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関連審決 無効2005-80355
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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成17行ケ10586特許取消決定取消請求事件 判例 特許
平成19行ケ10281審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  公知技術 /  技術常識 /  パリ条約 /  優先権 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  交換 /  設定登録 /  請求の範囲 /  訂正明細書 / 
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事件 平成 19年 (行ケ) 10054号 審決取消請求事件
原告ディー・エフ・ビーバイオ テックインコーポレイテッ ド(審決時の商号フィトン インコーポレイテッド)
同訴訟代理人弁護士尾崎英男
同 池原元宏
同訴訟代理人弁理士谷義一
同 主代静義
同 岩崎利昭
同 田村正
被告株式会社サムヤン・ジェネッ クス
同訴訟代理人弁護士長沢幸男
同訴訟代理人弁理士日野真美
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/04/24
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2005-80355号事件について平成18年10月5日にした審決中,「特許第3513151号の請求項1〜27に係る発明についての特許を無効とする。」との部分を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「タクスス属種の細胞培養によるタキソールおよびタキサンの増強された生産」とする特許第3513151号(平成5年2月22日出願,パリ条約による優先権主張,1992年2月20日,米国,1992年4月24日,米国,平成16年1月16日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。
被告は,平成17年12月8日,無効審判請求(無効2005-80355号事件)をし,無効審判係属中に,原告は,平成18年4月26日,本件特許の請求項1〜36のうち請求項2〜9及び24を削除する内容の訂正請求(以下「本件訂正」という。訂正後の請求項の数は27である。)をした(甲41の1,2)。特許庁は,平成18年10月5日,「訂正を認める。特許第3513151号の請求項1〜27に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をした。
2 特許請求の範囲本件訂正に係る明細書(甲41の2。以下「本件訂正明細書」という。)によると,本件訂正後の本件特許の請求項1ないし27は,次のとおりである。
【請求項1】下記工程を含むことを特徴とする,タクスス・シネンシスの細胞培養から高収率でタキソールおよびタキサンを回収する方法;(a)タクスス属種由来の細胞を,1つ以上の栄養培地で,天然のタクスス・シネンシスにより生産される量より少なくとも10倍量のタキソールとタキサンとを生産する条件下で培養する工程であって,(i)タクスス・シネンシス細胞を,培養細胞の迅速な成長に有利な懸濁液の成長栄養培地に植菌して植菌懸濁物を形成する工程,(ii)前記工程(i)の植菌懸濁物を成長させ,バイオマスを増殖させる工程,(iii)前記工程(ii)の懸濁培養物をタキソール及びタキサンの生合成に有利な生産栄養培地に継代培養して生産培養物を形成する工程,ここで,前記生産栄養培地は生産物形成のために独立して最適化され,前記成長栄養培地と異なる,(iV)前記工程(iii)の生産培養物をタキソール及びタキサンを形成するための条件下で培養する工程,を含む工程;及び(b)前記工程(iv)の培地,細胞,または生産培養物の培地及び細胞から前記タキソールおよびタキサンを回収する工程。
【請求項2】前記成長条件が前記培地中に使用される成長調整物質の量または種類を変えることにより最適化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】前記成長調整物質がホルモン類似体であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】前記成長調整物質がピクロラムであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】前記培地がAgNO を含有することを特徴とする請求項2に3記載の方法。
【請求項6】前記培地がマクロおよびミクロ塩類,微量元素および/またはビタミンおよびその他の有機補充物質を含有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】前記培地が植物ホルモン,ホルモン代替物および誘導体,ホルモン阻害剤および/または合成成長調整物質を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】前記培地が生物または非生物エリシターを含有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】前記生物的または非生物的エリシターが表1aから選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】前記エリシターがグルタミン酸キトサン,リゲナン,フェルラ酸および安息香酸から選択されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】前記エリシターがグルタミン酸キトサンであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】前記培地が生合成前駆体,代謝および非代謝阻害剤,および/または刺激剤および/またはアクチベータを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項13】前記生合成前駆体,代謝および非代謝阻害剤,および/または刺激剤および/またはアクチベータが表1bから選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】フェニルアラニンが前記培養の生産段階で存在していることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】前記培地が抗褐変剤,抗酸化剤,安定化剤,増強剤,ラジカルスカベンジャー,調整剤,および/または還元剤を含有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項16】定期的な栄養培地の交換の工程をさら含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】定期的なタキソールおよびタキサン除去の工程をさら含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】成長および生産物形成が,1段階または2段階のバッチプロセス,またはフェッド-バッチプロセス,または半連続プロセス,または連続プロセス,またはそれらの変形を用いて達成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】前記1つ以上の栄養培地がタキサン前駆体も含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】前記1つ以上の栄養培地が炭素源としてマルトースを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】前記1つ以上の栄養培地が炭素源としてスクロールを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】前記1つ以上の栄養培地が炭素源としてグルコース,フラクトース,またはそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】前記1つ以上のタキサンの生産が前記栄養培地の組成の変化により誘導されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】タキサンの生産中に少なくとも1回栄養培地を交換する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】前記培養工程中に少なくとも1回栄養培地を交換する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項26】前記タクスス・シネンシス細胞がフェッド-バッチプロセスにより培養されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】タキソールが前記細胞培養物の前記細胞または前記培地またはそれら両方から回収されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
(以下,それぞれ「本件訂正発明1」〜「本件訂正発明27」といい,これらを総称する場合は,「本件各訂正発明」という。)3 審決の内容別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本件各訂正発明は,米国特許第5019504号公報(甲1。以下「刊行物1」という。)の記載及び公知技術(甲2ないし4,6,7,9,11ないし16,18,21)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,とするものである。
審決は,上記結論を導くに当たり,引用発明の内容並びに本件訂正発明1と刊行物1記載の発明(以下「引用発明」という。)との一致点及び相違点を次のとおり認定した。
(1) 引用発明の内容ア 引用発明の方法(1)タクスス・ブレヴィフォリア由来の細胞を,Gamborg's B5中で懸濁培養して成長させ,その継代培養物を,培地1又は培地2で培養して,細胞を成長させ,これらの培地において成長した細胞によりタキソールを生産させる方法。
イ 引用発明の方法(2)前記アの継代培養物を,培地1,培地2又は培地3で培養して,成長させた細胞を,Gamborg's B5中で真菌培養を行って,タキソールの生産を誘導する方法。
(2) 一致点下記工程を含むことを特徴とする,タクスス属種の細胞培養から高収率でタキソールおよびタキサンを回収する方法;(a)タクスス属種由来の細胞を,1つ以上の栄養培地で,タキソールとタキサンとを生産する条件下で培養する工程であって,(i)タクスス属種の細胞を,培養細胞の迅速な成長に有利な懸濁液の成長栄養培地に植菌して植菌懸濁物を形成する工程,(ii)前記工程(i)の植菌懸濁物を成長させ,バイオマスを増殖させる工程,(iii)前記工程(ii)の懸濁培養物をタキソール及びタキサンの生合成に有利な生産栄養培地に継代培養して生産培養物を形成する工程,ここで,前記生産栄養培地は生産物形成のために独立して最適化され,前記成長栄養培地と異なる,(iv)前記工程(iii)の生産培養物をタキソール及びタキサンを形成するための条件下で培養する工程,を含む工程;及び(b)前記工程(iv)の培地,細胞,または生産培養物の培地及び細胞から前記タキソールおよびタキサンを回収する工程。」という点で一致する。
(3) 相違点ア相違点1細胞培養するタクスス属種が,本件訂正発明1においては,「タクスス・シネンシス」であるのに対し,引用発明では,「タクスス・ブレヴィフォリア」である点。
イ 相違点2本件訂正発明1では,タキソールとタキサンの生産が,「天然のタクスス・シネンシスにより生産される量より少なくとも10倍量」であるのに対し,引用発明では,そのような特定がない点。
原告主張の取消事由
審決は,?@一致点の認定を誤り(取消事由1),?A相違点に対する容易想到性の判断を誤ったから(取消事由2),取り消されるべきである。
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)引用発明には,以下の理由から,(a)(iii)記載の成長栄養培地とは独立して最適化された,タキソール及びタキサンの生合成に有利な生産栄養培地の使用が開示されているといえず,その結果,(a)(iv)及び(b)の工程が存在しないので,審決の一致点の認定は誤りである。
(1) 本件訂正発明1の「生産栄養培地」の意義ア審決は,培養細胞が成長していれば成長のための栄養培地に相当し,タキソールの生産が行われていれば生産栄養培地に相当すると判断した上で,「引用発明1の方法(1)」における「培地1」又は「培地2」及び「引用発明1の方法(2)」における「真菌エリシターを含むGamborg's B5培地」が,いずれも「生産栄養培地」に相当するとして,「生産栄養培地」が開示されていることを前提として,一致点を認定している。しかし,二段階培養の第一段階の「成長栄養培地」でもわずかながらの生産が生じ,第二段階の「生産栄養培地」でも生存のためにいくらかの細胞の成長は持続するから,審決によると,すべての栄養培地が成長栄養培地であり,かつ生産栄養培地でもあることになり,本件訂正発明1が二段階培養を内容とする発明として記載されていることが無意味となり相当でない。
イ 本件訂正発明1の「生産栄養培地」の意義本件訂正発明1に係る特許請求の範囲の記載によると,「生産栄養培地」は,「タキソール及びタキサンの生合成に有利」であり,かつ「生産物形成のために独立して最適化され」るものである。他方,「成長栄養培地」は,「培養細胞の迅速な成長に有利」なものとされる。よって,両者の相互の関連を考慮すれば,「成長栄養培地」は「タキソールやタキサンの生産よりも細胞の迅速な成長に有利な培地」を意味し,「生産栄養培地」は,「細胞の成長よりもタキソール及びタキサンの生合成に有利な培地」を意味するものと解すべきである。さらに,「生産栄養培地」は生産物の形成のために成長栄養培地とは独立して最適化されるから,「生産栄養培地」が「成長栄養培地」と比べてタキソール及びタキサンの生合成に有利であるとされる。なお,本件訂正明細書の「成長は生産培地でおきることがありうるとともに,生産が成長培地で起きることがあり得るし,単一の栄養培地中で最適の成長と生産が起きることがあり得る」との記載は,後記ウの成長関連に関するものであり,「成長非関連」における二段階培養を特徴とする本件訂正発明1とは無関係の記載である。
よって,本件訂正発明1の「生産栄養培地」は,「成長栄養培地の組成と比べて,成長よりも,タキソール及びタキサンの生合成に有利な組成の栄養培地」の意味であると解するのが相当である。
ウ 当業者の技術常識本件特許出願の優先権主張当時,当業者の間では,植物生産系における二次中間代謝物の生産が,成長関連(成長及び生産が同時に起こる)と成長非関連(成長及び生産が同時に起こらない)に分類されることが知られ,このうち,成長非関連の二次中間代謝物の生産のために二段階培養を行うことも知られていた(甲24,25,34)。また,培地の組成成分に関し,細胞の成長に適した組成は,ショ糖とその成分である単糖類,グルコース,フラクトースであり(甲25),二段階培養における二次代謝物の生産に適した組成は,硫酸塩,アンモニウム塩,リン酸塩,カリウム塩等であることが知られていた(甲28ないし32,34)。
エ上記イ及びウを総合すると,本件訂正発明1の「生産栄養培地」は,成長栄養培地の組成と比べて,成長に必須の無機物質を減少させ,成長よりも,タキソール及びタキサンの生合成に有利な組成の栄養培地に限定されるというべきである。
(2) 引用発明における「生産栄養培地」の記載の有無本件訂正発明1の上記の「生産栄養培地」の意義に照らすならば,「引用発明1の方法(1)」における「培地1」又は「培地2」,「引用発明1の方法(2)」における「真菌エリシターを含むGamborg's B5培地」は,いずれも本件訂正発明1の「生産栄養培地」に相当せず,引用発明には「生産栄養培地」が開示されていないから,審決の一致点の認定は誤りである。
2 取消事由2(容易想到性の判断の誤り)(1)審決は,本件訂正発明1の作用効果がタクスス・ブレヴィフォリアを用いた引用発明の効果と比べて,格別顕著なものとは認められないことを理由に,引用発明において,タクスス・ブレヴィフォリアに代えて,タクスス・シネンシスを用いることは当業者が容易に想到し得たものと判断した。
しかし,審決の上記判断は,以下のとおり誤りである。すなわち,本件訂正発明1は,タクスス属種のうちタクスス・シネンシスを選択したこと,及び独立して最適化された「成長栄養培地」と「生産栄養培地」を用いる二段階培養方法に係る発明であり,これにより,引用発明に比してタキソール及びタキサンの容積生産量を飛躍的に増大させるという顕著な作用効果を奏する。この顕著な作用効果は,本件訂正明細書実施例9に具体的に記載されているとおりであり,タキソールの「容積生産量」(培養液1リットル当たりに生産されるタキソールの量)は,25日目で21.3mg/L,42日目で153mg/Lであり,引用発明の1〜3mg/Lに比べ35〜150倍である。
よって,本件訂正発明1の作用効果が引用発明の効果と比べて格別顕著なものと認められないとした審決の判断は誤りである。
(2)審決は,引用発明と本件特許の実施例9とでは,細胞接種量,培養期間,培地組成が異なっていることを理由に,実施例9の記載は本件訂正発明1の顕著な作用効果を根拠付けるに十分なものではないと判断した。
しかし,審決の上記判断は,以下のとおり誤りである。すなわち,引用発明は,成長栄養培地でタキソールを生産しているためにわずかな量の細胞接種量で培養を開始し,バイオマスは増加するがタキソールの生産はわずかであるのに対し,本件訂正発明1は二段階培養方法を採用することにより,成長培養培地において成長した細胞を生産栄養培地に接種するので,多量の細胞を接種しても細胞はそれほど増殖せず,タキソールの生産量を飛躍的に増大することができたものである。
なお,本件特許の実施例8は,エリシター処理をした場合としない場合の比較をした実験であり,実施例9とは細胞接種量が異なるので,実施例9と矛盾するものではない。
(3)審決は,本件訂正発明1の特許請求の範囲には,実施例9のような培養条件が限定されていないから,実施例9の特定の培養条件下において得られる容積生産量を本件訂正発明1に係るすべての態様にまで一般化できるとはいえないと判断する。
しかし,審決の上記判断は,以下のとおり誤りである。すなわち,当業者が実施例9の実験内容を見れば,そこで得られた顕著な作用効果が成長栄養培地によって成長した細胞を,生産栄養培地で培養することによって得られたものであることが十分理解でき,特定の培地組成,細胞接種量や培養期間の設定は,当業者が本件訂正発明1の理解に基づき任意に選択設定できる事項であるから,上記審決の判断は誤りである。
被告の反論
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)に対し(1)本件訂正発明1の「成長栄養培地」は,迅速な成長に有利な栄養培地を指と規定されているが,「生産栄養培地」とは,上記の「成長栄養培地」とは異なるものであって,タキソール及びタキサンの生合成に有利でかつ何らかの指標により生産物形成のために独立して最適化された栄養培地であり,活性化剤やエリシター等の添加剤が添加された栄養培地を指すものと解すべきである。
そうすると,引用発明の実施例4における「培地1」及び「培地2」並びに実施例8,12における「真菌エリシターを含むGamborg's B5培地」は「生産栄養培地」に相当する。
(2)原告は,本件訂正発明1の「生産栄養培地」は,「成長栄養培地の組成と比べて,成長よりも,タキソール及びタキサンの生合成に有利な組成の栄養培地」の意味であると解するのが相当であると主張する。しかし,本件訂正明細書(甲41の2)に記載のとおり,「成長は生産培地でおきることがありうるとともに,生産が成長培地で起きることがありうるし,単一の栄養培地中で最適の成長と生産が起きることがありうる」から,「生産栄養培地」を「成長栄養培地」とを対比して,タキソール及びタキサンの生合成に有利な組成の栄養培地に限定する根拠はない。
(3)原告主張の文献には,いずれも生産栄養培地であるためには,必ず成長栄養培地の成分から無機物質を減少させ,他方,ショ糖などの炭酸源を増加させなくてはならないことや,原告主張の成分が成長に必須であることは記載されていない。また,甲19,25,32,乙1の記載によると,二次中間代謝物の生産栄養培地では,常に成長栄養培地の成分から無機物質を減少させ,他方,ショ糖などの炭酸源を増加するとはいえない。原告の主張は失当である。
2 取消事由2(容易想到性の判断の誤り)に対し(1)本件訂正発明1は,「成長栄養培地」と「生産栄養培地」を用いて培養すると,結果として天然のタクスス・シネンシスにより生産される量より少なくとも10倍量のタキソールとタキサンとを生産することが機能的に規定されているのみである。よって,本件訂正発明1が細胞の大量接種を可能にしたことにより容積生産量を飛躍的に増大させたとの原告の主張は,本件特許に係る特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり,失当である。
(2)仮に,実施例9が顕著なタキソール容積生産量を達成しているとしても,実施例8(エリシターを添加しない場合)のタキソール容積生産量は,5.4mg/Lにとどまることに照らすならば,実施例9で達成される容積生産量は,特殊な実施態様に限られる効果である。実施例9の高いタキソール容積生産量は,本件訂正発明1の要件を充たさない生産栄養培地における長期培養により得られる効果であって,本件訂正発明1の顕著な作用効果とはいえない。
なお,本件訂正発明1は,生産栄養培地に対して細胞をどの程度大量に接種すべきか,何日間以上培養すべきか等の有利な容積生産量を達成するための培養条件は,何ら規定されているわけではない。
当裁判所の判断
当裁判所は,審決には,原告の主張に係る,一致点の認定の誤り及び容易想到性の判断の誤りはないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1 本件訂正明細書(甲41の2)の記載(1) 本件訂正明細書には,以下の記載がある。
「生産培地条件本明細書において使用されるように,「栄養培地」という用語は植物細胞カルスおよび懸濁培養の培養に適した培地を記述するのに使用される。「栄養培地」という用語は一般的であり「成長培地」と「生産培地」の双方を含む。「成長培地」という用語は培養細胞の迅速な成長に有利な栄養培地を記述するのに使用される。「生産培地」という用語は培養細胞のタキソールおよびタキサンの生合成に有利な栄養培地を指称する。成長は生産培地で起きることがあり得るとともに,生産が成長培地で起きることがあり得るし,単一の栄養培地で最適の成長と生産が起きることがあり得ることが了解される。」(14頁7行〜15行)「タクスス・シネンシスにおけるタキソールとタキサンの生産の場合,成長と迅速な生産物形成は分離されており,独立の培地がそれぞれについて開発されていた。しかしながら,単一の成長/生産培地をこの培養のために処方してもよいことが了解される。」(15頁11行〜14行)「他のものも使用することができるが,種々の種に対する好適な生産培地を第5表に示す。例えば,他のものを使用することができるが,タクスス・シネンシス用の好適な生産培地はBおよびCである。これらの培地は第2表にリストされた成分を含有しているのが好ましい。これらの培地は主要および微量無機塩類,有機物および成長ホルモンもしくは成長調整物質を含有しているのが好ましい。量は一般に以下の,第2表に示す各培地成分の濃度の10分の1ないし3倍の範囲内である。」(15頁21行〜27行)「タクスス・ブレビフォーリアの培養において達成された細胞密度が1リットルあたりの乾燥重量で1g以下であったのに対し(Christen et al.(1991)で発表されたデータから計算),タクスス・シネンシスの懸濁培養では18日間の増殖で密度が1リットルあたりの乾燥重量で8ないし20gまで達した。」(22頁9行〜13行)(2)実施例8には,培地Dの中で成長したタクスス・シネンシスK-1系統の細胞を,エリシター添加した又は添加しない培地Cで培養して,タキソール及びタキサンの生産量を測定したところ,エリシター処理しないものが5.4mg/Lであるのに対して,エリシター処理した場合には13.9mg/Lであったことが記載されている。
(3)実施例9では,タクスス・シネンシスを,成長栄養培地Dで7〜8日間,懸濁培養後,生産栄養培地B又はCに移して,18〜42日間,培養しているが,第9表及び第5図によると,培地Cにおいて,?@タキソールの培地容積に対する生産量(mg/L),?Aタキソールの生産量(乾燥重量%),?B細胞密度(g/L)は,以下のとおりであることが記載されている。
タキソールの生産量細胞密度(mg/L)(乾燥重量%)(g/L)18日培養21.30.06532.825日培養24.250.042756.842日培養153.340.324447.32 刊行物1(甲1)の記載(1) 「我々のタキソール産生方法には,以下の工程が含まれる:a.タクスス属種の生組織を供し;b.上記組織からのカルス形成に適する及び懸濁細胞増殖に適する栄養培養培地を供し;c.上記組織由来のカルスを産生し懸濁細胞増殖のために上記組織を上記培地において培養し;d.上記カルス及び懸濁細胞及び上記培地からタキソール及びそれに関連する化合物を回収すること場合によっては,工程(c)に誘導剤を添加し,タキソール及びそれに関連する化合物の産生を最適化してもよい。」(訳文1頁,下から10〜1行)(2)「タキソール産生はまた,真菌エリシター(fungal elicitors)バナジル硫酸を含む様々な化合物の添加により促進されるが,例えば,3,4-ジクロロフェノキシトリエチル(アミン)等,副産物の産生をも刺激する他の化合物によってもさらに促進されうる。真菌エリシター及び他の化合物による迅速な促進能は,タキソールの商業的な生産に多大な利益をもたらす。Cytospora abietis,ATCC No.38688及びPenicillium minioluteum(Dierckx),NRRl 18467を含む真菌エリシターのような様々な真菌種がタキソール生産を誘導する。」(訳文3頁,7〜12行)(3) 「実施例3実施例1で得られたカルスを懸濁培養した。継代培養は,125ml容量のErlenmeyerフラスコにて,2,4-Dカイネチン,NAA,6-ベンジルアミノプリン(BAP)を様々な量のホルモンを含有する15mlのGamborg's B5培地を入れて,110-125rpmで振盪して行った。」(訳文4頁29〜32行)(4) 「実施例4実施例3の懸濁細胞の継代培養を:(1)硝酸アンモニウムの添加有り又は無しのGamborg's B5培地(表I及びII),(2)Lloyd及びMcCown's樹木植物塩基性塩混合物(表III),5ml Murashige及びSkoog's改変ビタミン混合物(表IV),15gスクロース,2gカザミノ酸及び5ml2,4-D;又は(3)Anderson'sロドデドロン塩基性塩混合物(表?V),5ml2,4-Dに分割した。20μlの細胞を125-ml三角フラスコに入れた45ml培地中に接種した。培地2及び3の細胞増殖は,Gamborg's B5培地にアンモニウムを補足した培地同様,無添加Gamborg's B5での増殖よりも2-3倍高かった。」(訳文4頁,下から4行〜5頁5行)(5) 「実施例6細胞培養によるタキソール生産は,高速液体クロマトグラフィー解析により測定した。懸濁液を細胞画分と上清画分にわけ,-20℃で凍結させ,エーテル抽出した。・・上清におけるタキソールの濃度は1.0-3.0mg/lであった。」(訳文6頁,1行〜10行)(6) 「実施例8実施例3の懸濁培養の継代培養を実施例4のように行った。Gamborg'sB5中において真菌培養を行い,タキソール産生を誘導するために用いた。
植物細胞上清のHPLC解析でオートクレーブした菌糸体及びフィルター滅菌した培養ろ液によりタキソール生産が誘導されたことが示された。Cytospora abietis,ATCC #38688はタキソールを誘導する真菌である。タキソールは,真菌材料を添加後26時間で誘導された。」(訳文6頁14〜19行)(7) 「実施例12タキソール生産のベストモード:ストックを寒天プレートに保存し,新しい懸濁培養を開始するために定期的に供給した。実施例1の樹皮細胞又は形成層細胞由来の懸濁細胞の継代培養物を実施例3のように生育させた。5mlの2,4-Dストック/リットルを含有する125ml三角フラスコ中に45mlのGamborgs B5ごとに20μlの細胞を接種した。細胞は,暗所で20-25℃で110-125rpmで振盪して生育させた,タキソールの迅速生産は,実施例8のように,フラスコ毎に破砕した,オートクレーブしたCytospora abietis菌糸体を2ml加えることにより達成された。」(訳文7頁1〜7行)3乙2には,4種類のタクスス・シネンシス種細胞株(654S,GEN-004,GEN-006及びGEN-006K)を,本件訂正明細書実施例9に記載の方法のとおり培養して,タキソール生産量を測定した結果が記載されている。このうち生産培地として培地B,Cを用いた場合のタキソール生産量をみると,654Sは,培地Bが0.1mg/L,培地Cが0.07mg/L,GEN-004は,培地Bが0.3mg/L,培地Cが1.4mg/L,GEN-006は,培地Bが0.4mg/L,培地Cが0.47mg/L,GEN-006Kは,培地Bが0.13mg/L,培地Cが0.03mg/Lとなっている。
4 取消事由1(一致点の認定の誤り)について原告は,刊行物1には,「生産栄養培地」についての記載,開示がないから,「生産栄養培地」についての記載があることを前提とした審決の一致点の認定には誤りがあると主張する。
しかし,原告の主張は,以下の理由により採用することができない。
(1) 本件訂正発明1の「生産栄養培地」の意義本件訂正発明1の特許請求の範囲によると,「生産栄養培地」は,?@タキソール及びタキサンの生合成に有利なものであり,?A生産物形成のために独立して最適化され,?B成長栄養培地とは異なると規定されている。
この点につき,原告は,本件訂正発明1の特許請求の範囲の解釈及び当業者の理解に基づけば,「生産栄養培地」は,成長栄養培地の組成と比べて,成長に必須の無機物質を減少させ,成長よりもタキソールやタキサンの生産に適した組成とした栄養培地に限定されると主張する。
しかし,本件訂正発明1の特許請求の範囲の文言から,生産栄養培地が成長の点において成長栄養培地と比べて劣るとはただちにいうことはできない。また,前記1で認定した本件訂正明細書の記載に照らすならば,「生産栄養培地」は,培養細胞のタキソール及びタキサンの生合成に有利な栄養培地を指称するものであり,成長の点において成長栄養培地と比べて劣ることや,成長に必須の無機物質を減少させた培地にすることを必須の要素としていないことは明らかである。
また,原告は,二段階培養の第一段階の「成長栄養培地」でもわずかながらの生産が生じ,第二段階の「生産栄養培地」でも生存のためにいくらかの細胞の成長は持続するから,仮に,審決の認定を前提とすれば,すべての栄養培地が,成長栄養培地にも生産栄養培地にも該当することになり,本件訂正発明1が二段階培養を内容とする発明として記載されていることが無意味となると主張する。
しかし,前記のとおり,「生産栄養培地」は,培養細胞のタキソール及びタキサンの生合成に有利な栄養培地を指称するものであり,原告が主張するようなわずかながらの生産が生じている程度の培地は,生合成に有利な培地ということはできず,「生産栄養培地」には当たらないというべきである。
以上のとおり,原告の上記各主張は失当である。
(2) 刊行物1における「生産栄養培地」の記載,開示の有無前記2で認定した刊行物1の記載によると,「Cytospora abietis菌糸体」が,タキソール及びそれに関連する化合物の産生を最適化する誘導剤であるといえる。したがって,刊行物1の実施例8において,Cytospora abietis菌糸体が添加された培地,すなわち「真菌エリシターを含むGamborg's B5」は,「タキソール及びタキサンの生合成に有利な生産栄養培地」であり,かつ,「生産物形成のために独立して最適化された」ものと認められる。また,実施例4に記載された,細胞増殖を促進する物質が添加された(1)〜(3)の培地が,実施例8における成長栄養培地であると認められるので,実施例8において,Gamborg's B5は,これらの成長栄養培地と異なるものである。したがって,刊行物1の実施例8のGamborg's B5は,本件訂正発明1の「生産栄養培地」に該当するということができる。
(3) 小括そうすると,審決が,引用発明の実施例4における「培地1」及び「培地2」並びに実施例8,12における「真菌エリシターを含むGamborg's B5培地」は「生産栄養培地」に相当することを前提として,本件訂正発明1と引用発明の一致点を第2の3の(2)のとおりと認定した点に,原告主張の誤りはない。したがって,原告主張に係る取消事由1は理由がない。
5 取消事由2(容易想到性の判断の誤り)について原告は,本件訂正発明1の実施例9において,生産栄養培地でのタキソールの容積生産量が,引用発明に比べて顕著なことから,この作用効果は,タクスス属の中からタクスス・シネンシスを選択し,それを二段階培養することによってはじめて得られたものであるから,本件訂正発明1は,引用発明から容易に想到し得るとはいえないと主張する。
しかし,原告の主張は,以下の理由から採用することができない。
(1)前記1で認定した本件訂正明細書実施例8によると,エリシター処理した場合もしない場合も,いずれもタクスス・シネンシスを用いて,二段階培養を行っているものと認められるにもかかわらず,容積生産量が少ないことが認められる。原告は,実施例8は実施例9とは細胞接種量が異なると主張するが,本件訂正発明1には細胞接種量の限定はないので,実施例8もまた本件訂正発明1の実施例というに妨げず,原告の主張は採用の限りでない。
前記3で認定した乙2記載の実験結果によると,タクスス・シネンシス種に属するものであっても,株によってタキソール生産量が異なる(培地Bで4倍,培地Cで約47倍の開きがある。)ことが認められる(原告は,上記実験結果の信用性については争っておらず,前記記載のとおりの実験であると認める。)。
以上によると,本件訂正発明1のごとく,タクスス・シネンシスを選択してこれを二段階培養した場合に,実施例9の効果が得られる場合があるとはいえても,上記構成によってその効果が直ちに得られるということはできない。しかも,本件訂正発明1においては,実施例9記載の接種量等が何ら特定されているものではない。したがって,本件訂正発明1の構成を充足すれば,必然的に実施例9記載の効果が得られるということはできないから,原告の主張は採用できない。
(2) 原告提出の実験結果等について原告提出の実験結果等(甲33,36ないし39)を検討しても,下記のとおり,本件訂正発明1の構成によって引用発明と比べて顕著な作用効果が得られるとは認められない。
なお,被告は,甲36ないし38の提出は,時機に後れた攻撃方法として許されないと主張する。しかし,上記証拠の提出は,訴訟の完結を遅延させる(民訴法157条1項)とまではいえないので,時機に後れた攻撃方法として却下するのは相当でない。
ア Roach博士の宣誓供述書(甲33)について甲33の表B(成長培地にメチルジャスモネートを加えたもの)によると,パクリタキセル(タキソールのこと,以下同じ。)の生産量は,6〜266.0mg/l,表C(成長培地にメチルジャスモネートを加えていないもの)によると,21〜68mg/Lの生産量を示しており,他のタクスス属種の「candensis」,「cuspidata」,「baccata」,「globosa」,「wallichiana」,「yunanesis」に比べて,おおむね生産量が多いことが認められる。
しかし,甲33記載の実験では,タクスス・ブレヴィフォリアについて行われておらず,タクスス・シネンシスと同一の条件でいかなる生産量を示すかは不明である。また,同じタクスス・シネンシスであっても,その株の種類や成長期間,培地の組成によって,パクリタキセル(タキソール)の生産量が,表Bの場合では約44倍,表Cの場合でも約3倍の違いがあることが認められる。そうすると,タキソールの生産量は,タクスス属種植物の株の選択や,培地の組成に負うところが大きく,タクスス・シネンシス種を選択し,成長栄養培地とは異なるタキソール生産に適した生産栄養培地を用いるというだけでは,顕著な作用効果を奏するということはできない。
イ スリニバサン博士の宣誓供述書1(甲36)について甲36には,タクスス・シネンシスとタクスス・ブレヴィフォリアについて一段階培養した実験結果が記載され,この実験の目的は,典型的な成長培地であり,刊行物1の表1及び表2にその組成が記載されているGamborgs B5を用いて一段階培養することとされる。しかし,前記4で認定したとおり,審決に一致点の認定の誤りはなく,引用発明は二段階培養に関するものであるから,上記実験は刊行物1の実験の追試とはなっていない。また,タクスス・シネンシスを培養した場合もタクスス・ブレヴィフォリアを培養した場合も,接種量が0.4g/L又は20g/Lと少ない場合には培養期間を28日間としても容積生産量が検出不能とされ,その容積生産量に差を見出すことができない。したがって,この実験結果は本件訂正発明1の顕著な作用効果を裏付けるものではない。
ウ「タクスス・ブレヴィフォリア細胞の培養におけるタキソール及び関連タキサンの生産:糖の効果」(甲37)について甲37には,タクスス・ブレヴィフォリアを成長培地で培養してもタキソールが検出されなかったこと,成長培地で培養し,次いで細胞を本件訂正明細書記載の生産培地Bに移したが,生産されたタキソールの生産量は最大1.43mg/Lであったことが実験結果で示されている。しかし,この実験は同じ条件でタクスス・シネンシスを培養した場合にいかなる生産量を示すか不明であるし,同じ属種であっても株の種類や培地の条件によってタキソールの生産量が大きく異なることは,前記アのとおりであり,上記の実験から,タクスス・ブレヴィフォリア全体について同様の結果となると断ずることはできないので,本件訂正発明1が,引用発明に比べて顕著な作用効果を奏する根拠としては,上記実験結果を採用することができない。
エ「バイオリアクターにおけるタキソール生合成の反応速度論」(甲38)について43 24 甲38には,MS培地と比較して,低い濃度のNH NO とKH POから構成され,6BA,酢酸ナトリウム,フェニルアラニンを補充した生産栄養培地を用いて,25日間培養を行ったもので,タキソールの生産量は,19.4〜27.5mg/Lであり,本件訂正明細書実施例9の25日間培養で24.25mg/Lとされるのに匹敵する生産量である。しかし,同1条件下で,タクスス・ブレヴィフォリアを培養した場合にいかなる生産量を示すかは不明であるし,上記タキソールの生産量自体も本件訂正発明1の顕著な作用効果とまではいえない。したがって,甲38の実験結果をもってしても,本件訂正発明1が,引用発明に比べて顕著な作用効果を奏する根拠ということはできない。
オ スリニバサン博士の宣誓供述書2(甲39)について甲39には,タクスス・ブレヴィフォリアに対し,本件実施例9と同様の実験条件で二段階培養を行っても,タキソールの容積生産量の顕著な増加はみられなかったとの記載がある。しかし,この実験ではタクスス・シネンシスの場合との対比を行っていないことに加え,この実験結果は1種類の株について1つの条件の下で行われており,上記の実験から,タクスス・ブレヴィフォリア全体について同様の結果となると断定することはできないので,本件訂正発明1が,引用発明に比べて顕著な作用効果を奏する根拠としては,上記実験結果を採用することができない。
(3) 小括審決が,本件訂正発明1は引用発明から容易に想到し得るとした判断に誤りはない。
6 結論以上のとおり,本件訂正発明1についての審決の認定,判断に誤りがないから,本件訂正発明1と従属する関係にある本件訂正発明2ないし27についての審決の判断にも誤りがないことになる(原告は,本件訂正発明2ないし27については,固有の取消事由を主張していない。)。
原告の主張する取消事由にはいずれも理由がない。原告は,その他縷々主張するが,いずれも審決を取り消すべき誤りは認められない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 上田洋幸
裁判官 三村量一