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関連審決 無効2007-800112
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20行ケ10236審決取消請求事件 判例 特許
平成19ネ10089特許権侵害行為差止等請求控訴事件 判例 特許
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関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  周知技術 /  技術常識 /  優先権 /  分割出願 /  クレーム /  参酌 /  置換 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  構成要件 /  設定登録 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10200号 審決取消請求事件
原告オークランドユニサービシズリミテッド
訴訟代理人弁護士井上愛朗,飯塚卓也,渡邊肇
同弁理士原島典孝,板垣孝夫,森本義弘,原田洋平,笹原敏司
被告神鋼電機株式会社 (審決上の表示・ )
被告アシストテクノロジーズジャパン株式会社
両名訴訟代理人弁護士福田親男
同弁理士梶良之,坪内哲也
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/02/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた裁判「特許庁が無効2007-800112号事件について平成20年1月16日にした審決を取り消す 」との判決。。
第2事案の概要本件は,後記本件発明の特許権者である原告が,被告らの無効審判請求を受けた特許庁により,本件特許を無効とする旨の審決がされたため,同審決の取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯(1)本件特許(甲第15号証)本件特許に係る出願は,特願平4-504164号特許出願(以下「原出願」という )の分割出願である特願平7-88976号特許出願の分割出願である特願 。
2001-214914号特許出願の分割出願である。
特許権者:オークランドユニサービシズリミテッド(原告)発明の名称: 複数の電動車両に誘導電力を分配してこれら車両を共通の軌道に 「沿って個別に走行させる誘導電力分配システム,電動車両」出願日:平成14年3月15日(特願2002-71125号)原出願の出願日:平成4年2月5日原出願に係る優先権主張日:1991(平成3)年3月26日(ニュージーランド国)設定登録日:平成17年10月14日特許番号:特許第3729787号(2)本件手続審判請求日:平成19年6月8日(無効2007-800112号)審決日:平成20年1月16日審決の結論: 特許第3729787号の請求項1及び2に係る発明についての 「特許を無効とする 」。
審決謄本送達日:平成20年1月26日(原告に対し)2本件発明の要旨本件特許に係る発明(特許第3729787号の請求項1及び同2に係る発明であり,以下,請求項1に係る発明を「本件発明1 ,請求項2に係る発明を「本件 」発明2」といい,本件発明1と本件発明2を併せて「本件発明」という )の要旨 。
は,以下のとおりである。
(1)本件発明1【 。 「 請求項1】つぎの事項(1)〜(17)により特定される誘導電力分配システム(1)軌道と,一次導電路と,電源装置と,複数の電動車両を備え,各電動車両に誘導電力を分配してこれら車両を共通の軌道に沿って個別に走行させる誘導電力分配システムであること(2)一次導電路は,軌道に沿って敷設されること(3)電源装置は,一次導電路に所定周波数の交流電流を供給すること(4)電動車両は,ピックアップと,整流平滑回路と,定電圧回路と,モータを含む負荷とを備えること(5)ピックアップは,コアに巻かれたピックアップコイルと,ピックアップコイルに並列接続された同調コンデンサを含み,一次導電路から発生する交番磁界に結合可能であること(6)ピックアップコイルのインダクタンスと同調コンデンサのキャパシタンスは,この並列回路が一次導電路から発生する交番磁界の周波数に共振するように選定されること(7)整流平滑回路は,全波整流回路と,インダクタを含むこと(8)全波整流回路は,ピックアップコイルに発生する交流を全波整流すること(9)インダクタは,全波整流回路の出力電流路に介在して平滑した直流を出力させること(10)定電圧回路は,ダイオードと,出力コンデンサと,電圧検出回路と,信号発生回路と,スイッチと,スイッチ制御回路を含むこと(11)ダイオードと出力コンデンサは,整流平滑回路の出力端間に直列接続され,整流平滑回路の出力によって出力コンデンサが充電可能であること(12)負荷は,出力コンデンサの両端から電力供給を受けて動作すること(13)モータは,当該電動車両を軌道に沿って走行させること(14)電圧検出回路は,出力コンデンサの電圧に対応した監視電圧信号を出力すること(15)信号発生回路は,基準電圧信号を発生すること(16)スイッチは,整流平滑回路の出力端間に接続されること(17)スイッチ制御回路は,監視電圧信号と基準電圧信号とを比較するとともに,その比較結果に応じてスイッチをオンオフ切替動作させ,負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コンデンサの電圧を定電圧化すること」(2)本件発明2「 請求項2】つぎの事項(21)〜(34)により特定される電動車両。 【(21)ピックアップと,整流平滑回路と,定電圧回路と,モータを含む負荷とを備え,一次導電路付きの軌道に沿って走行する電動車両であること(22)ピックアップは,コアに巻かれたピックアップコイルと,ピックアップコイルに並列接続された同調コンデンサを含み,一次導電路から発生する交番磁界に結合可能であること(23)ピックアップコイルのインダクタンスと同調コンデンサのキャパシタンスは,この並列回路が一次導電路から発生する交番磁界の周波数に共振するように選定されること(24)整流平滑回路は,全波整流回路と,インダクタを含むこと(25)全波整流回路は,ピックアップコイルに発生する交流を全波整流すること(26)インダクタは,全波整流回路の出力電流路に介在して平滑した直流を出力させること(27)定電圧回路は,ダイオードと,出力コンデンサと,電圧検出回路と,信号発生回路と,スイッチと,スイッチ制御回路を含むこと(28)ダイオードと出力コンデンサは,整流平滑回路の出力端間に直列接続され,整流平滑回路の出力によって出力コンデンサが充電可能であること(29)負荷は,出力コンデンサの両端から電力供給を受けて動作すること(30)モータは,当該電動車両を軌道に沿って走行させること(31)電圧検出回路は,出力コンデンサの電圧に対応した監視電圧信号を出力すること(32)信号発生回路は,基準電圧信号を発生すること(33)スイッチは,整流平滑回路の出力端間に接続されること(34)スイッチ制御回路は,監視電圧信号と基準電圧信号とを比較するとともに,その比較結果に応じてスイッチをオンオフ切替動作させ,負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コンデンサの電圧を定電圧化すること」3審決の理由の要点審決は 本件発明は いずれも米国特許第4914539号明細書 1990 平 ,, ((成2)年4月3日特許。審判及び本訴とも甲第1号証。以下「引用例」という )。
に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明に係る特許は,いずれも特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法123条1項2号により無効とすべきものであるとした。
審決の理由中,引用例の記載事項の認定及び引用例に記載された発明の認定(以下,引用例に記載されているものとして審決が認定した2個の発明のうち 「給電 ,システム に係る発明を 引用発明A といい遠隔配置負荷 に係る発明を 引 」「」,「」「用発明B」という )に係る部分,本件発明1と引用発明Aとの対比及び相違点に 。
ついての判断に係る部分,本件発明2と引用発明Bとの対比及び相違点についての判断に係る部分は,次のとおりである(略称を本判決の指定したものに改めた部分及び審決内で審決の他の箇所の記載を引用する際の当該引用箇所の符号を本判決のものに改めた部分がある。。)(1)引用例の記載事項の認定「引用例には,図面と共に次の事項が記載されている・・・。
a 『The wireless power distribution system・・・a constant voltage across its loa )d.(訳:上記特許記載の非接触給電システムは更に開発が行われ,現在では,直列共振給電線を駆動する正確に制御された定電流源が含まれる。ピックアップコイルの相互インダクタンスが,給電線内で直列に現れるため,定電流源は,相互インダクタンスおよび負荷が一定である限りにおいてのみ,ピックアップコイル出力での電圧を一定に保持することができる。一方,相互インダクタンスは,給電線とピックアップコイル間の距離に反比例しており,その距離も大幅に変動する可能性がある。更に,娯楽・乗客サービスシステムにより各ピックアップコイルに加えられる電気負荷も,比較的広範囲に変動することもありえる。これら可変パラメータが存在することから,各ピックアップコイルの負荷を横断して電圧を一定に保持するため,該コイル用に調整器を設置する必要がある(1欄50〜66行) 。)』b 『In a power supply system・・・a solid-state voltage regulator.(訳:ピックア )ップ回路に共振的かつ誘導的に結合される交流信号を生成する電源を有する給電システムにおいて,ピックアップ回路出力上の直流電圧を所定レベルに調整する装置が提供される。この装置には,次の手段が含まれる。ピックアップ回路出力に接続され,所定レベルよりかなり低い。 , , 調整基準電圧を生成する手段 ピックアップ回路出力に接続され 直流電圧関数として変化し直流電圧より低い比較電圧を生成するよう動作する分圧器手段。調整基準電圧と比較電圧間の差関数として変化する信号を生成する比較器手段。比較器手段からの信号を受信するよう接続され,ピックアップ回路を通って流れる電流が,その回路内で循環し,信号関数として変化する期間は出力されないよう電流を分路させる分路手段。
分圧器手段は,可変分圧器ネットワークを備え,また比較電圧を調整し,それによりピックアップ回路出力上の直流電圧レベルを判定する手段を含む。更に,ピックアップ回路には,ピックアップ回路結合の交流信号を整流し,それにより整流電流を生成する手段と整流電流の濾波を行い,直流電圧を生成する手段が含まれる。
分路手段は,比較器手段からの信号で判定される期間,整流電流のショートを行うよう接続される半導体スイッチを備えることが好ましい。交流信号は,ゼロ電圧レベルを通過し,ピーク正・負電圧レベル間で定期的に変化し,半導体スイッチで整流信号がショートする期間は,一般に,交流信号がゼロ電圧レベルにあるとき開始される。半導体スイッチにより,ほぼゼロ電圧レベルで状態が変化するため,そのスイッチングで,電磁干渉はほとんど起こらない。調整基準電圧の生成手段には,半導体電圧調整器が備えられる(2欄15〜56行) 。)』c 『As noted above・・・above-referenced patent.(訳:上述のように,航空機座席内 )設置の負荷に対して,電力と通信信号を分配するシステムが,共通譲受米国特許第4428078号に詳細に開示されている。この特許に関して,ここで参照という形でその開示内容全体を具体的に記載する。本発明は,前記参照の配電システムを更に発展させたものである。好適実施例では,本発明は,複数の遠隔配置負荷,具体的には航空機キャビン内の乗客座席グループ内に設置の乗客娯楽・サービスシステムのそれぞれの貯蔵部分に加えられる電圧の調整提供を対象とする。乗客娯楽・サービスシステムが要する直流電力は,多重巻ピックアップコイルを通して提供される。このコイルは,前記参照特許で開示されるように,給電線に近接して,各座席グループの基部に配置される(3欄9〜25行) 。)』d 『Supply loop 68・・・the supply loop.(訳:給電線68は,参照米国特許第442 )8078号に記載の図1〜4に示す給電線26に関し,その構成と同様の構成で,航空機キャビンの床内に設置される ・・・ 中略 ・・・図1に示すように,通常のピックアップコイル 。()は多数巻コイル70を備える。システム内の他のピックアップコイル(図示せず)も,それぞれ給電線に誘導結合される多数巻コイルを備える(4欄64行〜5欄17行) 。)』e 『In FIG.2・・・that resistor to lead 110.(訳:図2において,配電システムで使 )用される調整器回路72が示されている。調整器回路72は複数の調整器回路よりなり,各回路は座席グループ内に配置され,グループ各座席内に設置の娯楽システム・乗客サービスシステムに供給される電圧を調整するよう動作する。ピックアップコイル70は,共振タンク回路内でリード74,76を通り,3個の並列コンデンサ78,80,82に接続される。コンデンサ78,80,82の代わりに,それらの静電容量合計と等しい静電容量を有する単一コンデンサも使用できる。だが,共振タンク回路の各コンデンサでの散逸電力が極めて大きくなるため,3個以上の並列コンデンサを使用することが好ましい。ピックアップコイル70と給電(), 。 線68 図1参照 間の誘導結合のため 周波数38kHzで電流がタンク回路内を循環する好適実施例では,循環電流は負荷なし条件下でおよそ8アンペアであり,その中のおよそ2アンペアが接続負荷への電力供給に利用可能である。
リード74も,ショットキー・ダイオード84の陽極に接続される。ショットキー・ダイオードの陰極は,リード86を介し,インダクタ(チョーク)88の一方側,およびツェナー・ダイオード90の陰極に接続される。リード86も,コンデンサ94と直列の抵抗器92に接続され,コンデンサの他方側はリード76に接続される。Nチャンネル電界効果トランジスタ() , , FET 96はそのドレインがリード86に接続され そのソースがリード76に接続されツェナー・ダイオード90と並列に配置される。FETのドレインは,リード98を通り,ダイオード100の陰極に接続される。
インダクタ88の他方端はリード102を通り,PNPトランジスタ108のコレクタと直列の抵抗器104の一方側に接続される。トランジスタ108のコレクタはリード106を通り,NチャンネルFET96のゲートに接続され,該トランジスタのエミッタは,リード76に接続され,そのベースがリード110を通って,ダイオード100の陽極と,コンデンサ112の一方側に接続される。コンデンサ112の他方側は,リード76に接続される。リード110も,抵抗器114に接続され,抵抗器の他方側は,リード116を通りリード74に接続される。
フィルタ・コンデンサ118は,リード76と102との間に接続される。また,電圧分圧器ネットワークは,可変抵抗器124に直列接続される2個の固定抵抗器120,122を備え,リード76と102との間に伸びる。固定抵抗器122と可変抵抗器124間の共通接続は,可変抵抗器上のワイパアーム126に接続される。固定抵抗器120と122との間の共, ,() 。 通接続は リード132を通して 演算増幅器 オペアンプ 134の反転入力に接続されるリード102は+V出力端子128で終了し,リード76は接地出力端子130で終了する。
リード136は,電圧調整器とリード76間に接続されるリード140を通して接地するよう参照される電圧調整器138の入力に接続される。好適実施例では,電圧調整器138が5Vの直流調整出力を生成し,この出力は,リード142を通り,オペアンプ134の非反転入力に接続される ・・・ 中略 ・・・オペアンプ134の出力電位はリード148を通って, 。()抵抗器156の一端に送られ,そしてこの抵抗器を通ってリード110に送られる(5欄。)』18行〜6欄26行)f 『Operation of regulator circuit 72・・・solid-state switching.(訳:調整器回路 )72の動作は,次の説明から容易に理解できる。つまり,ピックアップコイル70および並列コンデンサ78,80,82を備えるタンク回路は,給電線68からピックアップコイル70に誘導結合される電力周波数38kHzで共振する。タンク回路内の循環電流により,リード74,76を横切って正弦波交流電位が生じる。ショットキー・ダイオード84によって,リード74から正の電流がリード86に流れ,交流電位の負の半分がブロックされる。NチャンネルFET96内のツェナー・ダイオード90と内部ダイオード(別途参照せず)により,リード74,76上での交流電位の他半周期間に,リード76からリード86へ,正進行電流が送られる。これにより,電流は,インダクタ88を通って途切れることなく流れることが可能。 , , となる NチャンネルFET96は リード76からリード86内への正電流フローに関してより低い順インピーダンスを有するため,この方向での電流フローの大部分は,ツェナー・ダイオード90ではなく,NチャンネルFET96を通って流れる。NチャンネルFET96がON操作されると,リード76からリード86に正電流が送られる。好適実施例では,ツェナー・ダイオード90により,リード86とリード76間の電圧差がおよそ40Vに制限され,それによりNチャンネルFET96が,その定格電圧限度を超えるドレイン〜ソース電圧から保護されることになる。
, 。 抵抗器92およびコンデンサ94は スナッバ・フィルタとして調整器回路内で使用されるこのスナッバ・フィルタにより,NチャンネルFET96が導電状態と非導電状態間でスイッチングされる時に生成される無線周波数(RF)騒音が,ピックアップコイル70から給電線68内に伝播返却されることはない。実際には,抵抗器92およびコンデンサ94は任意に設置されるものであり,NチャンネルFET96が生成するEMIが潜在的問題と考えられない適用例では 回路から排除されることが好ましい注1:アンダーラインは当審 判決注: 審 , 。( (「判合議体」を指す )で付した )しかし,航空機での使用では,調整器回路内でのEMIを減 。。
少させるため,適切なあらゆる予防措置が通常取られる。これは,航空電子システム内で使用される通信機器および他の高感度電子装置の破壊を避けるためである。
, , , インダクタ88では リード86上の半波整流波形と コンデンサ118による濾波の結果出力端子128 130を横断して発生する直流電圧間に インピーダンスが挿入される注 , , 。(2:アンダーラインは当審(判決注: 審判合議体」を指す )で付した )好適実施例では, 「。。
出力電圧は,前もって定められ,通常8V直流に設定される。非調整の場合の出力電圧は,給電線68とピックアップコイル70間での誘導結合の変化および負荷電流の変化が生ずるため,かなりの変動を受ける可能性がある。誘導結合変化は,乗客が機内持ち込み荷物をピックアップコイル上に置き,あるいは足で押すと,ピックアップコイルと給電線68間の物理的距離が減少し,その時に生ずる可能性がある。調整器回路72では,出力端子128,130を横断する電圧が調整される。この電圧調整は,リード74上での38kHz正弦波交流電位の各周期中の短期間,NチャンネルFET96を通る電流を分路することにより行われる。NチャンネルFETが電流分路を開始するのは,リード74上の電位がゼロ交差を通過し,波形の正側から負側に進む時のみである。NチャンネルFET96が電流を分略する期間は,出力を所望の公称レベルに維持するよう制御される。
図3は,NチャンネルFET96が,各周期毎に一度スイッチONされる時間に関し,リード86上における電位波形200を示す ・・・ 中略 ・・・どのような調整も行われない場 。()合,波形200は波形セグメント202に代わって,破線波形セグメント204に従い,半波形整流信号特性の波形を備えるであろう。
調整器回路72(図2参照)は,16ワットの定格出力電力で,出力端子128,130から,リードに対して2アンペア超の出力電流を提供可能である。出力端子128,130に加えられる負荷により,負荷供給の電流がおよそ2-1/2アンペアを超える場合,ピックアップコイル70およびコンデンサ78,80,82を備える共振タンク回路が共振を停止し,それにより出力端子128,130を横切る電圧が急激に降下し,タンク回路内の共振電流フローがほぼ停止する。この理由から,出力端子128,130を通る短絡電流は,およそ25ミリアンペアに制限される。調整器回路72は,出力端子128,130に定格最大負荷が取り付けられても,NチャンネルFET96により,少なくとも各周期毎,短い間隔で電流が分路される。これにより,ピックアップコイル70と給電線68間の誘導結合が変化する時,出力電圧が調整される。
NチャンネルFET96が電流分路の役割を果たす時間は,電圧調整器138生成の電圧に対して制御される。好適実施例では,電圧調整器138の出力は5V直流であるため,固定抵抗器120,122および可変抵抗器124を備える電圧分圧器ネットワークの構成要素は,所望の公称8V直流(または,他の適当な)出力電圧が出力端子128,130を横断し現れる時,リード132上に公称5V直流を生成するよう選択および調整される。可変抵抗器124により,比較的広範な範囲内,例えば,6〜12V直流で,出力端子128,130上での調整電圧の調整が可能となる。これは,調整電圧がリード132上の電圧分圧器ネットワーク出力電圧に対し,制御されるからである。
オペアンプ134は,リード132上で発生の電圧と,リード142上の電圧調整器138からの電圧出力との比較を行う。リード132接続のオペアンプ反転入力上の電位がリード1,, 。 42接続の非反転入力上の電圧より低い場合 オペアンプ134は 正の出力電圧を生成するオペアンプ134のフィードバック・ネットワークは,比較的高い値のフィードバック抵抗器146(好適実施例では,1メガオーム)を備え,その入力インピーダンスがはるかに低いため,オペアンプ134のゲインが,比較的高くなる。その出力電圧は,オペアンプの反転入力電位が非反転入力電位よりわずかに低い時でも,+Vccに近くなる。オペアンプ134からの正出力電圧は,抵抗器156が電流を制限し,リード110を通ってトランジスタ108のベースに加えられる。トランジスタ108のベースは,リード76を通して接地されるエミッタより正側であるため,トランジスタ108は飽和する。トランジスタ108が飽和すると,トランジスタ108のエミッタおよびNチャンネルFET96のゲートに接続されるリード106上の電位が,約ゼロ,または接地まで降下する。NチャンネルFET96のゲートがトランジスタ108を通って接地されると,それは『OFF状態』に維持され,リード86からリード76への正電流の流れがブロックされる。
出力端子128上の電圧が所望の公称レベルを超えて上昇すると,出力端子128上の電圧から派生するリード132の電圧も,リード142上の電圧調整器138からの電圧出力を超。, 。 えて上昇する その結果 オペアンプ134がほぼゼロの出力電圧レベルを有することになるリード74上の正弦波交流電位がゼロポイントを通り正から負に横切ると,トランジスタ108ベースの電位が接地に対して負となり,その結果トランジスタ108が『OFF操作』される。つまり,そのコレクタとエミッタ接合間での電流フローが停止する。リード106は抵抗器104を通してリード102上の+V電位に接続されるため NチャンネルFET96が O , 『N操作』され,それによりリード86からリード76に正電流が分路され,出力端子128での直流電圧が減少する。出力端子128,130横断の電圧は所望のレベルに降下し,その結果,オペアンプ134反転入力に接続されるリード132上の電位が,電圧調整器138からの電位より低くなる。このような状態が起こると,オペアンプ134は,直ちに正電圧生成を開始する。この正電圧はトランジスタ108のベースに加えられ,やがて抵抗器114を通って提供される負電圧を超えることになる。抵抗器114の抵抗は,抵抗器156のおよそ5倍に設定される。よって,リード74上の正弦波交流電位がほとんど負の部分の期間でも,オペアンプ134からの正電流フローはトランジスタ108ベース上の電位を正に駆動することになる。
NチャンネルFET96がリード86からリード76に正電流を伝えるのは,リード74上の正弦波波形が負から正に進む時,つまり周期毎に一回のみであるのは明らかであろう。リード74上の正弦波波形の正半分側の期間では,遅延t3後トランジスタ108がON操作される。この操作は,抵抗器114を通しトランジスタベースに伝えられるリード74上の電位,または抵抗器156を通りベースに達するオペアンプ134からの出力のどちらかにより行われる。オペアンプ134が正出力を生成していない時,抵抗器114,156はリード74上に存在する正電位用に電圧分圧器回路として動作する。これにより,トランジスタ108ベースがエミッタに対して正となることが保証される。このような状態により,トランジスタ108は前述のように導電となり,それによりNチャンネルFET96がリード86からリード76への正電流フローを阻止することになる。
ダイオード100は・・・ 中略 ・・・遅延t5(図3参照)も与えられる。 ()オペアンプ134の・・・ 中略 ・・・電解コンデンサ150を保護する。 ()調整器回路72は,給電線68とピックアップコイル70間の誘導結合および出力端子128,130に接続されている負荷の両方に関して,比較的広範囲の調整を行う。NチャンネルFET96による分路作用は,負荷に加えられる出力電圧を調整するよう,各波形の一部期間のみ行われ,過度の電流分路による電力消費は起こらない。更に,調整器回路72は,前記のように,過度の負荷電流が引き込まれると短絡により出力電圧が降下するため,短絡保護される。NチャンネルFET96はリード74上の電位がゼロ交差点でのみ電流分路を行うようON操作されるため,生じるEMIは最小となる。半導体スイッチングにより生じるRF騒音のほとんどを濾過排除するため 抵抗器92およびコンデンサ94を任意に設けてもよい6 , 。)』(欄27行〜9欄46行)g 『The embodiments of the invention・・・at a zero voltage level.(訳:独占権ま )たは特権を請求する本発明の実施例は,以下の通り定義される。
【特許請求の範囲】【請求項1】ピックアップ回路に共振的および誘導的に結合される交流信号を生成する電源を有する給電システムにおいて,前記ピックアップ回路出力上で直流電圧を所定レベルに調整する装置であり,(a)前記ピックアップ回路出力に接続され,前記所定レベルよりかなり低い調整基準電圧を生成する手段と;(b)前記ピックアップ回路出力に接続され,前記ピックアップ回路からの直流電圧出力関数として変化し,前記直流電圧より低い比較電圧を生成する分圧器手段と;(c)前記基準電圧と前記比較電圧間の差関数として変化する信号を生成する比較器手段と;(d)前記比較器手段からの信号を受信するよう接続され,前記信号の関数として交流信号の周波数程でしかない低い周波数で変化する期間,電流が前記ピックアップ回路内で循環し,出力されないように,前記ピックアップ回路を流れる電流を周期的に分路する手段とを備えることを特徴とする装置。
【】 , , 請求項2前記分圧器手段が可変電圧分圧器ネットワークを備え 前記比較電圧を調整しそれにより前記ピックアップ回路出力上の前記直流電圧レベルを判定する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】前記ピックアップ回路が前記ピックアップ回路接続の交流信号を整流し,それにより整流電流を生成する手段と,前記整流電流を濾波し,それにより直流電圧を生成する手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】前記分路手段が前記比較器手段からの信号で判定される期間,前記整流電流をショートさせるよう接続される半導体スイッチを備えることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】前記半導体スイッチが前記整流電流をショートさせる期間は,前記整流電流がほぼゼロ電圧レベルにある時に開始することを特徴とする請求項4に記載の装置(9欄5。)』5行〜10欄32行)h)また,FiG.2.には,ショットキー・ダイオード84の半波整流回路と該半波整流回路の出力電流路に介在して平滑した直流を出力させるインダクタ88とからなる整流平滑回路が示されている 」。
(2)引用発明A及び引用発明Bの認定「これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例には次の2つの発明が記載されていると認められる。
(引用発明A)『つぎの事項により特定される誘導的に結合される給電システム。
・給電線68と,交流信号を生成する電源と,複数の遠隔配置負荷を備え,各遠隔配置負荷に誘導電力を分配してこれら遠隔配置負荷を動作させる誘導的に結合される給電システムであること・給電線68は,床内に設置されること・交流信号を生成する電源は,給電線68に38kHzの交流電流を供給すること・遠隔配置負荷は,共振タンク回路と,整流平滑回路と,出力電圧を所定レベルに調整する回路と,電気負荷とを備えること・共振タンク回路は,多重巻のピックアップコイル70と,ピックアップコイル70に並列接続された並列コンデンサ78,80,82を含み,給電線68に誘導結合可能であること・ピックアップコイル70のインダクタンスと並列コンデンサ78,80,82のキャパシタンスは,この並列回路が給電線68に供給される交流電流の38kHzに共振するように選定されること・整流平滑回路は,ショットキー・ダイオード84の半波整流回路と,インダクタ88を含むこと・半波整流回路は,ピックアップコイル70に発生する交流を半波整流すること・インダクタ88は,半波整流回路の出力電流路に介在して平滑した直流を出力させること・出力電圧を所定レベルに調整する回路は,コンデンサ118と,分圧器手段と,調整基準電圧を生成する手段と,NチャンネルFET96と,NチャンネルFET96を制御する手段を含むこと・コンデンサ118は,整流平滑回路の出力端間に接続され,整流平滑回路の出力によってコンデンサ118が充電可能であること・電気負荷は,コンデンサ118の両端から電力供給を受けて動作すること・分圧器手段は,コンデンサ118の電圧を分圧した分圧電圧を出力すること・調整基準電圧を生成する手段は,調整基準電圧を発生すること・NチャンネルFET96は,半波整流回路の出力端間に接続されること・NチャンネルFET96を制御する手段は,分圧電圧と調整基準電圧とを比較するとともに,その比較結果に応じてNチャンネルFET96をON-OFF切替操作させ,分圧電圧が調整基準電圧より大きい場合にNチャンネルFET96をON操作して半波整流回路の出力電流を分路することによりコンデンサ118の電圧を所定レベルに調整すること ,』(引用発明B)『つぎの事項により特定される遠隔配置負荷。
・共振タンク回路と,整流平滑回路と,出力電圧を所定レベルに調整する回路と,電気負荷とを備えること・共振タンク回路は,多重巻のピックアップコイル70と,ピックアップコイル70に並列接続された並列コンデンサ78,80,82を含み,給電線68に誘導結合可能であること・ピックアップコイル70のインダクタンスと並列コンデンサ78,80,82のキャパシタンスは,この並列回路が給電線68に供給される交流電流の38kHzに共振するように選定されること・整流平滑回路は,ショットキー・ダイオード84の半波整流回路と,インダクタ88を含むこと・半波整流回路は,ピックアップコイル70に発生する交流を半波整流すること・インダクタ88は,半波整流回路の出力電流路に介在して平滑した直流を出力させること・出力電圧を所定レベルに調整する回路は,コンデンサ118と,分圧器手段と,調整基準電圧を生成する手段と,NチャンネルFET96と,NチャンネルFET96を制御する手段を含むこと・コンデンサ118は,整流平滑回路の出力端間に接続され,整流平滑回路の出力によってコンデンサ118が充電可能であること・電気負荷は,コンデンサ118の両端から電力供給を受けて動作すること・分圧器手段は,コンデンサ118の電圧を分圧した分圧電圧を出力すること・調整基準電圧を生成する手段は,調整基準電圧を発生すること・NチャンネルFET96は,半波整流回路の出力端間に接続されること・NチャンネルFET96を制御する手段は,分圧電圧と調整基準電圧とを比較するとともに,その比較結果に応じてNチャンネルFET96をON-OFF切替操作させ,分圧電圧が調整基準電圧より大きい場合にNチャンネルFET96をON操作して半波整流回路の出力電流を分路することによりコンデンサ118の電圧を所定レベルに調整すること 」』(3)本件発明1と引用発明Aとの対比「本件発明1と引用発明Aとを比較すると,その機能・作用からみて,後者における『誘導的』『 』,, に結合される給電システム が前者における 誘導電力分配システム に相当し 以下同様に『給電線68』が『一次導電路』に 『交流信号を生成する電源』が『電源装置』に 『38k , ,Hz』が『所定周波数』に 『共振タンク回路』が『ピックアップ』に 『出力電圧を所定レベ , ,ルに調整する回路』が『定電圧回路』に 『電気負荷』が『負荷』に 『並列コンデンサ78, , ,80,82』が『同調コンデンサ』に 『給電線68に誘導結合可能』が『一次導電路から発 ,生する交番磁界に結合可能』に 『給電線68に供給される交流電流の38kHz』が『一次 ,導電路から発生する交番磁界の周波数 にコンデンサ118 が 出力コンデンサ に分 』 ,『』 『』 ,『圧器手段 が 電圧検出回路 に調整基準電圧を生成する手段 が 信号発生回路 にN 』 『』 ,『 』 『』 ,『チャンネルFET96がスイッチにNチャンネルFET96を制御する手段がス 』 『』,『 』 『イッチ制御回路』に 『コンデンサ118の電圧を分圧した分圧電圧』が『出力コンデンサの ,電圧に対応した監視電圧信号』に 『調整基準電圧』が『基準電圧信号』に 『ON-OFF切 , ,替操作』が『オンオフ切替動作』に,それぞれ相当している。
そして,後者の『多重巻のピックアップコイル70』は,ピックアップコイルがコアに多重に巻かれているのが普通であるから,前者の『コアに巻かれたピックアップコイル』に相当するといえる。
さらに,前者の『負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コン』,()【】 デンサの電圧を定電圧化する とは 本件特許明細書 甲第15号証参照 の段落 0032の『出力負荷(14116)による消費電力が小さいと,出力コンデンサ(14115)から出力負荷(14116)に流れる出力電流が小さいので(ゼロも含む ,出力コンデンサ(1 )4115)の電圧が基準値より大きくなる傾向を示し,これに対応してスイッチ制御回路(14117 (14123)はスイッチ(14113)のオン割合を大きくする。すると,ピッ )クアップコイル(14111)に生じる交流電圧が低下し,よって整流平滑回路の直流出力電圧が低下し,出力コンデンサ(14115)の充電電流が減少する(ゼロも含む 。つまり, )出力負荷(14116)に流れる小さな出力電流に見合うように充電電流を減少させる自動制御が働き,出力コンデンサ(14115)の電圧が定電圧化する 』なる記載からみて,負荷 。
の消費電力が小さいことに対応して出力コンデンサの電圧が基準値より大きい場合にスイッチのオン割合を大きくして出力コンデンサの電圧を定電圧化することを意味するものと解されるから,後者の『分圧電圧が調整基準電圧より大きい場合にNチャンネルFET96をON操作して半波整流回路の出力電流を分路することによりコンデンサ118の電圧を所定レベルに調整する』態様は,前者の『負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コンデンサの電圧を定電圧化する』態様に相当する。
また,後者における『遠隔配置負荷』と前者における『電動車両』は 『被電力供給体』な ,る概念で共通し,後者の『遠隔配置負荷を動作させる』態様と前者の『車両を共通の軌道に沿って個別に走行させる』態様とは 『被電力供給体を駆動させる』との概念で共通し,後者の ,『,』『, 』 給電線68は 床内に設置される 態様と前者の 一次導電路は 軌道に沿って敷設される態様とは 『一次導電路は,所定箇所に敷設される』との概念で共通し,後者の『半波整流回 ,路』と前者の『全波整流回路』とは 『整流回路』との概念で共通し,後者の『Nチャンネル ,FET96は,半波整流回路の出力端間に接続される』態様と前者の『スイッチは,整流平滑回路の出力端間に接続される』態様とは 『スイッチは,整流回路で整流された後の出力端間 ,に接続される』との概念で共通している。
したがって,両者は,『つぎの事項により特定される誘導電力分配システム。
一次導電路と,電源装置と,複数の被電力供給体を備え,各被電力供給体に誘導電力を分配してこれら被電力供給体を駆動させる誘導電力分配システムであること一次導電路は,所定箇所に敷設されること電源装置は,一次導電路に所定周波数の交流電流を供給すること被電力供給体は,ピックアップと,整流平滑回路と,定電圧回路と,負荷とを備えることピックアップは,コアに巻かれたピックアップコイルと,ピックアップコイルに並列接続された同調コンデンサを含み,一次導電路から発生する交番磁界に結合可能であることピックアップコイルのインダクタンスと同調コンデンサのキャパシタンスは,この並列回路が一次導電路から発生する交番磁界の周波数に共振するように選定されること整流平滑回路は,整流回路と,インダクタを含むこと整流回路は,ピックアップコイルに発生する交流を整流することインダクタは,整流回路の出力電流路に介在して平滑した直流を出力させること定電圧回路は,出力コンデンサと,電圧検出回路と,信号発生回路と,スイッチと,スイッチ制御回路を含むこと出力コンデンサは,整流平滑回路の出力端間に接続され,整流平滑回路の出力によって出力コンデンサが充電可能であること負荷は,出力コンデンサの両端から電力供給を受けて動作すること電圧検出回路は,出力コンデンサの電圧に対応した監視電圧信号を出力すること信号発生回路は,基準電圧信号を発生することスイッチは,整流回路で整流された後の出力端間に接続されることスイッチ制御回路は,監視電圧信号と基準電圧信号とを比較するとともに,その比較結果に応じてスイッチをオンオフ切替動作させ,負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コンデンサの電圧を定電圧化すること』である点で一致し,次の点で相違する。
[相違点1]被電力供給体に関し,本件発明1が 『軌道』を備え 『車両を共通の軌道に沿って個別に走 ,,行させる』ものであり,一次導電路が『軌道に沿って』敷設され,かつ 『モータを含む』負 ,荷を備えた『電動車両』であると共に 『モータは,当該電動車両を軌道に沿って走行させる ,こと』としているのに対し,引用発明Aは,かかる特定がなされていない点。
[相違点2]整流回路に関し,本件発明1が 『全波整流回路』であり,ピックアップコイルに発生する ,交流を『全波整流』するものであるのに対し,引用発明Aは 『半波整流回路』であり,同交 ,流を『半波整流』するものである点。
[相違点3]本件発明1が,定電圧回路に『ダイオード』を含むものであり 『ダイオード』と出力コン ,デンサは,整流平滑回路の出力端に『直列』接続されるとしているのに対し,引用発明Aは,かかるダイオードを備えていない点。
[相違点4]整流回路で整流された後の出力端間に接続されるスイッチに関し,本件発明1が 『整流平 ,滑回路』の出力端間,即ち 『インダクタ』を介した後で出力コンデンサの直前の出力端間に ,,,『』,,『』 接続されるものであるのに対し 引用発明Aは整流回路 の出力端間 即ちインダクタを介する前の出力端間に接続されるものである点 」。
(4)本件発明1と引用発明Aとの相違点についての判断「上記相違点について以下検討する。
・相違点1について甲第8号証ないし甲第10号証(判決注:本訴甲第8〜第10号証)に開示されているように,非接触給電システムを,軌道に沿ってモータで走行させる電動車両に適用することは周知技術である。
そして,引用例の摘記事項『a 』を参酌すれば,引用発明Aの本質的な課題は,非接触給 )電システムにおける負荷が比較的広範囲に変動してもピックアップコイル出力での電圧を一定に保持する調整器の設置にあることが窺われるところであり,上記周知技術においても,引用発明Aと同様の課題が生ずることは明らかである。
また,引用発明Aにおいて,被電力供給体は誘導電力分配が可能な範囲内で当業者が適宜選定し得るものといえる。
そうすると,非接触給電システムの技術分野に属する引用発明Aにおいて,上記周知技術を踏まえれば,被電力供給体として上記の電動車両を選定することにより相違点1に係る本件発明1の構成とすることは,かかる選定に際し格別な技術的困難性が何等認められない以上,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
・相違点2について整流回路を全波整流回路とするか半波整流回路とするかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項であるから,引用発明Aにおいて,半波整流回路を全波整流回路に改変することにより相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,かかる改変に際し格別な技術的困難性が何等認められない以上,当業者にとって容易であり,また,それにより格別な効果が奏されるともいえない。
・相違点3及び4について本件発明1においては,スイッチが『インダクタ』を介した後で出力コンデンサの直前の出力端間に接続されているため スイッチがオンした時に出力コンデンサの放電を防止させる ダ , 『イオード』の存在が必要となっているものと解される。
一方,引用発明Aにおいては,スイッチ(NチャンネルFET96)が『インダクタ』を介する前の出力端間に接続されているものであり 『インダクタ』が,整流回路の出力電流を平 ,滑する機能のみならず 出力コンデンサ コンデンサ118 からの放電を防止し得る機能 引 ,() (用例の摘記事項『f 』の中のアンダーラインを付した箇所(注2の部分)の記載参照)をも )有するものであるといえる。
そして,引用発明Aにおいて,スイッチを 『インダクタ』を介する前の出力端間に接続す ,るか 『インダクタ』を介した後の出力端間に接続するかは,当業者が必要に応じて適宜選定 ,し得る設計的事項であり,後者の接続を選定した場合には,スイッチが出力コンデンサの直前の出力端間に接続されることから,出力コンデンサからの放電を防止するための回路素子が別途必要となることも容易に理解されるところである。
また,甲第3号証ないし甲第7号証(判決注:本訴甲第3〜第7号証)に開示されているように,電源回路の分野において,スイッチがオンした時に出力コンデンサの放電を防止させるダイオードを使用すること自体は周知技術である。
,,『』 ,, そうすると 引用発明Aにおいて スイッチを インダクタ を介した後の出力端間 即ち出力コンデンサの直前の出力端間に接続する際に,上記周知技術を加味することにより,相違点3及び4に係る本件発明1の構成とすることは,かかる構成とする上での格別な技術的困難性が何等認められない以上,当業者が容易に想到し得えたものというべきであり,また,それにより格別な効果が奏されるともいえない。
そして,本件発明1の全体構成により奏される効果も,引用発明A及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
なお,被請求人は答弁書において,本件発明1では一次導電路に帰還するインピーダンスが負荷の消費電力が小さい場合に小さくなるので,消費電力の小さい負荷が原因で一次導電路に電流を流しにくくなるという現象の発生を回避できるとの効果を奏する旨主張している。
ところで,本件特許明細書(甲第15号証(判決注:本訴甲第15号証。本件特許に係る掲載公報)参照)の段落【0033】には 『出力負荷(14116)による消費電力が小さい ,場合 スイッチ 14113 のオン割合が大きくなることによって ピックアップコイル 1 ,() ,(4111)に生じる交流電圧・電流が減少する。ピックアップコイル(14111)に流れる交流電流が減少すると,この交流電流の誘導作用により一次導電路に帰還するインピーダンスが小さくなる 』と記載されている。 。
本件特許明細書の上記記載を踏まえれば,負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コンデンサの電圧を定電圧化する引用発明Aにおいても,スイッチのオン, , 割合が大きくなることによって ピックアップコイルに生じる交流電流が減少することになりこの交流電流の誘導作用により一次導電路に帰還するインピーダンスが小さくなるといわざるをえないから,被請求人の主張する上記と同様の効果を奏するものと解される。
さらに,被請求人は答弁書において,引用発明Aにおいて本件発明1のスイッチ制御回路に置換することが周知技術に基づいて容易想到であると仮定したとしても,そのように置換したのでは『生じるEMIは最小となる』という重要な技術要件に適合しなくなってしまうため,かかる置換には明白な阻害要因が存在する旨主張している。
ところで,引用例については以下の点が明らかである。
第一に,引用例の摘記事項『a 』を参酌すれば,引用発明Aの本質的な課題は,非接触給 )電システムにおける負荷が比較的広範囲に変動してもピックアップコイル出力での電圧を一定に保持する調整器の設置にあることが窺えること。
第二に,引用例の摘記事項『f 』の中のアンダーラインを付した箇所(注1の部分)の記 )載によれば,引用発明Aの適用例としては,EMIを考慮しなくてよいものが含まれていると解されること。
第三に,引用例の摘記事項『g 』を参酌すれば,EMIを最小とするための構成は請求項 )5に記載されてはいるものの,請求項1〜4に係る発明の必須の構成要件としては含まれていないこと。
以上の点を踏まえれば,EMIを最小にするための構成は引用発明Aの必須の構成要件として認定する必要のないものであると共に,EMIを最小にすることが引用発明Aの解決課題であるともいえないから,引用発明Aにおいて本件発明1のスイッチ制御回路に置換する際に格別の阻害要因が存在するとはいえず,被請求人の上記主張は到底採用できない。
以上のとおりであるので,本件発明1は,引用発明A及び上記周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものというべきである 」。
(5)本件発明2と引用発明Bとの対比及び判断「本件発明2と引用発明Bとを比較すると,上記(3)での検討内容を踏まえれば,両者は,『つぎの事項により特定される被電力供給体。
ピックアップと,整流平滑回路と,定電圧回路と,負荷とを備えることピックアップは,コアに巻かれたピックアップコイルと,ピックアップコイルに並列接続された同調コンデンサを含み,一次導電路から発生する交番磁界に結合可能であることピックアップコイルのインダクタンスと同調コンデンサのキャパシタンスは,この並列回路が一次導電路から発生する交番磁界の周波数に共振するように選定されること整流平滑回路は,整流回路と,インダクタを含むこと整流回路は,ピックアップコイルに発生する交流を整流することインダクタは,整流回路の出力電流路に介在して平滑した直流を出力させること定電圧回路は,出力コンデンサと,電圧検出回路と,信号発生回路と,スイッチと,スイッチ制御回路を含むこと出力コンデンサは,整流平滑回路の出力端間に接続され,整流平滑回路の出力によって出力コンデンサが充電可能であること負荷は,出力コンデンサの両端から電力供給を受けて動作すること電圧検出回路は,出力コンデンサの電圧に対応した監視電圧信号を出力すること信号発生回路は,基準電圧信号を発生することスイッチは,整流回路で整流された後の出力端間に接続されることスイッチ制御回路は,監視電圧信号と基準電圧信号とを比較するとともに,その比較結果に応じてスイッチをオンオフ切替動作させ,負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コンデンサの電圧を定電圧化すること』である点で一致し,次の点で相違する。
[相違点a]被電力供給体に関し本件発明2が電動車両でありモータを含む負荷を備え一 ,,『』,『』,『次導電路付きの軌道に沿って走行する』ものであり,かつ 『モータは,当該電動車両を軌道 ,に沿って走行させること』としているのに対し,引用発明Bは,かかる特定がなされていない点。
[相違点b]整流回路に関し,本件発明2が 『全波整流回路』であり,ピックアップコイルに発生する ,交流を『全波整流』するものであるのに対し,引用発明Bは 『半波整流回路』であり,同交 ,流を『半波整流』するものである点。
[相違点c]本件発明2が,定電圧回路に『ダイオード』を含むものであり 『ダイオード』と出力コン ,デンサは,整流平滑回路の出力端に『直列』接続されるとしているのに対し,引用発明Bは,かかるダイオードを備えていない点。
[相違点d]整流回路で整流された後の出力端間に接続されるスイッチに関し,本件発明2が 『整流平 ,滑回路』の出力端間,即ち 『インダクタ』を介した後で出力コンデンサの直前の出力端間に ,,,『』,,『』 接続されるものであるのに対し 引用発明Bは整流回路 の出力端間 即ちインダクタを介する前の出力端間に接続されるものである点 」。
(6)本件発明2と引用発明Bとの相違点についての判断「上記の相違点について検討する。
・相違点aについて上記(4)の『相違点1について』での検討内容を踏まえれば,引用発明Bにおける被電力供給体として,軌道に沿ってモータで走行させる電動車両を選定することにより,相違点aに係る本件発明2の構成とすることは,かかる選定に際し格別な技術的困難性が何等認められない以上,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
・相違点bないしdについて相違点bないしdは,上記(3)の相違点2ないし4と実質的に同じである。
そうすると,上記(4)の『相違点2について』及び『相違点3及び4について』での検討内容を踏まえれば,引用発明Bにおいて,相違点bないしdに係る本件発明2の構成とすることは,かかる構成とする上での格別な技術的困難性が何等認められない以上,当業者が容易に想到し得えたものというべきであり,また,それにより格別な効果が奏されるともいえない。
そして,本件発明2の全体構成により奏される効果も,引用発明B及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
以上のとおりであるので,本件発明2は,引用発明B及び上記周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものというべきである 」。
第3原告の主張(審決取消事由)の要点審決は,本件発明1の進歩性の判断において,引用発明Aの認定を誤ったことにより本件発明1と引用発明Aとの一致点の認定を誤る(取消事由1)とともに,相違点2についての判断を誤り(取消事由2 ,また,本件発明2の進歩性の判断に )おいて,引用発明Bの認定を誤ったことにより本件発明2と引用発明Bとの一致点の認定を誤る(取消事由3)とともに,相違点bについての判断を誤った(取消事由4)結果,本件発明がいずれも引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとの誤った結論に至ったものであるから,取り消されるべきである。
1取消事由1(本件発明1と引用発明Aとの一致点の認定の誤り)(1)審決は,引用発明Aを下記のとおり認定した上,この認定を前提として,本件発明1と引用発明Aとの一致点を認定した。
(審決の認定に係る引用発明A)「つぎの事項により特定される誘導的に結合される給電システム。
・給電線68と,交流信号を生成する電源と,複数の遠隔配置負荷を備え,各遠隔配置負荷に誘導電力を分配してこれら遠隔配置負荷を動作させる誘導的に結合される給電システムであること・給電線68は,床内に設置されること・交流信号を生成する電源は,給電線68に38kHzの交流電流を供給すること・遠隔配置負荷は,共振タンク回路と,整流平滑回路と,出力電圧を所定レベルに調整する回路と,電気負荷とを備えること・共振タンク回路は,多重巻のピックアップコイル70と,ピックアップコイル70に並列接続された並列コンデンサ78,80,82を含み,給電線68に誘導結合可能であること・ピックアップコイル70のインダクタンスと並列コンデンサ78,80,82のキャパシタンスは,この並列回路が給電線68に供給される交流電流の38kHzに共振するように選定されること・整流平滑回路は,ショットキー・ダイオード84の半波整流回路と,インダクタ88を含むこと・半波整流回路は,ピックアップコイル70に発生する交流を半波整流すること・インダクタ88は,半波整流回路の出力電流路に介在して平滑した直流を出力させること・出力電圧を所定レベルに調整する回路は,コンデンサ118と,分圧器手段と,調整基準電圧を生成する手段と,NチャンネルFET96と,NチャンネルFET96を制御する手段を含むこと・コンデンサ118は,整流平滑回路の出力端間に接続され,整流平滑回路の出力によってコンデンサ118が充電可能であること・電気負荷は,コンデンサ118の両端から電力供給を受けて動作すること・分圧器手段は,コンデンサ118の電圧を分圧した分圧電圧を出力すること・調整基準電圧を生成する手段は,調整基準電圧を発生すること・NチャンネルFET96は,半波整流回路の出力端間に接続されること・NチャンネルFET96を制御する手段は,分圧電圧と調整基準電圧とを比較するとともに,その比較結果に応じてNチャンネルFET96をON-OFF切替操作させ,分圧電圧が調整基準電圧より大きい場合にNチャンネルFET96をON操作して半波整流回路の出力電流を分路することによりコンデンサ118の電圧を所定レベルに調整すること」(2)しかしながら,審決の引用発明Aの認定のうち,引用発明Aが「NチャンネルFET96を制御する手段は,分圧電圧と調整基準電圧とを比較するとともに,その比較結果に応じてNチャンネルFET96をON-OFF切替操作させ,分圧電圧が調整基準電圧より大きい場合にNチャンネルFET96をON操作して半波整流回路の出力電流を分路することによりコンデンサ118の電圧を所定レベルに調整すること」により特定されるとした部分は誤りである。したがって,審決の本件発明1と引用発明Aとの一致点の認定も,上記認定部分を前提として 「スイッ ,チ制御回路は,監視電圧信号と基準電圧信号とを比較するとともに,その比較結果に応じてスイッチをオンオフ切替動作させ,負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コンデンサの電圧を定電圧化する」との点で一致するとした部分に誤りがある。
すなわち,引用例に記載された発明(引用発明A及び引用発明B。以下,併せて「引用発明」という )は,航空機内の床下に設置された一次導電路と座席に設置 。
されたピックアップコイルとの誘導結合の変化等によって共振回路の電圧が変化する場合においても,共振回路の電圧・電流を一定に維持することによって負荷電圧を一定にすることを主要な技術課題とし,併せて,電流が流れている時にスイッチングを行うことによって生じる電磁干渉(以下「EMI」という )を回避するこ 。
とをも技術課題とするものである。そして,引用発明は,このような技術課題を解決するため,半波整流回路を用いて,ピックアップコイルに発生する交流電圧信号を常に監視して,交流電圧が正から負に変わった際に毎回分路用のスイッチ(NチャンネルFET96)をオンし,当該交流電圧が負から正に変わった際に少し遅れて毎回同スイッチをオフするという動作を繰り返しているものであり,このようなスイッチ制御の結果,スイッチを含む負荷側に電流が流れない負の半波期間には,共振回路で発生させた共振電流の流れを半波整流器によりブロックしているので,オン操作されても共振回路は自由共振を継続し,常に一定値以上のピックアップコイル電圧を維持する(ピックアップコイル電圧が一定値であれば,ピックアップコイル電流も一定値を維持する )とともに,スイッチをオンするタイミングを,ピ 。
ックアップコイルに発生する交流電圧が正から負に変わった際とすることによりEMIの発生をも回避しているのである。
このように,引用発明のスイッチング動作は,交流電圧の周期に同期してオン,オフの動作を行う位相制御であって,審決の認定するような分圧電圧と調整基準電圧の比較によりスイッチング動作を行うものではない。
(3)被告らは,引用例にEMI対策を必要としない発明が記載されているとか,引用発明は負荷への供給電圧を一定に維持することを目的とする発明であると主張する。
しかしながら,引用例において従来技術とされている米国特許4428078号(乙第4号証)には,航空機の複数の座席に電力を供給するための非接触給電シス(「」。),, テムの発明 以下 Kuo発明 というが開示されているところ 引用例には引用発明に係る「発明の背景」として,Kuo発明は更に開発が進み,現在では定電流源が含まれること,定電流源は,相互インダクタンス及び負荷が一定である場合に限りピックアップコイル出力での電圧を一定に保持できるが,相互インダクタンス及び負荷は変動する可能性があるために,ピックアップコイル出力での電圧の変動を防止すべく 「各ピックアップコイルの負荷を横断して電圧を一定に維持す ,るため,該コイル用に調整器を設置する必要」があるものの,直列通過式や分路調整器等の従来の調整器では 「容認しがたい電磁干渉(EMI 」が起こり,定電 , )流源が破壊される可能性があるとともに,過度に電力量が消費されるなど,非効率となる傾向があることが指摘された上で 「本発明の目的は,非接触給電システム ,の各負荷用に,低コストの調整器を提供することである 」と記載されている(訳 。
文2頁6〜末行 。したがって,引用発明が,容認し難いEMIと過度の電力消費 )を伴わない低コストの調整器を提供することを解決課題としたものであることは明らかである。
そして,引用発明は,直列通過式や分路調整器等の従来の調整器に代わり,やはり従来からの周知技術であるスイッチングレギュレータを採用した点に特徴がある。スイッチングレギュレータは,抵抗によるのではなく,スイッチングによって電圧・電流を制御して調整するため,電力消費が少ないというメリットがあるが,スイッチングが繰り返されるため,EMIが非常に大きいという欠点がある。そこで,引用発明は,そのスイッチングを開始する時期をスイッチに電流が流れない電圧ゼロの期間に行うこととしてEMIの発生を最小限に抑制し,スイッチングレギュレータの欠点を克服したものと理解できるのであり,この点にこそ,引用発明の重要な目的が存するのである。すなわち,引用発明は,非接触給電システムに電力消費の少ないスイッチングレギュレータを採用するに当たって,従来の調整器の抱えていた「電磁干渉」及びそれによる「定電流源の破壊」という課題を解消したスイッチングレギュレータを提供する点において,初めて独自性が認められるものである。
引用例には,被告らが摘記する「抵抗器92およびコンデンサ94は任意に設置されるものであり,NチャンネルFET96が生成するEMIが潜在的問題と考えられない適用例では,回路から排除されることが好ましい(訳文7頁6〜8行) 。」との記載があるが,この記載において,任意に設置されるものとされているのが,抵抗器92及びコンデンサ94(スナッバ・フィルタ手段)のみであることは明らかであって,ピックアップコイル出力電圧がゼロの期間にスイッチをオンとする構成まで任意とする趣旨ではないし,そのように解する余地もない。すなわち,引用例の「NチャンネルFET96はリード74上の電位がゼロ交差点でのみ電流分路を行うようON操作されるため,生じるEMIは最小となる。半導体スイッチングにより生じるRF騒音のほとんどを濾過排除するため,抵抗器92およびコンデンサ94を任意に設けてもよい(訳文9頁34〜37行)との記載に照らし,引 。」用発明のスナッバ・フィルタは,ピックアップコイル出力電圧がゼロの期間にスイッチをオンするという構成の下でEMIが最小に抑制されていることを前提とした上で,なおも生じ得るEMIを抑制することによって,定電流源の破壊や航空電子システムへの影響が生じる危険を完全に防止するために設けられるものであることが明らかである。他方,スナッバ・フィルタがノイズ除去の過程で熱を発することは当業者に周知であって,電力消費の観点からも,安全性やコストの観点からも不,「 」 必要であれば除外することが望ましいから回路から排除されることが好ましいとされているのである。
なお,被告らは,引用例の特許請求の範囲の請求項1及び請求項11に記載された発明は,ゼロ電圧検出手段を特定しないものであり,引用例がEMI対策を必要, 。 としない発明を含むことは 特許請求の範囲の記載からも明らかであると主張するしかしながら,引用例につき,本件無効審判で判断されるべき事項は,本件発明の回路構造やスイッチング構造が引用例に開示されているか(特段の思考を要さず実施できる程度に技術の開示があるといえるか)否かであるところ,上記請求項1及び請求項11の記載は,回路の構成の体をなしておらず,むしろ,非接触給電に分路の期間を変化させるスイッチングレギュレータを設けて分路による定電圧化を図ったという点を抽象的にクレームしただけのものと解され,具体的な回路を開示したものではないというべきであり,特段の考慮を要さずに実施可能な程度の技術の。, , 開示があるといえるものではない したがって これらの請求項に接した当業者がそこに記載された発明の意義を理解し,実施しようとすれば,引用例の明細書の部分の記載によらなければならないが,当該部分の具体的な電気回路の説明と図面に接した当業者が,請求項に限定がないからといって,明細書に開示された重要な技術思想と関係することが明らかであるスイッチング方式を不要なものであると解することなどあり得ない。
したがって,被告らの主張は失当である。
2取消事由2(本件発明1と引用発明Aとの相違点2についての判断の誤り)(1)審決は,本件発明1と引用発明Aとの相違点2として「整流回路に関し,本件発明1が 『全波整流回路』であり,ピックアップコイルに発生する交流を『全 ,波整流』するものであるのに対し,引用発明Aは 『半波整流回路』であり,同交 ,流を『半波整流』するものである点」を認定したものの,当該相違点につき 「整,流回路を全波整流回路とするか半波整流回路とするかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項であるから,引用発明Aにおいて,半波整流回路を全波整流回路に改変することにより相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,かかる改変に際し格別な技術的困難性が何等認められない以上,当業者にとって容易であり,また,それにより格別な効果が奏されるともいえない 」と判断した。 。
,, , (2)しかしながら 引用発明が 共振回路の電圧・電流を一定に維持することとEMIの発生を回避することとを技術課題とし,その解決のため,共振回路から負荷側に電流が流れない,共振交流電圧の負の半波期間に分路用のスイッチをオンするものであること,すなわち,この期間は,共振回路で発生した共振電流の流れが半波整流器によりブロックされているので,スイッチがオンであっても共振回路の自由共振が継続でき,共振回路の電圧を一定値以上に維持することができるものであることは,上記1のとおりである。
したがって,引用発明において,半波整流回路を採用することが,発明の技術的根幹をなすものであることは明白であり,審決が 「整流回路を全波整流回路とす ,るか半波整流回路とするかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項である」とした上 「引用発明Aにおいて,半波整流回路を全波整流回路に改変する ,ことにより相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,かかる改変に際し格別な技術的困難性が何等認められない以上,当業者にとって容易であり,また,それにより格別な効果が奏されるともいえない 」と判断したことは,明らかに誤りで 。
ある。
(3)被告らは,引用発明において,半波整流回路を採用することは発明の技術的根幹をなすとの原告の主張が根拠を欠くと主張するが,その理由は,引用例にはEMI対策を必要としない発明が含まれているとする点にあるから,被告らの上記主張が失当であることは明らかである。
3取消事由3(本件発明2と引用発明Bとの一致点の認定の誤り)(1)審決は,引用発明Bを下記のとおり認定した上,この認定を前提として,本件発明2と引用発明Bとの一致点を認定した。
(審決の認定に係る引用発明B)「つぎの事項により特定される遠隔配置負荷。
・共振タンク回路と,整流平滑回路と,出力電圧を所定レベルに調整する回路と,電気負荷とを備えること・共振タンク回路は,多重巻のピックアップコイル70と,ピックアップコイル70に並列接続された並列コンデンサ78,80,82を含み,給電線68に誘導結合可能であること・ピックアップコイル70のインダクタンスと並列コンデンサ78,80,82のキャパシタンスは,この並列回路が給電線68に供給される交流電流の38kHzに共振するように選定されること・整流平滑回路は,ショットキー・ダイオード84の半波整流回路と,インダクタ88を含むこと・半波整流回路は,ピックアップコイル70に発生する交流を半波整流すること・インダクタ88は,半波整流回路の出力電流路に介在して平滑した直流を出力させること・出力電圧を所定レベルに調整する回路は,コンデンサ118と,分圧器手段と,調整基準電圧を生成する手段と,NチャンネルFET96と,NチャンネルFET96を制御する手段を含むこと・コンデンサ118は,整流平滑回路の出力端間に接続され,整流平滑回路の出力によってコンデンサ118が充電可能であること・電気負荷は,コンデンサ118の両端から電力供給を受けて動作すること・分圧器手段は,コンデンサ118の電圧を分圧した分圧電圧を出力すること・調整基準電圧を生成する手段は,調整基準電圧を発生すること・NチャンネルFET96は,半波整流回路の出力端間に接続されること・NチャンネルFET96を制御する手段は,分圧電圧と調整基準電圧とを比較するとともに,その比較結果に応じてNチャンネルFET96をON-OFF切替操作させ,分圧電圧が調整基準電圧より大きい場合にNチャンネルFET96をON操作して半波整流回路の出力電流を分路することによりコンデンサ118の電圧を所定レベルに調整すること」(2)しかしながら,審決の引用発明Bの認定のうち,引用発明Bが「NチャンネルFET96を制御する手段は,分圧電圧と調整基準電圧とを比較するとともに,その比較結果に応じてNチャンネルFET96をON-OFF切替操作させ,分圧電圧が調整基準電圧より大きい場合にNチャンネルFET96をON操作して半波整流回路の出力電流を分路することによりコンデンサ118の電圧を所定レベルに調整すること」により特定されるとした部分は,上記1(取消事由1)のとおり誤りである。したがって,審決の本件発明2と引用発明Bとの一致点の認定も,上記認定部分を前提として 「スイッチ制御回路は,監視電圧信号と基準電圧信号とを ,比較するとともに,その比較結果に応じてスイッチをオンオフ切替動作させ,負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コンデンサの電圧を定電圧化する」との点で一致するとした部分に誤りがある。
4取消事由4(本件発明2と引用発明Bとの相違点bについての判断の誤り)(1)審決は,本件発明2と引用発明Bとの相違点bとして「整流回路に関し,本件発明2が 『全波整流回路』であり,ピックアップコイルに発生する交流を『全 ,波整流』するものであるのに対し,引用発明Bは 『半波整流回路』であり,同交 ,流を『半波整流』するものである点」を認定したものの,当該相違点につき,本件発明1と引用発明Aとの相違点2と実質的に同じであり,当該相違点2についての検討内容を踏まえれば,引用発明Bにおいて,相違点bに係る本件発明2の構成とすることは,かかる構成とする上での格別な技術的困難性が認められず,当業者が容易に想到し得えたものというべきであり,また,それにより格別な効果が奏されるともいえないと判断した。
(2)本件発明2と引用発明Bとの相違点bが,本件発明1と引用発明Aとの相違点2と実質的に同じであることはそのとおりであるが,審決の相違点2についての判断が誤りであることは,上記2(取消事由2)のとおりであるから,その判断を引用するに止まる審決の相違点bについての判断も誤りである。
第4被告らの反論の要点1取消事由1(本件発明1と引用発明Aとの一致点の認定の誤り)に対し(1)原告は,引用発明のスイッチング動作は,交流電圧の周期に同期してオン,オフの動作を行う位相制御であって,審決の認定するような分圧電圧と調整基準電圧の比較によりスイッチング動作を行うものではないと主張する。
しかしながら,引用例に「NチャンネルFET96はリード74上の電位がゼロ, 。 交差点でのみ電流分路を行うようON操作されるため 生じるEMIは最小となる半導体スイッチングにより生じるRF騒音のほとんどを濾過排除するため,抵抗器92およびコンデンサ94を任意に設けてもよい(訳文9頁34〜37行)と 。」の記載があるとおり,交流電圧の周期に同期してオン,オフの動作を行うこと,すなわち,交流電圧が正から負に変わるゼロ電圧を検出して,分路用のスイッチ(NチャンネルFET96)をオンし,当該交流電圧が負から正に変わった際に少し遅れて毎回同スイッチをオフするという動作を繰り返すことは,抵抗器92及びコンデンサ94から成るスナッバ・フィルタ手段(訳文7頁3行)と並んでEMI対策手段である。
しかるところ,引用例には「抵抗器92およびコンデンサ94は任意に設置されるものであり,NチャンネルFET96が生成するEMIが潜在的問題と考えられない適用例では,回路から排除されることが好ましい(訳文7頁6〜8行)と 。」の記載があり,抵抗器92及びコンデンサ94(スナッバ・フィルタ手段)が取捨任意であることが示されている。そうすると,ゼロ電圧検出手段も,スナッバ・フィルタ手段と同様,EMI対策手段である以上,EMIが潜在的問題と考えられない適用例では除去することができるものであり,除去した場合のスイッチのオン,オフ切換操作は,比較器による制御手段のみにより,分圧電圧と調整電圧の比較結果に基づいて行われることになるものである。
すなわち,引用例には,EMI対策を必須とせず,ゼロ電圧検出手段を除いて,分圧電圧と調整電圧の比較結果に基づいてスイッチのオン,オフ切換操作を行う発明が実質的に記載されているといえるのであり 審決は かかる発明を引用発明 引 ,,(用発明A,引用発明B)として認定したものである。
なお,引用例の特許請求の範囲には,請求項5(訳文10頁26〜27行)に,スイッチをオンにするタイミングを「整流電流がほぼゼロ電圧レベルにある時」に限定し,ゼロ電圧検出手段を特定した発明が記載されているが,請求項1(訳文10頁4〜16行)及び請求項11(訳文11頁8〜20行)に記載された発明は,ゼロ電圧検出手段を特定しないものである。
したがって,引用例がEMI対策を必要としない発明を含むことは,特許請求の範囲の記載からも明らかである。
(2)また,原告は,引用発明が,共振回路の電圧・電流を一定に維持することによって負荷電圧を一定にすることを主要な技術課題とするとも主張する。
しかしながら,引用発明は,ピックアップ回路出力上の直流電圧を所定レベルに維持することを目的とするものであるところ,引用例でいう「ピックアップ回路」には,ピックアップ回路結合の交流電流を整流し,生成された直流電流の濾波を行って,直流電圧を生成する手段が含まれるものである。したがって,引用発明におけるピックアップ回路出力上の電圧とは,負荷への供給電圧のことである(ゆえに直流電圧である。原告の上記主張は,このピックアップ回路出力上の電圧が, 。)あたかも共振回路の電圧(交流電圧)のことであるかのようにいうものであるが,引用例には,共振回路の電圧・電流を一定に維持することに係る記載,示唆は全くない。
(3)以上のとおり,審決の引用発明Aの認定に誤りはなく,これを前提とする本件発明1と引用発明Aの一致点の認定にも誤りはない。
2取消事由2(本件発明1と引用発明Aとの相違点2についての判断の誤り)に対し原告は,引用発明において,半波整流回路を採用することが発明の技術的根幹であるとして,本件発明1と引用発明Aとの相違点2につき「整流回路を全波整流回路とするか半波整流回路とするかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項である」とした上 「引用発明Aにおいて,半波整流回路を全波整流回路に改 ,変することにより相違点2に係る本件発明1の構成とすること」が,当業者にとって容易であり,それにより格別な効果が奏されるものでもないとした審決の判断が誤りであると主張する。
しかしながら,原告主張の根拠は,引用発明が,共振回路の電圧・電流を一定に維持することと,EMIの発生を回避することの両者を技術課題とし,その解決のため,共振回路から負荷側に電流が流れない,共振交流電圧の負の半波期間に分路用のスイッチをオンするものであるという点にあるところ,引用発明が共振回路の電圧・電流を一定に維持することを技術課題とするとの主張が誤りであること,引用例にはEMI対策を必要としない発明(引用発明)が含まれていることは,上記1のとおりであるから,引用発明において,半波整流回路を採用することが発明の技術的根幹であるとの主張が根拠を欠くことは明らかであり,これを前提として,審決の相違点2についての判断が誤りであるとする主張は失当である。
3取消事由3(本件発明2と引用発明Bとの一致点の認定の誤り)に対し原告は,引用発明Bが「NチャンネルFET96を制御する手段は,分圧電圧と調整基準電圧とを比較するとともに,その比較結果に応じてNチャンネルFET96をON-OFF切替操作させ,分圧電圧が調整基準電圧より大きい場合にNチャンネルFET96をON操作して半波整流回路の出力電流を分路することによりコンデンサ118の電圧を所定レベルに調整すること」により特定されるとした審決の認定が誤りであるとし,これを前提として審決の本件発明2と引用発明Bとの一致点の認定が誤りであると主張する。
しかしながら,審決の引用発明Bの認定に誤りがないことは上記1のとおりであり,この認定を前提とする本件発明2と引用発明Bとの一致点の認定にも誤りはない。
4取消事由4(本件発明2と引用発明Bとの相違点bについての判断の誤り)に対し原告は,本件発明1と引用発明Aとの相違点2についての審決の判断が誤りであるから,その判断を引用する本件発明2と引用発明Bとの相違点bについての判断も誤りであると主張するが,審決の相違点2についての判断に誤りがないことは上記2のとおりであり,したがって,相違点bについての判断にも誤りはない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(本件発明1と引用発明Aとの一致点の認定の誤り)について(1)原告は,審決がした引用発明Aの認定のうち,引用発明Aが「NチャンネルFET96を制御する手段は,分圧電圧と調整基準電圧とを比較するとともに,その比較結果に応じてNチャンネルFET96をON-OFF切替操作させ,分圧電圧が調整基準電圧より大きい場合にNチャンネルFET96をON操作して半波整流回路の出力電流を分路することによりコンデンサ118の電圧を所定レベルに調整すること」により特定されるとした部分は誤りであるとし,このことを前提として,審決の本件発明1と引用発明Aとの一致点の認定のうち 「スイッチ制御回路 ,は,監視電圧信号と基準電圧信号とを比較するとともに,その比較結果に応じてスイッチをオンオフ切替動作させ,負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コンデンサの電圧を定電圧化する」との点で一致するとした部分に誤りがあると主張する。
すなわち,原告は,引用発明のスイッチング動作は,交流電圧の周期に同期してオン,オフの動作を行う(交流電圧が正から負に変わった時に毎回分路用のスイッチ(NチャンネルFET96)をオンし,当該交流電圧が負から正に変わるのに少し遅れて毎回同スイッチをオフする)位相制御であって,分圧電圧と調整基準電圧の比較によりスイッチング動作を行うものではないと主張するものであり,当該主張の根拠は,引用発明は,一次導電路とピックアップコイルとの誘導結合の変化等によって共振回路の電圧が変化する場合においても,共振回路の電圧・電流を一定,, に維持することによって負荷電圧を一定にすることを主要な技術課題とし 併せて電流が流れている時にスイッチングを行うことによって生じるEMIを回避することをも技術課題とするものであるという点にある。
そこで,以下,引用例の記載事項について検討した上,審決の上記引用発明Aの認定及び本件発明1と引用発明Aとの一致点の認定のうちの上記部分の当否につき検討する。
(2)引用例の記載事項ア引用例には 「発明の技術分野」及び「発明の背景」として,以下の記載が ,ある。
「 発明の技術分野)本発明は,一般に給電線に誘導結合された複数の負荷への配電シ (ア) (ステムに関し,より詳細には分散負荷の調整器に関する(訳文2頁3〜5頁) 。」「 発明の背景)航空機を発注する航空会社は,製造業者に対し,乗客座席配置を含む(イ) (多くのデザインオプションを指定することが多い。異なる座席配置,座席間スペースの提供で生じる製造および在庫コストが重大な問題となり,特に各乗客に新しい個人的娯楽とサービス設備を提供する次世代航空機において重要となる。デザイナは,このような航空機の各座席背面に娯楽システムと乗客サービスシステムを設置する計画を立てている。その結果,航空会社が指定するかもしれない各座席では,座席への電力供給のため,異なる長さの電力リードハーネスが要求されることが一般的となる。また,従来技術を使用して各座席に電力供給を行った場合,その関連でコストおよび重量の面で不都合な点が生じ,ほとんどの旅客機では受け入れられない可能性がある。共通譲受米国特許第4428078号(C.Kuo)に,各座席を電源に有線接続するものに代わるものが開示されている。この特許では,航空機キャビン全体の座席背面に配置される複数の多重巻ピックアップコイルに対して電力を供給する,所謂『無線システム』が開示されている。より正確に記すれば,この技術は 『非接触』給電システム ,である。なぜなら,電力が,航空機キャビン全体の座席ベースに配置される給電ループから,直接電気接続を使うことなく,ピックアップコイルに誘導結合されるからである。この電力を使い,座席設置の乗客娯楽およびサービスシステムが操作される。この無線システムにより,座席は,個々の航空機が要求するような異なる配列においても移動が可能とされ,その際長さの異なる相互接続配線ハーネスを提供する心配もない。この特許で開示されていないのは,給電線に誘導結合される各分配負荷における電圧調整の詳細である。上記特許記載の非接触給電システムは更に開発が行われ,現在では,直列共振給電線を駆動する正確に制御された定電。 , , 流源が含まれる ピックアップコイルの相互インダクタンスが 給電線内で直列に現れるため定電流源は,相互インダクタンスおよび負荷が一定である限りにおいてのみ,ピックアップコイル出力での電圧を一定に保持することができる。一方,相互インダクタンスは,給電線とピ, 。, ックアップコイル間の距離に反比例しており その距離も大幅に変動する可能性がある 更に娯楽・乗客サービスシステムにより各ピックアップコイルに加えられる電気負荷も,比較的広範囲に変動することもありえる。これら可変パラメータが存在することから,各ピックアップコイルの負荷を横断して電圧を一定に保持するため,該コイル用に調整器を設置する必要がある。直列通過や分路調整器等の従来の調整器では,容認しがたい電磁干渉(EMI)が起こり,また定電流源が破壊される可能性がある。更に,従来の調整器は,過度な電力量が消費され,一般に部品数も多く,コスト要素も受け入れがたいため,非効率となる傾向がある。上述の問題に鑑み,本発明の目的は,非接触給電システムの各負荷用に,低コストの調整器を提供することである。本発明の他の目的および利点は,添付図面と好適実施例の説明から明らかになる(訳文2頁6〜末行) 。」上記各記載によれば,まず,引用発明は,給電線に誘導結合された複数の負荷への配電システム,特に分散負荷の調整器に関する技術分野に属する発明であり,引用発明の適用対象として 「発明の背景」欄には,航空機キャビンの給電システム ,に関する記載があるが 「発明の技術分野」欄の記載や,後述の特許請求の範囲の ,記載などに照らすと,当該技術分野の発明に係る代表的な実施例として航空機キャビンの給電システムが取り上げられたものであり,引用発明の適用対象が上記航空機の分野に限定されるものでないことは明らかである。
次に,上記「発明の背景」欄においては,航空機キャビンの給電システムの技術的発展段階に関し,時系列的にKuo発明前,Kuo発明,Kuo発明後の3段階に分け,?@Kuo発明前においては,異なる座席配置,座席間スペースで設置された座席への電力供給のため,異なる長さの電力リードハーネスが必要とされたが,コスト及び重量の点で不都合が生じたこと,?AKuo発明は,リードハーネスによる接続(有線接続)に代わり,電力が給電ループから,ピックアップコイルに誘導結合される「非接触」給電システムの技術を開示したものであったが,給電線に誘導結合される各分配負荷における電圧調整の詳細に関する開示がなかったこと,?BKuo発明後の更に開発の進められた非接触給電システムにおいては,正確に制御された定電流源により給電線を駆動するものであるが,相互インダクタンス及び負荷の変動により「ピックアップコイル出力での電圧 (この文言の意義については 」後に改めて検討する )が変動することを防ぎ,当該出力電圧を一定に保持するた 。
めには,調整器を設置する必要があるところ,直列通過や分路調整器等の従来の調整器では,EMIの発生,定電流源の破壊並びに消費電力,部品数の多さ及びコストの面での非効率という課題があったことを指摘した上,引用発明の目的は 「非,接触給電システムの各負荷用に,低コストの調整器を提供すること」であるとしている。
すなわち,引用例は,Kuo発明後の非接触給電システムにおける,従来の調整器に係る問題点として挙げた上記の各点のうち,直接的には,コスト面での非効率性の改善を引用発明の目的としていると解される。もっとも,上記のとおり,引用例には,これと並んで,EMIの発生や定電流源の破壊等が従来の調整器に係る問題点として摘示されており,また 「本発明の他の目的および利点は,添付図面と ,好適実施例の説明から明らかになる」との記載があって,現に後述のとおり 「好,適実施例の説明」には,引用発明におけるEMI発生の防止の効果についての記載もあるが,少なくとも,上記摘記に係る記載からは,EMI対策が引用発明の目的ないし必須の課題であることまでは読み取ることができない。
因みに,原告は,引用例の上記記載に係る「定電流源の破壊」がEMIを原因として引き起こされるかのような主張をするが,引用例には 「定電流源の破壊」の ,原因がEMIであることを窺わせるような記載はなく,また 「定電流源の破壊」 ,は,例えば,過度の帰還インピーダンスの発生を原因として起こることなども考え得るところであって,技術常識上,EMI以外の原因は想定し得ないとすることもできないから,この点についての原告の主張は失当である。
イ引用例には 「発明の要約」及び「好適実施例の説明」として,以下の記載 ,がある。
「 発明の要約)ピックアップ回路に共振的かつ誘導的に結合される交流信号を生成す (ア) (る電源を有する給電システムにおいて,ピックアップ回路出力上の直流電圧を所定レベルに調整する装置が提供される。この装置には,次の手段が含まれる。ピックアップ回路出力に接続され,所定レベルよりかなり低い調整基準電圧を生成する手段。ピックアップ回路出力に接続され,直流電圧関数として変化し,直流電圧より低い比較電圧を生成するよう動作する分圧器手段。調整基準電圧と比較電圧間の差関数として変化する信号を生成する比較器手段。比較器手段からの信号を受信するよう接続され,ピックアップ回路を通って流れる電流が,その回路内で循環し,信号関数として変化する期間は出力されないよう電流を分路させる分路手段。
分圧器手段は,可変分圧器ネットワークを備え,また比較電圧を調整し,それによりピックアップ回路出力上の直流電圧レベルを判定する手段を含む。更に,ピックアップ回路には,ピックアップ回路結合の交流信号を整流し,それにより整流電流を生成する手段と整流電流の濾波を行い,直流電圧を生成する手段が含まれる。分路手段は,比較器手段からの信号で判定される期間,整流電流のショートを行うよう接続される半導体スイッチを備えることが好ましい。交流信号は,ゼロ電圧レベルを通過し,ピーク正・負電圧レベル間で定期的に変化し,半導体スイッチで整流信号がショートする期間は,一般に,交流信号がゼロ電圧レベルにあるとき開始される。半導体スイッチにより,ほぼゼロ電圧レベルで状態が変化するため,そのスイッチングで,電磁干渉はほとんど起こらない。調整基準電圧の生成手段には,半導体電圧調整器が備えられる。本発明の更なる態様によれば,ピックアップ回路出力上で,直流電圧を調整する方法が提供される。この方法には,上記装置の機能に従い一般的に実施される工程が含まれる(訳文3頁1〜21行) 。」「 好適実施例の説明)上述のように,航空機座席内設置の負荷に対して,電力と通信(イ) (信号を分配するシステムが,共通譲受米国特許第4428078号に詳細に開示されている。
この特許に関して,ここで参照という形でその開示内容全体を具体的に記載する。本発明は,前記参照の配電システムを更に発展させたものである。好適実施例では,本発明は,複数の遠隔配置負荷,具体的には航空機キャビン内の乗客座席グループ内に設置の乗客娯楽・サービスシステムのそれぞれの貯蔵部分に加えられる電圧の調整提供を対象とする。乗客娯楽・サービスシステムが要する直流電力は,多重巻ピックアップコイルを通して提供される。このコイルは,前記参照特許で開示されるように,給電線に近接して,各座席グループの基部に配置される。図1において,本発明による誘導結合配電システム10が示されている。この配電システムの第1構成要素は,この好適実施例において,周波数38kHzの正弦波信号を生成する正弦波発振器12である。正弦波発振器12は,その出力上に高調波が生成されるのを避けるため,比較的低い歪み率を有する。出力に高調波があると,航空機の通信システムの動作や他の航空電子機器に対し,電磁干渉(EMI)を起こす原因となる可能性がある。配電システム, , , では 方形波発生器や他の周期信号源等が使用できるが 非正弦波波形に高調波が含まれると結果的にEMIが生じ,本適用では通常容認できるものではない(訳文3頁27行〜4頁2 。」行)「抵抗器92およびコンデンサ94は,スナッバ・フィルタとして調整器回路内で使用さ(ウ)れる。このスナッバ・フィルタにより,NチャンネルFET96が導電状態と非導電状態間でスイッチングされる時に生成される無線周波数(RF)騒音が,ピックアップコイル70から給電線68内に伝播返却されることはない。実際には,抵抗器92およびコンデンサ94は任意に設置されるものであり,NチャンネルFET96が生成するEMIが潜在的問題と考えられない適用例では,回路から排除されることが好ましい。しかし,航空機での使用では,調整器回路内でのEMIを減少させるため,適切なあらゆる予防措置が通常取られる。これは,航空電子システム内で使用される通信機器および他の高感度電子装置の破壊を避けるためである(訳文7頁3〜11行) 。」「・・・調整器回路72では,出力端子128,130を横断する電圧が調整される。こ(エ)の電圧調整は,リード74上での38kHz正弦波交流電位の各周期中の短期間,NチャンネルFET96を通る電流を分路することにより行われる。NチャンネルFETが電流分路を開始するのは,リード74上の電位がゼロ交差を通過し,波形の正側から負側に進む時のみである。NチャンネルFET96が電流を分路する期間は,出力を所望の公称レベルに維持するよう制御される(訳文7頁18〜23行) 。」「NチャンネルFET96による各周期毎の電流分路が長いほど,調整器回路72の直流(オ)出力電圧が低くなることは明らかである(訳文7頁36〜37行) 。」「NチャンネルFET96が電流分路の役割を果たす時間は,電圧調整器138生成の電(カ)圧に対して制御される。好適実施例では,電圧調整器138の出力は5V直流であるため,固定抵抗器120,122および可変抵抗器124を備える電圧分圧器ネットワークの構成要素は,所望の公称8V直流(または,他の適当な)出力電圧が出力端子128,130を横断し現れる時,リード132上に公称5V直流を生成するよう選択および調整される。可変抵抗器124により,比較的広範な範囲内,例えば,6〜12V直流で,出力端子128,130上での調整電圧の調整が可能となる。これは,調整電圧がリード132上の電圧分圧器ネットワーク出力電圧に対し,制御されるからである。オペアンプ134は,リード132上で発生の電圧と,リード142上の電圧調整器138からの電圧出力との比較を行う。リード132接続のオペアンプ反転入力上の電位がリード142接続の非反転入力上の電圧より低い場合,オペアンプ134は,正の出力電圧を生成する。オペアンプ134のフィードバック・ネットワークは,比較的高い値のフィードバック抵抗器146(好適実施例では,1メガオーム)を備え,その入力インピーダンスがはるかに低いため,オペアンプ134のゲインが,比較的高くなる。その出力電圧は,オペアンプの反転入力電位が非反転入力電位よりわずかに低い時でも,+Vccに近くなる。オペアンプ134からの正出力電圧は,抵抗器156が電流を制限し,リード110を通ってトランジスタ108のベースに加えられる。トランジスタ108のベースは,リード76を通して接地されるエミッタより正側であるため,トランジスタ108は飽和する。トランジスタ108が飽和すると,トランジスタ108のエミッタおよびNチャンネルFET96のゲートに接続されるリード106上の電位が,約ゼロ,または接地まで降下する。NチャンネルFET96のゲートがトランジスタ108を通って接地されると,それ『』, 。 は OFF状態 に維持され リード86からリード76への正電流の流れがブロックされる出力端子128上の電圧が所望の公称レベルを超えて上昇すると,出力端子128上の電圧から派生するリード132の電圧も,リード142上の電圧調整器138からの電圧出力を超。, 。 えて上昇する その結果 オペアンプ134がほぼゼロの出力電圧レベルを有することになるリード74上の正弦波交流電位がゼロポイントを通り正から負に横切ると,トランジスタ108ベースの電位が接地に対して負となり,その結果トランジスタ108が『OFF操作』される。つまり,そのコレクタとエミッタ接合間での電流フローが停止する。リード106は抵抗器104を通してリード102上の+V電位に接続されるため NチャンネルFET96が O , 『N操作』され,それによりリード86からリード76に正電流が分路され,出力端子128での直流電圧が減少する。出力端子128,130横断の電圧は所望のレベルに降下し,その結果,オペアンプ134反転入力に接続されるリード132上の電位が,電圧調整器138からの電位より低くなる。このような状態が起こると,オペアンプ134は,直ちに正電圧生成を開始する。この正電圧はトランジスタ108のベースに加えられ,やがて抵抗器114を通って提供される負電圧を超えることになる。抵抗器114の抵抗は,抵抗器156のおよそ5倍に設定される。よって,リード74上の正弦波交流電位がほとんど負の部分の期間でも,オペアンプ134からの正電流フローはトランジスタ108ベース上の電位を正に駆動することになる。NチャンネルFET96がリード86からリード76に正電流を伝えるのは,リード, 。 74上の正弦波波形が負から正に進む時 つまり周期毎に一回のみであるのは明らかであろうリード74上の正弦波波形の正半分側の期間では,遅延t3後トランジスタ108がON操作される。この操作は,抵抗器114を通しトランジスタベースに伝えられるリード74上の電位,または抵抗器156を通りベースに達するオペアンプ134からの出力のどちらかにより行われる。オペアンプ134が正出力を生成していない時,抵抗器114,156はリード74上に存在する正電位用に電圧分圧器回路として動作する。これにより,トランジスタ108ベースがエミッタに対して正となることが保証される。このような状態により,トランジスタ108は前述のように導電となり,それによりNチャンネルFET96がリード86からリード76への正電流フローを阻止することになる。ダイオード100は,NチャンネルFETのドレイン上に現れる可能性がある負電流スパイクからNチャンネルFET96およびトランジスタ108を保護し,また騒音スパイクがトランジスタ108をON操作することを防ぐ。
コンデンサ112では正変化を記憶することにより,トランジスタ108のOFF操作に少し遅延が与えられる。これによりリード74上の電位がゼロポイントを通過し終えるまで,トランジスタがOFFとならないことが保証される。またコンデンサ112では,遅延t5(図3参照)も与えられる。オペアンプ134のフィードバック・ネットワーク内コンデンサ150では,オペアンプの出力が統合され,抵抗器144と共に,オペアンプからの出力信号に進み位相シフトがわずかに与えられる。これにより整調器回路72による電圧調整の安定性が向上する。ダイオード154はリード148上に現れる可能性がある逆電位信号に対して電解コンデンサ150を保護する。調整器回路72は,給電線68とピックアップコイル70間の誘導結合および出力端子128,130に接続されている負荷の両方に関して,比較的広範囲の調整を行う。NチャンネルFET96による分路作用は,負荷に加えられる出力電圧を調整, , 。, するよう 各波形の一部期間のみ行われ 過度の電流分路による電力消費は起こらない 更に調整器回路72は,前記のように,過度の負荷電流が引き込まれると短絡により出力電圧が降下するため,短絡保護される。NチャンネルFET96はリード74上の電位がゼロ交差点でのみ電流分路を行うようON操作されるため,生じるEMIは最小となる。半導体スイッチングにより生じるRF騒音のほとんどを濾過排除するため,抵抗器92およびコンデンサ94を任意に設けてもよい(訳文8頁10行〜9頁37行) 。」上記各記載のうち,まず 「好適実施例」について見るに,(イ)〜(カ)の各記載及 ,び第1〜第3図によれば,当該実施例は 「航空機キャビン内の乗客座席グループ ,内に設置の乗客娯楽・サービスシステムのそれぞれの貯蔵部分に加えられる電圧の調整提供を対象とする (上記(イ))ものであり,その調整器回路72が調整する 」電圧は 「出力端子128,130を横断する電圧 (上記(エ) ,すなわち,当該 , 」)調整器回路72の出力電圧である。
そして,当該電圧調整は 「NチャンネルFET96を通る電流を分路すること ,により行われる」ものであり(上記(エ) ,具体的には,固定抵抗器120,12 )2及び可変抵抗器124を備える電圧分圧器ネットワークが,出力端子128,130間の出力電圧(調整器回路72の出力電圧)が所望値(所定値。例えば8V)であるときに,電圧調整器138の出力電圧(当該実施例では5V)と同一の5V直流をリード132上に生成するように調整した上で,オペアンプ134が,上記出力電圧の分圧電圧である「リード132上で発生の電圧」と「リード142上の電圧調整器138からの電圧出力」とを比較し,分圧電圧が電圧調整器からの出力電圧よりも低い場合(電圧分圧器ネットワークによる上記調整の結果に基づくものであり 「調整器回路72の出力電圧が所定値よりも低い場合」を意味する )に , 。
は,オペアンプ134はNチャンネルFET96をOFF状態として電流の分路を行わず 出力電圧の分圧電圧が電圧調整器からの出力電圧を超えて上昇した場合 同 , (様に 「調整器回路72の出力電圧が所定値を超えて上昇した場合」を意味する ) , 。
には,オペアンプ134がNチャンネルFET96をON状態として電流の分路を行い,それにより,調整器回路72の出力電圧を低下させる(上記(カ))というものである。
なお,当該実施例は,上記のとおり,航空機キャビンへの給電に係る電圧調整を想定したものであるから,航空機の通信システム,その他の航空電子機器の動作に影響を及ぼすEMIの発生が容認できない例に関するものである(上記(イ) 。そ), ,,() して EMIの発生を防止するために 当該実施例においては ?@給電側 一次側の発振器として,出力上にEMIを起こす原因となる可能性がある高調波が生成されることを避けるため,比較的低い歪み率を有する「正弦波発振器」を用い(上記(イ) ,?A調整器回路内で抵抗器92及びコンデンサ94から成る「スナッバ・フ )ィルタ」を使用して,NチャンネルFET96のスイッチング時に生成される無線周波数(RF)騒音が,ピックアップコイル70から給電線68内に伝播返却されることを防ぐ手段を講じている(上記(ウ))ほか,?B出力電圧の分圧電圧(リード132上で発生する電圧)が電圧調整器からの出力電圧を超えた場合に,オペアンプ134がNチャンネルFET96をON状態とするタイミングを,リード74上() , すなわち共振回路上 の正弦波交流電位が正から負に変わるゼロポイント時としリード74上の正弦波交流電位が再び負からゼロポイントを通過して正に変わるのにやや遅れてNチャンネルFET96をOFF状態として,出力電圧の分圧電圧が電圧調整器からの出力電圧(すなわち,調整器回路72の出力電圧)が所定値に下がるまで,このスイッチング動作を継続するものとし,その結果,NチャンネルFET96はリード74上の電位がゼロ交差点でのみ電流分路を行うようON操作されるため,生じるEMIは最小となるものである(上記(エ)〜(カ))ことが認められる。
また,上記(ア)の「発明の要約」には,おおむね「好適実施例」に沿って,当該発明が「ピックアップ回路に共振的かつ誘導的に結合される交流信号を生成する電源を有する給電システムにおいて,ピックアップ回路出力上の直流電圧を所定レベルに調整する装置」であること,当該装置が,調整基準電圧生成手段(上記実施例の電圧調整器138 ,比較電圧(同分圧電圧)生成手段,比較器手段(同オペア )ンプ134 ,半導体スイッチを備えることが好ましい分路手段(同Nチャンネル )FET96を通る分路 などを含むものであることなどが記載されているほか半 ) ,「導体スイッチで整流信号がショートする期間は,一般に,交流信号がゼロ電圧レベルにあるとき開始される。半導体スイッチにより,ほぼゼロ電圧レベルで状態が変化するため,そのスイッチングで,電磁干渉はほとんど起こらない 」との記載が 。
ある。
ウ引用例の特許請求の範囲の請求項1,3〜5,11の記載は以下のとおりである。
(ア)請求項1(訳文10頁4〜16行)「ピックアップ回路に共振的および誘導的に結合される交流信号を生成する電源を有する給電システムにおいて,前記ピックアップ回路出力上で直流電圧を所定レベルに調整する装置であり,(a)前記ピックアップ回路出力に接続され,前記所定レベルよりかなり低い調整基準電圧を生成する手段と;(b)前記ピックアップ回路出力に接続され,前記ピックアップ回路からの直流電圧出力関数として変化し,前記直流電圧より低い比較電圧を生成する分圧器手段と;(c)前記基準電圧と前記比較電圧間の差関数として変化する信号を生成する比較器手段と;(d)前記比較器手段からの信号を受信するよう接続され,前記信号の関数として交流信号の周波数程でしかない低い周波数で変化する期間,電流が前記ピックアップ回路内で循環し,出力されないように,前記ピックアップ回路を流れる電流を周期的に分路する手段とを備えることを特徴とする装置 」。
(イ)請求項3(訳文10頁20〜22行)「前記ピックアップ回路が前記ピックアップ回路接続の交流信号を整流し,それにより整流電流を生成する手段と,前記整流電流を濾波し,それにより直流電圧を生成する手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置 」。
(ウ)請求項4(訳文10頁23〜25行)「前記分路手段が前記比較器手段からの信号で判定される期間,前記整流電流をショートさせるよう接続される半導体スイッチを備えることを特徴とする請求項3に記載の装置 」 。
(エ)請求項5(訳文10頁26〜27行)「前記半導体スイッチが前記整流電流をショートさせる期間は,前記整流電流がほぼゼロ電圧レベルにある時に開始することを特徴とする請求項4に記載の装置 」。
(オ)請求項11(訳文11頁8〜20行)「ピックアップ回路に共振的および誘導的に結合される交流信号を生成する電源を有する給電システムにおいて,前記ピックアップ回路出力上で,直流電圧を所定レベルに調整する装置であり,(a)前記ピックアップ回路出力に接続され,前記所定レベルよりかなり低い調整基準電圧を生成する手段と;(b)前記ピックアップ回路からの直流電圧出力の関数として変化し,前記直流電圧より低い比較電圧を生成し,前記比較電圧を調整し,前記ピックアップ回路出力上の直流電圧レベルを判定する手段を含む,可変電圧分圧器ネットワークと;(c)前記調整基準電圧と前記比較電圧間の差関数として変化する信号を生成する比較器手段と;(d)前記比較器手段からの信号を受信するよう接続され,前記信号の関数として変化する期間,電流が前記ピックアップ回路内で循環して出力されないように,前記ピックアップ回路を流れる電流を分路する手段とを備えることを特徴とする装置 」。
(3)引用例の上記各記載及び第1〜第3図によれば,まず,引用発明は,交流電流を生成する共振回路のほか,交流電流を整流して直流電流を生成する手段を含む「ピックアップ回路」の出力上で,直流電圧を所定レベルに調整維持することを目的とするものであることが認められる なお 上記 発明の背景 の記載中には ピ 。,「」「ックアップコイル出力での電圧」という文言があるが,引用例の他の部分(請求項11 「発明の要約「好適実施例 )の記載及び第2図の図示に照らし,引用発 ,」,」明が上記ピックアップ回路出力上の直流電圧を所定レベルに調整することを目的とするものであることは明らかであり,引用例には,共振回路の電圧・電流を一定に維持する旨の記載は見当たらない。
次に,引用例の「発明の要約「好適実施例」及び請求項11の各記載によれ 」,ば,引用例には,当該引用発明である調整器回路の出力電圧の分圧電圧(リード132上で発生する電圧)と電圧調整器からの電圧出力とを比較し,当該分圧電圧が電圧調整器からの出力電圧を超えた場合に,NチャンネルFET96をON状態として電流の分路を行う発明,すなわち,分圧電圧と調整基準電圧との比較によりスイッチング動作を行う発明が記載されていることが認められる。
もっとも 「好適実施例」は,EMIの発生が容認できない例である航空機キャ ,ビンへの給電に係る電圧調整を想定したものであるから,給電側(一次側)の発振器として「正弦波発振器」を用いること,及び調整器回路内で抵抗器92及びコンデンサ94から成る「スナッバ・フィルタ」を使用することと並んで,EMI対策の一環として,出力電圧の分圧電圧が電圧調整器からの出力電圧を超えた場合のNチャンネルFET96のスイッチング動作を,共振回路上の正弦波交流電位が正から負に変わるゼロポイント時にONにするものである。
しかしながら,引用例において,航空機キャビンの給電システムは,当該技術分野の発明に係る代表的な実施例として取り上げられたものであり,引用発明がこれに限定されるものではないこと,引用例は,Kuo発明後の非接触給電システムにおける,従来の調整器に係る問題点として挙げた各点のうち,直接的にはコスト面での非効率性の改善を引用発明の目的としているものと解されることは,上記(2)のアのとおりである。また,上記(2)のイの引用例の「好適実施例の説明」の記載中には,EMI対策として採用された給電側の「正弦波発振器」の使用に関して,「配電システムでは,方形波発生器や他の周期信号源等が使用できるが,非正弦波波形に高調波が含まれると,結果的にEMIが生じ,本適用では通常容認できるものではない(上記(2)のイの(イ))との記載があって 「本適用」以外の,EMI 。」 ,が問題とならない「配電システム」では,方形波発生器や他の周期信号源等が使用できることが示唆されていること,同様に,EMI対策として採用された「スナッバ・フィルタ」に関しても 「抵抗器92およびコンデンサ94は任意に設置され ,るものであり,NチャンネルFET96が生成するEMIが潜在的問題と考えられない適用例では,回路から排除されることが好ましい。しかし,航空機での使用では,調整器回路内でのEMIを減少させるため,適切なあらゆる予防措置が通常取られる(同(ウ))との記載があり,抵抗器92及びコンデンサ94(スナッバ・ 。」フィルタ)は 「調整器回路内でのEMIを減少させるため,適切なあらゆる予防 ,措置」が採られる「航空機での使用」であるからこそ組み込まれているものであっ,「」 。 て EMIが問題とならない 適用例 では必要とはされないことが示されているそうであれば,これらと同じEMI対策として採用された,NチャンネルFET96のスイッチング動作を,共振回路上の正弦波交流電位が正から負に変わるゼロポイント時にONにすることも,EMI対策が要求されない実施の形態では必要がないことは明らかであり,引用例の上記記載からは,このようなスイッチング動作を交流電圧の周期に係らしめない発明も,十分に読み取ることができるものというべきである。
そして,NチャンネルFET96のスイッチングを交流電圧の周期に係らしめない発明においては,そのスイッチング動作は,出力電圧の分圧電圧(リード132上で発生する電圧)と電圧調整器からの電圧出力とを比較し,当該分圧電圧が電圧調整器からの出力電圧を超えた場合に,NチャンネルFET96をON状態として電流の分路を行うだけのものとなるから,かかる発明は,審決が,引用発明Aについて認定した「NチャンネルFET96を制御する手段は,分圧電圧と調整基準電圧とを比較するとともに,その比較結果に応じてNチャンネルFET96をON-OFF切替操作させ,分圧電圧が調整基準電圧より大きい場合にNチャンネルFET96をON操作して半波整流回路の出力電流を分路することによりコンデンサ118の電圧を所定レベルに調整すること」により特定されるものに他ならない。
そして,審決は,引用例の記載から,スイッチング動作を交流電圧の周期に係らしめない上記のような発明を引用発明Aとして認定したものと解されるから,引用発明Aが上記のように特定されるとした審決の認定に誤りはない。
(4)引用例の「発明の背景」に係る「定電流源は,相互インダクタンスおよび負荷が一定である限りにおいてのみ,ピックアップコイル出力での電圧を一定に保持することができる(上記(2)のアの(イ))との記載によれば,引用発明において, 。」負荷が変動すれば,ピックアップ回路出力上の直流電圧(上記「ピックアップコイル出力での電圧」との文言をピックアップ回路出力上の直流電圧の趣旨と解すべきことは前述したとおりである )が変動することが認められるところ,負荷が小さ 。
, ,( ) くなり その消費電力が減少すれば ピックアップ回路 すなわち調整器回路72, 。 から取り出す電流が減る結果 出力電圧が上昇することは技術常識上明らかであるそして,引用発明は,各ピックアップコイルの負荷を横断して電圧を一定に保持するための該コイル用の調整器の発明であるところ 「好適実施例」に係る「Nチ ,ャンネルFET96による各周期毎の電流分路が長いほど,調整器回路72の直流出力電圧が低くなることは明らかである(上記(2)のイの(オ))との記載を併せ 。」考えれば,引用発明は,負荷の消費電力が小さいほど,スイッチのON割合を大きくさせ,電流分路の時間を長くして,出力電圧を一定化するものであることが認められる。
したがって,審決が,上記イの引用発明Aの認定を前提として 「スイッチ制御 ,回路は,監視電圧信号と基準電圧信号とを比較するとともに,その比較結果に応じてスイッチをオンオフ切替動作させ,負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コンデンサの電圧を定電圧化すること」をもって,本件発明1と引用発明Aとの一致点と認定したことに誤りはない。
(5)なお,審決には,上記のとおり,原告(審判被請求人)の主張に対する判断として 「本件特許明細書(甲第15号証(判決注:本訴甲第15号証。本件特許 ,に係る掲載公報)参照)の段落【0033】には 『出力負荷(14116)によ ,る消費電力が小さい場合,スイッチ(14113)のオン割合が大きくなることによって,ピックアップコイル(14111)に生じる交流電圧・電流が減少する。
ピックアップコイル(14111)に流れる交流電流が減少すると,この交流電流の誘導作用により一次導電路に帰還するインピーダンスが小さくなる 』と記載さ 。
れている。本件特許明細書の上記記載を踏まえれば,負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コンデンサの電圧を定電圧化する引用発明Aにおいても,スイッチのオン割合が大きくなることによって,ピックアップコイルに生じる交流電流が減少することになり,この交流電流の誘導作用により一次導電路に帰還するインピーダンスが小さくなるといわざるをえないから,被請求人の主張する上記と同様の効果を奏するものと解される(20頁6〜18行)と 。」の記載があるところ,本件においては,引用例に記載された発明に関し,軽負荷時にピックアップコイルに生じる交流電流(共振回路の循環電流。共振電流)が減少するか否かについて,複数のシミュレーション解析の報告書等(甲第2,第32,第45号証。なお,甲第34,第39号証は,負荷の変動と共振電圧の増減との関係に係るもので,共振電流の増減を直接対比するものではない )が提出されてお 。
り,これらには,重負荷時と軽負荷時とで共振電流にさほどの変化はないことが示されている。
しかしながら,これらのうち,甲第2,第32号証は,いずれも引用例の第2図記載の回路を対象としたものであり,当該回路は 「好適実施例」に係るものであ ,って,NチャンネルFET96のスイッチング動作を,出力電圧の分圧電圧(リード132上で発生する電圧)と電圧調整器からの電圧出力との比較結果に加えて,交流電圧の周期に係らしめるものであるから,審決の認定した引用発明Aとは異なる発明についてのものである。他方,甲第45号証は,引用例の第2図記載の回路から 「ゼロ電圧検出手段」と「スナッバ・フィルタ」を除去した回路を対象とす ,るものであって,審決の認定した引用発明Aの構成を備えるものであり,したがって,同号証に係る,重負荷時と軽負荷時とで共振電流がほぼ一定であるとの解析結, , 果が正しいとすれば 審決の上記記載に係る判断は誤りであるということになるが仮にそうであるとしても,審決の認定した引用発明Aは,本件発明1そのものではなく,本件発明1との間には,なお,相違点1〜4に係る構成上の相違を有するのであるから,本件発明1と同じ効果を奏しなかったとしても,審決の引用発明Aの認定,ひいては本件発明1と引用発明Aとの一致点の認定に誤りがあるということはできない。
(6)以上のとおり,取消事由1の主張は理由がない。
2取消事由2(本件発明1と引用発明Aとの相違点2についての判断の誤り)について原告は,本件発明1と引用発明Aとの相違点2につき,審決がした「整流回路を全波整流回路とするか半波整流回路とするかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項であるから,引用発明Aにおいて,半波整流回路を全波整流回路に改変することにより相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,かかる改変に際し格別な技術的困難性が何等認められない以上,当業者にとって容易であり,ま, 。」 , た それにより格別な効果が奏されるともいえないとの判断が誤りであるとしその理由として,引用発明は,共振回路の電圧・電流を一定に維持することと,EMIの発生を回避することの両者を技術課題とし,その解決のため,共振回路から負荷側に電流が流れない,共振交流電圧の負の半波期間に分路用のスイッチをオンするものであるから,引用発明において,半波整流回路を採用することは発明の技術的根幹であると主張する。
しかしながら,引用例には,そこに記載された発明について,共振回路の電圧・電流を一定に維持する旨の記載は見当たらないこと,また,審決が認定した引用発明Aは,引用例に記載された発明のうち,EMI対策が必要とされない実施態様のものであることは上記3のとおりであり,したがって,原告が,引用発明の技術課題であるとして主張するところは,引用発明Aについてはいずれも誤りである。そうすると,当該技術課題の存在を前提として,引用発明において,半波整流回路を採用することは発明の技術的根幹であるとの原告の主張も,引用発明Aについては誤りであるといわざるを得ないから,審決の相違点2についての判断には,原告主張の誤りはない。
したがって,取消事由2の主張は理由がない。
3取消事由3(本件発明2と引用発明Bとの一致点の認定の誤り)について原告は,審決がした引用発明Bの認定のうち,引用発明Bが「NチャンネルFET96を制御する手段は,分圧電圧と調整基準電圧とを比較するとともに,その比較結果に応じてNチャンネルFET96をON-OFF切替操作させ,分圧電圧が調整基準電圧より大きい場合にNチャンネルFET96をON操作して半波整流回路の出力電流を分路することによりコンデンサ118の電圧を所定レベルに調整すること」により特定されるとした部分は誤りであるとし,このことを前提として,審決の本件発明2と引用発明Bとの一致点の認定のうち 「スイッチ制御回路は, ,監視電圧信号と基準電圧信号とを比較するとともに,その比較結果に応じてスイッチをオンオフ切替動作させ,負荷の消費電力が小さいほどスイッチのオン割合を大きくさせて出力コンデンサの電圧を定電圧化する」との点で一致するとした部分に誤りがあると主張する。そして,原告が,審決がした引用発明Bの認定のうち上記部分が誤りであるとする理由は,取消事由1において主張したとおりである(取消事由1において,引用発明Aと引用発明Bとを併せた「引用発明」につき主張している。。)しかしながら,審決のした引用発明Bの認定に誤りがないことは,取消事由1において,引用発明Aについて認定説示したところと同様であり,そうすると,審決がした本件発明2と引用発明Bとの一致点の認定にも誤りはない。
したがって,取消事由3の主張は理由がない。
4取消事由4(本件発明2と引用発明Bとの相違点bについての判断の誤り)について原告は,本件発明2と引用発明Bとの相違点bにつき,審決が,本件発明1と引用発明Aとの相違点2と実質的に同じであり,当該相違点2についての検討内容を,, , 踏まえれば 引用発明Bにおいて 相違点bに係る本件発明2の構成とすることはかかる構成とする上での格別な技術的困難性が認められず,当業者が容易に想到し得えたものというべきであり,また,それにより格別な効果が奏されるともいえないと判断したことに対し,審決の相違点2についての判断が誤りであるから,その判断を引用するに止まる審決の相違点bについての判断も誤りであると主張する。
しかしながら,原告の,引用発明は,共振回路の電圧・電流を一定に維持することと,EMIの発生を回避することの両者を技術課題とし,その解決のため,共振回路から負荷側に電流が流れない,共振交流電圧の負の半波期間に分路用のスイッチをオンするものであるから,引用発明において,半波整流回路を採用することは発明の技術的根幹であるとする主張が引用発明Aについて誤りであり,本件発明1と引用発明Aとの相違点2につき 「整流回路を全波整流回路とするか半波整流回 ,路とするかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項であるから,引用発明Aにおいて,半波整流回路を全波整流回路に改変することにより相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,かかる改変に際し格別な技術的困難性が何等認められない以上,当業者にとって容易であり,また,それにより格別な効果が奏されるともいえない 」とした判断に,原告主張の誤りがないことは,上記2のとお 。
りである。そうすると,本件発明1と引用発明Aとの相違点2と実質的に同じである本件発明2と引用発明Bとの相違点b(このことについては争いがない )につ 。
いても,同様に,審決がした判断には原告主張の誤りはないというべきである。
したがって,取消事由4の主張は理由がない。
5結論以上によれば,原告の主張はすべて理由がなく,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 田中信義
裁判官 杜下弘記
裁判官 石原直樹