関連審決 | 不服2007-15308 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成19行ケ10281審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20行ケ10055審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成17行ケ10586特許取消決定取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19行ケ10222審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19行ケ10292審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 頒布された刊行物 / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 周知技術 / 技術的意義 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 拒絶査定 / 請求の範囲 / |
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事件 |
平成
20年
(行ケ)
10028号
審決取消請求事件
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原告X 被告特許庁長官肥塚雅博 指定代理人関口哲生 同 岡本昌直 同 岡千代子 同 高木彰 同 小林和男 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2008/05/29 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1原告の請求を棄却する。 2訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が不服2007-15308号事件について平成19年12月11日にした審決を取り消す。 |
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争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯原告は,平成2年3月26日に特許出願した特願平2-77503号(以下「原出願」という。)の一部を分割して,平成13年3月30日に新たな特許出願とした特願2001-100858号の一部を更に分割して平成15年9月5日に新たな特許出願とした特願2003-314363号の一部を更に分割して,発明の名称を「調理レンジ」とする発明について平成17年7月19日に新たな特許出願(特願2005-208115号。以下「本願」という。)をした。特許庁は,平成19年3月28日付けで拒絶査定をした。原告は,平成19年5月1日,これを不服として審判請求(不服2007-15308号事件)をし,同年5月29日,本願の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書の記載を補正する手続補正をした(以下,補正後の特許請求の範囲及び明細書を「本願特許請求の範囲」及び「本願明細書」とそれぞれいう。)。特許庁は,審理の結果,平成19年12月11日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,平成20年1月9日,その謄本を原告に送達した。 2 特許請求の範囲本願特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,この発明を「本願発明」という。)。 「調理レンジの調理レンジ内又は調理部に容器を関与設定し該容器内にて食品を煮る,炊く,蒸す又は調理する事が出来る。該容器内を加圧・減圧又は加減圧する圧力作用を有する又は該加・減圧力機能を有する。又は加熱する加熱作用を有する又は該加熱機能を有する。上記記載の該容器を有した調理レンジにおいて,上記記載の該調理レンジに屈折迂回部分,凹凸部分,分岐部分,抵抗体,補助室,弁,安全弁,スプリング,玉体,輪導部,吸排出口に連結した部に切り込み線部・穴部,管体,枝構成体,分散構造体,安全機構・装置,圧力の道の制御・調整を行う機構・装置,圧力の分配を行う機構・装置,圧への抵抗を行う機構・装置,加圧・減圧又は加減圧の作動又は状態と温度の関係の変化に於いて為す温度・加熱変化を行う機構・装置,圧の多段圧力制御を行う機構・装置,圧の経時的オンオフの機能を行う機構・装置,圧の流動導の太細・直進・迂回機構・装置,又は蒸気・圧の発生流動の流動導機構・装置等を少なくても何れか1つ又は複数を有して,圧力を調整する圧力調整手段又は圧力を制御する圧力制御手段を備えたことを特徴とする調理レンジ。」3 審決の理由別紙審決書写し記載のとおりである。要するに,本願発明は,原出願の出願日前に頒布された刊行物である特開平1-186584号公報(甲1。以下「引用例」という。)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,請求項2に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶を免れないというものである。 審決は上記判断をするに当たり,引用例の記載から,下記(1)のとおりの2つの発明(下記引用発明A及びB)を認定した上,本願発明と下記(1)の発明(引用発明A)との一致点・相違点を下記(2)及び(3)のとおりそれぞれ認定し,また,特開昭59-41717号公報(甲2。以下「周知例1」という。)及び特開昭62-213715号公報参照を(乙1。以下「周知例2」という。)により,調理機において,調理室内を減圧したり,加圧・減圧することが周知であるとした。 (1) 引用発明Aの内容「電子レンジの加熱室12内にある耐圧容器20内にて被加熱体14を電磁波で加熱する。該耐圧容器20内を加圧する圧力作用を有する。上記記載の該耐圧容器を有した電子レンジにおいて,ノズル21を備え,内部の圧力を上昇させるようにした電子レンジ」なお,審決の「引用発明B」の認定は,「電子レンジの加熱室12内で被加熱体14を加熱する。該加熱室内を加圧する圧力作用を有する。上記記載の電子レンジに,所定の圧力でリークする圧力ノズル15を有し,水18の入った容器19を備え,マイクロ波により水を加熱し内部の圧力を上昇させるようにする電子レンジ」というものである。 (2) 本願発明と引用発明Aとの一致点「調理レンジの調理部に容器を関与設定し該容器内にて食品を調理する事が出来る。該容器内を加圧する圧力作用を有する。上記記載の該容器を有した調理レンジにおいて,圧力を調整する圧力調整手段を備えた調理レンジ」である点。 (3) 本願発明と引用発明Aとの相違点ア 相違点ア圧力作用につき,本願発明では,「加圧・減圧又は加減圧する」ものであるのに対し,引用発明Aでは,「加圧する」ものである点。 イ 相違点イ本願発明は,調理レンジに屈折迂回部分,凹凸部分,分岐部分,抵抗体,補助室,弁,安全弁,スプリング,玉体,輪導部,吸排出口に連結した部に切り込み線部・穴部,管体,枝構成体,分散構造体,安全機構・装置,圧力の道の制御・調整を行う機構・装置,圧力の分配を行う機構・装置,圧への抵抗を行う機構・装置,加圧・減圧又は加減圧の作動又は状態と温度の関係の変化に於いて為す温度・加熱変化を行う機構・装置,圧の多段圧力制御を行う機構・装置,圧の経時的オンオフの機能を行う機構・装置,圧の流動導の太細・直進・迂回機構・装置,又は蒸気・圧の発生流動の流動導機構・装置等を少なくても何れか1つ又は複数を有するのに対し,引用発明Aは,該構成が不明である点。 |
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当事者の主張
1 原告の主張別紙訴状写し(ただし,別紙訴状補正申出書写し記載のとおり訂正された後のもの。以下,同じ。)の「請求の原因」(ただし,「1特許庁における手続の経緯」の記載に,別紙平成20年3月11日付け準備書面(第1回)写しの2頁2行目ないし9行目で指摘された誤記があることは認める。)及び別紙平成20年3月17日付け準備書面(第1回)写し記載のとおりである(以下,別紙訴状写しの「請求の原因」の「4原告の主張」の「(1)取消事由1」〔2頁19行目から5頁16行目〕,「(2)取消事由2」〔5頁17行目から9頁2行目〕,「(3)取消事由3」〔9頁3行目から11頁26行目〕及び「(4)取消事由4」〔11頁27行目から13頁18行目〕の各主張を,それぞれ「取消事由1」,「取消事由2」,「取消事由3」,「取消事由4」といい,同項の「(5)取消事由5」〔13頁19行目から14頁1行目〕及び「(6)取消事由6」〔14頁2行目から17頁12行目〕並びに別紙平成20年3月17日付け準備書面(第1回)写しの各主張を合わせて「取消事由5」という。)。 2 被告の反論別紙平成20年3月11日付け準備書面(第1回)写し記載のとおりである。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由1について原告主張の取消事由1は,正確な内容であるか否かはさておき,審決を転記しようとしたものにすぎない。 したがって,取消事由1に係る原告の主張は,主張自体が失当である。 なお,別紙訴状写しには,「特開昭59-41717号公報,(「甲第2号証,引用発明B1」)」及び「特開昭62-213715号公報(「甲第3号証,引用発明B2」)」(4頁4行目から6行目)との各記載,「引用発明B(「B1・B2の2つの特開公報」)」(4頁11行目)との記載,「引用例B1特開昭59-41717号公報」及び「引用例B2特開昭62-213715号公報」(5頁18行目から19行目)との各記載,「引用発明B(引用発明B1・2は前記記載説明いたしました通りである。)」との記載(9頁14行目から15行目)があるが,審決にいう「引用発明B」は引用例に記載された発明の一つであって(審決書3頁10行目から14行目),甲2又は3に記載された発明ではない。また,原告の提出に係る甲3は,特開昭62-213715号公報(周知例2,乙1)ではなく,同公報に記載された特許出願に係る特許掲載公報(特許第2685172号公報)である。 2 取消事由2について原告は,周知例1及び2記載の各発明は,?@容器を調理手段に関与させるものではないこと,?A安全機構・装置の設定はないこと,?B屈折迂回部分,凹凸部分,分岐部分,抵抗体,補助室,弁,安全弁,スプリング,玉体,輪導部,吸排出口に連結した部に切り込み線部・穴部,管体,枝構成体,分散構造体,安全機構・装置,圧力の道の制御・調整を行う機構・装置,圧力の分配を行う機構・装置,圧への抵抗を行う機構・装置,加圧・減圧又は加減圧の作動又は状態と温度の関係の変化に於いて為す温度・加熱変化を行う機構・装置,圧の多段圧力制御を行う機構・装置,圧の経時的オンオフの機能を行う機構・装置,圧の流動導の太細・直進・迂回機構・装置,又は蒸気・圧の発生流動の流動導機構・装置等を少なくても何れか1つ又は複数を有する構成を備えるものではないと主張する。 しかし,審決は,そもそも周知例1及び2は,相違点アに係る本願発明の構成の容易想到性の判断の前提として「調理機において,調理室内を減圧したり,加圧・減圧すること」が周知事項であることを認定するため例示したにすぎず,原告の主張に係る記載を認定するために用いたものではない。 したがって,原告の取消事由2に係る上記主張も,誤解に基づくものであって,主張自体失当である。 3 取消事由3について原告は,「引用発明A,引用発明B1,B2と本願発明との同一技術思想は存在しない」(別紙訴状写しの9頁16行目,10頁14行目)と主張する。 原告が,引用発明Aと本願発明との同一技術思想は存在しないと主張する趣旨は,引用発明Aでは「所定の圧力でリークするノズル15」は,詰まることが予想されるのに対して,本願発明では,そのような事故の発生を想定していないから,本願発明にいう「安全機構・装置」に該当しないという点にあるものと理解される(なお,原告の上記主張における「引用発明B1,B2」とは,甲2,3記載の各発明をいうものと解されるが,前記のとおり,審決にいう「引用発明B」は引用例に記載された発明を指すのあって(審決書3頁10行目から14行目),甲2又は3に記載された発明を指すものではない。)。 しかし,以下のとおり,原告の主張は失当である。 (1) 本願明細書(甲4の2)の記載本願明細書には,「安全機構・装置」に関し,次の記載がある。 ア「【0021】ここで,本発明の調理レンジは,前記請求項における調理部内の圧力制御・調整を行う機能として用いる部品・機構・構造・又は構成を安全弁として用いる手段を有する安全装置,又は前記調理内部の加圧・又は減圧の値が一定値を越えたとき,遮断部の離脱・又は解放する手段を有する安全装置,又は扉開き構造の該部品を用いる手段を有する安全装置,又は前記調理内部の加圧・又は減圧の値が一定値を越えたとき止め栓構造の部品を備え該止め栓が飛び或いは外れてなる手段を有する安全装置,又は加圧・減圧又は加減圧の安全値を設定し,前記加圧・減圧又は加減圧の値が一定値に達したとき安全スイッチが働く手段を有する安全装置 等の手段を設ける事もできる。」イ「【0036】本発明に係る調理レンジは,調理部内を加圧,減圧,又は加減圧調整又は制御する機能及び構造を有する安全装置機構を備え,調理装置の管理や,調理の管理,又は安全の管理を行うこともできる。又,調理部内の圧力値が予め設定された加圧値を超えたときに作動する管理装置手段や安全装置手段を備え,それらの情報を報知するようにすることもできる。このように構成された調理レンジによれば,加圧を行う機能を備えているにもかかわらず,過加圧といった安全性の問題を解消することが出来,安全の管理を行うことが出来る。」ウ 「【実施例10】【0082】ここで説明する本発明に係わる調理レンジは,加圧,減圧又は加減圧の調理レンジにて加圧,減圧又は加減圧にて調理中に加圧,減圧が一定値を越えたとき,安全装置が作動して危険,爆発を防ぎ安全を保つものである。 【0083】安全装置を設定するに要する部品,構造は次のものがある。 【0084】イ)第9実施例記載の特徴の制御,調整を行う機能として用いる部品,機構をもちいて安全弁として用いて安全装置とする。 【0085】ロ)ばね等を用いて遮断部を離脱させて安全装置とする。 【0086】ハ)扉風の開き構造等の加圧,減圧,が一定値を越えたとき,扉が開き安全装置として作動する。 【0087】ニ)止め栓構造の部品等にて加圧,減圧が一定値を越えたとき,止め栓が飛んで安全装置として作動する。 【0088】図21体例を示し,加減圧調理レンジ(1)に於て,加圧,減圧又は加減圧の安全値を設定し一定値に達した時,危険表示をする又は安全スイッチ(30)が働き安全又は料理の管理を行うものである。」(2) 検討前記(1)アないしウの各記載によれば,本願発明の「安全装置・機構」は,「加圧,減圧又は加減圧の調理レンジにて加圧,減圧又は加減圧にて調理中に加圧,減圧が一定値を越えたとき,安全装置が作動して危険,爆発を防ぎ安全を保つもの」であると認められる。 しかし,本願特許請求の範囲及び本願明細書を検討しても,本願発明にいう「安全装置・機構」について,ノズルが詰まるという事故が発生したときにおいても「加減圧」が一定の範囲外となることを防止する装置・機構であることの記載も示唆もない。 そうすると,引用例に記載の「所定の圧力でリークするノズル21」は,加圧が一定値を超えたときに作動するものであるから,本願発明の「安全装置・機構」に相当するものといえるのであって,これと同様の働きをする「ノズル15」が,本願発明の「安全装置・機構」に相当するとする審決の認定に誤りはない。 以上のとおり,原告の主張は,本願特許請求の範囲及び本願明細書の記載に基づかないものであり,採用することができない。 4 取消事由4について原告は,?@引用発明Bは,安全機構・装置を有し,圧力を調整する圧力調整手段を備えた調理レンジではないから,審決は,相違点イの判断の前提である引用発明Bの認定に誤りがあること,?A審決書4頁25行目から32行目の「引用発明B」が「引用発明A」の誤記であるとしても,審決の認定判断には誤りがあることを主張しているものと解される。 しかし,前記1及び2のとおり,「引用発明B」は引用例に記載された発明を認定した点で,審決に誤りはなく(審決書3頁10行目から14行目),原告の上記主張は,同発明が周知例1又は2に記載された発明であるという誤解に基づいた主張であって,その主張自体失当である。 5 取消事由5について原告は,取消事由1ないし4で主張したように,審決の判断に誤りがある旨主張する。しかし,上記検討したとおり,原告主張の取消事由1ないし4はいずれも理由がなく,また,後記6のとおり,審決にはその結論に影響するような誤りはない。 原告は,本願の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書の記載を補正する旨主張するが,補正の手続は,特許法17条の2の第1項所定の期間内に特許庁において行うべき手続であって,審決取消訴訟においてすることはできない。原告の主張は,主張自体失当である。 以上のとおり,原告の取消事由に係る主張は,すべて理由がない。 6 念のため,審決の認定判断の当否について,以下のとおり判断する。 (1) 引用例記載の発明についてア 引用例(甲1)には,次の記載等がある。 (ア)「被加熱体を収容する加熱室と,この加熱室内に電磁エネルギーを照射して該加熱体を加熱する電磁波発生装置とを具備し,前記加熱室内を,又は加熱室内にあって被加熱体を副次的に収容する容器内を加圧可能に構成したことを特徴とする加熱装置。」(特許請求の範囲)(イ)「[発明の目的](産業上の利用分野)本発明は特に被加熱体を高圧下において加熱できる電磁波による加熱装置に関する。」(1頁左下欄12行目から15行目)(ウ)「(発明が解決しようとする課題)以上のように電磁波による加熱には充分な加熱ができず長時間必要な場合がしばしばあった。本発明は上記課題に鑑みなされたもので加熱が充分にできる電磁波による加熱装置を提供することにある。[発明の構成](課題を解決するための手段)本発明は被加熱体を耐圧力容器内に収容し電磁波で加熱することにより,より高温で,短時間に加熱することができるようにしたものである。」(1頁右下欄10行目から20行目)(エ)「(実施例)以下本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。第1図は本発明の電磁波による加熱装置の一例として電子レンジの概略図を示す。電子レンジ本体10の前面には開閉可能な扉11があり,該扉11には,加熱室12内が約2気圧まで加圧しても開かないようにしたロック装置13が設けられ,全体が耐圧構造となっている。すなわち,加熱室12は約2気圧までの耐圧構造となっていて,食品等の被加熱体14を収容したまま加圧できる。背面には圧力ノズル15が取付けられていて,所定の圧力,例えば1.5気圧でリークする。電磁波を発生するマグネトロン16は加熱室12の外側に取付けてあり,導波管17を通して加熱室12に導入される。加熱室の入口には電磁波を通し,圧力を保つため隔壁で区切られている。被加熱体は,マイクロ波で加熱される。又,加熱室内に水18の入った容器19を入れておけば水も加熱され水蒸気で加熱室内も充満し,内部の圧力は例えば1.5気圧まで上昇し,食品の充分な加熱が可能となる。」(2頁左上欄4行目から右上欄5行目)(オ)「本発明の他の実施例として第2図に示すように被加熱体14を自身は加熱されずに所定の圧力まで耐えられる耐圧容器20に収容して,電磁波で加熱することもできる。該耐圧容器は,例えばノズル21の付いたガラス容器で構成しても良い。」(2頁右上欄6行目から10行目)(カ)第1図には,水18を入れた容器19が加熱室12内に配置されており,扉11にロック装置13が取り付けられるとともに,ノズル15を備える電子レンジが図示されている。 (キ)第2図には,電子レンジと,ノズル21を備え,被加熱体14を内部に収容する耐圧容器20が図示されている。 イ前記ア(ア)ないし(キ)の記載等によれば,引用例には次の各事項が記載されているものと認められる。 (ア)「被加熱体を収容する加熱室と,この加熱室内に電磁エネルギーを照射して該加熱体を加熱する電磁波発生装置とを具備し,前記加熱室内を,加圧可能に構成したことを特徴とする加熱装置」及び「被加熱体を収容する加熱室と,この加熱室内に電磁エネルギーを照射して該加熱体を加熱する電磁波発生装置とを具備し,加熱室内にあって被加熱体を副次的に収容する容器内を加圧可能に構成したことを特徴とする加熱装置」(特許請求の範囲,前記ア(ア))(イ)「約2気圧まで加圧することができ,全体が耐圧構造となっていて,食品等の被加熱体を収容したままで加圧できる加熱室12と所定の圧力(約1.5気圧)でリークする圧力ノズル15とを備えた電子レンジであって,加熱室内に水18の入った容器19を入れ,食品等の被加熱体を電磁波で加熱すると同時に水も加熱することで発生する水蒸気で加熱室内を充満することで内部の圧力を上昇させて,食品等の被加熱体を加圧状態で加熱することを可能とした電子レンジ」(第1の実施例,前記ア(エ)及び(カ))(ウ)「ノズル21を備えた耐圧容器20に被加熱体14を収容し,耐圧容器を電子レンジの加熱室内12に収容して加熱するようにした電子レンジ」(第2の実施例,前記ア(オ)及び(キ))ウそして,第1の実施例(前記イ(イ))及び第2の実施例(前記イ(ウ))ををそれぞれ包含する発明として,「被加熱体を収容する加熱室と,この加熱室内に電磁エネルギーを照射して該加熱体を加熱する電磁波発生装置とを具備し,前記加熱室内を,加圧可能に構成したことを特徴とする加熱装置」及び「被加熱体を収容する加熱室と,この加熱室内に電磁エネルギーを照射して該加熱体を加熱する電磁波発生装置とを具備し,加熱室内にあって被加熱体を副次的に収容する容器内を加圧可能に構成したことを特徴とする加熱装置」が,特許請求の範囲に記載されていることは明らかであるから,第2の実施例において,?@耐圧容器20内は,第1の実施例と同様の手段によって加圧可能とされていること(被加熱体14を収容した耐圧容器20を電子レンジの加熱室内に収容して加熱することにより,耐圧容器内を加熱するものであって,当該加圧が,第1の実施例と同様に,加熱により発生する水蒸気により耐圧容器内を充満させることによりなされること),?A耐圧容器20が備えるノズル21は,第1の実施例のノズル15と同様に,所定の圧力でリークするものであることは,いずれも当業者であれば容易に理解することができる。 エそうすると,引用例には,「電子レンジの加熱室内にある耐圧容器20内にて被加熱体24を電磁波で加熱する」こと,「耐圧容器20内を加圧する圧力作用を有する」こと,「所定の圧力でリークするノズル21を耐圧容器20が備える」こと,「電磁波により水を加熱し,耐圧容器20の圧力を上昇させるようにする」ことが,それぞれ開示されているということができる。 したがって,引用例には,次の発明が記載されていると認められる。 (ア)「電子レンジの加熱室内にある耐圧容器20内にて被加熱体14を電磁波で加熱し,該耐圧容器20内を加圧する圧力作用を有する電子レンジにおいて,耐圧容器20が所定の圧力でリークするノズル21を備え,電磁波により水を加熱して耐圧容器20内の圧力を上昇させるようにする電子レンジ」の発明(以下「引用発明?@」という。)(イ)「電子レンジの加熱室12内で被加熱体14を加熱し,該加熱室内を加圧する圧力作用を有する電子レンジにおいて,電子レンジに所定の圧力でリークする圧力ノズル15を備えており,水18の入った容器19を備え,電磁波により水を加熱して電子レンジの加熱室内の圧力を上昇させるようにする電子レンジ」の発明(以下「引用発明?A」という。)(2) 本願発明と引用発明?@との対比ア本願発明と引用発明?@とを対比すると,引用発明?@の「電子レンジ」,「加熱室」,「耐圧容器」,「被加熱体」,「加熱し」は,それぞれ本願発明の「調理レンジ」,「調理部」,「容器」,「食品」,「調理する」に相当すると認められる。 イ引用発明?@の「所定の圧力でリークするノズル21」は,加熱により高まる耐圧容器内の圧力が,所定の圧力以上となることを防止する作用を奏するものであって,耐圧容器内の圧力が想定される圧力以上に上昇する危険を防止するためのものであることは明らかというべきであるから,本願発明の「安全機構・装置」に相当するものといえる。 ウ引用発明は,「電磁波により水を加熱して耐圧容器20内の圧力を上昇させるようにする」ものであって,「ノズル21」により所定圧力以上とならないように調整するものであるから,「圧力を調整する圧力調整手段」を備えるものということができる。 エそうすると,本願発明と引用発明?@とは,「調理レンジの調理部に容器を関与設定し該容器内にて食品を調理する事ができ,該容器内を加圧する圧力作用を有し,圧力を調整する圧力調整手段を備えた調理レンジ」である点で一致し,次の点で相違すると認められる。 (ア) 相違点A本願発明は「容器内を加圧・減圧又は加減圧する圧力作用を有する又は該加・減圧力機能を有す」るのに対して,引用発明?@は,「容器内を加圧する」のみである点。 (イ) 相違点B本願発明は「該調理レンジに屈折迂回部分,凹凸部分,分岐部分,抵抗体,補助室,弁,安全弁,スプリング,玉体,輪導部,吸排出口に連結した部に切り込み線部・穴部,管体,枝構成体,分散構造体,安全機構・装置,圧力の道の制御・調整を行う機構・装置,圧力の分配を行う機構・装置,圧への抵抗を行う機構・装置,加圧・減圧又は加減圧の作動又は状態と温度の関係の変化に於いて為す温度・加熱変化を行う機構・装置,圧の多段圧力制御を行う機構・装置,圧の経時的オンオフの機能を行う機構・装置,圧の流動導の太細・直進・迂回機構・装置,又は蒸気・圧の発生流動の流動導機構・装置等を少なくても何れか1つ又は複数を有して」いるのに対して,引用発明?@は,「容器に,本願発明の安全機構・装置に相当するところの所定以上の圧力でリークするノズル21を備える」ものの,調理レンジが上記構成を備えるものではない点。 (3) 審決の認定判断についてア審決は,引用例記載の発明の一つとして,前記第2,3(1)のとおり,引用発明Aを認定し,同発明と本願発明との一致点・相違点を,前記第2,3(2)及び(3)のとおり,認定した。 イ審決は,相違点イ(前記第2,3(3)イ)について,「引用発明Aは,『ノズル』を具備するものであるが,該ノズルの構成・機能については,明らかではない。しかし,『耐圧容器20』は,所定の圧力まで耐えられるものである(「2.(5)」〔判決注,審決書3頁1行目から4行目の摘記,すなわち,引用例の2頁右上欄6行目から10行目の記載を意味する。〕参照。)。また,引用発明Bは,同一技術思想における別実施例として記載されたものである。そうすると,引用発明Aにおける『ノズル21』を,所定の圧力まで耐えられるものとすることは,当業者が容易に想到し得ることである。」(審決書4頁33行目から5頁7行目)と説示している。そして,審決の上記説示は,引用例記載の第1の実施例に基づいて認定した引用発明B(前記第2,3(1))の「ノズル15」は「所定の圧力でリークするノズル」であり,引用例における第2の実施例に基づいて認定した引用発明A(前記第2,3(1))の「ノズル」を,引用発明B(前記第2,3(1))の「ノズル15」と同様に,「所定の圧力でリークするノズル」とすることは,当業者が容易に想到し得た旨認定判断したものと解される。 審決の上記認定判断は,要するに,当業者であれば,引用例の第2の実施例を記載した第2図における「圧力容器20」が備える「ノズル21」は,第1の実施例と同様に,「所定の圧力でリークするノズルである」ことを容易に想定し得るとしたものであって,実質的には,前記(1)ウと同旨の認定判断であるといえる。 ウしかし,審決における相違点イの判断は,本願発明が「電子レンジに安全機構・装置」を備えたものであるのに対して,引用発明?@が「耐圧容器に安全機構・装置」を備えたものであるという相違点B(前記(2)エ(イ))について,実質的に判断していないものといわざるを得ないから,審決は,相違点Bについて判断を遺脱した誤りがある。 そこで,審決の上記誤りが,結論に影響するか否か検討する。 (4) 相違点Bの想到容易性についてア引用発明?A(前記(1)エ(イ))は「ノズル15」を備えており,安全機構・装置を備えているものといえる。 イ一方,引用発明?@の圧力容器は,電子レンジの調理室内で加熱することによりその内部を加圧するものであって,引用発明?Aの電子レンジによっても当該圧力容器を加圧することができることは,当業者であれば容易に理解できることであるから,引用発明?@の電子レンジに換えて引用発明?Aのノズル15を備えた電子レンジにより加熱を行うようにすることは,必要に応じて適宜なし得る程度のことというべきである。そして,引用発明?@の電子レンジに代えて,安全機構・装置を備える調理室内が気密とされた引用発明?Aの電子レンジを用いる場合においても,圧力容器の備えるノズル21により,所定圧力以上となった水蒸気が放出されるのであるから,気密とされた調理室内の圧力が所定圧力以上となることを防止するためのノズル15を備えておく必要があることには変わりはない。 なお,本願明細書の記載を検討しても,調理レンジ内に関与設定した容器内を加減圧する場合において,調理レンジを気密にして,安全機構・装置を調理レンジに備えるようにする格別の技術的意義は見い出せない。 したがって,引用発明?@において,相違点Bに係る本願発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得た程度のことというべきであるから,審決が相違点Bについて判断を遺脱した誤りは,審決の結論に影響するものとはいえない。 (5) 相違点Aの想到容易性について相違点A(前記(2)エ(ア))は,審決が認定した相違点ア(前記第2,3(3))と実質的に同じであるところ,以下のとおり,審決の相違点アの判断に誤りはない。 ア 周知例1について(ア) 周知例1(甲2)には,次の記載がある。 a「密閉自在な調理室を有する調理器本体と,この本体の調理室内を所望時に減圧する減圧装置と,上記調理室内の食品を所望時に加熱する加熱手段とを備えてなる調理器。」(1頁左下欄5行目から8行目)b「この発明は,レンジ,オーブン,グリル料理において,その調理室内を減圧条件とし,従来にない調理法や従来の改善法を可能にするもので,さらに,各調理終了後には短時間に食品を飲食可能な温度まで冷却することのできる調理器を提供するものである。たとえば,たまご焼き,お好み焼きでは,圧力を制御することにより,従来の平面的なものから,立体的なものまで仕上がり状態を選択することができる。また,100℃付近まで温度を上げずに含水量を減少させることも可能である。さらにベーキングパウダー等を使用し,発泡させることが必要なパンやケーキの発泡を促進させ,ふつくらと柔らかな仕上がりを得やすくすることができる。含水量の多い料理の場合には,調理終了後減圧状態にすることにより,食品を沸騰させ,その気化熱を利用して短時間に飲食可能な温度まで冷却させることができる。」(1頁左下欄10行目から右下欄7行目)c「つぎに,減圧調理器として使用する場合について第1図,第2図,第4図及び第5図を用いて説明する。電源スイッチ(16)を入れ,調理したい飲食物を調理室(5)に入れ,冷却選択スイッチ(20)を調理側に切り換える。調理時の圧力は設定圧力(温度)表示部(14)を見ながら設定圧力(温度)調整ダイヤル(12)により設定する。この状態の電気回路を示したものが第4図である。・・・扉(2)を閉めると,ドアースイッチ(18)がON状態となり,適当な調理時間をタイマー(15)でセットし,接点がON状態となる。スタートスイッチ(17)をONするとスタート用リレー(24)が動作する。・・・電流は圧力スイッチ(11)の高圧側(11a)接点に流れ第2の電磁バルブ(10)が閉まり,パワーリレー(25)を動作させる。同時に加熱源選択スイッチ(19)によつて選択されたマグネトロン(22),かヒーター(21)に電圧が印加され,調理室(5)内の加熱が開始される。これよりやや遅れて,遅延リレー(26)が動作する。・・・圧力が設定値よりも下がると,圧力スイッチ(11)が低圧側(11b)となりOFFするため,パワーリレー(25)がOFF状態となり第1の電磁バルブ(9)が閉まる。」(3頁左上欄14行目から左下欄5行目)(イ)前記(ア)aないしcの記載によれば,周知例1には,「調理器の調理室内を減圧して加熱調理を行う減圧調理器」が記載されていると認められる。 イ 周知例2について(ア) 周知例2(乙1)には次の記載がある。 a「レンジ室内を気密に保持し,室内の圧力を加圧,又は減圧して調理する加減圧調理レンジの構造。」(1頁左下欄5行目から6行目)b「この発明は調理レンジに関するもので,従来のレンジは熟を加えるのみの調理で加熱温度の調整だけであったが,本発明は圧力の調整を加え従来より高度な調理をおこなう事を目的としている。本発明は加熱前に,調理材に調味料の味付けを減圧,又は加圧を行う事により内部まですみやかに浸透させ,その後,加熱を行い調理する。このとき圧力の調整を行う事により調理材内部温度の調整を行い美味な調理をおこなうものである。」(1頁左下欄8行目から16行目)c「外枠1に密着する扉2,とで気密室6を設け,その内部を加熱する加熱体3,及び気密室6に管合したポンプ4又は調圧器5にて気密室6の圧力を調整する構造の加減圧調理レンジの構造で,圧力,時間,繰り返し数,等種々設定し適当な調理お行う事によって,従来の方法では得られなかった美味な調理が出切る有益な発明である。」(1頁右下欄1行目から8行目)(イ)前記(ア)aないしcの各記載によれば,周知例2には,「気密室6の圧力を加圧又は減圧して加熱調理を行う加減圧調理レンジ」が記載されていると認められる。 ウ前記ア及びイ並びに弁論の全趣旨によれば,原出願の出願当時,調理レンジの調理室内を加圧したり,減圧したりして,加熱調理を行うことは,周知であったと認めるのが相当である。 エそして,引用発明?@においても上記周知の調理方法を実現するためには,耐圧容器を,加圧又は減圧可能な構成とすれば良いことは当業者であれば容易に想到し得るものである。なお,本願明細書において,調理レンジ内に設ける容器内を加圧又は減圧可能とする手段について特に明記されていないこと,周知例1及び2に記載されているように調理レンジの調理部内を加圧したり減圧したりする手段が,原出願の出願時において既に周知であることに照らせば,「容器内を加圧又は減圧可能に構成する」ことは,当業者が容易になし得る程度のことというべきであるから,引用発明?@において,相違点A(審決が認定した相違点アと実質的に同じ)に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものというべきである。 オ以上のとおりであるから,審決が,周知例1及び2を例示して,「調理機において,調理室内を減圧したり,加圧・減圧することは,従来周知の技術である・・・。そうすると,引用発明Aにおける圧力作用を加圧するものに換えて,加圧・減圧又は加減圧するものとした点は,周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。」(審決書4頁13行目から18行目)と認定判断したことに誤りはない。 7 結論以上のとおり,原告主張の取消事由には理由がなく,また,審決に,これを取り消すべきそのほかの誤りがあるとも認められない。よって,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 飯村敏明 |
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裁判官 | 嶋末和秀 |
裁判官 | 大鷹一郎 |