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関連審決 無効2005-80270
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18行ケ10563審決取消請求事件 判例 特許
平成17行ケ10661特許取消決定取消請求事件 判例 特許
平成19行ケ10257審決取消請求事件 判例 特許
平成19行ケ10285審決取消請求事件 判例 特許
平成18行ケ10542審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 冒認出願(冒認) /  特許を受ける権利 /  承継 /  発明者 /  協議 /  自然法則 /  技術的思想 /  創作性(創作) /  共同開発 /  共同発明 /  進歩性(29条2項) /  公知技術 /  発明の詳細な説明 /  共同出願 /  共有 /  着想 /  利害関係人 /  技術的意義 /  特許発明 /  実施 /  交換 /  構成要件 /  業として /  侵害 /  共同発明者 /  設定登録 /  混同 /  請求人適格 /  請求の範囲 /  変更 /  利害関係人 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10369号 審決取消請求事件
原告パルシステム株式会社
訴訟代理人弁護士矢花公平
同弁理士平木祐輔,関谷三男,渡辺敏章,大塩剛
被告株式会社測研
訴訟代理人弁護士小池豊
同弁理士平山俊夫,飯田房雄
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/02/07
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が無効2005−80270号事件について平成18年7月3日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1当事者の求めた裁判1原告主文と同旨。
2被告(本案前の申立て)原告の訴えを却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
(本案の申立て)原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第2前提となる事実1特許庁における手続の経緯本件は,原告が特許権者である被告を相手方(被請求人)として特許無効審判の申立てをしたが,請求不成立の審決を受けたので,その審決の取消しを求めている事案である。
被告は,発明の名称を「車間距離保持不足違反の違反証拠作成システムとその車間距離の測定方法」とする特許第3437101号(平成10年9月18日出願,出願番号特願平10-283527号,平成15年6月6日設定登録。以下,その特許出願を「本件出願」といい,その請求項1〜9の発明を「本件特許発明1」〜「本件特許発明9」といい,これらを「本件特許発明」という。)の特許権を有する者である。
原告は,平成17年9月8日,特許庁に対し,本件特許を無効とすることを求めて審判の請求をし,特許庁は上記請求を無効2005-80270号事件として審理した上,平成18年7月3日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成18年7月13日に原告に送達された。
2本件特許発明1〜9に係る特許請求の範囲の記載【請求項1】レーザー光線を用いて照射ポイントまでの距離を計測する一方向又は同時二方向の距離測定機(1)と,その計測場所の経緯度を測定するGPS経緯度測定機(2)と,その測定時の時刻を特定する時計(3)と,違反車の速度を計測する速度計(4)と,関係車両の車両登録番号を入力する番号入力装置(5)と,前記距離測定機(1),GPS経緯度測定機(2),時計(3),速度計(4)及び番号入力装置(5)から得られた電子情報をプログラム処理するコンピュータ(6)と,そのコンピュータ(6)で情報処理されたデータをプログラムされた所定様式の違反キップ(K)に出力するプリンタ(7)とが電子的に接続されて成る違反証拠作成装置(S)を,取締りパトロールカー(A)に搭載し,同一車線を走る前走車(C)と車間距離保持不足違反の追走車(B)と,それらとは別車線を走る前記パトロールカー(A)との位置関係に基づき,前記違反証拠作成装置(S)によって前記前走車(C)のレーザー照射ポイント(X)から前記追走車(B)のレーザー照射ポイント(Y)までの車間距離(L)を,前記パトロールカー(A)に搭載した距離測定機(1)によってそのレーザー照射位置(Z)を中心に計測した距離データを基に前記レーザー照射ポイント(X)(Y)(Z)を三角形の三点とする三角測量法から算出し,前記距離測定機(1)による計測と同時的に連動して前記違反証拠作成装置(S)により得られた車間距離(L)データ,経緯度位置データ,時刻データ及び速度データをコンピュータ(6)に取り込むとともにそれらの計測データとは別に人為的に入力した車両登録番号データを前記コンピュータ(6)で情報処理して前記プリンタ(7)から前記違反キップ(K)に出力できるようにしたことを特徴とする車間距離保持不足違反の違反証拠作成システム。
【請求項2】レーザー光線を用いて照射ポイントまでの距離を計測する距離計測機構(15)とそのレーザー照射ポイントをマーキングした写真に撮影するCCDカメラ機構(16)とを備えた一方向又は同時二方向の距離測定機(1)と,その計測場所の経緯度を測定するGPS経緯度測定機(2)と,その測定時の時刻を特定する時計(3)と,違反車の速度を計測する速度計(4)と,関係車両の車両登録番号を入力する番号入力装置(5)と,前記距離測定機(1),GPS経緯度測定機(2),時計(3),速度計(4)及び番号入力装置(5)から得られた電子情報をプログラム処理するコンピュータ(6)と,そのコンピュータ(6)で情報処理されたデータをプログラムされた所定様式の違反キップ(K)に出力するプリンタ(7)とが電子的に接続されて成る違反証拠作成装置(S)を,取締りパトロールカー(A)に搭載し,同一車線を走る前走車(C)と車間距離保持不足違反の追走車(B)と,それらとは別車線を走る前記パトロールカー(A)との位置関係に基づき,前記違反証拠作成装置(S)によって前記前走車(C)のレーザー照射ポイント(X)から前記追走車(B)のレーザー照射ポイント(Y)までの車間距離(L)を,前記パトロールカー(A)に搭載した距離測定機(1)によってそのレーザー照射位置(Z)を中心に計測した距離データを基に前記レーザー照射ポイント(X)(Y)(Z)を三角形の三点とする三角測量法から算出し,前記距離測定機(1)による計測と同時的に連動して前記違反証拠作成装置(S)により得られた車間距離(L)データ,CCDカメラ画像データ,経緯度位置データ,時刻データ及び速度データをコンピュータ(6)に取り込むとともにそれらの計測データ及び画像データとは別に人為的に入力した車両登録番号データを前記コンピュータ(6)で情報処理してその処理された文字及び画像を前記プリンタ(7)から前記違反キップ(K)に出力できるようにしたことを特徴とする車間距離保持不足違反の違反証拠作成システム。
【請求項3】同時二方向の距離測定機(1)に,その二方向間を計測する角度計(9)又は二方向を計測する方位計(10)を付設するとともに得られた角度データ又は方位データをそれらに接続されたコンピュータ(6)に取り込めるようにし,前記角度計(9)又は前記方位計(10)によって前記距離測定機(1)のレーザー照射位置(Z)を中心とする追走車(B)と前走車(C)との間の角度データが得られ,その得られた角度データから車間距離(L)の算出ができるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の車間距離保持不足違反の違反証拠作成システム。
【請求項4】違反証拠作成装置(S)に,距離測定機(1)のレーザー照射位置(Z)を中心に,パトロールカー(A)の進行方向に対して真横に向けて2〜5m範囲に感応する赤外線を照射し,その赤外線の反射で車体の存在を感知する赤外線センサー(17)を設け,パトロールカー(A)と並走する追走車(B)又は前走車(C)の車体が赤外線を反射した瞬間又は反射状態が解消した瞬間に前記違反証拠作成装置(S)のスイッチが自動的に入るようにするか又はパトロールカー(A)と並走する車が赤外線を反射している状態の時にのみ前記違反証拠作成装置(S)の手動スイッチが作動できるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の車間距離保持不足違反の違反証拠作成システム。
【請求項5】違反証拠作成装置(S)に,車間距離(L)の測定の瞬間に,前走車(C)と追走車(B)を含む全体の位置関係をパノラマ撮影できるCCDカメラ(8)を備え,得られたカメラ画像データを前記CCDカメラ(8)に接続されたコンピュータ(6)に取り込めるようにし,前記違反キップ(K)にそのカメラ画像の表示スペースを設けてその違反キップ(K)にCCDカメラ画像をプリンタ(7)でプリントアウトできるようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の車間距離保持不足違反の違反証拠作成システム。
【請求項6】作成された違反キップ(K)のデータに基づく車両登録番号で管理される交通違反の管理データをコンピュータ(6)で作成し,その管理データを現場の前記コンピュータ(6)を含むサブコンピュータシステム(11)と本部のメインコンピュータシステム(12)とを携帯電話回線(13)及び/又は自動車電話回線(14)を介して遣り取り可能とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の車間距離保持不足違反の違反証拠作成システム。
【請求項7】同一車線を走る前走車(C)と車間距離不足違反の追走車(B)と,それらとは別車線を走るパトロールカー(A)との位置関係に基づき,前記パトロールカー(A)の距離測定機(1)のレーザー照射位置(Z)を中心にしてそのレーザー照射位置(Z)から前記追走車(B)のレーザー照射ポイント(Y)までの距離(M)と,レーザー照射位置(Z)から前記前走車(C)のレーザー照射ポイント(X)までの距離(N)とを同時二方向の距離測定機(1)により計測し,また前記距離測定機(1)の照射位置(Z)を中心とする前記追走車(B)と前記前走車( )との角度(θ)を,角度計(9)C又は方位計(10)により計測して,前記距離(M),(N)と前記角度(θ)とから三角形を成す三点(X)(Y)(Z)の三角測量法により前記前走車(C)のレーザー照射ポイント(X)から前記追走車(B)のレーザー照射ポイント(Y)までの車間距離(L)を算出することを特徴とする請求項3記載の車間距離保持不足違反の違反証拠作成システムによる車間距離の測定方法。
【請求項8】同一車線を走る前走車(C)と車間距離不足違反の追走車(B)と,それらとは別車線を走る取締りパトロールカー(A)との位置関係に基づき,前記パトロールカー(A)を前記追走車(B)又は前記前走車(C)の側方に並走状態に運転操作し,距離測定機(1)のレーザー照射位置(Z)を中心に,赤外線センサー(17)によりパトロールカー(A)と並走する追走車(B)又は前走車(C)の車体が赤外線を反射した瞬間又は反射状態が解消した瞬間に前記違反証拠作成装置(S)のスイッチが自動的に入るようにするか又はパトロールカー(A)と並走する追走車(B)又は前走車(C)の車体が赤外線を反射している状態の時にのみ前記違反証拠作成装置(S)の手動スイッチが作動できるようにし,前記距離測定機(1)のレーザー照射位置(Z)から前記追走車(B)のレーザー照射ポイント(Y)までの距離(M)と,前記レーザー照射位置(Z)から前記前走車(C)のレーザー照射ポイント(X)までの距離(N)とを同時二方向の距離測定機(1)により計測し,距離測定機(1)のレーザー照射位置(Z)と前記追走車(B)のレーザー照射ポイント(Y)と前記前走車(C)のレーザー照射ポイント(X)の三角形を成す三点(X)(Y)(Z)間の直角となるパトロールカー(A)と並走する車側の内角と,得られた各距離(M),(N)とから三角測量法により前記前走車(C)のレーザー照射ポイント(X)から前記追走車(B)のレーザー照射ポイント(Y)までの車間距離(L)を算出することを特徴とする請求項4記載の車間距離保持不足違反の違反証拠作成システムによる車間距離の測定方法。
【請求項9】同一車線を走る前走車(C)と車間距離不足違反の追走車(B)と,それらとは別車線を走る取締りパトロールカー(A)との位置関係に基づき,前記パトロールカー(A)の距離測定機(1)のレーザー照射位置(Z)からパトロールカー(A)と並走する車のレーザー照射ポイントまでの距離を予め数値設定し,前記パトロールカー(A)を前記追走車(B)又は前記前走車(C)の側方に並走状態に運転操作し,前記距離測定機(1)のレーザー照射位置(Z)を中心に,赤外線センサー(17)により,パトロールカー(A)と並走する追走車(B)又は前走車(C)の車体が赤外線を反射した瞬間又は反射状態が解消した瞬間に前記違反証拠作成装置(S)のスイッチが自動的に入るか又はパトロールカー(A)と並走する追走車(B)又は前走車(C)の車体が赤外線を反射している状態の時にのみ前記違反証拠作成装置(S)の手動スイッチが作動できるようにし,前記レーザー照射位置(Z)からパトロールカー(A)と並走する車とは別の車のレーザー照射ポイントまでの距離を距離測定機(1)により計測し,前記予め設定したパトロールカー(A)と並走する車のレーザー照射ポイントまでの計測値と,三角形を成す三点(X)(Y)(Z)間の直角となるパトロールカー(A)と並走する車側の内角とから三角測量法により前記前走車(C)のレーザー照射ポイント(X)から前記追走車(B)のレーザー照射ポイント(Y)までの車間距離(L)を算出することを特徴とする請求項4記載の車間距離保持不足違反の違反証拠作成システムによる車間距離の測定方法。
3審決の要旨( ) 審決は,以下のとおり,原告(請求人)の主張及び証拠方法によっては,本1件特許を無効とすべきものとすることができないとした。
( ) 請求人(原告)の主張の概要(審決4頁12行〜28行)2本件特許出願においては,その発明者が「【AA】」,「【BB】」の2名とされてい アるが,本件特許に係る発明は,さらに「【CC】」,「【DD】」の2名を加えた4名によってなされたものである。即ち,本件特許発明のシステムは,「【CC】」が構想したものであり,また,本件特許の請求項2に係る発明の「マーキング」に関し,これをソフトウェアによって画像に形成することは,「【DD】」が発案したのであるから,この両名も共同発明者である。
本件特許発明についての特許を受ける権利は,請求人と被請求人の共有に係るものであイるにも拘わらず,被請求人は単独にて特許出願を行った。本件特許は,特許法第38条(共同出願)の規定に違反してされたものであって,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきものである。
本件特許出願の出願人である被請求人は,「【CC】」,「【DD】」から本件特許発ウ明について特許を受ける権利承継していない。本件特許は,発明者でないものであってその発明について特許を受ける権利承継していないものの特許出願に対してされたものであって,同法第123条第1項第6号に該当し,無効とされるべきものである。
( ) 審決が上記結論を導いた理由は,次のとおりである。 3ア請求人(原告)の提出した書証についての認定(5頁末行〜8頁10行)請求人は,甲第1号証ないし甲第17号証を提出しているので,これらについて検討する。
・・・なお,請求人は,証拠方法として,「写し」を提出しているが,その原本とも称されるべきものの存在について,被請求人は格別争っていない。
甲1は,本件特許第3437101号の特許証の写しとされるものである。これによれ(ア)ば,本件特許の表記上の発明者は,「【AA】」と「【BB】」の2名であり,この点に争いはない。
甲2は,平成10年中ごろ,請求人が作成し,被請求人と栃木県警に提出したものの写(イ)しとされるものである。甲2について,被請求人の主張によれば,甲2は,県警を含む5者の協議当日に被請求人代表の「【BB】」が説明した基本的なシステム構想を基に,コンピュータ作図を得意としていた請求人に依頼して作成されたものであるとする。ところで,甲2の資料には,その作成者はもとより作成日についても記載がなく,また,請求人側において本件特許発明に関与したことを窺わせる記載もない。そして,この点について,請求人は,何の補強もしない。そうすると,この資料によって本件特許発明発明者を認定するための証拠とすることは到底できないといわざるを得ない。
甲3,4についても,その作成者,作成日について記載がなく,さらに,請求人側にお(ウ)いて本件特許発明に関与したことを窺わせる記載もないので,甲2同様,本件特許発明発明者を認定するための資料とすることはできない。
・・・・・甲16は,「【AA】」が作成した陳述書であって,本件特許発明について,「【C(コ)C】」が共同発明者であることを立証しようとするものである。しかし,甲16を作成した「【AA】」は,本件特許発明の開発当時,栃木県警の勤務であって,栃木県警における「三者会合」などでの議論内容については格別,それ以外の,請求人と被請求人両社間の役割分担などについて正確に把握していたとは考えにくく,両社間の共同開発に直接関与していたとも考えられない。そうであれば,特に「【CC】」が共同発明者のひとりであるとする点についての甲16の陳述内容は,「三者会合」などにおける伝聞情報の域を出ないといわざるを得ない。
甲17は,「【CC】」が作成した陳述書であって,請求項2に係る発明について,(サ)「【DD】」がその共同発明者であることを立証しようとするものである。しかし,後述の「2.(3)」のように,この陳述内容によっても,「【DD】」が,請求項2に係る発明の共同発明者であると認めることはできない。もっとも,甲17の作成者である「【CC】」は,まさに本件特許無効審判事件の当事者である請求人の代表者であるから,この陳述内容は請求人の主張として捉える外ない。
イ請求人(原告)の主張について(8頁12行〜10頁下から5行)両当事者間に争いのない事実によれば,本件特許出願の図面である図2は,甲3最終頁 (ア)に記載の発明を基に作成されたものであって,この甲3最終頁の図面は,本件特許の出願日以前に,「【CC】」により作図されたものである。請求人は,平成18年2月23日の口頭審理期日において,この甲3最終頁に記載の発明が「【CC】」に係るものであるということを前提に,甲3最終頁に記載の発明が本件特許発明の必須の構成であることを証すれば,「【CC】」が共同発明者の一人であるということができるとした上で,このことを証明するために,同期日において,車間距離測定装置の原型の実物及びそれを示すビデオを提示した(平成18年3月27日付け「上申書」第3頁14行から第5頁9行)。同期日における請求人の陳述によれば,提示された実物あるいはビデオに示された装置は,本件特許発明構成要件に関連するものであって,これが「【CC】」により本件特許の出願日以前に作製されたものであろうことは,十分に窺われる。
ところで,ここにおいて明確に区別されなければならないことは,このような装置が誰によって作製されたのかという事実と,そのような装置が誰によって発明されたかのという事実である。つまり,この装置を作製した者が,その発明者であるとは限らない。いずれかの者が発明としての着想を得て具体化した後,これを別の者が作製したということも十分に考えられるからである。この点,被請求人は,甲3最終頁に記載の発明が「【BB】」の構想に係るものであると主張しているのであるから,前記装置が誰によって作製されたかという以前に,請求人は先ず,被請求人のこの主張を覆す努力をしなければならないのである。しかし,請求人は,この装置の発明者について,甲16,17における陳述以上の言及はしていない。そして,甲16,17については既に述べたとおり,共同発明者を証明するものとはいえないから,請求人の上記主張は採用することができない。
請求人は,請求人が開発したソフトウェアについて,このソフトウェアが,本件特許発(イ)明の構成要件に係るものであって,「【CC】」が発明したものであるとも主張する(平成18年3月27日付け「上申書」第5頁10行から第7頁12行)。
本件特許発明構成要件にソフトウェアが含まれていることは確かである。そして,そのようなソフトウェアを含めた全てのソフトウェアが,その構想の段階から請求人において開発されたというのであれば,「【CC】」が共同発明者であるということができるかもしれない。
しかし,これらソフトウェアが,その構想の段階から請求人において開発されたという証明は,請求人側においてなされておらず,また,請求人の開発したソフトウェアが本件特許発明の必須の構成要件であるとも必ずしもいえないのである。そうすると,この請求人の主張についても,上記(1)と同様,甲16,17の陳述以上の言及はなく,これを採用することができないといわざるを得ない。
さらに,請求人は,本件特許発明について,「【DD】」も共同発明者であると主張す(ウ)る。具体的には,請求項2の「レーザ照射ポイントをマーキング」する点について,「【CC】」は当初,物理的なマーキングを考えていたが,「【DD】」に相談した結果,「【DD】」が,ソフトウェアによって画像にマーキングを生成する技術を発案したというのである(平成18年3月27日付け「上申書」第7頁13行から第8頁10行)。請求項2には確かに,システムに「レーザ照射ポイントをマーキングした写真を撮影するCCDカメラ機構(16)」を備えることについて規定がある。しかし,請求項2に係るこの規定は,何らかの手段によってレーザ照射ポイントをマーキングして写真に撮影すればよいというものであって,それ以上に,その最適な解決手段が示されなければならないということはない。この請求項2に係る発明の場合,その部分に発明の特徴が存在するというものではないから,これをより具体的にしなければ発明が完成しないというものでもない。なお,ここにおいて,最適な具体化手段として,ソフトウェアにより画像にマーキングを生成するとの技術について発明がなされたのであれば,そのときはその発明について特許を受ける権利が生じたということができるのである。そうすると,ソフトウェアにより画像にマーキングを生成するとの具体的な技術については,「【DD】」の発明に係るものといえる可能性があるものの,本件請求項2に係る発明は,そこまでの具体的技術を求めるものではないから,本件特許発明に限れば,「【DD】」を共同発明者とすることはできない。
ウむすび以上のとおりであるから,請求人主張の理由及び証拠方法によっては,本件特許を無効とすべきものとすることができない。
以下,人の呼称については,自然人の場合は,初出のときに限り「氏名」を表記し,再出以降では「氏」で表記し,株式会社等の場合は,初出のときに限り「株式会社」等を付して表記し,再出以降ではこれを付さないで表記する。
第3本案前の抗弁1被告の主張原告は,まず特許法123条1項2号の無効理由のうち,共同出願について定めた同法38条違反を主張する。同条は,「特許を受ける権利共有に係るときは,各共有者は,他の共有者と共同でなければ,特許出願をすることができない。」と規定する。そして,特許法123条2項は,同法38条違反を理由とする無効審判請求は利害関係人に限り請求することができる旨を規定する。
ところで,原告は,会社であって,もとより発明者の地位にあるものではないから,本件は,出願人にならなかった共同発明者の一方が無効審判請求人として特許法38条違反を主張している事案ではない。原告が発明者の一人であるという【CC】は,原告の代表者ではあるが,会社と代表者は別人格であり,会社と個人を同一視することは許されないから(東京高裁昭和41年9月27日判決・行裁集17巻9号1119頁参照),原告は利害関係人ではない。
また,本件特許発明の特許権者である被告は,原告に対し,平成16年4月19日付けの誓約書(甲15。以下「本件誓約書」という。)において,「パルシステム株式会社の営業活動に対しては,これらの特許に係る一切の権利行使を行わないものとする。」との意思表示を行っており,本件誓約書中の出願番号特願平10-283527号が本件特許発明である。また文中の「パルシステムと測研との共同考案」との点は事実に誤りがあり,本件誓約書をもって本件特許が共同発明に係るものとの証明になるものではないが,被告が原告に対し本件特許権の行使をしない旨の約束は,現在でも変更がない。したがって,原告には,本件特許を無効とする利益がない。
無効審判請求をするために利害関係を必要とするか否かについては,法の変遷もあり,議論がなされてきたところ,平成15年法律47号により改正された特許法では,利害関係が原則として不要とされたが,特許法38条違反を理由とする場合及び同法123条1項6号違反を理由とする場合については,例外的に利害関係が必要とされることが同条2項に明記されている。利害関係につき特段の規定がなかった旧法下でも,「利益なければ訴権なし」との訴訟の原則から,利害関係のない者には請求人適格がないとの判断が示されているのであって,このような流れに従って考えるならば,現行法のもとで,利害関係不要との原則に対し,例外的にこれを必要とする場合の利害関係の存在は厳格に解すべきが当然である。
本件において,原告(請求人)は,共同発明者ではなく,また一企業として本件特許を自ら実施するに当たり制約もないのであるから,本件特許を無効とすることに何らの利益もなく,特許法123条2項にいう利害関係人に当たらないことが明らかである。
したがって,本件訴訟は,訴えの利益を欠いているから,不適法なものとして却下されるべきである。
2原告の反論( ) 下記のとおり,【CC】及び【DD】は,本件特許発明の少なくとも一部を1発明しているものであるから,本件特許発明の共同の発明者である。原告は,甲49に示すように,本件特許発明発明者である【AA】,【CC】及び【DD】から特許を受ける権利を譲渡されており,本件特許発明に関して特許を受ける権利を有するものであるから,本件訴訟において訴えの利益を有するものである。
( ) 被告は,原告が本件審判事件の利害関係人ではない旨主張するが,審判段階2では,利害関係人であることを争っていなかったのである。被告は,本件訴訟に至って,乙8〜19を提出するが,審判段階で,【BB】が本件特許発明発明者であることを積極的に主張しておらず,また,それを証明する証拠を一切提出してこなかったのに,ここにきて急に上記のような証拠が出現することは不思議であるといわざるを得ない。
第4原告主張の取消事由審決は,本件特許発明共同発明であることを看過し(取消事由1),また,発明者でない者のした特許出願であることを看過したものであって(取消事由2),違法であるから,取り消されるべきである。
1取消事由1(本件特許発明共同発明であることの看過)( ) 本件特許発明におけるソフトウェアの技術的意義について1ア【CC】は,平成10年6月から始まった車間距離測定装置の開発の過程で,平成10年8月に被告及び栃木県警察本部(以下「栃木県警」又は「県警」という。)に提出した「車間距離測定記録システム」と題する書面(甲2。以下「甲2資料」という。)及び平成10年9月に県警に提出した「第11回栃木県警察装備資機材開発改善コンクール出品説明書」(甲3。以下「甲3資料」という。)を作成したものであり,かつ,これらの資料に示されている車間距離測定装置(以下「コンクール用試作機」という。)の構成のとおりのものを創作したのである。
ところで,【BB】及び【AA】を発明者とする本件特許発明1は,距離測定機(1),GPS経緯度測定機(2),時計(3),速度計(4),番号入力装置(5),コンピュータ(6),及び,プリンタ(7)を含む違反証拠作成装置(S)を,取締りパトロールカー(A)に搭載したものであり,その違反証拠作成装置(S)の構成は,本件明細書の段落【0020】及び図1及び図2に記載されている。そこで,この違反証拠作成装置(S)の構成と甲2,3資料とを対比すると,前者の構成は,甲2資料の1頁及び2頁,甲3資料の5頁に示された構成と同じであり,わずかに,前者においては,後者のデータ連結装置の代わりにコンピュータが設けられている点で相違するのみである。
また,本件特許発明1は,「同一車線を走る前走車(C)と車間距離保持不足違反の追走車(B)と,それらとは別車線を走る前記パトロールカー(A)との位置関係に基づき,前記違反証拠作成装置(S)によって前記前走車(C)のレーザー照射ポイント(X)から前記追走車(B)のレーザー照射ポイント(Y)までの車間距離(L)を,前記パトロールカー(A)に搭載した距離測定機(1)によってそのレーザー照射位置(Z)を中心に計測した距離データを基に前記レーザー照射ポイント(X)(Y)(Z)を三角形の三点とする三角測量法から算出」するように構成されているが,この計算方法は甲2,3資料に記載されているものである。
したがって,本件特許発明1は,甲2,3資料を用いて作成されたものであって,本件特許発明1の違反証拠作成装置(S)の構成は,基本的に【CC】の着想によるものである。
また,平成10年9月14日作成のGPS経緯度測定機(以下「GPS」という。)のデータを取り込むためのソフトウェアのソースコード(甲9。以下「甲9資料」という。)は,【CC】が創作したものである。
ところで,本件特許発明1は,「前記距離測定機(1)による計測と同時的に連動して前記違反証拠作成装置(S)により得られた車間距離(L)データ,経緯度位置データ,時刻データ及び速度データをコンピュータ(6)に取り込むとともにそれらの計測データとは別に人為的に入力した車両登録番号データを前記コンピュータ(6)で情報処理して前記プリンタ(7)から前記違反キップ(K)に出力できるようにした」ものであるところ,まず,「車間距離(L)データ,経緯度位置データ,時刻データ及び速度データをコンピュータ(6)に取り込み」,かつ,それらのデータを処理するソフトウェアは,甲9資料に示されている。
したがって,本件特許発明1は,甲9資料も用いて作成されたものであって,この点からも,本件特許発明1の構成が【CC】の着想によるものであることが分かる。
イ審決は,前記第2の3( )イ(イ)のとおり,「本件特許発明構成要件にソフ3トウェアが含まれていることは確かである。」と認定し,「本件特許の製品化に当たって必要なコンピュータのデータ処理をするためのソフトウェアの作成」,「本件特許の実施化に当たって必要となってくる各種データをコンピュータ処理するに当たってのソフトウェアの作成」及び「本件特許で得られる各種データをコンピュータ処理するに当たってのソフトウェアの作成」については原告側が担当したことを認めつつ,「これらソフトウェアが,その構想の段階から請求人において開発されたという証明は,請求人側においてなされておらず」,「請求人の開発したソフトウェアが本件特許発明の必須の構成要件であるとも必ずしもいえないのである。」と説示しているから,ソフトウェアが「構想の段階から請求人において開発された」のでなければならないものと考えているようである。審決の趣旨は,必ずしも明確ではなく,請求人の開発したソフトウェアが本件特許発明構成要件であるソフトウェアとは異なるものであると考えているものと思われるが,何の根拠もないものであって,不当というほかない。
( ) 本件特許発明に係る共同開発2ア特許法36条5項は,「第3項第4号の特許請求の範囲には,請求項に区分して,各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認められる事項のすべてを記載しなければならない。」と規定しているから,特許請求の範囲には,発明を構成するための必須の構成要件のみを記載すべきであり,この要件を満たさない場合には拒絶される。
そこで,共同の発明者となり得る条件についてみると,請求項に記載された発明が複数の発明者の共同でされた場合には,請求項に記載された構成要件の少なくとも1つを発明した者が,その発明の共同の発明者であることは当然として,請求項に記載された構成要件の少なくとも一部を発明した者もその発明の共同の発明者である。また,発明は,着想の段階から発明が完成するまでの時間的な要素を有するが,共同発明者となるには,最初の着想の段階から参加し,かつ,発明が完成された時点まで継続的に関与している必要はなく,例えば,最初の段階で基本的な構想を着想し,その後に他人がその技術を発展させて発明を完成させた場合では,最初に着想した者も,その着想を発展させた者も,共同の発明者となり得るのである。
イ本件特許発明を完成するには,GPS及びレーザ距離計等から出力を取り込んで,車間距離を演算し,それを現在位置及び現在日時とともに証拠として出力するための技術が必要であり,そのためには,ソフトウエアの開発が必要であるが,被告にはそのような技術も経験もなかった。そのために,【BB】は,【CC】に共同開発の提案をしたのである。被告が本件特許発明を完成させるために必要な知識も技術も有しないことは,【BB】が【CC】に共同開発の申入れをしたことのほか,【BB】の手紙(甲20の2枚目5行目)において,被告自身が「私どもとしては技術も無いので,『車間距離測定システム』を防衛するには特許しかないことをご理解願います。」と述べていること,被告が宇都宮地裁の訴訟で提出した陳述書において,「役割分担をして共同開発を始めた」と話していることからも明らかである。
ウ【CC】・【BB】による本件特許発明に係る共同開発の具体的な経過は,次のとおりである(以下特に断らない限り平成10年の出来事である。)。
(ア) 【CC】は,6月中旬ころ,【BB】より,栃木県警からの話として「車間距離を測定し,その測定値を印字できないか」との相談を持ち込まれたので,同月22日,【BB】と一緒に,栃木県警に出向いた。栃木県警では,【EE】,【FF】及び【AA】が応対し,その席上で,【AA】から,?@車間距離を測定し速度取締り同様レシートなどに印字する,?A測定は先行車とパトカーの間の距離でよい,?B走行中のパトカーから測定する,?C装置はコンパクトなものがよい,といった仕様の説明を受け,また,この試作機を警察の装備資機材開発改善コンクール(以下「警察装備コンクール」という。)に出品したいとの要請を受けた。その際,【CC】は,【BB】から,口頭で共同開発の申入れを受けたので,これに応じ,栃木県警とも役割分担を決めてコンクール用試作機の開発を進めることになり,【AA】が実質的に指揮を取ることになった。
(イ) 7月初旬の【CC】・【BB】・【AA】の三者の会合で,【CC】は,適合するハードウェアとして松下電器産業製のモバイルパソコンを使用することを提案し,その採用が決まったので,【CC】は,早速,モバイルパソコンを松下電器産業から借用するとともに,ソフトウェア開発のためにソフト研修受講の手配を行い,システム設計に着手した。
(ウ) 同月9日には,被告の手配で測定器メーカのリーグルジャパン社から借用したレーザ距離計を使用して,県警・被告・原告・リーグルジャパン社の四者が集って,高速道路上で測定試験を行い,車のフロントガラス越しの測定でも機能に支障のないことが分かった。この段階で,【CC】は,上記レーザ距離計を取り扱って通信コマンドや通信手順(プロトコル)を知り,レーザ距離計とモバイルパソコン間の通信プログラムを完成させた。
(エ) 同月下旬の【CC】・【BB】・【AA】の三者の会合において,【AA】は,「取締場所の特定をキロポスト表(キロポスト毎の住所一覧表)で行っている」と説明し,GPS利用の話が浮上した。【CC】は,データベースを構築することで緯度経度からキロポストを割り出し,キロポストから住所を割り出すことが可能であり,そうすればGPSを活用することができると考えたが,車間距離測定装置にGPSを採用するに当たっては,距離測定と取締場所特定との同時性を確保する必要があるところ,時速100kmで走行する車は1秒間に30m近く移動するので,GPSが緯度経度を取得するタイミング,そのデータを外部に出力するまでの時間,データベース側の住所検索時間等々を検証し,精度や信頼性を明確にする必要があった。時速100kmで走る車の中でGPSの刻々と変化する緯度経度をどうやって瞬時に読み取るか,しかも距離測定と同時にこれを行うにはどうするか,それにGPSの緯度経度そのままでは取締場所の特定には使えないなど課題があり,目前のコンクールに間に合わないことが明らかであった。
そこで,【CC】は,距離測定とGPSデータ取得を同時に行うことで生じるモバイルパソコンの入力不足を補うとともに,GPSと距離計に電源を供給し,かつ,距離計による測定に同期させてGPSデータを取得するという連結機能を持たせるために,データ連結装置を考案し,これを基に甲2資料を作成し,8月中旬,【BB】及び【AA】に示した。ところが,データ連結装置は,市販品ではないので,別途,ソフトウェアとともに開発する必要がある装置であった。甲2資料において,車間距離測定装置の基本的な構想が完成した。
以上のように,車間距離測定装置へのGPS採用は,三者の協力であることには間違いないが,【CC】の発案で解決されたものである。
(オ) その後まもなく,キロポストのデータベース化をするに際してGPS仕様の詳しい情報が必要になったので,【CC】は,【BB】とともに,栃木県工業技術センターに出向き,GPSに詳しい技術者からGPSの性能や通信機能について説明を受けた。
ところで,被告は,車間距離測定装置の具体的な商品化に向けて,パソコンのソフト開発を依頼していた【CC】と一緒に県工業技術センターを訪ね,GPSの基本事項の取扱いやキロポストデーターベース化の可能性のアドバイスを受けた旨主張する。
しかし,【CC】が県工業技術センターの技術者に会ったのは,上記のとおり,キロポストのデータベース化に際してGPS仕様の詳しい情報が必要になったからであり,データベースはコンピュータ側のソフトウェアであって,GPSとは何の関係もない事柄である。
(カ) 【CC】は,8月下旬,甲2資料の基本的な構想に基づく試作をするために,甲3資料の最終頁の図を作成した。甲3資料は,データ連結装置の開発には,専用基板やファームウェアの開発など多くの時間と費用を要することから,この装置をノートパソコンで代用し,まずは動作を確認しようとするものである。甲3資料は,9月に栃木県警に提出された。また,この段階で,【CC】・【BB】は,甲3資料のうちGPSデータ取込み部分を除いてコンクール用試作機を完成させていた。
【CC】は,9月初めに,以前から親交のあるロングワード社の【DD】にGPSデータ取り込みソフトの作成を依頼し,GPS接続のためのRS232C/2chカードをメーカーに発注していた。
(キ) 【CC】・【BB】は,GPSデータ取込み部分を除くコンクール用試作機を持参して,9月4日,【AA】に同行して警察庁に出かけ,上記試作機を前に警察庁の担当者と意見交換を行った際,?@どこの距離を測定したかが不明である,?A後続車(被疑車両)の位置が不明であるとの2点で証拠能力に欠けると指摘された。
【CC】は,上記?@の解決にはカメラしかないと考え,【DD】に対し,カメラのデータ取込みソフトの作成も依頼した。上記?Aについては,日常の制御システムで利用される在荷検知の範囲内の簡単なものであった。
(ク) 【CC】は,9月27日に,GPSデータ受信処理,レーザ距離センサ受信処理のプログラムを完成させており,測定ボタンが押された時にレーザ距離計が測定をし,これに連動して,別作業で取得されたGPSデータが読み込まれる仕組みになっている。これは,本件特許発明1及び2にある「距離測定器による計測と同時的に連動して装置(S)により得られた緯度経度位置データをコンピュータに取り込む」とされているソフトウェアそのものであり,本件特許発明1の必須の構成要件である。
エ上記のとおり,ソフトウェアが本件特許発明1の構成要件に含まれる以上,【CC】及び【DD】は,本件特許発明の少なくとも一部を発明しているものであるから,本件特許発明の共同の発明者である。このことは,本件特許発明2〜9においてもそのまま妥当するものである。したがって,本件特許は,特許法123条1項2項の規定に該当するので,無効となるべきである。
2取消事由2(発明者でない者のした特許出願であることの看過)に対して本件特許発明発明者の一人である【AA】は,特許を受ける権利を,被告に譲渡していないし移転もしていないから,被告は,特許を受ける権利を有しておらず,したがって,本件特許は,発明者でない者であって,その発明について特許を受ける権利承継しないものの特許出願に対してされたものであり,特許法123条1項6号の規定に該当し,無効とすべきである。
特許法123条1項6号に規定する無効理由は,本件特許の出願人が,発明者でないこと,その発明について特許を受ける権利承継しないものであることを証明すればよいところ,本件特許の出願人である被告は,【AA】・【CC】・【DD】のだれからも,特許を受ける権利を譲渡されていないのであるから,本件特許の出願人が発明者でないことが明らかである。
第5被告の主張1取消事由1(本件特許発明共同発明であることの看過)に対して( ) 本件特許発明におけるソフトウェアの技術的意義に対して1ア被告の代表者である【BB】は,レーザー距離計を使った送電線と接近樹木との距離を測定できる離隔測定システム,ワンマン測量システムの開発,携帯型GPSを用いて瞬時に得られる経緯度のデジタル情報を基に,経緯度線のあるGPS専用の地図と突き合わせ現在位置を容易に読取り可能なナビゲ-ションシステムの開発の経験と実績を持っていた。本件では,【BB】は,栃木県警から当該システムの開発の要請を受け,所期の目的と機能を有するシステムの発明を行ったものである。本件特許発明は,データをプログラム処理することも要素となっており,発明の実施化をする過程で具体的なプログラムを作成したのは原告であるが,プログラム処理すること自体は【BB】の発案である。それゆえに,【BB】は,本件特許発明に係るシステムに適合するソフトウェアの作成を原告に依頼することにし,初期の段階で栃木県警との会合に原告の代表者である【CC】を同行したのである。
しかし,本件特許発明において,プログラム処理は,データの処理手段として本件のようなシステムに不可欠なものであるが,プログラムの内容が発明の対象となっているものではなく,プログラムが作成されないと発明として完成されないというものではない。
なお,原告が車間距離測定装置を作動させるソフトウェアを完成させたのは,平成10年12月以降である(なお,本件出願日は同年9月18日である。)。このことは,被告が財団法人栃木県産業技術振興協会に新技術,新製品などの助成金を交付申請したときの申請書(乙16の1)の2枚目?Cの項に,研究開発のスケジュールとしてソフト開発完了が平成10年12月とされていることからも明白である。
イ原告主張の基本的な誤りは,発明とその具体的な実施化とを混同し,後者への関与をもって発明者であると位置付けていることである。いうまでもなく,発明とその実施化とは次元の違う問題である。本件特許発明においては,むしろ,パトカーから先行車までの距離を測定するだけで,先行車と後続車間の車間距離を算出する方法が特徴的な技術事項であって,【BB】が最も苦労したところである。一般的に,三角形を解く方法としては,?@3辺の長さを知る,?A1辺と両端の角を知る,?B2辺とその挟角を知る,の3つの方法があるが,本件のシステムにおいて利用できるのは?Bの方法であり,その場合,高速移動中のパトカーから移動中の物体2点間の距離と角度を同時に測定することは,可能であるが,それなりの設備が必要となる。県警との当初の打合せでは,あまり精度を必要とせず,測定誤差は±1m以内であれば十分であるとのことであったので,さらに角度を測定しない方法を検討し,最終的には,パトカー,先行車,後続車でできる三角形を直角三角形にすれば,ピタゴラスの定理で,先行車と後続車との車間距離を算出することができるとの結論に到達した。そして6月22日の県警との協議の際,直角三角形の高さを一定にすれば斜辺だけの測定で,角度計を使わず,先行車と後続車との車間距離が算出できることを図示して説明したのである。
( ) 本件特許発明に係る共同開発に対して2ア【BB】が【CC】に依頼したのは,【BB】の創作に係る上記( )イの基 1本的なシステム構想を実施化するに当たって,共同開発を依頼したのであって,【CC】と共同で上記基本的なシステム構想を開発したのではない。前記のとおり,発明とその実施化とは次元の異なる問題である。
原告は,被告が宇都宮地裁の訴訟で提出した陳述書において,「役割分担をして共同開発を始めた」と話していることを取り上げて,【BB】が【CC】に共同開発の提案をした旨主張する。
しかし,原告指摘の部分は,「製品化するには,コンピュータでデータ処理するソフトが必要となるので,異業種活動で知り合ったパルシステム代表の【CC】氏に製品化に向けた共同開発を持ちかけたところ,【CC】氏も是非やりたいとのことで,両社の役割分担を決め,製品化に向けて共同開発をはじめました。」と記載されているのであって,もっぱら製品化に向けた共同開発のことを述べているのである。このことは,上記陳述書の他の部分において,「この特許はこの車間距離取締装置に関する基本技術についてのものであり,パルシステムが自社も発明したと主張する技術は一切入っておりません」(甲8の4頁17行〜19行)と明確に共同発明を否定し,製品化に向けての共同開発と峻別していることからも明らかである。
イ原告は,本件特許発明を完成するには,GPS及びレーザ距離計等から出力を取り込んで,車間距離を演算し,それを現在位置及び現在日時とともに証拠として出力するための技術が必要であり,そのためには,ソフトウエアの開発が必要であるが,被告にはそのような技術も経験もなかった旨主張する。
しかし,当時,被告を経営していた【BB】は,既にレーザー距離計を使った送電線と接近樹木との距離を測定できる離隔測定システム,ワンマン測量システムを開発して販売しており,また,携帯型GPSを用いて瞬時に得られる経緯度のデジタル情報を基に,経緯度線のあるGPS専用の地図と突き合わせて現在位置を容易に読取り可能なナビゲ-ションシステムも開発し販売して,関連の特許出願,実用新案登録出願などを行っており,本件特許の前提となる離隔距離測定,GPSの技術内容等について熟知していたのである(甲32の2,3参照)。また,被告は,レーザー距離計を使った送電線と接近樹木との距離を測定できる離隔測定システム,ワンマン測量システムを開発し,これを商標「ワンマンサーベイ」として販売していたのである(甲32の1参照)。
ウ原告は,【CC】が,6月中旬ころ,【BB】から,栃木県警の話として「車間距離を測定し,その測定値を印字できないか」との相談を持ち込まれたので,同月22日,【BB】と一緒に,栃木県警に出向いた旨主張するが,誤りである。
【BB】が車間距離測定装置を開発することとなったのは,6月9日,以前から親交のあった栃木県警の【EE】より電話で測量技術で高速走行中のパトカーから先行車両までの距離を測定し,その証拠を残す方法について尋ねられたのが契機であった。
エ原告は,6月22日の会合で,栃木県警の【AA】から,?@車間距離を測定し速度取締り同様レシートなどに印字する,?A測定は先行車とパトカーの間の距離でよい,?B走行中のパトカーから測定する,?C装置はコンパクトなものがよい,といった仕様の説明を受け,また,この試作機を警察装備コンクールに出品したいとの要請を受け,その際,【CC】は,【BB】から,口頭で共同開発の申入れを受けたので,これに応じ,栃木県警とも役割分担を決めてコンクール用試作機の開発を進めることになった旨主張する。
【BB】・【CC】が,6月22日,栃木県警の【EE】,【FF】及び【AA】と会合したことは認めるが,ここでの【AA】からの説明は,高速道路での事故の多くは車間距離不足から起きていて,車間距離を科学的に測定できる装置がなく,現状は道路に20mおきに引かれた,長さ10mの白線の車両区分線との比較を目測で行っている旨が説明されたことと,これに代わる測定方法がないかとの質問であった。その時点で,【BB】は,レーザー距離計を使って移動する車に対して瞬時に距離測定を行い,その測定値より三角測量法によって所要の車間距離を算出するという基本的なシステム構想を持っており,この構想を,テーブル上のメモ紙に説明図を描きながら説明したのである。
上記のとおり,【BB】は,6月22日より前に,レーザー距離計を使って移動する車に対して瞬時に距離測定をし,その測定値より三角測量法によって所要の車間距離を算出するという基本的なシステム構想を完成させていたのであり,【BB】が【CC】に依頼したのは,上記基本的なシステム構想の実施について共同開発を依頼したのである。
オ原告は,GPS利用の話が浮上した段階で,【CC】が,距離測定とGPSデータ取得を同時に行うことで生じるモバイルパソコンの入力不足を補うとともに,GPSと距離計に電源を供給し,かつ,距離計による測定に同期させてGPSデータを取得するという連結機能を持たせるために,データ連結装置を考案し,これを基に甲2資料を作成した旨主張する。
しかし,甲2資料は,基本的には6月22日の会合の際,【BB】が机上でメモ書きして説明したものを原告がまとめたにすぎないものであり,そこに示された構想も【BB】の発案に係るものである。
なお,本件出願に当たっては,当該図面のうち,例えば,先行車両から違反車両までの距離の算出方法について,甲2資料の方式では,距離測定のほかに角度を測定する機器が必要となり,装置及びデータ処理が煩雑になるので,採用しなかった。
カ原告は,【CC】が,甲2資料の基本的な構想に基づく試作をするために,甲3資料の最終頁の図を作成した旨主張する。
【AA】は,7月27日,【BB】に対し,警察装備コンクールの予備審査に入賞したので,8月7日の本審査に出したいとの意向を伝えてきて,その説明資料の製作を依頼された。これを受けて,8月7日の本審査の出品説明のために作成したのが甲3資料である。甲3資料に添付された図面は,基本的には6月22日の会合の際,【BB】が机上でメモ書きして説明したものを原告がまとめたにすぎないものである。甲3資料が8月下旬に作成されたとする原告の主張は,誤りである。
キ原告は,車間距離測定装置へのGPS採用は【CC】の発案で解決されたものであり,キロポストのデータベース化をするに際してGPS仕様の詳しい情報が必要になったので,【CC】は,【BB】とともに,県工業技術センターに出向き,GPSに詳しい技術者からGPSの性能や通信機能について説明を受けた旨主張するが,誤りである。
【BB】は,これまでの測量業務の経験からGPSで緯度経度を特定できることを知っていたが,県警との会合で,高速道路が0.1km単位のキロポストの所在地で管理されていることを知り,緯度経度と関連付けて,パソコンにより処理することを考え,7月31日,具体的な商品化に向けて,パソコンのソフト開発を依頼していた【CC】と一緒に県工業技術センターを訪ね,GPSの取扱いその他基本事項について説明を受け,また,キロポストデーターベース化の可能性についてのアドバイスを受けたのである。
ク原告は,【CC】・【BB】が,コンクール用試作機を完成させて,9月4日,【AA】に同行して警察庁に出かけ,上記試作機を前に警察庁の担当者と意見交換を行った旨主張するが,誤りである。
9月4日警察庁に出かけたのは,【AA】と【BB】であって,【CC】は加わっていない。これは,警察庁が全国コンクールの審査前に話を聞きたいとのことであったので,警察庁に行ったのであり,当日の警察庁の出席者は,交通局都市交通対策課の高速道路管理室長及び課長補佐,交通局指導課課長補佐の3名であった。
この会合では,【AA】が開発状況を説明した後,警察庁から,?@測定ポイントを立証する工夫が必要である,?A違反車両と並走し,違反車両の先端部分に入った瞬間スイッチが入ったことを立証する工夫が必要である,?B人間が手でスイッチを入れるのではなく,センサーが自動的にスイッチをコントロールできないか,との3点について指摘を受け,今後の課題とすることにしたのである。
ケ原告は,【CC】がロングワード社の【DD】にGPSデータ取込みソフトの作成を依頼し,さらに,上記?@の解決にはカメラしかないと考え,【DD】にカメラのデータ取込みソフトの作成も依頼した旨主張するが,否認又は不知である。
【BB】は,そのような事実自体を知らされておらず,本件出願時にはその存在を全く知らなかった。そもそも【BB】が【DD】の存在を知ったのは,本件無効審判の審判請求書を受け取った平成17年9月の後である。
2取消事由2(発明者でない者のした特許出願であることの看過)に対して特許法123条1項6号は,「その特許が発明者でない者であつてその発明について特許を受ける権利承継しないものの特許出願に対してされたとき。」をもって無効理由としている。ところが,原告は,【BB】が本件特許発明発明者の1人であることを認めているのであるから,原告の上記主張は,それ自体で既に失当である。なお,【CC】・【DD】が発明者でないことは上述のとおりである。
第6当裁判所の判断1本案前の抗弁について( ) 被告は,原告が本件特許発明発明者の一人であると主張する【CC】は原1告の代表者ではあるが,原告が発明者の地位にあるわけではないから,原告は特許法123条2項にいう利害関係人に当たらない旨主張する。
ア【CC】・【BB】・【AA】が,平成10年6月以降,警察装備コンクールに出品するための車間距離測定装置の開発及び製作を行い,本件出願前の同年9月4日ころに,いまだGPS,CCDカメラ等を組み込んでいなかったものの,ハード面,ソフト面を併せて所定の作動をするコンクール用試作機が基本的に完成していたことは,後記2( )ウ認定のとおりである(本件特許発明に関して【CC】5の関与があったことについては,後に改めて認定判断するところである。)。
イ証拠(甲11〜13,15,20,46,乙22)によれば,次の事実が認められる。
(ア) 原告と被告が,コンクール用試作機を改良して実用的な製品とすべく試作,テストを繰り返したところ,平成15年8月ころに,実用に供し得る車間距離測定装置(以下「完成機」という。)が完成した。被告は,平成16年1月ころ,ペンタックス販売を通じて,完成機を警察庁に納入し,その代金として約5378万円の支払を受けた。
(イ) 原告と被告はそれまで各自の出費について精算をしていなかったが,被告は,平成16年3月,原告に対し,コンクール用試作機及び完成機の開発に関する費用集計を提示した上,同月末ころ,開発に係る諸費用として3000万円を支払った。
ここで,【CC】は,費用集計の内容に不審を抱くとともに,被告が,【CC】を発明者に加えず,本件出願を含めて3件の特許出願をしていることを知った。
(ウ) 【BB】は,同年4月19日,「私(株式会社測研)は先に出願した特許(出願番号特願平10-283527,特願平10-375440,特願2000-405005)について,パルシステム株式会社及び株式会社測研との共同考案によるものであることを認め,パルシステム株式会社の営業活動に対しては,これらの特許に係る一切の権利行使を行わないものとする。」(甲15)との本件誓約書を提出した。しかし,翌20日,【BB】は,【CC】に対し,「『車間距離測定システム』の開発にあたり,【CC】様に誤解を与える結果となりましたことを深くお詫び申し上げます。昨日,貴社の【GG】様が来社され,パルシステム様が気にしている3件の特許番号を受け取り,自宅の特許控えを見て,当時出願した経緯を思い出し,パルシステム様の誤解を解けるヒントになるのではないかとペンを執りました。特許はご存知のとおり,その製品を他社からの侵害を守る唯一の手段です。このたびご指摘を受けた『車間距離測定システム』をはじめ,他の特許にも使われ,基本と成る物にレーザ光線を使った距離測定装置があります。この装置を他社が気づき,他の取り締まり装置に使われないように防衛するために特許を出願しました。・・・誓約書のなかで『共同開発によるパルシステム株式会社の考案によることを認め』・・とありますが,原文では認めることができません。これを『パルシステム株式会社及び,株式会社測研との共同考案によるものであることを認め』に改めるなら認めると共に,特許に係る一切の権利行使を行いません。」などと記載した書簡(甲20)を送り,本件誓約書の内容を一部修正した。
(エ) 【BB】は,そのころ,原告に対して,本件特許発明に係るロイヤリティを求めたり,特許出願費用の支払を求めたりした。
(オ) 同年6月以降,原告が,ペンタックス販売を通じて,完成機を警察庁に納入することになった。
ウ上記認定の事実によれば,被告は,原告に対し,一方で,【CC】を発明者から外して本件出願をし,それを謝罪するかのような誓約書を提出しつつ,翌日にはそれを一部修正する書簡を送り,他方で,本件特許発明に係るロイヤリティを求めたり,特許出願費用の支払を求めたりして,特許の冒認出願,清算,販路等をめぐって複雑な紛争となったことが認められる。そして,本件訴訟においても,原告は,本件出願が【CC】を除外した冒認出願であると主張し,被告はこれを争っているのである。
そうすると,原告は,本件特許発明冒認出願として無効であるか否かにつき利害関係を有しているものと認められる。
( ) 被告は,原告に対し,「パルシステム株式会社の営業活動に対しては,これ2らの特許に係る一切の権利行使を行わないものとする。」との誓約をしているから,原告には本件特許を無効とする利益はない旨主張する。
しかし,上記( )イ(ウ)のとおり,【BB】は,本件誓約書を提出した翌日,その1内容を一部修正する書簡を送っているのであるから,直ちに,本件誓約書が【BB】の真意に基づくものとはいい難いし,また,法的な拘束力があるとも認め難い。
しかも,たとえ,本件誓約書を誠実に履行するとの言葉が被告主張のように法的な拘束力があるとしても,特許に係る一切の権利行使を行わないという限度で効力があるのであって,依然として被告が本件特許発明の特許権者とされていることに変わりがないから,原告が本件特許を無効とする利益があるものというべきである。
( ) したがって,原告が特許法123条2項にいう利害関係人に当たらないとす3る被告の本案前の抗弁は,理由がない。
2取消事由1(本件特許発明共同発明であることの看過)について( ) 特許法2条は,「『発明』とは,自然法則を利用した技術的思想創作のう1ち高度のものをいう。」と規定しており,同法36条4項1号は,「経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと規定していることからすると,同法2条にいう「技術的思想創作」をしたといい得るためには,当該発明が当業者にとって実施可能なものとなっていなければならないものであり,原則として,単なる着想にとどまらず,試作,テストを重ねて課題を解決し,技術として具体化されていなければならないと解される。
ただし,例外的に,具体化が当業者にとって自明といえる場合,例えば,公知技術を組み合わせたような場合に(それが発明として進歩性を有する場合に限られることはいうまでもない。),着想をもって「技術的思想創作」に当たることもあり得ないことではない。
( ) 本件特許発明のような電子機器の場合,一般に,公知技術を組み合わせる段2階で,既に,工夫が必要となることが多く,具体化が当業者にとって自明といえる可能性はそう多くはないと思われるが,それはともかく,本件特許発明が上記の例外的な場合に当たるか否かについて検討する。
ア前記第2の2の本件特許発明1に係る特許請求の範囲の後半には,「取締りパトロールカー(A)に搭載し,同一車線を走る前走車(C)と車間距離保持不足違反の追走車(B)と,それらとは別車線を走る前記パトロールカー(A)との位置関係に基づき,前記違反証拠作成装置(S)によって前記前走車(C)のレーザー照射ポイント(X)から前記追走車(B)のレーザー照射ポイント(Y)までの車間距離(L)を,前記パトロールカー(A)に搭載した距離測定機(1)によってそのレーザー照射位置(Z)を中心に計測した距離データを基に前記レーザー照射ポイント(X)(Y)(Z)を三角形の三点とする三角測量法から算出し,前記距離測定機(1)による計測と同時的に連動して前記違反証拠作成装置(S)により得られた車間距離(L)データ,経緯度位置データ,時刻データ及び速度データをコンピュータ(6)に取り込むとともにそれらの計測データとは別に人為的に入力した車両登録番号データを前記コンピュータ(6)で情報処理して前記プリンタ(7)から前記違反キップ(K)に出力できるようにしたことを特徴とする」との記載があるところ,同記載によると,取締りパトロールカー(A)から,前走車(C)を利用して,三角測量法により追走車(B)の速度を測定し,GPS経緯度測定機(2)により取締りパトロールカー(A)の位置を測定し,かつ,測定の時刻を特定し,このようにして得た追走車(B)の位置データ,速度データ,時刻データを測定するとともに,入力した車両登録番号データと併せてプリンタから違反キップとして打ち出すという機能を有するものである。
一方,特許請求の範囲の前半には,「その計測場所の経緯度を測定するGPS経緯度測定機(2)と,その測定時の時刻を特定する時計(3)と,違反車の速度を計測する速度計(4)と,関係車両の車両登録番号を入力する番号入力装置(5)と,前記距離測定機(1),GPS経緯度測定機(2),時計(3),速度計(4)及び番号入力装置(5)から得られた電子情報をプログラム処理するコンピュータ(6)と,そのコンピュータ(6)で情報処理されたデータをプログラムされた所定様式の違反キップ(K)に出力するプリンタ(7)とが電子的に接続されて成る」との記載があり,同記載は,本件特許発明1の「違反証拠作成装置(S)」が,「距離測定機(1)」,「GPS経緯度測定機(2)」,「時計(3)」,「速度計(4)」,「番号入力装置(5)」,「コンピュータ(6)」,「プリンタ(7)」から構成されているが,このような構成自体から,直ちに,取締りパトロールカー(A)から,前走車(C)を利用して,三角測量法により追走車(B)の速度を測定し,GPS経緯度測定機(2)により取締りパトロールカー(A)の位置を測定し,かつ,測定の時刻を特定し,このようにして得た追走車(B)の位置データ,速度データ,時刻データを測定するとともに,入力した車両登録番号データと併せてプリンタから違反キップとして打ち出すという機能を有することにはならない。
イところで,本件特許発明1に係る特許請求の範囲には「ソフトウェア」という言葉の記載はない。しかし,電子的に接続されている「距離測定機(1)」,「GPS経緯度測定機(2)」,「時計(3)」,「速度計(4)」,「番号入力装置(5)」,「コンピュータ(6)」,「プリンタ(7)」を制御するためにソフトウェアが存在することは明らかであり,審決自体も,「本件特許発明構成要件にソフトウェアが含まれていることは確かである。」(前記第2の3( )イ(イ))と認定しているとこ3ろである。そして,このことは,特許請求の範囲の「距離測定機(1),GPS経緯度測定機(2),時計(3),速度計(4)及び番号入力装置(5)から得られた電子情報をプログラム処理するコンピュータ(6)」,「情報処理されたデータをプログラムされた所定様式の違反キップ(K)に出力するプリンタ(7)」,「電子的に接続されて成る違反証拠作成装置(S)」との記載にその一端が表れているものということができる。
ウ以上によれば,本件特許発明1の「違反証拠作成装置(S)」が,「距離測定機(1)」,「GPS経緯度測定機(2)」,「時計(3)」,「速度計(4)」,「番号入力装置(5)」,「コンピュータ(6)」,「プリンタ(7)」から構成されているところ,これらの構成からなる装置に対して,取締りパトロールカー(A)から,前走車(C)を利用して,三角測量法により追走車(B)の速度を測定し,GPS経緯度測定機(2)により取締りパトロールカー(A)の位置を測定し,かつ,測定の時刻を特定し,このようにして得た追走車(B)の位置データ,速度データ,時刻データを測定するとともに,入力した車両登録番号データと併せてプリンタから違反キップとして打ち出すという機能を果たさせているのは,ソフトウェアであって,そのために試作,テストを積み重ねる必要があるのであって,具体化が当業者にとって自明なものとはいえない。
エ念のため,本件明細書について検討すると,発明の詳細な説明には,次の記載がある。
(ア) 従来の技術と発明が解決しようとする課題a「【従来の技術】高速道路などにおいて,追突事故などの接近し過ぎによる事故を防止するために,車の速度に応じた前後走行する車間の車間距離の制限がなされている。しかし,車間距離の制限を越えて前走車に対して追走車が接近し過ぎる車間距離不保持による事故が多発している。現在,警察ではその取り締まりにより未然に事故防止をはかっているが,その違反事実の証拠を示す手段がなく苦慮している。これまでは,その車間距離保持不足による交通違反の証拠は,車道に表示されている車線区分線との距離の比較から推定する警察官の目測による距離測定で得られた数値が用いられている。停止している車間距離の目測さえ正確にはできないが,その目測を走行中に行なうことはさらに難しく,その測定誤差も大きくなり,この得られた数値は客観性を欠く人為的なものと看做され,車間距離保持不足違反の容疑者に対して説得力のある証拠とはなり得てはいない。違反場所での現行犯逮捕ではその場で確認することができるが,後にその違反で検挙しても容疑者からその証拠を無視乃至疑問視されてしまい,交通取締まりの実効性を確保することが困難な実情があった。また,追突などの事故を未然に防止するために必要な実務作業,即ち数多い自動車の中から車間距離保持不足違反の容疑車両を運転している容疑者を割り出し,その容疑者の違反の履歴調査,その車両の関係各方面への迅速な注意通達,その容疑者への連絡や呼出しなども容易ではなかった。」(段落【0002】〜【0004】)b「【発明が解決しようとする課題】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので,走行中の取締りパトロ-ルカ-の車中から高い証拠能力のある車間距離不足違反の違反証拠の作成とその証拠情報の迅速な管理及び利用を行ない,交通違反や接近追突事故などを未然に防止することのできるように実効性が得られるシステムを提供するものである。」(段落【0005】)(イ) 実施例a「【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図で以下説明する。先ず,本発明の車間距離不足違反の違反証拠作成システムについて説明する。本発明のシステムは,図1及び図2に示すように,レ-ザ-光線を用いて照射ポイントまでの距離を計測する一方向(図1に示す)又は同時二方向(図2に示す)の距離測定機1と,その計測場所の経緯度を測定するGPS(GlobalPosissoningSystem=全地球測位システム)経緯度測定機2と,その測定時の時刻を特定する時計3と,違反車の速度を計測する速度計4と,関係車両の車両登録番号を入力する番号入力装置5と,前記距離測定機1,GPS経緯度測定機2,時計3,速度計4及び番号入力装置5から得られた電子情報をプログラム処理するコンピュ-タ6と,そのコンピュ-タ6で情報処理されたデ-タをプログラムされた所定様式の違反キップK(図6に示す)に出力するプリンタ7とが電子的に接続されて違反証拠作成装置Sが構成される。そしてこの違反証拠作成装置Sを取締りパトロ-ルカ-Aに搭載する。」(段落【0020】)b「【実施例1】<パトロ-ルカ-の照射位置Zから追走車Bと前走車Cを測定する場合>パトロ-ル中に,車間距離保持不足容疑車両(追走車B)を発見した場合,先ずパトロ-ルカ-運転者がその追走車B(容疑車両)を追尾し,同乗者がパトロ-ルカ-Aの車中からその追走車Bの車両登録番号を見て確認し,番号入力装置5でペン入力又はキ-入力などで入力し,またその時に速度計4で追走車Bの速度を計測確認する。そして,パトロ-ルカ-Aを容疑の追送車Bと平行に走行してさらに追い抜き,その追送車Bの車体の照射ポイントYと前走車Cの車体の照射ポイントXとの間にパトロ-ルカ-Aを操作して,パトロ-ルカ-Aに搭載した距離計測機構15とCCDカメラ機構16を組み込んだ同時二方向(図2に示す)の距離測定機1によりそれらのレ-ザ-照射位置Zから二方向同時に距離計測を行なう。また,それらの距離計測機構15とCCDカメラ機構16をそれぞれ追送車Bと前走車Cの方向に角度を合わせ,また角度計9又は方位計10でその角度θを一つのスイッチ操作で同時に計測する。・・・その計測と同時に,GPS経緯度測定機2によりその場所の経緯度位を表示し,コンピュ-タ6内蔵の時計3でその測定時の時刻を確定し,速度計4で車の速度を計測し,それらのGPS経緯度測定機2,前記時計3,前記速度計4から得られた電子情報をコンピュ-タ6で情報処理する。
前記GPS経緯度測定機2により測定された経緯度からは,その経緯度に対応するその道路位置のキロポスト及びその場所の住所を前記コンピュ-タ6に組み込んだ変換ソフトで転換処理することもできる。」(段落【0036】〜【0040】)(ウ) 発明の効果「【発明の効果】本発明は以上のようで,走行中のパトロールカーA車中から違反証拠作成装置Sにより機械的に正確な距離が測定でき,パトロールカーAと並走する車までの距離を数値設定した簡易的な測定方法でも,目視によるものよりも極めて小さい誤差で正確に車間距離Lが測定できる。このため,容疑者への交通違反の説得力が大幅に改善される。また,目視による曖昧な計測ではなく,距離測定機1にレ-ザ-照射ポイントをマ-キングした写真に撮影するCCDカメラ機構16を備えた形態の場合では,走行車の測定ボイントが明確となり,機械的な測定による客間性のより高い証拠能力が得られるので,訴訟での車間距離保持不足の違反の証拠として採用されることが可能となった。特に,計測時に同時に作動するパノラマ撮影できるCCDカメラ8を有する形態とすれば,違反現場のカメラ画像が証拠写真となり,これを違反キップKに添えることによって,容疑者の言逃れを封じることができるようになった。」(段落【0058】〜【0059】)オ上記記載によれば,従来の技術と発明が解決しようとする課題が示され,その実施例があり,奏する効果の記載もあるのであるから,出願人が,特許請求の範囲記載の発明を,実際に製作し,テストして課題を解決し,所定の機能,効果を果たすことを確認したことが明らかである。
したがって,本件特許発明は,本件明細書の記載を検討する限り,試作,テストの積み重ねを経て見いだされた技術的思想であると理解される。
カ本件出願日は平成10年9月18日であるが,後記( )ウ認定のとおり,5【CC】・【BB】・【AA】が協力して作成したコンクール用試作機は,平成10年9月4日ころ基本的に完成し,警察における使用目的からすると若干の不都合があったものの,所定の動作をすることが確認されているのであるが,本件特許発明は,正に,上記コンクール用試作機の完成の直後に出願されたものである。しかも,本件明細書(甲1の2)の図面と甲2,3資料とを対比すると,両者は著しく類似しているところ,被告自身が甲2,3資料に依拠して本件明細書の図面を作成したことを認めている。
したがって,本件明細書は,平成10年9月4日ころに基本的に完成したコンクール用試作機の成果を基にして作成されたものと認められる。
なお,本件明細書の図面と甲2,3資料とを対比すると,細部に相違があるが,依拠性,基本的な共通性についての上記認定判断を左右するものではない。
( ) 本件特許発明2〜9について3前記第2の2のとおり,請求項2記載の本件特許発明2は,本件特許発明1と比較して,「一方向又は同時二方向の距離測定機(1)」が「レーザー光線を用いて照射ポイントまでの距離を計測する距離計測機構(15)とそのレーザー照射ポイントをマーキングした写真に撮影するCCDカメラ機構(16)とを備えた」,「CCDカメラ画像データ」の構成が付加されている点で相違するものである。また,本件特許発明3〜9は,本件特許発明1又は2を包含する発明である。
したがって,上記( )及び( )の結論は,本件特許発明2〜9においても妥当する12ものである。
( ) 被告の主張について4ア被告は,プログラム処理は,データの処理手段として本件のようなシステムには不可欠なものであるが,本件では,プログラムの内容が発明の対象となっているものではなく,プログラムが作成されないと発明として完成されないというものではない旨主張する。
しかし,本件のようなシステムに不可欠なものを欠いているのであれば発明が完成しているとはいえないのであって,発明として完成させた上で,プログラムの内容を当該発明の特定事項とするか否かとは次元を異にするものである。そして,本件において問題となっているのは,本件特許発明の完成時期がいつであるか,そこまでの過程において【CC】あるいは【DD】の創作的な関与があったか否かである。
この点について,被告は,原告が本件に係る装置を作動させるソフトウェアを完成させたのは,平成10年12月以降である旨主張する。
しかし,証拠(乙16の1,2,乙17の1〜3)によれば,被告が平成10年12月以降に完成したと主張するソフトウェアは,本件出願後にGPS,CCDカメラも取り付けられて完成した試作機に対応するものであって,同年9月4日ころに完成したコンクール用試作機ではないから,被告の上記主張は,前提を誤っており,失当である。
イ被告は,原告主張の基本的な誤りは,発明とその具体的な実施化とを混同し,後者への関与をもって発明者であると位置付けていることであり,発明とその実施化とは次元の異なる問題である旨主張する。
しかし,被告は,本件明細書には,前判示のとおり,本件特許発明が単なる着想ではなく,試作,テストの積み重ねを経て見いだされた技術的思想であることが記載されているにもかかわらず,そのうちの着想のみをもって発明とし,実施可能かどうかの確認作業を発明後の作業にすぎないと主張しているものであって,独自の見解に基づくものである。被告の主張は,本件明細書が平成10年9月4日ころには基本的に完成したといえるコンクール用試作機の成果を基にして作成されたものであるとすると,【CC】を共同発明者と認めざるを得なくなることから,本件明細書の記載に反して,実施例を製品化の過程であると結論付けているものであって,失当である。
ウ被告は,本件特許発明において重要なのは,パトカーから先行車までの距離を測定するだけで,先行車と後続車間の車間距離を算出する三角測量法であり,【BB】が最も苦労したところである旨主張する。
しかし,一般に,「三角測量」とは,「精密に測定された基線を基準とし,三角法を応用して行う測量。」(広辞苑第5版),「地形図などを作成する際,精密に長さを測った基線と,その他いくつかの測点を設け,それらを結びつけることによって多くの三角形の網をつくり,三角法によって計算する測量法。」(大辞林第3版)などといった意味を有するものであって,これが周知の測量法であることは当裁判所に顕著である。
本件明細書の【従来の技術】欄に,「停止している車間距離の目測さえ正確にはできないが,その目測を走行中に行なうことはさらに難しく,その測定誤差も大きくなり,この得られた数値は客観性を欠く人為的なものと看做され,車間距離保持不足違反の容疑者に対して説得力のある証拠とはなり得てはいない。違反場所での現行犯逮捕ではその場で確認することができるが,後にその違反で検挙しても容疑者からその証拠を無視乃至疑問視されてしまい,交通取締まりの実効性を確保することが困難な実情があった。」(段落【0003】),【発明が解決しようとする課題】欄に,「本発明は上記実情に鑑みてなされたもので,走行中の取締りパトロ-ルカ-の車中から高い証拠能力のある車間距離不足違反の違反証拠の作成とその証拠情報の迅速な管理及び利用を行ない,交通違反や接近追突事故などを未然に防止することのできるように実効性が得られるシステムを提供するものである。」(段落【0005】)と記載されているとおり,本件特許発明においては,車間距離測定の精度と迅速性を確保することが技術課題であったのであり,それゆえに,後記( )認定のとおり,平成10年6月から9月までの長期間を要したのであって,5単なる三角測量法の問題であったのではない。
( ) 本件特許発明に係る共同開発について5ア審決は,前記第2の3( )イ(イ)のとおり,「本件特許発明構成要件にソフ 3トウェアが含まれていることは確かである。」と認定しつつ,「これらソフトウェアが,その構想の段階から請求人において開発されたという証明は,請求人側においてなされておらず」,「請求人の開発したソフトウェアが本件特許発明の必須の構成要件であるとも必ずしもいえない」と認定し,【CC】が本件特許発明に係る開発行為に「創作」的な関与をしたことを否定しているので,本件特許発明に係る車間距離測定装置の開発の経過及びその前後の事情について検討する。
イ証拠(甲1の2,甲2〜4,6〜9,21,25〜30,33,40〜42,44,51,乙9,原告代表者,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア) 栃木県警の高速道路交通警察隊の管理係に所属していた【AA】は,平成10年度の警察装備コンクールに向けて,車両の距離測定器を利用した取締装置の出品を考えていたが,いまだ着想の段階にとどまっており,これを具体化する必要があったので,県警の同僚である【EE】の紹介で,平成10年6月初旬ころ,距離測定器を取り扱っている被告の代表者である【BB】と会った。【BB】は,【AA】から,速度取締りのため装置で,走行中のパトカーから先行車との間の距離を測定し,その結果を印刷する装置を製作したいとの構想を聞き,そのような装置を製作するためにはソフトウェアの開発が必要であると考えて,かねて知り合いの【CC】に相談した。
(イ) 【BB】と【CC】は,6月22日,栃木県警に赴いて【AA】らと面会し,再度,【AA】の考えている距離測定記録器の仕様を尋ね,【AA】は,先に【BB】に話したのと同様な話をし,これを警察のコンクールに出品したいことも告げた。そこで,【BB】及び【CC】は,【AA】と協力して,コンクール出品のための試作機を製作することとなり,【CC】は,ソフトウェアの開発を担当することとなった。
(ウ) 7月初旬の【CC】・【BB】・【AA】の会合で,【CC】は,適合するハードウェアとして松下電器産業製のモバイルパソコンを使用することを提案し,その採用が決まった。【BB】は,レーザ距離計を選定し,このレーザ距離計と小型のプリンタをモバイルパソコンに接続することにした。7月9日,【BB】は,測定器メーカからレーザ距離計を借用し,県警・被告・原告・リーグルジャパン社の四者で高速道路上において測定試験を行った。
(エ) 7月下旬の【CC】・【BB】・【AA】の会合で,【AA】は,取締場所の特定をキロポスト表(キロポストごとの住所一覧表)で行っていることを説明し,【BB】がGPSを利用することを提案した。そこで,【CC】・【BB】・【AA】は,GPSデータと距離測定とを連動させてモバイルパソコンに取り込むという方向で検討することとなった。時速100kmで走る車の中でGPSの刻々と変化する緯度経度をどのようにして瞬時に読み取るか,距離測定と同時にこれを行うにはどうするかなどといった課題があったが,GPS採用の方向で検討することになり,【BB】と【CC】は,7月31日,県工業技術センターに赴き,GPSに詳しい技術者からGPSの性能や通信機能について説明を受けてきた。
(オ) 【CC】は,8月1日から同月末にかけて,松下電器産業から,開発ツールソフト及びモバイルパソコンを購入し,また,GPSを利用するとすると,モバイルパソコンへの入力のチャンネル数を増やす必要があり,データ連結装置の開発も必要であったので,知り合いのロングワードの【DD】に協力を要請し,ハードウェア及びソフトウェアの面から検討して,9月初めころまでに,コンクール用距離測定装置の試作機を製作した。その間の8月5日ころには,測定距離と日時をプリントアウトするのみの試作機を製作するとともに,距離測定器,モバイルパソコン,プリンタで構成されたシステム構成図と車間距離算出方法の略図(甲16添付の図面)を作成し,この試作機で,高速道路で測定テストを行った。さらに,8月20日ころには,距離測定器,GPS,データ連結装置,モバイルパソコン,プリンタで構成され,位置住所表示用マスタ等の記載されたシステム構成図と車間距離算出方法の略図(甲2資料)を作成した。
(カ) 9月4日までに,【CC】・【BB】・【AA】は,GPSデータ取込み部分を除く車間距離測定装置,すなわち,コンクール用試作機の製作を終わっていた。
GPSデータ取り込み部分については,【CC】は,9月初めに,【DD】にGPSデータ取込みソフトの作成を依頼し,GPS接続のためのRS232C/2chカードをメーカーに発注していた。これに前後して,【CC】・【BB】は,「第11回栃木県警察装備資機材開発改善コンクール出品説明書」(甲3資料)を作成したが,その本文は【BB】が作成し,図面は【CC】が甲2資料を基礎として作成したものであり,その第4図では,距離測定器,GPS,データ連結装置,モバイルパソコン,プリンタで構成されているが,原理試作時の構成としてノートパソコンを掲げ,また,GPSを連動させることを明確にするなどしたシステム構成図と車間距離算出方法の略図(甲3資料)であった。
(キ) 【CC】・【BB】は,9月4日,【AA】に同行して警察庁に赴き,持参したコンクール用試作機について説明をしたところ,警察庁の担当者から,?@どこの距離を測定したかが不明である,?A後続車(被疑車両)の位置が不明であるとの2点で証拠能力に欠けるとの指摘を受けた。この対策としてCCDカメラと赤外線センサーを採用することになり,【CC】は,9月6日,【DD】に対し,カメラのデータ取得ソフト,GPSデータ取込みプログラム及びレーザ照射ポイントをソフトウェアによる写真へのマーキングで行うモジュール開発を依頼し,モジュールプログラムは同月27日に完成した。
(ク) 栃木県警は,9月17日のコンクールへの出品で試作機が大きな反響を呼んだので,平成11年度のコンクールに向けて本格的に装置開発に乗り出すこととなり,10月中旬までに,コンクール用試作機を捜査用の機器として完成させるためにプロジェクトチームを結成し,完成機を完成させるに至った。平成11年秋のコンクールで,完成機は警察庁長官賞を受賞した。完成機は,「ホーク・アイ」の名称で商品化が進められ,平成12年度の科学技術庁長官賞を受賞した。
(ケ) 被告は,9月18日に【BB】・【AA】を発明者とする本件出願をしたほか,12月14日には,本件特許発明に関連して【BB】・【AA】を発明者とする特許出願(特願平10-375440)をし,平成12年12月29日には,【BB】・【FF】を発明者とする特許出願(特願2000-405005)をした。
ウ上記認定の事実によれば,【AA】の発案に係り,これに【CC】・【BB】が協力して製作したコンクール用試作機は,既存の距離測定機,GPS,データ連結装置,モバイルパソコン,プリンタ等から構成されるものであり,開発の中心は各機器の接続関連のハード面と全体の機能を制御するソフト面の開発にあったこと,平成10年9月4日の時点で,甲3資料に記載されているとおり理論上のモデルは完成しており,コンクール用試作機はGPSの組込み部分を除いて基本的に完成しており,しかも,その部分は発注済みであり,9月27日ころに最終的に完成したことが認められる。
そうすると,本件特許発明1に係る試作は,平成10年9月4日ころの時点で基本的に完了していたものというべきである。なお,本件特許発明2は,CCDカメラ等を組み込んでいる点で本件特許発明1と異なるが,それ以外の点では,本件特許発明1と同様であり,本件特許発明1又は2を包含する本件特許発明3〜9も同様である。
前記のとおり,本件特許発明が「技術的思想創作」といい得るためには,単なる着想にとどまらず,試作あるいはテストを積み重ねて課題を解決し,着想を具体化していなければならないものであるところ,上記のとおり,【CC】・【BB】・【AA】が協力して,6月から9月までの約3か月間に,試作機の製作,その改良を重ね,テストを行って,本件出願日前の9月4日までに試作機を基本的に完成させているのであるから,本件特許発明1に係る創作に関与したのは,【CC】・【BB】・【AA】の3名である。
エ被告の主張について(ア) 被告は,【BB】が本件特許発明を開発することとなったのは,平成10年6月9日,以前から親交のあった栃木県警の【EE】から電話で測量技術で高速走行中のパトカーから先行車両までの距離を測定し,その証拠を残す方法について尋ねられたのが契機であり,6月22日の三者会談の際には,【BB】は本件特許発明の基本構想を完成させていたのであり,【AA】から相談も説明も受けたことはない旨主張し,【BB】は被告代表者尋問においても,この趣旨に添った供述をしている。
しかし,上記ア認定のとおり,本件特許発明1の発案者で,一貫して栃木県警におけるコンクール用試作機の開発に当たっていたのは,【AA】であって,【EE】は,単に【BB】を【AA】に紹介しただけである。【BB】自身,宇都宮地裁の訴訟で提出した平成18年6月20日付け陳述書(甲8)において,「発案者の栃木県警高速隊【AA】氏と会い,開発に必要な技術的条件を聞き取って,私が検討した結果,開発可能であるとの結論をお伝えしました。」と述べており,本件特許発明着想を【AA】から聞いたことを認めているのである。
(イ) 被告は,本件特許発明を【CC】と共同開発したことを否認し,ソフトウェアの開発を依頼したにすぎない旨主張する。
しかし,前記のとおり,本件特許発明は,既存の機器を利用しているのであって,開発の中心は各機器の接続関連のハード面と全体の機能を制御するソフト面の開発にあり,この中心的な開発作業を行ったのが【CC】であったから,【CC】が本件特許発明共同開発者であることは明らかである。被告の主張は,単なる着想が発明に当たるという独自の見解を前提とするものであり,失当である。
(ウ) 被告は,甲2資料は,基本的には6月22日三者会談の際,【BB】が机上でメモ書きして説明したものを原告がまとめたものであり,そこに示された構想も【BB】の発案に係るものである旨主張する。
被告は,甲2資料の三角測量による測定方式の図が【BB】の創案によることを根拠として上記主張をしているものと考えられる。しかし,前記( )ウのとおり,4三角測量による測定方式は周知の測量法であり,【BB】の創案を待つまでもない事柄である。【BB】がGPSの採用を提案したことは事実であるが,甲2資料は,単なる着想ではなく,距離測定器,GPS,データ連結器,コンピュータ,プリンタの接続関連のハード面と全体の機能を制御するソフト面の開発の具体的な方向付けを示しているものであり,甲2資料に記載されている構想をもって,【BB】のみの発案に係るものであるとはいえない。
(エ) 被告は,6月22日の三者会談の際には,【BB】は本件特許発明の基本的構想を完成させており,この時点で本件特許発明は完成していた旨主張する。
しかし,前記のとおり,平成10年9月初めのコンクール用試作機の製作までに,多くの試作,テストが積み重ねられ,その結果,コンクール用試作機が基本的に完成し,それを基に本件明細書が作成されたのであり,被告の主張は失当である。
(オ) 被告は,データをプログラム処理することも要素になっており,実施化する過程で具体的なプログラムを作成したのは原告であるが,プログラム処理すること自体は【BB】の発案であると主張する。
被告主張の「実施化」の意味が必ずしも明確ではないが,一般に,着想,試作,商品化という順序で進んでいく技術開発における商品化のことをいおうとしているものと思われる。しかし,前記のとおり,本件特許発明は,着想,試作を経て完成し,その後,商品化を進めているのであり,被告の上記主張は,試作の段階を無視して論じている点で,失当である。そして,【CC】が,試作段階の当初から開発に関与していたことは,前述したとおりである。
なお,被告が前記宇都宮地裁の訴訟で提出した陳述書(甲8)には,「製品化するには,コンピュータでデータ処理するソフトが必要となるので,異業種活動で知り合ったパルシステム代表の【CC】氏に製品化に向けた共同開発を持ちかけたところ,【CC】氏も是非やりたいとのことで,両社の役割分担を決め,製品化に向けて共同開発をはじめました。」(4頁3行〜7行)との記載があるが,上記陳述書にいう「製品化」の主張は,上記の「実施化」の主張と同様であって,採用の限りでない。
また,同陳述書には,「この特許はこの車間距離取締装置に関する基本技術についてのものであり,パルシステムが自社も発明したと主張する技術は一切入っておりません」(4頁17行〜19行)との記載もあり,被告の主張を端的に述べているものであるが,誤りであることは,前述したとおりである。
(カ) その外にも被告はるる主張するが,前記ア認定の事実に反する被告の主張は採用の限りでなく,また,【BB】の被告代表者尋問の結果及び同人の陳述書も信用することができない。
( ) 以上によれば,本件特許発明は,【CC】・【BB】・【AA】の共同発明6であり,本件出願は,被告が【BB】・【AA】のみを発明者とし,【CC】を除外してした出願であるから,本件特許はすべての請求項につき無効というほかなく,すべての請求項につき無効審判請求不成立とした審決は,全部につき誤りであり,取消しを免れない。
3以上のとおり,原告主張の取消事由1は理由があるから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由があるから認容し,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明
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