運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 訂正2006-39094
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16ワ25576特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成19ワ6565特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成19ネ10005損害賠償等請求控訴事件 判例 特許
平成18ワ1223特許権侵害行為差止等請求事件 判例 特許
平成19ネ10036特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
関連ワード 承継 /  発明者 /  優先権 /  実施 /  同意 /  設定登録 /  誤訳の訂正 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 /  釈明 /  訂正明細書 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 18年 (行ケ) 10547号 審決取消請求事件
平成 19年 (行ケ) 10232号 審決取消請求参加事件
原告兼参加人住 友金属工業株式会社(以下,単に「原告」という。)
訴訟代理人弁理 士広瀬章一
被告特許庁長官肥塚雅博
指定代理人鈴木由紀夫
同 野村康秀
同 唐木以知良
同 大場義則 脱退原告住 友金属建材株式会社
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/10/31
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が訂正2006-39094号事件について平成18年11月20日にした審決を取り消す。
第2争いのない事実1特許庁における手続の経緯(1)特許第3376949号の特許 平成11年3月24日出願 優先権主張 ( 〔:平成10年9月16日及び平成11年1月25日 日本平成14年12 ,〕,月6日設定登録,登録時の請求項の数は10である。以下,この特許を「本件特許 ,本件特許に係る特許権を「本件特許権 ,本件特許に係る明細書及 」 」び図面を 本件明細書 と それぞれいうは 発明の名称を 太陽熱反射 「」 ,。) ,「性表面処理金属板」とし,特許権者を原告及び脱退原告(以下,両者を併せ「」。),。,,, て 原告ら というとして 設定登録された なお その後 脱退原告は原告に対し,本件特許権の持分を移転した(平成19年5月25日登録 。)(2)本件特許の請求項1ないし10について特許異議の申立てがされ 異議2,003-72058号事件として特許庁に係属した。その審理の過程において,原告らは,平成17年7月11日,本件明細書を訂正する請求をした。
特許庁は,審理の結果,平成18年2月2日,上記訂正を認めないとした上,「 。」 で特許第3376949号の請求項1ないし10に係る特許を取り消すとの決定をした。原告らは,上記決定を不服とし,被告を相手方として,平成18年3月17日,その取消を求める訴訟を当庁に提起した(平成18年(行ケ)第10115号 。その後,原告は,前記(1)のとおり,脱退原告か ), , ら本件特許権の持分の移転を受けたので 権利承継による参加を申し立てて上記訴訟に参加し 平成19年 行ケ 第10231号脱退原告は 被告 (()),,の同意を得て同訴訟から脱退した。
(3)原告らは 平成18年6月5日 本件明細書を訂正することについて審判 ,,を請求し,この請求は,これを訂正2006-39094号事件として特許。,,, 庁に係属した その審理の過程において 原告らは 平成18年7月24日審判請求書を補正する手続補正をした(以下,この補正後の審判請求書に係「」, 「」, る訂正を 本件訂正 といい 本件訂正後の本件明細書を 本件訂正明細書本件訂正前の本件明細書を「本件訂正前明細書」とそれぞれいう。本件訂正により,請求項1,3及び10が削除され,その余の請求項の記載が訂正された〔項番号の変更を含む。特許庁は,審理の結果,平成18年11月 。〕。)20日,上記補正を認めた上で 「本件審判の請求は,成り立たない 」との , 。
審決 以下 審決 というをし 同年11月30日 その謄本を原告らに (「」。),,送達した。
原告らによる本件訴訟の提起後 原告は 前記(1)のとおり 脱退原告から ,,,本件特許権の持分の移転を受けたので,権利承継による参加を申し立て,本件訴訟に参加し,脱退原告は,被告の同意を得て本件訴訟から脱退した。
2特許請求の範囲(1)本件訂正前明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし10の各記載は 次,のとおりである 以下 これらの請求項に係る発明を項番号に対応して本 (, ,「件発明1」などといい,これらをまとめて「本件発明」という。。)請求項1基板として アルミニウム-亜鉛合金めっき皮膜を備え 3 「【】, ,50〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 Rが60%以上である ()E, () 基板表面に 800〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 R E/NIRが20%以上の顔料を2〜70重量%含有する塗膜を備えたことを特徴とする太陽熱反射性表面処理金属板。
【請求項2】基板として,アルミニウム-亜鉛合金めっき皮膜を備え,350〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 Rが60%以上である ()E, () 基板表面に 800〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 R E/NIRが20%以上の顔料を2〜70重量%含有することで所望の色彩に着色した塗膜を備えたことを特徴とする太陽熱反射性表面処理金属板。
【請求項3】前記顔料以外に,着色顔料を含まないことを特徴とする請求項2記載の太陽熱反射性表面処理金属板。
【請求項4】基板として,アルミニウム-亜鉛合金めっき皮膜を備え,350〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 Rが60%以上の基板 ()E表面に,外層塗膜と1以上の内層塗膜とを備え,該外層塗膜は,800〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 Rが20%以上の顔料を2 ()E/NIR〜70重量%含有するものであることを特徴とする太陽熱反射性表面処理金属板。
【請求項5】少なくとも1の内層塗膜は,350〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 Rが20%以上の顔料を2〜70重量%含有するも ()Eのであることを特徴とする請求項4に記載の太陽熱反射性表面処理金属板。
【請求項6】少なくとも1の内層塗膜は,鱗片状アルミニウム顔料を2〜20重量%含有することを特徴とする請求項4または5に記載の太陽熱反射性表面処理金属板。
請求項7350〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 Rが 【】 ()E20%以上の顔料の含有量が2重量%未満である内層塗膜の厚さが10μm以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の太陽熱反射性表面処理金属板。
【】, . 請求項8めっき鋼板を基板とし めっき皮膜表面の酸化膜の厚さが030μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の太陽熱反射性表面処理金属板。
【請求項9】基板表面の粗さが,中心線平均粗さRaで0.05〜2.0μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の太陽熱反射性表面処理金属板。
【請求項10】基板に,塗装前処理皮膜として,金属クロム換算で5〜200mg/m 相当のクロメート処理皮膜または0.2〜5.0g/m のリ2 2ン酸塩処理皮膜を備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の太陽熱反射性表面処理金属板 」。
(2)本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし7の各記載は 次のと,おりである 以下 これらの請求項に係る発明を項番に対応して本件訂正 (, ,「発明1」などといい,これらをまとめて「本件訂正発明」という。下線部は訂正箇所を示す 。)請求項1基板として アルミニウム-亜鉛合金めっき皮膜を備え 3 「【】, ,50〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 Rが60%以上である () E基板表面に,塗装前処理皮膜を備えないか,または塗装前処理皮膜として,. 金属クロム換算で5〜200mg/m 相当のクロメート処理皮膜または022〜5.0g/m2のリン酸塩処理皮膜を備え,さらにその上に800〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 Rが40%以上の顔料を2 () E/NIR〜70重量%含有することで所望の色彩に着色しかつ当該顔料以外に着色顔料を含まない塗膜を10μm以上30μm以下の厚みで備えたことを特徴とする太陽熱反射性表面処理金属板。
【請求項2】基板として,アルミニウム-亜鉛合金めっき皮膜を備え,350〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 Rが60%以上の基板 () E表面に,塗装前処理皮膜を備えないか,または塗装前処理皮膜として,金属クロム換算で5〜200mg/m 相当のクロメート処理皮膜または0 2〜2.5 0g/m のリン酸塩処理皮膜を備え さらにその上に外層塗膜と1以上 . ,2の内層塗膜とを備え,該外層塗膜は,800〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 Rが40%以上の顔料を2〜70重量%含有すること ()E/NIRで所望の色彩に着色しかつ当該顔料以外に着色顔料を含まない,10μm以上30μm以下の厚みのものであることを特徴とする太陽熱反射性表面処理金属板。
【請求項3】少なくとも1の内層塗膜は,350〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 Rが20%以上の顔料を2〜70重量%含有するも () Eのであることを特徴とする請求項2に記載の太陽熱反射性表面処理金属板。
【請求項4】少なくとも1の内層塗膜は,鱗片状アルミニウム顔料を2〜20重量%含有することを特徴とする請求項2または3に記載の太陽熱反射性表面処理金属板。
請求項5350〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率 Rが 【】 ()E20%以上の顔料の含有量が2重量%未満である内層塗膜の厚さが10μm以下であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の太陽熱反射性表面処理金属板。
【請求項6】めっき皮膜表面に酸化膜を有するめっき鋼板を基板とし,めっき皮膜表面の酸化膜の厚さが0.30μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の太陽熱反射性表面処理金属板。
【請求項7】基板表面の粗さが,中心線平均粗さRaで0.05〜2.0μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の太陽熱反射性表面処理金属板 」。
3審決の理由別紙審決書写しのとおりである 要するに 本件訂正は 下記(1)の理由によ 。,,り 特許法126条1項の規定に違反し また 下記(2)の理由により 同条3 , ,,,項の規定に違反する,というものである。
(1)特許法126条1項違反本件訂正は,本件訂正前明細書の段落【0066】の記載につき,「塗膜に含有させる顔料として,800〜2100nmの波長領域での分光反射率Rが45% 平均粒子径が0 4μmの不溶性モノアゾ顔料E/NIR ,.(大日本インキ化学工業(株)製,SYMULERFASTYELLOW4192 (以下,符号「PY154,Rが25%,平均粒 ) 」)E/NIR子径が0.5μmの無機顔料(菊池色素工業(株)製,パーマエロー1650S (以下,符号「PY34,および,Rが15%,平均粒子 )」)E/NIR径が0.5μmのクロム酸鉛(大日精化工業(株)製,325クローム)(,「」)。」(「」 エロー7G以下 符号 7Gを用いた以下 本件訂正前記載という )。
とあるのを,「塗膜に含有させる顔料として,800〜2100nmの波長領域での分光反射率Rが45%の顔料(以下,符号「PY154,RがE/NIR E/NIR 」)25%の顔料 以下 符号 PY34および Rが15%の顔料 (,「」),, E/NIR(以下,符号「7G )を用いた(以下 「本件訂正後記載」という。下 」。」,線部は訂正箇所を示す )。
と訂正するという訂正事項 以下 訂正事項a というを含むものである (「」。)ところ,訂正事項aは,特許請求の範囲減縮,誤記又は誤訳の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものということはできないから,訂正事項aを有する本件訂正は,特許法126条1項の規定に適合しない(以下「理由(1)」という。。)(2)特許法126条3項違反本件訂正後記載は,本件訂正前明細書に記載された事項の範囲内においてしたものということはできないから,訂正事項aを有する本件訂正は,特許法126条3項の規定に違反する 以下 理由(2) という なお 審決書9 (「」。,頁16行に 本件訂正前記載 とあるのは本件訂正後記載 の誤記と認め 「」,「」る。。)第3取消事由に係る原告の主張審決は,以下のとおり,理由(1)ないし(2)に係るいずれの認定判断にも誤りがあるから,違法として取り消されるべきである。
1取消事由1(理由(1)に係る認定判断の誤り)審決は 訂正事項aは特許請求の範囲減縮 誤記又は誤訳の訂正 或い ,,「,,は明りょうでない記載の釈明の,いずれかを目的としているとする理由は見当たらない (審決書5頁2行〜4行)と判断した。 」しかし,以下のとおり,審決の上記判断は誤りである。
(1)訂正事項aの要点について審決は 理由(1)の判断に当たり 訂正事項aの内容を 単なる 顔料審 ,,「『』」(決書5頁2行)への訂正と認定した。
,,「,, しかし 審決も認めたように本件訂正前記載は 何らかの誤記が存在しその結果として 記載内容が不明りょうになっている審決書7頁18行〜 , 」(19行)ところ,訂正事項aはこれを明りょうにするものであって,誤記を含めた段落【0066】の記載全体を対象とするものであるから,審決の上記認定は誤りである。
したがって,上記誤った認定を前提とする理由(1)の判断も誤りである。
(2)訂正事項aの目的についてア訂正事項aは,以下のとおり,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
上記(1)において指摘したとおり 「本件訂正前記載は,何らかの誤記が ,存在し その結果として 記載内容が不明りょうになっている審決書7 ,, 」(頁18行〜19行)ことは,審決も認めるとおりであるところ,本件訂正前記載に接した当業者は 顔料の分光反射率Rと 顔料の平均粒子径 , ,E/NIRや具体的名称等との間に特段の意味付けがあるとは理解せず,顔料の分光反射率をもって,本件発明を理解する。本件発明の特徴は,顔料の名称や品番ではなく 太陽熱反射率 分光反射率 Rが所定値以上の顔料と ,()E/NIR太陽熱反射率 分光反射率 Rが所定値以上の基板とを組み合わせる () E/NIRことにより,優れた相乗効果が発現されることを見い出した点にあり,このことは本件訂正前明細書において必要かつ十分に示されているからである。
すなわち,本件訂正前明細書の特許請求の範囲及び段落【0048】の記載からも明らかなとおり 本件発明における顔料は800〜2100 ,,「nmの波長領域」という特定範囲での特定の太陽熱反射率を有するものであり,段落【0050】の記載に示されるように,本件訂正前明細書に商品名で具体的に特定された顔料を用いなければ,本件発明が実施できないというものではない。このように,当業者であれば,本件訂正前明細書の, , 記載から 本件発明の技術思想や臨界性などを直ちに理解することができ顔料の具体的名称によらずとも,特定の太陽熱反射率の顔料を入手し,容易に追試することができる。
そして,本件訂正における「分光反射率」は,用語こそ違え,JISに規定された物性値であって,その測定方法も確立していることは,当業者には自明である。
したがって,訂正事項aは,記載の削除を伴うものではあるが,本件訂正前明細書の段落【0066】の記載の誤りを当業者が当然に理解する形に正そうとするものであって,明りょうでない記載の釈明という目的に合致するというべきである。
イ被告は,本件訂正前記載が,本件発明の実施例や比較例に関する記載で, ,,,, あること その要素である顔料につき 平均粒子径 製造元 顔料の種類製品名などの具体的事柄に及んだ記載であることから,顔料の記載自体は誤記とは理解されない旨主張する。
しかし,以下のとおり,被告の上記主張は失当である。
一般に,明細書に記載された実施例は,発明の構成がどのように具体化されるかを示すものにすぎない 本件訂正前明細書においても 実施例 比 。 ,(較例)は,顔料の800〜2100nmの波長領域での太陽熱反射率(分光反射率)が変化したときに,作用効果が具体的にどのように変化するか等を明らかにするものにすぎず,具体的顔料を用いることが本件発明の本質ではないから,本件訂正前明細書の段落【0066】における顔料の記載が誤記と理解されないとはいえない。
2取消事由2(理由(2)に係る認定判断の誤り)審決は訂正事項aは 訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてし ,「,たものということはできない (審決書9頁18行〜19行)と判断した。 」しかし,以下のとおり,審決の上記判断は誤りである。
前記1(2)のとおり,本件発明の特徴は,太陽熱反射率Rが所定値以上E/NIRの顔料と太陽熱反射率R が所定値以上の基板とを組み合わせることにあり 訂 E ,正事項aに係る段落【0066】の記載は,その具体例の構成要素としての顔料の例を示すにすぎない。当業者は,本件訂正前明細書に開示された顔料の測定値に疑念が生じた場合には,本件訂正前明細書全体の記載から,顔料の具体的名称等との間に特別の意味付けがあるとは理解せず,具体的名称等に何らかの誤りがあったと当然に理解する。すなわち,訂正事項aは,当業者が当然に理解する形に訂正するものであるから,本件訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。
本件訂正後記載の「PY154「PY34」及び「7G」により表される 」,3種の顔料は,いずれも本件訂正前記載における顔料と,同じである。すなわち,本件訂正によって,新たな顔料が追加されたわけではなく,別の顔料と入れ換えたものでもない平均粒子径 製造元 顔料の種類 更には製品名審 。「,,,」(決書9頁14行〜15行)は,本件発明を特徴づける事項ではなく,効果を左E/NI 右する事項でもないから,これらの記載がなくても,顔料の分光反射率Rさえ明確であれば効果の確認をすることができ 実施例 比較例 の説明としR ,()て不足はない。
第4取消事由に係る被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1取消事由1(理由(1)に係る認定判断の誤り)について(1)訂正事項aの要点について原告は 審決における ただ単なる 顔料 に それぞれ 訂正するもので ,「『』 ,,ある審決書5頁2行 との説示をとらえ 審決が訂正事項aの要点の認定 」(),を誤った旨主張する。
しかし 審決の上記説示は 訂正事項aが特許法126条1項の規定に違反 ,,することを指摘する文脈の中で用いられたものにすぎず,訂正事項aそれ自体を認定するものではない そして 審決における訂正事項aの認定 審決書 。, (4頁5行〜19行)に誤りはなく,この点は原告も認めている。
したがって,原告の上記主張は,審決を正解しないものであり,失当である。
(2)訂正事項aの目的について原告は,訂正事項aが明りょうでない記載の釈明を目的とするものである旨主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
ア本件訂正前記載は 形式的にみれば 何ら不明りょうではないがPY ,, ,「34」と「7G」の2つの顔料の「800〜2100nmの波長域」での分光反射率は同程度であると理解されるのに対し 甲12本件訂正前記 (),載では,25%と15%という有意な差があるから,当業者は,まずは,本件訂正前記載における特定の顔料名やその分光反射率の値に誤記があるものと理解する。
そして,本件訂正前記載が,本件発明の実施例や比較例としての記載で, ,,,, あること その要素である顔料につき 平均粒子径 製造元 顔料の種類製品名などの具体的事柄に及ぶ記載であることに照らせば,当業者は,本件訂正前記載における 平均粒子径が0 4μmの不溶性モノアゾ顔料 大 「. (日本インキ化学工業(株)製,SYMULERFASTYELLOW)」,「.(() 4192平均粒子径が0 5μmの無機顔料 菊池色素工業 株製 パーマエロー1650S又は 平均粒子径が0 5μmのクロム酸 ,)」「.鉛 大日精化工業 株 製 325クロームエロー7Gとの記載の (() , )」いずれかが誤記であるとは理解せず,ましてそのすべてが誤記であるとは理解しない。むしろ,当業者は,上記のような表記に慣れているから(乙1 2本件訂正前記載における分光反射率の値に誤記があると理解する , ),というべきである。
しかし,訂正事項aは,値を訂正するものではないから,誤記又は誤訳の訂正を目的にしているとはいえず,また,明りょうでない記載の釈明を目的にしているともいえない。
イ仮に平均粒子径が0 4μmの不溶性モノアゾ顔料 大日本インキ化 ,「. (() , )」, 学工業 株 製 SYMULERFASTYELLOW4192「平均粒子径が0.5μmの無機顔料(菊池色素工業(株)製,パーマエロー1650S及び 平均粒子径が0 5μmのクロム酸鉛 大日精化 )」「.(工業 株 製 325クロームエロー7Gが誤記であるというので () , )」あれば,訂正事項としては,平均粒子径,製造元,顔料の種類,製品名を訂正すべきである。
また,本件訂正後記載における「PY154」等の符号は,顔料を特定するものと解される可能性があるから 乙1 2これら符号を残す訂正 (, ),事項aは,結局,明りょうでない記載を解消するものではない。
したがって,上記の観点からも,訂正事項aは,誤記又は誤訳の訂正を目的にしているとはいえず,明りょうでない記載の釈明を目的にしているともいえない。
2取消事由2(理由(2)に係る認定判断の誤り)について原告は,訂正事項aは,当業者が当然に理解する形に訂正するものであるから,本件訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてするものである旨主張する。
しかし 前記1(2)のとおり 当業者は 本件訂正前記載における3つの顔料 ,,,の記載すべてが誤記であるとは理解せず,まして,そのすべてが「顔料」の誤記であるとは理解しないのであるから,平均粒子径,製造元,顔料の種類,製品名の特定のない「顔料」が,本件訂正前明細書に記載されているということはできない。原告の上記主張は失当である。
第5当裁判所の判断当裁判所は,訂正事項aが特許法126条1項の規定に適合しないとした審決の認定判断に誤りはないと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1取消事由1(理由(1)に係る認定判断の誤り)について(1)訂正事項aの要点について原告は 審決における ただ単なる 顔料 に それぞれ 訂正するもので ,「『』 ,,ある審決書5頁2行 との説示について 審決が訂正事項aの要点の認定 」(),を誤ったものである旨主張する。
しかし,以下のとおり,原告の主張は失当である。
ア審決は 前記第2 3(1)のとおり 本件訂正が 本件訂正前明細書の段 ,,,,落【0066】の記載につき,本件訂正前記載を本件訂正後記載に訂正するとの訂正事項を含むことを認定した上(この認定自体は原告も認めるところである,当該訂正事項を訂正事項aとしたものである。 。)そして,訂正事項aに係る具体的な訂正箇所を検討すると,本件訂正前記載における「,平均粒子径が0.4μmの不溶性モノアゾ顔料(大日本インキ化学工業(株)製,SYMULERFASTYELLOW4)」,「,.(() , 192平均粒子径が0 5μmの無機顔料 菊池色素工業 株 製パーマエロー1650S及び平均粒子径が0 5μmのクロム酸鉛 )」「,.(() , )」, 大日精化工業 株 製 325クロームエロー7Gとの記載をいずれも「の顔料」と訂正するものである。換言すると,訂正事項aは,,「,.」 本件訂正前記載における平均粒子径が0 4μmの不溶性モノアゾを削除しての を挿入し大日本インキ化学工業 株 製 SYMU ,「」,「(() ,LERFASTYELLOW4192 」を削除し 「,平均粒子径 ),.」,「」,「(() が0 5μmの無機 を削除しての を挿入し菊池色素工業 株製,パーマエロー1650S 」を削除し 「,平均粒子径が0.5μmの ),クロム酸鉛 大日精化工業 株 製 325クロームエロー7Gを (() , )」削除して「の顔料」を挿入するというものということができる。
イそうすると 審決が訂正事項aは 本件訂正前記載を本件訂正後記載 ,,「,と訂正するもので その要点は平均粒子径が0 4μmの不溶性モノア ,,『.ゾ顔料(大日本インキ化学工業(株)製,SYMULERFASTYELLOW4192平均粒子径が0 5μmの無機顔料 菊池色素 )』,『.(工業 株 製 パーマエロー1650S及び 平均粒子径が0 5μm () ,)』『.(() , )』 のクロム酸鉛 大日精化工業 株 製 325クロームエロー7Gを,その平均粒子径や製造元,不溶性モノアゾ顔料,無機顔料やクロム酸鉛といった顔料の種類,更には,SYMULERFASTYELLOW4192,パーマエロー1650Sや325クロームエロー7Gといった製品名,の特定されない,ただ単なる『顔料』に,それぞれ,訂」( ), 正するものである審決書4頁27行〜5頁2行 と説示している点は訂正事項aにおいて,上記アのとおり,各顔料の平均粒子径,製造元,種類,製品名などの具体的記載が削除されていることを指摘したものと理解できるから,審決の上記説示に誤りはない。
(2)訂正事項aの目的について原告は,本件訂正前記載には誤記が存在する結果,記載内容が不明りょうになっているものであり,訂正事項aは,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである旨主張する。
しかし,次のとおり,原告の主張は失当である。
ア「本件訂正前記載は,何らかの誤記が存在し,その結果として,記載内容が不明りょうになっている審決書7頁18行〜19行 ことについて 」( )は,当事者間に争いがないところ,原告の主張の趣旨は,要するに,本件E/NIR E 発明の特徴が太陽熱反射率Rが所定値以上の顔料と太陽熱反射率Rが所定値以上の基板とを組み合わせることにあることは本件訂正前明細書の記載から明らかであるから,本件訂正前記載に接した当業者は,顔料の分光反射率Rは誤記でなく 顔料の平均粒子径 製造元 種類 製品E/NIR ,,,,名などの具体的記載を誤記と認識する,というものと解される。
イ検討するに 本件訂正前明細書 甲5 によれば 本件訂正前記載は実 ,(),,【施例 に関する記載 段落 0065 〜 0087の一部であり ま 】(【】 【】),た 実施例1段落 0065〜 0072は 350〜2100n ,(【】 【】) ,mの波長領域における基板の太陽熱反射率 分光反射率 Rの値及び ()E/NIR800〜2100nmの波長領域における顔料の太陽熱反射率(分光反射率 Rの値の組合せにより 作用効果 鋼板裏面の最高到達温度 が ) ,( )E/NIRどのように相違するかを示そうとするものであること 段落 0069表(【】【1が認められる そうすると 本件訂正前記載に接した当業者が 塗膜 】)。, ,,, に含有させる顔料の分光反射率Rは誤記でなく 顔料の平均粒子径E/NIR製造元,種類,製品名などの具体的記載を誤記と認識する可能性がないとはいえない。
しかし,甲11〜13によれば,原告は,審判手続において,本件訂正前明細書の段落 0069 の 表1 における符号 PY34 及び 7 【】 【】「」「G の各顔料の反射率Rの値は 日本フェロー 株 製の顔料である 」 ,()E/NIR「42-633A」及び「42-701A」の顔料の各値に対応する旨主張したことがうかがわれるが,上記【表1】における符号「PY154」の顔料の反射率Rの値が 具体的にいかなる顔料 製品名等 に基づE/NIR ,()くものであるというのかについては,具体的に主張しておらず,また,甲, ,,, 14によれば 本件訂正前記載における顔料の平均粒子径 製造元 種類製品名などについて,本来,どのように記載するつもりであったというのか,本件発明の発明者とされる者でさえ具体的な説明をすることができないことが認められる。
そうすると,本件訂正前記載に接した当業者にとって,同記載における顔料の平均粒子径,製造元,種類,製品名などの具体的記載が誤記であることが,本件訂正前明細書の記載から自明であるということはできない。
ウ本件訂正前明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は,前記第2,2(1)のとおりであって,本件発明1では 「800〜2100nmの波長領 ,域での太陽熱反射率 Rが20%以上の顔料 としか規定されてい ()」 E/NIRないことに照らせば,実施例1( 本発明例」及び「比較例 )において, 「 」塗膜に含有させる顔料として,800〜2100nmの波長領域における太陽熱反射率 分光反射率 Rが45%の顔料 Rが25%の顔 (),E/NIR E/NIR料 Rが15%の顔料を用いる必然性があるとはいえないから 本件 , ,E/NIR訂正前記載に接した当業者が,塗膜に含有させる顔料の平均粒子径,製造元,種類,製品名などの具体的記載は誤記ではなく,顔料の分光反射率Rが誤記であると認識する可能性を否定することはできない。
E/NIRエ本件訂正後記載にはPY154 及び PY34 との符号が存在す ,「」「」るところ,訂正事項aが特許法126条3項に適合するという原告の主張を前提とする限り,符号「PY154」については,平均粒子径が0.4μmの顔料である大日本インキ化学工業(株)製,SYMULERFA(, ),, STYELLOW4192を意味するものであり 乙1 2また符合「PY34」については,平均粒子径が0.5μmの顔料である菊池色素工業(株)製,パーマエロー1650Sを意味する(乙1)と理解さ(,「」, れる可能性を否定できない なお 本件訂正前記載における PY154「PY34「7G」との符号は,それぞれ「平均粒子径が0.4μmの 」,不溶性モノアゾ顔料(大日本インキ化学工業(株)製,SYMULERFASTYELLOW4192平均粒子径が0 5μmの無機顔 )」,「.(() ,)」,「. 料 菊池色素工業 株 製 パーマエロー1650S平均粒子径が05μmのクロム酸鉛(大日精化工業(株)製,325クロームエロー7Gという特定の顔料を意味することは 本件訂正前記載自体から明ら )」 ,, 「」,「」, かであるところ 仮に本件訂正後記載における PY154PY34「」 ,, 7G との符号が上記特定の顔料を意味しないとすれば 訂正事項aは上記各符号の概念を,本件訂正前明細書に記載された事項の範囲でないものに変更するものといわざるを得ない。。)したがって,本件訂正後記載は,依然として不明りょうな点を残したものといわざるを得ない。
オ上記イないしエにおいて検討したところによれば,訂正事項aは,明りょうでない記載の釈明を目的とするものということはできず,また,誤記又は誤訳の訂正を目的とするものともいえない。そして,訂正事項aが,特許請求の範囲減縮を目的とするものでないことは明らかである。したがって,訂正事項aは,特許法126条1項の規定に適合しないというべきである。
(3)小括その他 原告は理由(1)に係る審決の認定判断につき縷々主張するが いず , ,。, , れも理由がない 以上のとおりであるから 理由(1)に係る審決の認定判断はこれを是認することができる。原告主張の取消事由1は理由がない。
2結論上記検討したところによれば 「本件審判の請求は,成り立たない 」とした , 。
審決の結論は 理由(2)に係る審決の認定判断の当否を検討するまでもなく こ , ,れを是認することができる よって 原告主張の取消事由2 理由(2)に係る認 。,(定判断の誤り)について検討するまでもなく,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 大鷹一郎
裁判官 嶋末和秀