関連審決 | 訂正2003-39103 異議2002-71713 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成19行ケ10006審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16行ケ86審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成13行ケ337審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成12ネ1016特許権侵害差止請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成10行ケ401審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 容易に想到(容易想到性) / 設定登録 / 訂正審判 / 請求の範囲 / 減縮 / 拡張 / 変更 / 独立特許要件 / 訂正認容審決 / 審決確定(審決が確定) / 取消決定 / 異議申立 / |
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事件 |
平成
15年
(行ケ)
67号
特許取消決定取消請求事件
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原告 アサヒ飲料株式会社 訴訟代理人弁理士 正林真之,藤田和子,小池誠,相川俊彦,渡邉昭彦 被告 特許庁長官小川洋 指定代理人 田中久直,一色由美子,林栄二,大橋信彦,井出英一郎 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2005/02/03 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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原告の求めた裁判
「特許庁が異議2002-71713号事件について平成15年1月7日にした決定を取り消す。」との判決。 |
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事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 本件特許第3246896号「新規な半発酵茶飲料」は,平成11年1月7日に特許出願され,平成13年11月2日に特許権の設定登録がなされ,その後,その特許について,特許異議の申立て(異議2002-71713号)があり,平成14年11月26日に訂正請求がなされた。 特許異議申立てについて,平成15年1月7日に「訂正を認める。特許第3246896号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。」との決定があり,その謄本は同月27日原告に送達された。 2 本件発明の要旨 (1) 設定登録時の特許請求の範囲 【請求項1】 浸出前の原料において包種茶の配合量が50重量%以上であって,タンニンの含有量が20から60mg/100mlに調整されていて,テアニンの含有量が2.00mg/100ml以上に設定されることを特徴とする半発酵茶飲料。 【請求項2】 テアニンの含有量が2.00mg/100ml以上に設定されることによって茶飲料の苦味と渋みが抑制させられ,すっきり感が増大された半発酵茶飲料。 【請求項3】 テアニンの含有量を2.00mg/100ml以上に設定することによって茶飲料の苦味と渋みを抑制する方法。 (2) 訂正請求に係る特許請求の範囲(下線部が訂正箇所) 【請求項1】浸出前の原料において包種茶の配合量が50重量%以上であって,タンニンの含有量が20から60mg/100mlに調整されていて,テアニンの含有量が2.00mg/100ml以上に設定されることを特徴とする加熱処理後の半発酵茶飲料。 【請求項2】テアニンの含有量が2.00mg/100ml以上に設定されることによって茶飲料の苦味と渋みが抑制させられ,すっきり感が増大されたPETボトル入り半発酵茶飲料。 【請求項3】テアニンの含有量を2.00mg/100ml以上に設定することによって密閉容器入り茶飲料の苦味と渋みを抑制する方法。 3 決定の理由の要点 (1) 訂正の適否の判断 訂正請求に係る訂正は適法なので,当該訂正を認める。 (2) 本件発明1についての対比・判断 本件発明1(請求項1に記載の発明)と刊行物1(「茶業研究報告」60号54〜58頁,1984年)に記載の発明を対比する。 両者は浸出前の原料が包種茶100%のものである点で一致しており,一方,(a)本件発明1は浸出後の茶飲料中のタンニンの含有量が20から60mg/100mlに調整され,テアニンの含有量が2.00mg/100ml以上に設定されるのに対して,刊行物1記載の発明は,浸出前の包種茶原料中のタンニン量が1979年産で15.58〜16.09%であり,1980年産で11.70〜12.75%であり,そのテアニン量が1979年産で636.9〜899.0mg/100gであり,1980年産で639.8〜931.2mg/100gであることが記載されている点,及び(b)本件発明1の半発酵茶飲料が加熱処理されたものであるのに対して,刊行物1記載の発明は茶飲料の加熱処理について記載していない点で相違する。 上記相違点(a)について検討する。 刊行物1には,包種茶中には相当量のタンニン及びテアニンが含まれていることが示されており,また,包種茶は茶であるから通常の浸出方法により上記成分を浸出させ得ることも明らかである。 また,刊行物5(特開平9-313129号公報)には,テアニンが茶の旨みの主成分であること(段落【0006】),及び,タンニン類を含む飲料の風味改善組成物として使用すること(段落【0009】)が記載されており,また,刊行物4(「日本食品工業学会誌」第19巻第10号475〜480頁,1972年)にもテアニンを茶に添加することにより,茶のし好度が変わることが記載されているから(479頁),本件発明1において,消費者の好みにマッチした半発酵茶を提供するために,テアニン量を好ましい値に設定する程度のことは当業者が適宜なし得る事柄である。その際,浸出工程において包種茶原料から浸出されるタンニンについては,刊行物5の段落【0007】に,テアニンは嗜好飲料中の苦味物質であるタンニンの風味改善のために使用し得ることが記載されているから,テアニン量を設定する際に,タンニン量を一定範囲に調整することも,当業者であれば適宜実験的になし得ることである。 そして,本件発明1のテアニン及びタンニン量が格別予想外の量ということもできない。すなわち,刊行物1の57頁の表6を参照すると,包種茶原料の状態でのテアニンの含有量は636.9mg〜931.2mg/100gである。刊行物2(「茶業研究報告」40号58〜66頁,1973年)に記載の緑茶原料とその浸出液における抽出成分の浸出率等から想定して,仮に,浸出液中の含有量/茶葉中の含有量(以下「浸出液/茶」と略す。)の比率が20%であって,かつ浸出率が1/50であるとするならば,当該浸出液100ml(約100gと仮定する。)におけるテアニンの含有量は,およそ2.55mg〜3.72mg/100mlとなり,また,浸出液/茶の比率を15%とした場合にも,当該浸出液におけるテアニンの含有量は,およそ1.91mg〜2.79mg/100mlになると考えられるのである。 また,刊行物3(「日本食品成分表」,医歯薬出版株式会社)によれば,緑茶,烏龍茶の浸出液におけるタンニンの含有量は,ほとんどの場合,0.03%程度以上であり,当該浸出液が100ml(約100gである。)であるとすれば,それに含有されるタンニン量はおよそ30mg/100ml以上であり,また,少なくともこの程度のタンニン量が浸出される場合,上記したテアニンによる苦味,渋味等の風味改善作用が達成される範囲として,これより若干高めの数値,例えば,60mg/ml程度の上限に調整することも,適宜実験的に決定し得るものと認められる。 次に,相違点(b)について検討すると,茶飲料を加熱処理することは,従来から必要に応じて適宜なされていることにすぎない。 一方,テアニン量等を適当な範囲に設定することにより,茶の苦味と渋み等を抑制し,適当な嗜好性を有する茶を提供し得ることは上記刊行物4及び5に記載の事項から明らかであり,半発酵茶飲料に関する本件発明1が上記刊行物に記載のものから格別顕著な効果を奏し得たということもできない。 以上のとおりであり,本件発明1は刊行物1〜5に記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 本件発明2についての対比・判断 本件発明2(請求項2に記載の発明)と刊行物5に記載された発明とを対比する。 刊行物5には,茶飲料中の苦味,渋み等の風味を改善するために,テアニンを製品に対して0.001重量%〜0.05重量%添加することが最も好ましいと記載されているから(段落【0009】,ここで,「0.001重量%〜0.05重量%」という量は,飲料において「1mg〜50mg/100ml」に相当する。),両者は茶飲料の苦味と渋みを抑制するためにテアニンを2.00mg/100mlに設定する点で一致しており,一方,(a)本件発明2は半発酵茶飲料であるのに対して,刊行物5記載の発明では「各種嗜好飲料」と記載されている点,(b)本件発明2は「すっきり感が増大されたPETボトル入り」の飲料であるのに対して,刊行物5記載の発明においてはこの点が明記されていない点で相違する。 まず,(a)については,刊行物5記載の発明において風味改善を要する飲食品としては特に限定されないとした上で,「各種嗜好飲料」と記載され,また苦味物質としてタンニン類が挙げられているところ(段落【0007】),茶はタンニン類を含む代表的な嗜好飲料であり,その中には,緑茶(非発酵茶),烏龍茶等の半発酵茶,紅茶等の発酵茶があることは周知の事実であるから,刊行物5記載の発明において,上記「各種嗜好飲料」として半発酵茶が実質的に開示されているといえる。 次に,(b)について,刊行物5記載の発明では,テアニンを添加することにより改善し得る風味として,「苦味,酸味,塩味,えぐ味,辛味,渋みなどの体感可能な風味」(段落【0006】)が挙げられている。 ところで,従来から,茶飲料は喉の渇きを癒すために飲して「すっきり」感を得ており,また,飲食後あるいは途中において口の中を濯いで「すっきり」させており,「すっきり感の増大」は茶を飲むことの一目的であって,刊行物5記載の発明でいう体感可能な風味改善の一態様ともいえるものであるから,この点で本件発明2が格別予想外の効果を奏し得たということはできない。 また,PETボトル入りとする点は,従来から,茶飲料はPETボトル入り,あるいは,缶入りとして商品化されていることは周知の事項であり,そのいずれがより好ましい商品であるのかを検討する程度のことは,当業者ならば適宜なし得る事柄である。 一方,本件発明2により得られる効果は,刊行物5に記載された発明及び周知事項から予想し得る程度のものにすぎない。 以上のことから,刊行物5に記載のテアニン含有嗜好飲料として半発酵茶を選択し,これをPETボトル入りとして,苦味と渋みの抑制とともに,すっきり感を増大させることは当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。 (4) 本件発明3についての対比・判断 刊行物4の475頁には,「・・18gの緑茶を大型のきゅうすに入れ熱湯1080mlを注ぎ,・・・1Lの三角フラスコに浸出液をとり,・・・官能検査に使用した。また,一部のものについては,緑茶の量を上記の1/3,1/2,2/3,3/2,2,9/4倍とし,同様な方法によって浸出液を調整した。」と記載されており,この記載によれば,同刊行物479頁の「中級煎茶の普通審査液の2/3の濃度のものに,テアニンを茶に対して3%の割合で加えたこと」により得られたものは,茶の浸出液1080ml中に360mg(=18g×(2/3)×0.03)のテアニンが添加されたものである。この場合,本来,茶の中に含まれているテアニン量を無視しても,浸出液100ml中には36mg以上のテアニンが含有されることになる。 本件発明3(請求項3に記載の発明)と刊行物4に記載された発明とを対比すると,両者は36mg/100ml以上のテアニンを含有する点,及び茶飲料の苦味と渋みを抑制する茶飲料である点で一致し,ただ,本件発明3が密封容器入りの茶飲料であるのに対して,刊行物4記載の発明はそのようなものに限定されていない点で相違する。 しかしながら,茶飲料を密閉容器に入れることも必要に応じて適宜なされていることである。 そして,そのことにより得られる効果が格別顕著な効果であるということもできない。 次に,本件発明3と刊行物5に記載された発明を対比すると,刊行物5に記載のタンニン等の苦味及び渋みを改善するためのテアニン含有風味改善組成物は各種嗜好飲料に関するものであり,これには茶が含まれることは明らかであり,また,テアニン含有量は0.001〜0.05重量%とするのが最も好ましいと記載されているから,テアニン含量にも格別の差異は認められない。 一方,本件発明3において茶飲料は密閉容器入りであるのに対して,刊行物5に記載の嗜好飲料はその点が明らかでないが,上記したとおり,茶飲料を密閉容器入りにすることは周知の事項である。 したがって,本件発明3は刊行物4及び刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (5) 決定の結び 以上のとおり,本件特許の請求項1〜3に係る発明は,刊行物1ないし刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,したがって,特許法113条1項2号により取り消されるべきものである。 |
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原告主張の決定取消事由
1 原告は,本訴審理中の平成15年5月21日,本件特許につき訂正審判の請求をしたが(訂正2003-39103号),平成16年1月28日,審判請求不成立の審決があり,その取消訴訟が東京高裁平成16年(行ケ)第86号として係属中である。その訂正内容は,特許請求の範囲を減縮するものである。そして,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく,独立特許要件も満たすことから,訂正審判請求は容認されるべきものである。 その訂正認容審決が確定した場合には,特許請求の範囲の記載が訂正されることとなり,決定は誤りに帰することになり,この瑕疵は決定の結論に影響を及ぼすものであるから,決定は違法として取り消されるべきである。 2 仮に,訂正審判請求が容認されない場合であっても,決定はその認定,判断を誤り,違法である。 |
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当裁判所の判断
東京高裁平成16年(行ケ)第86号の訂正審判請求不成立審決の取消訴訟については,口頭弁論が本訴におけるのと同日に終結となり,本判決と同時に判決が言い渡されることになっているにとどまり,本件口頭弁論終結時において,原告主張の訂正審判請求を認容する審決は確定していない。 したがって,訂正審決が確定することを前提にする取消事由1の原告主張は,理由がない。 原告は,そのほかに決定の取消事由を具体的に主張していない。 |
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結論
以上のとおりであり,原告主張の決定取消事由は理由がなく,原告の請求は棄却されるべきである。 |
裁判長裁判官 | 塚原朋一 |
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裁判官 | 塩月秀平 |
裁判官 | 野輝久 |