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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成15ネ1112各特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
平成13ネ959損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成12ネ2645各損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成17ワ19162特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成14ワ25043特許権侵害差止請求事件 判例 特許
関連ワード 製造方法 /  差止請求(差止) /  侵害 / 
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事件 平成 16年 (ネ) 910号 特許権侵害差止請求控訴事件
控訴人(原告) リヒター ゲデオン ベジェセティ ジャール アールテー
訴訟代理人弁護士 品川澄雄,吉利靖雄
補佐人弁理士 岩田弘,中嶋正二
被控訴人(被告) 藤川株式会社
被控訴人(被告) 沢井製薬株式会社
被控訴人(被告) 日新製薬株式会社
被控訴人ら訴訟代理人弁護士 花岡巖,木崎孝,森岡誠
補佐人弁理士 小谷悦司,植木久一,竹岡明美,三輪英樹
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/11/29
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴人の求めた裁判
控訴人は,原判決を取り消すとの判決とともに,原判決事実及び理由欄の「第1 請求」に記載のとおりの差止め,廃棄の判決並びに仮執行宣言を求めた。ただし,被控訴人藤川株式会社に対する請求中,輸入差止請求は当審において取り下げられた。
事案の概要
1 控訴人は,本件特許権(特許番号・第1922762号,発明の名称「N-スルフアミル-3-(2-グアニジノ-チアゾール-4-イル-メチルチオ)-プロピオンアミジンの製造方法」)に基づき,被控訴人藤川株式会社が原判決別紙目録1記載の方法で製造された同目録中B記載のファモチジンを被控訴人沢井製薬株式会社及び同日新製薬株式会社に販売する行為,並びに被控訴人沢井製薬株式会社及び同日新製薬株式会社がこれを製剤して原判決別紙目録2ないし4記載の医薬品(被告ら医薬品)を販売する行為の差止め等を請求したのに対し,原判決は請求を棄却した。
2 事案の概要は,次のとおり改めるほか,原判決事実及び理由欄の「第2 事案の概要」の「1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実)」及び「2 争点及び当事者の主張」に示されているとおりである。
(1) 原判決4頁下から4〜3行目の「被告藤川は,輸入に係るファモチジンを被告沢井,被告日新に卸し販売し」を,「被控訴人藤川は,輸入された原薬ファモチジンを購入し,被控訴人沢井製薬株式会社,被控訴人製薬株式会社に卸し販売し」に改める。
(2) 原判決5頁4行目の「被告藤川の輸入に係る」を,「被控訴人藤川の販売に係る」と改める。
(3) 原判決6頁3行目の「被告藤川が輸入し,被告沢井,被告日新に販売しているファモチジン」を,「被控訴人藤川株式会社が購入し,被控訴人沢井製薬株式会社,被控訴人製薬株式会社に卸し販売している原薬ファモチジン」に改める。
(4) 原判決10頁23行目,12頁1行目の「ジスルフィルド化合物」を「ジスルフィド化合物」に改める。
当裁判所の判断
当裁判所も,被告ら医薬品の原薬たるファモチジンは,本件特許製法によって製造されたものと認めることはできず,控訴人の本訴請求は理由がないと判断するものである。その理由は,次のとおり付加するほか,原判決事実及び理由欄の「第3 争点に対する判断」に示されているとおりである。
なお,原判決16頁18行目,17頁7,8行目,10行目の「ジスルフィルド化合物」を「ジスルフィド化合物」に改める。
1 控訴人が,当審において,被告ら医薬品の原薬たるファモチジンが本件特許製法によって製造されたものであることの根拠として強調するのは,クロロスルファミジン(N-スルファミル-(3-クロロ)-プロピオンアミジン)が,被告ら医薬品からも検出されたという事実である。控訴人は,本件特許製法に特有の副生成物であることを根拠にして,クロロスルファミジンが被告ら医薬品からも検出されたという事実は,被告ら医薬品の原薬たるファモチジンは,本件特許製法によって製造されたものにほかならない,と主張する。
しかしながら,原審における全証拠によっても,クロロスルファミジンが,本件特許製法に特徴的な原料物質であり,被告原薬製法によっては発生し得ないとの事実関係を認めることはできないのは,原判決説示のとおりであり(15頁(2)のイの2行目以下の「まず,」から8行目まで),当審における証拠調べの結果をもってしても,その事実関係を認めることはできない。
当審で提出された甲7-2は,甲7実験報告書(控訴人会社内研究所所長P1博士統括編集)の修正版であって,そこには,乙1-1製法(被控訴人らが開示した被告原薬製法に関する報告書である乙1の1に示された製法)の試料調整の処理条件や操作等についての補充が記載されており,また,甲15は,乙1-1製法に関する新たな追試実験結果(ハンガリーのデブレセン大学P2教授作成の実験報告書)であり,そこには,実験室スケールでの乙1-1製法によっては,クロロスルファミジンの生成量は検出限界以下であった旨の結果報告が記載されている。
しかしながら,理論上,被控訴人らが主張する被告原薬製法によっても,クロロスルファミジンが生成する可能性のあることは,原判決15頁〜16頁の(ア)〜(ウ)に説示のとおりであって,実験室スケールと工業スケール(実際の工場での製造のスケール)の違いについて被控訴人らが主張するところ,すなわち,生成物に溶媒を加えて洗浄を行う場合に,工業スケールにおいては,均一に分散させることが実験室スケールよりも容易ではないことなどから,中間工程において使用された化合物が次工程に持ち越されることの可能性がより高いこと,などの事情の存在を否定することはできないのであり,乙1の1によって示される製法によっても,クロロスルファミジンが生成する可能性を否定し去ることはできない(当審で提出された甲17,18(前記P2教授作成の宣誓供述書)も,この可能性について,乙1の1で示される製法を工業スケールによって再現した結果を示すものではなく,この可能性を否定するものではない。)。
このように,甲7-2や甲15によっても,クロロスルファミジンが,本件特許製法とは別の製法によっては発生するものではないとの事実関係を認めることはできない。
2 控訴人は,被告ら医薬品の副生不純物,ファモシアノアミジンとサイクリックダイマーの含有比率が,本件特許製法の特徴を示していること(原判決14頁イ摘示の控訴人の主張参照)に関する当審証拠として,甲6-2と前記甲15を提出している。甲6-2は,甲6の実験報告書におけるファモチジン試料の合成・取得条件について記載された実験報告書(前記P1博士統括編集)である。
しかしながら,これらの書証についても,原判決14〜15頁のイの項で説示された理由,とりわけ,本件特許製法がファモチジンの製造方法を具体的かつ詳細に規定しているものではないことに加え,サイクリックダイマーの工場スケールにおける本件特許製法により製造した製品における,ファモシアノアミジンに対するサイクリックダイマー比が0.09〜0.11であり,実験室スケールにおけるそれが0.33であって,特定の値にはなっていないこと,そして,そもそも,ファモシアノアミジンとサイクリックダイマーの比が,本件特許製法から導かれる根拠についての十分な主張立証がないこと,からすると,甲6-2及び甲15をもってしても,控訴人の上記主張を裏付けることはできない。
3 その他,当審における証拠調べの結果をもってしても,被告ら医薬品が本件特許製法によって製造されたものであるとの控訴人主張事実を認めるには足りない。甲16は,乙1-1,2の報告書の分析が行われた工場の会社(インドのTONIRA PHARMA社)が製造したファモチジンの分析結果報告書であるが,このファモチジンが被告ら医薬品の製造方法と同一のものであることを認めるべき証拠はないので,甲16をもってしても,控訴人の上記主張事実を認めることはできない。
結論
よって,控訴人の本訴請求は理由がないので,本件控訴は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 野輝久