絶縁膜を蝕刻した後にパッド電極上部のアルミニウム(あるいは合金)を蝕刻すると図5の‘B’部位でアルミニウムとITOとが接触するようになる。」(段落【0025】),「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止して素子の信頼性を向上させ得る液晶表示装置の製造方法を提供すること」(段落【0029】)との記載があり,また,図5の「A」部分も「B」部分も,コンタクトホール内におけるアルミニウム膜の側面における画素電極との接触を問題としている。
他方で,本件明細書の「発明の詳細な説明」には,第3金属膜として「クロム(Cr),モリブデン(Mo)あるいはチタン(Ti)など」(段落【0043】)が記載されているだけであり,第3金属膜の材質として,これら以外の金属を選択することができる旨の記載は全くない。
以上の本件明細書の記載からすれば,本件発明1の「第3金属膜」は,ドレイン電極となり,第1画素電極パターンとコンタクトホールにおいて接続され,構成要件Kの段階(工程)で残されて第2画素電極パターンと接触する可能性のあるものであるから,第3金属膜にアルミニウムが含まれるとすると,アルミニウムとITO(「透明導電膜」に相当。以下同じ。)とが直接接触することとなり,「アルミニウムとITOとの接触を防止する」という発明の課題及び効果を得ることができない。
したがって,本件発明1の「第3金属膜」(構成要件E,F,K)の材質にはアルミニウムが含まれないと解すべきである。
bそして,原告の主張によれば,工程5において,半導体膜パターンの形成された基板(a)の全面に形成された,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)という2層構造をもって,「第3金属膜」に相当するというのであるが,本件発明1の「第3金属膜」の材質にはアルミニウムが含まれないので,上記2層構造のものは本件発明1の「第3金属膜」に該当するものではなく,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1の構成要件E,F,Kを充足しない。
(ウ) 構成要件H,Kの非充足a本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載中には,パッド部に形成されるコンタクトホールについて,「前記保護膜及び絶縁膜を4次写真蝕刻して・・・前記ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホールを形成し,前記ゲートパッドより内側にオープンされるように前記保護膜及び絶縁膜を蝕刻する段階」(構成要件H),「前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る」(構成要件K)との記載がある。
また,本件明細書の段落【0037】には,「図6を参照すると,横方向に複数のゲートライン1が形成されており,各ゲートライン1の一端には複数のゲートパッド2が設けられている。」との記載があり,図6には,画素部を取り巻くように外周部に周辺配置され,ゲートライン1の終端部に設けられた幅広の領域にゲートパッド2の符号が付されており,データライン3の終端部にはデータパッド4が設けられている。
b(a)ところで,乙8(1995年11月20日発行の「JIS工業用語大辞典第4版」)によれば,「パッド」とは「表面実装部品を搭載するためのランド」(1503頁)を意味し,「ランド」とは「部品の取付け及び接続に用いる導体パターン」(1984頁)を意味するから,結局,「パッド」とは,「表面実装部品を搭載するための取付け及び接続に用いる導体パターン」を意味する。そうすると,当業者は「パッド部」とは液晶表示装置における「パッド」が設けられる部分を指し,「ゲートパッド」とはゲート電極における「パッド」を指すと理解する。
したがって,本件発明1の「ゲートパッド」とは,ゲート電極における「表面実装部品を搭載するための取付け及び接続に用いる導体パターン」を指し,「パッド部」とは,液晶表示装置における「ゲートパッド」が設けられる部分を指すと解すべきである。
(b)原告は,本件発明1の「パッド部」とは,「ゲートパッド」と「第2画素電極パターン」との接続が行われる領域をいい,イ号液晶モジュールの「パッド部」は,ゲート-パッド連結部1及びゲート-パッド連結部2により構成されている旨主張する。
しかし,原告の主張するゲート-パッド連結部1は,極めて小さく,形式的にも実質的にも外部端子との接続に寄与していないから,「表面実装部品を搭載するための取付け及び接続に用いる導体パターン」である「ゲートパッド」が設けられている部分ということはできず,本件発明1の「パッド部」に該当しない。
すなわち,乙10(「COF出力用高精細対応異方導電フィルムアニソルムAC-4713」と題する論文)には,?@液晶表示モジュールと外部端子とは,一般的に,異方導電フィルムを利用して行われること,「異方導電フィルム(アニソルム)は,接着剤中に,金めっきプラスチック粒子やニッケル粒子などの導電粒子を均一に分散させたフィルム」であり,「導電粒子」によって液晶表示モジュールの電極と外部端子との間の電気的接続を行う機能と,接着剤によって電極間を接着しさらに隣接電極間の絶縁性を保持する機能とを同時に発現すること(25頁左欄1行〜7行),?A異方導電フィルムによる電気的接続は,接着剤中に分散した導電粒子によるものであるため,接続面積が小さいと導通不良が発生すること(26頁の図2),標準的な異方導電フィルムの導電粒子径は4μm,粒子密度は5,300個/mm であ2り,この異方導電フィルムの最小接続面積は15,000μm で2あること(26頁左欄10行〜13行)が開示されている。
これに対し原告主張のゲート-パッド連結部1は,別紙写真1に示すように,接続面積は赤色部分でわずか45μm ,青色部分2で143μm と極めて小さく,標準的な異方導電フィルムの最小2接続面積(15,000μm )に比べて100分の1以下にすぎ2ず,導電粒子による電気的接続は全く期待できない。
したがって,原告の主張するゲート-パッド連結部1は,外部電極と接続される部分ではなく,本件発明1の「パッド部」に該当せず,ゲート-パッド連結部1に形成されたコンタクトホールは,「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)にも,「前記パッド部に形成されるコンタクトホール」(構成要件K)にも該当しない。
c(a)次に,本件発明1において,「パッド部に形成されるコンタクトホール」(構成要件K)は,構成要件Hに記載のとおり,保護膜及び絶縁膜を写真蝕刻して形成され,「ゲートパッドより内側にオープンされるように前記保護膜及び絶縁膜を蝕刻する」と限定されている。この限定の記載によれば,コンタクトホールは,保護膜及び絶縁膜の「双方」がゲートパッドより内側にオープンされる構成となる。
そして,本件発明1の実施例を示す図10には,絶縁膜及び保護膜を蝕刻して画素電極とパッド電極とを連結するコンタクトホールを形成するためのマスクパターン「P2」は,パッド電極を形成するためのマスクパターン「P1」よりも内側に形成されていることが示されており,保護膜に形成される開口も,絶縁膜に形成される開口も,いずれもゲートパッドより内側に形成される態様が開示されている。また,本件明細書によれば,本件発明1において,パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の第2金属膜の上に,半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る段階は,「保護膜及び絶縁膜が蝕刻される部位におけるITO膜のステップカバレージを改善する」(段落【0049】)ためであり,かかる効果を得るためには,保護膜の上に画素電極が形成されることが前提となる。つまり,パッド部に形成されるコンタクトホールは,少なくとも保護膜の上に画素電極が形成されないと,ステップカバレージを改善させるという点において技術的に全く意味がない。
以上によれば,本件発明1の「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)は,保護膜及び絶縁膜の「双方」がゲートパッドより内側にオープンされる構成であると解すべきである。
(b)しかるに,原告主張のゲート-パッド連結部2においては,保護膜が全て除去され,ゲート-パッド連結部2の保護膜はゲートパッドよりも外側まで開口されているから,ゲート-パッド連結部2に形成されたコンタクトホールは,「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)に該当しない。
d以上のとおり,イ号液晶モジュールは,「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)及び「前記パッド部に形成されるコンタクトホール」(構成要件K)を備えていないから,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1の構成要件H,Kを充足しない。
イ まとめ以上のとおり,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1ないし4の技術的範囲に属さないから,被告によるイ号液晶テレビの製造,販売の申出及び販売が本件特許権の侵害に当たる旨の原告の主張は,理由がない。
2 争点2(本件特許権に基づく権利行使の制限の成否)(1) 被告の主張本件特許には,以下のとおり無効理由があり,特許無効審判により無効とされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定により,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない。
ア 無効理由1(未完成発明)(ア)本件発明1ないし4の技術内容は,当業者が反復実施して効果を上げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていないため,発明として未完成のものであり,特許法29条1項柱書の「発明」に該当しないから,本件特許には,同項柱書の規定に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。
(イ) 本件出願の審査経過は,以下のとおりである。
原告は,本件出願につき平成12年1月28日付け手続補正書(乙1の3)により明細書の補正をした後,平成15年1月20日付けで,上記補正後の請求項1ないし4(以下,この補正後の請求項1を「旧請求項1」という。)に係る発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないことなどを理由とする拒絶理由通知(乙1の4)を受けた。
そこで,原告は,同年4月24日付け意見書(乙1の5)を提出したが,同年9月3日付けで拒絶査定(乙1の7)を受けたため,同年12月8日,これに対する不服審判請求(乙1の8)をした。
その後,原告は,平成16年1月7日付け手続補正書(乙1の9)により旧請求項1について「前記半導体膜パターンを形成する段階及びソース電極及びドレイン電極を形成する段階のうち,少なくとも何れか一段階は,前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る段階からなる」(構成要件K)との構成を追加して現行の請求項1とすることなどを内容とする明細書の補正をするとともに,同日付け手続補正書(方式)(乙1の10)により上記不服審判請求の審判請求書の補正をした。
上記手続補正書(方式)(乙1の10)には,旧請求項1において,構成要件Kに特定したことで,「画素電極のステップカバレージが向上すると[い]う作用を有するものであります」(3頁32行〜36行)との記載がある。その後,請求項1については拒絶されることなく,本件特許権の設定登録がされた。
本件特許の上記審査経過によれば,本件発明1は,旧請求項1に構成要件Kを補正により追加して,構成要件Kに基づく「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果を主張することによって特許されたものであるから,かかる技術効果を上げることが,本件発明1において必要不可欠であることは明らかである。
(ウ)本件明細書(甲3)には,「パッド部で保護膜及び絶縁膜が同時にパターニングされる部位に半導体膜あるいはソース/ドレイン電極用の金属膜を形成すること」が,「画素電極用のITO膜のステップカバレージが向上される」という効果を得るための技術手段であることが記載されている(段落【0081】)。また,蝕刻された部分が基板とほとんど垂直に形成されるので,ステップカバレージが不良になるという従来技術における問題点の記載(段落【0027】)から,本件明細書において,「ステップカバレージを向上させる」とは,「蝕刻された部分が基板と垂直ではなくすこと」を意味すると解すべきである。
そして,乙2(書籍「半導体デバイスの信頼性技術」)において,ステップカバレージの問題について,「段差部の形状を危険なひさし形状ではなく,テーパー形状となるよう設計的に改善する必要がある」(132頁12行〜13行)と記載されているように,「垂直ではなくす」とは,蝕刻された部分をテーパー形状とすることである。
しかるに,本件明細書には,「パッド部で保護膜及び絶縁膜が同時にパターニングされる部位に半導体膜あるいはソース/ドレイン電極用の金属膜を形成すること」という技術手段を採用することによって,いかなる原理又は作用に基づいて,「蝕刻された部分をテーパー形状として,画素電極用のITO膜のステップカバレージを向上させる」という効果を得ることができるかについての記載がない。そもそも,本件発明1の実施例は,図10及び図11に示された構造だけであり,実施例に関する記載は,段落【0047】〜【0049】の3段落しかなく,これらの段落中には,具体的な構成としては,わずかに,ゲート電極が耐火金属/アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)の二重構造であること,ソース電極82a及びドレイン電極82bがクロム膜であることしか開示されていない。したがって,本件明細書の記載からは,「蝕刻された部分をテーパー形状として,画素電極用のITO膜のステップカバレージを向上させる」という効果が得られる原理又は作用を理解することができない。
なお,本件明細書の第1参考例における製造方法の記載(段落【0041】〜【0045】)が,本件発明1の実施例においても適用されると解しても,具体的な構成としては,ゲート電極及び第3金属膜を蒸着により形成すること,半導体膜の材料が非晶質シリコン膜78及び不純物のドーピングされた非晶質シリコン膜80であること,絶縁膜76及び保護膜84として窒化膜を蒸着して形成することが記載されているだけである。そして,これらの構成を参酌しても,上記効果がなぜ得られるのかについて理解することはできない。
(エ)かえって,本件出願当時の技術常識に照らすならば,「パッド部で保護膜及び絶縁膜が同時にパターニングされる部位に半導体膜あるいはソース/ドレイン電極用の金属膜を形成すること」により,蝕刻された部分が逆テーパー(ひさし)形となるため,画素電極用のITO膜のステップカバレージが悪化するものと予想される。
すなわち,本件明細書には,絶縁膜76及び保護膜84を窒化膜で形成し,半導体膜をシリコン膜で形成することが記載されているため,本件発明1の構成要件Kにおいて,半導体膜を残した場合は,絶縁膜76である窒化膜の上に,半導体膜としてシリコン膜が形成された構造となり,半導体膜を残さなかった場合は,絶縁膜76である窒化膜の上に,保護膜84である窒化膜が形成された構造となる。
一般的に窒化膜をエッチング(蝕刻)する条件では,シリコン(Si)に比べて,窒化膜(Si N )のエッチング速度が大きくなる( 34すなわち,選択比が高くなる)。乙3(書籍「集積回路プロセス技術シリーズ半導体プラズマプロセス技術」)の表3.2.2には,実用レベルでの選択比が示されているが,CF +H ガスを利用した場42合,窒化膜(Si N )とシリコン(Si)の選択比が10:1であ 34ることが示されている(220頁の同表最下行右欄)。このようにシリコン(Si)に比べて,窒化膜(Si N )のエッチング速度は1340倍も大きい。このため,本件発明1の構成要件Kにおいて,半導体膜を残した場合は,エッチング速度が大きい窒化膜の上に,エッチング速度が小さいシリコン膜が形成された構造となる。
そして,乙2には,「Alのステップカバレージが悪くなるのは,チップ上の素子表面が,1〜2μmの凹凸を有している場合に,段差によるシャドウイング効果(shadowing effect)により,段差部が均一な厚さで被覆されないためである。・・・図5.14(A)の矢印部分のアルミ配線膜でクレバス[断線のこと]が起こりやすい。このような逆テーパー形状は,CVD・・・膜形成後のHClテンパー工程のエッチングレートがNSG(non-doped-silicate glass)に比較してPSG(phospho-silicate glass)が早いために逆テーパー(ひさし)形状となる。工程改善やCVD膜の変更により,図5.14(B)のような均一なAl配線膜厚を確保することができる。」(132頁9行〜19行)との記載がある。また,乙2の図5.14(A)に示すとおり,最上層のNSG膜はエッチングレート(エッチング速度)が小さく,エッチングされ難いのに対し,その下層のPSG膜はエッチングレートが大きいため,最上層のNSG膜よりも下層のPSG膜の方が横方向に深くエッチングされてしまい,最上層のNSG膜が張り出した逆テーパー(ひさし)状となるため,その後に形成されるAl膜は,張り出したNSG膜の影になる領域では形成され難く,ステップカバレージが悪化する。なお,乙2は,アルミニウムについて記載されているが,アルミニウムではなくITO膜であっても同様に,段差が逆テーパー(ひさし)状となった場合は,ステップカバレージが悪化することは当業者にとって明らかである。したがって,半導体膜を残した場合,エッチング速度が大きい窒化膜の上に,エッチング速度が小さいシリコン膜が形成された構造となり,乙2の図5.14(A)に示されているように,上層のシリコン膜からなる半導体膜に比べて,その下層の絶縁膜である窒化膜の方が10倍もエッチング速度が大きいため,半導体膜と絶縁膜の蝕刻された部分は,垂直どころか逆テーパー(ひさし)形となる可能性が極めて高い。
他方で,半導体膜を残さなかった場合は,絶縁膜76及び保護膜84としていずれも窒化膜を利用しており,窒化膜からなる絶縁膜76及び保護膜84を蝕刻することになり,同一材料からなる絶縁膜76及び保護膜84のエッチングレートはほぼ同じであると考えられるから,段差部の上方では,下方に比べてエッチングガスに接触する機会が多いため,一般的に,蝕刻された部分は,テーパー形状となりやすい。
(オ)本件発明1が「画素電極のステップカバレージが向上する」という技術効果を上げることができないことは,乙9の実験結果からも明らかである。
(カ)以上のとおり,本件発明1の構成要件K(請求項1)を採用すると,蝕刻された部分が逆テーパー(ひさし)形となり,構成要件Kを採用しない場合に比べて,画素電極用のITO膜のステップカバレージが悪化することが予想されるので,本件発明1は,「画素電極のステップカバレージが向上する」という技術効果を上げることができないものであって,発明として未完成であり,特許法29条1項柱書の「発明」に該当しない。
そして,本件発明2ないし4(請求項2ないし4)は,いずれも請求項1を引用するものであって,上記技術効果を上げることができないものであるから,本件発明1と同様の理由により,特許法29条1項柱書の「発明」に該当しない。
イ 無効理由2(実施可能要件違反)(ア)本件明細書の「発明の詳細な説明」は,当業者が「その実施をすることができる程度に明確かつ十分に」記載されていないため,本件明細書は,平成11年法律第160号による改正前の特許法36条4項(以下,単に「特許法36条4項」という。)に規定する要件(いわゆる実施可能要件)を満たしておらず,本件特許は,同項の要件を満たしていない特許出願に対してされた無効理由(平成14年法律第24号附則2条1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法による改正前の特許法123条1項4号(以下,単に「特許法123条1項4号」という。))がある。
(イ)前記ア(ウ)のとおり,本件明細書には,本件発明1ないし4は,「パッド部で保護膜及び絶縁膜が同時にパターニングされる部位に半導体膜あるいはソース/ドレイン電極用の金属膜を形成すること」によって,蝕刻された部分をテーパー形状にして,画素電極用のITO膜のステップカバレージを向上させるという効果が得られると記載されているのであるから(段落【0081】),画素電極用のITO膜のステップカバレージを向上させるための手段として,蝕刻された部分をテーパー形状にする蝕刻条件等についての技術的事項が,発明の詳細な説明において,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている必要がある。
しかし,前記ア(ウ)のとおり,本件発明1の実施例は,図10及び図11に示された構造だけであり,実施例に関する記載は,段落【0047】〜【0049】の3段落しか存在せず,具体的な製造方法はほとんど記載されていない。また,第1参考例における製造方法の記載(段落【0041】〜【0045】)が,本件発明1の実施例においても適用されると解しても,一部の構造しか具体的に記載されていない。このように本件明細書には,具体的な成膜条件,蝕刻条件等の製造方法は,全く開示されておらず,本件明細書の記載によっては本件発明1ないし4を具体的に実施することができない。
さらに,本件発明1(請求項1)は,構成要件Kにおいて「半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つ」の膜が「パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の第2金属膜の上」に残るという条件を特定しているが,本件明細書では,「コンタクトホールの縁」という条件について,その定義がされていない。
(ウ)以上のとおり,本件明細書の「発明の詳細な説明」の記載は,当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから,本件明細書は,特許法36条4項に適合しない。
ウ 無効理由3(サポート要件違反・明確性要件違反)(ア)本件発明1ないし4の特許請求の範囲(請求項1ないし4)の記載は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」(平成14年法律第24号による改正前の特許法36条6項(以下,単に「特許法36条6項」という。)1号)の要件(いわゆるサポート要件)に適合せず,また,不明瞭なものであって,「特許を受けようとする発明が明確であること」(同項2号)の要件(いわゆる明確性要件)に適合しないから,本件特許は,同項1号,2号の要件を満たしていない特許出願に対してされた無効理由(特許法123条1項4号)がある。
(イ)a本件発明1は,液晶表示装置の製造方法に関するものであり,その特許請求の範囲(請求項1)では,構成要件BないしJにおいて時系列に各製造工程の段階を特定しているところ,構成要件Kの段階で残した膜(「半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つ」)について,それ以外の構成要件に記載されていないため,請求項1の記載からは,構成要件Kと構成要件H及び構成要件Iとの関連が不明確である。
換言すれば,請求項1の記載によれば,本件発明1は,構成要件Kの段階で残した膜が,構成要件Hや構成要件Iの各段階と全く関連しない構成,例えば構成要件Hや構成要件Iに至る前に除去される構成も含むこととなり,請求項1の記載において特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。
b本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,第1ないし第3金属膜の材質が特定されていないので,本件発明1では,第1ないし第3金属膜の材質としてあらゆる金属を選択することができることとなる。しかし,本件明細書の「発明の詳細な説明」には,第1金属膜として「アルミニウムあるいはアルミニウム合金」(段落【0041】,【0049】),第2金属膜として「耐火金属」(段落【0041】,【0049】)及び第3金属膜として「クロム(Cr),モリブデン(Mo)あるいはチタン(Ti)など」(段落【0043】)が記載されているだけであり,第1ないし第3金属膜の材質として,これら以外の金属を選択することができる旨の記載は全くない。
したがって,本件明細書においては,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。
c本件明細書には,発明の解決すべき課題として,「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止して素子の信頼性を向上させ得る液晶表示装置の製造方法を提供すること」(段落【0029】)との記載があるから,本件発明は,構成要件Kに基づく「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果とは別に,上記課題を解決するため,構成要件AないしJに基づいて「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止する」という効果も得られるものでなければならない。
しかるに,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)では,前記bのとおり,第3金属膜の材質を特定していないため,第3金属膜としてアルミニウムが選択された場合,構成要件Kにおいて,第3金属膜を残すと,ITOとアルミニウムとが接触する構造となるが,このような構造では,「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止する」という発明の課題及び効果と矛盾することとなる。このように請求項1は,「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止する」という発明の課題及び効果と矛盾する構造を包含するものであり,発明として明確なものとはいえない。
また,本件発明2ないし4の特許請求の範囲(請求項2ないし4)においても,第3金属膜の材質を特定していないため,上記と同様に,発明として明確なものとはいえない。
d本件発明1ないし3の特許請求の範囲(請求項1ないし3)では,「第2画素電極パターン」の大きさを限定していないのに対し,本件発明4の特許請求の範囲(請求項4)において,「[第2]画素電極パターンは前記パッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分より大きく形成する」こととの限定がされていることからすると,何ら限定のない請求項1ないし3は,第2画素電極パターンがパッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分より小さく形成する構造を含むこととなる。
しかし,かかる構造は,画素電極パターンが,オープンされた部分の内側だけに形成され,コンタクトホールの段差を覆っていないため,「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果を利用しないものであり,このように請求項1ないし3は,「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果を利用しない構造も含むものであり,発明として明確なものとはいえない。
(ウ)以上のとおり,本件発明1ないし4の特許請求の範囲(請求項1ないし4)の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないか,不明瞭なものであるから,特許法36条6項1号,2号に適合しない。
エ 無効理由4(進歩性の欠如)(ア)本件発明1ないし4は,本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平5-165059号公報(乙4)に記載された発明(以下「乙4記載発明」という。),米国特許第5166086号公報(乙5)に記載された発明(以下「乙5記載発明」という。)及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。
(イ)本件発明1の進歩性の欠如?@(乙4を主たる刊行物とするもの)a本件発明1と乙4記載発明との対比特開平5-165059号公報(乙4)の段落【0032】,【0046】ないし【0049】,【0057】ないし【0060】,図2(f),(h)及び図3を総合すると,乙4記載の「薄膜トランジスタ部分」,「ゲートライン端子部GLa」,「アクティブマトリックス液晶表示素子に用いるTFTパネル」,「ゲート用金属膜11」,「下層膜11」,「ゲート絶縁膜12」,「i型半導体層13およびn型半導体層14」,「トランジスタ素子領域の外形」,「ソース,ドレイン用金属膜16」,「保護絶縁膜17」,「コンタクト孔17a,開口17a及び開口12a」,「画素電極20」及び「上層膜」は,本件発明1の「薄膜トランジスタ部」,「パッド部」,「液晶表示装置」,「第1金属膜及び第2金属膜」,「ゲートパッド」,「絶縁膜」,「半導体膜」,「半導体膜パターン」,「第3金属膜」,「保護膜」,「コンタクトホール」,「第1画素電極パターン」及び「第2画素電極パターン」にそれぞれ相当するというべきである。
したがって,本件発明1と乙4記載発明とは,以下の相違点1,2においてのみ相違し,その余の点は一致している。
(相違点1)本件発明1は,構成要件Bにおいて,第1金属膜及び第2金属膜を順番に積層しているのに対し,乙4には,ゲート用金属膜11の材質として「AlまたはAl合金等」(段落【0037】)としか記載されていない点。
(相違点2)乙4には,本件発明1の構成要件Kが開示されていない点。
b相違点1に係る本件発明1の構成の容易想到性乙6(平成6年3月1日発行の書籍「ディスプレイ技術シリーズカラー液晶ディスプレイ」)には,「ゲート電極材料にはCrとTa系金属が使われることが多い。・・・ただTaは比抵抗が大きいため,LCDが大きくなるほどゲート配線遅延によって画質が低下する。これを改善するため,AlやCuなどをTa配線に積層して形成し低抵抗化する研究が進んでいる。」(157頁16行〜21行)との記載がある。
また,特開平6-281954号公報(乙7)には,「アルミを単独で使用した場合,ゲート絶縁膜は基板温度が300℃以上で形成されるため,基板との熱膨脹率の差に起因すると考えられる熱応力によりアルミヒロックが発生し,層間絶縁性が著しく損なわれる。このようにアルミをアドレス配線電極として使用するには,高融点金属で完全に被覆する積層構造が必要である」(段落【0007】),「アドレス配線電極[ゲート配線電極]・・・は基板上に形成されたAlまたはAl合金からなる第1の金属とこの第1の金属の上に積層された高融点金属およびその合金,例えばTaまたはTa合金からなる第2の金属とからなり,前記第1の金属の前記データ配線電極に平行な方向の幅は前記第2の金属の幅よりも大きい液晶表示装置」(段落【0008】),「プラズマCVD法によりガラス基板21上にSiOxを成膜する。この上に,スパッタ法により,Al膜22およびMoとTaとの合金膜23をそれぞれ100nmおよび200nmの膜厚に連続的に堆積させる。このとき,Al膜はAl合金,例えば,Cu1原子%,Si0.5原子%を含むAl合金膜でも可能である。」(段落【0014】)との記載がある。
乙6,7の上記記載によれば,液晶表示装置の技術分野において,低抵抗化のため又はアルミのヒロックを防止するために,「ゲート電極材料として,第1の金属及び第2の金属を積層させて形成すること」及び「第1の金属としてAl膜又はAl合金を使用し,第2の金属としてTa等の高融点金属を使用すること」は,本件出願の優先権主張日当時,周知であったというべきである。
したがって,当業者であれば,乙4記載発明において,上記周知技術を適用して,ゲート用金属膜11として,第1の金属及び第2の金属を積層させて形成し,それらをフォトリソグラフィ法によりパターニングしてゲート電極G及び下層膜11をそれぞれ形成すること(相違点1に係る本件発明1の構成)は容易に想到することができたものである。
c相違点2に係る本件発明1の構成の容易想到性米国特許第5166086号公報(乙5)の図7b,7cから,「工程4」(図7b)における半導体層5のエッチングによって,ゲート電極2上とゲート端子3上の2箇所にそれぞれ半導体層5のパターンが形成され,ゲート端子3上の半導体層5のパターンが,ゲート端子を露出させる開口(図7c参照)の周囲に残っていることを確認することができるから,乙5には,相違点2に係る本件発明1の構成(構成要件Kに相当する構成)が開示されている。
ところで,一般的に液晶表示装置に使用される薄膜トランジスタとして,チャネルの上にチャネル保護膜を形成してチャネル領域を保護するチャネル保護膜型と,n型半導体層をエッチングしてチャネル領域を形成するチャネルエッチ型とが知られている。乙4で製造されるTFT(薄膜トランジスタ)は,チャネル領域にチャネル保護膜を形成しない点において,チャネルエッチ型に類似する構造であるが,乙5で製造されるTFTは,チャネルの上に保護絶縁層6を形成するチャネル保護膜型である。
乙4には,従来技術の欄において,i型半導体層4の「チャンネル領域」の上にSiN等からなる「ブロッキング層8」が形成されるチャネル保護膜型のTFT(段落【0008】)を製造する[工程1]ないし[工程11](段落【0010】〜【0023】)の記載がある。また,乙4には,「i型半導体層5のチャンネル領域の上にゲート絶縁膜4と同系の絶縁材(SiN等)からなるブロッキング層8を設けているため,薄膜トランジスタ3の製造工程において上記ブロッキング層8をパターニングする際に,i型半導体層5の下のゲート絶縁膜4にピンホール等の欠陥を発生させてしまうことがあった。」(段落【0024】),「本発明の目的は,i型半導体層の上にブロッキング層を設けることなく,しかもi型半導体層のチャンネル領域にダメージを与えることなくn型半導体層を電気的に分離して,層間短絡のない薄膜トランジスタを歩留よく製造することができる薄膜トランジスタの製造方法を提供することにある。」(段落【0029】)との記載があり,上記記載は,チャネル保護膜型のTFTに対し,乙4の製造方法を適用することを示唆している。また,乙4の従来技術において記載されたチャネル保護膜型のTFTの製造工程1〜7(段落【0011】〜【0018】)は,乙5記載のチャネル保護膜型の製造工程とほぼ同じである。
そして,乙4と乙5は,いずれも液晶表示装置の製造方法に関するもので,同一の技術分野に属するものであるところ,液晶表示装置の製造方法において,各膜のパターン形状を変更することは,マスクを変更することによって容易に実施できるものであり,公知のパターンを採用することは当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。
したがって,当業者であれば,乙4記載の「i型半導体層13およびn型半導体層14をフォトリソグラフィ法によって,トランジスタ素子領域の外形にパターニングする工程」において,乙5に開示された「半導体膜5のパターンを形成する工程において,ゲート端子3を露出させる開口の周囲のゲート絶縁膜4の上に,半導体層5を残す」という膜パターンを採用して,ゲートライン端子部GLaの下層膜11の上に,i型半導体層13及びn型半導体層14を残すこと(相違点2に係る本件発明1の構成)は容易に想到することができたものである。
d小括以上によれば,本件発明1は,乙4記載発明と周知技術及び乙5に基づいて,当業者が容易に想到することができたものである。
(ウ)本件発明1の進歩性の欠如?A(乙5を主たる刊行物とするもの)a本件発明1と乙5記載発明との対比?@米国特許第5166086号公報(乙5)の各記載(1欄14行〜17行,2欄20行〜24行,2欄53行〜3欄5行,3欄65行〜68行,4欄22〜67行,図6ないし10),?A前記(イ)cのとおり,乙5には,「工程4」(図7b)における半導体層5のエッチングによって,ゲート電極2上とゲート端子3上の2箇所にそれぞれ半導体層5のパターンが形成され,ゲート端子3上の半導体層5のパターンは,ゲート端子を露出させる開口(図7c参照)の周囲に残っている構成が開示されていることを総合すると,乙5記載の「薄膜トランジスタが形成される領域」,「ゲート端子3が形成される領域」,「アクティブマトリクス型液晶表示装置の薄膜トランジスタアレイ」,「ゲート端子3」,「ゲート絶縁膜4」,「半導体層5」,「半導体層5のパターン」,「バリア金属層8並びにソース及びドレイン金属層」,「透明導電膜」,「透明画素電極10」は,本件発明1の「薄膜トランジスタ部」,「パッド部」,「液晶表示装置」,「ゲートパッド」,「絶縁膜」,「半導体膜」,「半導体膜パターン」,「第3金属膜」,「透明導電膜」,「第1画素電極パターン」にそれぞれ相当するというべきである。
したがって,本件発明1と乙5記載発明とは,以下の相違点イないしハにおいてのみ相違し,その余の点は一致している。
(相違点イ)本件発明1では,構成要件Bにおいて,第1金属膜及び第2金属膜を順番に積層しているのに対し,乙5には,金属膜の材質について記載されていない点。
(相違点ロ)本件発明1では,構成要件Gにおいて,保護膜が形成され,構成要件Hにおいて,前記保護膜及び絶縁膜を写真蝕刻してコンタクトホールを形成しているのに対し,乙5では,保護膜が形成されず,ゲート絶縁膜4を除去してゲート端子3の開口を形成している点。
(相違点ハ)本件発明1では,構成要件Jにおいて,ゲートパッドと接続される第2画素電極パターンを形成するのに対し,乙5では,ゲート端子3と透明導電膜とが接触しない点。
b相違点イに係る本件発明1の構成の容易想到性相違点イは,乙4記載発明と本件発明1との相違点1と同じ内容であるところ,前記(イ)bのとおり,本件出願の優先権主張日当時,「ゲート電極材料として,第1の金属及び第2の金属を積層させて形成すること」は周知であったから,当業者であれば,乙5記載発明において,金属膜として,「第1の金属」及び「第2の金属」を積層させて形成し,それらをパターニングしてゲート電極2及びゲート端子3をそれぞれ形成すること(相違点イに係る本件発明1の構成)は容易に想到することができたものである。
c相違点ロ,ハに係る本件発明1の構成の容易想到性乙4には,相違点ロに係る本件発明1の構成(「構成要件Gにおいて,保護膜が形成され,構成要件Hにおいて,前記保護膜及び絶縁膜を写真蝕刻してコンタクトホールを形成している」構成)及び相違点ハに係る本件発明1の構成(「構成要件Jにおいて,ゲートパッドと接続される第2画素電極パターンを形成する」構成)がいずれも開示されている。
そして,前記(イ)cのとおり,乙4には,チャネル保護膜型のTFTに対し,乙4の製造方法を適用する示唆が存在するから,当業者であれば,乙5記載のチャネル保護膜型のTFTを製造するために,乙4の示唆に従って,相違点ロ,ハに係る本件発明1の構成を適用することは容易に想到することができたものである。
d小括以上によれば,本件発明1は,乙5記載発明と周知技術及び乙4に基づいて,当業者が容易に想到することができたものである。
(エ) 本件発明2ないし4の進歩性の欠如本件発明2の構成要件L,本件発明3の構成要件M及び本件発明4の構成要件Nは,乙4に記載されているか,あるいは周知技術であるので,本件発明2ないし4も,乙4,5及び周知技術に基づいて,当業者が容易に想到することができたものである。
(2) 原告の反論ア 無効理由1(未完成発明)に対し(ア)本件明細書の段落【0049】には,「パッド部の保護膜及び絶縁膜が蝕刻される部位の絶縁膜上にステップカバレージを改善するための第1物質層88が形成されている。前記第1物質層88は半導体膜をパターニングする時,保護膜及び絶縁膜が蝕刻される境界部位に半導体膜が残るようにパターニングしたり,ソース電極82a及びドレイン電極82bをパターニングする時,クロム膜が残るようにパターニングすることにより形成される。従って,別途の写真工程を加えなくても画素電極用のITOのステップカバレージを向上させ得る。」との記載があり,本件発明1の構成要件Kは,上記記載に基づいて,「前記半導体膜パターンを形成する段階及びソース電極及びドレイン電極を形成する段階のうち,少なくとも何れか一段階は,前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る段階からなる」と規定されているものである。
そして,当業者が本件明細書の上記記載に接すれば,構成要件Kの技術的意義を理解することが十分可能である。しかも,「前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る」構成とすることにより,「別途の写真工程を加えなくても画素電極用のITOのステップカバレージを向上させ得る」こととなるのであるから,本件発明1ないし4の技術内容は,当業者が反復実施して効果を上げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていることは明らかである。
(イ)被告が根拠として挙げる乙2の図5.14(A)では,上側NSG膜及びその下のPSG膜の部分が「逆テーパー形状」となっているが,下側NSG膜及び熱酸化膜の部分においては「テーパー形状」となっている。
また,被告が本来問題とすべき構造は,窒化膜(絶縁膜)の上にシリコン膜(半導体膜)が形成される構造であるべきところ,NSG膜とPSG膜は何れも絶縁膜であって半導体膜ではない。
さらに,被告は,「パッド部で保護膜及び絶縁膜が同時にパターニングされる部位に半導体膜あるいはソース/ドレイン電極用の金属膜を形成すること」により,蝕刻された部分が逆テーパー(ひさし)形となるため,画素電極用のITO膜のステップカバレージが悪化するものと予想されると主張するが,上記主張は,被告が独自に試みた定性的段差部形状評価の結果に基づくものにすぎない。乙2にも,膜の積層構造を同じくする図5.14(A)と図5.14(B)を比較して,「工程改善やCVD膜の変更により,図5.14(B)のような均一なAl配線膜厚を確保することができる。」(132頁18行〜19行)との記載があることに照らすならば,当業者であればなし得るであろう「工程改善」の余地等について何ら配慮することなくされた定性的段差部形状評価は,本件発明1ないし4が発明として未完成であることの客観的根拠たり得ない。
さらに,イ号液晶モジュールにおいても,絶縁膜と保護膜のエッチングは同一工程(工程9)で行われているが,被告が提出した実験結果(乙9)のような逆テーパー形状となっていない。
(ウ)以上のとおり,本件発明1ないし4の技術内容は,当業者が反復実施して効果を上げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていないため,特許法29条1項柱書の「発明」に該当しないとの被告の主張は,失当である。
イ 無効理由2(実施可能要件違反)に対し(ア)被告は,本件明細書には,具体的な成膜条件,蝕刻条件等の製造方法は,全く開示されておらず,明細書の記載によっては本件発明1ないし4を具体的に実施することができない旨主張する。
しかし,前記ア(イ)のとおり,乙2にも,膜の積層構造を同じくする図5.14(A)と図5.14(B)を比較して,「工程改善やCVD膜の変更により,図5.14(B)のような均一なAl配線膜厚を確保することができる。」(132頁18行〜19行)との記載があるように,半導体プロセス技術分野における技術的進歩に鑑みれば,この程度の「工程改善」は,当業者にとっては容易に実施できる程度の事項でしかない。
(イ)被告は,請求項1において唯一特定した「コンタクトホールの縁」という条件についても,その定義がされておらず,本件明細書の「発明の詳細な説明」において,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張する。
しかし,本件明細書の段落【0049】には,「図11を参照すると,・・・パッド部の保護膜及び絶縁膜が蝕刻される部位の絶縁膜上にステップカバレージを改善するための第1物質層88が形成されている。前記第1物質層88は半導体膜をパターニングする時,保護膜及び絶縁膜が蝕刻される境界部位に半導体膜が残るようにパターニングしたり,ソース電極82a及びドレイン電極82bをパターニングする時,クロム膜が残るようにパターニングすることにより形成される。従って,別途の写真工程を加えなくても画素電極用のITOのステップカバレージを向上させ得る。」などと記載されており,構成要件Kにおける「コンタクトホールの縁」がパッド部の保護膜及び絶縁膜が蝕刻される部位(境界部位)を意味する程度のことは,本件明細書に接した当業者にとって容易に理解され得る事項である。
(ウ)以上のとおり,本件明細書は,特許法36条4項に適合しないとの被告の主張は,失当である。
ウ 無効理由3(サポート要件違反・明確性要件違反)に対し(ア)被告は,請求項1の記載によれば,本件発明1は,構成要件Kで残した膜が,構成要件Hや構成要件Iの各段階と全く関連しない構成,例えば構成要件Hや構成要件Iに至る前に除去される構成も含むこととなり,請求項1の記載において特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない旨主張する。
しかし,発明を特定するための事項の意味内容の解釈に当たっては,特許請求の範囲の記載のみでなく,明細書及び図面の記載並びに特許出願時の技術常識をも考慮されるものであるところ,本件明細書に接した当業者であれば,特許請求の範囲(請求項1)の記載から本件発明1を明確に把握することが可能であることは明らかであり,本件発明1が「例えば構成要件Hや構成要件Iに至る前に除去される構成」でもあり得るなどと理解する当業者を想定することそのものに何ら意味はない。
(イ)被告は,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,第1ないし第3金属膜の材質が特定されていないので,第3金属膜としてアルミニウムが選択された場合,構成要件Kにおいて,第3金属膜を残すと,ITOとアルミニウムとが接触する構造となるが,このような構造では,「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止する」という発明の課題及び効果と矛盾することとなり,請求項1は,「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止する」という発明の課題及び効果と矛盾する構造を包含するものであり,発明として明確なものとはいえない旨主張する。
しかし,当業者であれば,「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止する」発明において,第2画素電極パターンと接触する部分のゲートパッドをアルミニウムとしたり,構成要件KにおいてITOと接触するような態様の第3金属膜としてアルミニウムを選択するなどということが技術的に無意味な選択であることは容易に理解し得る事項である。
(ウ)被告は,本件発明1ないし3の特許請求の範囲(請求項1ないし3)では,「第2画素電極パターン」の大きさが特定されておらず,第2画素電極パターンがパッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分より小さく形成する構造を含むこととなるから,「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果を利用しない構造も含むものであり,発明として明確なものとはいえない旨主張する。
しかし,本件明細書には,「画素電極は前記保護膜及び絶縁膜の蝕刻された部分より大きく形成されるので,ITOにより第2金属膜が保護され得る」(段落【0039】),「なお,パッド部に形成される画素電極を前記保護膜及び絶縁膜がオープンされる部位より大きく形成されるようにパターニングすることにより,第2金属膜はITO膜により保護される」(段落【0046】)との記載があり,これらの記載に照らせば,本件発明4(請求項4)の「前記画素電極パターンは前記パッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分より大きく形成する段階からなる」との要件は,第2金属膜をITOにより保護する旨を規定したものであることは明らかであり,「前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る」構成(構成要件K)とすることによってITO膜形成時に当該領域におけるステップカバレージが向上することとは,技術的思想としては区別して観念される。
加えて,ゲートパッドと電気的に接続する第2画素電極パターンは外部のデバイスや配線と接続される電極としても機能するのであるから,当該第2画素電極パターンを外部デバイス等と接続可能な程度の大きさとすることは当業者であれば当然に理解し,設計する事項である。
(エ)以上によれば,本件発明1ないし4の特許請求の範囲(請求項1ないし4)の記載は,特許法36条6項1号,2号に適合しないとの被告の主張は,失当である。
エ 無効理由4(進歩性の欠如)に対し(ア)本件発明1の進歩性の欠如?@(乙4を主たる刊行物とするもの)に対し被告は,乙4記載の「i型半導体層13およびn型半導体層14をフォトリソグラフィ法によって,トランジスタ素子領域の外形にパターニングする工程」において,乙5に開示された「半導体膜5のパターンを形成する工程においてゲート端子を露出させる開口の周囲のゲート端子3の上に,半導体層5を残す」という膜パターンを採用して,ゲートライン端子部GLaの下層膜11の上に,i型半導体層13及びn型半導体層14を残すことは,当業者が容易に想到することができた旨主張する。
しかし,被告の主張は,以下のとおり理由がない。
a乙5を精査しても,ゲート端子3領域についての記載はほとんど認められず,わずかに,「ゲート端子3の上の部分のゲート絶縁膜4を除去する」工程(工程5)が図7c(及び図2g)に図示されているにすぎず,図中に示されたゲート端子3上の半導体層5がどのような目的で設けられ,いかなる役割を果たすこととなるのか,また,半導体層5をどのようなマスクワークにより形成するのかさえ,全く不明である。乙5には,「写真工程の数」(マスクワーク数)を減らすことを前提とした上で,構成要件Kにより画素電極用のITOのステップカバレージを向上させ得ることとした本件発明1の技術的思想(本件明細書の段落【0049】)は,一切開示されていない。
bまた,本件発明1では,コンタクトホールの縁の半導体膜部分又は第3金属膜部分は,半導体膜パターンを形成する段階又はソース・ドレイン電極を形成する段階において残され,保護膜を形成する段階は,半導体膜パターンを形成する段階及びソース・ドレイン電極を形成する段階の後に設けられているのに対し,乙5では,「ゲート端子3を露出させる開口の周囲」の半導体層5の部分は,保護絶縁層6を形成した後であって,かつ,ソース及びドレイン電極(9a,9b)を形成する前に「残される」ものである。つまり,乙5の半導体層5は,保護絶縁層6を形成する以前にはパターニングされることはなく,半導体膜5のパターンは保護絶縁層6の形成前には活性領域にもパッド領域にも存在しない。
このような乙5に,たまたま,「工程4(図7b)における半導体層5のエッチングによって,ゲート電極2上とゲート端子3上の2箇所にそれぞれ半導体層5のパターンが形成され,ゲート端子3上のパターンが,ゲート端子を露出させる開口(図7c参照)の周囲に残ることが示されて」いるからといって,乙5において,本件発明1の構成要件Kに相当する構成が開示されていると結論付けることはできない。
そもそも,乙5では,ゲート端子3上の半導体層5は,ゲート端子3を露出させるために絶縁膜4を除去するためのマスクとして保護絶縁層6を用いることとした結果,たまたま当該保護絶縁層6の下にある半導体層5が残ることとなったという程度のものでしかなく,しかも,乙5の図2dを参照すると,ゲート電極2の直上には,ゲート絶縁膜4及び半導体層5が設けられ,不純物が添加された半導体層7は,保護絶縁層6を介して,半導体層5上に形成されているのであるから,当該保護絶縁層6は,乙4において「ブロッキング層」(段落【0024】)とされているものに対応付けられるべき層である。
そして,乙4記載発明は,「従来の薄膜トランジスタ3は,i型半導体層5のチャンネル領域の上にゲート絶縁膜4と同系の絶縁材(SiN等)からなるブロッキング層8を設けているため,薄膜トランジスタ3の製造工程において上記ブロッキング層8をパターニングする際に,i型半導体層5の下のゲート絶縁膜4にピンホール等の欠陥を発生させてしまうことがあった」ため(乙4の段落【0024】),このような不都合をもたらす「ブロッキング層8」を必要とすることなく薄膜トランジスタを製造することを目的とするものであるから(段落【0029】),乙4と乙5とを組み合わせることには阻害要因があるというべきである。
c以上のとおり,相違点2に係る本件発明1の構成は,乙4と乙5とを組み合わせることにより容易に想到することができる旨の被告の主張は,失当である。
(イ)本件発明1の進歩性の欠如?A(乙5を主たる刊行物とするもの)に対し被告は,乙4には,チャネル保護膜型のTFTに対し,乙4の製造方法を適用する示唆が存在することを前提に,本件発明1は,乙5と乙4とを組み合わせることにより当業者が容易に想到することができた旨主張する。
しかし,前記(ア)aのとおり,乙5記載発明は,マスクワーク数を減らすことを目的としたものでも,画素電極用のITOのステップカバレージを向上させ得ることを目的としたものでもなく,乙5の図中に示されているゲート端子3上の半導体層5がどのような目的で設けられ,いかなる役割を果たすこととなるのか,半導体層5をどのようなマスクワークにより形成するのかも全く不明なのであって,本件発明1に関連する技術的思想は一切,開示も示唆もされていない。
加えて,乙5を乙4と組み合わせることには,阻害要因があることは,前記(ア)bのとおりである。
したがって,被告の上記主張は,理由がない。
(ウ) 小括以上によれば,本件発明1は,乙4,5及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたとの被告の主張は,理由がない。
したがって,本件発明1(請求項1)を引用する本件発明2ないし4(請求項2ないし4)の進歩性の欠如をいう被告の主張も理由がない。
当裁判所の判断
1争点1(イ号液晶モジュールの製造方法の本件発明1ないし4の技術的範囲の属否)について(1) イ号液晶モジュールの構造及び製造方法ア イ号液晶モジュールの構造証拠(甲4ないし6)及び弁論の全趣旨を総合すれば,イ号液晶モジュールは,次のような構造を有することが認められ,これに反する証拠はない。
(ア)イ号液晶テレビに搭載されたイ号液晶モジュールは,液晶パネル(以下「イ号液晶パネル」という。)及びバックライトユニット等が金属ベゼルによって一体化されて構成されている。イ号液晶パネルの周辺部(端部)には,半導体チップが搭載されたCOF(Chip On Film)が複数接続されている(甲4の写真3-3,4-1,4-2)。
イ号液晶パネルの上側に設けられたCOFはプリント基板(PCB)に接続され,当該PCBはイ号液晶テレビ内に設けられた回路基板に接続されている。
(イ)イ号液晶モジュールは,基板(a)の画素領域に,別紙1(1),(2)のような,ソース,ドレイン,ゲートにより構成される薄膜トランジスタ(TFT),ドレイン電極の一部と透明導電膜が当接するコンタクトホールが形成された領域(原告主張の「薄膜トランジスタ部」)と,画素領域外(基板の周辺)の領域に,別紙1(3)のような構造の領域(原告主張の「ゲート-パッド連結部1」)及び別紙1(4)のような構造の領域(原告主張の「ゲート-パッド連結部2」)とを有する。
(ウ)イ号液晶モジュールの「薄膜トランジスタ部」(TFT部)では,別紙1(1)のように,基板(a)の上に,「チタン」を含む金属膜(b),「アルミニウム」を含む金属膜(c),「チタン」を含む金属膜(d)が基板側からこの順番で積層され,パターニングされてゲート電極を形成している。
ゲート電極の上には,絶縁膜(e),第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)がこの順番で積層され,第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)がパターニングされて半導体膜パターン(f,g)を形成している。
そして,パターニングされた第2の非晶質シリコン膜(g)の上に,「チタン」を含む金属膜(h)と「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)がこの順番で積層され,これらの金属膜(h,i)がパターニングされてソース電極及びドレイン電極を形成している。上記パターニングされた第2の非晶質シリコン膜(g)全体の下部表面は,第1の非晶質シリコン膜(f)の表面と当接している。また,ソース電極とドレイン電極との間では,第2の非晶質シリコン膜(g)が除去されて第1の非晶質シリコン膜(f)の表面が露出するチャネル領域が形成されている。
ソース電極,ドレイン電極,上記チャネル領域及び絶縁膜(e)(一部)の上には,保護膜(j)が積層され,パターニングされて保護膜(j)パターンを形成している。この保護膜(j)パターンは,上記チャネル領域に位置する第1の非晶質シリコン膜(f)パターンの上面と接触している。
一方で,保護膜(j)の上記パターニングにより,別紙1(2)のように,ドレイン電極の一部を露出させるコンタクトホールが形成されている。
そして,別紙1(2)のように,上記コンタクトホール,ソース電極,ドレイン電極及び保護膜(j)パターンの上に,ITO(Indium TinOxide)により組成される透明導電膜(k)が積層され,この透明導電膜(k)は,パターニングされてドレイン電極のうち「チタン」を含む金属膜(h)と接する画素電極パターンを形成している。なお,ドレイン電極のうち,「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)の上には保護膜(j)パターンが形成されており,透明導電膜(k)とは接していない。
(エ)aイ号液晶モジュールの「ゲート-パッド連結部1」及び「ゲート-パッド連結部2」では,別紙1(3),(4)のように,基板(a)の上に,「チタン」を含む金属膜(b),「アルミニウム」を含む金属膜(c),「チタン」を含む金属膜(d)が基板側からこの順番に積層され,パターニングされてゲートパッドを形成している。
ゲートパッドの上に,絶縁膜(e)が積層され,絶縁膜(e)のパターニングによりゲートパッドの表面を一部露出させるコンタクトホールが別紙1(3),(4)のようにそれぞれ形成されている。このパターニングされた絶縁膜(e)の上に,第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)がこの順番で積層され,さらに第2の非晶質シリコン膜(g)の上には,「チタン」を含む金属膜(h)がこの順番に積層され,積層された各膜(f,g,h)は,いずれもパターニングされている。
bイ号液晶モジュールの「ゲート-パッド連結部1」では,別紙1(3)のように,パターニングされた保護膜(j)が,「チタン」を含む金属膜(h)の一部を露出するように積層されており,また,前記aのコンタクトホールの縁の「チタン」を含む金属膜(d)の上には,絶縁膜(e),第1及び第2の非晶質シリコン膜(f,g),「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)が残存している。
そして,上記コンタクトホール,上記残存する絶縁膜(e),第1及び第2の非晶質シリコン膜(f,g),「チタン」を含む金属膜(h)及び保護膜(j)パターンの上に,ITOにより組成される透明導電膜(k)が積層され,この透明導電膜(k)は,「チタン」を含む金属膜(h)及び絶縁膜(e)の開口部においてゲートパッドを構成する「チタン」を含む金属膜(d)とそれぞれ接する画素電極パターンを形成している。なお,「チタン」を含む金属膜(h)の上に積層された「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)上には保護膜(j)パターンが形成されており,透明導電膜(k)とは接していない。
cイ号液晶モジュールの「ゲート-パッド連結部2」では,別紙1(4)のように,前記aのコンタクトホールの縁の「チタン」を含む金属膜(d)の上には,絶縁膜(e),第1及び第2の非晶質シリコン膜(f,g)及び「チタン」を含む金属膜(h)が残存している。
そして,上記コンタクトホール,上記残存する絶縁膜(e),第1及び第2の非晶質シリコン膜(f,g),「チタン」を含む金属膜(h)の上に,ITOにより組成される透明導電膜(k)が積層され,この透明導電膜(k)は,「チタン」を含む金属膜(h)及び絶縁膜(e)の開口部においてゲートパッドを構成する「チタン」を含む金属膜(d)とそれぞれ接する画素電極パターンを形成している。
イ イ号液晶モジュールの製造方法前記アの認定事実と証拠(甲4ないし6)及び弁論の全趣旨を総合すれば,イ号液晶モジュールは,次のような工程1ないし12(以下,各工程を「本件工程1」,「本件工程2」などという。)を順に経て製造されたことが認められ,これに反する証拠はない。
(ア) 本件工程1別紙2?@のように,基板(a)の上に,「チタン」を含む金属膜(b),「アルミニウム」を含む金属膜(c),「チタン」を含む金属膜(d)を基板側からこの順番で積層した後,フォトリソグラフィー工程(1次写真蝕刻)により,ゲート電極及びゲートパッドをそれぞれ形成する工程。
(イ) 本件工程2別紙2?Aのように,ゲート電極及びゲートパッドの形成された基板(a)の全面に絶縁膜(e)を積層する工程。
(ウ) 本件工程3別紙2?Bのように,絶縁膜(e)の上に,第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)をこの順番に積層する工程。
(エ) 本件工程4別紙2?Cのように,第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)を,フォトリソグラフィー工程(2次写真蝕刻)により半導体膜パターンに形成する工程。
(オ) 本件工程5別紙2?Dのように,半導体膜パターン(f,g)の形成された基板(a)の全面に,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)をこの順番に積層する工程。
(カ) 本件工程6別紙2?Eのように,フォトリソグラフィー工程(3次写真蝕刻)により,「チタン」を含む金属膜(h),「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)をパターニングし,薄膜トランジスタ部にソース電極及びドレイン電極を形成する工程。
(キ) 本件工程7別紙2?Fのように,「チタン」を含む金属膜(h),「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)をマスクとして,半導体膜パターン(f,g)を蝕刻し,ソース電極とドレイン電極間に位置する第2の非晶質シリコン膜(g)を除去する工程。
(ク) 本件工程8別紙2?Gのように,ソース電極及びドレイン電極の形成された基板(a)の全面に保護膜(j)を積層する工程。
(ケ) 本件工程9別紙2?Hのように,フォトリソグラフィー工程(4次写真蝕刻)により,保護膜(j)及び絶縁膜(e)をパターニングし,ドレイン電極(の端部)の表面と,ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホールを形成する工程。
(コ) 本件工程10別紙2?Iのように,保護膜(j)の蝕刻により露出されている部分の「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)を除去する工程。
(サ) 本件工程11別紙2?Jのように,コンタクトホールの形成された基板(a)の全面に透明導電膜(k)を積層する工程。
(シ) 本件工程12別紙2?Kのように,フォトリソグラフィー工程(5次写真蝕刻)により,透明導電膜(k)をパターニングして,薄膜トランジスタ部では「チタン」を含む金属膜(h)と接続する画素電極パターンを,「ゲート-パッド連結部1」及び「ゲート-パッド連結部2」では,「チタン」を含む金属膜(d)及び「チタン」を含む金属膜(h)とそれぞれ接続する画素電極パターンを形成する工程。
(2) イ号液晶モジュールの製造方法の本件発明1の構成要件充足性ア被告は,原告の主張するイ号液晶モジュールの製造方法を前提としても,少なくとも,イ号液晶モジュールは本件発明1の「第1金属膜」及び「第2金属膜」(構成要件B),「第3金属膜」(構成要件E,F,K),「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)及び「前記パッド部に形成されるコンタクトホール」(構成要件K)を備えていないので,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1の構成要件B,E,F,H,Kをいずれも充足しない旨主張する。
そこで,まず,被告の主張する諸点について順次判断することとする。
イ 「第1金属膜」及び「第2金属膜」(構成要件B)について原告は,イ号液晶モジュールのチタンを含む金属膜(b),アルミニウムを含む金属膜(c)及びチタンを含む金属膜(d)のうち,アルミニウムを含む金属膜(c)が構成要件Bの「第1金属膜」に,チタンを含む金属膜(d)が構成要件Bの「第2金属膜」に該当する旨主張する。
これに対し被告は,構成要件Bの「ゲート電極及びゲートパッド」は「第1金属膜」及び「第2金属膜」の2層の金属膜からなる積層構造のものに限定されると解すべきであるから,3層構造のイ号液晶モジュールは,「第1金属膜」及び「第2金属膜」を備えていない旨主張する。
そこで,イ号液晶モジュールにおけるアルミニウムを含む金属膜(c)及びチタンを含む金属膜(d)が,それぞれ構成要件Bの「第1金属膜」及び「第2金属膜」に該当するかどうかについて判断する。
(ア) 特許請求の範囲の記載本件発明1の構成要件Bは,「基板上に第1金属膜及び第2金属膜を順番に積層した後,1次写真蝕刻して前記薄膜トランジスタ部及びパッド部にゲート電極及びゲートパッドをそれぞれ形成する段階」というものである。上記構成要件Bの文言によれば,基板上に積層された「第1金属膜」及び「第2金属膜」により「ゲート電極」及び「ゲートパッド」が形成されることが理解される。
一方で,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載中には,「ゲート電極」及び「ゲートパッド」が「第1金属膜」及び「第2金属膜」の2層の積層構造のものに限定するものとし,この2層に他の層を付加してはならないことを明示した記載はなく,また,「第1金属膜」及び「第2金属膜」の材質を規定する記載もない。
(イ) 本件明細書の記載事項a本件明細書(甲3)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある。
(a)「本発明は・・・特に写真工程の段階を省き素子の信頼性を向上させ得る薄膜トランジスタの液晶表示装置の製造方法に関する。」(段落【0001】)(b)「薄膜トランジスタ(TFT)は一般トランジスタに比べて非常に薄いため,その製造工程は一般トランジスタの製造工程に比べて,更に複雑で生産性に劣り高コストである。従って,TFTの生産性を高め,低コストにするため・・・特に,製造工程に用いられるマスクの数を減らすための方法が広く研究されている。」(段落【0004】)(c)「前記従来の液晶表示装置の製造方法によると,ゲート電極をパターニングするための1次写真蝕刻,陽極酸化膜を形成するための2次写真蝕刻,半導体膜パターンを形成するための3次写真蝕刻,コンタクトホールを形成するための4次写真蝕刻,ソース電極及びドレイン電極をパターニングするための5次写真蝕刻,画素電極用のコンタクトホールを形成するための6次写真蝕刻,画素電極をパターニングするための7次写真蝕刻など最小限に7回の写真蝕刻工程が要求される。従って,製造に長時間がかかり必要なマスクの数が多すぎるため,高コストとなり製造収率も落ちる短所がある。」(段落【0012】),「かつ,ゲート電極を形成する物質として純粋アルミニウムを用いるため,ゲート電極の形成後,窒化膜,非晶質シリコン層及び不純物のドーピングされた非晶質シリコン層の3層膜を形成するための高温熱処理中にゲート電極にヒロック(hillock)が発生する可能性が増大する。」(段落【0013】)(d)「前記問題点を解決するために,アルミニウム合金をゲート電極に採用しゲート電極の上部あるいは下部に耐火金属を用いてキャッピング金属膜を形成し,保護膜の形成工程とコンタクトホールの形成工程を同時に施すことにより,マスクの数を従来の7枚から5枚に減らせる方法を提案してある。」(段落【0014】)(e)「図3は5枚のマスクを用いるTFT-LCDの製造方法の一例を説明するための断面図であり,韓国特許出願95-42618号に開示されている。」(段落【0015】),「図3を参照すると,TFT部及びパッド部に形成されたゲート電極はアルミニウムあるいはアルミニウム-ネオジウム(Al-Nd)あるいはアルミニウム-タンタル(Al-Ta)のようなアルミニウム合金からなる第1金属膜32と,クロム(Cr),モリブデン(Mo)あるいはチタン(Ti)のような耐火金属からなる第2金属膜34が順次に積層された二重構造からなっている。」(段落【0016】),「かつ,TFT部では保護膜44が蝕刻され形成されたコンタクトホールを通じて画素電極46とドレイン電極42bとが連結されている。パッド部では,第2金属膜34の上に形成された保護膜44及び絶縁膜36が同時に蝕刻され第2金属膜34の一部を露出させるコンタクトホールが形成されており,前記コンタクトホールを通じてゲート電極(32+34)とITOからなる画素電極46とが連結されている。」(段落【0017】),「前記方法によると,アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる第1金属膜32の上にキャッピング膜として第2金属膜34を形成することにより陽極酸化膜の形成工程を省くことができ,絶縁膜36及び保護膜44を同時に蝕刻することにより写真工程の数を減らすことができる。」(段落【0018】)(f)「図4は・・・5枚のマスクを用いたTFT-LCD製造方法の他の例を説明するための断面図であり,韓国特許出願95-62170号に開示されている。」(段落【0019】),「図4を参照すると,TFT部及びパッド部に形成されたゲート電極がクロム(Cr),モリブデン(Mo)あるいはチタン(Ti)のような耐火金属からなる第1金属膜51と,アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる第2金属膜53が順番に積層された二重構造からなっている。」(段落【0020】),「TFT部では保護膜63が蝕刻され形成されたコンタクトホールを通じて画素電極67とドレイン電極61bとが連結され,パッド部では第1金属膜51及び第2金属膜53からなるゲート電極とパッド電極61cとが画素電極67を通じて連結されている。前記パッド部に形成されたゲート電極は画素電極67と接触する部分の第2金属膜53が蝕刻されている。」(段落【0021】)(g)「前記方法によるとマスクの数を減らすことができ,耐火性金属膜とその上部に積層されるアルミニウム膜の二重膜にてゲート電極を形成することによりアルミニウム膜のヒロック成長を抑制することができる。かつ,パッド部に画素電極を形成する前にゲート電極を構成するアルミニウム膜を蝕刻することにより後続工程で形成される画素電極とアルミニウム膜の間の接触抵抗を減らすことができる。」(段落【0022】)(h)「しかしながら,前記二つの方法は次のような問題点を有しており,次の図5を通して説明する・・・」(段落【0023】),「第1,前記第1方法のようにパッド部に形成されるパッド電極を耐火金属/アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)の構造から形成する場合,図5に示したように‘A’部分でアルミニウムとITOとが直接接触するようになる。このようにアルミニウムとITOが接触すると,ITOをパターニングするための写真工程時に現像液による電池反応のためにITOが現像液に解けたり,LCD駆動時に駆動電流により酸化膜が形成される問題点がある。」(段落【0024】),「第2,パッド電極を前記第2方法のようにアルミニウム(あるいはアルミニウム合金)/耐火金属の構造から形成する場合,保護膜及び絶縁膜を蝕刻した後にパッド電極上部のアルミニウム(あるいは合金)を蝕刻すると図5の‘B’部位でアルミニウムとITOとが接触するようになる。」(段落【0025】),「第4,パッド部のゲート電極とパッド電極とを連結するために絶縁膜と保護膜を同時に蝕刻するため,絶縁膜及び保護膜の蝕刻された部分が基板とほとんど垂直に形成されるので,後続工程でITO膜を蒸着する時ステップカバレージが不良になる。」(段落【0027】),「第5,保護膜及び絶縁膜が数個のパッドにかけて一つの箱状にオープンされるため,保護膜及び絶縁膜を乾式蝕刻する際にパッドの間の基板が蝕刻される恐れがある。」(段落【0028】)(i)「本発明は前記のような問題点を解決するために案出されたものであり,パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止して素子の信頼性を向上させ得る液晶表示装置の製造方法を提供することにその目的がある。」(段落【0029】),「かつ,本発明の他の目的は写真工程の数を更に減らし得る液晶表示装置の製造方法を提供することである。」(段落【0030】)(j)「本発明によると,ゲート電極の構造とパッド部のパターンを変更することにより,写真工程の数を減らし,かつアルミニウムとITOの間の接触を防止し素子の信頼性を向上させることができる。」(段落【0034】)(k)「図7を参照すると,パッド部の保護膜及び絶縁膜はゲートパッドパターンより内側で蝕刻されるようにレイアウトされている。従って,アルミニウム膜が露出されることにより発生するアルミニウム膜とITO膜との接触を防止することができる。かつ,画素電極は前記保護膜及び絶縁膜の蝕刻された部分より大きく形成されるので,ITOにより第2金属膜が保護され得る。」(段落【0039】),「図8Aを参照すると,まず透明な基板70上にアルミニウムあるいはアルミニウム合金を蒸着して第1金属膜72を形成した後,前記第1金属膜72上に耐火性金属を蒸着して第2金属膜74を順次に形成する。次いで,前記第2金属膜74及び第1金属膜72を1次写真蝕刻してTFT部及びパッド部の基板上にゲート電極及びゲートパッドをそれぞれ形成する。」(段落【0041】),「図9Cを参照すると,半導体膜パターン(78+80)の形成された前記基板70の全面にクロム(Cr),モリブデン(Mo)あるいはチタン(Ti)などの金属を蒸着して第3金属膜を形成した後,前記第3金属膜を3次写真蝕刻してTFT部にソース電極82a及びドレイン電極82bを形成する。この際,TFTのチャンネルの形成される領域の不純物がドーピングされた非晶質シリコン膜80も蝕刻されて前記非晶質シリコン膜78の一部が露出される。」(段落【0043】),「前述した本発明の第1参考例によると,ゲート電極を耐火金属/アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)の二重構造から形成することにより,マスクの数を減らすと共に,アルミニウム膜のヒロック成長を抑制することができる。かつ,絶縁膜及び保護膜を同時に蝕刻して画素電極とゲートパッドとを連結するためのコンタクトホールを形成する時,ゲートパッドパターンの境界内で絶縁膜と保護膜をオープンさせることによりアルミニウムとITOの間の接触を防止することができる。なお,パッド部に形成される画素電極を前記保護膜及び絶縁膜がオープンされる部位より大きく形成されるようにパターニングすることにより,第2金属膜はITO膜により保護される。」(段落【0046】)(l)「図10は本発明の実施例による液晶表示装置を製造するための概略平面図であり,図11は本発明の実施例による液晶表示装置の製造方法を説明するための断面図である。」(段落【0047】),「図10のP4は保護膜及び絶縁膜が蝕刻される部分のステップカバレージを改善させるための第1物質層の形成された部分を限るマスクパターンである。」(段落【0048】),「図11を参照すると,ゲート電極が耐火金属/アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)の二重構造から形成され,パッド部に位置するゲートパッドパターンの境界内で絶縁膜及び保護膜がオープンされるようにパターニングされる。かつ,パッド部の保護膜及び絶縁膜が蝕刻される部位の絶縁膜上にステップカバレージを改善するための第1物質層88が形成されている。前記第1物質層88は半導体膜をパターニングする時,保護膜及び絶縁膜が蝕刻される境界部位に半導体膜が残るようにパターニングしたり,ソース電極82a及びドレイン電極82bをパターニングする時,クロム膜が残るようにパターニングすることにより形成される。従って,別途の写真工程を加えなくても画素電極用のITOのステップカバレージを向上させ得る。」(段落【0049】)(m)「なお,本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく,多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能であることは明白である。」(段落【0077】)(n)「本発明による液晶表示装置の製造方法によると,ゲート電極をアルミニウムあるいはアルミニウム合金と耐火金属膜を用いた二重構造から形成することにより,写真工程段階を5回に省くことができ,耐火金属膜のストレス弛緩作用によりアルミニウム膜のヒロック成長を抑制することができる。」(段落【0078】),「かつ,パッド部のパターンを変更してアルミニウムとITO間の接触を最小化することにより,画素電極用のITO膜をパターニングする時に現像液による電池反応を効率よく防止することができる。」(段落【0079】),「また,パッド部で保護膜及び絶縁膜が同時にパターニングされる部位に半導体膜あるいはソース/ドレイン電極用の金属膜を形成することにより,後続工程で画素電極用のITO膜のステップカバレージが向上される。」(段落【0081】)b上記各記載と図面(甲3)を総合すれば,本件明細書には,?@従来の技術による液晶表示装置の製造方法では,「ゲート電極をパターニングするための1次写真蝕刻,陽極酸化膜を形成するための2次写真蝕刻,半導体膜パターンを形成するための3次写真蝕刻,コンタクトホールを形成するための4次写真蝕刻,ソース電極及びドレイン電極をパターニングするための5次写真蝕刻,画素電極用のコンタクトホールを形成するための6次写真蝕刻,画素電極をパターニングするための7次写真蝕刻など最小限に7回の写真蝕刻工程」が必要とされ,かつ,ゲート電極を形成する物質として「純粋アルミニウム」が用いられていたため,ゲート電極の形成後に「3層膜を形成するための高温熱処理中にゲート電極にヒロック(hillock)が発生する可能性が増大」するという問題点があったこと(上記a(c)),?Aこのような問題点を解決する方法として,「アルミニウム合金をゲート電極に採用しゲート電極の上部あるいは下部に耐火金属を用いてキャッピング金属膜を形成」し,保護膜の形成工程とコンタクトホールの形成工程を同時に施すことが本件出願前に公知であり,この方法を採用することにより,「陽極酸化膜の形成工程」(2次写真蝕刻)を省くとともに,絶縁膜36及び保護膜44が同時に蝕刻されるため「写真工程」(写真蝕刻)を減らすことができ,また,アルミニウム膜のヒロック成長を抑制することができること(上記a(d)ないし(g)),?Bしかし,上記?Aの方法においても,パッド部でアルミニウムとITOとが直接接触し,ITOをパターニングするための写真工程時に現像液による電池反応のためにITOが現像液に解けたり,LCD駆動時に駆動電流により酸化膜が形成される,絶縁膜と保護膜を同時に蝕刻するため絶縁膜及び保護膜の蝕刻された部分が基板とほとんど垂直に形成され,後続工程でITO膜を蒸着する時ステップカバレージが不良になるなどの問題点があったため,「本発明」は,このような問題点を解決するため,ゲート電極の構造とパッド部のパターンを変更したこと(上記a(h)ないし(j)),?C「本発明の実施例」として,ゲート電極が「アルミニウムあるいはアルミニウム合金」からなる「第1金属膜72」及びその上に蒸着した「耐火性金属」からなる「第2金属膜74」の「二重構造」(2層の積層構造)から形成され,パッド部に位置するゲートパッドパターンの境界内で絶縁膜及び保護膜がオープンされるようにパターニングされ,かつ,パッド部の保護膜及び絶縁膜が蝕刻される部位の絶縁膜上に第1物質層88が形成された工程を含む液晶表示の製造方法(図11,上記a(k),(l),(n))が記載されていることが認められる。
(ウ) 判断a(a)本件明細書に記載された「本発明の実施例」は,前記(イ)b?Cのとおり,ゲート電極が「アルミニウムあるいはアルミニウム合金」からなる「第1金属膜72」及びその上に蒸着した「耐火性金属」からなる「第2金属膜74」の2層の積層構造のもの(図11)である。
しかし,一方で,前記(ア)のとおり,本件発明1(請求項1)では,基板上に積層された「第1金属膜」及び「第2金属膜」により「ゲート電極」及び「ゲートパッド」が形成される(構成要件B)が,請求項1において,「ゲート電極」及び「ゲートパッド」が「第1金属膜」及び「第2金属膜」の2層の積層構造のものに限定するものとし,この2層に他の層を付加してはならないことを明示した記載はない。また,本件明細書にも,「本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく,多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である」(段落【0077】。前記(イ)a(m))との記載がある。
加えて,本件明細書には,「アルミニウム合金をゲート電極に採用しゲート電極の上部あるいは下部に耐火金属を用いてキャッピング金属膜を形成」することにより,アルミニウム膜のヒロック成長を抑制することができることが本件出願前に公知であったこと(前記(イ)b?A),「アルミニウム膜のヒロック成長」の抑制は「耐火金属膜のストレス弛緩作用」によること(段落【0078】。前記(イ)a(n))との記載がある。上記記載によれば,「アルミニウム膜」の上部又は下部のいずれに「耐火金属」からなる「キャッピング金属膜」を設けてもアルミニウム膜のヒロック成長を抑制することができるのであるから,アルミニウム膜の上部及び下部の両方に「キャッピング金属膜」を設けた場合であっても,アルミニウム膜のヒロック成長を抑制することができることを理解できる。
さらに,請求項1を引用した本件発明2(請求項2)では,「前記第1金属膜はアルミニウムあるいはアルミニウム合金から形成されることを特徴とする」との限定をし,また,請求項1を引用した本件発明3(請求項3)では,「前記第2金属膜は耐火金属から形成されることを特徴とする」との限定をしている。
以上を総合すると,本件明細書に記載された実施例は,ゲート電極が「アルミニウムあるいはアルミニウム合金」からなる「第1金属膜72」及びその上に「耐火性金属」からなる「第2金属膜74」を積層した2層の積層構造のものではあるが,本件発明1(請求項1)における「ゲート電極」は,上記実施例の構造のものに限られるものではなく,アルミニウム膜の上部及び下部の両方に耐火性金属からなる「キャッピング金属膜」を設ける構成,すなわちアルミニウム膜の上下に耐火性金属からなる「キャッピング金属膜」を設けた,3層の積層構造のものを除外するものではないと解するのが相当である。
(b)これに対し被告は,?@本件発明1の構成要件Bに,ゲート電極及びゲートパッドを形成する工程として,基板の上に最初に第1金属膜を形成し,続けて第1金属膜の上に第2金属膜を形成して2層の金属膜からなる積層構造を成膜した後,この2層の積層構造を写真蝕刻して,ゲート電極及びゲートパッドを形成することを明確に示し,また,構成要件Eの「第3金属膜」との記載は,「第3金属膜」が形成される前には,「第1金属膜」及び「第2金属膜」の2層しか金属膜が形成されないことを明確に示していること,?A本件明細書の段落【0049】は,「ゲート電極及びゲートパッド」は「第1金属膜」及び「第2金属膜」の「二重構造」のものに限定されることを示し,本件明細書の段落【0016】,【0020】,【0046】,【0058】にも,これと同様の記載があることを根拠として挙げて,本件発明1の「ゲート電極及びゲートパッド」(構成要件B)は,「第1の金属膜」及び「第2の金属膜」の2層の金属膜からなる積層構造のものに限定されると解すべきである旨主張する。
しかし,前記(ア)のとおり,請求項1には,「ゲート電極」及び「ゲートパッド」が「第1金属膜」及び「第2金属膜」の2層の積層構造のものに限定するものとし,この2層に他の層を付加してはならないことを明示した記載はなく,また,構成要件Eの「第3金属膜」との記載は,「第1金属膜」及び「第2金属膜」が形成された後に形成される金属膜が「第3金属膜」であることを意味するものにすぎず,「第3金属膜」が形成される前には「第1金属膜」及び「第2金属膜」の2層しか金属膜が形成されないことを意味するものと解することはできない。
また,本件明細書記載の実施例は,ゲート電極が「アルミニウムあるいはアルミニウム合金」からなる「第1金属膜72」及びその上に蒸着した「耐火性金属」からなる「第2金属膜74」の「二重構造」(2層の積層構造)のものであるが,本件発明1(請求項1)における「ゲート電極」は,上記実施例の構造のものに限られるものではないことは,前記(a)のとおりであり,被告が指摘する本件明細書の各段落の記載を考慮しても,2層構造のものに限定解釈すべき理由はない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
bそして,イ号液晶モジュールの「ゲート電極」及び「ゲートパッド」は,基板(a)の上に積層されたチタンを含む金属膜(b),アルミニウムを含む金属膜(c)及びチタンを含む金属膜(d)をフォトリソグラフィー工程(1次写真蝕刻)により形成されたものであること(前記(1)イ(ア)の本件工程1),チタンは「耐火金属」であること(前記(イ)a(e),(f))に照らすならば,原告が主張するとおり,イ号液晶モジュールの上記3層の金属膜(b,c,d)のうち,アルミニウムを含む金属膜(c)が構成要件Bの「第1金属膜」に,チタンを含む金属膜(d)が構成要件Bの「第2金属膜」に該当するものと認められる。
ウ 「第3金属膜」(構成要件E,F,K)について原告は,半導体膜パターンの形成された基板(a)の全面に「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)が形成され,これらの金属膜(h,i)は本件発明1の「第3金属膜」(構成要件E)に該当する旨主張する。
これに対し被告は,本件発明1の「第3金属膜」の材質にはアルミニウムが含まれないので,上記2層構造のものは本件発明1の「第3金属膜」(構成要件E,F,K)に該当しない旨主張する。
そこで,イ号液晶モジュールにおける「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)が,構成要件Eの「第3金属膜」に該当するかどうかについて判断する。
(ア) 特許請求の範囲の記載本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,?@「基板上に第1金属膜及び第2金属膜を順番に積層した後,1次写真蝕刻して前記薄膜トランジスタ部及びパッド部にゲート電極及びゲートパッドをそれぞれ形成する段階」(構成要件B),「前記ゲート電極及びゲートパッドの形成された基板の全面に絶縁膜及び半導体膜を順番に形成する段階」(構成要件C),「前記半導体膜を2次写真蝕刻して前記薄膜トランジスタ部に半導体膜パターンを形成する段階」(構成要件D)を順に経た上で,構成要件Eにおいて「第3金属膜」が「前記半導体膜パターンの形成された基板の全面に形成」されること,?Aその上で,「前記第3金属膜を3次写真蝕刻して前記薄膜トランジスタ部にソース電極及びドレイン電極を形成する段階」(構成要件F),「前記ソース電極及びドレイン電極の形成された基板の全面に保護膜を形成する段階」(構成要件G),「前記保護膜及び絶縁膜を4次写真蝕刻して前記ドレイン電極の表面と,前記ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホールを形成し,前記ゲートパッドより内側にオープンされるように前記保護膜及び絶縁膜を蝕刻する段階」(構成要件H),「前記コンタクトホールの形成された基板の全面に透明導電膜を形成する段階」(構成要件I),「前記透明導電膜を5次写真蝕刻して,前記ドレイン電極と接続される第1画素電極パターンと,ゲートパッドと接続される第2画素電極パターンとを形成する段階」(構成要件J)を順に経て液晶表示装置を製造すること,?B「前記半導体膜パターンを形成する段階」(構成要件D)及び「ソース電極及びドレイン電極を形成する段階」(構成要件F)のうち,「少なくとも何れか一段階は,前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る段階」からなること(構成要件K)が開示されている。
上記?@ないし?Bによれば,本件発明1の「第3金属膜」は,「前記半導体膜パターンの形成された基板の全面に形成」され,「第3金属膜」の写真蝕刻(「3次写真蝕刻」)により「前記薄膜トランジスタ部にソース電極及びドレイン電極」を形成し,「第3金属膜」により形成された「ドレイン電極」は,透明導電膜を写真蝕刻(「5次写真蝕刻」)して形成された「第1画素電極パターン」と接続され,「前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に」,前記半導体膜あるいは「第3金属膜」のうち少なくとも何れか一つが残る段階があることが理解される。
一方で,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載中には,「第3金属膜」の材質を規定する記載はない。
(イ) 本件明細書の記載事項本件明細書(甲3)の「発明の詳細な説明」には,「・・・半導体膜パターン(78+80)の形成された前記基板70の全面にクロム(Cr),モリブデン(Mo)あるいはチタン(Ti)などの金属を蒸着して第3金属膜を形成した後,前記第3金属膜を3次写真蝕刻してTFT部にソース電極82a及びドレイン電極82bを形成する。」(段落【0043】。前記イ(イ)a(k))との記載があり,また,「本発明の実施例」を示した図11には,「ソース電極82a」及び「ドレイン電極82b」が図示されている。
このように本件明細書には,「第3金属膜」として「クロム(Cr),モリブデン(Mo)あるいはチタン(Ti)」が例示され,「本発明の実施例」における「第3金属膜」は,上記例示されたものであることが理解される。
しかし,一方で,本件明細書には,「第3金属膜」を上記例示のものに限定する趣旨の記載はない。
(ウ) 本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行物の記載事項a特開平5-165059号公報(乙4)には,「上記ゲート電極Gおよびゲートラインとドレイン電極Dおよびデータラインは,Al(アルミニウム)またはAl金等で形成されている。」(段落【0007】),「この画素電極2はITO等からなる透明導電膜で形成されており,その端部は,保護絶縁膜9に設けたコンタクト孔9aにおいて薄膜トランジスタ3のソース電極Sに接続されている。」(段落【0009】)との記載がある。上記記載は,ソース及びドレイン電極をアルミニウム又はアルミニウム合金等で形成し,ソース電極にITOからなる画素電極を接続する構成を開示している。
b乙6(平成6年3月1日発行の書籍「ディスプレイ技術シリーズカラー液晶ディスプレイ」)には,「ゲート電極材料にはCrとTa系金属が使われることが多い。・・・ただTaは比抵抗が大きいため,LCDが大きくなるほどゲート配線遅延によって画質が低下する。これを改善するため,AlやCuなどをTa配線に積層して形成し低抵抗化する研究が進んでいる。」(157頁16行〜21行),「ソースおよびドレイン電極には,比抵抗が小さく,n型a-Si薄膜やITOから低温でオーミックコンタクトをとりやすいAl/CrやTiなどが使われる。」(157頁29行〜末行)との記載がある。上記記載は,「Al」には比抵抗が小さいという利点があることを示し,また,「ソースおよびドレイン電極」に「Al/Cr」が使われることを例示するものである。
(エ) 判断a(a)前記のとおり,本件明細書には,「第3金属膜」として「クロム(Cr),モリブデン(Mo)あるいはチタン(Ti)」が例示されているが,「第3金属膜」を上記例示のものに限定する趣旨の記載はないこと(前記(イ)),乙4には,ソース及びドレイン電極をアルミニウム又はアルミニウム合金等で形成し,ソース電極にITOからなる画素電極を接続する構成が開示されていること(前記(ウ)a),乙6には,「Al」には比抵抗が小さいという利点があり,また,「ソースおよびドレイン電極」に「Al/Cr」が使われることが例示されていること(前記(ウ)b)に照らすならば,アルミニウムには比抵抗が小さいという利点があるので,ソース電極及びドレイン電極を形成する金属膜としてアルミニウムを使用することができないものとは一概にはいえないから,本件発明1の「第3金属膜」には,アルミニウムが含まれないと解することはできない。
(b)これに対し被告は,本件発明1の目的は「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止して素子の信頼性を向上させ得る液晶表示装置の製造方法を提供すること」(本件明細書の段落【0029】)にあるところ,第3金属膜にアルミニウムが含まれるとすると,アルミニウムとITOとが直接接触してしまうため,「アルミニウムとITOとの接触を防止する」という発明の課題及び効果を得ることができないし,また,本件明細書には,第3金属膜として「クロム(Cr),モリブデン(Mo)あるいはチタン(Ti)など」(段落【0043】)を用いる例しか記載されていないことを理由に,本件発明1の第3金属膜の材質にはアルミニウムが含まれない旨主張する。
しかし,本件発明1の「パッド部」とは,「第1金属膜」及び「第2金属膜」から成る「ゲートパッド」が形成される領域をいい(構成要件B),「第3金属膜」は「ゲートパッド」を構成するものではないから,本件明細書記載の「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止」するとの目的から直ちに「第3金属膜」にアルミニウムが含まれないと解することはできないし,また,本件明細書には,第3金属膜に「クロム(Cr),モリブデン(Mo)あるいはチタン(Ti)など」(段落【0043】)を用いるとの記載があるものの,本件発明1の「第3金属膜」を上記例示のものに限定して解釈すべき理由はない。
b以上によれば,イ号液晶モジュールのチタンを含む金属膜(h)及びアルミニウム(合金)膜(i)は,原告の主張するとおり,本件発明1の「第3金属膜」に該当する。
エ 「コンタクトホール」(構成要件H,K)について原告は,本件発明1の「パッド部」は,画素領域外の領域まで延伸したゲート電極である「ゲートパッド」と「第2画素電極パターン」との接続が行われる領域をいい,イ号液晶モジュールのゲート-パッド連結部1及びゲート-パッド連結部2はいずれも「パッド部」に該当し,ゲート-パッド連結部1及びゲート-パッド連結部2において「ゲートパッドの表面が露出されるコンタクトホールを形成し,前記ゲートパッドより内側にオープンされるように前記保護膜及び絶縁膜が蝕刻」(構成要件H)されているので,ゲート-パッド連結部1及びゲート-パッド連結部2にそれぞれ形成されたコンタクトホールは,「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)及び「前記パッド部に形成されるコンタクトホール」(構成要件K)に該当する旨主張する。
これに対し被告は,?@原告主張のゲート-パッド連結部1は,外部電極と接続される部分ではないから,本件発明1の「パッド部」に該当せず,ゲート-パッド連結部1に形成されたコンタクトホールは,「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)にも,「前記パッド部に形成されるコンタクトホール」(構成要件K)にも該当しない,?A本件発明1の「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)は,保護膜及び絶縁膜の「双方」がゲートパッドより内側にオープンされる構成であると解すべきであるが,原告主張のゲート-パッド連結部2においては,保護膜が全て除去され,ゲート-パッド連結部2の保護膜はゲートパッドよりも外側まで開口されているから,ゲート-パッド連結部2に形成されたコンタクトホールは「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)に該当しない旨主張する。
ところで,被告は,ゲート-パッド連結部2が外部電極と接続される部分であることを認めているので(被告第1準備書面11頁1行ないし5行),ゲート-パッド連結部2が本件発明1の「パッド部」に該当し,イ号液晶モジュールのゲート-パッド連結部2に形成されたコンタクトホールが「前記パッド部に形成されるコンタクトホール」(構成要件K)に該当することを争っていないものと解される。
そこで,イ号液晶モジュールのゲート-パッド連結部2に形成されたコンタクトホールが「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)に該当するかどうかについて判断する。
(ア) 特許請求の範囲の記載本件発明1(請求項1)の構成要件Hは,「前記保護膜及び絶縁膜を4次写真蝕刻して前記ドレイン電極の表面と,前記ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホールを形成し,前記ゲートパッドより内側にオープンされるように前記保護膜及び絶縁膜を蝕刻する段階と」というものである。上記構成要件Hの文言によれば,「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」は,「前記保護膜及び絶縁膜」の「4次写真蝕刻」の工程において形成され,コンタクトホールの開口部は「前記ゲートパッドより内側にオープン」されていることを理解できる。
一方で,上記構成要件Hの文言からは,コンタクトホールの開口部が保護膜及び絶縁膜の「双方」がゲートパッドより内側にオープンされる構成であることを明示したものとまではいえない。
(イ) 本件明細書の記載事項本件明細書(甲3)には,「本発明は前記のような問題点を解決するために案出されたものであり,パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止して素子の信頼性を向上させ得る液晶表示装置の製造方法を提供することにその目的がある。」(段落【0029】。前記イ(イ)a(i)),「図7は本発明の第1参考例による液晶表示装置の製造方法を説明するための概略平面図であり,パッド部を示す。参照符号P1はパッド電極を形成するためのマスクパターンを,P2は絶縁膜及び保護膜を蝕刻して画素電極とパッド電極とを連結するコンタクトホールを形成するためのマスクパターンを,P3は画素電極をパターニングするためのマスクパターンをそれぞれ示す。」(段落【0038】),「図7を参照すると,パッド部の保護膜及び絶縁膜はゲートパッドパターンより内側で蝕刻されるようにレイアウトされている。従って,アルミニウム膜が露出されることにより発生するアルミニウム膜とITO膜との接触を防止することができる。」(段落【0039】。前記イ(イ)a(k)),「図11を参照すると,ゲート電極が耐火金属/アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)の二重構造から形成され,パッド部に位置するゲートパッドパターンの境界内で絶縁膜及び保護膜がオープンされるようにパターニングされる。」(段落【0049】。前記イ(イ)a(l))との記載がある。また,本件明細書の図7には,P1(パッド電極を形成するためのマスクパターン)の内側にP2(絶縁膜及び保護膜を蝕刻してコンタクトホールを形成するためのマスクパターン)が配置されることが示され,図10におけるP1とP2の位置関係もこれと同様である。
上記記載及び図面(甲3)を総合すると,本件明細書には,「パッド部の保護膜及び絶縁膜はゲートパッドパターンより内側で蝕刻されるようにレイアウト」(段落【0039】)したのは,ゲートパッドパターンの外側まで蝕刻すると,ゲートパッドパターンを構成するアルミニウム膜の側面が露出され,このアルミニウム膜とITO膜とが接触することになるので,これを防止しようとしたものであることが開示されているものと認められる。
(ウ) 判断a(a)上記(イ)に照らすならば,ITO膜とゲートパッドを構成するアルミニウム膜の側面との接触を防止するためには,ゲートパッドの表面の露出がゲートパッドよりも内側に形成されていることが必要であるが,保護膜及び絶縁膜の「双方」がゲートパッドより内側にオープンされることは必ずしも必要ではないものと解される。なぜなら,ゲートパッドの上に直接形成されている絶縁膜をゲートパッドの外側まで除去すると,ゲートパッドを構成するアルミニウム膜の側面が露出するので,その蝕刻範囲はゲートパッドの内側にすることを要するのに対し,保護膜については,その蝕刻領域がゲートパッドの外側に及んだとしても,保護膜の下にゲートパッドの表面の露出がゲートパッドよりも内側に形成されるように絶縁膜が残されていれば,ゲートパッドを構成するアルミニウム膜の側面がITO膜と接触することにはならないので,そのような場合には保護膜の蝕刻領域をゲートパッドの内側とすることを要しないからである。
したがって,本件発明1の構成要件Hの「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」は,その開口部が「前記ゲートパッドより内側にオープン」されていればよく,「ゲートパッドより内側にオープンされるように前記保護膜及び絶縁膜を蝕刻する段階」とは,絶縁膜の開口がゲートパッドの内側に形成されるように,保護膜及び絶縁膜を蝕刻する段階も含むものと解するのが相当である。
(b)これに対し被告は,本件発明1において,「パッド部に形成されるコンタクトホール」(構成要件K)は,構成要件Hに記載のとおり,保護膜及び絶縁膜を写真蝕刻して形成され,「ゲートパッドより内側にオープンされるように前記保護膜及び絶縁膜を蝕刻する」と限定されているから,保護膜及び絶縁膜の双方がゲートパッドより内側にオープンされる構成であり,また,本件発明1において「保護膜及び絶縁膜が蝕刻される部位におけるITO膜のステップカバレージを改善する」(段落【0049】)という効果を得るためには,保護膜の上に画素電極が形成されることが前提となるから,本件発明1の「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)は,保護膜及び絶縁膜の「双方」がゲートパッドより内側にオープンされる構成であると解すべきである旨主張する。
しかし,前記(ア)のとおり,構成要件Hの文言からは,コンタクトホールの開口部が保護膜及び絶縁膜の「双方」がゲートパッドより内側にオープンされる構成であることを明示したものとまではいえない。
また,本件明細書においても,ステップカバレージを改善するために保護膜の上に画素電極が形成されることを要するとの記載はない。
加えて,前記(a)のとおり,ITO膜とゲートパッドを構成するアルミニウム膜の側面との接触を防止するためには,ゲートパッドの表面の露出がゲートパッドよりも内側に形成されていることが必要であるが,保護膜及び絶縁膜の「双方」がゲートパッドより内側にオープンされることは必ずしも必要ではない。
以上によれば,被告の上記主張は採用することができない。
bそして,イ号液晶モジュールのゲート-パッド連結部2では,保護膜及び絶縁膜が蝕刻され,絶縁膜の開口部がゲートパッドより内側に形成され,ゲートパッドの表面を露出させているから(本件工程9),イ号液晶モジュールのゲート-パッド連結部2に形成されたコンタクトホールは「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)及び「前記パッド部に形成されるコンタクトホール」(構成要件K)に該当するものと認められる。
構成要件充足の有無前記アないしエの認定事実と本件工程1ないし12(前記(1)イ)を総合すれば,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件AないしKをすべて充足するものと認められる。
(3)イ号液晶モジュールの製造方法の本件発明2ないし4の構成要件充足性ア前記(2)イ(ウ)bのとおり,イ号液晶モジュールのアルミニウムを含む金属膜(c)は「第1金属膜」に,チタンを含む金属膜(d)は「第2金属膜」にそれぞれ該当するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件L,Mを充足する。
イa次に,本件発明4の構成要件Nの「前記画素電極パターンを形成する段階は,前記画素電極パターンは前記パッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分より大きく形成する段階からなることを特徴とする」というものである。本件発明4の特許請求の範囲(請求項4)の記載によれば,構成要件Nの「前記画素電極パターンを形成する段階」とは,請求項1の「前記透明導電膜を5次写真蝕刻して,前記ドレイン電極と接続される第1画素電極パターンと,ゲートパッドと接続される第2画素電極パターンとを形成する段階」(構成要件J)を意味するものと理解される。そして,請求項1によれば,構成要件Jの段階は,「前記保護膜及び絶縁膜を4次写真蝕刻して前記ドレイン電極の表面と,前記ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホールを形成し,前記ゲートパッドより内側にオープンされるように前記保護膜及び絶縁膜を蝕刻する段階」(構成要件H),「前記コンタクトホールの形成された基板の全面に透明導電膜を形成する段階」(構成要件I)を順次経た後の段階である。
一方で,本件明細書には,「なお,パッド部に形成される画素電極を前記保護膜及び絶縁膜がオープンされる部位より大きく形成されるようにパターニングすることにより,第2金属膜はITO膜により保護される。」(段落【0046】。前記(2)イ(イ)a(k)),「・・・前記保護膜及び絶縁膜がオープンされる部位より大きく画素電極を形成することによりオープン部位のゲートパッドが保護される。」(段落【0058】)との記載があることに照らすならば,構成要件Nにおいて「前記画素電極パターン」を「オープンされた部分」よりも大きく形成するのは,ゲートパッドの露出部分を「前記画素電極パターン」により保護するためであり,本件発明4の構成要件Nの「オープンされた部分」とは,ゲートパッドの露出部分,すなわち「前記ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」(構成要件H)を指すものと理解される。そして,「前記ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」は,「前記保護膜及び絶縁膜を蝕刻する段階」(構成要件H)において形成され,保護膜の開口部分と絶縁膜の開口部分とにより形成されるが,保護膜の開口部分が絶縁膜の開口部分よりも大きい場合には,保護膜の開口部分と絶縁膜の開口部分とが重なる部分以外の部分については,ゲートパッドの表面は絶縁膜によって被覆されており,「前記画素電極パターン」で保護する必要はないものと認められる。
以上を総合すると,本件発明4の構成要件Nの「前記パッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分」とは,保護膜の開口部分と絶縁膜の開口部分とが重なる部分により形成された「前記ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」をいうものと解するのが相当である。
bそして,甲4の写真8-1,8-5ないし8-8,9-3を総合すれば,イ号液晶モジュールのゲート-パッド連結部2においては,保護膜(j)が全面的に除去されており,かつ,絶縁膜(e)が部分的に除去されて「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」を形成していること,ITOからなる透明導電膜(k)パターンが,上記絶縁膜(e)の開口部分である「ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホール」,絶縁膜(e)の上の半導体膜パターン(f,g)の露出部分及びチタンを含む金属膜(h)の全面に形成されていることが認められる。
そうすると,イ号液晶モジュールの透明導電膜(k)は,構成要件Nの「前記パッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分」より大きく形成されているから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Nを充足する。
ウそして,前記(2)オのとおり,イ号液晶モジュールの製造方法構成要件AないしKをすべて充足するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明2の構成要件(AないしK,L),本件発明3の構成要件(AないしK,M)及び本件発明4の構成要件(AないしK,N)をいずれも充足する。
(4) 小括以上のとおり,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件AないしNをすべて充足するから,本件発明1ないし4の技術的範囲に属する。
2 争点2(本件特許権に基づく権利行使の制限の成否)について(1) 無効理由1(未完成発明)について被告は,本件出願の審査経過によれば,本件発明1は,旧請求項1に構成要件Kを補正により追加して,構成要件Kに基づく「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果を主張することによって特許されたものであるが,本件発明1ないし4の技術内容は,当業者が反復実施して上記効果を上げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていないため,発明として未完成のものであり,特許法29条1項柱書の「発明」に該当しないから,本件特許には,同項柱書の規定に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある旨主張する。
しかし,被告の主張は,以下のとおり理由がない。
ア本件発明1の構成要件Kは,上記記載に基づいて,「前記半導体膜パターンを形成する段階及びソース電極及びドレイン電極を形成する段階のうち,少なくとも何れか一段階は,前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る段階からなる」というものである。
本件明細書(甲3)には,「図11を参照すると,ゲート電極が耐火金属/アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)の二重構造から形成され,パッド部に位置するゲートパッドパターンの境界内で絶縁膜及び保護膜がオープンされるようにパターニングされる。かつ,パッド部の保護膜及び絶縁膜が蝕刻される部位の絶縁膜上にステップカバレージを改善するための第1物質層88が形成されている。前記第1物質層88は半導体膜をパターニングする時,保護膜及び絶縁膜が蝕刻される境界部位に半導体膜が残るようにパターニングしたり,ソース電極82a及びドレイン電極82bをパターニングする時,クロム膜が残るようにパターニングすることにより形成される。従って,別途の写真工程を加えなくても画素電極用のITOのステップカバレージを向上させ得る。」(段落【0049】。前記1(2)イ(イ)a(l))との記載があり,また,「本発明の実施例」を示した図11には,パッド部の絶縁膜76上に第1物質層88が形成され,第2金属膜74,絶縁膜76及び第1物質層88の各露出部分並びに保護膜パターン84の一部が画素電極86によって被覆されていることが示されている。
そして,ITOのような電極配線膜を被覆する場合においてステップカバレージ(段差被覆性)を良好にする必要性があることは技術常識であること(乙2,弁論の全趣旨)に照らすならば,本件明細書に接した当業者であれば,「パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る」構成(構成要件K)を採用することにより,本件発明1において「別途の写真工程を加えなくても画素電極用のITOのステップカバレージを向上させ得る」ことを理解できるものと解される。
イ(ア)これに対し被告は,本件明細書において,「ステップカバレージを向上させる」とは,蝕刻された部分が基板と垂直ではなくすことを意味し(段落【0027】,【0081】),「垂直ではなくす」とは,蝕刻された部分をテーパー形状とすることを意味する(乙2)との解釈を前提に,本件明細書には,「パッド部で保護膜及び絶縁膜が同時にパターニングされる部位に半導体膜あるいはソース/ドレイン電極用の金属膜を形成すること」という技術手段(構成要件K)を採用することにより,いかなる原理又は作用に基づいて,「蝕刻された部分をテーパー形状として,画素電極用のITO膜のステップカバレージを向上させる」という効果を得ることができるのかについての記載がなく,本件発明1ないし4の技術内容は,当業者が反復実施して「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果を上げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていない旨主張する。
しかし,本件明細書の段落【0027】,【0081】はもとより,本件明細書全体をみても,「ステップカバレージを向上させる」とは,「蝕刻された部分が基板と垂直ではなくすこと」を意味するとの記載はなく,また,「垂直ではなくす」とは,蝕刻された部分をテーパー形状とすることを意味するとの記載もない。
もっとも,乙2(書籍「半導体デバイスの信頼性技術」)には,「Alのステップカバレージが悪くなるのは・・・段差部が均一な厚さで被覆されないためである。段差厚さ管理強化のみならず,段差部の形状を危険なひさし形状ではなく,テーパー形状となるよう設計的に改善する必要がある」(132頁9行〜13行),「図5.14(A)の矢印部分のアルミ配線膜で,クレバスが起こりやすい。このように逆テーパー形状はCVD(・・・)膜形成後のHClテンパー工程のエッチングレートがNSG(・・・)に比較してPSG(・・・)が早いために逆テーパー(ひさし)形状となる。工程改善やCVD膜の変更により,図5.14(B)のような均一なAl配線膜厚を確保することができる。」(132頁14行〜19行)との記載があり,また,「図5.14工程改善前後のCVD膜形状」(132頁)として,「(A)改善前の断面図(ひさし形状)」及び「(B)改善後の断面図(テーパー形状)」が示されている。しかし,乙2の上記記載は,段差部が図5.14(B)のような逆テーパー(ひさし)形状である場合にAlのステップカバレージが悪くなるので,工程改善によりテーパー形状とする必要があることを示したものにすぎず,乙2の上記記載から,「ステップカバレージを向上させる」とは「蝕刻された部分が基板と垂直ではなくすこと」を意味するものと直ちに理解することはできないし,また,乙2の上記記載から,本件明細書の図11における第1物質層88によって形成された段差によって「ITOのステップカバレージを向上させ得る」ことを直ちに否定することもできない。
したがって,「ステップカバレージを向上させる」とは蝕刻された部分をテーパー形状とすることに限定されることを前提とする被告の上記主張は,その前提において,採用することができない。
(イ)次に,被告は,一般的に窒化膜をエッチングする条件では,シリコン(Si)に比べて窒化膜(Si N )のエッチング速度が大きく34なるところ(乙3の表3.2.2),「パッド部で保護膜及び絶縁膜が同時にパターニングされる部位に半導体膜あるいはソース/ドレイン電極用の金属膜を形成する」(本件発明1の構成要件K)と,エッチング速度が大きい窒化膜の上に,エッチング速度が小さいシリコン膜が形成された構造となり,蝕刻された部分が逆テーパー(ひさし)形となるため,その後に形成されるITO膜は,張り出したシリコン膜の影になる領域では形成され難くなり,ステップカバレージが悪化するものと予想される旨主張する。
しかし,?@乙3(書籍「集積回路プロセス技術シリーズ半導体プラズマプロセス技術」)の表3.2.2(各種材料のRIE特性)には,RIE(反応性イオンエッチング)において,材料に特定の膜厚の窒化膜(Si N )を用い,CF +H ガスという特定のガスを用34 42いた場合の「エッチング速度」,「選択比」等の数値が示されているにすぎず(220頁),乙3の表3.2.2の上記数値のみをもって,一般的にシリコン(Si)に比べて窒化膜(Si N )のエッチ34ング速度が大きいとまではいえないこと,?A乙3の表3.2.2は,半導体集積回路製造プロセスに用いられる各種材料のRIE特性に関するものであるが,半導体集積回路製造プロセスは,本件発明1の液晶表示装置の製造方法とはシリコンの結晶状態等が異なり,そのエッチング速度も異なることに照らすならば,本件発明1の構成要件Kを採用した場合に,蝕刻された部分が逆テーパー(ひさし)形となるため,ステップカバレージが悪化するものと予想されるとの被告の主張は,その前提において,採用することができない。
(ウ)さらに,被告は,乙9の実験結果からも,本件発明1において「画素電極のステップカバレージが向上する」という技術効果を上げることができないことは明らかである旨主張する。
そこで検討するに,乙9(被告作成の平成20年12月19日付け実験報告書)には,検証実験の結果の「【4】結論」として,「パッド部において,半導体膜を絶縁膜上に形成したB側面は,半導体膜を形成しなかったA側面に比べて,全体として垂直に近い側面となり,しかも半導体膜によるひさしが形成される。このため,半導体膜を絶縁膜上に形成しても,コンタクトホール内に形成される画素電極のステップカバレージはむしろ悪化し,598公報に記載された「ステップカバレージを改善する」という発明の効果を得ることはできなかった。」(7頁)との記載がある。
しかし,上記検証実験は,特定の膜厚を持つ一つのサンプルを対象に特定のエッチング条件の下で行われたものであり(乙9の2頁〜3頁),このように限定された条件下で行われた検証実験の結果を一般化して,本件発明1においては「画素電極のステップカバレージが向上する」という技術効果を上げることができないとまで認めることはできない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
ウ以上のとおり,本件発明1ないし4の技術内容は,当業者が反復実施して「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果を上げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていないとはいえないから,特許法29条1項柱書の「発明」に該当しないとの被告の主張(無効理由1)は,その前提を欠き,理由がない。
(2) 無効理由2(実施可能要件違反)について被告は,本件明細書の「発明の詳細な説明」には,画素電極用のITO膜のステップカバレージを向上させるための具体的な成膜条件,蝕刻条件等が全く開示されておらず,また,構成要件Kの「パッド部に形成されるコンタクトホールの縁」の定義がされていないため,本件明細書の「発明の詳細な説明」は当業者が「その実施をすることができる程度に明確かつ十分に」記載されたものとはいえないから,本件特許には,特許法36条4項の要件を満たしていない特許出願に対してされた無効理由(特許法123条1項4号)がある旨主張する。
しかし,被告の主張は,以下のとおり理由がない。
ア(ア)被告は,本件明細書には,本件発明1ないし4は,「パッド部で保護膜及び絶縁膜が同時にパターニングされる部位に半導体膜あるいはソース/ドレイン電極用の金属膜を形成すること」によって,蝕刻された部分をテーパー形状にして,画素電極用のITO膜のステップカバレージを向上させるという効果が得られると記載されているのであるから(段落【0081】),画素電極用のITO膜のステップカバレージを向上させるための手段として,蝕刻された部分をテーパー形状にする蝕刻条件等についての技術的事項が,発明の詳細な説明において,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている必要があるが,本件明細書には,具体的な成膜条件,蝕刻条件等の製造方法は,全く開示されておらず,本件明細書の記載によっては本件発明1ないし4を具体的に実施することができない旨主張する。
しかし,前記(1)イ(ア)のとおり,ステップカバレージを向上させるとは,蝕刻された部分をテーパー状とすることに限定されるものではないから,被告の上記主張は,その前提において誤りがある。また,「液晶表示装置の製造方法」における成膜,エッチング及びフォトリソグラフィー(写真蝕刻)の技術は,本件出願の優先権主張日当時,公知であったこと(乙2ないし7,乙9の添付資料2)に照らすならば,本件明細書に接した当業者であれば,公知の上記技術を用いて,成膜条件,蝕刻条件等を適宜設定し,「パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る」構成(構成要件K)とし,本件発明1ないし4を具体的に実施することは可能であるものと認められる。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(イ)また,被告は,本件発明1(請求項1)は,構成要件Kにおいて「半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つ」の膜が「パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の第2金属膜の上」に残るという条件を特定しているが,本件明細書では,「コンタクトホールの縁」という条件の定義がされていないため,本件明細書の記載によっては本件発明1ないし4を具体的に実施することができない旨主張する。
しかし,本件明細書には,「図11を参照すると,ゲート電極が耐火金属/アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)の二重構造から形成され,パッド部に位置するゲートパッドパターンの境界内で絶縁膜及び保護膜がオープンされるようにパターニングされる。かつ,パッド部の保護膜及び絶縁膜が蝕刻される部位の絶縁膜上にステップカバレージを改善するための第1物質層88が形成されている。前記第1物質層88は半導体膜をパターニングする時,保護膜及び絶縁膜が蝕刻される境界部位に半導体膜が残るようにパターニングしたり,ソース電極82a及びドレイン電極82bをパターニングする時,クロム膜が残るようにパターニングすることにより形成される。」(段落【0049】。前記1(2)イ(イ)a(l))との記載があり,上記記載から「第1物質層88」が「保護膜及び絶縁膜が蝕刻される境界部位に」形成されることが理解される。また,本件明細書の図11には,「第1物質層88」が,保護膜84及び絶縁膜76が蝕刻される部位(境界部位)に設けられていることが示されている。
したがって,本件明細書の記載に接した当業者であれば,構成要件Kにおける「パッド部に形成されるコンタクトホールの縁」が,保護膜及び絶縁膜が蝕刻される境界部位を意味することを理解し,「パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る」構成(構成要件K)とし,本件発明1ないし4を具体的に実施することは可能であるものと認められる。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
イ 以上によれば,被告主張の無効理由2は理由がない。
(3) 無効理由3(サポート要件違反・明確性要件違反)について被告は,本件発明1ないし4の特許請求の範囲(請求項1ないし4)の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないか,不明瞭なものであるから,本件特許は,特許法36条6項1号,2号の要件を満たしていない特許出願に対してされた無効理由(特許法123条1項4号)がある旨主張する。
しかし,被告の主張は,以下のとおり理由がない。
ア被告は,請求項1の記載によれば,本件発明1は,構成要件Kで残した膜が,構成要件Hや構成要件Iの各段階と全く関連しない構成,例えば構成要件Hや構成要件Iに至る前に除去される構成も含むこととなり,構成要件Kと構成要件H及び構成要件Iとの関係が不明確であるから,請求項1の記載において特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない旨主張する。
しかし,薄膜トランジスタの液晶表示装置は,基板から上方に向かって順次成膜し,あるいはエッチングで特定部分を除去するという工程を組み合わせて製造され,先の工程で形成された膜が後のエッチング工程で除去されることが明示されていない限り,そのまま残存していることは技術常識であるから(乙4ないし7),本件発明1の構成要件Dの段階で形成された半導体膜パターン及び構成要件Fの段階で写真蝕刻された第3金属膜は,構成要件Hの段階において保護膜及び絶縁膜が蝕刻される領域にあれば除去されるが,それ以外は残存し,構成要件K記載の残された「半導体膜あるいは第3金属膜」は上記残存したものであって,これが構成要件Iの段階で基板の全面に形成される透明導電膜に被覆されることは,当業者にとって自明である。
したがって,本件発明1は,構成要件Kで残した膜が構成要件Hや構成要件Iに至る前に除去される構成も含むことになるものではないから,被告の主張は,採用することができない。
イ被告は,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,第1ないし第3金属膜の材質が特定されていないので,本件発明1では,第1ないし第3金属膜の材質としてあらゆる金属を選択することができることとなるが,本件明細書の「発明の詳細な説明」には,第1金属膜として「アルミニウムあるいはアルミニウム合金」,第2金属膜として「耐火金属」及び第3金属膜として「クロム(Cr),モリブデン(Mo)あるいはチタン(Ti)など」が記載されているだけであり,第1ないし第3金属膜の材質として,これら以外の金属を選択することができる旨の記載がないから,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえない旨主張する。
しかし,本件明細書の発明の詳細な説明には,「なお,本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく,多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能であることは明白である。」(段落【0077】。前記1(2)イ(イ)a(m))との記載があることに照らすならば,第1金属膜として「アルミニウムあるいはアルミニウム合金」,第2金属膜として「耐火金属」及び第3金属膜として「クロム(Cr),モリブデン(Mo)あるいはチタン(Ti)など」(段落【0041】,【0043】,【0049】)の記載は,第1ないし第3金属膜の例示にすぎないことは明らかであり,被告の上記主張は,採用することができない。
ウ被告は,本件明細書には,発明の解決すべき課題として,「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止して素子の信頼性を向上させ得る液晶表示装置の製造方法を提供すること」(段落【0029】)との記載があるから,本件発明は,構成要件Kに基づく「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果とは別に,上記課題を解決するため,構成要件AないしJに基づいて「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止する」という効果も得られるものでなければならないが,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)では,第3金属膜の材質を特定していないため,第3金属膜としてアルミニウムが選択された場合,構成要件Kにおいて,第3金属膜を残すと,ITOとアルミニウムとが接触する構造となって,「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止する」という発明の課題及び効果と矛盾するから,本件発明1は,発明として明確なものとはいえない旨主張する。
しかし,本件明細書の段落【0039】の「図7を参照すると,パッド部の保護膜及び絶縁膜はゲートパッドパターンより内側で蝕刻されるようにレイアウトされている。従って,アルミニウム膜が露出されることにより発生するアルミニウム膜とITO膜との接触を防止することができる。」(前記1(2)イ(イ)a(k))との記載に照らすならば,「パッド部でのアルミニウムとITOとの接触を防止する」とは,コンタクトホールにより露出されたゲートパッドを構成するアルミニウム膜とITO膜との接触を防止することを意味するものであり,ソース電極及びドレイン電極を構成する第3金属膜の素材としてアルミニウム膜を選択した場合に,これがITO膜と接触することを防止しようとしたものとはいえないから,被告の上記主張は採用することができない。
エ被告は,本件発明1ないし3の特許請求の範囲(請求項1ないし3)では,「第2画素電極パターン」の大きさを限定していないのに対し,本件発明4の特許請求の範囲(請求項4)において,「[第2]画素電極パターンは前記パッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分より大きく形成する」こととの限定がされていることからすると,何ら限定のない請求項1ないし3は,第2画素電極パターンがパッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分より小さく形成する構造を含むこととなり,このような構造は,画素電極パターンが,オープンされた部分の内側だけに形成されコンタクトホールの段差を覆っていないものとなるため「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果を利用しないものであり,このように請求項1ないし3は,「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果を利用しない構造も含むから,発明として明確なものとはいえない旨主張する。
しかし,本件発明1ないし3は,いずれも「前記コンタクトホールの形成された基板の全面に透明導電膜を形成する段階」(構成要件I)を経て,「前記透明導電膜を5次写真蝕刻して,前記ドレイン電極と接続される第1画素電極パターンと,ゲートパッドと接続される第2画素電極パターンとを形成する段階」(構成要件J)を有するものであり,画素電極パターンが形成される前に,基板の全面に形成する透明導電膜によりコンタクトホールの段差が覆われているから,被告が主張するような画素電極パターンがオープンされた部分の内側だけに形成されコンタクトホールの段差を覆っていない構造を含むことにはならない。また,本件発明1ないし3は,いずれも「前記半導体膜パターンを形成する段階及びソース電極及びドレイン電極を形成する段階のうち,少なくとも何れか一段階は,前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る段階」(構成要件K)を含むものであるから,「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果を利用するものである。
さらに,本件明細書(甲3)の段落【0039】の「・・・かつ,画素電極は前記保護膜及び絶縁膜の蝕刻された部分より大きく形成されるので,ITOにより第2金属膜が保護され得る。」(前記1(2)イ(イ)a(k)),段落【0046】の「・・・なお,パッド部に形成される画素電極を前記保護膜及び絶縁膜がオープンされる部位より大きく形成されるようにパターニングすることにより,第2金属膜はITO膜により保護される。」(前記1(2)イ(イ)a(k))との記載に照らすならば,本件発明4の「前記画素電極パターンを形成する段階は,前記画素電極パターンは前記パッド部の保護膜及び絶縁膜のオープンされた部分より大きく形成する段階」(構成要件N)は,「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果とは別に,第2金属膜をITOにより保護することを目的としたものであり,構成要件Nは,「画素電極のステップカバレージが向上する」という効果と相反するものでも,矛盾するものではない。
したがって,被告の上記主張は理由がない。
オ 以上によれば,被告主張の無効理由3は理由がない。
(4) 無効理由4(進歩性の欠如)について被告は,本件発明1ないし4は,乙4記載発明,乙5記載発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある旨主張する。
しかし,被告の主張は,以下のとおり理由がない。
ア本件発明1の進歩性の欠如?@(乙4を主たる刊行物とするもの)について被告は,?@本件発明1と乙4記載発明は,相違点1,2においてのみ相違し,その余の点は一致している,?A相違点1に係る本件発明1の構成は,本件出願の優先権主張日当時周知であり,乙4記載発明に上記周知技術を適用して相違点1に係る本件発明1の構成とすることは,当業者であれば容易に想到することができた,?B乙5には,相違点2に係る本件発明1の構成(構成要件Kに相当する構成)が開示されており,乙4記載発明において,乙5の開示事項を適用して相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者であれば容易に想到することができた旨主張する。
しかし,被告が主張するように本件発明1と乙4記載発明は,相違点1,2においてのみ相違するとしても,以下のとおり,乙4記載発明ににおいて,相違点2に係る本件発明1の構成を採用することは当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
(ア) 乙4の記載事項a特開平5-165059号公報(乙4)には,次のような記載がある。
(a)「・・・i型半導体層5はa-Si (アモルファスシリコン)で形成され,n型半導体層6はn型不純物をドープしたa-Siで形成され,コンタクト層7はn型半導体層6とのオーミックコンタクト性がよいCr (クロム)等の金属で形成されており,n型半導体層6とコンタクト層7は,i型半導体層5のチャンネル領域(ソース電極Sとドレイン電極Dとの間の領域)に対応する部分において切離し分離されている。」(段落【0006】),「また,上記i型半導体層4のチャンネル領域の上にはSiN等からなるブロッキング層8が形成されている。このブロッキング層8は,薄膜トランジスタ3の製造に際してi型半導体層5の上に成膜したn型半導体層6のチャンネル領域対応部分をエッチングにより切離し分離するときに,i型半導体層5のチャンネル領域もエッチングされるのを防ぐために設けられている。」(段落【0008】),「・・・上記従来の薄膜トランジスタ3は,i型半導体層5のチャンネル領域の上にゲート絶縁膜4と同系の絶縁材(SiN等)からなるブロッキング層8を設けているため,薄膜トランジスタ3の製造工程において上記ブロッキング層8をパターニングする際に,i型半導体層5の下のゲート絶縁膜4にピンホール等の欠陥を発生させてしまうことがあった。」(段落【0024】),「・・・このi型半導体層5にピンホールがあると,i型半導体層5の上に成膜したブロッキング層8をパターニングする際に,そのエッチング液がi型半導体層5のピンホールを通ってゲート絶縁膜4に達する。そしてSiN等からなるブロッキング層8のパターニングはBHF等の弗酸系エッチング液を用いて行われるため,このエッチング液がゲート絶縁膜4に達すると,このゲート絶縁膜4もエッチングされてピンホール等の欠陥を発生する。」(段落【0025】),「なお,i型半導体層5に欠陥がなければ,ブロッキング層8のパターニング時にゲート絶縁膜4をエッチングしてしまうことはないが,薄膜トランジスタの特性を上げるには,i型半導体層5の層厚をできるだけ薄くすることが望ましいため,欠陥のないi型半導体層5を成膜することは困難である。」(段落【0026】),「そして,n型半導体層6およびソース,ドレイン電極S,Dは,上述したように,ブロッキング層8をパターニングした後に形成されるため,ゲート絶縁膜4に上記のようなピンホールが発生していると,ゲート電極Gとソース,ドレイン電極S,Dとの間に層間短絡が発生してしまう。なお,この層間短絡は,ゲートラインとデータラインとが交差する部分にも発生する。」(段落【0027】),「このため,上記従来の薄膜トランジスタ3は,その製造過程で層間短絡を発生することが多く,したがって製造歩留が悪いという問題をもっていた。」(段落【0028】)(b)「本発明の目的は,i型半導体層の上にブロッキング層を設けることなく,しかもi型半導体層のチャンネル領域にダメージを与えることなくn型半導体層を電気的に分離して,層間短絡のない薄膜トランジスタを歩留よく製造することができる薄膜トランジスタの製造方法を提供することにある。」(段落【0029】)(c)「【課題を解決するための手段】本発明の薄膜トランジスタの製造方法は,基板上にゲート電極を形成する第1の工程と,前記基板上に,ゲート絶縁膜とi型半導体層とn型半導体層とコンタクト層とを順次成膜する第2の工程と,前記コンタクト層とn型半導体層とi型半導体層とを,トランジスタ素子領域の外形にパターニングする第3の工程と,ソース,ドレイン用金属膜とを成膜する第4の工程と,前記ソース,ドレイン用金属膜をパターニングしてソース,ドレイン電極を形成するとともに,前記コンタクト層を前記ソース,ドレイン電極の形状にパターニングする第5の工程と,前記ソース,ドレイン用金属膜およびコンタクト層のパターニングに用いたレジストマスクを残したまま前記n型半導体層の酸化処理を行ない,このn型半導体層のソース,ドレイン電極間の部分を酸化絶縁層とする第6の工程と,からなることを特徴とするものである。」(段落【0030】)(d)「[工程1]まず,図1(a)に示すように,ガラス等からなる透明な基板10上にゲート電極GおよびゲートラインGL(図3参照)を形成する。このゲート電極GおよびゲートラインGLは,基板10上にゲート用金属膜11を成膜し,この金属膜11をフォトリソグラフィ法によりパターニングして形成する。なお,図1(a)において図上右端に示した金属膜11は,ゲートライン端子部GLaの下層膜である。」(段落【0045】)(e)「[工程2]次に,上記図1(a)に示したように,上記基板10上に,上記ゲート電極GおよびゲートラインGLを覆って,ゲート絶縁膜12と,i型半導体層13と,n型半導体層14と,コンタクト層15とを順次成膜する。」(段落【0046】)(f)「[工程3]次に,図1(b)に示すように,上記コンタクト層15とn型半導体層14とi型半導体層13とを,フォトリソグラフィ法によって,トランジスタ素子領域の外形にパターニングする。」(段落【0047】)(g)「[工程4]次に,図1(c)に示すように,ゲート絶縁膜12の上に,パターニングした各層15,14,13を覆ってソース,ドレイン用金属膜16を成膜する。」(段落【0048】),「[工程5]次に,図1(d)に示すように,上記ソース,ドレイン用金属膜16をフォトリソグラフィ法によりパターニングして,ソース,ドレイン電極S,DおよびデータラインDL(図3参照)を形成するとともに,このソース,ドレイン用金属膜16のパターニングに用いたレジストマスク19を利用して,上記コンタクト層15をソース,ドレイン電極S,Dの形状にパターニングする。なお,図1(d)において図上右側に示した金属膜16は,データライン端子部DLaの下層膜である。」(段落【0049】)(h)「[工程6]次に,上記図1(d)に示したように,上記ソース,ドレイン用金属膜16およびコンタクト層15のパターニングに用いたレジストマスク19を残したまま,n型半導体層15(判決注・「n型半導体層14」の誤り)の酸化処理を行なってそのソース,ドレイン電極S,D間の部分をその層厚全体にわたって酸化させた酸化絶縁層14aとし,この酸化絶縁層14aによりn型半導体層14をソース側とドレイン側とに電気的に分離して薄膜トランジスタ30を完成する。」(段落【0050】)(i)「[工程7]まず,上記レジストマスク19を剥離し,この後,図2(e)に示すように,ゲート絶縁膜12の上に上記薄膜トランジスタ30を覆って保護絶縁膜17を成膜する。」(段落【0057】),「[工程8]次に,図2(f)に示すように,上記保護絶縁膜17をフォトリソグラフィ法によりパターニングし,上記薄膜トランジスタ30のソース電極Sに対応するコンタクト孔17aと,データライン端子部DLaおよびゲートライン端子部GLaに対応する開口17b,17cとを形成するとともに,ゲート絶縁膜12にも,上記ゲートライン端子部GLaに対応する開口12aを形成する。」(段落【0058】)(j)「[工程9]次に,図2(g)に示すように,ITO膜等の透明導電膜18を成膜する。このとき,透明導電膜18は,上記保護絶縁膜17に設けたコンタクト孔17aと開口17b,17cおよびゲート絶縁膜12の開口12a内にも成膜され,薄膜トランジスタ30のソース電極S上と,データライン端子部DLaおよびゲートライン端子部GLaの下層膜(ソース,ドレイン用金属膜およびゲート用金属膜)16,11の上に積層する。」(段落【0059】),「[工程10]次に,図2(h)に示すように,上記透明導電膜18をフォトリソグラフィ法により画素電極20とデータライン端子部DLaおよびゲートライン端子部GLaの上層膜の形状にパターニングし,TFTパネルを完成する。」(段落【0060】)b上記aの記載及び図面(乙4)によれば,乙4には,?@従来の薄膜トランジスタの製造方法では,i型半導体層5のチャンネル領域の上にブロッキング層8を設け,ブロッキング層8をチャンネル領域を覆う形状にパターニングした後にn型半導体層6及びコンタクト層7とを成膜することにより,n型半導体層6とコンタクト層7をチャンネル領域において切離し分離するものであったが,ブロッキング層8のパターニングの際にそのエッチング液がゲート絶縁膜4に達し欠陥を発生するという問題点があったため,乙4の薄膜トランジスタの製造方法は,i型半導体層の上にブロッキング層を設けることなく,n型半導体層を電気的に分離して薄膜トランジスタを歩留まりよく製造することを目的とするものであること(上記a(a),(b)),?A乙4の薄膜トランジスタの製造方法は,上記問題点を解決する手段として,ゲート絶縁膜12,i型半導体層13,n型半導体層14及びコンタクト層15を順次成膜し(工程2),上記コンタクト層15とn型半導体層14とi型半導体層13とをパターニングし(工程3),ソース,ドレイン用金属膜16を成膜し(工程4),次いでソース,ドレイン用金属膜16をパターニングしてソース,ドレイン電極を形成した(工程5)後に,n型半導体層14の酸化処理を行って,酸化絶縁層14aとし,この酸化絶縁層14aによりn型半導体層14をソース側とドレイン側とに電気的に分離する(工程6)ものであること(上記a(c)ないし(h)),すなわち,n型半導体層14をチャンネル領域においてソース側とドレイン側に切離し分離する手段として,ブロッキング層を設ける工程に代えて,ソース,ドレイン電極を形成した後にn型半導体層14を酸化処理する工程を加えたことが記載されていることが認められる。
このように乙4の薄膜トランジスタの製造方法は,絶縁膜上に形成した半導体膜をパターニングし,この半導体膜パターンの上に成膜された金属膜をパターニングしてソース・ドレイン電極を形成した後に,ソース及びドレイン電極間のチャンネル領域の半導体膜を酸化して絶縁層とする液晶表示装置の製造方法(いわゆるチャネルエッチ型)である。
(イ) 乙5の記載事項a米国特許第5166086号公報(乙5)には,次のような記載がある。
(a)「本発明は,アクティブマトリクス型液晶表示(LCD)装置の画素を駆動するための薄膜トランジスタ(TFT)アレイ及びその製造方法に関する。」(原文1欄14行〜17行の訳文)(b)「図1において,符号1は透明絶縁基板であり,2は基板1上に形成されたゲート電極であり,3は基板1上に形成されたゲート電極取出し端子(ゲート端子)である。」(原文2欄20行〜24行の訳文)(c)「工程1図2aに示すように,ゲート電極2が形成された絶縁基板1上に,プラズマCVDによってゲート絶縁膜4,半導体層5及び保護絶縁層6を形成した。
工程2ポジ型レジスト膜13を保護絶縁層6に塗布し,ゲート電極2をフォトマスクとして使用するために,下側(基板1端)からレジスト膜13に光を照射して露光する。ゲート端子の上方のレジスト膜13の一部は,従来のフォトマスクによって露光される。その後,レジスト膜13は,図2bに示すような・・・パターンを形成するために現像される。その後,図2cに示すように,パターニングされたレジスト膜13をマスクとして使用することによって保護絶縁層6がエッチングされ,レジスト膜13が除去される。」(原文2欄53行〜3欄5行の訳文)(d)「図5において,透明画素電極10は,ソース及びドレイン電極9a及び9bを形成した後に,一部がゲート絶縁層の上に,一部がドレイン電極9bの上に形成される。」(原文3欄65行〜68行の訳文)(e)「図6のTFTアレイは以下の製造工程によって製造できる。
工程1,2図1のTFTアレイの工程1,2と同じである。
工程3プラズマCVDによって,工程2によって形成された製品(図2c)の上に不純物が添加された半導体層7を形成し,不純物が添加された半導体層7の上に第3金属層11を形成する。・・・その後,金属層11の上にレジスト膜16が形成され,図7aに示すような特定のパターンにパターニングされる。
工程4レジスト膜16をマスクとして使用して,金属層11を特定のパターンにパターニングし,図7bに示すように,金属層11をマスクとして使用して,不純物が添加された半導体層7及び半導体層5を特定のパターンにエッチングする。
工程5図7cに示すように,ゲート端子3の上の部分のゲート絶縁膜4を除去する。
工程6工程5によって得られた製品の上に,バリア金属層8を形成し,バリア金属層8の上にソース及びドレイン金属層を形成する。そして,図6に示すように,ソース及びドレイン電極9a及び9bを形成するため,形成されたこれらの層を特定のパターンにパターニングする。・・・図1(「図6」が正しい)のTFTアレイをLCDを駆動するためのTFTアレイとして使用するため,図8〜10に示すように,透明画素電極を形成する必要がある。図8〜10に示す透明画素電極10に関する構造は,図3〜5に示す透明画素電極10の構造に対応するので,これらの説明は省略する。」(原文4欄22行〜67行の訳文)b上記aの記載及び図面(乙5)を総合すれば,乙5には,?@工程1で,ゲート電極2及びゲート端子3が形成された基板1上に,ゲート絶縁膜4,半導体層5及び保護絶縁層6を順次形成した後に,工程2で,ポジ型レジスト膜13を保護絶縁層6に形成し,ゲート電極2をフォトマスクとして使用して下側(基板1側)からレジスト膜13に光を照射して露光すると同時に,従来のフォトマスクによって上からも露光して,レジスト膜13をパターニングし(図2b),パターニングされたレジスト膜13をマスクとして保護絶縁層6のエッチングを行い,この保護絶縁層6のエッチングを行う際,保護絶縁層6の一部がゲート端子3の上方の半導体層5の上に残ること(図2c),?A後続の工程4で,半導体層5及びその上に形成された不純物が添加された半導体層7を特定のパターンにエッチングする際に,保護絶縁層6の真下にある半導体層5のパターンが,ゲート端子3を露出させる開口の周囲(ゲート絶縁膜4上)に残ること(図7b),?B工程5で,ゲート絶縁膜4を除去してゲート端子3を露出させること(図7c),?C工程6で,「工程5によって得られた製品の上に」,バリア金属層8,ソース及びドレイン金属層を形成し,これらの金属層をパターニングして,ソース及びドレイン電極9a及び9bを形成すること(図6)が記載されていることが認められる。
一方で,乙5には,ゲート端子3を露出させる開口の周囲に半導体層5が残された目的,作用効果についての記載はないことに照らすならば,上下方向から光を照射して,パターニングされたレジスト膜をマスクとしてエッチングされた保護絶縁層6を残したままさらに半導体層5をエッチングした結果,保護絶縁層6の真下に形成されていた半導体層5がゲート絶縁膜4上に残されたというにすぎず,この半導体層5を残すことに特段の技術的意義があるものとは認められない。
(ウ) 相違点2の容易想到性前記(イ)bのとおり,乙5には,半導体層5のパターンがゲート端子3を露出させる開口の周囲(ゲート絶縁膜4上)に残る構成が示されている。
他方,乙4記載発明は,前記(ア)bのとおり,絶縁膜上に半導体膜,金属膜を形成し,ソース・ドレイン電極を形成した後,ソース及びドレイン電極間の「チャンネル領域」(チャネル領域)の半導体膜を酸化して絶縁層とするチャネルエッチ型の液晶表示装置の製造方法である。これに対し乙5記載発明は,前記(イ)bのとおり,基板1上に,ゲート絶縁膜4,半導体層5及び保護絶縁層6を形成し,ソース及びドレイン電極間のチャネル領域にエッチングがされた保護絶縁層を形成した後に,ソース及びドレイン電極を形成する液晶表示装置の製造方法(いわゆるチャネル保護膜型)である。上記のように乙4記載発明では,チャネル保護膜である保護絶縁層6を形成する構成(段階)は存在しないのであるから,保護絶縁層6の真下に半導体層5が残るという乙5記載の構成を組み合わせることについての契機又は動機付けとなるものがない。
したがって,乙4記載発明に乙5の上記構成を適用する契機ないし動機付けとなるものがないから,当業者といえども乙4記載発明に相違点2に係る本件発明1の構成を適用することを容易に想到することができたものとは認められない。
そうすると,その余の点について判断するまでもなく,当業者が乙4記載発明に乙5記載発明及び周知技術を適用して本件発明1を容易に想到することができたものとは認められない。
イ本件発明1の進歩性の欠如?A(乙5を主たる刊行物とするもの)について被告は,?@本件発明1と乙5記載発明は,相違点イないしハにおいてのみ相違し,その余の点は一致している,?A相違点イに係る本件発明1の構成は,本件出願の優先権主張日当時周知であり,乙4記載発明に上記周知技術を適用して相違点イに係る本件発明1の構成とすることは,当業者であれば容易に想到することができた,?B乙4には,相違点ロ,ハに係る本件発明1の構成が開示されており,乙5記載発明に乙4の開示事項を適用して相違点ロ,ハに係る本件発明1の構成とすることは,当業者であれば容易に想到することができた旨主張する。
しかし,被告の主張は,以下のとおり理由がない。
(ア)被告は,本件発明1と乙5記載発明は,相違点イないしハにおいてのみ相違し,その余の点は一致している旨主張する。
しかし,本件発明1と乙5記載発明は,相違点イないしハのほかに,以下の点でも相違する。
すなわち,本件発明1と乙5記載発明とは,本件発明1では,「前記半導体膜パターンを形成する段階及びソース電極及びドレイン電極を形成する段階のうち,少なくとも何れか一段階は,前記パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の前記第2金属膜の上に,前記半導体膜あるいは第3金属膜のうち少なくとも何れか一つが残る段階」(構成要件K)を含むのに対し,乙5記載発明では,前記ア(イ)bのとおり,工程2で,保護絶縁層6のエッチングを行う際,保護絶縁層6の一部がゲート端子3の上方の半導体層5の上に残り,さらに,工程4で,半導体層5及びその上に形成された不純物が添加された半導体層7を特定のパターンにエッチングする際に,保護絶縁層6の真下にある半導体層5のパターンが,ゲート端子3を露出させる開口の周囲(ゲート絶縁膜4上)に残るというものであり,ゲート端子3を露出させる開口の周囲(ゲート絶縁膜4上)に残る段階が本件発明1の段階と異なる点で相違する。
そして,前記ア(イ)bのとおり,乙5記載発明においてゲート端子3を露出させる開口の周囲に半導体層5を残すことに特段の技術的意義があるものとは認められないから,乙5記載発明の半導体層5が残る段階を上記相違点に係る本件発明1の構成(構成要件Kの段階)に変更するための契機又は動機付けとなるものがない。
したがって,乙5記載発明において,上記相違点に係る本件発明1の構成を採用することを当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
(イ)次に,被告は,乙4には,相違点ロに係る本件発明1の構成(構成要件Gにおいて,保護膜が形成され,構成要件Hにおいて,前記保護膜及び絶縁膜を写真蝕刻してコンタクトホールを形成している構成)及び相違点ハに係る本件発明1の構成(構成要件Jにおいて,ゲートパッドと接続される第2画素電極パターンを形成する構成)がいずれも開示されており,乙4には,チャネル保護膜型のTFT(薄膜トランジスタ)に対し,乙4の製造方法を適用する示唆が存在することを前提に,本件発明1は,乙5と乙4との組合せにより当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。
しかし,乙4記載の薄膜トランジスタの製造方法(乙4記載発明)は,前記ア(ア)bのとおり,i型半導体層の上にブロッキング層を設けることなく,薄膜トランジスタを歩留まりよく製造することを目的とし,n型半導体層14をチャンネル領域において切離し分離する手段として,ブロッキング層を設ける工程に代えて,ソース,ドレイン電極をパターニングした後にn型半導体層14を酸化処理する工程を加えたものであり,チャンネル領域にブロッキング層に相当する保護絶縁膜6を設ける乙5記載発明に,乙4記載発明を組み合わせる契機又は動機付けとなるものがない。
また,仮に乙5記載発明に乙4記載発明を組み合わせる場合には,乙5記載発明に設けられている保護絶縁膜6が不要となるが,保護絶縁膜6がない場合には,ゲート端子3を露出させるためのエッチングを行う際に保護絶縁膜6をマスクとすることはできず,半導体膜5を残すこともできないから,乙5記載発明は,ゲート端子3を露出させる開口の周囲に半導体膜5を残すという構成(構成要件K)を有しないこととなる。
したがって,乙5記載発明において,乙4記載の構成を適用して相違点ロ,ハに係る本件発明1の構成とすることを当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
(ウ)そうすると,その余の点について判断するまでもなく,当業者が乙5記載発明に乙4記載発明及び周知技術を適用して本件発明1を容易に想到することができたものとは認められない。
ウ まとめ以上のとおり,乙4記載発明,乙5記載発明及び周知技術に基づいて,本件発明1を容易に想到することができたとの被告の主張は,理由がない。そして,請求項1を引用する本件発明2ないし4を容易に想到することができたとの被告の主張も,これと同様に理由がない。
したがって,被告主張の無効理由4は理由がない。
(5) 小括以上のとおり,被告主張の無効理由1ないし4はいずれも理由がないから,特許法104条の3第1項の規定により本件特許権の行使が制限されるとの被告の主張は理由がない。
3 結論(1) 差止めの必要性前記1のとおり,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1ないし4の技術的範囲に属するから,被告によるイ号液晶モジュールを搭載するイ号液晶テレビの製造,販売,販売の申出は,本件特許権の侵害に当たる。
そして,被告は,イ号液晶テレビを生産し,譲渡し,貸し渡し,輸出又は輸入し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)を行って原告の本件特許権を侵害するおそれがあるものと認められるから,原告は,被告に対し,上記各行為の差止めを求める必要性がある。
また,被告が占有するイ号液晶テレビについて,原告は,被告に対し,侵害予防に必要な行為として廃棄を求めることができる。
(2) まとめ以上によれば,原告の請求は,いずれも理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 関根澄子
裁判官 杉浦正典
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