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関連審決 訂正2005-39174
無効2004-80168
関連ワード 頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  引用発明の認定 /  相違点の認定 /  周知技術 /  技術的範囲 /  発明の詳細な説明 /  明瞭でない記載 /  実質的に同一 /  援用権(援用) /  参酌 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  交換 /  設定登録 /  訂正審判 /  訂正の許否 /  誤訳の訂正 /  誤記の訂正 /  請求の範囲 /  減縮 /  釈明 /  訂正明細書 /  訂正要件 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10439号 審決取消請求事件
原告キヤノン株式会社
原告訴訟代理人弁護士山崎順一
原告訴訟代理人弁理士大塚康徳
同 西川恵雄
同 高柳司郎
同 大塚康弘
同 木村秀二
同 永川行光
同 長尾達也 1 被告Y2 被告Y
被告ら訴訟代理人弁護士川井信之
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/02/21
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2004-80168号事件について平成18年8月22日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「インクタンクおよびインクタンクホルダ」とする特許第2801149号(平成6年8月24日出願,平成10年7月10日設定登録。以下「本件特許」という。請求項の数は44である )の特許権者であ 。
る。
被告らは,平成16年9月29日,本件特許のうち,請求項1及び6に係る発明についての特許を無効とすることについて審判の請求をし,無効2004-80168号事件として特許庁に係属した。原告は,同審判手続において,,(「」。), 同年12月20日 訂正請求 以下 第1回訂正請求 というを行ったが特許庁は,平成17年7月6日に,特許第2801149号の請求項1及び6に係る発明についての特許を無効とする旨の審決をした(以下「第1次審決」という。。)原告は,平成17年8月15日に第1次審決について取消訴訟(当庁平成17年(行ケ)第10636号)を提起するとともに,同年9月30日に訂正審判(訂正2005-39174)を請求したところ,知的財産高等裁判所は,平成17年11月17日,特許法181条2項により,事件を審判官に差し戻すため,第1次審決を取り消す決定をした。
差戻後の審判手続において,同法134条の3第5項の規定により,上記訂正審判の請求書に添付された特許請求の範囲と明細書を援用した訂正請求(以「」,「」。) 下 第2回訂正請求 といい 同訂正請求に係る訂正を 本件訂正 というがされたものとみなされた(以下,本件訂正前の明細書及び図面を「本件明細書」といい,本件訂正後の明細書及び図面を「訂正明細書」という。。)特許庁は,平成18年8月22日に,差戻後の審判において,特許第2801149号の請求項1及び6に係る発明についての特許を無効とする旨の審決をした(以下「第2次審決」という。。)2特許請求の範囲本件訂正の前後における本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び請求項6の記載は,次のとおりである。
( )本件訂正前1【】「 , 請求項1インクジェットヘッドを備えたホルダに対して着脱自在にされ該ヘッドに供給される記録に使用されるインクを貯留可能なインクジェット用のインクタンクにおいて,前記インクタンク本体と,前記インクタンクの使用状態で底となる部分に配され,前記ヘッドに対して前記インクを供給するための供給口と,前記インクタンク内を大気と連通する大気連通部と,前記インクタンクの一側面の一部に設けられた,前記ホルダに形成された第1係止部と係合する第1係合部と,前記第1係合部が設けられた側面に対する他側面に対して弾性的に設けられた,前記ホルダに形成された第2係止部に係合する第2係合部を備えたラッチレバーと,を備えたことを特徴とするインクタンク(以下 「本件発明1」という ) 。」,。
【請求項6 「前記インクタンク内には黒インクが収容されていることを特徴 】とする請求項1に記載のインクタンク(以下 「本件発明6」という。ま 。」,た,本件発明1と併せて「本件発明」という場合がある )。
( )本件訂正後(下線部は,訂正に係る箇所である )2 。
【請求項1 「インクジェットヘッドと該ヘッドにインクを供給するインク取 】り込み管と該インク取り込み管の開口端に設けられたフィルタとを備えたホルダに対して上下方向に着脱自在にされ,該ヘッドに供給される記録に使用されるインクを貯留可能なインクジェット用のインクタンクにおいて,前記インクタンク本体と,前記インクタンクの使用状態で底となる部分に配され,前記インク取り込み管を介して前記ヘッドに対して前記インクを供給するための供給口と,前記インクタンク内を大気と連通する大気連通部と,前記インクタンクの一側面の一部に設けられた,前記ホルダに形成された第1係止部と係合する第1係合部と,前記第1係合部が設けられた側面に対する他側面に対して弾性的に設けられた,前記ホルダに形成された第2係止部に係合する第2係合部を備えたラッチレバーと,前記供給口の周囲に立設された筒状の支持部と,前記支持部に挿入されて支持されたインク供給部材と,を備え,前記第2係合部は,前記ラッチレバーの外側に配設され,かつ,前記インクタンクの装着状態で,前記第1係合部よりも相対的に上方になるよう設けられ,前記第1係合部と前記供給口と前記第2係合部とが,前記インクタンクを前記ホルダに装着する際,前記第1係合部が前記第1係止部に係合した状態で前記インクタンクを下方に押し込むことで生じる前記インクタンクの回転によって,前記インク取り込み管が前記供給口に挿入されて前記フィルタが前記インク供給部材の下端面に当接し,前記インク供給部材からの前記インクの取り込みが可能となると共に前記第2係合部と前記第2係止部とが係合するように配置され,前記ラッチレバーは,その上端部に設けられた操作部と,その下端部との間に前記第2係合部が配され,当該下端部が前記インクタンクの前記底となる部分に近い領域において前記他側面に一体的に形成されて当該下端部を支点として弾性変位可能に構成されており,かつ,前記第2係合部と前記第2係止部とが係合状態にあるときは内側に弾性変位した状態となる一方,前記操作部が前記インクタンク本体側に押されて前記第2係合部と前記第2係止部との係合が解除されると,前記ラッチレバーの復元力で前記第2係合部と前記下端部との間の部分が前記ホルダの内壁に当接して装着する際とは逆の方向に前記インクタンクを回転させ,前記インクタンクの前記他側面側が持ち上がった状態となるよう前記下端部から外側上方に向かって傾斜していることを特徴とするインクタンク(以下 「訂正発明1」という ) 。」,。
【請求項6 「前記インクタンク内には黒インクが収容されていることを特徴 】とする請求項1に記載のインクタンク(以下 「訂正発明6」という。ま 。」,た,本件発明1と併せて「訂正発明」ということがある )。
3審決の理由。,, ( )別紙審決書の写しのとおりである 審決の理由は ?@主位的判断として1本件訂正は,特許請求の範囲減縮,誤記の訂正又は明瞭でない記載釈明のいずれを目的とするものにも当たらず,特許法134条の2第1項各号のいずれにも該当しないから,不適法として許されず,本件特許の請求項1及,(), び6に係る発明は 本件訂正前のもの 本件発明1及び6 として特定され本件発明1及び6は,いずれも,本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平5-162301号公報(本訴における甲6。以下「引用例1」といい,これに記載された発明を「引用発明」という )及び実願昭61-2 。
8751号(実開昭62-141718号)のマイクロフィルム(本訴における甲1。以下「引用例2」という )に記載された各発明に基づいて,当 。
,, 業者が容易に発明をすることができたものであるとし ?A予備的判断として,, 本件訂正が減縮を目的とする訂正に該当するとしても 訂正発明1及び6はいずれも,引用発明,引用例2に記載された発明,本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平2-188246号公報(本訴における甲7。以下「引用例3」という )に記載された発明及び周知技術から当業者が容易 。
に発明をすることができたから,本件特許の請求項1及び6に係る発明についての特許は,いずれも,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当するというものである。
( )審決は,本件訂正について,次のとおり訂正事項に分説した(以下「訂2正事項a」などという。。)aインクタンクが着脱自在にされる対象であるホルダを 「インクジェッ ,トヘッドを備えたホルダ」から「インクジェットヘッドと該ヘッドにインクを供給するインク取り込み管と該インク取り込み管の開口端に設けられたフィルタとを備えたホルダ」と限定する。
bインクタンクのホルダに対して着脱自在にされる方向を 「ホルダに対 ,して上下方向に」と限定する。
cインクタンクの供給口のヘッドに対するインクの供給がホルダに備えた「インク取り込み管を介して」なされると限定する。
dインクタンクが 「供給口の周囲に立設された筒状の支持部」と該「支 ,持部に挿入されて支持されたインク供給部材」と備えていると限定する。
eインクタンクにおいて 「第2係合部は,ラッチレバーの外側に配設さ ,れ,かつ,インクタンクの装着状態で,第1係合部よりも相対的に上方になるよう設けられている」と限定する。
fインクタンクにおいて 「第1係合部と供給口と第2係合部とが,イン ,クタンクをホルダに装着する際,第1係合部が第1係止部に係合した状態でインクタンクを下方に押し込むことで生じるインクタンクの回転によって,インク取り込み管が供給口に挿入されてフィルタがインク供給部材の下端面に当接し,インク供給部材からのインクの取り込みが可能となると共に第2係合部と第2係止部とが係合するように配置され」ていると限定する。
gインクタンクの「ラッチレバーは,その上端部に設けられた操作部と,その下端部との間に第2係合部が配され,当該下端部がインクタンクの底となる部分に近い領域において他側面に一体的に形成されて当該下端部を支点として弾性変位可能に構成されて」いると限定する。
hインクタンクのラッチレバーは 「第2係合部と第2係止部とが係合状 ,態にあるときは内側に弾性変位した状態となる一方,操作部がインクタンク本体側に押されて第2係合部と第2係止部との係合が解除されると,ラッチレバーの復元力で第2係合部と下端部との間の部分がホルダの内壁に当接して装着する際とは逆の方向にインクタンクを回転させ,インクタンクの他側面側が持ち上がった状態となるよう前記下端部から外側上方に向かって傾斜している」と限定する。
( )審決が,認定した引用発明の内容,本件発明1と引用発明との一致点,3相違点は,次のとおりである(本件発明6も,引用発明との関係で,これらの一致点及び相違点を共通して有するものであり,審決は,本件発明1と同様の理由により容易想到と判断している。。)(ア)引用発明の内容「記録ヘッド10Aと該ヘッド10Aに対してインクを供給する流路15Aと該流路15Aの開口端に設けられたフィルタ8Aを備えたヘッドベースプレート11AとキャリッジHCに対して着脱自在にされ,該ヘッドに供給される記録に使用されるインクを貯留可能なインクジェット用の交換インクタンク1Aにおいて,前記交換インクタンク1Aと,前記交換インクタンク1Aの使用状態で流路15Aがある取付面に対峙する部分に配され,前記流路15Aを介して前記記録ヘッド10Aに対して前記インクを供給するためのインク供給部4Aと,前記交換インクタンク内を大気と連通する大気連通部3Aと,前記交換インクタンクの一側面の一部に設けられた,前記ヘッドベースプレート11Aに形成された係合フック17Aと係合する係合ガイド5Aと,前記係合ガイド5Aが設けられた側面に対する他側面に対して設けられた,前記キャリッジHCに形成された加圧フック103Aの係合部に係合する加圧ガイド6Aと,を備え,前記交換インクタンク1Aの装着状態で,前記加圧ガイド6Aと係合ガイド5Aは流路15Aがある取付面から上方向に略同じ距離離れて設けられ,前記係合ガイド5Aと前記インク供給部4と前記加圧ガイド6Aとが,前記交換インクタンク1Aを前記ヘッドベースプレートとキャリッジHCに装着する際,前記係合ガイド5Aが前記係合フック17Aに係合した状態で前記交換インクタンク1Aを装着方向に押し込むことで生じる前記交換インクタンクの回転によって,前記流路15Aが前記インク供給部4Aに挿入されて前記フィルタ8Aが前記インク吸収体2Aの下端面に当接し,前記インク吸収体2Aからの前記インクの取り込みが可能となるとともに前記加圧ガイド6Aと前記加圧フック103Aの係合部とが係合するように配置されている交換インクタンク1A」(イ)本件発明1と引用発明との一致点「インクジェットヘッドを備えたインクタンク被装着体に対して着脱自在にされ,該ヘッドに供給される記録に使用されるインクを貯留可能なインクジェット用のインクタンクにおいて,前記インクタンク本体と,前記ヘッドに対して前記インクを供給するための供給口と,前記インクタンク内を大気と連通する大気連通部と,前記インクタンクの一側面の一部に設けられた,前記インクタンク被装着体に形成された第1係止部と係合する第1係合部と,前記第1係合部が設けられた側面に対する他側面に対して設けられた,前記インクタンク被装着体に形成された第2係止部に係合する第2係合部と,を備えたインクタンク」である点。
(ウ)本件発明1と引用発明との相違点(以下,審決の表記に合わせて「相違点ア」などという )。
アインクタンク被装着体が,本件発明1では,インクジェットヘッドを備えたホルダであるのに対して,引用発明では,ヘッドベースプレート11A及びキャリッジHCとからなるものである点,イ供給口が,本件発明1では,使用状態で底となる部分に配されているとしているのに対して,引用発明では,使用状態で底となる部分に配されているか否か定かでない点,ウ本件発明1では,第2係合部を,第1係合部が設けられた側面に対する他側面に対して弾性的に設けられたラッチレバーに設けているのに対して,引用発明では,第2係合部(加圧ガイド6A)を,第1係合部 係合ガイド5A が設けられた側面に対する他側面に対して 直 () (接)設けている点。
( )審決が,認定した訂正発明1と引用発明との一致点,相違点は,次のと4おりである(訂正発明6も,引用発明との関係で,これらの一致点及び相違点を共通して有するものであり,審決は,訂正発明1と同様の理由により容易想到と判断している。。)(ア)訂正発明1と引用発明との一致点上記( )(イ)記載の本件発明1と引用発明との一致点と同じ。
3(イ)訂正発明1と引用発明との相違点,, 上記( )(ウ)記載の本件発明1と引用発明との相違点のうち 相違点ア3イに加えて,次の相違点B,D,E,G,Hである(それぞれ,訂正事項b,d,e,g,hに対応する。。)B着脱方向を,訂正発明1では「上下方向」としているのに対して,引用発明では 「上下方向」であるか否か定かでない点。 ,D訂正発明1では,供給口の周囲に立設された筒状の支持部と,該支持部に挿入されて支持されたインク供給部材とを備えているのに対して,引用発明ではかかる構成を備えていない点。
E訂正発明1では,第2係合部は,第1係合部が設けられた側面に対する他側面に設けられたラッチレバーの外側に配設され,かつ,インクタンクの装着状態で,第1係合部よりも相対的に上方になるよう設けられているのに対して,引用発明では第1係合部が設けられた側面に対する他側面に(直接)設けられ,かつ,第2係合部のインクタンクの被装着体の取付面から上方位置が,第1係合部のそれとほぼ同じである点。
G訂正発明1では,ラッチレバーが,その上端部に設けられた操作部とその下端部との間に第2係合部が配され当該下端部がインクタンクの底となる部分に近い領域において他側面に一体的に形成されて当該下端部を支点として弾性変位可能に構成されているのに対して,引用発明では,ラッチレバーといえるものを備えていない点。
H訂正発明1では,ラッチレバーは,第2係合部であるラッチ爪の上面部分と第2係止部であるラッチ爪係合穴の上端部分とが係合状態にあるときは内側に弾性変位した状態となる一方,操作部がインクタンク本体側に押されて第2係合部であるラッチ爪の上面部分と第2係止部であるラッチ爪係合穴の上端部分との係合が解除されると,ラッチレバーの復元力で第2係合部であるラッチ爪の上面部分と下端部との間の部分の一部であるラッチ爪の外方部分がホルダの内壁に当接して装着する際とは逆の方向にインクタンクを回転させ,インクタンクの他側面側が持ち上がった状態となるよう前記下端部から外側上方に向かって傾斜しているのに対して,引用発明ではラッチレバーといえるものを備えていない点。
第3取消事由に係る原告の主張審決は,以下の点で誤りがあり,違法として取り消されるべきである。
?@本件訂正の訂正要件充足性の判断を誤り,本件特許の請求項1,6に係る発明の内容を,訂正発明1,6ではなく本件発明1,6と特定した点の誤り(取消事由1)?A本件発明の進歩性の判断における,引用発明の認定,引用例2記載の発明の認定,相違点に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由2)?B訂正発明の進歩性の判断における,引用発明の認定,引用例2記載の発明の認定,相違点に係る容易想到性の判断の判断の誤り(取消事由3)1取消事由1(本件訂正の訂正要件充足性の判断の誤り)( )審決は 「本件訂正は,インクタンク自体を限定するもの(訂正事項d,1 ,e,f,g)を含んでいるものの,意味不明確な記載事項(訂正事項h ,)インクタンク自体を特定するための事項としては不必要なホルダ自体の構成(訂正事項a,c)及びホルダとの相互作用を特定する事項(訂正事項b,h)を含むことによって,全体として,反って,本件請求項1の記載を不明確にするものであるから,特許請求の範囲減縮を目的とするものとはいえず,また,誤記の訂正を目的とするものまたは明瞭でない記載釈明を目的とするものでもない(審決書9頁37行〜10頁5行)と判断する。 。」しかし,審決の判断は,以下のとおり誤りである。すなわち,(ア)審決は,訂正発明1は 「インクタンクの発明」であって 「インク , ,ジェット記録装置の発明」や「インクタンクとホルダとの組み合わせの発明」ではないという前提に立って判断をしている(審決書6頁2行〜6行参照 。)しかし,審決の判断は,以下のとおり誤りである。
訂正発明はホルダとインクタンクとからなるコンビネーションにおいて,インクタンクに注目したサブコンビネーションの発明である(甲22参照 。そして,ポップアップ機能は,ホルダとの協働作用により発揮さ )れるものではあるが,インクタンク自体が有している機能である。そもそも,本件発明1(訂正前の請求項1)においても 「ホルダに対して着脱 ,」,「」 自在にされ と記載されているとおり ホルダとの協働作用で 着脱自在という特定の機能を発揮するインクタンクの発明である。訂正発明1における「ポップアップ機能」は,上記「着脱自在」のうちの「脱自在」という機能を訂正事項h等によって具体化したものといえる。
(イ)審決は 「訂正事項h」は,ラッチレバーの構成だけから,具体的な ,製品が,同事項を充足するか否かを判断することができないような記載であり(審決書9頁33行〜35行参照 ,また,ポップアップ機能を実現 )できるか否かは,インクタンクの形態のみではなく,ホルダの形態にも依存するから,ラッチレバー自体の構成を限定する事項として不明確であり(審決書13頁26行〜38行参照 ,さらに,ホルダとの相互作用を特 )定する事項でもあるため,訂正発明1を不明確にする(審決書10頁1行〜3行)趣旨を述べる。
しかし,審決の判断は,以下のとおり誤りである。
ホルダの形態も,ホップアップ機能が実現されることも,訂正発明1から,当業者が容易に理解することができる。訂正事項hに,ホルダとの関係に関する規定があっても,そのことから,訂正発明の技術的範囲を不明確にするものでもない。また,訂正事項hは,ラッチレバーの構成をインクタンクの機能で特定したものであるが,ラッチレバーの構成は,訂正事項gで特定されている。訂正事項gと訂正事項hは,ポップアップ機能を発揮するラッチレバーの構成を特定するものとして一体不可分の関係にある。ポップアップ機能が請求項1から認識し得ることは審決も認めているところ(審決書13頁17行〜25行 ,発明の構成を機能的な文言で特 )定することは許容される。
(ウ)審決は,訂正事項hは,操作部がインクタンク本体側に押されて第2係合部であるラッチ爪と第2係止部であるラッチ爪係合穴との係合が解除される状態とは,通常,ラッチ爪とラッチ爪係合穴相互の上下方向位置に変化はなく,それら相互の水平方向位置が変化して,ラッチ爪がラッチ爪係合穴から抜け出た状態をいうのであり,その時,ラッチレバーはホルダのどこにも接触できず,ラッチレバーの復元力が働きようがなく,ラッチレバーの復元力で第2係合部であるラッチ爪と下端部との間の部分がホルダの内壁に当接してインクタンクのポップアップ機能が発揮されるはずがない(説明資料の19図参照)から,その構成は明確でない(審決書8頁12行〜25行参照)旨を述べる。
しかし,以下の理由により,ラッチレバーの操作部がインクタンク本体側に押されて第2係合部の第2係止部との係合が解除されると,第2係合部は,必然的に第2係止部よりも上方に転位するのであるから,審決の上記認定は誤りである。
aすなわち,訂正発明1において「ラッチレバー」は 「当該下端部が ,前記インクタンクの前記底となる部分に近い領域において前記他側面に」, 一体的に形成されて当該下端部を支点として弾性変位可能に構成 され「前記下端部から外側上方に向かって傾斜している」のであるから,本来であれば,ユーザが「ラッチレバー」の「操作部」をインクタンク側に押すと 「第2係合部」は弧状軌跡上を上昇移動することになる。し ,かし 「第2係合部」と「第2係止部」との係合を解除する際,ユーザ ,が ラッチレバー の 操作部 をインクタンク側に押し始めてから 第 「」 「」 「」 「」 ,「」 2係合部 が 第2係止部 から完全に離脱するまでは第2係止部により「第2係合部」の上昇移動が規制されて 「第2係合部」が本来 ,の弧状軌跡上を移動することができない。したがって 「第2係合部」 ,が「第2係止部」から完全に離脱すると 「第2係合部」が本来の弧状 ,軌跡上を移動することになり 「第2係合部」と「第2係止部」との係 ,合が解除されると 「第2係合部」と「第2係止部」との上下方向位置 ,に変化が生じることになる。
bまた 「ラッチレバー」は,上記のとおり 「当該下端部が前記イン , ,クタンクの前記底となる部分に近い領域において前記他側面に一体的に形成されて当該下端部を支点として弾性変位可能に構成」され 「内側,に弾性変位した状態」となっているため,ラッチレバーには取り付け下端部を介してインクタンク本体から離れる力が作用しているので,インクタンクは,装着中,上方向に回転しようとする方向の作用力(ポップアップ力)を内在している。しかし,第2係合部が係合してその作用力を規制しているため上方向に回転することなく装着状態が維持されている。したがって,ユーザが「ラッチレバー」の「操作部」をインクタンク本体側に押すと,ラッチレバーの変位により第2係合部もインクタンク本体側に移動して第2係止部との係合が解除され,インクタンク本体側に弾性変位したラッチレバーは装着中よりも更に大きな弾性復元力を発揮し,係合が解除されると,操作部を押す力はラッチレバーの下端部を支点とした弾性復元力によってインクタンク本体に作用する。
なお,このようなインクタンクの上方向への回転のためには,ホルダ内にインクタンクの上方回転を許す空間が存在することが必須であるが,この空間については,訂正発明1において,インクタンクの装着が「前記第1係合部が前記第1係止部に係合した状態で前記インクタンクを下方に押し込むことにより生じる前記インクタンクの回転に」よりなされることが記載され,上記上方回転とは,装着時の回転とちょうど逆方向の回転に他ならないのであるから,この空間は当然存在している。
以上のとおり,上方回転によるポップアップのために必要なホルダの形態は,訂正発明1に規定されている。
c審決は,ラッチ爪がラッチ爪係合穴から抜け出た時点では,ラッチレバーはホルダのどこにも接触できず,ラッチレバーの復元力が働きようがないとするが,審決の判断は誤りである。すなわち,ラッチ爪がラッチ爪係合穴から抜け出た時点では,ラッチレバーはユーザによってインクタンクの本体側に押されており,ラッチレバーの復元力はこのユーザ,, , の押す力に反発して インクタンクを 装着時の回転方向とは反対方向すなわち,上方向に回転させる力として働く。
d審決は 「ラッチレバーの復元力で第2係合部であるラッチ爪と下端 ,部との間の部分がホルダの内壁に当接してインクタンクのポップアップ機能が発揮される筈がない」とするが,審決の判断は誤りである。すなわち,第2係合部と下端部との間の部分がホルダ内壁に当接した状態においては,訂正発明1に記載のとおりポップアップ可能なようにラッチレバーはタンク本体側に弾性変位しているのであるから,ラッチレバーの弾性復元力は,インクタンクを上方向に回転させる力として作用するのであり,ユーザがインクタンク本体側に押すだけで,インクタンクはホルダから簡単に離脱し,ポップアップする。
( )被告らの反論に対して2(ア)被告らは,ユーザがラッチレバーを押す動作は 「自動的」なもので ,ないから,そのような機能はポップアップ機能ではないと主張する。
しかし,被告らの上記主張は,以下のとおり誤りである。
すなわち,ポップアップ機能は,訂正発明1において「前記操作部が前記インクタンク本体側に押されて前記第2係合部と前記第2係止部との係合が解除されると」と記載されているが,ユーザは,インクタンクがポップアップする程度の強度と時間で押すことは当然であるから,そのようなユーザの動作を前提とすると解することに支障はない。また,被告らは,「第2係合部がホルダの内壁に当接する前までは,指の押す力がない限りラッチレバーは上方向に上昇することはないのであるから,その段階までのラッチレバーの動きはポップアップ機能ではなく,指で押した結果にすぎない」旨をいうが,ユーザが操作部を押すだけで,更に続いて格別の引き上げる動作なしに インクタンクがホルダから浮き上がることこそが 訂 , (正発明の)ポップアップ機能であり,被告らの上記主張は,原告主張を認めるものにほかならない。
(イ)被告らは,「ユーザが指を水平方向に押圧しているだけにもかかわらず,その押圧力に勝る力で上方向に上方回転力が働き,インクタンクが回転することはあり得ない」旨をいうが,訂正発明においては,ユーザが操作部を水平に押圧した押圧力そのものがインクタンクを上方向に回転させる力として働くのであるから 「押圧力に勝る力」なるものを問題にする ,こと自体が誤りである。
インクタンクが装着状態にある場合においても,ラッチレバーは内側に弾性変位した状態となっており,係合解除後に内壁に当接してインクタンクを上方に回転させる力と同じ力は常に働いているが,第2係止部と第2係合部との係合されることによって,インクタンクの回転が阻止されているにすぎない。したがって,ユーザが操作部をインクタンク本体側に押して係合が解除されるとその瞬間に,ユーザの指先を反力壁としてラッチレバーが復元し,インクタンクの上方回転が開始するのであり,ユーザは,この係合を解除する程度に操作部をワンタッチすることで足りる。
2取消事由2(引用発明の認定の誤り,引用例2記載の発明の認定の誤り,相違点の容易想到性判断の誤り--本件発明との対比)( )引用発明の認定の誤り,相違点イの認定の誤り1,, ,, 審決は 以下のとおり 引用発明の認定を誤った結果 相違点イについて「使用状態で側部となる部分に配されている点」と認定すべきところ 「引,用発明では,供給口が使用状態で底となる部分に配されているか否か定かでない点」と認定した点に誤りがある。
すなわち,審決は 「図1及び図4から,交換インクタンク1Aの装着状 ,態で前記加圧ガイド6Aと係合ガイド5Aは,流路15Aがある取付面から上方向に略同じ距離離れて設けられること「前記交換インクタンク1A 」,の装着状態で,前記加圧ガイド6Aと係合ガイド5Aは流路15Aがある取付面から上方向に略同じ距離離れて設けられ」ていると認定する(審決書16頁2行〜4行,25行〜26行)が 「取付面から水平方向に略同じ距離 ,離れて」と認定すべきである。また,審決は 「交換インクタンクの回転に ,よって,加圧ガイド6Aと加圧フック103Aの係合部とが係合する」旨を認定している(審決書16頁30行〜34行)が,引用例1の加圧フック103Aは手動式のものであり,交換インクタンクを装着方向に押し込むだけで加圧ガイド6Aと加圧フック103Aの係合部との係合がなされるわけではなく(段落【0025】〜【0029 ,特に【0027,交換インク 】】)タンクをキャリッジHC上に配置した後,加圧ガイド6Aと加圧フック103Aとを係合させるという別動作が必要となる点で誤りがある。
( )引用例2記載の発明の認定の誤り2審決は 「第1〜4図から,インクリボンカセット51の突起体56が設 ,けられた側面に対する他側面に,カセットホルダ60側からカセットホルダ60から抜け出る方向(上方向)に,インクリボンカセット51の本体から徐々に離れるように一体的に傾斜して伸びて端部が操作部となっている爪55を備えていること,当該爪55には,カセットホルダ60側と操作部が設けられた前記端部の間の前記インクリボンカセット51の本体から離れる側に突起54が配されていること,前記爪55は前記突起54の上端面が穴69の上端部に当接して係合状態にあるときインクリボンカセット51の本体側に弾性変位した状態となっていること及び前記爪55の下端部がインクリボンカセットの51の最下部に近い領域において装着体の側面に湾曲部を介して一体的に形成されて当該下端部を支点として弾性変位可能に構成されていることが看取できる(審決書17頁下から2行〜18頁10行)と認 。」定したが,同認定は,以下のとおり,誤りである。
すなわち 「抜け出る方向(上方向 」は 「抜け出る方向(水平方向 」 ,), )である。また,爪55の弾性力でインクリボンカセット51を右側側面に押し付けるとは,図3(b)の状態において爪55がインクリボンカセット51を同図右側に押圧していることを指しており,爪55がその弾性力によりインクリボンカセット51の装着方向と直交する左右方向にインクリボンカセット51を押圧し,これによりインクリボンカセット51の左右方向の位置決めを行なおうとしたものであることが明らかである。そして,爪55をU字型に形成したのは,インクリボンカセット51の左右方向の位置決めがなされるよう,爪55が弾性変位することを狙ったものであることが理解される。
( )相違点ウについての容易想到性判断の誤り3審決は,相違点ウについて,引用発明に引用例2記載の発明を組み合わせることが容易であると判断する(審決書20頁1行〜下から4行)が,審決の上記判断は,以下のとおり,誤りである。
すなわち,引用例1の加圧フック103Aは,交換インクタンク1AをキャリッジHCに保持するだけではなく,記録ヘッド10AとキャリッジHCとの電気的接続を生じさせる加圧力を発生させるものであり,加圧フック103Aによる交換インクタンク1Aの付勢方向は交換インクタンク1Aの装着方向とならなければならない。これに対して,引用例2の爪55は,その弾性力がインクリボンカセット51の装着方向と直交する方向に働く構成である。
したがって,引用例2の爪55の構成では,引用発明における記録ヘッド10AとキャリッジHCとの電気的接続を生じさせる加圧力を発生させることはできず,引用例2の爪55を単に引用発明に適用することは,引用発明の本質を損なわせることになるものであって,阻害要因が存在するというべきである。
3取消事由3(引用発明の認定の誤り,引用例2記載の発明の認定の誤り,相違点の容易想到性判断の誤り--訂正発明との対比)( )引用発明の認定の誤り,引用発明との相違点の認定の誤り,引用発明21記載の発明の認定の誤り審決は,取消事由2(前記2( )( ))記載のとおり,引用発明の認定を誤12り,訂正発明と引用発明との相違点イの認定を誤るとともに,引用例2記載の発明の認定を誤っている。
( )相違点の認定及び相違点の容易想到性判断の誤り2(ア)相違点の看過審決は,訂正事項fについて 「訂正事項fは新たな相違点を構成する ,ものとはならない (22頁5行〜19行)と認定する。 」しかし,引用例1には,交換インクタンクの回転によって,加圧ガイド6Aと加圧フック103Aの係合部とが係合することは記載されていない。したがって,訂正事項fに係る事項,すなわち訂正発明においては,「第1係合部と供給口と第2係合部とが,インクタンクをホルダに装着する際,第1係合部が第1係止部に係合した状態でインクタンクを下方に押し込むことで生じるインクタンクの回転によって,インク取り込み管が供給口に挿入されてフィルタがインク供給部材の下端面に当接し,インク供給部材からのインクの取り込みが可能となると共に第2係合部と第2係止部とが係合するように配置されている」点を相違点Fとして認定すべきであるのに,この点を看過した。
そして,審決が引用した引用例及び周知技術には,上記相違点Fに係る訂正発明の構成を開示するものはない。
(イ)相違点Bの認定の誤り及び相違点Bの容易想到性判断の誤り審決は,相違点Bとして 「着脱方向を,訂正発明1では『上下方向』 ,としているのに対して,引用発明では 『上下方向』であるか否か定かで ,ない点」と認定するが,引用発明では水平方向であり,上記認定は誤りである。
相違点Bについて,審決は 「インクタンク自体の構成を限定するもの ,ではなく,単なる使用上の違いをいっているにすぎず,相違点Bは実質的な相違点ではない (審決書23頁20行〜28行)と認定する。 」しかし,インクタンクがホルダに対して上下方向に着脱自在であることは,水平方向である場合に比べて,インクタンクをホルダに装着するに際し,これを押し込みやすく,また,ホルダから取り出すときにラッチレバーの復元力とインクタンクの自重との均衡により,インクタンクがポップアップした状態が維持され,ホルダから飛び出して床に落とすような事態を防止し得る。インクタンクがホルダに対して上下方向に着脱自在であることは単なる使用上の相違ではなく,技術的な意義が存在する。
(ウ)相違点Eの認定の誤り及び相違点Eの容易想到性判断の誤り引用発明は,交換インクタンクの被装着体の取付面の側方に係合ガイド5A,加圧ガイド6Aが配置された構成とされている。したがって,相違点Eとして,審決が,引用発明につき「取付面から上方位置が」と認定した点は誤りであって 「取付面からの位置が」と認定すべきである。 ,審決は,第2係合部が第1係合部よりも相対的に上方になるように設けることは 引用例3 甲7 に記載の発明から容易であると判断するが 審 ,() (決書24頁13行〜26行 ,訂正発明1は,インクタンクの回転装着を )容易にするだけではなく,取り外し時のポップアップ機能をよりスムースに発揮させるという,引用例3(及び引用例1,2)にはない格別の効果を発揮するものであるから,審決の判断は誤りである。
(エ)相違点Gの容易想到性判断の誤り審決は 「引用発明の装着構成に代えて,前記引用例2に記載された装 ,着構成を採用することは,当業者にとって想到容易であり,そして,引用(, , ) ,, 例2に記載された装着構成 記載c e f を 引用発明に採用すれば第2係合部が第1係合部よりも相対的に上方になるよう設けるようにすることを除けば,相違点E,Gにかかる構成が得られる」と判断する(審決書24頁1行〜12行 。)しかし,引用例2には,相違点Gの「ラッチレバー」が 「当該下端部 ,がインクタンクの底となる部分に近い領域において他側面に一体的に形成されて当該下端部を支点として弾性変位可能に構成されている」構成が記載されていない。審決が挙げる甲12,13は,係合解除のために手動でレバーを回動させる構成としてレバーの下端部を支点としただけで,レバーの復元力を別の力(インクタンクの他側面側を持ち上げる力)に利用する技術的意義はない。相違点Gは,ポップアップ機能を発揮するラッチレバーの構成を特定するものとして相違点Hと一体不可分の関係にありか(「つ」で結ばれている ,相違点H(ポップアップ機能)との関係を踏まえ )て判断されるべきである。したがって,審決の相違点Gについての判断は誤りである。
(オ)相違点Hの容易想到性判断の誤り審決は,ポップアップ機能を実現できるラッチレバーであるか否かは,インクタンクが特定の形態を備えるホルダに装着されたときはじめて確認できることであるから,ポップアップ機能を実現できるラッチレバーとの規定は,ラッチレバーの限定としてみる限り,ポップアップ機能を実現できる可能性をもっていると規定しているにすぎない(審決書24頁37行〜25頁12行)旨を述べる。
しかし,訂正発明1のインクタンクは,特許請求の範囲において,単にポップアップ機能を実現できる可能性を有するものではなく,ポップアッ。,, プ機能を実現するものとして記載されている したがって 訂正発明1がポップアップ機能を実現する可能性を有するにすぎないとの前提に立った相違点Hの認定及び容易想到性の判断は誤りである。
また,訂正発明1の技術思想は,インクタンクのホルダへの簡易な係合・解除を実現する係合機構と,ホルダからのインクタンクの取り出しを容易にする自動取り出し機構(ポップアップ機能)という,目的の異なる機構を,ラッチレバーによって実現したものである。これに対し,引用発明2記載の発明は,インクリボンカセット51をカセットホルダ60から取り外す動作として,専ら手動操作によって取り外すことを開示するのみであって,ポップアップ機能は開示していない。ポップアップ機能を開示又は示唆した引用例はなく,また,係合機構と自動取り出し機構とを一つのレバーで実現する技術思想を開示した引用例もない。
第4取消事由に係る被告らの反論本件訂正が訂正要件を充足していないとの審決の判断は正当であり,本件発明及び訂正発明の容易想到性についての審決の認定判断も正当であって,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1取消事由1(本件訂正の訂正要件充足性の判断の誤り)に対し以下のとおり,審決が,第2係合部と第2係止部との係合が解除された状態(解除された瞬間の状態)では,ラッチ爪とラッチ爪係合穴相互の上下方向位置に変化はなく,ポップアップ機能が発揮されるはずがないと判断した点(審決書8頁12行〜24行)に誤りはない。
( )本件訂正は,記載内容が不明確であるため,インクタンクの構成を不明1瞭にしているから,このような訂正は特許法134条の2第1項各号に規定するいずれの目的にも該当しない。
訂正事項hにより特定されるラッチレバ-の構成では,原告の主張するようなポップアップ機能を発揮することは不可能であり,ポップアップ機能を発揮するためには,少なくともホルダのラッチ爪より上方の内壁が上端まで存在していないことが必要である。
原告は,訂正事項hにより特定されるラッチレバーの構成によって,ポップアップ機能を発揮できるとの理由を全く説明をすることなく,所与の前提として述べるにとどまっている。
( )原告は,ラッチレバ-の操作部をインクタンク本体側に押し,第2係合2部の第2係止部との係合が解除されると,第2係合部は弧状軌跡上を上昇移, ,。 動し 第2係合部と第2係止部の上下方向位置に変化が生ずる と主張するそして,その理由について,ラッチレバ-はホルダに装着中に既に上方向に回転しようとする方向の作用力(ポップアップ力)が内在されており,係合が解除されると,ポップアップに先立って,ラッチレバ-の弾性力によってインクタンクを装着する際とは逆方向(上方向)に回転させるからである,と説明する。
しかし,原告の主張は,指で押す力(あるいは,最低でも指でラッチレバ-を支える力)がなければ,インクタンクがインクタンクを装着する際とは逆方向(上方向)に回転することもなく,ポップアップが働くこともないことを原告自身が自認したものであって,その主張は失当というべきである。
すなわち,ユ-ザが指でラッチレバ-をインクタンク本体の方向に押し,第2係合部と第2係止部との係合を解除した後も,指を離す(その結果,第2係合部がホルダの内壁に当接する)前の段階では,インクタンクの上方向への回転は自然に生じているわけではなく,指でラッチレバ-を押していることによってはじめて生じている。
( )原告は,ポップアップ機能を「ラッチレバ-を指でワンタッチするだけ3, 」。, で インクタンクがホルダから自動的に浮き上がる機能 と述べる しかしそのような説明は誤りであり,ポップアップ機能は 「ラッチレバ-の操作 ,部を指でインクタンク本体側に押し,第2係合部の第2係止部との係合が解除した後,指の押す力で第2係合部が弧状軌跡上を上昇移動した段階で,指を離し,第2係合部がホルダの内壁に当接した後,インクタンクが上方向に浮き上がる機能」のうちの 「第2係合部がホルダの内壁に当接した後,イ ,ンクタンクが上方向に浮き上がる機能」を指すと説明されるべきである。第2係合部がホルダの内壁に当接する前までは,指の押す力がない限りラッチレバ-は上方向に上昇することはないから,その段階までのラッチレバ-の動きはポップアップ機能ではなく,指で押した結果にすぎない。
( )インクタンクがユ-ザの押す力に反発して上方向に回転するか否かは,4指の押圧力をかける方向に依存する。ユ-ザがラッチレバ-を水平又は水平からやや下方に押圧すれば(通常の使用状態ではこのような方向に押圧されるであろう,インクタンクは上方向に回転することはない。 。)以上のとおり,原告が主張するポップアップ機能とは,原告が自認するとおり,指で上方向に押す力がなければ生じ得ない。したがって,第2係合部と第2係止部との係合が解除された状態(解除された瞬間の状態)では,ラッチ爪とラッチ爪係合穴相互の上下方向位置に変化はなく,ポップアップ機能が発揮されるはずがない,との審決の判断(審決書8頁12行〜24行)は正当なものである。
2取消事由2(本件発明との対比)に対し( )引用発明の認定の誤り,相違点イの認定の誤りについて 1(ア)原告は,引用例1についての「上方向」との認定は 「水平方向」の ,誤りであると主張する。しかし,水平か上下かは,方向の基準をどう取るかによって異なる。審決は,引用例1の公報の図1の記載の上下左右を基準として「上方向」と述べている(したがって,図4では,図1に合わせ, ),「」 て 装置を上から見て上下方向を述べている のであり 審決の 上方向の記載は,誤りではない。
(イ)引用例1の図1によれば,加圧フック103Aの爪部の左上面と加圧ガイド6Aの左下面は斜めになっており,この両面が接触した状態で交換インクタンクが押し込まれるに従って,加圧フック103Aが弾性的に右側方向に傾き,加圧フック103Aの爪部が加圧ガイド6Aの最右部を乗り越えると,最終的に加圧フック103Aの爪部の復元力により図1に示された状態に嵌合するのに適した形状となっている。したがって,これに図2の交換インクタンクの右方向が浮き上がった状態の図とを併せて解釈すれば,当業者であれば,審決が認定したとおり理解するはずである。
引用例1における加圧フック103Aの加圧係合動作は,加圧フック103Aの爪部の左上面と加圧ガイド6Aの左下面が接触した状態で交換インクタンクが押し込まれるに従って,加圧フック103Aが弾性的に右側方向に傾き,加圧フック103Aの爪部が加圧ガイド6Aの最右部を乗り越えると,最終的に加圧フック103Aの爪部の復元力により図1に示された状態に嵌合するものであり,審決の引用例1の認定に誤りはない。
( )引用例2記載の発明の認定の誤りについて2「」 「」 ,。, 上方向 と 水平方向 の違いをいう原告の主張は 失当である また引用例2の爪55の形状に関する原告の主張は,引用例2の記載に基づくものではなく,その実施品の具体的構成に基づく主張であって,失当である。
引用例2の第3図,第4図から読み取ることのできる爪55の構造は,審決が認定したとおりである。原告は,その他審決の認定の誤りを主張するが,いずれも審決の認定に誤りはなく,また容易想到性の判断に違法を及ぼすものではない。
( )相違点ウの容易想到性判断の誤りについて3引用例1の構成に代えて引用例2の装着構成を採用することに,阻害要因はなく,容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。
原告の主張は,引用例2の客観的記載から導かれる解釈に基づくものでなく 「引用例2の爪55は,その弾性力がインクリボンカセット51の装着 ,方向と直交する方向に働く」こと,すなわち爪55の形状がU字型であることを前提としている点において失当である。
, , また 仮に引用例2の爪55が原告主張のようにU字型であったとしても引用例2の爪55を引用例1に適用することは,引用例1の本質を損なうことにはならない。U字型であっても,加圧力を装着方向と直交する方向だけでなく装着方向にも働くようにすることに困難な点はない。仮に装着方向に加圧力が一切働かないとすれば,インクリボンカセット51の装着状態は極めて不安定になり,使用時においてガタツキや脱落が生じるおそれがあることから,当業者はU字型の爪55を用いる場合においても,加圧力を装着方向と直交する方向だけでなく装着方向にも働くようにすることは自然である。加圧力を装着方向にも働くようにするためには,例えば,突起54の位置を爪55の先端部寄りに設けることで足りる。これにより,インクリボンカセット51を装着方向すなわちカセットホルダ60側に押圧する加圧力を発生・増大させることができる。
3取消事由3(訂正発明との対比)に対し( )引用発明の認定の誤り,相違点の認定の誤り,引用例2記載の発明の認1定の誤りについて審決の認定に誤りのないことは,取消事由2の主張に対して述べたのと同様である。
( )相違点の認定及び相違点の容易想到性判断の誤りについて2(ア)相違点の看過について訂正事項fは新たな相違点を構成するものではなく,審決の認定に誤りはない。
(イ)相違点B,E,Gの認定の誤り及び相違点B,E,Gの容易想到性判断の誤りについて審決の相違点B,E,Gの認定及び相違点B,E,Gの容易想到性判断に誤りはない。原告は,相違点Gの判断は相違点Hとの相関関係(ポップアップ機能との関係)を踏まえてなされるべきであると主張するが,相違点Hとの相関関係を踏まえたとしても,相違点Gに係る事項は引用例から容易に想到できるものであり,審決の判断に誤りはない。
(ウ)相違点Hの容易想到性判断の誤りについて訂正事項hは,インクタンクを限定する記載でないから,審決の判断に誤りはない。
ポップアップ機能は,第2係止部から第2係合部が解除され,第2係合部がホルダの内壁に当接した際に,インクタンクが上向きに回転して上がること意味するにすぎない。そして第2係止部から第2係合部の係合を解除し第2係合部をホルダの内壁に当接させる直前までの作業は,指で行うのであるから,本件発明は,引用例2と同一であるか又は僅かの相違しかない。したがって,訂正発明は,引用例2と実質的に同一か,又は少なくとも容易に想到できる。
自動取り出し機能及び係合機能と自動取り出し機能とを一つのレバ-により実現することも,引用例から容易に想到できる。したがって,審決の判断に誤りはない。
第5当裁判所の判断当裁判所は,以下のとおり,?@本件訂正は,特許請求の範囲減縮,誤記,誤訳の訂正又は明瞭でない記載釈明を目的とするものではなく,特許法134条の2第1項各号のいずれにも該当しない不適法なものであるから,本件特許の請求項1及び6に係る発明は,本件訂正前のもの(本件発明1及び6)として特定されるべきであり,?A本件発明1及び6は,引用発明及び引用例2記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,し,, 。 たがって 審決の判断に誤りはなく 原告の取消事由は理由がないと判断する1取消事由1(本件訂正の訂正要件充足性の判断の誤り)について本件訂正中の訂正事項hは,インクタンクのラッチレバーについて 「第2,係合部と第2係止部とが係合状態にあるときは内側に弾性変位した状態となる一方,操作部がインクタンク本体側に押されて第2係合部と第2係止部との係合が解除されると,ラッチレバーの復元力で第2係合部と下端部との間の部分がホルダの内壁に当接して装着する際とは逆の方向にインクタンクを回転させ,インクタンクの他側面側が持ち上がった状態となるよう前記下端部から外側上方に向かって傾斜している」との構成を付加した訂正である。
確かに,上記文言を付加したことによって,形式的には,特許請求の範囲を。,, , 限定することになる しかし 訂正事項hは その内容を実質的に検討すると訂正事項の記載が明確でないのみならず,訂正明細書の「発明の詳細な説明」欄における実施例に関する記載及び図面を参酌してみてもなお,後記「ポップ」 。,, アップ機能 を実現するための構成を明確に示していない 結局 本件訂正は訂正事項hが付加され,インクタンクの発明であるにもかかわらず,ホルダとの相互関係ないし協働関係を不明確なまま構成要素として含んだことによって,特許請求の範囲(請求項1)を全体として不明確とするものであるから,特許請求の範囲減縮に当たるか否か判断することすらできないものであっ,, ,, て 結局 特許請求の範囲減縮を目的とする訂正ということはできず また誤記,誤訳の訂正又は明瞭でない記載釈明を目的とする訂正ということもできない。
その理由は,以下のとおりである。
( )事実認定1(ア)訂正明細書の記載訂正明細書には,図面と共に,次の各記載がある(甲14,15 。)【0034 【作用】上述した通りに構成されたインクタンクは,インク 】タンクホルダに装着する際にまず,インクタンクの一側面の一部に設けられた第1係合部としての爪状突起をインクタンクホルダに形成された第1係止部としての抜け止め穴に位置合わせして嵌合させ,次いで前記一側面に対向する他側面に弾性的に支持されたラッチレバーの第2係合部としてのラッチ爪をインクタンクホルダの第2係止部としての係合穴に係合させる。これにより,インクタンクの相対向する両側面がインクタンクホルダに保持され,インクタンクは正確かつ確実に位置決めされ,装着される。
また,インクタンクがインクタンクホルダに正確かつ確実に位置決めされるので,インクタンクの供給口とインクタンクホルダのインク取り出し手段としてのインク連通管との結合も確実に行え,インクの漏れも発生しない。第1及び第2係合部,供給口及びラッチレバーを請求項1に記載の構成とすることは,インクタンクを回転させてインクタンクホルダへ着脱することにより,少ないスペースでの着脱が可能となり,また,インクタンクをインクタンクホルダから取り出す際に,自動的にインクタンクのラッチレバー側が持ち上がった状態となるのでインクタンクからの取り出しが容易になる。また,インクタンクの装着状態で,第1係合部よりも第2係合部が相対的に上方になるので,インクタンクの装着のための移動距離を少なくすることができ操作性が向上し,インクタンクをインクタンクホルダに装着する際の下方向に向かう作用力をラッチ爪の係合状態で維持でき装着の信頼性を高めることが可能である。
【0039】ラッチレバーがインクタンクの底部に支持され外側上方に向かって傾斜または湾曲しているものでは,インクタンクをインクタンクホルダから取り外す際に,ラッチ爪と係合穴との係合が解除されると,ラッチレバーはインクタンクホルダの内壁に当接し,インクタンクの他端面側が,ラッチレバーの傾斜または湾曲に沿って上昇する。これによりインクタンクの他端面側がインクタンクホルダから突出し,インクタンクを取り外し易くなる。
【0040】ラッチレバーをインクタンクの底部の近傍に一体的に設け,ここを支点として弾性的に変位し,この支点とラッチレバーの先端の操作部との間にラッチ爪が配された構成とされることは,操作性の向上が期待でき,インクタンクの着脱動作を容易かつ確実に実行することを可能にする。また,インクタンクホルダの第2係止部としての係合穴に対して内方で係合するようにラッチレバーの外側にラッチ爪が配されるとともに,係合穴との係合状態ではラッチ爪は係合穴の外には非突出の状態として構成されることは,不測の事態などによってラッチ爪自体が押されて係合状態が解除されるような状態となり難く,装着の信頼性を確保できる。
【0042】上述された構成のインクタンクホルダは,インクタンクの一側面の一部に設けられた第1係合部としての爪状突起をインクタンクホルダに形成された第1係合部としての抜け止め穴に位置合わせして嵌合させ,次いで前記一側面に対向する他側面に弾性的に支持されたラッチレバーの第2係合部としてのラッチ爪をインクタンクホルダの第2係止部としての係合穴に係合させる。これにより,インクタンクの相対向する両側面がインクタンクホルダで確実に保持でき,インクタンクは正確かつ確実に位置決めされ,装着される。また,インクタンクホルダは正確かつ確実にインクタンクを位置決め保持するので,インクタンクの供給口とインクタンクホルダのインク取り出し手段としてのインク連通管との結合も確実に行え,インクの漏れも発生しない。
【0098】一方,インクタンク30の外部構造として,容器32には,インクタンク30をモノカラーホルダ60に装着した際にモノカラーホルダ60のベースプレート51側の内壁と当接する面に,爪状突起としての抜け止め爪32dが一体的に設けられている。この抜け止め爪32dは,() モノカラーホルダ60に形成されたタンク抜け止め穴60i 図12参照に嵌合するもので,インクタンク30をモノカラーホルダ60に装着する際のガイドとなるとともに,インクタンク30がモノカラーホルダ60に装着された状態ではインクタンク30を保持する役目を果たす。
【】, , 0100 さらに 抜け止め爪32dとは反対側の外壁である他端面に下端部を弾性的に支持されたラッチレバー32aが一体的に設けられている。ラッチレバー32aは,インクタンク30の外側上方に向かって傾斜し,モノカラーホルダ60のラッチレバーガイド溝60h(図11および図12参照)に嵌合するもので,インクタンク30がモノカラーホルダ60に装着された状態では,ラッチレバーガイド溝60hに押圧されて図14に示した矢印C方向にたわみ,ラッチレバー32aに形成されたラッチ爪32eが,ラッチレバーガイド溝60hに形成されたラッチ爪係合穴60jに係合される。本実施例では,ラッチレバー32aは,容器32に一体成形されている。
【】 , 0103 インクタンク30をモノカラーホルダ60に装着するときはまず,インク供給口32bを封止しているシール材を剥がす。その後,図16に示すように,インクタンク30を抜け止め爪32dが形成されている側から矢印方向に斜めに挿入し,インクタンク30の段差部31aをモノカラーホルダ60の各張り出し部60fの下方にもぐり込ませるとともに,インクタンク30の抜け止め爪32dをモノカラーホルダ60のタンク抜け止め穴60i(図12参照)に引っ掛け,インクタンク30のおおよその位置決めを行う。
【0104】次いで,図17に示すように,ラッチレバー32aがラッチレバーガイド溝60h(図11および図12参照)に沿って移動するように,インクタンク30を下方に押し込む。インクタンク30はモノカラーホルダ60に挿入された部分を中心に略回転し,ラッチレバー32aがラッチレバーガイド溝60hに押圧されて内側にたわみながら押し込まれ,ラッチレバー32aのラッチ爪32e(図14参照)がモノカラーホルダ60のラッチ爪係合穴60j(図12参照)に係合する。これにより,インクタンク30はモノカラーホルダ60に固定される。また,ラッチ爪32eがラッチ爪係合穴60jに係合することによりクリック感が生じるので,装着時の感触も良好である。
【0105】インクタンク30をモノカラーホルダ60から取り外すときは,ラッチレバー32aを内側に押し込み,ラッチ爪32eとラッチ爪係合穴60jとの係合を解除する。ラッチレバー32aは,その下端部を弾性的に支持され,しかもインクタンク30の外側上方に向かって傾斜しているので,ラッチ爪32eとラッチ爪穴60jとの係合が解除されると図14に示した状態に戻ろうとする。そのため,ラッチレバー32aの根元斜面がラッチレバーガイド溝60hに沿って滑り上がり,インクタンク30は自動的にラッチレバー32a側が持ち上がり斜めの状態になる。そして,持ち上がった部位を摘むことにより,インクタンク30は容易にモノカラーホルダ60から取り外せる。
【0108】‥‥‥モノカラーホルダ60からインクタンク30を取り外すために,ラッチレバー32aの復元力によりインクタンク30のラッチレバー32a側の端部が持ち上がる現象を利用しているが,それに加え,インクタンク30の他端側(ラッチレバー32aが設けられている側)の底壁をモノカラーホルダ60の開口に向けて付勢する付勢手段として,図18に示すようなポップアップバネ68を設け,そのバネ力を利用して,インクタンク30のラッチレバー32a側の端部を持ち上げてもよい。‥‥‥【0150】ラッチレバーがインクタンクの底部に支持され外側上方に向かって傾斜または湾曲していることによって,インクタンクホルダから取り外す際に,インクタンクの他端面側が,ラッチレバーの傾斜または湾曲に沿って上昇しインクタンクホルダから突出するので,インクタンクホルダからの取り外しを容易にすることができる。
(イ)発明の詳細な説明中の実施例における脱着動作訂正明細書の上記記載及び図面(図12,図14,参考として図23,図24,甲14)によれば,実施例において,インクタンク30のモノカラーホルダ60への脱着は,次のように行われるものと認められる。
a装着時の動作?@インクタンク30の抜け止め爪32dをモノカラーホルダ60のタンク抜け止め穴60iに引っ掛け,ここを中心としてインクタンク30を下方に回転させると,ホルダ60のベースプレート51とは反対側の壁(他の三方の壁よりも低く構成されている)の上端部内側角部にラッチレバー32aの下端部外側面が当接する。
?Aインクタンク30を下方に押し込むと,ラッチレバー32aは,ホルダ60の壁の上端部内側角部に対してその外側面上を摺接しながら(ラッチレバー32aからすると接触部が相対的に上方に進んでいく ,内側にたわむ。モノカラーホルダの内壁は,その下端部から外 )側上方に向かって傾斜した側断面形状を有しており,ラッチレバー32aの傾斜はホルダの内壁よりも大きくなっているので,ラッチレバー32aには,内側にたわむことにより,下端部を中心とした弧上において外側に復元しようとする弾性エネルギーが蓄積され,インクタンク30がホルダ60に対して下方に押し込まれれば押し込まれるほど,大きな弾性エネルギーが蓄積されることになる。
?Bそして,更にインクタンク30を下方に回転させると,ラッチレバー32aが内側にたわみつつラッチ爪32e(側面視で三角形状に突出しているラッチ爪32eの全体をいうと認められる)の尖端部がホルダ60の壁の上端部内側角部に至り,ラッチ爪32eの尖端部がホルダ60の壁の内側を摺接しながら下方に進む。
?Cやがてラッチ爪係合穴60jの天井部に至ると,ラッチレバー32aの弾性復元により,ラッチ爪32aがラッチ爪係合穴60jの内方に入り込んで係合する。この係合状態では,ラッチレバー32aに蓄積された弾性エネルギーにより,ラッチレバー32aの弾性復元力でホルダ60の傾斜した内壁面を押す力が作用し,この押圧力の反力のうちラッチレバー32aを長手方向に上昇させる方向の成分が,ラッチ爪32eの上端面がラッチ係合穴60jの天井面を押す力となって働くことで,強固な係合状態となる。
, , なお ラッチ爪32eの上端面とラッチ係合穴60jの天井面とはインクタンク30のホルダ60への装着時において両者が面接触するようにその位置関係が設定されている。
b離脱時の動作インクタンク30をモノカラーホルダ60から取り外すときは,ラッチレバー32aを手指などにより内側に押し込み,ラッチ爪32eとラ(【】)。 ッチ爪係合穴60jとの係合を解除することになる 段落 0105ここで,係合状態においては,ラッチレバー32aに蓄積された弾性エネルギーにより,ラッチレバー32aを長手方向に上昇させる方向の力の成分が働いているのであるから,ラッチレバー32aを内側に押し込んで,ラッチ爪32eの尖端部がラッチ用係合穴60jの天井面から抜けるまでは,ラッチ爪32eの上端面がラッチ用係合穴60jの天井面を押す力として働き,ラッチ爪32eの尖端部がラッチ用係合穴60jの天井面から抜けると,上記ラッチレバー32aを長手方向に上昇させる方向の力の成分によって,ラッチ爪32eの尖端部がラッチ用係合穴60jより上方のホルダ60の壁の内壁に沿って上昇しつつ(手指によりこれよりも強い力でラッチレバー32aを下方に押していれば上昇しないことはもちろんである 「係合の解除」とは,ここまでの作用を称 。
するものと認められる,ラッチ爪32eの尖端部を支点としてラッ 。)チレバー32aの下端部が持ち上がるように作用し,やがてラッチ爪32eの尖端部がホルダ60の壁の上端部内側角部に至ると,ラッチ爪32eより下方の部分がホルダ60の壁の上端部内側角部を摺接しつつラッチレバー32aが上昇する結果,インクタンクが持ち上がることになる。
( )本件訂正の許否についての判断2(ア)以上認定した事実を前提として,本件訂正の許否について判断する。
すなわち,まず,訂正事項hにより,インクタンクのラッチレバーについて 「第2係合部と第2係止部とが係合状態にあるときは内側に弾性変 ,位した状態となる一方,操作部がインクタンク本体側に押されて第2係合部と第2係止部との係合が解除されると,ラッチレバーの復元力で第2係合部と下端部との間の部分がホルダの内壁に当接して装着する際とは逆の方向にインクタンクを回転させ,インクタンクの他側面側が持ち上がった状態となるよう前記下端部から外側上方に向かって傾斜している」と構成を付加したことが,特許請求の範囲の記載の減縮を目的としたものといえるか否かについて判断する。
確かに,訂正明細書に記載された実施例には,ラッチレバー32aを内側に押し込み,ラッチ爪32eとラッチ爪係合穴60jとの係合を解除することによって,インクタンクが持ち上がることが記載されている(原告の主張に合わせ「ポップアップ機能」との語を用いる場合がある。。)しかし,同記載に係る「ポップアップ機能」は,あくまでも,ホルダの内壁が,その下端部から外側上方に向かって傾斜した側断面形状を有し,ラッチレバー32aの傾斜はホルダの壁よりも大きくなっていること等,ラッチ爪を含むラッチレバーの具体的形状やホルダの内壁の具体的形状等の相互関係に依存するものであって,インクタンクとして規定された構成のみによって,常に実現するというものではなく,インクタンクとホルダとの間に一定の条件が成立することによってはじめて実現するものにすぎない。
以上のとおり,訂正事項hは,記載自体が明確でないのみならず,発明の詳細な説明欄における実施例に関する記載及び図面を参照してみてもなお,ポップアップ機能を実現する事項に係る構成を明確に示したものと解することはできない。したがって,訂正事項hにおいて,ホルダとの相互関係ないし協働関係を不明確なまま要素として含んだことによって,本件訂正は全体として,インクタンクの発明であるにもかかわらず,特許請求の範囲の記載(請求項1)を不明確にするものとなったから,特許請求の範囲減縮に当たるか否かを判断することすらできないものであって,結局,特許請求の範囲減縮を目的とする訂正ということはできない。
また,本件訂正は,誤記,誤訳の訂正を目的とする訂正,又は明瞭でない記載釈明を目的とする訂正ということもできない。
(イ)本件訂正は,特許請求の範囲減縮,誤記の訂正又は明瞭でない記載釈明のいずれを目的とするものにも当たらないから,特許法134条の2第1項の要件を満たさないものであり,不適法として許されない。本件訂正を許されないとした審決の判断に誤りはなく,本件特許の請求項1,6に係る発明は,本件訂正前の本件発明1,6として特定されることとなる。
2取消事由2(本件発明の進歩性の判断等の誤り)について( )引用発明の認定の誤り,相違点イの認定の誤りについて1(ア)原告は,引用発明について,審決が 「前記加圧ガイド6Aと前記加 ,圧フック103Aの係合部とが係合するように配置されている」と認定した点について,引用例1の加圧フック103Aは手動式のものであり,交換インクタンクを装着方向に押し込むだけで加圧ガイド6Aと加圧フック103Aの係合部との係合がなされるわけではなく,交換インクタンクをキャリッジHC上に配置した後,加圧ガイド6Aと加圧フック103Aとを係合させるという別動作が必要となるから,審決の認定に誤りがあると主張する。
しかし,引用例1(甲6)には 「‥‥‥この加圧フック103Aの加 ,圧係合動作はどのようなものでも良いが,‥‥‥ (段落【0027 ) 」】と記載されていること,同図1によれば,加圧フック103A(同図中で反時計回り方向に付勢されているものと考えられる )の爪部の左上面と 。
加圧ガイド6Aの左下面は,いずれも左下がりの斜めになっており,係合ガイド5Aが係合フック17Aに係合した状態で交換インクタンク1Aを装着方向に押し込むことで,加圧フック103Aの爪部の左上面に交換インクタンクの加圧ガイド6Aが当接し,更にこの状態から交換インクタンクを回転することによって,加圧フック103Aが前記付勢力に抗して時計回り方向に回転しつつ交換インクタンクの回転を許容し,加圧フック103Aの爪部が加圧ガイド6Aの最右部を乗り越えると,最終的に加圧フック103Aの前記付勢力により復元することが示されていることに照らすならば,審決の認定に誤りはない。
したがって,原告の主張は失当である。
(イ)原告は,引用例1(甲6)について,引用例1の図4に示されるインクジェット記録装置の図面に示される加圧フックの構成に鑑みれば,引用例1の図1は平面図(上から見た図)であるから,審決が「取付面から上方向に略同じ距離離れて」は「取付面から水平方向に略同じ距離離れて」の誤りであると主張する。しかし,審決は 「なお,以下,便宜上,装着 ,体と被装着体の取付対峙面(各係合部が設けられた各側面に直交する面)に向かう直交する方向を下方向といい,離れる方向を上方向といい,まとめて上下方向ということにする(審決書14頁下から3行〜末行)と 。」断り書きをした上で,上記のように認定しているのであるから,審決の認定に誤りはない。
したがって,原告の主張は失当である。
( )引用例2記載の発明の認定の誤りについて2(ア)原告は,引用例2について,爪55の弾性力でインクリボンカセット51を右側側面に押し付けるとは,図3(b)の状態において爪55がインクリボンカセット51を同図右側に押圧していることを指しており,爪55がその弾性力によりインクリボンカセット51の装着方向と直交する左右方向にインクリボンカセット51を押圧し,これによりインクリボンカセット51の左右方向の位置決めを行なおうとしたものであるから,審決の認定には誤りがあると主張する。
しかし,引用例2(甲1)の第1〜4図からは,インクリボンカセット51の突起体56が設けられた側面に対する他側面に,カセットホルダ60側からカセットホルダ60から抜け出る方向(上方向)に,インクリボンカセット51の本体から徐々に離れるように一体的に傾斜して伸びて端部が操作部となっている爪55を備えていること,当該爪55には,カセットホルダ60側と操作部が設けられた前記端部の間の前記インクリボンカセット51の本体から離れる側に突起54が配されていること,前記爪55は前記突起54の上端面が穴69の上端部に当接して係合状態にあるときインクリボンカセット51の本体側に弾性変位した状態となっていること及び前記爪55の下端部がインクリボンカセットの51の最下部に近い領域において装着体の側面に湾曲部を介して一体的に形成されて当該下端部を支点として弾性変位可能に構成されていることが看取できるから,その旨を認定した審決に誤りはない。
(イ)原告は,引用例2(甲1)について,審決が 「第1〜4図から,イ ,ンクリボンカセット51の突起体56が設けられた側面に対する他側面に,カセットホルダ60側からカセットホルダ60から抜け出る方向(上方向 」は「抜け出る方向(水平方向 」の誤りであると主張する。 ) )しかし,前記のとおり,審決は 「なお,以下,便宜上,装着体と被装 ,着体の取付対峙面(各係合部が設けられた各側面に直交する面)に向かう直交する方向を下方向といい,離れる方向を上方向といい,まとめて上下方向ということにする(審決書14頁下から3行〜末行)と断り書き 。」をした上で,引用例2についても認定しているのであるから,審決の認定に誤りはない。
したがって,原告の主張は失当である。
( )相違点ウの容易想到性判断の誤りについて3原告は,引用発明に引用例2の爪55を適用することには阻害要因が存在すると主張する。
しかし,原告の主張は 「引用例2の爪55は,その弾性力がインクリボ ,ンカセット51の装着方向と直交する方向に働く」こと,すなわち爪55の形状がU字型であることを前提するものであり,引用例2における記載に基づくものではないから,その主張自体失当である。
, ,, 仮に 爪55がU字型であるとの前提に立ったとしても 当業者としてはインクリボンカセット51の装着状態を安定させ,使用時におけるガタツキや脱落を防止するために,加圧力を装着方向にも働くよう,インクリボンカセット51を装着方向すなわちカセットホルダ60側に押圧する加圧力を発生・増大させる方策を講ずることは容易であるから,引用例2の爪55を適用することに阻害要因はない。
したがって,引用発明の構成に代えて,引用例2の装着構成を採用することが容易に想到であるとした審決の判断に誤りはない。
( )小括4以上のとおり,本件発明1について,引用発明及び引用例2記載の発明により当業者が容易に発明をすることができたとする審決の判断に誤りはない。
そして,本件発明6は,本件発明1の構成に「前記インクタンク内には黒インクが収納されていること」との,インクタンクにおいて一般的な実施態様を構成として付加しただけのものであるから,同様に,引用発明及び引用例2記載の発明により当業者が容易に発明をすることができたとする審決の判断に誤りはない。
3結論以上によれば,審決の本件訂正の許否の判断及び本件訂正前の本件発明1及。, び6の進歩性判断に関する原告の取消事由はいずれも失当である したがって本件特許のうち請求項1及び6に係る発明についての特許は,いずれも特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。原告は,その他,縷々主張するがいずれも理由がない。審決に,その他,これを取り消すべき誤りは見当たらない。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 三村量一
裁判官 上田洋幸
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