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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16ワ8682損害賠償請求事件 判例 特許
平成14ワ3043特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成19ネ10024損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成17ワ3155特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成17ワ 785特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 反復(反復可能性) /  反復実施 /  技術的思想 /  有用性 /  物の発明 /  製造方法 /  加工方法 /  新規性 /  公然知られ(29条1項1号) /  公然実施(29条1項2号) /  29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  インターネット /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  技術的範囲 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  実質的に同一 /  警告 /  援用権(援用) /  特許出願日 /  出願経過 /  参酌 /  文言解釈 /  技術的意義 /  発明の要旨認定 /  均等 /  容易に想到(容易想到性) /  禁反言 /  特許発明 /  実施 /  加工 /  構成要件 /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  相当因果関係 /  不法行為(民法709条) /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 /  追認 / 
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事件 平成 18年 (ワ) 29554号 特許権侵害差止等請求事件
大阪市北区<以下略>
原告サ ントリー株式会社
訴訟代理人弁護 士青柳?ク子
訴訟復代理人弁護 士粟田英一静岡市駿河区<以下略>
被告株式会社アムスライフサイエンス 静岡市駿河区<以下略>
被告株 式会社エーエフシー
上記両名訴訟代理人弁護士斎藤安彦
上記両名補佐人弁理 士浅井八寿夫
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2008/03/27
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1被告らは,別紙物件目録記載の健康食品を譲渡し又は譲渡の申出をしてはならない。
2被告株式会社アムスライフサイエンスは,別紙物件目録記載の健康食品を製造してはならない。
3被告株式会社アムスライフサイエンスは,その占有する別紙物件目録記載の健康食品を廃棄せよ。
4被告らは,原告に対し,連帯して金1738万円及びこれに対する平成19年1月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5原告のその余の請求を棄却する。
6訴訟費用は被告らの負担とする。
,,, 。 7この判決は 第1項 第2項及び第4項に限り 仮に執行することができる- 2 -
事実及び理由
全容
第1請求1被告らは,別紙物件目録記載の健康食品を製造し,譲渡し又は譲渡の申出をしてはならない。
2被告らは,別紙物件目録記載の健康食品を廃棄せよ。
3主文第4項と同旨第2事案の概要本件は,セサミンに代表されるジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体(以下「オクタン誘導体」と略称することがある )の作用を増強し,か 。
つ安全性の高い化合物を,オクタン誘導体と共に含有する新規な飲食物等に関する特許権を有する原告が,被告らが別紙物件目録記載の健康食品を製造・譲渡等する行為は上記特許権を侵害すると主張して,被告らに対して,特許法100条1項及び同条2項に基づき,上記健康食品の製造・譲渡等の行為の差止め及び上記健康食品の廃棄を求めるとともに,民法709条及び特許法102条2項に基づき,不法行為による損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。
1前提となる事実(争いのない事実)(1) 当事者ア原告は,和洋酒,果汁,清涼飲料その他の飲食料品等の製造売買等を目的とする株式会社である。
イ被告株式会社アムスライフサイエンス(以下「被告アムス」という )。
は,ビタミンなどの栄養素を補給した栄養補助食品の製造販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。
被告株式会社エーエフシー(以下「被告AFC」という )は,ビタミ 。
ンなどの栄養素を補給した栄養補助食品の販売,輸出入,通信販売等を目的とする株式会社である。
(2) 原告の特許権ア原告は,次の特許(以下 「本件特許」といい,その出願を「本件特許 ,出願」という )につき特許権(以下「本件特許権」という )を有して 。 。
いる。
a)特 許 番 号第3283274号b)発明の名称新規組成物c)出願日平成3年6月15日d)登録日平成14年3月1日イ本件特許出願の願書に添付された明細書(ただし,平成12年12月4日,同13年8月9日及び同13年12月27日にそれぞれ補正された後のもの。以下,上記各補正後の明細書を「本件明細書」という )の「特 。
請求の範囲」の請求項10の記載は,次のとおりである(以下,上記請求項10記載の発明を「本件特許発明」という。なお,本判決添付の特許公報参照。。)「次の一般式(I : 化3】)【(式中,R ,R ,R ,R ,R 及びR はそれぞれ独立に水素原子又は12345 6炭素数1〜3のアルキル基であり,あるいはR とR ,及び/又はR と12 4,, , R は一緒になってメチレン基もしくはエチレン基を表し そしてn m5及びlは0又は1を表す)で表されるジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体と,α-トコフェロールとを,前記ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体1重量部に対して前記α-トコフェロールが0.1〜20重量部となる量で含有することを特徴とする飲食物 」。
ウ本件特許発明構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した各構成要件をその符号に従い「構成要件A」などという。。)A次の一般式(I : 化3】)【(式中,R ,R ,R ,R ,R 及びR はそれぞれ独立に水素原子又12345 612 4は炭素数1〜3のアルキル基であり あるいはR とR及び/又はR ,,,, とR は一緒になってメチレン基もしくはエチレン基を表し そしてn5m,及びlは0又は1を表す)で表されるジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体と,Bα-トコフェロールとを,C前記ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体1重量部に対して前記α-トコフェロールが0.1〜20重量部となる量で含有するDことを特徴とする飲食物。
(3) 被告らの行為被告アムスは,本件特許権の登録日である平成14年3月1日以後,別紙物件目録記載の健康食品(以下「被告製品」という )を製造し,これを被 。
告AFCに譲渡した。
被告AFCは,被告アムスから仕入れた被告製品を,遅くとも平成15年5月1日から第三者に対して譲渡し,また,譲渡の申出をした。
被告AFCは,被告アムスと代表者を同一にする,被告アムスの100%子会社であり,被告製品の製造及び販売に関しては,被告アムスと被告AFCとは製造会社と販売会社の関係にあるのであって,被告らは,共同して,被告製品の製造,譲渡及び譲渡の申出をしているものである。
(4) 被告製品について被告製品は,本件特許発明技術的範囲に属する。
2争点(1) 本件特許は 特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか 争 , (点1 。)ア乙第1号証に基づく無効理由(新規性の欠如)が認められるか(争点1-1 。)イ乙第1号証に基づく無効理由(進歩性の欠如)が認められるか(争点1-2 。)ウ乙第2号証に基づく無効理由が認められるか(争点1-3 。)エ乙第7号証に基づく無効理由が認められるか(争点1-4 。)オ乙第15号証と乙第7号証の1に基づく無効理由が認められるか(争点1-5 。)カ乙第20号証に基づく無効理由が認められるか(争点1-6 。)キ乙第21号証に基づく無効理由が認められるか(争点1-7 。)ク乙第26号証に基づく無効理由が認められるか(争点1-8 。)ケ乙第30号証に基づく無効理由が認められるか(争点1-9 。)(2) 被告らの行為の差止請求及び被告製品の廃棄請求が認められるか(争点2 。)(3) 被告らの行為により原告が受けた損害の額(争点3)第3争点に関する当事者の主張1争点1(本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について〔被告らの主張〕以下2から10までにおいて主張するとおり,本件特許発明新規性(特許法29条1項各号参照)又は進歩性(同条2項参照)を欠くことにより特許を受けることができない発明であるから,特許法123条1項2号に該当し,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものである。したがって,同法104条の3第1項によれば,原告は,被告らに対し本件特許権を行使することができない。
〔原告の主張〕以下2から10までにおいて反論するとおり,被告らが主張する無効理由はいずれも成り立たないから,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものとは認められず,原告は,被告らに対し本件特許権を行使することを妨げられない。
( ()) 2争点1-1 乙第1号証に基づく無効理由 新規性の欠如 が認められるかについて〔被告らの主張〕(1) 基本的主張ア本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙第1号証の公表特許公報(昭58-501996 (以下「乙1文献」といい,同 )文献に記載された発明を「乙1発明」という )の「請求の範囲」の請求 。
項13には,ごま種子油50重量部とビタミンE2.5重量部を含有する医薬品組成物が記載されている。
ところで,ごま油には0.3〜1.4%のオクタン誘導体が含まれているから,ごま種子油50重量部には,オクタン誘導体が0.15〜0.7重量部含まれていることになる。
そうすると,?@上記医薬品組成物に含有されるビタミンEがα-トコフェロールを100%含むものとして計算すると,上記医薬品組成物には,オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェロールが3.6〜16.7重量部となる量で含有されていることになるし,?A上記医薬品組成物に含有されるビタミンEが(乙1文献の「明細書」に記載されている「本発明の特に適当な具体例」において用いられている)α-トコフェロールを10〜14%含むトコフェロール類の混合物であるとして計算すると,上記医薬品組成物には,オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェロールが0.35〜2.33重量部となる量で含有されていることになる。
イまた,乙1文献の「明細書」に「本発明の特に適当な具体例」として記載されている表Aのコラム?Tから?Wまでに記載された各医薬品組成物には,ごま種子油に0.3〜1.4%のオクタン誘導体が含まれており,ビタミンEにα-トコフェロールが10〜14%含まれていることから計算すると,オクタン誘導体1重量部に対して,α-トコフェロールがそれぞれ?@0.23〜5.83重量部,?A0.06〜0.40重量部,?B1.63〜10.89重量部及び?C0.35〜2.33重量部となる量で含有されていることになる。
ウ乙1文献の記載は,直接的には,外部適用に向けられる医薬品調整物及び組成物に関するものである。
しかしながら,乙1発明の各医薬品組成物の主成分であるビタミンAやビタミンEは日本薬局方(乙8)及び食品添加物公定書(乙9)のいずれにも収載されていて,ビタミンAやビタミンEを含む乙1発明は,医薬品にも飲食物にも用いられるものであり,かつ,医薬品として用いるか飲食物として用いるかのいかんにかかわらず,同じようにして製造することができ,適用される技術にも区別はない。
また,乙1発明は,乙1文献の「明細書」において,内用薬としても使用可能である旨記載されていて,経口的にも投与できるのであって,このような投与形態では,医薬品か飲食物かの区別は判然としない。
したがって,乙1文献には,飲食物に関する発明も実質的に記載されているのであるから,前記ア又はイを踏まえると,本件特許発明は乙1文献に記載された発明であり,特許法29条1項3号(刊行物公知)に該当する。
(2) 原告が主張する相違点A1についてア本件特許発明における「飲食物」の意義について本件特許発明における「飲食物」の意義は,特許法70条に従って解釈されるべきであるところ,本件明細書には「飲食物」の定義はない。
原告は,本件特許発明が「飲食物」であるのに対して,乙1発明は「医薬品組成物」であるという点で相違する(以下「相違点A1」という )。
, 。, として 飲食物と医薬品組成物との字句の相違を主張する しかしながら下記のとおり,本件明細書には,飲食物と医薬品組成物とが区別して記載されておらず,これらは実質的に同一である。
a)本件明細書の「特許請求の範囲」は,請求項1から5までが「医薬組成物 ,請求項6から9までが「食品添加組成物 ,請求項10から1 」 」5までが「飲食物」と末尾に記載されているものの,末尾以外はほとんど同文であるから,飲食物と医薬品組成物とは実質的に同一と解さざるを得ない。
b)本件明細書の「発明の詳細な説明」においても 「…を含有する食品 ,又は医薬組成物に関する 【0001「…含有する新規な医薬,食品 」】,添加物,及び飲食物を提供 【0005「…を含有することを特徴と 」】,する医薬組成物,食品添加組成物及び飲食物を提供 【0009】など 」と並列に記載されており,飲食物と医薬品組成物とが具体的にどのように相違するのかが不明である。
c)さらに,本件明細書の「発明の詳細な説明」において 「この発明を ,さらに具体的に説明する 【0032】として【0033】から【00 」44】までに記載している実施例1から3までは,すべてラットによる動物実験であり,これらは医薬・飲食物・食品添加物に関する実施例を兼用しているものと考えざるを得ない。
イ乙1文献の「明細書」の記載について原告は,乙1文献の「明細書」の「もし間違って内用薬として摂ったとしても危険性のない多分最も強力なものと考えられている 」という記載 。
をとらえて,誤用だと強調する。
しかし,この記載部分は,乙1発明の外用医薬品が内用しても危険がないだけでなく 「多分最も強力なもの」すなわち内用によっても有効成分 ,, 。 が強力に吸収されて その効果が期待できることを示唆しているのである(3) 原告が主張する相違点B1についてア原告は,本件特許発明が,飲食物に係る発明の内容として,オクタン誘導体とα-トコフェロールとを,オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェロールが0.1〜20重量部となる量で含有するものであるのに対して,乙1文献はそのような内容を記載していないという点で,両発明は相違する(以下「相違点B1」という )と主張する。 。
しかし,乙1文献の「請求の範囲」の請求項13及び「明細書」の表Aにα-トコフェロール(ビタミンE)とごま種子油が記載されていることから,当業者ならば 「オクタン誘導体1重量部に対しα-トコフェロー ,ルが0.1〜20重量部となる量で含有すること」を直ちに理解することは,前記(1)ア及びイのとおりである。
イ原告は,乙1発明中にごま油の不純物(不けん化物)として微量のセサミン及びセサモリンが存在することは,本件特許出願時の当業者が技術常識として理解するところであるとしながら,乙1文献にはセサミン及びセサモリンの飲食物としての有用な目的・効果が記載されていないから,飲食物に係る発明の内容としてオクタン誘導体が記載されているということはできないと主張する。
しかしながら,化学物質特許の新規性判断においては,進歩性判断とは異なり,作用効果を考慮しないことが大原則であって,化学物質の構成が, , 公知であれば 目的・効果とは無関係に新規性は否定されるのであるから原告の主張は失当である。
この点について,原告は,発明の新規性判断において,刊行物公知(特許法29条1項3号 として発明が記載されているかどうかについて構 ) ,「成」が記載されていても「発明」が記載されているということはできないかのように主張している。しかし,そのようにいうことができるのは,そ,(),, の構成だけでは どのような目的・効果 用途を含む を有するか またどのようにして製造することができるかが当業者において容易に理解できない場合の例外なのであって,一般に,発明の構成が記載されているときは,目的・効果等の記載がなくても,発明が記載されているとみることができるのが原則である。
ウ原告は,乙1文献にはセサミン及びセサモリンとα-トコフェロールとが共存することについての飲食物としての有用な目的・効果が記載されていないから,飲食物に係る発明の内容としてオクタン誘導体とα-トコフェロールとの組合せが記載されているということはできないと主張する。
しかしながら,化学物質特許の新規性判断においては,構成が公知であれば,目的・効果とは無関係に新規性が否定されることは前記イのとおりであるから,原告の主張は失当である。
原告が「オクタン誘導体1重量部に対しα-トコフェロールを0.1〜20重量部となる量で含有する飲食物」という「構成」にオクタン誘導体のコレステロール降下作用を増強する効果を見出したとしても,本件特許発明の構成が刊行物に記載されている場合は,当該刊行物に記載されていない単なる効果を発見(追認)したにすぎず,これによって新たな発明が成立するわけではない。
エ原告は,ごま油中のオクタン誘導体の含有量について,乙第13号証の2の「ゴマの科学」と題する書籍(初版1989年(平成元年)10月10日株式会社朝倉書店発行。以下「本件書籍」という。甲37及び乙21と同一の書籍である )の表3.23に記載された数値(0.3〜1.4 。
%)は技術常識ではなく,乙1文献の記載内容の認定に当たって参酌することはできないと主張する。
a)しかしながら,本件書籍の表3.23記載のオクタン誘導体の含有量(0.3〜1.4%)は,原告が提出した甲第39号証(0.471〜1.719% ,甲第40号証(0.471〜1.719%)及び甲第 )41号証(0.09〜1.09%)とも著しく相違しない。
さらに,乙第19号証の「ゴマ油フライ時の抗酸化性物質の変化について」と題する論文(1987年(昭和62年)発行の日本家政学会誌38巻9号収載)の図2によれば,本件特許出願前に訴外竹本油脂株式会社(以下「竹本油脂」という )が製品化していた市販の焙煎ごま油 。
, , は セサミン9mg/ml及びセサモリン4mg/mlを含有しておりごま油の比重0.9を考慮すると,オクタン誘導体を1.4%含有するものである。
したがって,ごま油中のオクタン誘導体の含有量が0.3〜1.4%であることは,本件特許出願時における技術常識であったと言って差し支えない。
b)原告は,刊行物公知の主張においては,他の公知文献との組合せ主張をすることはできないと主張する。しかし,公知の刊行物を本件特許出願時の技術水準で解釈するのは当然であり,本件書籍の表3.23を本件特許出願時の技術水準として用いることは至極当然である。
c)また,そもそも,原告は,本件特許出願の審査過程で提出した乙第3号証の1の平成12年12月4日付け意見書(以下「本件意見書」という )において「原油に対するセサミンとセサモリンの合計量(すなわ 。
ち,リグナン類の量)は,ゴマの品種により異るものの,およそ0.3%(系統番号792)〜1.4%(系統番号638)であると考えられます 」と主張した(なお,ここにいうリグナン類は,被告らの主張で 。
はオクタン誘導体と表記している。原告は,このオクタン誘導体の 。)含有量に基づく計算値を本件意見書にて提出して,拒絶理由通知を回避したのであるから,このようなオクタン誘導体の含有量が技術常識ではないとする原告の主張は,包袋禁反言に相当する。
この点,原告は,本件意見書における原告意見とは,特許請求の範囲に記載された文言の解釈に関して限定的な意見を述べたものではないと反論する。しかし,原告意見は,乙第10号証及び乙第11号証の飲食物には,特許請求の範囲(請求項10)記載のオクタン誘導体とα-トコフェロールの混合比が記載されていないことを述べたものであるから,まさに「特許請求の範囲に記載された文言の解釈に関して限定的な意見を述べたもの」に相当する。
〔原告の主張〕(1) 被告らの基本的主張についての反論ア乙1発明の内容乙1文献には,皮膚疾患の治療を目的とした,皮膚の罹患区域への局所適用に適した適度の流動性又は固体性(コンシステンシー)をもった外用医薬品であって,ビタミンA,ビタミンB,アーモンド油,ごま種子油及びオリーブ油のすべての成分を,同文献の「請求の範囲」の請求項13又は「明細書」の表Aのコラム?Tから?Wまでに記載の重量部の割合でそれぞれ配合した油状又はクリーム若しくは軟膏状の医薬品組成物の発明が記載されている。
イ本件特許発明と乙1発明の対比本件特許発明が「飲食物」すなわち「人が食物として摂取(飲食)する物」に係る発明であるのに対して,乙1発明は皮膚疾患の治療に用いられる皮膚の罹患区域への局所適用に適したコンシステンシーを有する油状又はクリーム若しくは軟膏状の「医薬品組成物」であるという点で,両発明は基本的に相違する(相違点A1 。)また,本件特許発明が,飲食物に係る発明の内容として,オクタン誘導体とα-トコフェロールとを,オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェロールが0.1〜20重量部となる量で含有するものであるのに対して,乙1文献はそのような内容を記載していないという点で,両発明は相違する(相違点B1 。)ウ以上のとおり,本件特許発明と乙1発明とは,相違点A1及び相違点B1において相違するから,発明としての同一性がなく,したがって,本件特許発明は乙1文献に記載された発明(刊行物公知)ではない。
(2) 相違点A1についての説明ア本件特許発明における「飲食物」の意義等についてa)本件特許発明が 飲食物 に係る発明であることは 本件明細書の 特 「」,「許請求の範囲」の請求項10に明記されている。
ところで,明細書の用語は,その有する普通の意味で使用することとされ,特定の意味で使用しようとする場合においては,その意味を定義して使用しなければならないとされている(本件特許出願当時の特許法施行規則24条様式第29の備考8参照 。本件明細書においては 「飲 ),食物」の意味を定義して使用していないから,本件明細書に記載された「飲食物」との用語は,すべて普通の意味で解釈される。
「広辞苑(第5版 」によれば 「食品」とは「人が日常的に食物と ),。。」,「」 して摂取する物の総称 飲食物 食料品 と記載されており飲食物と「食品」は同義とされている。したがって 「飲食物」との用語の普 ,通の意味は「人が日常的に食物として摂取する物」である。
以上のとおり,本件明細書における「飲食物」との用語は 「人が食 ,物として摂取(飲食)する物」という意味で解釈されるものであり,本件特許発明は,このような意味における「飲食物」であることを発明の基本的な技術事項とするものである。
b)一方,本件明細書においては 「医薬」の意味を定義して使用してい ,ないから,本件明細書に記載された「医薬」との用語は,すべて普通の意味で解釈される。
「広辞苑(第5版 」によれば 「医薬」とは「治療・予防に用いる ),薬品,医薬品」と記載されている。また,現行特許法69条3項においても 「医薬(人の病気の診断,治療,処置又は予防のため使用する物 ,をいう 」と規定されており,かかる記載は 「医薬」を「飲食物」と 。 ,は別異の発明に係るものとして規定していた昭和50年改正前の特許法32条2号の記載と同一である。
, 「」, 以上のとおり 本件明細書及び乙1文献における 医薬 との用語は「人の治療・予防に用いる薬品」という意味で解釈されるものである。
c)本件特許出願は,いわゆる改善多項制の下で,医薬に係る発明,食品添加物に係る発明及び飲食物に係る発明という別異の用途に係る別異の発明について 「特許請求の範囲」において「医薬「食品添加物」及 , 」,び「飲食物」と明確に用語を書き分けた上で行われ,登録に至っているものである。
被告らは 「飲食物」及び「医薬」という用語自体の意味内容が不明 ,であるという誤った前提に立って,本件特許発明の「飲食物」という用語は「医薬」と実質的に同一と解釈すべきであるという解釈論を展開しており,失当である。
イ乙1文献には「飲食物」に係る発明は記載されていないことa)被告らは,相違点A1について,乙1発明の成分中のビタミンAやビタミンEは,日本薬局方(乙8)及び食品添加物公定書(乙9)のいずれにも収載されていて,ビタミンAやビタミンEを含む乙1発明は,医薬品にも飲食物にも用いられるものであり,かつ,医薬品として用いるか飲食物として用いるかのいかんにかかわらず,同じようにして製造することができ,適用される技術にも区別はないから,乙1文献には「飲食物」に関する発明も実質的に記載されていると主張する。
しかしながら,ビタミンAやビタミンEが日本薬局方及び食品添加物公定書のいずれにも収載されていたとしても,乙1発明が皮膚疾患治療を目的とする「局所適用に適したコンシステンシーを有することを特徴とする医薬品組成物」であること自体には何ら変わりはない。したがって,ビタミンAやビタミンEが食品添加物でもあり得ることを理由として,医薬品組成物に係る乙1発明を飲食物に係る発明であるとする被告らの主張は成り立たない。
b)もとより,乙1文献には,乙1発明が「医薬にも飲食物にも用いられるものである」という記載も示唆も存在しない。
この点,被告らは,乙1文献の「明細書」の「本発明による特に適当な調製物は表Aのコラム?Wに示された組成物であって,この組成物は,現在のところ,もし間違って内用薬として摂ったとしても危険性のない多分最も強力なものと考えられている 」という記載をとらえて,内用 。
薬としても使用可能である旨記載されていると主張する。
しかし,上記記載は,その文言どおり,皮膚の罹患区域へ塗布して局所適用する乙1発明の医薬品組成物を,もし「間違って」摂ってしまったとしても,その成分内容にかんがみて危険性はない旨を述べているだけであり,内用薬としても使用可能であるなどという趣旨の記載ではない。
ウ以上のとおり,皮膚疾患用外用治療薬のみを記載するだけで飲食物について一切記載がない乙1文献に記載された乙1発明について,相違点A1は相違点ではないとする被告らの主張は成り立たない。
(3) 相違点B1についての説明ア特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」とは 「刊行物に ,記載されている事項及び記載されているに等しい事項から把握される発明」であり 「記載されているに等しい事項」とは,記載されている事項 ,から出願時における技術常識参酌することにより導き出すことができるものである。
しかるに,以下に詳述するとおり,技術常識参酌しても,当業者は,乙1文献の記載からは,飲食物に係る発明の内容として「オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェロールが0.1〜20重量部となる量で含有すること」が記載されていると理解することはできない。
, , イまず 乙1発明にはごま種子油が成分として配合されているところから乙1発明中にごま油の不純物(不けん化物)として微量のセサミン及びセサモリン(いずれもオクタン誘導体の一種である )が存在することは, 。
本件特許出願時の当業者が技術常識として理解するところである。
しかし,本件特許出願時の技術常識としては,ごま油の「不けん化物」たるセサミン及びセサモリンは,ごま油の製造工程において除去されるべき不純物として認識されていたものである。また,本件特許出願時の技術常識としては,セサミン及びセサモリンのヒトを含む哺乳動物に対する生理活性作用は全く知られていなかった。
したがって,本件特許出願時の技術常識参酌しても,乙1発明中に存在するセサミン及びセサモリンが持つ,飲食物としての有用な目的も,飲, , 食物としての有用な効果も 当業者には全く認識することはできないから乙1文献に,飲食物に係る発明の内容としてオクタン誘導体が記載されているということはできない。
ウまた,乙1発明に成分として配合されたビタミンE中にα-トコフェロールが含有されている旨の記載が乙1文献にあり,同じく乙1発明に成分として配合されたごま種子油中にセサミン及びセサモリンが存在することが当業者に技術常識として認識されたとしても,乙1文献には,セサミン及びセサモリンとα-トコフェロールとが共存することについての,飲食物としての有用な目的も,飲食物としての有用な効果も,一切記載されていない。
本件特許出願時の技術常識としては,セサミン及びセサモリンのヒトを含む哺乳動物に対する生理活性作用は全く知られておらず,α-トコフェロールがセサミン及びセサモリンの人体に対する有用な作用を増強するとの作用も全く知られていなかった。
したがって,本件特許出願時の技術常識参酌しても,乙1発明中に存在するセサミン及びセサモリンとα-トコフェロールの共存が持つ,飲食物としての有用な目的も,飲食物としての有用な効果も,当業者には直ちに理解することはできないから,乙1文献に,飲食物に係る発明の内容としてオクタン誘導体とα-トコフェロールとの組合せが記載されているということはできない。
エ乙1文献にはオクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェロールを0.1〜20重量部となる量で含有する飲食物が記載されているとする,被告らが主張するオクタン誘導体とα-トコフェロールとの含有比率の算出方法について反論すれば,以下のとおりである。
,「」,. a)被告らは 乙1文献中の ごま種子油 との記載のみから これに03〜1.4%のオクタン誘導体が含まれていることになるとの前提に立って,乙1発明中のオクタン誘導体とα-トコフェロールとの含有比率を算出している。しかし,この前提自体が誤りである。
すなわち,生物たるごまが自らの組織細胞中に生成させるセサミン及びセサモリンの含有量は,品種によっても変動し,同じ品種においてすら栽培地や栽培時の気候等によって変動することが本件特許出願時の技術常識として知られていた。また,ごま油の製造方法によっても,ごま油の種類自体によっても,セサミン及びセサモリンの含有量が変動することも,本件特許出願時の技術常識であった。したがって,本件特許出願時の技術常識としては,ごま油に含有されているセサミン及びセサモリンの量が各種の要因で変動するものであることが知られており,ごま油中のオクタン誘導体の含有量は知られていなかった。
以上のとおり,被告らが主張するごま油中のオクタン誘導体の含有量は技術常識ではないのであるから,乙1文献の記載の認定に当たって参酌することはできない。
b)本件書籍は,平成元年発行の文献である。本件書籍は,その序文に記載されているとおり,シンポジウムの発表結果を成書として刊行したという学術刊行物であり,平成元年当時の「最新の知見」を提供することを目的とした文献であって,その記載内容のすべてが技術常識であると認定することはできない 本件書籍の表3 23は 甲第40号証の 国 。.,「産ゴマ品種間のセサモリンおよびリグナン抗酸化性物質の比較」と題する論文(1988年(昭和63年)発行の日本食品工業学会誌35巻7号収載)の表1を転載したものであり,日本の栽培品種である14種を選んで,同一場所で,同一時期に栽培したときに得られた特定のごま種子を,単に搾っただけの「原油」についての特定の分析値を報告しているものであるから,その報告の性質からして,技術常識として当該数値を記載しているものではない。
c)被告らは,本件書籍の表3.23記載の数値は本件意見書にも記載されている数値であると主張する。しかし,本件意見書は,本件特許出願の後である平成12年に至って作成されたものであり,しかも平成14年の本件特許権登録査定後に初めて公衆に閲覧可能になったものであるから,その記載内容を本件特許出願時の技術常識として参酌することはできない。
d)以上のように,ごま油中に0.3〜1.4%のオクタン誘導体が含まれているとの被告らの主張は,それが技術常識であることが立証されているものではなく,単に本件書籍の表3.23記載の数値を援用しているにすぎないものである。刊行物公知の主張においては,他の公知文献との組合せ主張をすることはできない。
e)被告らは,ごま油中のオクタン誘導体の含有量が0.3〜1.4%であることが技術常識であることは,甲第39号証,甲第40号証,甲第41号証及び乙第19号証によっても立証されていると主張する。しかし,被告らの主張は,下記のとおり,いずれも失当である。
?@甲第39号証,甲第40号証及び甲第41号証は,いずれも,本件書籍の表3.23と同じく学術的な実験報告であるから,公知の技術水準であるということができるものの,当業者に一般的に知られている「技術常識」を立証するものではない。
しかも,甲第39号証,甲第40号証及び甲第41号証が報告している数値は,特定のごまの品種についての,しかも「原油」状態での特定の分析値と理解されるものであり,すべてのごま油におけるオクタン誘導体の含有量についての技術常識を立証するものではない。
さらに,甲第39号証,甲第40号証及び甲第41号証に記載されている特定の分析値は,報告する実験ごとに異なる(変動する)ものであり,かつ被告らが主張する0.3〜1.4%という数値とも異なるものである。
以上のいずれの点からしても,甲第39号証,甲第40号証及び甲, , 第41号証の報告内容は ごま油におけるオクタン誘導体の含有量は原料とされたごまの品種により異なること,同一品種であっても栽培地等によっても影響を受けること,その結果として非常に多様な値をとることという技術常識を示しこそすれ,被告らが主張する「いかなるごま油であっても,0.3〜1.4%のオクタン誘導体が含まれている」などという技術常識を立証するものではない。
?Aまた,乙第19号証は,市販されている一つの「焙煎ごま油」製品についての特定の分析値を記載するものにすぎず,何らの技術常識も立証するものではない。
(4)新規性判断の原則についての被告らの主張に対する反論ア発明とは,目的・構成・効果からなる実施可能性のある技術的思想であり 技術的思想とは 一定の有用な目的を達成するための具体的手段有 ,「 」(用性)と解されている。したがって,乙1文献に,本件特許発明の構成が飲食物としての有用な技術的事項として記載されており,かつ本件特許発明に係る飲食物を反復して製造することができるように記載されているのでなければ,飲食物としての有用性を有する本件特許発明が乙1文献に記載されているということはできない。
しかるに,乙1文献には,オクタン誘導体そのものも,オクタン誘導体とα-トコフェロールとの組合せも,飲食物としての有用な技術的事項としては一切記載されていない。
また,本件特許出願時の技術常識をもってしても,乙1文献の「ごま種子油」との記載に接した当業者が,飲食物としての有用な技術的事項として,オクタン誘導体を認識することも,オクタン誘導体とα-トコフェロールとの組合せを認識することもできないのであるから,乙1文献には,飲食物としての有用な技術的事項として,オクタン誘導体及びオクタン誘導体とα-トコフェロールとの組合せが記載されているに等しいということもできない。
イまた,本件特許発明は,飲食物としての有用な技術的事項としてオクタン誘導体とα-トコフェロールの含有比率を特定したことによって,オクタン誘導体の含有量が変動するごま油を使用した場合でも,本件特許発明に係る飲食物を確実に反復実施(製造)することができるのである。
しかしながら,乙1文献には,飲食物としての有用な技術的事項としてオクタン誘導体とα-トコフェロールの含有比率が特定されていない。このため,当業者が乙1文献の開示に従ってごま種子油等を混合しても,その結果としての混合物におけるオクタン誘導体とα-トコフェロールの含有比率は,使用するごま油のオクタン誘導体の含有量の変動に応じて変動することを回避することができない。
したがって,乙1文献の記載からは,本件特許発明に係る飲食物を反復実施(製造)することができない。
ウ結局,前記ア又はイのいずれの点からしても,本件特許発明が乙1文献に記載されているということはできない。
エ被告らは,あたかも原告が「本件特許発明の要旨」として作用効果を加えた主張を行っているかのように主張する。しかし,本件特許発明は構成それ自体が新規なものであり,原告は,かかる飲食物としての本件発明の新規な構成を本件特許発明の要旨として主張しているのである。
むしろ 「本件特許発明の要旨」が請求項に記載された構成によって認 ,定されるのは,明細書の「発明の詳細な説明」において本件特許発明の目的・効果・構成が実施可能性をもって明確に開示されていることを前提とするからであり,引用例に本件特許発明が記載されているかどうかの判断に当たっては,引用例に,かかる目的・効果・構成からなる有用な実施可能性ある技術的思想としての本件特許発明が記載されているといえるかどうかという判断がなされるのであるから,新規性判断においては,目的・効果・構成からなる有用な実施可能性ある本件特許発明技術的思想が考慮されないかのような被告らの主張は明らかに誤りである。
(5) ごま油中のオクタン誘導体の含有量が0.3〜1.4%であることが技術常識ではないとする原告の主張が包袋禁反言の原則に反するとする被告らの主張に対する反論ア包袋禁反言の原則とは,イ号物件が特許発明技術的範囲に属するか否かの特許請求の範囲文言解釈に当たり,出願経過において権利者がイ号物件が属さないように限定的な解釈を主張して登録に至ったにもかかわらず,侵害訴訟においては拡張解釈することによってイ号物件が特許発明技術的範囲に属すると主張することを許さないという原則である。
イ本訴において被告らが取り上げている本件意見書における原告の意見とは,本件明細書の特許請求の範囲(請求項10)の文言解釈について限定的な意見を述べたものではないから,そもそも包袋禁反言の原則が適用されるべき前提がない。
ウしかも,被告らは,乙1文献の記載事項に関してごま油中のオクタン誘導体の含有量が0.3〜1.4%であると主張しているのであるから,これは特許請求の範囲文言解釈の問題ではなく,包袋禁反言の原則が適用される余地はない。
エなお,原告は,出願経過において,すべてのごま油中のオクタン誘導体の含有量が0.3〜1.4%であることが技術常識であるとの主張は行っていない。
a)ごま油は,原料となるごまの品種等によっても,ごま油の製造方法によっても,またごま油の種類自体によってもオクタン誘導体の含有量が変動することは,前記(3)エa)記載のとおりである。
b)乙1文献中の「ごま種子油」との記載について,当業者は,医薬品組成物の一部として配合されるという目的に適した程度の精製の工程を経た「精製されたごま油」を使用するものと認識する。
c)これに対して,原告は,本件意見書において,ごま種子から搾っただけの「原油」に関して本件書籍の表3.23の記載を引用したにとどま,「」 , るのであって精製されたごま油 についての意見は述べていないしましてすべての種類のごま油一般に適用することができる技術常識を述べたりはしていない。
( ()) 3争点1-2 乙第1号証に基づく無効理由 進歩性の欠如 が認められるかについて〔被告らの主張〕仮に,飲食物と医薬品とが相違するものだとしても,本件特許発明は,乙1文献の記載に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項により,特許を受けることができない。
〔原告の主張〕(1) 被告らの主張が成り立たないことについて被告らは,本件特許発明は,乙1文献の記載に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項により,特許を受けることができないと主張する。
しかしながら,被告らは,乙1発明に基づいて容易に発明をすることができるとする論理付けについて,一切主張していないのであるから,被告らの主張が成り立つ余地はない。
(2) 本件特許発明進歩性を有することを積極的に明らかにすれば,以下のとおりである。
ア本件特許発明と乙1発明の属する技術分野等の相違a)「人が食物として摂取(飲食)する物」である飲食物に係る本件特許発明と 「皮膚科学的状態,例えば湿疹,乾癬,単純疱疹(コールド・ ,ソアズ)などの症状に軽減を与えるため特に,しかし独占的にではなく」, 外部適用に向けられる医薬品調整物および組成物 に係る乙1発明とは技術分野自体を異にするものであって,乙1文献には,上記の意味での飲食物については,開示も示唆も存在しない。
b)人体に有用なオクタン誘導体と,オクタン誘導体の作用を増強させるような化合物を共に含有する飲食物を提供することを課題とする本件特許発明と,皮膚疾患の治療のための局所適用医薬の提供を課題とする乙1発明とは,その課題自体を全く異にしており,乙1文献には,本件特許発明の課題については,開示も示唆も存在しない。
c)コレステロール降下作用に代表されるオクタン誘導体の種々の作用をα-トコフェロールが増強するという本件特許発明と,局所適用剤の塗布により皮膚科学的状態を軽減させるという乙1発明とは,その作用・機能を全く異にしており,乙1文献には,本件特許発明の作用・機能については,開示も示唆も存在しない。
d)コレステロール降下作用に代表される人体に有用な作用を有するオクタン誘導体と,かかるオクタン誘導体の作用を増強させるα-トコフェロールとを組み合わせ,オクタン誘導体1重量部に対しα-トコフェロールが0.1〜20重量部となる量で含有せしめた飲食物とすることを技術思想とする本件特許発明と,皮膚疾患の治療のためにビタミンA,ビタミンB,アーモンド油,ごま種子油及びオリーブ油の5成分の配合を必須とする医薬品組成物たる乙1発明とは,技術思想自体を全く異にするものであり,乙1文献には,本件特許発明の技術思想については,開示も示唆も存在しない。
イ以上のとおり,本件特許発明と乙1発明とは技術分野,課題,作用・機能,技術思想において,すべて異なっている。本件特許発明と乙1発明とは,相違点A1及び相違点B1においてその構成自体を異にするところ,乙1文献には,かかる相違点について本件特許発明の構成とする手掛かりは一切開示も示唆もされていない。したがって,乙1文献の記載から,本件特許発明を当業者が容易に想到することができるものではない。
ウしかも,コレステロール降下作用に代表されるオクタン誘導体の作用をα-トコフェロールが増強させる作用を持つことは全く未知だったのであり,セサミンに代表されるオクタン誘導体とα-トコフェロールによる格別の相乗効果については,当業者の予測を超えるものである。予測を超えた顕著な作用効果もまた,本件特許発明進歩性を裏付けるものである。
4争点1-3(乙第2号証に基づく無効理由が認められるか)について〔被告らの主張〕(1) 基本的主張ア本件特許出願前に外国において頒布された刊行物である乙第2号証の「マウスにおけるIgE抗体の生成に及ぼすビタミンEの効果」と題する論文(1984年(昭和59年)発行のジャーナル・オブ・ファーマコカ。「」 イネティクス・アンド・ファーマコダイミクス7巻収載 以下 乙2文献といい,同文献に記載された発明を「乙2発明」という )には,実験に 。
おいて,マウス1匹当たり0.1,1.0及び10mgのα-トコフェロールの酢酸塩がごま油に混合されて毎日経口的に投与されたこと,並びにマウス1匹当たり0.113,1.13及び11.3mgのα-トコフェロールのニコチン酸塩がごま油に混合されて毎日経口的に投与されたことがそれぞれ記載されている。
イごま油の投与量は,乙2文献には明記されていないものの,マウスに対する経口投与量は,体重10g当たり0.1〜0.2mlまで投与することができるというのが本件特許出願時における技術常識であり,マウスの成熟期の体重は30g程度である(乙24 。したがって,マウスに対す )る経口投与量は,最大0.3〜0.6mlであるところ,乙2文献の著者は,マウス1匹当たり0.2mlを投与した(乙5 。)ごま油の比重は0.9であること,ごま油には0.3〜1.4%のオクタン誘導体が含まれていることから計算すると,前記アの記載から,オクタン誘導体1重量部に対して,α-トコフェロールの酢酸塩がそれぞれ?@0.04〜0.17重量部,?A0.4〜1.7重量部及び?B4〜17重量部となる量で,また,オクタン誘導体1重量部に対して,α-トコフェロールのニコチン酸塩がそれぞれ?C0.04〜0.19重量部,?D0.4〜1.9重量部及び?E4〜19重量部となる量で含有されている各飲食物が投与されたことになる。
ウα-トコフェロールの酢酸塩及びα-トコフェロールのニコチン酸塩中の酢酸及びニコチン酸の酸成分は,オクタン誘導体に比べればごく少ないから,乙2文献には,オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェロールがおおよそ上記?@から?Eまでの各重量部となる量で含有する各飲食物(乙2発明)が記載されていることになり,本件特許発明は,特許法29条1項3号(刊行物公知)に該当する。
(2) 原告が主張する相違点A2についてア原告は,本件特許発明が飲食物であるのに対して,乙2発明は経口投与用の実験動物用飼料である点で相違する(以下「相違点A2」という )。
と主張する。
しかしながら,本件特許発明における「飲食物」の意義は,特許法70条に従って解釈されなければならず,原告が主張するように「人が食物として摂取(飲食)する物」に限定解釈することはできない。
イ特に,本件明細書の「発明の詳細な説明」において,本件特許発明を具体的に説明するとして原告が掲げている実施例1から3までは,いずれも, 。 ラット用の動物実験食であって 乙2発明の実験動物用飼料と同等であるこれらの実施例によれば ラット用の動物実験食は 本件特許発明の 飲 ,,「食物」の最良の形態を示すものであるから,本件特許発明の「飲食物」にヒト用のものが含まれるとしても,ラット用の動物実験食が除外されると解釈すべき余地はない。
すなわち,本件明細書には「飲食物」の意義についての明確な定義は見当たらないものの,実施例にラット用の飼料を記載したことにより 「飲,食物」にラット用の飼料が含まれることを定義付けたのである。
ウ原告は,本件明細書に「飲食物」の最良の形態としてラット用の動物実験食を(実施例として)開示しているから,乙2文献には人が食物として摂取(飲食)するところの「飲食物」は記載されていないとの原告の主張は,包袋禁反言に該当する。
エまた,栄養学や医薬品の研究においては,最終的にはヒトが研究対象となるけれども,ヒトの飲食物や医薬品の研究のためには,マウスやラットを使った動物実験が必要になる。栄養学の動物実験における飼料は,ヒトの飲食物に当たるから,栄養学においては,飼料と飲食物を区別する実益はなく,両者は均等物と解される。
(3) 原告が主張する相違点B2についてア原告は,本件特許発明が,飲食物に係る発明の内容として,オクタン誘導体とα-トコフェロールとを,オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェロールが0.1〜20重量部となる量で含有するものであるのに対して,乙2文献はそのような内容を記載していないという点で,両発明は相違する(以下「相違点B2」という )と主張する。 。
イ原告は,相違点B2に関して,実験動物用飼料中にセサミン及びセサモリンが存在することについての有用な目的・効果や,セサミン及びセサモリンとα-トコフェロールが共存することについての有用な目的・効果が乙2文献に記載されていないことを指摘しているようである。
, , しかし 争点1-1についての被告らの主張(3)イ及びウ記載のとおり化学物質特許の新規性判断においては,構成として「オクタン誘導体1重. 」 量部に対しα-トコフェロールが0 1〜20重量部となる量で含有する飲食物が公知であれば,作用効果に関係なく新規性が否定されるのであるから,原告の指摘は的外れである。
なお,被告らは,以下の争点1-4から同1-9までについても,新規性判断の基準について,同様に主張する。
ウまた,原告は,ごま油には0.3〜1.4%のオクタン誘導体が含まれているとの前提が成り立たない旨主張している。しかし,これが失当であ, 。 ることは 争点1-1についての被告らの主張(3)エ記載のとおりであるなお,被告らは,以下の争点1-4から同1-9までについても,ごま油中のオクタン誘導体の含有量について,同様に主張する。
エさらに,原告は,乙第5号証は本件特許出願後に作成された私文書であり,本件特許出願時の技術常識として参酌することはできないと主張している。
しかし,乙第5号証は,乙2文献の実験者がマウスを使用する経口投与実験においてマウス1匹当たり0.2mlを投与したという事実を証明するために提出したものであり,本件特許出願後に作成された文書であっても,このような事実を証明することは可能である。
〔原告の主張〕(1) 被告らの基本的主張についての反論ア乙2発明の内容乙2文献は,ビタミンEを被験物質とした実験の報告であって,ビタミンEのIgE抗体の生成に関する効果を調べるために,被験物質であるビタミンEを溶かすための実験動物用飼料としてごま油を用いた旨の記載がなされている。
要するに,乙2文献には,ビタミンE(具体的には,α-トコフェロールの酢酸塩及びα-トコフェロールのニコチン酸塩)によるIgE抗体の生成の有無を調べるための実験に用いられた,被験物質であるα-トコフェロールの酢酸塩をそれぞれ0.1mg,1.0mg,10mg溶かした経口投与用の実験動物用飼料としてのごま油,及び被験物質であるα-トコフェロールのニコチン酸塩をそれぞれ0.113mg,1.13mg,11.3mg溶かした経口投与用の実験動物用飼料としてのごま油がそれぞれ記載されている。
イ本件特許発明と乙2発明の対比本件特許発明が「飲食物」すなわち「人が食物として摂取(飲食)する物」に係る発明であるのに対して,乙2発明は経口投与用の実験動物用飼料であるという点で,両発明は基本的に相違する(相違点A2 。)また,本件特許発明が,飲食物に係る発明の内容として,オクタン誘導体とα-トコフェロールとを,オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェロールが0.1〜20重量部となる量で含有するものであるのに対して,乙2文献はそのような内容を記載していないという点で,両発明は相違する(相違点B2 。)ウ以上のとおり,本件特許発明と乙2発明とは,相違点A2及び相違点B2において相違するから,発明としての同一性がなく,したがって,本件特許発明は乙2文献に記載された発明(刊行物公知)ではない。
(2) 相違点A2についての説明ア被告らは,相違点A2について,乙2発明はマウスに一定量の飲食物を投与しているから,本件特許発明の「飲食物」と同一である旨を主張している。
, , しかしながら 争点1-1についての原告の主張(2)アa)記載のとおり「」,「() 本件明細書における 飲食物 との用語は人が食物として摂取 飲食する物」という意味で解釈されるものであり,本件特許発明は,このような意味における「飲食物」であることを発明の基本的な技術事項とするものである。
また 「広辞苑(第5版 」によれば 「飼料」とは「飼養動物に与える ,),食物。えさ」と記載されており,人が食物として摂取する「飲食物」と動物に与えられる「飼料」とは,用語として明確に区別されることが示されている。これは,昭和50年改正前の特許法32条1号中の「飲食物」という用語について示されていた「飲食物という場合は,人の飲食に係るもので,動物の飲食に係るものは含まれない」との解釈と同旨である。
以上のとおり,本件特許発明にいう「飲食物」との用語は,実験動物に与えられる「飼料」をも意味するものと解釈すべきであるとする被告らの主張は成り立たない。
したがって,ビタミンEがIgE抗体の生成に及ぼす影響をマウスを用いて試験することのみを目的とし,かかる動物実験の実施のみを記載し,,「」 当該実験動物に与えた飼料のみが記載されているだけであって飲食物について一切記載がない乙2文献に記載された乙2発明について,相違点A2は相違点ではないとする被告らの主張は成り立たない。
イ被告らは,本件明細書の「発明の詳細な説明」において,実施例1から3までに動物試験の結果が記載されていることをもって,本件特許発明の「飲食物」との用語を「動物実験食を含む」と解釈する根拠となると主張する。
本件明細書の実施例1から3までは,出願発明( 医薬」に係る発明で 「ある本件明細書の「特許請求の範囲」の請求項1から5までを含む )に。
おける,α-トコフェロールがオクタン誘導体によるコレステロール降下作用を増強するとの薬理作用があることを確認するための薬理試験系として,動物実験を行った結果を記載したものである。
現行特許・実用新案審査基準においては 「医薬」に係る発明について ,は,当該発明に薬理作用があることを確認する薬理試験の結果を明細書に記載することが必要とされている。そして,ここで用いられる薬理試験系については,臨床試験,動物試験,試験管内実験のいずれによることも認められている。
したがって,本件明細書の「発明の詳細な説明」において,出願発明に薬理作用があることを動物試験によって確認していることをもって,本件特許発明の「飲食物」との用語を,当該用語の普通の意味内容に反して動物用実験食を含むと解釈することができるとする被告らの主張は,失当である。
ちなみに,本件明細書においては,実施例4として,バター脂肪にセサミン,エピセサミン,酢酸トコフェロールを加えて練圧して「コレステロール降下バターを得た」旨が記載されている【0045】ことから,当業者は,実施例4については本件特許発明に係る「飲食物」の実施例として理解するものである。
ウ被告らは 「飲食物」をヒト用に限定することは包袋禁反言に該当する ,と主張する。
しかし 「飲食物」を「人が食物として摂取(飲食)する物」と解釈す ,ることは,当該文言の通常の解釈であり,そもそも何らの限定解釈でもない。しかも,原告は,出願経過においても,本件明細書においても,また本件訴訟においても 「飲食物」との用語については 「人が食物として , ,()」 , 摂取 飲食 する物 という普通の意味内容のものとして一貫して使用しかつ主張しており,これに反する主張などは一切行っていない。
したがって 「飲食物」の文言解釈について,包袋禁反言が成立する余 ,地はない。
エ被告らは,栄養学においては,飼料と飲食物を区別する実益はなく,両者は均等物と解されると主張する。
, , しかしながら 栄養学においてあらかじめ動物実験がなされたところで本件特許発明に係る「飲食物」という文言の解釈とは無縁の事柄である。
(3) 相違点B2についての説明ア争点1-1についての原告の主張(3)ア記載のとおり,乙2文献に記載されている事項と,技術常識参酌して導き出すことができる事項から,飲食物に係る本件特許発明が把握できるのでなければ,本件特許発明が乙2文献に記載されており,刊行物公知であるとすることはできない。
また,発明とは,目的,構成,効果からなる技術思想なのであるから,構成が記載されていても,その構成がもつ飲食物としての有用な目的,飲食物としての有用な効果が当業者に理解できなければ,飲食物に係る発明の内容として当該構成が記載されているということはできない。
イ乙2発明の実験動物用飼料中には,ごま油の不純物としてのセサミン及びセサモリンが存在することは,本件特許出願時の当業者が技術常識として理解するところである。しかしながら,セサミン及びセサモリンについては,実験動物用飼料中に存在する目的も,その効果も乙2文献には記載されていない。
本件特許出願時の技術常識としては,セサミン及びセサモリンのヒトを含む哺乳動物に対する生理活性作用は全く知られていなかったのであるから,乙2発明の実験動物用飼料中に不純物としてのセサミン及びセサモリンが存在することを当業者が認識しても,そのセサミン及びセサモリンが持つ,飲食物としての有用な目的も,飲食物としての有用な効果も,当業者には直ちに理解することはできない。
したがって,本件特許出願時の技術常識参酌しても,乙2文献に,飲食物に係る発明の内容としてオクタン誘導体が記載されているということはできない。
ウ乙2発明の実験動物用飼料に,被験物質としてα-トコフェロールの酢酸塩及びニコチン酸塩が溶かされて実験動物に投与されたとの記載が乙2文献にあるとしても,実験動物用飼料中の不純物としてのセサミン及びセサモリンと被験物質としてのα-トコフェロールの酢酸塩及びニコチン酸塩とが共存することについての,人体に対する飲食物としての有用な目的も,人体に対する飲食物としての有用な効果も,乙2文献には一切記載されていない。
本件特許出願時の技術常識としては,セサミン及びセサモリンのヒトを含む哺乳動物に対する生理活性作用は全く知られておらず,α-トコフェロールがセサミン及びセサモリンの人体に対する有用な作用を増強するとの作用も全く知られていなかったのであるから,乙2発明の実験動物用飼料中に不純物として存在するセサミン及びセサモリンと被験物質としてのα-トコフェロールの酢酸塩及びニコチン酸塩との共存が持つ,飲食物としての有用な目的も,飲食物としての有用な効果も,当業者には直ちに理解することはできない。
したがって,本件特許出願時の技術常識参酌しても,乙2文献には,飲食物に係る発明の内容としてオクタン誘導体とα-トコフェロールとの組合せが記載されているということはできない。
エ被告らは,乙2発明の実験動物用飼料について,乙第5号証記載の投与量を前提とし,かつ,乙2文献の実験動物用飼料にはおよそ0.3〜1.4%のオクタン誘導体が含まれているとの前提に立って,乙2発明の実験動物用飼料中のオクタン誘導体とα-トコフェロールとの含有比率を算出している。
しかし,後者の前提がそもそも成り立たないことは,争点1-1につい(,, ての原告の主張(3)エにおいて既に詳述したとおりである なお 原告は以下の争点1-4から同1-9までについても,ごま油中のオクタン誘導体の含有量について,同様に主張する。。)さらに,乙第5号証は本件特許出願後に作成された私文書であり,かかる文書を本件特許出願時の技術常識として参酌することはできず,その内容も本件特許出願時のいかなる技術常識をも示すものではない。また,乙, ,. 第24号証は 乙2文献の当該実験に用いた当該マウスには ごま油が02ml投与されたという被告らの主張を何ら立証するものではない。したがって,乙2文献に記載されていない被告ら主張のごま油の投与量を,本件特許出願時の技術常識として当業者が直ちに理解するということはできない。
, ,, 以上によれば 本件特許出願時の技術常識参酌しても 乙2文献には飲食物に係る発明の内容として,オクタン誘導体とα-トコフェロールとを,オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェロールを0.1〜20重量部の量で含有することが記載されているということはできない。
(4)新規性判断の原則についての被告らの主張に対する反論ア争点1-1についての原告の主張(4)ア記載のとおり,乙2文献に,本件特許発明の構成が飲食物としての有用な技術的事項として記載されており,かつ本件特許発明に係る飲食物を反復して製造することができるように記載されているのでなければ,飲食物としての有用性を有する本件特許発明が乙2文献に記載されているということはできない。
イしかるに,乙2文献には,オクタン誘導体そのものも,オクタン誘導体とα-トコフェロールとの組合せも,飲食物としての有用な技術的事項としては一切記載されていない。
また,本件特許発明出願時の技術常識をもってしても,乙2文献の「ごま油」との記載に接した当業者が,飲食物としての有用な技術的事項としてオクタン誘導体を認識することも,オクタン誘導体とα-トコフェロールとの組合せを認識することもできないのであるから,乙2文献には,飲食物としての有用な技術的事項として,オクタン誘導体及びオクタン誘導体とα-トコフェロールとの組合せが記載されているに等しいということもできない。
ウまた,本件特許発明は,飲食物としての有用な技術的事項としてオクタン誘導体とα-トコフェロールの含有比率を特定したことによって,オクタン誘導体の含有量が変動するごま油を使用した場合でも,本件特許発明に係る飲食物を確実に反復実施(製造)することができるのである。
しかしながら,乙2文献には,飲食物としての有用な技術的事項としてオクタン誘導体とα-トコフェロールの含有比率が特定されていない。しかも,乙2文献においては,ごま油の量は一切記載されていないから,当業者は,この点で,既に本件特許発明に係る飲食物を反復実施(製造)することができない。
さらに,当業者が乙2文献の開示に従ってα-トコフェロールの酢酸塩又はニコチン酸塩とごま油を適宜混合しても,その結果としての混合物におけるオクタン誘導体とα-トコフェロールの含有比率は,使用するごま油のオクタン誘導体の含有量の変動に応じて変動することを回避することができない。
したがって,乙2文献の記載からは,本件特許発明に係る飲食物を反復実施(製造)することができない。
エ結局,前記イ又はウのいずれの点からしても,本件特許発明が乙2文献に記載されているということはできない。
(5) ごま油中のオクタン誘導体の含有量が0.3〜1.4%であることが技術常識ではないとする原告の主張が包袋禁反言の原則に反するとする被告らの主張に対する反論?@包袋禁反言の原則の意義,?A本件意見書における原告の意見については包袋禁反言の原則が適用されるべき前提がないこと,?B被告らの乙2文献の記載事項に関する主張について包袋禁反言の原則が適用される余地はないこと,?C上記原告意見においてはごま種子から搾っただけの「原油」に関して意見を述べたにとどまることは,争点1-1についての原告の主張(5)記載のとおりである。
なお,乙2文献中の「ごま油」との記載について,当業者は,被験物質の溶剤として用いられるという目的に適した程度の精製の工程を経た「精製されたごま油」を使用するものと認識する。
5争点1-4(乙第7号証に基づく無効理由が認められるか)について〔被告らの主張〕(1) 竹本油脂は,本件特許出願前から,食用大豆油90.0%及び食用ごま油10.0%からなる「江戸前天ぷら油16.5kg (以下「乙7発明」 」という )を販売していた(乙7の1・2 。 。 )なお江戸前天ぷら油16 5kg にはJAS表示がされている 乙 ,「.」 (25の1 。これは,昭和62年から実施されていたものである(乙29) )から,乙7発明が本件特許出願前である昭和62年から販売されていたことは明らかである。
(2) ごま油には0.3〜1.4%のオクタン誘導体が含まれていること及び大豆油には100g中10.4mgのα-トコフェロールが含まれていること(乙7の3)から計算すると,乙7発明には,オクタン誘導体1重量部に対して,α-トコフェロールが0.07〜0.31重量部となる量で含有されていることになる。
(3) 乙7発明が飲食物であることは明らかであるから,本件特許発明は特許出, 。 願前に公然と実施されていたものであり 特許法29条1項2号に該当する〔原告の主張〕(1) 乙7発明の構成について特許法29条1項2号は,出願前に公然と実施されていた発明については特許されない旨を規定しており 「公然実施をされた発明」とは,その内容 ,が公然と知られ得る状態で実施(製造・販売)をされた発明を意味する。
したがって,被告らが公然実施による無効理由を主張するのであれば,本件特許発明の構成との対比に先立って,本件特許出願前に竹本油脂が公然と販売していたとする製品(乙7発明)の構成を,事実として主張立証しなけ。,,「.」, ればならない 特に 本件では江戸前天ぷら油16 5kg という外観からだけではオクタン誘導体とα-トコフェロールとの含有重量比を知ることができない製品の販売を主張するのであるから,本件特許出願前に販売されていた製品そのものを分析してオクタン誘導体とα-トコフェロールの含有量を測定するのでなければ,乙7発明の構成を立証することはできない。
しかるに,乙第7号証の2は2007年(平成19年)2月20日付けの「」,「」。 商品仕様書 であり 乙第7号証の1はその 送付書 であるにすぎない乙第7号証の2によっては,本件特許出願前に販売されていた製品の構成を立証することができないことはいうまでもない。乙第7号証の1には,竹本油脂の「品目別油糧販売統計表」の平成2年版に「江戸前天ぷら油16.5kg」の売上げが計上されている旨の記載があるものの,そのことのみでは当該売上げに係る製品の具体的な構成は立証できない。
以上のとおり,乙7発明の構成は一切立証されておらず,もとより,上記製品におけるオクタン誘導体の含有量もα-トコフェロールの含有量も一切立証されていないから,被告らが主張する公然実施による無効理由は成り立たない。
(2) 乙7発明におけるオクタン誘導体の含有量について,「.」, 被告らは 乙第7号証の2における 食用ごま油10 0% との記載と「ごま油には0.3〜1.4%のオクタン誘導体が含まれている」とする架空の数値から,乙7発明におけるオクタン誘導体の含有量を計算している。
しかしながら,次に述べるとおり,上記の計算方法は失当である。
アそもそも,乙第7号証の2は本件特許出願前の製品の商品仕様書ではないから,乙7発明の構成を立証することはできない。
イ「0.3〜1.4%」という数値は,乙7発明に配合されていたごま油中のオクタン誘導体の現実の含有量ではない。
本件書籍の表3.23は,セサモリンを多く含有する国内産ごま14品種を選び,同一の土地において,同時に栽培したときに得られた特定のごま種子を単に搾っただけの「原油」についての特定の分析値を記載したものであるから,それが乙7発明に配合されていたごま油中のオクタン誘導体の含有量と同一であるとする被告らの主張には,何らの理由もない。
なお,乙第19号証は「焙煎ごま油」製品の一つについての特定の分析値を示しているにすぎず,乙第19号証記載の「焙煎ごま油」製品と被告らが本件特許出願前の実施品とする乙7発明との関係は何ら立証されていないのであるから,乙第19号証は,乙7発明の現実のオクタン誘導体の含有量を立証するものではない。
ウよって,前記ア又はイのいずれの点からしても,乙7発明における現実のオクタン誘導体の含有量は立証されない。
(3) 乙7発明におけるα-トコフェロールの含有量について,「.」, 被告らは 乙第7号証の2における 食用大豆油90 0% との記載と乙第7号証の3の「日本食品脂溶性成分表」に記載された大豆油のα-トコフェロール含有量を用いて算出した数値を,乙7発明におけるα-トコフェロールの含有量としている。
しかし,そもそも乙第7号証の2は本件特許出願前の製品の商品仕様書ではないから,乙7発明の構成を立証することはできない。
さらに,乙第7号証の3の「日本食品脂溶性成分表」というものは,植物油については原材料の植物の品質,生育環境,加工方法等の各種の条件によって成分値が変動するにもかかわらず,食品における脂溶性成分を簡便に把握することができるように,本来ばらつきのある数値を1食品について1つ。,, の成分値として収載したものである したがって 乙第7号証の3の数値は乙7発明に配合されていたとする大豆油中のα-トコフェロールの現実の含有量を示したものではない。
よって,前記のいずれの点からしても,乙7発明における現実のα-トコフェロールの含有量は立証されない。
6争点1-5(乙第15号証と乙第7号証の1に基づく無効理由が認められるか)について〔被告らの主張〕(1) 本件特許出願前に刊行された乙第15号証の「理論と実際の調理学辞典」と題する書籍(初版1987年(昭和62年)12月10日株式会社朝倉書店発行。以下「乙15文献」という )の「てんぷら(天麩羅 」の項には, 。)「大豆油に好みによりごま油を少し混ぜる」旨が記載されている。
本件特許出願前に竹本油脂が販売していた乙第7号証の1の「江戸前天ぷら油16.5kg」における大豆油とごま油の混合比9対1(乙7の2)というのも,一般の天ぷら屋や油問屋の要望に合わせたものであり,当時,最も多く用いられていた比率であった。
すなわち,大豆油とごま油を9対1の割合で調合して天ぷら油とすること(以下「乙15発明」という )は,本件特許出願前に公知であったのであ 。
り,争点1-4についての被告らの主張(2)の計算によれば,本件特許発明は,特許法29条1項1号に該当する。
(2) 原告は,乙15文献には「大豆油に好みによりごま油を少し混ぜる」と記載されているだけで 「混合比9対1」なる記載は存在しないと非難する。 ,しかし,乙15文献は調理学の辞書であるために,具体的な数字を挙げていないだけである。乙第20号証の「日本食生活文化調査研究報告集7」と題する書籍(1990年12月財団法人日本食生活文化財団発行)に収載されている「天ぷらに使用する油の実態調査とその食文化的研究」と題する論文(以下「乙20文献」という )の表7「2種混合する場合の油の組合と 。
混合比」によれば,大豆油とごま油を9対1で用いたことが具体的に記載されている。
〔原告の主張〕(1) 乙15発明の構成についてア特許法29条1項1号が規定する「公然知られた発明」とは 「不特定 ,の者に秘密でないものとしてその内容が知られた発明」を意味する。したがって,同号に該当することを主張するのであれば 「知られ得る」状態 ,では足らず,本件特許出願前に,現に不特定の者に秘密でないものとして本件特許発明の内容が知られていたことが事実として立証されなければならない。
イ被告らは,乙15文献に「大豆油に好みによりごま油を少し混ぜる」と記載されているから,大豆油とごま油の混合比9対1は,当時最も多く用いられていた比率であったなどと主張する。しかし,そもそも乙15文献には「少し混ぜる」と記載されているだけであって 「混合比9対1」な ,る記載は存在しない。
ウもとより,乙15文献によっては 「オクタン誘導体とα-トコフェロ ,ールとを,オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェロールが0.1〜20重量部となる量で含有する」構成が,本件特許出願前に不特定の者に公然と知られていたとの事実は,一切立証されない。乙第7号証の1によっても,同様に,上記事実は一切立証されない。
エよって,前記イ又はウのいずれの点からしても,乙15文献と乙第7号証の1によって本件特許発明の内容が本件特許出願前に公然知られたとする被告らの主張は成り立たない。
(2) 乙20文献の記載について被告らは,乙20文献に「混合比9対1」が具体的に記載されていると主張する。しかし,これは,料理店が使用時において数種の油を混合して用いることが記載されているだけのことであって,かかる使用時の使用者による混合使用は,本件特許発明たる「飲食物」の発明とは無縁のものである。
7争点1-6(乙第20号証に基づく無効理由が認められるか)について〔被告らの主張〕(1) 本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙20文献は,日本全国の天ぷら専門店に対するアンケート調査結果を示した文献である。
,「 」, (2) 乙20文献の表7には2種混合する場合の油の組合と混合比 として以下のような油の混合比が記載されており(以下,まとめて「乙20発明」という,それぞれについてオクタン誘導体1重量部に対するα-トコフ 。)ェロールの重量比を計算すると,括弧内のとおりである。なお,綿実油は,100g当たり28.3mgのα-トコフェロールを含有している(乙7の3 。)?@(a)コーン油5:(g)ごま油1(0.061〜0.285)?A(a)コーン油4:(j)ごま油1(0.030〜0.139)?B(b)大 豆 油9:(g)ごま油1(0.07〜0.31)?C(b)大 豆 油4:(j)ごま油1(0.030〜0.139)?D(c)菜 種 油3:(g)ごま油1(0.033〜0.152)?E(d)綿 実 油9:(g)ごま油1(0.182〜0.849)?F(d)綿 実 油8:(g)ごま油2(0.081〜0.377)?G(d)綿 実 油4:(j)ごま油1(0.081〜0.377)?H(d)綿 実 油3:(j)ごま油1(0.061〜0.283)?I(d)綿 実 油7:(g)ごま油3(0.047〜0.220)(3) 乙20発明は,本件特許出願前に日本国内において公然知られ,公然実施され,かつ刊行物に記載されていたことになるから,本件特許発明は特許法29条1項1号,2号及び3号にそれぞれ該当する。
, , (4) なお 前記(2)の?Eに示した綿実油9:ごま油1の混合天ぷら油について現実に市販されている綿実油(綿実白絞油,岡村製油株式会社製)に含有されているビタミンE(α-トコフェロール)は100g当たり28.8mgであり,純正ごま油(かどや製油株式会社製)に含有されているセサミンは100g当たり0.506gであった(乙39 。)この実測値を用いて,上記混合天ぷら油についてオクタン誘導体1重量部に対するα-トコフェロールの重量比を計算すると0.512になることから,本件特許発明は乙20文献に記載されており,特許法29条1項3号に該当する。
〔原告の主張〕(1) 乙20文献は,天ぷら専門店が店内で天ぷらを揚げるに際して,使用時にどのような油をどのような割合で混合して使用するかを調査した結果を示したものである。したがって,乙20文献が記載する混合割合とは,使用者が使用に当たってその都度混合するときの,使用時の混合割合であり,当該割合に調合済みの「製品」が市販されていたと記載しているものではない。また,使用時に混合される油の銘柄,成分組成等は一切記載されていない。使用に際しての単なる混合は,本件特許発明とは無縁のものであり,乙20文「 」, 献には 特定された一定の構成を具備した飲食物 は記載されていないから同文献には本件特許発明に係る飲食物は記載されていない。
(2) 被告らは,乙20文献によって刊行物公知にもなるなどと主張している。
しかし,乙20文献には,そもそもオクタン誘導体が飲食物としての有用な技術的事項として記載されておらず,オクタン誘導体とα-トコフェロールとの組合せについても飲食物としての有用な技術的事項として記載されておらず,ましてやオクタン誘導体とα-トコフェロールとの含有割合も飲食物としての有用な技術的事項として記載されていない。
(3) ところで,乙20文献の表7は,混合比率の多い油は2種類混合中のいずれの油であるかを特定していない。例えば大豆油(大豆白絞油)(b)とごま油(淡い色の香りの薄い油)(j)との組合せで最も回答が多いのは混合比4:1のものであるものの,乙20文献の17頁本文においては 「油の組合 ,せと混合比両方については (中略)淡口ごま油/大豆油の4:1,などが ,。」, 。 多かったと記載されており 混合比率の多い油は淡口ごま油の方であるこの点からすると,被告らの主張(2)の?@から?Iまでの記載は,油の混合比率が逆転しているものとすら解される。
(4) 被告らは,乙第7号証の3に基づいて,綿実油は100g当たり28.3mgのα-トコフェロールを含有しているとして,綿実油とごま油の混合油におけるオクタン誘導体1重量部に対するα-トコフェロールの重量比を計算している。
,「」, しかしながら 乙第7号証の3の 日本食品脂溶性成分表 というものは植物油については成分値が変動するにもかかわらず,食品における脂溶性成分を簡便に把握することができるように,ばらつきのある数値を「1つの成分値として収載する」ことを目的としたものである。
したがって,乙20文献の調査の際に,使用に当たって混合された綿実油中のα-トコフェロールの含有量を乙第7号証の3記載のとおりのものとするとの被告らの主張には理由がない。
(5) 被告らは,乙第39号証を提出して,平成19年12月27日に財団法人日本食品分析センターに提出して分析を依頼した「純正ごま油」には100g当たり0.506gのセサミンが含有されており 「綿実白絞油」にはα ,. 。 -トコフェロールが100g当たり28 8mg含有されていたと主張するしかしながら,乙20文献には,表7に記載された「ごま油(濃い色の香りの強い油)(g)」に「100g当たり0.506gのセサミンが含有されている」との記載はなく,またかかる記載がされているに等しいとの技術常識も立証されていない。しかも,上記分析値は,被告らが分析のために検体として提出した一つの商品(被告らは,かどや製油株式会社製の「純正ごま油」と主張する )についての分析値にすぎず,平成2年に発行された乙2 。
0文献の表7に記載されている製造者も商品名も不明な「ごま油(濃い色の香りの強い油)(g)」との同一性は立証されていない。
, 「」 上記のような問題点は 乙20文献の表7に記載されている 綿実油(d)についても同様の指摘をすることができる。
したがって,上記の分析値を用いて算出したとする「オクタン誘導体1重量部に対するα-トコフェロールの重量比0.512」との含有割合が乙20文献に記載されているとする被告らの主張も成り立たない。
8争点1-7(乙第21号証に基づく無効理由が認められるか)について〔被告らの主張〕(。「」。), (1) 乙第21号証 本件書籍 以下 乙21文献 ということがあるには揚げ油について 「日本では量的にはダイズ,ナタネ油が多いが,ゴマ油は ,上等な揚げ油として賞用されている。香りの強い焙煎ゴマ油は,他の食用油に2〜3割混ぜて天ぷらに使われており…」と記載されていて,大豆油にごま油を2〜3割混ぜて用いることが記載されている。
(2) 大豆油とごま油を8対2の割合で調合した場合(以下「乙21発明」という,オクタン誘導体1重量部に対して,α-トコフェロールが0.03 。)〜0.139重量部となる量で含有されていることになる。
(3) このように,乙21発明の天ぷら油は,本件特許出願前に公知公用であったことは明らかであり,本件特許発明は特許法29条1項1号に該当する。
なお,乙21文献は,本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物でもあるので,本件特許発明は,上記の刊行物に記載された発明であり,特許法29条1項3号にも該当する。
〔原告の主張〕乙21文献は使用者による大豆油使用時のごま油の混合使用を述べただけのことであり,本件特許発明とは無縁のものである。しかも,オクタン誘導体が飲食物として有用な技術的事項として記載されておらず,もとより「オクタン誘導体とα-トコフェロールとを,オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェロールが0.1〜20重量部となる量で含有する飲食物」という本件特許発明の構成は記載されていない。
9争点1-8(乙第26号証に基づく無効理由が認められるか)について〔被告らの主張〕(1) 本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙第26号証「() 」 の 老化促進モデルマウス SAM を用いたゴマの老化抑制効果についてと題する論文(1990年(平成2年)発行の日本栄養・食糧学会誌43巻6号収載。以下「乙26文献」という )中の表1には 「ゴマ食」として, 。,?@カゼイン20.9%,?Aすりごま20.0%,?Bミネラル混合3.5%,?Cビタミン混合1.0%,?Dα-スターチ54.6%の処方が記載されている(以下「乙26発明」という。。)(2) 「ゴマ食」の脂質含量10.9%は,実質的にすりごま中のごま油と考えられるから,ごま油には0.3〜1.4%のオクタン誘導体が含まれていることから計算すると 「ゴマ食」は327〜1526mg/kg diet ,のオクタン誘導体を含有している。
また 「ゴマ食」のα-トコフェロール量は,乙26文献の表3によると ,35.0mg/kgdietであるから 「ゴマ食」は,オクタン誘導体 ,1重量部に対してα-トコフェロール0.107〜0.023重量部を含有する。
(3) 乙26文献では,このような「ゴマ食」をマウスに経口摂取させている。
なお,本件特許発明における「飲食物」の意義については,争点1-3についての被告らの主張(2)記載のとおりであるから 「ゴマ食」は「飲食物」 ,に当たる。
(4)よって,本件特許発明は乙26文献によりその出願前に刊行物公知であり,特許法29条1項3号に該当する。
なお,乙26文献の448頁には,α-トコフェロールとごま成分との相乗効果も示唆されている。
〔原告の主張〕(1) 乙26文献は,乙第27号証の2の「老化促進マウス(SAM)によるゴマ抗酸化物質の老化抑制効果に関する研究」と題する論文(平成元年提出の修士論文(乙27の1参照 )に記載された「実験3」の,老化促進マウス )を用いた動物実験の内容及び実験の結果の一部を引き写した実験報告書にすぎない。
したがって,乙26文献には,実験用動物に投与された実験動物用飼料の配合は記載されているものの 「飲食物」は一切記載されていないから 「飲 , ,」 () 食物 に係る発明である本件特許発明が記載されていないこと 相違点A3は明白である。
なお,本件特許発明における「飲食物」の意義については,争点1-1についての原告の主張(2)アa)記載のとおり,実験動物用飼料は本件特許発明における「飲食物」ではない点については,争点1-3についての原告の主張(2)記載のとおりである。
(2) 乙26文献及びその基となった乙第27号証の2は ごまに含有される 抗 ,「酸化物質」が生体内の過酸化脂質の生成を抑制するのであれば,老化の抑制が期待できるとの仮説の下に 「すりゴマ」を配合したごま食とコントロー ,ル食とを投与したマウス群を用いて,老化関連物質として認められている過酸化脂質,リポフスチン量等を調べたものである。
ここで,乙26文献に記載されている「抗酸化物質」とは,OH基による抗酸化性を示すことを特徴とする物質を特定記載するものであり,本件特許。, 発明に記載されているオクタン誘導体を特定記載するものではない しかもコレステロール値が上昇する「高脂血症」とは 「老化」による経時的現象 ,ではないのであるから,乙26文献が記載する抗酸化物質による老化の抑制効果と,オクタン誘導体によるコレステロール降下作用とは,全く技術分野を異にするものである。
このように,乙26文献には,飲食物に係る発明を構成する有用な技術的事項としてオクタン誘導体が記載されておらず,飲食物に係る発明を構成する有用な技術的事項としてオクタン誘導体とα-トコフェロールとの組合せが記載されておらず,飲食物に係る発明を構成する有用な技術的事項としてオクタン誘導体の含有量に対するα-トコフェロールの含有量が記載されて,,()。 いないという点で 乙26発明は 本件特許発明と相違する 相違点B3したがって,これらの点においても,乙26文献は本件特許発明とは無縁の文献であり,刊行物公知の主張は成り立たない。
(3) 念のために,被告らの主張に即して詳細に反論すれば,以下のとおりである。
,「」「. ア乙26文献中の表1にはゴマ食 の飼料組成として カゼイン209%,すりゴマ20.0%,ミネラル混合3.5%,ビタミン混合1.0%,α-スターチ54.6%」と記載されており,さらに「タンパク含量25.0%,脂質含量10.9%,脂質エネルギー比26.3」との記載が付記されている。
しかし,乙26文献には 「すりゴマ」の成分組成も成分の含有量も一 ,切記載されておらず,結局,全体の飼料中に「すりゴマ」が20重量%の割合で配合されたことが記載されているだけである。したがって,乙26文献には 「ゴマ食」中のオクタン誘導体の含有量の測定値は一切記載さ ,れていない。
イ「ゴマ食」についての「脂質含量10.9%」との付記は,脂質含量の測定値を記載したものではない この点は 乙26文献と同一の実験を 実 。, 「験3」として記載している乙第27号証の2が 「実験3」の「ゴマ食」 ,の脂質含量について 「ほぼ10%「約10%」などと記載しているこ ,」,とから明白である(測定値であれば,そのような記載をすることはあり得ない。。)したがって 「脂質含量10.9%」との記載は,そもそも「ゴマ食」 ,,「」 についての測定値ではないのであるから かかる記載によっては ゴマ食のいかなる構成も主張することはできない。
被告らは 「ゴマ食」についての「脂質含量10.9%」との付記をと ,らえて 「ゴマ食」には10.9%のごま油が含まれていると主張し,そ ,の上でごま油には0.3〜1.4%のオクタン誘導体が含まれていると主張して,かかる二重の架空の数値を用いた算式を作り上げた上で 「ゴマ,食」中のオクタン誘導体の含有量を主張している。
しかしながら,乙26文献には「ゴマ食」中のごま油の含有量の測定値も 「ゴマ食」中のオクタン誘導体の含有量の測定値も記載されていない ,のであるから,乙26文献に「ゴマ食」中のオクタン誘導体の含有量が記載されているとする被告らの主張は成り立たない。
ウ乙26文献中の表3には 「ゴマ食」中のα-トコフェロール量の数値 ,が記載されている。
しかしながら,この数値は,同表の注a)に記載された換算割合( ビタ「ミン混合」中のα-トコフェロールを35mg相当 「すりゴマ」中のα ,-トコフェロールを痕跡と換算する)を基に換算した場合の数値であり,換算に用いる数値が異なれば 「ゴマ食」中のα-トコフェロールの量も ,異なる(現に,乙第27号証の2では,乙26文献と同一飼料でありながら,上記換算割合とは異なった換算数値を用いている。。)以上のとおり,乙26文献には「ゴマ食」中のα-トコフェロールの量の実際の測定値は記載されていない。
エ被告らは,乙26文献中の「飼料中のトコフェロールはコントロール食の方が高いのに血漿中のトコフェロールはわずかにゴマ食の方が高い傾向。 。 にあった ゴマにはトコフェロール以外にも数種の抗酸化物質が存在するこれらのものがビタミンEの分解・再生に影響を及ぼしている可能性が考えられる 」との記載部分を指して,α-トコフェロールとごま成分との 。
相乗効果が示唆されていると主張する。
しかしながら,乙第27号証の2の「実験3」においては 「雄のマウ ,ス群」及び「雌のマウス群」について血漿中のトコフェロール量が測定され,平均値を見ると「雄のマウス群」はわずかに「ゴマ食」の方が高い傾向を示すものの 「雌のマウス群」は「ゴマ食」の方が低い傾向を示した ,という正反対の実験結果を得ていながら,乙26文献においては「雄のマウス群の平均値のみ」をあえて用いた上で,上記記載部分の後段のような一般論としての考察を行っていることには大きな問題がある。
このように,上記記載部分の後段のような考察は,一般論としてそもそ,,「」 も成り立ち得ないものであるうえ その考察の内容自体も抗酸化物質(OH基を有する物質)による,トコフェロール(ビタミンE)の消費の抑制の働きの可能性と,トコフェロール(ビタミンE)の再生の働きの可能性を述べているものである。
したがって,そこには,オクタン誘導体が奏するコレステロール低下作用等の人体に対する優れた働きをα-トコフェロールが増強するという,本件特許発明において「α-トコフェロールが奏する特段の作用効果」については一切記載されていない。
10争点1-9(乙第30号証に基づく無効理由が認められるか)について〔被告らの主張〕(1) 本件特許出願前に外国において頒布された刊行物である乙第30号証の「市場で販売されている現今のゴマ油の品質評価に関する研究」と題する論文(1991年(平成3年)発行のザ・コリアン・ジャーナル・オブ・フード・ハイジーン6巻1号収載。以下「乙30文献」という )には,市販の 。
ごま油類74種について検討したところ,11種のみが純ごま油で,他は混合油であったことが報告されている。
(2) 乙30文献の表3に記載された混合油中,以下のような油の混合比のもの(以下,まとめて「乙30発明」という )は,それぞれについてオクタン 。
誘導体1重量部に対するα-トコフェロールの重量比を計算すると,括弧内のとおりである。
?@コーン油70:ごま油30(0.029〜0.133)?A菜 種 油70:ごま油30(0.025〜0.118)?B米 糠 油70:ごま油30(0.043〜0.198)?C綿 実 油70:ごま油30(0.047〜0.220), , (3) 乙30発明は 本件特許出願前に刊行物に記載されていたことになるから本件特許発明は特許法29条1項3号に該当する。
〔原告の主張〕(1) 乙30文献は 「ゴマ油の変造可否を簡単に判別できる適切な分析法を確 ,立」するとの観点から 「迅速に正確なゴマ油の純度判別の一環として (中 , ,略)FV値を利用」することを考え 「異種油混入による,他のゴマ油のF ,, ,, V値の変化を測定するために 標準ゴマ油に主要植物性油を10% 40%」 。 70%水準で混入させFV値を測定した 結果を表3に記載したものである(2) 乙30文献の表3には,オクタン誘導体が飲食物としての有用な技術的事項として記載されておらず,オクタン誘導体とα-トコフェロールとの組合せについても有用な技術的事項として記載されておらず,ましてやオクタン誘導体とα-トコフェロールとの含有割合も記載されていない。
( ) 11争点2 被告らの行為の差止請求及び被告製品の廃棄請求が認められるかについて〔原告の主張〕(1) 前記第2の1(4)のとおり,被告製品は本件特許発明技術的範囲に属するものであり,被告らによる被告製品の製造,譲渡等の行為は,本件特許権を侵害する。よって,原告は,被告らに対して,被告製品の製造,譲渡及び譲渡の申出の各行為の差止め並びに被告製品の廃棄を求める。
(2) 被告AFCは,原告からの侵害警告に対して 「胡麻セサミンの販売を一 ,切中止するとともに,在庫品も全て廃棄致しました 」などと述べ,販売を 。
中止したのは平成18年9月20日であると述べた。
しかし,被告AFCが被告製品の販売を中止したとか,在庫品を廃棄したことについては,何らの根拠も示されていない。むしろ,平成18年9月20日以降においても,インターネット上で被告製品の広告が相変わらず行われ,被告製品の通信販売がなされている。
(3) 被告らは,答弁書において,被告製品の製造を中止した旨述べている。
しかし,仮に,被告らが本訴の提起を受けて一時的に現在被告製品の製造・販売を中止しているとしても,被告らは,本訴において,本件特許権には無効事由があるとして,原告は本件特許権を行使することができないと一貫して主張し続けている。したがって,被告らには,侵害行為を再開するおそれが十二分にある。
よって,仮に現在の行為としての差止請求が認められない場合には,差止,, 。 請求については 原告は 将来の行為の差止請求権に基づいてこれを求める(4) 被告らは,被告製品の在庫についてはすべて廃棄したかのように主張している。
しかしながら,被告らが被告製品をすべて廃棄した証拠として提出した乙第37号証は,被告らが被告製品の全在庫を廃棄したことを立証できるものではない。しかも,乙第37号証の1枚目は,平成18年9月21日付けの「棚卸資産除却申請書」であるものの,乙第23号証の2によれば,被告AFCは,平成18年9月25日にも被告製品1袋を出荷しており,同月27日にも被告製品2袋を有償譲渡している。また,上記証拠には,被告AFCが,平成18年11月29日に株式会社ハイネット21から被告製品5袋の返品を受けて保有しているとの記載もなされている。
したがって,被告らが被告製品の在庫品をすべて廃棄したという被告らの主張は立証されていないから,原告は,被告らが保有する被告製品については廃棄請求権を有する。しかも,上記(3)のとおり,被告らには侵害行為を再開するおそれがあり,かかる侵害行為を予防するためにも,廃棄請求が認められる必要がある。
〔被告らの主張〕(1)被告製品が形式上本件特許発明技術的範囲に属するものであることは認め,原告の被告らに対する差止請求及び廃棄請求については争う。
(2)原告の主張(2)のうち,原告と被告AFCとの間で,原告主張のようなやりとりがあったこと及び被告らが被告製品の製造を中止し,在庫を廃棄した後においても,一時期インターネット上の広告がなされたことは認め,その余は争う。
12争点3(被告らの行為により原告が受けた損害の額)について〔原告の主張〕(1) 被告らの行為の共同不法行為性前記第2の1(3)のとおり,被告製品の製造・販売に関して,被告らの行為には少なくとも客観的な関連共同性があり,本件特許権侵害の共同不法行為を構成する。
(2) 原告の実施行為原告は,平成12年から現在に至るまで,本件特許発明実施して,オクタン誘導体の代表的な物質であるセサミンにα-トコフェロールを主成分とするビタミンEを配合した「セサミンE」シリーズの製品を製造・販売している。
(3) 特許法102条2項により推定される原告の損害の額ア被告製品の販売形態としては,カプセル30粒入りのアルミ袋詰め製品が新旧2種類(以下それぞれを「新30粒入製品「旧30粒入製品」 」,という,カプセル90粒入りの瓶詰め製品(以下「90粒入製品」と 。)いう,カプセル270粒入りのアルミ袋詰め製品(以下「270粒入 。)製品」という )がある。。
イ共同不法行為として被告アムスが製造し,被告AFCが販売した被告製品についての,平成15年5月1日から同18年11月末日までの販売形態別の有償売上数量及び有償売上高は,少なくとも以下のとおりであるから,●(省略)●ウ被告らは,共同不法行為によって原告に加えた損害の全額について連帯して賠償の責めを負う。
特許法102条2項における被告らが受けた利益の合計額は,被告両者の被告製品の総有償売上高から,被告アムスが有償売上に係る被告製品の製造及び被告製品の有償売上のために直接必要な費用並びに被告AFCが被告製品の有償売上のために直接必要な費用を控除することにより算定される。
,「 」 ところで被告アムスから被告AFCに対する被告製品の有償売上高と「被告AFCが被告アムスから仕入れる被告製品の有償仕入額 (上記」。) の被告AFCが被告製品の有償売上のために直接必要な費用に含まれるとは同額となることから,結局,被告らが受けた利益の合計額は,計算の便宜上,被告AFCによる被告製品の総有償売上高から,当該有償売上げのために直接必要な費用として,?@被告アムスの原材料費,?A被告アムスの包装容器代,?B被告アムスの(原材料費・包装容器代以外の)その他変動費及び?C被告AFCの(仕入価格以外の)その他変動費の合計額を控除した金額となる。
なお,被告アムスの個別固定費及び被告AFCの個別固定費は,特許法102条2項所定の「侵害行為により受けた利益」の算定に当たって控除することができる費用ではない。
●(省略)●被告製品の製造・販売によって被告らが受けた利益の額は,特許法102条2項により原告が受けた損害の額と推定されるから,原告は,平成15年5月1日から同18年11月末日までの期間における被告らによる本件特許権侵害不法行為による損害として,少なくとも1538万円の損害賠償請求権を有している。
(4) 弁護士費用相当額の損害額原告は,被告らによる本件特許権侵害行為のために,本訴の提起を余儀なくされたものである。本件事案の内容,性質,被告らによる応訴の態度,被告らによる訴訟活動の遅延等にかんがみ,被告らによる本件侵害行為の差止め,被告製品の廃棄及び損害賠償を得るために原告が要した弁護士費用のう, 。 ち相当因果関係のある損害は 少なくとも200万円を下回るものではない(5) 損害額のまとめよって,原告は,被告らに対して,前記(3)の損害金1538万円及び前記(4)の損害金200万円の合計額である1738万円及びこれに対する 不(法行為の後である)本件訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求める。
〔被告らの主張〕(1) 原告の主張(1)のうち,被告らの行為には客観的な関連共同性があり,本件特許権侵害の共同不法行為を構成するとの主張は争う。
(2) 原告の主張(2)のうち,原告による「セサミンE」シリーズの製品の製造・販売の開始時期については不知。その余は認める。
(3) 原告の主張(3)のうち,アについては認め,イのうち90粒入製品の有償売上数量以外については認める。●(省略)●(4) 原告の主張(4)及び(5)については,否認ないし争う。
第4当裁判所の判断1争点1(本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について(総論的判断)(1) はじめに本件訴訟において,被告らは,多数の文献を引用し,かつ,当該文献に記載された多数の物質を採り上げて,そのそれぞれについて本件特許発明の刊行物公知その他の新規性の欠如による無効理由を主張している(争点1-2における進歩性の欠如による無効理由の主張を除く。。)当裁判所は,本件訴訟の審理の過程において,被告らが主張する極めて多数の無効理由について 「無効理由の主張が複数ある場合において,それら ,が基本的に同種の証拠資料と論理に基づくものであるときは,その中で最も有力と思料される無効理由について,当裁判所が『本件特許発明は特許無効』, 審判により無効にされるべきものとは認められない と判断するのであればその他の無効理由についても当然に同様の判断が下されるであろうことは被告らにおいても容易に予測できることである。そうした複数の無効理由の主張を被告らが漫然と維持し,これらを当裁判所において逐一審理・判断しなければならないとすれば,特許権侵害訴訟の審理・判決手続の迅速な進行を。」,, 害する結果となると考えられるとの基本的な立場から 被告らに対して被告らが主張する無効理由をある程度類型化した上で,各類型ごとに代表的な無効理由を一つずつ採り上げる(言い換えれば,その他の無効理由の主張は取り下げる)ように要請した。
これに対して,被告らは,当裁判所の訴訟指揮にいったんは従うかのような姿勢を示しながら,結局,無効理由の主張を一部取り下げるどころか,す,。 べての無効理由の主張を漫然と維持するに至ったことは 極めて遺憾である(2) 本件特許発明の要旨の認定ア本件特許発明の要旨本件特許発明構成要件に分説すると,前記第2の1(2)ウ記載のとおり,Aジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体(注:化学式は省略した )と,。
Bα-トコフェロールとを,C前記ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体1重量部に対して前記α-トコフェロールが0.1〜20重量部となる量で含有するDことを特徴とする飲食物である。
構成要件Dにおける「飲食物」という用語の意味について本件特許発明構成要件Dにおける「飲食物」という用語の意味について,それが「実験動物用飼料」を含むものかどうか(争点1-3,争点1-8)が本件では論点となっているので,この点についてまず判断する。
a)特許法29条1項及び2項所定の特許要件,すなわち,特許出願に係る発明の新規性及び進歩性について審理するに当たっては,この発明を同条1項各号所定の発明と対比する前提として,特許出願に係る発明の要旨を認定しなければならないところ,この要旨認定は,特段の事情のない限り,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合には,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許される(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照 。)b)まず 本件明細書の 特許請求の範囲 の請求項10に記載された 飲 ,「」 「食物」という用語は,技術用語として一義的に明確な意味を有しているものではなく,いわゆる日常用語である。そして,日常用語としても,「飲食物」という用語は,栄養の摂取を目的とせず,味覚や嗅覚を満たすために摂取されるコーヒー・紅茶などの「嗜好品」と区別して用いられる場合もあれば,これらの嗜好品をも含めた意味で用いられる場合もあるので,一義的に明確な意味を有しているということはできない。
そこで,本件明細書の「発明の詳細な説明」の記載を見ると 「飲食,物」の意味を直接定義した箇所は見当たらないものの,以下のような記載がある(甲2 。)?@「本発明はまた,ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体及び抗酸化剤を含んで成る食品添加物に関する。食品には,これらの成分を含有しないか又は非常に少量しか含有しないものが多く,この様な食品には本発明の食品添加物を添加することが有用である。本発明はさらに,ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体及び/又は抗酸化剤を添加した飲食物に関する。飲食物の多くはこれらの成分を含有していないか又はその含有量が非常に少ないから,これらの食品においては,前記成分の両方を添加することにより本発明の飲食物を製造することができる【0025】。」?A「本発明の,又は本発明の食品添加組成物を添加する食品の種類は特に限定されない。しかし,特にコレステロール降下作用を考慮すると,油脂を含む食品への添加が考えられる。例えば,肉,魚,ナッツ等の油脂を含む天然食品,中華料理,ラーメン,スープ等の調理時に油脂を加える食品,天プラ,フライ,油揚げ,チャーハン,ドーナッツ,カリン糖等の熱媒体として油脂を用いた食品,バター,マーガリン,マヨネーズ,ドレッシング,チョコレート,即席ラーメン,キャラメル,ビスケット,アイスクリーム等の油脂食品又は加工時油脂を加えた加工食品,おかき,ハードビスケット,あんパン等の加工仕上時油脂を噴霧又は塗布した食品等を挙げることができる【002。」6】c)前記b)?@の記載を参酌すると,本件明細書においては 「飲食物」と ,いう用語は 「食品」と同義に使用されている。さらに,前記b)?Aに例 ,示された「食品」すなわち「飲食物」の種類を参酌すると,構成要件Dの「飲食物」という用語は 「人が日常的に食物として摂取する物」と ,いう意味において使用されているものと理解することができる。
d)被告らは,本件特許発明における「飲食物」の意義は,特許法70条に従って解釈されるべきであると主張する。しかし,同条は,特許権の侵害が問題とされる場合における,特許権の効力の及ぶ客観的範囲(特許発明技術的範囲)の確定の方法について規定したものであるから,前記のような特許発明の要旨認定の場合に当たっても同条が適用されるということはできない。
もっとも,結果的には,構成要件Dにおける「飲食物」という用語の意味については,本件明細書の「発明の詳細な説明」の記載を参酌することになるのであるから,被告らの法的論理は別として,その意図するところは,当裁判所の判断手法とさほど相違するものではない。
e)被告らは,本件明細書の「発明の詳細な説明」において 「この発明 ,をさらに具体的に説明する【0032】として原告が掲げている実 。」施例1から3までがいずれもラット用の動物実験食であることから,ラット用の動物実験食は本件特許発明の最良の形態を示したものであり,これによって原告は「飲食物」にラット用の飼料が含まれることを定義付けたとも主張する。
本件特許出願日(平成3年6月15日)当時の特許法施行規則様式29の備考14ロは,実施例の記載について 「必要があるときは,当該 ,発明の構成が実際上どのように具体化されるかを示す実施例を記載する。その実施例は,特許出願人が最良の結果をもたらすと思うものをなるべく多種類掲げて記載し,必要に応じ具体的数字に基づいて事実を記載する 」と規定していた。 。
この点,特許・実用新案審査基準には,第?Z部第3章として,医薬発明の審査基準が定められている(なお,同基準は,平成17年4月15日以降に審査される出願に適用することとされているものの,その内容は,医薬発明の記載要件,新規性進歩性について,特有な判断・取扱いが必要な事項を中心に特許審査の運用を明確化したものであるとされており,従来からの運用を確認的に明文化したものであるということができるから,本件特許出願の審査当時においても同様の特許審査の運用が行われていたものと解される。上記審査基準においては 「当業者 。) ,がその発明を実施することができるように発明の詳細な説明を記載するためには,通常,一つ以上の代表的な実施例が必要である。そして,医薬用途を裏付ける実施例として,通常,薬理試験結果の記載が求められる」こと及び「用いられる薬理試験系としては,臨床試験,動物実験あるいは試験管内実験が挙げられる ことがそれぞれ記載されている公 」 。(知の事実)本件明細書は 「特許請求の範囲」の請求項1から5までに「医薬組 ,成物」に係る発明を記載しているから,上記審査基準によれば,本件明細書の「発明の詳細な説明」には,医薬用途を裏付ける実施例として,薬理試験結果の記載が求められる。上記実施例1から3までは,このような理由から動物実験の結果を記載したものと解されるのであって,これらの動物実験が 「医薬組成物」のみならず「食品添加物」及び「飲 ,食物」についての効用試験も兼ねているとしても,これらの記載があることにより 「人が日常的に食物として摂取する物」という意味を超え ,て 「飲食物」にラット用の飼料も含まれると解することはできない。 ,なお 「飲食物」に係る発明である本件特許発明実施例としては, ,本件明細書には 他に実施例4として コレステロール降下バター0 ,「 」【045】が記載されているのであって,バターが前記c)の意味における「飲食物」に該当することは疑いのないところである。
( ()) 2争点1-1 乙第1号証に基づく無効理由 新規性の欠如 が認められるかについて(1)乙1文献の記載乙1文献には,次の記載がある。
ア「13.組成物が,(a) ビタミンA2.7重量部(b) ビタミンE2.5重量部(c) アーモンド油50重量部(d) ごま種子油50重量部(e) オリーブ油100重量部からなることを特徴とする,第1項から第12項の何れか1項に記載の医薬品組成物( 請求の範囲」第13項) 。」「イ「本発明は,皮膚科学的状態,例えば湿疹,乾癬,単純疱疹(コールド・ソアズ)などの症状に軽減を与えるため特に,しかし独占的にではなく外部適用に向けられる医薬品調整物および組成物,およびこれらの製造に関する( 明細書」の「技術分野 ) 。」「」ウ「ここで本発明の種々な特に適当な具体例を,表Aを引用して記述することにする( 明細書」の「本発明を実施する最良の態様 ) 。」「 」エ前記表Aには 「組成物」としてコラム?Tから?Wまでの4種類の具体例 ,が記載されている ( 明細書」の「本発明を実施する最良の態様 ) 。「 」a)コラム?Tの組成物の成分としては,(a)ビタミンA2.14〜5.35g,(b)ビタミンE2〜5g,(c)アーモンド油40〜60g,(d)ごま種子油40〜60g,(e)オリーブ油70〜130gがそれぞれ記載されている。
b)コラム?Uの組成物の成分としては,(a)ビタミンA1.07g,(b)ビタミンE0 6g (c)アーモンド油70g (d)ごま種子油70g (e) .,,,オリーブ油150gがそれぞれ記載されている。
c)コラム?Vの組成物の成分としては,(a)ビタミンA5.35g,(b)ビタミンE7g,(c)アーモンド油30g,(d)ごま種子油30g,(e)オリーブ油50gがそれぞれ記載されている。
d)コラム?Wの組成物の成分としては,(a)ビタミンA2.67g,(b)ビタミンE2 5g (c)アーモンド油50g (d)ごま種子油50g (e) .,,,オリーブ油100gがそれぞれ記載されている。
オ「表Aのこれら特に適当な具体例において,用いたビタミンEはトコフ, , エロール類の混合物 典型的にはアルフア-トコフエロール10〜14%ベータ-トコフエロールとガンマ-トコフエロールの組み合わせ64〜76%,およびデルタ-トコフエロール20〜30%,を構成し,かつこれにより提供される( 明細書」の「本発明を実施する最良の態様 ) 。」「 」カ「本発明による特に適当な調製物は表Aのコラム?Wに示された組成物であつて,この組成物は,現在のところ,もし間違つて内用薬として摂つた。」(「」 としても危険性のない多分最も強力なものと考えられている明細書の「本発明を実施する最良の態様 )」キ「組成物?Wを皮膚の罹患区域に適用することにより,今日までに行なわれた試験および実験で,著しく明確なかつ有益な結果が認められた。本調製物は皮膚科学的状態,例えば湿疹,乾癬,水虫,単純疱疹,火ぶくれ,虫さされなどによつて,通常起こる刺激,痒みおよび焼けるような感覚の, ,, 軽減に ならびに痔疾によつて起こる症状について作用が早く 効果的で長く持続することが証明された。更にまた,症状の軽減に加えて,組成物が,例えば痔核を収縮させる,あるいは開いた傷口の痂皮形成を早める場合のように,身体の自然の治癒能力を促進するように作用する多くの場合においては,明確な治癒結果が経験された。多くの場合,組成物?Wの一回の適用から8時間以上に及ぶ症状の軽減が経験された明細書 の 本 。」(「」 「発明を実施する最良の態様 )」(2)乙1発明の内容前記(1)によれば,乙1文献には,まとめていえば 「成分としてビタミ ,ンA,ビタミンE,アーモンド油,ごま種子油及びオリーブ油がそれぞれ所定の重量部からなるように配合された,湿疹,乾癬などの皮膚科学的状態による症状を軽減するための外部適用に向けられる医薬品組成物」の発明が記載されている,ということができる。
(3)本件特許発明との対比ア乙1発明には,その成分としてごま種子油が配合されていることから,オクタン誘導体の一種であるセサミン及びセサモリンが存在することは,本件特許出願当時の当業者が技術常識として理解するところである(争いがない 。したがって,乙1発明は,構成要件Aにおいて本件特許発明と )一致する。
イ乙1発明には,その成分としてビタミンEが配合されており,前記(1)オによれば,少なくとも「本発明を実施する最良の態様」として開示された実施例においては,ビタミンEにはα-トコフェロールが10〜14%の割合で混合されていることから,乙1発明は,構成要件Bにおいて本件特許発明と一致する。
ウ他方,乙1文献には 「オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェ ,ロールが0.1〜20重量部となる量で含有する」ことが記載されておらず,乙1発明は,構成要件Cにおいて本件特許発明と相違する(以下「相違点c1」という。。),「 」「」 エ乙1発明は外部適用に向けられる医薬品組成物 であって 飲食物ではないという点で,構成要件Dにおいて本件特許発明と相違する(以下「相違点d1」という。。)(4) 相違点d1についての判断ア乙1文献に記載された「外部適用に向けられる医薬品組成物」が,本件特許発明構成要件Dにおける「飲食物」すなわち「人が日常的に食物として摂取する物 (前記1(2)イc)参照)に含まれないことは明らかであ 」る。
イ被告らは,乙1文献の前記(1)カの記載をとらえて,乙1発明の医薬品組成物は内用薬としても使用可能である旨が記載されていて,経口的にも投与することができ,このような投与形態では,医薬品か飲食物かの区別は判然としないと主張する。
しかしながら,上記の記載は,外部適用に向けられる医薬品組成物である乙1発明の医薬品組成物を,もし「間違って」内用薬として摂ってしまったとしても,人体に危険性はない旨を述べているのであって 「多分最 ,も強力なもの」との記載部分は,本来の用途である外用の医薬品組成物としての効果について述べているにすぎないと解されるから,乙1発明の医薬品組成物を内用薬としても使用可能であるとしたものではない。したがって,被告らの上記主張は失当である。
(5)相違点c1についての判断ア被告らは,乙1文献には,本件特許発明構成要件Cが明示的には記載されていないにもかかわらず,乙1文献に構成要件Cが実質的に記載されている すなわち 相違点c1は相違点ではない と主張するためにご (, ),「ま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」という前提に立って,乙1発明におけるごま種子油の量からオクタン誘導体の含有量を計算している。
そこで,被告らによる上記の前提が,そもそも乙1文献に記載されていなくとも記載されているものと同視することができるもの,すなわち,本件特許出願当時における当業者の技術常識であったということができるか。,,, どうかが問題となる なお 乙1発明については 前記相違点d1により被告らの新規性欠如の主張に理由がないことが明らかであるものの,相違点c1についての上記争点は,他の無効理由に共通する争点であるので,ここで詳細に判断する。
イこの点について,被告らは,平成元年に刊行された本件書籍の161頁の表3 23 各種ゴマ種子中のセサミン セサモリンの含量 中の (a) .「 ,」「日本の栽培品種」欄に記載された14品種のごま種子のセサミン及びセサモリンの含有量を基に,ごま油中のオクタン誘導体の含有量が0.3〜1.4重量%であることは本件特許出願当時の技術常識であったと主張するので,以下検討する。
a)本件書籍の前記表3.23の(a)において,セサミン及びセサモリンの含有量の合計が最も少ないのは「系統番号792」とされる品種であって,セサミンが154.7mg/100gOil,セサモリンが152.9mg/100gOilであるから,当該品種におけるセサミン及びセサモリンの含有量の合計は,当該品種に含まれる油分に対して0.3076%である(乙13の2 。)他方,同表において,セサミン及びセサモリンの含有量の合計が最も「」,. 多いのは 系統番号638 とされる品種であって セサミンが8852mg/100gOil,セサモリンが476.5mg/100gOilであるから,当該品種におけるセサミン及びセサモリンの含有量の合計は,当該品種に含まれる油分に対して1.3617%である(乙13の2 。)これらの数値の小数点第2位以下を四捨五入すれば 「ごま種子の油 ,分中のセサミン及びセサモリンの含有量は0.3〜1.4重量%」という数値が一応導かれる。
なお,セサミン及びセサモリンは,いずれもオクタン誘導体の一種である(本件明細書の「発明の詳細な説明 【0010。」】)b)ところで,前記表3.23の(a)は 「国産ゴマ品種間のセサモリン ,およびリグナン抗酸化性物質の比較」と題する論文(1988年(昭和63年)発行の日本食品工業学会誌35巻7号収載。甲40)から引用されたものである。そして,同文献によれば,上記表3.23の(a)に示された数値は,国内産ごま種子14品種を,昭和58年に名古屋大学附属農場で栽培し,天日乾燥後,完熟種子を選別し,試料としたものである。
c)これに対して,本件書籍(甲37)の114頁によれば 「油の原料 ,のゴマは農産物のため,種子の品種,栽培条件,産地,気候などによって種子から得られる油脂の特性が異なってくる 」とされている。 。
実際,外国で刊行された「品種,生育地,エージング及び霜害により影響されるゴマ種子の油中のセサミン,セサモリン及びセサモール含有率」と題する論文(1955年(昭和30年)6月発行のザ・ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・オイル・ケミスツ・ソサイエティ32巻収載。甲39)の表?Uによれば,昭和28年に4品種のごま種子を6つの場所で栽培した場合のごま種子からの油におけるセサミン及びセサモリンの百分率が記載されているところ,栽培地によって 「K-10」と ,いう品種ではセサミン及びセサモリンの含有量の合計は0.251%から0.920%まで変化したことが示されている。
また,同論文の表?Wによれば,ごま種子が収穫前に霜害を受けることによって,ごま種子からの油中のセサミン及びセサモリンの含有率が低められることが示されている。
さらに,本件書籍(甲37)の119・120頁によれば 「わが国 ,ではゴマの産出が少なく,原料種子のほぼ全量を海外からの輸入に依存している 」とされている。 。
加えて,本件書籍(甲37)の161・162頁によると,ごま種子には,オクタン誘導体の一種であるセサミノールも含まれているとされている。
d)前記c)記載の各事実を考慮すると,前記表3.23の(a)のように,外国産のごま品種を一切含まず,かつ,日本における特定かつ単一の栽培地で同一時期に栽培した特定の14品種のごま種子についてセサミン及びセサモリンの含有量を調査した結果だけから 「一般的に,ごま種 ,子の油分中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」とか,これが当業者の技術常識であるとかいうことはできない。
むしろ,ごま種子は,その品種,栽培条件,産地,気候などにより,その油分中のセサミン及びセサモリンの含有量が異なるうえ,セサミノールなどセサミン及びセサモリン以外のオクタン誘導体も含有しているのであるから,ごま種子を直接圧搾する等の方法により抽出した「ごま原油 (乙3の1参照)中のオクタン誘導体の含有量は,本件における 」全証拠を総合考慮しても,これを一定の幅をもった数値としても特定することはできない。
e)さらに付け加えれば,前記表3.23の(a)は,ごま種子の油分中のセサミン及びセサモリンの含有量について記載したにとどまるものであるのに対し,一口に「ごま油」といっても 「焙煎ごま油 (原料のご ,」,, ), ま種子を焙煎し 蒸煮・圧搾し ろ過する工程を経て製造されるもの「ごまサラダ油 (原料のごま種子を焙煎することなく搾油した粗製油 」から各種の精製工程を経て製造されるもの「局方ごま油 (ごまサラ ),」ダ油よりもさらに高度に精製されたもの)といったものに分類されるのである(甲37の113・120〜126頁 。),, , 例えば 焙煎ごま油の場合 その製造工程である焙煎工程においては原料であるごま種子は高温で加熱され,焙煎される(焙煎の程度も様々に異なる )から(甲37の120・121頁 ,その過程でごま種子 。 )に含まれるオクタン誘導体が化学変化を起こすことも想定されるし,ろ過工程においては,搾油されたばかりの原油の中に夾雑物として含まれる水分,タンパク質,リン脂質などの粘着物や繊維質などが除去されていくから(甲37の122頁 ,仮にこの工程でオクタン誘導体が除去 )されることがなかったとしても,上記夾雑物の除去の結果として,ごま油中の重量比として見た場合のオクタン誘導体の含有量が変動することは避けられない。
また,セサミン及びセサモリンは,ごま油中に不けん化物として含まれる物質の一種であるところ(甲36 ,ごまサラダ油の精製工程の一 )つである脱臭工程においては,不けん化物としてのセサミン及びセサモリンも一部除去される(甲37の123・125・126頁 。)以上は,あくまで大まかに分類した場合の焙煎ごま油及びごまサラダ油の一般的な製造工程について述べたものであるから,実際には様々な製造業者が様々な独自の製造工程を経て各種の特徴あるごま油を製造・販売していること(甲46の1から4参照)をも考え合わせると,ごま油中のオクタン誘導体の含有量は,仮に原料となるごまの品質が同一であったとしても,製造工程次第で製品ごとに様々に異なるものである。
f)前記d)及びe)記載のような事情を総合考慮すると,ごま種子は,その品種,栽培条件,産地,気候などにより,その油分中のセサミン及びセサモリンの含有量が異なるうえ,一口に「ごま油」と言っても,ごま原油のみならず,焙煎ごま油,ごまサラダ油,局方ごま油など様々な種類のものがあり,その原料,製造又は精製の工程及び精製の度合いによって,オクタン誘導体の含有量もそれぞれ異なってくるものであるから,本件において 「ごま油」と称されるもの一般について「オクタン誘導 ,体の含有量は0.3〜1.4重量%である」という事実が客観的に立証されているということはできないし,もちろん,このことが本件特許出願当時における当業者の技術常識であったということもできない。
g)乙1文献においては,単に「ごま種子油」との記載があるだけで,いかなる種類のごま油を使用したのかも不明である(乙1発明の内容が医薬品組成物であることから,せいぜい精製度の低いごま原油が使用された蓋然性は低いということができるにとどまる。。)結局,乙1発明に成分として配合されたごま種子油中のオクタン誘導体の含有量については,これを特定することができない。
ウなお,被告らは 「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1. ,4重量%」という数値は,甲第39号証,甲第40号証,甲第41号証及び乙第19号証によっても裏付けられると主張するので,これらの点について補足的に検討する。
,「 .. a)被告らは 甲第39号証には オクタン誘導体含有量0 471〜1719%」という数値が示されていると主張するところ,被告ら主張の数値は,甲第39号証の「品種の影響」という欄に 「油中のセサミン ,含有率は,0.340%から1.13%までの範囲であり (中略)セ ,サモリン含有率は0.131%から0.589%までの範囲であり」と記載されていることから,セサミン含有率とセサモリン含有率のそれぞれの下限値の合計及びそれぞれの上限値の合計を単純に計算したものであると解される。
しかし,甲第39号証の表?Tを参照すれば明らかなように,例えば,セサミン含有率が0.340%の品種は,セサモリン含有率が0.387%である。被告らの計算は,甲第39号証の表?Tには33品種のごま種子についてセサミン含有率とセサモリン含有率の組合せが示されているにもかかわらず,その組合せを無視して計算をしたものであり,その前提において失当である。
また,そもそも,甲第39号証はごま種子の油分について述べた文献であって,各種の製造工程を経た「ごま油」一般のオクタン誘導体の含有量について,何らかの具体的な知見を示したものではない。
b)被告らは,甲第40号証には「オクタン誘導体含有量0.2782〜1.3617%」という数値が示されていると主張する。しかし,前記イb)のとおり,本件書籍の表3.23の(a)の記載は甲第40号証の実験結果を引用したものであるから,それぞれが独立した証拠価値を持つというものではない(なお,被告らが甲第40号証に基づいてオクタン誘導体含有量の下限を「0.2782%」と計算した根拠は説明されておらず,不明である。。)c)被告らは,甲第41号証(1990年(平成2年)8月発行のザ・ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・オイル・ケミスツ・ソサイエティ67巻8号収載の「ゴマ(SesamumindicumL)品種の油及び微量成分」と題する論文)には「オクタン誘導体含有量0.09〜1.09%」という数値が示されていると主張する。被告ら主張の数値は,甲第41号証の表1に 「セサミンの油中%が0.07〜0.6 ,1,セサモリンの油中%が0.02〜0.48」である旨が記載されているところから,セサミン含有率とセサモリン含有率のそれぞれの下限値の合計及びそれぞれの上限値の合計を単純に計算したものであると解される。
, ,, しかし 甲第39号証に関して指摘したのと同様に 被告らの計算は42品種のごま種子についてそれぞれセサミン含有率とセサモリン含有率を調査した結果の記載である甲第41号証の表1から,品種ごとにセサミン含有率とセサモリン含有率の組合せが異なることを無視して計算をしたものであり,その前提において失当である。
また,そもそも,甲第41号証はごま種子の油分について述べた文献であって,各種の製造工程を経た「ごま油」一般のオクタン誘導体の含有量について,何らかの具体的な知見を示したものではない。
d)乙第19号証の図2において,ごま油加熱時の抗酸化性物質の変化の実験に用いられた竹本油脂製造の焙煎ごま油には,加熱前にセサミンが9.0mg/ml,セサモリンが4.0mg/ml含有されていたことが示されているところ,被告らは,ごま油の比重が0.9であることを考慮すると,上記焙煎ごま油は,オクタン誘導体を1.4%含有するものであると主張する。
しかし,乙第19号証に記載された実験において使用された特定の種,「」 類のごま油製品のオクタン誘導体の含有量を示したところでごま油一般のオクタン誘導体の含有量を特定することができるというものではない。
エまた 被告らは 本件特許の審査過程で提出した本件意見書において 原 ,, 「油に対するセサミンとセサモリンの合計量(すなわち,リグナン類の量)は,ゴマの品種により異るものの,およそ0.3%(系統番号792)〜1.4%(系統番号638)であると考えられます」と主張したのは原告自身であり,原告は,このようなオクタン誘導体の含有量の計算値を本件意見書において主張して拒絶理由通知を回避したのであるから,このようなオクタン誘導体の含有量が技術常識ではないとする原告の主張は包袋禁反言に相当すると主張するので,この点についても検討する。
a)いわゆる包袋禁反言の原則とは,出願人が特許の出願経過において特許請求の範囲記載の文言に関して一定の陳述をなし,それが特許庁審査官に受け入れられた結果特許査定がされた場合に,その特許権に基づく侵害訴訟において,特許権者が上記陳述と矛盾する主張をして侵害を主張することが,禁反言の原則に照らして許されないとするものである。
すなわち,包袋禁反言の原則とは,特許権侵害訴訟において特許発明技術的範囲を認定するに当たって,出願経過を考慮することができるとする一場合を指すものである。
b)本件において被告らが指摘する本件意見書中の原告の主張とは,拒絶理由通知において引用された引用文献3及び4(乙10,乙11)には本件特許発明構成要件Cが記載されていないことを説明するために,上記引用文献3及び4における「ゴマ抽出物」が「ゴマ原油」を意味していることが明らかであると述べた上で,ごま原油に対するセサミンとセサモリンの合計量について述べたものである(乙3の1 。)したがって,本件意見書中の上記原告の主張は,そもそも本件特許発明の特許請求の範囲記載の文言に関して何らかの陳述をしたものではなく,拒絶理由通知における引用文献の記載内容に関して陳述をしたものであるから,包袋禁反言の原則が適用されるための前提を欠くといわなければならない。
以上によれば,原告が「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」ということは本件特許出願当時の技術常識ではないと主張することは,何ら包袋禁反言の原則に反するものではない。
, , , c)なお 被告らの主張を善解すれば 本件意見書中の前記原告の主張を「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」ということが本件特許出願当時の技術常識であったことを立証するための証拠の一つとする趣旨であるとも考えられる。
しかし,本件意見書中の上記原告の主張は,本件書籍の161頁の表. (), 3 23の記載を単に引用したものであるにすぎない 乙3の1 から上記表3.23の記載内容から独立して独自の証拠価値を有するような証拠ではない。そして,本件書籍中の表3.23の記載から本件特許出願時の技術常識を導くことができないことは前記イ認定のとおりである以上,本件意見書中の上記原告の主張が,技術常識についての前記認定に対して何らかの影響を与えるものということはできない。
オ以上によれば 「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4 ,重量%である」ことが本件特許出願当時における当業者の技術常識であることは立証されておらず,むしろ,乙1発明に成分として配合されているごま種子油中のオクタン誘導体の含有量を特定することができないことから,相違点c1が相違点ではないとする被告らの主張は,その前提において失当であり,成り立たない。
(6) 結論本件特許発明は,相違点c1又は同d1のいずれの相違点によっても,乙1文献に記載された発明であるということはできない。
( ()) 3争点1-2 乙第1号証に基づく無効理由 進歩性の欠如 が認められるかについて被告らは,本件特許発明は乙1発明に基づいて容易に発明をすることができたものであると主張する。
しかしながら,乙1発明は,湿疹,乾癬などの皮膚疾患による症状を軽減するための,外部適用に向けられる医薬品組成物に係る発明であり,乙1文献には,この組成物を人が食物として摂取する飲食物にも適用することができるとの開示も示唆もない(前記2(4)イ参照)以上,乙1発明から,技術分野が異なり,しかも人が口に入れるものである「飲食物」に係る発明である本件特許発明容易に想到することができたと認めることは到底できない。被告らは,乙1発明から本件特許発明に想到することについての論理付けについて,何ら説得的な主張をしておらず,被告らの上記主張は失当である。
4争点1-3(乙第2号証に基づく無効理由が認められるか)について(1) 乙2文献の記載乙2文献には,次の記載がある。
ア「これらの研究とは対照的に,IgE抗体の生成に及ぼすビタミンEの効果は,まだ報告されていない。それ故,IgE抗体の生成に及ぼすビタミンEの効果を研究することは興味がある(乙2の訳文の1頁) 。」イ「もう一つの実験において,EA及びEN(エーザイ株式会社,東京)が経口投与された。EAの投与量は1匹あたり0.1,1.0及び10m, ., .,. gであり ENの投与量は1匹あたり0 113 1 13 および113mgであって,最初の免疫化から実験の終了まで毎日,経口的にマウスに与えられた(乙2の訳文の2頁) 。」ウ「抗体生成に及ぼすビタミンEの効果を確認するために,EAとENが経口的に投与された。表?Vに示されるように,ビタミンEを投与したグループから得た血清のPCA滴定量は20日の対照と比べて低かった。10日と37日では,ビタミンE投与グループと対照の間でPCA滴定量の有意差は無かった。EAの高い投与は,ENよりもIgE抗体の阻害に効力の高い傾向を示した(乙2の訳文の2頁) 。」エ「IgE抗体の生成に及ぼす経口投与されたビタミンEの効果」と題する前記表?Vには,注として 「b)EAとENはゴマ油に混合され0日か ,ら毎日経口的に投与された 」との記載がある (乙2の訳文の5頁) 。。
(2) 乙2発明の内容前記(1)によれば,乙2文献には 「IgE抗体の生成に及ぼすビタミン ,E,具体的にはα-トコフェロールの酢酸塩(EA)及びニコチン酸塩(EN)の効果を研究するための実験において使用された,被験物質であるα-トコフェロールの酢酸塩各0.1mg,1.0mg,10mgをごま油に混合した経口投与用の実験動物用飼料,及び,被験物質であるα-トコフェロールのニコチン酸塩各0.113mg,1.13mg,11.3mgをごま油に混合した経口投与用の実験動物用飼料」の発明がそれぞれ記載されている,ということができる。
(3) 本件特許発明との対比ア乙2発明には,その成分としてごま油が配合されていることから,オクタン誘導体の一種であるセサミン及びセサモリンが存在することは,本件特許出願当時の当業者が技術常識として理解するところである(争いがない 。したがって,乙2発明は,構成要件Aにおいて本件特許発明と一致 )する。
イ乙2発明には,その成分としてα-トコフェロールの酢酸塩又はニコチン酸塩が配合されていることから,乙2発明は,構成要件Bにおいて本件特許発明と一致する。
ウ他方,乙2文献には 「オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフェ ,ロールが0.1〜20重量部となる量で含有する」ことが記載されておらず,乙2発明は,構成要件Cにおいて本件特許発明と相違する(以下「相違点c2」という。。)エ乙2発明は 「実験動物用飼料」であって「飲食物」ではないという点 ,で,構成要件Dにおいて本件特許発明と相違する(以下「相違点d2」という。。)(4) 相違点c2についての判断ア乙2文献においては,α-トコフェロールの酢酸塩及びニコチン酸塩をごま油に混合してマウスに経口投与したとの記載はあるものの,混合するごま油の量については,何らの記載もない。
この点について,被告らは,乙第5号証及び乙第24号証に基づいて,乙2文献において混合されたごま油の量は0.2mlであると特定している。
しかし,マウスにごま油等の油状物を経口投与する際の投与量は0.2mlであることが当業者の技術常識であるということについては,上記の各証拠によっても立証されているということはできない。
また,仮に,被告らが,乙第5号証に基づいて,乙2文献に記載された実験においてマウスに実際に経口投与されたごま油の量を直接立証しようとしているのであるとすれば,乙2文献の記載による新規性欠如の主張において,本件特許出願後に乙2文献の作成者により作成された乙第5号証の記載内容をもって,乙2文献に記載されていない内容を補充することができないことは明らかである。刊行物記載による新規性欠如の判断においては,当該刊行物に明示的に記載されていない内容であっても,当業者がその技術常識をもって当該刊行物を見れば,当該刊行物自体から当然に理解し得る内容であれば,これを当該刊行物の記載内容とみることができるとしても,後日に作成された他の文献を見なければ判明しない内容については,これを当該刊行物の記載内容とみることができないことは当然である。
イまた,被告らは,乙2文献には,本件特許発明構成要件Cが明示的には記載されていないにもかかわらず,乙2文献に構成要件Cが実質的に記載されている(すなわち,相違点c2は相違点ではない)と主張するため,「 ..」 にごま油中のオクタン誘導体の含有量は0 3〜1 4重量%であるという前提に立って,乙2発明におけるごま油の量からオクタン誘導体の含有量を計算している。
しかしながら,前記2(5)イf)記載のとおり,本件において 「ごま油 ,中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」という事実が客観的に立証されているということはできないし,もちろん,本件特許出願当時において当該事実が当業者における技術常識であったということもできない。むしろ,ごま油中のオクタン誘導体の含有量は(一定の幅をもった数値としても)特定することはできないのであるから,被告らの上記主張は,その前提においても採用し得ないものである。
さらに,乙2文献においては 「ごま油」との記載があるだけで,いか ,なる種類のごま油を使用したのかも不明である(乙2発明の内容が実験動物用飼料であることから,せいぜい精製度の低いごま原油が使用された蓋然性は低いということができるにとどまる。。)結局,乙2発明に成分として配合されたごま油中のオクタン誘導体の含有量については,これを特定することができない。
なお 「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%で ,ある」ということが技術常識ではないとする原告の主張が包袋禁反言の原, 。 則に反するものではないということは 前記2(5)エ記載のとおりであるウ以上によれば 「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4 ,重量%である」ことが本件特許出願当時における当業者の技術常識であることは立証されておらず,むしろ,乙2発明に成分として配合されているごま油中のオクタン誘導体の含有量を特定することができないことから,相違点c2が相違点ではないとする被告らの主張は,その前提において失当であり,成り立たない。
(5) 相違点d2についての判断ア「実験動物用飼料」が本件特許発明構成要件Dにおける「飲食物」に含まれないことは,前記1(2)イc)及びe)記載のとおりである。
イなお,被告らは,栄養学においては,飼料と飲食物を区別する実益はなく,両者は均等物と解されると主張する。
しかしながら,乙2文献では,ごま油は,IgE抗体の生成に影響を及ぼすと考えられるα-トコフェロールの酢酸塩又はニコチン酸塩をマウスに経口投与するための溶液として使用されているにすぎず,ごま油自体の効果については何ら検討がされていないのであるから,当業者は,乙2文献からα-トコフェロールの酢酸塩又はニコチン酸塩を飲食物としてヒトに対して投与することまでは技術思想として想到し得たとしても,少なくともそれらとごま油との混合物を飲食物とするとの技術思想が乙2文献に記載されているものと理解することはできないから,乙2発明の実験動物用飼料が本件特許発明構成要件Dにおける「飲食物」に当たるということはできない。
(6) 結論本件特許発明は,相違点c2及び同d2のいずれの相違点によっても,乙2文献に記載された発明であるということはできない。
5争点1-4(乙第7号証に基づく無効理由が認められるか)について(1) 乙7発明について乙第7号証の1,乙第25号証の1及び乙第29号証によれば,竹本油脂が,本件特許出願前に「江戸前天ぷら油16.5kg」という製品名の商品を販売していたことが認められる。
しかしながら,上記製品の「商品仕様書」として被告らが提出する乙第7号証の2は2007年(平成19年)2月20日に発行されたものであり,本件特許出願前に販売されていた「江戸前天ぷら油16.5kg」という製品 すなわち乙7発明の原材料及びその配合割合が 乙第7号証の2の 商 , ,「品仕様書」に記載されたものと同一であったということについては,本件における全証拠を総合考慮しても,的確な証明がないといわざるを得ない。
したがって,本件特許発明は,上記各証拠によっても,本件特許出願前に公然実施をされた発明であるということはできない。
,, ,. (2) 念のため 乙7発明が 乙第7号証の2に記載のとおり 食用大豆油900%と食用ごま油10.0%を配合した天ぷら油であったと仮定して検討しても,本件特許発明は,公然実施された発明であるということはできない。
その理由は,次のとおりである。
ア本件特許発明との対比, , a)乙7発明には その成分として食用ごま油が配合されていることからオクタン誘導体の一種であるセサミン及びセサモリンが存在することは,本件特許出願当時の当業者が技術常識として理解するところである(争いがない 。したがって,乙7発明は,構成要件Aにおいて本件特 )許発明と一致する。
b)乙7発明には,その成分として食用大豆油が配合されており,食用大豆油中には(具体的な含有量はともかくとして)α-トコフェロールが含まれていることは当事者間に争いがないから,乙7発明は,構成要件Bにおいて本件特許発明と一致する。
c)他方,乙第7号証の1・2には 「オクタン誘導体1重量部に対して ,α-トコフェロールが0.1〜20重量部となる量で含有する」ことが記載されておらず,乙7発明は,構成要件Cにおいて本件特許発明と相違する(以下「相違点c3」という。。)d)乙7発明は「飲食物」であるから,構成要件Dにおいて本件特許発明と一致する。
イ 相違点c3についての判断a)被告らは,乙第7号証の1・2には,本件特許発明構成要件Cが明示的には記載されていないにもかかわらず,乙7発明が構成要件Cにお(, ) いて本件特許発明と一致する すなわち 相違点c3は相違点ではない,「 .. と主張するためにごま油中のオクタン誘導体の含有量は0 3〜14重量%である」という前提に立って,乙7発明における食用ごま油の量からオクタン誘導体の含有量を計算している。
b)しかしながら,前記2(5)イf)記載のとおり,本件において 「ごま,油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」という事実が客観的に立証されているということはできないし,もちろん,本件特許出願当時において当該事実が当業者における技術常識であったということもできない むしろ ごま油中のオクタン誘導体の含有量は 一 。, (定の幅をもった数値としても)特定することはできない。
また,乙第7号証の2においては 「食用ごま油」との記載があるだ ,けで,いかなる種類のごま油を使用したのかも不明である(乙7発明の内容が天ぷら油であることから,せいぜい精製度の低いごま原油が使用された蓋然性は低いということができるにとどまる。。)ところで,乙第19号証においては,ごま油加熱時の抗酸化性物質の変化の実験に用いられた竹本油脂製造の焙煎ごま油には,加熱前にセサミンが9.0mg/ml,セサモリンが4.0mg/ml含有されていたことが示されている。しかしながら,上記焙煎ごま油と乙7発明に成分として配合されている食用ごま油とがオクタン誘導体の含有量において同等であることについては,何らの証拠も存在しない。
結局,乙7発明に成分として配合された食用ごま油中のオクタン誘導体の含有量については,これを特定することができない。
c)また 「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量% ,である」ということが技術常識ではないとする原告の主張が包袋禁反言の原則に反するものではないということは,前記2(5)エ記載のとおりである。
d)以上によれば 「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1. ,4重量%である」ことが本件特許出願当時における当業者の技術常識であることは立証されておらず,むしろ,乙7発明に成分として配合されている食用ごま油中のオクタン誘導体の含有量を特定することができないことから,相違点c3が相違点ではないとする被告らの主張は,その前提において失当であり,成り立たない。
(3) 結論本件特許発明は,前記(1)又は(2)のいずれの理由によっても,乙7発明によって本件特許出願前に公然実施をされた発明であるということはできない。
6争点1-5(乙第15号証と乙第7号証の1に基づく無効理由が認められるか)について(1) 乙15発明について被告らは,乙15文献の「てんぷら(天麩羅 」の項に 「大豆油に好み ),によりごま油を少し混ぜる」旨が記載されていること,及び本件特許出願前に竹本油脂が販売していた乙第7号証の1の「江戸前天ぷら油16.5kg」における大豆油とごま油の混合比9対1というのも,一般の天ぷら屋や油問屋の要望に合わせたものであり,当時最も多く用いられていた比率であったということができることから,大豆油とごま油を9対1の割合で調合し, 。 て天ぷら油とする乙15発明は 本件特許出願前に公知であったと主張する,「 」 しかしながら 乙15文献には 大豆油に好みによりごま油を少し混ぜる旨が記載されているだけであって,具体的な混合比は示されていない(乙15 。), 「. また 本件特許出願前に竹本油脂が販売していた 江戸前天ぷら油165kg」の原材料及びその配合割合が乙第7号証の2の「商品仕様書」に記載されたものと同一であったということについては的確な証明がないといわざるを得ないということは,前記5(1)認定のとおりである。
なお,被告らは,乙20文献においても大豆油とごま油を9対1で混合して天ぷら油として用いたことが記載されていると主張する。しかし,この記載は,全国の天ぷら専門店にアンケートを行い,回答のあった107店のうち1店だけがそのように回答したというものであって,これをもって,天ぷら油としては大豆油とごま油の混合比9対1というのが本件特許出願当時最も多く用いられていた比率であったことの証拠とするには不十分である。
(2) 結論したがって,乙15発明が本件特許出願前に公然知られた発明であるということはできない。
7争点1-6(乙第20号証に基づく無効理由が認められるか)について(1) 乙20文献の記載乙20文献には,次の記載がある。
ア「天ぷらにどのような油が好んで使われているかについて,特に天ぷらを専門としている店を対象に全国的にアンケート調査を行い,その実態を把握し,古来からのごま油と昨今の精製度の高いその他の油とが現在の天ぷら文化の中にどのように混在しているかを明らかにするとともに調理学的にもその要因について解析することを目的として研究を行った(乙。」20の14頁)イ「ごま油は図1に示すように精製法が2通りあり,それを区別して使っている場合が多いので2種類とした(ただし,ゴマサラダ油は一般には知られてないので,淡口ごま油とした。ばい煎ごま油のうち色のうすい油も淡口ごま油として市販しているメーカーもあるので,今回のアンケートでは淡口ごま油はゴマサラダ油とばい煎ごま油の色のうすい油を含むことになる(乙20の15頁) )。」ウ「調査の結果」として 「2種類の油を使用している場合」について, ,「混合する油の組合せとその混合比についてクロス集計すると表7になる(乙20の16頁) 。」エ「油の組合せと混合比両方については,淡口ごま油/綿実油の1:1,淡口ごま油/コーン油の3:1,淡口ごま油/コーン油の1:1,淡口ごま油/大豆油の4:1,などが多かった(乙20の17頁) 。」オ表7を参照すると,回答の多い油の組合せと混合比は,(d)綿実油と(j)ごま油(淡い色の香りの薄い油)の1:1が5店,(a)コーン油と(j)ごま油 淡い色の香りの薄い油 の3:1が4店 (a)コーン油と(j)ごま油 淡 (),(い色の香りの薄い油)の1:1が3店,(b)大豆油と(j)ごま油(淡い色の香りの薄い油)の4:1が3店である (乙20の17頁) 。
(2) 乙20発明の内容ア被告らは 乙20文献の表7には 以下のような油の組合せと混合比 乙 ,, (20発明)が記載されていると主張する。
?@(a)コーン油5:(g)ごま油(濃い色の香りの強い油)1?A(a)コーン油4:(j)ごま油(淡い色の香りの薄い油)1?B(b)大 豆 油9:(g)ごま油(濃い色の香りの強い油)1?C(b)大 豆 油4:(j)ごま油(淡い色の香りの薄い油)1?D(c)菜 種 油3:(g)ごま油(濃い色の香りの強い油)1?E(d)綿 実 油9:(g)ごま油(濃い色の香りの強い油)1?F(d)綿 実 油8:(g)ごま油(濃い色の香りの強い油)2?G(d)綿 実 油4:(j)ごま油(淡い色の香りの薄い油)1?H(d)綿 実 油3:(j)ごま油(淡い色の香りの薄い油)1?I(d)綿 実 油7:(g)ごま油(濃い色の香りの強い油)3イところで,前記(1)エにおいては 「油の組合せと混合比両方について ,は (中略)淡口ごま油/コーン油の3:1 (中略)淡口ごま油/大豆 , ,油の4:1,などが多かった 」と記載されている。他方,前記(1)オ記 。
,, , 載のとおり 表7では ajの組合せで混合比が3:1という回答が4店bjの組合せで混合比が4:1という回答が3店と表示されている。
すなわち,表7において 「ajの組合せで混合比が3:1」を(a)コ ,ーン油3に対して(j)ごま油(淡い色の香りの薄い油)が1 「bjの組 ,合せで混合比が4:1」を(b)大豆油4に対して(j)ごま油(淡い色の香りの薄い油)が1という意味に理解してしまうと,前記(1)エの記載と辻褄が合わないことがわかる。
そうすると,?@前記(1)エの記載が組み合わせる油の記載順序を取り違えたか,?A表7における混合比の記載順序が逆であるかのいずれかでなければならない。しかし,乙20文献を子細に検討しても,上記のいずれであるかを断定することができない。
仮に?Aであったとするならば,そもそも被告らが主張する乙20発明のような油の混合比は,乙20文献には全く記載されていないことになるから,被告らの主張はそれ自体失当である。その意味では,?@であることの立証がないという時点で,乙20文献に基づく無効理由は認められない。
ただし,なお念のため,?@であるということを前提にして,以下検討する。
ウ被告らが前記アで主張する10通りの油の組合せと混合比のうち,?Aの(a)コーン油4:(j)ごま油(淡い色の香りの薄い油)1及び?Iの(d)綿実油7:(g)ごま油(濃い色の香りの強い油)3については,表7に記載されていると認めることができないから,残りの8通りの油の組合せと混合(,「」, 比を対象に検討することとする なお 以下 乙20発明 というときは上記8通りの油の組合せと混合比の天ぷら油を指すものとする。。)(3) 本件特許発明との対比ア乙20発明には,その成分としてごま油が配合されていることから,オクタン誘導体の一種であるセサミン及びセサモリンが存在することは,本件特許出願当時の当業者が技術常識として理解するところである(争いがない 。したがって,乙20発明は,構成要件Aにおいて本件特許発明と )一致する。
イ乙20発明には,その成分としてコーン油,大豆油,菜種油又は綿実油が配合されているところ,大豆油中には(具体的な含有値はともかくとして)α-トコフェロールが含まれていることは当事者間に争いがなく,コーン油,菜種油及び綿実油にも,本件書籍(甲37)の181頁の表3., , 28によれば α-トコフェロールが含まれていることが認められるから乙20発明は,構成要件Bにおいて本件特許発明と一致する。
ウ他方,乙20文献には 「オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフ ,ェロールが0.1〜20重量部となる量で含有する」ことが記載されておらず,乙20発明は,構成要件Cにおいて本件特許発明と相違する(以下「相違点c4」という。。)エ乙20発明は「飲食物」であるから,構成要件Dにおいて本件特許発明と一致する。
(4) 相違点c4についての判断ア被告らは,乙20文献には,本件特許発明構成要件Cが明示的には記載されていないにもかかわらず,乙20文献に構成要件Cが実質的に記載(, ), されている すなわち 相違点c4は相違点ではない と主張するために「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」という前提に立って,乙20発明におけるごま油の量からオクタン誘導体の含有量を計算している。
イしかしながら,前記2(5)イf)記載のとおり,本件において 「ごま油 ,中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」という事実が客観的に立証されているということはできないし,もちろん,本件特許出願当時において当該事実が当業者における技術常識であったということもできない。むしろ,ごま油中のオクタン誘導体の含有量は(一定の幅をもった数値としても)特定することはできない。
また,乙20発明においては,いかなる種類のごま油を使用したのかも不明である(乙20発明の内容が天ぷら油であることから,せいぜい精製度の低いごま原油が使用された蓋然性は低いということができるにとどまる。。)ところで,被告らは,乙20発明のうち,綿実油9:ごま油1の天ぷら油について,乙第39号証の分析試験成績書記載の数値から,ごま油中のオクタン誘導体の含有量を立証しようとする。しかしながら,乙20文献に記載された綿実油9:ごま油1の天ぷら油に使用されたごま油と乙第39号証において検体とされた「純正ごま油」の成分組成が同一であることについての証明はないから,乙第39号証記載の数値を前提とすることはできない(なお,乙第39号証は「純正ごま油」についてセサミンの含有量のみを分析している。しかし,ごま油にはセサミン以外のオクタン誘導, 。)。 体も含有されているから この点においても被告らの立証は失当である結局,乙20発明に成分として配合されたごま油中のオクタン誘導体の含有量については,これを特定することができない。
ウまた 「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%で ,ある」ということが技術常識ではないとする原告の主張が包袋禁反言の原, 。 則に反するものではないということは 前記2(5)エ記載のとおりであるエ以上によれば 「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4 ,重量%である」ことが本件特許出願当時における当業者の技術常識であることは立証されておらず,むしろ,乙20発明に成分として配合されているごま油中のオクタン誘導体の含有量を特定することができないことから,相違点c4が相違点ではないとする被告らの主張は,その前提において失当であり,成り立たない。
(5)結論本件特許発明は,相違点c4によれば,乙20発明によって本件特許出願前に公然知られた発明であるということも,公然実施をされた発明であると, 。 いうことも また乙20文献に記載された発明であるということもできない8争点1-7(乙第21号証に基づく無効理由が認められるか)について(1) 乙21文献の記載乙21文献には,次の記載がある。
ア「揚げ油はまず食品を加熱する媒体としての役割があり,この場合,水とは異なり,高温の熱媒体で,食品を速やかに加熱するだけでなく,脱水作用がある。さらに高温での油の分解物による香りや油のなめらかな口あたりなどを食品に付加して特有の風味と栄養価をもったフライ食品を与えるので広く世界の調理に用いられ種々の油が利用されている(乙21。」の198頁)イ「日本では量的にはダイズ,ナタネ油が多いが,ゴマ油は上等な揚げ油として賞用されている。香りの強い焙煎ゴマ油は,他の食用油に2〜3割混ぜて天ぷらに使われており(乙21の198頁) ,」(2) 乙21発明の内容前記(1)によれば,乙21文献には 「大豆油に焙煎ごま油を2割混ぜた ,揚げ油」の発明が記載されている,ということができる。
(3) 本件特許発明との対比, , ア乙21発明には その成分として焙煎ごま油が配合されていることからオクタン誘導体の一種であるセサミン及びセサモリンが存在することは,本件特許出願当時の当業者が技術常識として理解するところである(争いがない 。したがって,乙21発明は,構成要件Aにおいて本件特許発明 )と一致する。
イ乙21発明には,その成分として大豆油が配合されており,大豆油中には(具体的な含有量はともかくとして)α-トコフェロールが含まれていることは当事者間に争いがないから,乙21発明は,構成要件Bにおいて本件特許発明と一致する。
ウ他方,乙21文献には 「オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフ ,ェロールが0.1〜20重量部となる量で含有する」ことが記載されておらず,乙21発明は,構成要件Cにおいて本件特許発明と相違する(以下「相違点c5」という。。)エ乙21発明は「飲食物」であるから,構成要件Dにおいて本件特許発明と一致する。
(4) 相違点c5についての判断ア被告らは,乙21文献には,本件特許発明構成要件Cが明示的には記載されていないにもかかわらず,乙21文献に構成要件Cが実質的に記載(, ), されている すなわち 相違点c5は相違点ではない と主張するために「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」という前提に立って,乙21発明における焙煎ごま油の量からオクタン誘導体の含有量を計算している。
イしかしながら,前記2(5)イf)記載のとおり,本件において 「ごま油 ,中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」という事実が客観的に立証されているということはできないし,もちろん,本件特許出願当時において当該事実が当業者における技術常識であったということもできない。むしろ,ごま油中のオクタン誘導体の含有量は(一定の幅をもった数値としても)特定することはできない。
また,乙21発明においては,焙煎ごま油を使用することが記載されている。しかし,焙煎ごま油に限っても,オクタン誘導体の含有量を(一定の幅をもった数値としても)特定することができないことは同様である。
結局,乙21発明に成分として配合された焙煎ごま油中のオクタン誘導体の含有量については,これを特定することができない。
ウ「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」ということが技術常識ではないとする原告の主張が包袋禁反言の原則に反するものではないということは,前記2(5)エ記載のとおりである。
エ以上によれば 「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4 ,重量%である」ことが本件特許出願当時における当業者の技術常識であることは立証されておらず,むしろ,乙21発明に成分として配合されている焙煎ごま油中のオクタン誘導体の含有量を特定することができないことから,相違点c5が相違点ではないとする被告らの主張は,その前提において失当であり,成り立たない。
(5)結論本件特許発明は,相違点c5によれば,乙21発明によって本件特許出願前に公然知られた発明であるということも,また乙21文献に記載された発明であるということもできない。
9争点1-8(乙第26号証に基づく無効理由が認められるか)について(1) 乙26文献の記載乙26文献には,次の記載がある。
ア「著者らはゴマおよびゴマ油に含まれるセサモール,セサミノール,トコフェロール等の抗酸化物質が生体内過酸化脂質生成を抑制し老化抑制効果をもつかどうかを調べてみようと考えている。本研究はその第一歩としてゴマそのものを用いて,竹田らにより開発された老化促進モデルマウス(SAM)を用いてゴマの効果を調べてみた(乙26の445頁) 。」イ「実験動物としてSAM-P/1系マウスを用いた。マウスは生後6週より試験飼料にて1ペア1ケージで18週間飼育し,その間の繁殖率を調べた。雄はさらに10週間合計28週間飼育した(乙26の445頁) 。」ウ「実験に用いた飼料組成は表1に示すとおりである。コントロール食として25%カゼイン,10%コーン油を,ゴマ食としてすりゴマ(株式会), 。 社真誠製 20%添加を用い 飼料中の脂質含量を10%近辺にそろえたまたゴマ食は飼料中のタンパク質含量をコントロール食と同一にするためにゴマに含まれるタンパク質分をカゼインから差し引いた(乙26の。」445・446頁)エ表1には 「飼料組成」として 「ゴマ食」はカゼイン20.9%,す ,,りごま20.0%,ミネラル混合3.5%,ビタミン混合1.0%,α-スターチ54.6%であること及び「ゴマ食」の脂質含量が10.9%であることが記載されている (乙26の446頁) 。
オ表3には 「飼料トコフェロール量」として 「ゴマ食」のα-トコフ , ,ェロールは35.0mg/kgdietと記載されている (乙26の。
448頁)(2) 乙26発明の内容前記(1)によれば,乙26文献には 「ごまに含まれるセサモール,セサ ,ミノール,トコフェロール等の抗酸化物質が生体内過酸化脂質生成を抑制し老化抑制効果をもつかどうかを研究するための実験において,実験動物である老化促進モデルマウスに飼料として与えられた,カゼイン20.9%,すりごま20.0%,ミネラル混合3.5%,ビタミン混合1.0%,α-スターチ54.6%からなるごま食であって,脂質含量が10.9%,α-トコフェロールが35.0mg/kgdietであるもの」との発明が記載されている,ということができる。
(3) 本件特許発明との対比ア乙26発明には,その成分としてすりごまが配合されていることから,すりごまの油分中にオクタン誘導体の一種であるセサミン及びセサモリンが存在することは,本件特許出願当時の当業者が技術常識として理解するところである(争いがない 。したがって,乙26発明は,構成要件Aに )おいて本件特許発明と一致する。
イ乙26発明のごま食中にはα-トコフェロールが存在することから,乙26発明は,構成要件Bにおいて本件特許発明と一致する。
ウ他方,乙26文献には 「オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフ ,ェロールが0.1〜20重量部となる量で含有する」ことが記載されておらず,乙26発明は,構成要件Cにおいて本件特許発明と相違する(以下「相違点c6」という。。)エ乙26発明は 「実験動物用飼料」であって「飲食物」ではないという ,点で,構成要件Dにおいて本件特許発明と相違する(以下「相違点d6」という。。)(4) 相違点c6についての判断ア被告らは,乙26文献には,本件特許発明構成要件Cが明示的には記載されていないにもかかわらず,乙26文献に構成要件Cが実質的に記載(, ), されている すなわち 相違点c6は相違点ではない と主張するために「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」という前提に立って,乙26発明における脂質含量10.9%が実質的にすりごま中のごま油と考えられるとして,オクタン誘導体の含有量を計算している。
イしかしながら,乙26文献においては 「すりゴマ(株式会社真誠製 」 , )との記載があるだけで,すりごま中におけるオクタン誘導体の含有量は示されていない。
乙26発明に成分として配合されているカゼイン中にも脂質が含まれているのではないかとの疑問も生じるところではあるものの,仮に,乙26発明における脂質含量10.9%がすべてすりごま中の油分であると考えることができたとしても,前記2(5)イf)記載のとおり,本件において,「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」という事実が客観的に立証されているということはできないし,もちろん,本件特許出願当時において当該事実が当業者における技術常識であったということもできない。むしろ,ごま油中のオクタン誘導体の含有量は(一定の幅をもった数値としても)特定することはできないのであるから,すりごま中におけるオクタン誘導体の含有量もまた,特定することはできない。
なお,乙26発明に成分として配合されたのが「すりごま」であり,その油分の組成は精製されたごま油よりもむしろごま原油に近い(あるいは等しい)ものだと考えたとしても,前記2(5)イd)記載のとおり,ごま原油中のオクタン誘導体の含有量についても,これを(一定の幅をもった数値としても)特定することはできないから,すりごま中におけるオクタン誘導体の含有量もまた,特定することはできない。
結局,乙26発明に成分として配合されたすりごま中のオクタン誘導体の含有量については,これを特定することができない。
ウ「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」ということが技術常識ではないとする原告の主張が包袋禁反言の原則に反するものではないということは,前記2(5)エ記載のとおりである。
エ以上によれば 「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4 ,重量%である」ことが本件特許出願当時における当業者の技術常識であることは立証されておらず,むしろ,乙26発明に成分として配合されているすりごま中のオクタン誘導体の含有量を特定することができないことから,相違点c6が相違点ではないとする被告らの主張は,その前提において失当であり,成り立たない。
(5) 相違点d6についての判断「実験動物用飼料」が本件特許発明構成要件Dにおける「飲食物」に含まれないことは,前記1(2)イc)及びe)記載のとおりである。もっとも,乙,, ,, 26発明は 前記(2)のとおり ごまに含まれるセサモール セサミノールトコフェロール等の抗酸化物質が生体内過酸化脂質生成を抑制し老化抑制効果をもつかどうかを研究するための実験において,実験動物である老化促進モデルマウスに飼料として与えられたごま食であるから,当業者は,乙26文献記載の実験がヒトの老化抑制効果をもつ物質の研究のための実験であることまでは理解することができるものである。しかし,乙26文献においては,乙26発明における実験動物用の飼料として与えられたごま食が,そのまま人が日常的に食物として摂取する物である「飲食物」として用いることができるということについての開示も示唆も全くないのであるから,乙26文献に構成要件Dが実質的に記載されているとみることは困難である。
(6) 結論本件特許発明は,相違点c6及び同d6のいずれの相違点によっても,乙26文献に記載された発明であるということはできない。
10争点1-9(乙第30号証に基づく無効理由が認められるか)について(1) 乙30文献の記載乙30文献には,次の記載がある。
ア「ゴマ油は,韓国でもその需要が多く他の植物性油よりも価格が高く,値段の低い他種類の油と混合させる等,さまざまな方法により市中に不良品が流通してる可能性が高く,実際数年前,ゴマ油に廃油を混合調剤した物が流通され物議をかもした事例もあった。よって,ゴマ油の変造可否を簡単に判別できる適切な分析法を確立し,ゴマ油の効率的な品質管理がされるべきと考える(乙30の訳文1・2頁) 。」イ「従来,ゴマ油の純度に対する試験方法としては (中略)する方法等 ,がある。
であるが,これらの方法等が複雑で,分析結果に対する解釈に困難であるため,広く実用的な方法が要求されている。よって我々は,迅速に正確なゴマ油の純度判別の一環として,ゴマ油の特徴である脂肪酸組成比であるC18:1+C18:2/C16:0×C18:3と修正Villavecchia-Suarezテストを結合させたFV(脂肪酸比&Villavecchia反応)値を利用し,市中で流通してるゴマ油,総74種類に対しその純度を判定し,ゴマ油の変造に使用されている混入油の実態を把握しようと考えた(乙30の訳文2頁) 。」ウ「変造油製造-米糠油,大豆油,コーン油,シソ油,菜種油,綿実油等,,, 。」 を標準ゴマ油に各々 10% 40% 70%の水準で混入し変造した(乙30の訳文2頁)エ「異種油混入による,他のゴマ油のFV値の変化を測定するために,標準ゴマ油に主要植物性油を10%,40%,70%水準で混入させFV値を測定した。表3及び図2をみると,混入比率が大きくなる程FV値が減少し,混入比率が小さくなる程FV値が増加した(乙30の訳文4頁) 。」オ「表3.市販の大豆油,コーン油,菜種油,シソ油,米糠油および綿実油を混合したゴマ油のFV値」という表及び「図2.市販の大豆油,コーン油,菜種油,シソ油,米糠油および綿実油を混合したゴマ油のFV値」という図には,大豆油,コーン油,菜種油,シソ油,米糠油又は綿実油をそれぞれ70%,40%,10%混合したごま油について,そのFV値等が記載されている (乙30の訳文7・12頁) 。
(2) 乙30発明の内容前記(1)によれば,乙30文献には 「迅速に正確なごま油の純度判別の ,, , 一環として FV値を利用しようという目的をもって行われた研究においてFV値を測定比較するためのサンプルとして試験的に配合された,?@コーン油70:ごま油30,?A菜種油70:ごま油30,?B米糠油70:ごま油30,?C綿実油70:ごま油30の混合比の変造油」の発明がそれぞれ記載されている,ということができる。
(3) 本件特許発明との対比ア乙30発明には,その成分としてごま油が配合されていることから,オクタン誘導体の一種であるセサミン及びセサモリンが存在することは,本件特許出願当時の当業者が技術常識として理解するところである(争いがない 。したがって,乙30発明は,構成要件Aにおいて本件特許発明と )一致する。
イ乙30発明には,その成分としてコーン油,菜種油,米糠油又は綿実油。()., が配合されている 本件書籍 甲37 の181頁の表3 28によれば, , コーン油 菜種油及び綿実油にα-トコフェロールが含まれていることが乙第7号証の3によれば,米糠油にα-トコフェロールが含まれていることがそれぞれ認められるから,乙30発明は,構成要件Bにおいて本件特許発明と一致する。
ウ他方,乙30文献には 「オクタン誘導体1重量部に対してα-トコフ ,ェロールが0.1〜20重量部となる量で含有する」ことが記載されておらず,乙30発明は,構成要件Cにおいて本件特許発明と相違する(以下「相違点c7」という。。)エ乙30発明は研究目的で試験的に配合された変造油であって 「人が日 ,常的に食物として摂取する物」という意味での「飲食物」ではないという点で,構成要件Dにおいて本件特許発明と相違する(以下「相違点d7」という。。)(4) 相違点c7についての判断ア被告らは,乙30文献には,本件特許発明構成要件Cが明示的には記載されていないにもかかわらず,乙30文献に構成要件Cが実質的に記載(, ), されている すなわち 相違点c7は相違点ではない と主張するために「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」という前提に立って,乙30発明におけるごま油の量からオクタン誘導体の含有量を計算している。
イしかしながら,前記2(5)イf)記載のとおり,本件において 「ごま油 ,中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%である」という事実が客観的に立証されているということはできないし,もちろん,本件特許出願当時において当該事実が当業者における技術常識であったということもできない。むしろ,ごま油中のオクタン誘導体の含有量は(一定の幅をもった数値としても)特定することはできない。
また,乙30発明においては,いかなる種類のごま油を使用したのかも不明である(乙30発明に成分として配合されたごま油は「標準ゴマ油」とされていること(前記(1)ウ)から,せいぜい精製度の低いごま原油が使用された蓋然性は低いということができるにとどまる。。)結局,乙30発明に成分として配合されたごま油中のオクタン誘導体の含有量については,これを特定することができない。
ウまた 「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4重量%で ,ある」ということが技術常識ではないとする原告の主張が包袋禁反言の原, 。 則に反するものではないということは 前記2(5)エ記載のとおりであるエ以上によれば 「ごま油中のオクタン誘導体の含有量は0.3〜1.4 ,重量%である」ことが本件特許出願当時における当業者の技術常識であることは立証されておらず,むしろ,乙30発明に成分として配合されているごま油中のオクタン誘導体の含有量を特定することができないことから,相違点c7が相違点ではないとする被告らの主張は,その前提において失当であり,成り立たない。
(5) 相違点d7についての判断乙30発明においては,人が食物として摂取するには適さない種類の油は混合されていないので,これを食物として摂取すること自体は可能である。
しかしながら,乙30発明は,ごま油の純度判別方法を研究する目的で,FV値を測定比較するためのサンプルとして試験的に配合された混合比の変造油であるから,それ自体は人が食物として摂取することを念頭において作られたものではない。
したがって,乙30文献に接した当業者が乙30発明を人が日常的に食物として摂取する物である「飲食物」と理解することは困難であり,乙30発明が本件特許発明構成要件Dにおける「飲食物」に当たるということはできない。
(6)結論本件特許発明は,相違点c7及び同d7のいずれの相違点によっても,乙30文献に記載された発明であるということはできない。
( ) 11争点2 被告らの行為の差止請求及び被告製品の廃棄請求が認められるかについて(1) 差止請求についてア被告製品が本件特許発明技術的範囲に属することは争いがなく,前記1から10までによれば,本件特許発明は,特許無効審判により無効とされるべきものとは認められない。
したがって,被告らが現に被告製品の製造・譲渡等の侵害行為を継続していると認めるに足りる証拠はないものの,被告らが将来において侵害行為を再開するおそれが認められる場合は,その予防のため,原告はその差止めを求めることができる。
イこの点について,まず,被告らが,本件訴訟において,本件特許発明には無効理由があるから原告は本件特許権を行使することができないと一貫して主張し続けていることは,当裁判所に顕著な事実である。
また,被告AFCの代理人から原告代理人に対して,同被告が被告製品の販売を中止したのは平成18年9月20日であり,在庫品は産業廃棄物処理業者に依頼して廃棄処分済みであるとの回答が平成18年11月13日付けであった(甲20)にもかかわらず,被告AFCのウェブページでは 平成18年12月13日時点においても 被告製品が代理店向けの 取 , ,「扱商品」として掲載されていた(甲7の4 。)さらに,被告らが提出した売り掛け帳簿(乙23の2)によれば,被告AFCは,平成18年9月25日に,270粒入製品を通販で1袋無償譲渡し,同月27日に,新30粒入製品を卸売で6袋販売したことが認められる。これらはいずれも,本訴提起前に被告AFCが被告製品の販売を中止した日として原告に対し回答した平成18年9月20日よりも後のことである。
ウ前記イの各事実にかんがみれば,被告らが将来において侵害行為を再開するおそれがあるということができるから,原告は,その予防のための差止めを求めることができるものと解される。
ただし,被告らの間においては,被告アムスが製造会社,被告AFCが販売会社という関係にあり,被告AFCについては,被告製品を過去に製造したという事実も,将来これを製造する能力があるという事実も認めることができないことから,被告AFCに対する被告製品の製造の差止請求については,その必要性が認められない。
(2) 廃棄請求についてア被告アムスに対する廃棄請求について被告アムスは,入出庫等管理表(乙34の3)の41頁において,平成18年9月21日付けで,新30粒入製品742袋,270粒入製品117袋,90粒入製品406本及び被告製品のカプセル5万2000球を有限会社フォーディーに対して出荷し,廃棄したかのように記載している。
また,同日付けの棚卸資産除却申請書(乙37の1枚目)によれば,被告アムスの社内では,上記各数量の被告製品を販売中止のため廃棄処分したい旨の申請がなされており,これに添付された産業廃棄物管理票(乙37の2枚目以下)によれば,被告アムスが排出した「動植物性残渣」960kgの処分を上記有限会社フォーディーが受託し,遅くとも平成18年9月30日までにはこれを処理した旨が記載されている。
しかしながら,被告アムスは,入出庫等管理表(乙34の3)の24頁においては 「在庫管理表」という標題で,平成18年9月30日時点で ,新30粒入製品1059袋,90粒入製品414本及び被告製品のカプセ,, ル7万0800球を在庫として保有していることを記載しており これは入出庫等管理表(乙34の3)の41頁の記載と明らかに矛盾する。
したがって,被告アムスが被告製品の在庫をすべて廃棄済みであると認めることはできず,むしろ被告アムスはなお在庫を保有していると認めるべきであるから,被告アムスに対する被告製品の廃棄請求の必要性が認められる。
イ被告AFCに対する廃棄請求について,, 乙第34号証の1及び2のフロー図によれば 被告製品の譲渡に関して被告AFCは自らの在庫を持たず,顧客から受注する都度被告アムスに発注し,被告製品は被告アムスから直接顧客に対して配送されるという仕組みをとっていたことが認められる。
(),, 被告らが提出した売り掛け帳簿 乙23の2 によれば 被告AFCは平成18年11月29日に,新30粒入製品5袋の返品を受けたことが認められる。しかし,上記のような仕組みの下では,被告AFCにおいて返品を受けた被告製品をそのまま現在まで保管しているとは認め難い。
したがって,被告AFCが現在被告製品の在庫を保有していると認めるに足りる証拠はないから,被告AFCに対する廃棄請求は理由がない。
12争点3(被告らの行為により原告が受けた損害の額)について(1) 特許法102条2項により推定される原告の損害の額についてア原告による本件特許発明実施甲第4号証の1によれば,平成12年12月9日付け朝日新聞に原告の製品である「セサミンE」の広告が掲載されていることが認められ,甲第4号証の2から6までによれば,途中で製品名を「セサミンEプラス」と変更したものの,原告が「セサミンE」シリーズの製品をその後も継続して販売していることが認められる。
なお 「セサミンE」シリーズの製品が本件特許発明実施品であるこ ,とは,当事者間に争いがない。
イ被告らの侵害行為の一体性被告AFCが被告アムスと代表者を同一にし,被告アムスの100%子会社であること,被告製品の製造・販売に関しては,被告アムスと被告AFCは製造会社と販売会社という関係にあり,被告らは共同して被告製品を製造・販売しているということについては,当事者間に争いがない。
また,乙第34号証の3によれば,被告アムスが被告製品の販売先としていたのは被告AFCのみであって,他の会社に対して被告製品を販売したとの事実は一切認められない。しかも,被告製品の譲渡に関して,被告, , AFCは自らの在庫を持たず 顧客から受注する都度被告アムスに発注し被告製品は被告アムスから直接顧客に対して配送されるという仕組みをとっていたことは,前記11(2)イにおいて認定したとおりである。
上記のような被告製品の製造・販売における被告ら両社の緊密な一体性, , にかんがみると 被告製品の製造及び販売という一連の侵害行為についてこれを全体的に考察すれば,被告らは,主観的にも共同して,積極的に製造と販売の役割分担を果たしていたものということができる。
このような場合においては,特許法102条2項に基づいて侵害者が侵害行為により受けた利益の額を特許権者が受けた損害の額と推定するに当たって,被告らを一体的な侵害者と評価した上で,被告製品の製造及び販売という一連の侵害行為により被告らが受けた利益の全体額をもって原告が受けた損害の額と推定するのが相当である。
ウ被告らが受けた利益の額a)総売上高●(省略)●b)売上数量被告製品の販売形態として,旧30粒入製品,新30粒入製品,90粒入製品及び270粒入製品の4種類があることは,当事者間に争いがない。
●(省略)●c)原材料費●(省略)●d)包装容器代(単価)●(省略)●e)(原材料費・包装容器代以外の)その他変動費●(省略)●しかし,その「費用内容の詳細」を見ると 「純正胡麻油「ゴマ ,」,イースト「理研オイルE「アルミ袋(印刷「シリカゲル」等 」,」,)」,が掲げられているところ,これらはいずれも,入出庫等管理表(乙34の3)において,既に「原材料費」の欄に「原材料名」として記載されていたり 「包装容器代」の欄に「包装容器材料名」として記載 ,されていたりするものである。これらの二重記載から判断すると,むしろ,原材料費・包装容器代以外に被告アムスが変動費として計上すべき具体的な費用は存在しないものと認められ,他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。
●(省略)●f)個別固定費●(省略)●?Aところで,特許法102条2項の「侵害行為により受けた利益」の, , 算定においては 侵害品の製造又は販売に相当な因果関係のある費用すなわち,製造又は販売に直接必要な変動費及び個別固定費を控除の対象としていわゆる貢献利益(広義の限界利益)を算定すべきであって,侵害品を製造又は販売しなくとも発生する費用(一般固定費)は控除の対象とすべきではないと考えられる。
そこで,被告らが前記?@において個別固定費として計上している費用については,上記の一般固定費との振り分けが問題となるところ,被告らの入出庫等管理表(乙34の3・4)における前記?@の記載内容から判断する限り,一般論としては,上記費用は一般固定費として振り分けられるべき性質の費用であるということができ,特に侵害品の製造又は販売に相当な因果関係のある費用として個別固定費に振り分けられるべきものが計上されていることをうかがわせるような証拠はない。
?Bしたがって,被告らが受けた利益の額を計算する上で,被告製品の総売上高から控除すべき被告らの個別固定費は存在しないものと認められる。
g)被告らが受けた利益の額の計算●(省略)●エよって,特許法102条2項により推定される原告の損害の額は,原告主張のとおり,1538万円を下回らない。
(2) 弁護士費用相当額原告は,被告らによる本件特許権侵害行為のために本件訴えの提起を余儀なくされたものであり,原告の請求の内容,本件の事案の性質,本件訴訟の経緯等を考慮すれば,本件訴え提起に伴う弁護士費用相当の損害としては,200万円を相当と認める。
(3) 損害額のまとめ以上によれば,被告らの行為により原告が受けた損害の額は,1738万円であると認められる。
第5結論よって,本訴請求は,主文第1項から第4項までに記載の限度で理由があるからこれらを認容し,その余は理由がないからこれを棄却し,仮執行宣言については,主文第3項については相当でないからこれを付さないこととし,仮執行免脱宣言については,相当でないからこれを付さないこととし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 設樂隆一
裁判官 杉浦正典
裁判官 古庄研
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