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関連審決 訂正2006-39053
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20ワ25354特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成20ワ14858特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成20ワ2387特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成20ワ4394損害賠償請求事件 判例 特許
平成20ワ14530特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 新規性 /  共同研究 /  29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  慣用技術 /  公知技術 /  上位概念 /  技術的範囲 /  発明の詳細な説明 /  存続期間 /  出願経過 /  参酌 /  発明の要旨認定 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  間接侵害 /  構成要件 /  のみ用いる /  物の生産に用いる物 /  課題解決に不可欠(課題の解決に不可欠) /  侵害 /  損害額 /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  発明の範囲 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 /  要旨変更 /  審決確定(審決が確定) / 
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事件 平成 20年 (ワ) 4056号 損害賠償等請求事件
原告有限会社池上インキュベーター
訴訟代理人弁護 士松本司松本好史
被告任天堂株式会社
訴訟代理人弁護 士美勢克彦秋山佳胤
訴訟代理人弁理 士深見久郎森田俊雄 酒井將行 中田幸治
補佐人弁理士山田義人
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2009/03/05
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原 告 の 請 求 を 棄 却 す る 。
2訴 訟 費 用 は 原 告 の 負 担 と す る 。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は原告に対し,2億円及びこれに対する平成20年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2訴訟費用は被告の負担とする。
3仮執行宣言第2事案の概要等1事案の概要本件は,発明の名称を「ポータブル型画像表示装置」とする発明の特許権者である原告が,被告の製造販売するゲーム機及びこれに装着するゲームカートリッジは上記特許発明技術的範囲に属し,同製品を製造販売する被告の行為は原告の有する上記特許権を侵害するとして,民法709条不法行為に基づく損害賠償の内金として2億円及びこれに対する不法行為の後である平成20年3月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
末尾に証拠等を掲記したものを除き,当事者間に争い 2争いのない事実等(がない )。
1原告の有する特許()原告は,下記の特許(以下「本件特許」といい,その請求項1の発明を「本件特許発明1 ,請求項3の発明を「本件特許発明3 ,請求項5の発 」 」明を「本件特許発明5」という。また,これらを併せて「本件各特許発明」ともいう )の特許権者であった(平成20年5月8日存続期間満了により 。
特許権は消滅した。本件特許に係る特許権を,以下「本件特許権」という。
また,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書」という。。)登 録 番 号第2645306号発明の名称ポータブル型画像表示装置出願日昭和63年5月9日出 願 番 号特願昭63-112972号登録日平成9年5月9日特許請求の範囲「 請求項1】画像表示用の液晶表示部を複数有し,前記複数の液晶表示 【部のうち,少なくとも1つの液晶表示部を折りたたみ可能に設けてなるポータブル型画像表示装置であって,前記複数の液晶表示部のうち,少なくとも1つの液晶表示部に画像表示させ,他の少なくとも1つの液晶表示部の画像表示を実質的に停止させることが可能なポータブル型画像表示装置(本件特許発明1) 。」「 請求項3】画像表示用の液晶表示部を複数有し,前記複数の液晶表示 【部のうち,少なくとも1つの液晶表示部を折りたたみ可能に設けてなるポータブル型画像表示装置であって,前記液晶表示部に表示される画像のサイズを変更可能とすることを特徴とするポータブル型画像表示装置(本件特許発明3) 。」「 請求項5】画像表示用の液晶表示部を複数有し,前記複数の液晶表示 【部のうち,少なくとも1つの液晶表示部を折りたたみ可能に設けてなるポータブル型画像表示装置であって,前記液晶表示部に表示される画像の表示方向及び画像のサイズを変更可能とすることを特徴とするポータブル型画像表示装置(本件特許発明5) 。」2構成要件の分説()本件各特許発明は,次の構成要件に分説することができる(以下,本件各特許発明の各構成要件を,以下の符号を付して「構成要件A」などという。。)ア本件特許発明1A画像表示用の液晶表示部を複数有し,B前記複数の液晶表示部のうち,少なくとも1つの液晶表示部を折りたたみ可能に設けてなるポータブル型画像表示装置であって,C1前記複数の液晶表示部のうち,少なくとも1つの液晶表示部に画像表示させ,他の少なくとも1つの液晶表示部の画像表示を実質的に停止させることが可能なDポータブル型画像表示装置。
イ本件特許発明3A画像表示用の液晶表示部を複数有し,B前記複数の液晶表示部のうち,少なくとも1つの液晶表示部を折りたたみ可能に設けてなるポータブル型画像表示装置であって,C3前記液晶表示部に表示される画像のサイズを変更可能とすることを特徴とするDポータブル型画像表示装置。
ウ本件特許発明5A画像表示用の液晶表示部を複数有し,B前記複数の液晶表示部のうち,少なくとも1つの液晶表示部を折りたたみ可能に設けてなるポータブル型画像表示装置であって,C5前記液晶表示部に表示される画像の表示方向及び画像のサイズを変更可能とすることを特徴とするDポータブル型画像表示装置。
3被告の行為()ア被告は,別紙被告ゲーム機目録記載のゲーム機(名称「ニンテンドーDSLite :以下「本件ゲーム機」という )を日本国内において販 」 。
売している。
イ被告は,以下に掲げる本件ゲーム機用のゲームカートリッジ等(以下,これらを併せて「被告各製品」ともいう )を日本国内において製造販売 。
している。
イ号製品(ア)別紙イ号製品目録記載の製品(名称「ワンセグ受信アダプタDSテレビ :以下「イ号製品」という ) 」 。
ロ号製品(イ)別紙ロ号製品目録記載の製品(名称「DS文学全集 :以下「ロ号製 」品」という )。
ハ号製品 (ウ)別紙ハ号製品目録記載の製品(名称「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修脳を鍛える大人のDSトレーニング :以」下「ハ号製品」という )。
ニ号製品(エ)別紙ニ号製品目録記載の製品(名称「ニンテンドーDSブラウザー :以下「ニ号製品」という ) 」 。
4本件ゲーム機及び被告各製品の構成等()ア本件ゲーム機の構成は別紙被告ゲーム機目録の2項に記載のとおりである。
イ被告各製品の構成及びこれらを本件ゲーム機に装着させた場合の本件ゲーム機の動作については,別紙イ号製品目録ないしニ号製品目録の各2項及び3項にそれぞれ記載のとおりである。
5対比()本件ゲーム機は本件各特許発明構成要件D(ポータブル型画像表示装置であること)を充足する(弁論の全趣旨 。)6本件特許の出願経過()ア当初明細書等の記載本件特許出願の願書に添付した明細書及び図面(以下,併せて「当初明細書等」という )に記載された事項は,別紙明細書対比表の「当初明細 。
書」欄に記載のとおりである。
イ当初明細書等の補正原告は,平成5年6月28日付けの手続補正書(乙22 ,平成7年9 )月18日の手続補正書(乙25)及び平成8年4月15日付けの手続補正書(乙28)により,当初明細書等の記載を,別紙明細書対比表の「本件明細書(訂正前 」欄の記載(ただし,下線を付した部分)に補正し(以 )下「本件補正」という,その内容で特許査定された(なお,図面は補 。)正されていない。。)ウ訂正原告は,平成18年4月12日,別紙明細書対比表の「本件明細書(訂正前 」欄の「表示部」を「液晶表示部」に訂正することなどを内容とす )る訂正審判を請求し(訂正2006-39053号 ,同年6月9日,訂 )正を認める旨の審決が確定した。
3争点1本件ゲーム機と被告各製品は本件各特許発明の各構成要件を充足するか()(争点1)2間接侵害の成否(争点2)()3本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものか(争点3) ()アサポート要件違反(争点3-1)本件特許に係る特許請求の範囲の記載は平成2年法律第30号の改正前の特許法36条4項1号(以下「旧特許法36条4項1号」という )に。
定める要件を充たしているか。
<判決注:旧特許法36条4項>「4第2項第4号の特許請求の範囲の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。
一特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項(以下「請求項」という )に区分してあること。 。
三その他通商産業省令で定めるところにより記載されていること 」。
進歩性の欠如(争点3-2)本件各特許発明は特開昭61-241786号公報(乙10:以下「乙10文献」という )に記載された発明等に基づいて当業者が容易に発明
することができたものか。
要旨変更による新規性欠如(争点3-3)本件補正のうち,以下の(ア)ないし(ウ)の補正は平成5年法律第26号による改正前の特許法40条(以下「旧特許法40条」という。また,同改正前の特許法41条を以下「旧特許法41条」という )に定める「願 。
書に添附した明細書又は図面…の要旨を変更するもの」に当たらないか。
要旨変更1(争点3-3-1)(ア)「画像表示用の表示部を複数有し」及び「前記複数の表示部のうち,少なくとも1つの表示部を折りたたみ可能に設けてなる」とする補正要旨変更2(争点3-3-2)(イ)「表示部の画像表示を実質的に停止させる」とする補正要旨変更3(争点3-3-3)(ウ)2つのテレビ番組を2つの液晶表示部に拡大表示するとの補正<判決注:旧特許法40条>「第40条願書に添附した明細書又は図面について出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前にした補正がこれらの要旨を変更するものと特許権の設定の登録があった後に認められたときは,その特許出願は,その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす 」。
4損害の額(争点4) ()第3当事者の主張1争点1(構成要件の充足性)【原告の主張】1イ号製品と本件ゲーム機()ア構成イ号製品を本件ゲーム機に装着して本件ゲーム機を作動させると,次の構成となる。
a別紙被告ゲーム機目録の2「被告ゲーム機の構成」1のとおりである。
b同2及び3のとおりである。
c1上液晶ディスプレイ画面はテレビ映像(画像)を表示し,下液晶ディスプレイ画面に「チャンネル操作イメージ (画像)を表示させた状 」態(別紙イ号製品目録添付図1-1(a):以下別紙イ号製品目録ないしニ号製品目録添付の各図については,単に「図1-1(a)」などという )で,一定時間(約90秒間)操作を行わないでいると,自動的に 。
下液晶ディスプレイのバックライトが消灯する(図1-1(b) 。しか)し,図1-1(b)の状態において,下液晶ディスプレイのLCDユニット及び表示制御デバイスには電力が供給されていて,どちらも動作しており,下液晶ディスプレイ画面に黒一色のイメージを表示している。
(別紙イ号製品目録の3?@及び?A)c5(c3)ユーザは,映像の縦横の比率が16:9(表示タイプ1)と4:3(表示タイプ2)の2種類の表示タイプ,及び「縦向き」と「横向き」のいずれかを任意に選択することができる。表示タイプ及び「縦向き」と「横向き」の各設定に応じて,ワンセグ放送の映像ソースが16:9の場合は,同目録の3?Dの(i)ないし(iv)のいずれかのテレビ映像データを選択的に生成する。
また,ワンセグ放送の映像ソースが4:3の場合は,ワンセグ放送に含まれる映像ソース(320×240ドット)をサンプリング処理(間引き処理)することにより,表示タイプ及び「縦向き」と「横向き」の各設定に応じて,256×192ドット,192×144ドット又は144×108ドットのいずれかのテレビ映像データを生成する (同目。
録の3?B〜?F)イ充足性構成要件A (ア)上記構成aの上液晶ディスプレイ及び下液晶ディスプレイは,構成要件Aの「画像表示用の液晶表示部」に該当する。
よって,上記構成aは本件各特許発明構成要件Aを充足する。
構成要件B(イ)上記構成bの上液晶ディスプレイと下液晶ディスプレイとがそれぞれ内側になる向きに閉じた状態を0°として180°まで開くことが可能であることは,構成要件Bの「前記複数の液晶表示部のうち,少なくとも1つの液晶表示部を折りたたみ可能に設けてなる」に該当する。
よって,上記構成bは本件各特許発明構成要件Bを充足する。なお,被告は,上液晶ディスプレイと下液晶ディスプレイとが「当接」していないから,構成要件A及びBを充足しないと主張するが,この主張は旧特許法36条4項1号に違反するとの誤った主張を前提とした技術的範囲の解釈に基づくものであり,争う。
構成要件C1(ウ)上記構成c1の「上液晶ディスプレイ画面はテレビ映像(画像)を表示し」は,構成要件C1の「少なくとも1つの液晶表示部に画像表示させ」に相当し,下液晶ディスプレイ画面のバックライトが消灯し,黒一色のイメージを表示するとは 「チャンネル操作イメージ」の画像表示 ,を停止していることになるから,構成要件C1の「他の少なくとも1つの液晶表示部の画像表示を実質的に停止させることが可能な」に該当する。
よって,上記構成c1は本件特許発明1の構成要件C1を充足する。
なお,被告の構成要件C1の解釈は,本件明細書の記載不備及び要旨変更との誤った主張に基づく解釈であり,争う。
構成要件C5及びC3(エ)上記構成c5(c3)の256×192ドットや192×144ドット等のドット数は,上液晶ディスプレイ画面に表示されるテレビ映像(画像)のサイズに関係するところ,図1-2(a)に「横向き」で「標準 ,図1-2(b)に「横向き」で「拡大 ,また,図1-3(a)に「縦 」 」向き」で「標準 ,図1-3(b)に「縦向き」で「拡大」と付記されて 」いるように 「表示される画像のサイズを変更可能」であり,かつ,上 ,液晶ディスプレイ画面及び下液晶ディスプレイ画面の表示画像の表示方向を「横向き」から「縦向き」に,又はその逆に変更することができることは 「表示される画像の表示方向を変更可能」に該当する。 ,よって,上記構成c5(c3)は,本件特許発明5の構成要件C5を充足するとともに,本件特許発明3の構成要件C3を充足する。なお,被告の構成要件C3及びC5の解釈は,本件明細書の記載不備及び要旨変更との誤った主張に基づく解釈であり,争う。
2ロ号製品と本件ゲーム機()ア構成ロ号製品を本件ゲーム機に装着して本件ゲーム機を作動させると,次の構成となる。
aイ号製品の構成aと同じ。
bイ号製品の構成bと同じ。
c3別紙ロ号製品目録の3?Aのとおり。
c5同目録の3?Bのとおり。
イ充足性構成要件A及びB(ア)上記構成a及びbが本件特許発明3及び5の構成要件A及びBを充足することはイ号製品と同じである。
構成要件C3(イ)上記構成c3の「設定により,文章で用いるフォントを,大きい文字のフォントと,小さい文字のフォントとで切り替えることができる」ことは,構成要件C3の「液晶表示部に表示される画像のサイズを変更可能とすること」に該当する。
よって,上記構成c3は本件特許発明3の構成要件C3を充足する。
構成要件C5(ウ)上記構成c5の「設定により,右利きの人が操作するのに適した表示方法と,左利きの人が操作するのに適した表示方法とを切り替えることができる」ことは,構成要件C5の「液晶表示部に表示される画像の表示方向…を変更可能とすること」に該当する。
よって,上記構成c3も併せると,本件特許発明5の構成要件C5を充足する。
3ハ号製品と本件ゲーム機()ア構成ハ号製品を本件ゲーム機に装着して本件ゲーム機を作動させると,次の構成となる。
aイ号製品の構成aと同じ。
bイ号製品の構成bと同じ。
c3別紙ハ号製品目録の3?Aのとおり。
c5同目録の3?Bのとおり。
イ充足性構成要件A及びB(ア)上記構成a及びbが本件特許発明3及び5の構成要件A及びBを充足することはイ号製品と同じである。
構成要件C3(イ)上記構成c3の「設定により 『名作音読』の文章で用いるフォント ,を,大きい文字のフォントと,小さい文字のフォントとで切り替えることができる 」ことは,構成要件C3の「液晶表示部に表示される画像 。
のサイズを変更可能とすること」に該当する。
よって,上記構成c3は,本件特許発明3の構成要件C3を充足する。
構成要件C5(ウ)上記構成c5の「設定により,右利きの人が操作するのに適した表示方法と,左利きの人が操作するのに適した表示方法とを切り替えることができる」ことは,構成要件C5の「液晶表示部に表示される画像の表示方向…を変更可能とすること」に該当する。
よって,上記構成c3も併せると,本件特許発明5の構成要件C5を充足する。
4ニ号製品と本件ゲーム機()ア構成ニ号製品を本件ゲーム機に装着して本件ゲーム機を作動させると,次の構成となる。
aイ号製品の構成aと同じ。
bイ号製品の構成bと同じ。
c3ユーザが「2画面モード」と「縦長モード」のうちのいずれかを選択できる。
図4-1( ズーム』で『50%』を選択 ,図4-2( ズーム』で 『 )『『100%』を選択)及び図4-3( ズーム』で『150%』を選 『択)で示す「2画面モード」では,本件ゲーム機の上液晶ディスプレイ又は下液晶ディスプレイのうちの一方の液晶ディスプレイ画面(上記各図においては下液晶ディスプレイ画面)に縮小したより広い範囲の文字や画像からなるウェブページを表示し,その一方液晶ディスプレイ画面に表示されたウェブページの一部の文字や画像を拡大して他方液晶ディスプレイ画面(上記各図においては上液晶ディスプレイ画面)に表示する 『ズーム』の設定を変更することにより,個々の文字やイメージを 。
大きく又は小さくすることができる。このとき 『ズーム』に応じて文 ,字の折返し位置やイメージのレイアウトが変わる。例えば,図4-1〜図4-3の※1では,文字の折り返しが変化している。なお,図4-1に赤枠で示した「タイトルバー」や「ツールバーのボタン」の大きさは変更されない (別紙ニ号製品目録の3?A〜?C) 。
図4-4( ズーム』で『50%』を選択 ,図4-5( ズーム』で 『 )『『100%』を選択)及び図4-6( ズーム』で『150%』を選 『択)で示す「縦長モード」では,上液晶ディスプレイ画面から下液晶ディスプレイ画面に連続してウェブページのイメージを生成し,本件ゲーム機の上液晶ディスプレイ画面及び下液晶ディスプレイ画面の両方を用いて表示する 『ズーム』の設定を変更することにより,個々の文字や 。
イメージを大きく又は小さく液晶ディスプレイ画面に表示することができる。
このとき 『ズーム』に応じて文字の折返し位置やイメージのレイア ,ウトが変わる場合もあれば,変わらない場合もある。例えば図4-4〜図4-6の※2では文字の折り返しが変化しており,※3では,イメージのレイアウトが変化しているが,文字の折り返し位置もイメージのレイアウトも変化しない場合がある。なお,例えば図4-4〜図4-6における※4のように 「縦長モード」においては 『ズーム』の設定を , ,変更しても,大きさが変化しないイメージがある。また 「縦長モー ,ド」においても「2画面モード」の場合と同様 「タイトルバー」や ,「ツールバーのボタン」の大きさは変更されない (同目録の3?D, 。
?E)イ充足性構成要件A及びB (ア)上記構成a及びbが本件特許発明3及び5の構成要件A及びBを充足することはイ号製品と同じである。
構成要件C3(イ)上記構成c3の「 2画面モード』を選択すると,本件ゲーム機の下 『液晶ディスプレイ画面には縮小したより広い範囲の文字や画像が表示されるとともに,上液晶ディスプレイ画面には下液晶ディスプレイ画面の一部の文字や画像が拡大して表示される 『縦長モード』を選択すると, 。
本件ゲーム機の上液晶ディスプレイ画面から下液晶ディスプレイ画面にウェブページのイメージを連続した文字や画像で表示される。また,上液晶ディスプレイ画面及び下液晶ディスプレイ画面に表示される文字や画像の表示サイズは,いずれのモードでも『ズーム』の設定を変更することにより,100%のほか,50%若しくは80%に縮小し,又は,120%若しくは150%に拡大することができること」は,構成要件C3の「液晶表示部に表示される画像のサイズを変更可能とすること」に該当する。
よって,上記構成c3は,本件特許発明3の構成要件C3を充足する。
5まとめ()以上のように,イ号製品を装着して作動させた本件ゲーム機は本件特許発明1,3及び5の,ロ号製品を装着して作動させた本件ゲーム機は本件特許発明3及び5の,ハ号製品を装着して作動させた本件ゲーム機は本件特許発明3及び5の,ニ号製品を装着して作動させた本件ゲーム機は本件特許発明3の,各技術的範囲に属する。
【被告の主張】1本件ゲーム機が構成要件A,Bを充足するとの点は,否認ないし争う。
()ア構成要件A及び構成要件Bの解釈構成要件A「画像表示用の液晶表示部を複数有し」について,発明の (ア)詳細な説明に記載されているのは,1つの液晶ディスプレイを当接する複数の液晶表示部により構成するということであり 「液晶表示部」に ,ついての発明の詳細な説明の記載は,各々が当接することにより1つの液晶ディスプレイを構成するということであって,それ以外の記載はない。
構成要件B「前記複数の液晶表示部のうち,少なくとも1つの液晶表(イ)示部を折りたたみ可能に設けてなる」について,発明の詳細な説明に記載されているのは,上記構成要件Aの1つの液晶ディスプレイを複数の液晶表示部で構成して,その液晶表示部から折りたたむことにより,液晶ディスプレイそのものを折りたたみ可能とすることであり,それ以外の記載はない。
しかるに,構成要件A,Bをその文言どおりに読むと,単にポータブ(ウ)ル型画像表示装置が複数の液晶表示部を有し,筐体が折りたたみ可能であればよいかの如き記載となっており,本件特許出願時の特許請求の範囲をかかる特許請求の範囲変更した本件補正は明細書の要旨を変更したものである(後記5【被告の主張。しかし,仮に本件補正が要旨 】)変更でないとするならば,要旨変更にならないように本件各特許発明の範囲を解釈すべきである。
そうすると,構成要件A「液晶表示部を複数有し」とは,1つの液晶ディスプレイを構成する複数の液晶表示部が当接しているということと解釈すべきであり,同様に,構成要件B「液晶表示部を折りたたみ可能に設けてなる」とは,1つの液晶ディスプレイが複数の液晶表示部により構成され,液晶ディスプレイそのものを折りたたみ可能とすることと解釈すべきである。
イ本件ゲーム機の構成a上液晶ディスプレイ(縦約46?o,横約61?o,バックライト付き透過型TFTカラー液晶ディスプレイ)が設けられた第1筐体と,下液晶ディスプレイ(縦約46?o,横約61?o,タッチパネル付き,バックライト付き透過型TFTカラー液晶ディスプレイ)が設けられた第2筐体とを有し,上液晶ディスプレイの下辺と下液晶ディスプレイの上辺の間の縦方向の距離は,2つの筐体を180°に開いた状態において液晶ディスプレイの縦方向のサイズの50%以上(約24?o)である。
b第1筐体と第2筐体とはヒンジ部を介して連結され,上液晶ディスプレイと下液晶ディスプレイとがそれぞれ内側になる向きに閉じた状態を0°として180°まで開くことが可能である(別紙被告ゲーム機目録の本体外観図(a)及び(b) 。)ウ構成要件Aの非充足性上記構成aのとおり,上液晶ディスプレイと下液晶ディスプレイとは当接しておらず,本件ゲーム機は構成要件Aを充足しない。
構成要件Bの非充足性上記構成bにおいても,液晶ディスプレイを備える第1筐体と第2筐体とがヒンジ部を介して連結され,開閉可能であるというにすぎず,当接する液晶ディスプレイが折りたたみ可能ではない。よって,本件ゲーム機は構成要件Bを充足しない。
2本件ゲーム機に被告各製品を装着して作動させた場合に,構成要件C1,()C3及びC5を充足するとの主張は否認ないし争う。
構成要件C1,C3及びC5の解釈構成要件C1(ア)本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているのは,映像信号を2分割(あるいは3分割)し,1つの画像を2分割(あるいは3分割)して,2つ(あるいは3つ)の液晶表示部に表示することにより,複数の液晶表示部が当接して構成される液晶ディスプレイに1つの画像を表示するという技術思想のみである。
かかる技術思想からすれば,構成要件C1の「少なくとも1つの液晶表示部に画像表示させ,他の少なくとも1つの液晶表示部の画像表示を実質的に停止させる」とは,映像信号の分割の停止を前提とし,いずれか1つの液晶表示部のみに1つの画像の映像信号全部を送信して1つの画像全体を表示し,他の液晶表示部には映像信号を送信せずに,画像表示を停止するということである。
構成要件C3(イ)上記(ア)のような本件明細書の技術思想によれば,構成要件C3の「液晶表示部に表示される画像のサイズを変更可能とする」も映像信号の分割及びその停止を必須の前提とすると解される。すなわち,2分割を例にとると,映像信号の分割を行っている場合に,2つの液晶表示部にまたがって1つの画像を表示していたものが,映像信号の分割を停止することにより,1つの液晶表示部にそれまでの2分の1に「縮小」した1つの画像全体を表示することが「画像のサイズを変更」の意味である。これを逆に見れば,映像信号の分割を停止して1つの液晶表示部に1つの画像全体を表示していた際に,映像信号を分割することにより,両液晶表示部にそれぞれ「半分の画像を拡大」して表示するのである。
このように,1つの画像の縮小と分割した画像の拡大が,構成要件C3にいう「液晶表示部に表示される画像のサイズを変更可能とする」ことにほかならない。
よって,構成要件C3「前記液晶表示部に表示される画像のサイズを変更可能とする」とは,映像信号の分割と分割の停止を必須の前提とし,2つの液晶表示部にまたがって1つの画像が分割して表示されている時に,映像信号の分割を停止する場合には1つの液晶表示部に画像のサイズを縮小して表示し,他の液晶画面の画像表示を停止するということである。逆に,1つの液晶表示部に1つの画像が表示されているときに映像信号を分割する場合には,複数の液晶表示部に分割した画像を拡大して表示するということである。
構成要件C5(ウ)上記(イ)のように,映像信号の分割の停止に伴い必然的に画像サイズは縮小するが,このとき,画像の表示方向を変更しなければ縦に半分の画面となり,画面の縦横のアスペクト比も変更せざるを得ない。そこで,1つの液晶表示部の画面一杯に縦横のサイズに適合させて表示するためには「画像の表示方向及び画像のサイズを変更する」ことが必要になる。
よって,構成要件C5「画像の表示方向及び画像のサイズの変更」とは,映像信号を分割して複数の液晶表示部に分割した画像を表示している時に,分割を停止して1つの液晶表示部の画像表示を停止し,他の液晶表示部に画像全体を表示する場合に,画像を縮小すると共に表示方向を変更して表示することである(別紙明細書添付の図面第7図〔以下,別紙明細書添付の図面掲記の図面を,各図面に付された符号に対応させて「別紙第7図」などという 〕参照 。逆にいえば,映像信号の分割 。)を停止して1つの液晶表示部に1つの画像が表示されているときに,映像信号の分割を停止して複数の液晶表示部に分割した画像を拡大して表示するとともに,表示方向を変更することである。
以上のとおり 「画像表示の停止 (構成要件C1)及び「画像のサ(エ) ,」イズの変更 (構成要件C3)並びに「画像表示の停止 (構成要件C 」 」1)及び「画像の表示方向及び画像のサイズの変更 (構成要件C5) 」は,いずれも映像信号の分割とその停止とともに,必然的・有機的に分かちがたく結びついているのである。
イイ号製品を本件ゲーム機に装着して作動させた場合に,構成要件C1,C3及びC5を充足するとの主張は,否認ないし争う。
本件ゲーム機にイ号製品を装着した場合の動作(ア)c1別紙イ号製品目録の3?@及び?Aのとおりである。
c3,c5別紙イ号製品目録の3?Bないし?Fのとおりである。
構成要件C1の非充足性(イ)上記構成c1は,上液晶ディスプレイ画面にワンセグのテレビ映像を表示し,下液晶ディスプレイ画面にチャンネルを表示しているときに,時間の経過により,下液晶ディスプレイ画面のバックライトを消灯するというものであるところ,その際,画像生成回路は黒一色の画面を生成しており,下液晶ディスプレイ画面そのものには電力が供給されている。
もとより,映像信号の分割停止も,それに伴う画像の縮小表示もない。
よって,構成要件C1を充足しない。
構成要件C3の非充足(ウ)上記構成c3では,そもそも2つの液晶表示部にまたがって1つの画像を分割して表示していない。まして,映像信号の分割の停止もなく,分割に伴って1つの液晶表示部に画像のサイズを縮小して表示し,他の液晶画面の画像表示を停止することもない。
よって,映像信号の分割と分割の停止を前提とする構成要件C3を充足しない。
構成要件C5の非充足(エ)上記構成c5では,分割した一部の画像の拡大も分割の停止による画像全体の縮小表示というサイズの変更も,それに伴う表示方向の変更も行っていない。そもそも2つの液晶表示部にまたがって1つの画像を分割して表示していない。
よって,構成要件C5を充足しない。
ウロ号製品を本件ゲーム機に装着して作動させた場合に,構成要件C3及びC5を充足するとの主張は,否認ないし争う。
本件ゲーム機にロ号製品を装着した場合の動作(ア)c3別紙ロ号製品目録の3?Aのとおりである。
c5別紙ロ号製品目録の3?Aないし?Cのとおりである。
構成要件C3の非充足(イ)上記構成c3は,そもそも2つの液晶表示部にまたがって1つの画像を分割して表示していない。まして,映像信号の分割の停止もなく,分割に伴って1つの液晶表示部に画像のサイズを縮小して表示し,他の液晶画面の画像表示を停止することもない。
よって,構成要件C3を充足しない。
構成要件C5の非充足(ウ)上記構成c5は,分割した一部の画像の拡大も,分割の停止による画像全体の縮小表示というサイズの変更も,それに伴う表示方向の変更も行っていない。そもそも2つの液晶表示部にまたがって1つの画像を分割して表示していない。
よって,構成要件C5を充足しない。
エハ号製品を本件ゲーム機に装着して作動させた場合に,構成要件C3及びC5を充足するとの主張は,否認ないし争う。
本件ゲーム機にハ号製品を装着した場合の動作(ア)c3別紙ハ号製品目録の3?Aのとおりである。
c5別紙ハ号製品目録の3?Aないし?Cのとおりである。
構成要件C3の非充足(イ)上記構成c3は,そもそも2つの液晶表示部にまたがって1つの画像を分割して表示していない。まして,映像信号の分割の停止もなく,分割に伴って1つの液晶表示部に画像のサイズを縮小して表示し,他の液晶画面の画像表示を停止することもない。単に文字のフォントを変えているだけであり,文章の折り返し位置が変わるのはそのためである。
よって,構成要件C3を充足しない。
構成要件C5の非充足(ウ)上記構成c5は,分割した一部の画像の拡大も,分割の停止による画像全体の縮小表示というサイズの変更も,それに伴う表示方向の変更も行っていない。文字のフォントを変更することと,右利き用と左利き用に文字が正立するように表示しているにすぎない。そもそも2つの液晶表示部にまたがって1つの画像を分割して表示していない。
よって,構成要件C5を充足しない。
オニ号製品を本件ゲーム機に装着して作動させた場合に,構成要件C3及びC5を充足するとの主張は,否認ないし争う。
本件ゲーム機にニ号製品を装着した場合の動作(ア)c3別紙ニ号製品目録の3?Aないし?Eのとおりである。
構成要件C3の非充足(イ)上記構成c3では,そもそも2つの液晶表示部にまたがって1つの画像を分割して表示していない。まして,映像信号の分割の停止もなく,分割に伴って1つの液晶表示部に画像のサイズを縮小して表示し,他の液晶画面の画像表示を停止することもない。個々の文字やイメージを大きく又は小さく表示しているにすぎない。たまたま文字の折り返し位置もイメージのレイアウトも変化しない場合もあるが,基本的には,「 ズーム』に応じて文字の折り返し位置やイメージのレイアウトが変 『わる」のであり,まして,1つの液晶表示部に画像のサイズを縮小して表示したり,複数の液晶表示部に分割した画像を拡大して表示してはいない。
よって,構成要件C3を充足しない。
2争点2(間接侵害の成否)【原告の主張】1特許法101条1号間接侵害()イ号製品は本件特許発明1,3及び5の,ロ号製品及びハ号製品はそれぞれ本件特許発明3及び5の,ニ号製品は本件特許発明3の,それぞれ物の生産にのみ用いる物である。
2特許法101条2号間接侵害()本件ゲーム機は本件特許発明1,3及び5の,イ号製品は本件特許発明1,3及び5の,ロ号製品は本件特許発明3及び5の,ハ号製品は本件特許発明3及び5の,ニ号製品は本件特許発明3の,それぞれ物の生産に用いる物である。
本件各特許発明は,従来技術における見やすさと携帯性という相反する課題を解決した発明であるが,本件ゲーム機並びにイ号製品,ロ号製品,ハ号製品及びニ号製品は,この課題の解決に不可欠な製品である。
原告は被告に対し,平成20年1月10日付内容証明郵便(甲6の1)において,イ号製品は本件特許発明1,3及び5,ロ号製品は本件特許発明3及び5,ハ号製品は本件特許発明3及び5,ニ号製品は本件特許発明3に対して,それぞれ特許法101条2号間接侵害品である旨通知し,同郵便は同月11日,被告に到達した(甲6の2 。)3以上より,イ号製品,ロ号製品,ハ号製品及びニ号製品は,それぞれ特許()法101条1号及び2号の間接侵害品に該当し,本件ゲーム機は同条2号の間接侵害品に該当する。
【被告の主張】1本件ゲーム機について()原告が間接侵害を主張するのは,被告各製品のわずか4つにすぎない。しかるに,現在までに本件ゲーム機に装着するゲームカートリッジ等のタイトル数は,国内向けに限っても1124を数えている。このように原告が侵害を主張し得ない1000を超える膨大なタイトル数のゲームカートリッジを装着することによって,本件ゲーム機は,様々な画像表示,ゲーム表示をすることができるのであり,かかる汎用的なゲーム機は,原告主張を前提としても,本件各特許発明の「課題の解決に不可欠なもの」ということはできず,「日本国内に広く流通しているもの」といえる。
2被告各製品について()原告が指摘する被告各製品の機能は,その極々一部にすぎず,本来的に具備する機能は多種,多様である。したがって,特許法101条1号の「物の生産にのみ用いる」との要件,2号の「課題解決に不可欠」との要件をいずれも充足しない。
3争点3-1(サポート要件違反)【被告の主張】本件特許は,以下のとおり,旧特許法36条4項1号に違反して特許されたものである。
1発明の詳細な説明の記載()本件明細書の発明の詳細な説明において,当業者に開示されているのは,2分割する場合を例にとれば,1つの液晶ディスプレイ装置を2つの当接する液晶表示部により構成し,1つの画像の映像信号を分割回路により2分割し,上記2つの当接する液晶表示部に分割された映像信号を送信し,2分割された画像を2つの液晶表示部にまたがって全体として1つの画像を表示することのみである。このとき 「少なくとも1つの液晶表示部に画像表示さ ,せ,他の少なくとも1つの液晶表示部の画像表示を実質的に停止させる」(構成要件C1)というのは,映像信号の分割を停止して,いずれか1つの液晶表示部のみに1つの画像の映像信号全部を送信して,1つの画像全体を表示するということであり,それ以外の記載はない。また,2つの液晶表示部に半分ずつまたがって表示されていた1つの画像のサイズは,1つの液晶表示部に全てが表示される以上,画像サイズを変更せざるを得ず(構成要件C3 ,このとき,1つの液晶表示部の縦横のアスペクト比に合わせるため )に,画像の表示方向を変えると共に,サイズも変更することとなる(構成要件C5 。)このように,画像表示の停止(構成要件C1 ,画像のサイズの変更(構 )成要件C3)及び画像の表示方向及び画像のサイズの変更(構成要件C5)は,いずれも映像信号の分割とその停止による画像表示に伴って必然的・有機的に分かち難く結びついているというのが,発明の詳細な説明に記載されている唯一の技術思想なのである。
2構成要件C1について()本件特許発明1の構成要件C1は 「少なくとも1つの液晶表示部に画像 ,表示させ,他の少なくとも1つの液晶表示部の画像表示を実質的に停止させることが可能」と記載するのみであり,必須である映像信号の分割も,画像のサイズの変更も記載していない。そのため,映像信号の分割停止を行わず,単に1つの液晶表示部に画像表示し,他の液晶表示部の画像表示を停止するという,上記発明の詳細な説明に記載されていない,あり得ない実施態様をも含み得る記載となっている。
3構成要件C3について()本件特許発明3の構成要件C3は 「液晶表示部に表示される画像のサイ ,ズを変更可能とする」と記載するのみであり,映像信号の分割とその停止とは無関係に,単に画像の一部であれ全部であれ,見た目の画像サイズを変更するありとあらゆる場合を包摂しており,かかる発明は上記発明の詳細な説明に記載されていない。
4構成要件C5について()本件特許発明5の構成要件C5は 「画像の表示方向及び画像のサイズを ,変更可能とする」と記載するのみであり,単に画像の表示方向とサイズを変更するあらゆる場合を包摂しており,かかる発明は上記発明の詳細な説明に記載されていない。
【原告の主張】1当初明細書等の開示内容()当初明細書等で開示された内容は以下のようなものであり,被告が主張するよりも広いものである。
ア当初明細書等の実施例の記載当初明細書等には,実施例として,別紙第3図ないし第5図及び別紙(ア)明細書対比表3頁左欄30行から5頁左欄20行までに示された実施例(以下「第1実施例」という )並びに別紙第6図及び第7図及び別紙 。
明細書対比表6頁左欄21行から7頁左欄21行までに示された実施例(以下「第2実施例」という )が記載されている。 。
第1実施例と第2実施例の電気系回路は,いずれも別紙第5図に示す(イ)構成であり,同図「19」の「1フィールド分(1画面分)を左右に2分割する画像分割/縮小回路(DEV 」及び同回路からの出力に基づ )き,1フィールドの左右各半分の画像を再生するように 「15a」 ,「15b」の左右カラー液晶表示部(LCDE)を駆動する「14a」「14b」の液晶駆動部(DRV)等の構成から,次のような画像再生の例が説明されている。
?@分割/縮小回路のスイッチ19aがOFFのとき別紙第3図又は同第6図のように,左右カラー液晶表示部15a,15bに跨って全部の画像が再生される。
?A分割/縮小回路のスイッチ19aがONのときア左カラー液晶表示部15bに全部の画像が,スイッチ19aがOFFのときの約1/2に縮小されて再生される。
イ別紙第7図のように左カラー液晶表示部15bに全部の画像が,スイッチ19aがOFFのときの約1/2に縮小され,かつ,90度回転を行って再生される。
このように,当初明細書等には,上記?@?Aで説明した,いずれの表示(ウ)及びその切換も可能であることが開示されている。
イ特公昭50-32009号公報(乙29)の記載当初明細書等(別紙明細書対比表10頁左欄6行から10行)で引用されている特公昭50-32009号公報(乙29:以下「乙29公報」という )に記載のスイッチング回路を利用することにより,本件各特許発 。
明の分割/縮小回路を用いることなく,1つ1つのブラウン管に別々のTV放送番組の画面を,それぞれを「きちんと」表示することができ,また,その1つ又は複数のブラウン管の映像を映出させないようにすることもできる。
すなわち,一方の画像表示を停止させることと,本件各特許発明の分割/縮小回路の有無とは,必ずしも関係しないものである。
公知技術当初明細書等(別紙明細書対比表5頁左欄24行から30行)によれば,画像の分割,縮小,拡大,又回転などの技術は慣用技術であって,これらの技術を本件各特許発明に適用できると説明されている。
エ以上,当初明細書等が開示している技術は,第1実施例及び第2実施例での上記の分割,縮小,拡大,回転などの技術のほか,乙29公報の発明の技術,更には慣用技術を開示しているものであり,本件各特許発明は,多種多様な画像の処理技術を含むものである。
2サポート要件について()発明の詳細な説明は,発明の開示として当業者に対してなされるものであるから,出願時点での技術水準を前提にした記載がなされており,しかも,本件では当初明細書等から,乙29公報に記載された発明,更には慣用技術を引用している。それにもかかわらず,これを無視して,第1実施例及び第2実施例の構成しか開示がないとする被告の主張は当を得ない。
4争点3-2(進歩性の欠如)【被告の主張】1乙10文献の記載()本件特許の出願前である昭和61年10月28日に公開された乙10文献には,別紙引用部分【乙10文献】の?@ないし?Dの記載があり,これによれば,乙10文献には,次の発明(以下「乙10発明」という )が記載され 。
ている。
?@駆動回路(3)及び(4)によってそれぞれ駆動される画像表示用の2つの表示素子からなる液晶ディスプレー(1)を有している?A2つの表示素子のうち,少なくとも1つの表示素子を折りたたみ可能に設けてなる携帯用(ポータブル型)の出力装置。
2本件各特許発明と乙10発明との一致点及び相違点()ア一致点乙10発明は以下のa,b及びdの各構成が開示されており,構成要件A,B及びDにおいて本件各特許発明と一致する。
a画像表示用の液晶表示部を複数有し,b前記複数の液晶表示部のうち,少なくとも1つの液晶表示部を折りたたみ可能に設けてなるポータブル型画像表示装置であって,dポータブル型画像表示装置イ本件特許発明1との相違点本件特許発明1と乙10発明とは,乙10発明には「複数の液晶表示部のうち,少なくとも1つの液晶表示部に画像表示させ,他の少なくとも1つの液晶表示部の画像表示を実質的に停止させることが可能な」についての記載がない点(以下「相違点1」という )で相違する。 。
ウ本件特許発明3との相違点本件特許発明3と乙10発明とは,乙10発明には「液晶表示部に表示される画像のサイズを変更可能とすることを特徴とする」についての記載がない点(以下「相違点2」という )で相違する。 。
エ本件特許発明5との相違点本件特許発明5と乙10発明とは,乙10発明には「液晶表示部に表示される画像の表示方向及び画像のサイズを変更可能とすることを特徴とする」についての記載がない点(以下「相違点3」という )で相違する。 。
3相違点1について()ア本件特許の出願前である昭和59年8月25日に公開された特開昭59-148475号公報(乙11:以下「乙11文献」という )には,テ 。
レビ表示画面(11)と時計機能表示部(12)の2つの液晶表示部を有する液晶用液晶テレビ(乙11の第1図)に関して,別紙引用部分【乙11文献】?@及び?Aの記載がある。
イ本件特許の出願前である昭和62年10月23日に公開された実願昭61-54676号(実開昭62-167193号)のマイクロフィルム(乙12:以下「乙12文献」という )には,時計用液晶表示パネル 。
(4)とデータバンク用液晶表示パネル(5)といった,それぞれ独立に駆動される2つの液晶表示部を有する光学的表示装置(乙12の第1図〜第3図)に関して,別紙引用部分【乙12文献】?@ないし?Bの記載がある。
ウ本件特許の出願前である昭和59年1月7日に公開された特開昭59-2081号公報(乙13:以下「乙13文献」という )には,それぞれ 。
対応するPDP駆動回路1(1a)及びPDP駆動回路2(1b)で独立に駆動される2つの複数のプラズマディスプレイパネル(PDP)を有する複合表示プラズマディスプレイパネル(PDP (乙13の第1図)に )関して,別紙引用部分【乙13文献】?@ないし?Bの記載がある。
エ上記アないしウからすると,複数の表示素子(表示部)を有する画像表示装置において,表示のために不要となった一部の表示素子(表示部)の表示を停止して消費電力を低減することは,本件特許の出願前において当業者にとって常套手段として行われていた周知技術であった。ましてや,それぞれ独立の駆動回路で動作させる画像表示装置については,表示のために不要となった一部の表示素子(表示部)に対応する駆動回路への電源供給を停止して消費電力を低減することが周知技術であったというのみならず,自明の課題に対して当業者が適宜採用できる単なる設計事項であった。
オ乙10発明の出力装置は,左右の表示素子をそれぞれ駆動回路(3)及び(4)によって独立に駆動するものである。したがって,乙10発明に接した当業者ならば,電池で駆動されるポータブル型画像表示装置において,省電力化という自明の課題を解決するために,周知技術に基づいて,複数の表示素子(表示部)にそれぞれ設けられた駆動回路のうち,表示のために不要となった一部の表示素子(表示部)に対応する駆動回路への電源の供給を停止する構成とすることは,単なる設計事項にすぎない。しかも,乙10発明の出力装置では,左右の表示素子がそれぞれ駆動回路(3)及び(4)によって独立に駆動されるため,一方を表示し他方の表示を実質的に停止することについて物理的な阻害要因はない。
カしたがって,乙10発明において,複数の液晶表示部のうち,少なくとも1つの液晶表示部に画像表示させ,他の少なくとも1つの液晶表示部の画像表示を実質的に停止させることを可能にすることは,当業者が容易に想到することができたものである。
4相違点2及び相違点3について()ア本件特許の出願前である昭和60年3月16日に公開された特開昭60-48573号公報(乙14:以下「乙14文献」という )には,表示 。
部(3)にグラフィック画面(32)及びキャラクタ画面(33)を表示する携帯形電子地図装置(乙14の第1図及び第3図)に関して,別紙引用部分【乙14文献】?@ないし?Bの記載がある。
イ本件特許の出願前である昭和62年7月30日に公開された特開昭62-173509号公報(乙15:以下「乙15文献」という )には,画 。
像を表示する画像表示装置(乙15の第1図,第4図及び第5図)に関して,別紙引用部分【乙15文献】?@ないし?Dの記載がある。
ウ本件特許の出願前である昭和61年3月31日に公開された特開昭61-62281号公報(乙16:以下「乙16文献」という )には,電気 。
信号によって表現される光学的画像を映出するディスプレイ手段を含む撮像及びディスプレイ・システム(乙16の第1図〜第3図)に関して,別紙引用部分【乙16文献】?@及び?Aの記載がある。また,乙16文献の図3(b)及び図3(c)では,画像再生表示装置(20)の表示装置(表示手段 (21)に映出される再生画像が,図3(a)の場合に映出され )る再生画像に対して,それぞれ回転及び縮小して表示されている。
エ本件特許の出願前である昭和56年7月8日に公開された特開昭56-83787号公報(乙30:以下「乙30文献」という )には,表示部 。
に表示される図形を一定の倍率で拡大させるための拡大手段を備える図形表示装置(乙30の第1図〜第3図)に関して,別紙引用部分【乙30文献】?@ないし?Fの記載がある。
オ本件特許の出願前である昭和62年2月23日に発行された「日経エレクトロニクス (2月23日号 (乙17:以下「乙17文献」という ) 」) 。
には,表示装置に用いられる 「拡大・縮小,回転,塗りつぶしを高速処 ,理する描画プロセサ」に関して,別紙引用部分【乙17文献】?@ないし?Bの記載がある。
また,乙17文献151頁の「表2実際に使える描画機能の組み合わせ」には 「コピー通常」と「拡大・縮小」との組み合わせについて, ,実際に使うことが可能であることを示す「○」印が付されている。また,同表には 「コピー任意角回転」と「拡大・縮小」との組み合わせにつ ,いて,実際に使うことが可能であることを示す「○」印が付されている。
カ上記アないしオのとおり,画像表示を行う画像表示装置において,画像を拡大,縮小,回転して表示することは,本件特許の出願前に当業者が通常行っていた周知技術であり,これを乙10発明に適用することは当業者にとって容易であった。
5まとめ()以上のとおり,構成要件A,B及びDについては乙10文献に開示され,さらに,構成要件C1,C3及びC5は,いずれも本件特許の出願時の周知技術にすぎないのであるから,本件各特許発明のような画像表示にかかる技術分野の当業者にとって,本件特許発明1,3及び5は,出願時の公知文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
【原告の主張】1本件特許発明1の進歩性()ア乙11文献の開示内容乙11文献に開示されているのは,テレビ表示面と時刻表示面とを兼用することを前提とした発明であって,複数の液晶表示部を前提とした発明ではない。しかも,本件特許発明1のように,不要な液晶表示部の画像表示を実質的に停止させることで消費電力の低減を図ったものではなく,時刻表示を通常のデジタル時計と同じ7セグメント表示することにより消費電力の低減を図った発明であり,消費電力の低減を意図した技術思想は全く表れていない。
イ乙12文献の開示内容乙12文献で開示されているのは,複数の表示パネルが「上下方向に積層配置」され 「いずれかが表示される」という構成であって,本件特許 ,発明1のように,複数の液晶表示部が,いわば「平面的に分けて配置」されている構成ではない。
ウ乙13文献の開示内容乙13文献は,大型化に適するPDP(プラズマディスプレイパネル)において,1枚の表示板に7セグメン卜表示,ドットマトリックス表示及びユニオンジャック表示等を,複数の「領域」を設けて各別に表示する「複合化」されたPDPの技術を開示するものであり,複数の表示板に分けて表示するという技術思想はない。
エ以上,乙11ないし乙13文献に開示された発明又は考案は,複数の表示を1枚の表示板で兼用又は積層したり,1枚の表示板に各領域を設けることを前提とするものであって,2枚の表示板の構成である乙10発明に組み合わせる動機づけはない。
2本件特許発明3及び本件特許発明5の進歩性について()ア乙14文献の携帯形電子地図装置は,携帯性に優れていること,すなわち,従来技術の「大判の地図帳は広げなくてはならない等」の欠点を解消する発明であり,スクロールを行うことを可能にしていること等から,「画像のサイズの変更」や「画像の表示方向及びサイズを変更可能」を1枚の表示板内ですることを前提とした技術である。
イ乙15文献の画像表示装置は,画像表示装置が縦長長方形の場合に,横長の文書を表示するときに,画面に入り切らなかったり無駄スペースが出るという問題を解決するため,装置自体を回転させることで,縦書文書でも横書文書でも画面の無駄スペースをなくして効率的に表示画面を使用することを目的とした発明であって,複数の表示装置を用いれば必要とはされない技術である。よって,1枚の表示板(表示画面)で解決することを前提とした発明である。
ウ乙16文献の発明は,テレビの画像を縦横比3:4のモニタ画面上で観察することを前提とする制約からの問題,すなわち,自由な作画ができないという問題を解決するとともに,画像の正立保持を行うこと,及びモニタ装置を回転させるような大掛りな手段を必要とせず,自由な作画を可能にした発明であって,複数の表示装置を用いれば必要とはされない発明である。よって,1枚の表示板(表示画面)で解決することを前提とした発明である。
エ乙30文献の発明は,拡大機能や反転機能により表示部に表示された図形を拡大又は反転させると,該図形の一部が表示部に表示されなくなる問題を解決したもので,複数の表示装置を用いれば必要とはされない発明である。よって,1枚の表示板(表示画面)で解決することを前提とした発明である。
オ乙17文献は「μPD7220後継のグラフィック・コントローラLSI」のマルチウィンドウ機能等を紹介する文献であるが,マルチウィンドウ機能の内容からして1枚の表示板(表示画面)で解決することを前提とした技術の説明である。
カ上記のとおり,被告が周知技術として掲げる上記各文献の発明等は,いずれも「画像のサイズの変更」や「画像の表示方向及びサイズを変更可能」を1枚の表示板内でなすことを前提とした発明であって,2枚の表示板とすることにつき開示も示唆もない発明であるから,これらを乙10発明に組み合わせる動機づけはない。
5争点3-3-1(要旨変更1)【被告の主張】1要旨変更1に係る補正箇所(別紙明細書対比表のを付した部分)()ア特許請求の範囲「画像表示用の表示部を複数有し,前記複数の表示部のうち,少なくとも1つの表示部を折りたたみ可能に設けてなるポータブル型画像表示装置であって」イ発明の詳細な説明(別紙明細書対比表11頁右欄13〜17行)「前記複数の液晶表示部(LCDE)のうち,少なくとも1つの液晶表示部(LCDE)を他の液晶表示部(LCDE)や装置本体などに折りたたみ可能に設けている」2要旨変更1の内容()ア当初明細書等の記載内容上記(1)アのとおり,当初明細書等の特許請求の範囲には,?@「画像表示手段」が「複数の画像表示部」からなること,?A「画像表示手段」が折りたたみ可能であることが記載されている。当初明細書等の発明の詳細な説明においても 「本明細書において…(2)画像表示装置とは,テレビ ,受像器,テレビモニター,ワードプロセッサー,パーソナル・コンピュータ,CAD/CAMなどを始め,画像を表示するものをいう。また,(3)画像表示手段(方式)としては液晶,プラズマ及びエレクトロルミネンス(EL)などの電気的なディスプレイ装置などを含む 」と記載さ 。
れており(別紙明細書対比表2頁左欄4〜13行「 3)画像表示手段 ),((方式 」とは「 2)画像表示装置」ではなく,画像表示装置の液晶, )(プラズマなどのディスプレイ装置であることが明記されている。
このように,当初明細書等が開示しているのは 「画面そのもの「液 ,」,晶画面そのもの」を折りたたみ可能にするということであり,1つの画像を表示する液晶ディスプレイ装置を,複数の当接する画像表示部により構成し,画像表示部から折りたたむことにより液晶ディスプレイそのものを折りたたみ可能にするというものである。このように,複数の液晶表示部が当接して1つの液晶ディスプレイ装置を構成し,液晶表示部から折りたたみ可能にすることにより 「必要に応じ小さくも大きくもすることがで ,き,携帯性と見やすさ,実用性に優れたポータブル型画像表示装置を実現することができる」という作用効果を果たし得るというのが当初明細書等の唯一の開示なのである。
イ本件補正後の記載内容本件補正後の特許請求の範囲では,ポータブル型画像表示装置が「複数の液晶表示部」を有すればよいとするのみであり(構成要件A ,しかも, )「複数の液晶表示部のうち,少なくとも1つの液晶表示部を折りたたみ可能」として(構成要件B ,液晶表示部から構成される「画像表示手段」 )すなわち液晶ディスプレイそのものが折りたたみ可能でない構成をも含むものに拡張されている。
すなわち,構成要件A,Bは,液晶ディスプレイを単に複数有するにすぎず,当接して1つの液晶画面を構成しない画像表示装置をも含み得るものへと拡張されており,これは当初明細書等の要旨を変更するものである。
また,本件補正により加えられた上記(1)イの記載も,同様に願書に添付した明細書の要旨を変更するものである。
3以上より,本件特許に係る出願日は本件補正に係る手続補正書を提出した()平成8年4月15日に繰り下がり(旧特許法40条 ,その結果,本件補正 )前に公開された本件特許の公開特許公報(乙21)により新規性を喪失する(特許法29条1項3号 。)【原告の主張】当初明細書等の記載(別紙明細書対比表5頁左欄31行から6頁左欄20行及び別紙第3図及び第4図)によれば,当初明細書等には複数の筺体を有するポータブル画像表示装置が各筺体ごとに液晶表示部を有し,筐体から折りたたみ可能であることが記載されていた。
よって,本件補正のうち,要旨変更1に係る部分は,当初明細書等の要旨を変更するものではない。
6争点3-3-2(要旨変更2)【被告の主張】1要旨変更2に係る補正箇所(別紙明細書対比表のを付した部分)()ア特許請求の範囲「前記複数の表示部のうち,少なくとも1つの表示部に画像表示させ,他の少なくとも1つの表示部の画像表示を実質的に停止させることが可能な」イ発明の詳細な説明(別紙明細書対比表5頁右欄9〜12行)「本実施例では,DRV14a,LCDE15aおよびBLT16aを停止させたが,この内の1つだけを停止させてもよい 」。
2要旨変更の内容()ア当初明細書等の記載内容当初明細書等の発明の詳細な説明に記載されているのは,映像信号を(ア)分割し,複数の当接する液晶表示部に,1つの画像を分割してまたがって表示すること,映像信号の分割を停止したときには,2分割の場合には,1つの液晶表示部の表示を停止し,他の液晶表示部に映像信号の全部を送信し,1つの画像全体を縮小して表示することである。
また,当初明細書等の記載(別紙明細書対比表5頁左欄20行)によ(イ)れば,当初明細書等の発明の詳細な説明には,画像を2分割していたSW19aをONにすることにより画像分割動作を停止し,2画面のうちの1画面のみを表示し,他の画面については信号の送信自体を停止すること,すなわち,2画面に分割回路により分割された半分ずつの画面が表示されていたものが,SW19aをONにすることにより,画像分割動作を停止し,1つの画面のみに全画面の信号が送信され,他の画面は何ら信号の送信もなく表示されなくなることが記載されている。
そうすると,液晶表示部の画像表示を停止することについての発明の詳細な説明の記載は,映像信号の分割を停止し,その結果,分割されていた映像信号の送信が停止される液晶表示部の画像表示が停止されることのみであり,映像信号が送信されていない液晶駆動部DRV14a,液晶表示部LCDE15a及びバックライトBLT16aはいずれも停止するというのが当初明細書等の記載である。
イ本件補正後の記載内容上記(1)イの「この内の1つだけを停止させてもよい」との補正は,(ア)映像信号の分割停止により,映像信号が送信されていないにもかかわらず,液晶駆動部,液晶表示部又はバックライトのいずれか2つを駆動させ続けるということであり,その回路を無意味に駆動させ続けて電力を消費するということになるから,当初明細書等の要旨を変更するものである。
また,上記(1)アの補正は,映像信号の分割の停止を伴わず,単に1(イ)つの液晶表示部の画像表示を停止するという発明の詳細な説明に記載のない実施態様をも含み得る記載である。しかも,特許請求の範囲の「実質的に停止」については,上記イの補正によって,映像信号の分割停止を伴わない画像表示の停止ばかりか,単に液晶のバックライトのみを停止する実施形態等をも「実質的に停止」として含み得るものとなっている。
よって,上記(1)アの補正も当初明細書等の要旨を変更するものである。
ウ以上より,前記5【被告の主張】(3)のとおり,本件特許は新規性を喪失する。
【原告の主張】1特開昭59-208529号公報(甲7)()本件特許出願前である昭和59年11月26日に公開された特開昭59-208529号公報(以下「甲7公報」という )には,画像表示(本件の 。
液晶駆動部DRV14a,14b及び液晶表示部LCDE15a,15bに相当)は点けているが,バックライト光源32(本件のバックライトBLT16a,16bに相当)を消すことにより,電池の寿命を大幅に伸ばすことができることが開示されている。
2当初明細書等の記載内容()当初明細書等の発明の詳細な説明には 「自然光,室内光を効率的に集光 ,し,バックライトとして用いるようにしてもよい 」と記載されており(乙 。
21の4枚目右下欄10行 ,しかも,バックライトのみを省くことによっ )て,省電力化が図れるとしているのである。
3したがって,甲7公報に記載された公知発明及び当初明細書等の記載から()すれば,当初明細書等の2つの液晶表示部(LCDE15a,LCDE15b)のうち,片方の液晶表示部(LCDE15a ,その液晶駆動部(DR )V14a)及びバックライト(BLT16a)を停止するとの記載(別紙明細書対比表5頁左欄7から9行)は,消費電力の低減を図る趣旨であることは当業者には自明であり,また,LCDE15a,DRV14a,又はBLT16aのうちの1つを停止させても消費電力の低減を図れることは当業者には自明の事項である。
よって,本件補正のうち,要旨変更2に係る部分は,当初明細書等の要旨を変更するものではない。
7争点3-3-3(要旨変更3)【被告の主張】1要旨変更3に係る補正箇所(別紙明細書対比表のを付した部分)()原告は,本件補正によって,発明の詳細な説明に下記アの記載を加え,また下記イのように変更した。
ア挿入部分(別紙明細書対比表7頁右欄26行〜8頁右欄5行)「なお,上記実施例では,画像のサイズの変更例として,1つのTV放送番組の映像(1画面分)を第6図のように2つの液晶表示部(LCDE)で拡大表示していたものを第7図のように1つの液晶表示部(LCDE)を用いて縮小表示する例を示したがこれに限るものではない。例えば,2つのTV放送番組の映像(2画面分)を1つの液晶表示部にマルチ表示(2画面分表示)していたものを2つの液晶表示部に拡大表示してもよい 」。
変更部分当初明細書等の記載(別紙明細書対比表10頁左欄6〜10行)(ア)「又,PLL式電子チューナとデジタルメモリとを組み合わせ,1つの画面上にいくつものTV放送番組の画面をマルチ表示してもよい。この場合,特公昭50-32009号公報の技術を用いてもよい 」。
本件補正後の記載(別紙明細書対比表10頁右欄6〜21行)(イ)「又,PLL式電子チューナとデジタルメモリとを組み合せて(例えば,特公昭50-32009号公報の技術を用いて ,1つの表示画面上に )いくつものTV放送番組の映像をマルチ表示(ピクチャーインピクチャー方式により複数画面分を表示)してもよい。この場合,上記実施例を用いて,例えば,2つのTV放送番組の映像(2画面分)を1つの液晶表示部(LCDE)にマルチ表示(2画面分の表示)してもよく,また拡大して2つの液晶表示部(LCDE)に1画面分づつ別々に表示してもよい。上記実施例によれば,複数の液晶表示部に表示される画像の拡大縮小や増減など種々の形態で画像表示を行うことができる 」。
2要旨変更の内容()ア当初明細書等の記載内容上記(1)イ(ア)の当初明細書等の記載は,1つの映像信号を分割し,当接する2つ(あるいは3つ)の液晶表示部により構成される1つの液晶ディスプレイに全体として1つの画像を表示する場合に,その「1つの画像」として「いくつものTV番組」をマルチ表示するということにすぎない。
よって,上記記載によれば,かかる1つの液晶ディスプレイ上に(複数の液晶表示部にまたがって)表示された「いくつものTV番組の画像」は,映像信号の分割を停止すれば,1つの液晶表示部に「いくつものTV番組の画像」が小さく表示されることになる。このことは,上記当初明細書等で引用されている乙29公報を見ても明らかである。
イ本件補正後の記載内容本件補正後の上記(1)ア及び同イ(イ)の記載では,2つのTV番組を1つの液晶表示部に表示していたものを2つの液晶表示部に1つずつ拡大して表示してもよいとしており,かかる補正は 「いくつものTV番組」が ,複数の液晶表示部からなる1つの液晶ディスプレイに表示されるとの当初明細書等の記載を,2つのTV番組が,1つ1つの液晶表示部にそれぞれがきちんと表示されるとの記載に変更するものであり,当初明細書等の要旨を変更するものである。
3以上より,前記5【被告の主張】(3)のとおり,本件特許は新規性を喪失()する。
【原告の主張】1前記3【原告の主張】(1)のとおり,当初明細書等に引用された乙29公()報には,同公報に記載されたスイッチング回路を利用することにより,1つ1つのブラウン管に別々のTV放送番組の画面を,それぞれ「きちんと」表示できることが開示されている。
2また,上記【被告の主張】(1)のイにかかる補正のうち,当初明細書等の()「1つの画面上にいくつものTV放送番組の画面をマルチ表示してもよい 」とは,本件特許の出願時に周知慣用技術であった「ピクチャー イン 。
ピクチャー方式 (甲12の1〜4)を採用してもよいことを意味するもの 」である。
よって,本件補正のうち,要旨変更3に係る補正は,既に開示されていた技術をより詳細に説明したにすぎず,当初明細書等の要旨を変更するものではない。
8争点4(損害額)【原告の主張】1被告は,平成18年3月2日より本件ゲーム機の販売を開始し,その後,()被告各製品の販売を開始した。平成20年3月1日までの本件ゲーム機及び被告各製品の販売額合計は少なく見積もっても2500億円に達している。
2本件各発明の実施料率としては2%が相当であるから,原告は50億円の()損害を受けた。
3原告は被告に対して,その内金2億円を損害賠償として請求する。
()【被告の認否】否認ないし争う。
第4当裁判所の判断本件の事案にかんがみ,争点3-3-1(要旨変更1)から判断することとする。
1争点3-3-1(要旨変更1)について1要旨変更の判断基準()「明細書の要旨」とは,旧特許法上その意義を定めた明文の規定がないものの,特許請求の範囲に記載された技術的事項を指すものと解すべきである。
したがって,特許請求の範囲を増加し,減少し,変更することは,その本来的意味においては,いずれも明細書の要旨を変更するものということができる。しかし 「出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前に,願書に最初に ,添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更する補正は,明細書の要旨を変更しないものとみなす 」と定めているから(旧特許法41条 ,当該補正が明細書の要旨を変 。 )更することになるか否かは,結局のところ,当該補正後の特許請求の範囲に記載された技術的事項が「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」か否かによって決せられることになる。そして 「願書に最 ,初に添付した明細書又は図面に記載した事項」とは,当業者によって,出願時の明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,このように導かれる技術的事項との関係において,当該補正が特許請求の範囲の記載に新たな技術的事項を導入するものであるときは,当該補正は 「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内に ,おいて」するものということはできず,明細書の要旨を変更するものということになる。以下,このような見地から本件補正が当初明細書の特許請求の範囲に記載された技術的事項に新たな技術的事項を導入するものであるか否かを検討する。
2本件補正後の記載()ア原告は本件補正により,特許請求の範囲を当初明細書の「(1)複数の画像表示部からなる画像表示手段を有し,かつ,前記画像表示手段を折りたたみ可能にすることを特徴とする携帯型の画像表示装置 」から「 請求 。【項1】画像表示用の表示部を複数有し,前記複数の表示部のうち,少なくとも1つの表示部を折りたたみ可能に設けてなるポータブル型画像表示装置であって,前記複数の表示部のうち,少なくとも1つの表示部に画像表示させ,他の少なくとも1つの表示部の画像表示を実質的に停止させることが可能なポータブル型画像表示装置「 請求項3】画像表示用の表 。」,【示部を複数有し,前記複数の表示部のうち,少なくとも1つの表示部を折りたたみ可能に設けてなるポータブル型画像表示装置であって,前記表示部に表示される画像のサイズを変更可能とすることを特徴とするポータブル型画像表示装置「 請求項5】画像表示用の表示部を複数有し,前 。」,【記複数の表示部のうち,少なくとも1つの表示部を折りたたみ可能に設けてなるポータブル型画像表示装置であって,前記表示部に表示される画像の表示方向を変更可能とすることを特徴とするポータブル型画像表示装置 」に補正し,また,発明の詳細な説明に 「前記複数の液晶表示部 。 ,(LCDE)のうち,少なくとも1つの液晶表示部(LCDE)を他の液晶表示部(LCDE)や装置本体などに折りたたみ可能に設けている」(同対比表11頁右欄13〜17行)との記載を加えたことが認められる。
イそうしてみると,本件補正により,表示部の構成に関しては 「画像表 ,示用の表示部を複数有し」とされ(以下 「補正事項?@」という,また, ,。)折りたたみの構成に関しては 「表示部を折りたたみ可能に設けてなる」 ,とされ,これと共に 「発明の詳細な説明」に上記アのとおりの記載が加 ,えられた(以下 「補正事項?A」という )ことが認められる。 ,。
3本件補正後の記載内容()ア補正事項?@補正事項?@に係る補正後の記載内容について,被告は,補正後の特許請求の範囲の記載では,単に液晶画面が複数あれば足り,当接して1つの液晶画面を構成しない画像表示装置をも含み得ると主張するところ,補正後の「画像表示用の表示部を複数有し」との記載では,複数ある画像表示部の位置関係が何ら定められていないのであるから,当接していないものも含め,各画像表示部が離れた位置にあって1つの画面を構成し得ないような画像表示装置についても,特許請求の範囲内に含み得るような記載になっていることが認められる(この点,原告も争うことを明らかにしておらず,むしろ構成要件A,Bの解釈においては,上記のような解釈を前提としている。。)イ補正事項?A補正事項?Aに係る補正後の「1つの表示部を折りたたみ可能に設けてなる」の意義について,発明の詳細な説明に加えられた記載,すなわち「前記複数の液晶表示部(LCDE)のうち,少なくとも1つの液晶表示部(LCDE)を他の液晶表示部(LCDE)や装置本体などに折りたたみ可能に設けている」との記載を参酌すれば 「1つの表示部を折りたたみ ,可能に設けてなる」とは 「1つの画像表示部を他の画像表示部や装置本 ,体などに重ね合わせるように折りたたみ可能に設けてなる」という意味で。)。 あると解することができる(この点について,当事者間に争いがないウそこで,以下,上記補正後の特許請求の範囲が当初明細書等に記載された事項の範囲内であるかについて検討する。
4当初明細書等の記載()当初明細書等には以下の記載がある。
ア特許請求の範囲「 1)複数の画像表示部からなる画像表示手段を有し,かつ,前記画像 (表示手段を折りたたみ可能にすることを特徴とする携帯型の画像表示装置(別紙明細書対比表1頁左欄7〜10行) 。」イ語句の意義「本明細書において (1)画像とは,映像,文字,記号など視覚を通し ,て知覚しうるものをいい (2)画像表示装置とは,テレビ受信機,テレ ,ビモニター,ワードプロセッサー,パーソナルコンピュータ,CAD/CAMなどを始め,画像を表示するものをいう。また (3)画像表示手段 ,(方式)としては,液晶,プラズマおよびエレクトロルミネンス(EL)などの電気的なディスプレイ装置などを含む(同対比表2頁左欄3〜 。」13行)ウ発明の課題従来の液晶ディスプレイ(LCD)テレビに係る別紙第1図及び第2図について以下の記載がある。
「従来のLCD-TVは,このように構成されているため,CASE10を小さくし,携帯性を優先させれば,LCD5も小さくなり,見にくく疲れやすいという問題が生じ,又,LCD5を大きくし,見やすさを優先させれば,CASE10が大きくなり,今度は逆に携帯性に欠けるという問題が生じる。すなわち,見やすさと携帯性とは相反するのであり,いずれかを犠牲にしなければならないという欠点があった。
また,大型のカラー液晶ディスプレイは,歩溜りが悪く,生産性に欠け,実用化が難しいという欠点を有していた。
本発明は,かかる欠点を除去するものであり,生産性が高く,見やすさと携帯性の両方に優れた画像表示装置を提供するものである(同対比。」表3頁左欄13〜29行)エ発明の効果発明の効果について以下の記載がある。
「本発明によれば,不要時小さく,必要時大きくすることができるので,装置の小型化と画面の大型化を同時に実現でき,特に携帯性に優れた画像表示装置を得ることができる(同対比表11頁左欄22〜26行) 。」オ実施例の記載発明の実施例に係る別紙第3図及び第4図について以下の記載がある。
(ア)「15は,LCDE15a,15bよりなる液晶ディスプレイ(LCD)であり,LCDE15a,15bの両者は,第3図に示すように配設され,当接して「ニュース」という1つの画像を再現することができる(同対比表4頁左欄28行〜5頁左欄2行) 。」「このようにすることにより,不使用時には,第4図のように折りたたみ小型にでき携帯性に優れ,使用時には第3図に示すように広げれば,大画面にすることができ,見やすくすることができ,かつ,大きなLCDを小さなLCDE(判決注:カラー液晶表示部)を2枚用いて構成するのでLCDEの生産性が高く大巾なコストダウンを図ることができると共に何ら携帯性を失なうことなく画面の大型化を容易に図ることができる(同対比表6頁左欄11〜20行) 。」発明の実施例に係る別紙第8図及び第9図について以下の記載がある。
(イ)「25は,LCDE25a,25b,25cの3枚の液晶板で1枚の画像を形成し,再生する液晶ディスプレイ(LCD)である(同対比。」表8頁左欄26〜29行)カ図面5補正事項?@に係る要旨変更について ()ア当初明細書等には,発明の課題として,見やすさを優先して液晶ディスプレイそのものを大きくすると 「CASE10」すなわち筐体自体も大 ,きくなって携帯性が悪くなるし,また大きい液晶ディスプレイは生産性も悪いという課題が掲げられており(上記(3)ウ ,その課題を解決する手 )段として,当初明細書等の特許請求の範囲や上記図面( 第3図【第6【】,図】及び【第8図 )で示されているような,複数の画像表示部を合わせ 】て1つの画像(上記図面では「ニュース」と記載されている )を表示す 。
る画像表示手段(1つの画面)の構成が開示されていることが認められる。
そして,上記構成を採ることにより,必要時に折りたたんで小さくすることにより携帯性に優れ,また,複数の画像表示部を合わせることで画面の大型化を図るという発明の効果を導くことができるのであり,各画像表示部が離れていて1つの画面を構成しているとは認識し得ないような画像表示装置では,画面の大型化による見やすさの向上という効果を奏することができず,上記発明の課題を解決することができないのであるから,このような画像表示装置は,当初明細書等に記載された発明の課題とも発明の効果とも関係のない全く異質なものというべきであって,当初明細書等には開示されていない技術的事項に係るものと解される。
イこのように,当初明細書等に開示された発明は,もっぱら,複数の画像表示部で1つの画面を構成し,かつ,折りたたみ可能とすることにより,不要時には小さく,必要時には大きくすることができ,装置の小型化と画面の大型化を同時に実現できる画像表示装置であったといえる。
そして,このときの各画像表示部の位置関係について,被告は,相互に当接していることを要する旨主張し,当初明細書等の実施例の説明においては「当接して」との文言が記載されている(上記(4)オ(ア))ところ,必ずしも各画像表示部が「当接」すなわち当たり接していなくても,1つの画像表示がなされたと認識し得るような近接した位置関係にあれば,当初明細書等の上記発明の効果を奏しないとはいえない。
したがって,当初明細書等に記載された発明は 「当接する」ことまで ,は要しないが,少なくとも複数の画像表示部が1つの画像を表示していると認識し得る程度に近接していることを要するというべきであって,各画像表示部が離れた位置にあることによって1つの画面を構成しないような画像表示装置は記載も示唆もされていないというべきである。そして,かかる構成が当業者にとって自明であったともいえない。補正事項?@に係る補正後の特許請求の範囲の記載では「画像表示用の表示部を複数有し」とされているのみで 「複数の画像表示部が一つの画像表示がなされたと認 ,識し得る程度に近接している」もの以外の構成を包含し得るものとなっているから,補正事項?@に係る補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で,当初明細書等に開示された発明の構成に関する技術的事項に新たな技術的事項を導入するものというべきである。したがって,同補正は,当初明細書等の範囲内においてするものではなく,当初明細書等の要旨を変更するものというべきである。
ウ加えて,補正事項?@に係る補正後の特許請求の範囲の記載では,各液晶表示部の関係について「折りたたみ可能に設けてなる」というほかに何ら定められていないのであるから,別紙第5図に示される画像分割回路すら備えない,画像生成回路において完全に独立した画像表示部であっても,これが複数あって折りたたむことさえできれば,特許請求の範囲(構成要件A,B)に含まれ得る記載になっている(なお,本件補正後の明細書においても画像分割回路による画像分割が当然の前提になっているが,補正後の特許請求の範囲には,当初明細書等の特許請求の範囲における「複数の画像表示部からなる画像表示手段を有し」といった各画像表示部の関係に係る記載が全くない以上,補正後の特許請求の範囲に係る発明の要旨認定に際しては,画像分割回路を備えた画像表示装置に限定して解釈することはできない。。)そうすると,当初明細書等に記載された発明は,複数の画像表示部によって1つの画像を表示する画像表示装置であるから,そのための画像分割回路は必須であり,これを備えないような画像表示装置は,当初明細書等に記載された技術的事項に新たな技術的事項を導入するものであることが明らかであり,かかる意味においても,補正事項?@に係る補正は当初明細書等の要旨を変更するものというほかない。
6争点3-3-1の結論()以上により,本件補正のうち,少なくとも補正事項?@に係る補正は,当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更した補正であるとは認められず,明細書の要旨を変更するものであるので,補正事項?Aに係る要旨変更について判断するまでもなく,本件特許に係る出願は,旧特許法40条により,本件補正に係る手続補正書が提出された平成8年4月15日にされたものとみなされる。
2新規性の欠如について1前記認定のとおり,構成要件A及びBは,当初明細書等に係る公開特許公()報である特開平1-282587号公報(乙21:以下「乙21文献」という )に記載された発明において必須の前提となっている構成(複数ある画 。
像表示部の近接性及び画像分割のための回路)を欠くという意味において,乙21文献に記載された発明の上位概念に当たる。
2また,乙21文献の記載(別紙明細書対比表4頁左欄1行〜7頁22行及()び別紙第3図ないし第7図)によれば,乙21文献には 「カラー液晶表示 ,部を2つ有し,前記2つのカラー液晶表示部のうち,一方のカラー液晶表示部を他方のカラー液晶表示部に,対向して内側,又は互いに外側になるように折りたたみ可能に設けてなる液晶型ポータブルカラーテレビであって,前記2つのカラー液晶表示部のうち,一方のカラー液晶表示部に画像表示させ,他方のカラー液晶表示部の画像表示を停止させることが可能であり,前記カラー液晶表示部に表示される画像の大きさを面積比で約1/2に縮小し,かつ,画像を90度回転して表示可能な,液晶型ポータブルカラーテレビ 」。
が開示されていると認められる。
そして,上記「2つのカラー液晶表示部のうち,一方のカラー液晶表示部に画像表示させ,他方のカラー液晶表示部の画像表示を停止させることが可能であり」との構成は,構成要件C1の「複数の液晶表示部のうち,少なくとも1つの液晶表示部に画像表示させ,他の少なくとも1つの液晶表示部の画像表示を実質的に停止させることが可能な」に該当し,上記「カラー液晶表示部に表示される画像の大きさを面積比で約1/2に縮小し,かつ,画像を90度回転して表示可能な」は,構成要件C3の「液晶表示部に表示される画像のサイズを変更可能とすること」に該当するとともに,構成要件C5の「液晶表示部に表示される画像の表示方向及び画像のサイズを変更可能とすること」にも該当すると認められる。
また,上記「液晶型ポータブルテレビ」は,構成要件Dの「ポータブル型画像表示装置」に該当する。
3そうしてみると,本件各特許発明は,乙21文献に記載された上記発明と()全ての構成において一致し,これと相違する点はない。
したがって,本件各特許発明は,いずれも出願前に頒布された刊行物である乙21文献に記載された発明と同一であり,特許法29条1項3号の発明に該当するから,本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められる。したがって,特許法104条の3第1項により,原告は,本件特許権に基づく権利行使をすることができない。
3結論以上により,原告の本件請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。