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関連審決 無効2003-35450
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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成17行ケ10770審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 新規性 /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  相違点の認定 /  周知技術 /  慣用技術 /  課題の共通性 /  機能の共通性 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  優先権 /  国内優先権 /  参酌 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  交換 /  設定登録 /  請求の範囲 /  変更 /  訂正明細書 /  不実施 / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 263号 審決取消請求事件
原告 リョービ株式会社
同訴訟代理人弁理士 藤本昇
同 岩田徳哉
被告 ダイハツディーゼルエヌ・エイチ・エヌ株式会社
同訴訟代理人弁理士 山崎宏
同 伊藤晃
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2005/01/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が無効2003-35450号事件について平成16年4月27日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
前提となる事実(文中に証拠等を掲記したもの以外は,当事者間に争いがな
い。) 1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は,発明の名称を「ドアクローザのストップ装置」とする特許第3176043号(平成10年4月17日出願。国内優先権主張日・平成9年6月5日。平成13年4月6日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。
(2) 被告は,平成15年10月30日,原告を被請求人として,本件特許を無効とすることを求めて本件審判の請求をし,同請求は無効2003-35450号事件として特許庁に係属した。本件審判の手続において,原告は,平成16年1月20日,本件特許出願に添付された明細書(設定登録時のもの)の訂正(以下「本件訂正」という。)を請求した。
特許庁は,上記事件について審理を遂げ,平成16年4月27日,本件訂正の請求を認めるとした上,「特許第3176043号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は同年5月11日に原告に送達された(弁論の全趣旨)。
2 本件訂正後の本件特許の請求項1及び2に係る発明(請求項1,2に係る発明をそれぞれ「本件発明1」,「本件発明2」という。)の要旨は,本件訂正後の明細書(甲2。以下「本件訂正明細書」という。)の「特許請求の範囲」に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】 所定の回転軸線上にて互いに回転可能に連結された一対のドアクローザ部品の一方と一対のセレーションを介して連結されるストッパ部材と,ドアの開度が所定角度に達したときに前記ストッパ部材と係合して前記ドアの閉方向の移動を阻止する手段とを備えたドアクローザのストップ装置において,前記ストッパ部材よりも下方の位置において,上下に移動可能に配置され,前記一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替えるためのストッパ部材押えと,前記ストッパ部材押えの下方において予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能であり,前記ストッパ部材押えを移動させるためのカム機構とを有し,前記カム機構を前記連結位置側に操作して,前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に上方に移動させることにより,前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結状態を維持し,一方,前記カム機構を前記連結解除位置側に操作して,前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に下方に移動させることにより,前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結解除状態を維持することを特徴とするドアクローザのストップ装置。
【請求項2】 前記カム機構は,前記ストッパ部材押えを上下に変位させるための端面カムを有していることを特徴とする請求項1記載のドアクローザのストップ装置。
3 本件審決の理由の要旨(甲1) (1) 本件発明1について ア 本件発明1と実願昭56-41463号(実開昭57-153679号)のマイクロフィルム(甲3の1。以下「刊行物1」という。)記載の発明(以下「刊行物1発明」という。)とを対比すると,両者は,「所定の回転軸線上にて互いに回転可能に連結された一対のドアクローザ部品の一方と一対のセレーションを介して連結されるストッパ部材と,ドアの開度が所定角度に達したときに前記ストッパ部材と係合して前記ドアの閉方向の移動を阻止する手段とを備えたドアクローザのストップ装置において,前記ストッパ部材よりも下方の位置において,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構とを有し,前記機構を前記連結位置側に操作して,前記ストッパ部材を上方に移動させることにより,前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結状態を維持し,一方,前記機構を前記連結解除位置側に操作して,前記ストッパ部材を下方に移動させることにより,前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結解除状態を維持するドアクローザのストップ装置。」である点(以下「本件一致点」という。)で一致し,次の相違点を有する。 (ア) 予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操 作可能である機構は,本件発明1が,カム機構であるのに対し,刊行物1発明は,突軸6とナット16とからなる点(以下「相違点1」という)。 (イ) 本件発明1が,ストッパ部材よりも下方の位置において,上下に移動可能に配置され,前記一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替えるためのストッパ部材押えを有し,前記ストッパ部材押えの下方において前記ストッパ部材押えを移動させるためのカム機構を有し,前記カム機構を前記連結位置側に操作して,前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に上方に移動させることにより,前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結状態を維持し,一方,前記カム機構を前記連結解除位置側に操作して,前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に下方に移動させることにより,前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結解除状態を維持する,すなわち,ストッパ部材とカム機構との間にストッパ部材押えを介在させるのに対し,刊行物1発明は,ストッパ部材押えを有しない点(以下「相違点2」という。)。 イ 相違点1を検討すると,一般に,一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替え,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構を設ける技術にあって,カム機構を採用することは,特開平9-37号公報(甲3の4),実用新案登録第2520331号公報(甲3の5),実開平5-20号公報(甲3の6),特開平7-12618号公報(甲3の7),実願平2-122636号(実開平4-80757号のマイクロフィルム(甲3の10)及び実願昭62-45559号(実開昭63-152791号)のマイクロフィルム(甲3の11。以上の各刊行物をそれぞれ「刊行物4ないし7」,「刊行物10」,「刊行物11」といい,これらを併せて「刊行物4等」という。)に記載されているように,周知慣用であるから,刊行物1発明に該周知慣用技術を採用して,本件発明1の相違点1に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得ることである。 原告は,ドアクローザのストップ装置の停止位置調整作業の特殊性を主張するが,本件発明1の作用効果は,要するに,セレーションの位置調整を容易に行うことができ,セレーションの噛み合い不良も防止するため,カム機構を採用したにすぎず,また,セレーション及びカム機構からなるものは,刊行物4の「【0025】・・・ワンタッチで簡単に調節することができる。」,刊行物5の「・・・不用意に旋回することがなく,・・・角度設定が同時に簡単且つ安全に行われる。しかも,・・・長期間にわたって良好な噛合い状態を維持することができ・・・」(6欄46ないし49行)との記載等のように,自明な作用効果にすぎないから,これをドアークローザのストップ装置に採用したからといって,当業者が予測できない作用効果を奏するとはまではいえない。 ウ 相違点2を検討する。原告は,「本件特許発明は,カム機構の動作を一旦ストッパ部材押えの上下動に変換し,該ストッパ部材押えの上下動を介してストッパ部材を上下に移動させる構成にしているので,特にストッパ部材を上方に押し上げるときにスムーズに移動させることができる」と主張する。
しかしながら,一般に,機械分野において,ある部材を押圧するために,他の部材を介在させるか否かは,当業者が,各部材間の円滑な作動を考慮して当然なし得る設計的事項にすぎない。また,セレーションを有する部材とカム機構との間に,他の部材を介在させることも,周知慣用である(例えば,刊行物4記載のスプリングリテーナ16,刊行物7記載の座金24等参照)。したがって,刊行物1発明において,本件発明1の相違点2に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得ることである。
本件発明1の相違点2に係る構成の奏する作用効果も格別のものは認められない。 (2) 本件発明2について ア 本件発明2と刊行物1発明とを対比すると,両者は上記(1)記載の一致点で一致する。他方,両者は,相違点1及び2で相違するほか,本件発明2が,前記カム機構は,前記ストッパ部材押えを上下に変位させるための端面カムを有しているのに対し,刊行物1発明はこの構成を有しない点(以下「相違点3」という。)で相違する。 イ 相違点3を検討すると,カム機構において,部材を変位させるための端面カムを有することは,刊行物4ないし7,10,11等に記載されているように,周知慣用であるし,ストッパ部材押えを設けることも相違点2において検討したとおりであるから,刊行物1発明に該周知慣用技術を採用して,本件発明2の相違点3に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得ることである。
本件発明2の相違点3に係る構成の奏する作用効果も格別のものは認められない。 (3) 以上のとおり,本件発明1及び2は,本件特許出願前に頒布された刊行物1及び周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり,無効とすべきものである。
当事者の主張
(原告主張の取消事由) 本件審決は,本件発明1と刊行物1発明の相違点の認定を誤り(取消事由1),また,相違点1ないし3についての判断を誤った(取消事由2ないし4)ものであり,その誤りが本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件審決は取り消されるべきである。
1 取消理由1(相違点の認定誤り) (1) 刊行物1発明の認定について 刊行物1には,所定の回転軸線上にて互いに回転可能に連結されたブラケット4b及びリンク4cの一方とセレーション13,14を介して連結されるカム板8及び座12と,扉1の開度が所定角度に達したときに前記カム板8及び座12と係合して前記扉1の閉方向の移動を阻止するスプリング9,摺動体10及び転子11とを備えたドア・クローザの扉開放停止装置が開示され,この扉開放停止装置が突軸6及びナット16を備えていることが記載されている。
しかしながら,刊行物1記載の扉開放停止装置は,突軸6に螺着されたナット16を緩め操作することによりカム板8及び座12が下方に移動してセレーション13,14同士の噛み合いが解除されてブラケット4bへのカム板8及び座12の締着が解かれ,また,ナット16を締め付け操作することによりカム板8及び座12が上方に移動してセレーション13,14同士が噛み合ってブラケット4bにカム板8及び座12が締着される構成のものであり,ナット16の緩め操作や締め付け操作においては予め定められた連結位置や連結解除位置は存在せず,両位置間でナット16が選択的に切り替え操作されるものでもない。すなわち,刊行物1記載の突軸6とナット16は,カム板8と座12をブラケット4bに締結するためのネジ締結手段であって,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能とする機構ではない。
一般に,ナットによる締着作業を行う場合,作業者は,締め付ける際には締め付けトルクにより管理し,緩める際には締着の対象物が互いに離反することをもって緩め操作を完了するのであって,特定の位置を目標あるいは基準にナットを操作するのではない。ナットにトルクを付与すればナットは更に回転し,付与するトルクが小さければナットは手前で停止するのであり,また,締着の対象物が離反した後も更にナットを緩む方向に回転させることができるのであって,締め付ける場合と緩める場合の何れにおいても特定の位置を基準として操作するものではない。
したがって,本件審決が,刊行物1発明に係る扉開放停止装置について,「予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である突軸6及びナット16とを有し,前記突軸6及びナット16を前記連結位置側に操作して,前記カム板8及び座12を上方に移動させることにより,前記ブラケット4b及びリンク4cと前記カム板8及び座12との連結状態を維持し,一方,前記突軸6及びナット16を前記連結解除位置側に操作して,前記カム板8及び座12を下方に移動させることにより,前記ブラケット4b及びリンク4cと前記カム板8及び座12との連結解除状態を維持するドア・クローザの扉開放停止装置。」と認定したのは,誤りである。
(2) 一致点・相違点の認定の誤り ア 本件審決は,本件発明1と刊行物1発明とが,本件一致点で一致すると認定したが,刊行物1発明は予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能な機構を有しないのであり,該機構を連結位置側に操作したり連結解除位置側に操作したりということもない。本件審決は,刊行物1発明について認定を誤った結果,両発明の一致点の認定を誤ったものである。
イ したがって,本件審決が,本件発明1と刊行物1発明は相違点1において相違するとした認定も誤りである。
すなわち,相違点1に関していえば,両発明は,本件発明1が予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能なカム機構を有し,このカム機構を連結位置側又は連結解除位置側に操作してストッパ部材を上方又は下方に移動させるのに対し,刊行物1発明はネジ締結手段である突軸6及びナット16を備えるのみで,上記の選択的に切り替え操作可能な機構を有さず,ナット16を締め付け操作又は緩め操作してストッパ部材を上方又は下方に移動させるにとどまる点で相違すると認定すべきである。
ウ また,本件審決が,本件発明1と刊行物1発明とは相違点2において相違するとした認定も誤りである。
すなわち,相違点2に関していえば,両発明は,本件発明1が,ストッパ部材よりも下方の位置において,上下に移動可能に配置され,前記一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替えるためのストッパ部材押えと,前記ストッパ部材押えの下方において予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能であり,前記ストッパ部材押えを移動させるためのカム機構とを有し,前記カム機構を前記連結位置側に操作して,前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に上方に移動させることにより,前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結状態を維持し,一方,前記カム機構を前記連結解除位置側に操作して,前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に下方に移動させることにより,前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結解除状態を維持する,すなわち,ストッパ部材と共に上下動するストッパ部材押えをストッパ部材よりも下方に設けているのに対し,刊行物1発明は,ストッパ部材押えを有しない点で相違すると認定すべきである。
2 取消事由2(相違点1についての判断の誤り) (1)ア 本件審決は,「一般に,一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替え,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構を設ける技術にあって,カム機構を採用することは,周知慣用である」と判断しているが,そもそも予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構はカム機構を意味するから,カム機構とは区別して「予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構」を認定することに意味はなく,結局のところ,本件審決は,ドアクローザを含む機械全般においてセレーションの切り替えにカム機構を採用することが周知慣用であると認定判断したことになる。しかしながら,ドアクローザとは関係のない僅か数種類の機械にカム機構が採用されていることをもって周知慣用であるとした判断が誤りであることは明白である。
イ 本件において,セレーションの噛み合いにカム機構を採用することが当業者にとって周知慣用であると認定判断するためには,少なくともそのことがドアクローザの業界において周知慣用であることが必要であるというべきである。確かに,刊行物4等にはカム機構で一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替えるものが記載されているが,刊行物4ないし6は草刈り機,刊行物7は農作業機,刊行物10は動力運搬車,刊行物11は自転車においてそれぞれカム機構が採用されていることを示しているにすぎず,これらの機械は何れもドアクローザとは全く関連性のない機械であって建築金物とも無関係の機械である。逆に,ドアクローザの業界においては,セレーション採用当初(昭和56年頃)からネジ締結構造が採用され,且つ,そのネジ締結構造が少なくとも本件特許出願の国内優先権主張日当時の平成9年まで長年使用し続けられてきたのであり,その間,ドアクローザのセレーションの噛み合いにカム機構は全く採用されていなかった。しかも,当業者である被告においても,本件特許出願の国内優先権主張日において刊行物4等の存在を認識していなかったのであるから,セレーションの噛み合いにカム機構を採用することが上記優先権主張日においてドアクローザの業界において周知慣用な事項ではなかったことは明らかである。
本件審決は,当業者にとって周知慣用ではない技術を周知慣用な技術であると認定し,その認定を前提として本件発明1には進歩性がないと判断したものであるから誤りである (2)ア 本件審決は,刊行物1発明と刊行物4等記載の周知慣用技術とを組み合わせることには何らの阻害要因もないから,本件発明1は進歩性がないと判断している。
しかしながら,刊行物1発明はドアクローザの技術分野に関するものである一方,刊行物4等に記載の発明はドアクローザとは無関係の分野に関するものであり,両者は技術分野を異にし,関連性をも有しない。しかも,セレーションの噛み合わせにカム機構を用いる技術が他の機械分野において存在していることについては,少なくとも本件特許出願の国内優先権主張日においては,被告自身も認めているようにドアクローザの業界においては全く認識されていなかったのである。
むしろ,既に述べたとおり,ドアクローザにおいては,セレーションの採用当初(昭和56年頃)からその噛み合いにネジ締結手段が採用され,且つ,本件特許出願の国内優先権主張日(平成9年)まで長年にわたってネジ締結手段のみが使用され続けてきたのであり,いわば,ドアクローザにおけるセレーションはネジ締結手段で噛み合わせるものとの業界内での技術常識が存在していたのである。
また,本件特許出願の国内優先権主張日後において被告自身もドアクローザにおけるセレーションの噛み合い及びその解除をカム機構で行うという内容の発明について出願し特許を受けているという事実がある(甲4)。一般に,ある発明について出願行為を行っている事実が存在する場合には少なくともその出願当時において出願人はその発明が進歩性を有するものであると考えていたと推認され,しかも,出願行為のみならず真に権利化を目指すべく審査請求を行い,特許を受けている事実が存在している場合には,出願人が進歩性を肯定していたとの推定が強まるものといえる。したがって,被告自身もその出願当時においてドアクローザにおけるセレーションの噛み合い及びその解除をカム機構で行うという発明が進歩性を有すると考えていたものと推認され,それを覆すものは存在しない。
イ 上記のとおり,刊行物4等に記載の技術事項が本件発明1とは無関係の分野のものである上に,それらの刊行物の存在が認識されずに刊行物1発明のネジ締結手段のみが長年に亘って使用され,本件特許出願人以外の当業者が本件発明1の進歩性を本件特許出願の国内優先権主張日に肯定していたと推認される事実も存在するのであるから,本件発明1の進歩性を判断するにあたっては,引用刊行物の記載内容やこれらドアクローザ業界の特有の事情等を考慮すべきところ,本件審決はこれらの事情を考慮することなく刊行物1発明に刊行物4等に記載の技術を組み合わせることに阻害要因はないとした上,本件発明1の相違点1に係る構成を想到することは容易であると誤った判断をしたものである。
(3) 本件審決は,「刊行物1発明と刊行物4等記載の発明とは,一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替え,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構を設ける技術である点で共通しており,両者の属する技術分野が全く相違するとの原告の主張は認められない。」とするが,かかる判断は,刊行物1発明の突軸6とナット16が予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構との誤った認定を前提にするものであって,誤りである。
(4) 刊行物1発明に比して本件発明1は顕著な作用効果を奏するものである。
すなわち,刊行物1発明のネジ締結手段では,締め付け操作時にはトルクで管理する上に,セレーションも目視確認がしにくく,また,頭上のドアクローザに対して下方から見上げるようにして作業を行うことが多いためにその作業性も悪いことから,セレーションが噛み合わずにその山同士が突き合う状態のままでも締め付け作業を完了するおそれがあり,この状態でドアの開閉動作を繰り返すとセレーションが周方向にずれて開閉毎に異音が発生したり摩耗や破損が生じたりして部品交換も必要となる。これに対して,本件発明1ではカム機構によって切り替える構成であるために,セレーションの山同士が突き合う状態となれば予め定められた連結位置まで切り替え操作することができないから,そのことをもって作業者はセレーションの噛み合い不良を確実に把握でき,ネジ締結手段の場合に生じ得るセレーションの摩耗等を未然に防止できることとなる。
このように従来のネジ締結手段に比してカム機構が顕著な効果を奏するにもかかわらず,ドアクローザの業界がネジ締結手段を使用し続けてきたことは,刊行物1発明から本件発明1を推考することに困難性があったことを意味する。
3 取消事由3(相違点2についての判断の誤り) 本件審決は,相違点2について,「一般に,機械分野において,ある部材を押圧するために,他の部材を介在させるか否かは,当業者が,各部材間の円滑な作動を考慮して当然なし得る設計的事項にすぎない。また,セレーションを有する部材とカム機構との間に,他の部材を介在させることも,周知慣用である」とするが,誤りである。
すなわち,機械分野において他の部材を介在させることが設計的事項にすぎないとしても,セレーションの噛み合いにカム機構を採用する上でストッパ部材押えの上下動を伴わせることまでが設計的事項とはいえず,また,セレーションの噛み合いにカム機構を採用すること自体が周知慣用ではないのであるから,ストッパ部材押えを設けることも周知慣用の技術とはいえない。
4 取消事由4(相違点3についての判断の誤り) 本件審決は,相違点3について,カム機構において端面カムを有することは刊行物4等に記載されているとおり周知慣用の技術であり,ストッパ部材押えを介在させることも周知慣用の技術であるとするが,刊行物4等に記載の技術事項が周知慣用でないことは前述のとおりであり,またストッパ部材押えを設けることも周知慣用の技術ではないから,かかる周知慣用の技術についての誤った認定を前提とした相違点3についての本件審決の判断も誤りである。
(被告の反論) 本件審決における,本件発明1と引用発明1との相違点の認定,および,その相違点1ないし3についての判断に,誤りはなく,本件審決に原告主張の取消事由は存在しない。
1 取消事由1について (1) 刊行物1発明の認定について 原告は,「刊行物1に記載の突軸6とナット16は,カム板8と座12をブラケット4bに締結するためのネジ締結手段であって,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能なものではないし,ナット16の緩め操作や締め付け操作においては予め定められた連結位置や連結解除位置は存在せず,両位置間でナット16が選択的に切り替え操作されるものでもない。」と主張する。
しかし,本件審決は,突軸6とナット16との締め付けにより,セレーション13,14が噛合する突軸6及びナット16の締め付け位置をもって突軸6及びナット16の連結位置と言い,突軸6とナット16との緩めにより,セレーション13,14の噛合が解除する突軸6及びナット16の緩め位置をもって突軸6とナット16の連結解除位置といっているのである。その意味で,連結状態となる締め付け位置(連結位置),連結解除状態となる緩め位置(連結解除位置)は予め定まっているから,本件審決は,突軸6及びナット16を予め定められた連結位置と連結解除位置との間を切り替え操作可能なものであるといっているのであって,本件審決のこの点の認定は正しい。
(2) 一致点と相違点の認定について ア 本件審決の刊行物1発明の認定に誤りはなく,したがって,刊行物1発明の認定に誤りがあることを前提に,本件審決の一致点と相違点の認定に誤りがあるとする原告の主張は,失当である。
イ 原告は,本件審決の相違点2の認定に関し,正しくは,本件発明1が,ストッパ部材と共に上下動するストッパ部材押えをストッパ部材よりも下方に設けているのに対し,引用発明1は,ストッパ部材押えを有しない点を相違点として認定すべきであると主張している。
しかし,この主張は,本件審決の相違点2の認定のどこの箇所が間違いであるかを具体的に摘示しておらず,また,誤認である理由を説明していないものである。
本件審決の相違点2の認定に誤りはない。
2 取消事由2(相違点1についての判断の誤り) (1) 原告主張の取消事由2の(1)について ア 原告は,本件審決は,ドアクローザの技術分野においても,セレーションの切り替えにカム機構を採用することが周知慣用であると認定判断したものであるが,ドアクローザとは関係のない僅か数種類の機械にカム機構が採用されていることをもって,上記機構がドアクローザの技術分野においても周知慣用であるとした認定判断は誤りであると主張する。
しかし,第1に,本件審決では,一般に,一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替え,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構を設ける技術にあって,カム機構を採用することが周知慣用であるといっているのである。つまり,一般に,一対のセレーションの噛み合い及びその解除を選択的に切り替えるという課題,作用,機能が共通する技術の場合,カム機構を採用することが周知慣用であるといっているのであって,ドアクローザの技術分野が刊行物4等に記載のものとは技術分野を異にするとする原告の主張は,失当である。
第2に,乙3の14(特許庁の審査基準)に記載されているように,2つの発明ないし技術事項の間に課題の共通性または作用,機能の共通性のいずれか1つでもあれば,これらの組み合わせの動機付けとなるものであるところ,本件審決は,刊行物1発明と刊行物4等に記載の技術事項とは,課題,作用,機能において共通性があるから,刊行物1発明に上記周知技術を適用して本件発明1の相違点1に係る構成とすることは当業者にとって容易想到であると判断しているのである。したがって,この判断に関し,ドアクローザの技術分野が刊行物4等に記載の技術事項とは技術分野を異にするとする原告の主張は,的外れである。
第3に,原告は,本件審決が,一般にセレーションの切り替えにカム機構を採用することが周知慣用であると認定判断したことにつき,僅か数種類の機械にカム機構が採用されていることをもってこれを周知慣用であるとしたのは誤りである旨主張するが,本件審決が認定判断の基礎とした引用例の数は,周知性を認定するに十分な相当数である。
なお,仮に,刊行物4等に記載の技術事項が周知慣用といえず,公知であるにとどまるとしても,本件発明1の相違点1に係る構成を想到することが容易であるとの本件審決の結論が相当であることに変わりはないというべきである。
イ 原告の取消事由2の(1)イの主張は,次に述べるとおり失当である。
まず,第1に,本件審決は,刊行物1発明と刊行物4等に記載の発明とは,一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替え,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構を設ける技術である点で共通しており,両者の属する技術分野は相違しないとしているのであり,この判断は正当である。ドアクローザの技術分野が刊行物4等に記載の技術事項とは技術分野を異にするとする原告の主張は,的外れである。
第2に,原告は,刊行物4等に記載の技術事項はいずれもドアクローザとは無関係の機械に関するものであって,それらの文献中にドアクローザの分野に関するものはひとつもなく,ドアクローザの業界においてセレーションの噛み合いにカム機構を採用することが周知慣用であるとはいえないと主張しているが,全く,的はずれの主張である。もし,刊行物4等に,ドアクローザにおいてセレーションの噛み合いにカム機構を採用することが記載されているならば,本件発明1には新規性がないのであって,進歩性の問題は生じなくなる。原告の主張は,進歩性の存否に関して無関係のことを述べているのである。
第3に,原告は,ドアクローザの業界においてはセレーション採用当初(1981年頃)からネジ締結構造が採用され,且つ,そのネジ締結構造が少なくとも本件特許出願の国内優先権主張日(1997年)まで長年使用し続けられてきたのであり,その間,ドアクローザのセレーションの噛み合いにカム機構は全く採用されていないのであると主張するが,あまり意味のない主張である。何故なら,上記優先権主張日までに,ドアクローザのセレーションの噛み合いにカム機構を採用したものがあれば,本件発明1に新規性がないということであって,上記優先権主張日までにドアクローザのセレーションの噛み合いにカム機構を採用したものがないということは進歩性の問題とは関係がない。
(2) 原告主張の取消事由2の(2)について ア 原告は,刊行物1発明はドアクローザの技術分野に関するものである一方,刊行物4等に記載の発明はドアクローザとは無関係の分野に関するものであり,両者は技術分野を異にし,関連性をも有しないものであり,しかも,セレーションの噛み合わせにカム機構を用いる技術が他の機械分野において存在していることについては,少なくとも本件特許出願の国内優先権主張日においては,被告自身も認めているようにドアクローザの業界においては全く認識されていなかったし,さらに,本件特許出願人以外の当業者である被告は本件発明1の進歩性を本件特許出願の国内優先権主張日に肯定していたと推認されるなどと主張する。
まず,第1に,本件審決は,刊行物1発明と刊行物4等に記載の発明とは,一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替え,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構を設ける技術である点で共通しており,両者の属する技術分野は相違しないとしているのであり,この判断は正当である。ドアクローザの技術分野が刊行物4等に記載の技術事項とは技術分野を異にするとする原告の主張は,失当である。
第2に,刊行物4ないし7,10は,農業機械に関するものであるが,トラクタ,動力運搬車,コンバインなどの農業機械においては,ドア装置が使用されているのは周知であるから,農業機械技術者にとって,ドア装置は密接に関係する技術分野なのであり,一方,ドア装置の技術者にとっても農業機械は密接に関係する技術分野である。さらにまた,刊行物11は,自転車に関するものであるが,自転車のごとき一般的な機械は,あらゆる分野の機械技術者にとって,関連する技術分野であるといえる。したがって,刊行物4等に記載の技術事項は,ドアクローザとは無関係の技術分野であるとはいえない。
第3に,被告とドアクローザの業界とは同一ではなくて,被告が認識していないことをもって,ドアクローザの業界においては全く認識されていないことにはならない。当業者とは,具体的に誰がそれであると言うことができる性質のものではなく,つまり,1特定人を指すものではなく,想定される平均的技術者,いわば特許法上の想像上の人物で有ると考えるのが通説である。原告の主張は,飛躍のし過ぎで,明らかな間違いである。
第4に,原告は,証拠を挙げることなく,いわゆる発明の不実施を根拠とした進歩性を主張するようであるが,本件審決は,進歩性の基本的判断基準に則って,刊行物1発明と刊行物4等に記載の技術事項とに間に,作用,機能に関して技術的に共通点があることをを踏まえて,刊行物1発明に刊行物4等記載の技術事項を適用して本件発明1の相違点1に係る構成を想到することが容易であると判断しているのである。従来においてさえ,いわゆる発明の不実施はあくまでも参酌事項であって,進歩性を判断する際の決め手ではないとされていたのであるから,進歩性の基本的判断基準に則つて,明確に進歩性がないと判断されるときは,これを参酌する必要がないことは,明白である。なお,本件特許出願の国内優先権主張日当時,ドアクローザの業界においては,ドアクローザにおけるセレーションはネジ締結手段で噛み合わせるものとの技術常識が存在したとの原告の主張は何ら客観的証拠に基づかないものである。
第5に,原告の主張は,被告が本件発明1の相違点1に係る構成と同様の構成を有する特許出願をし,特許審査を受けていることをもって,被告を進歩性を判断する当業者とする間違いを犯している。特許法上の当業者とは,前述の如く,具体的に誰がそれであると言うことができる性質のものではなく,つまり,特定人を指すものではなく,想定される平均的技術者,いわば特許法上の想像上の人物で有ると考えるのが正しい。したがって,原告の論理は,1特定人を当業者とするもので,明らかな間違いである。公知文献でない文献は,進歩性を判断する上で無関係であるとする本件審決の判断は正しい。
イ 原告は,本件審決が刊行物1発明と刊行物4等に記載の技術事項とを組み合わせることについて阻害要因がないとした判断の誤りを主張するようであるが,原告の上記主張は,上記組合せについて阻害要件があることを示していないから,失当である。
(3) 原告主張の取消事由2の(3)について 刊行物1発明の突軸6とナット16が予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構であることは,前記1(1)に記載のとおりであるから,原告の上記主張は理由がない。
(4) 原告主張の取消事由2の(4)について 原告は,本件審決が,「ネジ締結手段に代えてカム機構を採用することの効果の程度との関係を考慮せずに」,本件発明1の進歩性を否定したのは誤りであると主張する。
しかし,本件発明1の作用効果は,要するに,セレーションの位置調整を容易に行うことができ,セレーションの噛み合い不良も防止するということにあるが,セレーション及びカム機構からなるものがかかる作用効果を有することは,刊行物4に「【0025】・・・ワンタッチで簡単に調節することができる。」と記載され,刊行物5に「・・・不用意に旋回することがなく,・・・角度設定が同時に簡単且つ安全に行われる。しかも,・・・長期間に亘って良好な噛み合い状態を維持することができ・・・」(6欄46〜49行)と記載されているように,自明なことであり,これをドアクローザのストップ装置に採用したからといって,当業者が予測できない作用効果を奏するとまではいえない。
本件審決は,本件発明1の作用効果について上記のとおり判断し,このことも考慮した上で,本件発明1の容易想到性について判断しているものであって,その判断は正当である。
3 取消事由3(相違点2についての判断の誤り) 本件審決の判断するとおり,一般に,機械分野において,ある部材を押圧するために,他の部材を介在させるか否かは,当業者が,各部材間の円滑な作動を考慮して当然なし得る設計的事項にすぎない。また,セレーションを有する部材とカム機構との間に,他の部材を介在させることも,周知慣用であり,したがって,刊行物1発明において,本件発明1の相違点2に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得ることであるし,その作用効果も格別のものは認められない。
なお,セレーションの噛み合いにカム機構を採用することは,刊行物4等の記載により周知慣用の技術であると認められる。
この点に関する原告の主張は,失当である。
4 取消事由4(相違点3についての判断の誤り) 原告は,「刊行物4等に記載の技術事項が周知慣用でないことは前述のとおりであり,またストッパ部材押えを設けることも周知慣用ではないから,かかる周知慣用の認定を前提とした相違点3についての本件審決の判断は誤りである。」と主張する。
しかし,刊行物4等に記載のカム機構において部材を変位させるための端面カムを備えることは周知慣用の技術事項である。また,前記2のとおり,ストッパ部材押えを設けることは設計事項であり,周知慣用技術であるというべきであるから,相違点3についての本件審決の判断は正しい。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本件発明1と刊行物1発明の相違点の認定の誤り) (1) 原告は,刊行物1記載の扉開放停止装置は,突軸6に螺着されたナット16を緩め操作することによりカム板8及び座12が下方に移動してセレーション13,14同士の噛み合いが解除されてブラケット4bへのカム板8及び座12の締着が解かれ,また,ナット16を締め付け操作することによりカム板8及び座12が上方に移動してセレーション13,14同士が噛み合ってブラケット4bにカム板8及び座12が締着される構成のものであり,ナット16の緩め操作や締め付け操作においては予め定められた連結位置や連結解除位置は存在せず,両位置間でナット16が選択的に切り替え操作されるものでもない。すなわち,刊行物1記載の突軸6とナット16は,カム板8と座12をブラケット4bに締結するためのネジ締結手段であって,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能なるものではないとし,本件審決の刊行物1発明の認定は誤りである旨主張する。
(2) そこで,刊行物1発明の扉開放停止装置の技術内容について検討する。
ア 刊行物1には,次のとおり記載されている。
(ア) 「本考案は扉の開放停止位置を任意に調整できるようにしたドア・ク ローザの扉開放停止装置に関する」(2頁2ないし4行) (イ) 「第1図に示したように,扉1に固定されるドア・クローザ2・・・と,扉取付枠3とはリンク機構4により連結される。上記リンク機構4は,・・・ブラケット4bと,・・・突軸5,6にて連結するリンク4cとからなって,上記リンク4cとブラケット4bとの枢着部7にはカム面8a・・・に第2図(判決注:第3図の誤記と認める。)が示したように切欠凹部8cを設けたカム板8を着脱,かつ回動調整可能に締着してあると共に,上記リンク4cにスプリング9により弾撥付勢して内装した摺動体10先端の転子11を上記カム面8aに常時圧接し,開扉動作によって,上記切欠凹部8cに転子11が係嵌することで扉開放停止が行われるように構成されている。」(2頁9行ないし3頁4行) (ウ) 「本考案は,上記リンク4c端部に非回転に設けた突軸6に,中心に貫通孔12aを設けた座12を嵌挿し,その座部12bと,上記ブラケット4bとの対接面にセレーション13,14を夫々放射状に設けて相互に脱着,かつ回動調整自在に噛合すると共に,上記座部12bの裏面から真円以外の楕円形又は四角,六角形等の凸部12cを上記貫通孔12aの中心から第2図A,B,Cに夫々示した如く・・・突設し,該凸部12cの外形状に対応させて上記カム板8には透孔8dを貫通形成して,上記凸部12cとカム板8を脱着目在に・・・凸部を180度向きを変えて嵌合可能に嵌合し,上記座12と軸回り方向に固定して締着し,構成したものである。」(同3頁5ないし20行) (エ) 「上記突軸6としては,第1図に示したような段6a付きボルトが適 用されるもので,該ボルトの段6aに上記座12の凸部12c下端と,カム板8を受け,ネジ部6bにワッシャ15を介在してナット16を螺着することによりブラケット4b,リンク4c,カム板8,座12を螺着するように形成されている。」(同4頁1ないし7行) (オ) 「上記構成において,ドア・クローザ2は扉1に,一方ブラケット4bは扉取付枠3に固定されるから,今閉扉位置から扉1を開き方向へ回動して行くことによって,リンク4cが突軸6を支点として回動し,その途中においてリンク4cに支承されている転子11がカム板8におけるカム面8aの周縁突部8bへ臨むにつれ摺動体10はスプリング9を圧縮しながら後退し,もって転子11は切欠凹部8cに嵌合し,開扉停止が行われる。」(同4頁11ないし20行) (カ) 「ナット16による座12及びカム板8の締着を解いて両セレーション12,13(判決注:「13,14」の誤記と認める。)の噛合いを解いた後,カム板8を座12と共に周方向へ回動して切欠凹部8cを任意量変位し,然る後締着することで,上述開扉停止位置を所望位置に調整することができる。」(同5頁第1ないし6行)。 イ 上記ア認定の刊行物1の記載によれば,刊行物1には,「所定の回転軸線上にて互いに回転可能に連結されたブラケット4b及びリンク4cの一方とセレーション13,14を介して連結されるカム板8及び座12と,扉1の開度が所定角度に達したときに前記カム板8及び座12と係合して前記扉1の閉方向の移動を阻止するスプリング9,摺動体10及び転子11とを備えたドア・クローザの扉開放停止装置が開示され,上記(エ)記載のとおり,上記扉開放停止装置は,突軸6とナット16を備え,突軸6として適用される段6a付きボルトの段6aに上記座12の凸部12c下端と,カム板8を受け,ネジ部6bにワッシャ15を介在してナット16を螺着することによりブラケット4b,リンク4c,カム板8,座12を螺着するように形成されていることが認められ,また,上記記載によれば,上記扉開放停止装置においては,ナット16の緩め操作により突軸6(段付き6aのボルト)と座12及びカム板8との締着状態を解いて両セレーション13,14の噛合いを解き,その後,カム板8を座12と共に周方向へ回動して切欠凹部8cを任意量変位して,その位置において,再びナット16の締め付け操作により突軸6(段付き6a付きボルト)と座12及びカム板8とを締着させて,両セレーション13,14を噛み合わせ,上記開扉停止位置を所望位置に調整することができるようにされていることが認められる。
(3) 本件発明1と刊行物1発明との比較 ア 本件発明1に係る請求項1には,「ドアクローザのストップ装置において,前記ストッパ部材よりも下方の位置において,上下に移動可能に配置され,前記一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替えるためのストッパ部材押えと,前記ストッパ部材押えの下方において予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能であり,前記ストッパ部材押えを移動させるためのカム機構とを有し,前記カム機構を前記連結位置側に操作して,前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に上方に移動させることにより,前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結状態を維持し,一方,前記カム機構を前記連結解除位置側に操作して,前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に下方に移動させることにより,前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結解除位置を維持することを特徴とするドアクローザのストップ装置。」と記載されている。しかして,この記載からすれば,本件発明1において,連結位置とは,ストッパ部材押えをストッパ部材と共に上方に移動させることにより,一対のセレーションを噛み合わせて,一対のドアクローザ部品の一方とストッパ部材とが連結される位置をいい,また,連結解除位置とは,ストッパ部材押えをストッパ部材と共に下方に移動させることにより,一対のセレーションの噛み合いを解除して,一対のドアクローザ部品の一方とストッパ部材との連結を解除する位置を意味するものと解される。この場合,一対のドアクローザ部品の一方のセレーションの位置は固定されていると認められるから,設計上,その位置が一対のセレーションの噛み合い及びその解除がされる位置として予め定められているということができる。
イ これと対比してみれば,刊行物1発明において,ナット16の緩め操作により突軸6(段付き6aのボルト)と座12及びカム板8との締着状態を解いて両セレーション13,14の噛合いを解いた位置が,本件発明1の連結解除位置に相当し,また,ナット16の締め付け操作により突軸6(段付き6aのボルト)と座12及びカム板8とを締着させて,両セレーション13,14を噛み合わせた位置が,本件発明1の連結位置に相当することは明らかであり,また,ドアクローザ部品の一方であるブラケット4bに設けられたセレーション14の位置は固定されていると認められるから,設計上,その位置が一対のセレーションの噛み合い及びその解除がされる位置として予め定められているということができる。そして,刊行物1発明においては,ナット16と突軸6との締め付け又は緩めを行う操作によりストッパ部材を移動させて,連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替えることが可能になっているということができる。
ウ(ア) この点に関し,原告は,「一般に,ナットによる締着作業を行う場合,作業者は,締め付ける際には締め付けトルクにより管理し,緩める際には締着の対象物が互いに離反することをもって緩め操作を完了するのであって,特定の位置を目標あるいは基準にナットを操作するのではない。ナットにトルクを付与すればナットは更に回転し,付与するトルクが小さければナットは手前で停止するのであり,また,締着の対象物が離反した後も更にナットを緩む方向に回転させることができるのであって,締め付ける場合と緩める場合の何れにおいても特定の位置を基準として操作するものではない。」と主張しているところ,確かに,ナットによる締着作業を行う場合に,一対のセレーションの噛み合い及びその解除は,ナットに付与されるトルクにより突軸(ボルト)の締まり具合,緩み具合を調整して行うものであり,特定の位置を目標あるいは基準にナットを操作するものとはいえない。
(イ) この点を本件発明1についてみると,本件訂正明細書の「発明の詳細な説明」には,第1実施形態について,次のとおりの説明がある。
a 「図3〜図5に示すように,セレーション軸8の中心にはねじ孔8bが形成され,そのねじ孔8bにはレバー軸12のねじ部12aが螺合する。レバー軸12の下端部はカム押え10を貫いて下方に突出する。その突出部分には弾性部材としての皿ばね11がはめ合わされると共に,カム押え10及び皿ばね11を押し上げるカムレバー(カム部材)13がピン14を介して回転操作可能に取り付けられる。」【0013】 b 「レバー軸12のねじ部12aの上端はブラケット1の上方に突出し,その突出部分は調整ナット15と螺合する。調整ナット15を回転させその下面をブラケット1の上面と当接させ,レバー軸12でその上下位置を調整し,調整ナット15を締め付けることにより固定できる。図2及び図4(b)に詳しく示したように,カムレバー13には,皿ばね11に当接する一対の内カム面13a,13aと,カム押え10の下面に当接する一対の外カム面13b,13bとが設けられる。カムレバー13,ピン14,レバー軸12,調整ナット15及び皿ばね11がカム機構を構成し,このカム機構は,セレーション軸8と板カム9との連結状態及び連結解除状態を選択的に保持する保持手段として作用する。」【0014】 c 「以上の構成においては,カムレバー13をピン14の廻りに回転させると,外カム面13bの位相の変化に応じてカム押え10が上下に移動してセレーション8a,9aの噛み合い及びその解除が切り替わる。」【0015】 d 「このように,第1実施形態ではセレーション8a,9aの噛み合いの良否がカムレバー13の操作に反映されるから,作業者は容易にセレーション8a,9aの噛み合いの良否を判別でき,噛み合い不良のまま作業を終了するおそれがなく,セレーション8a,9aの欠損や摩耗が防がれる。カムレバー13を操作するだけで板カム9の位置を調整できるので,ボルトにてセレーションを締め付ける従来の装置と比較してドア停止位置の調整を容易に行うことができ,ボルトの締め付け不足によって装置を破損するおそれもない。カムレバー13のてこ作用を利用して皿ばね11及びカム押え10とカム面13a,13bとの接触位置に大きな力を加えることができるから,カムレバー13の操作力を軽減して作業をより容易に行えるようになる。」【0020】 上記の記載によれば,第1実施形態では,カムレバー13,ピン14,レバー軸12,調整ナット15及び皿ばね11がカム機構を構成していること,カムレバー(カム部材)13がピン14の廻りに回転した際に,これに設けられた外カム面13bの位相が変化して,カム押さえ10及び皿ばね11を介してストッパ部材としての板カム9を押し上げることで,セレーション軸8と板カム9との「連結状態」及び「連結解除状態」を選択的に保持するものであること,第1実施形態を採用した場合には,セレーションの噛み合いの良否が,カムレバー13をみることで判別できること,てこ作用によりカムの操作力が軽減されることが第1実施形態を採用した場合に作用効果として期待し得ることが認められる。
また,本件訂正明細書の「発明の詳細な説明」には,実施形態2及び実施形態3においても,一対のセレーションの「連結状態」及び「連結解除状態」を選択的に保持する機構が記載されている(実施形態2に関し【0030】ないし【0032】,実施形態3に関し【0038】〜【0041】)。
上記のように,本件発明1が,一対のセレーションの「連結状態」及び「連結解除状態」を選択的に保持する機構を備えたものであるとすれば,当該セレーションの噛み合わせ及びその解除は,「連結状態」あるいは「連結解除状態」が得られる範囲のうち特定の位置において行われるものとなると考えられる。そして,本件訂正後の請求項1には,かかる「連結状態」あるいは「連結解除状態」を選択的に保持する機構については何ら記載されていないものの,上記請求項1の記載に照らせば,本件発明1のカム機構は当然に連結状態又は連結解除状態を維持する機構を備えていることを前提にしているものと考えるほかはない。
(ウ) そうすると,本件発明1のように,一対のセレーションの噛み合わせ及びその解除を選択的に行う機構としてカム機構を採用した場合,刊行物1発明の採用するところの連結方向あるいは連結解除方向への漸進を行うのみのネジ締結機構と異なり,「連結位置」あるいは「連結解除位置」は,「連結状態」あるいは「連結解除状態」が得られる範囲のうち特定の位置になると解される。
しかしながら,「連結状態」あるいは「連結解除状態」が得られる位置と,「連結状態」あるいは「連結解除状態」が得られる範囲のうち特定の位置とは,「連結状態」あるいは「連結解除状態」が得られる位置という意味で一致するものであり,その位置に幅があるか否かで相違するにすぎないところ,かかる相違点は,一対のセレーションの噛み合わせとその解除を選択的に行う方法として,ネジ締結機構を採用するかカム機構を採用するかに付随して当然に生ずるものと考えられるから,この相違点を本件発明1と刊行物1発明との独立の相違点として取り上げるまでのことはなく,その相違点は,本件審決の認定する相違点1(予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構は,本件発明1が,カム機構であるのに対し,刊行物1発明は,突軸6とナット16とからなる点)に含まれていると解するのが相当である。
(4) 本件発明1と刊行物1発明との一致点の認定 上記(1)ないし(3)で検討したところからすれば,,本件発明1と刊行物1発明とが本件一致点(所定の回転軸線上にて互いに回転可能に連結された一対のドアクローザ部品の一方と一対のセレーションを介して連結されるストッパ部材と,ドアの開度が所定角度に達したときに前記ストッパ部材と係合して前記ドアの閉方向の移動を阻止する手段とを備えたドアクローザのストップ装置において,前記ストッパ部材よりも下方の位置において,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構とを有し,前記機構を前記連結位置側に操作して,前記ストッパ部材を上方に移動させることにより,前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結状態を維持し,一方,前記機構を前記連結解除位置側に操作して,前記ストッパ部材を下方に移動させることにより,前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結解除状態を維持するドアクローザのストップ装置)で一致するとした本件審決の認定に誤りはない。
本件審決の一致点,相違点の認定の誤りをいう原告の主張は,前記(2)ウ(ウ)に説示したところと異なる見解に立つものであって,採用することができない。
2 取消事由2(相違点1についての判断の誤り)について ア 原告は,本件審決は,ドアクローザの技術分野においても,セレーションの切り替えにカム機構を採用することが周知慣用であると認定判断したものであるが,ドアクローザとは関係のない僅か数種類の機械にカム機構が採用されていることをもって,上記機構がドアクローザの技術分野においても周知慣用であるとした認定判断が誤りである旨主張する。
イ そこで検討するに,刊行物4ないし7は農作業機械(草刈機等)に関する発明,刊行物10には動力運搬車に関する発明,刊行物11には折りたたみ式自転車に関する発明がそれぞれ記載されており,これらの刊行物には,カム機構により,一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替え,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能とする技術が開示されている。これらの刊行物の記載からすれば,本件特許出願当時,一般に,一対のセレーションの噛み合い及びその解除を選択的に切り替えるという課題,作用が共通する技術分野において,カム機構を採用することは周知慣用の技術事項であったということができる。
本件審決は,上記と同様の見解に立って,「一般に,一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替え,予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構を設ける技術にあって,カム機構を採用することは,周知慣用である」と認定判断しているのであって,この認定判断に誤りがあるということはできない。
原告は,セレーションの噛み合いにカム機構を採用することが周知慣用であると認定判断するためには,少なくともドアクローザの業界において周知慣用であることが必要である旨主張する。しかしながら,一対のセレーションの噛み合いとその解除を選択的に操作可能とするカム機構は,機械のいかなる技術分野においても共通に使用し得る汎用性のある技術であると解されるのであって,ドアクローザの技術分野においてセレーションの噛み合いにネジ締結手段が従来から使用され,本件特許出願(国内優先権主張日)当時までセレーションの噛み合いにカム機構が使用された事実がなかったとしても,そのことは,機械の技術分野一般における上記カム機構の周知慣用性に何ら影響を及ぼすものではない。
しかして,ドアクローザのストップ装置において,一対のセレーションの噛み合い及びその解除を選択的に切り替えるという技術を採用する場合に,上記周知慣用のカム機構を適用することに阻害要因があると認めるに足りる証拠はない。
ウ 原告は,本件発明1と同一の構成を有するドアクローザのストップ装置が本件特許出願時点までに存在せず,また,ドアクローザにおけるセレーションはネジ締結手段で噛み合わせるものというのが業界内での技術常識になっていたとして,本件発明1の相違点1に係る構成を想到することは容易なことではない旨主張する。
しかしながら,一対のセレーションの噛み合い及びその解除を選択的に切り替えるという課題,作用が共通する技術分野において,カム機構を採用することが周知慣用のものであることは前示のとおりであり,そうである以上,ドアクローザのストップ装置において一対のセレーションの噛み合い及びその解除を選択的に切り替えるため,ネジ締結手段に代えてカム機構を採用することの動機付けは十分に存在するというべきであり,原告主張の上記事情は,本件発明の相違点1に係る構成の容易想到性についての本件審決の判断を覆すに足りる事情とはいい難い(なお,被告自身が本件特許出願の国内優先権主張日当時において,刊行物4等の存在を認識していたか否かや本件発明1の進歩性を肯認していたか否かの事実が上記本件審決の容易想到性の判断を何ら左右する筋合いでないことは明らかである。また,刊行物1発明の技術内容は前記1の(2)及び(3)イに認定のとおりであるから,これと異なる技術内容であることを前提とする原告の取消事由2の(3)の主張は,その前提を欠き,理由がない。)。
エ 原告は,相違点1に係る構成を採用した本件発明1の奏する作用効果が,顕著で格別なものであるとも主張する。
しかしながら,本件訂正明細書の記載(段落【0004】,【0048】)によれば,本件発明1の作用効果は,要するに,一対のセレーションの噛み合わせの位置調整を容易に行うことができるばかりでなく,セレーションの噛み合い不良も防止することができることにあるとされているに止まる。そして,刊行物4の「特に,草刈機Aに対する草刈機用ハンドル装置1の装着姿勢の変更は,1本のロックレバーー12を起倒操作することでワンタッチで簡単に調節することができる。」【0025】との記載,刊行物5の「第1の菊座20を取り付けた支持金具16が不用意に旋回することがなく,ハンドル基杆12の刈取り作業機に対する前後及び左右方向の角度設定が同時に,簡単且つ安全に行われる。しかも,菊座20,22の山部が潰れることがないため,長期間にわたって良好な噛合い状態を維持することができ,菊座20,22の耐久性が向上する。」(3頁6欄46〜4頁7欄2行)との記載等から明らかなように,一対のセレーションの噛み合わせ及びその解除を選択的に操作する機構としてカム機構を採用した場合に,本件発明1の上記のような作用効果を奏することは自明のことであって,当業者において予測できる範囲内のものであり,格別のものとはいえない。
本件発明1の作用効果が顕著で格別のものであることを理由とする原告の主張は採用できない。
3 取消事由3(相違点2についての判断の誤り)について 機械の分野において,ある部材を押圧するために他の部材を介在させることは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず,そのことは,セレーションの噛み合わせ等にカム機構を採用する場合において,ストッパ部材押えの上下動を伴わせることに関しても同様というべきである。また,刊行物4及び7の記載等からすれば,セレーションを有する部材とカム機構との間に,他の部材を介在させることも,周知慣用の技術であると認められる。
本件審決の相違点2についての判断に誤りはなく,原告のこの点の主張は採用できない。
4 取消事由4(相違点3についての判断の誤り)について カムに端面カムを含む種々のものが存在することは技術常識であるところ,カム機構にこれらのうちから端面カムを選択して採用することは,当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項であると認められる。また,セレーションを有する部材とカム機構との間に他の部材を介在させることが当業者において適宜なし得る設計事項であり,また,周知慣用の技術であることは前記3において説示したとおりである。したがって,刊行物1発明に上記周知慣用技術等を採用して,本件発明2の相違点3に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得ることである。
本件審決の相違点3についての判断に誤りはなく,原告のこの点の主張は採用できない。
5 以上によれば,原告が取消事由として主張するところはいずれも理由がなく,本件審決には他にこれを取り消すべき瑕疵は見あたらない。
よって,原告の本件請求は,理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 青蜉]
裁判官 沖中康人
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